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大島参考人 ただいま
田畑本部長から概略御
説明がございましたが、やや細部にわたりまして私がかわって御
説明を申し上げたいと思います。
第一に
強化対策本部がどういう
計画を立ておるかということ、第二には、
東京の
オリンピックに対してどのような
目標を持って
計画を進めておるかということ、すなわち、
メダルを
幾つ取る
目標を持って
計画を進めておるかということ、第三は、
強化対策本部ができましてから今日までどのような
成果を上げてきたかということ、それから本
年度の
計画がどういうような
計画に基づき、いかなる
方針で
現場において
選手の
強化が行なわれているかということ、
最後に第五といたしまして、
選手を
強化するにあたってわれわれが現にどんな
隘路を持っておるかということ、どうしても
打開しなければならぬ
隘路がどういう点にあるかということについて、きわめて簡単に御
説明を申し上げると同時に、
皆様方の御
参考に供し、御援助をお願いしたい、かように存ずる次第でございます。
第一に
計画でございますが、
選手強化対策本部が一九六〇年一月十八日に発足いたしましたときに、
対策本部は五ヵ年
計画を立てたのでございます。一九六四年の
オリンピック年度をその仕上期とするところの五ヵ年の
計画を立てたのでございますが、過去二年間は、この
計画を進めるにあたっての
準備の
段階であった、その
基礎固めをやるところの
段階であったと申し上げることができると思うのであります。すなわち、それぞれの
競技団体の持っております
知識を
中心といたしまして、それに内外の
研究あるいは
知識交換などを取り入れまして、ここに
日本的な
トレーニング方式を編み出すというところに問題の
重点があったのでございます。これと並行いたしまして、やはり
体力がなければいかぬということで、
体力を
中心といたしまして
現場の諸
活動が続けられて参ったのでございます。とりあえずこの二年間、すなわちこの
準備期の二ヵ年間に、
対策本部としてはそれぞれある程度
目安を得たということが言えるのじゃなかろうかと思うのでございます。今
シーズンの初めといたしまして、ことしの
競技会は、従来とはかなり違った形において、たとえば
記録の出るものについてはかなりの
記録が出る、
世界記録に近いところの
記録が出るということ、それから
精神力におきましても、従来と違うところの
選手が
競技場に現われるという形をとってくるのではなかろうかという
工合に考えておるのでございます。本
年度は、第一次の本格的な
準備活動期とわれわれの方は言っておるのでございます。すなわち、過去二年間の
基礎準備をもとといたしまして、本
年度は本格的第一次の
準備活動に入ろうということでございます。
対策の
考え方といたしましては、本
年度この機会をはずしては
オリンピックで多くの
期待はできない、ことしのうちにかなりはっきりした
目安をつける必要があるということで、目下それらの諸
活動を続けておるのでございますが、本
年度を山といたしまして、
明年度は引き続き第二次の本格的な
活動期に入るわけでございます。
オリンピックの年は十カ月ございますが、その十カ月に
最後の仕上げをしようというのが大体の
方向でございます。
予算の点につきましては、
皆様すでに御承であろうと思いますが、一九六〇年、三十五
年度は約八千万円、六一
年度、昨
年度は二億八千百万円、本
年度は五億三千二百万円と、
予算の額におきましても、各
方面の御協力を得まして、本
年度の第一次の本格的な
強化活動ができ得るような態勢になっておるのでございます。
明年度の第二次
本格的強化活動期におきましては五億四千二百万円、それから
最後の
オリンピックの仕上期におきましては、
選手の数もしぼられて参りますので、一億八千四百万円ということの大体の
予算を組んでおるような次第でございます。
そこで
計画でございますが、
皆様のお手元に別表がございますので、それを
ごらんいただきたいと思います。すなわち、今から二年半後の
東京の
オリンピック大会では、それではどれだけの
メダルが取れるかということでございます。二十
競技団体にわたりまして昨年八月にとりましたときの
調査を、その後本
年度第一次
準備強化活動期に入りますときに、
予算を編成する
段階において、あらためてそれぞれの
競技団体と
協議をいたしました結果がこの表でございます。ここにございますそれぞれの
競技種目の問題につきましては、また後ほど
お話が出るかと思うのでございますが、総計いたしますと、
金メダルが二十四、銀
メダルが十四、銅
メダルが十九で、五十七ということになるのでございます。過去の
日本の
オリンピック参加は、非常にはなやかな
時代もございましたが、たとえばロスアンゼルスあるいは
ベルリン大会におきまして、はたしてどれだけの
メダルを
日本がとったかということを御
参考までに申し上げますならば、これはそれぞれ十八個であったわけでございます。一位から三位までの
メダルの数が十八であったのでございます。戦後ヘルシンキの
オリンピック大会では十分ではございませんでしたが、メルボルンの
オリンピック大会では全部で十九になっております。それからこの間のローマの
オリンピック大会では十八になっておりまして、
金メダルの数はそれぞれ四個でございます。過去において
スポーツの
黄金時代といわれたときにおいてすら、全部の
メダルの数が十八あるいは十九であったということでございますが、このたびは
東京で
オリンピックが開かれますので、それぞれ御
努力を願って、とにも
かくにも五十七の
メダルをとろうということでございます。この点につきましては、世上、こういうたくさんの
メダルがとれるものかというような
お話があるのでございます。しかしながら、これはあくまでも
目標の
メダルの数でございまして、それぞれの
競技団体では、将来二カ年あるいは三カ年の各国の
記録向上の水準などをにらみ合わせまして、とに
かく目標としてそれだけのことはやろうではないかということで進んでおるのでございます。かりにこれが八割あるいは六割に達したといたしましても、過去の
日本の
オリンピック参加以上の成績が上げられるのではなかろうか、かように存ずる次第でございます。いずれにいたしましても、それぞれの
競技団体はこの
目標に向かって
一路邁進をしているということを御了解願いたい、かように存ずる次第でございます。
第三は、
選手強化対策本部ができまして今まで約二年間の
成果でございます。それがもう
一つの表にございます。
記録の出る
競技種目につきましては
陸上、
競泳、
ライフル、
ウエート・リフティングその他がございます。表でございますので、
ごらんをいただきまして御了承が願えると思うのでございます。とにも
かくにも
選手強化対策本部が発足をいたしましてからでき上がりました
記録の出る
競技につきましての
記録でございます。すなわち、一九六〇年には、
陸上競技では二百メートルで
木村修三以下これだけの
記録が出ております。一九六一年にはさらにその
記録を上回るところの
選手がこれだけ出ておるのでございます。
競泳につきましても、百メートル自由形の
山中毅以下このように
記録が出ておるのでございます。
ライフル競技につきましても吉川以下このように
記録が出て、
日本記録を破っております。
ウエート・リフティングは御
承知の
通りでございます。本
年度はまだ
シーズンも浅うございますので、これから
記録が出るわけでございますが、
先ほども申し上げました
通りに、全然別の
選手ができ上がっておる。
スポーツ界の
現場は、過去の
スポーツ界の
現場と違う別のものであるという形の中で、昨年、一昨年以上にすぐれた
記録が出るであろうということを
期待いたしておるのでございます。
このほかに、注のところにございますが、
近代五種
競技では、昨年八月モスクワで開催されました第十回の
世界選手権大会において、
団体総合で第六位をとったのでございます。
近代五種
競技は
わが国においては新しい
競技でありますので、とても
世界の仲間入りはできないであろうと言われておったのでございます。しかし、
関係者各位の非常なる熱意と
努力によりまして、とにも
かくにも
世界の第六位に入ることができたので、これは
近代五種
競技始まって以来のことでございます。と同時に、
努力賞と申しますか、非常にすぐれた
成果を上げたということで、特別の賞牌を得て帰ったのでございます。
次に、今年一月インドで行なわれました
国際ホッケー・トーナメントにおきまして、やはり第六位を
記録いたしたのでございます。
このほか、御
承知のように、体操、レスリングその他の
競技におきましても、それぞれわれわれが
期待しておった
成果を上げておるのでございます。いずれにいたしましても、大ざっぱに見まして現在の
成果はこのようなところでございますが、これは
本部の
仕事ではなくて、それぞれの
競技団体の
現場の
努力によることはもちろんであるのでございます。われわれといたしましては、二十
競技団体すべてが足並みをそろえましてこのような
成果に向かって
邁進をしていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
第四は、本
年度の
強化策あるいは
方針でございます。本
年度は、
先ほど申し上げましたように山の年でございまして、第一次の
本格的強化活動に入ったわけでございます。そこで、
対策本部は、二十
競技団体と
意見を一にいたしまして、まず第一に、
重点主義的に
選手を
強化するという
方向を打ち出したのでございます。過去二年間は、二十
競技団体それぞれ同じ歩調をもってみんなが
努力しようじゃないかという形で
強化策をとってきたのでございますが、本
年度の第一次
本格的活動期に入りますや、
重点的にこれは踏み切らなければならないということで、
重点主義に踏み切ったのでございます。それによりますと、
先ほどごらんになりましたような
オリンピック入賞目標、あの表を
中心といたしまして、
入賞数の多い
団体につきまして
重点的に
予算を振り当てるという
方針をとったのでございます。一方においては
選手をそういう
工合にしぼって
重点的に合宿その他の
方法で
強化をいたしますが、同時に、これを教える先生、すなわち、
コーチの力を充実するとともに、
コーチの
努力によって
選手を直接
強化しなければならぬという
方針を打ち出しまして、
コーチの数を昨年の二倍にしたのでございます。昨年は六十四名の
コーチがあったのでございますが、本
年度はこれを倍にいたしまして、百四名の
コーチに数をふやしたのでございます。もちろん、この間、
選手を
現場で指導するところの
コーチの
資質を向上させるために、
コーチ会議を開催いたしますと同時に、
海外へ派遣いたしまして勉強させるとか、あるいは
海外から
コーチを招きましてディスカッションをやるというような
方法なども講ずるようになっております。
一方、
選手には、国際的な
知識と
経験とを得させるために、国際的な
スポーツ交流を盛んにしなければならないということで、これも昨年は総計約三百名ばかりの人数の
国際交流が行なわれたのでございますが、本
年度は約三倍になりまして、九百名の
選手が国際的に
交流をするという計算になっておるのであります。
先ほども申し上げましたように、一応新しい
トレーニングの
方法によって
体力はついた。
技術については、過去において
わが国が持っておりました、相当高く評価されるところの
技術があるということで、
技術と
体力の問題については一応の
目安ができたのでございますが、さて第三の問題は、
精神力の問題であるわけでございます。そこで本
年度は、
選手にいかにして
根性をつけるかということで、私の方にありますところの
科学研究委員会に問題をぶつけまして、この回答が五月の半ばころ出る予定になっておるのであります。今の
選手に
根性をつけるということは非常にむずかしいようではありますが、しかし、好きで
スポーツの
世界に入ってきた者の目、心というものは、一様にその方に向いておるではないか。従って、
スポーツという
社会の中でみずからを規制し、みずから
目標を立て、それに向かって
努力するところの
選手というものはできないはずはないではないかということで、本
年度はぜひこの
精神力の
強化について、
根性の養成について
努力をしたいというのが、
強化対策本部の第二点の
方針であるわけでございます。私
たちは、われわれが信頼しておりますところの
選手諸君が、今まで
社会的ないろいろな悪気流の中で
十分目的に向かって突進し得なかったところの
隘路を
打開しながら、
オリンピックではみずから自分の二本の足で立って自己を主張するところのりっぱな
選手を作り上げたい、かように考えておるような次第でございます。
方法その他につきましては、いかにしてその
精神を植え付けることができるかなどにつきましては、五月半ばころ出て参りますところの
科学研究委員会の結論に基づきまして、それに
現場の
経験を加えながら実際の方策を打ち出したい、かように考えておるのでございます。
それから第三の問題は
隘路でございます。
隘路につきましては、全体の問題としてあらためて申し上げたい、かように存ずるのであります。五ヵ年
計画を立て、
オリンピックにおけるところの
メダル入賞目標を立て、しかも
現場における
コーチの
資質が向上し、
コーチが
ほんとうに一生懸命になって
選手にぶつかりまして、
体当たりで
選手を作っておる。
選手も、従来の
選手と違うりっぱなからだができ、それに
技術が植え付けられる。とにも
かくにも、何とかやれるという見通しがつきましたときに、さて現実的に、それでは
現場で
強化するにあたってどういう
隘路があるかということを調べてみますと、やはり現在の
わが国の
体育、
スポーツの
社会において
幾つかの大きな
隘路があるのでございます。目下、
強化対策本部では、その
打開策につきまして寄り寄り
協議をしておるのでございます。しかしながら、戦後の
わが国の
体育、
スポーツの歩み方が、
世界並みと申しますか、ほかの
国並みでなかったというような事情から、この
隘路の
打開はなかなか容易でないように思われるのであります。第一に数えられますのが
施設でございます。
施設につきましては、
東京でも
全国各地でも、いろいろと
運動場その他の
施設があるようでございますが、しかし、
重点主義的に
選手がしぼられて参りますと、
選手のいる
場所というものがある程度固まってくるわけでございます。そこで、ある程度固まって参りましたその
選手の住んでおりますところの周囲に
トレーニングする
場所があるかということを考えますと、これは全然ないとは申し上げられません。しかし、ないと言っても過言ではないような印象をわれわれは
委員会の中で受けるのであります。
現場の
コーチ諸君から、常に、それらの問題を解決してほしいということを言ってくるのであります。
東京の例をとりますと、
国立競技場が改装されます
関係から、四月一日以降、われわれが
トレーニング・
センターとして考えておりましたところの
国立競技場が使えなくなったということが第一でございます。
第二は、これはやむを得ざることではあったのでございますが、
朝霞に
オリンピック村ができるということで、
朝霞にできるところの
オリンピック村に作られるであろう
練習場は、早く作っていただいて
トレーニング・
センターにしようという
考え方を持っておったのでありますが、ワシントン・ハイツに
オリンピック村が移りました
関係から、われわれが
期待をしておりましたところの
トレーニング・
センターをここに作ることができなかったというような事態も起こってきておるのでございます。その他、
体育館その他の
施設につきましても、やはり同様のことが言えるのであります。従って、今この第一次の
本格的活動期におきまして、
競技団体の
現場が一番困っているのは
練習場の不足でございます。このことは、季節がよくなりました今、春秋の場合においてすらそうでございますが、これを本格的に
強化しなければならぬということになりますと、夏はある程度涼しい山の上へ
選手を上げて、そこで
訓練をしなければならぬ、冬は暖かいところに
選手を持っていきまして、そこで
訓練をしなければならぬというようなことになりますと、これまた
施設が十分であるとは言えないのであります。
競技団体ではいろいろ工夫をされまして、
現場の
コーチも
専心努力をされて、多少とも
打開はされていっておるのであります。しかしながら、その
打開の仕方は十分であるとは言えないのであります。
それからもう
一つは、
器具、
用具でございます。専門のからだを作る、あるいは
技術をみがくところの
器具、
用具が
わが国には非常に少ないということでございます。今日、
選手を作りますところの
トレーニングの
方法が変わりまして、新しいと申しますか、今までにないところの
器具、
用具を使って
選手を鍛え上げていく。それは
宇宙飛行をやりましたソ連のガガーリンの
トレーニングの仕方などによっても明らかでございますが、すぐれた
世界的な
選手を作るには、やはり別の
トレーニングの
用具を作らなければいけないのでございますが、これにつきましても、
考え方はあるにかかわらず、十分なことが現在においてはできないということでございます。
こまかいことを申し上げると切りはないのでございますが、現在それらを含めまして
幾つかの
隘路を持っておるわけでございます。しかしながら、今日この
段階においてどうしても解決してやらなければならない、私
たちがあの一生懸命やっている
コーチの顔を見て、これに対して共同の
責任をとらなければならぬということであるならば、
トレーニング・
センターの
施設、
競技場の
施設並びに
器具、
用具の問題は早急にこれを解決をしてあげなければならない、かように考えておるのであります。今後これらの問題につきましてはなお
慎重審議をいたしまして、これは、
オリンピックに好意を持たれ、また積極的にこれを支援していただきますところの
関係各
方面の御理解を願って、何かの
方法で解決をいたしていきたい、かように考えておるのであります。大体大ざっぱに見積もりまして、今後七億円ばかりの経費がかかるという
工合に見られておるのでございます。ここでこの
隘路が
打開されるならば、
先ほど申し上げましたところの
メダル五十七、これは全部とはもちろん申し上げられませんが、これに向かって
準備をし、それに向かって
邁進をいたしていくところの態勢だけはでき上がる、かように存ずるのでございます。
きわめて大ざっぱに御
説明を申し上げて、十分とは申し上げられませんが、それぞれの
競技団体のことなどにつきましても、それぞれ代表者が来ておられますので、御聴取をお願いいたします。
きわめて簡単ではございますが、私の御報告はこれをもって終わりたいと存じます。