○水田国務
大臣 今私どもがとっております金融
政策について、一応の御説明をいたします。
私どもは、今
設備投資が行き過ぎだ、これを押えるという
方針をとっておりますが、
設備投資はどこが行き過ぎかと申しますと、やはり日本が自由化を控えて、これに対処するためには、
合理化投資をやらなければならぬということは当然でございますので、これはひとり大
企業だけに見られる問題でなくて、むしろ
合理化投資というものが
中小企業部門にまで浸透してきて、いわゆる
中小企業の
合理化意欲が非常に強くなっておるということが、やはり今の
一つの特徴ではないかと
考えております。従って私どもは、
設備投資を少し待たせるというからには、大
企業にももちろん、
中小企業の
設備投資というものについてもやはり待ってもらわなければならぬ、こういう
政策をとらざるを得ません。ところがそのうちで、大
企業の方に見られる
合理化投資は、すでに必要な
合理化投資を何年もやっております。ここでこの性質を全部分析しますというと、この間総理からもお答えがありましたが、市場占拠というようなことに力を入れた
設備投資というものも見られる。こういうものは、私ども強くこの際
抑制する対象にしたいと思いますが、自由化を控えた必要な
合理化はやらせるという基本的な
方針に立たなければ、これは
成長政策ではないと思っています。と同様に、特に
中小企業の部門において見られる
合理化投資というものは、今問題になっておる二重構造の解消とか、そういうものに関連した、体質に関連する重要な問題でありますので、必要な
中小企業の近代化投資というものは、これは私どもはむしろここで進めさせるというような基本態度をとらなければならぬ、そういうふうに
考えています。そうしますというと、金融
政策におきましても、大
企業の金融を引き締めるということと、
中小企業に対する金融の引き締めというものについては、その度合いを相当
考えてやらなければならぬ。こういう問題が出ますので、私どもはここで金融の引き締め
政策をやっても、
中小企業への引き締めというものは、一番ここで気をつけて
考えなければならぬ問題だと思います。こういう態度でこれに臨もうとします。というと、むずかしい問題は、単純な引き締め
政策をとったら、三十二年の例を見ましても、これは
中小企業への貸し出しというものがもうすぐに押えられて、系列化した大
企業への融資というような
方向へ行ってしまうということは、今の
情勢から見てはっきりしておることでございますので、これをどう防ぐかという配慮を先行させなければならぬ。こういうふうに
考えますので、私どもはまず大銀行が、今大きい
企業の
計画に対してどういう金融
計画を持っているかという、この実態を握って、そしてできるだけその
設備抑制の指導を金融機関にしてもらうという行政指導面を先に準備しておかないというと、金融引き締め
政策というものは、どうしても
中小企業へしわ寄せするということになりますので、これをこの夏相当骨を折って、こういう方面の行政指導を強化しまして、そうしておいて、たとえば公定歩合をいじるにしましても、ただ無
計画にいじったら、しわは
中小企業に寄ってしまいますから、公定歩合をかりに上げても、
中小企業部門への締め方と、大
企業への締め方がおのずから違ってくるような配慮という
意味の行政指導を今までやって、その上に今度の公定歩合の問題をやったわけでございます。どういう措置をとったかと申しますと、まず
中小企業への貸出率を落とさないように、むしろ上げてくれという通達まで出すし、各金融機関にみな相談をしてもらって、申し合わせというような形でやってもらうという方法をとりました。
今、
中小企業がどのくらい金融機関から金融をしておるかと申しますと、御
承知のように、総額は五兆何千億という額に上るだろうと思います。このうち一般の地方銀行、市中銀行、銀行による金融は、
中小企業金融のうちの五四%を占めている、これが一番大きい金融のにない手になっております。それから相互銀行とか、あるいは信用金庫、信用組合、こういうところの融資は二兆円をこしておりますが、
中小企業全体の金融から見たら三八%くらいの比率を担当している。そうして
国民金融公庫以下の
政府機関の
資金というものは、
中小企業に対しては八尾くらいの比率の金融力しか持っていない。こういうことですから、
政府機関の
資金を二百億、三百億増すということよりも、全体の何兆という方の貸出比率が落ちる方が
中小企業にとってはつらいことでございますので、まずこれを落とさないという措置だけどうしてもとりたいということで、今日まで骨を折って、大体
中小企業への貸出比率を落とさないで済むように各金融機関も協力してくれる、こういう態勢は現在できているものと私は思っております。
そういう配慮をした上で、今度は
政府機関自身がどれだけのことをするかという問題になるわけでございますが、原資に制約されるところもございますし、過去三十二年のときの
中小企業対策、
政府が出した金の手当の金額の幅というようなものも、過去の事例を全部参考にしまして、これの消化能力
——三機関といっても、無制限に金を消化できるものではございませんから、消化能力と、かたがた
政府の原資というようなものを
考えて、ここで年末のために三百五十億円くらいの手当をすれば大体やっていけるんじゃないか。ただし、今
政府の余裕金もあるときですので、この金をどう
中小企業の金融に役立てるかという方法も当然
考えなければなりませんので、こういう問題を私どもは検討した結果、市中銀行に対して、
中小企業の金融機関に対して、それの持っておる金融債以下の買い上げを
政府資金でやってやる。そしてこれを貸してもらう。信用保証によって貸したものについては、
政府がその
資金を
供給してやる。しかも先に貸せ、貸したら貸した分
政府が見てやろうという措置ではなくて、それだけ
政府が先に買ってやるから、これだけは貸しなさいという方法でいくなら、相当
中小企業金融に対して寄与できるだろうという方法をとることにしまして、これを十月に百三十億、十一月になって七十億、とりあえず二百億円、そういう買いオペという方法をもって
中小企業金融の
資金を
政府が
供給しよう。こういう措置をとって、この年末に対する
中小企業金融に対処しようというのが大体われわれの構想でございまして、それをやるための、さっき
お話ししましたような引き締めについてのいろいろな準備の行政指導も十分やっておりますから、今まで見られたことは、今度は少しその点は、事態は改善されるのではないかと
考えております。従って、歩積みとか両建というような問題につきましても、これは従来の慣行もございますし、商慣習もございますので、これを一がいに禁止するというわけには参りませんが、本人の意思に反したこういうことをやることはまかりならぬ、実質金利を上げることはやってはならない。公定歩合を上げても、
中小企業への金利は上げない措置をとったのですから、ここで両建、歩積みによって実質金利を上げることは、これは無
意味になりますので、これも
一つやめてもらいたい。銀行検査という検査権によっても、われわれは
抑制するつもりでございますが、さしあたりこの金融懇談会というものを通じて、自主的に
一つこういう
方向にいってもらいたいという要望をしまして、金融機関も自主的に今そういう申し合わせをして、これに協力するという態度をとっておりますので、この問題も、相当今度は
抑制されるのではないかと今のところは思っております。