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1961-10-17 第39回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十七日(火曜日)    午前十時四十一分開会    ——————————   委員異動 十月六日委員増原恵吉辞任につき、 その補欠として大川光三君を議長にお いて指名した。 十月九日委員大川光三辞任につき、 その補欠として西田隆男君を議長にお いて指名した。 十月十三日委員千葉千代世辞任につ き、その補欠として加瀬完君を議長に おいて指名した。    ——————————  出席者は左の通り。    理 事            小林 武治君            西田 信一君            秋山 長造君    委 員            小柳 牧衞君            西郷吉之助君            津島 壽一君            鍋島 直紹君            加瀬  完君            松永 忠二君            中尾 辰義君            杉山 昌作君   国務大臣    自 治 大 臣 安井  謙君   政府委員    自治政務次官  大上  司君    自治大臣官房長 柴田  護君    自治省行政局長 藤井 貞夫君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    警察庁警備局警    備第二課長   倉井  潔君    水産庁漁政部漁    業調整課長   木戸 四夫君    ——————————   本日の会議に付した案件災害対策基本法案内閣送付、予備  審査) ○地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○地方行政の改革に関する調査(災害  に関する件)    ——————————
  2. 西田信一

    理事西田信一君) ただいまから委員会を開会いたします。  小幡委員長が所用のため欠席されましたので、私が委員長の職務を代行することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。  初めに委員異動について御報告いたします。  十月六日付をもって委員増原恵吉君が辞任され、その補欠として大川光三君が委員に選任され、十月九日付をもって委員大川光三君が辞任され、その補欠として西田隆男君が委員に選任され、十月十三日付をもって委員千葉千代世君が辞任され、その補欠として加瀬完君が委員に選任されました。    ——————————
  3. 西田信一

    理事西田信一君) まず、災害対策基本法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。
  4. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ただいま議題となりました災害対策基本法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  わが国は世界に例を見ない災害国でありまして、連年各種災害が頻発し、甚大な被害を繰り返してきているのであります。これを克服することは、国をあげての最も重要な問題の一つであると言わなければなりません。したがいまして、この頻発する災害に対し、これを未然に予防し、災害に臨んでは警戒、防御、応急救助等の策を講じて被害を防止し、またはこれを最小限度にとどめ、また不幸にして被害発生したときは、そのすみやかな復興をはかり、民生を安定するために必要なあらゆる施策を適切に講ずることはきわめて緊要なことであります。  現在災害対策については、行政上または財政上の個々の制度はかなり整備されておりますが、その相互の間に、総合性計画性が必ずしも十分でなく、また、その実施は、政府行政機関都道府県市町村各種公共機関等、あげて有機的な連絡協調を保って行なわなければならないのでありますが、この点においても欠けるところなしとしなかったのでありまして、かねて総合的な災害対策基本体制を確立する必要性が痛感されていたところであります。  昭和三十四年九月に発生した伊勢湾台風は、死者四千七百人、負傷者約四万人に上り、その物的損害額は数千億円に達する甚大な被害を惹起したのでありまして、行政審議会の答申においても、総合的な防災体制を確立することの急務なる旨が強調されているのであります。  これにかんがみ、災害対策に関する基本的立法について検討を進め、成案を得て前国会に提案したのでありますが、成立を見るに至らなかったものであります。その後も災害が繰り返されておるのでありまして、そのすみやかな成立を念願して再度提案し御審議を願うことにいたしたのであります。  この法律案におきまして、特に留意いたした点は、次のとおりであります。  第一は、災害対策総合化であります。  現行災害対策関係法規を総合的体系的に位置づけ、それらに基づく活動組織化し、計画化することは最も緊要なことと存じます。特に災害対策に関して、政府地方公共団体公共機関及び住民それぞれの責任分野を明確にするとともに、その総合的な協力と迅速適切な計画的活動を確保するだめに、中央及び地方防災会議を設け、なお、災害に際しては災害対策本部を設けることとしたのであります。  第二は、災害対策計画化であります。  災害発生を予防し、または不幸にして災害発生を見た場合にはその被害をできる限り軽減するためには、平常から周到な計画を立て、関係機関の緊密な連絡調整をはかり、必要な諸般の準備を整えるとともに、訓練実施し、適時適切な応急対策を講ずることができる体制を備えておくことが必要と考えられます。そこで、中央及び地方関係機関防災計画の作成を義務づけ、これに基づいて計画的に災害対策実施することとしたのであります。  第三は、災害対策緊急性にかんがみ、特に災害が国の経済及び社会秩序維持に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合に対処する体制を確立することであります。  この法律案は、これらの諸点を考慮しつつ、中央における総合的な基本計画を基礎にして、それぞれの地域の実情に即して、都道府県及び市町村を中心として関係機関相互に協力し、国の総力をあげて災害に対処する体制整備することに特に意を用いたのであります。  以下法律案の主要な事項について概略を御説明申し上げます。  第一に、総則におきましては、国、都道府県市町村指定公共機関住民等防災に関する責務を掲げるとともに、国及び地方公共団体が特に配慮すべき重点事項を掲げ、この法律災害対策に関する他の法律との関係等を明らかにしたのであります。  第二は、防災に関する組織として、総理府中央防災会議都道府県都道府県防災会議市町村市町村防災会議を設けることとするとともに、災害発生した場合には、都道府県市町村災害対策本部総理府非常災害対策本部を設けることができるものとし、なお災害時における職員の派遣制度について規定したのであります。  第三は、防災計画でありまして、中央防災会議防災基本計画、各省庁等防災業務計画都道府県防災会議市町村防災会議等地域防災計画を作成しなければならないものとし、防災計画には、現行の消防、水防、災害救助のほか、災害対策として必要な事項を総合的に規定し、災害対策総合調整とその計画化をはかることとしているのであります。  第四は、災害予防でありまして、防災準備態勢に意を用い、防災に関する組織整備訓練物資の備蓄、施設設備整備点検等義務規定しているのであります。  第五は、災害応急対策であります。現在災害救助法による災害救助制度整備されておりますが、災害時の応急対策としては救助だけでは十分でありませんので、情報、警報、避難、交通の規制、漂流物の処理、応急の教育その他必要と認められる措置について必要な規定整備し、現行各種災害応急対策に関する制度を総合補完することとした次第であります。  第六は、災害復旧でありますが、災害復旧事業実施責任を定めるとともに、将来再び災害発生することを防止するため、災害復旧事業費決定にあたっては、これにあわせて施行すべき災害関連事業あるいは改良復旧事業が円滑に実施されるように、十分の配慮をしなければならないこととしたのであります。  第七は、災害に対処する財政金融措置であります。  災害予防災害応急対策及び災害復旧事業に要する費用の負担区分を明確にするとともに、災害に対処するため必要な財政上の措置等について規定することとしたのであります。なお、著しく激甚な災害発生したときは当該地方公共団体経費負担の適正をはかり、被災者災害復興の意欲を振作するため必要な施策を講ずるものとし、これがため別に法律を制定することとするが、これは、できる限り災害発生のつど制定することを避け統一的な法律を制定しておくものとし、その立法上の基準を定めることにしたのであります。  第八は、災害緊急事態に対処するための特別措置であります。  国の経済及び社会秩序維持に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚な非常災害発生した場合においては、内閣総理大臣は、災害緊急事態の布告を発し、緊急災害対策本部を設置することができるものとし、なお、緊急の必要がある場合において、国会が閉会中で、臨時会を召集するいとまがない等のときは、特に政令で一定の緊急措置を講ずることができることとしたのであります。すなわち、一、物資の配給、譲渡引き渡しの制限または禁止 二、賃金及び価格等最高額決定 三、金銭債務支払い延期及び権利保存期間の延長について、政令緊急措置を講ずることができるものとし、現行憲法範囲内において必要最少限度措置を講じ、もって公共の福祉の確保に遺憾なからしめることとしたのであります。  以上が、この法律案を提案いたします理由及び法律案内容概要でございます。  この法律案につきましては、その運用の実際に徴して今後さらに整備充実をはかってゆくべき点は少なくないと存じておりますが、この法律案により災害対策に関する基本的体制整備され、わが国災害対策が強力に推進されることになるものと存じております。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  5. 西田信一

    理事西田信一君) 本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。    ——————————
  6. 西田信一

    理事西田信一君) 次に、地方自治法の一部を改正する法律案(閣法第四〇号)を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 地方自治法の一部を改正するこのたびの法律案内容は、主として、御説明にありますように、四点でございますか。
  8. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 主として、御説明申し上げておる四点でございます。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 そのうちの公有水面上のいろいろの境界紛争資料が出ておりまして、こういう境界紛争をなくするというのが一つのねらいでありますけれども、この資料に出ております中で、知事裁定といいますか、仲裁といいますか、そういう方法によって解決されている何件かがありますけれども、自治体運営そのものから見れば、必ずしも満足すべき境界線が引かれておるという事例ばかりはないように思われるのであります。この点はどうでしょう。
  10. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 見方にもよると思いますけれども、何分にも非常に紛糾の結果、知事が中に入って取りまとめをやる、裁定をやるということでございますので、案件につきましては、客観的に見て非常に合理的なものというわけには参らないものも中にはあるのじゃないかと思います。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 このたびは、法案によりますと、埋め立て竣功前に所属決定するというのですけれども、紛争中はなかなか埋め立て竣工前に決定するといっても、具体的な事案になりますと、現状とあまり変わりがないことになるのじゃないかという心配が残るわけです。と申しますのは、埋め立ては全然一方的に進められる、しかし、両市町村の間で対立がありますときに、知事がこの法律案のように決定するといっても、対立をそのままにしておいた形で一つ裁定案を出したって、今の社会情勢ではなかなかそれぞれ譲らず、陳情その他攻め手が押し寄せて参りまして、知事としては決定しかねるということにおそらくなるのじゃないか。だから、こういう法律ができたとしても、現状解決の時間的遅速というものは、あまり変わりがないじゃないかというふうに思われますけれども、この点はどうでしょう。
  12. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 確かに御指摘のようなことはあり得ると思います。今度の改正案成立をいたしましたといたしましても、右から左にすべてのものの紛争がきれいさっぱりに解決を見ていくということには、おそらくは事柄の性質上なりにくいというものも多いと思うのであります。ただ、現在紛争でもって、未解決になっておりますものは、全国七件あるわけでございますけれども、問題はこの未解決案件をどうしていくかということと、それから今後、御承知のとおりに、市町村境界にまたがるような埋め立てということがだんだんふえて参るということが予想せられるのであります。そういう場合に、今のままでございますと、また、みすみす紛争事案というものを多くしていく、それがなかなか解決しないままで放置されていくという事態がふえてくるということが想像されるわけでございます。そこで、それらについて、未然に防止をするために、まず公有水面の間、まだ土地ができていないその間において、境界確定をまずいたしておくということになりますると、問題の解決はよほどはっきりとして参るのではないかという点がございます。それと現在紛争中のものにつきましても、附則に規定を入れまして、これらについても、今度の新しい方式でもって解決をはかっていくという道を開いているのでありまして、現行法で参りますと、すべて当該市町村のほうから申請が出て参りませんことには、所属未定地編入処分ができないという建前になっておりますので、これは事実上、みんなが納得をしない限りは、申請を持ってこないということで、問題の解決がはかられません。そこで、この場合に限っては、知事に一種の指導権を与えまして、知事のほうから市町村に話しかけて、その場において同意を得て、問題の解決に資していくという道を開いておりまするので、今までよりも、よほど解決が円滑に参るのではないかというふうに考えている次第でございます。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 たとえば、町村合併が行なわれましてから、もう相当の期間がたつわけでございますけれども、しかも自治省指導、あるいはこれが内閣まで持ち込まれまして、内閣決定線というものまで出た境界変更もありますけれども、いまだどういう決定線が行なわれても、町村合併紛争はそのまま残っているという地域も幾つかあると思うのであります。法律がどんなに作られても、住民の合意というものがなければ、やはり紛争というものは、知事が引いた線あるいは国が引いた線だけでは、きまりのつかない問題が残るのじゃないか。この公有水面も、公有水面埋め立て計画が全然ないところに、やたらに線を引くということは、おそらくあり得ないと思う。埋め立て計画があって、将来紛争が予想されるような場合、この紛争を防ぐために、まず線を引くという形をとるのじゃないかと思うのです。で、埋め立て計画があるということは、すなわち、境界のもう争奪が始まっている、紛争に発展する事案に対しては、当然そういうことが予想されるし、そういう事実の進展になると思う。でありますとすれば、やはりこの法律をきめたって、あまり変わりがないのじゃないか。たとえば、線を引いたって、どうしてもその境界線に従わなければならないという法律上の義務はあるかもしらぬけれども、別に罰則はないわけです。町村合併紛争と同じように、やたらに境界外地域の学校に子供を通わしたりすると同じように、なかなか、固定資産税のかけ方とかなんとかいうことでも、一応はっきりする形にはなるけれども、紛争は繰り返されるのじゃないか。あるいは建物のまん中に境界線が引かれるというような形になりかねませんし、どうも現状とあまり変わりがないのじゃないかと思うのですが、この点、どうですか。
  14. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 今度の規定改正が、万能薬であるというふうには私たちも考えておりません。いかに法律的な措置確定をいたしましても、いろいろの問題が事実上残っていくということは、今お話にもございました町村合併その他の経験に徴しても事実あることで、そういう点につきましては、やはり住民について十分納得をしてもらうとか、趣旨をよく説明をするとか、そういうような一面におけるPR運動というものを強化してやって参るという行政措置というものもあわせて講じなければ万全の効果というものは期待ができない、この点は御指摘のとおりだろうと思います。ただ現在紛争を繰り返しておりまして、まあそういうところでは区画がわからないために、選挙権行政なり、あるいは課税権の客体なりという点が明確でないということから、社会経済上きわめて遺憾な事態が継続をいたしておるわけでありまして、それがいつまでたっても解決をしないということでも困るわけでありますので、その点やはり一歩を進める措置といたしまして、今度の改正案を考えたわけであります。なお今後新しく埋め立て等が起こって参ります際には、埋め立てができるという事態になりましたときにまた紛争を新しくするというのではなくて、あらかじめ公有水面のみについて境界というものをはっきりしておくということが、今までよりもやはり事態解決に一歩前進になるのではないかというふうに考えたわけでございまして、お話のように今度の改正規定というものが万能薬というふうには思っておりませんですが、現状よりもやはり相当目立った前進が遂げられるのではないかと、かように考えておるのであります。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 私は、こういう法律の前に自治体としては考えておかなければならない前提の条件があるのではないかと思うのです。たとえば、それぞれの公有水面には漁区がありますね、あるいは大きくいえば雑魚をとるとか、あるいはノリつけをするとか、東京湾でいえばそういった漁業権があります。こういう既存生活権といいますか、こういうものをどう考慮するかということが十二分に自治体においては考えられておらないのじゃないか。たとえば公有水面でありますけれども、他町村地先に別の町村漁業権なり、あるいは入漁権なりというものを持っておるところがありますね。これは長い間の伝統でありますから、ちょうど農地雑地あるいは採草地なんかの入会権みたいな観念がありまして、これは自分たちのほうのところだと主張しますね。しかし、農地飛び地というものを、町村外飛び地というものをなるべく少なくしようという傾向があるくらいでありますから、境界線を引くときに、そこに飛び地を認めるということはおそらくできかねるのじゃないか、しかしながら、既存権利というものは別の町村住民が持っておる、こういう問題をどうするかということを先にきめなければ、なかなか線を引いても紛争をかえって求めるということになるのじゃないか、こういう点がまあ私たちの回りの県あるいは関係市町村埋立地においてはあまり考慮が払われておらない、そのために紛争あとから蒸し返されるという傾向がありますが、この点は自治省はどのようにお考えになり、また指導をなさっておられますか。
  16. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 境界決定をする、あるいは調停に入って話し合いをしていくという場合に、ただ単に昔の文献とか、あるいは客観的な地理的な条件ということだけにとらわれまして、今お話しになりましたような漁業権所在、存在とか、その範囲とかいうようなものに全く関心を払わないというようなことでは、今お話しになりましたような紛争が非常に起きる。また、これは理論的にどんなに筋が通っているようなことでありましても、既存権利というようなものを不当に侵害するような事態が起きて参りますとそこに問題が起きてくることは、これはそのとおりであります。事例が今までもたくさんあるようにわれわれも承知をいたしておるのであります。したがいまして、境界決定をするというような場合におきましても、単なる地理的な条件とそういうようなものだけでなくて、今のお話しになりました漁業権の存在なり、その範囲なりということも十分に加味して、これを決定の要素の中に加えていくということが特別に必要ではないかというふうに考えておるのであります。そういう点、今までも機会のありまする節には、そういう趣旨のことを申してきておるのでございまするが、今回の新しい措置が講じられるということになりますれば、運用上の心がまえなり方針といたしまして、今の漁業権所在というような点についても十分配慮をして、むやみに権利を侵害するようなことになり、あるいはことさらに漁業権を他市町村境界に取り残していくというようなことになって、問題をあとに尾を引かせるというようなことをなるべく避けるような指導をひとつわれわれとしても行なって参りたい、かように考えておる次第であります。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 水産庁はいらしておりましょうか。——まだ参らないようですから参りましたら聞くのでありますが、さらに自治省にこの埋め立て問題について次の点の御見解を承りたい。埋め立て補償権利補償なのか、権利補償といいますか、漁業権ならば漁業権というものの法律上存在している権利に対する補償だけでよろしいのか、それとも広く生活権補償するという立場をとるように御指導なさっておられるのか。ただいまのお話ですと、後者のようにも聞こえるのですけれども、現実に行なわれております地方自治体のやり方は前者、この点の御見解を承りたい。
  18. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 漁業権補償の問題につきましては、古い法律でございますと権利補償する、こういうことになっているわけでございます。現に公有水面埋立法等につきましては漁業権について補償する、こういうことになっておりますが、最近の立法例によりますと、たとえば電源開発の場合とか、あるいは自衛隊の場合とか駐留軍の場合、こういう場合がいろいろあるわけでございまして、そういう場合には、適法に漁業を営んでいる者につきましては、すべて補償する、こういう建前になっております。具体的に申し上げますと、現在基準として設けられておりますのは、電源開発方式と称する閣議了解補償基準があるわけでございますが、これによりますと漁業権漁業許可漁業、それから自由漁業があるわけでございますが、それがすべて補償される、こういうことになっております。それからもう一つ建設省で行なっております公共事業があるわけでございますが、それも訓令に基づきまして基準が書いてあるわけでございますが、漁業権漁業のみならず、許可漁業につきましても補償する、こういうことになっております。それでいかなる方式をとるかにつきましては、両者がそれぞれ話し合ってその補償基準方式をきめる、こういうことになっておりますが、一般的には電源開発方式がとられておるようでございます。したがって、最近の傾向といたしましては、単に権利補償ということでなくて、生業補償という形をとっておるのが大部分でございます。したがって、その算式の方法につきましても、総経費から、電源開発方式でございますと、自家労賃を除いた経費を差し引くわけです。要するに人件費自家労賃を足したものだけを残すわけです。それを資本還元いたしまして、その八掛について補償する、こういうような形がとられておるわけでございます。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、具体的に例をあげまして伺いますけれども、漁業権をもってノリさくを立てて、これを生業としている人たちは、当然これは漁業権によって補償をされております。ところが、漁業組合の認可といいますか、許可といいますか、話し合って漁業組合には入っておらないけれども、拾いノリとか、あるいは雑魚とか、こういうことで生計を立てている人たちもあります。これは漁業権はありません。しかし、今のお話ですと、生業としては間違いないわけでありますから、その人たち雑魚組合と呼んでおりますが、こういう雑魚組合人たちにも、当然生業補償という形で、補償が行なわれなければならないと解釈してよろしいですね。
  20. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 一般に先ほど申しましたように、どういう補償方式をとるかということを両者の話し合いできめる、こういうことになっておりますので、かりに電源開発方式をとるような場合には、そういうことになるわけでございます。したがって、具体的に起業者側と漁業協同組合だけで話をすれば、それに入っていない方は補償交渉の際に対象にならなかったという面があるかもしれませんけれども、かりに電源開発方式をとっているような場合には、補償しているのが通例のようでございます。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 今まではそういう関係があまり補償されておらないじゃありませんか。特に東京湾の内湾埋め立て、それから湖沼などの埋め立てなどについては、たとえば湖沼などにいたしますと、ここで内湾漁業権、湖沼の漁業権を持っておる者は当然これは補償されます。しかし、その漁業権を持っておる人が漁獲したものを販売して生計を立てておるような人たちは、漁獲がなくなるわけですから、生活そのものはやはり漁業権の所有者と同じように、これは消滅をするわけですが、こういうものは全然補償の対象にはなっておりません。たとえば仲買いとか問屋とか、あるいはその地域だけでその鮮魚を扱っておる人というものは、ほとんど補償の対象にはなっておりません。東京湾の千葉県における埋め立てなどにいたしましても、漁業権を持っておる者は今まで補償されましたけれども、漁業権を持っておらない、しかし、実質的に漁業で生計を立てておる人たちは、これは補償の外に置かれております。こういう形は正しくないといいますか、電源開発方式なり、建設省の方式なりをとれば、そういう今までワクの外に置かれた人たちも交渉して、生業補償という形で金額の多寡は別として、一応補償の対象にはなり得るということになりますね。
  22. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 生業をしておりましたと、こう申し上げましたのは、漁業を営んでいる、こういうことを申し上げたわけでございまして、漁獲された水産物なり、そういうものを販売している人は、その補償の対象になっていないようでございます。これはやはりどこまで補償するかということで、非常にむずかしい問題だと思いますけれども、現在各地で行なわれている補償事例等を見ますと、やはり直接漁業を営んでおって、その一定の条件によって直接その漁場が使用できないということになる人だけが対象になっているようでございます。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 雑魚を取ったり、拾いノリをしたりして生活を立てておりますのは、これはワクの中に完全に入りますね。
  24. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) そのことによって相当程度生活が依存していればやはり入ると思います。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 相当程度というのは、どういうことですか。兼業農家とか、兼業漁業者というものは、統計の上でも出てくるわけですから、兼業だってこれは差しつかえないわけでしょう。生活の一部分をそれによってまかなっているという事実があれば、まかなっている額に従って何%という補償が当然成り立つわけでしょう。
  26. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 相当程度と申し上げまして誤解があったかと思いますけれども、極端に申し上げますれば、一回か二回その拾いノリをしたというような場合には、まあどこまで補償するかということを勘案いたしまして、あるいはほんのわずか取っていたという場合には、補償交渉の技術的な面とも関連して補償されないという場合が出てくると思いますが、相当程度——一年のうちに三十日とか、四十日とか、そういう相当程度漁業に依存して、それで生活をしている、こういうことであれば、通例補償の対象になっているようです。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 拾いノリとか、雑魚を取る権利漁業組合から、幾らか金を納めて、まあ許可をしてもらった形にして、そういう生業を営む者たち雑魚組合というものを作って、それで生活の何分の一かをささえている、こういう形態であれば、これは相当といううちに当然入りますね。
  28. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 実態的な関係がよくわかりませんので、的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、漁業権漁業の場合では、賃貸をすることが禁止されておりますので、組合に入ってない人が漁業権漁業を行なうということはできないことになっているわけでございます。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 そうじゃない。それはわかる。しかし、実質的には漁業組合に入っておらないけれども、漁業組合と同じように漁業に従事しているので、漁業組合にその許可権というか、認可料というか、そういう金を一応納めて、それで毎日、ノリさくは持っておらないけれども、拾いノリとか、あるいは雑魚を取るとか、こういう漁業に従事している、こういう形態なんです。ですから問題は、私の伺いたいのは、契約があるから、ないからということではなくて、それほどのことをして漁業権者と同じように漁業生業としている者たちは、当然これは補償対象に入るだろう、こういうことです。
  30. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 電源開発方式でも、適法に漁業を営んでいる、こういうことになっておりますので、漁業権の外で自由漁業として営んでいるような場合には、まさに適法に営んでいるわけでございますが、共同漁業権の中で組合員が行なうということは、委員会等の指示があった場合を除いて、できないことになっておりますので、そういう法律に違反するような形態で漁業をやっている者が補償の対象になるとは言えないのじゃないかと思います。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 あなたはさっき電源開発方式として、当然その漁業権を持ってその権利によって漁業を営んでおるのと、それから許可によってやっておる者、自由漁業者と、こう言いましたね。自由漁業者の中には入らないのですか、今のは。
  32. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 漁業の種類には、漁業権漁業許可漁業自由漁業とあるわけでございますが、漁業権漁業は、一定の区域を指定いたしまして、共同漁業権の第一種共同漁業権であれば協同組合員だけやることになっておるわけでございます。それからちょっと沖合いにつきましては、普通許可漁業となっておるわけでございまして、資源上なり漁業調整上なり問題のあるものについては許可漁業、しかし、資源上もあるいは漁業調整上も問題のない漁業については自由漁業になっておるわけでございまして、その場合の自由漁業は、一般的は申しますと共同漁業権の外にあるわけでございます。そういう共同漁業権の区域外の自由漁業をやっておる場合には、これは補償の対象になるわけでございます。したがいまして、共同漁業権の中で自由漁業というのはあまり事例はないのではないかと思います。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 その漁業権というのが成立して漁業権者でなければ漁業を営むことができないということになりましたのはごく最近ですね。しかし、このいわゆる雑魚組合と称する漁業権者以外の漁業者は、漁業権などの新しい法律のできる前から実質的には漁業に従事しておった人たちなんです。ですから漁業組合ができましても、漁業組合に入らないにしても、一応その制限された漁業に従事することは、これは暗黙のうちに認めておった。それによって生活を現実的に営んでおるわけです。こういう慣行が何十年もあったわけです。たとえば、漁業権というものが法律的には明確にならなくても、明治でもその前でも、村の何軒かの中でこのノリつけはわれわれの部落でやるのだというようにきめて、それが一つの権になっておったわけです。そこへ部落へ新しい人が入ってきたり、あるいはその部落の中から次男なり三男が分家しても、それはそのまま漁業権というものを得させるような形はどこでもとっておらない。そこで、そういう人たちは実質的な漁業権の外で拾いノリをしたり、雑魚を取ったりするという形態がどこの地域にもあります。それは暗黙のうちにその権利者が認めておったわけです。生活を漁業によって立てておることには変わりはない。ところが、今問題になっておるような埋め立てのときになりますと、これは漁業権を持っておりませんから、補償のワクからはずされる。しかし、生活権というものを奪われることには変わりはない。しかも、これはほとんどが零細漁民です。埋め立てによって発展するかもしれぬけれども、その地域の何%かというものは全然無補償で生活を奪われる、こういう事態をこのまま放置しておいていいかどうか、こういう社会問題が東京湾の沿岸には所々に起こっておる。境界線をどこできめるかということも大事だけれども、境界線をきめる以上に、今まで生活をしておったところの住民生業を奪っちゃって知らぬ振りをするというようなことで一体よろしいのかどうか。こういう前提をもっと関係官庁は救済をしてくれなければ困るであろう、こういう立場で私はお伺いをしておるわけです。これを、金額はとにかく、救済の対象にする、あるいは補償の対象にするということは法律上不可能ですか。
  34. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 実態がよくわかりませんので的確なお答えができないのでまことに恐縮でございますが、漁業権漁業につきましては、明治以来漁業法になりまして、やはり明治時代におきましては専用漁業権制度というのがありまして、沖合い三海里ないし四海里のところは全部専用漁業権として地先漁業、当時は漁業会と申しましたが、漁業会で使用したわけでございます。それが昭和二十五年に漁業制度の改革がありまして、その専用漁業権がウキをはずされた形で共同漁業権ということに変わったわけでございます。したがいまして、現在におきましても、共同漁業権につきましては、やはり協同組合に与える、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、適法に営んでいたものであれば、私たちといたしましても、やはり行政指導の面におきましてはできるだけそういう面に補償をやっていただきたい、かように考えておるわけでございますが、何分にも補償基準ということにつきましては、法律で強制力を持って、この方式でやれと、こういう制度にはなっていないわけでございまして、それぞれ事業官庁なりが定めた基準によってどういう方式でやるか、こういうことをきめているような現状でございますので、法律的に必ずそれを補償しろと、こういうことはできないことになっておるわけでございます。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 最初のあなたの御説明では、権利補償かと言ったら、生業補償だと、こうおっしゃった。もっと具体的に申しますと、A部落ならばA部落の二十七戸ならば二十七戸というものが、A部落の海岸のノリつけ権利というものを持っておった。そこで、その二十七戸は何年間絶対に二十七戸以外に権利者をふやさないですよ。したがいまして、二十七戸のほかに新しく入ってきた人たち、あるいは分家した人たちというのは、これは二十七戸だけがもう伝承的に権利を持っているわけですから、権利者とはなり得ません。しかし、黙認の形で、さくは作れないけれども、流れてきたノリを拾ったり、雑魚を取ったりするということでやっぱり生計を営んでおった、こういう実態が東京湾の沿岸には所々にありますよ。ですから漁業によって生計を営んでおったことは間違いない。生業として漁業を営んでおったことは間違いない。しかし、自治体漁業権を持ったものだけを補償対象にして補償をいたしますので、こういう生業として漁業を営んでおりながら、正式の権利を持っておらない人たち補償のワクからはずされる。これでは権利補償であって生業補償じゃないじゃないですか。生業補償と言うならば、こういう人たちをも救済しなければ生業補償にならない。電源開発方式か建設省方式かでは、現実に生業として漁業を営んでおるものを救済をするということではないのです。やはり権利を持っておるものでなければだめですか。
  36. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 生業補償と申しましたのは、言葉が足りなかったかと思いますが、適法に漁業を営んでおる、こういう工合に法律に書いてあるわけでございます、電源開発方式では。したがって、自由漁業であれば許可とか漁業権というものは必要ないわけでございますから、それに基づいて自由漁業を営んでいた場合には、補償の対象になると思いますけれども、それが違法の状態で行なわれていたということであれば非常にむずかしい問題じゃないかと思います。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 違法とは言わないと思いますね。適法でないとも言われないと思うのです。書いてある条文にはずれているから違法だということは言われないでしょう。たとえば商法でも慣習法というものがある。相当の権利主張の根拠になるでしょう。ましてや漁業法などというものは新しい法律なんだ。漁業法のできる前から実質的な漁業権なり、あるいはさっきの例のように実質的に生業を営んでおったというこの長い間の慣習というのがある。これを当然の権利として主張されていいわけです。なぜなれば、海が埋め立てられなければ、この人たちはだれに文句も言われないでノリも拾えたし、雑魚を取って生計を営むことができた。埋め立てという事件が起こったから、権利があるとかないとか、補償されるとかされないとかいう問題が起こってきた。しかし、違法と言われますか、これ。海に入ってノリを拾ったり雑魚を取ったりする権利というものはね、全部の人が認めておったのですから、お前、違法だという問題は一回も起こらないのですから、暗黙のうちに慣習としてそういう権利を認めておったのですから、これが漁業権違反だと言われますか。農地の問題だって、たくさんそういうのがあるでしょう。入会権なんというのは一つの慣習でしょう。それが権利として生きているじゃないですか。これを補償しなければ、この人たちはどういうことで補償されるのですか。これを救済していかなければ、何分の一かの漁民というものは、埋め立てられたために犠牲になっても、何ら生活の保障がないということになるでしょう。これは、この慣習というものを生かして、適法だうといふうに解釈をしてやることのほうが、行政的には正しいじゃありませんか。この点どうでしょうか。そう解釈はできないのですか。取っていい権利というものは暗黙のうちにあった、慣習として。これを違法と言われますか。
  38. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 漁業権漁業の場合は、やはりその漁業権を受けた者が漁業する、それで、それを賃貸なりそういうことは禁止をしておるわけでございます。そういう必要がある場合には、法律的な制度といたしまして、入漁権の設定、こういうことがあるわけでございまして、組合間において入漁権を設定した場合には、適法に行使することができる、こういうことに、法律的な制度にはなっておるわけでございます。したがいまして、入漁権が、これは設定行為によって、契約によって設定するわけでございますが、そういう入漁権というのが設定行為によって設定された場合には、それはまさに適法に漁業を営んでいるということになりますので、そういう場合には補償するのが適当だと思いますし、一般に漁業補償の場合には、当該埋め立てになるその海面から水揚げされる総金類からやはり総経費を引いたもの、それを年利回りで資本還元した、こういう形になりますので、内部の分配の問題になろうかと思います。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 あなたそう言うけれどもね、漁業法なんかというのはね、まるでざる法で、非常に矛盾だらけでしょう。たとえば漁業組合というのは、届け出ればこれは認可しないわけにはいかないでしょう。漁業組合というものができたって、漁業権というものは漁業協同組合ができれば自然発生的に生まれるものじゃないでしょう。漁業権のない漁業組合というものも、今の法律ではあり得るでしょう。ですから、たとえばここに一つ漁業組合があります、内紛が起こって、分離して別な漁業組合を作ります。漁業権はもとの組合の漁業権をそのまま使わなければならないといった場合、それで新しい漁業権ができたときに、漁業組合によって漁業権というものがはっきりしたわけです。しかし、漁師ですからね、取っていられればいいだろうという考え方で、この法律のとおりにわれわれもやはり漁業権者としてはっきりした地位を獲得しなければならないという考えで、漁業組合を別に作って共同漁業権か何かを設定する、こういう方法を、法律の専門家やなんかがそろっているわじゃありますまいし、自治体だってそういう指導なんかはしておりませんよ。だから、取ればいいのだということで、漁業権が潜在しておるにもかかわらず、漁業組合を作らなかった。したがって、漁業権をはっきりと設定しなかった、そういう漁師といいますか、漁業従事者というものが相当ありますよ。組合の権利者も漁業によって生活を営むことは認めておって、自分たちも、何もだれはばからず、流れてきたノリを盗むのじゃない。海の中を流れているノリを拾って、泳いでいる魚をつかまえて、それで自分たちは生活を営む権利があると思ってやっている。これが一つの慣習になっている。これを補償の対象にしないということは筋が通らないというのです。現在の漁業法といっても、たくさんの穴があるのです。漁民とか農民というのは法律の専門家じゃないのです。やはり既存の慣行として、生活のよりどころとなっておった権利というものは、やはり尊重してやるという立場をとらなければおかしいのじゃないかと思うのです。自治省、どうですか。こういう問題がありまして、それを自治体として一つも的確に把握もしなければ、指導もしておらないので、紛争が相当起こっている。たとえば、この間、千葉の県庁には東京都の漁民がたくさん押しかけまして、ノリつけを千葉県側の海岸でしておった。それによって彼らは生活を営んでいる。ところが、ノリつけ場所を埋め立てられるわけですから、今度はノリさくによって生業を営むことは、東京都の漁民はできなくなった。ふらちじゃないか、われわれの補償はどうしてくれるという問題が起こってくる。こういうように漁民の実態というものを十分に知って対策を立てないと、これは境界の問題じゃないのです。境界紛争も大事かもしれませんけれども、一体この住民の生活の保障というものはどうしてくれるのです。それらには自治省もあまりはっきりした指導をしておらない。水産庁だって、今言ったように現実的にそういうふうに生業を奪われている者があるのに、何らの補償が出されていなくってもやむを得ないという形ですね。これで一体よろしいのか。境界線をどこに引くなどという問題以上で、住民にとっては生きるか死ぬかの問題です。むしろ旗どころの騒ぎでなくなりますよ。どうですか。この問題は、もっと十分研究して、的確な御指導をなさって下さる御意思がございますか。両省に伺います。
  40. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 境界の問題は境界だけの問題として解決をするものではないということは、御指摘のとおりでございまして、実態的にはやはり紛争の根というものがいろいろあるわけでございますから、そういう根を断つということになりませんと、根本的な事態解決にはならないというふうには考えるのであります。  今の漁業権の存在の問題あるいは埋立地というものができますることに伴っての漁業補償の問題というようなことも、境界線確定ということの、むしろ前提条件といたしまして解決をはかっていかなければならぬというような問題であることは当然だというふうに考えのであります。ただ、漁業補償内容、やり方等につきましては、主管の農林省なり水産庁によっていろいろ御指導に相なっておると思うのでありますが、総合的な観点から、知事なり市町村長なりというものは、行政をやっていかなきゃならぬということは当然のことでございまして、そういう角度から、事柄がただ境界紛争については、境界線の引き方を簡素化すればただ事足れりだというようなことではなくて、やはり実態に即した総合的な見地から行政のやり方を進めていくようにといったような点につきましては、今後ともわれわれのほうといたしましても、指導には万全を期して参りたいと考える次第でございます。
  41. 木戸四夫

    説明員木戸夫君) 実態を調査いたしまして、できるだけわれわれといたしましては、埋め立て等の行われた際には、今後の生活の再建の問題が一番重要な問題でありますので、実態をよく調査した上で、できるだけの御指導を申し上げたい、かように考えております。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 農林省にはよろしくお願いを申し上げまして、私の質問は打ち切ります。  自治省に伺いますが、埋め立ての問題で、しつこいようですけれども、境界線以上に必要なことは生活保障をどうするかという問題です。確かに政府もいろいろ地域の開発計画  基幹都市とか、あるいは産業都市とか広域都市という計画もありますし、あるいは東京都の分散疎開という問題もありますから、内湾埋め立てとか、あるいは海岸の埋め立てという問題は、始終起こってくると思います。その内湾なり海岸、あるいは湖沼なりというものにたよって生活をしておった者が、何ら生活保障の目安がないということでは、これは非常に私は問題が大きいと思います。しかし、今までの埋め立てというものは、ほとんど既存住民に対する生活保障というものが主目的にはなっておりません。これは自治法の精神からいっても、片手落ちだと思うのです。地方自治という形で地方自治体がきめて埋め立てをするのだから、それはそれでいい。しかし、もう一つの柱に住民の福祉を増進するということがある。東京湾埋め立てられて、大会社が来て、三十年、五十年後にはその地域はやがて発展するかもしれませんけれども、現在そこにおる農民や漁民というものは、追い立てを食って生活の道を失うわけです。住民の福祉にはならない。住民の福祉を保障するという線をもっと指導をしていただかなければ、私は埋め立ての線をどこに引くかという問題は問題にならないと思うのです。その点、そのように御留意をいただけますか、将来。
  43. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 地方自治の本旨というようなむずかしいことを申し上げるまでもありませんですが、事柄を進めていくという場合には、そのこと自体がいかに公共の福祉につながっておりましても、反面、それによって犠牲をこうむる者があるというようなことでありますれば、それについての救済方策なり補償方策なりというものを総合的に講じて参りませんことには、全体としてのやはり地方自治の根本方針にのっとった施策であるということは言えない。これは私はお述べになりましたとおりであると思うのであります。そういう点は個々の法律建前その他がございまして、地方団体だけでもってやっていけない部面もございましょう。しかしながら、それらの点については、法律改正を要するものがあれば法律改正措置を講じて参らなければなりませんし、あるいは自治体自身の考え方でもって対処ができるものであれば、そういう点も考慮して口々の行政を行なっていくということが、自治行政の基本的な態度ではあるまいかというふうに考えております。埋め立てによって生じて参ります今御指摘になっておりますような問題というものは、これは重要な事柄でございますので、これらの点につきましては、自治省自体といたしましても、そういうことは別問題だということではなく、やはり関係各省庁間とも今後も十分に連絡を密にいたしまして、総合的な円滑な行政が行なわれるように指導の完璧を期するように努力をして参りたいと思います。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 次の問題に移りますが、協議会制度というのが新しく出されておりますね。公益上必要な場合ということで、自治省が勧告権までも発動して協議会を作らせるという形でありますが、これはやり方によりまして、地方自治体の権限というものを中央統制力で抑えるということにも私はなりかねないと思うのです。自然発生的に市町村がそれぞれの共同の開発計画を持って相談をするという自然の姿にまかせておけばよろしい問題ではありませんか。こうなってくると基幹都市とかあるいは広域都市とか、こういう一つの構想を政府が持って、かつてのように市町村を無理にそのワクの中にはめ込む、今のあなた方にはそういう考え方がなくても、この法律ができれば、そういう動きが行なわれてくると思うのです。省によっては、ありもしない統制力を地方に及ぼして、地方自治権を侵害している省だってあるわけです。そういう危険があると思いますが、その点はどうですか。
  45. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 協議会について、公益上必要のある場合は、勧告等のことができるようにいたしたいと思っておるのでありますが、この点は、本来的にはむろん地方団体が自発的に判断してから他の地方公共団体と協議をして、協議がまとまったところで協議会を作っていくということが第一次的には必要でございます。私たちといたしましては、何もこの勧告権というものをむやみやたらに発動するというような意図は全然持っておりません。ただ利害関係が錯綜をいたしておりまする場合に、ある地方団体だけが横車を押すと申しますか、全体のその地域開発ということに対して、いろいろな利害関係からこれに消極的な態度を示しておる。そのために全体の地域開発が阻害されるというような極端な事例等がございました場合においては、この勧告権をやむなく発動をしていく。最小限度必要な場合にだけにとどめるつもりでおりまして、むやみやたらにこの勧告権を発動するというようなことは考えておりません。また将来の運営等につきましても、今お話しになりましたようなこと、むやみに地方自治体の自治権の侵害に及ぶような運用方針に堕することは、厳に慎んでいきたいと考えております。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 これは中央官庁と地方自治体との関係は、指導、助言、援助——おのおの公益上あるいは地方自治体の発展上、この方法をとらせては弊害があると考えた場合に、勧告というものがある。ですから、現在でも勧告し得る権限があるし、あるいは行政指導で可能なんです。行政指導でできないものを勧告したところで、聞く聞かないは向こうの勝手です。処罰する別に法規というものはない。だから、自然発生的な協議会が作られたり、総合発展の計画が進められるように行政指導をすべきであって、この勧告というものをやたらにひけらかすというやり方は、私は地方自治法の本旨にもはずれると思う。これは意見になりますが、時間も非常にたっておりますから、私はそういう考え方であまりこれには賛成できません。  次の質問に移ります。請負禁止の修正がありますね。この委員会で兼職禁止の問題が出ましたけれども、請負禁止などの問題よりも、兼職禁止のほうがむしろその根本じゃないか。たとえば知事とか市長とか、こういう方々がいろいろの兼職をなさっておる。それは必ずしも自治法の本旨に合うものばかりじゃないものが多い。兼職を禁止すべきだという意見がこの委員会でも非常に強くなりまして、この委員会としては、そういう法律案を作ったかに私は記憶している。この兼職禁止の問題は、今度の改正の場合に、自治省としては問題にならなかったのですか。
  47. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 当委員会で以前から兼職禁止の問題が日程に上っており、また論議の対象にもなっておりまして、法律案作成の段階にまで行ったという事態があったかというふうに私自身も承知をしておるのであります。この問題に対しまして、私たちといたしましても、全然無関心であるわけではございません。ただ兼職禁止ということになりますと、その範囲をどういうふうにしてやってゆくかというような点、あるいは公選にかかる方々につきまして、もしそういうことをやることが憲法その他の関係から申して、どのようなことになってゆくかというような点についても、なお慎重に検討を要する問題が残っているのではないかと思われるのであります。むしろ弊害というような点も確かにある面も絶無ではないと思うのでありますが、それらの点は御本人の良識なり自粛なり、あるいは世論の重圧ということでもって解決をされて参りますることが当面のところ本筋ではないかというふうに考えまして、今回の改正案の中には織り込まなかった次第でございます。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 これ一つでやめますが、国家公務員でも、地方公務員でも、一般職は兼職は禁止されておるでしょう。特別職だって常勤ですよね。なり市長なりというのは特別職であるがゆえに兼職が自由だということはおかしいじゃないですか。選挙の話をしましたけれども、たとえば副知事とか助役とかいうようなのは別に選挙じゃありません。むしろ請負禁止の問題も弊害があるかもしれませんけれども、小林委員が種々指摘したように、数年前に兼職の弊というものが相当あるんじゃないですか。良識を待ったって良識のある者ならやめるはずだけれども、良識があるかないか存じませんが、やめないのだから、それでいろいろな弊害を及ぼしているのだから、兼職禁止というのはもう少し考えるべきじゃないですかね。それを考えないというのはおかしい。これはちょっと問題からはずれますけれども、兼職は中央官庁の国家公務員はやっておりませんけれども、中央官庁の外郭団体で常勤の何々公団とかいったような役員の人でも兼職がずいぶんありますよ。これも非常に片手落ちだと思う。まあそういう考え方が自治省に現在ないというなら持てと言ったってこれは無理なんで、これは十分検討していただきたいと思います。質問を終わります。
  49. 秋山長造

    ○秋山長造君 簡単に一、二点お尋ねしたいのですが、この九条の三の三項の規定ですが、三項の規定をざっと読むと、今までは市町村申請がなければどうもできなかったのですね。今度はそれを知事のほうが主導権を持って乗り出して、そして関係市町村の同意を求めて、裁決する、こういうことに一歩前進した、こういう話なんですが、その三項の中に二つありますね、都道府県知事が職権によって自治紛争調停委員会ですかにかけて、それできまればよし、それでなお確定しない場合は、知事はこれを裁定することができる、その場合の「若しくはすべての関係市町村裁定することについての同意」というのは、それは必要ないわけですか。
  50. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) これは確定しないとき、調停に付して、それでもってなお確定しないという場合には、裁定ができる、というのが一つ、それはいきなりでございます。もう一つは、関係市町村裁定することについての同意がある、この二つの場合を想定しておるわけです。
  51. 秋山長造

    ○秋山長造君 関係市町村の同意があるときというのは、そうすると、前の「都道府県知事は、職権により」というところへかかってくるんですか、あるいは調停に付し、なおかつ、境界確定しないときというところへかかるんですか、それはどうなんですか。
  52. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 「調停に付し、」というのは、これは前段でございます。調停に付することができるというのが一つの前段でございます。あと裁定規定が二つ並んでおるということでございます。
  53. 秋山長造

    ○秋山長造君 そうすると、何ですか、関係市町村の同意があるなしにかかわらず、やれるということですか。
  54. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 調停につきましては、関係市町村からの申請を待たずして職権で調停に付せるということでございます。
  55. 秋山長造

    ○秋山長造君 それはいいんですけれども、そのあとが、調停に付して、なお確定しない場合は、関係市町村の同意があろうがなかろうが、裁定できるというのが一つですね。それからもう一つは、調停に付して、そうして境界がやはり確定しないときは、いきなり裁定することができるというのでなしに、関係市町村の同意があった場合、裁定することができる、二つになるんですか。私が疑問に思うのは、もし私が言うようなことだったら、関係市町村の同意があるときとか、ないときとかいうことは、必要ないんじゃないかと思うのだけれども、それはどうなんでしょうか、それを一つ一つ分けて説明していただきたい。
  56. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 紛争解決方法といたしましては、調停とそれから裁定ということがあるわけでございます。現行法規定によりまする場合においては、裁定の場合におきましても、関係市町村のほうから裁定に付するということについての申請がなければだめなわけです。それを職権調停も認めたということにはずを合わせる意味合いをもちまして、同意を得れば裁定に付し得るという道を開くということがこの規定でございます。
  57. 秋山長造

    ○秋山長造君 それでこれは附則で、すでに紛争の起こっておるところにも適用される、こうなるわけですね。したがって、出された資料の中に、未解決のものとして幾つかあげられておるですね。こういうものは大体あなたのほうのお見込みでは、全部この改正によって解決できるというお見込みなんですか。
  58. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 確信をもって必ずこれは解決ができるとまではちょっと言い切れぬと思います。問題が非常に困難で長く尾を引いておることでございますので、そうてきぱきとやれるとは思いませんですが、ただ現在なぜ紛争が長引いてにっちもさっちもいかないかと申しますと、それぞれ市町村の自主的な申請等がなければ、問題が一歩も前進しない。事実上の調停、あっせん等はやっておりますけれども、一つ市町村のほうでいやだというふうになりますると、これはにっちもさっちも動かぬという態勢であるわけであります。それを今度この規定ができて、附則で現在紛争中のものについても適用するということになりますからして、知事のほうから、主導権をとりまして、乗り出してゆくという根拠が与えられるわけでございます。これが契機となりまして、相当事態が進むのではないかというふうに、私たちとしては期待をいたしておるということでございます。
  59. 秋山長造

    ○秋山長造君 たとえば、東京のあの西銀座の高速道路だろうと思うのですが、これは。これは今のところは、三十二年の暮れから紛争が起こったままで全然解決していないわけなんですね。そうすると、今あそこには何ですか、いわゆるゼロ番地というのですか、何区ともきまっていないわけなんですね。そうすると、あそこの戸籍事務とかあるいは土地の土地台帳だとか、それから区民税だとか、あるいは固定資産税とか、そういう徴収事務というのはどうなっているのですか。
  60. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 今の問題につきまして、一応私たちの手元でも調べてみたのでありますが、第一番には、現在当該地区には住民は居住をいたしておりません。したがって、選挙の問題は生じないのであります。ただ納税その他の点につきましては、問題が確かにあるわけであります。今のところ、最終的には関係区の意見の調整がはかれませんが、しかし、そのままにしておくわけにも参りませんので、暫定的な取りきめをやって、それによって措置を講じておるのであります。具体的に申し上げますと、国税につきましては、京橋の税務署が所管をいたしておるのであります。それから都税につきましては、中央の都税事務所、これ歩所管をいたしております。それから保健衛生の関係につきましては、これは主として保健所の問題でございますが、実際問題としては、何か橋を——私も現地を見たわけではございませんが、橋を中心にいたしまして、その両側に分けるというやり方で区域を分けて、麹町と中央の保健所、この両保健所が管轄をいたしております。それから警察につきましても、区域を分けまして、中央と築地の両署がやっておるのであります。それから消防につきましても、同じく区域を分かちまして、丸の内消防署の京橋の両署が所管を分け合ってやっておるというのが暫定的な執行方法に相なっておるのでございます。しがし、いずれにいたしましても、こういうのは非常に変則的でございます。これらについても、何らかすみやかに解決をしなければならぬわけでありまして、今度の改正規定に従いまして、これらの点につきましても、都知事が積極的に中に入って、問題の解決のために一歩前進が行なわれるのではないかというふうに考えております。
  61. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の御説明によると、大体何も漏れがないような措置を講ぜられておるようなお話がありましたが、どうも常識的に見て、あれだけの西銀座ビル街というような大きなものがあって、膨大な人が出入りしておるようなところが、全然まだ所属が、もうすでにまる四年もわからないというようなことで、暫定的に税務だとか保健だとか警察だとかいうようなことは、どこが分担してやっておるということなんだけれども、そういう形で漏れなしにやってこれているのですがね、何か相当大きな漏れがあちこちでできているのじゃないかというような気がするのですが、その点はどうですか。
  62. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) おそらくは、こういうような便法を講じておりましても、今お話のような漏れがあったり、思わぬところに何か破綻が起きて、そのつど困っておるというのが現実ではないかというふうに私たちも想像するのであります。ただ、当面日々の仕事をやっていく際に必要となりまする問題については、今申し上げましたように、一応話し合いをつけて所管区域を決定をしてやっておりますので、それほど目立った問題点というものが起こっていないのではないかというふうに想像されるわけであります。
  63. 秋山長造

    ○秋山長造君 他の紛争地域についても言えることだと思うのですが、特に東京のあの西銀座の場合は、これはそもそもあの水面の埋め立て当時から、ずいぶん都政の七不思議の一つだとかいうようなことで、週刊誌あたりがおもしろおかしくずいぶん取り上げてやってきたことだし、また公有水面の利用の許可を与えたいきさつ、あるいはさらにそれを埋め立てて今のような形にするまでのいきさつ等については、ずいぶんいろいろなうわさがとりどりで、全部が全部真実のものかどうか知らぬけれども、いずれにしても、あの行政上の扱いについては、ずいぶん問題があったわけで、国会でも幾たびか問題になりながら、結局すっきりしない形でずっと今日まで見送られてきておることは御承知のとおりですが、いつか、この委員会でしたか、建設委員会でしたか、建設大臣あたりも、あれの問題については非常に遺憾な点があることを認めるというような答弁があったことがある、私が質問しましてね。いずれにしても、日本の帝都のまっただ中に、こういう所属不明の、しかも、草のはえた野っ原と違いまして、あれだけの目に立つ施設があって、しかも、いまだにそれが所属が不明というようなことは、全くこれは東京の七不思議でなしに、日本の一大不思議だと思うのです。まあ今度の法律ができれば、おっしゃるように、都知事が積極的に乗り出して、早急に解決をする努力をされるだろうと思いますけれども、やっぱり自治省としても、政府のおひざ元のことでして、特にこれは目に立つことですから、ひとつ自治省のほうでも東京都知事を督励して、何とか早急にすっきりした解決をつけるように努力していただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  64. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) これは御趣旨全くごもっともでございまして、私たちも帝都のどまん中で、ああいうような事態が起こっているということにつきましては、非常に遺憾に存じまして、関係局を通じては、今までもいろいろ話し合いを進めてきておったのでありますが、何分にも問題が問題であるのと、いかんせん、きめ手がないというようなことで、どうも事態が一向にはかばかしく進行しないままで今日まできておるというのが実情であります。今度幸いにこの改正案が通過をいたすことになりますれば、その意味のやはり筋道というものはつくわけでございますので、この運用を通じまして、できるだけすみやかに問題の解決がなされますように、積極的に私たちといたしましても指導に力を入れて参りたいと考えております。
  65. 秋山長造

    ○秋山長造君 今からお願いしておきますが、この法律が施行されて、東京都があの地区についてどういう処理をしたかということがきまりましたら、いつかの委員会で一度報告していただきたい。お願いします。  それからもう一点ですが、さっき加瀬委員の尋ねておられた協議会ですね、この協議会は、何ですか、自治省が別に準備されておった地方開発基幹都市建設促進法案ですか、あの中に地方開発基幹都市建設協議会というものを設けるという規定がありますね。それから新しく経済企画庁で立案されつつある新産業都市建設促進法案ですか、あの中に地区新産業都市建設協議会を置くというような規定がありますがね、あれと見合うものですか、この協議会は。
  66. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) あれとは別に直接の関係はございません。一般的に今度の場合、地方団体の協力方式について、その後の事態の進展に即応して新しい方式を取り入れた方がいいのではないかということから、御承知のように現在協議会といたしましても、事務の管理執行自体を行なう協議会と、事務のただ単に連絡調整だけをはかる協議会と二つあるわけでございまして、それだけでは少しもの足らない、もう少し広域にわたって共同して計画を作成して、計画ができれば各構成地方団体があらゆる施策について、その線にのっとっていくような、そういうレールを敷くという意味の計画作成の協議会が必要ではないかということで、今度この改正案を提出いたしておるような次第でございます。したがいまして、たとえば、今度の新産業都市なり基幹都市ということの区域指定がありました場合にどうなるかと申しますと、それらの関係法律の中に入って参りまする市町村については、場合によっては合併するというような機運があるものもあるわけであります。また合併まで一足飛びにいくのは適当でないということで、事務、事業を限って組合でもって運営していこうというものもあり得るわけであります。また協議会でもってやっていく連絡調整をはかる、あるいは事務の執行、管理のための協議会というようなことも抽象的には考えられる。ただ新産業都市なり広域基幹都市の場合におきましては、今お話しになりました地区の協議会ができるわけであります。この地区協議会というのは、知事の関係者のみならず、関係の市町村長、関係の市町村、それに国の出先機関までもそこへ入りました網羅的な協議会、その協議会で計画等の作成をやって参りますので、事実上自治法上の協議会にかわる機能をそこで実質的に果たしていくということに相なると思うのであります。ただ、あくまでも地区の協議会は、これは計画を策定していくということが基本でございますからして、実施面に入って参りますると、それらの地区においても、場合によっては組合方式をとったり、あるいは事務の共同処理をするための事務の管理、執行のための協議会方式をとるということは考えられると思います。
  67. 秋山長造

    ○秋山長造君 抽象的には今おっしゃった説明でいいんだと思うのですけれども、これもわざわざ今までに二種類の協議会があって、その上にさらに広域にわたる総合的な計画作成のための協議会、こうなれば、具体的には今やっているこの基幹都市だとか、新しい工業地帯の造成だとかいう、そういうことのための協議会ということに実際にはなるのじゃないか。それ以外の今度の趣旨のような協議会というものはちょっと考えられないのじゃないか。それから、たとえば今すでに各地域、九州開発促進特別法ですか、それから四国開発だとか、全国各地全部あるわけですね、特別立法、ああいうものに基づく協議会というようなものも全部これになってくるわけじゃないのですか。
  68. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 全部これになるとは考えておらないのでありまして、今の新産業都市の関係で参りますると、このほうは地域指定というものが行なわれます。その地域指定が行なわれます地区については、先刻お話の地区の協議会というものが法律上できるわけであります。したがって、そこには計画作成のための協議会というのは私はできないと思います。したがって、その地区に指定された区域以外におきまして、これの実態に即応してやっていかなければならぬといったものが、これはたくさん出て参っております。
  69. 秋山長造

    ○秋山長造君 どういうことですか。
  70. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) たとえば、具体的例をあげますると、大阪と神戸、阪神間でございます。阪神間には御承知のように中小都市が非常に並んで存在をしておるわけであります。これらの地区につきましては、もうそれぞれの市の内部だけでは問題が処理できないというような事柄がたくさん出てきております。交通はむろんのことでありますが、屎尿の処理槽というものをどこに作るかといったような問題、そういった点に対処できなく実はなってきておるのであります。事実上これらの阪神都市の連絡をはかりまするために、協議会を作って運営をいたしております。定時的に会合も持ちましていろいろ問題を出し合ってやっておるわけでありますが、いかんせん、これは事実上の問題であって、何ら拘束力がないということで困る、その裏づけがほしいというようなことは、従来から主張されてきたところでございます。そのほか交通経済の発展等に伴いまして、広域的に処理をしていかなければならぬ。ただ単に都市だけではなくて、周辺部を含めました、農村地帯をも包含した広域計画というものを作成をして、その見通しのもとに個々の自治体の仕事を進めていく、そういう必要性がだんだんふえてきておるのではないかと思うのでありまして、その要請にこたえるために、今回の新しい形の協議会を発足せしめたいという意図を持ったのでございます。
  71. 西田信一

    理事西田信一君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 西田信一

    理事西田信一君) 御異議ないと認めます。これより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 西田信一

    理事西田信一君) 御異議ないと認めます。これより採決に入ります。  地方自治法の一部を改正する法律案(閣法第四〇号)を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  74. 西田信一

    理事西田信一君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 西田信一

    理事西田信一君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。    ——————————
  76. 西田信一

    理事西田信一君) 次に、地方行政の改革に関する調査を議題とし、北海道における集中豪雨及び台風二十四号の被害状況について、警察庁当局から説明を聴取いたします。
  77. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) お手元に二通りの資料が差し上げてあると思いますが、北海道の集中豪雨の関係と、それから台風第二十四号資料でございます。その資料に基づきまして御説明いたします。  初めに北海道の集中豪雨関係でありますが、去る十月の五日の夜から六日の夜半まで、北海道地方に降りました雨は、道南部の室蘭、釧路、それから函館方面を中心に百ミリないし山岳部では二百ミリくらいあったのであります。各地で小さな川がはんらんいたしまして、相当な被害が出たのであります。この資料は、十月九日の午前九時現在で示しておりますが、大ざっぱな大体の被害状況は、ここに書いてあるとおりでございます。  全道の被害を総計いたしますと、人の被害は死者が十二名、行方不明が六名、負傷者が六名、罹災地帯が二千五百世帯、羅災者一万一千九百名ということになっております。  それから建物等につきましては、全壊が九棟でございます。それから半壊が二十五棟、流失が十九棟、全焼が五棟であります。それから床上に浸水しましたのが二千三百棟、床下浸水が三千百棟、こういう状況でございます。  それからもう少しこまかく具体的な被害地域を御説明申し上げますと、ここにありますように、北海道では室蘭と登別の町が二百ミリぐらいの豪雨のために、六日の九時ごろから登別川を初めとして小さな川がはんらんいたしまして、これがいわゆる鉄砲水となって下流域一帯を襲ったのであります。そのために、登別では温泉の付近の飯場の小屋が濁流にのまれて十一名が一瞬のうちに行方不明になった、こういうような事案があります。また、室蘭では家が倒壊いたしまして、それによって死者二名、重傷一名というのが発生しております。また、苫小牧では橋が流れたのを気がつかないで自動車が川へ落ちて三名が死んだというようなのがあります。また、浸水家屋も、室蘭と登別で二千八百棟に達しましたので、登別町には災害救助法が適用されております。これはまた変わった例でありますが登別の温泉町で家人が避難したあとに火事が起こりまして五棟が焼けたと、こういう事案が起こっております。  こまかい被害状況につきましては、一番最後に数字がありますので、これをごらんいただきたいと思います。  それで北海道の関係の説明を終わりますが、その次に台風二十四号関係の被害状況を御説明申し上げます。  台風二十四号は、十月の七日硫黄島の付近で発達しまして、大型台風となりそうであったのでありますけれども、十日の午前九時ごろに、御承知のように千葉の銚子付近を通過しまして、太平洋上に去ったのであります。この間に九日の夜から十日の朝にかけまして、関東地方を中心として一部十四県に及ぶ被害発生したのであります。台風は次第に勢力を弱めまして、中型の台風になったために、非常に心配されました東京の高潮の被害、河川の決壊というような大規模な被害発生を見なかったのであります。  この被害資料は十日の午後二時現在の資料でありますが、この被害状況は次のようであります。人の被害は、死者二名、負傷者十七名、罹災世帯四千八百世帯、罹災者が約二万名という状況であります。それから建物の被害は、倒壊家屋が七十棟、床上浸水が三千八百棟、床下浸水が六万棟ということになっております。  それからさらに具体的に各地域について申し上げますと、被害は一都十四県に及んでおりますけれども、そのうちの比較的大きな被害がありましたのが、東京都、神奈川、静岡、千葉の四県であります。東京について言いますと、東京湾に面する、いわゆるゼロ・メーター地帯の江東、江戸川、大田区の低地帯を中心に床上三千五百棟、床下五万三千棟の浸水家屋が出たのであります。また、文京区では、がけくずれがあって一名が死亡、一名が負傷するという事案も起こっております。また避難命令が出まして避難をいたしました住民が約一万五千に達しております。  次に、神奈川県でありますが、神奈川県におきましては、東京寄りの川崎、横浜方面に雨量が集中しまして、市街地の小河川、みぞ等が一斉に溢水いたしまして、この方面を中心に県下全域で床上浸水が百五十、床下浸水が千五百棟の被害が出ております。  それから次に静岡県でありますが、静岡県におきましては、静岡市の石部地籍といいますか——ここで一つミスプリントがありまして、日坂峠とありますが、これは日本坂の間違いでございます。恐縮であります。日本坂峠下の海岸にありましたトンネル工事の飯場小屋が波浪と強風で倒壊しまして十一名の負傷者を出したという事案が起こっております。それから海岸に面した焼津、それから田方郡の土肥町を中心に倒壊家屋十六棟、浸水家屋が七百七十棟というような被害が出ております。  それから次に千葉県でありますが、千葉県におきましては、館山、銚子、木更津、勝浦、千葉、市川という各市を中心に県下全域で倒壊家屋十七棟、浸水家屋は二千六百棟に及ぶ被害発生しております。館山市の海岸で舟を引き上げようとした漁夫一名が、舟とともに岸壁にはさまって死亡するというような事案が起きております。  その他こまかい数字につきましては、一番最後に一部十四県の数字が出ておりますので、これをごらんいただきたい、こう思います。  簡単でありますが、これをもって御報告を終ります。
  78. 西田信一

    理事西田信一君) ただいまの説明に関連して御質疑の方は、順次御発言を願います。——ちょっと私からお聞きしますがね、この北海道と、それから二十四号の台風の被害金額というのはつかんでおられますか。
  79. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 金額については、今のところわかっておりません。
  80. 西田信一

    理事西田信一君) わかっておらない……。
  81. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) はあ。
  82. 西田信一

    理事西田信一君) 私の手元に北海道知事かち、十六日付ですから、十六日の現在値として出ておるのによりますと、ただいまの御説明のたとえば建物の被害なんかの戸数なんかと非常に違って数字が拡大しているのですね。被害金額は三十五億というようなことが知事のほうから公式にこれ参っておりますが、あれですか、この北海道の集中豪雨は、ことしは北海道は数回被害を受けているようですが、前回のたとえば八月ですね、七月、八月等の集中豪雨の被害、北海道あるいは北海道以外の地域のそれに匹敵する規模というか、それに匹敵する程度の被害を受けているという御見解ですか。
  83. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 北海道の本年につきましては、七月の二十四日と二十六日に被害が集中豪雨で起こっておりますが、七月の場合は、死者が十七名、行方不明が一名、負傷者十名、全壊が三十九、半壊が九十七、流失百四十五となっておりまして、その人的被害、浸水や何かの物的被害は、十月の被害よりも七月のほうが多い、こういうことが言えると思います。
  84. 西田信一

    理事西田信一君) 警察庁のお調べだから、人的被害とか家屋とか、そういうことに調査の焦点が置かれておるようですけれども、今度の被害は、道庁の知事の出してきた資料によりますと、土木被害なんかも二十何億というような相当な大きな被害を受けているようです。今度のこの御報告では、そういう方面にちっとも触れておりませんから、被害実態がどうもつかめないので、これではほんとうの被害報告というにはどうも不十分だと思うのですよ、そういう点。
  85. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 警察庁におきましては、お説のように人的被害が中心になりまして、死者とか負傷者はこれは現実に個々に当たりまして確実を期しているのでありますけれども、家屋その他につきましては、何しろ専門家でございませんので、建設省その他の専門的な調査のほうがあるいは正確かもわからないということで、現場の応急の調査報告でございますので、必ずしも間違いは絶対にないということは言い切れないと思います。
  86. 西田信一

    理事西田信一君) 次回は十九日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会