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三木国務大臣 新聞等で御承知のように、不幸なことではありますが、
アメリカが核爆発の実験を開始し、その通知を受け取ったわけでございます。外務省よりの連絡によりますと、「米国の太平洋における一連の核実験の最初の実験は、現地時間二十五日朝に行なわれるが、正確な時間は不明である。」こういう連絡を受けたのであります。まだ公電が入っておりませんが……。本日、
日本時間の午前零時四十分ごろ、それも公電がありませんので正確なことはわかりませんが、非常に大型ではないという模様であります。公電があってから正式なことを申し上げた方がいい。われわれの知識も新聞の知識でございます。それと同時に、
アメリカ政府から
アメリカ原子力委員会の今度の核爆発実験に対する保健安全措置というものの通告を受けました。これはあまり長文でもございませんから、読み上げてみたいと思います。
保健安全措置
アメリカ原子力委員会
(1)フォールアウトを出来る丈少なくする様に核爆発実験の規模、回数等を制限し、去年のソ連の核実験のフォールアウトよりはるかに少なくする。
(2)局所降灰の被害をなくするため、コンピューターなどの改善された
技術を用い予想を強化する。
(3)海洋
調査を含め放射線生物学的な
調査と検査を拡大する。
(4)
一般的周知
事項
(イ) 実験区域内への許可のない者の立入りを監視するため海空の捜査が行なわれる。
(ロ) 十五の特別の気象ステーションが設けられる。
(ハ) 今回の実験ではそのフォールアウトの一-二%が実験地区内に降下することが期待され、のこりの九八-九九%は赤道地区の上高くに拡散されるであろう。そしてそこでショートライフの核種の放射能は減衰するであろう。
(ニ) 十六のモニタリングステーションが、洋上の島などに設けられる。
(ホ) 重要な食品の分析が重要な核種について行なわれる。そしてスポット検査(spot-check analys-es)は実験区域の外に送られる。例えばまぐろやココナツについて行なわれる。
(ヘ) 全β放射能は海水について調べられる。
(ト) ワシントン大学は洋上の多くの島の生物について
調査を行なう。
(チ)
研究所の
調査船ギルバード号が放射能分析のために魚を集める。
(リ)
アメリカの諸州における放射能嗣査は前回と同じ様な要領で行なわれるであろう。そしてパブリックヘルスサービスによって
調査データは毎月刊行されることになっている。
これだけのことが、正式に
日本に
アメリカから通報を受けた
文書でございます。
そこで、われわれといたしましては、きょうは午前十時から
放射能対策本部の
会議を開きまして、この事態に対して、
アメリカの核爆発実験というものが今後どういう影響を与えるであろうかという、いろいろな
検討を行なったわけでございます。私は
会議の途中で出て参ったのでございますが、大体実験を行なった地区のフォールアウトが、降下するのは一ないし二%というようで、九八%ないし九九%は上空高く拡散されるというこの
文書からして、おそらく核爆発実験は非常な上空において行なわれるであろう、二万メートル以上のような上空において行なわれるであろう。従って、今直ちに大量なフォールアウトが
日本に降下するということは考えられない。今後二年ないし三年という長期にわたって成層圏上空に吹き上げられたフォールアウトが、降雨時期などにこれが降下するので、相当長期のものである。半減期の短いものに対しては二十日ぐらいの間に
日本にくるであろう。しかし、それは量としてはあまり多くない。大部のものは成層圏に吹き上げられて、それが長期にわたって徐々に降下するということでございます。
そういうことで、さしあたりとして、われわれの対策としては、こういうことが予測されましたので、今日まで対策として講じておりましたことは、水産庁から漁船に対し、あるいは運輸省から貨物船に対して、危険水域のこれを明示して、警戒の注意の伝達をすでに出しておるわけでございます。また、漁船や貨物船に対して、どういう予定を持っておるかという
調査をし、そしてその漁船や貨物船に対して警戒するように注意を伝達した。それから漁船などに対しては、できるだけ計測器類を持ち込むよう水産庁から指導し、いろいろな指示を今後与える場合に、それを接受できるだけの設備を船が持つような指示を与えております。また、厚生省では、漁船の船員、貨物船の乗組員などに対して健康診断を実施することにいたしておる。そういう水域近くを行った漁船や貨物船に対しても健康診断を実施する。それから、漁獲物に対しては、東京都の魚市場等において抜き取りの検査を、もうすでに三十五日から開始をしておるわけでございます。現在の段階では、そういう危険水域近くに行くような漁船あるいは貨物船に対して十分な注意を与え、それに対していろいろな指示を受け取れるような設備をすることを指示し、それから漁獲物に対しての検査をする体制を整備し、あるいは乗組員の健康管理を、実施していこうとしております。
こういう体制でございますが、今後どの
程度に
アメリカの爆発実験が行なわれるかということは、これはなかなか途中では――今回の場合は開始を通告してきたわけであります。おそらく終了を通告するでありましょうけれ
ども、間ではいろいろなことを通告しないでありましょうから、二、三カ月続くものと見て、その間どういう状態になるかということも勘案していろいろな対策を考えておるわけでございます。現在として対策本部でいたしております手はずというものは以上申し述べたところでございます。
ただ、天水の飲用者については、これは単にフォールアウトのことばかりでなく、いろいろな衛生上からいっても、天水を濾過することが健康保持の上からいっても好ましいので、これには何らかの対策を講じたいということで
検討をしておる。あまりその費用が多額になってもいけないし、また、その濾過装置などに対して維持するために多額の費用がかかることもいけませんので、できるだけ複雑でなくて、費用もかからない方法で、天水の飲用者に対しては何とか処置をとりたいという考えで、きょうも
検討を加えておる次第でございます。
なお、今後、ソ連の核爆発実験による半減期の長いフォールアウトな
ども累積されていく傾向にありますし、
アメリカの核爆発実験によって、そのフォールアウトというものもこれに加わるわけでありますので、一応行政的な措置の目安として、
一般的な事態に対しての指標――ここまでフォールアウトが累積してくれば何らかの行政措置をとらなければならぬという指標、これとまた持続的事態――ただ一ぺんにかっと来る場合と、これが徐々にフォールアウトが累積されてくる場合とに分けて、この指標を、
放射能対策本部の作業班で結論に達したわけでございます。それで、本日は放射線議会にかけてこれに
検討を加えておるわけで、作業班から放射線の、審議会の手に移っておる。きょうも
会議を続けておりますが、この結論を得次第、できるだけすみやかに指標を発表して、
政府の行政措置の責任を明らかにしたいと考えておる次第でございます。