○
国務大臣(
佐藤榮作君)
臨時石炭鉱害復旧法の一部を
改正する
法律案につきまして、その
提案理由及び
法律案の趣旨について御
説明申し上げます。
臨時石炭鉱害復旧法は、十年間の限時法として
昭和二十七年に制定されまして以来、現在までに約九年を経過しているのでありますが、この間に約八十億円にのぼる
石炭鉱業及び
亜炭鉱業による
鉱害を
復旧いたしまして、国土の保全と民生の安定に大いに寄与してきたのであります。
しかし、昨年、
通商産業省におきまして全国的な
鉱害事業量調査を
実施しましたところ、現在累積して残存している
安定鉱害だけでも約二百四十億円にのぼり、そのうち六−七割程度が
臨時石炭鉱害復旧法による
復旧の対象となるものと推定され今後さらに年々
相当額の
鉱害が発生するものと予想されている次第でございます。
しかるに、同法は
昭和三十七年七月三十一日までに廃止すべきものとされておりますので、新たに広範囲、大
規模な
復旧工事に着手することは困難となっております。このような状況のもとに、
鉱害地域住民の間には、同法による
鉱害の
復旧がその後中絶されるに至るのではないかとの懸念と不安が高まってきているのであります。
したがいまして、この際同法の有効期間を延長してこれらの問題を
解決し、住民の不安を除去することが是非とも必要であると考えるのであります。
なお、
衆議院商工委員会におかれてもこの点に留意され、去る第三十七回
国会において同法の延長を骨子とする
改正法案を次期
国会に提案すべきであると決議されたのであります。
以上の経緯にかんがみまして、同法の有効期間をさらに十年間延長しようとするのが、ただいま提案いたしました
改正法案の第一の要点でございます。
改正の第二の要点は、
鉱害により緊急の事態が発生しました場合に、応急的に対処し得る体制を作ろうという点にございます。
鉱害復旧のための
基本計画を作成するためには、
鉱害の賠償義務を負う者はだれか、また、その責任の範囲はどれだけかということを明らかにしなければなりません。
これが明らかにならない場合には、緊急の事態が発生いたしましても、これに対する
措置について
現行法は
規定していないのでございますが、このような場合には、国と
地方公共団体が費用を支出して応急の
工事を行なわせた後に、賠償義務者等を追及してその者から費用を償還させるという方法によって事態に一応の
解決を与えたいと存じております。
その他
昭和三十三年に廃止されました特別
鉱害復旧臨時
措置法に関する
規定及びいわゆる無資力認定に関する
規定について、この際あわせて整備したいと存じます。
以上がこの
法律案の
内容及びその
提案理由であります。何とぞ慎重御
審議の上、御賛同あらんことを切望する次第であります。
石炭鉱山保安臨時措置法案につきまして、その
提案理由及び
法律案の要旨について御
説明申し上げます。
最近相次いで
炭鉱の重大災害が発生しましたことは、
政府としてまことに遺憾とするところであります。申すまでもなく人命の尊重は、何よりも重要なことでありまして、
政府としても従来ともこの方針のもとに保安行政を推進してきたのでありますが、最近の状況は、さらに徹底した対策の必要なことを痛感せしめるに至ったのであります。またさきの
国会におきましても事の
重要性にかんがみ衆参両院において
炭鉱災害防止に関する決議が行なわれております。
政府はこの決議の趣旨を十分に尊重し、かつ中央鉱山保安協議会その他の
関係者の意見をも勘案の上、さきに鉱山保安
確保のための具体的対策と当面必要となる予算
措置について閣議
決定をいたしたのでありますが、そのうち
法律を要する
重要事項について、ここに成案を得て提案することとなったのであります。
炭鉱の保安をはかる基本的
方向が、鉱山保安法、
鉱業法の厳正なる運用にあることは申すまでもありません。
政府としても常々この点に留意し、保安監督の強化をはかってきたのでありますが、今日における
中小炭鉱の実情を見まするに、一方において保安監督の強化をはかるかたわら、他方各
炭鉱の実情に即して抜本的な
施策を講ずる必要があるのであります。このため
政府といたしましては、このたび
石炭鉱山の実態を総合的に
調査することとし、その結果に基づいて保安に関する設備の整備の促進等をはかるとともに、保安を
確保することが困難な
石炭鉱山に対し廃業を円滑に行なわせるための
措置を講ずることといたした次第であります。
次に本
法案の要旨について御
説明申し上げます。
第一は、
石炭鉱山の実態を適確に把握し、その保安の
確保をはかるため、
採掘権者または
租鉱権者について、その
鉱区または租
鉱区の自然条件、経理的基礎及び技術的能力並びに保安に関する
事項に関し総合的
調査を行なうこととしたことであります。そしてその結果必要があるときは、保安に関する
事項の改善勧告をできるようにするとともに、その勧告の
内容についてその勧告を受けた者に当該
石炭鉱山の保守
委員会に通知させることとし、また
政府は、保安設備の整備に必要な
資金を
確保することに努めることとしたことであります。
第二は、総合的
調査の結果保安を
確保することが困難であると認められる
採掘権者または
租鉱権者に対して鉱業の廃止の勧告をできるようにしたことであります。そしてその勧告を受けた者にその
内容を当該
石炭鉱山の保安
委員会に通知させることとし、また、勧告を受けた者が、勧告に従って
採掘権または
租鉱権を放棄したときは、国が
石炭鉱山整理交付金を交付することができることとしたことであります。
第三は、この交付金について、賃金債務及び
鉱害賠償債務に優先的に充当するための
措置を講じたことであります。そのために交付金は、
石炭鉱業合理化事業団を通じて交付することとし、
石炭鉱業合理化事業団は、鉱業を廃止した者にかわって賃金債務及び
鉱害賠償債務の弁済を行なうこととしたことであります。
第四は、
採掘権者または
租鉱権者が鉱業の廃止の勧告を受けて鉱業を廃止したことにより、
鉱山労働者が解雇された場合には、国が、
平均賃金の三十日分に
相当する金額を支払うこととしたことでありまして、これにより
労働者の保護に遺漏なきを期することといたしております。
第五は、この
法律に基づく鉱業の廃止の勧告を受けて鉱業を廃止した者が放棄した
採掘権または
租鉱権の区域には、再び権利を設定することを禁止するとともに、
石炭鉱業合理化臨時措置法の
坑口開設許可制度を
改正し、保安を
確保するために必要な経理的基礎及び技術的能力を有しない者は、鉱業を行なうことができないように
措置したことであります。
これにより、保安
確保のできない
石炭鉱山が今後新たに発生するのを防止することとしたことであります。
なお、この
法律は、
石炭鉱山の保安
確保の緊急対策としての性格にかんがみ、有効期間を二年とする臨時
措置法といたしました。
以上簡単でございましたが、この
法律案の
提案理由及びその要旨について御
説明申し上げました。
何とぞ慎重
審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を
改正する
法律案につきまして、その
提案理由及び
法律案の要旨について御
説明申し上げます。
わが国の
石炭鉱業が、
石炭の
販売価格を
昭和三十八年度までに
昭和三十三年度に比較して千二百円程度
引き下げることを目標として、現在高能率
炭鉱の造成及び非能率
炭鉱の休廃止を中心とする
生産構造の抜本的な
合理化に努力しつつあることは、御高承のとおりであります。
最近、鉱工業活動の好調、渇水等のため
石炭の
需給がやや好転しておりますが、これにより
石炭鉱業の
合理化の必要性はいささかも減少するものではなく、むしろ石油
輸入の
自由化を考慮すれば、その
長期的な値下りの
傾向からみて、今後一そうの
合理化努力を傾注することにより
石炭鉱業の安定をはかる必要があると考えております。
石炭鉱業の急速な
合理化を進めていく過程におきましては、
生産の
集約化などに伴い、相対的な過剰
雇用が発生することは避けられないところでありますが、このような過剰
雇用をなくして
合理化効果を発揮してゆく段階においてやむを得ず発生する離職者に対し、退職金その他の支払いを円滑に行なえるようにすることは、ぜひとも必要であると考えます。また非能率
炭鉱を閉鎖する場合には、このほかにすでに発生した
鉱害を処理する必要があるわけでありまして、今後
石炭企業がその
事業を整備するために調達すべき
資金は、莫大な額に上るのであります。
しかしながら、このような
事業の整備に必要な
資金につきましては、銀行の融資が必ずしも円滑に行なわれていないのが現状でありまして、今後の金融情勢に照らし、一そうの困難が予想され、
石炭鉱業の
合理化がこの面で制約されるおそれがあると考えられます。このためこのような
資金の融資について何らかの
措置を講じて、これを円滑化することが特に必要になるのであります。
今回の
改正案は、このような考え方に立って、
石炭鉱業合理化事業団に
政府出資を行ない、これを基金として
石炭鉱業の整備に必要な
資金の借り入れについて債務保証を行なわせることとしたものであります。
次に本
法案の要旨について御
説明申し上げます。
第一は
石炭鉱業合理化事業団に、従来の非能率
炭鉱の買収
業務及び
近代化資金の貸付
業務に加えて、新たに債務の保証の
業務を行なわせることとしたことであります。
石炭鉱業合理化事業団が行なう債務の保証は
石炭鉱業の整備を促進するために行なうものでありまして、離職する
労働者に対し支払うべき退職金その他の賃金の支払のため必要な
資金、あるいは
事業を廃止するときの
鉱害の賠償に要する
資金を
石炭業者が銀行から借り入れる場合に、その弁済の保証を行なうことといたしたのであります。なお、
石炭鉱業合理化事業団が保証する債務の総額は、
保証基金に
一定の倍率を乗じて得た額を限度といたしております。
第二は、
政府が
石炭鉱業合理化事業団に保証
業務のため
追加出資する場合には、従来からその
業務の
一つとなっておりました
近代化資金の貸し付けのための出資と区分して
保証基金に充てることを明らかにし、
石炭鉱業合理化事業団は、これにより
保証基金を設けることとしたことであります。
第三は、債務の保証の条件等に関する
規定であります。
石炭鉱業合理化事業団は、債務の保証を行なう場合には、
石炭業者から保証の委託手数料に
相当する保証料を徴収することといたしまして、その
石炭業者が弁済期において債務を履行しなかった場合等には、銀行に対してその弁済されなかった借入金の二分の一を
石炭業者にかわって支払うことといたしました。
石炭鉱業合理化事業団は、
石炭業者にかわって銀行に債務の弁済をした場合には、その
石炭業者に対して求償権を取得することとなるのでありますが、この権利の行使の
業務は、銀行に委託することができることとし、以後において銀行が回収した金額については
石炭鉱業合理化事業団と銀行が折半することといたしております。
第四は、
石炭鉱業合理化事業団のこの債務の保証の
業務は、
昭和三十八年度末までに廃止することとしたことであります。この債務の保証により
石炭鉱業の整備の円滑化をはかることは、
石炭鉱業の
合理化の目標年次である
昭和三十八年度まで継続して行なう必要があるからであります。
以上簡単でございましたが、この
法律の
提案理由及びその要旨について御
説明申し上げた次第であります。
何とぞ慎重御
審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。
産炭地域振興臨時措置法案につきまして、その
提案理由および
法律案の要旨について御
説明申しあげます。
産炭
地域の経済は御承知のとおり全面的に
石炭鉱業に依存している所が多く、
石炭鉱業の盛衰がその地方の経済に及ぼす影響はきわめて著しいものがあるのであります。一般
産業界の好況にもかかわらず、
石炭鉱業の構造的不況は、これらの地方の経済に大きな打撃を与えているのでありまして、
炭鉱失業者は
雇用機会のないまま産炭
地域に滞留し、
鉱害その他の産炭
地域特有の事情と相まって社会不安の
原因となり、産炭
地域ははなはだしい疲弊にあえいでいるのであります。
このような状況を反映して地方財政もまたますます逼迫の度を高めつつあるのでありまして、
石炭鉱業の合理そのものも、次第に困難となってきているのであります。
これらの複雑かつ困難な諸問題の
解決のため、
政府は従来とも離職者対策その他の
施策を推進して来たのでありますが、御承知のように、
炭鉱失業はややもすると集中的かつ大量に発生するおそれがあるのみならず、その
地域全体が失業するという事態の発生する危険が少なくないのであります。さらに
失業者の過去の生活環境。年令構成。技能程度からみて、これを労働に対する
需要の大きな地方へ移動せしめるという対策には、重大な限界があることを認めざるを得ないのでありまして、そのためには、どうしても現地において
雇用の機会を創造し、増加させていくという
施策が必要になるのであります。
また
石炭は、産炭
地域においては、今日でもなお
競合エネルギーに対し経済的優位を保っているのでありまして、今後の
石炭政策という見地からも
石炭需要を産炭
地域において極力
確保するため、産炭地発電の推進、その他の対策を進めてゆく必要があるものと考えるのであります。
このためには、単一経済地帯である現在の産炭
地域に新しい
産業を導入し、育成し、多角的な
産業地帯を作り出していくという
方向が選ばれなければならないのでありまして、これは
ひとりわが国に特有の事情ではなく西欧諸国においても産炭
地域の振興には、特に力をいたしているのであります。
さらにまた、従来の
合理化対策、
炭鉱離職者対策等の
施策に加えて、積極的に
石炭需要の
確保をはかるための
施策を推進することによって
石炭鉱業を安定させ、これ以上、産炭
地域を疲弊させないようにすることも、産炭
地域の振興にとりゆるがせにできないことであると考えるのであります。
この
法律案は、このような考え方のもとに産炭
地域を振興するための基本的
方向と具体的計画を定め、国の
施策を統一的かつ集中的に進めてゆくことを企図しているものでありまして、これがこの
法律案の
内容の第一の点であります。このため、
通商産業大臣は、産炭
地域振興
基本計画と同
実施計画を定めることといたしておりますが、この
基本計画には
国民経済的
観点または
実施計画相互の関連等の
観点から
実施計画策定の基本となる
事項について、また
実施計画には各
地域の
特殊性をも十分考慮に入れた具体的
事項について計画を定めることといたしております。なお、これらの計画の策定にあたっては、産炭
地域振興
審議会の意見を聞くとともに、
関係行政機関と十分協議をする
建前をとっており、また
実施計画は、その緊急性にかんがみ、
法律の
施行後二年以内に定めることといたしました。
内容の第二点は、
通商産業大臣は、これらの計画を策定するために必要な
調査を行なうこととしたことでありますが、本年度の
調査のため三千万円の
調査費が予算に計上されております。この種の計画を定めるためには、事前に十分
調査をし、真に実効性のあるものとする必要があるので、
調査地域、
調査方法等についても
審議会の意見を聞くことといたしたのであります。
第三点は、国の助成
措置に関する
規定であります。産炭
地域振興のための具体的な
事業及びその推進の方法については、今後の
調査と、これに基づく計画により決められるわけでありますが、この
法律案におきましては、地方税の減免に伴う
措置、その他一般的な
措置として当面必要と考えられるものにつきまして
規定いたしました。
なおこの
法律は、産炭
地域振興の緊急性にかんがみ、有効期間を五年とする臨時
措置法とすることといたしました。
以上簡単でございましたが、この
法律案の
提案理由及びその要旨について御
説明申し上げました。
何とぞ慎重御
審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。