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政府委員(森茂雄君)
家畜商法の一部を改正する法律案につきまして、若干
補足説明を申し上げます。
まず、改正の主要点につきましては、(一)家畜の取引の業務に関する講習会の
受講終了を免許の要件にしたこと、(二)家畜商の
営業保証金の供託についての制度を設けたこと、(三)家畜商に家畜の取引に関する帳簿の備え付け及びこれについての
立ち入り検査に関する規定を設けたことの三点であり、その他の改正点は、これらの事項に関連して、免許の
資格要件、
取り消し要件等につき、必要な規定の整備を行なったことであります。
以下、これらの改正の主要点について御説明申し上げます。
まず第一点は、家畜の取引の業務に関する講習会に関する制度についてであります。現行法では、家畜商に簡単な
免許制度を実施し、その結果、現在のところ約七万五千人の家畜商につき免許が行なわれております。若干の
免許手数料さえ納入して申請すれば、
禁治産者、準
禁治産者、禁錮以外の刑に処せられその執行を終わった日から二年を経過しない者等でなければだれでも免許を与えられることになっており、この結果、家畜の取引の業務に必要な知識をほとんど持たないものであっても、家畜商の免許を与えられて営業できることとなり、取引に関する事故や紛争をおこす場合もあって、このことが
家畜商個人またひいては
家畜商業界の地位をおのずから低めている実情でもありました。そこで、今回の改正に際しては、講習会に関する制度を設け、家畜商の資質の向上をはかることにいたした次第であります。すなわち、第三条第二項の免許の資格についての
現行規定を改正し、
農林大臣の指定する者が行なうかまたは
都道府県知事が行なう家畜の取引の業務に関し必要な知識を修得させることを目的とする講習会の課程を終了した者またはその者を使用人その他の従業者として置く者に対してでなければ、家畜商の免許を与えないこととしたことであります。
第二に、この
免許資格の整備と関連して
免許申請者の保護をはかるため第四条の二の規定を新たに設け、
都道府県知事は原則として毎年一回を常例として講習会を開催しなければならないこと。ただし、
農林大臣が指定した者が行なった場合には、
都道府県知事は必ずしも行なわなくてもよいこととし、また講習会を開催した者は、その講習会の課程を修了した者に対し
修了証明書を交付しなければならないことといたしたことであります。
第三に、講習会の受講、修了を免許の要件としたことの趣旨が、実際の取引を行なう者の資質の向上をはかることにあり、したがって、免許を受ける家畜商のみでなく、取引の業務に従事する従業員にも受講、修了をさせる必要にかんがみ、第十条に第二項及び第三項を新設し、家畜商に対し、受講、修了をしていない者をその取引の業務(
農林省令で定める
取引契約の締結等の行為)に従事させてはならない業務を課するとともに、講習会の受講、修了をしていない家畜商は、みずから家畜の
取引行為を行なってはならないことといたしたことであります。なお、この講習会につきましては、附則第三項で既存の業者は、一年以内に受講、修了をし、その受講、修了をした証明書を添えて免許を申請しなおさなければならないこととなっており、またこれと関連して、附則第五項で
都道府県知事に法施行後十月以内に講習会を開催すべき義務が課せられております。
次に、主要な改正点の第二は、家畜商の
営業保証金の供託に関する制度についてであります。家畜商の知識の欠如に基づく
家畜取引上の事故または紛争につきましては、講習会に関する制度を実施することにより、その減少をはかることが可能でありますが、一部の家畜商が取引についての知識を有しながら他人に迷惑をかける場合もあり、この点、講習会の実施のみでは十分ではないので、家畜商の
信用能力を
最小限度において補完して家畜の取引の安全を確保するとともに、事故が生じた場合には、家畜商の取引の相手方の債権の保護をはかることを目的として
営業保証金の供託に関する制度を設けたことであります。
営業保証金に関する規定は第十条の二から第十条の七までと附則に若干ございます。
まず第十条の二は、家畜商の
供託義務、供託をしたむねの
都道府県知事に対する
届け出義務、届け出以前の
営業開始の禁止について規定しております。
第十条の三におきましては、
営業保証金の額につきまして、その家畜商の業務に従事する者の数が(免許を受けている者がみずからも取引の業務に従事するときは、その者をも含めて)一人であるときには二万円とし、一人をこえる場合には一人増加するごとに一万円をこれに加えた額とする旨を規定いたしております。
供託すべき
営業保証金は、この第十条の三第二項において、現金に限定することなく、国債、
地方債等の
有価証券でもこれに充て得ることを定めております。
第十条の四におきましては、
営業保証金の還付について規定されております。
営業保証金の還付とは、供託した
営業保証金により家畜の取引上その債権を有する者が取引上の弁済を受けることをいうわけでございますが、本条はこの還付について、
請求権者、請求のできる事由等を規定しているわけであります。
次に、第十条の五におきましては、
営業保証金の不足額について、家畜商の
供託義務を規定しております。
次に、第十条の六におきましては、
営業保証金の保管がえについて規定しております。
最後に、第十条の七におきまして、
営業保証金の取り戻しにつき規定しております。取り戻しとは、供託者が供託所から
営業保証金の払い戻しを受けることをいうわけでありますが、本条は、取り戻し権者、取り戻すことのできる額を規定しております。
なお、この取り戻しを行なう手続については、この条の第四項以下で
当該営業保証金の
還付請求権者を保護するため、取り戻しをしようとする者に
還付請求権者の存否を確かめるための公告する義務を課しているほか、
供託関係の法令またはこの法律に基づく省令で定められることになっております。
以上が
営業保証金に関する規定の概要であります。
このほか、附則第八項から第十一項までにおきまして、
既存業者についての
供託義務、供託した旨の
届け出義務、その届け出がない場合の免許の
取り消しについて規定しております。
改正点の第三は、
家畜取外に関する張簿の
備付及びその検査についてであります。
すなわち、第十一条の二の規定を新設し、家畜商に、
事業所ごとに帳簿を備え付け、これに取引のあったつど、その年月日及び場所、その
取引頭数、取引に従事した
使用人氏名等を記載させるとともに、第十一条の三の規定を新たに設け、
都道府県知事に対して、その職員に家畜商の事業所に立ち入り、
帳簿書類を検査させる権限を認めることとしたのであります。
以上が改正の主要点についての簡単な説明でございますが、このほか、以上の主要な改正点に伴い必要となった関連の改正点が若干ございます。
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家畜改良増殖法の一部を改正する法律案につきまして
補足説明を申し上げます。
まず本則におきましては、
第一に、わが国における畜産の発展、その農業に占める地位の向上及び必要性に対処するとともに、最近におきまする
畜産技術の進歩等に応じまして、家畜の
改良増殖を一段と計画的かつ効率的に実施して畜産の振興をはかるとともに、あわせて
農業経営の改善に資する趣旨を明らかにするため、目的に所要の改正を加え、
第二に、家畜の
改良増殖に有効な事項を極力総合的にかつ体系的に促進することとし、その実施に際しては
農業経営に家畜の
改良増殖の成果である優良な資質の家畜が適正かつ円滑に導入されることになるように努める旨の規定を設けることといたしました。
第三は、家畜の
改良増殖を計画的に行なう趣旨で、
家畜改良増殖目標の公表、
都道府県家畜改良増殖計画の作成等に関する規定を新たに設けることといたしたのであります。
第四には、
凍結精液の利用の実用化に伴い、種畜及び
家畜人工授精に関する規定を補正して整備することといたしております。
第五には、新たに
家畜登録に関する規定を設けることとしました。すなわち、これは
家畜登録事業の公正な運営を確保するため、
家畜登録事業についてその
登録規程を
農林大臣の承認制とするとともに、その業務について援助し監督すること等の規定を設けることといたしました。
第六には、新たに家畜の
改良増殖に関する
重要事項を調査審議するものとして、農林省に
家畜改良増殖審議会を設置することにしたのであります。
第七には、この法律案を施行するために必要な雑則及び罰則について所要の規定を設けております。
なお附則におきましては、
家畜登録事業について、その
登録規程が
農林大臣の承認制となることに関し、その他この法律の施行のため、必要な
経過措置、
関連法律の一部改正について規定を設けております。
次に、おもな
改正規定について
逐条説明を申し上げます。
第一条は、すでに申し上げました本法の目的に関しまして
改正法律案の内容に即しまして所要の改正をしたのであります。
第二条は、家畜の
改良増殖を促進する義務と家畜の
改良増殖が
農業経営の改善に資し、農業者にその成果を得しめるための家畜の導入等に対する措置に関する規定であります。すなわち第一項におきましては、現行法でも国及び
都道府県は
家畜改良増殖に有効な事項を促進することといたしておりますが、この
改正法律案におきましては、その趣旨を包括的にそのまま引き継ぐとともに、家畜の
改良増殖の
促進事項のうち、その
重要事項を極力具体的に又体系的に法文化してこれを明確に確保することといたしました。したがって、従来の「第二章以下に規定する事項以外であっても」を削除することといたしました。
第二項につきましては、国及び
都道府県が家畜の
改良増殖に関する各種の施策を進めていく際に、家畜の導入をいかに円滑に進めていくかについて規定いたしております。すなわち、新たに国及び
都道府県は、家畜の
改良増殖上必要な各種の施策を講ずるにあたっては、
改良増殖の成果である優良な資質の家畜が
農業経営に適正かつ円滑に導入されるように努めるとともに、家畜を取り入れた
農業経営の発展に資するよう努めるべき旨の規定を設けることとしたのであります。しかして優良な資質の家畜が
農業経営に取り入れられ、この飼育が行なわれる場合、これらの家畜がわが国の
畜産経営の発展の方向に即した形でその優良な資質が十分活用されるのでなければならないのは当然なことでありまして、これが措置を円滑に実施するために、家畜を導入するにあたっては
農林大臣が定める「
有畜農家育成基準に準拠」することとしたのであります。
第三項につきましては、
有畜農家育成基準の内容等についての規定であります。
有畜農家育成基準とは、家畜の
改良増殖の目標並びに
農業経営の現状及び将来の
改善目標等を考慮いたしまして、家畜の
飼養規模、
家畜導入にあたって考慮すべき
立地条件等について定めることといたしているのであります。
これまでのわが国の
畜産経営は、副業的な経営が大部分を占めていたのでありますが、畜産物に対する旺盛な需要に刺激され、一般的には自然的、経済的、
社会的条件により、経営の形態等について多くの差がありますものの、従来の
飼養規模に比べて多
頭数飼養の有利性が次第に認識され、普及されつつある状況であります。またこれと同時に、適切な
農業生産の発展をはかり、
農業経営の
近代化等を中心とする
農業構造の改善のためには、合理的な畜産の導入及び経営の育成、発展を確立しまして畜産の振興がはかられることが、今後の
わが国農業の発展のため最も必要なことの一つとして要請されているのは御承知のとおりであります。
有畜農家育成基準を定める場合には、無畜農家の有畜化を一段と適切に進めますと同時に、単なる
副業的有畜農家経営から多
頭数飼養による主畜経営またはこれに準ずる経営に移行することが必要であると考えられます。したがいまして、国としてもこの基準に沿って、従来よりも拡充した
援助指導を行ない、もって家畜を取り入れた
有畜経営による農業の発展を進めていくことを助長したいと考えておるわけであります。
次に、第一章の二につきましては、家畜の
改良増殖に関する目標、家畜の
改良増殖計画等に関する措置について規定しております。
第三条の二につきましては、
農林大臣の定める
家畜改良増殖目標の公表及びその目標の内容等に関する規定であります。今後におきまして畜産を適切に伸長して参ることは、まさに重点的な国策の一つでありますので、今後の家畜の
改良増殖を計画的、能率的に行なうための国の目標を重要な事項について定めますとともに、
国民一般特に農業者に理解と協力を求めるとともに、
都道府県が
家畜改良増殖計画を立てるときのよりどころにしたいと考えている次第であります。
第一項は
改良増殖目標を定める家畜は、牛、馬、綿羊、ヤギ、豚について定めることといたしまして、その他の家畜につきましては、必要な事態に応じまして政令で追加ができるように規定いたしております。
農林大臣は、
家畜改良増殖目標を定めたときは、これを公表することといたしておりますが、これは、国及び
都道府県の関係者のみならず、
種畜業者、家畜の飼養者である
農業者等、広く関係者に周知徹底をはかり、協力を得る必要があるためでございます。
なお、
家畜改良増殖目標を定める時期及び
目標期間につきましては、政令で定めることといたしておりますが、たとえば五年ごとに十カ年先までの目標というように家畜の性質、
畜産技術等を考え、かなり長期的なものとしてこれを立てる所存であります。
第二項は、
家畜改良増殖目標の内容について規定しているのでありますが、
家畜改良増殖目標は、家畜の
種類ごとに畜産物の需要の動向及び
畜産経営の発展の方向に即して
産乳能力、
産肉能力、体型、頭数あるいは耐暑性、
耐寒性等、地域性に応じた家畜の特性等について定めることといたしておるのであります。
第三項におきましては、
家畜改良増殖目標は、かなり長期にわたる家畜の
改良増殖の基本方針を定めるものでありますから、学界、実際家を通じ、民間の有識者の意見を聞いて慎重を期するため、
家畜改良増殖審議会の意見を聞かなければならないことといたしております。
次に、第三条の三は、
都道府県知事の定める
家畜改良増殖計画に関して規定したものであります。すなわち第一項は、
都道府県知事は、
農林大臣の定めた
家畜改良増殖目標の方向に即応して
家畜改良増殖計画を定めることができることとしたものであります。
第二項は、この計画に盛り込むべき必要な事項を定めたものであります。第一は
都道府県としての
家畜改良増殖の目標でありまして、方向としましては、国の目標に即するものであることが必要であると考えますが、その
都道府県の自然的、経済的、社会的な諸事情が加味されるものと考えられます。第二は計画の期間で、国に準じて一応十カ年くらいを考えております。第三
は種雄畜の
配置利用又び更新に関する事項であります。この趣旨は、
都道府県内の
改良増殖を推進する際の基礎となる優良な種雄畜を適正に配置し、有効に利用することにより、家畜の
改良増殖の所期の目的を達成せんとするものであります。
第四は、
都道府県の種畜場、民間の生産家の
施設等種雄畜の
生産施設、
家畜人工授精所、
家畜人工授精を行なう
種畜場等の
家畜人工授精施設、その他
有畜営農指導所、
畜産基地農場、
畜産試験場等の
家畜改良増殖施設の
整備拡充計画に関してであり、第五は産乳または産肉等の
能力検定事業の
実施計画等に関してであり、第六は講習会、
共進会等の開催の方針及び計画等の記載を期待しており、第七は、以上のほか
関係試験研究の計画に基づく
指導計画等についての事項を考えております。
第三項は、
都道府県知事は、
家畜改良増殖計画を定めようとするときは、畜産に関する
専門的知識または経験を有する者の意見を聞かなければならないこととしてありまして、これは、
大学関係者、畜産及び
農業団体の関係者、民間の
ブリーダー等が加わることを期待しているのであります。
第四項は、
家畜改良増殖計画は、国の場合と同様、広く関係者の理解とこれに基づく協力を期待しているものでありますので、その公表について規定しているのであります。
次に、第三条の四につきましては、
都道府県知事の定めた
家畜改良増殖計画の実施に必要な国の援助について規定しているのでありまして、
都道府県に対してましては、国の所有する種畜の譲与、無償貸付または時価よりも低い対価による譲渡もしくは貸付、種畜の購入に要する経費の補助、乳牛及び豚について行なう
能力検定事業の実施に要する経費の補助、
畜産研修施設の設置及び
講習会開催に要する経費の補助等の
助成措置を講ずる所存であります。
次に、第三条の五につきましては、種畜に等級を付する場合、
家畜人工授精所に愛着する種畜の規格を定める場合には、
農林大臣または
都道府県知事は、
家畜改良増殖目標または
家畜改良増殖計画の趣旨に沿ってその達成に資するものとなるように努めること、並びに、その他
家畜登録事業、
家畜改良増殖審議会等に関する各条項を運用するにあたっても、
改良増殖目標または
改良増殖計画の達成に資するよう努むべきことを規定しているものであります。
次に、第二章の種畜及び第三章の
家畜人工授精の規定の整備であります。
これは、近年
家畜人工授精技術が著しく進歩し、たとえば精液の凍結保存法のごとく精液を長期にわたって保存した後も、なお授精能力を保存せしめることも可能となり、わが国においてもこれが実用化の機運にありますが、昭和二十五年現行法を制定した当時は、このような技術は想定されておらず、結果的には
凍結精液の利用をはばむこととなるような規定がありますので、これを整備いたしたのであります。
すなわち、第一に、この法律で
家畜人工授精とは、牛、馬、綿羊、ヤギまたは豚の雄から精液を採取し、処理し及び雌に注入することをいうのでありますが、他方、第四条第一項の規定により、家畜の雄は、
農林大臣が毎年定期に行なう検査を受け、種畜証明書の交付を受けているものでなければ種付(
家畜人工授精を含む。)の用に供してはならないことになっております。すなわち、種畜でないものは、精液の採取の用に供してはならないことはもちろん、その精液を処理することも、雌へ注入することも禁止されることになりますので、種畜から採取した精液を凍結法等によって長期保存した場合、その種畜の死亡または廃用後その精液を雌に注入することは、すでに種畜でなくなっているものの精液を注入することになり、第四条第一項の規定に違反することになります。
そこで、第四条第一項中「種付(
家畜人工授精を含む。)」を、「種付け又は
家畜人工授精の用に供する精液の採取」に改めるとともに、第五条及び第九条の規定を同様な趣旨で改め、精液採取時に種畜であれば、精液注入時にはその種畜がすでに死亡、廃用等になっていても、その注入は違法ではないことを明らかにし、
凍結精液の利用が円滑に行なわれることを期したものであります。
第二、
凍結精液等貯蔵精液を利用する場合には、雌畜に注入するときまでにかなりの時日を経過することもあり、また精液が幾人かの手を渡ることがありますので、現行の第九条第四項の種畜の飼養者は、その
家畜人工授精用精液の注入を受ける雌の飼養者に対して精液採取証明書を交付しなければならないという規定は、種畜飼養者に、過重な義務を課することとなります。
したがいまして、第九条第四項から「精液採取証明書」を削ることといたしましたが、この点が改められましても、別に
家畜人工授精師が精液証明書、授精証明書を発行することになっておりますので、人工授精用精液の注入を受けた雌の飼養者に対する精液採取証明書の交付を種畜の飼養者に義務づけなくとも、
家畜人工授精の利用に支障はないものと思われます。ただし、家畜人工採精師が、
家畜人工授精用精液を採取し、検査した後その場で雌の家畜に注入する場合のことを考え、その注入を受けた雌の家畜の所有者から精液の採取に関する証明書を要求されたときは、
家畜人工授精師は、正当な理由がなければ拒んではならないことを第十三条第四項として規定した次第であります。
第三章の二は、
家畜登録事業に関する規定であります。
家畜登録事業は、その運営よろしきを得れば、不良形質の淘汰、優良家畜の作出等に役立ち、家畜の改良にきわめて大きな役割を果たすものでありますので、これが今後の畜産の向かうべき方向に即して公正に運営されることを確保するために規制を加えることとしたのであります。
第三十二条の二の第一項におきまして、
家畜登録事業を行なおうとする者は、登録事業の実施に関する規程(「
登録規程」という。)を定めて
農林大臣の承認を受けなければならないものといたしました。
第二項は、
登録規程において定めなければならない事項を掲げてあります。第一は登録する家畜の種類であります。第二は登録の種類及び方法でありますが、これは、登録にどのような段階を設け、いかなる方向で登録するかは、改良を能率的に進める上に重要でありますので、これらについて記載せしめることとしたのであります。第三は、審査の基準に関する事項であります。第一項でも触れておりますように、登録は、家畜を一定の基準で審査いたしまして、その判定に基づいて行なうものでありますので、その基準が
家畜改良増殖の向かうべき方向に即し、適切なものでなければなりません。第四は、登録手数料であります。登録事業は、主として手数料収入によって運営されておりますが、他面、手数料が高過ぎる場合には、家畜飼養者に過重な負担を課することとなりますので、これが適切な水準に定められる必要があるので、ここに掲げたのであります。第五は、
家畜登録簿に関する事項であります。
家畜登録簿は、
家畜登録の締めくくりであり、また基礎であるのみならず、家畜を交配し、あるいは導入する際の重要な資料であるので、これは適確に作成され、容易に利用できるものでなければならないと存ずる次第であります。
第三項は、
登録規程を変更する場合にも
農林大臣の承認を受けなければならない旨を定めております。
第四項は、
登録規程の承認及びその変更の承認の基準に関する規定であります。
家畜登録事業は、今後の
家畜改良増殖の方向に沿い、公正に運営されなければなりませんが、反面、登録団体の自主性を尊重する必要がありますので、その
登録規程が
家畜改良増殖目標に即するものと認められない場合及び
家畜登録事業の公正な運営を行なうのに適切でない場合を除き、承認することといたしました。
第五項は、
家畜登録事業の廃止の場合の届け出に関する規定であります。
家畜登録事業を廃止しようとする場合、それまでの登録簿、その他の関係資料の散逸を防止する必要があるため、あらかじめ
農林大臣にその旨届け出なければならないことといたしました。
次に第三十二条の三は、
家畜登録事業の公正な運営を確保するための国の援助について規定しております。
第三十二条の四は、業務規程違反の場合の必要措置命令に関する規定であります。
第三十二条の五は、法令違反の場合の
家畜登録機関に対する業務の停止命令に関する規定であります。
第二項は、
農林大臣が
家畜登録機関に対し業務の停止命令を行なう場合、これを公正に行なうための相当な予告期間を置くこととするとともに、処分にかかる者が意見を述べる等の機会を与えるための措置等、聴聞に関する措置を規定したものであります。
第三章の三は、
家畜改良増殖審議会に関する規定であります。
家畜改良増殖目標を定め、また家畜の
改良増殖に関する重要施策の企画、遂行にあたっては、広く学識経験者の意見を聞くことが適切であると考えまして、この審議会を設けることといたしたのであります。
まず第三十二条の六から第三十二条の九までにおきまして、その設置、権限、組織及び会長について規定いたしております。
第三十二条の十は、部会の規定でありますが、これは、家畜の
種類ごとにその
改良増殖技術は分化している面が少なくなく、また
改良増殖上の問題点も家畜の
種類ごとに異なる面がありますので、部会を設けることができることといたしております。
次に第三十四条に一項を加えましたが、これは、さきに述べました
家畜登録事業の公正な運営をはかるため、
農林大臣の報告徴収権に関して規定したものであります。
第五章の罰則のうち第三十八条及び第四十条の規定を改めましたが、これは、新たにこの法律に
家畜登録事業に関する規定等が加わったことに伴い所要の規定を加えたものであります。
最後に附則におきましては、第一にこの法律の施行日を公布の日から九十日以内で政令で定める日といたしました。
附則第二項から第四項までの規定は、現在
家畜登録事業を行なっている者は、この改正法が施行されてから一年以内にその登録に関する規程につき
農林大臣の承認を得なければならないものとする等の
経過措置を定めたものであります。
附則第五項は、
家畜改良増殖審議会の設置に伴う農林省設置法の改正に関する規定であります。
以上が、
家畜改良増殖法の一部を改正する法律案の概要でございます。