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最高裁判所長官代理者(
守田直君) ただいま御
指摘の勤務時間五十二時間延長を当
法務委員会において審議されましたのは、
裁判所の一部改正でございましたが、それに関連しまして、勤務時間を五十二時間に定めたということは、御
指摘の通りでございます。ただ、当
法務委員会の附帯決議の趣旨もございましたので、現実に運用の面は、国家公務員法の線によりまして、一週四十八時間を
裁判所で勤務する、あとは、各自みずからの最も
仕事のしやすい所で執務してよろしい。
裁判所で拘束しない。もって過労にわたらないように運用するということで現在運用いたしておる次第でございます。それにつきまして、当時の横田
事務総長が、
加瀬委員からいろいろ質疑を述べられ、いろいろ御教示にあずかったようなことも存じております。
裁判官の
報酬につきましては、これは、私
どもが
裁判官の
報酬を抜本的にひとつ改正してほしいということを申しておりますのは、そういったことはまあ
関係のないことでございまして、実は、
裁判官の
報酬は、政府職員とは少し違った運用、
考え方をしてもらわなければならぬのじゃないか。それで、その根本
原則としてはどういったことを
考えなければならないかということで、
関係各省の担当官に理解を求めたわけでございます。それはどういうことかと申しますと、
憲法によりますというと、下級
裁判所の
裁判官の任期は十年になる。必ずしも再任の保障というものはないわけでございます。したがいまして、
裁判官の
報酬制度は、この任期制を前提として定められなければならない。
裁判官の
報酬ということは、これは
俸給とどう違うかということにつきましては、いろいろ
議論もあるようでございます。こういった任期
制度や、そういったものを
考えますというと、やはり
裁判官の
報酬というのは、定額
給与制といったものを少なくとも
憲法は精神として持っているのである。そういう点を
考えまして、いわゆる
裁判官の
報酬は、キャリアシステムを前提として、政府職員の
俸給制度に擬して定めるべきじゃないのじゃないか。だから、たとえば当時の
報酬は、現在でも、七号から
特号まで、八段階にきざんである。しかし、これはもっと
号俸を少なくすべき性格のものである。
それから次に、
裁判官につきましては、昇給
制度とか、あるいは勤勉手当
制度を設けますことは、
最高裁判所に
司法行政権が属して、独立に行使するという
制度にはなっておりますけれ
ども、やはり
裁判官の独立という面から見ますというと、勤勉手当をよけいにもらうために右顧左晒する、あるいは昇給するために迎合するといったようなことは、どうも好ましくない。やはりどうしても
裁判官の独立の
地位というものをしっかり
考えていくならば、昇給
制度とか、あるいは勤勉手当といったようなものは、やはりもう一ぺん
考え、再検討する必要がある。それから
判事につきましては、経験の長短というものはございますけれ
ども、
職務と
責任というのはそう変わったもんじゃない。だから、たとえば、国家公務員法にありますように、
裁判官の
報酬が
職務と
責任を決定の最も強い
要素とするということになりますならば、アメリカの連邦地方
裁判所の
判事は
俸給が一本であるように、やはり
裁判官の号というものも、非常に少なくていいんじゃないか。たとえば、あるいは
考えようよれば、高等
裁判所とか地方
裁判所といったような審級の別とか、あるいは裁判長、陪席
判事といったような点などに差が設けられるといたしましても、
号俸のきざみというものはわずかでいいのじゃないか。これがやはり新
憲法下における
裁判官の
報酬の一つの
考え方でなければならぬ。これをひとつ理解をしておいてもらいたいということを主張しますのと同時に、現実の
裁判官の構成は、
判事補から上がっている人が大
部分でございます。こういった若い
判事にいたしましても、
経験年数十二年から四十年ぐらいの
裁判官の
経験年数の人たちがやっぱり
判事におるわけでございます。こういった人たちのことを
考えますれば、必ずしもこれをアメリカの連邦
判事のような一本に定めるということは、経過的にはやはり妥当でないだろう。やはりその点を
考えれば、ある
程度の号をきざむことはやむを得ないだろう。こういったようなことを主張いたしまして、そうして
関係当局に十分御理解を願って、
裁判官の
報酬を抜本的にしたい。なお、
裁判所法はもちろんのこと、
憲法から見ましても、やはり
裁判官は、法曹一元ということが理想として一番望ましいし、そういうものを前提としておると
考えられます。任期
制度十年というのも、やはりそういったものだと
考えられますが、そういった
意味から、
裁判官の
報酬は、やはり
弁護士の収入といったようなものとの関連において
報酬を
考えていかなければならないじゃないか。現在、
人事院は、民間
給与と比較して公務員の
給与を定めておりますか、
裁判官の
報酬は、やはり最小限の
意味におきまして、民間
給与というよりは、在野法曹の収入というものと権衡をとりながら定めるべきでないかというようなことを主張しまして、こういう方向で何らかの解決をはかりたいということで推進しておるのが実情でございます。