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1962-04-11 第40回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十一日(水曜日)    午後一時二十分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 福田 篤泰君    理事 古川 丈吉君 理事 松本 俊一君    理事 岡田 春夫君 理事 戸叶 里子君    理事 森島 守人君       宇都宮徳馬君    正示啓次郎君       竹山祐太郎君    床次 徳二君       稻村 隆一君    加藤 勘十君       黒田 壽男君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       松本 七郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     大竹 民陟君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         水産庁次長   村田 豊三君  委員外出席者         通商産業事務官 階堂 佳次君         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 四月十日  委員井手以誠君及び横路節雄辞任につき、  その補欠として勝間田清一君及び黒田壽男君が  議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  加藤勘十君が議長指名委員に選任された。 同日  理事穗積七郎君及び理事松本七郎君同日理事辞  任につき、その補欠として戸叶里子君及び森島  守人君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月九日  核兵器実験禁止等に関する請願戸叶里子紹介)(第三八四〇号)  軍備全廃に関する請願和田博雄紹介)(第三八四一号)  日韓会談反対等に関する請願外十件(猪俣浩三紹介)(第三八七七号)  軍縮協定締結及び日韓会談打切り等に関する請願外一件(戸叶里子紹介)(第三八七八号)  完全軍縮日米安全保障条約廃棄及び日韓会談打切り等に関する請願山中日露史紹介)(第三八七九号)  日韓会談即時打切りに関する請願外五件(岡田春夫紹介)(第四〇一三号)  同外十件(山内広紹介)(第四〇一四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月六日  核実験停止協定締結促進に関する陳情書(第六一〇号)  沖縄の日本復帰に関する陳情書(第六三七号)  竹島の領土権確保に関する陳情書(第六八四号)  核兵器実験反対に関する陳情書(第六八五号)  原水爆禁止等に関する陳情書(第六八六号)  大気圏内核実験停止に関する陳情書(第七五二号)  核兵器実験停止に関する陳情書(第七五三号)  同(第七五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事穗積七郎君及び松本七郎君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下國雄

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、理事辞任に伴う補欠選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、いかがでございましょう。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森下國雄

    森下委員長 御異議ございませんので、委員長は、戸叶里子言及び森島守人君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 森下國雄

    森下委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを順次許します。戸叶里子君。
  6. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は本日核実験の問題につきまして外務大臣に伺いたいと思っております。  まず第一に確かめておきたいことは、この間、国会で、核実験反対、いかなる国の核実験に対しても反対決議案全会一致で通ったわけでございますけれども、これは、もちろんその決議案の中には関係国にその旨を伝えるようにということはございませんでしたけれども、非常に重大な問題であり、関係国がそれぞれあるわけでございますから、それらの国々に何らかの意思表示なり何なりをされてしかるべきではないか、それが日本外交ではないかと私は考えるわけでございますが、何かそういうふうなことをおやりになったかどうかをまず伺いたいと思います。
  7. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカイギリスフランス、ソビエト、それぞれ通報いたしました。
  8. 戸叶里子

    ○戸叶委員 通報されたというので、私もぜひそうあってほしいと思っていたわけでございますが、そこで、去る四日に発表されましたクリスマス付近危険区域が、けさの新聞によりますと、さらに拡大されまして、ジョンストン島を中心にして半径八百七十キロの線の東南の部分がさらに追加危険区域にされ、クリスマス島とジョンストン島を結ぶ広範囲に広げられたということが報道されているわけでございます。ことに、ジョンストン島というのはハワイのすぐ前にあり、そしてまた、今回の危険区域として設定した地域というものは非常に広範囲にわたるものでございます。これらの問題について私は質問したいと思いますが、第一回目に危険区域として指定されましたときに、政府にそういう通告があったのでしょうか。それとも、それはアメリカなりイギリスなりの単なる発表ということであったのか。それとも、第八合同機動部隊がホノルルで発表しただけのものであったのか。もしも正式な通告があったとするならば、それを私どものところへ出していただきたいと思います。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ジョンストン島の周辺危険区域になるという問題は、実は私ども通報を受けておりませんで、新聞で見ましたので、さっそく先方に申しておきました。事前通報はこの問題についてはございません。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、さきのクリスマス島の場合には、事前通報はあったわけでございますか。
  11. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 クリスマス島の場合はございました。今度の場合は、どうも、いろいろ先方にも話してみたところ、何か先方手違いで、こちらに事前通報がなかったということが明らかになったわけであります。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 前にあったというのは、どういうふうな形であったのでしょうか。その内容を詳しく説明していただきたい。それから、さらに、今度の場合は手違いで通知がなかったというのはどういうことなのか、その辺もはっきりさせていただきたいと思います。
  13. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。当時私ガリオアでしょっちゅう国会に参っておりまして、十分きょうも資料を持ってきておりませんが、私の記憶では、たしかトーキングペーパー、口頭でございまするが、紙に書いたトーキングペーパーを持ってきたように思います。メモランダムであったかと思いますが、その兄出しのところ、——私、まことに申しわけございませんが、あとからお届けいたします。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私今二つ御質問申し上げました。最初のときはトーキングペーパーメモランダムで来た。しかし、あとはいろいろな手違いで来なかったと外務大臣はおっしゃったのですが、それはどういうことなんでしょう。
  15. 安藤吉光

    安藤政府委員 通例、この種のことは、向こうから、通報と申しましょうか、メモランダムをもちまして、向こう発表する前にわれわれの方に内報してくるのが例でございます。今度のジョンストン島の場合には実は内報がなかったものですから、昨日こういつたものをラジオあるいは速報で見まして、至急在米大使館の方に実情をよく調べて正確なことを言ってよこすように電報を打ちました。おそらく近々来ると思います。中間報告によりますと、向こうの力では急にきめたらしく、追って向こうの力でよくまとめた上でこちらに報告するということを言っております。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまアメリカ局長は、トーキングペーパーメモランダムで来たのだけれどもガリオアの問題でごたごたしてしまったということをおっしゃったのですが、私、これは聞き捨てにならない問題だと思います。どんなに大きな問題がかかっておりましょうとも、核実験の問題というものは日本国民にとりまして重大な問題でありますから、ガリオアに夢中になっておれば、ほかの問題はみんな机の上に載せておくという態度は実にけしからぬのであって、そういう問題はきちんと整理をされてしかるべきではないかと考えるわけでございます。その点をもう二度伺っておきます。
  17. 安藤吉光

    安藤政府委員 まことにお言葉の通りでございます。確かに、私、自席に帰りまして、直ちにそれを読んだことは事実なんでございますが、ただ、ここで、口上書であったか、トーキングペーパーであったか、はっきり申し上げられませんので、すぐチェックしてお答えいたします。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その点は、いずれであっても、口上書であってもメモランダムであってもかまわないと思いますが、この内容がどういうものであるかということくらいは頭の中に入っておると思いますけれども、その点を伺いたいと思います。
  19. 安藤吉光

    安藤政府委員 クリスマス島の周辺航行禁止につきまして、その内容は、やはり、一定地域、例の新聞等に出ました特定の地域に対して、たしか四月十五日以降当分の間その地域航行あるいは航空禁止をすることになるだろうということを言ってきたと記憶いたします。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ちょっとおしまいの方がわからなかったのですが、四月十五日以降いつごろまでということが書いてあったのですか。
  21. 安藤吉光

    安藤政府委員 十五日以降の期間は書いてなかったと記憶いたします。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただ、十五日以降こういうことだけでございますか。  そこで、委員長、今の口上書か何か知りませんけれども、それをあとからここへ出していただきたいということが一つ。印刷したものでけっこうでございますから、参考に出していただきたい。  それから、それを受け取った場合に、そのままにしておかれたのかどうか。それから、たしか三月六日ですか何か口上書抗議を申し込んでいるようでございますけれども、その場合に先方からどういう返事があったのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  23. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほど口上書そのものは、外交慣例によりまして、まず公表いたさないことになっております。しかし、実質的内容については何らかの形において発表されるわけでございまして、その内容につきましては、後ほど御報告申し上げます。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そのもの自体発表しない、しかしその内容については詳しくここへ出して下さるということでございますから、ぜひ早く、もう一両日中にも出していただきたいと思うのですが、その向こうから来た通告というものは、ただ単に四月以降危険地域に指定するというだけの問題だったのでしょうか、まだほかに何か書いてあったのでしょうか。
  25. 安藤吉光

    安藤政府委員 四月十五日以降これこれの地域における航行及び航空をしないようにしてくれということが書いてあったと思います。それ以後のことは触れていなかったと思います。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 四月十五日以降は航行航空を気をつけてしないようにしてくれということだったそうでございますが、そういうものを受け取って外務省としてはすぐにアメリカに対して何らかの意思表示をすべきではなかったかと思いますが、この点は何かなさいましたか。
  27. 安藤吉光

    安藤政府委員 三月二日にアメリカ合衆国が大気圏内核実験再開に関する発表を行ないました際、口上書日本から手交いたしましたが、それは当時三月六日に日本側から発表になっております。このたびのクリスマス島の航行制限に関しましては、向こうから航行制限通報がありますとともに、これはまず水産庁その他関係各省に直ちに通報いたしますとともに、新聞でごらんになりましたように各省とも相談の上、一昨日、補償要求を留保することをあわせまして抗議申し入れた次第でございます。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私まだ一昨日のことを言っていないのです。それ以前の問題を伺っているわけですが、先ほどお話では、何か向こうから日本政府通報があった、今のお話では、アメリカ政府発表になったというふうなことでございましたが、発表になると同時に、日本外務省に、その区域を通らないようにしてくれという申し入れがあったのですね。そこら辺がちょっとはっきりしないのですけれども……。
  29. 安藤吉光

    安藤政府委員 御質問の点は、今回の発表のことでございますか、先般の……。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いや、違う。先ごろのことを言っているのです。  それでは、時間の関係上ついでに伺いましょう。三月二日にアメリカでそういうふうな公表があった、発表があったと今おっしゃいましたね。それについて、発表すると同時に、日本に対して、クリスマス島の付近のどこどこの区域は通らないでほしいという申し入れなりあるいは通告なりがはっきりあったかどうかということが一点。それから、第二は、さらにジョンストン島までずっと区域を広げるということについては、まだ通報が来ていないということが今はっきりしたわけですね。ですから、最初の点で、通告があったかどうかということを伺っているわけです。
  31. 安藤吉光

    安藤政府委員 最初の場合には、事前口上書をもって通報がございました。それから、今度のジョンストンの場合は、向こうからの事前通告がございませんでした。従いまして、先ほども述べましたように、直ちに在米大使館を通じて実情あるいは詳細を報告するようにという指令を出しております。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 通報があったらば、直ちに向こうに、日本としては、どんなにガリオア・エロアが問題の中心になっていても、何らかの意思表示なり申し入れをしたと思いますけれども、もしもしたとするならば、それに対するアメリカ側の返答はどうであったかということを伺いたいと思います。
  33. 安藤吉光

    安藤政府委員 一昨日の抗議と申しますか、私がグッドイヤーに手交いたしました口上書につきましては、直ちに本国政府にこれを伝達したということは聞いておりますが、その後向こうからの返事はございません。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今回さらに区域が広げられて、非常に広い区域にされたわけですか、これに対しまして、外務大臣は、先方からまだ通告がない、そこで今調べ中だということでございますけれども、そういうものをお調べになって、そして、さらにアメリカイギリスに対しての何らかの抗議申し入れ意思がおありになるかどうか。そしてそれはいつおやりになるか。非常に時期も追っておりますけれども、どういうふうな形で効果あるようにおやりになろうとしているかを念のために伺いたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これにつきましては、もちろん抗議いたしますし、それから、補償の権利を留保するということも、当然これはいたしたいと思います。ただ、米英といたしましては、ぜひジュネーブにおける核実験停止を実を結ばせたいという気持が非常に強いようであります。そこで、ジュネーブでなぜ話がまとまらないかというと、結局、核実験が行なわれておるかどうかということについては国際的な有効な査察をさせたい、こういうのが米英考え方でありますし、査察は困るというのが、ソ連考え方なんです。これは御承知通りであります。そこで、あらゆる軍縮ができるまではいかなる査察行為といえどもスパイ行為であるというソ連考え方に対して、やはり、もう少しおおらかに、国際的な査察ならば、現実核実験停止しようというならば、そういうことも、受け入れていいではないかというような気持米英に非常に強いので、御承知のように、米英がこれをソ連にも望むということが伝えられておるわけであります。わが国といたしましても、ぜひ一つこの核実験をやめてもらいたい、そのためには、査察の点で、核保有国の最大の国であるソ連アメリカイギリスとの三つが何か有効なる合点に至るようにいたしたいのであるということを考えまして、われわれとしてもその線で努力をいたしておるわけであります。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ジュネーブにおいての核実験禁止協定が成功するようにということは、だれでもの念願だと私は思います。けれども、今度はフランスも入っていないし、考え方米ソが違っておるというような非常にむずかしい状態に置かれておるわけでございますけれども日本政府としてこれを成功させるためにどういうふうな努力をしておられるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはいずれまたお話しできるかと思いますが、この段階では差し控えさせていただきたいと思います。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはどういうことなんですか。何かやっておるけれども、今言いたくないということですか。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれとして及ぶ限りの努力をしておりますけれども、しかし、今こういうことをやっておるということを申し上げることは、ちょっといかがかと思います。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 核実験禁止協定を成功させるために日本努力しておることを秘密にしなければならないという理由がどこにあるのでしょうか。ちょっとその辺何となく私ども不思議に思うわけなんですけれども、別に秘密にする必要はないではないかと思います。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これを有効にしたいために、はなはだ恐縮でございますが、そう申し上げておるわけであります。ということは、われわれがあまり声を上げてこうやっておるというようなことを言うことは結局よくないのではないか、こう思うからでございます。これは、やってしまったことに抗議するとか、あるいは現実にもうやられることが確定しておるものに抗議するとか、これは当然のことでありますし、そのことは公表して差しつかえないと思います。しかし、このむずかしい段階で、われわれとしても、われわれの力でそのいい方向に向かうことができるならばやるべきだと思っております。ただ、やっております過程においていろいろ申し上げるということはいかがなものか、こういうことでございますので、はなはだ申しわけありませんが、少し様子を見ていただきたいと思います。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の外務大臣の御答弁は、核実験禁止協定が成功するように日本としては努力しておるけれども、その問題はあまり言いたくないということに了承いたします。ただ、アメリカが今回発表されました危険区域推定ということは、おそらく、もしかしたら実験をするんだという仮定のもとにそういう危険区域を指定しておると思うのです。そうだとするならば、やはりそれを阻止するためのあらゆる努力というものがなされなければいけないと私たちは思います。そういう意味において、日本外務大臣として、こういうふうなこともしたいし、こうもしたいということはやはりはっきりさせておく必要があるのではないか。ですから、先ほどのことは、核実験禁止協定を成功させるためにいろいろしているけれども、言えない、これは了承いたしますけれどもアメリカが今度の実験をしないようにするためにはあらゆる努力をするのだ、こういう御決意のほどだけはやはり私は承っておかなければならない、こういうふうに思っておりますが、それでよろしゅうございますね。簡単でけっこうです。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはもうその通りでございます。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで、先ほど実験をやめてもらいたい、こういうふうなことを、向うと同時に、補償の問題も留保しているとおっしゃいますけれども、そういう実験さえしなければ補償を要求しないでも済むわけでございます。考えてみますと、ちょうどイギリスから三十三年の四月の二十五日にクリスマス島に対しまして危険区域を設定するということを日本通告してきて、二十六日に日本政府から口上書を渡して、そして実験が行なわれた例がございます。さらにまたジョンストン島におきましては、三十三年の七月二十五日にやはり三、四週間危険区域として指定をしてきて、そして、このときは面接の被害はなかったために補償の問題は起こらなかったかもしれません。しかし、考えてみますと、この地域漁船がどんどん行く地域でございます。従って、その危険の区域を指定されている間漁船は出ることができないわけです。さらにまた、その周囲に散らされる放射能というものも非常に大きいわけでございますけれども、こういうふうな長期にわたって漁船が出漁できないという場合の補償までもその当時お話し合いになったかどうか。そしてまた、その当時それが話がついたというような例があったかどうか。これは水産庁の方がいらっしゃったらお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  45. 森下國雄

    森下委員長 水産庁の方へは今連絡しておりますから、しばらくその方はあと回しにしてもらって……。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、今のことは外務省の方ではおわかりになりませんか。
  47. 安藤吉光

    安藤政府委員 私の記憶しておりますところでは、この前のジョンストン及びクリスマス島の実験の際は、国内官庁において損害の有無を関係者について調査をいたしましたところが、具体的に損害の申告がなかったので、その問題は事実上起こらなかった、そのように承知しておりますけれども、なお、水産庁ともよく連絡いたしまして、適当な機会に確実なことをお答えできるかと思います。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 直接の損害はなかったということも私どもは知っております。しかし、その危険区域に入ったために放射能を受けたとか、あるいは病気で死んだとかいうことでなくても、ある一定の期間入れないということによって出てくる損害もたくさんあると思うのです。そういうような損失もたくさんあると思いますけれども、そういうものに対する補償について、この前一体アメリカと話をされたのかされなかったのかということを私は確かめたかったわけでございますが、今回もそういうことまでお話し合いになるおつもりなんですか。その中に入って何かの損害を受けた場合だけのことに限られているわけですか。
  49. 安藤吉光

    安藤政府委員 この問題につきましては、冒頭申し上げました通り、私たちとしましては、向こうからそういう通報があった場合、それから、実際上海上保安庁のいわゆる常時連絡によりまして禁止区域に関する通報がある場合が多いのでございますが、こういつた場合には、関係各庁、ことに水産庁等に直ちに連絡をいたします。それから、海上保安庁等には危険防止等意味で直ちに連絡をいたすのであります。それで、関係官庁におきまして、これに対する、今先生のおっしゃったような間接・直接の損害をどういうふうに調査するか等のことを含めまして、常時今連絡をとっておる次第でございます。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、損害の問題よりも、もっと根本的な問題にこれから触れていきたいと思うのですけれども、今度クリスマス島からさらにジョンストン島に地域を広げられたということ、そして航海だけでなくて航空の方も制限を受けるということになりますと、さしずめ、日本として、航空関係でも、非常に大きなマイナスになるというよりも、飛べなくなるという問題が起きてくるのではないか。たとえば、日航ハワイ経由太平洋空路の通路にも当たっておるのではないかと私は考えますけれども、こういう点はいかがでございますか。被害甚大であるということをお考えにならないですか。この点伺いたいと思います。
  51. 森下國雄

    森下委員長 ただいま水産庁村田次長が見えられました。
  52. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども申し上げましたように、具体的な正確なことについてアメリカに問い合わせ中でございます。私たちも、もちろん、しろうとながら、このジョンストンの今度の禁止の範囲と日航とかそういった定期便との関係があるのではなかろうかというので、先ほど申しました関係各庁というのは、航空関係あるいはその他の関係の各庁にも通報してある次第でございます。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、新聞に出た程度ではあまりはっきりしないから、もう少しアメリカから正確な資料をとるために努力しておるということなんですね。それでは、いつごろその資料が手にお入りになるかわかりませんけれども、大体見通しとしていつその資料が手に入って、どういう運動を開始していくかというくらいの目安を立てておおきになりませんと、私ども国民は危険でしょうがないのですが……
  54. 安藤吉光

    安藤政府委員 ワシントン大使館には昨日照会いたしました。それで、すぐ向こう連絡しておるから入手次第知らせるという中間報告が来ておりますので、さして時間はかからないと思います。幸いに、ここに、新聞報道でございますが、まだ読むひまもありませんが、特報が来ておりまして、向こう発表の全文が参っておりますが、またよく検討して参りますと、もう少しはっきりするかもわかりません。こちらの方がワシントンに聞いてやりましたところでは、できるだけ具体的なところを知らせるということがございますので、その上で、できるだけ早く検討し、また、対策を立てたいというように考えております。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 十五日といえばもうすぐですけれども、どうしても今度はやめてもらうという意気込みで、国民あげてこの禁止のためにあらゆる手段を講じなければならないということを私は感じておるわけです。  そこで、お伺いしたいのですけれども、これは昭和三十三年のときに一度問題になりましたけれども、それがうやむやになってしまいました。そこで、アメリカならアメリカが、勝手に、この地域危険区域だから入ってはいけないというようなことで、公海なりあるいは公空なりを指定するということが一体国際法上許されるかどうかということを私たち国民は非常に疑問に思うわけです。私は、これは当然国際法違反だ、公海自由の原則に反するもので、国際法違反であるというように考えるわけでございますけれども外務大臣はこれをどういうようにお考えになりますか。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いろいろな問題が考えられると思いますが、国際法違反とはっきり言い切るまでには、その禁止される時期の問題もあろうかと思うのであります。これにつきましては、よく研究をさせておりますので、またその結果によって申し上げたいと思います。これは、先ほどからの問題で、もちろん補償は要求すべきものでございまするが、しかし、補償ということよりも、実験をやめてもらえば一番いい。また、実験をやめますためには、ソ連との間に米英停止協定を作りさえすればいいのです。それもやはりわれわれとして非常に努力すべきだ、こういうように思っております。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはその通りですよ。それはさっきからみんな言っておることで、核実験禁止協定が結ばれてほしいということはだれでも願っていると思いますけれども、それとは別に、今目前に迫っている核実験ということに対して、何が何でもやめてもらいたいというのが国民の感情であるわけです。  そこで、今外務大臣は国際法違反であるかどうかということは時期の問題があるからということをおっしゃったのですが、それはどういうことなんでしょうか。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 期間です。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 期間が長けれはいけないので、短ければいいということなんですか。その点をちょっと伺いたい。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうも私も実は国際法の非常な専門家でもないわけでございますので、その専門家によく研究さしておるわけでございます。今私の聞いておりますところでは、やはり、一定の時期を限って一定の場所について公海上においても禁止区域を設けるというようなことは、特に国際法違反だということにはならないように聞いておるのです。しかし、なおよく検討さしていただきたい、こう思っております。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな御議論をお立てになるのでしたら、大体一定の時期というのは幾日ぐらいなのかということも伺いたくなるわけです。それから、時期が短いから被害がないとかいうことはあり得ない。また、日本が何かしたいという場合、近くの海岸をこれだけの地域は入ってくるなと言った場合に、それが問題にならないかどうかということもあるわけですが、その一定の時期が問題であるというならば、その内容を問題にしないで、そういうことで国際法違反でないというようなことであると、非常に私は危険だと思うのです。だれが考えても、そういうことを勝手にするということは国際法違反であると私たちは思うのです。もう一度念のために伺いたいと思います。
  62. 安藤吉光

    安藤政府委員 この問題に関しましては、はっきり申しまして、国際法上はこれを禁止する確立した規則はございません。公海の自由ということを一方認められておりますが、同時に、海上で演習することも認められておるわけでございます。しかし、こういうことをやりますために、不当に広範囲のところを相当長期にわたって占有してしまって他国に不当の損害を及ぼすということは妥当なことではないということは思えると思います。従いまして、今度のことにつきましては、われわれはアメリカにこの点もあわせて抗議しておるわけでございます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今アメリカ局長の言われた三つの条件に今度はぴったりしていると思うのです。他国に非常な被害、影響を与えます。それから、非常に広範囲だということは先ほどもお認めになった通りです。さらにまた、時期は一日とか半日とか一時間ということは言っておりません。こういうふうな問題から見ましても、私は当然これは国際法違反として考えられるべきものではないかと思う。外務省自身がそういうふうな腰の弱さで外交しているからアメリカになめられるのだ。もっとこの問題に対しては強く出ていいと思うのです。国民はこれは超党派でバックアップしていますから、安心して、こういう国際法違反的な——違反というのがおいやなら、違反とわれわれが心得ることに対しては、もう絶対にやるな、それくらいのことは、どうぞその言葉を使ってけっこうですから、おやりになっていただきたい。ガリオア、エロアということだけに心得るという言葉米を使わないで、ごまかされないで、ここではきめつけていいと思うのです。  そこで、私がさらにお伺いしたいのは、国際司法裁判所になぜ訴えられないのか。もうこれまでしんぼうしてきたけれども、当然この辺で訴えてもいいのじゃないか。しかもそれは三十六条に選択条項としてあると思います。たとえば、この三十六条の中には、四項にわたっての法律的紛争を取り上げることになっておりますけれども、宣言した国々といえば、日本もこの三十六条に対しては宣言していると思うし、アメリカイギリスも宣言していると思います。その四項というのは、「条約の解釈」、「国際法上の問題」、「認定されれば国際義務の違反となるような事実の存在」、さらに第四項目には賠償の問題等も書かれているわけでございまして、この条項に照らしても、国際法上の違反であるという点からぜひ国際司法裁判所に訴えるべき問題ではないか、こういうふうに考えますけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。
  64. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 お答え申し上げます。先ほどからアメリカ局長が申しましたように、この問題につきましては国際法上確立した原則がないというのが一般の通念でございます。従いまして、国際司法裁判所へ持って参りましても、はたして国際法違反という結論が直ちに出るかどうかということも、これまた非常に問題がございます。日本政府といたしましては、先ほどから申しましたように、こういう広範な区域を非常に長期にわたって独占するということが公海自由の原則に沿っているかどうかということには疑いを持っておりますが、直ちにこれをもって国際法違反という結論はまだ出しているわけでございません。従いまして、国際司法裁判所に持っていくほどまだ十分考えが固まっていない、こう申し上げたいと思います。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は今のお言葉を聞いていましてますます何か情なくなりました。大体、広範囲にわたって長期と思われるし、また、日本という国に非常な迷惑をかけているのだから、国際法違反の疑いもなきにしもあらずというところまでお認めになったのですけれども、今いろいろと検討しているというふうな態度であっては、この問題は決して片づかないと思うのです。やはり、日本がきぜんたる方針をきめられて、こういう国際法上違反と心得られるような、思われるようなことをされては困るという態度で、はっきり司法裁判所に訴えて、三十六条でもって適用してくれということを訴えるべきではないか、私はこういうふうに思いますけれども、もう一度外務大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  66. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国連局長が申しました通りでございます。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣は口の中で大へんに静かに自信のなさそうな答弁をされたのですけれども、もう少しはっきりとした外交をここら辺で示していただきたい。これは、先ほども申し上げましたように、国民全体が外務大臣をバックアップしておりますから、どうぞ強くこれは反対意思表示をしていただきたいと思います。  そこで、最後に一点だけお伺いしたいのですが、この間アメリカの婦人でさえも平和を愛する人たちが集まりまして国連にデモをしたということが報道されているわけでございます。日本の国民は、今度にしても非常に被害をこうむるわけでございますから、あらゆる手段を通じてこれをやめさせなければならないと思っております。今後またアメリカがやればソ連も競争してやるということにならないとも限らない。ですから、ここでぜひやめてもらうようにしていただきたいと思いますが、あらゆる手段の中の一つとして、超党派的に、婦人の代表でも、ソ連にもアメリカにもイギリスにも、核兵器を持っている国に送るというようなことをお考えになってみてはどうかと思いますけれども外務大臣、いかがお考えになりますか。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 研究さしていただきます。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ぜひ、研究をなるべく早くして、そして実現していただきたいと考えております。  私の質問はこれをもって終わります。
  70. 森下國雄

    森下委員長 細迫兼光君。
  71. 細迫兼光

    細迫委員 外務大臣にお尋ねいたします。  問題は韓国に関することであり、直接には日韓会談に関することでありますが、新しいニュースによりますと、この五月の中ごろには政治会談を再開するという約束ができておって、早く開けということを韓国側からせつかれておるということでありますが、そういう経過になっておりますか。そういう事実がありますか。
  72. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 次期の政治会談をできるだけ早く開こうということを、双方で、先般崔外務部長官が来たときに私との間で合意したわけでございます。しかし、どうも、先般の会談で、双方の考えておる背景と申しますか、考え方というのは相当に開きがありますので、そういう考え方がやはりある程度歩み寄ったた上でないと、直ちに政治会談というわけにはなかなかいかぬのじゃないか、いっても効果が少ないんじゃないか、こんなふうに思っておるわけであります。特にせつかれておるというふうにも私思っておりません。
  73. 細迫兼光

    細迫委員 ニュースは相当正確なものに受け取っておるのでありますが、韓国から代表部を通じてとまでニュースは言っております。韓国の代表部からそういう要求があったかないか、そこの事実をお聞きしたい。
  74. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 第二回の政治折衝をなるべく早くやりたいという要望は常時あるわけでございます。韓国側もそういう希望を、この前の第一回が済みまして以後常に持っておるわけでございます。  それから、ただいまの御質問は、あるいは、杉・ペ会談をやりたいという申し出が昨日ございました。その点にお触れになっておるかとも存じますが、これは、明日杉代表が東京にお見えになりますので、御都合がよければやりたい、こう考えております。
  75. 細迫兼光

    細迫委員 これに関しまして、五月中旬に、政治的な会談といいますか、外務大臣級における会談を行なうということについて文書ができておるというようなことがありましたが、そういう事実はありませんか。
  76. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 その点につきましては、一月の末でございましたか、なるべく早く第一回の政治折衝をやりたいということを向こうが申して参りまして、それに対しまして、国会の審議が一段落した際なるべく早く三月中に開こうということを約束いたしました。その際に、先方は、なるべく五月末までに会談全体をまとめたいという希望を表明いたしました。そういう目途のもとに努力をしましょうという約束はいたしておりますが、具体的なことは何もきまっておりません。
  77. 細迫兼光

    細迫委員 約束なさったといいますが、私の聞きましたのは、文書がその約束についてできておるかどうかということであります。まあ文書でなくても、約束ができたようであります。これは、当委員会においての日韓会談の経過状況を報告してもらいたいという希望に対しまして、報告なさったところとはどうも相当違っておると思うのです。つまり、請求権問題などにおきまして距離があるから、先のことは先のこととして、われわれの受けた印象は、当分外相段階における会談は開かれそうにもないというふうに私どもは受け取りました。そう受け取られるような御報告であったと思うのでありますが、これが変わってきたのですか、もとの御報告が違ってておったのですか。
  78. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 ただいま申し上げましたように、その申し合わせというものは一月の末でございます。それから、第一回の政治折衝というものは三月の半ばに行なわれたわけでございまして、この政治折衝をやりました結果としまして、先ほど大臣が申されましたように、あまりにも考え方が開いておる。そこで、今すぐやるような事態にないというふうなことは、その三月にやりました上でそういうふうな考え方になってきたわけであります。   〔「報告が違うぞ」「文書を出している」と呼ぶ者あり〕
  79. 細迫兼光

    細迫委員 仮調印までこぎつけるということがしかも文書になっているということですね、いかがですか。
  80. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今まで申し上げておる通りで、違わぬのでございます。できるだけ早く外相会談を開こう、そのあとは、これもできるだけ早く会談の最終的なところにたどりつきたい、こういうことで双方が努力するという申し合わせを杉代表とペ代表との間でした、これはその通りでございます。その結果に基づいて三月に会談をしたわけです。会談をしてみた結果、双方の考え方が背景において大きく違っておるということですから、会談を成功させるためにはそう急いでもなかなかむずかしかろう、その考え方をもっと歩み寄らせなければならぬ、その方が先決であるということになったわけです。別に違わぬわけです。
  81. 細迫兼光

    細迫委員 そういう了解があって、なるべく早くということは、結局五月中旬という具体的な目標を示してのことではなかったと思うのです。しかも、この件につきまして文書があるということを初めて知りまして、相変わらずの外務省秘密的な行動、今まで通り外務省秘密主義に対しまして不信の念をわれわれは抱かざるを得ない。あの当時といえども大体の見通しは持たれておったでありましょう。しかるに、なるべく早くということで、しかもそれは話し合いの結果当分時間を置かなくてはならぬというようにお考えになった、こういうふうにわれわれは印象づけられておるのであります。その文書がありましても、外務省としては、五月中ごろには仮調印にまでこぎつけねばならぬ義理を感ずる、義務を感ずる、約束を守らねばならぬということを感ずるという程度にまでは解釈していらっしゃらないのでありますか。
  82. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、杉代表とペ代表との間でそういう話をした。その話のよってきたるところは、実は、事務的な会談がさっぱり進まない。資料が出てこない。そこで、資料を出せと言うと、どうしても政治会談をやってくれなければ資料は出せぬと言って、委員会が進まない。こういうことでありますので、できるだけ早くこの会談をして最終的なところに持っていこうじゃないか、双方努力しようじゃないか、そのためには三月に政治会談をしようということになったのであります。それはその通りにやったわけですが、その会談というものは、何も粘土細工のようにただこね合わせるわけにもいきませんので、やはり、会談をした結果、双方が妥当と思う内容に到達せざる限りにおいては、これは妥結できぬのであります。従って、その会談の最終が五月というようなことは、結局、なるべくという努力目標であって、その内容がそこまで固まらなければできないということは、これは常識なんであります。従って、われわれは、別に何の義理も感ずるような問題も一つもない、こういうふうに思っております。
  83. 細迫兼光

    細迫委員 どうも従来の外務省の態度からお言葉をそのままに了解するわけにいかぬ気持が起こるのでありますが、杉さんとの会談においてではなくて、むしろ外務省が責任を持つべき文書ができておる、こういう印象をわれわれは持っております。その文書はあるのですか、ないのですか。
  84. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 韓国といろいろな話をいたす場合に、メモをとる場合と、とらぬ場合がございますが、この際は申し合わせた事項がメモにとってございます。それがとってありますので、今回のように先方から義務違反と言われましても、こっちとしましては、努力しようと書いてあるのだから、義務違反がないということがはっきり言えるわけであります。
  85. 細迫兼光

    細迫委員 その文書は見せていただけないですか。
  86. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 これは両方でもって公表しないということに当時いたしておりまして、その中身が向こうから漏れたわけでありますから、私の方も中身を申し上げておるわけでありますが、文書そのものは、まだ向こう発表いたしませんし、こっちもそれまでは発表いたしませんが、中身はそれだけのことでございます。
  87. 細迫兼光

    細迫委員 重要な当面の問題に関することでありますから、文書そのものを一つ委員会に提出していただきたいと思います。資料について、委員長、どうかお取り扱い願いたいと思います。
  88. 森下國雄

    森下委員長 資料として出せますか。
  89. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 これは、文書は発表しないということになっておりますから、発表しますと義務違反になります。中身は、向こうで申しましたから、それに応じてこちらもはっきり申しておるわけでありますが、文書そのものは発表しないということになっております。
  90. 森下國雄

    森下委員長 申し上げます。お開きのように、ただいまアジア局長は、今交渉の過程にあるもの、だから、その内容について漏れた一部分は言うが、文書全体についてはこれは発表いたしかねるということでありますので、この資料は出せないことになります。もしそういうことがいけないとするならば、このあと理事会を開いてよく協議いたしましょう。
  91. 細迫兼光

    細迫委員 重大な問題でありますから、ぜひ理事会をお開きになりましてしかるべくお取り扱いをお願いいたします。  問題を変えますが、日韓会談は懸案を解決しながら進めていくという従来の方針に変わりはないという御答弁を前の当委員会において承っておりますが、その懸案の中には李承晩ラインが含まっておるということでありました。李承晩ラインの問題につきましていかなる線で解決に持っていきたいという構想を持っておられるか。伝えるところによれば、李承晩ラインの問題は、あの海域における日韓合弁の漁業の企業を興して、これを中心とした解決方策ということが考えられておるように伝えられておりますが、その李承晩ラインの解決について考えておられる構想を明らかにしていただきたいと思います。
  92. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 合弁会社ということはわれわれは全然考えておりません。ただ、今のままで完全に野放しということになりますと漁族資源の保護ができませんので、李承晩ラインは撤廃いたしまして、そして、合理的な漁族資源保護のための何らかの規制措置ということを考えたい、こういうふうな考え方でございます。
  93. 細迫兼光

    細迫委員 大体かねてから外務省も李承晩ラインなるものは不法なものだという態度をとっておられると理解しております。が、依然として間違いなくその態度が続いておりますからということ。もしそうであるならば、先ほど戸叶さんが引用しました事例によりまして、国際法違反の問題でありますから、なぜ司法裁判所の問題になさらないのか。まことに腰が弱いことだと私どもは歯がゆく思うのでありますが、どうして司法裁判所の問題になさらないのか、御弁明を願いたいと思います。
  94. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 李承晩ラインというものが違法のものであるという点は、終始一貫そう考えております。そして、この問題を解決すべく目下交渉をいたしておるわけでございますが、交渉いたしましてもとうてい解決の見込みがないということになりますれば、ただいま仰せのような司法裁判所に持っていくということも考えられますが、まず両国間でもって交渉して解決したいというので、今やっているわけでございます。
  95. 細迫兼光

    細迫委員 何も司法裁判所に提訴するということが交渉の道をふさぐことにはならぬと思いますが。両者並行していってちっとも差しつかえないと思うのです。ただ、そこに、司法裁判所に持ち出すということが韓国の感情を刺激するだろうというようなことをおそれ、遠慮しておられるのだと私らは解釈するのでありますが、代表部の問題などにつきましても、依然として、日本からの韓国における代表部の設置には全然顧慮を与えていないというような韓国の態度に対しても、大した不法、不平等をなじるというような態度が見える手段をとっておられません。これはもう司法裁判所に李承晩ライン問題を提訴するという御方針がそろそろ出てきてよろしい時期ではないかと思うのでありますが、まだその構想、考えは熟していないのでありましょうか。
  96. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 目下のところは、やはり、両国間の交渉によって解決したい、その方が早いんじゃないかというように考えております。司法裁判所に提訴いたします場合には、先方が応訴するかどうかという問題もございます。今のところ、この両国間の交渉で解決したいという考えでおります。
  97. 細迫兼光

    細迫委員 問題を変えます。通産省からお見えになったようですから伺いますか、韓国は、国交の正常化の後においては日本の資本の算入も歓迎するけれども、民間の段階においては国交正常化以前でも歓迎する、こういうことを方針としておるように問えております。そこで、なお税金問題におきましても有利な条件を提出し、外資の導入、ことに日本の資本の算入に非常な熱意を上げておるようであります。そして、すでに湯川康平氏などを中心日本の企業家の視察団も行ったようでありまして、なお第二次の視察団も準備がせられておるということであります。この前のお話では、全然政府としては、外務省としては関知しないというお話でありましたが、後に川上委員が申し上げましたように、湯川康平氏は池田総理にも会って行っておるというような事実、これは池田さんも会いましたと言明しておられるのであります。必ずしも政府外務省あるいは通産省方面と無接触の状態で韓国への日本資本の輸出ということが行なわれておるとは思われません。通産省の方面は、これら日本からの視察団あるいは五台山、蔚山の開発等の問題につきまして何か日本財界との接触が持たれておるでしょうかどうでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  98. 階堂佳次

    階堂説明員 民間の方で調査団が行ったりするという話は聞いておりますが、その具体的内容につきまして、何らかの格好の経済協力なりの申請というのは、まだ一件も出ておりません。
  99. 細迫兼光

    細迫委員 つまり、まだ民間資本におきましても具体的には申請が出ていないというお話のようであります。聞くところによれば、保税加工の方式でもって輸出が行なわれるということが伝えられておるのでありますが、そういう申請が出ましたならば、無為替でやらせることを奨励なさる御方針であるかどうか。無為替、延べ払いということでやるのだという話が伝わっておりますが、通産省としてこれに対する御態度がきまっておれば、一つ承りたいと思います。
  100. 階堂佳次

    階堂説明員 先ほど申し上げましたように、具体的案件が出ておりませんので、そのときになってみたければわかりませんが。
  101. 細迫兼光

    細迫委員 無為替で事が運びますとまことに企業家にしても経営上不安な状況になると思うのです。しかも、韓国の内部の情勢というものは非常に不安であるということが伝えられております。多くの資本が韓国に輸出せられますと、これはやはり一つ日本の権益という形に宣伝せられると思うのです。その際、韓国の政情、民情が不安であるということになりますと、この日本の権益を守らなければという問題が必ずや起こってくると思うのです。韓国政府としては、この無為替、延べ払い、それから資本の進出、導入におきまして別に保証はしないという言明をしておるようであります。韓国政府の保証なきこれらの資本の進出、企業の進出ということを、通産省としては、不安なきもの、奨励すべきものとお考えになっておるかどうか。大臣がおられないにしましても、そういう話し合いなり、なされたことはありませんでしょうか、その方針について、察知すべき、何か会議というか話し合いというか、通産省内ではありませんでしょうか。
  102. 階堂佳次

    階堂説明員 無為替輸出ということにつきましては、そのケース、ケースによりましてそれぞれ具体的条件がありますので、そのケースに従って検討するということ以外には申し上げられないことであります。具体的案件もございませんので、そこまで具体的な話はいっておりません。事実でございます。
  103. 細迫兼光

    細迫委員 事が日韓会談と関連するから言われないというのですか、あるいは、まだ具体的なケースが起こっていないから何ら言い得る段階に至っていないというのでしょうか、どっちでしょうか。
  104. 階堂佳次

    階堂説明員 具体的なケースがございませんので、今のところ御返答いたしかねると思います。
  105. 細迫兼光

    細迫委員 伝えられるところによれば、水上三井物産社長なんかは三十八度線のバリケード代と思えば千億や二十億の金くらいといって大いに力を込めておるようでありまして、韓国の伝えられる五カ年計画も相当な計画らしくて、相当大きな資本が進出することが条件によっては予想せられるわけでございます。当面の大きな問題になっておるわけでありますから、通産省としてはおよそのこれに対処する方針がそろそろ話し合われておるのではないかと察せられる状況なのでありますが、それらの話はまだ省内でも出ておらぬのですか。
  106. 階堂佳次

    階堂説明員 無為替輸出という制度におきましては、それぞれのケースにつきまして検討するわけでありますから、具体的なケースがございませんので、この席で方針と言われましても、事務的には方針というものは特にございません。ただ、代金回収か確実であるかどうかということは当然審査になると考えられます。
  107. 細迫兼光

    細迫委員 これは相当大きな資本が動くと思いますし、必ずしも韓国政府は保証しないと言っているのですから、日本政府へは保証してくれというような話が持ち込まれることだって考えられないではないのでありまして、これは非常な大問題だと思うのです。これらに対処する方針はやはり大臣でなくては聞かれないと思います。仕方ありませんから、大臣に質問することを留保しておきまして、終わります。
  108. 森下國雄

  109. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど水産庁の方がおいでになりませんでしたので、私質問を保留しておいたわけですけれども、問題は、三十三年にクリスマス島で実験か行なわれましたときに、直接の被害がなかったために何ら補償の要求をしなかったというように外務省はお答えになったわけであります。水産庁の方にお伺いしたいのは、その実験をやっている最中は漁船も入れないわけでございまして、そういうことから来る間接被害というものに対しての補償を要求されたかどうかということを伺いたいのです。
  110. 村田豊三

    村田政府委員 三十三年のクリスマス島の実験の際の御質問でございますが、私ども承知いたしております範囲では、あのときの実験につきましては、ただいま御指摘のような損害報告は出ていなかった、従って、さような要求はしてなかったというふうに了解いたします。
  111. 戸叶里子

    ○戸叶委員 損害報告がなかったというのは、そちらの方で、漁船が出ていく場合にその漁船の持ち主に対して、その実験の間行けないけれども、それに対する損害はどうかというような点を徹底させたかどうか。徹底させなければ何の報告も出てこないと思うのですけれども、その点はどうですか。
  112. 村田豊三

    村田政府委員 三十三年にその危険水域の地帯に漁船が入れないために予想されるであろう損害に対して日本側補償を要求したかどうか、これは事実の問題になりますが、大へん失礼でございますが、私その事実の調査をただいまして参っておりませんので、後ほど調査してお答えしたいと思います。
  113. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、それは調査していただきたいと思います。  それから、もう一つそれから発展させたいのは、今回私たちはあらゆる努力をしてアメリカ核実験をさせないようなことをしなければいけないと思いますけれども先ほど外務省は、それに努力すると同時に補償の問題も考えているということをおっしゃったので問題になったのですが、今度のような広範囲にわたっての実験がもしかりになされたとしたならば、直接の被害以外に間接の被害というものが当然起きてくると思います。そういう問題も当然お考えになっていらっしゃると思いますが、いかがですか。
  114. 村田豊三

    村田政府委員 当然にそういう間接的な被害が発生するかどうか、これは、その実験の時期なりあるいはその規模なりを調査した上でなければ何とも私責任のあるお答えはできかねますけれども、たとえば、漁船の場合は、ある一定水域が危険水域の指定を受けますと、普通の場合は広い太平洋で漁業のやれる地域はほかにもございますので、その地域を避けてほかに回航して操業するということも不可能ではないのであります。従いまして、一般的に原則的にこうであるというお答えはいたしかねますけれども、そういう事態をよく調査した上で、また、ただいま御指摘のようなことが絶無だとは私は思いません。そういう可能性もあるかと存じますけれども、これらは具体的な実験内容なり方法等について具体的な調査をした上での検討が必要だと考えます。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はもうこれでけっこうですけれども水産庁の方がおっしゃっているようなことでは時期が非常にずれてしまうと思うのです。アメリカはもうすでに十五日からするかもしれないような態度を示しているわけでございまして、ぐずぐずしていられないではないかと思いますので、念のためにそれも御忠告申し上げまして、私の質問々終わりたいと思います。
  116. 森下國雄

    森下委員長 ただいまの組迫兼光君の質疑に対して関連質問の通告がありますので、これを許します。川上貫一君。
  117. 川上貫一

    ○川上委員 関連でありますから、まとめて質問をします。  私は、この前の質問のときに、日韓会談には暗い陰がつきまとうておる、陰険なにおいがしておるということを言うたんです。だんだんとそれが明らかになってくる。そこで、今細迫委員が御質問になりましたお答えを開いたのでありますが、はっきりしない。そこで、まとめて聞きます。  第一は、メモランダムであるのか、双方が持っておる帳面か何かにお互いに書きとめたものであるか。これは正確に答えてもらいたいと思う。これは、韓国と日本が今交渉しおるのでありまして、政府の答弁というものが正確でなければならぬ。相手があるのでありますから、この点は正確に答えておいてもらいたい。あいまいであればこれは再質問をさしてもらいます。  それから何月の何日にどこでだれとだれとがこういう文書を取りかわしたのであるか、その時分の両方の主たる代表と、そこに参加しておった代表の随員の名前を正確に知らせて下さい。これが第二点であります。  第三点は、その内容新聞に出ておりますが、私の手元にあるのは読売新聞である。これには、三月にソウルで政治会談を開き、五月に仮調印の上国交正常化をはかるという秘密文書、これが暴露されたとある。同時に、日本政府はこれを見て、これははなはだ困ったことだという態度になってと書いてある。そこで、よけいなことは言いませんが、これはメモランダムか何かわからぬが、この内容はここに出ておるものと同じものであるのか。もし違うとすれば、こういう工合に違うということを、正確に言うてもらいたい。何か違いますでは困る。こうこうこう違う、こう書いてあるのだ、これをはっきりと言うてもらいたい。  第四点は、そのことを総理は御承知かどうか。なぜそういうことを聞くかといいますと、三月の十四日の外務委員会穗積委員が質問をしておられる。その質問には、私は約して意味を言いますが、伝えるところによるというと、朴政権の側には、四月に第二次会談、五月十六日のクーデターの一周年に仮調印という、こういう話がありますがいかがでありますか、という意味の質問を穗積委員がしておるのです。これに対して、池田総理は、今いつまでにどうするというようなことは、それはなるべく早くという考えはありますけれども、予定などについては何にもありません、こう言うておる。努力目標も何もない、総理はこう答えておるのです。努力目標というようなことを言っておるのだが、あれはうそだと思うけれども、ほんとうにしても、これを首相は知っておったのかどうか。  この答弁によっては、私はきょうは関連だから再質問はしませんが、あとで質問をさしてもらいたい、こう思いますから、以上の四点、これだけをお答えを願いたい。これだけで。
  118. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 申し合わせの形態は何であるかという御質問でございますか、これは、申し合わせました事項が三つございまして、それを念のために書いたのでございます。ですから、両方がその書いたものを一部ずつ持っております。結局メモとして両方が同じものを一部ずつ持っております。そういう形態のものでございます。これは、一月二十五日、杉代表、ペ代表の間でこの話がきまったわけでございます。
  119. 川上貫一

    ○川上委員 メモランダムのことですな。交換したんですな。
  120. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 交換と申しますか、同じものを一部ずつ両方が持っておるわけです。
  121. 川上貫一

    ○川上委員 それを両方で了解したんですね。
  122. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 そうです。もちろん、話し合いまして、こうこうこうと三点について話し合いが成立いたしました。それをそのまま書いたものを一部ずつ両方が持っておる、こういうわけでございます。一月二十五日。杉、ペ両首席代表の間でこの了解に到達しております。  立ち合いましたのは、日本側は、私と、もう一人卜部参事官、先方は、崔参事官と、もう一人ぐらいおりましたか、よく覚えておりません。  それから、内容いかんということですが、内容は、国会審議が一段落した際に、なるべく早く政治会談を開く、三月中に開こうというのが第一点でございます。それから、第二点は、五月末までに話し合いをまとめるようにお互いに努力しようというのが第二点でございます。第三点は、事務レベル、委員会レベルの審議を促進しようというのが第三点でございます。  総理が御承知かどうかという点につきましては、大体のことは報告いたします。しかし、総理がよくお読みになりましたか、覚えておられたか、一応この日韓会談の動きについては報告いたしておりますが、はたしてこういうものまで覚えておられるかどうか、これはちょっと私も存じません。
  123. 森下國雄

    森下委員長 関連質問を許します。穗積七郎君。
  124. 穗積七郎

    穗積委員 今の経過並びに事実は、外務大臣よく御存じでございましたか。
  125. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 伊關局長から報告を聞いて承知しております。
  126. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、この間の委員会で、そういう向こう側からの希望もあるようだし、そういう申し入れもあったようだが、それに対して何か約束しておるようなことはないかという趣旨の質問をしたときにあなたはそういうことを言っておられない。総理は、今伊關アジア局長の話によりますと、あるいは報告をしたけれども読んでないかもしれぬということでしたが、大臣はそのとき同席をしておられて御存じだったわけですね。そうすると、さっき細道委員が言われたように、国会において今まで報告された点と、それから事実とは食い違いがある。言いかえるならば、事実は国民の前に隠蔽をしてこれを知らせないでいたという問題が残っているわけです。大臣、どういうふうにお考えになりますか、
  127. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはあくまで努力目標であって、そういうふうにできるだけしようという程度のものでございまして、予定というようなものではございませんから、さほど御報告すべき内容であるとは私思っておりません。
  128. 穗積七郎

    穗積委員 予定ではないでしょう。そういうふうに言って、それを目標にして努力しようということは言ったわけですから。その通りになるかならぬかは、むろん、さっきのお話通り、話の内容が食い違えば、時期が延びるのみならず、会談が妥結しないで決裂する場合もあり得るわけです。そんなことはわかっている。あの当時そういうことがわれわれには懸念されたので、その点を国民の前に明らかにしてもらいたい、こういうことに対して、外務省はこれを隠蔽しておられた。軽い意味なら軽い意味で、率直にその通り報告なさったらいいじゃありませんか。法律的な責任があるないということを私は言っているのではない、政治交渉ですから。いかがでしょうか。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、さっき申し上げたように、事務的な委員会段階での話し合いが少しも進まない。そこで、これを促進しなければならぬ。先方は政治会談というのを非常に強く希望している。そこで、政治会談というものは受けましょう、そのかわり委員会の審査も進めましょう、事務折衝も進めましょう、こういうことで申し合わせしたのが主たる内容でございます。従って、そういう五月というようなことを特に国会に御報告申し上げるということではない、むしろ、そう申し上げたら、かえって内容を誤るものであるというふうに私は思います。要するに、両方の善意によってそういうように努力しよう、こういう両代表間の申し合わせでございますから、私は、政府として特に御報時申し上げるような事項ではない、こう思っております。
  130. 穗積七郎

    穗積委員 関連ですから多く言いませんけれども、何もそういう期限についての確定的な合意があるかどうかということを私は報告しろと言ったのではないわけです。そういう経過はどういうふうになっているのか、それを目標にしておるのかどうかということに対して、そんなことについての目標はない、こういうことであったわけですから、事実に反することは明らかですね。ですから、これは、この間岡田委員がタイ問題等について質問いたしましたときにも明らかになったように、外務省秘密にしないでもいいことを秘密にしておる。これが私は国民の協力を得るという点で誤っておる根本的なものだと思うのです。しかも、池田さんは官僚出身だけれども、あなたは官僚出身じゃない。これが一たび役人になると、役人におどかされるのか、アメリカにおどかされるのか、韓国におどかされるのか知らぬけれども、まるで役人以上の隠蔽主義、秘密主義でやっておられる。これは非常な誤りですから、今後注意していただきたい。  それで、なお関連してお尋ねしておきますけれども、あした予定されておる両代表の会談ですね。それに対する政府の方針、それから、同時に、関連して、第二問は、日韓会談について、この間京都で総理並びにあなたが話されたような方針で当分は臨んでおられるのか、あれに変更があるかどうか、それも一括して、第一、第二、関連したことですからお尋ねしますから、この際率直に、必要以上に秘密にされないで、所信を国民の前に明らかにしていただきたいと思うのです。なぜかといいますと、今度の会談でもすべてそうですけれどもアメリカがうしろだてになっている会談には、すべて自主性を失って引きずられていくという傾向をわれわれは心配しておるわけです。特に、今度の朴政権の態度というものは、アメリカがこれを促進してくれておるということをうしろだてにして、請求権の問題初め、会談の妥結の時期、方法等についても、非常に不遜かつ強引な態度で日本側に臨んできているわけです。この背後は何かといえば、やはりアメリカがうしろだてになっているということを意識してやっておる。日本側は意識してそれに必要以上に恐怖心を起こしておる。こういうようなことがわれわれの印象としては見受けられるわけです。そういう点を御注意申し上げるとともに、今私が質問いたしました第一、第二の質問に対して、この際率直に大臣の所信を明らかにしておいていただきたいと思います。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は穂積さんとだいぶ長いつき合いだと思いますが、あなたの御心配は杞憂であると思う。あなたのようなお考えを私に対して持たれておるとするならば、非常な長い間のつき合いも浅いつき合いだと言わざるを得ない。誤解であるということをもって御返事を申し上げたいと思います。  それから、会談をやっておりますときに、一々だれがこう言った、ああ言ったということは御報告しないことが常識であることは御承知通りであります。私どもは崔外務部長官と会ったあとで共同声明で出しております。その際に、政治会談の次期の会談をなるべく早くしたいということを言っておりますので、その辺で御答弁申し上げておるわけであります。私の考えは少しもそれに変わりございません。大体そんなことであります。
  132. 穗積七郎

    穗積委員 明日の両代表の会談についての政府の方針はどうですか。
  133. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 基本方針、これは、会って話すというだけで、私別に特別の訓令を与えるとかいうような考えは持っておりません。
  134. 穗積七郎

    穗積委員 京都談話通りでいいですか。
  135. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 京都におきまして、記者団から質問ありましたのに対して答えた私の気持は、やはり会談をやってできるだけ早く日韓会談が合意されることが望ましい、しかし、その内容はあくまで合理的なもので国民の納得を得るものにしたい、こう考えて、そういうものができない限りにおいては、何でもかでも、あせって時期をきめて、それまでに納得を得ないような結論でもそこで会談を妥結させてしまうというようなことは私としても毛頭考えていない、こういうことを言ったわけです。
  136. 森下國雄

    森下委員長 加藤勘十君にちょっと申し上げますが、御要求の総務長官は後ほど参ることになっておりまして、ただいま大竹特別地域連絡局長が総理府から見えられております。さようお含みの上御質疑を願います。加藤勘十君。
  137. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は今日はもっぱら小笠原の問題についてお伺いしたいと思いますが、具体的な内容に入る前に外務大臣に対して二、三お尋ねしたいと思います。  その一つは、小笠原は、言うまでもなく、平和条約の第三条によって沖縄同様に扱われておるわけであります。従来、日本人の関心は、沖縄については、住民も八十万をこえる多数が居住し、利害関係も大きいという点から、あらゆる角度から、あらゆる問題について沖縄のことについては相当委曲を尽くして質疑がかわされておると思います。ところが、同じ条約の同じ条文に規制される小笠原の問題については、もちろんある重要な段階においての質疑はかわされておりますが、とかく、小笠原に元居住しておった諸君から見ますると、ひとり取り残されて、むしろ忘れられておる、捨てられておるという感じが強いのであります。従来の日本政府のこれらの島民諸君に対する態度から見ましても、あの小さな島におって苦心して築き上げたものをすべてなくして、内地に強制引き揚げを命ぜられて、今日食うや食わずに困っておる人の立場から言えば、その数はかりに非常に少ないにいたしましても、しかし、一人といえども、本来ならばそういうことのために飢えたる者がないということが当然のことでなければなりませんが、非常に困っておる人がたくさんあります。これに対して、外務大臣としては、まず具体的な要点をあげますれば、第一に、沖縄の施政権返還の交渉はされておるわけです。どういうようにその返還の請求交渉が進捗しておるかは、まだ私は詳しく知りませんが、その施政権返還の交渉の中に当然小笠原の施政権返還のことも含まれておると思いますし、また、おそらくそういう御返事だろうと思うのです。しかし、小笠原の場合は沖縄と条件が違うわけなんです。言うまでもなく、沖縄は、多くの住民がおって、そこに施政権が返還されれば、行政の権限が日本政府に帰属するようになる。ところが、小笠原の場合は、かりに施政権が返還されましても、そこに施政権の適用を受くべき住民がいない。これは、言葉の上では施政権返還ということでありますけれども、実際の問題としては非常に内容が違うと私は思うのです。その施政権返還の前に、元居住し、元そこで生活しておった島民の諸君の島に帰るということが承認されて、島に帰って生活の安住点を見出すということが先決でなければならない。こういうことに対して外務大臣はどのようにお考えになっておるか、そして、今日までアメリカとどういう交渉をなさり、その交渉の進展状況はどうであるか、まずこの点を聞かしてもらいたいと思います。
  138. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれ、施政権返還要求をアメリカに対して行ないます場合に、沖縄、小笠原一括してこれは同等に扱っておるわけでございます。この小笠原は、ただいま加藤さん御指摘のようにわが同胞がそこに居住していないという点は確かに沖縄と違うのでありますが、私どもは、この島を一括して対象といたしておるのであります。わが同胞がいないという点につきましては、北方領土と非常に似ておるのであります。同胞が内地に帰ってきておる、こういう点はむしろ北方領土と非常に似ていると思います。しかしながら、われわれとしましては、小笠原の諸島民が帰島できますように、また、帰島できないことによる困難を救済するために、外交保護権の行使に基つきまして昭和三十年以来アメリカ政府と折衝して参りましたが、三十三年に至りまして、この折衝の結果に徴しまして、救済措置の問題は帰島問題と切り離して早期解決をはかるということになりまして、八月二十九日、藤山外務大臣の当時、在米大使館を通じまして、講和発効の日以降旧来島民の帰島が実現できるまでの困難救済のために一括支払い金の要求を行なったのであります。その後引き続きまして折衝中のところ、昨年交渉がまとまりまして、六月八日、私とライシャワー在京アメリカ大使との間に、アメリカ政府から六百万ドルの支払いを内容とする交換公文の署名をいたしまして、同時に資金の授受が行なわれまして、この点に対する解決は見た、こういうわけであります。  この内容はもう加藤さん御承知かと思いますから省略いたしますが、結局この金は直ちに総理府に移されまして、総理府の特別地域連絡局におきまして、関係官庁連絡協議会に諮りまして、かつ旧住民関係の団体の意見も徴しまして、個人別の配分事務を進めておりまして、近く配分実施に至る、こういうふうな予定になっております。
  139. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 アメリカから日本に渡された金額の内容についての具体的な点は、総理府長官なり特連局長なりにいずれあとから具体的にお伺いしますが、今外務大臣にお尋ねしたいのは、その施政権返還の交渉をなさいます場合に、小笠原も含まれておる、こういうお話でございました。それならば、どういう程度にその交渉は進捗しておるのでしょうか。まずこれを一つお伺いしたいと思います。
  140. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはもう機会あるごとにアメリカ政府当局に話しておりまして、昨年池田総理大臣が行かれましたときにケネディ大統領との間にこの話をされました。私もラスク国務長官とも話をいたしました。その前年参りましたときに、私と当時のハーター国務長官との間でその話をいたしております。しかし、先方が一貫して言っておることでありますが、現在の極東における緊張と脅威が続く限りにおいては、これは日本に施政権を渡すということは困難である、こう言っておるのであります。しかしながら、最近にケネディ大統領の声明もございまして、これは必ず日本に返す、しかし、その返す日を円滑にするために日米共同して沖縄における諸施策について十分やっていこう、こういうことになっているわけです。ただし、小笠原にはわが同胞がおりませんものでございますから、これについては直接その声明の対象にはなっておりませんが、これは同様に措置されるものと私どもは了解しておるのであります。
  141. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうしますと、具体的には交渉はたび重ねて行なっていらっしゃるが、まだ何らの結論づけるような進捗は見ていない、一口に言えばこういうことなんですね。ただ、努力するというアメリカ側の意図がある、こういう程度ですね。  そこで、施政権の問題は何というても沖縄が中心だと思いますが、その施政権を返還してもらう前提として、せめて旧住民の島に帰って生活の根拠をそこに持つように交渉することはできないのですか。従来長い間先祖伝来持っておった生活の拠点なんですから、その生活がそこでできるように取り計らってもらうということはどうなんです。そういう交渉はなさったことはないのですか。
  142. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このことも言っておりますけれども先方は、どうも現在は困る、こう言っておるのであります。理由は、ちょうど北方領土——これはソビエト側は日本の主権というものを認めておらぬので違いますけれども、やはり軍事的な必要ということのように了解されるのであります。
  143. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 これは外務省でも御承知のことと思いますが、小笠原の多くの小さな島があります中で、軍事施設を持っておる島というものは一つか二つなんですね。あとは軍事施設はない島がたくさんあるわけです。そこにも戦前には相当程度に人が住んでおったということが言えるのです。それから、もう一つは、御承知のように、終戦直後に白系の住民の帰島を許しておるわけなんです。これは、もし白人系であるがゆえに許したというならば、明らかに人種差別の非常なものであると言わなければならぬ。けれども、私は今ここで人種差別の不当を責めようというつもりはありません。ありませんけれども、何と弁明をしても、白系なるがゆえに帰島を許し、白系ならざるがゆえに帰島を許さないということになれば、これは単なる軍事施設云々ということではない。どうも、白人系はいいが、白人系でない者は、かりにもし軍事的なという懸念があってスパイでもされては困るのじゃないかということだと、日本人に対する信頼感がないからそういうことになるのじゃないかと思うのです。私は、そういう点については、もっとアメリカ側の啓蒙をするように外務省としても努力されるべきじゃないかと思いますが、その点はどうでしょう。
  144. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはもうお説の通りなんでありまして、硫黄島と父島に基地があるといわれておりますが、それ以外のところはまさにお説のようなことが言えるわけであります。しかも、昭和二十一年でございましたか、百三十五人の白人系の人が帰っておるわけであります。従って、私どもは、御趣旨のようなことでアメリカともしきりに話はしているのでございます。この六百万ドル受領に際しましても、もちろんこれは土地の所有権の移転とは全然関係がない、そういうことははっきりさせて受け取っているわけでございます。御趣旨のようなことで私ども努力いたしておりますが、今後も努力したいと思います。
  145. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 小坂外務大臣が去年の二月二十七日の予算分科会で田中織之進君の質問に対してこういう答えをしていらっしゃるのです。それは、施政権の問題が問題であることはよくわかるが、その前に住民の帰村を先に交渉すべきではないか、白系住民が先に帰って、前からおった住民の財産権を侵害しているようなことがないかという質問をしたことに対して、あなたは、今までこれは調べたことはない、だけれども、さらに調査して財産権の原則に反することのないようにしたいと言って、調査を約束されているわけなんですが、実際問題としまして、先に白系住民が帰って、ここでアメリカ国会から調査団が来たときに座談会を開いているのですね。その座談会の席上で白系住民は、純粋のというとおかしいが、日本人は帰ってほしくない、こういうことを表明しているわけです。それは、引き揚げ当時一千名ばかりの人がおったところに百三、四十名の人が帰ったのだから、これらの人々の持っている財産が百三、四十人の人々によって占拠されて、それを自分たちが自分たちの利益のために利用しているというか、そこへとにかくもとの住民が帰ってくると、自分たちが今まで占めておったものがまた失なわれてしまうというようなことから、そういう帰ってほしくないという意思表示をしたのではないかと思われるのですが、外務大臣が昨年の二月予算分科会でお約束になりました調査というものは、はたしてほんとうに調査なさったのか、それとも、調査ができにくかったからおやりにならなかったのか、もし調査されているとすれば、現在どういう状態のもとにあるかということを一つ聞かしていただきたい。
  146. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この昭和二十一年といえば、まだ日本に対する感情の非常に悪い時期でございましたので、その当時に白系の人たちが行ったのであります。これは確かに私どもとしてははなはだ不満なことでありまして、この問題はその後どうなっているかということはもっと調査しなければならぬのでありますが、実は、まだそこまでいっておりません。しかし、幸いにして、今度はガリオア・エロアの問題も片づきましたし、いわゆる終戦処理の問題が片づいたので、今後またこういう点についても大いに調査をしたいというふうに考えているわけでございます。私どもとしては、自分の目で見ての調査はしておりませんけれども、問い合わせをいたしております。そこで、問い合わせの結果は、この百三十数人の人がわが同胞の持っていたものを全部占有してそこに所有権を発生するというようなことは絶対にさせない、所有権の移転というものはそれによって発生しないということははっきりとアメリカ側は言っているのであります。ただ、まだ行ってこの目で見ないというのは、はなはだ申しわけないのでございますが、そろそろそういう時期に来ているのではないかと考えます。
  147. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は、外務大臣から率直にありのままをお答え願って、その点はきわめてきれいでいいと思うのです。だが、残念なことは、まだ調査も行っていないということなのですが、そこで、もうあそこに何らかの形で、日本の海上保安庁の船でもよし、何か行く方法はアメリカと折衝すればあるのではないかと思すのです。なるほど、二十一年に白系住民だけ帰した時分にはそういう感情的なものもあったかもわかりません。われわれは、非常に好意に見ても、相当に人種的偏見が彼らの頭の中にあったということを否定するわけにいかぬと思います。しかし、今日、終戦以来もう十何年たって、すべての点においてアメリカは極東方面において日本の協力を求めなければならない。また、今おっしゃるように、ガリオア・エロアの問題が片づいたという。外務省としてはこの方に最近数年間は主力を入れておられたから無理もないと思いますが、しかし、それとこれとはおのずから問題は別なのですから、だからといって調査をされなかった口実にはならないと私は思います。それも私は責めようとはしません。しませんが、あらためて、どうですか、これは総理府長官にも聞きたいと思っておったけれども、幸いに外務大臣外交折衝されるのだから、アメリカ側と折衝されて、日本から小笠原の現状調査のために日本政府の公務員を派遣せしめるということについての理解を取りつけて、それを実現されるように取り計らっていただきたい。そうすれば、今自分たちのものがどうなっておるか非常に不安な状態に置かれておる強制引き揚げを命令された人々も、実情が明らかになれば一応は安心されるのではないかと思う。だから、まず実情調査をなさいますということが一つと、それから、最近はシベリアでも中国でも、まだ国交の回復しておらない地域の方面においても、自分たちの戦病傷死者の墳墓の地がそこにあれば、御承知のように、その墓参りに遺族の者を受け入れておるわけなんです。それならば、日米間においてりっぱに国交の回復しておる現在、この小笠原にも引き揚げた住民の先祖の墳墓の地があるわけなので、このお墓参りにでも行くというようなことが外交交渉としてなすことができないかどうか。まずこの二つの点で外交折衝を一つ具体的にやってもらいたいと思うのですが、どうお考えでしょうか。
  148. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、御指摘の点は全くその通りなんでありまして、私もそう考えまして、ずっとやっておりますけれども、昨年の秋には非常に強くこの話を交渉いたしました。今般アメリカのさる要人か参りましたときにもこの話を強くいたしたのであります。ところが、どうしてもなかなかいれるところにならぬのですが、その要人は十分研究してみようと言って帰られたのであります。そこで、これは軍と国務省の関係になるわけでありますが、やはり、何といっても、日本人に対する心からの信頼と申しますか、そういうものがないと、なかなかこういう交渉はヒッチになるわけなので、先ほど私はよけいなことなんですがガリオア問題などと申しましたのは、日本人は誠意を持って物事を跡始末をしていくのだということをはっきり見せたいと思って、それが見せられる段階になった。そこで、こういうこともあるのだし、戦争の傷跡はこれできれいになったのだから、さてわれわれとしても祖先墳墓の地に参るということは民族的な一つのよい風習、感情なんで、こういう点を十分考えてくれということをさらに私も申したいと思っております。何といいますか、加藤先輩ですからざっくばらんに申し上げて失礼かもしれませんけれども、お許し願いたいと思いますが、例の沖縄問題でも、あそこまで譲るにはかなりのヒッチがあったわけのようでございます。しかし、その反論のあるゆえんは、一歩譲ればまた出てくる、また譲ればまた出てくる、これはもうとめどないじゃないかという反論なのです。そこで、われわれは、やはり、けじめはけじめとしてはっきりしている、だからわれわれの要求は通せということでないと、先方を納得させることは非常に困難を感じますので、私は、この機会に大いにこの御質問の点は先方とも話し合ってみたい、こう思っております。
  149. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 この点は今度は正式に一つ交渉の議題としてやっていただきたい。小さい問題のようでありますけれども、これは日本人の感情にとりましては大きな問題なのです。アメリカ側からいけば日本人に対する不信ということが言われるかもわからぬが、日本側からいけ、は、アメリカの不遜というか、不信というか、何といっても小笠原は言うまでもなく戦前の行政版図は東京都の所管だったのです。ある意味からいけば日本の玄関口なのですよ。その日本の玄関口である小笠原が、一方においては軍事的な理由において先祖の墓参りもできない、しかも無人のままに放置されておる。これは前の住民が帰っていけばそこに幾らでも生活の根拠を開拓することができる。そういう余裕を持っておるにもかかわらず、しかも、島と島との間は相当距離が離れて、もしかりに非常に信頼がないとしても、何かスパイでもやるのじゃないかという危険を感じたにしても、一般住民がこっちの島におってあっちの鳥をスパイするなんということは事実上これはできることじゃないのです。そういう日本のある意味においての玄関ともいうべき小笠原諸島が今のような状態に放置されて、日本人は自分のものがそこにありながら折をくわえて見ておらなければならない。しかも、自分たちは生活に安定性を欠いて非常な苦しい思いをしておるという者から見ますと、政府当局の間においては、相互の理解を強めた、深まったということを言われるけれども、そういう国民感情からいきますと、私は決していわゆる両国の国民同士の信頼をつなぎ合うゆえんではないと思うのです。だから、これは私は小さい問題のようで、実は小さい問題ではないと思います。六百万ドルの金が与えられたからそれでもうアメリカは知らぬ顔しておるということでは、ほんとうに相互の信頼というものはつなぎ得ないと思うのです。私どもから見ると、これは小坂さんを前に置いておかしいけれども、ほんとうに日本政府アメリカに対する態度はあまりにも卑屈と思われるほどに卑屈なんですよ、ほんとうの話が。われわれが見るとですよ。あなた方はそう思わないかもしらぬが、われわれが見るとそう思うのです。それほどにアメリカに対して忠実である日本政府の申し出が、やれまだ国民の信頼がないから受け入れられぬということであるならば、これはあくまでもいわゆる支配者の専横ということになってしまうと思うのです。そうならばアメリカの本旨でなかろうと思うのです。アメリカもやはり日本国民との相互信頼ですべてのことを進めていきたいとこいねがっておるだろうと思うのですが、そういう点からいきましたら、帰島の問題がすぐに右から左へ話に上らないとするならば、とりあえず、帰島を前提とするまず現状調査日本政府において行なう。これは、向こうが軍事管理下に置かれておるから、軍事的な向こうのある程度の干渉はありましょうけれども日本政府から正式に調査団が派遣されたということを聞くだけでも、ここにおった住民諸君にとっては非常な朗報だろうと私は思うのです。そういう点で、ぜひ一つ、これは、外務大臣に対する私の希望として、外交案件として取り上げていただきたい、こう思います。
  150. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私、非常にその御意見は同感です。ただ、一つだけ、アメリカに対して非常に従属的であるようなお話は、これは返上したいと思います。言うべきことはちゃんと言っているつもりでございますし、決して卑屈な態度は私とっていない。これは私の信念においてそう思っております。  なお、実は、このほかにも、関連いたしますが、これはまさに承りましたが、ソ連地区に墓参の問題も、先方もことしも続けてくれるようでございますが、わが同胞の非常に多かった樺太あるいは国後、択捉、これに対する墓参は全然人を入れないのでございます。こういう点も私ども大いに交渉して、そういうふうなことを実現したい。こう思っております。
  151. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 政府が国民の感情等を尊重して、南であれ北であれ、関係各方面に折衝されるということは、国民としては非常に望ましいことなんです。われわれは、ただアメリカにだけ強く当たれ、ソ連や中国に対してはどうでもいいというような考えを持っておりません。われわれは、それがソ連であろうと中国であろうとアメリカであろうと、日本日本のあくまでも独自の権威を持って、独立国の権威を持って交渉に当たってもらいたい、こういうことの考えを持っておりますから、外務当局は、樺太、千島の方面に墓参に行きたいという希望者があるならば、それを向こうが受け入れるか受け入れないか、そういう交渉をなさること、それからまた、受け入れぬとすればなぜ受け入れないかということをもはっきりさしてもらいたいし、同様に小笠原の場合においてもその点をはっきりさしてもらいたい。そういう直接国の利害に関係がなくて国民の感情問題に影響するような問題については、やはり率直に、行けないなら行けない、行くなら行く、どのくらいの時期に行けるというようなことを明らかにしてもらうことがいいんじゃないか、こう思いますので、どうか一つそういう点を十分含んで折衝していただきたいと思います。  総務長官は来ておりますか。
  152. 森下國雄

    森下委員長 特別地域連絡局長は見えております。
  153. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 局長とはたびたび話し合っておるから、局長は具体的な問題のときにしてもらうことにして、やはり長官に責任ある言葉を聞かぬと工合が悪いと思いますから……。
  154. 森下國雄

    森下委員長 ただいま参りましょうから、五分間休憩いたします。    午後三時二十三分休憩      ————◇—————    午後三時二十五分開議
  155. 森下國雄

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま小平総務長官が見えられました。  加藤勘十君。
  156. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 先ほどもちょっと外務大臣からお話がありましたが、昨年アメリカ政府と話しがついて交換文を交換され、その交換公文の趣旨に基づいて六百万ドルという金が日本政府に渡された。それが六月八日ですね。六月八日でありますと、今日までほぼ十カ月経過しておりますね。十カ月経過しておるが、この配分についてはいろいろな困難な点があることはよくわかりまするけれども、一体総理府としてはどのようにこの配分についての案が作成されつつあるのか。三つの団体がこの配分について島民から委任状を取り、そして、その金の保存方法については、一応その三つの団体の代表者に、政府の監督下に行なうということをまかしたわけなんです。そして、その結果として、結論的に言えば三つの銀行に保管されておる。こういう状態にあるわけなんですが、配分についての案が政府ではどのように作成されておるのか。もし作成されていないとすれば、どの程度にその作成の作業が進行しつつあるか。これをまず聞かしていただきたい。
  157. 小平久雄

    ○小平政府委員 ただいま御指摘の通り、昨年の六月に米側から六百万ドルのこれらに対するいわば補償の金が参りました。その後、これをどう配分するかということにつきましては、総理府を中心にしまして関係各省で協議会を持ちまして、一体どういう基準でこれを配分すべきか、十数回にもわたりまして協議をいたし検討をいたしたのでございます。しかし、何分にも相当年月を経過いたしておりまして、権利関係等につきましても必ずしも明確でない。一言で申せば非常に不十分である。そういう関係からいたしまして、なかなか結論までには至らなかったわけであります。ただ、この際、特に総理府といたしましては、できますならば関係島民の皆さんの御意見がまとまりまして、それらの島民の方々の意向というものを十分取り入れてやることが、むしろ将来問題を残さぬためには望ましいことではないかということで、この島氏の方々の団体等にも相談をいたしまして、何らかこの結論を話し合いによって出していただけないかということを相談をいたしておったわけでございますが、不幸にしてその話し合いも今日まではまだできません。ただ、最近に至りまして、これらの団体が、いわば団体の代表と申しますか、一任なさる方々と総理府総務長官の職にある者とに一任してもよろしいといったようなことに、最近そういう結論に達したように聞いておりますが、いずれにいたしましても、以上申し上げます通り政府政府だけの考えでやるということも一つの方法かも存じませんが、しかし、なるべくならば島民の方々の納得のいく結論を得た線に沿うてやることがむしろ望ましいのではないか、こういうことで、それを尊重したい、こういう立場でおりました関係上、今日まだ最終的にどういう基準によって配分をするということの結論を得ておりません。しかし、もちろん、相当時日をかけておる問題でもございますから、できるだけ早くこれを配分をいたしたいと、ただいま鋭意努力をいたしておるところでございます。
  158. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 政府が諮問といいますか、相談といわれるか、意向を聞くといわれるか、そういう対象となっておるのは、帰島促進連盟と土地委員会、農業同志会の三団体ということでありますが、それはその通りですか。
  159. 小平久雄

    ○小平政府委員 従来は今御指摘の三団体でございます。ただ、ごく最近、帰島連盟に大体属しておった方々で別に一団体を作られたというような話も伺っておりまするが、実は、この帰島連盟を脱して新規に作られたのかどうか、その辺のところも実ははっきりいたしませんので、事務当局で連絡をさしておるところでございます。
  160. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 今長官のお答えの中にありましたように、従来、この三つの団体の間、あるいはこの間に政府も関与されたかどうかわからないが、少なくとも十数回の会合が持たれ、交渉がなされたようであるけれども、三つの団体間の意見がまとまっていない。さらに、その間に、帰島連盟の幹部の中から、事情は別にしまして、ともかくも警察から検挙される、その経理に関する書類が引き揚げられてしまった、こういうような好ましからざる事態が発生し、事態は少しも進展しない。のみならず、この幹部の少数の間に話し合いが進められて、帰島連盟所属の多数の人々が、ほとんどその意向が受け入れられていないという点から、いわゆる局長協議会というものを持って大会を開いて、そして、この帰島連盟から脱退をしておられる。最初委任状を出すときには、政府が保管しておる金は、もし政府がそのまま保管しておれば利子はつかないし、配分が決定するまでどれだけの時間がかかるかわからない、そうすると、このせっかくの金が利子もつかないし何にもならぬから、配分ができるまでどこか市中銀行に預け入れをして、その保管中の利子を縛るようにした方がよいということで、政府監督のもとに、その金の保管方法を三団体の代表に委任してくれ、そういうことで委任状が出されたわけです。ところが、今言うように、委任状を出して、最初は銀行等もある特定の銀行に限られておったのが、いつの間にやら、平素連盟の幹部が取引があると思われる銀行にも預けられて、結局三つの銀行になってしまった。三つの銀行に等分に預託される、こういうことになった。そして、この幹部のあり方に業を煮やした島民の諸君は、そういう大会を持って協議会を持ち、正式に委任状に対する無効の通告をされておる。委任状の返還というよりも、委任状効力無効の通告内容証明をもってなされておる。同時に、自分たちはその促進連盟から脱退をして、そして、独自の立場において、しかも私に代理を委任する、こういう通告を私のところにも内容証明でなされておる。また、あなた方の方へもその文書が正式に発せられておる。こういうことになって、その数は大体千四百人くらい。七千人の中で最初から委任状を発行していない人々が大よそ百人くらいある。そのほかに千四百人くらいの人が協議会を作って、もう連盟を信頼することかできないからというので、私に委任状を託しておられるわけであります。そういう関係で、一そう話は混乱してきておるようです。それから、土地委員会、この土地委員会の方は楢橋渡君が顧問で、楢橋渡君が委任を受けておる。帰島連盟の方は福田篤泰君が委任を受けておる。楢橋君は、不幸なことにあの人は他の事件で起訴されておる。こういう点が別な問題として発生したわけです。従って、島民の立場からいけば、それは委任しておるのはなるほど土地委員会の諸君が委任しておるのであるけれども、島民全体とすれば、当然自分たちの配分を受けるべき金の配分の方法について、そういう刑事被告人となっておる人が委託されておるというようなことでは信頼ができないというので、ちょっとこれはせん気筋といえばせん気筋ですけれども、全体を包含された点から、そういうところに信頼を与えるわけにはいかないというのが帰島促進連盟から脱退された理由なんです。こういう点について長官はどの程度に聞いていらっしゃるか。
  161. 小平久雄

    ○小平政府委員 まず第一点の、帰島連盟の役員の者に何か不正事件がありまして取り調べを受けておるという話は承知をいたしております。ただ、この問題は、私ども承知をいたしておるところでは、帰島連盟自体が御承知通り一種の任意団体でございまして、われわれの方で直接それを監督するという立場にも、正確にはございません。しかしながら、いずれにいたしましても、関係のある団体には間違いございませんで、そういう点で、たといそこの理事でありますか、役員の方がどういう関係から不正事件を起こしたにいたしましても、はなはだ遺憾なことだ、かように考えております。  なお、アメリカから受領いたしました六百万ドルの金を三銀行に預けることにつきましては、当時三団体の代表の方々の御同意のもとに、また、御指摘の通り、委任状を島民の各位からそれぞれの帰属に従ってちょうだいをいたしまして、そして、どういう銀行にどういう割合で預けるかということも、すべて三団体側の意見の一致に従いまして、預金をしかも連名でいたしておるのでありまして、当時としては、この三団体だけでございましたから、やむを得ないと申しますか、私どもとしては、適切にやった、かように考えておるのでございます。  それから、なお、委任状の関係で、その後これを取り消して別個の団体を作って、加藤先生を代表として御委任をなさる、こういう御通知も確かにちょうだいして、私ども承知をしております。従って、この点は、銀行への預金の後でありましたから、私どもとしては、今後これが四団体になろうが五団体になろうが、私どものかれこれ申す筋でもございません。ただ、先ほど申しました通り、島民の方々の意見の一致をなるべくならば見て、その上でこの配分をいたしたい、こういう考えは私どもも根本的に持っておりますので、幾つになられましょうとも、それらの団体の間でぜひとも一つ円滑に話し合いを願いたいものだ、今日でもかように希望いたしております。  それから、委任状を書かなかった者もある、こういうことでありますが、これも、私どもその通りだと承知いたしております。しかし、それらの方々の分とはっきりしたわけではございませんが、そういう事実もございますものですから、銀行への預金にあたりましても、一億円だけは留保いたしまして、それだけは今日依然として日銀に預けてございます。これは、もちろん、配分がきまりませんから、はたしてそれが全部その委任をされなかった方々に行くとかどうとかいうことではございませんが、大体の見当でそれだけは留保しておいた、こう御了解をいただきたいと思うのでございます。  それから、代表者の方は、代表と申しますか、帰島連盟の方は福田先生に、それから土地委員会の方は楢橋先生に万事御依頼する、こういうことは私ども承知しております。従って、今後それぞれの島民の方々の所属の団体等はなるべくならばこれをはっきりしていただきたい、こう私どもも考えております。  そこで、さっき申しました通り、それらの代表の方々にもお集まりいただき、また、それらの間で、ぜひとも話し合いを願って、一日も早く円満に配分をしたいものだ、いつまでも延ばして私ども預かっておくのは決して本意ではございませんで、なるべく早くしたいものだ、こういうつもりでおるわけでございます。
  162. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 実は、私、相当にこまかい資料をもってこまかくお聞きしようと思っておりましたけれども、大臣も委員長も大体四時までという話だそうですから、四時までには私の予定はちょっと終わらない予定なんですけれども、端折りまして、要点だけを中心として、できるだけ四時ころに終わることにします。  そこで、問題は、いろいろ言えば文句はあるのです。ありますが、要点は、現在の引揚島民の窮状にかんがみて、この金がいつどのようにして配分されるかということが一番中心なんです。ところが、それについては、今日までの経過について一通りあなた方に毛頭に入れておいていただかなければならぬことは、これは外務大臣もちょっと聞いておいていただきたいのですが、昨年の暮れ島長に一人について二万円ずつの貸し出しがなされた。これは銀行利子で天引なんです。そうしますと、一方からいくと、自分に配分される金がその銀行に預けられておって、そうして、今度その銀行からは預金利子の倍以上の利子で自分は金を借りる、こういう不自然というか不合理というか、これではどうしても納得がいかないのです。しかも、こういうことが延び延びになりますと、今度は利子に利子が重なって、もし一年も一年半もたったら、もらうときには、何のことはない、利子に食われてしまう。銀行に利子をかせがせるためにこの定期預金がなされておる、こういうことになってしまうと言われても文句の言いようがないと思うのです。だから、私どもは、そういう点から見ても、この金が至急に配分される方法が講じられなければならないと思うのです。ついては、従来の三団体、ことに土地委員会のごときは、この金は土地に出されたものである、補償ではないが土地に出されたものであると言っている。なるほど、アメリカ国会の速記録の写しを見れば、土地が一つの標準になっておることは事実です。しかし、全体の評価をする場合に、土地以外に標準になるものがないから土地が標準にされたというにすぎなくて、先ほど外務大臣もおっしゃったように、土地の移譲なんということは全然問題になっていない。おっしゃる通り、その通りなんです。であればこそ、土地が日本国民のものであればこそ、これに潜在主権というものがあるのでありますから、従って、その土地委員会の諸君が土地を主眼にしようということは、これは当を得ないものと思いますが、問題は、私は交換公文が一番具体的なよるべき根拠でないかと思うのです。交換公文は外務大臣とライシャワー大使との間に交換された正式の外交文書である。この外交文書に記載されておる内容こそが配分の根拠になる。ただ、当局として実際お困りになるのは、実際に今どういう状態になっておるかということの厳密な事実が判明しにくいというところにお困りになっていらっしゃるところがあると思うのです。土地による配分なんということは、交換公文によればそれでいいわけなんですが、そういう点でお困りだと思います。ただ、住民の側からいけば、強制疎開を命ぜられた昭和十九年の立ちのき当時を基準として配分を受けるという考え方でおるのですが、アメリカとの文書関係からいけば、講和条約発効後、こういうことになっておりまして、講和条約発効後では現実の情勢に適合しないと思うのです。もし講和条約発効後のものであるとするならば、その前の十九年からその期間に至る間の生活の補償は一体どうするか。日本政府は、従来小笠原の島民に対しては、何もと言うては語弊があるかもわからぬけれども、ほとんど何もやっておられないのです。たまたま一億四千万円の金を出された。しかも、これはアメリカからもらったら返すんだというので、そして、今度現に差し引いてしまった。銀行に預けるのでも、差し引いて預けてしまってある。小笠原島民としては強制命令によって引き揚げた。しかも、そのとき、壮年の人々は、強制徴発されて軍事行動に従って、約八百名の島民はそのまま戦線に使役されておる。その中の何割というものはそのために死んでおる。そういうことに対して、死んだ人に対してはどういう状態で政府としては慰謝されておるか知りませんけれども、とにかく、島民に対しては、強制疎開を命令して、それっぱなしなんです。他の地域、たとえば奄美大島の場合でも、十億円出されている。これは暴風の問題もあったけれども、十万円という見舞金が出されておる。沖縄についても、とにかくなし得ることは政府としてもなしておられる。ところが、小笠原だけはひとりほとんど何にもやられていない。ただ、東京都から何千万円かの見舞金があった。これは東京都の住民ですから、東京都が何千万円かの見舞金を出しておる。政府としては何にもやっていない。だから、このアメリカの六百万ドルというものは、アメリカ側では講和条約発効後ということに言うておるけれども、私は、日本政府はこの交換公文の建前から言っても当然強制疎開を命ぜられたときの状態を基準として配分されるべきでないか、こう思いますが、この点は、長官、どういうようにお考えでしょうか。
  163. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 最初に割当の問題でございますが、土地だけに割り当てられるかということでございます。お話のございましたように、小笠原の関係者の中にはそういう主張を持っておる方々もございます。その根拠としておられますのは、アメリカで法律が通ります際に、アメリカ国会で論議されましたうちにそういう配分が一部出ております。それを引例しておられるわけであります。しかしながら、日本政府アメリカとの間の取りきめ、これは先ほどお話ございました交換公文だけによってお互いに約束づけられておるわけでございます。この交換公文によりますと、講和条約発効後、将来にわたって旧住民が帰島できないためにこうむっておるいろいろな損害に対する支払いである、こういうふうに言っておるわけでありまして、その意味におきまして、私ども、土地だけに支払われるものではない、そういうものではないというふうに考えております。ただ、しかし、すべて一律平等に支払うのか。一方にまたそういう御意見もございますけれども、しかし、帰島できないことによってこうむっておる損害というのは、各人各様でございまして、いろいろな状態があるわけでございます。私どもといたしましては、そういう状態をよく調べまして、公平に配分ができますように考えておるわけでございます。  それから、第二の問題は、今の交換公文には講和条約発効後の損失というふうに書いてあるが、配分については基準時点をどういうところで押えるかというお話でございました。御説の通り、交換公文にはそういう表現になっておりますけれども、しかし、これは本来、帰島できませんためにこうむっておる損害に対して受け取った金でございます。やはり昭和十九年に島におりました当時の状態から出発していくということ以外にやりようがないじゃないか、というふうに考えております。そういう考えで現在の作業を進めております。  それから、もう一つは、政府としてはほとんど何にもやってないじゃないかということでございます。昭和二十九年に、少額でございますけれども、千七百万円程度のものを見舞金として出しております。三十年、三十一年に、ただいまお話しございましたような一億四千万円程度のものを、立てかえ見舞金として、アメリカがもしも将来こういった支払いをしますならば、その際には返していただく、しかし、当時の状況が非常にお困りであるから、あらかじめ政府が見舞金を立てかえようという意味で、一応一億四千万円出したわけでございます。これを沖縄の場合あるいはその他の地域の場合に比べまして、甲乙はないかというお尋ねでございますけれども、沖縄の場合は、御承知のように、アメリカの施政下に住民が置かれておるわけでございまして、小笠原の場合は、すべてこちらに引き揚げてきておられまして、もう内地の住民そのまま、一切すべての点で内地住民と同様な処遇を受けておるわけでございます。条件が違いますので、簡単に比較いたすわけにも参らぬかと思います。政府といたしましては、その程度の措置を従来講じておるということでございます。
  164. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 時間があまりなくなったので悪いが、問題は、今申しました通り、これをいかなる基準によって配分するかということに帰すると思います。しかし、それには、今日までの経過等についても十分勘案されなければなりませんし、また、今局長が言われたように、自分勝手な主張だけか通るというものではございません。それがために交換公文という一つの基準があるわけですから。私どもも、公平に見て、この交換公文がその基準でなければならぬし、政府は、むしろ、あまりに各団体間の意見が疎隔して合わなければ、その基準に基づいて政府の原案というものを示されて、各団体の代表の同意を求めるようにされてはどうか。もちろんこれは内意ですね。正式には政府が配分権を持っておるのですから。しかし、あらかじめ内意を聞かれるということの方が順序じゃないか、その方が早く行くんじゃないか。  それから、今、十九年の引揚時を基準とすると言われましたが、このときに、沖縄の籍のある人が一部、それから朝鮮の籍のある人が若干あったわけなんです。これらの人々は、その後、御承知のように、沖縄の人は沖縄に引き揚げ、朝鮮の人は朝鮮に引き揚げてもう日本国籍がなくなったわけです。こういう人は、その後のすべての見舞金等の配分にはあずかっていないわけです。こういう人は一体どうするのか、従来どのように扱われてきたのか、これも一つ参考までに聞かしておいてもらいたいと思のです。
  165. 小平久雄

    ○小平政府委員 今後配分をどう進めていくかという点につきましては、今日の段階に及びましては、大体ただいま先生がお示しのような方法をとって参りたいと、私どもも実は考えております。ただ、重ねて申しますが、私どもとしましては、この種の配分につきましては、とかくあとになりましていろいろまた不平もございましょうし、不満も一部からはございましょうししますので、関係の団体を通じて、少なくとも島民の皆さんの御納得をいただいたところでやりたい、こう実は考えておる次第でございます。  なお、後段につきましては局長から答弁をいたします。
  166. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 一つは、沖縄に帰った人でございますが、これは日本の国籍を持っておるわけでございますから、当然今度の対象に入れるべきものというふうに考えております。それから、朝鮮の方に籍が移った人は、今回の公文の中に書いてございますように、関係日本国民によるいろいろな損害というふうに交換公文ではっきりその点うたわれております。非常にお気の毒な方がごく少数できるかと思うのでございますが、ただいまではさように考えております。
  167. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 もう少し立ち入ってお伺いしたいことがありまするから、あさって若干の時間をさいてもらって継続したいと思いますから、きょうはこれでやめておきます。
  168. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会