○井堀
委員 私は民主社会党を代表して、
政府提出の本年度
予算補正二案に対して撤回を求め、その組み替えを要求するの動議を提出いたすものであります。わが党の本動議に対する趣旨
説明をごく簡単に申し上げたいと思います。要約して次の三点をまず取り上げたいと思うのであります。
第一の理由は、今回の
予算補正は、当初
予算編成に生じた緊急を要する所要経費を追加したものであって、
政府はこのように
説明をいたしておるのでありますが、実際には災害対策、公務員給与、食管会計の赤字補てん、地方交付税などを主体としたものでありまして、肝心かなめの
政府の所得倍増計画のあやまちによって生じた国民
経済に与えた甚大な被害について、この際対策が行なわれていないのみならず、
予算補正を行なうべきであったと思うのでありまするが、その責任を回避しておる点であります。
第二の理由といたしまするのは、
政府が今回補正の財源に充てておりまする租税の自然増収の見込み額でありますが、これは当初
予算編成に際して
政府が歳入見積もりを誤ったことによって生じたのであります。本来当初
予算にこれらの財源は計上しておるべきであると思うのであります。でありますから、これらの点につきましては、今回の補正
予算にあたって租税の自然増収の
部分は、国民に直接還元できるような方法をとるべきではなかったかと思うものであります。この点が全く軽視されておるのであります。
第三の理由といたしましては、
政府は現在、みずからその失政をぬぐうために金融の引き締めを強化しておりますが、この間に当然の措置とは申しながら、補正
予算の編成は財政の散超要因を作り上げておるのであります。これは金融と財政の一体化の見地からいたしますれば、財政自身における自粛措置を欠いたものと申さなければならないのであります。しかも最近の歳出
予算全般を通じてみますると、不要不急の支出の繰り延べ、減額、すなわち毎年度の多額の使い残しを初めといたしまして、不要経費の節約を行ならなど、現在の
政府の財政努力の重要な目標として要請されておるにもかかわらず、これらを全く怠っておるのであります。
以上の見地からいたしまして、われわれは次の項目をあげて組みかえを要求するものであります。
すなわち、一は、物価値上げに伴う日雇い登録労働者の給与の引き上げ、二は、医療費の値上げとともに国民の医療費負担を軽くするための医療保険に対する
国庫負担の引き上げ、三は、物価高のために事業実施の困難に陥っております地方財政に対する公共事業補助率の引き上げであります。四は、農業基本法施行に伴う農業近代化資金の原資増額、五は、所得税の年度内における減税、六は、歳出
予算全般を通じて不急支出の繰り延べ、減額など、以上六項目のこの際
予算補正を要求いたすものであります。また
政府案にありまする災害復旧対策費の増額、公務員の給与引き上げを人事院勧告通り本年の五月から実施するための経費を計上するなどを要求いたしておるのであります。
次に、ごく簡単に各項目にわたって
説明を申し上げたいと思います。
災害対策費につきましては、
政府案が合計百四十九億円余計上いたして、特に九月の第二室戸台風災害に対しまして、かつての狩野川台風、伊勢湾台風並みの特別措置を講じておりまする点については、賛意を表するにやぶさかではありません。しかしながら災害防止施設が十分でありませんために、甚大なる被害が各地に起こっております。ことに本年の災害の特徴とも申すべきものは、山間部の農村などに限られておりまする小地域で、自力によって再起不能に陥っておりまする激甚被害地が漏れておるのであります。当然これを指定し、また
政府は今回の災害対策にあたりまして、災害対策基本法案を提出いたしておるのでありますが、この法案においても、災害施設の不備のために受けまする人命並びに
個人財産の喪失に対する補償を援護の基本規定を、何ら含んでおらないのであります。いわんや今回の
政府の災害対策費は、その点を全く無視しておるのであります。これらの点よりいたしまして、災害対策費は
政府案より五十億円増額を要求いたす次第であります。
次に、給与対策費についてでありますが、
政府案は人事院の勧告を十月一日より実施としておるのでありますが、本年度のように、財政上の余裕が十分にあり、かつ五月以降の消費者物価の値上がりを考慮に入れますならば、給与引き上げは当然人事院勧告の通り、五月にさかのぼって実施いたすべきであると信じます。この点
政府に不満を持ちますと同時に、わが党は百五十四億円の増額を要求いたすのであります。
次に、日雇い登録労働者の給与単価の引き上げと公共事業補助率の引き上げについてであります。
政府案は、歳出補正として生活保護費、児童保護費の単価の引き上げ、あるいは建築単価の改正のための経費を計上いたしておるのでありますが、これらの歳出項目は
政府の政策の失敗によります消費者物価の値上がりのある意味におけるしりぬぐいの経費とも申すべきであります。生活保護基準と深い
関係のありまする日雇い登録労働者の給与単価の引き上げは、これらの点からいたしまして、当然この際取り上くべきものであったのにかかわらず、これが無視されております。また物価の値上げの影響によりまして、行き悩みになっております公共事業費の全体について、
予算単価をなぜ補正しないか。公営住宅の建築単価の引き上げだけ緊急補正して、災害のため治山治水や港湾整備など、緊急補正を要すべきものがあったにもかかわらず、これがなされておりません。前にも申し述べましたが、今回の補正
予算の大切な任務は、第一には災害対策費等の当然補正、第二は
予算項目全体にわたって物価高の影響を検討いたすべきであったと思います。この見地に立ちまして、最小限度の補正を要する項目といたしまして、私
どもはさきに述べた日雇い登録労働者の給与を十月一日から四百十四円に引き上げ、その経費として約九億円、公共事業については、地方財政に対する
国庫補助率の平均五%引き上げ、経費といたしまして、百七十三億円の増額を要求いたすのであります。
次に農業基本法施行に伴う農業近代化資金の原資増額についてであります。
政府が本年度より実施しようとする農業近代化助成資金の原資はわずかに三十億円であります。農業信用保証協会への出資補助金はわずかに三億円、利子補給補助金はわずかに一億七千万円であります。わが党は農業資金をフルに活用して、農業における生産と流通の両面の近代化を促進いたしますために、余裕財源の中から新たに六十五億円をこれに充当いたすことを要求するものであります。
食管会計への三百億円繰り入れにつきましては、
政府案に賛成いたすものであります。
次に、所得税の年度内減税についてでありますが、
政府案は歳出補正九百九十七億余円をすべて本年度の租税収入の自然増によっておるのでありますが、本年度の税の自然増収は、おそらく三千億円程度が見込まれるものと思うのであります。これらの自然増による余裕財源は、当然に国民に直接還元できるような施策に充当すべきであると思うのであります。この自然増収分を直接国民に還元する方式として、所得税の年度内減税を行なうべきであると考えます。今日の税制改正のうちでも、特に所得税の減税は必須の項目になっておるのであります。わが党はこの見地から、明年一月より所得税は
基礎控除と配偶者の控除と
両方をそれぞれ一万円引き上げて、五人世帯はおおむね年収四十二万円までを免税とするように要求いたします。これによって明年一月以降所得税の収入は、約五十億円ほど減収するものと見込まれます。これは優に本年度の自然増の伸びによってまかなうことが可能であると考えます。
次に、医療費の値上げについてでありますが、国民の医療費負担を軽くいたしますためには、医療保険に対する
国庫の負担率を引き上げる以外にはないと思うのであります。税の自然増収分は、さきにも申し上げましたように、国民に還元する施策の
一つとして、特に国民皆保険が叫ばれております今日、医療保険についての国民負担が医療費引き上げによって加重きるべきがごときは、まさに時代逆行と申さなければならないのであります。この見地からいたしまして、十月の一日から健康保険と船員保険につきましては
国庫負担率を二割に引き上げる。国民健康保険につきましては四割に引き上げ、日雇健康保険につきましては五割に引き上げるよう、それぞれ経費を増額いたします。このために要する経費は三百二十七億円を計上いたすのであります。
〔愛知
委員長代理退席、
委員長着席〕
次に、歳出
予算全般を通じて、不急支出繰り延べ減額についてであります。最近毎年度の一般会計
決算報告を見ますると、
予算に対する毎年度の使用済み額は、
昭和三十三年度は九二・五%、三十四年度は九一・九%、三十五年度は九一・八%でありまして、平均して九二%程度になっておるのであります。従って毎年度に多額の使い残しを生じておりまする、特に防衛庁の費用のごときは不要不急の経費がたくさんあるのであります。こういうものの節約を行なうべきことは、今日の時点における
政府当局にとりましては、財政努力の重大な目標としなければいかぬと思うのであります。わが党はこの意味におきまして、年度半ばをすでに過ぎておるのでありますが、現在では行政当局に当初
予算の平均三%、すなわち約五百八十五億円の経費節約を要求するものであります。
以上わが党の組みかえの要求によりまする歳出補正は、
政府案に対しまして差引百九十三億円の増額となるのであります。これをまかなうべき所得税と法人税の自然増の繰り入れば、
政府案より二百七十億円の増額となっておるのであります。そのうち二八・五%分に相当する八十七億円は地方交付税交付金の増額に充当し、残りの百九十三億円をもって歳出補正の増額組みかえ財源に充当いたします。以上のごとくわが党は
政府案に比べまして、補正規模におきまして二百七十億円の増額を要求するものであります。
なお
政府は中小企業に対する財政投融資の融資について、三百五十億円の増額を見込んでおり、このほかに買いオペによる短期資金の供給も講ずることにしておりますが、現在始まっておりまする金融引き締めは明年一ぱい継続されるのでありますが、これは総理の言明にもありましたように、
政府みずからが国際収支の均衡回復を明年末と見込んでいるのでありますが、これを換言して申しますならば、明年末まで設備投資と輸入金融をゆるめることはできないと
政府が言明したことになるのであります。この
政府の方針をもっていたしまするならば、今後予想されまする中小企業に対する金融引き締めは、二十九年の不況、三十二年、三十三年の不況当時にもまして、激烈になることは明白となったのであります。私
どもはこの見通しに立ちまして、資金運用部資金、簡易保険資金などの財政融資の原資に余裕のある限り、できるだけ中小企業
関係への財政融資を増額すべきことを要求するものであります。すなわち、具体的に申しますならば、資金運用部資金より五百五十億円、簡易保険資金より百五十億円、合計七百億円の自然増を繰り出して、これを国民金融公庫に百九十五億円、中小企業金融公庫に百九十億円、商工中金に二百三十五億円の追加融資を行なうよう要求するものであります。
以上、わが党の組替え動議の内容を
説明いたしましたが、
政府案は、当然補正の面でもきわめて不十分であり、かつ、みずからの失政のしりぬぐい補正の面はきわめて不誠意であります。みずからの歳入の見通しの誤りにより三千億に近い税の自然増を生じながら、これを国民に還元する施策を講じていないことが、
政府案に断固反対する理由であります。
なお、社会党案につきましては、歳入歳出両面における組みかえ要求の内容は、いずれも私
どもの賛意を表するところでありますが、要求範囲があまりにも広範囲に過ぎまするので、今回の
政府案の欠点是正としまして不十分でありまして、わが党の案を出しまして、
政府の案を撤回され、わが党の組替え動議を採択されまするよう要望いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。(拍手)
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