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1962-03-23 第40回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十三日(金曜日)    午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       安藤  覧君    愛知 撲一君       井村 重雄君    池田 清志君       宇都宮徳馬君    宇野 宗佑君       齋藤 邦吉君    椎熊 三郎君       正示啓次郎君    竹山祐太郎君       床次 徳二君    稻村 隆一君       加藤 勘十君    黒田 壽男君       島本 虎三君    戸叶 里子君       帆足  計君    細迫 兼光君       森島 守人君    横路 節雄君       井堀 繁男君    田中幾三郎君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (企業局賠償特         需室長)    池田 久直君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十三日  委員大久保武雄君、帆足計君及び田中幾三郎君  辞任につき、その補欠として宇野宗佑君、加藤  勘十君及び井堀繁男君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員加藤勘十君及び井堀繁男辞任につき、そ  の補欠として島本虎三君及び田中幾三郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事戸叶里子君同日理事辞任につき、その補欠  として穗積七郎君が理事に当選した。     ————————————— 三月二十二日  核兵器の実験禁止等に関する請願小松幹君紹  介)(第二七九九号)  同外二件(淺沼享子紹介)(第二八八八号)  日韓会談即時打切りに関する請願外一件(川上  貫一紹介)(第二八〇三号)  同外一件(志賀義雄紹介)(第二八〇四号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第二八〇五  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  日本国に対する戦後の経済援助処理に関する  日本国アメリカ合衆国との問の協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  特別円問題の解決に関する日本国タイとの間  の協定のある規定に代わる協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際民間航空条約改正に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通  商航海条約締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  海外技術協力事業団法案内閣提出第九二号)      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事戸叶里子君より理事辞任いたしたいと申し出がありました。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下國雄

    森下委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  なお、理事辞任に伴う補欠選任につきましては委員長に御一任額いたいと存じますが、いかがでございましょう。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森下國雄

    森下委員長 御異議はございませんようでありますから、委員長穗積七郎君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 森下國雄

    森下委員長 日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイ国との間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約改正に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国アルゼンチン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件、海外技術協力事業団法案、右を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを順次許します。床次徳二君。
  6. 床次徳二

    床次委員 私は、本日は、ガリオア及びエロア、並びにタイ特別円の問題に関しまして、時間のありまする限度において御質問を申し上げたいと思うのです。  まずガリオア・エロアの問題について御質問をいたしたいと思うのでありますが、すでにその債務性につきましては数十回にわたりまして議論があったのでありまして、私は、今日までの応答の結果、わが国債務性を有することにつきましては、すでに明らかになっておると思うのでありますが、今日は、特にアメリカ側におきましてこの資金に対していかなる意見を持っておるかということにつきまして、政府所見をただしたいと思うのであります。  この点につきましては、すでに外務省が資料1といたしまして提出いたしておるのでありますが、まず第一に、一九四七年二月二十日付のマッカーサー元帥米国議会に発しましたメッセージ資料として提出されておるのであります。このメッセージの中におきまして、マッカーサー元帥は、「米国予算からの支出は、日本債務となるが、」と言っておるのであります。元帥は、米国予算から支出される緊急救済物資日本債務になることについて、米国国内法上の規定に基づいて、債務であるがということを述べておるのかどうか、それとも、この文言は元帥が個人の見解として述べたものであるかを伺いたいのであります。
  7. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。この点につきましては、陸軍省予算から出されたものであります。予算を審議する過程におきまして、その性格を表現した、こういうことでございます。
  8. 床次徳二

    床次委員 続いて伺いたいのでありますが、マッカーサー元帥米国議会にあのようなメッセージを送らなければならなかった当時の米国国内事情がどうであったかということを説明を聞きたいのであります。占領費に対する米国納税者負担増大に対する不満を緩和するためにあのメッセージの発送となったというような説もあるのでありますが、もしもこの仮定に立つならば、米国国民は当初は米国予算から支出される救済物資納税者負担になるものと考えていたのではないかということを疑われる余地もあるのでありまするが、その点を明らかにせられたいのであります。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 当時、ガリオア歳出法には、この歳出返済が条件である、こういうただし書きがついておったといわれております。しかし、さようなことになりますと一銭一厘まで回収しなければならなくなる、こういうことで、そういうただし書きは取ったというようなことでございますので、当時の議会の空気としては、これは贈与として全部くれるなどということは毛頭考えていなかったと思われるのであります。従って、マッカーサー元帥においても、これは当然返されるものであるがと、こういう説明を行ないまして、そのただし書きの項を削らせる必要を感じられたのではないか、かように思う次第でございます。
  10. 床次徳二

    床次委員 米国側意見が次第に明らかになりましたが、なお明らかにいたしたいことは、ガリオアエロアは全く同質のもので、これを分離できないものと考えているかどうかであります。私の意見によりますれば、ガリオア占領地救済資金であり、エロア占領地経済復興援助資金でありまして、この間に幾分性質が異なるように思われるのであります。この意味におきまして、その債務性につきましてもそれぞれ相違があるように考えられると思うのでありまするが、いかが考えられておるかということであります。すなわち、エロアにつきましては、その債務性はきわめて濃厚でありまするが、ガリオアにつきましては、マッカーサー元帥メッセージで述べておりまするごとく、勝利者がもたらした明瞭な責任を果たすための処置というものに含まれるのでありまして、これは陸戦法規第四十三条に基づく占領地における飢餓疾病、不安を阻止するために必要な資金として支出されたものと考えるならば、その債務性はかなりエロアに比して薄いもののように思われるのでありますが、そういう意味において、政府ガリオアエロア区別して債務性を考慮したかどうか、また、その数量、金額等区別して今日計算の基礎を作ったかどうかということについて伺いたいのであります。
  11. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ガリオアエロアは、いずれも広義ガリオア予算に含まれまする歳出費目でございまして、予算上は同一性質を持つものであります。終戦直後は当面わが国飢餓疾病、社会不安を除去することを目的とするガリオア援助が適用されましたが、一九四七年米会計年度から、マーシャル援助に相応せしめる趣旨で、ガリオア予算がより広範に経済復興目的とする援助にも使用されることになりました。これをエロア援助と称しておるのでございますが、両者はいずれも同一予算に基づく支出でございます。従って、両者目的に相対的な区別があることは事実でありますが、これをもってその債務性相違があると言うことはできないのであります。また、アメリカとしても、ガリオアエロア区別をしてわが国に提供しておりませんで、通産省援助総額もこの両者を別個に算定する手続をとっておりません。  なお、ヘーグ陸戦法規第四十三条について、ガリオア・エロア返済を要するやいなやの議論に直接関連を有しないことは累次説明を申し上げた通りでございます。このヘーグ陸戦法規規定は、元来、戦争中一時的に行なわれる軍事占領のもとにありまして、占領地住民最小限度の公共の社会秩序を維持せしむるためのものでありまして、今次大戦のような長期にわたる占領行政を予想したものではございません。さらにまた、この規定は、占領軍生活必需物資等占領地住民に無償提供すべしとの義務を課しているものではないことは御承知の通りでございます。
  12. 床次徳二

    床次委員 なお、先ほど引用いたしましたマッカーサー元帥メッセージの中にある言葉でありますが「慎重に考慮すれば米国納税者はこの処置によって一ドルたりとも損をすることはない。」という意味を述べておるのでありますが、この意味は、ガリオア・エロアが原則的に全額日本側債務であって、いつかは返済されるものでありまして、その限りにおきまして一ドルたりとも損をしないという意味にとってよろしいものであるか、あるいは、この救済物資によりまして、占領行政地における飢餓疾病あるいは社会不安等の防止、治安維持等を可能にする、従って、占領管理の上でもって救済物資以上のむだな金は一ドルたりとも消費しないという意味でもって、損することがないと意味に述べておるのか、この点を明らかにせられたいのであります。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お述べになりました後者を意味するものとわれわれ考えております。すなわち、このマッカーサー証言意味するところは、対日援助については、よく考えてみれば決してむだにはならないのだ、当時、アメリカ国内の世論が、旧敵国に対して納税者負担が大きいではないか、こう言っているのに対しまして、決して長期に考えればむだにならぬ、すなわち、日本は後日何がしかを返済するであろう、必ず返済するであろうし、また、この援助によって日本が平穏に返り、経済も復興すれば、アメリカ自由主義陣営における負担は軽くなり、ひいてはまた世界平和にも貢献するということに着目すれば、この援助はきわめて有意義である、こういう説得をなしたものと考えられる次第であります。
  14. 床次徳二

    床次委員 さらにメッセージについて検討したいと思いますが、マッカーサー元帥は、メッセージにおきまして、ガリオア債務が「第一義的債権によって保護されなければならない。」とあるが、ここに言う第一義的債権とはいかなる意味を持っておるか、第一義的債権以外の第二義的債権というものが当時考えられておったのかどうかを伺いたいと思うのであります。一説によりますと、当時、それは平和条約におきまして想定される賠償その他の債務のことをさしておるものだとも言われておるのでありますが、さような見解と申しますか解釈があるかどうか、政府意見を伺いたいのであります。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第一義的債権という表現は、おそらく、他の請求権、たとえば賠償に比べて優先するという意味に使われたのではないかと思われる次第でございます。
  16. 床次徳二

    床次委員 さらに、これは平和条約の条項に関係するものでありますが、サンフランシスコ平和条約の第十四条(b)項は、連合国は「占領の直接軍事費に関する連合国請求権を放棄する。」と規定しておるのであります。政府見解は、直接軍事費にはガリオア・エロアのような債務は全く含まれないのだという見解をとっておるのでありますが、平和会議の当時、そのような見解につきまして了解ができておったのかどうか、これを明らかにせられたいのであります。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点は、資料にも提出申し上げておるのでお読みいただけると存じますが、昭和二十二年六月十九日に極東委員会が、降伏後の対日基本政策を決定いたしております。その中で、これは明らかに非軍事的輸入である、こういうことを言っておるのでありまして、ガリオア・エロア等は、この平和条約第十四条に申しまする直接軍事費ではないということは明瞭になっておるわけでございまして、直接の平和条約においてのそうした了解の取りきめというものはなかったと承知いたしておりますが、これは当然のことである、かように了解をしておる次第であります。
  18. 床次徳二

    床次委員 なお、これに関連してお尋ねをいたしたいのでありますが、昭和二十四年の了解事項におきましては、占領費という字が書いてあるのであります。平和条約には軍事費という言葉が使ってあるのでありますが、この占領費という言葉という軍事費言葉は同じように解釈すべきものかどうか、この機会に一つ明らかにしていただきたいのであります。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 条約局長からお答えいたします。
  20. 中川融

    中川政府委員 お答えいたしますが、占領費と申しますと、要するに占領に必要なあらゆる経費という意味になると思うのでございます。軍事費と申しますと、同じ占領費の中でも、直接軍事に必要な経費ということで、若干その間に広狭の差異は出てくるかと思いますが、これらの字句についての定義というものは、特にはっきりきまったものはございません。大体常識的に解釈いたしております。
  21. 床次徳二

    床次委員 この機会に、ガリオア・エロアの支払いの意義というものについて一つ伺ってみたいのでありますが、すでに債務性につきましては論ぜられておるのでありまして、わが国債務であることは明らかでありますが、この債務を払うということ自体がどういうことを意味するか、わが国民がこの際長年の問題を解決してガリオア・エロアを支払うということに対しましては、相当の、何と申しますか、広義の各般の意味も私は含んでおるのではないかと思うのであります。単なる借金を返すということでありますならば、問題は比較的少ないとも思うのでありますが、それ以外になお積極的な有意義なものを考え得ると思うのでありますが、わが国がこのガリオア・エロアを支払うことによりまして、われわれ国民としてどういうふうにこの償還行為を解すべきかということについての所見を伺いたいのであります。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このガリオア援助債務性についてはすでに明らかでございまして、ここに債務額を決定してこれを履行するという際におきまして、これはもらったものではないかという議論があるわけでございます。しかしながら、これについては、結局、米国陸軍省アメリカ予算から支出された同一の項目、それによりまする他の国がどうしているかということの比較論になろうかと思うのでございます。当時、連合軍に対しまして、旧敵国であった国は、日本ドイツでございます。そこで、ドイツがこれに対してどういう態度をとったかと言いますと、九年前にこの三分の一を払うということにきめまして、その大部分、八割くらいは実行済みであるわけでございます。ドイツがさような協定を九年前にいたしまして、日本がいつまでもこのアメリカ側の言っておりまする督促に応じないでいる、あれはもらったものだと申しておりますことは、これはやはり、日本アメリカの双方の立場から見て、将来はなはだまずい影響があると思うのであります。われわれは、今日、幸いにいたしまして、戦後の混乱期を切り抜けまして、相当な繁栄する状態になってきております。しかも、こういう立場になりますと、このアメリカとの間にもいろいろな問題をかかえておるわけでございます。しかし、その問題の解決アメリカに迫ります場合にも、やはり対等立場に立ってものが言える、そうしたことにしておかなければいかぬと思うのであります。ドイツが払ったのに日本は払わない、こういう立場でいつまでも終戦当時に受けた援助をそのまましりにつけておる方がいいか悪いか、私はもう明らかだと思うのです。これは、もう明らかに、支払って対等立場に立ってものを言う方がいい。しかも、交渉の結果によりまして、ドイツが三分の一払ったのに対して、先方の言います金額のわずか四分の一でこれを済ましていくのでありますから、この意義は私は非常に大きいと思っておるのであります。しかもなお、その支払います金そのものが、二千五百万ドルというものは日本国内に円で積み立てられて、将来志を有する若い人たちのために日米文化交流のために使われるのでありますし、それから、その他のものにつきましても、きのうのアメリカの朝海大使からの電報によりますと、一九六二年対外援助法というものの中に、はっきりと、日本ガリオア返済金というものは低開発国援助に充てるのだ、こういう規定が盛り込まれまして今度の議会に提出される、こういうことでございまするので、この金は、われわれは幸いにしてあの終戦後の窮地を切り抜けた、しかし、世界にはまだこれから多く開発をし栄えていきたいが資金不足に悩んでおる国がたくさんある、それに使っていこうということで、日本を別に十分だと言う意味じゃございませんけれども、日本よりもっと多い程度においてこの開発援助資金を要望しておる国がある、それに使われていくのだということになりますれば、なるほど日本はりっぱである、自分の終戦後の混乱を切り抜けた、その金をもって、アメリカには約束を果たし、しかもその金をもってこの低開発国援助に充てるということになっておるのであるから、これは日本立場というものはなるほどといって尊敬される立場になろうと思うのであります。そういう意味で、私は、あれはもらったものだということをいつまでもこだわらないで、確かにもらったとこっちが考えても、先方は上げたんではない、返してもらうということに考えておるのだ、こういうのでございまするから、これは明らかにこの際解決して、そうして今申し上げるような立場に立つということが、将来の外交上の、立場日本国自身立場として非常に大きい意義を持つと思う次第でございます。
  23. 床次徳二

    床次委員 ただいまも外務大臣から御答弁がありましたが、われわれは、単なる債務返還のみならず、世間の一部の人はいわゆる対米従属性等を非難しておりまするが、こういう返還をすることによって一そう自主性対等性というものを獲得し得るのだ、さらに、東南アジア方面にも大いに利益を与えてわが国立場を鮮明にし得るのだという趣旨につきましては、これは国民に対しましても一つ十分その趣旨の普及に御努力願いたいと思うのであります。  なお、関連をいたしまして、この支払金使途に関する交換公文に関しまして若干お尋ねいたしたいと思うのでありまするが、今回、米国におきましては、議会において行なわれる適当なる立法を通じましてこの使途が考えられるようでありまするが、この立法によるところの経済援助計画というものと、従来の援助計画というものと異なるところはどういうところが異なっておるか、今、一部、特に日本より云々という字を入れるというようなことを言っておられるのでありまするが、取り扱い等におきましてはいかような処置をされるのであるか、これは米国処置でありまするから具体的にはおわかりにならぬと思いますが、大体今日まで了解せられたところを御説明願いたいと思います。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一九六一年対外援助法、今度は、一九六二年対外援助法というその中に日本ガリオア返済金をはっきり明示して、大統領権限を付与しようという法律を出すそうでございますが、結局は、そうしたガリオア返済金大統領権限において低開発国援助に振り向けるということを明瞭にした、こういう意味があろうと思うのでございます。要するに、実態的にはどう違うかといいますと、それだけのものを大統領に直接権限を付与する、こういう内容の相違かと思われます。
  25. 床次徳二

    床次委員 なお、この交換公文の中におきまして、日米両国が従来から行なっている密接な協議を引き続き行なうことを確認する、そうして今後さらにこの趣旨の徹底をはかるというふうに予定されておるのでありまするが、従来から行なわれている密接な協議というものは、外交ルートに乗っておるところの日米関係であるか、なおそれ以外に特別な処置をやっておられたのかどうか、また、今後この使途に関してどういうふうな形式によって外交交渉をやっていかれる考えであるか、承りたいと思ます。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 従来からの外交ルートもございまするし、また、日本の入っておりまするDAC委員会関係もございましょうし、また、最近AIDのハミルトン、長官日本へ参りましていろいろ要路の人たちと打ち合わせをしておったのでありますが、かようないろいろなルートが考えられると存じます。日本としては東南アジアに対しては特別の関心を持っておるし、また知識も豊富であるということからしまして、アメリカ側としても十分日本見解というものを聞きながら、進歩開発を要望しつつある国に対してその希望を満たすようにしたい、こういう気持を表わしておるのが交換公文趣旨だと存じます。
  27. 床次徳二

    床次委員 この返済金後進国援助に使われるにあたりまして、単に日本からの返済金援助に使われるということが法律上に規定されるということにとどまるのか、また、この日本からの返済金は、わが国との関係におきましては、あるいはわが国から特に技術提携するあるいは指導するというような特殊な関係において、わが国と密接なと申しますか、いろいろの提携関係を結ぶような処置において、あるいはわが国意見を聞きながら貸付等が行なわれるのかどうか、この点の了解はいかようになっておるのか、伺いたいのであります。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その点は今後の相談事項になろうかと存じます。一九六一年の対外援助法によりますと、ガリオアその他の返済金というものは、これはECA貸付などが相当入ってくるものですから、これを三億ドル予定いたしております。その他十二億ドルのファンドを別に予定しております。それで一九六一年の対外援助をやるということになっておりますし、その後ガリオア援助返済金三億ドルに、あと十五億ドルずつのものを四年間続ける、合計して七十二億ドルのものを対外援助のために振り向けるというのが六一年の援助法の内容でございましたが、今後はそれに日本という字がはっきり入っておるわけです。入っておりますので、先方は非常に好意的に、今後対外援助を考えます場合に日本の具体的なプロジェクトというものについても考慮をしようという気持があるのではないかとも考えられますけれども、いずれにしてもこれは今後の相談事項であるというふうに考えております。
  29. 床次徳二

    床次委員 次に、支払金の一部の円貨払いに関する交換公文でありまするが、日米間において将来実施せられるというところの教育・文化の交換計画の概要について、どの程度の意見の交換が今日行なわれておるか、承りたい。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、とにかく九十億円、二千五百万ドルの円貨を第一回と第二回において払う、こういうことですから、日本の予定しておりまする返済分からそれだけの相当額が国内円に積み立てられるわけであります。これをいかにして運営するか、これから九十億円から利息も生まれてくるわけでございますので、それらの点をどう運営していくのがいいかということについては、これは今後の問題でございますが、直接担当しておりまするアメリカ局長から申し上げます。
  31. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいま外務大臣から御説明がございました通り米国側といたしましては、特にこの教育交流に充てるべき二千五百万ドルを初期において払ってもらいたいということは、最初に分割払いのときに千二百五十万ドルずつをこの教育・文化交流資金に充てる、これはもちろん円払いでございます。それが、先ほどもお話がございました通りに、分割払いを合計いたしますと、日本金に直しまして約九十億円。おそらく、これを資金として運用いたします場合には利子も相当あがってくる。今後これをどういうふうにして動かすかにつきましては、アメリカ側とこれからいろいろ交渉いたしまして、日本側の民間その他にも、あるいはわれわれにもいろいろな意見もございます。また、向こうもいろいろな考えを持っていると思います。これから交渉しまして具体化していきたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  32. 床次徳二

    床次委員 時間がありませんので、次にタイの特別円の問題に移りたいと思うのであります。  まず第一に、タイの前回の条約締結の手続に関して伺いたいのでありまするが、過般予算委員会におきましてもこれが取り上げられておったのでありまするが、最近はいわゆる三十年協定の無効論がありますので、この点念を押しておきたいと思います。  すなわち、タイ国憲法の第九十二条は、諸外国との平和条約その他の条約締結することは国王の大権であるということを規定しておるのであります。従って、この立場から見まして、その第一の質問は、昭和三十年の日・タイ特別円協定は国王の大権に属する条約であったのかどうかという点であります。  第二といたしましては、三十年協定第五条におきまして「この協定は、それぞれの国により、その憲法上の手続に従って承認されなければならない。」とありまするが、タイ国側の憲法上の手続とは、具体的にどのような手続を考えておったかという点であります。  さらに、ついででありますから第三点も御質問いたしたいのですが、第三点は、三十年協定が発効するまでの過程でタイの国王は一切ノー・タッチであったのかどうか、いわゆる行政手続だけでもって発効したものであるかどうか、伺いたいのであります。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点につきましては、逐次申し上げますと、第一点でございますが、第一点は、昭和三十年の日・タイ特別円協定タイ王国憲法九十二条による人民代表議会の協賛を受けるという必要はなかったわけでございます。これは領土の変更もしくはそれを履行するための制定法の公布を必要とする条約ではなかった、こういうことでございます。しかしながら、国王の大権事項に属する条約であったことには変わりはございません。  それで、三十印協定第五条の規定に従いましてこの協定タイの憲法上の手続に従って承認されたかいないかということの確認は、すなわち承認を通知する公文による正式の通報で国際法上十分と認められる次第でございます。すなわち、国王によって親任されておるタイの大使を通してこの条約協定というものが憲法上所定の手続を終えましたということをわが国に通報して参った、そのことで十分であると考えるのであります。いわゆる批准条項のない協定であるわけでございます。しかしながら、いろいろ御議論もあったことでありますので、念のためタイの外務省に照会せしめたるところ、これは一般的には国王に代表される行政府条約締結権があることを意味したものだ、九十二条の解釈というものは行政府条約締結権があるということを意味したものである、一般の立憲君主国と同様、この権限は包括的に政府に委任されておって、従って、各協定ごとにそのつど国王の承認行為が行なわれることはない、タイの慣行としては、この種の条約は閣議決定をもって最終的に承認され、憲法上の手続を完了するのであって、三十年協定の際も以上の手続によった、こういう旨を回答して参りました。タイ側としてはもちろん疑念を一つも持っておるわけではございませんし、わが国も、さようである、こう思っておるわけでございます。  最後の点で、タイの国王はノー・タッチであったかどうか、こういうことでございますが、これは、やはり、この三十年協定が発効したということは、ローヤル・コマンドとして国王の告示というものがタイ国においてなされておるのでございますから、包括的な政府に対する委任によってこの条約が発効したということを国王の名において公布されておる、かようなことで、いわゆるノー・タッチではないわけでございます。憲法上所定の手続を経た、こういうことであると思います。
  34. 床次徳二

    床次委員 ただいまの問題は前回にもすでに質疑があったのでありますが、事柄は外国の国内問題であるのであります。従来の外交儀礼から申しますならば、外国の代表でありまする大使からの正式公文書によりまして承認するというのは、これは当然のことだと思うのですが、相当議論になりましたので、特にこれをお尋ねいたした次第であります。  次に伺いたいことは、この三十年協定におきましては、「その憲法上の手続に従って承認されなければならない。」という規定になっておるのでありまするが、今回の新協定におきましては、「国内法上の手続に従って承認されなければならない。」と規定されておるのでありまするが、この規定の仕方の異なっておりますことにつきまして、何か本質的な相違があるかどうかという点であります。過般一度質問があったと思うのでありまするが、あらためてお答えをいただきたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、何ら本質的な相違はないわけでございます。ただ、現在タイの王国憲法が停止されておりまして、臨時憲法になっておりますので、このタイの憲法上の規定というよりは、国内法の所定の手続に従ってという方が現状から見てより妥当である、こういうことでさように書いたわけであります。
  36. 床次徳二

    床次委員 次に伺いたいことは、いわゆる仏印の特別円の支払いにつきましては、国会の承認というものがなかったのであります。タイの特別円につきましては、今回国会の承認を要するとしてその手続が行なわれておるのは事実でありまするが、このときの政府見解について伺いたいのでありますが、政府見解は、仏印の特別円は一時払いであったので国会の承認を求めなかった、しかし、タイの特別円については数年にわたるものであるから国会の議決を必要と認めたというように考えるのでありますが、一時払いと数年払いとの間に何らか法律上の性質が異なると考えておるものであるかどうか。債務の支払いということならば、両者はいずれにいたしましてもその性質におきましては同じであります。この支払いを行政上の措置として措置することができるならば、いずれにしても行政上の措置としてやれると思うのでありますが、この点はいかような解釈をとっておられるのか、伺いたいのであります。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お述べになりましたような考え方でございまして、一瞬払いでありますれば予算上の承認をもって足りる。かかる八年にわたって支払われるというような問題につきましては、将来にわたって国の予算上の支出を拘束するわけでございますので、国会の御承認を経る、こいうことであります。
  38. 床次徳二

    床次委員 去る六日にこの委員会におきまして大久保委員から、本協定による第四条の生産物及び役務の調達の中には軍事目的のものは含まないかどうかという質問があったのに対して、このことは合意議事録にも明記されているように、武器及び弾薬を含まないということが合意されているから、その懸念がないということであったのでありまするが、これをその通りであるか確認しておきたいのであります。  なお、この三条に関する合意議事録の規定は、含まないのは武器弾薬のみに限定されておるのか、あるいはいわゆる広い意味におけるところの軍需品というものも含んでおらないのかどうか疑問がありますので、伺いたいと思います。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この協定は、前文において述べられておりまする通り、日・タイ両国間の経済協力の関係強化ということを目的といたしておりまして、従って、軍需品は、ただ武器弾薬のみならず、広義の軍需品も含んでおりませんし、御質問軍事目的施設の建設もこの目的に沿うものではございません。このことはタイ側も交渉の途中において十分承知しておりまするので、軍需品調達を求めてくることは絶対にないものと承知いたしております。なお、合意議事録の第九項には、設備には武器弾薬を含まないと特に規定しておりますのは、この設備、エクイプメントという言葉は、ミニタリーエクイプメントというふうに用いられることもありますので、誤解を防ぐため念のために規定したということでございます。
  40. 床次徳二

    床次委員 次に伺いたいのですが、第二条一項によりますると、特別勘定は日本側銀行とタイ側銀行とのいずれにも開設できることになっておるのでありますが、この領金はケース・バイ・ケースによって行なわれるのかどうか、あるいは一定の率をもってそれぞれ両国側に振り分けておるのかどうか、これについての両国側の合意はどうなっているのか、伺いたいのであります。   〔委員長退席、野田(武)委員長代理   着席〕
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 合意議事録の第四項に、お互いによく緊密に連携をとっていく、こういうことの合意がなされておりまするので、この預金の配分を幾らにするかという具体的な両国間の合意につきましては、今後相談をしながらやっていく、かようなことになると思うのでございます。しかしながら、タイの方といたしましても、プレスティージの問題がございますので、このバンコック銀行というものが東京にございます以上、自分の方を排除されることは困るということでございますから、両方の銀行ということにいたした次第でございます。今後の交渉によって、話し合いの過程においてきまっていく問題である、かように思っております。
  42. 床次徳二

    床次委員 次に、銀行預金の利率について、これがきまっているかどうか。こういう利率も協定発効前に確定しておかないと、また文句を言われるというようなことがあってはいけないかとも思うのでありまするが、今度の協定におきましてはそういう心配がないかどうか、伺いたい。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さような心配はございません。合意議事録第七項で、特別勘定は当座預金、普通預金または通知預金として開かれると規定されておりまして、このほかの預金形態、たとえば定期預金などはなし得ないということになっております。一方、各預金形態については、臨時金利調整法第二条に基づきまして最高限度の利率がきめられておりまするので、いずれの銀行もこれを越えた金利を払うことはできません。でございますから、金利に対して紛争が起きるというようなことは絶対にないと思っております。
  44. 床次徳二

    床次委員 今後この協定によりまして運営がされていきまする際におきまして、いろいろ契約が実施されるのでありますが、この契約に際しまして、日本国政府は何らかの形でもってこのタイ側の契約締結に対して参加するかどうか。すなわち、賠償支払い等の場合におきましては日本がチェックし認証しておるのでありますが、今回はそういうことはないかどうか。また、たとい契約に直接関与しないといたしましても、何らかの形でもって関与いたしまして、不当に高いものをやるとかいうような、不当な利潤を生ずるというようなことが行なわれて紛議を生ずるということのないように関与する必要があるのではないかと思うのであります。また、あるいは第三条に関する議事録第九項に関する禁制品等に関する統制などの問題も、これは事実上考慮しなければならぬかとも思うのでありますが、さような意味においての日本政府側のいわゆる関与というものがあるかどうかということを伺いたいのであります。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問のような趣旨に基づきまして、われわれは、賠償契約が認証されることになっておりますると同様の意味で、協定第四条二項によりまして、調達契約は日本政府によって確認されなければならないといたしておるのでございます。これは、契約が協定の実施規定、たとえば第三条の規定に反していないかどうかということを確認するわけでございまして、もし諸規定に合致していなければ確認されないわけでございまして、確認されない契約に本協定による特別勘定からの支払いということはなし得ないということにいたしておるわけでございます。
  46. 床次徳二

    床次委員 今回の新協定によりまして三十年協定が一部廃棄せられるという形になるのでありますが、この手続というものは国際法上からいうとどういう理由になるのですか。事情変更の原則というようなものによると考えていいか、この点、政府の考え方を伺いたいのであります。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国際法上に申しまする事情変更の原則というものは学説上存在いたしますが、実定法として存在するかいなかはきわめて疑わしいとされておるのであります。かりにこの原則をとるといたしましても、条約当事国が条約締結当時に予測し得なかった新たなる事情が発生し、もしこの事情を予測し得たとすれば当事国は条約中に規定されたような条項に合意しなかったことが証明される場合に、当事国に条約を一方的に廃棄する権利を発生させると説くのが通説でございますが、この場合は双方の合意によって三十年協定を廃棄いたしまして、それにかわる新協定を合意によって締結せんとするケースであるということでございまして、いわゆる事情変更の原則とは全く別のものというふうに存じております。
  48. 床次徳二

    床次委員 三十年協定を国会におきまして審議する際におきましては、その当時の議事録をよく調べておりませんが、ほとんど質疑、反対らしいものはなくいたしまして、きわめて円満に協定締結につきまして国会の承認が与えられたようなふうに今日から見ると見えるのでありますが、社会党にもその当時全く異議がなかったように思うのでありますが、国会におけるところの審議の実態は事実はどういうふうであったから、この際、政府が調べておられるかと思うのですが、明らかにしてもらいたい。
  49. 中川融

    中川政府委員 三十年協定を国会で御審議願いました際、臨時国会であったと思いますが、会期の短かった関係もあるかと思います。と同時に、この協定ができまして日・タイ間の非常に長い間の懸案が解決するということで、国会でも非常にお喜びいただいたのでございます。その意味で、衆参両院とも、ほとんど実質についての御質問はなく、実は非常に短期間にこれを御承認いただいたのでございまして、政府与党のみならず、社会党も御賛成いただいたと私記憶しておりますが、そういう経緯でございます。
  50. 床次徳二

    床次委員 なお、この機会に、社会党則の意見関連いたしまして、引き続いて申し上げて伺ってみたいと思うのでございますが、社会党は手続上の理由でもって三十年協定を無効と主張される方があるのでありますが、もしも無効と主張いたしましたならば、その前提から言いますると、完全に二重払いをしなければならないことになるのではないかとも思うのでありますが、この点はどう解釈されましょうか。
  51. 中川融

    中川政府委員 これは、どういう御理由で三十年協定が無効であると御主張されるのであるか、その点も実はもう少し詳しくお聞きしないとわからないと思うのでありますが、政府といたしましては、有効にできた協定に基づきまして有効に五十四億円の支払いをすでに済ましておるのでござまいして、これが無効であるというようなことになることは全然予想しておりません。これが無効になるといたしますと、もう一回タイと再交渉を全然初めからやり直さなければならぬ。やり直したあとでどういうことになりますか、タイはもらったものはもらったものだと言いますか、あるいはもらったものは一応返してまた別のことでもらうと言うか、この辺は交渉してみないとわからないのでありますが、非常に複雑な関係になりますし、また、国際的にもほとんど例のない事態になると思うのでございまして、そういうことは私ども全然ないものと想定いたしてやっておるのでございまして、そういう事態の起こらないことを非常に希望するわけでございます。
  52. 床次徳二

    床次委員 なお関連して伺いたいのでありますが、終戦後の終止通告でもって同盟条約及び関連協定一切無効となったのだということを主張せられる方があるのでありますが、これでは、三十年協定ばかりでなく、戦時中の支払い一切も無効であり、収拾不能の混乱というものが出てくるのじゃないか、かような状態になるのじゃないかと思うのでありますが、それに対する政府見解を伺いたい。
  53. 中川融

    中川政府委員 三十年協定交渉過程におきまして、一番最初の段階におきまして、戦争中共同に戦争した国同士の間の請求権というものは放棄する例が相当あるじゃないかということをこちらが主張したことは事実でございますが、その主張もそう強い主張として言ったわけではないのでございまして、そういう例もあるから帳簿じりに載っておる十五億円だけでがまんしてたらどうか、こう実は主張したのであります。その主張自体、従って、完全に請求権がなくなるということを前提とした主張ではなかったのでございます。もし完全に請求権が相互に放棄されるのが国際法上の原則であるならば、日本銀行の帳簿じりも全然なくなる、ゼロになるわけで、ございまして、それを十五億円は十五億円でがまんしてたらどうかという主張をしたこと自体が、要するに、日本側も決してそれが国際法上きまった原則であるという意味で言ったのではないわけでございまして、要するに、交渉上の過程におきましてわが方に有利ないろいろの論拠をあげたわけでございます。
  54. 床次徳二

    床次委員 なお、三十年協定の有効無効に関しましてタイ側の立場というものを伺ってみたいと思うのです。もちろんこれは今日まで有効として取り扱ったと思うのでありますが、三十年協定が成立しました後におきましてタイ側から何らかの公式の意見というものが有効に動いておることを証明する公式の見解あるいは文書というようなものがあったかどうか、伺いたいのであります。
  55. 中川融

    中川政府委員 これは、何回も申し上げた通り、三十年協定ができましたあと、そのときの十二月に先方の外相が来まして実施段階を協議いたしました際に、初めて向こうがこれはもらったものだというようなことを言ったわけでありますが、しかし、協定自体が無効であるという主張は一ペンもなかったわけでございます。従って、協定自体は有効にできておるけれども、その解釈として向こうは日本側と違った解釈をとったというわけでございまして、無効論というものは実はわれわれ一ペンも聞いたことがないわけでございます。
  56. 床次徳二

    床次委員 従って、今日三十年協定というものは有効に発生した状態にあるわけでありまするが、しかし、今回改定を要する状態になった理由につきまして、三十年協定というものが現在どういうふうになっておるのかということについて伺いたいのでありまして、私は少なくとも各条別にこの点はいろいろと微妙な関係があると思うのでありまするが、第一条は、少なくともこれは実施されたんだろうと思うのでありますが、この点はいかがでありましょう。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せの通りでございます。完全に実行されたわけです。
  58. 床次徳二

    床次委員 次に、第二条というものはどういうふうになっておるか。有効ではあるが単にこれが実施されないという状態であるのか、どうでありますか。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 有効ではございまするが、二条の解釈が双方において異なっておって、これが実施できないということでございます。と同時に、第四条にありまする合同委員会規定、これも合同委員会を作っていかにこれを実行するかということであったわけでございますが、第四条も動かない、かようなことであったわけでございます。
  60. 床次徳二

    床次委員 第三条の、タイ国日本に対する請求権というものは、これはいかように今日なっておるのか、伺いたいのであります。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これも有効であるわけでございます。
  62. 床次徳二

    床次委員 第三条は有効であるから、今日請求権はなくなっておるという解釈であるかと思うのですが……。
  63. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りでございます。
  64. 床次徳二

    床次委員 第四条は、先ほどの第二条と関連しておるわけでありまするが、この第四条にいうところの協議及び勧告のための合同委員会ということは、本来どういう活動をすることを期待しておったのかどうか。また、この第四条が初めから全然動かなかったのか、あるいは設置の機運もなしにとどまってしまったのであるか、この間の経緯を伺いたいのであります。
  65. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第四条は、九十六億円をいかに動かすかということについての委員会でございます。従いまして、この九十六億円の態様につきましての合意がなされておりませんので、初めから全く動かなかったわけでございます。
  66. 床次徳二

    床次委員 なおこれに関連して伺いたいのでありまするが、現在かような状態において動かない条約になっておるわけでありますが、これに対しまして、政府は大所高所より政治的処置をいたしまして、これを動かそうというところに政治的解決意味があると思うのでありまするが、これは、単にこれが動かないと日本が損するというような状態ではなくして、日・タイ間の将来ということを考えまする場合には、相当積極的なものもあるかと思うのでありまするが、この大所高所の政治的解決というものの本質を一つこの機会に明らかにせられたいのであります。
  67. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 タイ側からすれば、自分の方が戦争中日本の軍費を立てかえておいて日本に貸してあったと思っておるのでありまするが、それが、協定解釈において、これを実行するというこにになると、逆に日本から借金をする、こういうことになるので、どうしても国民感情が納得し得ない、こういうことでございました。そこで、手をかえ品をかえ、いろいろと実質上タイ側の所得に九十六億円がなるようなそういう投資あるいはクレジットの形を考えてみたのでございますが、いずれもこれタイ側のいれるところになりませんでした経緯はすでに御承知の通りだと存じます。タイという国は東南アジアにおきますわが国の最も大きな輸出市場でありまして、輸出がこの六一年度で一億一千万ドルに上がっておるであります。非常に長い友好関係のある国で、ございまして、わが国が国際連盟を脱退するときの決議でも、わが国の主張を支持した唯一の国であったわけでございます。そんな関係で邦人も千人からタイにおって、ずいぶん長くおる人もあるわけでございます。ところが、この特別円問題をめぐりまして非常にタイ側の感想がよくなくなってくるということで、邦人の活動が年ごとに非常に不便になっている。そこで、タイ側の様子を見ておりますと、もういよいよしびれを切らしてきて、このままじんぜん日をむなしゅうしておりまするにおいては日本側の大きな輸出市場を相当に規制される状態になってくるのではないか、かようなふうな状況が見られたわけでございます。われわれ、アジアにおきましても最も工業的に進んだ国でございまするし、日本東南アジアに対する気持というものが非常に長く親密な関係にあったタイにおいてそこなわれるということになりますと、今後の日本のアジアにおける活動にも大きな響きを生ずると思われたのでございます。そこで、大所高所に立ってこの問題を解決するということを考えまして、九十六億円を八年に分割して払う、こういうことにいたしました。これを六分五厘の金利で現在の時点に対して考えてみますと、六十五億円今払えば払ったということになるわけでございます。実質的には減額をされる、こういうことになるわけでございますし、それによってタイ側は非常に喜んで、今まで何度も二重課税の問題がございましてこの交渉をいたしてもできない、これが最近急速に進みまして、三月の八日にこの仮調印をいたしたようなわけでございます。なお、タイ側においては、今までどの国に対しても調査をさせたことのないタイの国内の鉱物資源の調査を日本にやってもらいたいというようなことも言っておるのでございますし、四月の中旬以降に先方の商工大臣もやって参るというようなことでございまして、この特別円問題の解決を契機にいたしまして、今後日・タイ間の交流も非常に盛んになり、日本の貿易も画期的に増大するであろうということが考えられております。タイのみならず、全東南アジアに対する日本の気受けと申しますか、そういうものも非常によくなろうということが期待されておる次第でございます。
  68. 床次徳二

    床次委員 このタイの問題を解決することをめぐりまして、この問題が他に波及するかどうかということにつきましては常々憂慮されておるところでありますが、特にこの機会に伺っておきたいのはビルマの問題であります。  ビルマに対しましては、当時の賠償条約におきましては特殊な取り扱いでありまして、年間平均五百万ドルの経済協力事項というものがついておりまして、これに対しましては政府の保証の協力であるわけでありますが、しかし、この協力もなかなか実績をあげていないような状態なのであります。今日ビルマとの間におきましてはいろいろ再検討の問題がありますが、この経済協力につきましてビルマにおきまして十分な実施ができなかったという点につきまして、この際何らかのお考えがあるかどうか、承りたい。
  69. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ビルマは日本との間に一番先に賠償交渉に応じました国でございまして、賠償二億ドル、経済協力五千万ドルということになっております。その後にできましたフィリピンあるいはインドネシア、これは、経済協力といいましても商業ベースで、非常に性格の違う形になっておりまして、金額も、フィリピンは二億五千万ドル、インドネシアは四億ドルということになっておるわけでございます。ビルマにつきましては、この経済協力が一つも動いておりませんわけであります。ということは、ビルマにおける経済情勢が日本の投資意欲をそそるにふさわしくない環境であるというようなことが言われております。国内的にも、利潤送金制限であるとか、あるいは企業自身の国営の問題というようなものがいろいろあったわけでございます。最近、ビルマ側においては、これを大きく変えよう、——ビルマに対する投資について、ウ・ヌー内閣のときでございましたが、これを画期的に変える法律を作りましたのでございます。この投資環境を変えるということにおいて、ビルマは大いに日本の投資を歓迎する工作をいろいろ言ってきておるのでございますが、その後に政変もございましたりなどいたしまして、この問題についてはさらに研究を重ねていきたい、こう思っておるのでございます。
  70. 床次徳二

    床次委員 タイとの間におきまして、今回大所高所に立って解決に努力せられたこの気持に対しましては、われわれも賛意を表するのであります。タイに対して大所高所より接するということは、同時にこれはアジアにおけるわが国外交のやはり基本的な態度の一つの現われではないかと考えておるのであります。かような立場に立ちまして、私は、少しきめのこまかい政府のアジア外交というものをこの機会に要望いたしたいと思うのであります。  従来、アジア諸国に対しましては、日本賠償を実施している国が少なくない。同時に、相手が賠償を放棄いたしまして、わが国がこの賠償にかわるべき経済協力と申しますか、積極的に贈与等によりまして開発をいたしている国もないわけではないのであります。なお、資源的に申しまして、相当資源の多い国も少なくない。この資源が開発されるならば、将来のわが国の産業開発のために非常な役割を果たすのであります。他面、貿易の面から見ますと、とかくわが国からの出超が多く、相手から買うべき産物が非常に少ない。しかし、これは、将来の経済協力その他によって、産業の開発によりまして大きく発展できるということが期待されると思うのであります。わが国といたしましては、この際、乏しいと申しますか、余裕の少ない財源をもって積極的に各地にいろいろの経済協力をするということはなかなか困難であろうかと思うのであります。しかし、われわれがアジアの一員であるという認識から考えますならば、従来政府のとっておりました方針よりもさらに積極的考え方があり得るではないか。すなわち、言いかえますならば、経済協力とかあるいは賠償とかいう、なお今後経済協力事業団等もできて参りまして基金の充実もあるのでありますが、こういうものが総合的に集中的にアジアに対して効果をあげるように運営すべきではないかと思うのでありますが、この点、どうも散発的に、今日個々の国々に対して、アジア全体としての企画がとかく認識されないままに、やはり行き当たりばったりに行なわれているではないかというような印象を抱くことをまことに残念に思うのであります。この機会外務大臣のアジア諸国に対する日本外交の方針を伺いたいのであります。もとより、アジアにありましては、同じ自由国と申しましても相当程度に差があり、また、アジアの国と申しましても、共産国もあるし、中立国もあり、多少わが国との関係においても差があると思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、賠償国、あるいは賠償を放棄してくれた国、また、資源の特殊関係にある国、また、わが国と同じ立場に、思想的に非常に提携をする国と、いろいろ利害関係がある。こういうものを十分検討されて、そうして、ここに一貫したアジア外交というものを築き上げられたいと思うのでございますが、これに対する御所見を伺いたいのであります。
  71. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アジアはわが国にとりましていわば一つの固まりの中の国でございまして、われわれ、アジア外交を最も重要に考えなければならない立場におると思います。ただ、今御指摘のように、アジア全体の産業構造その他を見ますと、モノカルチュアでありまして、日本から買うものが割合少ないということが一つの問題点でございます。これに対しましては、開発輸入ということを考えまして、タイの場合で申しますと、トウモロコシを増産する、そうしてそれを輸入するというようなことが非常に成功して参りましたが、ビルマ等につきましても、そういう考え方が今後とれるではないか、こういうように思いまして、実は先般大来調査団を派遣したりして非常に先方にも喜ばれ、この間のきめのこまかい考え方というものをさらに練り上げて参りたいと思っております。  それから、賠償というものは、非常に先方にも喜ばれておりますが、何といいましても、性格上、どういうものを出すかということは日本がきめることでなくて先方の国がきめることでございます。従いまして、この賠償経済協力、あるいは開発借款というようなものをうまく組み合わせていくということは非常に必要でございます。賠償を払っていないインドとか。パキスタンについても、コンソーシアムで、債権者国会議で、われわれとしては相当膨大な、インドにつきましてはもう一億八千万ドルくらい出しておると思いますが、パキスタンについても五千万ドルくらいこの二カ年に出しておるわけでございます。そういうものがだんだん実りまして、先般もエカフェの会議がございましたけれども、アジアの光は日本であるという気持が各国に今非常に強いわけでございます。この際大いにアジア外交を仰せのごとくきめこまかく考えて推進して参りたいと思います。
  72. 床次徳二

    床次委員 これで終わりたいと思いますが、総理が見えましたので、今の外務大臣のアジア外交に対する御意見に補足してと申しますか、それを総括してお答えをいただきたいと思います。  すでに経済協力白書というものを発表せられまして、わが国が将来東南アリア等に対して相当積極的な働きをなすべきことを政府としては意図せられております。なお、今回すでにOAECの問題等もあるのでありまして、われわれは、いわゆる大所高所に立ちますと、なすべきことが非常に多いと思います。この点に対しまして、積極的にアジアに対して関心を持っていただいて、そうして、個々にたとえばタイに対して処置せられるというようなことが、さらに総合的な効果をあげるように一つ施策を生かして使っていただきたいと思うのであります。この意味において大所高所という字を使われたのだと思うのでありますが、これを広くアジア全般に及ぼしまして、最も有効的、総合的な外交政策を一つ要望いたしたいのでありますが、これに対する総理の御所見を伺いまして、終わりたいと思います。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 先だってエカフェの会議でも申したのでございますが、アジアの繁栄なくして日本の繁栄はない、日本とアジアとは経済的に一体で、ともどもに歩むべきだ、こういうことを申し述べたのでございます。しこうして、アジアと申しましても、各国いろいろ事情を異にしております。われわれは、その国々の事情に応じまして、日本の力に即応して、そうして各国別にいろいろ考えていきたいと考えております。
  74. 床次徳二

    床次委員 では、これをもって終わります。
  75. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 加藤勘十君。
  76. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私たちは、ガリオア・エロアの問題につきまして、この委員会において同僚の委員諸君と政府当局との質疑応答を議事録について拝見しております。だが、どうしてもやはり納得のいかないものがございますので、私は主として総理に対して幾つかの点について御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、ガリオア・エロアの、債権債務と心得ておられるその債権債務発生の条件について、総理は、経済のことならばおれにまかしておけと言われるほどに、自他ともに許すいわゆる経済専門家的な知識をお持ちの方であります。その経済的な専門的知識をお持ちになっておいでになる総理が、債権債務の発生についてどういう条件が整わなければ成立しないのか、これについてまずお伺いしたいと思います。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申しております通り、戦後におきまして、われわれ国民が非常に飢餓に瀕し、経済のどん底にあったとき、アメリカ合衆国はこの危機を救うために援助物資を送ったのであります。これが食糧であり、石炭であり、また綿花等々、各般の品物を送ってくれたのであります。その際におきまして、昭和二十一年七月でございましたか、この援助物資に対しての返還の条件あるいは計算は追ってこれを定めるという覚書が出ておるのでございます。われわれは、この覚書によりまして、債権額の確定はございませんが、将来この援助物資に対しましては、私は昭和二十四年に申しておりますが、援助物資に贈与のものもあり、また貸与のものもあるのだ、これを今一がいには申されません、こういうことを昭和二十四年にも言っておりまするが、この援助物資に対してそういう覚書が出ておりますので、いずれはこれは解決しなければならぬという考えのもとに、一応債務と心得ておりますというのでずっと来ております。しかし、確定債務ではございません。そこで、贈与の分もあり貸与の分もありますが、今回、アメリカ合衆国と折衝いたしまして、国会の承認を条件といたしまして、あるいは向こうさんでは十九億ドル近いと言うし、こちらは十七億九千万ドル、こう言っておる、それだけのものを四億九千万ドル十五カ年間に支払いましょう、こういう協定を国会の承認を条件といたしまして結び、その協定を今御審議を願うのであります。従いまして、この協定につきまして国会の同意がありますならば、四億九千万ドルの債務が、交換公文によって、文書を交換することによって確定することに相なるのであります。
  78. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私のお尋ねしておる焦点はちょっと違うです。一般論として、債権債務の発生についてどういう条件のもとに発生をするか、まずこれをお尋ねしておるわけです。具体的にガリオア・エロアの問題を債務と心得ておられるあなた方と、われわれ債務ではないと考えておる者との間においてのガリオア・エロアの問題の性質を分析しておるのではないのでありまして、一般論として、まず債権債務はどういう条件のもとに発生するか、これを、経済通として経済的専門的知識をお持ちになっておる総理として、お伺いするわけです。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 経済的に申しますと、今のようなことで債務が確定するわけでございます。債権債務は、まあ原則としては双務契約でございましょう。法律的の問題につきましては法制局長官から答えさせますが、私は、経済的にこのガリオアをどうするかということでお答えしたので、一般の法律論で聞かれておるなら、法律論は法制局長官からお答えいたさせます。
  80. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 法律論でなくて、経済現象として、物資なり、あるいはその物資の数量なり、あるいはその価格なり、こういうものが整わない場合に債務という概念が生まれてくるかどうかと、経済通念としてお伺いするわけです。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 それだから、先ほど申し上げましたように、昭和二十一年の覚書によりまして、そうして物がどんどん来て、それで支払いの条件及び計算については追って定める、こういうことになっておりますから、そのときには債権債務の確定のものではございません。従って、われわれは、繰り返して申し上げますが、贈与の分もあり、貸与の分もあると思っております。そうしてそれから一応債務と心得ておる。これは確定債務じゃございません。今度どれだけのものがわれわれの債務として支払うべきものかということは、先ほど申し述べた通りであります。
  82. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 どうも、総理のお答えは、従来繰り返されてきたことをそのままここでオオムのように繰り返されておるだけであります。少しも国民を約得せしむるに足らないと思います。問題は、そういう具体的に、ある部分は債務と心得るとか、ある部分はどうであるとかいうような問題でなくて、ガリオアの問題を明確にするためには、これが債務であろうとあるいはそうでなかろうと、これを明確にするためには、まず一般的に債権債務の発生がどういう条件のもとに発生をするかというこの通念が定められ、これに基づいて初めて、なるほどこれは債権の性格を持っておるが、国会の承認を経ていないから憲法上債務と断定することはできないので債務と心得る、こういうことが生まれてくるわけであります。もしこの債権債務発生の通念においてどこにもそういう条件を備えていないということになるならば、これを債務と心得るということ自体が間違っておると思う。この点についての総理のお考えはいかがですか。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 同じことを言うというおしかりでございますが、事実は事実でございますから、同じことを言わざるを得ない。変えることがおかしいのであります。私はそういう気持であります。債権債務の発生というものは、先ほど申し上げましたように、援助物資につきましての支払い条件及び計算については追ってこれをきめる、こう言っておるのであります。そして、贈与の分もあることもわかっている。しかしこれは貸与の分もある。それは今の覚書で出てくることでございます。だから、われわれは、債務ではございませんが、一応将来債務として取り扱われることがあることを予想いたしまして債務と心得る、こう言っておるのであります。私はこれで国民の方々はおわかりいただけると考えております。
  84. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 それでは、一つ観点を変えまして次の問題をお尋ねします。  それは、終戦直後から日本にさまざまな物資が来たことは事実であります。同時にまた、日本からさまざまな物資が輸出されておることも事実であります。その輸出物資の代金はどのように計算がなされておるか、どういう始末がつけられておるか、この点について総理はどういうようにお考えになっておりますか。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、援助物資関係と商業物資とは同じ勘定科目で取り扱われております。従いまして、日本からの輸出物資につきましても、その輸出代金は援助物資の支払いに充てられるということは、多分加藤さんが労働大臣のときにやったと思います。こういうふうにして、輸出代金も、日本の商業ベースの輸出代金もそれに充てられる、そういうことは今回の計算におきましても考えに入れてやっておるのであります。
  86. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は、経済開発局なり、あるいは終連事務局なり、あるいは通産省なりにその書類を求めまして、相当大部の参考書類を見たのでありますが、しかし、依然として計算は不可能でありました。なぜか。単価を定めていない。為替相場が、あるときは三百円で数えられ、あるときは四百円で立てられる。為替の一定の標準がそのときによって変わるということだけならまだ別ですけれども、全体として金額等は司令部のどんぶり勘定なんです。このどんぶり勘定では計算のしようがない。従って、今日ガリオア・エロアの問題を清算されようという場合に、日本から当時どんぶり勘定で輸出された輸出物資の代金は一体どうなっておるのか、これをお尋ねするのです。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、先ほど申し上げました通りに、そして、あなたのお話も、時によって変わるということもありますが、主として品物によっても為替相場が変わっておったわけなんです。従いまして、日本からの輸出も、もちろん今、ころのような輸出ではなかったのであります。ごく一部の輸出物につきましてもそういう計算で支払われ、こっちの輸出代金をガリオアの分に充てるということにもなっており、また、商業勘定による輸入もございました。その計算につきましては通産省が計算に当たっております。いずれその数字は事務当局よりお答えすることにいたします。ただ、問題は、向こうの勘定によりますと、先ほど言ったように、十九億数千万ドルと、こう言っておるのであります。われわれは、それを品物別に、また運賃も再検討いたしまして、われわれの計算では十七億九千五百万ドル、こうなっておるようでございます。
  88. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 向こうの計算の数字とこちらの計算の数字といいますけれども、数量に対する価格が明瞭でなくて、どうしてそういう計算ができるのですか。その当時は価格が明瞭でないのですね。もっとも、計算する便宜上、あとからその価格と数量とが日本政府に通知されておる。その当時は全然そういう計算がなかったのです。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 この点につきましては、数量がわかっておりますから、国際価格によって計算いたします。また、運賃も向こうの通りにいっていないわけであります。従いまして、個々のものにつきまして国際価格と適正な運賃ではじき出したので、向こうの言う総額とこちらの総額が違うわけです。今回はこちらの数字をとって一応交渉の対象にいたしたのであります。
  90. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 こちらの輸出物資の代金はどういう工合になっておりますか。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは通産省からお答え願う方がいいと思いますけれども、一応われわれの承知しているところでは、当時、輸入が十七億、輸出が六億五千、すなわち輸入が圧倒的に多かったわけです。日本は敗戦後で外貨がありませんから、この輸出の非常に少ない、輸入の多い状態を切り抜けるということは非常に困難であったわけでございます。それから、なお、国際価格はあったわけでございます。司令部はどんぶり勘定とおっしゃいますが、これは、先方が国際価格以上に非常に高い日本の品物を買うわけのものでもありませんし、また、非常に安く売るということも必要ないわけでございまして、結局、国内操作で得をしたものもあり損をしたものもあるとおっしゃいますけれども、これは日本国内の問題で、海外がそれによって影響を受けたものではない、こういうことであります。
  92. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 ちょっと加藤君に御注意いたしますが、大蔵大臣の時間がだいぶ制約されておりますから、もし必要でございましたら大蔵大臣から先にお答えを願うように願いたい。
  93. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 それでは、水田さんがいらっしゃいましたから、お尋ねしておきます。幸いに総理も御出席でありまして、本来ならこれは総理にお尋ねしたいのですが、まず大蔵大臣にお尋ねします。  大蔵大臣は、三十五年の十二月二十日の大蔵委員会で私の質問に答えてこういうことを言っておいでになります。いろいろ述べられておりますが、直接関係のあるところを申しますと、「この援助債務であるということを当時政府国民にはっきりと言明してなかった事情もございますので、国民の大多数は、これは債務じゃなくて援助だと思っておったのが実際ではないかと思っております。」、こういう答弁をなさっております。それから、もう一つ、こういうことを言っておいでになります。「確かに昭和二十四年の四月以降のものははっきりしておって、約九億ドル前後のものでございますが、それ以前のものは、貿易取引が総司今部の管理下にあって、商業物資と援助物資との資金別区分というものは日本側には明確でございませんでしたので、この金額が不確かであることは事実でございます。従って、この当時の総司令部が残した資料とか日本の旧貿易庁当時の資料で今私どもは推算もしておるのですが、大体十一億ドル前後の金額は推算されるということでございますが、なお、これについては米国側資料の提出を私どもは求めておりまして、それによってこの両国は折衝」云々、こういうように言っておられます。ここにおいて、いかにその当時の計算が司令部の独裁的な管理下にあって日本はほとんど発言権を持っていなかったかということが明瞭であります。私の言うどんぶり勘定というのは、そういう意味であります。これはあとからまた総理にお尋ねいたしますが、とにかく、そういうものが一体債権債務の体をなすであろうかということが一つ残ってきます。それから、大蔵大臣はさらにこういうことを言っております。「その経過等私もいろいろ調べましたが、これは、私どもも、当時は、実際言うと、もらったものという考えを持っておりましたが」、——実に明確なんですよ。「ずっと経過をさかのぼってみますと、やはりこれは当初からもらったものではなくて、いつかあとでこれは解決する債務と心得るということが、事実は最初からそうなっておったのがいきさつのようでございますので、私どもはこれはやはり債務と心得て解決すべきものであると思っております。」、それは、池田内閣の閣僚の一人として、最後に一言とってくっつけたような言葉をおつけになることはごもっともです。しかしながら、腹の本心は、当時はもらったものだと思っておった、これが水田さんの正直な本心です。それから、もう一つありますよ。これは池田内閣の時代ではございませんが、昭和二十八年の七月十日の衆議院の決算委員会において、当時の通産大臣岡野清豪氏はこう言っております。その前に、河野一郎君が、予算委員会でいわゆる爆弾質問をやると言うてちょっとジャーナリズムをにぎわしました朝鮮に対する四千何百万ドルの債権のことについての質問をされたときに、岡野通産大臣はこう言っておる。「当時ちょうだいしたものと思っておったものでありますから、」、つまり日本から見れば債権ですね、それと比較するようなことはいたしませんでした、これはその当時の通産大臣ですね。今になっていろいろ政府は、これを債務と心得るべきかということについて、これをどうしたならば合理化できるかということで苦心しておいでになります。政府債務と心得るということを合理化するために苦心されておるというその気持はわからぬではありません。わかりますよ。わかりますけれども、実際問題として、これを債務と心得るという根拠は何にもないんですよ。まあそれはあとからにして、こうおっしゃった大蔵委員会においての答弁は、水田さん、間違いありませんですね。これだけ一つはっきり……。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 速記録を見ましたが、これは間違いございません。問題は、私どもが知らなかった、従って、国民もその詳しいことを知っていなかったということは事実でございまして、私どもは当時当選したばかりで、政府には事実上関係しておりませんし、党務においても同様でございますのであの当時は、これはある程度もらったものだという考えを持っておりましたが、その後いろいろこのいきさつを調べてみると、最初から債務と心得るべきものになっておったんだ、このいきさつが今ではわかったので、これは自分は債務と心得て解決すべきものだというふうに言っておるわけでございますが、この通りでございます。私は、アメリカへ参りましたときも、雑談的にアメリカの当路者と、私はうかつですがやはり最初はもらったもののような気がしておった、だから日本国民も相当そういう考えを持っている人がある、これは自分たちの責任においてこの事情をはっきりさせるつもりであるが、しかし、私の考えとしましては、最後の解決がどうなろうと、確定債務がどうなろうとも、いずれにしましても、昭和二十四年以前のものを債務として払う金額になったらこれは相当問題なんで、私の方は、昭和二十四年以前のものはもう触れないで、いろいろ問題があるから切り捨ててもらうと、はっきり援助を積み立ててある額のうちこれをどれだけにまけてもらうかということが中心であって、その前のやつは債務と心得るべきものであるが、最後の解決のときにその前の分にまで食い込むというような解決はできないのだということを言いましたら、それはもうある程度当然考えるべきことだとアメリカも思っておるから、そういうことはしないで、外務省と適当に国民の納得のいくような交渉をしようというようなお話でございましたので、この点は、最初から債務になっていなかったというのじゃなくて、債務と心得るべきものだったのを、あまり特に関係してない人は事情をよく知らなかったということだろうと思いすま。
  95. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は、大蔵大臣の正直さを責める気持は一つもありません。正直、けっこうです。けれどもほんとうに総理を初め政府の閣僚の皆さんの腹の底を断ち割ったらばどういうことが出てくるかということは、これは、私から言わないで、あなた方皆さん自身で腹を断ち割って出してもらえばけっこうだと思います。(「切腹」かと呼ぶ者あり)いや、切腹なんて、そんな古くさいことは言わない。要するに、問題は、真実を明らかにしてもらいたいということなんです。国民は、真実が明らかになって納得をすれば、時の政府のやることについて承認を与えるでしょう。そうでない限り、依然として言葉によってごまかして、そうしてその場だけをつくらうというような解明の仕方では、国民は納得しません。はっきり言っておきます。大蔵大臣、それでは、それでけっこうですから、どうぞ。  それから、政府が今日まで債務と心得るという法的根拡としておあげになったものは幾つかございます。これは読み上げるのは重複しますけれども、順序としてそれをちょっと要項だけをあげますと、一つは、一九四五年の九月二十二日の降伏後におけるアメリカの初期の対日基本政策、同じく同年十一月一日の日本占領及び管理のための連合国最高司令官に対する降伏後における初期の基本的指令、それから四七年六月十九日付の極東委員会決定、降伏後の対日基本政策、この三つが文書によるものである、こういうようにあげておられます。それから、そのあとには、マッカーサーの書簡であるとか、あるいは阿波丸賠償請求権放棄の場合の了解事項であるとか、そういうものがあげられておるわけでありますけれども、一体、これらのものをほんとうに虚心に通読しまして、債務と心得なければならぬ根拠があるでしょうか。虚心に読んでですよ。私は、どこからも生まれてこない。すいうのは、アメリカがこの予算を決定しましたのが一九四七年、アメリカの八十議会で、追加予算法として、アメリカ公法典第六十一巻に示されております。それによりますと、御承知の通り、九つの条件というか項目が付されておる。その項目の多くのものは、いろいろ占領政策上の事務的な問題なんです。中にはアメリカの兵隊の保健衛生に関する項目もありますが、ガリオア関係するものと思われるものとしてはこの第九番目にあげられておる。かかる地域の——かかる地域というのは占領地域ということでしょう。かかる地域の市民人口に対し達成すべく追求されておる目的を害するような飢餓疾病、不安を阻止するに必要な最低の供給、しいて言えば、これがガリオア予算の根拠になっておると思うのです。しかし、今申します通りアメリカの兵隊の保健衛生に関する項目もある。アメリカの純粋に軍事予算ですよ。その中に、この地域における市民の飢餓窮乏を何とかしなければならぬ、——これは占領軍占領政策上必要な完全な軍事費なんです。占領費とも僕は違うと思う。軍事費なんです。私も、実際は、アメリカから食糧を援助してもらうために、当時の政府の責任者に要求したことがあります。だから、その当時のいきさつはよく知っておるのです。が、ともかくもこういう条項に基づいてガリオア予算というものは決定されておる。この予算の決定の場合に、政府は、マッカーサー元帥アメリカ陸軍省の要請に基づいて下院に出した文書を一つの根拠にあげておられます。また、アメリカ占領に伴うそういう経費並びにその他の費用は日本からの輸出代金によって償われるであろう、こういうことも言っておるということを政府は示しております。しかし、私は、そういう占領費日本負担しなければならぬものかどうかということについては、占領費として、終戦連絡事務局の予算で、りっぱに日本負担すべきものは別に負担しておるわけなんです。だから、それと、今指摘しておる軍事費というものとは、一体どういう関係にあるのか、この点を一つ、これは外務大臣からでけっこうですから、答えていただきたいと思います。
  96. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 終戦処理費は、講和条約の第十四条によりまして、こちらが払うわけであります。ところが、このガリオアその他の援助というものは、これは非軍事的輸入ということが極東委員会の決定にもうたわれておりますし、これは軍事費ではないということは、債務性の根拠としてあげました幾つかの資料に申し上げておる通り、明らかでございます。従って、これは別個のものである、性格が違う、かようなことでございます。  なお、先ほどあげられましたレファレンスの問題は、多少違っておるようでございますから、事務当局から少し聞いていただきたいと思います。
  97. 安藤吉光

    安藤政府委員 御説明申し上げます。  お言葉を返すようで恐縮でございますが、ただいま御引用になりました一九四七年度第一次追加予算にはそのような規定は何もございません。ただ金額を明示した追加予算であります。一九四七年度軍事予算法というものにいろいろ書いてございます。その項目の一つの中に、ガバメント・アンド・リリーフ・イン・オキュパイド・エリアーズ、いわゆるガリオア項目というものがございます。この項目は十一に細分されております。ちょっと長ったらしくなりますが簡単に読みますと、第一は、ワシントン及びその他地域における人件費、第二は、契約その他に基づく非常勤職員の採用、第三は、旅費並びに輸送費、第四が、法律書、参考書、新聞、機関紙、第五が、教育映画、翻訳権、写真、教育用展示等宣伝啓発、第六は、米国人子弟の学校運営経費、第七が、印刷、製本、第八が、速記報告、第九が、自動車、航空機維持費、第十が、建物、施設、付属物の修理及び維持、第十一に、占領目的を阻害するような飢餓疾病、社会不安防止のための住民に対する資材提供。いわゆる第十一が、われわれが今問題にしております日本に対する対日援助を定めたものでございます。先ほど申しました第一から第十までは、向こうの行政費でございます。そして、この行政費は、この種のものは、ガリオアと申しますか、こういった行政費が八千九百万ドルございます。今度米国側から日本に呈示いたしました対日援助の総額の中には、八千九百万ドルは全然入れておりません。  この第十一番目の、いわゆる日本に対する援助物資を供与するということに関して、当時国会でいろいろ問題になりまして、御承知の通り、これに返済条件をはっきり書くべきだという議論が非常に強かった。それに対して、これは一銭一厘までとるということではよくない、必らずこういった国は他日返すんだというようなことがいろいろ言われました。その一つに、マッカーサー元帥の証言とか、そういったいろいろなことが言われまして、ことに、マッカーサー元帥の証言は、日本に対する援助日本債務となると、はっきり申しておるわけでございます。
  98. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は九つの項目と言いましたが、ちょっと違っておるようですが、それは事務当局の方が正確としましょう。  そこで、問題は、そういう場合に、債務と心得るならば、少なくとも心得べき条件がなければならぬ。その条件に何があるのですか。この予算陸軍省予算ですね。軍事予算です。そして、買い付けた物資は、日本の意思に基づいて買い付けたのでなくして、アメリカ軍事的な必要に基づいて買い付けた物資なんです。そういうように、日本の求めるものは全然受け付けられていない。アメリカ軍事的必要に基づいてやることで、もしこの手段を施さなければ、占領地帯の民衆が飢餓、絶望、そういうものから反乱を起こしたりあるいはレジスタンスを起こしたりしたら、一体どうなるか。これは、戦争の場合、ほとんど多くのところで、土地、ところのいかんを問わず例を見る事実としては、レジスタンス運動が大なり小なり起こっておるのです。幸いに、日本国民は非常に従順であるから、アメリカ占領を御無理ごもっともで聞いて、何も反抗らしい反抗がなかった。だから、今日になればこういうことを言われますけれども、その当時、もし万一この手段がアメリカによって施されなかったならばどうなったかということを考えるならば、これも明らかに軍事費なんです。占領費なんです。日本が満州あるいはその他の中国の地域において軍を進めて占領した。そのときの占領の費用を日本はとっておりますか。そういうものは、どこの国でも、なるほど軍事占領行政費の負担すべきものは敗戦国で負担しなければならぬでしょう。それは日本はやはり終戦処理費として負担をしておるわけであります。それ以外の軍事費について日本負担する義務は僕はないと思う。先ほど外務大臣の御答弁によりますと、何か国際情勢上アメリカの信用を回微するために支払う方がよい、そういうような政治的考慮によってこの問題をしていて債務づけて、そして国民にその負担をしょわせよう、こういうことになってしまうと思いますが、そういう国際情勢というような政治的な問題と、このガリオア・エロアに関する債権か債務かあるいは贈与か、こういう問題とはおのずから別個の問題です。私は、本来言うならば、これは贈与以前の問題だと思う。軍事的な問題なんです。そう解釈するのが私は本来の姿だと思う。そういう点で、私は、そういう政治的な問題と混同さしてこの負担を求めるということは、国民に対して全くその意義をなさぬと思うわけですが、この点に対して総理大臣はどうお考えになりますか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 加藤さんのおっしゃるのは、私は国民感情からどうかと思います。あの困り切ったときに、あなた方もわれわれも要求し、感謝しました。放出物資に感謝しました。これは、国民に食糧その他衣料等を与え、産業復興資材を与えるのを軍事費だとお考えになるのはいかがなものか。贈与以前の問題だということはないと私は思う。従いまして、われわれは適当な価格を国民として払っているわけです。これはやはり経済的な問題でございます。私は、もちろん、こういう判断をいたしますときには経済的、政治的にあれしますが、援助物資に対します今までの経過は先ほど来申し上げる通りであります。国民はそのお金を払っておる。それを政府がためているわけであります。それをただいまためているものから、昔出して下さった恩義にむくいるためにも、また経済的に当然でありますまいか。向こうの品物をこっちへ持ってきて、その金が何千億と余っているのですから、これはやはり、アメリカのタックスペーヤー、納税者に対してわれわれとして払えるだけのものを払うことは当然だと思います。あのときのものを軍事費だとかあるいは贈与以前の問題だと私は日本国民として考えたくない。  そこで、先ほど来問題がございましたが、もちろん、私が大蔵大臣になりまして見返資金特別会計をこしられるまでは、向こうの管理でございますから、ほんとうはわかりません。しかし、その後において調査いたしましたところ、日本からの輸出は六億五千万ドル、昭和二十一、二十二、二十三、二十四年の三月まで六億五千万ドルの輸出。輸入が十七億四千万ドル。十七億四千万ドルのうち、商業勘定での輸入が五億四千万ドル、アメリカ援助物資は十一億九千七百万ドル。十一億九千七百万ドルというものは、われわれの計算では八億四千七百万ドルと、国際価格にあれして、運賃も適当にして、あったわけであります。私が見返資金特別会計というものを設けましたゆえんのものは、こういうふうに、十億ドル近いものが日本援助物資として来て、これが輸出補助金、輸入補給金とし、日本の税金も加えて、どこへ行ったやらわからぬような場合におきまして、将来援助物資を返してくれということになったときはこれは大へんだと思いましたから、私は見返資金というものを置きまして、アメリカ援助物資は昭和二十四年四月以降はこれだけのものが来ました、これだけのものをこういうふうに使いますとして、私は債務と心得えておりましたから、もし返すときには財源になるという気持で私はためおいた。そのことが復金を使ってやるよりも日本経済の再建にも役立つし、将来返すことがあるときにはこれが財源になる、こういうふうな気持で私はやっておる。途中ほかの通産大臣がどう言おうとも、水田君がどう間違って言われようとも、政府としては、そのときからはっきりした方針であることは、あなた方もたびたびお聞きになりまして、この問題の性質は十分おわかりだと思う。あなた方の時代にはどこへ行ったやらわからぬ。どんぶり勘定です。これではいかぬというので二十四年からこしらえた。しかも、そのとき物を売ってためておいて、利子を利殖して、その一部で払うのです。元金に手がつかぬようにして、利子だけで払っていこうということは、私は、日本国民として、あの終戦後の悲境のことに思い至ったとき、喜んで払うことが日本国民のために適当だ。われわれ、こういうことがあることを考えまして、見返資金を私は十何年前にこしらえたのであります。これが真相でございます。
  100. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 もちろん、贈与以前の軍事費であるということは、厳密に狭義に解釈すればそう解釈できないことはない、こういう意味のことであって、私もそれが純粋に軍事費であるとは思っていない。これは常識から見てもそうですか、しかし、これが贈与であるかあるいは債務であるか、こういうことになるならば、どこにも債務というものを規定づける条件はない。ただ向こうがこういう意思を持ったから、それだから債務であるということは言い切れぬと思うのです。債権債務の発生は、当然両者の間の意思の合致がなければならぬ。その意思の合致がその当時何にもない。  それから、当時の食糧事情等にかんがみて、日本国民は物資の配給を受けて金を出しておる、こういうことなんです。なぜ金を出したか。もちろん政府は本来ならば無償でこれを国民に与えたいのだけれども、無償ということにおいては、無制限になって、とうていその意を満たすことができないから、価格によってある程度の限界を設けておる。それは当然なんです。だから、貧困な者に対しては無償でも配給されておる。当然代金を支払った。そこで問題がある。むしろ僕は代金を支払ったからなおいけないと言うのですよ。なぜかというならば、当時、あの困窮しておるときに、ほとんど自分の意思にない、もう鶏のえさにしかならないようなものを金を出して買わされておる。その金はアメリカに払うというのでなくして、それが日本経済の復興に幾らかでも役立つならば、そういう方も潜在しておった。そういうことから、とにかく政府としてはこれを無制限に無償で配給するということはできないのだから、そこで有償配給を原則という建前にしたわけなんです。こんなことは当然だれでもわかっておることです。金を払ったから債務であるとか、金を払わぬからどうというような問題でなくて、国民はその金がアメリカに返されるものであるというようなことは考えていない。それは、吉田さんのように、やみのものばかり食ったかどうか知らぬけれども、とにかく生活に困らないような人は、個人的な感情から言っても、これだけのものを援助してもらったんだから、これは道義的にも一つの借金ができたものだ、借りができたのだ、こういう意味でその負債ということを考えられるようになったか知りませんけれども、本来の建前から言うならば、アメリカ占領政策上必要とする軍事的な意義を多分に含んだところの給与物資なんです。配給物資なんです。従って、国民が金を払ったからどうこうというようなことは、むしろ僕は逆だと思います。二十四年、あなたが聡明な、いわゆる財政的な賢明さをもって特別会計を設置されたことについては、われわれもっともだと思います。いつまでもどんぶり勘定でおかるべきものではない。幸いに池田というすぐれた能力を持った大蔵大臣が出たから、特別会計を設置するようになったのであろうと思う。特別会計が設置されたからというて、その金は、これは私が言うまでもなく、また、こんなところで言うべきでないかもしれませんけれども、あの当時の石炭の生産等にその特別会計からずいぶん回されたという点から言って、なるほど確かに日本産業の復興に役立っております。日本産業の復興に役立ち、日本国民の生活の援助、救援のために役立っているということであるならば、国民は喜んでそれを受け取るわけです。それが後になったらば返さなければならぬものであるということを知るならば、それならばなぜそのときにそうであるということを国民に知らしめなかったか。これは、今も大蔵大臣が言う通り国民に知らしてないから、大多数の国民はもらったものだと思っておる。こういうことを大蔵大臣にあるような人ですら言うておる、いわんや、一般国民がそう考えるのはあたりまえのことなんだ。私は、時間の関係もありますから、もうこれ以上政府の答弁を求めようとはしないけれども、ともかくも、そういう点において、今までの質疑応答の中から、あれをそのままそっくり議事録を国民の前で読んで、ほんとうにわかるでしょうか。(「わかる」と呼ぶ者あり)わかったという人は政府与党の諸君、聡明な頭を持った人はわかるかもしれぬけれども、一般国民はほんとうのところなかなかわからない。そういう点から考えて、これらの問題については……   〔発言する者あり〕
  101. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 お静かに願います。
  102. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 なおしさいに国民をして納得せしむるような解明が与えられなければならない、こういうことを痛切に思います。  最後に、池田総理はこの問題について今後どのように対処されようとするか、そのことについてお伺いします。
  103. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 加藤君にお諮りしますが、総理大臣の答弁がありましたら休憩に入りますから、お含みになって……。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 債務と心得る根拠は、先ほど来申し上げましたように、支払いの条件並びに計算は追ってする、こういうことでございます。  それから、これを有償でやるということは、無償だと無制限になる、こうおっしゃいましたが、もう切符制で、無制限にいきっこないのです。やはり、加藤さんもあのとき閣僚におられて、将来支払うべきものだとお考えになったから経済行為で代金をおとりになったと思います。それが順序です。これが良識です。将来支払いの条件その他は計算をするという覚書が出ておるのでありますから、当然これはやはり有償で売るべきだ。無償だと無制限になると言われますが、切符制でございますから、無制限になりっこない。私は、こういう点から考えましても、どうしてもやはり国民感情といたしまして、しかも向こうが与えたという金額の大体四分の一を払うのです。四分の三はもらったものになるのですから、しかも、今まで申し上げましたように、国民に税負担をかけずに利子だけ払うというようなことは、これは進んで日本国民としてはやるべきだ。私は大多数の国民が賛成していると確信をいたしております。  私は、今回のこの協定が通過いたしまして、そして、協定の条文によりましてわれわれはおきめいただきました債務の完全履行をいたしまして、国の名誉のために、また日米間協力体制の強化、そして東南アジア復興の一助のために進んでいきたいと考えております。(拍手)
  105. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 最後に一つだけ。われわれ社会党が唱えております二重払いということについて、三重払いでないということを政府見解としてとっておられるようですが、私は、この点はやはり二重払いだと思うのです。どうしてかというと、利子で払うから元金に手をつけぬから大丈夫だとおっしゃるけれども、その利子をもし払わなければ、それがそのまま日本国経済、産業の復興に役立つ、また、国民がそれを負担しないで済むわけです。産投の問題にしましても、あるいは国の予算の問題にしても、一般会計にもしその利子が繰り入れられるということになれば、それだけ予算において国民は利益を受ける。だから、当然二重負担になるわけです。だから、そういう点はわれわれは政府見解が違う。これは見解の問題だから何とも仕方がない。だから、見解見解であって、われわれは、そういうことで、利子だから二重負担にならぬということは言えない。利子だからというて、それを払わなければ当然国の利益になるのです。国の利益になるということは国民の利益なんです。そのことはあたりまえです。  それから、国際信義、国際信用ということを言うておられますけれども、もしアメリカと国際信用を高めなければならぬというならば、幾らでも手段はある。何もこれだけがその手段ではない。そういうところに理屈をくっつけられるところに政府の弱みがある。あなた方はアメリカの言うことさえ聞いておれば国際信用を高めるものだというような間違った卑屈な考え方を持っておられる。そういう卑屈な考え方は排除されなければならないと私は思います。これだけ一言言っておきますから……。
  106. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後三時四十七分開議
  107. 森下國雄

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。戸叶里子君。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっと待って下さい。
  109. 森下國雄

    森下委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  110. 森下國雄

    森下委員長 速記を始めて。質疑を続行して下さい。戸叶里子君。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 ガリオア・エロアは非常に問題を含んでおります。私どもは、戦後のどさくさのために仕方がなかったとは申しながら、将来においてまた疑問が残らないようにするためにも、この委員会で十分に審議を尽くすことが必要でございます。そこで、私もほんとうに真剣に問題点を出しますので、政府も誠意を持ってこれに答えていた、たきたいと思います。ガリオア・エロア債務であるとして、なぜ払わなければならないかというその過程がはっきりしないと、将来におきまして今日いる国会議員がいいかげんなものであったとの汚名を着せられるでありましょうし、また、将来の日本アメリカということを考えてみましても、アメリカのドル防衛政策の一環として押しつけられたとの感じを持ったり、また、日本が卑屈になり過ぎたのではないかと国民が考えたりしては、政府の願う日米親善関係にもひびが入りますから、どうぞ私の疑問に対しましても率直に明快に御答弁をしていただきたいと思います。  質問の第一でございますが、まず私は、資料言葉の点で確かめてみたいと思います。昨年の六月十日に外務省におきまして、小坂外務大臣とライシャワー大使との間に、米国の戦後対日経済援助についての覚書にイニシアルが行なわれたわけでございますが、その要旨におきまして、米国の戦後対日経済援助とは、民間供給計画に基づく援助、——これが私はシビリアン・サプライ・プロジェクトだと思いますが、さらに、ガリオア・エロア及び余剰物資援助をいい、これらの援助の最終的処理を図るため、協定を作成する、こう書いてございますが、これらを対象にされていろいろと差引をして四億九千万ドルというのが決定されたのかどうか、この点を急のために伺っておきたいと思います。
  112. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういうことでございまして、今そこにおあげになりましたような資料でも差し上げてあると存じますが、それをもとにいたしまして計算をいたしまして、四億九千万ドルというものを出したわけであります。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、もう少し言葉の点で伺いたいと思いますが、余剰物資援助というのは大体どういうものをおっしゃるのでしょうか。
  114. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 資料でも差し上げておりますSIM、QM、スペシャル・インセンティブ・アテリアル、それからクオーター・マスター・グッズでございます。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、その中には当然軍払い下げ特資、それらのものが入るということでございますね。
  116. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうでございます。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 米軍の払い下げ物資が四千三百八十二万三千九百二十ドルになっておりますが、この中から米軍払い下げ物資として六十八万三千五百六十九ドルだけ引いているわけでございます。これはどういうものを基準にして引かれたかを念のために伺いたいと思います。
  118. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 事務当局から申し上げます。
  119. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。数字がこまかいので、的確な数字を今出しているところでございます。シム、QM、いろいろなものを引きましたが、贈与分と返還分を引いております。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁でございますけれども、もう少し詳しく正確にお答え願いたいと思います。
  121. 安藤吉光

    安藤政府委員 これは通産省から提出いたしました資料の第一ページにあるかと存じます。米軍払い下げ物資からは返還分を六十八万三千五百六十九ドル引いております。それから、この返還分は、朝鮮に動乱が起こった際に米軍に返還したものでございます。それからスクラップ類、これは返還ではございませんで、日本としては、いわゆる価格ゼロと算定することを向こうに同意させまして引いた分でございます。これが八百六万四百十二ドルでございます。それから、もう一つは、これはビーコフから購入しました物資のうち、二十万九千四百七十八ドルに該当するものを朝鮮動乱の際に米国に渡し、それを後日このQMの勘定から差し引くということになっておりましたので、これを差し引きました。合わせまして八百九十五万三千四百五十九ドルを控除いたしたわけでございます。なお、余剰報奨物資に関しましては、やはり朝鮮動乱の際に返還いたしました千五百六十五万七千七百六十九ドルを控除しております。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 今のアメリカ局長からの御答弁で、数字だけはわかりましたけれども、そういうふうな数字の基礎となった資料というものがなければならないと思います。たとえば、ここに書いてありますとこの、米軍払い下げ物資として引いたその基礎は、こうこうこういうふうな約束でこれを引いたんだというようなスキャッピンなり何なりが私はなければならないと思いますが、そういうものはここに提出されておりません。ことに、私がお伺いいたしたいと思いますのは、この贈与分というものがございますけれども、この贈与分というものは何と何であるかということを政府に私は資料を求めまして、私の手元にだけは贈与分としての資料が大急ぎで来ましたけれども、これをまだ見ているひまがないほど急に下すったわけでございます。従って、こういうふうなものを、言われないうちに出していただきたいということが一つと、もう一つの問題点は、ここに英連邦軍物資対米引渡分というのが二十万ドルあるわけでございます。この二十万ドルを引いたわけでございますけれども、これは英連邦軍から日本政府に放出された品物で、その額が二十万九千四百七十八ドル、それが今度はアメリカ合衆国の軍隊に渡されたのでありますけれども、そうだといたしますと、日本と英連邦軍との間に何らかの取りきめなり何かがなければ、こういうものはなかったはずだと思います。その資料を私は個人的に要求いたしましたけれども、出していただいておりません。そこで、この際お伺いいたしますのは、この英連邦軍の対米引渡分というものを今回引くに至ったその基礎は何によるものであるかを伺いたいと思います。
  123. 安藤吉光

    安藤政府委員 英連邦払い下げ物資、俗にビーコフと申します。これにつきまして概要を御説明しまして、なお所要の資料につきましては後ほどまた整備いたして差し上げます。  英連邦物資と申しますのは、ちょうど一九四七年、昭和二十二年でございます。その三月から、英連邦軍はその保有しております生活必需品等を日本に売却する、あるいはまた一部は無償で供給するということになりまして、いわゆるセール・オア・ディスポーザルと言われておるのでございますが、この売却の場合は、物品の引き渡しの際、その数量とか価格を表示して参りまして、それに対しまして貿易庁がレシートを出しまして、すなわち売買として受け取ったものでございます。他に、特に価格を表記しなくて、いわゆる無償で受け取ったものもございます。この受け取りましたものの種類はどういうものかと申しますと、車両、食品、繊維類、なかんずくトラックが非常に多かったわけでございます。そうして、これらのものは円で後に払われました。その購入しました総額は約八十五万ポンド余でございました。先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、一九五〇年の九月、ちょうど昭和二十五年の九月に、朝鮮事変が勃発いたしました際に、当時まだ配給せずに手元に政府が持っておりましたシム、QM、米軍の余剰放出物資あるいは軍払い下げ物資とともに、未配給のビーコフ物資も米軍に引き渡すことを要請して参りました。そして、先ほども申しました通り、その結果、米軍に引き渡しましたビーコフ物資が約二十万ドルあるわけでございます。その後、昭和二十六年八月十三日に、総司令部から通産、大蔵省に対しまして、いろいろ協議した結果でございましょう、この二十万ドルは米軍払い下げ物資、すなわちQM勘定において日本政府にクレジットする、貸方の方にする、ということは、QM物資から差し引くのだということを申して参りました。従いまして、今回通産省は、通産省の持っております資料に基づきまして日本側の数字を算定いたします際、この二十万ドル、すなわちビーコフ物資は軍の払い下げ物資から差し引いて計算しておるわけでございます。一番最初にお配りいたしまして通産省の算出した数字の基礎の第一ページに出ておるのが、これでございます。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 数字のこともございますけれども、私が伺いたいのは、英連邦軍から日本に物資が来た場合に、何かそこに日本と英連邦軍との間に取りきめなりあるいは約束なり何かがあって、その基礎に基づいてこれが行なわれたものではないかというふうに考えます。そうでなければ、ただ英連邦軍から品物が来て、それをアメリカへやったということだけではないように思います。その日本と英連邦軍との間の取りきめなり、あるいはスキャッピンですか、メモランダムですか、そういうものがありましたら、ぜひ出していただきたいと思います。
  125. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいまの点でございますが、一九四七年三月十四日に、日本政府に対しまして、総司令部からスキャッピン三四二一のAというのが出ております。内容は、私が先ほど申し上げましたようなものでございます。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 その内容も、私はあとで少し調べてみたいと思いますので、なるべく早い機会に出していただきたいと思います。
  127. 安藤吉光

    安藤政府委員 そのように取り計らいます。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどもお話がございましたが、米軍の払い下げ物資ということが説明されたわけでございます。この米軍の払い下げ物資というのは、国民に対して非常に安く払い下げられたのでしょうか、それとも普通の、ほかのものと同じように売られたのでしょうか。
  129. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 QM物資の国内に対する払い下げは、当時のマル公価格で払い下げられております。  なお、先ほどQMの返還物資はどういうものがあったかというお尋ねがあったそうでございますが、靴、バッグ、シャツ、そういうようなものを返還しております。これが六十八万ドルの内訳でございますが、そういう物資でございます。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 私、ここでちょっと不思議に思うことがございます。それはどういうことかと申しますと、政府ガリオア・エロア債務であるということをおっしゃる場合に、国民は放出されたものをただでもらったのじゃない、お金を出して買ったのだからこれは債務であるということをおっしゃいます。先ほど加藤委員からもおっしゃいましたように、国民は当時なるほど買いましたけれども、これは国民政府の間の関係であるという立場に立っているわけです。政府のおっしゃる言葉を今ここに当てて考えてみますと、この軍払い下げ物資というのは、ただでもらったのじゃなくて買ったのだ、買ったのなら、ここでもって引く必要はないじゃありませんか。この軍からの払い下げ物資だけお金を出して買ったけれども、これはただなんだから引くのだというのでは、今までの政府の御答弁と少し筋が違うような気がしますけれども、どうでしょうか。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この債務性の問題に関しましては、昭和二十一年七月二十九日のスキャッピンによって、この支払い代金その他は追ってきめる、こう書いてあるので、そこでこの債務性というものが出てきておるということを言っておるわけでございます。QM物資につきまして、これをなぜ引いたかということでございますが、これは全体の三分の一だけ引かした、こういうことになっておるわけでございます。全体としましては、全部が債務だと言っているわけではないのでありまして、四分の三はもらったことになっておる。先ほど総理からも御答弁がありました通りに、四分の一払い、四分の三はもらった、こういうことになるので、その間の区分けをいわゆる外交交渉によっていろいろとしたわけでございます。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 私の質問とちょっと食い違っておると思うのですけれども、私はもっと根本的なことを伺っておるのです。それでは、QMのうちの四分の一払って四分の三もらったのですか。
  133. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもの申しておるのは、全体の債務と心得てっおたのを債務といたします場合に、先方の言っておるものの四分の三はもらって四分の一は払う、こういうことになっておるわけであります。
  134. 戸叶里子

    戸叶委員 それはQMに関して……。
  135. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうではありません。全体のことを言っておるのです。QMに関してはアメリカ局長から申し上げます。
  136. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。そうじゃないのです。私の伺っておるのは、先ほど、軍からの払い下げ物資に対しては、マル公でもって国民に分けてあげたということをおっしゃったわけです。今までの政府の答弁としては、ガリオア・エロア債務である、その証拠には、国民はお金を出して買ったじゃないか、こういうことを言われたわけです。ここでもって、もしも払っていながらそれを引いたというのは筋が通らないじゃないかと、この点を聞いておるわけで、こまかいことを聞いておるわけじゃございません。この点をお答えいただきたいと思います。(発言する者あり)委員長、大へん済みませんけれども、横でがやがやされますと、私質問ができませんので、ヤジを禁止していただきたいと思います。
  137. 安藤吉光

    安藤政府委員 技術的なことでございますから、私から詳細説明申し上げたいと思います。  QM、シム物資は、いつぞやも国会で御説明申し上げたかと思いますが、大体千六百八十ドルという価格で計算しておったわけであります。しかしながら、このQM物資は、実際にはもっと安く価格が表示されていたことが多いのであります。しかしながら、そのときのスキャッピンにもございます通り支払い条件等は後日きめることが最初から出ていたのであります。従いまして、今度のガリオアのときに一括いたしまして、何と申しますか、決済といたしましては三分の一程度あるいはほかのガリオアと一緒に引くことにしたわけであります。  そこで、今国内における配給のことをおっしゃっておるかと思いますが、国内における配給は、通産省からさっき御説明がありました通り、当時の国内の安いマル公で一般に配給したということでございます。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっとおわかりにならないかと思うのですけれども、今まで、ガリオア・エロア債務である、なぜならば、日本国民はお金を出してアメリカから援助されたものを買ったじゃないかということをおっしゃったわけです。ところが、今この軍の払い下げ物資はただですかとは聞きませんでしたけれども、安かったのですかどうですかと聞きましたら、マル公で払い下げたと言う。そうだとすると、今までの政府の答弁は、国民がお金を出して買ったのだから債務であるとおっしゃった。ところが、債務であるならば、これで引かれるならばただであるべきではないか。国民がお金を出して買ったにもかかわらず、これを引いておる。だから、今までの政府の答弁の、国民がお金を出して買ったのだから債務ですよという基礎にはならないと私は感ぜざるを得ないのです。
  139. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 事実関係を先に申し上げますと、英豪軍の返還分についてのお話だと思いますが、英豪軍への返還分は国民には払い下げをしておりません。一応日本政府として受け取ったものを、そのまま米軍に引き渡したものであります。これは国内には払い下げませんから、従って、国民からも代金は取っていないということになるわけであります。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、ちょっと私はわからなくなってしまったんですけれども、非常にこんがらかっていますね。米軍の払い下げ物資というものは、国民に払い下げをしないのですか。あなたは英連邦軍の分と両方間違えていらっしゃるんでしょう。米軍からの払い下げ物資は国民にやったわけでしょう。お金を取ったわけでしょう。そうじゃないですか。
  141. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 資料について少しお読み違いになっていらっしゃるんじゃないですか。といいますことは、この十七億九千五百万ドル、その中の中身は、見返資金設置以前のものと、見返資金ができましてからのものと、それから余剰物資ですね、これは、シム、それから米軍払い下げ物資の、QM、これがある。この内容について、そのQMが出ておるわけですね。そこで、この返還分は米軍に返したものです。これは日本の方へもらってないんです。米軍に返してある。返したものが千七百万ドルある。その千七百万ドルの中で、ガリオア物資は六十六万九千ドル返しておる。それから、シムは千五百六十五万七千ドル返しておる。米軍払い下げ物資は六十八万三千ドル返しておる。ですから、返しておるものは引いたわけです。ただそれだけのことです。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 私が伺っておりますのは、この払い下げ物資というものは、国民に分けてやったわけでしょう。分けないんですか。全然分けなかったんですか。
  143. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それですから、申し上げておるのですが、返したもの、国民に分けてないものもあるわけですね。一応向こうから受けたけれども、それを返還しておるものがある。返還しておるものは、もらってないから引いておる。こういうことでございます。
  144. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、先ほどの答弁にありましたこまかい数字を、私はあとから速記で読んでみませんと、これ以上この問題についての質問はできませんので、あとで読んでから質問を続けたいと思います。  そこで、次に政府に伺いたいと思いますのは、ガリオア・エロアに対しまして、日本債務として考えておる資料を出してきておるわけですが、これ以前に、一九四六年七月二十九日にスキャッピンを出されまして、これは、タームス・オブ・ペイメント・アンド・アカウンティング・ウイル・ピー・ディサイデッド・レーターというふうに書いてありますね。それを見て、そういうふうに書いてあるからこのガリオア・エロア債務である、こういうふうにこれまで何度も答弁をしてこられたわけですね。そうすると、これ以前の援助物資というものは債務の対象にはなさらないわけでしょうか。しているわけですか。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、冒頭に申し上げましたように、全部入っておるわけでございます。  それから、先ほどビーコフのお話もございましたので、ビーコフも一緒にして御質問になったような気がしたものですから、よくわかりませんでしたが、ビーコフというのは、英連邦軍の物資なんです。これを日本は売買契約で受けておるわけです。そのうち、朝鮮事変が始まりましてから、一部米軍の方でこれを使ったわけです。これはこっちの方で使ってないものですから、これを引かした、こういうことなんであります。
  146. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁ではっきりいたしましたことは、債務の対象にする根拠として、一九四六年の七月二十九日ですかの、このタームス・オブ・ペイメント・アンド・アカウンティング・ウイル・ビー・ディサイデッド・レーター、これがあるということをおっしゃったわけでございます。そこで、私まず最初に疑問に思うのは、この言葉の点でございます。ウイル・ビー・ディサイデッド・レーターとあるわけでございますけれども、私は昔英語を習いました。そのときに、一人称でウイルというときには意思が入る、三人称の場合には単なる未来である、しかし、もしもこれがシャルなりシュッドになると、これは義務を伴うことになる、こういうふうに聞いたのですけれども、この文法は変わってきたのでしょうか。
  147. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 もう一つ例がございまして、二人称の場合、——二人称の場合というのは、ユー・シャル・ダイというのがあるのですね。これはアイ・ウイル・レッツ・ユー・ダイ。これは、決定されるであろうということを合意しているわけです。決定されるであろうということを合意しているのでございますから、その合意に基づいて相談をしなければならない、相談した結果が今回の金額になった、こういうわけでございます。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 これは英語の問題だけじゃないのです。あとから問題になりますので、私はここで念のために伺ったわけなんです。  そこで、もう一度念のために伺いますが、もしこれがシャルでしたら義務を伴いますね、シャルとかシュッドでしたら。しかし、この場合にはウイルですから単なる未来にすぎない。だから、支払い条件がきまるかもしれない、それはどういうふうにきまるかわかりませんが、きめなければならないというのじゃないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、将来のことに属するので、未来に関してこういうことになるであろう、こういうことを書いてあるので、この点すなおに読んでいただけば、将来これは相談するであろうというのであります。するであろうけれども、この書いた方の人が相談しなかったら、これは消えてしまうかもしれませんが、あれはどうなるのだ、こういう相談をかけてくるわけであります。受けた方の日本政府としましても、相談するであろうということを未来において考えておるわけでありますから、それについて相談に応じなければならぬ、そこで合意が発生する、こういうことになるわけです。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、やはり相談するであろうであって、相談しなければならないというのじゃないというふうに考えてよろしいわけでございますね。くどいようですけれども、私はちょっとここで念のために伺っておかなければならないと思います。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ウイル・ビー・ディサイデッド・レーターですね、決定されるであろう。ここに非常に意味があるわけです。忘れるであろうではないのです。決定されるであろう、ここに意味があります。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそういうことを伺っておりません。それでは、イエスかノーかだけでけっこうでございます。ウイル・ビー・ディサイデッドの場合は、決定するであろう、もしもこれがシュッドなりシャルになれば義務が伴う。どっちですか。どっちかということだけ伺えばけっこうです。
  153. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは特段の相違はないというふうにわれわれ理解しております。きめられるであろう、シュッドでもシャルでもウイルでもウッドでも、大体こういう将来のことに対して言ってある。ただ、その決定されるであろう、ウイル・ビー・ディサイデッド、ここに問題があるのです。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 あとでアメリカが出したスキャッピンの中で、どうしてもこれは注意しなければいけないというときにはシュッドを使っております。シャルを使っております。あとから私はそれを示しますから、ここは先に進んでいきたいと思います。   〔発言する者多し〕
  155. 森下國雄

    森下委員長 静粛に。
  156. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、政府はこれまでスキャッピンというものを一応最上のものとしていられるようでございますけれども、これは仕方がないといたしましても、一体スキャッピンをよくお調べになったのですか。戦後のスキャッピンというものが大体どのくらい来ているか御存じでございますか。それを御存じなかったならば——今度これだけの援助をもらった、その中には贈与も有償のものもある、その中で、これはあとから決定されるということが書いてあるからそれは払うのだというのだったならば、そういうものを対象にして私はこの数字が出てきたと思う。だとするならば、スキャッピンの中に、これはどれだけ払うのだということが書いてあったのですか。参考のために、この数だけでもいいですから知らせていただきたいと思うのです。
  157. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答えいたします。  私自身、また私の関係しておる部局の者、あるいは関係各省総手をあげまして管理法令等を研究いたしました。その数は、いろいろな部門にわたっておりますので、膨大であることは御承知の通りでございます。ことに、このガリオア問題に関係をいたしましては詳細に調べました。そして、すでに戸叶先生にも差し上げたはずでございますが、プレガリオアはみんなやはりついております。その一、二の例を差し上げたはずでございます。ガリオアについては一八四四というのがございます。シム、QMについてもございます。かくのごとくしまして、このガリオア債務性はその当時からあったということは言えると思うのでございます。  先ほど要求がございました、一体スキャッピン全体で幾らあったかということは、ちょっと私ここでは申し上げかねます。スキャッピン集というものは、実はたくさん残ってございます。
  158. 戸叶里子

    戸叶委員 幾らあるかということはおわかりになるのでしょうかね。なるならなるということでいいし、ならないならならないという御答弁をして下さい。それは、私も実を申しますと、政府がスキャッピンというものを持ち出してきて、これが債務の根拠になるんだということをおっしゃいましたので、一体どのくらいあるものかと思いまして、国会図書館に行って、ほこりだらけの中から出してもらいましたところが、とっても調べ切れませんでしたけれども、私が見たところによりますと、たとえば四月なら四月で二冊も来ている場合もあります。一冊の場合もあります。しかもその一冊の中に、インディアン・ペーパーの実に薄いのが何百通もとじてあるわけです。そこで、私が考えましたのは、これは債務である、これは贈与であるというような仕分けは、こういうものの中からとてもできなかったんじゃないか。外務大臣は、これまで、向こうからの指令が来たり、品物が入ってくれば、それに対して一々請書を出したりしたということをおっしゃったものですから、それも研究してみました。ところが、当時は、ほかの大臣がお答えになっていらっしゃるように、商業物資とそれから援助物資というものはごっちゃまぜに来ているわけで、一々それに対して、これは商業物資の請書です、これは援助物資の請書ですなんというものは区別してなかったはずです。これは予算委員会においてもはっきり答弁されておられます。それじゃ一体何を根拠にしたんだろうかといえば、やはりスキャッピンだろうと思うのです。それを、山のように積まれたスキャッピンというものの中から選び出してこられたというならば、一体どのくらいのスキャッピンがあるものかということを私は今聞いてみたのですけれども、ちょっとこの点はあいまいでございましたが、私はそれに対して追及しようとはいたしません。ただ、問題は、今アメリカ局長がおっしゃいましたように、私もスキャッピンの一、二を出していただきたい、こういうことを申し上げましたところが、一九四六年の二月の十一日のスキャッピンの七三〇というのを出して下さいました。そして、これには、二百万ポンドの小麦粉の引き渡しのメモランダムというものが来ているわけでございます。これは一体支払いの対象になさいましたかなさいませんでしたか。
  159. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 ただいまの二百万ポンドのものは支払いの対象になっております。  なお、先ほどの御質問でありますが、通産省で今回援助物資の総額を算定いたします場合に使いました資料としましては、そういうスキャッピンもございますが、そのほか、当時の貿易庁関係資料、あるいは司令部の遺留資料を利用したわけでございます。司令部の遺留資料は、各契約別にファイルがございまして、そのファイルの中にいろいろ関係書類がございますが、その中に、たとえばガリオアでありますれば、ガリオア・ファンドで買ったというパーチェス・コミットメントのついておりますものとか、あるいはシビリアン・アプルーブド・プログラム・フォア・シビリアン・サプライズ、そういうようなことを記入した書類がございます。そういうようなものを援助物資と認定したわけでございます。商業関係の物資につきましては、そういう書類はついておりませんし、逆にまた、商業関係でございますので、いろいろな契約書類とかインヴォイスとか、そういうものが添付されておるわけでございます。そういうような契約別ファイルを選別しまして、援助物資と認定されるものをピック・アップし、それを集計したわけでございます。ただ、これには数量の記載だけのものが大部分でございます。あるいは価格の書いてあるものもございます。価格の書いてありますものはそういうものを利用しておりますが、価格の入っておりませんものは、今度米側から提示のありました決算資料から単価を出しまして、これはFASの単価でございますので、それに運賃を加算したものを、通産省で計算する場合の単価として利用したわけでございます。そういう意味におきまして、司令部のファイルも、これが援助物資について全部を網羅しておるという保証はございませんので、私ども計算いたしました数量は、援助物資の全部であるということは言いかねると思います。これを資料を作りまして米側と突き合わせますと、おそらく米側の資料によりまして通産省で足りないところは補足されるであろう、通産省の数字が小さ過ぎるというようなもので、米側から提示しました資料を見て納得すべきものであればこれは追加をしなければいかぬという考え方でわれわれは計算をしたわけでございます。そういう意味で、従来外務大臣も言っておられますように、数量については、通産省で計算した数字は、これ以上になることはあっても以下になることはない。おそらく米側と資料を突き合わせまして一件々々調査しますと、米側の言う十九億五千万ドルに漸次近づいていくというふうに考えるのが常識であろうと思います。と申しますのは、米側としまして、ただ出してきただけではなくて、向こうの支出ベースの数字について、先方の会計検査院の検査を経た数字であるということを申しております。そういう意味で、米側の数字に近づいてくるものであろうというふうに考えておるわけでございます。
  160. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁でございますけれども、こちらから払おうという債権債務関係にあるものに、米側からも資料を出してきた、それに突き合わせて出した、しかし全部の資料を見たわけではない、こういうことでございますが、そこら辺にも私は非常に多くの問題があるのではないかと思います。たとえば、これはあとから支払うというようなことが書いてあっても抜けていたり、まあ支払うと書いてなければおそらくそれは支払いの対象にしないでしょうけれども、そういうふうな問題が私は必ず出ていると思います。私は、きょう別にこまかく意地悪く聞くつもりはないのですけれども、たとえばこの小麦粉は一ポンド大体幾らの計算でなされたか。この支払った表を見ますと、二十二年に十六万九千七百四十三トン分として二千四百五十七万千六百二十ドル支払ったことになっているわけでございますが、その当時の小麦粉というのは、私調べてみますと、十グラムで二十円五十銭であったわけです。そうすると、この二百万ポンドというものは、一体どんなふうに、どういうふうな基礎によって幾ら払ったのだろうかということがちょっと疑問になったわけです。そこで、これ一つだけでも、あとからでけっこうですから、参考に出していただきたいと思います。私は、もっと大事な問題がありますから、先へ進んでいきたいと思います。  そこで、お伺いしたいのは、今この出していただいたスキャッピンも支払いの対象にした、こういうことを伊藤さんはおっしゃったわけですね。なるほど、このスキャッピンには、ちゃんとタームス・オブ・ペイメント・アンド・アカウンティング・ウィル・ビー・ディサイデッド・レーターと書いてあるわけです。そこで、お伺いしたいのは、政府が最初に出してきた資料というものは、一九四六年の七月二十九日の分を出してきているわけです。ところが、このスキャッピンというのは、一九四六年の二月十一日なのです。政府の出してきた資料よりも前の資料なんですね。この資料にもそういうことが書いてあるのに、それを対象にしないであとのものを出してきたというのは一体どういうわけですか。
  161. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答えします。  御質問趣旨があるいはよくわからなくて誤解しておるかもしれません。そのときはもう一ぺん回答させていただきたいと思いますが、スキャッピン一八四四を最初に出して、ほかを出さなかった、なぜ出さなかったかという御質問でございますけれども、スキャッピン一八四四はガリオアの全部をカバーした基本的なスキャッピンでございます。それに支払い条件及び計算は後日きめるということがあるので、一例として差し上げたわけでございます。このほかに、先ほども申し上げましたプレガリオア、これに関するスキャッピンは、先刻も申し上げました通り差し上げました。これはやはり同様で、タームス・オブ・ペイメント・アンド・アカウンティング・ウィル・ビー・ディサイデッド・レーターと出ております。このプレガリオアのときには、ケース・バイ・ケースにこういうスキャッピンが出ていたようでございます。その事例はたくさんございますが、ひな形的なものをたしか二枚くらい差し上げたかと思います。まだほかにもございます。  それから、次にQMでございます。これもたしか資料として差し上げたはずでございます。(「もらっていない」と呼ぶ者あり)それじゃ、これは差し上げてけっこうでございます。これも、QM物資一般について言っておるわけでございますが、シムについても同様一般のものがございます。ただ、シムについても、いつかこの委員会で申し上げましたように、シムの最初のスキャッピンにはその条項はありませんでしたけれども、そのあとに出ましたシム・QMの返還に関するスキャッピンに、その第二だと思いますが、支払い条件等については後日決定するということになっていたというのがありまして、かつ、それの評価方法といたしまして、千六百八十ドルというものを基準にしていたから、今度差し引くときには、返還として控除するときにはその金額で控除するというようなことが書いてございます。  そうしてみますと、全般的にカバーする基本的な指令、あるいはプレガリオアのごとく個々のもの全部総括いたしまして、いわゆる総司令部の指令によりましても、債務性というものがそのときにはっきり書いてあったということが言えるのであります。その代表といたしましてスキャッピン一八四四を差し上げたわけです。かたがた、そのほかにいろいろ債務性の根拠となるものは、最初に提出いたしました債務性があると考えられるその根拠という意味で、資料として出しておるわけでございます。
  162. 戸叶里子

    戸叶委員 今アメリカ局長から、一八八四という、すなわち一九四六年の七月二十九日の分がすべてガリオアをカバーするとおっしゃいましたけれども、今私が指摘いたしましたように、これ以前にもたくさん来ているわけですね。今例に引きました、たとえば一九四六年二月十一日の、すなわちスキャッピン七三〇とか、そのほかあるわけでございますけれども、そういうものまでこの一八四四がカバーするのだということは、一体どこでわかるのですか。初めにこういうふうなものが出ているならば、最初にこれをお出しになればいいじゃないですか。そうでなければ、プレガリオアの方もこれに入るのだということをはっきりお出しになったらいいじゃないかと思います。
  163. 安藤吉光

    安藤政府委員 プレガリオアが出ますときには、そのつど、先ほどから何回もくどく申し上げておりまするように、スキャッピンがございまして、その一八四四はいわゆるガリオア予算というものができましたときに出ました指令だと承知しております。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 一八四四はガリオア予算ができたときの指令ですね。それの前のはプレガリオアですね。そうすると、プレガリオアも支払いの対象になっているならば、一八四四だけでなくて、その前にもこういうのがあるというのが出ていなければ、私どもは一八四四以前のものはもう全然対象にしないのじゃないかと考えるのが常識じゃないかと思うのです。
  165. 安藤吉光

    安藤政府委員 その点につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、資料といたしまして代表的なものを出したつもりであったわけでございます。その後御要求がございましたので、直ちにプレガリオアの分も差し上げたかと存じております。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもの常識から申しますと、この支払いの条件はあとから決定するであろうという、そういう言葉がもしも一八四四よりも前にあったならば、こういう言葉があるのだからこうだという例を引くのには、最初のものを出すのがほんとうじゃないかと思うのです。まん中のものをぽんと出してくるのじゃ、なぜこういうものを出してきたのだろうか、これより前のは一体ただなのだろうかと考えざるを得ない、これが常識だと思うのです。しかも、一八四四の中に、前のも含んでいますよということは書いてないですね。こういう点がどうも疑問に思うわけでございますけれども、外務大臣、いかがでございますか。
  167. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今申し上げましたように、代表的なものを差し上げたわけでございます。ガリオアがすべての契約のうちで一番大きい部分を占めるものでございますから、それについて御参考までに申し上げたわけでございます。しかし御要求がありましたら、プレガリオア資料も、三月十二日に当委員会に提出してあるということでございます。  それから、先ほど通産省が非常に雑な計算をしたようなお話もございましたけれども、この通産省の努力というのは非常な努力でございまして、一つのスキャッピンを実は当たったのでございます。そこで、当たりました結果が十七億九千万ドル何がしというものになりまして、伊藤次長から申し上げましたように、これは全体をあるいはカバーするものではなかったかもしれないのであります。アメリカ側の言いますのは、十九億五千四百万ドルと言っておるわけでございます。そこで、もっとあると言われても仕方がないわけでございましたけれども、われわれとしましては、外交交渉によりましてアメリカといろいろと話をいたして、その結果、こちら側の提出した資料、これを全部そのままアメリカ側において認めまして、これによって計算をした、こういう事情であるわけでございます。
  168. 森下國雄

    森下委員長 関連質問の通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  169. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今小坂さんが、スキャッピンについては一つ一つ通産省が照合した、こういうことをお話しになったのですが、スキャッピンというのは日本が受け取っている文書ですね。そうすると、これは照合どころじゃない、そういうことは当然な話なんですが、とするならば、スキャッピンは全部これは日本にあるはずですし、その枚数くらいはおわかりになるはずだと思うのですが、スキャッピンは幾らあったか、これについて数字をお話し願いたい。
  170. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は私の言葉が足りなかったと思うのでございますが、要するに通産省の努力が非常なものであったということを申し上げたので、司令部が残置いたしました資料について一々これに当たってくれましてやった、こういうことでございます。
  171. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 一々遺留資料と照合したというお話ですが、まず第一点として伺いたいのは、スキャッピンの数はお出しになれますか、どうですか、次長に伺いたい。
  172. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 司令部の遺留資料は、各契約別のファイルがございます。そのファイルの中にガリオア・ファンドで買ったということを書いたパーチェス・コミットメントあるいはアプルーブド・プログラム・フォア・シビリアン・サプライズというような資料がございます。これによって援助物資であることを認定したわけでございます。その中には、当時の日本側から出した受領証もございます。スキャッピン自身は、これは本紙は日本側に来ておるわけでございます。契約別ファイルの中にありますのは、その控えになるわけでございます。日本側に来ておりますスキャッピンが全部出せるかどうかという点でございますが、日本側としましては、その全部はございません。ですから、全部を、何千通になりますか、提出せよと言われても、これはちょっとお出しするわけに参りません。
  173. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今非常に重要な御答弁があったのですが、日本側が受け取ったスキャッピンは全部はない、一部はなくなっているものがある、こういう点は、非常にはっきり今伊藤さんが答弁されたのですが、それでよろしいわけですか。
  174. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 スキャッピンはあるそうでございますが、物資の引き渡しの資料個々のものは、全部スキャッピンというわけではございませんで、メモランダムのもございますので、そういう個々のメモランダムについては全部はございません。
  175. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、もう一点伺いますが、伊藤さん、スキャッピンはある、そういう引き渡し受領書その他の関係ではないものもある、そういう点を確認するためには、当然遺留資料を根拠にしなければならない、こういうことになりますね。そうですね、総理大臣。——そうすると、総理大臣もうんと今言われた。それで、伺いたいのは、通産省には遺留資料というものはどれぐらいありますか、数をお話し下さい。もし御存じなければ私の方で言ってもいい。
  176. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 司令部の遺留資料は相当たくさんございまして、個々の数は勘定いたしておりませんが、おそらくこの部屋の四分の一か三分の一ぐらいのスペースを占めている程度でございます。
  177. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 伊藤さんに伺いますが、その数は大体十五万冊でしょう。どうです。
  178. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 勘定はいたしておりませんので、何冊という……。
  179. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私が知っていて、あなたが、知らないということはないでしょう。
  180. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 私どもも承知いたしておりません。
  181. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 伊藤さんは知らないかもしれない。通産省で知っている人があるはずです。十五万冊あるはずです。もっと言いましょうか。十五万冊の中で、司令部の一々の契約書類というものが、輸出関係で十三万冊、輸入関係で七千から八千、銀行通帳が八百冊。どうですか、あるでしょう。違うなら違うと言ってごらんなさい。
  182. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 計算はいたしておりませんので、どうとも申し上げられません。
  183. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは伺います。先ほど小坂さんが一々遺留資料を照合したと言うのは、伊藤さん、それは照合したのですね。
  184. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 輸入関係の契約別ファイルを一々見まして、そのうちで援助物資と考えられるものについて受領証の数字を集計したわけでございます。
  185. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは、一々でなくて、スポット・チェックでしょう。どうですか。
  186. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 一々チェックをいたしております。
  187. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その部分に関しては一々ですね。
  188. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 輸入物資については一々チェックであります。
  189. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この十五万冊は全部お互いにつながった関係にある。従って、これらを全部関連して調べない限りにおいては正確な数字がつかめないはずだ。そう思いませんか。あなたが先ほど言われたのに、大体においてとかなんとかいうのは、それは正確なつかみ方がないからです。それではこの点はあとに留保いたしておきますが、伊藤さん、この資料は今どこにありますか。ほんとうにあるのですか。
  190. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 二十四年の三月以前に輸入分について一々チェックをしたわけでございます。今の司令部の遺留資料は通産省の倉庫に保管してあります。
  191. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その通産省の倉庫はどこですか。
  192. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 通省の中であります。
  193. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そんなことはないはずだ。それはあなた、通産省の倉庫というのは、通産省の中といえば、通産省の事務所もあれば、あっちこっちにあっても、それも中と言えるだろうが、新橋の通産省の倉庫でしょう。どうですか。
  194. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 虎ノ門の通産本省の中にある倉庫であります。
  195. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、それを一々中をお調べになったというのは、われわれが委員会としてそれを見せていただきたいとい場合に、倉庫は見せていただけますか。
  196. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 私がいいとかなんとかいう問題ではございませんで、国会のおきめになることと考えます。
  197. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは倉庫の中におありになるのならば、われわれが希望すれば見せていただけると思うのだが、今まであまり見せておらないらしい。書類は全部そろっていて、そういう自信の上でこういう点お話しになっているのですね。私、関連ですから、これ以上言いませんが……。
  198. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 通産省の倉庫の中にある書類をチェックしたものでございます。従来見せてないとおっしゃいますけれども、書類の保存庫でございますので、どういう書類でも一般に見せるというようなことはいたしておりません。特にこの書類だけ別扱いをしておるという筋のものでは、ございません。
  199. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私、関連ですからこれで終りますが、留保いたしますけれども、伊藤さんの言われた、このような広さの中に一ぱいですか三分の一ですかあると言う。それで、私は約十五万だというのだが、あなたは管理しておって全然数を知らないというのは、管理簿か整理簿か何かないのですか。あなたの方では、通産省というのは、品物を受け入れても受け入れ簿も何にもないのですか。受け入れ簿もなくてただもらってきたわけですか。中で途中で落ちてもいいわけですか。ここら辺はどうなんですか。冊数ぐらいあなたわからないというのでは、通産省もいかにもだらしないじゃありませんか。遺留資料か何か知らないが、一体何万冊ぐらいあるということぐらい、あなた御答弁になれないのですか。あなたが知らなかったら、私言ってもいいけれども、あなた、やめているけれども平岡さんに聞いてごらんなさいよ。どうです。
  200. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 先ほど来申し上げましたように、二十四年の三月以前の輸入関係について調べております。それ以外の輸出等については、私自身はそう見ておりませんので、そういう見当はついておりませんが、契約別ファイルは相当数ございます。ただ、倉庫は、このように天井は高くありませんので、先ほど申しましたのは、床面積で大体四分の一か三分の一ぐらいというふうな感じで申し上げたわけでございます。
  201. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、もうこれで留保いたします。しかし、あなたがそういうふうにお話しになっているのなら、GHQからよこした資料がだいぶ散逸して、これだけしかなくなったものだと私は判断するかもしれない。初めは十五万冊あったのだが、今三万冊しかない、なくなったのだ、その三万冊によって照合して、そしてこれは正確なものでございますと言っているかもしれない。だって、通産省というのは書類を受け取った受け簿というのがあるはずだ。これは何万冊ありますというものがはっきりして、それが証拠書類ですから、これだけの数字が出ました、こういうことにならなければならないはずだ。ところが、あなたは、この建物の大体三分の一くらいある、こういうことで、受け簿はないかあるのか知らないが、部数はわかりませんと言う。私の質問する方から聞いているのだ。十五万冊あるのだ。あなた違うというのなら、たとえば三万冊しかないのだ、こうあなたがおっしゃるなら、そう言ったらいいじゃないか。それは受け簿にはっきり出ているはずだから、三万冊しかないのだとたとえばあなたがおっしゃっても、私は、GHQから受け取ったのは十五万あって、現在あるのが三万で、その三万を証拠にして資料を出しても、この数字はでたらめだとしか言わざるを得ないじゃありませんか。数がはっきりしない場合においては、そういうあなたの資料というものはいいかげんだと言わざるを得ないじゃありませんか。はっきりしているじゃありませんか。私は、こういう点から言って、あなたが答弁をあいまいにされる限りこの点は留保しておきます。この次また質問しますから、それまでに数を何ぼだか調べていらっしゃいよ。その天井まで上がって、すすだらけになって、何ぼあるか勘定したらわかる。調べていらっしゃい。
  202. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 先ほど来申し上げましたように、二十四年の三月以前の輸入関係の契約別ファイルは、大体二千件程度と承知しております。それ以外の輸出関係その他につきましては、後ほど調査をしてお答えいたします。
  203. 戸叶里子

    戸叶委員 私はもう少しスキャッピンの問題を続けていきたいと思いますが、この一九四六年、昭和二十一年の四月十一日のスキャッピン九六〇Aというのがございますが、それには輸入食糧の貯蔵と配給の記録の保存についてというのがございます。その中に書いてある文句を見ますと、——外務省はそれをお持ちですか。おありになりますか、ないですか。四月の十一日、九六〇のAです。ではこちらで読み上げます。それには、授権された、オーソライズドという言葉が使ってあります。オーソライズド・ディストリビューションという言葉が書いてあります。授権された配給の記録、すなわち日本が認可されて配給の記録をつけるときには、食糧の量とか、種類とか、配給を受けた人の数とか、配給された地方とかを記しておくようにしろという命令の文句がございます。この中で注目すべきは、このオーソライズド・ディストリビューション、授権された配給ということでございますけれども、この文句によって権利はすっかり日本に与えられているわけです。一般的な意味では、買ったものを分配するというようなときには、決してこういう言葉は使わないと思います。買ったものなら、こういうふうな授権された配給というようなことは使わないはずだと思うのですけれども、この点、総理大臣はいかがお考えになりますか。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、当時、申し上げておりますように、オーソライズドしたから、これはもらったものだというわけにもいかぬと思います。専門的の用語でございますから、条約局長その他からお答えいたさせます。
  205. 中川融

    中川政府委員 今おあげになりましたスキャッピンは、かつて私読んだことがございますが、今手元に持っておりませんが、要するに、その当時は非常な厳重な配給制度のもとにあったわけでございます。終戦になりまして進駐軍が来ますと、まず第一にいたしましたことの一つとして厳重な配給制度を実施せよという。日本の食糧は非常に不足でございますから、なお日本は食糧の輸入を非常に懇請したわけでございます。にもかかわらず、輸入は思うようにいかない、厳重な食糧管理をすることがまずである、これはもう何回もそういうスキャッピンが出ております。そういう関係で、日本自体の食糧の配給機構が、実は司令部の非常に強い要請でできておる食糧配給機構であったわけであります。オーソライズド・ディストリビューション・システムというのは、まさしく日本の食糧管理の機構、この機構で配給せよ、これも輸入食糧であるから、その機構に乗せて配給せよ、こういう意味の指令であるわけでございまして、当時の事情を考えれば、むしろ当然の要請であると考えます。
  206. 戸叶里子

    戸叶委員 総理大臣、ちょっとおかしくないですか。もしもアメリカから買ったものであるなら、そういうふうなきびしい制限をつけられるということはないと思うのです。ところが、これは、こういうふうに配給して、こうしろああしろというような制限をつけられて、そうして、なおかつ、これは買ったものだからお払いいたしますなんて、そんなばかげたことがありますか。普通の商売の常識から言っても、そういうことはないでしょうね。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 戦後におきまする日本の食糧事情から申しまして、配給が非常に問題でございますので、占領政策上言っておることでございます。従って、それによって債権債務の問題は関係はないと思います。
  208. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、次にもう一つ伺います。  これは、外務省は今お手持ちでないと思います。私は図書館で一生懸命になってほこりの中で探してきた問題ですから、あとからごらんになっていただきたいと思います。一九四六年の四月十三日のスキャッピン九九〇のAというのがございますが、その中には、一般市民の食糧輸入の放出というのがあります。それには四十三万六千五百ポンドのコラプト・コーンということが書いてあります。コラプト・コーンというのは、どういうふうに訳したらいいかわらりませんけれども、コラプト・コーンというのが日本に来たわけです。それを読んで参りますと、ここにシビリアン・リリーフ・インポートということが書いてあります。それは救済輸入ということが書いてあるわけです。輸入というのは、必ずしも有償の売買の場合にだけ使われるとは限らないのであって、それは物品が日本に入るとか出るとかいうような技術的なものを輸出、輸入と言うのだと思います。そこで、リリーフ、救済という言葉は、一般的には有償的な意味には用いておりません。ここでは救済輸入ということを、使っているのですが、もしこれが有償売買という特殊な意味で理解されるとするならば、米国の救済というものは、形は大へん美しいけれども、実体は、他国の苦しい状態を利用してお金をもうけることというふうにとられても仕方がないじゃないかと思うのですけれども、この点は総理大臣いかがでございますか。
  209. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうふうにおとりになるのが常識的かどうか、日本人の大部分はそういうふうにとりません。援助物資だからといって、これはただでもらったというわけにいかぬ。リリーフというのも、そういう意味に使われる場合もあるのであります。
  210. 戸叶里子

    戸叶委員 リリーフ・インポートですよ。普通のインポートならいいですけれども、救済のための輸入というのですよ。救済輸入というのに、これはお金を払いますといって、こちらから払うのはおかしいとお思いになりませんか。
  211. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう場合もありますから、先般来言っておるように、返済を要する場合もあるし、また贈与の場合もあると言っておるのであります。
  212. 戸叶里子

    戸叶委員 返済、贈与の問題につきましては、私あとから問題にしますけれども、さらに、このスキャッピンによりますと、先ほどと同じように、保管とか処分とか一々連合軍に連絡しなければならないということがはっきり書いてあるわけでございます。売買という取引から来るならば、いかに占領下であっても、当然日本が買ったものに対して、保管とか処分とか一々監督を受けなくてもよかったのじゃないか。そういうのは私は売買というものじゃないと思うのです。一々監督をされて、そうして保管まで気をつけろと言われて、それでなおかつこれはお返ししますというようなことを言うのは、これは私は売買ではないというふうに考えますけれども、これは総理と意見が違いますから、それはあとに譲るにいたしましても、さらに、そのスキャッピンの二項を読んでみますと、この四十三万六千五百ポンドのうち、約十八万千六百ポンドがスポイルをしていると書いてあります。私は、アメリカは非常に正直だと思うのです。これは腐っているぞということが書いてあるのです。そして、直ちに配給されなければならない、——ここにはちゃんとシュッドという字が使ってあるのです。だから、私は言ったのです。シュッド・ビー・ディストリビューテッド・イミーディトリと言っているのですよ。これはすぐに配給されなければならぬ、腐っているのだということを注意してきているのです。しかしながら、この穀物は注意深く日本政府によってよく検査されて、人間が消費すなわち食べても大丈夫かどうかを確かめて、そしてどうでも処分しなさいということが書いてあるわけです。しかも、その残りの穀物は盗まれないようにして、危険にさらさないようにして保管をしなさい、危険にさらさないようにして保管をしなさいというときにはウイルなんです。だけれども、これは急いで処分しなければならないぞという大事なときにはシュッドという字が使ってあるわけです。ですから、私は先ほどウイルという字とシャルという字の義務関係を言ったわけです。こういうふうに、はっきり、腐っているものだけれども気をつけて食べなさいと言っているわけです。いかに占領下といえども、アメリカ自身がスポイルしているから人間の食糧として使えるかどうかよく注意しなさいと言っているものを買う人が一体どこにいるのですか。この点を伺いたいと思います。
  213. 池田勇人

    池田国務大臣 リリーフという言葉救済物資とか、援助物資とか、ガリオアのRというのはリリーフなんです。だから、これは、私が言っているように、買ったものだとは私は言っていないのです。援助物資として来たものです。しかし、国民には売りました。しかして、今のような特殊な場合に、これは腐りかけているから早く配給しろということは、それは根本の債権債務とは違う。配給あるいはそのものの処理の問題でございますから、これは観念的に分けて考えるべきだと思います。
  214. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃないですね。今の問題で私が伺ったことに対して答弁していらっしゃらない。アメリカが正直に、これはスポイルしているのだから、人間に食べられるか食べられないかよく調べて、そしてこれをお使いなさいと言っているわけなんです。アメリカでさえもスポイルしているというふうに認めて、そして輸入してきた食糧というものを、お金を出して買う人が一体どこにおりますかということを私は伺っておるわけです。
  215. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まずそのシュッドという字ですが、これはマストをシュッドとよく使うわけです。これはおっしゃる通り、スポイルは必ずしも全部腐っておるというわけじゃなくて、損壊しているからスポイルしているという、こういうことです。しかし、その悪かったものは引いてもらっておるはずだと思います。全体でごらんになっても、さっき言っておるように、四分の三はただにしておるわけなんです。それから、ウイルと書いてあったから、これは全然どうでもいいのだというのじゃなくて、たとえばミセス・トカノ・ウイル・ビー・リッチと言えば、戸叶さんが金持ちになられるでしょうじゃなくて、やはりそこになられることを望んでおるという気持が入っているわけです。それは明瞭なことだと思います。
  216. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣は大へんに英語がよくおできになるそうでございますけれども、そういう文法はおそらく通らないということを、私はここで申し上げておきたいと思います。  そこで、今の問題ですけれども、スポイルしたものは払っておらないということですけれども、そうですか、総理大臣、もちろんそういうものはお払いにならないのでしょうね。
  217. 池田勇人

    池田国務大臣 たくさんの品物でございますから、スポイルしそうなものもあり、またしているものもありましょう。しかし、これは国民に売っていないかもわかりません。その個々の問題についてどうこういうことはございませんが、私は来たものが全部売れたとは思っておりません。モルモットなんかでも死んだのもございますし、いろいろなものがあることを知っております。そこで、向こうは十九億何千万ドル、こう言っておるし、こっちは、十七億九千五百万ドル、こういうふうに調べまして、こっちの数字を使って、しかもそれが三分の一か四分の一近くになっておるのでございますから、腐ったものが少し来たからといって、それを全部払うのじゃない。三分の一、四分の一払うのですから、そういうことによってガリオアの精神をスポイルすることは、これこそよくございません。
  218. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、私はお伺いしたいのですけれども、政府がこれまでの答弁で、タームス・オブ・ペイメント・アンド・アカウンティング・ウイル・ビー・デサイデッド・レーターという言葉があるから支払いになるのだということをたびたびおっしゃっておるのです。ところが、こういうスポイルしたものは払わないというのならわかります。しかし、そのあとに、支払い条件はあとできめると書いてあるのです。それじゃ一体どういうことになるのですか。こういうものだって、支払の条件をあとできめるということになれば、その言葉というものは当てにならないじゃないですか。支払いの条件はあとできめるのだぞということがちゃんと書いてあるのですよ。そうだとすれば、その言葉でもって支払わなければならないということにならないじゃないですか。
  219. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、二十億ドル近いもので、これをガリオアとして、——全体はガリオア、プレガリオアといったようなものでございますが、全体として払ってもらうのだが、そういうふうなものがありますから、支払いの条件あるいは計算は追ってきめる。これがあることは、品質の変化等もありますから、全部が全部国民に売れたものでもございません。そういうことから、支払いの条件及び計算はあとからきめるというのでございます。だから、筋道が通っておるじゃありませんか。
  220. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそうじゃないと思うのです。もしもこういうふうにスポイルしたものがあるのだったならば、これを気をつけて配給しなさいということが書いてあるのですから、そのあとの支払い条件くらいは、あとできめるということはなくしてもらったら、まだ政府の言う支払い条件はあとできめるということがあるからこれは債務だというふうな理屈が通ると思うのです。ところが、これにもなおかつそういうものがあるということは、結局、どれにでもそういうことが書いてある、こういうものでさえ書いてあるのだから、その支払い条件できめるということによって債務になるというようなことの証拠には私は絶対にならないというふうに考えるわけです。
  221. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ですから、なるのでございます。そういう条件はあとできめる、条件が悪ければ安くきまるわけで、悪い分だけ支払い条件が悪くなる、こういうわけでございます。
  222. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしたら、スポイルしたのもお払いになったのですか。払う対象にされたのですか。引いたのですか。
  223. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 要するに、全体の四分の三は払わないわけです。ですから、払わない部分に入っておると思います。
  224. 戸叶里子

    戸叶委員 払わない分に入っているというのは想像でしょう。はっきりしているわけじゃないのですね。大体そんなものもあるだろうからくらいでもって引いたわけですね。そうすると、今までの論議から見ても、これだけのものが債務であるということを決定した証拠というのは至って薄弱で、大体このくらいだろうということで払ったということにしか私はとれないのではないかと思うわけです。
  225. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、そういうものもありますから条件をあとからきめる、こうなっておるのです。もしあなたのを逆に言うと、そういうものがあるから、そういうものを引いたらあと全部払わなければならない、これは大へんです。こういう悪いものがあるから条件はあとできめよう、こういうことになる。悪いものは払わないということになれば、逆に言えば、いいものは全部払わなければならない。こういうふうに解釈することは、私は国のためにとりません。
  226. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことを言っておるわけじゃない。ほかのいろいろな条件があるので、そのことだけでそういうことに言われるのは少しおかしいと思う。  しかし、私は、総理大臣がそうおっしゃるので先に進めますけれども、戦後司令部が図書館に残していったスキャッピンのとじ込みがあるわけです。それは全部ではないと思う。それを全部勘定しますと、わずか六百七十二通、第何号というのがあるわけですが、しかし、その中からは、アドミニストレーション関係は全部抜いておりますとちゃんと書いてあります。それは何を意味するかというと、結局司令部も、日本の行政面にこんなに干渉したということをあとから言われないために、行政関係のものは全部抜いてしまったのではないかと思う。そうしてごく大したことのないような、だれがどこから帰ってきたとか、それからまた、だれがどこへどういうふうにしたとかいうような、ごくつまらないことだけしか書いてないスキャッピンだけをとじ込んで残していったわけです。その表紙に書いてあることは、この中から行政面のことは全部抜くぞということをはっきり断わって書いてある。しかも、ほかの行政面のスキャッピンというものは、一月に何枚も何枚も来ております。それが調べても調べても調べ切れないほどたくさんあるわけでございますから、そのことを考えてみますと、占領軍の指令書というものは、占領中は至上命令であったかもしれない。しかし、占領が済めば、もうそれに縛られる必要がないのではないか、そう考えるわけです。今日なお、その資料をもって、こういうものがあるから日本債務と心得えるのだというのは、いつまでたっても、独立国としての誇りを持っておるという態度ではなくて、むしろ占領当時と同じ精神でアメリカに従属しておると言われても仕方がないのではないか、私はこう考えるわけでございますが、これはどうでございますか。
  227. 池田勇人

    池田国務大臣 スキャッピンは、もう独立したからなくなりましたが、スキャッピンから出たこちらの法律は残っておるのであります。お話の点がはっきりいたしませんが、今の一般行政に対しまするスキャッピンは、今度のガリオア・エロアには関係がございません。占領中のものにつきまして、いつまでもそういう一般行政の分まで残すことが好ましくないというのは向こうに持っていっておるし、問題は、ガリオア・エロアについての資料がどうか。あなた方が非常に少なくなっておるとおっしゃれば、少なくなっておるかおらぬか、とにかくわれわれが調べた公正な分が十七億九千五百万ドルある。向こうは十九億でもっと多い。日本で言うのは十七億何千万ドル、向こうは十九億何ぼだから、つき合わせてやったら、外務大臣が言うようもっと多くなるかもしれないが、向こうはそういうことはしない。日本へ残った資料で精査した分の数字によろう、こう言っておるのでありますから、一般行政のスキャッピンなど問題にならぬと思いますが、今資料なんかと言っておられますが、あるとかないとかいうのは、あるだけの資料をやって、その資料だけで十七億と出したのです。これは日本に有利じゃございませんか。私はそれで言っておるのです。スキャッピンにおいて貸すとかなんとか、問題にならぬと思います。
  228. 戸叶里子

    戸叶委員 私が申し上げておりますのは、そういうことじゃないのです。ガリオア・エロアのスキャッピンももちろんございますけれども、たくさんのスキャッピンが来たわけです。けれども、大して行政関係に影響のないような、そしてまた日本のいろいろな面に口出しをしたと思われるようなスキャッピンというものは全然抜いてしまって、そうでないものだけを残していった。こういう点から見ても、私の調べたスキャッピンは、日本に残していったコピー、——残していったというよりも、日本の役所に来たコピーがとじてあるのを調べ出したわけなんです。ですから、そういうものから見ても、アメリカでさえも、占領政策というものに対して、いつまでも口出しをしていたということが歴史に残るということではいやだから、いろいろな行政面のものはそっくり抜いていったのじゃないか。日本だけが、そういうふうな行政面のアメリカのスキャッピンというものを至上命令であるとして、今でもなおこういうものがあるから債務だと言うのはおかしいじゃないかということを私は言っている。たとえば、スキャッピンでレッド・パージになった人がおります。レッド・パージになった人でも、この占領政策が終わってしまえば、スキャッピンでレッド・パージになったって、これが無罪になっている人がたくさんいるのです。そういうふうに、スキャッピンでいろいろ命令されても、それが終われば、そのあとになればその反対になった場合があるわけです。だから、今なおスキャッピンというものを至上命令と考えて、ここにこうあるから支払わなければならないという議論はおかしいじゃないかと私は言っているわけです。
  229. 池田勇人

    池田国務大臣 スキャッピンによりまして、われわれはあの窮乏から助けられたのであります。しかも、その窮乏から助けられて、そうして、そのものも代価がまだ残っておるのであります。スキャッピンが無効になったからこれを無効にしろというようなことは、私は国際人としては言えません。
  230. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆるスキャッピンは、占領中における占領軍当局の命令でございます。日本にとって至上命令だったわけでございます。しかし、スキャッピン自身の効力は、もちろん占領が終わればなくなります。しかし、占領中においてそのスキャッピンによってできた法律関係、これは占領が終わったから当然なくなるというものでは、ございません。これは法律関係の常識でございまして、そのことによってできた法律関係でも、占領軍当局それ自身の存在と密接に関係しているというようなものについては、そういう特別の事情から効力がなくなるものもございますけれども、たとえばこのガリオア・エロアみたいに、一応渡す、あとから勘定はしようという債務性の問題につきましては、占領がなくなっても、当然にそれで帳消しになる、そういうものではないと思います。これは法律関係の常識だと思います。
  231. 戸叶里子

    戸叶委員 わかりません。スキャッピンによって残された法律関係というものは残っているはずだ、こういうふうにおっしゃったのです。それでは、ガリオア債務性という法律関係というものが残っておりますか。残っていなければスキャッピンが無効じゃありませんか。
  232. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに、あれを日本が受け取ったことについては、勘定はあとでするという問題の法律関係は残っておるわけです。これはすぐ債務とは言っていないわけで、債務と心得るという趣旨で言っているわけであります。結局、その支払いの条件あるいは計算は追ってする、そういう関係は、これは占領がなくなったからといって、日本がものを受け取ったことは事実でございますから、その事実につきまとった法律関係がすぐなくなるというものではないと思います。
  233. 戸叶里子

    戸叶委員 支払いはあとでするという法律が残っておりますか。残っていないでしょう。ただそういう言葉だけでしょう。だから私が言っているのです。スキャッピンというものを、今なおその言葉を至上命令としているのはおかしいじゃないか。スキャッピンできめられたことが占領後に反対になった場合もあるじゃないか。それを今なおスキャッピンだけを至上命令にしているのはおかしいじゃないか。それを、今林法制局長官は、スキャッピンによってできた法律関係は有効だと言う。もちろんそうかもしれません、それでは、ガリオア・エロア債務であるという法律はありますかと言ったら、そういうものはなくて、支払いはあとできめる、これではわからないじゃないですか。
  234. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる成文法のような意味法律と申したわけじゃないので、結局その当時援助物資を受けたという事実は厳然としてあるわけでございます。別に占領が終わったから返したというものじゃないわけでございます。従って、その受け取ったことに一緒に付随して起こっている法律関係、これは、占領がなくなっても、あるいはスキャッピンの効力がなくなっても残る。これは法律関係の常識でございまして、要するに、たとえば占領中に占領軍の指令によってある人が職を失った、免職になった、それが占領が終わったら当然復職するかというと、これは別問題でございまして、それを復職させるのには別の行政処分が必要であったわけであります。そういうわけで、占領中にやった行為が、占領のもとになるスキャッピンがなくなった、あるいは占領という事実がなくなったということによって当然無効になるというものではこれはない。そういうのが法律関係の常識だと思います。
  235. 戸叶里子

    戸叶委員 今の法制局長官言葉は、私はどうも納得できません。それでは、スキャッピンによってレッド・パージならレッド・パージになった人が解除されたというふうなことは、一体どういうことになりますか。そのときで終わっているわけでしょう。
  236. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、そのいわゆるレッド・パージによって免職されたという事実はあくまで残っております。それをあとで復職さすかどうかというのは、また別の方の処分でやっております。その免職されたという事実は、占領が終わったからといって当然にはなくなっておりません。
  237. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、今の御答弁を聞きまして、非常に卑屈な考え方だと思うのです。占領時代にこういうことがきめられたのだから、それは私たちはいつまでも踏襲しているんだというような考えは、私はぜひやめていただきたいと思います。  次の問題に入っていきたいのですが、非常に大きな問題になってきますので、私、あと五分しかないそうですからやめますけれども、一問だけ伺っておきたいのです。それは、最近ある人が、一九五四年七月初版発行の時事用語小辞典というものを引いてみましたそうです。そうすると、ガリオアとは、政府説明しているように、初めの方は全く同じで、カヴァメント・アプロプリエーション・フォア・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアというものの訳である、そして、占領地救済資金のことである、アメリカ占領地援助資金のうち、食糧品、医療、肥料のように、占領地の住民の生活に直接必要な物資の供与に充てられた部分は、初めは援助として贈与されたものと見られていたが、最近になってわが国債務となっていることが判明した、結局、われわれ日本国民は、例の腐ったカン詰や飼育用のトウモロコシをありがたく高く買ったことになる、こういうふうに字引が説明しているのだそうです。そして、私は、これはほんとうですかと言ってある青年から聞かれたのです。こういうものに対して、一体池田総理大臣はどうお考えになりますか。この字引を訂正おさせになりますか。
  238. 池田勇人

    池田国務大臣 こまかいことは事務当局からお答えいたしますが、一九五四年と申しますと、昭和二十九年、そのころにそんなことを言う人は、よほど外交関係や国内法を知らぬ人でありまして、これは世間を誤らすものだと思います。
  239. 戸叶里子

    戸叶委員 取り消させますか。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、政府関係でございませんから、そういう間違ったことに対しまして一々政府がどうこう言うことは、これはよくないと思います。
  241. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、あとの質問は明日したいと思います。
  242. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいまの時事辞典でございますか、私もまだ読んでおりません。しかしながら、一例をあげましても間違っている点はございます。ガリオアというのは、カヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズです。私もずいぶん調べてみました。アメリカ軍事予算法には、ちゃんとガヴァメント・アンド・レリーフと書いてございます。そういう一例をあげましても、巷間書いてあるそういったもの、ある雑誌等には、事実を十分御承知でなくて、誤まったといいますか、実は真相に違うようなことが書いてあるものもたくさんございますし、それについて一々われわれがこれをどうこうということもいたしかねる次第でございます。
  243. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 関連。  今、安藤さんは、ガリオアは略で、もとはガヴァメント・アンド、レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズだと言われました。ところが、日本政府の発表する正式の機関誌によって、ガヴァメント・アカウント・フォア・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズ、こうなっているのもあります。これは大蔵省です。これは池田さんの元の巣です。それから、先ほどどなたか言われた、これは安藤さんじゃなかったかな、総理かもしれぬ。ガヴァメント・アプロプリエーション・フォア・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズ、この言葉を使っているのもあります。総理じゃなかったかもしれない。これは外務省が出しているその当時の資料にあります。これは一体どれがほんとうなのか、この点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  244. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ガヴァメント・アンド・レリーフが正しいのです。先ほど加藤さんの御質問でしたかに答えました十一項目のうちの十項目までがガヴァメントなんだということです。
  245. 森下國雄

    森下委員長 総理はお約束の時間ですから御退席願います。
  246. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 小坂さんがガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズだとおっしゃるなら、外務省の発表いたしましたガヴァメント・アプロプリエーションの場合は間違い、それから、大蔵省の出した「国の予算」の「昭和二十六年度」の四百二十ページ、ここにあるガヴァメント・アカウント・フォア・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズ、これも間違い、そういうことに確認してもよろしゅうございますか。
  247. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども御説明いたしました通りアメリカ軍事予算法、これがもとでございますが、それには、はっきりと、ガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズとなっておりますので、これが正確な表現でございます。
  248. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、私の言っているのは、アメリカがどう言おうと、日本でどうだというのです。アメリカがこうだから、日本もこうだと言われたのじゃ困る。だから、前の外務省と大蔵省のは間違いである、そう御訂正になるということですか。外務省の場合は訂正されますね。
  249. 安藤吉光

    安藤政府委員 そもそも、いわゆる援助物資というものは、米国軍事予算法でできてきたものでございます。その軍事予算法の中に、先ほども申しました通り、ガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズというのがございまして御承知の通り、この頭文字を重ねてガリオアとやっておるわけでございますが、それが正確だと言わざるを得ないのでございます。これは日本で作った字じゃございませんで、アメリカ軍事予算法のこの項目から出てきた字でございますので、どういう書物でございますか、正確には、ただいま私が申しましたのが……。
  250. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 前の間違いですか。
  251. 安藤吉光

    安藤政府委員 間違いというか、正確な表現は、ガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズというのが、これが基本である、いわゆる軍事予算法に基づいた正確な表現である、そういうふうに御承知願いたいと思います。
  252. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 安藤さん、それでは、ガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズというなら、これは占領地救済費、——ガヴァメントというのは何ですか。
  253. 安藤吉光

    安藤政府委員 行政と訳しますか、正確に申しますならば、けさほどのやはりこの委員会におきまする御質問に、私ガリオアの項目が一九四七年の軍事予算法に出ておるというお話を申し上げましたときに、そのうちの一から十までの項目は、これは行政費的なものでございます。おそらくこれをさしているのじゃないかと承知いたしております。
  254. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、あなたのおっしゃるのは、ガヴァメント・アンド・レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズ、この中で、今度払うといっているのは、レリーフ・イン・オキュパイド・エリアズ、この関係を払うのであって、ガヴァメントの関係は払わないのだ、こういうように解釈してもいいのですか。
  255. 安藤吉光

    安藤政府委員 けさほども御説明いたしましたように、日本に現実に参りました援助物資、すなわち、先ほど申しました一九四七年の軍事予算法のガリオア項目の中の第十一項目に当たるものが今度の処理の対象になっておるわけでございます。けさほども申しました通りガリオアに付随しました、もっと詳しく申しますならば、米国軍事予算法の中のガリオア項目にあります一から十までのものは、これはアメリカの行政費でございます。私の承知いたしておりますところでは、これは八千九百万ドルございまして、それは今度の援助総額の中にももちろん入っておりませんし、また、今度の処理の対象にもなっておりません。
  256. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、あなたの御答弁によると、その一から十までは、あなたの観念というか、あなたの答弁では、これはすべて行政費である、それ以外にはないということですね。(「アメリカ政府のものだ」と呼ぶ者あり)もちろん、アメリカ法律だもの。日本の行政費ではない。行政費だけを意味するのですね。それならそれでいい。そう御答弁して下さい。
  257. 安藤吉光

    安藤政府委員 けさほど申し上げました通り軍事予算法には、ガリオア項目がございまして、その細分に十一ございます。それで、今度の処理の対象になりましたのが、十一番目のいわゆる援助物資のことでございます。従いまして、その以外のものはいわゆる行政費的なものでございます。これは、今度のつけにも来ておりませんし、決算ベースの援助総額の中にももちろん入っておりません。これは総計八千九百万ドルと承知しております。これは全然初めからこの対象にはなっておりません。
  258. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私はこれは留保します。あなたが行政費だ行政費だけだとおっしゃるなら、それならそれでいいですよ。私は別な意見がありますから。しかし、これは留保いたします。  最後に、私、資料の要求をいたします。委員長を通じて資料の提出を願いたいのですが、先ほどから安藤アメリカ局長並びに通産省の伊藤次長が再三答弁されておりますが、輸入関係のスキャッピンはすべて調べましたと、かように御答弁になっております。そうすると、輸入関係のスキャッピンはお調べになったのなら、そのスキャッピンの数は何枚あるか、その枚数くらいはおわかりになるだろうと思うのですが、その枚数もわからないようでは、一体何を調べたんだと私は言いたい。この資料は何枚あるか。その文書を出せと言っているんじゃないのですよ。何枚あるかということくらいお出しになれると思うのですが、お出しになるのでしょうね。答弁願いたい。枚数をお出し下さい。お出しになるでしょう。
  259. 安藤吉光

    安藤政府委員 今の御要求は、おそらくはガリオアに関する輸入のスキャッピンだと承知してよろしゅうございますか。
  260. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それはガリオア・エロアです。
  261. 安藤吉光

    安藤政府委員 それは、先ほども申し上げましたが、プレガリオアについては、ケース・バイ・ケースにだいぶ来ております。そのパターンのものを差し上げました。(戸叶委員二枚しかもらっておりません」と呼ぶ)全部刷るのも大へんでございますけれども。それから、ガリオアに関しては、代表的な総括的な最初のものが少し出ております。QMもシムも出ております。
  262. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 安藤さん、ちょっと勘違いしておるのです。ちょっともう一度説明しますから。安藤さん、いいですか、ガリオアの対米債務の今度協定がありますね。今度の協定、今出ておるこの協定関係して、スキャッピンに基づいて数字が出ておるわけでしょう。そうですね。そうじゃないのですか。スキャッピンに基づいて出ていないというなら話にならない。出ているのでしょう。だから、そのスキャッピンが、たとえばガリオアもあるし、エロアもあるし、プレガリオアもあるし、その文書それ自体を私は出してくれと言っているのじゃないのですよ。プレガリオアは何枚であるか、ガリオアは何枚であるか、エロアは何枚であるか、QM、シムその他の関係があれば、これは何枚であるか、こういうものを出してくれということです。何枚かという枚数だけでもお出し下さいと言っているのです。それをお出しになれないというのではおかしいですよ。
  263. 伊藤三郎

    ○伊藤説明員 物資の引き取り指令書は、スキャッピンのものもあります。メモランダムのもございますが、枚数はさっそく調べて御報告いたします。  なお、ガリオアエロア区別はいたしておりませんので、ガリオア・エロア一本になっておりますから、そういうことで、枚数を調べてお知らせいたします。
  264. 戸叶里子

    戸叶委員 今の問題で、伊藤次長、プレガリオアも、一体どのくらいあるかということもついでに出しておいていただきたい。
  265. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十一分散会