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山中(貞)
委員 ただいまの問題で、私は
政府当局の
考え方に三つ誤まりがあると思う。その
一つは、これは
琉球だけの問題ではないということです。それは、奄美大島に、すでに現在の
日本の領土内において
パイン産業というものが存在をし、
パイン産業にたよる
生産農家があり得るわけでありますから、これは、
沖繩の問題をかりに
アメリカの
施政権内のものとしてこれが解決ができないで通過するとしても、
国内対策で無視できない点が
一つあるのだということ。それから、
琉球の対外輸出は、大部分と言われましたが、全量
日本の
市場に供給されておるということ。それから、第三は、消費者の
立場も
考えていかなければならないということでありましたが、これは、砂糖その他の生活必需品に対する
考え方と当然ニュアンスを異にして
考えなければならぬということであります。すなわち、
パイナップルの
カン詰は国民生活の必需食料品ではないのでありますから、少なくとも、
日本国民の農家の
特定の部分でありましても、それに依存してその
産業に生活の根拠を置いておる人たちの生活というものが重点に
考えらるべきである、
価格というものはその次の
配慮がなされなければならないものであるということであります。私は、この問題について、少し時間をおかりいたしましたので、根本問題に触れたいと思いますが、
琉球の農民は軍用地その他で、限られた狭い島の中の耕作農地というものを相当大きく取られました。そのために起こされました
琉球の軍用地接収問題の混乱は、われわれ
国会においても経験にまだそう遠くないところであります。その残された狭隘なる国土の中の、まして狭隘になってしまった田畑の上に
琉球の人たちがつないでおりまする換金作物はたった
一つ今まではカンショだけでありましたが、今ここに戦後ニュー・フェースとして
パイナップルが登場し、着々とその成果をあげておる
状態であります。そうすると、この問題が
自由化をされました暁においてどうなるかという
関心は、決して
琉球の一部の農民だけの
関心であってはならないのでありまして、私たちは、戦後十数年にわたって祖国になお復帰でき得ない
琉球の人々の上に愛情を注ぐ実態としても、この問題をないがしろにしてはならぬと
考えておるわけであります。そこで、現在
保護されておりまする
差益金と
関税との五五%を、かりに引き続き
関税に
差益を振りかえて五五%の
関税障壁を設けた場合に、
自由化した場合にはたしてどうなるかという問題でありますが、
琉球は、現在の九ドル九十八セントを、現存の時点においては
自由化された場合には九ドル六十セントまでは何とかできるということを言っておりますが、しかしながら、一方において、現在予想されておりまする
台湾、
生産量において限界があるとしても
マラヤ、こういうものの
価格は今後の問題として予測を許さないのであります。なぜならば、
自由化されますると、
政府が今日まで持っておりました大きなコントロールの手段、すなわち、数量、それから時期並びに第二義的でありますが
価格の問題、このすべてのコントロールの手段を失うわけでありますから、
台湾の国営的な輸出の管理、あるいは
マラヤが極東における新たなる
市場としての売り出しをこちらの予測以上の情熱をもってもし行ったといたしますとこれらの三つのコントロール手段を失った
日本としては、その予測はなかなか困難であります。従って、おそらく
マラヤは一洋に五ドルに下げる、
——下げ得るでありましょうし、数量において心配要らないといっても、それにつられて、国営的な管理形式を持っておりまする
台湾は、国策としてもこれを五ドルに下げることは可能であり、現実に
自由化と同時に六ドルで殺到するであろうことは、もう火を見るよりも明らかであります。そうなった場合に、
日本の現在の消費
市場の異常なる高さから見まして、この
パイナップル等の消費もまたそれらの
市場獲得のねらいの格好の的であることを私
どもは自覚いたしますので、容易ならぬ事態がそこに起こってくるであろう。そうすると、私
どもは、
沖繩の
パイナップル産業、そしてそれに従事する人たち、
生産農家の人たちのこれから先の見通しについて、重大なる不安を持たざるを得ないわけであります。
そこで、
考えられる
方法としては、来年の九月に一応
自由化のめどを立てておりまする
計画から、一応
パイカンをはずすか、第二には、その
計画のまま進むとしても、向こう五年間ガットにおいて留保年限をつけて、この五年間をもって
沖繩琉球政府が直接に、間接には
日本政府が親心を持って、ガットの許す
範囲の五年以内において諸外国と
自由化になっても太刀打ちできるだけの合理化の直接間接の援助を行なう。第三は、現状のままで、
差益を
関税に振りかえて、
関税障壁を五五%に高める。あまり高めることは、たとえば、
一つの品物で九〇、一〇〇という
関税は感心できませんから、かりに現在のままで振りかえたと仮定をいたしまして、先ほど私の述べましたような、おそらく予想される一極の
市場開拓のためのダンピングの中で、それをこらえて立ち上がっていくためには、
日本政府が直接の形においてその
価格の差を
日本国の予算から補給してやる。あるいは、ドルで入って参りますものに対して円建の
日本の予算から支出するには諸種の困難が伴いますので、従って、その方式等についてもむずかしい
配慮が行なわれなければなりませんし、財政
当局とも意見の一致に達するのは非常な困難を伴うであろうと
考えられまするが、あえてそのような手段をもって、
日本政府の祖国としての万全の
措置をとるか、あるいは、いま一そう複雑になりますが、
琉球政府自体が、
自由化に伴う
琉球の
パイン産業の受ける打撃を、その差額を、
パイン産業の
価格補償金として支出をいたしまして、その支出いたしました金額によって、結局するところ、
自由化されても海外の品物なり品質なりあるいは
価格なりに太刀打ちできるだけの
配慮を
琉球政府自体が行なったその全金額に対して、
アメリカの軍政
当局あるいは本国である
日本政府と十分
連絡協議合意の上、
日本国
政府がまるまるそれを当該年度ごとに決算し、しりぬぐいをしてやる。いずれかの手段しか私は
考えられないと思います。従って、その三つの手段を
考えるときに出されまする結論は、このままの
状態で無条件に単なる
差益の
関税振りかえのみをもって
パイナップルを
自由化することははなはだ困難であろうという結論だけは、事務
当局の諸君も十分
考えられまして、これから早急に、私のただいま
指摘いたしましたような点に
配慮を持ちながら、しからば現在の無条件
自由化が直ちに困難であるとするならば、他の手段と取りかえて、早急に事務
当局は、財政
当局とも
連絡をもちろんとられるでありましょうが、
当局としての
対策をお立てになるようにお願いをいたします。そして、いやしくも間違った観測等をもっておやりにならないように、先ほど
指摘いたしました点等は十分に
配慮をして、私
どもは私
どもで最高首脳部との間にはまたさらに政治的なあっせん等いたしますので、十分急いでその手段を取りまとめられるよう。そして、
琉球の方々が非常に不便な手続を経、高い旅費を払って
日本の東京にどんどん陳情に来られなければならない
状況をすみやかになくしてあげたいということで、時期的にも急ぎたいと思いますから、私は答弁があるならお聞きしますが、答弁は要りませんから、そういう
配慮をもって作業を進めてもらいたいと思います。