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木村(公)
委員 今いわゆる高速道路あるいは東海道の新幹線等の
工事を進めておりますので、これとよく似た問題が各地に起こっておるわけです。ところによっては損失補償法に便乗して、今まで何べん陳情してもできなかったような利益をもたらそう、取ろうというので、あるいは政治家を動かし、あるいは当局を欺瞞して、そうしていろいろな
工事をさしたり、いろいろな利益を得ておるというところもあります。また、ところによっては、当局の不勉強、不明のために、当然損失補償を適用すべき
個所があるにもかかわらず、それが適用されないで放置されておるという、国民の側にとってはなはだ迷惑な
個所もあるわけです。従って、このケースは小さいことのようですが、私はこれは重大な問題だと思う。
そこで、イデオロギーの問題ですけれ
ども、
調達庁の初めの
説明の中に、農民の慣行ということを
説明しておらない。ところが農村においては、水の問題は重大であって、水に対するあらゆる慣行があるわけです。排水についても、用水取り入れについても、いろいろな慣行がある。この慣行というものを
説明しておらなかったから、
会計検査院の
指摘を受けた。しかも
会計検査院の
指摘は、こういうように書いてある。
駐留軍の演習により原野等が荒廃し、豪雨時には桂川から
土砂等が福地
用水路や周辺農耕地に流入して
被害を与えるが、同
用水路の取水
樋門が施錠固定され、
洪水時にも閉鎖することができないから、
用水路内に流入する
土砂の滞留を防止する
工事を
施行することとし、
用水路の水路面をコンクリート張りにするなどの
工事費千三百四十一万円全額を県に対して補助している。しかし、現地を
調査してみると、前記の
樋門とびらはこれを閉鎖して
土砂等の流入を防止することができ、また本川の許容流量などからみても
樋門を閉鎖しても下流に支障を及ぼすものは認められないから、
本件補助金は交付する必要がなかったと認められる。こういう
指摘があるわけです。これは大へん重大なことで、
金額はわずか千三百四十一万円ですけれ
ども、同じケースが全国にたくさんある。あそこでもしもこういう慣行というものを
調達庁の言われるように無視すれば、おそらく私は、
会計検査院の言われるごとくで、この
樋門を締めたところで別に下流に
被害を与えない、これは
土砂の流入も避けられるじゃないか、なぜ
樋門をあけっぱなしにしておくのかという理論から、
樋門を締めないということが悪いんだ、しかもその流量を
計算してみても、当然
樋門を締めたところで、本川の桂川に影響はない、
洪水量にも及ばない。そうしてみれば、問題は
樋門を締めるか締めないかという一点にかかって、締めればいいじゃないか。それを締めないで、わざわざ千三百四十一万円の国費を県に補助してコンクリート巻きするということは、国費のむだ使いじゃないかと言うと、
調達庁の方では、そうじゃないんだ、
樋門をあけておくということは、長年のそこの農村の慣行であって、もしも強制力をもって
樋門を締めるようなことがあっては、農民騒動が起きぬとも限らない、農民一揆が起きないとも限らないという見地から、この農民の水の慣行等を勘案して、この金を使ったのであるから、むだ使いではないんだ、当然であると言うのです。そうすると、根本的に、農村の水の慣行等を認めるのがいいのか悪いのかということにしぼられてくる。
調達庁は、あとからかどうか知りませんが、水の慣行があった、こういう慣行があるからわれわれは全額を補助したんだ、従ってこれは適正であると、そう思っていらっしゃるだろうと思う。しかし、
会計検査院に聞いてみると、これは適正じゃない、むだだ、こんな金は一銭も出さなくてよろしいんだと言う。今聞いてみると、そのときの
説明には、水についてこういう施錠をしておるというような慣行があることは聞いておらなかったというととが
一つ出てきておる。もう
一つは、実は自分たちが行ったときは施錠もしてなかったと言う。そうすると、
検査のあとになって言いわけのために施錠という問題が出たのか、慣行というようなことが発明されたのかというようなことも疑わざるを得ない。どちらなんですか。
会計検査院が言うのがほんとうなのか。
調達庁が言うのがほんとうなのか。これは他に及ぼす影響が大きいケースであると思いますから、まず
調達庁の方からお尋ねしたいのは、慣行というのはあとからおつけになった慣行なんですか。
検査のときには施錠もしておらなかったと言っておる。慣行ということは、あなた方の
説明の中にもなかったと言うておるのですがそれはほんとうですか。