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説明員(
竹内寿平君) 去る十月十七日、
亀田委員から御
指摘のありました点につきまして、その後鋭意
調査をいたしましたととろ、過般
報告を得ましたので、本日その各点につきまして御
報告を申し上げたいと思います。非常に多数の点にわたっておりますが、詳細に申し上げたいと思います。
まず、
調査方法につきまして御示唆をいただいたわけでこざいましたが、事柄が
検察の運営に関します問題と、それから
検察官の綱紀に関する問題を含んでおりますので、私
どももきわめて重要視いたしまして、
亀田委員から御示唆のございました点は、もちろん現地にも知らせまして、慎重に
調査方法等につきましても協議いたしました結果、まず、とりました
調査方法は、
検事長の責任において
調査するということにいたしまして、
検事長は、現在の
池田検事正から
検事正の責任において十点余りの
調査項目につきまして正式の
報告をとりまして、それからさらに
検事長みずから、現在の
原田次席検事及び
伊津野検事を福岡に招致されまして、両
検事と直接面談いたしまして事情を聴取をされ、
検事正の
報告と対照しながら、真偽のほどを明らかにした模様でございます。それからさらに
野田検事正につきましては、
検事長から
野田検事正に直接書面をもって照会され、書面をもって責任のある回答を得て、それに基づきまして
当局に
報告が出されておる次第でございます。かような
調査方法は、従来のいろいろな問題につきまして、部内の問題、
綱紀問題等につきまして大体とっておりますやり方でございますが、
検事長みずから
関係の
検事を直接調べられたというようなことは、むしろ異例に属する事柄でございます。
そこで、御
指摘のございました
問題点につきまして逐次お答え申し上げますが、まずその第一点は、
主任検事でありました
苑田検事が、本年一月ごろに
告発人の
今村真純氏に対し、二月になったら
捜査に着手すると明確に言明したにもかかわらず、二月を経過しても
本件の
捜査に着手していないではないかという点につきましてでございますが、
今村氏が
告発をした
本件を
熊本地検が正式に受理いたしましたのは本年一月七日でございまして、
本件の
主任検事である
苑田検事は、同月十三日
今村氏に
告発の
趣旨を確かめた際に、同氏からいつごろ
捜査に着手できるかという質問がございまして、同
検事は、当時昭和三十五年に発生した
三井三池争議関係の
事件の
公判立ち会いを命ぜられておりましたので、その準備及び
争議関係の
残り事件の
処理に非常に忙しくしておりましたので、その際
今村氏に対しまして、早急に着手できない事情を、今申したような事情を述べまして、
熊本地検全体としては、二月になれば
衆議院議員総
選挙事件の
処理が終わるであろうから、そのころ
地検の
捜査体制に余裕ができるであろうという
趣旨を述べたことは間違いございません。が、二月に必ず
捜査に着手するという言明を与えた事実はないとのことでございます。なお、同
検事は、
選挙関係事件の
捜査には全く
関係をしておらない
検事でございます。
第二点の、本年七月、
野田検事正が
岐阜地検に転勤をする直前になって、
本件の
主任検事を
苑田検事から
伊津野検事に変更したという点につきましてでございますが、
野田検事正は、本年七月十五日付をもちまして
岐阜地検検事正に転出をいたしましたが、同月五日、
本件の
主任検事を
苑田検事から
伊津野検事に変更いたしましたことは事実でございます。しかし、これは
苑田検事が
三井三池争議関係事件の
公判立ち会いを命ぜられておりまして、その準備と、さらに同
争議をめぐって発生しました
警察官約五百名に対する
特別公務員職権乱用等の
告発事件がございまして、その
事件の
捜査に従事をしておりました
関係から、
本件の
捜査を早急にやらなければならぬというような
検察庁内部の
考え方からしまして、この
事件を本格的に
捜査をやらせるには、
苑田検事の
手元があまりに繁忙でございましたので、やむを得ず
主任検事を変更したものであるというのが、
検察当局の正式の回答でございまして、これに他意はないということが
検事長によって確認されておるのでございます。
第三点は、本年八月下旬、
伊津野検事は積極的に
本件の
捜査を行なって
告発人側にも
会社の
書類の
保管場所、分量などを聞いて、あたかも
強制捜査に踏み切るような印象を与えていたにもかかわらず、九月に入ると
強制捜査の必要がないという態度に一変をしたという点についての疑惑でございますが、
伊津野検事が、
告発人側からの
強制捜査の申し入れがありまして、これに対して、
本件については
任意捜査の
方法によって行なうつもりであるが、もし被
告発人側が
証拠物の
任意提出に応じない場合は、これは捜索、差し押えを行なうこともあるかもしれないという返事をして応答をした事実がございます。その際、
任意提出を求めるにあたりましても、
証拠となるべき
書類の
内容とか、
保管場所等を聞きおきますことは、これは
捜査上よくあることでございまして、必要であるわけでございますから、その点を
告発人側が知っておるならば承知しておきたいという意味で尋ねた事実もございます。しかし、
本件の
捜査におきましては、当初から今日まで、
検察当局としては
任意捜査の
方法によって終始しておるのでございまして、その間に
捜査方針を変更した事実はさらにないのでございます。したがいまして、
伊津野検事が
強制捜査に踏み切ることとし、その後その必要がないというふうに態度を一変したという事実は全く認められないのでございます。なお、この
書類等につきましては、被
告発人側に
任意提出を求めたところ、容易にこれに応じまして、
捜査上必要な
証拠物はほぼ収集されておる
状況でございます。
第四点として御
指摘になりましたのは、
会社側において
証拠隠滅をしている疑いがある。その
具体的内容といたしまして、
会社では本年三月一日から八月二十日までの間に、
会社の
金銭出納に
関係していた
重要参考人六名を、
会計事務とは無
関係の職場に配置がえを行ない、そういうことによって
本件の
捜査を困難ならしめた事実があるのだということでございまして、具体的に一人々々の名前をあげられておられる一わけでございます。この点につきまして、
会社側におきまして、本年三月一日から八月二十日までの間に、御
指摘の
重要参考人を
会計事務とは無
関係の職場に配置がえを行ないました事実は、そのとおりでございます。しかし、御
指摘の
参考人は、すべてこれは
会社側の証人じゃなくて、
告発人側の人証でございます。この配置がえによってその
取り調べに特に支障を来たした事実はなく、そのほか
証拠隠滅等が行なわれて
本件の
捜査に困難を生じたというような事実も、
検察当局の側から見まして、いささかもそういう点は認められないのであります。
第五点は、
本件の
重要参考人である
熊本の
金属商美宝堂こと
林敏夫につきまして、別件によって
逮捕状が発せられているにもかかわらず、
同人を逮捕していないという点でございます。特に
告発人の
今村氏は、去る九月二十七日に
熊本北警察署勇川
警部補から、右の林が岡山にいるということを聞いているんだ。にもかかわらず、
同人を逮捕していないという点についての
捜査上の疑惑でございますが、
本件の
捜査におきましては、
熊本の今申しました
美宝堂こと
林敏夫を
参考人として
取り調べる必要があるのでございまして、現在その
所在は明らかでないのが実情でございます。まだ
同人を
取り調べるに至っておりませんので、鋭意その
所在を
捜査中でございます。林につきましては、御
指摘のように、別の
横領事件によりまして
逮捕状が現在発せられておりますし、全国に
指名手配になっております。しかし、まだ逮捕されていないのでございます。なお
北警察署の勇川
警部補の話に関連した点につきまして
調査をいたしましたところによりますと、林の
所在につきまして、林から
熊本におります林の
知人あてに住所を広島と記載して
岡山局の消印のある手紙が送られている事実がございます。さらに、この御
指摘の九月二十七日に
熊本北警察署勇川
警部補が別の
事件の
参考人として
今村氏を
取り調べました際に、
今村氏に右の手に入れております書信を、手紙を見せまして、林が岡山市か広島市付近にいるのではないかというふうに漏らした事実があることがわかりました。しかし、同
警部補も林の
所在を確認しておるわけではなくて、現在
捜査当局、
警察、
検察庁を含めまして林の
所在を確認するに足る資料をつかんでいないのが現状でございます。
第六点でございます。重要な
証拠品であるいわゆる
板井メモ二冊、この原本が紛失しているのではないかという疑いの点でございます。御
指摘によりますと、本年七月、
関係者が
伊津野検事から
告発関係書類を見せてもらったときに、右の
証拠品がそこになくて、同
検事は「高検にでも行っているのかな」と申したということでございます。この点につきまして、私は前回の
委員会でも、紛失というようなことは信じられないことだというお答えを申し上げた記憶があるのでございますが、この
板井メモ二冊原本は全く紛失事実はなく、現に
主任検事の
手元に現存しております。このメモを領置いたしましてから今日まで引き続き
主任検事の
手元にあるのでございまして、この
伊津野検事が「高検にでも行っているのかな」というふうに言ったという事実は、
伊津野検事につきまして
検事長が調べたところによりますと、どうもこれは何かの行き違いではなかっただろうかということで、
自分の
手元に現存しているものをそんなことを言うわけがないというのが実情のようでございます。
第七点として申し上げなければならないのは、七月八日、
野田検事正は
本件の被
告発人竹林勇氏とともに
阿蘇で
ゴルフをして
阿蘇観光ホテルで会食をしておる。これは
事件関係者と責任ある
捜査権限を持つ
検事正が
ゴルフを
一緒にするなんということは、綱紀問題ではないかという御疑念でございます。この点につきまして
調査をいたしましたところ、本年七月八日、これは土曜日でございますが、
野田検事正が
阿蘇観光ホテルで御
指摘のような
人たちと会食をし、一晩
観光ホテルに宿泊しまして、翌九日日曜日に
阿蘇で
ゴルフをした事実は間違いなくあるのでございます。しかし、これは
本件の
事件とは実は
関係なく、
司法関係の
検事正の友人である方から、日曜日に
ゴルフを楽しもうという申し込みを受けられまして、それで
検事正も時おり
阿蘇で
ゴルフをしたことがあり、数名の者とそこへ参ったのでございますが、その
ゴルフ場も
観光ホテルも九州産交の
会社の経営にかかるものであるといいましても、そこの
支配人も、あるいは被
告発人である
竹林氏もその仲間に参加をして
ゴルフをやったということでございまして、お客さんはむしろ
司法関係の方でございましたので、そうしてこの
竹林とか
支配人とかいう方は、全く
パートナーとしておつき合いしたにすぎないということでございます。なお
亀田委員から
部屋割りその他についての御質問もございましたのでございますが、この点につきましては、
検事正のほうはどういうふうに
部屋割りをされたのか、そのいきさつは存じないということでありまして、なお
検事正の
答弁書によりますと、会費を三千円ですか、支払いまして、しかも、
自分はその
観光ホテルに前にも泊まったことがあるけれ
ども、ここはお客さんを主にしたのであって、
自分の泊まった部屋は、いつも泊まるところよりもずっとお粗末の
部屋に泊まったのであるということでございます。
事件と全く
関係ないことは、これによって認められるのでございますけれ
ども、まあ李下に冠を正さずといったような
考え方からしますと、もし避け得たならば、林と
一緒に、
パートナーでありましても、
一緒に同席し、
一緒に
ゴルフを楽しむというようなことは避け得たならば避けたほうがよりよかったのではなかろうかというのが私
どもの感じでございます。
第八点といたしまして、三十四年八月に
阿蘇山上の
ロープ・ウエー建設に関して
会社の公金をごまかしたという
事件があって、
本件については、
最初高田検事が担当しておったのであるが、途中で他に転勤を命ぜられ、その後
堀検事が担当して不
起訴になった。
事件処理後
野田検事正、
県警本部長及び
会社側が、
熊本の料亭「おく村」で祝杯をあげたといわれているという情報を御
指摘になったわけでございますが、まず、そのような
事件があったことは間違いないのでございまして、
高田検事は
熊木地検から
長崎地検厳原支部の
検事に転任をしております。これは
検事正の発意でそうしたのではなくて、
検事の人事はもちろん法務大臣が掌握しておりますが、多年の慣例によりまして、
検事長の推薦によって決定することになっております。ほとんど
検事長が
検事の
異動権を持っておると申しても過言ではないぐらい、推薦によってこれを決するということになっておりますが、御承知のように厳原は島でございますので、なかなか
検事をそこへ回しますことは、
検事長の一つの苦労の人事になっておるようでございます。それで、大体年限を限りまして交代をさしておるのでございます。たまたまこの
高田検事がその番に当たりまして、
検事長からの指名を受けてそちらへ転任をしたのでございます。
本件の
ロープ・ウエーの
事件とは全く
関係ない。これは
検事長の権限でいたした人事でございます。それから同
事件処理後に、これはまた聞き捨てならないことでございますが、料亭「おく村」で祝杯をあげたというような点につきましては、この
処理の前後を通じまして全くないということで、これは何かの誤解ではあるまいかというのが現地からの
報告でございます。なお、
阿蘇山ロープ・ウエー事件は、三十五年十一月七日付をもって不
起訴になっておりますが、この不
起訴の
内容をここで詳しく申し上げることははばかる次第でございますけれ
ども、私
どもが事務的に検討いたしました結果、この
処理はやむを得ない適正なものだというふうに考えておる次第でございます。
第九点は、昭和三十四年十一月、
本件の
告発人今村真純氏が九州産
交従業員組合幹部使い込み
事件を
告発したのでありましたが、
本件については、
野田検事正が
強制捜査を差しとめ、結局不
起訴処分になったといわれているという点の御
指摘でございます。三十四年十一月、
今村氏が九州産
交従業員組合、これは第二組合でございましょうが、との組合の幹部を
告発した
事件がございます。その後同
事件は不
起訴処分になっておるのでございますけれ
ども、
野田検事正がその
事件の
強制捜査を差しとめるというようなことは、もちろん
野田検事正は否定をいたしておりますし、
事件の概要を、私
ども、これも不
起訴事件でございますので、公開を差し控えなければなりませんが、事務的に
内容を検討いたしました結果、これは
強制捜査に踏み切るような
事件でもないので、
検事正の、確信を持っての、
強制捜査を差しとめたのでないという確言は、私
どもの立場から見ましても相当である、こういうふうに考えられますので、これも
野田検事正に対するうわさと申しますか、そういうものにすぎないものでなかろうかというふうに考える次第でございます。
第十点は、これは本年八月、
会社が、もと
会社の
従業員で
清田しめ子という
女子職員を、
同人が退職してから後に、
会社の
職員章を手に入れて、これを不正に使用して乗車したという事実で
告発をいたしております。
本件は被害がわずか二十円という
事件であるということで、
熊本北警察署においてこの
告発事件を
捜査した際に、右、清田の
取り調べの過程で、
女子職員を誘導しまして
今村真純氏からその
職員章をもらったと言わせたという事実があるが、そういう調べはいかがなものであるかという点の御
指摘であったと思うのでございます。この点につきまして
調査をいたしましたところ、
清田しめ子に対する
不正乗車——詐欺事件でございますが、この
事件は、
回数等はわかりませんのでございますが、数十回にわたって
不正乗車をしたという
告発のようでございますが、結局
証拠としてあげ得るものは二件だけで、結局、金額にすると二十円ということになるのでございますが、
北警察署において
取り調べ中に、その
不正職員章はどこからもらったかということにつきまして、清田のほうから、実は
今村さんからもらったのだという供述をしたために、今度は
今村さんに、お前やったことがあるかということで、
今村氏を調べるという順序になっておるようでございます。したがいまして、何でもかんでも
今村からもらったというふうに言わせて
取り調べを進めたというような事実
関係は——現にこの
事件は
検察庁に最近送られて参りました。
検察庁で現在
取り調べておりますけれ
ども、
検察庁の調べにおきまして本、そのような誘導したというような点は認められない
状況でございます。
以上をもちまして、大体御
指摘の点をお答え申し上げた次第でございます。