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1962-05-08 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月八日(火曜日)    午後一時五十一分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 河野  正君 理事 山口 鶴男君       松本 一郎君    石川 次夫君       西村 関一君    松前 重義君       三木 喜夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         科学技術政務次         官       山本 利壽君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         文部政務次官  長谷川 峻君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         厚 生 技 官         (環境衛生局水         道課長)    石橋 多聞君         厚生事務官         (医務局次長) 鈴村 信吾君         気象庁長官   和達 清夫君         参  考  人         (原子燃料公社         理事長)    高橋幸三郎君         参  考  人         (原子燃料公社         副理事長)   原  玉重君         参  考  人         (南極地域観測         統合推進本部委         員元南極地域観         測隊隊長)   永田  武君     ————————————— 五月七日  一、科学技術振興対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(科学技術行政一  般に関する問題及び原子力行政一般に関する問  題)  ウラン鉱開発に関する件  人工降雨等研究推進に関する件      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  科学技術行政一般に関する問題及び原子力行政一般に関する問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。  まず最初に、防災科学対策一環として人工降雨等に関する問題についての質疑を許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 毎日の新聞東京都の水飢饉が大へん問題になっておるわけなんだが、一体現状はとういう状態でございますか、まずそれから一つ承っておきたい。
  4. 石橋多聞

    石橋説明員 東京都の水道の現状についてのお尋ねでございますが、昭和三十五年と昭和三十六年におきますところの降雨の量が極度に少なかった関係で、貯水池を利用いたしておりますところの多摩川系統浄水場関係が、その能力をフルに発揮できなくなったのが現状であります。貯水量で、現在のところ小河内貯水池村山山口貯水池を含めまして四千七百五十万立方メートルの貯水量減少いたしております。満水の量は二億二千万立方メートルでございますが、現在約その二割程度減少をいたしておるわけでございまして、今後とも大きな降雨がなければ、その貯水量の回復は望めない現状であります。例年梅雨時になりますと若干の降雨が期待できるわけでございますが、本年度長期気象予報におきましても、平年並み、もしくは平年並みよりも若干少ないという長期予報が出ておりまして、これらの事情から、できるだけ貯水池の水を使うことを押えまして、長くもたせるという方針をとってきたわけであります。そのために、昨年の十一月から第一次の制限給水を行なっておりまして、若干圧力を落としまして給水量を減らしてきたわけであります。さらに、四月の十六日より第二次の制限に入りまして、これによって多摩川系統の水を約三割セーブしておるわけでありまして、これは夜の十時から午前五時までを断水いたしておるわけでございます。これでもなお貯水量減少を食いとめ得ませんので、さらに昨七日より第三次の制限に入りまして、多摩川系統の水を三五%、平生よりも節減するということに相なっております。これがために、夜間の断水に加えまして昼間も午前十時から午後四時まで断水するということになっております。ただし、これは多摩川系統に限られておりまして、それ以外の金町の浄水場によるもの、これは江戸川の水を利用しておりますし、もう一つは相模川の水を利用しておりますところの長沢浄水場系統、これはフルに現在は動かしております。
  5. 岡良一

    岡委員 ただいまの石橋さんの御説明では、貯水池の水が減ったということ、水が減ったということは雨が降らなかったということである。そこで、この水飢饉対策としては、水の節約で調整する、これで切り抜けていきたい。で、長期予報によれば本年度梅雨時においても大した降雨量は期待できないので、さらに一段と節水を強化しなければならない、こういうことでございますか。
  6. 石橋多聞

    石橋説明員 その通りでございます。
  7. 岡良一

    岡委員 そこで、この際ちょうど三木長官も来られましたが、研究調整局設置法改正でできました。この研究調整局では、防災科学などについてもこれを業務として取り扱うかの意向もかつて漏らされたこともあったかと思うのでございますが、三木長官のこの設置法改正に関する御見解を承りたい。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 総合研究課というものを研究調整局の中に置きますが、この総合研究課の中で防災関係を取り扱うことにいたしたい、こう考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 何しろ、飲料水が不足をしてきたということは、特に東京都のように日本の全人口の約一割近いものが集中しておるところの大都会における飲料水の欠乏というものは重大なる事態だと存じます。アメリカやヨーロッパに比べて日本列島全体としては二倍、三倍の降雨量がある。にもかかわらずこういう事態が起こっている。今御説明を聞くと、雨の降り方が足らなかった、いわば自然現象気象条件というものによって左右されておるということで、従って、また雨が降るまではお互いに水の使用を節約するより仕方がない。これでは私は、今日の技術革新の時代に非常に策がなさ過ぎるのではないかと思うのでございます。  そこで、科学技術庁では人工降雨について実験をしておられたはずでございますが、その過去の実績あるいはまた将来の御計画について、所管の局長等から御報告を願いたい。
  10. 前田陽吉

    前田説明員 お答えいたします。人工降雨の問題につきましては、これは電力用水の問題でございますとか、農業用水の問題でございますとか、あるいは霧を将来消すことができるとか、できないであろうかとか、まあ将来の問題といたしましては気象人工制御というものにつながる大きな総合的な問題でございますので、科学技術庁の方で人工降雨の問題を大いに推進をするということになりまして、昭和三十六年度に二千七百六十万円、昭和三十七年度予算では三千七百七十万円の委託費で計上されておるわけでございます。それで、当庁といたしましては、この人工降雨関係する学識経験者を備えております人工降雨研究協会という社団法人がございますが、そちらに委託をいたしまして、昨三十六年度九州地区におきまして予備実験冬季の基礎的な諸実験を行なったわけでございます。本年度はさらに関東地方をも加えました。九州は引き続きもちろん実施をいたしますが、九州における本実験を夏と冬に予定いたしておりますほか、関東におきましての予備実験並びに冬季の本実験というのを予定しておるわけでございます。この人工降雨の問題は、御承知の通り、非常に気象条件等が毎年変わるおけでございますので、一年や二年のデータではこの効果を判定するわけに参らないわけでございます。従いまして、約五年計画で統計的な要素も加味いたしまして試験をしたいと思っておるわけでございます。  申しおくれましたが、当庁におきまする研究委託の主点は航空機使用ということでございます。従来は、電力会社等で、戦後地上発煙方式による人工降雨の小規模な試験はかなり行なわれて参ったわけでございます。しかし、諸外国、特にオーストラリアあるいはアメリカ等研究状況を見ますと、航空機によることが非常に効果が多いというふうなデータもございますので、航空機による方式というものを科学技術庁委託によって行ないたいというのが主眼でございます。先ほど申しましたように、約五年間の研究によりましてデータをとりたいということでございます。ただいまはちょうど一年たった程度でございまして、まだその効果の点につきましては具体的に申し上げることができない段階でございます。
  11. 岡良一

    岡委員 今直ちに今日の東京都民水飢饉状態人工降雨によって救済できる、またしなければならぬと私は申し上げているわけではございません。しかし、禍を転じて福となすという意味において、人工降雨実験というものはよほど政府としても力こぶを入れていただきたい、こういう気持で私はお尋ねをしておるわけでございます。そこで、諸外国における人工降雨実績はどういうことになっておりますか。
  12. 前田陽吉

    前田説明員 諸外国におきまして人工降雨の問題につきましての研究がなされておりますのは、いずれも戦後のようでございます。アメリカにおきましては、戦後いち早く気象関係者あるいは軍の関係者によりましての大規模な実験が開始されたようでございます。ハリケ−ン・プロジェクト等によりまして、台風方向をそらすことができないかというような実験までやったようでございまするが、人工降雨によりましてどの程度降水量増加されたかというふうな問題につきましては、いろいろデータを総合いたしてみますと、一〇%から一五%ぐらいの増加は行なわれるのではないだろうか、ということが文献からうかがわれるわけでございます。それからオーストラリアにつきましては、一九五〇年ごろから航空機使用いたしました実験を開始しておるようでございまして、このデータを見ますと、過去四年間の資料によりますと一九%ぐらいの雨量増加があるというようなデータがございます。なおイギリス等でも行なっておるようでございまするけれども、軍の関係で行なっておられるようでございまして、報告は見当たらないようでございます。ソ連でも行なっておられるようでございますけれども、これにつきましても報告はうかがえないという程度でございます。以上が大体諸外国状況でございます。
  13. 岡良一

    岡委員 東京都で、村山でございましたか、小河内貯水池でございましたか、人工降雨実験をしておるということを耳にしたこともございまするが、その実験はどういうことになっておりますか。
  14. 石橋多聞

    石橋説明員 東京都におきましては、小河内貯水池流域におきまして、今までに数回この実験を行なっております。なお、本年度東京都といたしましてもこのために五百七十万円の予算を計上いたしておりまして、沃化銀発煙装置四台を延べ作間にしまして四百五十時間実施するだけの予算を計上いたしております。なお、恒久の対策といたしましては、総事業費が一億円で三十六年度から三十八年度までに発煙装置四カ所、これは恒久的な施設を作る、また気象観測地点を十四カ所設ける、これらを中央において管理する施設を設けたいという予定になっております。従いまして、本年度におきましても気象条件がこれに適合するというときには、いつでも都の水道局といたしましては実施をする予定をいたしております。
  15. 岡良一

    岡委員 とにかく現在の人工降雨実験は、諸外国の例を見ましても、あるいはまた東京都における実験を見ても、雨になり得る可能性、いわば雲が上空にあるということが一つの大きな前提条件になっておるようである。しかし、これはいろはいろはでございましょうが、人気中には常に水分はあり得るのです。雲を作る可能性はあり得るわけなんだから、これをある物理的条件のもとに雨に凝縮させることも不可能ではないと私は思うわけであります。また、そこまで実験が進んでおる国もあるやに私は聞いておる。しかし、それはそれといたしましても、今の沃化銀を発射するというか、散布する東京都の小河内貯水池における実験では、雲の高さにまで事実届いておるかどうか、あるいはまた散布した沃化銀が太陽の熱や光によって十分に氷晶核になり得るかどうかという点にも問題があると思う。そういう点、振興局長のように、飛行機をもって散布することがより有効であるということにもなろうかと思うのであるが、その点については確認をしつつ実験をしておるわけでございますか。
  16. 石橋多聞

    石橋説明員 確かにお説のように、航空機使用して散布をすることが一番効果的のように聞いております。しかし、残念ながら小河内地点は、その流域面積が非常に小さいということと、ちょうどこの流域面積の真上が航空路の路線になっておりまして、常時飛行機を飛ばすというわけに参りませんので、非常に時間的な制約を受ける。そのために、せっかくの機会を逃がすことが多いということが予想されますので、東京都におきましては地上における沃化銀薫蒸という方法を採用いたしております。
  17. 岡良一

    岡委員 小河内上空等民間航空機エア・ウエイになっておるのですか。それとも、アメリカ練習用飛行機のためにコントロールエリアになっておるのですか。
  18. 石橋多聞

    石橋説明員 その点はつまびらかにしておりません。
  19. 岡良一

    岡委員 これは三木長官お尋ねをいたしますが、万一東海村における原子力研究所上空のように、アメリカの爆撃のためのコントロールエリアであるならば、やはり日本政府としてこの使用制限というものを解除するように努力すべきだと思う。民間エア・ウエイに当たっておるというならば、これは当然運輸省と科学技術庁との話し合い東京都を加えての話し合いで解決できる問題であると私は思うのであるが、この点長官としてはどうお考えになりますか。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 私も具体的には今承知しておりませんが、これは研究をいたしてみたいと思います。いろいろ具体的にどうなっておるかを調べまして、各省と話をする必要があればいたすことにしたいと思います。
  21. 岡良一

    岡委員 水資源公団はこの一日から発足をいたしておる。これについても、新聞紙等を通じて見た限りではいろいろ批判もあるようでございます。しかし、いずれにしましても、これは利根川水系の水を小河内なり、山口貯水池なりに運ぼうというので、下久保なり矢木沢なりのダムを作ろうというような計画もあるように聞いております。しかし、これは竣工するとしても、貯水池までの通水人体昭和四十年ごろではないか。浄水をきれて都民の日に水が供給されるのはさらに二年を要するだろうというようなことにもなる。そういうわけで、非常に前途遼遠なことである。ところが、水飢饉はせっぱ詰まった問題で、小学校では学校給食をやめる。おとうふやさんも、おそばやさんも、出前をやめたり、いろいろ苦情が起こっておるというように、非常に実害が市民の生活の台所の周辺にひしひしと起こっておるわけです。私は、先ほども申しましたように、人工降雨で直ちにこれを救済しろなどというやぼなことを申し上げておるわけではないが、こういう機会にもう少し政府としても力を入れてもらいたい。エア・ウエイだから飛行機は飛ばせない。飛行機を飛ばせなければ技術的にも人工降雨実験としてのほんとう確認ができないと私は思っておる。にもかかわらず、その飛行機民間エア・ウエイなのか、あるいは米軍のためのコントロールエリアなのかわからない。とにもかくにも飛行機は飛ばせないというような、ゆうちょうなことでは私はいけないのではないかと思う。こういう点は、せっかく研究調整局を設けられたのだから、科学技術庁としてもしっかり調査をして、そして実験に遺憾なきを期してもらいたい。  なお、この際さらにお尋ねをいたしたいのは、雨を降らすこともさることながら、降り過ぎて困っておるという災害もあるわけです。ここ十年ほどの間には、いわゆる梅雨前線集中豪雨というもので、毎年ほとんど同じようなところに、能登半島、伊豆半島あたりに大へんな雨量が流れ落ちておる。大体日本全体では、台風の前後にかけては二千億前後の災害復旧費を使い、そして千九百万前後の人が罹災者となっておるわけであります。であるから、この水が飢饉をしておるときに雨を降らす実験も必要であるが、いま一つは、そういう降り過ぎて困る状態を解消するために雨を降らすということもある。こういうこともあわせた意味での、いわばほんとうの実のある研究をやっていく。そういうことのための具体的な調整をやろうというのが研究調整局の大きなお仕事ではないかと私は思います。そういう方向にいわゆる防災科学というものを確立する。単に雨が降らないから水が足らない、あるいはまた天気予報が間違っておったので都民に迷惑をかける、その結果としては水を使ってくれるなという非常にプリミティブな、原始的な対策ではなくて、むしろそういう自然現象である気象状況というものを、現在の進んだ科学の力で自然改造をやってのけるという進んだ高邁な意欲で、科学技術庁がこうした天然の諸災害に対処すべきであると私は思う。そういう方向に向かって、こういう機会に格段の努力を私はぜひ科学技術庁として払ってもらいたいと思うのでございますが、長官の御所信を承って、私の質問はこの程度で終わります。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員考えと私も同様に考えております。そういう点で、今後防災科学一環として水の問題というものは真剣に取り組みたいと考えております。
  23. 岡良一

    岡委員 問題は、予算もこうしてすでに議決をされたあとでございますが、幸い科学技術庁には研究調整局を持っておられる。でりあますから、ともすれば従来のあり方から各省割拠主義に陥って、せっかくのまじめな研究体制というものがそれに災いされる、研究推進がはばまれる危険性があるのであるが、あくまでもやはり総合的に、科学技術庁の責任において、予算が必要であれば調整費等を支出して、もって予算のバック・アップをしながら防災科学確立方向に進めていく、こういう御決意があるかどうか、この点をもあわせて承りたいと思う。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 必要があれば研究調整費も使って、そういう緊急な問題に対して総合調整の実をあげたいと考えております。      ————◇—————
  25. 前田正男

    前田委員長 次に、核原料物質開発及び核燃料物質生産等に関する問題についての質疑を許します。  なお、本問題については、原子燃料公社理事長高橋幸三郎君及び同公社理事長原玉重君をそれぞれ参考人として出席を求めておりますので、あらかじめ申し添えておきます。赤澤正道君。
  26. 赤澤正道

    赤澤委員 先般、現地での原副理事長新聞発表を見まして非常に意外に思ったので、実は真相を公社にただしたのです。あなたは当時御旅行中であって、いらっしゃらないので、欠席判決をしてはいけないと思って名前は申さなかったわけですけれども、高橋理事長のおっしゃることと違っている。ただ、われわれは新聞をうのみにして決してあなたを責めようとは思っておりませんが、理事長と副理事長との間にこうした発表について意思の統一を欠いているようなことはないでしょうか。
  27. 原玉重

    原参考人 私の現地出張中の新聞記事について、いろいろお手数をわずらわして相済まぬと思います。それにつきましては、大体実際そのままをここで御報告を申し上げましたら御了解が得られることかと思いますから、まずちょっとの時間を拝借しましてそのままを申し上げまして、そしてあとまた異論がございましたら御質問願いたいと思います。  現地へ参りますと、常に新聞記者がつきまとう。会わぬわけにいかぬくらいつきまとう。また、会って非常に協力してもらうこともけっこうかと思いまして、常に会うのでありますが、今度も倉吉出張所倉吉付近新聞記者諸君にお会いをいたしました。しかし、これは会う前にも連絡をいたしましたが、何ら新しく申し上げることもないし、ニュースもないから、特にお会いしてもどうかと思うという工合にも言っておきましたが、とにかく会いたいということで、面会をした次第であります。面会をしまして、やはり今申し上げる通りに、特にきょう申し上げることはないのだということを言いましたが、いろいろ向こうとしては質問がある。どういう用件で現地へ参ったか、いつもそうでありますが、粗製錬所は一体どうするか、というような質問が出るわけであります。それで、私としては、ニュースの提供とか公社としての発表というような意味では全然面会もしませんし、話もいたしませんが、いろいろの雑談をした次第であります。その内容につきましては、おもに粗製錬が質問の中心であったのであります。粗製錬につきましては、話のときには、これは中間プラントとわれわれは言っておるので、こういう程度のものを粗製錬所と言うか試験所と言うか、そういうことは名前つけようだが、という工合に断わっておきました。ここでもかりに粗製錬と申し上げますが、粗製錬所の設置については、昨年十月二十五日に国会理事長からはっきりと、三十八年度には建設にかかりたい、三十九年の中ごろには完成させて、中ごろから工場を動かしたいということを申し上げておるので、公社役員としては、とにかく今度帰ると五月、六月の期間に三十八年度事業計画予算を作ることになるのだから、この際は一応粗製錬所の予算を作ってみたいと思うというふうに申し上げると、いろいろその内容についてまた質問があります。これに対しては、内容については私は今日何も知らないのだ、わからない。それはただいま三沢開発部長今井冶金部長がそれぞれ詳細に案を作っておってくれるので、大体四月中というような話であったから、今度帰ればいずれお話もあるだろうし、理事会にもかかることだろう。従って、今日においては自分としては何らその案の内容については知らないのだ。しかし、前から東海製錬所の方でだんだん研究をしておるのだから、直接製錬というやり方、つまり中間でイエロ・ケーキを一ぺん作ってまたとかすというようなやり方でない方法、これを公社研究を進めておるからして、その結果も大体東海製錬所の方ではもう完結も近づいておるようだから、これを採用するようなことになるだろうという話が出た。一体公社がこちらの方へ作るというのは粗製練所なのか、精製錬所なのか、どうなのかということを聞きますから、その話の間においてこの問題も出た次第であります。続いて、それじゃ場所はどこかというような話も出ました。これは諸君御存じ通り、われわれは今案を作ってみるということだけは絶対間違いない、決心をしているのだが、この公社の作った案は七月ごろは原子力局へ持ち出し、また原子力委員会へかかり、引き続いて大蔵省の方へ持ち込むというような工合であり、最後は国会予算として通過をしなくてはならぬ問題だから、一体これがはたして公社の案の通りに認められるかどうかは全然わからないのだ。冗談半分に、きょう私はこう言っても来年の今ごろ来ると諸君から笑われるかもわからない、どこかで押えられて実現しなければ諸君はきっと笑うだろうが、その点は実際わからないのだ。いわんや、設置場所についてはなおさらわからない。これは神様でもきょうのところではわからぬだろう、これは予算でも通過して、いよいよ実行するという際に、どこにしようかということをきめるという段取りになるので、慎重に研究研究を重ねてきめることだからして、とうていそれはわかりっこないんだ、という工合にまず説明をしておいた次第であります。  従って、この点についての私の雑談というものは、大体昨年の十月二十五日にこの席上で理事長からお話を申し上げたこと、及び昨年十二月に当委員会として人形峠東郷鉱山へおいでになった際にそれぞれの場所で私からもお話もし、難談も出、当時私から新聞記者にも話したことで、私としては三番せんじの、ニュースになるようなものではないという考え方で今のような話を進めた次第第であります。とろこが、新聞社の方は、何か記事も少なかったのか、ある程度書いたので、いろいろ皆様に御心配をかけるようなことになった次第であります。  そこで、新聞記事がうそかほんとうかというようなことが、この前の速記録を拝見しますとありますが、あの記事はうそはないと思います。ただ、たくさんの雑談の間からところどころ書いておってくれるのですから、うそではないけれども、非常に誤解しやすい点はあるということを私は言いたいように思います。たとえば、製錬所はどこに作るのだ、こういう質問ですから、単に、それはわからぬ、これだけ一言いっておけば間違いなかったかもわかりませんけれども、人形峠に作るか、倉吉に作るか、三朝に作るか、日本海岸に作るか、瀬戸内海に作るか、東海製錬所の方へ持っていくか、そういうことは一切わからぬ、こういうことを私が言った。そのうちから、人形峠か倉吉かわからぬのだ、こういう記事になったと思うのです。従って、読む方の人から見ると、少なくとも人形峠と倉吉と、この二つに限定されたような誤解を受けるということになります。私としては別に新しいニュースでもなく、大した問題になることを言ったつもりでもなく、間違ったことを言ったつもりでもない。わからないからわからないと言っただけです。新聞社の方でも、別に私の言ったことをうそをお書きになったのではなくて、私の言ったことを一部分つまみ上げてお書きになっただけだ。ただ、これを私が見れば、大体私が言ったようなことだな、こう感じて読み取りますし、ある人から見ると、人形峠と倉吉のどっちかに限定したようなふうにとられる。あるいは、製錬所の規模は幾らか。それはほんの試験だから、あるいは五十トンかもわからぬし、百トンかもわからぬのだ、こういうふうに私の方で言ったことを、百トンぐらいと書いてある。これは大したうそじゃないので、新聞記事は間違っておると私から申し上げるほどのことじゃないんだが、しかし、読まれる人から見ると、百トンだと言った、こういうふうに誤解を受けるような節があると思います。私はそういう意味合いにおいては、はなはだ遺憾なことだと考える次第であります。  なお、この際、あれについて一、二申し上げておきたいのは、赤澤委員からこの前のこの委員会で御指摘下さいました用地の問題であります。これは赤澤委員のおっしゃる通りに、われわれも非常に慎重を期しております。重大な問題だと思っております。従って、私は、設置場所はわからないんだというふうなことを言ってぼかすつもりでありましたが、ああいう記事になって赤澤さんから御指摘を受けたということは、ごもっともと思いますし、まことに同感であります。将来こういう点につきましてはより以上十分注意をいたしまして、赤澤さんのおっしゃる通り、事業に支障のないよううまくやっていきたいと思っておる次第であります。  また、齋藤委員からの御質問で、直接製錬ということにきめたのか、きめるのは不都合じゃないかという意味かと思いますが、これは直接製錬という名前はどうかわかりませんが、その内容については前回今井理事から申し上げました通りであります。何といったって、世界でまだやっていない問題だし、私はこれは非常にりっぱなものだと思いますが、これをここ一、二年かかって熱心に職員がやってくれたのですから、今度の人形峠に中間プラントを作るとすれば引き続いてこの方法でやってみたい、こう思うことは御無理はないと思いますし、職員、公社といたしましても結局そういう方に進むのが順当じゃないかと思います。従って、現在公社の中で今井理事や三沢理事が作っておってくれる案も、おそらくそれを中に入れての案かと思います。しかし、私が直接製錬法を用いた製錬所を作りたいんだということを言ったのは、そういう案を作るということを申し上げただけで、それをもって、民間のその他のりっぱな案ができた際にそういうものを排除しようという意味合いでは全然ございません。予算そのもの、案そのものを、原子力局以上いろいろの機関でいかようにも修正し、否認されることもあるのですから。直接製錬法そのものにつきましても、案を立てるわれわれとしましては、何だかわかけがわかりませんがやりたいでは通らないので、案を立てる以上は今まで研究しておったものを生かして一つ中間プラント案を立てるということにいたしますが、これが局へ持ち出し、原子力委員会へかかり、あるいは皆さんの御審議の結果、いやそれ以上もっといいものがあるのだ、それはこっちの方がもっといいんだという場合においては、これはいかようにも御変更になるようなことを何らはばむ意味で私は申し上げたのではないのであります。これは当然そういういいものがあれば、公社の性質からしても、そういうものを取り入れても、やはり中間プラントを作るとか、研究を連めるとかいうふうにやるようになるのが常識であろうと思うのであります。従って、齋藤委員の御質問に対してちょっと弁解をいたしたいのは、私が直接製錬法でやりたいと思うというのは、そういう案を立てるという意味合いでありまして、それ以後においていろいろりっぱなものができてきた、それを排除しよう、あるいは原子力基本法、または先日の原子力委員会の統一見解にあるところの公社民間とをいろいろ研究の結果、いいものが出れば比較対照してみてきめるのだというようなことを別に否認するものでも何でもないのであります。どうかその点につきましても御了解を願いたいと思う次第であります。  ただいまの赤澤さんの御意見で、理事長と副理事長と違った考え方ではないかというような御質問でありまするが、そういう点については全然ございません。私が現場において発表したことはむろん理事長の示された範囲内、原子力局委員会及びその席上で皆さんの御了解下さったこと以外には一言も申しておりません。それ以上のことを全然新しい発表、新しい企画などというようなことでなまいきなことはしていないつもりであります。まじめに女房役を勤めておるつもりでありますし、公社の中はすこぶる理事の間でもなごやかで、今御心配のような点は全然ございませんから、御安心を願いたいと思う次第であります。
  28. 赤澤正道

    赤澤委員 原副理事長は、だいぶこの間の速記録や新聞その他参考資料を御研究になって、公社にも傷がつかぬように、新聞も傷つけぬように、うまい政治家的答弁をなさいまして、そのまま承ればまことにけっこうで、それで私はいいと思う。了解いたしますけれども、こだわれば幾らでも問題はありますよ。ここで、東海村で粗製錬方式を完成したということを言われましたが、私はびっくりしたわけであります。この間の委員会で冶金部長に聞きましたら、いや、そこまで至っていないというきわめて自信のない表現をして、理事長もそこまでの確信は持てないということをはっきり言っておられます。そういう自信のない段階にあるものをもとにして、今度開発部長のもとで大体あらかたの粗製錬プラントのスケールというものを作りかかっているということも言われて、大体金額もこのくらいのものだということを言っておられるようだけれども、これは私はおかしいと思うのです。なぜこういうことを申すかといいますと、時を同じくして、あなたもごらんになったでしょうけれども、「原子力発電所の立地等に関する統一見解について」の中にこういうのがあります。「天然ウラン燃料の製錬については、現在、原子燃料公社を中心として探鉱から製錬までの技術の開発を図っているが、将来は民間企業において事業化されることを期待しており、本格的事業化を促進する場合は、公社及び民間において開発された最も有利な製錬方式を採用することとする。」ということは、今、原さんがおっしゃったこともこの通りですね。そういたしますと、もうすでに、これは齋藤委員が非常に御熱心ですけれども、民間ではすでに数個のパテントさえとって、自信満々の粗製錬方式考えているというところもある。これは御承知のはずである。ところが、公社の場合には、全然そういう特許をとる段階にまで至っておらぬ。それを、すでに完成されたものがあるかのごとき発表をなさっておる。それはいずれといたしましても、どっちの方式が優秀で、どれを採用することになるかということは、これは公社が勝手にきめられることではないと思います。やはり技術的に十分検討して、この方が有利だということの発表を下す機関は別になければならぬと思います。  それからまた、これは理事長さんに伺っておきたいのですが、すでにこういう段階に入っていきますと、今、鉱業権は全部公社が握っている。民間が粗製錬方式で優秀なものを発見いたしましても、原料というものは全部公社が握っているという形になるわけです。そうすると、ここに一つの新しい方法を見つけなければ、せっかく優秀な技術を持っておっても、その民間企業体で実際に手をつけることは不可能だから、ちゅうちょするということになってくる。また、そういうパテントの優秀なものを公社が買収して、公社の手で開発されるということはけっこうです。しかし、その間、円滑を欠くということになると、いたずらにこの開発をおくらせるのみだと思います。そういうことが気になります。今、そういう時期にすでに入ってくるわけです。しかも、この間高橋理事長は、実際原鉱を採掘するいろいろな経費がほとんど大部分だ、あとの粗製錬の経費は大したことはないという表現をなさった。すべての鉱物は、採掘から製錬に至るまでの過程を見るとそういうふうになっている。原鉱を掘ること自体がなかなか容易ではない。今までも公社は、莫大な費用を投じ、たくさんの人間を使って探鉱しておられるが、それを民間の手にゆだねるということになると、これは公社の計算次第でべらぼうに高い原鉱石にならぬわけでもない。そこらのところを一体どういうふうに今の段階でお考えになっておるか、これは理事長から伺っておきたいと思います。
  29. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 ただいまの御質問にお答えします。あの人形峠、倉吉を中心としました鉱区の大半は民間の鉱業地にあります。しかし、それを開発するためには、公社民間の鉱業権者と話し合いの上に、つまり探鉱契約を結んで、そうして探鉱を続けておるわけです。従って、掘った鉱石、将来掘られるウラン鉱石については、公社のものじゃございませんで民間の所有になっているので、補償しなければならず、一つの買鉱制度のようなものがそこに生まれてくるわけであります。従って、今買鉱のスケールがすでに発表されておることは御承知と思いますが、現在でも掘った鉱石に対しては、ごく小規模でありまするけれども、そのスケールに従って、賢い上げ法に従って金を払っております。ですから、もし民間で今の鉱業権者が直接やりたい、あるいはほかの民間会社と共同で開発したいという意思がはっきりある以上は、公社は無理にそれを拒むわけにはいかぬだろうと思います。しかし、話し合いの上で、条件次第でどっちでやった方が有利であるかということは今後の問題でありまして、まだその点ははっきりどちらからも何も意思表示もありませんし、われわれはとにかく地下資源として国の宝ですから、早くこれを開発するという面に強力に進んでおるわけでございますから、民間でもしその鉱区の開発をしたいという意思がはっきり出て、そうして円満に話がつけば、民間開発することは一向差しつかえないだろうと私は思っております。
  30. 原玉重

    原参考人 ちょっと私が答弁する筋でもありませんが、参考までに一言申し上げておきたいのです。先ほど赤澤委員からお話しの、今井理事のこの前の答弁ですが、実は直接製錬法につきましては特許を出願いたしまして、異議申立期間も経過いたしまして、もう特許庁の事務的なことだけが残っておるだけで、間違いなく近々特許になることになっております。従って、ただいま申し上げた今井さんの説明いたしました直接製錬法というものについては、日本の特許権は間違いなくおりることと考えておりますから、その点一つ御了承置きを願いたいと思います。
  31. 赤澤正道

    赤澤委員 この前の疑義が氷解いたしました。しかし、現地における公社の探鉱の活動がもう五年以上経過しておる現在、まだ私の方から見ますとはかばかしい効果を上げていないと思います。ということは、人形峠地帯はだいぶ進みましたけれども、新しく有望な鉱区の見つかっておる方面がありますね。神ノ倉とかあるいは東郷方面、こういった方面をもう少し積極的に、金の都合もあるでしょうけれども、進めていかれるわけに参りますまいか。
  32. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 その点は同感でございます。私ももともと採鉱屋ですから、山の開発については非常に今まで熱意を持ってやってきたつもりであります。人形峠の方は、御承知の通り、地勢その他の条件が割合によかったのでありますが、神ノ倉の方は、御承知の通り中央山脈の脊梁に近い非常に交通の不便なところで、しかも雪が多いので、昨年あたりは雪のために交通が途絶して、仕事ができない期間がかなり続きました。ことしはそういうことにこりまして、山元に住宅を作りまして、そうして下へおりぬでも、交通がかりに途絶しても、山でもって自給して仕事ができるような体制に今はできております。同時に道路も、昨年県のいろいろ応援を得まして、われわれも相当金を投じて、ジープが自由に通ずるようになっております。また、冬は積雪が一メートル以上、二メートルもありますから、ブルドーザーをちゃんと用意しまして交通を確保したいという体制に今は進んでおりまして、今年からはかなり仕事が進展するものと期待しておるわけであります。
  33. 赤澤正道

    赤澤委員 鉱物の総埋蔵量の点では人形峠地区が一番大きいということは、あなたの方ですでに結果が出ておるわけです。しかし、品質はむしろ人形峠のものよりは神ノ倉、東郷方面がいいというデータが出ておるわけですね。ですから、比較的おくれている東郷地区あるいは神ノ倉地区等の推定埋蔵量を早く確定していただかたくてはならぬと思うのです。これは粗製錬計画をいたしますについてもその基礎になるわけですから、見当は大体いつごろつきますか。これはばくとしたことになるでしょうけれども、大体の御見当がつくならばここでお聞かせ願いたい。
  34. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 人形峠の方は、今まで着手した方面はかなり探鉱の結果ははっきりわかって、鉱量も何べんとなく御報告申し上げておりますが、東郷鉱山の方は、方面、麻畑という最初に見つかったところは品位がよかった。ところが、実際坑道を切っていろいろ探鉱をやってみますと、鉱量としてはあまり大きな期待は持てないということがはっきりわかりました。しかし、一方神ノ倉の方は、前に申しました通り、非常に不便なところでありますけれども、非常に将来有望であるということがはっきり出てきまして、今第一鉱体と第二鉱体に手をつけておりますが、さらに第三、第四鉱体までボーリングでもって確認しております。ですから、これをはっきりさせるにはどうしてもまだ時間をかけなければほんとうのことはわからぬと思いますけれども、今年、三十七年度はかなりあすこを重点的に探鉱をやりますから、第二鉱体は大体見当がつくだろうと思います。鉱量の点は探鉱して見ませんければはっきりしたことは申し上げかねますが、沖年度は約二百四十万トンという総数量が計上されておりますが、最近の四月末現在では約二百八十万トンをこしているようです。かなり鉱量も確保されております。これは主として東郷方面の開発の結果、大きなものが出ているわけなんです。そんな状態でございます。
  35. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 関連。簡単に今の問題で当局に何っておきたいと思います。この前、兼重原子力委員の統一見解御発表によりまして、原子燃料の国産化については「公社及び民間において開発された最も有利な製錬方式を採用する。」これに対して、どういう具体的の方法かという御質問を申し上げましたところ、原子力局長並びに兼重原子力委員から、専用部会を設けてその製錬方法の適否について検討を加えるということも一つ考え方であるという御答弁があったのでございますが、もちろんこれは技術的な問題でございます。今、舟木工大教授と古河電工で共同製錬の研究をやっておりまする問題は、すでに六つか七つ特許権が確定しておる。それから原子力局から五百万円の助成金が出て、その結果がすでに公表されておる。また今、原原燃副理事長のお話を聞くと、原燃の直接製錬方法も遠からず特許登録になる。でありますから、この際われわれといたしましては、今まで議題となっておりまする人形峠を中心とする国産ウラン鉱石の開発を行なう最も早急確実な方法として、どういう方法が粗製錬の方法として適当であるかどうかを検討を加えていただくことが一番いいじゃないか。原燃で今お話があった直接製錬法というものも世界で類例のない方法であるということがいわれておるが、しかし、実際やってみると、あるいは経済的に国際市価に遠く及ばないものが出てくるかもしれない。ですから、そういう国産原料を材料として粗製錬なりあるいは精製錬なりをする幾多の方法が特許になっておるならば、原子力局あるいは原子力委員会でその検討をすぐ加えていくという方法をとることが一番いいじゃないか、さように考えるのでありますが、これは専門部会を設けて、いつごろからそういう実際の問題に取り組んでいかれるお積もりなのか、一つ御答弁をお願いいたします。
  36. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 お答え申し上げます。その開発を進めますのに、粗製錬の技術ができたら始めるとかいう、それだけまだポイントがしはられておるわけではございませんので、今の御指摘の点の検討は適当な時期に始めなければならないと思いますが、今一番先に検討すべきものがそれであるかどうかということを、私自身今日はっきりした考えを申し述べるだけの用意がございません。しかし、御指摘の点もいろいろあることでございますから、至急に検討いたしまして、そういうものについての意見を聞く専門部会を早く作る方が適当だという結論になれば作り上げたい。しかし、今いつごろそういう専門部会を作る予定でございますと申し上げることはできません。
  37. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 それは原子力委員会原子力委員会原子力局、それから原燃、どちらでもよろしゅうございますが、今のように幾多の方法が案出されて、特許確定、または特許になるべき運命にある技術がある。がしかし、それをいずれがいいか悪いかという検討を加える段受りというものはまだできていない。これをいつやるのかわからない。ところが、当委員会では一日も早く人形峠を中心とするウラン鉱石埋蔵地帯の開発をやったらいいじゃないかという意向を、われわれいつでも持っているわけなんです。私の考え方からいきますと、世界的に見て、粗製錬をやっても、あるいは国産原料をもって金属ウランを作っても、大体世界の市価に甲乙ない、これは経済性もあるという方法が案出されれば、思い切って山の開発ができるのは当然ですね。しかし、その検討をいつ加えるかわからないということであれば、山の開発は本式にはできないことになる。われわれが山の開発をしてくれというのに、そういう方法が確立されないで、ではほかに方法があるかというと、とにかく鉱石を掘って、そいつを粉砕して水洗いして二%とか三%とかの富鉱体を作って、それを貯蔵しておくということでもやるならば、一応山の開発はやれば相当やれるのじゃないか、こう私は思うのです。われわれが問題として考えておる日本ウラン鉱石埋蔵地帯の開発というものは、さっそくにできないという前提に立たなければならないのか、やれば何か方法があるという前提に立ってものを考えた方がいいか、それは一体どっちなんですか。どなたでもけっこうですが、御答弁を願いたい。
  38. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 ただいまの御質問にお答えします。現在のところ、国産ウランを出す計画としてどこが一番隘路になっているかと申しますと、つまり粗精錬段階がまだできていなかったのでございます。これが今までの経過でございます。ところが、先ほどからたびたび話がありました通り公社でも公社なりの研究は進めて参りましたし、それから民間でも古河さんの方でいい方法研究しておられるということも伺っております。そこで、どっちの方法がいいかということは、結局粗製錬方式を決定して、そこで開発の一貫した計画が出てくるわけでございます。私の方としては私の方なりに、公社開発した方法によってまず中間プラントを作るのが順当である。このことについては前回三沢理事からここで詳しく御説明申し上げたから、私からは繰り返しませんが、要するに粗製錬所を作る段階には、実験室から粗製錬所の本格的な工場にいく間にいま一つ段階あることをわれわれは強調したいのでございます。ということは、今日のようにいろいろ急いでやってみましても、われわれとしては日本のウランの開発は初めてのケースでありますから、むだな費用のかからぬように、やはり慎重に計画を進めていくのが順当だと思います。そういう意味から、まずとりあえず、先ほど原副理事長も詳しく申しました通りに、三十七年度予算を計上して、そしてできれば三十八年度にその中間規模のものをやりたい。ですから、現場の粗製錬所に到着するまでに、まず最初に東海村にある今の応用実験室、それが必要上できました。それから、現場の粗製錬所にいくまでにはいま一つ現場に中間規模のスケールの小さい、プロトタイプというような言葉を使った方がいいかもしれませんが、そういうものが山元にどうしても必要だ。このことは一般われわれの仲間では常識になっております。そういうものを三十八年度に作りたいというのは先ほど原副理事長説明した通りでございます。その中岡規模の実験工場、これはものは生産しますけれども、本格的な生産工場じゃありません。あくまでも中間実験工場でございます。そこではっきりしたデータをつかんで経済性なり技術士の問題を解決して、そして本格的な粗製錬工場を建設するという段取りにわれわれは考えておるわけであります。いつ日本のウラン資源を開発するのかわからないじゃないかという御質問でございますけれども、私どもとしては、いろいろ事情もありましょうけれども、本年三十七年度はそういう予算を計上して、三十八年度からその計画実施し、そうして三十九年度には工場を完成して本格的な採掘作業に入りたい、こういうのがわれわれの念願でございます。
  39. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私はこの前からそういうことを質問しているのです。今理事長の言われたことと同じことを質問している。とにかく舟木教授のパテント七と、それに五百万円の助成金をやって、古河で一千万円以上の中間プラントを作ってやってみたところが、原子力局でりっぱなものだと認めるというのでしょう。ただし、経済的にどうか。だから、プラントを作るのだから、早く経済性を確めてくれ。あなたの方も同じことを言っているでしょう。やはり中間プラントを作って経済性を確めたい。だから、原燃がそういうことを要求しているし、古河の方もそういうことを要求している。二つともそういうパテントの技術が出てきて、技術的に成功しているが、経済性はどうかという段階になってきているときに、一体原子力委員会はこれをどう取り扱うかと言っても、まだやる気がないというから、それはおかしいと言っているのです。しかも、統一見解においてはよい技術を採用すると言っておきながら、二つ技術が出てきたときにこれを一体どう判定するのか。やるのかやらないのかと言うと、まだやる気はないという答弁でしょう。大臣、どうです、行政指導として。そういう統一見解を出しておいて、二つあるが一体どっちをとるのだと言ったら、まだその検討はやる気がない、ここでは言明できないという兼重委員の御答弁です。こんなことがありますか。それでは日本科学技術を担当しているなんて言えないと思いますが、これに対して大臣のはっきりした答弁をお願いしたい。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 兼重委員の言われることも、いろいろな方法があって、これでいくのだというそのことについて検討中という答弁だと私は思うのであります。燃料公社あるいは民間においても、今齋藤委員のお話のような研究は相当進んでおるようでありますから、これは至急に結論を出して、そうしてこれが最良の方法だということについて製錬を促進するようにしていきたいと考えております。
  41. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 大臣の御答弁がございましたから、これ以上私は関連質問を続行いたしませんが、いつでも責任のがれのような答弁があるのです。われわれのはそうじゃない。われわれが原子力委員会設置法を作ったときも、原子力問題に対しては絶対の責任を負ってもらいたいという建前からそういう法律を作っている。それが問題にぶつかると、読んでみるとあいまいもこたる答弁しか出てこない。そんなあいまいもこたる答弁をもって責任の所在を明確にするといっても、できないことですから、そういう答弁をするくらいなら原子力委員会というものはかえってじゃまになる。ですから、こういう問題は、製錬法については原子力委員会が責任をもって専門部会を作って、ここで検討してきめるのだ、こういう統一見解をお出しになったら、それを直ちに実行に移すような体制を作って、今古河でやっている方法と原燃でやっている方法と比較対照して、そうしてここで技術的な判定、経済上の判定をして、これがよいときめるのがやはり科学技術行政の指導力だと実は考えておりますので、どうぞそういう点をはっきりやるようにしていただきたいと思います。
  42. 前田正男

  43. 岡良一

    岡委員 先般の委員会では三木原子力委員長の御出席がなかったので、中途で保留をしておいたのでございますが、あらためてお尋ねしたいと思います。  それは、今問題となっている特に核燃料物質について、いかなる理由で民有にされたのか、この点でございます。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいろいろ価格の変動もありますし、今日のような情勢においてはこれを民間の所有にすることが適当であろうというような、いろいろ総合的な判断に基づいてそういうことをいたしたのでございます。
  45. 岡良一

    岡委員 核燃料物質の国有化の方針は、過去三年の間二回閣議の了承を得ておられるはずでございます。ところが、先般突如として民有に移された。その理由として閣議に原子力委員会が提出されました文書を見ますると、損害賠償法も成立をした、また規制法も改正したということが書いてあります。しかし、それだけの理由で民有に移されるというならば、原子燃料公社法第一条「原子燃料公社は、原子力基本法に基き、核原料物質開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理を総合的かつ効率的に行い、原子力の開発及び利用の促進に寄与することを目的」とすると書いてある。この燃料公社法第一条の規定から見まして非常に私は疑義があると思う。だから、ただいまの大臣の御答弁では私は引き下がるわけには参りません。もっと具体的な理由がなければなるまいと思うのでございますが、ないのでございます。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 具体的と申しますのは、今言ったように、これは国有の形式にする前においてはその必要があったのでありますが、今御指摘のようなこともあるし、政府が十分にこれを管理ができる。そういうときに、市価においても変動はするし、そういうものを政府がこれを取り扱うよりも、民間の所有にして、しかもこれに対して厳重に政府が管理できるならば、その方が適しておるのであろうという判断に基づいたものでございます。
  47. 岡良一

    岡委員 たまたま兼重委員もおられますので、お尋ねをいたします。  これは要するに、いよいよコールダーホール改良型の東海発電所の燃料の契約を結ばねばならない立場になっておる。すでに相手国からは代表が参って折衝を始めておるはずです。そういう事態が切迫をいたしましたので、当然日英動力協定によって政府としてオーソライズする機関が買い取らねばならぬ。それで、これまでのような国有の原則を固執するわけにはいかない。そういう必要からこれを民有に移すという方針が打ち出されたのではないか。兼重委員は、特にこの問題については、その原子力委員の中でも中心になっていろいろ御努力あったかと思うのでございますが、率直に申し上げて、これは東海発電所のために民有に移したのではないかと私は思わざるを得ない。ただいま大臣の御答弁等を見ても納得いきがたいのでございます。率直な原子力委員会としての御心境を一つこの機会に明らかにしてもらいたい。
  48. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 その二度目の閣議了解をとりますときには、私は確かに原子力委員会におりました。もちろんそのころ、御指摘のような東海発電所のこともございましたけれども、その必要からそういうふうに変更したということでは決してございません。あの会社の燃料問題だけに限って申しますならば、日本政府が持っておりまして、日本政府の形で折衝をやって、それを東海発電所を持っている原子力発電株式会社に貸与するという方法も、とろうと思えばとれるはずでございます。でありますから、最初のヘッド・オブ・コントラクトを結びましたときには、そのどちらでもできるようなふうにしてございます。従って、国有にしなければならないという理由が解消したらむしろ民有にする方が便宜が多い、あるいはその方が利益が多いという判断に立ったわけでございます。閣議了解をとりますときにつけてあります理由が、それまで国が所有するという方法をとらないと、万一災害があった場合の補償の点についてもまだ安心ができませんし、あるいは民有にした場合のその後の移動その他について、十分押えられるというふうなところにまでなっておりませんでしたので、これを所有の方式で押えるということにそれまでなっておったのを変えたというのでございます。
  49. 岡良一

    岡委員 しかし、昨年であったか一昨年の四月でございましたか、すでに二回目の、核原料物質はこれは原則として当分の間国有のもとにおくという閣議の了承があったときは、この委員会は核災害に対する損害賠償法の審議中であった。でありますから、この法律は当然成立することを予期されておった。また同時に、規制法の改正も審議しておった。でありますから、それが成立をして、一年後にそのことを理由として民有に移すということは、私どもとしては納得できない。  そこで、今の御発言について重ねてお尋ねいたしますが、要するに東海発電所のためにどうしても民有に移さなければ工合が悪くなった、そういう情勢の変化から民有に移したのである、こう率直におっしゃればおっしゃったまでのことなんだが、そうじゃないのですか。重ねてお伺いいたします。
  50. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 その点に関しまして私の記憶をたどりますと、そのときには燃料要素の具体的な交渉その他、直接原子力発電株式会社でやらないと非常に困る、あるいは取りかえ燃料が必要な時期にくるようにするためにも自分たちが主になって折衝したいというような希望はございました。しかし、そのことだけの理由で国有をはずして民有にしなければならないということでない、少なくとも私はそう判断しておるわけであります。その方が幾らか便宜が多いということはございますけれども、そういうことは政府が中に入りましてもやりようはいろいろ考えればあると私は考えておりましたので、そのためにどうしてもそうしなければならないからこういうものに変えたということには私は少なくとも了解しておりません。その方が便宜が多いということはもちろんございます。だから国有にすべしということと、便宜のために民有にすることのいい悪いは、あるいは意見の相違があるかもしれません。
  51. 岡良一

    岡委員 それでは、委員長お尋ねをいたします。原子燃料公社法の第二十条に、原子燃料公社については、「公社の業務は、原子力委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める核原料物資の開発及び核燃料物質の地産並びにこれらの物質の管理に関する基本計画に基いて行なわれなければならない。」と規定してある。でありまするが、今これを民有に移すということになりますると、はたして内閣総理大臣の定めた計画に基づいて核原料物質開発が実際問題としてできますか。今兼重委員は、いわゆる時宜に応じて便宜上というような言葉を使われました。実際原子力委員会でできますか。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 その点は、計画的に開発することは可能だと思います。それは開発する場合にもいろいろ許可が要りますから、全体としての計画ができないというふうには考えていないのでございます。
  53. 岡良一

    岡委員 諸外国では、原子力の研究開発の初期段階ではほとんど国または公社がやっておることは御存じの通りなんです。ところが、日本ではいきなりまず核原料物質から民有に移した、あるいは原子力発電も民有に移した。私どもは当初から強くこれに反対しておったことは御存じの通りでございます。そこで問題は、許可等があるから計画通りに物事が進展するように管理ができる、こうおっしゃいましたが、許可権を政府が持っておる、原子力委員会が持っておるということは、消極的な意味での管理はできるかもしれません。しかし、積極的に計画を遂行するがための積極的な管理が一体それでできましょうか。たとえば、具体的な例を申し上げますと、いま天然ウランを製錬いたしまして、成型加工いたしまして、これを東海発電所に渡します。その場合に、大体年間六十トン以下——国産炉もできましょうが、これとてもわずかなものでしょうから、天然ウランの成型加工も含めて七十トン程度のものを民間の会社にゆだねる。民間会社とすれば当然経済ベースというものを考えてこざるを得ないのであるが、一体そういうことが民間会社において可能なのかどうか。具体的な数字で、これは原子力局長からでもいいが、お示しを願いたい。
  54. 杠文吉

    ○杠説明員 お答え申し上げます。ただいま岡先生のあげられましたところの例によりますと、民間でも相当な能力を持って核燃料の成型加工等ができるということの想定のもとにお尋ねになっているようでございます。ただいまのところ、もちろん各社一生懸命に研究しているようでございますから、確かに少量のものについての試作はできるわけでございます。しかしながら、御承知の通りに、国といたしましては、名前も燃料公社と申しますように、燃料公社に燃料について事実独占的な形において開発する役目を仰せつけておるわけでございます。事実上は燃料公社が大半を処理するということに相なろうと思います。従いまして、民間関係分につきましては、そのうちのきわめて小部分を占める。従って、計画に大きな変更を来たすとかいうようなことをわれわれは考えられないというふうに思っておるわけでございます。しかも、民間におきましても、燃料の開発に当たっているところはきわめて小数の会社でございますので、その指導というようなことにつきましては、相当十分にできるのではないかというふうな自信を持っておるわけでございます。
  55. 岡良一

    岡委員 民間の会社が多いか少ないかということは、この際問題じゃないわけなんです。ただ、原則として民有にする。その結果、古河はアメリカのカタリーティック・エレクトリック・カンパニーとかいう触媒会社と技術提携をやっている。住友はデグッサとやっている。こういう形で、一たび民有に移しますと、せっかく日本が新しい分野としての原子力の平和利用の分野に足を踏み込む第一歩から、民有に移すことによって外国技術が競合しつつ日本に殺到してきている。そういうふうな事態を求めて招くということは、私は日本原子力委員会が非常に不見識だと思う。しかも、今申しましたような原子力局長の御答弁は答弁になっておらない。具体的に申しますが、先般も申しましたように、たとえば経済の景気不景気の起伏がある。あるいはそれをやることが経済ベースに乗るか乗らないかという利益採算の問題。民間にゆだねれば、そういういわば日本の原子力の平和利用、開発推進という大きな原則からおよそはずれた無縁な経済要因によって、その計画というものがゆがめられる可能性というものが出てきておるわけです。プラスして外国の技術導入というものを奨励する結果になってきている。これでは、もはや民間会社の経済ベースの利益のために、日本核原料物質開発に関する一貫的な計画というものがゆがめられてくる。これは私は原子力委員会としては大失態と思うのでございますが、委員長としてはいかがお考えでしょう。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれとしては、この決定をいたしますについて、あらゆる角度から検討いたし、岡委員御指摘のような点も検討いたしたのでございます。多少の不利益な点もございましょうが、全体としての判断は、この機会において民間の所有にすることが適当であろうという結論に達したのであります。
  57. 岡良一

    岡委員 長官も何か別なお時間の関係もあるようでありますから、それでは私は高橋理事長にお聞きをいたします。  先般もこの問題に若干触れましたときに、杠局長はこう言っている。要するに、私が、民間会社にゆだねるということになると、それが会社の利益になるかならないかという判断とか、あるいは金融の事情とか、そういう原子力の平和利用、開発推進という原則と無縁な経済的要因によって、内閣総理大臣の議決を要する基本計画というものがゆがめられる可能性があるということを指摘いたしましたときに、杠局長は、そういう場合には公社にやらせるのだ、要するに民間会社がもうからねば公社はやる、公社は全額政府が出資しているのだから、こういう御答弁があった。これでは全く日本の原子力開発の基本方針というものは、ないにもひとしいわけだ。そこで理事長にお聞きするが、先ほど来私が質疑をいたしておりますような形において、俗な言葉で言えば、二階へ上がってはしごをとられたような状態になろうとしているのであるが、これは私は原子力公社の大きな危機だと思う。その第一歩がこの民有化という事態から発生しつつあると思う。そこで先ほど来のような質疑応答が出てくるわけです。こういう核原料に関する原子力委員会の方針をすなおにあなた方は受け取れるのでしょうか、率直なところを一つ聞かせてもらいたい。
  58. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 核燃料に関する世界の情勢が、われわれが当初公社関係した当時と現在とでは非常に著しい変化があることをわれわれは現実に見ております。最初のころは、日本の原子燃料としてウランがはたして確保できるかどうかという問題が非常に大きくクローズ・アップされました。この問題は日本ばかりじゃございませんので、アメリカでもヨーロッパでも、同じような心配が非常に濃厚であったことは御承知の通りでございます。アメリカとしては、世界にウラン資源を求めて、そうして膨大な投資を各国にみな持ってその開発に猛進した格好でございますし、ヨーロッパでは、ヨーロッパで御承知の通りエーラトムというものができまして、そしてあの最初の主なる目的としてはウラン原料をどうして確保するかということであったように聞いております。ところが、それより二、三年の後、一九五八年の御承知の通りのジュネーブ会議のときになりますと、ウランというものは意外にたくさん世界の各所に出て参りました。アメリカのごときは、今までの契約はいたし方がないが、今後の新しい契約はもう結ばないで、むしろ最初の契約をどうして長く持続していくかということに苦心があったように私は聞いております。ヨーロッパでももちろんそういう情勢で、日本も初めのころはあるかないかわからないようなウラン資源の問題が、やってみると案外出てくる。こういうふうに世界のウラン資源というものの情勢が、非常に変化してきたのであります。いわゆるオーバー・プロダクションの時代がそのあと続々と世界を風靡して参りまして、現在もそういう情勢が続いております。従って、アメリカが、最初の契約は十一ドルか十二ドルで契約しましたけれども、だんだん下げて、現在は八ドルの線をようやく維持しております。しかし、それにもかかわらず、実際の市場の値段は五ドル、あるいは最近私どもが買ったのは四ドル台の安い原価になって参りまして、この公社ができた当時の情勢とはまるっきり違った状態が現在の天然ウランの情勢でございます。それに対する態度というものは、政策としましても実際の問題としましても、必ずしも最初の方針がその通り実行されなければならぬというものではなかろうと私は思っております。従って、政府が国策の線から国有を民有に移す、ただしそれは天然ウランだけでありまして、そのほかのいわゆる特殊核燃料、プルトニウムとかウラン二三三、ウラン二三五というような特殊なものは絶対に民有に移してはいかぬものだとは思いますが、現状はそのままで、政府が管理する責任を持っておりますから公社としてもその方針に従っておりますが、天然ウランに関してはあえて昔の考え方をそのまま踏襲しなければならぬということは私は考えておりませんし、委員会がそう決定して、政府の命令でわれわれはその線に沿って行動しておるまででございます。
  59. 岡良一

    岡委員 最後に希望だけ強く申し上げておきたいと思います。私どもはさきにも申しましたように、日本の原子力の平和利用、このための研究開発はやはり国の責任ある管理において進むべきだということを強く主張しておる。これは今日も変わりません。そういう当場から、今高橋理事長の御発言もありましたが、なるほどウランは世界市場においてはオーバー・プロダクションの状態となってきておるととは私も承知しております。であれば、IAEAと日本が直結をしてもらえばよい。若干もらう。また成型加工については、東海発電所の中空燃料というものはまだ実験段階のものであることも御存じの通りです。でありますから、燃料公社は燃料公社の責任において、この天然ウランの中空燃料たるものがはたして効率的なものかどうか、安全性において、経済性において妥当なものかどうかという研究のテーマにも、免責規定がありますから、当然すべきだと私は思う。また、今動力炉で燃やした使用済み燃料についても、アメリカは引き取らない、英国へも持っていく方法がない、あてがないということになれば、先般発表された原子力委員会の長期計画の中にうたわれておるように、プルトニウム・プロジェクトいうものが大きく浮かび上がってくる。それも燃料公社の仕事である。ですから、原料から特殊核物質に至る一連の一貫したお仕事というものが燃料公社の大きなテーマになってきておる。ものがあるかないかということじゃない。研究開発の一貫した大きなテーマが燃料公社にあるわけですね。それを、部分をたまたまお値段が安いからはずすとかはずさないとかいう小手先芸でなく、やはり原子力平和利用の分野において日本政府が責任を持って、せっかく作った原子力委員会の責任において進めよう、その進める部分の中でも、燃料の部分は公社形態をもって燃料公社がこれを受け持っておるのだから、やはり公社が責任を持つという体制をあくまでも失わないようにしなければ、いわゆる計画というものがこのままに追及され得ないのではないかということを私は心配して申し上げておるのです。  そういうわけでございますので、これは原子力委員会としても、燃料公社の持つ意義というものを十分に認識をせられまして、いたずらに外国技術の競合をあおるような政策をとらないで、あくまでも、私は日本科学者の潜在能力は非常に高いと見ておるので、この潜在能力を顕在化しつつ、文字通り日本人の手による日本の原子力の研究開発を進められるように格段の御努力を願いたい。このことを強く要望いたしまして私の質問を終わります。
  60. 松前重義

    ○松前委員 今、岡委員から質問がありましたが、それに関連しまして簡単にお伺いいたします。  それは、天然ウランを民有にしたというために起こる一つの現象として、その製錬に関する技術の外国よりの特許権の輸入、これをどんどんやり始めておるということであります。この問題は非常に重要な問題であって、私は科学技術庁というものが、あるいは原子力委員会というものが日本政府に存在しなければならないという理由の基本的な問題がそこに存在すると思うのです。日本の工業の、あるいはまた技術の独立、そうして日本の技術を世界水準にまで早く持っていく、しかも、そのことがあらゆる意味において日本の経済その他に対しましても非常な影響を及ぼすものであるということは、もうすでに皆さん方も御承知の通りであります。ところが、それを民有に移して、外国技術を導入することを科学技術庁としては慫慂される。すなわち、それを勧められる。民間にこれを誘発してくる。誘発どころでなく、何らかの意図を持って、外国技術を導入したらいいんじゃないかというような気持を持ってそのような措置をとられたのであるか、その点伺いたいと思います。
  61. 杠文吉

    ○杠説明員 技術導入の関係でございますから私からお答え申し上げたいのです。それは松前先生御存じの通り、原子炉規制法の制定にあたりましても非常に問題になった点でございます。しかし、その際におきましても、技術導入を禁止する、あるいは強く抑制するというようなことは、法律上はでき得ないという建前になっております。と申しますのも、そもそも燃料の開発につきましては、先ほど岡先生に対してお答え申し上げましたように、燃料公社というようにほとんど事実上の独占は行なわれておりますけれども、法律上の独占形態に燃料公社はなっていないという点であります。従いまして、技術導入の申請があった場合に、それを法律的に排除するところの根拠をわれわれは持ち合わしていない。従いまして、民有の線が打ち出される以前におきましても、技術導入の関係はございました。ところが、お尋ねのようにそれを奨励するような政策をとってこられたとは私考えておりませんし、私が局長に就任いたしまして以後におきましても、以前の方針通りを踏襲しておりまして、決して導入を奨励するというような行き方はいたしておりません。むしろ相当慎重に審査をするというような態度でもって臨んでおりまして、燃料公社におけるところの技術の開発を大いに奨励するというような行き方をとっております。と同時に、また一方民間においても、技術導入と申しますよりも、独自の開発を奨励する意味におきまして、先ほど来齋藤先生からも御指摘の通りに、舟木教授によるところの燃料の開発方式につきましても、五百万円というような補助金を出しているというようなことでございまして、その補助金委託費の審査にあたりましても、技術導入ではなしに、新規性ということに重点を置いて出してきたというのが現状でございます。
  62. 松前重義

    ○松前委員 おやりになっていることが一貫しておりません。これは技術全般の問題に通じますけれども、大体日本の技術が進歩しない理由は技術導入にあるのです。私は何も極端な国産論者ではありません。けれども、日本でせっかく芽ばえようとしている研究なり、あるいはその技術というものが、ようやく芽が出ようとすると、芽が出るちょっと前に、しかるべき大財閥が外国から技術を導入してきて、直ちにそれをものにして、そうして売り出すものですから、新しい技術はそのままつぶれてしまう。これが日本科学技術の悲劇なんです。こういうことをしてはいかぬとわれわれはいつも考えておるのです。今そうじゃありませんか。日本の技術がどんどん出ていっておるのに、外国の技術をまたそこに導入することを許す。それは法律には規定していないかもしれないけれども、外貨審議会では、そういうことはちゃんとできるのです。実際に行政上できます。だから、そういう一貫しない方針をとられるということはとんでもない。科学技術庁というものを作って、科学技術の育成強化どころか、つぶすためにやっておるようなことになるのじゃありませんか。こういう行き方に対しまして、どういう御見解をお持ちですか。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 科学技術振興のためには国産技術を開発しなければならぬという原則は、お説の通りだと思います。しかし、これが外国の技術導入を一切排撃するというようなわけにはいかないので、結局はある程度外国の技術導入をするという必要が、現在においても私はあろうと思います。  そこで、この技術導入の場合に、今御指摘のような外資の委員会において、その技術が国産技術として開発可能性が非常にあって、そういう芽ばえが出始めているものであるかどうか、あるいはそのことが日本の産業秩序の上にどういう影響を与えるか、いろいろな点を考慮いたしまして、その上で厳重な審査をすべきものである。だから、方向としては、国産技術の開発ということを原則として、過渡期としてはやむを得ないという事情もあるものですから、技術導入に対する外資委員会の厳重な審査、これ以外に私は方法はない、こういうふうに考えている次第でございます。
  64. 松前重義

    ○松前委員 科学技術庁は、外資委員会に委員をお出しになっているはずです。現実に厳重な審査が行なわれておりません。ですから、日本の国産技術というものは、もう一歩で芽ばえるというときに、みんなその芽はつまれているのです。それをつむものは常に技術原人なんです。そうして国内市場の独占に向かって進んでおるのが現在のいわゆる事業家たちです。ですから、ここに日本が海外市場の開拓の自由を確保しようとしても、それができない。前から申し上げておる通りです。これは、言葉としては、もうあなたがおっしゃる通りです。しかし、現実に行なわれてない。ただいまのようないろいろな製錬の問題にしても、技術がどんどん止まれてきつつあるときに、住友であろうとどこであろうと、外国技術の導入を許すなんということはどうだろうか。私は厳重な審査をなすったとは思わぬ。運動によって動いたと実は思っておる。そういうゆるふん的なやり方では、科学技術庁というものは科学技術の振興のためにあるのではなくて、むしろつぶすためにあるのだ、こういうようなふうに見ても差しつかえないのではないかと私は思います。もちろんそれは、外国技術の導入というものに絶対反対なんていたしません。それは必要なときにはやらなくちゃいけない。しかし、国産技術の芽ばえをつむようなことは、影響を及ぼすことになるというような技術導入はすべきではない、こう私は思うのです。その点について、今度の問題について、ただいまのこの民有に移されたということの結果が、そういうような技術の日本における育成をはばむというような結論にまで到達しつつあると私は実は思うのです。もう一つふんどしを締めてやっていただかなければならぬ。理屈として、やり方としては大臣がおっしゃる通りです。私はそう思うけれども、現実的にそれが行なわれていない。大臣はそういうつもりで言われても、下の方では、この辺のところを適当にやっちまえば、それは行政の複雑な中ではわかりやしません。筋骨を一つそこにうんと通してもらわなければいかぬ、こういうふうに実は思うのでありまして、これに対して別に御答弁は要求しませんが、答弁がありましたら伺いたいと思います。特にこの技術導入の問題については、相当に神経質であってほしい。と同時に、日本の現在の技術能力、研究能力というものをよくマスターして、日本人の実力というものをよく見てやってもらわなければいかぬ、このように私は思うのであります。日本人の研究能力は高いのです。これに適当な環境さえ与えるならば、それは決して劣るものではありません。近ごろの新興の会社、ソニーあたりでも、これは外国技術の導入によらずしてやったからこそ、輸出がどんどん行なわれて、あのような情勢にまでのし上がってきたのでありまして、現在あのような会社は技術能力はありますから、外国の技術導入をするときには、対等な条件で自分の技術を輸出する。向こうの技術もこっちへ入れる、そのかわりお互いに作ったものは世界市場にどんどん自由に輸出してよろしいという条件でやっておる。そこまで早くいかなくちゃいかぬのです。それをとにもかくにも、この芽ばえようとする技術の、原子力に関する技術というものに対してどんどん技術導入を許す、しかも、芽ばえようとしている、その芽が見えておるときに、これをつもうとするがごとき行政は、私はこれは厳に慎むべきものだ、こういうふうに思うのです。御答弁あったらお伺いしたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、原則的には全く同感なんであります。その点で技術導入の審査というものを、科学技術庁は国産技術開発という見地から厳重にしなければいけないということで、従来は振興局などにおいて技術導入のものを局限りで片づけておったのを、技術導入は必ず庁議にかけなければいけない、そうしてもっと広い角度から検討されなければならぬという改革を加えたのでございますが、まだ御指摘のような、十分と申せないような点もあろうと思いますので、今後一そう国産技術開発という見地から、外資委員会における審査は、科学技術庁の立場から一そう厳重にいたすことにいたしたいと思います。
  66. 石川次夫

    ○石川委員 関連して。今技術導入の問題で、松前さんから非常に重要で貴重な御意見があったわけなんです。私も全く同感であります。私、現場の研究者あるいは技術者の方から聞いた話で、私がまことにごもっともだと思う点をつけ加えたいと思います。  実は日本が技術導入が非常に立ちおくれている、それを取り戻すことが必要だということはだれも異議はない。従って、技術導入をしなければならぬということについて全面的に否定する根拠はないわけです。ところで、実態を見ますと、たとえばアメリカあるいはヨーロッパあたりから技術導入をするときには、そのときの最新鋭の非常に進んだレベルの技術を日本に導入をするという目的で折衝が行なわれているわけでございます。しかし、現場の実態に照らしてよくその経験者の意見を聞きますと、実はそのとき一番進んでいる技術だ、こう思われたものが、日本に持ってきたその時点においては確かに世界の最新鋭の技術、輝度の技術であるというように思われるわけですけれども、実はどこの国でもその技術をほかの国に渡すときには、その次のものがもうすでにできるんだ、それよりさらに高度のものができるんだという見通しが立った時点において初めて外国に技術を譲り渡すというのが実態のようであります。従って、現場の技術者から言わせると、この技術は今来たけれども、向こうではもうすでに新しいものができている。しかし、その技術は今はもらえないんだ。だから、その交渉をし、それがこちらへ来るというときには、もうすでに新しいものができるということがわかっていながら、その次の段階の技術を導入している実態です。これではいつまでたっても外国の技術に追いつくことは不可能だというので、切歯扼腕しておる。その意見というものは、たまたま私はあっちこっちで現場で聞いておるわけです。そういうこともよくお考えになっていただいて、今のように日本のせっかく芽ばえた技術の芽をつむということ、それから、実際は最高のレベルの技術じゃなくて、次のものができるというときに初めてわれわれは外国の技術の第二流のものをもらっているというのが実態であるというような、両方の見地からよくお考えいただいて、科学技術庁としては技術導入には相当しんの通った強い態度で臨んでいただきたいということを一つ御要望申し上げておきます。     —————————————
  67. 前田正男

    前田委員長 この際、本問題について発言を求められておりますので、これを許します。赤澤正道君。
  68. 赤澤正道

    赤澤委員 自由民主党、日本社会党、民主社会党と協議をいたしまして、ウラン鉱開発に関しまして共同決議案を提出いたします。  案文を読みます。    ウラン鉱開発に関する件(案)   国産ウランの開発については、国産原子炉との関係もあり、速かにその開発を促進する必要がある。   従つて、政府は、すでに確定鉱員の把握を終つている鉱山の開発を速かに実施するとともに、有望な鉱床の存在が認められるものについては、これが探鉱業務の促進を図り、品位、鉱量の把握に努めるべきである。   右決議する。  この理由は、言うまでもなく国産原料を十分購入をする機会がいつ来るかということを私どもは熱望して待っておるものですが、国産炉の開発については研究も次第に熟して参りまして、曙光が見えるに至りましたが、燃料の方はまだ見通しが十分でないのが残念であります。しかし、もうすでに先ほど公社から説明がありましたように、人形峠の場合は貧鉱といえども鉱量も確定いたしましたし、それからまだ有望と言われておる地帯が、東郷の方はあまり見込みがないようですが、神ノ倉の埋蔵量なんかは一日も早く確かめていただきたい。ただいま社会党の方からもいろいろ御質疑がありましたが、日本科学技術の発展は、きびしい自然、つまり資源的に非常に恵まれない国で、こういう貧鉱を処理するという苦しみを味わいつつ伸びてきたのでありまして、こういう国際価格が暴落しつつある実情にあることは今高橋理事長から御説明がありましたが、にもかかわらず、わが国技術陣ではこの悪条件を克服して十分実績を上げつつある実情であります。こういう実情にありますので、特に現行の探鉱その他については格段の努力が今必要な段階にあると思う次第でございます。  そういうことでこの決議案を提案いたしますので、どうか委員長においてお取り計らいの上、ぜひこれを政府に強力に申し出ていただくようにお願いいたします。
  69. 前田正男

    前田委員長 本件について別に御発言はありませんか。——別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  赤澤正道君の御提案の通りウラン鉱開発に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、本決議に関する政府の所見を聴取することといたします。三木国務大臣
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま御決議に相なりました国産ウラン鉱開発については、御決議の趣旨に沿い、今後開発に一そう努力をいたす所存でございます。
  72. 前田正男

    前田委員長 本決議につきましては、関係政府当局及び原子燃料公社等に参考送付することといたしたいと思います。その手続等につきましては、委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  74. 前田正男

    前田委員長 この際、高橋、原両参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  御多用中のところ、本委員会調査に御協力下さいましたことを、委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。まことにありがとうございました。      ————◇—————
  75. 前田正男

    前田委員長 次に、先ほど議題といたしました人工降雨等研究推進に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。三木喜夫君。
  76. 三木喜夫

    三木(喜)委員 先ほど岡委員の方から、人工降雨等研究推進に関しまして政府当局の特別の御配慮を要請いたしましたが、このことにつきまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党の方々と相談いたしまして、この際、決議を出して政府を督励することが妥当である、こういうように考えましたので、決議を出したいと思います。  案文を朗読いたしまして、以下若干その理由を申し上げたい、こう思います。    人工降雨等研究推進に関する件(案)   最近における東京都の水飢きんの実情、あるいはここ数年来の梅雨前線による集中豪雨の被害等にかんがみ、政府は、この際人工降雨等、発展しつつある科学技術の力によって自然的障害を人為的に克服するため、格段の実験的努力をいたし、その実用化を期すべきである。その予算的措置はもとより、これらの研究実験についても、科学技術庁を中心とする総合的、計画的体制を確立すべきである。   右決議する。  この理由といたしましては、わが国が非常に災害にさらされる関係上、国民といたしましては、これに対する対策を積極的に構じなかったならば当局としては拱手傍観しておるのではないかという疑念を持たれ、特にこの中にも書いてありますように、東京都の水飢饉に対するところの対策は消極的努力でありまして、これを積極化しなければならない。すなわち、われわれ日本国民の持つところの力を鼓舞し、そうして奮闘する姿がやはりこうした災害に対しても出て参らなければならない。ここにわれわれが積極的な努力を要請する大きな理由があるのであります。  このたび、科学技術庁研究調整局が設けられまして、それに何がしかの費用も計上せられておるのでありますから、これを十全に活用していただいて、積極的な努力をここに投入していただくことを要望するわけであります。  これがこの決議を提出する理由でございますので、この委員会でこれを取り上げていただいて御決定を願いたいと思います。
  77. 前田正男

    前田委員長 本件について中曽根康弘君から発言を求められております。これを許します。中曽根康弘君。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいまの決議に対して賛成の意を表明するものでありまます。  これから賛成討論いたします。賛成討論の中にわれわれの要望も盛り込みますから、三木長官は決議後のあいさつの中でお答え願いたいと思います。  今の説明にもありますように、東京都の水飢饉の問題は、必ずしも天災ではないと思うのであります。ところが、幸いにも科学技術庁は、今から二年くらい前から人工降雨の問題を非常に手がけておりまして、すでに二年前に官房長がオーストラリアに行きまして、人工降雨の実態を精細に調べてきております。また、アメリカ台風研究所、あるいはそのほかの気象研究機関とも連絡いたしまして、アメリカにおける人工降雨の問題も相当調べております。  そこで、昨年から九州で、自衛隊の協力を得ましてかなりの実験をやりました。その結果を資料に基づいて点検してみますと、大体三回に一回は成功しておるようです。やり方は、自衛隊のP2Vに、初めのうちはドラムカンに水を入れて、雲の八合目程度のところにその水を散布した。また、別の機会には沃化銀をまいた。ところが、北九州でやりました実験では、熊本市の上空においてはそれが大雷雨になって相当な雨が降ったという経験もある。平均してみますと打率は三割六分くらい、長嶋程度にはいっておるのです。  初め人工降雨を取り上げたのは、発電その他の関係と、それから水飢饉による特に農業災害克服という目的があったのであります。最近東京都の水飢饉の実態を見ると、東京の水対策の問題としても、この問題を科学技術的に取り上げるということは非常に重要な意味を持つものだと私は思うのであります。現在利根川を中心にダムを作っておりますけれども、このダムの完成には三年ないし五年を要する。沼田ダムのようなものはまだ解決の見通しがついていない。アイデアの域に入っておる。そういう点からいたしますと、三割六分程度の打率を持っておる人工降雨を積極的に推進するということは、政府としては最重要政策の一つとして取り上げるべき問題だと思うのであります。従って、今までのベースでこの問題を取り上げるべきではないので、全く新しい観点からこの問題を取り上げるべきだと思います。ことしの予算で約五千万程度だと思う。これではとても足りない、研究費用としても不足である。そういう意味から、発電会社等においても相当な関心を持って協力してきておるので、政府と一体になって、例の研究調整費を出すべき項目だと思います。こういう問題こそ研究調整費を出すべき問題であって、単に一部の学者のみならず、大学あるいは官庁、そのほか各部門の学者を網羅して、相当大規模の対策委員会科学技術庁において作って、大々的にこの問題を取り上げるべき段階に入ったと私は思います。  そういう意味で、この決議に対してわれわれは心から賛成するものでありますが、科学技術庁においてもその点を留意されて、新たなる画期的な政策を推進していただきたいと思うのであります。  以上をもちまして、私の希望を兼ねて賛成討論を申し上げる次第であります。
  79. 前田正男

    前田委員長 ほかに御発言はございませんか。——別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  三木喜夫君の御提案の通り人工降雨等研究推進に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの決議に対する政府の所見を聴取することにいたします。三木国務大臣
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま人工降雨に関する決議を御可決願ったわけでありまして、さらに中曽根委員から賛成の討論までされたわけでございます。この問題は科学技術庁としても特に力を入れようということで、予算も多少ふやして計上をいたしたわけでございます。わずかでございますが、昭和三十六年度より今年度予算はふやしました。従って、相当力を入れたいと思っておる点でございますが、今御決議にもございましたように、もう一そう力を入れるようにということでございますので、今後総合性あるいは計画的な体制を整えて、一そう御決議の趣旨に沿うように努力をいたしたいと考えております。  研究調整費は、今予算が計上してありますから、その予算の使い工合によって検討を加えることにいたします。
  82. 前田正男

    前田委員長 本決議は、関係政府当局及び東京都知事等あてに参考送付することといたしたいと存じます。その手続等につきましては、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  84. 前田正男

    前田委員長 次に、ガン対策に関する問題についての質疑を許します。齋藤憲三君。
  85. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私は、五月六日付で八項目にわたる質問要項を委員長に提出をいたしておったのでございますが、時間もございませんから、この中からただ一点だけ、ガン対策に関する質問長官にごく短く申し上げたいと思います。質問もごく短く申し上げますから、御答弁もごく短く、ただし、要領を得ませんと質問が長くなりますから、その点十分御注意の上御答弁を願います。  過日、この委員会で牛山医学博士、荻原医学博士、田崎医学博士、太田医学博士、八木沢医学博士、五人のガンに関する大家を参考人としておいでを願いまして、いろいろガン問題について質疑応答を重ねたのでございますが、一方は薬でガンがなおる、一方はなかなかなおらない、という対立関係における参考人としての御意見であったのであります。私もガンの問題についてだいぶ勉強いたしまして御質問申し上げたのですが、結局とどのつまり、未解決の点が一点残ったわけであります。それは、牛山博士は静脈からガン患者の血をとって、これをアミノ酸培養基に培養していくと一定の菌が発生する、これを大量に培養をして、そこから注射薬を作って、これをまたガン患者に注射すると非常にガンに薬効がある、こういうのであります。ところが、これに対して反対の立場に立つ方は、それは静脈から血をとってアミノ酸培養基に培養するときに、よそからばい菌が入るんだ、これが枯草菌なんだ。それを牛山博士は間違って、自分が正当な菌の培養に成功したと思っているのだ、こういう対立なんであります。これはくどくなりますから、要点だけを申し上げるわけでありますが、そこに未解決の点が残ったのであります。これは公正な立場における実験を行なって、両者の見解のいずれが正しいかを調べる以外に手がないわけであります。今度行なわれます第二回日米科学技術委員会においてもガン問題には触れるわけでございますが、この牛山博士は、すでに御承知の通り、何千というガン患者を手がけて、確かにきくということであります。田崎博士も、これは癌研究所の病院長として、いわゆるこの道の大家であるその方が、一つの問題を中心として、正しい、間違っているという論争をやっているのであります。こういう問題こそ、私は科学技術の立場において国家が解決をしてやるという努力があってこそ初めてガン対策というものが進捗をするのではないかというふうに考えるのでございます。これは国家の手によって適当な二、三の個所で実験をして、その正体を見きわめるということが必要なんじゃないかというように考えますが、長官は、科学技術庁としてはガンを重要研究項目に考えておるわけでありますから、一体どういうふうにお考えになりますか、御答弁願いたい。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 今齋藤委員の御指摘になっているような先般の委員会の結果は、話を聞いておるのであります。ただいま厚生省と、何とかこういうふうな研究に対して、これに結論を出すようなことができないかということで協議をいたしておるわけであります。まだ本日の段階でこうなりましたということを申し上げられないのは残念でございますが、厚生省と協議中でございます。
  87. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 SICの問題につきまして、治カン剤として一部にその効果があるということをいわれておるわけでありますが、ガンの治療効果につきましてまだ学会内でだいぶ異論もある状況でありまして、率直に申しましてまだ定説がない状況であります。従いまして、厚生省といたしましては、現段際で直ちにこの試験検査等のために国費を投入するということは、今のところまだ考えていない状態であります。
  88. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 厚生省の御答弁は私の質問と違うのです。私の言うているのは、この間の五医学博士、参考人の意見に関して未解決に残った点は、それがガンにきくとかきかないということじゃないのです。そのもう一つ前の問題なんです。牛山博士はガンに侵された患者の静脈から血をとって、アミノ酸培養基に無菌状態でこれを培養するというと一定の枯草菌のような桿菌がここに発生してくる、これをタンク培養して、それから注射薬を作っていくのだ、これがきくのだ、こう言うのです。ところが、一方の方は、それは正当な培養じゃないのだ、無菌状態で培養しているのだと思っているのだけれども、よそから枯草菌が入っていくのだから、よそからばい菌が入っているのだ、だからあれは正当な菌の培養じゃないのだ、こう言っているのです。ここが問題なんです。これがきくとかきかないということは広く実験すればいいので、ただその前の前提の、そういうガン患者の血液というものを無菌状態でアミノ酸培養基に培養したときに、牛山博士の言うがごとき一定の桿菌がそこに発生してくるかどうか、これが発生してこないのだと一方は言うし、一方は発生してくるのだと言う。これの実験をやらなければ、この問題は解決できないわけですから、今の厚生省の答弁はまるで的はずれの答弁です。そういう根本の問題を科学技術庁科学技術進展の建前から解決して、これはりっぱに培養ができるんだ、だからこの培養によって得たところの注射薬を、広く一つ臨床実験をやってみるとか、これは何も厚生省に頼むだけでなく、大学の病院にだって、研究室にだって頼めると思うんです。細菌学の大家に幾らでも実験は依頼できると思うのでありますが、そういう点を一つおやりになるお気持はないかどうか。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 科学技術庁が、どこか国立病院にでも頼めということのような御趣旨でありますが、どうしてもこれは厚生省が同意をして、ガンの対策計画との関連において考える方が私は適当だ。やはり病院ということになれば、そういう薬を発明した自身でもできますから、政府が関与するということならば厚生省も同意をして、ガンの総合対策計画の中に入れることが適当だと思います。きょうは消極的な答弁もありましたが、ガンというような、これはいろいろ世界が今取り組んでおる大きな問題ですから、案外われわれのそういう発明の中には貴重な発明もあるかもわかりませんから、厚生省ともさらに協議を重ねて、何かの方法があるかどうかを検討いたしたいと思います。
  90. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 きょうは三木長官お急ぎのようで、私の質問がどうも頭の中に入らないようですから、私の質問はやめます。またこの次にやりますが、一つ速記録でもよく読んでおいていただいて御答弁を願います。      ————◇—————
  91. 前田正男

    前田委員長 次に、南極観測に関する問題について、長谷川文部政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。長谷川文部政務次官
  92. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 南極地域観測の再開につきましては、本委員会の決議の趣旨に沿いまして、統合推進本部に南極観測の将来問題委員会を設けて、継続して検討して参りました。その後四月二十六日に、日本学術会議は本事業の再開について政府に勧告することに決定しましたので、今後の進め方について荒木本部長の指示を受けまして、将来問題委員会において検討の結果、おおむね次のような結論を得ていることを御報告申し上げたいと思います。  将来問題委員会の検討の結果は大体次の通りであります。  一つは、船舶、航空機の新造。船につきましては、従来の宗谷の船齢を勘案しまして新造することにしたい。四千トンから五千トンのもので、八千馬力から一万馬力程度のもの、電気推進で経費見積り約二十億から二十五億円かかる模様であります。航空機につきましては、ガス・タービン大型ヘリコプター三機を新規購入したい。一機大体一億八千万、計五億四千万程度であります。なお、船は本年度から設計を開始しましても三年を必要とするものであります。  実施本部の立法措置についてさらに考える必要があるかと思います。現在のままの統合推進本部は、御承知のように、各省庁において分担する観測業務を統合推進するのみでありましたので、今後は立法措置により、内閣に別の構成による本部を設けて、恒久的な国の事務として実施するような体制を確立する必要があろうと思います。特に現在の盲点であります航空要員の確保のためにも、従来業務を担当していない機関、たとえば防衛庁にも積極的に協力するように推進してみたい。  以上のような問題点を解決されまして、三年後に十六名越冬による再開を計画しております。  なお、今後恒久体制によるところの再開が決定された後は、必要によっては外国船の協力によるつなぎの観測も検討してみたい、こう思っておる次第であります。
  93. 前田正男

    前田委員長 本問題については、南極地域観測統合推進本部委員、元南極地域観測隊隊長永田武君が参考人として出席されておりますので、同君から約十五分間程度において御意見をお述べいただきたいと存じます。永田参考人
  94. 永田武

    ○永田参考人 私は、本日この委員会で、この前、中曽根先生その他の方々から御質問になりました南極観測の科学的な成果並びに意義等について、和達学術会議議長並びに学術会議南極特別委員会委員長が御説明になりましたことを補足説明するように出てこいということでございましたので、その御説明をいたすつもりでおります。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕  お手元に参考資料をお配りいたしたと存じます。この参考資料は、政府と申しますか、南極観測統合推進本部で立案したものではございませんで、実は便宜上、この春の日本学術会議総会に学術会議の南極特別委員会が決議案の原案を提出いたしまして、その際に説明書を提出したわけでございますが、その説明書の写しをただいま諸先生方にお配りしたわけでございます。従って、内容が、国会の先生方にお見せするのと違いまして、学術会議の諸公に見せるようになっておりますので、やや趣が、諸先生方の御質問にお答えするに適当であるかどうかは疑問がございますが、しかし、すべての点はこれに尽くされていると存じます。それで、との資料を逐一御説明申し上げようとは存じませんが、根幹になります点を御説明申し上げまして、中曽根先生その他の諸先生方の御質疑に対する和達先生のお答えの補足といたしたいと考えております。  私、この前本委員会会議がございましたときに、アメリカに主張いたしておりまして不在でございまして、帰りましてからこの委員会会議録を読ましていただきましたので、先生方の御質問の要点をはっきり理解しているかどうかについては疑問がございますが、一応私の理解しております御質問の要旨に沿ってお答え申し上げたいと存じます。  中曽根先先の御質問の中に、南極観測は最初に宇宙空間の研究をかなり大きな目標にしておったが、現在では南極に行くよりは、現在のロケット、糸川君のロケットを中心として、つまり直接スペース・プローブで研究する方が早いのじゃないかという点が一つあったかと存じます。もう一つは、南極観測自身が最初の第一回のときから次第に目標とするところ、つまり学術的目的が変わってきているのじゃないかという御質問があったかと存じます。  第一の点でございますが、南極観測は、ここにも資料に書いてございますけれども、大体学問的に申しまして最初から三つの大分けにできる柱の上に立っておったと私は考えます。一つは、中曽根先生のおっしゃいましたように、南極並びに北極という地域は宇宙空間に対します地球の窓口でございます。これは電気、磁気の関係でございまして、すべての太陽から出ます荷電粒子、つまりバン・アレン帯、すなわち放射帯その他を作っております荷電粒子が北極と南極へは突入して参ります。まことに奇妙なことでございますが、日本科学者は終戦直後から、この方面の極地での物理現象並びに宇宙空間の物理現象、超高層の物理現象につきまして、終戦当時天文台長で、今は東大をおやめになりましたが、萩原雄祐先生が委員長で、非常に総合的な研究をやって参りました。総合的と申します意味は、地球物理学、天文学、電波科学というような連中が一緒になりまして、総合的な研究をやってきたわけでございます。その関係で、これからの将来地球を人類が利用し開発していく上に、宇宙空間の問題が重要であることは申すまでもないことでございますけれども、その一つといたしまして、北極並びに南極の太陽荷電とわれわれは申しますが、太陽から飛んでくる荷電粒子の荷電に対する窓口に総合的な、つまり物理的な正確な、と申しますことは、予測のできる、つまり現在の状態から将来の予測ができるという意味での正確な観測をすることが最も望ましいという一つのことがございます。これはあくまで地球全体の問題でございまして、各国が協力して行なわねばならないわけでございます。この面につきましては、私は第一次、第二次、第三次の隊長をいたしておりましたので、私の口からこういうことを言うのはどうかと思われますけれども、少なくとも南極が始まります前の日本の持っておりましたこの学問における背景の上に立って、各国のできない、つまり総合的な意味で、あるいは物事を電波とか天文とかいう表面上の分数でなくて、純粋に物理学一本に貫いて精密科学をやっているという意味で、かなりの——ほんとうは多大と申したいのでございますが、質的な貢献をいたしていると存じます。  それで、ロケットによります、あるいは人工衛星によります研究というものは、これは申すまでもなく大へんな結果を得ております。私も南極屋ではございませんで、むしろ大学ではその方が本職でございますが、ここで申し上げたいことは、日本のロケット観測は御承知のように大体五百キロ、東大では五百キロと申しておりますが、千キロ以内の範囲を精密科学の点でやろうとしております。もし私の個人の夢が許されますならば、日本でできて最もこの宇宙科学に貢献する仕事は、南極の極光帯の地帯で二百キロないし三百キロにロケットを上げるということが、世界のどこもやれない、最も大きな仕事であるとすら考えております。そういう意味で、この両者は相待っていくものでございます。アメリカをごらんになりましても、ソ連をごらんになりましても、人工衛星並びにロケットによる宇宙の直接観測をやっておりますが、それと同時に、それと見合うバランスをもって極地の観測をやっております。たとえばアメリカのアーガス実験に一例をとってみましても、極地における観測とロケットによる空中での爆発及びその系路の測定と相待って、ほんとうの宇宙間の観測ができるわけでございます。これが一つでございまして、将来も日本が南極の再開ができますならば、この方面も日本の伝統に従いまして、伝統を恥ずかしめないように進めていきたいということが将来にもございます。過去の実績もその方面にあったわけでございます。  三本の柱の二つ目は、何と申しましても南極は未開の地でございまして、日本の二十二倍の広さがございます。これを将来人間ができる限り有効に使っていこう。その使う道はたくさんございます。そのためには、どうしても立地条件を調べる必要があるわけでございます。すなわち水質を調べ、地下にある天然資源は何物であり、住むための気候条件はどうであり、地形はどうである。これは文明地帯ではもうすでに何十年来行なわれておりますが、立地条件を調べ、そこに将来人間が住み、そこを開発することを前提としたための調査研究ということがあります。これが二つ目でございます。  第三番目にあげますことは、やはり国際協力による地球全体の問題でございますけれども、一番最初に申し上げましたのと少し違いますことは、たとえば気象の観測、あるいは海洋の観測といった種類のものでございます。これは最初の宇宙空間の研究といったものは、まだこれが人類の直接の役に立ちますのは十年ないし二十年の年月が要ると思いますけれども、今直ちにやるもの、たとえば気象の観測では、天候を正確に予報し、気候を正確に予測するのは、今日の産業にとって非常に重要なことでございますけれども、御承知のように、今日では北半球諸国は、北半球天気図によって数日間の予報をやっているわけでございます。これはもちろん、地球全体の全地球天気図を作りまして、そうして北半球、南半球一緒にした点から、より正確な科学的根拠に立って予報をするということは、気象学者にとりまして至上命令でございます。これは御承知のように、世界気象機構、WMOというものがございまして、政府間の条約もございまして、学問の成果が直ちにそういったような実情と申しますか、天気予報の事業に直結するものでございます。それから、同じような問題が海洋の観測でございまして、南極大陸の周辺における漁場といったようなものが産業の問題になりかかっております。あるいは鯨についてはなっておりますけれども、これをほかの太平洋あるいはインド洋あるいは大西洋と少なくとも基本的には同等程度に海洋調査をいたしまして、——海洋調査と申しますのは、潮流を含む海洋物理、化学成分を含む海洋化学並びに海洋出物まで含めた海洋学でございますけれども、この問題は世界が協力いたしまして、南極洋の実態を明らかにして、その開発利用に尽くすということでございます。  大体日本は、この三つの部門にそれぞれ貢献をいたしてきたと信じております。それぞれの部門ではかなりの成績が出、報告が出、出版されておるわけでございます。確かに中曽根先生の御質問になりましたように、最初は日本の観測隊は内地におきます学問的実力は十分ありますが、それに比べまして、南極におきます昭和基地並びに施設と申しますのは、ほかの国に比べては小さいとは申しておりませんが、アメリカ並びにソ連に比べては小そうございます。そこで、あらゆることを同時に実施するということは、具体的に困難でございます。それで、最初は直接すぐ国際地球観測年の思想に従いまして、世界の文化に直ちに貢献できるという意味で、主として超高層物理、あるいは宇宙空間の窓としての研究に力を尽くしたいと思います。もっともその裏には、私が一次、二次、三次の隊長をやっておりまして、これは人間でございますので、私は先ほど申し上げましたようにその方面の専門家でございますので、つい隊長のくせが出て参るということがないとは言えませんけれども、大義名分は私がただいま申し上げたところでございます。それで、順次、第一の問題がある程度わかったところで二番目の問題に力を注ぐ、二番目の立地の問題がある程度めどがついたところで三番目の気象、海洋というような問題に力を注ぐ、というふうに参っております。  一応御説明を終わります。     —————————————
  95. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 次に、本問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。中曽根康弘君。
  96. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 きょうはわざわざおいでいただきまして、まことにありがとうございました。ここに配付されました資料と、それから今のお話によりまして問題点その他はおおむね概要をつかむことができました。ただ、われわれがそういう専門家でありませんものですから、どの程度の深さと、重要性を持っておるかという点は的確にはつかみ得ないのであります。しかし、この手元にいただきました資料を読んでみますと、かなり広範にわたって各専門専門分野のデータを集めて、国際的にも非常に貢献いたしておるということがうかがわれます。これを読んで大体のアウト・ラインを私はつかむことができましたから、特にこれ以上質問することはいたしません。  ただ、これを読んで私が感じましたことは、国際学術分業の一環として、日本は背負っている仕事がある。その背負っている仕事の責任を果たすためにやらなければいかぬ、そういう要素がかなり強く出ているように思うのであります。学問というものはもちろんそういう性格のものであろうと思いますけれども、そういう要素が割合に日本のジャーナリストや政治家に浸透されていない。やはり南極に行ったというのは国威宣揚的要素が非常にあって、長い間占領されていた日本が南極に日の丸をはためかした白瀬中尉の昔を回想するような、そういうナショナリスティックな感情で南極問題というものをとらえてきたような感じがするのであります。しかし、現代の南極問題というものは、南極条約の出現でもわかるように、それとまるっきり変わった性格を持っております。もっと国際的なものであり、もっと純科学的なものになっている。しかも、それはここにありますように、十一年ぐらいのデータをとらなければわからない。たとえば太陽の周期の問題が出ておりますけれども、そういう程度のものであるということの認識が、われわれ日本国民全体に非常に欠けているように思うのであります。そういう点の説明を、文部省あるいは統合本部でもう少しおやりになって、純学問的な思考方法というか、もののとらえ方というものをこの機会に国民に植えつけたらいいと思うのです。今までのような日の丸を南極にはためかすという考え方もいいけれども、それは非常に素朴なものであって、それからもっと高いところに伸びていかなければ、日本人の考え方や学問に対するとらえ方というものは進まないと思うのです。そういう点をこれから大いに強調される必要があると私は思うのであります。  それで、学術会議においていろいろ御議論なさり、いろいろ決議や何かをおやりになっておるけれども、学術会議でおやりになっておることは、何か対岸の火災を見ているように国民は思っておる。学術会議自体が国民から遊離したものであり、学者が勝手に議論し合っている、そういう程度のものでしかないということと、それから政界、特に政府、与党の側から見ている学術会議というものは、縁なき衆生みたいな存在に今なっておる。だから、学術会議がどんな決議をしても、寝言を言っているくらいにしか思わない。あるいは決議をすれば、かえって反感すら持つというような議員が相当おるのです。これはうそではないから、正直に言っておきます。しかし、そういうことが起こっておるということは、南極の問題については非常に不幸なことであります。その罪はどこにあるかということを考えるならば、一つは学術会議にもあるだろうし、また学者の物事に対する態度にもあるだろうし、また一つには議員の認識不足にも私はあるだろうと思う。このギャップを埋めないというと、南極問題は進められません。ですから、これは学術会議自体でもお考え願わなければならぬ問題で、われわれも考えなくちゃならぬ問題であります。われわれは決議をもって両極の問題を推進すべしという意思を表示したわけであります。われわれとしては非常に前進しておるわけです。だから、学術会議の方でも、今までのような、というと語弊があるかもしれませんが、非常に独善的な、学者的独善的な、専門家意識過剰的な態度を検討なすって、もう少ししゃばに前進してくるようにしていただいたらいいと思います。その間を取り持つものが文部省や科学技術庁でありましょうが、まだ文部省や科学技術庁はそういうことまで気がついておらぬようであります。幸い長谷川大政務次官も見えておることでありますから、お仲人の役目をしてもらわなければいかぬ。実際はそういうことが予算をとり、あるいは砕氷船を作っていくもとになるわけです。それが解決しなければ船は永久にできないと、言っえていいでしょう。あなたにこんなことを申し上げるのは大へん失礼な言葉でありますけれども、あなたは研究さえしていればいいという人でありますし、私は南極問題に非常に好意を持つからあえてこういう無礼な言葉を申し上げる次第であります。どうぞ学術会議に帰ったら、われわれの意のあるところをよくお伝え願いたい。そうして、どうしてこれを推進していくかということについて両方が再検討し合う、そういうことを一つお伝え願いたいと思います。
  97. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 お答えいたします。私もしろうとでありますが、今中曽根委員がおっしゃった南極観測に対する気持、それを感じているものであります。ということは、終戦後の日本の学問が非常におくれたように見えたところを、国際的にキャンペーンに乗り出したというところに非常に興味を持つものでありまして、現に、しろうとでありましたが、ちょうど一昨年でしたか、北極のチューレーに私は不時着いたしまして、おそらく南極観測隊がやっておるあの雪上車はこういうものであろうということを、見たり乗ったりし、あるいはノース・ポール・リサーチ・センターというアメリカが作っているものを見せてもらいました。でありますから、私は文部省におりまして、中曽根委員がおっしゃったようなことを実は申しておるのです。行かれたわずか何十名かの専門家の悪戦苦闘、その方々だけの業績にしないで、これがどういう意義を持っておるかということを広く国民にPRしてもらう。それが私は日本で必要なんじゃないかということを文部省の内部でも訴えております。また、そうしてそういうことに興味を持ち、関心を持った人が根回ししないことには、こういう事業は推進しない。ですから、この委員会において御熱心に再開ということを御決議され、また私もそういう気持がわかるものですから、今御報告申し上げたようなことも、本部長を中心に、事務的になかなかむずかしい二十億の船の問題とか、いろいろな形に直ちに決定しましても、三年後に船ができるということを一体どうするかというふうな問題を推進する場合に、やはり全体かそうした学術会議あるいはまた議員の皆さん方の御注意等をいただきながら乗り出した格好でなければ、やはりこれは中を走っていくものがなければなかなか推進しないんじゃないかというような気持で、いささか推進の役割を今からもしてみたい、こう思っておりますことを御報告申し上げます。
  98. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 この南極観測に関する問題は、特に本委員会において私も熱心に関心を持った問題でございましたが、本日長谷川政務次官から、南極観測に関する本部の体制を大体承りまして、三年後には越冬隊をさらに送るくらいの事務的な構想ができたということで、私は非常に喜んでおるのでございます。もちろんしろうとでございますので、永田さんのいろいろなお話を承りましても、南極というものに対してはどれだけの価値があるかということは、とうてい的確につかみ得ないわけでございます。これは申すまでもないことでございますけれども、いわゆる自然科学を対象といたしました科学技術の進展というものは、結局宇宙の森羅万象を解明していくということに帰するわけであります。それでございますから、今、日本の立場として、南極条約の一員となって、南極から宇宙の森羅万象、特に地球を中心としたいろいろな現象を解明していくということは、科学技術の立場からいくと何ものにもかえがたい重大な問題だと私は思う。しかも、領土権をお互いに放棄して、自由な立場においてこれをやる。でありますから、こういう点から考えますと、船の問題その他において一時南極観測を中止したということは、他日、このために日本科学技術の振興に非常に大きなブレーキがかかったのだということになりますと、われわれ政治を担当しておる者から言えば、非常に大きな過誤を犯したのだと後世において笑われるというおそれも私はなしとしないと思うのであります。でありますから、今世界各国がそういう宇宙開発その他科学技術の進歩発達という点において、南極を足場として、南極条約にのっとって、大いに科学技術の振興の立場からすべての問題を解明していこうということに対して、おくれをとらないようにやりたいというのがわれわれの真意なんであります。いろいろな方法があると思います。今度五月の下旬から、アメリカにおいて科学技術に関する第二回の会議を持たれるわけでございますので、あらゆる点から確実に南極観測の再開ができるように、一つ文部省においても御努力を願いたい。それに対して、われわれもできることがあるならば大いに努力いたしまして、日本の体制がおくれないように一つやっていきたい、こう思うのでありますが、もう一度文部大臣にかわって長谷川政務次官から、いわゆる本部としての御決意を承っておきたいと思うのであります。
  99. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 齋藤委員のおっしゃいますように、実は第二回の日米会議が五月にアメリカで開かれますので、学術会議の方からも参りますし、また文部省の方からも出席いたします。第一回の箱根における委員会の席上においても、非公式でありますけれども、そういう再開してもらいたいという要請があったことは御承知の通りであります。今度参りますにあたりましても、おそらくこれは公式、非公式を問わず話が出るのではなかろうか。その際に、本委員会の決議、あるいは学術会議の決議、それから、金はかかってもこれを再開したらどうかという、新聞のコラムなどを見ましてもそういう世論のあることなども情報としてお伝えして、ある場合には外国の協力を求めて、まさに領土権さえ主張しない南極条約、ソ連のオビ号でさえも困ったときには手伝うということでございますから、こういう国際協力の上にわれわれもやりたいという気持は、私の方から、行った者によく表明させるようにいたしたいと思います。
  100. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 第二回日米科学技術会議には、科学技術庁からは長官出席しないで事務次官が出席をされるということであるわけです。われわれ科学技術の振興を念願としております者がこの第二回の科学技術会議長官出席を要望いたしたのでありますが、御都合で行かれないというので、次官がそのかわりにおいでになるということでございます。こういう問題につきましても、もうすでに出発の時日が迫っておりますから、一つよく御研究を願って、科学技術庁としても万違算なきを期するように御努力を願いたい。
  101. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 山口君。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間もあれですから、一言だけお聞きしたいと思います。  今、永田さんから南極観測の意義につきましていろいろ御説明をいただきまして、大へんありがとうございました。私も、過日南極観測の意義について当委員会で議論がありました際にも、やはりアメリカやソビエトというような、人工衛星を飛ばして宇宙観測に熱意のある国の方がむしろ南極における観測にも力を入れておる。やはり科学というものは、人工衛星を飛ばして直接いろいろのデータを集めることも必要であるけれども、同時に、南極というような特殊な地域において精密ないろいろな観測を地上においてやる、それが両々相待ってこの地球物理というものも進歩するのではないだろうかというふうに、しろうとながら観測をいたしまして、いろいろ御質問いたしたのであります。そういう観点で、今回も南極観測の意義について専門家の永田さんからお話のありましたことは、非常にうれしく思うわけであります。  ただ問題は、こういうようなパンフレットをわれわれが拝見いたしましても、また国民が見ましても、これではぴんとこぬと思うのです。先ほど中曽根委員も言われましたけれども、やはりしろうとが言ってはなんでありますけれども、南極観測のどういう点に意義があるのかといういわゆるPRについて、文部省も学術会議もやはり欠けるところがあったのではないかと思います。かつて「南極大陸」という映画が出ましたときには、全国民が非常な関心を持ったと思うのであります。しかし、その後数次にわたる観測もありましたが、当時のあの「南極大陸」以外の映画というものをわれわれ拝見する機会もなかったわけであります。いろいろなPRの手段を通じまして、国民に南極観測の意義を訴える努力をやはりすべきではないかと思うのです。そういう点について、文部省なり学術会議なりが具体的にどういう構想を持っておるのか、一つお聞かせいただきたいと思うのが第一であります。  第二は、次官にお尋ねいたしたいと思うのであります。南極将来問題委員会におきまして、りっぱな構想をお立ていただいたことは非常にけっこうであると思います。当委員会の決議を十分にしんしゃくをせられまして、三点にわたる構想を固められたことは非常にけっこうなことだと思うのであります。もうすぐ昭和三十八年度予算要求の作業を進める時期がきております。そこでお尋ねするのであります。船舶あるいは航空機、とりあえず船舶が一番中心でありますが、この構想にのっとった予算要求をおやりになって、しかもそれを実現するという御熱意があるのかどうかということです。それをまずお尋ねをいたしたいと思います。  それから、先ほどの次官のお答えで三番目はもういいようなものでありますが、太陽の静かな活動の年にどうしてもあわせてやりたいという学術会議の御熱意のようであります。そうなりますと、今船を新造するといいましても、間に合うかどうかということは非常に疑問なわけです。とすれば、当然国際協力といいますか、とりあえず一年は、残念であるけれども外国との国際協力によって観測しなければならぬという事態もあり得ると思うのです。その場合には日米科学委員会等を通じてアメリカの協力を得ることもけっこうであります。同時に、やはり南極がああいう形でほんとう意味で国際協力の上に立った観測の形態ができておるわけでありますから、アメリカに協力をお願いする面はお願いをする、また一番近い基地はソ連の基地ですから、そういう点からいきましても、ソビエトに協力いただく面についてもやはり協力をしていただく。そういうことについては東西ということにかかわりなく、東西協力の実をあげて、この太陽の静かな活動の年に間に合わせることが必要ではないかと思うのであります。そういう点に対するお考え方もあわせてお聞かせいただきたいと思うのであります。
  103. 永田武

    ○永田参考人 今三つお尋ねがございましたが、最初の御質問に対してお答え申し上げます。  確かにおっしゃる通りでございまして、私どももいわゆるPRが十分でなかったと思っております。ただ、映画は二次、三次、その後ずっと作っておりまして、第四次の越冬隊までございます。率直に申しますと、非常にみごとな映画でございます。ただ、最初のときは一般に公開されましたが、あとは本部、すなわち文部省が版権を持っておりまして、学校または公共団体にのみお見せいたしております。ここに本部の方もおられますし、せっかくのみごとな映画でございますので、また内容も最初のときよりはもっと科学的な編集でございますので、より多くの国民の方々に見ていただけるように努力いたしたいと思います。その一例といたしまして、本部並びに学術会議には南極地域観測特別委員会、学術振興会には南極地域観測後援特別委員会というのがございます。その双方で、近く八大都市でしたか、講演報告をやろうということでありまして、南極地域観測統合推進本部並びに学術会議南極地域観測特別委員会でも、今後は今までより一そう、今おっしゃいましたように、結果の報告あるいはPRということに努力いたしたいと存じております。幸い本年度は出版費も、今までは百万円足らずでございましが、今度は二百万円でしたか、今までよりはちょっとよくなりましてふえましたけれども、みみっちいと思うのでございますけれども、われわれといたしましては与えられました予算をフルに使いまして、これは主として学術方面でございますけれども、学術方面のいわゆる専門的な方向、一方では一般の方々に対する映画、パンフレットその他という方向に努力いたしたいと思います。以上、一番目のお答えといたします。
  104. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 先ほど申し上げましたように、船が設計を始めて三年かかる。その前に、この委員会でいろいろ議論も出まして、ただいま私はそれに受けてお答えいたしましたように、内閣の方に本部でも作るというふうな決定にまでなりますというと、予算の問題もだいぶ推進できるのではないか。またその間において、三年間船がどうしてもできないということになりますと、これはどこから借りるとか、あるいはどこから協力をもらうというふうな具体的な問題にも入ってくるので、これは予算の時期に至りますと、この委員会が南極については特に超党派的に学問的な立場から御協力いただきますから、いろいろ皆さん方の御意見なども参酌いたしまして推進してみたい、こう思っております。
  105. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 松前君。
  106. 松前重義

    ○松前委員 簡単に一言お尋ねいたします。  永田さんの御報告、ありがたく拝聴しました。いろいろ研究調査事項はございますが、これはどうしてもやらなければならぬのであります。ところが、これをやるのには、先ほど内閣に本部を作るというところまで政務次官は推進してこられた。しかし、その本部という性格はどんなものであるか。アメリカでもどこでも、たとえば宇宙開発の問題等をやる場合、具体的な機構を作る。機構というのは単なる委員会のような集団でなくて、完全な局というものを作って、そこでやっている。そういう価値があるのではなかろうか。これは南極だけに限らぬでもいいのではないかと思っております。この前も南極に関連して私が質問したら、文部省でもだいぶその後努力していただいた例のインド洋の海洋調査の問題、これなんかにしてもやはり同じようなことです。多少こちらはいろいろな経済方面との関連性もなきにしもあらずでありますが、しかし、現在までのところは非常に似通った調査であります。大体相当密接な関連性が学問的にもあるし、同時にまた、今後いろいろな意味において経済面におきましても関連せしめなければならない問題があると存じます。これは何もインド洋に限らず、すべての海の海洋調査というような問題も含め、あるいはその他の大自然の調査研究という諸問題を含めた一つの局といいますか、行政機構を作るということが必要ではないかと思うのです。それをやらないと、委員会とか何とか本部というようなものではなかなか責任ある仕事の推進はできないのじゃないか、こういうふうに実は思うのです。この点一つ、せっかく御努力いただいておりますから、そこまで踏み切っていただいて、そして文部省が内閣においても主導権をおとりになることも当然のことでありましょう。あるいは科学技術庁がとるのか、それはお話し合いの結果にいたしまして、そのような一つの責任ある行政機構をこれらの問題に対して作るということまで一つ御努力をお願いできないだろうか、これを承りたい。
  107. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 松前先比のおっしゃつたように、日本では行政機構を作ったからといって、動かないやつがみな入ったのでは仕事にならぬことは御承知の通りであります。文部省としてみんなで研究しておりますことは、この委員会でもお話がありましたように、これはやはり国民的なものである。そういう規模であるということからいたしまして、内閣にそうした本部を置いて、国民的な背景の中に、船を作るにはあと三年かかるとするならばそれをどうするかという背景の中に、実際今まで文部省の関係者でやってきたことですから、それが中心になって動いてお世話を申し上げて、その実現まで推進していきたいというふうに今のところ考えております。
  108. 松前重義

    ○松前委員 大体の構想はわかります。しかし、やはり責任を持って全体を調整推進していく役割を勤めなければいけない。ただ委員会のごとき、責任あるがごとくしてない、分散されたような体制では私はできないと思う。言いかえると、そういうものに対して具体的な、たとえば文化財保護委員会なら事務局長という人がおられる。その人が事務を担当して推進していく。調整の衝にもある程度当たる。こういうふうな、何か専門的にそれの調整に従事する世話役がいなければ推進しないだろうというのが私の言うことなんです。この点についてどうですか。
  109. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 南極観測の場合には、サボっていればすぐ具体的にその事例が出ますことは、船の問題が解決しないということですですから、こういう一つのはっきりした目標がありますれば、今の場合に私たちはだんだん皆さんの御注意などもお伺いしながら機構を作って参りたい。しかし、とにかくはっきりした目標がありますから、それを実現できるような機構に持っていきたいということを御了解願っておきたい。
  110. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 長谷川政務次官と、それから科学技術庁の事務次官にお尋ねしたいと思います。  南極の問題を解決するスタートは船の問題のように思います。これについては、前にも申し上げましたように、防衛庁の協力を求むるというのは一つのアイデアであります。私は当面の方向として防衛庁の協力を求むる以外にないような予感がするのであります。そこで、防衛庁側は笹本政務次官が、できるだけ協力しますという答弁を私にいたしましたが、一体学術会議や南極観測に従事する学者の側が、その点を了解して喜んで受けるかどうかということが問題です。学術会議の方からくるいろいろな風評を聞いてみると、必ずしも喜ばない空気があるやに承っておる。しかし、それではこの問題は解決しないと私は思う。こういう考えについては社会党の松前委員も、防衛庁が平和的な文化的な仕事に協力するということは歓迎すべきであるとほとんど超党派的に意思を表示されており、新聞のコラム等を見ても、当然そういくべきであるという意見が相当各所に見られている。そういう点から見て、学術会議も当然そういう方向に進めらるべきものであると思うのですけれども、文部省はこの問題を学術会議との間においてどう処理するか。それから永田さんは個人的に、防衛庁が協力することについてどう考えるか、その点をまず承りたい。  第二は、今度事務次官は日米科学委員会にお出かけになるようです。行ったらぜひ人工降雨の問題を一つ取り上げてもらいたい。これはすでに台風防災科学の面で調査団を派遣したことがあり、そこにおる和達さんも、アメリカへ行って気象研究の権威と会ってきておるのです。従って、日米協力の一つの大きなポイントにもなっておる。人工降雨の問題が、東京水飢饉等を考え、相当重要な問題になりつつあるのでありますから、日本側からこの問題を提起していただいて、アメリカの学者の協力も得るし、あるいは共同でいろいろ研究するということも可能でしょう、そういう点について日米科学委員会を活用していただくということを特に提起して、話をつけてもらいたいと私は思うのです。  それから、ただいまシアトルで二十一世紀博覧会というのをやっておる。これは相当大規模な権威のあるものであるらしい。従って、いい機会だから、帰りに事務次官なりあるいは兼重さんは、御苦労ですが二日ばかり滞在を延期して、それを見てきてもらいたいと思うのです。わざわざ行くというのも大へんであるから、帰りに寄るということは経済的にも非常にいいし、そういう新しいアイデアを得るということは日本科学技術を進歩させるゆえんである。これは笑いごとではない。三木長官にぜひ話していただいて、二日ぐらい延期したって滞在費は大したことはない。せいぜい五十ドルか六十ドルである。しかし、頭に入る価値というものは数千万ドルに値するものが出てくるかもしれぬ。その点を特に私要望いたします。このことを事務次官でも兼重さんでも、三木国務大臣にどうぞ話していただきたい、必ず回ってくるようにという私の強い要望があったと。おそらく委員会満場一致でこれをきめてくれるだろうと思う。委員会の強い要望があったということを伝えて、ここへ帰ってきて、みやげ話をしていただきたい。そのことを期待いたします。
  111. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 船の問題について中曽根委員からお話がありました。私は学術会議が、かりに中曽根委員のおっしゃった防衛庁の問題が出ましても、それについて正式に文部省に対して反対であるというふうな話はまだ受けておりません。個人々々のにおいはどうか知りませんが、受けておりません。が、この前宗谷が遭難したときでもソ連のオビ号が協力した事態を見ましても、これは私は観念的にそう妙なことを言うことがおかしいのじゃないか、こう思っております。
  112. 永田武

    ○永田参考人 私の個人的な見解でよろしいかと思いますが、私自身は防衛庁に協力していただくことに、喜びこそすれ、決して反対をいたしておりません。ただし、私が学術会議全体を代表するものではございませんので、多分学術会議南極地域観測特別委員会の委員、つまり南極の端的な観測研究に直接責任を持っている諸君は私とほぼ同じ意見ではないかと思います。
  113. 鈴江康平

    ○鈴江説明員 人工降雨の問題に関しましては、ただいま日米委員会の直接の議題には載っておりませんが、お話のように私どもも非常に重要だと思っております。この問題につきましては、委員の中に専門家の和達委員並びに坪井忠二委員がおられますので、十分御相談をしたいと思います。それで私としては、少なくともアメリカから人物交流といたしまして、そういったような人に早く日本に来てもらうということ、並びにこちらからもそういった学者が行って向こうの内容を知る、そこにおいて初めて国の政策として共同研究計画というものを整えてもらいたいと思っております。この点につきましては、すでにオーストラリアに、科学技術庁の方から費用を出しまして、気象庁の方から研究者に一年半ばかり行ってもらいまして、最近帰ってきたようでございます。そういったような人物交流の点からも、その点は進めていきたいというふうに考えている次第であります。  それからもう一つ、シアトルの博覧会。実は一応の時間を予定されて大臣から厳命をされておりますので、非常に窮屈なんでございますけれども、何とか差し繰ってそちらに回ってきたいという計画をただいまあれしております。ただ、そういう御期待に沿うようないい考え方を得られるかどうか、非常に疑問でございますけれども、できるだけ努力してみたいと思います。
  114. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 この際、永田参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本委員会調査のため多大の参考となりましたことを、委員会を代表いたしまして私から厚くお礼申し上げます。まことにありがとうございました。      ————◇—————
  115. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 松前委員から特に要求がありますので、質問を許します。松前委員。
  116. 松前重義

    ○松前委員 長谷川政務次官に。かつての問題の終止符を一つ打ちたいと思います。学位の問題で文部省が非常に熱心にわれわれの要望を取り上げられて、いわゆる大学院以外のコースをたどった者に対して従来の旧制的な考え方のもとに学位を授与する、そして彼らの研究を促進するという点について相当な力を注いでいただいたことに私は非常に感謝をいたしております。しかし、新聞紙には寄り寄り相当大きな活字で出ておりましたけれども、これは文部省としてそのように学位の規則を変えられたかどうかという点について具体的なお知らせを受けていないのでありますから、その点につきまして一つ政務次官からその事情を承りたいと思います。
  117. 長谷川峻

    ○長谷川説明員 本委員会から、博士制度について在野の研究者、そういう方々に門戸を開いて博士になれるように、そして学術振興をはかるように、改悪したものをもとのようによく直せという強い御要望がございましたので、さっそく文部省といたしましては研究いたしまして、省令でございましたので、四月一日からもとのように外国語をやらないということをちゃんときめまして、発表しております。新聞に載ったか載らないかわかりませんけれども、事務的手続を整えております。なお、事務的な詳しいことになりますれば、ちょうど岡野説明員も来ておりますから、お聞きいただけばけっこうだと思います。現に私のところにお礼状もたくさん参っております。これはやはり学術の問題は超党派で言っていただきますれば、受ける私の方も気が楽で、ばりばりやれた一つの現われがこうじゃないかと思っております。在野の研究者にそうしたことでいささかでも喜んでもらって、その上に日本の学術振興ができる。委員会の決議、また御発言をすなおに私の方も受けたことが、こんなに喜ばれているかと思って、内心快く思っておる次第であります。
  118. 松前重義

    ○松前委員 長谷川文部次官を中心として文部省が非常にすなおに本委員会の決議を受けたわけでありますが、私どもも微力をいたした者の一人として、各省研究所、またその他で研究しておられる在野の皆さん方から非常に喜んだ手紙をちょうだいしております。文部省にもさぞ殺到しておることと思います。ただいまの御発言は、何らかの形ですみやかにこれもPRしていただきまして、みんなが喜んで研究に励むようにやっていただくことをお願いしたいと思います。この際、文部省に対して感謝の言葉を申し述べさせていただきたいと思います。
  119. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会