○
鈴木委員長 これより
東北開発株式会社の
会計に関する件について
調査を進めます。
本日御出席いただきました
参考人は、
東北開発株式会社より、
総裁伊藤保次郎君、副
総裁山中徳二君、監事
中村清英君の三名でございます。
参考人各位には、御多用中御出席いただきありがとうございました。
まず初めに
東北開発株式会社につき、私が
調査をした結果を御
報告申し上げ、
委員各位の
審議の御参考に供したいと存じます。
まず、
東北開発株式会社の経過
概要について申し上げますと、その前身である東北興業株式
会社は、
昭和九年に東北地方を襲った大冷害が契機となって、
昭和十一年五月法律第十五号の東北興業株式
会社法により、東北地方の
振興をはかる目的で、同地方における殖産事業を行なうため、東北六県、同市町村及び農業団体等の出資により、資本金三千万円で発足した特殊
会社であります。
政府は、東北興業株式
会社に対し、株式配当補給、東北債券の元利保証及び出資等の援助を行なってきております。しかし、
昭和二十年の終戦とともに政府の法人に対する
財政援助の制限措置が行なわれたため、
昭和三十一年まで政府の
財政援助は停止されたが、同年五月再び社債の元利
支払い保証が復活し、翌
昭和三十二年法律第百四十二号により、東北開発促進法や北海道東北開発公庫と同時に、社名を東北興業株式
会社から現在の
東北開発株式会社に改名し、自来、政府出資、債券の元利保証、貸付金等の
財政援助は年々
増加をし、
昭和三十六年十一月現在の資本金は二十五億円で、うち九六・三%、二十四億七百五十万円が政府出資額となっております。
昭和三十五
年度における社債発行残高は七十五億六千六百万円で、これに対しては政府の元利保証が行なわれており、また、同年に対する政府からの長期借入金残高は八千三百六十二万二千五百七十四円となっております。
次に、事業
概要について申し上げますと、
昭和三十六年十月一日現在で、従業員数は千六百八十六名で、本社は仙台市にあり、岩手工場ではセメント及び生石灰の生産、福島工場では石灰窒素、カーバイト、酸素、窒素、溶解アセチレンの生産、木友鉱業所では亜炭の採掘、会津工場では硬質繊維板の生産を行なうほか、各地で土地造成事業をも行ない、最近では砂鉄事業を
計画しており、その他出資等の助成を行なっている子
会社は現在十二社に及んでおります。
なお、
昭和三十二
年度以降の営業成績を申し上げますと、
昭和三十二
年度は百五十七万八千七百八十三円の利益を生じていますが、前
年度繰り越し欠損が一億九千五十万五千百九十一円ありましたので、土地評価益、法定準備金及び再評価積立金の取りくずしによりまして繰り越し欠損を全額補てんしております。
同三十三
年度は三億二千二万四千三百一円の欠損が生じ、同三十四
年度は千五百八十万八千四百六十九円の利益を上げ、同三十五
年度は六千八百二十七万百三十二円の利益を計上しています。しかし、
昭和三十三
年度に多額の欠損を生じておりますので、同三十五
年度末の繰り越し欠損額は二億三千五百九十四万五千七百円となっております。
また、今期の
昭和三十六
年度決算の見込みでは十億三千九百八万七千円の欠損が生じ、前
年度の繰り越し欠損金を
合計すると、十二億七千五百三万三千円の赤字が予想されます。
以上が
東北開発株式会社の経緯及び事業
概要でありますが、本件に関しましては
会計検査院も
昭和三十五
年度決算報告に掲記しており、当
決算委員会としては、特に後進地域の開発促進が叫ばれている今日、多額の血税を投下している
東北開発株式会社の前述の
決算が正しいものか、その設立目的に従って合理的な事業
計画が樹立されているか、その
運営が
経済的、効果的に
管理されているか、また監督官庁の監督指導が適正に行なわれているか等について、徹底的に批判検討を試みる必要があると思う次第であります。そこで私が
調査しました諸点について御
報告申し上げ、
委員各位の詳細なる
審議に供したいと思います。
第一は、
昭和三十五
年度決算は、事実は約三億余円の赤字であるにかかわらず、これを六千八百余万円の黒字にし、虚偽の
決算を行なっていることであります。
第二は、セメントの販売及び倉庫
管理が不適正なため、多量の硬化セメントを発生させ、そのため膨大な損失を招いていることであります。
第三は、代理店等に対する
債権管理が不適正なために、多額の売掛金等が回収不能に陥っており、将来損失発生の危険があること。
第四は、セメント等の設備投資
計画が不適正なため、不
経済な経営となっていること。
第五は、
理事等の経営首脳部には企業的経営の経験のない退職高級官吏が多数その地位を占めており、政府の人事政策が不適当であること。
第六は、
経済企画庁の監理官等の監督責任者が適正な指導監督等を行なっていないことであります。
まず第一に、
決算の虚偽表示について申し上げますと、
会社は
昭和三十五
年度の損益
計算書の利益を六千八百二十七万百三十二円の黒字
決算を公表しておりますが、
会計検査院の指摘に従いますと、真実の
決算は二億八百九十五万一千六百七円の膨大な赤字であります。さらに、その他後述の硬化セメントの評価損を計上すると、約三億余の赤字
決算をするのが正当であると判断されるのでありますが、何ゆえに
会社はかかる実体をごまかして、六千八百余万円の黒字
決算として発表したか。これは当
決算委員会にとって重大な関心と今後の検討を要する点であります。
この
決算操作の原因となった取引は、造成土地の売却についてであります。すなわち
昭和三十五
年度末における実際の売却土地面積は三万三千百九十六坪であるにかかわらず、
決算上約三倍余の十万九千八百九十六坪が売却されたとして、これにより二億七千七百余万円の計上すべきでない見せかけの利益を計上しているのであります。これは秋田木材株式
会社に対して十万坪、単価五千五百円、五カ年分割払い、念書により
昭和三十六年八月三十一日まで先方の無条件解約つきの条件で、
昭和三十五
年度末を経過した同三十六年五月十日に正式売買契約を締結し、同日現金五百万円 約束手形五千万円を受領したにかかわらず、さかのぼって
年度末の三十六年三月三十一日に正式契約が行なわれたごとく契約書類を作成し、前述のように三十五
年度決算の売り上げに計上する操作をしております。
本件の契約日については、
会計検査院に対し、当初は
年度内に正式に契約が締結されていると
説明しており、また解除条件付の裏契約の存在については、これを否定し続け、八月末日になり秋田木材株式
会社から解約の申し入れがあり、手付金として受領した約手の五千万円及び現金五百万円と、この現金に対する年八分の利息を返還せざるを得ない立場になって、初めて裏契約があったとの
報告があり、
検査院に対しても虚偽の
説明をしていたもので、この裏契約の存在については、担当
理事と二、三の幹部職員しか知っておらず、解約があって初めて
総裁等の役員及び監事に
報告しており、また手付金に対して利息を付して返還するに至っては、言語に絶する無責任な
会社経営の実態であります。
また、セメントの売却数量については、直接利益操作とは言えないが、売れていない在庫のセメントを二万三千六百五十三トンも売却したように虚構し、当初の販売目標の二十六万トンを達成したかのように見せかけております。
なお、
昭和三十四
年度決算についても、同三十五年三月三十一日に日本ゼオン株式
会社に対し、九万六千九百八十二坪の土地を坪当たり五千五百円で売却する仮契約を締結したにすぎず、正式契約に至っていないのに、その際手付金として受領した約手の六千万円をそのまま純益に計上する
決算操作をしており、この契約も相手側から念書に従って解約されております。
以上のように、実際は三億余円に上る赤字経営の実態をごまかして
決算操作を行ない、六千八百余万円の黒字
決算としたのは、推測するに、当
会社の役員の任期末
決算であるため、再任の実績を作ることと、任期終了に伴う退職手当の受領を考えての故意の操作としか考えられないのであります。
多数の
政府関係機関等の
決算書が、このように、いとも簡単に操作され、虚偽の
決算が行なわれ、監督官庁も知ってか知らずか、これを認めて公表させるとすれば、これを信頼し、
財政投融資等によって血税を投下する
予算を承認する
国会は、全くだまされた結果になり、国民代表としての責務も果たし得ないことになるのであります。かかる虚偽の
決算を行なった
会社の役員の責任と、これを監督する立場にある役所の責任は鋭く追及されるべきであります。
第二のセメントの販売及び倉庫
管理が不適正なため、多量の硬化セメントを発生している点について申し上げますと、セメントの在庫量は、
昭和三十三
年度は四千三百七十二・七五トンで全量非硬化、
昭和三十四
年度は七千七百五十三・六五トンで全量非硬化であるが、これが
昭和三十五
年度においては三万二千九百四十一・八三トンと発表しているのと、
検査院の指摘による、から売り分の二万三千六百五十四トン——うち一万四千九百五十四・九六五トンが硬化分——を含めると、実際の在庫量は五万六千五百九十五・八三トンという膨大な数量になる。そのうち、硬化セメントは二万一千八・〇四トンに達している。
本問題については、一、何ゆえにかくも膨大な硬化セメントを抱き込む結果になったか。二、何ゆえに二万三千余トンのから売りの
決算操作をして発表したかということであります。
硬化セメント発生原因は、
会社の販売及び倉庫
管理が全然確立していないことを暴露している。すなわち、
会社では多数の倉庫に袋詰めセメントを多額の倉庫料を
支払い分散保管しているが、注文に対し、倉庫から先に入庫したセメントを出荷すればよいのに、先入れ先出し方式による出庫をすればよいのに、倉庫
管理ができていないため、工場から新しいセメントを直接出荷したり、倉庫出庫の場合も新しいセメントを出荷したため、先入れのセメントが長期滞留して硬化してしまったのであります。そのためトン当たり原価は約七千余万円のものが、硬化セメントとして二千円くらいでしか
処分できず、一トン当たり五千円の損失となり、三十五
年度末の硬化セメントは二万一千八・〇四トンで、一億五百四万円の評価損になるのであります。これなどは経営首脳者が倉庫
管理に当然払うべき注意をしておれば、回避することのできた損害であり、経営者としての誠意と能力が疑われる
事例として重大な責任問題であります。
また、前述で触れた通り、二万三千六百五十四トンの在庫セメントのから売り
処分は、
理事会の二十六万トンの販売目標を達成したかのように見せかけるため、売れてもいないものを売れたごとく
決算操作をしたものであり、担当
理事者だけの故意か、
理事会も承知の上でのことか、大部分が硬化セメントを引き当てており、利益操作も兼ねていたものか、かかる
決算操作を行なったことに対する責任は厳重に警告を要すべきであります。
第三の、
会社の売掛金等の
債権回収について申し上げますと、売掛金の各
年度末残高は、
会社側の資料によると、
昭和三十三
年度末に一億八千四百五十一万六千九百四円、うち四千九百四十六万六千四百八円が一カ月以上のもの、同三十四
年度に二億九千五百九十万三千五百八十六円、うち一億二千六百五十七万七十五円が一カ月以上のもの、同三十五
年度末に四億三千五百九十三万二千七百二十七円、うち九千百二十万六千七百二十四円が一カ月以上のもの、受取手形の各
年度末残高は、
会社側の資料によると、
昭和三十三
年度末に三億二千四百十七万千三百八十八円、うち四カ月以上のもの二千四百三十一万二千八百五円、同三十四
年度末に六億七百七十八万五百十四円、うち四カ月以上のもの千九百七十二万千八百七十八円、同三十五
年度末に七億三千九十一万四千九百七十五円、うち四カ月以上のものは八千二百八万千百二十四円となっております。そのうちでも青森建材株式
会社に対しては、セメントのから売り分三百十九万八千九百四十円を控除して、
昭和三十五
年度末売掛金が七千百九十三万三千七百九十三円あり、うち一カ月を経過したものが、六千二百九十四万八千九百五十五円、受取手形が二千四十九万八千九百二十円となっており、同建材に対する
会社の
債権は、
合計九千二百四十三万二千七百十三円と膨大な
金額になっております。東光物産株式
会社に対しても、セメントのから売り分の本店分は、九百十八万四千百三十五円、支店分は八戸六十二万二千九百六十八円を控除して、
昭和三十五
年度末売掛金二千五百二十九万八千三百五十九円、受取手形七千二百八十六万三千二十円で、同物産に対する
債権の合
計額は、九千八百十六万千三百七十九円となり、これまた多額の
債権額を擁しているのであります。
ここで注意を要することは、両社に対する
債権が多額であることではなく、ほとんどが不良
債権の性質を帯びているということであります。青森建材については、従前からも多額の不良
債権をかかえながらも、
昭和三十六年二月末に不渡り手形を発生させて、初めてセメントの売り上げ代金受領の受任措置を講じただけで、七月に至るも何ら
債権担保等の
保全措置が講ぜられず、現在までに確保した担保はきわめて少額であり、
保全目的は達していないのであります。
また、前述した受取手形の二千九百余万円については、ほとんど全額が、決済日に手形期日を書きかえて決済を延期してきている実情であります。
東光物産についても、不良性の
債権であり、
昭和三十五年十一月に不渡り手形を発生せしめているが、これも同様に
債権保全の措置が緩慢で、十分な担保確保の措置がとられていない実情であります。
これらは
会社首脳部の無責任、かつ、放漫な経営態度の結果と評価されても、弁解の余地はないのであります。
なお、
会社の青森建材に対する
債権の
金額は、
合計九千二百四十三万二千七百十三円となっておるのに対し、森建材の
決算書によると、
東北開発株式会社に対し、五千六百九十三万五千三百四十六円の
債務しか計上されておらず、両者の間には三千五百四十九万七千三百六十七円という膨大な
金額の不一致があり、青森建材において、この
金額がいかに
処分されたかということであります。あるいは、不一致の原因は、東北開発の
決算にあるのか、青森建材側にあるのか、この間には重大な問題が伏在する疑問も持たれるのであり、これについて、
会社側は明快な納得のいく御
説明をなす必要があると思います。
ただいま私から
東北開発株式会社の件について
概要を御
報告申し上げましたが、右のうち、
検査報告に記載されております
事項に関連して、
決算処理の二、三について
会計検査院当局に
確認を求めておきたいのですが、お認めになるか、あるいは御否定なさるか、その結論だけお答え願いたい。
第一に、三十五
年度決算は、健全な
会計処理の立場で再検討すると、硬化セメントの評価損も含めて約三億円の赤字になること。
第二に、秋田木材に対する土地の売り上げについて。その第一点は、契約日をさかのぼって書類を作成し、膨大な利益を計上していること。その第二点は、同契約には無条件解除つきの裏契約がかわされているが、
理事会にも、また
検査当時
会計検査院にも
報告されなかったこと。その第三点は、契約解除に伴って、手金五百万円に年八分の利息を付して秋木側に返還をしていること。
第三に、青森建材に対する
債権について。その第一点は、青森建材は不渡り手形を出したが、これに対する
債権保全の措置が緩慢で、十分な担保が取られていないこと。その第二点は、
会社の青森建材に対する
債権額よりも、青森建材が
会社に対し認めている
債務額が三千五百七十一万九千六百八十円も少ないこと。その第三点は、青森建材に対する受取手形の大半は、決済日に決済されず、期日を書きかえ書きかえしているものであること。
第四に、セメントの売り上げ及び硬化セメントの在庫について。その第一点は、二万三千六百五十四トンの、実際には売却されていない在庫のセメントを売り上げに計上して、在庫を
減少させていること。その第二点は、約二万一千トンの硬化セメントが発生していたこと。
第五に、東光物産に対する
債権について。その第一点は、東光物産よりの受取手形が不渡りになったこと。その後の
債権保全の措置が緩慢で担保の確保が十分といえないこと。その第二点は、東光物産本店が
会社に対し認めている買掛金と
支払い手形の
債務額は、
会社が東光物産本店に対して認めている
債権額よりも、百七十一万八千六百六十一円少ない。
第六に、日本ゼオン株式
会社に対する土地売り上げについて。
昭和三十四
年度決算に関するものであるが、土地売却の仮契約を締結しただけで、正式に契約するに至っていないものについて、受領した手付の約手六千万円をそのまま利益に計上するよう
決算操作をしていること。
以上の諸点について、事実であったか、いなであるか、
確認だけでけっこうですから、お答えを願っておきたいと思います。