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1962-04-03 第40回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月三日(火曜日)    午後三時二十一分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       安藤  覺君    愛知 揆一君       池田 清志君    宇都宮徳馬君       宇野 宗佑君    齋藤 邦吉君       椎熊 三郎君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    竹山祐太郎君       床次 徳二君    井手 以誠君       稻村 隆一君    黒田 寿男君       辻原 弘市君    戸叶 里子君       帆足  計君    細迫 兼光君       森島 守人君    井堀 繁男君       田中幾三郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君     ————————————— 四月二日  委員井村重雄君及び藤井勝志辞任につき、そ  の補欠として宇都宮徳馬君及び竹山祐太郎君が  議長の指名委員に選任された。 同月三日  委員黒田寿男君及び井堀繁男辞任につき、そ  の補欠として辻原弘市君及び田中幾三郎君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 四月二日  ドミニカ国ネイバ地区引揚者の更生に関する請  願(成田知巳紹介)(第三一九〇号)  ドミニカ国移民引揚者の援護に関する請願(池  田清志紹介)(第三五四四号)  核兵器の実験禁止等に関する請願川俣清音君  紹介)(第三五四五号)  同外三件(中嶋英夫紹介)(第三五四六号)  完全軍縮日米安全保障条約廃棄及び日韓会談  打切り等に関する請願外三件(東海林稔君紹  介)(第三五四七号) は本委員会に付託された。      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  国会正常化のおりから、二十九日のような混乱の事態は遺憾に思います。  質問通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私はきょうタイ特別円の問題について質問するのでありますが、前回委員会通産省から答弁をいただくようにお願いしておった点があるわけです。この点の留保がございますので、最初にこの問題を片づけてからタイ特別円問題に入りたいと思いますが、通産省伊藤次長来ているはずですから、そこから御答弁を願います。
  4. 森下國雄

    森下委員長 まだ見えておりません。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうして来ていないのです。
  6. 森下國雄

    森下委員長 今委員長が注意してやりました。呼びにやりますから、お先に……
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 通産省は当然きょうは来ていなくちゃならないはずなんだけれども、来ていないということならば私はほかへ入ってもいいのですが、やはり、委員長がお先におやり下さいというようなそういうことでなくて、いつになったら参りますからどういうようにして下さいということを委員長としてお話しいただきたい。何かなれ合いみたいなそういう形では困ります。
  8. 森下國雄

    森下委員長 申し上げます。ただいまこちらから連絡をいたしまして、すぐに通産省から見えられるそうでございます。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、伊藤次長が見えましてからその点について入って参りたいと思いますが、タイ特別円問題に戻ります。  タイ特別円の問題に入るについて、タイ国の状態について一、二簡単な御質問をしたいと思うのですが、タイ国は、終戦の直後、すなわち昭和二十年の八月十六日に、昭和十七年に行ないました対米英宣戦布告に対する無効宣言を行なっております。宣戦布告無効宣言などという例は私はあまり聞いたことがないのでありますが、宣戦布告無効宣言と、この無効宣言によってその法的効力はどのようなことになるのか、宣戦布告にさかのぼって効力を持つものであるかどうか。この点は条約関係でございますので、まず条約局長からこの点についての御意見を伺いたいと思います。
  10. 中川融

    中川政府委員 御指摘になりました通りタイ終戦直後宣戦の無効の宣言をしたのでございます。これは、こういう例があるかどうか、あまり無効宣言をするような例はないと思います。従いまして、この無効宣言というものが連合国によってどう取り入れられたかということになるわけでございますが、これは連合国は必ずしもタイ宣戦布告無効宣言をそのまま承諾したのではないのでございまして、結局、米国はいろいろのいきさつからタイ敵国扱いをしなかったのでございますが、イギリスタイを依然として敵国扱いにしたのでございます。その後タイイギリスとの間には終戦協定というものができたのであります。従って、タイ無効宣言というのは、国際法上必ずしも有効なものと連合国で認められたわけではないのでございます。
  11. 森下國雄

    森下委員長 ただいま通産省から伊藤説明員が参りました。
  12. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、説明員はもうちょっと待たして下さい。私質問に入ったのですから……。  今、中川条約局長から、宣戦布告に対する無効宣言は、そのような例は先例はない、あまりないようですがというやや不明確な御答弁ですが、そういう先例は別にございますか、どうでございます。
  13. 中川融

    中川政府委員 私はタイ無効宣言以外に特に承知しておりません。
  14. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、ただいま御答弁関係で幾らかはっきりなったのですが、アメリカ宣戦布告無効宣言に対して承認通告を行なっている。この承認通告を行なったというような先例はございますかどうですか。その他の国のそのような例を伺いたいと思います。
  15. 中川融

    中川政府委員 無効宣言自体前例をほかに承知しておらないのでございます。従って、無効宣言を有効なりと承認した前例も、これ以外にないと承知しております。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、連合国では、アメリカ一国を除いてその他のすべての連合国、この国々はタイ国敵国として扱ったということになると思いますが、いかがでございますか。
  17. 中川融

    中川政府委員 いわゆる対日宣戦に参加いたしました多くの国がタイをどういうふうに扱ったかということは、実は、はっきりした証拠はないのでございます。しかしながら、これは終戦後GHQから日本に来ました指令も数回あるのでございますが、いろいろ世界の各国の地位を分類いたしまして、連合国と、それから連合国と戦争したつまり旧敵国、それから中立国、第四のグループといたしまして、このいずれにも入らないスペシャルステータスの国というものが実はあるのでございまして、タイは一貫して、スペシャルステータス、第四のグループに入れられてきております。従って、連合国としては必ずしも敵国として扱ったかどうかということははっきりしないのでございまして、むしろ、敵国とも、あるいは連合国とも、あるいは中立国ともつかない、あるスペシャル地位を持った国、こういうことが大体連合国全体としての取り扱いであると考えます。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点についてもっといろいろ伺いたい点もありますが、それは別な機会にいたしまして、ただ一点だけ伺いたいのは、タイ国宣戦布告無効宣言、これによって、——日タイ間の同盟関係同盟条約によって締結されているわけですが、無効宣言が行なわれたことによって、そのときに同盟条約の締結にさかのぼって効力を失うものであるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  19. 中川融

    中川政府委員 タイのやりました宣戦無効通告宣言なるものは、日本に対しては直接の影響はないわけでございまして、日本はその当時すでに占領下にあったのでありまして、日本に対する関係におきましては、これはあらゆることが連合国最高司令部を通じて伝達されたわけであります。ゆえに、国際関係においては、日本だけで行動する、あるいは判断する地位になかったのであります。従って、日本に対する関係といたしましては、結局、現在に至るまで、その後に行なわれましたタイの日・タイ同盟を終止する通告、これで日・タイ同盟関係はそのとき以後終止した、かように考えておるのでございます。
  20. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題にどんどん入って参りますが、伊藤次長が参っておりますので、ガリオアの問題に戻りたいと思います。  前回委員会で私は質問をいたしまして、伊藤次長答弁を留保されました。そのあと資料あるいは答弁によってそれを報告をしたいという御希望があったので、この機会に御答弁を願いたいと思うのでありますが、その要旨は、ガリオア基礎になりました援助物資台帳である遺留資料と称するもの、この遺留資料と称するものは大体どれくらいの冊数があったのか。私の調べた限りにおいては、十五万冊の遺留資料と称するものがあった、これがガリオア援助台帳になったというようにわれわれは調べておりますけれども、この点については伊藤次長はいかなるお調べをされましたか、この点を伺いたいと思います。
  21. 伊藤三郎

    伊藤説明員 おくれて参りましたことをおわび申し上げます。  遺留資料の数でございますが、輸入関係ファイルが約七千冊でございます。輸出関係ファイルが十一万二千冊、合計十一万九千冊でございます。輸入関係が七千、輸出関係が十一万二千ということで、輸入関係金額割合に非常に少ないのでありますが、これは、輸入関係一つファイル相当たくさんの物資が入っております。たとえば、一つ指令で船が十ぱい分も二十ぱい分も一緒になったのがございますが、輸出関係についてはすべて一件ごとに一つファイルになっております。また、輸出については一件当たりの金額が小さいというようなことから、輸入関係輸出関係ファイルの数が非常に食い違いが出ておるというふうに考えております。
  22. 岡田春夫

    岡田(春)委員 前回私が御質問いたしましたときには十五万冊と申し上げたのでありますが、十五万冊などと言うと非常に多い数字のように一般に印象を与えまして、何か私が唐突なことを言ったような印象を与えておりますけれども、ただいま伊藤次長答弁によっても明らかになったように、十二万冊というものが輸出輸入関係である、こういう点が明らかになって参りました。ところが、遺留資料の中には、輸入輸出関係だけではなくて、銀行通帳その他もあるはずでありますが、その他の種類についてもお答えをいただきたいと思います。
  23. 伊藤三郎

    伊藤説明員 帳簿類が千七百冊ばかりでございます。
  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、遺留資料と称するものは、全体合わせまして、先ほどの十一万数千並びに帳簿類が千数百冊、合わせて約十二万、このような遺留資料があったと考えて間違いございませんか。
  25. 伊藤三郎

    伊藤説明員 ただいまのお尋ねのように、ファイル帳簿類合わせまして約十二万程度のものが遺留資料として保管いたしてあります。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、十二万の遺留資料というものがガリオア援助物資台帳になったと思うのでございますが、この遺留資料がなくて援助物資の算出が完全にできるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  27. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の三月以前につきましては、援助物資輸入商業物資輸入とは日本側には明確な公式の指示がございませんので、当時日本側としては援助商業関係がわからなかったわけでございます。従いまして、今回、二十四年三月以前の援助物資の算定につきましては、遺留資料によりまして援助物資であるかいなかということを検討したわけであります。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、今伊藤次長答弁で明らかな通りに、アメリカが残して参りました遺留資料十二万冊によって初めて、ガリオア援助物資というものが日本債務対象になるかどうか、債務と心得るというものの対象になるかどうかという基礎になってきたわけです。そこで、私が十五万冊と申し上げたものは、これはいいかげんな話ではなくて、昭和三十六年、昨年の三月二十四日、自民党政策調査会対外経済協力特別委員会の席において、あなたの通産省伊藤次長の下にいた、現在はいませんけれども、平岡賠償特需室長がそのように発表したものです。その席上には、ここにおられる野田委員もおられたはずであります。野田委員は御存じのはずです。ここに速記録が残っておりますが、そのとき平岡室長がどのように自民党に対して言ったかというと、「司令部が置いて参りましたいろいろな帳簿その他も全部ございます。帳面づらでいきますと全部で十五万冊くらいになりますか、文字通り万巻では及ばない書類、」 その次が重要です。「これを縦横に駆使しないと結論は出てこないという性質のものであります。」、こう言っております。それから、そのあとに、ただいま伊藤次長が言いましたように、輸出関係輸入関係銀行通帳その他を話しておりまして、最後に、「これを全部お互いにつなげていかないとこれは一体どうなったということがわからない性質のものです。どの程度能力でやるかということになりますと、これは簡単に人を集めてやれるものではない。私は自分でスポットチェックをすぐやってみましても、これはとてもやっていけない。」、少し行を置いて、一応スポットしてもとても万巻のものは能力的に読めませんので、どの程度の範囲で読むかということで調べてみました」云々となっておる。ですから、十二万冊の遺留資料がある。この十二万冊の遺留資料というものを全部精細に調べて、その上でガリオア援助物資債務総額というものをきめたものではない。これは平岡室長がはっきり、言っておる。スポット調査で一部を調べてもとても私の能力ではやれません、ですから、ごく一部分を拾い抜いてやったにすぎないのでございます。このように答えておる。それでは、政府出しガリオア援助物資の十七億数千万ドルというようなこれらの資料というものは、アメリカから出された台帳遺留資料さえ正確に照合したものではない、これは正確なものとは言えない、このように私は思うが、伊藤さんはどうお考えになるか。
  29. 伊藤三郎

    伊藤説明員 輸入関係のうち援助関係で使用しましたファイルは三百四十ばかりでございます。それにつきまして詳細に点検をしたわけでございますが、作業のやり方としましては、そのファイルの中にありますレシート受領証数量集計したわけでございます。レシート日本側から差し出しました正本が入っておるわけでございますので、数量についてはそのレシートを使ったわけでございます。  スポットチェック云々ということを平岡室長外交調査会で話したそうでありますが、私はその速記を読んでおりません。どういうふうに申し上げたかわかりませんが、スポット・チェクッと申しました意味は、おそらく、私が考えますのに、通産省としましては、何も今回初めて作業をしたわけでございませんで、遺留資料を二十九年ごろに引き継ぎまして、その後相当一時は人手もかけましていろいろ集計整理をいたしております。そういう間におきまして、いろいろカードも作りまして集計をしておるわけでございます。そういうカードの個々につきまして、全部をチェックしたというわけではなくて、相当部分について平岡自身スポットチェックしたという意味であろうと思うのであります。  通産省としてましては、関係ファイル一つ一つ点検をいたしまして、そのうちの受領証数量集計したわけでございます。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今のお話では、全部を調査したわけではなくて、一部分資料調査した、こういうお話です。その前にも調査しておりました、こういう御答弁です。それは私知っております。平岡さんが就任したのは、この記録によると、昭和三十五年から六年にかけて、去年の暮れまでしかおりません。昭和二十九年に調査していることは、二十九年にはこうでしょう、通産省の中で六十人の人を使って二年間調査したのでしょう。この二年間調査した結果、帳簿整理で終わっているのじゃありませんか。どうですか。
  31. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十九年当時通産省甲作業をいたしまして、単に帳簿整理をしただけではなくて、そういうファイルから援助物資考えられるものをいろいろカードに転記したり、あるいは必要なものを帳簿類のようなものも作って整理をいたしております。そういうようないろいろな資料を使いましたし、また、平岡君直接担当しまして、さらにもとに戻りまして、いろいろなファイルもあらためて検討した、いよいよ対米交渉が始まるというような時期になりましたので、従来作られました資料についてもさらに念には念を入れて十分な点検をしたというふうに承知いたしております。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 伊藤さん、再三、承知しておりますというお話ですが、伊藤さん自身は見たことはないのでしょう。実際調査にタッチしたことがありますか。ないでしょう。どうです。
  33. 伊藤三郎

    伊藤説明員 私自身ファイルも見ておりますが、そういう一々の検査はもちろん私はいたしておりません。全体監督をしてきたわけでございます。
  34. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたのお話では、全体監督程度で、十二万冊をどう調べたかというのは、これは国民はきわめて疑惑を持っている。そればかりではなくて、平岡特需室長はこう言っている。「これを管理するのに、」 管理というのは十二万冊ですよ。あなたの方では十二万冊、私は十五万冊だ。「管理するのに、アメリカの兵隊さんあるいはシビリアンが五、六人、それに日銀為替局から三十人の職員が来て、合計三十五、六人が来て管理しておったそうでございます。これでおわかりになると思いますが、この十何万冊の書類は、当時は、三十五、六人の職員が管理しておったという性質のものでございます。」、どうですか、皆さん常識考えてわかりますか。三十五、六人で十二万冊の帳簿を管理しておった、こんなことが事実上できるものですか。帳簿などとはいっても、それはどんなところにどういう数字のものであるか、おそらくこのような帳簿ではずさんきわまりない帳簿であろうと思う。三十人で十万冊というのであったら、一人で何千冊の割合でやるか。これではこの遺留資料それ自体にも信憑性がきわめてないと言わざるを得ない。この点については伊藤次長はどのようにお考えになるか。
  35. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十八年当時まで司令部職員日銀職員がそこで仕事をしておったということでございますが、これは、そういう遺留資料を管理しておったというだけではなくて、輸出入関係のいろいろな仕事をやっておったわけでございます。輸入につきましては、いろいろの物資の受け払い、あるいは帳づけというようなことがありますし、輸出につきましては、当時一件ずつ司令部の許可を必要としておりましたし、今申しましたように相当件数輸出があったわけであります。そういう仕事をやっておったわけであります。十二万冊と申されますけれども、そのうちの数としては輸出が非常に多いのでございまして、輸入関係、特に援助物資関係としては、ファイルは、先ほども申しましたように、約三百数十という程度のものになるわけであります。
  36. 岡田春夫

    岡田(春)委員 三百数十であってもですよ、ファイルとして三百数十でしょう。三十人の人が三百数十というファイルだ。実際に調べるのはもっとたくさんの資料調べなければならない。われわれは、そういう点から言って、あなたの方のお出しになった台帳信憑性を感じない。それだけではなくて、十二万冊という膨大な資料、それに基づいて作られた資料というものが、先ほども大体お認めになったように、完全にこれが不可分の形で、平岡氏の言うように、全部かかり合いをつけて調べなければならない。かかり合いをつけて十二万冊を調べるということは、人わざでできるものではない。そうなれば、あなたの方でお出しになった援助物資数字というものの信憑性というものはわれわれは信頼できない、このように言わざるを得ないじゃありませんか。十二万冊もあるというその資料を、あなたこの間言いましたね、通産省倉庫の中にあるのだとか言いましたね。倉庫の中にはごみ一ぱいでなかなか入るのに大へんだということも言いましたね。これほど大へんな、中に入るのにも大へん資料を、二十九年から二年間、おととしと去年の二年間、たった四年間でお調べになったというのは、通産省はずいぶん有能な人ばかりおらるるわけらしいんだが、そんなことは神様以外にはできないことだ。われわれは、従って、ガリオアの大基礎になっている援助物資数字基礎というものはきわめて不正確であると言わざるを得ないと思うが、あなたはその点についてどのような御感想をお持ちになりますか。
  37. 伊藤三郎

    伊藤説明員 先ほど来申しましたように、十二万冊と言われますけれども、そのうちの十一万二千が輸出関係でありまして、輸入は七千件であります。また、援助関係は三百五十ばかりということでございまして、輸出関係については別に今回は調べておりません。  それから、もう一つ平岡室長は不可分であるという趣旨を言ったそうでありますが、常識的に考えましても、十二万冊の第一冊と十二万冊目が関連があるということはちょっと想像できないのでありまして、不可分と申しましたのは、おそらくその一部分であろうと思います。たとえば、司令部整理の仕方としましてIMナンバーというような番号で分類をしておりますが、そのファイルが多少ほかのファイルにも関連があるということで関連づける必要があるという説明をしたのだろうと思います。全部関連があるというようなことは説明したとは思いませんし、平岡自身もそういうことは申しておらぬと信じます。
  38. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたがいかに信じても、自民党で言った記録は残っておる。記録には明らかに出ておるのだから、自民党諸君がだまされたことになる。あなた自身はそう信じなくたって、信じないのは自由だ。イワシの頭も信心次第というから、信ずるか信じないかの問題は別です。あなたのおっしゃるように、それは信じない信ずると言っても、七千冊から八千冊の輸入関係資料があり、先ほどあなたの答弁されたように、一千数百冊の銀行通帳その他があり、それを全部照合して、あなたのおっしゃる通りであっても調べなければならない。そういうことが正確に出せるとは、神わざでない限りはわれわれは信用できない。台帳というものがはっきりしないでおいて、あなたの方は援助物資数量が出ましたということにはならない。こういうことを私が言うと、前に池田総理は、アメリカからもらった数量なんかたくさん調べると多くなるから困るのだというようなことを言われたけれども、それは多くなるか少なくなるかの問題ではない。問題は正確であるかどうかが問題なんです。国民にとってはこれが正確であるか正確でないかということをわれわれは聞いておる。この点がほんとうに信憑性のあるものかどうかということについて、もう一度あなたの御意見を伺っておきたい。あなたが信じられないとおっしゃるのならば、自民党に話した平岡君の話が間違っておったということになるのだから、自民党諸君もだまされたということになる。そういうことになるのですね、それでよろしゅうございますかと、こういうことになるわけです。
  39. 伊藤三郎

    伊藤説明員 通産省作業いたしましたのは、一件ごとに受領した物資について援助物資と認定されるものを集計したのでありまして、通産省出しました二十四年三月以前の八億四千七百万ドルを含めました十七億九千五百万ドルという数字は、私は正しいものであると信じております。
  40. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まあガリオアの問題ばかりやっておりますと、タイ特別円に入れませんから、私はこの点は留保いたしておきます。  続いて、もとに戻りますが、伊藤さんがおそく来るものだから、話がどうも腰を折られた感じで非常にまずいのですが、話を進める順序として小坂さんに伺いましょう。特別円関係の対外債務はこれで終わったというように解釈してよろしゅうございますか。
  41. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これで特別円関係のものは終わった、かように解していただきたいと思います。
  42. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは済んだらしいのですが、国会にかけてないけれども、イタリアの特別円勘定はどうなりましたか。これの経過、いつどのようにされたか、そして国会になぜおかけにならなかったのか、この点の御説明を願いたいと思います。
  43. 中川融

    中川政府委員 今から三年ほど前でございますが、イタリアと日本との間の交渉が解決いたしまして、名目価格では大体四千万円ほどの残額がイタリアの中央為替局にあったのでございますが、日本は、これに対しまして、米ドルでありますとかイタリア・リラで払うものとかいろいろのものがございまして、結局イタリア・リラあるいは米ドルによりまして換算いたしまして四億円ほどになるものを払いまして、この問題は最終的に解決いたしました。  なお、お答えを忘れましたが、どうして国会に出さなかったという点は、これは、要するに、当該年度だけで予算の範囲内で払えるものであったということで、従来からやっております慣例に従いまして、国会の御承認は毎年の予算ですでに御承認を得ておるという考えで、国会に協定をお出ししないで解決いたしました。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、当該年度で支払うにしても、国の債務というものが規定されるならば当然承認が要る。これはガリオアの問題でも明らかではございませんか。憲法上の規定から言っても、国の債務に対しては国会の承認を得なければならない。これはなぜおとりにならなかったか。この点について、今のような御答弁ではわれわれは満足するわけにはいきませんので、これは小坂さんお答え下さい。政治問題です。
  45. 中川融

    中川政府委員 私のお答えが実は不正確でございましたので、補足させていただきますが、これは日本の旧正金のイタリア為替局に対する債務であったわけでございます。従って、日本政府は表に出ることなく、これは旧正金清算人とイタリア為替局との間で解決いたしたのでございます。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 旧正金という事実を明らかにされたのはけっこうですよ。あとで私どももやりますから……。それじゃ、正金の債務ならば正金が払うのですね。国がその点について正金に対して負債を負っているというのは、正金と日本政府との関係ですから、これは国内事項です。国際的には、正金が負債を負っておるなら正金自体が払うべきことであって、正金の負債ならば何も国のお金を使う必要はないじゃありませんか。おかしいじゃありませんか。
  47. 中川融

    中川政府委員 これは正金がイタリア為替局に払ったのでございます。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、正金とイタリア為替局との協定で、国の協定ではないわけでございますね。
  49. 中川融

    中川政府委員 これは、発生いたしました一番根源になります協定というものが、政府が表に出ない協定でございまして、これはそのときの正金銀行とイタリア為替局とが結んだ協定に基づきましてこの勘定はできておる。そういうことで、これは正金対イタリア為替局の債権債務関係ということがはっきりしておるわけでございます。
  50. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、中川さん、伺いますが、先ほどあなたが一般会計の中で払ったと言われたのは、お取り消しになるわけですね。間違いでしょう。
  51. 中川融

    中川政府委員 間違いでございます。訂正いたします。
  52. 岡田春夫

    岡田(春)委員 お間違いで訂正になるなら、私は責めようとは思いません。  それでは、もう一つ伺いますが、昭和十六年の三月七日に締結されている協定、昭和十六年六月十九日に締結されている協定、これは、あなたのお話通り横浜正金の東京支店の勘定に華北特別円の勘定が設定されている。華中特別円の勘定が設定されている。この二つの勘定の残高はあるはずですが、これはどうなっていますか。
  53. 中川融

    中川政府委員 この中国関係の問題は全部そのままの状態になっておるのでございます。これはその相手銀行自体が実は雲散霧消してしまったのであります。実はそのままの状態になっております。
  54. 岡田春夫

    岡田(春)委員 雲散霧消いたしましたとしても、債務には違いないですね。タイ特別円あと質問をして参りますが、政府間の協定その他というものは破棄になるんでしょう。無効になるんでしょう。債務というものは横浜正金に残高として債務が残っている。タイ特別円と同じじゃありませんか。タイ特別円と同じような華北特別円、華中特別円債務というものがあるのだ。これは、小坂さん、さっき特別円の対外債務はもうございませんとしゃあしゃあ言いながら、今になってこれはどういうように答えますか。あなたはただ中川さんにオウム返しに聞いて答えたって、これは正確じゃありませんよ。もっとあなたしっかり調べて、あなた自身責任があるから、あなた自身調べてお答え下さい。これはどうなんです。債務になるのですか、債務にならないのですか。
  55. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 条約局長からお答えしましたように、債権者自身がなくなった、こういう関係におきまして、これは別個の関係だ、こう思っております。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 債権者自身がなくなったという御答弁であなたよろしいですか。それならばそれでも、そういう点はタイ特別円関係でまた伺って参りますが、そういう答弁でよろしいなら、それであると、そういう点をはっきりしていただきたい。
  57. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 華北銀行というものはなくなっておる、そういう意味において相手方は消滅しておる、これはタイ特別円とは違う、こういうことを考えております。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、伺いますが、横浜正金に勘定残高はございますか。どうです、答弁しなさい。事実問題ですよ。勘定残高はあるでしょう。
  59. 中川融

    中川政府委員 この点は、実は債権者がなくなってしまいましたので、現実の債権債務問題として残しておりません。従って、これはどうなっているか、実は外務省では直接調べておらないわけでございます。主管官庁は大蔵省に相なっております。
  60. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、外務省がわからないそうだから、大蔵省答えて下さい。勘定残高はないということはないはずなんです、勘定を設定したんだから。勘定に基づいてゼロになっているということなら別ですよ。勘定それ自体がなくなったということにはならない。大蔵省の宮川さん、来ているならはっきり答えなさい。
  61. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 勘定残高は残っておると思います。
  62. 岡田春夫

    岡田(春)委員 残っているのなら、残高はどうです。
  63. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 ただいま手元に数字がございません。
  64. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、宮川さん、いつお答えできるのですか。われわれのきょうの状態を知っているでしょう。来月になって答えるなんて言われても困るのですよ。今すぐわかりますね。すぐ調べてお答え下さい。前の理財局長が言っているんだから。
  65. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 直ちに調べます。
  66. 岡田春夫

    岡田(春)委員 中川さん、小坂さん、よく覚えておいて下さいよ。勘定残高はなくなったとかあるとか、相手がなくなったとかなんとか言っていますけれども、終戦直後において二つの特別円、華北、華中特別円に関する協定第二条によって金約款の規定がある。この金約款に基づいて、終戦時においてイヤマークされている金の現送が中国に対して終戦直後に行なわれている。この金の現送が行なわれているということは、終戦時における勘定残高が先ほど答弁のように依然としてあり、あなたの方は銀行はなくなったのだからと言うけれども、終戦直後において、金の現送は一体どこへ送ったのですか。銀行がなくなったからどこかへ持っていってまいたのですか。金の現送分はどこへ持っていったか。外務大臣、あなたはさっき言ったじゃないですか。
  67. 中川融

    中川政府委員 金を送りましたとすれば、それは間違いない、ほんとうであろうと思います。私は今存じませんが、送りましたとすれば、それは日本銀行に中華民国政府の名義でイヤマークされた金があり、それを司令部指令によりまして中国へ送ったということであろうと思います。従って、これはどこへ送ったか、これは中華民国へ送ったのだと考えます。これは指令に基づいて送ったと考えております。
  68. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約局長、少の不謹慎じゃありませんか。あなた、銀行は中国の銀行ですよ。その金をアメリカに持っていったかなんて私は聞いておりませんよ。中国に持っていくのはあたりまえじゃありませんか。中国のどこへ持っていったのですかと私は聞いている。あなたは知らないなら知らないとお答えなさいよ。大蔵省、答弁したらいいじゃありませんか。何も外務省ばかりを攻撃するのが私の能じゃない。政府全体が責任を負うべき問題ですよ。大蔵省、はっきり答弁しなさいよ、宮川さん。先ほど言われたように、勘定残高があるというのなら、勘定残高の中で金との関係はどうなっておりますか。そのうちの金は、何月何日にいつどこの場所に対して現送を行ないましたか。これをはっきり答えて下さい。しかも——外務大臣、答弁したいのですか。立ったりすわったりして、ちょっとお待ちなさい。その相手の銀行がなくなったんだから払う必要はないと外務大臣言いましたね。勘定残高は払う必要はないと言っているが、銀行がなくなったのに金だけは持っていった。それを一体どこへ持っていったとわれわれ伺いたいじゃありませんか。その点をはっきり小坂さんお答え下さい。
  69. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 条約局長がお答えいたしましたように、この中国側にイヤマークされておりました純量六十万七千百五十四・七グラム、この金が昭和二十五年の三月二十八日付スキャッピン七一一九−Aによりまして、この年の三月三十一日、中華民国共和国政府代表に返還されたということになっております。共和国政府代表。スキャッピンでやったわけです。当時、御承知の通り占領下でございますので、われわれとしてはそれ以上知る由がない、こういうことでございます。
  70. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちょっと、あなた、お読みになったからいいのですが、中華民国共和国政府というのはどっちの政府ですか。そういう国の名前はあまり聞いたことはないのでございますが、何か第三の国がございますのでしょうか。
  71. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 英語ではリパブリックという言葉を使っております。リパブリック・オブ・チャイナ。ですから、共和国、こういう言葉を使っております。
  72. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは通訳されたわけですが、通訳はいいとして、あなたのお感じとして、どっちの政府ですか。北京政府ですか、蒋介石政府ですか、その共和国政府はどっちを言うのですか。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当時まだ北京政府というものはないわけであります。現在のいわゆる北京政府はないわけでありますから、中華民国といえば一つしかないわけであります。
  74. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、それに金の現送をやった。ところが、銀行にはやらないで政府にやったのですね。あなたのおっしゃるように、銀行はないわけですからね。金の現送分だけは政府にやったわけですか。それはちょっとおかしいじゃありませんか。どうです。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは、われわれとしては異議を言ったり、また深く知る由がないわけであります。スキャッピンによりまして、この今の七十万グラムばかりの金が昭和二十五年に送られた。しかし、それは中華民国政府代表に渡された、こういうことになっております。すなわち、総司令部指令によってそういうことをやった、こういうことであります。
  76. 岡田春夫

    岡田(春)委員 司令部指令、スキャッピンによってやったのだろうと思います。しかし、それはそうでしょうが、あなたも御存じでしょう。タイ特別円にしても、スキャッピンは金塊の未引渡し分〇・五トン並びにそれ以前の二十一トンですね、これはスキャッピンの指令に基づいて日本に一度戻された形でそれをタイ国に渡しているのですよ。中国の場合にしたって、日本に一度戻されて、その上で中国に渡したのでなければならないわけだ。そういう形をとっていなければならぬ。そして、現実にそれは昭和二十五年じゃないのです。もっと前のはずだ。そういう点もあるが、とにかく、新しい事実として、六十万トンという膨大な金、(「数字に弱いな」と呼ぶ者あり)——グラムとトンの間違いぐらい、そんなこと一々冷やかしちゃいけないよ。六十万グラムはトンに直すと何ぼになりますか。
  77. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 〇・六トンでございます。
  78. 岡田春夫

    岡田(春)委員 〇・六トンを運んだ。その点については、あなたは知りませんとおっしゃるが、あなた個人としては知らないでしょう。政府は知っているわけですよ。GHQが金の管理を解除し、その管理を解除にしたものを日本に戻して、それを中国に渡したのでなければならない。それを知りませんという話じゃ、これはちょっとはっきりしないわけですが、いかがでございますか。
  79. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは実は国会の資料に出ているのでありまして、昭和二十七年の第十三回通常国会の接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案、これの参考資料として出ているものでございます。  さっきちょっとお触れになりました例の〇・五トンの分でございますね。これは、三十八トンのものがタイにイヤマークされて、タイに送った。ところが、これは、初めどっかから日本に持ってきたのを、不当に窃取したのだ、こういうことで、またそれと思われる方面へ返還された。すなわち、タイは、受け取るべかりしものをそれだけ差し引かれたのだから、その〇・五トンに対しは請求権を留保する、これは当然の考え方だと思います。
  80. 岡田春夫

    岡田(春)委員 〇・五トンの点なんか私は聞いていないので、あとで詳しく聞きますから、先に言わない方がいいですよ。  それでは、今の点については、正金の勘定残高、金との関係その他は、大蔵省の答弁をおいておきましょう。そのまま進めます。  続いて参りますが、昭和二十年九月十一日並びに九月二十六日、二回にわたって行なったタイ国の日・タイ同盟条約及びこれに付帯するすべての条約及び協定の破棄通告は、それぞれの条約及び協定が条約締結のときにさかのぼって効力を失うものと解すべきかどうか、いわゆる破棄通告効力はどうなるか、条約局長に伺いたいと思います。
  81. 中川融

    中川政府委員 その通告の効果は、その日以後に発効されると考えるのでありまして、その初めにさかのぼるということは国際法の原則上あり得ないと考えます。
  82. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは中川さんに伺いますが、そうすると、破棄通告後これらの条約はすべて効力を失う、協定も効力を失う、その点は、こういう協定、こういう条約というものはどれどれの条約、協定であるというように日・タイ間において完全に合意されて、一致された上でこれらの協定は破棄されているわけですかどうですか。
  83. 中川融

    中川政府委員 先方からの通告の中にはっきり書いてあるものははっきりしておるのでございます。それ以外のものは、別にこの協定この協定と、先方と、これが廃棄された、これが失効したということをはっきり打ち合わせておるという事実はございません。従って、廃棄通告の中にありますような、付属するあらゆる協定ということがございますから、付属するものに実質上どれが入るだろうかということを判定してきめるわけでございます。
  84. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、これはこの前条約局長に御答弁を願っておりますけれども、もう一度念のため伺っておきますが、その付属する条約、協定等その他を伺ったときに、中川条約局長の三月十六日の答弁では、条約、協定で破棄されたものは全部で六つある、その六つの名前は、日本国・タイ国間の同盟条約並びにこれに基づく了解事項、特別円決済に関する日本国・タイ国両大蔵省間協定覚書、特別円の金への振替等に関する了解事項、それから特別円決済に関する日本銀行・タイ国大蔵省間協定並びにタイ国国庫特別円勘定に関するタイ国大蔵省・日本銀行及びタイ国銀行間協定というような六つの例をおあげになりましたね。私はこの点をなぜこまかく伺うかというと、池田さんの結ばれた三十七年協定といいますか、新しい協定の前文にはっきり書いてあることは、この特別円協定ですべての特別円に関する問題を解決するということですから、協定が幾つあって、協定がどうなったか、協定の内容はどうであるかということは、私非常に重要だと思うのです。ですから、関係協定あるいは条約というものはどういうものであって、それはどうなっているかということを詳しく最初にお答えをいただきたいというのが私の考え方です。ですから、三月十六日の答弁通りに、六つの協定、条約だけですべてでございますかということ。それから、もう一つ、私がそのときに伺っておいたのですが、南方占領地域及びタイ国間の交易決済協定というのもあったはずだが、これはどうなったか。これについては、中川さんは、私は知らないので調べてお答えしますということであった。そこで、あなたのお答えでは、あなたの答弁による六つと、私の質問一つ合計七つが関係条約、協定だということになるのかどうか、それ以外にあるのかどうか、こういう点を伺いたいわけです。
  85. 中川融

    中川政府委員 日・タイ間に戦争中に作られましたいろいろな協定があるわけでございます。しかし、これはほとんど現地で作ったものが多いのでございまして、その後十数年経ておりますので、全部の微細な協定に至るまで今資料があるかどうかという点は、実は必ずしもはっきり断定し得ないわけでございます。しかし、現在日・タイ間の戦争中の問題を解決するにあたって必要と思われるだけの資料は全部そろっておるのでございます。従いまして、先般私の申しました六つの協定、これは、はっきり先方の通告には名前は出ておらないものが多いのでございますが、その実体から見て、これはやはり同盟条約に付属する協定であると考えられるわけでございます。  なお、岡田委員の御指摘になりました第七の協定につきましても、これをその後調べてみましたところ、やはり南方物資特別円を使って買い入れることができるという協定でございますので、これもやはりこの同盟条約に付属する協定であると考えられるのでございます。従って、岡田さんの言われましたのもやはり失効しておると考えるのでございます。  なお、念のために申し上げますが、今回の協定で、「特別円問題に関連するすべての問題を解決し、」ということが前文に書いてございますが、これは、決して、三十年協定のときにさかのぼりまして、あのときに解決漏れのものを全部この際また見つけて解決したという趣旨で実は書いているのではないのでございまして、三十年協定の際にはっきりタイ特別円問題は解決されておるのであります。しかしながら、三十年協定で解決されたタイ特別円問題に関連して、新しい問題が出てきた、つまり、実行不能という問題が出てきたわけであります。その問題を解決するという意味で、実は、今回の協定の前文には、タイ特別円問題に関連するすべての問題を解決するということを書いておるのでございまして、私どもは、必ずしも、三十年協定のときにさかのぼって、そのときにあったと思われるあらゆる協定をもう一ぺん振り返って洗ってみる、こういう趣旨で実は今度の協定を作った意味ではないのでございます。すべての問題は三十年のときに片づいておるというふうに考えておるわけでございます。
  86. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、あなたの方のお答えはそうであっても、三十年協定ですべて解決したと思ったのに、三十七年になってまたやっているのです。だから、あなたが何ぼ解決したと今思っておっても、いろいろな協定があるならば、その協定は全部破棄しておりますとか、特別円関係する協定は全部破棄しておりますという御答弁がない限りは、向こうで結ぼうがこちらで結ぼうが、そういうことは理由になりませんよ。どういう協定があって、どうなっているかということを私は伺っておるので、七つ以外にないというお話なら、七つ以外にないのだとお話しになったらけっこうなんで、何かあるのだかないのだかわからないような御答弁をされるのは、私は迷惑なんです。その点はいかがでございますか。あとでまたタイから請求権があると言われたときに、あなたはどうしますか。
  87. 中川融

    中川政府委員 タイ特別円に関する問題は、今回の協定ですべて解決するのでございます。従って、その点は今後間違いのもとはないと考えるのでございます。なお、いろいろの協定とか合意とかいうのが戦争中にできておりますので、これを一々廃棄通告によって失効したかどうかということをもう一ぺん振り返って洗ってみるということも、これは事実上むずかしい点があるのでございます。しかしながら、条約によってはっきりこれですべて解決するということを言っておけば、それで間違いないのでございます。三十年協定のときに解決したのにどうして今度出たか、それは三十年協定が一部動かなかったという新しい問題が出たのでありまして、それを今度片づけるという趣旨でございます。
  88. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、中川さん、そういう答弁をしてはいけないと思うのだ。外務省としては条約締結の責任があるわけでしょう。三十年だって、あなたの責任ですよ。あなたはアジア局長なんだから、責任者の一人ですよ。そういう協定を結ぶときに、この協定によって破棄される条約、協定は幾つある、どういうものでどうなっているということを全部お調べになるのはあたりまえじゃありませんか。そういうことは調べる必要がない、そういう御解釈ですか。外務省はそういうことも調べたことがないというお考えでそういうことをおっしゃっているのですか。それならばそれでお答えいただきたい。
  89. 中川融

    中川政府委員 三十年協定のときの問題でございますが、結局、三十年協定では、タイ特別円問題をすべて解決するということが前文で書いてあるわけであります。それで、第三条におきまして、このタイ特別円勘定に基づく請求権はすべて放棄する、それから、あと三つの金売却関係の協定に基づく請求権は全部放棄する、なお、〇・五トンの金についての請求権も放棄するということをはっきり響いておるのでございまして、これによって、タイ特別円問題に関連あるすべてのタイの請求権は全部死んでしまったということがはっきりしておるのでございまして、あらためて戦争中のあらゆる協定あるいは覚書あるいは交換文正日等をさかのぼってみまして、一つ一つこれが向こうの廃棄通告によって失効しているかどうかということを確かめる必要は特になかったのでございます。要するに、タイが現実に有効に請求してきておりましたタイ特別円問題に関する請求権は全部これで死んでおる、しかもタイ特別円問題はこれで解決するということを言っておるのでありますから、これ以上、特に一つ一つをシラミつぶしに調べるという必要はない。要するに、必要なものは一括して殺しておる、なお、生きているものははっきりここで殺しておるということでございますから、これ以上の書き方は特に必要はなかった、また、調べることも特に必要でなかったと考えております。
  90. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約局長、私簡単に聞いているのですから、もっと簡単に答えていただきましょう。時間がやはり大切ですから。  そこで私簡単に伺いますが、三十年協定に「すべての」とどこに書いてありますか。あなた、書いてないですよ。三十七年協定には「すべての」と書いてあります。三十年協定には「すべて」なんて書いてありませんよ。それはどこにあるのか。  それから、あなたの方の御答弁では、そういう関係協定、条約は、全然——まあ全然ではないけれども、特に全体を調べるというような努力を外務省ではしたことはない、そういう御答弁ですが、それはそのまま承ってよろしゅうございますか。
  91. 中川融

    中川政府委員 第一の点からお答えいたしますが、三十年協定の第三条に、タイ政府は、この次にあげておる請求権を含む特別円問題に関するすべての請求権、日本政府及び国民に対するすべての請求権を放棄する、しかも、タイ政府国民にかわって放棄するということを言っておるのであります。これによって、タイ特別円問題に関するすべての請求権は、あとに第一項、第二項、第三項に掲げてあるものはもちろん含むのでありますが、もしかりにそれ以外のものがあっても、すべてこれを放棄しておるということをはっきりしておるのでありまして、従って、これで完全に殺しておると考えるのでございます。  第二点につきましては、われわれが持っているだけの資料を全部調べたのであります。しかしながら、資料にないものがないとは言えない。現地の軍がいろいろ何か覚書でやっているのがあるかもしれません。そこまでは実は人力をもってはそのとき調べ得なかったのであります。
  92. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたのおっしゃるのは現地軍の話ですか。私は現地軍の話を言っているのではないのです。私は、政府間協定あるいは日本銀行間協定、こういう政府間における取りきめの話を言っているのです。現地軍が何をどういうように結んだなんということまで調べれば大へんですよ。それはあなたといえども神様でないからおわかりにならないかもしれない。私はそんなことを、言っているのじゃない。政府間協定は六つか七つだけですかと言っている。政府の間でこれにタッチをして、あるいは金融協定と称する政府間の協定に基づく付属協定、こういうものはこれで全部ですかと言って聞いている。あまりこの点で時間をかけたくないのですが、全部なら全部だとお話しになったらそれでけっこうじゃございませんか。どうでございますか。
  93. 中川融

    中川政府委員 戦争中に、政府間と申しますか、現地の大使あるいは代理大使等が向こうの外務大臣等政府代表といろいろ公文交換等をしておるのでありまして、これはいずれもタイ特別円問題あるいは金塊の売却、——たとえば金塊の売却では七回にわたってこういう協定をしておるのであります。従って、先ほど申しました七協定以外に全然何もないかと申しますと、それはまだまだあるわけでございます。しかしながら、そのうち、三十年当時あるいは終戦後に生きておったもの、これはと思われるものは、はっきり名前をあげまして三条で殺しておるのでありまして、それ以外のものは、要するに、廃棄通告で死んでおるか、廃棄通告でもしかりに死んでいなくても、それは、現実に実施済みであるということから、効力をすでに失してしまっている形骸にすぎないというようなものでありまして、あのとき生きていたものは全部あそこに網羅しているつもりであります。
  94. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いつまでもこんなことを言っていてもきりがないので、それじゃあなたに私の方で具体的に聞きましよう。  昭和十七年十一月二十四日締結の軍費の決済に関するタイ国外務大臣・駐タイ日本大使間協定。昭和十七年六月十八日締結、特別円決済に関する日本大蔵省・タイ国大蔵省間協定覚書並びにタイ国大蔵省・日本銀行間協定に関する両国大蔵省間了解事項。第三、昭和十七年七月二日締結、特別円決済に関する日本大蔵省・タイ国大蔵省間了解事項に基く横浜正金銀行・タイ国銀行局間協定。第四、昭和十七年六月十八日締結、日本銀行・タイ国大蔵省間借款協定。昭和十八年十一月八日締結、タイ国編入のマライ四州におけるタイ国大蔵省・南方開発金庫間資金供給協定。まだたくさんあるんだが、これらはどうですか。
  95. 中川融

    中川政府委員 ただいま題目をお聞きしたわけでありますが、私は大体それらのものは同盟条約に付属する協定として廃棄通告の中に含まれるものと考えます。またよく内容を見てみませんとはっきり言い切れないものもあるわけでございますが、それらはいずれも実施済みのものであろうかと思います。いずれにせよ、終戦の際にはすでに失効した、内容を存していない協定であると考えております。
  96. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうも政府はもっとはっきりしていただかなくては困るんですがね。こういう条約、協定は少なくとも重要な協定ですから、あなたの方で、こういうものは調べてございます。請求権は三十年協定によって放棄されましたということでなければ、であると思いますなどと言われたのでは、私は、質問をしても、これじゃ政府は一体何を調べているのだと聞きたいわけです。  外務大臣、この点はっきりお答え下さい。今の点は放棄されているのだと私は思います。それで、あなたとしても、すべての請求権を放棄すると三十年協定の第三条にあったのだ、こういうことになれば、その関係の協定は一切破棄されたのだ、こういう解釈に立たなければこれは答弁にならないわけです。そうでなければ、こういうのは生きているのだか死んでいるのだかわかりません、こういうことになって参りますと、三十年協定で済んだものと思っておったのが、三十七年でまたいろいろなものを向こうからクレームをかけてくる、これで済んだと思ったら、また二、三年たったらクレームをかけてくるということになったら、これは話にならないのですから、外務大臣、はっきりお答えを願いたいと思います。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 三十年協定におきまして、タイ特別円問題に関しての請求権というものは一切失効しておるわけであります。しかも、なお、今度の協定において、こういうものに付属するあるいは関連する一切のものを失効させる、あと問題にならないということを明確にうたっているわけでございますから、岡田さんの御質問と私ども全く同様な考えを持っております。
  98. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、私、これは委員長にお許しをいただきたいのですが、私が調べております破棄されたと思われる協定、条約は全部で二十三あるのです。これを一々読みますと大へんですから、一応便宜的に印刷して持って参りました。これは政府諸君もお持ちでないようですから、御勉強のためにお持ちいただきたいと思うのですが、この協定、条約を政府の方でもごらんいただいて、しかもこれは大くき項目別に分けてあります。政府間協定、金融協定、借款協定と三つに分けてあります。それで合計二十三でございます。この二十三の協定は一切破棄になっているという御答弁なら、その御答弁をはっきり願った方が、私は質問を進める上で便利でございますので、この点を御了解を願いたいと思うのです。委員長、御了解いただけますか。
  99. 森下國雄

    森下委員長 今ちょっと理事と相談をいたしております。——よろしゅうございます。どうぞ。
  100. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、条約局長、外務大臣、ごらんになったわけですが、何か私語の中で特別円関係ないものもあるというお話ですが、そういう関係がないのがあるのなら関係がないと、どれが関係がないから違いますと言っていただきたい。私は特別円関係があると思ってそれだけの資料出したのですから、それが全部二十三が効力を失って破棄されている、特別円関係して効力を失っておりますというお答えならば、それで私の調べていることと一致するわけですから、私はそれ以上質問をする必要はないわけです。私は、その条文は、そこに見出しだけは書いてございますけれども、内容も全部調べて持っております。ここにございます。ですから、必要があれば特別円とどのように関係があるかということも御説明をしてもよろしゅうございます。あなたの方が御存じなければ御説明をいたします。ですから、まず第一に、二十三の協定というものが特別円関係のあるものとして私は出しました。それを特別円関係のあるあらゆる請求権、すべての請求権に関連するものと私は考えておりますので、そのような考え方が間違いであるかどうか、この点請求権の問題としてはきわめて重要でございますので、池田さんの前に、むしろ小坂さんに具体的な点で伺って参りたいと思います。はっきりと、今調べられないなら調べられないとか、わからないならわからないとか、——すべての請求権と言って突っぱってこられたのに、それはわかりませんなどと言われたんじゃ困る。これは、私が主として調べているのは政府間協定ですよ。何も現地軍がどうしたこうしたの問題じゃございませんよ。現地軍の問題じゃない。あなたの外務省それ自体に残っている条約ばかりです。あなたの方が七つしかないとおっしゃったのに、二十三あるのだ。二十三の問題をあなたはどうするのだということをお答え願いたいというのです。はっきりして下さい。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 賠償部長をして答弁申し上げさせます。
  102. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 このうち特別円協定に関係のない部分もございます。たとえば、この軍費借款に関するタイ国大蔵大臣と駐タイ日本大使のこれは、特別円協定ができます前の軍費特別協定に基づくものでございます。それで、その部分はすでに、かつて申しましたけれども、八千万円の軍費を出すかわりに金でイヤマークするという関係でございますが、このうち現実に支出しましたのは二千三百五十万千九百八十一円二十八銭を支出いたしまして、それに対する金はすでにイヤマークして売却いたしまして、それで、これは当時送れませんものでしたから、司令部の中に入っておりまして、それが今度は返った、そういうふうなことがございます。  それから、その次の、たとえば横浜正金とタイ国銀行局間の軍費借款協定というものは、これは軍費特別円協定ができるまでの一時的のものでございまして、これを見るとわかりますが、四月二十二日から六月三十日までの条約の中で、これはそのまま特別円の中にたとえば勘定の残高として入っておるのでございます。  それから、日本銀行の借款は、事実、こういう協定は、取りきめはございましたけれども、調べてみますと、この中の借款は現実には行なわれなかったという事態があるのでございます。  そのような部分は、特別円協定と全然関係のない部分、そういうのが含まっているわけでございます。
  103. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、今三つお答えになりましたが、第一の点、軍費の決済第一次分、それはあなたの通りです。第二の点、横浜正金の分は、これは特別円です。はっきりここに書いてあります。特別円決済に関する横浜正金銀行・タイ国大蔵省間暫定協定要綱、特別円決済に関する日本大蔵省・タイ国大蔵省間了解事項に基づく云々。それから、借款協定だって、これは特別円に明らかに関係しているじゃありませんか。その証拠に、借款協定をここで読んでみましょう。ちょっとお待ち下さい。  借款協定は、これは同盟条約の了解事項第二条に基づいて行なわれた借款協定で、これは特別円勘定として見合いとしてこれをやっていくということになっている。これは条章をお調べ下さい。そういう点をお調べになれば、特別円関係があることは明らかです。そういう点は、一切あなたの方で特別円関係をお調べになっておられないとおっしゃるけれども、これは関係あるのは明らかではありませんか。だから、あなたがおっしゃったのは、二十三のうち一つだけは関係がない、それ以外は私として認めるわけにはいかない。
  104. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 関係ないと申しましたのは間違いでございまして、それは事実借款が行なわれなかったから特別円協定の勘定には入ってこなかった、こういう意味でございます。
  105. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、しかし、それは特別円の勘定であるのに間違いがあったのだから、その点と、横浜正金の関係もそうなのだから、あなたが違うとおっしゃるのは——それでは伺いますが、外務大臣、軍費第一次分は小田部さんの言う通りです。私がこれを調べたのは、これは特別円のできる前のものでしたから、これは私の方で訂正をいたします。洋数字の3の最初の第一次分です。それ以外は全部私は特別円関係の協定だと思いますが、外務大臣、それは先ほど小田部さんが訂正された通りでございますので、それ以外は全部そうだと言って間違いないと思いますが、いかがですか。
  106. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういう協定ができましても、実行されていないものもあった。従って、そういう意味で御答弁した、こういうことでございます。あなたのおっしゃる通りでございます。
  107. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、私の言った方が正しかった。二十二の協定、条約が破棄された。ところが、政府が今まで出しておるのは六つしかない。三十年協定について、私の言い方をするならば、六つだけで全部でございますと言ってごまかして、三十七年になって私がこの数字を出すまでは、六つですと言って、言い切ってきた。これで、外務省が一体ほんとうに外交関係の専管事項であるというように考えて、われわれ日本国民が外務省を信頼して、国家の重大事項のこの問題について信頼することができるかどうか、これはきわめて私は無責任であると言わざるを得ない。  総理大臣、いかがですか。自分の所管の条約が二十二もあるのに、関係しているのは六つだ、それ以外の十六は違いますと言って、われわれが質問するまで知らぬ顔をしている。これでは外務省がいかに無責任であり、国会を軽視しているか、これは明らかじゃありませんか。総理大臣が国会というものをほんとうに尊重なさるならば、こういう外務省の態度に対しては十分注意される必要があると私は思いますが、総理大臣いかがですか。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 過去の協定につきまして、いろいろ失効したものもございましょうし、行なわれなかったものもございましょう。おもなるものだけを条約局長が答えたと私は思うのであります。従いまして、特別円協定につきましても、前の三十年協定の三条を置くとか、あるいは今度の前文のようなものも置きまして、全部これで片づく、こうやっておるのでございまして、私は怠慢とかなんとかいう問題ではないと思います。
  109. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、外務省がでたらめであるというもう一つの証拠を出します。それは、三十年協定のとき、これは池田総理もお答えになっているのですが、金の売却は全部で七回と言いましたね、総理大臣。七回のうちで四回だか四回半だかあって、残りの三回が売却未実行であった、そうして、四回はこれは済んだのだ、こういう話で、それでは四回の協定に対する金売却の取りきめを出してもらいたい。ところが、ここへこの間金売却取りきめに関するBというものを出してきました。ここにございます。私ここへ持っておりますが、Bというのを出してきました。これを調べてみると、外務省が出した「軍費に関する取極B」、その文書の最初のところに、「軍費に関する取極Aに従い、」云々と、こうなっている。これを見ると、よく私はわからないので調べてみました。ところが、これはこういうことなんです。軍費の決済に関するタイ国外務大臣、駐タイ日本大使間の協定の一部を、取りきめの別な分をそのまま置いておいて、条約として不可分の部分についてだけBという形で抜き書きをして出してきているのです。これでは協定の全体というのはわからないわけです。いかにも取りきめBが一つの協定のものであるかのごとく、そういう形で外務省は出してきている。これはいかに国会というものがこういう形でわれわればかにされているかということになる。条約全文を出さないで一部分を何か新たの条約であるかのごとくして出してきておる。これではわれわれわからないわけです。先ほど私は、これからの協定の効力は失いましたかと聞いたのは、それに関係があるからです。なぜかというと、これらの協定に基づいて取りきめBと称するものも効力を失ったんでしょう。そういう点から言って、外務省が今まで国会に出しておられる資料というものはきわめて無責任であると私は考えざるを得ない。こういう点から言っても、総理大臣は十分外務省当局に対して監督をされなければいけないと思いますが、まずこの点総理大臣から伺っておきたい。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 資料で不正確な点があれば、十分にこういう機会にお直しをいただきたいと思います。外務当局より説明するでしょう。
  111. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、私の今の論点から進めて参りますと、七回の金売却の中で、四回は効力を失っている。残りの書簡ですね、あなたの言われた書簡です。坪上書簡、山本書簡というような、合計三つですか、この三つの書簡の効力も私は失ったと思うのですが、総理大臣、いかがですか。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 七回のうち三回半ですか、四回、これはもう実行済みでございます。これは取り消されたというわけではない。実行済みでございます。そうして、三十年協定の第三条に掲げております三つですか、実行していない分は、前の有効期間中の約束でございますから、その後実行する、こういう建前になっております。
  113. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはそうでないのです。総理大臣。これは効力がなくなったのです。実行済みだからないのでなくて、先ほど申し上げた、あなたに配付いたしました軍費の第二次分の決済に関するタイ国外務大臣・駐タイ日本大使間協定が効力を失ったから、三回半ですか、四回ですか、実際の実行分ですね、これは協定それ自体効力を失ったのです。それと同時に残り三回も効力を失ったんです。効力を失ったからこそ、これは未実行であっても効力を失ったということになるわけです。この点の解釈はどうかと総理大臣に伺っておるのです。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 それは、破棄しました九月十二日以後におきましては、その協定は効力を失いました。それ以前の約束の分につきましては、われわれは、効力があるとして、三十年にこれを実行いたしたわけでございます。
  115. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、それ以降の分についてはということになりますと、この坪上書簡の中で、昭和二十一年に実行する分、昭和二十二年に実行する分は効力を失っているわけですね。どうですか、そうでしょう。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 この協定を停止する以前に約束した分でございますから、われわれはその約束に従って実行したのであります。
  117. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、あなた、おかしいじゃありませんか。総理大臣、ちょっと伺いますが、三十年協定で非常に深い関係がある未実行分について、日本タイに対して金を売却する契約を結びましたね。この契約を、全部売り渡しが完了しない間に、買手であるタイの方で契約を破棄したんです。買手の方のタイが契約を破棄した場合に、その結果、売手の日本が買手に対して売却未実行の責めを負わなければならないということはない。これは免れる。契約を破棄したのは売手ではなくて買手なんです。その結果買手自身に何らかの損害を生じたからといって、売手がそれの責任を負わなければならないということはないんじゃありませんか。当然でしょう。あなたのように経理数字に明るい総理大臣ですから、こんな筋の通らないことをけっこうですと言うわけはないわけです。この点について総理大臣はいかがお考えになりますか。
  118. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたの御質問の趣旨をあるいは私考え違いをしているかもしれませんけれども、こういうふうに伺っている。昭和十七年の下半期に二千万円の約束をした、これは実行済みである。それから、昭和十八年の上半期に九百万円のものを約束した、これは実行済みである。昭和十八年の下半期に三千万円のものを約束した、これも実行済みである。昭和十九年の上半期に五千万円のものを約束して、そのうち三千五百万円を実行した、従って千五百万円のものが残っておる。それから、昭和十九年の下半期に二千万円のものを約束した、これは実行済みである。なお、昭和二十年の上半期に二千万円のものを約束して、これはまだ実行していない。昭和二十年の下半期に二千万円のものを約束したけれども、これは、協定を作るにあたりまして、軍費が四五%しか調達されていないということを理由にいたしまして、これを値切って九百万円にして、その分を未実行のものを実行する、この三つが残っておるわけでございます。これを何かいけないというようなことでございまするが、これは約束しておって実行してないことでございまするから、総理大臣がお答えになりましたように、二十年九月十一日以降はこの協定は無効になったけれども、それ以前の約束は、これを実行すると約束して残っていたものであるから、当然実行すべきものである、かように思っております。
  119. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言うのは、それが、あなたのおっしゃることが理に合わないと言っているのです。だから、総理大臣にお伺いしている。確かに日本は実行しなければならないといって約束をしました。これはお説の通りです。実行しなければならないという約束をしておったけれども、この契約に対して実行しないうちに、相手のタイの方からこれを破棄してきた。契約を破棄してきたならば、売手の日本の方が実行しておらないからといって、買手に対して損害を払うとかその分を払うとかということは、商習慣なり経済関係に明るい池田さんから言っても、それは筋が通らないじゃありませんか。売り手が破棄をしたのならば、その損害を賠償をするということはありますよ。日本が破棄をしたというんならこれはあるでしょう。しかし、買手のタイの方が破棄をした。タイが破棄したのに、日本がこの損害を——損害じゃないにしても、その分を払わなければならないということは筋が通らないと思うが、総理大臣、これはいかがですか。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 これはこの前の外務委員会で詳しくお答えした問題だと思います。それは特別円勘定で一本の軍費調達はこうやっていきましょうという約束をいたしまして、そうして日本が十五億円の借りをしているわけです。戦争が済みまして、二十年の九月十一日にあの約束はやめましたというときに、十五億借りている分までこれが全部ゼロになる、これは私は信義の原則に反すると思う。将来はこういう特別円勘定をやめましょう、こういうことなんでございますから、特別円勘定をやっておるときに負った十五億円の債務、そしてその内容として金で払うという約束をした分は、これは残っておると考えるのが当然じゃございませんか。もしそんな考え方でいくのなら、特別円も何もあったものじゃない、一つも払わなくていい、こういうことです。特別円勘定をもって軍費調達の方式にしてやりましょうというその約束を破棄したのですから、その破棄するまでの貸借というものは、われわれは払うのがほんとうだ、こういうわれわれの常識でございます。あなた方は、約束したものを破棄したら、さかのぼってそれまでの貸借も全部ゼロになるんだとおっしゃるのでしょうが、私はそうは言えぬと思います。
  121. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は十五億円払ってはいけないなんていつ言いました。そんなことは言わないですよ 勘定残高十五億円というものが債務として残っているでしょう。十五億円の中で、具体的な数字で言いましょう。四千四百万円というのが金未実行分です。この金にかえて売りますということは条約破棄になったのです。条約破棄になったのならば、金でお返しするというのではなくて、四千四百万円の値打ちで払うのがあたりまえです。あなたのおっしゃるように、あなたの常識で言えば、十五億円は四千四百万円を含めてそれをお金で払うというのがあなたのお話の結論にならなければならない。ところが、あなたの結論は、途中で一度に飛躍されるのだ。そこは金にかえてどうなったとか、その条約は破棄されておる。破棄された条約まで生かさなければならないとするならば、そこに問題があるということを私は申し上げておる。総理大臣の御答弁に食い違いがあると私は思う。どうですか。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 金約款の問題につきまして、二十年九月十一日以前に、四千四百万円というものは金でお払いいたします、特定的にこういう約束をしておる。もともと、特別円勘定につきまして、金でどれだけ払うかという問題につきましては、向こうが要求し、約束したらそれで払う、初めは相当部分を金で払う、だんだんこれが少なくなって、約束して残っているのが四千四百万円でございますから、この分は約束済みであるというので、三十年に金で払うことにしたのでございます。
  123. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、総理大臣、金約款は生きているのですか。生きてないでしょう。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 金約款そのものよりも、金で売るという約束をしておるものについては、その約束が生きておる、こういうことであります。
  125. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、金約款はどうですか、小坂さん。
  126. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 金約款は使わなかったわけです。使わないうちに協定が破棄されたということです。ただ、四千四百万円のものについては、金で売りますという約束をしておる、その約束は生きておる、こういうことであります。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから、私は、金約款の協定は生きているのですか死んでいるのですか、もう一つ別な点から伺います。
  128. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういう条項を含んだ協定は、二十年の九月十一日以降破棄されておる、こういうことです。
  129. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、金約款は死んでいる、しかしながら金売却という事実はそのまま残っている、こういう解釈だということですね。売却はしかし未実行であった、こういうことになりますか。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 金の売却をするという約束はそのまま存在して、そうして、これは実行されていないものが四千四百万円ある、こういうことであります。金約款を含んだ特別円の協定というものは昭和二十年の九月十一日以降は存在していない、こういうことです。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから、私さっきから伺っているように、金を売りましょうという約束それ自体の協定が破棄されたではないか、それならば、その未実行分については当然これは実行する必要がなくなったではないか、しかも、日本の方で破棄したのではなくて、買手の方で破棄したのではないか、こういうことを私は言っているわけです。小坂さん、どうですか。
  132. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 買手の方で破棄したと言われますけれども、これは、日本の方から、二十年の八月十五日にいよいよ終戦を迎えるということで、八月の十日に、日本はいよいよ戦況不利で終戦に至るのやむなきように思える、そこで、タイ側としても同盟条約にこだわらないで適当な措置をとってくれ、こういうことを言いまして、それを受けて、タイ側の方では、それではお言葉に甘えてということでしょうか、九月十一日に廃棄通告をしてきた、こういう事情であることは累次申し上げておる通りであります。従って、そこに、特別円問題を考える場合に、明確な法的な基準、あるいは三十年協定というものを結んだ場合に双方に明確に合意された評価の基準が実はなかった、こういう点が一番の問題だというふうに私どもは思っております。
  133. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、あなたのお話では、書簡は生きておった、こういうことになるのですね。
  134. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それはそうでございます。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから、私はさっきから伺っておるのです。書簡の基礎になっておる協定が破棄されておるのに、書簡が生きておるのはどういう関係ですかと言っておるのです。
  136. 中川融

    中川政府委員 三十年協定の第三条第二項に掲げてあります三つの書簡往復、あれは、要するに、日・タイ同盟条約を失効せしめる、あの通告の中に含まれておる同盟条約に付属する協定には含まれていない、従って全然別個のものであるというのが政府の一貫した考え方でございまして、従って、もとが破棄されておるということは、その前提がわれわれ御同意できないわけでありまして、同盟条約及び付属する協定は破棄されましたが、あの三つの売却契約は破棄されていないというのがわれわれの解釈であります。
  137. 岡田春夫

    岡田(春)委員 中川さん、またそういうことを言ってはいけない。私は省略して言っておるのですよ。書簡だけで売却契約ができるわけがない。金売却の協定というものはあるはずです。政府調べていないでしょう。さっき効力があるとかないとかいうことを小田部さんが言った昭和十七年六月十八日の日本銀行・タイ国大蔵省間借款協定了解事項第二項、うしろの方で調べてごらんなさい。そこに、タイ国大蔵省が金を買い入れんとする場合には協定するを要すとなっていて、協定が必要なんです。協定があって、それに基づいて書簡の交換があったのです。あなたの方はこの書簡の協定を出していないのです。だから、先ほど池田さんに、こういうような協定がたくさんあるのに困るじゃありませんか、外務省が怠慢だと言ったのは、この点です。協定があるはずです。協定があるでしょう。
  138. 中川融

    中川政府委員 協定は、これに関係する協定はお出ししておるのでございまして、先ほど岡田委員が申された点にちょっと触れたいのですが、A協定、B協定と、Bだけ出してAを出さなかったというおしかりを受けたのでありますが、これは二つが集まって一つではないのでございまして、二つ別の協定でございます。いわゆる第一回の金売却協定は、このアレンジメントBというのが具体的の金を売る協定でございまして、従って、それをお出ししたわけでございます。アレンジメントAというものは、抽象的に、要するに、軍費を提供することと、それから日本政府が適当な額の金を売るということが書いてあるのでありますが、これだけを見ますと、これがもとになってその後の七協定、売却協定が出たように見えますが、よくこの経過を調べてみますと、非常に複雑でございまして、いわゆるこのA協定によって売られた金というものは二つだけでございます。第一回、第二回だけでありまして、第三回以後は、意識的にこれと切り離しまして、形式も別の文書によりまして、軍費の調達と金の売却とは別別の契約になっておるのでございます。しかも、売り渡しの価格もその後変わってきたことは御承知の通りであります。売り渡しの価格も、初めの四円八十銭というのから変えまして、日本に有利にしたわけでございます。  そういういろいろの経緯があるのでありまして、これらの経緯を公平に振り返ってみますと、まさしく、金売却取りきめというものは、第三回以後は軍費調達とは別の取りきめとして、しかもはっきり金約款とは関係がないということも念を押しまして、そうして日・タイ間にこの売却取りきめができておるのでございまして、それの最後に残った三つが、要するに三十年のときに生きておったからこれを払ったということでございます。
  139. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、協定があったのですかないのですか。この軍費協定に基づいたのですかどうですか。
  140. 中川融

    中川政府委員 軍費協定に基づきましたのは、第一、第二、この両回でありまして、第三回以後は軍費協定とは関係なしでございます。
  141. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、関係なしの書簡は協定なしでやったのですか。
  142. 中川融

    中川政府委員 個々の場合に、契約、つまり文書の交換でやったわけでございます。
  143. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、私はさっきから言っておるように、日銀との借款協定によって協定するを要すというのは、何も軍費協定だけではないのですよ。金の売却に関する協定ですよ。あの当時、金の売却を書簡だけで取りきめておるというようなことはあり得ないのですよ。当然協定があった。あなたは知らないから強弁しておるのですよ。これは協定があったのですよ、売却協定が。その証拠に、どうですか、前の二回は軍費協定があって、あとの五回は書簡だけでやって協定は結びませんでしたというようなことは、あなたとしても、外務省の条約を論ずる者として、ちょっとあなた恥ずかしくないかと私は思うのですが、どうですか。
  144. 中川融

    中川政府委員 この金売却は、実は三十年協定の非常な中核をなす要素であります。従って、金売却のいろいろの協定なり覚書、交換公文等は、よく調べたわけでございます。今御指摘になりました要するにA協定というのは、一見するとそのあとに続きました七個の売却協定のすべての根源になるように見えますが、よく調べてみますと、一回、二回のもとにしかなっていない。どうしてそういうことを申しますかといいますと、このアレンジメントAには付属書簡があるわけでございます。付属書簡によりまして、アレンジメントAには軍費を調達するということが第一に書いてあり、第二項に、日本政府は適当な額の金をタイに売り渡すということが書いてあるわけでございます。そうして、この付属書簡におきまして、適当な額とはおおむね五〇%を意味するのだということがはっきり書いてあるのでございまして、この五〇%ということと適当な額というのは、一つの要するに一体をなしたこのときの了解であったわけであります。ところが、この了解に基づきまして五〇%の金を売ったのは、一回、二回だけでありまして、三回以後はぐっと減って参りました。一番最後のころは三十分の一くらいしか出していないのであります。これは、要するに、日本としては、この最初の取りきめ、あなたの言われる金売却の取りきめに基づいてやることを不適当とする事態が出てきたのでありまして、従って、タイ側と話の結果、これは全然形を変え、観念も切り変えて、要するに、軍費とは全然切り離した単純なる商業契約としての金の売買という形をとったのであります。従って、数量も変わって参りますし、金額も四円八十銭から五円七十八銭というふうに変えてきたのでありまして、これらの経過を振り返ってみますと、まさしく、この金売買取りきめというものは、いわゆる軍費協定、アレンジメントAに基づくものではない、切り離されたものである、従って、これは同盟条約廃棄にはつながっていない、依然として有効な債務である、こういう結論に達したわけであります。従って、この間の事情はわれわれ相当調べておりますので、間違いないと思います。
  145. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点は明快ではないのです。明快ではないのですが、その証拠に、先ほど申し上げたように、借款協定の了解事項第二項にあること、それから、あなたの説明をもってするならば、日本の代表である大使が向こうの政府と売買契約をやる、売買契約を書簡だけでやった、こういうことになるわけです。ところが、売買契約の書簡で例をあげると、第三条の二項の(b)という一月十八日付山本書簡というのがある。あるいはその次の(c)でもいいんです。これはたしか(c)だと思いました。これで二千万円の金を売るということになっているのだが、この二千万円の金の中で、向こうのいわゆるバーツ貨を何ぼ買うことによって、これの見合いとしてどうなるというということが計算として出てくるわけです。こういう点は別に協定を結ばなければ出てこないのです。しかし、こういう点は条約関係の問題ですから、あまりこればかりいつまでもやっておってもしようがないから進行いたしますが、これは協定があったに違いない。これは間違いないと私は思います。この点はもう一度お調べを願いたいと思う。  問題は、その次に進行して参りますが、要するに、タイ特別円関係債務として払わなきゃならないものは、先ほどから池田さんの言われたように、特別円勘定の十五億円余ですね。それから金売却の未実行分の四千四百万円、金塊の〇・五トン分、これを現在の値段に換算をして、タイ特別円の支払いをやった、こういうことになるわけですね。そうでございましょう。
  146. 中川融

    中川政府委員 ただいま御指摘になりました三つの要素からこの五十四億は出てきたわけでございます。
  147. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうなって参りますと、もう一度小坂さんに伺って参りたいと思うんですが、先ほどから再三申し上げた通り政府間の協定というものは、全部これは効力を失った。ただいま申し上げた三つの要素が債務対象になる。この債務対象になるべきものは、先ほどイタリアの特別円中川さんが取り消されたり答弁をされた通りに、これは明らかに日本銀行の債務です。日本銀行の債務であって、国の債務ではないじゃありませんか。日本銀行がこれを債務として支払うべきである。横浜正金がイタリアに対して払っている。これと同じように日本銀行がタイに対してこれを支払うというものでなければならない。銀行間の勘定残高の支払いです。それを国の経費を払ったというのは、これは不当だと思うが、この点は、小坂さん、どうですか。   〔委員長退席、野田(武)委員長代理着席〕
  148. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 要するに、これは何回もお答えいたしておりますように、タイとの間に同盟条約を結んで、そうして、それに基づいて軍費の調達その他現地で調達するものを、特別円勘定というものによって日銀でつけかえ勘定をしておったわけであります。そのつけかえ勘定じりが十五億円残っておる。そこで、これと金の現送の未実行分あるいはタイのものになるべき〇・五トン、これを政府において扱うということは、これは当然なことだと思っております。
  149. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おかしいじゃありませんか。銀行間勘定の残高でしょう。あなた、この前の三月十六日のときには、軍費であるという原因が問題ではない、勘定の残高の問題だ、だから十五億円の残高について支払うのだということで、今も総理大臣だってそう言っているじゃありませんか。それならば、日本銀行の勘定残高は日本銀行の債務です。日本銀行の債務日本銀行が支払うべきです。あなたのおっしゃるように軍費の問題だというのは、日本銀行と日本政府関係です。日本銀行と日本政府関係は国内上の問題です。国内法の手続によってこれはやるべきです。タイに払うというのは、日本銀行が払うべきであって、これを国費を直接払うというのは、明らかにこれは違法です。五十四億円を国の経費として払うというのは違法ですよ。不当じゃありませんか。明らかじゃありませんか。外務大臣、あなた、そんなこと答えられるでしょう。当然そうしているじゃないですか。当然そうでしょう。イタリアでそう言ったじゃありませんか。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはもとは両国の大蔵省間の協定によってできておるものでございまして、さっきからも申すように、日本政府の軍事行為の調達のために特別円勘定というものは作ったわけです。それでは十五億円そのものが軍費そのものかということであると、軍費が大部分ではありますけれども、軍費そのものではないのです。それはせんだってお答えした通りです。しかしながら、そのよって来たる原因が、日本のそうした国の費用をまかなうために、つけかえ勘定のしりが日銀の残高にあったのでありますから、これは当然日本政府タイ国政府との間の決済さるべき問題である、これはその通りだと思います。
  151. 岡田春夫

    岡田(春)委員 では、小坂さん、伺いますが、イタリアと日本との特別円勘定は政府間の協定でしょうが。政府間協定に基づいて横浜正金との協定を結んだのでしょう。同じことじゃないですか。それなのに、イタリアの場合には銀行間協定で支払いをして、タイの場合には国の協定で支払うというのは不当じゃないですか。小坂さん、どうなんですか、それは。あなたの言っている理由が理由にならないじゃありませんか。どうなんです。はっきりなさいよ。こういうことはだめですよ。はっきりしなければだめですよ。理由にならないじゃないですか。   〔発言する者多し〕
  152. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 静粛に願います。
  153. 中川融

    中川政府委員 イタリアの場合の例をあげられましたが、イタリアの場合には、なるほど政府間には経済協力に関する協定というものができておりました。しかしながら、これには別に特別円を設置するということは何も書いてないのでございまして、緊密な経済協力をするということだけが政府間の取りきめであったわけであります。具体的な特別円勘定を設置する取りきめというのは、先ほど申しました通り、横浜正金銀行とイタリア為替局との間でできたものが一番のもとであったわけであります。それに対して、タイ特別円の場合は、タイと大蔵省との間に、はっきりと、特別円勘定を作って一切の決済をこれでやるという協定ができておるのでございまして、従って、日銀にあります十五億円の勘定は、要するにこれから基づいた勘定であります。形式的には日銀債務者であることお説の通りでありますが、実質はやはり政府債務であり、それの代行機関を日銀が勤めたということでありますので、政府がかわってこれの協定を結んだという関係になるのでございまして、イタリアの場合とはちょっと事情が違うのでございます。
  154. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは違うのです。あなたそういうことを言ったって、その条約は全部破棄されて、ないじゃありませんか。条約がないのに、それが生きておりますと言うのですか、あなたは。政府間協定というのは原因であったでしょう。その原因がなくなったのじゃないか。原因がなくなって勘定残高の支払いをするのじゃありませんか。勘定残高の支払いは日銀の勘定残高じゃありませんか。しかも、日本銀行とタイ国銀行という勘定残高ですよ。池田さん、あなたは支払っておられるけれども、日本銀行にはタイ国の(発言する者あり)——静かにして下さい。質問できないですよ。
  155. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 静粛に願います。
  156. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣に伺います。日本銀行の勘定というのは、タイ国政府の勘定ではないのですよ。勘定残高の名称は、タイ国銀行という勘定残高なんですよ。そうすれば、日本銀行にあるタイ国銀行勘定残高というものは、あくまでも日本銀行の勘定残高です。しかも、これはタイ政府に払うべきものではないのです。タイの銀行に払うべきものなんです。あなたのおっしゃるように軍費という原因が理由であったとしても、支払う先というものはタイ政府に払うべきものではないのです。これはタイ国銀行に払うべきものなんです。ですから問題になったのです。昭和三十年のころにナラティップという外務大臣が来たときに、タイ国銀行の責任者が来なかったということで、タイ国の国内で問題になったのです。われわれの考え方から言うならば、タイ国銀行に払うべきものをタイ国に払っている。政府間の協定はあったでしょう。これはあったのは事実だ。しかし、あなたの御答弁になったように、政府間の協定は九月十一日で破棄になって、なくなったのです。なくなったので、今支払うというのは銀行勘定の残高を払うと言っているのです。銀行勘定の残高を払うならば、これは当然日本銀行が払うべきです。池田さんは、その場合に政府の代行であるとかなんとかというようなことをたとえばお話しになっても、それは筋が通らない。それは日本銀行と日本政府との関係です。これは国内事項の問題です。条約問題ではございません。この点は、総理大臣はやはり筋を通してお答えいただかなければならぬと思うが、総理大臣、いかがですか。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、両国大蔵省間で政府同士で話し合って特別勘定を設けた。実質は日本国の債務であるのであります。従いまして、われわれは実質通りにやっておるのでございます。そして、日本銀行は政府のかわりにそういう勘定を設けてやっておるのでございますから、タイの方からの請求があれば、実質的にこれは払うのが当然だと思います。国内的の手続は事務当局からお答えいたさせます。
  158. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはそうじゃないのですよ。あなたのお話の方が筋が通るのです。実質においては国のあれかもしれないが、勘定残高を支払うというのは日銀の責任の問題ですよ。日銀それ自体が払う。これは、国家間の、タイとの関係ですよ。あなたが国が責任があると言うのは、国と日本銀行との関係です。日本銀行の国内関係国際関係で国が払うというのは筋が通らないと言っているのです。そうでしょう。そうじゃありませんか。だから、イタリアの場合だって同じじゃありませんか。特別円勘定で、特別円の協定国すら書いておりませんとかありますとか言っても、それは先ほどの決済協定に基づいて特別円勘定ができたのだから、その関係は同じですよ。それは、国民としてはそのような御答弁では納得ができないのは明らかです。
  159. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そこで、国内的な問題につきまして、これは大蔵省の所管でございますが、政府は五十四億円をタイに支払うことになった結果、日銀に対して政府は形式的に債権を有することになったわけでありますので、この勘定の整理として、昭和三十一年三月一日、日本銀行は勘定残高を政府に対して支払った、こういうことになっております。
  160. 岡田春夫

    岡田(春)委員 勘定残高を支払ったというのでしょう。それは日本銀行が払ったのじゃないでしょう。政府タイに対して払ったのですか。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 申し上げますが、政府タイに対して支払った、政府に対して日本銀行がまた支払った、こういうことです。
  162. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは、政府タイに払った、日本銀行は政府に払ったと言う。これは一体どういうことですか。総理の答弁とちょうどさかさまじゃありませんか。日本銀行がタイ国の銀行に払った、その分を日本銀行に対して政府が払うのじゃありませんか。総理大臣のおっしゃるのは筋が通っているので、小坂さんの言っているのはさかさまのことを言っているので、あわてたのなら、取り消すなら取り消しなさい。総理大臣と食い違うじゃありませんか。いいですか。それでは、日銀政府に対して払った、政府タイ国に対して払った、これは日本政府債務ですか、その点を伺いましょう。
  163. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理大臣の言われたことと少しも違わないのであります。すなわち、日銀帳簿の残高を、三十年協定の結果、政府が支払った。そこで、日本銀行の帳簿じりの十五億円に対する分については、政府が払ったのだから、今度日銀政府に対してそれを入れた、こういうことです。
  164. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはおかしいじゃないですか。日銀債務は、日銀が、タイ国銀行勘定の債務が残っている、これを払うのであって、その分の足りないのは政府日銀に払うべきです。それを、あなたは、日銀の分を政府が背負って、政府タイ国に払ったというのは、さかさまじゃありませんか。それならば、あなたのおっしゃるようなことだと、政府間協定が生きているということになるじゃありませんか。それでは政府間協定が生きているのですか。政府間協定が死んでいるから、日銀勘定の残高になるのでしょう。政府間協定が生きているなら、あなたの筋は通りますよ。政府間協定が死んでいるのに、さかさまにやるというのは、私にはわからない。どうしても納得がいかない。
  165. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 何回も同じことを言うようですが、先ほどから言っているように、両国の大蔵省間協定の結果、日銀にそういう帳簿残高を残したわけです。それに対して政府がそれを決済したわけです。従って、政府は形式的には日銀に対して債権を持つわけです。その債権を決済するために、日銀がそれだけのものを政府に入れた。少しも違わないじゃないですか。
  166. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、小坂さん、そうおっしゃるけれども、あなたはまだお調べになっていないでしょうが、昭和二十八年ごろの交渉のころには、日本政府の側では、これは日銀が払うべきものだという回答をしておりますよ。そういう回答をしているのに、急に、日銀の方で払うのではなくて、政府が払うのだということになった。それは政府間協定が生きているならそれでいいですよ。政府間協定が死んでいるのに、政府が払いますと言うのは、どう考えても筋が通らないじゃありませんか。大蔵省、この点いかがですか。
  167. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 外務大臣が答えましたように、日本銀行にあります勘定残高は、タイ国との軍費協定、タイ大蔵省・日本大蔵省との間の覚書に基づきましてできた勘定でございますので、政府が支払ったわけであります。そうしますと、十五億円という勘定残高は、日本銀行にとって不当利得になるわけでございます。従いまして、翌年の三十一年に、利息を合わせまして十六億何がしかの金を政府日本銀行をして納付せしめたのであります。
  168. 岡田春夫

    岡田(春)委員 宮川さん、政府間、大蔵省関係の協定に基づいてそういう債務ができた、それは確かにもうあなたのおっしゃる通りですよ。問題は、その政府間協定が死んでいるのですから問題なんですよ。死んでいるのに、政府間協定が生きているものとして払われるから問題にしている。そうでしょう。政府間協定が生きているならば、それであなたの筋は通る。政府間協定が死んでいて、残っているのは日銀の勘定残高です。日銀の勘定が残っておれば、これは日銀が払うべきです。日銀が代行しているという説があるが、日銀が代行しているでしょう。代行しておっても、それは日銀が払うべきです。日銀に対して日本政府が払うということは、これは日本の国内事項です。外交問題ではない。そういう関係は違うんですよ。だから、日銀が払うべきです。イタリアと同じです。日銀が勘定残高を払うのです。勘定残高を払わなければならない。さっきの話でも、正金に穴があいた、それに対して日本政府がどうしたか。さっき中川さんは、一般会計から払いましたというのを取り消しました。これは中川さん間違っているのですよ。一般会計から入れているのです。そうでしょう。さっきあなたはわざわざ取り消したが、入れているでしょう。入れてないわけないですよ。正金は閉鎖機関ですよ。閉鎖機関で金を持っていますか。そんなことをあなたでたらめ言っちゃだめですよ。大体、あなた、どうもそのときだけのことを言いたがるんだ。一般会計から出ているんですよ。一般会計から出て、それは日本政府が横浜正金に対しての国内事項なんです。それと同じケースですよ。そうでしょう。同じじゃありませんか。政府間協定は死んで、銀行勘定だけが残っているんだもの、そういうことじゃありませんか。大蔵省、答弁して下さい。
  169. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 勘定残高は、廃棄通告前の協定に基づいて起こったものでございます。従いまして、その限りにおいては、残高ができたということの協定は有効だと考えます。
  170. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは宮川さんに伺います。さっきあなたに資料を上げましたね。その資料を見たってわかるでしょう。勘定残高というものは銀行間協定なんですよ。金融協定なんです。金融協定に基づいて勘定残高が出ているんです。ここにあります。さっき差し上げましたね。これなんですよ。ところが、このもとになっている政府間協定はなくなったんですよ。銀行間協定だけは残ったら、銀行が払うのはあたりまえじゃありませんか。そういうことでしょう。あなた、当然そうなるじゃありませんか。
  171. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 銀行間協定は、岡田委員御指摘のように残っております。その残っております銀行間協定は、その前の大蔵省間の覚書に基づいてできておるものでございます。
  172. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではもう一つ宮川さんに伺いますが、大蔵省間協定というのは何によってできましたか。同盟条約に基づいてできたんでしょう。
  173. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 同盟条約に基づいてできております。
  174. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その同盟条約はなくなったんですね。
  175. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 九月十一日以降なくなっております。
  176. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その同盟条約はなくなって、それに基づく大蔵省間協定はなくなったんでしょう。
  177. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 九月十一日までは有効でございます。
  178. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その通りなんだ。十一日までは有効なんだ。だから勘定残高が残っている、だから十五億円払う、その通りなんだ。しかし、その勘定残高というのは、日本銀行の勘定残高なんだ。条約というものはないんだから、そうでしょう。ないのに勘定残高を政府が払うというのはおかしいじゃありませんか。イタリアと同じじゃありませんか。   〔発言する者あり〕
  179. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 静粛に願います。
  180. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほどお答えいたしましたように、勘定残高は、同盟条約並びに大蔵省間協定に基づいてできたものでございますので、政府が支払って支障ないと考えております。
  181. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、条約局長でもだれでもいいが、牽強付会な答弁をされるんだが、条約はなくなったけれども、勘定残高という言葉は条約の中で生きている、そういうことですか。私はそういうようには考えませんがね。速記録に残ることですから、お互いにはっきりしておきたいのですが、勘定残高というものは日銀の金融協定で、政府間協定というものはなくなっても、池田総理が再三答弁されたように、九月の十一日までは動いておったのです。動いておったから十五億円という残高があったんです。その勘定残高を払うというのは、日銀の勘定残高ですから、日銀の勘定残高を払うのに、政府が払うのはおかしいじゃないかと言うのです。そうでしょう。その証拠に、イタリアの特別円においても、正金銀行の勘定残高を払う。それは正金が払っただけでは正金としては赤字になりますわね。だから、それについての原因の問題というのは日本政府に原因があるんだから、日本政府がその赤字を埋めるんだ。これは横浜正金と日本政府関係だ。タイの場合にも同様で、日銀日本政府関係は、これは赤字になって、——大体日銀政府じゃありませんから、日銀それ自体の勘定としてそれだけ払って赤字になったままだったら損ですから、それは日本政府から払ってもらう、こういうことになるのはあたりまえです。これはあなたのおっしゃるように政府間協定があったからです。政府間協定がなくなった現在としては、日銀の勘定として払うのがあたりまえじゃないかというのです。どうでございましょう。   〔野田(武)委員長代理退席、委員長着席〕
  182. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、国内法の関係でも国際法関係でも、実は私は法律関係の常識だと思いますが、要するに、タイ特別円について申しますれば、今お話しのように、二十年九月十一日以後、日・タイ軍事同盟あるいはそれに基づく大蔵省間の特別円協定は効力を失ったわけであります。しかし、それまでにできた特別円等の勘定というものは残るわけであります。それは今おっしゃったように日本銀行の勘定として残っております。しかし、それが日本銀行の勘定として残ったということは、ただ日本銀行の債務であるというだけではないので、これができたそもそもの由来から考えなければならない。結局、それは日・タイ同盟あるいは特別円協定というものからできた実質的な政府の支払うべき債務であります。従って、それをどう払うかということについて、終戦後においてタイ政府日本政府とが協定して、三十年協定は、政府で払いましょうという協定をここでしたわけであります。これは実質から考えて決しておかしいものではないわけであります。要するに、法律関係の常識から申しまして、もとの法律がなくなっても、その法律が失効する前にできた法律関係は当然になくなるものではございません。また、その性格が違うものでもないわけであります。タイ特別円の勘定残高というものは、ただ日本銀行にある無性格な数字というものではなくて、性格は、前からの軍事同盟あるいはタイ特別円協定から引き続いた性格を持っておるわけであります。その性格に基づいて処理をすることは当然だと思います。
  183. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この点も私あまりやりませんが、もう一点だけ、林さん、いいですか、あなたそういう解釈をとるとするなら、イタリアの特別円の処理はどうしたか。さらに、もう一つ伺いましょう、仏印の特別円はどうしたのです。仏印の特別円関連してお答えなさいよ。われわれ知って黙っておるだけの話ですよ。
  184. 林修三

    ○林(修)政府委員 イタリアの特別円の問題は、さっき中川条約局長がお答えした通りで処理しております。  それから、仏印特別円の問題は、この前ベトナム賠償の問題が起こったときに岡田委員からもいろいろ御質問があったことを私よく記憶しておりますが、これは今度のタイ特別円と同じような形の処理をやっております。ただし、仏印特別円関係については、いわゆる条約として国会に御承認を求めておりません。いわゆる、あれについての日本政府とフランス政府の議定書を作りまして、たしか議定書だと思いますが、議定書を作って、それに基づいて支払いをやっております。これの支払いについての形はたしか議定書だったと思いますが、協定という形ではなかったと思いますが、これを国会にかけなかったのは、さっき申しましたように、いわゆるその年度の予算で払える、財政法第十五条から申しまして、いわゆる法律に基づくもの、あるいは債務負担行為に基づくもの以外、当該年度の予算で債務負担ができるものは債務負担ができるということになっております。その範囲で支払ったわけであります。
  185. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題は、私はまだ了解いたしません。あとでまた時間があればやりたいと思いますが、次の問題に移ります。  これは総理大臣にお伺いしたいのですが、三十年、三十七年のタイ特別円の処理、これは日本タイに対して負っておる債務、これの支払いです。ところが、この点は池田さんがこの間タイ国に行かれていろいろお話しになったようでございますが、日本タイに対して持っている債権についてはどういう交渉をされましたか。
  186. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題につきましては、やはり、特別円の解決がこういう状況になっておりますので、先方はこの問題になかなか言を左右にして乗ってこない。従って、まずこの問題を解決してから、わが方のいわゆる在タイ債権の問題に触れる、こういうことに考えております。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、日本タイに対する債権というものがあるんだ、この交渉についてはまだやっておらない、こういうように解釈してもよろしゅうございますか。たとえば日韓会談の場合においては、請求権の相互相殺をやろう、こういう点もいろいろ交渉されたような過去の経過があります。そういう点から言った場合において、債権の問題については当然日本政府としては交渉しなければならないと思うのですが、池田さんがサリット首相に会うというような、両国の巨頭間における話し合いがあったということになると、債務は払うが債権も返してもらいたい、こういうことを池田さんは交渉されておられると思うのですが、この点について、池田さん、いかがでございますか。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、ビルマの鉄道問題その他がございまして、私は、日・タイ間の特別円以外の問題につきましては、別途話をすることで、この問題には触れておりません。もっぱら特別円の問題で話したわけであります。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、債権の問題は別途交渉する意思である、このように了承してもよろしゅうございますか。別途今後交渉するつもりであるというお話ですから、これは重要な点ですが、総理大臣、よろしいですね。
  190. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題は、平和条約の第十六条によりまして一応解決したという見解を米英等は持っておるのでありますが、わが方はこれに対しては異議を唱えておる。従って、この問題は米・英・タイ三国の関連する問題でございますので、今後交渉して参りたい、こういうように考えております。
  191. 岡田春夫

    岡田(春)委員 タイに対する債権ですからアメリカと相談しなくてもいいんですよ。タイと相談したらいいのです。タイに対する債権ですから。あなたは、今度は、サンフランシスコ平和条約がありますから、こういう答弁をするでしょうが、それでは、何もアメリカイギリスだけで相談しないで、連合国全体で相談しなければならない。問題は、債権があるということについてタイと話し合いをされるつもりがあるのかどうかということを伺っているのです。その点は、外務大臣、どうなんですか。
  192. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これについては、御承知のように、十六条で一応日本中立国あるいは連合国に対して敵対国であった関係はケリがついておる、こういうことになっております。しかしながら、わが方としては、タイ側において余分に取っておるという問題もあるのではないか、こういう見解を持っておりますけれども、これは、タイ側が、米英の関係している問題だから、こう言っているという意味でございましてやはり、向こうがそう言っている以上は、タイ側のそういう考え方も頭に入れて話をするということが必要になろうかと思いますが、いずれにいたしましても、この問題については、特別円関係が一段落しないことには、何としても先方はこれに乗ってこない、こういう事情だったことは御承知の通りでございます。今後の問題と考えております。
  193. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何かタイ連合国とかなんとか言うのですが、小坂さん、あなたこの前言われたけれども、タイ連合国一つですか。違うでしょう。
  194. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは先ほど条約局長答弁した通りであります。
  195. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どういう答弁ですか。
  196. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど申し上げたと思いますが、連合国ではもちろんありません。ありませんが、いわゆる純粋の敵国ということでもないような関係だと思います。
  197. 岡田春夫

    岡田(春)委員 十六条で、「連合国のいずれかと戦争していた国」、これに当たるわけでしょう。
  198. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 さようでございます。しかし、戦争しておった国でございますけれども、やはりその後宣戦をしたことを取り消したりしておりますので、その辺にいろいろの関係があるわけでございます。
  199. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関係があるとおっしゃるのは、サンフランシスコ条約のほかの規定に関係があるのですか。これ以外にないじゃありませんか。十六条のこれでしょう。
  200. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 十六条だけでございます。
  201. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは伺いますが、この第十六条のこれの場合には除外事項がありますね。十四条の中に除外事項がございますが、こういう関係から言って、何か交渉されましたか。当然これは交渉の対象になる。
  202. 中川融

    中川政府委員 たとえば、大使館の財産でありますとか、文化財産でありますとか、宗教財産であるとか、こういうものは除外されるわけでございます。これらの問題も含めまして、これはタイと米英とのいわゆる三国協定が一九五三年にできましたときからタイ側に折衝しておるのでございますが、らちがあかないわけでございます。
  203. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは先ほど答弁とちょっと違うのです。中川さんと小坂さんと違うと思うのです。小坂さんは、これからタイの請求権を交渉するというお話であった。池田総理もそうなんです。ところが、中川さんは、もう交渉はやっておるのだが、まだ解決がつかないのだという答弁だが、これは違うのですか、どうなんですか。
  204. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来からやっておるわけでございます。しかしながら、タイ側が特別円の問題が解決しないということでこれに乗ってこない。そこで、この問題を今後やる。従って、同じことを言っておるわけでございます。引き続いてやられると言う方が正確だと思います。
  205. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、三十七年の今度の池田さんの協定を結ぶのにあたって、タイ側というものは、自分が間違っておったのだ、だから今度は三十年協定をやめて九十六億円を無償供与にしてくれ、こういうタイの弱い立場にあるにもかかわらず、この点については、ああけっこうです、日本の方は、それは上げましょう、こういうことだが、日本の債権については、こういうときこそ交渉してまとめるのがあたりまえじゃありませんか。その債権の問題については、ほとんど交渉しておられないのでしょう。アメリカイギリスと話したかもしれぬ。タイとは交渉していないのでしょう。それがほんとうなんでしょう。どうなんです。
  206. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この問題は、在タイ資産というのは、昭和二十八年に平和条約第十六条に基づきまして処理されておるわけであります。しかし、その処理のやり方につきまして、わが方は異議がございますので、英米並びにタイに対してそのときから交渉いたしておりますが、現実問題としましては、タイは、自分の方は何も残っておらぬということを言っておるわけであります。イギリスの方は、必ずしもそうでないということを言っておりまして、この問題は、イギリスタイ日本と三国の非常に複雑な問題になるわけでございまして、そこで、この特別円の交渉のある間は一時この懸案の交渉を中断しておりまして、これが解決いたしましたので、すぐまたこの交渉を再開するということに今なっておるわけでございます。
  207. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁は、一応そういうお答えは伺いましたけれども、その点に関係ない債権の請求権はあるでしょう。十六条で明確になっている点での請求権があるじゃありませんか。そうでしょう。たとえば外交官の所持品その他、——ここに私外務省の資料を持っております。外務省の資料昭和二十三年の「戦後におけるシャムの政治経済情勢」、これを見ると、その当時、大使館員は、大使官邸及びこれに隣接する大使館事務所に禁足されて、一般在留邦人は九月十七日よりこれを各自宅に軟禁し、財産その他一切は押収されて、所有現金も生活費として二百バーツしか渡されないで、抑留所へ運ばれた。一般の住民の問題は、これは一応連合国の問題として問題になるとしても、外交上の問題というのは、サンフランシスコ条約十六条に関係なしに解決できる問題じゃございませんか。そうでしょう。そればかりではなく、大使館の建物それ自体に対してだって問題はないじゃありませんか。こういう交渉をされたのですかということを伺っているのです。
  208. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その点につきましても交渉いたしております。タイ側は約二千五百ドルほどをその財産としていつでも払う用意があると言っておりますが、全体の問題につきましてややまだ疑義がございますので、一緒にして解決したいと思っておるわけでございます。
  209. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、外交官あるいは国の財産、これらの問題に関するだけは二千五百ドルという向こうの言い値である、この点だけは今まではっきりそれだけになっている、しかしそういうことで交渉が進んでおらない、こういうことですが、これはアメリカイギリスとの関係とは違うのだ、こういうことですね。
  210. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その大使館関係の財産二千五百ドルにつきましては、先方はいつでも払うと言っておりますが、ほかの問題がございますので、その問題も一緒にして今後やるつもりでおります。
  211. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その他の問題もあるそうですか、この請求権の問題は、戸叶さんから毛関連をして質問したいと言っておりますので、しばらく戸叶さんから質問をしていただきたいと思います。
  212. 森下國雄

    森下委員長 関連質問通告があります。これを許します。戸叶里子君。
  213. 戸叶里子

    戸叶委員 在タイ日本財産の請求権の問題だけに限って二、三点伺いたいと思います。  池田さんが、この間の本会議で森島委員質問に対して、一部に少額の財産権の補償もありますが、これは外務大臣より申し上げてもよろしい、こういうふうな答弁をされました。そうして、その後外務大臣からの御答弁は何にもなかったわけでございます。池田さんがこういうふうに答弁されました頭の中にはどういうことをお考えになっていらしたか、念のために伺いたいと思います。
  214. 池田勇人

    池田国務大臣 私が聞いておりますのには、泰緬鉄道の問題があるのであります。それから終戦当時の今の大使館の問題等もございまして、私が申し上げたのは泰緬鉄道等でございます。
  215. 戸叶里子

    戸叶委員 それは金額としてどのくらいのことを頭の中にお入れになっておりますか。
  216. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この泰緬鉄道というものは、昭和十七年に軍事目的のために作ったものでございますが、これはバンコックの西からビルマの国境までたしか四百五十キロと申しましたか、現在走っておりますのはその三分の一ぐらいで、しかも赤字になっておるわけでございまして、これは、作ってあるから、残っておるからともかく走らせておる。しかし赤字だ。しかも線路も三分の一しか残っておらぬ。タイに言わせますと、これが唯一の残ったものだ、しかも、こんなものはあるから仕方なしに住民のために走らしている、しかも赤字だ、これは何ら積極財産じゃない、こう言っているわけでございまして、作るときに幾らかかりましたかということは非常にむずかしい計算になります。いろいろなまだ負債が残っておったとかございますので、どれだけかかったかはちょっとはっきりいたしませんが、現在価値はないというのがタイの言い分でございます。
  217. 戸叶里子

    戸叶委員 それはタイの言い分であって、タイが赤字であるとかなんとか言っても、そのことを私は伺っているわけじゃないのです。私は外務省の出した本を読んでみましたところが、非常に骨の折れる仕事であったけれども、この建設が皇軍の——その当事の軍隊です。皇軍の手によって始められた、そうして、それはバンコックから西方七十キロのバンボーン駅とモールメン南方八十キロのサンヒュザアット駅とを結ぶもので、延長約三百五十キロに及ぶ、途中いわゆるテナセリウム山脈を横断するので、この地方は海抜五千尺の大ジャングル地帯であり、従来タイ・ビルマ両国政府によってしばしば建設計画を立てられたが、ついに今日まで実現を見なかったのを、日本によって非常に苦労をして作り上げたのだということが説明されてあったわけでございます。そこでこの問題を伺ったわけですけれども、今は大して役に立っていないというふうに言われるのですが、在タイ日本財産というものの交渉に当たるとするならば、大体これは幾らぐらいのものと見て交渉をされていたのか、この点を伺いたいと思います。全然金額もわからないで在タイ日本財産というものの交渉はあり得ないと私は思います。
  218. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これが幾らぐらいかかったかということになりますと、たとえば、日本軍将兵一万五千名、現地労務者約十万名、俘虜五万五千名を使い、それから、レール、まくら木その他はインドネシア、マレー等にあったものも持ってきた、——はがして持ってきたものもございます。そういうことに関連しまして、これはしかも戦後敵産としてイギリスが没収いたしまして、そうして、こういうものに対しまして、この在タイ資産の中からこれらの支払いを行なっております。そうして、敵産管理を解除しましたときにこれがタイの手に渡っておるという経緯になっております。幾らかかったかということになりますと、そういう労務をどういうふうに評価するかとか、資材もそういうふうに各地に現にある鉄道をはがして持ってきたというふうなことになりますので、非常に計算はむずかしいのじゃないかと思います。ただし、これに対しまして、日本の在タイ資産の中からイギリス側にある程度のものがこの費用として資材費並びに労務費として渡っておる、敵産処理としてイギリスがそれだけの金をこの中から使っておるということは事実でございます。
  219. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、お伺いいたしますけれども、在タイ日本資産として、大体この泰緬鉄道以外にどのくらいのものがある、どのくらいの金額があるということで交渉をされたのか、この点を伺いたいと思います。先ほど伊関局長が二千五百ドルとおっしゃいましたが、これは、在外公館の人たちの、平和条約によって免責条項で当然取れるその金額だけを御指示なさったのだと思いますけれども、いかがでございますか。
  220. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 在タイ資産につきましては、先ほどの二千五百ドル、これは外交官の財産でございますから、それを除きまして、これはイギリスが敵産処理をいたしたわけでございます。英国はタイ無効宣言を認めませんから、敵産処理をいたしまして、そのイギリス側からの資料によりますと、二百七十六万五千ポンドと覚えております。二十七億六千万円、これが在タイ資産の総額になっております。
  221. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと、二百七十六万五千ポンドと言ったのですが、ドルでどのくらいになりますか。
  222. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 二百七十六万ポンドでございます。五千がよけいでございました。
  223. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、何ドルになりますか。
  224. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 二十七億六千万円、それがイギリス側が計算いたしました在タイ資産の総額でありまして、その中に今さっきの二千五百ドルも含まれておることになります。
  225. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、イギリスがそういうふうに言われたその金額日本はもととして、そうしてタイと今後も交渉を続けるということでございますか。
  226. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは非常に複雑な関係になりますが、在タイ資産は、その外交官財産を除いて、平和条約第十六条によって国際赤十字の手を経て連合国の俘虜の手に渡るべきことになっておるわけでありますが、現実に国際赤十字に参りましたものは、その中から九十万ポンドでございます。二百七十六万ポンドのうちから九十万ポンドが参りまして、残りは泰緬鉄道関係に使われておるわけでございます。  そこで、この問題は、イギリス関係があり、タイとも関係があるわけでございますが、イギリスの方の言い方は、十六条でもっていずれにしろこれは連合国が受け取るものだ、ところが連合国の方は九十万受け取って満足したので、実際問題としまして泰緬鉄道の費用に残りがなったということで、連合国の俘虜がこの泰緬鉄道の建設に使われておる、この未払い賃金に一部行っており、それから、マレーとかあるいはインドネシア等からレールその他現物を持ってきておりますから、それらの費用に支払われて、いずれにしろ連合国の方にこの金が全部行っておる。そうしてタイには鉄道が残ったわけであります。だから、タイが得をしたといえばその鉄道が残っておるということになるのですが、そこで、先ほど申し上げたように、タイの方は、この鉄道は残っているから仕方なしに赤字でも走らしている、ほしいものでも何でもないのだ、こういうのがタイの言い分で、非常にこんがらがった問題になっているわけでございます。
  227. 戸叶里子

    戸叶委員 九十万ポンド赤十字に行ったとおっしゃいましたね。それは何の費用として行ったのでしょうか。
  228. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 それは、平和条約第十六条でございまして、連合軍の俘虜が苦しんだ、それに対する慰謝料ということになっていると思います。
  229. 戸叶里子

    戸叶委員 その問題を伺います前に、私は在タイ日本資産の総額というものが一体どのくらいであろうかと思って大蔵省に質問をしてみました。大蔵省から書いてもらったのによりますと、こう書いてあります。「公有財産については、在バンコックその他の在タイ公館の家具、什器、自動車等(不動産はなし)が大使館員の持ち帰り資料によれば約六十三万バーツであることが判明している。」、すなわち約六万三千ドルだと言われております。そういうふうに私には説明されました。そして、タイは、「昭和二十八年赤十字国際委員会に二百五十万ドルを引き渡したが、この引き渡し後にも日本の資産が残存していたかいなかについては、上述したごとく財産がどのくらいあるかよくわからなかったが、わが方に在タイ資産についての確たる計数がないため不明であり、またタイ側はわが方の質問に対して残存資産なしと主張している。」、こういうふうに、私が質問しましたのに対して答弁をしてくれたわけでございますけれども、この数字は今外務省の伊関さんのお答えになった数字と違っておるわけですが、一体どちらが正しいわけでしょうか。
  230. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 違うところは、今の六万バーツでございますか……。
  231. 戸叶里子

    戸叶委員 六万三千……。
  232. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 六万三千バーツといいますと、二十バーツが一ドルですから……
  233. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。そのときに大蔵省は、一ドルは幾らですかと聞きましたら、九・九六八バーツです、従って大体十バーツが一ドルであるから六十三万バーツは六万三千ドルであります。こういうふうに答えたわけです。
  234. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 失礼いたしました。いずれにいたしましても、それは、そのときに大使館員、領事館員が置いていきました財産がそれだけのものだというので、買った値段でありますか、あるいは消耗分をどういたしましたか、そう申告しておりますけれども、現実に何年かたちまして敵産処理をしてそれを売ったわでありますが、売って得た代価は二千五百ドルになっておるという点でございます。  それから、総額につきまして、大蔵省はわからぬと申しておりますが、私の方もはっきりいたしておりません。これは、イギリスが敵産処理をやった、そのイギリスの報告によって二百七十六万ポンドという数字が出ておるわけでございます。
  235. 戸叶里子

    戸叶委員 総理大臣もお聞きになっておいていただきたいと思いますけれども、こういうふうな今後交渉すべき基礎となる数字の根拠というものが大蔵省と外務省とで違うというようなことでは、私ども非常に不安にたえないと思います。従って、九十六億円を払うというのであったならば、当然そういう問題は統一しておくべきじゃないかと思いますけれども、総理大臣、いかがお考えになりますか。
  236. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は、十六条の関係等々がございまして、これは正式に内閣の方へお問いになれば内閣の方で両省の資料をとりまして返事をするわけでございますが、何と申しましても終戦後の状況でございまして正確な数字ができておりません。従って、ある程度違うことはやむを得ないと思います。
  237. 戸叶里子

    戸叶委員 私は今総理大臣から大へんに驚くべき答弁を伺いました。数字が違うのはあたりまえだと思うと言われる。それじゃ一体日本の財産がタイに大体幾らあるかという考え方は、タイなりイギリスなりの見方は違うでしょうが、しかし、日本の国内においては当然私は統一されていなければいけないと思います。大蔵省と外務省の数字が違うなどということは私は許すことはできないと思うのですけれども、もう一度念のために伺いたいと思います。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 それは、大蔵省の方がどういう資料でやりましたか、あるいはまた外務省がどういう資料でやったか、それを聞いてからでないと、私はここでどちらがどうこうと言うわけには参りません。
  239. 戸叶里子

    戸叶委員 私は何も意地悪するつもりじゃないのですよ。ほんとうにすなおな気持で日本タイとの間の協定を今審議して、九十六億円を国民の税金で払うというのですから、やはりそういう日本の持っている在タイ財産の請求権というものも、今総理大臣自身も放棄しないで今後交渉すると言われたのですから、もっと正確な数字を持って臨んでいただきたいということなんです。しかも、タイ国に対して九十六億円払うならば、私どもとしては、当然この在タイ財産というものを差し引くなり話し合いに先に出すべきであって、総理のように、あとになってこの問題は話すということになりますと、もう全然話ができなくなるのではないか。タイの方であとから払いますよなんということを言うかどうかということも問題だと思いますけれども、あとになってそれが取れるという見込みがおありになると思っていらっしゃいますか。この点を伺いたいと思います。
  240. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 話が少し誤解があるかと思いまするが、外交官の持っていた財産、これが六万ドルになるという申告によって大蔵省は計算されているわけです。ところが、タイ側では、さっき申し上げたように、千ポンドくらいのものと、言っておるので、まあそれでは打ち明けた話が問題にならぬというので、こっちはもちろんそれを承認しているわけではないわけでございます。そこで、ただ向こう側はこう言っておる、こういう説明であったと思います。従って、私どもは、なかなか複雑なむずかしい問題でございますけれども、それについては大蔵省と交渉の段階になりましたら十分それを調整してやらなければならぬことはもちろんでございます。   〔発言する者多し〕
  241. 森下國雄

    森下委員長 静粛に願います。
  242. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 しかしながら、タイ側では、特別円の問題が解決しない限りその話には乗れない、こういう態度をとっておるわけでございますということは、先ほど説明した通りであります。
  243. 戸叶里子

    戸叶委員 交渉の段階になったらその数字をそろえるというのでは、どうも日本国民としては納得できないと思うのです。やはり、日本の国で正確な数字を持っていて、その数字で向こうに交渉をすべきであるということが一点。私どもとしては、こういうふうにタイに九十六億円無償で上げるとするならば、当然その前にこの問題を解決すべきではないかというのが国民感情だと私は思います。その国民感情を無視して九十六億円払うということ自体にも私は大きな問題があるのじゃないかと思いますけれども、この点は平行線になりますから私はこれ以上主張しません。ただ、数字くらいは少なくともそろえておいていただきたい。池田さんのように、違っているのはあたりまえですなんて言っていばられるのでは、私どもはどうも納得がいかないということをはっきり申し上げておきたいと思います。  それから、もう一つお伺いしたいのですが、先ほど伊関局長がこういうことをおっしゃいました。二百七十六万ポンドのうち九十万ポンドは捕虜なり何なりに渡すために赤十字の国際委員会に引き渡した、こうおっしゃいましたね。その通りでございますか。
  244. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この二百七十六万ポンド、これが総額だということになっておりますが、平和条約第十六条によりますと、これを全部そのままかあるいはそれを換価したものが国際赤十字に行くことになっておるわけなんでありますが、実際にはそのうちから九十万ポンドだけが参りまして、あとのものはイギリスの方が敵産管理中に俘虜の未払い賃金に使ったり、あるいは泰緬鉄道の資材費として未払いのものに充てたわけでありまして、それは日本の知ったことではないのだというのが英米側の言い分でありまして、日本はいずれにしろ全部取られるものなのだ、それを国際赤十字に渡したのは九十万ポンド、それ以外のものは俘虜の未払い賃金と資材費に使ったのだ、日本から見ればどっちみち権限のない、もう主張できない金じゃないか、これは、連合国の間で相談して、そして、十六条通りではないけれども、十六条ならば全部なんだが、その方は九十万ポンドで満足したが、やはりその他の俘虜に対するもの、資材費すべてこれ連合軍の方へ行ったわけですから、連合軍の間でこういうふうに片づけたので、日本としてはもともとないものだから、これで了解してくれというのが連合軍の言い分なんであります。  それから、今の数字の点では、決して外務省と大蔵省が違っておるのではございません。大蔵省は調べております。外務省の方は先方の言い分を申し上げたので、これは目下交渉中ですから、これで満足するならば、それだけでももらっておるわけなんですが、二千五百ドルではとても満足できませんし、それから全体の関係もございますので、まだ未解決のまま残してあるわけでございます。
  245. 戸叶里子

    戸叶委員 まあ泥試合になりますから申し上げませんけれども、伊関さんがそういう答弁をなさるならば、議員として質問しているのですから、初めから親切にそうお答えになったらいいと思うのです。われわれはこう考えるけれども、大蔵省はこう言っているらしいというくらいのことはおっしゃるのが普通ではないかと私は思います。ところが、池田さんは、違っているのはあたりまえだなんというふうに言われますから、私どもは困ると思っているわけです。  そこで、先ほど伊関さんがおっしゃいましたけれども、九十万ポンドは国際赤十字へ行って、残りはイギリスがいろいろと処理をした。こういう連合国側の言い分というものを日本は了承したわけでしょうか、了承しないのですか。
  246. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 それは了承いたしておりません。これは、やり方がまず違う。日本に選択権があるのに、その選択権が行使されておらぬというところに、十六条の関係には問題はございます。それから、タイとの関係におきましては、そういうふうに敵産処理として全部連合国の方が処理してしまった、自分の方には何も残らぬというのがタイの言い分でございます。しかし、泰緬鉄道というものが現にあるじゃないかというのがわれわれの考えで、泰緬鉄道は残っているじゃないか。ところが、この鉄道は赤字で意味がないんだということで、この問題はアメリカはあまり関係ございません。イギリスタイ日本と、この三国の関係でありまして、二十八年以来何回か交渉いたしまして、それから特別円のこの問題が起きましたので、しばらく特別円問題の方を先にいたしまして、これが解決いたしましたので、また、この解決いたしました直後、二月の初めに、タイに対しまして、この問題をまた取りしげるということをすでに通報いたしてございます。また、イギリスに対しましても、この財産処理のもう少し詳細なことを知らしてくれということを交渉いたしております。
  247. 戸叶里子

    戸叶委員 九十万ポンドを赤十字に渡したというときに、この九十万ポンドは何を基礎にして九十万ポンドを赤十字に渡すということに対して、日本に了解を求めてきたかどうか、この点を伺いたいと思います。
  248. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この九十万ポンドを渡したというのは、そのときに九十万ポントしか残っておらない、——二百七十六万ポンドのうちから、さっき申し上げました俘虜の未払い賃金とか、いろいろなものを払ったので、残っておったものを国際赤十字に渡したというのがどうも実情のようでございます。  それから、連合国間でタイにおけるこの問題の処理をいたします前に、きわめて簡単に口頭でもって、こういうことをやるということを言ってきております。それに対しまして、日本は、これは日本も関心があるので、その会議にオブザーバーを出したいということを申しましたら、それはどうもおもしろくないというふうな返事がございまして、そのうちにこの協定がもうできてしまった。でき上がってから通報を受けたという、その点にも日本としては不満があるわけでございます。
  249. 戸叶里子

    戸叶委員 泰緬鉄道はイギリスタイ日本との関係があるということで、関係は今後も残っているわけですね。全然残っていないわけですか。その関係を教えていただきたい。
  250. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ですから、この問題は日本タイイギリスと三国密接な関係があるわけであります。
  251. 戸叶里子

    戸叶委員 そのイギリス関係があるというのは、どういうことなんでしょうか。
  252. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 本来ならば、全額が国際赤十字に行っておりますと、これは一番問題ないわけでございますけれども、イギリスが敵産処理をしております間に、九十万ポンドしか残らぬ。ですから、それ以外のもの、——もちろん、この敵産処理管理委員会の費用とか、あるいは現地で小さなクレームがあって、たしか五十万ポンドぐらいはそういうものに使われているのじゃないかと思います。約五億円ぐらいになりますか、そういうものが現地で小さなクレームとかあるいは管理委員会の費用に使われたということを言っておりますが、それ以外は、主として泰緬鉄道のためにイギリスが使ったというのがタイ側の言い分でありまして、イギリスの方はそういう詳しいことはあまり申しませんで、いずれにしろ、これはもう全部平和条約で日本のものじゃないのだ、それからあとをどうしたということは、これはまあ事前にも一応は通報したのだ、それで、ともかく日本は実質的には何らの主張はできない、形式には問題があるにしても、そういうものだから、もういいじゃないかというのがイギリスの言い分であります。
  253. 戸叶里子

    戸叶委員 今伊関局長が少し申し述べられましたけれども、この平和条約の十六条を読んでみますと、「日本国は、戦争中中江であった国にある又は連合国のいずれかと戦争していた国にある日本国及びその国民の資産又は、日本国が選択するときは、これらの資産と等価のものを赤十字国際委員会に引き渡すものとし、」と書いてあるわけです。従って、「日本国が選択をするときは、」というと、日本国に選択権があるはずです。品物にするにしてもお金にするにしても。それに対して日本に一体相談があったのか、相談があって、そうしてそれを日本が承知しないのをしたとするならば、平和条約違反ではないかと思います。
  254. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そこで、先ほどから申し上げておりますように、実質的な面にも形式にも問題があるということを申し上げておるわけでありまして、その相談があったかどうかという点につきましても、事前に簡単な通報がございまして、その会議に日本も参加したいと言いましたら、それに対してはっきりした返事がないうちに会議が行なわれまして結論が出てしまったわけでございます。
  255. 戸叶里子

    戸叶委員 平和条約で、はっきり日本国に選択権があるとされているにもかかわらず、簡単な通報があっただけで、しかも日本が知らないうちにそういうことをされた、日本がそこに参加しないでされたというようなことが、一体日本国として認めていいものかどうかということを国民は疑問を持たなければならないと思います。この選択権というものが、はっきり平和条約で約束されながら、そういうふうに無視されていいものでしょうか。
  256. 中川融

    中川政府委員 日本国は、そういう三国協定を唯々諾々として承知しているのではないのでありまして、五三年以来これに対して抗議をしてどういうことでこういうことをしたのかと、もう数回にわたってこれに対して申し入れをしておるのであります。しかしながら、先ほどから外務大臣が言われましたように、タイ特別円問題が片づかないために、肝心のタイ調査を行なうことが実はできなかったわけでありまして、今回この協定によって国際関係を改善することによって、はっきり事情を確かめることにしたい、こういうのが今の政府考え方でございます。
  257. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、今の問題は非常に重大な問題ですから、総理大臣に御答弁を願いたいと思います。今の質疑応答をお聞きになっていらしておわかりだと思いますけれども、平和条約の十六条で、はっきり、日本の財産というものの選択権、どういうふうにするか、赤十字へそのまま渡すとかあるいはお金にして渡すとか、そういう選択権があるにもかかわらず、その日本の選択権というものが無視されてしまって、そうして適当にイギリスタイとの間の話し合いでやられて、あとからその問題について話をするんだ、特別円の九十六億円を返さなければその問題は解決できないのだとタイが言うんだから、仕方がない、こういうことで一体日本国民は黙って九十六億円を払う気になるでしょうか。冷静に私は考えていただきたいと思うのです。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約第十六条によりまして、日本中立国に対してこれをやる、国際赤十字その他に出している。イギリスが敵産管理をいたしておりますときに、十六条による日本の承諾を口頭で言ってきて、日本が断わっている、この事実はあるのであります。そこで、この問題を解決すべく従来からやっておったのでございますが、なかなからちがあかない。今の泰緬鉄道の問題等々ございますので、これを交渉しておったのでございます。これはイギリスが入っています。従って、イギリスとの関係もございますが、私といたしましては、それは別個の平和条約の問題だ、われわれは旧同盟国のタイ国との特別円の問題はこの際片づけよう、片づけまして、そうして、今のイギリスタイ日本との平和条約十六条の問題は別個の話し合いにしていこう、こういう考えで進んでおります。
  259. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、今の御答弁に満足することができません。なぜならば、支払いをするのは日本です。日本の立場に立って、やはりその主張すべきものは主張すべきであって、イギリスがこう言うからこうとかいうべきじゃないと思う。しかも、講和条約に対してはイギリスもこれを認めておるわけです。日本に選択権があるということを知っているわけでしょう。知っているんだったら、なぜこの選択権の問題を先に解決なさらないのですか。先に解決しないで、タイがなかなか応じてこないから、だからタイの言うことを先に聞いておいて、あとからやると言ったって、これは国民が納得できない問題ではないかと思います。
  260. 池田勇人

    池田国務大臣 タイが応じないという問題ではございません。先ほどアジア局長が言っておるように、これは十六条によって日本は放棄する、(戸叶委員「放棄できないでしょう」と呼ぶ)——いいえ、財産は放棄することになる。ただ、その財産は、換価して、そしてこれを国際赤十字に出すか、あるいは品物をそのまま出すか、こういうことの選択権があるわけです。よろしゅうございますか。イギリスの方で見れば、日本は十六条で放棄しているのだから、選択権がどうこう言っても、もう日本には返ってくる財産ではないじゃないかということで、こういうことが十六条の規定なんでございます。ただ選択権だけです。現金で出すか、実物で出すかというだけの問題でございます。そこで、この問題は敵産管理をしておるイギリスとの関係でございますので、イギリスがいかように言おうとも、われわれは選択権があるということを主張して、これは別個の問題として取り扱うべきです。イギリスタイと相談して処分をしたわけです。だから、このイギリスタイとの関係が済まなければ特別円を払わないのだ、解決しないのだということは、これは価値判断の問題です。私らは、特別円の問題をここで片づける、そしてこの平和条約第十六条の問題は別にイギリスタイと話をしてやる、こういうことで進んでおるのであります。
  261. 岡田春夫

    岡田(春)委員 では、総理大臣、今の点でまだわれわれ納得できないのです。総理大臣、まず第一点として伺いますが、十六条というのは、日本に財産は返ってこない、どうせ処分するんだから、それはその通りですよ。しかし、それだけではないのです。あなた御存じでしょうが、十六条では、その財産を処分したお金というものは全部国際赤十字に渡すということなんですよ。そういう規定なんです。だから、返ってこないという点も事実だが、それだけではない。全部お金は赤十字に渡らなければならない。その点では、先ほど伊関アジア局長答弁しているように、その二百七十万ポンドの中で九十万ポンドだけは赤十字に行っている。残り百八十万ポンドというものは赤十字に行ってないわけですね。これは明らかにサンフランシスコ条約の十六条に違反しているではないかということを戸叶さんが聞いている。これはどうでございますかと言うのです。どうですか。
  262. 池田勇人

    池田国務大臣 そこで、アジア局長が言っているように、二百七十万ポンドあったのだが、いろいろ管理費用その他に要って、九十万ポンドしか残りません、イギリスはこう言っている、こういうのでございます。
  263. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ですから、先ほどの管理という点もあるでしょう。それから泰緬鉄道の捕虜の経費に払ったというのもありますね。こういうものは国際赤十字に払ったのじゃないわけですね。それは池田さんおわかりの通りだ。そういうように使ったということは、これは十六条に違反しているじゃないかと言っているのですよ。その点は簡単な点ですよ。総理大臣、そんなこと何もこだわる必要ないでしょう。——だめだめ、総理大臣に聞いている。
  264. 池田勇人

    池田国務大臣 条約局長から答えさせます。
  265. 中川融

    中川政府委員 十六条を見ますと、まさしく、岡田委員御指摘の通り、これは俘虜に行くということになっておるわけであります。しかしながら、同時に、十九条の規定があるのでありまして、戦争行為に基づくあらゆる連合国の措置を日本は承認しておるのであります。従って、どういう実態であったかということを確かめることがどうしても必要なんでありまして、もしも平和条約発効以前にイギリス日本の財産の一部分を自分で処置した、自分で取ってしまった、あるいは泰緬鉄道に使ってしまったということであれば、これは日本から言えば必ずしも満足することではありませんが、しかし、もしイギリスが平和条約発効前にそういう措置をとっていたなら、そしてこれは戦争に基づく行為としてとったということであれば、十九条で日本は請求権を放棄しているということになるわけでございまして、そこらの事実関係がどうであったかということを確かめることが本件の解決に非常に重大なんでありますが、その事実関係の究明が、今の日・タイ関係、従来の関係でこれができなかったわけでございまして、どうしてもそれはタイがなかなか情報をよこさないのであります。従って、どういう事実関係であったかを確かめること、それによって、イギリスめ責任がどの程度であるか、あるいはタイの責任がどの程度であるか、平和条約との違反はどの程度違反しているか、あるいは全然違反してないか、こういうことがおのずから出てくるのでありまして、これをきわめないと、在タイ財産問題の解決が実は方針もなかなか立ち得ないわけでありまして、そこにこの困難性があるわけであります。   〔発言する者あり〕
  266. 森下國雄

    森下委員長 静粛に願います。
  267. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことではわれわれ了解できません。あなた、そういうことを言われるが、タイに対して資料要求するというのは、イギリスが使ったというのにタイに要求したって出るわけがないじゃないか。ごまかしを言っちゃだめですよ。イギリスが使ったのなら、なぜイギリスに聞かないのですか。タイに聞いて返事がないのはあたりまえです。——お待ちなさいよ、まだ質問は終わってないですよ。しかも、あなた、どうですか。さっき小坂さんがはっり言っているじゃないか。小坂さんは、十六条関係以外はないと私に言ったじゃないか。あなた、十九条を今になったら思い出して、牽強付会に理由をつけたってだめですよ。交渉が始まってから何年たつのですか。終戦後今日まで、昭和二十年から昭和三十七年まで十七年交渉したのですか。あなた、しないでほってあったのでしょう。これは交渉しないでほってあったのがほんとうですよ。こういう点は、資料を明らかにしてもらわない限り、われわれ審議できません。こういうことではだめです。こういういいかげんなことばかり言っているのではだめですよ。
  268. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私が先ほど十六条以外ないと言ったのは、日本タイ関係を言っているのでございます。それで、今の十九条の問題は、イギリスの処分に対して日本が何か言うことはできない、これは十九条関係である、こういうことで言っているわけであります。そこで、問題を明瞭にするためにもう一度申し上げますると、日本の在タイ資産というものは二百七十六万ポンドである、こういうことの決定がなされまして、それがまるまる国際赤十字に行けば、あるいはもっと問題が少ないかもしれない。しかし、九十万ポンドというものが十六条関係で行っておるのですね。しかもなお、それが現物で行くか、あるいは等価のもので行くか、その選択権は日本にあるわけでございますが、それについての日本の選択権は認められていない。こういうことで、日本はこれは認めていない、すなわち、三国協定でやられたことは認めていない、こういうことを言っているわけであります。しかし、一方平和条約の十六条の関係では、四百五十万ポンドというものは、これはタイ以外の財産の処理として行なわれて、しかも九十万ポンドというものはタイ関係で出されたということで、平和条約第十六条の関係日本が完全に履行した、こう認められておるわけでございます。従って、私どもは、条約局長が申しましたように、この九十万ポンドというものは何がゆえに二百七十六万ポンドの中から払われたのか、泰緬鉄道が三十五万五千ポンドであるとか、いろいろ話は聞きますけれども、それがどういう資料なのかということを突きとめたいわけでございます。ところが、日・タイ間の関係は、特別円の第二条の問題をめぐって、なかなか先方がそういう資料を出すようにならない。そこに問題があったわけでございますが、今後はそういう資料出してもらい、イギリスとの間の関係もありますから、そちらとも十分打ち合わせてこの問題の解決に努めたい、こういうことなのでございます。
  269. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう答弁をされると、われわれますます了解できないのです。イギリスが使ったということは、十九条の何によってどういうようになるのです。イギリス自身が——ちょっとお待ち下さい。あなたの方で、小坂さんが今までにだいぶはっきり言ったように私聞いているのだ。二百七十万ポンドの中で九十万ポンドしか行っていない、残り百八十万ポンドをイギリスがこういうように使ったというのは、私たちの聞きたいのはこれなんです。この百八十万ポンドについて、日本政府は、これはサンフランシスコ条約に違反していると思って交渉しているのか交渉してないのか、これを聞いているのですよ。あなた、さっきから、それはどうも適当ではないと思う、こういうことで交渉はしているのだというお話でしょう。適当でないのなら、サンフランシスコ条約に違反していると思って交渉している、そう言ったところで、あなたの方のえらく尊敬しているイギリスアメリカに別に失礼に当たることじゃないじゃないですか。そんなこと簡単な話じゃないか。違反していると思います、だから、交渉しているのですとなぜおっしゃらないのです。それを言わないから、むしろあなた方は屈辱外交をやっていると言われるのですよ。はっきりそれを言ったらいいじゃないですか。それだけのことなんですよ。外務大臣、はっきりお答えなさい。外務大臣の答えについて私は言っているのだから。簡単なことじゃないですか。
  270. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その趣旨の抗議をしておるわけであります。
  271. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことでしょう。いや、あなた、そうこだわってはいかぬですね。趣旨だとか、まるで男だか女だかわからないような言い方をしないで下さい。最後までふん切りの悪い言い方です。やはり、外務大臣ともなったら、国の将来を考える人なんですから、あなた、そんなみみっちいことを言わないで、はいそうでございますと言った方が男らしくていいですよ。  それよりも、もっと伺いますが、伊関さん、だいぶお答えになりたいようですから伺いますけれども、泰緬鉄道というのは、所有権はどこにあるのですか。
  272. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 それはイギリスが敵産処理としまして没収いたしまして、そして敵産管理を解除して、現在はタイのものになっております。
  273. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、タイのものならば、この泰緬鉄道の建設に関する諸経費が百八十万ポンド使われたわけですね。さっきあなたが言われたように、捕虜の給料の未払いとか、いろいろなものに使ったんだということになりますと、タイの所有権に関するものに対して、現在ではそういう百八十万ポンドになるか、その中でどういう内容になるか知らぬが、ともかくのものが使われておる。そのお金をタイのために使ったというのは、明らかに十六条違反でしょう。どうですか。そうでしょう。そういうことでしょう。それは当然でしょう。
  274. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その点は、二百七十六万ポンドのうち九十万ポンドが国際赤十字に渡った点ははっきりしておるわけでございます。これは三国協定ではっきりいたしております。残りが百八十六万ポンドになりますが、これはどうなっているかというのが問題でございまして、これをイギリスタイと両方に問い合わせたわけであります。それに対しまして、タイ側の答弁は、その中から九十万ポンドが資材費、三十五万五千ポンドは労賃未払いに要ったと言う。そういたしますと、百二十五万五千ポンドになりますか、結局約六十万ポンド残るわけでございます。これは敵産管理の諸経費並びにこまかい現地におけるクレームに使って全然残っておらないというのがタイ側の説明でございまして、イギリス側の方に問い合わせましたのに対しましては、資産総領が二百七十六万ポンドあるということだけを返答いたしまして、要するに、これは連合国でやったことで、それを細目についてまで日本側に詳しい説明をすることは、タイイギリスとの関係もあって困るというのがイギリス側の回答でございます。それから、もう一つイギリス側の言い分は、平和条約第十六条に違反するじゃないかということに対しましては、平和条約第十六条の受益国である国が十何カ国あるわけでありますが、この十四カ国と相談をしてこの協定を作ったのだということで、在タイ日本資産管理の英、米、タイの三国協定で処理さたわけでありますが、それは昭和二十八年七月三十日に調印されたと思いますが、その調印をする前に、平和条約関係国と事前協議をして了解を得てやった行為である、だから、平和条約に結果的には違反するかもしらんが、十六条関係者の了解を得てやったのだ、ですから、日本政府関係において残る問題は、換価するか換価しないかという点だけが残るのだが、これは事前に通報した、こういうわけであります。事前通報を受けまして、われわれはオブザーバーを出すということを言ったのに対して、オブザーバーを出さぬうちに、返事をよこさぬうちにやってしまったというのが実情でございます。
  275. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう経過ではますますわれわれは疑惑を持たざるを得ないのです。さっきから私が伺っている点は、あなたの今の答弁で、タイの方からの回答では合計百二十五万ポンドですか、それを泰緬鉄道の関係で使ったというのでしょう。それならば、現在泰緬鉄道の所有権はタイ国ですね。そうすると、百二十五万ポンドのそれだけは財産から使われたわけです。少なくとも百二十五万ポンド・プラス・アルファというものが泰緬鉄道の価値ですよ。その場合に百二十五万ポンドをタイ国において使うということは、いかなる意味においてもサンフランシスコ条約十六条から出てこないじゃないですか。そうでしょう。赤十字に使うと書いてあるのだが、赤十字に使うものを鉄道に使ったといい、しかも連合国ではないタイ国で使ったのだ。これでは明らかに条約違反じゃありませんか。これは、何も交渉の問題どころでなくて、明らかな点ですよ。そういう点を日本政府がはっきりしないから、タイ国からむしろなめられるのです。そういう点に日本政府に欠陥があるのです。こういう点は、九十六億円はただで上げましょう、こっちの取り分はまあまあ交渉はこれからです、これでは池田外交などというものはどういうものかというのは国民にははっきりわかる、こういう点は、池田さん、はっきり答弁して下さい。こういうことじゃ困ります。
  276. 池田勇人

    池田国務大臣 今、この二百七十六万ポンドとか、あるいは九十万ポンドの赤十字にやった分の残りは日本の取り分だとおっしゃるが、取り分じゃございません。取り分じゃない。そうでしょう。(岡田(春)委員「取り分じゃないですよ。そんなことは一度も言っておらない」と呼ぶ)——いや、今取り分と言われた。それは日本は放棄いたしまして、それで、その放棄したものについて、それをお金でいくか、物でいくかということにつきましては日本に相談することになっているわけでございます。だから、相談しなかったという手続につきましてはわれわれは抗議しておりますが、二百七十六万ポンドの相当分が日本に返るとかなんとかいうことは、われわれは十六条で権利はございません。そこで、この二百七十六万ポンドの中で、いろいろの費用が要って、残りの九十万ポンドを赤十字に出した、こう言っておるのであります。そこで、どれだけの費用が要ったかということはまだわからない。だから、その点はわれわれは今抗議を申し込んでやっておるのであって、日本はもうすでに債権を放棄している。日本の取り分じゃございませんよ。その点は誤解のないように。
  277. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、総理大臣ですから、まさか言葉じりをつかまえておっしゃるのではないだろうと思うけれども、私がもし取り分だというように言ったとお感じになったならば、私は誤解を訂正しておきますが、私は百八十万ポンドを取り分だなどとは言っておるのじゃない。さっき言ったのは、請求権一切を言っている。私これからまだ請求権の問題をやるのですよ。請求権についてあなたは交渉しないじゃないか、日本の請求権ですよ。在タイ資産について交渉してないじゃないですか。しましたか。サリットと会ったとき交渉もしないでおいて、要するに日本の在タイ請求権というのは取り分ですよ。この取り分について一言もおっしゃらないで、タイの取り分については、はあはあ払いましょうと言うんじゃ、あまりにも日本の総理大臣は見識がないじゃありませんかと私は言ったのです。あなたは、そこら辺の取り分を百八十万ポンドの取り分と勘違いをしておられる。私は何も訂正する必要はないのです。勘違いをしても、そういうようなことをあなたとして答弁をされるのならば、あなたの外交方針というものをもっとはっきりお知らせ願わなければならない。取り分というものは、これからまだ債権として交渉できるかどうか。第一、あなたの方としてサリットと会ったときに、日本の請求権なり在タイ資産その他の請求権について交渉されましたか。してないでしょう。一言もやってないじゃないですか。
  278. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の請求権というのは、先ほど答えたように、大使館の館員の物等につきましての請求権はございますが、今日本タイにおける財産につきましての請求権はないのでございますよ。一般の財産につきまして……。(岡田(春)委員「それは知っていますよ」と呼ぶ)だから、今それ以外の財産権といったら、大使館その他のごく微々たるものでございまして、これは、今九十六億円のときに、大使館員の持つ二千五百ドルとか、——二千五百ドルですよ。こういうものを交渉するといっても、私は、それはもう当然のことであって、二千五百ドルとかなんとかいう問題を、あるいは大蔵省では六万ドルと言ったとかいうのですが、これは両省で話を詰めてみればわかることですが、日本タイにおける債権というのは何ぞやといったら、そういうごく微々たるものでございまして、タイにおける日本の財産というものは、もう今連合国その他に渡しておる、なくなっておると見るべきであると思います。
  279. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、そういうようなお答えで言えで私はまだまだ伺わなければならない点があるのです。二千五百ドルですよと念を押されたけれども、それはその通りでしょう。その二千五百ドルというものは、これはその当時の値段で二千五百ドルですよ。先ほど、たとえば、四千四百万円を時価に評価し直し、〇・五トンを時価に評価し直してやっているわけでしょう。二千五百ドルというような単純なものではないのですよ。あなたはそうおっしゃるけれども、ずいぶんあなたは日本が要求する権利を捨てるのは元気がいいんですね。気前がいいんですね。あなたは日本の権利に対してはそんなことは交渉する必要がないとおっしゃるけれども、交渉はなさるんでしょうね。それにしたところで、この在タイ資産の泰緬鉄道の関係にしたって、あなた一度もそういうことについてサリットに対してその他の請求権の交渉をやっておられないのじゃないですか。やりましたか。やってないでしょう。
  280. 池田勇人

    池田国務大臣 泰緬鉄道について日本の請求権がございますか。ないですよ。
  281. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いやいや、請求権がないというのは……。
  282. 池田勇人

    池田国務大臣 ないですよ。
  283. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、十六条に基づく交渉が不当であるという交渉をそのときされましたか。
  284. 池田勇人

    池田国務大臣 十六条に基づくものは、タイにおける日本の財産は放棄した、十六条でわれわれが権利を持つものは、(岡田(春)委員「選び方ですね」と呼ぶ)その選び方だけで、もう財産権自体、金で払うか物で払うかというだけであって、その財産の所有権というものはないのです。それを泰緬鉄道の請求権とかなんとか言われては事柄が違います。
  285. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、総理大臣、伺います。それじゃ、サリットとの交渉の中で、先ほどもちょっと答弁が出ておりますけれども、昭和十七年六月十八日に、日本銀行とタイ国大蔵省との借款協定第一条に基づいて、第一条には、日本銀行はタイ国大蔵省に対して日本通貨をもって総額二億円の借款を供与する、こういうことになっている。この借款については、事実この借款を行なわないのではなくて、先ほどからだいぶ問題になりました勘定口座を設けて、勘定口座に二億円という数字を載せて、それだけのことが六月の十八日に行なわれたわけです。これは、あなたのおっしゃる、タイに対する日本の請求権、こういうことになりますね。そのための借款協定なりそういう条約は、特別円と同じように条約はなくなりました。しかし、勘定残高の二億円というものは残っているわけですね。この二億円について、池田さん、どのような交渉をされましたか。
  286. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 事実問題ですから、これは賠償部長からお答えいたしますが、調べたところ、事実はないようでございます。
  287. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 そういう取りきめはございますが、日銀調べてみますと、現実に貸したことがないということが判明しております。
  288. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の方の調べのあれによると、六月の十八日、形式は信用設定契約、目的は発券準備補てん及びバーツ安定のため、タイ国銀行として勘定が二億円残っております。六月十八日付として、その他の中国銀行、フィリピンの共和国政府、その他一切多くの借款と一緒になってこれは出されております。大蔵省、勘定はあるでしょう。こういう交渉をしてくれなくちゃだめですよ、池田さん。
  289. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 日銀に、調べましたところ、そういう勘定は残っておりません。
  290. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、借款協定第一条があって、二億円という金は出さなかったというのはどういうことですか。日本銀行が、しかも総裁が判こまで押したのですよ。まあ終戦のときに火事で焼けましたか、そんな、あなた、ないといううそ一点ばりで、うそかほんとかわからないけれども、そんな答弁日本の国会が納得するなんて思われたら困りますよ。そういう点ははっきりして下さい。日銀が協定で判こを押しているのですよ。はっきりなさい。はっきりして下さい。   〔「あんまり大きな声を出さずに静かにやってくれ」と呼ぶ者あり〕
  291. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 それは、借款協定に関する取りきめはございまして、二億円のワクでございますが、このワクを実際に行使せられなかった、こういうことでございます。
  292. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大きな声を出すなと言うから、小さな声で言ってもいいですが、それでは伺いますが、やはりここで五十四億円に九十六億円足すのですから、池田さんにしても小坂さんにしても、向こうに行って交渉するときに、こっちの払うものばかり払いますと気前のいいことを言って、こっちの取りまえになるような請求権について何もあなた方は御存じなかったというのでは、これはちょっと私は日本を代表する外務大臣としてあなたは適当ではないと思うのです。あなたはそういう点について交渉したことがありますか。お調べになったことがありますか。
  293. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 調べましたが、今申し上げたように、ないのでございます。
  294. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ワクを設けるというこの言葉というものは、何もこの借款協定だけではないんです。これは別の特別円設定協定の場合にもワクを作るのです。それに基づいていわゆる取引関係が成立するんです。あなたはお調べになったと言うが、今になって、それを聞いたから調べたと言うのでしょう。交渉のとき調べたというのじゃないでしょう。大きな声で言うなと言うから、小さい声で言っていいんですが、あなたはこの間タイに交渉に行ったとき、こんなことは夢にも考えなかったのでしょう。払えというだけ払ったんでしょう。そうでしょう。
  295. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 向こうの問題にしているものと、こちらが問題にすべきものと、いろいろ精査いたしましたが、こちらが問題にするものがないというなら、これは話にならないと言わざるを得ないと思います。
  296. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは、タイがそんなことないと言うからといって、日本もないなんて言うなんて、そんな話はないですよ。外務大臣は日本を代表して交渉に行ったんでしょう。その場合に、こういうことを調べもしないで、払うものばかり持っていったのでは話にならないですよ。それでは、ないという点は私は了解できません。これは借款協定の中で確かに限度としてということが書いてあります。  それでは、宮川さんに伺いますが、タイ国銀行という日銀の勘定はあったでしょう。ないということはないですよ、これは勘定だから。あったでしょう。
  297. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 特別円勘定はございました。
  298. 岡田春夫

    岡田(春)委員 質問と違うことを答えられては困る。きょうのことを言っているのに十日前のことを答えられたら私はちょっと困りますよ。小さい声で言えと言われても、それはちょっと困りますよ。特別円勘定について私は聞いているのではないですよ。タイ国銀行勘定という借款協定の勘定口座はあったでしょう、こう聞いているのです。
  299. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 特別円勘定の中に口座を設けることになっておったようであります。
  300. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、設けることになっているというのだが、あったのですかないのですかと聞いているんです。
  301. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 口座はあったものと心得ます。しかし、残高はなかったようです。正確にはわかりませんけれども、特別円勘定の中に貸記されることになっておったわけであります。
  302. 岡田春夫

    岡田(春)委員 要求します。正確なことはわかりませんがというのでは、われわれ質問のしようがない。これは、日本銀行の関係の人に来てもらってはっきりしてもらわなければならない。正確なことを大蔵省でさえわからないというなら、われわれこんなことで審議はできませんよ。冗談じゃないですよ。あなた、はっきりして下さい。ないならない、あるならあるとはっきり言ってもらったらいいじゃないですか。だめですよ。
  303. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 直ちに日本銀行について調べますから……。
  304. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、私はあらためて日本銀行の当局者の出席を要求いたします。それに基づいて、休憩中にどういうように扱われるかということは(発言する者あり)——ちょっと静かに。休憩中にどうするかはあれとして、明日でもお答えいただいてもいいわけです。そこら辺は私はこだわっているわけじゃないのですから、日銀の出席を要求しますという要求を出したわけですから、いいですね、委員長答弁して下さい。
  305. 森下國雄

    森下委員長 岡田君、休憩中に相談いたします。
  306. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、出席の要求ですから、理事会で……。
  307. 森下國雄

    森下委員長 相談します。
  308. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の方では、日本銀行に十分問い合わせましたので、その結果をお答えしておるわけでございます。そういう協定があったのでございますけれども、そういう貸し出した残高というものはないので、そういう実績はございません。
  309. 岡田春夫

    岡田(春)委員 外務大臣がどういう御答弁になっても、われわれ了解いたしません。さっきから財政上の問題についてはほとんど外務省はわからないと言っているんじゃないですか。そうして、大蔵省が答えるといって、大蔵省が出ているんじゃないですか。外務大臣が急にあわてて、今調べましたがなんていいかげんなことを言われたって、われわれ困るのです。はっきりしてもらわなければだめです。(「休憩休憩」と呼ぶ者あり)日銀に出てもらって、はっきりしてもらわなければだめです。はっきりして下さい。
  310. 森下國雄

    森下委員長 ちょっと待って下さい。宮川理財局長に聞いて下さい。   〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  311. 森下國雄

    森下委員長 三十分間休憩します。    午後六時四十三分休憩      ————◇—————    午後七時二十九分開議
  312. 森下國雄

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質問を行ないますが、ただいま大蔵省の理財局長から発言を求められておりますので、これを許します。大蔵省理財局長
  313. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほど岡田先生の御質問にお答え申し上げます。  タイ国大蔵省と日本銀行との借款協定によりまして、借款を行なう場合は借款勘定を開設するという協定がございまして、日本銀行といたしましては、その勘定を開設いたすべく準備いたしておりましたけれども、実際に借款が行なわれなかった関係上、帳簿上は勘定を開設した事実はございませんでした。
  314. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その問題以外に御答弁はないのでございますか。華中、華北特別円勘定の残高その他……。
  315. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほどの保留をいたしました質問答弁をいたします。  正金銀行の中国関係で持っておりました特別円勘定は三つございまして、蒙疆銀行、中央儲備銀行、中国連合準備銀行でございます。閉鎖いたしましたときの勘定残高は、蒙疆銀行は元利で二千八百三十三万八千八百二十円、中央儲備銀行は元金で三千二百八十九万一千百四十四円十銭、中国連合準備銀行は元金で八千九百七十万二千八百九十二円、かような残高になっております。
  316. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、少し質問を続行いたしますが、それは横浜正金の勘定残高でございますね。
  317. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 さようでございます。
  318. 岡田春夫

    岡田(春)委員 横浜正金の勘定残高ということになりますと、これは当然勘定残高として残がある。払う相手についていろいろ議論の余地はございましょうが、残のあることは事実でございますね。
  319. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほど申し上げました数字が当時の残高でございまして、これに対しまして、蒙疆銀行につきましては三十三年の八月二日、並びに中央儲備銀行につきましては三十三年の八月二日、中国連合準備銀行につきましては三十三年の八月二日、いずれも同じ日付をもちまして利息を含めまして支払っておりますので、現在は勘定残高はございません。
  320. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはちょっと先ほど答弁と完全に食い違うのでございますが、総理大臣、いかがですか。今お聞きのように、先ほどあなた並びに外務大臣は、——あなたでなかったかもしれません、外務大臣です。政府の統括者としての総理大臣にお伺いしたいのですが、先ほどは、そういうものは相手の銀行がなくなったのだから払わないのだ、こういうでございました。ところが、明らかにこれを三十三年に債務として支払った、こういうことになりますと、事実が全く反するのでございますが、総理大臣からこれははっきり伺いたいと思います。
  321. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、この点につきまして記憶がございませんから、よく調べまして御答弁申し上げます。
  322. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはいつ御答弁いただけますか。明日でけっこうでございますが、明日御答弁いただけますか。
  323. 池田勇人

    池田国務大臣 なるべく早く、——なるべく早くというのは、明日中か明日の午前中、あるいは今理財局長を呼びまして今夜中でも、できるだけ早くやります。
  324. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは重大な問題ですから、よくお調べいただきたいのですが、先ほどの御答弁では私は不十分なんです。というのは、金の現送分がどうであったか、その勘定残高との関係はどうなるかということもありますし、その他の点も含めまして、何も急ぐ必要はございません。大体この委員会の質疑の状況はあなたが一番よく御存じのはずでございます。その御答弁関連してあとでほかの問題に入って参りますから、その点は留保願って、ほかの問題をお伺いしたいと思います。  そこで、総理大臣にお伺いしますが、これは伊関さんもよく聞いておいていただきたいのですが、伊関さん、あなたは先ほどサンフランシスコ条約十六条の関係で御答弁になりましたね。その中で、十六条の関係は何もタイだけではない、ほかの関係も含めて、たしか私の記憶が間違いなければ四百五十万ポンドですか、それくらいのものをいわゆる国際赤十字の方に入れた、そのうちタイ関係の分は九十万ポンドだ、そうして十六条関係はそれで済んだのだ、こういうように御答弁になったように記憶いたしておりますが、それでよろしゅうございますか。
  325. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私が申し上げましたのは、九十万ポンドが国際赤十字に参っておりますが、その残額につきましては、タイ側の説明によりますと、別に九十万ポンドが泰緬鉄道の資材費としてイギリスが支払った、それから三十五万五千ポンドが連合軍の俘虜に対する労務未払いとして払われた、そうしますと、残りますのが約六十万ポンドくらいになりますが、これは敵産管理局の事務費その他小さい現地のクレームの解決に使われた、こういうのがその説明でございます。
  326. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、その点は伊関さんの言っているのを否定しているのじゃないのです。あなたは先ほど、十六条関係で国際赤十字に対して在外財産の整理をして、それが四百五十万ポンド、タイ以外のものを含めて全部で四百五十万ポンド払ったのだ、それによって十六条関係は済んだのだと、小坂さんですか、そういうふうにお答えになりましたね。
  327. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その通りです。
  328. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、総理大臣、それでよろしいのですね。
  329. 池田勇人

    池田国務大臣 この中立国財産の分は、どれだけあって、どういうふうにしたということは、私は存じておりません。過去のことでございますから。
  330. 岡田春夫

    岡田(春)委員 外務大臣がそうお答えになったのなら、この政府を統括する総理大臣として、それと同じであるということになるのでございましょう。一応重要ですから念を押して伺っておきたいわけですよ。よろしゅうございますか。
  331. 池田勇人

    池田国務大臣 外務大臣が答えた通りだと思います。
  332. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、伊関さんに伺いますが、十六条関係は四百五十万ポンドで全部済んだわけでしょう。
  333. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 タイは九十万ポンドでございまして、それ以外の国が四百五十万ポンドで、全部片づいております。
  334. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、九十万を加えると五百四十万ポンドになる、こういうことでございますか。
  335. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その通りでございます。
  336. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、それで十六条関係は全部済んでいるのでしょう。済んでいるのならば、百二十万ポンドというものは何も十六条関係ではないじゃありませんか。日・タイ関係じゃありませんか。どうですか。伊関さん。
  337. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 タイの方が先に処理されまして、たしか二十八年にタイの財産が三国協定によって処理されまして、そのとき九十万ポンドが国際赤十字に渡されまして、それから、翌々年の三十年かに、ほかの国、スイスが主でございますが、それが整理されまして、それが四百五十万ポンドでございます。それで、タイにつきましては、そういうふうに在タイ資産二百七十六万ポンドでございましたか、それを処理いたしまして、結局九十万ポンドしか国際赤十字に渡っておりませんが、それは要するに、その額しかそのときに残っていなかったのじゃないかというふうに、われわれはよくわかりませんが、そう思っておるのでございます。それではそのほかはどうなったかという点は、先ほど申し上げた通りでございますが、これは、この十六条の受益国である十四カ国と英米が相談いたしまして、その了承のもとにタイの財産を処理したということになっております。
  338. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、タイ関係は、九十万ポンドということで国際赤十字の関係は一応済んだということを日本政府が認めた、こういうことになるわけですか。伊関さん、九十万ポンドに関する限りは。
  339. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 九十万ポンドは国際赤十字に渡っておりますが、二百七十六万ポンドを現物で渡すか、その換価したもので渡すかという点が十六条通りにやられておりませんから、その点について抗議を申し込んでおるのであります。
  340. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、抗議を申し込んでいるのはタイ国並びにすべての連合国に抗議を申し込んでおるのですか。
  341. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その他の連合国は事前相談は受けておりますけれども、在タイ資産に関する協定というものは、米・英・タイ三国でございますから、この三国に対して抗議を申し込んでおります。
  342. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこら辺は筋が一貫しないじゃありませんか。先ほど中川条約局長の答えによると、連合国関係では十九条でやれるのだ、十九条で言うのならば何もタイに言う必要はないのです。イギリスだけに言っていればいいのです。あなたの方はタイイギリスと両方に言っていると言うから、われわれはわからないのです。タイに言っているということは、その泰緬鉄道に使った経費としてすでに所有権がタイに移っている、泰緬鉄道の経費の一部になっているというからタイと交渉しているんだと思うのです。その場合においては、これは十六条の関係ではなくて、日・タイ関係なんです。あなたがお話しのように、タイとあれとに話をしているというのは、十六条としては出てこないはずなんです。十六条として出てくるとするならば、連合国に交渉するかの問題です。十九条に関係があると中川さんが言うのならば、これは連合国関係する問題です。タイ関係する問題ではありません。この関係を両方うまいこと兼ね合わせて言おうとしているところに無理がある。条約局長、はっきり御答弁下さい。
  343. 中川融

    中川政府委員 平和条約の十六条、十九条、この二つの条項がこんがらかって実は在タイ財産問題に包蔵されておるのでありまして、それがいかなる部分が十六条であるか、あるいは十九条にもあたる部分があるのかどうか、この辺が実態を知らないとわからないのでありまして、その意味で判断が非常にむずかしいのであります。従って、もとは十六条であります。——十六条によって三国協定を作ったわけでありますから。その十六条に基づく三国協定自体日本は方法論としては反対しておるわけであります。実態論については、要するに、十九条で連合国として権利のある分もあるかと想像されるわけでありますが、そこらも、イギリスに聞きましても、タイに聞きましてもはっきりしたことを言わないのでありまして、それはやはり今後の交渉に待って事態をはっきりさせなければ、この交渉が進められない。従ってこれを打開しつつ進めていこうというのが今の考え方でございます。
  344. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、その点はあまり、長く触れません。次に進みます。ただ、条約局長に一点だけ伺っておきたい点は、タイ国は泰緬鉄道の実態調査をするという日本の要求さえ拒否している、こういうことでございますか。それならそれではっきりしておいていただきたい。その調査それ自体を拒否しているのですか。その点はっきりして下さい。
  345. 中川融

    中川政府委員 従来一九五三年当時からタイと交渉いたしましたところの内容を伊関局長が申しましたが、結局、タイとしては、一つも在タイ日本財産というものはないのだ、自分が形だけでは管理している格好だけれども、それは全部連合国がとっちゃって、ないのだ、こういうことを言っているわけでございまして、タイの一応の返事はそういう返事でございます。しかし、われわれとしては、その返事だけでは満足できないので、実態はどうなっているのかということをもっと確かめたい。しかしながら、今までタイ特別円問題がこういうことでありましたので、その交渉が進まない、こういう段階であったわけでございます。
  346. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこで、もう一つ伺っておきたいのですが、先ほどからいわゆる日本資産の泰緬鉄道に対する転用の問題を言ってきたのですが、泰緬鉄道は、この資産はイギリスの所有に属すべきものじゃない、それはおわかりですね。一応敵産として管理するということと、所有するということと違いますね。その点はいかがですか。
  347. 中川融

    中川政府委員 泰緬鉄道は、戦争中に日本がいろいろ現地の労力、資材等、あるいは徴発したりあるいは買ったりして、いろんなことをして作った鉄道でございます。従って、一応は日本の所有権であると考えられるわけでありますが、イギリスに聞き、タイに一体どうなったのかと聞きました際に、タイ側の言い分は、泰緬鉄道はイギリスが戦利品として取ったんだ、単純なる敵産管理というよりも、むしろ戦闘行為に基づく戦利品ということで最終的に取ったんだ、従って所有権はイギリスに移ったんだ、こういうことをタイが言うのであります。これは、イギリスに聞きましても、イギリスは言を左右にしてなかなかはっきりした返事をしない。タイがそういうことを言うのであります。従って、もしそれが事実であるとするならば、これは戦時法規から見て少しどうかという点もありますけれども、権利を放棄しているというその十九条が出てくるのは、そういうところに出てくるわけでございまして、従って、そこらの事実関係をもっと確かめたいというのがただいまの考え方でございます。
  348. 岡田春夫

    岡田(春)委員 十九条というのはわかるのですよ。あなた、さっきから、いわゆる敵産、タイにある日本の資産を換価して、そのお金で泰緬鉄道の工事費その他を払ったのだということで、それは十九条の適用を受けるかどうかということはその通りなんだ。私の聞いておるのはその問題じゃない。泰緬鉄道それ自体は戦利品としてあれしてあったものだとするならば、極東委員会その他における明確なる規定がなきゃならない。そういう点は何もなくてですよ、何か戦利品でイギリスが取ったんだという。ところが、それだけならまだいいのですよ。あなただって、お互いに常識で話し合う話だけれども、戦利品なら戦利品で、取ったものならいいが、それをイギリスタイに売りつけたわけだね。売りつけたから問題になるわけですよ。そうでしょう。売りつけたんだ。戦利品として取ったものを売りつけたということですよ。こんなおかしな話があるか。戦利品なら戦利品で、極東委員会その他の規定によらなければならぬ。それこそスキャッピンなりメモランダムを再三あなた方は使いたがる方だから、何条の何項によって、極東委員会の規定によって戦利品になっております。あるいは終戦交渉の降伏条項の何条が適用されます、こういうことですから戦利品です、この戦利品をタイイギリスは売ったのです、そういうことになれば所有権の移転ということはある。ところが、イギリスが所有権を持っておるのか、タイが持っておるのか、しかも売った買ったについては金までタイは払った。これについては、あなたのその答弁だけではわれわれは満足できないのです。そうでしょう。あなただって、お互いに常識を持っておれば、そんなこと、いかに自民党の皆さんだって、それはあたりまえだということにはならないですよ。もう少し明快な御答弁を願いたい。
  349. 中川融

    中川政府委員 われわれとしても、泰緬鉄道を戦利品として取った、それをまたタイに売ったのかどうか、その辺の事実もまだはっきりしないのでありますが、そういう説もあるのであります。そこらもほんとうはどうであったのかということを確かめたいわけです。決してこれに満足しておるわけじゃないのでありまして、これは先方の言い分であります。先方の言い分をほんとうに日本としても、そのまま受け取っていいのかどうか、もう少し日本としてはいろいろなことを調べた上でないと結論を出し得ないというのが今の状況でございます。従って、決して不明確な点をそのまま満足して受け取っておるわけじゃないのでございます。
  350. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは私はますますわからなくなる。そうでしょう。これは自民党諸君だってわからないはずだ。戦利品だったら在タイ財産ではないでしょう。これは非常に明快です。その点はそうでしょう。戦利品であったという場合と、在タイ財産、もし在タイ財産であったとしましょうか、泰緬鉄道が在タイ財産であったならば、イギリスが勝手にそれを処分してタイに売りつけるということは明らかに間違いです。そうでしょう。十六条によって、日本の許可に基づいてそのお金は国際赤十字社に渡さなければならないんだ。そうでしょう。在タイ財産であるとするならば、その処分は明らかに間違いですよ。戦利品であったとするならば、戦利品であるという何らかの客観的な論拠を外務省はお出しにならなくちゃならないわけです。そのいずれかをはっきりしないで、十六年も十七年もわけのわからないままにして、私の質問するまで何だかわかりませんと言ってないしょにしているような、そういうことでは話にならぬじゃありませんか。なぜ、イギリスに対して、タイに対して明快な意思表示をしないのですか。日本政府が明快な意思表示をしないから、池田さんがサリットと会ったときに、払うものばかりは払いますということで、この問題については一言だって交渉してないじゃないですか。何も交渉したからといって必ずしもそれを返してもらうというのじゃないですよ。一国の総理大臣がタイに行って、そんな交渉さえ池田さんはやっていないじゃないですか。そういう点から言っても、なぜこの点をはっきりしないのか。はっきりするだけでも池田さんはやるべきではなかったか。どうですか、池田さん。
  351. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、先ほど申し上げておりますように、イギリスアメリカタイ関係がございまして、前からこの問題にわれわれは交渉しておるのでございます。しかし、これは、先ほど来言うように、懸案になっておる。今後、われわれは、タイ特別円を片づけて、それからこの問題を片づけよう、こういうことなんでございます。
  352. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣は片づけてとおっしゃるけれども、タイ特別円の問題はタイとの関係ではあっても、イギリスとの問題は、何もこれを片づけなきゃイギリスと話をしてはいかぬという問題じゃないですからね。なぜイギリスお話しにならないのですか。
  353. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、先ほど来外務省から言っているように、イギリスタイとこの問題については交渉いたしておるのであります。
  354. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことでは、私は筋が通らないと思う。第一、あなた、それでは、日本政府の態度として、それを戦利品と見ますか、在タイ資産と見ますか。総理大臣、どうです。
  355. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私から便宜お答えいたしますが、こういうことと御理解願いたいのでございます。そもそも、泰緬鉄道というものは、わが国が戦時中に作ります際に、資材もあちこちから調達をして、一部払ったものもございましょうが、役務も調達しているわけでございます。その役務が大体三十五万五千ポンドになるのじゃないか、あるいは資材費としてマラヤとかインドネシアの方に枕木やレール代を九十万ポンド払ったではないかというふうに言われるのでございますが、それをどういう形においてやったかということがわからないのであります。それについてイギリスに問い合わせても、なかなかはっきりしたことは言ってくれない。タイの方でも、特別円問題がこういうふうになっておるのでとてもそこまでは入らない、こういうことなんで、これは特別円問題が解決いたしましたる機会にさらにそういうことを十分精査するチャンスができてくる、こういうことなんでございます。泰緬鉄道というのは、平時にわが国が正規のルートで作ったものじゃなくて、戦時中に建設したというところにこの問題があるのだというふうに御理解を願いたいと思います。
  356. 岡田春夫

    岡田(春)委員 委員長、外務大臣に少し注意してくれませんか。私の聞いている以外のことを長々と、時間がかかるのに五分も六分も話して、肝心かなめのことを一つも言ってないでしょう。委員長、少し注意しなさい。委員会の運営のためによくないですよ、こういう答弁の仕方は。  もう一度言います。外務大臣、泰緬鉄道というものは在タイ資産か戦利品か、日本の解釈はどうなんだ、これをはっきり答弁しなさい。
  357. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ですから、私は申し上げているのです。その泰緬鉄道というものはそもそもどういう条件のもとに作られたかということが問題であるという根本論を申し上げているわけです。もちろん、在タイ財産であるかどうかということになれば、これは在タイ財産ではないということであります。
  358. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日本政府の態度はイギリスの戦利品であるという解釈をとっている、こういうことですね。外務大臣、もう一度はっきりしておきなさい。外務大臣、自分で答えたものは自分でやりなさいよ。無責任な。
  359. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは戦利品であるというふうに解しているとも思われまするし、管理しているものだからそういうように処理が行なわれているかとも思えるのであります。この点は、条約局長から先ほどお答えした通りでありますが、それをもっと確かめたい、こういうことなのであります。
  360. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だめです。私はこういうことでは質問はできません。あなた、冗談じゃないですよ。自分で在タイ資産ではないと思いますとはっきり言っておきながら、あと答弁でごまかしているじゃないか。私はこういうことでは質問の続行はできませんよ。冗談じゃないですよ。外務大臣ともあろうものが、そんないいかげんなことを言ってどうするのですか。何でもいいから時間がたてば通ると思って、そういうようないいかげんな答弁じゃだめです。はっきりなさい。
  361. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 伊関アジア局長からお答えいたします。
  362. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 われわれが在タイ資産と申しますときには、二百七十六万ポンドということを申し上げましたが、そのときには泰緬鉄道は入っておりません。泰緬鉄道というものは、むしろ負債だけになっておったようなものでございます。終戦の際には負債がうんとついておった。労務賃も未払いであれば、資材費も未払いである、そういうものが泰緬鉄道の実態であったわけであります。これに対しまして、在タイ資産の中からその未払いのものが払われたというのがタイ側の説明でございます。
  363. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣に伺います。総理大臣は経理に明るい人です。負債というのも財産です。これは資産勘定の中だから財産ですよね。しかし、これは負債もついているでしょう。会社というものは、経理ですから、負債もあれば利益もあるし、いろいろありますよ。問題は、泰緬鉄道の所有権はどうなんだということです。この資産というものは、これは資産と考えないのか、あるいは戦利品と考えるのかということを聞いているのです。だから、これは総理大臣お答え下さい。どちらなんです、日本政府の態度は。
  364. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がわかりませんが、あそこに泰緬鉄道というものがありました。これが資産なりや負債なりやということは、今の二百七十六万ポンドのうちには入っておりません。
  365. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、池田さん、あなたは経理に明るい大蔵省の生え抜きで、そういう意味では大蔵省の大先輩として私は敬意を表しているつもりだが、債務というのは資産勘定ですよ。債務が資産勘定なら在タイ資産ではありませんか。財産ではありませんか。戦利品でないというなら在タイ資産ですよ。あなたはさっきから資産と言っているのだが、在タイ資産なら資産でもよい。戦利品であるかないかを私は聞いておるのです。その資産の内訳が債務であるか債権であるかというのは別問題ですよ。そんなことを私は聞いていません。
  366. 池田勇人

    池田国務大臣 経理の問題ではございません。これは戦争中に日本が作った財産であります。しかし、それには負債も入っている、そういうことでございます。しこうして、二百七十六万ポンドのうちにはこれは入っていないということであります。
  367. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことはわかっている。二百七十万ポンドに入っていないのはわかっている。別勘定です、二百七十万ポンドというものとは。もっと簡単に言いましょう。バンコックにおった日本人の財産なんかを全部集めて、それをお金にしたのですよ。これが泰緬鉄道そのものであるなんてだれも考えていませんよ。問題は、泰緬鉄道というものが債務であろうが債権であろうが、——それは債務も債権もありますよ、会社の経理の中には。会社経理の中にそういうものがあっても、そういうものが財産、資産としてあるではないかということを聞いている。それが在タイ資産であるのか戦利品であるのか、これを聞いているのですよ。総理大臣、はっきりお答え下さい。経理に明るい人だから。
  368. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 事実問題でございますから私からお答えいたしますが、この泰緬鉄道も、英国がこれを戦利品として扱ったというのはタイ側が言うのでありまして、イギリスの方には何べんか交渉をいたしましたけれども、イギリスは、これは十六条の履行である、十六条に関する日本の義務は完全にこれで済まされたものであるからそれでいいじゃないか、日本はその内訳まで知らなくてもよいというのがイギリス側の言い分でありまして、その点は、イギリスタイとの関係があるし、細目については説明を差し控えたい、いずれにしろこの十六条の財産というものは連合国に渡るものである、その義務を完全に日本は履行したものとみなすからそれでいいじゃないか、連合国との間は事前に十分協議したというのがイギリス側の言い分であります。タイの方は、これはイギリスが戦利品として取り扱ったというのが言い分であります。
  369. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私がこんなに汗をかいて質問をしているのに、ほかの答弁をしてもだめです。日本政府がどうなんだということを私は聞いているのです。なぜ私がそう言いますかというと、サンフランシスコ条約十六条は、日本が適用を受けるでしょう。在タイ資産の場合には、日本はサンフランシスコ条約十六条の適用を受ける。戦利品の場合には別途の扱いになるのですよ。日本として、サンフランシスコ条約のときに、そしてそれ以降においてサンフランシスコ条約の適用上これをどう考えるのか、泰緬鉄道はこれをどういうように考えるのかということを、日本政府のことを聞いておるのですよ。私は、伊関さんなり総理大臣なり外務大臣に、イギリスがどう言ったかということを聞いているのではないのです。私は、日本がどう考えるのかということをさっきから聞いているのです。総理大臣、お答え下さい。
  370. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本としてはそれを決定する資料が不足している。従って、これをイギリスにも聞き、タイ側にも伺いまして、そしてこの問題を解決したい、そういうことなんであります。
  371. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことでは答弁になりません。質問を続行できません。戦後十六年もたって、資料がありません、イギリスの言うことを聞いてからきめます、タイの言うことを聞いてからきめます、これで日本にどこに自主性があるのですか。私は、対米従属という話は聞いていたけれども、タイに従属するなんてことは聞いたことがない。冗談じゃないですよ。そんな自主性のない外交は小坂外交というのでしょう。小坂外交というのはタイに従属する外交ですか。冗談じゃないですよ。はっきりしなさい。そんな無責任な態度がありますか。はっきりなさい。外務大臣が政治的な答弁をなさい。
  372. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の言ったことは前の通りでありますが、条約局長から補足させます。
  373. 中川融

    中川政府委員 問題になっております戦利品としての措置をとったと推定される時期は、これはまだ日本占領下にあったときで、日本の在外公館がタイにない時代であります。従って、どういう状況のもとにそういう措置がとられたのかということは、われわれとしては材料がないのはいたし方ないのでありまして、その材料を得ようとしてタイ側に話しましても、タイ側は、これは、初めのうちは、イギリスのやったことだということで、その後はタイ特別円問題のごたごたで話が進められないのであります。イギリスに聞けば、それは三国協定できまったのじゃないか、これでいいじゃないかということであります。従って、これを解きほぐすためには、タイ側からもっとたくさん資料をとる以外にこれを進める方法はないのでありまして、その意味でこれからやろうというのでございます。
  374. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、はっきりしておきましょう。泰緬鉄道のあれは行方不明である。一体どこのものだかわからない。戦利品であるが、在タイ資産であるか、それさえもわからないのだ。講和条約を結んで十年たってもまだわからないのだ。この講和条約以降十年間は自民党政府だ。この十年間はほったらかしにしておったんだ。こういう事実だけはお認めにならなければなりませんね。そういうふうになりますね。
  375. 池田勇人

    池田国務大臣 ほったらかしではないのであります。たびたび申し上げました通り、この問題につきましては、その性質を明らかにするために、イギリスタイと折衝しておるのであります。
  376. 岡田春夫

    岡田(春)委員 折衝したって、わからなかったら同じですよ。国民はそういうことでは納得しませんよ。たとえば、いいですか、あなたちょっとお考え下さい。日本の何かの品物があったとしますね。この品物が外国に置いてあった。これが、日本のものだか、タイのものだか、イギリスのものだか、戦利品だか何だかさっぱりわかりません、十年間置いてございます。交渉したけれども返事はございません、これが歴代政府の方針だ。交渉はしたのでしょうが、さっぱりできないじゃないですか。これで国民が納得すると思いますか。そんなことは納得するわけがないじゃないですか。
  377. 池田勇人

    池田国務大臣 終戦当時におきまして、とにかく泰緬鉄道をイギリス軍が占領しておったかどうか、あるいは占領していなかったか、こういう問題があるのであります。従いまして、そういうことを究明するために今まで交渉いたしておるのであります。
  378. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、お聞き下さい。一国を代表する総理大臣ですから、私は敬意を払います。しかし、私は、総理大臣として日本の戦争の関係のことを十年たってもまだわかりませんということでは、日本国民としては納得できませんね。納得できると思いますか。それは、池田さんはこう言うでしょう。タイの方から言わないから悪いじゃないか、イギリスの方から言わないから悪いじゃないか。そういうことはあるでしょう。あるだろうけれども、あなたはサリットに会って九十六億円を上げると言ったとき、なぜそれをはっきりしないのですか。お前の方に九十六億円上げるんだから、この機会にはっきりしない泰緬鉄道の問題だけでもはっきりしてくれればいいじゃないかという交渉さえあなたはしてないじゃないですか。それじゃ国民は納得しませんよ。
  379. 池田勇人

    池田国務大臣 終戦当時のことにつきましては、満州の問題にいたしましても、いろいろ不明の点がございます。私は、九十六億円の問題を早く片づけて、そうして、そういう問題、イギリスとの関係等を究明したい、これから究明していこうというのであります。戦争直後の問題につきまして、こういう問題はよくあることでございます。
  380. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは満州の問題という例をおあげになりましたが、満州の問題と言われるものと、問題が違うのです。あなたが満州の問題と言うのは、中華人民共和国政府を承認すれば簡単に解決する問題ですよ。あなたはそれをしないでおいて、満州がきまっておりません、タイもきまりませんと言っているが、タイとは自由諸国だといって友好関係を結んでいるじゃないか。それの関係がきまらないのを、自分の責任を回避して、満州の問題、中華人民共和国政府の問題をあなたがやらないでおいて、この問題がきまりませんからタイの問題もきまりませんと言うのでは、理由になりませんよ。どういう理由があるのですか。理由があれば理由があるとおっしゃって下さい。
  381. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げた通りに、特別円の問題は、三十年に協定しまして、二条、四条の関係で結末がつかないから、これをつけようとしておるのであります。しかして、今の泰緬鉄道の問題は、これは見ようによっては在タイ財産と言い得るかもわかりません。しかし、もしイギリス終戦前において占領しておったならば、これは日本の在タイ資産と言えないわけであります。こういう点は究明しなければならぬ。これを究明してからタイ特別円を片づけろ、こういうことでありますが、それは別問題である。タイ特別円を片づけて、そうして次にこういう問題を片づけようとしておるというのがわれわれの立場であります。
  382. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、いいですか。九十六億円という六年間の懸案事項があるならば、これをあなた解決されたといって、誇らしげでないにしても、大いに宣伝されておるわけだ。そうしたら、十年前からの問題をサリットに会ったときに一言も言わないというのでは、あまりに見識がないじゃありませんか。言ったらいいじゃありませんか。この問題をどうしてくれるんだ、はっきりしたらいいじゃないかと一言ったらどうですか。その際の交渉さえもなされないじゃないですか。
  383. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどからしばしば申し上げておりますように、終戦直後の状況というものは、われわれはわからないわけです。その当時の状況はどうなっていたかということを知っているのは、タイなりイギリスなりよりほかないわけであります。それに対していろいろ聞きますけれども、先ほど来言っておるように、なかなか事情が明らかにならない。そこで、今度特別円の問題がかように解決いたしましたので、その直後に私どもとして大江大使をしてこの問題についての究明方を申し入れさせておるわけであります。すなわち、岡田さんは、そういう問題もやはり解決してから九十六億円を解決したらいいじゃないかという御説でありますけれども、これは方法論でございまして、私どもの方で現実にタイとの関係にも接触しておりました者から見ますれば、やはりこの問題を解決してからでないと泰緬鉄道の問題も明らかにならない、こういう判断をする専門的な見地からの資料に基づいてさようにいたしたわけであります。
  384. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、小坂さんの答弁はあまり信用してないのです、ほんとうのことを言うと。小坂さん、あなたはさっき何と言いましたか。昭和二十五年三月には北京政府は存在していなかったと言いましたね。北京政府昭和二十五年三月には存在しておらなかったのですか。そんな程度だから、私はあなたの言うことは信用できないのです。存在しておりましたか、してないか、もう一度聞こうじゃありませんか。
  385. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたは間違っていらっしゃると思います。私が申したのは、一九四五年と言ったつもりであります。昭和二十年です。
  386. 岡田春夫

    岡田(春)委員 昭和二十五年でしょう。
  387. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一九四五年は昭和二十年でございます。
  388. 岡田春夫

    岡田(春)委員 昭和二十年は戦争の終わった年ですよ。戦争の終わった年の三月に、華北の特別円、華中の特別円の支払いをいたしましたとあなたは言ったのですか。昭和二十年の三月といったら戦争中ですよ。しっかりして下さいよ。一九四五年といったら戦争中ですよ。昭和二十年の三月といったら、あなた戦争中じゃありませんか。戦争中に北京政府の存在——第一特別円を返すわけがないじゃないですか。あなた、そんないいかげんな話はありませんよ。訂正するなら訂正しなさいよ。
  389. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それは私が悪うございました。昭和二十五年でございます。四九年に北京政府ができております。
  390. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、もう一度戻りましょう。中華民国共和国というのは特殊のものですか。さっきあなたは中華民国共和国と言いましたね。あれは一体何ですか。
  391. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 リパブリック・オブ・チャイナ、これは中華民国でございますけれども、これはり。パブリック・オブ・チャイナですから、共和国というふうに訳したんだと思います。
  392. 岡田春夫

    岡田(春)委員 外務大臣、国の名称を外務大臣という人が間違うということは失礼なことですよ。そういうようなことですから、外務大臣としてはあなたをわれわれ信用できないのですよ。あなたの言っていることは、ときどきそのときの思いつきでやるのですから。それはまあいいとして、進めます。  それでは伺います。先ほどの二億円というものは日銀の借款、これは口座はあったけれども行なわれなかったとお話しになりましたね。この点は一応留保しておきましょう。まだある。済んでいない。まだ借款があるでしょう。あなたは、今休憩中に食堂で、まだ借款があるはずだから調べておこうじゃないかといって調べていたんだから、言いなさい。
  393. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。先ほど岡田委員は、口座を設けてあったとおっしゃいましたけれども、私先ほど答弁申し上げましたように、口座はできなかったのであります。それから、なお、二億円の借款は実現できませんでしたし、ほかに借款はございません。
  394. 岡田春夫

    岡田(春)委員 食堂で調べた結果、ないわけですか。
  395. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 別に食堂で調べたわけではございません。
  396. 岡田春夫

    岡田(春)委員 宮川さん、食堂なんかで調べているからわからないのだ。もっと調べ直しなさい。勉強があなたは足りない。もっとはっきり言いましょう。昭和十八年十一月八日タイ国大蔵省・南方開発金庫間資金供給協定によって、日本タイ国大蔵省に対して一千二百万ドルの借款を供与した。しかもこの残高は私は知っている。昭和十九年十月末現在で約一千万ドルある。約二百万ドルは使われている。終戦当時における残高は幾らになっているか、この債務はどうか、お答え下さい。これはある。食堂で調べたってわかりゃしない。もしわからなければあしたでもいいですよ。
  397. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 勘定残高は後ほどお答え申し上げます。
  398. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、あったのですね。あるという事実は認めますね。
  399. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 協定はございましたが、勘定残高があったかなかったかもはっきりいたしませんので、調べましてお答えいたします。
  400. 岡田春夫

    岡田(春)委員 明日お答え下さい。よろしいですか。
  401. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 はい、承知いたしました。よろしゅうございます。
  402. 岡田春夫

    岡田(春)委員 よろしい、じゃ速記にも……。明日お答え下さい。
  403. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 今調べますけれども、わかりません場合には明日お答え申し上げます。
  404. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、これは留保しておきます。  それでは、私はまだあるのですが、辻原君がおられますので、私は次に入ります。  私は実はまだ半分くらいしかやれていないのです。しかし、まあいつまでも私がやっているのじゃいけませんから、ほかの人に入りますが、ただ一つだけ私伺って、きょうは残りは留保したいのですが、これは池田さんもよく聞いておいて下さい。あなたは知らないとおっしゃるかもしれないけれども、中川さんがよく知っているはずだ。中川さんは三十年協定のころアジア局長をやっていらっしゃいました。大へん失礼で申しわけありませんけれども、あなたはアジア局長はいつからいつまで御就任になっておられましたか。
  405. 中川融

    中川政府委員 一九五三年から五七年、大体四年間です。
  406. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうしますと、昭和二十八年から昭和三十二年までおられたわけでございますが、その間でちょっとお伺いしたいのは、サージ・リップスというアメリカの人、職業はエコノミック・コンサルタントという職業だそうですか、これは簡単に言うと何か国際的な利権屋らしいのでございますけれども、この人は、昭和二十八年から毎年タイ特別円の交渉で日本に来ております。あなたは毎年お会いになったはずです。その日付もはっきり申し上げてもよろしいのですが、二十八年、二十九年、三十年、三十一年、ずっと来ておりますが、あなたはお会いになっておりますね、これは交渉の当事者ですから。
  407. 中川融

    中川政府委員 私がリップスに会いましたのは昭和二十九年の初め、リップスがおそらく第二回くらいに来たときじゃないかと思いますが、そのときに会いまして、それから、三十年の協定を結ぶ間に二回くらいリップスは来たと思います。それから三十一年の初めにリップスが来たとき、このときまで、従いまして、三十一年といっても初めのころまでで、それ以後リップスは参りません。
  408. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の方で調べている限りでは、昭和二十八年の一月下旬から二月の下旬、昭和二十九年は九月の二十七日から十月八日、昭和三十年は三月下旬から四月の九日に、ナラティップ外務大臣は帰ったけれども、リップスは残ったんですね。そして、そのあと、あのときピブン総理が来るまでおったのですね。それから、昭和三十一年は一月の初め、こういうように来ているわけですが、大体二十八年は御存じないようですが、それ以外は全部あなたが直接接触されたと思いますので、その点は間違いございませんでしょう。
  409. 中川融

    中川政府委員 大体その通りでございます。
  410. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこで、一点伺いたいのですが、私は、これは外務省の資料調べて非常な関心を持った点であり、重大な点だと思うのですけれども、タイ並びにフランスに対して金塊の引渡しを行ないましたね。これは昭和二十五年の一月五日ですか、行ないましたね。昭和二十四年の九月の二十五日に極東委員会が行なわれておる。この極東委員会が行なわれたときには、この金塊引渡しはアメリカが提案したにかかわらず否決になっている。否決をしたのは、イギリスは棄権をいたしましたが、アメリカの提案に反対をしたのはフィリピン、蒋介石、インド、オーストラリア、ソ連その他多数。金塊の引渡しを賛成したのはアメリカだけ。極東委員会では明らかに金塊引渡しが否決になっているにもかかわらず、翌年の一月五日にタイ並びにインドシナに対して金塊を引き渡した。これはどういう関係になっておるのか。アメリカが勝手なことを考えて引き渡したのですか。
  411. 中川融

    中川政府委員 これは、日本といたしましては、連合軍最高司令部からスキャッピンで指令が参りまして、その指令通りに金塊を引き渡したわけでございます。
  412. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、私は日本がどうしたということを聞いているのじゃないのです。極東委員会の決定にもかかわらず、アメリカが、今あなたの御答弁通りに、日本に対して引き渡せという指令出した。極東委員会に反する行動をアメリカがやったということになるのですか。あなたは条約局長だから、極東委員会の経過やその他は御存じのはずなんだが、その経過をお答え願いたいと私は言っているのです。
  413. 中川融

    中川政府委員 連合軍最高司令部から指令が出ます前に、どういう経緯が裏であったか、これはわれわれは実は知らないのでございます。私個人も存じません。
  414. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた個人が知らない。「世界月報」を見てごらんなさい。外務省の本に書いてある。あなたが知らないなら不勉強だということです。外務省の本に書いてある。外務省の本に書いてあって、私は調べてそれを知っておって、条約局長が外務省の本にあるのを知らなかったと言ったら、あなたが不勉強だということになる。  そこで、伺います。これもあなたはおそらく知らぬと言うでしょうね。近ごろの外務省はあまり勉強しないから。(「昔は勉強したが」と呼ぶ者あり) 前は、北澤君のころはどうか知らぬが、これは昭和二十三年四月の「最近の世界情勢」、外務省の調査局が出した本です。ここにこう書いてあるページは六百六十五ページ、「アメリカはシャムがかねてからアメリカ政府に対し戦争中シャムが日本にイヤマークした四千万ドルの金塊の返還方を要求していたことに関連しピブン政府が在シャム、アメリカ人の利益を如何に取扱うかを見極めた上……考慮しようとの意味深い覚書を二十三日シャム側に送った」、——アメリカが送った、こうなっておるのです。ここで問題があるのは、極東委員会でも反対しているのにもかかわらず、日本にイヤマークしている金塊というものを、アメリカタイの要求に応じて、タイの中にあるアメリカ人の利益をいかに扱うかということを見きわめてからそれによってやろう、外務省の表現をもってすれば意味深い覚書を出したそうです。意味深いのですよ。なぜ意味深いか。アメリカの利権のために、日本で管理している金塊を引き渡したということなんです。極東委員会の決定で否決されているにもかかわらず、アメリカが、タイに対して、東南アジアに対して、こういう経済的な要求を日本のこの金塊を使うことによってやったということになる。これは外務省の本に書いてある。こういう経過でタイに金塊が引き渡されたのです。この事実は御存じないでしょう。外務省の本に書いてあるけれども、古い本だから、私知らない、それならそれでもいいのですが……。
  415. 中川融

    中川政府委員 不勉強で申しわけございませんが、私その本を読んでおりません。
  416. 岡田春夫

    岡田(春)委員 知らぬものは知らぬで、しようがないね。ここに持っております外務省の「世界月報」一九五六年二月号、これも私調べておりますが、これの中にこう書いてある。「戦後日本が米軍に占領されていた当時金塊引渡に当った、サージ・リップス氏の功績を讃えるために」云々となっている。サージ・リップスは金塊引渡しをやったのですよ。あなた知っているでしょう、しょっちゅう会ったんだから。お答えなさい。
  417. 中川融

    中川政府委員 私はリップスと会いましたけれども、そういう話を聞いたことはないのでございます。しかし、タイ側として、タイの内部におきまして、リップスが前の金塊の引渡し、つまり、日本の占領中の金塊引渡しに関係があったということは新聞記事に載っていたことがあるのでございまして、私もその点は読んだことがございます。
  418. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、中川条約局長がお認めになった通り、戦争中にアメリカ人が日本に来て金塊をタイに持っていくような、そんなことはできるわけはないですから、戦後に間違いないのですよ。まさか何ぼ何でも戦争中にサージ・リップスだけが日本に来て、タイに頼まれましたからといって金塊を持っていくのに、日本の国で、はあそうですかと渡すわけはないでしょう。戦後三十八トンの問題、これなんですよ。あなたもお聞きになったというのは事実なのです。  もう一つ伺います。サージ・リップスというのは、——これまた外務省の本です。あなた方よく本を調べて下さいよ。外務省の木、一九五六年の一月号に、昭和三十年のいわゆる三十年協定を結んだときに、御承知のように、四月九日に、ナラティップ外務大臣ですか、タイ国に帰りましたね。それから三十一年にあなたもお会いになった。この前私がちょっと伺っておきましたが、三十一年一月に来て、たしか一月の末にタイに帰ったわけです。バンコックにナラティップ外務大臣が到着したのは三十一年一月三十日であります。そのときにこう言っています。聞いておいて下さい。「今回の日本との交渉にはサージ・リップス弁護士が仲に入り、手数料二%を支払うことになっているが、日本からの返済が実行されたあかつきに支払うことになっている。」、外務省の本に書いてある。  もう一つある。外務省の同じく二月号、これはタイの大蔵省の声明です。これはページ数を言ってもいいですページは二百十六ページ。タイの大蔵省は、「リップス氏の雇傭については閣議において審議の結果決定したもので、同氏のブローカーレッジは」——ブローカーの手数料はタイが支払いを受けたものの二%を上げることになっている、こういうことで、要するに、ブローカーの手数料二%を五十四億円についてやっているのですよ。こういう事実はあなたは直接交渉して御存じでございましょう。タイの大蔵省が正式に発表したのですから。中川さん、いかがでございますか。
  419. 中川融

    中川政府委員 そういう発表等、あるいは新聞記事等の出ましたのは、交渉がすべて済んだあとでございます。三十一年一月、二月のころでございまして、そういう新聞記事が出た、あるいは発表があったということは、在タイ大使館から報告を受けて承知しております。
  420. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはリップスから話を聞いているのではないですか。そういう二%もらうことになっているというので交渉しているのだ。どうですか。
  421. 中川融

    中川政府委員 そういう話は一ぺんも聞いたことがございません。
  422. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私はないと思えないのですがね。ないといえばそれっきりだということにはなるけれども、私は、リップスと日本との間に何か密約があったのではないか。それは、この前からあなたがよく言われるように、百五十億円を五十四億円にしたのです。そこら辺は、投資とクレジットでやったのですということを盛んに言いましたね。そういうところでのんだのは、何か鼻薬をきかされたのではないか。どこから鼻薬をきかされたか、私はあえて言いませんが、そういう説まであるのです。こういう事実がないならないと、はっきりお答え下さい。
  423. 中川融

    中川政府委員 外国と交渉いたします際に、日本政府がそのような鼻薬とかなんとかいうことをきかされて交渉するということは絶対にないのでございます。これは日本政府の名誉のためにはっきり申しておきます。
  424. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、八時半ということでございますので、私は質問の点が実はまだだいぶ残っておりますが、この点についてはこれ以上の質問はきょうは留保いたします。債務性その他の問題について、並びに大蔵省の宮川さんからも御答弁のあるその他の問題がございますので、私はこれを留保して、このあとは明日またお伺いするようにいたしたいと希望して、私の質問は一応留保いたします。
  425. 森下國雄

  426. 辻原弘市

    辻原委員 私は、主としてタイ特別円協定につきまして、社会党を代表して、従来予算委員会なりまた当外務委員会で行ないましたいろいろの問題点につきまして、今なおほとんど不明でありますので、重要な諸点につきまして、総理、外務大臣に質問をいたしたいと思います。  タイ特別円につきましては、重要な点というのは、概括して言いますと、私は二つであると思います。われわれが、また同時に国民が非常に疑問としております点は、一つは、三十年の協定の際に、九十六億は投資及びクレジットという形で正式に協定せられたのに、それが今日、九十六億はただでやるという一転をした方針を政府がなぜとらなければならなかったのか、なぜそういうことをやってしまったのかという点が、その経過において、またその理由において、一番大きな疑問とする点であります。いま一つは、九十六億をただでやる、こう言っておるのですが、それでは、一体この九十六億を払うというその具体的な根拠、計数の根拠、またそれに伴う債務性、こういう点が、今までの質疑の中におきましても全然明らかにされておらないのであります。  そこで、私は、まず順を追うて総理にお尋ねをいたしておきたいのでありますが、(「何回も何十回もやっている」と呼ぶ者あり) 幾ら聞いてもわからぬから聞くんだ。池田総理は、三月の十六日の当委員会で、わが党の横路委員質問に対して、こういうふうに答えておる。横路君の質問は、なぜタイは、第二条の投資及びクレジットについて、ああまで執拗に、これはもらったものだというような主張を繰り返してきたのか、何かその間に不明瞭なものがあったのではないか、こういうふうな質問でありますが、それについての総理の答弁は、こういうふうに言っておるのであります。タイは第二条に不服を言うのではなく、間違いましたと言ったのだ、もらうものと心得ておりましたと言ってきたわけですと答えられておるのでありますが、ここで私が重ねて総理に伺っておきたいのは、この総理が答弁をしておる間違いましたというのは、一体何をタイ側が間違ったと言っておるのか、一体何をタイ側は間違ったからこうしてくれという主張をしてきたのか、その点が今までの質問におきましても明確でないのであります。私は、質問を続ける順序として、総理からいま一度この点についてのはっきりしたお答えを伺っておきたいと思います。
  427. 池田勇人

    池田国務大臣 第二条に明記しておりますように、投資またはクレジットの形式によって資本または労務を供結する、こういうことなんです。われわれは、これは投資またはクレジットの形式で労務並びに資本財を供給する、こういうのでございますから、クレジットあるいは投資でございますから、有償、返ってくるという考えでおったのでございますが、向こうの間違った原因は、投資またはクレジットの形式というのをどう考えたのか、私は、どういうところで間違ったのか、その理由は聞きませんが、間違いました、当初はわれわれはもらうものと思ったが、よく読んでみると、やはり日本の言うことにも一理ある、しかし、われわれとしては、戦時中に徴発されたもの、日本に対する債権をあの条約によって実行してみると債務になったというふうなことは、われわれの考えとしてどうしても納得できない、だからこの際九十六億円をもらいたい、こういうのが向こうの言い分でございます。
  428. 辻原弘市

    辻原委員 投資及びクレジットの形式でというその形式でということについて、向こうは解釈が間違っておりました、こういうふうに言ってきたというわけですね。
  429. 池田勇人

    池田国務大臣 いや、そういうところで間違いを起こしたんじゃないかと思う。とにかく、日本の言うことは正しゅうございます。われわれが間違いましたと言う。どういうところで間違ったのかと言ったら、投資またはクレジットの形式というのがはっきりしなかったんだ、こういうことでございます。
  430. 辻原弘市

    辻原委員 そんなわけのわからないとぼけた話ってありますか。それに対して日本側はどう答えておりますか。ああそうですか、あなた方の解釈はそれは間違っておりましたね、こういうふうに答えたのですか。それはどうなんですか。
  431. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、有償だ、ただ、有償で九十六億円を投資またはクレジットの形式でやるという、そのやり方は四条できまるわけです。向こうは、説明いたしましたところ、これはおおむね外務省でやったのでございますが、自分らが間違いだ、しかし、先ほど申し上げましたように、徴発せられておいて、債務がまた残るんだということは、われわれの良識、タイ国人の良識に合いません、で、九十六億円を払ってもらいたい、こう言うのでございます。そこで、私は、君らの言うことは間違いだったんだが、日・タイ関係を考慮いたしまして、延べ払いにするならば払ってもいい、こう決意したわけでございます。
  432. 辻原弘市

    辻原委員 今総理が後段に私がと言っておるのですが、向こうが間違ったと言ってきておるのは、この間新しい協定を結ぶといってあなたがバンコックに出かけたときとは違うのですね。この間の答弁によりますと、新協定が結ばれた直後、すなわち三十年の八月にいわゆる三十年協定が結ばれて、その年の十二月、そして三十一年の一月にかけて交渉が行なわれておりますね。そのときにすでに、聞違っておりましたと、こう言ってきておるわけです。だから、総理が私がこう言いましたというのは、これはこの間のバンコックか、あるいはその後の話でしょう。私が今お尋ねしておるのは、一体向こうが間違いだと言ってきておるのは、そのそもそも言い出したのはいつか、いつの時限でそういう間違いをしておりましたと言ってきておるのか、そんなとぼけたことをいつ言い出したか、こう言っているのです。
  433. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 三十年協定のできました直後からです。これは何回もこの委員会で申し上げておることですが、先方は、あれは実はもらったものだ、こういうことで言って参ったわけです。三十年協定のできた年の十二月からそのことを言っておるわけです。そこで、そういうばかな話はないということでこちらは押し返しておったわけでございますが、三十六年の四月四日、サリット首相はわが方の大江大使に対しまして、歴代の政府政府部内ではしばしば討議しながらも、民衆に対して本問題について沈黙を守らざるを得なかったのは、政府としては厳として存在する協定、——自分もこの協定についての日本政府の立場は理解し得るということを言っております。その協定と民衆の感情との板ばさみになったからであるということを申しております。それから、昨年の十一月十三日、やはり大江大使に対しまして、協定のことを言われれば一言もない、日本が現協定すなわち三十年協定のことを言うならば、タイ側としては何とも仕方がないから、このような失敗があったということを教訓としてタイ国青史に残すのみであるというようなことを言っております。昨年から先方は、まさに自分の方は協定をたてにとって言われれば一言もないということを認めておるのであります。しかしながら、民衆の感情との板ばさみになって非常に苦しい立場にあるということを言っておったわけです。
  434. 辻原弘市

    辻原委員 その間違っておりましたと言ってきたのは、だれなのですか。
  435. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは、日本の大江大使に対して、サリット首相が言ったわけです。しかしながら、この言葉の中にもそれとなく言っておるのですが、もっと激しいことも言っておるわけでございまして、状況が、自分らの方にばか者がおってこういうことになった、しかしながら、そのことは、日本がどうしても自分らの方の無知、失敗というものをたてにとって無理押しをするならば、タイ側の青史に残す、すなわち、タイ側としては非常な決意を持って日本との関係考え直さざるを得ないというふうな趣旨の感情的な気持になって訴えておるわけでございます。
  436. 辻原弘市

    辻原委員 まあ向こうの青史に残すと言っておどかされたから、九十六億をただでやったというわけではまさかありますまい。今あなたが大江大使と言われたが、この委員会での答弁でも、まだ半年たつかたたぬ三十一年の一月に、すでにこの協定は間違っておりましたと申し述べてきておるということが総理から答弁されておるのです。だから、そのときに、これは先刻の岡田委員質問の中にもはっきりしておりましたように、ワン・ワイタヤコン、それとリップスが一緒に来て、外務省との約一カ月にわたる交渉の中でそれを主張しておるということが答弁せられておるのです。だから、来たのは事実なんだが、それを主張したものは一体だれかということを私は伺っておる。これはどうですか。
  437. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ナラティップ外務大臣、これは責任者でございます。この人が三十年の七月に協定を結びまして、八月に批准になって、その直後の十二月に来たときから、実は第二条はもらったものだと考えるということを主張し続けておったわけであります。しかしながら、わが方としては譲らない。そこで、タイ側のサリット首相も、昨年に至って、日本側の解釈が正しいということを認めておるわけであります。主張したのはだれかということでございますが、要するに、二条をもらったものだと考えると主張したのは、これは先方の外務大臣が日本政府に対しそういう主張をしておるということでございます。リップスという男は、これはアドヴァイザーでございまして、タイ側に契約によって雇われておる人であります。これはタイ側の政府の意を受けて発言するということでありまして、責任者はあくまでタイ政府であり外務大臣である、かように考えております。
  438. 辻原弘市

    辻原委員 余分なようですがね、外務大臣、あなたはリップスについてかなり詳しいじゃありませんか。私が一月の三十日に質問したときには、何も知らぬといって、初めはしらを切ったんです。しかし、だんだんリップスの話が出てくる。外務省の書物を見ればれっきと名前が載っておる。しかも中川さんとはかなりじっこんの間柄だ。二十八年以来しばしばあれをしておるじっこんの間柄である。それをしも外務大臣は知らぬ存ぜぬで突っぱり抜こうとしておる。今の外務大臣の答弁によりますと、かなり詳しいじゃありませんか。私の今の質問の本論はそれじゃありませんから、あとでぼちぼち伺いますけれども、そこで、間違いましたと言ってきたのは、交渉の責任者であったワン・ワイクヤコン、すなわちナラティップ外務大臣であった。今までの池田総理、それからあなたの答弁によると、間違いましたと言ったのは、三十年協定が根本的に不満であるから、そういうものを結んだのは間違いだったとは言わなかった、第二条の投資及びクレジットの形式ということについての解釈に誤りがあって、その解釈はタイ側は取り違えておりました、だから、協定をたてにとられれば、これはやむを得ません、こういうふうに言ってきたということは、これは明確になった。  そういたしますと、そこから出発をいたしまして、三十一年以来、まあ現三十年協定が動かなかった動きましたという問題はさておいて、ともかく六年間そういう状態でしばしば交渉が行なわれ今日に至った。そうすると、今度の協定というものは、その解釈を統一したという協定であるのか、それとも三十年協定と変わった形において新しく一つの協定を結んだということになるのか、その辺のこの新協定の性格というものを明らかにしていただきたい。
  439. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 間違っておった、日本側の解釈が正しいのだということを言い出したのは昨年からでございます。それまでは、累次申し上げているように、自分の方はあれはもらったものだと考えておるのだというタイ側の考え方を言ってきたわけでございます。   〔委員長退席、福田(篤)委員長代理着席〕 昨年以降の交渉において、先方のサリット首相がそういうことを言い出した。しかしながら、タイ国民感情としてはもらったと考えざるを得ない、貸したものだから、それが借金になって残るという形はとても耐え得ないということを言っておったわけでございます。この経緯につきまして申し上げると非常に長くなりますし、しばしば申し上げておることでございまするから省きまするが、要しまするに、このタイ特別円の残高十五億円をはかる基準というものは、実は双方において解釈の相違があったと言わざるを得ないと思うのであります。タイ側が千三百五十と言い、あるいは五百四十と言い、あるいは二百五十と言い、百五十は最低だとこう言って参って、そうして、五十四億はスターリング・ポンドで払え、あとは第二条において投資あるいはクレジットの形において資本財並びに役務を供給する、こういう形になったわけでございまするが、そのはかる尺度について日本側タイ側と真に合一するものがなかった。そのために三十年協定が動かなかったということが言えるのであろうと思います。従って、それにかわる協定を結んで、今の御質問で言えば後者でございます。そういう新たなる協定を結んでこの問題を解決したというのが今回の協定であるわけであります。
  440. 辻原弘市

    辻原委員 外務大臣の今のお答えは、解釈を統一した協定ではなくて、新たなる協定を結んだのだ、こう答えられた。そうすると、従来の協定によりますと、九十六億というのは、これは投資及びクレジットである。今度の協定によると、九十六億というものは、これはただである。すなわち、無償で供与するということになった。そうすると、九十六億を無償で供与する新協定を結んだんだ。言いかえてみると、新たに日本の国が、日本国民債務を負う新協定を結んだんだとわれわれは理解をして、そう受け取ってよろしいかどうか、これを念を押しておきたい。
  441. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうことでございます。すなわち、第二条の解釈が双方において違っておる。こちら側の解釈が正しいわけでございますが、これでは動かない。そこで、九十六億円を先方がもらっておるという考えでいるときに、あくまでもクレジットあるいはインヴェストメントの形で供給するということになりますと、非常に長期な、非常に低利な、極端な表現で申しますれば、無利子でもそれを供給しなければならぬということに、実際問題としてこれを動かす場合はなるわけでございます。そこで、非常に長期な無利子の貸付をやる、そして、それが返って参りましても、将来、たとえば二十年というようなことになりますれば、現在価値で見れば非常に少ないものになるわけでございます。そこで、八年間の分割払いでいたしますれば、現時点においては、九十六億円を八年で分割して支払えば、これをかりに六分五厘とすれば六十数億円ということになるわけでございますから、そういう点で、日・タイの将来も考え日本自身の将来の貿易の状況等も考えまして、その方が日本のためにもよろしい、しかもタイ側においては長年のしこりがなくなるということでよろしかろう、こういうのが判断の基準でございます。
  442. 辻原弘市

    辻原委員 そうだとするならば、なぜこの協定にややこしい名前をつけたんですか。私もまあ外交はしろうとでありますけれども、私の知識をもってしても、今度結ばれた協定は題目からおかしい。特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定、ややこしいこういう名前をなぜ付したか。原文を私は参考にいろいろ調べてみました。そうすると、その原文に使われている言葉も、私の調べた範囲によると、どうやら苦心の作であるらしい。すなわち、そこにアグリーメント・リプレイスという言葉を使っている。これは一体そのまま解釈するとどういうことになりますか。これは条約局長でもけっこうです。どういう言葉になりますか。
  443. 中川融

    中川政府委員 この協定のこの題目にある通りのことでございまして、現在の協定のある規定にかわる協定、その英文の方のリプレイスというのはまさしくこの意味でございまして、現在ある第二条、第四条、これの効力を廃止いたしまして、そうして実質的にはこれにかわるものではありますが、形としては新しい協定を結んで、その新しい協定が実質的に現行の第二条及び第四条にかわる、こういうのがこの趣旨でございます。
  444. 辻原弘市

    辻原委員 新しい協定であるならば、なぜすなおに、何々に置きかえる協定ということじゃなくて、三十年協定を修正した新協定とか、改定をした新協定とか、こういう一つの表現を用いなかったか。それも、通例用いられる言葉を専門家に聞いてみますと、リプレィスという言葉は使っていない。また、そういう例があるかと私も調べてみましたけれども、それもあまり使われておらない。これは、使いなれない、聞きなれない言葉なんです。これまた私の聞いた範囲であるけれども、アズ・アメンドとか、あるいはアメンドメント、こういった言葉が通例の場合に使われる。すなわち、三十年協定というものをこれは変えたのだ、改めたのだ、そういう意味から言うならば、当然、何々にかわる、その協定のある部分の協定にかわるといったようなややこしい言葉じゃなくて、三十年協定の内容を改定した協定とか、そういう通例の言葉を使うのが外交上の慣例ではありませんか。その点は一体どうなんです。他にこういったややこしい言葉を使って表現している例がありますか。
  445. 中川融

    中川政府委員 実質的に申せば、現協定の二つの条項を実質的に変えるわけでありますから、現行協定を修正する協定というのも考えられるわけであります。国内法の場合にはそういうことを普通やるわけであります。従って、その場合には現行協定一本であります。新しい協定はできないのでありまして、現行協定の第二条、第四条が修正された形のものがそこにはまり込むという格好になるわけでありますが、条約を改定する場合にはそういうことをやる例もございます。たとえば、旧安保条約の付属の行政協定の十七条というものを変えたことがあります。それはまさしくそういうように変えたのでありますが、今回は、そういうやり方じゃなくて、むしろ、その内容が、要するに、今までのいろいろ複雑な関係であったのを一掃いたしまして、一つ日・タイ関係を新しい基礎の上に作り立てていこうということでありますから、むしろ今度の協定自体を単独の協定といたしまして、その趣旨をはっきりいたそうということで、これはどちらにしても同じことであります。どららをとってもいいのでありますが、タイ側と協議をいたしました結果、そちらの第二の方法の方がいいということに意見が一致いたしまして、その方法をとったのでございます。別に形式的にこういうことは非常に異例のことだということはないと思うのでございます。国内法の場合には非常に修正ということが多く行なわれますが、条約においては修正ということは比較的少ないのでございまして、この形を日・タイ双方で協議してとったわけでございます。
  446. 辻原弘市

    辻原委員 たんたんと答えられたようでありますが、私の問うに落ちずにどうやら語るに落ちたような感があります。というのは、今あなたが言われた、タイ側と協議した結果、タイ側はこれの方がよろしい、こう申したと言われる。一体、タイ側はなぜ、置きかえるという言葉、すなわちリプレイスというのを使った方がいいと言ったのですか。その点はタイ側はどういう理由をあげたのですか。これは条約の表題をきめる問題ですから、私は、簡単に、どっちでもいいや、そういう形で定められたものではないと理解する。大体、すべてどんなことだって、表題というものはその中に精神、性格、そういうものを織り込んで規定されるものなんだ。だから、私は、今度の協定の性格というものは一体何であるか、どういう経過から生まれてきたものであるか、こういうことを判断するのに、まずこの表題について分析を試みてみたら、いろいろ疑問が出てきた。そこで今お尋ねしたわけです。あなたは、どっちでもいいのだけれども、タイ側は、こっちをとった方がよろしい、リプレイスをとった方がよろしい、こう申したと言うが、その理由は何ですか。タイ側はどういう理由をあげてこっちの方がいいと言ったのですか。
  447. 中川融

    中川政府委員 今回の協定ができます前に、これの骨子になるものを、大江大使と先方の外務大臣との間に要綱という形で合意を結んだのでありまして、その合意に基づいて今回の協定を起草したのでありますが、その要綱自体にたしかリプレイスという言葉がすでにあるのでありまして、この要綱にありますリプレイスをそのままとって今回の協定の表題としたということでございます。その要綱を作ったときにどうしてリプレイスとしてアメンドとしなかったかということにさかのぼるわけでございますが、これは、やはり、今回の交渉自体が現在の協定の動かないものにかわる新しい合意をしようじゃないかということから出発しておるのでありまして、総理が行かれたときの話から、大体そういう思想で出てきておるのであります。従って、交渉の過程から申しますと、リプレイスという言葉が一番ぴたりと当てはまる実体であったのでありまして、その実体通りに協定の表現をしようということで、このかわるという書き方になったわけでございます。
  448. 辻原弘市

    辻原委員 もう一つ伺っておきますが、あなたは、先ほど、国内法では普通は修正、改定という言葉を使いますと言ったが、まさにその通りなんです。われわれが法律案の修正あるいは従来ある法律の改正を試みたときには、それに置きかえるなんという言葉はいまだかって使ったことがない。しかし、外交の場合は云々と言われたけれども、他にそういう例がありますか。他に、いわゆる修正、改定ということを使わずに、前のやつに置きかえる協定あるいは条約だというふうな形で使われておる例がありますか。例があるならばそれはどっちだっていいということになるが、私は寡聞にしてその例を知らない。おそらく今度のこのタイ特別円のみこういう言葉を使ってわれわれの目の前に出しておるのだと思うが、例がありますか。お答えを願いたい。
  449. 中川融

    中川政府委員 普通、条約を改定いたします際には、全文改定が非常に多いのでありまして、要するに、今までの条約を廃棄して新しい条約を作る。しかしながら、その中には今までの条約の内容も入れてある場合が相当多いのでありまして、要するに全面的に新しい条約に置きかえるというのが普通のやり方であります。今回は、そういうことでなくて、一部分を置きかえるということになったのでありまして、むしろその全文を要するに新しい条約にかえるという場合のやり方から出発いたしまして、一部をそれにかえるということに発展したからこういうことになったのでありますが、この全文改定ということは、たとえば、安保条約に基づきます行政協定が地位協定に変わった。これは、内容から見ますとほとんど同じでありますが、しかし、全文新しい条約になっていることは御承知の通りでございまして、そういう例がむしろ多い。しかしながら、ではどうして一部改定、一部代位という形をとったかと申しますと、これは、今の協定を全部殺してしまうわけにはいかないのでございまして、第一条、第三条、第五条というようなものは、これは当然生かしておかなければいけないのでありまして、その意味で、やはり部分代位という形をとったわけでございます。
  450. 辻原弘市

    辻原委員 おかしいじゃありませんか。今の三十年協定、これを生かしておかなければならぬと言う。第一条がすでに支払いを完了して、これは終わっているのでしょう。問題は、第二条についてどうするかということを取りきめて、先ほどからの答弁によると、新しく日本債務を負う九十六億という協定を結んだのだと言う。それならば、これは全面改定じゃありませんか。あなたの言うのは、全面改定の場合においてはいわゆる改定、修正という言葉を使っている例があるけれども、これは部分的に置きかえたものだからという意味でリプレイスを使ったのだと答えられておるのだけれども、部分的改定じゃないじゃありませんか。   〔福田(篤)委員長代理退席、委員長着席〕 残った一つの問題についてどうするかの新しい判断に基づいた協定を結んだ。まるきりこれは従来のものと違った、しかも、以前の三十年に結ばれた協定の今回触れなくともいい部分は、すでにこれは実施して終わっているじゃありませんか。そういう意味からすれば、今きめるものはまるきり新しい協定なんです。とするならば、これは当然いわゆる改定です。あるいは新協定だから、置きかえるなどという言葉を使うべきじゃないのです。もう一度答弁を願います。
  451. 中川融

    中川政府委員 現協定の第一条は、仰せの通り、すでに実施してしまったことでありますから、必ずしも生かしておく必要もないわけでありますが、一番大事なのは第三条でございまして、ここで、日本は、タイ側の請求権をみなこれで死んでおるということをはっきり響いておるのでありまして、この三条まで死んでしまいますと、タイ側の請求権はみな生き返ってしまいまして、また日本は五十四億円かなにかとにかく払わなければいけなくなります。この三条でタイ側の請求権がみな死んでおる。これだけはどうしても生かしておかなければいけないのでありまして、その意味で、これを生かしながら新協定を作るということは、非常に技術的に複雑でむずかしいので、新協定は作りますけれども、旧協定も部分的に生かしておくというやり方をとったわけでございます。
  452. 辻原弘市

    辻原委員 そういうお答えでは納得できないのです。さっき私が指摘をしたように、このリプレイスという言葉を使うことについては、日本側よりはむしろタイ側から持ち出されておる。このことが、私はこの協定の背後にうごめいておるいろいろな問題、それに深い関係があるということをこの際指摘していきたい。おそらくこういう問題をあなたに尋ねても、さっきの岡田委員質問と同じように、関知いたしませんと言うに違いないと思うのだが、われわれは、かりにここであなた方が否定をされたとしても、重大なこの点についての疑義を持っておる。すらっとという言葉があるが、すらっとなぜ新しい協定とせなかったのか。なぜあまり使われていないいわゆる協定の表題をくっつけて、むりやり三十年協定のある部分に置きかえたか。すなわち、三十年協定とこれは密接な関係を持っておるのだ、三十年協定が根本なんだよということを強調するためにこういう言葉を使った。それには、先ほど岡田君の指摘をされたリップスがこれに介在をしているということを、われわれはこの際指摘をしたいのです。なぜか。その証拠に、三十一年にリップスが来た際に、日本側に対して執拗に、何とか五十四億のみならず残る九十六億についてもただにしてくれという新しい要求を再三再四繰り返しておるのです。ところが、あなたもさっき言われた、小坂さんもさっき言われたように、三十年協定を結んだナラテイップの補佐役を務めたリップスが、わずか半年やそこいらで、しかも一応了解を与えておきながら、半年たつかたたぬ間に、あれは解釈が間違った、だから一つ何とか九十六億ものレジットではなくて無償でもらいたいのだというような主張をなぜしてきたか。これは、先ほど外務省の本に基づいて岡田委員が指摘をしたように、五十四億についてはリップスが一億八百万という二%のリベートをもらっておる。ところが、九十六億については投資及びクレジットだから、これはリベートをもらうわけにはいかぬ。まるまる両方合わせて百五十億取れば、その分についても契約通りの二%のリベートを払いますよ。だから一つやってみてはどうか、こういうことでリップスがにわかに裏面から残る九十六億の無償供与を工作し出したということが、当時のいきさつから見てこれは明らかなんです。ところが、九十六億を新しいものだとやれば、リップスはそのリベートをもらうわけにはいかぬ。前の協定と関係があるということになって初めてリベートがもらえる。これは一般に言われているのです。そういう経緯から、苦心惨たん、タイ側としてはリップスの工作によって何とか三十年協定と結びつけよう、こういうような経緯から生まれてきたのだということが言われているのです。関知しませんか、どうですか。
  453. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 このリプレイスという言葉がおかしいという御指摘でございますが、同じことだと思うのでございます。この二条、四条が動きませんから、それにかわる新協定を結ぶ、すなわち、それに置きかえるということで、修正と言っても、リプレイスと言っても、これは大した違いはないと思いますが、今の説明で伺っておりますると、むしろ置きかえるという方が新たなる協定という意味は強く出るのでございまして、そのリップスの報酬云々という方から参りますれば、むしろリプレイスの方がもらいにくくなるのではないだろうかというふうに、私はさように思うのであります。これは私の感じでございまして、これはタイ側のことでありまして、実際どうなるか知りませんけれども、私はさようなことはないと思います。  なお、この九十六億円は、これは銀行へ積んでおいて、そうして、こちらの資材、役務調達のつど支払われていくものでございまして、それについてのコミッションというのは、そこからは出る余地はないということであります。
  454. 辻原弘市

    辻原委員 私は、今逆に聞いてみたのです。確かに小坂さんが言われたように、リップスに関連をして、どちらの方にしたらリップスがリベートをもらえるか、いろいろな判断をしております。今小坂さんが言われたように、新協定とやった方がリップスがもらえるのではないかという解説をした本までここにある。「日本の動き」という本だ。これをちょっと参考に読んでみる。それは今小坂さんがくしくも答弁された。私は逆に聞いていた。前にひっかけてやった方がリップスがもらえるのではなかろうか。なぜかというと、三十年協定の当時はリップスは顧問として正式にきまっておったが、現在の協定には関係があるんだろうかないんだろうか、そこの一つの判断が率直に申して関係があるように見えるけれども、それについては今までの交渉の中には頭を出してきておらぬ。しかし、三十年協定があとで動かなくなった。その当時まではリップスは関係しておることは事実です。そこで、三十年協定で約束しておったのだから、三十年協定に関係があるならば、九十六億もそれに置きかわったものであるならば、そのときに交渉をしたリップスは、三十年協定から引き続いて生まれたものならば、九十六億についてはもらう権利がありますよ、こう主張してくる道があるのではないか。それに対して、小坂さんが、そうじゃなくて、それはそれとして終わったのだけれども、新しくまた特別円の問題で、ここで日本側が新しい金を払うということになれば、それは新事実として、リップスはもらいやすくなるのじゃないか、そう小坂さんはおっしゃる。それで、そういうふうに書いてあるのもあるのです。ここに書いてある。読んでみます。「このリプレースという珍らしい用語には可成り深い意味があるといわれる。これについて二つ理由が考えられる。1、タイ側の旧協定改訂申し入れに対し、三十二年岸首相、池田通産相は改訂は不可能だと拒否している。不可能が可能になったとの批判を避けるため「代る」という文句を用いた。」、——これは別の問題ですが、その次に、「改訂」にするとリップス弁護人にタイが二%支払わねばならないからそれを避けるため「代る」とした。しかし、政府の口からはまだはっきりした」云々、こう書いてある。これは小坂さんが今たまたま言われたことなんです。「代わる」とやったならば、もらいにくくなるであろう。この事実については、これはあなた方笑っておられるけれども、タイの新聞等にも報道されたことがあり、また、日本の外務省の資料にも一部出ておるほどはっきりしたことなんです。だから、われわれとしては、タイ特別円の問題については、何かしらそういう問題と問題を持ち、単に池田さんが言われるような経済協力とかあるいは日・タイの将来の問題という大所高所論などだけでは割り切れない問題がある。日本国民は、九十六億という新しい債務を何もはっきりしない理由のままくれてやろうというようなことについて納得がいかぬと今日申しておるのは、そういう暗い影がこれにまつわりついているからです。私は、時間がありませんから、タイの政情、そういった背景の中にどういう形でこの九十六億が今後使われていくであろうかということについては、きょうは触れることはできませんけれども、この協定にかわる、置きかえるという言葉一つだけを掘り下げてみても、そういう問題に突き当たってくる。だから、今までの総理なり外務大臣の答弁をされておるこの協定の交渉の経過、そういうことについては一切われわれ納得できないと申しておる。いま一度一つ総理から伺いたいと思う。
  455. 池田勇人

    池田国務大臣 私も、今の言葉にありましたごとく、協定第二条から言って、これは資本財あるいは役務を供給する義務がございますが、その元本はこっちに返る、これを強く主張したのであります。従いまして、途中におきまして精油工場を設けるとかいろいろなことをやってみましたが、どうしてもタイが納得がいかないので、このままでタイ日本との関係を置いておくということは、私は、日・タイ間のみならず、東南アジアに対する日本の信用から申しましても、よくない、こう考えまして、九十六億円を年賦で払うことにしたのでございます。もし九十六億円を有償だといっても、二十年も三十年もそのままでやられたなら大へんなことになるのであります。また、精油工場を置きまして九十六億円を出しましても、その後の経理状況等を考えてみますと、必ずしも有償であるからといって非常にいいことばかりはない。しからば、タイ日本との関係考えまして、年賦でやるならば現在価値から言っても相当抵いから、できるだけ長い年賦で無償でいこうという決心をしたのでございます。タイ日本とのことを考えましても、協定を結びました昭和三十年までは、御承知の通り日本が入超でございました。しかし、三十一年からは日本の方がうんと出超になった。しかも、その出超額は、時によって五、六千万ドルという、倍、三倍くらいに日本輸出タイからの輸入よりふえる。三十一年からタイ日本との貿易関係はすっかり逆になってきた。こういう点から考えまして、有償で工場をこしらえても、工場の元本とか、あるいはお金を長く貸して二十年も三十年もということになりますと、かえって損だ。それよりも、長い年賦でいくならば現在価値も少ない。こういうので、私はそちらの方をとったわけなのです。いかにも、有償のものを無償にした、くれてやったというふうに考えがちでございますが、これを経済的に申しますと、たとえば、九十六億円を今日本が有償だといって三十年も貸しておったらどうなりましょう。また、九十六億円を出して精油工場を作って、そのうち精油工場が赤になった、損をしたというときには、九十六億円の精油工場はいつになって日本に返るでしょうかということを考えますと、長い年賦でやれば現在価値も少ないから、日本の財政から言ってもこの方が得であり、楽である。こういうことを自分は考えましてやったのであります。
  456. 辻原弘市

    辻原委員 総理はいろいろ言われていますけれども、九十六億を今日本特別円によって起きた債務としてこれを払う、それとタイとの今後の経済協力の問題は別の問題だと私は思う。もしそういう議論をやるならば、この間も横路委員が触れられておったように、出超だから少々向こうに金をくれてやっても損にはならぬ、入超だからくれてやったならばこれは大へんだ、そういう商業的な考え方でこの問題を扱うということであるならば、これは一体九十六億の積算の根拠は何だ、あるいは三十年協定の五十四億の積算の根拠は何であるか、特別円はわれわれが払わなければならぬ額として一体何ぼ残っておるのだ、こういう議論は一切要らないということではありませんか。問題の建前は、あなた方がガリオア・エロアの問題についても、言っているように、また、タイ特別円のこの協定の問題についても言っているように、債務もしくは支払わなければならぬ額として、当然残っているものだから日本がそれを支払うのだという前提で問題が提起されておる。今総理が言われたような、日本の得になるか損になるかといったような商業的な考え方でものを律するならば、それは何もタイ特別円だけではありません。タイの国だけではありません。アメリカとだって、あるいは東南アジアのその他の国とだって、同じような議論が成り立つ。問題は、そういうふうにそらさないで、なぜわれわれがこの金を負担しなければならぬのか、三十年のときのいきさつはどうであるのか、今まで政府が、この金については、ただしこれは有償ですよという主張をしてきたのに、なぜにわかにこれがただになったのか、そういう点の疑問を明らかにしないで、総理の答弁はそれを別の方向にそらしておる。だから、その点についてはわれわれは了解しがたい。しかも、先ほどからの答弁によれば、そうするとこれは新しい協定、新しく日本国民債務を負うものと心得てよろしいか、こう私が申したならば、そうですとお答えになった。そうなれば、それでは一体九十六億という金はどういう積算の根拠から生まれた債務かと私は聞かなければならぬ。しかし、時間が今晩ないようでありますから、この問題につきましては、一体その積算の根拠はどこにあるか、このことを私は別の機会に伺っていきたいと思うのだが、最後に一言総理に伺っておきたいのは、今の答弁に、三十年協定で供給の義務を負っておるものだと言われた。そうすると、三十年協定の際に、五十四億は明らかに無償でこれを供与するときめておりますから、われわれは債務支払いという形においてそれは取り結んだし、また、支払った。しかし、同時に、九十六億というものについては、これは債務性あるものとして金額を算出して取りきめておったものであったのかどうか、この点を承っておきたいと思います。
  457. 池田勇人

    池田国務大臣 債務性があるかどうか、普通の金銭債務ではございません。それは、二条に掲げておるように、投資またはクレジットの形式におきまして資本財または労務を日本は供給する、こうなっておるのでありまして、供給の義務でございます。しこうして、その供給の義務を果たすのは、日本タイとが合同委員会を設けて、その具体的方法をきめるというここに相なっておるのであります。従いまして、その合同委員会の様子によっては、あるいは九十六億円を即金で一度に出して、二十年、三十年ということになるかもわかりません。これは話してみなければわかりません。ですから、供給する義務はあるのであります。
  458. 辻原弘市

    辻原委員 三十年協定では、五十四億と、プラス九十六億については供給の義務という意味において結ばれた。そうすると、今取り結ぶ協定において初めて九十六億は債務性を有する義務を負う、すなわち、日本が無償で供与する義務を負う内容を新しく取りきめた、こういうふうに理解してよろしいか。
  459. 池田勇人

    池田国務大臣 今度の協定で、あの条件に従って日本は金銭債務を負うことになるのであります。
  460. 辻原弘市

    辻原委員 先ほど申し上げましたように、あとの問題は留保いたしまして、きょうのところ質問を終わります。
  461. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後九時二十二分散会