○
参考人(
谷口久次郎君) 私は
滋賀県知事の
谷口久次郎でございますが、われわれ
水資源二
法案は初め
衆議院へ
提出をされました当時、
上流の
流域府県のわれわれとしましては非常にまあ
不満と申しますればはなはだ失礼でございまするけれども、幾多の
不満な点を持っていたということであります。それにつきましては、われわれはこれに対してぜひとももっと実情に合うような
修正をしていただきたいということを常に強調いたしましたところが、まあ
衆議院において
相当修正をしていただきまして、われわれも幾多希望の点が入れられたということは非常にわれわれとしても喜ばしいことなんでありまするが、しかし、まだわれわれの
要望しておりました点が完全にいれられたということは申されません。今後
参議院において十分ひとつ御
審議の上、われわれの
要望を少しでもいれていただくようにお願いしたいと切に希望してやまぬ次第であります。
私は、御
承知のとおり
水資源と申しましても、これは
琵琶湖が主体でございまして、他の
水資源の県とはおのずから
利害関係も異なるものがあろうと思いますので、それで私がきょう申し上げることは主として
琵琶湖についての
関係を申し上げたいと思うのであります。あるいはこの
関係から申しますと、
茨城県とあるいは似通ったような
利害関係を持っておるのではなかろうかと思われまするけれども、しかし
琵琶湖は何と申しましても大きい
水資源の
関係がありまするので、非常に異なったものがあるということを御了承を願いたい、かように存じておる次第であります。
まあ
琵琶湖は御
承知のとおり、
滋賀県の六分の一という
面積を持っておるのであります。それで
琵琶湖の
下流には一千万という住民がおる、そしてそこには
日本で四大
拠点と申しまするが、四大
拠点でなしに私としては二大
拠点の
一つとしての
工業を持っておるというようなことから、非常に近ごろ水を要する、この水が足らぬ
ために
地下水を揚げていくというような
関係から、
大阪市
あたりでも地盤が年々沈下をして将来非常に
心配の多い
事態が生じておりまするので、それでわれわれ
滋賀県としましては、そのときにこの水をたたいえておる
琵琶湖というものが
上流にあるという以上は、われわれは同じ近畿に
繁栄をともにする
地帯に住んでおる者としては、どうしてもこの際にこの水を
開放をして
下流の
ために利用していただいて、そして今後この
繁栄がこれによって行き詰まることのないようにという
考えを持っておりますので、この
水資源を
開放するということについてはいささかもやぶさかでない
考えを持っておる次第でありまするが、しかしそれだけに非常にこの
関係が広範にわたりまするので、単に
ダムをこしらえてそこから水を流すというようなことから
考えましても、たいへんその
関係が深刻でありかつ広範であるというような
関係がありまするので、われわれは水はあくまでも流すけれども、これは
県民に
被害が生じた場合には、あくまでもこれは
補償してもらいたいということを
建前としておる次第なんであります。
私は、最初この
水資源の二
法案を拝見いたしましたときには、これはどうもこの
法案は法の
建前からすれば、こういうことでなければならぬのかと思いまするけれども、いかにも
上流県の
犠牲において
下流県に据え膳を食わせるという感じがしたのであります。これではおさまらぬぞということで、いろいろ県の
関係も研究して参った次第でありまするが、御
承知のとおり琶琵湖は
年間五十四億トンと言っておりまするけれども、大体六十億トンぐらいの水を
下流に流しておるということなんであります。ところがこれは
明治時代におきましては、
上流の山林が非常に繁茂しておったというような
関係から、水は
年間大体通じて平均化されて流れておったのであります。ところが近ごろ
上流の山が荒廃いたしましたので、これが
洪水時には非常に大きな水が出てきてそして
滋賀県内を荒らすばかりでなしに、
下流も非常に
被害をこうむるというような
関係がありまするので、今度の
琵琶湖の
水資源の問題と申しますれば、この水を平均化してそしてすべてを有効放流するということが今度の
水資源問題の
目的であろうと思いますので、そういうことになりますと
降雨期でないときには
琵琶湖の水がどんどんと減ってしまって、ときによっても二メートル、三メートル、四メートルというように
水位を低くしなければならぬというような
関係にあるらしいのでありまするが、これが
降雨期になって元に復元するというようなことによって、日々の流れていく
水量というものを平均化し、これを有効化するということに帰着するのでありまするが、そういうことになりますと、今の
琵琶湖のいわゆる
平均水位、平常
水位と申しまするのは、
大阪湾の干潮時における八十五メートル六十五センチというものがいわゆるゼロ点となって、そこに
水位を置いておるということであります。その
水位からもしも一メートルあるいは二メートル、三メートル場合によっては四メートルというような水を下げるということになりますと、
滋賀県のこうむる
被害は非常に大きいということになってくるのであります。しかしながらわれわれはそうしなければ
下流の
繁栄を維持することができない、こういうことであればやはりこの
琵琶湖を利用して、そうして
下流に流す水を皆有効化して流すということはこれはどうしても避けることのできない問題であり、またわれわれとしてもこれにはきん然として
琵琶湖の
開放をしなければならぬ、こういう
観点に立っておる次第なんであります。
しかしながらこの
琵琶湖は御
承知のとおり、私は
衆議院では、この
琵琶潮のできたということは三十万年ほど前にできたということを学者から聞いておるが——こう申し上げたのでありますが、近ごろ
京大あたりでよく研究してもらった結果が、
琵琶湖はちょうどできてからはっきりと四百万年はたっておる、こう言われております。これは世界で一、二を争うほどの古い湖である。しかしこの古い湖がいまだに非常な若さを持っている、ということは、その陥没する
状態あたりはいまだに年々陥没している、非常な若さを持っていると言われているのであります。そんな
関係で四百万年もたっているという
関係から、
滋賀県民はこの
琵琶湖というものと
生活は全く一体になっているということであります。山の奥に住んでおっても
琵琶湖との
関係は、
生活的にもあるいは経済的にも、これと
関係なしには
滋賀県には住むことができぬと言われるほど、非常に
県民生活というものとの
関係は深いということであります。そんな
関係から、もしこれが今度のこの
水資源との
関係において、そして単に
下流の
ために利用するのじゃということで何らの
補償もなく、何ら
滋賀県民の
生活ということに
考慮を払われぬというようなことになりましたら、それこそたいへんな
事態が起こってくるということであります。私は
衆議院でも申し上げたのでありまするが、単にこの
上流において
ダムを
一つこしらえるということだけでも、あの
蜂の巣城というようなああした
事態が生じてくるのであって、
琵琶湖はやはり
県民全体に
影響を持つということであるから、これをいわゆる
水位を上下して、そして利用しようというようなことになってぐると、これに対して何らかの措置を講じてもらうということでなかったら、おそらく
県民から猛然たる反対が起こってきて、遂には収拾することのできぬような
事態が起こるのじゃなかろうか。こう申し上げておったのであります。私はそのときにもこれに不用意にさわるということになってきたら、おそらく
滋賀県民、まあ昔で申しますれば十個師団くらいの
人間が
琵琶湖の周囲にスクラムを組むというぐらいのことは一時間も待たずにできると、こう言うておるのであります。そういう
関係で他の
水資源の
関係よりは非常に深いということなのであります。
そういう次第でありまするので、私はあくまでもこの
補償ということ、これは完全にやっていかねばならぬということがわれわれの主張なんであります。ところがこの
補償をしてもらうと申しましても
琵琶湖の今度の
水資源の指定された
関係ができて参りますと、第一番にあらゆる点に
影響を及ぼすのでありまするが、そのうちで最も大きいものはやはり
漁業の問題である。
漁業に及ぼす
影響というもの、それから
湖上交通の問題、これは近ごろ
陸上交通が発達いたしまして昔のような
状態ではありませんけれども、以前この
陸上交通の発達せぬ
時代でありましたら、それこそ指一本さすことのできぬような
状態でありまするか、この
湖上交通の問題、それから
港湾の問題、
港湾が水が単に
低下したということであれば
港湾の仕方もありましょうが、それがまた復元してきて元のものになるというようなことになって参りますと、もう
滋賀県には
港湾というものは用をなすものがないというようなことになって参るわけであります。それからもう
一つ大きな問題は何と申しましても
滋賀県は
琵琶湖あることによって
観光県として生きていけるということであります。近ごろこれが国際観光的な
関係も生じて参りまして非常に将来を期待されるような
関係が生じておりまするので、この点についてもわれわれは十分なるひとつ
補償をしていただきたいということを申し上げておるのでありまするが、これについてはいろいろ
構想を練り、またいよいよこれが
水資源として指定される場合にはその点についての
構想も十分にしていただけるものと、かように存じておるのでありまするが、今申し上げましたようにわれわれの
補償と申しましても、金をもらえば済むというものは
漁業だけであります。
漁業関係は金で済ませる問題も多々あるのでありまするけれども、その他の
関係はすべて
施設でやってもらうということでありまして、この
施設がわれわれの
要望に副わぬということになってくると非常に問題が多いということであります。かりにまた現在はそういうようなことは直接見えて参らぬにしましても、やはり
水位が
低下するということになれば、当然この
地下水が
低下をしてくるということであります。そうなりますと、やはりこの
飲料水の問題にしましても、あるいはまた
灌漑水の問題にしましても非常な
影響を受けて、これがどうなっていくのかということは、われわれも実際現在においても関心の
中心をなすものなんであります。で、そういうことは、幸いにして
地下水の
低下はわれわれの
心配するほどのものでなかったということであれば大へんけっこうだと思いまするけれども、私はいろいろこの
一つの
工事を行のうても
地下水が
低下するような現象が起こって、これに対する
補償というようなことに現在でも苦心しておる問題があるのでありまするから、これを三
メーター以上も
水位を
低下するということになりましたら大へんな
事態が起こってくるであろう、これらに対してはどういう
対策を講じていくかということ、むろんこれは
琵琶湖の水を逆流して、そしてそこに
簡易水道を作り、上水道を作っていくというようなことも必要でありましょうし、また
灌漑水につきましては、
河川の
上流に
ダムを作って、そして必要のときにはそれを流してそして
灌漑用水に使うとか、いろいろそういうことをしなければならぬのでありまするが、それが前の
法案でありますと、いわゆる
水源の涵養とか保全とかいう文字はどこを探してもなかったので、われわれは非常な
不満を持って、これはぜひとも入れていただきたいということを申し上げておったのでありまするが、幸いに
衆議院においてはそのことが
修正されました。どうかひとつ
参議院におかれましても、そうした点について十分ひとつ御研究をいただきまして、われわれの
不満のないようにひとつやっていただきたい、かように存じておる次第なんであります。
そんな
関係から、
琵琶湖の問題は他の
水源県というものとは非常に異なったものがあり、またそれが
県民生活というものに深刻な
関係を持っておるということ、もしこれをおろそかにするということになりましたら、それこそ
県民生活の上には救うことのできぬような
事態が起こってくるのじゃなかろうか、その点を私は非常に
心配をしておるということでありまするが、ところが今申し上げましたようにわれわれは現に現有の
琵琶湖でも非常な苦い経験をなめておるということであります。昔は
琵琶湖は結局最後は瀬田川へ流れるということで、あそこの一本へ水が流れていくということでありまして、あそこで水を
操作をするということで、
南郷というところに
洗せきができておりまして、その
南郷の
洗せきによって
水位の上下をはかって、そしてこの
洪水時であるとかあるいは渇水時であるとかというようなときに、あそこで
操作をしておるのであります。ところがこれをも
滋賀県の
ために
操作されるかと申しますると、
洪水時になると全く
下流の
ために
操作をされるということでありまして、あの
淀川水系のちょうど
淀川の
沿岸において
水位が四
メーター五十とか四
メーター八十というところへ達しますと、これは
危険水位であるということで、あの
南郷洗せきの閘門はどんな
洪水でもぴんと締め切ってしまう、そして
滋賀県に水のたまるということ、あるいは家屋へ浸水するとか、あるいは田畑に冠水するということはおかまいなしにそれをやっておるというような
状態で、これ
あたりも
滋賀県民は非常に
不満を持っておるのでありまするけれども、昔の
時代にそういうことができて、
県民はそのことに対して何らの
発言もせず、何らのことも申し上げずにこれができてしもうたというようなことで、それが
ためにあの
伊勢湾台風のときには稲に対してだけでも六億円という
被害を農民は受けておるのであります。ことし
あたりのこの六月の出水のとき
あたりでも、農家の受けた
被害というものはもう計算上のものがあると思われますので、植えつけた稲はすっかり腐ってしもうて、あるいは岡山県へ行って苗をもろうてくるとか、
滋賀県内の他のところから株分けをして
供給するとかいうようなことで、それを埋め合わせをしたのでありますが、それが全く
下流の
利害の
ためにそうやられておるということで、あの
南郷の
洗せきが
開放されて、そしてこれがどんどん水は思う存分はかすということであれば、
滋賀県はほとんど
被害というものはないのであります。ところがこの
下流においては、そうなって
淀川沿岸というものが危険に瀕し、またそれが決壊を生ずるということになりましたら、この前大
洪水を超こして
淀川の
沿岸が決壊いたしましたが、そのときは局部的にでも一千億というような
被害があったということで、いわゆる大の虫を生かして小の虫を殺すということ、そういうことの
ために
滋賀県民はそのことを宿命のごとく思って忍んでおるということなんであります。
しかしながら今度は、ここで申し上げても
事態はおわかりにならぬとは思いますけれども、
琵琶湖に一番狭いところがあるのであります。その狭いところに今度堰堤をこしらえて、これを南と北との
琵琶湖と分けて、北の
琵琶湖で
操作をしてそして
水位の調節をはかっていくと、こういうことになっておりまするが、ここにそうした
施設が生じたときには、これの
管理ということに対して、われわれはやはり
一つの強い
発言を持つということでなしに、
公団等でそれが思う存分に
操作されるということになったら、今度はもう壊滅にひとしいような
事態が起こるのではなかろうか、この
点あたりは私は特に
心配をしておるのであります。むろんこれの
管理規程というものはできるのでありますが、時によると、こうしたことに対してやはり議会においてよく御
審議を願うて、そしていろいろ御
発言の中に、
地方は非常に
不満を持ち越し、また
被害を甘受しなければならぬということのないように御
配慮をいただきたい、かように存じておる次第なんであります。
私はこの
法案についてはまだまだいろいろ七カ条ほどの
修正要望というものを持っておるのでありますが、そのうちの
幾つかは満たされたということではありますけれども、まだ
幾つか
修正をしてもらいたい点は多いのでありますけれども、しかしながらいろいろな
事態を御
考慮をお願いしなければならぬ点において、われわれ満足をするということは、これは時によるとむずかしいのではなかろうかという
心配を持っておるのでありまするが、しかしながらこの
審議の御過程におきまして、十分われわれのこうした
事態を御了察をいただきまして、そして十分御
審議をいただいて、そして
被害を少しでも少なくするということに御高配をいただきたい、切にこのことをお願い申し上げる次第であります。
なおこれは申し上げておりますると際限がございませんので、以上申し上げまして、またあとからお尋ねでもございましたら
お答えを申し上げることにして、以上をもって私の陳述を終わりたいと思います。