○
最高裁判所長官代理者(栗本一夫君)
昭和三十七年度の
裁判所所管の概算
要求について御
説明申し上げます。
お
手元に書類がお配りしてございますが、二種類でございますが、厚いほうと申しますか、五枚になっておるほうにつきまして御
説明さしていただきます。二枚からなっておりますほうは、この五枚のほうの分の中からさらに最重要
事項を抜き出したものでございますので、比較的簡単になっておりますので、より詳しいほうの五枚からなっております分、それに基づきまして御
説明さしていただきます。
まず第一に、総額でございますが、ここに書いてございますとおり、
昭和三十六年度の予算額は百六十九億幾らでございまして、来年度の概算
要求額が二百三十七億七千幾らとなっておりまして、パーセンテージにいたしますと約四割増し、一四%ということになっております。
さらに、内容でございますが、「第二 重要
事項」というところ以下に書いてございますので、簡単に御
説明さしていただきます。
まず最初に、
訴訟の適正迅速をはかりたい費用でございますが、その内訳は、アラビア数字に書いてございますように
判事の増員七十四人、
裁判所書記官の増員百八十三人、
裁判事務処理の機械化、能率化で自動車とか録音機、写真機、距離計、かようなものの
要求になるわけでございますが、結局、
訴訟の適正迅速と申しましても、ことに東京、大阪等の八大都市の地方
裁判所におきますところの
訴訟の適正迅速をとりあえずはかりたいという
趣旨の費用でございますが、これは結局、内容といたしまして、現在の審理期間を半減し、かつ、御
承知のとおり、地方
裁判所は、一人の
裁判官で
裁判いたします場合と、合議体と申しまして三人の
裁判官で
裁判いたします場合とがございますが、合議体によります
裁判のほうがより適正、つまり慎重になりまして、事実審理等につきまして丁重になることは当然でございますので、比較的重要な事件等につきましては合議体で審理するほうが適当でございますので、さような合議体による
裁判の数を
増加さしたい。これをだいたい倍額に持っていきたいというような構想を打ち出して参りますと、ここに結局
判事の増員が七十四人ほど必要になってくる、かような数字が出てくるわけでございますが、ほんとうはこれは七十四人の倍の百四十八人が必要でございますが、二年計画をもちましてとりあえず本年度は七十四人を
要求したい、かような構想でございます。金額にいたしますと、
判事を七十四人増員いたしますと一億二千八百七十六万五千円でございます。
書記官の百八十三人の増員は、これは
判事を増員いたしますれば、
判事一人につきまして二・五人くらいの割合で当然
書記官がふえて参りますので、それに見合う数の増員の
要求でございます。それから機械化、能率化等は、これはいわゆる
事務費でございまして、人員の
増加の面とにらみ合わせて考えまして、機械化、能率化でもって
裁判事務の
処理の適正迅速をはかっていきたいという予算の
要求でございます。
次に二が補助機構の整備、充実ということでございますが、これは結局アラビア数字に書いてございますように、
裁判所書記官補等の
定員を
裁判所書記官の
定員に千五百人組み替えたいということと、
家庭裁判所調査官補の
定員を
家庭裁判所調査官の
定員に百人組み替えたい、かような金でございます。金額にいたしますと、ここに書いてございますように、千五百人分につきましては六千三百四十二万円ほどの金、
調査官補の百人につきましては五百五十七万円というような比較的多くない金でございますが、これは結局、現在実質的には
裁判所書記官または
家庭裁判所調査官としての能力経験等をすでに持ちながら予算
定員が、
書記官の予算
定員、あるいは
調査官の予算
定員が一応きまっておりまして、それ以上に
書記官、
調査官へ昇任させることができないというような状況になっておりますので、そこへ持ってきたい、これだけの人数だけ持ってきたいということでございますが、
書記官、
調査官のほうは
書記官補、
調査官補と異なりましてやや権限が強くなっておりますので、権限が強くと申しますと語弊がございますが、広くなっておりますので、
裁判官を補助するような権限が付加されております。ところが現在
調査官補、
書記官補でおりますと、さような権限の行使ができませんので、
事務能率上も多少欠けるところがございますので、さような点も考慮いたしまして、かように組みかえて参りますれば
裁判事務の促進のほうにも役立つことになるわけでございまして、かような組みかえを
要求をいたしたわけでございますが、
裁判所といたしましては、この点は先ほど申し上げました二枚のほうの最重要
事項にも載せてございまして、非常に重点を置いておるところでございますから、もちろん、一の
訴訟の迅速、適正化に伴います
判事の増員、
書記官の増員等も最重要
事項に載せてございますが、二の「補助機構の整備、充実」も、やはり重要視されざるを得ない
事項で、最重要
事項に載せてございます。
それからその次が、「家事、少年事件
処理の適正化」、これは内訳はこのアラビア数字にございますように、
家庭裁判所調査官の増員百二十四人、あとはケース研究会等、学生非行少年の予後の実態
調査というようなことでございまして、この中で結局
家庭裁判所調査官の増員百二十四人は、
裁判所といたしましても非常に重要視しておるところでございますが、これは結局事件がふえて参りまして、やはり
調査官はある程度増員して参りませんと、
家庭裁判所の
事務が円滑に、迅速に参りませんので、その観点から百二十四人の
増員要求をいたしておるわけでございます。これは最重要
事項のほうに載せてございます
事項でございます。
次に四といたしまして「交通事件
処理の円滑化」、これは激増いたします交通事件の
処理につきまして、これも
裁判所だけで交通事件が適当に
処理できるわけでもございませんけれども、
裁判所関係といたしましてとりあえず考えましたことは、このアラビア数字に書いてございますように、交通
裁判所を東京、名古屋に
新設したい、東京には御
承知のとおり一カ所、墨田にございますが、もう一カ所ふやしたい。名古屋にはございません、これは
新設したい。それからその内容をなします人間といたしまして、このアラビア数字の2に書いてございます
簡易裁判所判事等の増員二十四人をしていきたい、これは交通
裁判所を
新設いたしますと、その中で
職務を行なう所定の人員でございますが、二十四人と書いてございますが、
簡易裁判所判事を五人
増員要求いたしております。その他
書記官、
事務官等でございます。
それから五が「
裁判官の待遇改善」、これは内訳はアラビア数字を1から5に書いて、最初は「
裁判官の
報酬の増額」と書いてございますが、これは今度のベース・アップで、すでに、先ほどもここで承っておりますと
報酬法案の
改正案が出ておりまして、大体今回は
政府との間に特段の意見の不一致もございませんでしたので、特別に強い
予算要求ということじゃなくて、ただ一応重要
事項でございましたので書きましただけの意味だと御
承知おきいただいてけっこうでございます。2が「
裁判官管理職手当の拡充」、これは昨年も
要求いたしておりましたが、現在はここに書いてございますように
判事五百九人につきまして
管理職手当が計上してございます。
判事五百九人のカッコは、うち八十七人が一八%の
管理職手当で、残余の四百二十二人が一二%の
管理職手当ということになっておりますが、来年度予算におきましては、その左横に書いてございますように、最高裁長官、最高裁
判事、高裁長官、地家裁所長、高裁長官代行等百十人の方に二五%、高裁総括
裁判官、地裁所長代行等百七十七人の方に一八%。地裁総括
裁判官等四百十二人の人に一二%。この人間の数を合せわると六百九十九人になるわけでございますが、現在は五百九人でございますので、百九十人分の増額をしてもらいたいということと、パーセンテージをある
部分については
増加してもらいたい、かような
要求をいたしておるのでございますが、
裁判官について
管理職手当というのは必ずしも適当ではないという考えも一部にあることは存じておりますけれども、とにかく、何といたしましてもある程度におきまして
管理職手当を支給いたしませんと、行政官との実質的
報酬の開きができて参りますので、われわれといたしましては、
管理職手当というものによってカバーしていくことは、
裁判官の性質上必ずしも適当だと思っておりませんけれども、これはやはり
要求いたしませんと実質的に低くなって参りますので、その意味におきまして
要求いたしておるわけでございます。
それから3が「
最高裁判所裁判官調査研究費」、これは現在もうすでに支給されております。特に来年も、これを落とされては困るという
趣旨でございますので、本年どおり認められますれば、特段の強い意味を持たないわけでございます。
月額は三万円と書いてございますが、現在は一人
月額二万七千円でございまして、三万円というのはまるくして
要求したという意味でございます。
4は「
最高裁判所裁判官退職手当の増額」、これは昨年も
要求いたしましたが、最高裁
裁判官の中に、いわゆる昔ながら初めから
裁判官として来られました方は、退職されましても恩給、現在は年金と申しておりますが、年金がございますので、ある程度の退職後の生活につきましても報いることができるのでありますが、弁護士から来られました方は、在職十七年または二十年というふうに勤められる方はまずほとんどございません。最高裁
判事に入られましてから十七年、二十年本勤められる方はまずございませんので、さような方は結局恩給がないことになりまして、そうなりましても現在退職手当金は
一般公務員並みでございまして、特別にこれが増額されておりませんので、何とかさような方が退職される際において待遇を考えなければならないということで、年金のことも考えたのでありますが、どうも年金は現在の考え方は、いわゆる養老年金式になっておりますので、ずっと初めから積み立てておった金をへ退職後に一定程度
増加して本人に戻してやるという構想でありますので、最高裁
判事だけに限って在職年数が少ないにもかかわらず年金を提供するということはなかなか困難かと思われますので、退職手当金の増額によってカバーしたほうが適当ではなかろうかという構想を去年から考えまして、去年も
請求いたしたわけでございますが、結局大体におきまして公務員の退職手当は勤続期間一年につきまして一カ月の
俸給分を払うということになっております。具体的に申しますと、十年間在職された公務員は十カ月分の
俸給、これが退職金になるのでございますが、それよりももう少し加算したいということで、ここに書いてございますように、
報酬月額の六八〇%に相当する額の退職手当を加算支給したい、かような
要求でございます。金額といたしますと、ここに書いてございますように九千六百十二万となっておりますが、これは既往にさかのぼりましても、
最高裁判所が発足いたしましたのは
昭和二十二年でございますので、十四年しかたっておりません。既往にまでさかのぼりましても十一人の方しかまだ退職しておられません。さような方も含めましての金額が九千六百十二万という金額になるのでございます。
次は5が「
裁判官室の器具整備」、これは庁費でございますが、
裁判官の待遇改善の一環といたしまして、その環境の改善を器具の整備等によってはかりたいという費用でございます。
六が「判決前
調査官制度の
新設」、これは二、三年来
請求しておるところでございます。要するに地方
裁判所の刑事事件について判決前
調査を行ない、
裁判の適正化をはかるため心理学、社会学等の専門知識を有する判決前
調査官を設ける必要がある、
調査官といたしましてとりあえず一地方
裁判所に一人という割合で五十人と
要求をしておりますが、これは
法務省との間にまだ意見の調整ができておりませんので
法務省は……、必ずしも成立いたしますかどうか危惧の念を持っておりますが、従来通り
請求したという次第でございます。
七が「証人、国選弁護人、調停
委員等の待遇改善」でございますが、これは一番本体をなしますものは証人の
日当の増額でございますが、先ほど
法務省の方からも御
説明がございましたように、何と申しましても証人は
裁判のために必要欠くべからざる人でありまして、それの待遇と申しますと語弊がありますが、その証人のいわゆる一種の待遇、これを考えませんことには、
裁判の迅速化あるいは適正化ということも、はかりがたくなりますので、さような観点から二、三年来証人の
日当の増額を
要求してきたわけでございますが、幸い本年度は三百円に値上げされたわけでありまして、従前二百三十円でありましたものが、
昭和三十六年度におきましては三百円、七十円の増額をみたわけでありますが、増額されないよりはましであったのでありますけれども、しかし、何と申しましても、三百円ではどう考えましても依然としてまだ低いわけであります。三百円をもっと上回るような
日当にしたいという
予算要求でございます。証人の
日当を増額いたしますと、それとパラレルに、並行的に考えていかなければならないところの国選弁護人、鑑定人、通事とか調停
委員、あるいは
司法委員、参与員というような方々の
日当も引き上げを考慮せざるを得なくなって参りますので、それがここに記載してございます。結局、具体的の金額といたしますと、証人の三百円を千三百円に上げたい。それから国選弁護人、鑑定人、通事等の現在七百円を千三百円、調停
委員、
司法委員、参与員、
検察審査委員等の六百円でありますのを千三百円に上げたい。もっとも
法律は、
日当は何円以下ということになっておりますので、証人の
日当でも
法律に千三百円以下と記載してもらいたいということで、予算単価といたしましては、一人当たり八百円ぐらいの計算で予算上の
請求をいたしておりますので、一律に全部証人に千三百円を支給したいという考えではございません。千三百円まで支給し得る。大体の単価を一人当たり八百円ぐらいにおいておりますが、全部千三百円として
予算要求をしておるわけではございません。
それから次に「国選弁護人
報酬の増額」、これは大体現在より三〇%増しに国選弁護人の
報酬を増したいということでございまして、例といたしましてここに記載してございますように、現在地裁では一件五千二百円となっておりまして、それではやや現在の物価状況を見ますと低きに失すると思われますので、三〇%程度引き上げたい。かような
予算要求でございます。それに要ります金といたしますと、五千五百七十六万円ほどの増額
要求になるわけでございます。
八は「研修指導の充実強化」、これはアラビア数字に書いてございますとおり、修習生の増員は、
裁判所書記官、
家庭裁判所調査官等の研修の拡充でございますが、修習生はもうすでに九月にまた合格者の発表がございましたので、三百八十人ことし合格いたしまして、大体三百八十人程度が修習生になると思いますが、これは本年に比べますと大体三十名ぐらいの
増加になっております。これは百二十三人と書いてございますが、数がきまってきておりますので、大体大蔵省も認めてくれると思いますので、特別の意義は現在千はなくなってきたわけでございます。
それから九は「
人事管理体制の確立」、これは結局のところ、アラビア数字に書いてございますように、
裁判所事務官を三十二人増員し、
協議会、講習会等を開きたいという金でございますが、
事務官を何のために増員するかと申しますと、ここの右横の文章にも書いてございますように、
人事管理体制を強化し、
職員の服務規律の確立をはかりたい。そのために地方
裁判所及び
家庭裁判所事務局に人事担当の官として
事務局次長を設けたい。地方
裁判所は全国に四十九、
家庭裁判所も四十九ございますので、三十二人では全部に配置するわけには参りませんので、結局主要な、大きな地方
裁判所または
家庭裁判所にとりあえず
事務局次長を設けたいという構想でございます。
十が「営繕費」でございます。これは先ほど
法務省の方からも御
説明がございましたように、
裁判所といたしましてもやはり同様で、戦災後
相当数の
裁判所が焼け払われまして、その復興並びに明治以来
裁判所というのはございますので、非常に古くなった庁舎の改築も考えなければなりませんので、さような意味におきまして、営繕費は多々ますます弁ずる金でございますが、現在はここに書いてございますように二十億幾らとなっておりますが、これをできるだけたくさんいただきたいという
要求でございます。御
承知のとおり
裁判所と申しますところはある程度外観、
内容等がきちんといたしておりませんと、強い言葉で申しますと、
裁判の威信ということにも
関係してくることでございますので、営繕費につきましては
裁判所としては格別に重要視しておるわけでございますが、これも先ほど申しました薄いほうの紙の最重要
事項に記載してございます。この営繕費
要求の内訳はその次の、この紙のうしろに二枚ほどにわたりまして書いてございますので、ごらんいただけたら幸いだと存ずる次第でございます。
最後に十一といたしましては、「庁舎の
管理要員の増員等」でございますが、その内訳はアラビア数字1の
管理要員の増員八百六十人、庁舎維持費の増額、これは庁費でございますが、これはだんだんと
裁判所の庁舎も新改築等によりまして整備されて参りますので、勢い
管理要員が、どうしても数の
増加が必要になって参りますし、また庁舎維持費も従来のような、木造のような比較的小ぢんまりとした庁舎等の維持費ではどうしてもまかない切れない。かようなものは、
管理要員あるいは庁舎維持費等が必要数だけ入って参りませんと、先ほど申しましたように、やはり
裁判所の、強い言葉で申しますと威信等にも影響して参りますので、非常にじみな
予算要求ではございますが、
裁判所といたしましては、今年度は特に十一は重要視いたしまして、基礎から固める必要があるというような意味におきまして重要視いたしまして、薄いほうの紙の最重要
事項にも記載しておる次第でございます。
以上で、はなはだ簡単でございますが、
裁判所の
予算要求の概況につきまして御
説明さしていただいた次第でございます。