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1961-10-07 第39回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月七日(土曜日)    午前十時十四分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 保科善四郎君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       稻葉  修君    今松 治郎君       臼井 莊一君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    周東 英雄君       田中伊三次君    床次 徳二君       中曽根康弘君    中村 幸八君       中村三之丞君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤本 捨助君       船田  中君    松野 頼三君       松本 俊一君    淡谷 悠藏君       木原津與志君    小松  幹君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    長谷川 保君       松井 政吉君    井堀 繁雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月七日  委員西村榮一君辞任につき、その補欠として井  堀繁雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)      ————◇—————
  2. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 それではこれより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 先日来総括質問において、経済関係についてはそれぞれわが党の同志から質問が続けられましたので、私はそれを受けまして、各論的な立場で、二、三お尋ねを進めていきたいと思うわけであります。  第一にお尋ねいたしたいのは、経済企画庁長官に、物価の問題であります。物価の問題については、政府はあるときは値上げをしないのだと強い調子で言い、あるときは上がるものはやむを得ないのだというようにこれをゆるめ、時期的には議会の前あるいは議会中はこれを極力押えるようなゼスチュアをして、議会が終わると次々と公共料金その他の値上げをしていく、こういうふうな形で物価が混乱していくわけでありますが、一貫した政府物価に対する方針について伺いたいと思うわけであります。
  4. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 所得倍増計画といわれております高度成長政策を推進して参り、これが安定的に成長して、将来日本の経済がりっぱな調和を遂げますことは望ましいことでございますが、それにあたりまして、やはり物価の問題は非常に重要だと思います。特に物価が著しく高騰をするというような状況になりますれば、経済発展の段階において、諸般阻害的要素が起こってくるということにもなると思われます。従って政府としては、物価が安定的に進んでいくということが一番望ましい。ただ経済成長しております過程において、全然若干でも上がらないかといえば、上がらないわけではないわけです。それはしかしどの程度までならいいかという問題は、学者によっていろいろ議論もございます。しかしながらできるだけ横ばいに近い線で進むのが、申すまでもなくいいことだとわれわれは考えておりますので、そういう意味において、今後ともできるだけ政策を推進して参りたい、こう存じております。
  5. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 物価一般の問題について私はお尋ねしておるのではなくて、池田内閣物価政策についてお尋ねをしておるわけであります。前回の国会におきましては、池田総理は、卸売物価横ばいだ、弱含みだ、消費者物価も上がらない、公共料金鉄道運賃郵便料金等値上がりは吸収できる、こういうことを言明されてきたわけであります。その言明に対して、現在このような状態になっておりますことは、言明と相反するのであります。経済理論の上から物価はどうあるべきかというような、そういうことを今ここで論議しておるのではないので、物価が上がったのは設備投資過熱からだ、こう言うかもしれませんが、このことはわれわれは前国会においても、物価の安定なりあるいは国際収支均衡をはかるには、何といっても設備投資を押えなければ、これは押えられない。物価そのものを押えたって、国際収支だけを取り上げて、そこで手かげんしたってどうにもならない。その根源である設備投資を押えなければいけないということを強く言ってきたのでありますが、それに対しては、心配はない、こういう前提に立って言ってきたその政治的責任と、どういうところでそういうふうに変わったのか、そしてその変わったことに対して、今後物価に対してどういう態度をもって臨まれるのかという具体的なところがお伺いしたいのであります。
  6. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 物価を安定さしていくということを、池田内閣所得倍増計画で推進していくことは、それは当然なことだと存じます。そこで卸売物価につきまして、年初の見込みよりも違った、上がっているじゃないか、こういうことになるわけでありますが、卸売物価につきましては、四・七%くらい最近は上がってきておるわけでございます。しかしそのおもなる部分が建築材料、特に木材高騰に起因していることは、これはもう明らかなことでございます。従って木材については二月、緊急対策をとられまして、その後今日の現状から見まして、七月には木材に対する供給の増加をはかる意味におきまして、いろいろな税法上の、あるいは伐採その他の関係で林道を作るというような問題等について、予備費その他でやっておるわけでございます。永井さんも承知通り物価というものは、一面ではやはり需給関係からくるのでありまして、供給が足りないという場合においては、物価高騰せざるを得ないのでございます。そこで消費者物価の方につきましても、今日やはり相当な値上がりを見ております。でありますから、その面において、かりに供給が不足していて値上がりをするのだというものに対しては、緊急対策を講じまして、あるいは食肉でありますとか、そういう種類の関係のものであれば、これを輸入を促進して、そして市価の安定をはかっていく。また季節的な野菜その他の出回り等につきましては、十分市場と産地との間の関係を調節し、あるいは円滑な出回りに対する措置を尽くして、そしてこれらが安定していくように持って参りたい、こう考えておるのでございます。  公定料金の問題のお話がございましたが、これも三月七日、池田内閣としては閣議了解のもとに公定料金を上げない、抑制していくのだ、こういう方針を打ち立てたのでありまして、七月二十五日にさらにそれを確認いたしたのでございます。従って今後公定料金については、原則として抑制していくという方針を続けて参りたいと思っております。ただ御承知のように、たとえば消費者物価の面におきましても、第三次産業のようなサービス業及びサービス的要素をよけいに含んでおりますものにおいては、やはり労働賃金その他の高騰ということを、そのこと自体を抑止するわけには参りませんから、それらの面についての若干の値上がりというものは、ある程度やむを得ない。先ほど申しましたような全般的な高度成長を遂げて参ります場合のある程度値上がり、範囲内にそれが吸収されていけば一番望ましいことだと思うのでございます。  また公共料金関係におきましても、輸送面等に主たる公共料金適用がございますが、これらのものも、将来の生産活動に対して輸送円滑化をはかるとか、あるいは迅速化をはかる、そして十分な設備の改善をし、あるいは合理化をしというような面、あるいはまた今日の状況から見て補修等をして参らなければならぬということで、著しくそういう面に資金を要し、あるいは採算が適当になっておらぬというような状況で、やむを得ない場合には、これは例外として措置しなければ、将来の全体としての高度成長に弊害を及ぼすものでございますから、そういう特殊のものについては、特殊の場合、特殊の十分な検討をした上で、できるだけ低目にそれを許可していく、そういう方針でございます。
  7. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 物価の問題は、物価の面だけをどう突っついたってこれは値下げも安定もできないので、やはり経済総合施策の中で安定をはかる以外にはないと思う。そういうことを考えますと、木材が上がった、値上がりしたからもっと木を切れ、こういうことで、森林資源の実勢に合わない、ただその場限りの切り方をやっていく。需要の方はそのままほったらかしておいて、供給需要に追っかけようとする、こういうばかなことをしたって、これは山を坊主にして、さらに治山治水関係で国土を根こそぎ荒らす以外の何ものでもない、こう思うのであります。木材価格自体から見ましても、私は、木材価格は前から比べれば上がっておるけれども、木材価格そのもの——林業というものを一つ企業と見るならば、企業採算に合う方向に修正されつつあるのだ、正しい方向に動いているのだ、こういうことが言えると思う。値段木材価格を必要以上に下げて、そうして大量需要者に利益を与えて、あと補植や植林は国が補助金を出してこれをまかなっていく、こういう企業採算に合わないことを繰り返していたのでは、妥当ではないと思う。今日の場合だって、さらに今当面だって押えているだけである。パルプ関係は、さらに工場増設計画をただ半年延ばした、一年延ばしたというだけで、設備投資大勢というものは動いておらない。そういうふうに設備はどんどん伸びていくのに、それに合わして木を切っていくのだ、そういうばかなことは子供だまし以外の何ものでもない、こう思うのであります。また議会を控えて、しょうゆが直接的な統制で、値段を上げてはいけない、こういうふうに出たとこ勝負で、しょうゆが上がるときにしょうゆを押える、木材が上がっていくときはさあ切れ、こういうような方向物価政策というものはおやりになるのか、一体そこにどういう一貫性があるのか、どのような考えでやっているのか、それは消費者に対するゼスチュア以外の何でもでもない、ほんとうに物価を安定させる政策ではないとわれわれは考えるのでありますが、いかがでありましょうか。
  8. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 物価問題を申し上げますときに、今お話しのように木材が足りない。従って、緊急対策をしなければならぬ、こういう事情が起こっておりますことは事実でございますから、そのこと自体は率直に認めざるを得ません。しかしお話しのように、木材を無制限に伐採する、そうして森林資源を枯渇さす、治山治水にも影響を及ぼすというようなことがあってはならぬことは、当然のことでございます。また一方では、パルプ材等の問題につきましても、設備の拡張に伴いますようなパルプ材国内資源確保、もしくは輸入パルプ資源確保という問題をあわせて考えて参らなければならぬことは、当然のことでございまして、ただ設備投資だけが行き過ぎて、そのあとで原料を探し回るというようなことでは、必ずしも均衡のとれた成長政策ということにはならぬわけであります。そういう点については、十分注意をして参ることは当然のことだと思います。また公定料金の問題にしても、今日まで、議会が開会中だから延ばしておいて、議会の目がなくなったら上げてやろうというようなつもりでやっておるわけではないのでありまして、やはり十分な審査をして、その審査の結果に待って、公定料金としては一般的な抑制方針を堅持しながら、先ほど申し上げましたようなやむを得ない事情のものに限って、特別に許可していくという方針でやっておるわけであります。そういう意味において、今お話しのございましたような安定的な成長を遂げていくために物価がどの程度にあり得るかということは、先ほどもちょっと触れましたけれども、いろいろな学者議論がございます。経済が御承知のように拡大して参るわけでありますから、全然少しの影響もないというわけにはいかぬ場合がある。しかしその影響も、一%半なりあるいは二%程度までならば、過熱状態ではない。あるいは将来の勤労所得の中で吸収し得る立場にあるといういろいろな問題があるわけでありますが、そういう意味において、われわれとしてはできれば横ばい、あるいは諸般物価が低落して弱含みならばなおけっこうでございますが、またかりにそういうふうに参らない場合でも、その値上がりの限度というものは、ある程度これを押えて考えて参らなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  9. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 そこで、物価の見通しはいかがですか。上がる方向でありますか。下がる方向でありますか。横ばい情勢でありますか。
  10. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 今日までの事情から申しますと、若干高騰勢いを続けていくのではないかと考えましたけれども、しかし今回総合対策をいたしまして、そうして設備投資抑制等もいたしております。全体として消費をできるだけ減らしていただいて、そうして貯蓄を奨励して、将来の生活の上に楽しみを持ってもらうように、国民的な訴えもして参りたいと思うのであります。そうなりますと、やはり先般委員会でも御議論がございましたが、むしろ生産が過剰になりはしないかというような面も一面では考えられるわけであります。その過剰の生産をできるだけ輸出に向かわしていけば望ましいことなのでございますが、そういう情勢であるとすれば、必ずしも今日までのような勢い物価高騰をしていくということを考える必要はないのではないか、こう私どもとしては考えております。
  11. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 国際収支緊急対策として、政府担保率引き上げを行なったわけであります。原材料その他に対しても五%内外のキャッシュを積まなければ、あるいは緊急を要しないという関係については三五%の担保率だ、こういうように、輸入原材料を初めそういった関係値上がり要因は、一面非常に刺激されてきておる。また急激な設備投資抑制のために、土地だけは買って準備したが、それが固定した。建物だけは建てたが、中の機械は入らない。また機械も三分の二は入ったが、三分の一は入らないで動かない。こういうように非常な巨額な資金が固定して、それが企業圧迫となってくる。そういう値上がり要因もある、こう思うのであります。でありますから、金融難の問題もありますし、公定歩合の引き上げの問題もあります。私は、従来のようなやり方で投げやりにするならば、値下がり要因よりも値上がり要因が非常に多くなってきておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  12. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 今回総合対策を立てまして、これはかなり強力な打ち出しであったと思います。ただいま御指摘のありましたように、輸入担保率の問題にいたしましても、今回一挙に多くの種目を三五%にしたというようなことは、相当強い規制でございます。従って、これがある面では輸入に対する抑制に相当強く響いてくるのではないかと思いますが、今後の経過を見て参らなければなりません。しかし同時に、それが今お話しのように、値上がり一つ要因を起こしはしないかというような点については、われわれも十分将来の運営の上において気をつけて参らなければならぬこと、申すまでもないわけであります。こういうような強い政策を打ち出しますれば、その政策効果があるだけに、反面それに対する欠点もあることはむろんでございまして、経済の流れというものが、政策によって効果を上げると同時に、その欠点も出てくることは、これは見のがせないことだと思います。輸入抑制の問題にかりにいたしましても、機械類等につきましては、ただ単純に担保率の問題だけでなしに、現実に今日まで機械類輸入が非常に多かったという理由の中には、ある程度非常な市場占拠率というようなことで、民間産業人は非常な勢いでもって経済活動を起こして、そうしてやりました結果として、半年先に工場を作りたい、それには国内でもって機械類を買っても納期が間に合わない、外国ならすぐ間に合うというような点から、外国機械製品に相当いったような傾向も見受けられるわけでありまして、そういう点は、十分に通産御当局で御指導がありますれば、単純に担保率関係だけでなしに、輸入に対しても効果があるのではないかと思います。また今お話しのように、ある程度スロー・ダウンする、そのために工場が完成しない、あるいは工場建築に着手する前に土地だけ買ったものが寝ている、そういうものが資本負担として相当な影響が出てくるのじゃないか、これもやはりはね返ってくるとすれば、既存の生産コストの上にはね返ってくるということは考えられるわけでありまして、これらの問題については、今後の物価政策の上で、永井さんの言われるように、われわれとしては慎重に、そういうあらゆる強力な手を打っただけに、それから起こってくる副作用と申しますか、あるいは欠点というものを時々刻々手直しをし、あるいはそれに対処しながら進めていって、経済界に摩擦の起こらねように、激しい変動が起こらぬように考えて参らなければいけない、こう存じております。
  13. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 物価の問題ばかり時間をかけておるわけにはいかないのでありますが、私は、しょうゆ値上がりを強権で押え、あるいは木材値上がり資源にかかわりなく切り出すことによって押えるというほどの強力な施策を行なうというならば、独占企業独占価格ぼろもうけしている関係値下げを私は強力にやるべきじゃないかと思うのです。これは企業純益その他の統計から見ても、一年に純益が倍近く上がっておる関係統計にはっきり出ているわけでありますから、そういうぼろもうけをしている基礎産業関係原材料値下げを、みそ、しょうゆを上げるなと押えるくらいな力をもって直接統制をやるというほどの力を入れるならば、やるべきじゃないかと思うのです。これはどうですか、これが一点。  私は政府の出した物価白書というものを見て驚いたのです。物価値上がりによって国民生活に相当の影響がある、こういうことを議会で論議したら、それの弁明のように書いてあるのですが、物価値上がりすれば消費者が物を買わなくなるから、買う量も少なくなるから、実際の生活にはそう響かないのだ、こういうことを政府は書いているのです。たとえば肉が上がったから肉が食えないで鯨を買うのだ、鯨を食うから実生活にはそう響かないのだ、魚が食えなくなったら野菜を食っておるから実生活にはそう響かないのだ、こういうひどい考えで一体物価値上がり国民生活との評価をしているのかどうか。  私はこの二点だけで物価問題については切り上げようと思うのでありますが、お答えを願いたい。
  14. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 大企業収益が非常に多い。従ってそういう商品については値下げをするように勧告したらどうだということが御趣旨のようでございます。今日各国における経済の、あるいは民間人考え方を押し詰めて参りますと、むろん非常な収益を得て、それを勤労者資本家に分配するということについては、これはもう一応の考え方になっておると思います。しかしさらに近ごろでは、それを消費者にもある程度還元するということが考えられなければならず、また考えるべきであろうじゃないかということがいわれてきておるのは、御承知通りだと思います。生産業者にいたしましても、そういう観点から経済運営をしてくれることが望ましいのであります。機械工業その他につきましては、かなりそういう面が最近では出てきておるのではないかと思うのでありまして、新しい、たとえば電気冷蔵庫であるとか、テレビであるとかいうものは、逐年、合理化経営の結果として、それに働いておる人の給与も上がっておりましょうし、あるいは資本配当もふえておりましょうが、そのたびに値下がり等も見られるわけでありまして、そういう面については、なお十分な経済人の意識を拡大していくように、政府としても指導することが必要なことであろうと思います。  第二点のお話は、何か物価白書に、物価が上がれば買わなくなるから、生活にはそう響かない——どういうふうに白書に書いてありますか、実ははなはだ申しわけないのですけれども、私もその点記憶いたしておりませんが、少なくも政治というものは、国民がみんな豊かな生活をしていくことが必要でありまして、食えなければ食うのをやめろということでは、適当ではないと思います。全体としての国民経済が沈滞をしておるというようなときには、ある程度みんなにがまんをしてもらわなければならぬことは、やむを得ないことでありますが、経済が安定的に成長していって、国民生活が向上していく、それを何か物価のためだけにその国民生活の向上する内容を制限するという考え方は、私としては持っておらぬつもりでおります。
  15. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 委員長お尋ねします。私はきょうの質問中小企業農業関係を重点に尋ねるつもりでありますが、関係大臣がいないので私はこうやっているのですが、今までの、関係大臣が来るまでの時間は、一つ割当時間の余分として扱っていただきたいと思います。
  16. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 申し上げます。お約束の時間は時間でございますが、委員長といたしまして適当と認めましたならば許しますから、どうかそう御懸念なく……。なお通産大臣はもうすぐ参ります。
  17. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 次に、私は藤山長官国際収支の問題について二、三お尋ねいたしたいと思います。いろいろな施策を行ないましても、私は輸入大勢はそう急にはとまらないと思います。設備投資にいたしましても、機械その他の関係は、ずっと長期の契約でありますから、これからだんだんでき上がって入ってくるという関係があって、キャンセルするわけにいきませんから、これは入ってこざるを得ないと思います。また地域によっては、輸出のためには輸入をしなければならぬというバーターの関係もありましょう。そういった関係で、私は、国際収支は、現在の輸入のドライブのかかっている関係は、そう簡単にはとまらないと思うわけであります。それから輸出関係については、赤字赤字だ、輸出が伸びない伸びないといいますけれども、全体として見ればやはり若干は伸びておるわけであります。そうして大きく赤字を出している地域逆調になっている地域というのは、アメリカであり、カナダであります。でありますから、輸出振興振興といいましても、結局この大勢から見ますと、対米、対カナダの貿易を改善する以外にはない。もしアメリカカナダにおける赤字をほかの地域で埋めて、それによって均衡をはかるという、そういう方向をとるならば・必ずそれぞれの地域において反応が出てくる、そう伸びるものではない、私はこう思うわけでありますが、国際収支についての一般的なねらい、大勢、そういうものはどういうふうにお考えでありますか。また担保率引き上げというような関係については、私は、東南アジア、中近東その他の地区からの輸入については、その適用に該当する品目は相当あるのではないか、こう思います。しかしそういう関係で押えられますと、輸出も従って影響してくる。これは相関関係にあるので、一方だけ、片道だけ押えるというわけには私はいかないと思うのでありますが、その関係についてはどのような考慮が払われておるか、お示しを願いたい。
  18. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 輸出を増大する、輸入抑制する、こういうことを考えてみまして施策いたしましても、御指摘のようにその効果が十分出てくるというのは、早くて四、五ヵ月先だ、輸出にしても輸入にしてもすでに相当の、国際的の貿易の関係でございますから、数ヵ月先の取引をいたしておるのであります。従って、そういう意味において、御指摘のように効果が出てくるのは、輸出にいたしましても輸入にいたしましても、そう効果——若干は出て参りますけれども、年内にすぐそう出てくるというわけには参らぬと思います。しかしこれらの方策を講じまして、できるだけ輸出を伸ばし、そうして輸入抑制するということをやって参らなければならぬことは当然のことだと思います。  そこで貿易の関係は、御指摘のように相手国があることでございまして、日本だけが幾らきりきり舞いいたしましても、相手国がありますから、相手国との間の貿易を円滑にするためには、諸般の問題を考えて参らなければならぬと思います。そこでお話のございましたように、日本の貿易は、伸びは少ないのですが、去年より別に伸びないというわけではないので、六%程度は伸びておるわけでございます。しかし輸入が三〇%近いような増大を来たしておりますから、こういうアンバランスが出たわけであります。でありますから、若干でも伸びております輸出をさらに伸ばしていこうというのには、やはり努力が要ると思います。ただ今日までの状況を見ておりますと、国内的にも、貿易関係と申しますか、あるいは商業を扱っておるものは、日本では国内商業と国際貿易とを両方扱っておる商社その他が多いのでございまして、今まで輸出意欲というものが比較的——国内なら電話一本で取引ができる。国外ではいろいろな手紙を書き、時間もかかるというめんどうくささから、国内の景気がよければ、自然どうも輸出意欲、貿易取引の意欲というものが非常に少なくなっていたきらいはあったと思います。でありますから、そういう面においては、貿易業者の今後の指導ということも私は非常に重要なことだと思います。しかしそれらの意欲が盛り上がりましても、今お話しのように、世界経済の問題があるものでございますから、やはり相手国の景気の事情その他も考えて参らなければならぬと思います。アメリカに関しましては、昨年の暮れ以来、いわゆるドル防衛ということで、アメリカの景気が非常に悪かったわけでございまして、これに対しては、ケネディ大統領も相当な経済の伸長をはかりますような努力を今日まで続けてこられておるのでありまして、就任早々のケネディ大統領の国会に対する教書等を見ましても、それらのことが十分強調されている。それを受けまして、本年の六、七月ごろから、底をついた景気が若干ずつ戻りつつございます。アメリカの来年の景気をどう見るかということは、非常にむずかしい問題でございますが、しかし本年よりはよくなるという見方をして差しつかえないのではないか、こう考えております。日本の対米貿易というのは、やはりアメリカの景気に相当大きく左右される過去の結果だと思いますので、従ってそういう面から言えば、アメリカ需要というものは相当増大していくものじゃないか。ただ増大をして参ります場合に、われわれが気をつけて参らなければならぬのは極端な、アメリカ経済を、個々の産業を撹乱するようなことがありますと、また自主規制を要求されたり、あるいは関税等の引き上げ、あるいは輸入禁止等の措置がアメリカ国内で論議されますから、そこらの面については、外交上十分外務大臣でお考えを願いたいとわれわれは考えておるわけであります。  東南アジアの方面の貿易は、御指摘の通り、実は非常に経済力の弱い国を相手にして貿易を伸ばしていくことでございますから、そう急速には伸びませんし、また向こう側から買うものがなければ、向こうの資力も十分でないという国々が多いのでございまして、数年前までは米を買うというような問題もございましたけれども、今日は七年も続くような豊作の状態で、そう米を買って決済をするというわけにも参らぬ現状にきておるのでございまして、そういう面については、やはり一般的経済協力、あるいはできるだけ東南アジア、あるいは中近東方面から何か買うものを探しまして、そうして若干でもそういう方面から買うものをふやしながら、同時に輸出の総量をふやしていく。そしてあわせて経済協力も行なって参ることによってそれを補完して参らなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  19. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 そういうような場合でも品目一律一体で三五%の担保率適用されるわけですか。
  20. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 こうした問題については、やはり現実に即した処置をとっていただくことが望ましいことだと思うのであります。この問題は、主管官庁としての通産大臣が適宜適当にそのときの情勢に応じて対処せられることと信じております。
  21. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 通産大臣が見えましたから、今国際収支の問題にかかっているところですからお尋ねいたしますが、政府国際収支逆調にあわを食って、さて輸出振興輸出振興だと、もう発表したものを見ると、これから何をやるのか、具体的にはつかめないような項目だけを羅列した文章のようなものを作っているのですけれども、かけ声だけはやかましい。そこで税の対策をする、金融の措置をする、輸出について大いに援助する、こういうようなことを盛んに宣伝している。さらに三十五条を適用しておる国に対しては、報復的な手段でこちら側も制限をするぞ、こういうようないたけだかになった呼びかけをしておる。こういうように何といっても今日本が輸出を進めていくためには三十五条をとってもらわなければ、これはなかなか進めないような条件があるわけです。三十五条を適用している根拠は何かといえば、日本が安売りしたり、いろいろ市場を混乱させる、そういう取引をするからというので警戒をしているところへ持ってきて、そう中身もないような、輸出振興に対しては政府はあらゆる援助をするのだぞというようなほらを吹く。そうして国内においては日本の成長は世界一だ、こういうふうに言う。こういうことでありますから、このほらが反応を示しまして、外国の方からは、日本がどのような措置にくるかということで警戒気味になるのだと思う。あるいは日本の経済成長がそんなにいいならばというので、ビルマを初めとして賠償国その他から、もう少し賠償をよこせという話が出てくる。あるいは東南アジアその他の後進地域においてはこの経済援助について、国内経済がそんなにいいのに、やることはけちくさいじゃないか、もっと考えたらどうか、こういうようなことで、国際収支逆調になって国内で相当問題になる。あるいは設備投資をきつくやるので、経済的にも政治的にも相当反発が出てくるであろうということを予定して、国際的には非常に弊害があるいろいろな措置を、国内向けに放送しておる。これが国際的には非常に反響を呼び、逆な結果を来たしておるのではないか、こう思うのであります。こういう事柄に対して一体どれだけの成算があって、どれだけの効果を期待して、こういうふうにから宣伝をするのか、私は通産大臣及び経済企画庁長官から伺いたい。
  22. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 ただいまの基本的の問題についてのお尋ねであります。大へん時節柄政府の所信を表明しなければならない問題に触れられたと思います。  申すまでもなく一面で輸出振興をし、一面輸入抑制していくただいまの処置をとっております。輸入担保率引き上げにつきましては、三十二年のときにとりました最終的段階の高率の処置、いわゆる高いものは三割五分、あるいは一割、あるいは五分、こういうように非常に高い担保率引き上げをいたしました。これは、輸入抑制は短期間にその効果を実現さす、こういうことを実はねらったものであります。正常化すれば、この緊急措置を緩和する、こういう考え方であったのであります。しこうして大体の輸入の数量から見まして、三割五分が適用されるものは総輸入量の一割、残りが三割五分以下、一割以下の適用、五%適用のものが大体九割近い、かようにお考えになりますと、輸入の品種は大体想像がつくかと思います。そこで、一面輸出振興をいろいろはかっておりますが、輸出振興をはかりました場合に、これはガットの制約を受けることはただいま御指摘の通りであります。ところが各国ともいろいろの話をし、条件をつけまして輸出ドライブをかけておる。これは米国の例をごらんになりましても、シップ・アメリカンだとか、あるいはバイ・アメリカン、こういう国内と国外に対する、国際収支関係で、アメリカに益するような処置をとっておる。あるいは英独等におきましても、いわゆる延べ払い条件というものの内容などは、これは極秘な処置として、それぞれの国がそれぞれの国に適用するような方法をとって、輸出ドライブをかけておるわけであります。日本もガットの基本的原則に立つことは、これは当然であります。その立場に立ってのいろいろの奨励策は進めておりますけれども、いわゆる国際的に非難を受けないで済む程度のもの以上のことをしている覚えはございません。従ってこの点では、いわゆる貿易の相互主義、その観点に立っての処置としては、私どもも遺憾なきを期しておるつもりであります。ただいま、声ばかり大で何にも処置しないのじゃないかというようなお話でございますが、この国会に必要な法律案なども出ておりますから、それらの点について十分御審議をいただきたいと思うのであります。  この点について、ただいま御指摘になりました、日本は三十五条適用国に対して報復的な処置をとる、こういうおどしをしたのじゃないかということを言われておる。これは、新聞を攻撃するわけではありませんが、新聞記事の扱い方が、報復というような言葉が使われております。通産省は、そういう考え方はしておりません。政府自身も、そういう考え方はしておりません。どこまでも貿易は相互主義であるべきだ、相手の国が制限をしておるならば、当方も制限をするのは当然なんです。これは、いわゆる相互主義の立場に立っての国際貿易のあり方なんだという観点に立っておるわけであります。御承知のように、日本の自由化はおくれております。外国の自由化の方が進んでおりますから、すでに日本が自由化して、そして外国が何かの条件をつけたから、それに対応する処置をとるといえば、いわゆる報復処置ということも言葉が適当かと思います。しかし、おくれておる日本が自由化の進んでおる国に対処する場合に、よるものはいわゆる相互主義、その立場に立って、外国が制限をしておるから、それに対応する品種については、日本も輸入する場合に制限をつける、いわゆる相互主義の問題であります。ところが、欧米諸国と外務省は、いわゆる外交ルートにおいて、この夏以来三十五条の緩和のいろいろの交渉をいたしております。そこで今回も、十月一日に自由化する品種のうち、あるものを十二月一日まで実施をおくらして、その二ヵ月間に在来からの外交交渉に基づいでの、相互主義の立場に立っての円満な解決をする、こういう努力をただいまいたしておるわけであります。  また、永井さんから御指摘になりました、日本は狭い市場において競争を激化する、そのために日本商品に対しては外国から非常にきらわれておるのじゃないか、こういう御指摘でございます。外国政府は、そういう言い方を日本の商品に対して申しております。日本は、いわゆる狭い市場で深く浸透する、その結果が市場を撹乱する、これは困るのだ、こういうことを実は申しております。しかし、この点について、過日もロンドンから参りましたキッピングに会いましたら、永井さんが御指摘になるように、どうも日本は狭い市場で深く浸透するから非常に困るんだ、こういうことを言っておりましたが、それに対して私がこういう説明をした、これはその通りなんだ、三十五条でいろんな障壁を設けて、そして日本の市場を自然に狭めているのじゃないか、そしてみずからが狭めておいて、その市場で日本が競争した場合に、深く浸透するからおれたちは困るんだと言うけれども、それは当たらないのだ、かように申しましたら、キッピングなどは、それは確かに理屈のあることだと、みずから私どもの反論に賛意を表して、これは私ども、帰りましてよく考えましょうということを申しております。これは大事な点であります。私は、国内におきましても、もし一部において、ただいま御指摘になりましたように、狭い市場においてお互いが競争し、深く入ってその市場を撹乱する、それが日本商人だというような非難があるならば、これはやはり国をあげて、市場そのものを狭くしているのはだれなんだということをはっきり言っていただきたい。それがためにも、自由化を進めて参りますならば、そして三十五条の適用などをしなくなれば、必ず日本の国際市場というものも拡大されるわけであります。私は、今問題になっておる点に触れてのお尋ねでございますが、大へんいい機会でございますから、私どもの所信を表明し、また関係各界におかれましても、ただいま申し上げるような点についての御協力を願いたいと思います。  なお、輸出の各種の条件について、あるいはその具体性等について十分の説明ができていないではないか、あるいは声だけが大きいんじゃないか、こういう御批判もただいまございましたが、各国とも、この輸出の条件等につきましては、いろいろ内密でやっていることが非常に多いのであります。これらの点も、日本くらいオープンにやっているところは実はないようであります。先ほどのキッピングそのものにいたしましても、キッビングと会ったときに、持ってきている資料は、最近国会で問題になり、また政府が発表したものなど、全部そろえて持って参っている。だから、非常に日本の貿易そのものは、その内容、実態を明確にして、そうしてさらしたままで競争している。この辺にも業界の苦心、苦労があるのではないか、かように思いますので、この点も一つ御了承おきを願いたいと思います。
  23. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 三十五条援用国に対する問題、あるいはただいまお話しの、何か国外に対して特に日本の政策を強調し過ぎるのではないか、その反動が起こりはしないかというような点につきましては、通産大臣の述べられた通り考えております。
  24. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 通産大臣が来る前に経済企画庁長官お尋ねしていたわけでありますが、今大臣は、輸入制限については、担保率引き上げてこれを押えるのだと言っておるのであります。私は、一律一体にはなかなかそういうふうにはいかないのではないか、輸出をはかるにはやはり輸入をしなければならぬ、輸入の中にはやはりこの三五%の担保率に該当する品目があるかもしれない、しかしそれを押えたら、その地域として輸出が伸びないというような状況もある、東南アジアその他におけるこういった品目の輸入については、やはり一律一体に三五%を適用するのかどうかということについては通産大臣から答えてもらいたい、こういうことでありましたので、これもお答え願いたいと思います。  それから後進国に対する経済援助でありますが、これが何か日本の場合はまだはっきりいたしておりません。少ない資金効果的にこれを上げるというには、やはりねらいを定めて効果ある活用をしなければならないと思うのでありますが、後進国経済援助についての考えがありましたら、はっきりさせていただきたいと思います。  それからもう一つは、この貿易の重点を重化学工業に置くのだ、これは国際的なそういう傾向でもありますし、また日本の産業構造の上から申しましても、そういうねらいを持っていくことは、これはいいと思います。ねらいを持っていくことはいいのでありますが、現実には、やはり私は、重化学工業よりも、繊維その他雑貨等いろいろありますが、現実の処理としては、そういうところにやはり重点を置きながら重化学工業への発展に結びつけていかなければならないものである、こう思うのであります。ところが、重化学工業一体で、いかにもそこに重点があるような、繊維なんかもうすっかり忘れてしまったような状態でありますが、これはどういう心組みでありますか。
  25. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 輸入担保率の三割五分のものに該当するものが東南アジア等の諸地域にはあるのではないか、こういうお話でございますが、この三五%のものは製品になっておるものが多いのでございますから、まずただいまのところ、東南アジア諸地域からどうしても買わなければ貿易が伸展しない、そういう場合に三五%を適用する品物はちょっと見当たらないように考えます。しかし、もちろんこれは具体的な問題として検討していかなければならぬことだと思います。かように申しましても、私はただいま三五%を下げる、かように申すわけではございません。ただ永井さんから御指摘になりたいという点のものだろうと思いますが、一次産品で東南アジア地域から買わないと国際決済上困るものがあるわけであります。これがいわゆる食糧あるいは飼料等——食糧が主でありますが、そういうものがございます。これは特別な、決済上あるいは外交上の観点から、国内の需給とは別な観点に立って処理し得るようにはいたしております。これは三五%ではございません。しかし、これもただいまの、たしか五%のものではないかと思いますが、率を今変更するつもりはございません。今日までのところ、担保率引き上げについて業界からの非常な非難というものは、実はあまり受けておらないように事務当局も申しております。もちろん、これは苦しいには違いないと思います。最近の金融状態等から見ましても、それは困難なことだと思いますが、これで輸入がある程度押え得るように実は思っております。  また、これはお尋ねにはございませんでしたが、自由化も進んでおりますので、いわゆる在庫もやや伸びておる点がございますから、ただいまの輸入抑制措置が直ちに国内生産に重大な悪影響があるというような見方はしておりません。これはまた御了承おき願いたいのであります。  第二の点として、低開発国開発援助についてのお尋ねでございましたが、これは過去におきましてしばしば政府方針を明確にし、あるいは協力基金等も設置いたしておりますから、これでもうつけ加えるものはございません。今後はその内容の充実をはかっていくという点に、特に力を置くべきではないか。対象国は、これは各地域いろいろ考えられるわけでありますが、日本は多くの場合東南アジアを指摘されております。しかし最近の実情等から見まして、中南米あるいはアフリカ諸地域等につきましても、必要なことがあれば、私どもはこれを拡大することにおいてやぶさかではございません。  それから第三点は、輸出する品物ですが、もちろん外国の方で売れるものは、何にかかわらず進めて参るつもりであります。過去においては、繊維がわが国の輸出の大宗であったし、今日もまたこれが大宗である。これは私ども軽視するものではございません。ことに綿、毛あるいは化繊、合成繊維等各面にわたりまして、繊維関係輸出は大いに私どもも伸ばしていくつもりであります。最近の日米繊維会議等も一応の暫定的措置をとりまして、これなども昨年に比べて、この前の機会に、昨年の実績に比べて四割増しということを申しましたが、その後見ますと三割増しのようでございます。従いまして、輸出の専門商社等からのお話を聞きますと、必要な品物をそろえてくれ、そうすれば割当数量までは必ず出してみせる、内需がなかなか旺盛でありますので、必要な輸出の玉をそろえることにただいま努力をしておるような次第でございます。  また重化学というお話がございましたが、もちろん化学製品も、今の化繊等を含めれば、そういう意味では出て参ります。私どもが特に力を入れて今後出したいのは機械類であります。ことに今カメラなどは、今年などは国内生産の五割が外国に出ておるということでございまして、カメラは生産の半分を外国輸出しておる実情でありますから、まだこれは伸ばし得るのじゃないか、あるいはラジオ、さらにまた今あまり出ておりませんが、今後テレビとか冷蔵庫とか、そういうような冷房装置、それらの諸機械を出していくということを考えるつもりでおります。また薬品等も日本は誇り得るのでありますから、どの品物と限らず、あらゆる面で新市場を開拓して輸出を伸ばしていく、かような考えでございます。
  26. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 永井君、すでに御存じと思いますが、農林大臣がいらっしゃっておりますから……。
  27. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 政府は八条国勧告と自由化とすりかえたわけでありますが、自由化を来年の十月までに九〇%実現しよう、こういうのでありますが、国際収支の環境は、御承知のように非常に悪い。経常収支を見ましても、あるいは貿易外収支を見ても、資本収支を見ても、非常に困難な中で自由化を一年の間に九〇%まで上げるということは、これはやはりなかなか容易ではないと思うのであります。担保率三五%を扱い上げるとか、そういう措置をとりましても、やはり私はなかなかきめこまかな方針で進みませんと、国内産業圧迫になってくることは不可避である、こう思うのであります。そこで政府は自由化をどんな足取りで進めていくのか、どういう品目を大体どういう基本的な考え方で進めていくのか、私は政府考え方には、これをずっと先に延ばして、来年の九月、十月ごろまでこれを持っていって、そのときの情勢いかんでは、また自由化を締めようとする底意を持ちながら、おっかなびっくりで自由化を約束しておるのではないか、こう思われるのでありますが、この点はいかがでありますか、これが一点。  それからもう一つは、総理は、来年の暮れごろまでには国際収支均衡する、こう言っておるのであります。国際均衡はわれわれはなかなか困難である、こう見通しをつけておるわけでありますけれども、どのような根拠で、どのような具体策を持って、どういう数字で均衡するかということが責任を持って言えるのか、その点をはっきりとお示し願いたい。この二点についてお尋ねをいたします。
  28. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 あとの方を私からお答えいたします。  国際収支を、総理が来年末には均衡するように持っていきたいと言われ、私も来年の秋にはできるだけ均衡するように諸般政策をあわせて進めて参りたい、こう思っております。申すまでもなく、国際収支関係がそう長期にわたってアンバランスであることは、望ましいことではないのでございまして、少なくも総合収支を通じてある程度のバランスがとれるように持って参らなければなりません。ただしかし、先ほどもちょっと触れておいたのでございますが、できるだけ早い時期にと申しても、必ずしも、今回の諸般政策がきいて参りますことが来年の上半期ぐらいからで、いわゆる暦年における初頭以後でございますから、そういう意味から考えまして、そう急にバランスを合わせるというわけにも参らぬと思っております。そういう観点に立ちまして、輸出を増進する方策を講じ、あるいは輸入抑制する方策を講じ、また両者に影響を持ちます国内消費というものに対してある程度の方策を講じていくことによりまして、完璧を期して参りたいと思っております。ただ、これらの総合的な措置をとりました直後のことでございますから、これがどういうふうに影響してきて、どういうプログラムでいくかということまで今確実に申し上げては、あるいは若干予測が狂う場合もありますので、十分検討した上でやって参りたいと思います。
  29. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 貿易為替自由化促進計画、その主要品目等のスケジュールはどうなっているか、また政府は適当なところでこれを延期するのじゃないのか、こういうお話でございます。すでに発表いたしたものでございますから、きわめて簡単にスケジュールを申してみたいと思います。  十月一日に自由化するもの、機械類としては懐中時計、腕時計、紙パルプ、機械の一部、繊維機械の一部、木工機械の一部、農業機械の一部、鉱山土木建設機械の一部、化学品云々等がございます。そこで問題は、この計画通りやるかやらないかということだろうと思います。これは非常に大事なことなんでございまして、政府自身発表いたしました計画を変更する考えは毛頭ございません。特に私どもが非常に心配することは、もともとこの自由化については、二年前に計画をし実施に移り、幸いにして財界の協力を得てきておる。今日この発表がありまして、業界もこの計画通りの線で自由化後の経営に備えておるその際でございます。従いまして、一たん発表した計画を変更するということは、すでに決意している人たちに対しまして不測の事態を招来することになるのでありまして、この点は避けなければならないのであります。また一部において不信等があって、あるいは延ばすのじゃないかという考え方を持ちますと、いわゆる正直者がばかを見るというような結果を起こす危険もあるのであります。そういう意味におきまして、私どもはこの計画を発表したもので、これはぜひとも遂行したい、かように考えておる次第であります。各界の協力も得ております。従いまして、おくれておりますものについて、その間においてなおその不足の対策を講じまして、自由化後の万全の措置をとる、かようなつもりでおります。  またもう一つ、これを触れておきたいのでありますが、今のお尋ねのうちに、こういう際は自由化は一体どうなるんだというお気持があるようであります。先ほどお尋ねがありましたように、自由化を進めないとわが国際市場は非常に狭いものだという、これは先ほど説明した通りであります。そういうことをもあわせて考えて、今とっております政策としての統一ある、矛盾しない処置をとる、こういう考え方でございます。御了承いただきます。
  30. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。井手以誠君。
  31. 井手委員(井手以誠)

    ○井手委員 通産大臣と企画庁長官にお伺いをいたしますが、来年の秋、暮れまでには国際収支均衡するとおっしゃっておるのであります。先日来の総理の答弁もそうでありました。四月から六月までは引き続いて赤字になるであろう、その後は幾らかよくなって、暮れごろには国際収支均衡するであろうという御答弁でございましたが、そうであるならば、それにはやはり何かの根拠がなくてはならぬと思う。いつ均衡するかが一番大事な点です。来年の暮れには均衡させる見込みであるということでありますならば、私はその根拠があると思う。もし両大臣が、この席でお答えができぬならば、予算委員会の期間中でもけっこうでございますが、もしただいまお答えができれば承りましょう。この点は今の景気調整の一番大事な点であります。重ねて申し上げておきます。四月から六月ごろまでは依然として赤字が続くであろうということはおっしゃっておる。それが十月から十二月までには均衡させるというこの御答弁の根拠は、私は確かにあると思う。そうでなくては、答弁ができないはずです。その点を私は承りたい。
  32. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 先ほど申しましたように、私どもといたしては、来年の暮れまでに少なくとも貿易バランスで若干の赤字が出ましても、総合収支において均衡ができるように努力して参りたいつもりで諸般政策をやっております。そこで、今数字的に申し上げることの非常にむずかしいことは、先ほども永井さん御指摘になりましたように、貿易バランスを合わせるということは、輸出を伸ばした数字と、あるいは輸入抑制した数字というものを出さなければならぬ。それが貿易バランスを合わせる一つです。ところがこれだけの施策をやりましても、どの程度伸びるかというような問題については、国際的な景気の状況もございます。アメリカの景気がどうなるか、あるいは豪州の今日の財政事情その他がどうなっておるか、そういうものも詳しく検討いたしまして、そうして十分にした上でなければなかなか輸出がどの程度いくか、また輸入抑制するにしても、今日のような抑制策を講じて、そうしてそれがどういうふうに影響するかということをやってみなければならぬのでありまして、われわれとしては、今日ここでその数字を申し上げるわけにはいかぬと思います。
  33. 井手委員(井手以誠)

    ○井手委員 この大事な国際収支均衡、いつ均衡するかという点について、単に努力をしてそうしたいという希望的観測では、これはいけません。いつ均衡するかというところがこの景気調整の一番大事な眼目なんです。その均衡の時期、それによって来年度の経済の見通しも予算編成も変わってくるでありましょう。一番眼目のこの国際収支均衡する時期、それは来年の暮れとおっしゃいますならば、私は希望的観測では承知ができません。もし本日お答えができませんならば、総理からも来年の暮れには均衡するという言明があっておりますので、その基礎をぜひお示しを願いたい。それを一つ委員長から約束さしてもらいたい。何も私は詳細な数字をもってお答えを願いたいというのではございません。大体こういう要素で何月ごろにはどのくらいの国際収支状況になり、何月ごろにはこのくらいの見込みになるので、従って十月から十二月には均衡する見通しであるという大体の見通しをお示し願いたい。それを委員長からお取り計らいを願いたいと思います。
  34. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 政府からしかるべく答弁があるはずでございます。
  35. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、そういうような数字等につきましては、われわれとしては十分材料を整えてやらなければならぬのでありまして、そういう数字を整えた上で見通しを立てていくというのが、私は正確だと思います。政府が早急の間に見通しを立てて、もしそれが正当な見通しでないようなことになっては相済まぬことであります。従って、むろんわれわれは、総理もこの間言われておりますように、予算編成までにはそういう点について十分な資料を整えて、ある程度の見通しは立てなければならぬことは当然でございます。
  36. 井手委員(井手以誠)

    ○井手委員 私はそういう御答弁では承知いたしません。一番大事な問題を、単なる希望的観測では許すわけには参りません。私は今後引き続いてこの予算委員会を通じて徹底的にその点を追及することを申し上げておきます。
  37. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 国際収支の問題については、まだいろいろお尋ねしたいことがありますが、時間がありませんのでこの程度で打ち切りまして、私は通産大臣中小企業関係についてお尋ねをしたいと思います。  通産大臣は、大臣就任にあたりまして、今後は中小企業に重点を置いてやっていくつもりだ、所得格差は拡大の方向にあるようだということを述べられたように聞いておるのであります。私はその見識に対して敬意を表するとともに、その後どのような具体策が進められるかを注目していたところであります。池田総理大臣は、所得倍増計画の中で、二重構造は解消しつつある、こう言われておるのでありますけれども、われわれの見るところでは、二重構造は解消どころではなくて拡大していっておる、こういうふうに思っておるところへ、通産大臣は的確にそのような発言がなされましたので、私はその見識に対して敬意を表わしたわけでありますが、大臣はどのような診断の上に立ってそのような所信を今後具体化していくという決意を表明せられたのか、その基礎を明確に承りたいと思うわけであります。
  38. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 まだ結論を得ておりません。ただいま診断中でございます。しかしこれだけでは大へん失礼な答弁のようですが、申し上げるまでもなく、中小企業は態様が千差万別でございます。従いまして、簡単に結論を出すことはいかがか、かように考えておりまして、基本的にはいわゆる中小企業基本法を制定したい、その準備にかかるという態度をただいまとり、当面といたしましては、当面の経済情勢等にも対応して、応急的な処置をとっておるというのが現状でございます。
  39. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 通産行政があってから今日まで何十年、中小企業庁が新設されてから十四年、その間中小企業の問題をもっぱら管掌してやってきておる。これでは不十分だという点があるかもしれませんけれども、今後中小企業に対して重点を置いてやるのだという所信表明は、これから調査をするのだ、これから診断をするのだ、そういうことから出発されるならば、これは何もしないで大臣が終わるのです。調査中に終わってしまう。診断をして、どうだろう、こうだろうと頭をひねっているうちに、時間が経過してしまうことは明らかだと思う。少なくも不十分でありましても、今いろいろな産業の中における中小企業の位置づけの上から見ましても、あっちからこっちからいろいろなものが吹きだめのようになって、あらゆる病気の症状を持っておる中小企業の病状から見まして、この段階においてこういうことをやっていくのだ、そうしてさらに不十分な点はこれを補って、自分の手においてこれだけのことはやりたいという、在任中におけるスケジュールというものがなければ、漫然と診断するというようなそういう無責任なことでは、私は許されないと思う。所信を表明する以上は、これは大衆にゼスチュアを示すだけでは済まないことだと思いますので、私は現在の段階においてどういうふうに診断しているか、どの点が不十分なのか、これを承りたい。
  40. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 現在の段階において最も不十分と考えられますのは、設備の近代化が非常におくれておるという点、ことに自由化を前にいたしまして、そういう面でぜひともこれは改善していかなければならぬ点であります。第二点といたしまして、現在特に困っておると考えられますのは、雇用の面、これはただいまの設備改善とも相互関連を持つのでありますが、雇用の面におきまして、いわゆる賃金攻勢等で非常な悩みがある、また人手不足、こういう意味においても非常に困っておる、かように考えます。またいわゆる系列化の観点に立ってみましても、ほぼ系列化は完成しつつあるように見受けますけれども、系列化された後の力の強弱の問題、これまた一つの問題だと思います。あるいはまた系列化されない単独のものとしての個々の力の弱いものの団体結成、これまた不十分なように思います。これは制度の上の団体結成、これに力を入れなければならないと同時に、施設の面におきましても、こういう面で団体化が必要ではないか。最近団地等の計画はこういう点にあると思います。また金融の面におきましての中小企業金融というものは、過去において特殊の金融が講ぜられて参っておりますが、これまた今後さらに内容を充実していく対象になっておる。これは私が申すまでもないことであります。最近ことに金融の引き締め等からくる、これは時期的な問題だと思いますが、それらの問題もあることでございます。等々いろいろ問題は複雑でございます。いろいろな問題があります。しかもそれを受ける中小企業そのものの中に、さらに商業部門まで考えて参りますと、これは並み大ていのものでない、大へん膨大なものであり、複雑多岐なものである。これは先ほど冒頭に申した点でございます。
  41. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 中小企業の特徴的な病状についてお話がありました。一つの診断でございましょう。それならば、このような病状は何が原因でこのようになったと診断されますか、その病気になった原因についての通産大臣の所見を承りたい。
  42. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 これは、今までに指摘されておりますのは、日本産業の特殊構造だということがいわれております。私はいわゆる特殊構造だという形だけで処理できない、いわゆる産業自体の近代的産業構造という、この点では日本は外国に見ない独特な発達をしてきたものではないか、かように思いますので、何が原因だといわれると、やはり日本独特の経済組織だ、かように診断せざるを得ないようにただいま考えております。
  43. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 そうしますと、これらの病状治療の基本的な態度でありますが、これは設備近代化がおくれているからそこへこうやくを張る、雇用が問題になっているからそこへこうやくを張る、こういうような治療方法をおとりになるのか、あるいはただいまお話のありました、いろいろ日本の資本主義経済発展の中から出てくる必然的な結果である、あるいはこれを基本的に直すには、こういういろいろな病状を生み出したメカニズムを直さなければいけないというところまでお考えになってのいろいろな処置を講ぜられるのか、その治療態度であります。従来の保守党の大臣はみなこうやくばりで、口先だけでごまかしてきているわけです。ですから、何十年たったって中小企業は一歩も前進しない、悪化する一方です。でありますから、やはりその病気の原因を——ここにふき出ものが出た、その原因は何だ、その原因を治療しなければ、そこに触れなければ基本的な治療にはならない。やはり独占資本の独占利潤のための、独占の今までやってきた保守党と経済との結びついた結果として生まれたこれらの問題について根本的なメスを入れる、こういう基本的な態度であれば大へんけっこうだ、こう思うのですが、そのこうやくばりでやはりお過ごしになりますか。
  44. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 先ほど来申し上げますように、二通りの処置を考えております。今言われますものが、暫定措置というか、臨時的な措置というか、応急的措置というか、こういうそのときどきに対処してとる処置、これはもちろんとらなければならない。これをおくらすつもりは毛頭ございません。しこうして、いわゆる中小企業基本法制定の要ありというその意味の調査を進めていくということが基本的な対策であります。ここでは大事なことは、私どもは今政治をして、いわゆるイデオロギーで一つの違ったある姿を考える、あるいは過去のものを悪いというてこれをくつがえしていく、こういう考え方は毛頭ない。だからここに問題がある。基本法の制定にあたりましても、先ほど、相当の調査を必要とする、ただいま診断をしておりますのでまだ結論を出しておりませんと申し上げるのは、この点であります。この点は、基本法を作るという考え方は同じようでございましても、やはり実態を十分に考え、生きておる経済、それに対処する基本的態度をきめる、それにはしばらくの時日をかしていただきたい。また各般にわたっての調査を完了していかなければならぬ、これが先ほど来からのお尋ねの点であり、私も明確にすべき点であった、かように考えます。ただここで誤解のないように願いたいのは、基本法は一つのイデオロギーで、それに何もかも押し込んでいく、こういうような考え方で作るものではない、これだけはっきり申し上げておきます。
  45. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 私もイデオロギーで言っているのではございません。池田総理が、所得倍増計画を進めれば二重構造は解消するのだ、所得格差はなくなるのだ、こういうふうに言っておるので、所得格差をなくすならば、所得格差が出てくる基本を直す、そういうものを生み出す基本を取り除かなければ直らないのですから、池田総理の少なくも政策の範囲内でものを言っている、こう思うのです。  そこで、それならば基本法はいつお出しになりますか。
  46. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 まだ時期は確定しておりません。私は、次の国会に提案をするという決意にまではまだ至っておりません。
  47. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 時間がありませんから先に進むことにいたしまして、個々の問題についてお尋ねをいたしますが、金融の問題であります。緊急措置として中小企業にしわ寄せをしないという立場において五百五十億の金融ワクを準備されたわけでありますが、これは足りなければもっと出すのだというお話でありました。この五百五十億で当面十分であるという積算の基礎を示していただきたい。これが一点。  それから金融にあたって、大臣からお話がありました通り、大企業との系列関係が相当広まっておる。従って、ただ中小企業だという対象でこれを融資して参りますと、結局大企業の系列企業関係にこの資金が流れていって、間接に大企業を援助するという形が強まってくると思うのであります。そういうことではなくて、独立企業中小企業設備近代化を促進するという範囲でこれを運用することが必要であると思うのですが、それについての配慮。  それから金利は上げないと言っておられるわけでありますが、金利を上げないという措置については具体的にどういう措置をおとりになるのか。  それから、結局ほうっておけば金融ベースで金融されていきますから、力のあるところへばかり資金が流れていって、要するに中小企業といっても上中階層の方に流れていって、下層の方あるいは零細の方はこれは切り捨てとなるわけでありますが、その金融ベースに乗らない関係であっても適切であるという関係については、やはりこれは配慮しなければならぬ。すべてを金融ベースで処理するならば、結局は大企業の間接援助という結果になってしまいます。そういった関係に対しては、金融ベースに乗らない関係におけるなには、何らかの財政的な裏づけとかなんとかがあるのですかどうですか、そういう関係。  それから歩積み、両建等については、これは大蔵大臣から御答弁願いたいわけですが、金利は上げなくても、歩積みであるとか、両建であるとか、こういった関係でしぼり上げられれば同じことであります。そういう関係はどうなるか。それだけ一つ
  48. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 今私どもがとっております金融政策について、一応の御説明をいたします。  私どもは、今設備投資が行き過ぎだ、これを押えるという方針をとっておりますが、設備投資はどこが行き過ぎかと申しますと、やはり日本が自由化を控えて、これに対処するためには、合理化投資をやらなければならぬということは当然でございますので、これはひとり大企業だけに見られる問題でなくて、むしろ合理化投資というものが中小企業部門にまで浸透してきて、いわゆる中小企業合理化意欲が非常に強くなっておるということが、やはり今の一つの特徴ではないかと考えております。従って私どもは、設備投資を少し待たせるというからには、大企業にももちろん、中小企業設備投資というものについてもやはり待ってもらわなければならぬ、こういう政策をとらざるを得ません。ところがそのうちで、大企業の方に見られる合理化投資は、すでに必要な合理化投資を何年もやっております。ここでこの性質を全部分析しますというと、この間総理からもお答えがありましたが、市場占拠というようなことに力を入れた設備投資というものも見られる。こういうものは、私ども強くこの際抑制する対象にしたいと思いますが、自由化を控えた必要な合理化はやらせるという基本的な方針に立たなければ、これは成長政策ではないと思っています。と同様に、特に中小企業の部門において見られる合理化投資というものは、今問題になっておる二重構造の解消とか、そういうものに関連した、体質に関連する重要な問題でありますので、必要な中小企業の近代化投資というものは、これは私どもはむしろここで進めさせるというような基本態度をとらなければならぬ、そういうふうに考えています。そうしますというと、金融政策におきましても、大企業の金融を引き締めるということと、中小企業に対する金融の引き締めというものについては、その度合いを相当考えてやらなければならぬ。こういう問題が出ますので、私どもはここで金融の引き締め政策をやっても、中小企業への引き締めというものは、一番ここで気をつけて考えなければならぬ問題だと思います。こういう態度でこれに臨もうとします。というと、むずかしい問題は、単純な引き締め政策をとったら、三十二年の例を見ましても、これは中小企業への貸し出しというものがもうすぐに押えられて、系列化した大企業への融資というような方向へ行ってしまうということは、今の情勢から見てはっきりしておることでございますので、これをどう防ぐかという配慮を先行させなければならぬ。こういうふうに考えますので、私どもはまず大銀行が、今大きい企業計画に対してどういう金融計画を持っているかという、この実態を握って、そしてできるだけその設備抑制の指導を金融機関にしてもらうという行政指導面を先に準備しておかないというと、金融引き締め政策というものは、どうしても中小企業へしわ寄せするということになりますので、これをこの夏相当骨を折って、こういう方面の行政指導を強化しまして、そうしておいて、たとえば公定歩合をいじるにしましても、ただ無計画にいじったら、しわは中小企業に寄ってしまいますから、公定歩合をかりに上げても、中小企業部門への締め方と、大企業への締め方がおのずから違ってくるような配慮という意味の行政指導を今までやって、その上に今度の公定歩合の問題をやったわけでございます。どういう措置をとったかと申しますと、まず中小企業への貸出率を落とさないように、むしろ上げてくれという通達まで出すし、各金融機関にみな相談をしてもらって、申し合わせというような形でやってもらうという方法をとりました。  今、中小企業がどのくらい金融機関から金融をしておるかと申しますと、御承知のように、総額は五兆何千億という額に上るだろうと思います。このうち一般の地方銀行、市中銀行、銀行による金融は、中小企業金融のうちの五四%を占めている、これが一番大きい金融のにない手になっております。それから相互銀行とか、あるいは信用金庫、信用組合、こういうところの融資は二兆円をこしておりますが、中小企業全体の金融から見たら三八%くらいの比率を担当している。そうして国民金融公庫以下の政府機関の資金というものは、中小企業に対しては八尾くらいの比率の金融力しか持っていない。こういうことですから、政府機関の資金を二百億、三百億増すということよりも、全体の何兆という方の貸出比率が落ちる方が中小企業にとってはつらいことでございますので、まずこれを落とさないという措置だけどうしてもとりたいということで、今日まで骨を折って、大体中小企業への貸出比率を落とさないで済むように各金融機関も協力してくれる、こういう態勢は現在できているものと私は思っております。  そういう配慮をした上で、今度は政府機関自身がどれだけのことをするかという問題になるわけでございますが、原資に制約されるところもございますし、過去三十二年のときの中小企業対策、政府が出した金の手当の金額の幅というようなものも、過去の事例を全部参考にしまして、これの消化能力——三機関といっても、無制限に金を消化できるものではございませんから、消化能力と、かたがた政府の原資というようなものを考えて、ここで年末のために三百五十億円くらいの手当をすれば大体やっていけるんじゃないか。ただし、今政府の余裕金もあるときですので、この金をどう中小企業の金融に役立てるかという方法も当然考えなければなりませんので、こういう問題を私どもは検討した結果、市中銀行に対して、中小企業の金融機関に対して、それの持っておる金融債以下の買い上げを政府資金でやってやる。そしてこれを貸してもらう。信用保証によって貸したものについては、政府がその資金供給してやる。しかも先に貸せ、貸したら貸した分政府が見てやろうという措置ではなくて、それだけ政府が先に買ってやるから、これだけは貸しなさいという方法でいくなら、相当中小企業金融に対して寄与できるだろうという方法をとることにしまして、これを十月に百三十億、十一月になって七十億、とりあえず二百億円、そういう買いオペという方法をもって中小企業金融の資金政府供給しよう。こういう措置をとって、この年末に対する中小企業金融に対処しようというのが大体われわれの構想でございまして、それをやるための、さっきお話ししましたような引き締めについてのいろいろな準備の行政指導も十分やっておりますから、今まで見られたことは、今度は少しその点は、事態は改善されるのではないかと考えております。従って、歩積みとか両建というような問題につきましても、これは従来の慣行もございますし、商慣習もございますので、これを一がいに禁止するというわけには参りませんが、本人の意思に反したこういうことをやることはまかりならぬ、実質金利を上げることはやってはならない。公定歩合を上げても、中小企業への金利は上げない措置をとったのですから、ここで両建、歩積みによって実質金利を上げることは、これは無意味になりますので、これも一つやめてもらいたい。銀行検査という検査権によっても、われわれは抑制するつもりでございますが、さしあたりこの金融懇談会というものを通じて、自主的に一つこういう方向にいってもらいたいという要望をしまして、金融機関も自主的に今そういう申し合わせをして、これに協力するという態度をとっておりますので、この問題も、相当今度は抑制されるのではないかと今のところは思っております。
  49. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 御承知のように、政府大臣答弁も懇切は大へんけっこうなんですが、ずいぶん長い時間かかった答弁で、私は定刻開会の委員長の趣旨に協力いたしまして余分な質問をずっとなにしたわけであります。ですから、この中小企業と河野農林大臣に対する質問はまだ今始まったばかりなんです。それで中小企業関係については、金融の問題、下請の問題、労働問題、税金における国税通則法の実施の問題、その他基本的な問題、いろいろあります。ありますけれども、これは協力して余分だと最初から言っておる。だから私はこういうことで今時間がここで打ち切りだなんて言われたら何ですから……。
  50. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 私はまだ時間の打ち切りを申し上げておりません。あなたがそういう御意見を吐かれる間に時間が進みますから、どうかあなたの御意見を進めていただきます。
  51. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 それでは私は中小企業についてはこの一点だけにとどめたいと思います。大蔵大臣から金融についていろいろお話がありました。ありましたけれども、たとえば三十六年の、本年の八月までにおける金融の揚超は約六千億だろうと思う。十月から十二月は三千億内外は払超になるでしょう。しかし来年の一月からまたこれは税金その他で揚超になります。金融市場は非常に縮まってきます。そうした場合、ただ通牒一本、行政措置一本でこういう金融問題がコントロールできるかどうか。そのしわ寄せは結局は中小企業にみんな——そういうことを言いながら、池田内閣はしわ寄せはしない、これだけいろいろやったのだというので、死んだ寝床で、仏前でお経を上げて、迷わず成仏せいと言うのと同じ結果になる。これは中小企業にしわ寄せが来ると思うのです。その点については今の大蔵大臣の答弁は答弁としても、ここに重大なる問題を含めておりますし、下請関係の引き締めは相当にきつくなってきているということ等を述べまして、私は中小企業関係はこれ以上質問ができませんからやめます。答弁は次の機会に譲ってけっこうです。  私は次に、河野農林大臣お尋ねをいたしたいと思います。  砂糖の問題について、私は輸入糖の関係と国産ビートの関係と二つあると思うのであります。輸入糖については、やはり超過利潤の問題をどうするかという問題、それから国産ビートについては、予定のように増反が運んでおらない。工場は二工場増設されたけれども、これに引き当てる原料は今のところ見込みが立たない、不足するだろうという一つの問題と、もう一つは、昭和二十九年から八年間農民の生産価格と、いうものは据え置きになっている。御承知のように千斥三千百五十円、トンにして五千二百五十円、八年間据え置きになっているわけです。これは物価値上がりの指数から見ましても、米価の決定の事情から見ましても、何としても昭和二十九年から八年間ビート価格を据え置きにするということは常識を越えたことだと思います。これらの二つの問題を考えると、やはり輸入糖の問題は、国産ビート、国産の砂糖を擁護するためだ、そういうことで輸入糖の方は超過利潤をぽんぽんもうけていく。そういうかかわり合いにおいて、生産者農家は、この自由化に備えてコストを下げなければいけないといって生産者だけが押えられて、そうして消費者はどうかというと、消費者は世界一高い砂糖をなめさせられている。業者だけがもうけている。こういうような砂糖行政というものは、私は常識を越えたものだと思う。ビートの工場建設については、河野農林大臣は就任早々抜く手も見せずあざやかにやった、タイミングよくやったわけであります。しかしこれだけやるだけの見識と政治力を持ちながら、今日これだけ不当な形でゆがめられているビート価格の問題に目が届かない。あるいはしょうゆ値段を押えるというだけの目の届く大臣が、これだけの問題を見のがすことはないだろうと私は思うのでありますが、これらについて一つ御意見を承りたいと思います。
  52. 河野国務大臣(河野一郎)

    ○河野国務大臣 答弁が長いとお小言をちょうだいするかもしれませんが、まとめてお答えいたします。  第一に超過利潤の問題は、さっそく業界と話し合いまして、至急これを供出するようにいたしております。ただ出す金をどこへ置くかということで、今適当な保管場所がございませんので、(「そんなに多いのか、百億だな、値引きしたらいかぬ」と呼ぶ者あり)これは値引きをしたらいかぬとおっしゃいますけれども、そういう点は明瞭に申し上げます。百億とか七十億とかいろいろおっしゃいますけれども、現にそういう数字になっておりません。今計算されておりますのは、おおむね十八億ぐらいに計算されております。これは、各方面御了承の上のことと私は考えております。私が計算したのじゃございません。私が就任前からの計算がそういうことになっておりますから、その十八億をどういうふうに供出するか、これは一応政府に納めるか——政府に納めますと歳入となり、歳出の場合に、またこれが甘味資源対策に使う場合にめんどうになる。そこで適当な社団法人を形成して、そこにしたらよかろうという構想で、今せっかく適当な社団法人を考え中でございます。それができ次第そこに保管いたしまして、これを対策に使うということでいこうということで、着々準備をいたしております。  第二は、ビートの価格の問題でございます。これにつきましては、地元で、御承知通り工場を増設せい、増設せいという運動ばかりでございまして、昭和二十九年以来今日まで、なぜ一体それを言わなかったか、地元からもそういう声はあまり出ていなかったと思います。現にことしの四月、現価格決定の際にも、あまりそういう声もなしに決定になったのじゃないかと思います。私は現行価格を適正と考えておりません。今せっかくそろばんを入れて、そしてどのくらいにしたらよろしいかということを考えておりますが、御承知通り、二十九年から上げないには上げない理由があるように私は考えます。決して私は、農家の方を押さえておるという意味じゃございません。初期におきましては、ビートの生産等においてふなれな点等もございまして、反当収穫量も上がらなかった。それがだんだん反当収穫量が上がってきた。上がってきたので、従って農家所得もそれだけふえてきておるという現実がありますので、価格が今日まで据え置きになっておった。しかし、これが適当であるかどうかという問題につきましては、検討の余地があるということで、目下検討中でございます。これもあまり遠からぬうちに私は結論を出したい、こう考えております。従って、これらの点は、何を申しましても国内で新しく試みたものでございますから、振興過程にある産業でございますから、いろいろな点が、それぞれ不行き届きな点が出て参ります。しかし、これは今後十分あらゆる角度から注意を払っていきたいと思います。ただし、き今お話しのように、あれも悪い、これも悪いといって、別な角度から悪い点ばかり指摘されても、一般聞いておられる国民は非常に誤解を招きます。私はそういうことになっておらぬ、甘味対策を一貫したものをもってやっておるのでございまして、決してそういうことにしておりませんということを一つ御了承いただきたいと思います。
  53. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 価格等の問題については、私はもう三、四年前から国会で論議をいたしております。なぜ含糖率で取引しないのか。世じゅうが含糖率で取引しておるときに、なぜ日本では含糖率で取引しないで目方だけで取引するのか。これはベルギーでもオランダでもデンマークでもドイツでもフランスでも、全部含糖率で取引しております。私もドイツ、オランダ、ポーランド、デンマーク等を視察して参りました。みなやっております。ところがどこの国でも大体一五・五%から一六・七%の含糖率であります。ところが日本の場合は、これは政府の方ではじくときの計算基礎として含糖率は二二%とはじいております。実際には含糖率はもっとあるのですから、含糖率の上ではピンはねをしておる。さらに歩引きの点でこれは生産者を圧迫しておる。そういう量で処理するのだからというて三・五%の減損率を出しておる。これも事実と合いません。こういうような関係において、私はやはり世界じゅうでやっておるような正規な基準で、砂糖をとる原料ですから含糖率で取引すべきである、含糖率を明確にすべきだと思う。それからこの価格決定については、世界じゅうどこに行ったって農民と団体交渉できめておるのです。日本の場合はどうかというと、農林省の官僚と関係会社とだけがこそこそとそろばんをはじいてこれはきめておる。こんな民主的な方法によらない、公開された形によらない決定の仕方というものは私はないと思う。世界じゅうみなこういうふうな方法で農民との団体交渉においてやっておるのであります。それからさらに価格については、各国いろいろでありまして、ビート・パルプ等はほとんど農民に還元いたしております。やはりビートの葉なんかも土地に返す、あるいは砂糖をとっただけであとのものは土地に返して、そこで地力を培養して再生産を高めていく、こういう形にならなければいけないのでありますが、日本の場合には、一部はビート・パルプは農民に返りますけれども、大部分は本州に送られて飼料として、土地に還元されない。こういう関係だって、この価格の関係については私は直さなければいけないと思います。今日はそのほかには地区の問題、工場の今後の運営等については、私は、大臣は悪い点があると言うが、これはほんとうに正しい方法において、みんながこれは公正なものであるという立場によって了解するような形においてこれは運営されておりません。これはやはりもう一度大臣はわれわれの声を聞いて再検討する必要があると思います。  それからもう一つは、これは輸入糖の関係でありますが、これは三十六年度の予算単価はトン九十ドルであります。この九十ドルを基礎にしまして標準糖価というものを出しておる。このトン九十ドルできめましたときの国際相場はどろであるかといえば、七十ハドルから七十九ドルです。粗糖の原料においてこんなにも値幅がそこに出てくる。国内における標準糖価は幾らであるかといえば一キロ百二十一円六十七銭です。これに対して当時の市価はどうであるかといえば一キロ百二十八円から百二十一円です。粗糖の原料においてこれだけの値開きがあり、卸価格においてこれだけの値開きがある。そして輸入する数量というものはわかっているのです。そして溶糖の歩どまりというものがわかっているのですから、これを計算いたしますとちゃんと答えが出ると私は思うのです。超過利潤は最初日経その他においては七十億、八十億とありました。ところが、いよいよ議会で資料を求めたときには十八億幾らという、これは試算をやり直しているのです。試算をやり直した結果こうなったというのでありますから、私はこの問題については公開をして、そしてこれが妥当かどうかということはやはりやるべきだと思うのです。そしてビートの価格決定等についても、農民との団体交渉において直接やるところもありますし、国会において議決して——ドイツその他は国会において議決しております。こういうはっきりとしたやり方で今後ビート価格その他の問題は解決すべきだし、世界じゅうがやっています。含糖率の取引というものは当然是正すべきだ。
  54. 河野国務大臣(河野一郎)

    ○河野国務大臣 御承知通り、北海道のビート工場につきましては、非常に早くから、初め政府が非常に保護を加えており、すでに工場のすべての償却を終わっておる、非常に優位に立っておる工場がある。新しくこの点を考えまして、前回私農林大臣のときに、余剰農産物資金をこれに回して、てん菜糖工場を作ろうということで作り始めたのが今回の動機でございます。当時から、あまりてん菜によるところの工場がそれほど有利にいくものではないという考えで、資金におきましても、余剰農産物資金をこれに向けて、何とか国内砂糖資源確保という考えで始めたのでございまして、今お話しのような農民側において強い要望があり、そういう段階でありますれば、おそらく製糖工場が北海道に行って、てん菜糖工場を作ろうなどという人は、あまりなかったろうと私は思います。それがようやく今日——なぜ一体政府がそんな要らざる支持価格を出すか。支持価格を出せ、出せとおっしゃったから出したのじゃありませんか。出した当時の事情も少しお考えになって御議論いただきませんと、何のために政府はあんな要らざることをやった。私も、実は何でこんなことをしておるのだという疑問を、今回農林大臣になりまして持ちました。現に今その疑問は、私は解けません。北海道の農民諸君が、すぐ政府はやめてよろしいと言うなら、すぐ政府はやめてよろしゅうございます。そういうことであっては、この事業の安定性、将来の発展性の上から申しまして、そういう安定性がなければ、そういう今団体交渉でやるのだというような危険性があるならば、北海道に行って、てん菜糖工場を作ろうという意欲が非常に減殺されると思います。それらを安定する意味において、ここに安定性を保つためにおいて、支持価格を置き、その支持価格を基準に置いて、政府がそれによってできた砂糖の買い入れを初年度においてはする、そうして工場の安定性を保持するためにやっていくのだということでやっておることは、御承知通りでございます。それを今この段階になって、今のような御議論になりますと、これはわが国の農業の将来のことを考えまして必ずしも妥当でない。もしそういうことであったらば、北海道に、私は今回多少の各方面に異論もあったようでございますが、協同組合に製糖工場を許可いたしました。これらの協同組合の諸君が、率先して組合内部で原料の高値購入をいたすべきでございます。ところが、協同組合自身も高値購入をいたしておりません。農業者自身が作っております工場で、農業者自身の原料によって経営いたしておりますものも、今資本家が行ってやっておりますものも、同様の角度でいたしております。これらの点において私は深く検討を加えて、将来の北海道のビートもしくは畜産の発展というような全般的な北海道の農業のあるべき姿を考慮して、そうして持っていくことが正しい。でありますから、ここで政府は全面的に手を引いていいのだというならば、これも一つ考え方であると私は思いますけれども、今はその段階じゃないと言いますので、深く研究いたしまして、各方面の御意見も伺って——承知通り来年三月でてん菜糖に関する法律が期限が切れる。これをやめよとおっしゃる御意見は、この国会を通じて一回も私は承りません。現に北海道方面からも、あれは絶対継続せい、継続せいという御意見ばかりでございます。従って、これらの点がそれぞれの地区によっていろんな御意見が出てくる、そのとき、そのときによっていろんな御意見が出てくる。これらは、やはりよほどそういうことが一部の農民を刺激する。新しく開かれる地方においては、また新しい御意見があるというようなことでございますから、それらの点につきましては、御意見は御意見として私は十分拝聴いたします。しかし、その御意見を公開の席で責任ある御意見として発表なさいますと、われわれとしても、そういう意味でこれを取り上げて考えなければならぬということになりますと、全体の農業経営をやって参ります上においては、いろいろ支障も起きてくるのではないか、こうひそかに憂えるものでございます。どうかそういう意味で、今の御意見の中で、確かにてん菜の中に含まれる糖分がどのくらいあるか、この糖分も最近は上がっております。それも私承知いたしております。糖分が上がっておるから上がっただけのものは値上げすべきじゃないか。農家の方は増反されておる。増反されるのは、農家の意欲によって増反されたのだから、それだけもうかることはあたりまえじゃないかという議論を立てつつ、今せっかく検討しておるときでございます。どうか、私も決してそういう問題をなおざりにいたしておるものじゃございませんから、一つよろしくその辺の点を御了察賜わりまして、御協力賜わりたいと思う次第でございます。
  55. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 永井さんにちょっと申し上げますが……。
  56. 永井委員(永井勝次郎)

    永井委員 いや、わかっております。今大臣から、こういう事柄を公開の場所で言うことは、この糖業なり農業政策の将来に影響がある、こう言う。私は、この問題を公開の場所で公式にお互いに論議し合うことが、どういう悪い影響がありますか。また農民団体との交渉というような危険なことであるならばやるんでなかったと言うが、農民の団体交渉というのは、農民は気違いでもばかでもありません。自分の製品を売るのに、それに値をきめるのに参加するということは民主的なあたりまえなことじゃないですか。もしそれがだめなら、国会の公開の議場できめたらよろしい、これが何が悪いのですか。そしてまた現実においてこの値段が二十九年から据え置きになっていて、そうしてこの原料価格をこの値段で据え置かなければ経営が成り立たないというような実情ならば、これは何をかいわんや。しかし含糖率で取引しない、その砂糖の歩どまりの格差あるいは現在ビート会社が収益を上げている収益、これは大きな減価償却をしながら、年額四億から五億の純益を上げているんですよ。工場によって違いますけれども、大部分の工場はそのくらいの純益を上げている。そういう純益を上げていて、生産者がこれに対して値段を上げるという要求をするのはあたりまえなんだ。しかも歩どまりによって取引せよというのは世界じゅうがやっている。またどこからどこまでの農家がどういうふうに処理するということだって、全く農民というものはビートを作るだけなんです。自分の値段がどこできまって、自分の作ったものをどこに出すかということは、一言の相談もなくして天下りにやっている。こういう一つの不毛の地帯、日のささないところがある。それでも農民は黙っている。黙っているからそれがあたりまえだ、こういうことにはならぬだろうと思う。どこから見たって、達観的に見て、悪いものは是正し、それからいい方向に修正していくということはあたりまえなことです。
  57. 河野国務大臣(河野一郎)

    ○河野国務大臣 私が公開の席で議論することが悪いと申したことが悪かったら、お取り消しいたします。しかし、御承知通りそういうことで、自分のところへ工場を作ってくれ、工場を作ってくれといって工場を誘致したのじゃないでしょうか。工場を作るまでの地元のあの御熱心さはどういうものでございますか。現に地元が、どういうような工場誘致の御熱心な要望があるでございましょうか、そういう新たに工場を作ろうとしておる場所が非常に多い、それらの地方もございますから、早く私は昭和三十年に奨励してやらしたところが、確かに今うまくいっております。もうかっております。承知しております。そこがもうかっておるからといって、それ並みだといったら、新しく入る人はありませんよ。それがはたして北海道の農業のためになるのでございましょうか。そういうことで、事情が非常に違いますから、その違ったところは違ったように話し合っていかなければいかぬでございましょうと私は申すのでございます。それを、非常に初めのところはもうかっているから、もうかった話ばかりここでなすって、そうして農民が農民がとおっしゃれば、新しい地方はどうなりますか。新しい地方の、これから工場を誘致しようというところの農民諸君は、決して今あなたのおっしゃるようなことは、私は申さぬと思います。でございますから、諸般の点を勘案して、そうして私はやって参りたいと申しておるのでございます。決して農民の味方をしないで、工場の味方をしておる、そんなことをした覚えは私はございません。だけれども、これは始まりからが農民と工場とが一体になって、北海道のビート開発をしていこうということで、むしろいかなる場合にも地元が工場を連れてきて、そうして地元が工場にやれやれ、やってくれ、やってくれといって頼んでやったのが、今日までの経過でございます。そうして生産、改良、開拓、全部工場と両者一体になってやったのでございます。決してこれは、ビートのあるところへ工場が行って、そうして勝手にやっていることでないことは、御承知通りでございます。でございますから、ほかのものとはものが違う、場合が違う。ただ単に団体交渉と申しますけれども、両方の間は、そういう関係に私はあるものじゃないと思います。ただ、政府が入って、そうしていつまでも支持価格といって全体を一つにしておくことは適当であるかないかということは、これは議論の余地があると私は思います。初めにやったところは非常によくいっているし、もうかっている。もうかっているところは、工場の方ももっと利益を出してやったらいいじゃないか、私はその通りに思います。しかし、新しいところもございます。でございますから、一律に議論はできませんから、これらの点については、一つ全体をよく勘案した上においてやることが必要だろう。今日までは、そういう点で二十九年以来上げずにきたんだろうと思いますが、これは必ずしもは妥当と思っておりませんということは、最初に申し上げた通りでございます。だから、何も私は理屈を言うわけではございませんけれども、諸般の点を勘案して実情に合うように、両者の間にうまくいくようにやっていきたい、こう考えておりますと申し上げるのでございますから、御協力をいただきたい、こう思うのでございます。
  58. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 それでは上林山榮吉君。
  59. 上林山委員(上林山榮吉)

    ○上林山委員 私は、理事諸君の御了解を得て、この機会に一言政府の所見をただしておきたいことがございます。それは、今回政府が提出されました法案の一つでございますが、昭和三十六年五月二十九日及び三十日の強風に際し発生した火災、同年六月の水害又は同年九月の風水害に伴う公営住宅法の特例等に関する法律案、これでございますが、御承知通りこれはフェーン現象による八戸や何かの大火の問題、あるいは第二室戸台風等々に関する臨時立法だと考えるわけでありますが、政府としても、国会としても、もちろんこれは今国会中に通過されるものだろう、またぜひそうしてもらわなければならぬ法案であると私は考えておるのでありますが、これが通過した際における予算の増額はどういうふうになっておるか、私は単価のつり上げ等によって相当増額になると思っておりますが、それはどれくらいになるか、この点をまず伺って、それから質疑に入りたいと思います。
  60. 中村国務大臣(中村梅吉)

    中村国務大臣 お答え申し上げます。ただいま御指摘のございました、特例法によってどのくらいの金額がふえるか、またその処置はどうなっておるか、こういうことでございますが、こまかい数字は記憶いたしておりませんが、これらの特例法によってふえて参りまする国庫の負担分につきましては、今回の補正予算の中に織り込まれておりまして、この金額によって処置することができる、かように考えております。
  61. 上林山委員(上林山榮吉)

    ○上林山委員 大体二十数億円の予算を補正予算に組み入れてあるようでございますが、私はこの程度では足らないんじゃないかという考えを持っておりますが、時間の関係で残念ながらこの内容について多くの検討する時間がありません。  そこで端的に私がこの際申し上げたいことは、鹿児島の大火とこの問題と関連があるから、この問題にしぼって質疑を進めていきたいと思います。  今回鹿児島の大火が起こりまして、あの地区は戦後奄美大島あるいは沖繩等から約六割近くの人々が引き揚げて参りまして、あの混乱の時期に、それこそ社会政策的な意味で、都市計画の点も関連はしておりますが、そういう意味で、集団的に移住をしたといっていい場所でありまして、ここに住まっておる方々は、約二百戸が生活保護を受けておる。あるいは約四百名近くのものが、三百何十名でございますが、それくらいのものが、これは市民税を納めなくてもいい非課税対象になっておる世帯でございます。そういうところであったのでありますが、しかも二十三号台風が近づいて参りまして、出火当時は約七、八メートルでございますが、十二、三メートルまで強風がありまして、ここの特殊地帯といいましょうか、非常に困っておる地帯が八百四戸全焼をした、こういう問題でありますが、この法案は九月の風水害に伴う公営住宅法の特例となっておりますので、わずか一日違うか違わぬかによって、この法案の適用を受けられるか受けられぬかという紙一重の状態である、こういうふうに考えるのでありますが、政府は解釈を拡大するなり、あるいは政府みずからが法案の訂正をされるなり、あるいは国会審議の過程において、政府から連絡があるならば、国会においてもその実情をよく御認識いただいておると考えますから、これを改正するといいましょうか、これが入るように処置をされるという御意思があるかどうか、私はこの点をまず伺っておきたいと思います。
  62. 中村国務大臣(中村梅吉)

    中村国務大臣 鹿児島の火災はまことにお気の毒な次第で、私どももその点は十分に考えておるわけでございます。そこで、今回は災害関係の特別立法を提案をいたしておりまする国会でございまして、三陸のフェーン現象による火災は特別立法に入っておるわけでありますが、鹿児島の火災をどうすべきかということにつきましては、私どもただ火災の現状から見て気の毒であるという政治的判断だけで処理するわけには参りませんので、いろいろ事務当局及び関係省と毛協議をさせ、検討をいたして参ったのでございますが、火災につきましては、御承知通り、従来千戸以上のもっと大規模な火災もございましたが、火災について特例法を出したということは従来ないのであります。今回の三陸地帯の火災災害は、火災と申しますよりはフェーン現象による全くの災害で、他の場合の火災災害とは非常に趣が違っておりますので、特例法を提案する運びになったのであります。さような関係で、過去の実例等に照らしまして、織り込むことが非常に困難な事情にございますので、まだ検討を続けておるのでございますが、目下のところは、織り込むことが非常にむずかしいという段階にあるように承知をいたしております。
  63. 上林山委員(上林山榮吉)

    ○上林山委員 これは御承知通り、二十三号台風が近づいておったときの火災なんですね。そういうような実情から考えて、これは何メートル以上でなければならぬという何か規定があれば別でございますが、出火当時は七、八メートル、火災中においては十二、三メートルという状態であったことは、これはもう事実であって、そこは密集地帯であって、防火しても防火が至らない場所といってもいいところであった。しかも生活保護世帯、あるいは非課税対象の世帯が多いし、残っておる者も中小企業というようなものはほとんどないといっていい失対事業の人たちの群れでございます。しかもさっき申し上げたように、戦争で、あの混乱の時期に沖繩あるいは奄美大島から引き揚げてこられた着のみ着のままの人たちが、一応ああいうところに集団的に住居をかまえた、こういうところでございまして、これは一つそれこそ政治的判断によって、事務的な判断のみにまかせられないで、この際わずか一日の違いというような紙一重の状態であるのでございますから、この法案の中に入れていただきたい。できれば政府の方から国会に修正でも出していただきたい。それができないならば、われわれは国会の同僚諸君の御了解を得て、それこそこれを修正をして、この中に挿入しなければならぬかもしれない。こういうように困っておるのでありますから、この際一つ事務的な単なる報告や判断にとどまらずに、一つ真剣なる御検討を、強く要望を私はこの機会にいたしておきたいと思います。  そこで私は鹿児島の台風あるいは火災、そういうものだけでなく、この特例法は、あるいは今度出た災害基本法にいたしましても考えられることは、政府がいわゆる災害が起こって、起こったときにいわゆるどろぼうを見てなわをなうようなやり方を今までしておったところに非難があったわけです。そこで私は住宅の問題だけにしぼって申し上げますならば、大きないわゆる風水害あるいは大きな火事があったような場合は、かねて組み立て式の切り込みなり、あるいはその他の材料によってでもいいのでありますから、千戸なりあるいは五千戸なりというようなものをあらかじめ用意しておって、あるいは自衛隊なりその他の方法によって、一日や二日で緊急住宅なりあるいは半永久的な住宅までも場合によっては含む、こういうようなふうにして、これは大蔵大臣の了解も得なければならぬが、そうされることが困っておる人々のためになるばかりでなく、国の経済の上からも、私はそういうような処置をとっておくべきだと思います。今日木材が上がっておりますが、これらの人々は、いわゆる住宅法によっていろいろ国の補助を増してやっても増してやっても、木材値段が上がっておるために、今私が言ったような地域の人たちは、これは家を作れません。そういう場合にはやっぱり私は、今言ったような処置をとって、政府が緊急に処置をするところまで災害復旧対策というものは進めておかなければならぬ、こういうように考えるのでありますが、こういう構想に対してどういうようにお考えですか。建設省においては、たまにはこういうこともいいなというぐらいのことは考えておられたようでありますが、財務当局かあるいは政府全体というか、そういうところまで手が届いておらぬ。行政というものは、政治というものは、いわゆる血の通わない末端に血を通わせるということを——それは大筋も大事でありますが、それに加うるに、今言ったような末端に血の通う行政というものをやっていかなければ、これは政治はないと同じですよ。だから私はそういう意味において——時間が三十五分までという制限でありますから多くを申し上げません。私はいろいろここに材料を整えたけれども、前の質疑者の関係で時間がありません。だからこの場を答弁すればいいという意味でなくて、災害地の気持になって、建設大臣あるいは大蔵大臣、あるいは厚生大臣、自治大臣、みんな関係者でありますから、質疑を省略いたしますが、そういう意味で最後のしっかりした御答弁を、私に答えるという意味じゃなしに、被害地の諸君に答える意味でお答え下さい。
  64. 中村国務大臣(中村梅吉)

    中村国務大臣 ただいまの建設的な御意見につきましては、私も十分検討して参りたいと思います。  それから鹿児島の災害の当面の問題につきましては、われわれもいろいろ心配しておるわけでございますが、あの敷地の中に災害公営住宅等を建設するにいたしましても、従来のような密集状態で建設するということは、今後のこともありますので困難のようで、他に敷地をさらに拡張しなければならないように考えられますので、これらについても地元の市の意向、市の考え方及びこれに関連した県の考え方等とよく協調しまして、国としましては、現在の制度の最大限を活用しまして、できるだけの援助をしていきたい、こう思っておるわけでございます。実は地元の市及び県とも連絡をいたしまして、すみやかに考え方を立てて連絡をしていただくように督促をしておりましたところ、本日鹿児島県から、大体の考え方をまとめて、県の人が東京に来て下さる手配になっておりますから、上京されましたら、十分こまかい点にまでわたりまして御相談をいたし、できるだけの努力をいたしたい、こう考えております。
  65. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 次に、中村三之丞君。  委員諸君並びに閣僚諸君、昼が過ぎてまことに御迷惑ですが、能率を上げてやりたいと思いますから、ごしんぼう願います。
  66. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 私は、われわれの立場から見た中小企業基本法の問題、さらに中小企業基本対策について通産大臣、大蔵大臣にお伺いをいたしたい。また自治大臣にもお伺いをいたしたい。  通産大臣中小企業基本法に対しましては、先刻の御答弁では、よくいえば慎重なる態度をとっておられるようでありまするが、今や全国数百万の中小商工業者の要望は強いものであります。また党内においても強いものであります。次の四十国会においてこの基本法をお出しになる決意をしていただきたい。準備とおっしゃいまするが、これは私はいろいろな観点からし、またいろいろ資料があるはずであります。従ってお尋ねいたしますることは、通産大臣中小企業基本法を四十国会にお出しになるのかどうか、まず承りたいのであります。
  67. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 先ほど永井君にお答えいたしました通りに、ただいまのところは、次の通常国会に提出するという考えにまだ決心をしておりません。しかし与党のいろいろ御検討もおありのことだろうと思いますので、もちろん善処する考えでございます。なぜ私がさような慎重な態度をとっておるか、かように申しますと、これは私が指摘するまでもないところでございまするが、中小企業と一口には申しますが、この中小企業自体の一体どのくらいの規模を対象にするか、それすらもなかなかきまらない現状であります。またこれは、役所とか政府だけで考えるような筋のものでもございませんし、各界の協力も得なければならないものだ、かように実は考えておりますので、そういう意味で、慎重な態度を実はとっておる次第でございます。
  68. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 各界は中小企業基本法制定について全面的協力であります。今がチャンスなんです。これは通産大臣、この潮どきにお乗りにならなければいけない。これが政治的態度であると私は思うのです。しかし、といって粗雑なものをお出しになるとは申しません、これはわかる。そこで今おっしゃった規模の問題ですね。現在の中小企業関連法規と申しますか、現在の諸法規の中には、資本金一千万円ですか、あるいは従業員三百人、これはだれが見たって時代おくれだ。中小企業の発展というものは、通産省はいつも三十二年度のあの基本調査——なかなかよろしいです。私はあれをよく読んでおります。しかしあの時代と変わっちまった。三十二、三十三の時代じゃないのです。もう三十四、五で日本の中小企業というものは驚くべきと言ってもよろしい、その経営仕様というものは変化をしてきている。また増資にいたしましても、中小企業は相当の力を出してきている。また資本金を見ましてもそうであります。現在の一千万という線は時代おくれだ。現在の中小企業の発展にそぐわない。そこで私は一億円を最大とまずしてよろしいと思う。つまり現在の中小企業の範囲の上部限界を、あるいは五千万円説がありますが、私が実際調べてみたところでは、一億円というところはそう無理もないことだと思う。ここまでは私の私見でありますが、しからば通産大臣は現在の法律にあるところの資本金一千万円という限界はそれでよろしいとお考えでありますか。
  69. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 中村さんはよく御存じですから、私が御指摘するまでもなく、ただいままで中小企業として対象にしておるものが資本金一千万円、従業員にして三百人以下、サービス業、商業等は三十人以下、こういうことになっております。この建前で各種の立法がされておりますので、ただいま、それはもう時代おくれだ、かように言われますが、これを時代おくれだとすると、現行法律そのものもすでに実は変えていかなければならない。この中小企業の実態というもののむずかしさがここにも一つあると思います。こういう点があるいは五千万が適当だとか、ただいま一億というようなお話が出ておりますが、私は慎重に扱いたいと申しますのは、中小企業自体が、その産業の性質上いわゆる中小企業であるのか、ただ発展の過程上資本金その他が小さいのか、小規模であるのか、そういう問題をいかに扱うかという問題が一つあると思います。いわゆる中小企業といえば、必ず企業系列化されるものであるかのような言い方をされますが、そうでなくて、本来の産業の性質上大企業に踏み切らぬもの、こういうようなものもありますし、そこらのつかまえどころが非常にむずかしいのです。ことに生産関係するものもあるし、また三次産業として活動しておるものもある。またもう少し考えてみて、今の資本金を一億にした場合に、零細企業考えられるような小さなものはいかに扱うか、こういうことを考えて参りますと、非常に簡単に、中小企業と三百にいわれ、基本法はすべての要望だ、こういうことだけでは片づかないものがある。そういろ意味において十分調査を遂げ、そしてそれに対する将来のあり方をきめる、これを各界の意見をまとめていくことが必要じゃないか、かように思っております。
  70. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 私は中小企業のあり方、見方ははっきりしておる、わかっておると思う。社会党の方々のある人の意見を聞いてみますると、大、中小企業は越ゆるべからざる断層があるというのです。つまり、企業断層論です。これはイデオロギーになるかもしれませんが、私どもは自由経済立場でそう考えてはいかぬというのです。中小企業というものは、大企業と地続きであると私は言うております。ちと理論めきますが、産業のその中における規模の大小というものは、その産業の業態の中において比較して、大きいとか小さいとかいうものだ。たとえば森にたとえてみますると、大きな森には大きな木もありましょうが、その苗床は中小企業なのです。私は自由主義経済はこの見方がいいんじゃないかと思うのです。もとより自由放任を私どもは主張いたしません。個人の創意を発揮せしめる、それに対して国家が必要の場合には社会的経済的利益の上において調整するということはあり得まするが、私はそういう場合もあり得まするが、こういうふうに考えるのです。これはイデオロギー論なんです。よろしいのです。社会党のお出しになる社会党の案を見てみますると、大体において社会主義計画経済立場から書かれておる。そこで自由主義経済立場から中小企業基本法案を来たるべき国会に出して大いにわれわれは論議すればいいじゃないですか、これは大いに政治経済も発展するゆえんだと思う。この点だけは特にお考えを願っておきたい。そしてここならばチャンスだ、もうここへきたらいいと思いましたら、私は敢然として来たるべき国会に御提出を願いたい。  それから二、三の問題をお伺いいたしますが、私は卸、小売、商業を一つの組織として見ます。この場合問題になりますのは、あるいはスーパー・マーケット、あるいは百貨店、それと独立小売店と商店街なんです。この摩擦の問題が現に起こっておる。これは気をおつけにならぬと将来問題になると思う。現在調べてみますと、相当百貨店の新増設というものがある。理屈を言うようですけれども、現在の調整政策で建物、いわゆるビルなどは大いに延期しようと言われるが、十万平方メートルであるとか、あるいは二十万平方メートルの増設、新設を申請しておるようです。これをどういうふうにして統制せられるのか、またこの百貨店問題について資金、融資まで規制せられるのですか、そこまでいかれるのですか。これは現在目前の問題になっておる。私をして言わしむれば、現在の百貨店法というものは中小企業にとっては何らの恩典、といっては語弊がありますが、意味をなしておらぬ、むしろ中小企業を圧迫しておる。百貨店審議会の答申を見ましても、中小商工業を圧迫しておる形跡がある、また事実あるようであります。私はこの際独立小売店と商店街と百貨店との調整問題をどういうふうになさるか、お伺いいたしたいのであります。
  71. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    ○佐藤国務大臣 生産、卸、小売という一つの形態をお示しでございますが、この内容自身、いわゆる卸の部門というものにも今日非常に変化がきつつあること、これは私が指摘するまでもなく、御承知だろうと思います。商取引のあり方というものは、そういうように時代的な変遷があるものだと思います。従いまして、私は卸、小売、この系列というものがきっちりして今後も不変のものだときめてかかることは、非常に困難じゃないかという点、やや意見にわたりますが、そういう感じのしておることをまず一つ指摘しておきます。  次に、小売店、あるいは百貨店、あるいは商店街、こういうものの相互の競合競争的関係を御指摘になりました。一面、消費者立場というものを十分考えてみなければならない。消費者の利用度というものは、一体どういうことがよろしいか、ここにも一つの問題があるわけです。従って、現存する小売、あるいは百貨店、それだけの関係でなかなか律しかねるものがある。今日ただいま当面しております。いわゆる金融引き締め、あるいは設備抑制、こういう点から、まず一応緊急、臨機的な措置は別といたしまして、将来の問題として小売、それから百貨店、あるいは商店街、この三者が競争の立場にあるという観点だけに立ってその関係を律するわけにはいかない。同時にまた、消費者立場、それだけの立場からも律するわけにもいかない。ここにそれぞれの調整を必要とする、これはもう御指摘の通りであります。従いまして、百貨店の整備等につきましても、通産省の所管ではございますが、各界の意見を聞いて、そうしてその実情に応じた処置をとっておる。これはすでに御承知通りだと思います。今後の問題としては、御指摘の通り、調整の点に特に力をいたして、そうして今後指導なり、あるいは協力を求めていく、こういうことにならざるを得ないのではないか、かように考えております。
  72. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 百貨店は百貨店の機能があります。これは私も認めます。しかし、現在の日本の百貨店はもうある程度調整すべきではないか。そして、独立小売店と商店街の振興をはかっていく。商店街というものは地域経営体です。この地域経営体を法人化して、商店街振興法というふうなものの要求もあるようです。これはもっと検討しなければなりませんが、独立小売店とその集団であるところの商店街というものを、地域経営体をもっと伸ばされる必要があるのではないか、これは私の意見でありますが、よくお考えを願っておきたいのであります。通産大臣にはこの程度で終わっておきます。  大蔵大臣にお伺いいたします。中小商工業等の金融問題は先ほど社会党の永井君から御質問になりましたが、私は中小企業に対する財政投融資の投入額を思い切ってこの際借入金の許す範囲においてやるべきだ、なしくずしに五十億、百億では、——たとえば私どもの考えによれば三千億くらいの程度に広げていく、そういうくらいの思い切ったことを私どもは主張いたすのであります。同時に先ほど金融機関のいろいろな内容、中小企業向き貸し出し問題について数字をあげて御答弁になりました。大体これは私はその通りだと思うのでありますが、この際、全国銀行というものは、お話のように中小企業向き金融を相当やっておる。これは数字を見ると私は案外やっておると思うのです。この全国銀行が数字で見ると案外やっておる。中小企業向き融資を低利で長期化せしめる。もっともこれらの銀行は、いわゆる商業銀行です。商業銀行が中期間ないし長期の貸し出しをするということは、一面不可能であるという説もありますけれども、私はできると思います。たとえば一定のワクを設けて、地方開発のために地方銀行に対して大蔵省がそういう指導をなされる、最近ターム・ローンというようなことを言われてきた。長期ではありません。あるいは短期でもありません。大体三年ないし五年の期間によるターム・ローンということを言われている。これは私は非常にいいことだと思う。地方銀行が一定のワクを作って、そうしてこれに対して工業の設備とかその他に貸す。私は、このターム・ローンを行政指導をなさる必要があるのじゃないか。また消費者金融に対してどういうふうにお考えになっておるか、これは中小企業関係がございますから、この際御答弁をわずらわしたいと思います。
  73. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 いわゆるターム・ローンについて、今最もこの問題を熱心に研究しているのは地方銀行でございます。地方銀行は、当然その性質上、地方産業の育成ということをある程度任務とすべきものでございますが、最近の地方銀行は、そういう点から考えて、割賦返済の長期資金というものを地方銀行が率先して地方のために考えるべきじゃないかというような方向に来ておりますので、私どももその方向で、さしあたり地方銀行を中心にそういう行政指導をしたいと考えております。
  74. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 消費者金融について、これは中小企業、ことに商工業と関係あるのですが、また関係あるように消費者金融をやっていかなければいけない。ただ自動車だけではいかない。これがやはり独立小売店とか商店街の振興を期するゆえんなんです。これはどういうふうにお考えになっておりますか。
  75. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 いわゆる割賦販売による消費者金融というものは、現在のところではメーカーか、あるいは卸業者が自分の金融の範囲内でやっておるというのが実情でございますが、また銀行自身がいわゆる消費者金融ということを始めておる、これが一般化しているという段階ではございませんで、ごく一部にそういう問題を取り上げている銀行もございますが、まだ銀行自身が消費者金融をやるというような段階には今のところいっておりません。ただいまのような経済情勢のときでございますから、私どもも、この消費者金融というような方向を無理に今進めるというような態度はとっておりません。
  76. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 次に私は税金問題でお伺いいたします。これは中小企業を中心とした、中小企業から見た税金問題について念を押しておきます。大体いろいろの数字を見てみますると、所得税のほかに住民税、事業税、固定資産税を加え、月給取り階級と農家、それから中小商工業者を含む営業所得層に分けて、国民所得に対するこれら消費者別の直接税負担率を見てみますると、こうなるのです。結論を申し上げますと、所得税及び住民税は月給取り階級に重い。そうして農家が最も低い。固定資産税は農家に重く、次に商工業者、月給取りの順序となります。事業税は商工業者だけが負担しているのであります。これを総合してみますると、税金の重い順序は営業所得者、給与所得者、農民所得者の順となっておるのであります。これはいろいろ議論がありまするが、私の持っておる資料でいろいろ見たところはこうなる、あるいは今後多少変わるかもしれない。しかも私の指摘したいことは、商工業者だけが事業税というものを負担しておるということです。ここが問題なんです。もとより事業税は次第に基礎控除を引き上げられましたけれども、まだ事業主控除二十万円では私どもは足らないと思う。現在の法人事業税は、これは別といたします。現在の個人所得税は金額わずかに百五十億円なんです。思い切ってこの事業税を中小企業者のために撤廃する御意思があるか、これは大蔵大臣、自治大臣から私はお答えを願いたいと思う。
  77. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 事業税は、御承知のように地方の行政施策に対する応益課税というような性質のものでございますので、地方財政の面から見て、なかなか撤廃するということはむずかしい税金になっております。ですから、まあ基礎控除を上げるとか、白色申告の場合の専従者控除を認めるとか、いろいろ地方税を下げることには骨を折っておりますが、われわれの試算で見ますというと、かりに今の基礎控除二十万円を五十万円に上げたらどうなるか試算してみますというと、現在百九万人が事業税を負担しておる、その税額が百五十五億円ですが、かりに五十万円に基礎控除を引き上げた場合は、納税者は十七万人になって、納税額は二十五億円ということになりますと、九十二万人が納税しなくて済むことになりますから、地方財政の穴はこれによって百三十億円もあくということになりますので、地方財政にとってはこれは大きい問題でございますので、今応益課税であるという性質から事業税を撤廃するということは、これがまた地方財政の府県の一番中心の税金でございますので、税制全体をどう変えるかという考慮を伴わない限り、この事業税を撤廃するという方向は私は事実上できないのではないかと思います。
  78. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 私は中小企業立場から、多少無理なことを言っておるかもしれませんが、これはここまでいかなければ——地方財政はまた別の方途で別の財源、別の税源を求めてくる。私は個人事業税を申し上げておる。  それからもう一つ不合理な税金は、これはわずか十八億だと記憶いたしまするが、木材引取税、これは流通課税であって、しかも製材業者は中小企業である。また家内工業であります。もとよりこれは山林振興を目的としたためのようでありまするが、現在木材価格政策についてやかましく言われておるときに、この小さい製材業者に、わずかでありますけれども、流通課税をせしめるということは、時代に合わないのじゃないか。一つこれも撤廃なさる必要がある。どうです。自治大臣のお考えはいかがでございますか。
  79. 安井国務大臣(安井謙)

    ○安井国務大臣 先ほどの中小企業の事業税につきましては、大体大蔵大臣のお考えのように私も考えております。しかし中小企業対策という面から見ましても、減税という方面、税率の減小というものはできるだけ考慮はしていきたいものだ、こういうふうに考えております。  なお木材引取税につきましては、今お話し通り流通税でございまして、終局的には消費者の負担であろうと思いますが、これは木材価格、あるいは中小企業対策から、当然今日議論になるべき問題だと思っております。従いまして、私の方でも事務的な検討はいろいろ進めておりますが、税の性格といいますか、これまた応益税という性格も持っております。また税源そのものが地方的に非常に片寄って、これなくしては地方の税財源が半分以上なくなるといったような地域も相当ございます。そういうような点から、にわかにこれを減税あるいは撤廃するということは、なかなか困難な状況もございます。また一方で、立木課税をむしろ課してはどうかというような議論もございます。そういったような面は、今ちょうど税制調査会でいろいろ御検討もあるようでございますので、私どもその答申の結果を待って善処したいと思っておりますが、なかなか簡単にいかない問題だということだけ申し上げておきます。
  80. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 私はこの際所得税、すなわち直接税と間接税の問題を、中小企業者を中心としてお尋ねをいたしたい。  消費税というものは、収入の少ない者に負担税率は重いのです。収入の多い者に負担税率は軽いという現象を持っておるのです。事実をあげてみますると、ここに月収一万円の人がある。そうすると、この人はどれだけの間接税を納めるかというと、税額にして千二百五十七円納める。十万円の人は三千三百六十九円納める。金額においては十万円の人は一万円の人よりもよけい納めますけれども、負担税率が高い。一万円の人は一二・五七%の負担率だが、十万円の人は三・六七%しか率において負担がない。そこで当然、消費税の引き下げの政策を減税政策の一環としておとりにならなければならない。私の記憶に間違いないと思いますが、最近十年間所得税は七千五百億円に近い減税になっている。ところが間接税はわずかに四百六十億円の減税にしかなっておらない。消費税に重きを置くべしという考えは、これまた時代とともに変わってきた、消費税重課の思想は、大衆消費時代といいますか、この時代ではできるだけ消費税を軽くして、大衆をして購買せしめるようにしなければならない。また消費税を軽くすることは中小業者のためです。また物価政策にもよい影響を与えるのである。たとえば酒であるとか、たばこであるとか・入場税であるとか、電気ガス税であるとか、物品税、こういうものについて政府がある程度の整理をし、減税をせられたというと、心理的に私は物価政策に非常によい影響を与えると思う。また国民もよい感じを持つ。これはこの際私は政府はおやりにならなければいかぬ、またおやりになると思いますが、来年度の予算において消費税を中心とする減税をなさる意思があるかどうか、大蔵大臣より承りたいのでございます。
  81. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 御承知のように税制調査会で、私どもは税の体系的な、根本的なあり方を検討してもらって、それによって減税もやってきておるのでございますが、三十六年度は、御承知のように、とりあえず中小所得者中心の減税ということを中心とした答申を得て、政府もその線に沿った減税をやりましたが、昭和三十七年度においては、直接税と間接税のあり方についての検討を進める、そして間接税の減税についての調査をするという一応の順序になっております。従って今税制調査会も、この問題を議題として調査中でございますので、答申を得次第、私どもも来年度の減税としては、間接税の問題をどうするかということが、相当中心課題になった減税になるのじゃないかと思っておりますので、私どもその方向に解決したいと思っております。
  82. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 どうかその方向で進んでいただきたい。これは非常によい影響を与える。生活物価中小企業者に好ましい現象を与える。どうかこの辺御努力あらんことを希望いたします。  最後に、これはちょっと大きな問題かもしれませんが、現在租税特別措置法というのがある。この減税は地方において幾ら、国税において幾ら、減税というと語弊がありますから、私は減収という言葉を使います。それで租税特別措置法による減収額は地方税、国税を通じて幾らであるか。
  83. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 昭和三十六年度における租税特別措置による減収額は、平年度の予算ベースで申しますと、国税が千四百九十五億円、地方税が四百三十四億円、こういう数字になっております。
  84. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 合わせて大体二千億円ですね。そうすると一億円以上の会社がこの適用を受けて、三八%の法人税が、あるいは三〇%になり二〇%になり、恩典に浴しておるのは一八%くらいあるのじゃないかと判断されるのですが、大体どういうふうにこの実効税率を見ておられますか。
  85. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 詳しいことは当局から説明させますが、大体三〇%というふうに考えております。
  86. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 ものによっては二〇%もあるだろうと思いますが、三〇%なら三〇%でいいですが、ともかくこれだけ実効税率は八%恩典に浴しておる。そこで私はこれに対してきょうは議論しませんが、中小企業と申しましても、中小法人と申しましょう。中小法人は、この租税特別措置でどれだけの恩典に浴しておるか。私の聞きたいのはここなんです。大体が大法人でございましょう。中小法人をこの租税特別措置法によって、どれだけ恩恵というとちょっと古い言葉ですが、適用と申しましょう、適用されておるのか。
  87. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 租税特別措置は、これはひとり大企業にだけ及ぶものではございませんで、中小企業にも適用されている問題でございます。最近は、特に中小企業に対する減価償却も、大企業よりは有利な税制を作って、今年度においていろいろそういう整備をいたして、国会で御承認願ったことは御承知通りであります。今の実効税率というようなものから見ますと、大企業は三〇%と申しましたが、われわれの計算では、中小企業の方が少し高い、一三%前後という数字が出ているのが現状でございます。
  88. 中村(三)委員(中村三之丞)

    中村(三)委員 大体それでわかりました。  そこで一つ大蔵大臣にお考えを願いたい。全部とはいわないが、価格変動準備金、貸し倒れ準備金、退職給与引当金を中心として、これが中小法人にも適用されるよう工夫をしていただきたい。またそれを中小企業租税特別措置と私は名づくるのです。私も今研究しておりますが、一つ考えていただきたい。こういうふうに、大法人だけはそういう恩典に浴するが、中小法人は恩典に浴さない、この不公平な観念が非常に悪い影響国民思想に与える。私はこれを申し上げる。これを一つ御研究願っておきたい。  もう一つお伺いいたしておきたいことは、中小企業資金を得られる範囲が非常に狭い。しかし中小企業も、私が先ほど申し上げましたように、五千万の資本、一億の資本に発展してきた。これは何もわざと上げるのではない。自然発展です。そうしてきますと、何か通産省は投資育成会社法案というものをお出しになるというのですが、あれはイギリスの商工金融や、アメリカ中小企業に対する投資会社をモデルにしたものであると思いますが、日本の中小法人が五千万、一億の資本金を持つように発展した場合は、第二証券市場と直結させるのです。中小企業が証券市場と直結しない点が非常な欠点なんです。たとえば中小法人は社債市場に参加ができない。弱いから、あるいは資本金が足らぬからであります。こういうふうに第二市場に直結させるという工夫を一つ考えていく方法はないか、こういうことも私は大きな中小企業対策であると思う。なぜならば、中小企業が発展してきた、生成してきた、こういうふうに私は思う。なおこの中小企業問題については零細企業の問題、ことになりわい的な、生業的な零細企業の問題は重大でございますが、きょうはこの点には触れません。これはどうしてもわれわれとして見忘れてはならない。そこで私は通産大臣中小企業基本法を来たるべき国会に提出せられたいということを強く要望しました。それはどうしたって金融問題、投資問題あるいは税金問題と関係いたすのでございますから、大蔵大臣におかれては、この中小企業基本法に織り込むべきこれらの問題について御検討、御決定を願いたいというのが私の要望であります。  これで私の質問は終わります。
  89. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後二時十二分開議
  90. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算補正二案に対する質疑を続行行いたします。木原津與志君
  91. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 私は日本の当面する外交問題について、時間の制約がございますので、特にこれを日韓交渉にしぼって外務大臣に質疑をいたしたいと思いますが、その外務大臣に質疑する前に、この交渉に関連する問題がありますので、これを防衛庁長官にまず先にただしておきたいことがあるのです。と申しますのは、先月の九月十五日、防衛庁長官は韓国日報の鄭泰演という記者と会談されております。その会談の内容が韓国日報その他朝鮮の新聞に掲載されるや、その問題で北鮮側を非常に刺激をしておるということを聞きましたので、私はどういう記事であるか、韓国日報を取り寄せまして、その長官の談話の記事を訳文をつけて読んで見た。ところがその北鮮側を刺激したという内容は大体こういうような点にあるようです。「藤枝日本防衛庁長官は、十五日韓国と日本が自由世界の防衛のために緊密に協調しなければならない。藤枝氏はこの日、本社記者との単独会見で、日本外務省が韓国政府の自衛隊幹部に対する訪韓招請を拒絶したことに対して遺憾の意を表明しながら、次のように言明した。韓国軍事施設を見るために防衛庁は韓国の招請に応じようとした。ところが外務省が拒絶したのであるが、これは非常に遺憾だ。拒絶した理由は、防衛庁幹部たちが韓国を訪問したら、左翼分子たちがちょうど国会開会中で政府を窮地に追い込むおそれがあるから、時期が悪い。日韓会談が再開されない今、日本軍人たちが韓国を訪問するということは時期尚早であるということが外務省の見解であるようだ。韓国軍事指導者たちのそのような親切な招請に対し深甚なる謝意を表する。私は近い将来韓国を訪問することを希望する。」こういうような趣旨の談話記事なんです。ところがさらにまた私は十一月の「世界」を見た。その「世界」の中に、あなたのこの談話を敷衍してこういうようなことが書いてある。私が読み上げた最後の点だけ申し上げますが、「近い将来に韓国に自衛隊幹部を派遣し、かつ長期的に駐留することを私は希望する。」こういうことが「世界」の「日本の潮」の中にあなたの談話として載っておる。そこで私は、この最後の点の「韓国に自衛隊幹部を派遣し、かつ長期的に駐留することを私は希望する」という文句は正確かということを「世界」の編集局に電話で照会をした。ところが「世界」の編集局では、これは韓国日報による資料じゃないんだ、新華社の、東亜日報の資料によって記載したものだ、こういう御返事でした。いずれにいたしましても、このあなたの談話が韓国新聞に掲載されるや、北鮮側に非常なセンセーションを起こしておるということを私は聞いておる。ちょうどあなたも御承知のように、北鮮とソビエトの間にことしの七月八日朝ソ同盟条約が結ばれたいきさつについて私は知っておるのでございますが、そういうような点からあなたの談話が非常に刺激を与えたものだと思うのでございます。まず質疑をいたします前に、その韓国日報に記載された談話の内容を、あなたは新聞記者にお話しになったことを肯定されるかどうか、その点をまずお伺いしたい。
  92. 藤枝国務大臣(藤枝泉介)

    ○藤枝国務大臣 正確を期するためにちょっと経過を申し上げたいと思うのでございます。韓国側から外務省を通じて、十月一月の建軍記念日に自衛隊の首脳部を招待したいという招請がございました。これに関しまして、この日韓関係の非常に微妙なときでございますし、ことにそういう正式の記念日に参列するというようなことはいかがかと思いまして、十分に外務省と打ち合わせをいたしました結果、両国間の国交が正常化されていない今日、そういうところに参列することは適当でないという意味で、外務省を通じて返事をしていただいたわけでございます。それに関連いたしまして、韓国日報の記者に、いかなることで自衛隊幹部の韓国への招請を断わったのかという事情を聞かれましたので、その間の事情を、ただいま外務省と打ち合わせて返事をいたしたようないきさつを、韓国日報の記者に返事をしたわけでございます。従いまして、外務省が返事をなさる前に、外務大臣と私も十分お打ち合わせをいたしましたし、事務的にも打ち合わせをいたしておるのでございますから、外務省が断わったことが私には意外だというようなことは言っておりませんし、さらに国交正常化された上で韓国の事情を視察するということは希望をいたしておるということだけでございまして、常時駐留するとか、そういったことを言った覚えはございません。韓国日報にそういう記事が出たということを外務省を通じて承知をいたしたのでありますから、その間の事情はさらに外務省にお話をしてあります。
  93. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 全面的にこの記事を否定されておるようでございますが、しからばこのあなたの談話の中で、この点はどうですか。「韓国と日本が自由世界の防衛のために緊密に協調しなければならない」こういう記載がありますが、この点はどうです。
  94. 藤枝国務大臣(藤枝泉介)

    ○藤枝国務大臣 韓国と日本とが国交が正常化されて、提携ができるようなことになることが望ましいということは申しましたが、そういうただいまお読み上げになりましたような言葉は使っておりません。
  95. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 この記事を読んで私も実は驚いたのですが、韓国と日本は自由世界の防衛のために緊密に協調しなければならないということは、言うまでもなく日本の自衛隊は他国の防衛のために働くという機能はないはずだということについてこれは防衛庁の長官のお考えあとで聞きたいと思いますけれども、こういうようなことを言われたということになれば、事はまことに重大であります。私が寡聞であるか知りませんが、歴代の防衛庁の長官の中で、あるいはその他の責任ある大臣の中で、自由世界の一員として協力するというようなことはしばしば発言がある。発言はあるが、自由世界の防衛のために、他国の防衛のために、その国と協力をするというようなことを言われた大臣があったということを私は知らないのです。そこでこの点、もしあなたがこれを言われたということになれば、私はこの点についてあなたの憲法観なりあるいは防衛庁の長官として自衛隊を指導していかれる立場についての責任をここで徹底的に質疑して、疑問をただしたいと思ったのでございます。ただいまの答弁によればそういうようなことは言った覚えはないということでございますので、それならばこういうような記事が、特に今、南北の非常な対立の中で、第二のベルリンは三十八度線にあるというようなことが、これはもう国際常識としてみんなそれを心配しておるのですが、こういう中で、あたかも日本が韓国と一緒になって、そうし七韓国を守るために協調するのだというようなことを軍の長官が言われるとかあるいはこの東亜日報にあるように、韓国に自衛隊幹部を派遣して、かつ長期的にこれを駐留するというようなことを希望するというととは、国際的に非常に大きな影響を与えるものと私は思うのです。あなたも御承知のように、現在ソ・朝の同盟条約ができてから以後の日本並びにアメリカのいろいろな軍人たちが韓国に行く度合いというものが非常にひんぱんになった。こういうようなことも国際緊張の一つの原因になっておる。この中であなたがこういう発言をしたということで、よほど大きな刺激をここに加えられたと思うものでございますから、もしあなたが今この予算委員会国会でおっしゃったように、そういうことを言った覚えはないのだということをおっしゃるならば、これはどうか一つ何らかの方法によって韓国日報あるいは東亜日報のこの記事は何とか取り消しの方法を講じてもらいたいということをあなたに要望いたしますが、その点いかがですか。
  96. 藤枝国務大臣(藤枝泉介)

    ○藤枝国務大臣 私の真意が誤り伝えられておりますので、適当な方法を講じたいと考えております。
  97. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 そこで私は順次当面の日韓問題について外務大臣お尋ねをいたしますが、新聞紙の報道するところによると、今月の十日から日韓会談が再開されるというととがしばしば報道されておる。ところが、この会談を開くについての首席代表を政府では関西財界の大物とかいわれておる杉道助氏にしたということが韓国の腹に据えかねたのかどうか、その点は知りませんが、十日からの日韓会談を延期するという申し入れがあったということでございますが、その件についてのいきさつを外務大臣から御説明願いたいと思います。
  98. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 八月の末に韓国側から日韓会談を再開したいという申し入れがございましたので、わが方はこれに応ずるという回答をいたしまして、十月十日を目途として準備をしようということにいたしておりました。このほど首席の全権といたしまして杉道助氏を内定しまして、韓国側にその旨を通報いたしてございます。韓国側からしばらく待ってもらいたいという話がございましたが、その理由については、先方側の事情と心得ますが、そういうことでございますから、わが方は杉氏を決定いたしまして、先方がまたどう言ってこられるか待っておる、こういう関係でございます。
  99. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 いろいろとこれは憶測が伝わっておることでございますので、私もしかと断定いたしかねるのでございますが、世間の新聞紙等の報道によりますると、首席代表について韓国は副総理格である許政という人を首席代表にした。それにもかかわらず、日本が、小者といっては失礼な言い方だと思いますが、一応杉道助という人では、首席全権として交渉するにはこま過ぎる。そこで日本に誠意がないということで、主として代表の選任問題について韓国が再開を渋っておるということが巷間新聞紙上等にやかましく報道されております。その点についての外務省の見解はいかがでしょう。
  100. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 杉道助氏については、これは財界の非常な大物であるということは、われわれもそう思っておりますし、世間でもさように見ております。そこでわが方としては、この人が、人柄からいっても、経歴からいっても適当であると思ってきめたわけであります。先方の事情はどうも私どもはよくわからない、先方がどういうことかといって、こちらにおりまする李さんという代表部の長に聞いておるのでありますが、どうもその李さんもよくわからない、こういうことでございます。
  101. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 そういたしますと、首席代表の件については、わが国としては杉道助氏を首席代表に決定し、相手方の韓国の方でそれを不服として会談に応じないというような態度をとってくる場合においては、外務省として、この人選についてまた再考をされるというようなことがあり得ますかどうか、その点についてお尋ねしたい。
  102. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 杉さんの人柄や経歴その他について、漸次わかられると思うのであります。ただ今申し上げたように、延期の理由が何であるかということが実はわからないのであります。人柄の点についての何か誤解であれば、この誤解はよくその人柄を調べられるに従って理解される。この問題がもし延期の理由であれば、これは氷解されるのではないか。かように期待しているわけであります。
  103. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 両国間の外交交渉において、一方の国が交渉相手である他国の首席代表について注文をつけたり、あるいはこれを気に食わぬからというようなことでその人選の更迭を迫るとか、あるいは会談の再開を渋るというようなことは重大な内政の干渉であると私どもは考えますが、外務大臣の所見はいかがでしょう。
  104. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 まだこの点については、杉さんは気に食わぬとか、そういうようなことは実は言ってきてないわけでございますので、どうも私どもはそこを越えて、そういう仮定を作って、それについて論評を加えることはいかがかと思います。今お話しのように、相手国の代表が気に食わぬからどうということは、これは外交上きわめて異例のことになろうかと思います。しかし、現実にそういうことであるということになっておりませんので、何とも申し上げられません。
  105. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 そうすると、一応杉道助氏を首席代表と決定した政府の意思は、会談の延期いかんにかかわらず、変わることはない。あくまでも杉首席でこの会談をやっていくという政府方針には、相手方のいかんにかかわらず、変わりはないということでございますか。その点もう一回確認いたしておきたいと思います。
  106. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、今杉さんではいかぬという事情は何も出てきておりませんので、いかぬと言ってきた場合どうかということは、仮定に属することでございますが、政府といたしましては、杉道助さんに全権をやっていただく、こういう方針に変わりございません。
  107. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それを聞きたいんです。もしいかぬと言うてきた場合においては、政府はどうするか。どういう方針で日韓会談に臨むかということをお聞きしているんです。あくまでも、相手方の意思のいかんにかかわらず、わが方としては杉氏を決定した以上、首席全権として交渉するんだ、そのあなた方の気がまえを実は聞きたいんです。
  108. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 今申し上げたように、杉さんで交渉していただく、こういうふうに考えております。ただ私どもとしては、何度も申し上げるようですが、どうもいかぬと言ってきた場合はどうかということですが、おそらく言ってこないのじゃないか、かように思います。
  109. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 そこで交渉の相手方である韓国の政権でございますが、今まで政府が相手にしてきておった韓国の政権というのは、これはあなた方がしばしばこの国会で答弁されたように、今の韓国政権は、国連の第三回総会の決議によって、朝鮮において国連監視下における自由選挙で成立した合法政権だ、だから、われわれは北鮮とはこの懸案についての交渉はやらないが、南鮮とやる法的根拠はそこにあるんだ、国連の決議に基づく合法政権であるということを答弁してこられたように私は承知しておる。ところがこの十月、今月十日から再開されようとしておる韓国の朴政権は、あなた方もよく御承知のように、この政権の成立については、国連軍司令官に反逆して、国連軍司令官の意思に反して、クーデターによって成立した政権なんです。この点については、外務大臣にもこの政権の性格について異議はなかろうかと思う。そうすれば、今まであなた方が、合法政権だから、合法政権と交渉するんだから、差しつかえないじゃないか、そういう法的根拠に立って国際連合の決議によって交渉をやるんだといわれる。私どもは、今この日韓会談をやっても、将来南北の統一ができたときに工合の悪い事態に至るから、今あわてて交渉を妥結さすべきじゃないということを従来主張して参ったのでございますが、その点についてあなた方は耳をかさない。その耳をかさない理由は、主として国連の決議をたてとして耳をかさなかったと私は了解する。ところが今度あなた方が会談を再開されようというこの朴政権は、国連が一番きらっておる、そういう政権のあり方、成立のあり方を一番否定しておる、国連の決議に反するクーデターによってできた政権、こういう政権をあなた方の方で認めて、会談を再開させ、できればこれを妥結の線まで持っていこうとなさるお考えについて、従来のあなた方の見解といささか食い違いがあるようでありますから、この点をまずお聞きしておきたい。
  110. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 お話通りでございまして、私どもは一九四八年の国連の決議、これによって韓国との間に交渉をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。御承知のように、このクーデターが起きまして、その後現在の政権は民心の安定をある程度まとめ上げ、従来の不正、腐敗というものを一掃する、こういうことで着々その基礎を固めて参りました。二年後に文民政権に移行するということを申しております。なお、政策としましては、国連中心主義、あるいは日韓友好関係を確立するというようなことを言っておりまして、前の内閣とはその政策方針について変わりはないわけでございます。しかも、われわれとして考えますると、最も近い韓国との間に漁業その他いろいろ経済問題をたくさんに控えておるわけであります。二年後に文民政権になるというわけでありますが、二年間それじゃそれまでほうっておくかということになりますと、やはりその間今申し上げたような漁業を初め、いろいろな問題があるわけでございます。これと交渉して妥結に至れるものなら至りたい、こう考えるのは当然なことだと思います。
  111. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 外務大臣がいろいろな懸案を早急に解決するということについては、私も異議はありません。異議はありませんが、それでは、あなた方の従来主張してこられた態度とちょっと違うと思うのです。何度も繰り返すようですが、とにかく合法政権だから、これとやるのだということを従来主張してきた。それが合法政権でなくなった。クーデターという国連軍の意思に反逆をしてでき上がったこの政権を合法政権として、さらに再開をして妥結をするということになれば、これは従来のあなた方の見解を一応変更しなければできない相談だと思う。そこで、再開するにあたっては、従来のあなた方の見解をここであらためて翻して、そうして朴政権も国連でいう合法の政権だと認めて会談を進められるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  112. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 国連軍の意思に反して現在の政権があるということでありますが、現在朝鮮に国連軍はおるのでございまして、その間に連絡を現在の政府ととっておると心得ております。そこで先ほど申し上げたように、二年後に文民政権は引き継がれる、こういうことでございます。おそらく引き継がれる文民政権は、常識的に、現在の政権の掲げる政策、政綱というものを受け継いだ形において、民意を通して選挙されて最後に確定されるものと心得ますので、われわれの見解については少しも変わる必要はない、こう思っておるわけであります。なお、御承知のように、大統領も、ユン・ポソン氏は同じでありますことを念のために申し上げます。
  113. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それは外務大臣、おかしいですよ。二年後には選挙をやってそうして文民政権ができる、ほんとうに韓国の国民の意思を代表した政府ができるのだ、だから差しつかえないじゃないか、こういうような御議論のようですが、それはちょっと違う。現在いまだクーデター政権で、これは軍の政権なんです。国際連合の考えたこととは全然違う方向なんです。その違う方向が二年後には文民の政権を作るということを約束しているから、これと結んでも差しつかえない、こう言われるのでございますが、それならば何も今このクーデター政権を相手にしないで、やがて二年後にできるであろう——できるかできぬかわかりませんが、できるであろうこの政権と合法的に交渉されるということが私は正しい政府の態度じゃないかと思います。これが今までのあなた方が主張してこられた主張とも一貫する態度だと思いますが、どうです。
  114. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 現在の政権がクーデターによって成立したということは、これはその通りであります。しかし、この政権が同時に、二年後においては自由なる選挙のもとに行なわれる民意の代表を政府の機関といたしまして、そこに文民政権を作るということを公約していることも事実でございます。すなわち現在それに至る段階である、韓国において真の民主主義政府が樹立されるための生みの悩みの段階として、過渡的な形においてこの政権があるということであります。従って、この政権において行なわれました諸種の政策、あるいは外交の成果というようなものは、当然その次の文民政権に引き継がれるべきものでございます。従って現在、先ほどまで申し上げたような理由で、二年間それでは日韓関係をほうっておいていいかといえば、そうはいかないのでございますから、当然引き継がれるものであれば現在の政権と交渉をする、こういうことはきわめて適当なことと考えております。
  115. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 くどいようですが、二年後に自由選挙をやって、そうして文民政権ができるかどうかということは、これはあなた方がいつも使われる仮定の話であります。できるかできぬかわからぬ話でしょう。もしできなかったらどうしますか。できるかできぬかわからないものを一応できるものと仮定して、そうしてこの軍事政権と協定を結んでも一向差しつかえはないとおっしゃいますが、もし二年後にこの文民政権ができ上がらなかった場合は、あなた、これに対してどう答弁しますか。できるかできぬかわからぬものを仮定して、国際間の協定を、そこに新しくできるであろうものを合法として、そうして現在の朴政権はクーデター政権ではあるが、引き継がれるからこれをやろうということは、いささか筋が合いません。もう一回その点について……。
  116. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 仮定ではございません。これは、かりに現在の政府が何も言っていないものを、われわれの方から二年後には文民政権ができるであろうからこれと交渉するといったら——これは仮定でございます。しかしながら、現在の政府ははっきりと、二年後に文民政権ができて、そして今行なわれておる政策は、基本的なものは、外交というような他国との約束したものについては、これに引き継がれるということを公約しておるのでありますから、これは仮定ではないと思います。
  117. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それは外務大臣、少し強弁じゃございませんか。日本だけでそういうことを想像してやる場合においては、これは仮定だとおっしゃいますが、そんなものは仮定の中に入りませんよ。仮定という言葉と違いますよ。そんなものは想像ですよ。推測です。推測であって、仮定じゃありません。仮定というのは、相手方が二年後においでは文民政権にするのだということを公約しているから、それは仮定じゃありませんか。公約しているから仮定で、そういうことを、文民政権にするのだといっても、はたしてそれがなるかならぬかは、これはわからない。こういうネコの目のように転々とする国際情勢の中で、特に一つの朝鮮という国が二つの民族に分かれて、しかも主義主張を異にして、国作りの性格というものを異にして、三十八度線で国連軍が出動し、そして相手はこれに対抗するためにソ朝の軍事条約を結んで対峙しているときに、二年先のことを約束したって、それは仮定でないということは言えますまい。それこそほんとうの仮定なんです。その仮定をあなたの方は仮定でないとして、これは相手方が公約しているからその点について合法性を認めるのだという論理は、これはちょっとあなたの詭弁だと思う。それじゃ通りませんよ。いま一回……。
  118. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 私は、強弁するというのは非常にきらいでございまして、きわめて良心的にものを言う方でございます。そこで、先ほどの私の話を引用して、お前は同じようなことを逆なことを言うというお話でございますが、さっきは杉さんについて、向こうが不服を言ってきたらどうするかという、これはまさに仮定です。あなたの論理を用いれば、これは推測かもしれません。その意味においては同じことになる。しかし今私が申し上げておるのは、先方が公約をして、さようなことを現在の政権としてはっきりと日程を定めて、これを天下に公知せしめておる。そういう事実に基づいてわれわれの方はこれと交渉する、こういうことでございまして、想像でも仮定でもないわけであります。
  119. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 これは見解の相違かもしれませんが、とにかくめまぐるしく韓国自体がクーデター、クーデターによって——しかも朴政権というのはこの前の政権を推進した人だ。その人がさらにクーデターを断行して、張勉内閣をクーデターで倒した人をさらに倒して現在の政権に至っておる。そうすれば、その間わずかな年月の間にネコの目のように変わっておる。今後二年間に韓国に革命が、こういうクーデターが起こらないという保障はだれもせられないと思う。これはあなただってせられない。できるということは言えない。現に先般自民党の人たちが韓国においでになって、そして帰ってこられて、韓国の治安は非常によかったと報告された翌々日、韓国のクーデターが起こっておる。こういうようなことをいろいろ考えてみますと、二年先のことは仮定ではないのだ、確実だということは私は言えないと思う。こういうような危険な状態の中で、今まであなた方はせっかくいいことを言ってこられた。第三回の国連総会で、朝鮮におけるこの種の唯一の合法政権だという決議がある。これを金科玉条のようにして日韓会談を再開する、やるのだ。われわれがそれに反対すれば、お前たちは国連の決議をどうするかといって私どもに強く反発してこられた外務大臣が、国連の意思に反逆して、クーデターによってできた政権を、今度は手のひらを返すがごとく、これは合法政権だ、やがて二年後には民政に移管するということを約束しておるから合法政権だ、こういう断定のもとに一切の外交交渉をやられるということは、あまりに無定見であり、あまりに豹変もひどいと私は思う。この点について、あなたの方でもこの会談を再開するについて、幸いに十月十日のやつが若干伸びるようでございますから、十分外務省においても検討していただきたいと思うのであります。この点について仮定だとか仮定でないとか言うてみても、言葉の問題になりますから、次に進みます。  そこで、そうなると、もしあなた方がこういう国連憲章で認めない、いわゆる国連の決議の趣旨に沿わないクーデター政権を合法政権だと認めて対韓交渉を続行していくということになれば、当然そういう論理からして、これは同じ性質の問題でございますから、いわゆる朝鮮人民共和国との間にも、こういう懸案の問題について、請求権の問題あるいは朝鮮人の法的地位の問題あるいは国境の問題、こういうようなものについて同時解決をしなければならぬ性質のものでございますから、あなた方がこの軍事政権を合法政権として交渉をされるということが理論上了解されるということになれば、必然的に北朝鮮とのこの請求権その他の問題について会談をされなければならないという論理の筋道になりますが、その点いかがですか。
  120. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 三十八度から北にかけて現実にその地区についての政権があるということは、これは私もそうだと思っております。ただ国連では、御承知のようにこれはオーソリティといっており、いわゆる政府と認めていない。これは国連決議の尊重も何も言っていないわけです。一方韓国の方については、御承知通り私が先ほど来申し上げた通り、二年後には文民政権になるという約束をして、暫定的に韓国の現在の経済的な混乱とか、あるいは社会的な秩序の維持というようなことを引き受けている、こういうものでございまして、これはちょっと性質が違うわけであります。
  121. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 決して性質は違いませんよ。国連でも、何も北朝鮮の人民共和国を非合法政権だとは言っておらぬ。言った文句は一つもない。ノース・コーリア・オーソリティといっているでしょう。政権の存在は認めておる。しかし、国連の立場からすれば、こういう政権は民主的に成立した政権ではないということをいっているだけの話です。ところが、そういう論理を貫いていけば、今の韓国の政権は、今日現在——あなたは二年先のことばかりおっしゃるから、将来のことはあとにおきますよ。今日現在の韓国の成立なり、あるいはその構成なり性格なり、これは国連の決議による合法政権とはいえないのであります。そうすれば・いえないものと交渉するのだったら、あなたの方で国連を尊重するというのだから、国連が規定しないものを相手にして、これとの交渉をやるというならば、当然同じ性質の問題でございますから、他日北鮮との請求権の問題あるいは法的地位の問題、こういう問題についてはどうせ北鮮とやらなければいけない。ただ北鮮とやるか、あるいは朝鮮の統一政権と行なうか、それがわからぬだけの話で、いずれにしても統一政権ができないという暁においては、北鮮との間にもこれは行なわなければならない、懸案として解決しなければならぬ問題なんです。そうすれば、この際あなた方が軍事政権と日韓会談によってこの懸案を解決されるということになれば、もはや北鮮となぜやらないかということについての議論の立て道はないと私は考える。だから私どもは、当然朴政権を日本政府が相手として国境問題あるいは請求権の問題等について交渉をするならば、北鮮政府とこの機会に同時並行というか、こういう形で同じ問題について交渉を再開されなければならぬという考え方に論理上も事実上も到着するのでございますが、あなた方はそういう考えをお持ちじゃないのですか。
  122. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 そういう考えは持っておりません。北鮮の方は、御承知のように国連による干渉排除ということを言っているわけです。われわれは国連中心主義。韓国の方の政権は、国連憲章の尊重ということを言っております。従って、国連憲章を尊重する国との間に交渉をするということは考えております。国連憲章を否定する国との間には、まだ交渉を持つことは早いというふうに考えております。しかし、先ほど申し上げたように、北の方にそういう事実上の政権があるということは事実でございますから、その事実を頭に入れて、請求権問題その他の問題を論議するということになろうかと思うのでありまするが、これを具体的に言うことは、会談を間近に控えている際ですから差し控えたいと思います。いずれにしても、現在韓国政権の及ばない地区があるということは、これは頭に入れて考えるべきことであります。
  123. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 きょうは外務大臣はどうかしておられるのじゃないかと思うのですが、今懸案になっている国境の問題あるいは請求権の問題、法的地位の問題、こういう問題は、何も国連憲章を尊重するとか、尊重せぬとかいうような問題じゃありません。これはサンフランシスコ条約によって、われわれが朝鮮の独立を認めたのです。独立を認めれば、当然その分離独立していった国との間に、財産権をどうするか、あるいは今まで日本人だったが今度は朝鮮人になった、これの日本における取り扱いをどうするか、あるいは新しく分離独立した国との国境をどこに置くかということは、独立を承認した以上、当然それに伴うて必然的に決定せられなければならぬ問題なんです。だから、あなた方は今それをやろうとしているのじゃないですか。私どもは、そういう問題だから、これは全朝鮮を相手にしなければ確定できないのだ、韓国だけで確定できる問題じゃないじゃないかということを、私は前回もあなたに質疑をしたのです。決して国連憲章を認める国とそういう交渉をするとか、認めないからお前とはやらないとかいう問題じゃない。問題は、サンフランシスコ条約をわれわれが承認したときに、すでに両国の間に分離独立した——今まで日本だったのが、韓国あるいは北朝鮮という国に独立した。その独立した問題について、財産やあるいは国境その他を整備しなければならぬという、これは独立に伴う必然的な問題の処理でありまして、決して国連憲章を認めるからやる、やらぬというような問題じゃないのであります。この点について、外務大臣の大きな誤解があるようですから重ねてただします。
  124. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 御承知のように、サンフランシスコ条約第二条には、朝鮮の独立が承認されております。しこうして、その朝鮮における唯一の合法政府は韓国である、こういう立場に立って各国が韓国との間に外交関係を結んでおるわけです。従って、日本も韓国との間に外交関係を結ぶ、こういうことを考えております。北鮮との間に外交関係のある国は、共産圏のうちのきわめてわずかの国である、こういうことになっておるわけであります。
  125. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それは私に対する答弁じゃないのです。サンフランシスコ条約によって朝鮮が独立した。その独立を日本が承認した。独立の承認をすれば、当然この新しく独立した国ともとの国、本国、日本、この日本と朝鮮との間に、財産の帰属の問題、請求権の帰属の問題というものを解決しなければならぬ。これが独立に伴う第一の要件。第二には、法的地位をどうするかというような問題、国境をどこに置くかというような問題、こういう点について当然話し合いをしてきめなければならないのですよ。これは独立を承認した国と新しく独立したものとの間に、好もうと好まざるとにかかわらず、これが共産圏であろうと自由世界であろうと、確定しなければならない問題なんです。それを、韓国だけが自由世界で北鮮は共産世界だから、この人たちとは国境の画定も、法的地位も、財産請求権の問題も一切交渉をしないというようなべらぼうな論理は、これは国際法上も、国際通念上も、そういう解釈をとるべきじゃないのです。そういったような考えに立っておられるから、あなた方は朴政権というようなのと、こそこそっとやみ取引をやりかねないようなことになる。問題は、そういう一地域の政権と解決をして事足りる問題じゃない。これは独立に伴う必然的な懸案なんです。考え違いをしてもらっては困る。もう一回。
  126. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 交渉を持ちます場合に、日本が、その相手国において承認すべき政府がないということでありますならば、その政府と交渉するわけにはいかない。韓国においては、これは国連の決議によって、国連憲章を尊重し、そこに作られた政府があったのでありますから、それと従来交渉していた。今度できました政府も、国連憲章を尊重し、二年後には文民政権に移行する、こういうことを言っておりますので、それと交渉する、こういうことであります。  なお、私特に申し上げたいと思いますのは、やはり外交関係の問題というものは、単に理論もけっこうかもしれませんけれども、やはり日本の外交をどういうふうに持っていくかということに基づいて考えらるべきものである、こう思っております。
  127. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 後段の、あなたの日本外交をどう持っていくかという点についての見解が違うということについては、私もあなたの意思を認めます。認めますが、今の懸案になっておる問題は、そういったような国交を樹立するとか、あるいは通商条約を結ぶとか、そういうような問題と、問題の本質が違う。これは、独立したということの事実に基づいて、いやしくも独立を承認したならば、その国は、新しく独立していった国が気に食おうと食うまいと、これが自由世界に入ろうと共産世界に入ろうと、一応とにかく、国交樹立はしなくても、請求権の問題、あるいは国境の問題、法的地位の問題については、話し合いをして取りきめをしなければならないことになっておる本質的の問題です。国連憲章を認めたから、認めぬからというような問題とは、これは問題が違う。自由な貿易をするとか、せぬとかいうような問題とはいささか違う。通商条約を結ぶについて、北鮮は共産圏だから・韓国は自由世界だから、これと通商航海条約を結ぼう、北鮮とは結ばぬ、こういうような自由は、これはその政府の基本的な外交方針によってきめてよろしい問題だ。きめてよろしい問題だが、今懸案になっておる、あなた方がこれから交渉されようとしておるこの問題は、国のあり方その他によって左右することはできない。サンフランシスコ条約において朝鮮の独立を認めた以上、これは早急に確定しなければならない問題です。この懸案について、特に韓国との間には請求権という問題が折り合いがつかないから、今日まで十年間そのままになっておるのでございますが、これは変則なんです。韓国とその話し合いができれば、やがて北鮮とも同じ問題について話し合いをしなければならない。あなた方が、それは国連憲章を認めぬから話し合いをせぬのだ、するのだというようなことは許されない。これは当然やるべき問題なんです。そういう問題であるから、なぜ韓国とだけやるのかと言ったところ、あなたは、韓国は国際連合の総会において認められた合法的な政権であるからこれとまずやるのだ、北鮮とは別だと言っておられる。われわれも一応それを聞いて今日まで来た。ところが肝心の相手方である韓国が、国際連合の決議とは全く性格の違った、国際連合が一番きらっている形の政権ができたのに対して、これをなお二年後には文民政権を作るというから合法だといって、これと懸案の解決をなさろうというならば、この際には当然あなた方は北鮮との間においても国交の樹立をする、条約を結ぶ結ばぬはともかくとして、これと修好——仲よくするとかせぬとかいうことはともかくとして、独立の承認に必然的に伴うてくる懸案である請求権その他の問題について話し合いをすべきじゃないかということを私は聞いておるのです。
  128. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 繰り返すようになろうかと思いますけれども、われわれは朝鮮の独立を平和条約で承認しているわけです。そこでこの国と国交を結ぶ。そうすると、その国にある合法政権は韓国のソウルにある政権だ。そこでこれとやっているわけですね。ところが北の方にも別にあるじゃないか、それともなぜやらぬか、こうおっしゃいますが、国連に入っている国の多くは、先ほど申し上げた四十三ヵ国か四ヵ国は韓国に大公使を送って国交を韓国との間に持っているわけです。この関係はクーデター以後においても変わっていない、こういうことであるわけであります。しかし、法律的にいろいろ御研究のようでございますし、私との間で幾らお話ししても同じことをやりとりするのですから、条約局長から法的解釈を申し上げます。
  129. 中川政府委員(中川融)

    ○中川政府委員 サンフランシスコ条約に関してのお尋ねでございますが、御指摘のありました通り、サンフランシスコ条約で日本は朝鮮の独立を認めたわけでございます。従って、朝鮮の独立を認めますに伴いまして、新しく独立いたしました朝鮮との間にいろいろ決定しなければならぬ問題があるわけでございまして、それについては、御承知のように、すでにサンフランシスコ条約に第四条a項という規定がございまして、朝鮮その他日本から分離しました地域については、その地域にある当局と、たとえば財産についての取りきめをしなければいかぬという規定があるわけでございます。それでは、たとえば財産について取りきめをする相手である当局というものが、朝鮮についてどちらの当局であるか。つまり二つ政府があるわけでございます。これについて、やはりサンフランシスコ条約に二つほど規定がございます。一つは第二十五条だったと思いますが、サンフランシスコ条約の規定による利益は、サンフランシスコ条約に調印した連合国でなければその利益を主張できないという規定があるわけでございます。と同時に、第二十一条にこれの例外がございまして、そういう規定はあるけれども、中国と朝鮮については、例外的にある条項については権利を認めるという規定がございます。それで、今問題になりました財産取りきめに関する第四条、これについては、朝鮮に対して例外を認めておるわけでございます。従って、朝鮮はサンフランシスコ条約に署名した連合国ではございませんが、この規定に基づきまして、第四条にきめてある利益を享受し得るというわけでございます。従って、日本と朝鮮との間には、財産取りきめの交渉をする義務が日本にあるわけでございます。この場合の朝鮮、これはコーリアという字が使ってあります。この朝鮮が、それでははたして南か北かという問題が依然ここに出てくるわけでございますが、これにつきましては、サンフランシスコ会議の席上で、サンフランシスコ条約の主たる起草者でありましたアメリカの全権から、はっきり説明がございまして、ここにある朝鮮というのは韓国、リパブリック・オブ・コーリアをさすのである、どういうわけで韓国が、連合国でもないのにこういう権利を持つかという理由といたしまして、韓国は国連憲章の趣旨を尊重して、しかも日本と非常に長い間戦ってきた経緯がある、従って、これは連合国に準じて取り扱うべきものである、従ってこの規定で、韓国政府に連合国に準じたような権利を与えるのだ。こういう説明をアメリカの全権がしておるのでございまして、この説明に対して、集まりました各国は一つも異議を差しはさまず、この条約に調印しておるのでございます。従って、われわれとしては、この第四条の利益を享受しておる朝鮮の政府あるいは当局というものは韓国政府である、かように解釈いたしておるわけでございます。
  130. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 もう一ぺん、またあなたがそういうような答弁をされれば話が逆戻りするのですけれども、今の韓国の朴軍事政権が国連憲章を順守するというからこれを尊重するのだというお話の一節がありました。国連憲章を順守した政権じゃないじゃないですか。国連憲章のどの項目に、クーデターで政権をとっていいということを容認したあれがありますか。しかも国連憲章で一番きらっておるクーデターで政権をとったものが国連憲章を将来順守するといっても、ちょうどたとえて言えば、人のものをかっぱらって、そうして今後はかっぱらいをいたしません、私は法律の趣旨を守っていきますと言うのと同じことじゃありませんか。それをあなた方が無理やりにこじつけるために、この朴軍事政権が政権の成立のときにはクーデターでやったけれども、今後は国連憲章の趣旨に沿うていくから、これは国連憲章のいう民主的な政権だと言われる。そういう前提がそもそも私は納得がいかないわけなんです。この点については、時間がありませんから、あとで関連して回答していただきます。  それならば、日本政府の主張からいたしますれば、もし韓国との間に将来請求権の問題あるいは法的地位の問題、財産問題、こういったようなものの交渉が妥結、調印ということになった場合は、北朝鮮との関係は一体どうなるのですか。これは別なんですか。北朝鮮とはまたいつかの機会にこの請求権あるいは財産等の処理の問題について交渉を持たれるのですか、あるいは持たれないのですか、韓国との交渉によってできたものが全朝鮮に対する関係において効力を生ずるという解釈を持っておられるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  131. 伊関政府委員(伊関佑二郎)

    ○伊関政府委員 請求権につきましては、平和条約第四条は韓国だけに適用になります。そういう観点において第四条の特別取りきめの対象は韓国。北については残るわけでありますが、ああいう方式とは別の方式になろうかと存じます。  それから法的地位につきましては、実際問題としましては、いわゆる在日朝鮮人で、韓国人に対する法的地位、待遇がきまりました場合、これに均霑するととを希望する人には、実質上そういう待遇を与えるということになりますが、あるいはこれに均霑することを希望しないという人につきましては、現在通りというふうなことになろうかと思っております。
  132. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 現在あなた方がやろうとしておる日韓会談においての取りきめのできたものは、南だけに、韓国だけに効力が及ぶので、北の方には及ばないから、北の方とは別の方式でやる。この別な方式でというのは、請求権に関してのことなんですか。
  133. 伊関政府委員(伊関佑二郎)

    ○伊関政府委員 そうでございます。請求権につきましては、南は平和条約第四条というものがはっきりございますから、その方式でやるわけであります。
  134. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 別な方式でやるということについて、これは事務官僚からのお答えなんで子が、この点は外務大臣も確認されるのでございますか。
  135. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 平和条約の第四条にのっとっての請求権の交渉というものは、条約上韓国であります。しかし、北の部分は残るわけでございます。いわゆるブランクになって、そこだけあいておる、こういうことになるわけであります。
  136. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 別な方式でやると外務省の人が言われたから、別な方式でおやりになるのかどうかをあなたにお聞きするのです。
  137. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 ブランクなところをどう埋めるかということは、そのときに考えたらいいと思います。
  138. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それでは答弁になりません。南、いわゆる韓国とは講和条約においてやるのだ。そうすると北鮮とはどうするのかということを聞けば、アジア局長は、これは講和条約以外の別な方式でやるのだということを言われた。ところが外務大臣にその点をどうするのかと聞けば、これはブランクにしておく。そうすると、ブランクにしておくというのと別な方式でやるというのとは、これは全然違う……。
  139. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 私の答弁を全部聞いていただかぬと困るのですが、ブランクになって残っておる、それをどういうふうに埋めるかということは、そのときにはその方式を考える。すなわち言葉をかえていえば、伊関アジア局長が言ったように、別な方式になろうということでございます。
  140. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 この点について、ことしの二月の二十四日の参議院の本会議が大和与一氏が総理に、北朝鮮との請求権の問題はどうするのかということを聞いておる。これに対して総理の答えは、北朝鮮に対する請求権、北鮮への賠償の問題は私は全然考えておりません、こういう答弁をされておる。そうすると、今、外務大臣は、ブランクにして残しておくと言っておられますが、この点について池田総理との間の意思統一は今日されて会談に臨まれておるかどうか、その点をお聞きしたい。
  141. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 総理と私とは一体でございます。そこで、賠償を考えてない。私も賠償するとは考えておりません。
  142. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 賠償というのは請求権の意味なんです。向こうでは現に純賠償と言っているでしょう。あなたの方ではこれを請求権と言っているが、朝鮮の方ではこれは純賠償という言葉を使っておるのは、私がここで指摘しなくても外務大臣とくに御承知のはずなんです、そうでしょう。賠償だとかそういう言葉にこだわらぬでもいいのですが……。そうすると、同じく衆議院の外務委員会大臣はこの前はこういうふうに言てておられるのです。これは川上さんとの応答のようですが、川上さんが、そうすると朝鮮に南北統一の政府ができた時分にはこの問題はもう一ぺんやりかえるのですかという問をした。これは請求権の問題です。そうすると、それに答えて、北に関する部分については別であります、こういうことを言っておられる。答弁が非常に簡単だから私この点を特にお聞きしたわけなんです。北に関する部分については別でありますというのは、これはブランクにして、またそのときに応じて問題の処理を考える、こういうような意味なんですか。どうです。
  143. 小坂国務大臣(小坂善太郎)

    ○小坂国務大臣 先ほどお答えしたことと変わらないわけでございます。  もう一つさっきのことにさかのぼりますが、賠償と請求権とは非常に違うわけでございます。これは一つ木原さんの方においても、先方が違う言葉をかりに言ったからして同じだということは、おっしゃらないようにお願いしたいと思います。これは先方でもわかっておると思います。
  144. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 それは大臣から指摘されるまでもなく、私は多少法律を心得ておりますし、国際法も知っておるつもりですから、その点についてはよくわかっておるつもりです。わかっておるつもりですけれども、会談の中で相手方にそういうようなことを言っておりますから、ときどきそういう言葉が出るのでありますが、私が特に池田総理のあれを言いましたのは、大和さんの問いは、請求権をどうするかということを本会議質問しているのです。それを池田さんがどう間違えたのか、請求権ではなくて賠償——請求権と賠償をあなたのところの総理大臣自身が間違えて答弁をしておられるから、私が勝手に速記録を変更するわけにいきませんから、その速記録の言葉をそのまま引用しただけでありまして、決して私自身が請求権と賠償を混同しておるわけじゃないのですからその点誤解のないようにしておきます。速記録に書いてある。間違いの始まりは池田さんが間違うておる。  いま一回お聞きしますが、北鮮とのそういう問題は、また別な形で他日行なわれるということになるのでありますが、その点について相手方の韓国は懸案である法的地位、あるいは請求権という問題について日本は南だけに限定しておるということ、全朝鮮には及んでいないのだ、北は北で別な方式によらなければならぬということについて、韓国はこの交渉にあたってその点お互いに了解の上に立って話を進められておるものでしょうか、いかがでしょうか。
  145. 伊関政府委員(伊関佑二郎)

    ○伊関政府委員 そういう点につきましては、まだ今後の交渉に待つことになっておりますが、われわれがそういうふうな考えを持っておるという点は、ある程度におわしてございます。
  146. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 先般韓国から金裕沢とかいう人が見えて、いろいろと非公式あるいは公式の会談があったようでありますが、その際非公式にではあるが、韓国側から対日請求権について八億ドルという線が出たということが、新聞や雑誌で報道されております。そうすると、出たか出ぬかは別といたしまして、八億ドルということになりますと、それは向こうでは全朝鮮に対する請求権だというふうに見ているのか、それとも北鮮は除外した韓国だけの請求権の行使というふうに見ておるのか、その点いかがでしょう。
  147. 伊関政府委員(伊関佑二郎)

    ○伊関政府委員 その点につきましても、韓国側の説明と申しますものはごくあっさりしたもの、初歩の段階における説明しか聞いておりませんので、地域的に全鮮に及んでおるか、そうでないかという点まではまだ議論いたしておりません。
  148. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 日本の対韓財産請求権の放棄に関しまして、前回の通常国会で私いろいろと質疑をいたしましたが、その際には、アメリカの覚書というものが公表されてない。私が質疑をいたした後に、三月九日に至って、この日本の韓国に対する財産請求権の問題について、アメリカ側の覚書が発表されたのでございます。そこでその後、私この問題について関心を持っておりましたので、いろいろと調べて見たのですが、同僚の横路君の、この前のガリオア、エロアの質問のときに、法令の引用をされた、そのことを私知らなかったのですが、それを聞いてさらにもう一回だけあなた方に、なぜ日本が韓国に対して財産諸求権を放棄したかということについて、これはもうすでに、あなた方の見解では、講和条約で放棄しているんだと言っておられますが、さらにくどいようですがお聞きいたします。日本が韓国にある日本人の公有あるいは私有の財産を放棄するようになったのは、朝鮮軍の司令官が軍令三十三号によって没収をし、そうしてそれを韓国に移譲をしたからだという御説明でありました。私が調べてみますと、こういう日本の財産を軍令三十三号で没収をするということを発令をしたのは、昭和二十年の十二月の六日なんだ。ところが、同じ十二月の十九日に、当時の国連軍の最高司令官であったマッカーサー、そのマッカーサーはもちろん朝鮮の在韓米軍司令官、この三十三号で日本の財産を没収したその軍命令の上位の人です。マッカーサー元帥の全軍の軍令というのが出ております。それは、日本の財産を没収するということをやった三十三号が出て二週間ばかりあとに出ておるのでございますが、これによれば、マッカーサー元帥が管下部隊に対する軍令というのを一九四五年十二月十九日付で出しておりますが、これによると、占領軍は、国際法及び陸戦法規によって課せられた義務を順守するということを厳粛に宣言をしておるのでございます。そうなると、マッカーサーの命令によれば、日本人の私有財産を没収することはできない。没収しない。すなわち、ハーグの陸戦法規——国際法及び陸戦法規によって課せられた義務を順守するのだということを言っておる。その二週間前にマッカーサーの指揮下にある朝鮮軍の司令官が没収するということを言って没収している。その効力を日本は講和条約において承認しておる、こういう関係になっておるのでございますが、純粋な法律上の議論をさしていただくならば、この朝鮮にある日本の財産を没収した朝鮮軍の軍令三十三号というのは、マッカーサーのこの十二月十九日発した命令によって効力がなくなってしまっておる。従って、日本人の財産は没収されていないというふうに解釈をするのが私は正しい解釈ではないかと思うし、また、これによって、従来岡崎外務大臣以下この日韓交渉に当たった人たちは、この解釈で私は終始してこられたものだと思う。それをアメリカの覚書が出るや、この覚書を——一九五七年です。これを承認するというような経過をたどっているのでございますが、その間の経過が、これは当時の関係者がどうしても納得のいかない点なんです。その後、あの質問をいたしましたあとで、朝鮮あるいは満州からの引揚者の方々より、もう数十通の手紙が私のところにも参っておりまして、この点、もう一回外務大臣からはっきりしたいきさつを聞いてくれという要望がありますので、お尋ねしておきます。
  149. 中川政府委員(中川融)

    ○中川政府委員 平和条約第四条(b)項で認めました韓国にある日本財産についてアメリカ軍当局がした措置を日本が承認する、この字句の解釈につきましては、実は政府としては終戦直後から終始これについて研究を重ねてきたわけでございます。ただいま御指摘になりましたようなマッカーサー司令官から出しました麾下の軍将卒に対する指令というものも、われわれ知っていたのでございまして、これはもちろん占領軍司令官として当然すべき命令であります。占領軍であります以上、国際法あるいは戦時法規というものに従わなければならないのは当然でございまして、そういう原則があるにかかわらず、一方朝鮮においては、こういう一般国際法に反した措置をとった。しかもそれを平和条約で承認させられたということの法律的意義については、非常に研究して苦心したのでございますが、この一般命令と朝鮮に関しての特別の命令、これはもちろんマッカーサー司令官のみならず、アメリカ大統領との打ち合わせによってマッカーサー司令官、それの命令によって朝鮮軍司令官が出した指令でございますが、日本の財産を接収すべしとするこの軍令三十三号の効力いかんという問題でございます。しかし、これは結局一般命令と特別命令という関係でございまして、朝鮮につきまして出しました軍令三十三号というものは、一見一般国際法からは逸脱しておるようだけれども、これは今次戦争に伴う、今次戦争の跡を始末する一つ政治的な決定として行なわれたものである。従って、一般戦時国際法に基づく占領軍のすべき占領軍の権限、そういうものをきめましたものとは性質が違うのである。しこうして、その違うものを特にやはり将来疑義なからしめるために、平和条約四条(b)項ではっきり日本政府に承認させたのである。こういうのがアメリカの一貫した解釈でございまして、日本政府としては、何とかこういう解釈でなくて、在韓財産を救う道がないかといろいろ努力して研究してみたのでございますが、遺憾ながら、法律解釈といたしましては、やはり平和条約がすべてを決定するということが大原則でございますので、たとい国際法を越えた行為でありましても、平和条約できめましたものは、やはりそれによって合法化されるということを認めざるを得なかったのでありまして、政府といたしましては、その解釈を五七年以来とっているわけでございます。
  150. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 時間がありませんから、一般法、特別法の問題についてはまた機会を見て質問しますが、あなた方の一般法、特別法の解釈は間違っている。岡崎外務大臣の解釈は、これは国際法上正当なんです。あなた方のは間違っている。間違っているものをここで議論する時間がありませんが、一般法で国際法を守るということをいっているのに、それに違反した特別法が効力を持つなんというのは、そういう議論の立て方なんか、あなたが、何とおっしゃっても、われわれ法律をやっている者には納得できないのです。納得できないけれども、これは議論したってしょうがないから、もう時間がありませんので、せっかく大蔵大臣がお見えですから大蔵大臣に最後に一点だけお聞きして終わりたいと思います。  今外務省から御説明のあったように、日本人の私有財産を没収して、そしてこれをアメリカ軍が韓国に譲渡しているのです。一九四五年に没収をして、そして日本人の財産を韓国に引き渡したのは一九四八年なんです。そうするとその間三年ばかり間があるのです。この三年ばかり間があるのですが、この間にいろんな疑義が国民の間で取りざたされておるのです。一体日本軍から日本人の財産をどれくらい、どういう品目にわたってアメリカ軍が没収をしたのか、その時価は幾らくらいかということ、さらにアメリカが三年間それを管理して、そうしてそれを韓国に譲渡いたしておりますが、この韓国に譲渡したものは、これは一体アメリカが没収した財産全部を韓国に移譲したものか、あるいは一部分だけ韓国に移譲して、残りのものは依然としてアメリカが所有しておるのじゃないかというような点について、われわれ日本人の間に非常な疑惑があるのです。そこで一体どれだけの日本の財産が没収され、そうしてその中で幾ら韓国に譲渡されたかということがはっきりしなければ——おそらく今度小坂さんがおやりになる韓国との日韓会談における交渉の過程において、請求権で根拠を明らかにしなければならぬと思うのです。先般の小坂さんの御答弁では、没収された財産、没収したということは、韓国の請求権について、請求の取りきめについて考慮されるんだということがある。これはすなわち一種の相殺思想をこの中に含んでおるんだということを、繰り返し外務大臣が主張されたのです。はたしてそういうような相殺思想というものが含まれておるということになれば、日本の没収された財産が幾らで、韓国に行ったものが幾らあるかということを明らかにしなければならぬ問題だと思うのです。おそらく大蔵当局においてはこの点についての調査ができておると思いますから、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  151. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 日本人の財産を没収したものを韓国にどういうふうに米軍が譲渡したか、この品目そのほかについては、今、韓国側に日本側としては資料を求めているのですが、向こうからなかなか正確なものを出してこない、こういう状態にございますので、日韓会談が開かれますならば、日本側からあらためてこの問題の請求をして、十分その実際のところをつかまなければこの問題の解決にはならぬと思いますので、こちら側からその資料の要求をただいましているところでございます。
  152. 木原委員(木原津與志)

    ○木原委員 この点は将来の政府の会談にあたっても非常に重要なポイントになることでございますから、すみやかに資料を整備されて、そうしてこれを国会に提出していただきたいということを要望いたします。  いま一点だけ外務大臣に、簡単でけっこうですが、実は私ども朝野両党でこの夏に東南アジアに一ヵ月ほど衆議院から派遣されて行ったのでございます。その際フィリピンに参りましたときに、フィリピンで非常に奇異の感を私は抱いた。というのは、なるほどフィリピンで日本人が不信を受けるような態度をとったであろうということは、私どももいろいろ聞いておるのですが、もうすでに戦後十六年もたっておる。たっておるにもかかわらず、しかも先般の国会では不成立になりましたが、日本とフィリピンとの間に通商航海条約もできようとしておる。こういう中で、たとえば一例をあげますと、マニラに行ってみますと、大きな建物のところに地を掘って穴なんかある。そういうところにわざわざ立て札がしてあって、そうして、ここはフィリピンの志士が六百人日本軍から残虐行為を受けて殺された跡だというようなことを麗々しく書いてある。これを見まして私はこういう感じがした。私は長崎の生まれでございますが、長崎においても広島においても、原子爆弾によって何万という人間が——これは、これ以上の残虐行為はないと思う、非戦闘員が殺されたのだから。こういうようなことをされても、もう戦争が済んだら、いつまでも跡を残して置くべきじゃないというので、長崎、広島いずれにおいても全部戦争のあと傷を取っ払ってしまって、そうしてもう二度と戦争はしないのだ、ノー・モア・ウォーという立て札だけで終わっておるのです。ところが、フィリピンにおいては、日本人の残虐をした跡だといって立て札をつけて、フィリピン人はもとよりのこと、そこに来る世界各国の人にこれを示しておるというようなことは、もうやがて、国交も回復し、通商航海条約を結ぶ段階に至って、こういうような状態では非常に両国の将来の親善のためにいいことじゃないと思うのです。そこで外務大臣にお願いしたいことは、さらにまた話を聞くところによれば、フィリピンでは、日本軍が、あそこで戦死あるいは死刑その他戦争によって生命を失った人たちが、軍人だけで四十七万六千人の人があそこで死んでおるという。しかも死んでおるにかかわらずこの遺骨の収集さえ、これはフィリピンがやらせない、やらないでそのままどこにどうなっておるのかわからないというような状態であることを聞きまして、私ども自民党、社会党の一行五名の者は実に暗然といたしました。四十七万の、もう罪もとがもない、戦争が済んで講和条約も結ばれて通商航海条約まで結ばれようとしておるときに、日本人の残虐行為の跡をそのまま永久に残しておいて、しかも四十七万六千人の日本人のとうとい死霊について遺骨の収集さえできないというようなことでは、私どもまことに感慨なきを得ない。墓地にも行ってみましたが、四十七万の日本の軍人の遺骨はどこでさまようておるか。しかも同じくそこで戦争をしたアメリカの将兵の墓は実にりっぱな大理石でできておるにもかかわらず、日本人には、墓はともかく遺骨の収集さえできない。こういう状態の中で両国の交渉を行なうということは、これは何とかフィリピンにも反省をしていただかなければならぬのじゃないかと思うのです。そういう点を一つ外務大臣にも含んでいただいて、今国会において日比の通商航海条約がやがて通過する——前回通っておりますから、やがて今度議題になろうかと思いますが、この点については特に戦死者の遺族のお願いもありますし、どうか一つその点をこの交渉の中で何とか取りきめをして、せめて——軍人の遺骨を探しに行ったってもうありはしますまい、ありはしますまいけれども、とにかく四十七万六千人の遺体の収集ができるように、また残虐行為の跡の撤去というような問題につきましても、格段の外交交渉をしていただくように、特にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  153. 山村委員長(山村新治郎)

    山村委員長 次会は明後九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会