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中澤参考人 時間がありませんから、いろいろ固めて御返事申し上げます。
今
赤松さんがいろいろ言われましたことは、
プロ野球の中ですべて検討し、また研究している問題ばかりでございます。アメリカの
プロ野球は
一つの企業として始めましたけれ
ども、映画あるいは
新聞関係の人材、資本が入っておりません。そこでお金持の
野球の好きな人が企業として
一つのクラブを持ってやりますから、ニューヨークにできたチームに対してはニューヨーク・ヤンキースと言います。日本は、長い間
新聞のおかげで
野球が大
へん繁盛して参りました。いろいろ何とか連盟とか、何とか協会とかいいますが、みなうしろには
新聞社がついて強化して、バック・アップしてここまできたのです。そういう
意味で、
プロ野球もやはり
大学野球とか
社会人野球というものに次いで生まれたために、そういうようなにおいが今でも残ります。そこで今言われたように読売ジャイアンツ、東映フライヤーズといいますが、中におります私
どもは、——見て下さるファンは、福岡のチームだと思うから、福岡の人は一生懸命になります。また東京のチームだと思うから関東の人は一生懸命になります。そこでチームそのものは、チーム・カラーとして、関東に生まれたチームは関東人に好かれるようなチーム、九州に生まれたチームは豪快なチームということで、みんなチーム・カラーを作っておるのですが、いかんせんいまだに電鉄の名前、
新聞社の名前を頭にかぶせておるので、どうかして東京ジャイアンツあるいは西東京フライヤーズあるいは九州の福岡ならば福岡と書いているのですが、さて呼び名を言うときには西鉄ライオンズと言う。もう一歩前まで来ておるのではないかと思います。この点は確かにお話のように、都市を代表するチーム、都市のファンによって支持される
プロ野球ですから、お話のようにいかねばなりませんし、いくようになりつつあると思います。
それから、
一つの会社の
宣伝ということを申されましたが、確かにそういう形で発達して参りましたし、今も強くなれば親会社の
宣伝になるという思想は持たれております。というのは、名前をつけてその会社の専属
宣伝機関のような形で伸びて参りましたが、しかしもう
野球の
選手というものの評価が非常に高くなりましたので、
野球会社そのものの評価が、資本的に言いますと、非常に大きくなって参ります。その証拠に五、六年前、七、八年前は、人はポストで評価できませんが、親会社の課長なり部長級の方が代表あるいは社長をやっておりましたが、今や、セ・リーグさんの方はあとで
鈴木さんからお話があると思いますが、パ・リーグでは親会社の社長六人が全部球団の社長、オーナーになりまして、
野球会社というものは非常に大きく伸びて参りましたから、企業的に見て、
プロ野球の球団会社の独立する時期ももう近いと思います。
そして
世間には大
へんプロ野球が損しているということになっております。事があれば言いますが、これは事実損をしている球団もございます。今申されたたくさん見物の入らないチームは損をしておりますが、しかし昔と違って、入場者が少ないからといって決して損はいたしておりません。見ない人のお金、テレビ、放送、こういうものの金がざくざくと入って参ります。優勝するとかあるいは上位チームに入りますと、たとえば前年度に三千万円で契約した契約が一ぺんに七千万円、八千万円にはね上がった例もございますから、
世間の方が心配されるほど
プロ野球は貧乏をしておりません。
そして、できることなら
契約金を、という話でございます。確かにそうなんです。ただここで申し上げたいのは、どの会社でも、特殊の技能を持っている者には、相当の金を払うと思います。
野球の
選手というのは、ひすいかあるいはダイヤモンドが入っている原石なんです。金鉱が見つかったと言えばだーつと大きな金をかけていく。当たるやつもあり当たらないやつもあります。
プロ野球の
選手というのは、たとえば在学中に高文を通ったりあるいはそういう試験に通った資格者なんです。
高等学校の二年で中退しようが、この人が
プロ野球界へ来ますと、すでに一流なり二流の資格を持った
人間を採るのです。よく中退するといけない、いけないと言いますが、
プロ野球にはちっとも学歴は要りません。小
学校でもよろしい、あるいは
学校へ行かない子でもよろしい。ただし、先ほ
どもいろいろお話を伺っておりますと、大
へんりっぱな
人間を作るように
高校野球連盟がやって下さっておる。私がさらに望むことは、どうぞアメリカのようにもっとまじめな
野球、シーズン制をとって、四月から九月までで
学生野球はぴたっとやめる。昔優勝したり優勝候補であった
学校で、入学率のいい、できる
学校が今優勝の候補になっているでしょうか。
プロ野球としては、決して大きな力のある
選手ばかりほしくないのです。
プロ野球の
選手は頭がなければだめです。ですから、私は
高校野球がもっと視野の広い
野球——この前の
法務委員会の第五号の速記録を見ますと、
文部省の方が、公立
学校にはスカウトなんかする者は一人もいないと言っているが、こんなことは公然の秘密であって、下情に通じないもはなはだしいと思う。
学校を言えと言えば言いますが、名誉のため言いませんが、こんなことは公然の秘密です。スカウトをしているのはあに私立
学校のみならんやです。こんなことを堂々と
会議録に書かれるということが、すでに
高等学校の
野球を指導する方針が間違っているのじゃないか。ですから私はよくできる、頭のいい、そして
野球のうまい者を入れたい。アメリカの
高等学校はシーズン制で四月から九月までしかやらしておりません。しかし今大リーグの有名
選手はやはり四月か九月まで練習した、その中から生まれてくる
選手です。われわれは、日本の
プロ野球が発達するためには、もっと視野の広い、勉強のできる、しかも
野球のできる子がどんどん出ることを望みます。品がいいとか品が悪いということは大
へん抽象的なことですけれ
ども、非常に成績のいい、入学率のいい
学校、いわゆる県立、公立で昔強かったチームがほとんど今優勝戦線に出てきておりませんことは、練習量が少ない
学校は出られないということだと思う。一年じゅう
野球をやっていることは決して品のいい
学校を作るとは思いません。私は日本の
文部省、体育行政をつかさどる
文部省は、そういう面に力を入れて、ほんとうの
高校選手を生んでいただきたい。これが
プロ野球としては非常にいい
選手になるのです。何か
プロ野球というと一年じゅう
野球をやっている、力が強くて
野球だけうまい子を呼んでいるように思いますが、決してそんなことはございません。入りまして二年か三年たったら勝負がつきます。頭の悪い人はそれから伸びません。やはりしっかりした、視野の広い、常識のある、良識を持った子でないと
野球が伸びないことは、稲尾を見ても、あるいは杉浦を見てもわかります。
学校においてしっかりした子ほど
プロ野球は発達するのです。そういう
意味で、これはと思う人は、原石を割ってみると中にひすいが入っている、素質が大きいと思うから金を出すのです。巨人軍の長島君なんか大
へん騒がれましたが、もうすでに
自分がいただいたお金くらい巨人にもうけさしております。だからこれは、
世間の方が
契約金々々々と言われますが、
大学を出た人が定年まで働いてやめるときまでには五千数百万円の金を会社が払うということを、ある経済書の報告で見ました。
プロ野球は、十年使えますか十五年使えますか、一億、三億、三億かせがしても、やめるときには少しも金をやりません。もう君は来年は契約しない、さいならです。だから退職金を初めにもらうわけです。たとえば十年、十五年
プロ野球にいて、そろばんも持たず、英語の本も持たず、毎日バッティング、バッティング、
野球の本を見て十五年たって、三十二、三になって一体何をするでしょう。
学校の卒業証書を持って行ったって、どこの会社も雇いやしません。課長にもなれず係長にもなれない。そのときに何をするか。必ずアメリカの
選手のように、今に日本の
選手も牧場をやったり食堂をやったり旅館をやったりするようになる。その頼みになるのは何でしょう。金です。結局今の
選手が入るときに条件のいいところへ入ってくるのはあたりまえだと思う。やめるときは一厘ももらえないのですから。しかもそれが相対契約なんですから、こっちが五千万円よこせと言ったって、二千万円の価値しかないのは五千万円出しません。ただ悪いのは、
赤松さんにも認めていただきたいのは、せり合うことです。そのせり合いをやめるために
一つのワクを作ろうじゃないかといって、作っちゃ変え、作っちゃ変えしているのですが、これは大物だと思うと十二球団が行ったり十球団が行きます。
新聞記事にこういう笑い話がある。ある球団が確かに抑えているらしいということを聞いた他の球団の人が、安く契約するんじゃないぞおれのところは五、六千万円出すぞと、いやがらせに肩をたたいたという話を大阪のある
新聞記者の方に聞きました。それがわっと広がる。そうするとそれがほんとうかうそか知りませんが、親としては、一千万円のワクと聞いているけれ
ども、あるいは二千万円、三千万円という話を聞いているときに、五千万円というとよろめくかもしれませんね。そういうことは冗談に言うので、私はああいう若い人に五、六千万円実際にほんとうに出すチームがあったら、お目にかかりたいと思うのです。ただそういうようなスカウト競争、せり合いになりますとつい上がっていく。金鉱を見つけて、みんな権利を高くせり合って買うのと同じで、これは確かに素質があると思ったのが尾崎投手です。五、六千万円は
一つはそういうことでお耳に入ったと私は思います。
それから審判
学校や
野球学校を作ろうと思ったことは今まで数回ございました。今阪神の監督をやっている藤本定義君なんかは、
一つ野球学校を作ろうじゃないか、僕が教頭になるから
中澤さん校長にならぬかなんて、七、八年前にそういう相談を受けたことがございますが、そろばんをはじいてやってみるとどうもいかないのです。まだまだその時期でないと思ってとうとう実現しませんでしたが、審判
学校はほんとうに必要だと思います。どうかして作りたいと思っているのですが、今お話しのチームの均等化、これは人為的に強いチームから弱いチームに人をやりますと、せっかくでき上がったチーム・カラーというものがこわれます。そこで弱いチームが強いチームにくっつくように努力して、そうしていいチームを作るようなことをやっておりますので、
赤松さんの言われたことは大
へん魅力のあるお話ですけれ
ども、逆に作為的に強いチームから弱いチームへ人をやりますと、チームの魅力を減らして見物をなくすおそれがありますので、大
へんいいアドバイスでございますが、今すぐそれは使えません。ただ、今お話のありました点は、いずれも
プロ野球ではこれを希望し、検討し、そのように実施しようとして進んでいることだけは確かでございます。また
契約金も、どんどん
選手がふえまして、そして需給
関係がバランスをとりましたら、こういうばかなことはないと思うのです。何分急にブームを巻き起こし、急に強くなろうという意欲が強いだけに、せり合いの
関係でこういう不自然な形になっていることは、私も、またここにおられる
鈴木さんも、経営者でなくてアドバイザーですから、そういうことのないように今力を入れておりますが、力足らず、まだ御期待に沿えない点がございますが、それに向かって進んでいることだけ御報告申し上げます。