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木村(公)
委員 私は自由民主党を代表いたしまして若干の
質疑をいたしたいと存じます。
ただいま当
委員会において最も問題になっておりまするガリオア
援助処理協定の問題でありますが、これの結論は、
債務性があるかないかということが結局問題の結論でございます。そこで、これについては
昭和二十一年の七月に覚書が出ておるのでございますが、ちょうどその当時私は
国会に議席を有しておりましたので、それを思い出しながら
外務大臣に
お尋ねをいたしていきたいと思います。
世間並びに野党の諸君が今なお、これが単なるお慈悲でもらったものである、
債務性がないという議論をなさる根拠が私にはわからない。
政府の方でももう少し明確に
債務性があるということの根拠を示して堂々と御答弁をなさることが必要ではなかろうかと私は思うのであります。
私が申し上げるまでもないと思いますが、ちょうどこの年、
昭和二十一年四月十日に選挙がありまして、
外務大臣も当時初めてお出になったのでありますが、私
どもも当時一緒に出てきたのでありますけれ
ども、その七月の二十九日付で
連合国の最高司令部から
日本政府あての覚書が出てきておるのであります。これはいわゆる外務省で申せば指令第一八四四-Aという覚書であります。当時の覚書というのは、後ほど私はポツダム宣言の
内容も申し上げたいと思いますが、この覚書はディレクティヴとわれわれは了解いたしまして、命令だと思っておったのであります。しこうして、最高指令官の覚書というものは、これは負けた
日本としては動かし得ないものであるというふうに理解をいたしておったのでありますが、その覚書によりますと、その4項に、「支払条件及び経理に後日決定される。」、こうあって、署名者は当時の高級副官のジョン・ビー・クーリ大佐であります。しこうしてその
債務性を最も如実に表現しておると思われるのは、1、2、3いずれにもありますが、たとえば1の項を見てみますると、「米国その他の供給地から
日本に到着する穀類、その他の
生活緊要
物資は、将来
日本の消費に充当せられる。」、それから、これを受け取ったところの貨物の品名はできるだけ詳細にこれを司令部の方へ受取書を出せということが書いてある。さらにまた、「損傷、抜荷、せっ盗、その他の損害危険より貨物を保護し、貨物が常時適当な管理下におかれるよう貨物を保管すること。」が
義務づけられておるのであります。さらにまた、「貨物が
連合国最高司令官の放出許可発給前に分配せられることのないよう保証すること。」が
義務づけられておる。そして、本件に関しては、
昭和二十一年四月十一日付
連合国最高司令部発
日本政府あて覚書「輸入
食糧の保管及び分配に関する記録保持の件」というのが出ておる。
このディレクティヴが
政府に出されまして、
政府は
昭和二十一年の九月の末の
国会においてこれを朗読されておるのです。そうして、そのときわれわれは全員これに対して
感謝と同時に
承認をしておる。こんな重大な覚書を持っておりながら、今どきになって
債務性があるとかないとかいうようなことを野党の諸君、
国民の諸君に言わしめておるということは、PRも足りないかもしれませんけれ
ども、
政府の怠慢と言わざるを得ないこれほどはっきりした証拠がある。この証拠があるにもかかわらず、なおかつそのようなばかげたことを野党に言わせておくということは、まことに心外でございます。
しからば、そのディレクティヴの信憑性、ディレクティヴというものがどのように当時力を持っておったかということは、降伏文書を見てみれば明らかでございます。「下名ハ 「ポツダム」宣言ノ條項ヲ誠實ニ履行スルコト竝ニ右宣言ヲ實施スル爲聯合國最高司令官又ハ其ノ他特定ノ聯合國
代表者ガ要求スルコトアルベキ一切ノ命令ヲ發シ且斯ル一切ノ措置ヲ執ルコトヲ天皇、
日本國
政府及其ノ後繼者ノ爲ニ約ス」、「天皇及
日本國
政府ノ國家統治ノ権限ハ本降伏條項ヲ實施スル爲適當ト認ムル措置ヲ執ル聯合國最高司令官ノ制限ノ下ニ置カルルモノトス」とあります。「千九百四十五年九月二日午前九時四分
日本東京灣上ニ於テ署名ス」ということで、重光葵が署名しておる。そうして、当時の「
日本帝國大本營ノ命ニ依り且其ノ名ニ於テ」梅津美治郎大将が署名しておることは御記憶の通りです。重光さんは今おりませんけれ
ども、これはよく知っておる。そうして、それに対して、
連合国最高司令官、合衆国
代表者、中華民国
代表者、連合王国
代表者、ソビエト社会主義共和
国連邦
代表者、オーストラリア連邦
代表者、カナダ、フランス、オランダ、ニュージランド等の
代表者が全部このポツダム宣言に基づく降伏文書というものを認めておるわけです。しからば、この降伏文書というものが最も根幹となって、これに基づいてディレクティヴが出てくるわけです。しこうして、このディレクティヴというものが、小坂大臣が御当選なさった
昭和二十一年の七月二十九日付に
日本政府に来ておる。これをなぜもっとはっきり野党の諸君にも申し上げないのか。こういうようなはっきりした文書がある。返しますと書いてあるじゃないですか。
さらにまた、私は不思議で仕方がないのは、当時われわれは
ガリオア・エロア資金をもって
アメリカに行った。私も内閣
委員長として行った。そのときには社会党の戸叶君もおった。それから山花秀雄君もみんなおる。その金はガリオア資金で行っておるのです。
日本政府から金をもらったのではない。われわれは、将来それを返すべきものだと思うから、堂々と行った。ところが、その後の
交渉において、あの金は返さなくてもよろしいということになって、四分の一に下げられたときにあなた方のお手柄によってそれは削られたから、今は支払い
義務もないかもしれないが、戸叶も行っておるじゃないか。もう一人女の人がおる。何とか自転車屋、これも行っておる。こういう者が行って、山花秀雄君も行っておる。みんな行っておるじゃないか。
ガリオア・エロア資金でもって
アメリカに当時国政調査あるいは行政調査という名目のもとに行っておるじゃないか。たまたまそれは
日本政府の力によって
返済の
義務を免れたからといって、今ごろになって
債務性がないなんということを言うことははなはだわれわれは不可解です。
従って、ここで何べんも何べんもすでにあなた方は同じようなことを繰り返されて言っておられるのでありますけれ
ども、これは大事な点でありますから、この点について、
債務性があるかないかの点について、もう一度われわれに向かって十分明らかにしてもらいたい。
政府の累次の声明によって、
援助は
債務性を有するものであって贈与ではないという根拠は十分明らかにされておるとは考える。しかしながら、私が十分にと言うのは、今私が読み上げました覚書のことです。これは本
協定の基礎をなす最も重要な点ですから、
国民に対して十分意を尽くしてこれを理解せしめる
意味においても、この覚書について、大臣、あなたの口から、確かにこの覚書は
政府が受領した、しこうして
国会もこれを
承認したのだ、満場一致
感謝とともに
承認をしておる、しこうして、覚書の4項には明らかに「支払条件及び経理は後日決定される。」とあり、署名者はジョン・ビー・クーリー大佐である、このことを御答弁いただきたい。確認をしていただきたい。