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1961-10-04 第39回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月四日(水曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    井出一太郎君       稻葉  修君    今松 治郎君       臼井 莊一君    上林榮吉君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       久野 忠治君    周東 英雄君       田中伊三次君    床次 徳二君       中垣 國男君    中曽根康弘君       中村 幸八君    中村三之丞君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松本 俊一君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    松井 政吉君       春日 一幸君    西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月四日  委員久野忠治君及び倉石忠雄君辞任につき、そ  の補欠として上林榮吉君及び中村幸八君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きまます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 私は、わが国の経済の今後の動き、端的に申しますならば、新聞で報道されておりますように、不景気がどのように襲ってくるのか、これは私は国民の最大の関心事であろうと思うのであります。従いまして、どうしてこんな経済危機が生まれたのか、その原因と実態をこの機会に明らかにいたしますとともに、その上に立って今後いかなる財政経済政策政府はとられようとするのか、特に今後の経済見通し経済成長率並びに明年度予算などについて、特に総理にお伺いをいたしたいと思うのであります。  私はまず企画庁長官にお伺いいたしますが、その前に私は昭和三十三年の経済白書——三十二年に私どもは非常に苦い経験をいたしました。そのときの白書を持って参っております。おそらく各大臣もお読みであろうと思いますが、今の状態とほとんど同じである。不思議にも、くしくも池田さんが鉄道の運賃を上げられたり、ガソリン税を上げられたり、そのこともそっくり似ておるのであります。  その経済白書には、三十二年度批判としてこういうことが書かれておるのであります。「今回の景気下降は、設備過剰、投資意欲の停滞を主軸とし、先行した投資ブーム反動過程として、景気循環の中に深く根を下したものだけに、立直りまでには、前二回の経験におけるよりも長い期間を要するであろうといわれている。このような内外の情勢に照して当面の日本経済の課題は二重である。その一は、この間に処して、日本経済再拡大の契機をいかにつかむかということであり、その二は、経済基調の大変動を将来もくり返すことを避けるために、いまからいかなる準備をしなければならないかということである。」こういうふうに書いてある。そうして結びとして、「われわれは調整期を利して、産業および金融組織の姿勢を正し、もって過大膨張への禍根を絶たねばならぬ。」と書いてある。しかもその長官三木さんは、この際過去の教訓を十二分に生かしつつ、けんけん服膺すべきことを特にはしがきに書いてあるわけであります。おそらく各大臣もこれをお読みになっておるであろうと思う。当時の状態と今日の状態とほとんど変わらない、この点を特に私は前もって申し上げておきます。  そこで企画庁長官にお伺いいたしますが、私は、きのう自民党野田さんに対して、本年度経済見通しの修正と申しますか、改定と申しますか、一部漏らされたのでありますが、その全部を知りたいと思っておりましたところ、幸いにもきょうの新聞発表になっておりました。もし資料をお待ちでありますならば、この委員会に全部お配りを願いたいと思う。そこで念のためにお伺いをいたしますが、三十六年度個人消費支出見通し改定された見通し、それから設備投資見通し、それに実質成長率、それから消費者物価指数、この四点を一つ長官から確かめておきたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中間のまだ暫定的な試算でございますけれども、これにつきましては、委員皆様方にお配りをするように手配をいたしておきましたので、お手元に出ておるかと思います。これの数字のことは、詳しく御説明申す必要はあろうと思いますので、調整局長から一応まず説明いたさせます。
  5. 井手以誠

    井手委員 数字は時間がございませんのでよろしゅうございます。私が申し上げた四点だけ、今からの審議に必要でございますから、大臣からお答え願いたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 個人消費は、今度の改定見通しにおきましては、八兆七千億円といたしたわけでございます。それから設備投資が三兆七千五百億、それから国民生産は十六兆五千四百億でございまして、輸出が四十二億六千万ドル、輸入が四十九億六千万ドル、大体個人消費は三十五年度に対して一三・五%、設備投資が二三%、それから国民生産名目で一三・六%、実質でもって九・七%、それから輸出の方が前年度に比べまして八・六%、それから輸入の方が二四・九%、消費者物価は四・七%の値上がり、こういう数字であります。
  7. 井手以誠

    井手委員 総理、今お聞きの通り企画庁長官から改定された三十六年度経済見通し発表されたわけでありますが、総理にお伺いしたいのは、総理は、私きょうここにたくさんの速記録を持って参っておりますから、言った言わなかったということはないと思いますが、「七月、八月ごろには必ず黒字基調になる、心配は要りません。物価は変動ありません。」ということを再々この委員会や本会議その他の機会に言われておるのでありますが、今長官発表によりますと、だいぶ違うてきておるようであります。国際収支並びに消費者物価がずいぶん変わって参っておりますが、やはり前の当委員会などにおける言明はどうなんでございますか。今でも前のことが正しいとお考えでしょうか。見通しは間違いであったとお考えでしょうか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 経済見通しというものは、なかなかむずかしい問題でございます。従いまして、われわれは一応の見通しは御質問によって答えます。しかしその後の経済の移動ということにつきましては、これは見通しでございますから、実際面におきましては、われわれの見通しより相当違ってきておるのが実情であります。それでは見通しが間違っておるか。見通しは間違えません。それだけ経済が変わっておるのであります。
  9. 井手以誠

    井手委員 見通しは間違いないが、経済の方が間違っておるかのごとき、そういう御答弁は、私はあまり聞きたくないのであります。率直に願いたい。  まず総理にお伺いしたいのは、この間本会議における成田質問に対して、自分は三カ年九%成長については、昨年の九月ごろ自民党で出した三十五年度見通し十二兆六千億を基礎にしたと言われておるのであります。それがよく新聞では数字の魔術だと言われておるのでありますが、私はそれであればこそことしの当委員会において、すでにこの二月ごろに見通された三十五年度の総生産十四兆二千三百億円を基礎にして論議をいたしております。総理もまたさような建前で回答されておるのであります。総理はこう言われておる。「昭和三十五年度の総生産というものは十四兆二千億になっております。これを見ましても、私は当初の十七兆六千億を達成し得るのみならず、このままずっといったならば、十八兆六千億に三十八年度はなる、かように考えております。私は、当初の公約年平均九%というものは優に達成できる、かように確信いたしております。」こう答えられておるのであります。だから十三兆六千億を基礎にした年平均九%の成長ではなかったはずであります。十四兆数千億を基礎にした年平均九%の論議であったと私は考えておるし、速記録にもそのように載っておるのであります。総理はそこに何か考え違いはございませんか。将来非常に大きな問題になりますので、確かめておきたい。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 私が申し上げたその点については間違いないと思います。私は、党の公約は十三兆六千億を基準として、九%として十七兆六千億に三十八年度はなると申しました。それから今回の予算を作りまして、その間にずっと伸びていっているので、十三兆六千億は十四兆二千三百億とお答えしたことも記憶にあります。そこであなたが、十四兆二千三百億で九・二%になったならば十八兆六千億を三十八年度に確保できるか、こういう御質問でございますから、私は十八兆六千億を確保するように努力する、十八兆六千億を期待すると答えております。
  11. 井手以誠

    井手委員 その通りであります。なぜ私がこれを念を押しておるかと申しますと、十三兆六千億を基礎にした年平均九%であるならば、今日伸び過ぎたことについての論議はかなり変わってくると思うのであります。ところが十四兆二、三千億を基礎にしたもので、なおかつ自分はこれに確信を持っておる、こういうことであるならば、信念の強い池田総理ですから、十四兆二、三千億円を基礎にした年平均九%の成長は確かな、十分な確信があってのことだと私は思っておるのである。  そこでお伺いいたしますが、その確信を持って三年間平均九%の成長をなさろうとするあなたが——私は、五月の十九日でございましたか、日銀総裁を呼んで確かめました。その際に日銀総裁は、どうも設備投資行き過ぎておるので抑制しなくてはならぬ、経済安定成長ほんとうだと思っておりますというお答えがございましたので、私はあなたに念を押した。この九%成長ということは、私どもはもちろんのこと、各方面から批判がある、高過ぎはせぬかという各方面からの警告があるが、いかがでございますか、大丈夫ですかと私が念を押しましたところ、あなたは、これは高度の安定成長でございますとおっしゃった。今でもさようにお考えになりますか。高度の安定成長でございますか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 三年平均九%ということは、私は達成するように努力する、期待すると言っているのに変わりございません。そして九%の上昇というものは、高度の成長でございます。九%ずつでいくならば、大体高度の安定でいくと思います。しかし今の実情はそういっておりません。十四兆二千三百億に対しまして九・二%でありますと十五兆六千億です。昭和三十六年度が十五兆六千億であるべきだ。その十五兆六千億が、名目で十六兆五千億になる。一兆円だけ名目でふえておるわけでございます。物価は上がりましたけれども、なおかつ物価をデフレ化しまして、十五兆六千億の九・二%の増が十五兆九千七百億、十六兆になっております。十六兆になろうというのも、緊急措置で相当抑制しても、なおかつその程度にいくだろうという企画庁の見込みである。今やすでに、十四兆二千億のこの一月、二月の見通しに対しましても相当上回っている。これでは私の九・二%以上にいっておりますから、名目では二八%、実質で一二・二%の増になっておる。九・二%よりよほど今いっておる。押えるところを見通してもそういっておるから、今は高度の安定成長ではないようになってきておる。だから緊急措置をとるというのであります。
  13. 井手以誠

    井手委員 あなたは当時、経済は伸びれば伸びるほどいい、一一%になってもよろしいし、一二%になってもけっこうだ、日本は世界一だと盛んにここでもおっしゃった。そこで私は、これはあなたの方は安定成長かと聞いたら、自分の方は、池田は、これは高度の安定成長だとおっしゃる。そこでお伺いいたしますが、安定成長とはいかがなものですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 まず国内的にはインフレが起こらず、適正な生産上昇物価の安定、生活費のだんだんの上昇、そうして国際的には国際収支均衡ということをいっておるわけであります。
  15. 井手以誠

    井手委員 国際収支なりあるいは物価その他各方面均衡の上に成長していかねばならぬことは申し上げるまでもない。ただいまお話し通り。ところが一方は行き過ぎておった、設備投資行き過ぎておるのではないか、これを押えなければいかぬのではないかと、ずいぶんこの委員会で野党はあなたに注意を促した。ところが、伸びればいい、伸びたほどいいと盛んに強気のことをおっしゃった。ところが、実際こうなりました。この三十六年度経済白書にも書いてある。均衡の上に成長しなくてはならぬ、これは非常に大事だ、こういうことが書いてある。それでは池田総理は、今顧みて、あれほど強気だった池田さん、あなたは、自分が言ったことは今でも正しかったとお思いになりますか。九%成長は正しいものであるとお考えになっておりますか。九%に毎年これを繰り返していくというお考えは正しかったとお思いになりますか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 私の考え方は間違っていないと今も思って一おります。従いまして今の、三十八年度におきまして党の公約は十七兆六千億、そうしてあなたとの取引では十八兆六千億を期待いたしておる、こう申し上げておる。そうして私は、こうも申しております。ほっておいたならば一一%くらいいくかもわからぬが、腹八分目で、大体九%程度でいきたいということも申し上げておるのであります。御記憶にあると思います。一一%くらいにいくかもわからぬが、腹八分目ということも言っておる。そうしてまた、今五月をおっしゃいましたが、五月ごろにも、この様子では少し設備投資行き過ぎるじゃないか、あのときの議論はこうでございました。昭和三十五年度は二兆八千五百億だが、実際いったら三兆円こえるかもわからぬ、政府は三十六年度設備投資を三兆一千五百億と見ておるが、あのときの様子で、この五月は三兆六千億くらいになるじゃないか、三兆六千億といったら昭和四十五年の倍増計画のときの設備投資ではないか、だから行き過ぎだろう、こういう。それは行き過ぎてはおりますが、ただ四十五年との比較では、もう新規設備投資というものはだんだん少なくなって公正になりますから、所得が倍増になったからといって、その割合に設備投資というものはふえるものではありませんとイギリスの例を引いて申しました。しかし三兆六千億というものは、とにかくそれにしても多いということについては私も共鳴いたしまして、少し行き過ぎだからこれを押えなければならぬということを言っておる。あにはからんや、三兆六千億で多いと言っておいたのが、ほっておいたら四兆円になりそうだ、ここに自由主義経済のむずかしいところがある。それを金融で押え、いろいろな施策で押えるということをしなければなりませんが、なかなか今の状態ではむずかしいのですが。こういうことであったのであります。私は、三兆六千億になりそうだ、それは多い。お互いにそれは了解しておったのですが、その後において今の四兆円になる、今押えて三兆七千五百億としようとしておるのであります。私は当初の十三兆六千億を基準にすれば、もちろん楽々といくし、十四兆二千億というあなたとの話し合いにいたしましても、三十八年の十八兆五千億に合うようにいたしたいというのが私の希望で、そのときからそういうことを期待しておる。この考えには間違いございません。
  17. 井手以誠

    井手委員 総理は今でも、年平均九%成長政策は間違いでないとおっしゃる。間違いなく進んでおるならば、何で今度の景気調整というのが起こったのです。何で国際収支が赤字になっのです。あなたの政策が間違っておればこそ、九%成長政策の根拠に狂いがあったればこそ、私はこういう事態になっておると思います。問題は九%成長率設備投資をどんどんやったからでしょう。どうですか、それは。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 間違っていません。年平均九%というのは、今申し上げたように、三十五年を十三兆七千億でいけば当然なります。これは年平均でございますよ。それから十四兆二千三百億を基準として九%にいけば十八兆五千億、これを期待するわけです。しかるところ、十三兆六千億を基準にいたしますると、今の状態はどうかと申しますと、二〇何%の増加という状態です。そして実質一七%余りの増であります。これは財政演説で言っております。  それから、ここでたまたまあなたと話をした十四兆二千億を基準にいたしますと、今相当押えた数字で、今の状態名目的には一六%余りの増です。実質でも九%の分が一二・二%の増になっておる。だから私は行き過ぎだ。しかもこういう施策をしても一二・二%、名目では一六%の増になろうとしておるのであります。だから、私はこれを押えて、今十四兆二千億でなしに十四兆五千億になっていますが、これではちょっと初め行き過ぎている。一二・二%もいっておる。これを上る分をあまり上らないように、三年間平均九%でいき得ると私は考えたのであります。間違いはございません。
  19. 井手以誠

    井手委員 大きに間違いだと思います。あなたがあれほど高度成長を鳴りもの入りで、かねや太鼓で盛んにおっしゃるからこんなに伸びてきたのですよ。総理も御存じのように、二階に上がるときには一定の間隔で階段があるわけです。それを間隔を初めの方は広くしておいたのではこれは大へんなことになる。経済成長というものは均衡の上に順次成長してやらなければならぬ。人間のからだと同じでしょう。手、足、頭、一つだけが大きくなったのでは大へんでしょう。総理がおっしゃるのに、自分は伸び過ぎたと思ったからこれを押えるのだとおっしゃる。しかし経済の原則というものは、今言ったように徐々にずっと上がっていくのが理想じゃございませんか。本筋じゃございませんか。上がり過ぎたから押える。しばらく苦労して、また伸びていくという波を作ることは、これは政治家のやることじゃございませんよ。あなたの口の裏にはこういうことが考えられると思う。これは一月の二十何日かの記者会見でもおっしゃっておりました。最初九・二%伸ばしていこう、そうすればその翌年は五%でも、平均すれば七・二%になるのじゃないか、おれの言った通りになるじゃないかとお話になっておる。しかし政治はそうであってはなりません。経営者はそれでもいいでしょう。経営者は不景気になれば労働者の首を切る、賃下げをする、操短をやる。そうして景気が上向きになったときに一斉にやり過ぎた設備を一ぺんに稼動していきますともうかるでしょう。経営者としてはそれでいいかもしれませんけれども、しかし政治家としてはその波が来ないような努力をすることが、私は政治家の務めではないかと思う。あなたは波を考えておりますか。行き過ぎたから押えるのだとおっしゃる。行き過ぎたことが私はあなたの失敗だと思う。九%成長というよりも、私は伸びた方がけっこうだと思う。世界じゅうが、日本は大したものだ、一流国だとおっしゃる。その高度成長高度成長とおっしゃるところに、今日の緊急調整をしなければならぬこの経済危機が襲ってきたと考えておりますが、どうですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう点はあなたと同感でございます。従いまして、あなたにもお答えしたように、ほっておくと一一%ぐらいいくかもしれないから、腹八分目で九%で行きましょう、これがいいのだと言っておることは、あなたの今のお話通りでございます。従いまして、この五月ごろから私は行き過ぎる、行き過ぎると言っておるのであります。しかし御承知の通り政府が金を貸してはいけないとか、こうやらなければいけないというようなことは、自由主義ではいかない。だから一応の目安を置いておく。とにかく一昨年、昨年と相当伸びておる問題でありますから、このままでいくと一一%ぐらいいくかもしれない。一一・二%いくかもしれない。そこで九%でいきましょうと、あなたの今おっしゃったような気持で私は言っておるのであります。
  21. 井手以誠

    井手委員 自由主義経済政府の思う通りにいかないとおっしゃる。なるほどその点はあるかもしれない。しかしこの行き過ぎた張本人はだれですか、私はあなただと思います。あなたは今年の一月に金利を引き下げられた低金利政策の本尊ですからけっこうでしょう。金利を引き下げられた。あなたの言葉をかりますならば、それで三百六十億円の事業家のもうけになるでしょう。続いて国会を通じて、あなたは事業家に対して租税特別措置法を改正された。おそらくこれで四百数十億円の利益を与えたでありましょう。さらに法人税を改正して、これまた二百数十億円の利益経営者に与えたでありましょう。また大型予算を作って、さあ公共事業をやるのだ、太平洋ベルト地帯を作っていくのだと盛んに宣伝をなさる。そういうあなたの積極政策高度成長政策が、私は今日の経済危機を招いたものだと思います。私はあなたが責任者だと思う。責任者です。そこで、私はその点はあとでまたあなたの責任を問いたいと思っておりますが、この経済危機を招いた一番の大きな原因は、総理も認められておりますように、何といっても設備投資行き過ぎである。総理も今自分行き過ぎておると思って心配したとおっしゃる。その点はお話しになりました。私も聞いております。それほど心配しておるならば、なぜもっと効果のある抑制策をとられなかったのか。あれほどみんなから注意したのに、なぜほんとう効果のある設備投資抑制をやらなかったのか、それが聞きたい。  そこで私は、これは事務当局でけっこうですが、企画庁にお伺いいたしますが、設備投資による輸入依存率はどのくらいですか。最近機械類が非常に多いのでありますが、設備投資による輸入依存率ですね。
  22. 中野正一

    中野(正)政府委員 お答えいたします。設備投資がふえたためにどれだけ輸入がふえるかということにつきましては、これは輸入誘発率という言葉で言っておりますが、学者によっていろいろ違いまして、一五%であるとか、あるいは二〇%であるとか、そのときの経済情勢によって違いますので、われわれの方は、そういう数字だけによって輸入のふえ方を見ておりません。これは、企画庁では通産省その他の関係の各省、日銀あたりと相談いたしまして、主として積み上げによりまして見通しを立てているわけであります。
  23. 井手以誠

    井手委員 局長、あなたの方で出された経済白書には、従来の例でいけば一七%だと書いてあるのですよ。設備投資の額に対する輸入率は何%であるかということについては、一七%と書いてある。私はこの間企画庁の課長に聞いたところが、二三%程度でありましょうということです。あなたの方の宏池会の調査部で最近出した、ここにもそのパンフレットがありますが、あなたの方の守り本尊の宏池会の調査部で出されたパンフレットによりますと、一五%と非常に内輪に書いてある。これはやはりさすがに下村さんがいらっしゃるからです。人によると三〇%だという人がありますが、かりに企画庁の当の責任者が言われておる二三%をとりますならば、三兆一千四百億円の予定が三兆八千、三兆九千億になった、その差額の七千億円、七千億円の二三%をとりますとどうなりますか。もし予定通りに、あなたが計画なさった所得倍増、あの三兆一千四百億円で設備投資がいっておりますならば、私は国際収支の赤字というものは四億ドル食いとめることができたと思うのです。計算してごらんなさい、七千億円に二十三かけてごらんなさい、四億ドルになるのです。あの自分たちが計画した三兆一千四百億円、計画というものはやはり、これはその所得倍増計画のよしあしは今日申しませんけれども、私は計画というものはやはり先刻も申しました安定成長均衡のある成長という立場から申しますならば、これは一応の筋が通っておるはずだ。その三兆一千四百億円で設備投資を押えておりますならば、私は四億ドルの赤字を食いとめることができたと思うのです。それが今日危機を招いたのはその設備投資です。それを総理はどう思われますか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 設備投資行き過ぎ——設備投資だけではございませんが、予想以上に設備投資が旺盛で行き過ぎたので、国際収支の赤字の原因になっておるということは、もうわれわれも前から認めておるわけでございます。ただその金額につきましての計算は、私はなかなかむずかしいと思います。
  25. 井手以誠

    井手委員 金額の計算がむずかしいことはわかるのです。しかしあなたの方の所得倍増計画通りに、大体その前後で設備投資が進んでおるならば、私は四億ドル前後の国際収支の赤字を食いとめることができた。もし四億ドル食いとめたとしてごらんなさい、今日の事態は起こらぬでしょう。現在は十六億台の外貨でありましょうが、四億ドル加えてごらんなさい、こんな苦しい目にあいませんよ。  そこでこの設備投資で重ねてお伺いをいたしますが、ほかの国民所得、個人消費あるいは輸出輸入、総生産、こういったものは今日まで毎年八%から一〇%ずつ大体平均して伸びてきておる。どのものもみんな大体八%か一〇%ずつ伸びておるのに、設備投資だけ今日昭和三十三年ごろからずっと二〇%、三〇%伸びておるということ、私は伸びればいいというわけにはいかぬと思う。これは不均衡ですよ。それを何で池田総理は見のがしてこられたのか。三兆一千四百億という設備投資のワクというものは理由があって私はできたものだと思う。三十五年度に伸び過ぎておるならば、これをやはり押える、三十六年度の当初にこれを押えるのが私は総理の務めではないかと思う。伸びるだけでいいということではございませんよ。均衡ある発展をしなければならぬのに、ほかのものは八%ないし一〇%伸びておる、設備投資だけが二〇%から三〇%も伸びてどうなりますか。今日の事態を招くことはあたりまえじゃございませんか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、私は従来から設備投資行き過ぎておりますと、腹八分目にしなければならぬということをずっと以前から言っておるのです。政府はそれを押えろ、こうおっしゃいますが、なかなか今のところは、法制上はむずかしい。行政的にはやっております。そこで銀行その他におきましても、できるだけ設備投資をやらないようにということで、最近強く出ておるようであります。  私はここで一つ申し上げておかなければならぬことは、日本経済が非常に危機で、もうどうもこうもならぬとお考えになるのはまだ早過ぎる。私はそういうふうに考えておりません。今警戒信号を出して、これから行き過ぎたのをためるときであって、あなたのように、もう国際収支はどうもこうもならぬというふうな状態ではない、この辺で落ちつきを見せれば、今後スムーズにいくと考えるのであります。
  27. 井手以誠

    井手委員 今日の事態をあなたが甘く見ておることについてはあとで申し上げます。それは二、三日前のあなたの方の自民党の総務会と経済閣僚の懇談会で、政府考えは甘過ぎると言われておる。自民党、与党から言われておる。それはあとで申し上げます。  あなたは、政府の手ではなかなか設備投資は押えられぬとおっしゃるが、しかし、私はうそは申しません、世界的に日本成長しておりますよ、消費者物価は上がりません、さあやんなさいと言って、自分がうんと勧めたじゃございませんか。さっき申しましたように公定歩合の問題、あるいは税制上、法制上いろいろな恩典を与えて自分がやらしておいて、思う通りにならぬと言う。それはあまり無責任だと私は思う。  そこであなたにちょっとこの機会にお伺いいたしますが、あなたは九月の二十日でございますか、名古屋の経済人と懇談をなさったときに、どうも自分の言うことを商社が聞いてくれない、財閥はけしからぬ、投資調整に支障があるといって盛んにたしなめられたことが大きく載っておるのですが、それはどういうことでしょうか。財閥はけしからぬというのは……。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 今の傾向を見ますと、今お話しのように、もう九月ごろには少し行き過ぎておるということは、私は公開の席上で言っている。今の状況を見ますと、やはり系列化しつつあるので——昔の財閥が直ちに出てくるとは思いませんが、やはり金融資本と産業とが、昔ほどではございませんが、系列化しようとする傾向が見られるのであります。それを私は警告いたしておるのであります。
  29. 井手以誠

    井手委員 まああなたにしては、財閥を非難されたのは珍しいことだと思ってお聞きをしたわけです。またその点については別の機会でお伺いをいたしたいと思う。  あなたはこういうことをお考えになりませんか。公定歩合の問題が盛んに言われた。閣内でも非常に主張された人が各大臣にもおられる。公定歩合を再引き上げする、上げるぞということを盛んに新聞では報道された。それをあなたは押えてこられたのです。そういう場合にどういう事態が起こるでしょうか。どういうことが経済人として考えられるでしょうか。政府は近いうちに公定歩合を引き上げるだろう、金を借りるのは今のうちだ、それを言わんばかりの政府の態度じゃないか。私はそういう現象が起こってきておると思う。あなたの方でやられたあの輸入担保率の引き上げ。引き上げられた翌月に二億ドルの輸入申請があったと私は聞いておるのであります。こういう生きた経済状態ですから、何か政府がやろうとすれば先手を打つ、時をかせぐ、そういうことは当然起こるはずです。私は今日まであなたがとってきた、ことし初めからずっと今日まであなたの言動、あるいは提案された法律、税制、行政措置一連を考えて参ますと、設備投資が伸びてきたことは私は当然だと思う。自分が伸ばせ伸ばせと言っておいて、そして自分の言うことを聞かなかった、設備投資が伸び過ぎた、これはちょっと困った、そういうのは私は無責任だと思う。そして国民に協力を求められておる。私はまずあなたが、池田総理自身がこの今日の事態を招いた。危機ということをあなたは非常にお好きにならぬようですからあとで申し上げますが、今日の事態を招いた。この点について私は責任を感じてもらわなくちゃならぬと思う。少なくとも均衡ある経済成長をしなくてはならぬのに、ここに緊急調整をしなくちゃならぬという事態は、これは私は明らかにあなたの政策の失敗であると断じたいのであります。その点の責任は何もお考えになりませんか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 前の御質問にありましたことから一緒にしてお答え申し上げます。日本経済ほんとうに力強いものにするためには、日本金利は高過ぎるのであります。金利が高過ぎるから輸出競争力もそれだけ弱いし、日本物価の点も脆弱なところがある。私は、金利が安いということは、国際的に見ましても望ましいことであるし、高過ぎる日本金利を下げなければならぬということは、だれも考えることであると思います。従いまして、金利を下げることに賛成いたします。そうしてまた先ほど政府が膨大な予算を作ると、こうおっしゃいまするが、今の状態から見まして、道路にいたしましても、港湾にいたしましても、この産業状態からいってまだ低過ぎると私は考えております。道路に金を出したから、あるいは港湾に相当の計画をしたから今日の事態ができたとは思いません。一に民間の設備投資であります。しこうして設備投資をやれと言ったことはございません。行き過ぎはいけないということを常に言っておるのであります。しこうして、また最近の公定歩合の問題につきまして、閣議に云々の話がございましたが、閣議で公定歩合の問題が云々されたことは絶対にございません。これは余談でございまするから、あと適当に取り扱って下さってもよろしゅうございますが、大蔵大臣あるいは企画庁長官が私のところに公定歩合の問題で来ましたから、公定歩合の問題は大蔵大臣日銀総裁でお考え願いたい、総理は関与いたしませんとはっきり言っております。うそではございません。ということで、私はこの公定歩合の引き上げその他は大蔵大臣でやればよろしい。一般政治情勢としては、私はあのときに上げることはよかった。そうしてまた一割の設備投資の削減も、少し少な過ぎるのじゃないかということを言った記憶はございます。しかし私は、何もやれ、かにもやれということでどんどんしたわけではございません。それからお話にありました租税特別措置法につきましても、前よりもきつくいたしました。特別償却も前よりも年限を辛くした。いろいろな措置はとっておるのであります。設備投資を勧めるような法制上の措置その他はとっておりません。
  31. 井手以誠

    井手委員 あなたは非常に元気よくおっしゃいますが、なるほど閣議ではおっしゃらなかったでしょう。閣議ではおっしゃらなかったでしょうけれども記者会見やいろいろな大会の席上でおっしゃっておる。大阪でもおっしゃった。日本青年会議所でもいろいろなことをおっしゃっておる。これはきのう配って参りましたものですが、これはあなたの方の「政府の窓」ですから、自分の方の政府じゃないとおっしゃらぬわけじゃないでしょう。その中に何と書いてあるか。私は日本国民の生命、財産、あらゆるものを全部引き受けております関係上、人一倍勉強しております。経済ばかりじゃありませんよ。あなたは一億国民の生命、財産まで預かっておるならば、この緊急調整をしなくてはならぬという、これは非常に大きな不安と影響を国民に与えますよ。財産に関しますよ。財産に関する、あるいは自民党のいろいろな会議でも話が出た黒字倒産という問題、そういう重大な事態も起こりかねない今日に、自分責任がない、言っておらないでは済みませんよ。なるほど設備投資はやりなさい、あとは私が引き受けるよ、そうはおっしゃらぬでしょう。そうはおっしゃらぬでしょうけれども、おやりなさい、おやりなさいと言わんばかりのあなたの態度じゃございませんか。この場は言いのがれても、国民はそれでは承知しませんし、納得もいたしません。なおあなたとはこの問題についてまだ何回もお目にかかる機会がございますから……。私は五月十九日のこの委員会で、この秋にあなたとどちらが正しいか勝負をいたしましょうと申し上げておりました。不幸にして私の警告したことが的中いたしました。その結果は来年の春にはわかるでしょう。  そこでこの機会に大蔵当局に一、二点お伺いをいたしますが、最近三カ年ばかりの全国の主要法人の千七百社ですか、千五百社ですか、あなたの方の大蔵省の主税局でまとめられておる法人の営業収益と純利益一つここでお示しをいただきたい。合計した営業収益と純利益だけでけっこうです。
  32. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。金融機関を除く全営利法人で、昭和三十三年の営業利益は一兆一千六百三十七億九千四百万円、純利益が五千八百六十九億六千万円でございます。三十四年が一兆四千二百三億一千八百万の営業利益でございまして、純利益は七千七百二億五千三百万円でございます。三十五年度は営業利益が二兆三千七十五億一千二百万円、純利益が一兆二千九百六十三億八千六百万円であります。
  33. 井手以誠

    井手委員 ことしのものもわかりませんか。
  34. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 ことしのはまだわかりません。
  35. 井手以誠

    井手委員 今の数字総理はお聞きになったでしょう。あなたは何兆という言葉に踊らされることはないと思いますが、国民が聞いたらこれは大へんびっくりするでしょうな。会社だからもうけるのはあたりまえでしょう。しかし最近における大企業のもうけというものは莫大なものです。その原因は何かといえば、あなたが今までずっとおやりになった法制上、税制上の措置がこういう結果をなしておるし、この設備投資を中心とする今日の成長政策が私はこのような結果をもたらしたと思う。いいとか悪いとか申し上げません。一部のものが非常にもうけておるという事実、会社が二兆円をこえる利益を上げておるという事実です。しかも今設備投資の四三%程度は自己資金でまかなうのが当然であることはもちろんですけれども、その三兆七千億、八千億といわれる設備投資の四割内外は自己資金でまかなわれておる。その大部分は社内の留保、この巨大な利益から譲渡されておるという事実です。私は最近の高度成長を通じて、そしてまた貿易の自由化に備えてのこのあらしの中に、いわゆる超巨大資本といわれるものがどんどんと大きく成長しておるということ、弱肉強食——全国では一千何百くらいの大きな会社があるのでありましょうが、それをせんじ詰めて参りますと、総理が先刻お話しになったように、財閥の系列がある、会社の系列があるとおっしゃいましたが、この巨大資本の系列というものは大体二十くらいありましょうが、それが今日本経済を牛耳っておるという本態に立ち至っておる。だからあなたがいろいろおっしゃってもなかなか言うことを聞かないのは、それほど大企業が大きくなっておるという証拠にもなるでありましょう。  そこで総理府にお聞きをいたしますが、総理物価は上がりませんと盛んにおっしゃいましたが、先刻企画庁長官発表によりますと、ことしは四・九%の消費者物価の値上がりを予想されておるようでありますが、総理府の統計局で先月の末か中ごろに発表されました「最近の都市消費者家計の動き」というもの、その第三表にあります「可処分所得および消費支出の推移」という中の実質支出の五つに分類したそのパーセンテージを、一つここでお知らせ願いたいと思う。第三表にある「可処分所得および消費支出の推移」です。——わかりましたか。第三表、「実質」というところの欄の可処分所得の一番下の欄の昭和三十六年平均、一月から七月までの月年率というところです。平均から下の方の六行の分だけでけっこうです。
  36. 小平久雄

    ○小平政府委員 お答え申し上げます。可処分所得の伸び率は三十六年の一−七月の平均が五・四、第一分位が一・六、第二分位が二・四、第三分位が三・五、第四分位が四・九、第五分位が八・四、そういうふうになっております。
  37. 井手以誠

    井手委員 総理、今の総務長官が申した数字は、あなたですから御記憶でございましょうが、これは実質のものですから物価を織り込んだものであります。あなたは所得格差を縮めていこうということをいつもおっしゃっておる。また政治の目的はさようでなければならぬと私も信じております。ところが、あれほど所得の格差を縮小いたします、縮めますと言明、公約をなさっているあなたのその口の下から、あなたの方の総理府の統計ですよ。一月からあなたが総理大臣になったその実績ですよ。あなたの政治のもとで一月から七月までの間に物価を差し引いた所得の増加は平均五・四%です。その調べたものを五つに割って、所得の低い方から五つにずっと分類して参りますと、平均以上に所得が上がっておるのは、いわゆる最高所得者といわれるわずか一部の人だけですよ。高額所得者といわれるものも平均に及んでおりません。低額所得者は一・六%しか所得が上がっていないのに、最高所得者は、いわゆる重役級といわれるものは八・四%上がっておる。平均は五・四%です。この事実は、あなたの言明、公約とは逆に所得がますます開いておるという結果になりはしませんか。これはどうです。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 所得格差というものは、われわれは経済成長でこれをなくしようとしておるのであります。しかし今すぐにそれがなくなるものではございません。あなたはこの第三表をごらんになりましたが、これは、一−七月の分につきましてはお話し通りでございます。それでは三十五年平均一つごらんいただきたい。
  39. 井手以誠

    井手委員 あなたの政治のときだけを問題にしているのです。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 三十五年も私の政治でございます。三十五年はどうでございましょう。平均は六・六%の可処分所得の増でございますが、一番下の所得が、大体二万円程度のもの、一家族二万円程度のものは平均六・六%が七・三%、平均より上に上がっておるじゃありませんか。だからことしの一−七月だけを見るのでなく、長い間にわれわれは格差を直そうというのであって、一−七月だけをとっておやりになるのは——経済の見方は、もっと長い目で将来を見ていただきたい。三十五年はそうでございます。ただ私が申し上げるのは、今大所得者とおっしゃいましたが、この五分類したところの一番上の階級の人は、大体一家族平均八万円であります。月平均八万円になっておる。下の方が二万円でございます。ということを考えますと、われわれは長い目で見てこれを直そうとしておる。現に工場の賃金格差は、御承知の通り最近非常に縮まりつつあります。たとえば五百人以上の工場のものを一〇〇といたしますと、五人未満のものは四三%くらいであったのが、最近は五〇%くらいに上がっておると思います。そういうわけでございまして、所得格差をなくする。ではことしの一月から七月まではどうだ、これでは私は議論にならないと思います。去年も見ましょうし、今後もだんだんそういう方向に向かっていきましょうというのが私の考えでございます。
  41. 井手以誠

    井手委員 総理のおっしゃるように私も長い目で見て参りました。昨年のあなたが総理になられる前は、かなり低額所得者の所得が上がっておりましたが、その後だんだん落ちて参りまして、長い目でことしの一月から七月まで見て参りますと、あなたの方の統計ではこんなに開いておる。  運輸大臣にお伺いをいたします。あなたはこの間本会議で私鉄運賃は臨時国会中は、とまで言ったときにヤジが出まして、まだ考えておりません、とお答えになった。多分あなたは臨時国会中に上げると問題になるから、済んでから上げよう、認可しようという腹がまえではないかと思っておりますが、どうですか。——ちょっと待って下さい。企画庁長官、その前に聞きましょう。あなたは今度の経済見通しでは、消費者物価は四・七%上がるとおっしゃった。すでに四月から今日まで四%上がっておるのですよ。私があなたの方の事務当局に聞いたところでは、私鉄の運賃を一割上げますと、物価にはね返るのが、家計にはね返るのが〇・三八%だといわれておる。これだけでもう四%以上になっておる。これは上げられるものではございません。おそらく企画庁では、政府では私鉄運賃の値上げはお考えになっておらないだろうと思います。まずあなたから先にお聞きしましょう。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 公共料金の値上げについては、閣議の了解もありますように、われわれとしては今日の段階において押えていくことは、これは当然でございます。そうして現在のように四・七%という状況でございますから、その点を十分考えて参らなければいかぬと思っております。ただ経営上非常に困難な事態が起こるというような場合にだけ、例外として考えるということの方針で行っておるわけでございます。
  43. 井手以誠

    井手委員 長官、重ねてお伺いしますが、私鉄の会社は関連事業もたくさんやっておりまして、今莫大な利益を上げておることは御存じの通りであります。一割二分の配当をほとんどいたしておりますが、そういたしますと、今おっしゃいました企業の採算がどうだということを考えて参りますと、私鉄の運賃値上げは許可、認可なさらぬ企画庁の方針ですか。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私鉄運賃、バスその他の問題につきましては、主管官庁でございます運輸省及び運輸審議会等におきまして、厳重な内容の検査をされることだと思います。その検査の内容いかんによってわれわれは考えて、今のような状態考えておるわけでございます。一般的原則としてむろんこれを押えていくということであることは、申し上げるまでもありません。
  45. 井手以誠

    井手委員 きのうでしたか、おとついでしたか、あなたの方は公共料金はもう上げない、ストップするということを何かおきめになったように聞いておりますが、そんな答弁ではいけませんよ。企画庁というのは、私が申し上げるまでもございません。一番大事なところですよ。あなたが押えなくてだれが押えますか。はっきりおっしゃって下さい。あなたは別に私鉄の関係はないですからいいでしょう。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 企画庁で公共料金を全部押えるという決定をしたことはございません。しかしながら・物価行政というものは非常に重要である。ことに経済成長におきまして、現在外貨バランスも悪くなっておりますし、この機会において物価が一般的に上がって参りますということは、二重に困難を増して参るわけでありますから、当然これは押えて参らなければならぬ。一般物価についても当該主管官庁においてそれぞれ御苦心を願うように私ども考えておるのでございます。公共料金につきましては、われわれとして今申し上げましたようにこれを抑制して、そうしてよほどの事態、将来の生産に困難な状況が起こるという特殊のものに関してのみわれわれは考慮していくということを考えておるわけでございます。
  47. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 方針といたしましては、ただいま企画庁長官の述べられた通りでございまして、そういう方針に基づきまして、今私鉄の経営状況その他について慎重に検討中でございます。ただ今日の御承知のような交通混雑を緩和いたしますために、今年及び明年度にかけまして約一千億の施設の増強をはからなければ相ならぬことになっておるわけであります。これをどういうようにしてやっていくかということとあわせまして今検討中でございます。
  48. 井手以誠

    井手委員 この点は大事でございますからさらにと思いますが、肝心の今後のこの経済の危機をいかにして打開するかという財政経済政策が大事でございますから、運賃についてはあとで別な機会に申し上げたいと思います。  今度の景気調整対策といわれるもの、これはどういうわけか緊急という文字がないようであります。この前三十二年のときには緊急という文字がつけてある。今度はわざわざ注釈をつけて、臨時的であるとおっしゃっておる。ところが本会議における総理大臣の演説並びに大蔵大臣の率直な演説を聞いておりますと、これは根深いものであるから、相当期間緊縮方針を堅持しなくてはならぬとおっしゃっておる。どんなふうですか総理、臨時とおっしゃるのはまあここ何カ月かというお考えですか、あるいはあなたが昨日野田委員に言われたように、来年の暮れころには国際収支均衡するであろうと、そう言われたその時分までの対策でございますか、その点をまずお伺いいたします。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げましたように、私は一つのひずみと考えておるのであります。従いまして、普通ではやらないことをやっておるわけでございます。国際収支見通しがはっきり、大体もうとんとんでいくというときにはやめる考えでおるのでございます。いつもと違いまして、自由化という大問題もございますので、そういうものとかね合わせて考えていきたいと思います。
  50. 井手以誠

    井手委員 自由化という問題があればこそ、相当期間私はとらねばならぬ政策であると考えます。そこでこのあなたの方の対策というものが、なるほど事態は国際収支の赤字によってきたものでありますけれども、私は問題は別にあると思う。われわれが論議しなくてはならぬことは別にあると思う。それをわざわざ国際収支の改善に関する対策と言われておるのであります。貿易の振興も必要なことは私も認めます。が、貿易を振興するという、そういうやり方だけで何とかしょうというお考えですか。もちろんほかにいろいろなものは並べられておりますが、中心をなすものは貿易の振興策のようでございますが、いかがですか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 貿易の振興も特にこの際必要でございますし、また輸入抑制も必要である。そうして国内におきまする行き過ぎ設備投資を押えることも必要であるし、またいわゆる不急不要と申しますか、今でなくてもがまんできるものはがまんする、いろいろな方策があると思います。
  52. 井手以誠

    井手委員 世間で今度の振興策のことをこういうふうな批判をいたしておるのであります。定食であることには間違いない、皿はそろっておるけれども中身がないじゃないかという批判があるのであります。総理はこの前の国会でも、日本は外国と違った特殊の発展段階にございますと言われておる。日本がどんどん成長していくことは、これは当然だと、日本は特別の国だ、特に偉い国だと言わんばかりのことをおっしゃっておりますが、今日の事態を解決するには、輸出を伸ばすことはもちろん重大でありますけれども、単にそればかりであってはならない。今度のこの緊迫した事態というものは、私は、先刻来論議しておりますように、設備投資行き過ぎというそこに根深いものがあると思うのです。この前の三十二年度と違う。それは総理も認められておりますが、思惑輸入原因とは違うのでありますが、私は、相当期間この対策を講ぜねばならぬ、一番大事なことは、何といってもその原因をなしておる設備投資を押えるというところに重点を置かねばならぬと思います。すなわち、今までのあなたのやられて参りました高度成長政策というものを私は考え直さねばならぬと思うのです。九%は正しかったと今でもおっしゃいますけれども、伸び過ぎているから、成長政策行き過ぎているから押えるのですよ。私は、この成長政策というものを、もう少し考えを変えてもらわなくちゃならぬ。ここが一番大事な点で、かなめではないかと思うのですが、総理は、今でも日本は外国と違った特別な発展段階にあるとお考えになっておるのか、輸出振興だけでよろしい、設備投資の方に対しては何とかなるだろうとお考えであるのか。私は、原因成長政策、これを考えなくちゃならぬと思いますが、どうですか。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日毛お答えしたように、私は成長政策は変えません。成長政策でいくべきだと思う。しこうして外国よりも成長率が高い。これは日本人の努力であり、日本の今の経済状態が、日本人の力によってもっと外国よりも上にいく力を持っておる。従いまして、外国よりも比較にならないほど高い成長率を続けて参っておりますし、また今まで去年、おととしのような高い成長率行き過ぎだったから、三年間平均九%の成長率でいこうとしておるのであります。しかし九%をこえる非常な高度の、超高度の成長というものは私はとりません、先ほど来言っているように。このままでいったならば一一、二%いくかもわからない、これは九%でいきましょう、こう言っておるわけであります。ここ三年間程度九%の平均でいくということは、日本としてやらなければいかぬ。これによって国民生活水準を上げ、今までのいろいろなひずみを直していく、こういう考えに変わりはございません。
  54. 井手以誠

    井手委員 それではいよいよ問題の今後の経済見通しということになるわけですが、あなたはただいま今後も依然として九%成長政策を続けていくとおっしゃいました。はたしてこれでよいのかどうか、綜合政策研究会あるいは日銀、勧銀、あるいは経済同友会その他各方面の意見を聞いておりますと、成長は押えなくてはならぬというのが各方面一致した意見です。あるいは四%といい、五%といい、六%といい、七%と言われておる。九%よろしいという者はあなたと下村さんだけですよ。それはかっちり九%がいいとか悪いとかと私は申しません。いわゆる高度成長政策がいけないと思う。だからこそ設備投資行き過ぎたじゃございませんか。  それではいよいよ肝心の明年度のことに触れて参りますが、まず聞きたいのは、総理は、来年度経済見通し、さらに明年度予算編成についての何かお考えはございますか。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 誤解があってはいけませんから、はっきり申し上げておきます。  私は過去二年、そして今年の、あなたとの話の十四兆二千億に対しましての非常な上がり方等はこれはよくない、高度成長というのはどこに比べるか、外国に比べたら高度成長でございます。しこうして今の状況は超高度成長になっておりますから、これを押えようとしている。九%というのは、三年間平均九%の考え方でいけると思う、それを期待する、こう言っております。だから私は、本会議でも申しましたが、党が十三兆六千億から十八兆六千億、三十八年度に十八兆六千億ということを公約しておりますが、それに対しましては今後は、今でも高くなっておりますから、五%ぐらいなら十八兆六千億にいきましょう。それからあなたと話をした十四兆二千億を土台にして九%でいくならば、私は、今の分が相当それよりも上がっておりますから、何も九%の必要はないと思います。政府見通しといたしましては三年平均九%、どれをとるか、十三兆六千億ならこれは問題なし、あなたとの十四兆二千億をとって十八兆六千億、実質で十八兆五千億ですか、これへいくのには、なお今を土台にしたならば九%の必要はございません。  そこで、どうきめていくかという問題は、何も九%とか七%ということを言うよりも、先に日本経済の動きを見て、そうしてここでどういう措置をとったならば非常なデフレにならないようにスムーズにこの状態を切り抜けられるかということを頭に置いていかなければいけない。九%なんかは二の次です。何にもならぬ。何にもならぬとは申しませんが、大した問題じゃない。経済がどう動くかということでいくのです。そして、これは財政当局の責任でおやりになるのですが、私は大体お約束した三年間九%ということは実現できるようにし、そうして経済が円滑に上昇過程をたどることを期待して、それに向かって進んでいこうと思います。
  56. 井手以誠

    井手委員 あなたは九%は高度の安定成長政策だと何回もおっしゃった。そしてなお伸びることを期待するとおっしゃった。ところが今お話を聞きますると、一一%、一二%という成長率、あれは超がついているんだ、超高度のものだ。なかなか近ごろは熟語作りがうまくなられてけっこうですが、それで物事が割り切れるものじゃございません。あなたは三年平均九%とおっしゃいますが、それじゃことしよりも下がるということが一応考えられる場合がある。しかるに今どんどんやっております設備投資が実際稼働して参りますと、これは大へんなことになると思う。私はあちらこちらの意見を聞いて参りますと、供給面からいきますならば、過剰生産が起こらぬように、それが国内消費と輸出に全部完全に消化できる経済成長政策考えるならば、それは三十七年は一二・七%の成長率でなくてはならぬということです。今よりもふえなくては、今まで積み重ねた設備投資というものの製品のはけ口がございません。これは大事なところですよ。あとでまたこの数字を申し上げますが……。毎年片々ずっと個人消費あるいは輸出その他の一〇%程度の伸びに対して、二〇%も三〇%もよけいに伸びておる設備投資が、いよいよ二年先、三年先に動き出すということを考えますと、それを消化するには九%どころか一二%、一三%、次々にふえていかなくては消化ができませんよ。それを押えようとすれば大へんなデフレになる。そごをよくお考え願いたい。この事態を解決するには、私は社会党ですけれども、保守党でやれることは何か、来年度やらねばならぬことは、何としても設備投資思い切って下げなくてはならぬと思う。設備投資をことしと横ばいにして、来年度三兆八千億とか三兆七千五百億とか横ばいにしてごらんなさい。国際収支というものはさらに悪くなりますよ。赤字はどんどんふえて参りますよ。この一点だけでも、私は成長率というものはずっと下げねばならぬと思うのです。  そこで途中ですが、企画庁長官にお伺いいたします。あなたが述べられたこの経済見通しの中に、鉱工業生産の指数は二八三になっておる。これは大体いつが基準になっておりますか。九月ごろが二八三の生産の指数に上がっておりますか。きのう池田総理の答弁を聞いておりますと、十一月ごろ、あるいは十二月かわからぬけれども、それからずっと鉱工業生産は横ばいになるとおっしゃった。これは肝心なかなめの点です。さすがに総理だと思った。いいことをおっしゃる。鉱工業生産は、これはいつを目標にしてありますか。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 この二八三というのも、きのう私が一応説明いたしましたように、三十六年度平均でございます。多分私の聞いたところによりますると、八月が二八八であったと思います。大体二ポイント程度いっておりますから、ことしの一月ごろは二七〇幾らでございましょう。二八八が、今までのあれからいくと、十月ぐらいは二九〇ぐらいになるのじゃないか。そしていつからこれを横ばいにするかということは、これは政府はなかなかできないことなんで、設備投資その他の問題がずっと加わってきまして、私の見通しとしては二九〇から二九一ぐらいで、今年横ばいにいくと、年平均が二八三になるのじゃないかと思います。これは単なる今の見通しでございまして、十二月、一月、二月がどうなるかということは、政府が二八九とか二九一で横ばいにしろと言えるわけのものじゃない。だから、いろいろな施策を見ながら、金融その他の措置で考えなければならぬと思います。
  58. 井手以誠

    井手委員 総理のきのうの野田委員に対する答弁、速記をとって参りましたが、ことしの今までの二二%、これは前年に対する増加分です、二二%が一八・五%になりますと、一月からの生産はずっと横ばいになるということになりますと、こうおっしゃっておる。それで総理にお聞きしますが、一月からずっと横ばいになりますのはいつまでのつもりですか。来年の国際収支均衡するときごろまでですか。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 きのう申したのもそう申しております。今もそのつもりで言っておるわけです。そこで一−三月ぐらいはずっと横ばいでいくようになるだろう、これが理想型だと思います。そして二八三と、こうなる。そして今度来年の経済成長の見込みをどう見るかということは、ここ一、二カ月、三カ月の問題をずっと吟味しなければなりません。しかし今も言ったように、九%はいかなくても、相当程度はいかぬと非常なデフレになりますから、ある程度の倍率を将来検討の上きめなければならぬ問題でございます。今の二九〇から二九一の三月までの横ばいがいつからどういうカーブで上がってくるかという問題につきましては、私は昭和二十九年並びに三十三年のあの施策以後の伸び方を参考にして研究を続けております。
  60. 井手以誠

    井手委員 企画庁長官、鉱工業の生産は上半期は前年に対して幾らの伸びでございましたか。下半期は前年に比べて幾らの伸びに予定されておりますか。一八・五%をあなたは年平均にされておりますが。
  61. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御指摘の本年の上期の鉱工業生産は、数字で申し上げますと、四月が一七・四%前年に比べましてふえております。五月が二二・六……。
  62. 井手以誠

    井手委員 上半期一緒にして下さい。
  63. 中野正一

    中野(正)政府委員 上半期、今ちょっと平均を出しておりませんが、上期で大体二二%の成長になると見ております。それから下期が一五・三%上がる。それで年度平均で一八・五%くらいの上がりになる、こういうふうに見ております。
  64. 井手以誠

    井手委員 もうすでに私は、三十六年度成長率において九・九%あるいは一〇%をこえるであろうといわれておるものを、九・七%に押えられたということ、押えられたその急所は何かといえば、鉱工業生産を八月を総理は二八八ぐらいだろうとおっしゃいましたが、その八月の水準でずっと横ばいに考えられるのであります。それであなたは来年の国際収支均衡するごろまでは横ばいにしなくてはならぬであろうとお考えになっておる。そうなりますと、鉱工業の生産が八月を基準にしてずっと横ばいの状態になって参りますと、平均が二八三でございますから、八月は二八八であれば、大体八月を水準にして、ずっと来年の暮れごろまでは鉱工業生産の伸びというものはないのであります。しかしないといっても、やはり設備はどんどん実働して参りますから、若干伸びはあるでしょう。私はそういう場合でも六%程度の毛のはあると思う。あなたの言われるように今後の鉱工業の生産が横ばいであるということになりますと、これはどうしても明年度成長率というものは四、五%でなくてはならぬと思うのです。これはいろんな数字を検討して参りますと四、五%でなくてはならぬはずです。九%でいけますか。九%だったら一二・七%から一三%の成長率でなくてはならぬことになりますよ。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今言ったように、来年の三月までは十月二ポイント、十一月一ポイントくらい上がって、その上がったところで三月ごろまで横ばいでいく。そして三十七年度においてどういう上昇率を今度とっていくかということは、昭和二十九年あるいは三十三年のあの回復期のカーブを見ながら検討していくと言っておるのであって、来年の秋までずっと横ばいでいくということを今答えておりません。速記をごらん下さればわかる。これは三月ぐらいまではずっと横ばいである、十一月、十二月、二ポイント、一ポイント上がったところで横ばいでいくというので、今企画庁の言ったような計算になっておるわけであります。そして来年度になったならばどういうカーブで上がるかということは、これからの二、三カ月、三、四カ月の経済見通して、そして、繰り返すようですが、二十九年−三十三年のあの上昇カーブを参考にしてきめていくべきものであるというのであります。  もう一つの誤解は、三十七年度九%でいくと私は言っておりません。三年間平均で九%でいく、今が非常に上がっているから、あなたにお話し申し上げたあの数字、十八兆五千億にいくのには九%の必要はございません。こう言っておるのでございます。これは速記録をごらん下さればわかります。その点はっきり申し上げておきます。
  66. 井手以誠

    井手委員 予算の問題については今からお聞きをします。その前になお企画庁長官にお伺いいたしますが、輸出入の見通しでございます。今までの伸びの推移あるいは世界各国の貿易の情勢などを勘案して参りますと、来年度はせいぜい甘くは見られません、固く見るのが政治家の務めでありますが、輸出はどのくらい伸びるとお考えですか。ことしは四十二億六千万ドル、それに対して一五%程度伸びますか、二〇%も伸びるとお考えですか。ことしは一〇%の予定が八%に終わっておりますが、どうですか。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 来年度輸出入の伸びでございます。あるいは実勢でございますけれども、これは現在なかなか予測することが困難でございまして、特に輸出につきましては、輸出に対するいろいろな諸方策を講じております。また輸入に対しましては、担保率の引き上げその他によりましてこれを抑制いたしております。御承知の通り、本年は四十三億ドルの見通しでございましたけれども、本年は四十二億ドル程度しかいかないだろうという見通しを立てております。また輸入につきましては、四十二億程度の予想でございましたのが、四十九億六千というような数字に予想されるのでございます。しからば、それを押えた結果としてどの程度になるかということについては、今後の施策によるのではないかと思います。御承知の通り、先般輸出奨励というようなことで、非常に大きな輸出ドライブをかけましたから、当然輸出が伸びていかなければならないわけでございますが、しかしこういうような方策を用いましても、たとえば輸出業者が現地におきまして過当の競争をするというようなことになりますと、かえってそういう弊害も出て参りますので、そこいらも十分慎重に、貿易商社が現地でもって安売りの競争をする、あるいは競争をすることによって輸出を伸ばすことがじゃまになるようなことのないように、過去のそういう例もございますから、輸出を大いに奨励しただけにそういう競争も起こらないとは限りません。そういう点を十分注意しながら、今後これらの諸方策がどういうふうに成果を上げてくるかということは、もう二、三カ月たちませんと実際のところはわかりませんので、私といたしましては、そのころになりまして予算編成前後に十分な見通しを立てていきたい、こう考えておるわけでございます。
  68. 井手以誠

    井手委員 長官としては総理の前でなかなか言いにくい点もあると思う。しかし言いにくい点はあっても、今までの伸び率から、世界各国の経済状態から考えて、二〇%も三〇%も簡単に伸びるものじゃございません。大体の見当はつくはずです。かりにせいぜいあなたの方が輸出奨励をやる、業者がもうけて、出しいいような方法を今通産大臣はお考えになっておるようですが、そうやってやりましても、私は二〇%伸ばすことは困難だと思う。これは常識でわかる。今東南アジアはアメリカとの競争で伸び悩みであることは統計に出ております。いろいろなことをえ考て参りますと、せいぜい四十八億ドルから九億ドル程度ではないかと思うのが私は常識だろうと思う。それじゃ一体輸入はどの程度か、輸入を聞いてみましょう。輸入は貿易の自由化の影響がどのくらいあるのか。さらに今設備投資というのは佐藤通産大臣のあなたの方の資料によりますと、継続工事が七割近くになっておるのであります。設備は大型化して参りました。継続工事が非常に多いことを考えますと、いかに池田総理設備投資行き過ぎておりますと幾ら言ったって、簡単に設備がやまるものではございません。それを考えますと、輸入が簡単に減るとは思われません。設備投資に要する輸入依存率というものが低下するとは考えられません。貿易の自由化によって、人によれば昭和三十八年度ごろは十億ドルくらいふえるのではなかろうかという説があるし、三十七年度は二、三億ドルふえるであろうといわれる。それらを考えて参りますと、私は総理の言われるように来年度収支がとんとんにいくとは考えられません。十二月ごろに均衡するだろう、うまくいってせいぜいそんなものだ。私はそうは思いませんけれども、うんとうまくいって奇跡が起こってそのくらいです。それでは企画庁は、来年度輸入をどのくらいとお考えになっておりますか。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 輸出の伸びがどのくらい、二〇%であるか一五%であるかというようなことを数字的に申し上げることは、今日非常に困難だと私は思います。しかし今日の国際経済の状況から申しまして、対米輸出というものはアメリカの景気回復で若干伸びつつあるのでありまして、これは相当期待ができると思いますけれども、その他豪州等は金融危機に陥っておりまして、必ずしも輸出が十分伸びるというふうにも考えられませんし、東南アジアの各国の状況から見ますと、延べ払い方式等を十分併用いたしまして伸ばして参らなければなりませんから、その努力をいたして、そうして貿易の拡大をはかっていくことでありますけれども、それらの施策を講じまして、お話しのように二〇%も伸ばすということは、私も相当困難だと思います。ただどの程度伸びるかということについてはなかなかむずかしい問題でありまして、今それらの状況を判断しながら明年のことを予測せざるを得ないと思います。  また輸入抑制につきましても、自由化の問題を前提として実は諸方策をとったのでありまして、従って担保率の引き上げ等は、前回に比べましてかなり強い線を打ち出しておると私は考えておるのでございます。そういう面について直接輸入抑制の方法も講じておりますけれども、同時に通産大臣等も、各業界の方々を呼ばれまして、個別にいろいろ懇談をされて、設備投資抑制に努力いたしておられますので、その面からも考えられると思います。むろん自由化をいたしますれば、若干その面において数字はふえて参りましょうけれども、全体として輸入抑制する方策によって、総額の非常に伸びることを押えていかなければならぬのであります。これらは今後の施策をきめこまかにやって参らなければならぬと考えております。どの程度パーセンテージで押えられるかということは、今日の状況では正確に申し上げることは非常に困難ではないか、こう考えております。
  70. 井手以誠

    井手委員 総理は今お聞きでございましたでしょうが、企画庁長官輸出は二〇%は困難だとおっしゃった。そうしますと、どんなに努力をなさっても輸出が五十億台を望むなどということはとうてい考えられない。ところが輸入は相当ふえてくるでしょう。四十九億六千万ドルでは、ことしの水準ではとても間に合うことはできぬと思う。それは政府もすでに覚悟して、答弁にも現われております。そうなって参りますと、国際収支の面からいって、設備投資というものの輸入依存度から考えますならば、ことしほどの三兆七千五百億円とかあるいは三兆八千億円というような巨大な設備投資を続けることは絶対に困難だと私は思う。もしことしと同じ三兆八千億円の設備投資をやりますならば、輸入額は五十七、八億ドルに上るかもしれません。これはものすごい国際収支の悪化である、大へんなことになると思うのです。国際収支のバランスを考えて参り、鉱工業の生産などをいろいろ考えて参りますと、どうしても設備投資というものを三十七年度にはうんと押えなくちゃならぬわけです。私は先刻も申しましたが、あなたの方の保守党で計画なさった所得倍増計画において、四十五年度に三兆六千億円の設備投資、それが正しいかどうかは別です、これは総理もこの前論議されましたが。しかし、やはりその標準に合わせるように設備投資をうんと落とすことが昭和三十七年度、今後の経済見通しを立てる上に、あるいはまたこの経済危機を乗り切るには一番大事な点じゃないか。私ども社会党では別な考えを持っておりますけれども、保守党でできる限界というものは、設備投資を一割以上削減することが私は絶対必要であると考える。先刻も申し上げたように、鉱工業の生産を今日の水準でずっと横ばいに押えていくということと、来年度設備投資を三兆三千億か四千億程度に押えることが私は基本だと考える。そうしなければ国際収支は大へんなことになりますよ。あとで伺いますが、IMFから二億五千万ドル借りてきても焼け石に水になります。あなたは数字に明かるい人ですから大体見当はついているだろうと思う。五%とこの間の新聞大会で言ったことはおかしなことだ、七%くらいに言ったらよかろう、そうすると計算すれば平均九%くらいになるだろうというお考えを持っておるようであります。七%くらいにしたら大へんなことになる。その点どうです。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろよく御勉強になって、数字を並べていらっしゃいますが、私は、今とっております施策の結果を見ながらやっていきたいと思います。いずれは次の国会で議論することになると思います。今どうするこうする、どうだこうだと言うことはまだ早過ぎる。われわれはこういう施策をとっておる、これによってとりあえず今年度の一応の見通しをごらんに入れたわけであります。来年のことはもう少し様子を見てから議論いたしたいと思います。
  72. 井手以誠

    井手委員 池田さん、それでは済みませんよ。それではこの国会は簡単にいきませんよ。来年のことは今後の推移を見てから考えますということではいけません。この国会を通じて、いつまでにこの経済危機を乗り切るか、打開するかという見通し国民に示すことが任務であると私は考える。従来九月ごろには翌年度経済見通し予算編成方針はきめられておったはずです。昨年はちょっとおくれておりますけれども、大体九月に大綱というものはきまっておったはずです。しかも今回のこの経済危機というものは政府のあの超高度成長政策のためにこういうことが起こっておる。あなたはそうじゃないとおっしゃいますけれども、何といっても誘い水になっていることは間違いございません。あなたは来年の暮れには国際収支はとんとんに行くであろうとおっしゃる。この国際収支の危機を乗り切り、その景気を調整するのは、少なくとも来年の暮れまでか再来年の春までかからなければならぬかなり長期のものであろうと思う。だからこそ大蔵大臣は何と言いましたか、緊縮方針は相当期間堅持していかなければならぬと演説で言われた。あとで来年の春の通常国会で論議しましょうとおっしゃいますが、私はこの臨時国会を通じて論議を済まさなければならぬと思う。あなたの方針を押し通してもいい場合も出てくるでしょう。しかし、少なくとも国民に協力を求めるならば、今後とらんとする経済財政政策を明らかにするのが私は政府の務めであると信じております。ここで一つ来年の経済見通し予算編成の方針を出してごらんなさい。それを見なければ今度の景気調整策を審議するわけにいかないと思う。これは議題ではございませんよ。しかし、この国会に課せられた任務から考えますれば当然政府はそれを出すべきだと思う。お出しなさいよ。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 今のような状態で、しかも一連の措置をとっておる。非常に経済の動くときに、来年の見通しがどうだということは、設備投資とか、いろんな国民消費とか、あるいは政府予算とかいうふうなものは、まだ私はいつもの年とは違いますから、なかなかむずかしいと思います。企画庁でもできていないと思います。今後今の事態を見ながら、年末までに予算を編成いたすことにしております。
  74. 井手以誠

    井手委員 あれほど自信たっぷりな強気な池田さんが、先の見通しがつかぬなどと、そんなに自信を喪失されたのですか。従来も九月ごろには大体翌年度経済見通しなり、あるいは予算編成方針の大綱というものがきまっておった。今経済が動いておるとおっしゃいますけれども、この経済危機を乗り切るという対策、一番何といってもその中心は来年の予算編成の方針なんですよ。来年度昭和三十七年度における経済財政政策における政府の姿勢を示すことが、私は何よりも急務だと思う。それを示さずして、先のことは先だ、しばらく推移を見なくてはわからぬということは、これはさすがの池田さんも自信をなくされたのだと私は思う。どうしてもこの国会で今日、来年の見通しをお示しなさることはできませんか。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 経済に対する自信をなくしたのではございません。せっかくごらんに入れるなら、十分事態を見きわめて、しっかりしたものをごらんに入れたい、こういうので今検討を加えつつあるのであります。予算の大綱というものと、今のあなたのお聞きになりまする設備投資がどうだとかいう問題とは、また事柄が違うのでございます。私は、例年も来年度見通しというふうなものにつきましては、十二月の中ごろくらいに相なっておるかと記憶いたしております。
  76. 井手以誠

    井手委員 私が申しておる設備投資であるということ、鉱工業の生産というものは、これは経済成長の中心をなすものです。鉱工業の生産の割合によってどういう政策、どういう事態になるか、デフレ政策になるかインフレ政策になるか、設備投資によって今後さらに国際収支は悪化するかどうかというキー・ポイントです。一番大事な点です。それは総理が知っておるはずです。だからあなたはわかっておるはずですよ。十二月ごろの二九〇幾らから鉱工業の生産は横ばいにいたしますよと言っておる。そんなことまで言って来年度のことがわからぬということがあるはずがないですよ。大体予算編成の方針というもの、政府はこういう緊縮方針を考えておるから国民もこういうふうにしてもらいたいという、そういう態勢を示さなくては国民はどうしますか。すでに大蔵大臣は本会議で言っておるじゃございませんか。「経済を引き締め、内需を抑制することを一つの重点といたしております。すなわち、政府は、まず、みずから措置できる施策を行なうこととし、官庁営繕の一部を繰り延べるとともに、財政投融資及び公共事業費等についても、その一部の繰り延べを行なうことといたしました。」私は「明年度にわたりましても、予算金融その他各般の分野において引き締めの方針を堅持し、忍耐強く対処していかねばならぬものと考えております。」方針はきめてある。緊縮方針ならどうするということを示すのがあたりまえじゃございませんか。どうしても、大体来年の見通しはこういうふうになりはせぬでしょうかという大体の見通しでもお示しできませんでしょうか。経済見通し予算編成の方針は。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまも誤解があったようでございますが、本年度の鉱工業生産は、十二月ごろから横ばいにするというのじゃございません、横ばいになるという前提でこの表を作っているというのでございます。今横ばいにすると言ったじゃないか、こう言われますが、するといってもできるものじゃない。ただ一応の見通しをつけてこうなると、こういうことなんです。だから私は、今年の春設備投資は三兆一千億ぐらい、で三兆五、六千億は多いじゃないか、多い、こう言っておいても四兆円になろうとするから、今押えようとする。自由主義経済のもとで、総理大臣設備投資はこれだけにしなきゃいかぬということは、言えるものじゃない。そこは一つ前提でお考え願いたい。  それから、今あなた来年のあれを言えとおっしゃいますが、今十一月、十二月輸出入がどうなり、国際収支はどうなるということはなかなかむずかしい。ことにそれを地盤として三十七年をどう考えるかということは、まだ先のことでございます。大蔵大臣が、今年度において緊縮方針をとる、そうして来年毛緊縮方針をとりたいということは、これは大蔵大臣として当然のことです。その緊縮方針の程度がどうかということは、これからの様子を見て考える、建前はきまっておりますよ。どういう程度の緊縮方針かということは、大蔵大臣もまだ言えぬと思います。いかに専門家でも言えぬと思います。しばらく経済の事態の推移を見て、そうして正確なあれを作るということが、私は自信のある財政当局のやり方と思います。
  78. 井手以誠

    井手委員 あなたは国民の生命、財産まで自分は預かっておると言う。それほど強く言い切ったあなたが、もう少し事態の推移を見なくては来年の予算編成の方針も示されないと言う。それじゃ国民はどっちにいっていいのか、どうしていいのかわかりませんよ。いかに国民に協力を求めようとしても、協力するわけにはいかぬです。この間本会議あるいは予算委員会でも言われたように、この年末の金融がどうなる、黒字倒産がどんどんできそうだ、大へんなことになりそうだという、この国民の不安に対して、今さらしばらく推移を見なくては明年のことは言えませんなどといっても、だれが政府に協力しますか、協力する態勢になりますか。しかも今度の補正予算というものは、これは来年の予算につながっておるものですよ、つながっておりますよ——申してみましょう、笑っておるから申しますよ、見てごらんなさい。災害については別ですよ、災害については私は別の人がお話しになりますから申しません。予算の内容について、食管制度でも食管の繰り入れでもどうですか、三百億は。これも農業資材が上がったからですよ、あなたの政策によって上がったからですよ。都会の労働者の引き上げによって、その米価が一万一千五十二円五十銭に上がった、農民の手取りがふえたのじゃございませんよ。そういう政策の結果上げねばならないようになったものが三百億円になっておる。建築の単価引き上げでも同じでしょう、サービスの労務費は引き上げなくちゃならぬとあなたはおっしゃる。物価が上がるのはやむを得ないというあなたのそういうやり方が、全部そうじゃございませんか。ベース・アップでもそうですよ。公務員の給与改善だって同じ、物価が上がるから民間給与がだんだん上がってくる、従ってこれは民間給与が上がれば、五%以上の場合は国家公務員も地方公務員も上げなくてはならぬという、そういうために今度の予算が要求されているのです。考えて参りますと、あなたの成長政策の結果物が上がった、そのしりぬぐいが今度の補正予算であると私は申し上げたい。そうでありますなら、この物価騰貴に伴うこの補正というものは、これは来年度予算につながるものです。つながるものであるならば、来年の予算はこう緊縮をやります、こういう方針で臨みますということをここで示さなくては、この補正予算の審議もなかなかいきにくいんですよ。それを考えて下さい。井手君が言っておるのは、あれは経済政策の一般的な問題じゃないか、今度の補正予算と関係がないじゃないかとあなたは言いたいでしょうけれども、そうじゃございませんよ。これは来年度予算とつながった問題です。今度建築の単価引き上げは、全部これは来年度につながらなければならぬ。私は、あくまでもこの機会に来年の予算編成方針の大綱あるいは経済見通し、あとでそれをとやこう私は申し上げません。大体の見当でいいですから、あくまでもここに提出を願いたい。そうでなくてはなかなか審議に応じかねます。これは来年の予算と直接のつながりがある。今国民政府財政経済政策、いかにして政府——池田さんは身体財産をまかせろとおっしゃったが、どうしたらいいのかみんな迷っておるのですよ。
  79. 山村新治郎

    山村委員長 予算の具体的問題に入って参りましたので、一応大蔵大臣に御答弁をお願いしましょうか。   〔「総理総理」と呼ぶ者あり〕
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 来年、三十七年度予算に、三十六年度の当初予算並びに補正予算がつながりを持つことは当然です。しかし、つながりを持ちますからといって、補正予算を審議するときに、今の経済事情が非常に動いておるときに、その見通しを出せということは、これは僕は早過ぎると思います。今年の状況を見まして、もう少し状況を見て、予算編成のときまで国民は待って下さることを私は信じております。
  81. 井手以誠

    井手委員 倒産しかかってから待つわけには参りませんよ、中小企業者は。予算編成の方針というものは、それは簡単に一時間や二時間、一日や二日ではできぬでしょう。しかし経済見通しというものは、これはあるはずです。企画庁なんか大体試算しているはすです。その予算編成の中核をなすところの経済見通し、これは私はあると思う。それがなくてどうして今度の改訂ができましたか。今度の改訂というものは、鉱工業生産を、今までは二二、三%伸びておったものを今度は一五に落としたということ、下半期は一五に落としてある。落としたということは、来年度のことも考えて落としてあるはずだ。大体の試案というものは、企画庁にはできておるはずですよ。経済成長率は、大体それは、あなたは聞きにくい言葉かもしれませんけれども、五%か六%のものができておると思う。そうでなくてはこの鉱工業生産の指数なんか出てくるはずはございません。  それじゃ企画庁長官、お聞きしますが、五%の経済成長の場合にどういうふうなことになりますか。個人消費あるいは輸出入のバランスというようなもの、これは逆算してもらってもけっこうです。来年は輸出入はこのくらいだ、鉱工業の生産はこのくらいだ、そうなれば設備投資はどうだ、成長率は幾らになるということが、大体見込まれるでしょう。まず第一は設備投資輸出入の問題。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども年度見通しを立てます今日の場合においては、できるだけ誤りのないものを作って参ることが必要であると思います。従って、今行なわれております諸方策の影響がどういうふうに出てくるかということを見ることが必要でありまして、かりに五%ならどうなるとか、六%ならどうなるとかいうようなことよりも、むしろ現状の推移から見てどういう状況になるから、その結果がどうなるかという、むしろ逆な結論を見ていく方が、正確なものが出てくるのじゃないか。今、むろん企画庁としてはいろいろな材料を集めまして、そして検討はいたしておりますけれども、まだ申し上げるような結論には達しておらないのでございます。
  83. 井手以誠

    井手委員 それでは、何か政府も自信がないようでございますから、もうこれ以上要求いたしません。しかし、この大事な今後の経済見通しというものは、あるいは来年度予算編成方針というものは、これは国民が一日も早く、一時間も早く知りたい根本の問題です。すみやかに一つ政府は明年度こういう経済政策、財政政策をとりたいということを明示してもらいたい。そうでなくては、いかに総理大臣が口を大にして説教なさっても国民はついて参りません。あなたの人気も非常にこの間上がっておった。ところが株をごらんなさい。株はあなたが総理大臣に就任したときと同じくらいに、上がっておったけれどもまた下がってきた。最近では、あなたが公定歩合を再び引き上げたら逆に株が上がってきた。逆になってきた。これはあなたにとってもいいことではないと思う。来年のいろいろなことを考えますと、おそらく来年の夏ごろは大へんな時期になろう、今のままでいきますと。すみやかに、早目に率直に現実の事態というものをすなおに見てもらい、立場は一時困ったこともあるでしょう。金利政策なんかでもあなたの面子に関することもあるかもしれませんけれども、将来大きな災いを招くことよりも、大きな修繕、根本的な修繕をするような事態になるよりも、小さな修繕で、あの程度の修繕で済む程度政策は必要である。それを私はあなたに希望しておきます。私の試算によりますと、あるいは私の知った者の計算によりますと、来年度設備投資というものは、あなたの考えている四十五年度三兆六千億、それがいいかどうかは別にいたしましても、その段階の順序に従って三兆八千億といわれる今年度設備投資をぐんと落とすこと、これが私は基本だと思う。何も五%に下がったから、幾らに下がったからといって、あなたの面子は幾らか損をするかもしれませんけれども、しかし日本経済考えますと、その方がプラスです。あまりこだわらぬ方がいいということを私は特に申し上げておきたい。  そこで、時間が参りましたからもうあと一、二問で終わりますが、金利の点でどうしても聞いておかなければなりません。金利問題、長期貸付の金利というもの、これもやはり引き上げなくてはならぬ事態ではないか。この間成田質問に対してお答えがございませんでした。そしてまた預金金利についても、貯蓄を奨励し、預金者を保護する意味においても私は預金の金利も引き上ぐべきではないか。それは原則としては低金利ほんとうかもしれません。しかし、この病気をなおすためにはしようがないじゃございませんか。この事態を打開するためにはやはりそういう措置をとることが必要であると思いますが、いかがですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもは、さきに低金利政策が必要だ、自由化を前にして国際競争力を培養するためには、どうしても金利を国際水準にさや寄せすることが必要だという考えで、二十何年ぶりに初めて金利水準を下げるということをしました。ただ、金利を下げるといっても、やはり体系的な下げ方をしなければ、これはむずかしい問題でございますので、私どもは、預金金利も、金利体系を整えた下げ方をすることに非常に苦労しました。預金金利のむずかしさは、簡単にいかないところは、たとえば国の財政投融資の大きい原資をなしている郵便貯金のごときは、金利を下げるのは国会の審議を経なければならぬというようなものがございますので、金利の体系を整えるということはなかなかむずかしいことでございましたが、これを前国会においてやったということでございまして、今後といえども日本経済を自由化に対処させるためには、国際水準にさや寄せする、このことだけはどうしてもやらなければならぬ政策でございますので、私どもはこの方針は堅持したいと思います。しかし、そうかといって、経済のいろいろな推移によって金利を一時的に引き上げなければならぬというような事情が出たときには、これはそのときの弾力的な措置として、自由にこの金利の操作をする、それによって経済の調整をする、このこととは衝突することではないということを何回も申しておりましたが、今回もそういう方針で金利水準を下げるというせっかくやった仕事でございますので、これはこのまま堅持しながら、当面の経済に対処する方法としての金利の上げ下げというものは、弾力的に機動的にやるのだ、こういう方針から今度もやった次第でございますので、預金金利の方はしばらく見送ることがやはり妥当だろうという考えで、今度は預金金利の問題は見送りました。長期貸付の問題も同様に、これは行政指導でできるだけ設備投資——大口の設備投資を初めとして、押えられるだけ押えようという行政指導面でいろいろな強い措置を今とっておりますので、この措置の情勢を見てから考えてもいいという考えで、当分の間これも見送るという方針をとったわけでございます。
  85. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣にもう一点お伺いいたしますが、減税の問題です。これは非常に関心のある問題です。あなたは何回もこの席で、国民所得に対する租税負担の割合はどんな場合でも二一%以内にとどめたい。その前は二〇・五%と言い、税制調査会の答申は二〇%であります。しかし三十六年度予算を編成したときには、現実には二〇・七%に上がっておる。それを私がついたところが、そう一がいに二〇・七%以内に押えるわけにはいきませんが、しかし二一%を上るようなことは絶対いたしませんとあなたは何回もお答えになった。ところが来年度は、この間自民党が、税制調査会でございますが、あなたの方の主税局長が説明されたところを聞いておりますと、新聞報道によりますと、少なくとも四千五百億円から五千億円の自然増収があると言われた。来年の経済成長をいろいろ考えて参りますと、あなたの公約を守るには、それが間接税か直接税ですか、それは今後の問題でございますけれども、減税の額というものは少なくとも二千億、二千五百億に上ると私どもも思う。それだけしなくてはあなたの約束された二一%以内に租税負担を押えるということにはならないのであります。その公約はあくまでも守られるのですか、この一点だけはしかと私は確かめておきたいと思う。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はそういう公約をした覚えがないのですが……(井手委員「ここに書いてある」と呼ぶ)と申しますと、それを見ればわかると思いますが、私は、国民の租税負担が国民の所得に対して何%でなければならぬというものはない。ただ税制調査会において二〇%前後が好ましいという答申が出ておりますので、なるだけその線に沿ってやりたいと言っているわけでございますが、この何%でなければならぬかという理由はなくて、問題は国民所得の状況と国の財政需要の状況によってきめられるべきもので、この前も予算委員会で例をあげましたが、たとえば諸外国の例を見ても、イギリスの負担は国民所得に対して三十何%、三八%ぐらいにいっていると思います。それを今度は大増税をするというようなことでございますが、欧州の先進工業国というものの税負担というものは、みんな三〇%以上になっているというような状態でございますが、じゃあ、国民生活にとってその先進国の方が困るかといいますと、そうじゃなくて、国民所得が多くなっているところは、税負担が多くなっても国民の生活は割合に楽であるし、国民所得の低い国であったら、これは税負担の率が相当低くなければいけないというような事情にございますので、日本も早く社会保障費そのほかの経費がまかなえて、国民負担が二〇%以上、二一%、二五%、三〇%ぐらい負担しても日本国民生活は困らぬという状態に早くなりたいものだとまでここで言っておったくらいでございまして、税負担が幾らにならなければならぬということはないのだということを、この前ここではっきり申し上げたわけでございますが、できるだけことしは二〇%前後が妥当だという答申が出ておって、なるだけそれに近づけようとして三十六年度は努力したのですが、三十七年度、来年ぐらいになったら、これは二一%ぐらいに、ことしより。パーセントはふえるかもしれぬということを、なるだけその程度にとどめたいということは申しましたが、これは結局財政需要と国民所得との関係できまることでございますので、私は二一%に必ずするという公約をしたことはないと思っております。
  87. 井手以誠

    井手委員 もう時間が参りましたから、これで終わりますが、大蔵大臣はいつからそんなふうに詭弁を使われるようになったのか。書いてあるのですよ、あなた言っているのですよ。二〇・七%、これ以上はいけませんよ、どうですか。あなたは公約というか、税制調査会の答申を守らなければいけませんよと、私がずいぶん念を押した結果が、いえそれは二〇・七%でなくてはならぬというわけには参りませんが、しかし二一%をこえるということはいたしませんということをはっきり言っておる。書いてある。あとでゆっくり読んでごらんなさい。それは返事は要りません。——ちょっと待って下さい、まだ発言中。そういうあなたの答弁であると……(「食言だ」と呼ぶ者あり)食言であるばかりでなく、国民は大へん失望しますよ。あなたは国民所得が上がれば非常にけっこうだとおっしゃる、諸外国のように三〇%の税負担になるように国民所得が上がることを期待しておるとおっしゃる。池田さんのおっしゃるようなことをおっしゃる。しかし現実はどうですか、どこの家庭に行っても、物価がどんどん上がっておる。企画庁の調査では四コンマ幾らのパーセンテージ、東京では四・七か九%の物価の上がりでありますが、実際は各家庭の生計というものは非常に苦しくなっておる。それはこの間の池田総理の女優との討論でも出ておるのです。端的に申しますなら、お互いの家庭は——あなたの方は知りませんが、今までは豚肉買っておったけれども、高くなったから鯨の肉でがまんしておるのがほとんどの家庭です。実態は先刻の総理府の統計にありますように、生活は苦しくなっておるのです。だから私は、特に減税を行なわぬばならぬとあなたに希望しておるわけであります。だから答弁要りません。  そこで、最後に池田総理にも申し上げておきたい。  私が今まで来年度見通しなどについて相当しつこくあなたに追及いたしましたが、私はそれだけしなくてはならぬ義務があったから申し上げたわけであります。ここで総理に特にお考え願わなければならぬことは、今の設備投資による設備が、ことしの暮れから、来年から再来年にかけて実働するときに、どういう事態になるかということであります。今大きな工事が行なわれておりますが、今の設備がすぐ動くわけではございませんけれども、三十四年には二兆何千億の設備投資がある、昭和三十五年には、昨年度は三兆五百億の設備投資が加わる、ことしは三兆八千億にも上ろうとしておる。その膨大な設備が動いてごらんなさい。国民個人消費は八%か一〇%しか上がらぬ、輸出もその程度しか伸びない、そういうときに設備がどんどん動いてごらんなさい、どうなりますか。企画庁の内輪な計算によりますと、設備投資の額に対して一年間の生産力というものは六割といわれておるのであります。これは七割という説もあります。かりに一番少ない数字をとりましても六割、三十四年度から今日までの設備投資の総額は九兆円にも上るでありましょう。その六割という五兆何千億円にも上る一カ年の生産力が市場に回ってごらんなさい、どういう結果になりますか。そう輸出は伸びない。あなたはこの前のこの委員会において、輸出に向けられるものは大体一五%程度であろうとおっしゃった。そうなりますと、五兆円、六兆円の拡充された生産というものが一体どこで消化できますか。あなたは十二月から横ばいだ、四月からは一段……。三月までだとおっしゃいますけれども、あなたが近く出されるであろう経済見通し考えてみますと、来年はどうしても今の鉱工業の生産は横ばいでなくてはならぬのです。そうなりますと、昭和三十四年からどんどん設備が拡充された、その設備による生産はどうして消化できますか。生産過剰になります。このおそるべき生産過剰の反動というもの、今の高度成長政策の反動というもの、これをよく考えていただきたい。  時間がありませんからこれで終わりますが、これは容易ならぬ事態になるということを私は警告いたしまして、質問を終わります。
  88. 山村新治郎

    山村委員長 それでは午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  89. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算補正二案に対する質疑を続行いたします。川俣清音君。
  90. 川俣清音

    ○川俣委員 私は主として災害対策及び食糧管理制度を中心として質問を進めて参りたいと思います。近時の深刻な災害の頻発する現況にかんがみまして、この際、従来の治山治水に関する諸施策批判を加えまして、早急に治山治水の根本的な方策を確立して、これが強力な実施を推進し、もって被災者に報いるところがなければならないと存じまするし、また、わが国土の保全と開発に遺漏なきを期したいと思うのでございます。ただいま申し上げましたように、国土の開発保全と経済の発展、国民経済の向上の立場から見まして、防災対策が先行する必要があるのではないか。このことが社会政策の前提でもあると思うのでございます。特に恵まれない環境の中に生活をいたしておりまする低所得者層が常に最大の被災者であって、これは天災というよりもむしろ人災的であると指摘され、政治の欠陥を暴露しておるといわれておるところでございまして、私は人道上怒りを感ずるのでございます。これに対しまして、総理大臣の見解をお伺いいたしたいと存じます。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 川俣委員のおっしゃる通り、われわれは、経済成長と同時に、根本である治山治水に対しましてできるだけの措置を講じなければならぬことはお話通りであります。従いまして、伊勢湾台風のあの結果にかんがみまして、われわれは十カ年計画を打ち立てて、これが実行に入っておるのであります。また災害の予防その他善後措置のために基本的な考え方を打ち立てるという関係上、災害対策基本法を本国会に提案いたしまして、御審議を願う。われわれはこういう二つの柱で進んで参りまするが、やはり経済成長のうらはらでございますから、十カ年計画をとりあえず遂行すると同時に、財政上の余裕があれば、治山治水にこれ以上の万全の措置をとるよう努力をいたしたいと思っております。
  92. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣の今の答弁は、その通りでなければならないと思います。しかしながら、過去の治山治水計画を振り返ってみますると、明治四十四年第一次治水計画が立てられて、これが六十五河川に対して計画を立てられたのでございます。その後、最初の意気込みにかかわらず、遅々として進まないために、大正十一年再び第二次治水計画を立てまして、残りの四十四とさらに十三を加えまして、五十七の河川の改修を始め、治水対策を立てたわけです。これもまた財政の圧迫するところとなりましたか、あらためて昭和八年十一月に第三次治水計画を立てなければならなかった。続いて戦争のために荒廃いたしましたので、取り残されておりましたこれらの計画を、さらに昭和二十四年を初年度とした治水事業十カ年計画が実施されるに至ったのでございますが、これもまた遅々として効果が見られなかったために、二十八年に引き続き、大災害のあとを受けまして、昭和二十九年度を初年度とする治山治水基本計画が立てられたわけでございます。それは池田さんの関係しておったときであります。あなたが関係されまして、治山治水基本計画が立てられましたけれども、計画倒れになったために、さらに昭和三十一年経済自立五カ年計画に即応いたしまして、過去の反省の上に立って治水事業をあらためて計画するということになったわけでございます。また事業の効率的実施をはかるために、国民経済及び防災対策上、昭和三十一年度から三十五年度までの治水五カ年計画が作られ、本計画もまた時の経過とともに、主として国家財政上の理由によりまして、この計画が実施面からだんだんと置き去りになってきたのであります。こうした経過を経まして、三十四年の五月に伊勢湾台風のあとを受けまして、治山治水関係閣僚会議を開きまして、あらためて計画が立てられたのであります。これは当時の伊勢湾台風の世論に抗し切れずに、計画は立てられましたものの、その後の実施の状態を見ましても、計画は十カ年計画で千三百億、前期六百五十億、後期七百五十億、治水事業といたしまして九千二百億、前期四千億、後期五千二百億。林野庁にあらためて治山特別会計を設け、建設省に治水特別会計が設けられまして、この実施の裏づけをされたのでございますが、治山治水緊急措置法があらためて制定されまして、法律上の裏づけを持ちまして、強力に推進すると発表されたのでございます。  この当時、政府も熱意を示したのでございまするが、一向にその効果が上がらないために、再度問題になっておるわけでございます。従って、当時の政府は災害のあるたびに熱意を示されておりまするけれども、その後、時の経過に従いましてその実施が繰り延べられておるという結果、再度々々にわたっての計画を打ち立てなければならないという結果になったのだろうと思う。総理の今述べられましたことは、現時点においては、うそを言われておるとは思いませんし、そういう計画であることには一点の疑いを持たないのであります。しかしながら、今後三十七年度におきましても、また経済成長を幾分押えなければならないということになりますると、この治山治水対策がまた一番最初に犠牲になるのではないかという疑いを持ちまするし、またそういう結果になるのじゃないかと想像されるのでございます。そこで重ねてこの点についてお尋ねをしなければならぬわけでございます。総理の御答弁を願います。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 経済成長を押えると申しましても、行き過ぎを押えるのでございまして、私は三十五年度に立てましたあの治山治水十カ年計画、そして災害対策基本法、この基本法の通過を見まして、これにのっとりまして、少なくとも従来の計画は実行するし、よくなればこれに加えていきたいという考えであります。
  94. 川俣清音

    ○川俣委員 さらにお尋ねしますが、いつの時代の内閣におきましても、この計画がうそであったということにはならないと思うのです。しかしながら、明治四十四年以来熱意を示した計画が常に実行されてなかったという国民の恨みはなお残っておると思うのです。おそらく池田さんなるがゆえに実行されるであろうということは期待はいたすものの、ときにはやはり犠牲をこうむるのではないか、再び台風を前にいたしまして国民がおののいておるわけでございます。そのためにあえて念を押さなければならないことをまことに遺憾とするのです。池田さんが大蔵大臣のときにも、これはやはり国家財政の上からということで相当なたをふるわれたことがあるわけです。前科とは申しませんけれども、やはりかつてありまするから、今度のような台風が参りますと、あらためて問題を提起いたしまして、心からこの解決策を願わなければならないと思うのです。三十四年度におきまして立てられました計画が、三十五年度経済成長の伸びに従いまして割合によく実行いたしておりましたために、今度の災害も割合に軽少で済んだということは言えないわけじゃない、確かに効果は上がっておると思います。しかし、ここでさらにもう一度考えを新たにして対策を立ててもらわなければならないのではなかろうか。これは政治家の悪いくせとして、いつでも災害が起きます場合に、与党、野党を問わず、災害に対しては全力をあげる、こう称しまして、国民を喜ばせるのでございまするけれども、喜ばした国民に、喜びを与えないで、不安を与えておるというのが実際現状ではないかと思います。総理大臣も、地方を回わられまして、おそらくこの声を聞いておられると思います。再度国民に安心を与えるために、もう一度言明を願いたいと思うのであります。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま申し上げました通りに、経済成長とうらはらでございまするから、私は十カ年計画をそのまま実行することはもちろんでございます。できましたら、それ以上にやっていきたいという気持でおります。
  96. 川俣清音

    ○川俣委員 さらにお尋ねいたしたいのですが、今度の補正予算を見ましても、税の自然増収の面から見ましても、いわゆる会計制度、財政制度の単年度会計主義から見まして、こういう成長の伸びと合った自然増収をやはり単年度でできるだけ解決をするということが、単年度主義がいいか悪いかは別にいたしまして、現在の会計法及び財政法から見まして、もっと力を入れるべきではなかったかと思うのですが、この点はいかがですか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 三十五年度予算につきまして、災害も社会保障もあるいは公共投資も減税も、あらゆる点を考慮いたしまして、これが適当なりと、こういうので御審議、御決定をいただいたのであります。今後におきましても、経済の伸びにつれまして、重要度を勘案しつつ、適切な措置を講じていきたいと考えております。
  98. 川俣清音

    ○川俣委員 そういう答弁では不満足でございますが、時間を急ぎますために前に進みます。  経済成長から取り残されておりまする農民であるとかあるいは中小企業者が、今度の台風の個人被害を受けておるのでございます。これに対しまして、どのような救済策をおとりになるつもりでありますか。通産大臣と農林大臣にお尋ねいたしたいと思うのですが、特に経済成長から取り残されておりまする中小企業者あるいは農民の個人災害について、どのように救済をしていくという考えを持っておられまするか、この際ここで明らかにしてほしいと思うのであります。
  99. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 中小企業者の今次の災害の罹災者につきましてまず第一に取り上げましたのは、立ち上がりを容易にするという意味においての金融措置であります。この金融措置は数次にわたって説明しておりますから、その内容等は重ねて申し上げません。十分の対策をとったつもりでございます。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、今次の災害が従来と多少違いますことは、非常に局地的であったことと、風が強かった、そのために果樹類に非常に影響が多かった、特殊の農業に災害が多かったというような関係等もございまして、従来の災害とは多少違った方法でいかなければならぬと思います。ところが、従来の慣行といたしまして、個人の場合には融資ということになっておりますので、将来にわたって十分これらを検討しなければならぬだろう。ただし個人の場合につきましても、特別にワクを広げるとか、できるだけのことはいたさなければならぬとせっかく考えておるところであります。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣に重ねてお尋ねしたいのですが、大臣は特にいわゆる成長農業だと言われております果樹園芸であるとか畜産に非常な努力を払われておるわけです。ところが、これらの成長農業というものは必ず近代的設備を要するものでございます。原始農業よりも一歩進歩しただけに、近代的設備が行なわれ、投資されておるわけです。いわゆる経済成長農業に力を入れまするのはもちろんさしつかえないのですけれども、それだけに個人の投資が非常に大きくなっておる。それが災害を受けるということになりますと、従来よりもより大きな被害を受けなければならないという結果になるのです。いわゆる選択的拡大という方策に基づいて近代設備をいたしますと、その損害は従来よりもさらに大きな拡大災害になるおそれが出てきたことは、今度の台風によって明らかになったと思う。それだけ投資力が大きければ大きいほど被害をこうむる率が多くなってきた。これがやはり近代産業の持つところの——一つの大きな会社であれば別でありますが、別でないにいたしましても、いわゆる設備をすればするほど被害の対象になるという方向は、日本のような台風の被害地帯におきましては、相当考えていかなければならぬじゃないか。その対策なしには、成長農業だからといって、無条件に農民がついていけない危険を今度の台風は示してくれたと思うんですが、この点についての考え伺いたい。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通りでございまして、実は御承知の通り、畜産の保険にいたしましても非常に低度のものでございます。よほど拡充して参らなければならないと考え、せっかく検討中でございます。その他果樹園芸等につきましてもお話し通りでございますが、これには農災関係が非常に微弱でございます。従って、これらについても農業保険の制度を何とかして考慮いたさなければならぬだろう。今お話し通り、保険制度を並行して拡充して参らなければならぬということを検討中でございます。
  103. 川俣清音

    ○川俣委員 ここでもう一度農林大臣にお尋ねしたい。こういう果樹果物の落果を前にいたしまして、これを加工しようとする熱意が出てきたわけです。これは当然だと思う。それによって被害をなるべく削減しようとする努力でありますから、これは認めてやらなければいかぬ、こういう場合を考えましても、日本のいわゆるカン詰にするカン代が非常に高過ぎて、これらのものを保存利用する、加工するということに、カンの方が高くて——もちろん落果物ですから安いことはやむを得ないでしょうけれども、カン代のために働かなければならないような結果になっておることは、これは大臣お認めだと思うのです。  そこで通産大臣にお尋ねいたしたいのですが一日本のこれからの成長農業の——成長農業を私は必ずしも無条件で取り入れるとは思いませんけれども、せっかく河野さんの構想でございますから、それに従ったといたしましても、カン代が高ければこれらの成長農業の加工という面に非常なブレーキがかかるのじゃないかと思うのです。この点通産大臣いかがお考えになっておりますか。これらの加工をさらに助成していくということについて、日本の製カン事業というものは、おくれてはおりますものの、今後の団地生活あるいは集団生活の上からいって、需要からいえばカン詰工業はなお盛んにならなければならないと思うのです。そのときにカン代に全部とられるようなことでありますならば、消費者はカンを買わなければならない、そんなべらぼうなことはないのじゃないかと思うのでありますが、通産大臣はいかがお考えになりますか。
  104. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御指摘の通りのことが言えると思います。カン語用のカンは、いろいろ技術提携等をそれぞれいたしておりまして、三十二年以来大体一割程度安くなったようでございます。しかし、今後もなお外国会社との技術提携等をいたしまして、カンの値段を安くする、あるいはあきカンの回収、これなども大体二割程度は処理ができておるようでございます。その程度のものでもカン詰用のカン代を安くするというか、その負担を軽減する、こういうふうなことで回収にも力をいたしておるようであります。
  105. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣、どうお考えですか。あなたの所管で重要な関心を持たなければならぬと思うのですが。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 私は今後の農業育成の上におきまして、農村の工業化、その主たるものとして、御指摘の通りに農産物の二次加工という問題に、大いに力を入れなければならぬと考えておりますが、何分わが国内のカンの代金が欧米のそれに比して割高になっておる。これは、原料とする薄板の代金が高いのでございまして、この点は通産大臣を通じて、何とか欧米並みに薄板が製カン会社に入るように、そして製カン会社はまた欧米並みのカン代で農村が入手できるように御協力をお願いすることにせっかく御努力をいただいておるのでございます。ただいま通産大臣からお話がありましたように、内々話し合って努力いたしておりまして、いずれ貿易自由化というような場合におきまして、これらカン代で競争ができないというようなことであれば、遺憾ながら農村としては、外国製の、たとえばパイナップルにいたしましても何にいたしましても、貿易の自由というわけには参らぬというのが私の考えでありまして、十分努力して参りたいと考えております。
  107. 川俣清音

    ○川俣委員 ほかのことであれば、農林大臣なかなか勢いが強いのでありますが、事通産省のことになりますと、少し弱腰ではないかということを感ずるわけですが、そのことは触れません。  さらに、今度の災害のあとを振り返ってみまして、梅雨前線あるいは集中豪雨の災実を見ますと、むしろ利水の調節的役割を果たすべき多目的ダムまたは電源ダムなどが、必要以上に台風を前にいたしまして貯水をいたしておりますために、それをオーバーして被害を受けましたり、または貯水効果を上げるために、下の土砂どめを抜きまして、災害を拡大いたしたりしておる事実が明らかでございます。時間がありませんから例を述べませんけれども、いわゆる堆砂道の底を抜いたり、あるいは水を無理に一定量貯水をするためにオーバーして、災害時における水はけが悪くて、災害を下流に及ぼすような被害が出ておることは、企画庁も建設省も同様に認められておるところだと思います。そこで、通産大臣、従来のようななまやさしい調節規程では、これに対抗できないのではないかと思うのでございます。そこで今後このダムの規制につきまして、どのような対策を考えておられますか。従来の規制では、とうてい対抗できないのじゃないかと思うのです。これは府県知事に責任を移譲いたしておりますものの、地方の知事の力が弱くて、なかなかこれがうまくいっておりませんことは、今次の災害を見ても明らかであります。そこで、通産省の考え方、建設省及び企画庁考え方を、この際明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  108. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまダムの操作規程のあることは、御承知の通りであります。水害がありました後において、その操作規程で操作し、それが災害を引き起こした、こういうような事例があるかどうか、その都度実は問題になるのであります。今回の災害におきましても、泰阜ダム、その付近一帯の水害は、操作規程の不備によるのじゃないか、こういうような御意見もあるやに伺います。しかし、通産省といたしましては、ただいまのところ、操作規程を順守したことによって災害を引き起こしたというような調査の結果は、まだ得ておらないのであります。ただいまのところ、操作規程で十分ではないか、かように考えております。問題の泰阜ダムにつきましては、長野県は長野県でその原因等を調査しております。また通産省は建設省と、このダム操作について遺憾な点があったかどうか、それらの点をただいま調査中であります。これらの結果を待ちまして、この操作規程がいいか悪いかという問題になるのだと思います。ただいまのところそういうような心配はない、かように私ども考えます。
  109. 中村梅吉

    中村国務大臣 ダムの操作につきましては、いろいろ世間に批判があることを承っておりますし、私も実は災害現地を視察いたしました際に、従来から、御承知の通りダム操作規程がございまして、この規程を厳守させるようにいたしておるわけでございますが、この段階において、相当以前にできましたダムの操作規程を再検討する必要があるということを感じまして、目下専門の技術屋の諸君に委員になってもらって、ダム操作規程の再検討の委員会を作りまして、熱心に検討を開始いたしておる次第でございます。  なお、今通産大臣が触れられました泰阜ダムにつきましては、長野県で委員会を作りまして、地元は地元としての調査をいたしておりますので、私どもといたしましては、それと関連をして、今後のダム操作に対して遺憾の点のないようにいたして参りたい、かように考えております。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は、将来の水資源の問題にも深く関係いたしておりますので、通産省、建設省等と協議をいたしまして、今後実際のそういう問題を調査の上で、適当に対処するようにいたしたい、こう考えております。
  111. 川俣清音

    ○川俣委員 今、企画庁長官実情に即して対策を練らなければならない、それから建設大臣は遺憾のないようにさらに改正する必要があるのじゃないかということで検討している、通産大臣はその必要がないのだという答弁で、重要な三閣僚が意見がみな違うわけでございます。この点を総理大臣、どう調整されますか、お伺いいたします。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 この多目的ダム、あるいはそれ以前のあれにいたしましても、ダムの操作につきまして、慎重を期さなければならぬことは、従来から言われておることでございます。通産大臣といたしましては、万全を期すようにやっていく、こう言われる。それから企画庁長官の方は、水資源のこともありますので、今後十分検討する。ニュアンスが違うだけで、根本は違わないと思います。
  113. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣、必ずしもニュアンスばかりじゃないのです。これはおそらく通産大臣は、多目的ダムよりも電源ダムについて、かなり電力会社の意見が強く反映しておるのじゃないかと思うのです。そこで、全国の電源ダムの堆積土を年々お調べになってごらんなさい。必要貯蔵量を確保できないダムができてきております。従って、規程通りの調節を行ない得ないダムの現状は否定できないと思うのです。従って、今後何らかの規制が必要になってきたということは、現実が示しておるのじゃないかと思うのです。現在は、作られたときそのままの貯水量ではございません。五年経過することによって、あるいは十年経過することによって、激しい山の荒廃がありますと、堆積土がたまりまして、能力を落とすために、みずからやはり操作をしなければならないのが、操作規程に従っては完全能力を発揮できないために、あえてくぐっておるということが実際の現状である。そのために起こる被害について責任をどう感ずるか、こういう問題でございます。従って、操作規程はこのままでいいんだということには必ずしもならないのでありまして、十分ダムの堆積土等をお調べになっておるはずでありまするから、それをごらんになりますと、従来の操作規程でよろしいんだということは言えなかったはずだと思うのです。だからこれはニュアンスの違いではないのです。現状認識、把握の違いだ、こういうことになるのじゃないかと思うが、もう一度御答弁願いたいと思います。
  114. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまの操作規程、これが実情に合わなくなった。そういたしますと、御承知のように、地方長官、知事から意見の具申があるはずでございます。ただいままでのところそういう事態はございません。また過去の洪水等によって今堆積土がだんだんふえた、そういうのはございます。これは全然建設当時と同じとは申しません。しかし、ただいま操作規程を直ちに改正しなければならない、こういう程度には私ども考えておらない。これは、地方の管理している地方長官自身からの意見具申等もない現状です。しかし、それだけでは不十分でございますから、先ほどお答えしたように、泰阜ダム等については十分検討する。その検討の結果を待つ、かように申しておるわけでございます。
  115. 川俣清音

    ○川俣委員 実際これは不十分でございますが、あらためて委員会において資料をもちましてこの点を追及いたしたいと存じます。  次に、大阪、東京等の工業用水またはビル用水によって——工業用水といいましても、流水を誘導したところの工業用水ではなくて、地下水を引き上げる工業用水、またはビル用の地下水をくみ上げる用水でございますが、これらのために地盤沈下が起こりまして、計画いたしました高潮対策が不十分になるという結果が生まれてきておると思うのであります。これに対しまして、水資源を開発することによって工業用水を引き、あるいはビルに水を供給する等のことが考えられておりますることは認めますけれども、現状におきましては、これらの誘導して参ります工業用水あるいはビルの用水等が不足をいたしまして、または一キロリットルの価格が高過ぎまして、みずからやはり自分の所有地内における地下水をくみ上げるということが行なわれておると思うのです。このことは一つの資本主義の悪例でございましょうが、地下水もまた所有権なりという考え方で、それに抗し切れないで地盤沈下が起こり、社会不安を与えておると思うのです。これに対しまして適当な対策がなければなりませんし、また高潮対策につきましても、これは大阪であるとか東京というのは比較的地方自治団体としては恵まれておるところであるからということで、補助の適用をかなり引き下げておるようでございますが、いやしくもこの災害対策におきましては、恵まれておる都道府県だからということではなしに、やはり進んで高潮対策等を講じてやらなければならないのじゃないか。ある程度やはり国が犠牲を払わなければならぬのじゃないか。そういう鞭撻をしなければならぬのじゃないか。こう思うのですが、これは建設大臣はどのようにお考えになりますか。
  116. 中村梅吉

    中村国務大臣 お答え申し上げます。御指摘のように、工業用水につきましては工業用水法がありまして、規制の措置が一応ございますが、ビル用水につきましては、大阪あたりでは大阪府の府令と申しますか、規定で若干の措置はとっておったようでありますけれども、どうもこれだけではどうか、今回の災害にかんがみまして、また私ども現地を見まして、あの工場街にあらざるビル街が、このような地盤沈下を来たしておるということは、これは確かにビルの冷房用水を無制限に吸い上げておる、こういうことに基因することは間違いない原因考えられます。さような観点から、私どもといたしましても、ビル用水は還流装置等をいたしまして、今のような吸い上げ方をしないように、できれば水道量の十分ある地域においては水道を使って、還流をさせる。あるいは水道の十分でない地域については、全然水をとらせないわけには参りますまいが、一定量以上のものは許さない。そしてその水は完全に還流をいたしまして、みだりに放水をしないで、水を節約していく。こういうような方法をとらせる必要がどうしても緊急に迫ってきておると思いますので、目下ビル用水の規制措置につきまして立法準備をいたしておる段階でございます。いろいろ個人の権利あるいは既設のビルの使用制限等をいたしますることについては、法律上むずかしい問題もございますが、何とかこれらを検討いたしまして、近く立法措置を講じたいと思いまして、せっかく立案作業を開始し、また熱心に続けておる段階でございます。
  117. 川俣清音

    ○川俣委員 次に農林大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、国土保全のための造林政策、特に水源地培養の造林政策と、最近木材価格の高騰、需給逼迫に応じまして増伐を指示されたわけでございます。なかなか思い切った政策だと思います。そのためにかなりの木材の価格の高騰がとどまりまして、木材が軟調を示しておりますることは、まだ伐採しないうちにすでに効果を上げたということは、これは河野氏の偉大な力だと言えるだろうと思うのです。しかし、それだけで喜んではおられないのではないかと思うのです。確かにまだ切り出さないうちに軟調になり、価格がとどまっておるということは、効果が上がったことだと思います。そこで、その威力は大いにけっこうでございますが、今後災害が起きるたびに問題になりまするいわゆる水源地の造林政策につきまして、これは事欠かしてはならないと思うのです。そこで大臣は、このいわゆる国土保全のための造林政策と増伐指示とをどう関連させてお進めになるのか一これによりましてまた価格が変動してくるのではないかという——私は価格を押えられることは反対ではないんですよ。しかしやはり造林というものは相当あと押しをしていかないと、もう山に木がなくなるのだということを考えますと、立木地に希有価値が生じまして、また伐採がとまるような結果にもなるのではないかと思いまするので、おそらく考慮しておるとは思いますけれども、勢いのいい河野さんですから、まだ何だか不安もあるという気もいたさないわけではありませんから、この際明らかにしておいてほしいと思うのです。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 川俣さん御承知の通り、増伐いたしますれば、それに倍増した植林をしなければならぬことは当然であります。従来わが国の林政がとかく自然林もしくは過去の蓄積林に依存しておりまして、植林面積が割合少のうございました。とりわけ敗戦後一時非常に少なかったことは、はなはだ遺憾でございますが、それにいたしましても、その後非常に努力をいたしまして、最近におきましては、昭和三十年以来相当の植林成績を上げ、数字も強くなってきております。私は、今年よりも、明年度予算におきましてはさらに相当の造林をいたしたいということで、大蔵省の方に今折衝いたしております。今御指摘のように、木材の価格を押えるために木を切る。木を切るにいたしましても、無計画に切るのではないことは御承知でございますが、新たに林道を入れまして、そうして新しいところから、比較的そういう災害の来ないところを十分検討いたしまして伐採計画を立てる、そうして、計画的に伐採を進めて参ることにいたしておりますから、なおよろしくこの上とも注意をしてやりたいと思っております。
  119. 川俣清音

    ○川俣委員 ここで大蔵大臣総理大臣にお尋ねいたしたいと思うのですが、今度の増伐指示の結果、確かに木材価格に大きな影響を与えまして、軟調になったということで、総理大臣もおそらく心ひそかに期待しておるものがあるだろう、こう思うのです。この予算委員会でも、木材価格だけは何とかしなければならないという御答弁がありましたのが、一応おさまっておりまするから安堵されておると思うのです。ところが、今後伐採が進むだろうと思いまするけれども、深川の木場あたりが山元からの買付を控えておりまするのは何かと申しまするというと、せっかく切り出したものが、伐採されたものが、はたして順調に市場に届くであろうかどうかという不安がある。このことが、もっと引き下げらるべき情勢の中にありながら、軟調は示しておりまするものの、引き下げにまで影響を与えていない大きな原因ではないかと思うのです。これは林野庁が切ることは、必ずしもできないことはない。あれだけの蓄積を持っておるんですから、切り出せないことはないけれども、はたして需要を満たすだけの、あるいは市場に届くまでの、価格の調節をなすだけの市場性を持ったものが切り出されるかどうかということについては、やはり不安があるのではないかと思うわけです。そこで、今ではこれらの伐採計画は、林野庁の予算の弾力性を活用されてやっておられるようですが、これは林野庁だけがしゃっちょこ立ちしても、切ることはできましても、市場への搬出は困難になってきておるのではないか。と申しまするのは、地方の自治団体、特に山間を持っておりまする地方自治団体などは財力が不足でありまして、小さな橋あるいは小さな道路の補修に力を入れかねております。山では確かに伐採されまするけれども、トラック等まで運んでくるところの、林道は直轄林道それから補助林道がございますが、それらの補助林道あるいは村道等がいたんでおりまして、なかなか出が悪いんじゃないかという不安があると思う。また県道にいたしましても国道にいたしましても、大都会地の国道や府県道は割合に整備されておりまするけれども、地方の僻地の県道等は割合に等閑に付されておる。そのために運搬が非常ににコスト高になるような結果になってきておる。このために、せっかく切り出された数量が市場性を持たないというところに、切りましたものの効果が上がらない点があるのではないか。こう考えまするというと、政府全体が責任を持って搬出をするのだという態勢を整えていかなければ、効果が上がらないんじゃないか。河野君一人がしゃっちょこ立ちいたしまして気勢を上げましても、国家的な要請に沿えないんじゃないか、こう思うのです。この点についてお考えを承りたいと思います。別な言葉で言いますると、国全体がこれを搬出するための補正予算等を、自治省にも建設省にも補正予算を組んで、これらの材木の搬出に力を入れるという政府全体の態勢ができない限り、この目的は達成できないんじゃないか、こういうところからお尋ねしておるのでございます。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 全く同感でございます。私が施政演説で、木材につきまして特別の措置を講じなければならないというふうに、特定の品目を施政方針演説であげたことは、あまり例がないと思います。私は、前の農林大臣のときから、ことにまた河野農林大臣には強く要求いたしておるのであります。卸売物価上昇は、ひとえにといってもいいくらい木材の上昇原因しておるのであります。今の問題は、国内の林道、輸送ばかりではございません。外国から材木を入れるべく私は関係大使には常に言っておりますが、林道だけでなしに、今度材木の貯木場の問題が起きてきておるのであります。これは風水害の関係で、非常に取り越し苦労しておるところもありましょうが、やはりその問題がありますので、あらゆる点から木材の価格の安定。私は、弱含みではなしに、もっとうんと下がることを期待いたしております。
  121. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もう道路予算は今年度はきまっておりますし、その予算内で各県とも必要に応じた重点計画を立てられることになっておりますし、それによって対処できると思います。  それから、今総理が言われました外国から来る場合の港湾施設の問題につきましては、いろいろの支障が起こっておりますので、これに対処する方法としては、すでに補正予算じゃなくて、予備費をもって相当の支出をいたしておりますし、必要な予算措置は、現在もう行なっておるところでございます。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 これも不十分でございますが、先に移ります。ただ、大蔵大臣に申し上げたいのは、林道に弾力条項でやれということでなしに、やはり正々堂々と補正予算を組んでも、しっかりやれという鞭撻をしなければならないのではないか。弾力条項でやったらどうだというようなことは責任を小さくすることであって、必ずしも政府全体に協力させることにはならないのじゃないか。私は、どうせやるなら、弾力条項でやることも予算を使うことには同じでありますから、補正予算を組んで堂々と責任を持ってやれ、こうすることが効果を上げるゆえんじゃないか、こういうふうに考えるのでございますが、これはいずれまたの機会に譲ります。  そこで、農林大臣にもう一つお尋ねしなければならないのは、こういう災害対策の上から、保安林でやりまする水資源の培養につきまして、従来は一般会計で負担をし、治山勘定に入れまして負担をいたして効果を上げてきつつあったわけでございますが、先ごろの国会で、無理にこれらの公有林あるいは私有林につきましても、こういう経済効果の上がらない、経済制約を受けておりまする保安林地帯の施業につきまして、公団にやらせる。公団というものは、独立採算制のものであって、企業経営をやらなければならぬ。経済効果の上がらないものをやらせるということは、これはほんとうに水資源培養の上から言いまして、国が責任を持たなければならぬのじゃないか。建設省の予算はみんな国が責任を持ってやる。農林省は、森林公団にまかせるのだといって逃げることは、私は無責任じゃないかと心ひそかに思っておるのでございます。この点について農林大臣はいかにお考えになりますか。  それから、この際、総理大臣にお尋ねしたいのですが、この前の森林公団ができますときに、総理大臣は大蔵大臣だったと思いますが、できるだけそういう公団がふえることは控えたい、しかもその公団の目的を達成したならは廃する方向にいきたい、こういうことであった。ところが、一度森林公団ができまして、その目的を達成しますというと、何となく廃止することがいやで、何か仕事を見つけてやらなければならないというようなことになって、邪道に踏み入ったのじゃないかと私はそう想像するのでございます。そういう点もあわせて一ぺん農林大臣に見解を明らかにしてほしい、こう思うわけです。
  123. 河野一郎

    河野国務大臣 公団に対するお考えは、一般的に川俣さんの御指摘の点は私も決して異存はございません。しかしただいまお尋ねの森林開発公団につきましては、従来林野庁が自身でやって参りました造林、植林、これらの一部を開発公団に事業をやらせる、それが今お話し通りに収益を目的としないものまでやるわけでございますから、そこで公団の使命から逸脱するのではないか。ところが当時の政府考えといたしましては、植林、造林をやることについての能率を上げる上において従来経験のある森林開発公団に委嘱することは、非常に有意義であるというこの長所を生かしまして、これに委嘱した。ただし仕事をして、それが独立採算制というようなことをおっしゃいますけれども、これは決して独立採算制ではないのでありまして、事業を委嘱して一定の金を支給いたしておりますから、さらにこういう災害にかんがみましてどんどん仕事をやる、金がなくなれば、政府の方で補給するという建前でいっておりますから、一向その点は御心配いただかなくてもりっぱにやっていける、こう考えております。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 農林大臣が答えた通りであります。
  125. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは災害につきましてはこの程度にいたしますが、さらに台風の前ぶれを前にいたしまして、今後の治山治水対策並びに高潮対策につきましては、ここで明言されましたように、すみやかなる計画と実施を期待いたすものでございます。  次に食管制度に関しまして一つ総理大臣並びに農林大臣にお尋ねをしたいと思います。これがいよいよ本論でございます。どうも農林大臣である河野さんはいわゆる実力者だけに風当たりが強いのか、あるいは誤解や曲解を受ける方でありまして、まことに私ども忍びないところがあると思うのでございます。たとえばこういう風評もあるのです。私が見るのではないのです、世間のことでございますが、かつて河野さんは実力を発揮して農林予算を減らしたことがあるじゃないか、ほかの大臣が大いに力を入れているときに、実力者だけにやはり実力を発揮して農林予算をあれだけ思い切って減らしたのではないか、こうも批評されておる。また強引に農業団体の再編成を強行したのではないか。ほかの大臣ではとてもできないことをあえて強行したのではないか、また統制の撤廃をやらないと言われておるけれども、あの実力者だけに何をやるかわからないという不安と動揺を与えておるわけでございまして、河野さんのように感覚の鋭いエネルギーの横溢した方が進んで改革をやられようとするのでありますから、私個人としては、友人としては、しばらく時をかしてながめていたいと思わないわけでもございません。しかし角をためて牛を殺すの結果になるおそれもあるのではないか、あまり実力を発揮いたしまして、角をためた結果、本体の牛を殺すに至っては、国民経済の上から日本の農業の将来の上から見て、これは何とか避けさせなければならないであろうという立場で、そういう考え方で以下質問いたしますから、そのつもりで御答弁願いたい、こう思うわけであります。  そこであらためてあなたに真相を伺いたいので、河野農林大臣の食管制度に対する構想を文書でも見ておりますが、この際要点だけを一つ委員会において明らかにしてほしい。このことは誤解を避けるゆえんであります。いろいろな文書を出しておられますが、どれが一体ほんとうかという不安もありますから、この際この委員会においてあなたの構想を端的に明らかにしてほしい、こう思うわけであります。
  126. 河野一郎

    河野国務大臣 時間に制約がある委員会でございますから、あまり長話は差し控えまして、これまでも別の機会にいろいろ申し上げておりますから、ごく要点だけ申し上げて、あとは質問に答えたいと思います。  本年度の米価決定にあたりまして、米価審議会等の議におきまして、いろいろな従来見ない各種各様の意見が述べられ、しかも委員の有力な方が辞任をされるというような場合に立ち至った、これらを考えてみますると、食管制度そのものに対していろいろな角度から検討をされ、いろいろな議論が出てきた結果である。別の言葉で申しますれば、現行食管制度をある程度変えなければいかぬのではないかという各様の世論、思惑が各方面に出てきておるという、この事実は否定できないと思うのであります。  そこで、私も大臣を拝命いたしましてから、どういうふうにしたらいいだろうかということもいろいろ考えてみました。しかし何さま国民全体に影響のあるものでございますから、必要の最小限度、しかも全体の諸君が御了解願えることをやることがよろしいということで、あらためて申し上げますれば、第一は、生産者価格は絶対に現行法通りに支持すべきものだ、これは私が申し上げるまでもなく、農村経済の基盤になることでございますから、これはいかなる場合においても変えてはいけない。これは食管法の精神として、一切手をつけてはならぬ。しかもこの米価を維持する上において、政府は無制限買い上げをする、収納する、この点も食管法の基本的な精神として方向を変えることは絶対に許されない。  第二番には、この法が消費大衆の生活の安定を意図いたしておりますから、その意味において、消費者価格は絶対にこれを法の規定によって変えてはいかぬ。同様に消費大衆の要求する配給は、絶対にこれを維持しなければならぬ。この四点が、現在食管法に国民諸君が生産者といい消費者といい期待するところのものであって、この点についてはいやしくも変更を加えることは許されない。この原則をはずして改善する点はないということで考えるべきだということが、食管法改正の基本的の考え方であります。  そういう観点に立ちました際に、御承知の通りやみ取引されておりまする数量がどのくらいあるか、しかも政府が配給制度を堅持しておりまする際に、これを辞退、もしくは他の方面、方法で入手しておられる量がどのくらいあるだろうかということを考えてみまするのに、大体生産されまする米の数量が八千万石から八千二、三百万石、これはもうだれも議論がない。そこで政府がこれを取り扱いまする数量がどのくらいか、おおむね三千七、八百万石から最高四千万石ということになりますと、その間に出てくる米はどういう米が出てくるか、その差額は自家消費と、あとはやみに回る米であるということになりますと、自家消費につきましては、これも先輩、同僚諸君の研究の結果、おおむね四割弱という数字が大体妥当だろうということは、どなたもお認めになる点であります。そういたしますと、自家消費米が三千万石ないし三千二百万石、その差額千万石前後のものは、いずれにしても政府が、いわゆる食糧管理統制法の対象としておる米と自家消費との差額というものは、これはやみ取引もしくは何と申しますか、そういうルートで流れておる、移動しておる米ということが出てくるわけでございます。そこで、この一千万石以上のものが現に公正ならざる、法の対象になるような考え方で取引されておるということは非常に遺憾なことでありますし、またくどいようでございますけれども、本法制定の当時から、食糧の不足いたしております当時から、食管法が初期に対象として考えました足りないものを公平に配るという時代が過ぎて、今日のように、一応食糧が全体の国民諸君に不足感、不安感というものがなくなって参っております今日の段階におきましては、この国民諸君が、不足しておるとか不安があるとかいうことのない段階におきましては、今申し上げました一千万石前後の米を、依然として売らなければならない、買わなければならない、しからざれば処罰するという対象にしておく必要はないじゃなかろうかという考えのもとに、私は食管法にいうところの、農家は生産したものを全部政府に売らなければならぬ、消費者は全部政府から買わなければならないということが必要でない時代に相なっておるのじゃなかろうかということを考えまして、今申し上げました一千万石前後、一千数百万石のいわゆるやみ米を、政府が強力に管理統制の対象として処罰するという規定でもって臨んでおりますものから、はずしてもいいじゃないか、そうして、農民諸君に販売の自由選択権を与え、購入される諸君にもまた購入上の自由選択権を与えてもいいじゃないか。そうすることによって、生産農民が米価の下落が心配なく、また、常に政府が無条件で無制限に買い入れをするということによって、米価の維持ができるということであるならば、農家経済の点からは何らの不安がないのみならず、進んでこれが政府が決定した価格よりも、現在やみ値、将来上値の自由価格でもし生産者が消費者の要求に応じて売ることができるならば、それだけ農家所得がふえるじゃないか、というような意味合いから、私はこういう点に改善を加えて、そうして実は、現に農村に生産したものは自分に販売、処分の選択権がないと規定せられておるもの、消費者もまた購入の選択権がないというようなこの法律の規定を、むしろ逆に、政府が農民に対して無制限に一定の価格で購入いたしますという、政府が義務の立場に立ち、また消費者に対しても一定の価格で配給いたしますという、従来の国民が義務を負い、政府が権利の立場にあったものを、国民政府との権利義務の観念を入れかえて、そして、むしろ政府生産者にも消費者にも義務を負うという立場に変えることによって、支障がなく所期の目的が達せられるならば、変えた方がいいじゃないかという構想のもとに、せっかく具体案を練っておるというのでございます。ただし、私はこのことたるや、消費者におきましても生産者におきましても、すべての諸君が理解と協力ということなしには政策の遂行は困難でございます。そろばんが机の上ではいかに合いましても、それは机の上のそろばんであって、実際これを運用いたします場合には、大衆の協力がなくてはできません。従って、私は、国民諸君に十分なる御批判と御検討を賜わりまして、幸いにして大方の諸君の御協力、御理解を得られるならば、実行いたしたいというのが現在の私の心境であり、段階でございます。  なお、その他につきましては午前中に申し上げました。
  127. 川俣清音

    ○川俣委員 だいぶ、新聞宣伝されたり、地方へ行かれたときよりも低姿勢でありますために、実はつかみどころがなくなったような傾きなしともしません。しかしながら、従来の持っておられます構想というものがやはりところどころにニュアンスとして出て参りまするから、追ってそれについて質問を進めていきたいと思うのです。  一体、現在の米の需給状態につきまして河野さんはかなり楽観的に述べられておりまするが、このことにつきまして私もいろいろと検討してみました。自由の時代における米の需給函数あるいは政策が加わった場合の需給の函数等を、学者の想定に基づきまして、その趨勢をいろいろと求めたりいたしまして、どういう需給の変化がくるのかということを検討してみたのでございます。今その検討の数字をあげる時間がございません。しかしながら、言えることは、自由の時代における需給と、政策が加わった場合の需給とは異なることはもう明らかに出てきております。そこで、現在の需給状態がやや安定をしておるということは、大きな政策、しかも食管法という強力な背景のもとにおいて需給が安定をしておるということは、これは確かにいえるであろうと思う。そこでこれを緩和した場合に、やはり従来と同じような今の計算に基づく需給の安定を得られるかというと、必ずしもそうではない、こう言わざるを得ないのじゃないかと思う。ことに、将来農村人口が減って参りまして、都市に出て参りますと、農村の食う消費量も、都会で食う消費量も変わりないといたしまして、あるいは農村自体よりも減ると計算いたしましても、結果はどうなるであろうかというと、需給操作に現われる数量は大きくなる。生産地における需給はあまり意図するに足りませんけれども、全体の消費者として需給を受けなければならないということになると、需給の操作量が大きくなることは明らかでございます。一人当たりの消費量は農村よりも減ることはありましても、総体としての取り扱い数量は大きくなる。従って、需給のアンバランスが非常に大きく影響をするということだけは明らかであると思うのでございます。  それから、また河野さんはなかなかうまいことを言われるのです。これでみんなほれぼれとして賛成した人もあると思う。何も今経済罰則を負わせて、やみをやらせておくようなことはやめたらどうだ。これは聞いて非常に聞きやすいのです。だれでもそうは思うでしょう。しかしながら、単に米ばかりでなく、もっと農産物の前提となりまする加工についても、実は重大な制約を受けておる。たとえば米の場合でいいますと、自分で作った米を、自分のうちでどぶろくを作ると、酒税法違反だということで、これはかなりきつい罰則を適用されています。また自分が作った果樹、これを果実酒にいたしまして飲もうといたしましても、これもまた酒税法違反だということで罰則の適用があるわけであります。このくらいのものは何だ、現在やっているじゃないか、ブドウからブドウ酒を作ったっていいじゃないか、いやそうではないということで、なかなか強い罰則です。しかも、これは所によりますと酒屋と組んでと申し上げては語弊がありますかもしれませんが、酒屋の乗用車なりあるいは貨車を借りて密造取り締まりに出動いたしております。これは酒税法違反だということで取り締まるのはいいけれども、酒屋に打撃が与えられるじゃないかというような心持から取り締まられておるじゃないかという誤解さえ生むような取り締まりをしておるわけであります。自分が作ったものを自分で加工することに制限を受ける。販売するんじゃない、自家消費です。しかも税金を納めたもので作ったいわゆる梅酒、どうですか、これはアルコールはアルコール、あるいはみりんはみりん、あるいはしょうちゅうはしょうちゅうなりに税金を払っておる。砂糖は砂糖の消費税を払っておって、税金を払ったもので作ったものにもまだ酒税をかけるという取り締まりをしておる。こういうものが先に整理されるならば、もっと納得がいきまするけれども、手前が作ったものを自由に売らしてやるんだからいいじゃないか、こう言われまするけれども、今の日本の農村の状態では、河野さんの与えられる販売の自由というものは、病人に、お前食う自由を与えてやったんだから喜べというのと同じでありますし、またラッシュ・アワーのときに、自動車の交錯する中に、お前歩行の自由を与えたんだから喜べと言われましても、それは傷害とか死を求めるためにあえて歩行するだけの自由でございまして、決してこれをもって自由だとは思わないであろうということを私はあえて警告をいたしたいのでございます。  さらにもっと推し進めて申し上げたいと思いますが、一体農林大臣政府米と自由米との生産地における買い入れ比率ですね。むずかしくなりましたが、政府米と自由米とをどの程度のバランスで生産者から買うつもりでおられるのか、または配給する場合に、これは自由米だから比率がわからない、こう言われますけれども、これは需給に非常に関係してくることでありまするし、やはり消費者に不安を与えることになりますが、大体政府責任を持つところの数量はどのくらい、自由の数量はどのくらい、先ほどあなたは一千万石程度だ、こう言われております。これは計算上幾ら——論争するつもりはありませんよ。自家消費が、河野さんの言うように、三千二、三百万石であるかどうかということを論争しますと時間を食いますから……。現に政府買い入れが四千二百万石程度になりましょうが、そのことの数字でやみ米がどの程度だ、こういう論争をするんじゃないですよ。しかし一般に考えられますることは、一体どの程度の比率で買うのか。この比率が——今問題にするのは比率の問題じゃないんですよ。問題は一体こういう比率に合うように米価決定をするのかどうかということなんです。米価の決定の仕方によっては、政府買い上げ米の方が比率が高くなります。安く買えば自由米の方に比重がいきまして、政府米の数量が減るということになるので、そこで従来の通り米価は変えないんだ、こう言われましても、この考え方によりまして、比重が変わってくるわけです。現に今日自由米というもの、やみ米というものは非常に少なくなってきていることは農林省の統計で明らかです。漸次、ことしあたりは特に経済成長の結果、米の消費がふえまして、やみ米が総体的に減ってきておるわけですから、そういう中においてどのような比重で考えておりますか。こういう点が解決しないと、みんなの意見を聞くんだといいましても、この関係がわかりませんと賛否が明らかにならないわけですから、賛否を明らかにする意味におきましても、この点明確にしてほしいとこう思うのです。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 私は私の胸算用できめるわけには参らぬ。と申しますのは、自由米、やみ米——何と名前をつけていいかわかりませんが、やみ米と言います。やみ米に対する購買意欲がどの程度にあるかということが数量を決定するものであって、ただ見込みできまるものじゃない。これは申し上げるまでもなく、今の政府が配給いたしておりまする配給を受ける人と、そうでなしに自由にやみの方を——今ほとんど自由になっておりますから、その方に対する購買意欲がどの程度にあるかということで、購買意欲のあるだけ米屋さんは農村へ行って米を買うでしょう。ただし、その場合に、政府の価格決定したものが割高でございまして——割高という言葉は適当でないかもしれません、これが購買意欲に対して高いということであれば、それは減るでしょう、ということになりますから、そこで政府が米価を決定いたしますのは、ただいま川俣さんは、何かそんなものが参考に将来考えられては困るというような御懸念でございますが、そういうことは、先般来総理からも御答弁があります通りに、絶対にわれわれも考えておりません。食管法の、いうところの第三条の規定によりましてきめるのでございますから、そういうものは何らその生産者米価決定の要因にはなりません。そこで、その生産者米価が決定せられました際に、一般のやみ米、自由米を購買する意欲がそれ以上に高回っても、むろん高いわけでございますから、それより高回っても、なおかつそこに購買意欲がどの程度あるかということが数量として出てくるわけでありますから、それが意欲がなければ、米屋が農村に買いに行かないということでございますので、その数量はおのずから消費者の購買意欲によって決定される。現在においては、やみ米はこのくらい動いておるということを申し上げたのでございまして、私は、これから先のことは今申し上げますようなことできまっていくだろう、こう思います。
  129. 川俣清音

    ○川俣委員 これからの動向によってきまると言って、これは逃げざるを得ないと思うのです。まあ確かにその通りで、お聞きいたします。  そこで、農林大臣にちょっとあらためてお尋ねしたいのですが、確かに法律に基づく米価の決定は、生産者及びその他の経済事情を参酌してきめる。それか具体的には、最近は生産費及び所得補償方式によって算定をするという具体案ができておるわけでございます。そこでいわゆる生産費及び所得補償方式によって算定されるものが、必ずしも一定のものが出ないのです。これは出べきものであることは間違いないのですけれども、三十六年度の米価をきめるにあたりましても、政府の原案は三つか四つあったはずだ。これは野党にはわからぬだろうというが、与党にはお示しになったはずだ。三案ないし四案をお示しになって、どれをとるべきかということをお示しになった。これはいずれも生産費及び所得補償方式によって算出されたものでありましょう。従って最高と最低では——農業団体及び農民団体の統一米価は一万一千九百十四円、これも生産費及び所得補償方式による計算。農林省の生産費及び所得補償方式による計算でも、上限と下限では六百円ないし七百円の差があったはずであります。計算は同じであります。そうすると、生産費所得補償方式で計算するんだから従来と変わりがないのだと言うけれども、三十六年度の米価決定ですら六百円の開きがありましたから、今後もやはり大きな開きのある米価が予想せられるわけであります。そこで、これが安全だろうとはいえない。六百円の開きがありますると、大きい開きに見ます。都会ではそうでありませんでしょうけれども生産者にとりましては、石六百円ということになりますと、わずか二百円の早場米ですら目をさらにして生産をするという状態でございまするから、六百円の開きというものは非常な大きな開きになるわけです。だからこれで安心せよといっても農民は安心できないのは、すでに政府の中におきましても、ことしの米価を一万四百円台にするのか、一万一千円台にするのかということは、あれだけ自民党でももめたのでありますから、黙ってまかしておいても適当なところにきまるのだとは、何人も肯定しないだろうと思うのです。そこで生産費・所得補償方式であるから不安を感ずるな、こう言われても、不安を感ずるゆえんがおわかりになったと思うのです。そこでそれでは今後は米価をどのようにしてきめるのかということが問題になると思います。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 川俣さんも御承知の通り生産費・所得補償方式と申しましても、従来生産費はどの程度生産費をとるかということに議論もございました。とり方がありました。従っていろいろのものが出ることはあたりまえであります。こういうことはあなたも百も御承知のはずでございます。しかし積み重ねておりますうちに、おのずからそこに私は常識が出てくると思う。たとえば八〇%までとるのがいいか、九〇%とるのがいいかというようなことが議論の対象になって、従って結果が違ってくる。しかしこれらにつきましても、本年度の米価を一万一千五十二円五十銭ときめた、そのときにはどこまでとった、都市における労働者はどの辺までとったという内容をなすものが、それぞれこまかく前例ができて参るわけであります。この前例を逸脱して、ことさらに安いものを作るというようなことは絶対あり得ないということが私は良識だと思います。われわれはこの生産者米価というものは、農家経済の基盤として非常に重大事でございますから、今二つも三つもあったじゃないか、五百円も六百円も違ったじゃないかとおっしゃいますけれども、これはあなたも御承知の通り、今申し上げた通りでございます。従って今後におきましては、今年度米価決定の際に基盤にいたしましたものを前例として、この上に積み上げて価格を決定して参るということに違いはないのでございます。  なお、先ほど都市と農村のものがだんだん変わってくることによって、需給が狂ってくるのじゃないか。それは生産者、消費者の間に需給が狂うかもしれません。しかし国内における米の生産がそれによって減ってくるという数字にはならない。労力過剰の者が、もしくは都市の労働に非常に意欲を持って出て参る者がある。しかし田を荒らして、米を作らないで出てくる者はない。従って、それは国内で生産される米の量とその消費の関係においては、私はそう問題はない、こう考えております。
  131. 川俣清音

    ○川俣委員 河野氏、ちょっと誤解があるのです。私が言ったのは生産事情のことでなくて、消費事情のことです。農村で食うのも都会で食うのも同じだから、消費量には違いがないだろう、農村で食うのはむしろ多いかう、減るだろうということは言えるのですけれども、操作上の数量が大きくなると操作が非常に困難になる、このことだけ指摘したのですから誤解のないようにしていただきたい。  それから自由米を創設した場合は、流通機構をどうするのであろうかという問題があるわけです。そこで、私はさらに敷衍をいたしたいのですが、今の統制はどこに特徴があるかと言えば、赤字の問題にも触れることになりまするけれども、国がいわゆる商人と違ってマージンをサービスをするというところに、私は統制の一大特徴があると思う。商人のように利子を計算して、コストを全部出して、そしてこれはマージンなりとしてとらないところに、いわゆる消費者に対する安定感を与えておるのだと思うのです。不足なときには高くする、いいものには高くとる、悪いものは安く売るというような一つの商売上の取引でなしに、国民全体を対象として税金で食わせるというところに、幾らかの制約があって、不自由さがありましても、そこに大きな安定感を与えておるのだ。従って国がやるところのこれらの経費は、無料マージンといいますか、サービスだと心得るべきものじゃないか、国が国民に対するサービスだと考えまするならば、赤字の問題も私は起こってこないのではないかと思うのです。まあそのことは別にいたしまして、もしも商人の場合になりますと、自由米ということになりますと政府米と自由米とが競争することになる。競争することになりますれば、上質米と申しますか、高級米と申しますか、それらのものが自由取引の対象になる、こういう結果になる。そうすると政府は下級米または下質米を取り扱っていかなければならないという結果になるのではないか。たとえば今日輸送が非常に困難になってきておりますけれども政府の威力をもってすらなかなか輸送が円滑に行なわれないで、地方に滞貨が出てきております。三十四年度の米さえまだ運べないという状態もありますることは、運営上まことに残念でありまするけれども、当時積荷をおくらしたために下積みになって、依然としてまだ三十四年産米が倉庫の中に残っておるがごときは、まことに残念なんです。こういう米を再び持ってきて食わせるから、いわゆるまずいということも生じてくるのですが、これはいたずらに残っておるのではなくして、輸送がうまくいかなかったためにいつまでも下積みになっておるという結果でございます。私はこのことは言いたくはないですけれども、あえて言いますとそういうことです。従って上質米だけが自由米として取引され、いわゆる悪いと称せられる米だけが政府に買い集められるということになりますと、これはなかなか競争ができないのではないか。しかも片方は最も便利な地域に運ぶでしょう。国は便利なところに運ぶのではなくて、国民全体ですから、悪い地域のところにも経費を出しまして、全体の平均ベースで売るということになる。そういう競争をあえてするということは、今後強力ないわゆる統制をなしくずしにせざるを得ない結果になるのではないかということが、大きな不安の要因だと思う。いかに弁解いたしましても、この不安が氷解できませんのは、普通ならば理解されるところが理解できませんのは、そういうところに原因があるのじゃないかと思うのですが、河野さん、この点はいかがですか。
  132. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、川俣さんとはいささか見解を異にするものでございます。と申しますのは、消費者米価の決定は、御承知の通りの要因で決定をいたします。従って中間経費がサービスであるとかなんとかいうことを別にいたしまして、国民生活を安定せしめるという意味で消費者価格を決定されております。でございますから、その間に何がしかの補てんが必要である、これは当然のことであります。  第二の問題といたしまして、自由米の方は、良質にしてしかもサービスがよろしい、適当なところへ持っていくからよくいける、それはそういう長所はあると思います。あると思いますが、今申し上げますように、生産者価格は、生産者価格決定の要因によって順次私は上がっていくものであると考えます。よほどの経済上の変動でもない限り、これが下がるということはほとんど望めないと思います。従って、非常に所得が増大いたしまして、そして消費者価格を上げてもよろしいという段階がいつか参りますれば別でございますけれども、まず一応の良識といたしましては、生産者価格と消費者価格はだんだん開いていくということが、政府の内部で申しますれば、払い下げ価格を現に一万八百円で払い下げいたしております。購入は一万一千五十二円五十銭、この間はだんだん開いて参るということが私は良識と思います。そういたしますれば、むしろ麦のような事態が起こりはせぬかというお尋ねがある場合はあるかもしれませんけれども、これが先ほども御指摘の通り、やみ米はだんだん減っているじゃないかということのように——私はことしのように生産者価格が急激に引き上げられた、その結果としてやみ米が減って参るということになるのではなかろうかと思うのでございまして、やみ米の方がだんだんふえていく傾向にあるだろうということは、私は必ずしもにわかに賛成しかねる点があります。  次に、ただいま良質米だけが自由米に回るから、配給米は悪いものばかりになるおそれがあるということでございましたが、何さま御承知の通りに三千五百万石からの米を買うわけでございます。ことしでございますれば四千二、三百万石の米を買うわけでございます。それだけまずい米と申しますか、古ものと申しますか、そういうようなものがあるわけはないのでございまして、農家の自家消費のほかは、昔と違って大体いいものを売っていただいておりますから、従って農家から比較的良質のものが出るのでございます。現在でも政府はその中の三分の二以上のものを買うのでございますから、それが悪質の米というようなことにはならない、こう私は思うのでございまして、こういたしましたからといって、決して自由米がみな上等で、政府が配給するのはみなまずい米だということになるはずはない。ただ、その取り扱いの過程におきまして、非常に量が多うございますから、今御指摘のような点が間々ありますことは、はなはだ遺憾でございますけれども、本質的に悪いものを政府は買う、配給するということには、現実はそうならないと考えております。
  133. 川俣清音

    ○川俣委員 河野さんは私の質問を誤解しておるのか、曲解しておられるのか、統制経済というものは良質毛中質も下質も平均して売るのだ、従って距離の便利なところも、経費のかからないところもかかるところも、平均して安定をはかるのだというのが、直接統制の長所であるということを指摘したのです。これは自由になりますと、そうではない、こういうことを指摘したのです。特にあなたが適地適産主義をとられる。私はこれは一つの行き方だと思うのです。あらゆる農産物の適地適産主義、あるいは選択的拡大方式をとられるということも、私は批判がありますけれども一つの行き方だと思う。これを是認のもとに一部自由取引が行なわれるとどうなるであろうかということを想定できるわけです。適地適産主義をとりますと、大消費地の近くには果樹園芸、蔬菜というような大消費地に向くようなものが作られるということであろうと思う。従ってそうなりますと、米というようなものはだんだん大消費地から離れていかざるを得ないであろう、生産地と消費地が近ければこの中間経費と申しますか、輸送経費も楽になるのでありますが、だんだん遠ざかることによって中間の経費というものが増す傾向にある。米の主産地もだんだん偏してくる。あなたのおられる神奈川県などは、かつては米の相当な生産地でありましたが、今では全国のうちでもかなり下位に属するというほど、都会の形成によりましてだんだん生産地が遠くなる。大阪も同様生産地が遠くなってくる。そのように大消費地の近くには米の生産がなくなるというのが、あなたの言われるいわゆる適地適産だと思うのです。そういたしますればいたしますほど、やはり平均で買ってきて平均で売るというこの統制の必要が、さらに起こるのではないかと思うのです。また選択的拡大も同様な結果になっていくのではないかと思うのです。そこで、もしも適地適産をほんとうに進め、あるいは選択的拡大を進めるとすれば、今の統制が続いているからこそ安心して言えるのではないか。もしもそうでないとすれば、この適地適産主義を改めるか、あるいは選択的拡大を改めるかしなければ、この目的は達成できないではないか、こう思うのですが、この点どうですか。
  134. 河野一郎

    河野国務大臣 これは川俣さん、お考えをいただきたいと思うのですが、あなたは先ほどサービス、サービスということをおっしゃった。政府はサービスを大いにするわけであります。従って産地が遠くなろうが、どこに行こうが、これは産地が遠くなったから、運賃がかかるから、それによって生産者価格を下げるとか、消費者価格を上げるとかいうような要因には決してなっておりません。どこまでも生産者価格は生産者価格の要因によって決定し、消費者価格は同様に決定いたします。従って産地の遠近は問うところでない、こう私は思います。  第二にもう一つつけ加えてお答えいたしたいと思いますことは、やみ米の場合、御承知の通り青森から秋田というあなたの選挙区の方に参りますと、やみ米はほとんど配給米を下回るときもあるくらいに安いわけであります。これが大消費地の付近に参りますと、やみ米は相当に高い。やみ米の全国の高低は非常に大きなものがあります。これは申すまでもなく取り締まりの対象になりますから、そこで輸送関係等格段の中間経費がかかるから、そこで産地と消費地のやみ米の価格は非常な開きがある。こういうことは適当でない。よろしく自由米にして、合理的な経費によって購買力を満たすということが適当である、こう思うのでございまして、これは生産者も大いに高く売るのがよろしい、買う方も適当な価格で買うのがよろしいということにした方が、むしろその点がいいのだと思うのでございまして、せっかくのお話でございますが、私はむしろ逆に考えるのでございます。
  135. 川俣清音

    ○川俣委員 これは河野さん、非常に誤まりなんです。配給価格より秋田、青森は安いじゃないかと言われること自体が誤まりなんです。これは先ほどから言っておるように、統制価格というものは平均価格でありますから、あるいは俵代にいたしましても、運賃にいたしましても、あるいは庭先から倉庫まで運ぶにいたしましても、全国平均は三十二円五十銭だ、こうなっておる。そこでほんとうの米価というものは——いわゆる食管会計の方における一万一千五十二円五十銭が価格ではないのです。食管会計上の総買い入れ平均価格ではありますけれども、そのものが米価ではないのです。これは俵で売る人もかますで売る人も紙袋の三十キロ二十六円で売る人も、平均して三百六円の風袋ぐるみを計算するから一万一千五十二円五十銭という価格が出ておるのでありまして、おのおのは違った価格なんです。地域的には違った価格なんです。従って政府に売る場合の価格とやみ価格とを比較するならば比較になりますけれども、地方における消費者価格というものは、東京に運ぶのも村の中で払う価格も運賃は同じ、マージンは同じという消費価格でありますために配給価格よりも安いのだ、こう言われますけれども、それは当然のことなんです。これは政府へ売る米とやみで売る米とはどのくらいの比があるかという比較はできますけれども政府が売っておる価格というものは全国平均なんです。そこでやみ価格は安いじゃないかと言うけれども政府に売るよりも高く売っておる。この点の少し認識が足りないのではないかと思うのです。  そこで大臣の前の方の答弁は私のを肯定した答弁でございますから、それでよろしいと思うのですけれども、今後自由になりますと、これはここに統制の特徴があるのです。いわゆる中間経費というものを一つのサービス精神に置くと、平均でサービスをするわけですからでこぼこのあることは当然です。不利な地域、生産地から遠い地域も近い地域も同じく取り扱われるのが、統制の平均価格の算出の基礎になります。そこが特徴でありますために、それを生かしていかなければならないのではないか、こう私は主張しておる。それがいい点なんです。それではなくして、自由にするとその特徴がなくなって、私が申し上げたような結果になるとかえって困るのではないか、こう指摘したのですが、誤解のないように——あなたと今ここでやりとりをして勝ったところで、これは何にも役に立たないのですから。  それから私はこんなことを、あなたと数字の論争をするということは、あなたも得意でないから、できるだけ控えたいと思ったのですが、一万一千五十二円と今平均の消費価格であります一万八百四円と比較されましたけれども、実際は政府の卸価格は一万一千六百七十一円で、この中に、卸小売のマージンが八百五十六円引かれる、こういうふうになるのです。政府の卸価格は一万一千六百七十一円、この中に八百五十六円の卸小売のマージンが入ることになるのですから、すぐ一万一千五十二円五十銭が買い入れ価格で、すぐ売り渡し価格だと、こう見るのは間違いですが、私はこれはあなたを責めるんじゃありません。数字のことであなたを責めたって何にもなりませんから、これは食糧庁長官なりあるいは主計局長に聞くことでありますから、あなたには議論はしない。ところが、よく米審あたりでも逆ざやではないか、こういう議論がありますために、あえて言わざるを得ないのでありますが、この一万一千五十二円五十銭というのは、全国平均の農民から言えば平均手取額であるし、食管の方からいけばこれが生産者への総支払額の石当たり単価だ、こういうことになるので、これは米価じゃないのです。これをよく誤解をしまして逆ざやだと言いまするけれども、逆ざやを論ずる人は、米価の本質を知らないために逆ざやを論じて、河野さんもうっかりそれに乗せられるような格好がありまするので、私はここで注意をしただけでございます。  そこで、米価の決定につきまして、もう一つ。これは大蔵大臣にも一つ御考慮願わなければならぬと思うのですが、今度の三十六年度米価決定にあたりまして、生産費及び所得補償方式によって計算をいたしますると、一万六百三十四円五十銭という試算が出てきたわけです。これが決定の基礎になっている。一万六百三十四円五十銭。この中には三十二円五十銭という、いわゆる庭先からの運搬賃が入っておりますが、一万六百三十四円五十銭というのは、そのまま米価になっていない。計算は出てきましたけれども、実際の米価はさらにこれから十九円引いてある。なぜ十九円引いたかというと、前渡金二千円のうち千二百円分だけの二カ月半の金利を先取りするということなんです。総理大臣、どうですか。二千円の前渡金のうちの六がけ、千二百円の二カ月半分の利子十九円を計算されて、出てきたものから差し引くと、こう言う。ここで、総理大臣と大蔵大臣にお聞きしなければならぬ。これは金利の二重取りです。なぜかというと、食管会計では、別に資金のための金利というものを中間経費に見ております。一方金利金利として別に見ていながら、農民からも金利を出させる。食管会計でも、また支払いのために同じ金を中間経費として見て、金利を二重取りしておる形になっておると思うのです。金額は小さいけれども米価から差し引く。これは前渡金を受けた人も受けない人も、平均して十九円を差し引く、こういう計算になる。それで最後の米価がきまっておる。計算が合わないじゃないかと言ったら、十九円前渡金の利子を差し引きまして米価を決定いたしました、こう言う。これはどう思いますか。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、今年度の米価決定の上で非常に問題になった一つでございます。私は米価審議会で申しましたが、この米価の決定に関与してやってみますと、諸物価が全部自由物価になっているときに、一つ米だけを統制して値段をきめるということは、神様でないとできないといったくらい、これはむずかしい問題でございます。今度の米価は、御承知の通り、田植えのときからもう農家は労力を費しておる、そうして、これが金になるときは十一月、十二月であるから、その間の労力費にとにかく利息をつけろという問題が出まして、その利子を計算するということになれば、当然二千円、先に払った金額の利子も差し引くという、そこまでのこまかい計算にいった結果のことでございます。そうしますと、一般月給取りは一日から働いているが、月末にもらうときに、三十日までの月給になぜ利子をつけないかという問題まで出たのを、今度の米価決定では、長期にわたった労賃に対しては、一応の利子計算をするという計算がこの中に織り込まれたために、それとの差引勘定になったわけでありまして、二重の金利取りを政府がするという計算をいたしたわけではございません。
  137. 川俣清音

    ○川俣委員 論争はその通りでございますが、問題を二つ大蔵大臣は提起されたと思うのです。一つは、生産費所得補償方式というのは、前年度生産費でございます。あるいは前年度生産費を決定時の時価に修正をいたしまして決定をするということになりました前年度の経費です。これからもらうべきものだといいながら、前年度に支出されたものに対する経費でありますから、バック・ペイのときには大臣のような問題ができることは明らかでございますが、過去の生産費を基礎にして計算をするのだから、必ずしも先取りだというわけにはいかない計算の方式であるわけです。そのことは別にいたしまして、二重取りだということは、今度の食管会計を見ましても、米価から十九円上がってきたということを収入に入れていないではありませんか。その収入に入れていれば私は二重取りとは言いません。これは収入の中に入っておらない。十九円農民から取っていながら、収入になっていないから二重取りだと言う。収入になっていないで、支払いの方、金融の方には全部利子をつけております。国庫補助金は別ですが、その他は全部全額金利をつけております。そうすると、農民に貸した二千円については、農民から金利を取る。支払いの方はまた別に金利を払って中間経費ができておる。これを二重取りだと言うのです。どうですか。収入になっていないのです。十九円が収入になっていない。これは総理大臣、一番財政に詳しいからおわかりでしょう。どうですか。収入になっているなら、二重取りではありません。ちゃんと収入にして、その分だけ金利を支払わないというなら、これは二重取りではありませんよ。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなかこまかい問題で、昔われわれが米価をやっていたときよりだいぶこまかくなったことを痛感いたしました。なかなかむずかしい問題でございます。しかし、まだ食管会計は金利として取っていないのではございませんか、私の察するところ。だからおそらく載せなかったのじゃないでしょうか。こまかい問題で、しかも取り扱いの問題でございますから、事務当局から詳しく……。
  139. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この十九円は、取っておりませんから収入に入れていないのであります。
  140. 川俣清音

    ○川俣委員 食糧庁の説明は、算定されたところから十九円を引いたのは、何かこれは金利部分としてちょうだいをする、こういうことになっておる。金利部分として十九円だけ下げておるのです、算定した米価から。十九円金利部分として差し引いている。差し引くということは取っておることではありませんか、払わないことですから。
  141. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 計算上の問題でして、もしそういう労賃に金利をつけるということだったら、その金利分は何十円、それから二千円に対しては、普通の金利とすれば十九円というものの差引で米価をきめておるので、計算上の十九円でございます。
  142. 川俣清音

    ○川俣委員 これは非常な間違いで、米価決定は一万六百三十四円五十銭と計算上出てきたものです。出てきたところから十九円を下げて、これを買い入れ米価としたのでありますから、決定は決定なんである。間違いない。農林省の計算によりますと、一万六百三十四円五十銭という計算が出てきたわけである。これは誤りない。それから十九円を差し引き、それから早場米奨励金として別個に出しておったものを米価から差し引くということで二百五十円を引き、またさらに放出米のいわゆる歩どまり加算としての四十六円を差し引く。こういうふうにして差し引いて、裸一万三百二十二円五十銭と、こうなったのでありまするから、これは決定された米価から十九円を何ゆえに引くかというと、金利部分だ、こういうわけです。この金利部分を払わなければ米価は十九円高くならざるを得ない。高くならざるを得ないのを前もって差し引いたから、農民からいえば差し引かれた。あなたの方からいえば別にもらったんじゃないというけれども、それでは十九円高くしてごらんなさい。それだけ支払いますから、そうしたら計算が明瞭になる。
  143. 石野信一

    ○石野政府委員 お答えいたします。ただいまのお話でございますが、米価の決定について、農家の自己労働賃に利子をつけよ、こういうお話の計算の場合に、前渡しております金の分の利子は、これは政府が先渡ししているんだから利子をつける必要はないじゃないか、こういうことで差し引きをいたしましたわけで、その二千円の利子を食管で取っているわけじゃございません。
  144. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでこの論争はその程度にいたしまして、こういうふうに農林大臣、せっかく計算したものからまで何だかんだと引くのだからして、これからもまた何だかんだといって米価が安くなるのではないか、こういう不安がある。依然として変わらないのだというけれども、こういうととろに、前渡金まで——前渡金は前渡金としてりっぱに利子を取ったらいいじゃないですか。前渡金を貸すときに、これは金利だといって取れば事は明瞭なんです。それを明瞭にしないで、ごまかして価格をきめるところに、どうも不安があるという疑念が去りがたいのはこういう点だという点を明らかにしたのです。あなたは大丈夫だと言うけれども、あぶないんだ、こういう常に農民から信頼されていないという一つの例を明らかにしたわけでございます。  次に食管の赤字について、これは大蔵大臣及び総理大臣にお尋ねしたいのですが、かつてどんぶり勘定であった時代に、これを明確にしないと、いわゆる欠損と申しますか、赤字というものが不明瞭であるからして、どんぶり勘定を整理すべきだという主張に対しまして、当時大蔵大臣は率直にこれに応じられまして、いわゆる調整勘定なるものを設けまして、どんぶり勘定を相当整理はいたしました。整理をいたしましたけれども、根本的な整理には至っていないわけでございます。今申し上げましたように、食管法のよしあしは、別にいたしまして、現行法律でいきますると、総理大臣、なかなか詳しくお覚えになりましたように、生産者価格というものは独立して生産者価格が出て、消費価格は独立して消費価格が生まれておる。従って、そこの間に差額が出るものを埋め合わせるということで、会計上はそういう処置をしておるのです。しかし、食管法の本旨を変えないという言明でありますれば、私はかく理解をいたしたいのであります。食管法の趣旨は変えない。総理大臣は、農林委員会におきましても、私の内閣の間におきましてはそういう方針を変えないのだ、少なくとも私の内閣におきましては変えないのだ。かつて統制撤廃論者であった私が一言も言わないのは、変えないという証拠だと理解してほしいということだったわけです。そこで食管法の骨子を変えないということになりますれば、骨子は法律にもありまするけれども経済的に見まするというと、先ほど申し上げましたように、政府生産者から買って消費者にサービスをして配給してやるのだというのが食管の経済的基本的な理念だ。法律上の理念じゃなくて、基本的な理念だと私は思う。それは法律の条文の上に現われておる。従って、これは国民経済生活あるいは国民生活を安定さすための有力なる武器として食管法があるのである。そのために食生活の不安がなかったということが、今日の経済成長の大きな基本になっておると思う。食生活が非常に不安であり動揺いたしておりますると、そちらに力が入りまして、今日のような行き過ぎ成長までもいかなかった、行き過ぎ成長が食生活の安定にあったということでそしりを受けると困るわけですけれども、少なくともそこまで進んだということは、やはり一つの有力な安定勢力であったと思います。そういたしますれば、サービスだといたしますれば、この費用は国が出すのだという考え方になって参りますと、食管の赤字というものは生まれてこないのじゃないか。しかも諸経費というものは平均経費でありまして、そのおのおのの消費者が必ずしも負担しなければならない経費ではないのであります。消費者全体としてはかぶらなければならない経費であるかもしれないけれども、おのおのとしては、かぶるべきものと、かぶらなくてもいいものとが存することは明らかである。たとえば災害非常に対しまして売り払いをするような、あるいは安売りする場合には一般会計にいきますが、非常時として処理するような米まで一般の消費者が負担をしなければならない結果になっておりますが、そのことは別にいたしまして、いわゆる赤字々々ということを論じて、できるだけ生産者米価を引き下げて、それで消費米価をできるだけ上げるチャンスをねらうというのが、赤字論を強調するゆえんじゃないかと思うのですが、大蔵大臣はどう思いますか。大いにそういう論争があることを期待しておるのです。期待しておるということは、できるだけ消費米価を上げる機会をねらう、生産者米価を引き下げる機会をねらっておるからして、大いに弁解をしないで黙認をしておるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  145. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の赤字は、御承知の通り、買い入れ価格と中間経費を加えたものと売り渡し価格の差額が赤字になっておるということでございます。この赤字の意味がどういう社会政策的な意味を持つかという問題でございますが、最初の食管の果たした機能とは今機能が変わってきておることは御承知の通りであります。この米価によって農家所得が補償されるということと、一定量を一定価格で売り渡すということによって、一般消費者家庭の安定が確保されていく、こういう意味においては、私はある程度この食管制度がそういう社会政策的な意味を果たしておるとは考えておりますが、しかし、もう少し考えを検討していきますと、貧乏人も金持ちも米の値段を一様にされているということによる社会政策的な意味というようなものは、まだそう高くないものだと思われますし、むしろ低所得者にとっては、米賃に困るというような人には、生活保護費をふやしたり、ほかの社会保障的な経費を多くして、それによって生活の保障を受ける方が、この食管制度から受ける恩恵よりももっと大きいということも言えるでありましょうし、農家から見ましても、たとえば今政府考えておるというわけではございませんが、直接統制は堅持するといっておりますが、一定の米の値段を保証するという支持価格制を置いて、それよか米価が下がったというときには政府がみな補償してやる、上がったときには自由に高く売りなさいというような制度ができたとすれば、その方が農家の所得保護になるかどうかということもまだはっきりわかりませんし、また今のような形で米価をきめて、食管制度による農家所得の補償ということになりますと、自家用の米は別に保護されるわけではございませんし、いろいろ保護される対象ということになりますと、結局米の生産を多くしている農家ほどむしろ補償される度が多いということにもなりますし、そういう意味からいって、これが社会政策的に最もいい機能を果たしている制度かどうかということについては、これはこれからもっと真剣に検討すべき制度ではないか、私自身はそう考えております。
  146. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がなくなりましたから急いで申し上げますが、食管会計の赤字の中には大蔵省の責任で赤字になっておる部分もあるわけです。それは金利部分でございます。ことしのような自然増収のある場合には国庫余裕金というものが必ず出てなければならぬはずだと思います。この部分について、かつては食管の金融の五割程度まで一つ見てやろうということも言われたのでございますが、相当奮発されましても三二%程度ですかの国庫余裕金より使っていない。そのために金利負担部分が非常に大きくなっている。その金利負担部分がやはり何といってもまとまった一番大きな赤字の原因になっておるわけです。もう一つは、これは御承知の通り食糧行政、今日のようなこういう国民生活の安定に力を入れなければならぬために多くの行政費が使われておりますけれども、この国民生活の安定のために使用せられておりまする食糧庁の吏員の経費は、行政費の部分が相当大きいのですが、この行政費も消費者または生産者が負担をしておる。こういう建前になって、この二つが三百五十億程度の赤字の中の一番大きい部分を占めておるわけです。また輸送費の増大もございます。これは運賃の値上げを特に認められたという大蔵省の責任、または鉄道が今日まで設備を怠ったというところから、輸送が逆輸送されるといういわゆる運賃の加算、こういうものも加わって参りまして赤字が増大をいたしておる。さらにもう一つは、いわゆるサービス業でありまするところの中小企業者の経費を見なければならないというところから、いわゆる卸小売のマージンを引き下げたんです。一俵二十五円でございますから、石当たり六十二円五十銭でしょうが、それだけ卸小売のマージンを引き上げられた。これは普通ならば消費者にかぶせられるところを、卸価格を引き下げて売り払った。こういう卸値を引き下げ、政府売り渡し価格を引き下げたというところから出てくる赤字でもございます。これは政策上の赤字でございます。こういう政策をとられた結果の赤字で、これは、政策政府がとるのでありますから、当然裏づけをして政策を実行しなければならないはずだと思うのです。私の方で聞くべきところを私の方から話をしてしまったわけですが、そういうところから赤字が出たわけです。従って、これは赤字をわざわざ世間に伝えまして、赤字なるものは消費者及び生産者に負担させるという意味で強調されますることは責任のがれだということを言わざるを得ないと思うのでございます。  私どもは、そういう意味で、ことに大蔵大臣にもう一言だけ言っておきますが、酒米は——これは総理大臣も御存じだろうと思う。岡山の酒米は石当たり三千三百七十五円プラスして買っておる。安いので五百円程度ですか、岡山の雄町という米が一番高いのですが、三千三百七十五円です。こういうふうに米の需要というものも、一万一千五十二円五十銭の中の平均にはこの酒米の三千三百七十五円が入っておりませんけれども、こういう高い価格でも買っておるわけです。そういたしますと、消費事情がこんなに緩和されたといたしますれば、酒の方にもう少し米を回してもいいのじゃないか。河野さんの言うように、もっと自由に一つ買わしたらどうか。酒屋さんは実際はもう少し買いたい。それを制限しておるわけです。まず酒屋の方に河野さん一つ余っておるというならば勇敢に出されたらどうですか。かつて四百万から五百万石くらい出したことがある。今米が窮屈なものですから、九州の醸造家の権利を東北の者が石十五万円で買って参りまして——これはやみですよ。割り当てられた者の権利を買ってきて、東北で手やすいところの米を買って、醸造権を買って作っておる。これは明らかに酒税法上ではやみなんです。総理大臣、そうでしょう、権利を買ってきてやっておるのですから。配給は向こうなんです。わざわざ秋田へ醸造権を買ってきて、醸造権の売買というものは認めていませんから、ほんとうは割当がないはずだけれども、これは税務署がこれだけ権利があると認めておる。ほんとうはないのです。権利を石十五万円出して買ってきております。こういうこともやらしておる。やみをやって悪いというなら、これから一つやっていったらどうですか。こんなあたりまえのことをやらないで、あぶないものに手をつけるよりも、こういう手のつけやすいものをやったらどうですか。一体食いものの恨みというものは、河野さん、おそろしいものです。下手に手をつけたならば大へんな結果になると私はほんとうに真剣に思う。これは冗談ではない。思いつきでやりましたり、勢いでやりまして、それに即応した政策転換をしなければならぬというので、一年に何回となく政策を転換しなければならないという事態は、社会に大きな不安を起こすゆえんだと思いますから、私はほんとうに心から、あなたも低姿勢で協力を求められておるのですから、あまり独走しないで、慎重にこの食糧管理については検討してほしいということを最後に申し上げまして、あなたの回答を得たいと思います。
  147. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま酒米のお話がございましたが、酒米は大幅に一つ増配をいたそう、おおむね現在では二百三十万石くらいまではふやしてもいいのではないかと考えております。  なお、ただいま最後に非常に御忠告をちょうだいいたしましたが、かねて私申しておりまする通りに、各方面から十分御意見を拝聴いたしまして、そして全体の国民諸君の理解と御協力、御納得を得た上で改善いたして参りたい、こう考えておりますので、別に一つの予定コースを持っておるわけではございません。建設的な有力な御意見を十二分に拝聴いたしたいと考えておりますから、どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
  148. 山村新治郎

    山村委員長 それでは明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会