○
田畑参考人 選手強化のことを
説明いたします。
実は私、
選手強化につきましては相当
意見もありますし、また
阪上君がここに見えておりますけれ
ども、
日本の水泳を世界一にしたという実績もありますので、これについては非常な執着もありますけれ
ども、何といっても
オリンピック組織委員会の最高責任者でありますし、そっちの方が非常に多忙でありますので、また閣僚懇談会におきましても、責任体制をはっきりしろという御
意見もありますので、私は、この際、大島君に
お願いして、
オリンピック組織委員会の方に専念するために、
選手強化対策本部長は
辞任いたしますけれ
ども、過去のあれで十分わかりますから、一応おもなことを御
報告申し上げたいと思っております。
とにかく、今
委員の方からも
お話があったように、
東京オリンピック大会が
全国的に非常にムードが上がらないという
お話、確かにその
通りでございます。むしろ国外の方が非常にムードが上がっておりまして、国内の方はムードが上がらないという感じが事実ありますが、これは何といってもどうも
選手が強くない、
日本で
東京大会をやって、相当の金もかけるし、いろいろとやってみて、はたして日の丸が上がるかどうか、ひいきのしがいがあるかどうか、どうも今のままではひいきのしがいもないという点が、ムードが上がらない一番大きな理由だというふうに私は
考えております。それについて、あまりにも世界の水準が高くなっておりますし、
日本が、少なくとも過去十数年足踏み状態だったというところでそういう悲観的の観測が非常に強かったのですけれ
ども、最近においては、非常に明るい見通しと期待を持ち得るようになったと存じます。
日本の
スポーツ振興で一番隘路は、やはり
日本が極東にあるということで、なかなか
国際競技ができないという点が大きな難点だったのであります。外国ならば、大阪くらいまで行くことによりましてどんどん
国際競技ができるという
意味で、呼ぶにも行くにも簡単で金もかかりませんけれ
ども、
日本の場合には飛行機運賃も莫大にかかるというので、これができなかったというところにも
一つの原因はあると思います。
もう
一つは、やはりそういう外国
選手との交流がなかったというところから、極東の井戸の中に住んでいて、ほんとうに世界の
スポーツ界をはっきり観察しなかった。
日本人は、どうもからだが小さいからだめなんだ、負けて
あたりまえなんだということもありませんけれ
ども、そういう一種の劣等感をからだ自体持っていたということも、非常な大きな原因だったと思います。従いまして、三年前からの
選手強化の目標といたしましては、まず人間のからだ作りということを一番の主眼に置いてやって参りました。たとえば瞬間的に力を出す筋肉を作ること、あるいはいわゆるスタミナ、持続的に筋肉力を強くするという問題、あるいは循環系統、呼吸系統の肺臓を強くする問題、心臓を強くする問題、この点につきましては、ソ連とドイツ、アメリカからそれぞれ世界第一流の生理学者その他に
日本に来てもらって、コーチ並びに
選手に直接指導してもらったというところから、
選手のそういうからだ作りにおいては非常に進歩しております。
今の
段階は、戦争前の
日本人と違って、今の青少年、
スポーツに志す者がどうも根性がない、これは彼らが一番不幸な時代に育ったのですからやむを得ないかもしれませんけれ
ども、根性がないということが一番問題になっておりますので、今心理学その他の研究からも、今の根性作りということを最後の問題としてやっております。これに対しては相当の金も出していただいてやっておりますし、交流につきましても非常に
強化費を出してやっておりますので、非常に進歩したと思います。
御存じのように、最近、去年のものといたしましては、女のバレーが一番強いソ連を負かし、東欧圏全部を席捲して世界一になったという事実もあります。また、体操が、この間の
大会で、男の体操は世界
選手権をとりました。また、柔道は、いいとき負けた
——ということはないかもしれませんが、いいとき負けたので、ほんとうに試合方法あるいは
気持を立て直しまして、どうしてもこの四つの
種目全部に勝つということでやっております。さらに一番意を強くすることは、
オリンピックのメーン・イベントの陸上であります。これはほとんど
希望がないということが
スポーツ界一般の常識でありましたけれ
ども、最近におきましてはこれが非常に上昇しまして、織田君がこの間ヨーロッパ遠征から帰ってきまして、初めて
希望を持てる外国遠征をしたということを羽田で語っております。事実この間の予選会でも相当の結果を示しております。またレスリングが、一時はよかったのですが、最近だめだったのですが、これもこの間の世界
選手権で非常にいい成績をとっておりますし、また、ウエートリフティングも非常にいい成績をとっております。ボクシングも、軽い方では一人は必ず
金メダルをとれるだろうという見通しもあります。
それで、私
たちの目標と申しますか、開催国とすればどの程度やらなくちゃならぬか、どの程度やれば、来た外国
選手も、
日本選手はよくやった、おれ
たち来てよかったという
気持を持って帰ってもらえ、また
国民の皆様方もやってよかったという
気持になるにはどうすればいいかと申しますと、戦後におきましてソ連とアメリカがべらぼうに強くなっておりますから、この二つはたな上げしまして、開催国は必ずその次に第三位に入ってきています。豪州は人口の非常に少ないところですけれ
ども、メルボルンの
大会では、はっきり覚えておりませんが、十三の
金メダルをとりまして、先進国のイギリスもフランスもドイツも押えて第三番目に入っております。今度のローマ、これは
金メダル十七と思いましたが、やはり開催国がとりまして、ソ連、アメリカの次に第三番目に入っております。ですから、
日本が、ソ連、アメリカの次に、先進国のイギリス、フランス、ドイツというところを抑えて第三番目に入ってくれば、
国民の皆様も、来た
選手の方もみんな満足して帰ってもらえるだろうということであります。しからば、今度の場合にどのくらい
金メダルをとれば三番目に入れるだろうかと申しますと、ローマが十七でありましたから、十七以上、二十とれば絶対だと思います。これが可能であるか、不可能であるかという問題でありますけれ
ども、今申し上げましたように、柔道が四クラスになります。これは
日本で育って、
日本で世界的になって、
日本が
オリンピックに入れた
種目でありますから、絶対勝たなければならぬ、一生懸命やれば勝てるというので、この四つと、今申し上げましたバレーの六つ、それに体操が五つ、四つと六つと五つ、これですでに十五であります。しかし、今のバレー、柔道、体操は、あらゆる努力、研究を集中して世界一になろう、
オリンピックでは
日本を破るということでやっておりますから、決して安閑としてはいませんけれ
ども、今まで以上に努力をすれば、これの確保は決してむずかしいものではないと思います。それから、今まで世界で
日本が一番強かったのだという水泳、これがあまりにもアメリカが強くなり過ぎています。
日本は沈滞しているということもありますけれ
ども、これもだんだん出てきましたので、おそらく私は、千五百とバタフライ、ブレスト、バックの四つのうち二つはとれると思います。さらに八百リレー、メドレー・リレー、これで八つとれるということになります。そのほかには、今申し上げましたように、レスリングが非常に強くなっているようでありますが、軽い方で二つとるということは決して困難な問題ではありません。もちろん一生懸命やらなければなりませんけれ
ども、不可能ではありません。それからボクシング、ウエートリフティングの軽い方で
一つずつ、これはとり得ると思います。そうしますと、二十五というものは決して不可能ではない、非常に大それた望みでないと思います。これが
一つ二つ狂いましても、二十をこすという可能性は当然ありますから、そうすれば、皆様方も、あるいは外国から来た
選手も、よかったというように思ってお帰りになると
考えております。その上に、今申し上げました
オリンピックの中心であります陸上が、あるいはマラソンなり、あるいは三段飛びなり棒高飛びなりで、その中から
一つをとってくれれば画龍点睛で、問題ないと思いますけれ
ども、こういうことで、私は、今まで開催国がとった数だけは
日本が必ずとれるという確信を持っておるわけであります。
そういうふうでございますから、
オリンピックそのものがローマ
大会で一応のあれができまして、ベルリン
大会が
開会式、入場式のすべてのスタイルをきめたもので、これが空前絶後であろうと言われましたが、私は、
開会式、閉会式、あるいは競技運営、あるいは
選手村の
選手の生活というものについては、これは絶後とは申しませんが、空前に彼らが満足するものができるだろうと思います。問題は、しぼって
選手の問題、
選手がローマあるいはメルボルンで開催国がやったと同じようにできれば、今は、
オリンピックは早過ぎると反対の方も事実いらっしゃいますけれ
ども、しかし、やったときには、
東京オリンピックをやってよかったと言われるようになるだろうと
考えておりますが、その可能性は十分あるというふうに
考えております。
以上で私の
意見といたします。