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豊瀬禎一君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、本案に対し反対をいたし、さらに修正案を提示いたしたいと思います。
先ほど
大臣は、私は地に足がついていると言われましたけれども、
大臣の足は地について、だんだんと下にめり込んでいって、大地に足をついて伸びようとする施策が足らないということを、まず私は
指摘いたしたいと思うのであります。
大臣がおっしゃたように、本案の通過をこいねがう声は非常に多いということも、私は現実の姿としてよく
承知いたしております。それはしかし、これが理想案として正しいという
教育設計から来るものではなく、現実の苦境から少しでも上に上がりたいという悲願であるという点に対する
大臣の認識の不足と、
文部省の施策の不足が、本案の中に露呈していると私は
指摘して差しつかえないと思います。本案の質問に入ります際に、私は、
文部省が完全なる
中等教育とはいかなるものかということの策定が不十分である。したがって、完全なる
中等教育をいかようにして完成させるかという基本政策を持たないことから来るところの本案の不備について
指摘をいたしておきましたが、ただいまも申し上げましたように、あらゆる個所に
現状を打開しようとする消極的な善意は発見され、ベターの案としては私は完全に否定さることのできない点を持っておることは認めますけれども、新たに
法律案として高校の
適正配置及び
教職員定数の
基準を設定しようとする
文部省のかまえに対しましては、かなり私は
欠陥を持っておると思います。第三十七国会で、私どもは本
委員会におきまして
政府提出に基づくところの公立の中
学校の校舎の新築等に要する経費についての国の
負担に関する臨時
措置法案を審議いたし、これを可決
決定するにあたり、私は本案に対する附帯
決議を
提出いたしまして本
委員会の全会一致を得たわけですが、その附帯
決議は、「中
学校の生徒急増に引き続き、近い将来、
高等学校の生徒急増も必至である。
政府は、この事態に処して、
高等学校の
施設・設備の拡充整備、
教職員の
増員確保等について、すみやかに適切な
措置を講ずべきである。」との
決議をいたしております。私はこの
委員会決議に対し、本案はきわめて不誠実であることを
指摘せざるを得ません。
第二は、本
委員会においてもたびたび学力テストの問題等とからみながら
指摘されたことは、中
学校の予備校化の問題であり、高校全員入学の生徒父兄の悲願がほど遠いという問題であります。しかも本案は、これら予備校化を醸成しておる根本の
原因あるいは全員入学の期待に対してはあまりに遠いだけでなくして、しかも現実かくあるがゆえという理由をもってさらに一割のすし詰めを
法律によって認めようといたしております。このことは私どもの第一に
指摘しました
委員会決議の
趣旨と全く相反するものであり、第一に申し上げました
中等教育の完成という角度からも、あるいは全員入学の希望、中
学校の予備校化を防ぐためにもきわめて縁遠い案と
指摘せざるを得ません。 第三に
指摘したいのは、本案はいろいろの苦心の跡、
努力の跡が見られ、この点に対しましては一応の敬意を表しますが、特に
養護教諭あるいは
実習助手、
事務職員等、現場の中においてある意味では普通科の
教育職員よりも恵まれずして労苦をしておる人々に対する配慮が極めて薄いということであります。さらに農業、
工業、
水産業等のいわゆる専門職にあるところの
教職員の充実も、実業
教育あるいは
産業教育の
振興という旗じるしが掲げられておりながら、このことにも前進した案を示していないことを
指摘いたしたいのであります。
以上をもって本案に対する反対意見とし、続いて修正案に対する要点の説明をいたしたいと思います。
まず、
公立高等学校の
設置についてでありますが、原案によりますと、
都道府県が
設置するものと規定し、
市町村については、政令で定める
基準に該当するものに限られるようになっておりますが、
教育の機会均等の
原則から申しましても、
設置能力のある
市町村においては自由に
設置できる現在の状態が望ましいと考えられますので、これを現行のままとし、第三条を削除いたしました。したがって、第二章全体が削除されることとなり、また、第一条中の「
学校の
設置」及び
法律の題名中の「
設置」の字句も不要となりますから、それぞれ削除いたしました。
第二は、
公立高等学校の
学校規模を
法律で定めることをやめたことであります。
政府提出の原案によりますと、公立の
高等学校における
学校規模は、その生徒の収容
定数が本校三百人、分校百人を下らないものと規定してありますが、このことは、現に存する小
規模学校の統廃合の線に直結するおそれがあり、やがては青少年の進学意欲を減退せしめて、
教育の機会均等の精神に反するものであると思量いたされます。衆議院より送付されました送付案によりますと、この生徒の収容定員については修正を加え、本校にあっては三百人、分校にあっては政令で定める数を下らないものと規定いたしておりますけれども、なおかつ、ただいま私が申し述べた不安と
欠陥を払拭することはできないものと思われますがゆえに、第五条の規定を全面的に削除いたしました。
このことと関連いたしまして、教諭等の数をすべての課程について八人を最低数と定めましたことが第三点であります。
第四は、
養護教諭、
実習助手及び
事務職員の数についての
算定方法を改めたことでございます。原案によりますれば、これらの
教職員の数は、現行の
高等学校設置基準の
乙号基準を下回り、
現状よりも減少する結果を生ずることが予想されるのであります。それゆえに、これらの
教職員について、その
算定方法をそれぞれ次のように改めました。
養護教諭等の数は、各全日制課程または定時制課程に一人とし、
生徒数が千二百人をこえるときは二人とすることに改めました。
実習助手の数のうち、原案第十一条の一号の数は、各全日制課程または定時制課程に二人とし、
生徒数が百五十人をこえるときは、そのこえる
生徒数百五十人までごとに一人を加える数とするように改めました。
事務職員の数については、各全日制課程または定時制課程に二人とし、
生徒数が百五十人をこえるときは、そのこえる
生徒数三百人までごとに一人を加えた数とすることに定め、なお、農業、
水産または
工業に関する
学科を置く各全日制課程または定時制課程と通信制課程を置く
学校については、それぞれ
補正増員を行うように
措置し、これらにより
算定した数の合計数とすることにいたしました。
第五は、
附則第四項の、
実習助手の数についての特例規定について、
法案の第十一条第一号についての修正規定に合致させるように字句を改めるとともに、その猶予期間を短縮して
昭和三十九年三月三十一日までと改めたこととであります。
第六は、
附則第五項から第七項までを、すべて削除したことであります。これらの規定は、
昭和三十八年四月一日から四十四年三月三十一日までの間、すなわち、
高等学校生徒数の急増期間においては、学級編成を、一学級当たりの収容
生徒数を一割だけ増加できること、約一割までの
生徒数については、
教職員定数を増加させることなく、生徒を収容することができること等の経過
措置でありますが、これらの規定によれば、
相当長期にわたっての
高等学校におけるすし詰め授業を余儀なくし、教師の
教育活動の過重をしいる結果、著しく
教育効果を減殺するに至るであろうことがきわめて明白に予見できると断定せざるを得ません。このような理由により、これらの規定を全部削除することといたしました。
以上が修正の主要点でありますが、なおこのほかに、各章の移動を整理するために若干の機械的修正をいたしてあります。
この
法案第一条の目的にもうたわれてありますとおり、
高等学校の
教育水準の維持
向上に資するためには、このような修正を行いますことにより、初めて真に
教育効果の高揚が期待できるものと確信いたします。
何とぞ各党各派の御賛同をいただきますようお願いいたします。