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1962-02-22 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十二日(木曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員   委員長 前田 正男君  理事齋藤 憲三君 理事中曽根康弘君  理事西村 英一君 理事山口 好一君  理事岡  良一君 理事山口 鶴男君    安倍晋太郎君   佐々木義武君    細田 吉藏君   松本 一郎君    石川 次夫君   西村 関一君  出席国務大臣    国 務 大 臣  三木 武夫君  出席政府委員    科学技術政務次    官        山本 利壽君    総理府事務官    (科学技術庁長  島村 武久君    官官房長)    総理府事務官    (科学技術庁原  杠  文吉君    子力局長)  委員外出席者    原子力委員会委    員        駒形 作次君    総理府技官    (科学技術庁原  井上啓次郎君    子力局次長)    参  考  人    (日本原子力研  菊池 正士君    究所理事長)     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本原子力研究所法の一部を改正す  る法律案内閣提出五九号)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、日本原子力研究所法の一部を改正する法律案について、本日、日本原子力研究所理事長菊池正士君を参考人と決定し、また来たる三月一日、同君並びに日本原子力発電株式会社社長安川第五郎君を参考人と決定し、それぞれ意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  4. 前田正男

    前田委員長 日本原子力研究所法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  5. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 日本原子力研究所法の一部を改正する法律案につきまして、簡単に御質問申し上げたいと思います。  この一部改正法律案は、第十条中理事「「六人」を「七人」に改める。」この理由は、「放射線化学研究業務に係る管理機能を強化するため、同研究所理事の定数を一人増加する必要がある。」という提案の理由でございます。まず第一にお伺いいたしておきたいのは、事務当局に対して、放射線化学という概念、これは一体どういうことを意味するのか。これを一つ説明願いたい。
  6. 井上啓次郎

    井上説明員 ただいまの御質問は、放射線化学というものはどういうものであるかということでございますが、その点につきましては、御承知のように、放射線を使った化学反応というものは非常に範囲が広うございまして、各国とも非常な進歩を遂げております。技術的に見ますと、非常に技術革新の動きがあるということでございます。その中で、最近日本におきましても基礎研究は相当進みまして、それを企業に持っていく、いわゆる工業化するというときの方法論、いわゆる中間規模試験と申しましょうか、そういうものが問題になっておるわけでございまして、それを強力に推進するということにつきましては、今後のわれわれに課せられた使命だと考えておりますが、それには非常に大きな施設が必要でございます。従いまして、そのために原研放射線化学中央研究所というものを設けるようにした次第でございます。  その中身と申しますと、一応そういうふうな基礎研究の終わった、これから企業に持っていくための方式でございますが、現在のところ非常に広い範囲にわたっていますが、基礎的な項目のものとしてはエチレンからポリエチレンを作るための中間試験方式研究開発するということでございます。それから、セルローズにスチレンをグラフトいたしまして、よりよい繊維を作っていくという研究一つの課題になっています。さらに、最近注目されていますホルムアルデヒトの重合、これは「鉄より固くアルミより軽い」というキャッチフレーズで知られていますデルソンのもとでございますが、そういうふうな新しい技術革新のもとになるものでございます。さらに、最近原研の方でも研究が進んでおりますけれども、ベンゼンからフェノールを作る、これは従来の化学反応でもできますけれども、よりよい成果がおさめられる。こういうものが対象になっているわけでございまして、これからどういう新しい技術が出てくるかわかりませんけれども、現在わかっている範囲におきましても、相当今後の化学工業の大きな基礎になるというものが対象になっているわけでございます。
  7. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ただいまの御説明で、大体今回原子力研究所に新たに付置せられる放射線化学中央研究所業務の目的がわかったような気がするのであります。この放射線化学中央研究所放射線と称するものは、あらゆる放射線をそこへ備えて、ただいま御説明がありましたより以上の範囲にわたり、いわゆる放射線化学研究をおやりになるのだろうと思うのであります。これはことしから初めて付置され、予算措置もできたのでありますが、ほんとう放射線化学のりっぱな働きをし得るには大体何年くらいの年月を要する計画でありますか。御説明願いたい。
  8. 井上啓次郎

    井上説明員 ただいま申し上げましたような、化学反応を工業的に試験をするという段階考えられる放射線源といたしましては、現在のところコバルト六〇の三十万キュリーの施設を持つというのが一つ。それから、加速器を置きまして、その加速器を使いましてやる実験がたくさんございます。そのために現在のところはファン・デ・グラーフとかリニア・アクセレレーターというものも考えられますが、レゾナンス・トランス・フォ−マーを三十七年度には置くということに相なっております。  さらに、これは将来のことでございますが、アメリカで非常に開発が進んでおりますけれども、使用済み燃料を使いまして、その放射線を利用する。これも一つ線源として重要な要素を持っておりますので、この線源開発というものも大事だと考えて、計画に入っております。  また、アメリカでも現在の炉を使った研究を続けていますが、いわゆる化学用反応を起こさすために原子炉を使うという計画がございます。これは現存のところ化学用の専用の原子炉は世界的にもございませんけれども、そういうふうな流れがございますので、この点につきましては十分調査を進めていきたいと考えております。
  9. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうしますと、三十万キュリーのコバルト六〇が主体となるわけですね。その他のセシウムとかストロンチウムとかいうものの放射線化学というものは、今は世界的には推し進められておらないので、新しい繊維を作るとか、あるいはその他の材質検討を行なうという場合には、主としてコバルト放射線が用いられ、それに重点を置く。  それからもう一つ、今の御説明の最後の方にございました、世界的に見ると原子炉を持って、原子炉から出てくる放射線応用して、いわゆるいろいろな化学反応研究をやる。そうすると、将来は放射線化学中央研究所にも、化学反応研究を行なっていく原子炉を作るという構想がその中に入っておるわけですか。
  10. 井上啓次郎

    井上説明員 現在のところ、放射線化学中央研究所に、化学用原子炉を置くという方針は立ててございませんけれども、これは外国の今後の推移を検討する必要は十分ございますけれども、化学用原子炉というものが放射線化学の中においてどのくらいの位置を占めるか、また効果あるいは使い方というものを十分検討しなければいけないということで、調査検討はございますけれども、設置するという方針にはまだ至っていません。
  11. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 今回原子力研究所に付置せられる放射線化学中央研究所は、第一段階としてはコバルト六〇、三十万キュリーを中心として放射線化学研究をやっていく。しかし、必要に応じては、やはりそこに原子炉を作らなければならないことになるかもしれない。そういう観点から出発される。そうすると、今度の原子力研究所法の一部改正法律案によって六人の理事を七人にふやす。理事が一人その中央研究所を担当していく。大体最初出発される人員の構成というものは、どのくらいの規模でやられていくおつもりですか。
  12. 井上啓次郎

    井上説明員 まず予算的に御説明をいたしますと、現在三十六年度の定員といたしましては四人ふやしてございまして、三十七年度には十七人増員を認められております。しかし、これは建設当時のことでございまして、研究を進めていくためには、少なくとも三十七年度には二十一人を要するというふうに考えておりますが、これは民間の会社の協力も得まして進めていきたいと考えている次第でございます。
  13. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 原研理事長が御出席になっておられますから伺いますが、これは最初にスタートをする形は、現在の原子力研究所の中にこのスタッフを一応集めておいて、そしてどこかその原研の中に中央研究所を拡張していかれるのか。それとも、これは別個の土地にその体制を整えて、これを出発させていかれるのか。どういう御構想をお持ちになっておられるか。
  14. 菊池正士

    菊池参考人 今あとでおっしゃいましたように、東海研究所以外のところで出発したい、こういうふうに考えております。最初からいろいろ考え方がございましたのですけれども、この研究所ができます非常な推進力となりました産業界の御希望その他もございまして、今東海研究所内には将来のいろいろな構想もありまして、敷地の関係もありますし、その他の別途の土地にこの研究所を設けた方がいいというつもりで、その方向で今進んでおります。
  15. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、研究所の責任の地位におられる方が、一番この放射線化学推進に便宜であり、適切な方法をお選びになることに対しては私は賛成をするものでありますが、私もこの原子力問題に首を突っ込んでおりましていつでも気になっておりましたのは、新しい産業開発というものに対する原子力のあり方であります。これは非常に大きな価値を持つものであって、私はしろうとでよくわかりませんが、いろいろな話を聞きますと、たとえば今お話がございました化学繊維のトップ・レベルの品質というようなもの、あるいは建築材料、その他一切のものが一ぺん放射を浴びなければ結局材質変化というものはわからない。だから、いろいろな新しい品物を生み出すためには、とにかく放射線の洗礼を受けなければ決定的な材質変化というものに対する結論は得られないのじゃないかというふうにも考えておったのであります。幸い日本にも今度放射線化学が強力に発足をするということで、私たちは一日も早くその実現を希望するものであります。この点は一つ長官にもお願いをいたしまして、なるべくすみやかにその実体が整うように一つ御配慮をお願いいたしたいと思うのであります。  なお、私ばかり御質問伸し上げるので大へん恐縮でございますが、幸い原研理事長がお見えになっておられますので、一つ最近の原子力研究所に関する問題として、長らくの間日本の独創的な立場からの原子炉開発に対する研究題目として取り上げられた半均質炉の現状について御説明をお願いいたしたいと思うのであります。  実はこれは、二月二十日の日本経済新聞に、「半均質炉研究後退」という題目によって、原研ビスマス冷却は困難という記事が載っておるのでございます。これを拝見いたしますと、なんでも、最近半均質炉に関する検討が、半均質炉評価小委員会というものによってなされて、どうもビスマス冷却は不適当だ。また、二月十日の東京新聞には、「半均質炉開発室は解散」という記事が載っているわけです。  私もしろうとながら、日本の独創的な原子炉に対する構想が半均質炉によって今後開拓されるのではないか。その年月は三年かかるか五年かかるか、あるいは十年かかるか、将来の問題としても、とにもかくにも、半均質炉によって日本の独創的な原子炉開発の境地が開かれて、あるいはこれによって世界各国との足並みがそろうのではないかという期待をかけておったわけであります。特に、三十四年度の日本原子力研究所年報というものを見ますと、プロジェクトの冒頭には、このビスマス冷却によるところの半均質炉の問題が出ておる。それから、三十五年度の日本原子力研究所年報を見ましても、やはりプロジェクトの第一は半均質炉であり、その第二は水性均質炉、第三には高速炉予備実験です。ですから、この年報を毎年拝見いたしますと、そのプロジェクト壁頭には半均質炉が出てきている。ガス冷却がいいのか、ビスマス冷却がいいのか、そしてビスマス冷却によって日本の独創的な原子炉の将来というものがうかがわれるのである、というような記事が載っておる。  それが新聞によって、突如、ビスマス冷却というものは不適当である、半均質炉研究室は解散するんだ、というような記事が出ると、今まで日本原子力研究所に抱いておった非常に大きな希望が足もとからくずれ去って、今まで原子力平和利用の一番王座として考えられておった原研原子力発電炉研究というものが、もとのもくあみになったような気がするのであります。決してそういうことではないだろうと思うのでありますけれども、それに対して理事長から真相を、この際、はっきりとお話を願いたいと思って御出席を願ったわけであります。
  16. 菊池正士

    菊池参考人 半均質炉の問題につきまして、いろいろ伺いまして、大へん恐縮に思っております。  半均質炉の問題は、三十四年ごろからずっと始まっておりまして、三十四年、五年、六年の三カ年で各研究室には約一億八千万円ばかりの金が人っております。そしてこの中には、例のクリティカル・アッセンブリーの分も含まれております。人員といたしましては、現在約五十人がこれに従事しております。もちろんほかの研究室の分も含めてでございますが、その程度の人員でいろいろ研究しております。その間に、半均質炉主体をなします半均質燃料体、それからモデレーターとしてその構造の基幹をなす黒鉛のいろいろな問題、また冷却剤としてビスマスについていろいろの研究が行なわれて参りました。基礎的な面ではございますけれども、いろいろとおもしろいものが得られております。たとえば燃料体につきましても、半均質燃料体のいろいろな性質がございます。この中でできたいろいろなフィッション・プロダクトがどういうふうに移行していくか、またこういうものをどういうふうにとっつかまえれば、炉になった場合に一番有効にこういうものを除去していけるかとか、そういったような燃料体に関するいろいろな研究もございます。黒鉛につきましては、黒鉛金属をくっつけるのにはどうしたらいいかということで、黒鉛のいわゆるろうつけの問題がだいぶ進んでおります。これはいろいろとほかの方面にも応用などが見出されまして、最近東大の方でやっておりますように、ロケット燃焼器の熱い部分の黒鉛の薄い筒に、ここでやりましたろうづけ、ろうといっても金属溶接棒でありますが、それをはち巻みたいにやっていきますと薄くて非常に強いものができる。そういったような応用も見出されたりしております。また、ビスマスにつきましても、ビスマス取り扱いが非常にむずかしいこともあるのですが、ある程度これを溶かした状態で運転するとどういうことになるかというようなことについて、いろいろとおもしろい問題が得られております。また、ビスマス自然対流によって循環するために、いわゆるガス・リフトの研究というのも今現に行なわれております。  そういうふうにしていろいろと進めて参りましたが、原子炉としてこれを開発していくためには、さらにもっと広い範囲研究開発を必要とすることがはっきりしておりまして、今直ちに原子炉概念として固まるまでには至っておりません。そういう状態にありまして、こういうプロジェクトを進めますについては、所内のいろいろなパートの人の協力を得つつ、広く横の連絡をとってやっていかなければならないことがございますので、少なくとも所内では、原研プロジェクトとしての発展の段階がどういうふうになっているか、その成果検討、それからこの概念についての検討は、たびたび評価さるべき性質のものでございます。そういう意味で、このプロジェクトがスタートして以来約一年以上になりましても、まだ所全体としてこの問題についてはっきりした検討会みたいなものを全体的にやっておりませんでしたので、昨年の十月に半均質炉検討会みたいなものを設けまして、これまでの研究成果と半均質炉概念についてのいろいろな検討が行なわれたわけでございます。それで大体、最終的な委員会結論は出ておりませんが、小委員会結論が出まして、それについての討論が数回行なわれました。  その結論を簡単に申しますと、半均質燃料体の特性から見ますと、これは非常な高温に耐えるという性質を持っておる。だから、それを生かすのがいいだろうということがまず一つの目標として出されております。それから、この燃料体性質として、最初これは増殖炉に同時になるのではないかという考え方もあったようでありますが、増殖炉は多少無理ではないかという結論でありました。増殖炉が無理でも、燃焼率をずっと上げるということを考えれば、それが非常に有効な炉になるであろうということ。最近問題になりましたビスマスの問題については、非常な高温をねらうという立場から見た場合には、ビスマス冷却よりもガス冷却の方がすぐれているのではないかという結論が大体出ているわけであります。  しかし、今後半均質炉開発をどういう方向で進めていくかという問題でございますが、この高温ガス冷却炉となりますと、海外ですでに相当開発が進んでおるように存ぜられます。それで、このことは前からわかっていたわけでありますが、原研でこの半均質燃料体考え出したのとほとんど同じころに、外国でも同じアイデアのものが出まして、外国ではイギリスのドラゴン計画アメリカでもゼネラル・アトミックその他で非常に力を入れて開発をやっております。ビスマス冷却の方はまだどこでもやっておりませんので、それが非常に有効な炉になってくれば、原研独特のものとして非常にやりがいがあるというように考えられていたのであります。  こういう結論に対しまして、まだ所内でいろいろ検討中でございますが、私の大体の考え方を申しますと、非常な高温をねらった場合には、どうしてもビスマス冷却はだんだんむずかしくなる。しかし、その非常な高温へいく前の段階として、たとえば有機冷却剤ソジウム冷却剤を使う原子炉のタイプもございます。その一環として考えた場合に、ビスマス冷却の炉というものは、高温低圧冷却剤を用いる方法として一つの非常な有用なものになりはしないか。ですから、ガス冷却と直接比べることはむずかしいのでありますが、OMR、SGR系原子炉の系列の一つとして考えた場合に、これはどういうものになるか、そういう意味評価が現在まだ十分にできておりません。そういう意味評価をするためには、ここでもう少しビスマス取り扱いについての問題を発展させた上で片づけないと、必ずしもその評価が正確にできないという段階にあると思われます。ですから、現在のところ、私といたしましては、プロジェクトそのものを後退するという考えは持っておりませんので、現在進めつつありますこのビスマス技術に関する研究は、現在進めつつあるものをできるだけ早く完成させまして、その成果を見た上で、今言ったような意味での評価をして、さらに将来研究するかどうかをきめる段階にあると思います。  ガスの方の問題につきましては、ガス冷却で非常な高温をねらうという考えは非常におもしろい考え方でありますけれども、これは将来うんと高温にいきますと、いわゆる例のよくいわれます直接発電方式にもつながる問題である。それからまた、非常に高温のものになりますと、現在特殊なものとしては、まだ考えられているだけでありますが、例の宇宙ロケットに使う。つまりこの炉をロケットの何段目にかにつけて、高温のこれを使いまして、その炉を宇宙のどこかで燃し切ってしまって推力を得る。そういうような非常に特殊な炉にまで発展すると考えられているようであります。ですから、こういうものとしてこれを取り上げれば、また非常におもしろいものであります。  しかし、原研としましては、あまりいろいろな炉のプロジェクトを持ちましても、とてもできるものではございませんから、そこで、原研として今後さらにこういうものをガス冷却用として盛んに取り上げるか、あるいはそういう段階になれば、そうでなしに、あるいは高速増殖炉というものを取り上げていくか、あるいは水均質というものを取り上げていくか、その辺のところはなるべく近い将来にもう一度十分に固めなければならぬ段階が来るのだろうと思われます。  ですから、私は、現在のところ、半均質プロジェクトといたしましては、評価委員会評価というものを十分に尊重いたしまして、実質的には今までのやり方と少しも後退したような方向へは行かないものと考えております。  ただ、開発室の問題でございますが、開発室はこれを進める必要がないから要らなくなったという考え方でこれをやめるやめないの問題は、私一度も言ったことはないのでありまして、全く内部的な事情によりまして——これはこういう横へつながる研究をやりますためには、その運営がなかなかむずかしいところでございます。現在それをやっていく体制が、これは内部の問題でございまして、お恥ずかしい次第でございますが、中のこのプロジェクトを進めるための運営体制が、必ずしも円滑にいってない点が多少ございます。そういう点を開発室としても多少この際改めた方がいいのではないかということを考えておりますけれども、こういうものをまとめていく機構推進的な役割を果たすための機構そのものをなくしてしまうという意味での開発室をやめるというような考え方は持っておりません。そういうことでございます。
  17. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 今の御説明の中で、専門的にわたることは私もよくわかりません。いずれ速記録ができましたならばそれを拝見して、専門的な注釈をお願いして、もう一ぺん御説明検討してみたいと思うのであります。  私が資料としてちょうだいいたしましたこの評価委員会結論を見ますと、どうもビスマス冷却というものはもう将来性がないのではないかというふうに書いてある。冷却剤としてビスマスを用いることは問題を困難にするばかりでなく、特別取り立てて利点を見出すことはできなかった、半均質プロジェクトとしてビスマスに関する研究を今後も発展させることは疑問があるように思われる。こういうことが書かれてありますので、私といたしましては、ビスマスというものに原研としてはお手上げなんだ、これはやる必要がないのだという結論になったのではないか、というふうに考えたので、特に所長の御説明をお願いしたわけであります。ただいまのお話を承りますと、ビスマス冷却というものには幾多の難点があるが、しかしこれはギブ・アップしたのではない。さらにその研究推進していくのだというお話であったのでございます。しろうと考え方からいたしますと、一つの着想が必ずしも成功するとは限らない。十中の八、九は失敗に終わって、十のうち一つあるいは二つが成功すれば研究としてはりっぱなものじゃないか。私はそう思っておるわけであります。ただ、どういう評価委員会検討が加えられたかわかりませんが、とにかく蒼鉛が冷却剤として一本の独創的な考え方の中に浮かび上がった限りにおいては、一つとことんまで追及していただきたい、こう思うのであります。とにかく、このビスマスが二百十度にならなければ熔解されないとか、あるいはこれが冷え切ったときに膨張率が多いとか、あるいは資材を腐蝕させる率が多いとか、欠点はいろいろあると思うのです。しかし、そういう欠点があり長所があるならば、欠点をなくして長所を生かすというのが、私はほんとう研究体制ではないかと思うのです。ですから、せっかくプロジェクトとして取り上げたビスマス冷却の独創的なアイデアを、あまり早くギブ・アップをしないで、それを追及していく間に、ほんとう世界各国がやっているヘリウム・ガスの却冷炉がよくて、日本があらゆる角度から検討を加えていったけれども、やはり半均質炉というものは、ガス冷却が一番いいのだという結論に到達したのならば、われわれもまたそれに対して承服といっては語弊がありますけれども、それを認めるということは当然のことだと思います。ですから、この新聞記事にございますが、研究室が閉鎖されるとか、あるいはこれはもう問題にならないのだとかいうことになりますと、何かあまり早く独創というものが生まれて、あまり早くその独創というものをギブ・アップするような感じを受けるのです。  私から申し上げるまでもなく、原子力の平和利用というものは、世間でもって、スロー・ダウンしているとかスロー・ダウンしてないとか、そういう論議の対象になるべき問題でない、私はこう思っているのです。いやしくも原子力の平和利用というものは、これは遠からず人類のすべてのあり方というものを根本的に変える、原動力であって、そういう見地からいくと、一段上がったのか二段上がったのかという評価さえ早計ではないか。畳の上がでこぼこになっているというくらいの段階にしか、原子力の平和利用というものは、大局から見るとまだ進んでいないのではないかと思うのです。ですから、わが日本原子力研究所に課せられた課題というものは、ビスマス冷却プロジェクトがどうなったとか、こうなったかということでかなえの軽重を問われるべきものではなくて、もっともっと大局から、腰を入れた研究というものがあっていいと私は思う。しかし、これは国家要請にかなうべきところの研究所でありますから、常に何かの目標、プロジェクトというものは持っていなければならぬと私は思うのであります。漫然とした大学の付置研究所のような研究のあり方というものは、日本原子力研究所としてはあまりほめた形でない。何かの目標を持っていなければならない。その目標をようやくこの半均質炉ビスマス冷却というものでつかんだというので、われわれは非常に喜んでおった。それが今の新聞記事によって現われるようなほんとう体制であるとすれば、これは悲しむべきことだと思ったものですから、はなはだ老婆心みたいな失礼なことを申し上げたのでありますけれども、一つあくまでも目標をつかんで、あらゆる角度から研究をしていただきたい、そう思うのであります。  なお、この問題はこの程度にいたしまして、きょうは原子燃料公社、出席していませんか。  人形峠を中心として、日本にはウラン原鉱石が相当発見された。われわれも、日本の原鉱石を開発するよりはアメリカからイエロー・ケーキを買ってきた方が万事において都合がいいのであるから、大がいに国内の探鉱というものはやめたらいいではないかという議論を押し切って、この委員会としては、あくまでも国内資源の探鉱及び開発というものを目標として、相当の国費をつぎ込んできたわけです。そして、その最初において、その鉱石の価格決定ということを大いに論議して、原子力委員会においては〇・一%含有のウラニウム鉱をトン当たり五千円ときめたわけですね。  ところが、最近においてイエロー・ケーキの値段というものを私が教わりましたところによりますと、今、原燃公社において海外より購入しておるところの値段というものは、三十五年六月カナダから六千五百キログラム、FOBポンド当たり四・九ドル。これは東海渡しに換算いたしますと、一キログラム当たり三千八百八十円、そしてこれは品位が八〇%以上だ。三十五年十一月にカナダから買いましたのは東海渡し一キログラム当たり三千四百六十六円です。そうしますと、とにかくアメリカでは国内のウラン鉱を擁護する意味におきまして、八ドルパー・ポンドで保証している。しかし実際の取引を見ますと、アメリカもずいぶん安く売っている。ですから、一キログラム三千、五百円なんといいますと、一トン当たり三百五十万円ということになる。そうすると、日本の鉱石〇・一%を含んだやつを五千円で買って、これをまるまる抽出、製錬に成功したとしても、五百万円につくんですね。抽出、製錬のパーセンテージというものは、私はおそらく七〇%ないし八〇%くらいしか見込まれないだろうと思う。そうすると、まあ普通からいくと、〇・一%を含んでいるものをトン当たり五千円ということになれば、これはどうしても国際価格には引き合わないということになる。ここに日本のいわゆる国内ウラニウム資源に対する政府のお考え方をはっきりしていただかなければならぬ。これはあくまでも〇・一%をトン当たり五千円ギャランティしていくのかどうか。これは絶対に曲げない値段だ、これで国内の資源開発を擁護していくのかどうかということです。こういう点は、一体原子力政策として〇・一%あくまでもトン当たり五千円で、将来とも国内資源擁護の建前から曲げないでやっていくというおつもりなのか。だんだんウラニウム鉱というものは値下がりしてきているから、この値段は当然改正せらるべきものとお考えになっておるかどうか。
  18. 三木武夫

    ○三木国務大臣 このトン当たり五千円、品位の〇・一%のウランは、六月までの期限になっている。六月の改定にはこれは検討したいと思っていますが、現在のところ、国際価格そのもので日本のウラン買い上げの価格をきめるということは私は適当ではないと思う。国際価格も次第に下がっておることは御承知の通りです。そういうことで、国内資源保護というととも頭に入れながら、しかし全然もう国際価格というものを無視して、日本がウランの、あるいはイエロー・ケーキなどに対しても価格をきめることも適当でない。国産資源保護ということも頭に入れながら、国際価格ということも検討の材料にしながら、六月の改定期には検討したいと考えておるわけでございます。
  19. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは長官御承知の通り、今貿易自由化を前提として、この九月までには石油も自由化になるというので、国内石油及び民族資本による石油をどう取り扱うかというようなことで、あげて業界並びに政界は問題化している。それと同じように、〇・  一%の国内ウラン鉱を国際価格並みに引き下げていったら、これはもう幾ら努力しても採算ベースには乗らないということは、はっきりしておると思うのです。そこにやっぱり日本原子力政策というものが新たに打ち立てられなければならない段階にきているのではないか、こう私は思うのであります。と同時に、アメリカではパー・ポンド八ドルにイエロー・ケーキを保証しているわけですね。品位は八〇%ぐらいじゃないかと思うのであります。この前の委員会で私は、日本原子力政策を確立する上において〇・一%の原鉱石は大体きまっている。〇・〇五%のものでも、粉砕して水で洗えば〇・一%やそこらの品位に上がるのですから、この品位を標準として原鉱石の値段をきめるということはいいことだと思う。同時に、その原鉱石の値段をきめておったならば、日本でもイエロー・ケーキの値段というものは、はっきりきめなければ、ヒュエルに対する政策の基本というものは出てこないと思う。この問題をこの前、私、委員会で、石川原子力委員に質問したら、それはまだ早いのだという。そういうことをきめるところの何らの基準もないから、そういうものはまだきめないのだという。だけれども、もうそろそろ、そういうものもはっきりとした価格体制を形作って、日本はこの価格を今後五年間、十年間は保証するのだから、もしほんとう日本国内の資源を開発して、製錬をして、イエロー・ケーキを作って間に合うと考えるまでは、これに対して研究及び製錬の手を伸べていいんじゃないかというくらいの、積極的な施策に原子力平和利用を持っていかなければ、ほんとう意味の国内体制というものは確立しないのではないか、私はこう思うのであります。というのは、長官も御承知の通り、最近政界の間では総合エネルギー対策という言葉がはやり言葉になってきた、石炭が、石油が、天然ガスがと。しかし、だんだん石炭、石油、天然ガスというものを追及して参りますと、どうしても将来十年か十五年先は、日本原子力というものに最大の力をいたさなければ総合エネルギー対策は確立しないという結論になりつつあると私は思っておる。ですから、今のうちに、日本も思い切った国内資源の開発からあるいは日本独自のイエロー・ケーキ製造方法、あるいは製錬方法というものを誘導して、この体制を確立するという政策を示さなければ、私は日本国内は原子力平和利用というものに情熱をわかしていけないと思うのであります。長官は、そろそろこの六月の原鉱石改定値段をお考えになると同時に、世界的な商品としてのイエロー・ケーキ、日本国産のイエロー・ケーキに対するところの価格というものを一応お考えになる時期に来ているのではないか、こう思うのでありますが、どうでありますか。
  20. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、ウラン鉱の日本の埋蔵量も多くないし、従って、国際価格との間にもしイエロー・ケーキの価格をきめたとすれば、非常な差をつけなければ国内の産業保護にはならないのですから、現在の段階でイエロー・ケーキの価格というものをきめることは適当かどうかということについては、これは非常に検討しなければならぬものだと思います。そこで、ある程度の差であれば、それは国内の産業資源保護の上からきめることは適当であるかもしれません。あまりにも現在の状態では差がつき過ぎる。そういう点で、これはよほど慎重に検討しなければならぬ問題だと思いますが、六月にウラン鉱の買い入れ価格の改定もあることですから、あわせてそういうイエロー・ケーキの問題も検討をいたしてみたいと思っております。しかし、イエロー・ケーキについても買い入れ価格を設定するのだということを、今私は言明するわけにはいかない、これはもっと検討してみたいと思います。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 一つそういう問題にもお考えを願うことにいたしまして、次の質問を申し上げたいと思うのであります。  これは次会に原子力発電会社の首脳者のおいでを願っておりますから、そのときにもっと詳細に御質問申し上げたいと思いますが、これは私の考え方でございますが、日本の動力原子炉というものは、何といったって、アメリカ、英国等の先進国における原子炉技術というものを学ばなければ、新たな境地を切り開いて国産炉を建設するということは、一応理想としては言えるけれども、現実においては私はできないと思う。そういう意味で、先ほど理事長に御説明を願いましたような半均質炉研究というようなものも、大きな希望をわれわれは持ったわけでありますけれども、現在長期計画に盛られた、十カ年間に百万キロワットを作る、二十年間に七百万キロワットの原子力発電をやるという体制に向かって、日本が独自の原子炉体制を確立するということは、これは言うべくして行なわれない。そこで、当然その第一段階としてコールダーホールをいま東海村に建設中である。ところが、十年間に百万キロワットでありますから、あと八十何万キロというものは作っていかなければならない。そこで、御承知の通り、原発会社は第二の原子炉を、アメリカから大体買うというふうになっている。これは私はやむを得ないと思うんです。とにかく追っつかないものでありますから、どんどん外国技術を入れて、日本の弱体なエネルギー対策を確立していくということは、いわゆるナショナル・セキュリティの立場からいっても、これは非常に大切なことだと思うのです。  そこで、一つ長官にお伺いいたしたいのは、私の手元に、日米原子力産業合同会議発表の論文の中の「沸騰水型原子炉に関する現状及び将来の進歩」という、ジョージ・ホワイトというゼネラル・エレクトリックの原子力部長が講演をした速記が届いたわけです。これを見ますと、「一九六五年契約一九六九年引渡しの五十万キロワット沸騰水型原子力発電所はキロワット当り建設費百六十五ドル(五万九千五百円)より安くなり燃料費はキロワット・アワー当り一・五ミル(五十四銭)より安くなると申して居りますので恐らくその発電原価はキロワット・アワー当り五・三ミル(一円八十五銭)よりも安くなるものと期待されます。」こう言っておるのです。そうすると、一円八十五銭より安くなるという見通しがつくと、これは新鋭火力発電よりもずっと原価が安くなるわけです。このことは、前田委員長が昨年、長官の御委嘱によって世界各国原子力発電の視察をやったときも、太平洋岸においては七ミル以下だということを聞いたからこの点を自分も調べてくる。その話を承りましても、まさにその通りである。しかし、このジョージ・ホワイト氏によりますと、五・三ミルだ。これで一九六九年には五十万キロワット作れるのだ、こう言っているわけです。この間私は、原発の首脳者にもお話したのですが、そういうレポートが出てきておるなら、なぜさそくに調査団を派遣しないのか。日米原子力産業合同会議において、大衆の面前ではっきりと公表しておるところの事実を、現地に行ってよく調査して、もしほんとうに一円八十五銭でもって五十万キロワットいけるということであったら、それを日本において可能な体制推進していけば、長期計画で十年間に百万キロワットはやれる。しかし、現在のような体制に放置しておいたら、原子力委員会でもって委員長が責任ある地位について、そして十カ年計画百万キロワットと譲っても、お念仏にしかならないことだと私は思うのです。  そこで、私は長官に一つお願いいたしたいのは、こういう実態にまでアメリカは進歩しておるということはわかっておるから、こういう問題に対して専門的な調査団を至急に派遣をするということと。もう一つは、どうしたら一体、日本のような状態においてこの原子炉開発——たとえばアメリカでは、私が見ましたところ、アルゴンヌという国立試験研究所に参りますと、ペトロリウム・カンパニーという石油会社が責任者になっておる。しかし、監督はちゃんとAECがついている。金は全部政府が出しておる。仕事は民間にやらせる。政府は監督の地位に立っておる。いわゆる委託業務というのですか、そういうふうにでもして、ほんとうに一キロワット一円八十五銭でいけるという見通しがついたら、政府が思い切って金を出して、そして民間会社にこれをやらせて、政府は監督の地位に立つという方法も、アメリカ的には考えられるわけなんですね。ですから、私は長官にお願いしたいのは、こういうようにはっきりと、一キロワット百六十五ドル、建設費がそんなに安くできて、それからコストが一円八十五銭というような安い電力がアメリカでやれるということを言っているのだから、日本もこれをよく調査をして、日本がやれる方法を案出して、この長期原子力発電計画推進していくということに一つ長官も取り組んでいただきたいと思うのであります。この点に対して、もしお考えがありますならば、この際承っておきたい。
  22. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今御指摘になりましたように、原子力発電会社の調査団の派遣も相当おくれております。二号炉の建設についても、自然おくれるわけであります。この間の事情を聴取したり、調査団の派遣等も促進する必要があるという考えで、私はきょう昼、原子力発電会社の首脳部と会うことになっておるわけであります。前田委員長の先般御視察の報告にもありましたし、齋藤委員お話にもあったように、この際コストが下がってきておるということがあるわけですから、この実態というものを見きわめる必要がある。そこで、でき得べくんばこれを実際の原子力開発と結びつけて、原子力発電会社の調査団の派遣をもう少し早めて、こういうこともよく調査する必要があると思いますので、何か促進をしてみたいと思っております。  また、次に御指摘になった、相当政府が資金を出して、委託経営のような方式検討すべきではないかというようなお話についても、長期計画にあるような十カ年百万キロワットということを達成するには、そういうことも考えなければならぬだろうと私は思います。そういうことで、調査団派遣の促進、あるいは今後の原子力発電の方式については、いろいろ御指摘のあったような点も私も考えているわけでございますので、十分検討いたしたいと思っております。
  23. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これで私質問を一応打ち切りますが、今長官のお話では、きょうの昼、原発の首脳者とお会いになるそうであります。過日仄聞いたしましたところによりますと、原発は仕事を遂行していくのに非常にトラブルがあるということを私は聞いたのです。どういうトラブルか、私はよくわかりません。最初に関西の研究原子炉を作りますときに問題になりましたときに、淀川の上水が非常に問題になった。そのときには湯川博士も委員になっておられたように記憶いたしておりますけれども、そのときに国会でもって問題となりましたのは、参考人の意見であります。それは、質問の過程において絶対性というものが問題になったわけです。世の中に絶対性というものはあるべからざるものだと私は思うのです。学者の立場においてこれが絶対に安全かといわれたら、絶対に保証できる学者というものは私はないと思うのです。すべてものはあとう限りの限度というものがあると私は思う。今、原発がコールダーホールをやっておる。これに対して各方面から学理的な絶対性を要求されたら、私は仕事ができなくなってくるのじゃないかと思うのです。そういうことで、私はコールダーホールの建設はずっとおくれているのじゃないかと思うのです。コストもよけいかかっていくし……。そういう立場に立っている原発の首脳者は、非常に困っている点がたくさんあるのじゃないかと私は思う。ほんとうのエキスパートをそろえたところのコンサルティング・システムでもあって、一切の監督はこれにゆだねるとでもやれば、これは仕事はスムーズにいくでありましょうけれども、今日の日本の実情は、どこに一体監督権があるのか。あっちからもこっちからも文句が出て、結局は実際の仕事は進まない。手直し、手直しで、コスト高になっていくというような点があるのじゃないか、こう思います。なかなか原発の首脳者も、そういうことまではっきり言い切れるかどうかわかりませんから、長官の方から積極的にいろいろな問題をお聞きになって、早く原発が第二号炉に着手できるような体制をお作りあらんことをお願いして、私の質問を終わります。
  24. 前田正男

    前田委員長 次に岡良一君。
  25. 岡良一

    ○岡委員 ほんの一、二お聞きしたいのです。  半均質開発炉が、今、齋藤委員の御指摘のような懸念があるということです。この機会に、私は原子力研究所のあり方というものを、もう少し考え直してみる必要があるのではないかと思うのです。これは菊池理事長にお尋ねいたしますが、原子力研究所のあり方、これは大学の付置研究所、たとえば先生は田無の原子核研究所にもおられましたが、それとは非常に趣の違った性格を持っていると私は思う。そういう点、どうあるべきかという理事長としての御所信があったら承りたいと思います。
  26. 菊池正士

    菊池参考人 大へん大きな問題で、ここで短時間のうちに申し上げられませんけれども、今御指摘のように、大学の付置研究所とその性格は非常に違うと思いますので、そういうふうに運営していかなければならぬと思っております。  何といいましても、原子力研究所の第一の任務は、これからの日本原子力産業の発展に直接貢献していくということにあると考えております。それをやりますために、どういうふうにしたらいいかということは、合いろいろ意見があると思いますが、一つには、先ほどから問題になっております半均質炉みたいな、なかなか実現はむずかしいけれども、しかし相当の将来性を持ったものについて深くその開発等をやるという面も一つございます。そのほかにも、またさらに、今お話しになりましたようなコールダーホールの発電炉とか、今度次の二号炉が入ってきます、そういう場合に、やっぱりそれに付随しましていろいろな技術的な問題が起こって参りまして、現在でも原研としましては、原発の方からのいろいろな委託研究を受けましてそれをやっておりまして、それから将来炉が動き出しますと、あの中にたくさんのテスト・ピースが入ることになります。それは相当の頻度で、そのテスト・ピースが取り出されてはこれをテストするというような問題が起こってくるのでございます。そういうことに対して、われわれとしてもこれから全面的に御協力していくという立場をとっていく。ですから、われわれの仕事として、これから入ってきます、産業界としてどんどん流れていきます原子力産業の発展に十分貢献をしながら、しかしまた一方、ずっと先の問題に対しても、原子炉開発ということに向かって進んでいく。そういうこともまた一項というように考えていかなくちゃならぬ、そういうふうに考えております。
  27. 岡良一

    ○岡委員 私の尋ねることも非常にばく然としておりましたが、たとえば原子力委員会がきめられた長期計画がある。その長期計画の線に沿うて原研運営がなされるということになるでしょう。長期計画では、あるいは行く行くはブリーダーにする。いずれにしても、国産動力炉ということが一つの大きな目標になっているとすれば、そういう方向にいく。そういう場合に、この原研が長期計画を受け取って、さてその線に沿うてターゲット・データをきめてプロジェクトを立てるという場合に、原研が一本でそういう体制になっているのかというような点。たとえば半均質炉というようなこと、そこで材料を照射しなければならない。CP5が使えるかと思ったら、CP5では間に合わぬ。そこでアメリカへ送って照射してもらう。持って来た。ところが、その処理については原研のホット・ラボでは間に合わない、なんということで、あちらでも行き当たったり、また行き当たったりというような状態も聞いたこともあるのです。やはり運営の場合、プロジェクト・リーダーというものが、所長との間の関係あるいは各研究室の横の緊密な協力関係、こういった点はよほど立て直しをしてもらわなければならぬのじゃないか。理事長、先ほどいろいろ部内にも問題があると申されましたので、私はそういうことを聞こうとは思いませんが、やはり組織の運営という点で、もう少し研究所一本になった緊密な協力関係、こういうものがなければならぬのじゃないか。そういう点に欠けているのじゃないかという点なんですが、いかがでしょう。
  28. 菊池正士

    菊池参考人 御指摘のように、そういう点で非常にむずかしい点がございまして、極力そのいい方向に向かって進めるように努力いたしておりますが、何分にもこの体制がちょっとほかの研究所にないような複雑な問題がございます。たとえば原子炉を運転する、その横でそれから出てきたホットのものを使う、そしてそれを使うのに研究室研究者、いろいろな炉の方の運転員、ホット・ラボの方の運転員、そういった非常に大きなグループの間の協力関係でやっていかなければならない仕事になります。このために、そういうことをどう組織していくか、また人間的な関係でいろいろな問題もございます。そういう点を改善していくということは、非常に今原研としましても急務だと思っておりまして、極力努めている次第でございます。
  29. 岡良一

    ○岡委員 とにかく年間七十億前後の予算だと思いますが、おそらくそういうことでは、この大きな原子力の、燃料だけの研究費だって七十億くらいではやれないと思う。それを、非常に広く手がけておる。そういうところにも私は問題があると思うのです。これはむしろ原研の責任とかなんとかいうよりも、原子力委員会にも私は一つの問題があると思う。長期計画を拝見しまして、これについては別の機会に私の意見を述べたいと思いますけれども、あれでは全然予算の裏づけというものがはっきり出ておらぬと思うのです。道路整備五カ年に二兆一千億、これは一級国道を五年以内にコンクリート舗装するというのだからすぐ数字は出るでしょう。ところが、この長期計画では、最後になると民間企業に民間企業にというようなことも書いてあるだけに、なかなか予算が出ないと思う。しかし、長期計画を立てたからには、何といっても原子力研究所日本原子力開発研究のセンターなんだから、その長期計画に沿って、一年なり二年なり予算の裏づけのある計画原子力委員会は立てるべきだと思うのです。ここに原研のいろいろな混迷の一つの原因があると思うのです。ですから、原子力委員会としては、そこまでの立ち入った責任をとる親切さがあっていいと思います。そういうことについて、若干ないとは申しませんが、もっと責任を持った取り扱いが要ると思うのです。それと原研のあり方、これは原子力研究所だけでなく、国の研究所というもののあり方、国の要請というものとの関連などについて、これは長官としての御所見を聞かせていただきたいと思います。
  30. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国の研究機関のあり方については、原研に限らず、再検討を必要とするという考え方で科学技術会議に諮問をいたしまして、今専門委員会もできて、せっかく検討を加えておることでございます。近く、近くといっても五月くらいを予定しているのですが、答申も出るわけであります。これは十分検討に値する課題であります。国立研究機関全般に対してそういう関心を持っておるわけであります。原研についても、取り組んでいる問題がほかの国立研究機関とはまた新しいものであるだけに、これは何もかも創造していかなければならない面があらて、いろいろ御指摘のようなこともあり得ると思うのです。新しい研究開発の払うべき犠牲というものがある。しかし、だいぶん経験も積んで参ったのですから、原研などのあり方についても、原子力委員会などに対してもっと検討を加える必要は私も考えているわけでございます。親切心という点については、原子力委員会は持っておるわけであります。しかし、これは原研の将来の発展を期する意味において、もう少し十分な検討を加える必要がある。検討を加えてみたいと思っております。  予算は、予算と申しましても、原子力開発については民間方式というものをとっておるわけでありますから、おのずから予算に対しても一つの制約があるわけであります。予算の折衝の場合には、原子力委員会でいろいろ検討をして、大体その線に沿うてわれわれも予算折衝を行なっておるわけでございます。だから、現在の予算に対して、原子力委員会考え方と予算編成との間に、現在のままにおいてはそう大きな食い違いを持っておるわけではないのであります。従って、予算編成にあたって、もう少し長期的な見通しの上に立って年度計画的に考える必要があるという角度から考えれば、もう少し考える余地はある。しかし、毎年の予算編成については、まあ大体原子力委員会希望はある程度達せられておるのであります。もう少し長期計画の観点の上に立ってその年の予算というものを考えていくには、工夫をこらすべき余地があると私は考えております。
  31. 岡良一

    ○岡委員 いずれにしても、原研の予算というか、原子力の関係予算もことしは少し減っているのではないかと思いますが、今のような状態だと、なかなかこの予算をとりがたいのではないか。やはり一つプロジェクトを立てて、年次的にこうやるのだ、それには年次的にどれだけの予算が要るという計画は、もちろん作っておられるのでしょうけれども、われわれはよく承知しておらない。やはりはっきり責任の持てるものを、原子力委員会の責任で立てていかなければならないと思います。  それから、なおこの機会に、実はこの前の損害賠償法の成立をしましたときに、この委員会で若干の附帯決議をつけました。これは長官も御存じだと思います。それについては、私はいずれ別の機会に、それぞれどの程度まで原子力委員会がこれに取り組んでいるか御報告願いたいと思います。今特に射爆場等の問題があって、最近東海村周辺における、いわゆる原子力施設周辺の整備という問題について、いろいろ地元なり関係方面から、要望がわれわれのところに、もたらされております。原子力施設の周辺整備といえば、東海村ということになりますが、これについては、長官はどういう構想を持っておられましょうか。
  32. 三木武夫

    ○三木国務大臣 けさも東海村の都市計画について、地元の人たちの陳情を受けたわけでございます。原子力産業会議の代表と茨城県の代表が、朝私に面会を申し込んで、私けさ会ったのであります。そのときに私が申し上げたことは、茨城県なら今一番東海村が問題になっている地点です。そこで射爆場も、これは時期の問題で、返還になる。そういう射爆場の返還ということも頭に入れて、県庁の内部に東海地区の都市計画委員会というものを設けないか。それには単に地元の人ばかりでなしに、そういうことに対して専門の知識を持っている人たちを入れて、都市計画委員会を作って、一つの青写真を作ってみる。政府がどの程度までその都市計画に対して援助できるかということは、具体的な青写真ができれば見通しも立てることができる。地元の協力もむろん要るのだけれども、政府としたところで、相当腹をきめて援助をしなければ、都市計画は遂行できるものではない。そういうことで、単に印刷して陳情というのでなしに、地元でそれをやってみないか。それに対しては原研も、あるいは産業会議も、協力してもらって、そうして一つの青写真を作ってみる。そういうことで一つの都市計画というものを推進していったらどうか、という提案を私はしたわけです。きょう来られた人は、そういう角度で一つ考えてみるということでありました。また、来られた人も、都市計画のために単独法を作るということは適当でないように思う、という結論を持ってこられた。私も今そういうもので単独法を作ろうという考えはないので、現在政府として都市計画に対していろいろ援助もできる方法もありますから、一まず具体的な案を作って、それが政府としていろいろな制約を受けてできなければ、政府の方針を変えたらいいのです。相当な部分は政府がこれを援助しなければできない。そういうことで、単独法というような形でなしに、具体的に東海地区というものを取り上げて、一つの理想的な都市計画案というものを作って、それと政府がタイアップしてやっていこうという考えを私は持っておる。それをきょうは話して、先方もそういう案で一つやってみようということで、帰ったのでございます。それが私の考えでございます。
  33. 前田正男

    前田委員長 関連して、石川次夫君。
  34. 石川次夫

    ○石川委員 ただいまの東海村の周辺整備の問題に関連してですが、実はこの問題は私自身もはっきりした結論を持っておりません。非常にむずかしい問題です。これは中曽根長官が前に在任された当時、単独立法というふうな一つ方針を示され、そういうふうに指示されまして、それからそのあと本省の方で何か具体的な案を作ろうというようなことで、それを待っているがために、地方としてはその決定案待ち、その青写真待ちというふうなことで、具体的な案は今まで見送られておったというのが実態だと思うのです。今長官の言われたのは、新しい方式として、今度初めてそういう構想が明らかにされたというふうに理解されます。そうなりますと、これは一体どういうふうに受けとめていいかということは、私自身もちょっとここで決定するということは不可能でございますから、あらためてこの点については検討を加えた上で、この委員会でもって御質問したい、こう考えます。  ただ、地元ではやはりこの点については非常に熱心で、村でも、そういうふうな委員会が東海村にもできております。県の方でも、県会議員などが中心となって、この都市周辺整備に関する委員会も設置はされておるわけです。御承知のように、これは中央の建設省でも、都市計画というものが中心になっていろいろなことを考えてはおるけれども、都市計画では非常にむずかしい。ということは、いわゆる安全基準というものをどう考えたらいいかということは、建設省自体では決定できない。科学技術庁の方が主体になるか、あるいは建設省が主体になるかということ自体も、まだはっきりしないという段階です。  そうなりますと、地元でそういう委員会を作って、地元で青写真を作れと言われても、これは現実の問題として私は不可能ではないか。今のところは私は率直にそう感じます。地元でこれを作れと言われれば、地元の方ではこれは建設省の方へ持っていくとか、科学技術庁に意見を立てるのかということで、なかなか具体案を作るということは難航することなんです。これは中央でもって、ある程度の安全基準というものを具体的に示されておらない段階で、地元にこれをきめろと言われても、私は不可能だというふうに感じられます。この点については、陳情に来られた方が、それをどう理解されて帰ったかということを、あらためて連絡をとった上で質問をしたいと考えております。
  35. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私もきょう突然陳情を受けて、その場の私の思いつきです。これはやはり促進するのには、むろん科学技術庁も協力しなければなりませんし、各方面の協力で、その本部は県庁内に置いて、その方が推進するのには早いのじゃないかという感じを受けたので、申し上げたのです。その場の思いつきでもあったわけで、地元の方でも私の案に対して検討されるでしょう。科学技術庁でいろいろ相談をして、その結果申したのではないのでありますから、私の方でも検討をしてみたいと思っております。
  36. 石川次夫

    ○石川委員 ぜひお願いしたいと思う。そうなかなか簡単に地元ではきまりません。地元で作るという長官の案で計画を出すということになれば、地元の方ではしょっちゅう中央における学識経験というか、都市計画あるいは科学技術庁の相当の権威者を入れなければできぬということになって、現実の運用がうまくいくかどうかということが懸念をされるわけであります。この点は慎重に一つそちらとしても御検討願いたいと思います。
  37. 岡良一

    ○岡委員 この間、私ども附帯決議の中でも、原子炉の安全立地基準というものをやはり原子力委員会としては作ってほしいということです。この安全立地基準と、そして周辺の整備というものは、これは不可分の問題でありますから、やはり原子力委員会としても積極的に責任をとって乗り出していかなければならぬ。  それから、何しろ一般の都市計画であれば、都会に殺到する工場や人口を適正に配置しよう、その土地々々の産業立地条件に従った配置をやろうというようなことなんですが、これは場合によると人減らしをやらなければならぬというふうな、都市計画という古い概念と違った結論が出てくる性質のものです。ましてや、なかなか地元でというわけにはいかぬことも考えられますので、原子力委員会として積極的に取っ組んでいただくというふうに一つお願いしたいと思います。  それから、先ほどの齋藤委員の御意見に私反対する意味ではございませんが、実は原子力発電のコストの問題なんです。これも、どんどん現地へ行ってお調へいただくことはけっこうだと思いますけれども、たとえばBWR、ドレスデンは今十三ないし十四ミルです。行く行くは七・五ミル、これも目標で、ドレスデンは実際に運転実績は六カ月余りしかありません。制御棒の駆動装置に故障を起こしました。そういうものですから、なかなかその実績を基礎にして太平洋岸に六・五ミル、それを安過ぎるというので、AECの方で少しそろばんをはじいて六・八ミルだと言っておりますけれども、これは一体できるのかどうか。それは殷鑑遠からずと私思うのです。〇・六ペンスだというので飛びついてみたところが、今の東海発電所はおそらく五円を上回っていると私は思う。でありますから、経済的という観点から見ても、あわてふためかないで、ゆっくり腰を据えて、実績を見守りながら十分検討するという態度を私は原子力委員会はとってもらいたいと思いますので、これは念のために申し添えておくわけです。
  38. 前田正男

    前田委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。    午後零時十七分散会