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1961-10-27 第39回国会 参議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十七日(金曜日)    午後一時二十六分開会    ———————————  出席者は左の通り。    委員長     岸田 幸雄君    理事            岡村文四郎君            鳥畠徳次郎君            野上  進君            林田 正治君            相澤 重明君            北條 雋八君    委員            川上 為治君            上林 忠次君            木内 四郎君            佐藤 芳男君            田中 清一君            谷口 慶吉君            谷村 貞治君            阿部 竹松君            大森 創造君            北村  暢君            千葉千代世君            奥 むめお君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 齋藤  昇君    労 働 大 臣 福永 健司君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    警察庁刑事局長 新井  裕君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    大蔵省主計局長 石野 信一君    文部政務次官  長谷川 峻君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    通商産業省石炭    局長      今井  博君    運輸省鉄道監督    局長      岡本  悟君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君    労働省職業訓練    局長      三治 重信君    ———————————    会計検査院長  芥川  治君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    運輸審議会会長 青柳 一郎君    自治省選挙局長 松村 清之君    ———————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○昭和三十四年度一般会計歳入歳出決  算(第三十八回国会内閣提出)(継続  案件) ○昭和三十四年度特別会計歳入歳出決  算(第三十八回国会内閣提出)(継続  案件) ○昭和三十四年度国税収納金整理資金  受払計算書(第三十八回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和三十四年度政府関係機関決算書  (第三十八回国会内閣提出)(継続案  件) ○昭和三十四年度国有財産増減及び現  在額総計算書(第三十八回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和三十四年度国有財産無償貸付状  況総計算書(第三十八回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和三十四年度物品増減及び現在額  総計算書(第三十八回国会内閣提出)  (継続案件)    ———————————
  2. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) これより決算委員会を開会いたします。  理事補欠互選についてお諮りいたします。委員変更に伴い理事一名欠員となっておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じまするが、その互選方法成規の手続を省略いたしまして、便宜委員長においてその指名を行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 御異議ないと認め、私より野上進君を理事に指名いたします。    ———————————
  4. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 昭和三十四年度決算ほか三件を一括して議題といたします。前回の委員会に引き続き総括質疑を続行いたします。質疑の通告がございますので順次発言を許します。
  5. 大森創造

    大森創造君 総理もしくは官房長官に来ていただいて御答弁を願う予定でございますが、いろいろ都合がありますのでその他の方がお見えですから、皆さん方のほうから順次お尋ねしたいと思います。  まず武鉄の問題からお尋ねいたします。武鉄の問題についてああいう結果になったことは、述べれば切りがございませんが、一番中心的な欠陥はどこにあったとお考えですか。むずかしい問題ですが。
  6. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) 武鉄問題はまことに遺憾なできごとでございまして、再びこういうことのないように期したいと思っている次第でございますが、あの問題の起こったのはどこに一番欠陥があると思うかということでございます。事件は一応司法当局におきまして捜査は一段落したようでございまするが、今後なおこれが最後の判決の帰結を見なければわかりませんが、今までの検察庁の調べる基礎になった事柄が事実であるという前提に立ちまするならば、国政を担当いたしまする責任のある者は、今後もっと、何と言いますか、清潔にやってもらうことが必要であろう、かように申し上げる以外にないと思います。
  7. 大森創造

    大森創造君 過ぎ去ったことをいろいろ申し上げても何ですが、過ぎ去ったことを言わないと今後の発展がございませんから申し上げますが、大体楢橋さんはどうも池田さんや、あれは岸内閣のときですけれども、岸さんのおめがね違いであったわけです。まさかああいうことをするはずはないと思っておりました。ところが、どうしてどうしてたいしたことをやった。フランスへ行かれたりそれから北京飯店の支配人をやられたりして、どうも、楢橋さんもそうだが、奥さんも容貌に似合わず非常にずうずうしいお方だと私は思うのです。白面の一青年の、選挙区でもない滝島という人から二千数百万円という金をちょうだいした。これは何げなしに済まされるような問題ではないと思う。今運輸大臣のお答えのように道義の頽廃もきわまる問題だと思う。これで下級官僚に綱紀の粛正だなんて言えた義理ではないと思う。そこでそういう楢橘橋個人大臣なる人の心がまえの問題もございますが、私の見るところでは運輸審議会というものについて実はメスを当てにやならぬと思います。青柳会長以下運審の方一生懸命にやっておられますが、これはまだまだ運輸審議会について改善を要するところがあると思います。それについて青柳会長おいでになっておりますが、いかなるお考えでございますか。それは皆さん方職務は非常に重大でございまするし、広範な事務をあずかっておられますので、御熱心にやられたことはわかりますが、運輸審議会が悪いからこういうスキャンダルが起きたということには、私は全然思いませんけれども、あなたが運審会長としてごらんになった場合に、運審あり方というものをかくあるべしという姿があると思いますが、ありましたならば一つお聞かせをいただきたい。
  8. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 青柳でございます。運審機構につきましては、もう御研究済みだと思いますが、われわれ委員は七名で、うち一名は事務次官事務次官はあまり御出席がありません。ときどき呼びまして出ることはございます。その下に審理を受け持つ事務的の熟達者が七名おります。称して審理官と申しておりますが、私は審理官の増強を希望いたしたいと思います。それと同時に、われわれにはある程度の諮問機関としての権限を与えられておりまするが、その権限を実際に行なうために各種の予算的の措置が足らないのじゃないか。大体現状六、七名でもってたくさんの、しかも具体的の案件を一つ一つ公平に筋を通してきめていくということに終始苦労をいたしております。それにいたしましても補助者増員、あるいはときによっては現地に検証すると申しまするか、実地にそんな調査をするというふうな権能を与えられるための予算、そういうものがほしいものと存じております。
  9. 大森創造

    大森創造君 私は今青柳会長がおっしゃる点は、運輸当局として一日も早く研究をせなければならぬと思います。たまたま武鉄の問題が起きたからということではございませんが、ころばぬ先のつえと申しますか、運審あり方についてこれを解散するか、あるいは再検討するか、そういうお気持ちでやられることが運輸当局の任務だろうと思います。今お話ありましたように、実質的にはこれは独立機関にはなっておりませんね。おそらくそうだろうと思う。資料は全部運輸省からもらっている。審理官というのは七人しかいない。陸海空全体の輸送関係免許、許可、認可、全部やるのですから容易でないと思います。大体運輸省自体がこういう事務をやっていてはまずいということで、何年か前に運審なるものを発足させた。名目はそういう運審というものを作ってみても、ただいま会長がおっしゃるとおり、実質的に仕事をするような予算措置もやらないし、審理官の数も少ない。齋藤運輸大臣はそういう気持ちはないと思いますが、えてして日本官僚というものは名目だけ与えて、そうしてそれだけの責任ある仕事をするだけの内容を与えていない。そういう責任体制を持つような委員会の存在というものは運輸省自体あまり歓迎しないという向きが潜在意識的にある。そうだろうと私は思う。それではいけない。運審でありますから、これはしっかりした独立機関名実ともにということ、それがたとえ運輸省の方々にとって好ましくなくても何でも、作ったことならそうするというのが私は建前だと思います。そういうふうに運輸大臣考えになりませんか。
  10. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) ただいま運審委員長の述べられた点につきましては、十分考究をいたしたいと思いますが、私は、この運審機能というものは、何といいますか、公正な立場で物事を判断するということが主たる生命であろうと思います。政治的に左右されない、そうして良心的に判断をするということが一番の肝要なことだと、かように考えております。その面におきましては法律上は十分な保障は与えられているわけであります。したがいまして、そういう意味から申しまして根本的な運審あり方を再検討するということにつきましては、私は、必要がないと言うと語弊かもわかりませんが、今日のあり方でいいのじゃないかと、かように考えております。しかし機能を発揮するために今運審会長の言われましたような事柄につきましては、これはよく検討していきたいと思っております。
  11. 大森創造

    大森創造君 この運審にしても何の委員会でもそうですが、お金がなくても名目は成立すると思うんです。旅費、日当のわずかでもやると町村でも府県でもそうですが、それで名目は一応済まされるし、また会議やるときはやってもいいが、それでは実質的な運審機能というものは発揮されないんじゃないか。今度の汚職とは関係ございませんけれども、私は本来あるべき運審の姿として、今会長の言うように、まず予算が足りない、それから審理官の数が足りない。そうでしょう、名目上の運審であって、運輸省事務次官の言うことを聞いて何も右から左へやるということなら、運輸省自体にとっても何ら痛痒を感じないんですが、本来の運審という立場からすると、まず審理官を増大すること、それから動けるように予算をくれてやることが筋じゃないかと思う。各省の委員会審議会なんかは金がなくたって名目は成り立ちますよ、無用の長物だ。私は、委員会などというような、話は違いますが、会長にお尋ねしたいんですけれども、原水爆でも共産党やその他の方が熱心にやられる。そうすると、東大総長とかあるいは何とか官僚だというような人が、そのことについてそれほど関心のない人が名目委員にさせられる。だんだん事態が進行してくると、あわてふためいておれは知らないというような傾向が近ごろふえている。運輸審議会運営について、武鉄という、これはなかなか特殊な技術を必要といたしますが、私の想像では、運審はわかりませんが、その他の審議会委員会などというようなものは、えてしてその問題に関心を持つ人のほうに業者の圧力がかかって、したがって、その委員ばかり勉強して、その他の公正な第三者の立場にあるような、学識経験者とおぼしき人が忘れられてくるというような、ほかの委員会ではそういう例があるのですが、運審についてはそういうことはございませんか。
  12. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 結論的なお尋ねに対しましては、私は専門的な方のほかに、やはり普通常識をもって事の判断をする人が必要だろう、こう存じます。運審におきましては、もちろん運審運輸省内部機関でございます、しかしながら一方において独立な心証をもってことの判断に当たるという規定がございます。と同時に運審答申大臣はこれを尊重するという法律がございます、設置法に。したがいまして設置法を読んでみますと、運審におきましては関係部局を呼びましてその説明を聞く、また意見を聞くというふうなことになっております。実際の運営にあたりましてはその調査についても大いに質疑応答を重ねます。また意見についても対立する場合があり得ます、しばしばあるのです。その際には両者引き下がってまた調査をし直す、あるいはまた意見の調整をするということによりまして、運輸行政の一本化を策しておる次第であります。普通の人間も、普通の人間というとおかしゅうございますが、普通常識をもって、俗に申し上げますると筋の立った解決方法をわれわれ努力しておる次第であります。
  13. 大森創造

    大森創造君 この運審というのは運輸省内部機構なんですか。
  14. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 総理大臣の任命を受けまして、運輸省に所属し、常置されるものであります。
  15. 大森創造

    大森創造君 私は会長のお話のように予算を増額し、審議官というものを増員するということを具体的な運輸当局がとってほしいと思います。まあ運輸大臣はどういうお考えかわからないが、運審などというものはなくてもいいじゃないかというお考えもございます。
  16. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) 私は運輸審議会は必要な機関だと思います。
  17. 大森創造

    大森創造君 必要な機関だということで、運審というものがそれならば、現在もよくやって下さいますが、さらにしっかりやるために、その衝に当たっている会長が言うように予算審議官増員をはかりたいということについては支持なさいますか。
  18. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) だから今も申しておりますように、よく検討いたしますと申し上げたわけであります。
  19. 大森創造

    大森創造君 それではひとつ御検討をいただくことにして次に移ります。  武鉄の問題、いろいろいきさつございましたが、適正な審議の結果、科学的な分析の結果、人的な、物的なその他の条件を検討した結果、認可という結論が出た。これは念を押しますが、そういうことでございますね、運輸大臣
  20. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) 当時私はまだ責任者でございませんでしたが、後にずっと経過を調べてみまして、ああいう結論になったのも相当であろうと、かように考えております。
  21. 大森創造

    大森創造君 そうするとこれはまあ当然認可さるべきものが認可されたということになりますね。
  22. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) 他のところでも御説明を申しておりますように、当初の計画、当初の人的要素では認可ができなかったであろうと思います。ところがその後いろいろと変更が加えられまして、そうしてああいう条件を具備した以上は認可をされるのが至当であったろうと、こう考えます。ただ当時裏面にああいう事柄があったということがわかっておったならどういう結果になったか、これはまた私は別な判断が出てこようかと思います。
  23. 大森創造

    大森創造君 そうしますと、あれだけの大事件が起きて楢橋渡運輸大臣夫妻初め関係者がそれぞれ起訴になったりしておりますが、それで、ばらまかれた金が検察庁の発表によると五千数百万円ということなんだが、五千数百万円は、これは皮肉な言い方ですが、使ったって使わなくったって同じ結果になったということでございましょうか。これは運輸大臣に聞くのも何ですが、そういうことでございましょうか。
  24. 斎藤昇

    国務大臣齋藤昇君) 私が書類その他で検討した限りにおきましては、さようでございます。
  25. 大森創造

    大森創造君 私が当初一番初め武鉄の問題について運輸大臣その他の方にちょっとお尋ねいたした点はここです。運審が主催するんですか、あの公聴会というのは。その主催した公聴会運審が昨年はみんな反対したという。それで去年の十一月の総選挙がはさまって、まあ総選挙を引き合いに出すのは何ですが、総選挙がはさまって、それでことしになってから、そいつがスムーズに許可されたということでございますが、思想の変化と申しますか、考え方の変化と申しますか、運輸大臣は、いろいろな条件を変えて来たから、前はだめだったが今度はよくなったという御説明でございます。どうですか。この武鉄の問題について運審の中で警戒的な意見といいますか、こいつはどうもまずいという意見を言うた方がございますか。
  26. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 公聴会のみが審議の場面ではございません。十回にわたって審議をいたしておりますが、その間において、ただいま御発言のように、これに反対があるという意見を表明した人は一人もございません。
  27. 大森創造

    大森創造君 そこで運輸大臣にお伺いしますが、運輸大臣は当時の事情はおわかりにならなかったかもしれないが、運輸省に、どなたか大臣以外の方がお見えになっておられるならばお聞きしたいと思います。私はこの事件について今齋藤運輸大臣が、こういうスキャンダルが当時わかっていたならば認可したかどうかわからないということをおっしゃいましたけれども、運輸省高級官僚はわからないはずないと思うんですよ、私は。一部の方はわかっていたのと違いますか。楢橋運輸大臣が近ごろそわそわしているとか、一部の代議士が異常に熱心であるとか。そこが私はちょっと常識的に考えられないんだな。大臣は当時御就任になっておらないからいいけれども、運輸省高級官僚が毎日運輸省に詰めていて、そうしてあれですね、私鉄の問題なんかについて技術的に詳しいんだ、運輸省の空気もわかるんですよ。運審あり方だってわかるんですよ。わかっていて黙っていたのと違いますか。
  28. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) 私も昨年七月に現在の職務につきましたので、楢橋大臣には鉄道監督局長といたしましてお仕えしたのはわずか一週間ばかりだったかと存じます。そういうことは全然存じませんでした。
  29. 大森創造

    大森創造君 私の調べたところによると、民鉄部長石井健という人が終始ずっと反対していたようですね、どうですか。
  30. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) そういうことは存じません。
  31. 大森創造

    大森創造君 私は存じているんです。あなたはうそを言っているのと違いますか。存じているのに存じていないということを言っているのと違いますか。重ねて答えていただきたい。
  32. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) 存じておりません。
  33. 大森創造

    大森創造君 石井健という人は、終始一貫この武鉄の問題については反対をしている。三十四年の七月に就任をして、そうしてやめたのは三十六年の七月何日か、やめさせられているのかやめたのか知らないがやめている。そうして、これは運審決定の前日か当日に終始一貫反対した民鉄部長石井健という人がやめている。その当日運審が満場一致決定した。二日おいて七月六日に答申がなされている。七月十一日に免許という、そういうくだりに相なっておる。この人事関係ございませんか、監督局長
  34. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) 私の存じております範囲内では、富士急行のほうからぜひともくれという話が私のほうの前の大臣であります木暮大臣なり、あるいは政務次官でありました福家先生のほうへ申し出がございまして、それならばこういう人をあっせんしようかということで話がまとまったように聞いております。
  35. 大森創造

    大森創造君 富士急行のほうに要望されたから行ったと言うても、これは偶然の一致かどうか。富士急行に行った。その日かそのあしたに運審が決定された。運審のほうは関係ないでございましょうが、とにかく運輸当局初めこの武鉄については割り切っちまおう、いろいろあっても割り切っちゃおう、そこで七月六日が答申、七月十一日免許ということになって、これはもう石井という部長はこういう運輸省内部に居ずらくなってみずから身を引いたのと違いますか。
  36. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) その関係人事は前の次官が勇退いたしましたにつきましての関連の人事でございまして、その事情は前に申し上げたとおりでございます。
  37. 大森創造

    大森創造君 とにかく私が聞いた範囲ではこの人が終始一貫反対した。これはあなたも腹の中ではお知りになっていると思うのです。反対意見がないはずはないんですよ。運輸省はそんなにたよりない人ばかりじゃない。鉄道監督局長だって内心でどうかと思っていた。どうかと思っている人が相当いるのですよ、さすがに日本官僚で、技術的にわかる人ですから。だけれどもそいつを言わないのですよ。また国会場所に来ても言明をされないのです。これはこの場所であなたにお伺いしても始まらないことなんだが、これは私は連関あると思うし、確実にこれは連関があると思う。そこで監督局長やその他の方にひとつ用心までに申し上げておきますが、楢橋さんが偉いのではないのですよ。池田さんが偉いわけじゃないですよ。国民を愛する立場から武鉄認可はばっちりやるならやるという態度をとる。そうしていいことはいい、右顧左眄しないで、国会でも何でも言ってもらったらいいと思う。そうするとあやまちを起こさない。それでまあ役人根性で、もうあと十五年二十年、三十年も勤めているわけじゃないから、そんなに勇ましいことをやらなくてもいいからという気持でなく、しっかりした態度でやっていただきたいと思うのです。この項は終わります。  それから次に移りますが、楢橋夫妻が二千数百万円の、先ほど申し上げたとおり選挙区の人でもない白面の一青年からお金をもらったという神経のずうずうしさ、これはもう池田内閣ならでは見られない現象だと思いますね。総裁公選に大口の金がばらまかれるようなそういう内閣にこそふさわしき、これは悪の花であろうと私は思う。表面は何と言おうとそうですよ。あと十年、二十年たってからだって絶対これは私の言うことに間違いない、麻痺している。大体ここらでいいじゃないか、今どきはあれもお金を使う、あれも選挙違反やっている、だからいいじゃないか。五万や十万、百万、二百万の金はいいじゃないか。私はきのうも法務委員会で申し上げましたけれども、権力の座にある者は非常にこの際センシチブでなきゃならない、慎重でなきゃならないと思うのです。そうでなければ絶対にこの国政の浄化、刷新なんということはできませんよ。原水爆の禁止、核爆発がどうのこうのと言ったってだめですよ。  そこで余談はさておいて、私は申し上げますが、これは庶民の感情としてこういうふうに見ていますよ。ああ造船汚職というのがあったな、あれはふいになっちゃった。今度も二千数百万円もらった。この間本会議でもって質問をして、池田総理に二千数百万円は届けがありましたかと言ったらば、池田総理は届けございません。竹内刑事局長個人献金であるというようなことをおっしゃった。これは私は大多数の国民の側から見るというと、こういうふうに受け取っていますよ。二千数百万円のお金というものはなぜ持ってきたのだろう。なぜ受け取ったのだろう。金詰まりの現在二千数百万円の金を個人献金、これはどうも私は頭が悪いからわからない。あとでお教え願いたいと思うのだが、個人献金。そうすると、これに対する対価といいますか、そのお金をやったことに対するお返し、これを予想してやっているのでしょうね。これは法務大臣にお伺いします。  あなたは人情の機微を御存じでしょう。もう一回申し上げますよ。滝島という人が二千数百万円、選挙区でないですよ、選挙区でない、お金は幾らあっても足りないから埼玉銀行から相当無理して金を借りた。その人が二千数百万円の金を楢橋さんに渡すというのは、お金をやったからそのお返しをやってくれるであろうということを多分に期待してやったことでしょうね、滝島立場からするというと。それに似たようなことがちょいちょいありますが、これは小説的な御感想でけっこうですから、ひとつ法務大臣お答え願いたい。
  38. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今、事の真相はいずれ公判において明らかになると思いますが、一応検察当局の取り調べましたところによりますと、滝島のほうでは、この武鉄免許について便宜を与えてもらいたいという気持をもって持って行ったものと認められるのでございます。
  39. 大森創造

    大森創造君 それはそうだろうと思います。また、そこらの推察もできなければ政治家はできませんからね。植木法務大臣はさすがにあれですね。それはそうですよ。これは超党派でそうだと思うのですよ。二千数百万円金詰まりの現在、武鉄で金が要るのに持って行ったということは、これに対する報酬を予想してというか、報酬というか、それに二千数百万円金をもらうということじゃなくて、これに対するお返し仕事をしてくれるということを予想して持って行ったに違いない。受け取るほうは何というか、楢橋渡が偉いから二千数百万円持ってきてくれたとお考えでしょうけれども、これも植木法務大臣、あなた聡明な方だからもう一回お尋ねします。
  40. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) これは、まだその点につきましては、本人の検察当局に対する説明と申しますか、答弁の問題から見ますと、本人は純粋なるきれいな政治献金だと思った、こういうふうに言っておられますから、それ以上のことは御本人のこれは問題であり、私としては想像しかねます。
  41. 大森創造

    大森創造君 どうも植木法務大臣最初いいと思ったらあとからしり細りになってしまって、あなたそれほど頭の悪いはずはないのですよ。楢橋渡個人が偉いから二千数百万円持ってきた、そういう御認識ですか。あなた、ちょっと法務大臣考えて下さい。それほど頭悪くて……もう一回……そうでないでしょう。言わなくてもわかるでしょうというお考えですか、ひとつお答え願います。ここのところが一番肝心ですから。
  42. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 私としましては、いずれ公判廷において公判によって本人の考え方もおそらくお述べになるでしょうし、ただいまお答えした以上のことは何とも想像して申し上げることは、あるいは間違ってはいけませんから、以上の答弁でお許しを願いたいのでございます。
  43. 大森創造

    大森創造君 お許しを願いたいと言ってにこにこ笑ったから、おそらく腹の中は私と同じだろうと思うのですが、二千数百万円というとこれは大金ですよ。私など見たこともない、今後も見ることはないであろうと思います。そういう金を持ってきて、そして選挙区でもない人が御丁寧に、おれがえらいから持ってきてくれた……。大体自民党の人はそういうふうに考える、うからやからが多いんでしょうかな。私はもう少し潔癖だ。まず純粋な政治献金というやつは今どき一万円以上はないだろうと考える、私の考えでは。おれがえらいから政治献金を持ってきた。これをそっくり受け取る。どうもここらはちょっと困りますね。そういうあれでは。  そこで竹内刑事局長にお伺いをしますが、そういう種類の金は、はっきり検察庁や警察で調べた汚職の金と実質的に相違はないのでしょう、いかがですか。
  44. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 御質問の御趣旨がよくわかりかねるのでございますが、そのような政治献金汚職と同じであるかどうかということでございましょうか。もう一度。
  45. 大森創造

    大森創造君 補足説明いたしますが、私はそういう今法務大臣に答弁を、感想を求めたような種類の金でございますから、検察庁や警察で問題になって、それによって起訴された金という汚職の金、不浄の金、それと実質的に変わりはないのかという御質問ですが、まだおわかりになりませんかな。
  46. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 誤解をいたしておりましたら何度でも御質問いただきたいと思いますが、ただいま楢橋運輸大臣の受け取りました政治献金と称する金につきましては、本人の弁解はともかくといたしまして、諸般の証拠から、検察庁は、これは冒涜職の金であるわいろである、という認定をいたしまして、起訴をいたしておる状況でございます。
  47. 大森創造

    大森創造君 それは楢橋さんの二千数百万円について、そういうことでございますか。
  48. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) そのとおりでございます。
  49. 大森創造

    大森創造君 そこで刑事局長にお伺いをしますが、どうでしょうか。造船疑獄その他の問題について、庶民の感情としては、おれの月給は二万三千円だ、子供は三人で、今度は人事院の励告があったからベースアップになると思ったら十月になったというようなことで、電車に乗って、汽車に乗って、みんな庶民の感情を訴えておる。それが圧倒的多数であると思う。個人献金という点について、何か規制する法律の必要をお考えになりませんか。
  50. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 世間でよく政治献金という言葉を使うわけでございますが、これは法律用語として政治献金という言葉があるわけではなくて、その政治献金といわれておりますものの中に、政治家が政治活動の資金として他から寄付を受けてもらう。そういう金を広く政治献金というふうに理解をいたしますならば、その政治家の中に、政治家自身国会議員という公職にある者もあるわけでございますけれども、また国会議員の中で何々大臣という職責にある者もあるわけでございまして、そういう公職にあります方が、その公職の職務に関してその金を受け取ったということになりますと、刑法のいわゆるわいろ罪に該当するわけでございますが、このわいろ罪につきましては御承知のとおりかなりきびしい構成要件がございまして、職務に関しないものはわいろにならないと、こういうことになっております。そこで職務に関しない金、そういうわいろにならない政治献金というものにつきまして日本の現在の法制はどうなっているかということになりますと、御承知のとおりこれが政治団体のために金を受け取ったという場合には、これは政治資金規正法に触れるところで規制を受けるところでございますし、選挙中でございますと、一部の寄付につきましては法の禁止するところでありますし、また禁止しないまです届出その他によって規制を受けるのでございますが、選挙法の規制もなし政治資金規正法の規制も受けずという、しかもわいろにもならないという政治献金のようなものが存在いたしますことは私も認めるのでございます。そういうものにつきまして、これを規制して法人であるからと言ってこれを規制して国民の前にすべてその収入関係を明らかにするということがはたしていいかどうかという問題がそこにあろうかと思います。この点は慎重に検討を要するところであろうかと考えております。
  51. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  52. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記を始めて。
  53. 大森創造

    大森創造君 竹内刑事局長にお伺いしますが、あなたが今御説明されたことでよくわかりますが、そういう団体としての献金ということなら政治資金規正法、そうでないものについてそれを規制する法律を作ることはどうかというような趣旨、私はどうかでなくてやってほしいと思うのです。政治的暴力行為防止法案なんて、ああいうむずかしい法律を作るくらいならば、これは自民党でも今私が申し上げたような意味で法制化の研究をする情熱はよもやおありでないと思うから、これは法制局なりあなたのほうにひとつお考え願いたいと思う。まことに不思議だと思う、僕は。今まで申し上げましたような意味で個人への政治献金というものがむずかしいのですが、これは捕捉もずかしいし、規制もむずかしいのですが、ひとつ御研究願いたい。二年たっても三年たってもけっこうですから、そこが一番疑問だし、そこが一番焦点だと思うのです。また金で済まされちゃったという印象が強いし、実質的に不浄の金がそのままするするまかり通るということになればゆゆしき問題だと思う。まあ竹内局長研究をいただきたいと思います。  そこでこれは総理大臣あとでおいでになったときに申し上げるつもりでございますから先に移りますが、椎名さんの問題についてお伺いします。あれはどういうふうになっていますか。前通産大臣椎名悦三郎氏の出納責任者、総括責任者逃亡事件、三年四カ月、現在までの経緯を簡単に御説明願いたい。
  54. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) ただいまお話のありました椎名悦三郎議員派の昭和三十三年の五月二十二日施行の衆議院議員選挙にあたりまして、出納責任者であります松川昌蔵氏及びその妻敏両名が買収違反を犯した容疑がございまして、その額はさして大なるものではございませんが、選挙運動者である佐藤なにがしほか三十四名の者に対して現金七万二千円を供与したという容疑があったわけでございまして、関係者はそれぞれ取り調べを受け起訴をされたのでございますが、その場合におきまして右松川夫妻を取り調べようといたしました盛岡地方検察庁において両名の出頭を求めたのでございますが、三十三年の六月上旬その所在が不明になってしまいまして、そこで検察庁並びに警察当局におきましては、極力その所在を捜査したのでございますが、ついに発見ができない状態でございました。しかるところ、関係者の裁判がすでに確定をいたしておりまして、証憑すこぶる明白でございましたので、それともう一つは、それによって時効の停止を求めていくという考え方もございまして、昭和三十五年九月七日、右両名逃走中のまま盛岡地方裁判所一ノ関支部に起訴をいたしたのでございます。もちろん両名とも逃走中でございますので、起訴状の送達はできない。できない結果としまして公訴棄却の裁判があるわけでございますが、その年の十一月八日、裁判所におきましては、起訴状不送達の理由によりまして控訴棄却となったのでございます。そこで盛岡地方検察庁においては、やむを得ず事件を一応中止処分にしたのでございますが、その後も鋭意所在の追及に努めて参ったのでございます。そういたしておりますうちに、去る十月十七日になりまして、妻の松川敏氏が盛岡地方検察庁一ノ関支部に任意出頭して参りまして、またその妻の話によりまして、松川昌蔵氏もその所在が判明したのでございまして、そこで検察庁におきましては、直ちに捜査を開始いたしました。ただいま鋭意取り調べ中でございます。報告によりますと、松川敏に対しましては、去る二十五日逮捕状を執行いたしまして、身柄を拘束、取り調べ中でございます。一方松川昌蔵氏は、ただいま一ノ関市内の西城病院に高血圧及び肝臓障害のために入院中でございまして、安静を要するという状態でありますために、身柄拘束は行なってはおりませんが、病状に支障のない限りにおきまして、臨床尋問もいたしているやに報告を受けております。以上であります。
  55. 大森創造

    大森創造君 公明選挙運動に相当膨大なお金を使っても違反事件は累増する、まことに皮肉なことでございますが、事実はそうでございます。椎名さんは前通産大臣——岸さんか池田さんかどっちかがお認めになって、通産大臣の地位につかれたが、またもや選挙違反。これはお尋ねしますが、この松川昌蔵という人が総括責任者並びに出納責任者であって、この夫妻からお金をもらった人は何人起訴されておりますか。
  56. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 先ほどちょっと触れたと思いますが、佐藤俊一外三十四名に対して起訴をいたしております。
  57. 大森創造

    大森創造君 その佐藤さん外三十四名が、松川夫妻の手から現ナマをもらって起訴をされたのですね。
  58. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) ちょっと正確には記録を少し読んでみないとお答えしにくいのでございますが、手元にある一覧表によって見ますと、系統図から申しますとそういうふうになっております。多分直接もらっておるものと思います。
  59. 大森創造

    大森創造君 そうすると松川昌蔵並びに敏という奥さん、前市長で元代議士の夫妻ですね。この人の総括責任者から現金を渡した人が三十四名、罪状明白で有罪になっているとすれば、松川昌蔵氏夫妻は有罪は免れませんね。
  60. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 捜査当局の観点からいたしますと、有罪を免れないものと存じます。
  61. 大森創造

    大森創造君 私の調べたところによると、三十三年の六月上旬にふっといなくなってしまって、そして東京都内の世田谷におられた。昨年の十二月ごろ警視庁ではわかっていたというお話ですが、警察のほうの御関係の方はどういうことでございますか。
  62. 新井裕

    政府委員(新井裕君) ただいまお話がありましたことは、おそらく一部の新聞紙に出たことだと思いますけれども、新聞紙に報ぜられたことは必ずしも真実とは合わないのでありますが、大体この松川夫婦の立ち回り先は秋田県と東京都ということでありまして、手配の最初から東京都と並びに秋田県におきましては格別の関心をもって捜査を進めて参りましたので、しばしば東京あるいは秋田県——もちろん地元の岩手県も含みますが、情報がございましたが、いずれも所在が確認されないままに終わっておったわけでございます。
  63. 大森創造

    大森創造君 事実は違うではありませんか。去年の十二月ごろに奥さんがあんまを頼んで、そして警視庁の方にそれがわかって現場についてお調べに行かれたような事実がございましょう。
  64. 新井裕

    政府委員(新井裕君) どの事実をさしておられるのか、またその記事もどういう所から入手されましたのか、私どもでは承知いたしておりませんけれども、昨年の十二月にこういうことがあったということでは、ございません。三十三年、三十四年、三十五年、三十六年と四カ年ともずいぶんと情報はございましたけれども、いずれも確認せられないままに終わったわけでございます。ただ、この際お尋ねはございませんけれども、その記事に関連いたしまして十二月に情報があったけれども、盛岡からなかなか出てこないで、二月になって出てきたというような記事がありまして、いかにも盛岡が怠慢であるような記事の書き方でございますけれども手配と申しますのは手配先、手配を受けた先で捜査をするのが、原則でございまして、特別にはっきりしないけれども、これはそっちでも見てくれと言われたときに、手配をいたしましたものの県から適宜捜査官を派遣いたしまして捜査をいたしておるわけでございます。
  65. 大森創造

    大森創造君 警視庁のほうで大体この足取りをつかんで、そして地元のほうに連絡したのは事実でございますね。
  66. 新井裕

    政府委員(新井裕君) どういう……。
  67. 大森創造

    大森創造君 警視庁のほうは大体世田谷にそれらしい者がいるという情報をつかんで、岩手県警のほうに連絡をされたことは事実ですね。
  68. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 一回や二回でなくしばしば連絡はいたしておりまして、また情報がございましたのは世田谷だけではございませんでしばしば連絡をいたしております。最近では連絡によって二月になって岩手県から上京して、共同で捜査をいたしましたわけでありますけれども、これもまた不成功に終わったわけであります。
  69. 大森創造

    大森創造君 これはどうしてもつかまえようということで、情熱を持って警察はかかられましたか。
  70. 新井裕

    政府委員(新井裕君) ただいま申し上げましたように、全国の手配をいたしますと同時に、東京と秋田について、もちろん地元の県を含めまして、この三県は最も立ち回る見込みが強いというので、しばしば情報もありましてずいぶんと捜査をいたしておって、実は一度棄却をいたしましたので手配が解除になりましたけれども、再びまた手配をし直しましてあらためて捜査をいたしております。最近の例ではことしの二月になりまして、あらためて手配書を写真入りで三千枚印刷して、全国に配付をいたして熱心に捜査を続けてきたわけでございます。
  71. 大森創造

    大森創造君 この事件考えてみますると、三十三年の総選挙——だいぶ古い話ですが、それから三年四カ月逃げていて、椎名悦三郎前通産大臣選挙の総括責任者——出納責任者ですね、その松川昌蔵という責任者からお金をもらった人が、今刑事局長の御答弁によると三十四名有罪ということになって起訴されている。そうすると、今のお話にありますように、この間自首してきたということ、そうすると連座制——まあ想像するところ、松川昌蔵夫妻は有罪が決定するでありましょうが、連座制にひっかからないことになるんですね。これはどなたかお答え願います。
  72. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) さようでございます。選挙法の解釈上、連座制にはひっかからないことになると思います。
  73. 大森創造

    大森創造君 これはまあ自民党の方にもお考え願いたいと思うのですが、まことに実にずうずうしいです、やり方が。大臣のときには黙っていて、知らぬ存ぜぬ……。今も奥むめおさんがおっしゃいましたが、あのときの総理大臣にひざ詰め談判をして、こういう者を大臣にさせるとは何だということを言うた。椎名通産大臣はしゃあしゃあとしてひな壇にお並びになっている。私の想像ではおそらくこの夫妻の生活費を見ていたに相違ない。百も承知、二百も合点だ。そこで、幾ら非難されてもしゃあしゃあとしておられて、そして三年四カ月たったら自分が大臣をやめた、本人のほうもお金がなくなってきた。さて出てきて有罪の判決をしたって椎名さんには及ばない。これをはかっていたんですよ、ちゃんと。それなりに、警察当局が凶悪犯人でも探すような情熱でもってこれは探してほしかった。今から有罪の判定をされたってこれは椎名悦三郎氏の代議士は失格しない、連座制の規定が適用されない。ここらですよ。先ほど楢橋さんの問題についても申し上げたように、なるほど法律はそうなっているが、大臣がこういうことをやるんだから……。かすに時間をもってすると連座制規定にひっかからない。実質は同じでしょう。それで政府は、通産大臣も含めて、公明選挙運動……。こころみに聞きますが松村さん、公明選挙運動に予算をなんぼ使ってますか。
  74. 松村清之

    説明員(松村清之君) 国の経費は昨年まで一億三千万円ですが、ことしは三億使っております。
  75. 大森創造

    大森創造君 三億もの金を使って、そうして内閣の枢要な地位にある大臣が今申し上げたようなことをやっている、ぬけぬけとやっている。大臣はやめた、今出てきて自首したってさしつかえない、おれの首には関係しない、——はかってるんです、やり方を。こういうのは公明選挙を毒しますね。あなたはどう思いますか。
  76. 松村清之

    説明員(松村清之君) 私も全く同感でございます。
  77. 大森創造

    大森創造君 私は池田総理あとからおいでになったら一つお伺いしたいと思うので、あとのことは遠慮いたしますが、とんでもないことだと思う。風上にも置けない、こんな者は。幾ら要領がよくったって大臣なんかにすべきでない。今後は間違ってもすべきでない、こういう男を。法律の精神を愚弄している。  そこで警察の方にお伺いします。今度はまるで別の問題ですが、私はきのうの法務委員会でも新宿の自動車教習所の事件というものをだいぶ詳細に聞きましたが、めちゃくちゃな人権じゅうりんをやっている。あなたは御存じないかもしれませんが、一々こまかいことはお尋ねしません。警察の心がまえを私は聞きたい。小さい五十人くらいの労働組合、これの切りくずしをはかるため第二組合を作った。会社はもうかっているのに擬装閉鎖をしている、九月八日朝七時三十分、八十名の暴力団を先頭に、きのう質問しましたときも暴力団の端くれが来ました。暴力団を先頭に会社と警官何百人がそこに出て来た。そこで私は警備局長と一問一答をしたのですが、申し上げたいことはこのことなのです。権力の座にある者、警棒を持っている者は慎重にやってほしいということ。組合は安保のときは警察がなんぼ出て来ても安保反対の勢力のほうが人数が多かった、安保と事態は違うのですよ。小さな町工場で、もうかっているのに擬装閉鎖をして、そして賃金五千円の切り下げをやってそれを組合はのんだ、それにかけて今度は道交法の改正によるというと、五百円から九百円の値上げするときにまた元に戻すところはまた元に戻して、さらにベースアップもやろう、こういうことの協定違反、こういうことをやりながら、今度は九月八日に平穏に寝ている組合のほうになぐり込みをかけた。警察二百名、暴力団八十名、そこで私の知り得た情報では、警官と暴力団、会社側と相談をしてやってきたらしい。これはきのうも申し上げましたが、所轄の警察署長の個人差もあるだろうと思います。警察全体がそうではございません。安保のときとともかく事情が違います。小さい町工場の倒産あるいは労働争議というものが今後頻発するであろう。それに介在する警察のあり方というものはこれは、よほど慎重にしてもらわなければいかぬと思います。大体近ごろ警察のあり方が安保の当時とぐっと違ってきているのですが、何か労働争議について特別の指示、指令をやっているのですか、お伺いします。
  78. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 私全く所管を異にしておりますので、今御指摘のことは全くお答えする資格もございませんのでありますけれども、われわれの職務執行は常に厳正でなければならない。また達すべき目標と手段が比例をとっておらなければならない。何よりも人権を尊重しなければならぬという精神においては全く変わりございません。
  79. 大森創造

    大森創造君 私は警察、法務省の幹部級の方にお願いしたいと思う、これは超党的に。警察はデモきらい、まずデモというものは取り締まるものだ、労働争議、労働組合が悪い、自民党と社会党、社会党が悪い、こういう感覚の人が相当多い、あの警察の警棒を持つ手合いでは。これは警察というものの成立の経緯や歴史的な遠因、事情もございましょうが、どうもそういうセンスでもってこん棒を振り回すやつが多い。幹部の方は違いましょうけれども。ひとつ、なんぼ労働組合暴力をしたら押えてもけっこうでございますが、どうもそういう傾向が強い。これはよほど慎重に考えてもらわにゃいかぬと思うのです。警察の方に個人差もございましょうが、労働争議というと労働組合が悪い、そういう先入観念をもって事に当たるのですから、人件じゅうりんの事実をたくさん犯している。たとえばこういう事例がありました、きのう。これはひとつ御参考までにお聞き下さって警察ぐらいにお伝え願いたいと思います。組合員がナシを食べたい、暑いすから、九月八日ナシを拒否した。暴力団に便所へ行くことを拒否された。それを平然と見ているんだ、警察が。それで警備局長が部内で調べたから、自分の都合のいいことばかり報告を求めている。私は、確かに私の事実認定の違う点もあるかもしれませんが、あのケースは警察がもう少し慎重にやるべきだと思って、警棒を持っている者、権力を持っている者はひとつそれにおぼれないで、しっかり、公正な立場でやっていただきたいということの要望を申し上げたいと思います、この際ですから。  さてあと少しございまするけれども、総理大臣が来るまで留保いたしますので、肝心なところはあとに譲って、そのほうは短時間でございますから、ほんの十五分くらいでございますから、質疑を一応以上で打ち切ります。
  80. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の大森委員の綱紀粛正等の問題で御発言がありましたが、ちょっと関連質問さしていただきたいのですが、法務省として、武鉄問題で起訴をされたと、それで最終的に武鉄認可をめぐって幾らの収賄という額があがっておるのか。あなたのほうで起訴すす以上はだれは幾らもらったと、こういうことがあなたのほうでわかって初めてわいろとか収賄とかということで起訴したと思うのですね。それは全体で幾らになっておりますか。
  81. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) ここに資料を持ってきておらないのでございますが、私の記憶に基づきましてお答え申し上げますと、この武鉄事件と、いわれておりますのは、要するに武鉄免許を得たいという趣旨のものであったのでございますが、その責任者であります滝島一郎なる人物が、関係の会社からこの免許を得たいという趣旨で運動をするための金として、その手元に流れ込んだという金の額が約一億円といわれておるのでございますが、その一億円をさらに綿密に帳簿その他について検討してみますると、さらに六千万円がこの方面の金に使われたんではないかという客観的に帳簿上の容疑が出てきたのでございまして、捜査はもっぱらこの六千万円の資金の使途の究明ということに相なったのでございます。その結果として出て参りましたのが、楢橋運輸大臣に対する二千四百五十万円を初めとしまして、その金の使い道も逐次明らかになってきたのでございますが、それらの中には、全く犯罪と関係のない会社内部の金の裏金に使ったり、あるいはほかの会社に預けがえにしたというような金額もありまして、要するに世間で宣伝されたほど大規模なものでなかったことが今日判明されておるのでございますけれども、その金の使途の中ではっきりしましたものは、起訴すべきものは起訴を了したものでございます。起訴のできないものもあるわけでございまして、この点の金額を申し上げなければならぬという趣旨で御質問だったと思うのでございますが、この点は、まあ検察庁は犯罪を固めていく仕事を、職責を持っておるのでございまして、犯罪に当たらないものにつきましては、これを明らかにしますことは検察官としては行き過ぎになる、というふうに私考えておりますので御了承願いたいと思います。しかしながらはっきり申し上げますことは、裏づけは全部完全に取りつけておるということははっきり申し上げたいと思います。
  82. 相澤重明

    ○相澤重明君 青柳会長にお尋ねしたいのですが、運輸審議会が鉄道の免許を妥当と認めるかどうかということについて答申をする場合に、経理内容あるいはその設立の内容を調査をいたしますね。その中に、金額としてはまあわれわれの調べた点、私が代表質問で本会議で申し上げたことはおわかりだと思いますからそれは別にしまして、あなたが御調査されて、これならば武州鉄道が作れる、こういう答申をされたのは全体で区間としてどことどこ、それからそれは何キロであるか、総額は幾らであるか、それで自己資金と借入金というものはどういう比率になっているか、金額も合わせて御答弁いただきたいと思います。
  83. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 路線の距離でございますが、三鷹から東青梅を通りまして秩父市の御花畑まで六〇・三キロの区間でございます。これを三期に工事を完了する、たしか私の記憶が確かならば四十三年の三月までに完成する、こういうことでございます。要する資金は私どもの査定は六十億をこしますが、この会社と申しますか、創立せられようとしておりまする会社の資金といたしましては五十六億三千万円でございます。そのうち自己資金は三十億、借入金は二十六億円でございます。
  84. 相澤重明

    ○相澤重明君 それでその五十六億三千万円のうち自己資金が三十億、借入金が二十六億三千万、こういう大訳ですね。そこで現在までに青梅土地整理組合等に依頼をして土地買収に手をつけたと思うのですね。それで運審でごらんになったときには、この土地が手に入る、つまり鉄道が敷ける、こういうようなことがお考えになったればこそ初めて出たと思うのですが、その当時は実際にどのくらいの用地、武鉄のレールを敷くのに必要な用地というものは買収されておったのですか、おわかりになったらお答えいただきたいと思います。
  85. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) その点は免許が下りましたのちに工事施行認可の申請が行なわれます、一期々々行なわれます。その際に資金の裏づけ等行ないますのでございまして、用地の買収をどの程度でやっておるかということは審議の対象といたしませんでございました。
  86. 相澤重明

    ○相澤重明君 そうしますとあれですか、私はまあ公式的な御発言は了承をしても、運審としては鉄道を作るのに少なくとも都市で作る場合、近郊で作る場合、農村で作る場合、いろいろ違いますね、価格等の算定もかなり綿密に審査をされなければ、これで鉄道ができるとは答申ができないと私は思うのです。そういう点から申し上げまして、形式上は確かに仮免許をしていわゆる工事着手の状況のときに初めて内容的には調査をされるというけれども、すでにこの武鉄の場合には二十一億余の土地購入費を計上しておった、そのうち十一億が土地購入費として出されておると、こういうことを言われておったのでありますが、そういうようなことまでは運輸省なりあるいは運審においては何にも見ないで、ただこれを鉄道を敷くのには、輸送力増強なり今の輸送隘路を打開するのには、まことに当を得たことである、こういうことで答申をされるのですか。その点は一つ両方でよくお答えをいただきたいと思います。運輸省としては資料を運審提出する場合に、運輸審議会の各委員諸君に御討議をいただくのにはあらゆる角度からの資料を提出しなければならぬ責任がある。その責任の中でただ図面を引いてここからここまでは武鉄を一つ認可してほしいんだと、こう言うだけでは運輸審議会の対象にもならぬし、運輸審議会自身も御討議がむずかしい。そういう資金の問題や、あるいは確かに鉄道が敷かれるかどうか、こういうことについてもかなり深く私は御討議されたと思うのですが、そういう点についての資料の提出運輸省はどうしたか、それから運輸審議会はそういう点は全然討議をされなかったのか、こういう点、いま一度御答弁をいただきたい。
  87. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) この土地の問題でございますけれども、普通の場合におきましては、免許を得まして、それから期限内に工事施行認可申請を出しまして、その認可を得ましてから初めて土地買収にかかるのが通例であろうかと存じます。そこで免許申請事案の審査につきましては、実際敷設予定の土地が入手されておるかどうかということは、その場合においては審査しないわけでございます。つまりこの建設費の概算とかあるいは収支であるとかそういったことを中心といたしまして、事業の成否につきましては審査いたしますけれども、土地の問題は具体的にいよいよ工事にかかるという場合の問題でございまして、これは申請者の努力に待つといいますか、免許を得ました事業者なりの努力に待たなければならないのでありますので、あらかじめそれが入手が確実であるかどうかということについては別に問わないのでございます。したがいまして運輸審議会のほうに対しましてもそういう資料は提供いたしておりません。
  88. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) ただいまの御説明のとおりでございます。
  89. 相澤重明

    ○相澤重明君 そこで私はその青柳さんのお答えが非常に重要な問題になってくると思うのです。先ほどあなたは、私が自己資金、借入金で総額幾らかとこういう御質問を申し上げたときに、運審としてはまあ大体六十億ぐらいというお話があったんですけれども、武鉄認可事案として出されたものは五十六億三千万、そうすると、現在の東京を初めとしてこれらの区間に対する土地買収等の費用が、もし全然われわれは認可とは別に工事に着手するときに、実際の工事申請に基づいて調査をすればよろしいというような考え方でゆくと、これが百億かかる、こういうような場合には免許というものは、から免許になる。いわゆる第三者から見れば、運輸省というものは金が幾らかかるかわからぬ、土地は幾らで入手できるかわからぬけれども、ただ収支計算書が出されて、これが鉄道建設に必要であるというだけで、そうして免許をしてしまったけれども、実際に工事に入ってみたところがこれはできない、できないから第三者にその権利を譲渡する、こういうことになるということも言えないことではないじゃないか。あるいは免許をとっておきさえずれば、これは宝物になる、これは自分たちの権利になる、こういうことで株を増額すれば自分たちが大きなもうけができる、こういうことも言えないとは私は断言できないと思う。できるかできないかわからぬものを、とにかく収支計算書を机上だけで審査をして、それで事足りるというもし運輸省考えであれば、私はこれは非常に重大な問題である。そこで鉄監局長がそういうようなことで運輸省は今までの免許を与えるのに、運輸審議会答申を求めて資料を提供しておったのか、あるいは運輸審議会として青柳会長がお話になるように、六十億をわれわれとしては必要とするけれども、収支計算書を見て五十六億三千万円でこれを認可をしても鉄道は創設できる、レールを敷いて輸送力は増強できる、こういう確信のもとに運輸大臣答申をする、こういうことになったのか。これは重要な運輸審議会の今後の、私どもとしては運輸審議会が今後どうあったら正しい方向に、しかも国民の期待にこたえるようになるのかということを検討するのに重要な役割りを果たしますので、一つお答えをいただきたいと思う。これは一つ先に運輸省の鉄監局長のほうからお答えをいただきたいと思う。
  90. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) 免許申請をいたします場合に、法律上要求せられております添付書類は起業目論見書それから線路の予測図、建設費概算書、そういったものでございますが、つまり建設費は具体的にいよいよ工事に取りかかって、それが完成してみなければ正確な建設費というものは出せない理屈でございますから、そこで免許申請にあたりましては建設費の概算書、つまり線路の予測図でございますから実測図とは違いまして、ほんの地図の上にルートを書いておくという程度でございまして、それに基づく建設費の見積もりもほんの概算書にとどまるわけでございます。でいよいよ免許を得まして工事施行認可申請を出します際には、これは実測図に基づきまして、地方鉄道法上要求せられておる施設基準によりまして、具体的に線路の構造はどう、動力車はどう、一々それによりまして、建設費をはじくわけでございます。そこで初めてまず完成までの間の段階的なより正確な建設費というものが出て参るわけでございます。われわれといたしましては工事施行認可申請が出ました際に、そういう点を詳細にわたりまして、それが適切なものであるかどうかということを審査するわけでございます。実情におきましてもすでに承知かと存じますが、たとえば最近の例を見ますと、伊豆急行は申請におきましては建設費の概算を四十七億五千万円と見ておりましたけれども、現在では六十億を上回っております。あるいはこれは完成しまして、もっと多くなるかもしれぬと存じます。それから西武鉄道の池袋の延長線について見ますと、申請では二十二億七千万円の建設費の概算書を提出しておりましたが、工事施行認可申請の段階におきましては、これが三十六億三千七百万円に変わってきております。まあそういうことで概算でございますので、工事施行認可申請の段階に比較いたしますと、かなりラフなものが当初は出て参るということになっておるのが通例でございます。
  91. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) ただいまの御説明のとおりでございますが、株の引き受けとして二十二億円であったと思うのでございますが、そういう内諾書が出ております。それから金を借りる先の銀行が大体きまっております。その点を付加いたします。
  92. 相澤重明

    ○相澤重明君 あとの質問者ももう準備できましたし、また大臣もおそろいですからこれで終わりたいと思うんですが、こまかい点はいずれ関係の常任委員会等でやらしていただくし、また決算委員会に再度おいでをいただく時期もあると思いますから、そこで一つだけ最後に伺っておきたいんですが、収支見積計算書によって渉外関係費はどのくらいになっておったかおわかりになりませんか。
  93. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) 渉外関係費と申しますと、どんなものでございましょうか。
  94. 相澤重明

    ○相澤重明君 ですから、この創立をするのにいろいろ外部との交渉やら、まあ交通関係の費用があると思うんですよ。そういう費用というものは具体的にどのくらい会社自体として見積もっておったかということはおわかりになりませんか。
  95. 岡本悟

    政府委員岡本悟君) そういうことは出ておりません。また免許申請事案に必要な収支の見積書、あるいは建設費の概算書の中に、そういったことは必要であるということも要求いたしておりません。
  96. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連質問を一つ。先ほど青柳審議会長の答弁の中に、運輸審議委員が七名いてその下に審議官が七名いると、審議官増員したいと、こう述べられましたですね。何名まで増員したいのか、それから審議官のお仕事ですね、どういうわけで増員したいかということを聞かしていただきたいと思います。
  97. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 私は何名までという具体的なことは考えておりません。今やっております仕事の状況を見まして、非常に忙しいのが気の毒でございます。何名でも、というてもそうたくさんの要望をする必要はないと思いますが、二、三名でもできましたならばというふうにただ考えておるだけでございます。  それから審議官仕事と申しますのは、われわれの下働きをしてくれます。各種の調査、それからわれわれの意見が対立するときに、その間に受け継ぎをいたしまして、調査なり意見の調整なりをするのが仕事でございます。
  98. 千葉千代世

    千葉千代世君 その審議官はどなたが任命なさるのでしょうか。
  99. 青柳一郎

    説明員青柳一郎君) 運輸大臣でございます。
  100. 千葉千代世

    千葉千代世君 大へん謙虚な御要望なのですけれども、やはり審議会長としてお仕事をしておって、今回のような不祥事も惹起しておるこういう中で、審議会委員責任云々ということは別といたしまして、やっぱりこの仕事を充実していくために自分はこれこれの審議官が必要だ、こういうことはやはりはっきりお出しになって、そうして強く御要望なさって期待に沿うていくということが順当じゃないか。こういうことで、遠慮は遠慮それから要求は要求というふうにはっきりしていく、こういうわけでお尋ねしたわけです。
  101. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 労働大臣にお伺いしますが、石炭の問題で聞きたいわけですが、商工委員会関係ですから、きょうは特に労働大臣にお尋ねしなければならぬ点のみ簡略にお尋ねしたいと思うわけですが、昨年炭鉱が相当休山、廃山、閉山になったわけですが、その山の数と職を失った人員ですね、労働省がお調べになっておるのはどのくらいの山と人員であるかという点をまずお尋ねいたします。
  102. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいま係の政府委員がまだ来ておりませんのでちょっと猶予をいただきたい。  山の数につきましては別途調査の上お答えを申し上げますが、常用労務者の推移の数字は、昨年度、これはまあ三十五年度末で、前年度の末に比較いたしますと二万五千五百九十二名の減少を示しております。その前の年が二万九千九百六十四、で、今年度は七月末までの数字が出ておりますが、これが一万五百九十八名、こういう数字でございます。
  103. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 もうすでに今年も十月下旬になったわけですから、三十六年度の分についてはおわかりかと思ったわけですが、それがおわかりにならなければ、なかなかどうするかというお話もできないわけですが、もう一年前のお話になるわけですが、その二万五千何百名かの人員がどのくらい転換されて職にありついておるかということをお尋ねいたします。
  104. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) たいへん恐縮でございますが、決算委員会でございますので会計とかそういう係の諸君のみ来ておりましてなんでございますが、今すぐ数字を取り寄せましてお答え申し上げます。
  105. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大臣、福永さん、御答弁される前に、当参議院の決算委員会は、お金の問題ばかりでなくて、あらゆる問題をお尋ねするということになっております。ここに労働大臣にお尋ねしたいことは石炭政策の問題だと、こう書いてあります。武州鉄道とは書いてない。ですから、その担当者をお連れになって来られるのがあたりまえだと思うわけですがね。
  106. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記を始めて下さい。
  108. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 広域職業紹介と一般職業紹介に分けて数字を申し上げますが、ここにただいま出ております数字は先ほど申し上げました二万五千の中で、という数字ではないのでございますが、最近の昭和三十六年七月末日までの広域職業紹介による就職数が一万七百六十一人、それからごく最近の今年度だけでみますと、三十六年四月から七月までのが二千四百二十六人、一般職業紹介につきましては、同様三十六年の七月末日までのが二万五千七百二十三人で、今年度の四月から七月までの産炭地の県自体、福岡県なら福岡県の中で就職あっせんしたのが六千二百七十四名、それから職業訓練中のものもあり、訓練を経て就職したもの等もあるわけでありますが、そういうものが三十六年の八月末日までに入所したものが四千八百五十人で、これらの九〇・三%くらいのものが就職をしておる、若干まだ残っておるというようなものがあるというのが大体の数字でございます。
  109. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 労働大臣のただいまの御答弁は、離職した期間と就職した期間と同じでありませんから比較するにはちょっと困難ですが、一例をあげてみても二万五千名も職を失って、就職の今お答えの数を合計してみても一万人足らずですね。そうすると一万五、六千名のものが職についておらないという結論になるわけですが、ただいまのお話では。そういうことに理解してよろしいですか。
  110. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) その他に御承知のように緊急就労対策事業に従事したものだとかいろいろございますので、それらを全部まとめましてただいま主管局長からお答え申し上げることにいたします。
  111. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 閉山の数は今ちょっと手元に持ち合わしておりませんが、離職の関係の数字がございますので申し上げます。なお必要とあらば後刻通産省と連絡いたしまして御報告いたします。  そこで昭和三十五年度におきまして石炭労務者の解雇されましたものの数が七万五百三十名でございます。それからそのほか休職になりましたものが千九百十九名、それから転勤のため減少したものが三千二百二十三名、あわせて減少が七万五千六百七十二名でございます。大体三十五年度におきまする実際の動いた数字はただいま申し上げたような数でございます。  その前の年度につきまして申し上げますと、同じような数字でございますが、昭和三十四年度におきましては、解雇されましたものが七万一千五百八十三名、休職が二千百十七名、転勤が七千三百九十九名、合わせて八万一千九十九名ということでございます。  その前の年度も申し上げましょうか。
  112. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私のお尋ねしているのは、三十六年度ということで、福永労働大臣にお尋ねしたわけですが、労働大臣は三十六年度分については全部できておらぬ、こういうお話でしたから、その前年度分でもよろしいわけです。ただ離職した期間と職についた期間と同じでないと、対照して論議ができないということになりまするから、同じ期間をお示し願いたい。  そこでやめられた方と、それから職についたとわかっておるものとの差が何名ですからということをお尋ねしておるわけです。
  113. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 先ほどの数字に加えて申し上げますが、石炭産業自体におきまして先ほどの数字は、減少の分でございます。それから増加いたしました分というのが同じような数字をとりまして見まするときに、三十四年度において五万一千百三十五名、三十五年度において五万八十名ということになりました。これは要するにこの増加分もえらい多いように見えますが、炭鉱内部においてある炭鉱から別の炭鉱に、ある炭鉱を解雇されてまた別の炭鉱に入ったというような者がございますので増加が多くなっておるわけでございます。差し引きいたしますると、昭和三十四年度におきまするところの純減が二万二千九百六十四名、それから昭和三十五年度におけるところの純減が二万五千五百九十二名、こういう数字になっておるわけであります。  それからその次に、これはただいまお尋ねの点でございまするが、これは一応のわれわれのほうで推定した数字でございまするので、若干の狂いがあることはお含みを願いたいと思うのでございますが、職安の窓口における調査でございますが、昭和三十五年度の当初におけるところの職安における炭鉱の求職者、これが四万六百十七名でございます。それから三十五年の一月から三十六年の七月までの間におきまするところの炭鉱離職者の中で、職安に新規に求職を申し込みました者の数が結局十三万一千八百十六名、こういう数字になっております。合わせますと十七万二千四百三十三名ということになります。  それからその次に、職安におきまして紹介をいたし、それから縁故就職等をいたしました者の数を含めますと、昭和三十五年一月から昭和三十六年の七月に至ります期間に十万七千六百三名、これは自県内のものもございますし、それから広域職業紹介の分もあるわけであります。したがいまして、昭和三十六年の七月末におけるところの職安の求職者、炭鉱離職者で職安に職を求めております者が五万三百九十二名、こういうことになります。そのうちで一般の職業訓練所に入所するため七月末に職業訓練所に入所いたします者が、千五百三十三名ございますので、これを差し引きますと四万八千八百五十九名、その内訳が一般求職者が三万七千七百三十一名、それから日雇いが一万一千百二十八名、こういうことになります。それからなおただいま申し上げました数字の差し引きのほかに、帰農あるいはリタイアー、自営業というようなものをいたしたと思われる者が大体一万四千名程度というように推定いたしております。  それで、ただいま未解決のこの四万八千名のものにつきましては、失業保険の受給中の者もございます。それから緊急就労対策事業に就労しておられる方もございます。それから鉱害復旧等に就労しておられる方もございます。それから安定所におきまして、広域職業紹介及び自県内におけるところの配置転換のためにあっせんを申し上げている方もある、こういう状況であります。
  114. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 労働省は昭和二十三年に労働者のサービス・センターということで厚生省から分かれたわけで、福永労働大臣もたいへん苦労しながらそういう人たちのために努力なさっておると思うのですけれども、今膨大な数字の職を失った者が出て、たとえば今安定局長のお話を聞いても万をもって数えるほどの人がまだ職に就いておらぬのです。ですからそういう人たちは職を離れて、まあ日雇いであるか、あるいは失業保険で生活をしておるか、生活保護を受けておるか別としても、ずっと今までたどってきたその作業と違って、今度は安い給付で生活をしているのですから、ずっと収入が下ってくる。しかし、物価は逆に御承知のとおり上がっておるわけですね。そうするとこれは逆になって、生活できないという結論になるわけです。これは大問題だと思うわけですが、労務政策の一環としてどういう方法でこの問題を処理されるか、そういう点を一つ大臣にお尋ねいたします。
  115. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) わが国全体の雇用事情は割合によくなってきている。その中にあって特に石炭産業等が非常に深刻な事態にあるということは、私も深く憂うるものであり、同時にこの深刻な事態にあるものに対していろいろの面から施策を講じていかなければならないわけでありますが、まあ労働省といたしますと、まず第一番にできるだけこういうような失業者が出ないような措置の総合的施策、これは言うなればわが労働省だけでできることでなくて、政府施策全体の中からそういうことになるようなことを推進していく、という意味においての恒久的安定対策というものがぜひ必要であると存じまするが、また一面においてそういうことを心しつつ対処してもなおかつ生まれてきておりまするところの失業者等に対して、いろいろの緊急対策も講じていかなければならぬ、ことにごく最近はこれに対して痛切にそういうことを感じまするので、過般来内閣におきましてもこういうことに対処するための関係閣僚の会議等も持ち、また最も深刻な筑豊等に対しましては私も急拠かけつけて参りました一人でございますが、その後も関係閣僚が現地にも参りましてなまなましい事態をじかに見て、そのなまなましい感覚によって、より施策の強力なる推進をということで、具体的に若干の例をあげまするならば、労働省の所管といたしましてはどうしてもこういう人々の労働力が、いわば流動性を増す措置を講じなければならぬというような観点からの広域職業紹介であるとか、あるいは職業訓練であるとか、あるいは緊急就労対策事業への吸収であるとかいろいろの措置を講ずるについて、最近にもそうした意味においての施策の強化をはかるとともに、例の雇用促進事業団が行なっておりまする一連の事業の強化というようなこと、これはまあ住宅をどうするとか、移住資金をどういうように支給するとかいうようなこと、その他幾つかあるわけでありますが、こういうことにつきましても、現在までの措置では、これは十分といえないというので数日前の閣議等においても決定いたしましたところでありますが、それぞれ事業量を増す等の措置、したがってこれの裏づけとなるべき財政措置等についての決定もいたしましたのであります。なおこれらをもって足れりとするのでなくして、さらにこれには新たなる立法等も伴うことになると思うのでありますが、西独式の前収保障的な措置までは、これは日本事情としてなかなか容易ではないと思うのでありますが、雇用促進の意味において、雇用奨励ないし雇用保障のような考え方のある種の措置をとること、その他幾つかの新たなる構想、これを検討いたしておるところでありまして、これらについてできるだけすみやかに結論を得、また、したがって、立法措置、その他の諸般の措置を講じていきたい、こういう作業をただいま急ぎ進めておる次第でございます。
  116. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 衆議院の石炭委員会等においても、労働大臣佐藤通産大臣あるいは池田総理等、それぞれ総理大臣以下各担当省の方から御見解を承ったようです。私もその速記録を読みましたので、その点はお尋ねいたしません。ただ、今御答弁の中にございました訓練所、流動性を持たせるとか、緊急事業といっても、これは就職じゃないのですね。さしあたり、盲腸が起きたときに注射で一時とめておくというようなもので、それは切開手術しなければ絶対からだが助からぬわけです。盲腸起きたから、注射でひとつ痛みをとめておこうというようなことであってはならないので、たとえ一〇〇%でなくとも、八〇%でなくとも、もう少し具体的に、新しく立法措置をするとか、あるいはまた、就職に流動性を持たせるとか、こういう口先だけのことでなしに、五万人おるけれども二万五千人しかできません、二万五千人おりますけれども、一万八千人しかできませんと、こういうお答えでもけっこうですから、具体的にどうするかという御答弁の御開陳を願いたいわけです。ただ、ばく然とした、つかむところのないようなお答えでは了解いたしかねるのですが、経済閣僚懇談会を持って、石炭問題をやろうといったことも知っております。労働大臣がわざわざ九州の果てまで御苦労して、現地で十分見てこられたこともよく知っているわけです。その結論として、ただ、ばく然とひとつぼやっとしたものではならぬわけで、これはこうします、あれはこうします、それからこれは通常国会です、今度の臨時国会はこれこれだけやります、こういうことを承っておきたい、こういうことなんです。
  117. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 新たなる構想の部分につきましては、これは必ずしもまだ最終結論にいっておりませんので、どういう期間、どういう金額をとまでのことなどは申し上げがたいのでありますが、緊急措置等は、だいぶ阿部さんからごらんになると、ちゃちだとおっしゃるかもしれませんけれども、たとえば、ごく数日前の閣議できめまして措置しましたようなことは、先ほど私が申しましたように、一方において失業者がある、そうして一方においてはかなり労務者を必要としているところがあるという状況が、国全体としてはかなりあるわけでございます。一般に、たとえば京阪神であるとか、あるいは中京地区であるとか、あるいは東京周辺地区であるとかというようなところが労働力が不足しているというようなことのほかに、私ついこの間新潟へ行って体験をいたしましたのでありますが、新潟県のごときは、過去においてはかっては労務給源地のように認識されておったのでありますけれども、県全体として、どんどん若い人を中心といたしましてよその県に出ていくというようなことから、人口三十万の新潟市それ自体は非常に人手不足であるというようなことで、私も離職者対策ということが非常に今頭にきておりまするので、そうしたことを現地の人たちとの座談会のときなんかにも強調いたしておりましたところ、たとえば一会社ですぐ炭鉱から百人ほどもらえないだろうか、こういうようなことを言っておりました。これに対しては対策を講ずるようにしておいたのですが、これはまあほんの一例として申し上げたのでありますが、そういうような工合に、必ずしも今までこういうところは非常に不足していたのではないというような各地域からかなり不足しているというような事情等もあります。これらを考えまして、従来も広域職業紹介ということで、広い地域にわたって失業者のあるところから、ないしは労務の供給のできるところから需要地へという措置は、とってきてはおりましたけれども、この際画期的に、これは今日解決しなければならぬということを痛感いたしている次第でございます。そういうようにして、一方から一方へ移すような措置、ところがこれと関連いたしましてすぐ問題になりますことは、人は来るのはいいが、住む家がないとか何とかいうようなこと等もあります。そこで、そうした問題の緊要性にかんがみまして、この間私が、先ほど申し上げておりますような、恒久対策は、これはこれとして検討するとして、とりあえずの緊急対策といたしまして、住宅建設奨励金制度を拡充するというような意味で、自己資金による住宅建設奨励金の本年度ワク三百戸を九百戸にするとか、あるいは移動宿舎、例のパイプ・ハウスでございますが、これの貸与制度の充実をはかるという意味で、大体移動宿舎の本年のワク九百を一千五百五十に増加する、これにつきましては、さらにもう少し前に名古屋あたりを中心に考えまして、港湾荷役労務者が非常に不足していて、ぜひ石炭離職者等で来てもらう人をふやしてもらいたいというような要請等もありましたので、主として石炭離職者を考慮いたしまして、これのほうに別に九百戸、すぐに予備費を出して建てるようにいたしたのでございますが、それらのほかに、ただいま申し上げたような措置をとる。それから予算的には、今申し上げました項目よりこれが金額はかなり多いのでございますが、移住資金の対象人員の拡大、大体一人七万三千円見当になるのでございますが、移住するについて、その移住資金を与えますその対象人員を、今までの一万三千人というものを、とりあえず一万六千五百人に増加するというような措置、これで大体三億九千万円くらいな金額なのでございますが、こういうような措置等もごく数日前にとりあえず措置いたしましたのでございます。こういうような一連の施策をそれぞれともに講じまして、先ほど阿部さんが仰せになるようなことに対処する緊急の措置をとった次第でございます。まあ、これで足れりというわけではなくて、さらに必要に応じこれらのことは一そう推進していかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございまして、具体的にということでございますので、具体的に最近措置しましたものを例に引きましてお答え申しましたような次第でございます。
  118. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 今御答弁なさった内容は、衆議院でも質問が出て答弁されているようですが、九百戸——九百八十ですか、三百戸のやつを九百戸にするとか、港湾労働者云々、それをこちらに回す云々、三億八千万云々とありますが、やっていかなければならぬものは万単位で、家族を含めると十万単位ですね。それから一方、大臣の今御答弁になったような家を建てるといっても百単位だ。これは志のほどはわかるけれども、これではとても大臣、問題にならぬ。ですからこれからお尋ねすることは、厚生年金とか、あるいは災害保険料、どういうシステムになっているかわかりませんけれども、あの中から五十億か百億金を出して、そうして京阪神でも京浜地区でもけっこうですから、家を建てる、今大臣のおっしゃった新潟でもけっこうでしょう。そういうところに預金の金を持ち出して、そうして家を建てて、二十カ年賦ぐらいで労働者諸君に貸し与える。金を払った順番から、それは君の家にして上げますよ、払わぬうちは政府の所有の家であるというようなことで、これは大平さんにもお尋ねしたいわけですが、そういうような措置ができぬものかどうか。これは政府の所管物ですから、これは金を決して補助金として、あるいは助成金としてやる必要はない。ただ、今金がなくて家が建てられないわけですから、そういう方法で家を建ててやる。東京へ来ると、畳一枚一千円というのが相場ですよ。だから炭鉱がつぶれて給料も未払いのまま東京に出てきた人が、家など建てる金はないのですから、そういうような方法がとれぬものか、官房長官でもけっこうですし、労働大臣でもけっこうですから、そういうようなことができるかできぬか。それから厚生年金とか失業保険料あるいは災害保険料がどういうことになっているか、それをひとつお聞かせ願いたいと思うわけです。
  119. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいま阿部さんが例におあげになりました厚生年金は、ひとしく政府の関係で、何とかならぬかということになると、これは問題は別でございますが、厚生大臣が所管いたしておりますことでございますし、そのほうの金を直ちにどうこうというのは、私はここでは申し上げかねることでございますが、今お話のありました御趣旨と同様の考え方のもとに失業保険等で、これは私どもの所管のことでございますが、そういうところにありまする金で、これは雇用促進事業団にやらせましたのでございますが、アパートなんかを建てさせまして、すでに、ついこの間のことですが、八棟ばかり、四百人ぐらい入っております。でき上がりましたのですが、近く二十五棟、二千人分ぐらいもできる運びになっております。これまた単位が違うのではないかというおしかりを受けるかもしれませんが、まあ、ただいま示唆のありましたような考え方のもとに一部そういうこともやっておりますわけでございます。ただし、今お話がありましたような大規模においてのところまでいってないということは遺憾でございますが、こうした考え方を一そう拡大していきたい、そういうふうに私は存じておる次第であります。
  120. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その厚生年金ばかりでなく、労災保険も積み立ててあるわけですね。これはあなたのほうの所管じゃないですか。したがって、これは間発銀行で、保険の積立金じゃないですが、帝国ホテルに一億円とか、あるいはまた横浜のグランド・ホテルですか、何ですか名前は記憶しておりませんが、ホテルに五千万円だ、八千万円だ、一億円だという金を貸しておる。ですから、まあ日本の国は観光客に多く来てもらって、ドルを大いにかせがなければならないのですから、そこに投資という意味で金を間発銀行から出すのは理解はできますが、一方住む家のない人に私はやりなさいと言っておるんではないですから、それとこちらと比較して、どっちが大切かということくらいは理解できると思うのです。労働大臣は、名古屋と兵庫と大阪に建てた若干のアパートのことをおっしゃっておるでしょうが、とても焼け石に水ですよ。ですからそういう斬新的なものが厚生年金だから厚生大臣の話を聞かなければならぬということはもっともな話ですが、しかし、そういうことはおそらく閣議で——大番頭がここにおいでになっておるんですからね、大平さんがおる限りにおいては、これは池田さんと同じだと思って承っておるのですが、あなたの御答弁は池田さんと同じと感ずるのですが、どうですか、官房長官
  121. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 総理大臣にかわって官房長官にお答えもらいます前に……。ただいま阿部さんのお話に出ましたお言葉について、先に各論的なものを申し上げます。労災保険のほうは、先ほど阿部さんがお示しになりましたようなことに使うほど、そうたくさんは実はまだ金はたまっておりませんが、しかしその仰せの御趣旨のごとく、こうしたものを遊ばせておくということは、あまり利口でないと考えます。そこで中小企業等を中心といたしまして、安全設備等をするようなものに、これは非常に有利な条件で貸し付けるというような方途を、これまたごく最近でございましたがやっととりました。率直に申しまして、この種のこと、なかなか大蔵大臣も、大蔵大臣とあえて申しませんが、大蔵省もそう簡単によろしいとは申さないのでございますが、まだ一月にもならぬ、一月くらい前かと思いますが、正確には記憶いたしませんが、労災保険のものについてはそういう措置をとりましたのでございます。  なお、失業保険の関係のものについて、融資等についてのことも、御趣旨のような線で今検討中でございます。率直に申しますが、財政当局はなかなかこれまたそう簡単にうんというところまでいっておりませんが、なお努力をいたしまして、この趣旨の理解を得て、御趣旨のような工合に活用するということに今後さらに一段の努力をしていきたいと存じます。総体的にはただいま官房長官からお答えがあるかと思います。
  122. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 私、石炭問題はしろうとでございますが、理解している限りにおきましては、石炭産業関係の労働問題といたしましては二つあると思います。一つは、申すまでもなく、石炭産業が安定産業になりまして、そこの生産体制が確保されるためには、雇用が安定し、給与水準も適正な水準にならなければならない。そういう意味におきまして、先般政府は、賃金審議会のほうにお願いをいたしまして、賃金の御審議を願っておりますことは御案内のとおりでございます。それからもう一つの問題は、今御指摘の、現に離職をされた方が再就職ができる条件を作るということだろうと思うのでございまして、その点につきましては、ただいままでの政府の施策は、若干失業保険制度というきわめて消極的な制度でありまして、若干積極面といたしましては、職業訓練、それから職業紹介等が行なわれておったのでございますが、今私どもが苦心して検討を重ねておる問題は、一歩それから出まして、積極的に転職が確保される条件をどう作るべきかという問題で実は苦心をいたしておるわけでございます。  で、これはもとより、今労働大臣が御指摘のとおり、巨額の財源が要ることでございます。したがいまして、石炭関係閣僚会議などを設けましたゆえんのものも、実は労働大臣、通産大臣、きわめて御有能で、十分予算をお取りになるだけの力を持っておると思いますけれども、私どもが問題を整理しまして、大蔵省も含めまして、そういった全体的な措置を整理いたして、それで閣僚の間では談笑の間にきめてもらおう、こういう心がまえでせっかく苦心いたしておるところでございまして、したがいまして、今御指摘の財源問題が一番大きな問題だと思うのでございます。その財源にはいろいろな性格、いろいろな種類の金をどう組み合わせてこの必要に充当するかということになりますると、事柄はたいへん複雑であり、めんどうでございます。政府のまああらゆる力をできるだけお出しいただいて、私どもといたしましては、何か実のある施策を打ち出していきたい、そういうつもりでやっております。
  123. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 労働大臣のお話を承っていると、何しろ大蔵当局がかたいんでということで御答弁をされるのですが、これは福永労働大臣の御謙遜の言葉だと思うわけです。私どもは、かつて十何年か前に、福永労働大臣は元総理の吉田さんから、君は幹事長をやれよということで、年若くして大自民党の幹事長にまでなろうとした人ですから、そう簡単に水田さんに押し回されてしまって、予算が取れぬということはないと思うのです。これはあなたが御謙遜の言葉で、水田以上であって、あなたなら十分取れるという立場で話をしなければならぬわけですから、そういう点は大蔵省に責任を着せぬで、ひとつお仕事をやってもらわなければ、労働大臣はもう必要がございませんということになりますから……。そこで関連してお尋ねするのですが、福永さんの前に労働大臣は石田博英さんでしたね。石田さん当時に三井三池問題が起きて、すったもんだをやったときに、最終的に千二百名の首切りについては政府が責任を負いますというような意味の中労委案が出たやに僕は記憶しておるのですが、あの千二百名の政府が責任を負う分についてはどうなったのですか。
  124. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 詳細さらに政府委員からも申し上げたいと思いますが、お話のようなことで鋭意政府でも心配をいたしまして、まあこれらの人の身の振り方についてできるだけのことをいたしておるのでございますが、実はまだ二百五十名ばかり残っております人については、それぞれある程度の事情等もあるのでありますが、できるだけすみやかにこの残った人々についても、ただいまお話のような措置をさらに進めて、全面的に問題の解決をはかるようにいたしたいと、こう考えておりますが、なお若干詳細のことについては政府委員からお答え申し上げることにいたします。
  125. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 三井三池の離職者の方々のお世話でございますが、千百四十七名の方がおられたわけでございます。そこで、この方々の就職あっせん、自営業その他の問題につきましては、労働省といたしましても全力をあげましてお世話をいたすという考え方で、三井三池の労働組合とも密接な連絡をとりまして、今日までいろいろなお世話をしてきておるわけでございます。そこで現在、最近までの数字によりますると、就職が決定してすでに就職されておる方が、これは雇用関係に入られた方、これが三百十六名でございます。それから他地域に御移住になりました方が七十一名でございます。三百十六名というのは、近所の就職の方もございますし、名古屋、大阪、東京等に御就職になった方もみな含まれております。それから自営業等につきましては、たとえば企業組合を作りまして、タクシーを始めるというような問題については、福岡、大牟田等、これは陸運局とも、運輸省とも連絡をとりまして、幸い許可もおりまして、開業になっておられる方もございます。そういうような方々のほかに、職業訓練所に約四百三十六名、これは入所して訓練を受けておるわけであります。その他を含め、合わせますると八百九十三名、こういうことになります。差し引きまして二百五十四名の方はまだ未決定になっております。二百五十四名の方々につきまして、いろいろこれは現地で相談を実施しておるのでございますが、大半はどうしても現地を離れることがいろいろの事情でできない、こういうような方が多いわけでございまして、緊急就労対策事業に入れてもらいたい、こういう方も百三十人くらいおられる。あるいは自分で現地で自営業をどうしてもしたい、こういうような方々にもおられるわけでございます。これらの方々につきまして、私どもは就職されることをなるべくお励めをしております。それが可能のような条件になる場合には就職のお世話をいたす、それから緊就にどうしても従事したい、こういうお考えの方は、その方面について善処をいたしたいと考えておるわけでございます。また自営業の御希望の方々につきましては、これはさらに私どもは県当局、それから通産局、それから雇用促進事業団の現地の支部、支所、こういうものと話し合いまして、必要な資金の融資とか、あるいはそのほか、いろいろお世話できるところがありましたら、私どもは全力をあげていたしたいという考え方で、今いろいろ御相談を申し上げておるのでありますが、未解決の方がまだこれだけおりますのは残念でございますが、私どもといたしましては、さらに努力を重ねて、この解決をはかって参りたい考えでございます。
  126. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大臣の答弁を承っておると、千二百名のうち二百五十名が就職しない、あと九百名ぐらいが全部就職したような答弁の印象を受けるわけです。内部を承ってみますと、三百十六名プラス七十一名の約四百名ぐらいしか就職しておらぬ。訓練所に入ったのは、就職とみなしているのですか。あとで速記録をごらんになったらわかるのですがね、あなたのほうは訓練所に入ったものは、就職だと労働省では計算しているのですか。
  127. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) これは私も政府委員も言葉が足りなかったので、訓練所へ入りました諸君の九〇%三ぐらいは就職いたしておるのでございます。入ったところまで言って、出たあとのことを実は言っておらぬのでございますから、そういう誤解を生じましたので、言葉の足らざるところをおわび申し上げます。
  128. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、三百十六名プラス七十一名の四百名ぐらいと、四百三十六名が訓練所を終了して、そうして現在就職して作業についている、就職しておると、こういうことですか。
  129. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) ちょっと言葉が足りませんで申しわけありませんが、四百三十六名の方々のうちには、卒業されて就職された方もございます。しかし入所中の方々もございます。それでただいま大臣の申しましたのは、今までの実績からいたしますと九〇%以上就職しておるわけでございます。したがいまして、この今入所中の方も、これは九〇%これは必ず就職できると、こういう考え方でございます。私ども今までの実績から申しまして、また、入っておられる方の意欲から申しまして、また訓練所に現在求人の申し込みが具体的にずいぶんきております。その関係から申しましても、今までどおりの実績は保持できる、こういう意味で八百九十名の中に入れているのです。言葉が足りませんでまことに失礼いたしました。
  130. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 今どうなっているかわかりませんけれども、自動車があってガソリンがない、まさかりがあるがかんながない、かんながあってものみがない。こんな訓練所で訓練を受けた人がどれだけよそで雇ってくれるかわかりませんが、私のお尋ねしているのは、千二百名、小さく言えば約千百五十名ですね、そのうちどれだけ就職してどれだけまだ——僕は訓練所は就職と思っておらぬのですから、ですから訓練所にまだどれだけ残っておるかと、こういうことを端的にお尋ねしておる。あなたのように、これはいや大丈夫、就職できるからといって、就職の数の中に入れれば問題はないけれども、しかしこれらの仮定のことについては論議のほかになるわけじゃないですか。
  131. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) これは先ほどのような状況からいたしまして、私どもは従来の実績から、それからただいま求人の申し込み等からいたしまして、必ずお世話できるようにいたしたい。また相当の確信も持っておるわけでございます。訓練所入所がおくれましたのは、いろいろな関係もございます。訓練所の施設がだんだんと、これは昨年以来、昼夜兼行で整備をいたしまして、現在固まったわけでございまするが、そういう関係で入所の時期がずれたということもございます。また御相談を申し上げておりますというと、やはり従来失業保険を受給しておられる方がずっとあったわけでございますが、やはり実際問題といたしましては、この失業保険が切れるころになって、具体的にいよいよ身の振り方を考えよう、こういう御気分になられた方も相当ある。そんなようないろいろな事情がたまりまして、訓練所への入所もおくれた方もございます。しかし、今までのような実績でございまするので、私どもは今この訓練所におられます方の就職については、これはもう強い決意でぜひ就職をあっせん申し上げ、また従来の実績、現在の求人の申し込み状況からいたしまして、相当の自信を持っております。これはさらに今後努力いたす考えでございます。
  132. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その失業保険の問題ですが、失業保険料ですね、失業保険料とか災害保険料とかいうことで、福永労働大臣の管轄下でいろいろな問題を処理しておられるが、明年度の予算——もうすでに予算要求は労働省としてお出しになっておるのでしょうが、その中に保険料、今申し上げました労災保険とか失業保険とか、そういうものの増額ということで予算要求をしておるのですか、しておらぬのですか。
  133. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいまの御質問の御趣旨は、失業保険とか、あるいは労災保険等について、給付改善をはかる措置として、どういうようなことを考えているかというような意味でのお言葉かと存じますが、この点、社会保障審議会等でも研究を願っておるところでありますが、そうしたところでの審議の結果等も得れば、これによりさらに善処したい、こういうように今考えておる次第でございまして、給付の点で、現在と変わったということ等については、ただいまのところでは、まだ折衝いたしておりませんが、先ほど阿部さんの示唆されましたような点で、実は折衝中でございますので、いかがかと思って先ほど私は申し上げなかったのでございますが、まあ大きな項目まで申し上げてもよろしいのじゃないかと思いますので、ちょっと申し上げさしていただきますが、一般に金融の引き締め等が行なわれるというような情勢の中から、われわれは先ほどお話しのような趣旨によって、できるだけ失業者が常雇化される、再就職するということの便に資するというような意味において、たとえば労働力過剰地域の企業振興のために融資する、これはいろいろなことがあるわけでございますが、何としても労働者を吸収するためには、その作業を行なう工場等の建設その他が行なわれなければなりませんので、そういうことを含めまして、こういうための融資であるとか、あるいは労働力の流動化促進のための融資住宅をどうするとかというようなことを初め一連のものがあるわけであります。それからまた、中高年令者の雇用奨励といった意味においての融資、これらも、実はどこまでの歩どまりになるかわかりませんので、数字もいかがかと思いましたが、実は労働省といたしましては、八十一億円ばかり、こういった方面へ、こういった目的のために、失業保険積立金を引き当てとして、特別のワクとして融資するようにさせてはどうかというような折衝も実はいたしておるわけでございます。しかし、これを実施することになりましたということになりませんで、先ほど御激励を賜って恐縮でございますが、どうも御期待のとおりにいくかどうかということにつきましては一そう言うと気が弱い、しっかりしろというようなまたおしかりを受けるかとも存じますが、先ほどいただきましたお言葉に大いに励まされて、より一そうの折衝を遂げていきたいと、こういうように存じておる次第であります。
  134. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大臣の御心境のほど承って、もう感謝、感激にたえぬわけですが……。それだけじゃ問題は解決せぬと思うのです。お尋ねするわけですが、厚生年金は厚生省の管轄と、こういうことでしたから、これは厚生大臣に伺えばいいわけですが、実際問題として、厚生年金を納付しておるのは、労働省がお世話願っておる労働者なのです。ですから厚生年金の立法当時十年で支給となっていた。御承知のとおりそれが今引き上がったのです。しかし、坑内で働いていた人は御承知のとおり八時間も十時間も太陽のない所で働くのですから、からだが非常に弱っておるのは、これは御承知のとおりであります。ですからこの支給年限を出発当初のお考えに戻すわけにいかぬものでしょうか。
  135. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) この点はどうも、私の立場においてどうこうというわけに参りませんが、仰せの御趣旨は私もよくわかる次第でございまして、厚生大臣とも相談してみたいと存じます。しかし厚生大臣だけでいいか、もう一つまだそのあとに……。
  136. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大蔵大臣ですか。
  137. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まあそっちもございますから、よく相談してみたいと思います。
  138. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  139. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記をつけて。
  140. 相澤重明

    ○相澤重明君 今、炭鉱の離職者の問題と、いわゆる石炭政策の転換の問題を重点にお話を聞いたわけですが、私は横浜に住んでおるので、船混み問題で実は労務者不足で困っておる。過日も本会議で申し上げたのですが、特にけさの横浜の港湾労働組合の人たちの話を聞きますと、きょうも全港振といいまして人を雇うほうのあれですが、その人たちの回答いかんによってはストに突入をすると、とても労働力がこれ以上無理はできない、こういうので、港の船がまたとまるというような事態が新たに起きているわけです。その内容はどういうことかというと、一律三千円の賃上げを認めよと。それでいま一つは、現在の港の労務者が、労働条件、賃金条件が悪いので、若い人が入ってこない。ですから、幾ら荷主さんなり船主さんが人を雇ってくれといっても、来ても仕事をしてみてびっくりして帰ってしまうと。これが、港における労務者不足という大きな原因になっておるわけです。  そういうことで特に建設的な意見を労働組合の人たちからも聞くんですが、その人たちによると、港の荷役作業そのものも近代作業になっておるから、やはり技術訓練をする必要があるのではないか。ところが、職業訓練法からいくと、この港の労務者に対する訓練というようなものはないんじゃないかと、こういうことを言われておるが、労働省は、少なくとも労務問題について重要な内閣における役割を持っておるわけですから、そこで、そういう点について御検討されたことがあるのか、あるいはどういうふうにこの労務者の問題を解決をしていこうとしておられるのか、この際ひとつ、福永さんにお尋ねしておきたいと思います。
  141. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私も、あまり詳細に承知をいたしておるほうではございませんが、相澤さんのただいまのお話の港湾荷役等については、まあいろいろ問題があり、だいぶ昔は、ほかの職場よりは給料もかなりよかったようでありますが、現在は必ずしもそうでない。そして、かなり危険な作業も伴うというようなこと等もあり、しかも、現在最も労働力の不足しておりまする部分の一つであるというような点からいたしまして、しばしばこれについて閣議等においても、いろいろ検討をいたしておるところでございますが、御指摘のように今までのところ、この種目が技術訓練種目の中に入っていないのでございますが、ただいまのお話を伺っておりましても、私はこれについては、考慮を必要とするというように率直に思います。  そこで、そうするのについて、まあ事務当局からも若干その事情についてお答えをさせていただきたいと思います。
  142. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 港湾荷役の訓練の問題でございますが、これは、われわれが従来行なっております職業訓練の関係は、まあ長い伝統があるわけでございます。この港湾荷役労務者のほうは、やはり成年の方ですもんですから、従来のそういう職業訓練であるとか、あるいは失業保険受給者の訓練というふうには発展してこなかった。  そのおもな理由は、やはり御承知のように港湾労務者についての常用労務者を雇い入れる、常用労務者としての雇い入れという慣習が非常に少なくて、その荷の動きによって、日雇い労務者的に雇用して、それを充足して港湾荷役を果たしているという関係で、従来のわれわれがやっておりましたこの港湾の労務対策からいけば、やはり業者のほうが中心になって、そういう日雇いの方や臨時の方に逐次ギャング編成の訓練をやったらどうかというふうな意見で、われわれのほうも東京並びに神奈川で検討さしておったわけなんですが、やはり業者のほうが、どうしてもそれになかなか乗り気にならんで今日までに至ってきた実情でございます。  また一面、そういう要請につきまして、やはり業界のほうが何といっても職業訓練につきましては、こういう訓練と、またこういうふうな程度という、ある程度の要望やその専門家が出ていただかないと、どういう内容でどういう施設でという、いわゆる訓練基準の審議ができないわけでございます。  ところが最近——ことに昨年からの労務者不足の対策上、そういう要望も出て参りましたので、とりあえず神奈川県におきまして訓練を講習会程度でやることにいたしました。それから東京についても、目下検討さしておりますが、労働省としては、とりあえずそれについて講習会方式でやって、さらに訓練が軌道に乗る見込みがあるならば、やはり訓練審議会に諮って港湾荷役のギャング編成その他訓練種目として取り上げる方向で審議していただこうかというふうに考えております。
  143. 相澤重明

    ○相澤重明君 通産大臣見えたから阿部さんのほうにやっていただこうと思うから、簡単に私は次に聞いておきたいと思うのですが、これは私も、いろいろ国際的な資料を調査したわけです。日本は、この港湾荷役の労務者というものは非常にけがが多い。日雇い労務者で港湾災害にかかっているものが実に八二%、アメリカの場合と比較すると、米国の場合は、二十五年間で死亡したのは二人しかない。これはいろいろデータを、ずっと各国のを私出してみた。そういうことをやってみた。しかもアメリカでは時給は、現在では三ドル十一セントですよ。こういうことから、日本の労務者の点を考えてみると、ずいぶん全く気の毒だ。これでは若い人が魅力を持たないし、入ってこないというのは当然なんですね。ですから、いろいろ資料はありますよ、あるけれども、私はきょうは中心が石炭政策の転換で、阿部先生にやってもらう時間だから私申し上げるのをきわめて少なくするのですが、ぜひこれは、この技術訓練等も実施をしてやってもらいたい。幸い横浜では氷川丸というのがありますから、ああいうところでやれば、かなりできる。東京でも、今実は少しやっておるわけだ、これはすでにね。それで業者の中でいわゆる格付委員会というのを持ってやっているんですよ。私は東京も調べてみたんです。全部知っておるけれども、労働省が少し仕事が足りない。もっと積極的でなくちゃいかぬ。これが私の言いたいことなんです。幸い福永さん、きょうは、だいぶよい答弁をしておったから、やって下さい。  それで、その政府に金がないとか、あるいはそういうことが困難だということが出るといかぬから、ちょうど今、通産大臣がいい時期に来たから、私は言っておきたい。港で扱う貿易外収入というものは実に多い。その収入を、そういう港荷役等のために政府が使うということになったら、半分でもいいと思うのだ、私は。一億でもいいと思うのですよ、出るのですから。だからそういう金、たとえば半分使っても、一億以上の金が使える。だから、ちょうど大蔵大臣も来たんだから、この際労働大臣も通産大臣も、そこで、日本の労務者の中高年令層が、いかに苦労しておるかということと、労務者の不足というものに対する新しい見解をこの際打ち立てていく、こういうことをするのが労働省のサービス省としての本来でもあるし、通産省も、苦労しなくてやはり実質的に日本の貿易を促進することになる。外国の船が入ってきて港にとまっておって荷役が止まっておったら、これは決していいことじゃないですよ。だから、率直に言って、ひとつこの際、福永さんには、港の労働者の一律三千円の賃上げ、これはごく少ないですね。一律五千円にしなければいけないです。その内輪の要求をしておるのを、これをすぐ実施のできるように——この間、港運事業料が上がったんです。それは公務員の七・一%のいわゆる補正を組むということになったので、今度荷役料金を上げたんです。上げたんだから、その上げたものは、いわゆる人件費として配分すればいいのに、なまじっか経営者とか何とかいう人たちが、政府がなかなか金を融資してくれないから、われわれは、それを取られちゃっちゃ困るといって四の五の言っているからストライキが起きるので、これは私は、日本の政府が外国貿易をする場合の、われわれがいかにあるべきかという根本問題だと思うんです。福永労働大臣は、そういう労働サービスの面から言っても、まず第一に労働者の雇用条件をよくする。この雇用条件の基本は賃金条件である。したがって、港運事業料を上げたんであるから、これに対するところの配分として賃金を上げてやる。そうして今言った職業訓練を行なうようにして、外国に恥をさらさないような港の荷扱いをやってもらいたい。これは特にお願いするし、その金のもとは、通産省でもってやっている貿易外収入があるんだから、それももらう。水田大蔵大臣だって文句の言えるはずはないんだから、みんなが一生懸命やれば、それだけの金が入ってくるのだから、入ってきた金を政府全体の国策として使うんだから、これほどいい話はない。ほおかぶりと同じようなものだ。両方いいんだから、そこで、この際労働省に、ぜひ積極的にやってもらいたいし、通産大臣や大蔵大臣にも、ひとつ答弁を願っておきたいと思う。  まず最初に、労働大臣から答弁願いたい。
  144. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 港湾労働協議会、あるいは特に安全衛生については、労働基準審議会等で、いろいろ問題の検討もいただいておるところでございますが、ただいま非常に該博なる知識を傾けられて、いろいろお話があったのでございます。大いに参考にいたしまして、今後に処したいと存ずる次第でございます。
  145. 相澤重明

    ○相澤重明君 通産大臣、貿易外収入を出して下さいよ。大蔵大臣は当然の話なんだ。今の苦しんでいるのを、どうするかという打開の問題。取るばかりが能じゃない。まあいいや。あとから来たからわからないだろうから、あとで労働大臣から言って下さい。それでけっこうです。
  146. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 通産大臣にお尋ねいたしますが、実は大臣がまだ通産大臣に御就任される以前のことなんですが、よく引き継ぎになられたかどうかわかりませんので、はっきりお答え願えるかどうかわかりませんけれども、実は九州の豊州炭鉱、あの豊州炭鉱で坑内が水没して六十七名死体が上がらぬ、こういう事件が起きまして、その上がらぬままに廃坑にするということを通産当局がお認めになったということを承ったんです。太平洋のどまん中で船が沈没して死体があがらぬということであれば、これはわかるわけですが、しかし、豊州炭鉱というのは、水没して必ずそこに六十七名の遺体がおるわけなんです。それを通産省がお認めになるというのは合点がいかない、人道上の問題として。ですから、通産大臣が、そういう問題に対して、処置を認めたか認めんか、そういう点をお尋ねしたい。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今、阿部さんが御指摘のように、豊州炭鉱は、まことに悲惨なる事故を起こして、もちろん会社も国も、これが復旧作業に全力を尽くしたわけでございます。ことに、ただいま御指摘になりまするように、七十数名でしたか多数の死者を出し、しかもその遺体の引き取りもできない。まことに惨たんたる状況でございます。百方手を尽くして、しかしながら、ただいまの技術の点では、これが不可能である、こういう実は結論になりまして、その経過の詳細は、私で不十分でございますれば、局長から報告さしたいと思います。  そういう結論に達し、それで、ただいまのように坑口を閉鎖するという事態に実はなっておるのでございます。で、おそらく阿部さんも炭鉱の御出身であられますから、豊州炭鉱の実情はよく御承知のことだと思います。私も先だって現地に参りました際も、豊州炭鉱を訪れまして、遺族の方にもお目にかかって参りましたが、ただいま申し上げるように、百方手を尽くしてみたが、また技術者等のいろいろの知識も借りましたが、災害を拡大せずして、この遺体を引き揚げるということが至難だ、こういうような結論で、ついにやむを得ず引き揚げを断念したというような形になっておるわけでございます。
  148. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 八方手を尽くしたけれどもやむを得ず断念したということですが、死体は何十メートルか何百メートルか下にあるに違いない。入った水は出すことができるわけです。ただ経済的に考えて処置を講ぜられたのなら、たいへんな問題なんですね。これは通産大臣は、山口の御出身と承っておるので御承知でしょうが、山口県の東洋炭鉱というところで、二百数十名を海水が坑内に入って、そのまま死体を引き揚げぬという事件があったわけですね。ですから、そういう思想で、経済的に考えてやられたんでは、これはとてもがまんできないことですから、そういう点で、ひとつ返答をいただきたいのと、もう一つ、その豊州炭鉱の経営者は、今も石炭経営者をやっておるんですか。
  149. 今井博

    政府委員(今井博君) 豊州炭鉱の死体引き揚げについての政府のとりました実情を申し上げますと、御承知のように、地下の炭層が燃え出しまして、その結果川底が陥没して非常な出水を見た、こういうことになっております。  これにつきましては、三月十二日に学識経験者よりなる特別の調査団を保安局から派遣いたしまして、死体の収容作業についての技術的な可否、可能性等について、学術的な専門的な見地から詳細に検討いたしました。その調査報告は御承知かと思いますが、その結論は、現在の事態において、遺体の収容は非常に困難である、中止するのが妥当であると、こういう結論になっておりました。  ところが、その後さらに火災がどんどん広がりまして、この火災を放置する場合においては、第二、第三の鉱害が起こるという事態に実はなりまして、われわれとしましては、死体をあくまで収容するという前提のもとに、消火にあたっては、注水作業は行なわないで、できるだけ地下の炭層を水によらないで消そうということで鋭意努力して参ったわけでありまして、地下の削土作業等をやりまして消火に努めたのでありますが、いかんせん火災がどんどん蔓延いたしまして、先ほど申しましたように、第二、第三の鉱害が起こるという危険性が非常に増大して参りましたし、これは前の椎名大臣が、現地にそのとき参られまして、現地におきまして、すべての関係者、これは県、市それから炭鉱の労働組合、経営者その他学術経験者全部の七者会談を、現地において会談を行ないました。その結果、やはり現在の火災というものを一日も放擲できない、その結果、第二、第三の鉱害が起こるので、やはりこれは注水作業を行なう以外に、この火を消す効果的な方法はない、こういう結論が、この七者会談によって実は出ました。それで遺族の方にも、この点を詳細に説明して、決して遺体収容作業というものを放棄したわけではないけれども、現在の事態においては、火を消すためには注水せざるを得ない、こういうまあ結論についての了解を求めました。その結果三月の末にこの坑内に対しまして注水を開始いたしました。七月の十一日になりまして、やっとこの完全の消火というものが実はできたわけでありまして、その後火は完全に消えましたけれども、この遺体の収容をどうするかという問題につきまして、鉱業権者としては八月十一日に、さらに死体の取り上げ作業の開始というものを希望いたしておるが、これについて危険性があるかないか、一体、そういうことが許されるかどうかという点の伺いが鉱業権者からございました。これにつきましては、先ほどの学術調査団の結果等、それからその後における、注水後における諸般の事情等をいろいろと検討いたしました結果、このような事態のもとに、さらに取り上げ作業を開始するということは非常に危険であり、現在においては、やはり特別調査団の報告のように、やはりこれを中止せざるを得ないのじゃないかということを、保安的な見地から鉱業権者に申し伝えました。  その後、それに基づきまして、さらに炭鉱の内部におきまして労働組合、遺族という三者間において、種々相談されました結果、遺体収容というものを断念さした、こういう実は経緯になっておるわけであります。  いろいろ事態の推移を考えますと、やはりこの学術調査団の報告に基づいて、これを断念せざるを得ない、そういう実は結果になったのでございます。
  150. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 保安局長でない石炭局長にお尋ねするのは酷ですから私はやめますが、あなたのお話を承っていると、鉱業権者、これは利益代表者ですからね、それから学術調査団、これはあくまで参考意見をお聞きするだけであって、鉱業権者、つまりその利益代表者と参考に意見を承る機関の決定を待ってなどというのは、私は納得できぬ、あとで保安局長と話をして御答弁願いたいですが、保安管理者の意見は、どうであったか、福岡保安監督局の意見はどうであったかという問題になるわけですね。あなたのほうとしては、鉱業権者の言う通り真に受けるとは思われぬのですが、それは、石炭局長がひとつ保安局長と相談をして、あとで御回答をいただくことにして、そこで大臣がよその会議に出るそうですから、もう一点だけひとつ伺っておきたいのは、ここにおられる水田さん、あなた、かつて通産大臣やられたことございますね、水田通産大臣、それから前尾さん、今の幹事長の前尾さん、あの人も通産大臣、高碕さん、池田さん、椎名さん、何代かの通産大臣に対して、保安法を改正しなければだめですよ、鉱業法を改正しなければだめですよということを、しつこいくらい何年間の長きにわたって主張してきたのですが、ああその通りですという答弁だけであって、保安法の改正、鉱業法の改正は、いまだ行なわれておらぬ、本日衆議院から、ほんとうの修正というよりは、一部の一部の一部の修正された法案が参議院に回ってきておるようですから、これは当参議院の委員会で承ることにして、根本的にメスを入れなければ、通産大臣、これはだめだと思うのです。それから鉱業法の改正ですね、これは大体、明治三十四年にできた法律ですから、これはその後修正を加えられておるのですが、今まで歴代の通産大臣の御答弁を承ると、目下審議中目下審議中で、五年も六年もなっているのです。現在は、どうなっておるのですか、私、条文の中身はお尋ねしませんけれども、今度の通常国会には出てくるか出てこぬか、端的なお答えでけっこうですからお伺いしておきたい。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 皆さん方から、強い御要望がございまして、それで鉱業審議会ですか、審議会が発足し、この審議会は、本年内に結論を出すということになっております。最近の事態から考えまして、特に過去より以上に、鉱業法の改正の緊急性が私どもにも感ぜられます。そこでちょうど審議会結論を得ましたら、早速そういう方向に進めたい、かように考えております。  また、ただいま保安の関係のお話が出ております。最近の中小炭鉱における金融難等の見地から、万一保安の点において疎漏がありましては、働く人の安全を確保することができないことはもちろんであります。山自体としても、大へんな苦境に立つことだろうと思います。特に保安要員を確保して、保安監督を一そう厳重にするということが現状でございます。  ただいま御指摘の点については特段に留意して、その点を御披露して、御了承願います。
  152. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 通産大臣、けっこうです。  大蔵大臣、実は今まで、これはあなたの実力を認める話に尽きると思うのですが、あらゆる場所で、あらゆる機会に、またきょうも石炭の問題についてどうするかというお尋ねをいろいろしたわけですが、結論は、大蔵大臣ががんこで金が出ないので、これはとてもできませんと、努力してみましょうという意味のお話でした、大蔵当局としては、労働大臣なり通産相のおっしゃるように、全然見てやらないという御方針なのか、見たところで微々たるものか、端的にイエスかノーかという、時間もないようですから、それでけっこうですから、大臣の。いつも私どもが、各大臣から聞くような大蔵省の態度であるかどうかということをお尋ねしておきたいわけです。
  153. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 各省が、そう言っているかどうか知りませんが、別にがんこでもなくて、筋の通った金は、むしろ出し過ぎるくらい出していると私は思っておりますが、問題は、たとえば今一般的な傾向として見られることですが、何でもかでも一般会計、国民の税金から出せという国会の要望が非常に強いのございますが、この点については、私どもは国民の金の使い方というものについては非常に厳重に考えております。金融にしましても、一般協調融資に対して、国が一般会計からその金を出してやることによって、さらにそれが促進されたり、あるいは他の金を出すことによって、全体の金利が下がるということに寄与する場合には、これは一般会計から金を出すということは意義あると認めて、こういうものに金を出すということの方針は、私どもとっておりますが、そうじゃなくて、金融の量が足らぬから、この量的補完のために、一般会計をここへ、この金貸しの資金として出せとかいう要望には、これはなかなか問題が大きくて応じられない、そういうようなことで、金融で措置すべきものと、予算支出で措置すべきものとのけじめというものは、これはっけなければならぬ、そういう点で各省の要望に一、二応じられないというものも過去にあったかもしれませんが、そうでなくて、筋のついたものは一般会計から出すのが至当だという金については、案外惜しまないつもりでおります。
  154. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大蔵大臣の話にも、よく理解できるのです。なるほど大蔵省は、無尽蔵に金があるわけではないですから、国民の税金ですから、筋の通らぬ金は、金融だろうが何であろうが出さぬというのは、よく理解できるわけですが、ただ現在置かれているような石炭産業のような場合には、戦争中は、石炭をさあ掘れ、さあ掘れということで、企業の設備投資も何もやらんで、石炭を掘った。終戦後は、日本の復興というものは石炭からということで掘ってしまって、鉱害から何から、むちゃくちゃな政策のもとにやってきている。これは国の責任だから、国が全部負うべきであるというふうには私は申し上げませんけれども、少なくともやはり保護政策であたたかい手を差し伸べなければならぬじゃないかというように考えているわけです。  ですから、過去は過去として、むしろこうだったから、今こうせいというような三段論法では、私やりませんけれども、今言った御答弁の中で、筋が通れば出しますよということですから、そうしますると、各大臣が、それはいい話であるけれども、大蔵省がしぶくてねと、こういう御答弁をいただくものですから、心配になってきた。これは大蔵大臣ひとつ。大いに努力してもらわなければならぬという気持になるわけです。ですが、大臣が明確に、そういう点については理解し、そうして正しいものは正しいものとして認める。しかし何でもかんでも大蔵省に持ってきてもだめですよということは理解できますから、そういうふうに理解しておってよろしいのですか。
  155. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そう理解していただいてけっこうでございます。
  156. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は教科書問題について、文部大臣にお尋ねしたいと思います。教科書問題については、たくさんございますが、本日は、次の三点について質問いたしたいと思います。  第一番は、教科書の無償の件、第二番目は汚職事件について、第三番目は教科書の採択に関連した事情でございますが、まず無償の件でございますが、文部省は、昭和三十六年度の予算要求額として準要保護児童対策費として三十三億八千万を提出されました。これは前年度の同費目の九億五千万に比べまして、大きな前進をみられました。要求額の中で、約七億三千万円が教科書費で、従来の対象率の二%を七%に引き上げて要求している。しかし、最終的には、これが非常に大蔵省の査定で減らされて二億五千余万円になっている。前年度に比較して、わずかに五千万円程度しか教科書費がふえていない。しかも二分の一の補助率は、市町村が二分の一みると、こういうふうな経費だというふうに思っておりますけれども、ことしの文部省の概算要求——昭和三十七年度の教科書の概算要求は、幾らなされておるのでしょうか。
  157. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 具体的数字を失念いたしておりますから、政府委員からお答え申し上げます。
  158. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ただいま一の御質問でございますが、昭和三十六年度の予算におきまして、準要保護児童のワクを従来二%でございましたのを、これを倍の四%に引き上げたのでございます。厚生省関係では、生活保護児童の対象が従来二・五%でございましたのを、これを生活保護基準の引き上げに伴いまして三%にいたしました。そういたしますと、その七%が無償になっておるわけでございます。金額の点につきまして、五千万円しかふえてなかったじゃないかというお尋ねでございますが、それは御指摘の通りでございます。  ふえなかった理由は、従来教科書関係は十分の八の国庫補助をいたしておったわけでございます。その他給食とか、あるいは、新しく今度学用品の補助もいたしましたし、治療費、修学旅行費の単価の引き上げ等一連の施策を講じまして、さらに通学費まで見るようにいたしましたので、この補助率を全部統一的に二分の一に改めたわけでございます。したがって、教科書の金が五千万しかふえなかった。しかし実質的には、市町村の負担によりまして、従来の倍は無償になったわけでございます。  で、三十七年度の概算要求におきましては、低所得者層の階層が約一割ございますので、生活保護の関係と合わせまして一〇%の要求をいたしたわけでございます。
  159. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは、文部大臣にお尋ねいたしますけれども、文部大臣は、今度から義務制の教科書については無償にしたい、大蔵省にも交渉をしている、こういう御答弁でございました。特に先般の参議院の本会議で、何としても無償にしたい、それについては、大蔵省がなかなか言うことを聞きそうもない。大蔵大臣をくどいてみたいと、こういう御答弁がございましたが、その後大蔵省との折衝状況は、どのようになっておりましょう。
  160. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 千葉さん、万々御承知のように、義務教育は無償とすると憲法が宣言をいたしております。もっとも、当面無償というのは、授業料を取らないことが最小限度だという趣旨の学校教育基本法の規定があることを承知いたしますが、しかしそれも最小限度でありまして、できるだけの努力をして合理的な範囲の教育費は、義務教育に関する限り無償とする趣旨だと心得ます。  まあ、そういう角度から考えまして、少なくとも義務教育の児童、生徒に対します必要教科書を国なり公共団体なり、親の負担でなく無償にするという努力はなすべきものとかねて思っておるわけであります。ところで相当の経費も要することでございますから、具体的に大蔵省に概算要求をするという課題としては取り上げておりませんけれども、何としても、これは事務的に積み重ねました予算要求としての課題としては、あまりにも一般的に考察さるべき内容を持っておりますし、重要課題でございますから、与党のほうで、政務調査会のほうで検討をしてもらっておる段階でございまして、したがって、まだ大蔵省と具体的に予算折衝するまでの段階には至っておりません。
  161. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、今度の三十七年度の予算要求の中には、全然触れていないわけですね。別途に政務調査会の結論を得て、そして与党と話し合いで閣議に乗せていく、こういうわけですか。
  162. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そういう考えでおります。
  163. 千葉千代世

    千葉千代世君 この、義務制の教科書を全部無償にいたしますには、どのくらいの額でございましょうか、それから人数でございます。
  164. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 概算いたしまして、現在の定価のままでなしに約二割程度を増額せざるを得ない状態にございますが、増額することを計算に入れまして、概数百六十億円見当かと推定いたしております。もっとも、御案内の通り、中学校が三十七年でピークが終わりまして、児童、生徒数が急激に減りますので、三十八年度以降漸減いたしまして、四十一、二年、ころになりますと百二十億円見当と推定されます。
  165. 千葉千代世

    千葉千代世君 今伺ってみますというと、事文教に関しては、文部大臣責任をお持ちになっているようでございますけれども、これはやはり、一文部大臣としての責任範囲ではなくて、政府全体が責任を持つと、こういう事項のように伺っております。としてみますというと、文部大臣が大蔵大臣を口説く、これでは、ものは解決しないように承りました。大平官房長官あるいは大臣——次官がいらっしゃいますが、次官に伺いますが、今、荒木文部大臣が述べられましたような、憲法二十六条の中に教育を受ける権利、義務、この中に義務教育は無償とするとございますが、とりあえず教科書だけでも無償にしたい、こういう大臣考えは全く同感でありますし、私どもも、長い間この無償を望んでおったわけです。ですから、このことに関しましては、ほかの問題については、文部大臣意見を異にすることが多いので、これはまことに残念ですが、多いのですけれども、このことに関しましては、むしろ文部大臣を先頭にして、立てて、私どもは何とか実現したいと、こういう考えでいるわけなんです。  そうしますというと、これはやはり内閣の首班にある方々が、責任を持って、この教科書無償を確保していくと、こういう御努力が非常に大事じゃないか、これできまるかきまらないかわかるのじゃないかと、こう考えましてお尋ねいたしますが、内閣責任者として……、  もう一ぺんお尋ねいたします。先ほど文部大臣が、ぜひ無償の線でいきたい。しかしながら、今、政務調査会のほうで御相談中だから、その結論を待って交渉したい、こういうお話であったわけです。で、額も百六十七億に上るような、相当膨大でございます。今度の文部省の概算要求の中には載っていない。したがって、そうしますというと、これは一文部大臣責任だけでなくって、内閣全体の責任として、これを解決の方向に持っていかなければならない、こう考えます。で、総理大臣の代理でここにおいでになりました大平官房長官は、教科書無償について、どのような努力を払うおつもりであるか、その点について、覚悟のほどを示していただきたいと思います。
  166. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 義務教育諸学校の教科書を無償とするということは、私どもそういうことができますれば、ありたいものだと念願いたしております。  で、今文部大臣からお話がございましたように、事柄が重大であるので、事務的な折衝というよりも、むしろ高いレベルでお話し合いをつけたいというお気持のようでございます。  今の政府の状況は、明年度の経済の見通しを立てまして、それによりまして、明年度どの程度の税収が増加、確保されるかということ、そして現在の予算の、当然増が、どのような計数になって参るかというような基本的な事項を、これから予算の編成作業に入るまでにやらなければならないことでございます。そういった過程を踏んで参る道程におきまして、私どもといたしましても、こういった政策に財政的なルールができまするように、財政的な余裕がこのために確保されるような状況を何とか作り出すように努力してみたいということが、今私の心境でございます。
  167. 千葉千代世

    千葉千代世君 あの文部大臣の熾烈な要望に対して、官房長官の今の御答弁のほうは、あまりこの反応がないのじゃないかと思うのです。というのは、自然増収がどれくらいあったらどうしようとか、様子を見てからとおっしゃるのですが、四千五百億ですか、自然増収を見込んでいらっしゃるでしょう。大蔵大臣が、そう答弁なさいましたね。自然増収、大体、方向はきまっているわけでしょう。そうすると、自然増収がどのくらいあるか、それを見定めてからというのではなくて、大体、まあ自然増収がこのくらいあると、そうしたらその中で自然増収の使い道は、大体これこれというように、新聞でも伺っておるわけなんです。百六十七億でございますから、これは自然増収の額に比べて、そう比重は大きくないと思うのです。  そういう意味で、もう少し積極的に無償の措置を講じていただきたいと、こう思うのですが、重ねて少し御努力いただきたいと、こう要望しておきます。
  168. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 政府といたしましては、来年度の自然増収が幾らになるかということを公に表明したことはございません。また景気調整策をとっておりますから、われわれは経済の基礎を新しい基礎の上において計算せねばいかぬと思っております。一向お前は煮え切らぬじゃないかということでございますが、やはり問題は、お金のことでございまして、私がさか立ちいたしましても、お金がなければ勝負にはなりませんので、やはり事柄が重大であればあるほど、着実に考えていくべきものだと私は考えます。
  169. 千葉千代世

    千葉千代世君 荒木文部大臣がこの発表をなさったのは、夏に入るとすぐでございましたね、あなたがどっかへいらっしゃって、旅先で、今度は教科書無償を全部やると、そのときにたしか百五十億というようなことをおっしゃっておりましたが。そうすると、あなたは自分の考えだけで、こうやりたいなあという想像でおっしゃって、その後具体的に、内閣全体に対して反映したという機会はなかったのでしょうか。大平官房長官は、何かこれから考えるようなお考えのようなんですけれども、今までそういうお話し合いは、全然なさらなかったのでしょうか、閣議でも何んでも。
  170. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 予算の概算要求が取りまとめられて、閣議に御報告がありました席上で、荒木文部大臣から、本件については、事柄が重大であるので、概算要求には特に要求しないことにして、問題は党並びに政府の方針がきまってから、あらためて要求することにしたいという意味の御発言がございました。
  171. 千葉千代世

    千葉千代世君 それで荒木文部大臣は、その何とかしたいという御発言したっきりで、あとは政府の政調会におまかせしっ放しと、こういうわけですか。  というのは、私方々の婦人会とか、いろいろな婦人団体の会合とかに参ります。そうすると、新しい教育と古い教育と、こういう中でお母さん方が御勉強になって、そして、まあ荒木文部大臣が教科書を無償にしたい、こうおっしゃったことについては、もう全面的な賛意を表しておるわけなんです。だけれども、これはほんとうだろうかという御心配を持っておりました。私は荒木大臣は非常に信念のお強い方で——まあ必要以上に信念のお強い方であるので、このことは、安心していいのじゃないかと、だけれども、教科書無償即国定の方向へいくのじゃないかという御心配をおっしゃった方もありましたから、とにかく百五十億なら百五十億を大蔵省に要求して取っていただくために、全力を尽そうじゃないか、その過程の中で、教科書の採択の問題とか、検定の問題とか、いろいろ話し合って、そしてよい方向にしていこうではないかと、こういうお話し合いをしておるわけなんです。  そういう観点から、この無償にするかしないかということは、単に一人のお母さんだけの問題ではなくして、教育界全般もみんな要望していることだと思うのです。全部義務教育の費用、教科書だけではなくて、施設整備とか、それからまあ全部を無償にいきたいと、これがねらいなんですが、とりあえず、とにかく教科書全部を無償にしていくと、こういう、まあねらいを定めて実行に移していくと、こういうまあやり方については、非常に希望を持っているわけなんですが、そろそろ予算の折衝に入ってきて、各省が、まあ予算のぶんどり合いをしているとか、あるいは実力者でぶんどり合いが激しいとかと新聞にありますと、私ども詳しい数字は、なかなかつかみにくい者にとりましては、ただ、はらはらするばかりで、ここよりほかに、私どもお尋ねする場所がないわけです。そういう意味で文部大臣は、党にまかしたという、それだけではなくて、もう少し積極的にお働きいただきたい。それに関連して、各市町村で、まあ幾つかございますが、村有林が売れたから、その金は教科書無償に回して、そういうような教科書無償にした市もあるそうですから、しかし、これとても計画的に、来年も無償、再来年も無償ということはできない。なかなか心配が多い市があります。そうすると、隣の市では、あそこは村有林があるから無償にできるけれども、自分のほうはできないと、こういうふうに市政をあずかる者にとっては悩みがある。ですから、やはりこれは国が責任を持ってしていただくより仕方がない、こういうわけで、文部省に対して教科書無償、ぜひそうしてもらいたいという市町村の要望がかなり来ているんじゃないかと思いますが、具体的に全国のまあ教育団体とか、そういう方面から、無償の要望書がどのくらい出ておりますか。
  172. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今、具体的に数を覚えておりませんが、各方面から無償の要望が出ていることは御指摘のとおりでございます。御必要なら、あとで資料を差し上げてもけっこうでございます。
  173. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、教育費の父母負担の現状について伺いたいと思いますけれども、教科書が今、一年生から、まあ小学校だけでけっこうですが、一年生から六年生まで、大体どのくらいかかるでしょうか。
  174. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教科書は小学校で申しますと、平均六百五十七円になっております。中学校で申しますと、九百三十七円でございます。
  175. 千葉千代世

    千葉千代世君 その教科書を含めて、まあ教育費の父母負担が非常に問題になりまして、まあPTAでも、なかなかそうお金が払い切れない。地財法を改正して、PTAの負担をなくしていこう、こういう配慮がなされておりますが、現実には、やはりお母さんやお父さんの負担は減ってないという現状、一面、この地財法の適用を受けて、取れないようにしてはあっても、たとえば東京都のように、そうしたPTAの負担を軽減していくという予算を組んだ。しかし、東京都のような財源のあるところはよろしいのですが、なかなか財源のございませんところは組めない、こういう苦しみになっておりますが、それで、私の手元にございますのを見ますというと、まあ父母負担の教育費というものが、大体小学校一年で、大都市でもって二千二百円、中都市で二千百十七円、農村、漁村では九百三十五円、僻地八百八十四円、こういうふうになって、三年生が三千三百二十八円となっている。二年になりますと、千六百十二円とかと、こういうふうに大都市で考えていきますと、一年とか三年とか六年、五年と、こういうふうに、でこぼこがあります。とにかく、このような父母負担をさせているわけです。そうすると、全国的に見ますと、非常なこれは膨大な数字になるのじゃないか。  ですから、全体的に父母負担の費用を少なくしていく、そういう中で、まず教育費が無償になりますと、非常に助かるわけなんです。先ほどお話のございました一〇%の要求だそうでございますね。そうすると、もし文部大臣が要望をなさって、そうして官房長官のお答えのように、私は率直に、どうも見通しがないように思うのですね。あんな態度では取れませんよ、この要求なんて。そう考えていった場合に、もし無償というものがなくなったと、こう考えますね。そうすると、一〇%のままで今年も行く、こういうふうになってしまう。荒木大臣、それに対していかがでしょうか。私の想像、間違っておるでしょうか。そうじゃなくて、何でも取ってみせるというお考えだったら、披瀝していただいて、責任のある場所責任のある答えをしていただきませんと、旅先で、無償にいたしますとか、百六十五円取れますと言ったってだめです。
  176. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私の信念だけでは獲得できない重大な課題だと思っております。御案内のとおり、三十六年度の文教関係予算は、大蔵大臣の御協力を得まして、かなり増額してもらったわけでございますが、むろん、まだ努力が足らないことを憂えております。  それにいたしましても、もし教科書無償ということを事務的に積み上げて文部省だけで考えるとしますれば、三十七年度は三十六年度の倍くらいの新規増額をしてもらわなければまかなえないという、数字的に見ましても、それほどの大きなものでございます。教育基本法で一応最低限をきめておる。その最低限から竿頭一歩を進めようという課題として受け取りますときに、そう簡単に参らない課題であることは、千葉さんもよく御承知のところでございます。  さらに、単に教科書を無償にするのだという課題としてだけではなく、これを一種の間接税の軽減という角度でもとらえる意味がありはしないだろうか。さらに、社会保障政策の一端として考える意味もあると思われるのであります。したがって、単純に父兄負担の軽減、ピアノを買うのに寄付をした、そんな寄付は取るな、という課題とは違った、もっと基本的な財政政策の長い見通しと、取り上げる一つの重要政策、課題として、どう受け取るかということで考慮しなければならないほどの幅と内容を持った課題と心得ます。  したがって、一文部省の立場でなしに、内閣として、さらには、政党政治の建前に従って考えますならば、与党全体が、どういうふうにこれを政策問題として受け取られるかということの関連なしには考えられないと私は思うのでございまして、事柄としては、むろん何とか実現したいものだという熱情は持ちまするが、これを実現するとなれば、今申したような角度から取り上げることを努力しませんことには、実現性が困難ではなかろうか、こう考えておるような次第でございます。  もし、これが不可能でございますれば、三十七年度は一〇%の対象を考慮に入れました無償の限度にとどまるということも、やむを得ないことがあろうかと思いますけれども、そうはさせたくないものだとは思っております。
  177. 千葉千代世

    千葉千代世君 大平官房長官は、どちらにいらっしゃいましたか。
  178. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  179. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) 速記を起こして。
  180. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど父母負担の額を述べましたのですが、これは一人のお母さんにどのくらいかかるんだろうかという、その地域のお母さん方集まって、その平均をとってもらったんです。そうしたら、その世帯の月の平均収入、月給取っていらっしゃる方なら月給、それからお店をやっていらっしゃる方なら純益、それに比例して、どのくらい払っているかと聞いてみたんです。そうしたらば、あまりお金持ちの人がいなかったものですから、小中学校の場合ですというと、お子さんが一人のときは家計費全体の約一八%かかると、こういうわけですね。これは大都市ですけれども、それから中都市の場合ですというと、これは約一三%、高等学校へいきますと一八%になります。農漁村でいいますというと八%、僻地ですと九%、大体、今家計の一五%が子供の教育費に充てられているという、なかなか苦しい現状だと思う。こういうふうに実態が出てきたわけなんです。お金は、大体大都市が年間三十六万、中都市が三十二万四千円、農漁村が三十万、僻地が二十四万と、一年の年額を大体平均とって、それに比率を見ますというと、これだけ出ているというんです。非常な大きな影響を与えている。  それですから、教科書無償ということが、文部大臣の口から発せられて、各新聞が取り上げて、大体非常に大きく取り上げている。その後二、三回取り上げられていました。そうするというと、もうお母さんたちは、これが必ずできるというような考えを持ちまして、勘定して喜んでおったんです。こういうふうな意味で、私はやはり国の政策の中に岳文教政策の基本の中に、教科書無償でいくという、この一本が少なくとも打ち出されていくということが大事じゃないか、こういうふうに考えましても今官房長官総理大臣もいられないようですから、要望にとどまるんですが、この件については、文部大臣は一歩もうしろを見ないで前へ進んで下さい。引かないで下さい。これは要望でございますから、お願いいたします。ほんとうにお願いしておきますから。  次に、教科書の汚職について、少し伺いたいと思いますが、十月二十一日の朝日新聞でございますが、氏名を秘して発表されているわけです。いやしくも教科書についての汚職があったということは、私はまことに自分自身が恥ずかしいような気がいたします。先ほどから、各委員から、前通産大臣選挙のいわゆる違反の問題、それから前運輸大臣の武州鉄道の問題等々述べられたわけですけれども、少なくともこういう委員会で、こういう質問をしなくてもいいように私たちは進めていきたいと、国政を扱っていきたいと、こういう意味でお尋ねするわけなんですが、この十月二十一日に出ました教科書についての汚職事件の概要を、どのように把握していらっしゃるのか、お尋ねいたしたいと思いますが、時間もございませんから、人名だとかそういうことは、内容は、一々今伺う余裕を持っておりませんから、全貌でけっこうでございます。
  181. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 十月二十一日の新聞記載もございますが、その前から、実は大阪を中心に教科書の汚職事件が起きておったわけでございまして、今までに新聞で報ぜられるところを見ますと、大阪の管内、奈良、滋賀、兵庫、この辺が中心になっておるのでございまして、その会社は、教育出版、大阪書籍、教育芸術社、学校図書、大日本図書、東京書籍、この六社が一応対象になってあがっておるわけでございますが、この中で、今捜査中でございますが、今までに明らかになりましたのは、二名が起訴されております。それから教職員の関係者につきまして、これは最近は全部名前を秘しておりますから、明確には把握できませんが、百数十名にのぼっておるのではなかろうかと思うわけでございます。  私どもも、大へん遺憾なことと思っておるわけでございますが、これにつきましては、一応書類送検という形になっておりますので、まだ、どういう処置が行なわれるのか、今のところ見通しがついておりません。大体、金額としては大したことでないように新聞では報ぜられたわけでございまして、ワイシャツを贈ったとか、あるいは数千円の何か商品券を贈ったとかいうので、金額は、あまり多くはございませんが、いずれにしても、こういう不祥事が起きたことは大へん遺憾なことと思っているのでございます。
  182. 千葉千代世

    千葉千代世君 金額は、たとえ一銭でもまあこれはいけないことはいけないのですね。百万円でもいけないことはいけないのです。質においては、私は何ら変わっていない、こういう観点でおりますが、これは、大阪の高検が担当してやったことなんでしょうか。
  183. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 検察庁まで一応書類は届いたと思いますけれども、警察の手元で捜査をしている段階の分が、まだ相当多いのでございまして、一部は送検して、検察庁の手にわたっていると思います。
  184. 千葉千代世

    千葉千代世君 今回の汚職は、業者のほうが相当積極的に動いたという顕著な例がたくさんあるわけですが、よく、てんどんから建築までという言葉がはやっているように、今の日本汚職というものは、底知れない深みを持っているということを考えまして、私はやはりこれは、その原因は何であるか、対策をどうしなければならないか、事文部省行政に関連した問題でございますので、お伺いいたしますが、こういうことの起きた原因というのは、一体どの辺にございますでしょうか。
  185. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 一つは、教科書の冊数というものはきまっているのでございます。生徒数も一定しておりまして、生徒数がふえるときはけっこうでございますけれども、最近のように、小学校は、どんどん減って参りまして、減っている、すなわちマーケットが一定し、あるいは漸減していくというような傾向の中で、他面教科書会社のほうは、だんだんふえていく、こういう状況でございまして、現在小中高を加えますと八十六社、小中の義務教育だけで四十六社ほどございますが、教科書会社が多過ぎて、マーケットが狭い。勢い競争が激甚になってくるということで、その競争が激甚になった結果、こういうような不祥事件が現われたのではなかろうか。それから採択のやり方にも、多少問題があるのではないかとも思っているわけでございますが、いずれにいたしましても、基本的には、マーケットが一定しており減っていく。そこに教科書会社のほうが、ますますふえてくるという現象がございますので、まあこういうことになったのではなかろうかと思います。
  186. 千葉千代世

    千葉千代世君 採択問題に原因があるのじゃないかということをおっしゃったのですね、今。私は、これが一番のもとじゃないか、こう考えております。  というのは、最近非常に統一採択が行なわれてきた。それで広い地域に統一採択、たとえば県単位、あるいは郡市単位とか、町村単位とか、そういう単位に採択が行なわれていると、そういうところに割合に汚職が多い。ばらばら採択と申しますと、教科書の展示会に行ってみて、比較して、自分たちの地域の状況、教育の現状、そういうところを見て、この教科書がいいのだ、検定制度を通った中で、この教科書がいいのだという教師が判断して相談して採択した、いわゆる個々採択ですね、そういうところには、業者が入りにくいせいか、汚職が起きていないわけですね。現に東京、秋田等がばらばら採択なんですが、だんだん一括採択の方向に行っておりますから、これは相当大きな問題ではないか、こう思っておるわけです。  具体的にはまあ教科書を採択するには教科書の採択委員会を設けるとかあるいは教科書研究会を設けるとか、こういうようにやられて、形式的にはやられておりますが、実情をお聞きしてみますというと、この採択委員会のメンバー、それからそれをたばねている方、それが相当力を持っておって、それに左右されるという、こういう傾向があります。現場の先生が見て、これは私は、今度この教科書を採択したいと校長さんに相談します。それはいかぬ、それはもうきまっているのだからいかぬよ、と一蹴されて非常に悲観している先生にお会いしたのですが、こういうふうにして、実際は、採択委員会とか研究委員会とか、それを牛耳っている方が、教科書会社とも接触している、こういう県が、かなりあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  187. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教科書を各学校ごとに採択するところもあるわけでございます。たとえば東京のように、本来教科書の採択権は教育委員会にございますので、教育委員会が一括してきめているわけですが、その場合、各学校ごとにやりますと、転学その他非常に不自由が起きてくるので、現在は約八割が統一採択をやっている。統一採択と申しますのは、大体郡市ごとに同じ教科書を使っていこう。昔のように国定でございますと、そういう問題はないのでございますけれども、今検定教科書でございますから、教科書がばらばらになりますと、転学する場合にも進学する場合にも非常に不自由が多い、こういう点から統一採択が起きたわけでございます。  統一採択になりますと業者のほうは、そこをねらって一番誘惑するわけです。各学校ごとに採択するなら、かりにそこの学校を誘惑しても、他に影響がないということになる。統一採択のところに業者の勧誘が熾烈にいきますことは、これは想像にかたくないと思う。  そこで、まあ統一採択をされる場合の委員さん達が従来匿名になっておりますので、もう少しこの人達をはっきり明示して、責任を持たせる方向で今検討をいたしておるわけでございます。責任の所在が不明確でございますから、どうもそういうことも起きてくるのではなかろうかということを考えていまして、まあ統一採択にしたから、こういうことになったというわけでも私はなかろうかと思っております。
  188. 千葉千代世

    千葉千代世君 今内藤局長は、教科書の採択権は教育委員会にあると、こうおっしゃいましたね。私は基本的には、現場の教師にあると、こういう考えを持っていますが、この点についての質疑は、文教委員会に譲りますが、とにかく教科書に関する発言というものは、第一に教科書を使う教師の立場から発言が尊重されていかなければならないのじゃないか。それにこたえるものが、教科書を作る人、執筆者とかあるいは編集者とか出版者とか、そういう人々によってなされていく。それに対して、まあサービスするとかコントロールするとかいうのは、政府の仕事であろうと思いますけれども、教科書採択権は、教育委員会にあると私はそう思っていません。これは見解の相違ですから、後ほど文教委員会でいたしますけれども、教科書法案が出されて、これはつぶされましたね。その後、この採択についての問題は、地方教育行政法でございましたか、それから臨時措置法がございましたね。あれを三つずっと読んでみましたのですけれども、やはり展示会を開かなければならないことから始まって、いろいろ規定されておりますけれども、教育委員会にあるとは思わないわけですね。そのことは、あとにいたしまして、とにかくそういう立場で採択がなされていく、編集されていく。  ところが、昨今の教科書問題は、これを見ていきますと、不幸にして、そのような状態ではなくて、逆の結果になって、むしろ教科書を文部省のほうで、まあ統制していくという傾向が強いのではないかと思いますが、それについてお答えいただきたいと思います。
  189. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 統制するというような意思はございません。ただ教科書は検定、学校教育法に基づきまして、文部省が著作権を持っているいわゆる国定のもの、これは、大体民間ベースでペイしないような盲ろう教育とか、あるいは職業教育の一部にあるわけですが、それ以外は、文部大臣の検定というものが建前になっております。検定をする場合に、どういうものをするかと申しますと、そのものさしは、学習指導要領という教育内容、その程度、方法、方針をきめたものがございますので、その指導要領に合っているかどうかということを検定するわけでございまして、これは当然のことではなかろうか。  それを採択する場合には現在の地方教育行政の組織及び運営に関する法律によりますと、教科書に関することというのが、教育委員会の所掌事務になっているわけでございます。そこで採択は、教育委員会が採択する場合には勝手に採択するかといいますと、そうじゃございませんで、どこでも教科書採択協議会なり委員会というものを別に設けまして、その中に校長さんも現場の先生もお入りになって、そして十分検討されて採択がきまるわけでございます。  ですから、教育委員会だけがきめているのじゃなくて、この中には、教育長さんも入っていらっしゃると思いますけれども、主として現場の先生方の意見を十分反映できるような仕組みになっているのでございます。
  190. 千葉千代世

    千葉千代世君 今、局長の御答弁は、表面はそうでございますが、現実に汚職の起きる時期は、いつごろと思いますか、私の調べました範囲では、やはり六月、五月が多いです。そうすると、今、局長さんがおっしゃったように、展示会を開いて、七月一日から十日間ですね、展示会は。それを見て、先生方が見て、校長さんも見て、ひとつ小学校の理科は、これにしようじゃないか、こういう御相談があるというのは、展示会を見てから後にあるべきでしょう。その汚職が六月に多いということ、何を物語っているか、こういうことを考えてごらんなさい。現実に今、会社の問題が出されましたが、私の調べましたところでは九十四社あるわけですね。大手三社、中級、小級合わせまして、高等学校関係の会社等合わせまして、全部で九十六社というわけですけれども、そういう中で、一つの会社に非常に片寄っているという現状と、これはいいものだから片寄ったといえば、それまでの話で、何も言うあれはございませんけれども、しかし汚職が起きるからには、その裏というものがやはりあるということを、私どもは把握したわけです。  採択の問題にしても、今調べてみましたところが、たとえば三十六年度に、小学校の理科をどのくらいの県と郡市が何種類採択しているかということを見ていったわけです。そうすると、県として採択本数、たとえば千葉県なら千葉県で、小学校の理科の本を七つの会社なら会社から取った。七種類取った。これは千葉県ではございませんけれども、ある県で取った、そういうのが八県しかないわけですね。それから六種類以上取っているのが九県、五種が十二県、それから四種類これが八県、三種類が五県、二種類、ゼロ。愛媛県の例ですと、一県が全部同じものを採択しています。こういうのでございます。しかもその採択された中には六種類取っても、実際は六種類が平均取られているのではなくて、そのうちの一社か二社が全体の一〇〇なら一〇〇のうちの八五%占めている、こういう例がある。これは理科の教科書だけではなくて、各教科にございます。たとえば国語を見ていきますと、三十六年度の国語を見ていきますと、福岡県が五社採択していまして、五社採択した中で、一つの会社のが三五%も占めているわけです。それから二つの会社合わせて五五%、あと残りを三社が取る、こういうことになっております。一番ひどい例を見ていきますというと、宮崎ですが、これは、小学校の国語でございます。宮崎県として三種類採択していますが、その三種類の中で、大手一社が、これが八五%とっている。そうすると表面は、三つの会社からとったとありますが、中身をあけてみますと実際は八五%、こうなっている。そうすると、それが会社側の方に、どう現われていくかといいますと、これはいわゆる一つの会社に集中していくわけですね。先ほど局長が述べられました、また、たとえば東京書籍の例をとると、三十六年の採択者数、全部合せて三千八百七十八万冊、その次が学校図書の三千百七十七万冊と、こういうふうに二葉印刷、啓林館、大日本図書、ずっとありますが、そのうちで九十何社、局長のおっしゃったように、約八十社を見ていきましても、そういう中で大手三社、これが非常に多いという現状なんです。しかもこの教科書出版会社が、印刷会社と提携をして、私、いい言葉は存じませんが、やはりこの企業の集中化と申しますか一人占めにしてしまって、人に譲られないような防波堤を形成していく、その役割が、採択にあたって業者が売り込む、何とかして、これも教科書会社も、一つの企業でございますから、損してまでやれない、そうするには、適当の利潤を上げていかなければならない、そうすると、不当な競争の中に、過当競争の中で、どうしてもそこの従業員を派遣していく。けれども、さっき言ったように愛媛県では、一県全部同じものをとってしまったでしょう。そうすると愛媛県には、担当員は要らないわけです。四国四県には、高知県とか、そういうところへやるためには、何人か要りますけれども減らしてしまった。そうして今度は、そうでないところに、業者の担当者がもぐり込んでいって、そこで収賄、汚職の素地が作られていく。  こういうふうに把握しておりますが、文部省の見解いかがでしょうか。
  191. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教科書を作りまして、相当経費もかかるのでございまして、検定した場合に、いろいろ特色があるわけでございまして、都会向きのものも田舎向きのものもあるし、程度の高いもの低いのもある。そうしてそれは、それぞれの地方の実情に即して採択されるわけですが、文部省として検定する場合に、合格点があれば検定になるわけです。検定した中ではやはりその中に優劣もあるわけです。それをいろいろと採択される側でおとりになる。この場合、会社側としては、どうしても自分の教科書が一番いいという宣伝をされるだろうと思う。公正な宣伝なら、これ当然だと思う。その場合、不正な宣伝が一番問題になるわけです。私どもは不公正な取引については、厳重に監視をいたしておるわけです。で、先ほど九十何社とおっしゃいましたが、実は、それは統計が古いと思います。最近の統計ではだんだん減りまして八十六社になったわけであります。で、八十六社ございますけれども、義務教育に携わっているのは四十六社でございます。それは国語、算数、理科全部の教科をやっているところは非常に少ない。たとえば音楽だけやるとか、美術だけやるとか、あるいは国語と社会だけやるとか、あるいは理科と数学だけやるとか、いろいろ組み合せが違うわけです。各府県ごとにみますと、大体一教科については、五種類で、ほとんど全部カバーできると思います。五種類以上に、教科が分かれるということはまずない。これは全国的に見てみますと、大体上位五社で七五%から九五%を占めております。これは何と申しますか、これがいけないというわけに私はならんと思う。  それに反して高等学校の方は高等学校自体が採択しているのが多いのでございますから、非常にこまかく会社も分かれておりまして、教科も非常にこまかく分かれております。小中学校の場合は、比較的大きな会社は国語、算数、理科、社会一通りやっていらっしゃるわけです。そういうところが、やはり教科の関連性から申しまして採択されるわけです。国語と算数、理科が、ばらばらになってしまった場合に、使いにくいという面もあろうかと思います。そこで勢い大手五社に大体集中している、これは言えると思う。  その場合に、一県の採択部数が非常に多いから、これはいかんのだというのは、少し行き過ぎじゃないかと思う。ある場合は、やはりいい教科書ですと、その教科について相当な部数が出てくるということは、それだけが、すぐいかぬという理由にはならぬと思う。その裏に、御指摘のような不当競争が入っておりますれば、これは私どもとしては、厳重に監督し、その是正を要求しておるわけでございます。
  192. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほど採択の問題と検定の問題に触れられたわけですけれども、おっしゃるように学習指導要領ができて、それに準拠して検定の基準を設けておる。そうすると、検定を通らなければ出版できない。出版できなければ売れない。会社は、なかなか立っていかない。そういう中で、その検定に合せるように好むと好まざるとにかかわらずされていく、これは文教委員会の方で、検定制度に関して討議がありましたから省略いたしますけれども、やはりこの検定制度、その中にひそむもの、たとえば学習指導要領に、君が代を載せてある。そうすれば、これはどの会社でも、検定を考えて全部載せる。たとえば小学校の理科に、魚の泳ぎ方というのが出ておりますね、そうすると、これは全部、どうしても載せなければならんということで、どの教科書にも出ておる。横を向いたり前を向いたりの違いはありますが、とにかく金魚の絵が載っている。そうしなければ検定が通らないという錯覚を起こす。ひどいのは中学校の家庭科で目玉焼きが載っている。どれもこれも載せなければならぬ。特色も何もあったものではない。狭き門をくぐっていくという苦心が、教科書会社に非常になされておって、そのために著作者と会社の関係、それからこれを検定する側との関係、こういう相関関係の中で、幾多の矛盾をはらんでおる。そういう意味で、私は文部大臣が百五十億の予算をとって、ぜひ教科書を無償にしていくと、そうしたら、この機会に国定に踏み切ったらどうかという、自民党の政調会の文教担当の方の御意見があったそうです。そうしたら、いやいやそれは今国定をやると、来年の参議院選挙にまずいから、みんなから反対を食ってしまうから、これはちょっとほとぼりをさましておいて、そのかわり、実質的に変らない検定制度を強化していく、実際的には国定と同じような役目を果たさせるからいいじゃないか、検定制度強化ということが新聞にございました。それはほんとうでございましょうか。
  193. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 検定制度は、現行のままで参ります。強化するという必要は、一つも認めておりません。
  194. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますというと、現行のままでいらっしゃるという文部大臣の言葉を信じますが、実際には検定制度、検定する側とされる側の対立点を見て参りますと、前国会の文教委員会で詳細に述べられましたが、それはなかなか要所々々に網を張ってあって、ちょっと部分的に見ては、なるほどこれはいいなと思っても、総体的に見ていくと、すっかり内容が変えられるような係が幾つもあったわけですが、そういう係については、特に検定の衝に当たる者に対しての適切な指導を行なって、不当な、教育内容がゆがめられていかないような方途をまず講じていく。それから採択権についても問題点がございますから、そういう点を改めていかない限りは、これはなかなか問題の本質は解決できないじゃないか。  私は汚職する方もされる方も、たとえば一厘もらってもいけないと思う。教科書会社の人を命びまして、一体あなた方が、ものを贈れる限度は幾らですかと、こう聞いたのです。そうすると、こんな小さい帳面を出されまして、この帳面なら百円だ、この百円まではいいと言うんです。けれども、教科書会社の人が学校へ行って、一つこれをどうでしょうかという場合には、一ついかがでしょうか、ごらん下さいと言ったのは、百円以下のものなら、いいそうです。それから、著作者を郡なら郡で呼んで研究会を開く。さっきおっしゃられた、教科書採択委員会とか、教科書研究委員会が中央から著作者を呼んでお話をする。そういうとき、その会場費は三千円まではいいそうですね。それは認められておりますそうですね。それなら、会場費はいいのだ、これは教科書会社が出すのじゃなくて、地元が負担して、呼んだ方が負担して、三千円まで会場費を認めるというのです。現実には教科会社が、前もって行って施設をして置いて、そうしてやっているのですから、実際的には、教科書会社から出しているのだ。こういう例を幾つか聞いたわけですが、そういう話をしていけば際限もございませんけれども、要は、やはり採択なり検定なり、そういう問題にメスを入れていかない限りは、これは、なかなか本質的に解決できないのじゃないか。単に道徳的な問題だけで解決していこうと言っても、相当無理な問題じゃないか。  そういう面について、今回の汚職事件について、文部省の対策は、たとえばどのように適切に指導されていらっしゃるおつもりですか、伺いたいと思います。
  195. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは、従来からもやっておったんですが、今後回そう、不当競争に対する規制をして参りたいと思います。  今お述べになりましたように、研究授業の名を借りて、講習会をやっておるのが相当多いのでございます。こういう点につきましては、採択の直前は、今まで禁止しておりましたが、これにつきましても、十分検討を加えてみたいと思いますし、駐在員につきましても、少しルーズに流れておるようでございまして文部省では、できるだけ現職の校長さんや教育委員さんが、やめたあとに駐在員になることは、認めていないのであります。こういう点も、顔のきく駐在員がおって教科書の勧誘をすることについては、これもさらに検討してみたいと思います。あるいは教科書の今日までやっておる見本本の送付については、これはある程度、見本本でございますから、認めざるを得ないのでございますが、これについても検討してみたい。  そのほか、公正取引委員会の方で対象になっておりますところの中傷とか、あるいは饗応とか、あるいは金銭物品の贈与、こういう点については、一そう厳重に取り締りをいたしまして、今御指摘になりましたように、一円でもよくないと思います。百円未満がいいというようなことは、全然私どもは考えておりません。百円未満でも、けしからんと思いますし、会場費が三千円でも、これはいかんと思います。今後、そういう点については、各段の注意をいたしまして、御指摘のような、こういうことの絶無を期して努力をいたしたいと思います。
  196. 千葉千代世

    千葉千代世君 時間もなくなりましたが、今、百円もけしからん、ただもらってけしからん……。何か、それがいいというのは、どういう根拠で言うのでしょうね、それが許されているというのは……。誤解のないように、三千円の会場費は、実質的には会社が出しておりますけれども、表面は地域でみんなが出し合ったという形だそうですから、これは教科書会社が出したのではないという、表面は、そうなっておりますが、そういうこともあるという意味で申し上げたわけです。
  197. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今、百円までいいというのは……。私は百円でも一円でも、十円でもいけないと思います。ただ、公正取引委員会の方が百円未満のものなら、まあいいのではないかという指示はしたようでございますが、その百円未満でも、これは同じことだと思うのです。いかなるものも取るというくせをつけることが、そもそも教育的にはよくないと思います。学校の倫理観運動として、私どもは今後、そういうことは絶無でありたいと思っております。
  198. 千葉千代世

    千葉千代世君 今の意見には、全く賛成ですが、公正取引委員会に対しても、そういうことをきめられては困るということを言って下さいませんか、これは非常に問題ですから、百円が千円になり、しまいにはだんだん良心が麻痺していくということは、これはどの職にあってもいけないことです。特に教育の府にある者については、これは私は、たとえば教育指導主事で教育委員側だからどうとか、日教組の組合員だからどうだとか、そんな、けちくさい考え方ではなくて、組合員であろうが、指導主事であろうが、校長であろうが、教育委員会の親玉であろうが、やはりいけないことはいけないという、きぜんとしたものをもっていかなければならない。  こういう意味で、私は時間がございませんので、私の意見と希望を述べて、二度とこういうことがないようにしたい、こういうふうに考えます。自民党の一部には、さっき申し上げたように、現在の検定制度を再検討し、国定教科書的の形のものを現物配布したらよいと主張するものがいると聞いた、これは文部大臣御存じでしょうか。
  199. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 新聞記事で、ちょっと見たような気持ちがいたします。
  200. 千葉千代世

    千葉千代世君 あなた自民党でしょう。今自民党が政権をとっているんで、自民党内閣なんですよ。その大事な文教の基本をきめる政調会が話し合ったことを、新聞で見たような気がしますでは、ちょっと困りますね。
  201. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 党と政府は別でございますから、政調会の会合に一々出席しておるわけじゃございませんし、原則として、出席すべからざるものと心得ております。要求があれば出ることもございましょうが、要求は、いまだかつてございませんから、出席したことはございません。だから、新聞記事を瞥見する以外に手がないわけでございます。
  202. 千葉千代世

    千葉千代世君 それは党と政府は別だという考え方、全く賛成ですが、ほかの問題については、皆一致してやっているじゃないですか。そのことは抜きまして、かりに新聞にそういうことがあったら、やっぱり敏感に、ああ自分の担当している教科書行政の問題だな、これはとんでもない考えだといってのり込んでいって、それは違っているよということの積極的の意思を反映していくということが、やはり日本の国の文教行政をよくしていく、こういったものじゃないでしょうか。知らないじゃ、しようがないでしょう。
  203. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 党の政調会の論議の段階で、一人一人意見を言われることは自由だと思います。その中に、自由に述べられましたようなことがあったかもしれません。しかし、それは党としての意見じゃないと思います。党としての意見として同じようなことが出てきた場合に、それに対して政府側として何を言うかということは、次の段階の問題でございますから、ちょっと新聞に出たから、おっとり刀で飛び込むことは、私は失礼じゃなかろうかと思います。
  204. 千葉千代世

    千葉千代世君 失礼じゃないですよ。自分の担当している問題について軽々しく論議されて、やはり一国の文教政策の道というものに対して、そういう意見が出されたならば、自分と意見が違ったらば違うという、やはりあなたの、いつものきぜんとした態度で申し込むということが、ほんとうに国民にこたえる道じゃないかと思う。言わぬほうが失礼ですよ。論議しているほうも、文部大臣をおっぽらかして…。
  205. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 千葉さんの御意見でございますが、どうも同感の意を表しかねます。やはり発言は自由だという状態にあるべきじゃなかろうか。ただ、党としての最終的な意見がこうだ、政府側はどうだといわれたときには、政府側としての見解は当然述べられる機会があろうかと思います。途中では、申さないほうが、むしろ適切じゃなかろうか、こう思います。
  206. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは、まあ私も文部大臣になったわけじゃないからわからぬが、大臣になると、そういう心境になるのかもしれませんが、私ども一は、かりに婦人労働の問題について、労働省はこういうことを言った、それはいけない、こういう意見がありますと、やはり進んで行く用意を持っているわけなんです。そういう習慣なんです、私たちは。ですが、それは見解の相違でわかりませんから、このくらいにしておきたいと思いますが、もう一つは、教科書の無償配布という問題については、党の文教調査会の会長も新聞に述べられておりますね。その中に、それについては、検定制度の維持を前提とすべきだが、一教科に十数種もあるのは問題なので、教科書の数をある程度しぼるなど、規制の必要がある、これはたしか、新聞で見たと思いますが、さらに内藤局長の答弁で、ある程度了承いたしましたが、さらに九月二十日の政務次官会議で、これは政務次官に聞きますが、そのきめられた文教政策大綱について、現在の教育の偏向をただすという、この目標の裏には、教育委員、教育長などの人選に特別の配慮をして、その指導管理体制を強化する、校長、教頭を非組合員化す、そのほかにも教員養成制度を根本的に改めるなど、こういうふうに日本の教育について重大な発言がありましたが、あなたは、どういう発言をなさいましたか。
  207. 長谷川峻

    政府委員(長谷川峻君) 政務次官会議の話が出ましたから……。  予算の時期でありますが、直接予算関係するようなことよりは大事な、なんと言いますか、文教の姿勢について論じようということから、項目にわたっては、大学制度の問題とか教員養成の問題等を考えていこう。それから父兄負担の軽減として教科書の無償配付などもひとつ考えてみよう、こういう話が出ました。
  208. 千葉千代世

    千葉千代世君 最後に、私は今回の事件というのは、前に局長からも述べられておったのですが、教科書の売り込み宣伝、こういう問題に関して、採択関係者にわいろを贈ったという疑い、こういうわけで逮捕されたわけですね。そして新聞やマスコミは、これを非常に大きく取り上げたわけです、教育出版業者や教師の道徳性を云々して。そしてまあ、こういうふうに汚職などが広がるのではめんどうだから、いっそ国定化にしていったらどうだ、こういう意見に導きやすい素地を作っていくのだ、意地悪い見方をした方が、そういうことを言っておられた。私ではありませんよ。そういう方も、かなりあったわけです。ちょうど明治三十六年かに、たいへん教科書の汚職があって、これはたいへんだというので、いわゆる金港堂事件というものが、私調べてみたらございましたが、これではたいへんだから、国定に持っていこうというので、一挙に国定に持っていかれたわけです、そのときに。今は、社会情勢も違いますし、そういう単純なことではございませんけれども、少なくとも、この問題に籍口して国定あるいは統制の方向に持っていかれるということ、これは厳に警戒しなければならないと私どもは考えているわけですけれども、やはり今回の汚職に関して考えてみますと、再三再四述べたように採択制度、今の検定制度のもとでは、なかなかこの問題は解決していかないのではないか、こういうふうに考えているわけですが、この現在の教科書の採択面で、小中学校の場合に、いわゆる広地域の統一採択、これについては、文部省が何年でしたか、去年ですか、今年の初めですかに、そういう指導をするようにという通牒を出していますね、教育委員会に。だから、これもやはり問題じゃないかと、こう考えているわけです。  やはり教師が子供の発達段階に即し、地域の状況に即し、経験の中から学び取ったものを、教育の中に生かしていく、こういう建前から、教師がまず展示会に行って教科書を見る。見て、これはいいなと思ったら、それを今度は相談し合い、校長とも相談し合い、そしてこれを教育委員会に報告していく、こういう方向を、やはり堅持していってほしいと私はそう願っておりますが、時間が来ましたのでやめたいと思いますが、とにもかくにも、あらゆる角度から検討して、そして二度と、こういう不祥事件が起こらないような措置をお互いに考えていかなければならないじゃないか、その点を強く文部省に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  209. 岸田幸雄

    委員長岸田幸雄君) これをもって、昭和三十四年度決算外三件に対する総括質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。総括質疑は、終了したものと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十四分散会