○
内藤参考人 私は
横浜市の
建築局長の
内藤でございます。本日
公営住宅の
建設の
現況につきまして、
事業主体である
地方公共団体側の一人として参考
意見を述べさしていただく機会を与えていただきましたことにつきまして深く感謝申し上げます。
公営住宅法は御
承知のように、
昭和二十六年議員
提出の
法案として
審議され、制定され、現在まで約十年余りを経ておるものでございます。その間超過収入者に対する措置その他の点につきまして、数次にわたる部分的な
改正は行なわれましたが、すでに十年余りを経過いたしまして、いろいろな点で再検討を要する時期となっておると私どもは存ずるわけでございます。重要な問題というものはいろいろございます。しかしながら、本日は時間の
関係もございまして、三つの点について参考
意見を申し上げたいと存ずる次第でございます。
その第一は、補助
単価と補助率の問題、第二は、これは簡単に触れる
程度にいたしますが、宅地制度あるいは地価の問題、これは後ほど
嶋田参考人からもお述べになると思います。第三番目が
公営住宅に対する基本的な考え方の問題、主として
管理上の問題というようなこと、これもできるだけ簡単に触れさせていただきたいと思うわけであります。
第一の
単価の問題あるいは補助率の問題でございますが、御
承知のように、
公営住宅法第七条第一項に国の補助の規定がございます。第一種
公営住宅は二分の一、第二種は三分の二を補助しなければならない。これは議員
提出の
法律でありまして、普通
政府提出の
法律でございますと、
予算の
範囲内において二分の一以内をとか、三分の二以内を補助することができるというように多少逃げを打ってあるのでございますけれども、この
法律は逃げを打ってございません、「補助しなければならない。」とはっきり規定してあるわけでございます。しかしながら、第七条の第三項の規定において「
建設大臣の定める標準
建設費をこえるときは、標準
建設費をその費用とみなす。」という規定がございます。せっかく第一項において三分の二あるいは二分の一を補助しなければならないと明確に規定してありながら、第三項において
建設大臣が定める標準
建設費というものが補助の
単価の基準になるということになりまして、これが問題を生じておるわけでございます。せっかくの第一項の親心が生きていないと私は信ずるものでございます。
発足当初、すなわち
昭和二十六年に制定されたわけでございますが、当初の標準
建設費は若干
一般の
実情、すなわち私どもが
予算を計上し、
工事を
発注する実際の
予算——
地方公共団体といえども不当な高い
価格を
予算に計上するわけでございません。できるだけ市の財政の健全化あるいは節約をはかるために妥当な
予算を計上するわけでございますけれども、若干標準
建設費よりそれがいつも上回っておるというようなことを続けておったわけでございますが、それでもそれはあるいは五%であるとか、一〇%であるとか、ある
程度は
地方公共団体もやむを得ないというような気持で忍んで参ったわけでございます。しかしながら、先ほど
大林参考人からも述べられましたように、最近は特に地価の
高騰、毎年丸々
都市の郊外における著しい地価の
高騰、それから一昨年来の
建設関係労務者の労銀の値上がりあるいは一部
資材の値上がりというようなことが生じまして、その問題が特に
地方公共団体として重大な関心を持たなければならなくなったわけでございます。そこで、もちろん
建設大臣の定められる標準
建設費も、たとえば昨年も
補正予算によって是正されております。これらにつきましての
建設省御当局の御尽力は、私ども十分これを感謝するものでございますけれども、遺憾ながらそれらは
一般の
労賃なり地価なり、あるいは一部
資材の上昇に追いつかないというのが
実情でございます。現在におきましては、たとえば昨
年度の
横浜市の
公営住宅の
実施の
状況なんかを見ますと、
法律に第二種は三分の二補助と書いてございますが、二分の一補助に足りない。実際、市が
実施いたしますところの
単価に比較いたしますと二分の一補助に及ばない。それから
法律に二分の一補助しなければならないと書いてありながら、これは三分の一にも足りないといったような
実情であります。先ほど
大林参考人から、
地方公共団体は
建設省のいわゆる
標準単価、
建設大臣の定める
標準単価で
発注するのだろう一そういう
地方公共団体もあると思います。しかしながら
横浜市は、また多くの
都市は、それでは
建設業者が
受注してくれない。どうしても
実情に合うように
予算を計上しなければならない。その計上いたしました結果から見ますと、以上のような
状況に相なるわけであります。
たとえば、お手元に印刷物をお配りすることだけは遠慮いたしましたけれども、
横浜市は、昨
年度も本
年度も
公営住宅五百戸の
予算を計上いたしました。これに対しまして標準
建設費によりまして国から補助をいただいております。市はもちろん当然
法律によって負担すべきもの以外に負担いたしておりまして、そこで市が投入いたしますところの
資金を、もしも標準
建設費が
横浜市が実際
発注する
単価をもって標準
建設費とされますならば、逆算いたしますと、五百戸の
公営住宅でなくて八百四十七一尺五割以上の戸数の
建設ができるわけであります。そういたしますと、五%だとかあるいは一〇%くらいの
単価の違いは、これは見解の相違もありましようし、また国が
一般的に土地なりあるいは
物価の値上がりを抑制するという政治的な意味もありましよう。若干これは見解の相違に基づくところもございましようから、その
程度ならば
地方公共団体は今までも忍んできたわけでございますけれども、もう最近の
状況になりますと、とうてい
地方公共団体は、
地方財政の上から忍ぶことのできないような
実情に相なっておるわけでございます。単に
地方がそれだけ負担をすればいいだろうというようなことは、見方によっては言えるわけですが、ここに家賃の問題が生じてくるわけであります。
御
承知のように家賃の算定は、
公営住宅法の第十二条に規定してございます。それによって、たとえば最近
横浜市も三十六
年度の
公営住宅ができ上がりまして公募するわけでございますが、家賃をそれによって算定いたしますと、第一種の
住宅で四千七、八百円、川崎のごときは地価が高い
関係もありまして五千円くらいの数字になるわけです。第二種は約三千何百円から四千円近い。そうしますと既存の
住宅、たとえば
横浜市のごときも
横浜駅からバスで行ったら十分くらいの非常に便利のいいところに七、八年前に
建設した鉄筋コンクリートの四階建てのアパート、それらが当時の
建設価格で家賃を算定いたしまして、その後若干の家賃の
補正をいたしておりますが、第一種の
住宅が二千八百円。ところが最近
建設いたしました相当土地の不便な交通の不便な、地価の安いところでありますから不便なところですが、そういうところの第二種の、より低額所得者の入るところの
住宅の家賃が三千六百円、これではあまりにもアンバランスだということで、これも川崎市のごときも五千円という家賃がはじき出されるわけですが、それを
社会政策上四千四百円とか四千二百円に下げざるを得ない。また第二種のごときも三千六百円はあまりにひどい、何とか三千円を割るようにしたいというので苦慮をしておるわけであります。すなわち
地方公共団体は
法律の定める補助以外に
資金を投入いたしまして、しかも家賃の点において
法律に定められた限度以下にするというようなことにいたしまして、今後こういうことを続けますと、
地方財政上非常に禍根を残す、あるいは困難な事態が生ずるといったような二つの大きな問題が出てきておるわけであります。
そこでこれをどう解決するかという問題について若干の私見を申し上げたいと思います。これは
建設省御当局も、
住宅局の方も、また大蔵省の主計局の方もいろいろこの
標準単価の問題については御苦心願っておることは十分私ども認めます。かりに私が大蔵省の主計官であったとすれば、そんなら
実情に合うように、よろしい、それじゃ五割増しましようというようなことは、なかなか簡単にはできないと思うのです。それぞれ
立場があり、この問題についての解決は、現在の段階のようなやり方をやっておったのでは解決されない。どう解決するかと申しますと、理想的な解決方法といたしましてはいろいろございますが、一つの例をあげますと、アメリカ合衆国の
住宅法の第百四条に
地方の負担金という条項がございます。その前に百二条でしたか、三条に、国庫の補助金という規定がございます。これは三分の二以内を補助することができるという規定になっております。一方
地方の負担金の中に三分の二補助基準の場合は、
地方公共団体に対して三分の一以上の負担を要求してはならないということがはっきり規定してあるのであります。これはアメリカはどういうふうにして立法されたか知りませんけれども、連邦
政府の
法律は、連邦
住宅庁、HHFAですが、そこの長官を制限しておる。
法律がいろんな
理由をつけて三分の一の負担でいい場合に三分の一以上の負担になるような行政をやってはいけないというような、行政のやり方を規制するようなはっきりした規定がうたわれておるわけであります。こういう規定がありましたならば、私どもこういう場所に出まして参考の
意見を申し上げる心要もないし、また
予算編成時期になりまして、
地方公共団体の
住宅担当課長が
全国から集まりまして、お忙しい皆さん方のところにわざわざ陳情に及ぶ必要もない。
法律の一つの規定ですべてが解決するのではないかと思うわけであります。しかし、こういうような規定は、現行のほかの
法律にはございません。
公営住宅法は幸いにして議員
提出の
法律でございますから、そういう模範的な
法律を作っていただければ、まことにありがたいわけでありますけれども、これがそう簡単にはできないということになりますと、次善の策ということになります。次善の策といたしましては、現行の第七条の第三項、
建設大臣が標準
建設費を定める場合には、あらかじめ
住宅対策
審議会の
意見を聞かなければならない、この条文だけはぜひ何とか一つこの国会でそういうふうに直していただきたい。これはせっかく
公営住宅法が議員
提出の
法律でございますので、僅か一条の半条分、一項でございます。
建設大臣が標準
建設費を定める場合にはあらかじめ
住宅対策
審議会の
意見を聞かなければならない——しかも
住宅対策
審議会はわざわざ作る必要はございません。現在できておるわけです。その
意見を聞かなければならないということになると、その
住宅対策
審議会には、
地方公共団体の代表者もおりますし、あるいは
建設業界の事務局長ですか、どなたかも入っておられる。あるいは
関係官庁の方も入っておられる。学識経験者の第三者も入っておられるということで、おおむね妥当な形になっているけれども、これはいろいろな
立場々々によって
単価がこれでは安過ぎるとか高過ぎるとかいう
意見が出てくるのは当然でございます。これは前例といたしましては、あるいは米価
審議会とか、あるいは医療費の
審議会、いろいろございます。これは先ほど申しましたように、単に
地方財政に
関係するばかりではなく、家賃に
関係いたしまして
公営住宅全体の混乱を招くもとでございますから、何とかこれは一つ、きめます場合にせめて
住宅対策
審議会で十分練って、その案を参考として
建設省は大蔵省に
予算の折衝をするということにすれば、今のようなもののきめ方よりは数等進歩するのじゃないかというように私ども思いまして、もし今度の国会においてわずか一項目でございますけれども、修正していただくことができましたならば、私はここへ参りました
目的の大部分は達したというように思うわけでございます。
公営住宅法は議員
提出の
法律でございますから、まあ
政府の——私は
政府にも申し上げてあります。
建設省も一つこれを御
提案になったらどうでしょう、しかしなかなか御
提案いただけませんから、そこで哀訴嘆願いたしましてお願いいたす次第でございます。
しかし一方国家財政がございまして、
単価を上げれば国の
予算にも響いてくるわけでございます。そこで同時並行いたしましていろいろな点をあわせて考えて御参考に供したいと思いますのは、土
地区画整理
事業のように精算補助による方法も一つございますが、これも実際問題としてはなかなかむずかしいだろうと思います。もう一つは、これは私見でございまして別に
横浜市の
意見でもなく、
地方公共団体を代表した
意見でもございませんが、というのは、補助率をもう一ぺん考え直す、あるいは家賃の算定方法を考え直す。たとえば土地につきましては、
学校建築なんかは土地の補助金はございません。そこで土地については
国庫補助はございません。これを、現在やはり三分の二なり二分の一なりの補助があるわけでございますけれども、家賃の算定の場合に土地については補助以外、つまり
地方負担分の地代相当額を家賃に加えるということになっておりますけれども、これをもう土地については家賃に加えないというような制度を考えて、家賃の不均衡是正の一端にすることも一つの方法かと思うわけであります。あるいは土地についての補助率は現在、先ほど申しましたように三分の二なり二分の一であるわけでございますけれども、これを三分の一の補助率、
地方公共団体が、三分の一を負担する、あとの三分の一だけを地代、家賃に算入するとか、多少芸はこまかくなりますけれども、補助率をもう少し再検討するのも一つの方法かと思います。
最後に構造の方法、
設計の方法あるいは
施工の
合理化、これらのことも研究いたしませんと、
労働者はいよいよ
不足する、
不足すれば労銀の値上がりはどうしてもやむを得ない、こういうこともございますので、これらはいろいろ現在も
建設省のあるいは建築技術研究所で御研究になっておると思いますけれども、構造なり
施工の
合理化ということも当然同時並行いたしまして、
単価の値上がりをできるだけ抑制していくことも必要だと思います。
また前渡金制度、
地方公共団体に国は前渡金を渡し、また
建設業者に対して前渡金を、今は任意になっておりますけれども、これを
公営住宅については義務づける、
地方公共団体は
建設業者に対して前渡金を三分の二なら三分の二の支給をしなければならないといったようなことも、——これがいいか悪いか存じませんけれども、いろいろな点で
施策を合わせていたしませんと、
法律の一条項の
改正だけでは十分だとは思っておりません。
次は用地、土地の問題でございます。これは最近新聞なんかで拝見しますと、経済企画庁でもいろいろな経済
施策といいますか、
物価に対する
施策を十項目
程度あげておりまして、それに宅地制度の問題、地価の
高騰の抑制をはかるというようなこともあがっております。なお聞くところによりますと、宅地制度
審議会を設けるという
法案が今度の国会に
提案されまして、四月からいよいよ
政府も宅地制度についての本格的な検討に入るということは、これはまことにけっこうでございますけれども、この問題が現在の
公営住宅の
建設の一つのネックになっておるというように思うわけであります。特に大
都市の
立場を代表いたしますと、東京とか大阪あたりにも
建設省からは平家建の
公営住宅の割当があるのであります。これはあの土地の広いアメリカにおいても、御
承知のようにニューヨーク市は
公営住宅は全部二十階です。人口七、八十万のピッツバーグで四階か五階、人口が十五万くらいのニューヘブンなどになりますと二階というわけで、
地方公共団体の
実情に応じた
公営住宅を作っておるわけであります。そこで地価を抑制しなければならないという場合に、東京、
横浜、大阪、名古屋、これらに平家建の
住宅を作るということは、逆に言えば地価の
高騰を
促進している非常に皮肉な見方でありますけれども、そういうこともいえるわけであります。これは逆に言えば
建設省の指導方針として、五大
都市、六大
都市にはもう木造はもちろんのこと、平家建は作ってはいけない、少なくとも二階以上にするようにということにいたしませんと、皮肉な見方をすれば
公営住宅が地価の
高騰に一役をになっておるというような現状が見られるわけであります。
その他宅地制度をどうするかということについて、私なりに
意見がございますけれども、時間がございませんので、この際は省略させていただくつもりでございます。
次に
住宅の
管理制度、
公営住宅そのものをどう考えるかというような問題も、時間もございませんから簡単に申し上げますと、これは先ほど申し上げましたように非常に
建設年次の古いものは、相当便利な場所の鉄筋コンクリートが二千何百円、最近は第一種が五千円近く、四千円をこえる、また第二種ですら三千円をこえるといったようなアンバランスが出ております。これらについては若干不均衡是正の制度もございますけれども、これらをさらに徹底して、
公営住宅はほんとうの社会福祉的な
住宅とする、
一般的には
住宅公団の
住宅が
一般庶民の
住宅であるというようなバランスの問題、その点から見ますと、
住宅公団は
法律の規定もございましょうが、御
承知のように主として大
都市周辺にやっておるのでございまして、人口の
地方への再配分ということから考えますと、むしろたとえば岡山県の水島
地区とか、茨城県の日立だとか、そういうところにこそ
住宅公団の
住宅を作って、日本の
住宅の大
都市集中を是正するという意味からいいまして、
全国の各府県にとにかく
住宅公団の
住宅があるのだ、そうして収入の超過した方は
住宅公団に入るのだというような制度に持っていかなければ……。