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1962-04-06 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月六日(金曜日)    午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       亀岡 高夫君    佐々木秀世君       佐々木義武君    徳安 實藏君       保科善四郎君    細田 吉藏君       牧野 寛索君    山本 猛夫君       石川 次夫君    三木 喜夫君       田中幾三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  井上啓次郎君     ————————————— 四月六日  委員池田正之輔君稻葉修君、菅野和太郎君、  塚原俊郎君、松本一郎君及び内海清辞任につ  き、その補欠として徳安實藏君、牧野寛索君、  亀岡高夫君山本猛夫君、佐々木秀世君及び田  中幾三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君佐々木秀世君、徳安實藏君、  牧野寛索君、山本猛夫君及び田中幾三郎辞任  につき、その補欠として菅野和太郎君、松本一  郎君、池田正之輔君稻葉修君、塚原俊郎君及  び内海清君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一三四号)  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  原子力委員会設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 いろいろお尋ねをいたしたいと思っておったのでございますが、委員各位の御要望もございますので、具体的な問題はまたいずれ別の機会に譲りまして、当面の問題について、長官の率直な御所信を承りたいと思います。  この改正法案は、かねてこの委員会放射能対策原子力委員会責任において行なうべきであるというこの決議の趣旨に基づいていよいよ提出されたものでございます。ところが、はしなくも、いよいよアメリカ核実験再開はほとんど避くべかざる情勢と相なりました。そこでまずお伺いいたしたいのは、政府として、また原子力委員長として、三木大臣は、この必至となったアメリカ核実験再開に対していかなる対策を打ち出されようとせられるのか、まずこの点をお伺いいたしたいと存じます。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員も御承知のごとく、昨日アメリカは、太平洋地域における危険水域の指定をいたして参ったのでございます。これは核爆発実験前提であると思わなければならぬわけでございますが、最後の瞬間まで日本政府は、核実験をやめてもらいたいという外交交渉を続ける予定でございます。しかしながら、これは日本の力によって阻止できない場合も当然にあり得るわけでございますから、そういう場合に対しては、日本の午前十時から放射能対策本部といたしまして、各関係官庁の参集を求めて、もしアメリカ核爆発実験をやった場合にとるべき対策を決定いたしたのでございます。これは、たとえば指定いたされました地域漁業にも関係がございますし、そういうので、いわゆる一般漁業者あるいは貨物船等、そういう船舶に対しての通達を徹底する。それから、乗務員に対してはいろいろ注意事項周知徹底をせしめる。また、必要に応じては漁獲物に対しての検査乗務員身体検査を行なう。それから、必要に応じては調査船を派遣するようなこともいたしたい。いろいろ核爆発実験が行なわれた場合に考え得べき対策をきょうは決定をいたしまして、それを行政官庁を通じてできる限りその被害を少なくするような処置をとりたいと考えております。
  5. 岡良一

    岡委員 先般外務大臣にも御出席願いました節、私は強調しておいたのでございますが、政府が今日まで米ソ両国核実験に対しましては再三、再四、再五、またわれわれ国会もその停止を強く要求し抗議をいたしました。しかし、事実上これは無力でございました。従って、今後いかにワシントン政府に対して思いとどまるように政府要請をされたところで、その効果は期待し得ないと存じます。特に核実験再開の命令は、三軍の統帥権を握っておる大統領の最高の権限でございますから、日本総理大臣の、あるいは日本政府国会要請をもってこれをくつがえすということはとうてい困難であろうと存じます。  そこで問題は、いよいよ放射能対策本部、しこうして原子力委員会が中核となって対策努力をせられるということになりますると、まずもって、どこで核実験が行なわれるのか、この実験はどの程度の期間続くのであるか、あるいは何回行なわれるのであるか、あるいはまた実験される核兵器規模はどのようなものであるのか、あるいはまた用いられる核兵器がいわゆるきれいな兵器であるのか、それともきたない核兵器であるのか、こういうような諸点原子力委員会として、放射能対策本部としては、当然知る必要があると私は思うのでございます。また、このことが放射能対策のための重要な大前提と存ずるのでございます。当然対策本部として、あるいは政府として、アメリカ政府にこれらの具体的な事実を事前通告を要求せられるべきだと存じます。そのような御決意がおありかどうか、まずこの点をお伺いいたします。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 対策考える場合に実情を把握するということが前提でございますから、外交機関を通じて事前アメリカに対して、今、岡委員の御指摘になっておったような問題について、われわれはその正確な実態を把握するために努力を現在までもいたしておるわけですが、今後とも続けていたす所存でございます。
  7. 岡良一

    岡委員 ただ、御存じのように、核兵器実験具体的内容はおそらく極秘中の極秘だと存じます。従って、たとえば危険地域の設定とか、あるいはまた継続の大体の期間とか、そしてまた、きれいな爆弾を使うのであるということはアメリカ側も申しておるようでございますが、しかしながら、その規模がどの程度のものであるか、はたしてきれいなものであるのかないのか、これはフォールアウト対策として重要な問題でございまするが、この点についてはわが方としてこれを探知する必要があろうかと存じます。少なくとも対策本部としては、いかなる規模のものがいつ行なわれたか——このことはそのときの気象状況との関係において、フォールアウト対策としては重要な一つ問題点でございまするから、いかなる規模のものがどこで行なわれたか、しかも、その実験をされた核兵器はほんとうにきたないものであったのか、きれいなものであったのか、核種定性をやる、こういう探知というものは当然放射能対策本部として、していただかなければならないお仕事になってくると私は思いまするが、長官のお考えはいかがでしょうか。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員も御承知のごとく、気象庁において微気圧計地震計等、これは相当設置場所をふやしまして整備して参ったのでございます。微気圧計が八カ所、それから高感度の地震計が一カ所、現在持っております。これが探知する場合において一番手がかりになるわけであります。それ以外にも、むろんこれは制約がございましょうが、日米友好関係に顧み、また太平洋として一番被害を受ける日本でありますから、この探知機以外にも、できる限りアメリカ側からの情報を入手するように努めたいと考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 これまでもしばしば微気圧計等において、その計器に現われた数字からの科学的な結論が発表はされております。しかし問題は、対策本部としてその指揮下において、これらの施設、これらの機関というものがいち早く探知をするという方向に今後は動いていただかなければならぬ。こういう方向に、あなたは本部長として指揮されるべきであると私は思うのでございまするが、その辺の所信を承りたい。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 やがて原子力委員会あるいはまた科学技術庁にも放射能課を置いて、将来原子力委員会における放射能対策が軌道に乗れば対策本部は解消したいと私は考えております。しかし、現在こういう過渡期でもありますし、アメリカ自体にもそういう核爆発実験が行なわれるというような状態でございますので、今直ちにこれは廃止しない。今置いておくことが事態の対策を考究する場合に便利であるということで、しばらくはこれを存置いたしたい考えでございます。しかし、対策本部にいたしましても、あるいは原子力委員会にしても、いろいろそれを探知したりする、あるいは分析をしたりするような、そういう施設を全部直接に持たなければならぬと私は考えてない。分担をして、各行政機関など、おのおのその行政を通じての特徴を持っておるわけでありますから、そういう特徴に従って、探知とか調査とか分析とか、そういうものは各行政官庁においてこれをやる。しかし、それを指揮と申しますと言葉が強過ぎるかもしれませんが、対策本部なりあるいは原子力委員会として、いろいろな今言ったような政府機関を十分総合的に利用できるような、そういう形に持っていかなければならぬということは考えております。それを指揮と申すならば指揮と申してもよろしかろうと思います。
  11. 岡良一

    岡委員 私も別に、対策本部として別途に微気圧計を備えてもらいたいと申し上げているのではございません。ただ、これまではいわば地震学者の興味によって、あるいは統計的な趣味から発表されるというようなものであってはならないので、やはり放射能対策という観点から放射能対策本部がこれらの記録というものを常に国民に知らしめる、こういう御用意を持っていただきたいということを申し上げておるのでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、日本の現在の探知機能では、一体クリスマス島における核実験のどの程度までの爆発ならばこれを探知できますか、何キロトンまでならばできますか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 現在の微気圧計では、爆発力一メガトン以上の核実験探知できるということになって、まあソ連の場合も十五回ばかりが探知機探知できたわけでございます。クリスマス島においてもどの程度核爆発が行なわれるか、現在予測はつきませんが、大型の爆発であればむろんこれで探知できるわけでございますが、非常に小型なものになればこの探知機でキャッチできないというのが現状でございます。
  13. 岡良一

    岡委員 最近、核実験停止協定交渉においても探知の問題が重要なテーマになっておることは御存じ通りでございます。しかも、新聞紙の伝えるところによると、最近では相当中型以下の地下爆発でも探知し得る技術施設がすでに実用化されておる、こういうような報道も聞いております。最近ニューヨークのタイムス紙報道によりますると、クリスマス島において行なわれる核実験は、その規模は最大は十五メガトン、最低は二十キロトン、この程度のものであろうということが申されておるようでございます。従いまして、一メガトンということになりますと、小型の核実験探知できない。一方、先ほど申しましたように、諸外国では探知技術が非常に進歩しておる。こういう事情でございますから、これは私の強い希望でございますが、今さらに微量な測定がし得るような技術施設があるならば、ぜひこれを導入せられまして、探知の正確を期していただきたいと存じます。  第二の問題は、爆弾がきれいな爆弾であったか、きたない爆弾であったかということでございます。きれいな爆弾であるとアメリカ側は申しております。ソビエト側も申しておりました。しかし、たといそれがきれいな爆弾でありましても、かりに十五メガトンの核実験が行なわれますと、計算をしてみると、一〇〇%きたない二十キロトンの原爆フォールアウトというものが拡散されることになるわけです。従いまして、たといきれいな爆弾であっても、そういう大規模なものがかりに実験されるということになりますと、フォールアウト影響というものは無視できないことになる、そこで、一体日本では、科学的にフォールアウト分析によって、まず定性的にそれがきたない爆弾であるか、きれいな爆弾であるかという分析をし得るかどうか。現状においてその能力を持っておるかどうか。まずこの点をお伺い申したいと思います。
  14. 井上啓次郎

    井上説明員 きたない爆弾か、きれいな爆弾かということにつきましては、核種分析をしたければわからないわけでございますが、現在の日本能力では、ガンマ・スペクトル・メーターという機械を用いまして機器分析をする能力は十分ございまして、フォール・アウトがきてからそれをキャッチいたしまして分析する技術は、今回のソ連実験においても証明されております。従いまして、時間的には多少のズレはございますけれども、きたない爆弾であるか、きれいな爆弾であるかということは、技術的には判定できる段階でございます。
  15. 岡良一

    岡委員 局の方では御存じと思いますが、ドイツの対策本部のごときは、週報をもって常に実験規模、またその影響等を広く国民周知徹底をしておる。またその対策、心がまえをも指導しておることは御存じ通りでございます。従いまして、いよいよ太平洋において再開がされるということになりましたら、学問的に定量することはさておき、定性ならば私は数日で、はっきりすると思いますので、これらの諸点をも含めて、広く国民のみならず、全世界にこれを周知する。このことを、私は日本の大きな責務でもあろうと思いますので、対策本部としてぜひ御努力を願いたいと存じます。  なお、この際若干具体的な対策お尋ねをいたしたいのでございます。先ほど三木長官は、危険水域の近傍における船の乗組員等健康管理についてお話がございました。御存じのように、日本には天水を飲んでおる国民がなお十万ほどおります。しかも、それが太平洋諸島に特に多いのではないかと私は思っております。また、日本人の常食といたしましては、特に蛋白、脂肪は魚類に仰いでおることも御存じ通りでございます。こういう点について、どういうふうな対策を持っておられるか、まずこの点をお伺い申したいと思います。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 対策はいろいろ検討いたしておりますが、その中で今御指摘のように、天水飲用者というものは非常にこれは問題である。従って、これは濾過して飲むようにという指示は与えておりますが、しかしながらわれわれとしても、この対策については一歩進めて考えてみたいということで検討をいたしておるわけでございます。現在のところは、天水飲用者に対しても注意をしてもらいたいということの指示でございますが、しかし、それだけで目的を達成できるであろうかということについては疑問にも考えますので、天水飲用者の問題というものは今後真剣な問題として取り上げて、何らかの処置を講じたいと私は考えております。  また、魚類の点でありますが、マグロにつきましては、これは今度の場合どういう規模核爆発実験が行なわれるか、そういうことも影響するわけでございますので、今予測はできませんが、核爆発実験水域から帰ってくるようなマグロに対しては、これはやはり十分なサンプル調査をしたいと思っております。その調査によって政府としても適当な処置を講じたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 岡良一

    岡委員 この前のビキニのときには、マグロ市場は非常に恐慌を来たしたわけでございます。もはやああいう非科学的なことはされまいと存じますが、ただ、一部にはこういう声がある。ストロンチウム九〇であるからマグロの骨に沈着するであろう、であるから、マグロはおおむね安全ではないかという意見が一方にあることを私は聞いております。しかし、今問題となっておるのは、特は国際放射線防護委員会なりその他の機会において問題になっておるのは、セシウムです。セシウムの一三七は、御存じのようにマグロの肉の中に入る、いわばおすしの種の中に入っておる。でありまするから、これがいかなる遺伝的影響を現わすかということは、今日世界遺伝学界の重要な問題となっておるが、必ず影響があるということだけははっきりしておるわけです。でありまするから、一つこの際、われわれの常用する魚類放射能禍を防ぐためには、合理的な対策をもってぜひ処置せらるるように強く希望いたしておきます。  次には、蔬菜の問題でございます。蔬菜については新聞の伝えるところによると、かなり憂うべき蓄積が、われわれ日常の蔬菜ストロンチウム九〇があるのではないかということも伝えられて、国民の不安を呼んでおるのでございます。これに対してどういう対策用意しておられるのか、また事実どうであるのか、この点を御解明願いたいと思います。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 蔬菜についてでございますが、現在のところはストロンチウム含有量と申しますか、これが特別な対策を講じなければならぬ必要は感じていないわけでございます。その程度でございますが、事務当局から御説明を申してもよろしいと思います。しかし、将来の問題としては、この蔬菜の問題は重要な問題でございますので、実際問題として岡委員も御承知のように、これは原爆実験をやめてもらうよりほか完全な方法対策はない。そこにやはりこの問題の非常に深刻な問題があるわけでございます。しかし、それでもやらぬよりはましだということはあるわけでございますので、そういう対策、洗えばいい、そういうことも簡単なようだけれども一つ方法でありましょう。最も進んだ、もう少し効果のあるようなことはないかということは、検討を加えておるわけでございます。残念ながら、非常な妙案があって幾ら核爆発実験をやっても大丈夫だということを国民に言えないことはまことに残念でございますが、実情はその通りでございます。
  19. 岡良一

    岡委員 そこで問題となるのは、天水なり、魚なり、野菜なり、あるいは人工栄養児のミルクの問題なり、一体どの程度までストロンチウム九〇、セシウム一三七、ヨード一三一が含まれたときに危険であるか、少なくとも防護対策政府としては講じなければならないが、この基準というものをこの際お示し願いたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 これは非常に量が少なければ害はないということは言い切れない。幾らでもいけない。しかしながら、そうはいっても、これはいろいろ原子力開発もやらなければならぬし、天然の放射能もあるし、そういう極端な議論もできませんから、一応の基準というものをきめたい。そうでなければ、いろいろ行政的な処置を講ずるといったところで、何らの尺度も持たずにやるわけにはいきませんので、これは非常に作業が進んでおるわけであります。近く一つ基準といいますか、これ以上蓄積がふえてくれば警戒もしなければならぬという基準発表をしたい。ほとんど発表のできるような最終段階にきておるわけであります。これは発表したら岡委員からもいろいろ御非難を受けると思います。御非難というものは、いろいろな角度によって批判の余地がある。しかし、行政責任としてはそれは発表せざるを得ないと私は考えておるわけでございますので、これはもちろんこの国会中にこの基準というものを発表いたしたいと考えております。現在はまだここで申し上げる段階ではない。しかし、きわめて近い将来にこの基準は明らかにしたいと思っております。
  21. 岡良一

    岡委員 私は、ちっとも、それを御発表になられましても非難する気持はございません。先般、長官との間にやりとりがあったように、許容量という概念はないのである。最近の専門的な科学者の見解として、もはや放射能にはここまではいいという許容量というものはないのである。であるから、たまたま放医研が発表したように、まだ大丈夫だというような発表をされると、このことは国民に対して、実験をしたっていいじゃないかという幻想を与える。そういうことでは困る。そういう点を十分注意をして、お説の通り長官はこの間僕の言ったことをそのままそっくり言うておるんだが、許容量はないんだ。しかし、事実フォールアウト日本の国土に落ちてくる。野菜に降りかかり、魚が含み、天水がそれによって汚染されるのであるから、それらの放射能から国民を防ぐために、どの程度というものさしをまず行政的に作られるということに対しては、私はちっともこれを非難しようという気持はございません。ただ問題は、今度の国会中に発表するなどと今言っておられましたが、実験はもう二十日後にあるわけです。しかも、ソビエトの昨年の核爆発のためのストロンチウムが今月、来月はおそらく成層圏からどんどん日本へおりてくるであろうということを気象学者は言っておるわけです。本国会中に発表いたしますなどというような、そういうゆうちょうなことでは、聡明な長官としては、私は、まことに無責任だと思うのでございます。中性洗剤は三カ月内という期限を付しておりましたが、これは十日間以内ぐらいに、委員会じゃなく、国民にはっきりいたしていただかなければならない。同時に、どういう対策をとるのであるかということを、もちろんその予算は国に持ってもらわなければなりませんが、これらの点をはっきりアメリカ核実験の前に十分発表されて、もちろん実験がないに越したことはないが、現に行なわれるのであるから、せめても国民に安心を与えるということは、放射能対策本部としての私は当然の政治的責任であろうと存じます。その御用意がおありでございましょうか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 非常に用心深く申し上げたのであります。むろんアメリカ核爆発実験ができる前に発表できることは間違いはない。こういうものは、岡委員御存じのように、専門家がかからなければならぬし、いろいろ議論があるわけでございますので、少し余裕をとって申し上げたのでありますが、アメリカ実験が行なわれるであろう前に発表することは申すまでもないわけでございます。ゆうちょうには考えていない。また、対策については本日発表いたしまして、行なわれた場合における対策をとう考えているかということは、国民の目に、ラジオ、新聞等を通じて伝わるものと考えております。
  23. 岡良一

    岡委員 最後に、この核実験国の、わが方が受ける損害賠償に関する補償の問題でございます。先般この委員会林法制局長官は、日本としては当然損害賠償を要求する権利があるということを明確におっしゃいました。また、先般の委員会においても、外務省の条約局長もその旨をはっきり申しておられる。ところが、御存じのように、ビキニの場合は、わが方は二十七億の損害賠償の要求をいたしました。しかしながら、相手国賠償責任はないという態度で、いわば七億の見舞金をもって率を済ましたのでございます。そうして、そのまま日本政府は泣き寝入りをいたしました。私はアメリカあるいは特定の国に対する感情から申し上げるのではございません。核実験のための被害という人類の大きな恐怖に対し、特に日本といたしましては、この際明確な国際公法上の慣行を作り上げる必要があると思う。具体的には政府としてアメリカに対して補償を要求する、アメリカはそれを払うという明確な外交的な取りきめを取りつける必要があると思う。政府としては、その御決意がおありかどうか、ぜひそうすべきものと存じますが、御所信を承りたいと存じます。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、ソ連核爆発実験をやったときに、損害賠償の請求権を留保することを政府ソ連通告をいたしました。アメリカに対しても同様でございます。ことに危険水域というものを指定いたしますと、核爆発実験が行なわれない前に損害が起こる場合もございますから、政府はむろん核実験をやめてもらいたいという努力を今後続けましょうが、それと同時に、損害賠償に対して日本が請求の権利を留保することをアメリカ政府通告をいたすことになっております。
  25. 岡良一

    岡委員 留保するということでは納得ができないわけです。賠償費を支払いますという一札をとるように、具体的な取りきめを取りつけるように政府としては当然積極的な努力を払うべきである、こう私は申し上げておるわけです。いずれにいたしましても、こうしていよいよ原子力委員会の設置法が改正されて、原子力委員会が中核となって放射能対策本部が発足をする。しかも、これと機を同じくして、やがて中部太平洋においては核実験再開が行なわれようとしておる。私は、この法の改正の意義が真に発揮できるか、これはきびしい試金石であると同時に、原子力委員会の諸公の重大な責任であると存じますので、この際、以上申し上げまして、私の質疑と要望についてはぜひとも責任ある御措置をとっていただくように、この機会に心から要望いたしまして私のこの質疑を終えたいと存じます。
  26. 前田正男

    前田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  27. 前田正男

    前田委員長 これより討論に入るわけでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに本案の採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは本案を採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  29. 前田正男

    前田委員長 起立総員。よって、本案は全会一致をもって原案の通り可決するに決しました。
  30. 前田正男

    前田委員長 ただいま議決いたしました原子力委員会設置法の一部を改正する法律案に対して、山口鶴男君より、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案として附帯決議を付する旨の動議が提出されております。  まず、その趣旨の説明を求めます。山口鶴男君。
  31. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 自由民主党、日本社会党、民主社会党三党の御賛成を得まして、附帯決議を御提案申し上げたいと思います。  最初に、案文を朗読いたします。    原子力委員会設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、放射能対策を実施するにあたり、左の各項の実施を要望する。  一、放射能対策は、終局的には米・英・ソ等の核実験停止せしめ、更に他の国が核実験を行なうことを防止することにあるをもって、原子力委員会も進んで適切な方針を樹立し、その措置につき遺憾なきを期すべきである。  二、放射能で汚染された水あるいは食品等が人体に及ぼす影響調査並びに必要と認められる場合における対策については、政府は、すみやかに遺憾なき態勢をととのえるべきである。  三、核実験のためこうむるわが方の損害については、実験国との間に、補償に関する明確な保障をとりつけ、もって、公正な国際慣行を確立すべきである。    右決議する。  簡単に理由を申し上げます。  先ほど岡委員から、いろいろな角度からの質問がございまして明らかになったのでありますけれども、アメリカ政府は、今月の四日、十五日よりクリスマス島周辺に対しまして実験区域を設定すると発表したわけでございます。かかる核実験のいわゆる実験区域というものが、国際法の規定から申しまして適法なものであるとはわれわれ考えられないのでございまして、このような実験区域を設定することについて私どもは非常な疑義を持つわけでございますが、それはさておきまして、とにかく放射能対策の一番のいい対策というのは、いみじくも三木大臣も言明せられましたように、要するに実験をやめてもらうことである、これが最善の方策である、これは明らかであろうと思うのであります。従いまして、原子力委員会設置法の一部が改正をせられまして、原子力委員会放射能対策に対して、政策の決定、内閣に対する勧告、こういった権能を持つわけでございますから、ぜひとも原子力委員会といたしまして終局的に核実験停止せられる方向に万全の努力を払っていただくことが何よりも必要である、この点を強調いたしたいと思うのであります。  二番目に、そうはいうものの、四月の十五日以降実験再開ということは必至であろうと考えざるを得ません。そうなりました場合に、特に小笠原諸島等における住民が天水によって飲料水を得ておるという現実もあり、また、日本国民が蛋白資源として摂取いたしておる魚類、これに対していろいろな被害があることは明らかでございます。先ほど大臣も言明せられましたように、これらの天水、あるいは魚類、あるいは野菜等に対して、ストロンチウム九〇なりあるいはセシウム一三七なり、こういったものに対する安全基準はいまだ発表せられておりません。大臣の言明によれば、実験再開までには発表せられるという御趣旨だそうでございますけれども、この安全基準の設定は多くの問題を含む問題でもございますので、慎重に御審議をせられ、すみやかに安全基準発表せられると同時に、天水を飲んでおる住民の対策あるいは魚類等に対する対策に万遺憾なきを期していただきたいと思うのであります。  最後の問題は、この補償の問題であります。ビキニの際に、久保山さんがなくなられた際に、日本政府賠償として請求をいたしましたのは二十七億、これに対してアメリカから見舞金として参りましたのは二百万ドルであります。七億二千万程度でございます。しかも、これも損害賠償に応ずるというものではなく、あくまでも見舞金という、きわめて不明確なる形で処理をせられておるのであります。しかも、なくなられました久保山さんに対しても、これまた弔慰金として若干の金額が与えられたという程度でございまして、この問題については、私どもきわめて遺憾に存ずるのでございます。従いまして、先ほど岡委員が申されましたように、あくまでも日本は、被害があった場合には損害賠償を要求する権利がある、また、実験を行ないました国は当然この賠償に応じなければならぬ義務がある、こういった国際的な協定を明確にいたしまして、公正な国際慣行を樹立していただくために、全力を尽くしていただきたいと思うのであります。  このような理由でございまするから、どうか満場一致御可決あらんことをお願いを申し上げる次第であります。
  32. 前田正男

    前田委員長 本動議については、別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  33. 前田正男

    前田委員長 起立総員。よって、本動議は全会一致をもって可決いたしました。  この際、三木国務大臣より発言を求められております。これを許します。三木国務大臣
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいまの御決議はいずれも理由のあることでございますので、御決議の趣旨に従って善処いたしたい決意でございます。     —————————————
  35. 前田正男

    前田委員長 ただいまの法律案議決に伴う委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  37. 前田正男

    前田委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  原子力行政一般に関する問題について、三木国務大臣より発言を求められておりますので、この際これを許します。三木国務大臣
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 先般、原子力基本法と原子力関係物質の輸出について岡委員から原子力委員会としての統一的見解を求められております。原子力委員会としては次のような統一見解を決定をいたしましたので、御報告を申し上げたいと思います。  すなわち、   原子力基本法第二条は、わが国における原子力の研究、開発及び利用が平和の目的に限られることを明らかにしている。ここでいう利用に輸出を含ませることは、法文解釈上困難である。   しかしながら、わが国が外国の原子力利用に関係する場合にも、原子力基本法の精神を貫くべきであると考える。   従って、わが国から外国に供給する核原料物質、核燃料物質、原子炉炉心及び特殊核物質の分離精製装置が、平和目的に限って利用されることを確保することが必要である。これが統一見解でございます。
  39. 前田正男

    前田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。   〔委員長退席、山口(好)委員、長代理着席〕
  40. 岡良一

    岡委員 私の求めによりまして、統一見解を御決定をいただきまして、原子力委員会の各位に敬意を表します。ただ、この統一見解は、拝見をいたしますると、若干解釈に幅があるようでございます。そこで、この際、この統一見解について、さらに確定解釈を、委員会として、原子力委員会との間に確立をしておきたいと存ずるのであります。この立場から若干のお尋ねをいたします。  まず、第一の点は、なるほど前文においては基本法の精神がうたわれてございます。しかし、利用ということになると、これに輸出を含ませることは法文解釈上困難である、私はそのこともよくわかります。しかし、問題は法律論ではございません。むしろ政策論として、原子力委員会の態度を私はお伺いをいたしたいのでございます。  御存じのように、ただいま成立をいたしました原子力委員会設置法の一部を改正する法律案の附帯決議の第一項に、「放射能対策は、終局的には、米・英・ソ等の核実験停止せしめ、更に他の国が核実験を行なうことを防止することにあるをもって、原子力委員会も進んで適切な方針を樹立し、その措置につき遺憾なきを期すべきである。」こううたってございます。長官はこの趣旨を尊重することを今言明をされました。従って、利用という言葉が輸出という言葉と同義語ではないという法律上の疑義は私は了承いたしますが、それにもかかわらず、原子力委員会としては、他の国が核実験をするために、あるいは原子力の軍事利用をするために必要とする資材であれば、これを輸出すべきではない、これが原子力委員会一つの重要な政治方針である、かく理解をしていいのでございましょうか。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員の御指摘のように、この前段において法律解釈に触れて、後段において原子力委員会としての政策というものに触れたわけでございます。従って、今後こういう輸出が行なわれるときには、実際問題としてはその政府日本政府とがこの原子炉に対しての用途というものについて協定まで結ぶ必要は私は考えていないのでありますが、政府の意図というものを、公式な外交機関を通じて回答を求めるというような形が好ましいと思っております。しかし、実際問題として、それが明らかでないような場合には、この輸出する物質に対しての制限をしておくことが原子力基本法の精神にも沿うものであるというので、原子炉の中心的なもの、これ以外の——今日のような場合に、何でもかんでも輸出することはいけぬということで制限する必要はない。これだけの本体になるものを制限して、これは貿易管理令等によって制限することは可能でございますので、これさえ押えておけば、やはり日本の原子力基本法にいう精神にそむくものではないということで、このように列記したのであります。それにはやはり、日本の原子力産業というものを育てたいという意図もその中にあるのであるということも考えながら、こういう制限を加えたわけでございます。
  42. 岡良一

    岡委員 私は、委員長の御苦心はよくお察しできるのでございます。しかしながら、今お話しのように、わが国が外国に供給する物資としては、核原料物質、核燃料物質、原子炉炉心及び特殊核物質の分離精製装置、いわば禁制品がこれだけに限定をされておることでございます。ところが御存じのように、イギリスのコールダーホール動力炉というものは、原爆原料である。プルトニウムと発電の両用炉でございます。フランスのマルクールの天然ウランを原料とする炉も、発電とプルトニウム生産の両用炉でございます。従いまして、この炉は、この炉に付置さされておる熱交換器も発電機をも含めまして、明らかにこれはプルトニウム生産のために間接的に役立っておる資材である。でありますから、このような場合においては、発電機なり熱交換器なり、その他所要な資材というふうなものの供給ということは、その国のプルトニウム生産を認めることになり、原爆製造を認める結果に事実上なるわけでございます。従って、制限品目の中には、そういう事態においてはそういうものも出すべきではない。これが原子力基本法の精神であり、それを貫くゆえんであると私は存ずるのでございますが、御所信はいかがでございましょうか。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員の御指摘のように、日米協定などに比較いたしますとこれは非常に小さくしぼったわけでありますが、原子力開発も相当な発展をいたして参りまして、今後原子力委員会としてはこれを新しい。パターンとしたい、こういうことで、いろいろなものをこの上に書いてそうしてする必要はなかろう、これだけさえ押えておくならば原子力基本法にいう平和利用という目的は達成できる。今後の解釈のこれは新しいパターンとしたいという考えでございます。
  44. 岡良一

    岡委員 私は、たとえば具体的な例について申しましょう。ある一国がコールダーホール改良型の炉を運転をすることになりました。ところが、その国は、この炉を運転することによって出てくる使用済み燃料から化学処理によってプルトニウム二三九を作って、これを原爆材料にする。しかし、余剰エネルギーはこれを電力として一般の家庭なり工場に供給する。こういう計画のもとに炉が作られたときに、その発電機を喜んで日本が売り渡す、熱交換器を売り渡す、あるいは所要の耐圧容器の鉄板を売り渡すということは、その国の原爆出産に協力することになるではございませんか。  そこで私は、今あなたに水かけ論のようなことを申し上げたくはないのでございますが、長官は先ほど、別に事々しくその国との間に約束を取りかわさないということをおっしゃいました。しかし、これはやはり民間ベースにまかすということでは、ときに原子力委員会の御方針にたがう結果が私は出てこないかと思うのであります。なるほど、ある国がこういう部品が必要であるというときには、その炉のデザインをおそらく原子力委員会検討なさる機会がございましょう。そうすると、たとえばコールダーホール型の炉であれば、熱出力を三百ないし五百メガワット・デー・パー・トンに押えておるということならば、これは明らかにプルドニウム生産の炉である。二千ないし三千メガワット・デー・パー・トンに上げておれば、バーン・アップを上げておれば、これは純粋の発電炉である。こう現在の原子炉の常識は教えておるわけでございますが、これを原子力委員会の事務的な判断にまかすべきものであるのか。原子力委員会としてはそのデザインの上に立ってその判断をいたしましても、相手国からさらに一札、平和利用のためのものであるということを、政府政府関係において受け取るというところまでやはり責任を持たるべきであろうと私は思うのでございますが、いかがでしょうか。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 私は協定までは考えてないと言ったのでありますが、相手国政府に対して、これを民間に自由にまかすという考えではない。相手国政府に対して平和利用に対する保障を何らかの形においてとりたい。そうすれば、こういうものはむろん必要がない。しかし、政府がその原子炉というものをどういう方面に使うかということについて明らかでない場合、こういう場合には、これだけのものはやはり政府が制限できるような処置をとりたい。しかし、平和利用に対する相手国政府の保障というのが第一番の段階であります。それが不明確な場合においてこういう処置をとって、これを押えておきたいというのが、この統一解釈の考え方でございます。
  46. 岡良一

    岡委員 それでは、ここに述べられておる核原料物質、核燃料物質、原子炉本体部品並びに特殊物質の精製処理の設備以外にも、先ほど申しましたような事例においては、その炉の平和利用という保障をとったしで、行く行く資材の輸出を認める、これを輸出せしめる、そういう方針でございますか。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 平和利用の保障があれば、こういういろんな制限をする必要はない。しかし、その保障というものが得られないような場合、不明確な場合、そういう場合には原子力基本法の精神からこれだけのものは政府が制限をするようにしたい、こういう二段のかまえでございます。
  48. 岡良一

    岡委員 私は、ここに述べられた諸物質以外の資材についても、相手国からの平和利用についての保障があって初めてこれを輸出するのであるという長官の答弁を了といたしまして、この統一見解に賛意を表したいと思います。
  49. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 ただいまの御質問と答弁との間に誤解があるようでございますから、この趣旨をもう一度御説明申し上げます。ここに書いてあります核原料物質そのものにつきましては平和目的に限って利用されることを確保する必要があると考えておりますから、それが確保されないおそれがあるときには、これは輸出させない、こういうことでございます。従って、ここに書いてありませんものについては、特別なことは考えないという趣旨でございます。
  50. 岡良一

    岡委員 それでは、先ほど原子力委員会設置法改正に附帯して成立いたしました決議案の第一項と異なるのではございませんか。だから、先ほど私が事例をあげておるように、ある一国がプルトニウム二三九を生産するために低いバーン・アップで炉を運転する、しかし余剰エネルギーは動力用として利用もできるわけです。しかし、目的はプルトニウムが作られるということです。そういう場合に、発電機なり熱交換器を日本が輸出するということは、事実上その国の原爆製造なり、あるいは核実験再開ということに対して協力する結果になるではないか。であるからして、ここに書いてあるもの以外のものでも、私の方で作るのは平和利用のものでございます。何も日本が査察をするわけでも何でもない。そんなむずかしいことをわれわれはする必要もないし、われわれはできるものでもないのだから。ただ一応公にその保障を受け取られる必要がある。そうでなくては、皆さんがこの附帯決議を尊重せられると言われるが、尊重しない結果になる。そうじゃないでしょうか。
  51. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 この制限をする物質あるいは資材をどこの線で切るかということが非常に問題でございまして、いろいろ検討をいたしました結果、先ほど委員長が答えられましたように、そういう意味の押えるべき大事なポイントだけ押えよう、その抑えるポイントの新しい形としてここで押えるのが適当であろうということになったわけであります。そこで、現在わが国は日米協定あるいは日英協定で、もっと広い範囲につきまして査察まで受けるような義務を負っております。そのときに、あの協定を結びますのに、そういうところまで範囲を広げる必要はないではないかということを原子力委員会では主張したのでございます。従って、あの協定につきましても、ああいう範囲まで広げなくてもいいと考えていたものが、今度は他の国に要求する場合にはそこまで広げるということは趣旨が合わないことである。最も大事な点だけを押えるという方針をとっておりますために、こういうことになった。この手伝う、協力するという意味では、今、岡先生のおっしゃいましたような種類も、そういう感じは絶対ないとは考えません。従って、そういう考え方もあることは承知しておるのでございますけれども、そういう線をどこで引くか。たとえば山の頂上に行くときに、平地の入口で押えるか、あるいは途中で関門を作るか、ごく頂上に近いところで関門を作るか、というたとえ話までいたしまして、それによって、ここにあげましたところが最も効果的であり、その趣旨に合うものだということで、これをきめたわけでございます。
  52. 岡良一

    岡委員 そんなイソップ話を私は聞こうと思っているのではない。あなたが先ほどおっしゃった、たとえばある国がコールダーホール型の炉を運転する。これはプルトニウム生産と動力との両用炉である。その場合、動力のための、発電のための資材を供給するということもやはり原爆製造に協力することになるが、しかしそこまで範囲を広げないで、ここの程度で押えたと今あなたはおっしゃいましたが、そうでございますか。
  53. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 手伝う意味になるがと申した、なるという感じを持つ場合もあり得る、こう申しましたわけで、私自身がどういうふうに思っているかということは、今日ここで申し上げるのは避けたいと思います。と申しますのは、これは原子力委員会の統一見解について述べているのでございますから、個々の委員の中にどういうふうであったかということを申すことは適当でないと思います。そこで、私が手伝うと申しましたのを、手伝うことになるがというふうにもしも申しましたとすれば、私の用語が不適当であったので、そういうふうな感じを持たれることもあり得るというふうに申したつもりでございます。
  54. 岡良一

    岡委員 それでは三木委員長のおっしゃった通りではございませんか。私も、何も無恥なことを申し上げているつもりはないのです。これは日本の原子力産業にしても、今非常な赤字に悩んでいる。日本の貿易そのものも非常な窮境に立っている。しかし、それだからといって、他の国に新しく原爆実験を許すような協力を、間接であれ直接であれ、するということは、日本の貿易やあるいは原子力産業界の危機以上の私は大きな問題であり、なればこそ、原子力委員会としては、ここに書いてあるように新しく原爆再開をやるというようなことに対しても遺憾なき措置をとってほしい、やりましょう、こういうことになったわけです。だから、私が三木長官に申し上げたのは、これは民間ベースでやると、原子力委員会の誠意にもかかわらず、ざるになって抜ける危険があるから、やはり相手国に対してどういう資材でも、資材を出すというときには、相手国原子力委員会なら原子力委員会委員長は書簡を出されてもいいのじゃないか。向こうと協定を結んだり、ややこしいことをやらなくてもいいから、平和利用をやるのだ、そのためにほしいのだという一札を原子力委員会としてはとって、その上でならば何でもお出しになったらいい。それだけの措置をとってもらいたい、その上でここに書いてあるもの以外のものも含めて、それだけの措置をとって出される。これくらいの考慮を払っていただくことが、今尊重されると言われたこの附帯決議第一項の趣旨にかなうことなんです。でありまするから、ぜひそうしていただきたい。そういたしますと委員長は言われたわけです。兼重さんが横から何もものを言う必要はないのです。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 私と岡君との間に解釈の食い違いはないと思うのですが、こういうことなんです。要するに、こういう輸出をやる場合には、相手国政府に対して日本が輸出する原子炉あるいはいろいろな付属的な機械類に対して、それを平和的目的に利用するのか軍事的目的に利用するのかを、正式の外交交渉を通じて相手国に対してこれを照会する。協定まではいかない。そうして保障を求める。その場合には、何を出したところで、これに対してはその相手国政府の保障を信用して、もう何でも輸出する。しかし、軍事的な目的が明白である場合には、ここに書いてあるもの以外においても日本は輸出をしない。これはもう軍事的にやるのだということが明白な場合には、これ以外のものでも輸出はしない。しかし、平和的目的か軍事的目的か明白でないような場合には、これだけのものは貿易慣例等によって政府がこれをチェックするのだ。これがこの統一解釈の根底でございます。
  56. 岡良一

    岡委員 この問題が出た当初はインドの問題だったわけです。インドは保障措置を受けつけないというようなことから、コールダーホール改良型炉の導入に対して何か問題が起こっておるように私は聞いている。これはぜひ一つあなたの方で調査しておいてもらいたいということを申し上げたのですが、きのうもまだ調査ができておらぬというわけです。昨年の十一月二日にマンチェスター・ガーディアンの記者に、ニューデリーでネールさんはこういうことを言っている。インドは核兵器を二年以内に持つことができる、また中共も二年以内に核爆発をする明白な証拠がある。しかし、インドは核実験をしたり、核兵器を保有する気は毛頭ない、こうネールさんは言っておられます。メノン国防相も、先般の国会でやはりそういうことを、言っておる。ただ問題は、御存じのように、インドは最近国民会議派から離脱したいわゆる極右派といわれる諸君が、ネールの対中共政策に対しては激しい攻撃をやっておるようです。これが今度の選挙でも極右派の伸びた大きな原因だといわれておる。そこで、作る気はなくても、もうすでにプルトニウムの化学処理工場を持っておるのだから、プルトニウムの蓄積をやるというようなことが考えられないでもないのではなかろうか。であるから、そういう点をネールさんははっきりそう言っているのだから、ネールさんは原子力委員長じゃないが原子力相なのだから、やはりケース・バイ・ケースで、そういう事態の中では原子力委員長としてはっきり確かめておくという点をぜひやっていただいた上で、ここに述べられた資材以外のものも、いやそうじゃない、おれの方は軍事利用も兼ねているという御返事が来たら、これは残念ながら輸出は一つ思いとどまってくれといって輸出をさせない、こういうやり方をやってもらいたいということを私は申し上げておるわけです。長官の御趣旨はそういう御趣旨でございましょう。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 そのように私は考えております。
  58. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私も前に質問いたしましたので、この御決定について若干御質問を申し上げたいと思います。  私は、原子力委員会が今こういうものをお作りになる立場はよくわかりますけれども、この決定は無意味であると私は思います。なぜかと申しますと、この決定を読んでみますと、この決定はこれでいいです。前半は法律解釈を意味しておる。従って、原子力基本法自体の法解釈においては輸出ということを含ませることはできないのであるから、輸出しても違反にはならない、そういう解釈がここで厳然として成立していると思うのです。ただし後半において、原子力委員会の政策として、これこれの措置をとるのだ、そういうことを言っておられるのです。ですから、この二段に分けたというところに御苦心のほどがあると思うので、その点は了とするのであります。  なぜ無意味であるかということを申し上げますと、核クラブを利用するオリジナル・メンバーを除く国は、大体今IAEAの国際原子力機関に入っておる。国際原子力機関に入っておる国は、平和利用ということを条件にして査察も受けるということになって、おって、それからバイラテラルの協定の網によって今世界も張りめぐらされておるのであって、それには当然査察等の行為も入っておるわけです。従って、平和利用以外には原子炉が築造されるということは今のところは考えられない。しかし、そのオリジナル・メンバー以外の国になるおそれがある場合、たとえば中共が炉を作るとか、あるいはインドが天然ウランで自分の炉を建設するとか、そういう場合に問題が出てくると思うのです。従って、IAEAのカバーされている範囲内の問題については平和利用ということが大前提になって、おるのであって、それに関する国際的な保障までもが入っておるのであるから、下請である日本がとやかく言うほどの問題ではないのです。そこに日本がのこのこ顔を出していくのは、お前の出る幕ではないと言われるくらいの問題であると私は思うのです。従って、その点まで日本がとやかく規定するということは、社会党の御要請によってこれを書いた印象をぬぐうことができない。だから無意味であると私は自民党の立場から思うのです。念のために社会党におつき合いしてこういう政策論を書いたのではないかと、大へん失礼であるけれども、法解釈を純粋に考えると私はそう考えるのです。現在世界の法体系を考えるとそういうことになると思うのです。  ところで、次の問題は、インドが天然ウランを自分で作って、そうして炉を自分で作るという場合、日本の協力を求むるという場合が出てくる。これが軍事利用になるのか平和利用になるのかわからぬという問題が出てくる。あるいは中京が同じような問題をやる場合が出てくる。この場合の問題なんです、しかし、この場合の問題は、非常に大きな政治的な問題になってきている。おそらく一原子力委員会の問題ではないくらいの大きな問題に必ずなると私は思うのです。そうすると、原子力基本法よりももっと大きな政治の場面においてこれは考えられるべき問題であって、今の原子力基本法の精神からすれば、それはこの後段にあるような精神で貫かるべきであると思いますけれども、それより大きな政治の場でそれを考えるべき問題に当然私はなると思う。それが軍事利用になろうが、平和利用になろうが、当然であります。単に日本の国内の原子力政策を中心に立てられた政策のワクを出ている大きな問題である。今までの原子力基本法云々というものは、みんな国内の日本の問題に関してのみを言っておる問題であって、相手国との関係やら、あるいは世界政策の面というものを離れた考えからきておるのであります。従って、その場合は、もっと大きな政治の中で国策的に考慮さるべき問題である。しかし、その場合においても、この後半の精神が好ましいということは当然であるけれども、それだけを考慮に入れるべき問題であるか、そのときになってみなければ私はわからないと思います。そういう意味から、この文章をお作りになった立場はわかるけれども、私は無意味であると思うのです。私の独断論に対して、長官はどういうふうにお考えになるか、お答え願いたいと思います。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 私は遺憾ながら見解を異にいたすものでございます。これだけのやはり科学技術対策特別委員会においても問題になったわけでございます。この背景の中には、国民もまた、具体的に問題が起こる起こらぬは別として、どういう考えを持っておるかということは、国民の関心事でもあり、今日の次元においてこの問題をかく考えるということは、大きな政治の義務だと考えておるわけでございます。中曽根委員のような、非常に世界情勢の激変によって原子力基本法それ自体も根本から考え直さなければならない場合には、それは御指摘のような場合も起こり得るでありましょうが、現在原子力委員長としては原子力基本法の精神を厳重に守ることが私の任務である、そういう意味において、現在の次元でかく考えるということを明らかにすることは大いに政治的な意義を感じておるものでございます。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は何も原子力基本法を廃止しろとか破れとかという考えは毛頭ないので、この点は社会党の皆さんにもよく御了解しておいていただきたい。ただ、純粋に法解釈の問題という問題と、それから政策論というものを混同してはいけない。ややもすれば混同するきみがあるように自分には感ぜられる。その点を多少皮肉をまぜて考えたから私の今のような発言になったと思うのですけれども、私も外交政策や世界政策の面については、日本はそういう平和利用をもって一貫することが正しいと思うのです。思いますけれども、やはり原子力委員会、あるいは法制局、あるいは国会というような場では、法解釈に関してはやはり冷厳な法解釈を堅持しなくてはいけない。政策論については、政策論の分界をはっきり明確にしなければならない。その上に立っていろいろな考え方が展開されなければならぬと思う。そういう点について、その立場をはっきりしておく必要が一応あると思いましたから、今のような発言をしたのであって、原子力というものが世界的に平和利用をもって一貫さるべきであるという主張については、私の考えは一貫しておるのでありますから、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  61. 岡良一

    岡委員 この点、中曽根さん、実は私の調べた範囲だからあるいは間違っているかもしれないが、これは中曽根委員御存じ通り、国際原子力機関の憲章ができるときにも、インドの代表のバーバー博士があの保障措置に非常に反対されたことは御存じだと思う。それによってバーバー氏の意見も相当いれられて、緩和されたことも御存じだと思う。そこで、コールダーホール改良型の炉を入れるについて、インドとしては英国の保障措置というものについて非常な難色を示しておる。これはどういうことかといえば、おれの方では平和利用でやるのだ、それに対して保障措置をもって臨むなどというようなことはやめてくれというような意向があると、僕はインドの態度を非常に善意に解釈しておるのです。でありますから、こういう取り扱いをするということは決してインドに対する内政干渉的なものでもなければ、むしろインドの立場というものをわれわれは積極的に是認をするということにもなるので、決してこういうことがこの原子力委員会として出過ぎたことではないと私は思います。  それから、法律の解釈は、それは厳正にしなければならぬという御趣旨は前段にちゃんと書いてある。しかし、原子力委員会はやはり政策を企画し、決定し、実施するという権能を与えられておるわけです。同時にまた、内閣総理大臣に勧告もできるし、また所管大臣に対しては意見書を提出することもできる。でありますから、輸出行政というものはこれは通産大臣の所管であるかもしれません、しかし、やはり原子力基本法を守るべき立場の原子力委員会としては、そこまで念を入れておくということは無意義なことではない、むしろ必要なことである、また当然なることである、原子力委員会責任でもある、私はそう考えておるわけで、中曽根さん、そうむずかしく考えないでやろうじゃないですか。何もこんなことで与野党けんかする必要もないし、社会党のベースに乗せられたなんと言われると非常に心外なので、その点はお取り消しを願いたいと思います。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 たとえばインドはコールダーホールの炉を建設しておる。そこに状況によっては、日本技術は非常に進んでいくのですから、炉心を作ることも可能です。そうなると炉心も輸出する。そしてプルトニウムがそこでできた。それじゃ、そのプルトニウムが平和利用に確保されるというために、インドでできたプルトニウムを日本と同じようにイギリスに持っていって分離してもらうとか、それはイギリスに使わせるという場合も、当然インドでもあり得るのです。その場合に日本と同じように、平和利用に使うということまでインド政府がイギリス政府に対して保障させる必要があるかどうか。日本はただ炉心を作ってやったというだけの立場にある。そこまでやらなければいかぬかという問題が出てくるのです。私はそんなことは余分なことだと言うのです。そういう意味で今のような発言をしておるのであって、そこまでやるというならばまた何をか言わんやで、私はおそらくそんなやぼなことはやらぬと思うのですが、その辺はどうですか。社会党の考えならばそこまでやらなければ済まぬというようなお考えのようですが、われわれは他国の主催に関することはなるたけ日本は立ち入らぬ方がよろしい、そういう考え方を基本的に持っておるから、今のような発言をしたわけです。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 私は岡委員にもお答えいたしておりますように、相手国政府に対して保障を求める、いろいろ次々に日本が保障を求めていくというわけではない。日本が輸出する相手国政府に対して平和利用の保障を求めていきたい、これが考えておる限度でございます。
  64. 山口好一

    山口(好)委員長代理 齋藤憲三君。                  一
  65. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私は、この際簡単に、国内問題で原子力局に御質問申し上げたいと思います。  日本の原子力平和利用推進の根底をなします日本国内における燃料の問題でございますが、今日まで人形峠に対してどれだけの探鉱試掘費をかけられたか、概算をちょっとお知らせ願います。
  66. 杠文吉

    ○杠政府委員 現在までに約十四億の経費を投入いたしております。そして現在判明いたしておりますところの鉱量というものは、予想鉱量を含めまして約二百四十万トン、その品位の平均は約〇・〇七%ということでございます。
  67. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 この人形峠の予想鉱量を含めて二百四十万トン、〇・〇七%の原鉱石に対して、埋蔵地方はもちろんのこと、われわれも一刻も早く国内において適当に処理をして国際市価に追いつくような体制を早く見出してもらいたいということを考えておるのでございますが、去る三月二十四日の日刊工業新聞に、低品位ウラン鉱石から炉燃料を経済的に処理することができるようになったという記事が出ておるのでございます。これは私もその内容を知っておる一人でございますが、これに対して原子力局当局はどういうふうなお考えを持っておられるか、御説明を願いたいと思います。
  68. 杠文吉

    ○杠政府委員 確かに齋藤先生御指摘通りに、古河電工が行なっておりますところの新しいウラン精錬法は非常に有望だと考えております。そこで、三十六年度の補助金といたしまして原子力局の方から約五百万円を交付して、その助成をはかっておるのでございます。まだ今のところ、それが技術的に確定するという段階にまで至ってないとわれわれは判定いたしておりますのと、また経済的にどうであるかということもなお検討してみたい。その上でいま少しく助成をしなければならぬというようなことになりましたら、従来の助成にも増して大いに助成措置を講じていきたいというふうに考えるわけでございます。
  69. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 原子力一般に関する外国並びに日本国の特許につきまして、原子力局では、一々その内容、それが及ぼす工業的な価値等については、どういう体制をもって検討を加えておられるか、これを一つ伺いたいと思います。
  70. 井上啓次郎

    井上説明員 外国の特許を日本でどういう評価をしているかという問題でございますが、これは一々局としてはやっておるわけではございません。もちろん各メーカー及びユーザーの方ではそれぞれチェックはしております。しかし、局としてその内容を検討する段階には至っておりませんが、研究開発という面からいろいろの資料を使い、あるいはまた直接に担当しているところから事情を聞いて、その評価というものは逐次やっている次第でございまして、今後とも、そういうふうな意味では広い視野にわたって、そういう技術の振興ということについて努力したいと考えております。
  71. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 そうしますと、原子力研究一般に関しては原子力研究所で世界の特許並びに日本の特許に注目をしている。それから、燃料、その他廃棄物の処理等に関しては、原子燃料公社において世界の特許並びに日本の特許に注目をしてこれを分析しておる、こういうことでございますか。
  72. 井上啓次郎

    井上説明員 具体的に全部の項目にわたってそういうふうに調査しているということにはなりませんけれども、中心課題のそれぞれの分担におきまして、先生の御指摘のような趣旨の措置はとっております。  なお、特許庁におきましては、御承知のように、海外の特許というものを一元的に調べ、リスト・アップをしているという現状でございますので、そういうふうな意味においては整理がついております。
  73. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 過日も申しましたが、特許庁の特許行政のあり方は、特許にすべきもの、実用新案にすべきものと認めたものを公告して登録するという程度にとどまっておるわけです。私の申し上げておりますのは、原子力局が、日本の原子力平和利用推進の立場から、外国特許でもって、いわゆる外国人が日本国内に特許を申請したもの、及び日本人が特許庁に特許を申請したもの、しこうしてこれが特許の価値ありとして登録を見たものに対して、一々これに検討を加えて、日本の原子力平和利用の推進に力を加えなければ、新しいアイデアというものは日本に出てこない。これは原子力局並びに関係研究機関あるいは原子燃料公社でどういう処置を講じておられるかを伺っておるわけです。
  74. 井上啓次郎

    井上説明員 具体的な個々の問題につきましては、やっておりますが、ただいま申し上げましたように、全般を通じて見ているということにはなっておりません。しかし、技術の進歩が非常に早いのでございまして、それぞれの分野において自分の分担、あるいは任務という範囲におきましてそれをよく検討し、おのずから今後発展さすべき技術を持つ使命というものをよく認識して研究開発を進めるわけでございますので、先生の御指摘のような総合的なといいましょうか、機関はございませんが、それぞれの分野で、かなりの範囲で伸長をしているというふうな現状でございます。
  75. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 この新聞記事を見ますと、今までウラン鉱石の処理というものはおおむね硫酸法を用いられておった。しかるに、硫酸法を用いるというと好ましからざる元素が硫酸によって溶解をして参って、イエロー・ケーキになっても、そのイエロー・ケーキからさらに鉄その他を分離するということが非常に困難である。ところが、今これで行なわれております方法は、重炭酸塩を用いるというと第二次ウラン鉱はウランだけが溶解をしてくる。であるから、この方法をもってすれば人形峠の鉱石というものが簡単に処理できて、国際市価に匹敵する精錬の過程に到達をするのではないか。特にこのインピュリティの高いイエロー・ケーキを重炭酸塩で処理することによって、非常に簡単に純粋な酸化ウランをとり得るのではないかという記事なのであります。しかも、この新しい方法日本の特許に指定されておる、そこで原子力局も何百万円かの金を出して、そしてこの研究助成をやっておる、こういう記事なんですね。これは確かでありますか。
  76. 井上啓次郎

    井上説明員 新聞記事も確かに拝見いたしました。なお、三十六年度に補助金を出しておりますので、内容は十分承知しております。先生の御指摘のように、従来はウラン鉱の処理は酸か、あるいはまたアルカリ——これは重炭酸塩も使いますが、普通のアルカリを使った方法一般でございます。しかし、先生の御指摘方法は、そのアルカリと蓚酸を用いたというところに特徴があり、しかも不純物が非常に溶けにくくなるという、今までにもない方法だと私は考えております。しかし、今研究段階でございますので、今後の発展というものも期待するわけでございます。現在古河の施設を私も見せていただきましたが、非常にりっぱにできておるのであります。これを用いまして、続けて研究開発をすれば、さらによい技術の成果が実るだろうということも期待されるわけでございます。
  77. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ただいまの御説明のように、この舟木東京工大教授の研究が古河電工の協力を得、さらに原子力局の助成金によって効果が上がりつつあるということでありますれば、十四億をかけた予想埋蔵量二百四十万トンという人形峠を中心とした日本のウラン鉱の開発というものは非常に大きくクローズ・アップしてくるわけですね。だから、私が今貴重な時間を拝借して御質問を申し上げておるのは、こういうりっぱな方法日本の特許になっておる、しかも今日まで研究が進んでいる過程においては幾多のデータが出ておると私は思うのであります。一体、原子燃料公社が設立された趣旨というものは、日本の国内にあるウラン鉱石の調査及び試掘、探鉱を行なって、もしこれをもって国家的な、いわゆる日本の燃料を自製することができれば、これを最も強力に行なうということだと私は考えておるわけです。でありますから、私が今まで御質問申し上げたように、一体日本においてウラン鉱石を処理するところの特許が公告になっておるのに、原子燃料公社はこういうものに対して何らの関心を示しておらないという形というものは、原子燃料公社の存在の意義から見て私は非常におかしいのではないかと思う。こういうものが出てきたら、何も五百万円や六百万円の助成金を古河電工にやって、そしてその成果を見るということのみならず、これと並行して原子燃料公社も、こういう新しい、しかも見通しのきくような方法に対して研究実験の過程を強力に推し進めていくというのが、私はその建前ではないかと思うのでありますが、そういう点は一体今どういうふうな形になっておりますか。
  78. 井上啓次郎

    井上説明員 原子燃料公社におきましては、従来から硫酸を用いまして粗製錬の研究開発を東海製錬所においてやっております。この粗製錬のやり方というものは、特に日本の場合は貧鉱でございますけれども、非常に溶けやすいという特徴を持っております。その点に関しましては燃料公社におきましてもいろいろの技術検討しているでしょうけれども、従来のやり方はただいま申し上げたように、硫酸を用いた抽出を行ない、それの精製といたしましては有機触媒法及びイオン交換樹脂法でやっておるわけでございます。これは一つの研究開発の流れといたしまして、そういうふうな計画で進んでおるわけでございまして、現在古河電工で実施しております新しい製錬法が着々と進んでおるという状況がございましても、それはそれで並行的に成長することも一つの方策じゃないかと考えます。従いまして、公社がそれを実際どういうふうな形で実施するかというのは今後の問題でございましょうけれども、現在の段階ではそれぞれ特徴を生かして研究開発をし、しかも日本のような貧鉱石を経済的に製錬するということが大眼目でございますので、その点は今後の発展を待って技術評価をする必要があると考えておる次第であります。
  79. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 硫酸法を用いて日本の貧鉱処理を行なうということは、これはもういかなる角度から押していっても国際市価にはおっつかないと思う。それはもともとの鉱石が貧鉱なんでありますから、同じ硫酸法をもってやったならば、国際市価にとても及びもつかないというので、人形峠の開発というものは、どうもこれは前途はなはだ不安である、あるいはあのままで永久に死蔵されるのではないかという不安をわれわれ持っておるわけであります。しかも、これに対して、もうすでに十四億の巨額の国費を投じておる。ところが、こういうふうな新しい方法をもってすれば、人形峠にあるところのウラン鉱石というものは独特の性質であって、重炭酸塩あるいは蓚酸というものには非常に溶けやすい。しかも、それをやるとウランだけが溶けてくる。鉄その他の不用なものは溶けてこない。そうすると、これはイエロー・ケーキという段階を飛び越えて、直ちに金属ウランあるいは酸化ウランとして活用ができるという、これは新聞記事から得られるところの感じなんであります。でありますから、私といたしましては、今、日本というものは原子力平和利用を大いに推進していこうという建前でありながら、一番肝心の燃料というものは外国に依存しなければならない。まるで石油と同じような形をとっておる。二百四十万トンといえばわずかな原料かもしれませんが、とにかくそれをもって日本世界市価に追いつけるだけの国内の燃料を確保できる。しかも、日本の特許庁においで、全部特許を受けておる。私が電話で問い合わせましたところが、もう七つくらい特許がとれている。しかも、重炭酸塩あるいは蓚酸を用いて溶解するところの分量というものは、九五%ないし九七%溶けてきておる。そういうりっぱなデータがあった場合に、原子力局としての行政措置は、これをなるべく早く時間を詰めて、はたして人形峠というものが開発の対象になるかならないか、国産の燃料というものをほんとうに日本世界市価以下で手に握れるかどうかをきめるということが、原子力の平和利用を日本の力で推進していくということに大きなウエートがあるのではないかと思います。今どういう見込みを持ってこの研究の成否を見きわめんとしておられるのでございますか。もう二、三年かかるというのですか、ことし一年でもってやり得るというのですか。そういう点、はっきりして、それはどんな実験だって、だらだら引っぱってやられたら五年も十年もかかる。それを情熱を入れて、設備を完備して、そしてあらゆるデーターをしぼっていって、一年後にこの結果を出して、人形峠の開発をやる。三年後にはとにかく二百四十万トンという原鉱石を相手にして、一時的でもいいから、日本は原子力平和利用というものを日本独自の力で推し進めることができるという体制に持っていけるのかどうか。そういう見通しを聞いておきたいと思うのです。
  80. 井上啓次郎

    井上説明員 ただいま先生御指摘の新しい製錬法がどういうふうに育つかという問題でございますが、三十六年度に補助金を出している関係もございまして、私たちの方では十分その成果、あるいは今後の計画というものは、担当である古河電工にお聞きしております。従いまして、確定的に予測するということはむずかしゅうございますけれども、現在の段階から見まして技術的にある程度の見通しはつきましても、経済的な意味でどういうふうになるかということを、少なくとも三十七年度には見きわめをつけた方がいいというふうに感じております。もちろん、これはどういうふうなやり方でも時間をかけてやればできるわけでございますが、スピード・アップするということは、こういうふうな技術内容から、言いましても大切なことと思いますので、その点は努力したいと思います。従いまして、ここ一年でそれができ上がるかでき上がらないかという問題を確答するわけにはいきませんが、少なくとも現在の段階で進めば、三十七年度中にはその見通しはある程度技術的にも、経済的にも得られるのではないかということを期待しております。
  81. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ラボラトリーは、もうすでに東京工大の舟木研究室でやっておられるので私は十分だと思う。それは人形峠の原鉱石を重炭酸塩とかあるいは蓚酸で溶かして、そして何%溶解していくかということは、これはもうだれがやっても、そういう方法を発見すればそのデータはきちんと出てくると思う。ですから、この新聞を見ますと、これは中間工業試験をやっているのではないかと私は思うのです。それでなければ、助成金が五百万円出ると一千万円以上の金がかかっていることが推測されるわけですから、中間工業試験をやって、もう一ぺん中間工業試験をやって、そこで結論的なデータをとるということですか。
  82. 井上啓次郎

    井上説明員 現在の段階の試験はパイロット・プラントとわれわれは考えています。これはこういうふうな製錬の規模というものと技術的な内容から見た規模というものの兼ね合わせでございますが、先生の御指摘のように、舟木先生のところで行なった研究は実験室の規模でありまして、それを基礎として古河電工でパイロット・プラントをやっておるという段階でありますので、その次の大きさは確定できませんが、現在の古河電工でやっているデータがかなり整えれば、相当の規模のところまで持っていけるのじゃないかということが期待できると思います。
  83. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 そうすると、昭和三十七年度の中間工業試験というものは現場でやるのですか、こっちへまた鉱石を運んできてやるのですか。
  84. 井上啓次郎

    井上説明員 現在古河電工でやっている範囲では、鉱石をあの場へ持ってきて試験をするということで足りるかと思います。もちろんそれ以上のパイロット・プラントということも考えられますけれども、現在の段階の試験を続行すれば、少なくとも工業的な規模のものに発展できるというふうなことを申し上げているわけでございまして、現在の成果からいえば、面接的な意味の工業化というものに役立つと考えているわけでございます。
  85. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ちょっとそこがわからぬのですが……。今、パイロット・プラントをやっているわけですね。そして大体パイロット・プラントの結論が出てきたわけですね。そうすると、今度は、さらにもっと大きな中間工業試験をやるということになると、その目標とするものはいわゆる経済的価値です。その経済的価値というものを中心としてさらに中間工業試験をやるということになりますと、現場の一番いい場所を選んで、そこで中間工業試験をやれば一番経済的な結果というものが出てくるわけですね。ですから、私が申し上げのは、ラボラトリーで成功し、パイロット・プラントで成功し、しかも今度は開発を目標としての中間工業試験をやるのであるから、この中間工業試験研究所というものは現場へ持っていくのか、あるいはまた工場内でやるのかということです。
  86. 井上啓次郎

    井上説明員 現存のパイロット・プラントの試験が済んで、技術的にも経済的にも見通しがつけば、もちろんその次の段階としては現場適用、いわゆる鉱山の近くへ行くということが本来の姿かと思います。
  87. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 長年の間、人形峠を対象といたしまして、われわれは予算をここに投じ、そして原子燃料公社はきわめて熱心に調査探鉱して、予想埋蔵量二百四十万トンというまでこぎつけたわけなんですが、われわれの一番心配しておりました人形峠を中心とするところの開発というものは、いつ行なわれるかわからない。特に今着席されました赤津委員のごときは、地元でありますから、この問題について、たびたびこの委員会で質問されているけれども、さっぱり目鼻がつかない。ところが、幸いにこういう方向が見つかって、そうしてラボラトリーに成功し、プラントにおいて成功し、もう今度は残すところは経済的な問題だということになっておれば、行政指導というものはそういうところにあるのであって、助成金をなんぼ出す——けちな助成金を出せば、古河電工というものは、いや、おれは現場へ行かないと言うかもしれないけれども、助成金をうんと出せば、みんな現場へ行ってやるという気持になるのですから、そういうところを一つ行政指導として、十分現場において中間工業試験の行なえるような処置を講じていただけば、今度は一番いい場所でもって設備をし、そうして坑道から、掘さくする費用から何から全部、そこで経済的なデータをとれば、それを一ぺんやってのければ、あとは人形峠大開発ということになるのではないかと私は思う。そういうところを、行政指導でタイムを詰めてもらいたいというのです。そういう御所信がありますか。
  88. 杠文吉

    ○杠政府委員 原子力局の所信を問われておりますから、私からお答えします。先ほども齋藤先生の御質問にお答え申し上げましたように、非常に有望だと判断しておりますので、なお突っ込んで検討いたしまして、できるだけ御趣旨のあるところに沿うように努めたいとお答え申し上げます。
  89. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 場当たりの御答弁は要りません。いつでも、御趣旨に沿いたいとか、御高説ごもっともですとか、これは僕はきらいなんです。  ただ、なぜそういう懸念を持ったかというとお話を承ると、昭和三十六年度に助成金五百万円、昭和三十七年度で五百万円。それでは同じ五百万円であって、どうして第二次の中間工業試験がやれるのですか。先ほど原子力局長は、これは不用意に言われたかもしらぬけれども、三十七年度にも五百万円助成金をやるというようなことを言われた。そんなことでは、私は一つも進歩がないと思う。三十六年度に五百万円の助成金をやって、そうして第一次のパイロット・プラントにおいて技術的に成功したならば、今度はこれに経済的な検討を加えていくということであったなら、人形峠の現場において経済的なデータの出るだけの規模でもって、これは中間工業試験というものをやってもらわなければならぬのですから、それは誤ってはいかぬのですよ。小さなパイロット・プラントでもってやって、技術だけは確立したけれども、原料は一日に一トンしか要らないのだから、これでは経済的価値判断ができないというのが、今の第一次パイロット・プラントだと私は推測する。だから、経済的にやろうということになったら、一日に五トンとかあるいは十トンの鉱石をつぶすところの設備を持って経済的な判定を下していかなければならぬ。それには、わずか五百万円の助成金でやってもできっこない。私はそれを言っておる。
  90. 杠文吉

    ○杠政府委員 私は、私ども齋藤先生の御質問にお答え申し上げましたときには、三十六年度は約五百万円助成いたしておりますが、三十七年度におきましてはまだ支出を決定いたしておりませんで、目下審査中でございますから、御趣旨を生かし得る余地があると考えて、お答え申し上げたわけであります。
  91. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 くどいようですが、もう一ぺん念を押しておきます。技術的な決定を見るために現在のパイロット・プラントをやっておる。その結果によって技術的に確立いたしましたならば、人形峠の現場において経済的判定を下すための第二次パイロット・プラントをやる。これには適当な行政指導と、それから助成金をやる、かように御答弁から感知し得たのでございますが、このまま信じてよろしゅうございますか。
  92. 杠文吉

    ○杠政府委員 私の方の研究助成金は研究に限っておるわけでございまして、先ほど私が申し上げましたのは、まだ技術的に確定いたしてないというのは、研究の分野に属するかと思います。しかし、経済的にどうかという検討につきましては、われわれはもちろんやらなければならぬということを考えておりますが、助成金のワク内において経済的な問題を扱うことはないというふうに御理解いただきたいと思うのであります。
  93. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 どうも答弁がすこぶるあいまいになって参りました。私がさっき原子燃料公社設立の趣旨をあえて申し上げましたのは、ここなんです。私たちは、筆をとって原子燃料公社設立の法案を作った方なんです。でありますから、特に原子燃料公社の存在というものに言及いたしたのであります。原子燃料公社が今やっておる硫酸法と、重炭酸塩及び蓚酸法を比較検討しても炭酸塩及び蓚酸の方が硫酸法よりも、人形峠の原鉱石を相手として国産ウラン燃料を作るにはすぐれておるという技術的な確立をした場合に、原子燃料公社にこれをやらしたっていいわけでしょう。ちっとも差しつかえないじゃないですか。それはもちろん特許権者と、あるいは古河電工等との折衝もあるかもしれませんけれども、原子燃料公社が金を出してそういう設備をやって、そうして経済的な検討を加えてみる。これは十分経済的な検討を加えた結果やってよろしいものであるとしたならば、これは古河電工に差し戻して、民間でもって開発さしたっていいわけでしょう。助成金を研究だけに限って、経済的な検討を加えるところのパイロット・ブラントは考えないということになれば、問題はちっとも進まないということになる。
  94. 杠文吉

    ○杠政府委員 私の答弁がまずいからか、なかなか御理解をいただけないのですが、今申し上げました約五百万円を三十六年度に出しているというのは、研究助成金の項目から考えております。しかし、先ほど来、齋藤先生が御提案なさっているところの、燃料公社でこれを考えていったらどうかという問題になりましたら、もちろん燃料公社は、経済的に引き合うか引き合わないかということも当然検討の対象といたします。その点については十分に考えていきたいということでございます。もちろん三十七年度の予算はそのことを織り込んでございませんから、三十八年度予算において十分検討に価するというふうに考えられるわけであります。
  95. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ちょっと長官に伺います。これはやはり長官に伺わなければ最後のとどめはわからぬですから。  新しいウランの精錬方法日本の特許になって、大学においてのラボラトリーの試験においては技術が確立した。技術が確立したから特許がとれたということなんです。それで、今度は三十六年度に五百万円の助成金を出して古河電工にパイロット・プラントを作らせた。新聞によると、これは非常な成功をおさめているというのです。そうすると、あとに残るものは何かというと、それがはたして経済的にいくかいかないかという問題なんです。私さっきから当局に質問いたしておりますのは、ラボラトリーで成功し、技術的にパイロット・ブラントで成功し、あと残っているものは経済的に検討を加えることだけであるということになったらば、これは現場に行ってパイロット・プラントを作って経済的検討を加える。しかし、これは研究の助成金の中には入らない、こう言うのです。それでは原子燃料公社にやらしたらどうかということを今提案したのでありますが、これも今の御答弁からいくと、なかなからちがあきそうもないのであります。私は、そういうところに研究調整費というものがあるのではないかと思う。一体科学技術庁というところは、技術的にだけ検討を加えて、そしてこれが経済的にものになるかものにならないか検討が加えられないのだというなら、それはかたわなことなのです。科学技術というものは、私から言うまでもないことであるが、科学技術庁設置法によるというと、国民経済に寄与するということになっている。結局国民経済に寄与するということは、経済的に成り立つか成り立たないかというところまで検討を加えることだと私は考えておりますから、技術的に成り立ったけれども、研究だけに助成金はしばられているから、経済的検討を加えるのには金は出しようがない、そんなばかなことはないと思う。そういう点において研究調整費、そういうものもあるのじゃないかと思うのですが、こういうものを推進していって、早く人形峠を開発するという考え科学技術庁にあるのですかないのですか。長官一つ
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 齋藤委員の御質問になっているように、国産のウラン鉱というものはできるだけ開発するという建前がいい。これは世界に無制限にあるわけでないのです。国産の燃料があれば、これは開発すればいい。しかし、品位が御承知のように非常に低いおけですから、貧鉱処理の精錬方法というものは、これは単にウランに限らず、日本の場合は鉄などにもそういう問題があったわけです。だから、古河でそういうふうな研究をやっておる。これに対して、われわれが協力するという形です。将来これはいよいよ経済的になることが確かめられれば、これは大きなウラン開発の功績になると思います。研究調整費でやったらどうかという齋藤委員の御指摘ですが、そういうふうな、いよいよ企業化させるということになれば民間があるいは適当なのかしれません。どこでやるかということは、今ここで答えてみろといっても無理であります。しかし、そういうふうな新しい貧鉱処理の精錬方式ができたということに対して、科学技術庁は重大な関心を持って、これはやはり経済的に成り立つように育成していくということは、われわれとして大きな関心事でなければならぬ。従って、これは新聞等に成功したということが載っておるようでありますが、もう少し科学技術庁としてもこの問題を具体的に検討して、これがやはりそこまで成功するならば、経済的に成り立ち得ることは可能でありましょうから、重大な関心を持つようにして、齋藤君のねらいである国産の資源を開発せよという趣旨には、それでいきたいと思っております。
  97. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の申し上げておるのは、ちょっと長官の頭のはしっこには入っおるけれども、まん中に入っていないですから、もう一ぺんやります。科学技術庁というところは、そういう助成金をやって技術的にりっぱな方法であるということを認めた際に、今度は経済的な価値判断をやらなければいかぬわけですね。その経済的価値判断には科学技術庁で全然手を触れないのか、あるいは経済的価値判断まで科学技術庁がやる手があるのかどうか。科学技術庁でやれる手は、やはり新技術開発事業団に委託する、あるいは研究調整費でやるとか、いろいろ手はあるわけですけれども、助成金をやって技術は確立した、これは世界的にりっぱな技術である、しかし経済的に見るとまだまだ疑義があるというときには、そのままおっ放してしまうのですか。経済的価値判断まで科学技術庁の手でやるのですかということを伺っておるのです。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、助成金を渡して技術的に成功したものをおっ放すということでは、国民経済に対して寄与することが技術の研究の目標でしょうから、それでは責任を果たしていないわけです。やはり研究調整費は、企業化の一歩手前といいますか、そこまでは研究調整費の範囲をこえるのではないか。新技術開発事業団というようなものがそういう目的のために作られたのであるから、企業化の一歩手前というならば、科学技術庁が大いにあっせんして、新技術開発事業団、これの橋渡しをするというようなことは科学技術庁がやらなくてはならぬことだ。それを研究調整費で出すということは、なかなか予算にも限度がございますし、また研究調整費そのものの性格からいっても、それで十分いけるなら新技術開発事業団を作る必要はなかったわけですから、新技術開発事業団に橋渡しをして、この問題なども、そこで今後は大じかけにやるということが好ましいと思うのであります。
  99. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 古河電工の独自の力でやれれば文句はないわけです。もし古河電工独自の力で経済的検討を加え、第二回目の中間工業試験がやれないというときは、新技術開発事業団といっても、これはウランでありますから、ちょっと的はずれな感じがする。そうすると、結局原子燃料公社がこれに手を差し伸べて、そうして経済的価値判断をするとか、何らかの方法を講じなければならないと思うのです。そういう点に対しては、ここで即答を求めてもなかなかむずかしいと思うのであります。長官も、ひまがありましたら古河電工に行かれて、実際国産ウラン開発の原動力をなすがごとき研究完成が行なわれておるかどうかということに御検討を加えられた、一刻も早く国産ウランの開発に着手できるように——これがやれるとやれないとでは、昭和三十八年度における国産ウラン探鉱費に大きな影響があると思いますから、これをなるべくすみやかに実現の方向に持っていくように御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  100. 山口好一

    山口(好)委員長代理 山口鶴男君。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど岡委員、中曽根委員等から論議のございました統一見解の問題につきましては、私ども次のように考えるのであります。これを見ますと二つに分かれております。第一の前段におきましては、原子力基本法第二条のいわゆる解釈を述べておられるわけであります。私はここで、利用という言葉の中に輸出が入るか入らないかということについては、いろいろ議論があろうかと思いますけれども、しかし、原子力基本法第二条というものは、利用という言葉に輸出が入るか入らぬかというようなことは、小手先でもって議論する条項ではないと思うのであります。これは世界唯一の原爆被爆国である日本が、原子力の開発に乗り出すにあたってあくまでも民主、公開、自主の原則の上に立ち、しかも平和目的というものを厳格に守るのだという、いわば大きな理想を掲げた条文でございまして、当然平和憲法第九条にもかかってき、また憲法前文である世界平和に寄与するという一つの大きな日本の国の方針、こういうものに当然かわってくる条文である、私はかように考えるべきだと思うのであります。利用という言葉の中に輸出が入る入らぬという小手先の法律解釈でもってこれを判断することは、私はやはり問題が残るのではないかと思うのであります。そして、私ども懸念をいたしますのは、法律解釈では輸出の場合は何ら制限するものではないのだ、ただ、中曽根さんも言われたように、法文解釈は別として、政策では当面こういうことをとるのだ、こう述べておられるわけであります。私どもがこういう形式を見るとすぐ想起をしなければならぬのは、今国会で問題になっているたとえば核武装の問題、これに対して歴代の政府は、現行憲法では決して核武装は禁止はされておらぬのだ、ただ現在の池田内閣の政策としては核武装はしないのだ、こう言っているわけです。そういったやり方と全く似たような形式になっている。私どもはそういうところに危険を感じるわけでございます。法文解釈云々があるけれども政策はどうだ、ということではなくて、私が指摘いたしました憲法前文、憲法九条、それにのっとった原子力基本法第二条、こういう観点から、やはり私はもっと明確な筋を通した考え方に原子力委員会は立つべきではないか、かように考えるものです。ただ、この点の議論は本日は時間もおそくなっておりますからいたしませんが、一応そういう考え方をとるべきではないかという私の見解を申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、具体的な問題を一つだけお聞きいたしたいと思います。それは、現在紛争中の原研労組の賃金問題に関することでございます。聞くところによりますと、この原研労組が一律に五千円の賃上げを要求をいたしまして、いろいろ所側と折衝いたしまして、これに対して中労委があっせんに乗り出し、中労委としては二千二百五十円のあっせん案を提示をいたしました。組合といたしましては、この中労委あっせん案を受諾をいたしました。ところが、所側におきましては、この中労委あっせん案を受諾するという形をとらずに、あっせん案とは若干異なりました二千九十九円を出す、こういう形で現在紛争が続けられておると聞いておるのであります。金額とすれば百五十円程度の開きしかないわけでございます。日本における唯一の原子力の研究センターである原研に、こういった中労委のあっせん案が出、しかもその受諾をめぐって紛争が起こるということは、原子力委員会としても当然慎重に考えなければならぬ問題ではないかと思うのであります。原研労組の話を聞きますと、所側としては、たとえば大蔵省とかあるいは原子力局とか、そういうところといろいろ話し合いをいたしておるのだけれども、財政的な面もあって二千九十九円以上はなかなか無理なんだ、こういう点で固執をいたしておると聞くのであります。中労委あっせん案が出たら、私は当然所側は受諾したらいいと思う。そうしたら紛争が解決する。どうしてこういった程度の問題からこのような紛争になっておりますのか。この点、原子力委員会あるいは局長でもけっこうでありますが、積極的な解決をする意図がおありなのかどうか。また、そういう点の努力をいたす御用意があるかどうか、お聞きをいたしたいと思います。
  102. 杠文吉

    ○杠政府委員 ただいま山口委員から御指摘の問題は、昨年の十月にさかのぼるベース・アップの問題でございまして、私たち真剣に取り組んでみた問題でございます。御存じ通りに、この動機となりましたのは、昨年の十月一日、政府関係機関が五十幾つございますが、そこの給与を一斉に上げようということになりまして、一般職公務員が七・一%のベース・アップをするのに右へならえをして、十月一日にさかのぼって一斉に七・一%の財源をもってベース・アップをするというようなことに相なったわけでございます。それ以来ずっと折衝を重ねて参っておりまして、私の方のいろいろの機関、すなわち情報センター、原子燃料公社等におきましては、七・一%の範囲内において妥結を見ました。ところが、残念ながら、原子力研究所におきましては、何回となく理事者側と組合側との間で協議をしているのでございますが、なかなか妥結ということに至りませんで、組合側といたしましては、所側にも通知なく、突如として昨年の十二月二十五日中労委にあっせんの依願をいたしたわけでございます。所側もこれに応じて、三月八日藤林あっせん員からあっせん案が示されまして、三月八日の夜組合側は直ちに受諾いたしました。所側におきましてもいろいろ検討いたしまして、三月十九日には受諾をいたしたのでございます。その際に、この中労委の十月一日以降一人当たり月額二千二百五十円の原資をもってというその原資の解釈を、所側といたしましては、予算単価に二千二百五十円を積むものであるという解釈のもとに受諾いたしますという受諾書を出したわけでございます。その後組合側ともいろいろ協議をして参っておったのでございますが、組合側は、中労委のいう二千二百五十円は十月一日の現給に積み上げるべきものであるという考え方を中労委の方へ申し入れいたしまして、ただいまもお話しの通りに、その点をめぐる紛争にしぼられているわけでございます。それより前に、組合側としては、二千二百五十円は一律に積め、従来の俸給表では、御承知通りに、たとえば初任給なんかもらっている人は低いのですが、十年も勤めたりした人はもっと高い。それに対して一律に二千二百五十円を積めと、相当長い期間にわたって所側に交渉しているのであります。しかし、今申しましたように、最近しぼられてきておりますのは、そういう主張は一応やめまして、やはり原資の論に帰ってきて、山口委員も御指摘通りに、予算単価ではなしに現給に積め、そうするとその差額は百五十一円になるということでございます。しかし、この点につきましては、官庁ではもちろんのことでありますが、官庁に準ずるところの政府機関におきましては、すべて財源措置というものは予算単価をもとにして争われているものでございます。たとえば七・一%でほかの各機関等も妥結しているというのに、原研のみが五十幾つかのうちで残されているということでございますが、それはすべて予算単価の上において解決しておるということでございます。原研は特殊法人ではございます。しかし、ほかの政府関係機関においても特殊法人等はたくさんございます。公団等がございます。その同じ特殊法人ではございますけれども、その特殊法人の給与の扱い方というものは、すべて予算単価をもとにするところの争いであって、当初から、争いを中労委にあっせんしました折に、組合側は予算単価をもって一五%のアップをしてくれという要求を所側にした。これがなかなか先ほど来申し上げておるように、話がととのわないからというゆえに、そういうあっせんを中労委に依頼したというような経緯もございます。ところが、中労委のあっせんを現給に積むものであるというふうな組合の主張にしぼられてきておるわけです。何しろ、御存じ通りに、会計年度というものがございまして、やはり官庁に準ずる政府関係機関におきましても、三月末日をもって打ち切れということに相なっております。しかし、今日四月の幾日かをこえておるわけでございます。こえましても、原研について藤林あっせん案というものは出ましたが、そのおりには、四月六日までは猶予期間として取り扱われておりましたので、昨日の夕方五時からけさの七時にわたりまして、いろいろ事務折衝を組合側と理事者側と重ねております。所側はやはり予算単価という考え方でありますし、組合側も今ではその中の配分の問題について折衝を重ねておるという段階でございますし、四月六日に東海研究所においては全日ストをやるということを理事者側に通告して参っておったのを直ちに取り消しまして、事務折衝に入るという段階で、先ほど申し上げますように、予算単価に積むところの二千二百五十円ということの了解の上にその配分について事務折衝に入り、また一休みしまして、けさ七時までかかっておりますから、また十時から引き続き事務折衝を理事者側との間に行なっているという状況でございます。おそらくはきょうにでも妥結するのではなかろうかというふうに考えております。私自身も本日の対策本部にも出なくちゃなりませんし、こちらの委員会にも参っておりますが、絶えず一日も早く妥結してくれるようにというふうに念じております。おそらくは、皆さんも一日も早く解決して、労使関係が正常な状態に戻りたいということだろうと思っております。それが今日までの状況でございますし、私たちも一生懸命に努力してみたその結果は、おそらくは七・一%が政府関係機関すべての財源措置でございますけれども、原研におきましては、それを多少上回るプラス・アルファの努力だけは、及ばなかったのでございますけれども、した、ということは申し上げることができると思います。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろ努力されておるようであります。そこで私は聞きたい。努力されるのはけっこうなんですが、問題は、私は原研労組と原研との間のいわば労働関係、これをどういうふうに考えるかということに問題があると思います。どうも、今のお話を聞いておりますと、昨年人事院の勧告が出まして、公務員に対しては七・一%の賃上げがございました。それは国家対国家公務員という、また人事院勧告という制度があるゆえにこういう形がとられた。この場合の労働関係を、原研労組と原研との間におけるように、当然労働組合法に基づいて中労委にあっせんができるという違った労働関係にあるこういう機関等を、何が何でも同一視いたしまして、そうしてやっていくという考え方にそもそも間違いがある、こういうふうにいわざるを得ないと思う。努力されてみましても、七・一%を押しつけるような努力をするのと、そうではなくて、そういった労働組合法に基づく労働関係なんだという認識の上に立って正常な労働慣行を作り上げるという観点から努力するのとは、全く私は行くと帰るほどの違いだと思う。そういった努力の仕方。それから労働関係をどう考えるか。ただいまの局長さんのお話には、私は非常に疑問があるような気がしてなりません。そこでお尋ねをいたしますが、聞くところによりますと、原子力委員会では、政府機関が七・一%だということなんだから、七・一%でもってこの事態を収拾するんだ、こういうようなことをわざわざ原子力委員会の席で論議をされて、そしてそういう方針をきめられた。そしてまた原子力局では、公務員と同じような七・一%にのっとって給与表まで作って、原研側にこれを示して、これでもってやれ、こういうような指示をやったというふうに聞いているのですが、私はこれは逆だと思う。原研と労組とが団体交渉をいたしまして、そして、こういう形で妥結をしたいと思います、一つ原子力委員会許可してくれ、原子力委員会としては許可をする、こういうのならば当然わかりますけれども、給与表まで原子力委員会で作業して、全体の方針をきめ、原子力局で俸給表まで作業をやって、これでやれというような格好で押しつけるということは、私は全く誤りだと思うのですが、そういう事実はございませんか。
  104. 杠文吉

    ○杠政府委員 それはお説の通りでございまして、確かにわれわれは財源の措置について許可すればよろしい、こういう立場でございます。従いまして、理事者側から、給与表をかくのごとくしたいが、いかがかという伺いが出ております。それに対しまして、われわれのところでは、これはかくのごとき給与表にすべきではないかという意見を申し上げております。しかし、山口委員もおそらく御経験がおありと思いますが、給与につきましては、単にこれだけでいいとか、これはどうだとかいうような問題ではございませんので、やはりそれぞれにあるべき姿において給与表というものは作られなければならない。従って、私たちの方の専門家が、原研が持ってきたところの案に対して、この配分はかくあるべきではないか、そういうことを申し上げるのは当然だと思うのです。ただまるのみに、財源は幾ら幾ら、何百万円よこせというようなことで、それでよろしいというような許可というものは国家に忠実なるゆえんであると私は思っておりません。やはりその中をよく確めまして、そして納得のいくところで給与表というものはきまっていかなければならぬ。その財源措置もしなくてはならぬというふうに考えるのであります。ただいま例をおあげになりましたのは、原研の理事者側から持ってきたのに対しまして、かくのごとくすべきだというようなことで協議したという事実はございますが、私の方からこの給与表でやれ、事態をおさめろというような指示をしたことはございません。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 問題は、予算の総額を許可するにあたって、給与体系がどうあるべきかというようなことについていろいろ相談をなさるということは、もちろんわかります。ただその場合、国家公務員がこうなったのだから、それと同じような体系をそのまま押しつけるといいますか、それでなくちゃいかぬというふうにこだわる考え方というものは、日本の原子力研究を進める責任を持つ原子力委員会及び原子力局の態度としては、どうもいかがなものかといわざるを得ないと思うのです。やはり予算のいろいろな制約もございましょう。また、国家公務員がああいうような形の俸給表である。また他の公団等もそれに準じた格好になっておる。こういった中から、原研だけがあまり違った格好では、というようなことをお考えになることも、わからないことはございません。しかし、私は、そういうことを考えると同時に、原子力委員会なり原子力局は、日本の原子力研究を進めるにあたってのあるべき給与体系はどうか、こういった考え方がなくてはならぬと思うのです。そういった考え方をつきまぜていろいろ指示をされることが妥当なのであって、やはりそういった考え方に十分なものがあったというふうに、どうも私は受け取りかねるので、私の意見を申し上げたわけでございます。そういう私が申し上げたようなことも考えておりますのかどうか。これは原子力委員会の方でもいろいろ議論されるようでありますから、原子力委員会の給与担当、どなたがやっておられるか知りませんが、原子力委員の方の御見解を一つお聞かせをいただきたいと思うのでございます。大臣からでもけっこうです。  同時に、いま一つ聞いておきたいのであります。やはり原研と原研労組というような格好でいろいろ交渉いたします。ところが、所側が、予算の権限その他について、一々大蔵省なり原子力委員会あるいは原子力局の方にお伺いをしなければいかぬ、そういう特殊な事情がございます。そうすると、労働組合の側から見れば、原研当局というのは全く主体性がなくて、交渉しても何にも話が進まぬじゃないか。そうかといって、原研労組が直接大臣のところに行って交渉するというわけにはなかなか参らぬと思うのです。そうなると、のれんに腕押しみたいなもので、主体性のないものと交渉している。こういった形がどうしても出てくるところに、私は問題があると思うのです。  そこで、私は大臣にお伺いしたいと思うのです。今度の炭労と政府との折衝炭労は決して、総理大臣に対して団体交渉権があるという団体ではもちろんございません。通産大臣に対してもそうでありましょう。しかし、日本の総合エネルギー対策をどうする、そしてまた、国内の不安を呼び起こすような事態が起きようとするときに、政府政府責任において、団体交渉権云々ということとは離れて、やはり政治的な解決に乗り出す、こういうことが行なわれたということは、私は非常にけっこうだと思っております。とすれば、大臣としても、いつまでものれんに腕押しのような格好に原研と原研労組を置いておくということについては、私は再検討される必要があるのではないかと思うのです。そうして、もちろん最終的に予算等について、認可権は別といたしましても、ある程度主体的な立場で所側が労働組合に対処できるような一つの形というものを打ち立てるということも、私は決して不可能ではないと思うのであります。現に中労委としては、所側が言っているように予算単価に対して乗せるな、こういった方式については中労委あっせん案の趣旨に反するということを言っている、ということを聞いておるのであります。政府機関が中労委のあっせんの趣旨に違うような形でいろいろ交渉を行なわれるということについても、やはり私は反省をいたさなければならぬと思うのであります。そういったことも加えまして、大臣として、今のような状況にある原研と原研労組とのいわば労使関係というものを、もっと労働組合法の立場に立って、十分原研労組と原研とが話し合って、主体的に問題が解決できるような、そういう方向に持っていくおつもりがあるかどうか、また、そういうことを通じて、日本唯一の原子力研究の機関である原研の体制について一歩進めるという、お考え方があるのかどうか、この点を一つお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  106. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力開発のような、ああいう重要な研究所に労使の間の紛争が起こることは好ましくないことは御指摘通りです。従って、労務関係といいますか、労使の関係あるいは給与も含めて、もう少し原研の体制というものを再検討してみたい、こう思っているのです。しかし、これは建前からも原研の中で処理すべきもので、われわれが直接にというものではないけれども、そういう労使関係のあり方というものに、われわれとして、もう少し再検討を加えたい。今度の場合も、われわれとすれば、できる限り研究者あるいはそれに付随した業務を行なっている人たちの待遇を改善したいという考えを絶えず持っておるわけであります。そういう点で、人事院に対しても強く要望しておるわけですが、しかし、国立の研究機関として、一方においていろんな制約もあるわけです。また、よそとのバランスもあるわけでありますから、必ずしも労働組合の言う通りにもいかない場合がある。ことに政府の予算の制約を受けるものとして、予算単価を離れて現給ということについては、今日の予算の建前から非常に困難である。——できるだけ尊重もしたいということで、実際は七・一を多少上回ったわけです。それは努力をしたのであります。労働組合の言う通りにいたしますと、七・八ぐらいになるのでしょう。これはやはりほかの方にも同種の研究機関がありますから、原研だけにとどまらないわけであります。燃料公社その他いろいろあります。理研もある。そういうことで、必ずしも満足だとは思っておりませんが、現在の問題としては、今、原子力局長も御報告申し上げたように、これで大体きょう話がまとまるのではないかという期待をいたしておるわけであります。この問題はこの問題として解決しますれば、次にはやはり労使関係、ことに給与の問題等のあり方に対して再検討を加えたいと私は考えております。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私、一年生ですからあまり詳しいことを知りませんけれども、私どもが国会へ出る以前、地方におりましても、三木大臣の経歴は自民党の中でも最も進歩的なお考え方を持っている方だというふうに、国民の間に常識としてなっていたと私は思うのです。そういうつもりで私もおりました。現在でもそういうつもりでおります。今の大臣のお話を聞きまして、納得できるところが多いのであります。大臣の言われましたように、確かに予算の制約等はある。しかし、原研の労使関係というものを、所側がもっと主体的な立場で処理できるように進めていきたいというそのお考え方は、私は非常にけっこうだと思うのです。とにかく今の状態では、ほんとうに所側が主体性がなくて、俸給表の内容に至るまで一々原子力局に持参いたしまして、これでよろしいのかどうか、いや、これはこうだこうだというようなことを言っておるような状態では、これは原研労組としても非常にたよりないと思うのです。ですから、この問題は、百五十一円がどうだこうだということももちろんありましょう。しかし、同時に、原研労組の気持を推察いたしますのに、交渉する相手は何かたよりなくてしょうがない。そうではなくて、交渉する相手がもっと主体的に交渉して、問題の解決をはかれるような、そういう体制を作ってくれというところに、私は今回の紛争のねらいがあるような気がいたします。ぜひともこの点につきましては、自民党の現在の大臣の中でも最もりっぱな進歩的なお考え方を持っておられる大臣の仕事として、この原研といわず、理研あるいは原子燃料公社、似たようなものを通じまして、一つの新しい労働慣行というものを作っていただく方向一つ努力いただきたいことを、特にお願い申し上げる次第であります。
  108. 岡良一

    岡委員 原研労組の給与の問題も、毎年実はわれわれも大臣に要求しておるわけなんです。御存じのように、原子力研究所は日本の原子力研究開発のセンターであるから、ここには俊秀を集める必要がある。それには現在のような公務員の給与規定で縛るということになると、なかなか英才が集まらぬのではないか。だから、この点やはり特殊法人というふうな形態をとって、そして処遇についても十分に配慮し得るようにしようというのが、あれを特殊法人にした大きな動機であったわけなんです。ところが、その後、大蔵省あたりの考え方で、だんだんといわば一般の公務員のベースの方向にレベル・ダウンされつつあるというのが、やはりあそこに働いておる諸君の不満の一つでもあるようです。  いま一つの不満は、山口君も主張されましたように、原研の理事者の諸君には、予算についての権限がない。そこで、原子力局にお伺いを立てる。杠」君の悪口を言うわけじゃないが、あなたはやはり会計課長としてなかなか渋い。大蔵省へ行く、それは原子力予算のいろいろ御折衝もありますから、このことについてあまり大蔵省に強腰も言えないというようなことから、この原子力研究所の労組の諸君は、毎年こうして年中行事のようにストをやる。われわれは、原子力研究所は、ほんとうにりっぱな仕事を次々と打ち出してくれる日本の名実ともに原子力研究開発のセンターであってほしいのに、むしろストライキが名物になるというようなことでは非常に残念であります。先般も私は、大臣は直接労働組合の代表の諸君の意向を聞いてくれないか、池田長官のとき私は率直に申し上げた。そうして、やはり政治的な折衝の段階で、大蔵大臣に言うべきことがあったら大臣として言っていただけるくらいのところで、こういう年中行事のストライキに終止符を打ってもらいたいというようなことを強くお願いしたこともあります。たまたま先般人事院においても、技術に理解のある、技術者の処遇に理解のある方を御推挙いただいて、私ども非常に敬意を表しておるのでございますから、ぜひ親心を持って善処を願いたいと思うのです。  私が引き続きお尋ねを申し上げたいことは、実は先般新聞を見ると、MASAの調査員が今フィリピンに来ているが、日本で受け入れるということが閣議で承認をされた、このことは私どもも非常に重大な関心を実は持っておりまするので、このことについて将来起こり得べきいろいろな問題についての、特に科学技術庁長官としての大臣の御所見を承りたかったのでございます。しかし、こうして見渡すところ与党の方が少ない。私どもは御存じ通り国会正常化の立場から、今暁に至るまで堂々の論陣を張ったわけでございます。ところが、これを理由として委員会では与党の諸君が少ない。これでは、まあ、一つ欠席の諸君に問責決議案でも出そうものなら、わが党が勝つかもしれませんが、まあ武上の情けで、不在裁判はやめることにいたしまして、この際簡単に、NASAの調査員が日本へ来る目的は何なのかということ、それに対する閣議での御報告の内容等を承りまして、質問は次回の委員会に譲りたいと思います。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカのNASAから人工衛星の追跡のセンターと申しますか、探知の設備を持つセンターを日本に置きたい希望がある。それは、九州の地区で六カ所ばかり向こうの希望の地域を申してきたわけであります。むろん日本ばかりでなしに、フィリピン等もその候補地になっておるわけでございます。これは軍事目的に使うものではむろんない。平和目的のものであるということは明白でございます。また、日本科学者との協力関係も向こうは否定してはいないわけです。従って、それはそれなりに日本の宇宙開発にも寄与するものがあろうと思います。しかしながら、その八十エーカーくらいの地点と、その周辺に対していろいろ建造物に対する制限もあるわけです。従って、たとえば航空路の問題、その上空は飛行機が通ることは困るというような制限もありましょうし、また電波を送るような場合もある。これは国内の電波法の関係もあるし、航空路の関係もある。従って、いきなり現地を調査するということは困る。しかし、何分にも文書の往復では詳細にその内容というものがわかりませんから、フィリピンまで来られておるというならば、日本に来られるならば具体的な内容に対して検討する用意がある、というようなことを先方に返事をいたしたのでございます。そして、十分に向こうのいう、どういう設備をして、その設備をした周辺に対してはどういう制限があるのか、日本との協力関係はどうか、いろいろなもっと具体的に問題を明らかにして、そしてそれがいいものならば、現地の調査——むろん現地の承諾も得るわけでありますが——現地の調査をするように進めていく場合もある。が、どうしてもいろいろな状態で——ただ宇宙開発というようなことだけではない。国内法のいろいろな関係もあって、都合が悪いときには、それはお断わりをする。現在は詳細内容を聞くために調査員を受け入れてディスカッションの機会を持ちたい、こういうことが現在の政府の立場でございます。
  110. 岡良一

    岡委員 質問はこの次の機会ということにいたしまして、資料を一つ御提出を願いたいと思います。  御存じのように、NASAの打ち上げておる二十七ばかりの人工衛星が現在回っておるようであります。特に偵察衛星サモスについては、カナダとオーストリアの南部に追跡ステーションが置かれてあります。これはどういう国と国との間の協定において置かれておるか。また、その運営はNASAがやっておるのか、あるいはまたその国の科学者も協力しておるのか。あるいはまたその運営において、いわゆる機密保持というような厳重な制限があるのかどうか。こういうような点を含めまして、カナダとオーストラリアにおける基地の実態について、資料をぜひ一つこの次の委員会までに御提出を願いたい。その上でまた、ゆっくり質問をさせていただくことにいたします。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 突然にこの問題が起こりましたから、次の機会までにそういう協定、いろいろ御指摘になったようなことが資料として出せるかどうか請け負いかねますが、現在の時点においてわかっておるだけのことは資料として出すことにいたします。
  112. 山口好一

    山口(好)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会