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1961-10-05 第39回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月五日(木曜日)    午前十時十四分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    稻葉  修君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    周東 英雄君       田中伊三次君    床次 徳二君       中村 幸八君    中村三之丞君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松本 俊一君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    田中織之進君       高田 富之君    楯 兼次郎君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       野原  覺君    長谷川 保君       松井 政吉君    春日 一幸君       佐々木良作君    西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月五日  委員中垣國男君、中村幸八君及び春日一幸君辞  任につき、その補欠として赤澤正道君、倉石忠  雄君及び佐々木良作君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員倉石忠雄君及び佐々木良作君辞任につき、  その補欠として中村幸八君及び春日一幸君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、これより会議を開きます。  この際、一言申し上げます。前回の委員会におきましてお約束申し上げました通りに、当委員会におきましてはあくまでも時間の励行をいたしたいと存じます。何分とも委員諸君及び閣僚諸君におかれましても御協力をお願い申し上げます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。西村榮一君。
  3. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は民社党を代表いたしまして、災害の予防問題、この激動期国際政局に直面して日本の内政をいかに整えるか、第三には、外交方向をどこにとるか、第四には、危機に直面しておる日本財政経済をいかに立て直すか、この四点について政府所見を承りたいと思うのであります。  私は先般来かぜを引いておりまして、席をはずしておったときの他の議員諸君の質問と若干重複する点が一、二点あるかもしれませんが、それは一つお許しを願いたい。  災害問題からお伺いいたしたいのでありますが、今度の補正政府は百五十億円の災害予算をお組みになりました。予備費百二十億でありますが、だんだん実情が判明いたしますと、被害はきわめて甚大であります。この際、災害を追っかけているということよりも、防潮堤の問題、地盤沈下の問題、その他公共施設個人災害等の問題につきましては、抜本的な解決が要ると思うのであります。事情が漸次判明いたしまして具体的な計画が災害地から立案されたときには、本予算案にこだわらず、さらに御考慮をわずらわしたい、こう思っておりますが、いかがでありますか。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の災害予算は、一応梅雨前線によるものを主として計上いたしました。これは、時間がたちまして一応の目安がついたために、大体百四十九億を見込でおるのであります。先般の第二室戸台風につきましては、相当甚大な被害があったのでございますが、まだ集計その他が参りませんので、一応予備費の方に百二十億を予定しておるのであります。お話しのように、第二室戸台風につきましては、災害の防止、工業用水あるいは地下水の問題、あるいは仰せの方面防潮堤の問題等々、今までの問題より別にある程度考え直さなければならないのであります。こういう点がございますので、今後応急復旧の問題と将来の問題とを一緒考えていかなければならぬと思います。従いまして、応急の問題で足らざるところは、もちろん予備費でやります。それから将来の問題がきまり次第、また適当な予算措置をとることに相なると思います。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいまの御説明で了解いたしました。財政まことに多端のおりからでありますが、災害を抜本的に将来処理するという意味において政府の格段の御努力を願いたいと思います。  次に、私は、日本政治体制の確立について、総理大臣の御所見を承りたい。今より半年ほど前に、ある先覚者はかように申しておりました。日本は、異常なる経済の発展と精神的頽廃という二本の足で成り立っている、こう批評しております。私は、この批評は、日本政治に携わる者として深く銘記しなければならぬと思います。そこで、私は、日本国家が有するこの本質的の矛盾をそのままにして、今後の国際情勢の変化に即応することは困難である。この二つの問題を私は解決したい。今後歴史が大きな変革を遂げると申しまする根拠は三つあります。第一には、歴史教訓の教うるところによりますれば、大きないくさが終わりましてから十五年は平静でありますが、十五年から二十年の五カ年間は一個の重大な転機です。第一次世界戦争が終わって十六年目にヒトラーが出てきて、二十年目に第二次世界戦争が行なわれた。今日ラオスの問題、コンゴの問題、アルジェリア、その他幾多の事変は、これは偶発的なできごとでなしに、歴史一つの法則通り動いておるのであります。第二の問題は、米ソの対立が冷戦の継続か、あなたがおっしゃるあたたかい戦争継続かはいざ知らず、三年、四年を出ずに、米ソいずれかが世界の覇権を握る、対決をしなければならぬ宿命に追い込まれておる。第三の問題は、アジアアラブの問題であります。第二次世界戦争が終わって国連に加盟しておる国家が五十一でありますが、今百を数えております。これはことごとくアジアアラブの旧植民地から独立した国家であります。後世の歴史家は、これをさして歴史の第四革命と称するほどの大きな変革であります。私は、かような三つの要素を持って激動していくこの国際情勢に際会して、わが国がこれに対していかなる方策をもって国家の安全と平和とを乗り切るかということが、現下日本政治にとりましてきわめて重要なことであろうと思うのであります。そこで私は率直に申しますならば、今の日本政治官界——少しいやなことでありますが、先般の運輸省の疑獄事件のごときも、政界の腐敗と、官界との結びつき、媒介、これは氷山の一角でありますが、これらを根本的に改革しなければ、私はこの激動期歴史変遷日本は乗り切ることは不可能だ、かように考えております。しからばそれをいかにして改革するか、方法三つしかありません。共産主義革命を行なうか、ファッショ革命を行なうか、はたまた民主的立場において改革を行なうかという三つの道しかない。わが国はもちろん共産革命の道はとりません。ファッショ革命の道をとりません。しかりとすれば、民主主義立場における改革わが国の国柄が必要とするといたしますならば、私は政党は違うけれども、先般自民党の中曽根君が提案された内閣総理大臣の直接国民投票、あるいは立法府と行政府とを厳然と区別して、国会議員行政官すなわち国務大臣にならないというような御意見は、私は、保守党立場における一個の改革理論として傾聴に値する議論だと思っております。しかし私が言わんとするのは、それらの問題を解決する前提として民主主義革命をやろうとするのならば、今日の一番具体的な方法は、私は選挙法改正であろうと思います。私は法律家ではありませんから、選挙法改正についてのむずかしい法理論は別として、大局をつかめば三つあると思います。一つは、新しい人材が議会に出られる方法を講ずることです。因縁情実にとらわれない、公正な選挙をされることです。金のかからぬ選挙をすることです。そういう立場から考えますならば、まず第一に現在の選挙法では出られないし、煩瑣でいやだと言うておる野の遺賢といえども、今後における議会政治に吸収して、議会の権威と識見を高めるために、それらの人々が参加できる選挙法改正する。金が要らないようにする。そして政策本位に公正なる選挙を行なう。この三つの点を考えますると、私は現在の可能な範囲内において考えることは、小選挙区制比例代表制一つの構想として浮かび上がってくるのではないか。私は時間の省略上簡単に申します。小選挙区制比例代表制にも幾多弊害があります。しかし今選挙の上において金がかかり、情実にとらわれ、そして新しき野の遺賢が吸収できないという弊害があれば、民主革命の一種として現在の選挙法をいじって、二、三回やってみて悪ければ、また別に改めるという気やすい気持で、以上の主として新人の吸収、金のかからない、因縁情実にとらわれない、そして民主革命の一方法として選挙法改正してみるということが必要ではないかと私は考えるのであります。これは決してあなたの言葉じりや何かをとらえたりしませんから、率直な御意見一つ、そして私の言うことにもしもあなたが反対であるならば、ファッショ革命を避け、共産革命を避け、しこうして民主主義的な方法において現下議会政治をいかに変革するという腹案があれば、これを承りたい、こう思っております。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しの点の前提は、私は全く同感でございます。従いまして、施政方針演説におきましても、経済の伸長は非常に目ざましいものがあるが、精神方面におきまする点になりますと、ある程度芽ばえつつありますけれども、まだまだだということを申しておるのであります。西村さんとその点は同感でございます。しこうしてこの変動期に対処する政治体制をどうするか、お話し通りファッショ革命共産革命は絶対にわれわれの容認できないところであります。しからば民主政治を伸ばしていかなければならぬ、その方法として選挙が大事なことも同感でございます。しかるところ選挙制度を小選挙区制比例代表制にしたならば、情実が加わらないか、お金が要らないようになるかという問題につきましては、いろいろ議論がございます。従いまして、あなたの方向に向かっていくためには、この最も重大な選挙制度ということにつきまして、各階層の御意見を承りたく先般選挙制度審議会というものを設けたのでございます。しこうして、これは従来の選挙制度調査会というものよりもその調査範囲等々につきまして相当広く、ほとんど全般にわたっておりますし、しかもまたその答申につきましては例をあげて、これを尊重します規定を入れました。しかもでき上がりました選挙制度審議会は、非常に熱心に毎週開かれまして、私は、ただいまのところ区制その他につきましては、本年内には答申は出ないかもしれませんが、いろいろな重要な点につきましては、年内答申が出るのではないかと期待いたしておるのであります。その答申を待ちまして十分検討して、お話しのような方向に向かって前進したいと考えております。小選挙区制比例代表制の点につきましては、いろいろ議論のあるところでございます。しばらく私の意見を申し述べることを差し控えますから、お許し願いたいと存じます。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 選挙法につきましては、私は今の選挙区制にしろ、大選挙区制にしろ、あるいはまた小選挙区制にしろ、いろいろ選挙に伴う弊害はやはりどの区制をとってもあり得ると思うのです。ただ私は、ここで力点を置きたいことは、総理に理解していただきたいことは、日本議会が国権の中心です。最高機関です。ここに日本全国の知能と英知を吸収するという方策を第一にとるべきではないか。そういたしますと、小選挙区制、中選挙区制、大選挙区制にしてもいろいろ弊害はあるが、比例代表制によって、政党に集まる投票の中から政党が信頼する人を吸収するということが、私はこの際とられる政治改革一つ方法ではないか、力点を私はそこに求めている。今あなたの立場上、選挙法の問題は自由党の中でも、社会党さんの中でも、民社党の中でもなかなか議論は一致しないことで、むずかしいことでありますが、しかし政治指導の任に当たっている者は英断を持って時勢に適応する方法をとってもらいたい。これは保守党指導者、イギリスにおけるエドマンド・パーク氏の後世に対する教訓でありますから、一つその点をお考えおきを願いたい、こう思っております。  次に私は外交の問題に入りたいと思っております。外交問題について私は、本会議においてあるいは本予算委員会において、あなたから断片的な御意見を承っておるのでありますが、失礼でありますが、総括してかつ総合的なあなたの御判断国際情勢に対する認識を承っておらない。はなはだこの点率直に申しますが、あなたが何を考えておられるか、どういうふうに国際情勢を見ておられるか、国際情勢判断について承りたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 各地におきましていろいろの紛争、あるいは紛争に至らなくてもいろいろの問題がございます。しかしその問題につきましては、私はあくまで国連の問題にすべきものは国連、あるいはベルリン束ドイツの問題のように、四カ国で処理すべき問題は四カ国で処理する、その事態々々によりまして、私は双方が話し合いでこれを平和裏に解決する、こういうことを考えておるのであります。もちろんその点につきましては、根本的には国連が強化される、ほんとうにあそこで建設的な平和的な議論が行なわれて、みんなの納得し得る方法で解決していこう、こういうのが私の方針でございます。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が今あなたにお尋ねしておるのは外交問題の処理方法をお尋ねしているのじゃない。激動していく国際情勢に際会して世界動きはどういう方向をたどり、どういうところにねらいを定めて米ソ両国中心として世界が動いているか、その動きの中に日本外交をいかにするかというあなたの識見をお尋ねしておるのです。情勢判断の上において。国連話し合い、その他の外交のテクニック、私はそれは外務大臣にお尋ねしよう。しかし大宰相をもって任ずる池田勇人氏にお伺いするのは、私はその識見のほどをお尋ねしておる、前向きの話をお願いしたい。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 前向きとか識見とかおっしゃいますが、私は世界動きをどう見るかというときには、これは非常に熱くなりそうになったり、また冷静になったり、いろいろ動きがございます。しかしその都度話し合い戦争にならないように進んでいっておると私は考えております。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからばそれについてはあと回しにいたしまして、次にあなたにお尋ねしたいことは、フルシチョフが過ぐる去年の万国共産党大会において述べ、十月十七日ソビエトの新綱領として中央委員会に提出するソビエト外交方針の基本になる平和共存政策について、あなたはどういうふうな解釈をしておられますか。どういうふうな認識のもとにその外交考慮に入れながら、日本外交を進めていかれようとしているか、これをお伺いしたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説で申しましたごとく、ソ連平和共存政策を掲げております。しかしその裏には、やはりソ連考え方世界を征服しよう。平和共存とはいいますが、階級闘争考えがそのうしろにひそんでいることを私はうかがい得るのであります。だから、今回の核実験の問題にいたしましても、いち早くソ連からこれをやるという宣言は、平和共存ほんとう精神とは違っておるのではないかという気持を持っております。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 第三にお伺いしたいのは、自由民主党の内閣外交原則を唱え、その中にAAグループ一員としてと言われておるのでありますが、AAグループはその歴史的な条件も違えば経済的な諸条件も異にしておるし、ヨーロッパ共同体と違いましてなかなかむずかしいところもあります。しかし日本AAグループ一員としてその国際環境が与えられておることは、これは否定し得べくもないのであります。その立場においてAAグループとの関連あるいは将来の提携その他は一体いかになさるか、具体的な方針をこのむずかしいAAグループの諸条件の中からどうされようとするかという具体策を承りたい。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 外交の三原則として、お話し通り国連中心主義自由国家群一員、そしてAA諸国一員、これは今まで唱えてきた通りであります。国連中心にしていかなければなりません。しこうして、また自由国家群一員としての地位も年とともに強化せられております。その強化せられたことが、AAグループ一員としての日本にも相当の好影響を与えておるのであります。しからば、お話し通りAAグループというものは、五十カ国をこえようとするAAグループというものの内容を調べてみますと、自由国家群の方に入っておるといわれるイランあるいは。パキスタン、タイ、フィリピン、日本、そしてまたフランス系のブラザビル・グループ等々もございます。あるいはまた完全な中立主義を主張ておる国もございます。一様にはいっておりません。だから、AAグループ一員といたしましては、いわゆる昔の植民地主義を排撃する、この思想にわれわれはもちろん立って、そして、しかもほとんど大部分が低開発国である現状にかんがみまして、これらと合うところは一緒に主張していく。合わないところにおきましては、われわれの考え方を十分納得してもらうように努力し、AA諸国、低開発国がともに発展していくように、われわれは何と申しますか、指導という言葉は強うございますが、お互いに話し合っていくべきじゃないか、これがAA諸国一員といろ意味でございます。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体私は常識上そうであろうと思うのです。ところがときどきあなたのお言葉の中には、AAグループを侮辱する言葉がちょいちょい出るので、これはやっぱり誤解の種になると思います。たとえて申しますと、あなたがこの間、一日に新聞協会でお述べになりましたのは、自分としては西欧諸国と緊密な提携を結んでいきたい、そうすると池田アメリカ一辺倒と言われるから、まあ議会演説ではAAグループ一員として、というふうな言葉を用いましたが、事実は西欧諸国と緊密な提携をしていく、こういうお話新聞に報道されている。私は、これは聞きようによっては、目にかどを立てて申しますと、まず第一に、あなたは、日本議会お話しなさることと、あなたの本心が違うことを言うておるということになれば、議会に携わるわれわれとしては、重要なことであります。同時に、これは外交AAグループ諸国を侮辱したことになります。そこで、今のお話とそれは違うのでありますから、私は、今のお話が真実であれば、この間新聞協会お話しになったことをお取り消しになっておく方がいいのではないか。少なくとも、その新聞の報道しておるものは、日本一流新聞です。従って、新聞協会お話が翻訳されてAAグループの方へ回りますと、やはり多くの誤解も生ずるし、議会人としても私どもは少し申し上げなければならぬことがある。新聞協会の話は、そのときのもののはずみということであったら、今の話が本心だということで、新聞記事をお取り消しになって、新聞協会記事の翻訳の速記を一つ削除しておく方がいいのじゃないか、こう思います。私はもう議論はめんどうくさいですから、ここに新聞があります、新聞に書いてある、これをあとであなたが訂正するなら、青木さん、上げておいて下さい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、ここでお話しすることも、新聞協会で話しすることも、私自身が話したので、違いはないと思います。話したあと、どう新聞に載りましたか、私新聞を読んでおりませんが、私は日本立場から申して、アメリカとの協調もさることでございます。しかし、今のヨーロッパ現状を見ますると、アメリカに対しまして、まさるとも劣らない経済力を持ち、人口を持ち、そうして日本が貿易その他で重要視しなければならぬ問題だと、こう私は言っておるのであります。で、日米関係のみならず、日英日独日仏等々ともほんとうの緊密の度を加えていきたい、こう言っておるのであります。西欧諸国と緊密の度を加えていくということが、AA諸国を侮辱する意味には私は絶対にならないと思う。AA諸国の低開発国につきましては、アメリカのみならず、やはり西欧諸国とともに手を携えてこれが開発の手を伸ばしていこうということを言っておるのでございまして、私は何ら間違ったことを言った、あるいは取り消さなければならぬとは思っておりません。しかし、出ました新聞は実はまだ読んでおりません。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は親切に申し上げたので、あなたの真意新聞に誤り伝えられておるならば、それはやはりお取り消しになっておく方がいいのではないかということを、御注意だけ申し上げておる。別に目にかど立てて論争するほどのことでもありませんけれども、あなたの真意新聞に十分伝えられてないということだったら、それはやはり公式にお取り消しになっておく方が、あと外交上、言いわけになるのじゃないか、かように考えておる次第です。  次に、私があなたにお尋ねしたいのは、今の国際外交危機感の焦点は、ベルリン問題にしぼられております。そこで、ひときり非常に険悪な状態でありましたが、今、東西首脳部間の話し合いにおいて円満に妥結するの曙光が見え始めましたことは、まことに人類にとりまして私は幸いだと思うのであります。しかし、先ほどフルシチョフ平和共存論の中に、あなたは定義を下しておられました。私も、その見解の大綱については賛成です。フルシチョフは、平和共存論とは、階級闘争の一変形である、これは長きにわたる政治、軍事、経済の競争であるのであって、大きな戦争を避けて共産圏世界的勝利をおさめる方法は、現在の政治戦略として平和共存論が一番正しい路線である、こう彼自身説明を下している。従って、ベルリンの問題も、この二カ年間、その政治戦略からくる一環として正確な時間通りの歩み方を続けております。そこで、今のワシントン、ニューヨーク、国連中心として東西首脳話し合いをいたしておりますが、ソビエトとしては、この話し合いのほかに、平和共存論政治戦略に基づきまして、十月の十七日、ソ連中央委員会の前後に、ワルシャワ条約参加外相会議を開きまして、東独の問題を協議する、そうして十一月の末か十二月の上旬におきまして、かつてドイツと交戦した世界の諸国に招待状を発しまして、東独サルシエンホーフにおいて単独講和会議を開催する。その会議においての結論は、東独の承認であります。かくして、ソビエトは一定の世界政治戦略を立てて、時間通りの歩みを続け、ベルリン問題は、ソ連の一方的勝利です。西欧陣営の敗北であります。東独との単独講和が成立いたしましたならば、ここに起きてくるものは、かつて終戦直後に締結された四カ国管理協定はここに自動的に崩壊いたしまして、西ベルリンと西ドイツの交通権の問題、その他四カ国協定で保障されたものは、自動的に崩壊していくのであります。そこで、平和共存論からくる一定の勝利をおさめたソビエトは、第二ラウンド、次の外交の攻勢を一体どこに置くか。直ちに西ベルリンの問題に手をつけるのであるか、アジアの問題に手をつけるのであるかということは、今日判断困難であります。しかし、問題は、ここまではフルシチョフは正確に時間通りに、時間表に表わしているごとく成功をおさめて参りましたが、ここに一つの大きな誤算がある。それは今回のベルリン問題の処理の仕方において、西ドイツとアメリカとの関係、ヨーロッパ諸国との関係を考えてみまするならば、ヨーロッパ諸国は、みずからの力で将来の共産党と対決しなければならぬ。ここに新しい決意と態勢が漸次ベルリン問題の解決後に生まれてくる。これはフルシチョフの計算外の大きな要素が出てきたと私は思うのです。  しかるに、アジアにおきましては、残念ながら、いまだ民主主義の訓練を受けていない新しい国が多くある。しかも、残念ながら、お気の毒であるけれども、いまだその生活状態はきわめてお気の毒な状態である。この民主主義の無訓練、経験の乏しい諸国に加うるに、生活の窮乏は、共産主義の進出の絶好の温床であります。私は、この時点に直面して、世界民主主義の主要国家として、アジア民主主義の支柱としての日本外交は、この現実に直面していかなる方向をとろうとするのか、これを私は先ほどあなたにお伺いした。国際情勢の見方についてあなたの見方は、私は甘いと申し上げる。かつ外交のテクニックではない。大きな時勢を見る鋭い観察力と、それに対処する大胆率直な政策こそが、現下日本に与えられた外交の使命ではないか、かような見地から、私はベルリン問題とアジアの問題と相関連して考えまするときに、なかなか容易ではない。そこで、アジア民主主義の支柱としての日本政治的使命、国際的な任務、それをいかにして果たすかということについて、あなたの御意見を承りたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 ベルリン問題がいかに解決するか、われわれは非常に関心を持って注目しております。また、アジアにおきましていろいろの問題が起こっております。これは各国みな違っておる状況でございます。しかし、いずれにいたしましても、アジア民族の状況は、やはりお話し通り世界の先進国が手を伸ばしてこれが民主主義の発達と経済の復興を考えなければならぬ、その点につきましては、従来もいろいろエカフェ等を通じ、あるいはいろんな金融機関を通じてやっておるのであります。われわれといたしましても、それだけでは十分ではない、世界経済開発機構に参加して、東南アジアの問題にもわれわれは相当の援助をする、また、別に東南アジア開発基金制度を設けまして、まだ十分ではございませんが、アジアの人民の生活水準の引き上げに努力しようとしておるのであります。十分ではございません。今後わが国の発展とともに、これを強化していかなければならぬ。また、これを強化することがわが国の発展のもとであるということは十分考えて、今後その方向に向かってもっと力を進めていきたいと考えております。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたのお言葉によりますと、アジア太平洋の民主主義を奉ずる諸国は、その結合を強化していかなければならぬ、また強化の態勢に日本が努力しなければならぬ、こういうお話であります。これはまことにけっこうです。そこで、それを具体的に進めるためには、私は今から二年前、一昨年の十一月、時の臨時国会におきまして、日本の将来の国家の姿は中産階級の国家でなければならぬと申し上げたとともに、太平洋を中心とするアジア太平洋友好同盟の条約というものを今から考慮しておかなければならぬのじゃないかということを、二年前に申し上げたはずであります。今後における単独防衛体制、集団防衛体制、国連の防衛体制、幾多論ぜられる中に、今後その国々がよその国々と防衛体制を結ぶのは、私は、軍事が先行となるところの結合ではならぬと思います。お互いに生活環境を同じゅうするもの、歴史性を同じゅうするもの、そしてその生活を守る、お互いに社会環境をひとしゅうするものを守り、お互いの歴史性を守る、それが世界の平和を調和する。経済提携をまず第一にし、その結果政治的な結びつきを密にするということが、これからの集団防衛体制の性格ではないか。戦争が起きたときには一緒戦争に出かけるということよりも、その前にお互いの生活圏を守ろうということが、これからの政治ではないか。そういたしますると、太平洋並びにアジア諸国における相ひとしくするところの生活圏をお互いに助け合って向上しよう、それを通じて政治的結びつきを密にしていこうという意味において、私は、アジア太平洋の友好同盟条約というふうなものを日本が構想し、世界の志を同じゅうし、そうして民主主義を守ろうとする国々とともに、まず第一に、全世界の平和を念願する前に、アジア太平洋の平和的態勢を確立するということが、現下日本の置かれた政治的使命ではないか、かように考える。大綱においてはあなたと話は一致したようでありますが、具体策について、私は、二年前提唱したアジア太平洋の経済政治の態勢を中心とする友好同盟条約を今日切実に踏み切るべき時期ではないか、かように考えるが、いかがでしょうか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 アジア各国いろいろ事情がございます。友好同盟ということは、相手のあることでございますが、しかし、少なくとも経済的に通商航海条約を結んで、お互いに行き来が楽にできるような方法でいかなければならぬ、こう私は考えておるのであります。従いまして、まだ組閣後あまり間がないのでございまするが、パキスタン、インドネシア、フィリピンとの通商航海条約に調印いたしました。また、マラヤの分は批准をしております。こういうふうなことから、あなたのお考えになっている経済的同盟と申しますか、いわゆる太平洋アジアに対しましては、コロンボ会議というものがあって、お互いに先進国が後進国を助けていくというのもございますが、こういう全般的なものでなしに、個々の国々と通商航海条約を結ぶべく努力をいたしてきておるのであります。同盟ということにはなりませんが、私はこれは一つの進歩だと考えております。
  21. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、今のあなたのお立場においてはそれ以上具体的なことを述べられることは困難な事情があるということは、よく了解いたしております。たとえば、われわれが豪州、ニュージーランド、カナダ等々とその経済関係の一個の同盟を結ぶにしても、これは英本国が欧州共同体に入るか入らないかということを公式に決定した後でなければ、これらの国々の動きは明確にならないでしょう。しかしながら、問題は、これらの国々においてはそれぞれの時勢を達観して、そしてイギリス本国が欧州共同体に加盟した後において英連邦の太平洋上における諸国がいかなる方針をとるべきかということは、相当考えておる事実であります。従って、私は今あなたがそれ以上の答弁は困難であろうと思うのは、かような外交上のデリケートな見地から困難であろうとは思いますけれども、欧州六カ国は幾多経済的あるいは歴史的な条件を異にしながらも、ヨーロッパは一体化さなければならぬというので、数年にわたって努力をいたしております。その努力の実が今経済的に、政治的に着々結びつつある。私が先ほど申し上げたフルシチョフの大きな誤算の一つは、ヨーロッパの発展の推移を見誤ったことではないか。といたしますると、私が冒頭に申し上げました、アジア諸国においても今日なお、歴史性においても、経済力においても、政治体制においても千差万別であります。これを一つにまとめていくということは、欧州共同体の努力の数十倍を要することは、これは外務大臣もよく御存じだと思う。しかしながら、その方向に——今この機会に、公式の会合にその構想を述べられないといたしましても、十分そこに意を用いて、日本外交方向を——言外ににじみ出る外交のニュアンスと申しますか、方向というものをおとりになる必要があるのではないか、私はそう思うのであります。それとまっ向から意見が違ったら、違ったとお答え願いたい。お答えにならなくてもけっこうです。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように、ヨーロッパ経済共同体ができ、またイギリスを中心とした英連邦との問題に加えまして貿易連合ができ、また、ラテン・アメリカ経済関係強化の条約ができておるということは私は存じております。私も東南アジアの特殊の事情から、ライス・バンクということも考えたことがございます。その方向としては西村さんのおっしゃることは正しい、そうあるべきだと私は思います。しかし、現実の問題で、ヨーロッパ経済共同体のように、経済政策も同じようにする、ほんとう経済が一体となり、政治的にも発展して一国らしいようなところが出てきている、こういうところに推し進めていくのには、相当の時間と歴史も要ります。そしてその心がまえと、問題は、各国の経済状態が大体つり合っているということが必要であるのであります。今お話しのように、早急に望むわけには参りません。共同体のようにはなかなかできない。しかし、できないからといってほうっておくわけのものでもございますまい。そこで、いかなる方法——経済共同体のようなことはとれません。あるいはまた、各国の輸出入その他の関係につきまして、東南アジア開発機構という一つの為替銀行的な、ライス・バンク的なものを考えるということになりますと、世界銀行あるいは第二世界銀行との重複その他の点もまたあるのであります。そこで、どういうふうな方向経済関係を緊密にしていくかという問題がいろいろございます。たとえば、今までの実績よりも伸びた場合においては、その伸びた額に対しまして関税上の恩典を与えるとか、いろいろな点もございましょう。しかし、いかんせん、関税上の問題になりますると、今お話しにありましたような英連邦というのもあります。そしてフィリピンとアメリカとの特殊関税制度もございます。フランスとラオス、カンボジア——昔の仏領とフランスとの特殊関係も中に入っているわけです。こういう点でいろいろ問題もございますが、しかし、何とかお互いの国同士、あるいは多数国同士で貿易の伸長を考えていく方法をとるべきではないか、それからまた、日本とかインドのような消費の多いところは相当の工場施設をしてもよろしゅうございますが、小国——小国というより、経済的に非常に単位の低い国は、非常な大工場、合理的な工場を持っても、販路に困る。そういうときには、たとえば鉄鋼をマラヤで作るならば、ビルマ、タイの方でその鉄鋼を買うというふうな調子にすれば、鉄鋼会社ができても、非常に明るいのであります。また、森林資源を持っておるビルマに製紙工場を作って、そうして他の国と一緒にその製紙工場の紙を消費していこうというようなことにでもなれば、産業の発展に非常に寄与する。そういう具体的問題につきまして、私は、今後東南アジアに参りました場合におきまして検討を加えてみたいと思います。なかなか困難であります。ラテン・アメリカよりももっと困難であるというのでございますが、しかし、困難を克服していく方法——今までの、お金を先進国が出すということだけでは十分ではない、出し得る措置を東南アジアの国々で考えていこうという段階に来ておると思っております。
  23. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、総理大臣に対する外交問題についての質問はこれで終わりたいと思います。ただ問題は、民主主義を守って左右の全体主義と対決するわが国外交方針を貫くためには、先般行なわれた領土問題の論議もきわめて重要ではありますけれども、それよりも、戦い敗れたとはいいながら、今日の日本の国際的地位と環境に置かれて、世界の平和と日本の安全と繁栄とをどう結びつけてわが国が積極的な外交方針をとるかということがきわめて大切ではないか。あなたの内閣は、国連協力といわれておりますけれども、抽象的な国連の協力ではない。私が外交問題の結びとして申し上げたいことは、今日日本が必要とすることは、政治的安定と統一性です。これは単なる議会の中における政党間の争いではございません。全九千万国民の中に政治的安定性と統一性を求めるということが、これからの難局に処して日本が心がくべき最大のものではないか。全国民に政治の安定性と統一性を求めるには、政治みずからが国家の行くべき志と目的を明らかにする、この目的に向かって朝野をあげて両三年に来る歴史の変遷を乗り切るという外交政策をとることが、今日きわめて緊要ではないか。その構想の一端として、私はアジア太平洋の友好同盟条約も考えておいていただきたいということを申し上げます。私が外交論争であなたに申し上げた要点は、要するに、抽象論ではない、大胆率直に国民に向かって日本の志と目的のあるところを告げて、国民に協力を求める、これ以外に日本が乗り切る態勢、力というものはない、その意味において私はあなたに国際情勢の分析と見通しについて承ったのでありますが、あなたの情勢の認識と見通しについて率直なる御意見を承ることができなかったことははなはだ遺憾でありますが、私の意のあるところは、政府は適当の機会に国の目的と志を明らかにして、全国民とともにこれを乗り切る態勢をとってもらいたい、これがあなたに対する私の要望であります。  次に、小坂外務大臣にお伺いいたしたいのであります。あなたは先般国連に御足労願いまして、いろいろ日本の主張をしていただきました。そこで私は、その主張の一々についてあなたから御返事を承りたいと思いませんが、あなたの演説された核実験禁止の演説に対しまして、いかなる成果と収穫が将来期待し得るか、この点承りたいと思います。
  24. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 核実験をぜひやめてもらいたい、そして核物質の貯蔵を廃棄し、核物質を戦争に使うことそのものをやめてもらいたいということは、われわれにして最も言い得る立場にある。ということは、われわれが唯一の被爆国であって、戦争十六年たった今日においてすら、放射能障害のために年々同胞が死亡しておる。こういう兵器を持つということは、戦争そのものもいけないのだけれども、これはもうその国のためではなくて、全人類のためである。どうかほんとう世界の各国が寄ってこの問題を考えようじゃないかという趣旨のことを私は申しました。反響はあったように考えております。私は、この核実験禁止の決議というものを、できるだけ多くの国連加盟国の賛同を得て、実行性のある、査察を伴う形において何とか国連においてまとめ上げていきたい、かように考えております。目下代表部においていろいろと各国と折衝している次第であります。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は小坂さんに対して、せっかくニューヨークまでおいでになって御努力願っておるのに言いにくいことでありますが、あなたの今の御答弁は、新聞でも拝見いたしました。しかし、それは従来言い古されていることである。何らの新味がない。国連外交においてもそうでありますが、今は抽象論、修身の説教を言うているような時期ではありません。日本は大胆率直にみずからの方針識見——たとえ将来誤っておっても、誤りがあれば是正したらよろしい。その時点に立って最善なる方法というものを、国連に大胆率直に、世界政治の向かうべき道を示してこそ、日本外交の権威があるのじゃないか。かような観点から考えまするならば、私は、あなたの今の御演説は常識的であり、かつ、何らの新味がない。考慮してもらいたいことは、原爆の被害を受けた唯一の民族としての日本立場における独自的な主張があるはずです。それは、単に人道的なものではありません。具体的に実を結ぶ方法があるわけです。私はあなたに言いっぱなしではいけませんから、将来の国連外交に対する希望の一端として申し上げれば、国連外交におけるあなたの核兵器禁止の演説の中で、私が気がついたところの一例をとりましても、全世界の科学者の中には三通りあるのです。一つは、アメリカ、イギリス、ソ連、フランス、核所有国の自分の国に奉仕している科学者。もう一つは、科学者ではあるが、この兵器こそは人類絶滅の反逆行為であるからけしからぬというので、人道的、宗教的立場から政治闘争に努力していただいておる科学者があります。もう一つの科学者、それはいわゆるパグウォッシュ会議における精神を帯びて、そして、政府にも協力しない、政治運動にも参加しない、しかし、この自分たちが作った核兵器が、人類の将来にとっていかなる弊害を及ぼすかということを、研究室の中で血涙をしぼって悩んでおる科学者が多くある。あなたが核兵器禁止の演説国連でされるならば、竿頭一歩を進めて、国連の中に、核兵器の害悪について調査する、さらに進んで、その核兵器禁止国の参加している各科学者も、科学者だけは政治活動に参加しないで、人類的立場をとろうじゃないか、国連中心とする超国家主義的な立場に全世界の科学者が動員できる、吸収できるという態勢を、この何らの政治活動をしない。パグウォッシュ会議精神を帯びて、今日苦心している科学者を中心にして、国連の中にそういう機関を設けて、核兵器禁止の実効をおさめられるような対策を、国連においてあなたが提唱されるならば、日本外交識見と、そして真実の、核兵器の被害を受けた国民としての悲壮なる叫びというものは、私は受け入れられるのではないか、かような見地から、あなたの名演説国連においてはけっこうです、しかし、抽象論ではなしに、具体的な内容を帯びた問題に進めていただきたい。その意味において、次の国連総会に出られたときに、この間の核兵器禁止のあれは一つ前提として、結びとしては、実際的な効果としてはこういうところで、万国の労働者団結せよということを、二十世紀の後半は、万国の科学者よ団結せよ、超国家的な立場において世界の平和を守ろうじゃないかという機関を国連の中に置くことを、次は提案されてはどうか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  26. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来非常に有毒な兵器として禁止された毒ガスであるとか、ダムダム弾であるとか、こういうものは敗戦国が使って禁止をされた、その禁止は非常にやりやすかったという面がございますが、今度の核兵器の場合は、その害悪は比べものにならないくらい大きいにかかわらず、今これを持っておるのは強国であります。従って、強国自身の自覚に待たざる限り、これがなかなか禁止できない。持っておる強国が実行せざる限り禁止ができないというところに非常にむずかしい点があることは、西村さんと私は同意見でございます。そこで、ただいまのような御意見もまことに傾聴いたしますが、国連総会の演説は年に一回でございます。今後国連総会はまだ開かれ、各種の決議が出し得るのでございまして、その段階においていろいろ研究して、ただいまの御意見等十分尊重いたしたいと思います。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 外交問題につきましての私の質問はこれで終わりまして、次は、財政経済の問題につきまして総理大臣にお伺いいたしたいのであります。  私、先般来あなたの施政演説、質疑応答を承っておりますと、どうも数字がよく入るのであります。これはものの正確を期するためには必要でありますけれども、数字というものは、扱う人の主観によって、そして、それをはじき出す基準によって違うのでありまして、私は数字論争をきょうしようとは思いません。しかし少なくとも、数字の説明主計局長か大蔵次官がおやりになるのであって、宰相になられた今日において、なお数字をもてあそぶ悪いくせはおやめになったらどうか、こう思うのであります。同時に、今日国民が希望しておるものは、数字ではありません。一昨日の株は、株式市場始まって以来の大暴落を告げております。物価値上がりのムードによって、国民は生活の不安におののいております。経済界、中小企業の諸君も、将来日本経済はどうなるか、きょうきょうたる不安に今日襲われている。これに対して、過去の政策が誤っておるなら誤っておる、非は非として率直に認められて、将来この難局をいかにして切り抜けるかという積極的な方針を打ち出して、不安におののいておる国民に対して安心感と自信と勇気を与えることが、今日の財政経済の任務ではないかと思うのでありますが、その大綱について承りたい。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 別に数字をもてあそんでごまかそうとか何とかいう考えは毛頭ございません。ただ、日本経済の進み方等、非常に進んだとか、あるいはまた進み方が非常にゆるいとか、早過ぎるとかいう問題は何によってやるかというと、やはり統計その他を一応あれしなければならぬと思うのであります。数字を言って悪ければ、数字は申しません。ただ問題は、私が想像しておった以上の経済の進み方が現われまして、国際収支に非常な、今まで一度経験いたしました程度の赤字が出てきたのであります。株価の問題も、最近非常に下げ続けております。しかし、下げ続けると申しましても、昨年の今ごろに比べると、まだ相当高いのでございます。私が組閣いたしましたときは、ダウが千百円余りであった。きのうは下がりましても千四百円程度、それが千八百円へ行ったということは非常な行き過ぎと、あの当時もいわれておった。数字を申して恐縮でございますが、どれだけ、どういうような動きということは、ちょっと言っておかぬとわかりません。取引所開所以来の暴落だと言われますが、その暴落をしても、なおかつ去年の今ごろより高い。私が組閣したときよりも高い。これがよく現わしておるのです。過熱しておる。われわれはそういうことのないようにやるのでございまするが、株をどうやって押さえるかということは、なかなか困難なことでございます。だから私は、自分の考えておった以上の進み方をしておりますから、しばらく足踏みと申しますか、進み方を、進んでもゆるくしてもらわないと、ひずみが出てくるからというので、今の緊急対策をとっておるのでございます。過去の経験から申しましても、私はこの状況は克服し得るもの、また克服しなければならぬ。それにはどういう措置をとるかというのが、今の当面の施策でございます。しばらくこの様子を見まして、そして、その現われによりまして、来年度の財政経済方針をきめたいと考えております。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 株の話はあとにします。株の動向については去年より高いとおっしゃった、私は見解が違いますが、しかし、これは経済界に与える影響が大きいですから、私は差し控えましょう。  そこで、昨日の朝井手君が、来年度の経済の見通しと予算編成の基本方針をこの際示してもらいたいとお述べになった、これに対してあなたは、まだその時期ではないというふうなお答えがあったように思います。本来ならば、従来の例でありましたならば、九月に入りますと、大体その大綱がわかるのであります。しかし、ことしは経済のいろいろな変化によってその測定が困難であるということであれば、一応それをお聞きいたしておきますが、しかし、先ほど申しましたように、日本の国民経済は将来についての多くの不安を持っている。来年度はどうなるのであろう。この基準を一応見通しをつける目安は、内閣の予算編成方針にあるということになりますると、私は人心安定の立場からいっても、かつまた、あなたが財政政策に対する自信のほどからいっても、これは至急お示しになる必要があるのじゃないか、こう思う。  そこで私は、井手君が相当きのうあなたに質問をいたしましたから、重ねて申そうとは思いません。この機会にお尋ねしておきたいことは、至急、すみやかにと申し上げたいのでありますが、大体あなたの今の状況からいえば、いつ時分になったらそれは示し得るのか、その時間の目安のほどをお示しを願いたい。内容はあとからでもけっこうです。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、最終限度はきまっております。来年度の予算を編成しますためには、経済界が一応動いておる、国際収支の見通しがなかなかつかなくても、一応の腹がまえはできなければ予算が作れませんから、十二月の中ごろまでには一応の見通しを作らなければならぬことは当然でございます。しかし、それまでにおきましても、いろいろな動きを見ながら私は検討を続けていきたい。ただ発表までにはなかなかむずかしいと思います。しかし最終限度は、十二月の中ごろまでにはつけなければいけません。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 それはきのうも承ったのですが、十二月の中旬に予算の大綱をきめるというのは、これは事務的にきまるのです。大綱というのは、そうじゃない。数字のこまかいことは別として、来年度の景気の動向、それは国際経済の動向をにらみ合わせながらどうするかということを、大体において九月あたりにきめておるのが例なんです。十二月の中旬にあなたはきめるとおっしゃったけれども、これは大蔵省が事務的にきめて各省に内示する予算案なんです。私の聞いておるのは、そうではない。経済の動向についての見通しと大綱を示してもらいたいということが、今日の国民の声である。しかし、きのう井手君からこれについて相当お話がありましたから、私は深くはそれは申しません。十二月の中旬は大蔵省が示す事務的なものでありますから、それ以前に、私はすみやかに大綱を示してもらいたい。それだけ申し上げまして、次の質問に入りたいと思います。  私は、大まかに申しまして、今日の経済の逆調を来たした理由は、二つあると思います。一つは、過去三年間異常の上昇を続けてきて、ここらで一息入れて、そして走り過ぎたもの、おくれたもの、でこぼこ、跛行性というものを、一応一休みして足並みをそろえて、そして基礎固めをする。日本経済の次の飛躍発展のために基礎を固めるという時期に——基礎固めをせずして走り過ぎたんじゃないか、うちわであおり過ぎたんじゃないか、このとがが今日きておる。もう一つの問題は、所得倍増計画を事務当局が七・二%と立てて、あなたがそれを政治的な立場から九%以上に引き上げられたが、そのときに、あなたの構想の中に、国際経済の分析と見通しというものについては的確な判定が欠けておったか、見通しが誤っておったか、この二つが今日日本経済の苦悶の原因のおもなものではないかと私は思うのでありますが、あなたのお考えはいかがですか。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 経済発展の過程におきまして、あるときに足踏みをするということは、一つ方法でございます。その例は、昭和二十八年から九年にかけてと思います。私が一兆円予算を政調会長に主張したときに、こう説明いたしました。子供が風船玉をふくらして、破れる直前にこれをやめて、空気を出して、そうして風船をもむと、その次にはもっと大きくふくらしても破れない、経済というものはこういうものだということを私は説明した覚えがございます。そういう例もございます。一たん休んで、地固めをする。それから三十二年のときには、思惑でいろいろな危機が来た。これは、思惑を押える強力な手段をとることもございます。三十六年のこの状態は、休むべきか休まざるべきか、この問題は考えました。私は日本の将来のことを思い、そしてこれから出てくる雇用関係等を考えますると、七・二%という、数字を言っては恐縮でございますが、そのことよりも、今までの日本の力でこのくらいはいくだろう、しかし、このくらいいくだろうというのを少し控え目にして私はやったのであります。自分自身としては控え目にしております。しかるところ、控え目にしてこれだけやりますと、政府財政も非常に大きいと言われましたけれども、公共投資、道路、港湾等においてはまだ足りません。今回のこういう状態が起きたことは、私は政府財政措置からきたとは思わない。ただ私の遺憾に思うことは、私が腹八分目と申しましたこの数字よりも、私がこういうようになるのじゃないかという相当なところまで実はいってしまったのが、ひずみのもとでございます。そういうことを考えなかったか、考えましたから腹八分目と言ったわけなんですが、その通りに今の経済機構その他で行けなかった。しかし、こうしたことはまことに遺憾であります。世界情勢の見通しを誤ったか。見通しは、これは問題は輸出でございまするが、輸出はある程度見通しよりも減って参りました。しかし、それにいたしましても、輸出の減が国際収支に非常な影響を及ぼしたというわけのものではございません。主としてこれは輸入の激増でございます。輸入の激増はどこからきたかといったならば、私が想像した以上の輸入のために、物資の支払い並びに運賃の支払い等で来たのであります。だから見通しは、それは輸出が二%予定より違えば、誤ったと言われれば誤りましたでしょう。しかし世界情勢に対する分は、そう見通しを誤っておりません。ただ問題は、国内の過熱ということにつきましての私の、何と申しますか、腹八分目、それでこのくらいでいこうということが、国民に理解と共鳴、ことに産業人に理解と共鳴を得ることができなかったということは遺憾に存じておるわけでございます。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が申し上げたのは、経済の成長の今日の苦境は、国際収支の限界と海外の国際経済の見通しが誤ったところにとががきたのではないか、こう申した。あなたはそれに対して、見通しの誤りはない、こうおっしゃいました。私は、事務当局が立てた七・二%というものが適当であるかどうかは別といたしまして、少なくとも政治に携わる者の立場としては、少しでも景気をよくして国民生活を安定したいというのでありますから、それは九%に伸ばし、一二%に伸ばしたいというあなたの気持はわかります。しかし、その希望とは別に、それを制約する要素が二つある。一つは国際収支の面です。一つは、海外における有効需要の問題です。あなたは、海外における国際経済の見通しは誤っていない。けれども、輸出は半分になった。輸出は半分近い。私の数字が誤っておれば訂正しますよ。しかし、輸出は所期よりはるかに低いということは言える。これは一つの誤りです。それから国際収支が、あなたは本年の施設演説の中で、本年度末には二十億ドルの手持ち外貨はありますと言明したにかかわらず、万人見るところは十二億ドル、十三億ドルの危険ラインに迫ることです。政府説明、すでに十四億四千万ドル。しからばここに、経済成長というものは、私どもが憂えたように、国際収支と海外における有効需要、この二つの点から制約されておるという経済上の法則が厳然としてきておる。そこで、あなたが言いたいことは、この二つの事実を無視して、あなたは今最後の言葉の中で、聞き捨てならぬことをおっしゃった。それは、日本経済の私の政策に対して、国民特に経済界が無理解であり、協力をしなかった、こう言うのであります。これは、責任を他に転嫁することであります。何となれば、あなたは、経済の独走、行き過ぎに対して、ブレーキをかけるときに政策上拍車をかけた、その結果が成長の行き過ぎとなり、過熱となって、今日の経済界のとがが出てきたということにお考えになりませんか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、別に経済の成長をあおったとは考えておりません。そうして、責任を他に転嫁するものじゃございません。結果から申しまして、私の予定しておった、そしてあなた方に説明いたしました予算並びに経済大綱の通りにいかなかった、どこがいかなかったかといったら、設備投資が過大である、こういうことでございまして、私は別に今まで経済の過度の成長をあおった気持はございません。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、あなたがあおったという理由を、今とっさの場合ですから正確な表現は困難でありますが、今考えると、二つあります。一つは所得倍増ムードです。これにたまたま国際自由化の問題と相関連してあおった。政策的には、すでに所得倍増計画において、民間企業にまかしておいても相当行き過ぎるであろうということを予想されながらも、公定金利を二回にわたって引き下げられた。これはブレーキをかけなければならぬときに、あなたは、低金利をもって国際競争力に対処するのだという名目をつけられまして、金利を引き下げられた。そして、日本経済は将来奇跡的な発展を遂げるのであるという楽観論は、多くの民間経済人、国民全般に一つの楽観的ムードとなり、しかもそのムードは運賃その他の物価の値上げになる。この値上げを抑制し、労働賃金の上昇をそのまま承認するとすれば、どうしても企業を近代化して増産にかからねばならぬという空気の中に、あなたは所得倍増論と低金利政策をもって、ブレーキをかけるところを拍車をかけられた。私の申し上げるのは、幾多ありますが、例をあげれば、その二つに対して、あなたは、今日どういうふうな方策をもちまして、この過熱状態、そして将来の恐怖的な経済の不安に対して対処するかということを承りたい。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 公定歩合の引き下げは、われわれは多年考えておりまして、この二銭というものは高いのだ、これは貿易自由化の問題から考えても、また経済の伸長の点からいっても、二銭というものが高いということは、私は常々考えておった。これは当然下げるべきものでございます。だから私は、経済の基本政策によってこれは下げていく。下げたことが、あおったか、こういう問題になりますと、私はそうとは思いません。これは考えようによって違いましょうが、金利、公定歩合のきめようによって日本の産業をどうこうしようということは、理論的には考えられますが、私は、実際にはあまり力がないんじゃないかという気持を持っております。それはなぜかと申しますと、日本の産業の今の過当競争というものは、ことに設備の過当競争というものは、公定歩合の上げ下げによってきまることはそう強くない。だから、私は、本然の姿に正常化するために下げたのであります。これは、私は、あふったということはいかがなものかと思います。この点は見解が違う。私は、金利を上げるとか上げないとかいうことよりも、金融操作が非常に大事なことで、私は、この点におきまして経済界に反省をしていただきたい。過当競争をやる過熱の設備投資をやめてもらいたい。それが金利を引き下げたからやったということは、私は、これは形式的の問題であって、実際には、金利よりも過当競争、過熱が原因である。これは全然関係ないとは申しませんが、そういうものは第二義、第三義的な問題と私は考えております。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、日本の産業の特殊事情は、大別して二つあると思います。労働問題と金利の問題です。この問題のために、金利が二銭は高いから引き下げるというあなたの御意見に対しては、私は賛成です。ところが、時期が悪かった。そこで、そのとががきて、今度それを上げなければならぬ。二回にわたって金利引き上げをした。そうすると、あなたのおっしゃるところはとんちんかんになってきやしませんか。同時に、あなたが今おっしゃったように、かつて、経済は私にまかしておいてくれと胸をぽんとたたきながら、今は経済界の協力が足らぬ、こう言うのです。まかした結果がこうなってきている。金利政策においてもそうである。金利の高いことは国際競争力を低減しますから、私は賛成であります。しかし、今上げねばならぬという事態が起きたことは、あなたの政策上の一大失態とお認めになりませんか。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 金利の引き下げには賛成——これは、通常の状態においてあなたと私は一致いたしております。しかし、過熱が起こった場合に、金利は低いことを望むからといって低くするわけでもございませんし、据え置きよりも、過熱の状態のときには、臨時の措置として公定歩合を上げるということは、普通の措置であり、一つも矛盾してないと思います。それから経済につきましては、私は、内閣を組織しておる以上、責任を持ちます。しかし、経済のことを、今一時の現象を見てこれをどうとかこうとかいうことよりも、これはやはり長い目で見なければならぬ。私は、この前もあえて申しましたが、いろいろいわゆる難関を越えていかなければならぬ。難関を越えるつど、日本経済は伸びていっておる。非常手段と申しましても、イギリスのような非常手段はまだとっておりません。だから、あまりに、経済界が過熱と同時に、考え方経済問題に少し過熱過ぎるんじゃないでしょうか。私は、大きな気持で、長い目で見て、これをお互いに越えていこうというのが建設的な議論だと思います。
  39. 西村榮一

    西村(榮)委員 その問題に深入りしていますと、時間の制約がありますので、私は次の質問に移りたいと思います。  あなたは、本年度予算編成のときには、本年末には手持ち外貨は二十億ドルに達する見込みであるということを言われて、国民に多くの希望を与えました。八月末に十六億六千万ドルとなり、政府の見込み額でも、明年三月には十四億ドル台に落ち込むのであります。一般の専門家が見るところは、大体それに拍車をかけて、短期外資その他の流出を入れて、十二億ないし十三億ドルの危険ラインを彷徨するのではないか、こう心配いたしております。  そこで、過去の問題は別といたしまして、私はあなたにお尋ねしたいのでありますが、そういう場合においては、日本の国際収支、手持ち外貨、そして、それが輸出入にさしつかえないようにするためにはどういう方策をおとりになるのか、承りたい。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 手持ち外貨がどれだけでいいかということにつきましては、いろいろ議論がございます。しかし、私は、その議論よりも、日本経済に対する外国の信用いかんということが根本だと思います。今のお話のように、ユーロ・ダラーが出ていくんじゃないか、あるいは日本の銀行への短期の貸付金が回収されるんじゃないかということを心配する方々がおりますが、それよりも大事なことは、なぜ出ていくか、なぜ短期の貸付を外国が断わるかという問題を、先に研究すべきじゃないかと私は思います。そういう意味におきまして、外貨がどれだけが限界だということは、何人も言い得られない。ただ、今までの常識から申しますと、輸出入額の四分の一ぐらいはどうだとか、あるいは輸出入額の三カ月分ぐらいはどうだとか、こういうふうなことを言っているのがございますが、問題は、日本の国力、経済力に対する信頼がもとをなすものでございます。しかして、こういうことがありますから、西村さん御承知の通り、フランスの平貨の切り下げその他の危機におきましては、平貨を切り下げなければならぬような危機に対しましては、IMFは相当思い切った援助をしております。また、先般のイギリスの為替危機の問題につきましては、十五億ドルの援助、また、日本の分も五千万ドル加わっておりますが、こういうのは、われわれは年の当初に予定していない五千万ドルの減少でございます。等々考えますと、今、最低限の外貨はどれだけだということは、議論するのにはあまりにもむずかしく、取りとめのない議論じゃないかと思います。
  41. 西村榮一

    西村(榮)委員 なかなかあなたの答弁は苦しそうでありますけれども、あなたが日本経済の将来を展望して、議会において述べられたのは、日本経済は三本建で安定している、一つは卸売物価が安定している、第二は輸出が伸びている、手持ち外貨は本年末には二十億ドルに達します、以上をもって私に経済をおまかせ願いたいと、ぽーんと胸をたたいた。この輸出の問題、卸売物価の安定、手持ち外貨、三本建でも、今日くずれている。そして、卸売物価の安定をはかろうとすれば、輸入がふえます。外貨が減ります。生産が増強するまでまだ時間があります。その間の危機を一体どうするか。それからあなたは、日本人は心配しておるけれども、外国人は信用している、こうお述べになった。しかし、私は、今統計は正確にありませんが、最近における輸出ユーザンスは、従来の六十日から一カ月になり、最近は、はなはだしきに至っては一週間になっている。これは外国の日本経済に対する信用の度合いを測定する資料になります。第二の問題は、ユーロ・ダラー三億一千四百万ドルを初めといたしまして、ホット・マネーの五億ドル、漸次これの入る率が減ってくるとともに、出ていく率が多くなりつつある。外国人が信用しているか信用していないかということは、甘い政治言葉は別といたしまして、冷厳なる経済原則は、今言う輸出ユーザンスと、短期資金の流入の減少と、そうして出ていく率が多くなってきている。私はこういうふうな事態を憂慮いたしまして、過去における問題は別として、将来この危機に対してどういう対策を講じておかれるのか。あなたが、日本経済は心配ないから安心してくれ、こういうなら、今はあなたが政治の責任者ですから、私はあなたのお言葉を信用するより仕方がない。事実の証明は、半歳の後でなければ証明できません。しかし、私がお尋ねしたいことは、あなた以外のほとんどの人々が、日本経済の将来を憂えている。この憂いに対して、安心する方策を提示して、国民の向かうべき道を明らかにすることが一つ、しかして、一般の人々の憂えている事態が起きたときには、その場合にはこういたします、この対策をもって切り抜けますと、両様のかまえを国民に提示して、安心してもらい、勇気と自信を持たして、この危機を国民とともに突破するということが、今日のあなたの立場ではないか。その意味において、あなたの楽観論とは別に、万一のときがあったときには一体どうなさるか、これを国民に安心せしめてもらいたいというのが、私の質問の趣旨です。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまユーロ・ダラー三億一千万、ホット・マネー五億とおっしゃいましたが、私の計算にはそういう数字はございません。それで、昭和三十二年のときの状況よりも、まだ今の方がよろしゅうございます。そうしてユーザンスの問題、一カ月が一週間になった、こういうことは、何かの誤解かと思います。輸入ユーザンスは今大体十二億ドルくらいございます。しかし、外国への貸付その他輸出ユーザンスが七、八億ドルございます。だから、外貨と輸入ユーザンスのような買掛金とを比べる説が新聞に流れておりますが、その場合には、われわれの外国への貸付並びに輸出ユーザンスが載っていない、非常に誤解を招く数字がときどき出ておるのであります。私は、今の状態は三十二年よりもよろしゅうございます。そうして、ユーザンスが急にきつくなっておるとも考えませんし、また、短期資金はときに減る場合もありますが、またもとへ戻って、大体落ち着いた動きをしておるのであります。そこで、私の見通しでは、大体、本年度末には十四億四千万ドルですかの数字の外貨は確保できると思います。しこうして、この程度あれば大体越せるのじゃないか。私は、来年の四、五、六も相当赤字が出ると思います。そうしてまた、七、八、九の第二・四半期は赤字がある程度減ってくるだろうが、今の政策が国民の協力を得れば、来年の秋ごろには大体とんとん、収支均衡の徴候が出てくるのじゃないか、こういう見通しをいたしておるのであります。  そこで、問題は、十四億四千万ドルでいいか悪いかという問題でございます。私は、十四億四千万ドルなら、日本の貿易状況から申しまして、大体泳いでいけると思います。もし、これが、まだ輸入が足りなくて相当ふえてくるとか、あるいは落ち方が、少ないという、見通しよりも悪くなるという場合におきましては、先ほど申しました、フランス、イギリスがとったような措置はとれるのであります。しかして、その額を申し上げますと、昭和三十二年のときには一億二千五百万ドルの借り入れでございましたが、IMFから、増資いたしました関係上、また、日本がイギリスに貸した五千万ドル等を加えますと、少なくとも二億ドルとかあるいは二億五、六千万ドルは、私は、楽に、ほとんど自由に借り得ると考えておりますが、今借りる気持はございません。しかしてまた、日本の特殊事情といたしまして、綿花や、あるいはくず鉄や、いろんなアメリカからの輸入の分がございます。これは御承知の通り、綿花借款で、四千万ドルあるいは六千万ドルはずっともうそこで借りておるのでありますが、昭和三十二年のときには、この六千万ドル以外に綿花借款をふやしたり、あるいは大豆、小麦等につきましてのアメリカ輸出入銀行の特別の融資を受けております。これも相当期待し得るのであります。この前は一億一千万ドルでしたが、実際は一億百万ドルくらいの借り入れになりました。そうしてまた、日本は相当の定期預金をいたしております。そうして、今でもアメリカの証券を持っております。定期預金を相当しておりますので、向こうの銀行が日本経済に対して、協力するならば、私は、ユーザンスがまだまだふえるとか、あるいはユーザンスの期限がきたものにつきまして、アメリカ銀行の協力を得る道もあるのではないか。まだそこまで手を伸ばしておりませんが、いろんな方法はあるのでございます。だから、私は何も楽観しておるというのではございませんが、過熱の設備投資をここで控えてもらいたい、そうして不要不急のもの、たとえばインスタント・コーヒーとか、あるいはエビだとか、ああいうなくても済むものはしばらくがまんして下さいというので、輸入緊急措置をとったわけでございます。この措置をとっていけば、私は、自分の見るところでは、ただいまのところ、協力を得ればこれを乗り越え得ると考えております。また、乗り越え得るような施策を今後もし、来年度の予算におきましても考えなければならないと思っておるのであります。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は手持ち外貨のことについて深入りする時間がないのでありますが、あなたの今の説明と御意見には、私は別な心配を持っております。たとえて申しますと、あなたは三十二年度よりいいと申しましたが、三十二年度より悪かったら、日本経済は破産です。それから十四億四千万ドルで日本の今日の輸出入の貿易がまかない得るかいなやということは、専門的な議論になりますが、私はもはや十五分しかないそうでありますから、仕方なしに次の質問に移ります。  そこで、私は、今の日本経済の大きな問題は、国際収支の問題と有効需要の問題だと申しました。すでにあなたも御存じの通り、輸入は、一〇・三%の予定のところをその三倍近く超過いたしました。輸出は、九・四%の見込みのところへ現在では六・三%しか伸びておりません。そこで、問題は、今の時点において、今の生産力においての海外における市場の開拓、有効需要をいかにして確保するか、第二の問題は、あなたは、行き過ぎたほど拡大された生産力を、将来その市場を海外のいずこへ求められるか、その計画の一端をここにお示しをいただきたい。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 それが今回の輸出助成措置であり、また、輸出入銀行への資金の繰り入れ等々でございます。これはプラント輸出のみならず、あらゆる場面におきまして、輸出のドライブをかけなければなりません。私は、今回の輸出措置、すなわち金利を二回にわたって据え置いたり、あるいは輸出産業への特別償却というようなことは、いまだかつてあまりないことであると思います。何と申しましても、生産がこれだけ伸びてきた。今国内の内需でやっておる。これを内需からやはり外に向けることをいたさなければなりません。たとえて申しますと、鉄鋼なんかにつきましても、予定しておる鉄鋼の各社の輸出状況が、大体予定の七割くらいにしか今いっていない。通産大臣にお願いしまして、各社が少なくとも予定しておった鉄鋼の輸出をしてもらいたいということを、特に勧奨いたしておるのであります。だから、私は、商社なんかの状況を見ましても、従来の商社の輸出、輸入あるいは国内取引等々に分けまして、えてして国内の取引の上昇が多いし、輸出の取引の伸びが少ないし、輸入が非常に多くなってくる。こういうものを個々に商社ごとに検討しまして、政府の方でお願いして、もっと輸出マインドを起こしてもらうようにという、いわゆる行政的の措置も今とってもらいつつあるのであります。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、かつてあなたが、日本の高められたる生産力を、国内市場を開拓してそれでまかない得るのだと言われたときには、ひやりといたしましたが、今有効需要を海外に向けるというお話を承って安心いたしました。そこで、あなたは、今輸出奨励策として輸出入銀行の増資をした、こう言われるのでありますが、私は、それは不十分な額でありますが、一応了解します。しかし、輸出努力は単に金だけではありません。もっと、やはり商社だけではなしに、国家自身の開拓と、そして、それらの国々の購買力をどうして育成するかということが必要じゃないか。一そう具体的な——輸出奨励についての輸出入銀行の増資だけではなしに、それらの具体的な政策の立案を希望いたします。  そこで、その問題はそれとして、私は、ここにあなたに切に考えておいていただきたいことは、今日のドル飢餓は、輸入が多くなって、輸出が少なくなった。そのアンバランスは、大体において目の子算用六億ドルです。それは日米貿易関係のアンバランスと匹敵するのです。問題は、アメリカが六億ドル日本から買うだけの量を買ってくれれば、一応この危機は切り抜けられるのです。日米安全保障条約の軍事の一面は、日米経済協力でした。これで国民は一つの明るい希望を持った。ところが、政治的に甘い言葉は交換されるけれども、現実における日米間の経済的なあり方というものはきわめてきびしい。あなたが、この点について、ケネディ大統領との間に、日米貿易のアンバランスについて具体的に折衝していただいたかどうか、お伺いしたい。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 輸出入のアンバランスが六億で、そうしてその六億は、日本アメリカからの輸入超過だ、そういう見方もありますが、カナダからも輸入超過でございますし、今来ておられるマラヤとも非常な輸入超過でございます。また、輸出超過のところもございます。ただ、日米の貿易関係と申しますと、常に原材料を向こうからとりまする関係上、何と申しますか、昔は輸入額に対して輸出額が半分くらいのが普通であったのであります。一九五八年にこれが十一億ドルとんとんくらいになりました。そうして、昨年はまた輸入が増加いたしましたが、本年は、大体そうでございましょう、十一億ドルくらいの輸出で、十七、八億ドルの輸入になると思います。しかし、こういうことはアンバランスでございますから、ケネディ大統領、ラスク国務長官に対しましても強く要求しておりますし、私は、ニューヨークの商工会議所並びに日本商工会議所等三団体の席上、数百人の前で、日米貿易のアンバランスと、日本の所得倍増計画と、そうして、アメリカ人に日本経済成長に対して協力を願わななければならぬということを演説いたしました。幸いに、ニューヨーク・タイムスの社説におきましてもこのことは引用してくれておりまして、できるだけの措置は滞米中に私はとった考えでおります。また、十一月初めに開会いたしまする日米閣僚懇談会、これはわれわれとして前から望んでおったことであるし、また、先々回の国会でも、この問題について、この席で議論をしたこともあるのでございます。幸いにわれわれの申し出にきん然と応じてくれました。こちらで第一回の会議を開き、貿易問題、労働問題等々につきまして、日本に対する認識をもっと深めてもらって、経済交流をうまくやっていこうというのが、私の今の考えでございます。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の今問いたいことには、簡潔にお答え願いたい。日米貿易のアンバランスに対して、輸入制限その他について、ケネディ大統領と具体的に話をされたかしないか、これだけです。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 ケネディ大統領のみならず、ラスクとも話をしております。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 その話をした結果が、その後においては、日本の繊維品その他雑貨のきびしい輸入制限となってきている。紡績界の代表は、この会談から帰り来たり、アメリカから裏切られた。日本経済失望大なるものがある。あなたはその話をしたと言う。話の仕方がまずかったか、下手だったかということは、私は問うところではない。しかし、その結果が現実における日本経済、日米間の経済に現われていないということについて、ケネディ大統領との会談をもう一ぺんむし返して、この問題を日本経済の現在の危局に臨んで打開する御意思があるかどうか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、ケネディ大統領に数字を出して話をしました。とにかく一九五七年に、日本の綿織物の輸入がああいう制限を受けまして、その後香港の対米輸出が非常にふえてきた。これを数字を出して説明したら、前の経済団体からも自分は聞いている、この問題について善処しよう、こう言ったわけです。その後、ジュネーヴにおきまして会議が開かれました。そのときの会議の模様では、非常に日本の財界の人は裏切られたというふうな気持を持っておられました。私は、ボール国務次官に帰朝後会いまして、これを強く言っております。しかも、会談の間において、輸入国で一応話をし、そうして輸出国とまたその次に話をすると言ったときに、輸入国ばかりで話をしてもだめじゃないかと強く私は言ったのであります。しかし、ジュネーヴ会議の結果を私は見守っております。ジュネーヴ会議の結果におきましては、お話のように、非常に不満の意を綿業者は持ったようでございます。しこうして、そのあと、内地におきまする綿織物会談におきまして、私は、今までのようなくぎづけられたものよりも相当全体の数字がふえておりますし、また、向こうが強く主張しておった品目別の融通の点も、相当日本の言うことを聞いてくれまして、今の綿業は、私のところに、これで一応済んだというお礼に来たのであります。私は十分とは思いませんが、ジュネーヴの会議できめられたアメリカの態度は、東京における日米会談でよほど緩和せられて、十分ではないが今までよりもよくなったという確信を持っております。これは、みんな欲望がございますから、十分ではなかった、不満だと言われるかもしれませんが、事実におきまして、一九五七年から今まで五年間日本がくぎづけにせられておったことがほぼ解かれて、それで昨年よりもある程度ふえたということでございます。わずかでも、大体綿業者はこれでやっていこうということに相なっておりますから、私は効果はあったと思います。
  51. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、あなたが数字をあげて説明されたというのでありますが、それにもかかわらず、その後の結果が逆に出ているということは、数字に対する説明が説得力が不足であったのか、ケネディ大統領が信義を裏切ったのか、原因はいずこかにある、そこで過去のことを問う必要があります。あなたはその話を現時点において再度具体的に交渉される御意思があるかどうか。話し合ったことを確認して、実行してもらいたい、それだけでいいわけです。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 ケネディ氏に数字をあげて話をいたしました。これは私ばかりでなしに、佐藤使節団も話をいたしております。しこうして、そのことはよくわかっております。ジュネーヴではそれが十分に実現できませんでした。しこうして、こちらでの話では、これでは足らないという人があるかもわかりませんが、綿業者は、一応今までの過去を払拭して新たにスタートする、まあこれでがまんして進んでいきましょう。しかも今まででも、割り当てられておった量がいっていない。そこを融通をし合って、実質的にふやすように日本も努力をこれから加えていかなければならぬ。私は、今のところで満足する状態とは言いませんが、ケネディ並びに米国政府は一応聞いてくれた。しかし不十分でございますし、また綿織物ばかりではございません、ほかの関係もありますので、日米閣僚会議におきましては、日米間の貿易の正常化、そしてまた伸展ということにつきましては大きい話題になると考えております。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 総理は数字を並べて言われたとおっしゃいますが、私は日米繊維会談の結果の概数を申し上げます。  ワクに対しては、今回一二%の増であります。昨年の実績に対しては四〇%の増加になっております。さような実情でございますから、実際の現物を国内でまとめることができますならば、十分繊維業者の要望にこたえられる、こういうふうに考えております。
  54. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がありませんから、私は簡単に質問をいたしたいと思います。要点だけ申し上げます。  一つは、来年十月に日本は九〇%自由化を実行するという協定をされました。しかし現在の経済の動向によってその自由化の協定が実行できなくなったならば、それを実情からいって延期せざるを得ないのではないか、これが一つ。  次に、日本経済は、何とあなたが弁明されても、一つの大きな苦難に直面しております。デフレと称するか、恐慌と称するか、不況と称するかはいざ知らず、一つの苦悶に直面しております。これに対してどう対処されるか。年末の金融、将来の見通しについて。この二点をお伺いいたしたい。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国の自由化については、先般IMFから担当局長が来られまして、いろいろ日本の実情を調べた上、ああいうふうな決定になっております。私は世界の大勢から申しまして、自由化にはできるだけ早く進んでいきたい。しかし、国内の事情も十分考えなければならぬ。この二つの問題をかね合わせて進んでいこうといたしておるのであります。お話通りに、日本経済が一番大事でございますから、日本経済でしょい切れないようなことになったら、これはIMFも考えることでもあるし、われわれも考えなければなりませぬ。しかし、この問題を今から安易にどうこう言うことは、私は適当でないと思います。日本経済世界の大勢によってきまるべきもので、われわれはその方向に向かって今努力いたしておるのであります。  第二の、今の経済界の現情勢において、金融その他につきましてどういう措置をとるかという問題でございますが、先ほど来問題になりました金利の点・私は一番しわ寄せのある中小企業への金利の引き上げはやめてほしいということを強く行政指導するように、大蔵大臣に指示いたしました。そうしてまた、金融の金額につきましては、三金融機関に、御承知の通り年末あるいは長期の融資をいたします。しかしこれだって、情勢によっては今後もこれを増額しなければならぬ情勢になったときは、やぶさかではございません。また、この三機関に対しまする三百五十億という問題は、中小企業金融の一部でございます。やはり一般金融機関並びに相互銀行、信用金庫等の問題が相当大部分でございますので、これが指導につきましても、大蔵大臣に善処方を要望いたしておるのであります。情勢の推移に応じまして、適当な措置をとることはわれわれの務めでございます。あらゆる方面を注意しながら善処いたしたいと考えております。
  56. 西村榮一

    西村(榮)委員 簡単に御質問します。  あなたは、経済の成長が思ったより行き過ぎて、それが過熱状態になった、こうおっしゃった。これは私も同感であります。そこで、行き過ぎればブレーキをかけるべきだ。私は従来の金融政策が誤っておったということをくどくどしく申し上げる必要はありません。ただここにあなたにお尋ねしたいことは、この事態を憂えて、日本銀行は五月ごろ金利二厘の引き上げを要求したが、政府はこれを渋り、ついに七月二十二日になり、次に九月二十八日になり、渋々これを承認した。ブレーキをかけるチャンスを失している。従って禍根は拡大された。この政策論は別にして、日本銀行が政策を決定するには、これは日本銀行の政策委員会の自主権にある。それを政府が干渉した、そうしてチャンスを失した。そこで政府がこれを干渉し得る法的根拠は、日銀法四十三条の一般命令権。この四十三条は、戦争または地震その他天変地変の非常事態において初めて発動されるのであって、これ以外においては日本銀行の自主的な金融操作にまかせなければならぬ。それを権限を侵してそうしてチャンスを失した。私は、日本銀行の自主性の立場から、今後こういうことのないようにしてもらいたい、こう思うのですが、いかがですか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 公定歩合の問題は、日銀総裁並びに大蔵大臣の所管事項でございまして、私は大蔵大臣にも日銀総裁にも、公定歩合の問題については、自分は全然タッチしない。大蔵大臣からあるとき意見を聞かれましたが、即座に、僕の意見を聞くべきにあらずと言い、私は関知しておりません。従って、御質問に対しましては、所管の大蔵大臣からお答えさせることにいたします。
  58. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がないからけっこうです。  最後に私はあなたにお尋ねをしておきたい。一月三十一日の本会議においてわが党西尾委員長が、明年度の経済は少なくとも後半期になれば楽観を許さない事態が起きるおそれがある、これは私だけの意見でなしに、世論である、今や国民は、下半期の経済に対して深い憂いを持っておる。そこで、あなたの見通しがはずれて、世人が心配しているがごとき事態が起きたならば、総理大臣はいかなる責任をおとりになるか、この質問に対し、あなたはかくお答えになった。「責任をとるほどの見通しの誤りは起こらぬと確信いたしております。」しかるに今やあなたは、経済成長の三本立、卸売物価の安定性、外貨保有高の二十億ドル、輸出の増強、三点とも見込みが狂ってきている。本会議の公開の席上においてあなたは、「責任をとるほどの見通しの誤りは起こらぬと確信いたしております。」と述べておられたのでありますが、今や事実となってそれが現われてきている。少なくとも政治家は、数字の論議ではありません、姿勢を正しゅうして国民に相対することが政治家の姿です。とるべき責任は当然とる。その責任のとり方が、誤りは誤りとして、将来どうするかということもあります。私があなたに責任をとれと言うことは、責任のとり方は幾多ありますけれども、あなたのように先般来本会議予算委員会を通じて数字を並べて強弁を事にしておるのは、居直り強盗です。政治家たる者、誤りは誤りとして認め、将来をどうするかということが、これが真剣なる政治家の態度です。従って私は今、八カ月前西尾委員長があなたに対して、いかなる責任をおとりになるかと言ったことに対して、あなたはかくお答えになったが、この結論をあなたはどうおつけになるか承りたい。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 西尾氏の言われた問題は、私はあのときどういうふうに言われたのか、非常な過熱になるか、あるいは不景気になるか、この問題がはっきりわからなかったのであります。しかし、先ほど来議論しておりますように、私は日本経済につきまして、今非常に苦難な場合にありまするけれども、この苦難は越えなければならないし、越え得る苦難と思っております。そうして、責任をとる、とらぬの問題ではございません。私はこれに対して適当な措置を講じて、国民の期待する安定成長に持っていきたい、このために努力いたしておるのであります。身を慎んでおります。一生懸命に予算とともに進んでいこうと勉強いたしております。私は、このことによって日本経済が一日も早く安定成長に向かうことに努力することが、私の務めであると考えておるのであります。
  60. 西村榮一

    西村(榮)委員 もう時間がありませんから、これを最後にいたします。  私は、あなたが日夜精進努力しておられることを認めるにやぶさかではありません。しかし政治家というものは修身の先生ではないのです。九千万国民の生活と安全をリードしていく一つ識見と見通しが先決問題です、人格とともに。今あなたはそれを誤っている。誤った責任をどこにとられるかということは、言辞を弄して免れるべきではありません。誤りは誤りとして、率直にあなたはお認めになったらどうですか。第一あなたは、過去八カ月間のあなたの言動は日に日にネコの目のように変わっておる。たとえば一月末日に経常収支が赤字になったときに、将来の国際収支のバランスに対してあなたはどういうふうな対策を講ずるかという質問に対して、あなたはかくお答えになっておる。今幾ら赤字が出ても総合収支が黒字でありますから決して御心配は要りません。これが第一です。ところが今度は総合収支に赤字が出た。そのときにあなたがお答えになったのは、いや少々赤字が出ても八月になればよくなりますから御心配は要りません。ところが八月になりまして、がぜん一億三千万ドルという日本始まって以来の赤字を出しておる。さらにあなたは、公定歩合の問題でもそうです。そうして大阪の商工会議所において、とうとうとして日本経済の将来性について楽観論を述べられておる。さらに東京に帰られて、内外情勢研究会の年次総会において、どうも日本人は神経質過ぎて困る、外国人は日本経済を少しも心配しておらぬ、どうも日本人は肝っ玉が小さ過ぎて神経質過ぎると、国民をおしかりになっておる。これが九月七日、ところが九月十一日になりまして、この国際収支のアンバランスと日本経済の将来についてがく然とされた結果が、総合対策を立てられて、国際収支改善の緊急政策を立てられた。国民の憂えていることは、あなたはその日その日によって言葉が違うということです。そうして今、心配は要らぬ、心配は要らぬと言う。これはちょうど十七年前の大東亜戦争の末期において大本営が、本土決戦は竹やりでやるから心配要らぬと言ったことと同じことである。経済はもっと峻烈なものである。この意味において私はあなたに希望したいことは、西尾委員長がいかなる責任をおとりになるかと言ったこのことは、その責任のとり方について私は差し出がましいことは申しません。けれども、ここに言い得ることは、しばし誤りは誤りとして、この誤りから犯した、見通しの欠除から犯したところの大きな欠点はかくして克服するから、国民は協力してもらいたい、ここに国民協力一致して難局を突破するという態勢こそが、今日のあなたの置かれた謙遜的にしてかつまじめな政治的態度ではないか、これを申し上げて私の質問を終わります。(拍手)
  61. 山村新治郎

    山村委員長 それでは午後は一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時五十四分開議
  62. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  予算補正一案に対する質疑を続行いたします。松井政吉君。
  63. 松井政吉

    ○松井(政)委員 私は、主として石炭を中心といたしました日本のエネルギー政策の問題、すなわち電力、石油等に関係をいたしまして、さらにただいま政府が進めております石炭合理化政策の振興状態におけるもろもろな困難と政策上の問題、さらに合理化を進めるに従いまして、ただ日本の産業の中で、炭鉱だけが一つ首切り、賃下げの状況に置かれておりまするこの離職者対策等の内容につきまして、さらにまた炭鉱地帯をかかえておりまする自治体の行政上の困難は大へんなものがございます。そういう産炭地振興等の問題に関連をいたしまして、これから総理並びに関係大臣にいろいろお答えを願いたいと存じます。質問の内容がきわめて具体的な問題に触れると思いまするので、具体的にお答えを願いたいと存じます。いろいろ本会議並びに当予算委員会のお答え等をお伺いしておりましても、きわめて具体的な問題になりますると、検討をして、適切な、妥当なるということで、答えが済んでいるようでございまするが、具体的な問題につきましては、具体的にお答えをいただきたいとお願いを申し上げておく次第でございます。  そこで最初に総理にお伺いをいたしますが、日本の今の石炭産業の状態は、いろいろ困難が起きたり、むずかしい問題が起きていることは御承知の通りだと思うのであります。合理化政策をどんどん進めておりまするので、買いつぶし炭鉱の数は、あとで具体的に数字によってお答えをいただきますけれども、非常な買いつぶし炭鉱がふえて参りますし、失業者は増大をするし、さらに失業者をかかえております自治体でも扱いに困っているような問題が起きております。しかしながら、石炭は非常に日本のエネルギー源としては大切なものだと思いますが、現在の石炭産業の実態認識について、これでいいのかどうかということについて、まず総理大臣からお答えをいただきたいと存じます。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 過去を振り返ってみまして、戦後における石炭産業の重要さから、いろいろな施策を講じて参りましたが、その後お話のようにエネルギーに対する関係が非常にむずかしいことに相なり、いろいろの手を尽くしてきたのでございますが、御承知の昭和三十四年の石炭合理化対策、そういうものを立てまして、昭和三十八年度を目標に、合理化による炭価の引き下げを計画いたし、これが実行に進んで参っておるのであります。  しかるところ、片一方では、重油その他の問題、ことに自由化の問題に関係いたしまして、今までの施策ではこれを切り抜けていくわけにいかない。新たな観点から根本的の対策を講じなければならぬという状況に相なっておると承知いたしております。従いまして政府におきましても、これが対策につき特別の機構を設け、積極的に案を生み出そうといたしておるのであります。
  65. 松井政吉

    ○松井(政)委員 積極的な案を打ち出されようと考えていると思いますが、私が今お伺いしているのは、やはり非常な混乱を起こしておる。今度は、次に原因をお伺いいたしまするが、御承知のように、池田内閣の一枚看板であります高度経済成長政策が強行されて、石炭合理化対策が打ち出された結果として、日本における産業の中で、あるいはまた労働者の生活の中で、国民経済に二重構造の矛盾が拡大をいたしておる。さらにまたその政策の現われとして、エネルギー源をどう確保するかという、エネルギー源を確保する根本の問題についての混乱と、それに伴う国際石油カルテルの圧力等が深刻な危機に石炭を追いやっている。さらにまた中小炭鉱の場合を考えますと、閉山買いつぶし、失業の増大、それから日本の産業の中で所得倍増の線に沿うて、本国会にただいま提出されておりまする予算でも、公務員給与ベースを引き上げなければならないという実情の中で、炭鉱だけは失業者が増大をしており、さらに、炭鉱だけが一万円近くの賃金値下げを行なわれておる。こういう状態についていろいろ混乱を起こしておるが、その混乱の原因の一番根本をなすものはどこにあるかということをお尋ねいたしたいのであります。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろございましょうが、やはり石炭産業自体の持つ弱みと申しますか、競合エネルギーに対します弱みがここに出てきておるのであります。従いまして、その弱みをどういうふうにして強くしていくかということが、今後の問題と考えております。
  67. 松井政吉

    ○松井(政)委員 今後の問題については、あとでいろいろ具体的に詳しくお伺いして参りますが、私がお伺いしているのは、今後の問題ではなくて、総理はただいま石炭産業の弱みが、このような状態になっているとお答えになったのでありまするが・私はそうではないと考えております。要するに無理な高度経済、成長政策を行なうために産業全体の中に、その成長政策に沿うていく産業と陥没していく産業とのアンバランスが生まれてきた。そこで、石炭に対する合理化政策を政府はとったのでありますから、そこに今日の石炭全体に対する混乱が起きている。こういう考え方を持っているのでありますが、ただ石炭の産業自体が弱いから起こった、こういうことなら、弱ければ国の政治経済政策の中で力をつけてやればよろしいのであります。だから弱いという原因だけではないのでありまして、その原因について明確に、もう一ぺんお答えを願いたい。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたのお話も私のお答えも合っていると思います。アンバランスというのがその弱みでございます。それは石炭産業の持つ根本的の弱みということもありましょう。またこれを補なっていくための政策の不十分ということもございましょう。これはいずれにしても弱みでございます。日本ばかりではございません。特殊のアメリカのようなところは、そうひどく困っているわけではございませんが、ドイツ、ベルギー等におきましては、この石炭産業自体の持つ弱みが出ていることは日本と同様でございます。だから、その弱みというのは、それ自体が持つことと、それに対する施策が、まだその弱みを直すだけの力が足りなかった、こういうことから出てくるのだと思います。
  69. 松井政吉

    ○松井(政)委員 政策の足らざる点はお認めになったようでございますが、石炭産業そのものが弱い。それからそれに伴う政策の欠除があったというお答えでございますが、その点は率直に言われたのでありますから私はいいと思いますが、これを要するに外国の石炭産業も石炭産業そのものが弱い、こうおっしゃるけれども、御承知のようにドイツ並びにイギリスは石炭産業そのものの産業構造を変えても、石炭の持つ重要性にかんがみて、国内エネルギーを石炭に求めるという方策をおとりになっておることは、総理も御承知だと思います。そういたしますると、日本の産業の中において総合エネルギーの問題を議論する場合に、石炭というものの重要性と日本の産業の中における石炭鉱業の持つ地位というものをどのようにお考えになっておるか、これをお伺いいたしたいのであります。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 石炭産業の持つ弱みというのは、これは各国共通しておるのでございまするが、ドイツのそれと比べますると、産地と消費地の違うということが、ドイツよりもより日本の方が弱みをたくさん持っておるわけでございます。そういう点も今後検討していかなければなりません。しかして石炭産業の日本のエネルギーにおける地位ということになりますと、御承知の通り、従来のような地位ではなくて、だんだん減っていきつつあります。最近ではエネルギーの四〇%足らずが石炭になっておるのだろうと思います。あとは重油あるいは電気、こういうふうになっておる。しかし、それにいたしましても一般資源の少ない日本といたしましては、石炭は一つの重要な資源であるのであります。だから、われわれといたしましては、この重要な資源を合理的に、しかも安定的に供給する措置をとらなくてはならない、こういうので五千五百万トンという線を堅持して、そうしてそれが消費される方面も、長期的な契約その他で安定的な配給をはかろうといたしておるのであります。最も重要な地下資源、しかしてそれが雇用の関係にも、国際収支の関係にも、いろんな点から申しまして、私は日本の最も重要な産業の一つ考えております。地下資源としてこれが第一だと私は考えておるのであります。
  71. 松井政吉

    ○松井(政)委員 石炭が日本の産業の中で地下資源として重要であるという点はお答えになったのでございますが、重要であれば重要であるほど今の石炭問題というものを、さらに政策的にその発展に対する裏づけをしなければならない。さらには弱いからというので石炭全体を捨ててしまう方向の、ものの考え方にはわれわれは納得できないのであります。わが国のエネルギー需要の伸びは非常に増加の一途をたどっておることは御承知の通りであります。政府の所得倍増計画でも、昭和四十五年度には石炭換算で二億八千万トンが見込まれておる。このエネルギー需要の拡大に対して水力電力の開発等はすでに限界に達したという学者もおります。あるいは実際に携わっておる人たちもそういう話をしておるのが今日の現状である。さらにまた原子力にいたしましても、その実用化までには相当の曲折が予想されると思います。そういう関係からいたしまするならば、石炭鉱業に課せられたエネルギー源としての日本の役割は非常に大きいものと思わなければならないと思います。そういう考え方に立って、日本の石炭がどのくらいあるかということをいろいろ検討いたしましても、五千五百万トンの政府考えておるベースで進んでも、なおかつ百年以上確定炭量を有するというのが日本現状でありまするし、国内エネルギー資源の乏しいわが国においては最重要のエネルギー源といわなければならないと思います。そういう考え方からいたしまするならば、石炭の地位について、石炭産業そのものが弱いということになれば、政治的な施策について、経済的な施策について、あるいは雇用その他の関係について、あるいは石油の輸入関係の施策についてすべて転換をはかって、石炭の地位を日本の産業の中に総合エネルギー源として確保する必要があると考えますが、この点について再度お答えを願いたいと存じます。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 その点は十分考えていかなければならぬことは、お話通りでございます。
  73. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それでは具体的な問題に入ってお伺いをいたしたいと存じますが、まず石油と石炭の関係について、石炭を中心としてお伺いをいたしたいと存ずるのであります。  これは総理並びに通産大臣にお伺いをいたしますが、第三十八国会におきまして、椎名通産大臣は、重油の値段はますます下がるであろうという見通しの話を答えておるのであります。従いましてただいまの重油の輸入数量、それから価格、これは三十八国会当時、椎名通産大臣が答えた当時と現在との比較、そういう問題についてお答えを願いたいと存じます。
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 三十六年九月末の在庫原油は、輸入におきまして二百五十四万四千キロリットル、国産原油が二万八千キロリットル、合計二百五十七万二千キロリットル。ガソリン、これが五十八万六千キロリットル、石油化学の原料油三万六千キロリットル、ジェット燃料油四万五千キロリットル、灯油、軽油、五十三万七千キロリットル、重油はA、B、C合計しまして、百九十四万キロリットル、燃料油の合計は以上で三百十四万四千キロリットル、かようになっております。
  75. 松井政吉

    ○松井(政)委員 三月と現在との比較を。
  76. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 三月の数字は持っておりません。
  77. 松井政吉

    ○松井(政)委員 もう一つあなた落としておりますが、価格の問題についてのお答えがございません。従いまして、ついでにお答えをいただきたいのでございますが、第三十八国会の衆議院の予算委員会がこの質問を行なったのは、御承知のように二月でございます。三月からただいま御説明になりました三十六年九月までにおける輸入石油の数量の移動、それから予算委員会で椎名通産大臣が答弁をした二月当時の重油の価格、それからあなたがただいま説明をされました三十六年九月における重油、その他石油の全体の価格変動、そうして現在価格が幾らになっているか、このことについて明瞭にお答えを願いたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 輸入原重油の価格の推移、三十五年、原油はFOBで一キロリットル三千四百三十一円、三十六年一−六月は三千三百三十四円、それからCIFで三十五年が五千二百十三円、三十六年が五千六十二円。A重油がFOBで三十五年が七千百十円、三十六年一−六月は七千百五十三円。CIFで八千九十六円、三十六年は八千百七円、C重油で三十五年は四千九十三円、三十六年は四千八十六円。CIFで五千二百八十八円、五千三百五十円。これが輸入原油の価格の推移でございます。石油製品価格の方は、東京で申しますと、揮発油は三十五年の平均が、一キロリットル一万四千四百九十二円、灯油一万七千八十五円、軽油一万五千五百九十九円、A重油一万二千三百五十八円、C重油八千八百五十円。それが三十六年の四月になりますと、揮発油は一万二千四百四十三円、灯油が一万六千三百円、軽油一万五千三百円、A重油一万一千七百三十三円、C重油八千五百円。
  79. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ちょっとお伺いいたしますが、最近における世界の石油産出国においては値上げをする傾向が非常に強いといわれておりまするが、そういう事柄について通産大臣のお調べになっております事柄がございましたら、お答えを願いたい。
  80. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 石油の価格は、輸出相手国と申しますか、輸入、まだその市場の固まってないところにおきましては、なかなか競争が激甚でございます。たとえば日本のような場合は、石油市場としてまだはっきり確定しておらないため、ただいま日本向けに対しては、いろいろ価格の変動があるという状況でございます。
  81. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そこでヨーロッパといいましても、西欧においては、大体英米資本といいますか、英米が中心になって扱っておりまする石油販売が減少をした。そうしてこれらの石油資本は今や日本を唯一の石油市場として確保しようとしている。そのために石油重油その他一般の価格は、どんどん日本の場合には下がってきている。それが結局エネルギー源としての石炭を圧迫しておる原因の一つになっておる。こういう見方もあります。そういう関係から要するに石油産出国においては、これは主として民族意識の強いところでありますから、民族産業を守ろうという意識も働いておるのだと思いまするが、こういう石油を扱う英米関係については値上げの要求をしている。こういうのが大体石油における今の動きじゃないかと思われますが、この通りであるのかどうか、これが一点。  それからその通りだとするならば、石油関係の値段というものは、これは一種の政治価格です。国際カルテルが日本を石油市場として押えようとする考え方でくるとすれば、これは政治価格の形において下がってくる。ところが、エネルギーとしての国内の石炭はそうはいかない。これは設備に対する原価計算、さらにまた労働者、さらにまた設備の改善、いろいろな関係からいきますと、原価コストに基づいての炭価をきめなければならぬのが石炭の現状なんです。だからそういう政治価格でどんどん安く持ってきて、将来における唯一の石油市場を日本に確保しようとする外国石油業者の考え方と、国内の石炭のコストで戦おうと思っても無理なんです。そこで石炭政策についての十分なる施策が必要になってくる。この関係についてお答えを願いたい。
  82. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御指摘のように石炭の価格と石油の価格、これは各地で開きのあることは御承知の通りであります。また日本におきましての石油価格が最近下がっております。また国内の石油業者自身がしからば利益を上げているかと申しますと、これまた非常に競争で苦しんでおるのが現状であります。従いまして、今日の石油価格というものが長く続くとは必ずしも考えられないと思います。しこうして今石油と石炭との関係において、石炭に対しては、先ほど来お話しのあります五千五百万トン、同時に千二百円を引き下げる、こういう一応の基本方針をきめております。この価格と、しからば石油の価格は均衡がとれているのかと申しますと、これは均衡はとれておりません。しかし、ただいまのエネルギー供給の立場から見まして、石炭が占むる割合は現在三八%、先ほど総理は四〇%近いということを言われましたが、三八%であります。そしてその三八%のうち三二%は国産石炭であります。だから、残りの部分は外国から入ってきておるわけであります。この三二%を供給しておるエネルギーの石炭が、将来石油にかわる、あるいは外国炭に全部かわる、これは大へんなことでありまして、私どもはさようなことは考えられない。今後石油が安くなり、またエネルギー源が大きくなって参りますから、消費量はふえて参ります。そういうような場合に石炭の占むる。パーセンテージは下がることがありましても、必ず五千五百万トンは確保しよう。そうして三十八年度千二百円下げというその基本線で、この五千五百万トンを消化していく、その基本対策をただいま考えておるわけであります。今後おそらく石油はときに安くなる、あるいは今よりも少し高くなるかわかりませんが、石炭の値段と比べれば必ず安いに違いないと思います。そこで石炭の方は、基本的に千二百円下げを考えておられますが、最近の運賃そのほかの値上がりから見ると、最初に予定された合理化の程度ではなかなか千二百円下げは困難ではないか。そういう意味において、経営者側の経営合理化への御協力をこの際願っておる、こういう立場にあるわけでございます。  石炭産業について、一部で非常に悲観した言い方をされておりますが、やはり何と申しましても、大事なエネルギー源でございますから、安定的供給、これは大きなウエートを置いて考えなければならない。それを考えますと、国内産の石炭というものは、そういう意味では最もたよりになるのであります。だから、われわれは国産石炭を、ただいま申し上げますように五千五百万トンというものを将来確保していく、そのためにあらゆる困難を克服していこう、こういう基本的な考え方を持っておるのであります。
  83. 松井政吉

    ○松井(政)委員 合理化の問題は後ほど具体的にお伺いをいたしますが、要するにかりに無制限というと語弊があるかもしれませんが、今後やはり石炭とのにらみ合いにおいて、もう石油だけではない、石炭自身が外国から入ってきておるわけでございます。それからとにかく百年掘ってもまだあると言われる石炭でございますから、新しい縦坑開発等の計画があって、それで国内のエネルギー源は石炭に三八%程度ではなくて、かりにも五〇%以上依存するというような根本的な考え方が出れば、石油の輸入制限等の問題も生まれてくる。そうでございましょう。だから今のように、石炭は合理化政策を進めるということで、要するに大事だ大事だと言っていながら後退をさしていく、ところがその間隙をねらって日本にどんどん油が無制限、無統制に入ってくる。それはしかも将来における石油国際カルテルのものの考え方からきておるのですから、政治価格をもって乗り込んでくる、こういう事態に対処するためには、ただいまの善処しなければならぬ程度の答弁ではなかなか満足をしない。だからそういう問題について石油を無制限に入れない、あるいは統制をするとかあるいは関税措置を考えているとか、あるいはまた国内の石炭については単に五千五百万トン確保の合理化政策を進めるということだけではなくて、むしろ石炭鉱業発展の道を逆に開いていくというような具体策があったら、その具体策をこの機会に知らしてほしい。合理化問題は後ほど具体的にお伺いいたします。
  84. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今石炭で石油を押える、こういうお話でございます。しかし経済的に見ますと、流動燃料である石油と固型燃料である石炭と比べまして、私は価格の面その他から見まして、採算というか、双方比べてみれば石炭が劣っておる、これはもういずれの面からも全部が承認しておる実情でございます。この事実を私どもは無視するわけにはいかない。ことに産業全般にわたりまして関係を持つものに高価なものを使っていくというわけにはいかない、そこに問題があるわけであります。だから、この石油自身が、石炭を千二百円下げ、その場合の重油を七千円見当と見て一応権衡がとれる、こういうことを見たようでございますが、その後の推移等を考えますと、なかなかそうはいかない。これはどこの国でも流動燃料にかわっている、消費者の自由選択という、そういう方法でいっている。けれども、これではただいま御指摘のように、石炭産業自身も大へんだろうというので、国内産業の育成維持をわれわれは準備しておる、こういうことに実はなるわけであります。今松井さんの御指摘のように、石油をうんと押え、そうして石炭の方をどんどんふやせ、こういうことにはなかなかならないと思います。また私ども考えますのに、石油に関税をかけることは必ずしも望ましいことではないだろう。安いものは安いなりで使うことの方が望ましいことだと思います。ここにいろいろ議論が出ておるのであります。いずれ今後閣僚会議なり、あるいは特別委員会等においても、この点についてはいろいろの御高見を拝聴することになるだろうと思いますが、ただいまのところでは今の燃料のあり方、その大勢に逆らっていくわけにはなかなかいかない。これは一つ御了承願いたい。
  85. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これは電力にも関係をしておる問題でありますから、続いて触れていきますが、要するに、重油そのものの価格と石炭価格、たとえば、動力源としての電力に使う場合のコスト等につきましては、それは今大臣のおっしゃった通り、価格の問題も出て参りましょう。けれども、それでは一つ具体的にお伺いいたします。これは資料を要求すれば一番よかったのでございますが、お聞きした点だけ答えていただければよろしい。水力電力とそれから重油でたいております関西電力姫路、これと石炭をたいております火力電力、その電力の生産コスト、これの比較がございましたら、御説明を願いたい。生産コストだけでけっこうであります。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 水力で一番うまくできたと考えられる黒部川第四、関西電力であります。発電原価四円十六銭、もうすでに一部運転中であります。火力、これも関西電力多奈川、これは三円六十五銭、石炭でございます。火力姫路第二、これは重油専焼で二円八十八銭、ただいま建設中でございます。もちろん最大出力との関係もあるだろうと思まいすが、原価はただいま御披露した通りであります。また、東京電力の場合を見ますと、これはだいぶん時期も違っておりますので、必ずしもその通りになるかどうかと思いますが、二十九年の調べで、水力の発電原価一円十三銭、火力五円七十四銭、水力、火力総合で二円五銭、こういうふうになっております。最近の東京電力の場合は、水力が一円七十七銭、火力が三円七十八銭、水力、火力総合三円六銭、かようになっております。
  87. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ちょっと関西電力の姫路の重油のあれは、私の資料に基づきますと、重油七千円の価格で——送電原価二円八十八銭と今大臣はお答えになりましたが、これは二円八十八銭でございますか。三円八十八銭ではないですか。それからもう一つ。私の資料に基づきますと、石炭の場合の送電原価は、常磐共同火力で第五年度目に三円八十銭、釧路火力が第一年度で二円九十八銭、それから西日本共同火力、第五年度で二円八十三銭、電発若松二円九十銭、それから新江別、これは確定いたしておりませんが、大体こういうトータルが出るわけであります。そうすると、やはり送電原価が変動を起こすのは、産炭地における火力と、さらにまた産炭地以外における石炭を予想して起こす火力との間にコストの相違が出て参ります。従いまして、やはりどんどん重油をたいて、今後も電力をやるおつもりであるのか。それから石炭原価の下がる方策と同時に、火力等は石炭にすべてをかけてやろうとお考えになるのか。この問題に触れて、価格の問題は私の申し上げた点に間違いがあるかないかを答えるついでに、一つ電力の構想についてお伺いいたしたい。
  88. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今手元に持っております材料の姫路第二は、二円八十八銭で、三円ではございません。ただいま申すように、これだけで見ますと、石炭の方が重油より高い。しかし、もちろん姫路第二というものは最も安いといわれているものでございますが、全部が全部この通りになるか、これは、ことに九十万キロワットでございますだけに、全部を判断するわけにはいかないと思います。問題になりましたように、石炭の産地が、先ほどあげますように北海道、九州、使うのが中部、非常に距離がある。こういうところに一つの石炭の難点があるわけです。同時にまた、今後石炭を使う面におきましても、こういう輸送、流通の面を一つ工夫する余地があるだろう。そこで、ただいま御指摘になりますように、共同火力等を地元で作ることが非常に安くなるのじゃないか、こういうことがいわれると思いますが、私は、共同火力等の建前を見ましても、重油にはなかなか合ってはいかない、やはり石炭の方が高いと思います。問題は、今の電力会社の料金を決定いたします場合には、安い電力料金であることが望ましい、これは間違いのないことであります。同時に、安定的供給ということが必要でありますから、そういう意味で、火力の場合におきましても、重油専焼で占めるパーセンテージ、あるいは石炭をどれだけたくかという、そういう点を十分工夫していく必要がある。また安いものを安いままで使わせ、高いものは高いままで使わせ、そして総発電のコストが適正なところへとどまるように指導することが必要だろう、こういう考え方をするわけであります。安いから、今後は全部火力は重油による・こういう簡単なものではございません。また、全部国産の石炭ばかり、こういうわけにはいかない。ここらに行政上のいろいろの工夫をいたして参るつもりであります。
  89. 松井政吉

    ○松井(政)委員 どうしても重油の方が安くあがる、こういう観念的な考え方でなしに、一ぺん私がただいま申し上げた資料に基づいて——これがほんとうでありますならば、やはり西日本共同火力でたいている石炭も、常磐火力でたく石炭も、今日までは三千五百カロリーなんです。今また五千カロリーをたくいろいろなかまの設備をやっておりますけれども、三千五百カロリーで、西日本共同火力の場合は二円八十三銭、姫路は重油をたいて二円八十八銭、そうでございましょう。だから、この価格の争いをやっても、根本的には石炭の方が高くなるのは私承知いたしております。けれども、現在やっております石炭の火力電力と、重油でたいている火力電力の送電原価の差が、むしろ石炭の方が安い場所がある。石炭の方が高い場所もあるわけです。その関係というものは、あとで揚地か産炭地かの問題についてもお伺いいたしますけれども、要するに、重油にばかり頼る必要はない、工夫をして石炭に依存をすれば事足りるというのが、私の根本的に聞きたいねらいなんです。そういう点について一つお答えを願いたい。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御指摘のように、低カロリーでも安くできる。問題は、そういう場所でその電力が使われるか使われないか、需要の問題でございます。これをさらに高圧送電するということになりますと、いろいろ送電費等でかさんで参りますし、消費地の模様も違うわけであります。だから、産炭地自身で発電をいたしまして、そこで消費されるなら、私どもも今まで進めてきたように、その政策を変えるつもりはございません。
  91. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そこで産炭地の問題と、私がお伺いする前に高圧電線の問題が出たから、この機会にお伺いしておきますが、御承知のように、高圧電線より超高圧の方が送電料が安くつく。建設費は、これはいろいろまた具体的に計算がございます。私も資料をいただいておりまするから読みましたが、要するに、それならば電力ができる場所が産炭地であろうと、それから消費地を中心とした都内であろうとも、電力というのは国民が全部使うわけですね。生産地だけが使うわけじゃないのです。そうでございましょう。そこでやはり石炭を船なり汽車で送って揚地で発電をするのと、それから産炭地で電力を起こして、超高圧電線等の設備、それから資金、そういうものを石炭を中心にしたエネルギー確保の立場から国の政策としてものを考えた場合との一体どこが一番大切になるのか、どうやるのがいいのかという考え方が明確に固まっているなら、聞かせていただきたい。研究中なら研究中でけっこうですから、その話を一つ聞かせていただきたい。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 産炭地自身で電気を起こし・産炭地自身でそこで使うのが一番安い、一番けっこうです。そういう意味で産炭地振興というようなことがいわれておるわけであります。それから、これを送電することと転送することと一体どうかと申しますると、最近の状況から見ると、四十四万ボルトで送電する、これは、大へん建設費その他もかかりますし、まず技術的にもまだ困難さが残っております。それらのことを考えますと、やはり輸送して、そうして揚地で発電する、できるだけ消費地近くに炭を持っていって、そこで発電するということが望ましいようであります。
  93. 松井政吉

    ○松井(政)委員 その望ましいということなんですが、産炭地において電力会社ができて、そこへ石炭を送る場合に、貨車運賃、船運賃は要らないわけです。よろしゅうございますか。ところが、かりに九州から阪神地域、北海道から京浜地域、ここへ船なり貨車なりで送る——貨車が一番高いですけれども、そうすれば、トン三千円の石炭は四千円をこえますぞ。トン五千円の石炭は六千円をこえます。それを持ってきて電力を起こすことが安いという計算は、一体どこから出るのです。石炭だけのことを考えていった場合に、どこから出るのです。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その電気で送る方がいいか、揚地で発電する方がいいかという、その二つを比べたわけです。それはもう問題なしに、冒頭に申したように産炭地で石炭を使って電力を起こして、そこで消費するのが一番いいということなんです。だから、電力の発電の場所と消費地とが離れておる場合にどちらがいいかというと、これは送電よりも、やはり輸送して、そうして消費地の近くで発電する方がいい、こういうことであります。
  95. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それは、電力会社がものを考えるならば、その方がよろしゅうございましょう。しかしながら、やはり低品位炭、三千五百カロリー、三千カロリーというものは、貨車運賃と石炭の値段が東京に持ってきた場合は同じなんです。九州から阪神地域に持ってきた場合には、要は石炭原価と輸送賃とは大体同じくらいなものなんです。運賃でも運輸大臣が腹をきめてまけてくれない限り、同じようなものなんだ。そうした場合に、低品位カロリーの石炭において、産炭地で発電をして、送電線の超高圧等は——石炭が必要でなければ別ですよ。総理大臣もおっしゃいましたし、通産大臣も御答弁なさっておりまするが、エネルギー源として石炭が大事だということならば、やはり超高圧線の電線設備、それに対する資金、金融、いろいろな面の政策上の措置を行なえば、産炭地発電がいいことはきまっております。そうでございましょう。それだから、要するに揚地発電を起こして——頭の中に重油がこびりついている限り、産炭地発電はできないのですよ。だから、重油抜きにして、低品位カロリーの石炭を高い運賃で持ってきて揚地でやるか、現地でやって送電設備を国が行なうか、そのどちらをおとりになるか、この問題について明確に一つお答え願いたい。
  96. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 一応試算したものがございますから、それを申し上げます。揚地発電と産炭地発電とを比較いたしますと、大阪着の電力原価が、揚地発電の場合は三円六銭、産炭地発電の場合は、送変電線設備を国家資金で建設して、これは利子をとらないで、送電費用を極力切り詰めるといたしましても、三円十二銭を下らない、こういう試算が出ております。これは必ずしもこの通りだと申すわけではございません。しかし、ただいまそういうことを実は考えております。さらに、今の産炭地発電の場合に、使用炭が特に低品位炭である、こういうことを考えますと、これは発電設備の建設費が少し高くなる。さらに、産炭地発電の場合の九州・阪神間の送電線建設費、これは三百七十億円くらいは必要だろう、こういうような計算のもとにただいまの試算をいたしております。
  97. 松井政吉

    ○松井(政)委員 じゃこれだけお伺いしておきましょう。どっちに重点を置くか。揚地発電は、計画をしてみるとそういう数字が出るが、まだやらないのだ。しかし、産炭地の電力はどんどん今やっているわけですから、さらに拡大したり新設してやる方針があるなら、ある。どっちに重点を置いていくのだということを一つお答え願いたい。
  98. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 問題は、できた石炭を必ず消費するか消費しないかということだと思います。そのどの場所で電力を作るのが一番いいかということは、必ずしも私どもがきめてかかる必要はない。今私どもが特に重点を置いておるのは、石炭が出た場合に、これを長期に引き取る、そして生産者もこれに十分信頼が置けるかどうか、そういう長期引取契約ということに主体を置き、そしてその後はそれぞれコストの安いように業界自身にも工夫してもらうし、また通産省としても業界と十分連絡をしてこれを指導する、かようにいたしておりますので、どの場所に重点を置くと、こう最初からきめてかかることは必ずしも当を得たものじゃない、かように私考えております。
  99. 松井政吉

    ○松井(政)委員 五千五百万トンにえらいこびりついているようですが、これはあとで合理化政策は変えなければならないところにきているということの実例をもってお伺いをいたしますから、あとで聞きますけれども、五千五百万トンの壁は破れているのですよ。もう雑炭を入れると六千万トンの線にいっている。これはうそだと思ったら、電力会社に行って聞いてきて下さい。同時に、そういう形になって参りますと、勢い外国炭の輸入がふえてくるのですよ。そういうことも考えられませんか。だから、要するに、われわれが産炭地ということを考える場合に、五千五百トンの需要をどう考えるかというような問題ではないのですよ、電力の問題を考えた場合。同時に、電力の熱源として石炭を使おうという腹ができた場合には、五千五百万トンをどう消費するかというような問題はとっくに通り越している。ここに政府の合理化政策が、あとで具体的に私はお伺いいたしますけれども、全部くずれているのです。それで・もう一つやはり真剣に考えなければならないのは、経済成長政策を遂行しようと池田内閣は何べんも言っているのですから、その場合に、地方の開発と産業の分散も池田内閣はお認めになっているわけでしょう。それとのからみ合いにおいて、産炭地並びに炭鉱地帯においての——大がい今の炭鉱地帯は斜陽産業なんという言葉で、われわれはおもしろくないんだが、いわれている実情ですから、低開発地域と言っても過言でないでしょう。そういう場合の開発計画とにらみ合わして、今の石炭を電力源として、エネルギー源として使うこと、そういう問題を総合的に考えていった場合に、われわれはやはり産炭地に重点を置くべきだという答えが出るのですよ。そうでございましょう。だから、そういう問題について今きめるべきじゃないとか、情勢の推移を見るということではなくて、この点は明確に御確認願いたいと思う。
  100. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 産炭地振興対策、こういうものは別途お尋ねもあるだろうし、お答えもするつもりでございますが、そういう意味の工夫もいたします。そして今五千五百万トン以上出ているじゃないかという御指摘でございますが、この点が、炭がたくさん出て、しからば炭鉱業者は全部助かっているのか、非常に収益を上げているのか、かように考えますと、必ずしもそうじゃない。ここに問題があるわけだ。しばしば聞きますことは、非常な需要がある。そして考え方によると、供給が足らないという話を聞く。それで、その需給の関係から、しからば供給者側は利益を上げているのかというと、上げてない。ここに事業そのものを合理化していく、能率化していくという問題があるわけであります。ここに石炭産業への私どもの工夫なり指導なりというものがある。ただいまの、実際によけい使われているじゃないかということは、けさほどの議論からもすぐ御理解がいただけるだろうと思いますが、私どもやっていることは、統制経済じゃございませんし、一応の目標数字でございますから、その基本的な数字で各界の協力を得つつあるわけですけれども、ただいま言われるように、非常な無理が行なわれている。その無理な状況を、これを実態として直ちに考えるというわけにはなかなかいかない。ここらに松井さんと私との間の意見の相違が、実はあるようでございます。もちろん、産炭地でございますから、産炭地そのものを振興さすこと、これが一番手っとり早い話なんです。だから、そういう意味においての事業団を作るとかいうようなことを、ただいま検討中であるというのが実情でございます。
  101. 松井政吉

    ○松井(政)委員 どうも通産大臣は合理化にこだわっているようですから、合理化に入ります。だから、これは具体的に一つお答えを願いたいと思いますが、政府の石炭合理化の三十八年目標の基本計画は、御承知のように、出炭規模を五千五百万トン、生産能率を二十六・二トン、炭価を千二百円ダウンする、実働労務者数を十七万五千六百七十人に減らす、こういうことなんですね。ところが、この考え方では本格的な合理化にもならないし、同時に、石炭政策の基本をなすものが現在根本的にくずれてきております。というのはどういうわけかというと、出炭規模においては先ほど申し上げた通りなんです。五千五百万トンの妄執にこだわって押えようとすることに無理が出る。生産能率の問題は——合理化というのは、合理化の本質として機械化がなされて、近代化がなされて、新規の開発計画に伴って、労働時間を短縮しても設備の完璧を期したためにトン数が上がるという形でなければ、合理化ではないのです。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 要は労働時間をふやしたり、人間を減らしたり、そうやって無理をして二十六・二トンに持っていこうというコースが進捗をしているのです。そこにこの生産能率の問題の無理押しという点が、現状においてくずれてきておるのです。それから炭価の千二百円ダウンの問題でございますが、これはここで具体的にこの問題についてお答え願いたいのですが、最近における坑木、電力料金、運賃、諸物価の値上がりに伴って、炭価のダウン千二百円じゃなくて、炭鉱業者の方でもっとダウンした形になっておると思うが、その実例がここでもくずれてきておるのです。政府の出した数字は、全部くずれてきておるのです。今度は実労働者数でも、しゃにむに今までに六万人も首を切られているんですよ。あとで買い上げ、買いつぶし炭鉱の問題と大手、中小企業の炭鉱の労働者の異動については、具体的な数字をもってお伺いいたしまするけれども、大体無理に十七万五千六百七十人にしようということで、大手の方では生産能率向上と炭価引き下げのために賃下げ、首切りを強行して、買いつぶし炭鉱の失業者が産炭地の市町村にはんらんいたしておりますよ。社会問題、人道問題が起きようといたしておるのです。それは、どうしても公務員給与も一般の賃金も上げなければならぬほど、所得倍増と経済成長政策の結果、物価が上がってきておるのです。そういう状態にもかかわらず、ただ日本の国内における石炭産業だけは、どこの大炭鉱でも、大手でも、中小炭鉱でも、一万円以下の賃下げが行なわれておるのです。こういう実情にぶつかっているのが、政府の三十八年度目標の石炭合理化の基本計画なんです。これが現状においてくずれているのです。三十八年度でくずれているのじゃないのです。にもかかわらず、これを進めることによっていわゆるエネルギーも確保したい、それから炭鉱もよくしたい、労働者もめんどうを見たいということは、不可能なんです。だから、この合理化政策が現状のごとく破綻に瀕している事実をお認めになるかどうか。私は数字で申し上げた。もしこの数字がくずれていないとするなら、くずれていないという根拠を示していただきたい。これはまず総理大臣に、政府の三十八年度目標の石炭合理化の基本計画がかくのごとき状態になっているが、一体これはくずれていると思うのか、くずれていないと思うのか、そのお答えを願って、具体的な数字等については通産大臣からお答え願いたい。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 三十八年度を目標といたしまして千二百円引き下げの計画は、当時もある程度のベース・アップは認めておったと思います。しかし、坑木その他の値上がりが、今のようになろうとは思いませんでした。ことに材木——最近の卸売物価の問題は材木が主でございます。坑木が相当に影響を受けておることも存じております。しかし、また片一方で賃金の千円引き下げ、あるいは佐賀の杵島炭鉱争議の問題でございますとか、そういう特定の場合におきまして、賃金の下がった炭鉱も一、二あるということは存じております。従いまして、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、情勢の変化と、片一方では石油自由化の問題等とかね合わせまして、根本的に再検討しようという状態でございます。
  103. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今総理から大体の傾向はお話しでございました。先ほどもちょっと触れましたように、坑木、運賃等の値上がりがあるから、そこでもう少し合理化を進めなければならぬだろう、工夫しなければならぬだろう、かようなことを申したつもりでございます。まず私どもが一応考えますのは、採炭量をもう少し上げたらどうか、二トンぐらい上げることが可能ではないだろうか、そういう意味で、非能率炭鉱の整理等もその線に合わしてみたら可能じゃないだろうか、こういうように実は考えております。
  104. 松井政吉

    ○松井(政)委員 お答えにならぬので困りましたが、坑木その他——今すぐなかったら、質問中に政府委員の方でいろいろ調べていただきますが、大体坑木でどの程度上がっているか、電力料金でどの程度上がっているか、それから運賃等の措置がどうとられて、運賃見合いがどうはね返ってきているか。とにかくこの三十八年度目標の中には、トン当たりの千二百円ダウンと言うているのですから、トン当たりの坑木の値上げや、それから運賃の値上げや、電力料金の値上げや、現実に上がっていることは事実なんですから、そうすれば、この千二百円ダウンということは、千二百円じゃないわけなんですよ。この点は大事なところですから、一つ資料を調べてもらって明確にお答え願いたい。  それからもう一つ総理大臣にお伺いいたしますが、要するに、これがくずれているという一つ現状と、それが一大混乱を産炭地に起こさしているという原因について私は申し上げて、お伺いをしたい。この三十八年度石炭合理化基本計画というものを変えなければならぬところへきているのは、私がただいま指摘した通りなんです。ところが、七月現在の——池田総理は、本会議の答弁でも、当予算委員会の答弁でも、中小企業については特別の措置を真剣に考えているというお答えをたびたびいたしました。ところが、これは炭鉱に通用しないのです。これは炭鉱には通用いたしません。なぜ通用しないかといいますと、具体的に説明しますと、七月現在に中小炭鉱で買いつぶしにあった——中小炭鉱で買いつぶしで閉山をしなければならないというのが、二百十七鉱です。北海道三十、東部四十九、中国三十三、九州百五、二百十七鉱なんです。これは全部中小炭鉱なんです。そこでやはり失業をいたしました労働者数が、二万九千七百八十七なんだ。七月現在で、こういう状態が起こっているのです。ところが、大手の例をとってみますると、五鉱。大手炭鉱と言われるところが五つ。その五つで、買い上げのために——首切りはものすごい首を切っておりまするけれども、買いつぶしのために職を失った者は千九百六十三名。中小炭鉱の二百十七鉱、二万九千七百八十七、これを見ても、炭鉱だけを見ると、中小企業をいじめたり、つぶしたり、なくしたり、中小企業の労働者を失業させるために今の合理化を進めていられるような傾向が数字で出ておるのです。この問題の扱い方と、それから合理化政策がなお正しいとおっしゃるのか、一つ聞かしていただきたい。これは総理大臣からお答えを願って、この実情については通産大臣から答えていただきたい。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 本会議並びにここで申し上げました中小企業対策は、全般的の問題でございます。石炭業の中小企業というものは、これは一般の中小企業とは違っております。もう一昨年来これに対しまして特別の措置を講じております。また、今の現状から申しましても、石炭業全体につきまして再検討を特別に加えなければならぬ状態にたっておるということは、先ほど来申し上げている通りでございます。
  106. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 事務当月から数字を説明させます。
  107. 今井博

    ○今井(博)政府委員 ただいま石炭の合理化計画に関連して、どの程度の物価の値上がりがあるかという御質問でございましたけれども、われわれの合理化計画は、三十三年度に比べてどうだということでやっております。従って、三十三年度から三十六年度までに物価の上昇その他一切を含めてどのぐらいのはね返りがあるかという数字は、トータルいたしますと、四百十五円という数字になっております。しかし、三十五年度までにこれらの物価の値上がりの相当部分が吸収されておりまして、昨年度に比べまして、すなわち三十五年度に比べまして三十六年度はどのくらいのコスト・アップの要因があるかと申しますと、これは全部トータルいたしますと、約二百円程度のトン当たりのコスト・アップとなっております。先ほどの四百十五円は三十三年度からの数字でございまして、昨年度から上がりました二百円との差は、それまでの合理化によって吸収されている。すなわち合理化が予定よりも進捗している、こういうことでございます。この二百円の問題につきましては、おもなるものを申し上げますと、先ほど御指摘の坑木の値上がりがトン当たり約三十円程度ございます。それから大きいのはベース・アップの問題でございまして、ベース・アップは約七十円程度というふうに踏んでおります。これは予定のベース・アップを三・八%と考えておりますので、その予定よりもふえた分ということで七十円と考えております。その他運賃の問題、電力の問題——電力等も、これは部分的に地域によって上がっておるところも上がらないところもございますので、トン当たりで比較しますと、電力料金は約十円程度でございますが、九州地区では約三十円、こういうことになっております。そういうものを一切含めまして、約二百円程度のコスト・アップの要因が生じておる、こういう状況でございます。この点につきましては、本年度の実施計画を実は六月に策定いたしまして、石炭鉱業審議会において諮りまして、これの分は主として増産によって相当吸収できるということで、生産費等もはじきまして、この分は、今年は何とか吸収できるではないかという実施計画を現在立てております。
  108. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ちょっとお伺いします。三十五年度に石炭合理化の基本計画を立てて、三十六年度ももう三十七年度予算の通常国会を控えておるわけです。そうすると、進行いたしておるわけであります。実施計画というものはどういうものですか。今実施計画を立てているというが、その実施計画の構想は、この合理化の基本計画は、実施計画の名においていろいろな物価の移動、石炭の状態、それから、いろいろな関係においてこの計画を変更する部分は、実施計画という言葉で呼んでいるのかどうか。そうでなくて、観念的に、物価が移動しようと何しようと、やはり発表いたしましたこの数字で行こうとするのか。石炭局長は一番よくわかっていると思いますが、五千五百万トンの数字はくずれておりますよ。そういうことを含めて実施計画で変更しようとするのか、それともやはり実施計画は実施計画だとおっしゃるのか、その辺のところを一つ端的にお答え願いたい。
  109. 今井博

    ○今井(博)政府委員 石炭の合理化法によりまして、毎年実施計画をきめることになっておりまして、実施計画は、実施の目標の計画を立てるという意味で、年度の当初にできるだけ早くきめなければならぬ、こういうことで策定いたしております。従って、今年は六月に石炭鉱業審議会を開きまして、実施計画を策定いたした次第であります。その場合にトン当たり生産費がどのくらいになるかということを、これはやってみなければわからぬという説もございますが、やはり年度当初に目標を立てまして、その目標にできるだけ努力する、こういう意味におきまして、生産費と、どの程度のコスト・ダウンができるかということをはじいてみました。昭和三十六年度におきましては、石炭の生産費はトン当たり三千九百十円ということを目標に進もうじゃないかということで、審議会で正式に決定をいたしております。
  110. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これは合理化の関係と、それから自由化の問題と、きわめて重要な関係があると思いますからお伺いいたしますが、先ほども大臣はお答えになりましたし、昨日もお答えになったと思うのですが、石炭関係閣僚会議、そういうものですか。——そういうもので御相談をいたしておりまする中身と申しますか、こういう問題について、要するにたとえば自由化の問題も出て参りましょう。石油の自由化繰り上げの問題も、おそらく議論の出ないはずはない、出ておると思います。石炭合理化の三十八年度計画を進めてきて、いろいろ出ました不合理の問題についての議論もございましょうし、それから今の産炭地発電、揚地発電の問題も出ておるだろうし、それから石炭の離職者の問題も出ておりましょうが、石炭閣僚会議といいますか、そういう会議において、一体何をおやりになろうとしているのかというところの構想を一つお伺いしたい。
  111. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 関係相が集まりますので、その際に出て参りますのは、ただいま御指摘になりましたような点が必ず出ると思います。  まず第一は、ただいま言われております石炭合理化の基本的な問題、今基本的に考えておりますのは、五千五百万トンの千二百円下げ、その線においての実施計画、あるいは非能率炭鉱の整備の問題であるとか、あるいは租鉱権の問題であるとか、あるいは流通機構の問題であるとか、あるいは揚地発電、あるいは着地発電、あるいは産炭地発電の問題であるとか、あるいは運搬船と申しますか、海運の関係であるとか、あるいはまた産炭地振興の事業団の問題であるとか、あるいはまた離職者対策、ことに中高年層の離職者対策等、各般にわたって十分審議を遂げて、そうして来年度以降に備えたいというのでございます。
  112. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そこで、それではその中の一つとしてお伺いいたしますが、やはり閣僚会議の話題になると思いまするけれども、私、希望を含めて申し上げますから、お答えを願いたいのです。  たとえば石油の自由化を繰り上げ実施をするという考え方でございますか。この点を先に一つお伺いをいたします。
  113. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 来年の十月までに石油の自由化をするという自由化計画を発表いたしております。この石油あるいは石炭、さらにまた電力等を含めての総合エネルギー対策というものを、それぞれ検討を続けておるわけであります。ただいままでのところ、石炭対策は総合エネルギー対策の一部会として、もうすでに答申を得ております。最近官民合同の欧州石油事業調査団が参りました。これは大体十一月には帰ってこられることになりますので、これらの報告を聞きまして、石油対策も立てていくつもりでございます。石油の場合に、石炭と石油との関係が一つと、同時にまた石油自身で国産原油と外国原油との調整の問題、こういうものを十分検討して参る、こういう考えでございます。
  114. 松井政吉

    ○松井(政)委員 石油の自由化の繰り上げが石炭に及ぼす影響についての見通しを一つ聞かして下さい。  それから今の石炭合理化計画を遂行する場合に、大きな支障があるとわれわれは思うのですが、その点についての具体的な考え方説明一つお伺いしたい。
  115. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほどから申しますように、石油と石炭と、これを価格の面で競争さす考え方を持っていない、これは先ほど来申し上げた通りであります。そこで、われわれは一応消費者側の燃料選択の自由ということは認めますけれども、十分安定的供給というか、そういう重点に立ちまして業界を指導して、石炭の長期引き取り計画、これを確認していきたい、かように実は考えておるのであります。この長期引き取り契約ができ上がり、そうしてこれが確認されるということになりますならば、石炭業者もそれを信頼して事業を遂行していくことができる。その場合に基礎に取り上げておるものが、ただいまのところでは、先ほど来たびたび申し上げます千二百円下げの五千五百万トン。これの長期引き取り計画、これは全部が全部じゃございません。大体七割見当を目標にしまして、電力その他の産業が長期にわたって引き取り契約をする。そういうことによって消費の大筋が確認がで声、そこに事業経営の信頼性がつなげるんじゃないか、かように考えております。先ほど来五千五百万トンの線はくずれたといわれておりますが、安い液体燃料等の競合を考えた場合に、まず七割程度これを確保することが適当な処置ではないか、かように実は考えております。
  116. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それで、もちろん液体燃料の方向についての考えはそう狂いはない。けれども石炭を中心にしたガス化の問題だとか、燃焼した灰の化学的な扱い。たとえば、私はしろうとですからわかりませんけれども、広島、長崎の原爆の爆薬は、石炭の灰からとったゲルマニウムだといううわさも聞いたことがあります。そういうものが出るのでありまするから、石炭を生で使わずに、燃焼して、科学技術の進歩に伴って考えていく。それから地下ガス化の点を考える。それから電力を中心にしたエネルギー源としての石炭を考える。いろいろあろうと思うのです。そうしますと用途は洋々たるものがあると思います。そういう総合的な、石炭を極度に生かして日本の産業経済の発展の土台として、石炭は来たんですから、斜陽産業などといわずに、あくまでもその土台を貫くという考え方で、今申し上げました液体化からガス化から、あるいはまた灰にしてそこからいろいろものをとるという、いろいろな施策についての考え方、研究がどの程度進んでおるか、具体化の方向はどういうところまで来ているかということについて聞かしていただきたい。
  117. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 松井さんより私の方がもっとしろうとでございまして、石炭のことについて、さらにその事業の拡大等についてのお話になりますと、全く私答弁に困りますが、ただいま御指摘のありました液体化、あるいは石炭ガスにしてこれを使う方法はないかといういろいろな点を研究いたしております。しかし、まだこれなら大丈夫だ、この方向に新しい分野がある、ここまでの確信のあるものはまだないようであります。しかし、今後ともこういう点についての研究は続けて参るつもりであります。
  118. 松井政吉

    ○松井(政)委員 時間が進捗いたしますから、さらに合理化の問題については希望を申し上げて次へ移りたいと思います。  ただいま私が数字で質問をいたしましたように、当初の合理化計画は変更せざるを得ないところへ来ております。従いまして、これは衆議院において特別委員会も持たれたのでありますから、そこでまたこまかい具体的なことの質問もし、またお答えもいただきましていろいろ理解を深めたいと思いまするが、希望を申し上げておきます。これは一つぜひ新しい角度から石炭を考えていただきたいということを申し上げておきます。  そこで労働問題についてちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、要するに、先ほど申し上げましたように、日本の炭鉱産業だけが六万人の失業者を出しているわけですね。買いつぶし炭鉱の、中小炭鉱だけの失業者が二万九千七百八十七人出ておるわけです。これに対する具体的な扱い方は一体どうするのか。私は冒頭申し上げますが、離職者対策だけが万全を期せば失業者を出していいというものの考え方は、私は持っておりません。やはり産業の発展とともに雇用の増大が原則でありまして、大体首を切る、それから失業をさせるということ自体に私は不満があるのです。だからそれを前提として、しかしながら政府の合理化政策を進めた結果、強行した結果、犠牲になって失業したのでありますから、それに対する対策は万全を期さなければならない。そういう角度からお答えを願いたいのでありますが、一体こういう合理化政策の強行によって現われた失業者——台風等の被害を受けた者は家も流され、同時に人にもいろいろ傷をつけられたりしてお気の毒でありまして、これはやはり党派を超越して台風対策を立てていることは御承知の通りであります。ところが炭鉱の労働者は、これは天災ではないのです。これは政府経済成長政策のいわゆる政策禍なんです。政策の被害なんです。この政策の被害から生まれた人々をこれはやはり善処しなければならぬことは当然なんです。これは党の問題じゃないのです。社会問題、人道問題に発展している産炭地の地域があるということも御承知願いたい。その上に立って労働大臣は六万人の炭鉱失業者に対して一体どういう措置とどれだけのあれをやってきたかということについて、一つ具体的にお答えを願いたい。
  119. 福永健司

    ○福永国務大臣 まず松井さんが冒頭に申される石炭産業の現状については、私も深く憂うる一人でございまして、私は、失業者が出るのが当然で、それに対する施策をどうするかというような考え方ではなく、できるだけ失業者が出ないことを欲する点においても松井さんと考えを同じゅうするものでございますが、しかし石炭産業の特殊性よりいたしまして、ある程度の失業者が今日までも出、なお今日以後も出るであろうことは当然予想されます。従って、従来御承知のように、いろいろの施策を講じて参っておりますが、今日以後さらに緊迫した事態がより加わるということを考慮いたしまして、一そうこれを強く推進していかなければならないと思うわけであります。たとえば、炭鉱離職者に対しまして、従来雇用促進事業団——これはまだできてあまり長いものではございませんけれども、この足跡を見ましても、おおむね円滑に業務を行ない、相当程度の成果をあげてきたと存じておるわけでございます。ごく簡単に数字をあげて申し上げさせていただきますならば、雇用促進事業団の炭鉱離職者援護業務の予算は御承知の通り十一億九千万円であり、移住資金の交付一万三千人、移動宿舎の建設百二十棟、八百人分、住宅確保奨励金の交付が一千戸分、それから職業訓練手当の支給が四百五十人、こういうような数字になっておりますが、現在まで、先ほど申し上げましたようにおおむね円滑に実施されてきておるのでございます。しかし御指摘のように、重ねて申し上げますが、この点についてもさらに一そうの努力をしなければならない、施策が及ばねばならない、こういうように考えます。また別の面から申し上げますと、こういうような事態がある。そうして一方には相当労務者を求めている部面もあるというようなこと等からいたしまして、職業紹介等につきましても、これをより積極的に、広域職業紹介というような考え方から従前もやっておりますが、そういうようなことも進めていかなければならない。その他いろいろの施策があるわけでありまするが、これは、要するにさらに強化していかなければならない。これを強く感じておる次第でございます。
  120. 松井政吉

    ○松井(政)委員 的確に簡明にお答えを願いたいのですが、いろいろ施策を講じているというお話でございますけれども、第一点は、本年度一般会計予算で雇用促進事業団それから援護対策事業並びに緊急就労対策、いろいろございますが、これでは、現状ではわれわれは不足だと思う。この点についての見解を一つ明らかにしていただきたい。これが一つ。  それからもう一つ、要するに、相当成績を上げている、こうおっしゃるが、残念ながら上げておらないのです。これは石田労働大臣が三池の炭鉱の例をとりまして、前国会の当委員会で、えらく自分だけが離職者に対して全部のめんどうを見るような立場説明をされ、われわれもその説明を聞いているときは非常にありがたかった。ところが現状になってみますると、千二百名の離職者、これは買いつぶし炭鉱の離職者ではございません。これは合理化促進の結果生まれてきた一種の災難としての離職者なんです。政策災難と言ってもいいと思う。その離職者なんです。そのうち訓練中はいろいろめんどうを見ている、それから訓練して就職した者もおる——これはおりますよ、三百四十人。訓練を受けている者は百四十人おりますよ。けれども百六十人は完全な失業者、それから七百八十人というものは政府の手当の及ばない失業状態を続けているということはおわかりでございますか。こういうことを考えるならば、無理な政策遂行の結果生まれてくる失業者なんですから、首を切らないでほしい。政策遂行のためにやむなく失業する者については、要するに、憲法に保障された生活の保障を予算的にしなければならない。石炭合理化の推進は、いずれをとるかというところへ追い込まれてきているのです。それをどっちもやらないということになりますると、これは社会問題、人道問題が起こってくる。産炭地においては、もう買いつぶし炭鉱の労働者の子供は小学校に行っておりませんぞ。中学校に行っておりませんぞ。握り飯がないんですぞ。それでもかまわないでいいんですか。義務教育を受けることができないんですぞ。二万人程度の村で千人の炭鉱労働者が炭鉱がつぶれて失業した場合には、家族四人平均で五千人の失業者でありまするから、二万人の人口の村では四分の一の失業者をかかえているのです。自治体はどうにもなりませんよ。どういう措置を労働大臣は一体やったのですか。かりに五万人の人口の市においてもそうですよ。四つの炭鉱がつぶれて千三百人の失業者を出したということになりますると、これはやはり人口の相当部分が失業になっているのですよ。しかも、未払い賃金のまま買いつぶしになっているのですから、つぶれた炭鉱はすぐ失業です。うちは自分のものじゃないから、閉山と同時に追い出される。畳なんかありはしません。同時に電気設備や線路とか炭車、そういう金目になるものは全部もろもろの税金の差し押えとかで市なり税務署なりが押えております。労働者の未払い賃金に当たる物資は何もない。これが合理化推進の結果生まれてくることをおわかりになりませんか。それでも首を切らなければならぬとお考えになりますか。それでもやむなく出た失業者に対する手当がこれで満足だと労働大臣はおっしゃるのですか。これを明らかにしていただきたい。
  121. 福永健司

    ○福永国務大臣 御指摘のような非常に遺憾な事情が一部生じておりますることも私も認識いたしており、従って先刻申し上げましたように深く憂えておるわけでございます。  まず冒頭におっしゃった、従来の予算措置をもってこれで足れりと労働大臣は考えるかというお話の点につきましては、私もここまで緊迫した事態、そしてまたこれが加速度的になお進むことも予想さるるにおいては、一そうこの際何とかしなければならぬ、こういうように考えております。従って予算措置につきましては、これは来年度になるものもありましょうし、これについては鋭意それまでに財政当局とも折衝するつもりでございますが、当面の措置等につきましても検討いたしておるものもあるわけでございます。  なお、皆様方の方でも従来のものと違った意見をいろいろなすっておられたし、あるいは労働者、経営者等からもある種のお考え方等も示されておりますが、これらにつきましても、せっかく国会にも特別委員会もできましたし、また先刻通産大臣がお答え申し上げましたように、関係閣僚でもこれからいろいろ話し合っていこうということでございますので、今御警告をいただいたようなことを深く心いたしまして、善処していきたいと存じておる次第であります。
  122. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ただいま申し上げた実情でございますが、労働大臣もやはり本年度三十六年度一般会計予算における離職者対策等の予算については満足とは考えておらないようだ。そうならば今の離職者の現状について、訓練手当は昼と夜と違っておりますが、手当を受けている間でもまんまを食わなければならぬ。手当を受けている間は失業保険は出さないのです。そういう形で、これは食事もできないで職業訓練を受けているというような現状であります。また就職しても、炭鉱におれば三万円働けたものが一万五千円で働かなければならないところへ訓練終了者は大半勤めざるを得なくなっている。さらに半数以上というものは、これは買いつぶし炭鉱の産炭地は三池炭鉱の離職者よりももっとひどいと言っても過言でない状態であります。そういう実情に照らして、三十六年度一般会計予算で満足でないとおっしゃるならば、なぜ今度の補正補正をしなかったのか。なぜ離職者対策、訓練手当その他足らざるものについて予算補正を行なわなかったかという点について一つ明瞭にお答え願いたい。
  123. 福永健司

    ○福永国務大臣 失業保険給付等につきましては、御指摘のようなこともございますが、さらに従来の規定だけの取り扱いよりも延長してこれを支給する等の措置もある程度講じたことも、松井さん御承知の通りであります。こういったことについてはなおこの上とも特段の配意をしていきたいと思います。当面精神からいたしますならば、なぜ今度の補正予算にそういうものを加えなかったかというお話でございますが、既定予算内でできるだけの措置をし、それでどうにもならない場合には、さらにということも考えられないこともないと思います。そこに先ほどから申し上げました国会の特別委員会なり、あるいは関係閣僚でいろいろ考えていこうということ等もございますので、なおしばらく時をかしていただきたいと思います。
  124. 松井政吉

    ○松井(政)委員 今国会で補正をしなかったことは事実でありますから、石炭特別委員会でも、私は特別委員会理事をやっておりますからいろいろお伺いしますし、また石炭閣僚会議等もございますから、そこで三十七年度予算編成期には一つ労働大臣が、ただいま申し上げたようにわれわれが満足できなくても労働大臣が満足できる程度は一つ考えていただきたい。これは私は明確に希望を申し上げておきます。  それからもう一つお伺いをいたしますが、英国、ヨーロッパではすでに炭鉱を国有しておるところもあれば公有の形をとっておるところもあれば、そして石油資源等から石炭資源の方向へエネルギーを求める施策がとられておることは、総理大臣も御承知のことだと思う。それから労働者の問題につきましても、英国においてはすでに炭鉱労働者だけの最低賃金を制定いたしております。日本におきましても、繊維産業の労働者については最低賃金的なものが確立しておる。これは労働大臣は御承知でしょう。今の炭鉱労働者についての最低賃金——最低ということよりも保障賃金と言った方が当てはまるかもしれませんが、そういう問題についてお考えになっておることがありますか。考えて実施する意思があるかどうか。一つお答え願いたい。
  125. 福永健司

    ○福永国務大臣 最低賃金制につきましては、われわれは極力これを推進していきたいという考えのもとに、現在百四万人程度の適用を見るに至っておりますが、これを二百五十万にするという計画を推進中であることも御承知の通りであります。石炭につきましてどうするかということにつきましては、御承知の中央最低賃金審議会で労使、公益三者構成の小委員会を設置いたしまして、ただいま鋭意御検討を願っておる。これらの結論を待ちまして私はぜひ善処いたしたい、さように考えております。
  126. 松井政吉

    ○松井(政)委員 私のただいま申し上げた最低賃金というのは一般的なものではない。要するに炭鉱合理化を進めて能率を上げて、きめられたトン数を一人の労働者が掘る。炭価を下げなければならぬという合理化進捗に伴う労働者でありますから、炭鉱労働者だけの保障賃金制を考えたらどうか、こういうことであります。それは今鋭意検討中だということでありますからやはり十分検討していただきたい。そしてこれは実施可能な方向に労働大臣は拍車をかけていただきたいということを申し上げておきます。  時間がありませんから最後に参ります。御承知のように前国会において椎名通産大臣は、石炭、石油、電力あるいはすべてを含む総合エネルギー対策を鋭意考究中でありますと言っております。通産大臣は、先ほどもちょっと触れたようでありますが、当面どのようなことを御相談願っておるか、そのアウトラインでけっこうでございますからお聞かせ願いたい。
  127. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほども触れましたように、総合エネルギー部会のうちの石炭部会だけの答申を経まして、その答申に基づいてただいまいろいろ通産省として立案し、今回設置いたしました関係閣僚会議等におきましても、その答申案を骨子にして御審議を願っておるつもりでございます。また石油につきましては、ただいま官民合同の調査団が欧州に行ったばかりでございます。帰朝を待ちまして、その報告を徴して、その線で検討を続けて参りたい、かような考えでございます。
  128. 松井政吉

    ○松井(政)委員 時間がありませんからただいまから一括して申し上げます。そしてこの問題について総理並びに通産大臣からのお答えをいただいて、私は質問を終わりたいと思います。  御承知のように、ただいままでの間質疑応答をいたしました中身から考えましても、石炭産業については、政府とかあるいは野党とか、自民党、社会党という党で勝手にするということではなくて、根本的なエネルギー対策から出発をして、石炭をどうするかという問題になっていることは事実だと思うのです。その事実に基づきまして当面やり得ること、これはやっていただきたいということが幾つかございます。それを申し上げますので、それについての見解を一つ明らかにしていただきたいと思います。  われわれは英仏で行なっておるように石炭産業が重要な場面に直面をしているから直ちに国有にせよなんということをただいま申し上げておるわけじゃございません。基本的な産業計画としてわれわれはいろいろな構想を持っております。けれども、ただいまそれをやれなんということを言っておるのじゃございません。けれども、やはり石炭にエネルギーを求めようとするヨーロッパ諸国においては、自分の国の地下資源のエネルギーを大切にするために、むしろ労働者の雇用の増大をはかって、重油を専売にするとか、重油の輸入を制限するとか、あるいはまた重油をボイラーにたくことを禁止して石炭をたかせるとか、もろもろの具体策を考究していることは、すでに総理も通産大臣も各国の実例を知っていることだと思います。そういうことは池田内閣としてもやろうと思えばやり得ることであるが、そういうことについて考えを持っておるかどうかということについて一点。  それから、石炭産業全体に対する、石炭鉱業を安定化すための基本法的なものを構想に描いておるかおらないか。必要であると思うか、必要でないと思うか、この点が第二点。  それから、今の炭鉱を再編成する必要があることは現実だと思いますので、適正規模に再編成をするために、鉱区の整理統合等を行なって生産体制の確立をはかることがいいと思うが、この問題について考えておるか。明確な考え方があったならば、これを一つ聞かしていただきたい。  それから、流通過程の問題が一番重要になりますから、流通過程を整備いたしまして中間経費を節減してもらう。そしてやはり単価の切り下げと、それから、消費というと電力その他消費者は幾らもあるわけですが、そういう人たちに迷惑をかけないような流通過程を整備するために、二千数百にわたる石炭の銘柄を一ぺん整理してこれを規格化する方法を通産省として考えられないかどうか。これは必要なことだと思うが、そういうことはやろうと思えばやり得ることなんです。これはやれるかどうか、一つ考えていただきたい。  それからもう一つは需要の安定的拡大をはかるためにこれを液体化することが必要である、ただいまの質疑応答の中でも明らかになったのでありますが、やはり何といっても電力用炭の拡大をはかるためには産炭地発電をわれわれは最大の希望として申し上げているのでありまするが、これは希望意見になりまするけれども、産炭地発電に重点を置いていただきたい。その場合における超高圧送電線等の建設はやはり国の資金でやることがいいと思うが、そういうところまで考えたか、そういうところまで研究しているか、まだそこまでいかないとおっしゃるのか、そういう点について一つお答え願いたいと思います。  それから石炭の地下ガス化は先ほどお答えをいただきましたからけっこうでございますが、最後に、特に産炭地の自治体がその失業者をかかえて困っている実情と、特別失対等の事業についての問題に苦慮いたしておりますが、産炭地の自治体に対する特別の手当を必要とすると思うが、その点についてのお考えはいかがか。  それから産炭地振興法というようなものを根本的に考え直して、そしてやはり池田総理がおっしゃっておりまする産業の分散、それから低地域の開発と相待って産炭地自体で現地雇用が増大するようなものの考え方で産炭地振興というものを考えていただきたいと思うが、この点についていかがか。この各項申し上げましたことは通産大臣からお答え願いたい。  それから最後に総理大臣から、通産大臣がお答えしたあと、当面こういう政策はできると思うし、合理化政策等についてもやはり部分的には変更した方がいいと思うものが党派を越えて生まれてきておる、こういう事態について、エネルギー確保のために石炭についてやはり重要に考えている考え方について最後にお答えを願いまして、私の質問を終わりたいと思いますが、お答えを願いたいと思います。
  129. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 第一点、石炭の国有そのものにつきましては、これはもう今言わないということでございますから、別に答えなくていいかと思います。ただ石油が自由化された後、専売だとか、あるいは重油について特別制限するかしないかというお尋ねでありますが、先ほども触れましたように、ただいま石油エネルギー調査団を派遣したばかりでございます。その報告を待ちまして私どもの態度をきめていきたい、かように考えております。  それから第二の、石炭鉱業安定法、これが社会党といたしましてはぜひとも作れという強い御要望のように承っております。その中身等につきましても、一応事務的にも目を通しているつもりでございますが、ただいまのところ、私どもはこの安定法という法律を作るというような考え方にまでは話を進めておりません。  次の、鉱区の再編成あるいは適正規模云々の問題でありますが、租鉱権の問題をめぐり、鉱区の整理統合等の問題は今後の炭鉱整備の一つの大きな重点になっておる問題だ、かように考えておりますので、これは真剣に取り組んで参りたいと思っております。  また流通過程の整備整理の問題であります。これまた御指摘のように今後の合理化の方向として私ども特に力を入れるべきものではないか、かように思っておりますので、一部いわれております専用の石炭輸送船の建造等につきましても、研究を進めておる次第であります。あるいは揚地の荷役設備等についてもさらに検討を続けていく必要があると思います。  そのうちに銘柄の整理についてお触れになりました。これはまことに困ったことだと思います。おそらくその専門家であられる松井さんの方がよく御承知のことであります。あらゆる機会に銘柄の整備等がいわれております。過去におきましてもなかなか実現しておらない。だが今後能率炭鉱に重点が置かれるというようなことになれば、自然に銘柄の整備も統合もそういう方向に向かうのじゃないか。これは官民一緒になりましてできるだけ簡素化するように努力をしたいものだと思います。  第五に、需要拡大について御指摘がありました。産炭地発電を別に特に主張するわけではないが、社会党としてはそれを強く主張する、その立場に立っての超高圧送電等やるかやらないかはっきり言え、こういうことであります。これは場所を限るとか、あるいは方法を限られないで、先ほどもお答えしたように需要の拡大については私ども一そう努力をしたい、かように思っております。特に電力関係におきましては、石炭を使っての発電を大いに勧奨するつもりでございますから、その点御了承いただきたいと思います。  次は産炭地振興についての各種の具体的な方策等にお触れになりました。御指摘の通り政府並びに与党といたしましても、産業の地方分散等を考えておりますし、またそういう意味から産炭地振興も具体的方法考えております。いずれにいたしましても、今回特別な整備の対象になり、非常な影響を受けておる産炭地方でございますので、この方に適当な産業が興れば、これは大へんけっこうなことだと思うし、同時に失業者をも吸収し得て大へんけっこうなことだと思います。ただ今までのところいろいろ努力され、いろいろ叫ばれたのにかかわらず、立地条件その他等が十分に合わない、なかなか具体化していない、この点はまことに残念に思います。しかし今後税制の面からも、あるいは資金繰りの面からも産炭地に特別な産業が興るように私ども指導して参りたい、かように考えております。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 石炭産業は、経済的にまた社会的に、そうして政治的に見まして最も重要な問題でございます。しかも非常な苦境にあるのでございますから、われわれといたしましては、これが善後策につきまして十分な措置をいたしたいと思います。
  131. 福永健司

    ○福永国務大臣 松井さんのお呼び出しはありませんでしたが、一点、私からお答えするのが適当であろうというものがございましたので、お答え申し上げます。  炭鉱離職者対策の推進に伴いまして、地方公共団体の財政負担の軽減をはかっていくということは、従来もやっております。松井さん御指摘のような極端な例も幾つかあるようでございます。政府が炭鉱離職者緊急就労対策事業の国庫補助としては五分の四を持っておるのでありますが、残りの五分の一につきましても、なかなか容易でない小さな地方公共団体のあることを承知いたしております。そこで、すでにこれらにつきまして、その財政状況を勘案いたしまして、特別交付税の交付、あるいは起債の認可、そういった措置をとってきておりますが、事態のより一そうの緊迫化にかんがみて、これを強化する必要があろうと存じます。これは、自治大臣もおればなおいいのでありますが、よく打ち合わせをいたしまして、御趣旨のごとくに処したいと思います。
  132. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これで私の質問を終わります。
  133. 山村新治郎

    山村委員長 それでは次に小松幹君。
  134. 小松幹

    ○小松委員 私は日本社会党を代表しまして、現下経済問題並びに予算の問題、貿易の問題について総理並びに大蔵大臣に承りたいと思います。  これまでも委員会あるいは本会議総理現下経済状態という問題について聞いたりあるいは成長政策について承ると、常に高度成長政策はいいのだ、そうしてそれを変える意思もないのだ、そういうことを居直ったようなことをおっしゃられておるわけであります。この点について私は再度お尋ねしたいと思います。  高度成長政策をやりながら今日の時点で私は一番困っておるのは、総理自身じゃないかと思う。あるいはこの高度成長政策の犠牲、あおりを受けて倒産したりあるいは金借りに飛び回っている中小企業である、あるいは先ほども質問が出たように、炭鉱離職者の方々が、この高度成長政策の恵みがなくして困っておるわけであります。あなた自身も国際的均衡の問題については困っておると思う。国際収支が赤字になってどうにもならぬ、こういうことでお困りになっておると思うのです。そうなれば、ここに経済政策というものは私は腰を折られた格好になっておると思う。高度成長政策が順調に数字の上でもあるいは現実の社会の環境の中でもスムーズに進んでおったら、これは何をかいわんやでありましょうが、少なくともいわゆる計画の数字も乱れた、同時に現実の問題として国際収支の赤字が累積されつつある、こういうようなことを考え、あるいは物価が所期の計数よりもはね上がっておる、こういうことを考えた場合には、少なくとも過去のあなたがとり来たった成長政策というものに反省を求めなければならぬ、あるいはこれを改めるかあるいはこの問題でどこが悪かったのか、こういういわゆる反省が加えられなければ、私は今後の経済運営というものは成り立たぬ、強気でただこれはいいのだ、やるのだ、これじゃ国民は納得しないと思うのです。私は、どこが間違ったのか、一番間違った点は、あなたが常日ごろから言ったりあるいは腹の中にあるところのいわゆる輸入依存度の問題だと思うのです。経済成長政策を進める上で一番心配したのは輸入依存度の問題であると思う。ところがそれをきわめて過小評価するというか、輸入依存度は平均値で一〇%でいいのだあるいは九・何%でいいのだ、こういう輸入依存度をはじき出して、それをもとにして輸入がふえるということよりも成長に追われて、そしてこの高度成長政策というもを作り上げた。私は輸入依存度というものは単に平均値だけでとるべき問題でないと思う。過去の累積、経済的な数字を積み重ねても、限界輸入性向というものから考えて、平均値でなくして、もう少し限界線、最大の限界線がきたときには、この成長政策は破綻がくるのではないかというようなことを考えなくちゃならぬと思う。これは過去においても経済企画庁は輸入依存度というものを大きく取り上げて、そうしてできるだけ成長率というものを押えていこうという考え方に立っておった。少なくとも三十六年度予算編成のときには、経済企画庁から出たところの経済成長率というものは七・二%の平均値を持っておった。ところが総理、あなた自身が九%に数字を変えた。変えたことはそれはいいでしょう。だから変えた限りにおいて設備投資とかあるいは国民総生産というものは伸びただろうが、そのひずみ——あなたもきのうかおととい言われたひずみ、陥没地帯が出た。これは一番最初から心配されておった輸入なんです。輸入が一番問題になっておる。そうなったときに、高度成長政策の少なくとも心配され一番基本になっておった輸入依存度を軽く見た、こういう点が私は相当あなたの責任だと思うのです。この点についてあなたの御答弁をお伺いしたい。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 高度成長、高度成長と言われますが、この高度成長というものはどの程度のものが高度成長かということになります。国民総生産が三、四%、四、五%ぐらいは最近では普通の国でございます。国によって違いますが、ドイツの方は少し上でございます。私の言う九%の成長は、私は日本におきましては高度成長——ほかよりも高度成長だが、これは達成し得る成長率と私は考えたのであります。十年間ずっと九%であります。私は、達成し得る、またしなければならぬ目標の成長と考えております。しかし今の現状は、私の成長率よりも相当上回って、超高度成長率であります。超高度成長率になったということにつきましては、私も責任は負いましょう。また民間の人も考えてもらわなければなりません。問題は高度成長率じゃなくて、超高度成長率の問題なんでございます。あなたのおっしゃいます輸入依存率というものも、普通の九%程度のときの輸入依存率と、それが一二、三%になったところの輸入依存率というものが違うことは当然でございます。だから、私は超高度成長率が、国際収支の非常な赤字を見ておると考えております。だから、池田は成長率を変えない、がんばっていると言いますが、私は当初三年間九%平均の成長率は日本としてできることである・そう無理ではないと思います。しかし今のように一二、三%の高度成長率はよくございません。従ってこれを改めようとするのであります。これは輸入依存率の問題ではございません。依存率のいかんよりも、そういう超高度の成長はやめなければならぬ、私はこう言っておるのであります。たとえば依存率と申しますと、鉄鋼につきましても、ある程度の分は日本国内の鉄鉱石でできます。ある程度の分は超粘結炭の国産品で、五割五分、六割程度、あるいは七割くらいは今の状態ではいってありましょう。しかし一定の度を越えると、今度は外国依存の鉄鉱石が非常に多くなる。またくず鉄とか、あるいは今まであまり輸入しなかった銑鉄の輸入なんか二百五十万トン。だから輸入依存率というものは、成長率をどう見ていくか、そしてそれが普通の成長率か超高度の成長率かによって変わってくるのでございます。依存率の問題よりも超高度が問題だと私は思います。
  136. 小松幹

    ○小松委員 あなたは自分の出した計画自身に対する弁明ばかりをしている。超高度成長率だから変わったのだ、輸入依存率を軽く見たのじゃないと言う。しかし現実にそういうものがあったから——成長計画というものは片足だけがどっとふとったり、あるいは一部の産業だけ、あるいはものが、数字が上がって、あとのものはびっこになってもいいという計画はあり得ないことなんです。やはりその計画は計画なりに均衡を保つような一つのシステムになっておらなければならぬ。それがそのシステムが数字の上ですでに破れておるわけです。実際には現実も破れておる。だからその現実が破れたということは、あなた自身の計画のそごともいわれるわけです。全部が全部あなたの責任だとは言わないが、少なくとも超高度になったというその原因というものは、やはりあなたが出した倍増ムードにあるというか、高度成長政策のドライブがかかったために、今日これだけの超がつくものが出た。今になってあなたが超だと言うていかにも超だけが悪いんだ、おれの計画は正しかったのだ、そんなことを言うてもあなたは国民を納得させることはできない。この前の本会議でも、先般の井手委員の質問に対しても、すぐにあなたは三十五年度のGNPは十三兆六千億だ、そのときの計画は三十八年度の計画を云々して、いかにも計画は正しかった、こういうようなことをおっしゃるけれども、もはや三十五年度の当初十三兆六千億という数字は死文になっているわけです。計画としては死んだもの、ほごになっている。そのほごになったものを今ごろ引っぱり出してきて、現実から目をおおうて、十三兆六千億を積み上げて、計画の通り三十八年度にはいきます。だからこのままいったならば来年、再来年は五%の成長率でいいなどと幾らここで言うても現実とはずれておるのです。あなたのはペ−パー・プランの答弁にしかならぬと思う。この点はやはりもう少し政治をやるというものは、ペーパーにとらわれることもないでしょう、過去の成長率の数字にとらわれることもないでしょう。少なくとも現実この瞬間における政治というものを、どうするかということを考えなければならぬ。現実は国際収支は赤字になっておる。だからよく学問的にもいわれておった、国際均衡かあるいは国内均衡かというようなことが問題になる。あなたは少なくとも国際均衡の問題は大した問題じゃない、国内均衡の方が大事だ、内部の需要率というものを高めて、ドライブをかければいいんだ、あなた自身が、あるいは下村さんあたりがどんどんそれを吹聴してきた。だからこういう結果が出てきた。全部が全部あなたの責任じゃないとしても、ここまで追い込んできた責任の大半は、あなたの高度成長政策あるいはムードというものに基因して今日の破局がきたんだ、私はかように考えます。現にもう資料においても数字というものはめちゃくちゃになっておる。貿易の数字もあるいは設備投資の数字も、あるいはGNPの数字も、計画そのものの数字も、めちゃくちゃに乱れて、しかも現実というものはもっと困った状態にきておる。政治家はこの困った状態に対する責任を負わねばならぬと思う。私は過去の数字の責任を負えとは言わない。しかし今の困った事態に対してどういう責任を負うのか。それはおれがしたのじゃない。設備投資が上がったからだ、設備投資をしたところの財界が責任を負うんだ。そんなことでは政治家は責任を負えない。それなら最初から数字を出さぬがいい。どうせ成長するのは間違いないのだから、出さない方がいい。あえて出して、そうして自分が混乱に導いておるという責任は確かにあなたにあると思う。その点について御答弁を願いたい。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 成長は間違いございません。その通りです。いかなる程度で成長するかという問題でございます。私はここで、あえて言いたくはないのでございますが、十年間倍増という成長につきましては、国民の大多数が一つの目標を持って言ったと思います。わが党ばかりではございません。ほかの方でも言っておられたと思います。しこうして過去の数字は、紙のようなものだと言われますが、わが自由民主党は、昭和三十八年度十七兆六千億、これは天下に公約した数字でございます。天下に公約いたしております。私は三十八年度十七兆六千億の総生産ということは、天下に公表した数字で、われわれは責任を持たなければなりません。しこうして、その間においてむちゃくちゃだとおっしゃいますが、何もむちゃくちゃじゃございません。十三兆六千億を基準にいたしません。井手さんとの話を基準にいたしましても、私は自分があのときに主張しておった九%というものは三年間で確保していく、党の公約以上の分を当初において確保していく自信を持っていっております。ただ十カ年倍増、あるいは初年度三カ年間九%の平均でいくということについての私の考え方と、現実が違ってきたということにつきましては、これは私も政治家としての責任を負いますから、その違ったところを、私が申し上げたような三年間平均九%でいくように、これをためていく、直していく、是正していくということが私の責任であるというので、従来からずっと申し上げておるのであります。成長政策はだれも願うところであります。十年倍増の成長政策はほとんど大多数の、各政党とも言われたことであります。しこうしてそのテンポの点につきましては、私の国会で言っておった一一、二%は多過ぎるから、九%で三年間いくというのが、私の見方より心配しておった見方に行ったのであります。そのひずみをあらゆる措置で直そうというのが私の責任であると考えております。
  138. 小松幹

    ○小松委員 いわゆる数字が乱れたということは、現実が、特に国際収支がもう困った段階にきておるわけです。そのことだけたった一つとってみても、安定成長あるいは均衡成長からすれば、そごがきておるということは事実です。だからこれを手直ししなければならぬ。あなた自身も手直しは私の責任だと言う。経済成長の過程でダイナミックな考え方からとってみれば、成長論を否定する者はない。それはあなたがおっしゃる通りでしょう。しかしすべてが巨視的な見方をするあまりに、現在のこの瞬間の政治というものあるいは経済というものに対して目をおおうてはだめだと私は思う。少なくともこれは経済界が、あるいは銀行屋ならば、それはほっておっても成長はするのだというような考え方に立つかもしれないが、少なくとも政治家は巨視的な目だけ持っておったってだめだと思う。そういう点では、もう少し瞬間的に今の現段階において強い経済の成長率に対する反省がなければならぬ。いいのだ、いいのだと言うても、なかなか納得ができぬじゃないですか。現に池田さん自身が今やっておる政策は、少なくともことしの七月ごろから、あるいは今度の十月からやるところの、あるいはやっておるところの政策は成長政策ですか、私は聞きたい。むしろ成長政策を押える反成長政策の政治しかしていないじゃないですか。それはあなたが好むと好まざるとにかかわらず、急角度にデフレ政策に変わってきておると私は思う。これはどうなんです。あなたが今やっておる政治というものは成長政策、成長の政治をやっておるのですか、押える政治をやっておるのですか、デフレ政策をやっておるのですか、この点はどうですか。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど私が申し上げました日本に適当な成長政策は、私は続けて参るつもりであります。ただあなたの言われる高度成長と、私の言う予定以上越えた超高度政策、それは押えていく、その点ははっきりしていただきたい。私は三年間九%でいくというこの根本方針は変えません。変えるのは、私がお約束いたしましたパーセンテージをこえた行き過ぎの超高度政策をもとに戻すのです。しこうして、これは決してデフレ政策ではございません。先ほど来申し上げますように、今年度これからの分の鉱工業生産は、ある時期から横ばいくらいになっていくと期待いたしております。そして昭和三十七年度がどれだけの上昇率でいくかということは、過去の経験を生かして、今検討しなければならぬ。決してデフレ政策をとる気持は私はない。超高度の行き過ぎた、誤った行き過ぎた分を押えようとしておるのでございます。
  140. 小松幹

    ○小松委員 あなたの言葉を聞いておると、成長に二種類ある。あなたの成長論は二つあって、一つはまんべんなくいく成長論で、一つはびっこの成長論を言っている。成長政策というものは一つであると思う。片一方の超というのは、これは成長政策じゃないのでしょう。あなたの超と言われる成長というものは、これはびっこの成長だ。足が片一方大きくなって、片一方が小さいところの成長をほんとに成長と言いますか、そこを聞きたい。成長というのは、そんな成長はないはずだ。赤字を出して国際通貨基金から借金をしてまでいこうという、こういう成長政策もあるのです。あなたの言うのは、どっちの成長政策が正しいのですか。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げておる通りで、私の成長政策というのは、日本経済の実態に即し、日本国民のたえ得る成長が成長政策であります。ほかの国に比べたら高度成長政策かもわかりません。しかし、今の現状は私の言う成長政策、いわゆる各国に比べての高度成長政策を越えました行き過ぎた分でございますから、この行き過ぎた分を押えようというのであります。あなたの言われるびっこの政策、超高度政策というのはあなたもおきらいですが、私もきらいです。だから、これをためなければならぬというのであります。だから、適当な成長政策は私は続けていく、びっこの誤った超高度成長政策というものは、これをやめなければいかぬと思います。
  142. 小松幹

    ○小松委員 誤った成長が出てきたのでしょう。実際問題として出てきた。これは一体だれが責任を負うのですか。びっこの成長は国民が負わなければならぬものでしょうか。あなたの責任はどうでしょうか。あなたはびっこの責任を肯定して、あるいは経済高度成長政策をやはり今まで通り続けていくつもりですか。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 私は過去の状況を見まして、すでに小松さんも御存じだと思いますが、さきの国会でも、ほっておいたならば、また普通の計算ならば一一、三%、一一、二%出るようになるが、そこはわれわれとしては腹八分目で、九%程度の、日本に合った、望ましい成長率でいかなければならぬということはたびたび言っておるのであります。しかし、国民の非常な力強い成長によって、この見込みが変わってきた、違って参りました。それがいわゆるあなたの言うびっこの成長、私の言う超高度の成長になった。これはだれの責任かといえば、私が政治をしていれば、まず第一に私の責任でしょう。人がやっても私は責任を負います。財界の方で行き過ぎた点につきましても、内閣総理大臣としては一応の責任は負います。しかし、責任を負うと言うて、負うだけではだめなんで、これはびっこの成長、超高度だから直しましょうというので、私は五月、六月ごろから警告を発しながら、適当な措置をとり続けてきておるのであります。
  144. 小松幹

    ○小松委員 政治家は、そういうびっこの成長が出てきたら、何もあなたが直さぬでも、ほかの人にかわったらいい。この前あなたが一千億減税、一千億積極政策といって石橋総理と抱き合い心中してやめていったら、あとで一萬田さんが出てきてちゃんとやったじゃないですか。だから責任というものは、私が責任を持ってあとで手直しをやるんだなんて、そんなことで政治家というものは勤まるものではない。自分の高度成長政策九%をやって、輸入の依存度の考え方の相違によって輸入がこれだけの大きなアンバランスがきた以上は、おれは間違っておったのだということをはっきり言えばよい。悪かったら、ほかの者にやらして、押える政策はお前がやれというふうにして譲ってもいいわけだ。あなたは実際、おれがやらなければ——あおっておいて、困ったら今度は押えるやつはわしがやるのだ、こういう言い方を今しているわけです。あなたはデフレ政策をやっておらぬと言うけれども、おかしいですよ。みな押えているじゃないですか。九月の上半期の財政の対民間収支の状況を見ても、三千億の揚超が出る、それには税金は一千五百億も吸い上げ、からっぽに吸い上げてしまって、そうして金詰まりにしておいて、窓口規制をやる、高率適用はやる、こういうようにすれば、金がのうなるのは、四苦八苦するのはあたりまえじゃないですか。中小企業などは、金の借り場所がないから、あぶあぶするのはあたりまえだ。こういう政策を現にあなたはやっているじゃないですか。少なくとも金融政策では押える政策をやっている。窓口規制をやらしたり、高率適用をやらしたり、あるいは揚げ超をしておいても、それに何らの財政補給もしないで、そのままほったらかしにして、締めろ締めろでここに来て、あなたはうまいことを言って、高度成長政策の看板はおろしませんと言いながら、裏にかえっては国民を詰めるのと同じだ。実際問題として、窓口規制なんというのは、少々ほべたはったり、ひねられたりするようなものだ。表ではいいことを言う奥さんで、裏にかえったら子供をひっぱたく奥さんになっているような格好ですよ。実際デフレ政策をやっているじゃないですか。そうしておいて、なおデフレ政策をやらないという。それはデフレの状態になったかならぬかは別問題です。しかし、やっていることはデフレ政策をやっているのです。それはどうなんです。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 デフレ政策をやっているのか、行き過ぎを押える政策をやっているのか、デフレ政策にはいろいろ見方がございましょう。今政府が非常な引き揚げ超過をやっている、こう言っておられますが、引き揚げ超過をやった反面におきましては、日本銀行がどれだけ貸し出し増加をしているか。数字は申しませんが、政府財政投融資の引き揚げ超過の倍額を日本銀行は貸し出し増加をいたしております。こういうことを見まして、私はいろいろな点で大蔵大臣に措置をやらしているのであります。日本銀行の貸し出しは、政府の一時的引き揚げ超過、——この十月からまた散布超過で、国の財政支出が何千億と出て参りましょう。しかし、片一方では引き揚げ超過よりも倍額の貸し出し増加がある。窓口規制をやっているといっても、それだけいっている。しかもこの貸し出し増加は、政府の引き揚げ超過が十月からほとんど大部分散布超過になってきますが、日本銀行の貸し出し増というものはなかなかおさまりにくいから、こういうひずんだところを直そうとするのでありまして、いわゆる全般のデフレ政策という政策とは、私は言い得ないと思います。
  146. 小松幹

    ○小松委員 あなたは揚超であるけれども、日本銀行は貸し過ぎておる、それは、日本銀行は今一兆円以上貸しています。貸し過ぎております。しかしその貸し過ぎておるものは、民間に泳いでおりませんよ。実際一兆円の金は民間に泳いでおりません。設備投資となって全部沈下しておるじゃありませんか。だから金が足らないのです。これが市中銀行に一兆円をあなたが言うように流して、市中銀行にあれば、何もやあやあ言って金を借りまくらぬでもいいわけです。実際は吸収されておるじゃないですか。そういう意味からすれば、今の時代は金不足なんです。金詰まりなんです、少なくとも今の瞬間は。その金詰まりの社会にますます金詰まりにするような追い打ちをかけておる政策は、デフレ政策じゃありませんか。これをあなたは成長政策と言えますか、それはどっちですか、成長政策ですか、これはどうなんです。こういう成長政策もあるのですか。追い打ちをかけて金詰まりにするような政策は成長政策ですか。それはどうなんですか。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 事柄全体を見ていただきたいと思います。政府が非常に引き揚げ超過をやった、こう言われるから、片一方では貸し出しをしておる。そうして、それは設備投資へ行った、こう言われる、その通りです。そこで、われわれは設備投資を押えようとしておる。それを押えるために窓口規制、あるいは貸し出しの急増を押えるということは、何もデフレ政策ではございません。
  148. 小松幹

    ○小松委員 いわゆる政策というものは、全部に、デフレ政策とかインフレ政策といっても、国民全部が共通に受ける損害ではないのです。設備投資に吸収されたから金詰まりになっておる。そこにもってきて、金を貸さぬような政策をするから、困るのはだれか、中小企業が一番困るじゃないですか。少なくとも中小企業は実際は黒字倒産なんです。あるいは手形交換所の実態を見ても、大きい大口手形というものが不渡りになったり、あるいは投げたりしておる。こういう状態になってきておる。私はあなたに私の質問に答えてもらいたい。少なくともこういうように、金融だけをとってみますよ。金融だけをとってみても、金が足らないところに金を貸さぬような政策というのは成長政策ですかと、これを聞いているのです。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 金を使い過ぎ、また金を使い過ぎようとするところは押えていくのであります。そして、それによって非常にお困りのような中小企業に対しましては、いつもよりも金をたくさんお貸しするように努力するのであります。
  150. 小松幹

    ○小松委員 あなたが幾ら強弁しても、あなたの成長政策は円満にこういく成長政策ではないのです。これは碓氷峠か何かに汽車に乗っていくと、スイッチ・バックといって、あそこまでいきますとあとへ下がる。あなたのはスイッチ・バック的な成長です。スイッチ・バック成長なんです。あと戻りしているんです。こういって横ばいなんというけれども、あなたの言うのは横ばいじゃない。下がっている。その下がるのを、単に負けるが勝ちで逃げていく下がるではなくて、やはり次の目標は持っていることは持っている。スイッチ・バック的なあなたの成長なんです。こういういわゆる成長政策は、あなた自身の計画にはなかったはずです。今ごろになってあなたはこう行きよった成長をこうまた戻していくというのだから、こういう成長論というものはおかしいと思うのです。そういう成長論というのは、あることはあるのだろうが、私は不思議に思う。少なくともここの段階においては、あなたははっきり政策を変えておる。政策転換に踏み切らざるを得ない。それをごまかしていいかげんにお茶を濁していけば、さっそく来年の予算編成に一番困るわけです。あとで言います。これは少なくとも金融政策を見ても、あるいは一般会計のいわゆる公共事業費を繰り延べるというような点から考えても、成長政策とおよそ反対な引っぱり政策をやっておるのですよ。だから、この成長政策は現実にひずみがきておる。ひずみがきておるけれども、やること自身もデフレ政策に転換しておる。もうこの際政策転換を世間にはっきりする方がいいと思う。その点どうなんです。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておる通りに、私の予定しておるスムーズな成長、たんたんとしていく成長政策が、時代の変遷と申しますか、予想以上のあなたのいわれるびっこの成長が出てきたから、これを直すことをやっておるのであります。だから、われわれは今までの経験、またどこの国でもございまするが、碓氷峠のように、ちょっと行ってとまって、ちょっと行って、こういう点もありましょう。これは過去の歴史で二十八年のとき、三十二年のときにはそういうことがありまして、そうしてその次に高度の非常な成長をして、日本世界に例のないような成長をしたのであります。私はそういう経験からいって、九%三年ならば、そういうことのないように行くだろうと考えていったところが、びっこのいわゆる高度成長が具現しましたから、これを直そうとしておるのであって、私の予定の三年間九%というのは、変えるのじゃございません。それをこえたびっこの分を今私は責任者として是正しようとしておるのであります。これを一つよくお考え願いたい。
  152. 小松幹

    ○小松委員 これはだれも東海道線を乗っていくのに、スイッチ・バックがあろうと思わぬからずっと行っておる。ところが途中でスイッチ・バックが起こって出てきたのですよ。現に出たのでしょう。それならはっきりそれはもうしようがないから、いっそ引き返すのじゃないけれども、スイッチ・バックで下がってまた登っていくのだと言って政策転換を訴えた方が、もっと私は苦悩が少ないと思うのだ。そういう点においては予算編成も楽だと思うのです。やるのかやらぬのか、隠すのか隠さぬのか、よろいが下からちらちら見えるようなことでなくて、はっきりこれはもうデフレ政策に——デフレ政策ということを言わぬでもいいのですよ。現実にやっておる政策というものは、もう非常な締め上げをやっておるのですからね。この点はあなたも直された方がいいと思う。  ここで私は数字を上げて一つ、企画庁長官おりますかね、あなたこの本年度の見通し数字というものを出したでしょう。そうなると、まあ全部とらないで、見通しのうちの国民総生産、GNPの十六兆五千億という数字をとって、そうしてそれが名目二二%、実質九・七%、こういうように期待する、ですか。そういうふうな期待するとなると、ここで数字のマジックになりますけれども、きょうの瞬間、少なくとも九月末までの成長率というのはもっと高いわけです。そうしてこの上半期の成長率をとってみると、あるいはGNPをとってみると、十六兆八千億ぐらいになるわけです。これを下半期へ押しならすから下がっていくでしょう。ところがもう上半期に大きな成長を遂げておりますから、あなたの示すような名目一三%と九・何%になれば、これから先、少なくとも十月から以降の下半期の成長率というものはきわめて低い。横ばいよりもむしろ低くなる。横ばい横ばいと言うけれども、これから先の成長率というものは三・四、五%にしかならない。過去の上半期が高かったから、下半期はむしろマイナスになるぐらいな成長率しか持たない。そういうことになる。これはどうなんですか。その点企画庁長官にお尋ねします。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 成長率が非常に高過ぎたということは、先ほど来総理の言われておる通りでございまして、その結果、現在のような貿易収支の上におきましても、あるいは諸般の経済事情の上にいろいろなひずみを起こして参ったわけでございます。従いまして、今回いろいろな政策をとりましてこれを押えていく、そうしてできるだけ成長率を低目にもっていかなければならぬことに、結果としてはなっております。しかしながら、われわれとして、少なくも今日とっております政策というのは、今までの非常な過熱してきた状態を押えておるのでありますから、従ってその押えがきいて参りますれば、今までのような勢いで成長していかないということだけは事実でございます。ただその結果がどの程度まで効力を持って実際に押えられるかということは、今後の問題になってきます。少なくもわれわれとしては、年度末十四億四千万ドルというぐらいな外貨事情に落ちつくことを目標に努力をいたしておるのでございます。
  154. 小松幹

    ○小松委員 企画庁長官は私の言うたことをはぐらかしておる。何も私は効果を言っておるのじゃない。結局あなたが出した見通しの数字から推して、数字の上で押えていくと、下半期の成長は三・四%かせいぜい四%程度しかならない、こういうことになるんです。実際数字を当たってみれば、これは計算上なるわけです。そうなると、ここまでずっと成長したのが急角度にカーブを下げるという、こういう成長率になってくれば、池田さんはどういうふうに考えるか、これはあなたは年末まではこうやって、そうして来年の春まではというような、なだらかなモデレートな一つのカーブというものをうまく頭の中に想像して期待している、私たちにそういうことを言うけれども、今の数字を見たら、こういったものがモデレートにいくのじゃない、首を打ったようにがくっとならざるを得ないでしょう。それは最終的な数字から逆算してみたらそうなるわけです。そうすると、結局今まで高度成長してきた数字というものががくっと下半期になって首を打って、成長率が四%ぐらいに落ちていくということは、これはデフレ・ショック政策である。デフレ・ショック政策をやらない限りは、これは落ちないのですよ。ここまでいけば、やはりショックを与えていかなければ、それがなければずっといきますよ。いつまでたっても同じですよ。少なくとも経済企画庁がこれだけに今度は押えようという目標を立てたのです。あなたは、目標を立ててもほったらかしておくというなら別ですよ、目標を立てたら少なくともこれで成長していかせようとすれば、そこで下半期は相当思い切ったデフレ・ショックの政策をやらなければならぬという結論になってしまうわけです。その点はどうなんですか、やはり下半期はぐっとのべつまくなしにモデレートにいきますか。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、私がずっと今まで言っていることですが、御信用なさらぬそうでございます。あなたのように、こう上がっているのが、がくっと下がるようなことはございません。ただ上がり方が十月か十一月ごろからだんだん落ちてくる、そうして下がらずに横ばいでいく、従って昨年度に比べて鉱工業生産は一八・五%の上昇と、こう見ておるわけでございます。だから、あなたはがくっと下がる、首を折るようなことになるとおっしゃるが、私が企画庁から聞いたところによりますと、そうはなっていないようですし、私も一八・五%の上昇ならば、そうはならないと思っております。
  156. 小松幹

    ○小松委員 現実はやり方次第ではそうならないでしょう、やり方次第ではなりますよ。しかし、数字の面から示す問題をいうと、その数字はがくっときておるというのです、少なくとも下半期は、そうすると、数字の上で示されたがくっときておるものをやらなければ、その数字は虚構の数字なんです。企画庁長官は、出さなければならぬから出した数字、そうでしょう、無理に委員会に適当に出してきたようであるから、適当に出したのかどうか、もう一回聞きます。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれが試算したのは、上期が非常に高い成長率でございます。二二%以上の成長を持っております。でありますから、年度間を通じまして、こういう情勢でいけば相当なことになるだろうということでありまして、従って、下半期の成長をむろん低めなければならぬことは当然でございますが、しかし、そのあれを三%とか四%じゃなくて、ただいまでは一〇%程度に踏んでおります。
  158. 小松幹

    ○小松委員 長官、あいまいですね。二二%上半期が伸びたのでしょう。伸びて、平均で押えていこうというのだから、下半期は数字からいえば、がくっとなる数字が出てくるはずなんです。あなたが幾ら隠しても、計算はそうなるわけです。上半期が伸びて、大きくなったやつを押えるのですから、下半期はその数字が出た以上は、それをやるのかやらないのか、あるいは数字は適当に出したのかということを聞いた。もう一回……。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の程度に、今貿易のバランスの面に非常な影響が来ておるわけであります。従いまして、通常貿易を運営していく上におきましても、いろいろな見方もございますけれども、輸出入のバランスというものをできるだけ合わせて、そして年度末において十四兆四千億というくらいな外貨を保有していきたいというのがわれわれの目標でございます。むろん、その後の問題についても将来検討して参らなければなりません。従って、そういう状態であって推移していくためには、十六兆五千億程度の成長でなければ、それ以上の成長であってはとうてい処置できないわけでありますから、そういう意味において、われわれはそういう方策をとっておるわけでございます。
  160. 小松幹

    ○小松委員 総理、今私が言ったことは、数字の誤差が零コンマなんぼあるか知りませんけれども、確かに今の企画庁が出した数字からはじくと、実際は下半期はがくっといくような数字が出てくるのですよ。それをあなたはがくっとやらないで、モデレートにやる、こうおっしゃるのか、がくっとやるとおっしゃるのか、そこをはっきり……。
  161. 池田勇人

    池田国務大臣 適当に見積もったかというお話でございますが、実際に沿うように、そうしてわれわれが希望しておるように適当に見積もったようでございます。あなたががくっときておるとおっしゃるから申し上げますが、今、本年になって、多分八月でありますか、九月の数字か、前年のそれに対しまして二ポイント——二八八でいっております。数字を申して恐縮でございますが、その前の八月が二八八、その前の七月は二八六だったと思います。そうして六月が二八四くらいであります。四ポイント上がったときもありますが、ずっと二ポイント程度であります。そして昨年の同月に比べまして、大体今の二二%程度上がっておるのであります。そこで私の記憶では、九月までそうであって、十月からすぐ二八八が二八八ではとどまらずに二九〇くらい、二ポイントぐらい上がるだろう。そうして輸入制限その他の措置ができて、金融引き締めで、一カ月くらいは二ポイント上がるでしょうが、その次のときは一ポイント上がるようにして、そうしてあとは二九一でずっと三月まで横ばいでいくという数字でいきますと、前年に比べて二二%上がっておったのが一八・五になるのであります。私はその罫線を自分で見ましたが、企画庁の事務当局に説明さしてもよろしゅうございます。私はそう記憶いたしております。そういうことであります。そうすると、十一月、十二月あるいは来年の一、二月、三月が前年のそれに比べて、今までは二二%上がっておったのがどうなるかということになりますと、一〇何%の上がりになると思います。一〇何%という数字はしっかりしておりません。そういう二ポイント、一ポイントずっと上がったもので横ばい、こういうような数字で出したのが前年に対して一八・五%、そうして総生産が十六兆五千億。十六兆五千億と見積もると、輸入がこう、輸出がどう、個人消費がどう、こういうことに相なってくる数字でございます。従いまして、私の記憶が間違いかもわかりませんから、企画庁の方から説明をいたさせます。私はそういう気持で進んでおります。
  162. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 これからの鉱工業生産がどういうふうになるかという、企画庁で算定をいたしました数字を申し上げますと、上期が、今総理がおっしゃいましたように、今七月は正確な数字が出ておりますが、昭和三十年を一〇〇にしまして二八二・九、そういう数字になっております。大体五、六月ごろが前年に比べまして二二%ないし二三%伸びております。上期が前年に比べて二二%ぐらい生産が伸びると見ております。大体八、九、十と二ポイントずつ上がりまして、十一月から一ポイントぐらいの増勢になるのではないか、十二月から一−三月までは、大体鉱工業生産は横ばい、こういうふうに見ますと、十二月の水準が前年度に比べまして一七・八%ぐらい上がる、三月の水準が一〇・三%ぐらい上がる、こういうふうになだらかに伸び率が落ちていくというふうに見ますと、下期が前年に比べまして一五・三%程度の上がりになる。結局二二%上期に上がった生産が、下期には前年の下期に比べまして一五%程度の上がりにおさまる。こうなれば年度間として一八・五%ぐらいの生産の伸びになる。これに相応する国民総生産が十六兆五千四百億と算定をいたしまして、名目で二二・六、実質で九・七%程度の国民総生産の伸びにおさまるのではないか、こういうふうに見ておるわけであります。
  163. 小松幹

    ○小松委員 今企画庁の出した説明は、鉱工業生産で説明をされた。私はGNPで数字を説いたわけです。だから、出されておる鉱工業生産の伸びを、ポイントを上げていったり、下げていったりしていく、そういう出し方をしたのならば、そういう結果が出たのならば、逆に今度は出たGNPから逆算していったならば、私は下期のカーブというものはもっとひどい、一五%よりもずっと低い、こういう計算が出るわけです。私の計算では出ると思う。その点、これは企画庁とそういう争いをしても仕方がない。要は私は国際収支がどうなるかという問題だろうと思います。この問題でやはりお尋ねしなければならぬと思うが、私がいろいろはじいたということを言っても何の意味もありませんから、勧銀の資料が出ましたから、その試算によってお尋ねしてみたい。三十七年度の鉱工業生産の水準を、今企画庁が言ったように、大体三十六年度はほとんど横ばいにいく、三十七年度は横ばいにいくという計算を立てて、そうしてその生産水準を二七八、そうして輸入水準をはじき出してみて五十一億ドルに推定される。輸出の方は国連の平均値をとったりして、そうして三十七年度の総合収支は、やはり相当オーバーにとってみても赤字だ、黒字にはならぬ、一億ドルの赤字だ、こういうようなのが、勧業銀行のいわゆる来年度の国際収支の見通しが計算されております。この点について、つまり鉱工業生産が横ばいでいっても結局国際収支は赤字、来年度を通して赤字だという一応の推計が出ておるのですが、これはどう総理はお考えですか。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 勧銀の見通しについての調査を私は新聞で見ました。そこにお持ちになっているなら、ごらんいただければいいですが、在庫投資は一つもふえぬことになっておる、この点につきまして、私は友人から勧銀の当局に、こういうことを御発表になっておりますが、自信がおありでございますか、常に今年も七千五百億円の在庫投資増、昨年も八千億の在庫投資の増、一昨年も七千億か六千億の増でございましたが、勧銀の調査では、在庫投資がゼロになっております。これは私は常にいろいろな調査を見まして、僕の友人に、専門家に、勧銀へ聞き合わせに行かせまして、勧銀と私の友人が討議いたしました。そうしてまた、勧銀の調査主任の方が私の友人の調査機関に来て、いろいろ議論をされたようでございます。私は勧銀のその調査に全幅的の信頼はおきません。しかし、いろいろの機関が調査しておることにつきましては、私は常に注意を怠っておりません。昭和三十七年度の国際収支がどうなるかという問題につきましては、もう今まで私がお答えしておるところでおわかりいただけると思いますが、来年の暮れぐらいに国際収支均衡の数字が出ることを期待して、いろいろの施策をとっていく。しかし、そうしますと、暮れに収支均衡が出たときには、上半期の赤字、そして下半期にある程度の——輸入期でございますから、全体としては赤字が少しぐらい出るのではないかという気持を持っておる。しかし、国際収支の均衡の態勢が整えられることを私は期待し、そうしてその方面に向かって努力をしようといたしておるのでございます。勧銀の調査は、そういう点が私のふに落ちませんから申し上げておきます。
  165. 小松幹

    ○小松委員 確かにその点はあると思います。ところが総理に私がお伺いしたいのは、あなたは、先ほど企画庁が説明をしたときには、在庫投資のことを言わないで、やはり鉱工業生産のポイントだけでもって人を納得させたじゃないですか。あなたが言う前、一分前に、私に納得させるのに、鉱工業生産のポイントの上がりで納得させてきた。それなら今度も鉱工業生産でいって——人の欠陥だけつかんで、あなた自身もそういう欠陥があるでしょう。それと同時に、この勧銀のは、貿易自由化というものを含んでいないから、在庫投資と考えたらあるいは実際のところは持合になるかもしらぬ。だから資料をこういろいろ説明する場合には、人の欠陥——お前の資料は在庫投資が入っておらぬから、これはだめだ、それなら、あなたは鉱工業生産だけしか言わぬじゃないか、そういうようにして、資料をまんべんなく出し合っていかなければならぬでしょうが、ただ勧銀が設備投資が入っておらぬから、それなら企画庁の出した数字も鉱工業生産だけだから、これはだめだとあなたが言わなければならぬはずじゃないか。都合のいいときにはそういうふうにとるでしょう。都合の悪いときには、あれは何だとけちをつける。そうして結局あなた自身池田ベースにもっていこうという考え方、そうはいきません。何もかも、あなたが数字までそのベースに持って行く。そのいわゆる成長率をとってみますと、貿易の自由化というものをオミットしておいても成長率というものは四・六%にしかならぬという、これは他山の石でしょう。それは絶対に勧銀の数字が正しいとは私は言いません。そんなことを言いません。しかし少なくともこういう資料が出てきた、それが大へん悪いといえばしようがありません。悪ければ仕方ありませんけれども、事実としてこの勧銀側の資料が出たら、あなたは必死になって勧銀にやかましく言ったということも、それも聞いております。それから後に何かしらぬ五%というのがあなたの口から出だした。勧銀が四・六%を出して、大体五%、六%を出したら、次の日ごろから、あなたが五%を出してきた。そうして五%をよく聞いてみたところが、それは本会議でもここでも聞かれたように、三十五年度の十三兆六千億からこういくと、ペーパー・プランでは来年は五%になります、こういう何か打ち消しにあなたは五%と言う。新聞協会でも五%という数字が出ておる、実際は。そうすると、あなたの言う五%、新聞協会で発表した五%と、今この勧銀の出したという五%という資料とは、全然食い違った、カテゴリーの違うものだと思う。けれども、あなたがなぜ、こう勧銀が五%という成長率を出してきたら、やがて五%を口に出して言わねばならぬようになったのか。あの本会議や、ここで五%を言う必要はあなたはないのですよ。そうでしょう、あなたは自身に自分で反省してみなさい。五%を何も本会議でまで言う必要はないでしょう。これは成田さんから質問されたから、苦しまぎれに五%と言ったかもしらぬけれども、実際五%というものは、何も意味のない五%です。あなたにすれば。それをあえて持ち出してきたというのはどうしてだろうか、何ぼ私が考えてもおかしい。だからあの新聞協会の発表した数字を見ていると、新聞社でみなその五%の書き方が違う。日経の書き方は、五%は名目は九%をとるが、五%になって、結果としてなるであろうというような書き方をしておる。毎日新聞は五%でいきますとこう書いてある、ということは、あなた自身が、五%をあいまいなことばかり言っておるからそういう結果になる。実際はそうなんですよ。だから、新聞社は・相当のベテランの新聞記者も、みんなまちまちな記事を書くようになるわけです。だからぽっと毎日新聞を見れば、池田さんは五%に踏み切ったかなと思う。こっちの新聞を見るとそうでもない。よう聞いてみると、その五%は縁もゆかりもない五%なんです。だから私は、ここで勧銀の五%、四・七%をあえて出して、経済成長率はそのくらいきびしくなっておりますよとあなたに訴えたいのです。あなたに引き下がれと言ってもなかなか意地が強いから引き下がらぬでしょうから、訴えたいのです。実際はそういうところまで問題は発展しておるのじゃないかということを、私は国民の一人として言わなければならぬと思うわけであります。この点あなたどうです。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 私が鉱工業生産を申し上げたのは、生産がどうなるか、首打ちをする、こう言われましたから、数字で言ったわけであります。そうして設備投資を言わないじゃないかといっておりまするが、設備投資はもうお配りいたしました表に、当初は八千億円だったが、七千五百億円になっておるとはっきり書いてあります。だから、われわれの十六兆五千億、そして前年に対して鉱工業生産一八・五%、その根拠を言っただけで、設備投資を隠して、ほおかぶりしようというのではありません。はっきりあなた方に申し上げておるのであります。しこうして勧銀のお話によりますと、在庫投資をゼロに見るということにつきましては、向こうも気がつかなかったようでございます。もし在庫投資をゼロと見るということならば、非常なデフレになって参ります。在庫投資のふえなかったのは昭和三十三年だと思います。私はそういうことをしたくないから、適度な在庫投資は、経済の発展とともにある程度のふえ方の違いはございますが、まあ六、七千億から八千億程度の設備投資は当然に毎年期待する、こういうことで言っておるのであります。  それから五%というのは、いいかげんで言わずもがなじゃないか、こう言われますから、私は党の政策に忠実でございます。そして私の心境を十分お話しするために新聞協会でもやった。平均九%で参ります、そしてこれをずっと——今年が予想以上の超高度成長でございますから、党の公約の十七兆六千億に達するためにはもう七%、八%、九%と言わなくても、党の公約でいったならば、もう下が上がっておるから、五%程度でも党の公約は守り得られるのですということを言ったわけなんでございまして、昭和三十八年度五%というのではありません。党の十七兆六千億に忠実なるがために説明いたしたのであります。そして今回のこの委員会、あるいは本会議で言ったのは、いろいろな点が問題になりますから、今は超高度成長でございますから、今後は私が今まで言っておった九%にとらわれる必要はありません、党の公約を実行するのなら五%くらいでいいのじゃないか。しかしそれで三十七年度の経済の上昇がどうなるか、国民生活がどうなるかということになりますと、パーセンテージばかりではいけませんから、いろいろな事情を考えていかなければならぬと申し上げておるのであります。言わずもがなではございません。党の政策を説明するために申し上げておったのであります。
  167. 小松幹

    ○小松委員 あなたはPR用に言わずもがなじゃなかったかもしれませんが、国民はかえって迷惑です。党の問題なら党に行って言えばいい。三十五年度からあなたの数字というのはほごになった数字でしょう。実質に修正されてきておる、いわゆる死んだ数字というものをここに何も生かして、わざわざ三十五年は十三兆六千億でありましたと、繰り返し繰り返し、死んだ、実質で修正された数字を掘り起こしてきて、国会で説明する必要はない。党の問題なら党でPRをしなさい。それよりも大事なのは、そういう数字じゃなくて、現事態において、来年度の予算編成で一体成長率を何ぼに見るかという問題が、あなたとしては一番大事な問題なんです。PRのようなことを幾ら言ったって、池田さん何を言っているのだろうか、新聞人もみな心配しておる。何を言ったのか、私に、新聞社がきのう、おととい来て、何で五%と言ったのだろうか、さっぱりわからぬ、みんなわからぬと言いますよ。あなたがいかにも宣伝用に言っているのだから、わからぬはずです。実際のところ、何もそういうことを国会へ来て言わぬでも、自民党に行ったらいい。それはそうだと思います。それよりもあなたに言ってもらいたいのは、来年度の成長率は、九%だけれども七%にするのだと言ってもらいたい、あるいは五%にするのだ、あるいは九%でいくのだと・ここで言ってもらいたい。言ってもらいたいことは言わないで、言わぬでもいいことを言うから、私は言わずもがなと言っている。おわかりになりますか。私の気持はわかったでしょう。これは気持の問題ですから……。善悪じゃない。あなたにはあなたのプライバシーというものがあるかもしれません。  そこで私は、次に下期の外貨予算の状態を見たいと思います。今度下期の外貨予算を出しておりますが、鉱工業生産の年率が一八%にとって、上期の実績は二二%、そして下期の実効が五・六%になって、今年度は横ばいの目標を立てておるわけです。これは下期の外貨予算でありますから、何も来年度の一般予算にすごく影響すると私は言いません。言いませんけれども、少なくとも下期の外貨予算を作るときには、一応の経済の動向、あるいは輸出入の動向というものをつかみながら、積み上げか、あるいは試算かによって下期の予算をこしらえていっただろうと思うわけです。だから、その予算から見てみますと、十月から十一月、十二月と、年末ではなかなか繁忙期になります。繁忙期だから、少々押えてもなかなか上がってくる。そうなると、来年の一月から三月には五六%で落とすということは、相当むずかしいのではないか。これは佐藤通産大臣がおりますから、これもやはり私は数字から見ますよ。わからぬから、数字からいいますと、五・六%ではさっき言ったがっくりまではいかぬけれども、相当押えていかないと、輸入が多くなって、外貨予算がオーバーになって、結局目標の数字というものは出てこない。上期が二二%です。下期の外貨予算から見れば、五・六%とれば、がっくりとまではいかないけれども、相当締め上げて、輸入に圧力を加えなければ所期の目的は達せられない、私はかように思いますが、通産大臣、総理大臣の御所見を承りたい。
  168. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 通産省の立場でお答えいたします。御承知のように輸入を押え、輸出振興の方策をとっております。すでに輸入担保率の引き上げなどを計画いたしております。そういう立場で外貨予算を一応組んだわけであります。同時にまた御承知のように、この十月になりますと六八%程度まで自由化されております。そういう点も加え、また国内の金融事情なども考えて、ただいまのような予算を組んだのであります。私はこれが大きく変わるようなことはないだろう、かように思っております。
  169. 池田勇人

    池田国務大臣 数字を申し上げて恐縮でございますし、また私は直接外貨予算の編成に当たっておりません。ただ私はいろいろずっと研究してみますと、上期の輸入はお話通り想像以上です。それだったら輸入原材料の在庫率を調べますと、これはそう高くはございません。しかしそれは生産が非常に伸びたからであります。実態の額は非常に多いのでありますが、率としてはそうため置きがあるということも考えられません。昭和三十二年におきましては、五、六億ドルあったと思います。今は私の見込みでは、それの三分の一くらいじゃないかと思います。しかし相当あることはあります。どの点にあるかと申しますと、綿花の方は、この四、五月ごろから綿花高を見越して相当輸入が多い、この数字は申しませんが、綿花は相当上がっております。それから羊毛も常よりも上がっております。お砂糖もちょっと普通の輸入よりも一、二割在庫が多いようであります。ということを考え、そうして今までの銑鉄の輸入は相当来ております。二百五十万トンくらい入りましょう。月に一千万ドルくらいの銑鉄の輸入が来ておる。こういうものが少し落ちてくるのじゃないか。スクラップは、これも相当入っております。ということを考えますると、今まで相当入っているから、五%程度の増でいいのじゃないか。パーセンテージは見ておりませんが、あなたのお話による〜、その程度でいいのじゃないか。四十九億六千万ドルという輸入が大体いいところじゃないかと、私は閣議に出されたときにあの表を見て感じたので、上期に比べて五、六%の増ということならば、私は大体少し減るのじゃないかくらいな気持も持っております。こういうことでございますが、ただ機械の輸入は相当見ておるようでございます。今一番多いのは機械でございます。おととしぐらい四、五億ドルでございましたが、今年は八、九億ドルくらい入る予算になっていなかったかと思います。機械の方はもう注文してずっといっておりますから、そういう個々の品目で、在庫を見ながら、情勢を見ながら、大蔵省、通産省がよほど慎重に検討した結果でございますから、五%くらいの増で私はいいのじゃないかという気がいたしております。
  170. 小松幹

    ○小松委員 外貨予算の下期の比率とすれば、二二%の、総理は三分の一、七%、五%、六%、大体それは五、六%どころでしょう、だれも保証するものはないのですから。そうなると、やはり私がさっき言ったように、がっくりいかないでも、相当輸入というものを引っぱってうしろ向きに、成長でなくして輸入に対しては圧力を加えなければいかぬのじゃないか。数字が合わぬでずっといけば、これはほったらかしでいけばいいですけれども、その数字を合わせて、とにかく赤字をなくしていこうとする考え方に立てば、輸入に圧力を相当かけなければこの数字には届かない。そこで今、佐藤通産大臣が貿易の自由化をだんだんやっておるから、それはけっこうでしょう。ところがずっと見ておりますと、輸入がしやすいのから自由化をやっている。自由化したからといって、今急に問題の起こるようなのはないというのから、だんだんに、あまり心配にならぬのからはずしておるでしょう。心配にならぬのからはずしておるから、心配なのはいつ残ってくるか。大物が最後に残ってくるわけです、来年にずっと。そうすると最初の列車には乗りおくれても、しまいの最終列車ということがあるのです。最終列車が込んできますよ。小物だけ最初に自由化していきますから、大物が残ってくると、来年の中期以後は大物の自由化というものは込んできます。立て合いをやってきます。それはもう事実だろうと思うのです。そうなったときに、やはり今度は相当てこ入れをしなければ——うまく自由化して、そうして外貨予算もたっぷりつけて、成長率を落として、実際のところ無難な道で行きよる。ところがしまいに最終列車になるとそうはいかなくなる。いよいよ来年の十月の貿易自由化の九〇%の時期になってきますと、私は相当輸入圧力というものが、内部からも加わるけれども、外部からも加わってくると思うのです。そうなったときに、はたして今の成長率というもので、のんびり安閑と経済成長政策でございというていかれるか。やはり私は相当、締め上げるという言葉は悪いかもしれませんが、押えていかなければ、国際収支のとんとんというととはむずかしいのじゃないか、この点を考えておるのですが、その点について通産大臣にお伺いしましょう。
  171. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど来総理が基本的なお話をしておられます。私どもももちろんその線でいろいろ作業をしておるわけであります。ただいま自由化について、これからだんだんきつくなるだろう、こういうお話でありますが、ただいままで自由化いたしましたうちにも、原綿、原毛、あるいはスクラップ等、非常に数量的には大きいものがございます。あと残っているもので大きいのは、いわゆる石油類であります。私どもそれらの計画を進めていき、しかも混乱を来たさず、また国際収支のバランスがとれるようにという意味においてのあらゆる施策をとって、ただいま調整をしておる次第でございまして、これがあるいは来年の末になるとか、あるいは来年の六月時分になれば傾向が明らかになるとか、こういうことを申しておるわけであります。ただいま調整段階に入っておって、その調整段階についてのいろいろの、先ほど来の御批判はよく伺いますが、調整段階が短期間に実効をあげるようにしたい、こういうところで私どもは今自由化の計画もあわせて進めている次第であります。
  172. 小松幹

    ○小松委員 次に、私は予算の編成上の問題についてお伺いしたいと思いますが、今度補正が出ておりますが、一応補正の問題はあとにしまして、今度は大蔵大臣にお伺いいたします。  来年度の余裕財源ですが、コンスタント以外に上がってくる余裕財源というものを一体どの程度見るか、この点を一つお伺いしたい。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 きのう総理大臣から申しましたように、今度とった措置によって経済にどういう推移が現われてくるかということをもう少し見なければ、来年度の経済見通しはできないということでございましたが、その通りでございまして、来年度の経済見通しが固まらなければ、それによって自然増がどのくらいあるかとか、あるいはその自然増を政策経費としてどれくらいとか、減税にどうとか、この配分関係をどうしようとか、そういうような予算編成方針というものも具体的には固まらないということになりますので、私どもは来年度の経済見通しをつける作業の方が先であって、それから来年度の予算編成方針をゆっくり考えたい、こういう態度をとって、いろいろ作業はしておりますが、また当初来年度の自然増収はこのくらいだろうと見込んだこともございましたが、こういう措置をとった結果によってどう狂ってくるかというようなことも今やっているときでございますので、はっきりした数字はちょっとまだ申すのは早いと思います。
  174. 小松幹

    ○小松委員 申すのは早いということは一体どういうことなんですか。国会が正規に聞いているのに、申すのは早いとか、そういう言い方は私はないと思う。申すのは早い、それは不遜な言い方じゃないですか、言い直してもらいたいと思いますが、わからぬはずはないと思う。一代大蔵省で飯を食っている人が毎日がたがた計算しておって、来年の自然増収がどの程度あるか、その的確なものは別にして、あるはずです。出していただきたい。
  175. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 要するに正確なことはまだ今のところわからないということでございまして、いろいろ世上自然増収は今年度に比べて四千億は見込まれるだろうとか、四千五百億円は見込まれるだろうと、いろいろな見方は今まで出ておりましたが、これは少し前の話でございまして、今度のような措置をとったことによる結果、どのくらいのものが正確に見込まれるかというようなことも、これからもう少し作業しなければはっきりわからないという状態でございます。
  176. 小松幹

    ○小松委員 総理にちょっとお伺いしますが、あなたの政策は、大へんいい、いいとあなたは言うけれども、もう十一月になって、来年度の財源もはっきりつかめぬような政治をやらしているのですか。新聞に出た言葉や、あるいは町で言う評論家の数字ほどの数字も出せぬで、四千億か四千五百億ほどかあるそうです、というような出し方というものはあり得ないと思うのです。そういう政策をあなたは行政的にやらせているかどうかということがまず一つと、それほど困難な事態に政策上追いやったならば、あなたはいさぎよく辞職をすべきです。その二つ。どっちかです。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 租税収入の点は、一番大きく左右するのは九月決算でございます。その次に左右するのは年末賞与、これでかなり動きます。年末賞与の分は別問題といたしましても、九月の決算がどうなるかということは、決算報告は、われわれでこう作れ、ああ作れというわけじゃございません。なかなかむずかしいので、私は今政府の責任の地位におって、そうして国権の最高機関である国会に、来年度の租税収入はこうでございますということは、今のところは言われないと思います。
  178. 小松幹

    ○小松委員 じゃ九月決算じゃなくて、八月までの数字から試算した一つの計数をはじいてもできるはずです。できないことはないはずです。一応来年度予算の編成に関係のある問題でございますから、この点はおよその数字の目安というものをここではっきり出していただきたい。
  179. 池田勇人

    池田国務大臣 私の今までの経験から申しますと、なかなかはじきにくいと思いますが、大蔵大臣がおられますので、この問題は大蔵大臣からお答え願うことにいたしましょう。
  180. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今のところはっきり申し上げられますのは、前年度の剰余金が千二百億円ある。この半分が来年度の歳出需要に応じられる金額である。そのほか税の自然増収というものは、大体私どもの当初の見込みは四千億から四千五百億円前後の自然増収が見込めるのではないかという見込みでございましたが、これは正確なものではございませんし、今後の推移によって相当動いてくるのではないかと思っておりますので、正確なものとしてはまだ今のところは申し上げられません。
  181. 小松幹

    ○小松委員 そうでしょう。実際のところ、今の政策というものを下降方向に押える。私に言わせればいわゆるデフレ政策、デフレ政策をやらなければすぐ積算して出るかもしれぬが、今からのいわゆるデフレ政策というもので幾分か変わってくるでしょう。それならばはっきり来年度の成長率を幾らにするかという問題が先に出てこねばならぬ。ところが、どうも政府は成長率も出さない。それじゃ幾ら余っておるのかといえば、それも出さない。幾分前進したのは、今の四千億から四千五百億程度あると最初予想されたけれどもという程度しかわからない。世間に言われておるのも、四千億から五千億と言う人もある。けれども、これを安くとって四千億の自然増収があると一応——私はベース・アップがあったり、財政的なものはあまり変異はない。財政投融資とかあるいは公共事業を幾分繰り延べた程度で、ほかのものはベース・アップなどをやっていますから、それと先ほどから幾たびか池田さんが設備投資は完璧に超々高度にいきました、こう言うたから、設備投資あたりからくるそういう税金というものはそんなに変わらない。こういうふうに見れば、やはり四、五千億の財源はある、こういうふうに見なければならぬ。これは常識的です。そうした場合に、この余裕財源をどういうような形に用いるのかというので、大体その自然増収がこんなに累積されて、パーセントが上がって、毎年々々自然増収があるというのは、これはけっこうな話ですけれども、最初の試算においても誤りがある。同時に減税政策が行なわれていないことのためにここにきておると思う。そうなれば、とにかく四千億が三千億になろうが、あるいは四千五百億になろうが別でございますが、減税をやらなければ累進課税が歴年上がってきて、そうしてほんのわずかしか——減税がことしやられた程度である。取られる方はたくさん取られる。こういうことになれば、減税をやらなければ、私は政治としては、どうも取るだけ取って、取り過ぎる。こういうような考え方を持っておりますが、この減税についての大蔵大臣並びに総理大臣の御答弁をお願いしたい。総理大臣は二十五分までといいますから、この問題についてお答えをしていただきまして、あとは……。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 お話し通りに、今の状態が行き過ぎておるところをためようとしておるのでございますから、来年度の経済状況がどうなりますか、また、経済状況がどうなるかということは予算の組み方にもよって参ります。いわゆるイタチごっこでございます。しかし、私は成長政策からいって、ある程度の自然増収を期待しております。まあ大蔵大臣は四千億とか言っておりますけれども、もし四千億だとすれば、どこの税金からそれだけ上がるかということによりまして、まず引かなければならぬのは地方交付税でございます。法人税、あるいは所得税、あるいは酒税というものが主であれば、四千億のうちの千億ばかりは引かなければなりません、もし今の三税だけの増収だとすれば。そうして今度一年間を通じますと、既定経費の次年度分、あるいは当然増が相当出てくると思います。ベース・アップなんかも一年分でございますから、そういう点、あるいはいろんな施策での、まあ生活保護費なんかも上げないといたしましても、半年分は出てくる。いろんな点が出てくると思います。と申しますと、今度はわれわれの主張しております社会保障制度の強化、減税あるいは経済基盤の強化等々、いろんな重要問題がございます。どういうふうな割り振りにするかということは、これは大蔵大臣に一つりっぱな措置を願いたいと思うのですが、私の気持といたしましては、できるだけ私が組閣に申しておりました社会保障制度の拡充、そうして減税あるいは公共投資、文教関係、こういうものには主力を注いでいきたいと私は考えておるのであります。
  183. 山村新治郎

    山村委員 総理大臣は帰ってもよろしゅうございますか。
  184. 小松幹

    ○小松委員 総理はよろしゅうございます。
  185. 山村新治郎

    山村委員長 それではどうぞ御退席願います。
  186. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣、私の見方をすれば、自然増収は相当大幅な自然増収が出てくる。これはかげんをすれば別ですれども、相当出てくる。今総理が、大体減税はやる、その順序までほぼ私としてはという前提のもとに言われておりますが、今総理の言われた点を振り返ってみますと、何げなしに言うたかもしれませんけれども、社会保障関係の投資、その次に税金、その次に公共投資という順序で言われたと思うのです。これは一応総理大臣の腹づもりではないかと思うのですが、そこで問題になるのは、それでは社会保障投資に金を全部やるのかということになると、やればあと減税がなくなるわけです。この点総理のお考えは一応聞いたけれども、大蔵大臣としてどういうお考えか、大蔵大臣のお考え一つ……。
  187. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今までの経済論議で、いろいろ経済の行き過ぎが出ておりましたが、民間の設備投資が進み過ぎたということによって、またこれに対応する政府の社会投資が均衡がとれなくなっているという部面もまた出ておりますことを考えますと、どうしても公共事業的な経費というものは、今度こそは重点的な配慮をしなければならぬだろうと私どもは考えておりますし、また社会保障につきましても、昨年度いろいろ社会保障制度の整備をして出発しましたが、本年度はあのままの形でも、社会保障費的な経費は相当大きくふえるということは見込まれますし、文教、それから減税、やはり昨年と同じように予算編成の幾つかの柱というものは、今年も重要な柱になると思います。従って、その柱間の均衡をどうとるかということも、今度の予算編成方針では相当吟味されるべき問題だと思いますが、ただ、自然増も相当見込まれるという反面、私どもが今いろいろ試算してみますと、すでにきめた政策を実行するための歳出の自然増というものも、来年は相当の金額に及ぶということも考えられますので、どれだけの自然増部分をそういう政策経費と減税分に配分するかというような問題については、結局、来年度の経済見通しがはっきりしてくるという時期にならなければ、やはりそういうものとの勘案で決定できない問題だろうと私は思っております。いずれにしましても、日本の税負担が軽いとは思っておりませんので、減税政策はさらにわれわれは続けていくという方針には、今のところ間違いございません。
  188. 小松幹

    ○小松委員 あなたは公共投資、それから減税、社会保障という順序に言われたから、やはり社会保障、減税もやる。あなたは柱を立ててやるという考え方であろう、こういうように伺い知ったわけであります。そこで公共投資のことですが、もちろんその考えは、今まで経済成長政策で公共投資をやったのだが、ことしは公共投資をだいぶ来年度に回して繰り述べをするのでしょう。そうした場合に、来年度は公共投資をふやす、ことしは来年に見送るというと、相当ことしから来年にかけて公共投資がふえる。それはけっこうですが、ことしの緊急総合対策ですか、これとの関係は別にないのですか。
  189. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 設備投資を抑制するという方針は、ここしばらく持続的に考えて、来年度の予算編成においても、当然考えなければならぬ問題だろうと思っております。従って、私どもはそういう今度の対策の趣旨をも取り入れた予算編成をしたいと思っておりますので、来年度の予算におきましては、必要であることはわかっておっても不急である、日本経済として、これは今しばらく待てば待てるのだというものは待ってもらうし、どうしてもこれは民間の行き過ぎに応じて不足だということがはっきりしているたとえば港湾対策というようなものは、これは民間が行き過ぎているだけ政府が大急ぎであとでついていかなければ均衡発展が得られないという問題にも関連しますので、こういう点については、必要な予算は重点的に確保するということをやらざるを得ません。そうしますと、不急というような部門については、場合によったら来年待てるものは待ってもらうというような方針も当然入れなければ、来年度の予算編成方針はできないだろうと考えておりますので、今とった対策の趣旨というものは、私は十分来年度の予算にも持ち込まれなければならぬものだと考えております。
  190. 小松幹

    ○小松委員 どうもお話を聞いておると、言いのがれといえば語弊があるかもしれませんけれども、必要でない予算は組んでないはずです。あなたは何か必要な予算と必要でない予算と二つあって、必要でないやつは向こうにやるのだというような言い方をされておりますが、これは大きな間違いだと思う。必要でない経費なら予算に組むはずがない。もし組んだとしたら自民党内閣としてはまことに不見識な話だ。だからみな必要なんです。必要なのをどういう一つのシステムなり、あるいは考え方なりでぴしゃっと割り切っていくかという問題がはっきり筋金が入らなければ、私は予算編成というものはできないと思う。これは必要でない、これは必要だ、そういうものでいけば、私は論理は立たないと思う。そこでやはり公共投資をあなたは来年はやるならやる、あるいは今の抑制政策あるいは今のデフレ政策というものの線に沿うて、あるいは総合政策の線に沿って公共投資は押える、それは押えるといったって、何も港湾対策の船込み対策のところを押えるということじゃない。総体のトータルできちっとやる、こういう政策が出るか出ないかというのが問題なんです。結局ワクの問題です。その事業の内容じゃないと思う。結局事業選別をやれば、それは今のように予算が編成されておる場合には、事業別にこの事業は回してこの建築物は来年回しということはいきますけれども、まだ編成されていない前は内容というわけにはいかない。やはり総ワクで、このくらいしか出せぬ、減税にこれだけ回すから、こういう論議が出てくると思いますが、この点まだどうも公共投資に対する考えがはっきり出ていないと思いますが、公共投資は思い切って今までの所得倍増計画に従ってやるのか、あるいは少し遠慮するのか、この点だけを伺いたい。
  191. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、まだ来年度の予算の総ワクというようなものの想定もできないというときでございますから、ワクの問題はまだ早いと思います。方針の問題ですが、これは経済の推移を見てきめべき問題でございまして、われわれは必要な公共投資はいたしますし、さっき申しましたような恒久対策であるといって必要な経費と認められるものでも、この際日本経済の事情によっては、一部待ってもらいたいというものは待ってもらうという方針は貫いて一向差しつかえないことでございまして、その全部の予算ワクが幾らになるかというような問題は、これからの問題だと思います。
  192. 小松幹

    ○小松委員 来年度予算については、減税はするというようなことを言われておりましたから、それ以上のことはここでは時間もありませんから、補正予算で一つだけ労働大臣にお伺いします。  今度は補正予算であるけれども、大体値上がり等の分、あるいは貧困階層の分として予算を組んだが、失業対策事業の対策費、こういう面が一つ考慮されていない。あなたがおらぬだったというけれども、おらなければのかされるのかな。実力者じゃないからのけられたのかともひがんで見ていますが、この辺はどうなんですか。私は官房長官にそのことも言ってますよ。そうしたら、これは閣議にも出たのだけれどもと官房長官が言うたきりで、どうもそのときに労働大臣おらなかったのかなと思ったのですが、その辺はどうなんですか。なぜのけられたのですか。
  193. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいまお触れになりました点については、私が列国議会同盟に行っておったからそれでうまくいかなかったということではないのであります。私は最終の閣議には間に合うように帰っても参りましたし、それから出かける前にも主張もいたしておきましたし、また私の留守中、灘尾大臣に私の仕事を臨時に代理していただきましたが、その灘尾大臣にも強く主張もしていただいたのでございます。まあ実力者でないからということは・さようでございますと申し上げるわけにもいかぬし、そうでないとも申し上げるわけにもいかぬのでありますが、それはまあそちらで御判断いただくとしまして、とにかく今度の補正予算にその数字が現われてないということは、私も大へん残念に存じておるのでございます。水田大蔵大臣ここにおりますが、ただいまの瞬間までも、水田さんにも交渉して何とかということで、必ずしも今次予算にないから全然方法がないとは、私は言い切れぬような気がいたします。大蔵大臣はこの私の表現には少し御不満かとも思いまするけれども、私はそういうような観点からいたしまして、今なお努力をいたしておる次第であり、従って先ほど小松さんの言われるように、官房長官も私の主張するところをいささか了としてくれているのじゃないかというように私も思っておるのであります。そこで、まあ先ほど小松さんにとっては、官房長官の言う意味がわかったようなわからぬようなことにお聞こえになったと思いますが、先ほど申し上げましたような工合に、なお検討中であるということのゆえに、そういうことの響きになったのかと、こう存ずる次第でございます。
  194. 小松幹

    ○小松委員 予算書を見ますと、どこも、厚生省あたりは大ていなところまで全部それはそれなりに予算化して、どこの予算書をくってみても……。あの失対のところだけがぽつんと穴があいて、ベース・アップでもないでしょうけれども、まあ生活保護者の費用あたりに——生活保護者といえば最低でしょう。そうなれば実際は失対人夫あたりの費用も何ぽか見るのが、これはもう当然のことなんです。それを落とされたということはまことに私は残念ですが、これはまあ福永労働大臣はその道は非常に御熱心でありますから、きっと何とか解決はつくと思いますが、補正予算としてまことに穴があいておる。もう一つは、これは大蔵大臣に聞いておきたいのですが、今の問題は福永労働大臣も苦衷があると思うのです。その点は一つ大蔵大臣もこの次は見てやるように考えてもらいたい。なぜ船込み対策費を予備費で組んだかという問題がある。この二つの問題というのは——私は予備費というのは初めから船込み対策の費用がわかっているのなら、五十何億でしょうから、はっきり運輸省か何かに所管を移して、あるいは予算化すべきであるのに、それを予備費の中に投げ込んでおるというのは、予算編成上どうもおもしろくないが、その辺はどういうことかということと、どうしてそういう技術を通り越した面が出てきたのか、その辺をお伺いします。
  195. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の御質問ですが、予備費に組んだというわけではございませんで、これは緊急を要する問題として、当初予想しなかった事例として、私どもは予備費ですでに必要な金の支出をいたしております。十億以上の事業をやることにして、必要な予備費の支出をもうやってこの問題に対処しておりますので、補正予算には組まなかった、こういう事情でございます。
  196. 小松幹

    ○小松委員 それじゃどういうことをどれだけ使って、船込み対策をやっておるか。もう十億使ってしまったのですか。その点一つ運輸大臣にお聞きします。
  197. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 船込み対策のうちで、公共事業費としてやります岸壁の増加、あるいは係船ブイの増加、いわゆるバースの増加、これが公共事業費としては主でございます。船込み対策としましては、なおはしけとか、あるいは倉庫を作るとか、いろいろなものがございますが、これらは融資の面でやることになりまして、従って公共事業としまして事業費十億以上にわたる金額の決定を予備費から願ったわけでございます。ただいま実施中でございます。
  198. 小松幹

    ○小松委員 どれほど予備費の中に考慮されておるかもしれないが、私思うに、官房長官にも聞いたのですけれども、実際のところ名目ははっきり立つのだけれども、今度は補正予算で項目をあまり多くしても困るから予備費に入れておこう、こういうような言い方を官房長官はしておられたのですが、おそらくこれは予算編成上の考え方、今度の予算はちょうど政府が総合施策を出して、もっと言えば政策をデフレ政策に変えてくる、そのときに補正予算をぽんと出す、一千億からの補正予算を出すということはどうもちぐはぐな感じがするから、もうほんとうにやむを得ぬものだけを出してという格好にして、そして予備費あたりに投げ込んでいったものではないかと思うのです。少なくとも補正予算は、私はデフレ政策の観点から見れば一応成長政策のベースに乗って、前向きの方に向いておると思うのです。ただずっと前向きに向いた予算であるかというと、今言うたように照れ隠しで、少し総合政策に合わしておる面もある。それが一つはこの失対費を落としてみたりしたんじゃないかと思うのです。これは労働大臣がおらなかったから落としたのではないので、照れ隠しであそこだけ上げぬでいったりしたんじゃないかと、ひがんでみたりする。補正予算を考えてみるとほんとうに少ない。たとえば生活保護費の引き上げにしてもほんのお義理合いだ、こういうような感じがしてならない。  それともう一つは、医療費の問題が漏れておる。漏れておるというのは、あなたの方では漏らすつもりだったかしらぬが、との前の国会のときに池田総理山村、山本両国会対策委員長と社会労働委員とが立ち会いのもとで、医療費の値上げの分をはっきり次には予算化します、両国会対策委員長池田さんの立ち会いのもとで、はっきり国保の補助は見ますと、こういう公約をしておる。この点どうして厚生大臣は今度の補正に見送ったのか、このことをお伺いします。
  199. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民健康保険の療養給付費に対する国庫負担率の引き上げにつきまして、この前の国会において国会内部でいろいろ御熱心な御要望がありましたということも私伺いました。ただ、この問題につきましては、私どもも現在の国民健康保険の状況を見まして、財政的にこれを増加する必要がある、かように考えておりますが、問題は、法律の改正を要するいわゆる制度の問題に属するわけでございますので、かような問題につきましては、通常国会においてその御審議を願うのが適当であろう、厚生大臣といたしましてはかように考えまして、今回の補正予算をお願い申し上げなかったわけでございます。  なお一つ、ついでながら申し上げさしていただきたいのでございますが、先ほど来福永労働大臣に対しまして、失対関係の賃金の問題についてのお話がございました。あたかも私が、お留守中に留守番をしておるときのことでございます。労働省といたしましては、その要求を大蔵省に対していたしておったわけでございます。まことに私微力でございまして、ついにこれを貫徹することができなかったのでございまして、この点につきましては、どうぞ福永労働大臣に対しましてあまり強くおっしゃらないように一つお願い申し上げます。
  200. 小松幹

    ○小松委員 これで最後の質問でございますが、今厚生大臣の意向等を聞いておりますと、どうも厚生大臣勘違いをしているんじゃないかと思われる。あの医療費五%の引き上げの分というものは、本年当初予算に組んだものを国保が見てない。予算化してあるのを、国保だけ値上がり分を——政府が値上げを今年やったでしょう。あとの二割なり、今度最近話をつけた医療費の問題は、これは医師会との話し合いがつかないから仕方ないとしても、前の分、五%の分は、もうこれは既定の事実として上げざるを得ない費用なんです。それを山村国会対策委員長も山本国会対策委員長とこれは話して、もうやむを得ぬという結論のもとに、池田総理大臣立ち会いのもとにきめたものですから、これはいいかげんなきめ方じゃなかったと思う。どうでもいい、これは先でもいいのだというようなものじゃなかったと思う。この点であなたはちょっと勘違いしておりはせぬかと思う。もちろんあなたが大臣になった直後だったから、その点もあったかと思いますが、少しいきさつからいうて問題があるのじゃないかと思うのです。この点、これは山村委員長に聞いては悪いけれども、委員長、あなたこれをどう判断しますか。
  201. 山村新治郎

    山村委員長 また別の機会にお答えするときもあると思いますから、本日は一つ御猶予を願います。
  202. 小松幹

    ○小松委員 それじゃ、大蔵大臣。
  203. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは御承知のように、医療費の改定、一律単価一円二十銭ということを七月に決定いたしましたが、これは、衛生材料に占める割合をどのように見るかということによっても変わってきますし、各保険別の入院、入院外、歯科別の改定率というものも変動してきますので、この実績がある程度わかってから予算を盛ることがいい、これは必ずしも盛らなきゃならぬものじゃなくて、最後に精算的な経費でございますから、これがわかってから金額も正確になるという性質のものでございますが、七月に改定したもので、七月分の医療費の請求は事実上八月になって出てくる、八月に出てきたものの支払いは九月中旬、予算を編成しているときまでにはまだ支払いがなされていないということですから、どうしても十月以降でなければ今言った実績が判明してこないという事情がございますので、この判明を見て正確な金額を措置してもいいんだ、次の機会に送ってもいいという大蔵省や厚生省了解のもとにこの補正予算には載せませんでした。
  204. 小松幹

    ○小松委員 どうもたびたびそういうことを言って申しわけないですけれども、大蔵大臣の所見を承ればそれでいいと思いますけれども、これは前国会において総理がはっきり野党の国会対策委員長なり、その担当の理事に公約して、予算化しますと言った以上は、少なくとも今次の補正には組んでもらいたかった。これは私は何度も繰り返して言いますが、そういう信義のないことでは、幾ら約束してもから約束になると思う。だから、この点は一つ今後はそういう約束をしたならば、少なくとも予算化するということに努めていただきたい。そのことを申し上げて、私は希望とともに質問を終わりたいと思います。厚生大臣の御意見があれば承りたい。
  205. 山村新治郎

    山村委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会