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1962-04-13 第40回国会 衆議院 運輸委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十三日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 簡牛 凡夫君    理事 關谷 勝利君 理事 高橋清一郎君    理事 塚原 俊郎君 理事 福家 俊一君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君       生田 宏一君    宇田 國榮君       川野 芳滿君    木村 俊夫君       佐々木義武君    砂原  格君       竹内 俊吉君    西村 英一君       細田 吉藏君    増田甲子七君       加藤 勘十君    勝澤 芳雄君       田中織之進君    内海  清君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         運輸政務次官  有馬 英治君         運輸事務官         (大臣官房長) 広瀬 真一君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君         運輸事務官         (船員局長)  若狭 得治君  委員外出席者         運輸事務官         (船員局労働基         準課長)    住田 正二君         日本国有鉄道参         与         (船舶局長)  久田 富治君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  本船運送法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四三号)  船員法の一部を改正する法律案内閣提出第三  八号)      ————◇—————
  2. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本委員会に設置されております観光に関する小委員会において、国土の美化促進について、学識経験者及びこれらの作業に従事しておられる方を参考人として招致し、意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び参考人を招致する日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 御異議ないようでございますので、小委員長と協議の上決定いたしたいと存じます。      ————◇—————
  5. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 木船運送法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
  6. 肥田次郎

    肥田委員 この法律の中で一見して私たちが感ずることは、改正の要点であるところの、「小型船による輸送に対する信頼を向上させ、不適格者による小型航海運業秩序撹乱を排除するため、」こういうふうに書かれております。ところが、この法案内容を見てみると、これはさほど内容を強く改めようというのではなしに、ただ単に登録という程度扱い方でもってこの法案の趣旨が組み立てられておる。そういう登録制によって、先ほど申し上げましたような、ここに書いておるところの不適格業者秩序を撹乱する、そういういわゆる悪質業者、こういうものを実際に排除できるのかどうか、この点について説明を願いたいと思います。
  7. 辻章男

    辻政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘ございましたように、登録制度というものは、いわゆる許認可制度に比べましては、そういうふうな不適格者を排除するという効力の点におきまして劣ることはもちろんでございますが、私どももいろいろと検討をいたしたのでございますが、他産業との振り合い、あるいは営業自由というふうな根本の原則その他から勘案いたしまして、現状ではこの登録制度改正強化するということが妥当ではないかということで提案いたした次第でございます。  私ども考えといたしましては、許認可ほどの効力は発揮できないと思いますが、この登録制度強化によりまして、いわゆる不適格者を相当排除し得る、かように考えておる次第でございます。
  8. 肥田次郎

    肥田委員 排除できるという考え方そのものを、われわれは今ここで言葉の上でどうこうとただすことはしてないわけでございます。実際この目的とするところが、そういう不適格業者、それから秩序を乱すようなそういう悪質業者、こういうものを排除するということになると、ただ単に、登録制度ということだけでいわゆる取捨選択しようということになると、これは非常にむずかしい。どこまでを除外をするかというような点について、なかなか内容がこまかくきめられないと思うのです。ですから、そういうことになると、法律的に本来の目的であるその目的を実現できないようなことになるんではないか。なぜ免許制度にしないのか、こういうことについてもう少し詳しく説明してもらたいと思います。
  9. 辻章男

    辻政府委員 先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、こういう小型船運送事業に対しまする免許制度ということも、考え方としては考えられないことはないのでございますが、現在の政府のとっております政策としましては、営業自由ということを尊重して、できるだけ個人創意工夫経済活動に反映させていくということで認可していくんだという建前に立っておりまして、いろいろな経済政策が行なわれておるわけでございます。いわゆる小型船日本経済におきまする地位というものは相当高いのでございますけれども、これを免許制にするほどの、何と申しますか、公益制というものが、他産業のそういう免許制になっておりますものと比べまして、比較の問題といたしまして、そこまでやるというのは行き過ぎであるという意見が、政府内としては強うございまして、登録制強化ということに落ちついた次第でございます。
  10. 肥田次郎

    肥田委員 どうも抽象的でよくわかりませんが、いうところの自由の建前をはずさないワク内だ、こういうふうに言われのですが、そうすると、登録制では、実際事務処理上、ここに書いてあるような、いわゆる秩序を乱したりするような悪質業者、それから乱立を防ぐ、こういうような面を実際に押えられるかどうかというこの疑問を私は聞いておるわけなんです。乱立を防ぐということは、これはなんでしょう、本質的には自由営業ということとの関係から考えると、これを押えるわけにはいかない性質のものでしょう。ですから、自由という立場を尊重するということになると、制限のしようがない。それを制限しようとすれば、そこにこまかいところの一つ基準というものを設けなければならぬ、こういうことになるわけです。ですから、考えておられるところの——言葉の上ではわかっておりますが、しかし、実際それをどう登録処理上扱っていけるのか。結局ここに書いてあるところの乱立秩序を乱す不正業者悪質業者、こういうふうなものを防ぐ手段というものは、実際にむずかしいんじゃないか、こういうことを聞いているわけなんです。
  11. 辻章男

    辻政府委員 御指摘がございますように、本案のような登録制強化によりまして、小型船海運業乱立を防ぐことはできないと考えております。ただ、ここでねらっておりますのは、新たに出てこられるそういう小型船海運輸送に関する面の事業者が、非常に投機的な意図を持ってこられるとか、そういうふうな不適格な意図を持ってこられるものを排除しようというだけでございまして、繰り返して申し上げますように、いわゆる供給過多のような状況を、これでもって抑止するということは困難かと思います。  ただ、実際問題といたしましては、現在の小型船海運業というものは、非常に苦しい立場にあるのでございまして、新しく事業を開始するに足るだけのあまり収益性のある事業現実ではないのでございますが、割合小さな船でございますので、小さな資本でそれが行なえるというふうな事情から、何らかの事情で金をもうけられますと、えてして一つ船をやってみようかというふうなことで、いわば無計画的に、よく業界の実情も認識されずに事業を開始される。開始した以上は、なかなかやめるわけにはいかないので、秩序を乱すような行為によってその営業を続けていかなければならぬというような傾向が相当あるわけでございます。そういう不適格な方々をある程度排除できれば、法律的な建前としましては、需給のバランスを調整するという制度ではございませんが、実際上の問題としては相当の効果があるのじゃないか、かように考えておる次第であります。
  12. 肥田次郎

    肥田委員 こういう点はどうなんでしょうか。先ほどおっしゃった、いうところの回漕業、これはさほど公共性はないということですが、事実そういうふうにお考えなんですか。  それからもう一つは、私らもあまりこの点はわからないのですが、ほんとうにわかってないからお聞きしますが、われわれも常識的には、従来あったいわゆる回漕業者、こういう業種というものはだんだん陸上に切りかえられていく、いわゆるスピードと軽便という点でトラックに切りかえられていく、こういう点が非常に多いのじゃないかということを考えておったんです。ところが、これは若干認識不足でした。そうではなしに、回漕業者というものはどんどんふえるんだ、乱立するんだ、こういう声も聞くわけです。そうすると、一面では、既存業者保護という目的もやはり必要になってくる。それから、乱立を防ぐという点では、乱立を防ぐということは、悪質業者ということと同義語ではないと思うのです。既存業者保護という面もやはり必要になってくる。そうすると、公益性が全然ないということには次第に考えられなくなってくるんじゃないか。やはり公益性建前としたところのものの見方、こういうことが必要になってくるんじゃないかという気がするわけなんです。この点について一つ考え方を聞かしてもらいたい。
  13. 辻章男

    辻政府委員 今御指摘になりましたように、小型船海運業というものは、日本経済におきまして非常に大きなウエートを持っておりますので、その意味におきまして、公益性がないとはもちろん言えないわけでございますが、現在の法制下におきまして、大体営業免許なりあるいは許可的な制度でやっておりますものの根本的な考え方が、二つあると思うのでございます。一つは、それが不特定多数の一般消費者等対象にするような場合で、ある程度独占性を持っておるもの、まあ典型的なものが、私鉄でありますとか、そういうふうな部類、海運で申しますれば、旅客定期航路につきましては、それに当てはまるかと思うのでございます。それからまた、もう一つ観点としましては、非常に地域的な独占の度合いが強いもの、もちろん例外があると存じますけれども、大きな考え方としましては、大体そういう二つの要素が、ある事業免許なりあるいは許可制にしておる大きな基準になっておりますが、そういう観点から申しますと、小型船運送は、大体相手石炭業者でありますとか、あるいはその他生産業者、まあ商売人相手が多うございます。また、輸送機関としましても、代替性が相当あるようなものでございますので、そういう観点からいたしまして、許認可制度にすることは困難であるということなのでございます。
  14. 肥田次郎

    肥田委員 まあ将来のことを考えると、私は、やはり公益性を全然否定することはできないと思う。特にこのいろいろな職種というものは、これは大なり小なり社会の経済生活、こういうものに関係のないものはないのですから、そうすると、本質的には公共性が非常に重いということを考える。ただ、それが自由業であるという立場で放任されておるがために、その公共性というものが意識されないで、しかもそれぞれの業者自身公共性を意識しないで、ただいわゆる回漕業という商売というような、単純な考え方でやっておった。いわゆる封建的な習慣そのものがここに残っておると思うのです。だから、これを近代的なものに立て直すというのですか、指導する必要は、やはり私はあるだろうと思う、こういうことを考えます。  それはさておいて、もう一つお聞きしたいのは、ここにある小型海運業登録資格要件として、新たに、当該事業を遂行するに必要な能力及び資力信用を有すること、これがいわゆる登録免許、−免許というのですか、登録をするところの条件になっておりますね。これの内容を少し詳しく説明をしていただきたいということと、それから、これの指導は当然、地方指導になるわけですから、地方指導によって、これがはっきりされておらないと、その指導上の地域的な相違ができてくる、こういうようなこともあるだろうと思う。そういう場合の一貫した指導方針、こういうようなものはどういう処置によってとられようとするのか、この点二つお答え願いたいと思います。
  15. 辻章男

    辻政府委員 今御質問が二点あったと思いますが、便宜あとの問題からお答え申し上げます。  まず第一に、今御指摘ございましたように、地方出先機関登録要件認定をさせる場合に、地方々々によってその認定基準が違っては行政上妥当ではないじゃないかという御指摘でございます。ごもっともでございまして、私どもその杞憂につきましては、各地方出先機関に、中央から通牒によりまして、一定の基準を示し、なお打ち合わせもいたしまして、そういうふうな内容にいたしたいと考えております。  それでは一体判定基準としてはどういうふうに考えておるかという第二の点でございますが、ここには能力資力信用というものが新たに加わりました。これはなかなか認定のむずかしい点であるのでございますが、まず能力について申し上げますと、大体小型船海運業を営み、あるいはまた、それに使用人として二年以上の経験を有するような者は、能力ありと認定したいと考えております。それで、なお、小型船海運業でなくとも、これと取引関係のある海上運送事業の部門において三年程度経験のある者、たとえて申しますれば、石炭関係小型船の方の輸送関係をやっておられたような方のことをいうのでございますが、そういう業務に従事しておられて三年程度経験のある方は、能力ありというふうに考えております。  それから、それでは全然経験のない者についてはどう考えるかということでございますが、これは運航業を営もうとされる場合には、輸送の貨物についてどういうふうな荷主輸送計画がなっておるかということを、事業計画を提出していただきまして、それらからそれが明確であるということが明らかな者、また、取扱業につきましては、どういうふうなところの荷物を集めるかという計画が明確な者、そういうふうな点を判断いたしまして、能力基準にしたいと考えております。  それで、資力信用の点につきましては、船舶運航業なり貸渡業につきましては、船舶建造費あるいは購入費の資金の計画が明確であって、それが無理がないということ、それからまた、取扱業につきましては、店舗等が確実に定まっておりまして、その確実な事業の遂行が見込まれる者であるとか、また、過去の経歴から見まして、事業を誠実に遂行することが認められるというふうな点を基準といたしたい、かように考えております。
  16. 肥田次郎

    肥田委員 これは、海運局長何ですか、今お答えいただきましたが、これは私は実は非常にむずかしい問題だと思うのです。お答えをいただいたところではそういうふうに理解されますけれども、実はこの中で的確に判断できるということは、これでも問題はあると思いますけれども資力の問題、能力とか信用という問題は、これはなかなか判断がしにくいから、従って、それぞれの経過、文書、報告書を出さしてそれによって判定しよう、こういうことをおっしゃったわけです。この抽象的なこういうものの処理をする際に、これはやはり個人対象になりますか。私が申し上げておるのは、こういうことは個人事業という形のもので認めるのではなしに、もっと団体事業という形のものに切りかえさすようなことをお考えになっておることはないのかどうかということを聞きたい、そういう意味のことですが、個人的にということになると、今言ったように、純然たる個人能力とか個人信用、こういう非常に抽象的なこと以外に採点のしようがないわけです。この点はどうなんでしょうか。
  17. 辻章男

    辻政府委員 小型船海運業というものは、非常に個人的な色彩が強いのでございまして、船舶保有者の大部分がいわゆる一ぱい船主ということで、個人船主が多いという状況でございます。また今度は小型船取扱業となっておりますが、機帆船につきましては、いわゆる回漕業といわれている業者につきましても、個人のものが相当ございますし、会社制度になっておりましても、有限会社でございますとか、そういう非常に個人的な色彩の強いものでございまして、これを、今御指摘のございましたように、個人的な色彩のものを全部払拭しろというようなお考えに対しましては、現実の問題としてはなかなか困難ではないか。そういうことになりますれば、現在すでに長年家業としてやっておられますものにつきまして、相当な衝撃を与えるということにもなりますので、私どもとしましては、現実の推移を見まして、将来の問題として検討していきたい、かように考えております。
  18. 肥田次郎

    肥田委員 将来の問題として考えるというお言葉ですが、これを急速に今ここでということは無理だと思います。ただ、考え方として、私はそういうことが必要であるのではないか。今陸上運送関係に関する限りは、そういうことはございませんね。いわゆる免許制度でやらされておる。それは個人はどうこうということじゃありません。いわゆる海運という大きさのものではなしに、回漕業、こういうものに対してのみ登録制でいこう、ですから、これは一歩進んだものとは考えます。けれども陸上運送経過考えてみても、私らがいつでも問題を起こしておると思われるものは、やはり内容において旧態依然としておる。そして免許事業としてやっておるけれども内容旧態依然としておるものだから、そこにいろいろな社会問題も起こしてくる。当然労働問題も起きてきます。いわゆる一人でトラックを持っていた親方が、何台かトラックをふやして小運送をやる。ところが、労働者条件というものは、もう全く低劣な条件においてそのままでやっておる。形は会社だとかなんとかという形式になっても、内容においては、依然として親方自分は腕一本、すね一本でたたき上げた、こういう習慣がまといついておるから、なかなか形が改められない。こういうものが陸上運送に今日なおたくさん残っておる。海上運送は、私はなおそれよりひどいだろうと思う。そういう点でお聞きしたわけです。ですから、将来の指導方向としては、陸上運送並みの統制というものが考えられなければいかぬだろう、こういうことを考えるのですが、そういう点については、局長の方では御異存はありませんか。
  19. 辻章男

    辻政府委員 小型船の、特に木船関係について申しますと、現在業者数が約一万二千五、六百あるのでございますけれども、このうちの九〇%が、先ほど申し上げましたいわゆる一ぱい船主でございまして、個人で船を持って動いておるというふうな実情に相なっております。先ほど指摘がございましたが、これは陸上といわず、海上といわず——海上でも大体汽船関係の方は、運航主体というものがある程度の組織を持ち、相当な船を扱っておりますので、これの代理店をやりますとか、あるいは荷主との間で仲介、いわゆるブローカーとして働くものは、その運航主体よりも力が弱くて資本力が少ないというのは、これは海陸を通じました交通業の大体の姿であると思うのであります。木船小型船につきましては、先ほど申し上げたような一ぱいしか船を持っていないというものが圧倒的に多うございます。これがいわゆる回漕業者によって陸上との接触を保っておる。それで海上業者は、一面からいえば船の代理店的な仕事もやり、ブローカー的な仕事もやり、荷主の方の代理店的な仕事もやるというふうな、非常に複雑な機構を零細ながら営んでおるわけでございます。基本的に私どもは、この法律には直接関係ありませんが、小型船海運組合法というものがございまして、いわゆる中小企業としての結束力をもちまして大企業に当たっていくというようなことで、共同行為によって企業零細性をカバーしていこうということで、行政指導を行なっているわけでございます。それらが実を結んで参りますれば、相当回漕業の形態も変わってくるのではないか、かように考えている次第であります。
  20. 肥田次郎

    肥田委員 そうすると、今、一ぱい業者というのは、自分が運転して、そうして自分が荷役もやっている、こういうことではありませんね。やはりそこには何人かの家族も含まれている場合もあるでしょうが、そこでそういうところの労働者生活条件というものはおわかりになっておりますか。
  21. 辻章男

    辻政府委員 いわゆる一ぱい船主と申しすまのは、自分一ぱい船を持ちまして、あるいは船長船員を雇って、自分はいわゆる船のオーナーとしてやっているものもございますが、またこの一ぱい船主の大部分自分みずから船長になりまして、これに親戚縁者たちの子弟を乗り組ませて、大体百トンくらいの船ですと、六、七名の乗り組みでいいわけですから、そういう縁故的な乗組員を乗せて走っているのが非常に多いわけでございます。  今給与がどういうふうになっているかということでございますが、大体木船については、私どもの統計では、平均して、航海手当等も含めて、これは歩合も入っているわけでありますが、大体一万九千円程度のベースであろうかというように考えております。
  22. 肥田次郎

    肥田委員 ここでこまかく労働条件を聞こうとは思いませんが、これはそういう水上労働者人たち労働条件生活環境というものは、もうほとんど船がねぐらのようになっておりますね。ですから、そういう意味では一万九千円というこの賃金の計算の基礎というものは、あるいは固定されていないものもあるだろうということが考えられるわけです。そういう形のものをそのままほうっておくわけにいかないと思うのです。逐次行政指導をして、そうしてそういう零細船主が持っているところの、一ぱい船主が持っているところのもの、それは近親者であろうと縁故者であろうと、そこだけが古い暗黒時代習慣そのままの労働条件です。こういうことではいけないと思うわけです。そういう意味からしても、やはりこれは許可制にして既存業者保護する、そうして保護するかわりに強力な行政指導をして、近代の経済発展の水準にマッチするような形の回漕業海運業、こういうものに切りかえていく、こういうことが必要じゃないかと思うわけです。そういう意味からいろいろなことをお聞きしましたが、その点についてはどういうふうにお考えですか。将来の確たる指導方針を承りたいと思います。
  23. 辻章男

    辻政府委員 ただいま御指摘がございましたように小型船海運業、特に木船海運業につきましては、いわゆる実態的な方向で進めなければならぬ点が多々あるわけでございます。私どもは、機会ありますごとに、そちらの方へ進んでいくように行政指導をしていきたい、かように考えております。ただ、将来許可制にするかどうかということでございますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、政府全体の産業政策とのバランス等考えまして、将来の問題としては検討して参りたい、かように考えております。
  24. 肥田次郎

    肥田委員 もう少し突き詰めておきたいと思うのですが、将来起こってくるいろいろな問題とにらみ合わせてと言うが、そういうものなんですか。私がお聞きしておるのは、当然もうそういう趨勢をたどるべきではないか、そういう行政指導が必要ではないか、だから、その前段としてここで登録制が出ておるので、これは既存業者保護し、公益性を持たせたところの行政指導をして、そこで働く労働者条件も逐次改良していくということからすれば、いわゆる企業の整備ということが当然必要になってくる。だから、そういう意味からしても、いわゆる登録制度というものは当面の処置であって、将来はやはり免許制度という、近代的な性格を持たせたものに漸次そのものの形態を変えていくということが必要ではないか、私は当然そうあるべきだと思う。それでなかったら、今ことさらに登録制度というものを出す必要はない。今まで通り行政指導をされておればそれで十分なんですよ。そういうふうに考えるわけなんですが、その点は今までよりは前進でないとは申しませんよ。前進でないとは申しませんけれども、やることがはなはだ中途半端で、いわゆる一部からの要請に基づいて、その要請をちょっと聞いてやったというような、そういう性質の法案のような気がする。そういう意味のことをお聞きしているわけです。
  25. 辻章男

    辻政府委員 これは、将来必ず免許制なり許可制にするということを、ただいま私どもからこの席で申し上げる立場にはないのでございますが、そういう問題も検討いたしまして、ぜひともそれをやることが妥当であるという機が熟しますれば、もちろんやるということでございますが、ただいまの段階では、将来の問題として検討して参りたい、かようにお答えいたす次第でございます。
  26. 肥田次郎

    肥田委員 どうもこれ以上の返事がいただけぬようでありますが、ただ私重ねて申し上げますけれども法案を作る以上は、やはり将来のことが計画されたところの法案であってほしいとわれわれも考えるわけです。今度こういう法案ができた、この法案については当面これだけの処置なんだということでは、物足りない気がするわけです。だから、将来の指導性というものがはっきりされて、そしてその上で前段の処置として登録制で進歩さしていくのだ、こういうことでわれわれは気持よくこの法案を了承したかったわけですが、お答えがまだ十分にいただけませんけれども、将来十分検討するということは、必ずわれわれが考えているようなことになるだろうという予想のもとに私の質問を終わります。
  27. 久保三郎

    ○久保委員 関連して簡単に一、二お尋ねしたいのですが、この改正は二十トン未満のものについてはどういうふうになるのでしょうか。
  28. 辻章男

    辻政府委員 二十トン未満の船舶につきましては届出だけにいたしております。
  29. 久保三郎

    ○久保委員 これは現在は登録でありますね。その二十トン未満を現在登録から届出にするということは、いかなる理由からそういうふうにしたのか。
  30. 辻章男

    辻政府委員 二十トン未満の船舶は、文字通り非常に小さな船でございまして、またその行動範囲も狭うございますし、小型船全体から見ます輸送の比重も少なうございますので、限られた予算態勢をもちまして小型船海運業行政をやっていきます際には、二十総トン以上の小型船海運業の方にもっと力を注いでいきたい、かような配慮から二十総トン未満のものは届出制に改めた次第であります。
  31. 久保三郎

    ○久保委員 二十トン以下のものを、早く言えば野放し——と言っては語弊があるが、届出にする、こういうことの今の御説明では、どうもわれわれは若干理解しにくいのでありまして、これはむしろ運送取扱業というか、そういうものが最近の経済事情に応じて非常に問題が複雑になってきているのでありますから、現状通り登録制にしておくのがいいんじゃないか、しかも二十トンに切った理由は、船舶安全法の二十トンというのが大体の基準だろう、それ以外の理由は何らないと私は思うのですが、しかし、運送取扱業そのものを見れば、二十トンで切るところの何らのトン数的な理由が存在しないのではなかろうかと思う。たとえば陸上において荷馬車一台で、あるいはオート三輪一台で運送業を営む者もございます。それから何百台、何千台のトラックを持って運送業を営む者もございます。しかし、これはいずれも運送取扱業者としての範疇に属していると思うわけでございますが、事海運に関しては、この区別をすること自体についてどうもわれわれには理解しにくい。本日は非常に短時間でありまして、なかなか御解明いただけないと思うのでありますが、もう少し簡単に、明快に、二十トン未満を届出に直したのはかくかくの理由だ、今までの御説明ではどうも納得しがたいのであります。これをもう一ぺん御回答いただくと同時に、先ほど肥田委員から、登録制について、これは免許制に切りかえるべきではなかろうか、こういう御質問があったわけでありますが、それに対していろいろ御説明があった。それでいい、まあ仕方がない、そういうことになるわけですが、しかしながら、新しく追加した第六条の一項の第四号の「当該事業を遂行するに必要な能力及び資力信用を有しない者」は登録拒否となるわけでありますが、これについては政令か何かでとの基準をきめるのでありますか、いかがですか。
  32. 辻章男

    辻政府委員 能力資力信用基準につきましては、現在のところ通牒によりまして各出先機関に通達いたしまして、全国的な統一をはかりたい、かように考えております。
  33. 久保三郎

    ○久保委員 その二十トン未満を届出にするというのはもっと明快な理由はあるのですか。今までの御答弁では明快ではない。
  34. 辻章男

    辻政府委員 先ほど申し上げた点から出ないのでございますが、繰り返すようでございますけれども、活動範囲も狭うございますし、また、傾向としましても、今後の船は、木船におきましても、だんだん大きくなっていきます傾向にございますので、限られた陣容、予算で行政をやって参ります際に、二十トン以上の分野に主力を注ぎたいという理由でございます。  ただ、先ほど指摘ございましたが、二十総トン未満の船につきまして、船主の運航業者の点はそういうことでございますが、いわゆる運送取扱業、機帆船で申しますと回漕業といっておりますが、これは二十トン未満のものだけを取り扱う業者はほとんどおりませんので、取扱業につきましては、届出的な扱いは絶無に近いというふうに考えております。
  35. 久保三郎

    ○久保委員 絶無に近いというから必要ない、こういうことであるそうでありますが、それは法律建前としてはとらないところであります。実情はそうだとしても、法律実情に合わせて改正したり何なりするのがほんとうでしょうが、この条項からいけば、二十トン未満の船でも取扱業は堂々とできる、こういうことであります。  特に、先ほど肥田委員からも御指摘があったように、業者が多くなることは必然的な傾向だと思うのです。しかし、それが運送秩序を乱すという場合、あるいはその中における経営が不健全になっていくというようなことを防止しなければ、正常な経済行為は行なわれないと思うのです。そのために運輸省は監督機関として存在するわけであります。  先ほどの二十トン未満を届出にした一つの理由には、現在の運輸省の海運局の陣容ではなかなか目が届かぬから、これを一つらち外に置いてこれを監督の対象にはしない——対象と言うと語弊がありますが、そうはしない。人が足りなければ人をふやせばいいので、人が足りないからこういうものは除いておこう、こういうことでは話は逆ではないかと私は考えるのです。いかがですか。今度の改正は、鋼船がふえてきたから名前を変えていくのだというだけで、あとは何かちっとも進歩がないと言っては語弊がありますが、もう少し業態を健全に発達させるためにはこれこれが必要だという点が改正されてしかるべきだと思うのです。今まで申し上げたような点からいっても、後退ではなかろうかという点も間々あると思う。もし御所見があればお述べいただきたい。
  36. 辻章男

    辻政府委員 今御指摘がございましたが、決して二十トン未満の船を見捨てたということではないのでございます。木船小型船全体から見ますれば、行政的には一歩改善の方向に進む趣旨の改正と心得ております。ただし、二十総トン未満の船につきましては、今までの登録制から届出制にした点は、行政的にはゆるくしたということはその通りでございます。木船全体の考え方からしまして、一歩前進していきたいと考えておる次第でございます。
  37. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 ほかに御質疑はございませんか。——ほかにないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  38. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 これより討論に入りたいと存じますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 御異議なしと認め、これより採決いたします。  木船運送法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  40. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお、本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者たり〕
  41. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  42. 簡牛凡夫

    簡牛委員長 次に、船員法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
  43. 久保三郎

    ○久保委員 では前回に引き続いて、船員法関係をお尋ねするわけでありますが、前回七十二条の二の条項についてお尋ねしたわけであります。その中で政令に譲る部分について御回答があったわけですが、もう一ぺん念のためにお尋ねします。七十二条の二によって政令に譲る部分はどういう点であるか、お答え願いたい。
  44. 若狭得治

    ○若狭政府委員 七十二条の二によりまして、命令に譲るべきものといたしましては、法律は平均八時間以内という規定がございますので、何週間を平均して八時間にするかという週期の問題と、それから休息時間を何時間にするかという休息時間の限度の問題であります。
  45. 久保三郎

    ○久保委員 休息時間とそれから週期の問題、そういうところですか。
  46. 若狭得治

    ○若狭政府委員 その通りございます。週期の問題につきましては、労働基準法におきましては四週間を平均して一日八時間という規定がございますので、それを参考といたしまして、海上労働の特殊性ということを考えながら、その限度をきめたいというふうに考えております。  それから休息時間につきましては、これについても労働基準法におきまして、連続四時間の睡眠時間という規定がございますので、それを参考といたしまして、休息時間連続四時間というような規定を定めたいと考えております。
  47. 久保三郎

    ○久保委員 まず第一に、始期、終期の問題でありますが、基準法三十二条は、原則として一週四十八時間、こういうことになっておるわけであります。だから、本来ならばこの原則を貫き通すのが建前だろうとわれわれは考えております。今船員局長のお答えの方は、三十二条第一項に対するただし書き、こういうふうにとれる部面だと思うのでありますが、ただし書きによらざるを得ないのはいかなる理由があるのでしょうか。
  48. 若狭得治

    ○若狭政府委員 近距離の航路に就航する船舶の運航のスケジュールにつきましては、陸上の場合と異なりまして、船舶というものが膨大な設備でございますので、制限せられているわけでございます。と同時に、航海の途中において人員の補充ということが不可能なわけでございます。そういう点からいたしまして、この乗り組みの船員が同じ条件で勤務する、しかもまた、同じ船に乗りまして、その仕事及びその船に熟達するということが必要でございますので、陸上の場合と異なる海上の特殊性というものを、やはりこの週期の場合にも考えていかなければならないというふうに考えます。
  49. 久保三郎

    ○久保委員 ただいまのお答えでは、始期、終期というか、三十二条の第二項によることをきめる理由には十分ならないのではなかろうかと思うのであります。というのは、膨大な施設で、一つの船に乗るからと言う、それが陸上勤務形態と同じような形になり得るものもあるわけですね。これはあるわけでしょう。そういうものを原則としてきめるのがまず建前でなくてはならぬと思うのです。そうして、それによらないものが、いわゆる始期、終期ということだと思うのです。その原則は、それじゃ三十二条第一項に見合うものはどういうふうにおきめになるのか。労働基準法三十二条第一項に見合うものは、政令としておきめにはならないのか、これはどうなんですか。
  50. 若狭得治

    ○若狭政府委員 労働基準法三十二条の一週四十八時間という最高限度の問題でございますけれども、これにつきましては、船員法は、前会以来御説明いたしておりますように、五十六時間制度をとっておるわけでございます。従いまして、五十六時間というのが船員法建前でございますので、その限度につきましては、労働基準法とその点において異なるわけでございます。
  51. 久保三郎

    ○久保委員 船員法では五十六時間を限度としてきめておるから、こうおっしゃるが、それによりがたいものということでしょう。しかも船員法は五十六時間にきめているのは、航海当直に立つ者の労働時間であって、航海当直をしない者の労働時間は、御案内の通り、これは四十八時間なんですね。あなたがおっしゃるのは誤解されますよ。全部船員は五十六時間で縛ってあるのだ、こう言うが、四十八時間で縛ってある部面もあるわけです。だから、いわゆる船員法の労働時間というのは、航海当直は今日では五十六時間が限度、航海当直をしない者は四十八時間限度、こう二通りあるわけですね。だからそういう二通りは、この七十二条の二でも是認されているわけですか。そういう意味ですか。だからこれは、別に政令ではきめないのだ、こういうことですか。この七十二条の改正案を見ますと、これは六十条及び六十二条ないし六十六条、これから全部これに関係なく別途に政令できめるというふうにわれわれは解釈するわけなんです。いかがなんですか。
  52. 若狭得治

    ○若狭政府委員 七十二条の二を特に規定いたしました趣旨は、現行船員法におきましては、一日八時間、航海当直に立つ者に対しては一週五十六時間、そういう規定がございます。しかしながら、近距離に就航する船舶につきましては、一日八時間という規定が不適当であります。具体的に申しますと、たとえば一昼夜交代というような勤務の状況でございますので、そういう面からいたしまして、平均八時間という規定を入れるわけでございます。そういう点に主眼があるわけでございます。
  53. 久保三郎

    ○久保委員 これは、一日平均八時間というのは、きめることが意味がある——そう書いてありますからそうなんでしょう。これはわかります。これはわかるが、その他の部面について、六十条及び六十二条ないし六十六条に見合った部面も政令できめるとおっしゃるのでしょう、七十二条の二は、基準課長いかがでしょうか。
  54. 住田正二

    ○住田説明員 今、久保先生のおっしゃった通りでございます。
  55. 久保三郎

    ○久保委員 だからこの六十条及び六十二条ないし六十六条に見合った部分はどういうふうにおきめになるか、これを一つお話しいただけば一番わかりやすいと思います。どういうふうなものをきめていくのか。先ほど来、船員局長からお話しの、始期、終期をきめる、あるいは休息時間四時間というか——連続四時間というのは誤りだと思うのです。連続四時間は、おそらく夜間の問題かと思うのでありますが、そういうものをきめるとおっしゃるが、それだけでは足りないと思います、もしおきめになるにしても。いかがですか。
  56. 住田正二

    ○住田説明員 現行船員法の労働時間の規定は、一日八時間あるいは一週五十六時間ということを規定いたしておるだけでありまして、それ以外にあまりこまかい規定を置いてないわけであります。従って、今回の七十二条の二におきましても、一昼夜交代の勤務という、一種の勤務態勢から生ずる労働時間の変則、その点だけを時間として定めるわけでありますので、一日平均八時間、あるいは一週平均五十六時間になった場合に、どういうふうにそれを計算していくかという点が、命令を定める場合の問題点になりますので、一応四週間平均して一日八時間、一週五十六時間、そういう始期、終期の問題と、もう一つは、二十四時間勤務をとった場合に必要な最低の連続休息時間、大体そういう二点だけをきめれば、現行船員法の労働時間の特例としては十分である、かように考えております。
  57. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、先ほど言った航海当直をしない者の四十八時間というのも、全部五十六時間以内というものに含まれるわけになりますか。
  58. 住田正二

    ○住田説明員 今申し上げましたように、特例は現行船員法の特例でありますので、計算する場合の始期、終期あるいは連続休息時間ということでありまして、労働時間の制度そのものを変えるという考え方はございません。現行船員法は最低基準をきめているという建前でありますので、その最低基準としての特例を作るという考え方でございます。
  59. 久保三郎

    ○久保委員 それならば、七十二条の文言はそういうふうに改めないと、読めないのではなかろかと思うのです。今、基準課長おっしゃったように、始期、終期一日平均八時間と法律で書くから、これを受けて、始期、終期をきめなければいかぬ。それに見合って、特殊なものだから休息時間も書く、こういうことなんですね。そうなりますと、あとの労働時間については、その他の六十条あるいは六十二条ないし六十六条、こういうところのもので規律していくんだ、こういうことになるわけですね。そうだとするならば、この規定によることが著しく不適当と認められる部分については、こうこう政令で定めるということにならぬと、何か七十二条の二で出てきた政令は全部一本で、一般の条項について関係なく、これだけで規律するのだ、こういうふうにとれそうに思うのですが、法律的な解釈としてはどうですか。   〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕
  60. 住田正二

    ○住田説明員 七十二条の二は、現行船員法の労働時間制度に対する特例でありますので、六十条、六十二条ないし六十六条全部について、必ず特例を設けるという趣旨ではないわけです。従って、省令で別段定めをしなければ、当然現行船員法の方に戻っていくということになるわけであります。
  61. 久保三郎

    ○久保委員 そういうふうなお話だとするならば、七十二条の二の書き方が、少しそういうふうにはとれない書き方ではなかろうかと私は見ているわけなんだが、それはどうなのか、こういうことなんです。これ、ちょっと読んでいってそういうふうにとれますか。特例法だから、しかも特例法ではっきり六十条及び六十二条ないし六十六条の規定によることが不適当なものについてと、こう書いてあるから、そうすると、これは適用外ということになるんじゃないですか。こういうふうな解釈になるんじゃないですか。あなたのお話のようにならぬと思うのです。
  62. 住田正二

    ○住田説明員 法律の方は、命令で別段の定めをすることができるということになっておりますので、命令で別段の定めをした場合に、その規定が適用になるということであります。従って、命令で別段の定めをしていない場合には、当然原則の方に戻るということになるわけであります。従って、との規定、七十二条の二の書き方で十分であるというふうに考えております。
  63. 久保三郎

    ○久保委員 命令で定めることができるというから、やらない場合はその他に譲るんだ、こういう解釈で、そういう解釈ならそれでいいと思う。ただ、そこで始期、終期のきめ方で、この前のお話では、大体五週間というふうに考えておるんだ、こういうことなんですが、五週間にきめた理由というのは、大体一月、労働基準法の第三十二条の第二項では、一月ということで四週間平均。いかなる理由で五週にこれは延ばすのか。この点はどうなんですか。
  64. 若狭得治

    ○若狭政府委員 この点につきましては、近距離を航海する船のダイヤの実態がどうなっておるかという問題から、実は検討いたしておるわけでございまして、具体的に申しますと、この週期の問題について一番むずかしい問題になっておるのは、国鉄の連絡船でございます。特に青函の連絡船につきまして、現在一日一往復、あるいは二往復、あるいは二日に三往復というような運航の形態があるわけであります。こういう形態をもとにいたしまして、スケジュールを組んでおるわけでございますけれども先ほど申しましたように、全船員につきまして、労働時間の総量、乗下船の時刻というものを均等化するということが必要でありますし、また、乗船する船舶をそのつど変更するという状態でも困りますので、そういう点を総合的にお考えになりまして、国鉄では、現在三十日というスケジュールを組んでおるわけでございます。われわれといたしましても、このスケジュールにつきましては、そういうスケジュールが最も効果的なスケジュールではないかということで、そういう点から五週間というものを現在考えておるわけでございます。
  65. 久保三郎

    ○久保委員 国鉄の連絡船が一番問題だということで、今日の運航ダイヤというか、そういうものが一月で組んでいるから、それに合わせていく、こういうことでありますが、そういうお話を聞くと、どうも国鉄運航形態が主体であって、船員の労働時間というものが主体でなさそうにも、逆に見れば思うわけなんでありまして、むしろここでは、国鉄の運航ダイヤがそれ以上に組めないかどうかの問題ですね。そういうものの御検討もなさらぬで、三十日としてやっているから、三十五日までやっておけば大丈夫だろうというのでは、少しくどうも話が違いやしないか。言うならば、今日国鉄がやっている船員法違反の事項を、何とか政令によって合法性を与えようという考えではなかろうかとも考えられる。これでは話は違うじゃないか。たとえば船員法改正委員会から出た問題を、これが運輸省の一応の見解でもある、あるいはそれ以上に、三者構成の公正な委員会一つの常識として妥当な線だということを建前とするならば、今のような考えでは少しうしろ向きではないだろうか、こういうふうに考えるわけであります。むしろ一月というならば、陸上においても一月を基準にして四週ということになっているのですから、四週で切れないはずはないわけですね。その辺のことはどうなんですか。
  66. 若狭得治

    ○若狭政府委員 この週期につきまして、一応一カ月ということを考えておるわけでございますけれども、この点につきましては、現在の船舶の運航のダイヤ、運航回数というものを確保する、現在の船舶の数でもって確保するということになりますれば、その間、船員の勤務時間にアンバランスが出てくる可能性があるわけでございます。そういう点、われわれといたしましても十分検討いたしましたけれども、そういう船員の労働時間のアンバランスということは、これは非常に困難な問題が出てくるわけでございますので、そういう点からいたしましても、この週期の問題につきましては、現在の国鉄の船舶の数というもの、それからダイヤというものが変更できないというような状態である限りは、五週間ということはやむを得ないのではないかと考えるわけでございます。
  67. 久保三郎

    ○久保委員 今のお話では、どうも何か現在の運航ダイヤを全然手をつけられないのだということで、これに法律を合わせていくということですね。それじゃ、ちっとも前向きの姿勢ではないと思うのです。もちろん、そこには物理的にどうにもならぬ問題もあるでしょう。これは認めます。しかし、こうなりますと、そういう思想が一貫して命令で定めるということになって参りますと、現在の勤務形態、運航形態そのものを全部容認していくという立場に立たざるを得ないのではなかろうかと思うのです。これはそういう意味ではないのですか。違うのですか。
  68. 若狭得治

    ○若狭政府委員 船員法の原則は、労働時間の原則は一日八時間、一週五十六時間という原則でございますけれども、これにつきまして、特に七十二条の二を起こしまして、例外を認めまして、平均八時間という規定を入れておるわけでございますが、われわれといたしまして、この国鉄連絡船の労働の問題につきましては、平均八時間を守るということに最大の主眼を置いているわけでございますし、また、その場合に、各船員が均等な労働に従う、しかも、同一の船舶において勤務するというような条件をいろいろかみ合わせてみました場合には、現在申しております五週間という週期はやむを得ないものであるというふうに考えるわけでございまして、船員保護の面からいたしましても、八時間労働を、均等に平均八時間というものの労働を守っていただくという点と、それからその間に不均衡を生じないというような面からいたしまして、現在の五週間という週期はやむを得ないというふうに考えているわけでございます。
  69. 久保三郎

    ○久保委員 週期をきめることは、今きまっておりませんね。今きめはないですね。それをお答えいただきましょう。
  70. 若狭得治

    ○若狭政府委員 これからきめるわけでございます。現在のスケジュールが一カ月を単位といたしておるということでございます。
  71. 久保三郎

    ○久保委員 私がお尋ねしているのは、国鉄でそういう週期というものはきめてないだろう。だから、週期をきめることはなるほど前進であろう。こういうふうにはとれます。しかし、五週にきめることがはたして妥当なりやいなやということは、私にはよくわからぬ。一月というなら、陸の方で一月は四週間であるのに、なぜ海の方は五週間にするのだろうか。五週間といえば、五、七・三十五日、一月以上出張る、そういうこともある。しかし、それは今の運航形態を全部是認するという立場になっているからですが、はたしてそれがいいかどうかということは、私は、後刻お尋ねしたいと思います。  ところで、そういうきめ方の中で、たとえば全日海が、今日調停は出ているということでありますが、はたしてこれはその通りになるかどうかわかりませんが、たとえば週休制がこの中で一番問題になっておるわけでありますが、そういうきめ方の中でも、たとえば週休制はやろうとすればやり得る道はあるのだ。五週ときめたり、それから休息時間が連続四時間——ことに四時間というのは、今でも守り得ない面があるようでありますが、そういうものが週休を建前とした場合に完全に守り得るのかどうか、そういう工夫があるのかどうか、そういうお見通しはどうなんですか。
  72. 若狭得治

    ○若狭政府委員 われわれは、法律の最低限度を規定するわけでございまして、この限度内におきまして、各企業が労使間においてそれ以上の条件の労働時間を取りきめるということについては、これはもちろん差しつかえないわけでございます。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 差しつかえないことは差しつかえないのです。それは別にお答えいただかなくとも、以内と書いてあるのだから、その通りなのでありまして、あなたの方の監督官庁とすれば、出張らなければいい、中に引っ込む分にはどんなに引っ込んでもいい、そういう立場ですから、お答えいただかなくてもいいのですが、私としては、あなたが週期を五週にするということは、現在の運航形態その他を見てこうしなければいかぬだろう、こういうふうに思うとおっしゃるから、それならば、そういうワク内で、私がいうところの週体を建前にしたものもある程度可能性があるのかどうか、やればやり得るのかどうかというお見通しを聞いておるわけです。あなたは、五週といった現状に合わす前に、そういうことはどうなのか、こう聞いておるわけです。
  74. 若狭得治

    ○若狭政府委員 具体的に、国鉄の連絡線の問題につきまして週休を与えるというような場合には、現在の運航ダイヤがどういうふうになるかというような問題について、われわれはまだ検討いたしておりません。しかしながら、法律建前からいきまして、そういうことは当然あり得るというふうに考えるわけでございます。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 それでは、船舶局長がおいでになりますから、あとでまた中村常務に確認を求めますが、この七十二条の二によって、今までお話があった通り、政令で出すということなんですが、運航形態からいって、今の話の通り五週でなくちゃならないのか、四週ではどうなのか、その点はどうですか。
  76. 久田富治

    ○久田説明員 お尋ねの件でございますが、大体一船二運航、あるいは一船一運航半で、二日間船に乗りまして二日間陸上で休む。つまり四日が一つの単位になっております。従いまして、四の倍数——四、七、二十八、四、八、三十二、四の倍数で三十日のあたりを少しこした日を運輸省の方にはお願いいたしておるのでございます。具体的には労働基準法にいいます一月くらいのところを目途にしてダイヤを組んでおりますが、特定のものにつきましては、三十日でははみ出しますので、三十二日ぐらいを限度にお願いしております。それが五週間という区切りになったことと、私どもは解釈いたしております。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 今の二昼夜乗って、二昼夜休むというのが、最大ですね。
  78. 久田富治

    ○久田説明員 さようでございます。
  79. 久保三郎

    ○久保委員 そうすると、四日ですね。
  80. 久田富治

    ○久田説明員 そうでございます。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 四日だとすれば、四、七、二十八日でいけるのじゃないですか。四週間でどうですか。
  82. 久田富治

    ○久田説明員 一月を目途にしておりますから、一月以内では非常に苦しい。御承知のように、ダイヤの組み合わせの要素が、非常に多い。一番根幹になっておりますむずかしいものは、同一の船に同一のチームが乗る、そういうことでございますので、船の船繰りと同一の顔ぶれ、たとえば七十人なら七十人の顔ぶれが必ず同一の船に乗るという建前をとっておりますので、その建前をくずしますれば、非常にダイヤは楽でございますけれども、そういう建前をとっております以上、やはり一月をはみ出す分が出てくる。従いまして、多少のアローアンスを見て五週間にお願いしたい、そういうことなのでございます。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、先般中村常務にもお尋ねしたが、陸上勤務と海上勤務のまん中にあるような形態でありまして、労働の再生産からいけば、やはりいろいろ問題があっても、多少の無理を忍んでも、労使ともに週休制をとってやった方がいい。給与の問題等も大へん強調されますけれども、そういう問題を前提に考えていたのでは話が進まぬから、どうしてもそういう建前をやっていったらどうか、こういうお話を従来しているわけでありますが、ついては、そうなりますと、そういうものの週休を基本にして、これからいろいろ労使ともに協議をなさる、あるいは運輸省とも御相談をなさる、こういう段階は——たとえば週期を五週に法律というか政令できめても、その結論としては、週期は四週の場合もあるし、三十二日というか、そういう決定も内部的にするということにとってもよろしいかどうか。だから、政令は最大のワクでありますから、その以内の問題については、そういうこともあり得るだろうと私は推測するわけでありますが、それはどうですか。
  84. 久田富治

    ○久田説明員 先般の当委員会で中村常務が申し上げました通り、週休の方向に努力いたします。ただ、それを直ちに実施しますことは、陸上職員について、現在中央労働委員会の調停案が出ておりますので、その具体的な内容について、ただいませっかく団体交渉中で、具体的に事務が進んでおりますので、それとバランスを失しないこと、それから今度船主協会その他に四十八時間労働の調停案が出まして、それの前文にも書いてございます通り、海運合理化の趣旨に沿うということが書いてございますので、私どもも、その趣旨を踏みはずさない、その二つを守りまして、四十八時間の方向に努力する、こういうふうに考えている次第でございます。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 大体わかりましたが、それで先ほど私がお尋ねしたことについては、週期のきめ方は、命令で五週ときまっても、そういう結論の見ようによっては、それ以内の取りきめもあり得る、そういうことは言えるわけですね。
  86. 久田富治

    ○久田説明員 さようでございます。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 それでは次に参りまして、そこで、これは中村常務にもお尋ねしたわけでありますが、船員法は、遠からずどういう形かで今国会において通るだろうと推測いたしております。推測いたしておりますが、先般来から、船員局長の方では労使の協議によって云々ということを繰り返しておりますし、また今もお話があった通りです。ついては、早急に団体交渉なりあるいはその他の機関でこれを検討して、この法律改正は十月一日から始まるということでありますから、それ以前に結論を得るということで、今御決心をいただいているかどうか。いかがでしょう。
  88. 久田富治

    ○久田説明員 ただいまの点につきましては、私どもとしてできるだけ早急に労働組合と団体交渉をしたいと思います。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 それからもう一つは、これまたこの前の委員会で中村常務にも御忠告を申し上げたのでありますが、今までの船員というか、船舶関係の労使の交渉は、長いことかかっておりますが、残念ながら結論を得られない。結論を得られないのは、お互いに疑心暗鬼であったのが最大の原因だと思うのであります。これは中村常務も率直に認められたのでありますが、先ほど船舶局長おっしゃるように、週体制を遂行するというのには、いろいろな問題が出てくると思うのであります。現状においてこれを直ちにやるといっても、大へんな問題があろうかと思う。しかし、それはある一定の日にちをかせばできると同時に、もう一つは、やはり多少無理を押しても、両方とも譲ってやるべきであると、われわれは考えておる。その譲る方法については、ある場合においては、私も、非公式ながらそれぞれの向きにもそういう点をお話し申し上げるが、そういう積極的な意欲を今日お持ちであるかどうか。これはどうなんですか。
  90. 久田富治

    ○久田説明員 久保先生ただいまおっしゃいました通り、私どもが、どちらかといえば消極的でございましたのは、実はいろいろ諸般の情勢が熟さなかった。具体的に申しますならば、一般海運界にもそういう動きがあるが、なかなかその機が熟しておらない。また、私どもの方の陸上職員におきましても、中労委にかかっておるけれども、調停案がどういうふうに出るかわからない。ところが、双方、船主業界の調停案あるいは国鉄部内の陸上の時間短縮の調停案がそれぞれ出ましたので、私どもも、機運としては熟したと存じまして、今までの消極的態度を前向きに進めていくような気持で積極的にやっていきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 それ以上くどいようでありますが、もう一点だけお話しを申し上げたいのでありますが、従来船員法の最低の条件をたてにとって、実はその前進をはばんできたという事実は、お認めにならざるを得ないと思うのです。いわゆる五十六時間というものをたてにとって今までやってきた。今度も政令に譲る部分が、実際だいぶ多いのです、平均八時間だけでありますから。そうなりますと、平均八時間、あるいは政令で先ほど船員局長おっしゃるような形でとれば、それを最大のたてとしてこれを押し返すということが、今まであったわけです。そういうことは考えておりませんね。いかがですか。
  92. 久田富治

    ○久田説明員 気持といたしましては、久保先生のおっしゃる通り、そういうことは考えていないつもりでございますが、ただ、私どもは、やはり予算のワク、あるいは経営合理化というような至上命令がございますので、片一方におきましては、先生のおっしゃる気持、片一方におきましては、私どもに課せられたそういうような使命、双方をうまく生かしていきたい、そういうふうに考えております。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 それで、その経営の合理化というか、そういうものについては、あなたの方の職員も、今日相当深刻に考えてきているわけです。この週休制がとれるなら、ある程度合理化にも積極的に協力しようという機運が、幹部の中にも出てきている。それを率直に認めないと、私は前進はできないと思う。これは船舶局長は、直接のことでありますから理解が深いと思うのでありますが、残念ながら、国鉄には、役所と同じようにいろいろなセクションがございまして、なかなかうまくいかないというようなことをわれわれは今まで聞いている。ことに職員局長などは、最近の動きを見ると、おれがというような考えが非常に強い。これは国鉄のマネージメントとしては非常に不適当であるということを、私は最近は考えておる。その中において、あなたの実力というか、これは運輸省自体も責任を持って解決しなければいかぬと思うのです。そういうことも一つ考えてもらいたい、こういうように思います。  そこで、とにかく先に参りますが、この問題は非常に深刻な問題になっておるのでありますから、今お話のように、客観情勢も非常に好転しているのでありますから、この際、勇断をふるって正常な形に持っていくという努力を労使ともにやるべきだと、私は考えております。  そこで、これは運輸省の政務次官に一言お願いしておくわけですが、今までお話した通りであります。国鉄も前向きにしよう、船員局自体もそのためにはやるべきだろう、こういうふうな、ちょっとなまぬるいのでありますが、うしろに国鉄が控えておりますので、国鉄の返事を聞かないうちはどうもというので、週休のきめ方についても、国鉄のダイヤばかりにらんでおるようでありますが、これはどうも監督官庁としてはなまぬるい——といっては語弊がありますが、気持の中にはあると思います。表現がまずいのでありますが、ついては政務次官に、今のお話の通り推進させるということを、この際一つ約束をしていただきたい。そして七十二条の二ができて、それに伴う政令が出ても、現在の労働条件よりもこれを低下させることがあっては、私は絶対にならぬと思うのです。先ほどお話があって、そういうことはあり得ないと思うのです。これは、今まで当局も組合も疑心暗鬼を持っておるのですから、七十二条の二がこのまま底抜けた形で通ってしまえば、政令のきめられようによっては、これはとてもじゃないが、今より労働条件が悪くなる。そういうふうに当局は押しつけてくるだろうという疑心暗鬼を持っておるから、船員法の審議については最大の関心を持っておる。ですから、そういうことのないように注意をしていただくと同時に、前向きの姿勢でやらせるようにするというお約束を、一つ政務次官からいただきたい、こういうふうに思います。
  94. 有馬英治

    ○有馬政府委員 運輸省といたしましては、久保委員のお説を十分参考にいたしまして、今後、国鉄の営業方針と運輸省の海運行政が十分調和のとれるように、一そう努力をしていく考えでございます。
  95. 久保三郎

    ○久保委員 どうも政務次官の言うのは、調和をとると言うのですが、調和をとると言っても、今の話はちっとも僕に対する約束にならぬので、前向きにやるように指導、監督するというようなお言葉を一言お漏らし願わないと、次に進めません。
  96. 有馬英治

    ○有馬政府委員 前向きの態度で調和一をとって参りたいと思います。
  97. 久保三郎

    ○久保委員 次に、定員の問題でございますが、今度改正の条項になっております。十条でありますが、この七十条の改正は、後退ではなかろうか、こう思うのです。なるほど、最近船舶の構造も近代化されて参りましたから、航海当直の問題については、そういう改正の理由の一つにはなろうかと思うのです。しかし、これは先ほどの労働時間等の話で申し上げたように、一つの最大というか、最低のワクをきめておけば、あとはどうでもなるという思想があるならば、しいてこれを改正することは必要がないんではないか、こういうふうにも思うわけです。これはどうもわれわれ自身として、何か後退だ、最近における船腹増強のために、船員が不足だから、まあこの辺で少しちびっていこう、こういうふうにもとれるわけです。これはどうなんです。
  98. 若狭得治

    ○若狭政府委員 ただいま久保委員のおっしゃいましたように、船舶の航海設備が最近非常に改良発達をして参りまして、現実におきましては、緊急の場合におきましても、六名の航海当直で航海には何ら支障がないという状況でありますので、その事情に合わせまして、従来九人を要求いたしておったわけでございますが、船舶状況から見まして、これは不必要な状況であるということで改正いたしたわけであります。
  99. 久保三郎

    ○久保委員 それでは、六人で足りる、九人は必要ないというのは、船船が近代化したということの理由だけでありますが、どういう点が近代化で、それで九人を必要としないで六人で足りるのか、非常に専門的になりますが、これはいかがですか。どういう点で必要がないのですか。
  100. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現実的には航海当直は一名でやっておるわけでございますけれども船舶の構造、設備が発達いたしましたと申し上げますのは、航海計器が非常に発達して参ったわけであります。自動操縦もできるようになって参りましたし、レーダーその他の設備もできておるわけでございます。そういう面からいたしまして、直接肉眼による見張りというような点、操作というような点が、従来よりは非常に労働が少なくなったという事情でございます。
  101. 久保三郎

    ○久保委員 それじゃ、現行九人以上で、同時当直が三人以上ということなんですが、それも、今度は同時三人は削り、九人は六名、こういうふうになったわけです。これは船舶の構造上必要ないんだということをお話しいただきたいのでありますが、この席では非常に長時間かかると思うし、実際何か図面でももらわなければわからぬので、この九名ときめ、同時三名のワッチというのは、どことどこに立てなければいけない。しかし、同時三人というのは、削れば同時三人は要らない、最低限一人でいい。それはどういう機械ができて、ここで一人、一等航海士なら一等航海士が見張っているから、全部要らないんだ、こういう理屈になるわけですね。だから、そういう機械について、これは図面をもって、計器がどうなった、あるいはかじの工合がどうなった、あるいはレーダーがあったから、この点の当直は要らない、こういうふうな御説明をいただかぬと、なるほど近代化したから要らないと言うが、近代化しない船もたくさんあると思う。だから、九名ときめ、同時三人ときめたものが今度六人となったやつの裏づけは、どうなのか、これはあとで資料をもって御説明をいただきたい、こういうように思います。  それからもう一つは、今度はみな七百トン以上になって、二千トンという区切りはなくなったということでありますね。これはどういうわけですか。同じように扱えばいい。結局七百トン以上二千トン未満の線に落としてきた、こういうことなんですね。そうですね。それはやはり別段の理由がなくて、今の船舶が近代化されたからという理由だけですか。
  102. 若狭得治

    ○若狭政府委員 この労働時間制につきましては、海運界の実情等の問題がございます。船主の負担力の問題もございます。そういう点をも勘案いたしまして、労働時間の適用、船舶の範囲の引き下げということにつきましては、われわれ従来から努力をいたしておったわけであります。現在二千トン以上という規定は、一応内航は除外いたしまして、外航へ出かける船を大体において対象にしておるというふうにわれわれ考えるわけでございますけれども現実的には、内航に主として従事する船舶におきましても、その労働時間の規制につきましては、できるだけ広めていきたいということで、現在の船主の経済力その他等も勘案いたしまして、一応七百トンというところまで引き下げることにいたしたわけであります。
  103. 久保三郎

    ○久保委員 最大の理由は、船主の経済というか、そういうところからのようでありますが、船員法自体は、船員の労働という問題が重点であります。かたがた船舶の航行安全という二面性、この面からいうならば、船舶経済性云々は三の次なんですね、実際言って。だから、今の御説明だけでは、船員法で規定しているこの条項に対しては、理解がしにくい、こういうふうにわれわれは考える。もう少し的確な理由がございませんか。それはやはり近代化だけですか。何か今の船主、経営者の経済性から減らした方がいいだろう。これは船舶安全法とは関係ないですか。
  104. 若狭得治

    ○若狭政府委員 安全法とは関係ございません。われわれといたしましては、労働時間の適用範囲をできるだけ下げていきたいという考え方でいるわけでございます。現在七百トン以下の船舶の船主経済実情というものにつきましては、なかなかむずかしい問題があると思いますけれども、また、現実問題といたしまして、現在の七百トン以下の小型船舶の労働の状況というものは、今直ちにこの労働時間制を適用して円滑にいくかどうかというような面もございます。また、これを行政的に取り上げました場合に、その実効を期することがどの程度できるかというような問題もございますので、現実的には、一応現在のところは七百トンという制限でもってしばらく情勢の推移を待つということでございまして、また、現実的に、さらに労働時間の問題につきましては、労働委員会の決定によりまして、この時間制を適用するという道も開かれておりますので、そういう面等も勘案いたしまして、今後行政をやっていきたいと思っておるわけでございます。従いまして、方針としては、できるだけ範囲を広げていこうという考えで、こういう制度を立案いたしたわけであります。
  105. 久保三郎

    ○久保委員 七百トン以下の話は、私はまだしていないのです。先にお答えいただきましたが、七百トン以下の話は、まだそこまで行かないのですよ。ただ、定員を減らすこと自体どうなのかということを重点にお尋ねしておるわけなんですが、これは先ほど申し上げたように、資料として、私たちの理解がいくように御説明をいただきたい、こう思うわけです。それで、同時三人は必要でないというのですか。こうなると、こんなことはあり得ないと思うのですが、ここに同時三人以上と書いてあったが、今度ないから、当直は要らないのですか。こういうふうにもなるのですが、そんなことはありませんか。これは一人でもいい、二人でもいい、三人でもいい、こういうことに解釈するわけですか。これはどうなんですか。今までは三人以上でなければならぬ理由があったわけです。これはあとで御説明いただきますが、今度は要らないということになると、最低限一人、こういうことがあり得るわけですね。それは許容されるわけですね。
  106. 若狭得治

    ○若狭政府委員 その通りでございます。
  107. 久保三郎

    ○久保委員 これは、あとで資料によってまた御説明いただきましょう。  次に参ります。七十一条の適用除外でございますが、今度の改正は、やはり千トン未満のところから七百トンまで引き上げた、こういう格好ですね。引き上げたというか、数からすれば引き下げたのですが、適用範囲除外を今度は狭めたということですね。そうですね。いかがですか。
  108. 若狭得治

    ○若狭政府委員 労働時間の適用対象をふやしたわけでございます。
  109. 久保三郎

    ○久保委員 そこで、この七百トン以下の船及び帆船並びに漁船、これは七十三条によって、主務大臣が必要があると認めるときは、船員労働委員会の決議によって必要な命令を発することができる、こういうことになっているわけです。  そこでお尋ねしたいのは、この七十三条にかかるわけですが、これはできて以来の船員法でありますが、七十三条についてはいかなる関心と意欲を今日まで持っていたのか。やろうとしたができないのか。どうなんです。
  110. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在までのところ、七十三条によりまして、労働委員会の決議をもってというような状態にはまだないわけでありまして、船員法改正の問題の中にこの問題を取り入れて、どこまで適用範囲を引き下げるかということについて、検討を行なっておったわけであります。また、中央労働委員会等も、こういう点に主眼を置いて今日まできておるわけでございます。
  111. 久保三郎

    ○久保委員 いや、それで七百トンに下げてきた、これだけ適用範囲が拡大したということで、その労は多とするのでありますが、七十三条によるところの七十一条適用除外のものについて、これは法改正を今するわけでありますが、従来から眠っている七十三条なんです。しかも、この条文の書き方が「必要があると認めるときは」とあって、運輸大臣が必要ないと認めているのかどうか。あなたの方で必要があると認めるときは、船員労働委員会の決議によってきめなくちゃならないものです。「発することができる。」、きめるということですね。ところが、今までのやり方は、一部はわかった、七百トンに下げてきたからわかった。だけれども、七百トン以下、並びに帆船あるいは漁船についての問題は、これはあなたの方で必要があると認めてないので今日まで作らなかったのかどうか。これはどうなんです。
  112. 若狭得治

    ○若狭政府委員 労働時間につきましては、七百トン以下についても、あるいは帆船、漁船につきましても、この適用の除外の問題については、いろいろ検討すべき点があると思うわけでございます。ただ、いろいろな条件が総合的に熟して参りませんと、なかなか労働時間の規定だけを適用いたしましても、実効を上げることはできないわけでございますので、そういう点からいたしまして、従来検討は行なっておりましたけれども、まだこれを発動いたしまして適用するというような段階に至っておらないわけでございます。
  113. 久保三郎

    ○久保委員 必要がなかったということじゃないのですね。必要はあるが、なかなかどうもやり得ない、こういうことですね。そうなんですね。いかがですか。
  114. 若狭得治

    ○若狭政府委員 労働時間の問題につきましては、他の条件もすべて総合的に考えませんと、労働時間だけ強制するということは、全く実効が上がらないというふうに考えるわけでございます。たとえば現在、漁船につきましては、この前申し上げましたが、働く労働条件の改善という問題がございますし、また、機帆船につきましても、ようやく現在最低賃金制度の方針で進んでおります。そういうものがある程度固まって参りませんと、労働時間だけ先へ進んでも、とうてい実効を上げることはできないと私たち考えておる次第でございます。
  115. 久保三郎

    ○久保委員 そこで、その漁船並びに帆船については、先般お出しになった三十七年度の労働条件改善指導要綱によって逐次積み上げていく、こういう積極的な意欲で、敬意を表しているわけです。そうすると、七百トン以下というものについてはどうなのか、こうお尋ねしているわけです。漁船、帆船についてはわかった。こういう努力をわれわれは今から積み上げていって、必要と認める条件が出てきたときに初めて命令できめる、こういうことはわかる。わかるが、じゃ、七百トン以下のそれ以外の船は、どういうふうに御指導になって積み上げをしていこうとするのか、こういうことです。
  116. 若狭得治

    ○若狭政府委員 今後とも、この労働時間につきましては、できるだけその適用範囲を広げるという方向で努力をしていきたいと思います。今後、法律改正して適用範囲を広げることが、最も簡単な行き方でございますが、やはり現実の環境がそういうふうに熟して参りませんと、法律だけが先に進みましても、実効を上げることができないという状況ではないかと思うわけであります。そういう意味からいきまして、この労働委員会の決議によって労働時間を打ち立てていくということが、一つの方法ではないか、そういう既成事実を作りながら、その後において法律において適用範囲の拡大を考えるというような措置を講じていきたいと思います。
  117. 久保三郎

    ○久保委員 いや、船員局長は、私の聞いていないことを答弁している。私の聞いておるのは、気持はわかるけれども、漁船並びに帆船については、こういう指導要綱によって積み上げていこうという熱意のほどは敬意を表する。しかし、漁船、帆船以外の七百トン以下の船舶についても、そういう積み上げのことをさしあたりやるのかどうか。それは全然野放しだ、こういうことでは話がおかしいじゃないか。結局、七十三条によるところの船員労働委員会の決議によってというのは、そのあとの話です。そこまですぐあなたに強要する考えは、私は今日ありません。なかなかむずかしいことをいろいろ言ったって話にならぬのですから、だから、せめてこの指導要綱のように、別途七百トン以下の船についても、こういうように近づける工夫というか、努力をされるべきだと考えておるのだが、これはどうなのか。
  118. 若狭得治

    ○若狭政府委員 今久保委員のおっしゃいましたような努力を、今後とも続けていく考えであります。
  119. 久保三郎

    ○久保委員 では、努力の目標を次回までにきめていただかぬと、船員法改正は、残念ながら来年も改正する機運にはないと思うのです。これは基本法でありますから、おそらく来年改正する意図がないでしょう。意図があるのならば、適用範囲拡大ということで、七十三条によらぬでもこれはやれるわけですね。だけど、それはとてもできない。基本法だから、毎年々々改正というのはとてもできないから、私はそれでしつこく言っておるのです。だから、しょっちゅう改正した方がいいということならば、しょっちゅう改正することで、別にあとに残してもいいと思うのです。そういう意味で、この要綱というか、方向を、これを機会にお示しいただきたいと思うのです。いかがでしょう。
  120. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在、小型船の労働時間については、調査を行なっておる段階でございます。従いまして、この調査が済みまして、どの程度船舶についてはどういう程度までの指導をする方が適当であるかというような結論を見ました上で、具体的に労働時間を適用する船舶の範囲というもの、あるいはそれに伴う事業者の負担というものを考慮いたしまして、労働委員会で決議いただいて、それを七十三条によって実行していくというようなことを、現在考えておるわけであります。ただ、この調査につきましては、目下のところ、その内容が非常に複雑でございますので、いつまでにその調査が終わるか、あるいはいつまでに労働時間を適用するかというようなことは、今のところは申し上げられないのであります。
  121. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、私が言うような指導という面よりは、実態調査をして、七十三条に基づくところの命令でやっていきたい、そういう方針になっておるのだ、こういうことなのですか。それもいつきまるかわからぬということでありますれば、やはり早急に——これはその前提として、その作業は作業として進めながらも、指導要項はあるべきではないか、こういうことなんです。どうなのですか。
  122. 若狭得治

    ○若狭政府委員 今、先ほど申し上げましたような方針でおるわけでございますけれども、今後の処理につきましては、中央労働委員会においても、この問題については真剣に現在まで討議を行なっておるわけでございます。われわれの調査によりまして、中央労働委員会におきましても七十三条を発動するということを考えておると思いますけれども、そういうものと緊密に連絡をとりまして、今後処理していきたいと考えております。
  123. 久保三郎

    ○久保委員 それでは、次会は、今中央労働委員会でも真剣に御研究なさっておるということですから、その中央労働委員会の担当者も出ていただいて、お話を承りたいと思います。本日は時間にもなりましたので、残余は残して、一応この辺で打ち切っておきます。
  124. 高橋清一郎

    ○高橋(清)委員長代理 次会は、来たる十八日、水曜日、午前十時より委員会を開会することといたします。  なお、来たる十七日、火曜日は、午前九時五十分より理事会、午前十時より観光に関する小委員会、十八日の委員会のあと、午後一時より都市交通に関する小委員会が開会されますから、御承知おき願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十二分散会      ————◇—————