○松前委員 そういう場合は少ないとおっしゃいますけれ
ども、その
技術を使って生産をした品物を海外に出してはいけないという
ような市場制限をすることは、これはもうその特許を使わせるときに当然のことなんです。自分の会社が従来輸出しておった市場が、
日本の低賃金で、多少器用な国民によって生産された品物によってどんどん占領されていく、縮小されていくということは、だれも好まないのでありますから、当然
技術導入による市場制限というものは伴ってきております。この点は、今大した影響はないとおっしゃいますが、実際大いに影響があるのです。これはほんとうにまじめに
一つ調べていただきたい。私は何もここで政治的な取引きの問答をしておるわけじゃないのです。ほんとうに憂えて私らの
意見を申し上げておるわけなんです。というのは、ある会社、名前は申しません、
日本における有力なる
電気関係の会社ですけれ
ども、それはある国の有力なる会社と提携をしております。提携をしておりまして、
技術導入はほんのわずかしかしておりませんけれ
ども、数年前に向こう十五カ年間という
ような協定を、いわゆる
技術導入とあわせて今の市場協定をちゃんとしておる。表面は市場協定は出ておりません。けれ
ども、裏にあります。私はちゃんときのうも聞いてきた。有力なる会社です。設備投資をどんどんやっております。そういう会社がたくさん
日本にある。ことに最近における精密機械の工場等は非常にそれが多い。大メーカーというものはそうです。小さな中小企業はありませんけれ
ども、大メーカーは相当にこれが多い。多いどころか、私はほとんど全部に近いんじゃないかと見ておる。
ですから、たとえば、自分のことを言っては、はなはだ口幅ったい話ですけれ
ども、私がドイツへ行ったときに、ちょうどジーメンスのある技師が私を尋ねてきた。フランクフルトの駅へ尋ねてきました。そして、昔よく知っておったものだから、年をとっても思い出して迎えにきた。そして、君を迎えたらおれはインドへ行くのだ、君を迎えて電報を打てばそれで使命は終わるのだから、と言う。なぜインドへ行くのかと聞くと、君が発明した無装荷ケーブルを全面的にドイツが注文を受けた、こう言うのです。私が二十四、五年前にドイツへ行ったときに、無装荷ケーブルはできないと言って大いにドイツは反対した。それを思い切ってやった。ところが成功した。成功して
日本の会社に作らしたが、輸出ができない。
日本で発明して、
日本の輸出ができません。
日本の会社全体が押えられているからです。片や
アメリカに押えられ、片やドイツに押えられている。だからその会社は特許権が切れたので、どんどん作って輸出しておる。
日本は出ていけない。遺憾ながら、
日本の国産
技術でありながらも、海外に輸出ができないのです。そこに私は基本的な問題があると思う。
そういう
ような協定をしている会社が、相当むちゃくちゃな設備投資を今やっております。ですから、国内市場だけです。ああいう妙な広告の何とかテレビ、何とかラジオという
ような大きな立て看板が至るところに、町の交差点あたりにはどこにも林立しております。ああいうのは
世界に珍しいと思う。みんなそれぞれ、おれはウエスティングハウス、おれはゼネラル・エレクトリック、おれはRCA、おれはレイテオン、おれはジーメンス、おれは何々と、それぞれコネクションをつけて、みんなやっておる。それがみんな
日本の名前で看板が立っておる。外国のひもつきの市場争奪戦が
日本国内で行なわれておる。こういう
ような現象を呈して、それに設備投資を相当にやっているはずです。これは具体的に調べれば、私は非常におもしろい今後の経済政策のデータになると思うのです。ですから、西ドイツやあるいはまた
アメリカや英国など――英国は多少低いのですけれ
ども、そういう国の経済学者が書いた論文や、やり方などをそのまま踏襲して、そして経済企画をやる
ような経済企画のやり方では、
日本の経済は決して復興しない。大体輸出制限をされておる国、
科学技術の低いレベルの国でありますから、その現実を認めた上で、やはり
日本的な性格の上においてやるべきものだ、こういうふうに前々から考えておったので、所得倍増計画でいつか論議してみ
ようと思ったのですけれ
ども、まあ遠慮して、しなかった。とにもかくにも、こういう現実を私
どもは認めなければならないし、同時にまた為替管理の委員会等に出てくる各会社の申請の
資料というものには、こういうことは出ておりません。市場制限の問題は裏でちゃんと契約はでき上がっております。だから、今後
科学技術が基本的な役割、経済の復興に対して責任を持っているわけであります。それを市場制限を受けているのはわずかしかないという御認識は、一ぺん、相当にあるという前提の上に立って、まじめに御
調査になっていただきたい。そうして、将来の
日本の建設をやらなくてはならぬ、こういうふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。それともやはりまだ、わずかしかないとお思いですか。