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安川参考人 まず最初に工期の問題です。
イギリスの今日やっておる各種の
原子力発電所の
完成期間を見ますると、
石炭や
石油燃料の
火力発電所よりもはるかに長い期間がかかっております。これはこかまいところでどういう点でそう長くかかるかということは、私はそう
検討したわけじゃありませんが、要するに安全性を確保するために例の圧力容器の溶接が、ボイラーなどに比し数倍やかましい規定によって検査も厳重にしなければならぬというようなことも
一つの原因じゃないかと思います。
イギリスでも、
火力よりもはるかに長い期間を要するということは、私、申し上げて差しつかえないと思います。
ところが、
東海村の、それよりもなお以上期限が延びた原因は、これは
東海村に限った
一つの原因があるから起こったわけであります。第一に、いよいよ
建設に入る段になって、最初の
向こうから持ってきた仕様書、図書、設計だけでは、
日本はまた
日本のいろんなコードがありますので、やはり
日本で
建設する以上はそれに従わなければいけない。
イギリスそのままの設計では、
日本で取り入れることはいろんな点で支障があるということで、そういう観点から
向こうの設計にだいぶ変更を要求した。われわれは簡単に設計は変更できるものと思っていたのが、
向こうに言わせると、ほとんど全部根本から設計をし直さなければならぬというので、設計のし直しに要する期間を相当
向こうから要求されて、こちらとしても、それはなかなか表面に出せぬからということで強く要請をして、こっちもあらゆる方法を講じて、六カ月延びるというのを三カ月に縮めたというようないきさつがあります。
それから、第二の大きな問題は、圧力容器に用いた鋼材が、これははなはだ予期しないできごとであったのでありますが、
イギリス一流の製鉄
会社の供給したものが、いよいよこちらで加工をして溶接の
段階になって、非常な瑕瑾が発見された。しかもそれは一カ所、二カ所じゃないという判断で、これを全部はねる。しからばこれをどこに注文がえをするかということで、残された製鉄
会社は、ドイツにマンネスマン、
イギリスにもう
一つ、今度注文したのと対抗的な一流の製鉄所があります。それから第三には、これはむろんおひざ元の
日本にも製鉄所がある。そのうちで
日本製鋼所ならば国内でもあるし、デリヴァリも早いだろう、従って価段も
外国から輸入するよりは割合に安く上がるだろうということで、実は
日本製鋼に注文がえをいたしました。
日本製鋼としては非常な便宜をはかってくれました。その問題の起こったのが昨年の八月ごろであったと思いますが、結局本年一ぱいにほとんど全部必要な鋼材を
日本製鋼は供給してくれるという結果になったのであります。しかし、何にしても、
向こうからせっかく持ってきたものを全部
向こうに返す。新たに
日本で製造したのでありますから、その間の期間、相当延期をやむなくされたわけであります。結局初めの
契約よりも八カ月延期を承認せざるを得ない結果になったわけであります。しかし、ただいまの約束では、
昭和四十年の三月一ぱいに
完成という改定した
契約になっております。
それから、値段の点でありますが、値段は、最初われわれが
調査団として
イギリスに渡って各
メーカーに打診し、またAEAの
意見等を
調査したときは、割合にキロワット安い。これなら、あるいはうまくいけば
石炭火力くらいには対抗できるのではないかというような気がする
程度であったのであります。いよいよこちらからディテールの仕様書を突きつけますと、むろんその中には
日本独特の耐震構造というものは追加されておるのでありますが、
イギリスで感じたよりもキロワット当たりの
建設費が案外高いものについておりました。それをいろいろ
向こうと交渉し、最も
経済性の高いものを選定するという
立場で、御
承知のようにGECに指定してきたのであります。
その後、ただいま申し上げるような、
日本は
日本なりのいろんな
立場から、安全性などは御
承知のように安全
審査委員会で相当もみにもまれて、この結果として相当設計変更もありましたし、それから追加施設も全部安全性に関する施設でありますので、極端なことを申し上げれば、この装置がもしフェールしたら第二の装置で安全を保障する、この装置がもしいかなかった場合にはこれで防ぐというような、四重、五重の安全装置を加えざるを得ないということに当然なりました。御
承知のように、初めの
契約のときに何もかも入れておくと、割合に
メーカーの方も安い値段でなにするのですが、あとの設計変更による追加ということになると、とかく値が張るのは、特に
向こうが暴利をむさぼるというわけではないのでありますけれども、案外に経費がかさむものであります。そのために、最初の
契約当時の価格からなお以上追加しなければならぬということで、案外に最初の一基は高いものになったということは、これはどうしても申し上げざるを得ない羽目になったわけであります。これらの
経験を将来の少なくも第二基に対しては十分参酌して、再びこういうような追加経費のかかるような、また期限を
予定よりも延ばさざるを得ないようなことのないように、十分一
号炉の苦い
経験を生かしたいと私は
考えておるのであります。節一号の
発電施設に関しては遺憾ながらそういう大きな問題が発生いたしまして、期限が延びるし、また経費もそれに応じて相当追加せざるを得ないようになったことは、はなはだ遺憾に
考えておる次第であります。