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山本参考人 それではお許しを得まして、私から朗読させていただきます。
今般
東北開発株式会社に関する件について
参考人として
出席方を依頼されましたが去る二月五日の
鈴木委員長の
調査報告及びこれに関する質問、応答、更に二月十五日の
東北開発株式会社伊藤総裁の
釈明書及びこれに関する質問、応答について
決算委員会議録を熟読致しました結果、関係ありと認められる事項を書面に記述し、御参考に供する次第であります。
なお、私は主として会社の
経理部面を担当しておりましたので、その記述も
経理的観察となりますことを御
諒承願い度いと存じます。
一、
伊藤総裁の
釈明書と
菅政務次官の答弁に対し、再度、調査を要望するの件。
私は、伊藤現総裁の
釈明書と
菅企画庁政務次官の答弁によって名誉を傷けられたものと存じますので、その疑を更に徹底的に御調査されるよ
う要望致します。
(1)
伊藤総裁の
釈明書に依れば、渡邊前総裁の
引継説明が
会計検査院の審査結果と矛盾し、特に
秋田木材会社の
解除条件付契約に関する経緯を
少数理事の専断なりとし、経営に関し一層疑惑と不信の念を強くしたと説明すると共に、これに関する監事の
責任態度に言及し、今回の決算中の
指摘事項については監事の触手を回避するが如き状態において為された結果なりとし、
会社経営の態度に対し不信感を強調しておるのであります。私はこの見解が
伊藤総裁の不見識を表明するものであり、甚だ遺憾に思う次第であります。思うにいずれの事業においてもそのよって来たる複雑な沿革があるのであります。従って
決算そのものも突如として発生するものではないと思います。
伊藤総裁は
事業家出身と聞くが
東北開発会社が旧
東北興業会社という破産的な会社から発足したものである位は御存じの筈と思います。四年前の破産的な会社から今日の発展をもたらしたその経過についても、一言も触れることなく、また最も大事な
資金事情、
資産内容等に深い洞察を加えることなく、当
委員会で問題となっている、いわゆる
裏契約等を捉えて、
会社経営の万事を判定しているのであります。即ち、今少し思慮ある総裁ならば
釈明書作成に際しては、直接に処理に当った前役員の意見を徴するくらいの配慮は当然と思うのであります。私は昨年の九月一日会社を去るに臨み、
経理部より見た会社の経営に関する
重要問題点を含む
引継書を作成し、
伊藤総裁、山中副総裁、
経理担当田所理事に手交した筈であります。然るに
釈明書作成に当り、これを採択した如き節もなく、当時の
経理担当の私の意見も徴しないのは悪意をもって臨まれているのであるか、または、
背任行為者と認めておるかの何れかであると断じられても弁解の余地がないと思います。
また、
裏契約に関しては
委員長の報告によれば「
担当理事と二、三の
幹部職員のみ知っておる」とあるのに、総裁の
釈明書は「
少数理事の専断」として複数の理事が居るごとく表現し、
久保委員の質問に対しては、「理事の資格を持った人々の専断」…「自然とそういう隠れたような審議」…などと説明しこれに対し監事の触手を回避するが如き状態で行われたとして恰も、私もこの一員であるかのような印象を与えておるのでありましてその
真意奈辺にありや疑惑を持たざるを得ないのであります。然して最後にこの事実を会社の
最高責任者たる
伊藤総裁は自ら背任と断定しており世間に一層疑惑を抱かせるに至ったその責任はまことに重大であると考えます。
(2)次に
久保委員の質問に対し
菅政務次官は、いわゆる
裏契約に関し「
少数理事が専断で処理したことは
任務違反である」とし「この点を含めて当時の理事は全員御退任願った」と答弁、又、次の答弁においても「会社の運営上は明らかに
理事者としての
義務違反だ」と発言、「こういうことも含めて幹部の更迭を致したのである」と、あたかも、全理事がこの責任に依って解任された如き印象を与えたのであります。
二、昭和三十五年度決算は赤字であるに拘らず黒字にし、虚偽の決算を行ったということについて。本件については別紙『
秋田造成土地の
売却益を三十五年度の決算に算入した理由』に説明しておきましたが、これを算入するについては
当社発足以来の沿革(
損益並に資金の事情)と各年毎の損益の取扱、
造成土地資産の
特殊性等綜合のうえ決定致した事情もありますので、何卒この点につき、御
考察願い度いと存じます。
(一)
会社発足以来の損益及び
資金状況
昭和三十二年度は旧東興の
資産内容の整理に終始し、三十三年三月末の決算においては未
処理欠損約二億円を補填して
資本金四億円を維持することとしました。
即ち、表面一億余の積立金ある会社が未処理の損金約二億円を包蔵しており、更に
事業資金(
セメント工場建設資金)の内約四億円も流用しておったのでありますが当社の自力をもって補填する計画を立てたのであります。(興銀を中心とする
協調融資、台ノ
原土地の処分、その他の
不用資産の処分)当時は資金の不足を一気に補填できなかったので、社債を早期に発行することを政府に要請して辛くも経営を維持して来たのであります。三十三年度、三十四年度と損益の状況に応じてその資金繰りも漸次好転し、当初四億円の
流用額も三十四年度末においては二千七百万円と減少しましたが、三十五年度においては取引量の増嵩のため三億一千六百万円と
流用額は増加したのであります。同年度末
手持手形二億三千七百万円の
資金化対策中に三十六年度に入り、大蔵省の社債の
大型化の方針により、一度に十三億円の資金の受入れがあったので、一時
資金難をまぬかれましたが、設備の進渉と共に
資金手当を必要とするため、極力、
セメント代金の回収、
造成土地の売却により
資金化を図る必要に迫られておったものであります。
(以上
次頁別表「損益および
建設資金流用状況調」参照)
これは省略してもよろしゅうございますか。(「いいよ、いいよ」と呼ぶ者あり)それでは省略させていただきます。
(二)各年度の
損益決定の実情について
当社としては旧東興の引継時よりの巨額の
資金不足に鑑み、
資金化対策を第一策として来たものであり、従って
損益状況よりする
資金化対策も亦
重要度を占めているわけでありまして、少くとも償却前においても利益を生ずる程度の
損益状況を期待して来たものであります。この際において、その償却を
定額法とするか、或いは
定率法とするかによって表示上の損益に相当の幅を生ずるのでありますが、
資金蓄積と決算の
堅実性の見地から
償却額の多額な
定率法を用いて来たのであります。三十二年度は
東興整理の年であるので、
前任者の名誉のためにあらゆる努力を払い収益をあげ
差引損益を零とし
資本金維持(
当期資本金四億円)につとめたのでありますが、三十三年度は三億二千万円という多額の欠損を計上するに至りました。この主たる原因は
定率法による償却の影響もあり、
工事進行中の土地の利益を計上できぬ為にもありました。従って実質的にさほどの欠損といえないのであり、むしろ過当の欠損を示すものとしてよい意味で真実でない面もあるのでありますが、外見、三億円の欠損という事で、その影響は意外に大きかったのであります。もっとも、本欠損を出し、将来、各方面に注意を喚起するというねらいも意図されておったわけでありますが、上述の事情に鑑み、三十四年度においては土地の利益について
工事進行基準によることを主張致しましたが、官庁の認めるところとならず、土地については契約あるものについてのみその計上を認めるという事情にありました。しかし、仮契約の
日本ゼオンの土地の
利益計上の経緯につきましては、先ず資産として十分であるということ、仮契約も実行できる見通しであること、利益の計上もその一部たる手付の範囲であること等を勘案されまして官庁もこれを認めたのであります。ところが、これが色々と問題となりましたので(注)、三十五年度は実質的にも、正式に契約したものを利益に入れるという方針で臨んだのであります。
(注)
日本ゼオンの仮契約の
利益算入は無効であること、
三倉鉱業に関連して
三浦代議士が三百万円収賄していることなど事実無根のことが流布されて、会社としても大いに迷惑をしたので、三十五年度の
秋田木材関係の
土地売却においては
日本ゼオンの如きことのないよう極力注意を払って参ったのであります。
(三)
造成土地資産の
特殊性について
造成土地は
工場誘致の目的で売却するのであり、従ってその
会計学的性質は商品と認められます。しかしながら
流動資産とも取扱いかねるので、当社は
流動資産、
固定資産の中間に
造成土地資産勘定を設け、
造成土地に関する
債権債務その他の資産、負債を整理しております。
完成後一、二年は手持となる実情から、先ず
会計処理として未完成までは
工事進行基準によってその
見積利益を計上することが適当と思われるのでありますが、目下のところ官庁はこれを認めておりません。
又
工業用地の
売却代金の
回収額は、三十五年より
自己資金として
事業設備資金に引当てられているので完成後は一刻も早く売却する必要があります
三、
セメント代理店に対する
債権管理が不適正であり、多額の
売掛金が回収不能となる危険を持っているという事について。
本件について
東光物産(株)、
青森建材(株)等に対する
セメント売上代金の多額の回収不能という御指摘の点については、
代理店認定当初における対外的な
つながりの他、千葉前
営業部長等内部の役職員の
つながり、及びその
背後関係等があり、複雑な問題(
後述マル注)も包蔵しておりますが、これを最終的に
代金回収担当の立場にある経理の面から釈明を申し上げます。
当社においては代金の
回収事務は
営業部の所管であって
回収金を経理に持込む制度となっております。従って経理としての直接の事務は
手形期日において回収をはかることにあるわけであります。当初、
経理部が
代理店の
代金回収に重大なる関心を持っておりました趣旨は、回収不能を生ぜしめざることもさることながら、全体
的資金の回収が順調に行われ資金の還流を正常に保持することを第一の眼目としていたわけであります。然るに漸次、一部の
代理店の中に
売掛金が固定する傾向が見えて来たのでその強力なる整理が必要であると考えられたが、むしろこの際、
専門的営業マンの主掌する
販売会社を設置し、独自にその発展をはかることが
東北開発という本来の事業が進む所以と考え、これを部内に進言し、
会社案として三十五年度において政府に要請したところ
セメント代理店等の反対によって実現を見なかったのであります。経理としては
営業部の陣容の強化、特に販売、回収に当る人材の拡充によって整理を促進することを進言し、これが実現を見て
実行段階に移ったところ、
かなりの障害もありましたが
相当程度の効果を挙げつつあったところ、前役員の退陣後はなにびとの進言によるものか
回収努力を停滞せしめる如き人事を行った模様であります。なお、この際一言したいことは、御指摘のあった
硬化セメントにつき当社の
前任者がすでに備えつけていた
篩別機等により品質の
向上対策を講ずることなく、
資金難の
折柄資金化の為か真相は不明なるも、すべてをトン二、〇〇〇円にて売却しその損害(一億二、〇〇〇万円)が
前任者の責任に帰するものの如く釈明しておることは甚だ遺憾とするところであります。
マル注(1)
東光物産(株)に関する千葉元
営業部長の
特殊関係より、
元横山経理部長が当初強硬に整理に当ったため非常な反感をもって見られる結果となった。この
債権処理と
代理店認定とにからみ山中、
中村両前監事の態度は極めて、消極的であった。(
東光物産(株)は実際は
三福商事(株)と
矢野商事(株)とに分れているが、これら複雑な関係からこの二店は正式の代理の認定はなかった。)私は山中前監事に対し、強く監督を強化すべきことを要請したことがある。
マル注(2)千葉元部長は「
経理部に書面を回すな」という非協力な態度であり、あるときは
セメント横流し事件に関し非協力であるので、経理としては総裁の特命のもとに、これを粛正したことがあった。又、各地に
セメント倉庫を設置することにきめた会社の方針に反対、製品を独断で東京に送るということもあった。かかる
営業部長のもとにては
回収整理など期待出来ないので、その配置換を要望した。然るところ、これを動かすことに
監督官庁の
有力者が反対し、この
粛正人事が出来なかった。
マル注(3)
自民党東北開発特別委員会事務局のある幹部は特に千葉元部長と密接な関係にあり、同人は
監督官庁に呼びかけ私に対し、
会社幹部に犯罪ありと称して、
犯罪捜査の手段を用いるが如きこともあったが、これは、
犯罪捜査機関により行わるべき事を理由に拒否した。
マル注(4)これら
粛正人事に当り、私は、会社のある
幹部職員により「闇夜もあるから気をつけろ」と脅かされたこともあった。
マル注(5)
営業部における回収の
責任者たる
横田販売計算課長が
回収処理について消極的であるので、その配置替と後任に
竹内課長を任命することを進言、同課長の就任後は
かなりの整理が行われた。この整理に当っては
棟方セメント東北会長、丹野同顧問の反対があったため
東光物産(株)並びに
青森建材(株)の処理について
竹内課長の苦心は並々ならぬものがあった。
マル注(6)前
役員退陣後、
竹内課長は配置替され、また
不成績代理店の支持ありと認められる
赤塚営業部次長が
営業部長に栄転している。
尚、
赤塚部長は
土地造成部次長時代において
秋田大材(株)との
土地売買契約の
裏契約の
起案者の立場にあったと聞くが当時の
横山工業用地部長が責任を問われたのに、反対に
営業部長に栄転している。
四、
セメントの
倉庫売について。
三十五年度末決算に際し
セメントの空売りを決算に計上したとの御指摘でございますが、経理の立場から釈明を申し上げます。
売買は契約により成立し、これによって
債権債務関係が発生するので経理的にも、財産に変動を及ぼすものであるから、
経理処理として
契約主義をとることが望ましいばかりでなく、経理の
内部統制の立場からも、その取引を早目に把握できる長所を持っているものであります。当社の
経理処理としては従来
セメント売上については、
引渡し主義をとっていたため弊害の事例(一例として
東洋物産(株)に対する冬期対策売り問題。
マル注後述)も見られたので、私としては可及的速やかな
契約主義への移行を腹案として持っておりました。然し、対外的、
対内的関係から、その機熟せず、三十五年度においても依然、
引渡し主義を継続した次第でありますが、ただ、その前進として、少しでも早くその
契約関係を把握し、また、その売上げの促進にもなる方法を
営業部に求めた結果、いわゆる
倉庫売りの制度が出て来たわけであります。経理としては倉庫において
引渡しが行われたものとの
営業部よりの連絡によりこれを売上に計上することとしたのでありまして、当初から空売を損益に計上する考えは毛頭なかったのであります。尚、本件は原価にその他の経費を加算すると売値よりも高くなっており売ったことによって経理的には損が出ておったと思います。
マル注東洋物産(株)冬期対策売り問題。当社は三十三年
セメント売上増強対策として冬期(三月三十一日迄)買上のものに
トン当り六〇〇円を割戻す
販売方法をとっていた。(但し、当社の都合にて期限内に
引渡しができない場合は、期限後に、おいても、この条件が適用されることになっていた。)たまたま、
東洋物産(株)より年度末に、当社の
生産能力よりみて、とうてい
引渡し不能な二万トンの注文を
営業部は引受けた。
東洋物産(株)は強硬に割戻し請求権を主張し、現在、その一部は当社の
売掛金の回収に応じないという形で残っている。
経理部は割戻しの請求があって始めてその事実を知った。