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松本(俊)
委員 この
外務委員会で目下付託となっております議案の中で最も重要なものは、何といいましても、いわゆるガリオア・エロアに関する
協定並びに
タイの特別円の
協定でありますが、この二件につきましては、あるいは
予算委員会、あるいは本
会議、あるいは当
委員会におきましても先日わが党の正示
委員からの質疑で相当詳細にわたる問答がありました。私どもも、ほぼこの二
協定に関する
政府側のとられた措置についての御
説明ぶりを知ったのでありますが、しかしながら、私個人といたしましても、なお両
協定の二、三の点について十分
政府側の御意向を承っておいた方がいいと思う問題があるのでありますが、何分にも、この両
協定は、
日本にとりましては金を払う
協定でありまして、
政府としても非常に困難な交渉の後に到達されたものと思いますけれども、しかしながら、その交渉の過程なり、また、
協定の
内容なり、また、その金額なりにつきまして、十分国民が
納得するような
説明を徹底さしておきませんと、とかく、こういう問題については何か割り切れないものが残って、その結果、せっかく
わが国がこれらの国と親善関係を一そう深めようという
目的のために作りました
協定が、かえって親善関係を害する、——具体的に言えば、ガリオア・エロアの問題について、せっかく
政府がアメリカ
政府と長年にわたって交渉されてこういう
協定ができて、いよいよ今度金を支払うことになったにもかかわらず、その交渉の過程なり、また根拠なりが、もし国民の
納得のいかないものでありますときには、かえって
日本のアメリカに対する国民感情に悪い
影響を及ぼして、ひいては日米関係にも悪い
影響を及ぼすこともあり得ると思います。もとより、私は、この両
協定が、一方は米国との関係、他方は
タイとの関係を一そう緊密にし、この米国なり
タイなりとの関係をよりよくしていくことは信じて疑わないのでありますが、ただいま申し上げましたような見地から、少しく
政府側の御
説明を拝聴したい点があるのであります。従って、少し話がこまかくなる場合もございますが、それはそういう
趣旨でございますから、ごかんべん願いたいと思います。
まず私の伺いたいのは、先
日本会議の席上で
戸叶委員から御
質問があり、池田総理大臣並びに
小坂外務大臣から一応の答弁がありました問題でございますが、いわゆる
阿波丸の
請求権処理のための日米
協定、並びに、それに付属しておるのかどうか、これは
政府の御
説明を明確に私は承らないとわかりませんが、少なくも同日に署名されました了解
事項というものがあります。この
二つにつきまして、私の疑問とするところを
一つはっきりさしていただきたいと思っておるのであります。
阿波丸の事件はまことに不幸な事件でありまして、実は私自身も
阿波丸を南方に
派遣したことに責任がある一人でありまして、当時外務次官をしておりまして、当時の連合国側と折衝しました。連合国から切なる希望がありまして、南方
地域における連合国側の俘虜に救恤品を贈りたいということで、あの船を出すことにきめたのであります。私もそれをきめた当事者であります。ただ、私は、あれをきめて間もなく仏印へ赴任することになりました。私は、そのときに、あれをやっておりました係の人に、人だけは乗せない方がよかろうということを言ったのでありましたが、しかしながら、その後いろいろな
都合で人を乗せることになりました。本日
委員長を勤めておられます
森下先生も、当時外務参事官をしておられまして、危うくあの船に乗られるととろでありました。これが助かったのは、たまたま臨時
国会が召集になりまして、当時参事官であられた
森下先生は乗れないことになったので助かったのでありますが、そのかわり、その身がわりとして、私の最も信頼しておりました親友であります山田調査局長が乗りまして、ついになくなりました。そういう、私にとりましては、職務上、また感情上、非常な深い関心を持っておる事件であったのであります。そうして、私は友邦国の態度についてとかく申すのは心苦しいのでありますが、あの事件についてのアメリカの態度ははなはだあいまいだったと思うのであります。最初は責任は一切ないと言って参りました。そうして、しばらくして、いや責任はあるから後日賠償を払うということを申して来たのであります。これは
外務省の方は御存じと思いますが、そういう経緯がありまして、あの船に乗りました多数の友人、それから仏印で私に
協力してくれました多数の部下があれに乗って家族ぐるみなくなっておるのでありまして、私もこの
協定の賠償については非常な関心を持っておりました。
ところが、この
阿波丸の
請求権の
処理の
協定、これは当時いろいろアメリカの国内の事情があったのでありましょう。マッカーサー元帥が仲介の労をとりまして、
日本とアメリカとの間にこの
協定を結ぶことになって、そうして
日本は
請求権を放棄したのであります。その第一条には、「
日本国政府は、ダグラス・マックアーサー元帥の下に
日本占領が開始されて以来進展した公正な事態を考慮し、且つ、降伏後の期間において
米国政府から受けた物資及び役務による直接及び間接の援助を多として、
阿波丸の撃沈から生じた
米国政府又は米国民に対するいかなる種類の
請求権をも、
日本国政府自身及び一切の関係
日本国民のために、すべて放棄する。」、こういう
協定になっておりますが、まず最初に、私は実はこの
協定の当時は追放中でありまして、ただ新聞で読んで、実ははなはだけしからぬ
協定ができたと思って心では憤慨しておったのでありますが、しかし、当時の事情まことにやむを得ないことも私は推察しておりましたが、ここに、「且つ、降伏後の期間において
米国政府から受けた物資及び役務による直接及び間接の援助を多として、」とございますが、この援助の中には、今度の
協定の
目的になっておりますガリオア、エロアの援助というものは含まれておるのでありますか。その点をまずお尋ねしたいと思います。