○国務大臣(
荒木萬壽夫君) このたび政府から提出いたしました
日本育英会法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申しあげます。
昭和十九年、
日本育英会法施行以来、日本育英会は、年々堅実な発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受け、その勉学を続けることができた学徒は、きわめて多数に上り、国家的な育英事業として多大の成果を収めて参りました。日本育英会から学資の貸与を受けた者は、修業後一定の期限内に、その貸与金を返還する義務を有しておりますが、特例として、それらの者が
義務教育に従事する
教員または高度の
学術研究者となった場合に、その貸与金の返還を免除できる
制度を設けてまいりましたのは、それらの分野に積極的に人材を誘致し、
義務教育の充実と
学術の
振興をはかろうとする
趣旨に基づくものであります。ところが、近年、
高等学校進学者の急増に対処し、また、科学
技術者の育成を促進するため、
高等学校、
大学または高等専門
学校に優秀な
教員を確保することがますます重要になって参りましたので、これに応ずる
措置を講ずるとともに、日本育英会の貸与金の回収を一そう適確に行なうため、
現行法の一部に必要な改正を加えることが適当であると考え、この
法律案を提出するものであります。
改正の第一点は、
大学における貸与金の返還を免除される職のうちに、
高等学校、
大学、高等専門
学校その他の
施設の
教育の職を加えたことであります。改正の第二点は、
大学院における貸与金の返還を免除される職のうちに、中
学校、
高等学校および高等専門
学校の
教育の職を加えたことであります。改正の第三点は、日本育英会の業務の方法のうち、とくに貸与金の回収に関するものは、主務大臣の定めるところによるものとしたことであります。改正の第四点は、当分の間、
大学もしくは
大学院または高等専門
学校で学資の貸与を受けた者が、沖繩の
教育または
研究の職についた場合も、日本
本土の場合と同様に、その貸与金の返還を免除できる規定を設けたことであります。改正の第五点は、当分の間、貸与金の返還免除については、国立工業
教員養成所を
大学と同じ取り扱いとしたことであります。
以上が、この法案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御
審議の上、すみやかに御賛同下さるようお願いいたします。
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次に、このたび、政府から提出いたしました
学校教育法等の一部を改正する
法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この
法律案は、
学校教育法につきまして、
高等学校の通信制の課程の
整備並びに
高等学校の
定時制の課程及び通信制の課程と技能
教育施設との連携のため所要の規定を設けるとともに、
特殊教育及び就学義務関係の規定等を
整備し、また、私立
学校法につきまして、通信制の課程の
整備に伴う
学校法人にかかる認可等について所要の規定を設けることとしたものであります。
まず、
学校教育法の改正といたしましては、第一に
高等学校の通信による
教育を行なう課程を通信制の課程として
整備したことであります。
高等学校の通信による
教育は、その発足当初の諸事情のため、全日制の課程または
定時制の課程における
教育方法として考えられ、現在まで運営されてきたのでありますが、最近に至り、年々これを
利用する
生徒数も増加し、
関係者の努力によりその内容も充実し、
定時制の課程と並んで勤労青年を
対象とする
教育の上に相当の役割を果たすに至ったのであります。そこで、このたび、これを全日制の課程、
定時制の課程と並ぶ独立の通信制の課程として明確に位置づけるようにするとともに、通信制の課程のみを置く
高等学校の
設置をも認めることといたしたのであります。また、通信による
教育は、これまで都道府県を単位として行なわれていたのであり、将来もその発達を促進するとともに、最近におけるラジオ、テレビの普及に伴い、通信
教育にこれらの新しい
教育手段をも考慮し、
全国または数都道府県を実施単位とする広域の通信制の課程をも
設置し得る道を開くことといたしました。なお、広域の通信制の課程の
設置、廃止等にかかる都道府県の
教育委員会または知事の認可を行なうに際し、
全国的見地からの
調整、
教育水準の維持の必要等の見地から、あらかじめ、
文部大臣の承認を受けて行なわせることとして、その適切な実施を確保しようとしたのであります。これらの法的
整備をはかるとともに、さらに各般の行政
施策を講じ、勤労青年の
教育の機会の普及拡充に今後格段の努力をいたしたいと存ずるのであります。
第二は、
高等学校の
定時制の課程および通信制の課程と技能
教育施設との連携をはかることであります。
高等学校の
定時制の課程または通信制の課程に在学する
生徒が、同時にまた事業内訓練
施設その他の技能
教育施設において相当組織的な
教育を受け、その成果を上げている場合がありますが、その
施設、
設備、
教員組織、指導内容等が
高等学校と同等以上と認められるときは、これらの技能
教育施設における学習を
高等学校における教科の一部の履修とみなすことといたしました。このことにより
学校と
産業界との相互の連携を密にし、技能
教育についての能率を高め、もって
科学技術教育の
振興に資することといたしたのであります。
第三は、
特殊教育に関する規定を
整備いたしたことであります。すなわち、現在、
盲学校、
聾学校及び
養護学校の幼稚部及び
高等部は、単独には
設置できないこととなっておりますが、特別の必要がある場合には、これらの部をそれぞれ単独に
設置し得る道を開くとともに、
盲学校、
聾学校、
養護学校または特殊学級において
教育することが適当な児童、
生徒の範囲を明確にし、もって
特殊教育の
振興に資することといたしたのであります。なお、これらのほか、
義務教育諸
学校にかかる就学義務に関する規定等を
整備することといたしたのであります。
次に、私立
学校法の改正につきましては、主として
学校教育法の改正による
高等学校の通信
教育制度の改正に伴い、規定の
整備をはかったものであります。すなわち、広域の通信制の課程の
設置、廃止等にかかる認可につきましては、
文部大臣の承認を経ることといたしましたことに伴い、これを設ける
学校法人についても、同様の
措置を定めるなど所要の規定を設けることといたしました。
以上が、この
法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御
審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
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次に、今回、政府から提出いたしました
公立高等学校の
設置、
適正配置及び
教職員定数の
標準等に関する
法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
高等学校は、
義務教育に続く
学校として戦後の学制改革により新たに設けられた
制度でありますが、十数年を
経過した今日におきましては、中
学校卒業者の半数以上が
高等学校に進学しており、わが国の
学校教育において大きな役割を果たしているのであります。しかしながら、
高等学校の
設置、規模、学級編成、
教職員定数等につきましては、従来、
学校教育法及び
文部省令である
高等学校設置基準等の規定を根拠としてきたのでありますが、その後、
高等学校教育の実態が大きく変化して参り、
現行の規定が必らずしもこれに即応しないこと、
高等学校の
教育課程の改訂に伴い、これを実施していくために必要な
教職員定数を確保しなければならないこと、最近における地方財政の
実情にかんがみ、
高等学校の
設置について国が一定の
基準を示す必要があること、また、今後における中
学校卒業者数の急増に伴い、
高等学校進学者数の増加に対処する必要があることなどの理由により、
公立高等学校の
設置、適正な
配置及び規模並びに学級編制及び
教職員定数の標準について、国の方針を策定することが緊要となって参ったのであります。
政府におきましては、これらの
実情にかんがみまして、この際、これが解決をはかるべく、本
法律案を提出いたしたのであります。すなわち、この
法律案は、
公立高等学校の
設置について所要の規定を設けるとともに、その適正な
配置及び規模並びに学級編制及び公立の
高等学校に置くべき
教職員の定数の都道府県または
市町村ごとの標準を定めることとしたものであります。
まず、公立の
高等学校の
設置につきましては、現在、都道府県及び
市町村がこれを
設置する場合には別段の制限がないのでありますが、一方、地方自治法におきましては、
高等学校に関する事務は主として都道府県が処理するものと規定されております。この
法律案におきましては、この考え方を進めて、公立の
高等学校の
設置は原則として都道府県が行なうものとし、政令で定める一定
基準に該当する
市町村は
高等学校を
設置することができるものとすることにいたしました。
第二は、公立の
高等学校の
配置及び規模の適正化について規定したことであります。すなわち、都道府県はその区域内の公立の
高等学校の
配置及び規模の適正化に努めなければならないことといたしました。なお、この場合において、私立の
高等学校が公立の
高等学校と相ともに
高等学校教育の普及と機会均等のため果たしている役割の重要性にかんがみ、私立の
高等学校の
配置状況を十分に考慮しなければならないことといたしました。また、公立の
高等学校の
学校規模の最低標準を定め、
高等学校の
教育水準の向上をはかることといたしたのであります。
第三は、学級編制が
教育効果の上に大きな
影響があることにかんがみ、学級規模の適正化をはかるため、その標準となるべき
生徒数について規定いたしました。
第四は、公立の
高等学校の都道府県または
市町村ごとの
教職員の定数の確保をはかるため、その標準となるべき数を定めたことであります。すなわち、この
法律案におきましては、
校長、教諭、助教諭、
講師、
養護教諭、
実習助手、事務職員などの職種別に
教職員数を算定し、これらの数を合計して、都道府県または
市町村ごとに置くべき
教職員の定数の標準となるべき数を定めたのであります。この場合、標準となるべき数の算定の基礎については、
高等学校の課程ごとの
生徒の数を基本とし、これに課程の特色や学科の数、
学校規模などの諸条件を十分考慮するようにいたしました。なお、これらの
教職員の具体的
配置については、各
教育委員会が、地方の
実情に即して適切に
措置できるように考慮したのであります。
第五は
経過措置であります。その一は、この
法律案によって算定した
教職員定数の標準を実施することに伴う急激な財政負担を緩和するための規定でありまして、この
法律施行の際、現に定められている
教職員の定数がこの
法律による
教職員定数に達しない都道府県または
市町村は、
昭和三十八年三月三十一日までの間に、順次、
教職員定数を充実していかなければならないことといたしました。その二は、
昭和三十八
年度以降
昭和四十四年三月三十一日までの間における
生徒数の急増に対処するための
措置でありまして、この間におきましては、約一割までの
生徒増について
教職員定数を増加させることなく、
生徒を収容できるようにいたしたのであります。なお、これに伴って、この期間中は学級編制の標準についても、一学級あたりの収容
生徒数を一割だけ増加できることといたしました。
以上が、この
法律案を提出いたしました理由及び内容の概要であります。何とぞ、十分御
審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申上げます。