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1962-03-01 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月一日(木曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 河野  正君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       佐々木義武君    保科善四郎君       細田 吉藏君    松本 一郎君       日野 吉夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君  委員外出席者         原子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       石川 一郎君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  菊池 正士君         参  考  人         (日本原子力発         電株式会社社         長)      安川五郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五九号)  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  本日は、日本原子力研究所理事長菊池正士君及び日本原子力発電株式会社社長安川五郎君の両参考人が御出席されております。  この際、両参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず本委員会審査のため御出席下さいまして、まことにありがとうございました。  日本原子力研究所法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。安倍晋太郎君。
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員 私は原子力問題についてはまことにしろうとでございまして、常識的な立場から基本的な問題につきまして、二、三当局並びに安川さんに御質問いたしたいと思います。  原子力発電長期計画の問題でございます。これは昭和三十六年から四十五年を前期、四十六年から五十五年を後期として策定されておるわけでありまして、この新しい長期計画に対して非常に国民も関心を寄せられておりますし、この長期計画によりまして、わが国経済の伸展に非常に大きな寄与があることは確信をいたしておるのでございます。この前期の十カ年間の長期計画によりまして、百万キロの電力を作り上げていくということでございますが、しかし、はたしてこれが計画通りいくかどうかという点に対しては、危惧を持っておるわけであります。第一期炉などの建設がおくれている事情、あるいは第二期炉、第三期炉の計画もおくれているという情勢から、この点に対して危惧も生まれておるわけでございますが、安川さんはこの計画が十カ年の間に十分やっていけるかどうかということに対して、どういうお考えを持っておられるのですか。
  4. 安川第五郎

    安川参考人 それではただいまの御質問に対して、私の個人的な意見をまぜまして、お答えを申し上げたいと思います。  要するに、十年間に百万キロ原子力発電所建設の骨子は、私の了解いたしておりますところでは、多分十年間くらいでは従来の火力発電所経済性においてまだ太刀打ちができないだろうということを前提にして、それかといって、これを経済性が見えるまで放置するわけにいかない性格を持っておるものでありますので、とりあえず、経済性を無視した百万キロ程度建設を、技術員養成、その他いろいろの経験を得るために踏み出すことが必要であるという考え方から、とりあえず十年間に百万キロにするということが出たものと私は了承しております。しかし、私の発電会社がただいま受け持たなければならぬと決定いたしましたものは、御承知のように、すでに東海村に建設を実施いたしておりますイギリス型の十五万キロ程度の第一号原子力発電設備及びこれから建設にかからんとする第二号原子力発電設備、これはもうはっきり私の担当しておる原子力発電会社が実施することになっておりまして、なお、株主総会の承認を得て目下二号機についても準備のまつ最中であります。それ以上の原子力発電所に対しては、まだ私としてこれをどうすべきかという責任は負わされてもおりませんし、また、会社がかれこれ計画をすべき筋合いのものではありませんので、私からかれこれ申し上げることは差し控えたいと思います。しかし、私個人として、はたして十年間に百万キロができるかどうか。これは私は十年間と厳密に切られると、はっきりしたことは申し上げ得ないのでありますが、やる決心さえすれば決して不可能ではない。ただ、やるといったところで、これは非常に膨大な資本を要するものでもありますし、そういうことを無視して、ただ技術的にできるからということだけで、将来の見通しを立てるべき性質のものではないのであります。そういう点さえうまく解決すれば、百万キロ程度十年間、一日もおくれぬというような厳密な見通しは私にはできませんが、およそ十年間のプランとして百万キロ程度をやることに対しては、私は可能であるという考えを持っております。
  5. 安倍晋太郎

    安倍委員 大臣がお見えになりましたので、もう一度この点につきまして大臣にお伺いします。原子力発電長期計画でございます。ただいま質問しましたように、十カ年で百万キロ作るということで、原子力委員会としても非常に熱意を払って策定しておられるわけであります。これが諸般の情勢から、第一期炉、第二期炉等も多少おくれておるように聞いております。そういう点から考えますと、客観的な情勢の変化もあろうと思いますが、百万キロワットが可能であるかどうか。これは原子力委員会で策定された計画でございまして、ぜひともやってもらおなければならぬのですが、入庫としてどのような考えを持って臨んでおられるか、まずお聞きしたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 長期計画でありますから、多少時間的なズレはやむを得ない。大体十カ年間に百万キロワット程度発電は実現をしたいと考えておるわけでございます。こういう新しい原子力平和利用というような部門は、世界的にもいろいろな経験を積んできて、発電コストというものもある時期がきたならば非常に下がってくる。だから、十年というものをつきならしてみると、大体初めのうちは非常にスピードがおそくとも、これが新鋭火力発電などに比べてコストが安いものだということになれば、後半期には相当急激な開発もできますから、今のところは長期計画を変更するという意思は持っていない。これを目標にして、できるだけ努力をしたいと考えております。
  7. 安倍晋太郎

    安倍委員 私は、今の政府の、それから原電との関係から見まして、十カ年計画を実現するのにはなかなか困難な面もあると思うのであります。御承知通り原電資本の構成を見ましても、九電力が八割、政府関係が二割でございます。それにこの第一期炉、第二期炉、第三期炉等計画、立案、実施等も、原電がイニシアチブをとってやるような形になっておりまして、大体政府が従の立場で民間が主体になっておるわけでございます。何分こうした計画は、膨大な資金を要する事業でございまして、政府のこの原電に対する関係は、監督行政立場にある。あるいは資金あっせん等もすることになるのでございますが、しかし、たとえば資金獲得等原電でやらなければならない。そういう点から、経済ベース考えなければならないわけであります。火力原子力発電コストを見ましても、たとえば東電千葉火力発電がありますが、これは一キロワットで四円五十八銭から五円十銭程度でございます。また石炭でやっております、ことしじゅうに完成するといわれる横須賀にしましても、四円十銭から四円四十五銭程度であるといわれております。さらに、重油発電が今後重要視されてきておりますし、重油は国際的にも値下がりの傾向にあるわけであります。横浜の東電重油による火力発電所が三十八年度に完成するといわれておりまして、これは十七万五千キロワットのボイラー四基を備えつけるわけでございますが、そのコストを調べてみますと、二円八一四銭から三円三十五銭程度。この第一号炉によりますと大体四円九十九銭でございます。建設費を見ましても、火力の場合は、七割が運転資金で、三割が建設費であります。原子力発電の場合はその逆であるといわれておるわけでありまして、そうした資本の効率的な運用から見ましても、経済ベースに乗っていく場合は、そうした問題から今日は金融引き締め等その他いろいろな経済上の制約があるのでありまして、このような状態で、はたして今の計画通り進むかどうかということに対して私は常識的に一つ疑念を持っておるわけであります。これに対して、政府は相当の熱意をもって原電に対して指導、協力していかなければならぬと思うわけでございますが、こういう点から見まして、今のような形ではたしておくれておる事業を進捗させることができるかどうかということに対して疑念があるわけです。その点に対して三木大臣答弁を求めます。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 現在第一号炉建設中でありますが、これを通じて建設技術の修得、あるいは技術者養成、あるいは国産化促進——こういう建設を通じて日本もいろいろ新しい技術を修得したいというわけであります。そういうことで、二号炉になってくると、そういう経験が生かされるわけでありますので、今日のところではスピードもあまり早くないわけですが、次第に原子力発電コストも下がってきておる。前田委員長なども先般世界を回られて、三円を割るのではないかというような御報告も承っておるわけであります。これは後半期になってくると、相当発電炉建設ということもスピード・アップされてくる。そうなってくると、いろいろ資金的な面についても電力会社の協調のもとに原子力発電というものは開発したいというのが政府基本原則でありますが、その原則の上に立ちながら、政府がもっと資金的にいろいろめんどうを見る。形はいろいろ研究しなければなりませんが、めんどうを見なければならぬような場合も出てくる。原則の上に立って、政府資金的な協力というものを強化する必要が起こってくる、こう考えておるものでございます。
  9. 安倍晋太郎

    安倍委員 具体的な問題について一、二お伺いしたいのであります。第二号炉建設は決定しているわけですが、細目は一切未決定でございます。もうすでに着工予定にも達しておるのではないかと思うわけですが、その資金、炉型、工事内容等は何も結論を得ていない。さらに、長期計画を読んでみますと、調査団派遣するということになっておりますが、まだ依然として調査団派遣されていないというふうな状態でございます。政府として、そういうおくれておる状態に対して促進措置を講じられておりますかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力発電会社とは緊密な連絡をとって、模様を聞いておるのですが、外部には、調査団派遣とか、いろいろな動きが少ないように見えますが、非常に真剣に二号炉建設に取り組んで、その計画はきわめて順調に進んでおる。ただ、調査団は、イギリスの場合でも、私も聞いた話でありますけれども、公式、非公式、八十一回も調査団が来て、日本はこんなに調査団派遣する国かという批判も起こったようでありますので、今度の場合は十分な準備体制を整えて、あるいは一回ぐらいは本契約の前に行くことになるかもしれませんが、調査団派遣というようなことは別といたしまして、これは準備は順調に進んでおるということをわれわれは聞いておるわけでございます。近くいろいろ具体的なことも発表される段階になると信じております。
  11. 安川第五郎

    安川参考人 全くただいま大臣から御答弁のあった通りに、いささかも間違いはありません。この問題は、御承知のように、一歩誤ると取り返しのつかないような成り行きになった例も相当ありますので、会社としては、あるいは過ぎるかもしれないくらい慎重な態度で進めておりますために、外部には、何だか遅々として、進捗を見ておらぬではないかという感を抱かせるのはごもっともとお察しするくらいであります。しかし、十分検討検討を加え、また、会社自力のみでは将来遺憾の点も生ずる場合も予想されますので、特に電力関係会社のその方の相当権威者参与をお願いして、参与制を設けて、二カ月に一回ずつ参与会を開いて、各方面からの貴重な御意見を参酌して、進むべき方向にただいま進みつつあるのであります。今後次々に、時期を見て皆様方のお耳に入れるような段階になるものと私は考えております。
  12. 安倍晋太郎

    安倍委員 そうしますと、第二号炉着工予定通り進みますか。
  13. 安川第五郎

    安川参考人 予定と申しましても、今いつ幾日から工事が始まるというような見通しは、はっきり確約を申し上げることは私としてできませんが、ただいま、もっぱら向こうから出たいろいろな資料をもとにして調査しております。一番具体的に決定しなければならぬのは、私はこの敷地の問題であろうと思うのであります。これあるがために、実は慎重に慎重を加えておる次第であります。これには、もちろん候補地として一つや二つじゃありません。また、非常な誘致運動を受けた場所もあるくらいであります。しかし、何をおきましても、地震の多い国ではありますし、ことに地質、気象の調査を経なければ土地を決定するという段階になりませんので、目下順を追ってそういう調査に着手したい。これはおそらく近い将来に、どうしても順序を迫って地質調査に着手する段階になるだろうと考えております。それがきまりますと、おそらく外部に出る計画がだんだん進んでいくだろうと思います。順調にいけば、本年中には調査団を出す段階になるものと考えておりますが、しかし、これも四囲の情勢でどういうふうになるか、はっきりしたことを申し上げることは、私としてできないのであります。  なお、第一号炉の貴重な経験がありまして、ここでいろいろ詳しくは申し上げませんが、ずいぶん私としては苦労を続けました。しかも、今となって考えれば、こういうふうにやればもっと早くいっただろう、もっと経済的にいっただろうという点が、それはあげれば山ほどあります。従って、第二号炉については、この貴重な経験をどこまでも活用して、二号炉に関する限りは、あとで悔いを残すようなことがいささかもないことを期したいと考えております。それにはやはり前もって、着工するまでにできる限り物事を決定する。これはなかなか完全に設計のディテールまで確定するということは、メーカーとして不可能であることは十分察せられるのでありますけれども、前もっての準備工作を完全にすればするほど、将来に悔いを残すことは私は少ないと考えております。最初のスタートが、いかにもどうも遅々として進まぬようにお考えになるかもしれませんけれども、それは私は、結局最後完成、しかも最後に最も経済的な完成を見るゆえんだと信じております。私に関する限りは、この方針を守って進行いたしたいと考えております。
  14. 安倍晋太郎

    安倍委員 今年じゅうに調査団派遣されるかどうかわからないというお話でございます。どうも少しテンポがのろいように思うわけでありますが、調査団原電から派遣されるわけであります。  それから、第二号炉は大体いつごろから着工されるような予定を立てておられますか。その点についてお伺いいたします。
  15. 安川第五郎

    安川参考人 これは私は多少大事をとって申し上げるので、案外早く調査団を出す段階になるかもしれませんが、今のところ、いつ幾日調査団を出すと申し上げて、どうもそのときに出すまでに到達しておらぬ場合も私としては一応考えなければならぬので、どうしても本年一ぱいには出したい、その目標で、できる限り早く調査団を出すことに進めて参ることには、いささかも努力を惜しまないつもりであります。  従って、この着工の期限を、いつごろから始めるかと言われると、これもちょっと私として今確答を申し上げる自信がないのでありまして、むろん、いたずらに時日を遷延してみたところで、これは何らの功績もないわけであります。できる限り早い方が望ましいのでありますが、資金面におきましても、今日の金融緊縮のおりから、なかなか思うにまかせないところもありますし、それらを考えのうちに入れると、来年から着工するのだというようなことを私の口から申し上げるのは、ちょっと差し控えさせていただきたいと存じております。あしからず御了承願います。
  16. 中曽根康弘

    中曽根委員 関連質問。ただいまの質問関連いたしまして、三木委員長及び関係各位に御質問したいと思います。  第二号炉の問題を考える上について、もっと基本的な問題をわれわれは考える必要があるように思います。原子力を推進する側からすれば、ただいまのようなお考えは当然のお考えであると思うけれども、日本の現在のエネルギーの総合的な調整という面をもう少し掘り下げてみないと、計画自体がくずされるおそれがあると思うのです。現在ごらんのように、石油業法をめぐって、国産エネルギー外国から来るエネルギー、あるいは日本系アラビア石油スマトラ原油をどうするかというような、座標交点をどこにするかということで相当もめておるようであります。その座標交点をきめる上において、原子力が年次的にどういう役割を果たしていくべきか、その体系を見定めないで、いたずらに二号炉のことを言っても、これは砂上楼閣になるおそれがある。そういう基本的な部面について、原子力委員会としては、数字をはじくなり、あるいは基礎調査をしているかどうか。それが一番今日の重大な問題であると私は思うのです。現に日本の国に関係しているいろいろのエネルギーを見ても、石炭の問題があります。それから海外からの石油の問題があります。それからいわゆる国産石油の問題がある。それからガスの問題がある。それからアラビア石油その他の日本系石油の問題があるし、原子力の問題もあるわけであります。そういう点に関する基本的な調査原子力委員会は相当なエネルギーを使ってやり、そのために原子力発言権を確保しておくべきだと思うのです。その点に関して、委員会としてはどういう処置をおとりになっているか。このことをまず承りたい。  第二は、第二号炉を持ってくるにしても、一番大きな問題は、今の安川さんのお話のように、サイトの問題が一番大きな問題になるだろうと思います。そういう点から、われわれはすでに数年前から原子力地域整備法という問題を提起して、国民に安心を与えるということが先決であるということを申し上げてきたはずです。この問題が解決されないと、第二号炉以下の日本原子力の推進ということが非常な障害にぶつかることは、もう火を見るよりも明らかです。従って、金融の問題も重要かもしれぬけれども、それ以上に、国民心理の上からする障害をどうして取り除くかということを、どういうふうにお取り扱いになっておられるか。  第三番目は、これから原子力技術というのは日進月歩であって、契約をしている間にも向こう技術が進歩しているはずであります。そういう面から、われわれが、かつてやったいろいろな契約の長所、欠陥をもう一回検討してみて、技術の進歩というものがどういうふうに動態的に契約の中に挿入さるべきか、こういう点も大いに考えなければならぬ。それが経費を節約する上において、あるいは能率的な炉を建設する上において、今度の場合は非常に重要な先訓として掲げらるべきであると私は思うのです。そういうような契約条項の改善という問題について、どういうような検討を加えておられるか。  最後に、これはメーカーの側の立場になってみると、たとえばインドにおいてコールダーホールの入札がある。それに日本富士電機グループが参加しておる。けさの新聞に出ておりました。その場合、インド政府コールダーホールでできたそのプルトニウム平和利用に使うかもしれぬし、軍事利用に使うかもしれぬ。もし軍事利用に使う場合には、日本の業者が技術協力してこの建設に参加した場合は、原子力基本法違反になるのかどうか、こういう問題が明らかにされることが非常に重要であります。この第四の外国政府の正式のコミットメントを必要とするかどうかという点について、これは三木委員長の明確なお答えをしていただくことがいいと私は思います。  以上の四点についてお答え願いたい。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 第一の御質問でありますが、とにかく原子力開発というものはまだ修練の時期でありますから、長期計画でいうあの目標を、エネルギー事情がどうあろうとも、これを変更するという事態は起きていない。しかし、全体のエネルギーとの関連において今後の長期計画を進めていくについて、いろいろ検討しなければならぬことは事実なのであります。そういう意味で、昨日も新しく原子力委員が任命されて、第一回の会合を開いたわけであります。そのときに、もっと広い視野から、総合エネルギーという観点から、原子力発電の今後の計画というものをどういう一つ順序で進めていくかということを掘り下げて検討してみようということで、第一回の会合の第一議題にしたわけでございます。  それから、第二の場所の問題については、今単独立法をする考えは持っていない。しかし、この原子力のセンターと申すような地域がふえてくれば、将来そういう単独立法考えなければならぬと思います。現在の段階では、私は茨城県の代表者が参りましたので、茨城県の中に一つ東海村の都市計画委員会というようなものを作って、そうして政府もこれに対して協力したい。現在のところ東海村だけでありますから、ここで立法的な措置というのは考えてないが、県自体として政府協力のもとで都市計画を立てる。そこで政府がどの程度協力できるかということを、また地元でやらなければならぬ面もあるだろうし、そういう形で一歩進めてみようじゃないか。茨城県側も、そういう線に沿うて一つ名前はどういう名前になるか、そういう委員会を作って、そうして都市計画というものを県全体の産業立地計画ともにらみ合わせて、そういう一つ計画を立ててみようということであります。政府もこれに対して協力していきたい。将来は、中曽根委員の言われるような単独立法ということも考えなければならぬ時期が来るかもしれません。現在はそういう方針でございます。  また、最後のお尋ねの、インド政府の、日本富士電機その他のグループは下請けでありますから、政府間のコミットというのは、そういう段階においては必要がないと私は考えておるのでございます。
  18. 中曽根康弘

    中曽根委員 最後のところからもう一回御質問いたします。私の質問は、原子力基本法に違反するかしないかということなんです。私はしないと思うのです。それはなぜかと申しますと、原子力基本法日本に築造される原子炉についていろいろ規制をしておるのであって、外国に築造される原子炉まで日本管轄権が及ぶとは考えられない。イギリスとの動力協定の場合は、日本の炉で作られたプルトニウムであるから、政府間の協定というようなものが多少必要であったかもしれません。これについても、原子力基本法に違反するというところまではいっていないだろうと私は思うのです。しかし、念のために政策的にやったことだろうと思う。インドのような場合には、そのできたプルトニウム軍事利用にするか平和利用にするかということは向こうの主権の範山内のことであって、日本政府としてどうこう言う問題ではないと私は思います。そういうようなできたプルトニウムの所有権の関係や、あるいは政府がやっていることかそうでないかというような、いろいろの関係考えてみても、日本メーカーがそういう場合に参画することは日本原子力基本法には違反しない。その点を明確にしないと、今やっている原子力産業会議の各メーカーの創意とか熱意というものは非常に失われる。あの諸君は、大体アジア市場というものを目ざしてやはり技術関係を拡充しているのであって、その疑義を原子力委員会として明確にしておくということが、産業発展の非常に大事なポイントになると思うのです。そういう観点から、三木委員長の、厳粛にして確実なる声明をここで私はしていただきたいと思うのです。  それから、サイトの問題は、これはアメリカとの関係、その他サイトクライテリア等の問題は先般来非常に大きな問題になっているようでありますけれども、しかし、問題が起きてからやったのでは間に合わないのです。東京都の交通地獄を見れば一番よくわかります。後藤新平みたいなのが出てこなければいけない。原子力においても同様である。もうそろそろ三木先生は後藤新平になっていい時期である、私はそう思う。その二つの点についてもう一回承りたい。  それから、第一の点について私が申し上げたのは、原子力の重要性をわれわれは知っておるから、また将来に対する期待性を非常に持っておるから、発言権を強めておくために的確な資料を作れという意味なんです。また的確な研究を原子力委員会として、しておきなさい。そうして、石油石炭やほかの燃料に対する対抗力を、理論的にも武装して持っておく必要がある。そういう意味で、原子力委員会として経済性その他に関する基礎調査を総合的に掘り下げてやっておく必要がある。そういうことで申し上げたのでありまして、そういう何らかの手配を原子力委員会としてもやる必要があると私は思うのです。このことは念のために申し上げておきます。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 インドの場合は、先ほど申し上げましたように、イギリスのGECが主契約者になって、その下請で部品を作るわけであります。こういうメーカーがこういう形でアジア地域に進出することは原子力基本法に違反しないということは、中曽根委員御指摘のように考えておるものでございます。  それから、総合エネルギーの見地から、原子力発電のウエートというものをもっと掘り下げて研究しておくべきだということは、私も同じような考えで、昨日の委員会にもこれを最初の議題として取り上げた次第でございます。そういう同じ考えでおるわけであります。  また、先ほどの御質問の中に、技術の進歩、これは契約の中に当然織り込まれなければならぬということは、これは発電会社としても十分にそういうことを頭に入れて、そして契約をするものと期待をするものでございます。  また、東海村の原子力の施設のある地域都市計画については、これはお話のように前もってやらないと、結果においては非常に計画的でないようなことになりますから、単独立法というのは考えないけれども、相当政府も腰を入れて将来のことを考えながら都市計画というものには協力をしたい、非常な熱意を持っておるわけでございます。
  20. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の関連質問はごく簡単でございますからお許しを願いたいと思います。  今、安倍委員並びに中曽根委員から原子力発電の十カ年計画についていろいろ御質問がございました。私の関連質問は、今中曽根委員からもお話がございました通り日本の貿易の自由化を前提といたしまして初めて大きな問題にこのエネルギーという問題がぶつかっておるわけでございます。それは石油業法をどう規制するかということで、今非常に大きな問題となっておることは御承知通りであります。今後十カ年間に二億キロリットルの石油というような大きな目標が出て、わずかに一%ないし二%が国内石油であり、アラビア、スマトラを加えてもなかなか一〇%にも達しないのではないか。また、市場をそのままにしておけば国内石油及び民族石油と申しますか、こういうものはなくなってしまう。どうするのかということで、非常にもめておるのでございますが、この際原子力という将来のエネルギーというものを国家百年の大計として総合エネルギー対策の一環足らしめる非常に大きな機会じゃないかと私は考えておるわけであります。  関連質問を申し上げました理由は、昨日海外に行っておりますこのほうの人から私のところに手紙が参りまして、フランスとかイタリアとか英国とか、そういういわゆる欧州の、原子力発電に対するところの私信が参りました。これを読んでみますると、欧州では石油を対象として原子力発電考えておらない。やはり石炭を対象として原子力発電考えておる。これはナショナル・セキュリティから判断したものの考え方である。しかし、現実においては石油を対象とするとコストにおいて幾分か原子力発電は高いけれども、行く行くはやはり石油よりは安くなるのだ。現在においてはナショナル・セキュリティという立場から考えると、石油考えるよりも石炭を対象としてものを判断していく、こういうことが書かれておるのであります。従いまして、今石油というものは日本においてはどうしても九〇%ないし九五、六%を外油に依存しなければならないなけれども、これはナショナル・セキュリティという立場から言うときわめて不安定なものである。でありますから、日本の将来のエネルギー対策というものは、石炭原子力発電というものに重点を指向して、それによって対策を確立していくということが、ナショナル・セキュリティという立場から言うと私は本筋じゃないのではないか。そういうことを考えますと、エネルギー対策として国論が大きくわいているときに、原子力発電のあり方というものはどうあるべきかということは、やはり大局から強力に国民に示唆を与える必要があるのではないか、そう考えておるのでありますが、この点に対して一応長官の御意見を承っておきたいと思います。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 将来やはり原子力発電というものに日本はウェートがかかってくる。これはいろいろセキュリティという問題もありましょうけれども、輸送とかいろいろな面から考えてウエートはかかってくる。しかし、長期計画にいう十カ年に百万キロワットというのを、それならばこういうエネルギー問題がやかましいからこの長期計画を変更する、ということには参らぬ。これは百万キロワットでも大へんな努力を要するのでありますから、今お話しのことは十カ年というものではなくして、もっと長期な見通しを持つべきであることはお話通りだと思います。しかし、今後十年というような年限を限って、石油に対して依存度を石炭とか原子力発電に置きかえるというそういう事態の変化は、十カ年には起こり得ない。どうしても石油に対する依存度というものは、相当長期にわたって日本エネルギー問題としてはウエートを置かざるを得ない。しかし、長い将来から言えば齋藤委員のお考えは非常に検討しなければならぬし、もっと原子力発霊にウエートを置いていかなければならぬという、そのきわめて長期的な見通しには同感でございます。
  22. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の申し上げているのは、十カ年間に百万キロ以上の原子力発電を早期に完成してくれというのじゃないのであります。日本原子力平和利用体制というものは今日のごとき状態でいいのかどうか。もっと積極化する必要があるのじゃないか。原子力委員会の今日までのあり方を見ても、また一般的な原子力研究所のあり方を見ても、こういう大きな日本の根本を決定するがごとき、総合エネルギー立場から見ると、もっと積極的に原子力利用というものに国家的に取り組まなければいけないのじゃないか。今いきなり十カ年間に三百万キロやれといったってできないだろうけれども、もっと積極性を加味した施策を行なうということが、将来の日本のナショナル・セキュリティ、その他木式の総合エネルギー対策というものに合致するのじゃないか。今までのような微温的なことでやっておって、それで原子力日本総合エネルギーの中の大きなウエートにするということは、これはなかなかむずかしい。今よりも二倍も三倍も積極性を加えていかなければいけないのじゃないかということなんです。幸いに「また原子力委員各位も重任されたということを承っておるのであります。今までの原子力委員の方々も非常に努力をされたのでありますけれども、ここで再任をされた以上は、この日本の体制にマッチするように原子力平和利用という線を積極化していかなければ、日本というものの安泰はできないのじゃないか。だから、もっと大いに積極化してもらいたい。今までよりも二倍も三倍も一つ積極化するような原子力行政をやっていただきたい、こういう意味なんでありますが、その点に対してもう一ぺん一つ御所見を伺いたい。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 将来の長い展望からして積極的な意欲を持って大いにやれということは同感でございます。しかし、新しい一つ技術開発するためには、もう齋藤委員十分御理解のあるように、これはやはり時間がかかるのです。今一つ技術研究の時代でありますから、いきなり積極的にやれといっても、あるいは技術者養成にしても技術開発にしても、ある程度の時間をかけなければ、あまり急激といっても成果は上がらない。そういう点で、まず最初の段階としては、現在のような原子力開発段階というものは、これはやむを得ない。しかし、もっと積極的にいろいろな経験を積んで技術者養成できる、そういう段階が来たときには飛躍する時代がなければならない。だんだんと一歩々々というのではなしに、ある程度の自信がついたときはこういう新しい産業は飛躍的な発展を遂げる。その飛躍的な発展を遂げる過程においては多少ぐずぐずしておるじゃないかという、そういう時代もやむを得ないのじゃないか。新しい技術開発はそういう過程をとるのではないかという考えを私は持っておるのであります。しかし、意欲を持って歴任された機会に原子力委員会は新しい決意のもとにやれということは、これは私も委員長としてそういう考え方で原子力委員の各位と決意を新たにしてやりたいという考えでございます。
  24. 西村英一

    西村(英)委員 関連して。大臣の御答弁で気になるととろがありました。現在の状態で、電力の需給状況あるいは電気事業立場ということから見ますれば、原子力発電火力発電は、はるかに火力発電の方が有利であることは明らかであります。しかしながら、今までいろいろ議論もありましたような点も考えて、原子力発電を将来にわれわれは期待しておるのであります。従いまして、これをなるべく円滑に、急速に進むる点におきまして、およそ私は三つの点が原子力火力発電の大きい違いになると思うのです。そこで、この三つの大きい点につきましてこれを強力に進めていかなければ、改善していかなければ、原子力発電はなかなか進まないと思うのです。  その火力発電と違う第一の点は、今問題になりましたサイトの問題でございます。適地選定の問題でございます。しかし、これは諸外国でもいろいろなことを考えておりますが、日本はやはり非常に事情が違うのでありまして、何といいましても、日本の国情に合った考え方をしなければならぬ。このサイトの問題につきまして、日本においては、原子力国民が一般に適切に判断しない。どこに置きましても一部の方々はこれを利用して、いろいろ悪宣伝をやる。そのために非常に当事者はブレーキをかけられるのであります。私は、適地を選ぶ場合の二つの問題として、関係者に申しておきたいのは、第一番は原子力の利用を的確に国民に知らせるPRをするということが第一。第二の問題は、ただいまも中曽根委員から申されましたが、とにかく特別な国情にありますから、やはり施設周辺は整備してやるのだ、こういう安心感を持たせることが絶対に必要であろうと思うのであります。それをやらないと、また安川さんも言いましたが、おそるおそる今やっておるので、間違えばどうなるかわからぬと言っておるが、とにかく非常に安心させるということは必要でございます。これはもう前の長官でありました中曽根委員からも、施設周辺の整備をやろう——それについて政府も研究いたしておるようでありますが、いま長官のお話ですと、どうも今まだそれはほど遠い先のことだというようなことであります。私は、あのような法律は、あまり考えてもそう知恵は出るものじゃないと思うのです。今まで出た知恵で十分です。立法して、悪ければ直していけばいい。とにかく原子力の施設を持っておる周辺は整備してやるのだ、安心せよ、こういう安心感を与えることが絶対に必要だろうと私は思うので、ぜひこの国会でも立法をして出していただきたいぐらいな気持を持っておるのであります。もう一回大臣に、再考するという御返事をいただきたいのであります。私は一番障害になるサイトの点についてはPRすることと、周辺整備をして安心を持たせるということが最も必要であろうと思うのですが、もう一回大臣のお考えを伺いたい。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 だいぶ原子力に対する国民の理解も高まって、原子力施設をやるときには誘致運動が非常に盛んになってきておるということも、非常に原子力に対する国民の理解の高まった結果だと思います。しかし、これはなおPRの必要は認めますから、原子力局などにも、そういう希望のあったときには、スライドでも持っていって説明することはいろいろ科学技術振興の上にも役立つので、そういたすようにということを私は申しておるわけでございます。  ただ、原子力施設の周辺の整備の問題は、今現に東海村だけでありますが、いろいろ今後施設がふえて参りますと、そういうことも必要になってくる時期がある。しかし、この国会にそれを出せという西村委員の御要求に対しては、残念ながら、まだそれだけの——今東海村一カ所でもございますし、もっと検討を要する点もございますので、応じかねます。しかし、私が申しておるのは、茨城県に対して周辺の整備計画と申しますか、都市計画を、政府協力するから一つやってみて、そしてどの程度までそういうことの整備に対して政府協力できるのかいろいろ具体的に問題を検討してみる。それは将来の立法においても非常に参考になるだろう。だから、これを整備したいという意欲はあるのだということはあなたと変わらない。これをこの国会にでも法律を出すかということに対しては、それは応じられないということを申し上げるのです。熱意は持っておるので、この問題に対してはただ責任のがれでなく、このままで置いておけばまた非常に計画性のない都市になっていくということは、東海村などを見てその必要を感じておりますので、その具体的な青写真のようなものを作って、それで政府と地方がどの程度協力できるかというそのことも具体的に検討して、それは将来の立法の基礎にしたいと考えておるわけでございます。
  26. 西村英一

    西村(英)委員 周辺整備の法律は行く行くは必要になるであろう、そこのところは私と考えが違う。私はこの時に臨んで必要だ、こういうことなのでございます。これは今大臣とここで争っておってもしようがありませんから、いずれ大臣を啓蒙して、もう少し説得するつもりであります。  第二、第三の障害の問題ですが、これはもう私が言わなくてもわかるように、大体原子力発電所建設費は、はなはだ高い。東海村と最近できました火力を比べても、三倍も四倍もかかっておる。しかし、幸いにいたしまして、諸外国においても建設費は下がっていくだろうという見通しもついておるようであります。  第三の障害、これが私にはわからぬのです。東海村の発電所にいたしましても、何年かかるのですか、非常に工期が長い。火力発電所でございますと、わずか十五万キロの発電所なんかは二年半でできる。それが東海村はわずか十六万キロくらいで、何年かかるのですか。また延びたといっておりますが、いつ完成するのか。この点について、どういう考え安川先生お持ちになっておるのか。また、聞くところによりますと、建設費は現在の発電所の申請のときと今とそう値上がりしてない。工期はまた相当に延びたというのですが、建設費等はだんだん下がっていきましょうが、工期の点なんかは、原子力発電所それ自体においでやはり火力の二倍ないし二倍半かかるものであるか。しかし、今度は初めてのことであるからそうであったのか。あるいはいろいろ茶々が入って、監督官庁の許認可をめぐって引き延ばされたのか。あるいは資金の面でこういうふうに六年も七年もかかるのか。つまり工期が長くなる原因がわかっておらなければ——将来に向かってこれは心配するな、今度初めてであったから長くかかったが、将来は火力が二年半くらいでできれば、そのくらいの容量は三年くらいでできるようになるんだ、こういうのですか。その辺が私は心配になるのでございます。  要するに私たちは、やはり将来を見通しましても、どうしても原子力に期待しなければならぬと思っておりますがために、その発電所の建設を進捗させる上で障害となるべきところのサイトの問題、建設費の問題、工期の問題、その他いろいろありましょうが、建設費と工期の問題について、安川先生、何かお考えがありますれば一つ教えていただきたいのでございます。
  27. 安川第五郎

    安川参考人 まず最初に工期の問題です。イギリスの今日やっておる各種の原子力発電所完成期間を見ますると、石炭石油燃料の火力発電所よりもはるかに長い期間がかかっております。これはこかまいところでどういう点でそう長くかかるかということは、私はそう検討したわけじゃありませんが、要するに安全性を確保するために例の圧力容器の溶接が、ボイラーなどに比し数倍やかましい規定によって検査も厳重にしなければならぬというようなことも一つの原因じゃないかと思います。イギリスでも、火力よりもはるかに長い期間を要するということは、私、申し上げて差しつかえないと思います。  ところが、東海村の、それよりもなお以上期限が延びた原因は、これは東海村に限った一つの原因があるから起こったわけであります。第一に、いよいよ建設に入る段になって、最初の向こうから持ってきた仕様書、図書、設計だけでは、日本はまた日本のいろんなコードがありますので、やはり日本建設する以上はそれに従わなければいけない。イギリスそのままの設計では、日本で取り入れることはいろんな点で支障があるということで、そういう観点から向こうの設計にだいぶ変更を要求した。われわれは簡単に設計は変更できるものと思っていたのが、向こうに言わせると、ほとんど全部根本から設計をし直さなければならぬというので、設計のし直しに要する期間を相当向こうから要求されて、こちらとしても、それはなかなか表面に出せぬからということで強く要請をして、こっちもあらゆる方法を講じて、六カ月延びるというのを三カ月に縮めたというようないきさつがあります。  それから、第二の大きな問題は、圧力容器に用いた鋼材が、これははなはだ予期しないできごとであったのでありますが、イギリス一流の製鉄会社の供給したものが、いよいよこちらで加工をして溶接の段階になって、非常な瑕瑾が発見された。しかもそれは一カ所、二カ所じゃないという判断で、これを全部はねる。しからばこれをどこに注文がえをするかということで、残された製鉄会社は、ドイツにマンネスマン、イギリスにもう一つ、今度注文したのと対抗的な一流の製鉄所があります。それから第三には、これはむろんおひざ元の日本にも製鉄所がある。そのうちで日本製鋼所ならば国内でもあるし、デリヴァリも早いだろう、従って価段も外国から輸入するよりは割合に安く上がるだろうということで、実は日本製鋼に注文がえをいたしました。日本製鋼としては非常な便宜をはかってくれました。その問題の起こったのが昨年の八月ごろであったと思いますが、結局本年一ぱいにほとんど全部必要な鋼材を日本製鋼は供給してくれるという結果になったのであります。しかし、何にしても、向こうからせっかく持ってきたものを全部向こうに返す。新たに日本で製造したのでありますから、その間の期間、相当延期をやむなくされたわけであります。結局初めの契約よりも八カ月延期を承認せざるを得ない結果になったわけであります。しかし、ただいまの約束では、昭和四十年の三月一ぱいに完成という改定した契約になっております。  それから、値段の点でありますが、値段は、最初われわれが調査団としてイギリスに渡って各メーカーに打診し、またAEAの意見等を調査したときは、割合にキロワット安い。これなら、あるいはうまくいけば石炭火力くらいには対抗できるのではないかというような気がする程度であったのであります。いよいよこちらからディテールの仕様書を突きつけますと、むろんその中には日本独特の耐震構造というものは追加されておるのでありますが、イギリスで感じたよりもキロワット当たりの建設費が案外高いものについておりました。それをいろいろ向こうと交渉し、最も経済性の高いものを選定するという立場で、御承知のようにGECに指定してきたのであります。  その後、ただいま申し上げるような、日本日本なりのいろんな立場から、安全性などは御承知のように安全審査委員会で相当もみにもまれて、この結果として相当設計変更もありましたし、それから追加施設も全部安全性に関する施設でありますので、極端なことを申し上げれば、この装置がもしフェールしたら第二の装置で安全を保障する、この装置がもしいかなかった場合にはこれで防ぐというような、四重、五重の安全装置を加えざるを得ないということに当然なりました。御承知のように、初めの契約のときに何もかも入れておくと、割合にメーカーの方も安い値段でなにするのですが、あとの設計変更による追加ということになると、とかく値が張るのは、特に向こうが暴利をむさぼるというわけではないのでありますけれども、案外に経費がかさむものであります。そのために、最初の契約当時の価格からなお以上追加しなければならぬということで、案外に最初の一基は高いものになったということは、これはどうしても申し上げざるを得ない羽目になったわけであります。これらの経験を将来の少なくも第二基に対しては十分参酌して、再びこういうような追加経費のかかるような、また期限を予定よりも延ばさざるを得ないようなことのないように、十分一号炉の苦い経験を生かしたいと私は考えておるのであります。節一号の発電施設に関しては遺憾ながらそういう大きな問題が発生いたしまして、期限が延びるし、また経費もそれに応じて相当追加せざるを得ないようになったことは、はなはだ遺憾に考えておる次第であります。
  28. 西村英一

    西村(英)委員 幾らになりますか。
  29. 安川第五郎

    安川参考人 期限が延びたために、ただいまのところは、金利や何かみな入れて二十七億という計算にはなっております。
  30. 前田正男

    前田委員長 次に岡良一君。
  31. 岡良一

    ○岡委員 これは初めに委員長に御注意を申し上げておきたいのだが、きのうの理事会では、まず先に法案を上げよう、だから法案に直接関係のある質疑を大いにやろうではないか、そのあとで原子力行政一般についての質問をやる、こういうことだったわけです。ところが、この申し合わせが実は守られないままにこうしてきておるので、この法案の審議に入れない。これは今後ぜひきちっと理事会の申し合わせを守って運営をしていただきたい。  ただ、私は法案に入る前に一点だけお尋ねをいたしたいというのは、原子力基本法の運営の問題でございます。いま中曽根委員からのお尋ねに対して三木長官は、第三国が原子力軍事利用をするということがわかっておっても、日本メーカーが炉を建設したりすることのために必要な資材を売ることは原子力基本法の違反ではない、こういうふうに御答弁になったと思いますが、そう理解してようございますか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 原子炉が、インドの場合を例にとっての質問であったわけですが、これは主たる契約者があって、その部分的な下請をやるわけであります。そこで、それをインド政府がどういうふうに利用するかということについては、これは日本の場合としては最終までこれを見届けるわけにはいかない。従って、こういうケースの場合において、日本メーカーがその下請をやる場合に、インド政府日本政府との間の政府協定をしなくても、そういう契約原子力基本法に違反しないということを申し上げたのであります。
  33. 岡良一

    ○岡委員 日本と英国、あるいは日本とアメリカとの動力協定の中では、特にわが国は強く主張しておる。原子力基本法第二条に基づいて、日本が相手方に返還をする使用済み燃料等の平和利用については、条約正文あるいは議定書ではっきり相手方の確約を取りつけております。  そこで、英国がインドとの間に当然協定を結ぶと思います。結んでおりますが、さらに結ぶこともあり得るでしょう。そこでその場合に、英国が情報や資材その他をインドに供給するということが、英国の原子力公社とインド政府との間に結ばれる。ところが、たまたまその資材の中のある部分が日本メーカーに発注をされる。そしてそれを提供する。ところが、インドと英国との条約において何ら使用済み燃料の平和利用という確約がない。軍事利用されるという可能性があるということになれば、事実において日本インドの原爆実験に協力するということになるではありませんか。国民はだれしも常識的にそう考えると私は思う。これはやはり原子力基本法第二条の建前からいって著しい違反だと私は思いますが、いかがでしょう。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 インド政府が軍事目的のために利用するということを明確にした場合、これは検討を要すると思います。基本法の見地から十分な検討を要する。しかし、御承知のようにプルトニウムなどは、インド日本プルトニウムを持っていくというのではないのであります。その原子炉に対してのある下請をやるというのです。そういう場合に、いずれの場合においてもそういう契約というものが原子力の基本法に反するというようには考えない。すなわち純然たる軍事目的という場合には、基本法の見地から検討しなければならない問題だと思います。
  35. 岡良一

    ○岡委員 それでは、他の国が軍事利用を目的として原子炉建設する場合、その部品を日本メーカーが提供することは、どのようなトンネルをくぐろうとも、これは原子力基本法の違反になる、こうおっしゃるのですか。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力基本法にその場合においても真正面から違反になるかどうかということは、これは十分検討を要しますが、そういう場合、好ましいものではない。基本法の問題については、まともにそれが違反だと言い切るためには検討を要しましょうが、しかし明らかに軍事目的という場合には、日本メーカーがその契約に応ずるということは好ましいことではないと私は思います。
  37. 岡良一

    ○岡委員 これは原子力委員会の統一見解というものをぜひお示しを願いたい。有沢委員も石川委員もおられませんから、原子力委員会として、来週のこの委員会にでも、ぜひ統一見解をお示しを願いたい。  なお、さらに具体的にインドとしぼってみた場合、私は英国とインドとのコールダーホール改良型導入に対する交渉の経過も、あるいは条約の内容も知りません。ただ、インドは使用済み燃料の返還をしない、インドにおいて保有する、あるいはこういう措置に出ておるのではないかと推定される理由はございます。と申しますのは、ボンベイの近くのトロンベイでは、使用済みの燃料の処理工場が稼働しつつあるかのように聞いております。それから一方では、トリウムが無尽蔵にあるということも聞いております。またインドの、原子力委員長は、プルトニウム・トリウム・サイクルでいわゆる増殖炉、こういうものの開発というようなことも平和利用会議などで発表しておられたこともあるやに私は聞いておる。そういうような事情考えますると、英国に対して使用済み燃料の保有を主張しておるのではないかと思われる節があるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、やはりこれは原子力委員会として、インドと英国政府との間においてどういう取りきめが進められておるのか、同時にまたその取りきめの内容として今申しました点もはっきり見定めてもらわなければならぬ。これは当然原子力委員会として私はとるべき措置だと思う。でなければ、原子力基本法の建前からして重大な問題だと私は思うので、これは三木長官もぜひしかるべき筋を通して、インドと英国とにおけるこの動力炉導入に関する交渉、最近の結論などなど、これもあわせて原子力委員会の御見解と同時にこの委員会に御報告願いたいと思います。  さて、それではこの法、案に即してお尋ねをいたしたいと思います。御存じのように、昨年の、原子力災害の損害賠償法につきまして、私ども委員会は附帯決議をつけまして、先ほど来問題になっているように原子力施設周辺の整備、あるいは原子炉の安全基準、あるいは従業員の健康を守るための措置、これはあの附帯決議の全文をお読みいただけばよくおわかりのように、この損害賠償法が発効するまでには原子力委員会として善処をしてもらいたいということが書いてあります。この法律はことしの四月に発効いたします。そこで私どもは特にその東海村に問題を移して考えます場合、御存じのように、われわれが他国との原子力協力協定では免責条項、これは政府間の協定で免責をのんでおるわけです。だから、相手国から受け取った資材、情報等は、相手国としてはできるだけたんねんなものであるように努力するが、しかし何しろまだ未開拓な原子力の分野の問題であるから、万一の事故が起こっても相手国の責任はとらない。ということは、言葉を返せば日本政府の責任だ。ところが、損害賠償法では五十億を限度とするこの賠償保険に入るということにいたしまして、しかもその損害賠償の責任は無過失責任の原則原子炉の設置者に集中される。非常にこれは苛酷なやり方なんです。しかし、原子力の場合は仕方がない。仕方がないが、政府政府が免責をのんでおる以上は、やはり政府としてもできるだけ事故を少なからしめるような努力がなければならない。こういう趣旨から、私どもは施設の周辺の整備あるいは炉の安全基準、従業員に対する必要あらば特別な災害補償の法制的措置をとるべきであるという附帯決議をつけておる。  そこで、一体これらの附帯決議について原子力委員会の諸君は御検討なさったのかどうか。もう一年たっておりますが、なさったのかどうか。なさったとすれば、どういう結論に到達になったのか。まず一つこのことを、何しろ日本原子力研究所は世界無比の原子炉の集中したところでありまするから、特にわれわれの附帯決議はこの際必要だと思う。一体検討なさったのか。なさったとすればどの程度まで御検討を済ましておられるのか、御報告願いたいと思います。これは原子力委員のどなたかから、ぜひ一つ御報告願いたいと思います。
  38. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 お答え申し上げます。  この前の災害補償法の御審議のときに附帯決議をつけられましたことは、もちろん十分承知いたしております。その後原子力局の方で、関係当局の人々と相当の時間を使いましていろいろ折衝いたしました。その結果、一つの壁にぶつかっておるわけであります。その壁をどういうふうにして打開するかということは、まだ今日現在、こういう法案にして国会に提出できるという見通しに至っていないのであります。でありますから、先ほど委員長が、この国会に提出できないと思われる意味のことを御返事なさったわけであります。決してほったらかしておるわけではございません。
  39. 岡良一

    ○岡委員 私どもの附帯決議は幾つもあるわけで、今壁とおっしゃいましたが、原力炉の安全基準を設定しろという附帯決議に対してどういう具体的な壁がありますか。従業員の災害補償について善処しろという附帯決議に対してどういう具体的な壁がありますか。原子力施設周辺の整備というわれわれの附帯決議についてどういう具体的な壁がありましたか。この際、その壁をお示し願いたい。
  40. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 今私が申しましたのは、周辺の施設のことだけについて申し上げたわけであります。現在原子炉の安全審査というのは、考えられる事故といたしまして、敷地の周辺以外に影響を及ぼさないという建前で審査をしておるわけであります。そこで、その審査されて大丈夫という結論になったものについて設置の許可をしておるわけであります。しかし、それにしましても、原子力の現況はそういうことにたより切っておられないという面は、もちろんなくはございません。ところが、法律に持っていきますときに、そこをもう少し私の方で割り切るのでないと、特別な取り扱いをすることができないというような意見が強いということを、私御報告を受けております。従って、もうそれで壁にぶつかったからあきらめたというわけではないわけでありまして、それをどういうふうに調和をとるかというようなことで、検討を残しておるわけなのでございます。ほかの二点につきましては、またそういうのとは違いまして、別に私は壁というような言葉で申してはおりません。
  41. 岡良一

    ○岡委員 それでは、具体的にどういう障害がありましたか、ほかの二点について。
  42. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 安全基準につきましては、安全基準専門部会の方で、もうすでに二年以上にわたりましていろいろ検討を重ねていただいておりますけれども、学者の間でこういうものの基準を作ることができるという結論になかなか到達できないのが現況であります。従って、そういう専門部会における専門家の御意見を伺っておりますと、今すぐこれを作ってもらいたいということを希望するのにも私どもちゅうちょされる面がありますので、そういう安全基準という形ではできませんけれども、ケース・バイ・ケースについて審査をするごとに、何かそれに類したようなことを念頭に置きながら審査をしてもらっておるというのが現状であります。
  43. 岡良一

    ○岡委員 とにかく附帯決議に責任を持つのは直接には原子力委員会なんです。原子力局でもなければ、安全基準部会でもない。二年越しかかってもまだ結論が出ない。あるいは原子力局の意見に徴すれば、どうも障害がある。では、原子力委員会は責任を回避しておると思う。そういうことがあってはいかぬと思う。だから、今の御答弁では何も具体的な責任ある御答弁を私は伺っておらない。この附帯決議に関連して原子力委員会がどういう御討議をされたか。来週までにぜひ一つその議事録を御提出願いたい。その上で私はまた申し上げることがあれば申し上げたいと思いますから、ぜひ議事録を出していただきたい。  それから、半均質炉の問題です。長期計画では半均質炉の計画、これがプルトニウムの研究とあわせて二つの、重大なプロジェクトとして設定されておる。ところが、前回の委員会でも問題になったように、この半均質炉については非常な問題が起こってきている。原子力委員会としてはこれをどう取り扱われるか。これは駒形さんが一番適任者だから、駒形さんどうされます。
  44. 駒形作次

    ○駒形説明員 半均質の炉のことにつきましては、前回菊池原研理事長からいろいろお話がございました。私どもも、おおむねその考えを持っておるのでございます。結局半均質炉としてはこの際いろいろな問題がございますので、それを基礎的のものは基礎的に、一方、炉の問題として考えるものは考えるものといたしまして、しかもそのリアクター・プロジェクトとしては広い意味で問題を取り上げていくようにして、半均質もその中に加えたい、大体そういう考え理事長もお述べになったようでございます。そういうことで、早くその線に沿って結論が出るように考うべきではないかと考えます。
  45. 岡良一

    ○岡委員 この半均質炉の今日の現状、ひいては組織としての半均質炉開発の問題などについて、日本原子力研究所から原子力委員会に御報告がありましたか。同時にまた、原子力委員会としてはこれを親身に御協議になりましたか。
  46. 駒形作次

    ○駒形説明員 原研から半均質炉の点につきまして伺っております。そして、そのあと私どもといたしましても、いろいろ中でディスカッションをいたしております。
  47. 岡良一

    ○岡委員 この半均質炉は、いわゆるプロジェクトとして原子力委員会が策定した計画の中に、はっきり書いてある。であるから、当然原子力委員会としては真剣に取っ組んで、善処方について具体的な対策をやはり用意してもらわなければいかぬ。茶飲み話で話をしてもらっちゃ困る。原子力委員会には、やはりこういう問題については検討する機関もあるはずだ。問題は、新しい原子力委員に御選任になった方もおありですが、もう少し原子力委員会というものは責任を持たなければいかぬ。自分が、長期計画として、その重要なプロジェクトとして半均質炉の研究開発とうたっておる。ところが、原研においてはこの問題が第一次の評価委員会では、冷却材の問題で一頓挫の状態にもある。こういうことで、原子力委員会としては、東海村に行って親しくひざをまじえて話をする、原子燃料公社なら原子燃料公社に出かけて、現場と接触をしつつ、原子力委員会としては機動的に、能動的に、積極的に働かなければいけない。眠っておると私は思う。いよいよ原子力関係の問題もいろいろ国際的にも新しい方向が打ち出されようとしておるし、そういうときには、よほど原子力委員会はがんばってもらわなければならない。この際原子力委員長として、一つこれまでのようなやり方ではいかぬ、今後は腰を据えて、責任を持って原子力行政をリードするのだという立場で邁進をしてもらえるかどうか、この点委員長の御所信を伺いたい。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力委員会もなかなか今日までよくやっていられますが、いろいろ長い今までの原子力委員会の運営、そういうものに反省を加えて、一つ改革をしようじゃないかということを、きのう第一回の会合でも話し合ったわけでございます。岡君の御指摘のように、今後決意を新たにして、原子力委員会の運営に当たりたいと考えております。
  49. 岡良一

    ○岡委員 ぜひ一つ決意を新たにして、積極的に責任を持って取っ組んでいただきたいということを、この機会に皆さんに心からお願いいたします。失礼なことを申し上げました。私はこれで終わります。
  50. 前田正男

    前田委員長 これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  51. 前田正男

    前田委員長 これより討論に入るわけでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに本案の採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認め、よって、さように決しました。  これより本案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 前田正男

    前田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決するに決しました。     —————————————
  54. 前田正男

    前田委員長 ただいま議決いたしました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対して、内海清君より、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案として附帯決議を付する旨の動議が提出されております。  まず、その趣旨の説明を求めます。内海清君。
  55. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいま議決になりました日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対しまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党三党共同提案によりまする附帯決議を付するの動議を提出いたしたいと存じます。  まず、案文を朗読いたします。   日本原子力研究所法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   日本原子力研究所は、ひとりわが国のみならず広くアジアのセンターとして発展せしむべきである。この見地よりして、研究所の今日までの実情にかんがみ、政府原子力委員会並びに日本原子力研究所は、特に左の諸点の実現を図り、もってその負託に応うべきである。  一、研究開発計画は重点的に策定するとともに、その計画を推進するためには、関連各部門は互いに緊密なる連絡を保持しつつ協力一致の体制をとり、研究所の機能を集中的に動員し得るよう、組織、運営の刷新を期すべきである。  一、研究所の従業員については、その研究、作業環境の特殊性にかんがみ、健康の保持並びに処遇の適正化等について、責任ある措置を講ずべきである。  右決議する。  今日世界におきまする科学技術の進歩発展というものはまことに驚異に値するものがあるのでありまして、この開発研究、このことが国力の伸展のバロメーターであるとさえいわれておるのであります。しかも、その中核をなすものがこの原子力開発であり、しかも、これがいかに平和的に利用されるか、こういうことにあることは今さら申し上げるまでもないのであります。従いまして、世界各国におきましてもこの原子力開発平和利用、この面に対しますところの施策あるいはそれに対する熱意、こういうものも私どもの想像以上にあることは御承知通りであるのであります。  こういう情勢の中におきまして、今日までにおきまするわが国のこの部面に対します情勢を顧みますときに、いろいろな障害があることも承知いたしております。その中にあって、関係各位がそれぞれ御努力になっておることはうかがい知ることができるのでありますけれども、この際特に十分なる反省を加え、そうしてここに心を新たにして最大の熱意努力を払って、この研究所の機能が集中的に動員できるような体制を作り、そうしてこの研究開発が飛躍的に推進、発展いたしまして、その負託にこたえられなければならぬと考えるのであります。  こういう意味におきまして本附帯決議を提案いたすわけであります。何とぞ皆さんの御賛同をお願い申し上げる次第であります。
  56. 前田正男

    前田委員長 本動議については別に御発言もないようでありますから、直ちに採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  57. 前田正男

    前田委員長 起立総員。よって、本動議は可決いたしました。  この際三木国務大臣より発言を求められております。これを許します。三木国務大臣
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいまの附帯決議に対しては、政府も十分尊重いたす所存であることを申し述べておきたいと思います。     —————————————
  59. 前田正男

    前田委員長 ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決します。      ————◇—————
  61. 前田正男

    前田委員長 これより原子力行政一般に関する問題について調在を進めます。  それでは、本問題について質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。岡良一君。
  62. 岡良一

    ○岡委員 委員長の要求もございますので、私は一点だけ、先ほどお尋ねいたしました問題と関連しますので、この機会に長官である原子力委員長にお伺いしたいのです。  それは、先般予算委員会で藤枝防衛庁長官が核兵器の保持について答弁をしておられました。この答弁は、新聞紙によりますと、憲法の法理論的な解釈からは、小型の核、兵器を持つことを禁じてはおらない、しかし政府としては核兵器の持ち込みも保有も認めない方針である、こういう答弁をしておられる。これが政府の統一見解であるのか、まずこの点を一つお聞きしたい。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 憲法の解釈については、政府間でそういう問題を議題にしたことはございません。しかし今日、日本に核兵器を、それが小型であろうが大型であろうが、持ち込むということは、政府としてこれはいたさない。また事実今日の国民感情からいたしまして、核兵器を持ち込むなどということは、それが許されることではない。従って、法理論はともかく、池田内閣が核兵器を持ち込まないというのは厳粛な国民に対する約束であると私は強く感じておるものでございます。
  64. 岡良一

    ○岡委員 そこで問題は、憲法の法理論的解釈からは小型の核兵器ならば持ち込みが認められる、池田内閣としては国民の感情その他を考慮して核兵器の持ち込みは絶対しないということであれば、池田内閣でない別な内閣が政策的にこれを持ち込むということはあり得るということでございますか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 自民党が健全なる限りそういうことはないと思います。
  66. 岡良一

    ○岡委員 それでは、よく小型あるいは大型の核兵器ということがいわれておる。原子力委員長としてあなたは専門家でいらせられるわけなんだが、小型あるいは大型の核兵器という基準はどこで求めるのです。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員の言われるように私は専門家ではございません。学問といいますか、技術的にいえばいろいろ区分けがあるのでしょうが、しかし、普通の常識からすれば、小型というのは、規模においてもきわめて小さいし、私も常識的に考えておるので、これを専門的に説明せよと申されますならば、これは適当なほかの政府委員等によることが適当である。私はきわめて常識的に小型、大型というものを考えておる。それ以上専門的には私もよく存じないのであります。
  68. 岡良一

    ○岡委員 この小型、大型というような使い分けは、いわば私も知りません。おそらく世界にも小型の核兵器、大型の核兵器という基準は私はないと思う。にもかかわらず、小型ならば憲法解釈上、法理論的には保有が認められるというならば、小別出というものはいかなるものであるかということの概念規定は、私は少なくともなければならぬと思う。でなくては、そういう俗耳に入りやすい言葉で人をたぶらかすことになる。政府としては、小型ならば法理論的にいいというならば、小型とはかくかくのものだというはっきりした限定がなければならぬわけではないでしょうか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 私が申し上げておるのは、日本が核兵器というものを保有しない、これは強い決意であると言っておるのでございますから、小型とか大型とかいうものを区別して、小型なら場合によったら持ち込むという伏線のためにさように区別はしていない、またすべきものではない。小型も大型も核兵器は保持しない。これは強い決意でございますから、それを岡委員は、小型なら場合によったら持つ場合があるのかという御疑念かもしれませんが、そういう御疑念は御無用に願いたいと思うのでございます。
  70. 岡良一

    ○岡委員 実は予算委員会で岸総理が私に答えられたときに、小型ならば憲法解釈上あり得る、そう言っておられる。しかし、池田内閣では、小型、大型といわず、憲法解釈上も核兵器はそれでは持ち得ない、こう言われるのですか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 憲法解釈上は私は議論があると思います。私自身もこれは強い反対論者でありますから、そう憲法というものに対していろいろ拡大解釈をしたくない。きわめて厳重に、日本は核兵器を持つべきでないという私の政治家としての強い信念を持っております。そういう点であるのでありますから、それを伏線に利用するという考えは毛頭ない。しかし、憲法の解釈においてはいろいろ議論のあるところだと思います。従って、憲法解釈上も、これは持つことはできないのだと私はここで断言することはできない。
  72. 岡良一

    ○岡委員 要するに、憲法第九条の解釈においては、皆さんは自衛権というものの存在を認める以上は、自衛力というものはあり得るんだ、こういういわば前提に立っておられる。百歩譲ってその場合でも、大型、小型などといわず、すべての核兵器は自衛力の中に含まれない、こう言われるのでございますか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 私自身としては、これは憲法解釈ということになれば、そういうことで政府がいろいろこれに対して検討して、私は答えることが適当ではないと思います。しかし、原子力基本法もあり、私の強い信人心としては、大型、小型と区別するものではない。やはり核兵器は日本に持ち込むべきではない、こういう強い考え方を持っておるし、原子力基本法を忠実に履行しようとする原子力委員長としては、むろん私自身としてはそういうことはやるべきでないという強い考えでございますが、憲法解釈ということについては、これは私はここで政府を代表して憲法解釈の問題を申し上げるのは適当ではないと考えるのでございます。
  74. 岡良一

    ○岡委員 私は、別に古い憲法学者の意見を聞こうとは思わぬ。やはり常識ある国務大臣としてのあなたの所信を実は聞きたい。問題は、自衛力、侵略という対句がある。しかし、核兵器という問題になりますると、それが侵略か自衛かという限界は非常にもうろうとしておる。おそらく小型の核兵器というのは、先般日本にも来られたアメリカのH・キッシンジャーという方が、いわゆる核限定戦争、その場合は二十五キロトンまでの小型核兵器は持ち得るというようなことを言っておる。文献を探すと、あれが小型に該当するのかもしれませんが、しかしそんなものが使われたら、二十五キロトンが五十キロトンになり、あるいはメガトンにならないという保証はないわけです。侵略、自衛といいますが、ソ連はアメリカ帝国主義の戦争挑発があるために核実験の再開をやった。今度アメリカの方では、自由主義諸国の安全を守り世界平和に貢献するために核実験の再開をやらなきゃならぬ。両方とも平和といい、防衛、自衛といいながら、核実験をやり核兵器の開発をやっておる。そういう言葉のあやではなくて、私はあらためてあなたの御所信を聞きたい。  原子力基本法第二条は、もちろん憲法に基づくものである。原子力委員会は、原子力基本法を守ることが当然な責務である。従って、わが国における原子力の研究開発利用は平和の目的に限ると明確にうたわれておる限り、単に小型であるとか大型であるとか、法理論的な解釈だとか、あるいは政策論的にどうということじゃなく、基本法が健全に存在する限りは、日本国は、核兵器を持って自衛隊が武装することも、外国の核兵器の持ち込みも、基本法を改正しなければできない。私はそう信じております。大体長官の御所信と一致しておると思いまするが、さらにお聞きをしておきたい。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、原子力基本法は、大体岡委員のように厳重に考えておるわけであります。原子力基本法の精神からいたしましても、核兵器を持ち込むということは、原子力基本法の精神にも反すると考えております。
  76. 岡良一

    ○岡委員 大体なんと言われると、また文句を言いたくなるのであります。  時間もなんでございますし、実は私も病後で声が続かないようですから、来週ゆっくり原子力一般の問題について御質疑を申し上げることにして、きょうはこれで終わります。
  77. 前田正男

    前田委員長 この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本委員会審査のため長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、委員会を代表いたしまして私から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  78. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 安倍委員質問関連質問でちょん切って、あとの質問がたくさん残っておるのですが、委員長はこれをどう取り扱われますか。
  79. 前田正男

    前田委員長 来週の木曜日に原子力一般について審査を進めたいと思いますので、そのときに安倍委員にお願いしたいと思います。どうぞ御了解を願いたいと存じます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十六分散会      ————◇—————