○岩下
参考人 全敗連の岩下でございます。前置きはさておきまして、
法案の問題点につきまして申し上げ、お願いをいたしたいと思う次第でございます。
法案の全体を貫く
考え方といたしまして、
調整販売を行なって有利に市場に販売し、かつ合理的な運営を行なうという
考え方に立たれておるということにつきましては賛意を表する次第でございますが、ただ、この
調整販売を実施するにあたりまして、いろいろな問題点が
法文の中に現われており、あるいはその辺が明らかになっておらないというような点がございますので、この点につきまして諸
先生方にお願い申し上げ、なおただすべきはただしていただくようにお願い申し上げたいと思うわけでございます。
まず第一点は、交付金の交付を受け得る法人というのがございますが、この法人の規模、事業区域、こういう点につきまして明らかになっておりません。少なくとも
調整販売、すなわち需要に見合う供給を計画的に実施するという場合には、多数しかも零細な単位における
調整計画というものは根本的に成立しないということに相なろうかと思いますので、これは全国的区域における単一の
機関において計画的な
調整販売を行なうということによってこの趣旨が達成せられるものと
考えられます。しかし、一地方あるいは一町村という範囲における協同組合または法人が、それぞれの
立場において
調整計画を樹立し実行するということは、根本の全体の
調整販売をくつがえすということになる危険性を多分に持つことになろうと思いますので、前段に申し上げましたような全国区域における単一の
機関によってこれが達成されるということを特にお願いを申し上げる次第でございます。
なお、法第二条の第一項の第二号にございます法人、
法文では「売渡し又は売渡しの委託」という表現で出ておりますが、言いかえますと、賢い取りを認めておる、こういうことにうかがえるわけでございます。一たん買い取った品物を
調整販売をするという場合に、先必ず上がるということが確定的にきまっておればけっこうでございますが、相場のことでございますので上がり下がりがございます。一たん買い取ったものを需要に見合う計画販売ということに置きかえる場合には、そこにリスクが生じて参りますので、賢い取りということを前提にいたした
調整販売ということは、根本的に成立しないのじゃないか、こういうふうに考られます。さらに、買取り品を計画に載せるということでございますが、買い取りとは、買い取ってみなければ
数字が確定しないわけでございますので、買い取りをする以前において計画を立てるということになりますと、それは単なる見込み計画ということに相なると思います。従って、買い取り以前における計画は机上計画ということになりまして、現実の数量というものと非常に違いが出てくることになるわけでございますので、買い取りということが根本にあっては、先ほど来申し上げますように
調整計画というものは成立しないのではないか。従って、第三条の二項で計画の承認変更ができる、こういう条文がございますが、今申し上げたような前提で、単なる買い取れるであろうという見込みに立った計画を一たん承認を得て、さらに今申し上げた条文で承認の変更ができるということに相なりますれば、極端に申し上げますと、日々の業務によって計画からそごを来たして参りますのを、三百六十五日計画の変更承認願いを出す、こういうことになって、結局大みそかにならなければ結論がわからない。そういう
調整計画であっていいものかどうか。こういう点が問題になろうと思うわけであります。従って、買い取りという思想をなくして、委託によって計画販売を実行できるようにこの性格をお変えいただきたいということでございまして、すなわち、
生産者から一定の時期においてどれだけの数量をどの
機関に委託をするかという、一定の時期を限って予約あるいは約束をつけて、その約束づけられた数量をもとにして
調整計画を立てる、こういうことにいたさなければ、毎日々々積み上がったものを変更し、大みそかまでいくということでは問題があろうと思いますので、この一定の時期を限って
生産者と取り扱い
機関との委託契約を取り結ぶ、そして一定の期間までにその約束づけられた現品を入庫を終わらせ、その入庫の終わったものに従って計画販売を年間を通じて行なっていく、こういう制度にお変えをいただかなければ、
調整販売ということが成立して参らないのではないか、こういうように
考えるわけでございます。
さらに、先ほど申し上げました買い取りという思想から参りました
調整計画というものは、おそらく、先ほど申し上げたリスクの問題もございますので、出回り期に集中的に販売する計画になって、
調整計画と言えないというような問題になって参ろう、こういうふうに
考えますので、この点についての問題をいろいろあげましたけれども、御指摘申し上げ、御検討をお願い申し上げたい。
さらに、買い取りをいたしましたものを市場に販売して、高く市場に売った場合は、その利益は賢い取りをした扱い業者の利益であると同時に、
政府の支払う交付金額が少なくなるということでありまして、農民の損をもとにしまして扱い
機関及び
政府の利益が達成される、こういうことになって参ろうと思いますので、今まで申し上げましたように、
調整販売計画を実際行なうためには、賢い取りという点をなくしまして、すべて委託でもって計画が立てられて実行される、こういうようにお願いを申し上げ、さらに、そのためには、
生産者の扱い
機関別の
生産者登録といいますか、毎年この年度においてはどの
機関を通じて販売するかというルートの登録を実施をして、それによって還流防止あるいは途中における混乱を防止し、
調整計画の円滑なる実施が行なわれるように御配慮をお願い申し上げたい、こういうことでございます。
次に、先ほど
渡辺参考人からお話がございましたが、
基準価格の問題でございます。これは、この
法案を見た限りにおいては、
基準価格というものが
農家の手取り
価格になるという保証が出て参らないわけでございまして、その一点は、先ほど
渡辺参考人の述べられました
予算の範囲内ということの問題のほかに、第二条第二項の二号の
標準販売
価格の取り方でございますが、この
標準販売
価格の取り方の中で、
大豆にあっては消費地において形成された云々と、それから、なたねにあっては産地において形成された云々ということになっておりますが、
大豆となたねの
標準販売
価格の取り方の要素を一体別々に
考えるという必要性があるのかどうか。さらに、
大豆につきまして、市場において形成される
価格の中に、穀物取引所の毎日六回ずつ場立ちのしております穀取の
価格というものもございますが、これは、すでに諸
先生方御承知のように、実際の現物の受け渡しをほとんど伴っておりません投機の場としての、取引所でございまして、実際現物の取引と遊離した
価格と言ってさしつかえないのではないか。このような現物取引と遊離した場所において形成された
価格を
価格算定の要素にするということは、
実態と遊離した結果が出ますので、
基準価格と
標準販売
価格との差額がすなわち交付金となって
基準価格にイコールする、
農家手取りにイコールするとはならないということになろうと思います。従って、
大豆にあっては、なたねにあってはというふうに別々にしないで、一本にいたしまして、取り扱い
機関が実際に販売しました
価格そのものをとって
標準販売
価格にせられるようにお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
さらに、
法案で参りますと、
農業協同組合系統及び扱い業者の法人という形で、これが複数の
機関が出て参りますが、それぞれ複数の
機関が販売をした複数の単価を一本単価に直す、こういうことになりますと、さらに実際販売
価格と遊離して、
基準価格が
農家に渡らないという結果が出て参りますので、この点も、前段で申し上げましたように、販売の
機関は単一の
機関で販売をいたしますれば、単一の単価が出て参りまして、
基準価格と
標準販売
価格との差額金によって
基準価格が全部の
農家に保障されるという結果が出て参りますので、ぜひそのようにお願いをいたしたい。
さらに、そういう問題を引き伸ばして参りますと、たとい前段で買取り制をやめて委託制度にいたしましても、つど委託ということで、きょうの売り上げ金をその
農家に渡し、あすの売上げをあす
農家に渡す、こういうことをいたしますと、また
農家の手取りというものがまちまちになって参りますので、ここで共同計算というものが具体的には実施されるという
内容にならないと、
生産者に
基準価格が確保できないことに相なろうと思います。この点も、先ほど来、根本を委託に置き、そして単一の
機関で取り扱い、販売をする、こういうことを申し上げました
理由であります。
それから、さらに、農林大臣の定める交付
対象数量、これは農林大臣の定める一定数量が交付金を支出するもとの数量になって参るわけでございますが、先ほど
渡辺参考人からも御
意見がありましたように、麦作転換、あるいはその年の豊凶、それから、私どもすでに
生産の合理化を進めつつございますが、その結果から出て参りますものは、逐次数量は増加して参ろうと思いますので、この大臣の定める一定数量というものには慎重なる御配慮をいただくことが必要であろうというように
考えます。
さらに、この数量の
決定の時期でございますが、
法文を拝見いたしますと、大体物が
流通し出す以前の段階においてこの数量が
決定される、それは協同組合または法人の
提出いたします
調整計画の承認の段階においてこめ一定数量が
決定を見る、こういうことになろうと思いますが、先ほど申し上げたように、単なる買い取れるであろうという見込みをもとにした数量によって各団体が
提出したトータルが、当初予定しております農林省当局の数量をはみ出てしまったという場合に、この
調整をいかにするか。また、この
調整を終わって、一定の数量が定められて、実際に現物を取り扱った結果、ある団体はその大臣の定められた一定の数量の範囲内であり、ある団体は定められた数量のワクをはみ出たという場合に、ワクをはみ出た団体に属する
農家の取得する交付金の単価は非常に安くなってくる、こういう矛盾が生じて参りますので、これらの点につきまして、もっと合理的な方法で実施を行なえるように十分御配慮をお願いを申し上げたい。
それから、さらに、
大豆の特殊性といいますか、従来の国内
大豆は、
流通されるであろう数量の約半数というものが無検査で
流通をしておるわけでございますが、無検査で
流通しているものに対する格づけというものが非常に困難になって参りますので、この
流通される
対象にするものは、検査を受けて格づけの行なわれたものを
対象にするということにして、正しく
農家に格づけに基づく品位の
価格が支払えるように御配慮を願いたい、こういう点でございます。
さらに、最後に申し上げておきたいのは、この制度で、扱う法人を通じて交付金が流された場合に、
農家に正しく渡らない場合が虫ずる。こういう場合には、波さなかった取り扱い
機関は処罰を受けますけれども、もらわなかった
農家にだれかがかわって支払うという保証がないわけでございまして、間違いなく
農家に必ず渡るという制度に御配慮を願わなければならない、こういうようにお願いをいたしたいと思うわけでございます。
以上、問題になります主要な要点を申し上げたのでございますが、最後に、この
大豆、なたねとはちょっと関係がはずれるわけでございますけれども、
大豆、なたねがこの七月以来自由化されました結果、こういう保護を
要請し、実現をお願いしておるわけでございますが、また近年のうちに色豆類のAA制が実施されるということもうわさされております。これらについても、AA制実施の暁は、また国内
生産者への圧迫が生じて参りますので、事前にこれが保護を講ずるように特に諸
先生方に御配慮をお願い申し上げまして、私の
意見の陳述を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。