運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-07 第40回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)    午後零時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 野田 武夫君    理事 北澤 直吉君 理事 福田 篤泰君    理事 古川 丈吉君 理事 松本 俊一君    理事 岡田 春夫君 理事 戸叶 里子君    理事 森島 守人君       安藤  覺君    池田 清志君       宇都宮徳馬君    宇野 宗佑君       浦野 幸男君    大久保武雄君       齋藤 邦吉君    椎熊 三郎君       正示啓次郎君    竹山祐太郎君       床次 徳二君    稻村 隆一君       黒田 寿男君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       松本 七郎君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         内閣官房副長官 服部 安司君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      山本淺太郎君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         外務事務官         (移住局旅券課         長)      志水 志郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月七日  委員愛知揆一君及び西尾末廣君辞任につき、そ  の補欠として浦野幸男君及び受田新吉君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員浦野幸男辞任につき、その補欠として愛  知揆一君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名により理事の私が委員長の職務を行ないます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  3. 帆足計

    帆足委員 事務の都合上質問がおくれまして、まことに御迷惑をかけました。  沖繩施政権返還の問題につきまして、前委員会以来、与党野党ともにそれぞれ誠意をもって政府を鞭撻し、また、問題解決のかぎを明確にいたしますために質問を続けておる次第でありますが、この問題は、沖繩施政返還の道筋においては、碁の打ち方がいろいろありますように、与党野党多少の見解の相違もありますけれども沖繩八十万の同胞要望にこたえてその施政日本返還祖国復帰要望するというその心持と熱意においては、私は与野党思いを同じくするものであろうと思うのでございます。しかるがゆえに、小異を捨てて大同につくというのは東洋の特に日本醇風美俗でありますから、与野党それぞれ誠意を披瀝し合いまして共同決議案を本会議に上程しようという話し合いも進んでおりますことも仄聞いたしておりまして、その節与野党それぞれの立場からまた賛成意思表示があろうと思いますが、その場合には、三党また国会あげての共同意思を確認し、政府を鼓舞激励するという意味決議でございますから、おのずから、それぞれの党派におきましても、その共同趣旨の線に沿うた発言なり賛成演説があることをわれわれは期待しておるわけでございます。しかし、この外務委員会におきましては、問題を率直に明らかにすることがきわめて重要でございますから、時としては、今日の外務大臣のお考えに対してわれわれの不満をありのままさらけ出して申し上げまして、多少はお気持に触れる点もあろうと思いますけれども、それはお許しを願いまして、問題の所在を国民の前に明らかにすること、すなわち、一政府意見よりも、一党派意見よりも、国民利害の方が大切でありますし、また、国民利害を真実に即して語り合わなければほんとうの道を発見することの困難であることは、過去における大東亜戦争のときの失敗のことを考えましてもそうでありまして、時としては時流に逆らっても、時としては政府の逆鱗に触れてでも言うべきことは言わねばならぬ。これが国会の職能であろうと思いますから、そういう見地から本日は御質問したいと思います。従いまして、共同決議案共同決議案として、これは和気あいあいのうちに与党諸君の御良識に期待して成立するようにいたしまして、きょうの論議がそれに何ら支障のないようにという皆さんの御了解を得つつ私は質問いたしたいと思うのでございます。  まず第一に、前回外務大臣質問しておりますが、実は、国連憲章においては、民族自決植民地解放大義はもはや今日の常識になっております。ことさら植民地廃止決議案を出す必要がないほどの常識になっておりますけれども現実には、過去のいきさつもあり、また、植民地民族の中にはまだ十分に民主主義的自治仕事になれていないというような実際問題上の多少の困難もありまして、またそれを口実にして他国民族に対する他の権力からのその意思に反した支配がいろいろな形態で行なわれておりますから、軍事同盟があろうと、友好同盟があろうと、そういう名にかこつけてその住民人権を制限しその自治権を奪うということは、これは親心と言いますけれども、そういう家父長的、封建的親心などは発揮してもらいたくない、何ごとがあろうと、その国の住民人権と自由を尊重して、一国の独立権というものは至上のものとして尊重せねばならぬ、こういう趣旨に基づいて国際連合はいろいろの機会において適切な意思表示をしておるものとわれわれは了承しております。二十年前の国際連盟の時代においては、諸国民が平和のうちに語り合うということは好ましいことであるけれども、それは現実には夢である、ましてや世界連邦のごときは宗教家の抱く夢にすぎないとまで考えられておりましたけれども、戦後の国際連合においては、とにかくそれが一歩前進いたしまして、政治の複雑な現実の問題に対しても国際連合発言というものが次第に大きくなりつつあることは御同慶の至りでございます。私どもが順守せねばならぬ新日本憲法の前文にも、国際連合のその大いなる人類精神に従ってわれわれもその一環として努力を続けようという、戦争の悲惨な経験を味わった直後の誠意ある気持が貫かれておることも皆様とともに了承しておる次第でございます。  そういう次第でありますから、国際連合できめます一国の独立、さまざまな形の植民地的支配形態の排除ということにつきましては、厳密に国際法上においてそれを沖繩に適用するかせぬかということには論議の分かれる点もありましょうけれども、その大いなる精神を尊重しつつ、その心持アメリカ国務省を動かし世論を動かしていく、どこの国の職業軍人も、職業軍人というものは人生の問題には比較的視野狭く愚かなものでありますけれども、その職業軍人諸君にも、強いばかりがさむらいではなくて、今後は論理をもって人類の進路に臨まねばならぬという気持がだんだん浸透してくる、そういう世論の流れの中で沖繩の問題もまたこの世論に照らして雪解けになり解決がしやすくなるという点においては、私は、今次の沖繩立法院決議は、二歩三歩退いて考えても、これはよい決議であり、よい方向である、こう思っておる次第でありますが、政府が反対したのは、技術的問題でまだ研究の余地があるというようなお心持もあるのでありましょうけれども外務大臣沖繩における高等弁務官の現在の独裁政治沖繩住民意思に沿うものであるとお考えになっておられるかどうか。それはやむない国際緊張その他の理由があるということはあっても、やはり、施政権日本返還してもらいたいという沖繩住民意思は正しく、日本政府誠意をもってそれを支持するお気持があるかどうか。重ねてまずこのことを確かめておきたいと思います。外務大臣の御答弁願います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 わが国におきまして、南方におき、また北方において、われわれの領土がいまだわれわれの施政権下にないということについては、私ども国民ひとしく遺憾に思っておるところだと存じます。沖繩におきまして、あるいは小笠原におきましては、終戦直前のあの死闘を繰り返したこともわれわれの記憶に新たなところでありますし、また、北方領土におきましては、われわれがすでに降伏した後において、一方的にこの島々が占拠された、また、その状態が今日に及んでおるということもわれわれの記憶に新たなるところであります。しかしながら、南方におきましては、沖繩においては八十八万の同胞が現におるという点からいろいろな問題が特に御議論になられるわけでありまして、私ども沖繩施政権返還祖国復帰というものは一日も早く実現させなければならないということを強く考えており、また、沖繩住民気持というものもわれわれのよく了解するところでありまして、われわれもこの同胞希望に沿うべく現にできるだけの努力を傾けており、また、今後もしなければならぬと思っておるのでございます。しかしながら、現在の国際情勢下にありまして、今直ちにということが困難な問題もございまして、その辺からまだこれが実現を見ていないのでございますが、実現に至るまでの間できる限りわれわれの同胞福祉が向上せられますよう、昨年の池田ケネディ会談におきましても、沖繩状態日本県並みにしたいということに同意を得まして、今その方向で着々日本側としてもアメリカ側に折衝しておる次第であることは、帆足さんも御承知の通りだと思っておる次第でございます。
  5. 帆足計

    帆足委員 沖繩施政権日本返還せねばならぬというのは、これは民族大義ですから、私はだれ一人反対する人もないと思います。外務大臣がこれに賛成と言われることは当然でありますけれども賛成ならば、実は、言行一致と申しますけれども、実行が伴わなければならぬ。私ども外務大臣答弁から受けた印象は、やむない国際緊張事情とか、また敗戦直後のサンフランシスコ条約を結んだときの事情などを理由にして、何かアメリカ国務省立場から弁解これ努めておるというような感じを抱くのでありまして、弁解アメリカ国務省がわれわれに対してやればいいことであって、日本政府といたしましては、種々の困難な国際情勢があろうとも、施政権返還沖繩における人権の回復については、もううまずたゆまずアメリカと強硬に折衝し、説得に努力しておるというのでなければ、われわれとして納得できないのじゃないかと思うのでございます。あとで詳しく申し上げますが、数日前二回にわたるキャラウェー高等弁務官新聞記者諸兄との談話を見ますと、アメリカ軍政当局においてはまだほとんど何ら反省の色がない。このことについてはあとで申し上げますが、現在いろいろ困難な事情があるといたしましても、現在の高等弁務官独裁政治というものが沖繩住民意思に沿うものであるか、現実に反しておるものであるか、外務大臣はどちらにお考えになりますか。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 沖繩のわれわれの同胞希望というものをできるだけいれるように努力をしておる、こういうことであろうと存じます。現に、われわれもアメリカ側と鋭意折衝いたしまして、御存知のケイセン報告というものも今アメリカ大統領府に提出されまして、先方自治権拡大その他についていろいろと相談中と聞いております。現在よりもさらに明日は進歩し、さらに進歩が続くという段階において沖繩住民福祉が招来されることをわれわれは期待いたしておりまするが、一方においては、われわれ、施政権返還ということについては、あくまでねばり強く、しかも精力的にアメリカ当局と折衝するということは続けていきたいと思います。
  7. 帆足計

    帆足委員 そういたしますと、過去においていろいろ困難な国際事情がありましたが、現在は、施政権日本に戻してもらわねばならぬという確信に外務大臣も立っており、沖繩住民もそれを希望しておる、不幸にしてその意思は現在まだアメリカ当局にいれられず、すなわち、アメリカ当局の現在の独裁方式沖繩住民主びに日本政府両方意思に遺憾ながら現状では反しておるということに、いろいろな事情があろうともなっておる、こういうふうに私どもは理解いたしますが、外務大臣も御同様でございますか。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 反しておるといいますか、住民意思そのままにはなっておらぬということだろうと思います。私は、現在の沖繩の主席その他いろいろな方々とも親交を重ね、また、いろいろお話も承っておりまするが、御承知のように、現在の沖繩の輸出入の状態を見ますると、一億一千万ドルくらいの輸入超過でございます。それだけの輸入超過をまかなっていきまするためにも、沖繩経済をささえる非常にいろいろな手だてが必要であろうと存じます。私どもは、日本としてもやはりその中に入っていって、日本側からしてもできるだけこの沖繩住民福祉のために貢献したい、その貢献していく状態が、施政権返還されるときに非常に円満にわが同胞を迎えられることになる、かように考えておる次第でございます。
  9. 帆足計

    帆足委員 私は外務大臣の御答弁が多少あいまいであることに対して不満でありますが、アメリカ沖繩に対する経済援助特需軍需のおこぼれ等で、資源の貧しい沖繩に多少潤った一面のあることもそれは事実です。しかし、民族大義としては、他国のおこぼれをもらってそれだけで能事終われりとするわけに参らないのでありまして、世に売笑婦が卑しめられるのはそういう心がけがないためだと思うのです。どんな冷暖房つきのアパートに住んでいても売笑婦がなぜ尊敬されないのかといえば、そのためだと思うのです。貧しくても清く正しい生活をし、子供たちの未来に希望のある生活をしたいというのが沖繩国民の望みである。私はキャラウェー弁務官報告を読みまして、ここに重大な問題の幾つかが出ておりますから、あとで御質問いたしますけれども、その文章の大半は、十カ年にわたるアメリカ軍事政権政治自画自賛に終わっている。しかし、前回この委員会でもお取り次ぎいたしましたが、サンフランシスコ条約締結のときに、ダレス・アメリカ代表は、他国恵みを受ける、それを当てにする民族に真の自尊心が生まれるはずがない、どのように恵み深い他国援助であろうとも、それはその民族精神的に必ずしも向上させるものではないと言っている。私は、この言葉はまことに金玉の名言であると思って読みました。従いまして、援助第一義にするのでなくして、その民族独立自尊がまず尊重されまして、互恵平等の関係で友の援助であるならば、友あり遠方より来たるで、これはいいことであります。いかなる経済援助も、いかなる文化的な交流も、その民族独立自尊を尊重した基礎の上に立っての援助であるならば、それはよいことでありますけれども、それがなかったならば、それは奴隷恵みを与えただけのものであって、現に、沖繩住民諸君は、目前の軍需特需の利益は第二としても、沖繩民族としての自尊心と、また子供たちの前途のためにほんとうの復興を考えたいというのが今日の沖繩国民諸兄気持であろうと思うのであります。従いまして、援助のことはあとにしますけれども、その第一義であるところの、沖繩市民日本国民としての自由と人権、その民族的良心の尊重、それらのことについて、現在占領直後さながらの奴隷のような状況になっていることについては、沖繩住民意思がいれられていないと今外務大臣は言いましたけれども、率直に言うならば、沖繩住民意思は全く押えられている、そしてアメリカ軍政がそこで行なわれている、このことは事実であろうと思うのです。外務大臣は、現在沖繩住民基本的意思に反してアメリカ支配形態がなされている、この事実を認められるかと私は質問したわけです。その政策の中に、アメリカが衛生に対する配慮とか、その他道路、交通等に対する配慮とか、その中でとるべきものがあることは事実です。しかし、私は今それを伺っておるのでなくして、とにかく、軍事基地をグラウンドのように貸したところで貸さなかったところで、それと関係なく、沖繩住民が今日奴隷のような状況に置かれている。皆さん承知でしょうが、由美子ちゃん事件というのがありまして、一少女が泥酔したアメリカ兵のために暴行を受けた。しかし、それに対する弾劾権裁判権もわれわれはない。一応名目上は極刑を受けたけれども、二、三年たつと本国へすっと帰って、減刑されてのうのうと暮らしている。先日も歩道の上を歩いておった少女たちがジープでひき殺されてひき逃げされている。犯人の名前すら明らかでない。治外法権である以上、そういうことが行なわれることはやむないことでありましょうけれども、そういうことは間違っている、これが民族大義です。そういうことは、終戦後三年か五年ならばいいけれども、十七年もたってなおそういう形態アメリカとの軍事同盟が行なわれておるならば、何の友好国ぞやとの非難が出ても、皆さん弁解されるのに骨を折られるでしょう。  従って、私は外務大臣に率直に伺いたいのは、沖繩住民願いに反して今キャラウェー独裁政権というものの存在がある、この事実を外務大臣認められるかということを伺っている。あなたはアメリカ国務省から歳費をもらっているわけじゃありませんから、日本外務大臣として一つ率直に御答弁をお願いしたい。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 二月二十八日にキャラウェー高等弁務官記者会見をやったということで、新聞にも報道されておりました。その中に自治権拡大の必要はないという文句がございましたので、私はこれは非常に遺憾なことであると考えまして、事情を調査いたしましたが、そういうことは申しておらないようでございます。また、テキストも取り寄せて全部見ましたし、立ち会った人の話も聞きましたけれども、そういうことは言っておらないのであります。  沖繩民族と言われましたが、私は、日本同胞であると考えております。その見地からいたしまして、沖繩同胞諸君願い現実に達成せられるように私は衷心から希望し、かつ努力を続けておるつもりでございます。しかしながら、その努力過程におきまして、将来を達観して、やはり沖繩におられる同胞が真にしあわせになるようにということを考えるのが日本外務大臣としては当然のことであると私は思っておりまして、その方向で極力努力いたしております。
  11. 帆足計

    帆足委員 私の申し上げましたことに対して大臣答弁されておらない。これは顧みて他を言う。努力をされておるということは、われわれも若干の努力認めておる。しかし、その努力の内容については、今後われわれが不満とするところを申し上げますけれども、今そのことを申し上げておるのではない。  なお、キャラウェー弁務官の声明の原文がすでに手に入っておるということでしたら、これは重大な問題ですから、さっそく外務委員にもそれをぜひお見せ願いたい。これは委員長から要求して下さい。間に合えばこの委員会過程においても配付願いたい。  私がお尋ねしたのは、諸般のいろいろ困難な事情があるし、外務大臣も相当の努力をなされておるでしょうけれども、現段階においてはその努力はまだいろいろな困難な事情のためもあって効を奏せず、今日のアメリカ高等弁務官独裁政治下においては沖繩同胞の悲願は押えつけられておる、その願いは達成されていないという事実をお認めかということ。私がこれを言うのはなぜかというと、外務大臣が答えたくない意味もよくわかるのですが、他国住民意思に反する形態支配、——それはいろいろ事情もありましょう。その善悪を論じておるのじゃない。沖繩住民意思に反する支配形態が現在行なわれておる。しかればこそ、外務大臣は、その支配形態を緩和してくれ、変えてくれといって誠実な交渉をされておるんでしょう。従って、現在のところでは、日本政府並びに日本国民及び沖繩同胞意思に反した政治形態が行なわれておるというこの事実を認められるかどうか、これをお尋ねしておるわけです。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 誠実にということをお認めいただいて、私もはなはだうれしく存じまするが、私もできるだけ努力をしておるつもりでございます。  沖繩住民希望が一歩々々実現しつつあるということを実例をあげて二、三申し上げてみたいと存じまするが、まず国旗の掲揚を私ども認めさせることになりました。(「そんなことはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)あたりまえのことができておらなかったのでございまするが、それをいたさせました。それから、労働者基本権でございますが、労働三法はこれは適用されております。ただ、国家を暴力によって倒そうとするような団体に関係がないということを誓約しなければ軍関係仕事に従事できないという趣旨の法律があったようでございますが、これもすこぶる人権に触るるものがあるということで、このことも交渉いたしまして先方に納得してもらったわけでございます。それから、裁判管轄権の問題はあとからまた御質問があるかと思いまするが、沖繩における同胞関係裁判は現在沖繩裁判所でやっておるわけでございます。それから、なお、厚生その他の施設はだんだんによくはなってきておりますけれども、さらに、三十七年度の予算では、三十六年度の予算の倍以上のものを、わが国予算として十億以上のものを計上いたしまして、大いにこれからわれわれの考え方による厚生福祉の行政をやってもらおう、こういうふうになっております。なお、立法院がございまして、一応の国内関係の立法というものは立法院でやっておるわけでございますが、しかし、拒否権というものがあるわけでございます。これらの点についても、いろいろ実情も聞いてみたりして、われわれは、やはり日米琉の間で日本も入ってこうした沖繩住民要望に沿うような政治経済状況が招来されるようにできるだけ努力して参りたいということで極力いたしておるのでございます。  ただ、現在の状態は、施政権日本に復帰させたいという沖繩同胞要望があるわけでございます。私も、そういうことはけっこうなことだと思って、そのようにしたいと思って努力しているわけでございますが、それがこの時点で達成されないからといって、直ちにそれでは沖繩住民要望を踏みにじった施政が行こなわれておる、従ってこれは国連憲章にいうところの植民地状態である、憲章違反だ、こういうふうになって参りますことは、現在の時点におきまする日本沖繩、またアメリカ関係に対して、このような行き方でこの施政権問題を解決するということは、私としてとらざるところであると思っておるのでございます。自由民主党の与党方々もさようにお考えをいただいております。私は、今の段階においては、それはできる限りわれわれとしては努力をして、この状態の中においても同胞福祉を増進していくという行き方が一方においてとられなければいかぬ、かように思っておる次第でございます。
  13. 帆足計

    帆足委員 大臣の御答弁は、前半は顧みて他を語り、後半は、仮定の事実について、私がまだ質問しないことについて語っておる。私は、植民地解放宣言を今適用するかどうかという技術的なことをお尋ねしておるのではなくて、事実として沖繩住民意思がとにかく、じゅうりんされているという言葉は使わなくても、いれられてない、いれられてない政治形態が行なわれておるという事実を外務大臣はお認めになるかということを聞いている。今、日の丸の国旗が立つようになったとか、そのくらいのことはあたりまえのことで、労働組合の活動の自由といっても、ファッショ国でない以上はあたりまえのことで、そうでなかったらキャラウェー高等弁務官はファシストとして逮捕せねばならぬわけですから、今のチェスター・ボールズ、スチブンソンの国、若いケネディ大統領の国で、そんなことは出先でもなすべきことじゃないでしょう。そんなことはあたりまえのことであって、そういう弁解アメリカ国務省当局の属僚がわれわれに平身低頭してすればいいことで、お国の土地をお借りしておるためにいろいろ御迷惑かけておりましたが、近ごろはだいぶゆるみました、それはアメリカ国務省がわれわれに言えばいいことである。そういうことでなくて、日本民族大義として、沖繩同胞に対して施政権返還せよ、その意思はいまだいれられてない。いれられてない以上、沖繩住民意思に反して高等弁務官という一つの独裁制度が、——それは事情は別ですよ。また、それを植民地解放宣言に適用するかどうかということも別です。ただ、事実として沖繩住民意思に反する政治形態が現在遺憾ながら行なわれておる。外務大臣の御努力等によって少しゆるむ傾向があるけれども、まだ国旗掲揚とか二、三のことが行なわれただけであって、基本的には三権ことごとくが外国支配の手に移っておる。その事実を認められるかと、こう私は言っておるわけです。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどお答え申し上げました後段の問題は、仮定の事実とおっしゃいましたが、実は本委員会において何回もあなたから御質問のあった問題だったのでそういうことに触れたわけでございます。  なお、沖繩状況というものは、平和条約の第三条によりまして、立法、司法、行政の三権がアメリカに属するということを条約上私ども認めておりまするので、その事実についてはその通りであると存じます。
  15. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁はよく意味がわからぬのです。十何年前に、サンフランシスコ条約事情のもとでは、やむなく、やがて国際連合信託になるという見通しもあってこれを認めた。当時英国がそばから口添えをして、沖繩の問題については国際連合信託という見通しもあるし、そして行政権の全部が必ずしも日本から離れるものでもないという口添えもあって、——私は速記録を見て驚いたのですが、それに対して吉田首相は、英国の御発言も考慮にいれてわれわれはサンフランシスコ条約を承認いたします、こう答えておるのです。当時としては日本政府意思がこれを認めたのでありますけれども、そういう既成事実に対して、われわれは終戦後十七カ年の今日もはや不満である。沖繩現地住民も全部不満である。すなわち、今日の事態では矛盾の幅が大きくなりまして、終戦直後ならいざ知らず、十七年もたちました今日では、キャラウェー弁務官が独裁権を握っておるということは、日本政府並びに沖繩住民意思、今日の願望に反する形態である、これを緩和してもらい廃止してもらうために日本政府は今後とも努力を続ける、こういうことだと思うのです。率直に、今日沖繩同胞意思に反した支配形態であることはまことに遺憾である、こう一言答弁していただけば私は次に質問を進めたいと思っているわけですが、どうですか。正確な御答弁をお願いしたい。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは条約上さようなことを認めておるわけであります。従って条約上にはさように認めておりまするが、われわれは沖繩における同胞とは特別の関係、血の関係なんです。従って、われわれの気持において沖繩同胞と最も触れ合う行政の面等については日本考え方をできるだけいれさせるようにするということを、条約の制限はございますが、申しておるわけでございます。
  17. 帆足計

    帆足委員 現状は沖繩住民意思に反している形態が行なわれておるということを外務大臣はお認めになるか、こう言っておるわけです。それを遠回しに、それを答えたら帆足計に一本やられやしないかというので、まるでドジョウ、ナマズのようにのらりくらりした返答をなさる。敷島のやまとの国ですから、男らしく、民族大義に関することは、これはこうです、しかし諸般の事情はまことに困難である、(「腹と腹でいけ」と呼ぶ者あり)——腹じゃない。大脳と大脳でなければだめだ。人類は大脳でいかなければならぬ。外務大臣、ただいまの点を正確に答えていただきたい。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現状においては満足すべきものであるとは言っておりません。沖繩住民要望日本に復帰したいということである点と、現状において施政権アメリカの手にゆだねられている状態とは違うということは、先ほどからも言っておる通りでございます。
  19. 帆足計

    帆足委員 答弁不満足でありますけれども沖繩住民の切なる要望に反した形態が遺憾ながら行なわれているという事実は外務大臣認められたけれども、ただ、外務大臣として諸般のことも考えてエチケットを心得た表現をされたものと理解いたしまして、第二に移ります。  先日植民地廃止宣言が通りましたときに、日本はこれの賛成国の一国になっている。まことにけっこうなことですが、そのときに、これに沖繩が含まれては困るということをちょっと考えて、起草委員に打ち合わせして、そうして入らないような解釈を一応とったという御答弁がありました。しかし、その法的効果やいきさつを聞いてみますと、多少そういう気持があって私語が交されたような程度であって、植民地の定義について、また沖繩という具体的場所との連関において、これは何ら公的な決定ではなかったというふうに私は条約局長から承ったのでありますが、その後政府当局から提出しましたこの小坂大臣あての松平大使の公電を拝見してみますと、どうもそういうことは書いてありません。ただ、ガーナ国が出した修正案の中で、「ピープルス・イン・オール・テリトリース・ザット・アー・ノット・イェット・フリー・インデペンデント」すなわち、完全に独立していない国々を、こういう言葉であったのを、「トラスト・アンド・ノンセルフガバニング・テリトリース」、自治力を持っていない地域、こういうように変えただけであって、これならば、字句の変化について何らこれは沖繩に影響を及ぼすこともないし、あるいはまた、最後に可決されました植民地解放宣言の中には、六項目にわたって詳細な定義がしてあって、もう論議の余地がないのです。私は、沖繩がその住民意思に反する他国支配のもとであろうとも、これをどう取り扱うかということは今後の問題であるとしても、他の国に支配されている形態がよくないという点において、国際法上正確に植民地解放宣言のその文句が沖繩に適用しようとしまいと、一国の住民施政権を取り上げて、そうして軍事基地を運用するのに、お前たちにいろいろな権能を与えたら都合が悪いからというような独断的親心は、今日の民主世界においては許されない。たとえば、娘に対する親心であっても、恋愛の自由などというものは、親が子供に対してやはり注意はしても、最後の決定は娘の意思によらなければならぬ。それと同じであって、それを弾圧し、足どめし、気に食わぬむこさんだからといって娘を押し入れの中に入れておく権能はないのとまさに私は同じことであると思うのです。従いまして、植民地解放宣言趣旨については、直接なり間接なり沖繩に影響することは当然だと思うし、それは悪いことではないと思うのです。それをなぜまるでアメリカ国務省の属吏のごとくこの問題に対して心配されるのか、私はその気持がわからぬと思うのです。植民地解放宣言は、諸国民族大義として決定された。われわれとしては淡々としてそれを受け入れればよいのであって、しかる後に、沖繩にそれが文義通り適用されるということであるならば、それはそれでアメリカと話し合うし、文義通りでなくて、その趣旨として道徳的精神を組み込まねばならぬとするならば、それもまた必要なこととしてアメリカと話し合うための一つの道徳的力になる。それであるにかかわらず、小坂さんのようなわれわれと同じ年代の政治家がどうしてそういう卑屈な態度をおとりになるか。長野県というのは昔から養蚕で有名であって、世界の見える県で、気骨稜々たる場所であると思っておりましたが、それに対して外務大臣答弁は常にあいまいで消極的であることをわれわれはまことに残念に思う次第です。私たちは日本人同士ですから、やはり率直に述べた方がよいと思う。従いまして、われわれがこのことを声を大にして言うのは、外務大臣を窮地に陥れようとしてではない。こういう論旨で言うわけですから、野党論議もなかなか整然としておるので、アメリカ国務省もこういう論議もあるからよく考えてもらいたいというふうにこの問題は持っていけばよいのであるから、われわれは国策に稗益するところ大きいと確信して発言しているわけです。従って、この松平大使の公電によって、沖繩は明確に除外されているということはそういう気持が出先の大使として動いたというだけのことであって、何ら国際法的公的な効果のあるものでないという感をいよいよこの資料をいただいて強くいたしましたが、外務大臣はその後、今事務官殿からいろいろ資料をいただいてごらんになっているようですから、何かいい知恵が浮ばれたか、よい情報がおありになるか、その点について、その後の御研究の結果をこの際御答弁願いたいと思うのです。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 率直にお答えを申し上げますが、今帆足さんの言われた点は少し違います。というのは、われわれが何か頼んで、そしてこの宣言案の起草の際に今お述べになりましたようなことが行なわれたということでございますが、われわれは何もそんなことを頼んだ覚えはございません。これは、その起算者であるインドネシアの代表が、その独自の判断においてかような宣言案を起草いたしたのであります。なお、私語したということでございますが、私語ではございませんで、これはこの会議の席上でさような趣旨を堂々と述べたのでございます。今問題に提供されましたこの資料は、帆足さんに差し上げました資料そのままを今うしろから持ってきたのでありますが、それは、今お述べになりましたところのあとに、ここに書いてございまするように、ちょっと読んでみますると、「四日午前の作業委員会においてインドネシア代表は、起草委員会が作成した案の主文にあるザ・ピープルス・イン・オール・テリトリースの字句及びガーナが提出した修正案中のピープルス・イン・オール・テリトリース・ザット・アー・ノット・イエット・フリー・インデペンデントの字句は概念が明確でなく、沖繩等がこれに入るかもしれないという疑問が生じ得るので、これがまだ主権をもたない領土に限定されていることが明瞭な字句、たとえばトラスト・アンド・ノンセルフガバニング・テリトリースを用いる必要があると述べた。」、こういうことでございまして、後段にはっきりと、この沖繩が入っていないということが書いてある次第でございます。
  21. 帆足計

    帆足委員 そうしますと、私は、この字句から見ましても、または最後の決定された宣言案の各項目から言いましても、何ら事態に変化はないと思っておりますが、インドネシア代表は、それでは会議の公式の席上で、沖繩等がこれに入っては都合が悪いからこういう文章にしたらいかがでしょうという提案をしたのですか。その点を伺いたいと思います。
  22. 中川融

    ○中川政府委員 その通りでございまして、この席上でインドネシア代表が、沖繩等が入るようなふうに解釈されては困るから、まだ主権を持っていない地域に限られるという意味の字句にしようじゃないかという提案をしたのでございまして、その提案がいれられまして、そのインドネシア代表の言ったような字句が挿入されたわけでございます。
  23. 帆足計

    帆足委員 これはきわめて重要な問題でありまして、そのときの速記録はございますか。
  24. 中川融

    ○中川政府委員 このアジア・アフリカ会議会議をいたします際に、速記はとっておりません。しかし、会議に出ておりましたわが方の松平代表がすぐそのあとで電報で報告してきておるところもございます。これがただいま差し上げた資料になっておるわけでございます。
  25. 帆足計

    帆足委員 私は、速記録にも出ていないものについて、そのまま効力があるということについては疑問を持ちますし、それならばそれで、当時こういうような解釈になっているということを外務省は内外に発表すべきものであったように思いますが、言葉としましても、主権を持たない領土に限定されるというのはどういう意味ですか。沖繩は御承知のごとく主権を持っていない。同じことじゃないですか。
  26. 中川融

    ○中川政府委員 インドネシア代表の言いました意味は、結局、沖繩には日本の潜在主権があるので、すでに沖繩自体も日本国の一部といたしまして主権を持っておる、そういう地域はこの宣言に入らないようにすべきである、こういう意味であろうと考えております。
  27. 帆足計

    帆足委員 当時の問題のいきさつはこれで明瞭になりました。これをどのようにわれわれが解釈し、また国際関係の中でどのようにこれを理解し受け取るかということは別な問題でありまするから、私はこの問題についての研究は留保いたします。  次にお尋ねいたしますが、日本は植民地廃止宣言案に欣然賛成いたしました。植民地とはどういう国々であるかということについてのリストぐらいは日本政府はお持ちでございますか。また、研究なさっておりますか。たとえば、アメリカ領のプエルトリコなどは、これは植民地に入るとお考えになっておりますか。西イリアンなどはどのようにお考えでありますか。ちょっとお尋ねしたいと思います。
  28. 中川融

    ○中川政府委員 お答えいたします。  いろいろ世界に植民地あるいは非自治地域があるわけでございますが、外務省といたしましては、各国がそういう地域を大体植民地と見ておるか、あるいは非自治地域と見ておるかということについては調べておるのでございます。  なお、プエルトリコ、これは従来非自治地域とはアメリカ認めていなかったのでございますが、従って、その意味での報告はたしかに国連出していなかったように思います。しかし、プエルトリコについては、最近相当高度の自治権認められまして、その結果、すでに非自治地域ということの関係からは実質的にもはずれるという扱いになっておると思うのでございます。  なお、西イリアンにつきましては、インドネシアは、これは自分の主権のもとにある地域だとして、ただいまの日本沖繩と同様に考えているようでございまして、従って、植民地にはおそらく入らないという考えでおるのだろうと思います。
  29. 帆足計

    帆足委員 植民地解放決議案によって、いよいよ昨年から実施促進の小委員会ができまして、この三月二十日から活動を開始したということですが、ただいまいろいろ御答弁を承りまして、私ども、この問題の解釈、解決、またその国際法の適用、その精神の拡大等について非常に参考になる意見を伺いまして感謝いたします。西イリアンの問題のごときは、私は自明の理と思っておりましたが、ただいまのような問題があり、有名なウエスト・サイド・ストーリーズという映画に描かれているプエルトリコの問題、そのプエルトリコの問題についてもただいまのような解釈が行なわれているとするならば、植民地リストの問題はなかなかこれは困難な問題であり、また、植民地という言葉自体の、その道義的意義ではなくて、現実的、国際法的、事務的解釈というものは非常にむずかしい問題があるということについては、政府当局の参考資料は非常に参考になりました。ただいま、一、二の国が国連に届けたというお話がお言葉の中にありましたが、国連に対して植民地と思う国はそれぞれ届出でもなされて、私はあるインドの政治家からそのリストができているという話を聞きましたが、政府当局はまだそういうことについて聞いていないというこの前の返答でございました。たとえば、ゴアに対しては、先日も申し上げましたが、ポルトガル政府は、ゴアは南洋の一州である、プロビンスである、これは国際連合事務局からどうもそういう不合理なことは言わぬでもらいたいという警告を受けたという話も聞きました。ゴア一つについても国によって解釈の相違があったということを伺いましたが、植民地リストにつきましては、植民地解放査察促進特別委員会において当然これは検討せねばならない問題である。すなわち、純粋な植民地としてリスト・アップされた国、ボーダーラインとして問題がある国、また、その国が反対するために、諸般の事情のためにリストに入らないが、道義的にはその精神をくみ込んで国際連合においても論議が行なわれるであろうような国々、私は、この三つの範疇が討議の対象になるように思いますが、解放すべき植民地のリストというものを、その後外務省はどういう資料を入手なされたか、伺いたいと思います。
  30. 中川融

    ○中川政府委員 前回帆足委員からも御要求がありましたので、詳細に調べましたが、まだ国連におきまして解放せられるべき植民地のリストというものは詳細にできていないそうでございます。
  31. 帆足計

    帆足委員 先ほどその植民地として届け出るというお言葉がありましたが、それは何か私の聞き誤りでしょうか。
  32. 中川融

    ○中川政府委員 今の国連憲章によりますと、いわゆる非自治地域というものにつきましては、その施政の任に当たっております国が国連事務総長に報告を出すことになっております。従って、自分の国が自分の非自治地域であると認める地域につきましては国連に報告を出すので、従って、これが非自治地域であるということがはっきりするのでございますが、そういう意味報告を出している地域を大体非自治地域と見ていいのじゃないかと考えるのでございます。植民地について特に報告を出す制度はございませんので、これは結局一般的ないわば認識の問題になると思うわけでございます。
  33. 帆足計

    帆足委員 それでは、ただいまの非自治地域のリストでもまた御入手になりましたら参考にいただきたいと思います。この問題は、これは国際法上も非常に重要な問題でありますから、国際法学者並びに人権学者諸君とともにわれわれもまた大いに研究いたしまして、研究の結果については政府に参考に差し上げたいと思います。  そこで、ついでにお尋ねいたしますが、昨日の外務大臣の御答弁で、西イリアンの問題が平和的に妥結することを希望するというお話がありましたが、その場合に、西イリアンの問題について外務大臣は、西イリアンは解放さるべきものという観点で、これがそういう方向で平和的に妥結すればいいとお考えなのですか。それについての判断は、反乱中止で、ただまあまあ何とか平和であればいいというお考えでしょうか。参考のために伺っておきたい。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題は現在非常に微妙な段階でございますし、また、私は、解決に向かって非常に明るい面が出てきておると見ておるのでございまして、この問題についてこの席での言明は一切差し控えさせていただきたいと思います。
  35. 帆足計

    帆足委員 続けて質問いたしますが、キャラウェー弁務官の先日の新聞記者諸氏との談話、並びにその後の事情説明書、これはぜひとも外務委員会にいただきたいのですが、これは委員長から請求していただきたいと思います。
  36. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 承知しました。
  37. 帆足計

    帆足委員 そこで、それについてお伺いしたいのですが、まず、キャラウェー弁務官は、第一には、現在程度の政治条件で沖繩住民は満足すべきである、——これにはさすがに内外の世論も驚きまして、外務大臣も即刻これに抗議の趣旨の談話を発表されましたことにわれわれは敬意を表しておりますが、同時にまた、アメリカからの電報も、これはアメリカ国務省または大統領の最近の意向を体したものでないという新聞が発表されておりますことも御同慶の至りでございます。しかし、従来沖繩に対するわれわれの主権は、今条約局長が言われたように、潜在主権とか残存主権とか言われておりますが、今度のこの文章で見ますると、そのように書いてない。残存利益、インタレストという言葉を使ってあるということを伺いまして、これはきわめて重大な問題であると思うのですが、外務大臣のこれに対する御所見を伺いたい。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 発言全体につきまして御要求のように存じますので、委員会皆さんにも配付をさしていただきたいと思っております。  今御質問の、残存利益といいますか、リジデュアル・インタレストという言葉を使ってございます。これは、リジデュアル・ソヴリンティというよりももっと大きな、広義の意味というふうなことでございまするが、私は、やはり、残存主権という言葉を正確に、あるいは潜在主権という言葉を正確に使ってもらう方が望ましかったと思っております。  なお、もしお許しがございますれば、その要旨のあらましを御説明いたしてもよろしゅうございます。
  39. 帆足計

    帆足委員 実は私は要旨はもう詳しく存じております。そこで、時間がありませんから、あとでその資料はいただくことといたしまして、普通潜在主権とわれわれが言っておりますのに、リジデュアル・インタレスト、残存利益または残存利権、まことにこれは政治的な用語でなくて人をばかにしたような用語のように思いますが、こういう用語は今度初めて使ったんですか。従来はアメリカとの交渉において公式にはどういう言葉を使っておりましたか。それを伺いたいのです。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 潜在主権という言葉を使っております。
  41. 帆足計

    帆足委員 英語で……。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 リジデュアル・ソヴリンティです。  なお、ちょっと念のために申し上げますが、政府としては、近く、ケイセン報告に基づきましてアメリカ沖繩政策が再検討された後に、日米間でさらに現状の改善について話し合うことになっておりまするので、この段階で、特にキャラウェー高等弁務官発言というものがその趣旨に非常に違うものでございますれば問題といたしまするが、どうも先方にいろいろ問い合わせてみたところによりますと、特別違っておる点もないようでございますので、特に現在問題にする点はないように思っております。そのうちで、極東の脅威と緊張の続く限りアメリカ沖繩における現在の立場を維持する必要があるということで、昭和三十二年六月岸・アイゼンハワー共同声明中アイゼンハワー大統領の発言として述べられた文言、これを引用しておりますが、昨年の池田・ケネディ共同声明におきましてはこういう文言はございませんけれども政府は日米間でこのような話し合いがあったことを国会その他の答弁で明らかにいたしておるわけでございます。  なお、今の残存利益の問題でございまするが、これは、高等弁務官発言は、従来の日米間の了解を述べたものにすぎないので、従って、アメリカ沖繩に関する日本の潜在主権を認めていることに変更はない。インタレストという言葉は、訳し方によっては利益になりますが、広義の権益といいますか、そういうふうにも訳せると思います。この言葉は主権を含む一般的な概念として使用されたものであるということを先方は回答してきております。
  43. 帆足計

    帆足委員 私どもはこの残存利益または残存利権という言葉に驚いたのでありますが、政府はさっそくこれを問い合わせて、そういう意味でないということを確認したということをここで正確に御声明になったわけですから、それは大へん御苦労でございましたが、なぜわざわざ高等弁務官はこういう言葉を使ったのか、そのことについて外務大臣はどのようにお考えですか。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 とにかく、このキャラウェーの発言は、要するに、新聞記者の方々も新しくおかわりになった方がたくさんおる、そこで、従来言っておったことをもう一回ブリーフィングしようということで言われたようなことで、特別に今までと違ったことを言おうという意図があったことでないということは明らかでございますので、その辺の心理状態まではちょっと私存じておりません。
  45. 帆足計

    帆足委員 外務大臣がそこまで気を配って、そうして言葉意味を問いただしたとされるならば、われわれはその点は多とする次第でありますが、私どもが重大と考えますのは、今外務大臣が一言触れられましたが、昨年の池田ケネディ会談のときに、極東において緊張が続く限りは沖繩における現在の政治形態を維持するということは話がきまっておったという点です。それではまるでなれ合いで話し合いがきまっておったような印象を内外に与えるのではあるまいか。と申しますのは、与党立場政府立場としては、国際緊張が続く限りは軍事的、戦略的いろいろな問題が政府立場としてはありましょうけれども、しかし、沖繩住民の自由と人権施政権に関する限りはそれをわれわれに譲ってもらうということは、軍事的必要や国際緊張のある間にもそういう基本的人権は譲ってもらいたいということを主張しておるわけですから、それで現状でいいという話がきまったというのであるならば、一体、政府が数回にわたって交渉したなどと称するのも、これはなれ合いではなかったか。新聞も口をそろえてその点を疑問にしているわけですが、われわれも同じ感を抱くわけです。従いまして、施政権の譲渡については、日本政府立場を譲らず、現在の国際緊張下のもとでもそうした方が沖繩同胞のためにも日米両国の国民感情のためにも有利であるから、それは固執したけれどもアメリカ側としては今日の状況のもとではまだ譲ることができないとアメリカが言った、これに対して池田さんは、自分の考えはこうであるけれども、お前の方がそう言うならばというので会談はそこでとどまったというならば話はわかるのですけれども、しかし、キャラウェー高等弁務官のこの声明によりますと、ここに原文がありますが、ケネディ・池田会談で再確認されておるということを彼は得々として述べておる。再確認という言葉は、もうそれで当分の間けっこうだという意味にだれしもとるわけでございます。従いまして、そうでないならばないで、こういう事情でなかったということを外務大臣から明確にしていただきたい。特に、一年前にこの池田ケネディ会談があったときに、われわれはこういうことがそういうふうに固定的に確認されておるという情報は不敏にして承っていなかったわけですから、これは国民は驚く方が当然だと思うのです。従いまして、外務大臣から明確な御回答をいただきたいと思います。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昭和三十二年六月の岸・アイゼンハワー共同声明に、アメリカ側がこう言った、しかし、日本側は、主権を返してくれ、施政権を返してくれ、こういうことを言ったと書いておるわけです。アメリカ側は極東に緊張と脅威が続く限りアメリカ沖繩における現在の立場を維持する必要があるということを言って、日本側は、そうじゃない、日本施政権を返してもらいたい、こういうことを言ったと書いてあるわけです。この点は池田ケネディ会談においても同様なことが繰り返されたわけです。しかし、話は並行線であるから、現実日本施政権が返ってくるまでの間にはとにかくこれこれのことをやろう、沖繩のわが同胞福祉を向上する諸般の問題について現実的に方途を講じよう、こういうことを言っておるわけでございます。
  47. 帆足計

    帆足委員 今日、国務省のやや良識ある人たちの間では、沖繩の現在のやり方はちょっと現状に即しないという声がだんだん大きくなりつつある。それに対して、ミサイル・ギャップの穴を埋めるために国防省はなかなかがえんじない、——どこの国の職業軍人でもそうですが、職業軍人はこれをがえんじないというような二つの流れがあることは内外の新聞が報ずる通りでありますが、日本政府といたしましては、この雪解けの方向に期待してせっかく折衝中であるから大いに政府努力を買ってもらいたい、こういうことを言われておりますが、それについての見通しはどうか。私は、それが単に日の丸の国旗を立てるとか、わずかばかりの経済援助、教育基金、特需等をふやすとかというだけにとどまるならば、それは見せかけのただ譲歩であって、われわれ日本国民が、また沖繩同胞が主張しているものとはまだ非常に縁が遠いことを残念に思う次第ですが、外務大臣はそういう目前の些事でもってとどまるお考えであるかどうか。現にキャラウェー高等弁務官発言などというものはあのように横柄なものであるし、そして、あの沖繩事情というものを読んでみると、十カ年間のアメリカ軍政の善政の成果はかくのごときものであった、もし十年間ブランクになった人が沖繩の今日の姿を見たらびっくりするであろう、こう書いてありますが、むしろ、沖繩国民が東京に来て東京の復興ぶりを見たならば、その何十倍とびっくりするであろう。終戦直後の、さいの河原のような沖繩が、どうにか皮膚呼吸ができる程度にまで回復したということは、これは当然のことであって、職業軍人各位がそれほど御自慢になるような沖繩の高い賃金でもなければ、また経済復興の状況でもないとわれわれは見ているわけです。従いまして、外務大臣といたしましては、このキャラウェー高等弁務官の声明に対しまして、まず沖繩住民状況、特にその政治状況は現在程度でよろしいと言ったことに対して、この前それはどうも行き過ぎた声明であるという談話を新聞になさいましたけれども、その後アメリカ政府当局に対してどういうふうな折衝をなされておられるか。また、若干のアメリカ側の譲歩がなされつつありますけれども、究極的に施政権返還を、現在の軍事情勢または国際緊張のもとにおいても、民族大義としてそれはよいことである、それは妥当なことであるという確信のもとに交渉されているのかどうか。その点を伺いたいと思います。
  48. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 キャラウェー高等弁務官発言は、新しいことを言おうとしたのじゃなくて、従来言っておったことをブリーフして繰り返したということを先方は言っておるということは先ほど申し上げたのでありますが、発言を見ましても、従来これこれのことをやったということであって、だからもうこれ以上一歩もいかなくてもいい、こういうことを言っておるのではないようでございます。従って、さっき申し上げたように、ケイセン報告が出まして、そして自治権が拡大の方向に向かうというような機運の際でございますから、私どもはこのキャラウェー発言というものはその程度にしておきたいというふうに考えておることは先ほど申し上げた通りでございます。現在アメリカの国務、国防両省においてもいろいろ意見があるようでございます。もちろん、この施政権日本に返すということについてのわれわれの強い要望というものはアメリカに十分届いておりますけれども、一方において、そうした場合に沖繩アメリカの基地というものが無用のものになってしまうのじゃないか、現に日本国内においてはアメリカを敵とするような考え方も相当一部にある、そういう際においてこういうことを直ちに考えることがいいかどうか、こういうような議論もなされているというふうな話も聞いております。彼此勘案いたしましていろいろ議論をなされておるのだと存じますけれども、われわれとしましては、沖繩住民の幸福ということを諸般の観点から見て第一義考えていくということが必要だろうと思っております。
  49. 帆足計

    帆足委員 他の委員からの質問もありますから、私は簡単にして、あと質問を留保して次にいたしますが、時間はとりませんから、もう一度今の点を確かめます。現在の国際緊張のもとでも、この施政権返還ということは国民の基本的大義に関する問題ですから、それは実施に移すことが日本外務大臣としては適当である、アメリカ国防省その他としてはこれに対して抵抗がありましょうけれども日本外務大臣としては現段階でもこれは必要なことであるという確信を持って交渉されておりますか。これについて簡単明快な御答弁願いたいと思います。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 施政権返還については、われわれ確信を持って交渉しております。しかしながら、今申し上げたように、先方の言い分もあります。また、条約上の根拠も先方にはあるわけでございます。われわれとしても、条約上の点を例にとられれば、それに対しては、条約があるのにこれをどうしても破れと言い得ない点もあることは、おわかりいただけると存じます。ただ、問題は、アメリカ沖繩に基地を持っておりますが、同時に条約上の施政権アメリカが持っておる、その施政権返還によって、根拠を失わせて、その基地をゼロにしてしまうということであるという心配がアメリカにございますので、やはり、そういう心配はないんだということはこちらとしては言ってやる必要があろうかと思いますので、その意味においては、国内において、この施政権返還を要求すると同時に、やはり極東における緊張の状態というものも頭に入れて問題を考えていかなければならぬと思っております。
  51. 帆足計

    帆足委員 私は外務大臣の決意のほどを承ったのであって、アメリカ国務省側の弁明を今承ろうとしたのでないわけです。  あと一、二だけ質問いたしまして終わりにしますが、デイリー・エキスプレスという英国の新聞で、クリスマス島で原爆実験なんかせぬで沖繩でやったらどうじゃ、——もちろん、これは、英国政府が言うたことでもなく、ロンドン・タイムズが言うたことでもありません。しかし、こういう目でもって沖繩を見られておるということは、まことに遺憾なことであると思います。従いまして、この権威ある外務委員会の席で外務大臣からやはりこれに対して決意のほどを伺っておくことは、これは適切であると思いますので、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点については、米英の大使に来てもらいまして口上書も手渡し、強く核実験の反対を訴えました。それと同時に、場合によっては補償の権利を留保するということも言っておきました。また、このことがソ連の数十回にわたる核実験に対してこれをやらなければならぬ事情に追い込まれたというものでございますから、この三月の十四日から開かれます十八カ国の軍縮委員会においてぜひ各国の有効なる核実験の停止がなされますよう強く希望するということも申しておるわけであります。
  53. 帆足計

    帆足委員 同時に、沖繩かまたはその他の南太平洋地域、——沖繩かというようなことを英国で言うようになったのもけしからぬし、なめられておると私は思うのです。従いまして、これは、沖繩かというようなことを書いたこのデイリー・エキスプレスというものの品位はこれで非常に低まったと思うのですが、沖繩という言葉がこれに入っていることに対して、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういうことははなはだよくないことだと思います。また、現実にそういうことは行なわれないだろうと思います。
  55. 帆足計

    帆足委員 沖繩にわれわれの潜在主権が残っておることは事実である。これは歴史の一こまとして潜在主権と言っておるだけで、われわれとしては、もちろんそのまま日本の中、こう思っておることは、与党諸君も同じ気持です。(発言する者あり)ただいまの題目は沖繩ですから、理事として余分の発言をして時間を空費させないで下さい。沖繩にはすぐれた音楽もありますし、すぐれた無形文化財になっている舞踊のあることも御承知の通り。これは非常に貴重なものです。それからまた、沖繩経済状況、民情等について、国会議員や日本の著名なる文化人たちが時として視察をするということは、これは当然なことであって、これは民主主義社会における普通の常識醇風美俗だと思う。それが、たとえば社会保障制度審議会会長として政府側もその学識を高く買っておる大内兵衛博士とか、またはその立場はラジカル・デモクラットの立場に立っている中野好夫君や高桑教授たちが、沖繩訪問のパスポートさえもらえない。かりに私なども、こうして外務大臣と一緒に誠意をもって沖繩のことをお互いに心配して論じておって、沖繩の民情がどうなっているかということを淡々として視察もしたいし、また沖繩の芸術文化のことも見てきたいと思いましても、世間ではパスポートはなかなかおりるまい、こういうふうに言っている状況です。先日パスポートの下付率は非常によくなったと言われますけれども沖繩の人に聞きましたら、沖繩側から日本に来る人は、こまかなことを何百項目と書かされて、それがちょっと違っていると刑事犯罪法にひっかけられるおそれがあるので、非常に慎重にして、ほとんど出さないと言うのです。そのために出した者はみんな通るという結果になっているのであって、遺憾な状況沖繩側の方では解決されていない。日本から沖繩を訪れる観光客の数は近ごろふえて参っておりますから大へんけっこうなことですが、ただいま例にあげましたような学識経験者、アメリカで言えばチェスター・ボールズ氏やスチブンソン氏に当たるような、そういうタイプの学者諸君ですらが沖繩に行けない。また、われわれはワシントンやニューヨークには昨年の夏も行ってきまして、いろいろ勉強するところもありました。しかし、沖繩に行くとなると、多分許可されると思いますけれども、許可されないかもしれぬというようなことを一般では言うような状況なんです。こういうようなムードがあるということは、私は、外務省としても、外務省情報文化局など大いに責任があると思う。ぼやぼやしているからそういうムードが発生するわけです。従って、今の大内博士とかそういうような人が行く場合に、政府は間に立ってそういうことのないようにするためにあっせんの労をとる誠意と良識があられるか、一つそのことをお尋ねしておきたい。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最近渡航の問題は非常に改善されて参りまして、こちらから先方に行く人が、昨年の四月現在で〇・三%がどうも工合が悪い、すなわち九九・七%は全部申請通りに行けた、先方からこちらに参りますのは〇・一%以下が工合が悪いということになっているそうでございますが、今後はできるだけ自由に渡航できますように話し合いをして参りたいと思います。また、ケース・バイ・ケースによりまして、私どもも御相談にあずかってもけっこうでございますが、先方としてはあまり妙な問題を持ち込まれることはなるだけ避けたいという気持でやっているのだろうと思いますが、私は、実情によって、御相談があればお話を伺ってもけっこうだと思います。
  57. 帆足計

    帆足委員 そこで、私はまだ質問の個条がたくさんありますけれども沖繩の問題は与野党ともにきわめて重要な問題でありますから今後質問を続行いたしますことを留保いたしまして、きょうはこれで終わりますが、ただいまの大内博士の沖繩観光視察旅行のごときですらやれない、こういう事情を一つ外務大臣は心にとめられまして、時としてはライシャワー博士にも話をして、あなたがワシントンに行こうと思ってもちょっと行けないというふうだったらどういう気持がするかということでお話し願いたい。この前スカラピノ教授にもそのことを言ったのです。カリフォルニアの進歩的大学教授で、コンロン報告を書いたという理由でもしワシントンに行けなかったらどういう気持になるか。ですから、おのれの欲せざることを人に施すことなかれということを一つ外務大臣からもライシャワー博士に伝えていただいて、国会議員やこの国の一流の文化人の渡航すら危惧が持たれるというような状況で、何の同盟国ぞや、何の自由国ぞや、私ども沖繩に行くことすらが不自由であるならば、それは自由国と言えないと言われても弁解できなくなるから、そういうことのないようにということを一つ外務省当局の方からもアメリカ大使館並びに弁務官殿あてにそれぞれの時期を見て一つ言うていただくことを要望いたしまして、きょうはこれで質問を終わります。     —————————————
  58. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 細迫兼光君。   〔野田(武)委員長代理退席、北澤   委員長代理着席〕
  59. 細迫兼光

    細迫委員 きょうは韓国問題に関しまして少しばかり質問の序文的なところをやりたいと思います。  韓国に対しましてだいぶ以前からこげつき債権がそのままになっていると思うのですが、それは始末がついたでしょうか。その後の状況を御報告願いたいと思います。
  60. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 たしか昨年の四、五月でありましたか、韓国の方から、今後、貿易残高と申しますか、韓国の輸入超過が二百万ドルをこすたびに現金で支払っていく、毎月十日でございますかにその貿易じりを払う、その間といえども二百万ドルをこしたならばすぐ払うというふうなことを申し出て参りまして、その際に、この貿易じり残高四千五百七十三万ドルでございましたか、この問題も取り上げまして、これはすみやかに払うようにしたいということを向こうが一札を入れております。
  61. 細迫兼光

    細迫委員 払うようにしたいと言いながら、まだどうも現実には払っていない意味だと受け取りますが、しかるに、韓国に対しましていろいろ日本の企業が進出を企てておるようでありますが、すでに湯川康平氏なんかの調査団も行っておるようですが、保税加工方式の輸出、すでに計画の緒についておるように承っておりますが、これらの企業、韓国へ設定せらるべき企業について、韓国としては一切どんなことが起きても保証はしないということを言明しておることが新聞に出ておりますが、外務省で受け取られておる情報においても韓国がそういう態度をとっておることは間違いありませんか。
  62. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 この湯川氏の調査団が参りまして、近く帰ってくるか、あるいは一部帰っておるかもしれませんが、これは政府とは全然無関係のものでございまして、私ども新聞でそのやっておることを知っておる程度でございます。実際の問題といたしましては、まだ調査団が行っている程度であって、現実の具体的な話にはなかなかならないんじゃないかと思っています。韓国側も、新聞によりますと、そういうふうに政府保証はしないということで、新聞には出ております。
  63. 細迫兼光

    細迫委員 韓国が一切保証しないと言っているぐらいですから大丈夫だと思うのですが、日本政府関係においてもこれを何らかの保証をするというような考えはないものと理解していいですか。
  64. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 現実には、何と申しますか、そういうふうに韓国に対する投資というものはまだほとんど話ができたものはないんじゃないかと思いますが、何かいい話が出て参りまして、そしておそらく無為替輸出の許可を申請するというふうなことがあり得るかもしれませんが、現在のところは一つもございませんが、そういうときにはケース・バイ・ケースでもって考えるということになろうと思います。
  65. 細迫兼光

    細迫委員 保証の問題はどうですか。韓国の今の経済状態では韓国政府は保証しないと言明しておりますから、日本の輸出する企業としてはどこかに保証を得たいと思うだろうと思うのですが、その際における日本政府の態度としましては、保証なんというようなことを考慮する余地があるのか、余地がないのか、その態度をお聞きしたいと思います。
  66. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 具体的に何か政府に対しましてそういう無為替輸出の申請等でもございませんとよくわかりませんが、無為替輸出を認めれば、たしか九割程度の輸出保証があるとかという、私もあまり専門家ではございませんから、そういうことを認めるか認めぬかということは、そのプロジェクトがいいかどうか、そのプロジェクトに対して韓国の方でだれが保証しておるか、韓国銀行が保証するという場合もございましょう、あるいは外国銀行、まあ個々のケースに当たってみませんとわからないことで、これは確かにあぶないものを政府が保証するというようなことはなかろうと思っております。
  67. 細迫兼光

    細迫委員 これはガリオア・エロアの問題にも関係してくるのですが、あの支払金の使途に関する交換公文がございますね。あの中を見ると、たしか東アジアにおいてその経済復興にアメリカ日本が重大な関心を持つ地域にこれを使うというような趣旨のことがありますが、東アジアという言葉はちょっと今まであまり聞いたことのない言葉ですが、どういう地域をさしておるのでしょうか。御説明願いたいと思います。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 交換公文は、御承知のように、一項、二項とございまして、この返済金はアメリカがこれを使うわけですが、アメリカ側としては低開発国の援助に使う、こう書いてございます。第二項の方には、日本アメリカが東アジアの経済状況についてはよく相談し合う、こういうことが書いてございます。従って、一項、二項をそのままに読めば、相談したからすぐにその金が使われるということではないわけでありますが、この東アジアという言葉意味ですが、これは、アジアをわれわれ東南アジアと言っておりましたが、アジアには東南アジアのほかに東北、北東アジアもあるわけですし、それから、いわゆる西アジアと言っているのもあるわけであります。そこで、束と西に分ければ東アジアと西アジア。西アジアの方は大体インドとパキスタン、これが通常西アジアと言っておりますが、これらの地区に関しましては、いわゆるコンソーシアム、債権者国会議というものがあって、日本はインドにもパキスタンにもそれぞれ債権者になって援助しておるわけでございます。そういうものが行なわれていない地区ということを考える、こういうことだと思います。
  69. 細迫兼光

    細迫委員 韓国は当然この東アジアに入るだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それはやはり東のアジアで、今申したように西アジアは抜けているわけですが、西アジア以外の地区はみな東アジアということだと思います。
  71. 細迫兼光

    細迫委員 韓国がその地域に入るとすれば、ガリオア・エロアの使途においても当然目標地域と考えられるわけでありますが、さっきもお聞きしたように、韓国の経済事情はまことに弱い。ここへ使われる可能性というか、危険性というか、非常にあるように私は思うのです。韓国へは絶対に使われるはずはないという御言明ができましょうか、できませんか。
  72. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはアメリカが使うのでございます。アメリカが使う場合には、低開発国の援助にする。すなわち、アフリカや何かも入る。中南米も見方によってはそういうふうになるわけであります。われわれは、いわゆる東アジアの経済状況についてアメリカと今後いろいろ緊密に話していく、こういうことでございますから、日本として日本の金を使う場合なら国会でいろいろ言うこともできますけれども、これはわからないと申し上げるのが一番適当だと思います。
  73. 細迫兼光

    細迫委員 これはガリオア・エロアの問題に入りますから、やめておきます。(笑声)
  74. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 静粛に願います。
  75. 細迫兼光

    細迫委員 韓国の態度を見れば、資本の輸入については非常に熱心で、非常な有利な条件の法律が出て、税金なども数年にわたって免除あるいは軽減するような、資本導入に非常に熱心で条件もいいようですから、これは日本の企業家にとっても非常に垂涎ものだと思うのです。一番の難点は、彼らがおそれることはおそらく政情不安定であることと経済的に弱いこと、これが足踏みをさせる要因だと思うのです。これはいずれ本格的には政府がやはりタッチせなければならぬと思うのですが、日韓会談にあたりまして、例の進め方の方式、懸案を解決した上で国交正常化をはかるという線が一度出ておりました。だが、その線がまたくずれたような印象も受けておるのであります。この十二日から崔外務部長とお会いになるという新聞記事が出ておりましたが、それはほんとうでありましょうか。そして、今申しました懸案解決の上で国交正常化という線はその後やはり変更を見たでありましょうか、その通りになっておりますか。
  76. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今の二点は仰せの通りでございます。
  77. 細迫兼光

    細迫委員 と申しますと……。
  78. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 と申しますると、第一点、十二日から崔外務部長官と会談を始めるや、しかり、第二点、懸案解決後に国交正常化するか、しかり、ということであります。
  79. 細迫兼光

    細迫委員 その際、竹島問題には小坂外務大臣ちょっと触れたけれども、それには反対して議題にならないのだということが韓国の主張であるようでありますが、竹島問題は懸案の中に入っていないのですか。
  80. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会談は、従来からやっております議題として三つの問題があるわけであります。すなわち、、請求権、それから李ライン漁業の問題、それから法的地位の問題で、この中には入っておらないわけであります、しかし、国交正常化ということを考えます場合、私は当然この問題について何らかの合意があるということが必要だと思っております。
  81. 細迫兼光

    細迫委員 今の御答弁は、ほとんど八〇%、九〇%私は満足に思います。と申しますのは、竹島問題は困難だろうからといってこれを回避する態度がずっと前の経過においてにおわれるのでありますけれども、国交正常化については領土の確定ということがまず何よりも先行すべき懸案でなければならぬと思うのです。御承知のように、それがために日ソの平和条約も足踏みしておるような状況であります。竹島問題をあわせて解決せなければならぬという御態度は当然なことだと思っております。その際、経済問題に返りますが、直ちに通商航海条約なんかも結ばれる予定でありますか。
  82. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 将来の問題としてはそういうものができることが望ましいと思っておりますが、これは国交正常化後の問題であります。
  83. 細迫兼光

    細迫委員 今、国交正常化をしようとして相手取っておられます朴政権、このもとにおける韓国事情は非常に民生不安定の極にあるということが私の耳には入っておるのでありますが、政府として、その朴政権のもとにおける韓国の民生状況、いかように判断しておられますでしょうか。
  84. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 御承知のように、六〇年の四月に革命がございまして、また昨年の五月十六日に革命がありました。そういうふうな政情の不安定ということがございますと、従って経済活動も萎靡するという点は確かにございます。いろいろな指数を見ましても、昨年の六月、七月、八月というときには非常に悪い徴候を示しておりました。これが九月ごろから逐次よくなり始めまして、まだ本年一月の数字は私の方は持っておりませんけれども、物価騰貴、インフレの心配もないし、大体生産が逐次上がってきておるということで、次第によくなっておるというふうに見ております。それに、昨年は、米の収穫でございますが、大体一昨年一千六百万石をちょっと切ったものが、一千九百万石近い、約三百万石の増収がございまして、こういうことも非常に農村の安定に寄与しておるというので、状況は逐次よくなりつつある、こういうふうに見ております。
  85. 細迫兼光

    細迫委員 昨年の十二月二十日ごろのことですが、合計十四万人の者が逮捕せられた。政党関係六百六名、社会団体二百五十二名、学生が五百四十六名、学生、教師六百名をこえるこういう莫大な逮捕者が出ておる。それから、こういうふうな弾圧が行なわれておるにかかわらず、旧民族青年団系列のものが、これは軍隊の中にも関係者があるそうですが、これらのものが朴政権を倒すクーデターの計画が発覚した、あるいは、旧民主党系列としては新興義烈団なるものが組織せられて、これまた朴正煕政権を除去しようというクーデター問題が表面化したというようなことが言われておるのでありますが、政府の方には、外務省の方にはこういう情報は入っておるのでありましょうか、いないのでありましょうか。
  86. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 軍事革命以来逮捕されました者の総数は一万三千二百七十五名ということになっております。そのうちで、すでにもうこの起訴の期間というものが終わっておりますので、結局起訴されました者が全部で六百九十六名、そして、その中に百八十三名の逃亡者がいるということで、現在、起訴中の起訴者のうち四百五十二名が既決になっておるという程度でございます。ですから、有罪の判決を受けております者は四百五十二名という程度でございます。(「外務省のその情報はどこから入ってくるのですか」と呼ぶ者あり)それは韓国政府が発表しております。  それから、最近小さい革命の陰謀みたいなものが二つほどあったのでありますが、これも報道されておりますが、これは、名もないような小さな団体の者がやったので、ほとんど取るに足りないようなものだと言っております。
  87. 細迫兼光

    細迫委員 日本の企業者の韓国への進出、これを政府としては奨励をなさるつもりですか、あるいは、少しあぶない、怪しいから慎重にしろというブレーキをかけられるおつもりですか。大体の御方針はいかがですか。
  88. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。いろいろ業界から視察団の計画もあるように聞いておりますけれども、何と申しましても、根本はコマーシャル・ベースでやっていただかなければならぬというふうに考えます。それで、まだいろいろ案もあるようでございますし、先ほどお話しになりましたような保税加工制度というようないろいろな案も出ておるようでございますが、まだまだ具体的なことはわれわれのところに達しておらないありさまであります。従いまして、もう少し具体的な点も見て態度をはっきりさせたいと思いますが、根本的には、コマーシャル・ベースでやっていただくということが原則だと、こういうように私は考えております。
  89. 細迫兼光

    細迫委員 もし奨励する態度をとられて、そして企業がどしどし韓国に進出するということになれば、何かの保証、保護というものが政府の責任になってくる関係に相なると思います。そういう場合に、政府の保証、これは生命財産に関する問題と経済上の問題と、大体二つに分けられると思うのですが、どういうことを用意しておられるか、あるいは用意してないのか、あるいはこれに関する御方針について承りたいと思います。
  90. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。今後業界の方々が韓国に渡られましていろいろ事業活動やあるいは貿易その他の活動をなさいますときに、政府としてのどういう保証があるかという話でありますが、生命その他の財産の直接の損害につきましては、これは国際法上の原則に照らしていろいろ交渉になることと思いますが、純粋に商売の面から話を考えてみますと、たとえば資本並びに商品の輸出をした場合に、これに対する保証制度というものは、現在のところ考えられるのは、たとえば輸出保険とかその他の制度がございます。現にこれは通産省で取り扱っておりますけれども、根本はあくまで保険料を払って保険してもらうという考え方でございまして、商売というか、コマーシャル・ベースをはずしたものではございません。従って、将来の日韓間の貿易その他の事業活動につきましても、先ほど申し上げましたように、保険の適用その他につきましても、これはあくまで根本はコマーシャル・ベースでいくべきものだ、こういうように考えております。
  91. 細迫兼光

    細迫委員 ちょっと枝葉の問題ですが、せっかく来ていただいておるのではないかと思いますが、旅券課の関係の方、今韓国との間に人間が行ったり来たりする、その旅券の発行はこちらでやっておられるのですか。
  92. 志水志郎

    ○志水説明員 お答えいたします。外務省の旅券課でやっております。
  93. 細迫兼光

    細迫委員 ビザはどこで取り扱っておりますか。
  94. 志水志郎

    ○志水説明員 ビザは私の方の旅券課でやっております。
  95. 細迫兼光

    細迫委員 韓国の新聞では、旅券発給者氏名・本国入国許可者の氏名公告を韓国駐日代表部領事課旅券担当官というものがやっており、並びに、これと肩を並べて、在日韓国居留民団中総民生局長、この二つのものが名前を並べて本国入国許可者の氏名を毎日発表しておるのですが、これはこの形から見ると外務省の方ではほとんどノータッチのような感じがするのですけれども、そんなことはないのですね。
  96. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 日本人で韓国に参ります者は、外務省でもって旅券を発行いたしまして、韓国代表部でもって入国の査証をもらって参るわけでございますが、おそらく、新聞記事は、ここにおります在日韓国人が韓国に行く場合のことを書いておるのじゃないかというふうに考えます。
  97. 細迫兼光

    細迫委員 在日韓国人が韓国に行く場合の手続並びに取り扱いはどういうふうになっておりますか。
  98. 志水志郎

    ○志水説明員 お答えいたします。在日韓国人が韓国に参ります場合は、法務省の入国管理局で許可を受けて参ります。
  99. 細迫兼光

    細迫委員 韓国から今日本が輸入しておる品物は、おもなものはどんなものがあるのでしょうか。
  100. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。昨年の日本の輸入総額は一千六百万ドルでございましたが、おもなるものは、農産物二百万ドル、金属類、これは鉱石の格好だと思いますが、四百万ドル程度でございます。
  101. 細迫兼光

    細迫委員 最近韓国の米を五万トンばかり輸入するということがきまったような新聞記事がありますが、ほんとうでありましょうか。
  102. 中山賀博

    ○中山説明員 韓国は約十万トン手持ちの米があるというわけで、日本にも累次買ってほしいということを申し出ておられます。しかし、いまだに、数量・価格その他すべては将来の交渉に待つ方針でございまして、何ら具体的に決定したものはございません。
  103. 細迫兼光

    細迫委員 鮮魚も相当に入っておると聞くのですが、どれくらい入っておるのでしょうか。
  104. 中山賀博

    ○中山説明員 昨年、年間で百八十万ドル入っております。
  105. 細迫兼光

    細迫委員 小坂外務大臣が十二日に会われる崔外務部長官とのお話は、いつまで続く予定でありますか。
  106. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 十二日に会いますのですが、その後のことは、いろいろ話し合ってまたきめたいと思っております。
  107. 細迫兼光

    細迫委員 他の問題は留保しまして、今日は終わります。
  108. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 受田新吉君。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 私は、最初に、先ほど問題になったロイター通信のディリー・エキスプレスという英国の新聞の報道についてさらに深く掘り下げてお尋ねをし、その次に、日韓会談を直前にした重要な問題点をお尋ねしたいと思います。  ディリー・エキスプレスという新聞紙はどの程度の実力を持った英国の新聞紙であるか、お答えを願います。
  110. 中川融

    ○中川政府委員 ディリー・エキスプレス紙は、イギリスにおける大衆新聞でございまして、購読数は相当多いのでございますが、新聞の質は必ずしもよろしくない、こういう新聞でございます。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 質はあまりよくないけれども、大衆が多く読んでいる新聞だ、こういうことになると、質のよしあしにかかわらず、大衆に与える影響力は非常に大きい新聞だと判断してよろしいかどうか。
  112. 中川融

    ○中川政府委員 いわゆる大衆に対する影響力は相当あると思いますが、しかし、そこに書いてある新聞記事が全部ほんとうであるというような意味で必ずしも大衆が読む性質の新聞では実はないのでございまして、興味本位で読む新聞でございます。従って、そういう種類の新聞でございますので、必ずしも日本の実情とはちょっと比較ができないのでございます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 私は、少なくともそうした大衆に影響力を持ついわゆる有力紙といわれる新聞が、米の大気圏内の核実験宣言に対応して沖繩を使用すべしなどという暴論をはくに至ったということをよいかげんに取り扱ってはならないと思うのです。日本政府としても、そうした大衆紙の影響力ということも考えて、何らかの形でこれに警告的な抗議的な意思を表明しなければならないと思いますが、具体的にはまだ何ら措置がしてないわけですね。
  114. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 おそらく、ごく近いときに在英大使から報告してくると思いますので、それを見ました上で何らかの措置をとりたいと思っております。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 日本政府として、いやしくもわれわれの血のつながった同胞を持つ沖繩を問題の地域にしようなどというけしからぬ主張に対しては、重大な警告なり抗議なりがされるべきだと私は思います。十分この点は御注意を願いたい。  次に、日韓会談の政治的な重要会議を目前にして小坂さんにお尋ねをしたいのですが、十二日から開かれる両国外相会議というものにはどのようなメンバーが参列されることになっておるか、場所をどこに指定されておるのか、及び、そこで議題にされる重要な問題点は何であるか、この三つについてお答えを願います。
  116. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 会議の場所は外務省でやるつもりでおりますが、向こうの出席者につきましては、向こうの崔徳新外務部長官が来ることはわかっております。それに、ここにおります襄大使も参加すると思いますが、それ以外の随員につきましてはまだ氏名がわかっておりません。それから、取り上げます問題は、日韓会談では請求権、漁業問題、法的地位、この三つがおもな問題でございます。これらにつきまして、事務レベルでもって各委員会のレベルでやっておるわけでございます。委員会のレベルで解決しないようなむずかしい問題はすべてこの外務大臣レベルに上げて、ここで取り上げるということになっております。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 その会談には、日本国側の政府当局はだれとだれが参加されますか。
  118. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 先方の参加者がはっきりいたしませんので、日本側からだれが出ますか、最終的には確定いたしておりませんが、おそらく、大臣、それから杉首席代表、それに私も出る、それから、問題によりまして、請求権の問題のときには請求権委員会の主査をしております大蔵省の理財局長、漁業の問題のときには漁業委員会の主査をしております水産庁の村田次長、あるいは法的地位ならば入管局長というふうに出られると思っておりますが、まだきまっておりません。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 私は、そこで議題にされます請求権の問題に関しまして掘り下げてお尋ねしたいのですけれども、大体、韓国にあった日本の私有財産、これは、終戦直後のアメリカの軍令によって一応没収された形になっておるのか、あるいは敵の財産という敵産管理の形に処理されたのか、あの軍令の内容は、性格は没収か敵産管理であったのか、これをまずお尋ね申し上げたいのです。
  120. 中川融

    ○中川政府委員 いわゆる軍令第三十三号でございますが、これの中には、日本財産をヴェストしオウンすると書いてあるのです。ヴェストしかつオウンするということの法律的な効果といたしまして、それに関する所有権はやはり全部このときはアメリカ軍に移った、そのアメリカ軍に移ったものがさらに韓国に移った、かようになっておると思うのでありまして、しいて言えば没収に近い、こう考えます。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 すでに、この私有財産の尊重については、ヘーグの陸戦法規にも、没収ということは絶対にできない規定が書いてある。この没収が現に今あなたの御答弁のようにあるとするならば、そのような措置をされている例がほかにどこにありますか。
  122. 中川融

    ○中川政府委員 占領軍の権限といたしまして、陸戦法規に書いてありますことは、敵国の私有財産は、これを管理あるいは使用することはできるけれども、没収してはいけないという規定になっていることは御指摘の通りでございます。従いまして、純粋の占領軍当局の行為としては陸戦法規の範囲を逸脱する行為であると言わざるを得ないのであります。しかし、最終的に戦争の結末をつけました平和条約におきまして、日本はこの効力を承認しておるのでございます。従って、平和処理といたしましてこのような措置を承認したのでございます。同様の措置、いわゆる戦争中あるいは旧敵国の私有財産をいわば取ってしまうという措置は、このほかには、たとえば平和条約十四条における連合国にある日本の私有財産、こういうものもございます。あるいは、いわゆる中立国にある財産を国際赤十字に渡すという規定も平和条約にございます。なお、イタリア平和条約におきましても、ある場合におきましては旧イタリア領域にありました私有財産を取ってしまう措置をきめておるのでございます。なお、ドイツにおきましても、今次戦争の結果といたしまして、ドイツの在外財産というものは連合国がどのような処分をしてもドイツは文句を言わないという協定ができておるのでございます。従って、今次戦争の結果といたしましては、一九〇七年にできましたヘーグの陸戦法規できめましたようなこと、あるいは十九世紀に発達いたしました国際法において原則として言われておりました私有財産の尊重というようなことが、実は第一次大戦、第二次大戦の結果として相当破れてきておるというのは、客観的な事実として認めざるを得ないのでございます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 はなはだ消極的な外務省の態度であります。今あなたは平和条約であっさりあきらめたような御答弁でありますが、昭和三十二年の末米国務省の覚書が出て、没収されたものを韓国に移転したことを日本が初めて了承したのではないですか。それまでは四条の(a)項中心の立場日本政府としてはその請求権を留保しておったのじゃないですか。もう平和条約であっさりあきらめたとおっしゃるが、米国務省の覚書で初めてあきらめられたのじゃないですか。
  124. 中川融

    ○中川政府委員 平和条約の解釈といたしまして、アメリカのとっております解釈、あの解釈がやはり正当な解釈であるということを日本政府認めたのでありまして、従って、それをはっきり表に出しましたのは三十二年の暮れでございますが、しかし、日本政府としての解釈は、要するに、平和条約によって陸戦法規の措置を越えたような措置をも認めたんだ、こういう解釈を正式にとっておるのでございます。従って、これは平和条約そのものから出ることである。実はかように考えております。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの御答弁で、遡及して平和条約の四条(b)項による処分として認めたというような形になるようですが、三十二年の末のあの覚書が出るまで、日本国の政府としてはどういう態度だったのですか。ここは大事なことですから、一つ確認をしておきたい。
  126. 中川融

    ○中川政府委員 三十二年に覚書が出たわけでございますが、その覚書の実体となりますものは、それよりさらに四、五年前にすでに日本・韓国両方の政府に提示されていたのでございます。日本政府は、第三次日韓会談だったと思いますが、一九五三年の暮れだったと思いますが、そのときまでは、韓国に対して、平和条約といえども陸戦法規に違反したことは認め趣旨ではないと日本は解釈するということで、交渉上そういう態度をとったのでございますが、一九五三年当時以後は、日韓会談は中絶したのでありまして、その後、日本政府はどういう態度をとっておるか、どういう解釈をとっておるかということを先方に言う機会も実はなかったのでありまして、その間いろいろ検討いたしました結果、日韓会談の当初言っておりましたような解釈はやはりすなおな解釈ではないという結論に達しまして、従って、平和条約第四条(b)項の解釈といたしましては、やはりそれは陸戦法規を越えた措置をも日本は平和条約で認めたんだ、はっきりそういう解釈をとっておるわけであります。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣、この事件はあなたの前任になる藤山さんが外務大臣の当時だと思うのです、日本政府としてはあまりにも軟弱なやり方であったと思うのです。少なくとも当初の主張を引っ込めて米国務省の覚書を容認したということは、これは陸戦法規違反をアメリカがやっていることをそのまま認めた形になるのです。小坂外務大臣もこの韓国における日本の私有財産の没収は明らかに陸戦法規違反であると断定できるかどうか、外務大臣から御答弁願います。
  128. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今条約局長が申し上げましたように、一九〇七年にできましたヘーグの陸戦法規、これを越えるような規定、たとえば十四条の規定あるいは十六条の規定というようなものが、第四条(b)項以外にも平和条約の中にできているわけでございます。従いまして、彼此いろいろ勘案いたしまして、日本政府としては昭和三十二年十二月三十一日の米国務省覚書について了承したという事実は、私もその通りに考えていきたいと思っております。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 私がお尋ねしておることは、陸戦法規違反であると外務大臣は断定するかどうか、アメリカ国務省覚書というものはどうか、そのことです。
  130. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 陸戦法規を越える規定であるというふうに考えております。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 越える規定とは、違反であるということになるのかどうか。
  132. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その後における国際間の情勢、あるいは戦争状況、あるいは占領の状況、いろいろなものが変わりまして、一九〇七年当時規定されたもの、それを越える解釈というものが国際間でできてきた、かように思わざるを得ないと思っております。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 越える解釈ということは、結局違反をしているということになるわけですね。
  134. 中川融

    ○中川政府委員 一九〇七年に陸戦法規ができました当時は、要するに、戦争というものは非常に短期間に片づき、ことに、戦後処理というものは、どんなに長くても一年半か二年すれば片づいた時代でございます。従いまして、占領というものもきわめて短期間に行なわれる事態であったのであります。ところが、第一次戦争、第二次戦争の跡始末になりますと、非常に長期にわたって戦後処理がかかるのでありまして、このような長期にわたる戦後処理がある時代においては、なかなか五十年前にきめました規則によっては律し得ないような事態がどうしても出てくるのであります。従って、軍令三十三号というものも、その趣旨は、要するに、韓国というものを独立させ、日本から切り離して新しく発足させるためにやむを得ない措置、必要な措置をとにかくとったということでございまして、なかなか五十年前の陸戦法規では律し得ないような事態があることは、これは客観的に認めざるを得ないのであります。従いまして、単純に陸戦法規違反というふうにきめつけることも必ずしも適当でない、むしろ越えるというのが適当ではないか。そのもとになる事態がだいぶ変ってきておるのでありまして、変った事態を律するために、昔の短期間の占領があったのみの十九世紀末ごろの要する国際法の観念をもってこれにそのまま当てはめるということは、必ずしも適当ではないのではないかということも考えられるのであります。違反と言わずに越えるという表現を用いるのは、そういう趣旨でございます。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 その越える場合も国際司法裁判所に提訴することができるかどうか、お尋ねいたします。
  136. 中川融

    ○中川政府委員 これは、結局、サンフランシスコ平和条約四条(b)の解釈として、日本がたとえばアメリカのとります解釈と違う解釈をとったという場合に、日本はこの平和条約の規定に基づきまして国際司法裁判所に提訴できるわけであります。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 提訴できるというのですね。そうしますと、法的には提訴可能な事項である、こういうことであります。  そこで、この問題で今日現実の問題として並べられるのは、台湾、中華民国と日本との平和条約です。これには、双方の請求権というものは両国の合意によってこれが処理されるという形にになっている規定があると思います。台湾の場合と韓国の場合とが違うことになるのです。これは公平の原則に反しませんか、同じ日本の植民地で。
  138. 中川融

    ○中川政府委員 まさしく、台湾の場合と韓国の場合とは、そこにある日本財産の処置について平和条約の規定するところは違うわけでございます。しかし、これは、台湾というのは、日本領土の一部が中華民国の一部にいわば譲渡されるという事態でございまして、領土を一国からほかの国に移すという場合に当たるわけであります。これに反しまして、韓国の場合は、日本領土の一部が独立して一つの国家になる、国家そのものになるわけであります。従って、領土の一部がほかの国に譲渡されるという場合には、そこの私有財産を尊重するということは、これは当然国際法上大体確立された原則でございます。しかしながら、一国の中から一国の一部が独立して完全な独立国になるという場合、これはどうなるかという、ことにそれが戦後措置として行なわれるという場合でございますので、必ずしも、これは、台湾の場合と違う取りきめをしたということがいわば権衡を失する——それは、そこに私有財産を持っておられる個人にとっては非常な違いでございましょう。しかしながら、全体の大きな戦後処理という見地から申しますれば、必ずしもこれが同じでないからおかしいということも言えないのではないかと思います。もちろん、日本として決して朝鮮半島における日本の財産が没収されることを喜ぶ理由は一つもないのでありまして、これはぜひそういうことはやめたいわけでございますが、平和条約で認めたという基礎に立ちますと、これはやはり違う措置であったということを認めざるを得ない、かように考えるのでございまして、これはほかの戦敗国の場合にもやはり同じような問題もあるのでございます。ドイツからオーストリアが独立したというような場合には、やはりそこにおける私有財産というものは必ずしもその他の地域とは同じ取り扱いを受けていないということであったと思います。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 あなたが今御答弁されたことに関連するのですが、アジアの国国、新興国家、英国の植民地であったりフランスの植民地であったりした、あるいはアフリカの英、仏等の植民地であった国がそれぞれ独立したのです。植民地が独立している。その植民地が独立した際に、やはり今あなたが唱えられたような方法で財産というものが移譲されているかどうか、あるいは、無償援助というような形、無償供与というような形がされているのかどかう、御答弁願います。
  140. 中川融

    ○中川政府委員 戦後に、たとえば従来イギリスの植民地であったところが相当たくさん独立いたしまして、これらはしかしいずれも平和裏に独立したのでありまして、従って、私有財産というものは尊重されていると思います。私有財産が尊重されていない例といたしましては、インドネシアの場合でございまして、これは、オランダと結局長い戦争をやりました結果独立した、しかも、その際の円卓会議というものが、結局、一時はできましたけれども、実施されないままにまたオランダとインドネシアは断交する、こういうような事態になりまして、結局、その後インドネシアが布告を出しまして、オランダの私有財産を要するに没収措置をとったのでありまして、これは例外でございます。しかしながら、そういういろいろなやり方があるということは、この例で一応わかるのではないかと思います。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 そのいろいろなやり方を具体的に各国別に一つ資料として出していただきたい。他国はどういうふうにされているかということ。日韓会談に臨まれるにあたって、類似の国々の状況もよく伺っておかないと、政府に野放図におまかせするわけにいかない。国民関心の日韓会談でありますので、植民地が独立国になった場合における私有財産の取り扱い及び無償供与等の措置がどうされているかを具体的にお示しを願いたいと思います。  なお、マッカーサー司令官は占領直後に布告を発しまして、すべての陸戦法規その他の約束を厳守しなければならないという宣言がされているのです。そういう宣言をされた親方自身がそういう違反をするというようなこと、それがおかしいのであって、国際司法裁判所に十分提訴して、日本国の従来の主張の立場から、第四条の(a)項に基づく立場から当然これは提訴すべき性質のものじゃないか。なぜ当時提訴しなかったのか、このことを今あらためて外務大臣にお伺いしておきます。あなたの政治的責任ですから。
  142. 中川融

    ○中川政府委員 従来の経緯の関連で私から一応御答弁申し上げますが、もし日本政府当局がほんとうにこの四条(b)項の解釈について陸戦法規以内のことしかここできめていないのだということを考えて、それがあくまでもどこへ出しても十分根拠のある主張であるという立場をとっておりますとすれば、まさしく、受田委員の言われる通り、これは国際司法裁判所まで出してでもアメリカと争うべき問題であるわけでありますけれども、しかし、これは交渉技術上そういう主張をいたしましたけれども、翻って考えてみますと、それが、この第一次戦争、第二次戦争の結果といたしましての戦後の処理の私有財産のあり方というようなものから見まして、そういう解釈はどうも少し無理じゃないかという考えがどうしてもするのでありまして、そういう見地から、むしろ日本の自発的な考え方としてこのアメリカ式の考え方を採用したのであります。従って、日本もそういう解釈でありますので、これを国際司法裁判所に持ち出して争うという必要はないわけでございまして、むしろ、この解釈によりまして韓国との間に一日も早く公正妥当な財産権の処理をしたいうこうい考えでおったわけでございます。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 韓国にある日本の私有財産の総額は終戦当時及び現在における価格によってそれぞれどの程度のものがあるのかを御答弁願います。
  144. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 全朝鮮半島を通じます私有財産につきましては、引き揚げてきました人たちの報告に基づいて大蔵省の管財局で調べたものがございますが、これは今のところ発表しないということになっております。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 終戦直後に大蔵省がそういう調査をやって一応発表された数字があるはずです。在外財産全体の場合を例にとって私はお聞きしましょう。それは韓国のみでなくて幾らくらいになっておりますか。——では質問の終わりにでも一つ御答弁願うことにいたしましょう。その額によってもまた今度会談に対する問題があるわけです。私は、今度の政治会談で物事を円満に解決しようという向こうの気持もあるようでございますので、日本側としても主張すべきことは当然強力に主張して、少なくとも日本の個人あるいは法人が持った私有財産の尊厳というものを傷つけぬような形でこの問題を考えでいってもらいたい。特に、アメリカ国務省の覚書などというものは、こちらの要求するものと向こうの要求するものと何とかして相殺させようというお気持があったと思うのですが、大臣、あれは、向こうが日本へ賠償を要求することをやめさせ、こちらは私有財産権を放棄するということで片づけさせたいという政治配慮でそれを日本が了承した、かように考えてよろしゅうございますか。
  146. 中川融

    ○中川政府委員 昭和三十二年暮れの、要するにあのときの日本考え方でございますが、これはアメリカ解釈を基礎として日韓間でこれによって財産の請求権の処理をしようということを合意したわけであります。そのアメリカ解釈の中に、日本財産は軍令ですっかりなくなった、しかし、そのなくなったという事実は今後の日韓請求権の処理に関連がある、どの程度関連があるかということは日韓間で相互にいろいろ資料を持ち寄ってきめるべきである、こういうことが基礎になっているわけであります。従いまして、関連があることは事実であります。しかし、それをどの程度しんしゃくするか、あるいは考慮に入れるかということは、今後日韓間の話し合いで結局公正妥当なところをきめる、こういうことになるわけでございます。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、外務大臣、向こうは日本に賠償要求をしようとした、それを押えるために私有財産権の放棄をさせたというアメリカ配慮、そこには相殺的な思想が動いている、そういうあっせんの労をとった、それに日本は乗っかったのだ、かように了解していい、こう考えてよろしゅうございますか。これは重大な問題ですから外務大臣から答弁願います。
  148. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうも私はそのままにもとれないところがあると思います。今条約局長が申しましたように、そうした事実はこの問題を解決するにあたって関連があるということを考慮する、こういうことでございます。私は非常に微妙な問題だからことさらに答弁を差し控えているのでありますが、十分私どもの主張すべきことは主張するつもりで考えております。ただ、この場でいろいろ申し上げることがいいかどうか、これは済んでから十分に申し上げさせていただきたいと考えております。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 会談に臨む前に一応日本側意思というものをはっきりしておいていいと思うのです。そうして、そのはっきりした線の中から交渉の幅というものが生まれてくるのであって、何もかもみなあなたまかせのような形になっても困るわけで、一応、日本側の主張、国民要望、こういうものを十分に頭にとどめおいてから交渉しなければならぬと思うのです。  そこで、問題は、ここに官房副長官がおられるから、あなたは総理大臣にかわって答弁してもらいたい。外務大臣は今私有財産権の放棄を宣言されている。ところが、韓国と同じ立場にある植民地の台湾については、双方の国の政府で合議でこの処理をするという条約を結ばれているのです。こういう段階で、在外財産の補償というものが日韓会談における私有財産権の放棄という形で全然見通しがつかぬということになれば、これはやはり国の責任で何らかの措置をとるべきである。引揚者給付金支給法などというそういうこそく手段ではなくて、本質的に、在外財産の補償は会談の結果だめである場合には国内で補償する、こういう形のものになるのかならぬのか、原則論をあなたから総理大臣にかわって御答弁していただきたい。
  150. 服部安司

    ○服部政府委員 受田委員にお答えいたします。  在韓日本財産は、在韓米軍政府の帰属命令によって米軍政府がみずからの所属に帰せしめ、その後米韓協定によりこれを韓国に移譲したのでありますが、わが国は、平和条約第四条(b)項の規定により、在韓米軍政府の在韓日本財産に対するこの処分については異議を申し立てないことになっているのでございます。在韓日本財産が在韓米軍政府に帰属し韓国に移譲されたことによって生ずる財産喪失の損害は、前述のようにあくまで米国政府の措置に基因するものであって、日本政府の処分によるものではないので、政府としては損失補償の責めに任ずるものではないと考えているのでございます。しかしながら、現実には、多数の在外同胞生活の本拠とする外地からほとんど無一物で引き揚げてこられた気の毒な実情にかんがみ、先ほどお話がございましたが、まず引揚者給付金の支給その他の援助措置を講じて参った次第でございます。  そこで、在韓日本財産を放棄した場合という仮定の質問でございますが、御承知の通りに、今交渉中でございまして、私といたしましては、そういうまだ答えも出ておりませんものについて十分答えられないのでございます。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、今副長官の御答弁によると、まだ私有財産の件は放棄してない、こういうお話のようでございます。そういう仮定のものは答えられないと言うのですが、これはどういうことです。国務大臣から一つ……。
  152. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 経緯は、御承知のように、軍令三十三号によって日本人の在韓の財産は米軍に没収されたわけであります。その後米韓協定によってこれが韓国の米軍に引き継がれた。そこで、日本は、平和条約によって第四条(b)項で米軍の処理の効力を承認したわけです。そこで問題は一段落しているわけでございます。すなわち、副長官が言われましたように、日本財産の処理の効力というものは、これはアメリカによってなされたものでございまして、日本政府の行為によっておるものではないのでございます。日本戦争に負けました結果平和条約を承認した。その平和条約の中における規定によって、在韓財産というものは、米軍の処理の効力を承認して放棄しているわけでございます。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 これは大へん私は残念なことなんです。これではアメリカという国は勝手にアメリカのやり方で日本国民に損害を与えておることになるんですね。日本政府承知していないということです。あの三十二年末の覚書を日本政府が拒否すれば、それはもっとはっきりしたものが出たはずなんです。結局アメリカ立場に屈従させられた結果、今のあなたの言うようにアメリカに責任を負わしておられる。また、今度、ガリオア・エロアあるいはタイ特別円に対する多くの負担を引き受けようとしておる。こういうようなことは、どうも日本政府が自主性を失っておると思うし、また、韓国で長期にわたって蓄積したその勤労の結晶を簡単に処分されるようなそういうアメリカの命令に日本政府は従っておいて、タイ国やアメリカのガリオアというようなこういう問題に金を出すことばかりに真剣になっておられるということにも私は問題があると思う。もっと日本の自主性を尊重して、同時に、韓国で苦労された人々に対するはっきりした私有財産擁護という、憲法にも国際法にもはっきりしてあるこの原則を会談の途中において十分主張しなければならぬと思うのです。大臣、どうですか。
  154. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その問題については、やはり日本戦争に負けたということを考えてみなければならぬと思います。われわれは男らしく負けようということで平和条約に調印いたしまして、その中には、御承知のように、第十四条におきましての規定もございますし、策十六条においては、これは中立国に対する財産ですね、これも同様な苦心の結晶でございますが、その中立国における財産も放棄しておるわけでございます。第十九条の規定も、御承知のように、日本が負けた結果、占領軍費も負担するという規定にもなっておるわけであります。すべてこれは敗戦の結果生じたものと考えざるを得ないのであります。しかし、今おあげになりましたガリオア、これは別でございます。ガリオアは、累次御説明申し上げておりますように、幸いに御質問がございましたから申し上げるのでございますけれども、あれは、アメリカの方から来た物資について、それに見合うものを日本に積んでおいたわけです。この金額が二千九百十九億円あります。簡単に申し上げますが、それをいろいろ利殖をいたしまして、日本の国内で七分七厘くらいで政府の財産が動いておるわけです。これが、昭和二十四年に見返資金を作りましてから今日までの間に四千億になっておると言われております。その中から二千八十五億円返すというので、これは、もともともらったものがあって、そのうちの一部を、アメリカ側では約二十億くれたと言っているのですが、その四分の一を返す、こういうことでございまして、もらったものの中から一部を返すということでありますので、これは事柄が違います。しかし、お話の気持については私も十分わかっておりますから、それは交渉の過程において十分主張いたします。  なお、タイの問題は、これも触れられましたから申し上げますると、これは、日本とタイの間に同盟条約がございまして、昭和十六年同盟条約ができた。そこで、十七年に特別円の協定を結んだ。その勘定じりが十五億円日銀の残高の帳簿にあるわけであります。それで、この特別円の協定には金約款がついておった。ところが、その金約款のうち一部は適用しないということがあって、全額金約款というふうには読み切れない。しかし、二十年になりましてこれをタイ側が廃棄してきたわけです。そこで、十五億円をいかに計算するかということで計算しまして、この五十四億円と九十六億円、合わせて百五十億円というものをいかにして処理するかという協定が三十年にできた。ところが、それが動きませんから、今回それを動くようにしようというのが私ども考え方でございまして、御質問がございましたから申し上げる次第でございますが、ちょっとそれは事情が違うわけでございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 私はガリオア・エロア、タイ特別円の質問をしたのでないのです。そのことははっきり間違えないようにしてもらいたい。  そこで、私がお尋ねしているのは、そうした日本政府の軟弱性を暴露したのが、今度の米国務省覚書の暗黙の容認だということになってきたと私は思うし、また、今度韓国が無償供与、無償援助ということを要求してきておるわけです。こういうものに対しても、日本政府ははっきりしたものを持って会談に臨まれないと、これは日本国民がまた大きな損害を受けることになるわけなので、筋を通した日本国の自主性を十分立てて、また、アメリカの道義的責任も追及していく。アメリカが勝手にああいう覚書などを出して日本に押しつけたということに対する道義的な責任が十分にあるのですから、これは、大臣アメリカの道義的責任というものが十分あるのだということをお考えになりましょうね。ちょっと答えていただきたい。
  156. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も、いろいろなことを考えまして、ただぼんやりと会談に臨む気はさらにないのでございます。ただ、今申し上げにくいので、これができましたときには、なるほど小坂はそこまで考えてくれたか、こう言っていただけるようなものにしたいと思います。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 きょうは、会談に臨む前に大臣の心得をかためておく必要があったので、あなたに注意を申し上げておいたのであります。  これで一応質問は終わります。
  158. 北澤直吉

    ○北澤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会