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1961-09-30 第39回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年九月三十日(土曜日)    午前十時十九分開議     ―――――――――――――  議事日程 第五号   昭和三十六年九月三十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件  (第三日)  第二 常任委員長選挙     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第三日)     ―――――――――――――
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)。  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。相澤重明君。   〔相澤重明君登壇、拍手
  4. 相澤重明

    相澤重明君 私は、日本社会党を代表して、総理の施政方針並びに関係国務大臣に対して質問を行なわんとするものであります。  この臨時国会は、災害対策国会ともいうべきもので、去る六月の梅雨前線豪雨を初め、室戸第二号台風被害に対し、予算化立法化等により、国民諸君の期待にこたえるのが責任であると思うのであります。私はこの機会に、被災者諸君にお見舞を申し上げるとともに、災害により物故された各位並びに御遺族に対し、衷心より哀悼の意を表するものであります。今次災害発生するや、わが党は早期臨時国会開催を要求したにもかかわらず、池田内閣の無責任が今日まで延引したことは、まことに遺憾しごくであり、政府はその理由を明らかにしなければならないのであります。  次に、池田総理に対し、政治の姿勢についてお尋ねいたします。総理は話し合いの政治を口にされるのでありますが、前国会末期のごとき状態を何と考えられるでありましょうか。政防法の審議については、民主主義に逆行する問答無用多数決という、きわめて高姿勢があのような混乱を惹起したことを反省し、政防法のごときは廃案となし、国民生活に重要な法案を審議すべきであると思うが、総理の見解を問うのであります。  またこの臨時国会では、与野党が十分話し合って国会正常化に努力すべきであるにもかかわらず、衆議院においてわが党議員の懲罰問題を再現し、無理に国会運営に混乱を起こしたことは、まことに残念の一語に尽きるのであります。しかしこれは話し合いがつきましたけれども、やはり総理としては、少なくとも一党独裁でなく、民主主義の原則に立って、議席数による配分をする、あるいは国会正常化をはかる、こういう基本的な考え方を明らかにしてもらいたいと思うのであります。  第二点は、綱紀粛正汚職追放についてであります。最近とみに日立つのは、公務員政府関係者汚職事件であります。しかもその代表的ともいうのが今回の武鉄免許にかかる点であることは諸君が御承知の通りであります。政府はいかなる責任をとるのか。対策を持っておるのか。今次武鉄事件は多額な金品により政財界に波及したのであるが、楢橋君は現大臣でないから池田内閣に責任がない、こういうようなおそらく総理の御答弁があろうと思うのです。あなたは岸内閣で同じ国務大臣であり、かつ事案そのものは本年七月十一日認可という池田内閣のもとに行なわれたことであります。私鉄に対する免許は戦後三回目であるが、今までの筑豊、伊豆急行の二件はいずれも三年以上の時日を要したのであります。武鉄は、申請をした当時は全く問題にならないほど、資金的にも内容的にもずさんであるということを当時指摘されておったのであります。今その内容を考えて参りますと、三十三年十二月に大日産業社長滝島総一郎君が部下の総務、人事あるいは経理等の者と、埼玉銀行の頭取あるいは人事部長あるいは支店長、こういう人たちと一緒になって、そうしてあるいはまた土地買収のために白雲観光会社等を設立をして、この事案というものをでっち上げたものであります。当時このことを調べて参りますというと、東京京橋埼玉銀行会議室において、発起人会議が十二月に持たれております。そしてその十二月発起人会を持つと同時に、中央線三鷹駅――秩父市御花畑間の約六十二キロ、これに対する免許申請をしたものであります。三十四年三月にはこの用地買収のために白雲観光株式会社を設立をいたしましたが、資金的にも、あるいは免許をめぐる問題についても、役員会の意見が一致しなかった。したがって、当時埼玉銀行平沼頭取あるいはまた滝島白雲観光社長は、相次いで役員会を実は脱退をしておるのであります。そういう中に三十五年五月の公聴会では、このような中に西武鉄道等の猛烈な反対もあって、ついにこれは免許がされなかったのであります。しかし楢橋君が在任中のことであるし、これらの関係を大映社長の大川君等の「つて」によって、元蔵相の小笠原君を代表者として、ついに政財界の顔ぶれをそろえて、そうして武鉄企業の改組を行なった、こういう経緯ということが言われておるのであります。したがってこれが事実とするならば、いわゆる政治家に対するところの大きな工作というものが行なわれて、ついに武鉄免許に本年は踏み切ったというのが、本年七月に運輸審議会において委員が妥当と答申をし、しかも七月十一日に木暮運輸大臣が、三十八年七月十日までに着工の条件付で免許を行なったのであります。資金的には、五十六億円余の資金のうち自己資金は約三十億、借入金が二十六億、自己資金のうち三分の一は公募、三分の二は発起人負担ということで、しかも問題のある青梅土地区画整理組合との関係、あるいは政界工作との関係、こういう点で使途額は実に十億余になろうと言われておるのであります。土地購入代金は約十一億でありますから、こういう点を調べて参りますと、きわめて問題が残されているのであります。かくして希代の大山師と言われたところの滝島総一郎に踊らされ、また利用され、また利権を得た者は数十人に及ぶという、しかもその中に政治家が重要な役割を果たしているということであっては、国民の疑惑の出るのは私は当然だろうと思うのであります。こういう点に対して、政治に対する不信これ以上のものはありませんから、総理はどういうふうに内閣として責任をとるのか、その点を明らかにされたいと思うのであります。  また法務大臣には、大映の大川社長に、お母さんの病気見舞ということで、五日間の拘留停止をされたということであるが、一たん帰って来ても、こういう重要な事案について、そういうことが軽々しく許されていいものかどうか、こういう点を私は法務省の見解を明らかにしてもらいたいと思うのであります。  池田総理は、自民党政治資金源である国民協会を中心に近代化すれば、不祥事故はなくなると、あなたは言われたそうでありますが、選挙に金のかかることを野放図にして、金をかける選挙をやるということをしておって、どうして汚職がなくなるでありましょう。しょせんは保守党の持つ選挙――利権――金、こういう宿命的とでもいうべきものではないかと思うのであります。あなたの言うように国民協会で金集めをされるというときは、それじゃあなたの宏池会なり、あるいは隣りにすわっている佐藤さんの周山会なり、あるいはその隣りの河野さんの春秋会なり、あるいはそれらの後援会ですか、そういうものは一体解散をするのですか、どうですか。  さらに武鉄については発起人関係者も疑惑を持たれておるから、運営しも私は相当問題があろうと思う。免許について再審査の考えはないか。またこのような疑惑を持たれる免許を答申した運輸審議会の構成、運営について、運輸大臣はどう考えるか。免許事業については、さらに電波事業のごとくに、仮免許制度についても研究する必要はないのか。総理並びに運輸大臣の答弁を求める次第であります。  第三は災害対策についてであります。昭和二十八年の西日本の水害を初めとして、三十三年の狩野川台風、三十四年の伊勢湾台風、三十五年のチリ地震津波、本年の梅雨前線の豪雨及び室戸第二号台風と、災害日本と言われるほど大きな災害にわれわれは見舞われているのであります。これらの災害によりまして、人的には、死亡、行方不明者実に七千五百余人、罹災者の数は約四百万人、家屋の全半壊、流出は二十万戸に及んでおり、公共土木施設だけでも約二千五百億余、田畑は約四千億余の被害を見ているのであります。国民の人命財産がいかに多くの犠牲となっているかを真剣に考えなければならぬと思うのであります。災害補正は、今次百四億八千百万円と追加予備費百二十億ということを蔵相が言われておるのでありますが、とれでは単なる復旧だけで、改善はできないのじゃないか。公共土木農林水産文教施設商工関係だけでも七百億以上の被害があるのであります。また、公社関係の被害にはどうするか。総理は口を開けば、「経済のことは私におまかせ下さい」、そう言っておるが、去る二十二日の新聞記者諸君との会見では、あなたは、国民の生命財産まで預かると言ったそうでありますが、しからば、大蔵当局の推定による三十六年度税収自然増は約二千五百億、三十七年度には四千五百億以上を見込まれておるというが、国民から取り過ぎた税金は、当然大幅減税を行なうと同時に、こういう災害のようなときには、再災害の起こらぬように、改善のため前向きの施策が必要であると思うがどうか。  この際、中村建設大臣に一言聞いておきたい。あなたは、大阪を初め、被災地の調査及びお見舞に行ったそうだが、大阪西淀川区西島川の決壊により、全市のうち、約十二万戸にも達する浸水で、現地の人々は不眠不休、排水に努力しておったそうであります。現地調査に行った責任者のあなたが、自動車をおりないで、車の中から現地を見て素通りしようとした、こういうことで、現地の被災者の憤激を買ったということは事実かどうか。事実とすれば、これは非常に重大な問題である。あなたに輿相を話してもらいたい。  今年の災害の特徴は、異常な豪雨のため、中小河川あるいは宅地造成のための被害がまことに多かったのであります。政府は、三十六年度より十カ年計画で九千二百億を投じて、治山治水海岸保全防災ダム河川改修、あるいは道路五カ年計画では二兆一千億の巨費を投じて、輸送力の確保、幹線道路大都市街路整備等に着手するのでありますが、人手不足や資材の値上がりに対してどんな手を打とうとしておるのであるか、それをお伺いしたいのであります。  国土開発についても、各省の意見はばらばらであります。公共投資都市建設工業配置についても、自治省は基幹都市案、建設省は広域都市案、通産省は工業立地計画、こんなばらばらなことで、一体どうして総合的なことができるのか。今回ようやく政府も、経済圏拠点開発方式をとるということで、六つの経済圏を作ったそうでありますが、低開発地域工業促進について考え方を明らかにしてもらいたいのであります。企画庁初め関係大臣の答弁を求めます。  災害は必ずしも天災ばかりではありません。対策を忘れ、投資を惜しんだ余り人災が生まれるのであります。これは厳に反省しなければなりません。新潟県白根市を流れる信濃川の支流中ノロ川の堤防決壊により、農林省の保管米四百三十九俵を土のうがわりに使ったことがあります。これは、ひとつ河野農林大臣から政府の考えを明らかにしてもらいたい。現地調査の結果は、災害に対する認識の欠如と、地元一部の者と保守政治家の結託の結果、今回のこうした事件が起きたのであります。県が当初計画した永久橋のかけかえ、堤防のかさ上げということをやっておったら、今回のような事故はおこらなかった、こう言われておるのであります。政府は、人災をなくするために厳重なる監督指導に当たるべきであるが、どうするか。  国際的には非常に核開発に血道を上げておる米ソの対立、あるいはその進歩の中で日本は竹やり的存在自衛隊の増強に狂奔している。あまつさえ、国民勤労階層生活難をよそに、次期戦闘機ロッキードの生産に一千億にもなろうとする財政債務負担行為をのうのうとやっておる自民党池田政権の無神経、無感覚には、全くあきれてものも言えない。(拍手)自衛隊国土開発隊に再編成すれば、憲法改正も必要ないし、多額な債務負担行為である、おもちゃのロッキードを作るのをやめて、平和国土建設のために、再災害防止のために投資し、万全の備えをなすべきであると思うが、どうか。伊勢湾台風の経験や本年災害にかんがみ、高潮対策地盤沈下対策並びに被災者住宅対策農林漁業施設農林物植栽復旧中小企業対策について、さらに災害対策基本法等関係立法化資金対策についてもどうするのか、総理並びに関係大臣のお答えをいただきたい。  第四は、船ごみの問題であります。運輸大臣は、九月十三日から港運事業の新料率を実施をいたしましたが、現在の船ごみの状態をどうしてあなたは解決しようとするのか。これは根本問題は、労働災害をなくし、労働者労働条件生活条件の改善以外に私はないと思うが、どうか。現在の港湾運送事業による貿易外収入は幾らか。通産大臣に、また、その貿易外収入はどういう面に使用されておるのか、御答弁をいただきたい。  なお、運輸大臣には、第十七次造船計画と、さらに問題になっておる戦標船、これらの関係についての資金対策等についても御説明をいただきたい。  次は、米軍基地の関係の問題であります。特に最近、軍事基地の周辺におきましては被害が非常に多いのであります。ジェット機の墜落事故、爆弾をあやまって落とす誤投問題、爆音による被害は今や人権問題にまで発展しておるのであります。わが党が主張するように、国際的には中立政策をとるならば、日米安保条約は要らないし、また、当然米軍の基地もなくなるのでありますから、これはもう問題はない。しかし、歴代自民党内閣の誤った考えが、今や基地問題を頂点として、日本民族を拷問にかけていると言っても、これは過言ではない。政府は、五月十三日に、米軍及び自衛隊等基地に関する主要問題を討議するため、基地問題等閣僚懇談会を作った。さらに、下部機関として、基地等周辺問題対策協議会をおそまきながら設けたいということは、これは私はけっこうだと思う。その構成、運営、内容等について明らかにしてもらいたい。今後、大和、小牧、板付等関係地区問題解決への方向を明らかにしてもらいたいと思うのであります。現在、日米合同委員会で、米側の要求で、基地周辺航空地役権を設定する協定を協議中と聞いておるが、外務大臣防衛庁長官に経過並びに内容を明らかにしてもらいたい。さらに、米軍は勝手気ままな飛行コースをとっておるが、政府はいかなる対策を持っておるのか、話を進めておるのか。米軍機によるこの被害というのは、テレビ、ラジオ、そうして電話、こういうものが全く聞こえない。見ることもできない。料金不払い同盟ができるのも、これは当然であります。前の小金郵政大臣は、これは、陳情者に対して、全くあなた方のおっしゃる通りである。これは人災であるから、事務当局検討立案を命じた。こういうことを言われておるのでありますが、この視聴料金問題や国、地方税の減免については、災害に準じた特例を認めて、基地交付金等による財源補てんをなす考えがあるかどうか、関係大臣の御答弁をいただきたい。また、移転補償問題についても合理的解決ができないか。なお、これら関係立法で補償されぬ部面に対し、国家補償を行なうべきであると思うが、国家賠償法の改正を行なう必要があるのではないか。総理大臣、あなたに特に私の長い間の質問でありますから、今回はお答え願いたい。国家賠償法を改正する意思があるかどうか、なお、関係大臣の御答弁をいただきたい。  第六は文教政策についてであります。荒木文政の反動的なことは、これは自他ともに許しておることであります。(拍手)あなた自身は、何でも自分の言うことは正しいことと思っているかもしれませんが、いざ一つお尋ねいたしましょう。第一は、十月二十六日、全国一斉の学力テストはどんなねらいか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。-おそらく、条件整備と言われるでありましょう。しからば、条件整備とは何か、五教科のテストのために、他の教科を全部犠牲にする、あるいはからだの悪い者でも何でも、全部その試験を受けなければならぬ、こういうことは、……国家が問題を提出するような例は諸外国にあるか、日本だけじゃないか。米国が国防教育法をきめて、テストしたことがありますが、それもすでに二〇%以下ですよ。それから、英国の場合におきましても、十六才になると資格試験をとらせている。これは今は自主的に行なわれて、文部省というのはノー・タッチであります。今回文部省が行なわんとする学力テストは、憲法二十六条の学問の自由、機会均等の精神を全く侵すものであり、そのねらいは、日本国民の頭の程度を下げる、あるいは低賃金政策、こういう現われではないかとも疑わざるを得ない。昨年十二月の学術月報を見なさい。十年後の人材企業別によると、中学卒業が百四十万、高校卒が四十四万、大学卒は十七万人とされており、ちょうど符節が一致するのじゃないか。また、今回のテストを起案した者は一体だれなのか。これは経済企画庁の中にある総合計画人的能力委員会ではないか。その中には調査計画目録に、一斉学力テスト文部担当としておる。藤山君どうなのか。子供の教育に全生涯をささげておる教師の意思をじゅうりんする考えか。地方教委と教師との話し合いによる方向をとるべきだと思うがどうか、文部大臣。さらに、千葉県では来春卒業する中学生をすでに実習名義で就職をさせておるというが、学校教育基本法労働基準法違反ではないか。労働大臣文部大臣のお考えを聞きたい。さらに、神奈川県下で、平塚では炭鉱労働者の百七十六世帯の集団移転があります。これについてもしこのままで就学させますと、一学級五十九人から六十一人というようなすし詰め教育になると思うが、政府はこれらの問題について、当局間の連絡と地教委、自治体への協力、指示はないのか、この際、関係大臣の御答弁をいただきたい。  次は、科学技術の問題でありますが、これはもう政府が七年間に一万六千人の定員増をはかると言っておりましたけれどもこれじゃ足りない。いわゆる国公私立大学を通じ、理工系の増員計画、あるいはまたそれに必要な施設、設備の拡充、近代化のための予算の増及び助成の大幅拡大、さらに補助対象の拡大、融資及び免税措置等についてひとつ御説明をいただきたい。さらに、教員の定数がふえなければ幾らそう言ってもこれは何にもならない。研究費の増額、待遇の改善という点について関係大臣の御答弁を願いたいのであります。  第七は労働問題であります。福永労働大臣国際機関に出席して、わが国労働事情をよく紹介したようであります。たいへん御苦労さまでした。しかし、帰ってから、一体日本の労働者の地位、労働条件あるいは生活条件がどうなっておるかということをあなたは反省されましたか。特に、労働慣行の樹立やいわゆる中高年令層失業状態を見て、完全雇用ということを言っておるが、一体どうするのか、何か名案を考えましたか。現在求人難というが、実際に職安の窓口に行ってみると、失業者が列をなして窓口で職を探しておるのであります。労働省のあなたのところで調査しているところによれば、五十一才以上は男が十九人に一人、女が九人に一人しか就職のチャンスがない。いわゆる三十才以上の九割はあぶれだと見ておるのですが、三十一才以上の失業者は何人いるか。また、職業訓練を行なっておりますが、現状はどのくらい職業訓練を行なっておるか。その経過と今後の方針を聞かせてもらいたい。特に、中小企業の求人は全くお手上げの格好であります。どうしたらいいか、そういう点についてもあわせて御答弁を願いたい。結局、労働者賃金状態労働条件の向上以外に私はないと思う。政府の最低賃金制、ああいうごまかしをやめて、正しい方向に私は認識を変える必要があると思う。  次は、労働争議の問題であるが、経営者もだんだんよくなって参りまして、近代的経営方針を持つようになってきたので、件数は減ってきたが、しかし、今起きておる争議というものは、きわめて経営者の中にはヒステリックであり、しかも悪質な事件が多くなっておる。私ども神奈川県では、相鉄、日の出両交通の争議を見てみますと、経営者は全くロック・アウトしておって逃げて歩いておる、経営権の放棄をしておるのであります。こういう悪質なものは、免許を取り消すとか、厳罰に処すべきであると思うが、労働、運輸大臣の答弁を求める。  最後に、賃金の引き上げについてでありますが、今回人事院勧告によって七・一%、総額百八十四億を計上して十月一日から実施する、こういうものを蔵相が提案された。これはしかし、人事院の勧告というものを、あなたはすなおにいわゆる尊重しておるのでありましょうか。また、労働者の給与について関係者と十分相談し、話し合いをするということが本来でありますが、なぜ公務員共闘話し合いをしなかったのか。今の物価高から言えば五千円というくらいのものは当然じゃないですか。私ども国会議員を上げるばかりではなく、そういう公務員も上げなければならない。そういうことで、今回の補正で、中央あるいは地方公務員公共企業体職員、こういうところに対する補正というものはあなたの提案で十分なのか、この点御答弁をいただきたい。  失対労務者についてでありますが、福永労働大臣、あなたはなぜ失対労務者に対して賃金を上げてやることができないのか。それともあなたは、失対労務者は食っても食わなくてもいい、こういう考えなのか、それともあなた自身の力がなかったのか、この点はっきりお答え願いたい。  次は、医療社会保障関係でありますが、同僚議員からすでにお尋ねしてありますから、私は簡単に厚生大臣にお答えいただきたい。国民健康保険事務費の問題あるいは家族の負担についてどうするか、あるいは医療費の問題について、なぜ両医師会薬剤師会と十分話し合って、この機会に補正予算に計上できなかったのか、この点はっきりしていただきたい。  最後ににネルギー対策についてであります。わが国エネルギー対策はきわめて不十分である。いかに経済成長所得倍増を呼号しても、実効の上がらないのは当然であります。政府は諸外国の例を取り入れ、総合エネルギー対策について、行政上、専管省あるいは公団等を設ける考えはありませんか。通産大臣。  次に、貿易自由化により今後のエネルギー対策の中心は石油に変えると通産省は言っておるが、三十九年までに非能率炭鉱を六百二十万トンも買って山をつぶしてしまうというが、そういうことが事実なのかどうか。そのために、石油各社は現在非常に競争して、外資導入を考えている。その総額一億五千万ドルを上回ると私は承知している。しかも出資してもよろしいというのが数社あります。政府は石炭産業について、赤字だから、経営不振だから、こういうことで、エネルギー革命、いわゆる石炭斜陽論ということを唱えて、炭鉱経営者とともに、三十九年までに炭価を千二百円、労働者を十一万人にも及ぶ膨大な首切り、合理化政策を進めようとしているのである。三十五年度のわが国エネルギー総需要量は石炭換算で一億五千五百八十二万トン、そのうち五千九百八十四万トン、つまり三八%までが石炭であります。さらに製造工業におけるエネルギー費が全生産費との比率は五・七あるいは六%ではないか。石油に切りかえても、総コストの低下はわずか一、二%ではないかと思うが、諸外国においても石炭と石油の競争が激しいということは私どもも承知しております。その諸外国でも、総エネルギーの六〇%――七〇%は石炭確保のために必死の努力をしていることを通産大臣は忘れてはいかんと思う。それはとりもなおさず、石油の原産地を除けば輸入エネルギーが不安であるということを十分承知しているからであります。同時にまた、労働者の雇用あるいは地域開発、こういう問題が不可分の問題であるからである。政府がせっかくの地下資源を活用しないで、外国エネルギーに依存することは、国民のためでない。一部金融資本独占に奉仕する以外の何ものでもないことを暴露するものである。一時的な対策、貿易自由化のムードによる幻惑でなく、外国事情や国家的経済事情の立場から輸入エネルギー資源に頼ることなく、国産エネルギー資源の開発に資金的にも政治的にも配慮し、労働者の生活を守るとともに、地域経済の衰退を食いとめるために、本臨時国会でわが党はエネルギー特別委員会設置を提唱するものである。政府もそのように踏み切ったようでありますが、はっきりお答えをいただきたい。  以上の立場で、わが党は政府に対し、石炭政策の転換を強く希望するものであります。池田総理通産大臣並びに関係大臣の誠意ある御答弁を望みまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
  5. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げますが、御尋ねの第一点は、話し合い政治についてでございます。私は御説のように、組閣以来、また党の総裁になりましてから、議会運営を正常化するためには、どうしても各党が話し合って結論を出すことがけっこうだと、こういうので、その方針で進んでおります。  次に武州鉄道の汚職の問題でございますが、まことに遺憾なことでございます。ただいま検察当局は厳正公平な態度で調査中でございまするから、その結果を待ちたいと考えております。  なお、国民協会についてのお話でございまするが、われわれは、政党が国民と直結し、そうしてまた政党の運営が清く正しくあるべきと、こういう理想のもとに、外郭団体の国民協会を、今、作っていただきつつあるのであります。これによりまして、今までの、各人の持っておりまする政治結社は、私は自粛してしかるべきと考えております。  次に災害対策の問題でございまするが、本国会にも災害対策基本法を御審議願うことに相なっております。また昨年より治山治水十カ年計画を立てまして、これが対策につきまして万全を期しておるのであります。しかし、お話のように、災害は年を追うて出て参りますので、今までの計画、また今回の災害対策基本法等の運用にあたりまして十分注意して、できるだけの対策を講じていきたいと考えております。  国家賠償法について改正する気はないか。――私はどいう点を改正するか、御質問内容がわかりませんが、国家賠償法は制定後十余年たっております。不備の点があれば、これを再検討するにやぶさかではございません。  石炭問題、基地問題等、御質問の点は関係閣僚よりお答えいたさせます。(拍手)   〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手
  6. 植木庚子郎

    国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。  私への御質問は、大映の永田社長の身柄拘置の執行停止について軽卒な点がありはしなかったかと、こういう御質問であったと思います。申すまでもなく、こうした場合におきまして身柄拘置の執行停止をするということは、検察当局、すなわち捜査当局のためには、捜査上非常に不便が多いことは申すまでもございません。しかしながら、事、人道上に関するような問題等の場合におきましては、刑事訴訟法にも、御承知のとおり規定がございまして、そうしてこれを執行を停止する場合はたくさん例があるのであります。一部では、これを、異例な例だということも言われておりますが、たとえば、全国の統計はまだ手元にございませんが、東京地裁だけの例を見ましても、本年一月から半年の間に、約二十件にわたっての類似の例がございます。この具体的の、永田氏の場合におきましても、十分われわれといたしましては、また検察当局は出先の機関にも命じまして、十分調査をいたしまして、そうして真にやむを得ないものと考えましたので、裁判所当局に対しましてもやむを得ないと考える旨を申し立てて、この仕儀になった次第でございます。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手
  7. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 武州鉄道の免許問題にからみまして、いろいろ疑惑を受けておりますごとは、私といたしましてもまことに遺憾に存ずる次第でございます。この免許の再審査をする考えはないかというお尋ねに対しましては、武州鉄道の免許の際における発起人は、その資力信用とも十分な方々が発起人総代になっておられますので、その他の点につきましては今日の状態におきましては再審査をする考えはございません。また、この免許には再審査の制度はないのでございます。  運輸審議会の機構等について考えはどうかということで、ございますが、運輸審議会の機構につきましても、私は今までの検討の結果は、運輸審議会の機構はあれでけっこうだ、かように考えております。  なお、電波法による仮免許制度のようなものを、この私鉄の免許の場合に考えてみてはどうかというお尋ねでございまするが、今日の私鉄の免許は、その後に工事設計の認可をもう一度いたすことになっております。その際に、はたして実際に適合した工事が施行せられるかどうかということを審査する機会を法律によって与えられておるわけでございまするので、従って仮免許制度と同じような効果であると考えております。しかしながら、せっかくの御意見でございまするので、今後この仮免許制度につきましては、法の改正について考えてみたいと、かように存じます。  なお、船ごみ対策につきましては、御承知のように、昨今、日本の主要港が非常に滞船滞貨の著しい現象を現わしておりますので、これは港湾整備の不十分、あるいは労務が十分でないというような点が主要の原因でございます。したがいまして本年度内におきましても、予備費をもちまして、事業費といたしましては、港湾整備の金として十億円の事業を行なえるようにいたして、そうしていわゆるバースの数をふやす。また、その他、倉庫、上屋、はしけ、荷役機械業の整備を急速にはかる必要がありますので、これらに対して財政資金のあっせんをただいまいたしておるわけでございます。しかしながら、何といっても、仰せのとおり、港湾機能の発揮には十分な労務対策が必要なわけでございます。労働大臣とも打ち合わせをいたしまして、労働関係におきまして、雇用促進事業公団で住宅を急速に建設をしていただくこと、その他十分な労務管理についていろいろと協議をいたし、その実効を上げたい。かように考えておるわけでございます。  十七次船の資金計画につきましては、御承知のとおり、十七次船の計画造船は二十五万トンでございます。これを五十万トンに増加をいたしたわけでございますが、しかしながら、二十五万トンのこの開銀融資は、造船の実施がおくれておりますために、今年度において融資をする額は、起工がおくれておるという関係から、すでに準備をせられておる融資の額でまかない得ることに相なっておるわけでございます。  以上お答えを申し上げます。(拍手)   〔国務大臣中村梅吉君登壇、拍手
  8. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ただいま西島川被災地の視察に関連いたしましてお尋ねがございましたので、この機会にごく簡潔に御説明申し上げておきたいと思うのでありますが、実は九月二十一、二日の両日、私、大阪府及び和歌山県の災害見舞いかたがた現地視察に参ったのでありますが、この視察日程に関しましては、一切、近畿地建と大阪府及び和歌山県等にその時間的配分等をまかして出かけました。二十一日、実は午後に飛行機で大阪に到着いたしまして、まず府庁に行って、いろいろ災害状況の説明を聞き、各般の要望を拝聴いたしまして、かれこれ実は時間がずれて、四時になってしまいました。六時から記者会見が現地で予定されておりましたので、その間の時間内に大阪市内だけを視察をしたいということでありましたが、まあ案内をされました大阪府にしてみますると、この限られた時間のうちで、できるだけ広範囲を連れて歩きたいという意図があったものと見えまして、西島川の被災地の個所におきましても、案内役としては、自動車の上から視察をして通過をしようという計画のようであったようであります。ところが、現地の方々は非常に熱心で、大ぜい集まっておったようで、その結果、私としては、その状況を見まして、みずからドアを排して、現地に徒歩で入っていったのでございます。したがって、それまでの間は、大阪府の土木部長が助手台に乗っておりまして、案内役は通過しようとするし、地元の人たちは通らせないというわけで、自動車を包囲したような形態になりましたから、なるほどあまりかんばしくないような状況でございました。そこで私は、直ちにおりまして、現場まで歩いていきまして、そこへ集まっておられた諸君のいろいろ御意見等も拝聴し、別れるときに握手して、みななごやかに別れたわけであります。そういう次第でございまして、私としては、一面遺憾な面もございましたが、非常に短時間の間に見せる方としてはできるだけ広範囲の罹災場所を見せたいということに関連をしておったと思いまするので、この点は、どうぞひとつお含みおきをいただきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  9. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 災害対策予算関係だと思いますが、今回の補正予算に計上しました災害復旧費の内容は、すでに調査の完了したものにつきましては、調査の数字をもとにして今年度の所要額を計上したものであります。また、第二室戸台風関係のものは調査が終わっておりませんので、被害報告をもとにして今年度の所要額を推定し、予備費を追加計上したものでございまして、復旧の措置には支障を来たさないようにするつもりでございます。  公務員の給与引き上げにつきましては、内容人事院勧告を尊重してそのとおり行いましたし、期日の問題は昨年の例に準じて十月一日からいたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 国土開発計画が非常に日本の産業の発展に重要なことは、お説のとおりでございまして、しかも、これを総合的に実施して参りますことが、能率的な日本経済発展に貢献することだと思います。御指摘のように、各省でもっていろいろそれぞれ案を作っておりましたので、今回これを一括いたしまして、一つの法律案にまとめまして、できればこの国会の中ごろに提出をいたしたいと、こういうように考えておりますので、御了承をいただきたいと思います。  なお、国土開発計画にあたりまして、災害防止についての十分な考慮をいたしますことは、これは当然申すまでもないことでございまして、それらにつきましても最善の注意をして参りたいと存じております。  なお、企画庁にあります経済審議会の人的委員会は、今日人的能力部会として、能力をどういうふうに測定したらいいかという基本的な原則を検討をいたしておるのでありまして、まだその結論は得ておりません。私といたしましては、何か文部省の下請でもしたような、試験問題を作ったというようなことについては存じておりませんし、そういうことはないと存じております。(拍手)  〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  11. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま国土計画の問題については経済企画庁長官からお答えをいたしました。通産省といたしましても、最近の工業地帯の造成につきまして、特に地下水等の利用が多くて、それが沈下を招来しているというような事柄もございますので、すでに制定を見ました工業用水法の運用にあたりまして、十分指定地域の地下水のくみ上げ等は今後厳重に取り締まって参るつもりでございます。  次は、石炭対策エネルギー問題についてのお尋ねであったと思います。たいへん時期を得た、私どもが腐心している問題であります、その点についてお尋ねをいただきまして、たいへん私も感激いたしておるのでございます。このエネルギーの問題につきましては、私が申し上げるまでもなく、もうすでに御承知のように、通産省は、総合エネルギー対策としての検討をただいま進めておりまして、その部会においては、石炭部会からすでに答申を得ております。しかし、通産省だけで処理のできない問題が多いのでございますから、政府におきましては、来週早々に関係大臣が集まりまして、石炭対策の基本的対策を検討考究する、こういうように運びが進んでおります。ただ、先ほどのお尋ねのうちに、御意見にわたりますが、あるいは動力省を作るような考えはないか、こういうお尋ねがございました。これも一つのりっぱな構想かと思いますが、私どもといたしましては、ただいまさような結論は出しておりません。また、石炭自身が斜陽産業であり、今後の見通しが立たないような御心配があるやのようなお尋ねを伺ったのでありますが、すでに御承知のように、政府は今後五千五百万トンの石炭確保して参る、こういう基本的な計画を持っております。すでに発表した数字といたしましては、四十五年度の総エネルギー需要量は、石炭換算にいたしまして三億三百万トンというエネルギーの総需要量計画いたしておりますが、さような際におきましても、五千五百万トン確保というこの基本線には動きはないのでありますから、この意味においての石炭の採炭の合理化なり、あるいは炭業の維持、これについての諸般の対策を立てて参る、かような考えでございます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手
  12. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 過半の災害における新潟の政府所有米使用につきましては、それぞれの関係当局にも御調査をいただきまして、いろいろ打ち合わせをいたしました結果、緊急やむを得ざる処置ということに決定をみておりまして、それぞれによって処置をすることにいたしております。さよう御承知おき願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手
  13. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 私に対する御質問は、主として防衛庁長官からお答えになったほうが適切な問題だと思いますが、米軍基地による損害、あるいは誤投下による被害等が起きます場合におきましては、逐次日米合同委員会におきまして米軍に善処方を申し入れ、そうした災害が起こらぬように注意を喚起する、そのようにいたしておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介君登壇、拍手
  14. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 米軍の墜落機あるいは米軍機による誤投下等の被害を未然に防止するために、あるいは標的の移転、重要施設上空の飛行の制限、あるいは機体等の厳重な点検等を米軍側に申し入れまして、それを実施をいたしておるのでございますが、しかし、不幸にいたしましてなおそうした被害がございますので、被害事故を起こしました場合には、十分米軍側にその原因の探究の要求をいたしまして、同一原因による事故を起こさないように努めておる次第でございます。  基地周辺の騒音の問題につきましては、飛行時間の制限あるいは進入経路の変更、飛行方法の変更等を米軍に求めまして、その実施をしてもらっておるわけでございますが、さらに周辺教育施設、療養施設等の騒音の防止の工事等の実施をいたしております。いずれにいたしましても、基地周辺の種々の問題につきましては、単に防衛庁、調達庁というような一部局でなく、政府全体としてこれを解決する必要がございますので、基地等問題閣僚懇談会、あるいは事務クラスによる基地周辺の整備に関する協議会を設けまして、積極的な解決をはかりたいと存じて、すでに数回にわたってこれらを開催いたしておるような次第でございます。  なお航空基地における航空地役権の問題でございますが、航空基地を提供しておる以上、その飛行活動が円満に行なわれるようにいたすことは必要でございますが、地役権というような形でそれをいたすか、あるいは話し合いによりましてこれをいたすかということについては、なお検討の要がございますので、十分研究をして参りたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手
  15. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 基地周辺におけるラジオ、テレビの受信障害があることは事実でございますが、これらに対する聴視料等を免除することについては、現在の仕組みによりましては、日本放送協会から政府にその旨の認可の申請があって、それに対して政府はこれを審査して可否をきめるという仕組みになっております。現在までのところ、日本放送協会からはその種の申請が出ておりません。なお、聞くところによりますと、日本放送協会では、陳情のございました厚木周辺につきましては、その最もひどいところを例にとりまして綿密な調査をしたそうでございまするが、その結果得られましたところは、受信障害は時間的にはきわめて短時間であって、これによって受信契約を要しないものとして受信料を免除するということは困難だという判定をしているという報告を受けております。(拍手)   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手
  16. 荒木萬壽夫

    国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  第一点は、来たる十月二十六日に行なう予定をいたしております中学校の学力一斉調査についてのお尋ねであったと思います。お尋ねは、何のためにやるのだというのがその一つでございましたが、これは義務教育の最終段階におきまして中学の生徒の教育水準を実態的に正確に把握したい。そういたしまして、その結果に基づいて諸般の教育条件の整備あるいは学習指導の改善をはかるよすがにしたい。まあそういうことを目的としてやるわけでございます。外国でもやっている例は聞いてはおりますが、諸外国の例いかんにかかわらず、いわば児童生徒のからだの条件は健康検査でわかりますが、学力のいわば健康検査というふうな意味合いで、児童生徒の利益のために、また教育の場の改善のためにやりたい、こういうことでございまして、そのほかいろいろ言われておりますような他意は毛頭ございません。同時に、これによりまして、各学校自体も学校差がわかったとすれば、その原因が探究できる。合理的な、科学的な根拠が発見できるわけでございましょう。地域差も、当然、現在もございますが、この調査の結果によって地域差というものもまざまざと出てくるものと思います。しからば、その原因は何だ、一々これを解明いたしまして、その原因にさかのぼって文部省ないしは教育委員会等で考えねばならないことは将来の改善の資料にいたしたい。まあそういう目的をもってやることをお答え申し上げます。  一斉にやらぬでもいいんじゃないかというふうな意味のお話もございましたが、これは御案内のとおり、昭和三十一年からサンプリング調査をいたして参っております。先日第六回目をやりました。その成果に基づきまして、たとえば僻地学校の教育の欠陥をいろんな原因について発見いたしまして、それらの具体的施策を進めて参る資料に活用して参ったわけでございますが、サンプリング調査はだんだん、年々自費でやってもぜひ参加したいというので、小中学校の大体六〇%くらいが参加をいたしております。そういうことで、だんだんと希望が多くなっている実情にもかんがみまして、むしろ竿頭一歩を進めて、全国的に一斉にやれば、より根拠の正しい資料が得られるであろう、このことを期待したゆえでございます。  さらにまた、お話は、そういうことをやるのならば、組合とよく相談したらいいじゃないか、天下りじゃいかんじゃなないかという意味のお話があったと思います。これは学力調査を実施しますということは、純粋の教育政策の問題でございまして、教育委員会やら、学校長等、教員の意見を聞くことはこれは当然でございます。それは中学校の校長会議ないしは教育委員会議等の席において十分相談をして参っております。そういうものでございますから、日教組以下の職員団体と交渉すべき課題ではないと心得ております。  第二番目のお尋ねは、千葉県下で、中学校の来年卒業見込みの者を、すでに事実上の就職試験みたようなことで事業場等に実習さしている例があるが、これは適当じゃないじゃないかというお言葉であったと思います。もちろん、けしからぬことでございますから、直ちに調査をいたしまして、今から一週間ばかり前に、教育委員会を通じまして、そういうことはやめるようにということを申し入れております。実情は調べて一応わかっておりますが、くどくなりますから、省略させていただきます。  第三番目は、各地で集団住宅ができたり、工場誘致等の結果、いわゆる人口の社会的な移動が行なわれて、特に義務教育の児童生徒が多くなって非常に困っておるが、対策ありやという意味のお尋ねだったかと思います。最近、一番具体的な例として平塚市のことを御引例になったかと思います。むろんこれも調べましたが、一般的に社会増に対しましては最近にわかに顕著になって参りました問題で、必ずしも従来十全の措置がとり得ていなかったことを遺憾に存じますが、三十七年度予算におきましても、特に社会増に対して具体的な対策を考慮に入れて処置したいとも思っております。平塚の問題は、炭鉱離職者の集団就職をめぐりまして、たしか中学校で十五学級の学校に四学級ぐらいを追加しなければならない事態に立ち至っているようであります。当面は、これは物理的に不可能でございますから、すし詰めでがまんしてもらう、しかし、なるべくすみやかに四学級を新設する、新たに増築もいたしまして対処すべく、平塚市においては検討中でございます。文部省ないし教育委員会としても、これに当然協力をすることは申し上げるまでもございません。  科学技術教育の振興ないしは技術者の養成にしっかり力こぶを入れろうという、御激励をかねた御質問だったと思います。前の科学技術庁長官の勧告を待つまでもなく、一般的に技術革新の線に対応して万全の措置を講じませんければ、国民全体の不幸だと思います。そういうことで、従来及ばずながらの努力はしておりますが、特に所得倍増の具体的目標との関連において検討してみましたことは、過ぐる国会でも申し上げたところでございますが、いかんせん、教員組織が現実に隘路でございまして、実行可能な条件を考慮に入れて計画いたしますると、一応の推定が、十七万人の中堅技術者の不足に対しまして、十年後に、昭和四十五年現在での入学定員は大学において一万六千人以上は困難だという見当でございましたが、はしなくも、この前の国会でいろいろ御論議の種になったわけでございます。その後さらに検討を加えておりますけれども、何とかして教員組織を、少し無理であっても、具体的な手当てをすることによって、十年計画をもっと繰り上げてやる手はなかろうかということで、三十七年度予算中心に、よりより検討をいたしておるところでございます。御指摘のとおり、国立大学はもちろん、私立大学におきましても特に協力を求めまして、万全を期して参りたいと思います。教員養成の制度は、次善の策ということで御了解を得まして立法措置もとっていただきました。そのほうにもむろん力こぶを入れますが、さらに教員給与が、戦前に比べれば、実質まだはるかに下位にあると思います。一般民間と比べまして特に格差がございますために入手難であるということも、御指摘のとおりでございますから、人事院にも、これまた、よりより申し入れをしたりして努力はしておりますが、なかなか思うにまかせませんけれども、今後この面についても努力して参りたいと思います。予算措置として、三十七年度に、大学の教授を初めとして、研究費その他の増額もはかることによって、実質給与の改善ないしは教授陣の整備の一助にもしたいと考えております。さらに、前国会で御決定をいただきました高等専門学校を大幅にできれば新設をいたしまして、この面からも優秀な中堅技術者を将来は続々と出してみたいと、かように考えております。工業学校の拡充につきましても、すでにこの前もお話し申し上げましたが、一生懸命努力して参って、御質問の御趣旨にこたえたいと存じております。  以上お答え申し上げます。(拍手)   〔国務大臣福永健司君登壇、拍手
  17. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 幾つかの点について御質問がございました。順次お答えを申し上げます。  義務教育課程にある年少者を、職業補導その他の名目をもって卒業前に労働者として使用することは、労働保護土の見地からいたしましても絶対好ましくありません。御質問の実際の件につきましては、千葉労働基準局等をして直ちに実地調査を行ない、ただいまこれに対して措置をせしめているところでございます。  相鉄交通労働争議は、相当激しいものでありまして、私も深く遺憾といたしておりますが、神奈川当局は、再三にわたってこれにいろいろの対処をいたしており、現在までにかなりの歩み寄りを示しております。労働省といたしましては、労使両当事者が、違法行為等は厳に慎んで、すみやかに話し合いにより問題を平和裏に解決することを期待し、成り行きを見守っておる次第でございます。  雇用状況は、国全体といたしましては相当よくなってきておりますが、相澤さん御指摘のごとく、中高年令層等においては好ましからぬ事情もございます。数字を示せという点でございましたので、ちょっと申し上げますが、三十五ないし三十九才の場合においては、殺到率は一・六三倍、就職率が一六・一%、また四十才から四十九才の場合は三・六六倍の一二・一%、五十才以上になりますと一八・六七倍の五・二%、こういうようなことでございまして、どうしてもこうしたことについては強力なる施策を講じなければならないことは当然でございます。中高年令者の就職につきましては、転職訓練をより積極的に推進し、新しい職場への就職を容易にするとともに、この適職を調査いたしまして、より一層善処することを考え、こうした人々を優先的に適当な職種について採用するよう、政府機関等に勧奨をいたしておる次第でございます。  失業対策事業就労者に対する質金引き上げにつきましては、昨日繰り返しお答えいたしましたとおりでありますが、今次補正に数字的に現われているところがないという限りにおきましては、おしかりを受けるのもごもっともでございます。福永の力が足らぬからではないか、率直に答えろというお話でございますが、私の力につきましては、私自身が申し上げるのもいかがかと存じます。学力テストについては相澤さんの御意見がございましたが、大臣の能力テストについては相当きびしいようでございます。今後御鞭撻をいただきつつ大いに努力をいたしたいと存じますので、いましばしごらんをいただきたいと思います。  公務員給与につきましては、昨日繰り返しお答えを申し上げました次第でございます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇、拍手
  18. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。  国民保険につきましては改善を要する問題が非常に多いように思うのであります。御指摘の中にもございましたが、事務費の問題、あるいは療養給付に対する国庫負担率の問題、あるいは給付内容改善の問題、いろいろあるわけでございます。これらの点につきましては、これまでも努力して参りましたわけでございますが、国民皆保険の状況となりました今日、国民健康保険の堅実な発展をはかるということはきわめて重要な課題であると私は思うのでございまして、今後できるだけの努力はいたしたいと存じております。明年度予算におきましても、この趣旨の実現に極力努力いたしたいと考えておる次第であります。  また、医療費の引き上げに関する問題でございますが、先般、七月に医療費に関する改訂が行なわれました。その後、私、厚生大臣となりましてから、医療問題懇談会等の経過を経まして、一部なお改訂をする必要があるようにも思いましたので、先般、中央医療協議会に諮問をいたしておるところでございます。まだその答申を得るに至っておりません。前回の改訂に関する部分と、今回諮問をいたしております部分と合わせまして、予算の措置を講じたいと思っております。今回、補正予算に計上するに至らなかったのでございます。(拍手
  19. 相澤重明

    相澤重明君 議長、私の言葉の誤まりがありますから、訂正さして下さい。
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 相澤君。その席でけっこうでございます。
  21. 相澤重明

    相澤重明君 先ほど質疑の中で、汚職問題の際に、大映大川社長と言ったように今注意されました。あれは永田社長でありますので、その点は、つつしんでおわびを申し上げます。  それから、これは先ほどの、総理大臣答弁ですが、総理国家賠償法内容がわからぬと言っておりましたが、私の今言うのは、国家賠償法一条、二条、三条の現時点における是正をする必要がある、今までの立場ではもう被害者に適用できない、だから、新しい時点に立って適用するように改正をしてはどうですかというお尋ねをしておるわけでございます。これは長い間、決算委員会で、私からあなたにも官房長官にも言って、検討を進めるということになっておったのでありますから、このことは誠意をもってお答えいただきたいと思います。  それから運輸大臣答弁が欠けておるのですが、私は十七次造船と、それから戦標船資金的な問題で、あなたはどういうふうにそれに苦労されておるだろう、こういう点を率直にお話しになったらどうですかと、こういう質問なんです。ですから、十七次造船だけを言われたけれども戦標船の問題について、資金の問題について触れていない。そういうところをお答えいただきたいことと、いま一つは、再審査の制度がないというようなことで、私鉄の免許問題のことを言っておりましたが、これは今の政治上の問題をお尋ねしておるのであります。  以上であります。
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 訂正の点は、議長として訂正と認めます。再質問の点は、再質問は認めませんけれども答弁漏れとして答弁いたします。   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問を再質問のような趣旨でお答えいたしたいと思います。  すなわち、国家賠償法につきましては、制定後十余年を経過いたしております。したがいまして、不備の点があればこれを再検討するにやぶさかでないとお答えいたしておりますから、検討いたしまして善処することにいたします。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇君登壇、拍手
  24. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 戦標船の問題につきましては開き漏らしまして、どうも申しわけございませんでした。  御承知のように、戦標船は年次計画を立てまして、そうして新船を作ります際に戦標船の解体をする、これは特殊船舶公団で今やっているわけであります。本年度の計画は、さきに予算で御決定をいただきました。そうして、これは計画どおり進んでおりますので、来年度の分といたしましては、また資金獲得に御協力をお願いいたしたいと、かように存じます。  なお、武州鉄道の免許の再審査の問題は、先ほども申し上げましたように、今日の段階におきましては、再審査をしなければならぬという実質的のものも私は感じません。また、法律の上にも再審査の道はないわけでありまするので、したがって、工事認可の際に、はたして実際に施工できるかどうかという点を、あわせてその際に考えればよろしいと、今日の段階では考えているわけでございます。事情が変って参りますれば、また考えも変えていかなければならぬ、かように存じます。(拍手)     ―――――――――――――
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 千田正君。   〔千田正君登壇、拍手
  26. 千田正

    ○千田正君 私は、一昨日行なわれました池田内閣総理大臣並びに水田、小坂両大臣の所信表明の演説に対しまして、いささか時間がありませんが、重点的にお尋ねいたしたいと思うのであります。  特に私は、池田総理は、その所信表明の中で、わが国外交の基調である国連中心主義外交に触れ、自由国家群に属しながら、同時にまた、AA諸国の一員であるということを自覚し、より高次の理念をもって臨むと述べておられたのであります。ところが、昨日から今朝にかけまして重大な発表がなされていることは、諸君も御承知のとおりであります。それは、池田総理書簡に対するフルシチョフ・ソ連首相の返書に、われわれとしては無視黙過できないところの領土問題についてのきわめて重大な発言が含まれているということを見ましたときに、今まで日本政府が主張しておりました点と、ソ連フルシチョフ首相の答えた点との間に、重大な食い違いがあるということをわれわれは見ましたときに、いささかこの点について納得のいくように、総理大臣から国民に表明していただきたい、この点についてお伺いしたいのであります。  フルシチョフ首相は、その返書の中で、日本の領土は今までの国際協定に基づいてすでに確定しており、ソ連から返還すべき何ものもない。日ソ平和協定を結んだ後に領土問題を解決すべきであるという日本側の見解は何の根拠もない。日本側が領土返還を主張するのは、日ソ関係をいたずらに悪化させるだけであるとして、サンフランシスコ条約をたてにとり、領土問題に関する論議は一切無用という主張を述べ、さらに、日本国内に、ソ連、中国を目標としているアメリカの軍事基地が存在することを強調して、ソ連はこれに無関心ではいられないと主張しているのであります。  そこで、私は総理大臣にお伺いいたしたいのは、まず十六年前の敗戦により受諾したところのポツダム宣言に照らし合わせまして、千島列島の帰属問題の正しい解決は何であるか、政府のはっきりした見解と態度を表明していただいて、国民に納得のいくような御所信を発表していただきたい。  次に、ヤルタ協定について、日本政府は関知しないという態度をとっておるのでありまするが、フルシチョフ首相の言う国際協定の中には当然ヤルタ協定が含まれており、政府が一方的に関知しないと主張しても、それがソ連のいれるところでない限りは、単なる水掛け議論となって、終始日ソ国交の上に大きなみぞが今後残されるであろうということをわれわれは懸念するのであります。この点についてはどうお考えになりますか。また、サンフランシスコ平和条約によって、日本の領土問題について、特に問題となっている千島列島の問題について、対米関係に関しての入領土権の問題は解決し、ソ連に対しては依然として領土権の主張をしておるが、この問題については、ヤルタ協定及びサンフランシスコ平和条約の領土権の問題についての明確な態度を重ねて国民に表明する必要があると私は思いますので、総理大臣から御表明をお願いしたいのであります。さらに、次に一九五六年九月の日ソ交渉にあたりまして、日本側の松木全権とソ連側のグロムイコ外務次官との交換文書によれば、当時合意に達しなかった領土の帰属問題については、明らかに日ソ平和条約締結に際してのときに、あらためて協議の上決定すべき旨の一項があるのでありますが、このときのソ連との確約をはっきりさして、真の解決をはかるべきではないだろうかと思われるのであります。  しかし、国連中心主義外交のみを唱え、相次いで提起される対ソ外交をなおざりにすることはでき得ない。私は、昨日の総理大臣の御説明の中に、ソ連などは――まあ、ある程度ソ連の主張をおそれるに足らないと、これはごもっともで、われわれも大いに同感であります。しかしながら、おそるるに足らないとするならば、それだけやはり日本の主張はあくまで主張しなければならない。同時に、国民にそういう心がまえを植え付けるだけの納得のいくような表明を総理大臣は確信をもってなさるべきであると思うのであります。でありますから、この際この点についてあらためて、重大な段階に来ておりまするから、御表明をお願い申し上げたいと思うのであります。  次に、私は先般参議院から派遣されましてヨーロッパ諸国を回って参りましたが、その際に特に考えましたのは、世界の経済は新しい段階にもう突入しておる。今までソ連とアメリカだけの二大強国のいわゆるリードによってなされたがごとく見えておったところの世界経済、あるいは政治外交という問題は、新しい段階に入ってきた。それは何かというと、これは私が申し上げるまでもありませんが、東西ベルリンの緊張にいたしましても、国連での論争にいたしましても、その基礎的背景には必ず経済問題があるのであります。特に第二次大戦後におけるところの欧州諸国が、米ソ二大国に対して、新たに第二経済圏、ひいては欧州連邦的政治外交の連携をはかる基礎として、欧州六カ国の共同市場が誕生して以来、目ざましい進展ぶりを示してきているということは、すでに総理も、また水田大蔵大臣も、十分に御認識のことと存じます。私が詳しく申し上げるまでもなく、石炭鉄鋼共同体の過渡期間における経験にかんがみまして、あらゆる産業部門の共同により、西ドイツ、フランス、あるいはイタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ等の六カ国は、自国産品の市場を確保して、さらに強化拡大するとともに、新たなる原子力の平和利用はアメリカやソ連のみの独占ではならない、われわれは小さいながらも、一国の力ではとうていこの米ソ大国に列することはできないから共同の力をもってこれを解決していこうというような共同体制のもとに、第三勢力として世界の経済界に大きな地歩を占めるようになったのであります。共同圏内における相互の関税障壁の撤廃や、あるいは圏外貿易におけるところの高率関税の設置、労働力及び資本の移動協力、投資基金制度の設置等々、まさに欧州経済共同市場は新たなる脚光を浴びて、新しくヨーロッパあるいは東南アジアあるいはアフリカ等に伸びようとするわが経済外交の前面に、大きな力をもって立ちはだかってきたということを考えますときに、これらに対しまするところの日本の新しい経済外交を生み出さなければならない。これに対するところの確信ある御所信を承りたいのであります。  特に最近に至りましては、この共同市場はイギリスがさらに参加する、いわゆるEFTAを解消して新しく英国が共同市場に参加しましたときに、その目標とするところは単に経済共同ではなくて、第三勢力としての政治外交の共同へ持っていこうとする、ソ連とアメリカの二大勢力の間にくさびを打ち込もうとする新しい政治分野が世界の上に台頭してきておるということを認識しながら、日本政治外交をもっていかなければならないということに直面して参ったといわざるを得ないのであります。こういう問題に対しましてどういうふうにお考えになっておるか。  これに引き続きまして、私はこれに関連しまして、欧州諸国の共同政策と日本の貿易の上に最大の難関とされておりますところのガット三十五条の問題――昨日も総理大臣並びに水田大蔵大臣からお話もありましたが、われわれの貿易政策の前面に立ちふさがるのはガット三十五条であります。これをどういうふうにして撤去するか。われわれは、国内の輸出入の問題、そういう問題について真剣に論議すると同時に、国外においてはわれわれ日本の進出をはばむような問題が起きておる。その底辺には、大きなヨーロッパの共同市場、こういうものが現われてきておるということを考えましたときに、これを突破するにはどういう手段に訴えてこれを突破していくか。  こういう状況のもとに、最近新しく唱え出されておるところの第四経済圏という問題が起きておるのであります。それはEFTAによって解消されようとしているところのイギリス連邦の多くの国々たとえばカナダ、あるいは豪州、ニュージーランド、こうした太平洋に面するところの国々が、日本を主体として第四勢力を結集して新たに政治外交の面まで押し出していこうじゃないかという空気が、最近世界の経済界の一面において行なわれようとする声が、高らかに唱え出されておる今日におきまして、日本経済の進出と、また政治外交の一場面の進出の面からいいまして、新たなる観点に立って日本経済の外交を進めなければならないと思いますが、それに対しまして、総理大臣並びに外務大臣、貿易等に関しましては通産大臣から、御意見を承りたいと思うのであります。  第四に、私は、岸内閣から引き続きまして池田内閣の成立を見てから、日中間の問題が前向きに進むかの感じがあったのであります。昨日も総理大臣からは、親近感を感ずると、あるいはいろいろな面においてそのニュアンスを含むお答えがあったのでありますが、現実の問題におきまして、今後の輸入抑制政策にからんで、今まで行なわれておりましたところの、ささやかではありまするが、日中貿易というものが、あるいはここでさらに抑制されるのじゃないか、もっと進む一つの考えをお持ちじゃないか、あるいはこの中国の問題に対して、一応は外交問題として国連の舞台においていろいろな課題を解決しなければならないでしょうが、その裏づけとしての面としましては、日中貿易等については、むしろ進んで、輸出あるいは輸入の面において、政府が、表面からでもなく、特別の力を入れて、その親近感の実際の裏づけをしてもいいではないだろうか。この点につきまして総理大臣のお考え通産大臣のお考えを承りたいと思うのであります。  次に、国際収支の赤字解消について、総理からたいへん強気の御見解の表明があったのであります。ともかく先般の貿易自由化措置の促進によって新しい段階に入ったと思われるのでありまするが、この赤字問題は、日本経済の赤信号を直接表示するものとして、多くの識者の憂えるところでありまして、これが対策政府も苦心と努力を払ってきたであろうことは容易に想像もできるのであります。その主要な対策は、一方では輸入制限措置をとりながら、もう一方では貿易の自由化を断行するという、実際的効果という面から観察するならば、全く相反する効果が生まれてくるおそれがあるのであります。しかも、どろなわ式に急いで実施するということは、それ自体、はなはだ矛盾した政策ではないでしょうか。この点について、輸出の伸びが期待するほどには少しも進捗しない。五月以降の赤字の累積する状況にあるにもかかわらず、この悪条件を少しも顧みることなく打ち出された貿易の自由化促進政策は、タイミングにおいて非常に悪いではないか。経済理由に基づく措置というよりも、むしろ経済外のある種の理由に基づく措置ではないかとさえ考えられるのであります。その結果として、現在以上の赤字の累積を招くであろうということは想像にかたくないのでありますが、この点について、政府のあまりに楽観したお考えではなく、真剣に、矛盾撞着のない――一方においては輸入制限をし、一方においては貿易の自由化ということを唱えられる現政府のこの矛盾を調整していくという――はっきりした確信のあるところの所信を御表明をいただきたいのであります。  最後に、私は農業問題について農林大臣にお伺い申し上げたいのであります。前国会において農業基本法の成立を見たのでありまするが、これが審議にあたり、私は、かつてこの議場から、政府及び自民党がいたずらにみずからの提案のみに固執することなく、少数意見であっても識者の論評によく耳を傾けられんことを切望いたしたのでありますが、審議の過程は必ずしも満足すべきものではなかったことを遺憾とするものであります。同時に、基本法に関連する幾つかの法案が、会期末において突如として問題にされた政防法案のために廃案に終わったことは、日本の農民諸君とともに全く遺憾千万と申さざるを得ません。もっとも、そのうちの幾つかは今国会に再提出されるごとくでありまするが、それ以前に、当然基本法に従って、政府が長期間にわたる農業発展計画を樹立して、六百万耕作農民が意を安んじて農業に従事し得るように措置をとることを期待していたのでありまするけれども、第三次池田内閣の成立後、いわゆる河野構想として伝えられますところの食管制度改善に基づく問題、この問題について、農業の総合的発展計画を欠除した米麦生産だけを問題にした河野構想は、行きつくところ、食管会計の赤字を補てんする程度の問題に還元せざるを得ないではないかということの杞憂を持つものであります。ぜひこの点は、農業計画の長期計画の根本的問題であるという着想であるならば、そこに、はっきりした観点を国民に示してもらいたい。産米についての無制限買い入れ方式と自由販売化は、おそらく農林当局の期待するように、品質改善と、需要の変動による他の農作品種への自然的転換をもたらすものではない。
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 千田君、時間が経過いたしました。
  28. 千田正

    ○千田正君(続) はい。逆に、何をどの程度に作るべきかについて、農民の間に現在以上の混乱を招くであろうということは自明の理であります。この点を十分にお考えになられまして、先般も重大な問題としてわれわれは重視したのでありますが、米価審議会を通じての米価の決定に際してのあの混乱、こういう問題が起こらないような対策をはっきりしていただきたい。これこそ、農民が常に要望しておるところの、生産農民の悲願であります。  もう一つ最後に、今も申し上げました自由貿易を実施するようなことが当然出てくると思いますが、重大な影響を受けるのは農林水産業であります。自由貿易に基づいてなされた場合において受ける影響に対して、それをどういうふうに考えるか、農業のこの問題は、ひとり日本のみならず世界的風潮でありますだけに、各国は農業に対しましては保護政策をもってこれに当たっております。日本としては、自由貿易化の影響を防ぐための国内産業の基礎というものの確立に対して、農林大臣はどういうお考えを持っておられるか、こういう点について私はお尋ね申し上げたいのであります。  時間がありませんが、以上私が申し述べましたことは、今後日本の命運をかけなければならない重大問題であります。特に外交問題あるいは経済に対するところの問題等につきましては、日本の命運をかけて責任ある行動をとらなければならない点でありますので、総理大臣以下何とぞ明快なる御所信を御表明いただきたいと思います。以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  29. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申します。  御質問の第一点は、昨日私あてのフルシチョフ氏からの返書に関して、その内容の領土の問題でございます。私は、択捉、国後、歯舞、色丹は、日本の固有の領土であることを、今まで常に主張しておったのであります。しこうして、われわれの受諾いたしましたポツダム宣言のもとであるカイロ宣言には、固有の領土は侵害しないという原則が立てられておるのであります。したがいまして、私は、ポツダム宣言を無条件受諾したからというても、そのカイロ宣言の趣旨を四カ国は守るべきべきものであると考えます。フルシチョフの考え方には反対でございます。ことに、択捉、国後につきましては、歯舞、色丹はもちろん、一八五五年の日魯通好条約で、はっきり幕府時代から日本の固有の領土と認めておるのであります。しこうして一八七五年すなわち明治八年の千島樺太の交換の場合におきましては、千島とはウルップ島以北の島を千島といっていることは、はっきりいたしております。この点は講和会議におきましても吉田全権より主張いたしております。しこうして、ヤルタ協定なるものは三国の秘密協約でございまして、われわれはこれを認めません。アメリカにおきましても、ヤルタ協定につきましては議論があることを聞いております。しこうして、私は、講和条約の場合において、今のグロムイコ外務大臣は次官として、そして首席全権として来ておられました。講和条約の草案ができまする前までには、私の記憶するところでは、南樺太はソ連にリターンする、返還する、千島はソ連にハンド・オーバーする、譲渡すると、草案には書いてあったと思います。それが九月六日の講和会議におきましては、日本は南樺太、千島の権利、権原及びあらゆる請求権を放棄すると変わっておるのであります。このことは、グロムイコもはっきり知っておるわけであります。彼は非常に憤慨いたしまして、結局は講和会議から出ていったのであります。以前の草案には、ソ連に譲渡あるいは返還という言葉が、われわれの調印した講和条約には、日本は権利、権原及び請求権を放棄するといっている。だれに放棄するということは、調印した国に放棄したと私は心得ております。調印しないソ連が権利を主張するということは誤りでございます。これは、はっきり申し上げておきます。また、ポツダム宣言あるいはわれわれの認めておりませんヤルタ協定に参加したアメリカ政府も、択捉、国後は日本のものであろうという考えを持っておると私は考えております。こう考えて参りますると、私はフルシチョフに対して、当然、択捉、国後は――歯舞、色丹はもちろんであります――日本の国有の領土であって、これを侵害することを許し得ないと考えるのであります。ことにお話のとおりに、松本全権がソ連との共同宣言以前のときの交渉におきまして、領土問題は平和条約のとぎに審議する、こういうことに相なっておることはお話のとおりであります。こういう意味から申しまして、私は領土問題につきましては一歩も譲らないことを、ここにはっきり申し上げておきます。(拍手)  次に、欧州経済共同体の問題でございます。これは御承知のとおり、一朝一夕にできたものではございません。ベネルックス三国がまず共同体のもとを作り、そうしてフランスのシューマン外相が、ドイツ、フランス、ルクセンブルグの、あの地理的に、そうして産業的に似通った国が戦争をやめて共同体になろうということを、シューマン外務大臣が言い出して、十年このかた、たっていったのであります。その間における各国の経済事情はいろいろ違っておりましたが、これが六カ国がうまくいくようにその間に調整ができて、今はわれわれの予想した以上の発展を遂げていることはお話のとおりであります。しこうして、最近、英国、英連邦がこれに参加しようとしておりまするが、なかなか今の貿易連合全部が入るか、イギリスだけが入るか、なかなか問題がありましょうが、少なくとも英帝国が加入したいということを強く希望し、宣言する程度にまで経済共同体が進んでいっておることは、われわれうらやましいことと思っております。しこうして、わわれれが今後貿易拡大にあたりましては、もちろんアメリカとの貿易の増進は考えなければなりませんが、アメリカ以上といわれるほどの経済力、人口を持っておるこのヨーロッパ共同体、あるいは貿易連合、これをわれわれは十分見直して、こういう先進工業国に向かっての輸出増進をアメリカ以上に努めなければならぬ段階に私はきておると思います。私は、今回アメリカに参りましても、この点はアメリカに強く主張して、われわれは日米関係と同様な、日英あるいは日独、日仏関係を作り上げたいということを私が言ったのも、この経済共同体並びに貿易連合体との関係をよりょくしようという気持で進んでおるのであります。  次にガットの問題でございます。すでに御承知と思いまするが、ガットの問題につきましては、日本に対する三十五条の援用の可否について、ガットにおきましては特別作業部会を設けて、そうして今後問題を解決しようとしております。中間報告的には、ガット三十五条を援用したり、あるいは新規ガット加入国が従来援用している国と同様に援用しようとすることは、世界の貿易、ことに日本の貿易の進展に害ありという意向が示されております。私はこの秋にはぜひともこの援用をやめてもらうよう強力に外交施策を持っていきたいと思います。  次に、カナダを加え、豪州、ニュージーランド、日本が、太平洋の経済圏を確立したらどうかというお話でございまするが、私は、アメリカでも有名な人からこういう意向を聞かれましたが、そのときに答えました。「経済共同体ということは一朝一夕になるものではありません。お互いの国々が大体経済程度が同じで、完全に有無相通ずる程度の状況にならなければ、共同体というものはできない。もしそれ、カナダ、豪州、、ニュージーランドと日本経済共同体を結びましたならば、農産物は完全な自由ということになってきた場合のことを考えますと、なかなか共同体というものは、いいようでございますが、それができるための措置がなかなか困難である。」ということを、私はアメリカの有名な人に答えましたら、「それはそうだろうな」ということでございまして、私はここでも、こういうことは理想としては考えたいけれども、現状としては、そこへ行くまでのよほど地ならしが必要であるということを申し上げて、お答えといたしたいと思います。  なお、輸入の制限と為替貿易の自由化は矛盾するじゃないか、こういうお話でございますが、矛盾ではない。貿易為替の自由化は、日本の産業経済の発展のためにぜひとらなければならぬ基本の方策でございます。ただその場合に、輸入が非常に多くなったときに、為替資金等の関係上、しかも行き過ぎの経済拡大を防止するということは、これは一つの経済安定の一時的な措置でございます。しかし、貿易の自由化というものは、国が伸びていくための基本でございます。世界の経済に進んで協力する経済の基本原則であるのであります。われわれはその基本原則を守りつつ、日本の状況に応じての特定の場合の特定の措置をとろうというのが輸入制限でございまして、実際にはなかなかむずかしい。矛盾ではございませんが、むずかしいことではございまするが、これは日本の将来のために、また、今の経済をよりょくするために、越えなければならない関所であると私は考え、これに向かって努力を進めておるのであります。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍   手〕
  30. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 総理から大体お答えがございましだが、私に対しての御質問中、例のEECとEFTAの関係を申し上げたいと思います。お話にもありましたように、イギリスが共同市場に入る決議をいたしました。EFTAの七カ国も随時これに随伴するかと思われます。そうしました場合に、われわれとして一番大きな問題は、ガット三十五条の問題でございまして、イギリスの持っている条件がそのままEECの中に入っていくということになりますることは、われわれの将来の貿易を伸ばすという観点から見て非常に大きな問題だと考えます。先般イギリス政府の招待がございました機会に、この問題を強く申した。しかもこれをイギリスにおいて、ガット三十五条を撤回することを強く要望いたしました。なお、このガット三十五条をわが国に適用されておりまする一番大きな先方側の原因として考えられますものは、私どもの商品が非常に一時的に、いわゆるフラットする ――集中して、先方の商品と競合する問題でございます。したがいまして、この点については、自主規制あるいは秩序ある輸出ということをわれわれ大いに数年来努めておるわけでございますが、この実情をよく先方に認識させることが必要でございます。と同時に、われわれとしては、イギリスとの間には通商航海条約を、建設的な内容を持ったものを提案しております。これはまだ先方から返事が参りませんし、内容を申し上げることは差し控えなければならぬのでございまするが、私はこれが何とか実を結びまして、イギリスとの間にガット三十五条援用が撤回されることを期待いたしております。なお、その他の国、フランスその他につきましても、強力にこの交渉を進めるようにいたしております次第でございます。何と申しましても、ヨーロッパの経済は非常に伸びておりますし、われわれの輸出もこの方面に向かって伸びることが必要でございまして、昨年の一-六月の同期に比べますと、今度は一六・七%輸出が伸びておるわけでございます。さらにこの問題については、われわれとしては大いに精力的に努力いたしまして、ガット三十五条をめぐる日本の輸出の不利の条件を解消いたすように努力いたしたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  31. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私に対するお尋ねのうち、総理からお答えになりました太平洋関係の諸国の経済圏を作ること並びに国際収支についての答弁は、総理のお答えのとおりでございますから、重ねてお答えいたしません。  日中貿易のあり方についてのお尋ねでございますが、日中貿易は御承知のように、民間協定では、最後は、第四次は片道九千八百万ドル程度の約束をし、それに近いものが出ておったのでありますが、不幸にして長崎の国旗事件以来これが中絶し、その後昨年などはわずか五百万ドル程度でございます。また本年の実績を見ましても、上半期だけで、輸出が百三十五万ドル、輸入二百八十四万ドル、まことに少額であります。しかしてこれは入超の数字であります。ところで、申すまでもないことでありますが、貿易はどこまでも平等であり、互恵であり、しかも商業ベースに乗ることが基礎的に必要な条件だと考えます。私ども隣りの国でありますから、貿易拡大に一そう力をいたしたいと思いますが、ただいままでのところ、ただいま申すような基礎的条件につきましても、十分納得のいくような条件になっておらないことを遺憾に思います。なお、関係業者の要望によりまして、すでに御承知のように強制バーター適用地域から中国本土は除かれております。かように、当方といたしましては拡大に努力をいたしておりますが、なお拡大は今後の問題だろう、かように思います。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手
  32. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたしますが、今千田さんから、私が食管法の改正を強く意図いたしておりまして、これで農村の問題を強く押し出していこうと考えておるようにお話のようでございましたが、私はそうではございません。農村政策は明年度予算等において御審議願う予定でおりますが、当然農業基本法を基盤にいたしまして、これに肉づけをして参る。この基本の精神にのっとりまして農業構造全般にわたって改善をして参る必要がある。たとえて申しますれば、農業の多角化、高度化というようなふうにして参らなければならないだろうと考えまして、前回農林大臣の際に、新農村建設運動を展開いたしましたが、多少これとは内容は異にいたしますが、全国の三千数百の農村を個々に、それぞれの適地適作と申しますか、適当なものを経営していただくというようなことにして、一つ一つ村について構造の改善を願い、これに対して政府は協力していくというふうにして、そうして御承知のとおり、他産業との所得格差を縮めて参る、世界農業に対して日本農業の基盤を強化していくというところに、基本的な考えを置かなければならぬだろうと思っておるのでございまして、決して米の値段をどうするとか、米麦によってのみ農村の経営が成り立つようにしていくとかいうようなことは考えておりません。ただ私は、現行されております食管法をこのまま続けて参ることはどうかというような意味において、直すとすればこの程度のことを最小限度に直すことが適当ではなかろうかという私の考えを、農村の方々、消費者の方々に申し上げ、一応御意見を伺っておるということでございまして、これが農業政策の大本であり、基本であるという考えを持っておりません。  また自由貿易が農業に及ぼす影響が非常に強い、これはひとりわが国だけでございません。世界各国、いずれの国においてもさようでございます。したがって世界各国いずれも貿易の自由化については、自由国家群ひとしくその思想で参っておりますけれども、その国々の農業について、特殊的立場はそれぞれお互いに認め合って参っておることが現実でございます。したがってわが国におきましても、特に考慮いたさなければならぬ農業の業種については、これは貿易の自由化の中においても、われわれは特殊な立場は守っていかなければならぬ、その保護の上に経営を続けていくことが必要である。さらに一言申し上げますが、私は現在の段階においてますます農村に対して保護農政を続けて参る。これは農業基本法の線にのっとって、新しい農業を育成して参る。いかようにやって参るにいたしましても、この保護農政を当分の問続けていく、そうして、その保護の中に、それぞれ農業が自立できるように別途これを育成して参るということが、当面する農業政策の基本でなければなるまいと考えておる次第でございます。さよう御承知願います。(拍手)     ―――――――――――――
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 佐藤尚武君。   〔佐藤尚武君登壇、拍手〕   〔議長退席、副議長着席〕
  34. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は同志会としまして、国連に関連した一、二の問題について、総理外務大臣の御意見を承りたいと存ずるものであります。  第十六回国連総会は去る十九日から開会されているのでありまするが、今回ほど国連の基礎がゆすぶられたことは、国連が始まってから十六年の今日まで、いまだかってなかったと思われるほどであります。過去においても国連が幾多の困難な問題に直面しまして、そのたびごとに国連の危機が叫ばれたことはありました。かの朝鮮動乱のごとき、またスエズ問題、近東問題のごとき、それであったのでありますが、国連の機構としては、安全保障理事会、総会、それに国連機構の推進機関であるところの事務局の制度などが、国連開設以来の伝統を受け継いで存続していたのであり、したがって、幾多の困難な国際問題もこれらの機構を通じて解決を見ることができたのであります。もとより現在の国連の組織では十分な活動を期待し得ないまでも、国連固有の機構そのものの組織が動揺しなかったおかげで、多くの困難を乗り切って、どうやら世界平和の維持をはかることができて参ったのでありました。ところが昨年来のコンゴー問題の紛糾に関連し、これが平和的解決に没頭していた国連事務総長ダグ・ハマーショルド氏の急死にあい、国連はその機構の根底をゆすぶられることになり、その成り行きいかんによっては国連活動の麻痺を来たし、ひいては世界平和維持の上におそるべき動揺を来たすことなきを保せず、まさに今回こそは文字通り国連の危機であると言わなければなりません。日本政府としましても一大決心を持ってこの危機の打開に臨まなければならぬと信ずるものであります。ハマーショルド事務総長は、かねてからソ連政府の逆鱗に触れていたことは周知の通りでありまするが、これは、同事務総長が西側に偏し、西側の肩を持ち過ぎるというのが、ソ連側の不満の種でありました。ことにコンゴー問題が紛糾するに及んで、ソ連の攻撃は一そう激しくなり、公然、同総長を忌避し、おのおのが拒否権を持った三人の事務総長制を提唱するに至ったのでありまするが、これに対し、昨年十月ハマーショルド事務総長が、国連総会においてソ連の非難にこたえて所信を披瀝しました。その中に、「ソ連を初め世界の大国は、自国の防護のために国連を必要としない。大国は必要としないが、他のすべての国々はそれを必要としている。私は、すべてのこれらの国々のために、彼らの希望に従って、任期中、国連機構の奉仕者として私の地位にとどまるであろう。」と言ったのでありました。これは、大国の圧迫に抗して、大多数の参加国擁護のために、決然国連事務総長の地位にとどまらんとする彼の決意を表明したものでありまするが、わが日本もまた国連の庇護を必要とする国家群の一員であります。そこで、国連が加盟国の庇護者であるというそのためには、国連が世界平和維持機構として、あうと限り強固な基礎の上に存続することが必要である。この見地からしますれば、ソ連の提唱する事務総長三人制、しかもおのおのが拒否権を持った三人制の、いわゆるトロイカ方式のごときは、国連を麻痺させる以外何ら好結果をもたらし得ないのでありまするがゆえに、日本としてはとうてい賛同することのできない提案というほかはありますまい。小坂外務大臣は去る二十二日、国連総会の席上、すでにこの問題に関する政府の所信を明らかにしておられますることを、私は多とするものであります。私は、この際、国連事務総長の権限を明らかにし、事務遂行上の命令系統を明確にしておくことが必要と考うるものでありまして、すなわちハマーショルド氏の後任として、一人の事務総長を選任し、その配下に、自由国家群、共産圏並びに中立国家群を適当に代表せしむる三人の事務次長を置き、これに、あるいは地域的考慮を加えた数名を増員することも考えられましょうが、とにかく命令系統はあくまで一人の事務総長一本にしぼる、というがごとき事務局構成の実現を希望してやまないものでございます。グロムイコ外相も国連総会における演説で、後任事務総長の暫定的推薦に同意しだ模様で、これは問題解決の余地を与えたもののようではありまするけれども、一人の事務総長のもとに、三人の拒否権を持った事務次長の任命を提唱しておるところから見ますれば、トロイカ方式の変態としか考えられないのでありまして、問題は緊急解決を要する性質のものなので、政府は全力をあげて、全加盟国、ことに常任理事国の良識に訴え、この危機から脱するように善処されんことを希望してやまないものでございます。この点に関しまする政府の御所見を伺いたいと思います。  さて、眼を転じて現下の世界情勢を見まするに、ベルリン問題をきっかけに、ソ連は突然、核実験再開に踏み切り、すでに十数回にわたって超強力の核爆発を実行し、米国もまたその対抗手段として同様の行動に出ることに相なりました。日本政府、国会の数次にわたる抗議、警告も無視された形となっております。そうしてまた、世界の大国は巨額に上る軍事費を予算に計上し、あるいは予備役を召集し、満期兵の除隊を延期する等、軍備拡充に狂奔しているのが実情であります。米ソ両国とも進んで実力行使には出ないと宣言はしておりますものの、互いに軍備を競っておりまする以上、いかなるはずみで熱戦が展開されないとも限りません。実に危険千万な情勢にまでわれわれは追い詰められておるありさまであります。かくのごとき世界の危機を乗り切るには、どうしても世界不安の原因である核兵器の実験、製造禁止はもとより、各国間の軍備競争を停止させなければなりません。このときにあたり、去る二十五日の総会における演説で、ケネディ大統領は、国連のワク内においての、そうして効果的な国際管理のもとでの完全軍縮を、段階を追って実現する構想を明らかにいたしました。他方、ソビエト代表は数年来即時完全軍縮を提唱し、その上、適当な国際管理を受け入れる態度をとるようになって参っております。このように米ソ両国が軍縮の根本的観念で共通点を見出すように相なりましたのは、軍縮の前途に一道の光明を与える感があります。しかし、米大統領の表明した軍縮の構想に対し、翌日グロムイコ・ソ連代表のなしました演説を見れば、いかにも懐疑的で、米案に難くせをつけており、軍縮の前途多難を暗示するものがあります。要は軍縮当事国の誠意の問題で、世界の危機を救うための軍縮精神に徹し、誠意をもって臨むならば、たびたびお流れになった軍縮会議の前轍を踏むことなく、会議を成功に導き得るはずであります。日本会議の促進に側面から協力善処をされるよう要望いたしたいのであります。ケネディ大統領は、軍縮とともに特別平和維持部隊の結成を提唱しておられます。なくなったハマーショルド事務総長も、スエズ動乱のころから同様の考えを発表していたのであり、私自身もまた朝鮮動乱勃発の当時から国際警察軍提唱者の一人であったので、今回の米大統領案を大いに歓迎しているものでありまするが、日本政府におきましても、国際警察軍の考え方を痴人の夢視せず、真剣に研究される必要があると思うのであります。  米大統領の軍縮構想は、国内の兵備を最小限度まで削減して、もっぱら国内治安の維持に当たらせ、国際紛争の制圧には、国際連合の配下に常備された国際警察軍をもってこれに当たらせようとするものであります。国連特別部隊の編成は、すでに国連憲章第四十三条以下に予見されているところであり、特に国連の緊急軍事措置を可能ならしめるためには、加盟国に対し国内空軍の割当部隊を直ちに利用することができるように保持しなければならないとしてあるのでありまするが、これらの憲章の規定は、国連発足以来、偶発的に実行に移された二、三の例はありましたが、まだ完全に実施されるところに至っておりません。また、常設国連警察軍の実現まではほど遠い感があったのであります。それを今回の米大統領の提案では、これを実行に移そうというのであります。日本政府としても、この考え方にまじめな考量を払う必要があり、また、軍備を除いた経済、文化の領域においてすでに大国の班に列した日本として、その世界平和維持の責任上、憲法第九条の制約はありますが、この国際警察軍を実質的に支援する余地が残されているかいないかにつき、打ち込んで研究がなされなければならないと思うのであります。この点につきましても私は政府の所見をただしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  35. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  お話のとおり、国連におきましては、最近難問題が重積いたします上に、名総長といわれたハマーショルド事務総長の急な死去によりまして、国連に対していわゆる危機がきたんではないかということがいろいろいおれているところであります。われわれは、国連の使命にかんがみまして、この危機を乗り越えるべく、各国と協調していかなければならぬと考えております。  また、事務総長の後任につきまして、事務総長のトロイカ方式というものにつきましては、すでに、小坂外務大臣が国連総会におきまして反対の意を表明しております。しかる場合に、事務次長を、自由、共産あるいは中立、これから選ぶことはどうかということは、ちょっと問題となっておるようでございます。私は、国連憲章第百条の規定によりまして、やはり事務次長に関しましても、利益代表的な考え方は、いれるべきじゃないのじゃないか、いれるべきでないという考えがあるのでございます。これは各国の考え方等も参酌いたしまして、まだ結論を出すのには早いかもわかりませんが、私の考えとしては、そういう気持を持っております。  なお、お話のとおり、米ソの間におきまして、全面軍縮の基本的考え方の一致を見ました。私は、これが具体的に実現されることを強く希望するものでございまするが、お話のとおりに、今の情勢から、一応基本的の妥結はできたけれども、これからの具体的の問題ということになると、よほど両国を初め関係各国、また、全世界の国家が強い決意で協力しなければなかなかむずかしいのだと思います。しかし、むずかしいからといって、ほうっておくおけではございません。われわれも、できるだけ実現するように犬馬の労をとりたいと考えております。  第三番目の平和部隊の問題でございます。お話のとおりに、従来も、国際警察軍ができ上がったときに、日本憲法上、日本自衛隊がいけるか、いけないかという場合につきましては、私は、原則としていけない。警察軍という名前が、単に軍備を用いるのでない、ほんとうの平和的のものならば、絶対にいかぬというわけではございません。おおむね、こういう考え方は、私は、憲法に違反すると考えております。なお、今回提唱されました平和部隊というものの具体的な性格あるいは任務、こういうものにつきまして検討を加えないと、私は、憲法九条のもとではむずかしいのではないかと思っております。しかし、提唱せられましたケネディ氏らの平和部隊の性格等につきまして、今後検討はいたします。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍   手〕
  36. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 国連の柱ともいうべき事務総長が空位にあるということは、それ自体、国連の危機を生むものでございますから、できるだけすみやかに事務総長をきめなければならないということは、私は、国連の演説においても、世界各国の賛同を得たつもりでございますが、これをどういうふうに持っていくか、今お話にもございましたし、私も申しましたことですが、国連の事務総長というものは、この団体に対する奉仕をなすべきものでございますから、これに政治体制あるいは政治理念の異なるものをもって埋めていくということでは、総理大臣のお答えにもありましたように、憲章百条の精神にも反するものでございます。また、それ自体、総長の事務が運営しなくなることでございますから、これはもう問題にならぬと思います。ただ、私は、国連ができましてからすでに構成国が二倍にもふえておりますので、その間の事務局職員、ことに高級職員を、地域的な配分を十分考慮してふやす必要がある。そしてこれが事務総長を補佐すればいい。これが非常にうまく動けば、非常に妥協的な一つの案になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。  その他、核実験禁止の問題は強く申しましたが、この実験をまず禁止し、そうして製造を中止し、そうして核兵器そのものを廃棄するというふうにぜひ持っていきたいものだと考えております。  また、完全軍縮の問題についても、総理大臣からお答えがございましたように、これはまさに大国が、強い軍備を持っておる大国それ自身が、まずもって実行すべき問題であります。私はそのことを強く大国に要請し、また、われわれとしても、世界の各国をいざない、さような方向に大勢を馴致いたしたいと心から念じておる次第でございます。(拍手
  37. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十九分散会