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1962-02-01 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月一日(木曜日)    午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君    理事 西村 英一君 理事 山口 好一君    理事 岡  良一君 理事 河野  正君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       佐々木義武君    細田 吉藏君       松本 一郎君    石川 次夫君       西村 関一君    松前 重義君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房会計課         長)      松田 壽郎君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         文部政務次官  長谷川 峻君  委員外出席者         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    黒澤 俊一君         文部事務官         (大学学術局大         学課長)    村山 松雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(科学技術振興の  基本施策及び研究者処遇改善に関する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。本日は、まず最初に、研究者処遇改善に関し学位制度あり方等に関する問題について調査を進め、次に科学技術振興基本施策に関し科学技術庁関係予算説明に対する質疑を行ないたいと存じます。  それではまず、研究者処遇改善に関し学位制度あり方等に関する問題について質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。松前重義君。
  3. 松前重義

    松前委員 この前の臨時国会におきまして学位制度の問題の改正に関する決議を本委員会においてやったのであります。われわれが考えておりました、いわゆる新学位制度のみではよろしくない、旧学位令を持っているところの特長を生かして、そして大学院のみならずその他の研究者学位を獲得し得る、従来と変わらないような方式における道を開いてやる必要がある、こういう意味においての決議であったのであります。これに対して、文部当局は善処する、その趣旨に沿うて早急にやりたい、こういう御答弁政府を代表して長谷川政務次官からあったのであります。これは、三月いっぱいをもってこの旧学位令が一応消滅することになる。そうなると その後においては新学位規則によっておやりになるということになりまするので、ちょうどその境目に相当している。もう二月にもなりましたので、ここで文部省はその後におけるこの問題についてどのような熱意をもって具体化しようとなさっておられるか、この問題について私はお伺いしたいと思っております。
  4. 長谷川峻

    長谷川政府委員 お答えいたします。臨時国会のときに政務次官になった早々の私に、こういうりっぱな権威のある委員会に呼び出しを受けまして、非常に大事な日本学術向上の問題、しかも博士という最高権威のある方々を作る、その制度のいろいろな不備な点についてお話がありましたので、その席上で私お答えしたのですが、直ちに文部省に持ち帰りまして、ここの決議されたことを尊重しながら、その趣旨に沿うことが日本学術向上のためになる、こういうことで研究いたしました。  そこで、学位に関する事項変更につきましては、大学設置審議会の議を経ることになっておりますことは、松前博士が御承知通りであります。そこで私の方といたしましては、先般来大学院を有する大学当局の意向もただしまして、その審議会内容を聞きましたところ、この委員会決議された内容あるいは論議におけるところの皆さんの御熱心なる話などを申し上げまして、審査方法改善について研究させました。そうしますと、ここで論議されましたように、博士論文を出した場合にその人たち二つ外国語をやらなければならぬというふうなことは、この委員会においてちょっとおかしいのじゃないかという話がありましたので、私たちもその点特に研究するように申し上げましたところが、これについてはやはり異論がないようでありますので、細部の点についてはなお検討しておるようでありますが、近く審議会特別委員会にはかってその答申文部省が待つ。そして所要の手続をいたしまして、松前さんがおっしゃるようにきょうは二月一日でありまして、制度が三月一日からあなたが憂慮されるようになるので、この二月一ぱいにでも一つこの委員会決議実現できるように、二月一ぱい結論を得て、三月の変更の際に憂慮されるべき事態、そういうことが起こらないようにしようと思っております。
  5. 松前重義

    松前委員 御参考までに申し上げておきますが、この問題が本委員会において提起されましてから、各方面から、ちょっと新聞に出たらしいので、問い合わせが殺到してきております。これに対してガリ版の返事を出しておいたのでありますが、その返事に対してたくさんの共鳴の激励手紙が参っております。このことは、学閥以外の研究者皆さんが、また学閥の中においても、すでに京都大学のごときは教授会議に諮られて、そうして私に電話をもって激励のなにがきたのであります。こういうふうな、学閥というと失礼でありますけれども、少なくとも学閥的な傾向と見られるようなそういうところでさえも、またそれ以外のところでも、これに対して非常な賛成賛成どころか大へんな熱望の手紙が、きょうはわずかしか持ってきておりませんが、まだたくさんあります、受け取っております。御承知のことでありましょうけれども、一応御参考のために読んでみます。  「今回新学位令の廃止もしくは大幅改正のために御尽力中の御趣拝承研究中の人々にとってはまことに早天に慈雨の恵みを受けたかのように、死灰に芽ぐむ生気の力さえわき出ることと存じます。当社の学術課でもすでに学位を得た者も幾人かあり、現在もその途にあって研さんを続けている者も多く、ことに十数年前から営々としてたゆまぬ努力を続け「研究のイバラの道は速くとも求むるものはいつの日かわれに」の信念を持ってただ黙々と研究を続ける老学徒もある現状です。さて、新学位令が仰せのごとくこのまま実施されますなら、篤学者研究心は著しく阻害され、やがては学術進歩科学技術振興にも大きな影響を及ぼすことは申すまでもありません。また海外文献にあら、されば新知識の求め得ざる時代はすでに過ぎ、世界の文化水準に達したわが国の教育制度研究機構または学者研究陣は、いささかも海外のそれに比し遜色なきはもちろん、またこれらの人々によって著作された日本語の文献によっても研究に何らの不足なき今日、ことさら外国語試験まで行なう必要がどこにあるのか判断に苦しむものです。もしあくまで新学位令の実施を強行するならば、文部省がみずから定めた一、日本学校制度の無価値をみずから暴露することになり、二、日本学者価値を疑う大なる侮辱ともなり、三、これらはずかしめを海外にまで示す愚の骨頂でもある、といわなければなりません。どうかこの意味においても「研究者等処遇改善に関する決議」の目的が早急に達成されますよう、わが国禁界進歩のために格段のお骨折り賜わりたく、くれぐれもお願い申し上げます。追って、時おり運動の経過御一報いただけますなら幸甚に存じます。」なかなか関心を持っております。「なお、すでになされたこととは存じますが、過日の印刷物は世論喚起のためにぜひ各大学院にも御発送いただけますなら審査参考資料ともなり、やがては研究者にも一大光明をもたらすことと存じます。」これは現代製薬株式会社学術課長医学博士山崎英明という人であります。こういうふうなのがたくさんきておりまして、みんな同じような趣旨であります。  こういう少し変わったのもきております。前言葉は省きますが、いろいろお礼を申し上げるという言葉の次に、「つきましては今回学位の問題について報告書の御送付をかたじけのういたしましたが、当該件につきましては平素心痛していた者でありますが、御報告書により一縷の光明を見出した感であります。地方公設試験研究機関が負わされております使命は、他の学術研究機関と異なり経済効果が最優先でありますだけに、研究経過の取りまとめがおくれがちでありまして、勤務の研究要員にとってきわめて不利な現状であります。ついては御決議に対して一日も早く新学位令改正されることを熱望するものであります」云々。鹿児島県工業試験場長西野弘という方であります。こういうふうなのが各大学からも、旧制大学からも来ております。教育大学等からも参っておる。至るところから、北海道大学の方からも来ておりますし、短期大学あるいは私学の工学部、理学部等静岡大学等からも、そういうふうなあらゆる方面から、早くこの実現希望してきております。  要するに、旧学位令というものがよかったとか悪かったとかは別問題として、あれが長い伝統を保ってきておった。また、それに光明をつなぎながら研究しておった諸君が、一挙に失望、落胆したというのが現状であります。従って、決議にありましたように、大学院による博士というものをわれわれは拒否しませんし、それはあっても、ちっとも差しつかえない。けれども、旧学位令というもののやり方をあまりもじらないで、そのまま生かす方法によって新しい制度を早く確立してもらいたい。でなければ、旧学位令をしばらくの間存続して、その間完璧なものを一つ研究して成案を得ていただきたい、こういう希望を、私はこういう多くの人たちにかわって申し上げたいと思うのです。一つ大臣にあとでお話し願って、この点は特に科学技術研究のみならず、あらゆる方面における学術研究の奨励のために、また学術発展のために努力をしていただきたい、こういうふうに思います。一つお願いをいたします。
  6. 長谷川峻

    長谷川政府委員 松前委員も、この委員会決議されて以来、文部省がそうした専門家を集めて、この委員会決議尊重のためにいかに動いていたかということはおわかりいただいていると私は思うのであります。旧博士論文の場合でも、これはほとんど無審査です。試問するという事項があったそうでありますけれども、ほとんど例外なく無審査でやってきた。ところが、新学位令によりますと、ここで御議論になったように、外国語二つを課するというふうなことなどは、旧と比較すると非常におかしいじゃないかということで、私たちもその通りだと思いまして、だんだん研究させました結果、それをやるところの審議会内部において——ある場合には、あなたがいただいたような激励と申しますか、地方の窮状などもよく了解してもらいまして——やはり審議会内部においては、外国語二つ課すということはおかしいということになりまして、これを二月いっぱいに、予定より答申を早くとりまして、三月の切りかえまでにはそういう御不便のないようにし、そして学術向上のために資したい。ただ、その際にも、たった一つあれしますことは、外国語二つは課さないけれども、ただ野放しでもまずいじゃないかということから、試問などという文字は入るのじゃないか。これは旧の場合でも、試問という文字があっても全然やらなかったと同じように、ただ野放しでもまずいじゃないかということから、試問という文字などは入るかもしれませんけれども、今のところ、この委員会で、特に松前さんがおっしゃったように、二つ外国語を課するということはやめてもらうという方向に大体——大体どころではない、太鼓判を押して御期待に沿えるのではないか。委員会の御意思を非常に尊重して、そして学術向上のためにやっていきたいということで、ようやくそこまで来ましたことをあらかじめ御了解を得て、日本学術向上のために一つ喜ぶような姿を作りたい、こう思って真剣にやっておりますことをこの際御了解いただきたいと思います。
  7. 松前重義

    松前委員 決議に対して非常に尊重されまして、熱心に取り上げられたことを感謝いたします。今のお話によりますと、語学試験はしない、こういうことであります。ところが、その内容に少しばかり入ってみなくちゃいかぬかと思うのです。私は詳しいことは申し上げませんから、私の言葉のニュアンスから察知してやっていただきたいと思います。全般的な、多くの人たち希望は、語学の問題だけではないのです。言いかえると、所定の審査を経てやる。何と申しますか、博士として大学院相当した学力があるかどうかを大体審査をしてやるというふうに、新学位制度によりますと書いてある。そうすると、それは何も語学だけでない。少なくとも語学二つはやれと、こう書いてある。それでは、何でもやれることになっておる。だから、そういうふうな長年研究に携って、相当に深い造詣、専門知識を持っておる人が、今度また大学教養過程ぐらいで習うようなことを、何か口頭試問審査でも受けるというようなことは、これを若僧からやられるのはたえ切れぬものだから、こういうふうな陳情が来るのです。実に涙の流れるような陳情なんです。旧制度にはそういうのがなかった。それで、かえって旧制度の方が今の新制度による博士よりもはるかに偉い人が出ておる。はるかに学力もあります。これはもう太鼓判を押せる。だから、そういうルーズにしたから非常に学力が低下するというのは大間違いなんで、大体、大学院に行って、大学教授のもとである研究テーマを与えられておやりになると、その人はそれだけしか知らない。その教授指導だけによってその人が認定されて学位をもらうということになる。まことに狭い知識です。それで、その指導した教授というものが大したものじゃない。大体、そう広い知識を持っておるわけじゃない。それよりも、自分であっちと折衝価し、こっちと折衝し、あれをあさり、これをあさりしてきて、自分の力でこれをものにした者は、これははるかにそれよりも実力のある者なんですから、その実力はほんとうに学問発展に大きな寄与をするものだ、私はこういうふうに思うのです。だから、そういう意味において、常識的な教養課程みたようなものを、審査するとかなんとかということによって、若い教授からそんな口頭試験を受けたりするようなことのあり得ないようにしていかなければ、これは研究者に対する侮辱だと思うのです。それで、決して学力が劣っていない。しかし、古い大学先生は、やはり自分の弟子を博士にしたいものだから——そういう人もおるような気がする。ときどき話してみて、なるほどこの人はこういう気持かなという人もあります。というのは、自分だけが博士を作るのであって、独学なんというのは博士の資格はないのだというような気持の人もなきにしもあらずじゃないかと思う。しかし、それは学閥を作ります。そうして、それは決して学問発展を促進しません。だから、そういう意味において、非常に小さな問題のようだけれども、非常に大きな問題。しかも、この手紙をくれている人は、これから博士になる人じゃない。みんな博士です。旧制博士をとった人です。そうして、後進の指導にみんな困っている。ですから、こういう意味におきまして、一つ成案を得られるときに、特にあまり妙な、神経質な心配をせぬで、思い切って、政治的な判断によって裁断を下してもらいたい、私はそう思う。今のあなたのお話の中に、何かちょっと耳ざわりな試問とかいうお言葉があったのですが、そんなことは心配せぬでもいいと思う。あなたの神経の太さで、荒木文部大臣神経の太さで、一つやってもらいたい。  それからもう一つ学位名前です。そこの大学教授が、非常に偉い人もおるだろうけれども、一部分のみ専門家教授もおるだろうと思うのです。これはもう人間はとりどりですから、その人の知識の範囲内において指導し、そして博士号をその人にやるのだというようなものは、その大学教授指導によって博士を作り上げたんだから、自分博士になったんじゃない、作り上げたんですから、人形みたいに、その人の所属する大学名前をその作り上げた人形に書いてちっとも差しつかえないと私は思う。けれども、自分の独力で相当研究を出した者に対しては、これは従来通りの、いわゆる何々大学というようなレッテルをはる必要はない。やはりユニバーサルな名前でやるべきだと思う。だから、旧学位令というものの精神を十分に生かしたという意味はそこにある。この点についてはどうですか。一つ事務当局からでも、あなたではあまりなんだろうから、説明してもらおうか。
  8. 村山松雄

    村山説明員 旧制度の場合は、学位の授与は大学におきまして審査決定いたしまして、文部大臣の認可を得て授与することになっております。従いまして、国家的な制度といたしまして、個々の大学名前は冠しなくてもいい。新制度におきましては、学位大学審査決定いたしまして授与して、その旨文部大臣に報告することになっています。実質的にも形式的にも大学が最終的に責任を負うことになっております。従いまして、学位を授与した責任を明らかにする意味におきまして課程博士の場合はもちろん、論文審査による場合も、審査した大学名前を冠するということにいたしたわけでございます。このことが、必ずしも学閥を助長するというようなことには相ならぬじゃないかと思うのであります。
  9. 松前重義

    松前委員 どうもあなたの答弁はおかしいですな。そうすると、新制度は全然そういう学閥的な傾向はないという結論をお持ちですね。そうすると、変更する必要はないでしょう。これを改正する必要はありませんよ。これは新制度でおやりになったらどうですか、ちっともそういうふうななにがないんなら。そうすると、こういうふうな要望も、まだ今後どんどん盛り上がる空気として出てきますよ。ですから、私は何だ大学というようなケチくさい名前をつけるべきでないと、いつも思う。その学校でやったやつはそれでいいのです。その学校指導したやつはそれでいい。大学院を出たやつはいい。大学院を出ない人間で、しかもその大学の卒業生でない人間に、その大学学位なんという名前なんか冠してもらう必要はない。従来と同じように審査だけしてもらえばいい、こういうことです。これは実は非常に大事なことなんです。みんなの意見がそうなっている。
  10. 村山松雄

    村山説明員 先ほど政務次官からお答え申し上げましたように、新制度学位審査方法細部の点につきましては、大学設置審議会特別委員会で検討することになっておりますので、ただいま御指摘の点もあわせて検討いただいた上で結論を出すようにいたしたいと思っております。
  11. 長谷川峻

    長谷川政府委員 先ほどの答弁を私はあれするわけじゃ、ないですけれども、旧学位令の第五条に「学部教員会ハ前条論文審査ニ付其提出者ニシ試問行フコトヲ得」、こういう項目があることは御承知通りです。その試問ですが、旧制度において一ぺんも試問されたことはない。しかしながら、試問という言葉を貫いておくことは、やはり盗作があったり代理論文があったりするというような危険があるので、試問という言葉は使われておりましたけれども、今まで行なわれたことがない。新の場合も、ここの委員会で話があったように、外国語二つというものはやらせないように内面指導をし、その方向に今持っていきつつあるが、しかしこの程度の試問というものはやはり必要なんじゃなかろうか、野放図にするわけにもいかぬのじゃなかろうかという意見もあることも御承知置き願いたいことが一つ。  それから、今、大学課長お話のありましたように、論文を、博士の場合にはその大学名前をつけない、旧制度博士論文のようにしたらどうかという御意見でありますが、これは私の承知したところでは、アメリカあたりでは、ハーバード大学あたりはちゃんと大学名前をつけているそうですね。いい大学は、あれはハーバード大学博士だというようなことやらありますので、新制度の場合にそういうことも加味いたしたりして今のような結論になったわけですが、今度の外国語二つの問題のときに、松前委員お話もありますから、それもあらためて研究していただこうかというふうな政治的判断をして、内面指導もしてみたい、こう思っておりますことを御了承願います。
  12. 松前重義

    松前委員 政務次官お話で了承いたします。一つ、しっかりお願いしたいと思います。  そこで、大学設置審議会との関係ですが、結論は今の政務次官お話でわかりますけれども、文部省自体がこれは行政の責任はお持ちになっているのだ。大学設置審議会という隠れみのに文部省が隠れないように、あくまでも大学設置審議会意見はある程度尊重はするけれども、しかしその通りにするかどうかという問題については、やはり文部大臣責任においてやるべきものだ、私はそう思うのですが、その点はどうでしょう。
  13. 長谷川峻

    長谷川政府委員 理論といたしますれば松前博士と同様の心境を持っております。ただ、法律上の問題といたしまして、学校教育法の第六十八条に、「博士その他の学位に関する事項を定めるについては、監督庁は、大学設置帯議会に諮問しなければならない。」と書いてありますので、だから、諮問をし、尊重する。その過程においての政治的配慮は、日本学術向上を考えるわれわれの責任において、あなたと同様の心境において御指導をし、実現に持っていきたいと考えておりますことを御了承願いたいと思います。
  14. 松前重義

    松前委員 私は大学設置審議会を無視なさいと申し上げているのではないので、その点は大体お含みの上の御答弁だろうと思うのです。しかし、大学設置審議会という制度がありますが、この方々がやはりこういう研究者、ことに一番大多数の民間の研究所、あるいは官庁の研究所公立研究所、あるいは大学付属研究所、こういうところの研究者代弁者ではないのですね。大体大学院先生方が一番多い。だから、そういう意味においては、それに一応書いてありましょうけれども、今度の要求はその方々要求ではない。そのほかの要求だから、これは一つ政治的に特に強く配慮してこれを取り上げていただかなくちゃならないのじゃないかと私は思うのですから、この点は特に政治家としてのあなたの御手腕に期待するわけであります。
  15. 長谷川峻

    長谷川政府委員 松前先生、とにかく十月くらいにここで決議されて、ここまで持ってきたのは、審議会尊重はしますけれども、内面指導をしてきたからここまできたのです。委員会尊重してその通りやりますから、どうぞ一つ御安心いただきたいと思います。それはその通りやるから御心配なく。   〔「大政務次官、やらなければ不信任案だ」と呼ぶ者あり〕
  16. 松前重義

    松前委員 おそらく不信任案を出さなくてもいいかと思うのでありますが、そういう意味において、うんとがんばっていただきたい。ことに事務当局、あまり言いわけばかりせぬで、この大きな目的に対して邁進していただきたいと思います。
  17. 前田正男

    前田委員長 次に、河野正君。
  18. 河野正

    河野(正)委員 すでに当委員会におきましても、学位問題に対する決議も行なわれておりますし、さらにまた、当局側もこの委員会決議方針に沿うて、改善のために鋭意努力する、こういうような御意見の表明がございました。私もそういう方針に沿う中で、若干違った立場の意見もございますので、そういう意見を若干申し述べて、所信を承っておきたいと思います。  もちろん、単位問題の改変というものが、学術振興に寄与するという大きな目的でなければならぬということは、私どもが今さら申し上げるまでもないと思います。  そこで、まず第一に承っておきたいと思います点は、これは後ほど論議発展させる意味で非常に参考になりますのでお聞かせ願いたいと思いますが、今度の単位制度を改変した大きなねらいというものがどこにあるのか、これが非常に大事だと思うのです。改変をしたが、そのために学閥を助長したり、あるいはあとでちょっと触れますけれども、三重大学のようないわゆる学園の聖域を汚すような事件が発生したり、そういうことでは困るのであって、どこまでも学位問題の改変というものは学術振興に寄与する、こういう一つの大きな旗じるしがなければならぬというふうに思うわけでございます。いよいよことしの春から実施に移るわけでございますが、そのねらいというものがどこにあるのか、そういう方向について御意見をお出し願いたいと思います。
  19. 村山松雄

    村山説明員 学位制度趣旨につきまして、従来通説とされておりますところを御説明申し上げます。  まず、これから改変する以後の問題は別といたしまして、現在の新学位制度趣旨につきまして申しげますが、これは終戦後の学校制度の改革によりまして、大学制度が改革されたのに伴いまして、必然的にやはり新しい大学制度に対応する単位制度として現在の単位制度がとられたわけでございます。旧制度におきましては、単位制度は、旧制の大半の大学院に二年以上在学して論文を提出して学部教員会の審査を受けた者、または大学院には在学しないが、学部教員会に論文を提出して前者と同等の学力があると認められた者に対して、文部大臣の認可を受けた上で大学が授与しておったわけであります。新しい大学制度におきましては、監督庁の監督をなるべく少なくする、純粋な学術研究に関するものは、大学において実質的にも形式的にも最終的に処理するという精神からいたしまして、学校教育法の第六十八条に、「大学院を置く大学は、監督庁の定めるところにより、博士その他の学位を授与することができる。」という規定がたされたわけでございます。ただ、授与の手続等につきましては、監督庁——文部省でございますが、文部省令によりまして二種類の外国語試験を課するとか、あるいはその他の試問等ができるというような規定がなされておったわけでございます。そういう手続上の規定の実質的な点につきましては、大学設置審議会に諮問いたしまして、その答申を得まして、その答申の線に沿って文部省令を作っておったわけでございます。現在はまだ当分の間旧学位令が存続中でございますので、新しい学位制度による学位授与の件数は比較的少のうございます。前回の委員会にも御報告申し上げましたが、課程終了のものを含めまして約二千件博士が授与されております。そのうちで論文提出によるものは百二十七名でございます。新しい制度によった学位の授与件数が少ないことは、必ずしも新しい制度が非常に実情に即しないわけではなくて、旧制度がありますものですから、旧制度による単位授与の道がありますので、主としてそっちの方で学位をとっております関係で新制度のものはまだ少ないわけでございます。しかし、いろいろ実情を承りますと、新しい制度大学が最終責任を負う建前からいろいろ審査方法を比較的こまかくきめたものにつきましては、御指摘のように実情に合わぬ点があるという反省がなされまして、今後それらの点につきましては、実情に沿うごとく改善をはかりたいというのが既存の実情でございます。
  20. 河野正

    河野(正)委員 学制の改革に基づいて学位制度が改変されるということは、これは形式的な問題でごさいますから異論のないところでございますけれども、しかし、本質的な問題は、やはりこの単位制度という問題を改めることによって、さらに一そう学術振興に寄与せしめていくということでなければならぬと思うのです。ところが、学制の改革に基づいて機械的にやったために、よって起こってくる現象というものは、学閥を助長し、あるいはまた学位取得にあたってのいろいろな醜聞を巻き起こすということでは困ると思うのです。そこで、これは文部省改善のために鋭意努力中であるという所見を今、長谷川次官からも述べられたわけでございますけれども、私どもも、改善していただくならば、一つ私どもの意見も十分お聞き願いたいという意味で、若干の意見を申し上げてみたいと思います。  すでに御承知だと思いますけれども、この学位制度の改変をめぐって現われて参りました一つの現象というものが、さきの三重県立大学博士事件だというふうに考えておるわけであります。この三重大学の事件を私どもが論ずる場合に、単位制度の改変を無視して論ずることはできぬと思います。これはそこが大きに関係しておるわけであります。そこで、これは今後の学位制度のあり方について、私どもも一つ抜本的に取り組んでいただきたいという希望等もございますので、こういう事件を文部省がどういうふうに判断しておられるのか、一つその辺の所見をまず承っておきたいと思います。
  21. 村山松雄

    村山説明員 三重県立大学の医学部におきまして、学位の授与に関連して問題になりましたのは、六名の教授の力が謝礼を受け取ったということで、警察から検察庁に対しまして立件送致になりまして、検察庁において取調中という事件でございます。この事件は、実は旧制学位の授与に関連して起こった問題でございまして、新制度博士に関連したものではございません。ただ、旧制でなぜこういう事件が起こったかということを反省してみますと、御承知のように、旧制度がだんだん終点に近づいて参りましたので、一時に論文が殺到した。そのために、推察すれば、論文提出者の方は、論文審査に便宜のはからいをあるいは若干期待して謝礼を贈ったというようなことであったかとも存じますが、これは検察庁で取調中のことでございますので、いずれそちらの方で明らかにされることと存じます。私どもが大学当局その他から報告を受けた限りにおきましては、これは一部には、学位審査に関して教授相当骨を折って指導するわけだから、謝礼をとるのは社会的通念で不忠議でないんだというような議論もあったようでありますが、大学当局も私どももそのようには考えておりません。学位授与に関して多額の金品を受け取るということは、はなはだ遺憾なことだと思っております。これは旧制度の終点近くに過渡的に起こった不祥事件という工合に把握いたしたい、現段階ではかように考えております。
  22. 河野正

    河野(正)委員 今、大学課長からいろいろと三重大学事件の真相、概要について御報告があったのですけれども、私はこの事件の中でわれわれが見のがしてならぬ点は、これは検察庁も言っておりますように、この事件は紹介論文にしぼって調査をしておるということですね。要するに、教室でやった論文あるいは紹介論文というように二つの形がございますが、今度の事件というものは紹介論文というものにしぼって検察当局は手を入れたところが、今御報告があったような収賄事件というのが大きく浮かび出てきたということです。そこで、やはりそれだから紹介論文を私どもは否定するということではないわけです。そうでありますと、松前さんの意見と若干違って参りますので、そういうことではないのであって、ただ、今度のこの事件というものは紹介論文を中心にしての事件であった。そのほかにまだ事件があったかわかりませんけれども、そこでやはり若干そういう方式が旧制度に残っておったと仮定して、そういう方式がいいか悪いかということは別問題として、私は今度の事件の中にはそういう一つの特色があったというふうにはいえると考えるわけです。そこでやはり、そういう現象というものは十分考えつつ、やはり今後の学位制度について取り組む必要があるのでなかろうかというふうに考えるわけでございまするが、その点についてはいかがお考えでございまするか、一つ御所見を承りたい。
  23. 村山松雄

    村山説明員 三重県立大学事件は、紹介論文を中心とした事件ということでございますが、私どもが報告を受けました限りにおきましては、警察は一応紹介論文も学内指導論文も全部を問題にしたわけでございます。実情は、全部の学位授与につきまして教授に謝礼が出されておったようでございます。ただ、警察は捜査の段階でいろいろしぼりまして、まさかそういう全員を送検するわけにも参りませんので、警察の見解といたしましては、平素学内で指導を受けておった弟子が先生に対して若干のお礼をするということはまあ社会的通念であろう。しかし、全然従来指導を受けておらないで、外部で論文を作って、つてをたどって紹介を受けて提出した論文、それについて金品を贈る。しかも、警察の見解によれば、ある限度以上の多額の金品を贈るということは、これはどう考えても社会的通念を逸脱した収賄と考えざるを得ないということで、紹介論文で、しかもそれに関連して多額の金品が贈られた六名の教授につきまして立件送致をしたということだそうでございます。従いまして、今後の問題といたしましては、これは制度というよりは、やはり直接指導を受けた先生、あるいは論文審査を受けた先生に対して、一体どうその謝意を表するのが社会的通念であるかというような観点から考えるべきでありまして、必ずしもこれは制度に伴って必然的に起こった事件ではないんじゃなかろうかというのが私どもの感じでございます。
  24. 河野正

    河野(正)委員 実は私はいま課長が御答弁なさったことと反対の意見を持っておるわけです。と申し上げますのは、これは後ほど若干触れてみたいと思いますけれども、大学で勤務いたします公務員の身分の問題等が関連してくると思うんです。そこで、私も長いこと研究生として残っておりましたが、長いこと無給なんですね。そこでむしろ、私は社会的通念からいいますと、紹介論文の方が若干のお礼をして、無償で働いておるのですからそちらの方がむしろ謝礼をしないというのが、どうも社会的常識ではなかろうかというふうに私どもは判断するわけです。ところが、今度三重の場合を取り上げたのは、紹介論文について収賄があったということで取り締まるわけです。ところが、今申し上げるように、むしろ紹介論文の方が謝礼をすることが社会的通念ではないか。というは、学内では、今の大学院制度もそうでしょう、月謝を払ってやっておる。私ども戦時中は特別学生は月給をもらっておりました。ところが、今の大学院の学生は、御存じのように月謝を払わなければならないというような状態でありますので、むしろ今課長が御答弁なさったような観念は、私どもの社会常識から見ますと、少し食い違っておるのではなかろうかというふうに判断するわけです。そこで、やはりこの問題は一がいに紹介論文がよいとか悪いとかというような判断はつかぬのではなかろうかというように私どもは考えます。  と同時に、これは松前先生の方からいろいろ御要望が出て参りましたが、特に最近の傾向によりますると、学外の研究機関が非常に優秀になってきた。これは医学に限らず、すべての科学技術が経済の成長とともに非常に優秀になってきた。そこで、従前は大学におれば最高の研究ができるというような格好でございましたけれども、最近は必ずしもそうではない。かえって学外に出た方がりっぱな研究ができるというふうな実情も生まれてきておるわけです。そこで、そういう意味からいいますと、大学大学外との研究の交流、こういう必要性というものが当然出てくると思う。そういうことになりますと、やはり今の紹介論文というふうな問題が、そういう事情を考えて参りますと非常に大きな意義を持ってくると思う。これは今の科学技術が非常に進歩するというような状態の中では、大学の学内だけの研究では十分と言えない。学外の研究とも両々相待ってりっぱな研究を育成していくということになりますと、どうしても研究の交流の必要性というものがある。そうなりますると、今問題となりました紹介論文というような形式が当然大きく浮かび上がってくるということになりますと、こういう問題も、事件として非常に社会の批判をこうむって参りましたけれども、やはり一考すべき問題でなかろうかというふうに実は思うわけです。ただ、そういう紹介論文のやり方に対しまする認識が、課長と私の方が若干食い違っておる。そういう点に対しましてどういうふうにお考えになりますか、お答えを願っておきたいと思います。
  25. 村山松雄

    村山説明員 先ほどの御説明は、この事件を処理いたしました三重の警察、それから三重の地検の見解を大体そのまま御報告申し上げたわけでございまして、私どもといたしましては、紹介論文にいたしましても学内論文にいたしましても、論文審査につきましては相当の手数がかかることは事実でございます。特に自然科学関係論文なんかになりますと、論文に記載してある事項がはたして正確であるかどうか追試などして確かめなければ、大学として責任ある審査ができないといったような事情にも相なります。ところが、現在学位審査に関連いたしまして手数料を大体取っておるわけでございますが、手数料を取り、それから審査に当たる教官には審査手当を出しております。国立大学の場合でございますと七千五百円の審査手数料をとりまして、それと大体同額を手当といたしまして、審査に当たった先生方に還元しておるわけでありますが、との審査手数料や手当が非常に少額であるという問題になるのじゃないかと思います。かりに紹介論文審査に対して、その審査した教官の労苦に正当に報いるといったようなことを制度化するとすれば、たとえば十万円くらいかかるものであれば、十万円の審査手数料をとって、十万円相当額を審査された教官に還元するといったようなことにいたしますれば、これは幾らとってもと言っては語弊があるかもしれませんけれども、正規の手続でとるものはとり、それから教官に対してお払いするものは払うということになりまして、何か暗黙のうちで教官に金品を渡すといったような不正事件としての格好は解消することになろうかと思います。そこら辺は検討に値する問題でございますが、現在の制度ですと、どれだけの手数料をとり、どれだけ手当を払うかは、国立では予算的に一定しておりますが、公私立大学につきましては、個個の大学で個々に定めるということになっておりまして、これにつきましては、文部省では認可等の監督をいたしておりません。これの合理化が必要じゃないかというように感ずる次第でございます。
  26. 河野正

    河野(正)委員 そこで、今の問題と関連をするわけですし、さらにちょっと触れると言いましたが、国立大学、私立大学に関せず、いわゆる研究生の身分の問題です。特に国家公務員が問題になっておりますけれども、その一例としては、たとえば大学病院の医員の身分ですね。これはどこでも一応慣例としては、医局に入局いたしますと、それぞれ診療部門を担当する。そうしますと、実際には主治医という職務を持つわけです。ところが、大学の中でも、実際国家公務員であるべき身分の人は、助手以上でございますので、微々たる数なんです。この助手以上の国家公務員になるのは大へんなことです。そうなりますと、診療責任の在所というものが一体どこにあるのか。実際その診療は責任を持って担当しておるけれども、身分は国家公務員じゃない。そういう点から見ますと、これはさっきの問題とちょっと関連してくるわけですけれども、そういう研究生の身分確保の問題、こういう問題について、文部省はどういうふうにお考えになっておるのか、一つこの際明らかにしていただきたいと思います。
  27. 村山松雄

    村山説明員 大学病院におきます無給研究員と申しますか、職員ではないが職員相当の職務に従事しておる研究生その他の者の取り扱いにつきましては、もう戦前から戦後を通じまして、大学病院の大きな問題の一つであることは御指摘の通りでございます。これにつきまして、基本的な考え方は、診療に必要な要員であればこれは定員化して職員とする。それから、本人の研究のために大学病院に出入する者は、大学院学生なり、研究生なり、学生としての身分を明らかにして授業料をとる、奨学の措置があれば奨学金を与えて学生としての取り扱いをするという基本方針でやって参っております。ところが、実際問題といたしましては、なかなかこの整理がつかないのが実情でございますし、それからまた職員としない大学院学生なり研究生といたしましても、大学病院におります人は、みなインターンを終わり、国家試験に合格して医師免状を持っておる者でございます。そこで、医療法の関係では、診療に従事して一向差しつかえない人たちでございます。そこで問題は、そういう者が診療に従事した場合に、その機関の責任との関係ということになるわけでございます。それにつきましては、多年の問題でもございますし、厚生省なんかとの関係もございます。実は大学病院のことは、従来は大学課で所掌いたしておりましたが、昨年の五月に大学病院課ができまして、大学病院課の方で最大の問題の一つとして、現在、大学における無給医員の問題を取り上げまして、実態調査をし、対策を講ずることにしております。あまり明快なお答えにならなくて恐縮でありますが、一応実情を御説明申し上げました。
  28. 河野正

    河野(正)委員 大学研究生といえども、主として問題になるのは医学部だと思いますが、今鋭意研究中だというお話でございますけれども、事は人命に関する非常に重大な問題ですね。ところが、今私が指摘したように、その診療責任の在所が明確でない。それでは一体、今の診療責任というものは、大学ではだれが負っておるのか。これはどういうふうに御理解になっておりますか。
  29. 村山松雄

    村山説明員 ただいま医療法の診療責任と、大学の機関としての責任と、二つに分けて申し上げたわけでありますが、医療法上の診療責任は、医師個人に帰着するわけでございます。ただ、大学病院という機関の責任といたしましては、無給職員がやっている事柄は、無給職員の大学におけるあり方に対応いたしまして、それを監督すべき職員が責任を負う、かように理解し、取り扱っております。
  30. 河野正

    河野(正)委員 これは今のような答弁には、事人命に関する非常に重大な問題でありますから、私も納得ができるわけですけれども、現実の問題として鋭意研究されておるわけですから、私どもは、一応そういう研究成果を待つとして、この問題については留保いたしておきたいと考えております。  さらに、この学制改革問題と関連して私どもが所信を承っておきたいと思いまする点は、この学制改革といえども、やはり新しい科学技術の革新という今日の世界情勢のもとでございますから、そういう情勢に応じてそれぞれ学制改革というものが行なわれるというふうに私どもは理解をいたします。そうしますと、形式的にそうだといたしますと、実質的にもやはりそういう方向で使命が達成されるような方向にいかなければならぬということは、これは私どもが今さら論ずるまでもないところと考えております。そこで、今日の大学院制度でございますが、この大学院の学生が日本科学技術振興の中で大きな役割を果たすというように私ども考えるわけですが、司法修習生には、国家試験通り、司法修習生になると手当がある。私はやはりほんとうに身を落ちつけて、今日の非常にものすごい勢いで進歩いたしまする学術振興に寄与するこの大学院の学生諸君に対しましても、やはり司法修習生のごとく手当を支給して、じっくりりっぱな研究をさせるというようなことが当然望ましいというように考えるわけです。戦時中は、実は大学院の特別学生には手当がついておりました。私が助手をしておったときは、大学院の学生の方が月給がちょっと高かったですよ。そういうことで、大学院の学生が国の方針に沿ってりっぱな研究ができる。そういう制度が私は望ましいと思うわけでございますが、文部省としては、そういう考えに対しましてどういう所信を持っておられますか。この点は、今後の日本学術振興のために非常に重要な点だと思いますので、一つこの際所信を承っておきたいと思います。
  31. 村山松雄

    村山説明員 大学院の学生に対して給費をすべきかどうかという問題と承知いたしますが、この点につきましては、御承知と思いますが、ここ一、二年来、大学院の学生が専心研究に従事するためには、少なくとも博士課程においては給費に踏み切ることが必要であろうと文部省としては考えまして、予算の要求をしております。ところが、政府原案としては否決されまして、三十七年度につきましても、従来八千円、一万円の貸費が貸費のままで一万五千円に増額になり、大学研究所研究要員になった場合には将来にわたってその返還を免除するという制度のままで、その拡充にとどまったわけでございます。文部省としては御趣旨に全く賛成でありますが、財政的な事情から実現を見ないというのが実情でございます。司法修習生とか、ちょっと系統は違いますが、防衛大学校の学生などには給費が出ておるわけでありますので、給費はおよそなすべからずという工合には決して考えておりませんが、政府全般といたしましては、司法修習生や防衛大学校の学生とその他一般の大学大学院学生とは身分上相当違うので、給費はできないという考えであります。
  32. 河野正

    河野(正)委員 科学技術振興を達成するためには、まず第一に機関、施設の充実ということがあると思いますし、第二はやはり人材の養成ということが当然大きく重視されなければならぬ。大体こういう二つの柱がそれぞれ両々相待って、日本科学技術というものが振興されるというように私どもは理解をするわけです。そういたしますれば、当然機関、施設、そういうものの充実のために力を注いでいただくということが必要なことだし、第二はりっぱな人材を養成していく。そういう意味で、さっきの司法修習生ではございませんけれども、一定の手当を支給してりっぱな人材を研究機関に残していく。これは後ほどちょっと触れたいと思いますけれども、最近では頭脳の開発といって、民間の方で優秀な研究生をどんどんスカウトしていくというようなことがいろいろ取りざたされておるわけです。そういう状態ですから、今まで科学技術の主たる大きな役割を果たすのは大学機関だ、こういうふうに考えられておりましたけれども、今日ではむしろ学外の方がりっぱな研究ができるという方向にだんだん変化しつつあると思うのです。そこで私は、やはりこれは研究生の育成機関でもあるし、大学研究というものは特に重視しなければならぬということでございますから、やはりその点については十二分な配慮が行なわれなければならぬ。この点は今後の問題等もございますから、一つ政務次官から率直に御所信を承っておきたいと思います。
  33. 長谷川峻

    長谷川政府委員 今の問題は非常に大きな問題でして、文部省といたしますれば、給費の制度を確立したいと思って、先ほど大学課長が御答弁されましたように、今度の予算にも計上し、大蔵省に要求したのですが、ほかの方の関連から従来のままに落ちついてしまったことは残念であります。しかし、この方針は、河野さんのおっしゃったようなことをわれわれも考えておりますので、将来に向かってさらにこの実現を期していきたい。そして、今の学問に一生懸命な大学院学生に対して、ほんとうに希望を持たせてやっていきたいということを思っておりますから、御了承願いたいと思います。
  34. 河野正

    河野(正)委員 やはり学位問題を論ずるにあたっては、そういう学術振興という問題が大きな使命になってくるわけですから、そのためには一体研究化の処遇をどうすべきか、あるいはまた研究機関の内容をどうすべきかというようなことで、いろいろ御努力願わないと、単に学位問題だけを論じても私は意味がないというふうに考えるわけです。  そこで、さっきちょっと触れましたように、今日経済成長に伴って、民間ではどんどん優秀な技術者を求めるという方向にございます。そのために民間の初任給がどんどんつり上がっておる傾向にあるわけです。大体人事院の調査でも、昨年と本年を比べますと一〇%以上上回っておる。特に医師を中心といたします技術者のごときは、一七%くらい上回っておるというふうにいわれておるわけです。そういたしますと、人事院の勧告に基づいて昨年ベース・アップが行なわれた。特にこの研究技術員のベース・アップがやや優先的に行なわれたということでございますけれども、なかなか民間の給与の引き上げに追っつかぬ。追っつかぬだけならばけっこうでございますけれども、そのために民間に優秀な技術者をとられてしまう、こういう傾向がだんだんと濃厚になってくるわけです。これは三木科学技術庁長官も閣議で言われたということでございますけれども、少々科学技術者が優遇されたとしても、民間に比べて給与が低いために、優秀な技術者がどんどんと民間に出ていく心配がある、こういうことを三木科学技術庁長官も閣議で述べられたように私どもは承っております。  そこでこれは、長谷川次官もおいででございますが、長谷川次官にすべてをおまかせするということでもないと思いますけれども、しかし、この科学技術者を養成するということについては文部省に非常に大きな責任等もございますので、こういう点について今後どういう所信で臨んでいかれようとするか、今のような実情等もございますので、この際一つ率直に御意見を承っておきたいと考えます。
  35. 長谷川峻

    長谷川政府委員 お答えいたします。私は、日本がすばらしくなるのには、やはりこの一億の人間が知恵を出すこと、人間の開発だろうという気持は、皆さんと同様、そして文部省におりますから、それを予算化して実現することが私たち責任じゃないかと考えております。科学者養成ということは、日本並びに世界の問題でもありますが、特に日本の場合にはそれが痛切に感ぜられますので、ただいま国会の御審議もいただいておりますが、給与の問題にいたしますれば、文部省関係の初任給はほかの官庁よりもいいような予算の措置を今度してあります。待遇の問題が一つ。  もう一つは、やはり施設改善の問題がその次じゃなかろうかと思いまして、目に見えるものといたしますれば、国立工業専門学校というものが本年度から発足しますが、十二新設を政府原案として認められた次第であります。これはかつて十二も新設の専門学校が生まれるなんということはなかったのじゃないか。そこまで時代的要請と世論の盛り上がりがある。  そうしたことと、最初申し上げました研究者等の待遇の改善。数字は今覚えておりませんが、教官の待遇などは、昭和三十七年度の予算に従前よりも、私たちが期待した以上に大蔵省からも確保ができた、こう思っております。いずれにいたしましても、会社、研究所等の待遇などがよろしゅうございますから、従来大学その他の研究所でその設備を利用しながら営々として学問あるいは学術振興のためにやっておった方々が、お困りになって、よその方に移るということは非常に惜しいことでありますから、それを防ぎもし、また向上してもらうように、励みを持ってもらうように、これは私たち責任において、皆さん方の御支援を得て一生懸命やっていきたい。力の足りないことをおそれながら、今日あちこちかけずり回りながら予算の獲得に邁進している次第であります。今から先も、日本のほんとうに人間開発という線でやって参りたいと思いますから、御激励のほどをお願い申し上げます。
  36. 河野正

    河野(正)委員 文部省当局が鋭意養成機関に力を注いでいただくことについては、私どもも全く同感でございます。しかし、せっかく養成していただいても処遇が非常に劣悪だということになりますると、どんどん民間の方に流れていってしまう。そこでやはり、この養成機関を助成していただくということもけっこうだが、それと並行して、養成された人物については十分な処遇をしていただく。そうして、りっぱな科学技術の向上に寄与するような研究をできるだけしていただくということに、さらに格段の御努力をお願いをいたしたいと思います。  それから、昨年のこの研究者の給与改定に基づいて能力給制の道が開かれた。この点については若干今、次官も触れられたと思いますが、そういう制度というものはきわめて前進した制度であり、私どもも全く同感でございますけれども、しかし、運営いかんではかえっていろいろ研究機関で問題を引き起こす危険性がある。たとえば能力判定の仕方のいかんによっては、かえってその研究機関に不平不満を起こさせるという問題も起こってこようと思うのです。そこで、そういう運営については、当然不公平が起らぬような慎重な体制というものを確立されるべきだというように私どもは考えるわけでございますが、そういう点について、どういう方針で望まれつつありまするか、一つこの際お聞かせ願いたいと思います。
  37. 村山松雄

    村山説明員 給与制度の問題になって参りますと、どうも文部省といたしましても、多少何といいますか、直接所掌でない面がございますので、ただいま御指摘の能力給が入ってきたというような問題につきましても、はなはだ恐縮でございますが、実情をよく承知しておりませんので、関係のところと問い合わせまして、そういう点がありますれば、この科学技術研究のしに支障のないように運営して参りたいと思います。
  38. 河野正

    河野(正)委員 実は今の御答弁を聞いて非常に私も不可解に思ったわけですが、私どもが仄聞するところによりますと、そういう能力給制というものの道が開かれた。そこで科学技術庁や人事院は、各省に対してできるだけ広い範囲の審査員を集めて委員会を作って公平にやるようにと要望をいたしておる、こういうふうにいわれておるわけですが、今申し上げたように存じ上げぬというようなことでございますると、せっかくそういう道が開かれても、そういう点については具体的な面は何ら前進されておらぬというようなことになると思いますが、この点はどうでしょうか。
  39. 鈴江康平

    ○鈴江説明員 科学技術庁といたしましては、これは文部省関係は除外されております点でございますから、各省の研究機関につきまして、給与の改善について、能率給といいますか、能率本位ということを打ち出しておるわけであります。御承知のように、今お話がございましたように、人事院の勧告におきましても、能力によって昇格させるんだということを持ち出しておるわけでございます。しからば、どうやって能力を判定するかという問題でございますが、やはり私の方といたしましては客観的にそれを十分確かめるということが必要であろうと思います。従いまして、こういったものを客観的に判断するためには、公平な審査機関が必要であるという見地から、各省に対しましてもそういった審査機関を置いてやったらどうかということを、今話し合っているわけでございますが、まず率先いたしまして、科学技術庁自体において御指摘の研究機関がございますものですから、科学技術庁自体においてそういう審査機関をまず作りまして、公平な判定をしていきたいと思っておるわけであります。ただいまのところ、研究所長等とも相談中でございますけれども、大体審査機関を置こう、その審査機関にはやはり外部の権威ある研究者を入れて構成したいというふうに考えておるわけでございます。いずれ近くその実現を行ないたいと思っております。科学技術庁におきましてその先例を開きまして、それによって各省がこれにならうことを私どもは期待しておるわけでございます。ただいまそういった階段でございます。
  40. 河野正

    河野(正)委員 この点はせっかく道が開かれたけれども、いまだどういう方向でそういう道の達成をやっていくかということについては、何ら具体的に確立されておらぬというようなことでは、これはもう仏作って魂入れずで、何のための科学技術振興であるかというふうなことで、私どもは当局の誠意をむしろ疑いたいというふうに考えます。と同時に、各級各界の方々を集めて、そうして今おっしゃるように委員会を作ったといたしましても、他の研究所研究ということについては、なかなかわかりにくいのですね。それですから、わかりにくいのに、その人の研究の能力がどうだというような判断というものは、なかなかつきにくかろうと思うのです。そこで、なるほど審査員を集めて委員会を作る、そうして公平に判断していくというようなことでございますけれども、実際の運営というものは、私はなかなかむずかしいと思うのです。簡単にいかぬと思うのです。同じ医者の中でも、私ども研究して参りましたが、人が研究している研究内容はなかなかわからぬ。わからぬのに、その研究者が能力があるかどうかという判断というものは、なかなかつきにくいと思うのです。そこで、せっかく道が開かれた、そのために委員会を開かれたといたしましても、その運営いかんによっては、さっきの話じゃございませんけれども、学閥を助長したり、あるいはまた研究機関の中におきまする不公平、不平不満というものを助長したり、そういう結果というものも、これはないことを希望しますけれども、ややもいたしまするとそういう結果が起こってくる可能性、危険性というものがあると私どもは判断をいたします。特に問題となりますのは、三等級への昇格は、それぞれ機関の長がおりますから、そういう人が判断されるといたしましても、二等級昇格の場合はなかなか問題が起こってくる可能性があるのではないかというふうに判断をするわけです。そこで、その通常についてはよほど慎重な体制というものを確立していただかぬと、さっき申し上げますように学位問題じゃないけれども、学閥ができて、そのために学閥によって昇格が行なわれていく、あるいはそういう、不公平が起ってきますから、研究機関内において非常に不公不満というものが醸成されて、そのために十分な立体的研究というものが不可能になってくるというようなことでありますと、せっかく道が開かれたけれども、それがかえって科学技術振興をはばむ結果になってしまうというようなことも当然考えられて参りますので、そういう点についても十分配慮の上で、しかもすみやかにそういう体制を確立すべきではないかと思うわけでありますが、その点は次官から……。
  41. 長谷川峻

    長谷川政府委員 科学技術庁の方から、今の研究機関の問題については文部省が入ってないというお話でありましたので、そういう制度ができた場合は河野先生のおっしゃるようなことは十二分にやはり研究して考えていかぬと、給与体系の革新と申しますか、変更だろうと思いますから、それが科学技術振興に累を及ぼさないように気をつけていかなければならぬということは同感でございます。
  42. 河野正

    河野(正)委員 科学技術関係する責任者として、長谷川次官もこういう問題については直接であろうと間接であろうと、そのいかんを問わず、そういう方向で格段の御善処をお願い申し上げます。そうして、今後科学技術振興というものが円滑に発展していくようにお願いを申し上げたいと思います。  いろいろ申し上げたいことはたくさんございますけれども、一応きょうは学位問題についてというふうな議題でもございましたので、そういう単位問題をめぐっての諸問題についての御所見を承ったわけでございます。文部省でも、学位問題の改善については鋭意検討中ということでございますので、今申し上げますようなこともあわせ御考慮願って、学位問題の改善のために御善処をいただきたい。そういうことを御要望申し上げて、一応私の質疑を終わりたいと思います。
  43. 長谷川峻

    長谷川政府委員 河野委員に私から最後にお答え申し上げます。  先ほど松前委員に申し上げましたように、この委員会で、自民党初め社会党その他の会派全部が共同で決議されました博士号についての問題については、その御趣旨尊重いたしまして、この三月までに間に合うようにこの意見を十二分に取り入れて、日本学術振興に支障のないようにやって参りたい。いろいろな議論もあるでしょうけれども、これは大きな政治的な立場も入れまして、やってみたい。これは一つ誠意のあるところを御了承願いたいと思います。
  44. 前田正男

    前田委員長 この問題に対します質疑はこの程度といたします。     —————————————
  45. 前田正男

    前田委員長 次に、科学技術庁関係予算説明に対する質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。齋藤憲三君。
  46. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 長官の所信に対する質問の参考として、資料の要求を申し上げておきたいと思います。総理大臣の施政方針の演説にも、文教と科学技術振興というものが一括して取り上げられておるのであります。きょうは長谷川政務次官が出席されまして、まさに文教と科学技術振興が渾然一体をなしたような感がありまして、この委員会も将来の運営において、特に文部当局の出席をたびたびお願いをして、文教と科学技術の一体化をはかって参りたいと思うのであります。  施政方針演説の中には「政府が、明年度の予算編成にあたり、新時代に即応する科学技術の開発並びに科学技術者の養成とともに、最も力点を置いたところであります。」ということを総理大臣も述べておりますし、これと同じようなことを科学技術庁長官も申し述べておられるのであります。大蔵大臣は、昭和三十六年度当初予算において要求した額よりは四百八十二億円の増加となっておる、総額三千五十三億円の文教並びに科学技術刷新に関する予算の要求をやっておる、こういうことを言っておるのでありますが、この科学技術庁それ自体の予算というものは、わずか百二十七億円程度でございます。この三千五十三億円の中には、直接科学技術振興に関する予算というものは関係行政庁の中でどれだけ見込まれるか、という資料を一つ出していただきたいと思うのであります。  なお、政務次官にちょっとおとどまりを願いましたのは、従来科学技術庁の設置法には、人文科学に関することと大学における研究に関するものを除くというのが第三条にあるのであります。それに、文部省とは科学技術の基礎研究という段階においては疎遠になりがちなんです。これを何とかして是正したいとわれわれ考えて、総理府の付置機関として科学技術会議というものを設けまして、この中にその委員として文部大臣に入ってもらっておるわけであります。しかし、先ほど来の同僚委員各位の質疑応答を伺っておりますと、科学技術庁と文部省が、大半の研究関係を除くなどというがごときあいまいな関係において日本科学技術振興をはからんとすることは、これはとうてい不可能じゃないかと思うのです。やはり国家の要請というものは、実体において科学技術庁がよく検討を加えて、そうしてその研究の要請というものを基礎研究の最も旺盛な国立大学その他の機関にこれを委託して、最も有効適切な研究を助成していく。いわゆる産学協同の体制というものをこの際作っていかなければ、単に理工系の学生を教育すればいいんだということだけでは、国家の繁栄には足りないのじゃないか。そういうことも考えておるのでございますが、いずれこれはこの委員会においても、本年度は真剣に取り組んで参りたい、こう思っておるわけです。これは学術会議あたりの意向がこういうふうに反映して、そして科学技術庁の設置のときに、特にこういう人文科学と大半の研究は除くんだという条項を入れてしまったわけなんですが、これはわれわれの本意ではなかったわけでありますけれども、科学技術庁を設置しなければならないという前提において一つの大きな障害となったために、やむを得ずこういう条項を入れたわけです。もう大体科学術振興というものは、いかなる体系でいかなければならないかということは、はっきりわかってきた時代でございますから、これを特に文部当局においても御勘考を願いたい、かように存ずる次第であります。
  47. 長谷川峻

    長谷川政府委員 齋藤委員お話、非常に本質的な問題だと私は拝聴しました。科学技術庁はあとから生まれましたけれども、同じ文部省の建物で三階と五階でありますので、行ったり来たりはしょっちゅうでございまして、予算のときも、ときに共同作戦などをやっておった次第でございます。私の方といたしますれば、あなたの御指摘されたような従来の国立大学その他を拡充し、技術教育を盛んにするために予算をとった。その一つの現われとしては、科学技術局などというものを今度作りたいということで、大いに行政管理庁と渡り合っているような格好です。時代がやはり科学技術振興ということでありますから、今御議論のある問題などは本質的な問題ですから、それぞれの機関において十二分にお考えいただいて、共同して足並みをそろえて振興ができるように、いろいろな場面においてなわ張り争いはしないでやってもらわなければ工合が悪いのじゃないかと私も考えますので、本日の議論を、帰りまして文部省でもあらためて議題にしまして、みんなの注意を喚起しながら前進するような、前向きの姿勢をとりたいと思います。よろしくお願いします。
  48. 前田正男

    前田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる八日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、三木長官の科学技術振興の所信表明及び科学技術庁関係予算説明に対する質疑を行なうことにいたします。  なお、来たる七日水曜日午後一時より科学技術の基本問題に関する小委員会を開会いたします。  これにて散会いたします。    午後零時三十一分散会