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1962-04-20 第40回国会 衆議院 運輸委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 代理 理事 高橋清一郎君    理事 塚原 俊郎君 理事 福家 俊一君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君       伊藤 郷一君    生田 宏一君       宇田 國榮君    木村 俊夫君       佐々木義武君    壽原 正一君       竹内 俊吉君    西村 英一君       細田 吉藏君    増田甲子七君       三池  信君    石村 英雄君       加藤 勘十君    勝澤 芳雄君       島上善五郎君    田中織之進君       山内  広君    内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         運輸政務次官  有馬 英治君         運輸事務官         (大臣官房長) 広瀬 真一君         運輸事務官         (船員局長)  若狭 得治君         運輸技官         (港湾局長)  坂本 信雄君         運輸事務官         (自動車局長) 木村 睦男君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁交通局         交通企画課長) 藤沢 三郎君         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    中村 一成君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         運輸事務官         (船員局労働基         準課長)    住田 正二君         建設事務官         (道路局次長) 高田 賢造君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道参         与       久田 富治君         (船舶局長)         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 四月二十日  委員矢尾喜三郎君辞任につき、その補欠として  山内広君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 四月十九日  自動車保管場所確保等に関する法律案(内  閣提出第一五六号) 同月十八日  尾道市久保地内防地口付近旅客専用停車場  設置請願内海清紹介)(第四一二四号)  同外三十八件(高橋等紹介)(第四二一二  号)  同外四件(永山忠則紹介)(第四二一三号)  同外四十九件(重政誠之紹介)(第四二六九  号)  野岩羽線敷設促進に関する請願八田貞義君紹  介)(第四一二五号)  国鉄豊川分工場廃止反対に関する請願外三件  (穗積七郎紹介)(第四一六四号)  蕨、南浦和両駅間に駅設置請願福永健司君  外一名紹介)(第四二七〇号)  国鉄大崎大宮被服工場等廃止及び統合反対  に関する請願外六件(佐野憲治紹介)(第四  三四八号)  私鉄運賃値上げ反対等に関する請願永井勝次  郎君紹介)(第四四八二号)  私鉄運賃等値上げ反対等に関する請願永井勝  次郎紹介)(第四四八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  自動車保管場所確保等に関する法律案(内  閣提出第一五六号)  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第三  八号)      ————◇—————
  2. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 これより会議を開きます。  本日、委員長は所用のため出席いたしかねるとのことでありますので、委員長指名によりまして、私が委員長の職務を行なうことになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。  昨十九日、本委員会に付託されました内閣提出自動車保管場所確保等に関する法律案議題とし、審査を行ないます。     —————————————     —————————————
  3. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 まず、本案について、政府当局より提案理由説明を聴取いたします。斎藤運輸大臣
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま議題となりました自動車保管場所確保等に関する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  現下の交通情勢は、交通事故の激増、大都市における路面交通混雑激化等、まことに憂うべき状態となっておりますが、これに対しては、政府といたしましても、従来から、臨時交通関係閣僚懇談会及び交通対策本部において関係行政機関相互施策総合調整をはかり、道路及び駐車場整備踏切道の改良、交通安全施設整備交通規制及び取り締まりの強化、交通安全運動及び交通安全教育推進等の諸施策を講じて、これが解決に鋭意努力して参ったところであります。  しかしながら、最近における交通発達、ことに自動車の増加は、まことに目ざましいものがあり、大都市における道路交通量道路容量をはるかにこえて、著しい交通渋滞を招いておりますが、加うるに車庫等保管場所を有しない自動車が多数道路上に放置されて、道路の適正な使用を阻害し、ただでさえ狭い道路を一そう狭めて、交通混雑に拍車をかける結果となっております。  かかる現状にかんがみ、政府といたしましては、道路自動車保管場所として使用しないよう義務づける等の措置を講じ、道路使用適正化道路交通円滑化をはかりたいと考え、この法律案を提出いたした次第です。  次に、その要旨について御説明を申し上げます。  この法律は、自動車保有者等自動車保管場所確保し、道路自動車保管場所として使用しないよう義務づけるとともに、自動車駐車に関する規制を強化することにより、道路使用適正化及び道路交通円滑化をはかることを目的としております。  まず、自動車保管場所確保の義務づけでありますが、この法律におきましては、自動車保有者当該自動車保管場所確保しなければならないものとし、これを担保するため、政令で定める地域内においては、保管場所確保していることを証する書面を提出しなければ、自動車の登録を受けることができないことといたしました。  しかしながら、自動車保管場所確保を義務づけても、その保管場所自動車を保管せず、自動車道路上に放置しては何の効果もないわけでありまして、この法律は、より直接的な手段として、政令で定める地域内においては、何人も道路上の場所自動車保管場所として使用してはならないものとし、また、保管場所としての使用でなくても、長時間にわたる駐車は、同様禁止することとし、違反行為に対しては、それぞれ罰則を設けました。  なお、これらの規定は、全国的に適用されることが本来望ましいのではありますが、一挙に実施することの利害得失を考慮して、当面道路交通円滑化をはかる上において特に必要と認められる地域政令で指定して実施し、逐次これを拡大していくことといたしました。  さらに、この法律におきましては、現行道路交通法駐車禁止及び駐車時間の制限に関する規定を強化いたしました。  なお、この法律は、公布の日から三月を経過した日から施行することといたしましたが、自動車保管場所としての道路使用禁止等に関する規定は、現在保管場所を有しない自動車保有者保管場所準備するために必要な期間を考慮して、公布の日から一年後に施行することといたしました。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  5. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 本案に対する質疑は、次会に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 船員法の一部を改正する法律案議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  7. 久保三郎

    久保委員 先般中途——中途というより、お答えを保留してお願いしておいた第七十条の定員の問題について、一応非公式に御説明は若干承りましたが、要約して、七十条改正中身について御説明をいただきたいと思います。
  8. 若狭得治

    若狭政府委員 今回七十条を改正いたします趣旨は、海上労働現状に即応いたしますように法律基準を合わせようとするものでございまして、これによりまして定員の削減を意図したものではございません。これまでの法律規定しておりました定員規定趣旨は、毎日実際に航海当直に立つ者を九名要求しておったわけではございませんで、荒天または濃霧中の航行等の緊急の際に航海当直をすることができるものに限って九名といたしておったのであります。最近の船舶におきましては、航海設備が非常に発達して参りましたので、緊急な際におきましても、六名以内の航海当直をもって航行に何ら支障がないといえると考えるわけでございます。また、同時当直定員規定趣旨は、同時に当直をする体制を要求したものではございませんで、現実に同時に当直を行なうことを要求したものでもまたございません。現在実際に働いております船舶の実情から見ましても、甲板部の部員のブリッジにおける当直者は、一名の場合が非常に多いわけでございます。従いまして、実際の航海当直員数につきましては、各船の状況に応じまして、船長がこれを定めるということが適当であると考えるわけでございます。従いまして、今回の改正は、実際の定員に影響するものではございません。また、船員労働の負担を増すというような結果になるわけのものでもございません。実際問題といたしまして、船舶航海設備につきましては、自動化機械化という点につきましては非常に目ざましいものがございまして、自動操舵装置航海装置等におきまして、たとえばジャイロ、レーダー、ロラン、無線方位測定機音響測深機等の、いろいろな機械発達が今日行なわれておるわけでございますので、こういう面から見ましても、この規定改正はむしろ当然ではないかと考えるわけでございます。
  9. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、七十条の改正は、現状に合わせたということが一つ。もう一つは、これによってその船舶所要定員を、特に航海当直定員を削減するというものではない、こういうことだと思うのであります。ただし、従来は、同時に航海当直をする者は三人以上というふうに規定しているわけでございます。同時航海当直する者の員数が三人以上ということに相なりますと、常時同時に航海当直するかどうかは別として、そういう同時に航海当直する場合が出てくる。そういう場合は、当然この法律改正されても、その定員は除かれてはいない、こういう意味に解釈してもいいかと思うのですが、そうですか。
  10. 若狭得治

    若狭政府委員 このたびの改正によりまして、従来の法律と異なりまして、同時に当直すべき者の員数を定めてはおらないわけでございますが、それは、船長がそのときの状況によりまして定めるということによって、十分安全が確保できるということを考えたわけでございます。従いまして、今久保委員のおっしゃいました通りの結果になったと考えます。
  11. 久保三郎

    久保委員 それでは、まだ質問者も続いておりますので、なるべく簡潔に質問をしたいし、御答弁も願いたいと思うので、こまかい点については、局長でなくて、基準課長でもよろしいかと思うので、自由に一つ答弁をいただきたい、こういうように思います。  そこで、次には六十七条のいわゆる時間外労働及び時間外手当の条項の中の改正でありますが、その中で、改正の重点は、六十四条の第二項には、いわゆる事務職員休息時間でありますが、一日につき十二時間、その中で連続八時間を確保しなければいかぬということがありますが、この第二項の連続八時間を中断することができるという規定が、従来の六十七条であります。ここにははっきり「八時間」とこう書いてあるわけですが、今回の改正では、これは「所定時間」、こう直したのは、単なる法文上の整理であるかどうか。いかがでしょう。
  12. 住田正二

    住田説明員 今回六十七条を「所定時間」と直しましたのは、今先生のおっしゃったような趣旨であります。
  13. 久保三郎

    久保委員 それでは、法文上の整理でありまして、六十四条の第二項には、はっきり連続八時間以上、こう規定してあるものを中断することができるという意味だから、ことさらに連続八時間と書かないで、所定時間と、こうしたと了解してよろしいわけですね。
  14. 住田正二

    住田説明員 この七十二条の二の改正によりまして整理をしたわけでございますが、その場合に、どういうような規定の仕方をするか、まだきめてないわけでございます。現在の勤務時間につきましては、休息時間という面から労働時間の規制をやっておるわけでありますが、もしそういうような規制のやり方をすれば、休息時間が連続しなかった場合には、オーバータイムになると思うのでありますが、しかし、今後の省令におきまして、従業員労働時間を八時間あるいは一週平均五十六時間というような規制をやりました場合には、たとい休息時間が連続しなかった場合にも、オーバータイムになるということにはならないと思います。
  15. 久保三郎

    久保委員 私は、七十二条の二の政令の分はお尋ねしていないんです。いわゆるその前段にあるところの所定時間、今日では連続八時間というものを中断するという規定であります。そこには連続八時間という明文があるのでありますが、今度は、ここに所定時間、こうなっているから、これは法文上の整理であるかどうか、こういう点だけお尋ねしておるわけであります。
  16. 住田正二

    住田説明員 法文上の整理と申しましたのは、七十二条の二を改正したことによる法文上の整理ということでございます。
  17. 久保三郎

    久保委員 わかりました。今までは七十二条の二はないから、いわゆる連続八時間というだけの規定でしたが、七十二条の二がいかに必要かわからぬが、できたものについては、やはり八時間ということにならぬかもしれませんから、そこで所定時間とした、こういうことですね。そうすると、七十二条の二では、従来長々と御質問を申し上げて参りましたが、この休息時間については、政令では大体いかようにきめる考えなのか。これはどうですか。
  18. 住田正二

    住田説明員 七十二条の二によります省令におきましては、現在われわれは労働時間を直接規制していきたいというふうに考えておるわけでございます。その条件といたしまして、連続休息時間を置くということを考えておるわけでありますので、そこで、直接休息時間による労働時間の間接的な規制ということは、一応現在は考えてないわけであります。
  19. 久保三郎

    久保委員 もう一点お尋ねしますが、そうしますと、結局休息時間はきめないで、対象になる労働時間だけでやっていこう、こういうことでございますか。
  20. 住田正二

    住田説明員 現在のところでは、労働時間を直接規制していくというふうに考えております。条件といたしまして、連続睡眠時間、連続休息時間ということにいたしております。
  21. 久保三郎

    久保委員 わかりました。全体の休息時間は縛らぬが、労働時間の中の条件として、先般お話があったような連続時間、夜間睡眠時間というか、そういうものを条件として入れる。その場合には、大体この前の御答弁では、四時間程度というふうに考えられておるようでありますが、これは夜間睡眠時間というふうに考えられておるかどうか。これはいかがですか。
  22. 住田正二

    住田説明員 連続休息時間は四時間を考えておりますが、船におきましては、一日フルに働いておりますので、一般の陸上と違いまして、夜間ということは考えておりません。
  23. 久保三郎

    久保委員 今のお話では、結局夜間と限定しないということになりそうでありますが、現在の国鉄連絡船実態からいけば、事実そういう形に近いものを今やっているわけですね、連続睡眠時間、夜間睡眠時間は。四時間以上というか四時間、これに最小限合わせて、それより長い分にはかまわないのですから。法律でありますから。今までの建前からいけば、結局夜間睡眠時間四時間は、最低限として確保しなければならぬ、こういうふうにおきめになることが妥当ではないかと、われわれ考えておる。いかがでしょう。
  24. 住田正二

    住田説明員 船は二十四時間動いておりますので、夜間必ず睡眠時間を四時間とるということは、海上労働特殊性からいって非常にむずかしいと考えておりますので、最低連続四時間の休息時間をとるということにいたしたいと思います。
  25. 久保三郎

    久保委員 いや、住田課長、私がお尋ねしておるのは、七十二条には、国鉄連絡船ばかりじゃないのでありますから、そういうふうにお答えになるのはあるいは当然かもしれませんが、しかし、国鉄連絡船実態は、課長承知通り夜間睡眠時間四時間、あるいはそれに近いもの、その程度、これは実態においてとっておられるわけですね。だから、そういうものを中身として考えておられるかどうか。七十二条には全体を含むのですから、その中の連絡船についてはそういうことがあるべきだとわれわれ考えるが、せめてそういうような考えを持っておるかどうか。
  26. 住田正二

    住田説明員 睡眠時間は夜間にとるのが原則でありますので、夜間にとるのが望ましいとは考えております。ただ、省令規定といたしましては、最低限をきめるということで、夜間という規定は置かないつもりで現在考えております。
  27. 久保三郎

    久保委員 結局、七十二条の二は、国鉄連絡船以外にもあるから、お話しの通り連続四時間以上の休息時間というか、睡眠時間というか、そういうものを原則としてきめる。しかし、国鉄連絡船実態は、今のダブル・ハンド・システムによってこういうものをとり得るという実態にあるということでありますから、これは連続四時間といっても、夜間原則である、こういうふうに指導されるのが当然かと思いますが、そういうふうなお考えはどうですか。これは局長にお伺いいたします。
  28. 若狭得治

    若狭政府委員 法律最低限度をきめるわけでございまして、実態的に国鉄の作業に支障の起こらないように、できるだけ乗組員休息が達成されるように努力いたしたいと思います。
  29. 久保三郎

    久保委員 それじゃ、そういうふうに御指導いただくことにして、次に移りましょう。  次に、これはちょっと大臣に……。これは局長でないとあるいはおわかりにならぬかもしれませんが、大臣承知のように、国際的な海上労働条約というものが、たくさん作られておるわけであります。大体われわれの調べた範囲では、三十四ございます。漁船船員も含めまして、三十四ございます。その中で、今日わが国で批准したものは、六条約であります。こういう実態でいくと、もちろんこの条約批准をしないでも、それに近いもの、あるいはそれ以上のものも実態としてはあるかもわかりませんが、大体においてこの条約批准ができかねておるのは、国内態勢がそれに伴っていないという実態でありますので、この条約批准は、特に最近における海運界の全体的な、世界的な問題からいっても、あるいは貿易の自由化の問題からいっても、日本の船というか、そういうものはやはり一つ対象になっておるわけでして、特にその中でも、船員労働条件が非常に対象になっておるのでありまして、これは三十四の条約の中の六つしか批准してありませんから、残りについて早急に批准態勢を固めて、批准に移行すべきだとわれわれは考えておりますが、政府部内においては、どういうふうに考えておられますか。
  30. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も、久保さんと同じような考えで、できるだけすみやかに国内態勢を整えまして、一つでも多く批准の早くできるように努力をして参りたい、こう考えております。
  31. 久保三郎

    久保委員 続いて船員局長に同じ問題でお尋ねしますが、現在政府部内というか、当局の間で批准する意向を持っているのは、どういうものがあるのか。あるいはそれに関連して、法改正その他の所要の手続をしなければなりませんが、そういうものの手順はどういうふうに今日進めているか。いかがでしょうか。
  32. 若狭得治

    若狭政府委員 さしあたり批准準備を進めて関係の各省と現在御相談いたしておりますものは、魚船船員関係の三条約漁船船員の雇入最低年令に関する条約、一九五九年、それから漁船船員健康検査に関する条約、これも一九五九年、それから漁船船員の雇入契約に関する条約、この三条約をできるだけ早急に批准いたしたいということで、農林省及び労働省と現在御相談をいたしておる状況でございます。
  33. 久保三郎

    久保委員 さしあたりこの漁船関係の三条約ということでありますが、これに関連して、批准するとすれば、今日の法律等はどういうものを改正しなければならぬと考えておりますか。
  34. 若狭得治

    若狭政府委員 この三条約に関しましては、法律改正の問題はございません。ただ、問題としましては、先ほど申し上げました最低年令関係でございますけれども、家族船員が非常に多い状況でございますので、そういう点について現在検討を行なっているわけでございます。
  35. 久保三郎

    久保委員 家族労働者の多い漁船でありますから、最低年令の問題があると思うのでありますが、結局やはり一応のめどをつけないと批准にならぬと思うのでありますが、役所としてはどこがネックになっていますか。
  36. 住田正二

    住田説明員 漁船関係の三条約につきましては、大体問題ないと思うのでありますが、若干法解釈的なこまかい点で問題がありますので、現在労働省と話し合いをしております。大きな障害というのはないというように考えております。
  37. 久保三郎

    久保委員 大体批准の見通しはいつのころですか。めどのない話でやったのでは、いつまでたってもけりはつきません。
  38. 若狭得治

    若狭政府委員 われわれの目標といたしましては、この次の通常国会目標にして批准準備を進めたいと考えております。
  39. 久保三郎

    久保委員 そこで、あとの幾多の条約がございますが、これについてはどういう手順になっていますか。
  40. 若狭得治

    若狭政府委員 国際労働条約船員に関する条約は、非常に数多いわけでございまして、現在までに批准いたしたものは、わずかに八条約でございます。また、先ほど申しました漁業三条約を今度批准いたしましても、なお残るものは非常に多いわけでございますけれども、これにつきましては、先ほど大臣の御答弁にありましたように、国内態勢整備という問題がございますし、われわれの方でも、この条約につきましては、省内に研究会を作りまして、個別的に検討を進めておる状況でございます。
  41. 久保三郎

    久保委員 船員局では内部的に委員会を作って検討を進めているというだけでありますが、どうもそれだけでは少しもの足りないのでありまして、時間もありませんから、これ以上この点では申し上げませんが、資料提出を要求いたしておきます。未批准条約について、今日問題になっている点、あるいは先ほど来お話のような点、そういうものを条約別一つ資料として出していただきたいと思います。  次に移ります。次は、七十四条の有給休暇付与期間の問題でありますが、これも改正されているわけでありますが、この改正によりますと、従来は、航海途中にあるものについてのみ延期ができるようになっているわけでありますが、今度改正されますと、もちろんこれは許可事項でありますが、工事に必要な期間三カ月を限って延長することができる、こういうふうに直っているわけなんであります。これは時代の趨勢からいって、逆行ではなかろうかと考えるわけであります。でありますが、特に先般来、全日海の休日付与についての調停案が出されて、労使双方とも受諾したわけでありますが、その中の一項目には、有給休暇付与期間短縮ということが一項目あります。これも調停中身として是認されているわけでありますが、もちろん具体的な問題はさらに団体交渉を重ねて解決をつけると思うのでありますが、どうもこれだけ読みますというと、さらに三カ月延長になる、こういうことになります。そうでなくても、日本船員連続乗船期間というのは、今日の実態では非常に多いわけであります。そうなりますと、労働の再生産からいっても、非常に問題があろうというので、そこで全日海においても、この有給休暇付与期間短縮ということを実は調停に出したのだろうと私は推測するのです。そういう時代の趨勢と関連して、この法改正はどういうことでありますか。
  42. 若狭得治

    若狭政府委員 全日海が現在有給休暇付与期間短縮について要求を出していることは事実でございますけれども、この条文は、特例措置として二年三カ月以内——たとえば航海途中であり、あるいは船舶の工事のため必要がある場合には、特例的な措置として二年三カ月以内の期間有給休暇を延長することができるという特例でございまして、実態を申し上げますれば、たとえば新造船の艤装等に従事する機関部の機関長その他の職員につきまして、その艤装に従事する前に他の船舶からかわってきたという場合におきまして、艤装期間が六カ月かかる。それから新造船に乗り組みまして、いろいろなテストを行なうわけでございます。そして一年後におきまして、造船所の保証工事がございますが、その保証工事にも立ち会うというような実態がございますので、そういう場合には、どうしても余人をもってかえることができないという場合には、特例を認めていこうという考えでございます。従って、一般的な有給休暇付与期間短縮という問題とは別個に、特例的な措置として、どうしてもやむを得ない、その本人でなければどうしてもその工事ができないというような場合には、その特例を認めていきたいということでございます。
  43. 久保三郎

    久保委員 短縮と別個の問題というが、あなたのおっしゃるのとは別な意味で、私はまるっきり別個だと思っているわけです。これはこういうことはございませんか。一年乗って、そのあとの一年間の間に有給休暇付与すればいいというのが原則でしょう。そうしますと、たとえば一年乗って、あと十一カ月で下船して、そして艤装の要員に回す。その場合には、予備船員でも何でもない艤装職員として雇い入れを更新した場合には、これは当然有給休暇の問題は起きないようにできるんじゃないですか。そういうことはありませんか。いかがですか。
  44. 住田正二

    住田説明員 新造船を例にとりますと、すでに一年ほかの船へ乗船して、それから艤装員になるという場合には、有給休暇をとってから艤装員になるということでありますので、有給休暇を与えないということはあり得ないと思います。この例外的に三カ月延長するという場合は、ほかの船に九カ月ないし十一カ月乗ってくる。まだ有給休暇の請求権は発生していない。しかし、すでに九カ月ないし十一カ月乗っている、そういうものについてのみ三カ月延長の必要が起きるわけでありまして、それ以外のものにつきましては、延長の必要は起きない、こういう工合に考えております。
  45. 久保三郎

    久保委員 それじゃ、これは保護規定のようにとっていいわけですね。これは今の住田課長お話だと、実は保護規定のようになるわけですね。そういうふうにも見えるのですが、それでいいのですか。というのは、たとえば九カ月なら九カ月船に乗ってきて、三カ月艤装に入る、これはいい。九カ月ではまだ付与期間にならぬ、こういうことですか。どうなんですか。
  46. 住田正二

    住田説明員 今説明を省略したのでありますが、ほかの船に九カ月以上乗って、まだ一年未満のために有給休暇請求権が発生しない、そういう人が艤装に従事いたしまして、その後保証工事の一年間乗船する、そのあとにまた保証工事が二カ月なり三カ月続く、こういう場合には、どうしても二年三カ月勤務してもらうということになりますので、そういうものについてのみ例外を認めるという趣旨でございます。従って、そういう九カ月以上十一カ月乗船して艤装員になるという例は非常に少ないので、しかも、そういう人というのは士官が多いわけでありまして、一般の部員というのは保証工事にどうしても出て来なければいかぬという必要もありませんので、有給休暇の延長というのは例外——非常に少ないケースだというふうに考えております。
  47. 久保三郎

    久保委員 多少疑問がありますが、それじゃ最後にこの条項で申し上げたいのは、行政官庁の許可を受けなくちゃならぬことになっていますね。許可条件としては、結局そういうものが不当に延ばされるというようなことを押えることは、当然だと思うのです。これは明確に許可条件というか、そういうものを将来明示される手はずでありますか。
  48. 若狭得治

    若狭政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、どうしても余人をもってかえがたいという場合にだけ許可する方針でございます。
  49. 久保三郎

    久保委員 それは法律がもし幸いにして通れば、その通りの下部機関というか、海運局長でありますか、そういうものに指示をいたすわけでありますか。
  50. 若狭得治

    若狭政府委員 その通りであります。
  51. 久保三郎

    久保委員 次に、八十二条のドクターの問題でお尋ねしますが、この条項の改正は、聞くところによれば、船医の乗り組みをさせることが、需給関係で問題があるのかどうかわかりませんが、少なくとも船医を今の法律で完全に乗せ得ないというところから改正を企図したとも聞いているのでありますが、これはどういう意味ですか。
  52. 若狭得治

    若狭政府委員 船医制度の改正につきましては、中央労働委員会でも当初から論議されておったところでございまして、また、昭和二十八年の船員法改正直後から、この点についてはいろいろな問題があるということで検討されておったわけでございます。その問題の第一は、国際的に、わずか五十名足らずの外国船のために、法律をもって医師の乗り組みを強制するということが適当であるかどうかということでございます。それからこの船員法を施行いたしましてもう十数年になるわけでございますけれども、その間におきまして、実際に船舶に乗り組む医師を獲得することが非常に困難であるという実態から、なかなか船医として適当な医師を得ることができないというような実態が出て参ったわけでございます。もう一つは、五千トン以上というふうに法律規定いたしましたために、五千トン以下の船舶につきましても、船内の衛生医療という面につきましては、五千トン以上のものとほとんど同じような要求があるにもかかわらず、その面についてはなかなか向上は考えられないというような、この三つの原因があったわけでございます。  それで、具体的に船医の乗り組みの状況から見ますと、たとえば一年以内に船をおりてしまうというような者は、約四〇%に達しておるわけでございまして、しかも、ニューヨーク航路あるいは欧州航路というような非常に危険度のない、観光のための乗船というようなものについては、医師を獲得することはさほど困難ではございませんけれども、非常に瘴癘の地、あるいは長い航海というようなものになりますと、なかなか医師を求めることはできない。また、せっかく求めましても、適当な医師を得ることはできない。たとえば船に乗りましても、当座に間に合わないという医師が比較的多いというような状況でございます。また、老齢の方々も非常に多いわけでございまして、約二〇%が六十才以上の方々であるというような状況でございます。そうして船医の同一船舶への定着規定というようなものがありませんので、従って、船内の衛生状態の改善というような面にまで考慮を払っていただくというようなことも、なかなかできないという状態であったわけでございます。従いまして、われわれといたしましては、ただ形式だけ維持するというような面から、この船医制度を拡充するというようなことではなしに、むしろ実態的に、船舶の安全衛生というような面について、何らかの措置を講じていこう、少なくとも五千トン以下の船舶についても、同様な航路に就航している船舶については、同一な衛生状態に持っていくということを考えまして、この改正を提案いたしたわけでございます。
  53. 久保三郎

    久保委員 ただいまの御説明で三点の理由をあげられましたが、おおむね先ほど私が言ったような理由が重点かと思うのでありますが、なるほど、船医を確保することが困難であるとか、適格者をなかなか確保できないとかいうことも、事実現状としてはありましょう。しかしながら、船医を乗り組ませるということ自体は、どういうことか。言うまでもございませんが、船内の衛生管理というか、そういうものを確保することが重点でありまして、船医を確保することが困難だからこれは減らすのだというようなことでは、どうも話は逆じゃなかろうかと思うのであります。実情についてはいろいろ問題があるようでありますが、新たな工夫というものをとにかくしなければいかぬだろう、こういうように思うわけです。ついては、医療機関との連携、あるいは受け入れ態勢の整備、こういうものも、人命は何ものにもかえがたいものでありますから、やはり人命の尊重ということからいっても、あるいは船員労働再生産の面からいっても、これはやはり衛生態勢というか、そういうものを低下させることは、断じて今日の時代では許さるべきものではないだろうと、われわれは考えております。これに対してはどういうお考えなんですか。いかがですか。
  54. 若狭得治

    若狭政府委員 御承知のように、船内の衛生状態を低下させることは、許されないところでございますので、今後は、絶対に必要と思われる航路につきましては、従来通り医師の乗船を法律上義務づけるわけでありますが、それ以外のものにつきまして、三千トン以上の船舶につきましては、衛生管理者を置きまして、船員の災害、疾病を少なくしていくということを考えておるわけでございますけれども、その衛生管理者制度の充実をはかりますと同時に、他面労働安全衛生規則もできるだけ早く作っていきたい。また、船舶安全法におきまして、船内の船員設備に関する条約を取り入れまして、これも改善していきたいというふうに考えております。また、今後の問題といたしましては、日本船舶が相当寄港する港におきましては、駐在制度というものを作っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  55. 久保三郎

    久保委員 時間もありませんから、われわれの主張としては、そういうことでありますが、一応ここで確認をしておきたいのは、いわゆる船医を乗せないものについては、国内各港間を航海するときであります。これはわかります。命令の定める区域のみを航海するときというのは、「命令の定める区域」とは、いかなる区域をさすのか。
  56. 若狭得治

    若狭政府委員 近海第一区が、命令で定める区域であります。
  57. 久保三郎

    久保委員 近海第一区というのは、しろうとでわかりませんが、近海とは、インド洋から太平洋のまん中、北はオホーツク海といいますか、ベーリング海峡の辺まででありますが、一区とは、この区域のうちのどういうところですか。
  58. 若狭得治

    若狭政府委員 近海一区の範囲は、大体におきまして、台湾、南鮮、香港方面、ソ連方面、こういうような非常に限られた範囲でございます。
  59. 久保三郎

    久保委員 「又は命令の定める短期間航海」という「短期間」とは、幾日くらいの航海をさすのですか。
  60. 住田正二

    住田説明員 通常近海一区だけ、先ほどの香港あたりまで行っている船が、たまたまマニラまで行くというような場合には、免除しているということであります。
  61. 久保三郎

    久保委員 次には、この八十二条の改正の第二号でありますが、これの「命令の定める船舶で主務大臣の指定する航路」というのは、二段になっておりますが、「命令の定める船舶」とはいかなる船舶か。さらに「主務大臣の指定する航路」とはいかなるものか。
  62. 住田正二

    住田説明員 「命令の定める船舶」といたしましては、総トン数三千トン以上の定期貨物船及び輸送船を考えております。それから「主務大臣の指定する航路」といたしましては、西アフリカ航路、インド・パキスタン航路、ペルシャ湾航路。それから暫定的に医者の配乗を行なう航路といたしまして、東南アフリカ航路、欧州航路、世界一周航路。それ以外に、これらの地区で三国間輸送をやっております定期航路がありますから、そういうもの。以上を指定するつもりでおります。
  63. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、暫定として東南アフリカ、これは三国間を含むということにとっていいのですか。それに欧州航路、世界一周航路、こういうのは、暫定として乗せるというのは、どういう意味なんですか。
  64. 住田正二

    住田説明員 従来通り医者を乗せまして、船内の衛生状態が向上いたしまして、医者の乗る必要がないというふうな事態ができましたならば、医師の配乗義務を免除する、かように考えておるわけであります。
  65. 久保三郎

    久保委員 暫定というのは、どうも少し疑問でありまして、われわれ自身は、東南アフリカとかあるいはヨーロッパ航路とか、そういうようなものは長い距離である、それから気候の変化のあるところも通過するということからいたしますれば、当然暫定というのではなくて、先ほどおあげになった西アフリカあるいはインド、ペルシャ航路というようなものと同様に置くべきだと思うのですが、暫定という意味があまりはっきりしない。これは暫定ではなくて、かっちり乗せるという西アフリカとか、インド・パキスタンとか、あるいはペルシャとか、そういう航路との違いは、どういうふうにとっておるのですか。
  66. 住田正二

    住田説明員 西アフリカ、インド・パキスタン、ペルシャ、この辺に行く船は、この航路は非常に危険が多いと見られておるわけであります。それに対しまして、欧州航路、世界一周航路というのは、大体健康のいい港に寄港して参っておるわけでありますので、その途中に二、三不健康な港もございますが、従来通り医者を乗せまして、その結果を見て、将来乗り組みを続ける必要があるかどうかをきめていくということにいたしたいと思っております。
  67. 久保三郎

    久保委員 次に移りましょう。  次に、三号の「命令の定める母船式漁業に従事する漁船」というのは、どういうことですか。
  68. 住田正二

    住田説明員 「命令の定める母船式漁業に従事する漁船」といたしましては、いわゆる母船式漁業の母船を予定いたしております。
  69. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、母船式漁船というのは、全部ということですね。
  70. 住田正二

    住田説明員 母船式漁業の母船、トン数は最終的に決定しておりませんが、大体三千トン以上ということにいたしたいと思っております。
  71. 久保三郎

    久保委員 水産庁がおいででありますから、林田さんにお尋ねしますが、大体母船式漁業の母船は、三千トン以上というが、三千トン未満のものも相当あるのではないかと思うのですが、その区別はどうなんですか。
  72. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 母船式漁業の母船につきましては、七十二隻あるわけですが、これは三十六年度現在であります。このうちで、七隻が千トン以下になっております。
  73. 久保三郎

    久保委員 千トン以下というと、大体母船と付属船を含めてどの程度乗組員がございますか。およそでけっこうです。
  74. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 大体千トンくらいの母船で、百人程度であります。
  75. 久保三郎

    久保委員 トン数によっては、航海期間もだいぶ違うと思うのです。母船式の漁業の航海期間というか、問題は航海期間だと思うのですが、距離の問題もあるでしょうが、航海期間は、千トン程度のものと、三千トンというか、それ以上のものとだいぶ違いますか。
  76. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 航海期間はあまり違いません。と申しますのは、母船式漁業は、運搬船を持っておりまして、母船はそこにおりまして、運搬船が魚の持ち運びをいたしますので、その漁業によって違うということで、トン数によって違うということはありません。
  77. 久保三郎

    久保委員 そこで申し上げたいのでありますが、大体今の漁政部長のお話では、千トンで約百人くらい乗り組むだろう、こういうお話です。日数については、操業の形からいっても大体同様ということになりますれば、これは当然母船式漁業全体の母船にこういう措置が必要ではないかとわれわれは考えるのです。こういう点については、これはどうなんですか。これは水産庁の方から先に聞きましょう。林田さん、いかがですか。
  78. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 現在、母船式漁業の保健衛生の管理状況を見てみますると、三千トン以上の母船につきましては、全部医師が乗っておりまして、そのほか、三千トンから千トンまでの母船が十一隻ございますが、そのうち、四隻は医師が乗っております。
  79. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、今の形からいけば、この法改正で、大体あと七隻というものに乗せるだけですか。労働基準課長にお聞きしましょう。
  80. 住田正二

    住田説明員 搭載人員百人以上の船舶につきましては、三千トン以上の船について医者の配乗を命じているわけでございます。それとの均衡から、母船についても三千トンというふうに考えているわけでございまして、将来、三千トン以下の母船につきましても、医者の配乗ができるということであれば、そういう点を検討いたしまして、トン数を切り下げていくということにいたしたいと思います。
  81. 久保三郎

    久保委員 長期にわたる母船式漁業でありますし、また母船式漁業の実態からいっても、これは瘴癘の地と言っては語弊があるかもしれませんが、衛生的にも気候があまり適当でない場合も多いわけですね。そうだとするなら、この法改正で、前進もある、後退もあるというのが法改正でしょうから、せめて母船式漁業全体には、こういうものを配乗させる、ドクターを配乗させるというのが、本来の筋ではないか。今日一番おくれているのが、そういう漁業の面での衛生管理で、それが非常におくれているという話も、われわれ聞いているのです。いわゆる居住区一つとっても、これは漁船船員の居住区と一般の船舶船員の居住区とでは、実際雲泥の差があると思う。しかも、これは母船に乗っている乗組員はまだしも、付属船に乗るところのいわゆる漁船船員の衛生管理というものが、非常に問題があると思うのですね。そういうところからいっても、当然これは乗せるべきじゃないか。法改正を三千トンで区切るということについては、これは実態に合わぬじゃないか。同じ外洋船の三千トンというので切るならばまだしも、そうじゃなくて、いわゆるその船の仕事自体が違うのでありますから、それからいけば、当然漁船についてはさらに拡大して、これは乗せるということが当然ではなかろうかと思うのですが、これはどうなんですか。
  82. 住田正二

    住田説明員 漁船につきましては、三千トンという制限は法律に書いてないわけでありますので、先ほど三千トンと申し上げましたのは、省令で三千トンという基準を入れたいということでございます。従いまして、今後三千トン以下の母船の衛生管理の状態を調べまして、必要があれば、将来三千トンの基準も下げていきたいというふうに考えております。
  83. 久保三郎

    久保委員 そこで水産庁にお尋ねしますが、今住田課長からお話があったように、これは政令できめるのでありますから、ここで三千トンということで一応運輸省から答弁がありましたが、実態からいって、もう少し幅を広げるように御努力いただくのが当然かと思うのですが、いかがでしょう。
  84. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 御承知のように、母船式漁業は、たとえば太平洋のマグロ漁業のようなものでしたら、単独の漁船で、あっちこっちに分散しておるというようなのが多いのでございますが、北洋のような地域ですと、大体母船の船団が相当数行っておるわけであります。それで、小さい母船におきましては、そういう場合は、ほかの母船の医師に診断をしてもらうということもできるわけでございまして、ただ、太平洋マグロのような場合は、ある程度考えなければいかぬという問題が出て参りますので、そういう実情をよく把握いたしまして、何トン以上ということをきめていくべきじゃないかというふうに考えております。
  85. 久保三郎

    久保委員 特にこのマグロの漁業は、かなり小さいものも行っていると思うのです。そういうことからいけば、かなり大きい船は、やはり集団の一つとして、おっしゃるように持たせるべきだ。これは法律が通ったあとで政令を出すのでしょうから、さらに一考をしていただきたい、こういうふうに希望しておきます。  時間もありませんので、次に移りますが、あわせて衛生管理者制度が創設されるわけでありますが、この衛生管理者の資格要件というか、そういうものは、どういう程度にしようと思っているのか。
  86. 住田正二

    住田説明員 衛生管理者の資格といたしましては、新制高校または旧制中学卒業程度の学力を有する者が、理論百十五時間、実技四十五時間程度の研修を受けました場合に試験に合格するという程度のことを考えております。
  87. 久保三郎

    久保委員 この衛生管理者は、ちょっと専門的で私わかりませんが、看護人というか、看護婦程度の資格を持たせるのかどうか。と申し上げますのは、今日、看護婦は、静脈注射は医者が指示しなければできませんで、皮下注射はできるというふうにわれわれは承知しております。その程度の資格でもって、皮下注射もできないのかどうか。その場合、非常に問題が起ころうかと思うのです。おかの衛生管理者ならいざ知らず、皮下注射一本も打てないようでは、残念ながら急場の間に合わぬ衛生管理者だと思うのです。これはいかがですか。
  88. 住田正二

    住田説明員 実技の方の研修も受けますので、皮下注射程度はできるというふうに考えております。
  89. 久保三郎

    久保委員 医師法違反になるような場合も想定されますので、資格についてはこれは厚生省ですか、厚生省と資格要件については十分打ち合わせをして、十分な配慮をしていただかぬと、衛生管理者はせっかくできても、これは問題にならぬと思う。  それからもう一つは、衛生管理者なるものは、大体において原則として専任か、兼務か、どっちですか。
  90. 住田正二

    住田説明員 法律の建前といたしましては、兼任でも、専任でも、どちらでもよろしいということになっております。ただ、実際問題といたしましては、衛生管理者の業務だけをやる人が、常に——今後できるといたしますと、そういう船員の将来性というものを考えますと、専任の衛生管理者というものはあまり望ましくないというふうに考えております。
  91. 久保三郎

    久保委員 専任の衛生管理者になるのが好ましくないということでありますが、それは好ましいか、好ましくないかわかりません。それは当人にとっては、将来性の問題ですからわかりませんけれども、ただ、問題は、今度ドクターの配乗を省略するという、そういう船に対しての衛生管理者だけは、これは専任であるべきじゃないかと私は思うのです。ドクターからずっと以下の、看護人以下のような衛生管理者を、しかも兼務で乗せるという場合には、残念ながらこの技術の修得も不完全ではなかろうかと思うのです。こういう点についてどう考えておられますか。
  92. 住田正二

    住田説明員 船員法の予定いたしております衛生管理者は、陸上の労働基準法の衛生管理者よりは数段高い資格といいますか、能力を持ったものを予定いたしておりますので、今回医者がおりてそのかわりに衛生管理者が乗るという場合におきましても、特に専任でなければならぬということにはならないと思います。
  93. 久保三郎

    久保委員 ねばならないということでなくて、そうするのが当然ではなかろうかというんです。一挙に質を低下することは非常に不安であるとわれわれは思っている、こういうことなんですよ。いかがですか。
  94. 住田正二

    住田説明員 専任がいいか兼任がいいかという点につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、専任はあまり望ましくないのじゃないかというふうに考えております。
  95. 久保三郎

    久保委員 その望ましくないというのは、船員法の立場からいえば、船員の衛生管理をよくするということからいえば、専任がいいんじゃないんですか。それは衛生管理者になる当人のことを先に考えているのか、それとも船舶の経営者のために考えているのか、どっちなんです、今のお答えは。
  96. 住田正二

    住田説明員 専任の衛生管理者になる本人のためを思っております。
  97. 久保三郎

    久保委員 そうすると、ますます船員の健康というか衛生、そういうものはないがしろにされるというお話になりますね。これはどうも逆だと思うんです。ドクターを省略したり、衛生管理者をつけて、だんだん後退していくようで、これはどうも納得のいきかねる条項ですね。これはいかがなんです。大へん船員のことを思っているようだが、全体の船員は思っておらぬ。どうなんです、局長
  98. 若狭得治

    若狭政府委員 衛生管理者制度の創設の場合におきまして、これは専任にするか兼任にするかという問題につきましては、われわれ非常に長い間かかりまして検討を進めたわけでございます。先ほど注射の話がございましたけれども、これにつきましては、国際的に船舶の医療助言制度というものができております。どこからでも国際的な船舶の医療助言機関に対して指示を受けて、その指示に従って処置を行なうという制度が、現在できておるわけでございます。従いまして、先生が例にあげられましたような事態に対しましても、衛生管理者は当然適正な処置ができるようにわれわれは養成して参りたいと思っておるわけでございます。従いまして、この専任、兼任の問題につきましては、これは現実に衛生管理者の制度ができまして、今後その推移を見なければならないわけでございまして、さしあたりの問題としては兼任でもやれるということを考えておりますけれども、われわれのねらっておりますところは、現在乗船している者に対しまして、先ほど申し上げましたような講習を行ない、試験を受けさせ、資格をとらせまして、そうして業務に従事させる、そういうものが船内に何人か数多くできてくる、そういうことによって、将来船の衛生思想というものが向上していくということを考えているわけでございまして、ただその一面だけが専任であるか兼任であるかということは、今そう本質的な問題として考える必要はないのではないかと考えておるわけでございます。
  99. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんから先に参りますが、とにもかくにも、この船員の問題あるいは衛生管理者の問題をいろいろ御苦心なさっているようでありますが、われわれとしては、この制度改正によって、船内衛生の管理態勢が低下することがあっては困るということでありますから、十分政令その他これからの実施面においては考慮してもらいたい、こういうふうに思います。  次に、百十八条に救命艇手の問題が出ております。これは船舶安全法の規定を大体とってきておると思うのでありますが、船舶安全法は、これとの関係はどうなのですか。船舶安全法から移しかえてきて、船舶安全法を近き将来そういうものを除いて改正するという意図から出てきているのかどうか。これはいかがですか。
  100. 住田正二

    住田説明員 その通りでございます。
  101. 久保三郎

    久保委員 船舶安全法の改正でありますが、これはどういう時期に改正しようとしているのか、どういうねらいでやろうとしているのか、この点についてはどうなのですか。これは局長に伺いたい。
  102. 若狭得治

    若狭政府委員 船舶安全法につきましては、私の所管ではございませんけれども、一九六〇年に海上における人命安全条約が全面的に更改されたわけでございます。これに伴いまして、船舶の構造、あるいは海上衝突の予防、各般の面につきまして改正が行なわれるわけでございます。船舶安全法も、この海上における人命安全条約批准の前提として、現在のところは、この次の通常国会目標として改正準備を進めておるわけでございます。
  103. 久保三郎

    久保委員 次に参ります。百十九条の政令への委任でありますが、特に漁船の適用範囲に基づく政令の制定あるいは改廃、こういうものは、今後合理的に必要と判断される範囲内において所要の経過措置をとるというのだが、これは最終的な経過措置の期限はいつまでですか、大体政府部内の見通しとして。
  104. 住田正二

    住田説明員 この経過措置は、相当内容もいろいろ考えなければならぬ点が多いので、来年の四月一日以降施行したいというふうに考えております。
  105. 久保三郎

    久保委員 ずいぶん長い期間がかかるようだけれども、これは船の問題が重点かと思うのですが、今年、これは手続さえ間に合えば、早急に経過措置を打ち切ってやるべきだと思うのですが、いかがですか。参議院選挙が終われば、また国会が開かれるのですから、そういう財政的な措置も講じてやるべきだと思うのです。あるいはこれは厚生省の船員険課長にお尋ねした方がいいと思うのですが、これは事務的な手続がその程度かかるのか。それとも、予算の措置はすでに三十七年度は終わったから、これは動かさぬでやるという約束なのか。どうなんです。
  106. 中村一成

    中村(一)説明員 ただいまのお話は、百十九条の二に関しての御質問でございますが、これは船員保険だけじゃございませんで、その他各種の社会保険、労働関係等もございます。船員保険についてだけどうのこうのということじゃございませんので、運輸省の方の御答弁通り、私どもも、関係のものにつきましては、来年の四月一日に実施を目標として御協力申し上げる、そういうことでございます。
  107. 久保三郎

    久保委員 船員保険ばかりではないのでありまして、いろいろあります。いろいろありますが、御担当の部門の問題は、手続上そんなにかかるのか。それとも予算の関係でそういうふうになるのか、こういうお尋ねを見通しとしてお聞きしておるわけです。
  108. 中村一成

    中村(一)説明員 百十九条の二の規定は、これは船員保険に強制適用になりますので、他の関係はどうするという問題でありまして、別に私どもに関係ないわけであります。
  109. 久保三郎

    久保委員 それでは四月一日を目途にしなくてもいいですな。厚生省としては、船員保険が強制適用になるから、それ以外の健康保険、あるいは年金制度、その他の問題になる、こういうふうにとってよろしいかと思うのですが、そうでしょうな。  それでは時間もありませんから、厚生大臣にお尋ねする事項を二、三残しておきまして、大臣が来たならば簡単にお尋ねすることにして、この程度にしておきます。  結論として、私はいろいろ改正条項その他についてお尋ねをしたわけでありますが、船員法が、冒頭申し上げたように、船員労働基準法という建前からいくならば、今回の改正は小部分にすぎない、さらにマイナスの面もあるというふうにわれわれとっているわけであります。これは一そうの努力をして、将来完全な船員保護の法律ということに置きかえるべきだと思います。政務次官おいででありますからお尋ねするわけでございますが、こういう基本法はしょっちゅう変えるものではないと思うのでありますが、今日改正した部面で非常に工合が悪いという部面は、再考の余地があるから改正しよう、あるいは今日改正したから、これはもう触れぬで——さらに今日手をつけない部面で非常に問題の点がありますが、最初の質問のときにいろいろ申し上げましたような、そういう部面については、条約ともからみ合わせて、当然近き将来再び改正法案を提出すべきではないか。もちろん、これは会期も少なくなりましたから、われわれ自身の船員法改正も、来たるべき国会には提出したい、こう思うのでありますが、それ以上に、政府はそういう意欲を持ってやってほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  110. 有馬英治

    ○有馬政府委員 基本法はみだりに変えるべきものではないこと、それは仰せの通りでございます。従いまして、運輸省といたしましては、みだりに変えるべきものでないという態度で、今回はこの法律を出したわけでございます。しかしながら、著しい勢いで社会、経済の変化が行なわれております。法律は、実情に沿うことが一番重要でありますので、決して将来改正しないというような根本的な態度は持っておりません。どこまでも実情に即した方向に運輸省としては検討していかなければなりませんので、将来とも、社会、経済の一般環境の変化につれながら、絶えず検討を進めていきたいと考えております。
  111. 久保三郎

    久保委員 もう一つ最後に申し上げておきたいのは、基本法でございますから、改正部面でもそうですか、改正しない部面についても、政令あるいは命令に譲る面が非常に多い。こういうものの制定については、当然国会を通さぬでいくわけであります。われわれは、若干のその中身について質問しましたが、詳細についてはこれからおきめになることだと思います。ついては、これにはそれぞれの諮問機関もありましょう。あるいは諮問機関以外に、該当するそういう対象のものもあるわけですから、十分そういうものの相互の意見を聴取して、さらに政令、命令の制定に対しては、慎重を期してほしい。こういうことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  112. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 内海清君。
  113. 内海清

    内海(清)委員 きょうは時間もないようでございまして、いろいろ質問申し上げたいこともあるわけでございますが、すでに久保委員から、ほとんど全体にわたりまして詳細な御質問がございましたので、多少重複する面も出てくると思いますが、私のなお納得できにくいような点につきまして、大ざっぱに質問申し上げたいと思うのでございます。従って、一つ簡単に要を得たお答えを願いたいと思います。  大臣がもうおいでになると思いますが、大臣にお伺いいたしたい事項がございますので、これはおいでになりましてから質問申し上げたいと思います。  久保委員の御質問で一番問題になりましたのは、やはり適用範囲の問題であったと思いますので、これにつきまして、私も若干お尋ねいたしてみたいと思うのであります。  御承知のように、船員法の第一条二項で「総トン数五トン未満の船舶」、「湖、川又は港のみを航行する船舶」、「総トン数三十トン未満の漁船」には適用除外、こういうことに相なっておるのであります。この船員法の適用される船員労働基準法の適用を受ける船員というふうに、同じ海上労働者であってこの二つに分かれておるわけですが、これはどういう基準によって分けられておるかという点について、一つお尋ね申し上げます。
  114. 若狭得治

    若狭政府委員 船員法は、海上労働特殊性という面に着目いたしまして、労働基準法の特別法を定めてあるわけであります。従いまして、海上労働特殊性の顕著なものから法律の適用対象として取り上げておるわけでありまして、現在の法律におきましては、三十トン以上の漁船、及び五トン以上の船舶というような規定をいたしておるわけであります。しかしながら、時代の進展によりまして海上労働実態も変わって参りまして、たとえば小型船舶でそういう特殊性を持ってくるものも当然あるわけであります。そういう面を、今回はその対象として取り上げてきたわけでございます。
  115. 内海清

    内海(清)委員 結局海上労働特殊性というものをどういうふうに認めるかということで分かれたと思うのであります。  そこで、水産庁にちょっとお尋ねいたします。  漁船の場合、三十トン以上の場合、改正で二十トン以上とし、一種を除くということになるわけでありますが、これは今の御答弁で、海員の特殊性というようなことからみますと、主として継続的に海上で労働するということがその基本だと思うのであります。ところが、三十トン以下の場合は海上労働者と認めない、陸上の労働者と同じだという見解でありますが、水産庁ではこの実態を最もよく知っておられると思うので、こういう区別、線の引き方というものについて、一つ十分な御説明をいただきたいと思います。
  116. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 三十トン未満のものが、海上労働に従事していないということはないわけでございますが、特に最近におきまして、漁船の行動半径が技術の進歩によりまして非常に大きくなって参るという趨勢に伴いまして、従来三十トン未満でありましたものの行動半径が非常に広くなって参りまして、従って、海上労働に従事する日数も非常に多くなるというような事態にございますので、今回それを二十トンに引き下げてもらいまして、船員法を適用する範囲を政令できめて、海上労働を多くいたしておる船員につきましては、できるだけ船員法を適用してもらおうというようなことにしておるわけでありまして、次第に海上労働の方が多くなっておるという実態でございます。
  117. 内海清

    内海(清)委員 だんだん漁業の方法その他が変わってきて、進歩してきたために、行動半径が大きくなった、従って、従来三十トンであったのを二十トンに引き下げて、この一種だけは大体除くというふうなことに相なっておる、こういうことであります。この点については、先般来の質疑で非常に論議があったわけですが、この一種を除くということが、いろいろ問題があると思うのであります。一種の中にもいろいろな関係がございまして、ここで線を引いたために非常な問題がある。特に従業規則などから特殊制限ができておるということから、この従業制限というものは、これは随時変更できるものである、かような見地から問題があるわけでございまして、それらの点について、もっと——私どもは、二十トン以上は一種を除くということでなしに、これを全部含めるということに相なるならば、ここの問題は、先般来の質疑応答の内容から考えましても、十分得心がいく問題である、かように思うのであります。これらの点につきましての御見解を伺いたい。
  118. 若狭得治

    若狭政府委員 二十トン以上の第一種に船員法を適用するかどうかの問題につきましては、実態的に、先ほど海上労働特殊性と申しましたけれども、長期間海上に滞留して社会から隔絶されるというような者についての法規でございますので、二十トン以上の船舶乗組員でございましても、非常に短期間航海しか行なわない、原則として日帰りで家庭に帰って、家庭を生活の根拠として労働しているという者について適用することは、適当ではないのではないかということをこの前申し上げたわけでございます。従いまして、第一種のものは、われわれといたしましては、この対象から除くということで、中央労働委員会の答申もできておりますし、また、この国会に法律案を提出する前に農林省及び厚生省とも御連絡しておったわけでございますけれども、国会の審議の経過におきまして、第一種を全面的に除くということについては、非常に問題があるという御指摘がございました。また、現実に三十トン以上の船舶については第一種も入っておるわけでございますので、その間の権衡ということも検討しなければならないわけでございまして、まだこれは直ちに第一種をすべて適用の対象にするということで十分な検討を終わっておりませんので、この点につきましては、われわれといたしましては、できるだけ船員法の適用範囲を広くしていこうという方針ではございますけれども、事業者の負担の問題もございますし、保険財政の問題もございますし、また、われわれの行政の能力の問題もございますので、そういう点を十分検討して、今後関係各省と相談いたしたいと考えておる次第でございます。
  119. 内海清

    内海(清)委員 ここでちょっと一つお尋ねしてみたいと思いますが、漁船について労働基準法の適用関係を受けておる、つまり三十トン以下の場合と、それから船員法の適用を受けておる三十トン以上の場合との労働者の数、これがわかっておりますか。
  120. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 現在、漁業の従事者として船の漁業をやっておりますのが、六十万人ほどおります。その中で、三十トン未満の従事者が大体四十万人でございます。
  121. 内海清

    内海(清)委員 船に乗って漁業しておる者が六十万人で、三十トン未満が四十万人、そうすると、三十トン以上が二十万人ということですね。そういうことですか。
  122. 住田正二

    住田説明員 船員法の適用を受けております漁船乗組員の数は、十二万一千人ほどでございます。
  123. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、農林省のこの数字と運輸省の数字は、食い違いがあるんじゃないですか。
  124. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 先ほど申し上げました水産庁の数字は、水産庁の方で調査しております数字でございまして、実は従事者の数につきましては、いろいろダブっておる面がありまして、正確な数字がなかなか把握できないわけでございます。それで、一応私たちの数字では六十万人になっておるわけでございますが、特に船員法の適用を実際に受けておるという数字は、これは運輸省から申されました数字が明確な数字であると存じております。
  125. 内海清

    内海(清)委員 これは参議院の社労委で、二月二十二日に坂本委員が御質問になってのお答えの数字と、かなり違うのですがね。この基準法の適用関係というものについて、このとき、これは労働省だろうと思いますが、大島政府委員が答えておりますのが、「基準法の適用関係の漁業の総数につきましては、事業者数で約二万、労働者数で約十五万ということになっております。ただし、これは大ぐくりといたしまして畜産の事業が入っておりますのと、それから先生御指摘の漁業以外の水産業を含む数字でございますが、大ぐくりで、今申しましたように事業者数で二万、労働者数で十五万という数字が出ております。」それからそのときに林田漁政部長がお答えになっておりますのは、「漁業に雇用されております。特に三十トン以上の雇用者の数でございますが、大体九万五千人ほどでございます。」こういうことになっておりますが、これらの数字の食い違いは、どういうことでございますか。
  126. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 先ほど申しました漁業従事者数と申しますのは、これは漁業に従事しておる者をすべて含んでおる数字でございます。従いまして、家族労働が入っておりまして、たとえば無動力とか三トン未満という非常に小さい漁業の数字が、きわめて多く入っておるようなわけでございます。
  127. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、参議院でお答えになったのは、水産庁のは、漁業に雇用されておるということと、それから今の従事者ということで差があると理解していいわけですね。
  128. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 そういうわけでございます。
  129. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、労働省の発表の数字につきましては、今おられませんからはっきりせぬと思いますが、ここらに関係各省の間の実態の把握についての差がある、非常にまちまちであるというふうに私は感ずるのでありますが、こういうことがこの法律を適用していく上にいろいろな支障を来たしておるのじゃないか、かように思うのであります。いろいろと各省にまたがっておるということが、一つの大きな原因であると私は思う。これでは実情に適合した船員法の運用なりその他ができるかどうか、こういう点を疑わざるを得ないのでありますが、これらにつきまして、一つ御意見を伺いたいと思います。
  130. 若狭得治

    若狭政府委員 漁船船員法適用の対象船員については、われわれは明確な数字を持っております。また、厚生省におきましても、保険の対象者としての明確な数字をお持ちになっておるわけでございます。また、このたび二十トンに引き下げるという場合につきましても、具体的な船舶及びその乗組員の数につきましては、農林省の方におきましても、またわれわれにおきましても、ある程度明確な数字を持っておるわけであります。従いまして、問題はその船員法の適用対象になる者以外の数について、いまだ不明確な点があるということでございますので、われわれといたしましては、船員法対象船員につきましては、今後明確に数字を検討して参りたいと思いますけれども、対象になってしまった者については、非常に明確な数字を持っておるわけであります。
  131. 内海清

    内海(清)委員 その問題は、またあとでお尋ねしたいと思います。大臣がおいでになりましたので、大臣にお尋ねいたします。  先般、この船員法というものが、いわゆる船員労働基準法である。従って、一般の労働基準の上に、船員特殊性というものが当然積み重ねられるべきである。従って、いろいろ改良すべきものが多いが、現在の船員法についてはきわめて不満な点が多いということを申し上げまして、大臣の御共鳴を得たわけであります。  そこで、一つお伺いいたしたいと思いますのは、これは御承知のように、基準法の特例法としてできておるものであります。ところが、基準法の制定されます二十二年の提案理由の中に、いろいろございますが、第一には、最低労働条件の国際水準を取り入れる。第二には、わが国の労働関係において残存している封建的な残滓をできるだけ排除すること。さらにまた、契約自由の原則を修正して、国が基準を決定し、法律によって労使双方のおもむくべきところを示して、それによって労働者の人たるに値する生活を営むことができるようにする、こういうことが指摘されておるのであります。ところが、先ほど申しましたようなことから船員法をながめますと、陸上の基準法との間に大きく差ができておる。むしろ、船員法には非常な後進性が多いということであります。こういう点から考えて参りますと、やはりここに多くの問題がありますことは、いわゆる国際労働機関において採択されております国際労働条約、これがなお批准されてないものがきわめて多い。これも、先ほど来ございましたようなことで、詳しいことは申し上げませんが、そういうふうな状態、これが船員法に非常な後進性が多いという最も大きな原因じゃないかと、私は考えるのであります。これはまことに遺憾なことであります。今日の世界の趨勢、あるいはわが国の海運の地位というふうなことから考えましても、これは早急に国内法の整備をして批准さるべきじゃないか、こういうふうに思うのであります。これについて、先日大臣からも御答弁いただきましたが、この船員法を積極的に改正してりっぱなものにしていく、このことが必要であると思うのであります。これらにつきましての大臣の御所見を、もう一度お伺いいたしたい。
  132. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、国際労働条約としてすでにできておりますものについては、できるだけ数多く批准をいたしたいと考えております。日本の今までの特殊な事情から、おくれておることはいなめない事実でございますが、しかしながら、日本の経済もここまで伸長をいたし、成長いたして参りました今日、私は、今おっしゃいますように、陸上労働よりも海上労働の方が労働条件が悪いということは、これはいつまでもそのまま捨てておくべきではない、こう考えております。ただ、このためには、海運企業の基盤の強化ということも、ぜひ必要なことであります。私どもが海運企業の基盤強化を言うておりますのも、一つはやはり海員の方々、乗組員の方々の労働条件もよくして参りたいという念願がひそんでおるわけでありまして、この方にもただいま努力をいたしております。また、内航等におきましては、あるいは荷主と海運業者との関係等もございますが、これらの点も是正して参って、日本の産業の発展に見合う海運労働条件のあり方というものを逐次推進して参りたい、かように考えておるわけであります。
  133. 内海清

    内海(清)委員 大臣の御答弁をいただきましたが、これはわが国の海上労働者の問題から考えますならば、きわめて重要な問題だと思うのであります。この点につきましては、先ほど来、局の中にこれの調査機関を設けてできるだけ推進する、ことに漁船関係施策については早急にやりたいということでございますが、これはぜひとも強力に進めていただきたいと思うのであります。  これに関しまして、私一つここでお伺いしておきたいと思いますのは、これは国際海上労働条約の九十二号に相当するものであります。いわゆる船員の設備基準の問題であります。これをわが国にどのように適用するかという審議をするために、すでに、これは船員局からいただきましたものでは、二十七年の七月と、こういうことになっておりますが、これは船員設備協議会というものできておるのであります。その船員設備協議会の構成は、これは公益が四であります。船主が八、組合が五、造船所が六、計二十三名でこれを構成しておる。三十一年の一月には、五千トン以上の船舶に対する基準を中間答申し、それから三十五年の六月には、五千トン未満五百トン以上の船舶に対しまする基準を答申して、船員設備協議会としては、一応その任務を終わった形に相なっておるのであります。  そこで、この答申が出ました以上は、運輸省としては直ちにこれを法制化せなければならぬ責任があると思うのでありますが、今日まで、この答申は放置された形に相なっておると思うのであります。この船員設備の基準の問題、これは船員に対する労働条件一つだというふうに私ども考えておるのでありますが、これがいまだに放置されておるという問題、これは聞くところによりますと、海員組合では、今の構成員が一致した答申である。だから、運輸省でできるだけ早く法制化の努力をしてもらいたい、こういうことも要望し、これが今日まで行なわれないので、たびたび法制化の要請を行なってきておるようでありますが、これがいまだに実現していない。いわば当局の熱意がないのではないか。船員労働行政を担当する当局として、この点どうお考えになるか。この点を一つお伺いいたしたいと思います。
  134. 若狭得治

    若狭政府委員 船員設備協議会につきましては、先ほど申されましたように、非常に長い間にわたりまして検討を進められまして、御答申をいただいたわけであります。われわれといたしましては、それを早急に法制化する考えでございましたけれども、先ほど久保委員お話の中に一部ございましたように、一九六〇年の海上における人命安全条約批准に伴いまして、船舶安全法の改正が現在検討されているわけでございます。その中に取り入れて参りたい。われわれといたしましては、船舶安全法の体系の中でこの問題を解決していただくということを強く念願いたしておりまして、省内におきましても、そういう連絡をとっております。先ほど申しましたように、船舶安全法は、明年の通常国会を目途に現在検討を進めておりますので、そういう時期をとらえまして、これを法制化するという考えでおるわけでございます。  なお、この答申と、先刻の船員設備に関する条約につきましては、多少の食い違いがございますので、われわれといたしましては、この条約批准ということよりも、むしろ答申を尊重いたしまして、答申の線に従って進んで参りたいと考えておるわけでございます。
  135. 内海清

    内海(清)委員 これは船舶安全法の改正があるから、そのときに待つということであります。これは船舶安全法の施行規則として公布されてもいいものかとも考えるのでありますが、そうすると、この次の船舶安全法の改正のときには、これを入れるということでございますね。その点はっきりお答え願いたい。
  136. 若狭得治

    若狭政府委員 その方針で今後努力して参りたいと思っております。
  137. 内海清

    内海(清)委員 その方針で努力するということであって、この点は、どうも私ども十分納得できないのです。すでに三十一年と三十五年で全部答申を終わって、今日まで十分検討されておるはずです。しかも、組合からは再三再四これの法制化の要請をしておる。ところが、その組合の要請に対しては、納得させてないということです。そういうことに対する熱意が、どうも足らないように思う。ですから、これは安全法の改正の際には必ずやるということの言明を、一つここではっきりいただきたいと思いますが、いかがでございます。
  138. 若狭得治

    若狭政府委員 この船内の船員設備に関しましては、実は船員法の中でこれを規定すべきであるか、船舶安全法の中で規定すべきであるかという点について、われわれ検討いたしたわけであります。船内の船員の設備でございますので、むしろこれは船員保護の面からいいまして、船員法の面から規定する方が適当ではないかということを考えたわけでございますけれども、設備に関する限り、やはり船舶検査官をしてこの設備の状態を点検せしめる、船舶検査の場合に十分これは検査させることの方が、実効を確保する上から見まして適当ではないかということで、法律的には船舶安全法の中でこの問題を取り入れてもらおうというふうに考えておるわけでございます。船舶安全法の所管の問題でもございますので、ぜひとも来年の改正の際にこれを入れていただくということで努力するつもりでおります。
  139. 内海清

    内海(清)委員 これは船員労働条件一つ考えまして、ここで御質問したわけです。しかし、安全法の改正の際にこれを入れたいということでありますから、これは安全法になっても私は差しつかえないものだと思うのですが、他のいろいろな条件があるから、それらを考えあわせて、これがはたしてそこでできるか、できないかはっきりわからないというような御答弁では、ちょっと困るのです。元来、いろんな諮問機関に対しては、常にその答申は尊重されて、今日まで多くの問題について、答申がこうだからこうやりたいのだという言葉が述べられてきておる。この問題に限ってそういうふうなことでは、ちょっと納得しかねるのであります。もう少しはっきりさせていただきたい。
  140. 若狭得治

    若狭政府委員 御答申は、全面的にわれわれとしては船舶安全法の中で取り入れてもらうという態度で努力したいと考えております。
  141. 内海清

    内海(清)委員 それでは、この問題は船舶安全法の改正の際には必ず入れられる。こういうふうに解釈してけっこうでございますか。
  142. 若狭得治

    若狭政府委員 そのように努力いたします。
  143. 内海清

    内海(清)委員 それでは次に移りたいと思いますが、この国際条約の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、今の問題を初めとしまして、なお多くの問題があると思うのであります。この問題、さらに漁船関係条約、こういう問題のみならず、あとなお批准されていないものにつきましては、早急に一つ調査、研究されて、国内法を整備されて、これをやっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  それでは、またもとに戻りますが、先ほど来いろいろ伺っておりますと、結局適用範囲の問題は、今回の改正では漁船特殊規則に定めている従業制限の第一種を除外する、こういう考え方であると思うのでございますが、そういう点から考えますと、先ほどもちょっと申し上げましたが、漁船特殊規則というようないつでも勝手に省令で変更できるようなこういうもの、これが基本法である船員法の適用範囲を左右するような結果になることはどうか、こういうことを私は強く感じるのであります。現にこの改正委員会の審議の途中におきましても、この特殊規則が大幅に改正されておる。多くの漁船が二種から一種に落とされておる。そこで船員中央労働委員会の答申においても、これは「三十二年七月十日現在」ということを一応規定しておるように思うのであります。で、くどいようでございますが、そういう点から考えまして、この五トン以上の船に乗り組んでおる船員についてはその全部について船員法を適用して、海上労働という、一般陸上労働とはすべての条件が違っておる、海上独特の法的規制になりあるいは保護なりが与えらるべきである、こう考えるのであります。漁船だけを二十トン以上にし、しかも第一種を除くというようなことは、きわめて片寄った取り扱いではないか、かように考えるのでありますが、その点につきましていかがですか。
  144. 若狭得治

    若狭政府委員 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、船舶の一般社会からの孤立性ということに着目いたしまして、法律的な規制を行なっているわけでございますので、五トン未満の船舶というものを除外いたしました。また河川、湖沼のみを航行する船舶を除外しておりますのも、そういう趣旨から出たものでございます。二十トン未満の漁船実態につきましても同様なことがいえると思うわけでございますけれども、先ほど漁船特殊規則というものが一片の省令でもってこういう法律的な重大な問題を決定するのはいかがかということでございましたけれども、これにつきましては漁船の構造という面から見まして、その航行の区域というものを規定いたしておるわけでございます。従いまして、安全性の面から出てくる問題でございますので、決して恣意的にそのときの状況によりましてこの安全の問題をきめておるというような状況ではないわけでございます。従いまして、特殊規則によりまして近海あるいは遠洋の漁業に従事するというものにつきましては、二十トン以上につきましても三十トン以上のものとほとんどその実態は変わりませんので、このたび法律改正いたしまして、これを船員法の適用範囲とするということにしたわけでございます。第一種の問題につきましては、先ほど申し上げましたように三十トン以上の船舶、第一種の船舶との権衡もございますので、その実態に応じまして今後検討さしていただきたいと考えるわけでございます。
  145. 内海清

    内海(清)委員 十分納得できぬのでありますが、時間がだんだん迫って参りましたし、先般来論議されたことでもございますので、一応次へ移りたいと思います。  海の上で魚をとっておる、こういう労働者の労働条件労働基準を陸上の労働基準監督官にまかしておって、それではたして心配ないというのか。結局これらの人は、陸上の労働基準法と船員法のいわば谷間にある人なんですね。はたして実際にあなた方がごらんになって、これらの船員法の適用されていない海上労働者に対して十分なる監督行政、指導が行なわれておるかどうか、この点についてどうお考えになっておりますか。おそらく実情をよく御存じないんだと思います。それではたしてこういう法を作っていっていいのか。少なくとも船員法を取り扱われる部面としてはそこまで考えられなければならぬと思う。この点につきましては、水産庁の方は実態をよく御存じだと思いますが、いかがでございますか。——時間がますますたちますから、御答弁がなければけっこうです。けっこうですが、私ははなはだ遺憾に思うのであります。今日海上労働者で一番残された部面はここなんです。結局、労働基準法と船員法の谷間にある人、これが海上労働者の数からいえば一番多いんじゃないですか。それをそのままほっておいていいのかということです。ここに今度の船員法の大きな欠陥が出てきておる。これらについては水産庁の方においても今後十分お考えいただかなければならぬ。これについて今ここで論議してみましてもお答えがないので、一人相撲になりますから、これは今後十分に一つ考えていただいて、必ず次の国会ではこの面に対する施策、これを提出してもらいたいと私は強く要望しておきたいと思うのであります。実際この部面におる人が今日一番ふしあわせなんです。これらの人々の生活の状況というものは実にみじめな者が多いのであります。  それでは、そういう面からも関連いたしまして、政府は今後なるべく近い将来において五トン以上の漁船にもすべて船員法を適用するようなお考えがあるかどうか、この際伺っておきたい。
  146. 若狭得治

    若狭政府委員 船員法の適用対象につきましては、先ほど申し上げましたように、海上労働特殊性ということに着目いたしておるわけでございます。二十トン未満の船舶についても、海上労働であるという点につきましては同一でございますけれども、その生活の根拠が陸上にあると申しますか、大体において日帰りの労働を行なっている者について、はたしてこの船員法のいろいろな特別な法規を適用する方が妥当であるかどうかという問題が残されているわけでございます。また保護の面からいたしましても、たとえば船員保険の問題は、厚生省の御所管でございますけれども、これにつきましても、今後の保険のあり方という問題につきましては、ただ一律に船員保険の適用対象に取り上げるということですべてが解決するというふうにも考えられないわけでございます。そういう点をいろいろ今後検討さしていただきたいと考えておるわけであります。
  147. 内海清

    内海(清)委員 いろいろそれは問題はございましょう。問題はございましょうが、これは、これが上程されまして以来一番問題点はそこである。十分一つこの点については研究して、できるだけ早く——これは二十トン未満はその日帰りだ、家に帰ると言われますけれども、私は瀬戸内海だけれども、瀬戸内海漁船なども全部それですよ。これは船員法を適用されているじゃないですか。そこらに大きな矛盾があるじゃないですか。だから特殊性特殊性と言われますが、その特殊性というものの基準が明らかでないということなんです。ここに解決しなければならぬ問題がある、私はそう思うのです。きょうはその問題は一つ研究してぜひこの問題を解決していただきたいということを強く私は要望しておきたいと思います。  なおそれに関連して、この適用範囲の問題ではいつも、この前から論議されましたが、厚生省が、この保険財政の上から船員法の拡大については反対があるではないか、これは船員中労委の議事録を詳細に調べればいろいろわかると思うのであります。ここで御答弁願えば、船員法の適用されたものについては船員保険はすべて適用するんだという御答弁が出ることば明らかでありますが、運輸省としては、これはもちろん関係はありますけれども、これは保険の徴収率その他がいろいろ問題があると思うのです。そういうこともあわせて考えていくならば、運輸省としては、そういう厚生省の態度に同調するだけではどうもならぬと思うのです。今回の拡大につきましても、労働保護という立場に十分立って、運輸省の意向に押し流されることのないように特別に一つこの点はお考えいただきたいと思うのであります。  それから先ほど来の質問でもう一つ残りますのは第一種の問題、第一種が海上労働特殊性がないというこの理由なんです。これと特に五十トン以上の一般船舶との差異というもの、これはどういうところにあるんでしょうか。
  148. 若狭得治

    若狭政府委員 三十トン未満の第一種の従業制限を要する漁業につきましては、沿岸の漁業でございます。従いまして、長期に海上に滞留して作業に従事するというような場合は少ないということで、区別いたしたわけでございます。ただ先ほどから申しておりますように、この点につきましては、最近の漁業の実態等も勘案いたしまして、さらに検討さしていただきたいと思います。
  149. 内海清

    内海(清)委員 一つの例で御説明願えば一番よくわかると思うのですが、たとえば底びきと揚繰とのその実態の差はどこにあるのかということです。実態ですよ。それは言葉の上ではいろいろあれはありましょうけれども、実態の差はどこにあるのですか。その点を一つ……。これは水産庁の関係でもけっこうでございます。
  150. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 三十トン未満の漁船の操業延べ日数につきましては、これは二種とか三種の延べ日数とそんなに変化はないわけでございます。ただ一回の出る日数が一種の方が少ないということはありまして、従って、運輸省の方では長期にわたって海上労働を続けるかどうかという点を問題にしておられるわけでございます。  それから揚繰と底びきでございまするが、底びきもいろいろ種類がございまして、たとえば以西底びきのような長期にわたりまして海上労働に従事するというものもございまするし、あるいは一種の方にいたしました以東底びきのように、以西に比べましては比較的に少ないという種類もございまするし、また先ほど先生おっしゃいました瀬戸内海の小型底びきのようなものは、大体一日の作業で帰ってくるというようなものが多いわけでございまして、底びきでもその漁種に応じまして変えておるような次第でございます。それから揚繰につきましても大きいものと小さいものとあるわけでございまするが、大体揚繰と申しまするのは、まき網漁業の小さいものを揚繰と申しておりまして、小型底びきよりは揚繰の方が大きいというような漁種でございます。
  151. 内海清

    内海(清)委員 突っ込んで論議する時間がございませんので次に移りたいと思います。  厚生省関係一つお伺い申し上げたい。この船員保険、これは船員法の適用を受けるということ、これによって自動的に船員保険に含まれる、こういうことであります。機帆船は五トン以上であればこれは適用される。しかも陸岸に沿って大体航行しておるわけですね。ところが漁船は大体陸岸から海洋へ対角線に出ていくということなんですね。ところがこれが三十トン以上でなければ適用されぬということ、つまり法の保護が受けられぬということなんですね。これはどういうことであろうか、社会保険としての船員法の使命というものはどういうところにあるか、この点について一つ
  152. 中村一成

    中村(一)説明員 船員保険におきましては、便宜船員法の適用の船員対象といたします。先生もおっしゃいます通り、社会保険という立場からどういうふうな範囲が適当であるかということにつきましては、社会保険という立場からおのずからまたそこで検討しなくちゃいかぬ。それで先生のおっしゃいます通り社会保険という立場に立っていかがであるかという御質問であろうと思いますけれども、私どもは、そのことにつきましては、現在の船員保険の中におきましても、社会保険としてこれを船員保険の中において見た方がいいのか、あるいは他の保険において見た方がいいのかという、現在すでに適用になっておるものについてみましても、いろいろ問題があるわけでございます。先生の御質問はそういう外の方をもう少し入れるべきじゃないか、そういうような御趣旨かと思うのでございますけれども、これは非常にむずかしい問題でございまして、現在陸上の健康保険におきましても、五人未満の従業員を扱っている事業主のところにおきましては、これは強制適用になっておりません。そういうようなものは国民健康保険において現在適用になっておるわけでございますけれども、しかし、それはたとい一人でも、二人でも被用者として使われておる者は、これは健康保険に入れるべきじゃないかという大きな問題があるわけでございます。従って、船員保険の場合におきまして、およそ船に乗っておる者は一つ船員保険という形においてとらえたらいいじゃないかという議論も、私どもの部内にももちろんあるわけでございます。検討いたしておりますが、これは十分、もちろん答弁にはなりませんけれども、保険の適用の問題と申しますのは、現在におきまして非常にむずかしい問題で、それだけにまた現在も非常に解決を急がれておるわけです。先生も御承知と思いますが、社会保障制度審議会におきまして、現在社会保険の適用の調整ということを、来年度からその第一歩を踏み出すということでただいま検討を急がれており、近く答申も出るというふうに伺っておるのでございますけれども、私ども厚生省内部におきましても、いろいろと議論をいたしまして、現在のところにおきましては、船員保険においては、船員法の適用の船員対象にするというところでいかざるを得ないということでございまして、これをもし船員法適用以外の方もやった場合におきましては、他の法、たとえば労働基準法とかその他との関係もございますので、これを根本的に立て直すというのでなければ、現在の段階におきましては、船員法船員船員保険の適用者とするのが、他の法との関係におきまして最も便利であるということから、現在のところにおきましてはその方針で参りたい、こういうふうに考えてやっている次第でございます。
  153. 内海清

    内海(清)委員 御説明わかりました。船員法を適用されている者が船員保険の適用の対象になる。これは船員法とうらはらになる。船員法が適用になれば船員保険がそこに適用できるならば、実際問題としてもっと船員法を広げてもいいということになると思う。厚生省がなかなかそういう面に踏み切りにくいということは、結局保険財政の問題が一番重要だと、これは言われないかもしれないけれども、これが一番重要だと思う。だからその問題は、この保険料の納付率、こういうふうなものは、それはそれとして考えて、社会保険としてはどうあるべきか、この基本的な態度をきめて、これでいかなければ、いつまでたっても、保険財政が困るといえば船員法の拡大はできぬことになる。これはなるほど表面では、船員法が拡大されればその通りに保険はやられますと言われますけれども、今回のこの拡大についてもいろいろ論議があったことを私どもは承知しておる。そこらの問題なんです。だから社会保険という船員保険の立場から言うなら、それはできることならこういうふうにしたいということがあると思うんです。その点をお伺いしたい。
  154. 中村一成

    中村(一)説明員 先ほども御質問お答えいたしました通り、私どもは行政上からいきました場合におきましては、船員法とうらはらの形において運営しておる現在の立場からいきました場合においては、やはり適用範囲につきましては、船員保険の場合はそういう労働基準船員法という特別法に従ってこれをやっていくというべきでありまして、私どもの方から、社会保険の側から、これは保険としてこうあるべきだというふうにいくのは、やはり現在の船員法及び船員保険の立場からいった場合においてはいかがであろうか。やはりこれはそういうような船員という特別な労働関係が規律せられるというような態勢になって初めて保険もそれに従っていくというのが正しいのじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  155. 内海清

    内海(清)委員 御承知のように船員法は、海の労働基準法であるわけであります。そういう立場から申しますと、船員法において保護すべき対象をその労働実態に照らして確保しなければならぬ。ところが、もしこれがかりに保険という面から規律されるというようなことがあれば、これは本末転倒だと思うのであります。特に労働保護の必要性というものは、大企業の近代的な労働者、これもさることながら、一番重要なことは、おくれた零細企業のもとにある労働者、これについて一そう意を用いられなければならぬことは言うまでもございません。しかも、こういう点から考えますならば、船員保険のような総合保険においては、それが特色といえるのじゃないか、こういうふうに私は考えるのであります。こういうような立場から考えましても、船員法の適用範囲の拡大については、厚生省といたしましても、今後十分意を注いでいただかなければならぬのではないか、私はかように考えるが、これらにつきましての御所見を一つお伺いいたしたい。
  156. 中村一成

    中村(一)説明員 適用範囲の問題につきましては、これが船員法の適用を受けました場合におきましては、船員保険の方の強制適用になりますので、この適用範囲という問題は、そのように一人々々の国民にとりまして、それがどちらかの保険を強制的に受けざるを得ないという、現在の社会保険のいずれかを強制されるというわけでありまして、非常に重要な問題であります。従って、この問題につきましては、これを軽々しくどうするということは許さるべきことではない。私どもといたしましては、この適用の範囲の区分がきまりましたならば、それを忠実に実施しなくちゃならぬということで準備を進めておるわけであります。そういう気持で、現在は関係の各省と御協力をして検討いたしておるところでございます。
  157. 内海清

    内海(清)委員 厚生省の立場はわかるわけでありますが、しかし、社会保障の重要な部面を受け持っておられる厚生省としても、もっとこういう面においては積極的な態度が望ましい。従って、この船員保険につきましても、今後十分この面に意を注いでいただきたいと考えるのであります。  次に、水産庁にちょっとお尋ね申し上げたいと思いますが、最近漁業労働者がだんだん減ってきておる、これは十分御承知のことであります。わが国の水産業というものを、一つの産業として近代的な方向に発展させる上に、この漁業労働の問題というものはきわめて重要なことになってきておるのであります。私はそういうふうに認識いたしておりますが、その点どうでございますか。
  158. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 先生の仰せになられますように、最近は漁業労働者が次第に減って参りまして、たとえば遠洋漁業という場合でも、なかなか漁業労働者を充足させるということが困難なようなことが出て参っております。それで、この点につきましては、水産庁としては非常に重大な関心を持っておるわけでございまするが、なお私たちといたしましては、そういう大きな漁業でなくて、小さい漁業の漁業労働者に重大な関心を持っておりまして、それはまた沿岸漁業振興法というような法案もこの国会に提案いたしておるようなわけで、別個の立場から沿岸漁業、中小漁業を伸ばしていきたいというような考え方をもちまして対策を立てておるような次第でございます。
  159. 内海清

    内海(清)委員 陸上一般の産業に比べまして、この漁業労働が特殊な、しかも非常に悪い労働環境で働かなければならぬ。さらにまた、賃金とか雇用の不安定というようなもの、それから、そういうふうなことのために、漁業に従事するところの新しい漁業労働力がだんだんなくなっていくということ、これはきわめて重要なことで、たとえば船員法の適用の問題にいたしましても、船主経済を理由として今日まで適用にかなり反対してきた、これが実態でありましょう。実際そういうことになってきたのでありますが、これはもうすでに過去に去りつつあって、現在では積極的に労働安定化のための法の保護が必要だというふうに業界の方も意向が変わってきておるように思うのであります。  そこで、水産庁としても、水産業の健全な発展を考えて、これらのいろいろな条件を克服することが今日非常な急務であると私は考えておるのであります。労働力の正常な確保、これが最も必要である、こういうように考えておるのでありますが、これに対してはどういうふうなお考えを持っており、今後どういうふうにこれに対処しようとしておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  160. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 御承知のように、漁業の経営が従来必ずしもよくないものでございますから、経営者の方にいたしましても、漁業労働について十分な配慮を払うということもできかねたような場合もあったわけでございます。しかしながら、今後漁業労働を非常に重要視いたしまして、りっぱな漁業労働者を確保しなければいかぬという現在の情勢にあたりまして、経営者の方におきましても、その点を十分考えておりまして、確かに仰せになりますように考え方が変わってきておるわけでございます。水産庁としましても、そういうふうな情勢に応じまして、よい漁業労働者を確保していくということに十分配慮をいたしたいというふうに存じております。
  161. 内海清

    内海(清)委員 その点は、わが国の水産業の今後の発展のためにきわめて緊要なことだと考えますので、今後十分対処していただくように要望いたしたいと思います。  次にお尋ねいたしたいと思いますのは、先ほどもいろいろ質疑がありましたが、行方不明手当の問題、今回の改正によりまして、行方不明手当が制定せられたことはまことにけっこうだと思います。そこでお伺いいたしたいと思いますことは、この手当は災害補償とお考えになるかどうかという問題であります。この点をまずお伺いいたしたい。
  162. 若狭得治

    若狭政府委員 その通りでございます。
  163. 内海清

    内海(清)委員 これが災害補償ということであるならば、何ゆえに保険の裏づけができなかったか。その点いかがですか。
  164. 若狭得治

    若狭政府委員 行方不明手当は、このたびの船員法改正によりまして初めて創設いたしました制度でございます。もちろん従来汽船の船主等におきましては、こういう制度は実質上行なっているわけでございますけれども、法律的な制度といたしましたのは、このたびの改正案において取り上げたのが初めてでございます。従いまして、この保険化の問題につきましては、今後厚生省と十分連絡をとっていきたいと考えておるわけであります。
  165. 内海清

    内海(清)委員 これの保険化の問題は、今後厚生省と十分連絡してやりたいということでございますが、従来もこれは法制化されていなかったけれども、業者側においても、できるだけこういうふうなものについては考えていると言われるが、ところが実際問題として、それがどういう状況になったか十分御存じだと思う。これは海上保安庁の統計から見ましても、昭和三十五年度を見ても、海難の問題を見ますと漁船が四六%くらい、汽船が三五%、この中で全損から見ましても漁船が実に多いのであります。これは一々数字は申し上げませんが、そういう点から考えて、しかも今日まで行方不明手当に相当するものを業者として負担してきたその実績から考えて、ただこれが法制化したたけで能事終われり——これはこれから厚生省と話をして、できるだけ保険化するのだというふうなことでこれが済まされるかどうかということです。これは陸上におきましても、御承知のように労災保険がございます。この保険化がむずかしい問題は、やはり厚生省との間に問題があると思います。陸上におきましては労働省基準法を持ち、労災保険を持っておる。今日いわゆる労災保険というものが労働者にとりましてはまことに一つの福音である。ところが、海上においては、今日まで取り残されておるのだ。これは船員局と厚生省の保険局というものが分かれておるところに一つ問題がある。一般の社会保険の問題は別にいたしまして、少なくともこの労災の考え方からいくならば、そこらに問題があるのではないかと考えるが、この点いかがですか。まず運輸省の方から答えて下さい。
  166. 若狭得治

    若狭政府委員 このたび行方不明手当の保険化の問題につきましては、厚生省には適用範囲の拡張の問題とともにお願いしておるわけでありまして、保険特別会計としての財政の予算の問題もございます。従いまして、法律的には、この手当を創設することによってこれを強制するわけでございますので、当然この実行は十分確保できるものであるというふうにわれわれ考えておりますけれども、船舶が滅失または棄損するというような行方不明の事件の起こる場合には、零細企業においては行方不明手当の支出能力がなかなかないという場合がございますので、そういうものについては、保険化の必要があるということで、厚生省と十分連絡をとっておるわけであります。厚生省としても、その点は十分検討していただいておるわけであります。従いまして、所管が分かれておるために、この問題について不円滑であるというような問題はございません。
  167. 中村一成

    中村(一)説明員 行方不明手当につきましては、厚生省でこれに反対するというわけではございません。厚生省といたしましては、ただいま船員局長からお答えがありましたように、これを保険化するにつきましても、早急に実施するようにということで検討をいたしております。
  168. 内海清

    内海(清)委員 船員局長は、これが法制化されたから大体実施されるであろうということでありますが、そういう自信をお持ちですか。過去の実例から見まして、これは使用者による補償義務である。ところが零細企業にあっては、海難によって全損の場合は、船そのものが経営のすべての基盤なんです。従って、これを失った場合には負担能力が全然ないのです。こういうものをカバーするのはどうしても保険制度が必要なんです。これは陸上の労災においてもそうでしょう。だからそれが設けられておる。これによって特に零細企業の労働者が非常に助かっておる。これは海上においても同様であります。ですから大体保険化はいつごろできる見込みですか。
  169. 中村一成

    中村(一)説明員 私どもといたしましては、できるだけ早急に実施したいということでございますが、先生御承知通り、保険はこれは特別会計でございますので、従って、私どもといたしましては、結局会計年度によって行ないますので、時期的には、早い場合におきましては来年度の会計年度から保険に取り入れられたら幸いだ、こういうふうに考えております。
  170. 内海清

    内海(清)委員 結局保険財政の問題で、できれば来年度からこれを保険の対象にしたいということであります。船員保険の保険料の収納率を調べてみますと、三十五年度で汽船で九八・七%、機帆船で九一・四%、大型船において九四・二%、一般漁船では八六・七%ということになっておるように思うのです。これは私の調査です。こういう点から考えて、この収納率が高まってくれば、十分私は行方不明手当も保険事項にすることができるのじゃないか、かように判断するのであります。  ところが、こういう収納率を高める方面に今まで十分な努力がされないで、当然保険事項となるべきものがなおざりにされていたということは、これは保険を取り扱っておられるところについても十分なる責任があると私は考える。もちろん運輸省におきましても、これらの点につきましては、十分なる協力が必要だと思うのであります。しかし私は、先ほど申しましたように、この運営が運輸省と厚生省とにまたがっておるところに一つの問題があるのじゃないかと思ってお尋ねしたのですが、これはまあ両省から問題ないということでありますけれども、労働行政と労災補償の問題が一元化されることが、今日すでに労働省においてこれのはっきりした手本があるわけです。モデルがあるわけでありまして、これが一番うまくいくのではないか、こういうふうに私は考えておるのであります。こういう点につきましても、一つ今後十分な御検討をわずらわしたい、かように存ずるのであります。  それでは、もう時間がございませんので、問題は残りますが、一応久保委員から全体的に触れられておりますので省略いたしまして、最後にお伺いいたしたいと思いますのは、船員の厚生施設の問題であります。船員保険によります福祉費は報酬月額の千分の七が徴収されておるわけです。これの過去五年間の収支と現在の保有金の内容を、わかればちょっとお知らせいただきたい。
  171. 中村一成

    中村(一)説明員 過去五年の資料を今持っておりませんので、これは後ほど調べて申し上げますが、まず昭和三十六年度、前年度の予算で福祉費が三億九千九百四十七万一千円、それから三十七年度、本年度の予算額が四億四千二百五万八千円の福祉費でございます。その前の三カ年につきましては、調べて後ほど申し上げます。
  172. 内海清

    内海(清)委員 この船員施設につきましては、国内の施設はもちろんでありますが、海外におきます施設については、今後必要度と実態考えて十分考慮していただきたい。従来この施設についてはまことに寒心にたえないものがある。再検討される時期ではないかと思うのであります。  時間がございませんから、海外に出漁しております日本漁船の状態、あるいは海外基地漁業の実情についてかれこれ申し上げることは省きたいと思いますが、今後海外の漁業に対するものといたしまして、船員保険福祉費を十分活用していただきたい、その方途を講じていただきたい。現在これについて計画なりあるいはお考えがあればお伺いしておきたいと思います。
  173. 中村一成

    中村(一)説明員 厚生省といたしましては、この福祉費の使用につきまして、海外における福祉施設をこの福祉費の中からまかないたいということで、年来大蔵省に対しましてそういう要求をいたしております。残念ながら今日まで認められておりませんが、私どもといたしましては、先生の今お言葉のございましたように、最近におきますところの船員保険の被保険者の海外におけるところの労働状況からいたしまして、船員保険といたしましても、ぜひとも海外に何らかの福祉施設を設けようじゃないかということで、今後ともそういう方針でいきたいということを考えております。
  174. 内海清

    内海(清)委員 私これは割愛いたしましたが、今日四十トンばかりの漁船でもって大西洋まで出漁しておる、こういうような実態をいろいろ調べてみますと、こういうような面はますます必要性が増大しておると思うのであります。  さらに、この点で一つ水産庁にお願いしておきたいと思いますことは、これは厚生省にまかすということじゃなしに、業者側も相当力を入れて考えなければならぬ問題であるから、経費の捻出その他のためにも船主側でもできるだけ考慮するように、水産庁としても鋭意御努力いただきたいと思うのですが、その点いかがですか。
  175. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 海外の基地漁業につきましては、現在各経営者の方におきまして、船員の寄宿舎とかあるいは休息所、スポーツの施設とか医療施設とか、そういうものにつきまして相当努力をしております。基地漁業でなくて、そのほかに母船式で出ていく漁業とかいろいろございますが、そういう漁業につきましては、漁業の許可の際におきまして、そういう労働条件も調べまして許可をするようなことをいたしておりまして、十分の配慮をしていきたいと存じます。
  176. 内海清

    内海(清)委員 船員の厚生福祉につきましては、今時間の関係で海外のことを申しましたが、これは国内におきましてもきわめて不十分である、ただ名のみであるという施設が多いのであります。この点に関しましては、一つ関係方面で今後十分御考慮願って、この海上労働者の福祉のために万全の処置をお願い申し上げたい。  最後に、私はこれで質問を終わりますが、先ほどもございましたが、この船員法改正にあたりまして、私が前回申し上げましたように、今回のものは船員労働委員会におきまする三者合意のものが成案として出ておるのであります。従いまして私は、今度成案を得ましたものについて、ここでかれこれ申し上げるものではございませんが、この法全体を見ましたときに、実に問題点が多いと思うのであります。この船員保険の実態をお考えいただいて、これが基準法の特例法として生まれたものだという経緯からも考えて、基本法である船員法につきましては、今後十分御検討いただいて、早急に一般労働者の上に船員特殊性が積み重ねられましたりっぱな船員法ができて、海上労働者の労働条件なり生活の向上ができるように格段の御努力を切に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  177. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 山内広君。
  178. 山内広

    山内委員 私はかつて船員手帳の交付を受けまして、船員であることを誇りとした体験もありますので、今度の船員法改正案をずっと読みまして、私なりに考えていることはたくさんあるわけであります。けれども、もう本会議の時間も迫っておりますので、七十二条の二項、すなわち距離の短いところをひんぱんに往復する、一般の船員法で勤務時間を規定することができないために特例を設けた、この一点に問題をしぼって、特に青函と宇高の問題についてお尋ねしておきたいと思うわけであります。  これは国鉄の労務管理の最高責任者にお尋ねいたしたいと思いますけれども、国鉄という大きな機構の中において、非常に特殊な職場が一本のレールの中にはさまっておるわけであります。これは言うまでもなく、全然特異な職場でありまして、これに対してどういう労務管理をお考えになっておるのか、必ずや特別な配慮が払われていなければならない。よく国鉄は動脈にたとえられるのでありますけれども、動脈の中でこの点が一番脆弱であると私は判断しております。この補強工作としてどういう考え方で常日ごろ労務管理をなさっておるのか、この基本的な考え方をまず伺っておきます。
  179. 中村卓

    中村(卓)説明員 お答え申し上げます。  もちろん陸上の労働と違いまして、国鉄連絡船船員労働特殊性を持っております。そういう点を考えながら、なおかつ、陸上の職員とのバランスを考えながら、われわれといたしましては、実質的にえこひいきのないように公平な考え方で扱っておるつもりであります。
  180. 山内広

    山内委員 もちろんそれはそうだろうと思うのですけれども、私そういうことをお聞きしておるわけではないのです。ああいう膨大な船と船員とお客さんの生命を預かって働いている労働者は、海技免状を持った特殊な人たちが乗っておる。そして非常に精密な高価な機械を持っておる。そして勤務状態は、御存じのような折り返し運航ということでいろいろ問題を含んでおるわけであります。その一つがまずくいっても全般に影響を及ぼす、そういうことで、たとえばあすこの局長はこういう配慮をしておくとか、そのほかいろいろ待遇上の問題、あるいは勤務の労働条件の問題、厚生施設とかいろいろあると思うのです。こういう点についてどういう御配慮をなさっておるのか、こういうことなんです。
  181. 中村卓

    中村(卓)説明員 そういう御質問でございましたら、ちょっと具体的なお答えになると思います。たとえば、給与につきましては、陸上勤務者に三号俸よけいに加えますし、あるいは共済組合の年金につきましては、これは法律ではっきりしておるのでございますけれども、普通の陸上勤務者に対しまして三分の四倍の計算期間で計算をしております。これにつきましては、掛金の問題も若干ありまして、今年度から少しふやしていただこうかというようなことも考えておりますけれども、そういうような面で海上労務者としての特殊性を相当考慮してやっておるつもりでございます。
  182. 山内広

    山内委員 国鉄の労務管理の最高の指導者が、それだけのお考えでは私非常に不満であります。けれども、この問題を今議論しておりますと時間がありませんので、あらためてまた私の意見も申し上げ、あなた方の考え方も聞く機会を作りたいと思います。  この七十二条の二項によりまして、「命令で別段の定めをすること」になっております。省令をお出しになるわけですが、その具体的なものがあったらお示しいただきたいし、もしそういうものがまだ決定しておらないならば、その考え方、構想といったものもお聞かせいただきたいと思います。
  183. 若狭得治

    若狭政府委員 この命令で定めます内容といたしましては、船員法原則が一週五十六時間制、航海当直に立ちます者については一週五十六時間制、また航海当直に立たない者は一日八時間、一週四十八時間という規定がありますので、この命令におきましては一日平均八時間といたしまして、その週期をこの命令で定めたいというふうに考えておるわけでございます。また同時に、休息時間についても規定いたしたいと考えております。
  184. 山内広

    山内委員 週期を省令で決定したいというお話ですが、今のお考えはどういうお考えですか。
  185. 若狭得治

    若狭政府委員 五週間を考えております。
  186. 山内広

    山内委員 これはほんとうは非常に議論をしたいところなんですけれども、時間があればまた申し上げることにいたします。  この週休をお考えにならなかったということ、末尾に「平均八時間以内でなければならない。」と書いてある。そうしますと、今の話では五十六時間ですから、年がら年じゅう休みなしに働くことになるわけです。これが私ども一番心配しておる点であります。これは国鉄当局にお聞きしたいのですが、いかがでしょう、もう船中労のああいう決定もなされ、両者とも受諾した今日、週休というものは考えざるを得ない段階だと思います。その点について……。
  187. 中村卓

    中村(卓)説明員 御承知のように、国鉄の職員全般につきましては、公労委から昨年の夏、時間短縮調停案が出ておりまして、これは労使とも受諾して、今までその線で団体交渉を進行中でございますが、直接この問題に関係が薄いものでございますから、あまり詳しくは申し上げませんけれども、たとえば一昼夜交替勤務だとか、あるいはまた動力車組合だとか、そういうものについては、具体的に話がまとまって、近く実施の段階に移ろうということになっております。船員関係につきましても、われわれといたしましても従来からのいわゆるダブル・ハンド・システムという勤務形態、そういうものと、それからまた、先ほど申し上げましたような陸上勤務者よりは給与が高いという点、そういう点を総合的に勘案いたしまして、できますればやはり作業の合理化という問題とあわせ考えた上で、方向としては四十八時間の方向に進んでいきたいというふうに考えます。
  188. 山内広

    山内委員 今のお話では四十八時間の方向で交渉を進める、こういうことで一歩前進したお答えがあった。これはぜひそういう方向でやっていただかなければならぬと信じておりますが、ただ、前回の船中労で出された場合に、あなたの方ではけって、組合の方が受けたという経緯が確かあったはずです。それで結局は不調ということで、今日この船員法でも日の目を見ない結果になったのではないか。そういう経緯にかんがみまして、もう少しこの四十八時間の方向というものを具体的にどういうふうにしてやるか、そういうことの腹をおきめになっておったら、もう少し組合との関係も調整し、あるいはお互いに不信感を持たないような形で、具体的に取りきめをなさった方が利口ではないか。もう少しこれをはっきり申し上げれば、この船員法が通ったら、直ちに組合とまず週休の点については団体協約を結ぶ、そしてそれの具体的実施は、さらに団体交渉で話し合いを進め、そしてそれが最終的にできた場合には、あとで申し上げたいと思いますけれども、就業規則等ではっきりそれを明文化する、こういう線が出れば、非常に労使間の関係もうまくいくし、第一この間の不乗便闘争とか、あるいは合理化闘争に見るような、私の目から見れば、あれは無益な争議であり、非常に残念な犠牲を払ったと思っておった。そういう意味で、今お出しになった四十八時間の方向で団交を進めていく。このことをもっと具体的に一つ取りきめといいますか、はっきりさしていただきたい。このことに対するお考えはいかがですか。
  189. 中村卓

    中村(卓)説明員 陸上の方の時間短縮につきましても、とりあえず五十六時間を二時間ないし三時間なり縮めるという段階で、漸次実情に即して、一方において企業の合理化をはかりながらやっていくという方向で、今組合とは話を進めておるわけでございます。従いまして、最終目標といたしましては、船の関係につきましても、四十八時間でいこうと思っておりますけれども、途中の段階においては、いろいろな実情の段階というものがあり得るのではないかと考えておりますと同時に、先ほど申し上げましたように、陸上勤務者との給与のバランス、そういう問題もありますし、また例の船員の食料というような、こまかいことを申し上げれば、そういう問題もございまして、そこら辺のところを総合的に勘案しながらやっていかなければいかぬのじゃないか。極端な例になりますが、船の方だけ非常に進んで、陸上の方が悪いということになりましては非常に困る次第でありますので、そこら辺は組合の方も十分全般的に見ておられると思いますので、そういう方向で団体交渉を進めていきたいと考えております。
  190. 山内広

    山内委員 実は今の御答弁も、それほど割り切っておりながら、一歩前進できないというあなた方のお考えに対して、私は実に非常にたくさんの資料を持ってきまして、あるいは労働時間の問題については外国の例なども申し上げたいのでありますけれども、時間がありませんので全部省略いたしますけれども、今実施しておるところのダブル・ハンド、これももう再検討を要する時代だと私は思っております。しかしそのことは、逆にとられると、あなたの方ではこのダブル・ハンドをやめて、もっとそこから船員でも生み出そうというお考えであれば、これは大きな間違いだ。私の申し上げることは、今労働時間の、いろいろ世間でいわれている疲労の問題から解釈して、二十四時間の連続勤務というものは、人間の勤務でないという考え方を私は思っております。一日八時間で十六時間休むというのは、あなた方もわれわれもそれをやっておる。そしてこういう勤務であれば超過勤務も二時間程度より認めていないというのが労働基準法の考えであります。この間労働大臣に会ったときに、疲労度について何か医学的な研究をしたことがあるのかと聞いたのですが、これは連続二十四時間というものは、あなた方はおそらくおやりになったことはないと思うのですけれども、大へんにからだにこたえるものなのです。私も実は体験がありますが、もう二十四時間日になると、船の五段くらいのタラップを上がることができない。そのかわり君たちは二十四時間連続して休むだろうと言われますけれども、疲労した体でうちに帰って、しかもこれは昼間です。休んだって疲労がとれるものではないのです。こういう勤務を非常にいい勤務のごとくお考えになっておるとすれば非常な誤りである。できればやはりこれは八時間、たとえば溶鉱炉のように火を消すことのできない労働者は三組を交番にして一組八時間、そうして十六時間の休養、これを三交代でやっておるのです。私は連絡船の場合には、そういうことを考える時期がきたと思っておる。船はものを言いませんから、二往復でも三往復でもどんどん働かすことができる。しかし、これに乗り組む船員は生身でありますから、二十四時間を連続して週休なしに働かせるというのはどうでしょう。人道上の問題ではないでしょうか、この点については、一つ船員局長なり運輸大臣の御意見も聞きたいと思います。
  191. 若狭得治

    若狭政府委員 船員法法律上の最低の限度をきめておるものでございますので、具体的な労働の実施につきましては、労使間におきまして決定をしていただくということでありまして、われわれとしましては、この最低限度を逐次上げていこうということで努力をいたしておるわけであります。ただ、海上労働は御承知のように陸上労働と非常に変わった労働でございますので、この点については、なかなか実際問題といたしましては、たとえば陸上のように補充者がいつでも得られるという状態でもございませんし、また設備につきましても、他の設備をもってかえるというようなことのできない労働でございますので、そういう点については多少の除外例を設けざるを得ないわけでございますけれども、しかしながら、全体としてはこの向上にできるだけ努めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  192. 山内広

    山内委員 はなはだ時間に追われて残念なのでございますが、なぜ、当局が週休を認める方向で団交もして実現したいというときに、はっきりしたものを出していただきたいかということは、あなたの方でお考えになっておる新造貨客船の基本計画を見せていただいたのですが、この計画の中では、一つ船員労働環境をよくするとか、あるいはそういう時間短縮の問題を考慮せられていないのです。そうしますと、将来はっきりと週休をやらなければならないということになると、定員が変わってきます。これはもう時間の問題であって、いかに国鉄当局が、財政上こうだとか、あるいは何名の採用を必要とするというようなことをうたわれても、この時代の流れには抗し切れない時期がもうすぐくると思うのです。そういうときに、新しい船の計画が、何らそういうことが考慮されずに設計され、新造されると、ここにまた問題が起こってくる。われわれの家庭で、家族がふえたからすぐ住宅の建て増しをするというようなわけには参りません、船はきまっておりますから。そうなれば貨車甲板をつぶすとか、お客の乗るところをつぶすとかいうしか方法がなくなってくる。そうなってくると、やってあげなければならないと思っておってもそれが実行できない。それが労使紛争の種になってしまう。ですから、こういう船員法改正のときに、ぴしゃりしゃんと週休をやらなければならぬとうたってあれば、現在設計しつつあるものの中に、それを織り込んだ構想が出てくるわけです。そういう意味で、ぜひこれは何らかの形ではっきり出していただきたい。この船員法は、修正の余地もないほど切迫しておることは、私は承知しておりますので、当局の方の言明がはっきりすれば、これは紛争のガンをこの辺で予防していくという意味で非常に建設的なことではないか、そう思いますので、重ねて国鉄当局答弁を求めます。
  193. 中村卓

    中村(卓)説明員 御承知のように、青函連絡船の代船新造計画は、われわれとしては技術的に、事務的に検討しておる段階であります。おもな基本的な設計は、大体決定いたしましたけれども、細部設計につきましては、これからやる段階でございまして、もしこういう問題につきまして組合との間に円満に妥結ができますれば、もちろんそれが実施できるようなことを考える余裕は十分あると考えております。ただ時間的に、うまくその前に円満に妥結がいくかどうか、先ほど申し上げましたように、給与その他むずかしい問題がございますので、若干国鉄としては心配を持っております。
  194. 山内広

    山内委員 今出された中で、私はやはり当局の猛省を促しておきたいと思うのですが、勤務時間は、あまりそういう俸給とか収入の問題とからめないで、働く者の一つの権利として、これはぜひやってやらなければならぬという基礎の上に立たないと、給料を多くやったからうんと働いてもいいんだという考え方は、私はどうかと思う。  これは船員局長にもぜひお願いしたいのですが、さきにもちょっと触れました通り労働基準局の方でもこの疲労の研究はしておらないと言っておる。民間で若干やっておるけれども、そういう機関は持って一いない。しかしこれは、ぜひ一つ万難を排してでも——もう医学的に研究されることなんです。こちらもさっきタクシーの運転手と同じだとおっしゃいましたが、私もそうだと思う。居眠り運転をしてぶつけておる現状なんです。あの連絡船がそういう事故を起こしたら大へんなことになる。これはちょうど、何といいますか、アルコール中毒と同じで、二十四時間連続して働いて二十四時間休んだ、疲労が切れない、回復しない、そうしてまた二十四時間の勤務に服する、こういうことになりますと、もう疲労が切れませんから、これは非常にからだに害になっておると思うのです。そういうところが医学的に研究されませんと、これはアルコール中毒患者を作るように——一週間に一ぺんくらいははっきり休んで、そして完全に疲労を回復しておかないと、非常にからだに支障を来たすと思う。こういう研究はもうあなたの方でやっていただかなければやるところはない。ですからこれは、私は前に一ぺん調べたことがあるのですが、まあそういうことを申し上げておると非常に長くなりますので……。  ただ、皆さんあるいは国鉄当局でお考えになると思っておるのですが、時間がありませんから私の意見を多く申し上げますけれども、たとえば、ベッドもあるんだ、休みも十分とってある、こういうお考えだろうと思うのです。しかし、私の体験を通じて言えば、やはり船に乗って船長の支配下に服したら、おりるまで勤務時間と考えないといけない。この中からここに三十分、ここに一時間という休養をトータルしてみても、それは休養にならないのです。こういう認識を一つはっきり持っていただきたい。また、そういう規律を確立しておかなければ、お前には睡眠時間があるんだからと、ぐっすり眠られたら、事故があったとき困るんです。船員は船に乗ったらいつでも船の音響を聞いて何か機械に事故がないか、それだけの神経を働かしておならければならない。そして事故が起きて電気が消えても、まっくらやみを自分の仕事場まで走っていくだけの熟練とそれだけの機敏を要請しておる。これはあとから申し上げますが、四時間の連続をやったからといってぐっすり眠るようでは、ほんとうは船員としての資格はないのです。連絡船のように、ひんぱんに運航するときは、常に起きている勤務の状態ですから、もしこういう勤務を解除するということになれば、もっと船をたくさん建造して、一週間に一ぺんくらい船をつないで休養をとらせる何かの方法を考えませんと、私はこれは非常に重大な問題だと思っております。また、これについて反論でもありましたら一つお聞きしておきます。
  195. 中村卓

    中村(卓)説明員 船員の疲労度の調査につきましては、実は先生も御承知と思いますが、ただいま職務評価委員会というのを組合側と話をつけましてやっております。この中で、船員だけでなくて、陸上勤務者も全部含めまして、おもな職種につきましては、疲労度の調査を医学的な見地からやるというような話し合いになっておりまして、近くそれが実施に移されるんじゃないかというように考えておりますが、われわれといたしましては、そういうものの調査も見ました上で慎重な態度で検討していきたいと思います。
  196. 山内広

    山内委員 もう一つは、これは機構上の問題ですけれども、今船員法ができ上がりますと、もちろん船員ですからこれらの人たちも適用を受けるわけです。ところが、この船員法にからんで紛争が起きた場合、これは公共企業体の労働委員会にかけられて、あなた方の手を離れて、今度は国鉄の方にいくわけです。そうして、向こうにはしろうとばかりで事情がわからない、そういうことで、先ほど日の当たらない谷間のようなお話が前の委員からも出ておりますけれども、こういう意味では、憲法でも労働時間が保障されていない。そして日本では、健康にして文化的な生活を営むという目標のもとに、労使ともいろいろ努力しておるわけですが、これが今度法律で定められる、その法律すらも、今度は省令にゆだねてしまう、こういうことで、この面ではずっと一本に、もうどこかでチェックするようなほんとうの労働基本法として、労働者の憲法として守る保護的な機構になっておらないのです。——首をかしげておりますから、具体的に申し上げますけれども、たとえば不乗便のようなことが起きてきた、そうしますと、これは公共企業体労働委員会にかけられるわけです。船員の事情のわからない委員会で処理される。そういうことを私申し上げておる。この機構についてどうお考えになりますか。
  197. 若狭得治

    若狭政府委員 公共企業体労働委員会船員中央労働委員会との関係については、今御指摘のような問題がございます。しかしながら、実際の問題の処理にあたりましては、公共企業体労働委員会の方から、専門的な問題、その他実情につきましては、十分中央労働委員会の事務局ないしはわれわれの船員局には御連絡がありまして、われわれとしても必要な資料を御提供いたしておりまして、従いまして、そういう実情の把握ができないというような状態ではないのではないかとわれわれは考えております。
  198. 山内広

    山内委員 先ほど中村常務さんの方からちょっと話があったのですが、船員の方は三号俸高いというんですけれども、組合に言わせるとそんなことはないと言っているのですが、これはどういうことになりますか。資料でもありましたらお出しいただければいいと思うのです。私も一つ研究してみたいと思います。
  199. 中村卓

    中村(卓)説明員 制度といたしまして、たとえば陸上勤務者が船に乗った場合は三号給与を積んでいる、それから船に乗っていた人が陸上にかわったときは三号引いているというような制度をとっております。これは先生御承知のように、もともと二九ベースのときに勤務時間が長いというような点を主として勘案いたしまして、あのときある程度差がつきまして、それがその後ずっと歴史を作っているというようなことにわれわれは解釈しております。
  200. 山内広

    山内委員 それは国鉄ですから、陸上の勤務者と比べることも必要かと思いますけれども、国鉄以外の船員との対照もやはりしなければいかぬと思う。そういう意味一つこれは資料をいただいて私もじっくり研究いたしたいと思います。  次に、青函間でも就業規則がありまして、この間向こうへ行きましたとき、現地の局長からいただいてきたのですが、これを読みまして非常に私は危惧の感を抱いております。それは違法の——違法と申しますか、まだ合法的でない、こういう考え方を私は持っております。法的に有効なものではないのではないか。その理由は、いろいろ申し上げたいのですが、もう予鈴も鳴っておりますので、この点について何か釈明がありましたら、船員局長あるいはこれをお調べになったことがあるかどうか。
  201. 住田正二

    住田説明員 国鉄の方から就業規則の提出をいただいておりましたが、船員法規定と合わない点がありますので、正式に受理しておりません。船員中央労働委員会の方でも、国鉄問題の改正を御検討になっておられますので、その結論を待ってからということで今まで経過しております。
  202. 山内広

    山内委員 受理はされたけれども、これは有効に効力を発生していないんだという話ですね。
  203. 住田正二

    住田説明員 受理はしておりません。
  204. 山内広

    山内委員 それでは、まだだいぶありますけれども、もう予鈴が鳴っておりますので、わざわざ御出席を求めました港湾局長一つだけお尋ねしておきたい。  それは函館港の北防波堤、あれは私の記憶では大正の初めに着工して、そうして一部分はケーソンを入れたままで放置されております。これは運輸大臣一つぜひ知っていただきたい。これを私なぜ取り上げたかと申せば、もしこれが完成しておったら、あの洞爺丸の事件は起きなかったであろうと私はかたく信じております。これが未完成であって何の役にも立たないから、あの船は沖へ出ざるを得なかった。現在どの連結船もそうです。沖がしけてきたら港の中に避難するというのが常識でしょう。ところが、風が強くなると逆に外海に出ていって、そうして波に抵抗しながら船をささえていく、あるいは大きな岩の陰に隠れるという、こういう避難の方法をやっておるのです。なぜこの防波堤を完成しないでそのまま何十年もこうしてほうっておくのか、航路筋にこんなものがありますから、かえってじゃまになる。それから、作る意思がなければこれは撤去した方がいい。ことしになっても、たしか六青函だと思いますが、干潮のときにちょっと頭を出すくらいですから、見えない、そこへのし上げてしまって大きな事故を出しておる。幸い沈没を免れましたけれども、客を積んだ船がこういうところに行って当てたらどうしますか。また洞爺丸のような事件が——あれほどの大きな風がいつ起こらないとも限らない。そういう意味でこれはぜひ早期に着工してもらいたい。なぜほうっておくのか。簡単でよろしいです。もし予算額などわかっておりましたら一つお知らせ願いたい。
  205. 坂本信雄

    ○坂本政府委員 函館港の防波堤につきましては、西防波堤といいますのは函館ドックから北へ約千七百メートルでございまして、それから四百メートルの港口を隔てまして三百八十メートルの計画がございます。そのうち北防波堤がケーソンだけ置かれまして、水面から顔を出しておらない部分があります。これは戦時中に作りましたものでございまして、戦後これをそのまま放置してございましたけれども、最近これを早くやらなければいけないという必要性から、本年度の予算でもって百八十メートル全部かさ上げをすることにいたしております。  予算額といたしましてはその分が千二百万円でございます。
  206. 山内広

    山内委員 たった千二百万円くらいで完成するなんて、たしか三億五千万かそこらあればすっかりでき上がるのです。一つ大臣、これは記憶にとどめられて、この航海安全という見地からも、これっぱかりのわずかな金は——早期に一つこれを完成を期していただきたい。  これだけを要望して終わります。
  207. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——ほかにないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  208. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 これより討論に入りたいと存じますが、討論の申し出もございませんので、これより直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 御異議なしと認め、これより採決いたします。  船員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  210. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 総員起立。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  211. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 この際久保三郎君より発言を求められておりますので、これを許します。久保三郎君。
  212. 久保三郎

    久保委員 自由民主党、社会党並びに民主社会党共同提案によります、ただいま可決になりました船員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を動議として提案いたします。  案文の内容を朗読します。   政府は本法の運用にあたり左記各項に留意すべきである。     記  一 国際海上労働条約検討を早急に進め、批准に必要な国内体制の整備に努めること。  二 原則として総トン数二十トン以上のすべての漁船船員法を適用するよう努めること。  三 国鉄連絡船労働時間及び休息時間に関する命令の制定にあたっては、労使の意見を十分に聴取して万全を期するとともに、具体的な労働条件については、労使の協力により、休日付与の問題を含む労働時間の短縮その他の措置をとるよう善処すること。  四 漁船、小型鋼船及び機帆船の労働時間及び休日について適当な基準を設定するよう努力するとともに、これらの船舶乗組員、特に国際漁業、長期漁業に従事する者の労働条件の改善についての指導を強化すること。  五 船内の衛生管理の向上について万全の措置をとること。  六 行方不明手当については、船員保険法の給付対象とするようその改正を図ること。  以上であります。  これは具体的にいろいろ御説明申し上げることはございませんと思いますが、今までこの委員会を通して長期にわたる審議の中で特に重点として問題になった点であります。十分政府においても考えてほしい、こういうふうに思います。  特に二については、ただいまも質問があったように、船員法の建前からいって、特に今度の改正では、第一種漁業船員漁船のうち一部を除くということでありますが、これはすべて二十トン以上で線を引くというのが漸進的な方法であろうと思う。  三番目については、ただいま御質問もあったように、特に今まで長い間その労使慣行というか、労働条件が確立しない国鉄連絡船については週休制を建前にして、その他の諸条件を改善する。こういうことが一番問題になっている点であります。  四、五、六は、すべて今までの質問の中で発表した通りでありますので、十分御考慮をいただきたい、こういうふうに考えます。
  213. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 ただいまの久保三郎君の動議のごとく、船員法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  215. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 なお、本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  217. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 この際、政府当局より発言を求められておりますので、これを許します。斎藤運輸大臣
  218. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま全会一致をもって御議決になりました附帯決議事項につきましては、本法の運用にあたりまして、十分留意をいたしまして、関係各省と連絡を密にいたしまして、決議事項の内容の実現に努力をいたしたいと思います。
  219. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十九分散会