○
政府委員(若狭得治君) 船舶における無線通信士の乗り組みにつきましては、大正四年に無線電信法が制定されまして、この
法律に基づき私設無線電信電話規則というのが、やはり同年に施行されたわけでございます。これによりまして船舶の無線通信士の乗組員がきめられたわけでございますが、その当時は、遠洋航路の二百名以上の旅客船につきましては三名、それから二百名未満の百名以上の遠洋航路の旅客船及び近海航路の五千トン以上の旅客船については二名、その他は全部一名、つまり貨物船につきましては、その大小を問わず、全部一名ということになっておったわけでございます。
ところが、
昭和十六年に船舶保護法という
法律が施行されまして、それに基づきまして、海軍省令が出まして、海軍
大臣の指定する職員を船舶に乗り組ませるということに、
昭和十六年になったわけでございます。したがいまして、それによって船舶の無線通信士の定数が具体的に各船別に示されまして乗っておったわけでございますが、
昭和十九年にこの当時の乗り組みの
状況にあわせまして、
船舶職員法を
改正いたしまして、同時に船舶通信士を正式の船舶職員として
法律上規定したわけであります。その
昭和十九年の
改正によりまして、三千トン以上の旅客船及び五千五百トン以上の貨物船については三名、それからその他の無線電信設備を強制されている船舶については二名、その他は一名ということになったわけでございまして、現在はそのまま踏襲しているわけでございます。具体的に中しますと、五千五百トン以上の貨物船について、今一番問題になっております貨物船について三名、それから千六百トン以上五千五百トン未満の貨物船につきましては、
昭和二十五年に電波法が制定されまして、オート・アラーム
——自動警急通信装置というものを設置したものについては一名減員いたしまして二名という状態になっているわけであります。
こういう状態で推移しておるわけでございますけれども、終戦後作戦行動の必要性なりあるいは船団航行なりあるいは機雷の危険その他そういう状態がなくなって、常時貨物船に三名
程度の通信士を乗船させる必要がなくなったわけでございますけれども、当時の船員は、すべて船舶運営会に雇用されておりまして、その給与支払いその他は、配乗はすべて船舶運営会が行なっておったわけであります。船舶運営会は御承知のとおり、すべて
政府の予算でもって運営されておったわけでございます。そこで当然、この減員の必要が生じたわけでございますけれども、御承知のように、開戦当初六百五十万トン
程度ありました船が終戦時には百五十万トン
程度になってしまった。外航船に至っては、その半数に満たないという
状況でございまして、船舶通信士を直ちに減員することは非常な失業の不安を生じさせるということで、そのまま推移したわけでございます。
昭和二十四年に船舶運営会が廃止されまして、民営に還元されまして、船舶通信士も、それぞれの所属会社に帰ったわけでございますけれども、このときには、これが具体的な減員の計画が出るというような状態のときには、すでに電波法も施行されておったというような状態でございまして、それが今日までそのまま推移しておるという
状況でございます。
それから御
質問の第二点の、外国との比較でございますけれども、これにつきましては、御承知のように国際条約につきましては、人命安全条約におきましても、国際電気通信条約におきましても、一名の定員を要求しておるということでございまして、具体的な各国の例を見てみますと、たとえばイギリスにおきましては二百五十人以上の旅客船については三名それからそれ以外の船舶、旅客船については二名、それから千六百トン以上の貨物船については二名、その他は一名というふうになっておりますけれども、警急自動受信機
——オート・アラームを装置した場合には、二百五十人以上の旅客船についても二名、それから貨物船については千六百トン以上の貨物船については一名ということになっておるわけでございます。またアメリカにおきましても、客船は二名でございますけれども、貨物船については千六百トン以上二名でございますが、オート・アラームを設置した場合には一名というふうになっております。
それから、外国の状態は、そういうようなことでございまして、昨年日本へ入って参りました外国船について調査いたしたところでも、貨物船六十八隻のうち六十四隻は一名の乗組員でございます。それから四隻が二名の乗組員というような状態になっております。
それから、御
質問の第三点の技術的な不安はないかどうかという問題でございますけれども、これにつきましては、現在オート・アラームについて、いろいろ
検討されておりますけれども、すでに
昭和二十五年の電波法においてオート・アラームが、この
法律にとり入れられて、その後、郵政省においても
検討を進められておるところでございますし、また技術的な観点から申しますと、無線機器は、その後急速に発達いたしておりますので、この点についても、国際的に見ても不安はないというふうに、われわれ
考えております。
ことに日本で建造いたしております輸出船につきましては、日本の無線設備を積み込んで出しておるわけでございまして、それについて、まだ不平を聞いたことがないというような
状況でございます。
それから具体的な減員の見込みでございますけれども、現在問題になっております千六百トン以上の船舶につきまして、この
法律によりまして減員するわけでございますが、その
法律上の定員は二千七百名でございます。これが暫定措置によりますと千八百名になるわけでございます。したがいまして九百名の減員が見込めるというわけでございます。
これによりまして、海運会社の負担は軽減すると思いますけれども、問題は、その具体的な軽減の経費というよりも、むしろ現実は、需給が非常に逼迫しておりまして、すでに無線の義務船舶でない船につきましては閉局しておるものも相当ございますし、また、遠洋から近海、近海から沿海というふうに航行先を変更いたしまして、無線乗組員の義務を免かれているというものが相当出ているという
状況でございます。また現在、所得倍増計画によりまして、相当多数の船舶を今後建造していかなければならないわけでございますが、この設備につきましても、今後の建造にあたりまして、大きな設備を船の中に積み込み、またその運営に要する人員の設備もそこにつけるということは、経済的に非常な不利益でございますので、そういう点をぜひともこの際、早急に直していただきたいというふうに
考えておるわけでございます。