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1962-03-15 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 西村 英一君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 岡  良一君    理事 河野  正君 理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       佐々木義武君    塚原 俊郎君       保科善四郎君    松本 一郎君       西村 関一君    三木 喜夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  井上啓次郎君         参  考  人         (原子燃料公社         理事長)    高橋幸三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)      ————◇—————
  2. 西村英一

    西村(英)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、前田委員長にはお差しつかえがありますので、委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  去る二月二十三日石川一郎君、兼重寛九郎君及び西村熊雄君が、原子力委員会委員に再任されました。本日は、石川一郎君にはやむを得ざる用件のため欠席いたしておりまするが、兼重西村委員出席いたしておりますので、この際、ごあいさつを申したいとのことでございますので、これを許します。兼重原子力委員
  3. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいま御紹介がありましたように、去る二月二十三日付で原子力委員会委員に再任されました。常勤委員になりましてから二年に近く、非常勤の時代も入れますとほとんど五年になります。だいぶ長いのでございますが、このたびの再任にあたりましては、覚悟と気分を新たにいたしまして、これからの勤めに励みたいと存じております。どうか諸先生方の御援助、御鞭撻をお願いいたします。  これまで原子力委員会に特に分担の制度というのはございませんけれども、私は安全審査の面を主として受け持ってきたようなことでございます。今後どういうふうになりますか、まだ特に打ち合わしておりませんけれども、自分といたしましてはその方に対する関心は持ち続けていきたいと思っております。  わが国の原子力開発、特に原子力委員会といたしましては、これまでも残された重要な問題を幾つか持っております。これはいずれも解決に困難の多いことでございます。ところが、最近の情勢を見ますと、これに新たな問題が幾つか加わるのではないかというふうに感じるのであります。そのいずれもが前に劣らないほど重要であり、解決に困難が伴うことであるように私は感ずるのでございます。これからそういうものに取り組んでいく覚悟でございますので、特に皆様方の御指導、御援助をお願いいたしたいと存じます。
  4. 西村英一

  5. 西村熊雄

    西村説明員 再任いたされました西村でございます。私は前期は八カ月原子力委員をいたしましたけれども、この八カ月は大体研究時代だと心得ておりまして、委員として職責を果たす上に一応の基礎知識は得ていなくちゃならぬと思いましたから、主として勉強することに専念いたしました。その間に、前委員長の御好意によりまして、委員長に同伴いたしまして欧米の研究開発の視察の機会をちょうだいいたしたことは、今もって深く感謝しております。その結果、日本の現在の原子力研究開発利用段階がどの程度にあるかということについて大体見当がついたような感じがいたします。大体日本中進国のカテゴリーに入れればいいではないか、こういうふうな結論をいたし、絶えず日本の問題を考える場合に、そういう国々、西独、イタリア、カナダ、ああいうところを標準として判断いたしております。特にイタリアを私は比較の対象として考えております。ただ、結論から申し上げれば、イタリア日本と比べて毎年約倍額の予算を投じておるということ、それからユーラトム及び欧州経済協力機構という地域的協力機構のメンバーであるという利点を持っております結果、日本よりも一、二年前進している。しかしながら、日本としては少なくともその程度ぐらいまでは独力をもってしてもいかなければならないのではないかという印象を持っております。  委員会委員といたしまして、兼重委員が申されましたように、各委員分担というものはございませんけれども、私が委員に任命されました経緯から見まして、私は主として法制国際協力の面について努力しなければならないかと思います。法制の面につきましては、法制整備すべき問題が随時起こってきておりますけれども、どの問題をとらえましても新しい分野の問題でございまして、十分の経験を一国だけで積んでおりませんので、勢い国際的に法制ないしは国際的基準というものは固まっていき、各国の知識経験を集積いたしまして、それに刺激されて国内の法制ないし各種の基準というようなものも整備されていく、外から締められて内が整っていくという傾向を帯びるものだと、こう考えております。でございますから、自然重点は次の国際協力が非常に重要だということになる、こう考えております。  国際協力の問題につきましては二国間の協力国際機関との協力地域的機関との協力後進国に対する援助というようなものがございますけれども、そのいずれをとりましても、大体協力がうまく友好的にいくためには、各員が大体同一程度発達段階に達しておるという場合、それからその努力方向が大体同一方向を向いておる場合に初めて友好な協力ができる、こういうふうな印象を受けております。日本といたしましては、それらの協力について今後ますます努力していくことが、はね返って日本原子力研究開発利用の促進となりますから、この点につきましては微力ながら努力をしていかなければならない、こう考えております。  ただ、最後に私の個人的の印象でございますけれども、それを申し上げさせていただきたいと思います。私は今日の原子力のある姿を、いつも、大きな石を五、六人の子供が上げようと努力しておる絵に比較しております。上げようとしている石が少し大き過ぎるので、石は浮くけれども、なかなか宙に上がらないというのが今日の姿ではないか。では、石を少し削ればいいじゃないかということと、上げようとする子供の力を強くすればいいじゃないかという二つのことが考えられます。石を削るのはまだ早い。お前たちの力が足りない、こう考えるのがわれわれの当然とるべき態度だと考えておりまして、微力ながら委員として全力を尽くしたいと思います。ただし、一言お断わり申し上げますが、今の絵の中に、私は子供を五、六人と申し上げましたけれども、その子供の中には委員長であられる大臣は入っておられないということだけをお断わり申し上げたいと思います。  一言ごあいさつ申し上げます。      ————◇—————
  6. 西村英一

    西村(英)委員長代理 これより科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、原子力行政一般に関する問題について、原子力燃料公社理事長高橋幸三郎君を参考人決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 西村英一

    西村(英)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  高橋参考人一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をわずらわしまして、まことにありがとうございました。よろしく本委員会調査に御協力のほどをお願いいたします。      ————◇—————
  8. 西村英一

    西村(英)委員長代理 それでは、原子行政一般に関する問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  9. 岡良一

    岡委員 私は、三十七年度にはぜひ結論を出していただかなければならない問題を原子力委員会はかかえておられると思いますので、それらの点を若干御所信をお尋ねしたいと思います。  ただ、その前に、これは委員長に御確認を願っておきたい点でございますが、先般の委員会でいろいろ質疑応答がございました。その中に一つ問題点は、原子力発電炉敷地の問題でございます。動力炉敷地の最終的な決定は別といたしましても、候補地をどこに選ぶか。こういうことはやはり原子力委員会としては、すでに、前期の十年には四つないし五つの炉を置こう、また後期の十年になれば六百万キロワットなり六百五十万キロワットですから相当な炉を置くことになるが、せめて前期四つなり五つの炉を置こうという計画を公表された以上は、やはりその適地についても、あるいはまたその候補地についても、原子力委員会として積極的にこれを求める努力があってもいいのではないか。先般の委員会のお話によれば、日本原子力発電株式会社としてはたびたび地元から強い要請があって、その上にもってきて、その地元側が提示する地域についてのボーリングはその県あるいは県の外郭団体である開発公社財政負担においてやるのだというようなことまでも持ち出されたので、懇望もだしがたく、こう言っておられたのです。懇望もだしがたくそこにきめたというような形で候補地選定が進められることは、妥当ではない。これはやはり原子力委員会として適当に予算を持ち、そしてすでに何基かの動力炉を置くという方針をきめられたら、その候補地選定に当たるという積極的な意欲があっていいのではないか、こういう意見が出たわけでございますが、委員長としては御所見はいかがでしょうか。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、長期計画では相当発電炉というものの建設が進んでくることになるわけでございますので、原子力委員会予算をこちらの方で査定をいたしまして、全国的な調査を、通産省をして図上の調査をするようにいたしておるわけでございます。だから、全体の原子力発電炉設置すべき候補地というものは、全国的視野においてこれを検討する。しかし、今回問題になっております第二発電炉のような、こういう具体的な敷地については、発電会社が常に十分な連絡をとっておるわけであります。現在どういう状態になっておるかということはわれわれ承知しておるのでございますから、そういう具体的なその過程においては連絡をとりつつ、しかも建前としては申請があった後にわれわが適否をきめる、こういう建前をとっていきたい。要約すれば、全国的な原子力発電炉設置調査はわれわれの方が通産省と提携してやりますが、具体的な候補地については常に連絡を保ちつつ、手続としては申請を待ってわれわれが適否を言う、こういう建前でやりたいと思っております。
  11. 岡良一

    岡委員 先般の原子力発電課長の話によれば、原子炉安全基準というような部会も設けられて、一応定性的な安全基準を作った。これに基づいて全国的に候補地を探した。このリストというものは、これは原子力局へきておるわけでございますか。そういう意味の事務的な有機的な連絡というものはあるのでございますか。
  12. 杠文吉

    杠政府委員 私の方の規制課というのが、もっぱら原子力発電等の炉の規制関係をやっておるわけでございます。そこに参っております。すなわち原子力局へは参っております。
  13. 岡良一

    岡委員 そういう書類が参っている場合に、それをどういうふうに取り扱われるわけですか。さらにそれを原子力委員会として検討するのか。そういうようなことはしないで、ただ書類としてうのみに受けとっておる、こういうことですか。
  14. 杠文吉

    杠政府委員 ただいまのところはまだ原子力局段階にとどめておりまして、やがて委員会の方へ資料十分整備をいたしましてからお出ししたい。御報告申し上げ、あるいは御審議等を願うということにいたしたいと思っております。
  15. 岡良一

    岡委員 いずれにしましても、やはりこの原子炉安全性については、原子力委員会は全的な責任を持っておるのであるから、そうなれば、その敷地の問題は重大な関心事でなければならぬし、責任のある事項とも思われるので、とりあえずまた資料として、その通産省原子力発電課の調べた適地なるものをぜひわれわれに御提示を願いたいと思います。  それから、その次の問題は、安全審査会の運営であります。具体的には、今度東海発電所炉心に若干の設計変更があり得るということでございます。そこで、そういう事態になったときに、その安全審査原子力委員会としてやるべきではないかと、こう申し上げて御所見をただしたのでございます。詳しいことは兼重さんもよく御存じだと思います。兼重さんは安全審査中心に受け持っておられるようでございますが、制御棒の数あるいは材質変更等があり得るわけでございますか。これは委員会としては安全審査にかけられる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  16. 兼重寛九郎

    兼重説明員 現在の審査過程におきまして、原子力委員会設置の許可をいたしましたあと設計変更その他のものがどの範囲までは設計認可段階に属するものであるか、あるいは基本までさかのぼってやるべきものであるかということは、はっきり線が引けるようになっておりません。それで、通産省審査と、それから原子力委員会審査の問の打ち合わせをやりながらそれを進めていっておる段階でございます。ただいまの審査をすでに原子力委員会の方の安全審査会にかけておるという段階にはまだ至っておりません。しかし、私はいずれそういうふうにすべきものであろうと考えておりますが、現在手続的にそれがそうなったという段階ではございません。
  17. 岡良一

    岡委員 非常にデリケートな問題ではございましょう。ただ、しかし、耐圧容器の鋼材の材質がよくなかったとかいうことから、別なメーカーからそれを調達する、あるいは黒鉛が英国製のものよりフランス製のものがよかったということならば、これは通産省段階でも私はいいと思う。しかし、炉心とか、しかも制御棒とか燃料というような炉の安全と不可分の重大な関係のある問題は、やはりちゃんと原子力委員会安全審査をされて、そして国民に安心を与えるように、ぜひ一つ今おっしゃった通りにおはかりを願いたいと思います。  それから、委員長にお尋ねをいたします。先般の安川社長の話によりますと、原発の方でもいよいよ燃料契約をしなければならないということで、数日前から始まっておるということでございます。原子力委員会としては、この燃料契約について何らかの御方針がおありでしょうか、お示しを願いたい。
  18. 杠文吉

    杠政府委員 前会も岡委員の御質問に私からお答え申し上げたのでございますが、今回も委員長の御指示によりまして私からお答え申し述べさせていただきたいと思います。  燃料契約の直接の当事者は、ただいま御指摘がございましたように、発電会社英国のAEAということになるわけでございます。しかしながら、これは日英間の協定もあることでございますので、政府はその両者の契約締結の中に加わって、協定面から見て不都合な契約が結ばれないようにするというようなことはいたす考えでございますし、従来ともヘッド・コントラクトというものを結んでおられるわけでございますが、そのヘッド・コントラクトにおきましても政府は十分に立ち入っております。従いまして、本契約も今年じゅうには結ばれる予定になっておりますので、その下準備と申しましょうか、そういう段階においても原子力局も入っております。だんだんこれを原子力委員会の方にも御連絡申しには、当然に原子力委員会の方の御指示を得て、先ほど申しましたような契約に不当なことが生じないようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  19. 岡良一

    岡委員 燃料引き取りの場合、燃料相手国の供給の条件あるいは使用済み燃料引き取りの具体的な方法、こういう問題は原子力計画全体に非常に大きな影響を及ぼすような問題をはらんでおるわけでございます。これは先々のことではございますが、そのつど私どもはやはり経過の御報告をいただいて、われわれとしての意見も申し上げたいと思いますから、抜かりなくお願いをいたしたいと思います。  それから、前の前の国会で、原子力損害賠償法の成立したときに、委員会として若干の附帯決議をいたしました。この附帯決議については当時の池田原子力委員長も、誠意をもって善処いたしますというお約束があったわけです。そこで、その後どのように取り扱われておるかということについて、原子力委員会議事録をぜひ御提出を願いたい、こう申し上げておりましたところが、審議状況についての中間報告をいただきました。私それを拝見をいたしたのでございます。今その審議状況がいいとか悪いとか、そんなことを申し上げたところで仕方がございませんが、この安全基準は大体いつ原子力委員会としては作られますか。タイムスケジュールですね。大体いつごろという見当だけをお示し願いたいと思います。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員承知のようもございますし、できるだけ早く結論を出すことが決議の趣旨にも沿うゆえんと考えまして、できるだけ促進したいと思っておりますが、今タイムスケジュールを出せということ、責任を持ってお出しするということは困難であると思います。できるだけ早くということで御了承を願いたいと思うわけであります。
  21. 岡良一

    岡委員 安全基準部会のいろいろな中間報告のような文書も実は私読ませていただいておるのですが、私はこの安全基準の取り扱いを見ておると、学者の専門的な討論に終始しておられるような感じがいたします。原子力委員会は何もそう学者討論会ではないのですから、政策をきめてもらう。だから、原子力施設周辺整備にいたしましても、おそらくはこの第二者補償にいたしましても、候補地決定にいたしましても、安全基準をはっきり出さなければ、これはものが進まないわけです。ところが、これだけが非常におくれておる。長官も御存じのように、政策決定するのですから、何もそう——原子力はなるほど日に日に発展をするから模様はいろいろ変わってくる。変ってくるから、それを見送りながら、どれにしようか、これにしようかというので、じんぜん日を送るということでは、近代科学と取っ組んで政策決定なんてできっこない。だから、国際放射線防護委員会でも、ああしてこの五年の間に二へんでも三べんでも最大許容量というものを変えておる。最近は最大許容量という概念はないというところまできている。これは君子は豹変すというものが学者討論十分参考にしながら、やはり機宜に適した適当な基準を出していくという政策的な意欲を持っていただきたい。一つそういう気がまえで、こういう問題はすべての前提になる問題でございますので、作業を進めていただきたいと思います。  それから、周辺地帯整備については、先般の御答弁によると、地元の発意を中心にということでございます。  それから、第二者補償従業員補償でございます。これは中間報告を拝見しますと、一番手おくれのような状態にございますが、一体原子力委員会としては従業員放射能災害補償を特別に立法される気持なのかどうか、そこをまずお伺いいたしたい。
  22. 西村熊雄

    西村説明員 御指摘になりました最後の問題は、二つに分けられると考えております。一つの問題は、現存の労災法で第二者に対する放射能からくる障害というものをどの程度完全にカバーできるか、ないしはカバーできない部分があるかという問題でございます。第二の問題は、あの附帯決議がつけられましたあのときの情勢から考えまして、第二者が現行法制のもとにおいて受けている災害補償よりも第三者災害補償の方が広くはないか。あとの方が無過失絶対責任立場をとっておりまするし、補償の額についても限定がございませんので、一見すればそういうふうな感じを持ちます。第三者災害補償の方が第二者災害補償よりも広くあるならば、この面からもまた公平待遇平等待遇の必要が出て参る。この二つの問題がございます。現在委員会主として第一の点、現在の労災法でカバーし切れるか、し切れないかの問題でございます。二回開催されました懇談会の結果は、疑問の点が数点検出されているわけでございます。従って、残されている問題は、この問題をカバーされるというようにはっきりするためには、どういうふうな措置をとるべきであるか、こういうことでございます。その点につきましては、懇談会出席して拝聴しておりまして、学者立場と、いわゆる行政当局立場とでは相当違いがあります。先生指摘のように、要望、決議に対しまして委員長誠意をもってこれを実行いたしますと言っておられます通り委員会としては、どうしても早く具体的結論を出しまして、必要であれば必要な措置をとることにしなければならない、こう考えております。さきに国会再開と同時に、先生方から、委員会がその点をどうしてくれるといういろいろ御不満をちょうだいいたしましたので、その経緯もございますが、委員会としても十分その責任を痛感いたしまして、貴意に沿うよう立案のことをいたしたいと思います。いましばらく時日をかしていただきたいと思います。
  23. 岡良一

    岡委員 労災をもって救い得ないと思われる数点の疑義が出たというのですが、具体的にどういう点がありましたか。
  24. 杠文吉

    杠政府委員 その点は、具体的な例でございますから、例を申し上げます。たとえば、労災におきましては慰謝料というような性質のものは出せない。慰謝料というのはどういうことかと申しますと、原子力災害特有のものであるかどうかということは、いろいろ目下審議中のところでございますけれども、表面的に病的現象として現われなくても、心理的に、放射線量相当浴びたから、たとえばからだがだるくなってきたとか、何をやるにも根気が続かないとかいうような現象があったといたしましたおりに、それが医学的によし証明できなくても、何らか償いをつけるべきではなかろうかというような性質のものが、ここでいう慰謝料という考え方でございますが、そういうようなものは労災では全然はずれております。それからまた、後発性障害でございます。これまた同じく、後発性障害というのが病理的な現象として相当はっきりしているものについては、もちろん労災相当にめんどうを見るというふうに最近では改正されて、手厚くなっておりますから、労災の方でも見れば見れるわけでございますけれども、御存じ通り労災一般病理現象としては後発性のものはない。やはり原子力特有病理現象である。従って、これも十分にカバーできるかどうかを解明していかなければならないというようなことがございます。ただいまのところは、具体例としてはこの二例ぐらいのところについていろいろ審議されているという状況でございますが、やはり人知の及ばざるところ、まだほかの例も審議対象としてあがってくるかもわかりません。しかし、目下のところはその二例ぐらいではなかろうかというところでございます。
  25. 岡良一

    岡委員 だから、そういう問題は、この委員会でしばしば私も申し上げておるように、労災では救えない。労災では一時補償というようなもので、最近の改正で一時補償を大幅に採用しておるのだけれども、症状固定というものが大事だ。放射能障害には症状固定がない。少なくとも症状固定と判断すべき医学的な理由というものは持ち得ない。もう一つ一番問題点は、それこそ杠君じゃないが、人知のいまだ及ばざるところ、これが放射能によってなったものであるかどうかという挙証ができない。少なくとも臨床的な症状だけではできない。ただ、その人がおられたその環境から判断するよりしようがない。そういう点は労災とは本質的に違った問題があるわけです。これは労災ではどうしたって救うわけにいかないのだから、そういう特例の補償措置を設けることは当然なことです。これは第三者補償を設ける。第三者補償をしなければならない事態は、第二者補償は当然必要なんです。ところが、第三者だけで、しかも第二者においては現行の労災でどうしても救えないものがあるのに、これを見送って、そして懇談会とやらを作って、人知の及ばざるところなどというような文学的表現で逃げてもらっちゃ困る。これは当然、もっとまじめに責任を持ってやってもらえば、できないことはない。ぜひ一つがんばって、やっていただきたいと思います。  それから、西村さんにお伺いをいたしたいと思います。主として国際協力の分野を西村委員が御担当になるというお話を伺いました。現在の日本原子力外交と申しますか、現在日本がアメリカやイギリスと結んでおる動力協定というものは、非常な矛盾をはらんでおると私は思います。どういう矛盾をはらんでおるかと申しますと、それらの国は、われわれの要望にもかかわらず、思い切って原爆の実験をやっておる。軍事利用をやっておる。しかも、彼らがわれわれに与えた協力において、平和利用ということに限定し、そのためにおそらくは主権国家としてのぎりぎりのシビアな査察をわれわれは受けておる。こういう矛盾のない事態にしなければならない。こういう矛盾を克服することによって、世界のほんとうの原子力平和利用国際協力が生まれてくるのだというのが、私どもの信念なんです。そういうことから、日英あるいは日米動力協定の場合でも、私どもは特にこの査察の問題については強く反対をいたしました。そのとき政府の方でも、御答弁では、国際原子力機関が査察を担当し得るようになれば、できるだけすみやかにこれに移しかえたい、こういう希望を、委員会でも本会議でも、明確に当時の藤山外務大臣は言っておられる。もちろん条約成文にもあるわけです。この査察については、特に昨年来IAEAの理事会でもいろいろ御努力願って、どうやらIAEAとしての査察方式というものが確定したかに聞いておるのでございます。その間の事情、内容を、まずお聞きしたいと思います。
  26. 西村熊雄

    西村説明員 岡委員のおっしゃるところは、まことにもっともなところでございまして、私どももそういう気持で考えております。御質問の二国間協定に基づく安全保障措置国際機関に移管する問題でございますが、移管するにはまず前提として、国際機関で安全保障措置基準を確定してもらわなければできない相談でございます。ところが、幸い昨年理事会におきまして、機関による安全保障措置規則が採択されましたので、移管の前提が完備いたしたわけでございます。それを待ちまして、政府は直ちに機関、それからカナダ、アメリカに対しまして、二国間の協定に基づく安全保障措置の機関への移管について交渉を開始したいという申し入れを正式にいたしまして、機関も同意し、カナダ政府もアメリカ政府も同意いたしまして、現在四者間でございますかに、正式に交渉を開始されております。でございますから、機関への移管については、機関、カナダ、アメリカ、日本関係四者の間に完全に意見が一致いたしまして、今はその移管協定をいかなる協定によって実現するかという、協定中心にして交渉中でございます。遠からず協定の妥結を見ることと思います。  ただ、私の説明の中にはイギリスを申し上げませんでしたが、イギリスとの関係につきましても同様の問題が起こりまするが、御承知通り日英協定によりまして、主として査察の対象となるべき燃料物質でございますが、いわゆる核燃料日本に引き渡されるという事態はまだ目前に迫っておりませんので、現在移管の必要を感じられませんので、政府方針としましては、日英協定によって査察の対象となるべき核物質の日本への引き渡しが間近になりましたころを見はからって、カナダ、アメリカ等の例に従いまして移管の協定を結ぶ、こういうことにしたい方針で対処いたしております。
  27. 岡良一

    岡委員 日本と双務協定を結んでおる国々との間に、IAEAも査察についての取りきめが採択になったから、ここれに移しかえるための努力を、相手国と交渉しておる、そして遠からずそれは実現するであろう、こういうお話でございます。まことに私どもも、その日が一日も早くきてほしいと念願しております。  この際、さらに委員長の御所信を承っておきたいのでございます。このIAEAは単に査察だけではなく、各国、いろいろな燃料物質、原料物質、情報その他を提供しておるわけです。委員長もIAEAの総会に行かれまして、IAEAの権威を高め、国際的な原子力の平和利用が普及をすることによって軍事利用を圧倒すべきだという趣旨の演説をしておる。わが国はIAEAの理事国である。その運営に責任を持っておる。この理事国である日本といたしましては、やはりIAEAの国際的権威を高めるためにはできるだ協力をする、努力をする義務があると私は思う。そういうわけで、その一環として、双務協定のうち保障についてはIAEAの保障を受けるという方向に移しかえる、これも大きな前進である。同時に、その他IAEAに他の先進諸国が提供した物質、情報、資料等も、やはり日本の今後の開発においてはできるだけIAEAから受け取るという方式において行くべきじゃないか、こう思うわけです。  そこでお尋ねしたいことは、端的に申し上げると、できるだけすみやかにIAEAの保障措置に移しかえるよう、原子力委員長としては御努力願いたい。今後日本原子力平和利用の開発推進の場合、IAEAを通じてもろもろの物質なり資料なり、情報の獲得をやるという形で、理事国たる日本がIAEAの権威を高めるために一段の協力をしていただけるかどうか。この二点について委員長の御所信を承りたい。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 お話のように、日本は平和利用ということに徹していこうという決意であります。国際原子力機関と緊密な連絡をとるということは、お話の通り必要なことだと考えます。保障措置についても、西村原子力委員からお話し申し上げましたごとく、現在国際原子力機関と関係国との間に、一日もすみやかに保障措置に関する協定を締結したいということで努力しておりますから、遠からず協定が成立するものと考えております。これは促進をいたしたいと思います。  また、情報その他は、現在においても国際原子力機関から緊密な連絡のもとに受けております。そういう点においても、今後国際原子力機関の果たすべき役割というものは非常に多いものがあると考えております。
  29. 岡良一

    岡委員 ぜひ一つ国際原子力機関の協力を得つつ、日本国際協力を進めていただきたいと思います。  次の問題は、実は原子力産業の現状でございます。新聞紙やあるいは若干の資料によりますと、日本原子力産業がだいぶ青息吐息の状態のようでございますが、この実態は原子力委員会としてはどういうふうに把握しておられますか。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 数十億の赤字が出ておると言われております。具体的には原子力委員からお話をした方がいいと思いますが、私はこういうふうに考えておるわけです。このような新しい産業を開発しようという場合には、相当長期間研究のために犠牲を払わなければならぬものである。将来日本は必ず原子力時代が来る。相当企業としても大きな未来を持っておるのでありますから、われわれとしても、できる限りのことは政府協力すべきでありますが、民間企業として原子力発電をやりたいという基本方針を変えて、国営的なものにせなければならぬほどの事態だとは考えていない。民間企業として育成したいという基本に立ちながら、政府としてできるだけのこれに対する協力をいたしていきたい。こういう産業を開発すれば、その初期においては相当な犠牲もやむを得ない、それはまた将来において大きく生きてくるときがくるのだ、大きくはこう考えておるわけでございます。
  31. 岡良一

    岡委員 このイエロー・ブックを見ると、大体三十五年度までの五カ年間における原子力産業の支出の総計は二百五十八億になっておる。ところが、売上高は、ときに四十四億であり、ときに二十一億であり、いわば非常にでこぼこである。しかも、支出の内訳を見ると、研究的な支出がだんだん減ってきて、維持その他の経費に追われておるというのが数字で、はっきり出ておる。今、長官のお話を承ると、これは初期の産業においては当然なことだというふうなお話もございました。しかし問題は、一体何でこういう赤字を生むようなことになったのか。少なくとも原子力委員会としては、原子力産業についても行政指導をすべき大きな責任があると思う。何で一体こんな赤字の累積に悩まねばならないことになったのか。原子力委員会としてはどう思われますか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろな理由があると思いますが、やはり何と言っても大きいことは、日本が手なれない新しい産業を開発しようとするのでありますから、なかなか予定通りにいかない点もある。ことに、当初は研究費に相当使われている。しかも、相当原子力産業に関連する企業体も多いわけであります。そういう点で、競争による長所もあるけれども、むだも出てきておる面もあるわけでしょう。一口にこうだとは言い得ませんが、とにかくまだ研究開発という初期におけるいろいろな不合理、不便、あるいはまた出費、こういうものの累積であるというふうに考えるわけでございます。
  33. 岡良一

    岡委員 私は、党という立場から、原子力産業を公共管理のもとに置け、国有でやれというような主張をいたしましたが、この現実の事態に対して今そういう機械的な形式主義を振り回そうとは思わない。ただ、問題は、日本原子力の平和利用を進めていくということになると、やはり学界の協力、健全な産業界の協力、この二本のレールの上に乗っけていかなければならない。原子力委員会はいわばこの二頭立ての馬車の手綱を締めてこうした誤りがないようにしていくということで、少なくとも現状においては日本原子力というものの開発は進められる。ところが、産業界の方は、こういうような数字の大へんな赤字を出して青息吐息ということになると、一頭の馬は疲労こんぱいというようなことにでもなってしまえば、スピードもおくれるだろうし、方向もゆがめられるだろうということになる。一体なぜこういうことになったのかという反省を、やはり原子力委員としては真剣にしてもらいたい。その理由のほとんどを、ただ原子力産業会社の責めに帰すということでは、立て直すためにどうしたらいいかという原子力委員会の再建方策は出てこないと思う。  私は率直にお尋ねをいたしますが、むしろここまで経済的な危機に追い込んだ大きな責任原子力委員会にある。どこにあるかと申しますと、三、四年前は、昭和五十年までに七百万キロワットの原子力発電をやると言って、あのブームです。その前の委員長も、原子力発電、原子力発電といって太鼓をたたいて、その結果として七百五十万キロワットを五十五年までにやるということで、国際会議にまで行って日本政府方針としてそれを吹いた。こういうように原子力委員会自身が、今にも原子力発電がやれるのだ、七百五十万キロやる。そうすれば民間産業にすれば、一基三十万キロワットの発電容量としても二十五基がやれる。一基三百億としても百二十億は国内に流れるというようなことから、わっと原子力発電ブームというものが起こって、原子力発電株式会社というものを作らせた。ここに大きな責任があると思いますが、どうでしょう。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 こういう新しい原子力などに取り組む場合に、それだけの情熱は必要だと思います。情熱がなければなかなかこういう新規なものに取り組むことはできないが、しかし単に原子力に限らず、何かブームとして問題を取り扱う日本の政治の現状に対して私は不満を持っている。岡委員感じは同じであります。長続きがしない。一時のブームであおり立てる日本の政治の現状に対しては、やはり不満を私は岡委員と同じに持っております。従って、原子力開発長期計画が今誤っておるとは思わない。こういうものは、何か一歩々々というよりも、原子力発電に対するコストがほかの新鋭火力発電などに比べて非常に有利になるというようなことになれば、飛躍して原子力発電がなされる時期がくる。ちょうどプロペラからジェット・エンジンにかわったような過程を新規の産業はとるものだと思います。従って、この計画自体は非常にずさんなものであるとは今申されませんが、とにかくブームとして何か数字以上の雰囲気を作り上げるということは、日本の政治として反省しなければならぬ。原子力に限らずそう考えておるわけであります。
  35. 岡良一

    岡委員 それは原子力委員長、道義的なお答えではございましょうが、私は、原子力発電計画がよかったか悪かったかなどというようなことを、いまさら申し上げようとは思わない。しかし、現実には、とにかく十五年の間に七百五十万キロワットの発電をやりますと世界じゅうに吹いて歩いた。その当時、そういう危険なことを言いなさるなということを、私どもは何度ここで言うたかわからぬ。しかし、そのことは今私は言いません。ところが、幸か不幸か、今度は十年の問に百万キロワットということでスロー・ダウンした。七百五十万キロワットといえば、民間産業はどんどんその方向に向かって投資もするでしょうし、設備も拡張するでしょうし、やるでしょう。ところが、今度は百万キロワットという形できた。問題は、七百五十万キロワットが是か非かということではなくて、七百五十万キロワットから百万キロワットに下がったという、こういう計画の練り直しをやるとなれば、原子力委員会としてやはり重大な責任があると私は思う。この責任は、ただブームはよくない、ただし正しい意欲ならいいという、そういう道義的なお説教では済まぬし、救われないと思う。どうしたらいいという具体的な案をお持ちかどうかということなんです。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 これは最近、産業会議からも、いろいろ現状に対する報告がなされておるし、原子力委員会としても原子力の平和利用、そのためには原子力産業というものの健全な発達が伴うことが必要でありますから、この問題と真剣に原子力委員会としても取り組んで、今後原子力産業の現状というものをどう分析し、これをどう育成していくかということについては、真剣な課題として取り組みたいと私考えております。今ここでいろいろ分析を申し上げるだけの検討もまだ、正直に申して足りない。これはやはり真剣な課題として検討をいたしたいと考えております。
  37. 岡良一

    岡委員 委員長御存じだと思いますが、英国原子力産業界は非常に聡明だと私は思う。コールダーホール改良型についてどうもいろいろと難点が出てきた。これではそう外国も買ってくれないかもしれない。国内の発電計画もスロー・ダウンしたということから、五つあったのをいち早く三つにしぼってきた。三つ四つ受け持つなら産業としての収支の安定が期される、というふうにやってきておる。日本では、まだあらゆる技術をほとんど外国から持ってこなければならぬ、原料も外国から持ってこなければならぬというのに、看板だけは五つある。この一つ一つの内容を見ると、とにかくセメント会社があって、銀行があって、熱交換器を作る電機メーカーから、ずっといわゆるシンジケートをなしている。そのバックには三井とか三菱とか住友とか、古い財閥がある。こういう姿をこのままにしておいたのでは、原子力産業における過当競争というものは、絶望的な過当競争というものをもたらしてくる。英国のように業界が賢明に切りかえができないというならば、原子力委員会として、この英国の例に学べというので、強く産業界における原子力産業界というものの再編成、そこまでいっていいのじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 現在は研究開発段階であって、そしてたくさんのグループがあって、お互いに研究を競うという意義はあります。いよいよ本格的に工業化の段階になってくると、原子力産業が非常に細分化されていく傾向は私は好ましくないと思います。やはり業界自体としても、今まではブーム的なものがあったわけですが、今後工業化されていく場合においては、業界自体も反省しなければならぬけれども、政府としても将来の原子力産業のあり方というものに対しては、十分な検討とそれに対する行政指導と申しますか、そこまでは強過ぎるかもしれぬが、とにかく政府としても原子力産業界の将来を考えて、今後どのように持っていくかということに対しては一つの見識を持たなければならぬというふうに考えております。
  39. 岡良一

    岡委員 とにかくこれは、何も原子力産業だけではなく、日本のすべての産業も、やはり石油業法を必要とするような事態がきておるわけです。そこで、産業といったところで、まだこれからの産業である原子力産業について、ただ自由経済なるがために業者の自主調整というようなことでは、やれるものではない。相当シビアというか、行政指導をもってやらなければ、業界自体が私は崩壊すると思う。また、まかり間違うと、業界の利益採算から原子力政策がゆがめられる危険もあるわけです。こういう点を十分考慮されて、公正にこの建て直しのためのプログラムを作っていただいて、一つ強く推進をしてもらいたいと思う。  この機会に局長にお尋ねをいたします。この燃料精製錬、成型加工、あるいは原子炉について外国技術の導入をしておる相手の会社、日本の会社、その契約内容、わかっていたら聞かせてもらいたい。
  40. 杠文吉

    杠政府委員 ただいま手元に資料不足でございますので、後日資料をもって差し上げたいと思います。
  41. 岡良一

    岡委員 それでは僕のところにある、これは古いものなんだが、これでいいんでしょうかな。原料は、燃料については住友がデグッサ、古河がカタリーチック社、三菱がどこか、これは思い出していただけると思う。燃料公社は、これは高橋さんは御存じだと思う。燃料について日本の民間会社がほかの会社と技術提携をやっている会社名、できたら条件もお聞きすればなおいいし、どことどこの会社がやっているのですか。
  42. 高橋幸三郎

    高橋参考人 民間会社の方で直接やったことは私よく存じませんが、公社としましては、過去においてエキサーと、今精製工程の導入にウェンリッチ・コンサルタント、これはもうすでに工場も完成しまして成績も上がっております。それから昨年度プルトニウムの研究を目的とした情報の供与を外国とやった例が現在進みつつありますが、それはインターニュークレア会社でやっております。この会社はかねて原研の方でも水均質炉の問題のときに関係のあった会社で、ニュートラルな性格の会社で、技術の内容も非常に優秀だということでございます。それと提携しようとして今話を進めつつあります。それから、もしできれば、明年度三十七年度になると思いますが、さらにニューメックという、これはプルトニウムの研究施設の設計を、小さなものですけれども、新しい一つ計画としてそういう考えを持っております。現在私の方の公社としては、この三件が問題になっております。
  43. 岡良一

    岡委員 局の方で、今の燃料精製錬、成型加工についての民間会社と外国会社との技術提携の現状は…。
  44. 井上啓次郎

    ○井上説明員 ただいまの御質問のこまかい資料はございませんが、あとで御提出いたします。  簡単に、精錬関係におきましては、原子燃料公社がウェンリッチから——これはオークリッジで開発した精錬方式でございますが、これを乙種導入しております。それから同じ精錬方式で、これは西ドイツのデグッサという会社でございますが、住友金属鉱山が乙種導入しております。また、精錬方式の技術導入といたしましてカタリーチック、これはアメリカのコンサルタント会社ですが、カタリーチックから古河電工が導入しております。  なお、加工につきましては、天然ウラン系のものにつきまして三菱原子力がデグッサからガンマー押し出し法というものについて導入をいたしております。これも乙種導入であります。それから、カナダから、これは国産一号炉JRR−3の燃料加工という観点から、乙種の技術導入しております。もう一件、住友電工がアメリカのシルバニア社というところから板状燃料の加工の乙種導入をしております。  今申し上げたのはみな乙種技術導入でありまして、これは情報の提供ということでロイアリティは入っておりません。従いまして、ロイアリティを含んだ甲種の技術導入は、現在のところは三菱原子力がアメリカのPWRの技術提携という中に一部入っているわけです。  それだけで、現在の段階といたしましては、研究開発段階ということに関しまして技術導入をしている状態でございます。
  45. 岡良一

    岡委員 原子炉については、今PWRは三菱原子力とおっしゃいましたが、他にありませんか。
  46. 井上啓次郎

    ○井上説明員 現在のところございません。
  47. 岡良一

    岡委員 実は昨日斎藤君の御主張に対して大臣も非常に同感の意を表されました。その一つは、外国の技術を導入することに取りまぎれて日本の国産技術の培養をおろそかにしてはいけない、もしこのままの状態でいくならば、日本は幾ら経済成長を誇ってみても、技術的な国際水準としてはこれはもうなかなか大へんなことだ、これが科学技術行政上の大きな問題点だろう、と卒直におっしゃいました。  今、燃料についてお聞きすると、燃料公社はさておきまして、民間の会社が四つ五つ乙種ではあるが技術導入でやっておる。ところが、それでは燃料についての見通しは一体あるのか。このイエロー・ブックを見ると、大体民間産業の燃料に対する投資は十七億ほどです。ところが、今度は外国の技術を導入し、さらにそのための工場を作ることになれば、さらにさらにそれを投資することになりましょう。では一体、この東海村を初め所在の原子炉が、どの程度の金額の燃料を今後期待できるのだろうかというそろばんが私はよくわからない。これはやはり、原子力局あたりでそろばんをはじいておられると思うのですが、どういうことなんですか。
  48. 井上啓次郎

    ○井上説明員 燃料の需要という問題は、原子炉に関連しまして起こるわけでございまして、研究用の原子炉及び動力用というように分けられるわけです。現在のところ、研究用の場合は濃縮ウランがおもでありして、アメリカから輸入しているわけでございます。しかしてその加工ということにつきましては、従来はアメリカでお願いしておったわけでございますけれども、だんだん研究、開発が進みまして、日本でも、六弗化ウランから二酸化ウランを作るというところはできませんけれども、それ以降の加工は日本でもできるようになったことは、研究成果のためだろうと考えております。  なお、天然ウランにつきましては、ただいま申し上げましたJRR−3の燃料とも第一次装荷はカナダで加工したわけでございますが、二次装荷燃料以下は日本の国内でやろうということで準備を進めているわけでございます。動力用の燃料は大量になりまして、企業的な面から考えられるわけでございますけれども、現在天然ウランにつきましては、東海村の日本原子力発電株式会社のもの一基だけでございます。しかも、これは英国から輸入するということになっておりますので、需要はございません。従いまして、天然ウラン系の需要というものは、現在のところ研究関係だけに限られておるわけで、企業的な意味の規模で考える段階ではないと思います。
  49. 岡良一

    岡委員 濃縮ウランの場合でも、現在のところは大した量でもないと私は思う。だから、一つの企業体として濃縮ウランを受け取って成型加工するということになれば、何と言いましょうか、何かはみ出したものでも当て込むような形のてんでんの運用になるのだと思う。  そういうことは別としまして、ここで委員長一つお考えを願いたい。まだそういう先行きが何にも確たる見通しがない。ところが、日本の民間産業があちらからの技術援助を、乙種だからようございますが、得ておる。得て、さておれがおれがといって名乗りを上げてくるというと、これは産業界も墓穴を掘るようなことになる。だから私は、こういう新しい産業であるだけに、原子燃料の精製錬、成型加工を一括したそういう機構を作る。これは原子燃料公社なら原子燃料公社中心に作る。民間産業も参加する。そういうアイデアも、いつかあったということも私、新聞で読んだような記憶もあります。何かそういうことを、きのう委員長の言われた横割り、縦割というような言い方ですれば、燃料の横割り、こういう一つ開発機構を作る。そういう形でこれをやっていき、燃料問題の解決をやっていくべきではないかと私は思うのです。これはすぐここでそれが是か非かという御答弁をいただこうとは私は思いませんが、やはり踏み切っていただかなければならぬと思いますので、ぜひ一つ善処願いたいと思います。  それから、新聞紙などを拝見しますと、いよいよ英国へ——アメリカでは使用済みの燃料は引き取らないが、英国へ持っていく。これは大へんなことだ。使用済み燃料を持っていくというようなことは、とてもできそうもない。そうなれば使用済みの燃料というものは、やはり日本で再処理しなければならぬという条件が出てきたと私は思う。長期計画を拝見すると、プルトニウムの研究はやはり重点的にするプロジェクトだということがうたってあるわけです。だがしかし、内容について具体的にどうすべきかというところまでは出ていないが、これはしかし、日本原子力政策では大きな中心課題になってきたと私は思う。この点どう対処されるのか、一応見通しを承っておきたい。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 お説のように、使用済み燃料の再処理ということは重大な課題になってくるわけです。ことに再処理から生ずるプルトニウムの研究、これは大事で、昨年の暮れでありましたか、フォーラムなんかでアメリカが熱中性子炉にプルトニウムを使って成功しつつあるという見通しもございますし、イギリスなどでは高速中性子炉にプルトニウムを使って研究をやっておる。こういうことで、私はやはりプルトニウムの専門部会のようなものを作って、そうして日本も、従来原研、燃料公社などはやっておるのですから、もう少しこれに力を入れて、日本もこの問題と取り組むべき必要がある、こういうふうに考えておるわけです。
  51. 岡良一

    岡委員 プルトニウムの処理については、燃料公社もいろいろと御努力のように先ほどもお話がありましたが、なおこの機会にもう一度お聞かせを願いたい。
  52. 高橋幸三郎

    高橋参考人 ただいま長官のお話もありました通り、プルトニウムについては最近情勢が非常に変化して参りました。従来は、プルトニウムの利用は高速中性子炉が本命で、熱中性子炉に対してはまだ考える段階にはなかったような空気が一応ありまして、従って、熱中性子炉のプルトニウムの利用の問題はきわめて新しい事態でございます。昨年のフォーラムでわれわれが初めてアメリカ側からその話を直接承りまして非常に参考になったわけでございます。ところが、御承知通り、プルトニウムは私どもは実物を持っておりませんので、これを研究しようにも実物で研究することは今のところできない状態でございます。そこで、一応おくればせながら、昨年あたりからわれわれは機会あるごとに人を出し、また情報を得て、プルトニウムの研究は書いたもので勉強して参ったのでありまするが、いよいよアメリカ側の方の意向も昨年のフォーラムによって、従来のような、プルトニウムは原爆の材料であるから秘密主義で発表しないというようなことは、だいぶんやわらいできたことがはっきりわかりまして、向こう側も、日本が来るなら教えてやるぞというような意思表示がありました。それで、われわれは関係方面といろいろ打ち合わせせて、早く教わることを一つ考えている。しかし、教わるについても、こっちが全然基本の知識がなければ、向こうへ行って実物にぶつかって、たとえばハンフォードのPRTRというところで熱中性子炉でプルトニウムは現実に大規模に試験している。現に動いておるわけです。そこなどを見せてやるということも言っておられました。こちらの方は、あまりにまだ幼稚かもしれませんが、まず第一に勉強をしなければいかぬということで、主としてアメリカが熱中性子炉に対する研究は進んでおりますので、そのアメリカの情報をまずキャッチするのがとりあえずやるべきことだという考え方から、先ほど申し上げました通り、インターニュークレア会社にその情報の提供を主とした技術導入といいますか、これは大した金額じゃありませんが、それを今交渉しつつありまして、大体外資委員会の方にも書類が回っております。許可があり次第実行に移したいと思っております。それが一応勉強の材料にはなりますけれども、さて、実際自分が取り扱うためには、それをやる研究者と研究施設を持っていなければできません。施設といいましても、御承知通り、プルトニウムは非常に毒性が激しいし、また臨界性の問題もありまして、そう簡単にすぐ自分でやるということはできませんから、その施設について、まず一応アメリカで実際やっておる最も信頼の置ける会社と提携して、その情報をキャッチするのがまず先決なんだ。その上で向こうのそういう技術情報を基礎にして、その設計をもとにしたものを早く日本に作って、そうして日本人が自分の手で研究を始めるのが一番望ましい。そういう考え方で、三十七年度の予算に計上してあります。金額にしまして、ちょっと張っておりますけれど、五千万円ばかりの金額が載っております。設計を向こうから買うわけですから、情報とは少し違いますが、これがもし国会の承認を得まして実行になれば、今度われわれの方からも人も出しましょうし、向こうからも来、いろいろ施設について指導を受けることができると思います。そうなれば、このプルトニウムの研究はだいぶん前進すると私は信じております。現在の段階では、プルトニウムに関しては大体そういう情勢でございます。
  53. 岡良一

    岡委員 三木委員長のお考えでは、高速中性子炉の実験、実用化のためにはプルトニウムが必要でもあろう。それから、高橋理事長のお考えでは、その前段階としての熱中性子炉にプルトニウムが使い得るのではなかろうかというのでこの点の研究を進めておる。私の方もそういう学問的なことは一向に存じませんが、ただプルトニウムも三千メガワット・デーパー・トンというふうなことでは、やはり使用済み燃料にも原爆には不適当なプルトニウム二四〇などがあるので、これはあまりほしくないというのが相手国の本音でもあるし、しかし、一方プルトニウム二四〇も、これまでは中性子を吸収するバーナブル・ポイズンであったものが、むしろこれが中性子を吸収して二四一になれば、またフィッション・プロダクトとして使用するんだ。そういうことから熱中性子炉という方向にハンフォードなりアルゴンヌで研究して、相当の金をつぎ込んでやっておる。これもどの程度まできておるものか、私どもよく知らないが、ぜひこれも原子力委員会として燃料公社と力を合わせて、現地の経験を十分察知して、単に高速中性子炉のためのプルトニウムといっても、まだその間時間的な問題もあるので、そういう有意義な中間的な研究のテーマがあれば、十分これも御調査の上で、これらの成果の上にさらにこのプルトニウムの研究日本のものとして樹立し、活用の分野を見出すようにお願いしたい。  それはそうといたしまして、ただプルトニウムの再処理をやる、日本でプルトニウムを製造するということは、私は非常に重大な決定だと思うのです。第一に、原子力発電株式会社は、年々出てくる五十七トンか八トンの使用済み燃料を向こうへ持っていくことがとてもできぬ。お手あげだ。ところが、原電とすれば、発電コストの中にはプルトニウム・クレジットを見込んでおる。二十銭から三十銭の間に見込んでおる。だから、これを助けてやるという考え方があると思うのです。これはプルトニウム・クレジットはゼロになる。ただ、日本がこのプルトニウムをよりよき研究のマテリアルとして持ち得るという、こういう計画の中でこれがあらためて評価されなければならぬ。この点はあくまでも、原電の窮境打開のためにプルトニウム・タレジットの肩がわりをしてやろうということであってはならぬと思います。この点はもちろんだと思いますが、一応原子力委員長の御所見を承りたい。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 その通りだと思います。そういう単なる肩がわりというようなものであってはならぬと考えております。
  55. 岡良一

    岡委員 その次には、何といいましても、やはりいよいよ日本としてもプルトニウム製造に踏み切ったということになりますと、国内外からあるいは不測の誤解を招くかもしれない。先ほどのお話では、原子力委員会に何か専部門会のようなものでも設けて検討するということでございました。こういう原子力政策の上の重大な政治的決定なんでありますから、少なくとも政治的影響のある決定でございますから、こういう決定は単に原子力委員会だけのレベルにとどめないで、やはり閣議決定とする、政府決定とする。そしてそれは軍事利用にはしないのだ、かくかくしかじかの理由において日本は平和利用のために踏み切ったのだということを、取り扱いとして事前にはっきり明らかにしてもらわなければならない。私はそう思うのですが、そこを伺っておきたい。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力基本法などもありまして、これは日本原子力基本法というのは世界に行きわたっておるわけであります。われわれも国際会議などにおいては必ず前言葉に言うわけであります。これは世界が承知いたしておるのであります。従って、日本がプルトニウムの研究をしたことによって誤解を生ずることはなとは思いますが、できるだけ日本の意図を誤らしめないだけの措置はとる必要があると考えます。
  57. 岡良一

    岡委員 最後に、問題は、こうしていよいよ使用済み燃料日本で処理しなければならないという立場になって参りますと、原子力の昨年二月の開発の長期計画にも具体的な若干の変更が必要になると私は思います。それで、先般私「原子力海外事情」という小冊子をいただいて読んでおりましたが、ヒントン卿が、英国における原子力発電のコストが思った通りにいかぬ、外国にもっと安いものができたから、やはり経済性の見地から、これを引き取ったっていいではないか。そうなってくると、もうとにかく結論として、英国原子力研究開発計画も平和利用の面では根本的に立て直すこともやぶさかではない、こういう思い切った表現をしておるわけです。私は原子力長期計画もあるにしろ、未知の分野が非常に多い。また、予期しない条件が出て参りますので、そういう場合には、やはり思い切って変更をしながら、しかも将来をあやまたないように進めていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 西村英一

    西村(英)委員長代理 斎藤憲三君。
  59. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 三月八日の本委員会で、安倍委員岡委員質疑応答によっての結論が明確に得られませんでしたので、候補地問題、射爆場問題、アイソトープ・センターの問題、原子力アジア会議の問題、燃料問題、こういうものに対して当局の統一見解を御発表願いたいということを申し上げておったのですが、きょうは長官お忙しいようでありますから、この統一見解を承りまするのは後日に譲って、一つゆっくり承りたい、こう思うのであります。  ただ、先ほど候補地選定の問題について、岡委員からの御質問に対しての御答弁があったのであります。私ちょっと頭が悪いので、了解しがたかったのでありまして、大へん失礼ですが、もう一ぺん御答弁をお願いいたしておきたいと思います。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員にお答え申しました要旨は、日本の全国的な規模ににおいて原子力発電の候補地というものは立地的に、原子力委員会通産省予算をつけて、そうしてこれを検討をする。しかし、今度の第二号炉の場合には、具体的な候補地発電会社候補地選定して、むろんその間連絡は十分とるわけですが、その申請を待ってその適否を検討する、こういうことにしたい。
  61. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 そうすると、私の従来考えておった見当見当がだいぶ違うですね。というのは、原子力委員会予算通産省につけて、通産省候補地を全国的に調べるということにも私は疑義がある。通産省というのは、そういう能力があるかないかということです。原子力局でもそういう能力があるかないかとわれわれは危ぶんでいるのに、通産省原子力発電所の候補地調査する。原子力発電課というのは公益事業局の一課ですから、私はまことに微々たる能力しかないと思う。そうでないのじゃないか。原子力委員会政策決定する。その政策の中には、十カ年間に百万キロワットの発電をやるという政策決定した。そうすると、この政策決定の実行は行政庁である原子力局に移って、原子力局が全国的に候補地選定していく。しかし、公益事業局に原子力発電課というのがあるから、これにも補助的にやらせる。従来の発電という観点からやらせる。しかし、あくまでも主たるイニシアチブは行政的には原子力局が持つ。それから、政策的には原子力委員会が持つ。そういう候補地の中から、今度は原子力発電株式会社がその他の立地条件として、じゃここがいいとか、あそこがいいとかいうふうに選んでいく。そういう段階でこの原子力発電候補地というものは推進されるものだ、こう思っておったのですが、今のお話だとだいぶ私の考え方と違うのです。これはここでは論議を重ねませんが、そういうところに統一見解をはっきり出していただきたいと、こう私はお願いをしたわけなのです。先ほど原子力委員会の再任の方のごあいさつもございましたが、せっかく今度またお勤め願うわけでございますので、そういう点に強力な線を出していただかないと、いつでも問題はもやもやしてしまう。とにかく責任が大きくなってくると、どうもこれは原子力委員会の問題じゃないとか、そういうふうになっちゃ困るのです。とにかく、原子力委員会というものは政策決定する。政策という字は、上は国政から、下は町村の問題に対しても、一切政策というものはあるわけであります。特に原子力平和利用に関しての政策ということは、これはよほど強力な線を出していただかないと、先ほど岡委員のお話がございました通り、民間も戸惑って、そして原子力一切の事業というものがスロー・ダウンの形になっていくわけです。線が弱い。線が弱いということは、従来大局に立った政策という線に力を出してないで、小さな事務的なことばかり。事務的なことだとあまり責任がないわけです。ですから、われわれから見るとそういうふうに見える。そういうことをわれわれは原子力委員会に要求しておるのじゃないのです。大きな、世界的に推進していく日本原子力政策というものをはっきり打ち出してもらいたいということが、原子力委員会に対しての要望であって、企画、審議決定権というものは付与されておるわけであります。今度またお勤めを願うのでございますから、そういう線を一つ責任を持ってどんどんお出しを願いたい。これはお願いでございます。  ついでに一つ原子力委員の方々と原子力委員長にお尋ねいたしたいのでございます。これは従来からの問題ででございますので、原子力委員の方を今のように私が一生県命になってプッシュしても、この間の原子力局長の御答弁の中には、私は原子力行政を担当する責任の地位にあると同時に原子力委員会の事務長であります、こういう答弁が速記録に載っておるのです。あげ足をとるのじゃありませんけれども、現実の姿がそうだ。そして、原子力局原子力委員会の所掌事務は同じことが書いてある。ただ、原子力局の方には政策という字がない。同じことをやれるのです。ところが、同じことをやれる権限を原子力局長は放棄して、原子力委員会の事務長になっておるのです。そこに、長所かもしれませんけれども、非常に大きな欠点が生まれてきておると私は思うのです。ですから、結局原子力委員会に持っていく問題は、行政事務を持っていくのです。事務長は原子力委員会に問題を持っていくのです。原子力委員会には手足がないから、つい原子力局から持ってきたところの事務的な小さな問題を抱きかかえて、そして重箱のすみをようじでほじくり始める。これをやり始めたら、毎日原子力委員会を開いても大局の政策というものはなかなか打ち出しにくくなってくるのじゃないか。ですから、私は長官にお願いしたいのは、委員長としてお考えになって、原子力委員会に事務局をつけてしまう。そして、事務局と原子力局とにしょっちゅう問題に対して論争をさせる。それを委員長が長官として見ておって、ピックアップすべきものは、ピックアップする。そして原子力委員会原子力委員会の総意として、大きな問題を事務局に検討を命ずる。私はこれは原子力委員会の方々に伺ったことがないのですけれども、原子力局長は事務長だと言っておるけれども、やはり官制におけるところの原子力局長ですから、原子力委員の方々も電話一本で、おい、ちょっと来いということはやれないだろうと思う。つい遠慮がちになってしまうと、原子力委員の方には手足が一つもない。そういう原子力委員会の活動において、組織の上において大きな欠点があるのじゃないか。これはしばしばこの委員会において論議されたところでございますが、こういう点に対して、御就任以来長官として、委員長として何かお考えになったことがございますか、どうですか。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 新しく原子力委員が再任された第一回の会合に——私も齋藤委員と同じような、原子力委員会の運営について改める必要があるという感じを持っておるものであります。従って、その決定といいますか、大所高所から見た日本原子力開発というもの、その問題を原子力委員会で主として取り扱って、事務的な問題は取り扱わないようにしたい。事務的な問題でも議題にする必要があるものは別として、何んでもかんでも原子力委員会に持ち込んで、非常に部厚な印刷物ができて、それに非常な長時間を要するということは原子力委員のあり方とは違う。基本的な政策というものと取り組めるような運営をしたいということを、第一回の会合に私は申したのでございます。そこで、こういう形で運営をしていきたい。きょうも岡委員から指摘された原子力産業の育成というようなものも取り組まなければならない大問題、あるいは使用済み燃料の再処理の問題とか、これにはやはり一つ政策方向がきまらないと事務的にも処理できないものですから、そういう基本的な問題と取り組んで、事務的な問題は原子力局で処理したらよいわけであります。こういうことで運営をして、改めたい、こういうことを申したのでございます。従って、この一つ方針で今後原子力委員会を運営していって、どうしてもそれでは工合が悪いということならば、事務局のごときも考えてみたいと思う。まあ現在のところは、そういう運営の方式を改めることによって、齋藤委員の御指摘のような弊害を是正していきたいという私は考えでございます。
  63. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 今の問題ですが、原子力委員は常任委員でございますからそういうことはないと思うのですが、私は科学的技術庁の顧問をやっておりまして、顧問会議というものが開かれる。膨大な印刷物が配布される。そしてそれの説明をすると、もうおしまいです。そういうくせというものはよく官庁にはあるわけです。そういう手を原子力委員がときどき食っているのじゃないか。膨大な印刷物を配られて、説明を聞いていると、その日はオーケーです。それで、ひまをつぶして、肝心な問題に大きな線が出てこないのじゃないか。ですから、そういうたくさんの問題を処理する事務局というものがあって、エキスだけを原子力委員会に提案して、それについて簡単にイエス、ノーをきめる。そういうふうにしていただきたい。長官、お忙しければ……。  きょうは参考人に高橋原燃理事長においでを願ったのでありますが、大体は岡委員の御質問で私の御質問申し上げることがなくなったわけでございます。ただ、先ほど来の岡委員との質疑応答の中で感じましたことは、原子燃料公社というものの職務の中で一番大きなものを数え上げてみますと、ウランの探鉱、採掘、製錬というものもございますけれども、われわれが原子燃料公社を作りましたときの考え方を振り返ってみますと、再処理が非常に大きな問題である。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第五章というところに、「再処理の事業に関する規制」というものがございまして、これは主として「原子燃料公社以外の者は、再処理の事業を行ってはならない。ただし、」云々として、原子力研究所が許可を受けてやる場合はよろしいということが規定されておる。それでありますから、われわれは原子燃料公社に対しては、日本原子力発電に踏み込んでいくと年々膨大な燃えかすができる。これの再処理に対しては早く専門の理事を任命して取り組まなければ、おくれてしまう。現実におくれておるでしょう。先ほど来お話を承ると、今から情報をもらってなんということをやっておるのですから、これはわれわれから厳密な意味で申し上げますと、非常におくれてしまった。新聞記事なんか見てもそうです。それで、私は特にきょうは御出席を願った方がいいのじゃないかということを申し上げたのです。ここに先ほどお話になりました再処理の技術導入という点で、いわゆるニューメック社と交渉しておられますが、三十七年度予算に五千万円計上する一方、四月に契約を成立させるため目下契約内容の細部について折衝している、この技術導入は原子炉で燃えた核燃料を処理して、新しい燃料であるプルトニウムを製造する技術と、それに必要な施設の設計資料を得ようというもの、ただ先方の特許料要求額が公社で予定していた予算を上回っているため、成立までにはなかなかの時日を要しそうである、その次には、来年からどんどんJRR−3から六トン程度使用済み燃料が出てくる、これを一体どうするかという問題で、もう足もとに火がついてきたぞ、という記事なんです。ですから、原子燃料公社設立の趣旨というものは、再処理の問題に対しては専売なんです。それに対して、今プルトニウムが出てきてもこれを一体どうするか、めどもツかないし、これから情報を得て勉強するなんというのでは、怠慢という言葉は当たらぬかもしれないけれども、非常に牛歩戦術であると思うのです。私らも三十年にアルコーに行って見たけれども、ちゃんとアルコーには再処理を行なう模型工場ができておるのです。模型工場だといったって、そんなちゃちなものじゃないですよ。日本の金にして二十億か百億か知らぬけれども、それは実にすばらしい再処理実験設備ができておる。だから、再処理問題を勉強しようと思ったら、アメリカを手本にしたりその他の国を手本にして勉強をするのじゃなくて、独力で勉強しようというなら、それはわれわれだって時間がかかることは承知なんだ。しかし、今お話を聞くとアメリカから情報をもらうのだというのですが、もっと早く情報をもらったらいいでしょう。一体今まで何を考えていたのか。今ごろになって、もさもさとプルトニウムの問題で動き出したのか。この間の消息を一つ端的に御説明を願いたい。
  64. 高橋幸三郎

    高橋参考人 ただいま大へんきびしい質問を受けましたが、その読み上げられました新聞記事のプルトニウムの問題、再処理の問題は、少し違っておるのです。というのは、先ほど私がアメリカから導入すると申し上げたのはプルトニウムに関する情報であって、プルトニウムを熱中性子炉に使うという実際の事情は、昨年の十二月にアメリカの人たちから直接聞いて、われわれは初めてびっくりしたようなわけです。ともかくそれまでは日本のどなた様も、おそらく齋藤先生でも、プルトニウムの平和利用というものはやはり高速中性子のブリーダーの系統が本命であって、それには二十年かかるだろうというのが一般の世界的な空気です。現在もその線はあまり変わっていないのです。ところが、熱中性子炉に使うということは、われわれはすでに前からそういう空気のあることは察知しておりましたが、実際具体的に現われてわれわれが知ったのは昨年の十二月なんです。そこでわれわれは、まず日本としてはプルトニウムのそういう新しいニュースをキャッチしなければ再処理の本命にはならぬというふうに決心して、取りかかっておるわけなんです。再処理そのものについては、実は私一九五八年にジュネーブへ行ったときに、ウインズケールの工場を全部見せてもらって、大体こういうものだというアイデスは持って参りました。再処理についての勉強は今まで私どもも相当やっております。だけれども、これは炉の進行状況と関連のあることで、再処理工場だけを先に作ってみても、炉ができなければ、そのスペント・ヒューエルというようなものが一定量に達しなければ、経済性が成り立たぬものです。そこで私どもは、あの当時もうすでに、再処理プラントがわれわれの使命であるということはよく認識していましたけれども、その後になって第二次の長期計画というものが現われまして、昭和四十五年つまり一九七〇年までに百万キロというふうな線が出てきました。これなども、百万キロだけでは再処理プラントを経済的に運営することはちょっと困難です。しかしその次の昭和五十五年、一九八〇年に、先ほどもいろいろお話が出ましたような七百万キロというふうな大規模な原子炉ができるということですから、それに間に合うようにわれわれはどうしてもそれを作らなければならぬ、というのが現在までのわれわれの考え方であったのです。そこで、実際のところ、われわれが計算してみますと、こういうことなんです。つまり、四十五年、一九七〇年ですか、この次に百万キロやりますと、スペント・ヒューエルはどのくらいできるか。その中には天然ウランのものもありましょうし、濃縮ウランのものもありましょうが、まあ大体推算すると四百トンないし四百五十トンのスペント・ヒューエルが出てくる。これだけではまだ、それを目当てに再処理工場を作ると経済性が成り立たぬのですよ。そこでその次の十年、つまり昭和五十五年に七百万キロ前後のものができたとすれば、二千五百トンないし三千五百トンという使用済み燃料が出てくる。それならば一つ経済的に間に合わないだろうかということをわれわれは前から言っております。私がジュネーブから帰ってすぐに、百十トンのプラントをある人に話したら、一蹴されました。しかし、そのときはそうであったからこれはやむを得ませんが、今でもやはり私の考えは間違っていなかったと思います。しかし、オーダーとしまして、プラントのキャパシティは、こういうふうな七百万キロもできたときでも、日本でやると一日〇・七トンないし一トン、わずかな処理量の再処理プラントのものが十分やれる、そういう計算になるのです。そこで私どもとしては、そういう長期計画が実施されると仮定して、そうしたならばいつどういうふうにやるかということを今計算してみますと、大体これから、来年の予算に計上してありますが、三十七年度の予算でいろいろ準備段階に入ります。その設計の資料を得るために予備設計として、わずかな金ですけれども、五、六万ドルの金が必要であります。しかし、それが実際にできるのには、五年ないし六年かかる。その建設時期は、少なくとも二年ぐらいで済みますけれども、安全審査や準備設計の段階相当時間がかかる。それが三十七年にスタートしても、どうしても五、六年かかると四十六、七年ごろになるわけです。そこで初めて、われわれが本物のスペント・ヒューエルをそのプラントに入れることができる。まだ五、六年先のことなんです。それをやるにしても、しかし勉強はしなきゃいかぬ。だから、勉強だけは昨年からして、原研と協力して、今あそこの中に、径数インチのパルスコラムの中に樹脂を入れまして、そして高放射能レベルのものを分離する研究をやっております。それから今年はさらに、ミキサー・セットラーという別の方法ですが、 二つの方法をことしの予算に計上して、原研と共同研究をやっております。そして、いよいよ炉の進行が予定通り十年以内に百万キロできるならば、それに間に合うようにわれわれは計画ができる段取りになっておりますから、御心配になるようなことは私の責任上決してしておりませんから、御安心願いたいと思います。
  65. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 再処理の問題が責任を持って原燃でやっていただければ非常にけっこうなわけであります。とにかく原子力発電炉だけでなく、方々かから廃棄物というものは出てくるだろうと思う。だから、廃棄物に対しては、ただ経済性に合うとか、大きな設備がいつできるとかいうことでなく、廃棄物の処理からその問題全般に関して、これは原子燃料公社責任を持つのでしょう。それはどうなんですか。
  66. 杠文吉

    杠政府委員 この問題については私からお答えいたします。廃棄物全般について原子燃料公社が負うのではなくて、今のスペント・ヒューエルを処理するという再処理について原子燃料公社責任を持っておる廃棄物処理全般につきましては、行政責任はもちろん当然に原子力局が持っておりまして、現在やっている廃棄物の処理事業は放射性同位元素協会において一応処理していくということでございます。
  67. 岡良一

    岡委員 関連して。それでは、原子力局燃料公社の理事長にお聞きしたい。お調べを願いますと、大体使用済み燃料はCP−5で二〇%のものがことしの四月に二二・四キロ出てくる。それから、ことしの十二月には九〇%のものが四・七キロ出てくる。大体二十七キロ出てくるわけですね。それから三十九年七月になりますと、JRR−3から天燃ウランで六トン出てくる。JPDRからは四十一年七月ごろから出てくる。これはことしから出てくるわけですが、どういうふうに貯蔵されるのですか。ポンドにでも入れてほっておかれるつもりか。非常に危ないものだが、具体的な方法を考えているのですか。これはだれがやられるのか。燃料公社がやるのか。
  68. 井上啓次郎

    ○井上説明員 ただいま御指摘原子炉別の使用済み燃料の処理でございますが、CP−5につきましては、この燃料はアメリカから賃借しているものでございます。従って、アメリカ政府が所有権を持っておる。現在の細目協定におきましては、返しますというお約束をしていますので、これはキャスクという十分厳重な容器に入れて返すことに今準備を進めております。  それから、JRR−3の燃料は天燃ウランで六トン、御指摘通りでございますが、これは現在のところ処理する施設はございません。従って、貯蔵ということになります。御承知のように、使用済み燃料は、炉から出しますと、崩壊させるために少なくとも百日は水を満たしたポンドに貯蔵いたします。これはアルミニウムの被覆でございますので、そのままで長い問の貯蔵はできません。従ってそのデケーをしたたあと、適当な処理をして貯蔵するわけでわでありますが、この点につきまして現在技術的に詰めている段階でございます。  なおJPDR、これは日本政府が購入している濃縮ウランでございますので、これについても、再処理工場ができるまでは当分の間貯蔵するということになろうかと思います。一方、これは検討事項でございますが、アメリカの方の施設は再処理の委託も受けるというふうな約束もできるという情報も入っておりますので、そういうものを検討いたしまして、貯蔵と、国内で再処理工場ができるまでの間の処理をどうするかということは、技術的な面と量的な面とをかみ合わせまして検討をしている状況でございます。
  69. 岡良一

    岡委員 それでは、西村委員にお尋ねいたします。その場合、国際原子力機関の決定された保障措置によると、そういう場合も相当援助してくれることになっている。これは国際原子力機関憲章にも書いてあるはずです。たとえば、その保有する日本使用済み燃料を保管する、そこで日本がプルトニウムを抽出するために化学処理をすることも援助する。そして、その抽出されたプルトニウムのうち、日本で必要とするものは日本の自由な使用に供する、という一連の措置を国際原子力機関はやろうとしておる。だから、こういう問題もやはり原子力機関のこういう機能を十分に高めていく方向で、これは日本だけの問題ではなくどんどん起こってくる問題なので、原子力委員会としてはぜひ一つがんばってもらいたいのです。これは希望です。
  70. 西村熊雄

    西村説明員 御趣旨に沿って努力いたすつもりでございます。
  71. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 時間もおそくなりましたから、法律上の問題をここで論議しようとは思いません。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の第四十八条には「原子燃料公社は、次の事項について、総理府令で定めるところにより、保安のために必要な措置を講じなければならない。」とあって、そこには「使用済燃料から分離された物又はこれらによって汚染された物の運搬、貯蔵又は廃棄」と書いてある。だから、やはりどんな小さな使用済み燃料でも、責任原子燃料公社にあるというのがこの法律だと思うのですが、そうかそうでないか。
  72. 杠文吉

    杠政府委員 それは齋藤委員の御指摘通りでございまして、先ほどお答えしましたのも、使用済み燃料原子燃料公社責任があるということをお答えしたつもりでございます。
  73. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ですから、この再処理の問題で、プルトニウムがどうだとか再処理の技術がどうだとかいうことはホット・ニュースとして去年アメリカから聞いたというのも、日本原子力全般の立場から見るとうかつ千万なことであって、そのニュースぐらはもっと早くキャッチできるはずじゃないかと私は思う。だから、そういう問題を言っているのじゃなくて、再処理問題が起きたについてわれわれが原子燃料公社に要求しておったのは、早く担当の理事を一名きめて、再処理から使用済み燃料から一切を、国民に安心を与えるような組織を作って、これを早くやるのがいいんじゃないかということを要求しておった。今ごろようやく再処理問題になって、プルトニウムをアメリカにくれるのか英国にくれるのか、何かうまい方法があるのかと言ったら、うまい方法もない。一体どうするのか、万全を期しておるのかどうかという御質問を申し上げた。万全を期しておられればいいですけれども、この使用済み燃料が今どこから出ても、この取り扱いにちょっとでも不備があると、これにはちゃんと内閣総理大臣が原子燃料公社に業務停止を命ずることになっている。そういうことのないようにやってもらいたい、ということを申し上げておくだけであります。万全の措置を講じているということは、またあとでよく御説明を願うことにいたします。  きょうは国会で核爆発実験禁止の決議案が上程されるという新聞記事であります。私も核爆発実験が世界的に禁止されてくれればいいということを非常に念願している。また、ここには最後の重い反粒子という記事も出ておって、スロー・ダウンをしておるようですけれども、原子力の世界というものはなかなかいろいろな面において活発化している。  そこで一つ、井上原子力局次長の博学的な知識に訴えて御答弁を願いたいと思うのであります。自然界に存在するところの元素は九十二、しかし話に聞くと、もう百までできているというのですね。そうすると、九十三以降の八つは人間が作ったものだ。私がいろいろなところから話を聞きましたのでは、プルトニウム以外のもので爆発力を持っている人工元素がある。それが非常に臨界のキャパシティも小さいし、爆発力も大きい。だから、これは想像ですが、アメリカの今度の核爆発実験におけるフォールアウトはゼロまたは〇・二%、こういうことをアメリカが言うておるのじゃないかと思うのです。今までの原爆の過程からいけば、フォールアウトがゼロまたは〇・二%なんということは言い切れないはずです。何らか新しい爆発要素というものが見出されて応用されてたのじゃないかという推測が一部に行なわれている。これは私のアンテナにひっかかったが、私のアンテナはろくなアンテナではないから、ほんとうかどうかわからぬけれども、一体そういうことは、原子力利用という立場から言うと、その進化過程において考えられることであるか、考えられないことであるかということです。どうなんですか。
  74. 井上啓次郎

    ○井上説明員 非常にむずかしい問題を突然に言われまして、なんですが、私の知っている範囲でお答え申し上げますと、今御指摘になったように、原子番号で九十二番目はウランでございます。これまでは今までよくわかっていることでございます。その上に、中性子を当てますと、超ウラン元素というグループが、先生の御指摘のように、現在では百二番目までございます。原子番号で百二番までわかっております。たくさんの同位元素があるのでございますけれども、この中で核分裂を行なうというものも相当わかっております。しかし、今の御指摘の、それでは爆発をしてどういうふうな核分裂生成物ができるかという情報は、まだ公表されておりません。現在までの場合は、トリウム、ウラン二三八、ウラン二三五、これはよく発表されておりますけれども、この点は不明でございますので、お答えはいたしかねますけれども、今御指摘の、ウラン以上のもので核分裂を起こさせやすいものがあるかどうかというふうな事実に対しましては、私は可能性があるだろうと思います。一つ申し上げますと、ウラン二三八からできましたプルトニウム二三九というものも、一連の超ウラン元素の中でございますので、その上のキュリウムとかカリフォルニウムとかいうものにつきましても、核分裂の起こり得るものがあるということが文献にも出ておりますので、当然そういうことが考えられると思います。
  75. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 この原爆ですが、一番軽い水素と一番重いウラニウムですから、ウラニウムに中性子を当てて超ウラン元素というものが出ていくと、原子量の多いほど爆発力が大きいとい理屈は成り立つのですか。
  76. 井上啓次郎

    ○井上説明員 爆発力と核分裂というものは完全に相関性があるとは言えませんが、核分裂がしやすいもの、これも二つのカテゴリーがございまして、熱中性子で核分裂をしやすいものと、高速中性子、非常に早い中性子で核分裂をしやすいものがございます。大体大まかに言いまして、今までわかっている範囲では、熱中性子で核分裂が起こしやすいものは、ウラン二三五、プルトニウム二三九、トリウムからとりましたウラン二三三が対象になっております。速中性子で核分裂を起こすものは相当の範囲でたくさんございます。しかし、これはもう核爆発の機構というものは全然末公開でございますのでわかりませんが、理論的に申しますと、その分裂するというのは非常に瞬間的に行なわれるわけでございますので、この大きさというものは、使う核分裂をする物質の量と、その熱中性子なり速中性子をいかにうまく使うかという効率の問題、この二つでわかろうかと考えます。従いまして、今お尋ねの、そういう核分裂のしやすいものが大きな爆発力があるかということにつきましては、すぐにイコールにはならなくて、ほかの要素を加味しなければならないだろうと想像いたしております。
  77. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 核爆発実験が停止されれば人類の平和の上において非常に幸いだと思うのでありますが、もし不幸にしてクリスマス島その他においてアメリカが核爆発実験をやるという事態に遭遇いたしますと、今度の法律改正によりまして、原子力委員会中心となってフォールアウト対策を立てるということに今度はっきりなるわけであります。こういうことを申し上げますと、非常に誤解を招くおそれがあるのでいかがかと思いますが、日本がこのフォールアウトの実験をするために大きな核爆発実験をやって、そしてフォールアウトの人体に及ぼす影響というものを調査しようとすると、これは日本の金ではできないわけです。アメリカやソ連が核爆発実験をやるから、このフォールアウトがどれだけ日本に対して被害があるか、これはある意味においては健康を保持し、安心を得るために日本はやるわけなんですけれども、学問的な実験という立場から見ると相当大きな興味のある問題だと私らは見ている。ですから、一つ原子力委員会におかれましては、フォールアウト対策というものをりっぱに立てて、もし核爆発実験が行なわれたら、いかなる性質のものを使っておるかというところまで今度は見きわめるようにしていただきたいと私は思うのです。アメリカが今度使うと仮定されるその原爆が、もしアメリカの言うがごとくフォールアウトの放射能がゼロであり、あるいは〇・二%しか含まれていないということになると、先ほど私がお話を申し上げたように、これはウランじゃない、ほかの元素を利用したのだということにならざるを得ないと私は思う。今までの実験過程において、ウラン系統を使ってフォールアウトの放射能がゼロになったり〇・二%になったりするということは考えられないわけです。何か新しいものをアメリカは見出してこれを使っておるのだ、だから原子爆弾というものは非常に小さくなってきたのだ。何かが現われないと、アメリカが発表しておるような小さなもので、そして発表するがごとき大きな爆破力を持つということは考えられない。これは私のしろうとの考え方かもしれぬけれども、そういう点も一つよく注意してフォールアウト体制というものを確立せられんことをお願いいたしまして、質問をやめます。
  78. 西村英一

    西村(英)委員長代理 この際、高橋参考人一言ごあいさつを申し上げます。  御多用中のところ、長時間にわたり貴重なる御所見の御開陳をいただきまして、まことにありがとうございます。  この際、委員各位にお知らせいたします。午後一時から開会予定の科学技術の基本問題に関する小委員会は、時間の都合もありまして流会とすることになりましたので、御了承をお願い申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時一分散会