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1962-04-18 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十八日(水曜日)    午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 西村 英一君 理事 山口 好一君    理事 河野  正君 理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    佐々木義武君       松本 一郎君    石川 次夫君       三木 喜夫君    山田 長司君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君  委員外出席者         通商産業事務官         (特許庁総務部         長)      奥宮 正典君         参  考  人         (社団法人発明         協会理事長)  近藤 晴夫君         参  考  人         (日本オイレス         工業株式会社社         長)      川崎 宗造君         参  考  人         (那須農業高等         学校教諭)   提橋  昇君         参  考  人         (麹町学園教         諭)      清水 重一君         参  考  人         (住田光学工業         株式会社社長) 住田  進君     ————————————— 四月十八日  委員日野吉夫辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山田長司辞任につき、その補欠として日  野吉夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(発明奨励に関す  る問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日は、発明奨励に関する問題について参考人より意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、社団法人発明協会理事長近藤晴夫君、日本オイレス工業株式会社社長川崎宗造君、那須農業高等学校教諭提橋昇君、麹町学園教諭清水重一君及び住田光学工業株式会社社長住田進君、以上五名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、本委員会調査のため御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  これより発明奨励に関する問題につきまして、それぞれの御発明なり、または創意工夫等の御実績についての各位の御体験や御抱負、その地本問題に対する日ごろの御所見等にわたって忌憚のないお話を承りたいと存じます。時たまたま科学技術週間であり、また本日は発明の日に当たっておりますが、本委員会としては各位の御意見を拝聴し、もって科学技術振興対策樹立のよき参考といたしたい趣旨でありますので、この点をもお含みの上、よろしく本委員会調査に御協力のほどをお願いいたします。  なお、参考人の御意見開陳はお一人約十五分程度にお願いいたしまして、そのあと委員各位の質疑にお答え下さいますようお願いいたします。  参考人の御意見開陳の順序は、最初近藤晴夫君、次に川崎宗造君、次に提橋昇君、次に清水重一君、最後に住田進君よりお願いいたします。  それでは、最初近藤参考人よりお願いいたします。
  3. 近藤晴夫

    近藤参考人 では、最初に私から意見を申し述べさせていただきます。  本日は私、社団法人発明協会理事長ということで出席を求められましたので、私ども平素発明協会におきまして考えております発明奨励に関しますところの希望ないし意見というようなものを申し上げたいと存じます。  まず第一点といたしまして、発明者または発明実施者に対しますところの税制上の優遇措置という点につきまして申し上げたいと存じます。御案内通り政府におかれましては、特定産業あるいは特定企業家に対しましてその産業なりあるいは企業を保護し、あるいは推進する、奨励するという意味におきまして、いろいろ税制上の優遇措置を講じられております。たとえば昨年の夏以来国際収支が非常に赤字になりまして、この際、国際収支を改善するために輸出振興ということがわが国の当時の情勢として最も要請されているというようなときに臨みましては、輸出業者あるいは輸出産業関係しておりますところの業者にいろいろの税法上の優遇措置を講じられました。考えてみますと、発明家あるいはまた発明を実施されます方々は、みなそれぞれわが国科学技術工業水準の引き上げ、あるいはまた産業全般発展のために非常に貢献される方々ばかりであります。従いまして、そのように一国の産業発展、あるいは国民生活の向上に非常に寄与されます方々に対しましても、輸出業者あるいはその他の国家が必要といたします産業あるいは企業者と同様に、税法上の優遇措置を講じられるのが当然かと考えるのであります。たとえば発明者発明を完成いたしますのに、あるいはまた発明を完成いたしましても、それを企業化しあるいは実施いたしましたあと数年の間は、たとえばその発明に要しました経費を法人の場合は損金として認めるとか、あるいはまた個人の場合は所得税から適当な方法でそれを減免するというような措置を講ぜ得られましたならば、世の中の発明者、ことにいわゆる町の発明者にとりましては非常な恩恵であります。また、そうすることによって国民一般発明に関しますところの関心をより高めることになりまして、ひいてはそれが発明奨励という大きな目的につながる政策ではないか、かように考えるわけでございます。  それから、第二点といたしまして、発明実施化補助金の増額の問題でございます。御案内通りわが国工業所有権に関します出願件数は今日、ここ二、三年の間、世界第一といわれております。四法合わせますと十七、八万件に達しております。なるほど出願件数は多いのでありますけれども、それが特許になり登録になりますところの、いわゆる特許率あるいは登録率という点を考えてみますと、外国が六、七割台というのに比べまして、わが国は大体長い間二割台でありましたが、三十六年度において初めて四割台になるというような状態でございまして、なお欧米に比べましては非常に登録率あるいは特許率が低いのであります。さらにそれが実施化段階になりますと一段と少なくなりまして、正確な数字はございませんので、私はここで、はたしてどの程度実施化されているかという正確な数字は申し上げにくいのでありますが、おそらく特許になりあるいは登録になりましたもののうち一割前後のものが実施されているのじゃないか。人によりましては、おそらく何百分の一程度しか実施されていないのじゃないかということを言う人もございます。いずれにいたしましても、特許登録になりましたもののうち、実施化されますものはさらに少ないのであります。なぜ少ないかと申しますと、諸先生方すでに御案内通り発明家発明を完成いたしますまでに、大体個人の場合は私財をほとんど使ってしまうわけであります。従って、それを実施化いたしたくても手元に金がない、あるいはまた適当な融資を仰ぐ方法がないということで、せっかく発明は完成いたしましても、それを実施化することができないというのが今日の多くの現状ではないか、実施率が非常に少ない一番大きな理由ではないか、かように考えるわけであります。せっかく発明を完成いたしましても、それを実施化いたしませんと何にもなりません。そうした意味におきまして、科学技術庁におかれましては、すでに先年から発明実施化補助金を交付されております。しかし、金額を申し上げますと、これはすでに御案内通りでございますが、大体年二千万円程度であります。しかも、昭和三十六年度におきましては、一人当たり七十万円程度交付金でございます。金額の多い少ないは別といたしましても、私どもはこの際、発明実施化補助金を少なくとも従来の数倍に、できれば何億という程度に引き上げていただきたいということを、第二番目として申し上げたく存ずるものであります。  それから、第三点でありますが、今日現在各都道府県、ことに東京都のごとく発明奨励に関して非常に積極的にやっておられます県におきましては、それぞれ専門職員がおられます。東京都以外にも、若干の府県には、発明奨励あるいは科学技術指導関係専門職員がおられますけれども、この際できることなら一つ全国都道府県に最小限一人の発明奨励担当官といいますか、担当職員を置いていただきたい、かように存ずるものであります。なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、私ども発明協会といたしましては、全国都道府県にそれぞれ支部を置いております。そういたしまして、発明協会本部でやっております事業に準じた発明奨励関係のいろいろの催しなり仕事をやってもらっておるわけでありますが、専門職員のおられます府県と、そうでない、県の方が、かたがた兼務仕事をやっておられます県と、その発明奨励に関します実績を比較いたしますと、専門職員のおられる県とそうでない県とは雲泥の相違があります。これは単なる一例でありますが、全国都道府県にそれぞれ一名以上の発明奨励に関します専門職員を置いていただきますならば、発明奨励の点につきましても、今後さらに飛躍的な発展が期せられるのじゃないか、かように存ずるものであります。中央から、たとえば科学技術庁なり特許庁からそれぞれ担当官を一人ずつお出しになるということは大へんでございますので、もしそうした場合には、地方都道府県職員のうち一人をそういう専門の人にしていただきまして、それには国家の方から半額程度人件費補助金を出していただくというような方途を講ずることによりまして、各都道府県がそれぞれ専門職を一人以上置いていただけるのじゃないか、少なくとも置いていただける機運が醸成されるのではないか、かように考えるものであります。  それから、第四点でありますが、特許文献利用度を高めますとともに、調査活動敏速化をはかるということが必要ではないか。これは、直接発明奨励関係がないかと思いますが、間接的にはもちろんあるわけでありますので、一言述べさしていただきます。すでに申し上げましたように、わが国出願率は非常に高いけれども、それが特許になり登録になり、あるいはまた実施化されますのはさらに少ないということを申し上げましたが、その一つの原因といたしましては、わが国におきましては、出願者の方がいわゆる先願——すでに同じような出願が出ているか、あるいはまたすでに既得権があるかどうかということをあまり調査されないで、悪い言葉でありますが、特許庁にむしろ調査してもらうというような意味で非常に多くの方が簡単に出願されます。そのために、先願がある、あるいは類似既得権があるという理由拒絶査定を受けるのが非常に多いのであります。このことは、ひいては特許庁仕事の負担を非常に重くいたしまして、必要以上に仕事が繁雑になるということにもなりますし、また国家経済の点から見ましても、明らかに拒絶になるものを出願手続をとるということは、いろいろな点から見て不経済でございます。そこで、私ども発明協会といたしましては、従来から、特許庁の御指示によりまして、公報類全国に広く頒布いたしまして、公報をよく見てもらって、むだな出願を避けてもらうということをやっておりますが、従来の公報は御案内通り相当部厚なものであります。これを私どもが各地方あるいは関係業界あるいは業者の方に配布いたしますと、文字通りツンドク、積んでおかれるだけでありまして、内容をなかなかごらんにならない。せっかく資料を配布いたしましても、それを、会社あるいは関係団体におかれましては、図書室とかあるいはまた部屋の一隅に積んでおかれるにとどまるわけであります。この際この公報をもう少し広く活用してもらう、そうしてむだな出願を省いてもらうというような意味におきまして、私ども公報をもう少しよく見てもらうために、最近国内公報につきましては抄録——公報を簡単に抄録するわけでありますが、抄録カード作成ということを始めたわけであります。このカード発明内容を、図面と特許請求の範囲、その他必要な事項を簡単な、半紙半裁くらいな紙に抄録することによって、しかもそれを一定の法則に基づきまして整理しておきますと、必要な先願関係あるいは類似既得権関係を調べる場合には、ちょうど私どもが図書館に参りまして必要な書類を引き出します場合にカードをくって簡単に見つける、それと同じように、全部発明公報内容抄録カードにおさめておきますと非常に発見が容易であります。このことは、単に出願者がそれによってむだな出願をしなくて済むという利益があるばかりでなしに、特許庁で、審査を進めます場合にもそのカードを利用願うならば、非常に簡単に類似関係あるいは先願関係が発見できるわけであります。このことは特許審査をより効率的に迅速にやられるために必要であるばかりでなしに、発明家あるいは町の企業者の方が出願をされます場合にも、先ほど申しましたように、むだな出願をしなくて済むという利点もあります。こうしたことがめぐりめぐりまして、結局は今日の特許庁仕事といいますか、米審査でたまっておりますところの書類が非常に早急に解決できるのではないか。聞くところによりますと、審査官の方が審査をされますのに相当な時間がかかるわけでありますが、そのうち半分以上はその類似関係あるいは先願関係を調べられるのに時間を要しておられるように聞いております。そうした点からいたしましても、そういうように公報内容特定カードにおさめることによって、簡単にその内容を把握できる、調査できるという道を講じますならば、特許の、審査も一段と促進され、しかも出願者その他にも簡単に先願その他が見分けられまして、むだな出願をしなくて済むという効果があるのじゃないかと思われます。従いまして、私どもといたしましては、そういう国内公報抄録をいたしたい、また、最近は外国特許公報につきましては、米国、ベルギー等については国家から補助金特許庁に対し出されるようであります。同じようなことが国内公報についても言えるわけでありますので、国内公報にしろ、あるいは外国公報にしろ、こういう公報作成にもう少し国家の方から御援助をいただきたい。たとえば補助金の形でけっこうですが、そうした抄録をこの際できるだけ広範囲に迅速に作りまして、関係業界に配布するということに、一つお力添えを賜わりたいということを申し上げまして、私の意見を終わらしていただきます。
  4. 前田正男

    前田委員長 次に、川崎参考人よりお願いいたします。川崎参考人
  5. 川崎宗造

    川崎参考人 私は前田委員長のお呼び出しで出て参りました日本オイレス工業株式会社川崎宗造でございます。  お呼び出しがございまして、準備するひまがない。小さい工場を持っておりますと、求人難で四苦八苦する。そうすると、ごたぶんに漏れず春闘です。せっかく初めてこういうところに呼び出されたのだから、私も何か一つ勉強してこようと思ったのですけれども、そういう次第で、ない頭のところをますますまとまったことが申し上げられぬ、こう思います。先ほどお話がございましたように、私は町の発明屋というものでございます。町の発明屋として今まで身近に感じたことを断片的に率直に申し上げまして、お耳をわずらわしたいと思います。ところが、私の話なんかは、それは君、的はずれだよ、そんなのはもう今ごろないよ、というそしりを受けはせぬかと思って心配する次第であります。  私は、特許というものを常識程度に全国民に知らしてもらいたい、熟知さしてもらいたい、これが重要なことじゃないかと思うのです。特許庁も七十周年記念というのを二、三年前にやられたと思うのですが、七十年も過ぎていて、特許というものを認識しない人がたくさんある。これが私は大きな欠陥だと思います。発明協会理事長近藤先年がお話しになりましたが、これが私のようなかじ屋頭にはわからぬのです。特許庁外郭団体であって発明協会という。発明というものと特許というもの、これは専門家に言わせれば、発明特許ということと、ただ特許だけの特許がある、こういうふうで大へんややこしいことをおっしゃるに違いないと思います。実際われわれ、もう常識として特許発明発明特許の姿が現実じゃないか、こう考えます。そういう意味において、特許というものを一般国民がどんなふうに考えておるかということを、私は手近なことをお話ししたい。特許というと、金もうけに縁があるという。私も役人をしたのですが、特許というと、あいつは金もうけしやがる、こう言う。それはわれわれはけっこうでございますが、もっと特許発明というものに多くの材料を持っておる大学教授はどうでございましょうか。昔は、ある先生特許をとられた。上の先生から、あいつは学者の風上にも置けない、こういう姿があったことも、古いことじゃないと思います。ところが、新学制になってどうかというと、特許が、大学先生教授になる、助教授教授になる、講師が助教授になるという点数一つになっているということでございます。何と申しますか、終戦後に科学技術の大元締めになるような学術会議もできております。これの選挙権の資格が特許なんです。特許一つ点数に入っているということなんでございます。ようやくそういう段階になったが、町の人はどうか。特許はむずかしいものだ、ことに必要とする中小企業者親方は、高ねの花のように考えておる。こんなことでは、幾らかねや太鼓をたたいたって、だめだと私は思う。こういう姿でございます。新聞あるいは雑誌、パンフレットに、いまだに実相専売特許という言葉を使っております。いわゆる新案特許、そういう言葉はもうないはずじゃございませんか。特許であり、新案登録である。いわゆる新製品専売特許と書いてあると、いかにもこれは大したもののように考える。新聞雑誌に、新製品として専売特許数字が書いてございます。その数字特許庁においでになって、試みに一つ明細書ごらんになると、思い半ばです。その明細書にもないようなことが盛んに書いてあります。この姿は何かというと、もう特許というものはえらいものだと考える。かくのごとく、七十年たっても国民特許というものになじんでいないということじゃなかろうかと思う。これは一つ何とかしてやらなければいかぬと思います。  その他、特許科学の進歩に役立つ。なるほど役立ちますが、結局これが災いする面もあります。中小企業では特許明細書弁理士に頼むのであります。ところが、大企業はちゃんとそういう部課があって、あるいは重役がその部の親方になっておるところがある。ある組織を持っております。そうして特許をどんどん作る。ある町の発明家が苦心惨たんして、ようやく特許にしようといって出してみると、もうだめだとけられる。大企業がちゃんと持ってござる。特許をとるために使う職員を大企業は雇っておられるのだから、けっこうな御身分だと思います。そうして、自分特許を擁護せんがために防壁を作る。ものを完成せんとする町の発明家は、せっかくやって、あとは、あそこが権利を持っているからだめなんだとべそをかく以外に手はないということも、よく私は見聞きいたします。まあ、長いものには巻かれろというのが日本人の根性ですから、それならそれでいいと思うが、要りもしないような特許防護壁でやたらに作られるということは、これはなかなか問題だと思う。それには、特許というものをもっと身近に、すべての人間が親しみを持つようなことをしなければうそだ、こう思います。特許庁ごらんなさい。昔はよかったかもしれぬけれども、早い話が、まるっきり刑務所に行くようだ。もっと明るくしなければいけないと思います。  先ほど発明協会近藤先生がおっしゃったのですが、アメリカあたりは百件しか持っていないのを、日本件数が多くて、審査官は三百件も持って右往左往している。これを何とかしていただかなければならぬ。私はこれを逆に使って、若い連中に言っているのです。特許ほど安いものはないぞ、自分技術的水準をトレーニングするのだ。わずか千円か五百円印紙を張って出せば、有能な審査官がどんどん審査してくれるのだ。これは特許庁に怒られるかもしれないけれども、そういうような考えを持っております。もう少し特許に対する国民常識、認識の程度を深める運動をやるべきだ、こう考えております。  それから、補助金の問題です。貧乏人は、何かいいこというと、金をよこせと言う。発明協会に入ると何か金づるに縁がないかというのが、ない袖はふれぬ発問家のあり方でございます。特許というものは、先達の言われた言葉があります、アイデアに数%それを実施化する、技術化するのに九〇何%の労力を要する。ことに日本特許先願特許で、ちょっと頭のいいやつが、大阪をたって東京へ行く間にアイデアが浮かんだ。じきに頼みつけ弁理士のところに電話をかけて、ちょっと来い、こういうアイデアだから書いて出せ、といって登録する。まるきり絵にかいたもちです。幾ら件数をあおったって、これはだめです。もっと発明を助成するのならば、ただ特許の作り放しじゃいかぬと思う。それを育ててもらわなければいかぬ。私は町の発明家で立ったのですが、今二百人くらいいる五千万円の小さな会社をこさえましたが、これなども補助金のお蔭なんです。私は昭和十七年から二十八年まで、個人として連続どこかの補助金をちょうだいしている。その額が四百万円ぐらいになっている。さっき計算して持ってきているのですが、四百万円ぐらいです。十七年からですから、ちょうど二十年です。もとは大体一万円か二万円のものです。私の仕事がほんとうに何か役に立つということは、これは補助金のお陰だと私は感謝しております。ところが、これもやはり作り放しじゃいかぬ。どうも役所の行政というものは、なるべく無難なように、総花です。こういうことなども、なかなかむずかしい問題だろうと思うのですが、もっと考えてもいい問題だと私は考えます。  それから、私個人の話ですが、生方によく味わってもらいたい。私は三十一年に紫綬褒章をちょうだいしました。それは私の過去の特許のものが主体になっております。特許庁にはお世話になったから、特許庁長官から多分もらうのだろうと思って、行ったのです。そうしたところが、技術庁の長官、総裁ですか、その方がどこか御旅行中で、代理の方からいただいた。そうしたら、こちらは真剣に、ありがたくちょうだいするのに、読まれた字が違うのです。私のは軸受(ジクウケ)ですが、ジクジュとおっしゃった。これでは信頼感がなくなります。こういう点は多々あると思います。それは私だけでなくて、東大の大越教授も一緒に行ったのですが、川崎君、君の方も間違っているのか、おれの方も間違っている、これでは全くありがたみがないね。まるきり隣のおじさんからお菓子をもらったようなものだ。こういうことなどが信頼感をなくするところだと思うのです。  これはこういうところで言ってはどうかと思うのですが、今技術週間あるいは発明日とあるけれども意見は出尽くしているのではなかろうかと思います。私もあらゆるところに耳をそばだてているのですけれども大がい意見は、どなたがおっしゃっても同じことです。そうすると、今の姿はどうだというと、スーダラ節とかいうのがありますな、わかっちゃいるけど何ともならぬということで、これは一つ何とかしていただくということが私の希望でございます。とりあえず第一条件として、特許というものと発明というものをごっちゃにさせないようにする。あるいは学校の先生方には、特許ということはむずかしいかもしれぬ、教わる方が。ところが、特許発明というものは、私はうらはらだと思う。ことに今後いわゆる貿易の自由化となるというと、日本人だってそうばかじゃないですよ。大体アメリカの特許をとるのに五十万かかる。私なんか気負った方ですから、なにくそと思ったけれども、五十万出せなかった。そしてまた、アメリカは相当なものだからだめだろうという、長いものには巻かれろ根性が私の胸にもあります。ところが、出してみると六件くらい通っております。そうすると、ようやく特許庁外国特許云々ということですね。こういう点で、お互いに知っちゃあいるけれどもできないというのを打破するのが、先生方のお力だと思います。一つよろしくお願いいたします。(拍手)
  6. 前田正男

    前田委員長 次に、提橋参考人よりお願いいたします。提橋参考人
  7. 提橋昇

    提橋参考人 本日は参考人としてお招きいただきましたけれども、本日の趣旨でございます発明奨励にはちょっと関係がございません、地下水の問題でございますが、私が今まで体験したことについて、これから十五分間申し述べさせていただきたいと思います。  私は栃木県の北端で、十年前までは栃木県の北海道などといわれた未開地の那須野原の出身でございまして、地元の農業高校に理科の教師として勤務しながら、生徒会の地学クラブというクラブ活動の組織内におきまして、放課後とか休日などを利用いたしまして、生徒とともに十二年間、この地域を主体に、栃木県一体の地下水について調査研究している者でございます。地元の農家あるいは各市町村からの依頼で、井戸の選定調査はもうすでに千件を突破いたしまして、調査結果はほとんど意に合っている次第であります。これからこの地域を主体に説明させていただきます。  那須野原というところは水利の便が非常に悪うございまして、従って開発もおくれ、昔蒲生氏郷がここを通りましたときに、ここは那須野原というところなりければあまりにも人気もなくものさびしかりつる、こう書いたといわれますが、十年前までは未開地の全くさびれた農村でございました。これと申しますのは、この広い原野を潤す水がきわめて少なかったということが大きな原因の一つかと思います。表流水と申しますれば、人工の疎水のみでございまして、利用といいますと、これは水利権に縛られているために、大部分の人は水といえば地下水にどうしても依存しなければなりません。地下水といいましても、四万ヘクタールの面積のうち、約半分は井戸も非常に深く、二、三十メートル掘らないと水が出ないという地域でございまして、昔から井戸か蔵かといわれるほど、非常に井戸というものが貴重な財産の一つでございました。しかし、水量の面になりますと、どこを掘っても多量にあるものではなくて、わずかしか出ない井戸もたくさんあり、特に三月、四月の渇水期にはから井戸も少なくありません。かような状態のところで、飲料水にこと欠くところでは、疎水、川の水を飲料水といたしまして、いまだに赤痢などが発生しているありさまでございます。  しかし、最近は関係当局の方々、また、微力でございますけれども、私たちの地下水調査の進展に伴いまして、井戸掘りの悲劇というものも次第に少なくなりまして、水量の豊富な地下水系は、電気揚水で開田に、あるいは工場用水として、急激に伸びつつある現状でございます。  では、私が現在実施しております探査方法について、順を追って御説明いたしたいと思います。  地下水を調べるのには、基本はまず井戸の水位をはかりまして、これを地図に記録いたします。たくさん井戸がありますれば、地下水の面を結びまして、地下水面図というものを作ります。そして、地下水面の傾きから地下水のおよその流れ方をつかみます。続きまして地下水系調査に移り、地下水が地面の下のどこをどのくらいの早さで流れているかということをまず見当をつけます。これには、流れの上流に当たる井戸に私たちは薬品を入れます。薬品といたしましてはいろいろございますけれども、私は、フルオレッセイン・ソーダ、いわゆる俗称ウラニンという、肉眼で約百万分の一まで容易に検出できる螢光物質、あるいはネッセラ試薬でアンモニア・イオンを検出する塩化アンモン、これを使用しております。これを下流の井戸で十分置きに水をくみまして、薬品の量を化学的に調べるわけでございます。たとえばいま、Aの井戸に入れた薬品がBの井戸に一時間後に出始める、三時間後に最も濃度が濃くなり、それから次第に薄くなっていくといたしますれば、地下水はAからBまで流れるのに三時間かかるということがわかります。そしてこの二つの井戸がかりに百メートル離れていたとすれば、その早さというものは一時間に三十三メートル、こういうことになるわけでございます。こうして調べますと、調べた井戸の水がお互いにどれだけつながっているか、また流れの方向はどちらからか、どれだけ早いかなどということがわかります。しかし、これは一見簡単なようでございますけれども、薬品を入れる場所、時間、薬品の量、それから水をくむその間隔、時間を十分検討してから実施いたしませんと、これは効果がございません。私が、かつて川治温泉の地下水系調査を行ないましたときに、投入薬品が岩盤内の水道(みずみち)を通りまして、六百メートル離れました温泉湧出口に出るまでには十八時間もかかっております。従って、この調査にはまず何といっても根気が第一ということが言えると思います。薬品の量は、私の経験では、百メートル以内の間隔で調べる場合には、フルオレッセイン・ソーダでございましたら約五百グラム、塩化アンモンの場合でしたら十キログラム。五百メートルくらい離れておりますと、これはフルオレッセイン・ソーダでしたら三キログラム、塩化アンモンでしたら五十キログラム以上投入いたしませんと、なかなか容易でないと思います。この方法は、川の伏流水系とか、あるいは温泉水系、それから岩の中の地下水系を調べるのに非常に有効であります。  続きまして、地下水系と地下の地質構造との関係をつかむために電気探査というものを行ないます。これは、簡単に申しますれば、地表から地中に電気を送りまして地下の様子を調べるものでございます。そして、岩質とか水の存在状態によりまして電気の比抵坑値の差のあることを利用したものでございます。地表から地下に何メートルまでどんな地層かとか、あるいは地下水はどこに多くあるか、水を通さない岩盤というのは何メートルからかということを調べます。これで調べますと、たとえば砂利層というのはすき間が非常に大きいので電気を伝えにくいけれども、水を通さない岩盤というのはすき間が小さいので電気を伝えやすい。それでだんだん深く調べていきますれば、地下水の含まれている砂利層と岩盤の境というものの深さがわかります。この解析は、普通は比抵坑値と深さの関係を表わした比抵坑曲線というのを作って行なっております。こちらに見える、この下に書いてある曲線でございます。   〔提橋参考人、図を示す〕 私の今使用しておりますのは、深さ大体五十メートルぐらいまでの精度のL10型大地比抵坑測定機、これを使っておりますが、機械そのものといたしましては操作はだれにでもできます。しかしながら、地下の状態を正しく判読いたしますためには、電線の張り方とか、測定深度、間隔、解析法というものが非常に微妙な技術になると思います。特に地下の解析には、地質学的仮説に基づく推理と並行して読まなければ正確を期することは不可能でございます。今この図をごらんいただきまして、ちょっとこれについて御説明申し上げますと、下に書いてあるのが深さでございます。こちらは比抵坑値になっておるわけでございます。この曲線を見ますと、二メートルまでは抵坑の低い粘土質のもの、いわゆる西那須野の方では関東ローム層であります。それから上昇カーブのところが砂利層でございまして、非常に抵坑が高くなっております。そうしてこの十四メートルから下は曲線が下降しております。これはお配りいたしましたプリントの一番最後の図に書いてございますけれども、那須野原というものは一体どうしてできたんだろうかという地質学的仮説に基づいて判断いたしますと、ちょうどこの境のところ、ここから下は水を通さない岩盤になりまして、ここに最も多く地下水が滞水しておるということが見当がつけられるわけでございます。これは西那須野町の水道水源の調査に携わったときの資料でございます。現在は渇水期でも一日大体二千五百トン、豊水期は八千トンくらいの豊富な水量があります。  この要領で、地下水の流れの方向に直角の線上で、こまかい間隔で電気探査を行ないますれば、砂利層の深さが場所によって違い、それを結べば断面図ということができます。ここに示しましたのは砂利層の深さ、いわゆる地下構造の断面図であります。これは今のような電気探査によって調べるわけでございます。これで見てもおわかりになりますように、基盤の山、地表は平らでも地下には凹凸がありまして、その山には非常に地下水が少ない、それから基盤のくぼみ、地下谷になっておりますが、ここには非常に豊富な水量がございます。今までこの地域の人が清水とか湿地に目をつけまして井戸を掘って失敗していたのは、実はこのような基盤の高まりを掘ったためにほかなりません。地下水と申しますのは、この下が水を通さない層でありますから、ここから下はしみないわけであります。そうすると、この上に滞水した水は下に入りませんので、ここから地表に現われまして清水とか湿地になるわけでございます。従って、清水とか湿地の水量というものは見かけ上の水量にほかなりませんで、こういう点で今までだいぶ井戸を掘って失敗した方がございます。  この地質断面図の形は、ちょうど橋の上から川を見おろしたときによく似ておりまして、一つの川の断面らしいということがわかります。といたしますれば、このような基盤のくぼみ、地下谷というものは、上流にも下流にもずっと続いておるはずで、これを電気探査によって追跡いたします。そういたしますれば、昔の川の流路がわかり、地下水を涵養しております伏流経路というものもわかって参ります。   〔提橋参考人、地図を示す〕 こちらに示しましたのが、私が今まで那須野原で調べました地下水の流れの方向と地下谷の図であります。この赤いところが水の出ない地域でありまして、この矢じるしで示したのが地下水の流れる方向であります。従いまして、この線上に井戸を掘りますれば、ほとんど成功する。ところが、この赤い経路の延長を掘りますれば、どこも失敗いたします。これが那須野原の地下水の経路でございます。  今までの調査から、地下水はこの基盤と砂利層の境、水を通さない層と砂利層の境、この上部数十センチのところに多くありまして、そうして流れておるということがわかりました。このようなわけで、解析が非常に微妙になってくるわけです。   〔提橋参考人、図を示す〕  ただいまから一例を申し上げますと、この図のまん中の地下谷でございます。まるのついているところの地下谷の下の曲線でございますが、これは今この電気探査による解析を、下に書いてあります深さを一メートル間隔に地下の状態を測定いたしますと、ちょうど十九メートルの上にちょっと上りカーブが見えると思いますけれども、これが出てこないわけです。従って、一メートル間隔で調べますと、水を通さない地層は六メートルからということになってしまいまして、間違ってしまうわけです。ところが、これを深さを五十センチ間隔で地下の状態を調べてみますと、ちょうどこの十九メートルの上に上昇のカーブが見えるわけでございます。これが先ほど申しましたように、基盤とそれからその上数十センチのところに非常に地下水があるということが、これで解析できるわけでございます。これが電気探査による解析の一つのポイントだと思います。  それから、この解析方法には標準曲線方とか、いろいろありますけれども、せっかく調査したのを標準曲線に乗せて解析いたしますと、どうしてもきれいに作る関係で、修正する懸念があるように見えます。従って、栃木県のような、深くて三十メートルくらいの地下水を利用する場合には、その資料をなまで読む同視法というものが非常に有効かと存じております。  だいぶ時間も超過してしまいまして、この程度にさしていただきますが、以上が私が今まで実施いたしました地下水の探査法の一端でございます。要するに、地下水と申しますのは、地下の谷、昔の川の本流、地下谷に豊富にございまして、そして地下の水量というものは基盤すれすれのところに非常に多くあるということが見のがせない事実の一つでございます。今まで数多く地下谷の井戸も掘りまして、どの井戸も付近の井戸との干渉もなく、一日二千トン以上常時揚水しております。  話が非常に抽象的でございまして、おわかりにくかったと思いますし、本日の趣旨にも沿わなかったかもしれませんけれども、この辺で打ち切らしていただきたいと思います。私もこれからさらに研究を続けまして、地域の開発のためにがんばりたいと思いますので、どうぞよろしく御指導のほどをお願いいたします。(拍手)
  8. 前田正男

    前田委員長 次に、清水参考人よりお願いいたします。溝水参考人
  9. 清水重一

    清水参考人 私、御紹介いただきました清水重一でございます。本日、科学技術振興対策に関する議題で、少しく意見を述べさせていただきます。  まず第一に、有能な発明家に対する生活保障について申し上げます。私は、日本民族はすぐれた民族だと思っております。しかし、今日多数の隠れた有能な発明家が、その才能を十分に発揮し、そして発明研究に専念することのでき得ないのは、根本的な問題であるところの生活の保障がないためであると私は思います。まず、生活を維持するためには働き、その余暇を利用して発明研究を続けている。また、発明費もその生活費の一部をさかなければならない。こういったようなのが実情なわけでございます。ですから、結局は実際的にその能力がありながらも、十分にその能力を発揮することができないというような結果になっておりますが、これは社会にとりましても非常に大きな損失だと、こう考えております。その結果、能力は国全体としては相当ありながら、やはり外国に比較して実際的に科学的な技術の進歩は非常に立ち遅れて、毎年特許の実施料としては相当莫大なものが外国に支払われているのじゃないかと思います。このようなことを考えまして、今日そのような費用の一部が実際的に払われているのはどのくらいかということはわかりませんが、なお何億にも上っておると聞いておりますので、その十分の一に相当するくらいの額であっても、今日こういったような発明家の援助のために使ってくれれば非常に幸いだと思います。こういったような発明家に対して、どのような方法をもって援助するかといいますと、いろいろな援助の仕方もあると思いますが、その生活程度によりまして、またはその者の発明歴によりまして段階を設けて、その者の生活を保障するような何らかの方法をとっていただければ非常に有効じゃないかと思っております。  その次には、発明実施化試作試験の補助制度と試験終了後の工業化の助成について少しく意見を述べてみたいと思います。発明実施化試作試験に伴う国の交付する補助金は、現在外国に支払う特許実施料に比べますと、ごく少額であります。大体これは毎年四十数名補助をしていただいておる方がありますが、東京都だけでも数十万の科学者がいるということを考えますと、実に少数な者にしか補助金が交付されていないのじゃないかと思っております。そうして、こうした補助を受けないところの他の大部分の発明家というものは、自費でもってやはり試験研究を行なわなければならない。そしてまた、実際的に交付額というものもその実際にかかる額の何%である。そういったようなことになっておりますので、やはりそれは補助を受けたその者であっても、何分かの額というものはやはり自分の費用を充当しなければいけないといったような実情になっているわけです。ですから、結局は、その発明というものに身を投じますと、何らかの形で非常に経済的な困難が伴うというようなことになっております。こういったようなことを考えまして、現在の補助金に対しまして、私たちで考えますと相当少ないと思いますので、今後さらに相当額増額してくれればやはりいい結果をもたらすのじゃないかと思います。  それからまた、別なことですが、私は教職の身にありまして常に考えますが、発明協会あるいは科学技術庁等におきまして、学生における発明研究というものは非常に奨励されているわけです。けれども、実際的に学生の発明展に出すそのような試作品なり、あるいはそういったような他の研究に対しましても、それはやはり相当額の補助をいたしませんと、かえってきらわれるような結果を招くのじゃないかと思います。こういったようなことを考えまして、学生の研究に関しましても、国家なら国家としまして、やはり何かの方法で補助制度あるいは補助金制度というのですか、そういったような制度をもって、優秀な発明、あるいは実用新案的なものを含みますが、それらに対して補助をしていただければ幸いだと思います。  それから次に、試作試験の成功した発明の工業化に対しまして、国は積極的な援助を行なうのにすでに新技術開発事業団があると承っておりますが、この特殊法人をさらに拡大強化いたしまして、実施あっせん、それからあるいは市場性に非常に困難のあるところの発明製品を、まず公共機関の方から優先購買させるよう督励して、企業化の成長を援助するとともに、また、これらの新製品企業育成の立場から、ある一定期間におけるところの経営が軌道に乗り黒字経営になるまで、税法上、特にこの発明奨励意味からも、税の適用を緩和する方法をとっていただければ幸いじゃないかと思います。新製品企業化の成功は、早くとも五年、普通ならば七年くらいから大体黒字になるのが普通常識じゃないかと思います。このような長い間というものは、やはり赤字でもってやってきたということなんですが、これを償却するにはやはり五年以後、あるいは七年以後でなければこの赤字を償却していかれないというのですが、そういったようなときに、ちょうど税が相当額課せられるということは、この企業の成長に相当阻害になるのじゃないかと思います。  それから、これはあわせての事柄ですが、非常に零細な、こういったような新技術開発をいたします、法人ある個人におきましては、すなわち特許出願料または登録料の納付の能力が概して乏しいために、それを負担に感じますので、こういったような場合におきましては、普通の成長した法人に比べて半額ぐらいにしてあげられれば、やはりそれは相当側面的な援助となるのじゃないかと思います。  その次には、今度は公共性の発明に関する国の特許権買い上げについて申し上げたいと思います。すなわち、発明奨励とは少し違うかもわかりませんが、特許制度が発明の奨励になる反面、特許権の専有は国の産業発展に多々マイナスになる場合があると思います。特に公共性の大きい発明に対しては、一個人やあるいは一事業家が権利を専有する、こういったようなことは、かえって関係あるところの産業に不便を与えるといったような場合があるわけなんです。たとえば、穀類または食料品の変質防止法、または海藻の増産方法、あるいは鉄道車両関係発明、それから四番目は、私も実際に関係しておりましたが、火災防止器具やあるいは避難器具、また消防車及び消防器目など、こういったような公共性の強い発明に関しましては、やはりこれは国がその特許権を買い上げるとか、あるいは何らかの方法でもってあっせんをするとか、そういったような方法を講じてもらいたいと思います。あるいは、このような特に一般公共性に最も関係の深いようなものは、国が強制買い上げをしてもいいのじゃないかというくらいにまで考えております。今申し上げましたように、実際的な発明をしながら、あまりにも公共性の大きいために自分はこれを実施化することができないというようなことがありますと、今後こういったような公共性の大きいような発明は、やはりこれを避けられるといったような傾向があるのじゃないかと思います。このようなことの、ないように、国は何らかの方法をもって解決を与えていただきたいと思います。  それから、私は先ほど申し上げましたように学校に勤めておる者ですが、担当は社会科の方を担当しております。新憲法になりまして、現在の学校も含めまして十五年ほど社会科の方の教鞭をとっておりますが、これは僣越かもわかりませんが、憲法の中に発明または工業所有権の条項がないということなんです。私自身は、現在の学校ではちょっとあだ名をとりまして、発明先生とかあるいは特許先生とか、生徒が愛称的に呼んでくれておりますが、やはりこの面から考えましても、この憲法の中にそういったような条項のないのは少しさびしいような感じがしております。歴代の内閣におきましても、特にこのような科学技術の振興に関しましても、重要な政策の一環としております。また、昭和三十一年だと思いますが、科学技術庁設置法、それからさらに工業所有権法の改正もされておる今日ですから、やはりでき得ればそういった面にも御考慮願えれば幸いだと思います。  以上をもちまして、私の参考意見といたします。御清聴を感謝します。(拍手)
  10. 前田正男

    前田委員長 最後に、住田参考人よりお願いいたします。住田参考人
  11. 住田進

    住田参考人 本日お呼び出しをいただきました住田でございます。私、こういう場所に出てお話をいたしますことは初めてでございまして、話の前後がいろいろとなると思いますが、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。  ただいま清水先年並びに近藤さんから、私が今用意して参りましたようなものの中の大半のことをすでに述べられましたので、私といたしましては、あくまでも科学技術の振興あるいは発明を育成されるという場合には、これは非常に長期にわたるもので、しかも確率が非常に悪い、しかもこういう海のものか山のものかわからないというような非常に不安なものがございまして、これと取り組んで参りますので、その面では経済的には何かと非常に障害が多いのでございます。それで、いつもこういうことになりますと、もっと奨励金を出してくれとか、補助金をふやせとかいうことは、みんな同じように考えておるものでございます。そのにつきましては、皆様たびたびお聞きになっておりますのでよくおわかりだと思いますので、このにつきましてはあまり深く申し上げません。  さらに、このわが国科学技術の底が浅いととかくいわれますことの中には、二代目——私ども一代目でございますが、日本科学技術と申しましょうか、産業技術というものはまだ日が新しいのでございまして、これを医学のように四代、五代にわたって続けているというような場合が比較的少ない。そこらにも底が浅いということがありますし、また、経済的な理由で続けられなくなったり、あるいは場合によりましては、目新しいものにすぐ飛び移る、そういうような面においてもじみな基礎研究がされない。そういうことがその一番大きい原因じゃないか、かように思っておる次第でございます。その点で、長期にわたる発明工夫をぜひ一つ御援助いただくようにお願いいたします。  それから、これは私の実際にぶつつかりました問題でございますので、ケースとしては非常に珍しいケースだと思うのでございますが、三十三年に科学技術庁から補助金をいただきました。——申しおくれましたが、私の仕事は、光学ガラスの素材のプレス作業をいたしております。その仕事と申しますのは、ほとんどが手工業でございました。これは私の父親が大正十三年に始めたのでございますが、ほとんど手工業でございます。これに補助金その他いただきまして、ここ約十五年ほどかかりまして、機械化を計画いたしまして、それを三十四年度にほぼ完成いたしました。ところが、三十五年になりまして、双眼鏡の生産が過剰になりまして、業者の間に過当競争が非常に激しくなったのです。そのために通産省と業者の間で自主生産と申しましょうか、あるいはもっと強いものかもしれませんが、一つの生産制限を始めました。この場合のきめ方が例によって、実績本位。これは量的販売高による実績を一年間にきめてしまったのであります。そのために、私どもは工場が古く、しかも工員の過半数が十三年以上の勤務者だものですから、いろいろな面で給与ベースが高い。そういうことから、安い、過当競争の激しい双眼鏡レンズができなかった。そのために約一年半くらいというものは、ほとんど生産できなかったわけです。そのときにたまたま機械ができて、やれやれ、何とかこれで一つやろうというときに、ワクができて、過去一年間に実績がないために、この機械の稼働ができなくなってしまった。品物は作れますけれども、作った物を売ることができない。しようがありませんので、通産省にそういう話をいたしましたら、企業が不安定だから、そんなものはあと回しだ。これじゃ大へんだというので、科学技術庁に——当時、中曽根さんが長官のときでございましたが、私が参りまして、中曽根長官にお願いいたしまして、振興局長から、通産省の重工業局長にあてて、何とか考慮してもらえないかという公文書を出していただきました。これに対しましては、通産省からはナシのつぶてで、返事は何もございませんでした。たまりかねて重工業局長に内容証明を出しまして、私そのことでぜひ御返事をいただきたいのだといって参りましたところが、産業機械課の課長にまかせてあるからといって会ってくれない。産業機械課の課長が出てこないで、下の係員が二人出てきて、ああだのこうだの、まあまあというようなことで、結局断られてしまった。これは一方で技術奨励をしていて補助金まで出して、そうして科学技術の育成だとか、きょうもこういうことで皆様お集まりのようでございます。そうした中において、今のような、せっかく六年もかかって作った。しかし、この中には東京都から七十五万借りております。補助金を四十五万もらいました。そうしてできたが、そういったことで機械が使えない。しようがないから油を塗っておきましたけれども、だんだんさびてきて、どうにもならないので、本年の一月に、場所が狭いものですから、それを解体いたしまして、とうとうこわしてしまったような次第です。これはまことに私としては残念で、何とかこの機械を作ったということに免じて——一カ月の稼働を私は要求したつもりはなかったのです。ただの一週間でも、四日でもいいから動かすことのできるようなことを考えてもらえないか。業者が困っているのはお互いなんだから、小さな風穴でいいから、風穴をあけてほしいということを言ったのですが、これは遂に実現しませんで、やはりああだこうだということで、結局は終わりになるものでございますから、この問題については私はついに断念いたしまして、今年の一月に別な分野の仕事が出て参りましたので、試作中の機械も完成してきたものですから、さっそくそれと入れかえるために解体いたしました。このようなことは、まことに残念なんです。ただ、残念とはいうものの、科学技術庁にしても、一度は振興局長から書類を出してくれたけれども、その後の二の矢をかけてくれない。あれはどうなっているかという追跡がないのです。そして、それをあまり言えば通産行政に対する干渉だというようなお考えもあったと思うのですが、一つには技術庁が非常に非力だ。はなはだ申しわけないのですが、まだそこまで力がないということじゃないかと思うのです。決して私は悪いことをしたわけじゃないので、事実困ったからそういうふうにお願いしたのですが、こういうことの再び起こらないようなことをお考えいただきたいと思います。  そういうためにも、一つ——私らお役所のことはよくわかりませんけれども特許庁が通産省の外局みたいになっているのですが、発明というのは科学技術の中核なんですから、特許庁なんというのは当然科学技術庁の一部として、一部と言ってははなはだ失礼かもしれませんけれども、一緒であっていいと思うのです。あるいは今のような問題が起こった場合、世間でいう家庭裁判所のような、何か審議会みたいなものを作っていただいて、そういうところで聞いていただく。そして、それに対して適当な措置をとっていただく、そういうふうなことはできないものかと考えております。  それから、先ほど近藤先生の申された件ですが、私は企業もやっておりまして、きょうはこんな背広を着ておりますが、家に帰りますと、自分自身もときどき工場に入って仕事をしております。そういうときによく考えますのは、研究費がやっぱり非常に問題になる。この研究費というものは、私よくわかりませんが、現在の税法では繰り延べ資産になっておりまして、五年間に償却することになっている。ところが、少額のものはかまわないのですが、少しまとまったものになりますと、私ども中小企業といたしましては、研究費が税法の扱い上まことに困る。これは何とか税法の一部を改正されて、研究費は損金といいますか、あるいは経費といいますか、多額の場合は何か限度があるでしょうけれども、ある程度までのものはその年の損金で落とさせてもらう。それから、少し大きくなったら五割くらいの償却を認めていただいて、そして発明を助成をしていく。中小企業ではキャバレーに行って飲んでしまうとか、あるいは自動車を買って乗ってしまうという人もかなりいるのですけれども、またその反面、こういう研究をやれば税法上の恩典もあるのだということになりますと、少しでもそういう熱意が高まってくるのじゃないか。補助金をお出しになる場合、いつも少ないとか多いとかいっておりますけれども補助金を出すことも一つですけれども自分の持っているもの、たとえば、ことしはもうかったから、このもうけの一部を研究費に回せる、こういうことがあると、やる人にしても、私の場合なんか特に助かる、非常にありがたいと思うのでありますが、何とかこれをぜひ実現していただきたい。  こういうふうにして参考意見をお聞きになっていただきまして、意のあるところがおわかりいただけましたら、何とかこれをそういう方向に持っていって実行していただきたい。どうも今まで見ておりますと、話はいつもわかって、いや、君の気持はわかるとかなんとかいうことはあるのですが、立ち消えになってしまうわけです。こういうことを申し上げては、はなはだ失礼だと思いますが、何とか立ち消えにならないで、いいことだけは、おそくなってもいいから実行していただきたいものだと私は思います。  私の申し上げたいのは大体かようなことでございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  12. 前田正男

    前田委員長 以上をもちまして参考人の御意見開陳は終わりました。
  13. 前田正男

    前田委員長 それでは、本問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。山口好一君。
  14. 山口好一

    山口(好)委員 本日は、いわゆる町の発明者方々に、われわれの委員会のために特にお忙しいところをお出まし願って、まことに貴重な御意見また御苦心のほどを拝聴いたしまして、発明を奨励するには、今後われわれとしてはいかになすべきかという示唆を多分に与えられまして、まことにありがたく存じます。  私、栃木県から選出せられておりますので、栃木県の提橋君も参っておりますから、提橋君に少しく御質問をいたしたい。  提橋君は、あの不毛の土地、また広漠の地であります那須野原、この開拓のためには最も必要である水系の問題と取り組んで、長年御苦心をなされておられます。まことに頭の下がる次第であります。この間におきます提橋君の肉体的また精神的な御苦労はもとより、非常な経費のかかるお仕事であると思うのでございます。また、資材などにつきましても、いろいろな試験材料などについても、入手をするのに困難な点もおありであったと思うのでありますが、その点で何か国家から補助を受けたということがございましょうか。
  15. 提橋昇

    提橋参考人 今まで補助金として公の機関からいただきましたのは、栃木県教育委員会から科学研究費として年間一万円です。それから、文部省の科学助成金が一年に三万円で二回。合計七万円しかまだいただいておりません。それで、機械は、昭和三十三年のころ、一番忙しかったときでありますが、学校では、教育委員会の費用も少ないので、そういう機械もなかなか買っていただけませんので、また私の月給ではとうてい買えませんから、私の父がちょうど退職いたしましたので、その退職金で電気探査の機械を買いました。  それから、方々調査でございますけれども調査の場合には、研究の当初のころはまだ科学的に調査をするというのは非常にばかにされていたころでありまして、ちょうど昭和二十五年から二十八年ぐらいまでだと思いますが、まだ農民もそれまでになってきていませんでした。そのころは、仕方なく、生徒を連れましてこの二本足で全部歩きました。昭和三十三年に至りまして、東日本一帯の異常渇水のときに、ようやく地域の人々も目がさめまして、今度は私らの運搬に対しましてはオート三輪——交通法からいいますと違反になるかもしれませんけれども、あそこに生徒五名を乗せて、あと私が乗って、やったわけでございます。最近は、ほとんど私も授業を終わってから調査に出る関係で、一々要請にこたえておりますとからだも参ってしまいますので、向こうでもわかりまして、みんな農家のうちでオート三輪のあるところはオート三輪、それからトラクター、中には自動車で迎えに来てくれるようなこともあります。  国からいただきましたのは、現在のところ、県の方からいただいたものと全部で七万円でございます。そういうわけでございます。
  16. 山口好一

    山口(好)委員 われわれ土地の者でありますから、地理をよく存じておりますが、非常に交通の不便なところを踏査をするということだけでも大へんな上に、また自分の独力ではできない仕事でありますから、篤志家の生徒さんをお使いになったり、あるいはようやく村の人も御協力をしてくれるというような段階になって、そういう人でも補助的には得られるでありましょうが、それにつけても費用は大へんなことと思います。にもかかわらず、ほんとうにスズメの涙というような補助でこの大事業と取り組んで、国家の将来のために非常に有意義な発明発見のために努力せられておりまするお話を伺いました。  他の諸君におかれましても、やはり同じような御苦労がおありのことと思います。本日は、近藤理事長も御出席で、主要な点を四点ほど御開陳がございまして、いずれも、発明者の御苦心を助け、発明を助成するにはもう必須の四つの条件だということをわれわれ理解いたしました。また、川崎宗造君が言われた発明特許というようなことも、新しい発明に苦心された方にはやはり特許権が当然与えらるべきである、発明があったならば、特許の申請をして、それが通過するように、そうしてそれが実施できるように国家でも助成をすべきである、こういう意味先ほど開陳があったことと思いますが、まことにしかりと考える次第であります。川崎さんも、その他の方々も、いずれも私財を投じて有意義な発明に努力せられておるわけでありますので、一々本日御開陳の御意見については、われわれ深く肝に銘じた次第でございますが、川崎さんの言われました発明特許という言葉は、さような意味でございましたでしょうか。
  17. 川崎宗造

    川崎参考人 そういえば今のお話のようにもとれると思うのですが、結局、発明特許というのは、現実においても、うらはらではないか。そうすると、発明という格好でいわれることと実社会での特許という面で、そういう点に大へん認識の釈然とせぬところがある。いわゆる特許というものに対して、これは一般の町のおやじだけではないと思うのです。私もこういう経験があります。私があるところから補助金をもらって、その官庁が会計検査院に調べられた。そうして、私のところに調べに来られた。私が話をすると、どうもふに落ちないで、二回も三回も会計検査院が来る。私も役人をしておったので、会計検査院はよく存じ上げております。そうしたところが、私の特許明細書ごらんになって、特許明細書に全部記載してあるじゃないか、これがあれば補助金なんか要らぬじゃないか、こういうお話です。私が説明するよりか特許庁へ行ってお調べ下さい、特許明細書というものは大多数がアイデアだ、それを実施化し、なにするというのは一苦労です、これからやるのですよ、ということで、私は試験の入費を全部お見せしたところが、わかった。町のかじ屋がわからぬのはあたりまえですが、会計検査院が、いわゆる特許補助金をやったら、特許庁なんか属僚がたくさんおるから調べられて、御苦労ですなと言って下さればよかりそうなのに、何べんも来られる。これは仕方が思いのじゃないか。そういうふうに、特許というものに対する認識がはなはだ足らぬ、こういうことを申し上げておるわけです。だから、特許と、発明と、むずかしく専門的にいえばいろいろあるだろうけれども、実際の立場で、工業権がなくて発明したって、ソ連が何をやったって、こちらに力があればどんどん取ればいいのですからね。そういうような関係で、いわゆる特許というものをもっと国民に認識していただきたい。特許発明、こういうふうにとっていただいてもかまわぬと思いますが、そういうふうに何だか学問と実際というような格好では、どうも釈然としないのではないか、こういう次第であります。
  18. 山口好一

    山口(好)委員 もう一つ提橋君に伺います。これはあるいはあなたの研究の秘密に属するかもしれませんが、那須を初め栃木児には非常に温泉の出る地帯があります。ただいまの揚水の関係のほかに、特に温泉地帯、温泉の出る場所につきましての研究をなされたことがございましょうか。また、現在なさっておりましょうか。
  19. 提橋昇

    提橋参考人 地下水と同じように、生徒のクラブ活動として、近いところでは那須温泉の研究を行なっております。それで、栃木県の温泉保護対策の方で宇都宮大学の鈴木先生が依頼されておりますので、その補助者として、栃木県の温泉として那須温泉、それから湯四川温泉などへ行って調査したことがあります。特に詳しくやっておりますのが那須温泉でございます。
  20. 山口好一

    山口(好)委員 新しい地熱対策などの問題もございまして、温泉の探査ということもごく重要であると思いますので、いろいろおやりになっていることと思いますが、これも一つ電気探査などによりましてできましたならば、非常に有益であると思います。今後なお一そうの御研究をお願いいたしたいと思います。  他の諸君も御質疑がございますから、本日のお話参考にしまして、今後われわれも外力いたしたいと思いますということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  21. 前田正男

  22. 山田長司

    山田(長)委員 日夜発明仕事に御努力されておられる参考人各位に、深甚なる敬意を表する次第でございます。  最初に、社団法人発明協会の近藤理事長に伺いたいのであります。実はちまたで、特許庁を信用しているのかいないのかよくわかりませんけれども特許庁発明したものを持っていって特許を受けるのには、明細な図説でこれが説明をしなければならない、同時に、特許を受けるまでの間にはかなり長い歳月を要するので、ややもすると盗まれてしまうのじゃないかというような危惧の念があるので、実際はその発明品を持っているのだけれども、なかなか出願に行けないのだ。こういう声を実は聞いたことがあるのであります。社団法人発明協会として、そういうことの危惧の念はちまたで聞かないものですか。それとも、そういう危惧は、特許庁へ出した場合に全然ないものなんですか。一応一つ伺っておきたいと思います。
  23. 近藤晴夫

    近藤参考人 私、特許庁職員でありませんので、実はあまりよく存じませんけれども特許庁出願されますと、それが先願になりまして、あとで同一の出願をされましてもそれは後願ということで権利になりません。従って、特許庁出願されたがために内容がわかりましても、あとで困るというようなことはないのじゃないかと私は思います。  それからなお、相当日数がかかるというお話でございますが、これはもうすでに御案内通り特許庁の現在の審査官方々の担当しておられます件数が非常に多い。私聞くところによりますと、アメリカあるいはドイツあたりは、日本審査官が受け持たれております件数のあるいは二分の一、三分の一。従って、逆に申しますと、日本特許庁審査官が受け持たれております件数は、西ドイツなりあるいは米国の二倍も三倍も一人が担当されておるというような関係もありまして、決して審査官方々個人的な理由によって、審査が長くなっているのではございません。特許庁でも毎年審査官の増員を大蔵省に要求されまして、増員をはかっておりますけれども、いろいろな観点からまだ増員も思うにまかせないというような実情で、審査が、長引いているのであります。  それからまた、先ほど、そういううわさを町で聞かないかというお話でございましたが、私寡聞にしてあまりそういう話は聞いたことがございません。御答弁申し上げます。
  24. 山田長司

    山田(長)委員 科学技術庁のお役人をうしろに控えて、社団法人発明協会理事長として、耳にしておっても、耳にしたことがあるということはここでなかなか言い切れぬと思いますけれども、実はそういうことをわれわれも耳にするのです。それで私今申し上げたわけです。  そこで、ただいまの近藤さんのお話を伺って、科学技術庁の振興局長一つ伺いたいと思うのです。三木長官という比較的保守党には珍しい進歩的な、われわれの尊敬している長官がおられるわけなんです。長官はきょう見えていないので陰でほめているようなわけです。一人の専門家が非常に多い特許件数に当たっていることによって、これが日本の文化の上に非常に損になる。もしスムーズにこれが片づいたならば、どのくらい大きい役割をするかわからない。多くの件数を擁しているために、それが許可をすることができないというようなことであるとするならば、日本の文化の面から考えてみても大へん損だと思うのです。三木長官はこういう問題について熱心だと思うのですけれども、一体どこに隘路があるのですか。一つお答え願いたいと思います。きょうは遠慮しないで言ってみて下さい。どこにその隘路があるのか。やはり私は文化の発展を阻害するような印象を受ける。せっかく苦心して生み出された発明品が、二年も三年も特許がおりるまでの間にかかるようなことはもったいないと私は思うので、ぜひ一つ隘路を遺憾なくお話しになって下さい。
  25. 奥宮正典

    ○奥宮説明員 特許庁の立場から、今の御質問にお答え申し上げたいと思います。  今御指摘のありました通り特許というものは新しい技術思想を社会に公開いたしまして、その上に次々とあとの人がさらに積み重ねて開発していくという制度でございますので、ある人が考えられた思想が早く世間に公開される。発明した人は公開の代償として独占権を持たれる。ほかの人はそれを基礎にしてさらに新しい開発をされる。こういう制度でありますので、せっかくの発明思想の内容が、特許庁出願されたものが早く特許にならないということになりますと、ただいま御指摘がありましたように、まさに工業所有権制度そのものの矛盾になるわけでございます。  われわれといたしまして、この特許審査を早くするということをどういうふうにしなければいかぬかということを考えましたが、結局やはり担当の審査官をふやす。これは非常に難解な最新の技術思想を理解し、それを今までの既存の資料と照らし合わせまして、はたしてこれが新しい特許に該当するかどうかということを判断する仕事でございますので、単純に機械にかけてやるというような作業には最も不適当な内容でございますので、どうしても審査官をふやさなければいけない。しかも、それも相当程度知識を持った人を集めなければならぬ。その上さらに特許庁には、御承知のように、各産業技術部門のあらゆるものを、単に通産省担当部門のみならず、運輸省あるいは農林省、建設省、すべてのものが参りますので、あらゆる考え得る部門の専門家を集めなければならない。こういうような前提条件が必要でございます。現在特許庁には約四百名程度審査官がおりますが、それでも年間の出願件数を見ますと、特許と実用新案で約十二万件近いものがございます。一人で四百件くらい審査しなければならない。しかもその審査は、先ほどお話がありましたように、厳重な先願主義でやっております。一人で四百件というものを順番にこなすということになりましても、次から次と処理がおくれていくというのが現状でございます。  それでは、われわれといたしまして今までどういう手をとってきたかということが当然の御疑問かと思います。それにつきましては、現在官庁のみならず、民間におきましても、こういう優秀な科学技術者が非常に足りなくなったということで、まず官庁の技術者の待遇ではなかなか集まらないのではないか。特許のこういうようなむずかしい仕事をしている審査官には、特別に審査官手当というようなものを設けてほしいということを、人事院その他とも交渉いたしまして、一昨年から審査官手当という、一般のほかの技術職員についていない手当が認められるようにはなっています。それからさらに応急の措置といたしまして、現在の審査官にもう少し残業をしてもらう。一週間のうち二日くらいは、土曜日の午後もある程度残って仕事をやってもらうというような、特別超勤といいますか、本来はあまり好ましい制度ではございませんが、出願を早く処理してほしいという社会全体の要望に庁員といたしましてもどうしてもこたえなければならぬということで、そういうような非常措置も講じております。  また、採用試験につきましても、たとえば十月から十一月が翌年の卒業生の第一次の採用時期でございますが、そのときだけではとても需要がまかなえませんので、その一般の人事院試験の終わりましたあとにつきましても、さらに追加の試験を人事院にお願いいたしまして、年に数回採用試験を行なっております。しかしやはり、一定のレベル以下の人をとりましては、これは審査官の役に立ちませんので、どうしてもある程度のレベルの人に限らざるを得ないわけであります。  こういうことで、一般的な技術者の不足ということが根本的な原因と思いますが、特許庁審査官は一般の公務員の技術者のうちでは比較的優遇された立場にはあるけれども、まだ足りないというのが、現在特許に関しましても二年以上かかっているという一番大きな原因ではないか。これにつきまして、われわれといたしましても、給与制度を根本的に、今の八%程度の手当をつけるということで、はたしていいのかどうかというような点も根本的に考え合わせていきたいと考えておりますが、今すぐどういう制度をとるかという具体的な成案は、今のところまだ持ち合わしておりません。
  26. 山田長司

    山田(長)委員 自分仕事が、今の話を聞いていると、どこに隘路があってどうすればいいのかという結論がまだ出てないということでは、少し不熱心じゃないかという印象を持つのです。やはり隘路を見きわめる。よくことわざに、発明は文明の母だといっているくらいなんですから、その一番の究極の目標が見出せたならば、その方針に従ってやはりどこまでもやっていく。科学技術庁なんというすばらしい役所ができておるにかかわらず、それが仕事がとまっていて、二年も三年も特許がおりないということでは、自信をなくしてしまって、せっかく発明の意欲に燃えている人たちが希望を失なってしまうのじゃないかという気がするのです。おまけにこういう世の中が大きな変化があるときでございますから、同じような品物を、全然意思が通じなくても、甲の人が作ったものを次に乙が作る場合があると思うのです。そういうときに、長い歳月がかかっていますと、やはり内部から漏れたのじゃないかという印象を最初発明した人は持つのじゃないかと思うのですね。そういう点で、これはやはりもっと隘路の探求を急いで、一つこの結論をお出しになって、一人の人がたくさんの件数をかかえないで、二年も三年もたって特許がおりるという形でなくて、もっとスピーディにものの処理ができるような方法にしてもらいたいということを私は希望します。  次に、川崎参考人にお尋ねしたいのであります。先ほどお話を伺っていると、自分が今日あるのは、補助金のおかげで今日のようになったというお話を伺いました。どういう御苦心の作ができておるのかわかりませんけれども補助金によるものであるというお話を伺って、これはまあ補助金を出してよかったんだなという印象を、私は持ったわけなんです。補助金をどのくらいおもらいになり、発明品はどのくらいの数だったのか、一つ参考にお伺いします。
  27. 川崎宗造

    川崎参考人 お答えいたします。私はここに持ってきておるのですが、昭和十七年に東京都から、これは代用品研究というので、君もらえというわけで、もらったのが初めてです。私は何も代用品のつもりで研究しているのじゃないのです。戦争中だから、金属がなくなれば木でも代用品、私は心外だったのですけれども、くれるというから、もらおう。それから、軍需省でございます。それから内閣技術院、それから、二十年から終戦の結果、文部省になります。終戦になって文部省から、一月ごろに、ちょっと来いと言ってきた。行った。そうしたところが、技術院のいろいろな研究資料を見てみるとほとんど人殺しに関連のあるものばっかりだ、お前の研究なら何かいわゆる民間の事業に役立つのじゃないか。ああごもっともというわけで、一時は文部省だけでしたが、応用研究とそれから基礎研究、それで二十年から二十五年までちょうだいしています。この時に、ある大学先生が、ちょいちょい私の名前が出るものだから、川崎宗造って何者だと、こう言われたという話も私は聞いている。  ところが、私は、私自身の変なエキセントリックなところがありまして、科学技術発明家伝なんというのがありますな、すべてが苦労した人のようにいわれておる。それだから、優秀な青年も、そんなに苦労するのなら発明家なんかならぬ、と言う。ところが、何でも意表に出ようといえば、そば屋でもあるいは八百魔でも、同じような苦労をするものだ。ところが、よく発明家の苦労という。苦労といえば発明家についたようなものです、こう青年は言うのです。補助金の問題なども、諸賢はよく御承知のはずです。ドイツではどれだけ使っておる、アメリカではどれだけ使っておるということなんですが、それにたよっていたのでは、中小企業は何ともできないですよ。それだから、同じ目標に対してアイデアはずっと変わってくるということです。結局二十八年ごろになって、そろそろこちらもやはり金をもらわぬでもよくなったから、私できもしないのに、これから補助金を出そうじゃないかということを若い連中に話した。それで補助金を打ち切った。打ち切ったところが、そのころからどうも補助金があまり乱用され過ぎるというような世間の風潮になった。それでその後私は涼しい顔で、おれのところはもらっていないよということだった。この書いてきたものはお見せいたします。これがなければ、いわゆる親なしの川崎宗造がきょうまで一つのものを見つめて企業化することはできなかったでしょう。そういう意味において、自分から取る意欲がなければだめです。これはほんとうは世の中には通らぬことで、それですから若い連中に無理なことばかり言っておるのです。おやじくたばればいいと思っておるでしょうが、何か自分の方でやらなければ、お互い忙しいし、ただごとではできない。それですから、目移りのあるものでなく、一つの筋を通さなければいかぬ。これは、何も発明家だけが世の中で悲惨な努力をするものだというような考えを持つべきではないと私は考える。こんなところでこんな話をすると、全く工合が悪いかもしれないが、率直な話がその通りです。
  28. 山田長司

    山田(長)委員 川崎さんの話を伺って、大へん長い苦心の作のほど想像できまして敬服するのであります。最近は発明者に対する協力が、新聞社などでよく何の発明について幾らの金を出すということで、発明に対する助力が盛んになってきたのです。一つ念のために伺うのですが、あなたの今日あるは補助金のおかげだというのですが、会社の責任者の立場にもなり、発明におけるまあ功成り名遂げておるという印象を受けるのです、私今率直に申し上げると。そこで、後輩をやはり育成強化するために、あなたなどが率先して若い人たちのために手を差し伸べてやる運動を起こすような気は起こりませんか、どうです。
  29. 川崎宗造

    川崎参考人 お答えします。私は、自分の手元からやるということが私の主義でありまして、私の工場では、ほとんど月に一件くらいずつ特許出願しております。私はサゼスチョンを与えたり何かしますが、若い連中だけでやっております。そうしてこれは特許庁に、はなはだ迷惑でしょうが、何でも出せというのです。アイデアが浮かんでいわゆる理屈に会ったから出せ、そうすると千円くらいで有能な審査官が長時日をかけて調べて下さるのだ、ということで勧めております。それだから、特許庁というのは若い技術者のトレーニングの道場だ。先生のところへ聞きに行ったって、菓子折なんか持っていったって、だめだ。これは特許庁に印紙を張っていけばいい。  それで、先ほどの議員の御質問でございますが、これはよけいなことかもしれませんけれども、私は特許庁というところをきわめて信頼しております。ということは、これはほかの役所と違うのでございます。特許庁審査官となれ合いでいい明細書を出したって、世間がなんだ、とこう言う。そうすると、狂いがあれば特許審査官のミスですから、一緒に気持よく飲み食いしたって、自由にならぬ。そういう意味において特許庁は、私もやはり役人をしたが、ほんとうに公平なところだ。もう時間が違えばだめです。先願ですから、受けつけて判を押しましょう。そうして、町では長い長い、こう言います。ところが、あまり長くはないのですよ。私も最初、何だってこんなこと一生懸命やっておるかと不平たらたらでした。ところが、現実になると、もうなるべく早く審査してもらいたくない。それは、いわゆる特許になったときの期限がございましょう。まだやることはやらなければならぬということです。
  30. 山田長司

    山田(長)委員 次に、提橋参考人に伺います。先ほど山口委員からも申されましたように、大へんな努力で那須野原の開墾の仕事にも匹敵する大いになる発明をされて、一千余カ所の水の出場所をお作りになった、まことに敬服に価するものです。この間、実はたまたま水不足の佐野市に参りました。四万一千の佐野市に水がなくて、非常に困っておる中をたんぼの中ですばしらい水が出ておるのを実は見ました。これが佐野市の水道課の人たちに協力をされて、あなたの指示によるものだということを伺いまして、これで県南地方の水飢饉も解消できるという印象を受けて、私は非常に敬服したのです。  そこで、ちょっと伺いたいのですけれども、全く機械のことにうといのですが、電気探査というものはどんな機械なのか。それからこの機械を利用して、あなたに使用法を教わったならば、山毎地帯の水飢饉の村落にみんな水を潤わすすことができるものかどうか。いろいろ地質学上の問題もあるかと思いますけれども、その点を一つ要約して教えてもらいたいと思うのです。
  31. 提橋昇

    提橋参考人 ただいまのことについてお答えいたします。電気探査といいますのは、結局は機械を使ってやるわけでございますが、その機械は日本でも製作しておりまして、私の使っておりますのは先ほど申し上げましたL10型大地比抵坑測定機という機械であります。その機械の操作は、だれでもできるのです。操作はうちの生徒もできるのですが、その地下の地層がどうなっておるか、水がどうなっておるかということは、まず地質学的な仮説と推理というものが必要になってくるわけでございます。地質学的な仮説を立てる場合にも、ただ机の上にいただけでは、とうていこの仮説というものは生まれてこないわけであります。たとえば那須野原を調べる場合ですと、那須野原の岩石の露出があるところを全部二本足で歩いて初めてこの付近の地質の構造の概形というものが頭の中に入ってくるわけでございます。その外側を見て中までは見てないわけですから、その中をこの機械を使って地質学的推理をもって入っていくわけでございます。ですから、機械そのものはだれでも操作できるのですけれども、その場所に入った場合は、地質学的にすべてを考えながら解析していかなければならないということでございます。もちろん、機械はだれでもできるといいましても、測定する場合に、たとえば二十メートルまでの深さを測定いたしますとすれば、きょうはもう大へんだから、だれもわからぬのだから、一つ二メートルずつ深さを調べていって見ようかということになりますと、その二メートルの間にものすごい地下水の水口がある場合は逃がしてしまうわけであります。ですから、深さは、私が今まで経験したのでは、相当骨は折れますけれども、地表から五十センチごとに調べてみればそう違いはないと思います。五十、一メートル、一メートル五十、そういうふうに三十メートルまでぴしっとやって参りますと、先ほどの上がるカーブが見えるのです。そこにものすごい地下水が流れているわけです。それを探すのがコツだと思うのです。ただ、電気探査は機械を回して調べることはできますけれども、電線の張り方を、地下に谷があって川はそこを流れてくるという考えを持たないで、その横に電線を張ってしまいますと、基盤と砂利の抵坑がまざってきまして、よく出ないわけです。電線の張り方は昔の河道に並行にはるということも必要なことじゃないかと思います。  機械はどなたでもできるのです。ただ、解析法は、相当歩いて地質学的に大体の構造を頭に入れてからやれば何とかできると思います。どなたでもできると思いますが、それには五、六年はかかると思います。
  32. 山田長司

    山田(長)委員 五、六年の歳月を地質学上の研究をするということになりますと、やはりよほどの情熱を持たないとできないことになるわけです。日本の山岳の様相からいいますと、樹木の伐採状況にもよりますが、山岳地帯というものは最近は水飢饉で、渇水期になりますと非常に困っておるところがあるわけです。私は佐野から三里ばかり山の中に生まれておるのですが、われわれの郷里の渇水期になりますと、三町も五町も先の方へ水をくみにいくのが珍しくないのです。われわれの郷里には弘法井戸というのがあります。昔、弘法様がこの地点は水が出ると言った。そこに水が出たというのがあるのですが、今話を伺うと、それとは違った形において科学的に測定ができるということなので、これは渇水状態に置かれる日本の山岳地帯の研究をくまなくするということになれば、まるで農業構造の変更が起こるほどの、実は大きな文化的な役割をする仕事になると思う。これはどこの地点も、そんな歳月をかけなければ調べられぬのですか。那須野原の火山地帯なので特に長い歳月がかかったという印象もあるのですが、どこの地点もそう長くかかるのですか。
  33. 提橋昇

    提橋参考人 今のは、機械を使って完全に地下の構造を読むためには五年くらい経験しなければならないということなんでございます。それでやりますと、今度はその地域に参りまして、一応地下構造というものも、歩けば即座にわかるわけでございます。たとえば佐野に参りますれば、あすこへ私が参りましたときは、学校の授業の関係で土曜日だったかと思いますけれども、汽車だけで五時間くらいかかったと思うのです。その間で調べるのにはとても地質調査も容易ではなかったのですが、前にあの付近を歩いたことがございます。ちょうど佐野の近くの川がございますが、あの川の昔の川跡を探せばよいという那須野原の経験が頭の中にあったものですから、それをもとにしまして、結局背の川の本流を探せば水があるだろうということで、あすこの測定を行なったわけでございます。ですから、どなたでもできるのですけれども、その土地になれなくちゃだめじゃないかと思うのです。特に那須野原の場合には、私は小さいときからおりますし、そのほか歩いて地質学的にも幾らかなれたので、五年と申し上げたわけですけれども、ただ機械を持っていってはやはりまずいのじゃないかと思っておるわけであります。ですから、地質学者が労力を惜しまないで電気探査をやれば、実にすばらしいと思っております。地質学者で地質学を勉強した者がその機械を持って歩けば、これはだれでもできると思います。そういうことでございます。
  34. 山田長司

    山田(長)委員 どうもありがとうございました。  次に、清水参考人に伺いたいのです。発明家に対する生活保障が必要ではないか、まことにこれはもっともな話だと思うのです。しかし、発明家の生活保障という問題については、発明家にもピンからキリまであるので、むずかしい問題だと思うのであります。しかし、それだからといって、やはり生活保障という問題は重大な問題だと思うのです。そこで、生活保障という問題について、ただ抽象的なことだけでなくて、必要の度合いをどういうふうにしたらいいだろうということをお考えになったことがありますか。
  35. 清水重一

    清水参考人 先に関連したことから申し上げます。最初に、どういったような方法においてそれを選ぶかということですが、発明関係、これは発明協会もありますし、それから地方行政機関を通じて有能な発明家を選考して、それを登録しまして、その者の発明を援助するという方法もあると思います。それで、ちょっと答えがそれるような感もありますが、普通の場合、最小限度の生活ができる程度の何らかの形で補助してあげられれば、安心してその研究ができるんじゃないかと思います。また、先ほどもちょっと申し上げましたが、その者の発明歴などによりまして段階を設けて、それによって支給する方法も考えたらいいのじゃないかと思います。
  36. 山田長司

    山田(長)委員 質問を終わります。
  37. 前田正男

    前田委員長 次に、山口鶴男君。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 本日は科学技術週間のまん中の日でございまして、十六日から始まる一週間の科学技術週間の中心である本日、こうして民間におかれまして発明仕事に尽力されておられる方々の御意見をお伺いできましたことを非常にうれしく思う次第であります。先ほど山田さんからお話もあったのでありますが、これから幾つか政府関係方々及び参考人方々にお尋ねをいたしたいと思うのであります。四月一日は普通うそを言ってもいいというふうにいわれておりますが、科学技術週間の中心の日でありますから、政府あるいは他の官庁等に若干差しつかえがありましても、思っておりますことを率直に言っていただいても本日は差しつかえないだろう思いますので、一つお願いをいたしたいと思います。  まず、特許庁の総務部長にお尋ねいたしたいと思うのであります。毎年特許出願件数あるいは実用新案の出願件数等を合わせますと十七万件をこえるそうでありますが、何と申しましても、先ほどお話がございましたように、四百人の審査官をもってしては非常に審査に手間取るというのは現実だろうと思います。お話によりますと、二年も三年もかかって、非常に特許審査が渋滞をしておる。現在においても未処理の件数が三十万以上にも達しておる、こういうようなお話を聞くわけでございます。一方で特許庁の予算を拝見いたしますと、八億五千万円くらいだそうですね。年々出願をいたしまする出願の、いわゆる特許料、手数料収入を下回っているというようなお話を聞くのであります。そういたしますと、特許庁というのは、国の財政をもって国民にサービスをするということが全くなくて、むしろ特許料、手数料の収入が特許庁の予算よりもよけいあって、もうけておるというような状態では、私は日本特許行政としてきわめて遺憾であると思うのでありますが、現実は私の聞いておる通りでございますか。  また、特許庁発明実施化助成費というのを出しておるようでございます。予算を拝見いたしますと、五百六十三万円だそうであります。昨年は五百八十万円だったそうでありまして、若干ではありますが本年の方が下回っている。近藤さん初め、大ぜいの参考人の方から発明実施化助成費を増額してもらいたいというようなお話があったのでありますが、現実に下回っているというような状態では、私はきわめて遺憾に思うのでありますが、この点は実情はどうか。また、特許庁としてお考えがございましたら、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  39. 奥宮正典

    ○奥宮説明員 お答えいたします。  まず最初に、特許庁の歳入と歳出の関係が、非常に歳入がオーバーになっておるのじゃないかという御質問だと思います。三十六年度、これはまだ三月末の確定の数字ではありませんので、一応見込みで申し上げますと、全部の手数料収入あるいは特許料収入、そういうものを合わせますと約十億二千万ぐらいの金になる予定でございます。それに対しまして三十六年度の予算といたしましては七億四千万。三十七年度の見込みといたしましては、同じく十億八千万ぐらいの収入がある見込みでございまして、三十七年度の予算の八億五千万と対比いたしますと、確かに歳入の方がかなり上回っておるというのが事実でございます。ただ、この特許庁の歳入につきましては従来からいろいろ議論がございます。たとえば手数料収入というものは、先ほどおっしゃいましたように、特許庁出願に伴う役所側のサービスのなにであるけれども特許料というものにつきますと、これはむしろある程度特権料的な色彩があるのじゃないかというような議論もありまして、そういうふうに手数料と現実の特許料とのあれを分けてみますと、やはり特権料といわれております登録料の方が多いのでございまして、三十六年度の十億二千万のうちの五億六千万が特許料、登録料といういわゆる特権料的な色彩のものでございまして、出願の手数に伴う収入につきましては三億三千万ぐらいになっております。それと比べますと、特許庁の予算はまだはるかに多いというような考え方も成り立つのではないかというふうに考えます。  それから、二番目の発明実施化補助金のことでございます。実際の実施化に伴う補助金については、おそらく科学技術庁でお出しになっておるのじゃないかと思うのですが、私の方で補助金的な色彩のものは、発明協会に対する補助金と、外国特許出願をする方に対する補助金、こういうようなものでございますが、先ほど御質問になった補助金内容はそのことについてでございましょうか。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうです。
  41. 奥宮正典

    ○奥宮説明員 これは昨年度と比べますと、たしか五%ですか、多少減少いたしておると思います。これは一般的な全部の補助金についての削減の否定を受けまして、実質的な金額は、最初は昨年と同一の査定でございましたけれども、各省共通の補助金の五%減という数字で減っておる分だけが多少減少になっております。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、私の調べたことが正しいということになるのです。確かに特許というような一つの特権を伴う登録料収入を云々するということになれば若干議論はあるかと思うのですけれども、しかしそれにいたしましても、いわゆる特許料、登録料が五億円を上回っておるということは事実だと思います。それに対して特許庁の予算が八億五千万である。登録料云々ということについて議論をいたしません場合は、明らかに手数料収入の方が特許庁の予算を上回っておる。こういうことでは、私考えてみまして非常におかしいと思うのです。たとえば特権的な意味を伴う登録料ということを考えたといたしましても、日本科学技術の水準が非常に世界各国よりおくれておる、しかも日本が年々外国に対して特許料を支払う額が三億日にも上っておるという現状の中で国産技術をより開発しなければいかぬということは、これは国の大きな使命だと私は思うのです。そういうことを考えれば、この特権的な意味を含む登録料につきましても、何もこれを含めたから、あるいはこれを除いたからという議論だけで、手数料収入と国家予算と対比するということは私はおかしいと思うのであって、明らかにそういった登録料でありましても、これを含めて特許庁の予算がそれを下回るというような現状は私は十分に考えなければいかぬだろうと思う。  ちょうど大臣が来られたからお伺いしたいと思うのです。特許庁のことですから、科学技術庁の方でとやかく言うことはいろいろ問題があろうかと思いますけれども特許庁の予算が八億五千万であって、特許庁の手数料収入が十億をこえている。日本が少なくとも科学技術の水準を向上させなければいかぬということで大きく問題にしておる時期にそういったあり方が、科学技術庁長官としてでなしにいわゆる国務大臣として、そういうあり方がはたして妥当であるかどうか、この点大臣から御見解を承りたいと思うのです。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 それにはいろいろな特許庁の今までの経緯があると思いますが、今私も山口委員からここで聞いてちょっとした感じを言えというならば、検討の要ありというお答えをするよりほかにはないということでございます。
  44. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それはいわばうしろ向きに検討するのではなくて、三木大臣の御発言でありますから当然前向きに検討される——国民が聞けば驚くだろうと私は思うのです。国産技術の開発ということを非常に言っておる。本日は科学技術週間の中心の日である。政府科学技術週間というものを設けて、これが開発に努めなければいかぬということを言っておる。そういう現状であるのに、今のようなことは、これは大臣としても、私が思っておることと同じような意味で非常に奇異に感じただろうと思うのです。そういう意味で、一つ大臣の今後の施策を大いに期待をいたしたいと思うわけであります。  そこで、お尋ねをいたしたいと思うのです。科学技術庁関係の予算を拝見いたしましても、科学技術庁でやっております発明実用化試験助成費でありますが、これは昨年と同額だそうであります。それから地方発明センターの助成費というのがございます。これが二千七百六十四万円でございまして、昨年の二千八戸五十万円に比較しますと、約百万円近くでありますけれどもこれまた減少をしているというふうに思うのであります。せっかく発明奨励というようなことを言いましても、特許庁の予算も減っておる。発明協会に対する補助金も減っておる。しかも、科学技術庁関係発明関係の予算も、同額かないしは減っておる。これは一体どういうわけですか。振興局長さんにお尋ねをいたしたい。
  45. 前田陽吉

    前田(陽)政府委員 はなはだ遺憾ではございますが、その通りでございまして、研究費の方は節約をしないということになっておりますので、発明実用化試験費補助金につきましては同額でございますが、地方発明センターにつきましてはあるパーセントの減額が行なわれているわけでございます。これは先ほど特許庁の総務部長からお話がございましたものと同じような考え方で、政府全体の予算につきましてそういうことが行なわれているわけでございます。
  46. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 国の予算は、少なくとも昨年のワクとことしのワクとを検討いたしますと、総ワクは二四%ふえているわけでしょう。ところが、発明奨励関係のものは減額ないし据え置きである。これでは私はどうも筋が通らぬと思うのですがね。ここに発明協会理事長近藤さんもおられますので、民間としての御感想をお伺いいたしたいと思いますが、どうですか。そういう現実は近藤さんはよく御存じなんだろうと思うのですけれども、そういった施策でもって国が発明奨励に対して力を入れておるというふうに発明協会として感ぜられておられますか。特許庁の総務部長さんがおられますから遠慮するということではなくて、発明協会理事長さんとしての御見解を一つお伺いをいたしたいと思うのです。
  47. 近藤晴夫

    近藤参考人 お答えいたします。私ども発明奨励関係仕事をやっております民間団体といたしましては、政府から補助金をたくさんいただければいただくほど、ありがたいのであります。また、特許庁の方でも毎年特許庁関係の予算要求につきましても、前年度を上回る要求をされているようであります。また、その中には私ども発明協会に対します補助金も非常にたくさん計上してもらっておるのでありますけれども、結局大蔵省の査定にあいまして、結果的には大体前年並みということになっているのが現実のように考えるのであります。従いまして、この点はむしろ国会の諸先生方におかれまして原局なりあるいは原官庁が出されます予算を積極的に御支援願いまして、より多額の予算の決定を見ますようにお力添えを願いたいと思います。
  48. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私ども社会党としましても、発明奨励に力を入れなければならぬということも考えまして、発明開発振興法というようなものを用意をいたしまして、今申し上げたような使用料、手数料より特許庁予算が下回っているというような現状を打開すると同時に、近藤参考人から言われました、何といいましても日本特許出願については、私も地方で耳にするのでありますが、似たようなものがたくさんございまして、すでに特許になっておる品物といいますか、そのアイデアが十分周知徹底をされていないために非常に発明家の方もむだをするし、それから特許審査に当たっても非常に重複したむだが多いというようなことも聞いておるわけでございます。近藤参考人が言われましたようなカードを作って、あるいは地方発明センターみたいなものを作って、そして十分登録の状況を一般の人たちが知ることができるような施策を考えるとか、あるいは特許行政に対して、もっと力を入れますとか、いろいろな形の内容を含んだ法律案を出しまして、自民党の方々とも十分御相談をいたしたいと実は思っておるわけでございます。せっかく発明協会を作っておられるわけでございますから、民間としても、啓蒙活動といいますか、そういう点にも一つお骨折りをいただきたいと思うわけでございます。  そこで、さらにお尋ねをいたしたいと思うのであります。朝日新聞の「想林」という欄に、三重県のある中学校の先生科学技術週間に寄せまして一つの文章を発表しておられます。それを見ると、私も不敏にして驚いたのでありますが、現在科学技術週間の日に当たっておるわけでございますが、科学技術週間に対して政府がこういうものは知っているか知っていないかという世論調査を行なったところが、科学技術週間を知っているというふうに答えた者が一四%、科学技術庁を知っていると答えた者が三一%、だから国民のうち六九%は科学技術庁すら知っていない。従って、科学技術庁長官なるものがおられることも知っていないというような現状になるかと思うのであります。そういう非常に残念な世論調査の結果が出ておる。ところが、この文を寄せた方が科学技術週間というものに対して一般の周知徹底が乏しいというので、上京した際に、科学技術庁の係官にそのことを伝えたところ、科学技術庁では、科学技術週間の看板を文部省の前に掲示するように頼んだら、それがどうもうまくいかぬで難航しているというようなことをお答えになったということが書いてあるのであります。科学技術庁と文部省は、同じビルの中にたしか同居しておられます。その際に、科学技術週間のポスターを掲げることすら難航したというような事実があったのでございますか。これは振興局長でけっこうだと思いますが、お尋ねいたしたいと思うのです。
  49. 前田陽吉

    前田(陽)政府委員 私が聞いております範囲では、そういうことはございません。現に今、文部省の建物を虎ノ門の方からごらんいただけるとおわかりでございますけれども、屋上からかなり大きなたれ幕を下げまして、科学技術週間という大きな、相当遠いところから見える範囲のものをやっておりますし、また文部省の掲示板にも科学技術週間のポスターを出していただいております。これは現実でございます。
  50. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、看板が出ているのは承知しているのですが、新聞で見ましたら難航したとある。だから、すんなりかからぬで、すったもんだがあってから、かかったのかと思っておったのですが、そういうことはないのですね。
  51. 前田陽吉

    前田(陽)政府委員 ことしに関しましては、そういうすったもんだしたことはございません。
  52. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ことしはないというのは、以前はあったのですか。
  53. 前田陽吉

    前田(陽)政府委員 私実はこの週間は、今度局長になりましてから初めての行事でございまして、前任のことはよく聞いておりませんけれども、またその朝日新聞の記事も見ておりませんけれども、本年につきましてはきわめて順調で、決して文部省とのトラブル等はございません。
  54. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 済んだことですから、それ以上古いことはどうだというようなことをお尋ねするのは差し控えたいと思います。  とにかく世論調査の実態というものを考えましても、まだまだ科学技術週間が徹底をしていない。それは考えてみて当然だと思うのです。予算の上から見まして、昨年よりふえるとか減るとか、特許庁の予算が特許登録料、手数料収入よりも少ないという、そういう現状の中で、科学技術週間というものが国民に普及徹底しないといったことは、当然の結果として私は出てくると思うのです。ですから、そういう点につきましては、今後とも施策の中に十分生かしていただきたいと思うのであります。  最後にお尋ねをして質問をやめたいと思うのでありますが、大臣は、かつて、日本科学技術を振興させるためには税法上の措置については十分再検討いたしたいということを、本委員会でお述べになりました。本日、近藤参考人等、多くの参考人方々から、補助金ももちろんであるけれども税法上の優遇措置について十分検討していただきたいというお話がございました。清水参考人からもあったかと思うのであります。多数の参考人の方からそういう御意見がございました。ところが、現在の税法では、私は詳細は知らないのでありますが、むしろ外国から日本会社特許を買った場合においては、外資法においていろいろ優遇をされておる。それからまた、たとえば日本の買った会社がロイアリティを外国に払えぬという場合には、国がかわってその支払いをするというようなことすら外資法の中で定めておるというようなことを聞いておるわけでございます。そういった外国からの技術を導入した場合には税法上の非常な恩恵がある。しかるに、国産技術の開発について税法上の恩恵について非常に欠くる点があるということは、非常に遺憾でありますし、話がむしろあべこべではないかという感じを持たざるを得ないのです。特に法人の利益金の中から、住田参考人も言われましたが、研究費についてはある程度まで損金として認めていただきたいというような御意見もございました。当然であろうと存ずるのであります。また、個人の方につきましても、当然研究費につきましては、何らかの必要経費というような意味税法上の恩恵を与えたらどうかという御意見もございました。こういう点に関しまして、大臣もかつて税法上の問題については検討をいたしたい、こういう言明をされたわけでございまして、その後こういう方面に関して税法上の恩典を与えたらどうかというような御検討は、科学技術庁としてある程度進んでおられますか。今後検討せられるということなんでございますか。その点一つお教えをいただきたいと思うのであります。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 私、こういうことは実現したいと思っておることは、技術を外国に輸出する、そのときには税金を取らなくたっていいじゃないか。そうすれば非常にやはり奨励になりますし、大した金額でもないのですから、それを外国に技術を売ったことでまた税金で取られるというようなことはやめたいと思っております。ほかには、今、山口委員の言われた研究費は、損金にはなっておるのです。もうすこし優遇する道はないか。これはやはり会社でも、研究費のために会社が相当金を出すことは、採算上非常に会社としても都合がいいというような形に持っていくことが、科学技術振興の一つの柱だと思いますから、そういうことでぜひとも来印度においては税法上ある程度の改革を加えたい、こういう考えでございます。
  56. 山田長司

    山田(長)委員 関連して。先ほど、大臣見える前に、私は、特許庁科学技術庁の連携庁であるように言ったのですが、その点ちょっと間違ったがあったので、取り消しかたがた申し上げるわけです。どらも科学技術庁の所管に特許庁は入るべき筋合いのものだという印象を持つのです。その点、どんな所管上の隘路があって通産省が離さずにいるものか。あるいはこのままの方が科学技術庁として仕事がやりいいのか。どうもしろうとのわれわれによくわかりませんけれども、何かこの点についてのそごがあるような印象を持つのですけれども、大臣としてこれについての所管上の問題について御意見があったら、一つこの機会に御発言願いたいと思います。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 今、御承知のように政府に臨時行政調査会というものができて、これは相当意欲的な行政機構改革をやろうというときです。そのときにはやはり特許庁ということも、科学技術庁全体の行政機構ということが問題になります。そういうときには、やはり今お話のようなことも議論になろうかと思います。ただ、御承知のように、役所の習性として、持ったものは離したくないという習性がありますから、なかなか抵坑もあると思います。私が申しますと、特許庁の方を前にしてこちらに来てもらいたいというようなことを言うことは適当でない。臨時行政調査会でこの問題は検討すべき問題であると思います。
  58. 山田長司

    山田(長)委員 了解しました。
  59. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 税法上の措置につきましては、一つ抜本的に進めていただくようにお願いいたしたいと思うのです。かりに法人について損金として一部認めておっても、その認め方の限度が非常に不満であるというようなところに、住田参考人等からの御意見もあったのではないかと思うわけでございます。その損金として認める度合い等大幅に引き上げるとか、とにかく民間の個人法人の研究意欲を高めるための税法上の措置につきましては、やはり科学技術庁が中心になってこれを促進していたかきたいと思うわけでございます。  それから、提橋参考人に最後にお尋ねしたいと思うのです。山田委員からもいろいろお尋ねをしたことがあったのでありますが、内容的に見ましても、今全国的に水不足の時期でもございまして、提橋参考人の御研究というのは非常にすぐれたものであろうと存ずるのであります。山田委員からお尋ねをいたしたところでは、特にこういう問題について特許出願についてはいろいろな点で二の足を踏んでいるといいますか、むしろ特許の申請というようなこと——あるいは特許に当たりますのかどうかわかりませんが、そういった出願をいたしますと非常に期間が長くなるというようなこともあるせいかどうかわかりませんが、あまりそういうことは自分としてはしたくないというようなことを言われておるというお話も聞いたのであります。その点は、結局機械自体は別に目新しいものではない。要するに電気抵坑の、電気探査をいたした場合の比抵坑曲線を読める技術、それが非常に長い間の経験といいますか、そういうものを必要とする。そういう問題については別に特許とかなんとかいうことではなくて、十分そういった技術を身につける。また、そういうことをやるなり、あるいはそういうことが普及するならば、十分この問題については解決するのだ。こういうような御見解でおられますのか。そういう点を一つお聞かせをいただきたいと思うのです。
  60. 提橋昇

    提橋参考人 お答えいたします。機械そのものは、これは特許にも何にも私の方では全然関係ございません。私が地下水の探査としてやっておるのは、機械を使いましての解析法が地質学的仮説に基づいての解析法で初めて地下の実態がわかるものでございまして、これには経験が相当ついてくるのではないかと思います。従って、私の方としては全然特許というようなことはできませんし、ただその技術をこれから地元の人々に普及をさせていただく、そういう考えでおります。
  61. 前田正男

    前田委員長 次に、齋藤憲三君。
  62. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 きょうは発明の日で、参考人各位においでを願いましていろいろお話を承りましたことを非常にうれしく、また記念日に相当するわれわれの行事の一つとして喜んでおるのでございます。いろいろ参考人各位に対してもお話を承りたいと思うのでありますけれども、もう時間もおそくなりましたので、それは一切後日に譲ることにいたしまして、ただ感謝の意だけを表させていただきたいと思うのであります。  ただ、この際、国会も終末に近づきましたので、特にこの科学技術の振興という問題に思いをいたしますと、常に発明というものがその中核をなしてくるわけであります。この発明国家の法的措置をもって擁護しまた発展せしめるというのが、特許法の存在の一つの大きな理由であって、これは国際的にも平等の立場をお互いにとっておるわけなのであります。その点で、一つきょうは特許庁に一、二簡単に御質問を申し上げて私の質疑を終わりたいと思うであります。  私、商工委員をやっておりまして、また自由民主党の商工部会にもおるのでございますが、三十六年度の予算、審議の際、これは名前は申し上げませんが、時の長官に、もっと思い切って特許庁の予算を要求したらどうかという提案をいたしたのであります。そのときは、たしか七億程度の予算であったかと思うのであります。そのときの特許庁長官の答弁は、予算をふやしてもらっても、どうにもならぬのだ、こう言う。どうにもならぬのだというところに私は特許審査の二年ないし三年の時日を要するという根本的な欠陥があるだろう、こう思うのであります。私が申し上げるまでもなく、特許の効力発生は、新しい特許法に基づきますと、登録を決定すべきものときまったそのときに遡及して特許法のいわゆる権限というものは発生するのです。それに二年か三年かかりますと——今まで仕事をやっておられる方はいいのです。さっきのお話のように、幾ら特許をお出しになっても、関連した特許あるいは新しい特許であっても、その特許が早くおりてこなくても、これは事業というものには根本的な影響というものは少ないかもしれぬけれども、新しくこの仕事をやろうとするときは、建前として特許を出して、はたして特許違反になるか新しい特許であるかという結論が出ないと、これは新しい仕事はできないわけです。せっかくいい仕事だと思ってやって特許は出した、そして三年かかって事業が非常に大きくなったときに、これは類似特許があるという判定を下されると、仕事をやめなければならぬ。そこにわれわれ国民側からいいますと、特許審査の期間というものは非常に早くなければならぬという結論が出てくるわけなんです。それで、私なんかも長年の間、どうしたら特許審査期間が短縮されるかということに腐心をいたして参ったのでございますが、どうしてもそれは実現できない。だんだん特許出願件数がふえていく。審査能率を上げてもこれに追いつかない。これを解決しないと、発明をして特許出願をした側からいうと、いわゆる致命的な影響を受けるということになるわけです。とにかくテンポが速いですから、新しい商品ですと三年たつと古くなってしまう。そうすると、特許を許可されたときには、もうこれは商品価値がないのだということになれば、実質的に工業権というものは価値がないということになってしまう。  そこで私は、特許庁長官というものに、通産省の人事として非常に疑義があるのです。しょっちゅうかわっている。ああいうかわり方が、はたして特許行政というものの長として徹底した仕事がやれるかやれないかということに私は非常に疑問があるのです。だから、三十六年度の予算のごとく、七億くらいの予算で一体どうするのか。特許料と出願料だけでもって、もっと予算を上回っているのではないか。それは大蔵省の雑収入に入っているではないか。それプラス何ぼの国家予算でなければならないのだから、少なくとも二十億くらいは予算を要求して、そして全般にわたっての特許行政を改善して、審査期間をなるべく短縮するような徹底した抜本策を講ずべきではないかという進言をしたのだけれども特許の予算をよけいもらったってどうにもならぬという答弁だった。それから僕は、特許庁の予算増額に対してあまり熱意を示さなくなってしまった。僕らが考えているのと全然標的が違う。いやしくも発明というものをしょっちゅう手がけているところの特許庁ですから、特許審査期間の短縮をどうしたらはかれるかというくらいの頭がなければ、特許審査はできないのではないか、私はこう思っている。それを一つ特許庁としては考えていただきたい。電子計算機によってりっぱなカード式の分類をやって、電子計算機にかければすぐこれに対する類似特許があるかないかということがわかるような組織を持てば、類似特許はいかに世界的に文献を調べなければならないといっても、過去の累積でありますから、過去の累積の調べがついてカードに記入されて、そしてコンピューターによってぱっとどこにあるかと、すぐさっと引き出して見ると、これに対しては過去の世界文献の中には類似というものがないということになれば、これは当然特許の対象になるといったように、非常に私は特許審査期間の短縮がされるのじゃないか、そういうふうに思うのです。ですから、私はきょうの発明記念日にお願いいたしたいことは、何とかして特許審査期間の短縮をはかり、これにはこうこういう方法があって、これだけの金が、要るのだという結論を出していただけば、われわれも三十八年度の予算編成のときには、その事実をひっさげて、特許行政のあり方というものに対して可能な限りの進歩発達を遂げられるように努力いたしたい、こう思うわけであります。実際問題として、そういうことができるかできないか。非常にこれはむずかしいことをお尋ねするようでございますけれども、何らか御回答が得られるならば、一つ率直な御意見をお述べ願いたいと思っております。
  63. 奥宮正典

    ○奥宮説明員 ただいま非常に御同情あるお言葉をいただきまして、先ほど審査官の人の問題だけについてお答えいたしまして、全般的にまだいろいろお答えすべき点があったのを私そのままになっておりまして、気になっておりましたのですが、今の齋藤先生のお質問に関連いたしまして、特許庁が今分析して、どういうところに問題があって、どういうふうにこれを打開していかなければならないかということを今まで検討いたしましたことにつきまして、概略申し上げてみたいと思います。  まず第一に、何と申しましても人の問題でございます。これについては、先ほど申し上げましたように、現在確かに八%の特別手当というものがついておりますが、この程度の格差で民間の企業と優秀な技術者を取り合うということでは、特許庁に必要なだけ確保するということは非常にむずかしいというのが、われわれここ数年の経験でございます。これにつきましては、われわれといたしましては、やはり現在の特許庁審査官が一般の行政職の俸給表の適用を受けるという、その一般の行政職員の一部に過ぎないのだ、これについて特別な措置をつけるのは非常に困るという原則論が人事院あたりにあるわけでございまして、八%の手当さえも、あんなものをつけたがためにあとで各省から、おれたちの方にもつけろつけろと言われて困ったということをよく聞くわけでございます。これは現在の給与制度のワク内で特許庁審査官をそのままに置くという前提のもとでは、ちょっと、いつまでたっても問題の解決にならないのではないか。そういう点で、私どもといたしまして、やはり特許庁審査官というものは、裁判官に準ずるような特別職的な新しい俸給表を作るというような、何か抜本的な制度的な裏づけがなければ、給与も、ほかの技術職員も、研究職もこれでがまんしておる、普通の行政職による技術者もこれでがまんしているのに、特許庁だけはそんなもので扱うわけにいかぬという前提で議論をいたしますと、いつまでたっても解決しないという意味で、われわれといたしましては前から人事院の方に対しましても、特別の俸給制度をぜひ設けてほしいということを強く申し上げておるわけでございます。われわれの力がまだ及ばない点もございまして、実現には至っておりませんが、今後こういう方面の努力も強力に押し進めていきたい、こういうふうに考えております。  それから、審査の促進につきまして、ただいま機械化のようなことを考えたらどうかというようなお話でございます。まことにごもっともでございまして、この点につきましては、われわれの方では昨年からすでに機械化の研究室といいますか、ごくささやかな、これは一般のおっしゃる意味の組織ではございませんが、優秀な審査官を専任で配属いたしました。現在すでにアメリカの特許庁あたりで、一部の化学物質について機械化の研究をやっております。各国の特許庁でもそういう機運が非常に高まりつつあるようでございます。現在各国の特許庁でどの程度のことをやっておるかという材料を集めまして、それを至急に翻訳して検討する、そういうことに取りかかっております。昨年アメリカの特許庁に、百二十五周年の記念式がありました際に、われわれの方の審査部長が参列しました。そのときに、各国の特許庁からもやはり一人係官が集まりました際に、アメリカの特許庁長官が、特許庁審査の資料の検索という問題が、だんだん膨大なものから拾っていかなければならないと大へんなことになるから、早く機械化しなければならぬと思うので、各国の横の連絡委員会のようなものを作りたいということで、大体各国が賛成いたしまして、これから毎年各国の特許庁職員が集まってこういう研究を進め、あるいは資料の交換をやっていこうじゃないかというようなことにもなっております。この点は、来年度の予算につきましては相当突っ込んだ内容を盛りたいと思っております。三十七年度の予算につきましても、機械化——機械化といいましても、現段階では資料のカード化でございます。膨大な資料を読まなくてもいい、これを適当なキー・ワードで、十語か二十語で内容をある程度ピック・アップできるようカード化するというような研究をやろうという予算が、五十万円ほどついております。これはほんの最初のスタートでございまして、こんなものではむろん問題になりませんけれども、これを手がかりにいたしまして次第に進めていきたい。これにつきましては、情報センターにありますいろいろな磁気録音テープのような機械の運営状態なども絶えず連絡いただきまして、われわれの方でも審査の資料の検索にどのような機械が最も適当かという研究も怠らず今後進めていきたいと思っております。  それから、現在のようにただ審査出願が多い多いといって、ただそれを一人当たり何百件もかかえておるのが能ではありません。現在非常に出願が多うございますけれども、そのうちの過半数は拒絶になる。しかも、大部分は日本公報を引用されて拒絶になっておるということでございます。裏から申しますと、審査官は半分くらいはむだな出願審査に精力を要しておる。逆に言いますと、出願する際に、もう少しすでに特許になったものを調べていただけば、こんなむだな出願がなくてもいいのじゃないかと思われる出願が非常に多うございます。これは発明協会仕事でもあり、あるいは一部われわれの仕事でもございますが、やはり全国津々浦々至るところに、たとえば自分がこういうものを出願したい、これにすでに日本特許があるかどうかということがだれにでもわかりやすいように、こまかい分類別に既存の権利がすぐ察知できるような施設がなければいけないじゃないか。この点につきまして、まだ全国の至るところでそういうものがあるということは申し得ないような現状でございますが、発明協会の各支部におきましても逐次整備していただき、われわれの方でも大阪の通産局の方に現在特許室というものを特別に置いておりますが、これの資料の整備その他につきまして、本年度から初めて五十万円ほどのわずかの金額でございますが、ついております。やはり既存の特許資料の整備、これはわかりやすくだれでも検索できるような状態にする、こういうようなむだな出願を減らす方の努力もやっております。  それから、こういうことをやりましても、なお出願がふえる。新しい出願がふえるということは、国民発明意欲の非常に多いということで、けっこうなことでございます。ふえること自身は、私それを押える理由は何にもないと思います。こういうようなことをやりましても、もしどうしても現在の陣容、現在の特許庁内容ではできないということであれば、少し制度の根本をもう少し考え直す必要があるのではないか。いわゆる現在の特許制度というものは、二年ほど前に三十年来の大改正をいたしました。これは数年来の審議を重ねて、慎重審議の結果行なわれた改正ではございますが、現在のような非常な出願の増加というような事態を考えなかったために、非常に微に入り細に入り、いわば非常に理想的な、特許法とはかくあるべきものであろうということで、非常に丁寧に、十分な審査官がおって十分な時間をかけてやれば非常に理想的な内容になる、というような特許法でございます。しかし、現在のように、幾ら手を打っても人が十分集められないかもしれない。その反面、出願もふえるかもしれないということになりますと、手続をうんと簡素化するとか、あるいは場合によっては審判の制度なんかも一部は廃止するとか、これは今きまったわけではございませんが、そういうような、制度で何かもっと抜本的なメスを加える余地はないかどうかということも、現在内部的に検討を進めております。  われわれといたしましては、考え得るあらゆる手を現在検討いたしておりまして、その実施できるものにつきましては、予算の有無を問わず直ちに実施いたしたいと思います。どうしても法律改正なり、予算の裏づけをもって新しく実施する必要のあるものにつきましては、さらに御審議をいただきまして実現いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  64. 前田正男

    前田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本委員会調査のため多大の参考になったものと存じます。委員会を代表いたしまして私から厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。  本日はこの程度といたし、次会は公報をもってお知らせいたします。本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十三分散会