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1961-09-29 第39回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年九月二十九日(金曜日)    午後二時五十五分開議     —————————————  議事日程 第四号   昭和三十六年九月二十九日    午後二時開議  第一 国務大臣演説に関する件  (第二日)  第二 常任委員長選挙     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第二日)     —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。吉田法晴君から海外旅行のため十四日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認ます。よって許可することに決しました。      ——————————
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)。  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。小林孝平君。   〔小林孝平登壇拍手
  6. 小林孝平

    小林孝平君 私は、日本社会党を代表して、昨日行なわれた内閣総理大臣施政方針演説に関し、主として、外交、経済問題について政府の所信をただしたいと存じます。  質問に入る前に、一言、政府に強く要望いたしておきたいことがございます。すなわち、今年は数次にわたる集中豪雨及び第二室戸台風の被害のため、関係地方民は非常な生活困難に追い込まれているのであります。今国会においては、政府災害対策の予算並びに立法の措置をとられますが、関係罹災者が十分満足できるよう万全の措置をとられることを望みます。特に、わが党の見解といたしましては、現在の災害復旧の制度においては、個人被害救済対策についてほとんど見るべきものがないので、この際、罹災者援護法とでも言うべき立法を行なって、罹災者生活復旧に万全を期すべきものと思います。ここに、罹災地方民を代表して政府にこの点を強く要望しておきます。(拍手)  さて、外交問題については、平和維持の問題と善隣友好関係の促進の問題についてお尋ねいたします。  第一には平和維持の問題でありますが、ベルリンをめぐる東西両陣営の対立激化に加え、米ソ両国核兵器の実験を再開している現在、世界平和確保こそは、日本国民のみならず、世界の全人類にとって差し迫った問題であります。われわれは今日、平和の維持、国際緊張の緩和のために、あらゆる努力を傾注しなければならないと信ずるものであります。平和国家として再建され、平和を最大の国是としているわが国は、このように緊張の度を加えて参りました国際情勢に対処して、どのような態度で、どのような具体的な政策を講ずるかは、政策の最初にして最大の、かつ根本的な問題と考えざるを得ないのであります。しかし、池田内閣には平和の維持についての確信がない、理想がない、政策がないのではありますまいか。総理は昨日の演説の中で、「いかにすれば世界平和の達成に建設的に貢献できるかという、より高次の理念を堅持しつつ、あらゆる国際問題に対処していく所存」であると述べておられます。ところが、何が「より高次な理念」であるのか、一向に明らかでありません。明らかなことは、サンフランシスコ体制の礼讃を繰り返していたに過ぎないのであります。つまり、池田内閣が国際問題に対処していく基本的な問題は、サンフランシスコ体制の礼讃であり、日米安保体制の墨守であるわけであります。先般、池田首相はワシントンを訪問し、ケネディ大統領の歓待を受けて、手放しで喜んで帰ってこられました。ケネディ大統領が長年の知己のごとくに池田首相を歓待した理由は、その対外政策が世界の至るところで失敗をし、また、ロケット技術におけるソ連からの立ちおくれにいら立っているアメリカが、わが国を太平洋におけるアメリカの防波堤とし、極東における対共産圏作戦基地として利用しようとしているのにほかならないからであります。核兵器の異常に発達している今日、日本アメリカ核兵器軍事戦略の片棒をかついでいる限り、一歩誤って日本核戦争の戦場にならないと、だれが断言できるでありましょうか。この意味において、この際、日本の安全と国際緊張の緩和に関する池田首相の具体的な政策と所信のほどを承りたいのであります。  第二は、近隣諸国との善隣友好関係の促進の問題であります。歴代の自民党内閣は、その外交方針の中でほとんど例外なく善隣友好を唱えて参りました。しかしながら、中国、朝鮮、ソ連等の諸国との関係は少しも改善されておりません。これら諸国との関係に関して、池田首相はしばしば前向きの姿勢で解決したいと述べておられるのでありますが、そこで、まず中国問題についてお伺いいたします。  中華人民共和国政府は全中国を代表する確固たる正統政府であります。その承認は、アジア、アフリカを初めとして、今や世界の大勢であります。これを反映して、国連における中国代表権の問題は、今総会において大きな問題として世界の注目を集めております。日本は依然としてアメリカに同調する態度をとっているが、一体、政府中華人民共和国政府を承認できない理由は何でありますか、この際はっきりと承りたいと存じます。(拍手)もし、この政府共産主義政権であるというならば、日本はすでにソ連初め東欧諸国との間に国交を持っている現在、ひとり中国についてだけ共産主義政権であるという理由で承認できないという理屈は成り立たないはずであります。また、もし台湾の蒋介石政府と交渉を持っているからであるとするならば、これもおかしなことであります。かりに自民党政府の立場に立ったとしても、日華平和条約を見ると、日本は?政府が全中国を代表する政権とは認めていないことは、との条約の地域限定条項が何よりもよくこれを物語っています。全中国を正当に代表し得るものは北京政府だけではないでありましょうか。なぜ日本は中国を承認できないのか、国民政府の態度に対し理解に苦しむものであります。また、国連総会において今年も中国代表権問題が討議されようとしております。政府はよろしく北京政府を中国の代表政府と認める旨の提案に進んで賛成すべきであると考えられますが、実際にはどのような態度で臨んでおられるのか承りたいと存じます。また、かりに国連での中国代表者北京政府とする旨がきめられた場合には、国連中心外交をモットーとする池田内閣は、直ちに北京政府を承認せざるを得ないはずであります。こうした事態に対処する総理の所信を承りたいのであります。われわれは、すみやかに中国と正常な国交を回復し、また政府間貿易協定を締結して経済交流活発化をはかるべきだと確信しています。以上の諸点について総理から明確な御答弁を求めます。  次に、朝鮮問題であります。申すまでもなく、日本は対日平和条約で朝鮮の独立を承認することになったわけであります。ところが、なぜか李承晩政権だけを相手にして、いつ果てるとも知れないいわゆる日韓会談を続けてきたのであります。歴代の自民党政府南鮮政府だけを相手にしてきた表面上の理由は、南鮮政府国連総会で唯一の合法政府であると認められているからということであります。ところが、国連総会の一九四八年十二月のこの決議は、結局、南鮮政府は三十八度以南の南鮮地区で自由な選挙によって成立した唯一の政府であるということであります。決して全朝鮮を代表する正統政府であるとは言っていないのであります。のみならず、その後南鮮では一昨年のクーデターによって李承晩政府が倒れ、以来現在の朴少将による軍事政権の樹立まで、その政権の交代はいずれも軍事的なクーデターによるものであって、決して自由な選挙によって民主的に合憲的に政権が交代したものではありません。してみれば、現在の軍事政権国連決議で言っているような合法政府では決してないのであります。政府はかかる軍事政権を相手にして何を取りきめようというのでありますか。不可解しごくと言わなければなりません。(拍手)結局、南鮮との交渉は反共軍事同盟体制アメリカ支援のもとに行なわんとしているのであって、一そうアジアにおける緊張の激化をもたらすものと言わざるを得ません。総理はすみやかに従来の日韓会談を取りやめて、朝鮮の南北統一のために協力すべきでありましょう。なぜならば、これのみが全朝鮮の人民に幸福をもたらすものであり、かつは、かつて四十年にわたって日本が朝鮮に対して行なってきた植民地支配のせめてもの償いになるからであります。こうした方策こそ朝鮮との間の真の善隣友好の道だと確信いたしておりますが、総理の所信を承りたいと存じます。  次に、日ソ関係であります。日ソ関係はいまだ平和条約も結ばれていないため、多くの不幸な事件を起こしていることについては、御承知のとおりであります。しかしながら、当面日ソ間の貿易の促進につきましてはソ連側もはなはだ積極的であり、先般は相互に商品見本市も開かれ、また極東シベリア開発についての日ソ経済技術協力可能性も濃い状態にあるわけであります。平和条約を結ぶにしても、貿易を増大するにしても、何といっても日ソ間の友好関係の改善が基礎であることは言うまでもありません。ところが、池田総理ソ連に対する態度は、はなはだ高飛車で、むしろ挑戦的な響きを持った発言を昨日も本会議場でなさっておられます。すなわち、総理米ソ両国核実験の再開について、アメリカに関しては、それはソ連実験再開に対応するものであるとして一応の同情を示しつつ、「遺憾しごくである」と言い、「自制を要請する」としているに反し、ソ連に関しては、「全世界の平和を愛好する諸国民の失望と怒りを招いたものである」として、ソ連に「深甚なる反省を求める」と、手きびしく非難しているのであります。核実験核戦争に連なり、核戦争は人類の全滅を意味いたします。それゆえに、核実験は理由や動機のいかんを問わず反対すべきでありましょう。アメリカの実験には比較的寛大で、ソ連に対してはことさら手きびしいというのは、決して当を得た態度ではありますまい。少なくとも日ソ間の友好関係の促進にはこうした片寄った態度は決して役立たないでありましょう。この際、政府ソ連に対する基本的な態度並びに日ソ貿易の振興に関する施策に関し、総理及び関係閣僚からできる限り詳細にその所信を承りたいのであります。  さて、次に経済政策の問題についてお尋ねいたします。去る三十八国会における三十六年度予算案の審議に際し、わが党は、池田内閣所得倍増計画国民生活を犠牲にする大資本木位政策であることを批判し、この計画を実施するならば、必然的に、国際収支物価等の面から日本経済の破綻が現われてくることを警告したのであります。昨今のわが国経済の趨勢を見ると、わが党の警告が明らかな現実となって現われてきたのであります。このことは、所得倍増計画を一枚看板として出発した池田内閣が、すでに日本経済の現実の姿によって不信任を突きつけられていることを意味いたします。私は、池田内閣の重大なる責任を追及する立場に立って、以下、幾つかの具体的な問題について総理並びに関係閣僚の所信をただしたいと思います。お尋ねする問題は、国際収支物価設備投資中小企業金融貿易自由化及び農業問題でありますが、まず第一には国際収支の問題についてであります。  池田内閣所得倍増計画が実施に移されると同時に、わが国経常収支は赤字に転じました。前国会で総理は、「日本経済は心配要らない。経常収支も七−九月は黒字となる」という言明をされたにもかかわらず、現実は七−九月も経常収支の赤字が続いております。しかも、五月以降は総合収支も赤字になり、八月の総合収支は実に一億三百万ドルと、戦後最大の赤字であります。そして保有外貨は本年三月末に二十億ドルに達したのが、現在までに約四億ドル減少して十六億ドル台になっております七このまま進めば、年度末には十億ドル前後にまでなるおそれがあります。総理は、「経済のことは、この池田にまかせろ」と大みえを切っておられたのに、昨日の演説では、ひたすら「国民諸君の協力を得れば」と言って、むしろ責任を国民に転嫁しているありさまであります。今や「経済のことも池田にまかせるわけにはいかない」と思うが、これに対する総理の見解をお伺いいたしたい。(拍手)  次は物価問題であります。池田内閣所得倍増計画は、国民所得増大をもたらす前に、物価の上昇をもたらしました。昨年昭和三十五年六月から本年六月までの一年間に、卸売物価は四・二%、消費者物価は四・八%上がっております。この物価値上がりのおもな柱となっているのは、明らかに、国鉄、電力、水道、都市交通等公共料金引き上げであります。政府は、本年三月七日に「物価が落ちつくまで、当分の間、原則として公共料金引き上げを認めない」と閣議決定しております。ところが政府は、その後すでに東電の料金引き上げも認めたし、また、近く私鉄料金引き上げも認めようとしているのであります。三十六年度の経済見通しをきめたとき、政府は、消費者物価値上がりを一・一%と閣議決定しているのであります。それが現在四・八%も値上がりしている。まさに値上がり率は四倍であります。倍増どころではありません。そこで、藤山経企長官にお尋ねいたしたいのでありますが、一・一%ときめたとき、電力、水道、都市交通等公共料金値上がりしたのは、その予定に入っていたのか、いないのかということであります。池田内閣は、閣僚の間で物価政策についてその態度がばらばらであるように見受けられます。池田内閣実力者内閣であるけれども、こういう点から見れば、むしろ、ばらばら内閣と言った方がよいのではないかと思うのであります。河野農相だけは、みそ、しょうゆ、木材等価格抑制について一応の努力をしておられるようであるけれども、他の閣僚は、多くは業界の陳情を丸のみにして、値上げを認めようとされているのであります。これでは、物価政策に破綻を来たすのは当然でありましょう。それはともかくとして、こんなに物価値上がりをしたことは、政府政策スピード違反であると言わなければならないのであります。見通しが全く狂ったのであるから、政府は当然責任を感じておられることと思いますが、いかなる形で責任をとられますか。あやまちを改むるにはばかることなかれというが、この際、少なくとも政府は、消費者大衆を含めて国民に謝罪すべきだと思うが、池田総理はどう考えておられるのか承りたいと存じます。(拍手)  さらに物価値上がりの犠牲は、特に低所得者層に強く響くことになりますが、生活保護基準及び失業対策労務者賃金大幅引き上げを行なう意思があるかどうか。蔵相及び厚生、労働両大臣の所信を承りたいのであります。  次は、設備投資についてであります。国際収支の赤字や、あるいは物価上昇をもたらしたほんとうの原因は、民間大企業設備投資の過熱であります。このことは、政府も財界もこれを認めざるを得なくなり、今また日銀公定歩合の再引き上げを行なうに至ったのであります。本年一月に公定歩合を一厘引き下げ、そして七月には一厘引き上げ、さらに本日一厘引き上げを行なう、こういう朝令暮改の金融政策の取り扱いは、政府経済見通しの誤りからきたことであり、醜態といわざるを得ません。金融政策について、日銀がその判断に基づいて適時に適切な措置をとり得るよう、日銀の自主性を拡大すべきであると考えるのであります。具体的には、日本銀行法第六章の日銀に対する主務大臣監督条項を改正し、同時に、日銀政策委員会に、労働者、農民、中小企業者等代表者を加えるべきであると思うのでありますが、総理の見解はどうでありますか。設備投資の過熱を招いたものとして、本年度の設備耐用年数の短縮、配当課税軽減等企業課税の減税が作用していることは明らかであります。三十七年度の減税では、企業課税の減税ではなく、国民生活面への減税を主体とすべきだと思うがどうか。また、大企業のみに特権的に認められている租税特別措置も、民間設備投資を過熱させている税制上の要因でありますが、租税特別措置を大幅に整理する考えはないか。総理及び蔵相の答弁を求めます。  次は、中小企業金融についてであります。設備投資抑制策をとれば、当然中小企業金融は引き締まるし、現在すでに引き締まっているのであります。これに対し、特別の金融措置をとることが必要であります。具体的には、財政投融資中小企業金融機関資金量を大幅に増額する意思があるかどうか。中小企業信用保証協会が保証し、保険公庫が保険した中小企業貸し出しは、日銀の特別融資の対象とすべきものと思うがどうか。中小企業に対する両建、歩積み貸付を規制するよう銀行法を改正すべきものと思うがどうか。  以上三点について大蔵大臣の明確な答弁を求めます。  次は、貿易自由化の問題でありますが、時間の関係でこれを省略いたしまして、最後は、農業問題であります。  自由米を認める、自由市場を認めるということが、統制の根幹をゆるがすものであることは明らかであります。河野農林大臣がいかに言葉巧みに説明されても、心から納得する者は少ないのであります。政府もわが党も、日本農業が今重大な転換期に直面している、あるいは危機に直面しているという認識の上に立って、前の国会では農業基本法をめぐって激しい論議がかわされたのであります。ところで、結局、政府提案基本法が成立したのでありますが、関係法案は一つもできておらない上に、基本法という性格からして、また特に政府案は、その内容が明確を欠く点が多いのであります。今多くの農民は、農業の基本政策を一体どこに持っていかれるのかわからないという不安を抱いているのであります。したがって、農林大臣として、当面、何をおいてもなすべきことは、基本法審議の際における国会内外の論議を十分しんしゃくして、農民が真に安心できる農業政策の確立ということであります。かかる段階で河野構想が発表されたことは、いたずらに、農村、農民に不安動揺を与えるにすぎません。また、基本法では、所得の均衡、格差の是正ということが最大の目的になっているのでありますが、河野構想は、この目的とは反対に、格差拡大になることは明らかであります。麦の管理をゆるめる、大豆の自由化をやる、バナナ、パイカン果汁等自由化をやる、米について自由米を認める、一連のこういう政策をやって、どうして所得の均衡をはかることができますか。政府は、基本法を悪らつに運用していると言わなければなりません。河野構想は、生産者も、消費者も、全く魅力を感じておりません。ただ、大部分の米屋さんと財界だけが賛成しているにすぎないのが実情であります。それをどうして、農政を担当される農林大臣がしゃにむに推し進めようとされるのか、全く理解に苦しむところであります。(拍手)実は、まことに申しにくいことでありますが、世間では、これはよほど人に言えない複雑な事情があるのではないかと申しております。この際、河野農林大臣の真意のほどを国民の前に明らかにせられたいのであります。  最後に、総理に次の二点をお尋ねいたします。  第一は、総理は、国会でわれわれの質問に答えて、米の統制は撤廃しないと言明されているのであります。しかるに、河野構想は明らかにあなたの言明と矛盾しているが、総理はどう考えておられるのか、承りたいのであります。また、農林大臣は、河野構想実現のため、関係法案を次の通常国会に提案すると言っておられますけれども、総理は同意されているのかどうか、お尋ねいたします。  第二の点は、総理は、来たる十一月十六日、タイ、ビルマ等東南アジア訪問をされる予定であります。あなたは、かねてライス、バンクの構想をお持ちでありますので、これに関連し、この際お伺いいたします。すなわち、政府は、河野構想自由米を認め、肩の荷を軽くし、一方では、さらに外米の買付を進めようとするのではないかと農民は不安を抱いております。特に今回の総理の外遊に際し、外米の買付の約束をさせられてくるのではないかと案じているのであります。したがって、この不安を解消させる意味から、この際、そういう約束はしてこないということをここに言明できますか。総理のこれに対する御所見をお伺いいたします。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  わが国平和維持の問題でございます。これは、さきの国会で申し上げましたごとく、われわれは国連中心で、そして各国が誠意を持って世界の平和を確立するよう努力しなければならない。そういうときまでは、いたし方なく、日米安全保障によって日本の安全を保っておるのであります。しかし、あくまで国連中心各国が話し合って、建設的な議論をし、平和を確立するように努力していくことが、外交方針でございます。  なお、中共の問題につきまして、何ゆえ中華人民共和国を承認しないか。—— これは共産主義であるからではございません。われわれは、中共の問題は重大な問題でございますから、国連十分討議して、そして世界の納得し得る結論を出すよう努力していくことが当面の課題だと考えております。施政演説で申し上げましたごとく、御承知のとおり、われわれは中華民国政府というものと平和条約を結んでいる関係がありますので、一般の他の国とは違った立場にあるのであります。これがむずかしい問題のもとであるのであります。しかし、この今の現状中華民国があり、そして中国大陸には中共政権がある。この現状につきまして、国連十分討議をするようわれわれは考えておるのであります。  次に、韓国の問題でございまするが、私は、韓国日本との昔からの関係考えまして、早く正常な姿に持っていくことが適当だと思います。もちろん南北朝鮮統一を願うととはもちろんでございまするが、それを待つというわけにも今の状態ではいかぬと私は考えておるのであります。  日ソの問題につきましては、われわれは、一九五六年のあの共同宣言にあくまでよって、善隣友好関係を続けていきたいと考えております。  核兵器の問題につきましては、一九五八年の実験停止協定ができましてから、突如としてソ連から実験を開始をいたしましたので、まずソ連に話をしたのでございます。アメリカでもソ連でも、どこの国でも実験を停止するよう、われわれは常に強く要求するわけであります。  次に、経済問題でございまするが、国際収支見通しは、お話のとおりに、われわれの予想とは違って参りました。これは、一つには、世界経済情勢もございましょうが、お話のように、日本民間設備投資の行き過ぎ等々がございまして、予定より変わって参りました。しかし、お話のように、この三十六年の年度末に十億ドルぐらいになろうというようなことは、これは私はないと思います。今後このままでいってはいかないので、この辺である程度手綱を締めなければならぬという立場になっておるのであります。国際収支が非常に減ってくるから責任を負え。—— これは責任の問題ではない。われわれの内閣は、経済問題その他一般国民の負託を受けてやっておるのであります。だから、行き過ぎたときにはこれを締める。そうして行き過ぎないときにはこれを助長していく。これは政治の根本でございますので、責任のあるないよりも、この場をどう切り抜けるかということがわれわれの関心事であるのであります。したがいまして、公共料金につきましても、これは、当初の消費者物価の一%何ぼというときにはあまり見込んでおりません。また、東京だけの問題でございます。私は、今後の問題におきましても、公共料金というものにつきましても極力押えていく考えでおるのでございます。しかし、何と申しましても、お話のとおり、公共料金は戦前のそれに比べて上がり方が非常に少ない。戦後の物価政策上非常に強く押えておったのであります。いつまでも強く押えて、そのためにサービスが悪くなったり、経済の発展に支障があるというふうな場合におきましては、ある程度のことはやむを得ない。こういう考えで進んでおるのであります。  なお、日銀政策委員の問題でございまするが、これは、すぐれた経験と識見のある人というので四人を選んでおります。まあ政策委員を置くか置かないかということにつきましては議論はあるのでございますが、今置く場合に、四人の委員が利益代表という意味ではございません。金融に関して経験があり、その他経済界に識見のある方というので選んでおるのでございまして、労働者代表を入れるがいいか悪いかという問題もありましょうが、この政策委員会というものがはたして必要かどうかという根本につきましても、私は今後検討していくべき問題ではないかと思います。  なお、設備投資の租税措置等につきましては、大蔵大臣からお答えすることにいたしておきまするが、米の統制撤廃。私は、米の統制を撤廃しないと、はっきりと言っております。だから、河野君の考え方が私の考え方と違うのだったならば、これはやめてもらわなければいけませんが、私は違わないと心得ております。その説明は農林大臣からお答えすると思います。したがいまして、提案するしないの問題はまだ早い。  なお、東南アジアに行くのは、米の買付をするか、これはそういう考えは持っておりません。ライス・バンクの問題と米の買付ということとは別個の問題でございます。どうぞその点は御安心いただくよう願います。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、   拍手
  8. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) ただいまの小林さんの御質問については、ほとんど総理が委曲を尽くしてお答えになっておるのでありますので、私から特に申し上げることはないのであります。  ただ、ソビエトとの関係は、御承知のように、一九五六年に共同宣言ができまして、その中で、国際紛争は平和的に解決する。それから武力による威嚇または武力行使を慎しむ。国連憲章五十一条の個別的集団的な自衛権を相互に確認する。それから内政干渉を相互にし合わない。こういう四つの原則をきめておるのでございます。しかし領土の問題が未確定でありますので、平和条約というものは結べないわけでございます。こげ関係共同宣言によって両国が友好的にいく。したがってその限りにおいて貿易も増進していこう、こういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  9. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど貿易自由化については時間がないので、−他の機会に譲ると、かような御発言もございました。多分私に対する質問はこの点だと思います。中小企業については、特に大蔵大臣を御指名なさったようでございますので、大蔵大臣答弁に譲りたいと思います。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問は、本年初頭の物価水準の問題について、一・一%の中には公共料金が入っているかという御質問でございました。当時の一・一%の算定の中には、国鉄運賃、九州電力、私立学校の授業料の値上げ等は入っておりますけれども、その他のものにつきましてはここに入っておりません。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  11. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 中小企業に対する資金対策でございますが、今私どもが一番意を用いていることは、金融引き締め政策によって特に弱い中小企業者にそのしわ寄せが寄らないようにということでございます。前回公定歩合引き上げましたときは、市中の金融機関において決議をいたしまして、中小企業向けの貸し出し金利は公定歩合が引き上がってもこの金利は据え置く、引き上げない。そうして金利、資金量の両面において格段の配慮を行なうと、こういう申し合わせをしていただいて、その通りやっておりますが、今回も同じように、公定歩合引き上げがございましても、中小企業向けの貸付金利は引き上げないということ、それから政府関係機関の資金量よりも民間金融機関の資金量のほうがこれははるかに大きくて、中小企業にいく貸付は何千億円ということでございます  ので、まずこの量を切らないことが中小企業には一番大切でございますので、中小企業への貸付比率を落とさないという強い行政指導をただいまやっておりますので、この点は十分配慮しておるつもりでございます。そうしてさらに、そういうことに加えて、財政投融資においてもこの資金量の増強をはかるということに今回はいたしたいと思います。すなわち、国民金融公庫に九十五億円、中小企業公庫に九十億円、商工中金に百六十五億円、そのほかさらに政府資金をもって金融債の買い上げを行なって中小企業向けの資金供給を二百億円、合計五百五十億円の資金手当を中小企業の年末需要に備えてやる。必要があれば、さらにそのつど、この対策を強化する。こういう方針を立てておりますので、したがって引き締め政策が特に中小企業にしわ寄せにならないように、この点は十分気をつけるつもりでございます。  それから租税特別措置を整理する考えはないのかということでございますが、これは御承知のように、租税特別措置は、政策上の必要からとった措置でございますので、この効果が出てくれば、そうしてまた目的を達したら、直ちにこれは廃止する性質のものでございますので、大体昭和三十一年から今日までの整理では、金額にして今までの措置の半分は整理して参りました。特にこの三十六年度の税制改正のときにも御承知のようにその合理化を十分にやっておりますが、三十七年度においてもさらに改廃すべきものはするという方針で、ただいま税制調査会に検討を願っている最中でございますので、逐次必要がなくなったと見られるものについては整理する方針でございます。  それから中小企業信用保証協会が保証して保険公庫が保険した中小企業向けの貸し出しは日銀特別融資の対象とすべきであると思うがどうか、という御質問でございますが、私どもは、日銀特別融資の対象にするということは妥当でないと思いますので、中小企業に対してこの信用保証を利用して貸し付けた民間の金融機関に対して、その機関が持つ債券を、金融債その他を、預金部資金、政府資金で買い上げるという買いオペーレーションをやって、中小企業への貸し出し資金を供給したいと考えておりますので、そういう方法で対処すれば、大体うまくいくのではないかと思っております。  それからもう一つは、生活保護基準と失業対策、労務者賃金の引き上げの問題でございましたが、生活保護基準を変えるということは、これは社会保障制度の一つの根本の問題でございますので、ほかの政策との総合判断からすべきものである、したがって年度の途中で簡単にこれを変えるということは妥当でないという意見でございましたが、しかし、ただいまの物価情勢から見まして、当面五%の引き上げを行なって、生活困窮される方への問題を解決するということにして、その基準内容等は、明年度、三十七年度予算編成のときに根本的に考えたいという態度を今度はとっている次第でございます。一方失業対策の問題でございますが、この対策事業そのものもちょうど前にきまってから今日まで十二年になりますので、事業そのものについても根本的な検討を必要とするということで、ただいま関係省で検討をやっておりますので、その検討の結論を待って、明年度予算考えることが妥当だろうということで、今度の補正予算ではこれを見送ることにした次第でございます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  12. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 生活保護基準引き上げについてのお尋ねでございますが、ただいま大蔵大臣が答えましたとおりでございます。経済の成長あるいは国民所得の増加ということを考えます場合に、政府といたしましては、低所得階層の生活内容の充実向上に格別の配慮をしなければならぬものと心得ておるわけであります。したがって、本年度におきましても、御承知のように昨年度に比して一八%の保護基準の引き上げをいたしたわけでございます。最近の物価の増高等にかんがみまして、さらに今回五%の引き上げをしよう、かように考えておる次第であります。御了承願います。(拍手)   〔国務大臣福永健司君登壇拍手
  13. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 失業対策事業就労者の賃金につきましては、今大蔵大臣から一応答弁があったのでありますが、ただいまの答弁と決して矛盾するわけではございませんが、今次補正予算に今申し上げました意味においての数字は現われておりませんけれども、鋭意各省間で今折衝中でございまして、本年度内の措置につきましても、何らか適切な方途を講ずるよう目下鋭意検討中でございます。なお来年度につきましては、民間賃金の動向に基づきまして、これまた当然に検討されるべきものと考える次第であります。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  14. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  農業基本法関係のある法案は、ぜひ今次臨時国会において御審議をいただきまして、成立を見るようにいたしたい。なおまた、この各種の法案に続きまして、明年度予算措置等につきましても、この農業基本法を軸としまして、わが農村全体の振興をはかるように鋭意努力をいたしたい。こう考えております。  そこで、米に関することについていろいろ御心配をいただいておりますけれども、これは多少誤解もあるのではないかと思いますので、いずれ他の機会に詳細は申し上げることにいたしますけれども、私の考えを率直に申し上げますと、御承知のように、今日消費者の皆さんの中に、おおむね三分の一程度の配給辞退の方がいらっしゃるわけであります。これらの諸君は、現在の配給価格でなくてよろしい、もう少し高くてもよろしいというような意図が見受けられるのであります。したがって、われわれといたしましては、高く買って下さる人に無理に安いお米を配給しなければならぬ必要はなかろうじゃないか、高く買う意思のある人には農村から高く売って差し上げてよかろうじゃないか、せっかく高くてもよろしいという人に安くしなければいかぬという必要はなかろうじゃないか。これはあえて申し上げるわけではございませんが、社会党の皆さんから、この前、私、農林大臣をいたしました当時において、今日の供出制度は適当でない、今日のこの法律は適当でない、自由を与えて、もっと農家に、生産者に自由にしてやらなければいかんじゃないか、苛斂誅求していかんじゃないかということを、しばしば承ったのでございます。私はお説のとおり、当時の必要はもうなくなった、足りないものを皆さんにお分けするのではない、今日の目的は、一定の価格で消費者の方々の生活に不安を与えないということが、今日の米の消費者に対するわれわれの意図でございます。それで、消費者の方々のうちの配給を御辞退なさる人の分まで、われわれはこれを取り扱うことはしないでもよかろうじゃないか。また生産者の諸君に対しては、再生産に必要な価格でわれわれは幾らでもちょうだいいたします、政府は無制限に幾らでも買います。この線を守ることによって、われわれは農民諸君の御要望にこたえ得るのじゃなかろうか。この二つの点さえしっかりかんぬきを入れておきますことによって、今申し上げますように、消費者のほうで高いお米をけっこうだという人には農家から高く売っていいじゃないか、この自由を押える理由は私はなかろうじゃないか、こういうことを考えまして、鋭意この点について各方面の御意見を拝聴して検討中でございます。いずれ案がまとまりましたならば、しかるべき機会に御審議願いたいと思うのでございまして、総理のおっしゃるように、統制を無制限にはずして、みだりに食管法の基本方針を逸脱して、自由米を認めようというようなことは考えておりません。したがって、各方面の御意見を十分拝聴いたしました上で、結論を得て、皆さんの御審議をいただきたいと、こう考えているわけで、御了承を願います。(拍手
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 谷口弥三郎君……。    「外米輸入問題をどうするか」と    呼ぶ者あり〕
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 農林大臣から補足いたします。   〔国務大臣河野一郎君登壇
  17. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 外米の件についていろいろ御心配でございますけれども、もう今日わが国の食糧事情は、外米に依存しなければならぬような数字に実はなっておりません。現に今年度の数字にいたしましても、おそらく七十万石以下の数字でございまして、これによって需給を維持するというような重要なウエートを持っておりません。したがって外米を入れなければならぬとか、なるとかというようなことではないのでありまして、われわれはまた将来につきましても、御承知のとおり、米の生産が特別な事情——天然現象でもあれば別でございますが、しからざる限り、減少して参るような事態にありませんことは御承知のとおりでございます。(拍手)     —————————————
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 谷口弥三郎君。   〔谷口弥三郎君登壇拍手
  19. 谷口弥三郎

    ○谷口弥三郎君 私は自由民主党を代表して、総理並びに関係大臣に対し、若干の質疑を行ないたいと思います。  まず最初に、最近の経済情勢に関連して、池田内閣の主要な政策である高度成長政策の諸問題を取り上げたいと存じます。高度成長政策は、内政上における池田内閣の最も重要な政策一つでありまして、その成り行きは国民の注視の的であります。  第一は成長のテンポについてであります。国民所得倍増計画は、昭和三十五年から十年間に、国民所得倍増させることを目標として、そのためには、毎年実質七・二%の経済の成長の必要があるのであります。ただ最初の三年間は、過去の経済の実勢から見て、九%程度の成長が予想されるということでありました。高度成長政策の第一年度である昭和三十六年度の国家予算は、同年度経済成長率が実質九・二%になるであろうという見込みのもとに編成されました。ところが、経済の進み方は、政府の予想を上回り、この際、幾分手綱を締めなければならないところにきております。これを過去一両年の経済成長率と比較しますと、昭和三十四年度も三十五年度も、経済の実際の伸びは、政府の予想を上回っていたにもかかわらず、物価は比較的安定し、国際収支にも何ら危険な傾向は現われなかったのであります。しかるに、本年度に至って、政府の当初の見通し九・二%を上回ることわずかに〇・七%にして、国際収支赤字の累積から、景気の調整を必要とするに至ったということは、はたして、その原因がどこにあるのでありましょうか。昭和三十四、五年度の成長率が異常に高かったにもかかわらず、困難な事態に陥ることのなかったのは、偶然にも、幸運な諸要因が重なり合った結果であったのでありましょうか。そうだとすれば、安定した成長を遂げるためには、どの程度の成長率を維持することが適当であるのでありましょうか。総理の御所見を伺いたいと存じます。  第二は物価問題についてであります。  二十二日の記者会見において、総理は、物価問題について、いわば相当強気の御答弁をなさっておりますが、卸売物価について申しますならば、今日卸売物価が比較的安定しているのは、物資の供給が輸入によって十分裏打ちされているからではないでありましょうか。つまり、卸売物価安定のしわ寄せが、国際収支赤字になって現われているということではありますまいか。国際収支均衡を保持するために輸入を抑制することになれば、需給のアンバランスが生じ、卸売物価上昇を来たすのではないかと思われますが、いかがなものでありましょうか。また、消費者物価については、値上がりの持つ所得階層別の影響に注意しなければならないと存じます。国民所得は、消費者物価上昇率以上の率をもって増加しておるとはいえ、いわゆるボーダー・ライン以下の層についても、一般的な所得上昇率を当てはめて論ずることは、かなりの危険が伴うのではありますまいか。国民所得一般には増加していても、一部には消費者物価上昇に見合うだけの所得をふやし得ない人々の存在することを否定することはできません。そうした人々の生活を安定させることに特段の配慮をお願いいたしたいのであります。これらの点について、政府の御所見を伺いたいと存じます。  次に、昭和三十七年度予算編成の心がまえについて、総理並びに大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。もとより、明年度予算の編成方針はこれから御決定になることで、今その細目をお伺いしようとするのではありませんが、ジャーナリズムの上でも、すでに相当な論議が行なわれております点について、大まかな考え方をお尋ねしたいのであります。  第一に、明年度予算がかなり強く引き締めの線を打ち出すであろうことは、当然に予想されるところでありまして、新聞の伝えるところによりますと、政府部内では、消費的経費を極力節約するほか、公共投資についても、その増額をなるべく小幅にとめたいという意向が強いということであります。もし、明年度予算が公共投資にきびしい圧縮を行なうならば、計画の実現に支障を生ずることにもなりましょうし、社会保障についても、その他各般の施策についても、類似の困難が予想されるのであります。そこで、私がお尋ねいたしたいのは、明年度予算における引き締めの程度はどのくらいのものであるべきか、要するに、明年度予算一般的性格は何か、それは高度成長政策実施の長期的な見通しに変更を加える必要を生ずるほどのものであるかどうかという点であります。この点について大体のお心組みを伺いたいのであります。  第二は、四千五百億円を上回るであろうといわれております明年度の自然増収をいかに処置するかという問題であります。税制調査会の答申の線に沿うて、自然増収の相当な部分を減税に振り向けるべきであるという主張がある一方、減税国民の消費性向を高め、景気の過熱を助長する危険があるから、いわゆる資金のたな上げを行なうて、景気調節のために留保すべきではあるまいかとの主張もございます。また、別の角度から、減税、特に所得税の減税は、所得税を負担する階層に対しては恩恵となるが、所得税を負担し得ない低所得層に対しては何らの恩恵にもならないから、減税の余裕があるならば、それは社会保障の充実に充当すべきであり、もし、減税を行なうにしても、大衆課税の軽減という意味で、間接税の軽減を中心とすべきであるという主張もなされております。これらの相対立する主張が盛んに論じられている今日、政府が全く白紙の立場にあるということも、何か、うなずけないものがあります。これらの諸説について、政府において何らかの所感がありますならば承りたいと存じます。  次に、中小企業の対策についてお伺いしたいと思っておりましたが、ただいま大蔵大臣からいろいろとお話がございましたので、時間の都合もございますので、この点は省略させていただきます。  次に、私は、社会保障の問題についてお伺いいたしたいと存じます。  社会保障の充実は、公共投資と並んで、昭和三十六年度予算の三本の柱の一つとして、特に重点的な取り扱いを受けた事項であります。公共投資につきましては、さきに少しく触れましたように、需要抑制の見地から、その拡大に一定のワクをはめようという空気がありますが、社会保障についてはいかがでありましょうか。社会保障については、景気が上昇する場合にもまた下降する場合にも、それぞれ社会保障制度の運用に期待される面が多いのであります。上昇局面においては、景気の上昇に付随する所得格差の拡大を社会保障の面から補正するという任務、また下降局面においては、不況のしわ寄せを受ける低所得者を救うという任務、そうした任務が社会保障制度に課せられております。なかんずく景気が下降に転ずるような場合に生ずる影響は特に痛切でありまして、社会保障制度に寄せられる期待もまたしたがって大きいことを強調しなければなりません。私はこの際、社会保障の充実が一年きりのお題目にとどまることがないように、引き続き大きな努力を払うことを要望してやまないものであります。社会保障に関する政府の熱意のほどをお伺いいたしたいと存じます。  第二に、医療制度の問題についてお尋ねいたします。医療制度の改善は長い間の懸案でありますが、日進月歩の医学医術を取り入れ、医療の本質と主体性を阻害しないということが基本問題であります。さきに開かれました医療懇談会においては、医療保険について、関係団体の間では、ほぼ了解がついて解決の曙光が見えてきましたので、今回の補正予算にはそれに伴う経費が計上せられるものと期待していたのでありますが、そこまで具体的な解決が得られなかったことはまことに遺憾であります。この際、関係団体との了解事項については、すみやかに具体的な解決案が得られることを切望してやまないものであります。この点について厚生大臣見通しをお聞かせ願いたいと存じます。また、医療保険の改善に伴うて国民の医療費負担は当然若干の増加を来たすことが予想せられますが、しかし、特に低所得者層につきましては、たとえば国民健康保険の国庫負担率を引き上げるとか、その他低所得者の医療費負担の軽減について特段の配慮を必要といたします。この点について政府の心がまえをお聞かせ願いたいと存じます。(「いい質問だ」と呼ぶ者あり)  第三に、社会保障制度の総合調整の問題についてであります。わが国の社会保障制度は、医療面では国民皆保険が達成され、国民年金制度が新たに発足して所得保障の体系ができたことによって、社会保障の大きな柱が打ち立てられたことになり、これを機会として総合調整の問題が大きく取り上げられているのであります。社会保障制度の総合的な体系としては、すでに昭和二十五年の社会保障制度審議会による勧告にその構想が示されておりますが、自来国民生活の向上と経済の高い成長率とに裏づけされ、制度充実の要請にこたえながら府政も努力を続けてきたのでありますが、一本の筋の通った体系の実現を目ざして前進がなされなかったため、今日できてしまった各制度を通じて見ると、相互間の不均衡やギャップが目立ち、調整のなされないまま社会保障制度内における保障の格差を大きくしているのであります。したがって、まず国民皆保険のもとにおける医療保険の総合調整については、視野を広くして本問題に取り組むことが大切でありますが、この問題について厚生大臣の御所見を伺いたいと存じます。  次に、文教政策の問題について伺います。その第一は、学校給食の改善についてであります。さきに厚生省におきましては栄養基準の改訂を行ないましたが、この改訂された基準に従って学校給食の内容を改めるとするならば、近年における食料品の値上がりと相待って、父兄の給食費負担は一食当たり四円近くも増加する。すなわち二割余りの負担増となることが予想されます。ところで、国が学校給食のために支出している経費はどうかといえば、一食当たり一円の補助と、ごく少数の準要保護児童の給食費の半額負担があるだけであって、諸外国に比べますと、学校給食に対する国の配慮は、はなはだ薄いと言わなければなりません。国民の主食である米につきましては、生産者の生産費と所得を補償するための生産者米価と、社会政策的な意味を持つ比較的安い消費者米価との差額は、これを国が負担し、その負担額は年々数百億の巨額に達しておりますが、これに比較いたしますと、子供の学校給食用の小麦粉とミルクに対する国庫の負担はきわめて微々たるものであります。米の主たる消費者はおとなであると見て、子供にも、おとな並みの配慮が望ましいのであります。たとえば学校給食の全経費の半額はこれを国が負担するというがごとき措置を要望いたすものであります。この点について文部大臣並びに大蔵大臣の御意見をお伺いいたします。  第二は、高等学校の校舎の急増対策についてであります。終戦後におけるいわゆるベビー・ブームの影響は今日に及び、ここ数年間に高校進学者数が年々五十万人ずつも増大するという結果となって現われておりまして、高等学校の収容率を急速に増大させることが当面の急務となっております。これを戦前の中学進学率がわずかに最高一六%といったのに比較しまして、まことに今昔の惑にたえないのであります。これは国民の教育程度の向上を示すものであり、慶賀にたえないところであります。しかしながら、もしこの一両年に所要の校舎を整備するのでなければ、高校の入学競争は、はなはだしく激烈となり、青少年の不良化を助長するなど、非常に大なる社会問題を引き起こすおそれがあります。この面からも高等学校の収容数の増加が緊急に必要とせられるのであります。  第三点は義務教育の教科書の無料給付についてであります。教科書の値段は昭和二十七年に定められた基準が昭和三十年に一割方引き下げられたまま今日に至っており、諸物価値上がりにかんがみまするときは、教科書の価格基準もまた二、三割程度の引き上げを必要とする状態に立ち至っております。父兄の教育費負担は、これまでも、たとえばPTAの負担が相当な額に上るなど、いろいろの問題がありましたが、もし教科書の価格が引き上げられるとなると、父兄の教育費負担はますます増加する結果になります。この際思い切って義務教育の教科書を全部国が無償で給付することに改めるならば、義務教育の徹底という点でも、父兄の教育費負担の軽減という点でも、きわめて好ましいことであると考えますが、政府のこれに対する御用意をお伺いしたいのであります。  次に、災害対策についてお尋ねいたします。本年は、六月の豪雨、最近の第二室戸台風など、非常に大きな災害に見舞われました。その当面の対策につきましては、さきに政府側からの発表がありましたので、政府の施策に信頼し、対策実施の万全を期するようお願いいたすごとにとどめておきます。私は、ここで特に二つの点について政府にお尋ねいたします。御承知のとおり、台風の襲来は、わが国の地理的位置から見て決して偶然ではないので、毎年の年中行事でございます。その被害に対しまして、毎年のようにそれぞれ特別の措置を講じているのが現状であります。第一、水害発生の状況にかんがみるときは、従来の治水事業十カ年計画は非常に手ぬるい感じがい心します。この際、治水対策を拡充するとともに、緊急を要する事業につきましては、その実施を大幅に繰り上げて行なう必要があると思うのでございます。これについて政府の御見解をお伺いいたします。また第二に、今般の第二室戸台風について、気象庁はかなり正確な台風情報を出し、防災活動を円滑ならしめた点が認められるのでありますが、今後さらに適切な予報業務を行なうためには、現在の施設、人員で、はたして十分でありましょうか。政府所信をお伺いいたします。  最後に、私は、いわゆるおそるべき死の灰の問題についてお伺いいたしたいと思います。  核爆発による放射性降下物であるいわゆる死の灰は、北緯三十度から四十度の中緯度地帯の上空にたまりやすいのでありますが、とりわけ、わが国は最も集中しやすい所の一つで、日本はおそるべき死の灰の吹きだまりとなっているのであります。このために、わが国の気象観測陣や科学者が放射能の測定に努力し、人体への影響に極度の神経を使っているのであります。ジュネーブで続けられている核実験停止会議によって、今後は放射能による人類に対する一大脅威がいよいよ除去される日が来るものと、われわれは強い希望を抱いておったのでありますが、最近になって、当事国の一方が、いまだ交渉の半ばにもかかわらず、突然の一方的宣言によって矢つぎばやに多くの実験を行ない、核実験再開の端緒を開くに至ったことは、まことに遺憾のきわみであります。人類として最初の、そうしてただ一つの例として、おそるべき放射能による洗礼を受けたのは、日本人だけであります。十数年を経た今日におきましても、この悲惨なつめあとは、いまだに消えずに残っているのであります。したがって、われわれ日本人のみが、平和への祈りをこめて、核実験において、放射性降下物から人類を守る義務があり、これを世界に忠告する権利もあると存じます。長期間にわたって消えることのない放射能を有するストロンチウム九〇、セシウムなどの、いわゆる死の灰の地上蓄積量は、現在、一平方キロ三十ミリキュリーであると言われ、三年前に各国実験が中止されたというのに、今なお、たまる一方であるのであります。まさに死の灰の吹きだまりにあえぐわが国は、いかにしてこれに対処すべきでありましょうか。この際、政府所信をお伺いいたしたいと思います。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  20. 池田勇人

    ○国務天臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  御質問の第一点は、従来ずっと生産が伸びていった、そのときには国際収支の心配はなかったのだが、ことしになって急に国際収支赤字になる、これはなぜかという御質問。なかなかむずかしい問題で、当たっているかどうかわかりませんが、私が考えますのに、国際収支というものには、国内生産品でまかなう分と、外国から輸入してつじつまを合わすものとがございます。例をとって申し上げますると、たとえば今非常に伸びておりまする鉄鋼業でございます。鉄鋼を製造するのには、鉄鉱石、スクラップ、そうして石炭——強粘結炭でございます。一定の、たとえば千七八百万トンくらいのところでは日本の鉄鉱石が一割五分程度持っております。そうして強粘結炭につきましては、大体千八百万トンくらいの生産ならば、粘結炭は四割程度日本の粘結炭で負担します。それからスクラップの問題にきつましては、国内スクラップが相当の部分でございますが、千八百万トンが三千万トン近くになりまして、日本の鉄鉱石、スクラップには限度があるということになりますると、外国からの輸入が相当多くなければならぬ。そうしてそれが、輸入が多くなれば、貿易外のいわゆる船賃というものがかさんできますし、そうして国内でまかなう分の度合いが少なくなってくるから、国際収支が悪くなってくると、こう私は考えるべきだと思います。(「答弁じゃない」「そんなことは研究会でやれ」と呼ぶ者あり)たいへんいい質問だというお話がございましたので、私はお答えしておるのであります。問題は、成長率はだんだん上がって参っておりまするが、国内でまかなう程度が減って参りますので、私は国際収支に響いてくるものだと、こう考えるべきだと思います。  それから次に、卸売物価が安定しているのは、いろいろなものを輸入しているから安定しているのだろう。もし輸入をとめたならば供給が足りないから卸売物価が上がるのじゃないか。これも一応の御質問であります。しからば卸売物価が上がることは、国内の需要が多くて供給が少ない、こういうことなんです。そこで私は、他の不急とか、あるいは急激に上がる設備投資を押えていって、そうして適正な伸びをするために、適正な伸び以上の輸入を押えようとするのでございまするから、輸入を制限したからといって卸売物価が上がるということはございません。上がらないようにかげんすべきものだと考えております。  それから消費者物価上昇によって非常に困りやしないか。——消費者物価上昇しておりまするが、それ以上に各階級とも所得が増加しておりまするから、国民全般の下のほうも上のほうも所得の増加によりまして消費者物価が上がるのはまかなっていける。統計に出ております。これは下の階級も上の階級も大体同じでございます。  それから来年度予算編成方針でございまするが、これは今のような状況でございまして、なかなか四千五百億自然増収が出るかどうかわかりませんが、まあ大蔵大臣の所管でございまするが、私は池田内閣を組織いたしましたときに、所得倍増計画を立て、そうしてその手段として、減税と社会保障と、そうして倍増計画のもとをなす公共投資、そうして人的資源の育成、これは続けていくつもりでございます。堅持いたします。内容につきましては、そのつど大蔵大臣がお考えいただくと思います。したがいまして、社会保障制度の拡充強化は、私の最も重要視いたしておる政策でございまするから、医療関係その他につきましても、皆さん方の御協力を得まして進んでいきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍   手〕
  21. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 来年度予算に対する心がまえと減税方針というようなことに対する御質問でございましたが、これは、来年度経済見通しというものはまだ固まっておりませんし、今回とりました総合対策の効果というようなものも十分見きわめた上でないと、確たる方針が出せませんので、まだ固まっておりませんが、ただ、心がまえとしましては、国際収支改善対策の今回の趣旨に沿って、安定を基礎に経済を成長させるという方針で臨みたいと思っております。  学校給食の問題がございましたが、ただいま学校給食には三十五億円の補助金を出しておりますが、今の制度が一食当たり一円補助をするという制度になっておりまして、こういう零細補助の形式がいいか悪いか、同じ金を使うのなら、もっと社会格差の解消という方向に使ったらどうかとか、あるいは、まだ給食制度を行なっていない所の設備補助にこれをしたほうがいいんじゃないかというふうに、いろいろ議論されておる問題でございます。したがって、この社会格差というようなものを飛び越えて、一足飛びに、貧富の別なく、これの半分補助とか全額補助とかいうようなやり方がいいか悪いかは、これはもう少し検討を要する問題だと思っております。  教科書の問題は、私どもも、できるなら無償給与ということにしたいと考えておりますが、これは、御承知のように、ただいま教科書は、約百ぐらいの会社が競争でこれをやっておりますので、今の現状において、この百社の教科書を、だれかが全生徒に割りつけをうまくやるというようなことでもできますならともかく、そうでない限り、これを無償給付というようなことへ行くのには、技術的にもいろいろ問題がございますし、現在全生徒の七%ぐらいは政府が教科書をただになるように補助しておりますが、これを全部に及ぼすということになりますというと、これは、金額も非常に大きいものでございますので、私は、今の財政力で、一足飛びに全額という方向へはなかなか行けないんじゃないか、技術的な問題の改善と待って、徐々にこの方向に行くのがいいんじゃないかと考えております。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  22. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。  社会保障についての非常に御熱意のある御質問を承りました。私もまことに意を強くする次第でございます。先ほど総理も申されましたように、政府といたしましては、社会保障の充実向上ということについては格別の重点を置いておるわけでございます。ことに所管大臣といたしましては、仰せのとおりに、景気がよいときにはよいように、悪いときには悪いように、この問題については特に努力をいたしたいと存じておる次第でございます。さよう御了承を願いたいと思うのでございます。  次に、医療制度の問題について、改善の見通しいかんと、かような御趣旨のお尋ねがあったのでございますが、この問題は、まことに複雑多岐な問題であり、しかも、現在きわめて困難な問題の一つでございます。先般厚生大臣に就任をいたしました当時のわれわれのまわりの空気というものは、かなり険悪なものであったように思うのでございます。この複雑多岐にわたり、しかも国民生活に最も大きな関係を持つ医療の問題、これは私は、やはり、政府はもちろんのことでございますが、関係者がそれぞれ理解協力をもって推し進めて参らなければならぬ性質の問題と思のでございます。それにしては、あまりにも険悪な空気のもとに私は就任いたしたような心持がいたしたのでございます。何とかしてこういうふうな空気をひとつ緩和したい、そうして関係者がお互いに協力いたしまして、前向きの姿勢でもっていろいろな問題を解決して参りたい、こういうふうに存じまして、別に形式ばったものではございませんけれども、関係者の方々の御参会を願って、懇談会なるものをやったのであります。これは、今後もときどきやるつもりでおります。前後八回ばかりの懇談会をいたしまして、医療担当の側の諸君、あるいはまた、保険者側の諸君、被保険者側の諸君、直接関係のある方々の隔意ない懇談を八回ばかりやったのであります。それによりまして、かなり空気が私は緩和してきたようにも思うのであります。少なくとも厚生大臣といたしましては有益な懇談会であったと思うのでございます。一つの一応の了解点というふうなものができましたので、これを発表いたしましたようなわけでありますが、もちろんこの内容は非常に広範にわたっているわけであります。医療保険制度そのものに関する根本的な議論もございましたし、また医師、歯科医師、薬剤師等に関する、いわゆる医療制度に関する問題もございます。あるいはまた、現在の医療の内容の改善向上、こういうふうな問題もございます。各般にわたる問題が出まして、これに対しまして、きわめて抽象的ではございますけれども、一応の了解点に達しましたので、これをまあ出発点といたしまして、問題の解決に関係者ともどもにやって参りたいというのが現在の私どもの心持でございます。その中には、直ちに実行できるものもあり、あるいは今後長い期間をかけて研究しなければならぬものもある。一様にはいかないのでありますけれども、ともかくこれを出発点といたしまして、何とか協力して医療保障あるいは医療保険、こういうふうな問題の前進をはかりたいと存じている次第であります。新薬、新製剤等の中で、直ちに取り入れてよろしいというふうなものは、すでに前回中央医療協を開きまして、若干のものを取り入れましたようなわけでございますが、制度の改正でありますとか、こういうことになりますというと、そうなかなか簡単には参りません。いずれにいたしましても、検討を今後真剣にいたしたいと思うのでございます。また、医療費の向上に伴いまして、低所得階層に対する配慮ということは当然なされなければならぬ問題であります。この問題につきましても、真剣に取り組んで参りたいと思う次第でございますが、少なくとも今回の医療費の引き上げ、かような問題につきましては、御迷惑をかけないように措置いたしたいと考えている次第でありますが、いずれにいたしましても十分まじめに検討いたしまして、被保険者側の負担を増加いたさないように努力いたすつもりでございます。各種医療保険が併立いたしております。この間にアンバランスもあるということは御指摘のとおりであります。この問題ももちろん解決をはかっていかなければならない問題でございますが、なかなか一朝一夕にいく問題とも思いません。現在御承知のとおりに、社会保障審議会におきまして社会保険に関する総合調整の問題を御検討願っておるわけでございます。あるいはまた医療制度調査会におきまして医療制度に関する御検討を願っておる最中であります。その御答申を得まして、これらを参考といたしまして積極的に進んで参りたいと考えておる次第であります。  それから死の灰の問題についてのお尋ねでございます。私がお答えを申し上げてよろしいのかどうかと思いますけれども、厚生省といたしましては、もとよりこの問題は、保健衛生がどうのこうのという問題ではない。現在のいわゆる核実験というものをやめてもらいたいわけでございます。これをやめてくれさえすればこの心配はしなくて済むわけであります。残念ながらソ連がまずこれに手をつけ、引き続いてアメリカがこれに手をつけるというようなことで、またまた、われわれはこの死の灰のもとに生活をしなければならぬ、こういうことになりまして、遺憾千万に存じております。この放射能による汚染の状況につきましては、長期的にまた持続的に調査をいたしておるわけでございます。また国民の放射能物質に対する措置、たとえば天水を飲んでおる人たちに対する飲料水の問題はどうだ、こういうような問題につきましても十分指導も加え、措置もいたしておるわけであります。これらにつきましては、各省連絡会議を開きまして、いろいろ検討を重ねておる次第であります。ただ今日までのデータによりますれば、最近、きわめてわずかではありますけれども放射能の灰が増加したというデータが出ておりますが、保健衛生の見地だけから申しますれば、現在のところはそれほど心配する程度のものではないということは申し上げることができるであろうかと思うのでございます。(拍手)   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍   手〕
  23. 荒木萬壽夫

    国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  第一は学校給食でございますが、御指摘のように、学校給食が児童生徒の心身の健全な発達のために非常に有益であったことは実証されておりまして、私どもといたしましては、少なくとも義務教育課程の児童生徒に対しましては、完全給食の方向に持っていくのが当然だと心得ておる次第であります。さらにまた、これまた御指摘のように、少なくとも半額を国庫で負担するということも、その重要性からいきましてきわめて妥当な線じゃないかと心得ます。ただ実際問題といたしますと、一挙にそこまでいきにくい面もございますけれども、もっと摂取カロリーを多くするということも考えつつ、今申し上げたように完全給食の方向へ半額国庫負担という構想のもとに推進したい。できれば五年ぐらいの年次計画をもってその程度までやっていきたいものだと心得ております。ただ大蔵大臣から申しましたように、一食一円の補助というのは一見零細のようではございますが、実質効果は一食五、六円には相当すると評価されておる。そのやり方は検討を要しますけれども、要は、児童生徒の学校生活の期間中のみならず、生涯の健康を決定する基本的課題でございますことに思いをいたしまして、十分努力いたしたいと存じております。  高等学校の生徒急増対策は、もちろん、御指摘のように万全を期さねばならないと存じております。すでに御案内のごとく、三十八年度からピークに入りますが、前向きに、三十六年度予算と三十七年度予算を合わせて三十八年度の学年初頭に支障なきを期したい、こういう歩み方で現在やっております。所得倍増、技術者技能者養成という線もあわせて考えまして、三十八、三十九、四十年の三年間に百二十五万見当の高校生の純増があると予想されますが、それに対しまして二百六十校ぐらいの高等学校を新設したい、同時に三十二、三万ぐらいは、遺憾ではございますが、すし詰めでもってまかなっていきたい、残りの六十万見当は現在あります学校の学級増でまかなっていきたい、まあそんな考え方で、ピークが終わりますれば、おのずから一学級当たりの生徒数も減るわけでございますが、一番の苦しいさなかに、ある程度のすし詰めを国民諸君もひとつお許しをいただきたいという考え方に立っております。  最後に第三番目は、義務教育の教科書を無償配布したらどうだという御意見でございますが、私どもとしましても賛成でございます。憲法は御承知のとおり義務教育は無償とすると宣言いたしております。もっとも教育基本法で、その無償の最低線は義務教育では授業料を取らないぞということになっておりますが、それ以上のことがむろん禁止されているわけではございません。なろうことならば、義務教育の教科書は無償にしたいものだと、かように考えまして目下検討中でございます。与党の自民党のほうでも政務調査会のほうで研究していただいておるようでございますから、その結論が出ましたならば、またあらためて大蔵大臣もひとつ口説いてみたいものだと思っておるところでございます。(笑声、拍手)   〔国務大臣中村梅吉君登壇拍手
  24. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 治水十カ年計画の経費を繰り上げ実施する考えはないかと、こういう御質問でございましたが、最近の災害の傾向から見ますと、中小河川の被害、あるいはこういうそれに関連した砂防の問題、あるいはことに低地地域の高潮対策、あるいは排水のポンプの整備と、こういうようなことは非常に緊急性を持っておりますから、私どもといたしましては、治水十カ年計画の中でできるだけそういう必要な所要の経費を先行投資していきたいという情熱を持って臨んで参りたいと思うのでありますが、これには国家財政との関係もございますから、大いに財政当局の御理解を求めつつ、私どもとしてはそういう方向に全力を注いで参りたいと思っております。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇君登壇拍手
  25. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 第二室戸台風に際しましての気象予報業務のことについて、おほめの言葉をいただきましたことを、厚くお礼申し上げます。全国の気象関係職員は非常に感激をいたしておることだと存じます。先般の梅雨前線豪雨の際も気象の予報が相当的確に行なわれたのでありますが、これはひとえにレーダーが完備をせられて参りましたことと、防災気象官の配置をしていただいた結果だと存ずるわけでございまするが、まだまだ十分とは申せませんので、今後全国のレーダー観測網を完備いたしますとともに、また、高潮対策といたしましては、高潮の観測装置が相当不備でございます。これらも完備いたしまして、そうして全体の気象業務の完備をはかって参りたい。人員におきましても、お尋ねがございましたが、まだ非常に不十分の点が多いわけであります。防災気象官等におきましても、さらに倍にいたす必要があろうと存じております。同時に、気象観測に従事いたしまする職員は、非常に昼夜目まぐるしい勤務に従事をいたすわけでございまするので、これらの処遇の改善等もはかりまして、十分御期待におこたえをいたしたいと存じます。来年度予算にはお願いを申し上げたいと、かように存じておる次第であります。(拍手)     —————————————
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 松浦清一君。   〔松浦清一君登壇拍手
  27. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府の施政方針に対し、若干の質問をいたしたいと思います。  今回の臨時国会は、災害の復旧対策、公務員の給与引き上げ等の所要経費につき、予算の補正を行なうことを主要な目的とされておりますが、総理施政方針演説でも述べられました通り、これと並んで国民が期待しておりますることは、今政府がとっている外交政策経済政策はこれでよいのかということであります。したがって、私は、まず外交問題について、池田総理並びに小坂外務大臣にお尋ねをいたします。  今回、政府が、国連総会に対して、核実験停止に関する決議案を提出されようとする努力に対しましては、率直に敬意を表します。本院もまた国民の総意を代表して、同趣旨の決議を一日も早く行なうべきであると思います。ただ問題は、核実験の禁止の訴えにとどまるべきではなくて、当然わが国としては、効果的な査察制度を伴う核実験禁止協定の締結と、さらに進んで、核保有国をこれ以上ふやさないため、国連を中心として、この際、核兵器と通常兵器を含めた徹底軍縮の実現に向かって精一ぱいの努力を続けるべきものと存じます。   〔議長退席、副議長着席〕 総理及び外相の演説では、このような軍備と戦争の追放に対する熱意と気魄が全く見られないのを遺憾とするものであります。あらためて軍縮についての政府所信を明らかにされたいと思います。  第二の問題は中国問題であります。御承知のとおり、核兵器保有国をこれ以上ふやさないためには、西独や中国の問題がキー・ポイントであり、また、あらゆる軍縮問題において、中国の占める地位はまことに重要であります。さらに極東緊張緩和し、わが国の平和と安全を確保する意味から言っても、大陸中国との関係の正常化に努力すべきことは言を待たないのであります。池田総理は、先に中国問題について、前向きの姿勢を国民約束したはずであるにかかわらず、ワシントンにおけるケネディ大統領との会談におきましては、もっぱら先方の御意見拝聴に終わったことは、わが国外交の大きな失敗と言わなければなりません。今や世界の注目を集めております歴史的な国連総会において、中国国連代表権問題が議題として取り上げられることになった以上は、総理や外務大臣演説で述べられたような、単に慎重に行動するとか、建設的な貢献をするなどという抽象的な言いのがれでは許されないと思うのであります。私は、中国代表権問題については、日本の根本政策を明らかに示し、その上に立って国連総会の討議に積極的に加わることが肝要と信ずるのであります。しこうして、その根本とは、北京政府中国の代表権資格を与えるべきであること、また、同時に、台湾問題については、国際緊張の平和的処理と、台湾住民の自決権を考慮した現実的な解決を考えるべきであると思うのでありますが、総理の明快なる答弁を要求いたします。第三にお伺いいたしたい点は、国民の総意を結集して外交するため、超党派外交を確立する御意思はないかということであります。私どもは、外交は、万難を排し、与野党が党派の立場をこえて、日本民族の自主性を基調としてなさるべきだと思うのであります。わが国外交には、それに欠くるところがあると思われます。たとえば、過般総理が訪米された際、私どもは、中国国連加入問題についてケネディ大統領と話し合い、そうしてその成果を持ち帰られることを期待しておったのであります。また、日米安保条約と中ソ友好同盟条約に対処する方向を話し合って来られることを期待しておったのであります。さらには、沖繩返還の具体化についても成果をあげて帰られることを国民とともに期待をいたしておったのであります。しかるに、帰国された直後、新聞記者会見等で御発表になった限りにおいては、これら日米間の重要懸案については何らの成果を見ることができていないのであります。このことは、訪米された総理にその御意思がなかったのか、一国の総理としてのあなたの背景をなす力が弱かったのかは別として、古今を問わず、外交による一国の利害は、その背景をなす力の強弱に支配されるところが非常に多いことは論を待たないのであります。外交は、説得と理解を第一とし、次いで戦力を背景とするか、国民世論の力を背景とするか、それよりほかに道がないのであります。現在わが国立場は、国民世論の総意を結集して、説得と理解外交の基本理念とする必要があると思うのであります。これはどの党が政権の座にあっても同じことであります。最近の国際情勢は、ベルリン問題を契機として、米ソ間の谷間に位置し、どの国の民族よりも強く、どの国の民族よりも深刻に願います私どもの平和への道とは、日ごとにその距離を遠くしておるのであります。こうした国際情勢のもとにおいてこそ、超党派外交の態勢を固める努力をなさるべきだと考えます。その努力とは、現内閣外交路線を私どもの線に接近させることであります。総理の御所見を承りたいと思います。  次に、経済、内政問題について、総理大臣並びに関係大臣にお伺いをいたします。  池田総理は、「経済は私におまかせ下さい」としばしば申されました。その力強い言葉を国会記録に残し、総理として登場されて以来、ときには低姿勢をとられ、また、ときには高姿勢となって、国際収支赤字が四億ドルや五億ドルにふえても、たいしたことはないとよく言われるのですが、どこまでならば、たいしたことはなくて、どの辺までいけば、たいしたことになるのか。その限界点に対する総理の判断をお示し願いたいと思います。あなたは、昭和三十二年、私どもの再三の警告にもかかわらず、神武景気を謳歌して、思惑輸入を無制限に許し、その反動として極端なデフレ状態を引き起こし、国民経済急変動の波にさらした御経験をお持ちであります。その人が、今また倍増景気をあおりたて、国際収支を異常に悪化させ、今日の憂うべき状態を招来しつつあるのであります。あなたは、十分に予測し得たはずの経済過熱を放任すること二回にわたり、インフレ、デフレによる急激な経済変動が、国民生活をいかに不安にするかは、百も御承知のはずであります。私は総理が、本国会劈頭、所得倍増計画の誤りを率直に認められることを期待いたしておったのであります。しかるに、逆に所得倍増計画を堅持すると言明をされました。私にとって、総理のこの発言は、全く現状経済に即して不可解であります。現在のわが国経済は、民間設備投資の行き過ぎが原因となって、大幅な輸入増加を招き、国際収支の悪化は、まことに前途憂うべき状態にありますことは、総理演説大蔵大臣演説、その他質疑応答によっても明らかであります。政府はこれに対して、日銀公定歩合引き上げ、輸入担保率の引き上げ措置をとり、また、きわめて抽象的な国際収支改善の対策なるものを発表されました。しかし、この対策は、実行の確率がきわめてあいまいであります。所得倍増計画に基づく民間設備投資の進行をどれほど調整ができるのか。この点についての見通しを具体的にせず、当面の思いつきだけを述べられても、国民わが国経済の全貌とその成り行きを知ることができないのであります。毎年九月ともなれば、政府は慣習として、明年度経済見通しと、明年度予算編成の基本方針を公表し、政府経済政策当面の方向を明らかにするのが慣習となっているのでありますが、現在の政府は、まさに方向なしの計画と対策に明け暮れている感があるのであります。  さらに、総理大蔵大臣に念を押してお伺いいたしたい点は、九月末の外貨保有高は大体十六億二千万ドル程度とみられ、本年度末の国際収支尻は、経常収支において十億二千万ドルの赤字総合収支尻において七億ドル見当の赤字になり、外貨手持ちは十二億ドル台に低減するというのが定説であります。不幸にして、もしこの予測どおりになって、十二億ドル台に手持外貨がなった場合、わが国の手持外貨状態は、まことに身動きならぬはめに陥ると思うのでございまするが、その対策と見通しについて、お考えをはっきりとお伺いいたしたいと思います。  第二に、私どもは、万一その場合になってから急激に設備投資の引き締めを強行したり、また、急激に輸入の引き締めを強行すれば、それこそわが国経済をデフレのどん底に転落せしめると思うのであります。この国際収支均衡を堅持するため、第一に、急激なデフレの要因を警戒しながら、現在の輸入担保率の引き上げを漸次強化し、さらに過度の設備拡大や輸入を抑制するため、金融の引き締めを時を追うて強化すること。第二には、貿易外収入としての海運収入を増加させるために、日本の外航船腹を増強して、輸出入貨物の積取比率を改善することであります。ただし、現在わが国の海運企業は、企業それ自体において船腹を増強させる力を持っておりませんので、これに対しては思い切った助成を与えて、激しい国際競争にたえ、国際収支の改善に寄与できる基盤を持たせるべきだと思いますが、設備拡大と輸入の抑制については、大蔵大臣と通産大臣、海上輸送力の増強については運輸大臣より、それぞれの御所信を承りたいと存じます。  第三に、政府貿易自由化促進されることを明らかにして、十月までに九〇%の自由化を実現する方針とのことでありますが、これは、わが国の産業経済の上にどういう成果が期待できるのか。また、石炭産業や農産物価格にどのような影響があるのか。通産大臣農林大臣及び経済企画庁長官から、その目的と具体的な成果について詳細に御説明を承りたいと存じます。もとより貿易自由化は、現在、国際経済の大勢でありまして、ひとりわが国のみが制限貿易のワク内に閉じこもることは許されないと思います。しかし、同じ政府の施策として、さきにきめた国際収支赤字解消の手段として、国産品の愛用と輸入の制限、それと今度の貿易自由化とをどう調整されるのか。また、それにテンポを合わせようとする民間企業からの資金需要は拡大されると思いまするが、今後の金融引き締め方針とどう調和ができるのか。一定限度の資金量に対し、大企業貿易関係産業に融資が偏重して、それが中小企業向けの金融にしわ寄せされる懸念が残ると思うのであります。中小企業のこのような不安を一掃するため、政府はすみやかに中小企業基本法立法化に努めて、経済政策としての大企業偏向の弊を是正される必要があると思いますが、この点については、大蔵大臣もともに所信を披瀝されたいと思います。  さらに第四に伺いたいことは、政府物価政策と社会保障政策等、国民生活安定の諸対策に関してであります。政府公共料金の値上げをやらないとたびたび言明をされたにかかわらず、なぜこれをくつがえして、電力、私鉄その他の料金の値上げを認可する方針に変更されたのか、その理由をお伺いいたしたい。  第五に、今回の補正において、物価高の被害を受けている国民の生活安定対策としての生活保護基準引き上げ、日雇い登録労務者への対策がまことに不十分であります。かつ、老人、児童等の収容所施設の飲食費単価の引き上げ等、最小限のなすべき対策を怠っているのはまことに心外であります。また、今回の予算補正が医療協議会の議を経ていないという理由で医療費値上げに対する予算措置を計上しておりませんが、物価高のもとにある国民生活を守るため、当然に医療保険に対する国庫負担率の引き上げを行なうべきであると思うのであります。労働大臣、厚生大臣の御見解をお伺いいたします。  第六に、公務員給与の引き上げについては、人事院勧告を無視して十月よりの実施とされておりまするが、今年度は税の自然増収が大幅に見込まれているので、人事院勧告どおり五月にさかのぼって実施するのが当然と思います。政府は、財源の点よりも、むしろ財政法上あるいは予算制度上支障ありとの建前をとっておられるようでありますが、それは具体的に申せばどういうことでありまするか。大蔵大臣労働大臣よりお教えを願いたいと思います。また、法律上あるいは制度上できないことをなぜ人事院が勧告したのか、その辺のところを御説明賜わりたいと思います。  最後に、本国会災害復旧に対する予算の補正にその重点が置かれて開かれたものであるにかかわらず、五月から八月にかけての全部の災害に対する復旧費として、その予算額は合計二百七十億円であります。政府も熟知されるとおり、今の日本世界に誇り得べきものは、産業施設と労働者の勤勉と諸官庁を含むビルの大きさのみであります。これに引きかえ、国土は荒れに荒れて、少々ぐらいの復旧では、道路も河川も海岸も、一つの災害ごとにその荒廃の幅を広げるのみであります。今度の二百七十億円が一時しのぎの復旧とはなり得ても、今後の防災には少しもならないのであります。一雨来たれば、またまた被害は深まってくるのであります。このような状態の中でわが国の国土を保全し、災害被害を最小限度に食いとめるためには、政府計画性のある災害防止対策を立てるべきであります。三十七年度予算編成にあたってはこれらの点を十分考慮しておられるのかどうか、大蔵大臣、建設大臣の御意見を承りたいと思います。  また、前の集中豪雨といい、今度の第二室戸台風といい、公共の施設もさることながら、家屋の倒壊、浸水、土砂くずれ等による個人の被害が今までの災害よりも非常に多いのであります。政府はこれらの個人被害に対して何らかの救済策を準備しておられるのか。しておられるならば、その内容をお示し願いたいと思います。こいねがわくは、本国会をして災害国会にふさわしく、国土保全の大方策を総理及び建設大臣よりこのマイクを通して国民に周知されることを期待いたしまして、質問を終わります。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  全面軍縮、しごく賛成でございます。また、有効な管理を伴う核兵器の排除、これも賛成でございます。われわれは、こういう意味で今まで努力いたしております。今後も一そう努力を続ける考えでございます。  なお、中国代表権問題につきまして御意見がございましたが、あの御意見には直ちに賛成はできません。私は、ああいう問題が外国で論議されることも知っておりますが、いわゆる二つの中国という問題につきましては、先ほど申し上げておりますように、われわれはただいま結論を出すわけにいかないのでございます。  なお、超党派外交につきましては、しごく私は賛成でございます。組閣のときに、民間におきましても各界各層の人にお集まり願って、いろいろ御審議願うようにしたのでございまするが、各界各層というわけには参りません。これはわが国の国情がしからしむることでございまして、私は徐々に超党派外交ができるように進んでいきたいと考えております。  なお、私とケネディとの会談で何にもできなかったじゃないかというお話でございまするが、私は御批判は当たらないと思います。言いわけはいたしません。  次に、外貨はどの辺でいいのかと、こういう問題でございますが、外貨はどの辺でいいかということは、いろいろ問題がございます。だれも結論を出す人はおりません。ただ私は、外貨の数字よりも日本経済に対する国際信用が一番大事であるのであります。そういうことを考えまして、いろいろ対策を講じております。で、年度末十二億ドルになったらどうか。私はそんなになろうとは思いませんが、そういうふろにならないように先ほど来いろいろ措置考えて公表いたしておる次第でございます。どうぞ政府のなすことに国民の御協力を得ますれば、私は御心配の点はないと確信いたしております。(拍手)   〔国務大臣小坂善太郎君登壇拍手
  29. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 核実験停止に関しまする政府国連における努力につきましてお言葉をいただきまして、私のほうからも感謝をいたします。さて、この有効な査察を伴う核実験停止は、総理からもお答えになりましたように、ぜひこれを実行いたしたいと思っておりまするが、これはやはり全面軍縮の問題とは切り離してやるほうがいいと思っております。全面軍縮の問題と一緒になって参り事ずると、この最も早くすみやかにできる、しかも非常に必要なこの核実験の停止の協定というものがぽかされてしまう場合が多いと思われますので、ぜひこれを切り離して実行したいと思います。  それから、米ソ両国の間におきまして完全軍縮に関する原則的な合意ができまして、この原則が国連に報告されましたことについては、非常に私どもも喜んでおるわけでございまして、全面的な軍縮が徐々に有効な査察を伴いながらその方向に完成されることを心から望むものでございます。  次に、超党派外交につきましても、総理からお話がございましたように、私どもぜひそういうようにありたいものである、こう思っております。それにつきましては、一般外交に対する理解というものを進めるということが必要であると思いまして、さような方向へ努力いたしておりまするが、各党各派の政党間の場合でございますと、われわれ、なかなかこれは困難な点がございまして、何といっても、反対のための反対というような党派心がぬぐわれない限り、これはなかなかできないものではなかろうかというような気も持っております。どうもアメリカのことというと、ことさらに悪く言ってみたり、ソ連のことをいうと何か非常におっかながるといいますか、どうも正当なことを言うことも遠慮するような風も一部にあるのでございまして、こういうことはやめて、やはりいいものはいい、悪いものは悪いと、はっきり言う気魄がやはり日本人全体のものにならなければいかんのじゃないかと思っております。(拍手)何といたしましても、日本の利益を考え、それから極東の平和、世界全体の平和を考えるということが、外交の根本でございましょうと思いまするので、そういう方向でできるだけ私ども努力いたしまして、一致した国論の上に強力な外交ができるように心から希望いたす次第でございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  30. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 設備投資を中心とする内需の調整策についての御質問がございましたが、設備の繰り延べに対する行政指導を強化するということと、これにあわせて金融財政両面にわたる総合対策、今回のような対策をもって臨むつもりでございます。  公務員の給与の問題でございましたが、人事院勧告は尊重することにいたしまして、内容は勧告どおりにいたし、実施の時は昨年の措置に準じまして十月一日からということにした次第でございます。(拍手)   〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  31. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 経済調整対策といたしまして、ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、いろいろの総合施策をすでに発表し、それを実施に移しております。その際に、御指摘のように設備投資の抑制なりあるいは輸入担保率の引き上げなどを漸増する、漸次これを強化するような方法はどうか、こういう御意見でございました。設備投資につきましては、すでに過去七月に一割抑制をお諮りし、財界協力を得つつありますが、最近さらに私ども通産省関係の業界と個々に折衝いたしまして、生産に影響しない部門からの設備抑制に御協力を願うように、具体的にお話を進めて参っております。  また、公定歩合の金利につきましては、すでに御承知のように、過去二回にわたって、一厘ずつ引き上げております。しかして輸入担保率の引き上げの問題でありますが、今回は三十二年の際にとりましたように、数回に分けてこれを強化するという処置をとらないで、三十二年にとりました最高の強化策を今回直ちに発表いたしたような次第でございますので、これより以上さらに強化するということは、必ずしも適当ではないだろうと思います。むしろ輸入担保率の引き上げ、現在の最高三割五分、このもとにおきまして十分輸入抑制の効果を発揮していただいて、この種の処置はできるだけ早く緩和の方向へ持っていきたいものだ、かように考え、その意味の御協力を願っているような次第でございます。  次に、自由化についてのお尋ねでございました。自由化の基本的な構想につきましては、すでに政府が発表したとおりでございます。この自由化の基本的な理論についてのお話をするつもりは毛頭ございませんが、自由化を進めていきます場合に、私どもが特に気をつけなければならないのは、弱体産業と考えられる中小企業あるいは農業、これにどういう影響があるか、また、今後の発展に期待しておりますような、いわゆる将来性のある、これから育成していくというその産業に対して、いかなる考慮を払うかという問題、そういう点を特に考えて参るのでありますが、またその場合に、日本の産業の上から見まして特に問題になりますのが、御指摘になりました石炭産業であります。ただいま指摘したその二つには該当いたしませんが、ここ数年来、石炭産業の扱い方について特に政府も苦心し、労使とも頭を砕いておる最中でございます。その際に自由化を進めて参りまして、いわゆる競合エネルギーの問題、石油等とこれとの関係を調整していくということが、たいへんな問題になっておるわけであります。ただいま通産省におきまして、すでに関係各方面の学者その他のお手伝いを得ながら、いわゆるエネルギー総合対策なるものを樹立しつつございますし、また、各国の実情なども十分調査いたしまして、万遺憾なきを期しておる次第でございます。まだ十分の結論は出ておりませんが、早急に政府といたしましても、関係各省と、この石炭対策、さらに競合するエネルギー資源、これの扱いについての政府態度を明確にしたい、かように考えまして、来週あたりから関係省の間で特別懇談会も設置する、こういう気運にあるのでございます。皆様方の御協力を得まして、この石炭エネルギー問題は、ぜひりっぱな成案を得たいものだと、かように考えております。  また、中小企業の問題につきましてお尋ねがございましたが、中小企業の金融につきましては、すでに前質問者に対して答弁がございましたので、この際は基本法制定の考え方について一言触れておきたいと思いますが、私が指摘するまでもなく、中小企業の実態は千差万様でございます。したがいまして、実情を十分把握して、そしてこれに対する対策を立てることが望ましいことだと思います。基本法は必要なものでございますので、ぜひとも基本法を制定したい、かように考えておりますが、ただ、時間を常非に急ぐというわけにはなかなかいきかねるのではないか、かように考えております。しかして中小企業が当面しております幾多の難問題などを考えます際に、基本法ができないからといって、当面している事態をそのまま黙視するわけには参りません。この基本法基本法、また、それぞれの時期的な対策等につきましては万遺憾なきを期して参るつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣斎藤昇君登壇拍手
  32. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 国際収支の改善及び日本の今後の産業成長の面から考えて、海上の輸送力の増強をどう考えているかというお尋ねに対しまして、お答えをいたしたいと存じます。  仰せのとおり、日本貿易が非常に増して参りましたにもかかわらず、船腹がこれに伴いませんために、たとえば昭和三十三年における邦船の積み取り比率が五二%でありましたものが、三十五年度には四六%と低下をいたしております。これは輸入貨物についてでありますが、輸出貨物につきましても同じく低下をいたして参っておるわけでございます。これが今日貿易外収支におきまして、この輸送の面で赤字を出しておる一つの大きな原因でございます。今後日本経済成長、所得倍増計画に伴うものを想定いたしますると、われわれといたしましては、ここ五カ年の間に四百万トンぐらいの邦船の増加を考えなければならぬ、年平均八十万トンの増加を考えなければならないわけでございまするが、しかし、これに対しまして日本の海運界の企業の基盤が相当脆弱でございまするので、はたして今日の海運界に、政府の今までとって参りました方針のもとに、年平均八十万トンの造船ができるかどうかという問題があるわけでございます。これらの点を勘案をいたしまして、ただいま海運合理化審議会にこの点を諮問をいたしておるわけでございまするが、できるだけ早く結論を見ました上、政府といたしましては海上輸送力の増強について根本的な対策を樹立をいたしたい、かように存じておるわけでございます。  なお、私鉄運賃についてすでに値上げの方針を決定したのはどういうわけかというお尋ねでございましたが、私鉄の運賃の値上げにつきましては、まだ方針は決定をいたしておりません。方針といたしましては極力抑制をして参りたいという方針のもとに、ただいま具体的に検討いたしておるわけでございまするので、御了承いただきたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  33. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 貿易自由化農業に及ぼす点につきましては、御承知のとおり、各国とも非常に重要な問題と考えて、特に農業については留意いたしておりますことは御承知のとおりであります。私、わが国におきましても、わが国農業各国農業に比べまして、経営規模等におきましても特に弱い面もありますことでございますから、これらの自由化につきましては、特別に考慮いたさなけりゃならぬというのでございますが、ただ、この際に御了解を得たいと思いますことは、米麦等、これらの食糧は、貿易自由化とは全然別個に考えますことは、各国におきましても了解いたしておるところでございますから、この点につきましては、一部どうなるんだろうかという御意見もあるようでございますが、私は、米麦、これにつきましては、絶対に貿易自由化とは別個に考慮するという建前をとるつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍   手〕
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま貿易自由化の問題につきまして私に御質問がございましたが、現実の問題としては、通産大臣農林大臣等が主管官庁としてそれぞれの立場からお答えをいただいているので、ただ貿易自由化ということは、今日の国際貿易を拡大する上におきまして当然の処置であることは、これは申すまでもございませんが、今日のわが国の産業の体質の上におきまして、まだ弱体産業が相当ございますから、これらの弱体産業が自由化に備えてどう改善されていくかということは、十分注意して参らなければならぬのでございまして、そういう点をあわせて考慮しながらわれわれ将来の経済成長に見合って努力をして参りたいと、こう存じております。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  35. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 今日の状態において、老人でありますとか児童でありますとか、そういう方面に対する飲食費等の引き上げをやると、こういうふうな御質問だったと思うのでございます。これにつきましては、先ほどお答えをいたしました中にもございましたが、あるいは不十分かと思いますけれども、一八%の引き上げに加えて今回特に五%ほどこの方面に対する引き上げを行なったわけでございます。本格的な生活保護基準引き上げにつきましては、来年度予算の問題として取り組みたいと思っております。  また、医療費の引き上げについてのお尋ねがございましたが、これも、本年度は、予算といたしましては一割ほど増加する予算を持っておるわけでございます。前大臣の時代に、医療協議会において医療費の引き上げの問題についての答申を得て告示をしておられる。私もまたさらに多少の引き上げを行ないたいと思って、目下検討を重ねておる次第でございます。なるべく早く結論を得まして、この引き上げを実施いたしたいと存じております。  次に、災害関係の問題でございますが、御質問の趣旨を私あるいは間違えておるかもしれませんけれども、御承知のように、一定規模の災害につきましては、住宅、衣料、食糧、そういうふうな問題につきまして災害救助法を発動いたしまして、これによって当面の救助をいたしておるわけでございます。それ以外の救助になりますと広範な問題になりますが、私どもといたしましては、当面の応急救助はこの災害救助法によってやっておるというのが実情でございます。そのほかに、世帯の立ち上がり等につきましては、世帯更生資金であるとかあるいは母子に対する資金であるとか、そういうふうなものを活用して御協力いたしたいと、かように考えている次第でございます。(拍手)   〔国務大臣福永健司君登壇拍手
  36. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 日雇い労務者への対策につきましては、先刻もお答えいたしましたような事情もございますが、この上とも検討を加え対策を講じていきたいと思います。  次に、給与担当者としてのお答えでありますが、公務員給与の引き上げにつきましては、さきの人事院勧告の内容を尊重いたしまして提出したのでありますが、その実施時期についてただいま御意見がございました。この点につきましては、国民経済全般の情勢とにらみ合わせまして、総合的判断によって昨年どおり十月一日より行なうと、こういうことに決した次第でございます。(拍手)   〔国務大臣中村梅吉君登壇拍手
  37. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 災害防止対策事業の重要性について御指摘をいただきましたが、御承知のとおり、現在としては総額九千二百億円に達する十カ年治水計画を持っておるのでありますが、私どもとしましては、災害防止に関する治水事業は、先行投資をするだけ、すればするほど効果があり、また、防災の効果を発揮するわけでございますから、できるだけ先行投資になって参りまするように、極力財政当局と相談をいたしまして、災害防止に万全を期して参りたいと思うのであります。同時に、起きました災害につきましては、御承知のとおり、単なる原形復旧だけでなく、最近では大蔵当局も了解をされまして、努めて改良復旧をいたしまして、あるいは関連事業等も行ないまして、再度災害の起こらないように、再度災害の防止について留意いたしておる次第でございますが、御指摘のとおり、災害は、一たび参りますと、非常に国家的にまた社会的に重大な損害を及ぼしますので、われわれとしましては、御指摘のように、全力を尽くしてその対策を具体化し講じて参りたいと考えております。(拍手
  38. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会