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1961-11-14 第39回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十一月一日(水曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  閉会審査小委員       井村 重雄君    稻葉  修君       上村千一郎君    小島 徹三君       河本 敏夫君    田中伊三次君       林   博君    牧野 寛索君       赤松  勇君    坂本 泰良君       坪野 米男君    畑   和君       田中幾三郎君  閉会審査小委員長      河本 敏夫君 ─────────────———————— 昭和三十六年十一月十四日(火曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員   委員長 河本 敏夫君    理事 稻葉  修君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 赤松  勇君    理事 坪野 米男君       井原 岸高君    池田 清志君       上村千一郎君    唐澤 俊樹君       小金 義照君    千葉 三郎君       馬場 元治君    阿部 五郎君       井伊 誠一君    猪俣 浩三君       畑   和君    中村 高一君       志賀 義雄君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         文部事務官         (体育局長)  杉江  清君         参  考  人         (全国プロフェ         ッショナル野球         機構参事)   赤嶺 正志君         参  考  人         (日本社会人野         球協会常任理         事)      小川正太郎君         参  考  人         (全国高等学校         野球連盟会長         日本学生野球協         会副会長)   佐伯 達夫君         参  考  人         (セントラル野         球連盟会長)  鈴木 龍二君         参  考  人         (太平洋野球連         盟会長)    中澤不二雄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 十一月一日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  片山哲君が議長指名委員に選任された。 同日  委員片山哲辞任につき、その補欠として田中  幾三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十月三十一日  一、裁判所法等の一部を改正する法律等の一部   を改正する法律案畑和君外八名提出、衆法   第三号)  二、裁判所司法行政に関する件  三、法務行政及び検察行政に関する件  四、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  人権擁護に関する件について、調査を進めます。  本件については、お手元に配付いたしました名簿の通り、五名の参考人のおいでを願っております。  まず議事に入ります前に、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、御出席をわずらわし、まことにありがとうございました。さきに御通知申し上げました通り、本委員会において調査中の人権擁護に関する件について、各位の御意見を拝聴し、本委員会審査参考にいたしたいと存じます。つきましては、忌憚のない御意見の御開陳をお願い申し上げます。なお、議事の進め方は、委員質疑に応じて御意見を述べていただくことにいたします。  それではこれより質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。
  3. 志賀義雄

    志賀(義)委員 赤松委員の質問の前に、ちょっと委員長の方から人権擁護局調査を御依頼願いたいことが起こりました。それは、最近大阪市立大学で、一人の女子学生に対して、この学生部落出身のものである、だからこれを退学させろというビラが出され、あるいはまた本人のところにはがきで退学しろというようなことが繰り返し、繰り返し行なわれているのであります。これは、たとえば今ここに持って参りましたが、昨日の大阪版の朝日新聞夕刊に、これほどの紙面で出ているのであります。大問題になっております。このことについて、人権擁護局には何らか連絡がありましたか。ないとすれば、これは至急に調査していただきたい。学校当局並びに社会的に重大な問題になっているので、これの調査一つお願いしたいのであります。  もう一つは、公安調査庁で、最近日本共産党第八回党大会に関する膨大な資料を印刷して出版しております。これは当法務委員会とも関係がありますので、各委員にその資料を配付するように、委員長の方から御請求願いたいことであります。  まず人権擁護局長の方から、その点についてどういうふうになさるかをお伺いしたいと思います。
  4. 鈴木才藏

    鈴木説明員 最初の問題につきましては、まだ私の方に大阪法務局から報告がございませんけれども、地元の新聞でそれほど大きく取り上げられまして、内容が部落関係する差別待遇の問題であるとするならば、おそらく新聞情報によって取り上げて調査にかかっておるものとは存じますが、こちらからも、今、志賀先生のお話もありますので、さっそく調査するように指示をいたしたいと存じます。
  5. 河本敏夫

    河本委員長 公安調査庁の問題につきましては、理事会にはかって、おって決定したいと思います。  赤松勇君。
  6. 赤松勇

    赤松委員 私は、調査質疑に入ります前に、文部当局に対しましてお聞きしておきたいことがあります。  先般、当委員会におきまして、私立大学に相次いで起こっておりますから手問題、これは人権じゅうりん疑いがあるということから、また学生スポーツとしては明らかに行き過ぎであるという見地から、これが善処方文部当局に要求いたしましたが、その後青山学院大学、さらに静岡大学におきまして不祥事件が発生しておるのであります。これに関しまして体育局長のその後の措置について、またどのように指導されておるかということにつきましてお伺いしたいと思います。
  7. 杉江清

    杉江説明員 大学のから手部にたび重なる不祥事件が起きておることは、まことに遺憾なことであります。このことにつきましては、その反省、自戒を求めるために、いろいろな対策を考えておりますが、実は先般大学の、ことにから手の学生連盟の幹部の方に来ていただきまして、まず事情をよくお伺いし、そうして今後どうしたらいいか話し合ったわけでございます。学生は、主として学生責任者が参ったのでありますけれども、非常に恐縮しておりまして、われわれみずからの手で自粛するようにしたい、さように申しており、またその今後の善処方を私の方からも要望して参ったのであります。  なお、この問題について、私どもは単に、そのような学生連盟の役員の方と話し合うだけではいけないと考え、実は学生連盟指導的立場にある方々とも話しておりますし、なお、今後大学のから手部関係者の集まりを企画して、それらの方々とじっくりお話し合いして、この問題の改善方をはかる計画を今持っておるわけであります。
  8. 赤松勇

    赤松委員 私は空手をやったことはありませんが、ものの本を読んでみますと、から手道精神というものは、決してあの送別試合に現われておるような精神ではないと思います。それは護身が目的であって、人を傷つけたり殺傷したりするようなことが目的でないことは明らかな事実です。ある大学の学長が私のところに来られましたが、その学校はやはり問題の起きた大学でありますけれども、以後、送別試合は一切禁止するというような態度をとっておられます。私も、選手一般でなしに、そういう不祥事件を起こす者はごく一部の選手に限られておる、すなわちから手道精神を十分にわきまえていない人たちであると思うのであります。しかし、子を持つ親といたしまして、また一般世間としまして、一たんから手部に入って退部する場合に、一人に対して二十二人も二十三人も、入れかわり立ちかわり送別試合と称してリンチを加えられたのでは、人権が無視されるばかりでなしに、まさに人命に関する問題であると思うのであります。現にこれで死んでおるわけでございます。こういう点につきましては、さらに自覚を促して、できれば自発的に送別試合などは全面的に選手の申し合わせによって禁止をする、そういう自粛的な傾向を助長するように御指導願いたい、こう思います。  それから続いて、本日はプロフェッショナルの方から赤嶺さん、それからセントラルからは鈴木さん、パシフィックからは中澤さん、さらに社会人野球小川さん、それから高野連の方からは佐伯さん、球界を代表される最も有力な方々に御出席をお願いしまして、以下いろいろな問題につきまして意見の交換のできることを私は大へんうれしく存じます。非常に御多忙のところ御出席いただきましてどうもありがとうございました。  この際、社会党として一言触れておきますが、私どもスポーツを愛することは、人後に落ちません。しかもそれはアマプロを問わず、すべてのスポーツを愛しております。ただし、私どもスポーツの愛し方というものは、プロプロに生き、アマアマに生きる、そしてそれは心身の鍛練ばかりでなしに、アマに限らずプロに限らず、これは言うまでもなく大衆のものであります。国民大衆全体がスポーツを愛好するということは、非常に健全な傾向だと私は思うのであります。ことに野球に至りましては、ナイターにいたしましても、あるいはデー・ゲームにいたしましても、あの健康的な空気の中で白球を追いながらゲームをする者もまた見る者もともに楽しむということは爽快きわまりないことでありまして、競輪、競馬などとは比較になりません。まさに健全なスポーツでありまして、従って、私どもはこの大衆のものであるスポーツ、つまり大衆には労働時間の短縮あるいは所得の増加、そういうものから出て参りまするレジャーを健全に楽しませる、その精神的な空白を生じさせない、これを最も健康的なスポーツの中でそのレジャーを正しく生かしていくという意味におきまして、日本社会党スポーツの発展を心からこいねがっておるのであります。  そういう立場に立ちまして、以下高野連社会人野球あるいは大学野球プロ野球等につきまして質疑をしてみたいと思うのでありますが、その前に、大体今日のアマプロを問わず、常識的な考え方を集約した新聞記事がここにございます。これは十一月九日の産経夕刊の「笛」というところにこう載っております。「プロ入りを表明した高校選手野球部に対し、出場停止処分にするのは、人権侵害疑いがあるというので、衆院法務委員会が、プロ野球関係者全国高校野球連盟関係者を呼び事情をきくことになった。例の大分県高田高校門岡選手の問題が発展したもので、アマチュアイズムの確立と職業選択の自由とどっちが重要か、いよいよ天下のハカリにかけられるわけだ。佐伯高野連会長によると、スポーツルール違反者を処分したからといって、いちいち人権侵害で訴えられていたらたまったものでない(本紙昨朝刊)ということだが、なにびとにも職業選択の自由をもつ権利があるのだし、元来野球部にしろ庭球部にしろ音楽部にしろ、学校内のあらゆる部というものは、学校そのものがやっているのでなく、クラブ活動なのであるから、全高連が」——これはおそらく高野連のことだと思います。「全高連がこれに罰則をもってのぞむのは、人権問題はともかく不当のそしりは免れないだろう。アマチュア規定が厳格なのはいいが、高野連は自らアマチュア規定に違反している。たとえば春、夏の大会で、選手を集めて人文字を書かせるのは、 マスコミの宣伝に一役買っているもので、アマ選手宣伝に利用したりっぱな違反行為である。かえりみて、他を責めるより自ら責めるべきだろう。プロ入りを発表した選手があれば、その選手だけをアマチュアの資格なきものとすれば、それでいい。プロ野球の方には、もっと問題が多い。高い契約金はともかく、それで選手の身柄を十年間もしばってしまうのは、引き抜きを防ぐためとはいえ、問題だし、トレードに至っては、一種の人身売買である。ことにことしから両リーグにまたがるトレードは、選手の同意がなくてもできることになり球団の勝手な意思で売り買いできるのだから、まったくの人権無視である。白昼公然と人身売買が行なわれているプロ野球界は、かつての暗黒大陸といってもいい。」こういうように、産経夕刊の笛が大体世間の常識的な考え方を集約したようなものを書いておるわけであります。  以下、私は数点にわたってお尋ねをしたいと思うのでありますが、まず高野連のいわゆる支配者と呼ばれております佐伯会長にお尋ねいたしますが、高等学校野球連盟の歴史と性格とその任務について概要を、一つ簡単でけっこうでございますから、述べていただきたいと思います。
  9. 佐伯達夫

    佐伯参考人 高等学校野球は、戦争前には大体そういう一つ競技団体はなかったのであります。終戦直後、当時は中等学校でしたが、一年ほどたって高等高校に変わったので、現在高等学校になっておりますが、野球大会を再開するのにあたりまして、これは競技団体を作って、そういうものと朝日新聞社あるいは毎日新聞社が共同主催のもとに大会をやっていくということがいいのじゃないか、あわせて高等学校野球を健全に発達せしめるためにいろいろ貢献するのがいいのじゃないかということで、昭和二十一年の三月に当時の全国中等学校野球連盟というものを結成したようなわけであります。  私どもは、高等学校野球というものは、これは一つ教育として取り扱うべきものだ。教室では賢くするということはできるだろうが、りっぱな人間を作るということはなかなか教室ではできない。むしろスポーツによって、野球のようないろいろなスポーツによってりっぱなスポーツマンを作ることが大切ではないかというようなことから、ただ単に一つの楽しみの野球ではなしに、私ども教育上、つまり将来社会に出して役立つところのりっぱな選手を作る、りっぱな人を作るというところに重点を置いていろいろやっておるのが今日の高校野球の行き方なのであります。今日の世の中というものは、どうも自分に賢いというような人が多過ぎる。それでは非常に困るので、そういうときに、私どもとしましては、高等学校野球というものはこれは自分のためにやっているのではない。母校の名誉のためにあるいは郷土の誇りのために、自分はずいぶんえらい目をしても一生懸命やる、そして身を粉にして、暑かろうが寒かろうがあるいはえらかろうが、ともかく母校のために真剣に活躍するというような、練習のうちあるいは試合のうちにいろいろ将来世の中に立って活躍する上において容易に得がたいところのりっぱなものを身におさめ、そういうものを生かして、社会に有用な人間を作るというところに重点を置いて今日進んでおるのが高等学校野球の行き方なのであります。
  10. 赤松勇

    赤松委員 今お聞きしておりますと、何だか時代が戦前に返ってきたような感じがするわけであります。自分自身のためではなしに、母校のためにだとか、郷土のためにだとか、そのために身を挺していかなる困難にも耐えるところの、というような言葉が出ましたけれども、そういうことがたとえばあのから手のリンチ事件などにもなって現われてきておるのであります。本来スポーツというのは、母校のためにやるものでも、あるいは郷土のためにやるものでもないのであります。それは自分自身の体位を強め、さらに自分の教養を深め、スポーツを通して自分自身人間性を高めていくというところにあると思うのです。個人の人格完成というものがスポーツ精神でなければならぬ。あなたのようなことでいえば、これは文部省の統制、かつての文部官僚考えておった考えと同じなんです。そうでしょう。すなわち、今現に高等学校が、あるいは中学が、それぞれ自主的にクラブ活動をやる、たとえば庭球部を作る、あるいは山宿部を作る、音楽部を作る、あるいはバスケットボール部を作る、野球部を作る、それは何も郷土愛のため、母校のために作っておるのじゃないのです。自分が好きだからそこへ入って、スポーツを楽しみながら学業に携わっておるのであって、私はその考え方とは根本的に違う。これは体育局長どうですか、高野連指導者がそういう考えを持っておるとすれば、それは大へんだと思うのです。
  11. 杉江清

    杉江説明員 ただいまの佐伯さんの御発言は、高等学校学生対外試合は、広い意味において、教育的な意味が尊重されなければならぬということを強調された御趣旨と私は理解しております。もちろんおっしゃる通り学生スポーツ目的心身の健全な発達、人格完成スポーツマンシップの育成というところに最も重要なねらいがあるということは申すまでもありません。同町に、ただいま佐伯さんのおっしゃったような、それが単なる娯楽でない、やはりスポーツマンシップを育成する、人格完成を目ざすというふうな基本的な意味を持ちながら、学校を代表しているんだ、郷土を代表しているんだ、そういうふうな自覚を持ち、またその責任を感ずるということは、同時にやはり教育的意味のあることだ、私はそのようにただいまの発言は理解したわけであります。
  12. 赤松勇

    赤松委員 だいぶ文部省はカバーしておられますが、オリンピックの生まれました起源は、私が言うまでもなく、これはギリシャ戦争の際に戦争に勝ちまして、そしてオリンピアまでみんながたいまつをかざして歓喜に燃えながら行進をしたということがオリンピックのそもそもの始まりなんです。しかしそれは非常に原始的な、つまり戦争に勝った喜びというものを集団行進という形に現わしたものであって、今日のいわゆる二十世紀におけるスポーツに対する考え方というものは、まるで変わっておると思うのであります。だから戦前は、あるいは戦争中は、富国強兵と称して、特にみじめだったのは、これは中澤さんも御存じであると思うのですけれどもプロ野球がゲートルを巻いて戦闘帽をかぶって、そして菜っぱ服を着て、ストライクを「よし」、ボールを「だめ」なんといって野球をしておりましたが、これは富国強兵野球なんです。本来の野球はこういうものであってはならぬ、本来のスポーツというものはこういうものであってはならぬ。郷土のためというのは、進んでは国家のためなんといって、支配者に利用されるのであります。この点におきましては、佐伯さんと私とは遺憾ながら根本的に考え方が違っておるということを明らかにしまして、しからば、そのように佐伯さんが理解される高野連の存在について、財団法人日本学生野球協会の寄付行為というものの第八条の中にこう書いてある。「この法人基本財産のうち、現金は、理事会議決によって確実な有価証券を購入するか又は郵便貯金とし若しくは確実な銀行に預金して理事長が保管する。」有価証券とは何ですか。株じゃありませんか。最も有利な株を買うということは投機である。そうすると、あなたのおっしゃるりっぱなアマチュア精神と、こうして上げた利益を、基本財産のうち現金理事会議決によって、有利にして確実な有価証券を買う、株を買う、そしてもうけていくということとは、まるで矛盾しているじゃありませんか。この点は一体どうなんですか。
  13. 佐伯達夫

    佐伯参考人 そういうことになっておりますけれども、事実は株も何も持っておりません。わずかばかり、百九十万円ほどは銀行定期預金に入っております。それ以外には電話を買うために、何か電話の公債を少し持っているくらいなことで、われわれは株を売って、それをもうけてどうという意味ではありませんが しかし、一つのそういう財団法人基本財産を持っておって、その基本財産をできるだけ有利に運営して、それから生ずるところの利益を正しくスポーツのために使用するということは、私は一向差しつかえないと思います。
  14. 赤松勇

    赤松委員 私は今有価証券を買ってあるとかないとかいうことを問題にしているのではない。そもそもあなたのおっしゃるりっぱな高校野球あるいは学生野球規約の中にこういうものが書かれておるということは、あなたのおっしゃることと矛盾している。高校生や大学生野球をやらして、それで入場料をとって上げた利益で株を買ってなぜ悪いんだ、そんな理屈がどこにありますか。それはおかしいですよ。だから、この規約は訂正なさる方がいいんじゃありませんか。私はこういうことを書く必要はないと思う。あなたのようなりっぱな方がおられる間は有価証券はお買いにならぬでしょう。しかし、もし佐伯さんがほかの人とおかわりになって、その人が非常に株の好きな人だったら、あるいは株を買うかもわかりません。従って、学生野球の規則の中に有価証券を購入するというような実に不愉快なことがあることは、やはりやめた方ががいいと僕は思う。この法人基本財産のうち現金は現事会議決によって郵便貯金とし、もしくは確実な銀行に預金して理事長が保管する、これでいいじゃありませんか。これをお直しになる考えはありませんか。
  15. 佐伯達夫

    佐伯参考人 私は毛頭そんなものを変える必要はないと思います。別に金をもうけてそれを私用に使うとかなんとかいうのではなくて、持っておるものはできるだけ有益に運営して、それから生ずる果実を一つスポーツ行事の事業に使うということは、私は何ら差しつかえないと思います。
  16. 赤松勇

    赤松委員 入場料をとる場合、これはアマですよ、プロはもうけるためにとる、あなた、もうけるためにとるのではないでしょう。そして、それで上がった収益について何を買おうと勝手だとおっしゃるが、今のあなたの言い分からいえば、株が上がってもうかることを前提にしておる。今度のように株が下がったらどうするのですか。そのアマチュアスポーツに協力しようといって、多くの人が入場料を払って、そこから上がった収益を、上がるか下がるかわからないような不安定な有価証券に依存してよろしゅうございますか。そんなことはアマ精神とは違うと思う。文部省はこれに対してどうお考えですか。
  17. 杉江清

    杉江説明員 こういった団体財産の保管の仕方として、確実な有価証券を購入するという財産運用の仕方は、私は必ずしも不当だとは考えておりません。「確実な有価証券」という表現をしておるのでありまして、これはほかにも例があることであります。ただ、その運用にあたって、「確実な」という条件が度外視されるということは問題があると思います。
  18. 赤松勇

    赤松委員 あなたは、株をおやりになっているかいないか僕は知らぬが、私はやったことはないから、よくわからぬけれども、株は必ずしも上がるばかりじゃない、下がる場合もある。「確実な」というのは何を意味するのか私はよくわかりませんが、とにかく文部省がそういうこともあり得るのだという。いや、好ましくないという言葉を使えばまだいいのですけれども、別に不当でもなんでもない、こういうようにおっしゃるとすれば、あなたの御答弁というものは一貫して、ずっとあらゆる問題に尾を引きますよ。よろしゅうございますか。
  19. 杉江清

    杉江説明員 私の今の発言の限りでは、私はそれでよろしいと考えております。
  20. 赤松勇

    赤松委員 この問題は、私は留保してあとで議論いたします。時間がありませんので次に移りたいと思います。そこで、今度は文部省にお尋ねしたいが、高等学校体育連盟というのがございますね。この高体連性格任務、さらに高体連高野連の両者の関係、そしてこの高野連に、たとえば私の方の県で言えば、愛知県におきましては高野連にも高体連にも入っている、静岡県はたしか高体連には入ってないですね。高野連だけです、あそこの高等学校で入っておるのは。そうでしょう。その高体連性格任務、そして高野連高体連の両者の関係、双方加盟か一方加盟か、こういう問題につきまして文部当局の見解を聞きたいと思います。
  21. 杉江清

    杉江説明員 高体連高等学校の体育の対外的な活動を主として扱っておるところの自主的団体でございます。その趣旨は、高等学校スポーツはあくまでも広い意味教育的意義を持つものであり、そういうふうな教育的な運営をしなければならない。それにはやはり高等学校教育関係者自体が一つ団体を作って、その企画、運営に当たるということが適当である、かような考え方から高体連ができておるのであります。従って、そこでは高等学校で行なわれます各種のスポーツをまとめて取り扱っておるのでありますが、ただ野球につきましては高野連の組織が前からありまして、しかもしっかりした組織を持ち、そしてその組織の中には高等学校関係者が入っておるのであります。そういうふうな経緯から、これは高体連の組織には入っておらない、別の組織として現在あるのであります。それで、現在のところ、両者の関係について特に問題があるということは私ども聞いておりません。両者はいろいろな点において相協調し、相提携していくべきものだと考えております。
  22. 赤松勇

    赤松委員 どうして二つの組織が要るのですか。高体連は総合スポーツだけれども、それは野球部というものがちゃんとあるでしょう。従って、総合スポーツの中で野球部の存在があり、それと総合的に一環的に運営をしておるとすれば、その方が望ましいじゃありませんか。ただ今まで高野連があったからにわかにやめるわけにはいかないので、その存在を認めているのだ、こういうお話でありますけれども、あなたはこの両者の間にトラブルがないということをおっしゃるけれども、現にトラブルがある。私はちょっと耳にしているけれども、ある学校長は両方に入っているので困るということを言った人もあるし、それから佐伯さんがある県の高野連理事長に、高体連には加入せぬでもいいということをおっしゃったということを聞いておる。これが事実であるかないかは別としまして、そういうことを聞いておるわけです。そういうふうに高等学校野球そのものが現在批判の対象になっておるときに、どうしてそんな二つの組織が要るのですか。佐伯さん、何か御意見があったらどうぞ。
  23. 佐伯達夫

    佐伯参考人 私は決して各府県の高等学校野球連盟に、高体連に入るなということを言ったことはありません。各県の総意できめるべきものです。皆さんが入る方がいいということだったら、入ってもらってけっこうだ。けれども皆さん方の総意が別に高体連に入る必要がないというのであれば、別に入らなくてもいいのだということは言っております。決して高等学校体育連盟に入るなということは、私は毛頭言った覚えはないと思います。これははっきり言っておきます。
  24. 赤松勇

    赤松委員 文部省にお尋ねしますが、さっき佐伯会長のお話でありますと、個人のことはともかく、郷土のために母校のためにということが言われておるわけですけれども、ここで問題になるのは、スポーツをするのは個人ですね。個人の健康というものがやはり重大な問題になると思うのです。幾ら郷土のためでも、母校のためでも、自分の健康を犠牲にすれば、これはスポーツ精神に反しているということになります。そういたしますと、私は今文部省が統制令を持っていないので、そういうものはないと思いますけれども、何か広く体育健康管理について文部省はどういう方針を持っておるか。ことに高等学校中等学校等の生徒に対する体育健康管理の方針について文部省の見解を明らかにしてもらいたいのと同時に、もう一つは、その体育の健康を管理する何か管理憲章というような、それに類したものはないのかどうか。あればそれを御提示願いたい。二点お答えを願いたい。
  25. 杉江清

    杉江説明員 体育の健康管理の憲章というべきものは、現在のところ持ち合わせておりません。ただ、私ども高等学校スポーツのあり方につきましては、これはあくまでも生徒の心身の健全な発達を所期しているものである、そういう立場を離れて勝負のためのみを考えたようなスポーツのあり方、ことに練習試合等のやり方については、常に注意を喚起しておるのであります。この点はもう高等学校体育の基本的な問題でありまして、これはあらゆる機会、あらゆる場合に私どもはその点を強調しておるのであります。もちろん実際の運営にあたりましては遺憾な点もあるので、今後とも注意して参りたいと考えております。
  26. 佐伯達夫

    佐伯参考人 先ほど申しおくれましたが、高等学校野球連盟というものは、全国の高等学校野球部を持つものは全部入れという統制団体でもなければ、またどうのこうのと、ぜひなにせいというもんじゃありません。私どもはお互いに寄って、こういう規約のもとにこういうつまり一つ野球連盟を作りますから、皆さん方御賛成の方はふるって一つ御参加下さいというようなつもりでやっておるわけなんです。  それからもう一つは、今の高体連野球連盟のお話がありましたが、何も野球というものは——終戦後一番先に野球団体ができて、そのあとで高体連ができてきたわけなんでありますが、高体連野球連盟が何かけんかをしておるかのような、あるいは意思が疎通してないとか、いろいろな御意見があるようでありますが、私ども高体連はやはり一つの友好団体として取り扱っておるので、高等学校体育連盟の方で、われわれのやっておる野球に対してこういう点はもう少し考えるべきじゃないか、こういう点は一つこうしてもらいたいというような話があれば、御遠慮なしに言ってきてもらいたい、いいことはわれわれとしてできるだけ取り上げていきましょうというような友好的な姿であります。大体高体連があるから、それに統一的に野球部をみな入れなければいかぬということは、戦争前の統制と同じような格好になるので、野球野球でちゃんとそれでりっぱにやっていけているということであれば、何ら差しつかえない。今日体育協会に野球は入っておりません。そういう一つの国の体育協会の中にすべての競技が入る行き方もいいかもしれぬが、また別に入らなくても野球野球でりっぱにやっていく、体協と協力して相ともにスポーツを正しく発展さすために協力していけるということであれば、そういう姿であっても私は何ら差しつかえがないと思うのです。無理にそれに入るべき必要はないので、入るということになれば、われわれとしたって野球連盟の総意が高体連へ入る方がいいということであれば、それは喜んで入るし、みなが入る必要がないじゃないかということであれば、別に入らなくたって私は何ら差しつかえがないと思うのです。
  27. 赤松勇

    赤松委員 あなたがおっしゃっていることは、非常に矛盾をしているのですよ。さっきは郷土愛とか母校愛とかいうようなことをおっしゃっている。今は入ろうが入るまいが自由だと言われる。私もそう思う。別に野球統制があるわけじゃないと思う。クラブ活動しようとしまいとそれは自由だ。私の子供が野球部に入ろうと入るまいと自由です。今まで入っておりましたが、この間やめました。それは自由です。そんなことは自由なんで、何も政府の統制下に入れとか、一本の組織の統制下に入れということを私は言っているのじゃない。つまり高体連の中には野球部というものがあるわけです。あるでしょう、ございますよ。高体連の中に野球部はありませんか。野球部は全部あります。
  28. 佐伯達夫

    佐伯参考人 ありません。
  29. 赤松勇

    赤松委員 あるかないか、ありますよ。それはあなた、認識不足だ。よく相談しなさい、ありますよ。まあ、あるとかないとかは別として、あるのだ。私はだから何も高野速に入れとか高体連に入れとかいうことを言っておるのじゃない。入るか入らないか、そんなことは自由です。自由だけれども、あなたはそんな余地はないとおっしゃる。高野連はいやだ、どうしてと言ったら、佐伯さんが居るからいやだという人もある。人間ですからいやな場合もあれば、あなたのような人がある程度にらみをきかしておかぬと困る場合もあるでしょう。人間ですから、いろいろなことがありますけれども、とにかくそういう二つの組織がある。本来自主的なクラブ活動であるところの高等学校で、教育者つまり学校長がいろいろな部面で苦労していることはこれは事実なんです。  そこで、どうでしょうか。春の選抜チームの選考の基準は一体何であるか。あなたの方の学生野球協会がお出しになっているこの中で、副会長の外岡茂十郎という人が書いております。非常にりっぱなことを書いておる。ちょっと御紹介申し上げますと、「選手選手たるの故を以て如何なる名義を以てするを問わず、他より学費、生活費等を受くるを得ざることとして、選手買収主義を排撃したのも或いは選手はコーチ、審判等を行うに当り、旅費宿泊費其他当然必要なる経費以外の金品を受けるを得ざることとして、無報酬主義を明示したのも選手として何等の恩典も報酬も享けないところに、学生野球の限りない尊さがあり、燦然たる輝きがあるからである。」こうお書きになっておる。私もその通りだと思います。ところがその通りであるのだけれども、あなたの方の書いておられることと、現実に高等学校で行なわれていることとは違うのです。これは九月十二日のNHKの第一放送、十時十分の「時の動き」という放送の中に、現に高等学校のスカウトが、中等学校の素質がある将来有力選手になるであろうと思われるその選手に対してスカウトしている。その際に、父兄側がマイクを通して言っているのには、学校は一人に対して百五十万円までなら使え、こういう話もありました。あるいは選手が卒業のとき就職をあっせんしてやる、だからおれの方の高等学校へ来い、こう言って勧誘を受けた。あるいは学費をただにしてやる、とう言っておる。そうすると非常にりっぱに、ここに「選手選手たるの故を以て如何なる名義を以てするを問わず、他より学費、生活費を受くるを得ざる」と書いてあったって、ほんとうにこんなことはありません。野球ファンの中で今日有名校——私はその学校のために名前をあげませんけれども、有名校といわれるものは、あなたがおっしゃったような意味野球をやらしておるのじゃありません。学校宣伝に使っておるじゃありませんか。選手は一日何時間授業をしていると思いますか。そして正確に学費を払っているものは何人おると思うのですか。そうでないとおっしゃるなら、私は事実をあなたの前に示す。そうでない、高等学校に関する限り、公立、私立を問わず絶対にそんなものはない、アマ精神に徹しているのだ、こうあなたは私の前に断言できますか。いかがですか。
  30. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それは非常にあなた方のものの考え方が違うので、われわれとしてはそういうことがいいとか悪いとか言っておりません。そういうことがはっきりわかれば、私の方で処分しております。現に大和の方の学校でありましたか、そういうスカウトをやっているということを聞いたものだから、それもとめました。それから大阪の岸和田の学校の後援会の連中が、大阪のある有名校の中等学校選手の引き抜きのために非常に努力しておったということを聞いたから、それもとめた。私の方とすれば、やはり憲章通り考えておるのです。そういう悪いものがあれば、はっきり悪いものを言っていただいたら、私の方で事実がほんとうだったら処分します。決してそれを認容しているわけじゃない。今日の世の中は、あなたのおっしゃるように、何もかもスポーツ以外のものでも理想通りにいっておりますか。私はおかしいと思うのです。やはりあなた方のやっておられることでも、いろいろな問題が出ておるじゃありませんか。だから世の中というものは、理屈通りに決してきれいにいくものじゃなしに、いろいろ汚職なり犯罪なり出ておりますし、いろいろなものが出ておるのだから、われわれとしても、もしもそういう間違ったことをやったものがはっきり例証を持ってこられたならば、それに対して処分するつもりでおるのだから、それでいいじゃありませんか。
  31. 赤松勇

    赤松委員 いいじゃありませんかとか、それから処分をするとか、あなたの考え方それ自身が私はおかしいと思う。どうしてそんなふうにだんだんこじれてくるか。それはプロにも責任があるけれども、あなたの方のいろいろな点で統制にひとしいような、クラブ活動の自主性を抑えるような古いやり方が、それが積もり積もってそういうような弊害を生んでいるのです。もっと高等学校野球中等学校野球というものは明朗なものにしなければならぬ。決して明朗なものじゃありません。佐伯という名前を聞いただけでみんなぴりっとします。それはなぜかというと、高等学校野球をやって、その選手が一番希望を託しているのは何かといえば、甲子園に出ることです。そうでしょう。春に選抜をされたい、夏に勝ちたい。ところが夏の甲子園の野球というのは、これは全国から選ばれて文字通り実力主義です。実力で勝ったのが出るのです。選抜じゃないのですよ。自由裁量はできない。勝ったか負けたか、そのスコアによってきまる。これは冷厳なる事実です。そこにはごまかしはできない、夏の大会は。春の選抜はそうじゃない。春の選抜野球は、あなたがあれはきらいだと思えばある程度手心が加えられる。しかもきれいなことを言っているけれども、この春の選抜は僕はしばしば見ているけれども、ナイターをやる。まだ寒いのにナイターをやる。私が今文部省選手の健康管理の問題について聞いたのもそれなんです。この前だって雨の中をナイターをやらせる。佐伯流にいえば心身鍛練、郷土のため、母校のためにということになるわけです。そんなばかな話がありますか。そんなスポーツというものはない。それはプロならばある程度商売ですからやむを得ないとしても、高等学校学生に対して寒いときにナイターをやらせる。雨の降る中をやらせる。しかも試合が延長戦、再試合なんかになると、スケジュールがはみ出てしまう。そうすると決勝戦をやれない。準優勝戦をやれない。そうするとあなたの方でこう言うでしょう、どうぞ帰って勉強して下さいと。準優勝まできて、決勝まできて、それならば帰って勉強しますと言うものがおりますか。それは無理したって一日か二日か延ばすのです。それは延ばした例があるじゃありませんか。そういう無理なことをどうしてやらなければならないのか、あなたの考え方は非常に古いです。あなたの野球に対する考え方というものは非常に古い。プロならプロで割り切りなさい。商売なら商売で、雨が降ろうが、少々からだを痛めようが、金をもらっているんだからしようがない。しかし、高等学校学生は学問をすることが目的なんです。野球をするために学校に入ったんじゃない。それを小雨の中を、しかもまだ四月にナイターをやらせる。かわいそうに、まだ子供ですよ。それが郷土のためだ、いや母校のためだ、心身鍛練だ、そんなものは鍛練になりますか。しかも、その選抜に何とか出たい、自分学校を有名校にして、そして宣伝をしたいということが今日の学校当局の頭の中にあって、そのために選手に対していろいろな無慈悲な規制を行なっておる事実があるわけであります。この選抜チームの選考の基準については大体二点をあげている。一点は実力、もう一点は品位。品位というのは、あなたの考えておる品位と僕の考えておる品位とは違いがあると思うけれども、その選抜の重要な基準になる品位とは一体何ですか。
  32. 佐伯達夫

    佐伯参考人 あなたは選考を私が一人でやっておるかのように、あるいは品位を自分一人できめておるように言われますが、それはちゃんと委員を設けて、委員がみんなとにかく考えて、これはよくない、それからこれを出そうじゃないかということをきめるので、私が一人できめておるわけでも何でもありません。大体選抜大会というものは一つの招待野球なんです。だから、必ずしもどこを出さなければいかぬという筋合いではないので、こことこことこことを今度出してやってもらおうじゃないかということであえて差しつかえないと私は思うのです。特に、私は、選抜大会というものは、教育的に考えて、幾ら野球がうまくても学校の素質が非常に悪い、あるいは野球部が非常に悪いというものはもう招待しないことにしようじゃないかというような点において、非常に教育的に効果を上げていると思う。現に選抜に選考された学校なんかは、校長みずから、選考されたんだから、一つ学校の生徒はみんなよく考えて、悪いことをしないように気をつけろというようなことまで各学校でやっておられるようですが、そういうことによって、たとい野球が強いだけではいけない、野球もりっぱで、学校もりっぱでなければ選抜には選ばれないのだというような現われ方は、教育的に非常にりっぱなものであるという工合に私はうぬぼれております。決してそこに不公正な問題があるわけでもなし、ちゃんと選考委員というものもきめて、その選考委員の総意できめるので、何も私がそれをどうのこうのときめておるわけではありません。  選抜大会をやって、試合の期日が雨で延びるときには、両方の野球部長を呼んで、いよいよこういうことになって学業に差しつかえができるようになるのだ、皆さん方が教育上こういうことは困るということであれば、いつでも選抜をやめてよろしい、どうぞ一つ校長さんなりによく連絡をして、そうして出るか出ぬかということは学校自体できめてもらいたい、そうして皆さんや学校長が教育的に見て、一日、二日学校で学業をするよりもその大会に出す方がいいという考えで、出てもかまわぬということであれば続けてもよろしいが、皆さん方が工合が悪いということであれば、われわれとしてはいつでもこれで中止いたしますということまで私は話をし、そして野球部長から校長になにしましたところが、大会に出てもかまわぬということで、しっかりやりますということでやっているので、決して無理やりに押えてやっておるわけでもありません。ナイター、ナイターと言われますが、大体私どものあり方は、ナイターはやらないということを原則にしております。決して初めからナイターをやっておるのではなしに、試合が延びたために、少しばかりのしまいの足らぬところを夜使うということで、初めからナイターでやるというようなことはやらない。だから、何時くらいになって試合が遂行できないということであれば、そこで打ち切ろうということで、その建前でやっているので、これも、何も私一人がきめているわけではありません。大会委員もたくさんおりますので、それらが相談して、こうしようじゃないか、ああしようじゃないかということでやっているのです。雨が降ると言われますけれども、そうざあざあ降りで困るような場合にむちゃくちゃにやっているということもありません。
  33. 赤松勇

    赤松委員 私があなたにお尋ねしているのは、佐伯さん個人にお尋ねしているのではなしに、あなたが高野連の副会長であり、機関の代表であり、また世間から見ればあなたが高野連を指導している実力者である、こういうふうに世間考えているし、実際の運用の面を見ますると、そういうことがはっきり出ているわけですね。だから、私は、機関の代表としてのあなたにお尋ねしているのであって、そうあなたは感情的になっては困る。別にあなた個人をどうこうしようというのではなしに、僕は高等学校及び社会人野球連盟を含めてスポーツを愛するがゆえに、人権じゅうりんなどと疑われるような問題があるので、それであなたに国民にかわってお尋ねしているわけでありますから、どうぞ一つ御冷静に願いたい。私は若いですから、私が興奮するのはあたりまえだが、あなたが興奮するのはどうもおかしい。あなたはかつて早稲田の名外野手として鳴らした人だから、その方においては十分身心ともに僕以上に鍛練されておるのですから、だからあまり興奮せずに、一つ冷静にやりましょう。  そこで、私はさっき品位の問題ということを言ったのですが、この品位の問題というのは、一体どういうことですか。これが明らかにならないと、いろいろな問題が出てくるのですね。どうですか。もし抽象的な話でお答えができなければけっこうですが、それでは私は具体的にお尋ねします。  四国に松山商業というのがありますね。あれは実力もすぐれておるし、当然選抜チームに入れる、こう世間も思い、あの学校も思っておったようです。断わっておきますが、僕は松山商業とは何も関係ありません。関係はありませんが、たまたまスポーツ新聞で僕が見たところによると、この間まで近鉄の監督をやっておりました千葉君が——松商は千葉君の母校です。彼は近鉄で苦労しておって、久しぶりに国へ帰って、うちでのびのびしておって、母校へふらっと遊びに行った。ところが野球をやっておった。それで、それはだめじゃないか、こうやったらどうかとちょっとアドバイスしたということで、それだけのことで松山商業が選抜から漏れた。そうであるかないかは別として、スポーツ新聞にはそういうように報道されておったわけです。それで、あなたの機関でもって選抜から落としたというのは、一体どういう理由ですか。それが品位とどういう関係があるのですか。
  34. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それは品位じゃありません。それは規約で、プロのコーチを一切受けてはいけないという憲章がありますから、その憲章に触れたから、一応そういうところは遠慮してもらおうじゃないかといって遠慮さしたわけですね。
  35. 赤松勇

    赤松委員 確かにそれはありますね。「選手は、職業選手又は職業選手たりし者と試合を行い或はコーチを受けることを得ない。」と書いてある。それからほかにも書いてあったと思うのですが、確かにそれは書いてあります。そのコーチを受けるということ、それが問題なんですね。そのコーチを受けたというのですけれども、千葉君が当時新聞で語っておったところによると、「あんなことが選抜されない理由になるのか、自分母校へ帰って、グランドへ遊びに行ってちょっと見ておって、そして、こうしたらどうだという程度のアドバイスをちょっとしただけだ。」というのです。松高の選手は選抜されようと思って一生懸命に、あなたの好きないわゆる母校のために、郷土のために、心身を鍛練してずっときて、千葉のコーチを——コーチじゃない、助言をちょっとしてもらったというだけで、それで選手全体が選抜されないというようなことは、ちょっと行き過ぎじゃありませんか。それは心身鍛練よりも、それが青少年に及ぼす心理的な影響の方が大きいのじゃないですか。そういう点はいかがですか。
  36. 佐伯達夫

    佐伯参考人 これはやはり憲章にちゃんときまっていることをやったのだから、それだからそれは遠慮すべきではなかろうか。選抜大会選手大会と違って、強いものを必ず出すという筋合いのものでもないので、だからそういう母校の卒業生であっても、自分母校へ行って、そして選手をコーチしたというようなことがあれば、やはりそれは遠慮された方がいいのじゃないかということが問題になって、選考委員会は一応松山を推薦しないということになったのです。
  37. 赤松勇

    赤松委員 そういうことは別にあなたがきめるわけではありませんけれども、あなたの意見が有力に支配するのですね。そういう中であなたの感覚からいえば、今言ったアドバイス程度がコーチ的な作用になってくるので、この点は私は非常に問題があるので、これはぜひ一つ考えを願いたいと思うのです。  それから、例の門岡選手の問題ですね。この前もこの委員会で問題になりまして、向こうの人権擁護局の方から要望書が出て、人権擁護局長からもちょっとそれは個人的には気の毒な気がするという発言もこの委員会であったわけです。考えていただきたいのは、相手はまだ高校の三年生です。そして甲子園の大会で敗れた、敗れて新聞記者に取りまかれて、君は今度どこへ入るんだということでどんどん問い詰められるものだから、中日に入るとか入りたいとかいうことを言った。そうしたらあなたの方で、審査室で審査されたのですか。
  38. 佐伯達夫

    佐伯参考人 大体審査しております。
  39. 赤松勇

    赤松委員 大体じゃいけません。これは非常に重大なことですよ。大体という言葉がありますか。これは審査室で審査しておりません。
  40. 佐伯達夫

    佐伯参考人 冗談言っちゃいけません。
  41. 小島徹三

    小島委員 これはあくまで質疑にとどめて、討論にならぬように一つお願いします。
  42. 河本敏夫

    河本委員長 赤松君に申し上げます。時間もだいぶん経過いたしましたので、それを御考慮の上、質疑を進められんことを望みます。
  43. 佐伯達夫

    佐伯参考人 審査室の方では、学生野球協会の方でちゃんと審査をしております。
  44. 赤松勇

    赤松委員 それでは文部省の方へお願いしておきますが、財産その他についても報告する義務があるのですから、審査室においてどのような審査が行なわれたか、文部当局の方で報告書を取り寄せられんことを希望いたします。
  45. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それは一両日のうちに審査室の審査の発表をすることになっております。ちゃんとできております。
  46. 杉江清

    杉江説明員 審査の内容は規定によりまして非公開ということになっておるわけでありまして、その内容を取ることは私は適当でないと考えます。
  47. 赤松勇

    赤松委員 おかしいですね。あなたの方へ財産その他については文部大臣に全部報告しなければならぬ義務があるのですよ。なるほど非公開とは書いてありますけれども、非公開とは人を入れないということです。監督の立場にあるあなたの方が、その審査室でどういう審査を行なったかということをお聞きになることは自由じゃありませんか。しかも今佐伯さんのお話では、二、三日の間に発表するということになっておるということをおっしゃっているから、本人が発表するということを押える必要はない。
  48. 杉江清

    杉江説明員 私の申し上げたのは、審査会議の内容それ自体のことでございまして、もちろんその結果については近く御発表になるようであります。
  49. 赤松勇

    赤松委員 今の門岡問題に限ってですよ。
  50. 佐伯達夫

    佐伯参考人 先ほどちょっと門岡問題にありましたが、門岡問題というものは、そんな簡単なものじゃありません。あなたは門岡のやっていたことをほんとによくお調べになったのですか。
  51. 赤松勇

    赤松委員 よく調べていますよ、私のところのチームですからね。
  52. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それでは、どういうお調べか聞かしていただきましょう。
  53. 赤松勇

    赤松委員 あなたの方の審査軍の御発表があってから、私の方は個人的にあなたの方にお知らせすることにします。今委員長から御注意がありましたように、時間もたってきましたが、小倉商業、作新学院、その他の選抜に漏れた経緯につきましていろいろお尋ねしたい点がありますが、これは省きます。  次に、今浪華商業の尾崎問題というのが非常に問題になっているわけですね。この浪商の尾崎問題について野田副校長があなたのところをたずねたことがございますか。もし訪問されたとすれば、どういうお話がございましたか。一つお聞かせ願いたいと思います。
  54. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それは、尾崎は本人も学校へ最後まで行きたいといって、これは国体の前から再々見えております。本人も卒業するまではぜひ学校へ行きたいと言っておる。父兄もおじさんもみんな、プロに行くのであっても学校を卒業してから行きたいということを言っているのだが、もう毎日々々プロのスカウトだとかスポーツ・ライターなどが来て、いろいろ書き立てられるので実は困っているのだ、どうしたらいいだろうか。本人に聞けば、ぜひ学校へ行きます、父兄もぜひ学校へやりますと言っておるのだが、これがどうも何だかプロへ行くような報道が盛んに出て自分は困っているのだということを再々相談に見えましたのです。これは一つよほど気をつけて、私は何もプロへ行くことがいかぬと言うているのじゃないので、もしも本人がそういう意思であるならば、誤解のないようによく父兄とも話し、本人とも懇談し合うのがいいだろうというような話を両三回したことがあります。最後に見えたときは、十月三十日までは父兄なんかと会ったら、いや学校へ行きますと言いおったやつが、何か六日ごろに突然退学届を出して、それで実は学校としても、本人の将来を考え教育立場からいうて、中途から行くということは本人のために悪いから、何とかして学校にとどまって、学校を卒業するように勧誘はしているのだが、どうもだめらしいという御相談に見えました。私は、本人が行くということならやむを得ない、けれども選手である間はやはりそういう折衝をしてもらっては困るのだから、よく父兄にも話をして、何も半期待てとか一年待てというのじゃないのだ、学校へ退校届を出しても退校にはならないのだ、学校でちゃんとそれを認めるということになれば、それからは学校にも関係もなければ野球にも関係がないのだから、それで御自由にお話しになって、プロ行きになろうと何になろうと自由である、そこのところを善処してやらぬと、また憲章の違反になって、学校がお困りになると因るから、ということを御注意申し上げたわけであります。
  55. 赤松勇

    赤松委員 この問題についてはたくさん質問があるし、プロの方にも質問があるのでありますけれども、時間の関係で一点あなたにお尋ねしておきますが、実は学校当局が非常に心配しておる点は、これでまた選抜チームから落とされるのじゃないだろうかということ、つまり実力はあるけれども、品位の問題ですか、あるいはこららの協会の規約の問題等に該当するようなことがあるのじゃないかというようなことを非常に心配して、あなたの方へお伺いしたということを聞いておりますが、そのことは別にしまして、この問題については佐伯さんどうですか、春の選抜に別に何らの影響はございませんか。
  56. 佐伯達夫

    佐伯参考人 それは実は校長が、大阪の予選大会で尾崎が出たために優勝したのだ、尾崎がいなくなったら大阪の代表としては非常にまずいと思うので、辞退したいと思うのだがどうですかということを私のところへ相談に来たわけです。私は、何も学校が悪いことはないじゃないか、学校が悪くないのに学校から辞退するということは、ますます世間から何かまずいことがあったのじゃないかというような誤解を深める、むしろ辞退する必要はないのじゃないか、大阪の代表として一応出たのだから、まだ近畿の大会が残っておりますから、近畿の大会に尾崎をのけてやられたらどうか、それで近畿大会でりっぱな成績をあげられれば、選抜の対象にもなりましょう。ただし、もしも近畿の大会で成績があまりかんばしくないときには、大阪代表としての優勝は尾崎が入っておって優勝したのだ、だから尾崎をのけたときに選抜に出すだけの価値ありやいなやという対象にはなるだろう。しかし私は尾崎がプロへ行ったとか、あるいは学校をやめて行ったからという考えは毛頭持っていないから、どうぞ御安心をという返事をしておきました。
  57. 赤松勇

    赤松委員 なかなかいい回答で、僕も非常に満足です。ぜひそうしてもらいたいと思いますね。尾崎君の問題自身は、まあ新聞しかわれわれは知りませんけれども、まず運動部、野球部へ退部願を出して、それから交渉をしておるようであります。私はこの交渉——交渉ということが規約の中に出てくるのですが、交渉というのはどの範囲のことをいうのか。どの程度の接触をいうのかということをあとでお聞きしたがったが、その前に浪商の問題につきましては、これは尾崎君とは別に関係ありませんから、実力、品位ともにあなたの方の規約にふさわしいものであるならばぜひ一つ選抜してくれとか、してくれるなということではなくして、資格を喪失させないように、ぜひこういう問題につきましては正しい立場でもって選んでいただきたい、こう思います。  それから今言ったプロとの折衝とか交渉とかいうやつですね。これは非常によくわからないんですね。たとえば最近ではプロの折衝は本人に言うよりも何か実力者とか何とか変な周囲の人に言って、そうして交渉が成り立ったとか成り立たぬとか言うんですね。手紙一本出すのも、やっぱり接触の範囲に入る。それが交渉と言えるのかどうか、これは非常に高校の学生さんにとっては重要な問題ですが、それはどうなんですか。
  58. 佐伯達夫

    佐伯参考人 私どもは、プロのスカウトが来て自分の方へ入ってくれないかというお話が出たことに対して、どうとかこうとか言っていないけれども、本人をプロに入れるためにいろいろプロとあるいは条件だとかその他のようなプロへ入るための折衝を始めるということは、遠慮してもらいたいと思います。
  59. 赤松勇

    赤松委員 まだたくさんお尋ねしたいことが残っているんですけれども、時間の都合上佐伯さんに対するお尋ねはこの程度にとどめておきたいと思うのであります。あなたが多年学生野球のために尽くされましたその功績につきましては、私万々よく承知しております。ほんとうに御苦労さんであったと思うんですが、ただし、本来いえば、高校野球にしても大学野球にしても、これは自主的なクラブ活動でありますから、これの管理者は当然学校長でなければならね、あるいは教育者でなければならぬ、私はこういうふうに思います。はなはだ言いにくいことを言って申しわけありませんが、あなたは一運送会社の経営者なんですね。従って教育者じゃないわけなんです。だからいろんな問題も出てくると思うので、やはり学生野球、ことに高校野球というものを正常な姿に戻すためには、私は本来の自主的なクラブ活動、これの管理者は学校長、さらにこれの指導者教育者でなければならぬということを申し上げまして、あなたに対するお尋ねを終わりたいと思います。どうも御苦労さんでありました。
  60. 佐伯達夫

    佐伯参考人 私はあるいは不適任であるかもしれぬが、学校の先生が教育者であって、先生じゃない者は教育者じゃないというものの考え方は、私は間違っているのじゃないかと思う。社会人でも教育者に負けないりっぱな教育者もたくさんおるだろうと思いますね。私どもの連盟というものは全国四十六府県の連盟の代表者が出、そこへまた理事会で推薦したところの二十何名の常務員によって、そうしてだれがいいかということで選ばれたので、私は何もみずから好んで買うて出ているわけでも何でもない。みんながぜひやってくれという話だから、それじゃ一つ努力しましょうということでやっているだけで、私は必ずしも、高等学校だから教育者じゃなければいかぬということはこれは誤った考えで、事野球ということに関し、あるいは水泳ということに関すれば、やっぱり水泳の競技に関係のある人、あるいはまた野球であれば野球関係のある人と、それから教育者とみんながまざって、そうしていろいろ相談してきめていくのが私は一番正常な行き方じゃないかと思うんです。私の方の連盟の機構といたしましては、学校の校長とか野球部長、関係者、それから県の体育関係者、それから野球人というようなものが寄って、そしていろいろ相談をして事をやってきておるので、決して、つまり野球関係者教育関係のない人ばかりやってきめているわけでも何でもありません。その点を一つ御了承願いたいと思います。
  61. 赤松勇

    赤松委員 そうなって参りますと、プロもノンプロ学生野球も何だかわからなくなっちゃうんですね。どこへ境界を置くかということになっちゃう。だれでもいいのだ、教育者でなければならぬわけじゃないのだ、こうおっしゃるけれども高校野球というのは、御承知のように、大学の場合もそうですけれども、これは学生の自主的なクラブ活動なんです。だからあなたがコーチをされるということは差しつかえない。しかしこれを管理される、あるいはその組織の役員におなりになるということは、私は本来の学生野球立場からいえば望ましくないと思うのであります。これは当然学校長なり、あるいは教育に携わっておる現場の教育者というものがそのクラブ活動を側面的に助言をし、あるいは側面的に援助をしていくということをやるべきであって、何か強い組織を作って、そうしてこれで全国の高校野球を統制する——統制じゃありませんが、指導監督という言葉がここに書いてあります、指導監督をしていく。そうしてその場合に指導監督の一番大きな柱になるのは選抜野球及び夏の甲子園の大会、これがなければあなたの統制なんというものはてんできかない。これがあるから統制がきいてくる。しかしそのことは何も春や夏の大会をやめろと私は言っているのじゃありません。あなたはさっき選抜野球はやめたければやめさせると言われたが、あなた一存でもってやめさせたりすることはできない、そんな機構じゃありません、今日の春の選抜というものは、これは新聞社が主催になって、後援ですか、大きな規模でもって行なわれるのであって、佐伯個人でやめさしたり、やらせたりするというような、そんな単純なものではなくて、大きなメカニズムの中に生きている機構であるということを考えますると、そんな単純なものではない。しかし学生野球に関する限りは、私どもの信念は、そうしておそらく文部当局もそうであろうと思うのでありますけれども、これは学生の自主的なクラブ活動である、そうしてそれを助言し、あるいは側面的に指導援助していくというのは学校長もしくは現場の教育者でなければならぬ、この考え方は私は不動の信念です。絶対に正しい、こう考えております。それを全国的に組織を作って、その組織の上にただ昔野球をやったからということだけでそこへ乗っかって、そうして全体を統制していくような、そういう傾向というものは、私は学生野球にとっては決して有益ではないという考え方は変わりません。このことを特に申し上げておきます。
  62. 河本敏夫

    河本委員長 赤松君に申し上げます。次の質疑をお進め下さい。
  63. 赤松勇

    赤松委員 次に今度は社会人野球の方へお尋ねしたいと思います。大学選手は秋のリーグ戦以前においてプロ野球と契約しても別に差しつかえないわけですか。これはどういうふうになっておりますか。
  64. 小川正太郎

    小川参考人 今の質問の要旨がちょっと僕にわからないのですが、大学生プロ野球と契約の件ですか、ちょっと今のはどうも……。
  65. 赤松勇

    赤松委員 私の質問が非常にあいまいだったので、その点申しわけありません。ずばり言いますとね、十一月五日の早慶戦のときに三浦投手が日本石油に就職がきまっているということを答えておりますね。この問題はもっとわかりやすく言えば、前の桜井君というのがおりましたね、あなたの後輩で。彼が他の会社と就職の契約をしておりましたね。それで何か会社との間に金銭的な関係があったようなんですな。真実はわかりません。わかりませんが、あったようです。その後彼は突如大洋へ入りましたね。ああいうような行き方については——あなたは学生野球の役員をおやりになっておりますね。
  66. 小川正太郎

    小川参考人 学生野球の役員はやっておりません。
  67. 赤松勇

    赤松委員 それでは社会人野球立場からいえば、すでにあなたの方の社会人野球協会に入っておられるチームと約束ができておった。それが大洋に行ったというような場合、これは一体規約上どういうことになりますか。
  68. 小川正太郎

    小川参考人 それは、けっこうでございます。どしどしプロの方に行ってもらいます。  ただ前のことでちょっと御説明いたしますと、桜井問題のことでございますが、桜井君は、その前に静岡支部で登録したのであります。そうすると登録した者は、その一年間はわれわれの会員だという表明でございます。登録後に契約して行ったということがわかったわけでございます。それと同時に、金銭的授受がありますと、われわれの方で審査委員会にかけて、われわれの会員から除外するという規約がございますから、それにひっかかったわけでございます。
  69. 赤松勇

    赤松委員 今、新聞を読みますと、安藤ピッチャーが問題になっておりますね。それは東レに入ることを別に誓約したわけでも何でもないという話ですが、一応約束して、そして東レの方を断わって、今度はプロに入るということですね。別にこれも差しつかえありませんね。
  70. 小川正太郎

    小川参考人 はい。
  71. 赤松勇

    赤松委員 そうですが、わかりました。  それで実は小川さんに対しましては、あなたは大毎チームの選手選考委員になっておられまして、当時この大毎チームの創立につきましても、大井広介氏の雑誌による発言を読んだわけですけれども、そういうこともあって、実はいろいろ社会人野球プロ野球の問題についてお尋ねしたいのでありますけれども、時間がありませんから、これは、また次の機会に譲ります。  そこで今度は、プロの方にお尋ねしたいのでありますが、新聞によりますと、この新聞では「尾崎争奪、激しい追い込み、阪急五千万円用意」と書いてある。おそらくこれは大毎と東映のことだと思います。これはおそらく別に五千万円を新聞記者が見たわけではないでしょうけれども、前に法制二高の柴田君が巨人に入るときに二千五百万円、その他多額な契約金が払われた。今は就職は自由ですし、契約金を幾ら取ろうと、それは問題にすることはないわけですけれども、ただ私どもプロ野球の将来を考えますと、一体こんなことで採算がとれるのかどうかと思う。私は今プロ野球に対して一番不満を持っておる点は、プロ野球は本来のプロ野球になっておらぬ。これはノン・プロみたいなものです。会社の宣伝機関みたいなものです。たとえば名前をあげて失礼ですけれども、巨人は読売新聞宣伝、ドラゴンズは中日の宣伝、東映は私鉄の宣伝、大毎は永田さんの宣伝というようなことで、社会人野球の場合でもほとんど今そうなんです。社会人野球は、おれはプロじゃない、アマだという。小川さんもおっしゃるだろうけれども、私どもからいえば、今の社会人野球をだれが純粋のアマチュア野球だというように見るものがありますか。ちゃんと専門のスカウトを置いて、そしてどんどんやっておるのです。だからやっておることは、プロとそう大して変わらないと思うのですが、それは別としまして、こういうように一高校生に対して何千万円というような契約金が払われるということは、社会的な大きな問題ではないだろうか。長い目で見てプロのために有害ではないか。プロプロらしく親会社から独立をして、独立した純粋のプロ野球として独立採算の上に立って運営さるべきではないか。そうなれば話は変わってくる。いま一つの問題は、なぜこういう多額の金を払わなければならぬかということは、私は今のプロ野球をやっておられる方がほんとうの企業家ではないからだと思うのです。もしほんとうの企業家であるならば、独立採算のそろばんの上に立って、ちゃんと計算をされておやりになるから、こんなばかな金はどこからも出てこない。たとえば巨人は何か利益を三億上げて、そのうち一億を何々に回して、二億をスカウトの方に使うということをスポーツ新聞で私はしばしば拝見しましたが、こういうのは正常な姿ではない。やはり利益を三億上げれば、そのうちのある部分は選手の待遇の改善あるいはアンパイアの待遇の改善あるいは選手の将来のために、たとえば養老金制度を設けるとかなんとか、そういうことをちゃんとやる。そしてばかげた契約金を使わないようにしていくことが必要ではないかと思う。私はしろうとですから、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、私はこういう考えを持っております。それはセ・パを問わず、各球団がどんどん競争してやるのではなしに、セ・パが話し合いをされて、セ・パの下でも、あるいはプロフェッショナルの下でも、あるいはコミッショナーの下でもけっこうですが、野球学校みたいなものを作って、ほんとうに野球が好きで、野球で飯を食っていこうという人があれば、その学校に入れる。そうして全部プールしてしまう。柴田であろうと、門岡であろうと、尾崎であろうと、全部そこへプールしてしまって、そうして大学卒業は幾ら、高校卒業は幾らというふうにする。それからチームの不均等性をなくすために、たとえば阪急、近鉄というと、パ・リーグでは、失礼ながらお荷物だと思うのです。またあそこには魅力がないから、行かない。行かないから、よけい金を使わなければならぬということになる。そうすると自分の会社には金がないから、親会社にお世話にならなければならぬということになる。従って、プールしておいて、そうしてリーグ全体の発展のために、各チームの実力を均等化させるために、その学校に入れた選手をうまく配分していく。投手陣の非常に弱いところには投手を持っていく、あるいは内野の弱いところには内野を持っていく。そういう方法でもとらないことには、こういう傾向は克服できないのではないだろうか。セ・パでも、たしか契約金については限界を設けましたね。これ以上払ってはいけない、これ以上払うと罰するぞということをおやりになったけれども、実際は行なわれていない。各社がそれこそもうばかげた競争をして、ああいう社会問題を引き起こしている。これに関してプロフェッショナルの方、それからセ・パの方の御意見一つお聞きしたいと思います。
  72. 中澤不二雄

    中澤参考人 時間がありませんから、いろいろ固めて御返事申し上げます。  今赤松さんがいろいろ言われましたことは、プロ野球の中ですべて検討し、また研究している問題ばかりでございます。アメリカのプロ野球一つの企業として始めましたけれども、映画あるいは新聞関係の人材、資本が入っておりません。そこでお金持の野球の好きな人が企業として一つのクラブを持ってやりますから、ニューヨークにできたチームに対してはニューヨーク・ヤンキースと言います。日本は、長い間新聞のおかげで野球が大へん繁盛して参りました。いろいろ何とか連盟とか、何とか協会とかいいますが、みなうしろには新聞社がついて強化して、バック・アップしてここまできたのです。そういう意味で、プロ野球もやはり大学野球とか社会人野球というものに次いで生まれたために、そういうようなにおいが今でも残ります。そこで今言われたように読売ジャイアンツ、東映フライヤーズといいますが、中におります私どもは、——見て下さるファンは、福岡のチームだと思うから、福岡の人は一生懸命になります。また東京のチームだと思うから関東の人は一生懸命になります。そこでチームそのものは、チーム・カラーとして、関東に生まれたチームは関東人に好かれるようなチーム、九州に生まれたチームは豪快なチームということで、みんなチーム・カラーを作っておるのですが、いかんせんいまだに電鉄の名前、新聞社の名前を頭にかぶせておるので、どうかして東京ジャイアンツあるいは西東京フライヤーズあるいは九州の福岡ならば福岡と書いているのですが、さて呼び名を言うときには西鉄ライオンズと言う。もう一歩前まで来ておるのではないかと思います。この点は確かにお話のように、都市を代表するチーム、都市のファンによって支持されるプロ野球ですから、お話のようにいかねばなりませんし、いくようになりつつあると思います。  それから、一つの会社の宣伝ということを申されましたが、確かにそういう形で発達して参りましたし、今も強くなれば親会社の宣伝になるという思想は持たれております。というのは、名前をつけてその会社の専属宣伝機関のような形で伸びて参りましたが、しかしもう野球選手というものの評価が非常に高くなりましたので、野球会社そのものの評価が、資本的に言いますと、非常に大きくなって参ります。その証拠に五、六年前、七、八年前は、人はポストで評価できませんが、親会社の課長なり部長級の方が代表あるいは社長をやっておりましたが、今や、セ・リーグさんの方はあとで鈴木さんからお話があると思いますが、パ・リーグでは親会社の社長六人が全部球団の社長、オーナーになりまして、野球会社というものは非常に大きく伸びて参りましたから、企業的に見て、プロ野球の球団会社の独立する時期ももう近いと思います。  そして世間には大へんプロ野球が損しているということになっております。事があれば言いますが、これは事実損をしている球団もございます。今申されたたくさん見物の入らないチームは損をしておりますが、しかし昔と違って、入場者が少ないからといって決して損はいたしておりません。見ない人のお金、テレビ、放送、こういうものの金がざくざくと入って参ります。優勝するとかあるいは上位チームに入りますと、たとえば前年度に三千万円で契約した契約が一ぺんに七千万円、八千万円にはね上がった例もございますから、世間の方が心配されるほどプロ野球は貧乏をしておりません。  そして、できることなら契約金を、という話でございます。確かにそうなんです。ただここで申し上げたいのは、どの会社でも、特殊の技能を持っている者には、相当の金を払うと思います。野球選手というのは、ひすいかあるいはダイヤモンドが入っている原石なんです。金鉱が見つかったと言えばだーつと大きな金をかけていく。当たるやつもあり当たらないやつもあります。プロ野球選手というのは、たとえば在学中に高文を通ったりあるいはそういう試験に通った資格者なんです。高等学校の二年で中退しようが、この人がプロ野球界へ来ますと、すでに一流なり二流の資格を持った人間を採るのです。よく中退するといけない、いけないと言いますが、プロ野球にはちっとも学歴は要りません。小学校でもよろしい、あるいは学校へ行かない子でもよろしい。ただし、先ほどもいろいろお話を伺っておりますと、大へんりっぱな人間を作るように高校野球連盟がやって下さっておる。私がさらに望むことは、どうぞアメリカのようにもっとまじめな野球、シーズン制をとって、四月から九月までで学生野球はぴたっとやめる。昔優勝したり優勝候補であった学校で、入学率のいい、できる学校が今優勝の候補になっているでしょうか。プロ野球としては、決して大きな力のある選手ばかりほしくないのです。プロ野球選手は頭がなければだめです。ですから、私は高校野球がもっと視野の広い野球——この前の法務委員会の第五号の速記録を見ますと、文部省の方が、公立学校にはスカウトなんかする者は一人もいないと言っているが、こんなことは公然の秘密であって、下情に通じないもはなはだしいと思う。学校を言えと言えば言いますが、名誉のため言いませんが、こんなことは公然の秘密です。スカウトをしているのはあに私立学校のみならんやです。こんなことを堂々と会議録に書かれるということが、すでに高等学校野球を指導する方針が間違っているのじゃないか。ですから私はよくできる、頭のいい、そして野球のうまい者を入れたい。アメリカの高等学校はシーズン制で四月から九月までしかやらしておりません。しかし今大リーグの有名選手はやはり四月か九月まで練習した、その中から生まれてくる選手です。われわれは、日本のプロ野球が発達するためには、もっと視野の広い、勉強のできる、しかも野球のできる子がどんどん出ることを望みます。品がいいとか品が悪いということは大へん抽象的なことですけれども、非常に成績のいい、入学率のいい学校、いわゆる県立、公立で昔強かったチームがほとんど今優勝戦線に出てきておりませんことは、練習量が少ない学校は出られないということだと思う。一年じゅう野球をやっていることは決して品のいい学校を作るとは思いません。私は日本の文部省、体育行政をつかさどる文部省は、そういう面に力を入れて、ほんとうの高校選手を生んでいただきたい。これがプロ野球としては非常にいい選手になるのです。何かプロ野球というと一年じゅう野球をやっている、力が強くて野球だけうまい子を呼んでいるように思いますが、決してそんなことはございません。入りまして二年か三年たったら勝負がつきます。頭の悪い人はそれから伸びません。やはりしっかりした、視野の広い、常識のある、良識を持った子でないと野球が伸びないことは、稲尾を見ても、あるいは杉浦を見てもわかります。学校においてしっかりした子ほどプロ野球は発達するのです。そういう意味で、これはと思う人は、原石を割ってみると中にひすいが入っている、素質が大きいと思うから金を出すのです。巨人軍の長島君なんか大へん騒がれましたが、もうすでに自分がいただいたお金くらい巨人にもうけさしております。だからこれは、世間の方が契約金々々々と言われますが、大学を出た人が定年まで働いてやめるときまでには五千数百万円の金を会社が払うということを、ある経済書の報告で見ました。プロ野球は、十年使えますか十五年使えますか、一億、三億、三億かせがしても、やめるときには少しも金をやりません。もう君は来年は契約しない、さいならです。だから退職金を初めにもらうわけです。たとえば十年、十五年プロ野球にいて、そろばんも持たず、英語の本も持たず、毎日バッティング、バッティング、野球の本を見て十五年たって、三十二、三になって一体何をするでしょう。学校の卒業証書を持って行ったって、どこの会社も雇いやしません。課長にもなれず係長にもなれない。そのときに何をするか。必ずアメリカの選手のように、今に日本の選手も牧場をやったり食堂をやったり旅館をやったりするようになる。その頼みになるのは何でしょう。金です。結局今の選手が入るときに条件のいいところへ入ってくるのはあたりまえだと思う。やめるときは一厘ももらえないのですから。しかもそれが相対契約なんですから、こっちが五千万円よこせと言ったって、二千万円の価値しかないのは五千万円出しません。ただ悪いのは、赤松さんにも認めていただきたいのは、せり合うことです。そのせり合いをやめるために一つのワクを作ろうじゃないかといって、作っちゃ変え、作っちゃ変えしているのですが、これは大物だと思うと十二球団が行ったり十球団が行きます。新聞記事にこういう笑い話がある。ある球団が確かに抑えているらしいということを聞いた他の球団の人が、安く契約するんじゃないぞおれのところは五、六千万円出すぞと、いやがらせに肩をたたいたという話を大阪のある新聞記者の方に聞きました。それがわっと広がる。そうするとそれがほんとうかうそか知りませんが、親としては、一千万円のワクと聞いているけれども、あるいは二千万円、三千万円という話を聞いているときに、五千万円というとよろめくかもしれませんね。そういうことは冗談に言うので、私はああいう若い人に五、六千万円実際にほんとうに出すチームがあったら、お目にかかりたいと思うのです。ただそういうようなスカウト競争、せり合いになりますとつい上がっていく。金鉱を見つけて、みんな権利を高くせり合って買うのと同じで、これは確かに素質があると思ったのが尾崎投手です。五、六千万円は一つはそういうことでお耳に入ったと私は思います。  それから審判学校野球学校を作ろうと思ったことは今まで数回ございました。今阪神の監督をやっている藤本定義君なんかは、一つ野球学校を作ろうじゃないか、僕が教頭になるから中澤さん校長にならぬかなんて、七、八年前にそういう相談を受けたことがございますが、そろばんをはじいてやってみるとどうもいかないのです。まだまだその時期でないと思ってとうとう実現しませんでしたが、審判学校はほんとうに必要だと思います。どうかして作りたいと思っているのですが、今お話しのチームの均等化、これは人為的に強いチームから弱いチームに人をやりますと、せっかくでき上がったチーム・カラーというものがこわれます。そこで弱いチームが強いチームにくっつくように努力して、そうしていいチームを作るようなことをやっておりますので、赤松さんの言われたことは大へん魅力のあるお話ですけれども、逆に作為的に強いチームから弱いチームへ人をやりますと、チームの魅力を減らして見物をなくすおそれがありますので、大へんいいアドバイスでございますが、今すぐそれは使えません。ただ、今お話のありました点は、いずれもプロ野球ではこれを希望し、検討し、そのように実施しようとして進んでいることだけは確かでございます。また契約金も、どんどん選手がふえまして、そして需給関係がバランスをとりましたら、こういうばかなことはないと思うのです。何分急にブームを巻き起こし、急に強くなろうという意欲が強いだけに、せり合いの関係でこういう不自然な形になっていることは、私も、またここにおられる鈴木さんも、経営者でなくてアドバイザーですから、そういうことのないように今力を入れておりますが、力足らず、まだ御期待に沿えない点がございますが、それに向かって進んでいることだけ御報告申し上げます。
  73. 赤松勇

    赤松委員 今の御意見はおそらくセントラル・リーグの鈴木会長さんも同じ意見だと思うのです。そのように了解しておきます。  時間がありません。すでに刑事局長も来ておられまして、坪野君の質問もございますので、赤嶺さんに二点だけお伺いしておきたいと思います。  まず第一は、プロ野球の統一契約書第三十一条によると、クラブと選手の契約が一月中に成立しないときは、二月から後は選手に前年の俸給の四分の三を与えてこのクラブのために一方的に拘束することができるようになっているが、これは憲法上の職業選択の自由が侵されることになりはしないかどうか。これが第一点。  第二点は、プロ野球の統一契約書第二十一条によって、選手トレードされる場合は異議の申し立てをすることができないとあるが、これは憲法上の奴隷的な拘束にならないかどうか。この二点についてプロフェッショナルとして一つお答えを願いたいと思います。
  74. 赤嶺正志

    赤嶺参考人 私時間もありませんですから簡単に御返答申し上げますが、今の二点を要約いたしまして、第一に、保留される選挙がそのチームのためにいつまでも権利を持たれるということ、及び統一契約書によってよそのチームに行く自由を奪われておるということ、これらのことが憲法第二十二条と第十八条にあるところの条項に抵触するのではないか、こういうふうな質問になると思いますが、総じて野球選手というものは一般の社会の人に比べまして相当高額の給料を得ております。その給料と申しますのは、ほかの一般の会社、銀行と違いまして、その中には勤労の対象もありますし、あるいは勤労中に起こる危険の負担もありますし、また一定期間勤めたことによって生ずる退職金、そういうふうなすべて万般のことを含んでかなり高額な給料を得ておるわけでございます。従って、就職の自由が制限されるとか、あるいはその他いろんな自由が束縛されるということは、ある意味において、その高額な給料のうらの一部分が、それらのものを球団の方に売り渡しておる一つのことであって、憲法にも、自己が望まないところの労役であるとかあるいは奴隷拘束は受けないと書いてあるが、自己がそれを望んだ場合、すなわちその自由というものを相手方の球団に譲り渡した場合はいいのではないか。従って、選手の給料が何百万というような給料に達しておれば、その自分の自由というものを球団に対して、卑近な言葉で言えば売り渡しておるのである、こういうことになるのであって、これは社会の安寧秩序、公序良俗に反しない限りにおいてはそれらのことを譲り渡していいのではないかと私たちは解釈しております。それで、もし非常に給料の安い連中——大体今現役選手となって試合に出る人は一万五千円を切ってはいけないということが協約に書いてあります。従って、非常に給料の安い連中、たとえば高校卒業生でもって、今世の中の景気がいいですから、普通一万二千円か三千円になるでしょう。あるいは二万円の程度の連中でもって、その自分の持っている憲法上の権利を金にかえているということになれば問題がありまして、これらの人に対しては本人が望むのであればあるいは自由にしてもいいじゃないかと思いますが、高額の給料で現役選手としてやっている連中に対しては、そういうふうな理由でもって彼らが自由でないといっても、それは彼らがみずから進んで球団との間に個人契約をかわしたものである。従って、これは決して人身の自由を束縛しない、職業選択の自由を束縛したものでないという解釈を私どもはしております。
  75. 中澤不二雄

    中澤参考人 今の赤松さんの質問にちょっと補足したいのですが、この二月からあとは選手の前年の俸給の四分の三を与えて縛るということになっております。これはたとえばAのチームの選手をCのチームの人が、お前来ないか、今八万円だが、お前は八万円の値打ちじゃない、うちに来れば十万円で常時出場させるというようなことで誘われたときに、選手がもしよからぬ心を起こして、仮病を使ったり、どうもことしは肩が痛いからといってやらなかったら、義務を果たさないことになります。そういうことを常時させたら、そのチームの強さはしょっちゅう不動の力があってこそファンがつくのですから、そういうものを押えるために、休んでもいいぞ、そのかわり四分の三しか月給をやらぬ。金だけはやって生活は保証するが、試合には出さない。その罰がこれなんです。  それから選手はよく商品々々と言われます。アメリカでもそういうふうに言われますが、日本では今選手のことは財宝なんです。宝です。その宝が勝手に足をつけてぽこぽこ歩いてよそへ行かれたら、そのチームは安定した勢力、チーム力というものがしょっちゅうこわされて、ついているファンが減りますから、その企業を助ける意味で、あの自由主義のアメリカでさえこういうことが行なわれておる。やはり二、三べん国会で問題になったらしいですが、ついに問題にならないことは、特殊な強さ、一つの安定した強さを持つのがプロ野球の本質です。それがそういう財宝やそういうものが勝手にあっちのチームに行きたい、こっちのチームに行きたいと、足をつけて歩き出したら大へんだというので、こういう縛り方が認められておる。日本のプロ野球も大体アメリカにならいまして、選手は財宝だから、財宝を大事にするという意味でこういうことが現在行なわれておる。憲法上の奴隷的拘束ではないという見解でやっておるわけであります。
  76. 赤松勇

    赤松委員 まだ質疑がたくさんありますけれども、先ほど言ったように坪野委員の質問がありますので、ただせっかく御出席をお願いしておるセントラル鈴木会長から、今の中澤さんのお考えと同じであるということを一つ御確認願っておきたいと思います。
  77. 鈴木才藏

    鈴木参考人 プロ野球スポーツであるために、どうしても健全な経営をしていくという特異的な機構のもとに、球団と選手が双務契約をする、それを選手も実行し、服してもらわなければ、プロ野球の健全な経営はできないと思います。
  78. 赤松勇

    赤松委員 まだ質問がありますけれども、留保いたしておきます。  御出席参考人の皆さんには、大へん御多忙のところありがとうございました。たまたま、私質問中にあるいは失礼にわたる点があったかと思いますけれども、これはスポーツを愛し、野球を愛する余りのことでありますから、どうぞよろしく御了承願いたい、かように思います。  以上をもちまして、質問を終わります。
  79. 河本敏夫

    河本委員長 この際、参考人各位に対して、一言御礼を申し上げます。  本日は、御繁忙中のところ、長時間お引きとめをし、貴重な御意見の御開陳をいただき、委員一同を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  80. 河本敏夫

    河本委員長 法務行政及び検察行政に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。坪野米男君。
  81. 坪野米男

    坪野委員 私は刑事局長にお尋ねをしたいと思うのでございますが、時間もありませんので、要点だけ質問いたしまして、御答弁いただきたい。まだ質問が尽きない点は、次の機会に譲りたいと考えるわけであります。  第一点は、十月十七日の法務委員会志賀委員から質問がありました大阪の釜ケ崎事件に関連して、大阪府警の警察官によるいわゆる拷問と申しますか、職権乱用の事案について質問があったわけでございますが、その後相当捜査も進んでおるのではないかというように考えられますので、その後の捜査の結果あるいは捜査の経過について、一つお尋ねをしたいと思います。  なお、人権擁護局長にも簡単にお尋ねしたいと思いますが、一つ刑事局長から……。
  82. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま御質問の点につきましては、その後捜査を進めておることは事実でございますが、その結論につきましては、まだ私ども報告をいただいておりませんので、詳細にお答え申し上げるわけにはいかないと思います。捜査中でございます。
  83. 坪野米男

    坪野委員 今捜査中でまだ報告を受けていないから詳細な報告ができない、こういうことでありますが、先日の新聞記事によりますと、この警察官が諭旨免官になったという記事を見たわけであります。中間報告でけっこうですが、どの程度捜査が進んでおるかということについて、もしおわかりであれば、一つお答え願いたいと思います。
  84. 竹内壽平

    ○竹内説明員 あらかじめ用意をして参ればよかったのでございますが、きょうは九州産交のことをお尋ねになるということでございましたので、問い合わせもいたさずにここに参ったわけでございますが、大阪地検からはまだ報告をいたしておりませんので、もしお答えをするとすれば、若干の時間をいただきまして、先方に問い合わせました結果に基づいてお答えしたいと思います。
  85. 坪野米男

    坪野委員 それでは、その質問はあとに譲りたいと思います。  それでは、人類擁護局長に同じ問題でありますが、人権擁護立場から調査をされた結果あるいは中間報告があれば、一つ御報告願っておきたいと思います。
  86. 鈴木才藏

    鈴木説明員 この件につきましては、中間報告は大阪法務局人権擁護部からございました。五、六名の関係者、警察官及び病院の方からその現場を見たという人たち、その他いろいろ調べてみたという報告は参っておりますが、結論的な最後の意見はこちらにまだ届いておりません。また関係書類をきょう持って参っておりませんので、詳しい中間報告をただいまできませんので、御了承願いたいと思います。
  87. 坪野米男

    坪野委員 それでは、いずれも別の機会に御報告いただくとして、人権擁護局長はお帰りいただいてけっこうです。  それでは、これもさきの法務委員会で私から質問いたしまして、調査の後に報告する、答弁するということで留保になっておりますいわゆる九州産交事件について、その後調査された点についてお尋ねしたいと思います。五、六点にわたっておったかと思いますが、私の方から一つずつ問題点についてお尋ねしますから、それに対してお答え願いたいと思います。一番われわれとして大きな問題じゃないかと考えておるのは、当時の野田検事正が被告発人と阿蘇湯谷ゴルフ場でゴルフをやり、またその晩に阿蘇観光ホテルに宿泊した、会食した、こういう事実があったとありますが、そういう事実があったかどうか、もしあったとすれば、どういう理由で検事正が被疑者と目される被告発人とそういった交歓あるいは会食をしたのかという点について、最初にお尋ねいたしたいと思います。
  88. 竹内壽平

    ○竹内説明員 本年七月八日、土曜日でございますが、野田検事正が阿蘇観光ホテルでただいまお尋ねの人たちと会食をし、その夜観光ホテルに泊まりまして、翌日付近のゴルフ場でゴルフをしたという事実はございます。それはどういういきさつでそういうことになったかと申しますと、野田検事正のかねての知り合いの司法関係の弁護士、裁判官等でございますが、そういう方々からゴルフをして楽しもうじゃないかという対戦の申し込みがあったそうでございまして、土曜日でもございましたので参りましたところ、元阿蘇観光ホテルの支配人の大即あるいはたまたま被告発人の竹林氏もそれに参加したようでございまして、この人たちは阿蘇ゴルフ場での御定連のようでございますが、私も詳しいことは存じませんけれども、ゴルフには何かパートナーが、数がそろはないと出られないそうでございまして、そういう御常連でありますために、その仲間にたまたま参加しただけでありまして、もちろん、被告発人の竹林氏と本件についてそういう機会に話し合ったとかというようなことは全然ないそうでございます。全くスポーツを楽しむということ以外に他意はなかった模様でございます。
  89. 坪野米男

    坪野委員 その会合に九州産交の顧問弁護士の楠本弁護士も参加したという事実はどうですか。
  90. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいまお話しの弁護士は参加しておらないようであります。
  91. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、検事正のゴルフ仲間の呼びかけがあって、たまたまそのゴルフ場で被告発人の竹林専務と顔を合わせたにすぎない、こういうことですか。
  92. 竹内壽平

    ○竹内説明員 先ほど申しましたように、ゴルフ仲間と申しますのは司法関係のゴルフ仲間でございまして、その人たちの申し込みで参加をいたしまして、たまたま竹林氏もパートナーに、中へ参加した、こういうことでございます。
  93. 坪野米男

    坪野委員 この阿蘇観光ホテルに宿泊の申し込み、あるいは宿泊のあっせん、お世話をしたのが被告発人の竹林専務であるという事実はお調べになりましたか。
  94. 竹内壽平

    ○竹内説明員 竹林専務ではなくて、もと観光ホテルの支配人の大即さんが世話をしたということでございまして、やはり関係者みんな会費でやったようでありまして、検事正もそのときに会費三千円を支払ってきたということでございます。
  95. 坪野米男

    坪野委員 出時の客室日報の中に、竹林常務が申し入れたというような書類が、私の方に写真で来ておるわけですけれども、竹林常務の方から表向きの招待は——今言ったようにほかの関係者かもしれませんが、やはり実質的に九州産交の竹林常務の方から話しかけがあってそれに参加されたというような節が、この日報から見ると見られるのですけれども、そういう事実は全然ないということですか。
  96. 竹内壽平

    ○竹内説明員 この調査は福岡の検事長が御自身で責任を持って調査に当たられたものと私は信じておりますが、その調査報告によりますと、ただいまお尋ねのようなことはない模様でございます。
  97. 坪野米男

    坪野委員 野田検事正はこの竹林常務とは以前からのゴルフ仲間ということで、以前から知り合っておったということなんでしょうか。それともここで初めて顔を合わせて知り合ったという間柄ですか、その点一つ伺いたい。
  98. 竹内壽平

    ○竹内説明員 野田検事正もゴルフがお好きで、たびたびそこへもおいでになったことがあるようでございまして、竹林さんとは前から知ってはおられると思いますが、特にこのゴルフ会が竹林さんの招待でなされたものではなくて、司法関係者の方からのお申し出によって参加した、こういうことでございます。
  99. 坪野米男

    坪野委員 今刑事局長が申された通り、野田検事正と竹林常務とは以前からの知り合い——ゴルフを通じてかどうか知りませんが、相当な間柄であったということは明らかのようであります。また、今告発事項に出ておりますが、これ以前に阿蘇山のロープ・ウエー事件というロープ・ウエーの建設にからむ不正事件がありまして、その際には、現在の顧問弁護士の楠本弁護士が告発人になって告発された事件で、これは不明朗ないきさつから不起訴になったようでありますが、その当時からやはり九州産交の竹林常務との関係はおそらくあったであろうと推察されるわけであります。また今この告発事件が熊本地検に継属中であるということも、野田検事正としても十分承知をしておるはずでありますが、たまたま他の司法部の友人の呼びかけでゴルフを楽しむということ自体は問題でないといたしましても、今事件にかかっておる被疑者と目される竹林常務と同席をして、そこでゴルフを楽しむというようなことは、私は非常に不見識な、また不明朗な感を与えると思うわけであります。そういった席に、たまたま今事件が地検に継属しておる被疑者が同席するという場合には、遠慮をする、あるいは途中で退席をするというようなことも、検事正という責任のある立場からしては、当然そういった配慮がなされなければならなかったのではないかと思うわけであります。そういった点について、最高検なりあるいは法務省として、検事正の個人的なつき合いといえばそれまででありますけれども、被疑者と目される人とそういった席で歓談をする、会食をするということは、私は非常に不明朗な感を与えると思うのですが、そういう点についての御意見はいかがでしょうか。
  100. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま阿蘇山のロープ・ウエー事件というお話が出ましたが、これは昭和三十五年十一月七日付で、犯罪の嫌疑なしということで不起訴処分になっておりますが、そういう事件もあり、現にこの事件を捜査中でございますので、その最高の指揮者である検事正が関係者と偶然——別の機会ではあったのでございましょうが、ゴルフ場で会う、そして一緒に会食するといったようた機会にはまり込んで参りましたことにつきましては、御指摘のように、何か考えて、適当な方法があれば適当な方法を講じた方がよかったのじゃないかというふうに私どもも実は考えておるわけでございますけれども、当面の取り調べに当たっておる検事でもなかったので、エチケットと申しますか、そういったようなところから、どうもその場ですぐ、顔を見たら退席するというわけにもいきかねたという事情もあるやに伺っておるのであります。
  101. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、検察当局としては、この野田検事正の行為に対しては、特に注意をするというような措置も何らとる必要がないというお考えでありますか。
  102. 竹内壽平

    ○竹内説明員 この点につきましては、まだ私ども考えをきめておりません。とりあえず調査の結果をここで御報告を申し上げておるわけであります。
  103. 坪野米男

    坪野委員 この点は、今後の検察行政のあり方あるいは検察そのもののあり方としても、ぜひ一つ検察当局から厳重な注意を野田検事正に与えてもらいたいということを、特に強く要望しておきます。  それでは、問題の、前回お尋ねしたいわゆる九州産交会社事件の捜査の状況ですね、最初に一般的に一つ御答弁いただきたいと思います。
  104. 竹内壽平

    ○竹内説明員 先般、この事件の捜査のあらましにつきましては申し上げたと記憶いたしておりますが、最近検察庁からの報告によりますと、この事件につきまして、主任検事のほかに補助検察官をふやしまして、連日取り調べに専念をいたしております。今日までに、被告発人の三名はもちろんのことでございますが、参考人として五十数名を、取り調べを終わっております。なおかつ必要と考えられます証拠物六百数十点を領置いたしまして、これが検討に鋭意努力をいたしておるのでございまして、今後いつこの捜査が終了するかということは、あらかじめはっきり申し上げかねるのでございますけれども、あまり遠くない将来に結論が出し得るのではないかというふうに考えておるわけであります。
  105. 坪野米男

    坪野委員 今の補助検察官というのは、副検事を一人増員されたということでありますか。そういうように伺っておりますが、その程度の検察陣でもって十分この告発事件の捜査を推進して、相当短い期間に捜査を終結することができる、こういう御判断ですか。
  106. 竹内壽平

    ○竹内説明員 現地の検察当局の考え方はその通りでございます。
  107. 坪野米男

    坪野委員 鋭意捜査を進めておって、近く結論が出る、こういうことでございますが、前回私がお尋ねした当初の主任検事の苑田検事から伊津野検事に担任がえをしたという理由、これもわれわれの方では非常に疑惑を持っておったわけですけれども、何か相当な理由があって担任がえになったのかどうか、その点一つ……。
  108. 竹内壽平

    ○竹内説明員 その点につきましては、本年の七月五日に苑田主任検事から伊津野検事に変更いたしましたことは事実でございますが、これは苑田検事が三井三池争議関係事件の公判立ち会い、その準備、それから同争議をめぐって発生しました警察官約五百名に対する特別公務員職権乱用等の告発事件の捜査に従事しておりました関係から、それとあわせて本件の捜査を本格的にやるということは不可能な事情でありましたので、本件の捜査を急ぎます必要上、伊津野検事に主任を変更いたしたものでありまして、全く事務上の都合から変更になったものと、かように結論が出ております。
  109. 坪野米男

    坪野委員 その点はそのように伺っておきますが、最初伊津野検事が担任がえになって熱意をもって捜査に当たられておった、そしてある段階で強制捜査に踏み切るという意思を関係者に漏らされておったようでありますが、その後にその捜査方針が変わって、任意捜査でいくのだというようなことで、今日まで任意捜査でもって被告発人の取り調べも一応済んだように聞いておりますが、任意捜査で十分やれる、強制捜査の必要がないという判断に立たれた理由について、具体的に一つお尋ねをしたいと思います。
  110. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいまの点につきましては、関係の告発人側の受け取り方と私ども考え方との間に少し食い違いがあるようでございまして、これはおそらくは一方は取り調べを促進してほしいという熱心がありますし、他方は事務的に話したことのその言葉じりの受け取り方の相違であろうかと思いますけれども、当局で調べました結果によりますと、伊津野検事が告発人側から強制捜査をしてほしいという申し入れを受けたようでございますが、これに対して本件については任意捜査の方法によって行なうのであるけれども、もし被告発人側が証拠物の任意提出に応じない場合は捜索、差し押えを行なうこともあるかもしれないというような意見を述べたもののようでございます。その際任意提出を求めるにあたりましても、証拠となる書類の内容、保管の場所等を聞きますことは、これは捜査上あり得ることで、また必要でもありますので、その点を告発人側から聞いた事実はございます。しかし、本件の捜査におきましては、当初から今日まで任意捜査の方法によっておりまして、その間捜査方針をいささかも変更したことはないのでございます。従って、伊津野検事が強制捜査に踏み切ることとし、その後その必要がないというふうに態度が一変したというような事実は全くございません。  なお、書類等につきましては、被告発人側におきましても任意提出に応じまして、すべてこれを提出しておりますので、捜査上証拠物に関します限り、その収集に支障を生じた事実はないようでございます。
  111. 坪野米男

    坪野委員 本件のいわゆる会社事件、相当多額の金額にも上る大事件に属する事案だと思うのでございますが、こういった会社事件では、大体ある時期で、あるいは当初から強制捜査で臨まれる場合が通例だと思うのです。ところが、本件の場合は、野田検事正と被告発人の会社重役との間にゴルフを通じての親交関係がある、そういった経緯から何か手心が加えられて、強制捜査に踏み切ることがちゅうちょされておるのではないかという疑惑が起こってくるわけでありますが、今の御答弁では任意捜査で十分やっていけるという確信を持って臨んでおられるということであれば、それも検察庁の独自の御判断として承っておきますが、そういうことでこの告発の事実について相当確信を持って捜査が進められておるのか、あるいはもう捜査は完了に近づいておるけれども、この事件についてあまり的確な心証が得られないというような状況であるかどうか、そういう点についてはお答えいただけるかどうかわかりませんが、もしわかりましたら……。
  112. 竹内壽平

    ○竹内説明員 御質問の点は非常に事件の判断をすることになりますので、近く結論が得られました暁におきましては、御報告を申し上げるのにやぶさかではございません。この段階におきましてはお許しを願いたいと思います。
  113. 坪野米男

    坪野委員 それでは前回やはりお尋ねして、調査の結果を待っておったわけです。いわゆる板井メモといわれる証拠物の原本が紛失したのじゃないかということをお尋ねしたわけでありますが、この点調査の結果、原本はやはりあったということになっておるのでありますが、その点はどうなんですか。
  114. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お尋ねの板井メモ二冊、原本でございますが、これは紛失した事実は全くございません。これを領置いたしまして、今日まで引き続き主任検事の手元にございます。  なお、御質問の際に、伊津野検事が高検にでも行っておるかなということを申したようなことがあったそうでありますが、そのような事実は、伊津野検事は記憶しておらぬということで、これも検事長がみずから伊津野検事を調査したことに基づいての結果の報告でございます。
  115. 坪野米男

    坪野委員 なお、重要参考人と目される美宝堂の林敏夫が別件で詐欺の被疑事件で指名手配中と聞いておりますが、この林敏夫が岡山におるということが判明したにもかかわらず、いまだに逮捕されておらないので、疑惑を招いておるわけでありますが、この林敏夫の件についてはどういうようなお調べでございましたか。
  116. 竹内壽平

    ○竹内説明員 熊本の貴金属商の美宝堂林敏夫氏を本件の参考人として取り調べる必要を検察庁も感じております。現在その所在が明らかでありませんために、いまだ同人を取り調べるに至っておらないので、鋭意その所在を捜査中でございますが、林氏に対しましては別の事件、横領事件でございますが、逮捕状が発せられておりまして、全国に指名手配になっておるものでございます。しかし、まだ逮捕されておりません。そこで、問題の岡山にいるのじゃないかという点でございますが、林の所在に関しましては、林氏から熊本の同人の知人にあてて、住所を広島市と記載して、消印が岡山局になっております書信が届いておる事実があるのでありまして、さらに本年九月二十七日に熊本の北警察署勇川警部補が別の事件の参考人として今村氏を調べられた際に、今村氏にその書面を示されて、林が岡山市か広島市付近にいるんではないかというふうに漏らした事実があるかどうかの点につきまして、そういう事実があるということがわかったのでございますけれども、同警部補も林の所在を確認しておるわけではなくて、そういう手紙を手に入れたという状況でございまして、先ほど申しましたように、指名手配中のものでございますので、わかっておるものをあえて捕えないというような関係ではございません。
  117. 坪野米男

    坪野委員 もう一つお尋ねしたいのですが、本件の告発事件以前の昨年の阿蘇山ロープ・ウェー事件でありますが、この事件の際に、当時の野田検事正は、主任検事の高田検事は非常に熱心にこの事件の捜査に当たっておったようでありますが、この高田検事を転勤させて、あとに堀検事に事件の担当を命じた。堀検事は、この捜査にあまり熱意がなかったのでありましょうか、あるいは鋭意捜査をしたけれども、証拠が不十分であったということでありますか、いずれにしても、堀検事の手でこれが不起訴になって、うやむやに終わってしまったという事件であります。この高田検事が捜査の過程で、しかも最終段階のように聞いておりますが、急遽転勤を命ぜられたという事情についてお調べになったかどうか、その点を一つ承っておきたいと思います。
  118. 竹内壽平

    ○竹内説明員 一般検事の人事の権限でございますが、これは法務大臣がもちろん持っておりますけれども、検事長の推薦によってすることになっております。従いまして、事実上申しますならば、検事長が人事権を持っておると申しても過言ではない状態でございますが、高田検事は熊本地検から長崎地検管内の厳原支部に転任になっております。これは通常の人事異動でございまして、検事正とは関係なく、検事長が全管内の人事をにらんで通常の人事異動としてこれを行なったものであるということを検事長が明言いたしておりますので、この間に熊本の検事正の特別な配慮による異動でないことがはっきりいたしておる次第でございます。
  119. 坪野米男

    坪野委員 このロープ・ウェー事件の直後に、野田検事正がやはり九州産交の会社の重役と「おくむら」という料亭で会食したというような事実があるようでありますが、この点お調べになっていただいたかどうか、お伺いします。
  120. 竹内壽平

    ○竹内説明員 その点はすこぶる重大な問題でございますので、検事長も慎重に調査された模様でございますが、同事件が不起訴になりましたのは、先ほど申したように三十五年十一月七日でございますが、その後に野田検事正等が熊本の「おくむら」で会食した事実があるかないかにつきましては、「おくむら」につきましても取り調べた結果、全く事実無根であるということがはっきりいたしました。
  121. 坪野米男

    坪野委員 その不起訴処分のあった以前、捜査過程においてあったかどうかという点のお調べはどうですか。
  122. 竹内壽平

    ○竹内説明員 そういう事実は私の方にはわかっておりませんが、もちろん綱紀の問題でございますので、厳重に調べた結果だと思います。
  123. 坪野米男

    坪野委員 それが事実無根のうわさであればけっこうでありますが、先ほどお答えのあった阿蘇観光ホテルにおける会食、そういった事件が一つあるというと、やはり検察の威信が疑われるわけでありまして、うわさがうわさを呼ぶということは当然であろうと思うわけであります。しかもこの会社事件が昨年の十二月に告発されて、一月から捜査が進められながら、途中で何回か中断しておる、また担任の検事がかわっておるというようなことから、今日国会で問題になりましてから相当捜査が進展しているようでありますけれども、野田検事正のこういう態度が関係者に非常に不明朗な感じを与えておることになるのだと私は考えるわけでありまして、今後の問題としても、検事正に限らず検察を担当する第一線の検事がこういった不謹慎な態度をとらないように、一つ十分の監督をしていただきたいということを特に要望いたしておきます。  まだ捜査中のようでありますし、十分私の方で満足のいく御答弁がいただけないことは残念でありますが、今後の捜査の過程で——もちろん事件の内容そのものについてとやかく言うわけではございませんが、その捜査の過程でいろいろ疑問の節が出て参りますので、さらに別の機会にお尋ねしたいと考えておりますが、本日は時間の関係もありまして、これ以上質問することはやめまして、この程度で終わっておきたいと思います。
  124. 河本敏夫

    河本委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会