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1961-10-26 第39回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十六日(木曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小山 長規君 理事 田口長治郎君    理事 丹羽 兵助君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       金子 岩三君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邉 國男君    舘林三喜男君       谷垣 專一君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       中山 榮一君    藤田 義光君       本名  武君    松浦 東介君       八木 徹雄君    米山 恒治君       足鹿  覺君    片島  港君       川俣 清音君    北山 愛郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    楢崎弥之助君       西村 関一君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         食糧庁長官   安田善一郎君  委員外出席者         農林事務官         (畜産局参事         官)      保坂 信男君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会農政         部長)     渡辺 勘吉君         参  考  人         (全国販売農業         協同組合連合会         畜産部長)   寺村 秀雄君         参  考  人         (日本乳製品協         会会長)    瀬尾 俊三君         参  考  人         (北海道農業協         同組合中央会参         事)      鈴木 善一君         参  考  人         (茨城県久賀農         業協同組合組合         長)      飯島 忠則君         参  考  人         (全国販売農業         協同組合連合会         麦類雑穀部長) 岩下 豊水君         参  考  人         (全国雑穀商協         同組合連合会専         務理事)    石井 磐根君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 十月二十六日  委員片島港君及び北山愛郎辞任につき、その  補欠として川俣清音君及び永井勝次郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員川俣清音君及び永井勝次郎辞任につき、  その補欠として片島港君及び北山愛郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 十月二十五日  建物共済農協一元化に関する請願山本猛夫君  紹介)(第九六七号)  同(綱島正興紹介)(第一〇一六号)  同外二件(徳安實藏紹介)(第一〇一七号)  同(加藤高藏君紹介)(第一一四八号)  同外一件(中山榮一紹介)(第一一四九号)  同外十四件(宇野宗佑紹介)(第一二四一  号)  同(佐々木更三君紹介)(第一二四二号)  同外十三件(坂田英一紹介)(第一二四三  号)  同外二件(毛利松平紹介)(第一二四四号)  かすみ網猟法の解禁及びつぐみ等狩猟鳥追加  に関する請願羽田武嗣郎紹介)(第九六九  号)  果樹の共同利用施設等融資制度に関する請願  (羽田武嗣郎紹介)(第九七〇号)  分収造林収益分収割合改訂に関する請願(羽  田武嗣郎紹介)(第九七一号)  農林水産企業合理化試験研究費の増額に関する  請願羽田武嗣郎紹介)(第九七二号)  中央卸売市場法の一部を改正する法律案に関す  る請願坊秀男紹介)(第九七三号)  同(伊藤五郎紹介)(第一〇八二号)  同(荒舩清十郎紹介)(第一一三九号)  同(石橋湛山紹介)(第一一四〇号)  同(池田正之輔君紹介)(第一一四一号)  同(江崎真澄紹介)(第一一四二号)  同(遠藤三郎紹介)(第一一四三号)  同(海部俊樹紹介)(第一一四四号)  同(神田博紹介)(第一一四五号)  同(志賀健次郎紹介)(第一一四六号)  同外二件(丹羽兵助紹介)(第一一四七号)  同(小島徹三紹介)(第一二四五号)  同(渡海元三郎紹介)(第一二四六号)  農業災害補償制度改善等に関する請願(植木  庚子郎紹介)(第一〇一四号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案の成立  促進に関する請願草野一郎平紹介)(第一  〇一五号)  同(仮谷忠男紹介)(第一一五〇号)  同(高橋等紹介)(第一一五一号)  同外十二件(川村継義紹介)(第一二四七  号)  同外十二件(坂田道太紹介)(第一二四八  号)  同(松野頼三君紹介)(第一二四九号)  地方卸売市場法制定に関する請願稲富稜人  君紹介)(第一〇八三号)  国内産学校給食用牛乳供給事業拡大に関する  請願田中彰治紹介)(第一一二五号)  農業経営相続法制定に関する請願坂田英一  君紹介)(第一一六八号)  日本海区水産研究所利用部の存置に関する請願  (田中彰治紹介)(第一一六九号)  甘しよ糖業育成措置に関する請願池田清志  君紹介)(第一一七〇号)  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融  通に関する暫定措置法の一部改正に関する請願  外二件(宇田國榮紹介)(第一二三九号)  同外一件(上林山榮吉君紹介)(第一二四〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  畜産物価格安定等に関する法律案内閣提出  第四八号)  畜産物価格安定法案芳賀貢君外十一名提出、  衆法第七号)  大豆なたね交付金暫定措置法案内閣提出第六  二号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。内閣提出畜産物価格安定等に関する法律案及び芳賀貢君外十一名提出畜産物価格安定法案並びに内閣提出大豆なたね交付金暫定措置法案の各案審査のため本日御意見を承ることになっております参考人のうち、北海道農業協同組合中央会会長高橋雄之助君より、都合により本日出席できない旨の連絡がありましたので、この際、同中央会参事鈴木善一君より参考人として本日各案についての御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 野原正勝

    野原委員長 内閣提出畜産物価格安定等に関する法律案芳賀貢君外十一名提出畜産物価格安定法案、及び、内閣提出大豆なたね交付金暫定措置法案を議題として審査を進めます。  これより三法案についてそれぞれ参考人方々より御意見を承ることといたします。本日御出席をいただいております参考人方々は、お手元に配付してあります参考人名簿通りでありますので、御了承願います。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず参考人として御出席いただき、まことにありがとうございました。今後の農政に重要な関連を有しますこれらの法案につきまして、深い識見と御経験を有せられます参考人各位より、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって法案審査の貴重なる参考に供したいと存ずる次第でございます。  それでは、畜産関係法案から参考意見を順次承ることといたします。  なお、参考人各位には、最初委員長指名順に一人十分以内程度にお述べいただき、あとで委員の質問に応じていただきたいと存じます。  まず、参考人渡辺勘吉君よりお願いたします。渡辺勘吉君。
  5. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 御紹介いただきました渡辺でございます。  常日ごろ農政問題について要請をいたしております立場として、参考意見を述べる機会を与えていただきましたことに非常に感激をいたしますとともに、与えられた事柄重要性考えますと、非常に浅学であり経験に未熟な立場からこれから申し上げることについて非常に恐縮をするわけであります。せっかくの機会でありますので、与えられた時間の範囲内で畜産物価格安定法案についての意見を述べさせてもらいたいと思います。  ただいまの臨時国会で、われわれ農業関係者は、農業基本法に関連いたしますところの実体法が次々と審議されているその事柄内容につきまして、異常なまでの関心を持ってその経過を見守っております。それといいますのも、農業憲章的な農業基本法が個々具体的にどう肉づけされるかということが、これからのわれわれの進む方向というものをほとんどゆるぎないものにまで確立していくという動向が決定されようとしているからであります。従いまして、数多く提案されている法案の中でも、とりわけわれわれの関心の深いものの一つが、本日これから参考意見を申し上げる畜産物価格安定法案だと言えると思います。  農業基本法は大へん新しいハイカラな言葉を使っておりますが、その中でも農業生産選択的拡大という言葉なんかは大へんハイカラな言葉であります。この基本法でうたっておりますところの農業生産選択的拡大ということは、農業基本法に描かれた農政の最も大きな柱の一つだと理解をいたします。その意味するものは、手っ取り早く言えば、売れないものの作付はやめて、売れるものに切りかえるということであります。選択的拡大を実施いたしますためには、それが円滑にできるように、生産拡大する作物の価格なり流通なりの政策を強化する必要があります。畜産がこの選択的拡大のスポット・ライトを浴びて最も期待される成長部門として登場いたしましたことには、ほとんど異論がないわけであります。それだけに、この畜産発展にはきわめて内在する問題が多くあるわけであります。  申し上げるまでもなく、農業は、他産業に比較いたしまして、自然的に、経済的に、社会的に、不利な制約を受ける特異の性質を持った産業であります。この農業の背負う各種の不利益に対し、経済面からの制約を補正し、所得の向上に資せしめようというのが価格政策であります。従いまして、農業基本法のいうところの選択的拡大対象部門であるところの畜産物価格安定施策がどういう内容実体法にうたわれるかということがわれわれ関係者の重大な関心を呼ぶと冒頭に申したのもこのゆえんであります。  まず第一に、この畜産物価格安定制度に対する基本的考え方から申し上げますと、三十五年の十二月二十六日、全中といたしましては、畜産物価格安定制度の確立に関する要請国会に対していたしております。その要点というものをまとめて再びここで御紹介をいたしますと、第一は、生乳あるいは肉豚等農家生産物価格は、その再生産を確保するというところに価格のめどを置いてほしい。第二点は、買い入れ対象は、生乳あるいは枝肉というものを対象品目にしてほしい。それから、買い入れ機関は、これは本来的には政府特別会計を設けることが望ましいのでありますが、特別会計を一歩譲って事業団という扱いをいたしました場合にも、その出てくる年間の損失補てん措置する措置を講じていただきたい。要約してこの三点にしぼった三十五年十二月の要請基本線は、系統農協としてこの法案に対する原則的な態度であり、これは今も変わっていないわけであります。  そこで、まず買い入れ価格のきめ方についてでありますが、示された政府案によりますと、一体どこに算定の指標を置いておるのかきわめて不明確であります。一方、乳製品製造経費のはじき出し方につきましては、標準生産費——その製造の実費を調査をいたしまして、それを基準として定めるという、いわゆる生産費方式でありますのに、一方、牛乳における価格のきめ方というものは、過去五カ年のいわゆる市場価格と申しますか、そういうものを建前としておるということは、同じこの生乳あるいは乳製品という一連の生産に対する価格としてはプリンシプルが一貫していないということが考えられるわけであります。価格をきめる指標となるものは、今のところどうしても生産費以外にはないと理解をいたすのであります。従いまして、ただいま北海道からも要請があったようでありますが、所得補償生産費を補い所得を補償するというシステムをこの畜産物価格の中に一挙に具現できないといたしましても、さしあたりはやはり生産費基準とした価格のきめ方を法文に明確に打ち出してほしいと思います。  次に、買い入れ売り渡しについてでありますが、その買い入れ対象品目に対しましては、生乳練乳飲用牛乳買い入れ品目に入れるべきであると考えます。その理由としては、生乳につきましては、乳業会社から乳製品買い入れるのでは、これは会社在庫調整に役立つだけでありまして、生乳価格の安定ということには、三十三年の体験から見ましても、ならないと考えます。生産者団体委託加工品を受け入れればよいという考えも、これはかなりあまいのではないかというふうに考えられます。練乳につきましては、いつも乳価の値下げが練乳のダンピングという手段によってはかられておる経過からかんがみまして、この練乳斜陽商品であるという理由だけでこれを対象品目からはずすということは、納得がいかないのであります。なお、飲用牛乳につきましては、乳製品だけを対象としていることに対して、市乳地帯生産者はかなり不満を持っておるわけであります。また、たな上げ保管だけでは価格は回復しないわけでありまして、これは、すみやかにこれを処理する機能が十全に発揮されなければ、その安定を期することが非常に困難であろうというふうに考えます。  それから、次に、買い入れ方式についてでありますが、これは買い入れを義務づける必要がどうしてもあるというふうに考えます。買い入れることができるという原案だけでは、この点が非常にすっきりしない。やはりこれを義務づける必要があろうかと考えます。  それから、売り渡しの方法についてでありますが、学校給食等特定用途向け売り渡しを明文化していただいた方がいいと考えます。在庫をいつまでも抱えておる状態を予想しては、これは絶対価格の回復がおぼつかないわけでありますので、多少の価格差補給金財政支出をするという態度が必要な問題でありまして、この結果過渡的には二重価格制というものが現われても、これは当然ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、次に、買い入れ機関の点でありますが、この点につきましては、すでに農産物については食管法あるいは農産物価格安定法というものによりまして政府特別会計を設けて価格安定政策をおとりになっておるのでありますが、農産物でのこうした措置畜産物にも及ぼし政府が直接管理するという考え方を、重要畜産物についてやはりこの安定の措置の中にうたっていただくべきではないか。そういう建前から申しますと、原案では事業団ということになっておりますが、冒頭に申しましたように、政府が直接管理するという方式がどうしてもおとり願えないといたしまして、事業団という一つ機関を新設されまして乳価安定措置を講ずるということになった場合でも、その安定機能を発揮することによって生ずる当然の損失というものは、これは毎年政府によって一般会計からこれを補てんするという措置法文の中に明確に現わしていただく必要があろうかというふうに考えるわけでございます。  なお、その他の問題でありますが、牛乳につきましても、あるいは食肉につきましても、本来ならばやはりそれらの調整をする機能というものは農協が果たすべきでありますけれども、現状におきましては一挙にこれらを農協の自主的な機能によって果たすことができないという実態にあるわけでありますが、その点は調整なり保管なりということを自主的にやるといたしましても、それらの経費は現行では明らかに採算割れであります。従いまして、現状におきましては、これはやはり政府の強力なバック・アップなしには調整ということは困難な実態でありますので、やはり、この調整機能中心とする諸施設については、行政において全責任を持ってその設備が完備するような措置をおとりを願いたいというふうに考えます。  与えられた時間を経過をいたしましたのでこれ以上は申しませんが、価格決定する際の審議会構成については、その中心生産団体中心委員構成していただくとともに、なお国会の代表にも当然委員に入っていただいてこの価格審議会審議というものを運営するような構成をはかっていただきたいというふうに考えておるわけであります。  冒頭に申しましたように、農業生産選択的拡大のホープとして目されておる畜産部門に対しまして、ただいま政府でお考えになっておりますように十億程度予算措置酪農基金からの繰り入れ等によって事業団を創設して価格の安定をはかるということでは、あまりにもこれは貧弱の感を免れないと感じます。どうしても、これは、事業団に担当させるといたしましても、赤字を顧慮せずにこの安定の機能を十分発揮するというためには、かなり思い切った成長部門に対する措置をここで積極的に講じていただきたい。農業基本法でいうところの経済的な不利を補正するというためには、基本法の各条文の中にある農業保護というものを積極的にこの畜産物価格安定法基本に据えて、そうしてあくまでも私たちが安んじて畜産部門に没頭できるような一つ実体法であることを強くこの畜産物価格安定法に望んでやまないものであります。  以上で私の参考意見を終わらせていただきます。
  6. 野原正勝

    野原委員長 続いて寺村秀雄君に願います。寺村秀雄君。
  7. 寺村秀雄

    寺村参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました全敗連畜産部長寺村でございます。参考意見を申し述べさしていただきます。  農業生産選択的拡大が提唱されまして、その具体的選択品目としまして、畜産物生産拡大という指標が大きく取り上げられたのでございますが、農家はこれによりまして一種の安心感を持ったというような状況であるわけでございます。さらにはまた、それを飛躍いたしまして、その経営の中に最も合理的な姿で畜産を取り入れることによりまして、いわゆる所得倍増というものの達成も必ずしも不可能ではないという期待をも持って畜産生産に邁進しかけておるような状況であるわけでございます。つきましては、国の意思の最高決定機関としての国会の諸先生方におかれましては、この農家期待を単なる期待にすぎなかったというような結果が出ないように、今後とも万般の諸施策の樹立をさらに広く深くお進めいただけるようにお願いいたす次第でございます。  この意味におきまして、畜産局の三十六年度の予算が、事業団出資の五億円を除きまして四十五億にすぎないというこの数字につきましては、われわれ生産者関係といたしましては非常に心さびしいものを感じておるような状況であるわけでございます。およそ、畜産事業安定的発展というものを期待いたしまするには、生産面対策消費面対策との二つに大別されようかと思われる次第でございますが、生産面対策といたしまして最も必要なものの一つとして考えられますのは、低利でしかも長期の金融であろうかと思われるわけでございます。農家畜産事業を開始するにあたりまして、まずもって最も悩みます問題は施設費の問題であるわけでございます。これをたとえて申し上げますれば、鶏を飼うといたします場合に、おおむね標準的な施設費として、鶏舎あるいはケージの購入費等でございますが、一羽当たり五百円ぐらいの金を必要とするわけでございます。従いまして、ここで五百羽養鶏を実施しようとする場合には、おおむね一羽当たり五百円の五百倍ですから二十五万円の金を必要とするということに相なるわけでございます。かりにここに八反歩米作農家があるといたしまして、生産されました米の全量をあげて政府に売る、かようにした場合、おおむね二十五万円ぐらいの収入になろうかと思われるわけでございます。かくしますれば、いわゆる標準農家——反歩標準以上であろうかと思いますが、標準農家米作収入をあげて五百羽養鶏施設にぶち込まなければならないというような状況が見られるわけなんです。この例で示します通り畜産卒業を開始するにあたりましての施設費重要性というものは、きわめて大きい問題であるわけであります。西独ほどでなくても、せめて近代化資金というようなルートを開かれまして多少の前進はされましたことを喜んでおるのでございますが、それにいたしましても、七分五厘の金融で専業がペイするというような農業経営ではないことを残念といたす次第でございます。ここらあたりの点を特に御高配願えますればと念願する次第でございます。  さて、当面の問題になりまするが、第二の流通面対策、これをさらに大別いたしますれば、価格対策と、この対策が実効をあげるために必要とするところの並行対策としての生産者団体の共販を強く盛り上げる対策が必要であろうかと思うわけでございます。この二つ対策は車の両輪のような格好考えられる次第でありまして、この両方が相整備されて初めて流通面対策はなれりというような格好が出てくるんじゃないかと思われるわけでございます。私の以下申し述べまする畜産物価格安定法案に対する具体的な意見も、この二つ対策を並行して実施していただきたいということを骨子といたしておるわけでございます。  これを具体的に申し述べさせていただきますれば、第一は価格問題でございます。政府提出法案の第三条第四項によりますれば、価格決定にあたりましては、「生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して定める」、かように相なっております。これにつきましては、社会党案にありますところの、生産費基準とし再生産を確保することを旨として定める、再生産が可能な価格で定めるというところに法律案の修正存願えますればと念願いたす次第でございます。その理由につきましては、渡辺参考人からも申し述べましたので、省略させていただきます。  次に、この価格構成に関連いたしてでありますが、政令で価格を定められます場合に、当然のこととして、まずもって農家庭先価格というものが算定せられまして、それに指定場所までの運賃諸掛り欠減等損失といったものが積み重ねられた数字となろうかと思うのでございます。この場合に、運賃諸掛りに問題があるわけでございまして、やはり、作業としまして技術的にある程度プール計算はやむを得ないと思われるわけでございます。しかしながら、全国的に見まして、運賃諸掛り地帯別等に大きなバラエティがある場合におきまして、これを十ぱ一からげのプール計算で算出するという行き方は少しラフではあるまいか、かように考えられるわけでございます。従いまして、そういう内容に応じまして、運賃関係は二本建あるいは三本建というものを考えていただく。——グループ別プール。従いまして、出てきました最終的な価格というものもやはり二本建、三本建ということになるかと思われるわけでございます。このように、実態に即したところで全国至るところの農家が同じ生産費をカバーしてもらえるというような全体の組み立てをお願いいたしたいと思うわけでございます。  特に、この点につきまして、乳製品の問題につきましては委託加工方式というのが法律案には出ておるのでございますが、この委託加工を可能ならしめるための措置といたしましても、広域的な集乳というものが必要とされるということが考えられるわけでございます。現在の原料の流れ以上に広い地域から一カ所の加工工場に集中するということが実際問題として必要になろうかと考えられるわけであります。かように見ますれば、先ほどお願いいたしました運賃関係の組み立て方というものは特に慎重を要する、実態に即して運賃を組み立てていただきたい、かようにお願いいたす次第でございます。  第二点といたしましては、指定品目の問題でございます。これも渡辺参考人から申し述べましたので詳しいことは省略さしていただきたいと思いますが、少なくとも練乳政府闘い上げ対象の指定品目の中に初めから入れていただく。政府案によりますれば、政令によって入れることが可能であるという含みは残っておりますけれども、練乳につきましては、あとから政令で入れるという含みに残すべき問題ではなかろう、かように考えておるわけでございます。と申しますのは、生産者団体が乳の加工工場を持っておりますのがかなりあるわけでございますけれども、そのうちほとんどは練乳の加工施設でございます。粉乳の加工施設生産者団体の持っておりますものが全国に二、三しかないということであります。一方、練乳につきましては、おおむね十四、五県かに生産者団体練乳の加工施設を持っておるようなわけでございます。従いまして、練乳を初めから指定品目の中に入れていただきまして、これを買い上げの対象にしていただくということになりますれば、委託加工というよりむしろ自己加工という方向で相当のものが解決されるのじゃあるまいか、かように考えられるわけであります。  次に、事業団方式でございますが、これも渡辺参考人から申し述べましたので詳しいことは省略さしていただきますが、いずれにいたしましても、事業団方式をとる場合に最も問題とされますのは、その機構並びに運営がどうなるであろうかということでございます。率直に申しまして、役所の機構に準ずるようなものでございましては、この仕事はなかなか円滑に参らない。極端に言いますれば、芝浦へ行って豚を買うということになるわけであります。私ども職員が芝浦で血にまみれて豚の販売をやっております。こういう仕事をお役人さんにやっていただくこと、あるいはお役人さんに準ずるような考え方の方にやっていただくことは、なかなか困難性があろうかと思われるわけでございます。従いまして、事業団構成並びに運営にあたりましては、そういういわゆる琴柱ににかわして琴を鼓すというような機構にならないように、あるいは運営に当たる人間がそういう形にならないようにという方向で特にお考えを願いたいということでございます。毎日流れておるものでございます。しかも、ある意味におきまして、いわゆる畜産物でございますから、その中におきまして自己の責任と経験とにおいて迅速果敢に処理をする、しかもみずから挺身して事に当たるというようなことが、事業団の役職員の方には強く要請されるのではあるまいかと考えられるのでございます。これが逆に、官僚機構と申しては失礼でございますが、そういったものの出店のような格好に相なりますならば、むしろこれはやはり政府直接買い上げという一本の線の方がよりベターであるというふうに考えられるわけでございます。
  8. 野原正勝

    野原委員長 参考人の力にちょっとお願い申し上げます。  実は時間が非常にございませんので、できるだけ簡潔に、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  9. 寺村秀雄

    寺村参考人 承知いたしました。  次に、事業団の欠損処理の問題でございますが、政府案によりますれば、第五十三条に、損失を生じたときは毎年その欠損処理をすべきである、かようなふうに書いておりますが、その損失が累増していった場合にどうするかという問題が規定されていないわけでございます。私どもといたしましては、その点判断了解に苦しむわけでございます。事業団がたまたま一年度損失が生じたが、長い目で見て黒になるというならば、事業団の存在意義がどこにあるかというようなことも問題になろうかと思われるわけでございます。やはり、ある程度損失はやむを得ないという格好で出るべきものではないかと思われるわけでございます。そうした場合にその損失の処理をどうするかという点が規定されていない点が、私どもといたしましては非常な不安を持つ点でございます。  次に、生産者団体の自主調整の強化の問題でございます。先ほども申し上げました通り価格対策と自主調整を強化する対策、この二つが車の両輪であるということを申し述べたのでございますが、そういう意味におきまして、自主調整が積極かつ果敢に実施されるように、万般の諸施策を思い切って実施していただきたいのでございます。たとえば、鶏卵の保管倉庫あるいはまた肉の保管倉庫の施設というものは、現在のところ全然ないというような状況でございます。こういうものがなければ自主調整がなかなか困難であるということは申すまでもないわけでございます。  次に、それと関連してでありますが、政府案によりますれば、法第三十八条第四号によりまして、生産者団体の行ないますところのいわゆる自主調整保管に関するところの計画の実施に要する経費を助成すること、これは、省令で定めるところにより、かように規定されておりますが、これにつきましては、先ほどからお願いいたしましたような趣旨によりまして、その経費が満額助成されるという方向で御処理願えることを切望する次第であります。それによりまして、われわれ生産者団体といたしましては、自主調整を前段に打ち出しまして、小さな波を防ぐというような機能を十分発揮いたしたいと考えておるわけでございます。そのことによりまして、結局政府買い上げ数量も減らし得る可能性が出てくるのじゃないか、かように考えておるわけでございます。  最後でございますが、競合品の輸入禁止また抑制問題についてお願いいたしたいのでございます。伝えられるところによりますれば、三十七年、来年の秋から鶏卵がAA制になるというようなことを伺っておるのであります。もしこれが事実といたしますれば大へんなことであろうかと思われるわけでございます。われわれの年輩の者にとりましては、戦前、中共卵、当時は支那卵でございますが、支那卵が日本の鶏卵市場を席巻したことはなまなましい記憶としてあるわけでございます。現在の中共の政治組織からいたしまして、それがどうなるかということを考えますと、非常に危険性が考えられるわけでございます。国家貿易といたしまして、いわゆるソーシャル・ダンピングの格好において日本に持ってくるということもまた最高者の決意一つでできるわけであります。そのような危険が感ぜられるわけであります。しかも、これを別といたしましても、アメリカなり何なりから冷蔵卵が大量に安く入ってくる危険性すら感ぜられるわけでございます。もしかように相なりますれば、鶏卵の出産事業は壊滅に瀕することに相なろうかと思うわけでございます。この点におきまして、こういう競合品の輸入禁止を必要とするものは絶対にAA制にしないという方向で御検討願いたい、ぜひとも実現をお願いいたしたいと思うわけであります。肉類にいたしましても、やはり牛肉につきましては現状通り外貨割当制を将来とも続けていただくことによりまして、牛の生産の安定もあろうかと思われるわけであります。何と申しましても、わが国の農業生産物は、そのよって立つ基盤の脆弱さからいたしまして、これを国際的にほうり出しますれば、すべて壊滅に瀕する危険性のあることは今さら申し上げるまでもないところであります。世界各国とも農産物につきましては手厚い保護政策をとっておるような事情もあります。いわんや、日本においてはさらに手厚い保護政策というものが必要とされ、それによって社会秩序も保たれ、国民全体の繁栄も期待されるというところであろうかと思われるわけでございます。これらの点につきまして、何分ともよろしく御高配をお願いいたしたいのでございます。  以上申し述べました諸点の実現につきまして格段の御考配を賜わりたく、意見を申し述べさしていただいた次第でございます。
  10. 野原正勝

    野原委員長 次は瀬尾俊三君にお願いします。でき得るだけ簡潔にお願いいたしたいと思います。
  11. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 私、日本乳製品協会の会長をいたしております瀬尾俊三でございます。畜産物価格安定法案についての所見と、御留意をぜひわずらわしたいと思います点を七カ条ばかり申し上げたいと思います。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕  まず第一に、この法案の中に流れております思想とでも申しますか、元来、酪農と乳業は常に共存共栄の立場にあるものかと私は考えておりますが、その立場においてお互いに発達が期せられるのでございまして、一方的な繁栄というものはあり得ないと信じております。いわゆる一蓮托生の運命にあるのでありますが、この法案内容は、あるいはその思想において両者を何か対抗的に、対立的に取り扱って、需要と供給の関係に対する考慮、また特に両者の提携強化に対する御配慮が欠けておるのではなかろうかというような点がうかがえるのであります。この考え方は、今後のわが国の酪農発展の基本をなす問題であろうかと思うのでございまして、この点特に格別の御留意をお願い申し上げたいと思います。  第二の点は、日本の酪農の安定に非常に重大な影響を及ぼすと思われます貿易自由化の問題であります。貿易自由化問題は、わが国の酪農、乳業の将来に対する重大問題でございますことは、今さら私が申し上げるまでもありません。しかし、まだその基本的な対策を明確にされておらないのでありまして、政府当局におきましては、自由化しないということは申されますが、現実には近年相当大量の乳製品が輸入されておるのであります。これは一面実質的に自由化への第一段階にあるようにも思われるのでありまして、ことに、ガットあるいはIMF等の国際情勢あるいは世界各酪農国の生産がやや過剰状態にあると見られております今日、これらをよく判断いたしますと、その点は甘く考えておられないものがあると心配されるのであります。これらは、今後の酪農、乳業のあり方、乳価安定上重大な問題がありますので、その対策、方針等明確にしていただき、まず海外競争に耐え得る酪農、乳業自体の体質改善をはかり、その上に本質的に価格の安定を期することが本筋であろうかと考えるのでありまして、この点につきまして格段の御配慮をわずらわしたいと存じます。  次に、第三の点でありますが、乳価安定の基本についてであります。積極的な酪農の保護育成助長のために、原料乳価は年産費を保障する、価格の安定維持をするということには私ども異論はないのでありまして、むしろその実現を希望するものでありますけれども、反面、酪農の伸展には、その製品の消流が円滑に行なわれることが根本的な条件であろうかと思うのであります。従いまして、この製品の市場価格から算出される原料乳価がきわめて妥当性があり、むしろ物価決定の経済原則とも考えられておるのでありまして、この両者の乳価の差が常に存在することになりますので、この価格差を政府も何らかの施策をもって保障するということが農業政策であろうかと思われるのであります。すなわち、経済の実態は、単に基準価格や安定価格決定することによって解決のできない問題があることが考えられるのでありまして、たとえば、乳業者が生産費の問題を考慮いたしまして乳価を上げたにいたしましても、それに伴って飼料も上がる、実質的に酪農家に実収がないというようなことではいけないので、飼料対策、ことに粗飼料に対する大きな考慮、それらについてもその施策が相伴っていくことが望ましいということも考えられる次第なのでございます。  第四の点でありますが、政令、省令等の明示について御希望を申し上げたいと思うのであります。この法案は今後の運営に問題があると思うのであります。法案には、その内容を明示しない多くの政令、省令または農林大臣の認定にゆだねられている事項がたくさんありまして、これらの基準を明確にしていただきまして、失礼な言葉でありますが、独断的な行き過ぎの起こらないように御配慮願いたい。私ども、法案を通読いたしましても、政令とかあるいは省令とかいうものの内容の明示、運営の仕方というものがわかりませんので、はたしてどういう方向にいくの、であろうかということを心配する者でありまして、この運営にあたりまして、こういう点をよく関係者に徹底するような方式をぜひお願いしたいと願う者でございます。ただ、その中に、一例をあげますと、先ほど前の参考人から意見の出ております調整工場という言葉、これらにつきましても、その運営いかんによっては非常にマイナスの面も出てくるかと思うのでありますが、それらの運営面等も、私ども一向にわかりませんので意見は申し上げられませんが、そういう点についても慎重を期していただきたいと考える次第でございます。  その次の第五でございますが、安定価格決定について、これは法の第三条に関するものでございますが、この法案によりまして農林大臣が決定する原料乳の安定価格または基準価格は著しく強い強制力を持つものだと判断するのでありまして、その決定方法、具体的な基準算出の方法等は、すべて政令にゆだねられて、政政の考え方は明示されておりません。従って、この法案制定後毎年決定される価格は、政治的な力関係において経済事情とは無関係にゆがめられて定められる危険性はないだろうかということを心配するのでありまして、生産者と消費者の中間にあるわれわれ乳業者といたしましては過大な犠牲を強要されるおそれがあるのではないだろうかということも実は案じておる次第でございます。従いまして、前に申し上げました通り乳価安定のための何らかの裏づけ政策、飼料対策であるとかあるいは農村の自給飼料の問題であるとか、そういう対策考えた上での面も十分に考慮をお願い申し上げたいと思うのであります。価格決定基準は、価格形成の原則に従って、需給事情及び経済事情を十分に考慮——私どもから言えば第一に考慮と申し上げたいのでありますが、十分に考慮されまして、決定、明示をしていただきたいと思うであります。  第六の点でありますが、畜産物価格審議会について一言申し上げたいと思います。この法案におきまして価格審議会の責任はきわめて重大でありまして、この審議会が従来の例のように革に形式的なものとならないよう、また、これも失礼な言葉かも存じませんが、官庁の隠れみの的な存在とならないように、その運営及び委員構成には特に慎重な御配慮をお願いしたいと存じます。その考え方といたしましては、価格決定は、直接これと関係のある委員需給事情と経済の実勢を判断して純然たる経済的ベースの上に審議決定されることが最も妥当ではなかろうかと考える次第でありまして、酪農振興上とるべき政治的、政策的な施策は別途国政審議機関において決定され、この価格審議会とは明らかに切り離して行なっていただくべきものではなかろうかと考える次第であります。  最後に、第七の点と申しますか、指定乳製品の輸入について一応お願い申し上げたいと思います。わが国の発展過程にあります酪農の現状から申しますと、その土産と消費は必ずしも並行いたしておりません。この需給の対策としまして、一部の乳製品の輸入は、現在のところ避けられないような状態にございます。ややもしますと、管理貿易の特権のもとに特殊なものに利益を与えるおそれもあるようでありますし、あるいは、輸入後の配分におきましても、既存の消流ルートを混乱させたり、あるいは輸入品の横流し、逆流等の好ましくない事態を現在すでに見つつあるのでございます。輸入問題は、国内の出産需給並びに市場価格の影響等、メーカー及び酪農家に非常な大きな関係を持つものでありますので、その輸入方式、時期、数量、取り扱い等、実情に即して適切公明に行なわれるよう、特に御配慮が願いたいのでございます。具体的に申し上げますと、輸入は事業団の責任において直接または輸入業者を介してのみ行なっていただく、第二は、輸入品による差益は全部事業団が吸収して、酪農及び乳業の振興に資する公共的な施策に使っていただく、こういう点に特に御留意が願いたいと思うのであります。  個々の条文等につきましては、後ほど御質疑等によってまた申し述べることといたしまして、一応概括的に意見を申し述べた次第でございます。
  12. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 次に、北海道農業協組合中央会参鈴木善一君にお願いします。
  13. 鈴木善一

    鈴木参考人 ただいま御紹介にあずかりました鈴木であります。  実は、中央機関以外に北海道からわざわざ私が出向くことに相なりましたことは、先生方が絶えず北海道農業を調査をされまして、北海道における畜産が非常に大きなウエートを持っておるということからであります。しかも、北海道の実情は、気象的にも土地条件的にも畜産を入れなければ営農が成り立たないというような地域でございます。  そういうような関係から、昨年道が国のいろいろ基本対策を研究する過程におきまして、北海道におきましても道の機関として北海道農業対策に検討を加えたわけであります。その対来の結論をまず申し上げますと、北海道の昭和三十四年の現在では、乳牛が十八万頭、役肉牛が二千三百頭、豚が八万五千頭、鶏が二百四十万羽飼育されておるわけでありますが、これを農業基本法に基づく農業成長部門として大きく取り上げております。そのことは、先ほど申し上げましたような北海道農業環境からそのように考えたわけであります。そういたしまして、乳牛につきましては、先ほど申し上げました現状の約三倍に近い四十四万五千頭くらいの乳牛を将来飼育させよう、役肉牛につきましては、十六・八倍、約十七倍の三万九千頭くらい、それから、豚につきましては五・六倍の四十五万頭、鶏につきましては二・五倍の六百万羽にしようというような計画を持っておるわけであります。目下、その方針に基づきまして、道あるいは団体が多頭飼育の問題やあるいは畜産の団地形成育成の問題を計画をしております。そのような面から考えまして、北海道農業が今後振興するかいなかは、この畜産の振興が大きな役割を持っております。そのような観点から、きょう私はいろいろ今回の問題について御意見を申し上げたいと思うのであります。  そこで、今回の法案を見ますと、先ほど渡辺さんあるいは農民組織の方から要請がありましたが、どうも、法案の方針の中には、乳業者なりあるいは関連産業の余慶によって年産が伸びるというような考え方、これでは非常に片手落ちではなかろうか。畜産物価格安定と同時に、農家経済の安定をはからなければならぬではなかろうか。しかも、法律の価格形成の中には、安定下位価格ということで、これは、私、考えますと、安定下位価格とは最低価格とすれすれの価格ではなかろうか、いわゆる最低価格と表現をすると問題があるから安定下位価格と表現をするのじゃなかろうかと思うのであります。そうだとするならば、一番低い価格で農民はそれぞれの畜産物なり牛乳を販売しなければならぬ。そうなりますと、基本法にうたわれているところの他産業と同様な農家所得、他産業に従事する者と同じような生活ができ得るかどうか、まさしく農業基本法に反するようなものの考え方、この思想ではなかろうかと思うわけであります。そういう点から、まず、考え方については、生産者を経済的に保護するというような考え方を強く出していただきたい、これが第一点であります。  次に、第二点でありますが、原料乳の価格あるいは指定食肉の価格の形成の仕方であります。法律にありますように、安定下位価格、私から言いますと最低価格でありますが、そのような価格ではとうていこれからやっていけない。今までの牛乳なり肉畜の奨励過程におきましても非常に不安定な中にあるわけであります。そういうことではとうてい農出家は経営ができません。従いまして、この価格算定につきましては、生産費所得補償方式によって基準価格決定することを明文化していただきたい。私はあとくだくだ申し上げません。先生方よく内容を知っていらっしゃるので要点だけを申し上げますが、次には、これに関連いたしまして、長期生産計画。従来の酪農振興法を見ましても、あるいはいろいろな法律を見ましても、いわゆる農林省の政策は奨励政策であって、あとの経済的な始末はほとんどできておりません。これは牛乳におきましてもそういう例が二十九年から三十年にあったわけであります。従いまして、長期生産計画を計画するにあたりましては、いわゆる国内の需給計画、需要と供給の見通しをはっきり把握する、これが一番大事だと思うのであります。今までは、奨励をいたしまして、需要の見通しが狂ったために、酪農民は非常に経常に苦労する、これが絶えず行なわれておったわけであります。こういうことのないように、農家の年産計画をまず立てる場合におきましては、そのような計画に基づいて農家に不安を与えないような計画を立てていただきたい、これが第二点であります。  次に第三点は、畜産事業団の問題でありますが、いろいろな角度から皆さん方御意見を申し上げておりますが、私は、まず、この事業団方式を改めて、特別会計で実施をしていただきたい。いわゆる畜産事業団は、法律によりますと十億程度の出資金であります。しかも、前の関係者が申し上げました通り損失については何ら触れておりません。政府が持つものでもないし、それが明確でないわけであります。従いまして、このような小規模な出資金事業団、あるいはその損失の行方がどうなるかわからないようなものでは、このしわ寄せは必ずや年産者に来るだろう、こういうような面から、これは食管制度と同様な特別会計制度といたしまして、赤字が出た場合一般会計から繰り入れをする、こういうような点を明確にしていただきたいわけであります。これが第三点であります。  次に、第四点は、乳製品や食肉の輸入の問題でありますが、去年、おととしあたりからこの問題はちらほら出ておりましたが、そのことによって、それぞれ業者は、向こうのものはこんなに安いのだ、こういうように脅かされておるわけであります。従いまして、これらのものについては貿易の自由化は絶対にしないということをまず考えていただきたい。さらにまた、どうしても国内産において供給が不足するような場合は、最小限度の輸入にとどめまして、国内産の出席者価格を保護する措置を講じていただきたいわけであります。  次に、第五点でありますが、これらの乳製品あるいは指定食肉の買い入れの問題であります。これは、特別会計にいたしましても、予算においてそれぞれ買い入れをするということになりますと、数量が制限されます。その場合、買い上げ数量以外に過剰が生じた場合は、これまた生産者にしわ寄せが来るわけでありますから、これは生産者価格を維持安定するまで無制限買い入れを実施するようにしていただきたい、これが第五点であります。  次に、最後は、審議会の問題でございますが、審議会には生産者生産者団体代表は少なくとも三分の一以上参加をさせること、さらに、ぜひとも国会議員に参加をしていただくように願いたい。次に学識経験者、このような構成によって、この重要な価格の算定やあるいは輸入の関係とかあるいは買い入れ数量等いろいろ各般の問題について御検討をするようにしていただきたいと思うわけであります。  時間の関係上、要点だけを申し上げまして、意見といたします。
  14. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 次に、茨城県久賀農業協同組合組合長飯島忠則君にお願いします。
  15. 飯島忠則

    ○飯島参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました飯島でございます。末端の農民の立場で御意見を申し上げたいと思います。  御承知のように、今の農村の人たちは非常に迷っております。たとえば、最近の状況を申し上げますと、農業基本法制定されまして、畜産部門成長部門であるというようなことで、畜産に手を出したい、こう思っておりますけれども、その畜産経営を転換するだけの資金も持っていない。一方、また、若干の資金を融資してもらって畜産経営をしておるけれども、実際に入ってみると、その価格が不安定なために非常に苦しんでいる。何をやったらこれからの農民は生きていけるのだろうというような考えが非常に強く出ております。麦の問題にしましても、やはり、非常に生産過剰であるということによって、転換の気持は十分持っており、そのための努力もしております。しかし、このような条件の中で、幸いにしてここに畜産物価格安定法が出されましたことは、私たちの非常に期待するところでございます。  実際に、今まで、私たちとしましては、ハクサイ等も、作ってみますと、昨年のように、その価格が非常に安いために、豊作貧乏というような経験を経まして、東京までの運賃にもならないというような体験をしみじみと味わってきておるわけです。こういう結果から、今度畜産物価格安定法ができましても、はたしてその安定を保てるかどうかという疑問を非常に強く持っておるわけであります。  そこで、私たちは、現在上程されましたこの安定法案内容を浅い知識の中で検討してみたままの御意見をまず申し上げてみたいと思います。  まず第一番目に申し上げたいことは、生産農民のための安定法であっていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。先ほど瀬尾さんから申されましたけれども、確かに畜産というものは農民と乳業会社とが連携を保って発展してきた歴史的事実があります。しかし、今度の安定法の中に流れている基本的な考え方は、むしろ、農民は安い原料の提供者であって、乳業会社に非常に大きなウエートを置いているように私どもには考えられるわけであります。従って、もう少し農民の所得均衡をはかる点から農民にウエートを置く、つまり、原料を生産する農民の立場、その暮らしを守っていただくような安定法にしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  次に、第二点は価格であります。価格につきましては、先ほどからいろいろ御意見が出ておりますが、価格算定の基準が非常に不明確である。たとえば、豚肉の場合、私どもの地域は主として和牛と豚を飼育しております。また、酪農をやっておる地域もありますが、豚の例をまず申し上げてみますと、現在、キロ当たり二百九十円という価格で計算してみますと、ほとんど手間賃にもならないという現状であります。子豚が大体四千円程度しております。それに、枝肉五十キロ程度のものを出すまでに飼育いたしますと、飼料の費用が大体八千八百円近くかかります。これは、いろいろとこまかく検討してみましても、増肉量一キロについて百十円ないし百二十円の飼料費がかかるわけであります。従って、五十キロの枝肉と申しますと、大体八十キロの成体が必要である、そういう点から八千八百円近くの飼料費がかかります。この点だけでも、八千八百円と、子豚の代、そのほか注射の費用とかあるいはいろいろなその他の諸経費を加えますと、大体一万三千八百円の経費がかかります。これを二百九十の価格で売りますと、大体一万四千五百円であります。そこで、手元に残る金というのは七百円程度であります。この七百円というのがつまり農家の飼育する手間賃になるわけであります。大体百五十日間でこれを割ってみますと、一日五、六円の手間賃、こういうことになるわけであります。従って、もしも豚の価格が二百三十ないし四十というような最低価格で保障されるとするならば、おそらく原価を割る価格になってしまうであろう、こういうふうに考えられるわけであります。  乳の場合にしましても、私どもの近くで経営しております乳は大体一合五円八十銭程度で取引されておりますが、これが実際の消費者に渡ります場合には十五円程度になっておる。乳業会社に渡って、それが小売業者に渡される場合には大体九円五十銭ぐらいであると聞いておりますが、そのような点から考えましても、生産者の手から離れた乳が実際の消費者に渡るまでには三倍近くの価格になっている。しかも、末端の小売商の経費ともうけとを合わせた価格がちょうど農民の生産価格であるという状況であります。  このような点を考えてみますと、どうしてもこの価格基準はあくまでも生産費基準にやっていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。従って、今度の法律にも、はっきりと、価格基準をどこに置くか、あくまでも農民の生産費を保障する、しかも再生産を保障するように、暮らしが高まっていけるような、しかも農業基本法の精神に流れておる所得均衡をはかり得るような価格を下位価格に持っていっていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  それで、茨城県としまして過般要求をいたしましたのは、大体乳価においては最低価格が一升六十円、それから、豚肉につきましては茨城県で計算しましたものによりますと、約三百十円の経費がかかっております。それから、卵につきましては百八十円という数字が出ております。  次に、第四点でありますけれども、これは調整保管の設備であります。これについて、先ほど渡辺さんからも申されましたように、現在農民の置かれている状況から見まして、調整保管の設備については全額国が助成措置をもってやっていただくような措置をぜひとも講じていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。現時点では、先ほども申し上げましたように、農民が畜産転換をはかろうとしても、その資金がない。幸いにして農業近代化資金等の助成措置が講ぜられましたけれども、この金利にしても、聞くところによれば七分五厘という金利でありまして、このような高い金利であっては、先ほど申し上げましたように、子豚代や飼料代に回されて手間にもならない、それに加わる金利ということになりますと、この面の負担についてすら非常に苦しい状況に追い込まれる、こういうことであります。  次に、輸入規制の問題ですが、これはぜひとも輸入規制の条項を明確にしていただきたい。事実かどうかはっきり確認はできませんけれども、現在輸入されました肉等について、輸入関係に輸入差益として約六億くらい上がっていると、かすかに聞いておるのでありますけれども、このようなものができました場合には、そういうものは国全体の畜産行政の中で農民にまでそれが還元されるように、決してそのものを還元するのではなくて、畜産振興のためにそういう差益を利用していただくということを考えていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  次に、需給計画でありますが、これにつきましては、需給計画を立てるというように法文には出されております。しかし、私どもが今までの体験から申しますと、果樹がいい、あるいは園芸がいいというような国の奨励によって、実際にそれに取り組んでいきましても、生産計画がはっきりと樹立されていない関係上、多く作り過ぎるという傾向が出ております。そのために、先ほど申し上げましたように、豊作貧乏の経験をしておるわけであります。従って、このような価格安定法の真の考え方が農民に生かされるためには、やはり、この価格安定法の計画とともに、生産計画がはっきりと打ち出されるべきであろう。地域によって畜産に転換でき得ない地域もあるだろうし、畜産に転換でき得るようないい条件をそろえておっても、今申し上げましたようないろいろな条件に制約されてなかなか転換できない。こういう点から、団地形成の意味からしても、やはり国が生産については責任ある一つの計画を立てて、そうして、決して価格が不安定にならないような基礎を作っていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  最後に申し上げたいことは、飼料対策であります。冒頭価格の面で申し上げましたように、飼料は生産費の中に非常に大きな割合を占めております。従って、一面からはこの飼料に対する御考慮を願いたい、こういうふうに考えるわけであります。  以上七つの点を申し上げましたが、農業基本法に基づく選択的拡大生産が実際に農民の手によって大きく動き出していくためには、ぜひともこの価格安定が生産費所得補償によって打ち出されることをお願いすると同時に、これに関連する畜産振興の抜本的な対策をもう一応深く御検討いただきたい、かように考えるわけであります。  以上であります。
  16. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 以上をもちまして畜産物価格に関する両法案に対する参考人意見の開陳を終わりました。  これより参考人に対する質疑を行ないたいと思います。永井勝次郎君。
  17. 永井勝次郎

    ○永井委員 第一に瀬尾さんにお尋ねいたします。  乳価は、大まかに規って、原料乳は国際価格、製品は大体国際価格の二倍近い価格、こういうふうになっていると思います。その製品がこういうふうに高いのはどこに原因するのか。加工の部分にあるのか、流通の部分にあるのか、そうしてこのコストを下げるためにはどのような条件を充足したらいいか、この点を明確にしていただきたいと思います。  それから、先ほどのお話の中で、原料乳の所得補償もいいが、市場価格から逆算して乳価の問題を考えることも必要ではないか、こういうふうにお話があったように了解します。私は、原料乳はやはり生産費を保障する、安定して、しかも農家にとって有利な条件、安定だけじゃなく有利な条件がないと伸びませんから、安定有利な条件を確保して、これが市場の価格の若干の影響を受けてもそう影響ない形で保障される、そうして、その上に、加工部門なり流通部門なり、こういろ面の合理化がきびしく追求される、こういう形が出てこなければいけないのではないか。だから、原料乳というのは、単に乳製品生産するのだ、牛乳生産するのだという考え方に立てば、これはそういう価格でいろいろな影響を受けるということもいいのですが、これはやはり、酪農という農業経営の基盤の中で牛の生産が行なわれる、こういう性格を考えますと、私は、市場価格に左右されない乳価安定、こういうものが裏づけにならなければ農業の近代化なり畜産奨励ということにはならぬ、こう思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えになるか。  それから、加工分野等においても、自由化反対のいろいろな意見が皆さんからあったのですが、私も現在の段階ではその通りだと思います。しかしながら、日本だけが国際の経済情勢に孤立してその中で安穏に過ごせるものではないので、やはり、そういう一定の時期は、自由化を阻止しながらも、その内部においては国際の価格で競争できるような体質改善というものがきびしく追求されなければならないと思うのです。そういうことなくして、ただ永久に壁を作ってその中でということではいけないと私は思うのです。そういたしますと、やはり合理化がきびしく追求されなければならぬ。合理化が追求せられる場合には、金融のワクの問題もありましょう。金利の問題もありましょう。あるいは期日の問題もありましょう。そういった関係において、金融の関係や合理化の面でどのような具体的な施策が進められたならば、製品が国際価格に競争できるような体質改善ができるかどうか、こういうことを伺いたいと思います。
  18. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 永井先生の御質問にお答えいたします。  第一の点でございますが、乳価は外国と大体似ているが、製品は二割以上高いのであります。これは、飲用牛乳あるいは乳製品、非常に数が多うございまして、それぞれ価格構成が違っておるようでございますが、原因といたしまして、飲用牛乳におきましては、大体、外国においても日本におきましても、原料乳価と末端販売価格との比率は似たようなものでございます。バターにおきましては非常に差がございます。チーズ等においても差がございますが。バター、チーズ等におきましては外国でも非常に差がございます。たとえば、すでに御承知と存じますが、ロンドン相場、あれは自由に輸入しておるのでありますが、ロンドン相場は、具体的に申し上げますと、昨今でポンド百十円前後でございます。一方で、ニューヨーク、これは世界の三大市場の一つでございますが、二百二十円前後。ニューヨーク相場はロンドン相場の倍になっております。こういうような実例もありますので、日本の現実は割合に外国に影響されておりません。  ところで、どういうことで製品が概して高いかと申しますと、これは、製造の規模がまず第一に違うということ、一工場の生産量が外国では非常に大きいということ、たとえて申しますと、北海道全体の乳量くらいのものを外国では一村で処理しておるというような例が多いのでございまして、工場の処理規模が違うということにコストが非常に違う面が出て参ります。   〔田口(長)委員長代理退席、委員   長着席〕 流通過程の点が先生のお話でございましたが、流通過程も、外国では、日本の米、みそと同じように日常のものでありまして、扱い量が非常に多い。従って、中間流通におきますマージンが非常に小さいのでございます。こういう点も非常に違うのでありますけれども、問題は、要するに量産ということが非常に影響しております。これは、私どもの経験上、一工場の乳量が急に倍になるならば、どのくらいのコスト・ダウンができるかという線も計算上できておるのでありまして、それは私ども常に申しております。工場周辺に酪農密集地帯を作って漸次地方に及ぼすということが最もコスト・ダウンする一つのいい方式であるとかねて申しておるのでありますが、そういうことも将来御考慮願いたいものだと考える次第でございます。いろいろ事情がございまして、これは一例にすぎないのでありますが、とにかく、アメリカと日本では生産量が三十倍も違う。それから、日本の今の生産量でいきますと、ちょうどデンマーク、オランダと同じくらいなんでありますが、向こうの工場数からいきまして、その乳量扱いは全く格段の差がある。こういう点も原因の一つであるということも御認識願いたいのであります。  それから、第二の点の、市場価格の逆算の問題と生産費補償方式でありますが、私ども、酪農の発展には、やはり農家の方の非常に努力された生産費というものは保障するにやぶさかでない。これはごもっともな話だと思います。先生の御意見と同じなんでありますが、諸外国ではほとんど酪農が飽和状態になっておるのでありまして、主として酪農の奨励よりは消流対策に苦慮しておるということから、まず市場価格というものを主体にした計算をいたしまして、これはメーカーあるいは農村の委員会ができておるようでありますが、それが毎月逆算した乳価を出して、それで取引されておるという状態にあるようであります。日本では、今躍進しつつある途中でありますので、そういう方式を直ちにとるわけにはいきませんが、先ほど私意見を申し上げましたように、消流されるかされないかが一つの問題であります。そこで、私の申しますのは、高くても、お客さんが高く買って下さるなら問題はありません。ところが、今日の物価指数からいきまして、現実に他の食品に比べて比率が非常に安いのです。具体的に申しますと、二十九年に企画庁で発表しております物価指数からいきまして、バター、チーズのごときは七八%くらいに落ちておる。肉などは約一三〇%くらいに上がっておると思いますが、それでもまだ高いと申しております。少し上がると消費が縮む。また、前にも繰り返したように、たくさん滞貨したときに犠牲を払って安く売りますと、半年か一年の間になくなってしまう。そこに消流というものを考えてのことをお願い申し上げたいと思うのであります。ただ、そのときに、農村の生産費を犠牲にしてとは私申し上げるのではないのであります。と申しますのは、商品の消流はやはりはからなければならぬのでありますから、市場性から逆算した価格生産費のギャップを直接農民の方に補償方式でする。補助金でも何でもよろしいのでありますが、そういう一つ方式をおとりになったらいかがですかということはかねて意見を申し述べたことがあるのであります。そういうのも一つの方法ではないかと思うのです。やはり、生産費というものはできるだけめんどうを見て差し上げるのがほんとうだと思います。しかし、今申したように、消流の関係からの考慮、——物はできても、買ってもらわなければならぬ。そこを一つ考え願って、その値幅を何かの方式で直接農家の方にお返しになるような方式が最もいいのではなかろうか、そういう補償が必要ではなかろうか。余ったものを買っても、いずれは国内で処理しなければならぬ。物があるということはその商品に対する弱気を呼ぶのでありますが、それとは別に、安く物を売ってしまった、生産費とのギャップは何かの方式で補償して差し上げるということがいいのではなかろうかということは、かねて御意見を申し上げております。  第三の点でありますが、自由化反対、体質の改善、金融の面か技術の面かということでございますが、金融の面を申し上げますると、諸先生方御承知と思いますが、日本の金利はすべて高こうございます。外国では五%以上の金利というものはあまりないようでありまするが、かねて、三十三年でしたか、この席上で私意見を申し述べたことがありました。金融措置ができてないと同時に、金利が非常に商い、長期低利の資金を流していただけないものかという御意見を申し上げたことがあるのでありますが、金利は外国より比較にならないほど高いのであります。  また、技術面でありまするが、技術面は、私が申し上げるのは口はばったいのでありますが、外国の技術に決して負けておりません。製品の品質をごらんになってもおわかりになると思いまするが、技術は負けてないのであります。また、大メーカー筋の設備は世界一流の設備をいたしております。非常に合理化した近代設備をいたしております。外国品と対抗する準備のために大きな金をかけてそういう改善をいたしております。これに乳量が伴いますと非常に大きなコスト・ダウンができるということを計算上申し上げることができると思います。  以上、三点について一応お答え申し上げます。
  19. 永井勝次郎

    ○永井委員 寺村さんと鈴木さんにお尋ねいたしますが、今まで乳牛がどういう足取りで伸びたり縮んだりしてきたかといえば、乳価が上がれば牛をたくさん飼う、生産が過剰になって乳価がたたかれるとぐっと減る、減るとまた政府が補助金を出して奨励してふやしでいく、ふやしてきて一定の生産量が若干過剰になるとまたそこでたたかれる、こういうふうに、常に一定の波を打って同じような形でやってきておるわけです。奨励するには、一定の量以上になれば生産費に影響するわけですから、そういうときは、それを備蓄するとかなんとか、対策がなければならないのですが、それが従来なく、そのままの形で、成り行きで伸びたり縮んだりしてきた、こういう形でありますが、私は、この問題をこれから取り上げて発足するにあたりましては、わかり切った問題で、過去において経験済みの問題を手当てして対策を立てていかなきゃならぬじゃないか、こう思うわけであります。そうして、その場合、そういうことがすぐ製品の分野に及ぶと、メーカーから原料をチェックしていく。こういう形になりますと、せっかく農業経営の基盤として育ちかかったものが常に芽をつまれる。そこで、加工分野あるいは流通分野、それぞれの分野において合理化することをきびしく追求しながら、そういう影響が生産者に及ばないというような状況を確立することが、今日発足するにあたって大切な要件ではないか、こう思うわけです。それをどういうふうにお考えになるか、それが一つ。  それから、もう一つは、乳価も国際価格と競争していかなければならない。いつまでも自由化阻止の温室の中に育つわけにいかない。そうしますためには、飼料の問題であるとか、あるいは運賃の問題であるとか、あるいは電力料金の問題であるとか、こういう生産コストに影響するいろんなファクターというものを取り上げていきませんと、幾ら乳牛の面でコストを下げようとしても、ほかの物価がどんどん上がってきて、合理化したものを全部食ってしまって、さらに吐き出さなければいけないということでは、とても農家は追っかけていけない。そこで、飼料が今日乳価とかそういうことにかかわりなくこんなに高いのはどうしたことか、これは一つの独占価格が支配しているせいではないか、こう思うのでありますが、飼料に対して生産の面からどういうふうにお考えになるか、これを伺わせていただきたいと思います。
  20. 寺村秀雄

    寺村参考人 永井先生にお答えいたします。  第一の問題でございますが、御指摘の通り、従来は非常に不安定でございまして、乳の値が上がれば、豚でも卵でも同じでございますが、値が上がりますれば、乳牛にいたしますれば元牛の値段が上がってくる。そこで、よかろうということで、だんだん元牛の値段が上がったのを買って、そうして、買った農家が乳をしぼり出す時分には、今度は乳が下がるというような逆作用が出て参りまして、そこに畜産物生産の不安定の根本問題があったわけであります。この対策といたしましては、畜産物価格安定法期待いたしておるところでございます。生産費基準とし、再生産を確保し得るような価格を続けて決定していただきますれば、それによりましてコンスタントな姿が出てくるのではないか、かように考えるわけであります。もちろん、御指摘のように、将来を考えますれば、生産品そのものにつきまして生産者側にもきびしい合理化の追求は必要であろうかと存じます。  その意味におきまして、第二の問題に入りますが、先ほどもお願いいたしました通り、西独は三分の金利でしかも長期の融資をしておるということを聞いておるわけであります。ああいった対策——牛舎を作りますのに、寒冷地では一頭当たり十万円からかかるというデータも出ておるわけでございます。低利長期の金融というものが非常に重要な問題と思われるわけでございます。そういった対策等も取り上げていただきたいと思います。  なお、飼料の問題につきましては、私は専門でございませんので、まことに申しわけございませんけれども、飼料の面におきましては、むしろ輸入の自由化がまだ残されている問題があるのではなかろうか。こういう面においてこそ大乗的に割り切っていただきまして、完全自由化をしていただくというようなことも必要であろうかとも考えるわけでございます。また、状況に応じまして、生産者団体みずからの手による飼料工場を必要に応じどんどん拡張していく。その中におきまして生産の合理化をはかり、流通の円滑化をはかっていくというような方途も必要であろうかと存ぜられる次第であります。  適当なお答えでなかったかと存じますが、以上でお答えにかえさしていただきます。
  21. 鈴木善一

    鈴木参考人 永井先生の御質問にお答え申し上げます。  第一点は、酪農安定の問題だと思いますが、私は、日本全体のことは申し上げません。北海道実態から申し上げますと、まず、現在の酪農経営の問題でありますが、最近の情勢を申し上げます。今のところ原料乳価と市乳乳価とは非常に差があるわけであります。もう一つは、昨年からの顕著な例は、いわゆる食生活が急激に肉に依存するというようなことと、もう一つの大きな問題は海産物の減収だと思います。そういうことで肉に対する依存度が非常に高くなったために、従来の豚とか鶏とか馬とかは非常に乳牛に集中されたというような問題が北海道に出ております。こういうような二つの要素で、昨年一カ年間の例を見ますると、前年度より一万頭以上もはらみ牛の屠殺が増加しております。それから、本年の例は、肉用はさほどではありませんが、最近の情勢は前年より七〇%くらい多く道外にはらみ牛が出ております。それから、原料乳価と市乳乳価との差が非常にある。たとえば、今茨城県の方が言われましたが、五十八円あるいは六十円あるいは六十円をこえているようなところがあります。北海道乳価は、現在奨励金を入れまして四十九円五十銭であります。そういうような関係から、都市周辺にいる酪農家がどんどん買う、あるいはまた、府県でも、酪農振興をやっておりますから、北海道からどんどん妊娠牛を持っていく、こういうような状態が出ております。しかし、北海道の酪農先進地としては当然そうあるべきだと思いますが、そういうことで牛が非常に安定をしない。急激に道外へ出ていく、こういうような一つの要素があります。  もう一つは、道内の中でも、昨年の調査でありますが、二頭以下の飼育農家は昨年度あたりの乳価でもこれは全然ペイいたしません。いわゆる三頭以上の農家で昨年あたりはやや接近しておる、こういうような状態であります。それからまた、最近の状態を酪農協会が調査いたしました乳価でありますと、はっきり計数は記憶しておりませんが、五十三円八十銭といわれております。これは昨年から飼料が非常に高くなったという影響が端的に出ておるわけであります。そういうようなことで、北海道を見ましても、そういうような市乳地帯に刺激をされる。こういうことで、牛の移動が激しい、あるいはまた経営の合わない農家が酪農経営をやらない、こういうような状況があるわけであります。  それから、もう一つは、これはどの産業でも同様だと思いますが、特に北海道における農村の道路の問題であります。道路が非常に悪いために搬出に非常に苦労をする。そのために労力を多く使う。こういうことで、せっかく牛を入れましてもだめになる。さらにまた、先ほど瀬尾さんが言っておりましたが、北海道の大部分を見ますと、牛が密集されておりません。きわめてぽつんぽつんと入っておるわけであります。そういうようなことで非常に条件が悪い。  それから、もう一つは、北海道も、少なくとも全国比率ぐらいの市乳が出ればけっこうなんでありますが、大体北海道では一八%から二〇%程度であります。その残ったものが全部原料になって、製品が本州でなければ販売はできない、消費ができないという状況があります。これが、北海道の酪農が、ずいぶん長い間やっておりますが、安定していない、不安を絶えず繰り返している原因であります。  それから、もう一つは、先ほど申しましたように、政府が酪農振興法を制定しましたが、その直後は非常に不安定が出ております。これは、日本の牛乳が急激に増産されたので過剰牛乳が出た、こういうことで、私どもは学童給食の問題を先頭に、製品の買い上げを政府要請し、あるいは砂糖戻税を要請して先生方に解決を願ったわけでありますが、そういうような状態の中で非常に何か不安定があるわけであります。  それから、この問題についてはさらにまた冬季問の輸送という問題があります。これは本州とは全然違った要素であります。東北、北海道では、酪農をやるにしても、そのような道路の問題、また降雪期における輸送の問題、こういう問題が解決つかなければ、なかなか安定した状態にはならぬのではなかろうか、こういうことで、そういう対策要請しておるわけでありますが、そのことがまだ実現されておりません。でありますから、北海道では、今、乳牛の少なく入っている僻地地帯、これはいわゆる牛の非常に少ないところという意味で、こういうところについて今度その対策を講ずることになりましたが、従来の牛の状態が、密集していないという状態を考えないで、単に牛を入れるということだけを考えている、そのことが少頭数飼育農家の多く出ている原因である、こういうような状態であります。  まず、基本的には、道路の問題、あるいは牛の密集をはかるという問題、あるいはまた市乳地帯と原料地帯の価格調整の問題を何らかの方法で考えていただくということをしなければ、なかなかこれは解決できないのではなかろうかと思います。  それから、さらに、金利の問題でありますが、現在の五分、五分五厘では、農業生産の拡充はなかなか困難であります。これをもっと申し上げますと、これは暴論と言われるかもしれませんが、三分か三分五厘の融資でなければ、農業生産はその急激には発展をしないであろう、少なくとも十年後の計画は今年からスタートして計画を立てなければ、農業生産の拡充は私は困難だと思うのであります。たとえば、くつ工場がくつを作るように、売れなくなったらそれを減らす、売れるようになったらそれをふやすということは、ではできません。そういう問題があると思います。こういうような事情から、私は、なかなか安定をしない原因がそこにあると思います。  それから、次に、飼料の問題でありますが、飼料問題につきましても、昨年政府は大麦、はだか麦の払い下げをして、飼料価格を値下げするように考えましたが、現在大豆は自由化されておりますけれども、私の聞くところによりますと、大豆かすは自由化されておりません。そういう問題があります。あるいはまた、政府がせっかくそういう飼料用の大麦、はだか麦の放出をいたされましても、その時期が非常におくれておる、もう飼料がうんと上がったときにやるので、そういうような政策が実際に行なわれましても、その時期が当を得ないために、そういう引き下げが非常に困難であります。北海道の場合には粗飼料のことは十分確保できるわけでありますが、いわゆる濃厚飼料の確保はそういうことで非常にむずかしい。昨年の生産費調査と今年の生産費調査とを突き合わせてみますと、非常に上がっております。その大きな理由はもちろん労力にもあるのでありますが、問題は、飼料価格が非常に上がっておるということ、これは、私どもも、できるだけ系統でそういう飼料工場を持って生産をして多く供給をする、あるいは政府がもっとこの飼料対策について、酪農振興に対してあるいは畜産の振興に対して対策を講ずべきではなかろうか。せっかく緊急的にやられましても、効果がその割には出ていないということがおるわけであります。そういう問題が解決すれば、飼料問題は片づくのではなかろうか。先ほど私が冒頭に申し上げましたように、北海道の十年後における農業畜産の問題につきましても、従来の農産物の反別を減らして、相当の飼料を確保するという対策を持っておるわけであります。そういうようなことで、できるだけ多くの農家の自家正慶による飼料の対策の問題とあわせて、濃厚飼料対策の問題をどうしても考えていかなければならぬということを考えて、目下対策を講じているわけでありますが、直ちにそううまくはいかぬと思いますが、そういうような状態なので、その期間については政府の積極的な対策が望ましいと考えております。
  22. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に簡単にお尋ねします。  参考人の皆さんのお話にありました通り畜産の振興といい、あるいは価格の安定といい、畜産というワクの中だけでものを処理しても、これはとてもできるものじゃない。やはり、国全体の経済の総合施策の中で畜産をどういう位置に置いてどういうふうにこれを安定させるかという、総合施策の集約されたものがそこに合理的に出てこなければ、適正な形で出てこなければならないと私は思うのです。そうでなかったら、これは部分的で言葉の上でごまかし合っているのだと思う。たとえば、補助金の問題にいたしましても、これは、飯島さん、それから渡辺さん、寺村さんにお尋ねしたいと思うのですが、単に補助金を出す。補助金を出しますと、土産農家にこれだけの補助があるのだから、これだけ安くしてもそろばんが合うというので、上の方でそれを見込んで生産農家を安くたたくのでありますから、今後いろいろな施策の中で政府のいろいろな助成があるにいたしましても、この補助金の流し方、補助金のつけ方、そしてその後におけるこの処理がありませんと、農家のふところを通して上の方へ吸い上げられてしまう、こういう形が出ると思う。それらについて、今後の施策の上における助成策あるいは補助政策、そういうものがあるとするなら、それらに対してどういう点を注意していかなければならぬか、どういうことが生産農家の上には望ましいかということをお尋ねしたいと思う。  それから、今度の法案が、単に価格安定という、こういう名にしましても、中身はばく然としておるのですね。具体的には中身がどうかということなのです。やはり、畜産農業経営という基盤の上に立って考えられ、一切をそこから割り出していくということでありませんと、これは、ビートのように、生産農家は犠牲になって、製糖会社だけがもうけている。あるいは、肥料会社のように、農家に補助を出せば、その肥料補助は上の方で吸い上げようとして待っておる。そういう形になってしまうのでありまして、そういう点について、政府のこの原案というものは、これは何か生産農家というウエートが少なくてメーカー本位の方向に動いていく性格を持っているのではないか、こう思うのですが、あわせてその点についての所見を伺いたい。
  23. 飯島忠則

    ○飯島参考人 ただいまの永井先生の御質問に対してお答え申し上げます。  まず第一点の補助金政策でありますが、今までの農民保護政策の中である程度までの発展の要素をなしてきたのは、国の施策の中での補助金だと思うのでございます。しかし、最近私たちが真剣に考えておりますことは、むしろ、仕事それ自体に対する補助でなくて、やはり、先生がおっしゃるような、農業全体の中における畜産を発展させる割合、その置かれている地位、そうしたものを検討していただいて、そういう中で合理化していくような施策をしていただきたい。むしろ今私たちが希望していることは、それは国の予算の中で大きな補助金が出し得るならばそれにこしたことはありませんけれども、しかし、農民の自主性も最近は非常に強くなってきております。そういうような観点からいきますと、先ほどどなたからか出ましたように、やはり、融資の道を、低利にしてしかも長期に、しかもたくさんの融資をお願いしたい。そういう道を切り開いていただくことの方が、この仕事のためにはいいんじゃないだろうか、こういうふうに考えております。しかし、現時点においては、私どもの要求としては、できるだけ補助政策もあわせて行なっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  第二点の問題でありますが、この点につきましては、やはり、価格だけの問題ではでき得ない、すべての抜本的な対策が講じられなければだめだ、こういうふうに考えられます。この価格の面で先ほど申し上げるのを一つ落としましたけれども、今度の安定法の内容をよく検討してみますと、何か加工会社の加工品の価格基準をきめる場合にはやはり会社生産費をその価格の中に織り込んでいくというふうにうかがわれるような気がするのであります。しかし、農産物について、農民の生産されたものについてはその点が明確にされていないような気もいたすわけであります。いずれにしましても、価格については生産費を十分に織り込んでいただきたいということでありますが、それらを、ただ単に価格だけの政策でなくて、やはり、先ほども申し上げましたように、融資その他経営を転換でき得るような総合施策を十分にお考え願いたい、このように考えておるのであります。
  24. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 畜産政策自体は、畜産そのものだけの範疇で解決ができない、基本的な農業施策の中でどう位置づけられるかということが必要ではないかという意味に御質問を受け取ったのでありますが、そういう問題の前に、やはり、何といいましても、これからの農業基本的な方向というものは、わが国の農業が健全に発達していくにはどうしたらいいか、そうして農業者の農業経営なり生活の安定向上をどうしてはかっていくかということを国の基本方針として、わが国産業全般の施策がこういう基本方針の関連において総合的に確立されていくことが、私はわが国農業の今後の基本的なあり方でなければと考えます。そう言うゆえんは、先ほども申し上げたのでありますが、何といいましても、経済的な制約を受けております。自然的な制約を受けております。社会的な制約を受けております。そういう農業の特異な性質というものに立脚して、そういう基本的な方向を立てていただきたい。  そういう基本的な方向の中で、しからば畜産はどうあるべきかということになりますと、何といいましても、畜産物の需要の今後における増高の傾向というものが所得倍増計画の中にも出ておるわけでありますので、そういう点をふまえて、今後やはり選択的拡大と称するそういう畜産のわり方というものを考えていく場合には、冒頭に申しましたような基本的な態度に基づいて畜産というものを十分そういう経済的な制約から守り得るような具体的な施策というものを畜産政策の上にお立てを願いたいということであります。  従いまして、価格におきましても、瀬尾さんから申されましたように、乳製品価格から逆算して出たものを生産費として、その差額を助成するというような考え方には、私は反対でありまして、基本的には、農業を営む者をどうしたならば所得格差の拡大現状からその格差を縮小し、望み得るならば均衡する方向に持っていくかということをやはり松本に置いて、その基本に基づいた価格政策なりあるいは総合的な流通施策なり生産対策なり、これを一貫して確立を願う。その中で、特に経済的な制約を受ける点につきましては、価格政策の役割として畜産物価格安定法案審議の途上にあるわけでありますので、あくまでもその中心になる価格建前は、生産費を保障し所得を確保する、酪農に投下した労働時間というものを都市並みの労賃に評価するという建前を貫いていただくことが最も望ましい建前であると思うのでありますが、前段に申したように、そのことを一挙に本日ここで具体的に施策の中に入れていただくということもなかなか困難な課題の提起であるとも思いますので、そういう点を将来に一つ確保していただくという前提で、ワン・ステップとして、生産費を補償する価格というものをこの際安定法の中に置いていただきたい。と申しますのも、それは農業所得の確保こそ価格政策を取り上げていただく中心的な柱にしていただきたいということで申し上げたつもりでございます。
  25. 寺村秀雄

    寺村参考人 お答えいたします。  第一点は、補助金のつけ方についてどういう考えがあるかという御質問に承ったのでございます。確かに、御指摘の通り、補助金政策につきましては、つけ方の点を慎重に考えないと逆の問題が出るわけでございます。たとえば、酪農地帯を育成するということに相なりまして、ここではらみ牛の導入費に補助金がついたという場合に、ややもしますれば中間の博労さんが先に買ってしまって高く売りつけるというような事態が起こるケースもあるわけであります。これは、本来言えば、私どもの同じ農家生産し同じ農家がが購入するものにつきましての共同販売、共同購買の線が固まっていないためにこういうことになるというふうに考えるわけであります。われわれ生産者団体が日夜奮励しなければならぬ面であろうかと思いますが、また、同時に、金のつけ方にいたしましても、生産者団体から生産者が買う、あるいは農家が直接農家から買うというものに限りつけるというような制限でもつけますれば、その問題は防がれるのではないか、こういうふうに感じております。それぞれのケースに応じまして、テクニックと申しますか、規制と申しますか、そういうものが今後一そう講ぜられなければならぬのではないかと思います。  第二点は、安定法の問題と関連いたしまして、メーカーの救済、メーカー本位に走る危険性が考えられないかどうかという御質問かと承ったわけでございますが、補助金の問題にいたしましても同様でございますが、やはり、農家に直結する以外の面に補助金をつけるということは、ややもすればそういう方向になる危険性があるわけでございます。あるいはまた、補助金ではなくても、補助金に似たような一定の算定価格で買い上げるという場合に、それが農家に直結いたしません場合には、ややもすればそういう危険性が考えられるかと思うわけでございます。そういう角度からいたしまして、この安定法におきましてその危険性が多分にある面かございますれば、——ございますればと申しますのは、私どもも感じておるのでございますが、その点御修正願えれば非常にしあわせであると考えます。
  26. 野原正勝

    野原委員長 足鹿覧君。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 主として瀬尾さんと寺村さん、または渡辺さんにお尋ねをいたしますが、あるいはぶしつけな御質問を申し上げることになるかもしれません。失礼に当たる点があるかもしれませんが、畜産現状と今後を憂える立場において、御了解を願いたいと思います。  そこで、最初に寺村さんなり渡辺さんに伺いたいのですが、農協畜産物に対する共販体制に対するお考えは、われわれも一応存じておりますが、これを強化拡大していく方針ありやいなや、また、その対策はどういうふうにお考えになっておりますか、お答えいただきたいと思います。
  28. 寺村秀雄

    寺村参考人 足鹿先生にお答えいたします。  農協畜産の年産共販体制につきましては、本来非常におくれておったわけでございます。そこに内部的に大きな議論の経過があったわけであります。ようやくにいたしまして、と申し上げますと何でございますが、腰を上げました。腰を上げました以上、いわば少し誇張的になりますが、大和、武蔵が動き出したというような格好考えていただいてもけっこうかと思います。  そこで、系統三段階のうちの全敗連について申し述べさせていただきますと、全販連におきましては、現在担当職員が約二百名でございまして、牛乳の共販、豚の共販、卵の共販を実施いたしておるわけであります。おもにこれらの事業を実施しておるわけであります。現在のところ、卵はおおむね私どもの共販価格が市価になるというところにまで実現されて参っております。豚につきましては、本年度の取り扱い見込みは、おおむね三十万頭という程度でありまして、芝浦におきましては、おおむね三割のものを全販連がみずから屠殺、販売をやっておるという実情でございます。横浜、名古屋、その他におきましては、荷受けに対する委託販売というような形式をとっておりますが、おおむね七割くらいのものをわれわれ共販のもので扱っておるわけであります。こういうような現状でございますが、さらにこれを飛躍化するという点からいたしまして、先ほど来お願いもいたしましたが、施設そのものを、全販自体としても、清水の舞台から飛んだような気持で大きく取り上げていこうということになりまして、計画いたしましたのが、御承知のように、資本金以上の計画を私どもいたしておるわけであります。約八億円くらいに相なるわけでございます。その計画のうら着手いたしましたのが約二億円くらいに相なります。豚の販売施設、ささやかでございますが、冷蔵庫、鶏卵の荷受け販売施設、食鳥の荷受け販売施設というものを逐次設立していくことに相なっておる次第であります。  それとの関連におきまして、系統三段階においてどういうふうにやっていくというような整理もいたしたのでございます。単協の段階におきましては、豚で申し上げますれば、一単協でそれぞれ技術指導者を置くというのは、現在の単協の経営規模から見ましてやはり問題がございますので、これをグループ単位で置くというような角度からいたしまして、集団という問題を取り上げておるのでございます。単協に技術指導者を置く、かようにいたしまして、豚につきましては、その単協で預託制をとりまして、みずから生産した子豚を農家に配給していく、こういうような考え方をとっておるわけでございます。県の段階はどうするかということになりますが、県の段階は、今申し上げました集団を推進する。これは、今の技術指導の合理性の追求と、それから出荷、販売にあたりましてのロットの問題がございます。その面での規模という問題を取り上げまして集団化を推進しておるのでございます。県連の仕事のおもな仕事はこれに相なるわけでございまして、なお、県連においても技術者を入れる必要があるというようなことで、逐次充足をしてもらっているわけであります。全販連は、これを受けまして、消費地における荷受け販売施設を確保するということになるわけであります。これに伴いまして技術者も必要でございますので、新年度におきましては、約五十名新卒を採用いたしまして充足するということに相なるわけであります。  さらにまた、豚なりあるいは鶏なりの種豚、種鶏というものが大きな問題に相なる。最も合理的な、いい品質の種豚、種鶏の出産も、これはある意味におきましては国の仕事であるというようなことも言われようかと思います。国の方も大いにやっていただいておりますが、先ほど申し上げましたように、わずか四十五億、五十億くらいの予算でたよりにならないというような点からいたしまして、私たち自体もそういうものを持つということにいたしまして、種豚場、種鶏場を持つことにいたしたわけでございまして、土地買収が終了いたしまして目下整地をやっている段階でございます。ここにおきまして優良な種豚、優良な種鶏を作り出しまして、県連の種鶏場、あるいは種豚場、単協の種豚場、種鶏場にこの種を回して参りたい。かようにいたしまして、系統での豚なり鶏なりの自給体制を確立する、こういう方針を組んでおるわけでございます。  大体以上のような格好で、一時期を画して積極的にやるという体制が整えられてきたということでございます。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 牛乳ですね。あなたのところでは牛乳はやっておらぬ。しかし、中間の都道府県段階では生乳の共販体制というものが相当進んでいる。酪連等で地方では指導しておられるでしょうが、あなたのところの系統機関でやっている。これに対してあなたたちの共販推進体制というものは強力に指導しておられますか。
  30. 寺村秀雄

    寺村参考人 お答えいたします。  牛乳につきましては、直接全敗連まで上げました共販もやっております。全販が共販をやっておりますのは、神奈川県、福井県、滋賀県、京都、大阪、兵庫、徳島、香川、これだけは全販からメーカーに販売しております。一元集荷多元販売というような基本線でやっておるわけであります。県の段階でやっておりますのが、それ以外に、北海道を初め、青森、岩手、宮城、秋田、山形、茨城、群馬、山梨、長野、石川、かようにあるわけでございます。その他の県連も、地区連が合併いたしました県も、すでに二、三本年度に入りましてできました。そういう点から見まして、牛乳共販を大いに取り上げていこうという意欲に燃えておるわけであります。  なお、全販といたしましても、やはり、お互い同士という中身を持っておるところの加工業ですね、広い意味におきますところの生産者団体、農民団体の出資にかかる加工事業をやっているところもある。ここのところの提携を深めていく、そうして、これらを軸にいたしまして共販を逐次拡大して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 そこで、瀬尾さんに伺いますが、今お聞きの通り農業団体は共販体制を強力に拡大推進していくということであります。先ほどのお話にもありましたように、生産者と乳業者が共存共栄で行かねばならぬ、まことにけっこうで、その通りでございますが、実情は随所に遺憾な事態が起きておるように思うのであります。先般岩手県の乳価紛争の場合におきまして、乳業三社といいますか、これが大結束をされまして、経済連に対抗措置をとられておる。その中でも、どうもわからぬのですが、雪印という会社は特殊な会社で農民の会社だとわれわれは思っておったのですが、それが一番急先峰だったという話を聞いて、私ども納得のいかぬ奇異な感に打たれておるものでありますが、乳業関係としては共販体制に対してどのような態度を持って対処されるのか。共存共栄と申しましても、それは口で言い頭で描くことは何人も反対はない、その通りなんです。これを実際に移していく場合におきましては、今お聞きのように、全国においての共販体制というものが進んでいく、これとあなた方の利益があるいは対立する場合もあるかもしれないが、この共存共栄を根幹としてあなた方乳業者が適正な利潤を得ていかれるならばよいが、不当不法な大きな利益を追求する、——より多くの利益を追求することは企業者として当然でありましょうが、それでは共存共栄の実は上がらぬのじゃないか。従って、この共販体制に対する乳製品関係者基本的な態度、たとえば岩手県に現われたような、これを徹底的に切りくずしていく、こういう対抗的なお考えで今後対処されるのか。共存共栄の一番大きな問題としまして、これに対するあなた方の御方針、態度というものについて一つ伺いたいと同時に、その岩手県の話はほんとうでありますかどうか、その間の消息がわかれば聞かしていただきたいと思います。
  32. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 お答えいたします。  まず、岩手県の例でございますが、たいぶ誤解がおありのようでございます。私、乳製品協会の会長としてきょう出ておりますので、他社のことに触れては申し上げたくないのでありますけれども、ただいま雪印の名前が出ましたが、私雪印に籍を置いておりますので、ただいまの雪印の態度についてお答えいたします。  雪印が急先峰であったというお話でありますけれども、あの過程におきまして、岩手県では雪印の取り扱い乳量が一番多いということから一番矢面に立たされたのが実情でございます。そこで、争いと申しますか紛争のもとになりましたのは、岩手県の酪農家方々は、生産費補償方式乳価で買えというのが一つの問題でありました。ところが、今日の状態では、生産費を補償する乳価牛乳を買いまして市場に出した場合に、会社が全部その損失を負担しなければならないので、会社は立ちゆかぬ。現在の事情ではそれができないのであります。従いまして、先ほど来申し上げましたように、現在のメーカー筋では、各製品の負担力と申しますか、乳価の負担力でそれぞれ交渉して、各地区の情勢を判断しましてお取引をしておるわけなんでありまして、先ほど来私ども生産費補償方式はけっこうだがと申し上げておりますが、一面で、お客さんの買ってくれない、売れないものを作るわけにもいきませんので、その辺のかね合いを政府がギャップを何か補償する方式はできないのかと申し上げたにすぎないのであります。誤解があるようですから、この際一つ申し上げた次第でございます。  それから、共販の問題でございますが、共販は、これはまた雪印になりますけれども、他社は必ずしも同じではありませんが、雪印におきましては、北海道を基盤にいたしまして三十五年間参っておりますが、共販はむしろ奨励いたしております。まず共販を始めたのは北海道が一番先でなかったかと思うわけであります。現在も共販方式で進んでおります。また、本州方面に進出しておりますのも大体共販方式を奨励しながらやっております。会社によって違いますので、他の会社のことは申し上げにくいのでありますが、その辺で御了解願いたいと思います。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 共販体制に対する態度は大賛成だということでありますが、問題はその中身になると思います。農民にとって正当な利益を守ることにならないような共販体制なら、これは役に立たぬ。従って、その結果が、あなた方の利益率に、従来の独占企業的なときよりも若干食い込むという事態に、これは共販体制が実を結ぶためには結果としてなる。そういう場合にとことんまでこれと対立抗争していくのかどうか。先ほど、岩手県の例は生産費補償方式による過大な要求であったという意味のことを言われたわけですが、いわゆる交渉する乳価につきましても、いろいろ考え方はあるのです。頭からそれを完全に実現を期するという地帯もありましょうし、力関係もありますから、そう一律にはいかない。これは一つの国の法律なら法律に基づいて行なわれて初めて可能なことであって、その地域における力関係が最終的には決定すると思うのです。ですから、その間にあっては、実情を反映した正常な取引、話し合いをし、協定を結び、そして正当な取引が行なわれない限り、やはり紛争が起きていく可能性があると思うのです。共存共栄の立場から、その点は今後の畜産の占める農業上の地位ということを考えた場合に特に重要であろううと思いますので、十分御留意を願いたいと思いますが、これらの点については、時間もありませんし、あとでもう少し伺います。  それから、乳業三社の利益率と言いますか、そのことについて伺いたい。これは、農林省の資料によりますと、わが国では諸外国と比べまして牛乳価格は高いことはない。むしろ低い。ところが、製品になりますと、一倍半から二倍、それ以上になっておるのが実情のようであります。これはどこにそういう原因があるのか、乳業者が企業努力を怠っておるのか、それともまた利潤が多過ぎるのかという不審をわれわれはいつも抱いております。先ほどの瀬尾さんのお話によりますと、日本の乳製品会社の技術は世界的水準ないしはそれ以上で、決してまさるとも劣らぬのだというきわめて自賛の強いお話がありまして、まことに心強く思うわけでございます。どうも、外国の乳製品よりも著しく高いというのは、お話にもかかわらず、どこか企業そのものの中に大きなコスト高になるような原因が横たわっておるのか、あるいは、平たく言えば、あまり乳製品会社がもうけ過ぎておられるのではないか、大へん失礼でありますが、こういう率直な疑念を持っておるのでありますが、そこで、昨年度の利益総額と利益率は三社でどの程度になっておりますか、ちょっとお伺いしたい。
  34. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 昨年度は三社で平均しますると二%ちょっとになるかと思いますが、その中には、二%を割る会社もありまするし、三%に近い会社もございます。全体の食品業界で申しますると、ここに調査がございまするが、大体年々五%に近い利益をあげております。製造業界一般ですと六%、七%以上の利益をあげております。配当の点をごらん願いますとわかると思いますが、株式取引に上場しておりまする食品会社は三十数社ございますが、最低八%から、最高ですと三割以上のところもあります。乳業三社は、一割三分を最高にしまして、一割というところでございます。その下に八%という食品会社が一社ございます。そのほかは全部一割以上でございます。さように、乳業会社はもうけているもうけているとおっしゃいますけれども、私ども、結果から見ますと、決してそうもうけていないのでありまして、この点、上十分御検討願いたいと思います。私が申し上げますと、何か自己宣伝になりますけれども、実際においてそうなんでございます。利潤をあげ得ないというのは、いわゆる。申し上げますと、原価高の製品安、最近の消費物資の値上げ抑制ブームと申しますか、政府の御方針にのっとって、乳価はこの春以来上がっておりますけれども、製品はさほど上げていないということで、非常に芳しい経常をいたしております。  それから、合理的の問題でございまするが、これは、私ども合理化を怠ったら株主から敬遠されるのでありまして、私ども経営者の責任として絶えず毎日のように合理化をやっております。先ほどちょっと申し上げましたように、生産量の問題であるとか、また、御承知のように、牛乳は輸送いたしますと非常に高いコストになります。ところが、日本では、谷合い谷合いで牛乳生産される、それから、谷合いを越え山を越えて輸送されるということで、小さな工場が非常に多いのであります。一工場単位が非常に小さいということがコスト高の大きな原因になっておるということもあるわけであります。こういう点もお調べ下さるとわかるのでありますが、合理化については私ども責任上絶えずやっております。従いまして、過去においてはバターが二百円もしたことがありますが、その当時の乳価が三十二円でありましたけれども、今日は五十円ないし五十円近い乳価を払っておりまして、バターが半ポンド百七十円くらいにとどまっているということも、一つの合理化の線であります。乳価は高くなっているが製品は安くなっているということが合理化の現れであります。そういうことは絶えず努力いたしているつもりでありますが、今後とも先生方の御指導をお願いいたしたいと思います。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 議論をすることを避けまして多くは申し上げませんが、企業努力は十分払っている、しかし利潤が少ない、決してもうけ過ぎておらぬ、こういうことになりますと、乳価そのものも安い、にもかかわらず製品が外国に比べて著しく高いということ、この問題は大いに究明、検討する価値があると思うわけです。いずれまた、これは、本法の審議に際して、政府施策とも関連がありますので、その際に検討することにいたしまして、多くは申し上げません。  次に、脱脂粉乳の輸入差益の問題についてでありますが、これは、年間一万四千トンから一万五千トン、生乳に換算いたしますと百五、六十万石の脱脂粉乳が、余剰農産物協定ですが、あれ以来ずっと続いている。国内では過剰傾向の際に、先年この委員会でも問題になって、やめたらどうかということを申し上げたのでありますが、政府にはなかなかこれをやめる気持がない。大へんアメリカその他に気がねをしておられる模様でありますが、そこで、われわれはこれに対しては多くの意見を持っております。持っておりますが、本日はそのようなことをあなた方に論ずる機会でありませんので差し控えますが、われわれが聞くところによりますと、ある団体はこの差益金を莫大にかえておられるという話も聞くのであります。とにかく、これはもうかっているということは事実のようでございます。乳業四社が保留しておられます差益金を、社内保留しておられる各社別の事情をお伺いすることができないでしょうか。  それから、ついでにまた、相当の社内保留があれば、これはどういうふうにお使いになることが一番好ましいかという点もあわせてお伺いいたします。
  36. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 お答え申し上げます。  年間脱脂粉乳を輸入しておりますのは、学費給食用を入れますと三万トンをこえるようです。ところが、昨年から入れましたいわゆる市場不足の調整輸入、これはその大した大きい量ではないのでありまするが、昨年は脱脂粉乳は千五再トンですか、それが今日になりますと二千五百トン、バターが、昨年が九百トン、本年が二百五十トン、こういうことになっております。差益となるとちょっと大きいのでありますが、約二億円近くなるのではないかと思っております。  そこで、あの調整輸入をするときに、乳製品協会といたしましては、この調整輸入によって業者は一文ももうけてはいかぬ、そこで、その差益は全部どこかに供出して酪農並びに乳業の発展のために使ってもらいたい、その方式で輸入を許可してくれということを懇請いたしまして、御許可をいただいて実は進んだわけであります。ところが、さて、その間に、いろいろ輸入したものを取り扱う業者をどう指定するかについてはいざこざがございましたが、ともかく、輸入して配分された。その差益は預かり金になって現在各社が保有しているはずでございます。先般も御当局からこれに対するいろいろな質問がございましたが、私どもは、最初の原則にのっとって、これは、単に乳製品協会だけでなしに、生産者団体でありまする全酪連の方々、それからまた卸問屋の方々の同意と申しますか、協賛も得まして、その方式でやろうということになったのでありますが、今日おのおのその差益を握ってみますると、何かこれは私したいというような気分もあるやに伺っておるのでございます。もうだいぶ今日まで進んでおります。時日が経過しておりますが、いまだに預りっぱなしで、まだどこに出せという御指示はないわけでございます。先ほど私ちょっと輸入の問題で申し上げたように、何かこれは個人的に利得を与えるようなおそれもあるというような言葉で申し上げたのはこの点なのでございます。そういうことがあってはいけないのじゃないかと私どもは思っております。私ども乳製品協会の関係者の者は、いつでも供出申し上げます、どうか早く御指示下さいと申し上げておりますが、他の団体の方はどういうように交渉をしておるか知りませんが、いまだにきまらないところに多少の疑問を持っておるような次第でございます。まだきまってないことでありますから、これはいけないとは申し上げられませんので、ただ心配しておるというところであります。大メーカーといたしまして、三社のうちで私どもが一番多いのでございますが、私どもは預かり金として保留しておるものはわずか六十万円くらいのものでございます。明治、森永さんはまだ小さいのでございます。ある団体においては一億近い金も預かっておるようでございます。これはこれからの処置でございますので、できるだけ公明正大に、そして将来の酪農並びに乳業発展のためにお使いいただきたいというお願いは申し上げておりますが、まだ決定されていない、御指示はいただいてないという段階でございます。   〔委員長退席、小山委員長代理着   席〕
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 お話のような形においてこの差益金をどのように使うかということについては、今後、本委員会においても、政府にただし、政府対策等についても十分ただしていきたいと思うのですが、各社別の差益金の保留高というものはお聞きすることはできませんか。
  38. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 私はちょっと記憶にないのでございますが、それは御要求がございますれば差し上げてもいいと思います。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、一つあとでお示しをお願いいたします。  先ほどの脱脂粉乳に関連しましてもう一つ伺いたいのですが、最初の瀬尾さんの御意見の中に、輸入乳製品が横流しになったりして一部の者に不当な利益を与えたことがあったという意味のお話がございましたが、なかなか言いにくいことでしょうけれども、その実態はどういうことでございましょうか、もう少し突っ込んで御披露願いたいと思います。
  40. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 実は、輸入脱脂粉乳につきましては、需要者を指定して払い下げと申しますか売り渡したのと、問屋に売り渡したのとございます。ところが、需要者が入札払い下げを受けたものが、割当の通知がありますとそれを直ちに問屋へ取引しているという例もございます。それから、問屋の中にあの配分されました脱脂粉乳は積み上げられておるという現実の事実もございます。どういう取引でそういうことになったか存じませんが、目的に流れたはずのものが他の目的の方に入っているというものがあると思う、これは現実に私どもいつでもその事実はお目にかけましょうということを言ったことさえあるわけであります。
  41. 小山長規

    ○小山委員長代理 一時半まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  42. 野原正勝

    野原委員長 休憩に引き続き会議を開きます。  参考人各位には長時間にわたりお待ちいただき、まことに恐縮でございます。  それでは、畜産関係参考人に対する質疑を続行いたします。足鹿覧君。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 午前中の質疑を続けさせていただきますが、その際脱脂粉乳の最近の輸入の点についてお尋ねをいたしましていずれ数字等については後ほど述べるであろうというお話がありまして、御準備もできたようでありますので、この際お話を承りたいと思います。
  44. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 足鹿先生の御質問でございますが、先ほど、私、雪印乳業につきまして六十万程度と申し上げましたが、訂正させていただきます。あれは取り扱い数量の間違いでございまして、まことに恐縮でございます。  休憩中数字を取り寄せましたので、御報告申し上げますが、最近は畜産局長さんの何分の指示があるまで積み立てることになっておりまして、乳製品協会関係のうちの四社の取り扱いましたバター五百トンに対しまして、雪印が扱っておりますのが三百一万八千七百八円、明治乳業が扱っておりますのが百二万三百二十六円、森永乳業が九十五万六千四百七十六円、協同乳業が三十二万百円、合計いたしまして、五百三十一万五千六百十円でございます。これはバター五百トンのみでございまして、このほかにバター四百トンと脱脂粉乳千六百七十トン扱った別口があるのでありますが、その扱っておりますのは、全酪連さんと乳品生飯協同組合さんと、日本製酪協同組合さんであります。その扱っております金額は、これは推定でございますけれども、大体合っておると存じますが、一億九千五百万円ほどになるのであります。これは細部の内訳は私存じません。ただし、これは、この総額としまして二億五十万円ほどになりますが、これが処分のときになりますと、一たん利益勘定に落として供出することになりますので、法人税として税金を約半額納入しなければならぬことになろうかと存じております。私どもも税金を納めないでまるまるこれを酪農その他の公共事業に使いたいというお願いを申し上げたのですけれども、大蔵省と関係があろうかと思いますが、税金はとられることになっております。これが三十五年度であります。  それから、三十六年度におきましては、脱脂粉乳二千五百トンとバター二百五十トンが現在取り扱われております。この扱い業者は、全酪連さんと日本製酪協同組合と乳品生販協同組合であります。乳製品協会のメンバーは全部扱っておりませんから、この内容については私ども存じませんので、これは後ほど畜産局長さんの方へお問い合わせ願いたいと思います。  以上訂正と御報告を申し上げます。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 よくわかりました。三十六年度の分ですが、あなた方四社は取り扱っておらない。他の三団体が取り扱っておるということでありますが、取り扱う意思はおありになっても取り扱えなかったのか、頭から取り扱う意思がなかったのか、あるいは割当の都合上そういう形になったのか、その経緯でありますか。
  46. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 お答え申し上げます。  最初バターを輸入いたしましたときに御相談を申し上げたときには、乳製品協会のメンバーも扱うことになりまして、一応その通りになったのでございます。十二月に入りまして脱脂粉乳が入りましたときに、どういう関係か存じませんけれども、乳製品協会のいわゆる大メーカーと申しますか、現実に生産と販売の実績を持っておりますわれわれには割り当てないという御方針がきまりました。秋どもは扱わしていただきたいことは再三お願い申し上げたのですけれども、どういう都合かそれは存じませんが、割り出てないということになりましたので、その通りになりまして、先ほど意見を申し上げたように、多少の混乱が生じたのではなかろうかということが考えられます。  引き続きまして、三十六年度におきましても、バターも脱脂粉乳も今度も取り扱わせていただいておりません。希望は申し上げておりますけれども、その事情は存じませんが、とにかく取り扱っていないわけでございます。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 ちょっと間が切れましたので、若干重複するきらいがあるかもしれませんが、お許しを願います。先ほどの瀬尾さんのお話の中に、輸入乳製品が横流しにされたり、その結果一部の者が不当な利益を得たきらいがあるというお話がありました。ただいまもこの輸入乳製品の割当についてその実態の一端をお話しになりましたが、どうも不明朗な感じを私ども受けるのであります。この際、午前中の横流しのお話なり、それに基づく不当な利益を得たこの真相等について、いま少し突っ込んだ、たとえばこういう事例があるというふうに、お立場もあってなかなかおつらいでしょうが、お話し願えたら幸いと思いますが、 いかがでしょう。
  48. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 不当というのは懸念として申し上げたのでありまして、現実に、配分されたものを受け入れた業者が、いわゆる実際の需要家でありまするが、すでに割当を受けたものを問屋の力に取引を申し込んでおる。さらにまた、もっと具体的に申しますると、タイミングのズレと申しますか、実は私の方で要らなくなったので国産品と取りかえてくれないかというような申し込みを私は現実に受けてもおります。それから、扱っております卸屋さんで、なにしろ値段が安いものですから、買い取りまして、おかげさまでと言っている人もあるような状態でございますが、だれがどうということはちょっと遠慮さしていただきたいと思うのであります。問屋でも現実にそういう品物をお待ちの方もいらっしゃることは、はっきり申しますが、事実でございます。そういう点で、量は具体的にはなかなかつかみにくいことですけれども、相当の量はそういうものに流れているということは、配給機構と申しますか、そういうところに何か欠陥があるのじゃなかろうかということでございます。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 まことに、われわれ、驚き入った実態をお聞きしまして、あ然たらざるを得ないのですが、この問題はいずれ本法案審議に際してその実態政府よりさらに聴取いたし、今後に処したいと考えます。一応その点についてはこの程度にしておきます。  次に、一番最初に伺いました点で、さらにこれと関連をいたしまして瀬尾さんにお尋ねをいたしますが、生産者と乳業者の共存共栄と申しますか、ともに共栄していく、こういうモットーのもとに進んでおるということでありまして、私ども、そうあらねばならぬと深く考えるものでありますが、先ほども生産者価格と消費者価格から逆算をした価格との差額を国で補給することはどうかという趣旨のお話もございました。これに対してのいろいろな意見はしばらく別の問題といたしまして、実際の問題として見た場合に、北海道なり東北の乳価は、先ほども鈴木さんのお話にもございましたが、大体三十円から四十九円、こういうところにあるようでございます。これは乳価が非常に低いです。こういう乳価はとうてい生産者としては納得のいくものでないことはもちろんでありますが、かりに全脂加糖練乳を作る場合におきまして、原料乳を六十円と見ましょう。これなら大体生産者としましても適当と思いませんが一応やむを得ざる価格として、まあこの六十円を基礎といたしますと、加糖練乳を一カン当たり三斗五升として見ました場合に、原料乳代が二千一百円、加工費、販売費を含めまして一カン二千三百円、合計四千四百円となっております。これは農林省の昭和三十四年の調査に基づくものでございます。一カンは二十四・五キロ、こういうことになっております。この農林省調査を基礎といたしまして、今の練乳の相場を見ますと、一カン四千三百円前後であるように聞いておりますが、この実情から見ますと、共存共栄の実がはたしてあがっておるかどうか、大きな利潤をおあげになっているのは乳業者であり、それが繁栄をしているのであって、農民はこの六十円の乳価はおろか五十円の乳価も怪しいという実情にあるのであります。これは乳価を六十円とした場合の計算でありますが、これをはるかに割った現状におきましては、酪農農民の場合非常に困った実情であり、一方それを原料とした乳製品の業者の方では相当大きな利潤をあげておられるように思うのであります。こういうことに対するいろいろな抵抗と申しますか、共存共栄の実をあげていくための農業団体その他の共販体制の強化拡大、また、国の畜産政策の重要な一環としましての酪農政策、現在われわれが今審議をいたしておる畜産物価格の安定問題も当然起きてくるのであります。この点につきまして、その御意図のことはよくわかりますが、すべて合理的に話し合って、そうしてともに立っていくという、またその考え方で進んでおられる乳製品業界の基本方針と、今日実情が著しく隔たるということになりますことを私は非常に遺憾に思うのでありまして、あえてこの席で御議論をふっかけるつもりは毛頭ございませんが、共存共栄の実をあげていくためには、お互いが持ちつ持たれつ、いわばそれだけのことでありますが、それを具体的に実現していくためにはなかなか今日の実情がそうでないことを非常に憂える者でございますが、この点につきまして瀬尾さんの御意見はいかがでありますか。共存共栄の具体的な今後の進め方等についてこの際御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  50. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 ただいま先生のおっしゃいました数字の中にお間違いがあるのでありますが、先ほど鈴木参考人から北海道、東北の乳価を申し上げた際の数字は四十九円五十銭のはずでございます。三十円、三十五円というのではなく、四十九円五十銭が工場持ち込みの乳価です。これは乳価として農家に払う代金でありまして、そのほかに、当方で、向こうのステーションから運ぶ運賃であるとか、あるいは途中の生産ロスであるとか、こういうものを含めますると、副費を入れまして、原価計算上の乳価というものは、平均しまして五十四円くらいになるわけでございます。もちろん三・二の脂肪率の一升の値段でございます。現実には三・四以上あるのでございますが、三・二に換算しての乳価でございます。そういうことから割り出していきますと、農林省さんでお立てになりました原価計算はどういう内容か私存じませんすれども、現在の原料地帯の乳価で大カン練乳を作ったといたしますと、メーカーの能率その他によりますけれども、大体四千三、四百円になろうかと思います。ところが、現在はそれが四千円を割るものも出てきておる。特に大メーカー筋では、製菓等につながるものもありまして、割合に有利に消化しているものもありますけれども、一番困っておりますのは、市乳地帯のシーズン・オフの関係で、残乳ができておる、これを市乳値段の乳価で買って、これを原料にしてやっております中小メーカーの関係が非常に困っておるというのが昨今の現状でございます。原価計算につきましては、農林御当局の御要望によりましてたびたび出しておりますので、その後の変化と原価の構成と、いろいろ御勘案願っておるはずでございますが、この前の農林省の原価計算というものは、私ちょっとわからない点があります。  なお、共存共栄と申しまするが、口幅ったいようでございまするけれども、今日までの酪農の発展には、やはり各メーカーとも相当の酪農費と申しまするか、そういう費用を出しております。大きな会社ですと、年額二億、三億という金額を出しております。そういうものを、つまり利益をあげる場合にすでに農村に還元しておるということ。そうして、メーカーといたしましても、乳量のふえることが何よりの合理化なんでございまするから、増産に対してそういうような金を使っておる。また、補導員を、ある社においては三百人、また小さいところでもそれぞれ補導員というものを置きまして、それらの経費も使っておる。要するに、酪農が伸びることがメーカーの合理化でもあり、また、農家にも、それが消流をはかられることが農村の酪農を伸ばすということで、共存共栄の実がそこにあるのではなかろうかと考えております。そのほかに、各メーカーといたしましても、補導費の補助であるとか、乳牛導入の補助金であるとか、あるいは利息の補助であるとか、いろんな面をやっておるわけでございます。これはそれぞれの会社によって違いますけれども、大小おのおののメーカーのやっておることでございまして、また、ある会社におきましては、決算前にその利潤の還元もしておるような会社もあるようであります。そういうことで、できるだけ酪農の伸展に、口幅ったく申しますと、お尽くししているというふうに私どもは考えておるわけでございます。ただ、おのずからそれには限度がありまして、やはり会社でありまするので、ある適当な利潤は確保いたしたいものだと思っておりますけれども、他の食品業者のような大きな利潤はあげ得られない。これは私どもの宿命だと考えております。非常に底の浅い業界でございますが、何とかかんとか息をついてやっていっているというのが現状でございまして、できるだけそういう面において御協力申し上げて、共存共栄の実をあげたいと念願しておる次第でございます。
  51. 足鹿覺

    足鹿委員 議論になる点は省略いたしますが、酪農振興なり酪農資源の開発等に対して相当の資金なりその他を注入しておられることは、私どもも知らぬことはございません。しかし、それば、いずれの業を見ましても、一つの投資であり、それは一見当然恩恵的な振興費のごとく見える面もありますが、究極においてはこれは投資でありまして、その投資に対する利潤という形で考えられることは、これは企業の常識であろうかと思います。この間も、中央市場法の審議の際にも、産地に対して技術の指導もやっている、内渡し金もやっている、あるいは包装の指導もやっておると、いかにも産地の育成に自分たちが身銭を出しておるようなお話でありますが、これは必ず別な形において回収をされておるのであります。少なくとも私はそれに対して毒づくわけではございません。その努力は悪いことだとは申し上げぬのでありますが、企業体としては、それも投資になり、またそれに相当するものとして究極においては経理上明らかになっていくのでありまして、決して、社長が身銭を出すとか、あるいは役員が身銭を出して産地の育成あるいは改良等をする犠牲奉仕ではないのであります。われわれは犠牲奉仕であってほしいと思うのでありますが、この点は本日参考人としておいでを願いました各位に対して失礼でありますから、これ以上は申し上げませんが、少なくとも、今私が申しましたような農林省統計をもってしましても、根拠あるこの利益配分ということについては十分御留意を願う必要があるように存ずるのであります。これ以上の問題につきましては、他の機会法案審議で十分尽くしたいと思いますので、これ以上申し上げません。  次に、最後でありますが、全販の寺村さんにお伺いいたします。一番最初にお尋ねをいたしました共販体制の問題に関連いたしてであります。つまり、全販の畜産対策基本とでも申しますか、そういうことについてこの際伺っておきたい。  第一に、事業団に対する運営上の危惧と申しますか、そういった点について御発言がありました。私どもも、もっともだと思います。この事業団というものの組織、機構、運営というものは、はたして妥当なものであろうか、また、その運営がうまくいくであろうかということは、ひとしく憂えるものであります。ほかのものと違いまして、化生きものを取り扱い、なまものを取り扱う、蚕繭事業団のような繭を取り扱う団体でもこれはなかなか問題があるのに、いわんや、こういった仕事を持つ事業団というものが初めての試みとしてはたしてどのような運営になるのか、なかなかむずかしい問題だろうと思うのです。これに対して、しからばどういった組織、機構、運営が必要と思われるか。具体的に、この構想ではなしに別にこういう構想を持っているんだということでもけっこうであります。私どもの社会党が要望しておりますものは、特別会計によって運営するという基本を明らかにいたしておりまして、事業団を設けないということになっておるのであります。それらも一つ勘案の上、この際お話を伺いたいと思います。
  52. 寺村秀雄

    寺村参考人 社会党方式政府直接買い上げの問題と、事業団方式につきましては、正直に申し上げまして、私ども悩みに悩んだわけでございます。やはり、筋としては特別会計によります政府買い上げが正しい、こういうふうに考えられるわけであります。また、そのことによりまして、想定されますいろいろの困難な問題も打開の方途はあり得るんじゃないかというふうな点も考えたわけでございます。それから、先般各経済連さんの方々がお集まりを願いましたときの会議におきましては、ではあるが、今も足鹿先生のおっしゃいましたように、日々流れているやつである、なまものである、畜産物であるということによりまして、政府の直接買い上げという問題が、これは事務的な角度が中心になりますが、ほんとうにスムーズにいくかどうかということが迷いに相なりまして、その辺から見ますならば、政府の役人が直接やるよりも、運営に問題はございますが、事業団方式の方があるいはいいかもしれない。これは断定的な判断は……。(芳賀委員事業団は役人の古いのがやるのだぞ」と呼ぶ)そこでございますが、従いまして、専業団方式をとります場合におきまして、いわゆる民間機構のような簡素強力な、そう複雑な機構でなしに、簡素強力な機構ができて、しかもそれぞれの部署におきますところの責任と権限とにおきまして、瞬時々々の判断に基づく行動が迅速に開始されるというようなあり方というものが何とかならないものか、こういうようなところでございます。
  53. 足鹿覺

    足鹿委員 お困りのようでありますから、あえて追及は申し上げませんが、先般全販連は、水産業界が畜産界に乗り出した際に、この団体と覚書を交換をされまして、集荷面については全販がやっている、お前らは集荷面まで入ってくるな、こういう趣旨の覚書を交換されたことを承知しておりますし、また、最近では、メーカーと共同出資において加工会社を創設されて進んでおるやに聞いておりますが、大体の傾向を見ますと、系統組織が集荷機関化していく、その事業の実態というものとは遠い末端の集荷機構を担当するという形になり、そのことが非常に大きな成果のように伝えられておるのであります。これは見解の相違と言えばそれまででありますが、ちょうどビール会社が特殊組合を作って意のままになるような集荷機関を自分の傘下に集めたり、あるいは大製糸業者が養蚕組合を特殊組合的に集荷機関化して意のままに駆使したりという過去の実績から見まして、ややこれと軌を一にするきらいはないかという疑念をわれわれは持っておるものであります。  こういったことに対して、この方針を今後も貫かれていくということでありますと、先ほど述べられた共存同栄のためには、農業団体は乳業資本に対しても農民の利益を代表して言うべきことは言う、そして適正な農民の利益を敢然として守っていく、こういう形のものにやや遠い運営の姿となりはしないかという心配と疑問を私ども持つのであります。その過程にあっては、いろいろまた、その業界としては、先ほど瀬尾さんの話もありましたように、いろいろな奨励施設と称する対策が講じられ、それによる義理がからまり、そして両者が深い一体的なものになりました場合においては、気のついたときには、ちゃんともうそれは集荷の下請機関に堕しておりはしないか。特に最近の資本の集中独占の過程にありまして、全販自体がビール麦で多くの苦杯をなめさせられ、当委員会においても熱心に昨年来この問題で検討し対策を練ったいきさつもよく御存じでありましょうが、やはり、きぜんたる共販体制というものを主張しながら、一方において企業家の集荷機構をもって甘んずるような印象を受けるようないき方が、はたして農業団体の進むべき道であるかどうかということについて、これは決して攻撃しておるわけでも何でもありませんが、どこにあなた方の主張があり、共販体制の確立の上においてどういう関係にこれが立つものであるかということを一つこの際伺っておきたいのでありますが、 いかがでしょうか。
  54. 寺村秀雄

    寺村参考人 御指摘に相なりましたように、私自身といたしましても、農業協同組合は生産共同体である、こういう考え方を持っておるわけでございます。従いまして、生産共同体である限りにおきまして、単にその組織が物を集荷して需要者に流すというだけのことであっては、これは中途半端、ある意味におきましては御指摘のような方向が出る形勢もなきにしもあらず、かように考えるわけであります。もちろん、品目によりましては、つまり大衆消費を対象にするようなものにおきましては、これは集荷・販売——販売というのは大衆消費を相手の販売でありますので、そういうのは例外でございましょうが、原料に相なりますものにつきましては、やはり究極的には御指摘のような方法を一刻も早く実現しなければならないのではないか、かように考えておりまして、牛乳の問題につきましてもそういう方向で逐次前進体制をとっておるわけでございます。   〔委員長退席、田口(長)委員長代   理着席〕
  55. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも私がお尋ねすることにはみんな肩はずしのような印象を受けるのですが、さっきの事業団特別会計の問題、あまり追及してもお困りでしょうが、もう少し確信のあるところを伺いたい。  では、私から一つ方式として申し上げますと、現在全敗が構想してすでに実現されておるところのものは共同出資会社方式のようであります。これらは畜産のごく限られた一部分に適用され、今実行に移されつつある方式のように思うのです。そうしますと、われわれの考えておる特別会計の直接買い上げ、政府考えておる事業団による運営、もう一段下がるのか上がるのか知りませんが、とにかくもう一つの方法としては共同出資会社方式、こういうことで、全販としては、共同出資方式事業団にかわる、あるいは特別会計にかわる、——もちろん、組織機構が違いますし、目的が違うわけでありますから、直ちに今政府考えておる事業団の任務そのものを果たすことはできますまい。しかし、これらを一つの関連としてこの畜産流通問題を処理していこう、こういう基本方針でありますか。あなたの権限外で答弁の限りでない、会長が必要だということであればこれは別でありますけれども、もう少しその点を聞きたいのです。
  56. 寺村秀雄

    寺村参考人 権限の問題になりますと、一畜産部長でございますが、しかし、いろいろの何も一応幹部職として参画はいたしております。その限度でございますけれども、足鹿先生のお考えになっていらっしゃるような方向で進めて参りたい、こういうような考え方であるわけでございます。
  57. 足鹿覺

    足鹿委員 これは非常に大きな問題でありますが、まあ、きょうは、他の委員からもまたお話があろうと思いますし、大へんお困りのようでありますから、この程度にいたします。  それから、申し落としましたが、瀬尾さんにさっきお尋ねしようと思ってつい忘れたのですが、この法案が示すところによりますと、委託加工の問題がある。巷間伝え聞くところによりますと、乳業界では委託加工に対する態度をきめられたというような話を聞いておりますが、さような事実はございますか。
  58. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 私、寡聞にしてまだそういうことを聞いておりません。その問題について相談したこともございません。要は、委託加工はいろいろなファクターがあるわけでございまするが、たとえば、適正な委託でなければならぬとか、模範定款ですか、そういうものをお作りになられるというようなことは流れておるようですが、それはけっこうでございましょうが、資材の問題をどうするかとか、あるいは加工費をどうするか、それから、受け渡し場所をどうするか、あるいはまた工場の規模、場所、そういうことによるファクターの相違をどう調整するかというようなことで、いろいろ内容的に検討して、話し合いの上で合理的なものであればだれでもやると思うのです。断わるとかなんとか、そういうことをきめたとか考えたことは決してございません。ただ、その内容が、委託加工を受けるときに御相談の間に適正であることを望んでいるということであります。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員 大体この程度で終わります。
  60. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 丹羽兵助君。
  61. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 きょうは参考人の皆様方からいろいろと御意見をお聞かせいただきまして、私どものただいま審議いたしておりまする畜産物価格安定等に関する法案審議上非常に参考になった点、感謝いたします。そこで、私は、この提案になっておりまする法案の各条項にわたる質問ではなくして、お聞かせいただきました参考人のお述べ下さいました御意見、そこの中から一、二きわめて簡単に、他の議員も御質問はたくさんあるようでありまするので、お聞かせを願いたい、こう思っておるのであります。  第一点、お名ざしでまことに恐縮でございまするが、寺村参考人に承りたいと思います。次は瀬尾参考人に承ります。第三点は、瀬尾さんを抜いたお力どなたでもけっこうでありますから、一つお聞かせを願いたい。この三点であります。  第一に寺村さんにお尋ねいたしたいのは、先ほど御意見の中に、近い将来に卵が輸入されるおそれがあるということがございました。どの参考人の方方も、畜産物価格の安定、農民の所得の安定と申しますか、これがため、乳製品を初め畜産物の輸入規制というものを非常に強調しておいでになる。そこへ持って参りまして、寺村さんは、私どもの今まで聞いたこともございませんお話をされました。今までは逆に香港へ日本の卵が輸出されておった。その背はもちろん輸入の時代もあったかもしれませんが、近く卵が輸入されるというようなこと、また、これを政府考えておるということになりますると、これは大へんなことになってくると思うのです。これはもう、あなた方、われわれ農民の立場考えていつも保護的なお立場をとっていただける人から考えても、御了解いただけることだと思います。これは大へんなことだ。今日あなたの御発言がかりに新聞に出、かりに全国の養鶏農家が耳にいたしますと、大へんな脅威を感ずることになると思う。今回の法案の中にも、最初は、養鶏、養卵ということについては考えられていなかったのであります。政府養鶏というものに対してあまり関心を抱いていなかった。それを、私どもこの委員会において初めて鶏卵というのを挿入した。もちろん養鶏一つの企業でありましょうが、零細とまでは言いませんけれども、とにかく、大企業的な養鶏は別といたしまして、ほんとうの養鶏農家といった方がいい方々にとっては、これは大切な仕事なんであります。特に、農家は、季節的に米を出したり麦を出して相当な金が入ってくるときがございますが、平素は、菜園ものを作るとか畑作のないところは金が入ってこない。日金は入ってこない。しかし、養鶏は、小規模でできて日金が入ってきまして、相当これはよい割合の副業なんですね。これを今まで何ら政府の保護を受けずに自前産業として農家は成長させてきたのです。それが今日やっと日を見るようになってきた。そこに持ってきて、大企業、水産関係までの人がのこのこおかに上がってきて、養鶏を十万羽、二十万羽でやられる。これに対しては非常に脅威を感じておるわけであります。そこで、われわれは、卵が生産過剰になっては困るから、また、価格が下がっては困るからというので、せっかく今度の法案の中に卵も入れようと努力した。そこへ、あなたのようなお話で、外国から輸入されるとなったら、これはもう農家としては非常な脅威を感ずるわけです。これも自由貿易になって参りますればやむを得ませんが、われわれは努力をもってこれを阻止いたしまするが、万が一阻止できないときには、一体どういう方法でこの輸入卵と国産の鶏卵との競争をしたらいいかということを一つお教えいただきたいと思います。もちろん、 これは、野菜と同じように生鮮なものを国民は喜ぶでありましょう。そうしてまた大いに消費のPRもやるでありましょう。それと同時に、事業団であろうが、あるいは社会党さんの案のように政府特別会計方式をとられましょうが、いずれにしても、政府が買い上げてくれるにしましてもその保管の問題がある。その保管の方法等も、量的にも技術的にも研究していかなければならぬと思う。あなたは、今、近くシナの卵が輸入されるぞ、こういうようなことをお述べになりましたが、せっかく今まで難儀をして参りました養鶏農家、特に農家の大きな生活の根源になっておるこの卵を、一体どうしたらこれと対抗していくことができるか、飼料の問題もありましょうし、一つ率直にお聞かせ願えたら大へんけっこうだと思います。
  62. 寺村秀雄

    寺村参考人 ただいまの卵の輸入の問題でございますが、これは新聞紙上で、畜産物の自由化計画ということで、卵を来年の十月から輸入する計画であるということを発表されたわけでありまして、そのときに、さて、先ほど私が申し述べさせていただきましたように、自主的な格好でのこれの対応策というものはまず考えられないと思うわけでございます。申すまでもないことでございますが、養鶏にはえさ代がほとんどのコストを占めておるわけでございます。その他の面での合理化という余地はもうあまりない、こう考えられるわけでございます。もちろん、今お話しになりましたように、大衆の消費の向きはやはり新鮮卵がいいというので、輸入のものよりはこちらのものの方が幾らかは期待できるということは考えられますけれども、それにいたしましても、その期待には限度がございますから、当然引っぱられると思いますし、さらにまた、加工原料でありますれば、何も新鮮卵のような高いものでなくてもいいという格好になりまして、消費全体も萎縮するということも考えられてくるわけでございます。従いまして、新鮮だから心配要らないということも、そうは言えないのじゃないかと思うわけでございます。万々一自由化されます場合には、と申しますよりは、自由化は是が非でもかんべんしていただきたいということでございますが、万々一という場合には、えさを徹底的に安く出していただくという手しかなかろう、こう考えるわけでございます。
  63. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 そうしますと、今の寺村さんのお考えと申しますか、御意見は、えさで少しは調整をとることができるけれども、手はない、だから、卵の自由貿易は絶対に反対する以外にない、輸入は反対する以外にない、こういう御意見のようでありますね。それで、どうか一つ、あなたに私どもが頼むということは変なんですけれども、しかし、北海道の先ほど鈴木さんでございましたかお話をいただきましたが、一道ですら二・五倍の六百万羽の養鶏計画を持っておる、増産計画ですか計画を持っておる、こういうお話なんです。一北海道ですら二・五倍の六百万羽にふやそう、それだけもう考えていらっしゃるように、全国の農家がこれは手軽にやれますし、先ほど私が申し上げたように、小銭が入って参りますれば、これは場合によりましては、零細農家と言った方がいいこれらの方々にとっては一番大事な養鶏なんですから、私どももがんばりますが、あなたも、一つ大いに、これ以外に道はないという主張を曲げないようにしていただきたいと思います。  次に、先ほど瀬尾さんにお尋ねいたしたいと申しましたのは、きょうの参考人の御意見を聞いておりますと、どなたも、今寺村さんがおっしゃいましたように、やはり畜産というものは生きものでございますから、飼料の問題を強く出しておいでになります。もう、生産費のコストを下げるにしても、何事によらず飼料が問題だ、こういうように言っておいでになります。そこで、朝から承っておりますと、この飼料の問題についてはきわめて親切に具体的に飼料問題をお聞かせいただいたのは瀬尾さんだったと思います。私は他の方々の御意見を聞き漏らしたかもしれないと思いますが、いかがでありましょう、それほどまでに大事な飼料問題なのですから、自給飼料あるいは政府の食管会計で買い入れたような大麦、はだか麦の放出といいますか、それから外国からの輸入飼料、こういうものを一切含めまして、国内飼料の問題はわれわれよく聞いておりますけれども、そういう飼料の配給といいますか、飼料をほんとうに畜産農家に配給されるのに、あなたはそれだけ御造詣のあるお方でありますのでわかると思いますが、一体どこかに欠陥があるのじゃないか。実際専門家に私どもこの委員会でやかましく言いまして、そうして大麦、はだか麦の放出をされた。ところが、牛を飼っている方には少しは流れたかもしれませんが、鶏の方には全然行っていない。どこかで失っちゃうのですね。そして、今お話のあったように、かりに自由貿易に対抗するには飼料の問題以外にないとおっしゃるその飼料が、変なことになっちゃうのですよ。そして、政府には飼料審議会というものがあります。輸入飼料のことについてやる、あるいは飼料の配給計画を立てる飼料審議会ですけれども、こんなものは一年に一ぺんあるかないかで、委員の方ですらいつやったかわからないというしろものであります。だから、実際、今日、畜産物価格安定のみならず、畜産奨励という意味から考えて、一番大事なのは飼料の問題だと思う。その飼料をあなたがきょう私どもにこまかにお話になりましたから、どういう点に欠陥があるのか、こういう工合にやったら牛が伸び伸びして乳もよけい出る、卵も安くなるのじゃないかという御意見がありましたら、一つ遠慮なく聞かせていただきたい、こういうことをお願い申したいと思います。
  64. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 私、乳業者といたしまして飼料関係についてはあまりよく存じませんが、いろいろと聞きかじったことから判断いたしまして、まず、この輸入飼料でございますが、聞くところによりますと、外国の原産地からこちらに入りますときに、原産地と日本の輸入価格に非常に開きがある。この結果は何かと聞いたところが、外国のバイヤーが権利を持っておる、そして日本の飼料情勢によって勝手に輸入価格をきめて取引しておるということもあるのだ、こういうことも聞いております。そういう場合には、政府が外国と直接取引をして安いものを出すようにしたらどんなものだろうか、こういうことを言ったこともあるのでございます。  それから、日本国内の流通過程におきますと、実は私ども今日まで昨年から再三乳価を上げておりますが、不思議なことに、大元では飼料の単味は何も上がっていない、上がっていないのに、乳価が上がるとその地帯の末端飼料価格がぽっと上がってしまう、実にこれはもう機敏なもので、私どもあぜんとするのでございます。せっかく、農家の手取りをよくしてもらいたい、そして意欲的に専心してもらいたいと思っておるのに、乳価が上がると、その土地夜々で飼料価格がすっと上がってしまう。これは私ども再三見せつけられた事態でございまして、これは、配給機構の複雑さは私にはよくわかりませんけれども、段階があまりにもあり過ぎるのではなかろうか。製造元の単味の問題は農林省の御指示によって上げずにおいて押えておるが、それから流れていく段階において政府の方針の届かないところがたくさんあるのじゃないか、こういうようにも考えられるわけであります。そこで、よく他の末端では、せっかく上げてもらっても何にもならないから、飼料を何とかしてくれということで、農家の方から乳業メーカーの方に申し込みがあります。私ども、大元にお頼みして、特に分けていただいて、それに補助金までつけて差し上げるということを再三やっておるわけでありますが、それにもおのずから限度があるわけでございまして、その配給機構というものを、一つ先生方のお力で、どういう実態になっておるのか、どこに欠陥があるのかということを十分御検討願いたいものだと思うのでございます。そして、飼料には、せっかく、飼料の安定法ですか、何か法律があるのでございますから、あれを十分に活用して、そして農家の方に安い飼料が行くということにしてもらいたいものだとかねて念願しておるような状態でございます。  それから、今のは購買飼料でございますが、次に、自給飼料でございますけれども、先生方もしょっちゅう旅行なさっておられるようでありますが、汽車の窓から見ても、草のはえているところはたくさんございます。ところが、あれはみな野草でございまして、特に本州関係ですと牧草専門の畑はあまり見受けられませんが、スイスなどでは、ああいう山岳地帯でもほとんど野草が見られない。国をあげて草地改良をしている。そうして、そこに放牧をして、共同放牧もありましょうし、個人のファームもありましょうが、その放牧によって非常に安く牛乳生産しておる。あれは大都会の近所でもやっている例があって、非常に成功しているようでございます。これは、村をあげて、町をあげて、あるいは県をあげて、共同でやらなければおそらくできないと思いますが、こういう方面に大きな資本力を使っていただきますれば、非常にしあわせではないかと思います。せっかく草のはえている土地があるんですから、これを牧草のはえる土地に変えるということでございます。このようにしますと、牛乳生産費も安くついて、酪農家の手取りも大きくなるのじゃないかと思います。北海道でも、もしこれを改良するならば十五万町歩ぐらいあるのじゃないかという話を聞いております。全国にすれば大へんなものだと思います。私旅行しますごとにそう思うのでございますが、何とかこういう方面にもお力を入れていただきたいと念願しておる次第であります。  私、乳業メーカーでございまして、飼料の専門のことはあまり存じません。聞きかじった点だけ申し上げた次第でございます。
  65. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 私がしいてあなたにお尋ねいたしましたのは、先刻申し上げましたように、お述べ下さいました御意見の中に幸いにもこの問題を強く取り上げて下さったからお尋ねしたわけなんで、ただいま承りますれば、専門ではないけれども、乳価という問題から、あるいは乳の生産量という点から言ってもこれは必要だという立場で飼料の問題をお述べいただきまして、大いに参考になって感謝いたします。これを要約して申しますと、国内飼料というものは、できるだけ牧草をふやせ、牧野をふやせ、それに対しては県も国も渾然一体となって大きく力を入れてやるように、それから、輸入外国飼料に対しては、配給機構なんかもっと検討を加えるべきだ、そして飼料需給安定審議会なんかの運用をもっとよくしたならばある程度の欠陥が補われるではないか、このような三点に承らせていただきましたが、さよう受け取りましてよろしゃうございましょうか。
  66. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 もう一点、外国の原産地の飼料の価格、これと国内へ輸入されている価格の差、これの御検討をお願いしたい、これを加えさせていただきたいと思います。
  67. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 次に、瀬尾参考人の御答弁をきらってというわけではございませんが、なぜそれを申し上げるかと申しますと、先ほど足鹿委員のお尋ねが瀬尾さんに対して大へんこまかくありまして、どうも最後になると私どもわからぬ点がございまして、またその同じようなことをあなたにお尋ねしておっても同じようなお答えよりいただけぬかと思いますので、私は、今度、瀬尾参考人以外のどなたでもけっこうでございますから、お教えいただければたいへんけっこうだと思って申し上げるわけであります。  それと申しますのは、先ほどからお話を聞いておりますと、酪農生産者乳価というものは、再生産にもならないように非常に安い。しかし消費者の方には三倍近いものになって渡る。消費者は高いと文句を言っておる。そしてまん中の業者はもうからぬとおっしゃるのです。こんな話は聞いたことがないですね。それはどうも私どもわからぬのです。そこを足鹿さんが盛んに聞かれて、ついでに、寺村さんには、事業団方式がいいかあるいは社会党の特別会計での政府買い上げがいいかというようなことで話が進展してきたが、これまた、その方法については、寺村さんからは、どっちでもないというようなことで、はっきりしたお返事がいただけない。それが今までの参考人各位に私どもから聞いておる御答弁を要約したところの結末でございます。  私は率直に一つお聞かせを願いたいのですが、先日私どもの方の、委員長初め農政の情熱家各位が、北欧からアメリカ全体を歩いて農政問題を研究してこられました。その人方のお話を聞いてみますと、世界の農業国といわれ、特に畜産の国といわれておるデンマークでは、日本の金にして一升五十三円ぐらいの生産費だ、そして農業協同組合のような方式で農民が集まって市場へ出しておるが、消費者に渡る価格は八十五円、でありますから非常に消費者も喜んでおる、それならばそこで働く労働者は賃金が大へん安いかというと、六万円程度労務者は所得があるというのです。日本は、三倍も上げて消費者に行って、働く農民、また労務者の方々に非常に賃金が安いといって嘆いておられる。五十三円で買って八十五円で消費者に渡って、労務者は月に六万円の所得があって喜んでおるという国がある。もちろん、これは、日本では、隣で一合配給し、また十軒も先の家へ行って一本配給し、また向こうへ行って一本配給するといったようなことで、非常に目に見えた配給のための貧金もかかるでしょう。そういう国のように、みんな一升もらう、三升もらう、湯水のようにがぶがぶ飲むところは、そういう賃金なんかはかからぬということはわかっております。それから、長い歴史、長い研究によって相当合理化されておるということもわれわれは考えなくちゃなりませんが、あまりにも開きがあり過ぎる。そして、だれも喜ばない。どうでしょう、団方式であろうが政府の買い上げ方式であろうが、何でもいいですから、今秋の言うように、百姓も喜び、私どももがぶがぶ飲めるような方式をあなた方で研究なさったことがあるでしょうか。一つお聞かせ願えたらけっこうであります。どなたでもけっこうですが、一番御研究を願っておっていただくはずでありますから、渡辺参考人にお願いしたいと思います。
  68. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 大へん国際的な視野に立って、むしろお教えをいただいたことに対して、こちらから申し上げる何ものもないわけでありますが、ただ、今まで私に御指名がなかったことで、今の丹羽先住のお話に多少関連することに触れさしていただいて、責めを果たさしていただきたいのでありますが、何と申しましても、国内自体で、たとえば今例におとりになりました酪農家の場合にしぼって考えてみましても、酪農家自体が非常に生活のレベルが高いという事態に置かれておらないということ、その経済的ないろいろな制約を排除するために今度の法律が立てられたものと理解をいたしますものですから、従って、そういう期待にこたえるような点をどこに私たちは特に焦点を置くかと申しますと、やはり価格の問題。それで、結局、そのことを操作する場合には、何と申しましても、公社あるいは公団あるいは事業団というものをもってこの操作に当たらしめるということになりますならば、これは、やはり、そういう一つの独立した団体のしからしむる帰結といたしまして、できるだけ赤字を出さないということがその団体の一つの目標となってくると思うのであります。そういたしますと、本来非常に弱い酪農家畜産全体の対象価格でカバーし、その操作でカバーしょうということで、公団あるいは事業団ということによって非常に硬直した一つ機能しか発揮できない。従って、そういう出てくる当然の赤字というものを政府自体が直接責任をおとりになる、ダイレクトにこの操作における責任を政府がとっていただくということは、食管法においてもすでにおとりになっておりますし、他の重要農産物価格安定法においてもおとり願っておるわけでありますので、それ以上時代の脚光を浴びて期待されておる畜産部門につきましては、当然やはり政府の責任で管理することを中心としてお考えを願いたい。それが言葉の上ではやはり特別会計というものにつながって参るだろうと思います。そういうこと自体が、直接国の責任が明確になる。名実ともに政府自体の責任において安定部門であるところの畜産に対して重点的にその責任を完遂していただく意味において、非常にこれは望ましい形ではないか。そのことがまた内容的には財政措置を十分に政府自体の責任で直接に配慮していただける。やはり、赤字を無視してのわれわれの期待するようなことは事業団ではなかなか容易でないだろうということを、建前として午前は御要請申し上げたはずであります。しかしながら、一気に今もしもそういうことを国会で今度の法案に盛り込むことができないような場合には、ワン・ステップとして事業団を設置していただくこともやむを得なかろう。   〔田口(長)委員長代理退席、委員   長着席〕 しかし、その場合におきましても、今言ったように、本来の畜産物価格を安定するという機能を十分発揮するためには、当然その機能が十分発揮することによって予想されるところの赤字というものは、やはり、原案にあるように次年度に繰り越すというようなことではなく、その年度における赤字というものは政府において一般会計でこれを処理していただくということが法文の間に明文化されることによって、私たちはこの法案に対する大きな信頼も持ち得るものではないかと考えるわけでございます。  学校給食等、これは瞬間タッチ方式で、事業団の放出されるという場合に、出てくる問題はやはり一つの赤字でございましょう。そういうことを考えますと、食管会計において私たちが当然として考えておる二重価格の性格もこの問題としては出てくる。そういう一つ建前を貫きながら、私たちはやはり畜産団地の形成ということを自主的な農協機能中心として推し進めながら、よりその年産性を高める努力をしながら、ともどもにこの畜産の発展の方向に努力していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員 冒頭私が申し上げたように、私の御意見を承りたいのは、この法案の条項に基づく御意見を承っておるのではなくて、参考人各位のお述べ下さいました、また私どもにお聞かせ下すったその意見、お考えにならって聞いておるわけであります。先ほど言いましたように、この法案の中にありまする事業団方式だとか、社会党の出しておられまするところの特別会計による政府買い上げ方式ということは、いずれも御意見があることでありましょうからそれはそれといたしまして、それよりも、根本の問題は、先ほど委員長初め皆様方がずっと世界の農業国を歩かれ、特にデンマークなんか歩いて、こういう実情だという話を聞いておる。日本においては生産価格よりも三倍も高いものが牛乳で言うならば売り渡されて、酪農者も喜ばない、消費者は高いと言っている。そして、中に入った業者はもうからぬと言う。こんなことでは、それは何も畜産価格の安定にはならないと思うのですよ。そうして、畜産業の奨励にもならないと思うのです。畜産業を奨励させようとするならば、もっとこれは国民みんなが喜んで消費するものでなくちゃならぬし、消費する価格に持っていかなくちゃ伸びるものじゃないのです。私はそう思う。だから、余剰のものをどうするかこうするかというような末端のことよりも、もっと根本的に、こういう矛盾、——矛盾と言っていいかとうか、日本の現代の状況においてはやむを得ないかもしれませんけれども、飼料の問題を片づける、消費の宣伝、PRをするとかして、先ほど私が申し上げましたように消費量がずっと増せば、運賃だってうんと安くなってくる。それだけ、同じ価格で売るものならもうける人ができてくる、あるいは価格を下げてやれば消費者も生産者も喜ぶということになるでしょう。こんなことはしろうとでもわかる。もう、消費者がどう言っておるかといえば、みんな、三倍も高い牛乳が飲めるか、よく知っているから言うのですね。そういう点、もう少し何かの工夫と努力、創意によって下げる方法を考えられないか。あなた方はいつも御研究いただいておるのですから、私も考えておりますが、あなた方のお立場において考えておっていただくことがあったならばお聞かせ願いたいというのが私のお尋ねの要旨なのです。おわかりになっていただけるでしょう。一つ端的にお答えいただきたい。
  70. 寺村秀雄

    寺村参考人 あまりお答えにならないかと思いますが、考えております点、お聞き願います。  一つは、畜産物だけではございますまいが、わが国の消費者があまりにもサービスを食い過ぎるという点があろうかと思うわけでございます。これは、メーカーさんのことをよくおっしゃるけれども、私はこれを肯定せざるを得ないと思うわけでございます。外国のことを聞いてみますると、私見てもきましたが、やはり消費者が買いに行く。一定のところまで取りに行くという方式がとられているように見ておるわけでございます。日本におきましては、大びんどころじゃない、一合びんで毎戸配達しておる、こういう格好であります。そこに、サービス料、人件費というものがべらぼうに要ってくる。あるいはびんのコストもあるかもしれません。そういった問題がある。この問題につきましては、だんだん労力が不足になって参りましたので、こういう客観的な拘束からいたしまして改善される面があろうかと思ってはおるのでございますが、むしろ、より積極的に、メーカーの方々が相語り合って改善するという方向が出ないものか、私はこれを思うのでございます。みんながそうやっていただければ、消費者も、三里、五里というわけじゃございませんから、特に都市におきましては三町、二町のところまで買いに行けばいいわけでありますし、それが癖になれば通るのじゃないか、私はこういう気もするわけでございます。そうなりますれば、そういうところで消費者にサービス料をとらない、サービスをとめてもらうということで消費者価格をダウンせしめる要素もあるのじゃないかと思います。  それから、もう一点私疑問に思う点でございますが、現在の生乳を市乳に加工する市乳処理施設が現在のようなりっぱなものが要るかどうかという点を多少疑問に思うわけでございます。しろうと的な角度かもしれませんが、濾過器でこして熱で消毒すればいいじゃないかというような考え方も持つわけです。これはしろうと的な考えかもしれませんが、少なくとも現在のような市乳処理施設が必要であるかどうかということに疑問を持つわけでございます。もしこれがそこまで必要でないというふうになりますれど、それはそれで加工面のコストというものも非常にダウンするのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  71. 野原正勝

  72. 芳賀貢

    芳賀委員 主として参考人の皆さんに政府提案の畜産物価格安定法と社会党提案の安定法の対比のもとに御意見を伺っておきたいと思うのでございますが、第一点は、牛乳価格安定をやるという場合に、政府案の言うように、乳製品の原料乳だけを切り離して、この部面だけの乳価の安定を行なえば全体の安定が期せられるというような考え方は、これは間違いだとわれわれは考えておるわけでありますが、この点について瀬尾さんと渡辺さんにお伺いしたいと思うわけです。
  73. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 乳価の立て方でございますが、これは地方によって違うのでございます。いわゆる市乳地帯と原料乳地帯と言われておりますが、北海道のような原料乳地帯では、製品を主体にした乳価の立て方になっております。そうして、それの何割増しかが市乳の価格になっております。それから、東京、大阪、名古屋というような大都市周辺で生産牛乳がほとんど市乳になる地帯では、市乳の販売価格が主になって乳価が立てられております。しかし、統制をいたします製品が乳製品である以上、やはり乳製品を主体にすべきじゃなかろうか、乳製品の原料乳価格を主体にすべきものじゃなかろうかと思います。  それから、ついでと申しては恐縮ですが、一応申し上げますと、下位価格あるいは基準価格というものが一本で引かれるということは今日非常に危険な点もあります。たとえば、地域差というものはどうするのか、地方におきまする価格の差をどうするのか、こういうことがありまして、これの立て方によりまして農家に右利なところ不利なところができるわけでありまして、こういう面から考えますと、一つの安定帯というものが必要でなかろうかと思うのでございます。最高最低の中で地方的にいろいろ勘案して乳価をきめるという線がないと、全国一本でということはとうていできるものではないのでありまして、実際にそぐわないというふうに考えるわけであります。事業団におきまして取り扱うものは、乳製品である場合には一応乳製品の原料乳価格ということで差しつかえないと私は考えております。
  74. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 なま乳を対象にするということを私午前に申し上げましたのは、乳製品だけを対象にいたしますと、これは会社の手持ち在庫調整するという機能に役立つだけであって、本来的な酪農生産者乳価を保障するという措置には及ばないということから、乳製品も当然でありますが、なま乳もその対象にしていただきたいという意味で申し上げたわけであります。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、乳製品だけを切り離して、それに要する原料乳価の安定ということになりますと、最近の牛乳会社経営方針を見ると、これは資本主義体制下においてはやむを得ないことでありますけれども、経営上から見たときには、乳製品の取り扱い分量よりも市乳の取り扱い分量が多い方が経営が容易である、利潤が多い、こういう判断は誤りないと思うわけです。ですから、経営上から見れば、できるだけ市乳地帯に販路を拡大して、市乳に必要とする乳の集荷を行なう、やむを得ざる場合においては第二次的に乳製品生産を行なう、その場合も、乳製品の原料乳価は製品から逆算した乳価ということになっておるのが今日の実情である限り、この壁を打破しなければ、畜産農業の面から見た、農業者の面から見た牛乳の安定というものは絶対に期することはできないと思うわけです。そういう見地から、まず、生産農家生産して販売しようとするなま乳の価格の安定をどうするか、これを基本考える必要があると思うわけです。その場合は、日本国内のどのような地域で牛乳生産を行なっても、そこで最低の生産費の回収と今後の再生産が可能であって農家所得が確保されるという限界というものを最低の限界としてなま乳の基準価格というものをきめ、その上に、その地域が市乳地帯であるか原料乳地帯であるか、あるいは飼料を確保する場合にそれが高率の飼料であるかあるいは低廉な自給飼料であるか、そういう判断というものはその基準価格一つの算定の要素としてそれを加算していくということになれば、当然、その結果は、農家が同じ生産した乳が、会社の都合によって一部は市乳に用いられる、残りは原料乳に用いられるというような差別というものは漸次解消するのではないかというふうに考えるわけですが、この点はいかがですか。
  76. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 先ほども申し上げたように、なま乳の基準価格、これはどういう点に基準を置くか私はわかりませんが、市乳地帯で夏のようにほとんど市乳に回るという地帯は、乳製品原料は要らない。それから、先ほど鈴木参考人が申し上げましたように、北海道のように大部分が原料乳に回るという場合にはやはりこれを基準にするということでありまして、全国一律に基準価格というものはおそらくできないと思います。それから、飼養管理上、北海道のように飼料の割合豊富なところ、あるいは大都会の周辺のように自給飼料のほとんどないというところで、それもごっちゃにして一本の価格基準ということも、これは言えない。従来の慣習でございまするし、たとえば、先ほど芳賀先生がおっしゃったように、市乳が昨今伸びておる。従って、東京周辺の市乳用の原料価格がきまっている。そうして、距離的の問題とその地帯の消費状況から見ましたある割合での比率で各地の乳価がだんだん定められていくというような実情でございまして、そういう考慮からいきますと、先ほど申したように、一つの帯というものがあって、その中での動きというものでなければならない。一律一本できめて、それにいろいろなものを加えると申しましても、これは用途別に季節的にみんな違うのでございますから、ちょっと無理なんじゃないだろうかと、実際面から見て考えられる次第でございます。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 誤解があるようですが、この両法案とも、食管法のように、政府が米の政府買い入れ価格をきめて農民の生産した全量を国のきめた一本価格でこれを有権的に買い入れなければならないという規定はどこにもないのです。ここでいうところの基準価格というものは、それを最低にして取引が行なわれなければならない、それ以上の価格があって当然であるという思想の上に立っておるのです。ですから、生乳全体を対象にした場合は、当然、生乳地帯の乳価というものは、その使用目的が市乳である場合は、当然これは基準価格よりも上回る価格というものが算定される結果になると思うのです。ですから、もうきまったらどこでもその通りで買わなければいかぬということじゃないのです。それ以上買ってはいけないという考え方はごうまつもないのです。政府案の場合には、上位価格をこえた場合には、政府があるいは輸入するとか事業団の手持ちを放出するというような調整機能を発揮することになっておるが、その場合であっても、上位価格以上の取引はこれを厳重に処罰するというような規定は全然ないわけです。私がこれを申し上げるのは、原料乳地帯の乳は安いのが当然であるというような、こういう思想が常識的に固定すると、これは非常に危険なことになる。お前たちの乳は原料乳地帯の乳だからこれは安いのがあたりまえだということで押しつけるということは、これは非常に危険なことになる。その証左というものは、先ほど鈴木参考人が言われた通り、全国で北海道が一番乳の生産が伸びていないわけです。乳牛の頭数もその増加率が非常に低調なわけです。ですから、たとえば現在の北海道牛乳生産というものは、今の状態ではそれ自体がもう成長の期待というものはだんだん薄らいでおるわけなんです。北海道で、子牛が生産されて、それを育成したものが成牛になると、どんどん大都会周辺にそれが取引されて移動しておるという現状なんですね。そして、その牛は、市乳地帯において、もう極度に、できるだけ短期間に量的な搾乳をやるということでいくものですから、大体三年ぐらいで廃牛ということになる。こういう姿が今後続くと、正常な日本の畜産農業の発展というものは絶対にあり得ないとわれわれは考えておるわけです。ですから、そういうことを根本的に解決するためには、やはり、この生産された乳全体を対象にした乳価安定の基本というものを定めて、そして、使用される乳が原料乳であるか市乳であるかというその目的と、それぞれの条件というものをそれに加味して現実の取引が行なわれなければ意味をなさない、そういうふうにわれわれは考えておるわけです。その可能性があるとかないとかということになると、幸いと申しては何でありますけれども、今日、日本の四大乳業社は、協乳は少し力がないようですが、あとの三社は全国的に集荷網とか工場を設置しておるわけです。ですから、一地域だけでやるというようなそういう立地的な差というものはないわけです。ですから、同じ経営体のもとにおいて、各地において生乳を購入しておるという場合においては、企業全体の中において今日のような地域乳価の格差というものがあり得るということは、これは非常に問題があると思うわけです。その問題というものは、この地域は原料乳地帯だから安く買うのがあたりまえだという方針が現地に押しつけられておる。だから、生産者も、なるほどおれたちのところは原料乳地帯だから安いのがあたりまえなのかなという確信のない不安というものが現在はびこっておるわけです。ですから、どうしても、この際、法律をせっかく作る場合には、この壁を破る法律でなければ、法律を作る必要がないということになるので、くどいようですが、この点をぜひここである程度明確にしておきたいと思う。
  78. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 原料乳地帯が安いということでくぎづけしておるということではないのでございます。市乳地帯の、いわゆる大都会周辺の牛乳の高いのは、市乳のいわゆる末端価格から推しまして、高く買えるから高く買っておるということになります。それから、市乳のない地帯でそれと同様に買うということになりますと、製品の価格が非常に高くなるということで、私どもの経営上からいきますると、結局、決算面では、全国のおのおの乳価負担力が違ういろいろな製品を扱って、その総利益で利潤をあげるわけでございまして、これを平均して各地で乳価をきめるということになりますと、いわゆる製品の原料乳地帯はけっこうなことになるかもしれませんが、おそらく負担力のある市乳地帯乳価が下がるということになることを心配するのであります。現実におきましては、市乳地地帯が、乳価を高く買って、増産態勢に持っていっておるために、割合に高いのであります。そのために乳牛も流れるということで、先ほどお話しの北海道の乳牛増加率が落ちているというのは、乳牛そのものが北海道に残るならば大へんな増加率になりますけれども、やはり、需要との関係で、牛を売る方が都合がいいということで内地に流れておるのでありまして、そこに、乳価の差は、あなたのおっしゃるようなことはあるかもしれませんけれども、要するに、大都会周辺の市乳地帯農家に購買力があるということでないかと思うのであります。現在ですと、北海道の乳牛が全国比で大体二一%くらいになっておると思います。昨今ですと、関東地区が一八%を少し上回っておると考えております。どうしても負担力が大きくて乳価が高く買える地帯に乳牛が集まるということはやむを得ないことではないかと思うのであります。また、そこに乳牛が集まることは、市乳が豊富に供給できるということになるわけであります。現在でも、東京周辺は大体おさまりましたが、また、関西であるとか北九州あたりでは、乳牛が足りないということで、盛んに北海道に乳牛を買いに行って、これが北海道の増加率を低減しておるということで、北海道で搾乳牛が三%しかふえてないということは、要するに牛の移動なのであります。政策の問題というよりも、牛そのものの需給調整の関係で動いているものだと私は思います。乳価は、これは、私どもの会社では、各製品の年産計画から見まして、しかもその負担力から見たものを平均して皆さんと話し合いをしておるわけなのであります。これに市乳を入れて全国平均で基準価格を出すということになりますと、さっき言ったような、市乳地帯農家の手取りが率としては下がるのではないかということも考えられます。従って、市乳を基準にするめか、乳製品基準にするのかということは別にいたしましても、その基準の立て方を現在まだ承っておりませんので、私たちも批判しかねておる、御意見を申し上げかねておるわけなのであります。どういうふうにしてきめるかということがきまってないのでございます。そういう点で、私たちどうもはっきりした御意見を申し上げられないのでございますが、今申したように、市乳の負担力と乳製品の負担力が格段の差があるということだけは一つ御承知置き願いたいと思います。   〔委員長退席、秋山委員長代理着   席〕
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、これは将来の問題になる点なんですが、たとえば調整保管を行なう生産者団体がこれを加工保管することになるわけですが、その設備がない場合には、結局乳業者の既存施設を利用して委託加工ということで製品化するわけなんですね。その場合には、当然、先ほどもお話の出ました委託加工に要する経費というものは、これは厳密に計算されなければならないということになる。ですから、その機会を通じて、乳製品の加工経費はどの程度のものかということが今度は国民の前に明らかになってくると思うわけです。ですから、その明らかになった経費と、この牛乳の適正な基準価格というものを合算したものが、いわゆる最も好ましい乳製品の販売価格ということになるわけです。ですから、委託加工なら委託加工行為を通じて乳製品価格形成というものが新しく止まれてくるということは、これはもう想像できるわけです。今までは、乳業者の立場からも、あるいは政府法案の思想というものは、乳製品からの逆算方式で下位価格をきめるということであるが、その点については、参考人の皆さんは、全員、そういう方式はうまくない、やはり原則は生産費所得補償方式乳価決定を行なってやるべきであるということにはいささかの食い違いもないわけであります。ですから、乳の基準価格をきめるということになると、乳全体を対象にした基準価格以外きめようがないのです。出産費の調査をやる場合においても、最初から原料乳と市乳にはっきり分かれて牛の乳がしぼり出されるわけはないわけなんです。同じ農家がしぼった乳でも、工場へ持っていってから、一部は市乳に使われたり、一部は原料に使われるということになるので、それは会社経営の都合なんです。問題は、農家が牛からしぼり上げた乳を販売するときの基準価格をどうするかということが問題になるわけですね。ですから、最も正しい生産費に基づいた乳価をきめるという場合には、乳全体が対象になるということでなければだめなわけですね。だから、ここを押しつけるわけではないが、どういう立場から考えても、理論というものは、あるいは原則というものには、そんなに大きな食い違いはないと私は思うわけです。ですから、どうしても原料乳地帯の乳だけを安くしたいということが前提になれば、もう曲げてでもそうでなければならぬということになるが、そうでなければ、やはり、常識の考えから言っても、全体を対象にした基準価格を算定する以外に方法はないと私は思うのですが。
  80. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 芳賀先生にちょっとお伺いしたいのですが、地域差というものは御考慮なさらないということなんでございましょうか。たとえばですね、東京周辺で牛乳を出産する場合には濃厚飼料を非常に使っておるんで乳価が非常に高くつく、北海道のごとく自給飼料が割合にあるところではそれより幾らか安く生産されるという面があろうかと思いますが、しかし、北海道内部だけでも、場所によりまして非常に安いところと高くつくところとおのおのあるわけです。全国的に見ますとそれが非常に複雑なんでございますが、その地域的な複雑さをどうして調整するかということなくして一本価格をきめるということは危険でないか、非常に迷惑をする農家が出てくるのではなかろうか。それをカバーできる方法があればけっこうです。そこで、私は、そのきめ方の方法を承りたい、こういうことなんです。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 これは議論になるかもしれませんが、米に一例をとってもらえばわかるんですね。北海道の場合には、大体豊作の年は反当三石ぐらいとれるわけですが、まあ二石台のところもある。それから、内地府県の場合は四石ぐらいはとれるわけですね。だから、その反当の収量から見ても、地域差というものはずいぶんあるわけです。また、米を生産する場合の経費のかかり方等についても地域差はあるわけです。そうであっても、国が全部買い上げる米価の場合においても、これは一本の価格で動かさないでやっておるわけですね。上も下も許さないわけです。われわれは、下は許さぬが上は許すという思想の上に言っているから、その点は心配ないのです。基準価格に地域的な事情を加えたり、あるいは、都市周辺の市乳であるということになれば、それに相当のプラスがされて基準価格より高値で、取引されるということはあり得ることであるし、そういうことが実行されなければいけないわけです。その点は御心配ないのです。基準価格が設定されても、それ以上幾ら高く買われても、国民経済に影響を与える、これは社会政策的にうまくないという事情になるまでの高値というものは、これは許されるわけですからして、その点は、高く買うということは、絶対御心配はないわけです。
  82. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 伺いますが、米は全国一本でやっている。しかし、政府は相当の赤字を出して、二重価格と申すのですか、消費者の価格はある一定の価格でやっている。これならできると私は思うのです。ところが、飲用牛乳乳製品、おのおの製品の値の差があります。相場が非常に大きく狂うものもあり、あるいは一定の相場を維持しているものもあり、いろいろあるわけですね。そこで、先ほど来申しておりますように、製品の負担力によった総合的な乳価農家と相談してやっているというのが現状なんです。米と一緒にしていただくことはちょっと了解できないのですが、ただ、今先生のお話の中にありまする市乳地帯乳価は高くなっても差しつかえないのだ、これは現在と同じなんであります。そうすると、最低の基準というものはやっぱり原料乳地帯を基準にするということになろうかと思うのでございますが、そういう意味でございましょうか。それならそれでけっこうなんでございますよ。ただ、どれを基準にするかということは、ただ平均を基準にするということになると、全国の農家の中で非常にアンバランスができるということなんです。どこか最低のこれ以上割ってはいけないというのをきめて、それにプラスすることはいい、そこに地域差を求めるというならそれはけっこうだということを私は申し上げたいのです。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 簡単に言うと、そういうことをしても、市乳地帯の原料乳の価格は絶対に下がらないということと、もう一つ、原料乳地帯の乳価というものは現在より相当上がるという結果が生まれてくるわけです。市乳価格が下がるということには絶対になってこないのですね。ただ、原料乳価格というものは現在よりは相当程度上がる答えが出てくるわけです。それは、原料乳だけをこっちに別にして、その中で生産費を計算するということになれば、生産費所得補償方式はその場合とれないのですよ。乳製品の原料だから乳製品から逆算して工場経費等を引いて残るのが原料乳の値段ということになると、これはもう今よりまだ下がるような答えが出てくるわけです。それでは皆さん方が言う生産費所得補償方式にはならないのですよ。  それから、米の場合には、地域価格差を埋める場合に、食管から赤字を負担をしているのではなくて、それと別に、国民経済的な見地から、なるだけ消費者に対して安い米を提供しょうという国の配慮によって、そこに二重価格というものが生まれておるのであって、これは地域差を埋めるということではないわけですね。
  84. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 もう一つ、先生のおっしゃる、いわゆる製品の原料乳地帯の乳価の上がる方策をやるのだということ、これは、私どもはきめられた乳価経営をどうするかの問題になりますが、一番の問題は、その値段で消費者がついていくかということなんです。上がった場合に、それからできた原価で消費者が好んでその値段で買ってくれるかということが一番問題なので、乳価を高くして原価が高くなっても、製品の値上げが認められるということで、消費者も納得して消費してくれるということならいいのですが、今までの例からいきますると、まだ製品が商いということで、だんだん滞貨ができてくる。また、牛乳が多く生産されたことも事実ですけれども、結局滞貨したものを安くすれば消費されるという結果になっているわけです。これは戦後四、五回やっているわけであります。それで、消費者の高い高いという声ですが、先ほども外国と比べてのお話も出ましたのですが、原料乳は、先ほどもお話があったように大体似ている。ところが、製品は食い違っている。これは卸売価格であるとか輸入価格は非常に違うのです。たとえばバター、チーズのごときは、現実において外国の方が安いようであります。それから、市乳においてはそう差が大きくないようであります。それから、飲用牛乳におきましても、先ほど申したように価格構成上の比率はそう大した違いはない。三倍々々というお話が出ておりますが、現実の原料乳地帯の乳価市乳地帯の末端価格を比較するとそういうことになりますけれども、この市乳地帯で末端価格と比較すると三倍というような数字は出ておらないのでありまして、この点は御了承願いたいと思うのですが、ただ、もう一つ、日本の現状といたしまして、私どものやっていることが間違ってないという裏づけではないのですけれども、世界的に有名な外国商社が日本で卒業をやっておりますが、これがはたして日本のメーカー以上のサービスをしているかどうかというと、大きな資本をかかえていてもサービスをしておらないのでありまして、こういう点についても日本のメーカーは相当に合理化しているのだということが言えると思うのでありますが、それはさておきまして、要は、消費者が満足して絶えず買っていただければ事業団の仕事がなくなるのです。事業団に買ってもらうために作るのではないのであって、食べてもらうために作るのですから、その辺のかね合いを考慮した基準価格というものが望ましいと私どもは願っておるわけであります。これは、牛乳乳製品の消費人口というのは非常に小さいのですが、消費者の通念としまして、買うものは何でも高いと言います。奥さんが財布のひもを解くのですが、買うものは何でも高いと一応言います。奥さんが安いという言葉を出すのはおそらく亭主の月給だけではないかと思います。ほとんどだれでも高いと言います。ただ、買う方の高いという声だけではいけないのでありまして、出産したものと消費とのバランスがとれて絶えず流れるような形に持っていきたいというのが私の念願でありまして、今度の基準価格の設定にしましても、そういう情勢判断を十分に取り入れた基準価格の設定をしていただきたい。どの範囲に基準を置くのだということになりますと、市乳に基準を置きますと、確かに原料乳地帯は高くなってけっこうだと思いますけれども、消費の点が心配になる。原料乳地帯に基準を置いて市乳地帯は上がってもいいんじゃないかということになりますと、これはまたうなずけることになるのであります。それから、全国平均してみますると、先ほど申したように、市乳地帯乳価の方の基準価格というものは二心下がるということが考えられて、それに基づいて販売価格というものも考慮して売る場合にはあるいは差しつかえないが、他方で上がるという線も出るでしょうし、これは地方々々で情勢が違いますから一がいには申しません。申しませんが、そういう危険も多少あるということは、これは含みとして私は申し上げておる次第であります。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 ただ、消費者のことも考えるのが大事だが、しかし、常識ある国民は、現在のような形で、たとえば会社の利潤だけは確保される状態の中において、原料を提供する生産者だけが犠牲になった形で乳製品の安いのが好ましいとは考えていない。主婦連なんかは何でも安い方がいいような運動をしておるが、全部が主婦連の主張でもないと思います。やはり、農民も国民として人間的な生活が行ない得る、そういうことを基本にして考えた場合に、これは、乳業者の立場から見ても、原料乳地帯の乳価が安過ぎるということは、これは認めておられる点なんです。ですから、まず、順序としては、乳価基準価格というものを正当に設定して、それに適正な会社の加工賃や適正利潤というものを加算して、そうして、一体指定乳製品価格が幾らになる、乳製品基準価格が幾らになるということを、今までは日本ではそういうことをやったためしがないが、今度法律が出ると、そういうことをいやでもやらなければならぬことになるわけなんですね。その出た答えによって、国民がその価格で消費するかどうかということは、これは今後に残された問題なんです。乳製品が高過ぎるが、じゃ全部飲用にするということになれば、飲用乳の消費が拡大しますからして、日本の生産された牛乳を全部有利な飲用に使っても差しつかえないのですよ。生産者は無理やり安い乳を売りたいというような希望を持った者はないのです。とにかく、有利に処分されれば、乳で飲んでもらっても、製品で使ってもらっても、これは差しつかえないのです。だから、そういう、極端なようですが、全部国内の乳は市乳に使う、それ以外にまた乳製品を希望するのであれば、これは、国の特別会計を通じて、そして安価な乳製品を輸入して、そして十分それを提供するということもできるのですね。だから、その点はあまり心配ないと思います。
  86. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 今芳賀先生のおっしゃった、価格を維持するために市乳に持っていく、これは強要できないのですね。それは、やはり、牛乳を好きな方もありますし、牛乳のきらいな方もあります。乳製品でも、バターの好きな方もあればチーズの好きな方もある。これは強要できない。これは自然な推移で、昨今の傾向から見ますと、市乳は相当ふえていくと思います。極端な例ですが、イギリスはほとんど国産牛乳は市乳に向けております。そして乳製品はほとんど輸入ですが、これは、乳量が少ないために、そして乳製品の消費量が非常に多いために、ああいう傾向になっておると思うのでありますが、将来の形は別といたしまして、現在製品をこれだけしか日本でできないのだということだったら、消費者に対して大問題ではなかろうかと思うのです。これは将来はあるいはそういう形になるかもしれないが、私たちもそれは察しないわけではありませんけれども、現実にすぐそういくということは、これは私はそう考えられないのであります。  それから、もう一つ、乳業者がいかにも利潤を追求しておるというふうに聞こえるのですけれども、先ほど申したように、これについては十分に御検討下さることを私はお願い申し上げますが、これは、どんな産業だって、採算のとれない産業は滅びます。同じ酪農家方々だって、絶対採算とれないということになったら、日本の酪農は滅びてしまいます。何とか維持してたえておる面もありますけれども、戦後やはり六倍、七倍と伸びておるのは、そこに何らかの利点があるのだと思いますが、乳業界におきましては、農協さんがおやりになっていた乳製品工場までも含めて、戦後ずいぶん工場がつぶれております。乳業者が非常に淘汰されておる。これは、やはり、そこに価格構成なり経営上も無理があったということで、これは現実にもう淘汰されておるのです。こういうことも一つ考えおき願って、やはり、お互いに共同運営する、共存共栄するという意味での、バランスのとれた製品価格であり乳価である、こういうことでお考え願いたいということを御希望申し上げておる次第でございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、指定乳製品の品目の問題ですが、これは、生産者関係の代表者の方は、それぞれ練乳を全面的に指定すべきだという御意見でありましたが、乳業者の立場から見た場合はどういうふうにお考えですか。
  88. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 練乳にもたくさん種類があるのですが、ここで考えていらっしゃる練乳というものは、どういう種類でございましょうか。私は大カンだと思っておりますが、小カンもありますし、また、エバ・ミルクもありますが、私は大カンだと思ってお答えします。  大カンは、主として中小企業の方々が作っていつも苦しめられているものですから、これに対して道を開くことはまことにけっこうだと考えております。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 それは加糖の大カンですけれども、無糖ですね、いわゆるエバ・ミルクというような、そういうものも、これはやはり必要な場合には対象にした方がいいのではないかとも思いますし、そういう説もあるわけなんですね。その点についてはどうお考えですか。
  90. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 エバ・ミルクは小カンです。大カンじゃ保存できないのです。日本のエバ・ミルクの需要状況は、これは統計上ごらん願えばわかりますが、その伸び方は遅々たるものである。それから、練乳の全脂の小カン、これもほとんど横ばい状態です。ですから、われわれはそういう消費のかげんを見て製造しておりますが、これだけ余分に作ったって消化のしょうがないということです。ですから、練乳とするならば大カンであるべきだと私は考えております。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、買い入れ方式の問題ですが、われわれの考えから言いますと、まず指定された生産者団体が必要な場合には調整保管計画を自主的に立てまして、これを農林大臣が認定するわけでありますが、これは生乳では保管できない。瞬間タッチで処理するのであれば、それはできるでしょうけれども、そういうことをしない場合には、当然一応製品化して調整保管するということになるのですが、その場合には、政府が定めた基準価格、いわゆる委託した場合には、委託諸経費を加算して、それに買い上げ時期までの金利、倉敷等を加算した価格で買い上げる、政府の構想から言うと事業団が買い上げるということになる。ですから、乳から製品化されたものを一貫して、やはりその年間の需給事情等を勘案してそこで操作するということになれば、その分だけを買い上げれば目的が達せられるのじゃないか。一方、乳業者の任務としては、乳業者自身の自主的な努力によって年間の製品の調整販売計画というものを立てて、そこで努力をしてもらう。そして、その計画内で認定された分について調整販売の努力をしたものについては、それに要した倉敷、保管料、等を政府が支払いをするという形式でいけば、相当強力な調整販売が進められるのではないかというふうに考えますが、この二本立方式についてはどう考えますか。
  92. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 これは製品ですが、私どもメーカーとしては、年間販売計画、出産計画は必ず立てるのでございます。基礎といたしましては、生産乳量を基盤にして立てます。そこで、これだけの乳量を、たとえば百万石なら百万石の乳量を何の製品にやれば全部消化できるかなということで、製造計画を立て、販売計画を立てるわけです。ところが、私どものように全国的な場合には調整もある程度できるのですが、一地区にあります乳業者は、どうも、全国的の需給関係には影響せずに、余ったり足りなくなったりする。それから、私どものように総合的に各種の製品を作っておる場合には、その調整も割合楽なんですが、単品をやっておるところ、これが非常にお困りなんです。従って、過去の経験上から、何が余ってくるか、何にしわ寄せされるかということからいきますと、まず、大体において、バターとか、脱脂粉乳、練乳ということになるので、それらを取り上げて買い入れ指定品とするということは賢明だというふうに考えておるわけであります。何でもかんでも買い入れるんだということができないことと、何でもかんでも余ってくるのではないのでありまして、それぞれ、各メーカーとも、販売をしなければならないのですから、出ていくものから計画して製造していく。しわ寄せは、結局原料部門、つぶれるのは必ず原料価格です。しかも、どうしても大カンものを作らざるを得ない状態から、牛乳が余ってきた場合にくずれる、こういうことになるのですから、こういう点も御勘案いただければけっこうだと思います。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は非常に大事な点ですが、生産者団体が加工保管したものだけを最終的には無制限買い入れをする。この措置が相当計画的に行なわれれば、会社経営は非常に楽になる。そうでしょう。大体一年間の需給計画をにらんで、値下がりをするような場合は比較的過剰傾向が現われるときなんです。ですから、その傾向を生産者団体がとらえて、そして、調整保管計画の線に沿って、それを隔離するような、凍結するような措置を講ずるわけです。そしてなお価格が正常化しない場合には、それは全面的に買い入れ発動ということになるわけであるからして、かつて乳製品会社に対して調製保管をやらしたときよりも、これは会社としては非常に負担が軽くなる。しかも、会社自身の調整保管行為については買い入れはしないが、しかし、その分についての保管料とか金利等の助成を国が行なうということになれば、これは経営安泰となると思いますが、どうですか。
  94. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 この際ですから一言申し上げたいと思うのですが、何か、調整施設と申しますか、調整工場をお持ちになるということがあるようですが、委託加工を全面的にできるということになると、この調整工場というのは、先ほども運営上疑問があると申し上げたのですが、ふだん遊んでいて、あるときだけ活動するということでは、絶対に採算がとれるものではない。それから、現在一応日本の年産乳量が処理される設備が各地にある。そのほかに調整工場を新しく作るということは二重投資ですから、今日の金融措置から見ましても、非常にむだが大きいということが考えられるわけです。  それから、生産者保管するのか乳業者が保管するのか、これは、方法は別といたしまして、とにかく保管しているということが必ずしも市場をよくするという問題ではないので、これはいつか放出される。あるいは特別の用途に損しても使うのだということが保証されておれば別でありますが……。そういう面もありますし、また、生産者保管といいますけれども、乳業者は、一工場受け入れ乳量が減るということは生産コストに非常に影響するので、できるだけ生産コストを安価にするためには乳量を離したくないというのが人情です。ですから、どんなに不況で物が余っているときでも、増産計画を立てている。これが、コスト・ダウンする、合理化する一つの大きなテーマなんです。ですから、メーカーから牛乳をとってしまえば、そして生産者保管させればそれで合理化されるんだということは、その通りには受け入れられない。私ども、過去においても、どんな不況のときでも増産計画を立てております。これを要するに、増産されることがほんとうにコスト・ダウンの一つの大きなテーマだということ。ですから、私どもは作らしてもらうことが一番いいのでございまして、その処置を、ほんとうに残った上積みを買い取る方向に向かっていくことが望ましいので、生産者保管されることが直ちに会社に有利だということは言い切れないと申し上げる次第でございます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 そこはなかなか正直な御意見なんですが、従来は、牛乳生産が伸びて需要がそれに伴わないような場合は、そのことを理由にして乳価の引き下げがしばしば行なわれたのです。そういう苦い経験を持っておる。だから、そういう理由でまた会社にたたかれては大へんだから、今度は、そういう傾向が現われることを事前に察知して、その分は凍結するということになると、会社の所要乳量は少し減りかげんにまでこっちはやるわけです。そうすれば、これは大へんだということで、やはりそういう買いたたきはしないわけです。場合によっては正当な競争が起きるという場合もある。これはやはり相当効果があると思うわけです。ですから、そこをやはりねらっておるわけです。その場合に、生産者が凍結した製品については、これは国の責任で買い上げ、処理する。市場へそれを出した場合には市場に悪影響があるから、そういう場合には学校給食に使うとか、あるいは病院の給食にするとか、国が買い上げた分については社会政策的に使用する。そういう目的がこれに伴わなければ、ただ買いだめしておるということであれば、これは大へんなことになるので、そこは、われわれとしては、十分先の先まで読んで、これはどうするということでいくわけです。そういう万般の配慮をした場合においては、会社調整保管分まで買い上げる必要はないのじゃないか。金利、倉敷程度出せば健全運営ができるのではないかというのがわれわれの判断ですが、権威者の瀬尾さんはどう考えますか。
  96. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 私、まことにおこがましい申し上げようでございますけれども、芳賀先生のお考え通りには動かないと思います。と申しますのは、かりに中小企業者はどういたしますか。大体、中小企業者は、過去においては滞貨を持って困っておった方が多かったのであります。それらが、会社であるがゆえに買ってもらえない、これはどうもちょっと片手落ちのような気がするのであります。先ほど申したように、生産費の関係で、牛乳をとられることは損をすることになるのであります。これはやはりコスト・ダウンすることで乳量を維持したい。もし必要があって生産者保管するならそれもけっこうでしょうけれども、メーカーのある人が保管した場合に、また地域的なそういう問題が起きると思いますが、それはやはりやってやるべきじゃないかと考えられるのであります。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 決して大メーカーを擁護するために貧弱な中小メーカーをつぶそうという考えはないのです。その方向というものは、そういうことになると、大体大きな三社ないし四社に集中されるのはしようがないことですね。それがお困りであれば、それでは政府決定した適正基準価格で取引をやれるかどうかという問題です。法律にも、この基準価格における取引の勧告措置等というものはいずれも書いてありますが、問題は、凍結したり保管したりするよりも、その生産した乳が正当な価格で常時取引されればそれに越したことはない。それをわれわれも一番望んでいるわけです。ですから、会社の製品に対してもやはり買い入れ措置も必要であるということになれば、それを理由づけるために、むしろ法律によってきめられた基準価格以下で取引してはいけない、必ず最悪の場合でも基準価格において長期的な契約取引をやるというような体制が確立されて、これが正常化されていくということになれば、この法律の意義は非常にあるということになるのですが、この点もわれわれが心配するわけなんです。法律では基準価格による取引というものを期待するが、はたしてこれがこの法律の力の範囲で行なわれるかどうかということは、まだやってみないから疑問な点なんですね。その点はいかがですか。
  98. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 基準価格買い入れない業者に対しては買い上げない、これは一つの信義になっておるもので、私どもも承知いたしております。それは、結局、基準価格で買いまして、市場がだぶついて安く売らざるを得ないという場合に買い入れていただく。全般的に、計画的に業者問で数量を買い上げていただくということによって市価を維持するという方法があるわけであります。そういう方法に非常に役立つということでありますので、これはメーカーのものをお買上げになる道を作っていただければ別に差しつかえないのじゃないかというふうに考えます。これは、もちろん、基準価格以下の勝手な乳価のものまで買ってくれ、そこまでは私は言わないと思います。前からのお話し合いで、基準価格以下で買ったものは買ってやらないぞということは身にしみているようでありますから、そういったことは御心配ないと思います。   〔秋山委員長代理退席、委員長着   席〕
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、輸入規制の問題は皆さんから述べられた点でありますが、この際、指定乳製品だけを限度としてのものの考え方でいくか、そうではなくて、国内で消費される、特に学校給食法に基づく給食脱脂紛乳についても、特別会計あるいは事業団がこれを一手に買い入れて、そうしてその業務を通じてこれを学校給食なら学校給食に回すところまでいくか。そこまでいかないと、それは別だ、学校給食用は除くということであれば、これは完全な輸入に対する規制ということにはならないわけなんです。その点はどうなんですか。
  100. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 学校給食関係は、私どもの取引関係には全然影響はございません。いろいろ問題のあることは伺っておりますが、これは文部省さんと農林省さんの話し合いでありまして、扱いはどこで扱うか別に問題ではないと思うのでありますが、今のやり方で何か欠陥があれば、諸先生方の御意見を出して、農林省と文部省とよく話し合いをさせればいいのではないか。今度の輸入問題について私どもの心配するのは、一般市場のものなんです。特別用途に使うものをどこが扱うかということは、私どもはあまり関心がない、と言ってはおかしいですけれども、市場に影響しない。ということは、今の方法が悪ければお変えになったらいいのではないか。今の方法でいいというならば、今のままで一向差しつかえないわけですが、乳価に影響する問題は市場分ですから、市場に関係ない特殊用途のものについては、私どもはとやかく申し上げるべき筋ではないと考えております。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 これはちょっと解釈が違うのですが、われわれの言うのは、現在のような状態で、学校給食用の脱脂粉乳は毎年二万トンないし二万五千トン全量を必ずアメリカから買わなければならぬという、そういう政府のやり方というものに対してこれを問題視しているわけです。それは、もちろん、向こうがダンピングしてくるのですから、価格だけを考えればそれは安いわけですが、そういうことではなくて、原則は、やはり、学校給食用の乳製品牛乳についても国内生産のものを向けるということを原則とするのはあたりまえなんです。そういうようにいくべきであるとすれば、学校給食用の乳製品等の輸入についても、やはり全面的に規制するということでいかなければ、これだけは別だ、この二万トンとか二万五千トンは別だという運営をしておったのでは、今後畜産の発展とかあるいは畜産物全体の安定措置はできないと思うのです。この点を私は言っているわけです。
  102. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 お答え申し上げます。  私は最初御意見の解釈を間違えまして失礼いたしました。ただいまの御意見に対しては全面的に賛成であります。
  103. 野原正勝

    野原委員長 芳賀委員に申し上げます。参考人に対する質問でございますから、一つできるだけ簡単にお済ませ願いたいと思います。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 まだ三十分くらいありますから……。
  105. 野原正勝

    野原委員長 あとまだ大豆参考人の方が朝からお待ちでございますし、午前中に大体済むという予定でおいでいただいている関係もありまして、その点を一つ十分お考えの上で、できるだけ早くお済ませいただかないと、参考人に対して大へん失礼なことになりますので、その点をよろしく御了承願いたいと思います。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長はひんぱんに離席されるようでありますが、われわれは初めから終始一貫この議席におって慎重に意見の聴取とか審議を進めておるわけでありまして、単に形式的に意見を聞けばいいというようなものではないと思うのです。今提案されている法案審議に対して重要な点を各委員が聞いているのであって、私の場合はまだ三十分までいっていない程度ですから、これは従来の例からいくと短い時間でありますし、もう二、三点、大事なことでありますからお尋ねいたしたいと思います。
  107. 野原正勝

    野原委員長 それでは、なるべく簡単にお願いいたします。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、今事業団の問題に触れたわけでありますが、これは私は全販連の寺村さんにお尋ねしたいのですけれども、われわれが法律を通して想定する生産者団体というのは、やはり中心をなすのは全販連だというふうに一応考えているわけです。この中心体が思想がまとまっていないということになれば、この団体には安心して仕事をまかせられないのではないかという不安がわれわれ委員の中にもすでに生じているわけです。そこで、団方式も賛成しかねる、特別会計方式は理想的であるけれども、これは社会党が出した方式だから賛成しかねるということになれば、それ以外の何かいい方法としては、先ほど足鹿委員が触れられた共同会社的なものを作って、これに全く事業団の下請機関のようなことをやらして、そうして全販連のマージンかせぎをやりたいというような考えが実はうかがわれるわけですが、あなたは畜産部長ですから、役員ではないので、あまり重要なことはお伺いできないが、この法律が通った場合、これはいずれかになるのです。特別会計になるか、事業団になるか、どっちかきまるのですよ。流れる場合もあるが、成立した場合はいずれかということになるのですが、そのいずれについても賛成できがたい、理解しがたいということになると、これは金版連はこういう機構には参加できないということになると思いますが、その点はどうお考えですか。
  109. 寺村秀雄

    寺村参考人 今の方式につきましては、筋としては、特別会計によります政府買い上げ方式が筋であろうとは思うわけでございますけれども、諸般の客観的の事情から判断いたしまして、事業団方式でやむを得ない、——でありますがというところでお願いをいたしたわけであります。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、社会党は少数だから、これは結果的には政府案事業団が通るだろうという、ごく現実的な考え方から、現実に妥協して述べられたので、これは最近の団体の傾向からしては正直な態度だと思うわけです。ただ、問題は、専業団になると、事業団経営内において業務をやるということになれば、本来の任務は生産者牛乳とか畜肉とかの価格安定をはかり、調整保管したものは事業団が買い上げるということになれば、事業団はもうからないのですよ。事業団はとんとんにもいかないのです。積極的にやれば毎年数億円の赤字が出るということになるわけです。ですから、そういうことがはたして事業団経営の中において期待できるかどうか、最初からあたりまえだとか、期待できるということにはならないわけですね。この点を考えた場合には、やはり最初からそういうわかっておる法律の目的に沿って生ずる赤字というものをどうするかということを先に判断してかからないと、通るから事業団でやむを得ぬということでは、これは何も仕事はできないわけです。ですから、当然生ずる法律の目的に沿った赤字というものを一体国はどうするのだということになれば、その場合はなかなかこれは事業団方式ではできない。やはり、食管特別会計と同じような特別会計の方向でいって、そうして毎年度に生ずる業務上の赤字等につきましては、これは一般会計から予算的な措置でこの赤字を補てんするということでいかなければならないということで、われわれはこの特別会計方式をとっておるわけです。ですから、この点については御心配をされておると思うが、なかなか積極的な赤字を作るということはできないと思うのですが、こういう点に対してどうお考えになるか。  それから、一体、事業団それ自体がどの程度に買い取りしてしまった後の保管施設を持つか。乳製品の場合にはそれは会社の倉庫に保管させる方法もあるが、食肉の場合はなかなかそういうわけにはいかないと思うのです。そういう冷凍施設等についても、ちゃちな冷凍倉庫ではだめです。やはり、急速冷凍のできるような近代的な設備というものを事業団が当然設備しなければならぬということになると思うのです。一方、生産者団体もそういう体制を国の助成のもとに行なうということも必要になるわけでありますが、われわれとしては、事業団の場合には今言っただけでも大きな問題点が生じてくると思うのですが、一番事業団と密着して生産者団体中心にしなければならぬとわれわれは想定しておるのですが、その全敗連が一番真剣に事業団のことを考えてもらわなければならぬのですが、もう少し、個人的な見解でもいいですから、そういう具体的な点に対して意見を聞かしていただきたいと思う。
  111. 寺村秀雄

    寺村参考人 芳賀先生御指摘の第一点の赤字の問題でございますが、この点は、先ほども、私は、赤字が出ました場合の一般会計からの補てん、この方式をおとり願えないかということで実はお願いしたわけなのでございます。法制的にどうなるか、それは不勉強でわからないのでございますが、法律に規定すれば可能じゃないかというふうにも考えるわけでございます。御指摘のように、事業団が赤字が出ないならば、事業団の存在価値が失われるというような筋合いのものであろうかと思うわけでございます。  それから、第二点の調整保管だの何だのの問題につきましては、御指摘のように、事業団自体で持つことももちろんのこと、また、生産者自体も持つという方向で、できるだけすみやかに進めて参らなければならぬと思うわけでございます。ただ、問題は、御指摘のように、やはり凍結設備も必要といたしますので、そうなりますと、土地代を別にいたしましても、坪四十五万円、五十万円の金がかかる。しかも、かりに調整倉庫を作りましても、実は、農家団体は、調整倉庫が遊んでいるような市況、価格情勢で流れるのが一番いいということなのであります。従いまして、常時入っておればおかしいというようなことになろうかと思うわけでございます。そういう点からいたしますれば、その回転率と申しますか、利用率と申しますか、そういうものは非常に悪いということが当然想定されるのでございます。そこらあたりを見ますと、設備だけじゃなしに、あとの運営費の面におきましても、なかなかこれはむずかしい問題があるというふうに考えられるわけでございます。しかし、それはそれといたしましても、可能な限り政府の大幅な助成もお願いいたして、逐次進めて参らなくてはならぬと思うわけでございます。米がどうにか生産流通面で安定しておりますのは、申すまでもなく、農業倉庫というものが全国的に整備されておるがためにこれが実現されておるわけなのでございます。いわんや畜産物におきましておや、ということを考えるわけでございます。ただ、それはそういうことで進めるといたしましても、当面そう急速に整備されない。その対策としてどうあるかということ等も私も考えておるのでございますが、これは、必要に応じて、——と申しますのは、計一画が成り立ちますから、その計画に応じまして、事業団に早くから現有の設備を坪借り、一定の面積を年間を通じてなら年間を通じて借りておいてもらうということ等のやり方によりまして、計画的な調整保管状況に応じて政府売り渡しということも可能であろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、飲用牛乳の問題ですが、社会党の案としましては、先ほど申し上げました通り生乳全体を対象にした乳の価格安定措置を講ずることにしておりますので、当然、飲用牛乳の問題についても、これは法律上触れておるわけです。政府案には飲用牛乳の関係が何ら触れておらないのでありますが、やはり、年間消費の五五%ないし六〇%を占める飲用牛乳の分野について何ら制度上の措置を講じないということは、これは不当なことなんです。ですから、今後の問題としては、やはり飲用牛乳等についても適正な販売価格等というものが設定される必要がある、そういうふうにわれわれは考えておるわけですが、この点について瀬尾さんあるいは渡辺参考人から御意見を伺っておきたいと思います。
  113. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 飲用牛乳価格を設定するということですが、現在も指導方針は農林省の方から指示を受けております。その結果をごらん願いたいのでありまするが、これはそういう意図があったかどうかわかりませんけれども、おそらく大メーカーが横暴するというような考え方で押えたんじゃないかというふうに私たちはひがんで考えております。ところが、現実は、いわゆる大メーカーと申しますのは総合的な経営をしておりますので、白牛乳では採算がとれない、これは常識になっておりますけれども、それはそれとして、維持しておるということなのです。反面に、市乳を単一業としている方が非常に迷惑している。これが先ほど申したように整理態勢に入ってきておるということで、指導価格というのがほんとうに適正であれば何も問題ないのです。それから、もう一つは、適正でないところに今のような問題が起きるのですが、飲用牛乳の地帯の乳価は、常に現在では、消費のキャパシティと申しますか、そういう面から他の地区より割合に有利になっておる。ずっと過去そうなっておる。従って、そこに乳牛が流れるのも、これが実態を現わしておるというふうに考えられる。それをそこまで御心配になる人がいるのかなというふうに私は考えておる。現実にそういうようなことがいまだかつてあまりなかったようなのです。今農林省さんが指導しておる価格というものはほんとうに適正でないということは、私ははっきり申し上げていいと思うのです。
  114. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 飲用牛乳であろうと原料乳であろうと、私たちは、やはり、牛乳を作るという農家立場から、生産費をつぐなう乳価というものを政府で保障して、安定した年産に邁進できるようなことをこの法律に期待をしておる、こういうことであります。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 それと、もう一つは、消費者の立場から見た場合も、末端に行って消費する飲用牛乳価格というものは大体どの辺が合理的で妥当かということは、国民はわからないのです。農民の立場から言うと、農民の乳価の倍以上の価格で市乳が販売されておる。そういうことは消費者の側からも言えると思うのです。ですから、そういう点は、やはり生産者乳価をきめると同時に、飲用乳が末端に消費されるまでのそれぞれの経費、そういうものをやはり国が正確に算定して、その結果、この程度が飲用乳の基準的な価格である、そういうようなことを国として発表できるような制度というものがどうしても必要であるという考えで私は述べたわけです。  最後にもう一点、参考までにお伺いしておきたいのですが、この調整保管をやる場合の数量の把握、調整保管計画を立てる場合にどのくらいの数量を計画の中に入れるかということは非常に把握が問題になるのですが、われわれの研究した点では、最近の年間の牛乳の出産の伸び率等を勘案して、大体全生産量の三%ないし五%程度の数量の範囲内において調整計画が完全に実行されれば、それによって安定措置というものは十分進められるというふうに判断しておるわけです。たとえば三%というと年間約四十万石ということになる。五%ということになれば、これは六十万石くらいのことになるわけですが、そういうことでやられるとすれば、その全量を国が無償で使うということにしても、予算的には非常に少額です。食管会計では年間七百億というよた戸も聞かれます。国が大きく期待する畜産農業の部面にたとえば五十億とか将来有徳を国が消費するということになれば、相当積極的な制度が実現するというふうに考えるわけですが、まずどの程度の数量を計画に入れれば実効があがるかという点を参考人にお聞きしたい。
  116. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 最初に御質問の、市乳の価格は適正な価格かどうかということですが、先ほど、私は、現在の市乳の指導価格は適正でないと申し上げました。その御判断をいただきます一つの資料として、農協さん関係がおやりになっておる市乳工場が、失礼な言葉ですけれども、ほとんど立ち行かないという状態のところが多い。これが現在の市乳価格の適正ではないという証左でないかと思います。それから、それではメーカー筋はどうしておるかといいますと、いわゆる総合的な経営をやっておる会社はどうにかやっておる。メーカーとしては、単一市乳業者は苦しいのだ、これは先ほど御答弁した通り、だと思います。  それから、調整の乳量はどのくらいかと申しますと、それは年々その年によって違うのでございます。しかし、過去におきまする最高の調整した乳量は、その当時の大体五%。今日は牛乳乳製品の需要も非常に旺盛ですから、そういう場合にはあるいは三%でとどまるかもしれない。これは、乳価あるいは製品の価格等にある程度の幅があって、その範囲内でとどまるような処置ということになるわけですが、過去の実績から言いますと、これがその当時の最高であるわけです。しかし、その調整したことによって、主任後か一年後にはむしろ足りなくなった、価格が安いために需要が増した、そういう効果もあった。そして念に酪農が伸びたという利点もございます。その辺でございまして、今の需給状態から見ると、三%、五%といいますけれども、過去の経験から五%以上は出ないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  117. 野原正勝

    野原委員長 川俣清音君。簡単に願います。
  118. 川俣清音

    川俣委員 端的に一つお尋ねいたします。  今参考人からいろいろ有益なお話を聞いたのですが、一つ重大な点が未解決でございますので、お尋ねをしたいと思うのです。  それは、乳製品業者が消費拡大のためにコストを引き下げなければならないということで一体どれだけ努力されておるであろうかという点です。別な言葉で言えば、企業の合理化によってコストを下げていく努力が一体払われておるのかどうか。御説明によりますと、コスト・ダウンのために相当努力をしておる、最大限努力をしておるというお話でございましたが、私は、努力はしておるだろうけれども、それほど消費拡大のために有益なコスト・ダウンはしておらないのではないかと思うのです。そこで、瀬尾さんと渡辺さんにお聞きしたいと思う。この問題が解決つかないと乳価安定対策が立たないのでございますから、お聞きいたしておきます。もしやっておるというならば、私はやっていないという証拠をあげてお尋ねをしなければならないと思うのです。
  119. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 合理化の努力でございますが、私ども、単に国内消費の関係だけでなしに、輸入に対抗するための合理化まで進めておるつもりでございます。これも簡単にお答え申し上げますが、先ほどちょっと申し上げましたように、たしか企画庁だと思いましたが、二十九年を一〇〇とした物価指数が出ておるのです。これは昨年の統計でありますが、牛乳はあのときの乳価から見ましてたしか二〇%になっていたはずであります。ところが、製品は昨年からこの森までは上がっておりませんので、上がらないまでのこの三月までの製品価格、たとえばバター、チーズで申し上げますと、七二%になっております。二十九年を一〇〇にして、乳価は上がっておりますけれども、製品は七二%になっております。その後に末端価格を十円上げましたので、七八%にとどまっておるという状況です。これは端的に合理化しておる一つの証左でなかろうかと考えておる次第であります。
  120. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 私には会社の合理化のことですか。
  121. 川俣清音

    川俣委員 そうです。
  122. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 それはちょっと戸惑うのですが、会社自体の経営の合理化ということにつきましては、たとえば、雪印乳業に対しては、農民資本で構成されておる会社でありますから、そういう株主の参加及び重役の導入等によって合理化の措置を講じておるわけであります。他のメーカー等に対しては、間接的な形でありますから、積極的な課題の提起程度であって、たとえば乳価交渉等の場合に具体的な問題をさらに掘り下げて要請をしておるという程度であります。  なお、消費の拡大も、これはやはり製品自体の拡大と乳自体の消費の拡大二つあるわけでありますが、特に後段の問題等につきましては、寺村君の方からも述べたことでありますが、環境衛生法などというあまり窮屈なものはできるだけこれを簡略にして、高温殺菌で隣近所で簡単に飲めるような、農村その他の実態に即したような法律の緩和ということをやはり要請して、この牛乳の消費というものについてもいろいろ努力をいたしておるわけであります。  製品自体については、農協団体側としては直接的な取り上げ方はやっておらぬわけであります。
  123. 川俣清音

    川俣委員 そこで、私は、端的に、合理化ができていないということはこの点をお答え願えればよろしいと思います。もしも乳価が二割下がれば乳製品が二割下がるということならば、その経営というものは合理化されている経営だ、こう見てよろしいと思う。五割乳価が下がれば製品が五割下がるというならば、その経営というものは確かに合理化されていると見てよろしいと思うのです。これは常識だと思う。ところが、今、乳価は五割下がりましても、おそらく一割か二割の乳製品の下がりにとどまるのではないかと思う。そうなれば合理化されているということは言えないのではないか。問題はそこなんですが、どうでしょうか。
  124. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 それは先生のおっしゃるのと逆なんです。と申しますのは、先ほど申し上げた指数から見ましても、乳価は上がっても製品は安くなって、乳価が下がって製品を下げているのじゃないのです。乳価を上げて製品を下げているのですから、先生のおっしゃる以上の合理化なんです。これはなぜ合理化しなければならないかというと、外国品のことを私は申し上げましたけれども、国内の各メーカーの競争というのはまことに熾烈です。乳価は少しでも上げて牛乳をたくさん集めようといたします。製品はできるだけ安く売って、御存じのようにたくさん売りたい。これは合理化しなかったらその会社はつぶれるのです。それがわれわれ責任者の努力を要するところであります。これが達成できなかったらわれわれ重役にとどまれないということなんで、ほんとうに日夜頭を悩ましているのです。だんだんしらが頭になってきておるのはそのためなんです。その点は一つ御了解願います。
  125. 川俣清音

    川俣委員 私の言うのは、乳価が高くなっても製品を下げるということは、これは一つの合理化の現われであります。しかし、それが完全なものかどうかということを見るときには、乳価が下がったときには必ず下げ得るという形態であれば、それは合理化の形態をとっておるのだと言ってよい。下げるか下げないかは別にいたしまして、その内容を持っていなければ、どんなに合理化が進んでおるのだと言いましても、それは自己満足でありまして、乳価の大きな対策からいけば、それは合理化されていないと私どもは判断しなければならないということを申し上げておるのです。ほんとうに乳価が下がったら下げられるような運営機構になっておるかというと、そうじゃないのじゃないか。これはあまり参考人を責めるとか何とかいうことではないのですが、どうも、私から見ると、一体乳価が下がっても製品が下がるような余地はあまりないのではないか。  もう一つは、大カン練乳につきましても、これはあなた方この砂糖の分についての課税は免除させるという運動をみずから率先してやらないのではないかと私は思うのです。一体、どこの世界に、乳幼児から、まだ意識も何もない者から税金をとるなんてばかな話がありますか。赤ん坊から税金をとるという話はないはずです。大カン練乳は乳菓にもなるものでしょう。乳幼児の、あるいは病人用のお菓子です。その乳幼児から税金をとる、砂糖であろうが何であろうがその税金をとるのはやむを得ないのだというような考え方でおるということは、私は積極的に消費拡大のために努力されておるとは思われないのです。これはわれわれの責任でもありますけれども、もっと積極的にこういう点について究明をし、ただして、そうして拡大をしていかなければならない責任がメーカー自身にあるのではないか。われわれも協力しなければならないことはもちろんでありましょう。そういう点で、合理化が相当進んでいますなんて言われますことは、協力しようと思いましてもできないということにもなるので、そういう点をお尋ねいたします。
  126. 瀬尾俊三

    ○瀬尾参考人 ただいまの、乳価が下がった場合に製品を下げるかということであります。他の地力はよく存じませんが、北海道については、ここに鈴木参考人もいらっしゃるので、この力も御証人に立っていただけると思いますが、過去におきまして乳価を引き下げるときの交渉過程におきましては、こういうように製品が余って製品がこれだけ下がりました、現価に換算すると下がった値段は三円でございます、五円でございます、しかし、これは全部農村にしわ寄せをするわけにいきませんから、あなたの方はこのうちの四〇%負担して下さい、あるいは三五%負担して下さい、あとは会社の合理化によって負担をいたしますということで交渉過程を経ております。これは毎回その過程を経ております。ここに鈴木さんがいらっしゃいますからよく御存じだと思います。製品が下がった以上に乳価を下げたことは一度もございません。  それから、税金の問題でございますが、これは大蔵省にずいぶん熾烈な運動をいたしました。幸いに大蔵御当局も育児用の練粉乳につきましては非常に理解していただきまして、これは免税をするということになりましたが、残念ながら、菓子の製品には、ただいま先生のおっしゃったように菓子というものは大部分子供の食べるものだということでありますけれども、大へん菓子業界の景気がいいと申しますか、相当に利潤をあげておるのだからこのくらいの税金は負担できるじゃないかということの一本やりです。これは諸先生方にもずいぶん御協力を願ったのですが、私どもの努力が足りなかったせいもありましょうけれども、残念ながら大蔵省当局に認めてもらえなかった。しかし、私どもは、菓子業界の負担力よりも、酪農の維持助成ということで、ぜひこれは免除していただきたいと、どのくらい懇請したかわからない。酪農の維持助成なら農林省に行け、大蔵省は何も酪農のことは知らぬよというような御返事でありまして、どうにもとりつく島がなくて、とうとう御協力を先生方にお願いしたのですけれども、残念ながら認めてもらえなかったといういきさつでございますから、御了承願いたいと思います。
  127. 野原正勝

    野原委員長 これにて畜産関係参考人に対する質疑は終わりました。  畜産関係参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、きわめて貴重な御意見を長時間お述べをいただきまして、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  128. 野原正勝

    野原委員長 次に、大豆なたね交付金暫定措置法案について参考人より御意見を承ることといたします。  なお、時間もだいぶ迫りましたので、参考人からの御意見は十分以内程度、また、御質問の諸君も十分以内程度一つお願いをいたしたいと存じます。  それでは、参考人渡辺勘吉君からお願いいたします。
  129. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 私たちは、昨年の十二月第八回の全国農業協同組合大会におきまして、農業基本政策の確立に関する決議をあげたわけであります。その農業基本政策の確立に関する決議の一つの柱といたしまして、「輸入農産物が国内農業の発展に影響を及ぼさざるよう適切な措置を講ずること。」という決議をあげまして、この決議の趣旨に沿うた具体的な措置を講じていただくように国会及び政府当局に対して要請をいたして参ったわけであります。  ただいまの大豆なたね交付金暫定措置法案でございますが、この案は、大豆の輸入自由化によりまして国産大豆、なたねが値下がりをし、生産者の経済に悪影響を与えることとなるわけでありますので、これは福田農林大臣以降三代の大臣にわたって公約をされたことでありますが、貿易自由化の農産物のナンバー・ワンとして大豆が自由化として登場するという場合において、われわれ国内大豆、なたね生産者に悪影響を与えないように、政府では、その手段として全量を買い入れるか、あるいはこれと同様の効果を持つところの措置を講ずることによって生産者保護の万全を期する旨を三代の大臣がそれぞれの機会にわれわれ国民に公約をしておられるのであります。今回提案されましたこの政府原案では、従来大豆の自由化に関連いたしまして最も重要な課題でありますところの、自由化を実施する前の大豆なりなたねの生産者の手取りが確実に保障されるという内容になっておらぬと理解せざるを得ないのであります。この法案を読みましても、この法律が通ることによってわれわれ生産者は一体幾らで政府によって保障されるのかという明確なる数字の確認が容易に理解できない、非常に不明確な内容法案であると理解せざるを得ないのであります。従いまして、従来の歴代の農林大臣が公約をされましたように、生産者手取りの保障を確実に実行に移していくために、不足払いというような制度の実施によりまして、そういう一つ価格制度というものを明確にして、そのためには、販売調整をする機能農業協同組合によりますところの系統の一元販売ということによりまして、生産者団体生産者に対する支払い額と基準価格との差額を不足払いとして交付するという制度にこの案を修正して、そうして、従来の自由化以前にわれわれが農安法によって保障された手取りが、自由化によっていささかも後退することのないような措置をこの法案に盛り込んでいただきたいと思います。万一、財政当局の圧力等によって、生産者農民に経済的な不利益の補正をするということがこの法律によってもしも欠けることがあるといたしましたならば、農民の生産意欲を減退せしめることが心配されるわけでありますので、十分なる御配慮をまず第一点としてお願いを申し上げるわけであります。  この法律を読みますと、この適用の期間について「当分の間」ということがうたってあります。現在、御承知のように、大豆もなたねも国内需要が非常に大きい割合で輸入に依存をいたしておる現状でありますので、将来国内で必要な大豆なり油脂原料としてのなたねなりが国内の農家生産力によって自主的にその需要を満たし得るということが、これは、農業立場から申しましても、独立国家の建前から言いましても、そういう方向は当然望むべき方向であろうと思いますので、こういう自由化のあらしにさらされている大豆、なたねの生産者の保護のためには、当分の間というような——当分の間ということが一、二年ということであればなおさらでありますが、これは相当長期にわたって保護的な措置を盛り込んだ法律として実施をしてもらわなければならないと思います。その間財政支出等を中心として生産改善施策を強力に推進をして、その効果によって内地の大豆なりなたねの国際的な競争力がつくまでは、少なくとも自由化の影響によって生産が減退するということのないような一つ措置を特にこの法律の中に期待をいたしますと、「当分の間」というような字句が非常に問題になる個所であると考えます。当分の間という字句は、これを削除していただきたい。  第三点は、「予算の範囲内」ということが第二条にうたわれております。もとより、この大豆、なたねは国際的な非常な競争裏に立たされておる商品でございます。従って、海外市況の影響を受けまして市場取引価格が低落をしたり、あるいは現在政府で積極的にお取り上げになろうとしておるところの麦作の転換によって大豆、なたねにこれが移行することによって出てくる数量の増大等によって、政府が保障する財政支出というものが一定の定められた予算の範囲で制約されるということになりますと、非常な不利益をさらにこうむることが懸念されるわけでありますので、この予算の範囲内についてという制約も撤廃して、少なくとも政府が不足払いとして法律の中にうたってもらいますものを全体に保障をしていただくような措置が必要ではないかと思いますから、この予算の範囲ということも削除をしていただきたいと思います。  それから、基準価格そのもののきめ方でありますが、これも、第二条第二項第一号の基準価格の算定にあたって、需給事情その他経済事情を参酌してきめるとあります。しかしながら、貿易自由化によって外国産大豆の供給が無制限に行なわれ、需給事情が緩和されるのは明らかであるのに、そうした需給事情を考慮して基準価格がきめられるということになりますと、これは非常な懸念をされる価格が考慮されるということであります。従って、こうしたような特殊な条件下に置かれておるところの大豆、なたねに対しましては、私たち農業協同組合としては、従来要請して参りました点をさらに強くここに出していただきたい。それは、農業所得の確保を重要農産物価格のバック・ボーンにしていただきたいということであります。このことは農業基本法が参議院を通過する際に附帯決議の一号に掲げておることでありますので、こうした明らかに不利益と思われる要素、需給事情その他の経済事情というものを撤廃して、農業所得を確保するということを目途として、それを生産者の手取り価格基本に置いていただきたい。物質統計によります三十一年から三十三年の平均価格にその後のパリティを乗じた額をもって基準価格として設定をし、その価格との不足払い制を実施していただきたいというのが第三点のお願いでございます。  なお、これらの基準価格決定の時期でございますが、これは、やはり、農家がその作付をする前にその価格決定して、安心して生産ができるような時期にこの価格決定していただきたい。  なお、その他の具体的な点については、時間の制約もありますし、より専門的な岩下君が述べるだろうと思いますので、私は以上四点をこの際参考意見として申し上げて、これの実現について格段の御配慮をお願いしたいわけであります。
  130. 野原正勝

    野原委員長 次いで岩下豊水君にお願いします。
  131. 岩下豊水

    ○岩下参考人 全敗連の岩下でございます。前置きはさておきまして、法案の問題点につきまして申し上げ、お願いをいたしたいと思う次第でございます。  法案の全体を貫く考え方といたしまして、調整販売を行なって有利に市場に販売し、かつ合理的な運営を行なうという考え方に立たれておるということにつきましては賛意を表する次第でございますが、ただ、この調整販売を実施するにあたりまして、いろいろな問題点が法文の中に現われており、あるいはその辺が明らかになっておらないというような点がございますので、この点につきまして諸先生方にお願い申し上げ、なおただすべきはただしていただくようにお願い申し上げたいと思うわけでございます。  まず第一点は、交付金の交付を受け得る法人というのがございますが、この法人の規模、事業区域、こういう点につきまして明らかになっておりません。少なくとも調整販売、すなわち需要に見合う供給を計画的に実施するという場合には、多数しかも零細な単位における調整計画というものは根本的に成立しないということに相なろうかと思いますので、これは全国的区域における単一の機関において計画的な調整販売を行なうということによってこの趣旨が達成せられるものと考えられます。しかし、一地方あるいは一町村という範囲における協同組合または法人が、それぞれの立場において調整計画を樹立し実行するということは、根本の全体の調整販売をくつがえすということになる危険性を多分に持つことになろうと思いますので、前段に申し上げましたような全国区域における単一の機関によってこれが達成されるということを特にお願いを申し上げる次第でございます。  なお、法第二条の第一項の第二号にございます法人、法文では「売渡し又は売渡しの委託」という表現で出ておりますが、言いかえますと、賢い取りを認めておる、こういうことにうかがえるわけでございます。一たん買い取った品物を調整販売をするという場合に、先必ず上がるということが確定的にきまっておればけっこうでございますが、相場のことでございますので上がり下がりがございます。一たん買い取ったものを需要に見合う計画販売ということに置きかえる場合には、そこにリスクが生じて参りますので、賢い取りということを前提にいたした調整販売ということは、根本的に成立しないのじゃないか、こういうふうに考られます。さらに、買取り品を計画に載せるということでございますが、買い取りとは、買い取ってみなければ数字が確定しないわけでございますので、買い取りをする以前において計画を立てるということになりますと、それは単なる見込み計画ということに相なると思います。従って、買い取り以前における計画は机上計画ということになりまして、現実の数量というものと非常に違いが出てくることになるわけでございますので、買い取りということが根本にあっては、先ほど来申し上げますように調整計画というものは成立しないのではないか。従って、第三条の二項で計画の承認変更ができる、こういう条文がございますが、今申し上げたような前提で、単なる買い取れるであろうという見込みに立った計画を一たん承認を得て、さらに今申し上げた条文で承認の変更ができるということに相なりますれば、極端に申し上げますと、日々の業務によって計画からそごを来たして参りますのを、三百六十五日計画の変更承認願いを出す、こういうことになって、結局大みそかにならなければ結論がわからない。そういう調整計画であっていいものかどうか。こういう点が問題になろうと思うわけであります。従って、買い取りという思想をなくして、委託によって計画販売を実行できるようにこの性格をお変えいただきたいということでございまして、すなわち、生産者から一定の時期においてどれだけの数量をどの機関に委託をするかという、一定の時期を限って予約あるいは約束をつけて、その約束づけられた数量をもとにして調整計画を立てる、こういうことにいたさなければ、毎日々々積み上がったものを変更し、大みそかまでいくということでは問題があろうと思いますので、この一定の時期を限って生産者と取り扱い機関との委託契約を取り結ぶ、そして一定の期間までにその約束づけられた現品を入庫を終わらせ、その入庫の終わったものに従って計画販売を年間を通じて行なっていく、こういう制度にお変えをいただかなければ、調整販売ということが成立して参らないのではないか、こういうように考えるわけでございます。  さらに、先ほど申し上げました買い取りという思想から参りました調整計画というものは、おそらく、先ほど申し上げたリスクの問題もございますので、出回り期に集中的に販売する計画になって、調整計画と言えないというような問題になって参ろう、こういうふうに考えますので、この点についての問題をいろいろあげましたけれども、御指摘申し上げ、御検討をお願い申し上げたい。  さらに、買い取りをいたしましたものを市場に販売して、高く市場に売った場合は、その利益は賢い取りをした扱い業者の利益であると同時に、政府の支払う交付金額が少なくなるということでありまして、農民の損をもとにしまして扱い機関及び政府の利益が達成される、こういうことになって参ろうと思いますので、今まで申し上げましたように、調整販売計画を実際行なうためには、賢い取りという点をなくしまして、すべて委託でもって計画が立てられて実行される、こういうようにお願いを申し上げ、さらに、そのためには、生産者の扱い機関別の生産者登録といいますか、毎年この年度においてはどの機関を通じて販売するかというルートの登録を実施をして、それによって還流防止あるいは途中における混乱を防止し、調整計画の円滑なる実施が行なわれるように御配慮をお願い申し上げたい、こういうことでございます。  次に、先ほど渡辺参考人からお話がございましたが、基準価格の問題でございます。これは、この法案を見た限りにおいては、基準価格というものが農家の手取り価格になるという保証が出て参らないわけでございまして、その一点は、先ほど渡辺参考人の述べられました予算の範囲内ということの問題のほかに、第二条第二項の二号の標準販売価格の取り方でございますが、この標準販売価格の取り方の中で、大豆にあっては消費地において形成された云々と、それから、なたねにあっては産地において形成された云々ということになっておりますが、大豆となたねの標準販売価格の取り方の要素を一体別々に考えるという必要性があるのかどうか。さらに、大豆につきまして、市場において形成される価格の中に、穀物取引所の毎日六回ずつ場立ちのしております穀取の価格というものもございますが、これは、すでに諸先生方御承知のように、実際の現物の受け渡しをほとんど伴っておりません投機の場としての、取引所でございまして、実際現物の取引と遊離した価格と言ってさしつかえないのではないか。このような現物取引と遊離した場所において形成された価格価格算定の要素にするということは、実態と遊離した結果が出ますので、基準価格標準販売価格との差額がすなわち交付金となって基準価格にイコールする、農家手取りにイコールするとはならないということになろうと思います。従って、大豆にあっては、なたねにあってはというふうに別々にしないで、一本にいたしまして、取り扱い機関が実際に販売しました価格そのものをとって標準販売価格にせられるようにお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  さらに、法案で参りますと、農業協同組合系統及び扱い業者の法人という形で、これが複数の機関が出て参りますが、それぞれ複数の機関が販売をした複数の単価を一本単価に直す、こういうことになりますと、さらに実際販売価格と遊離して、基準価格農家に渡らないという結果が出て参りますので、この点も、前段で申し上げましたように、販売の機関は単一の機関で販売をいたしますれば、単一の単価が出て参りまして、基準価格標準販売価格との差額金によって基準価格が全部の農家に保障されるという結果が出て参りますので、ぜひそのようにお願いをいたしたい。  さらに、そういう問題を引き伸ばして参りますと、たとい前段で買取り制をやめて委託制度にいたしましても、つど委託ということで、きょうの売り上げ金をその農家に渡し、あすの売上げをあす農家に渡す、こういうことをいたしますと、また農家の手取りというものがまちまちになって参りますので、ここで共同計算というものが具体的には実施されるという内容にならないと、生産者基準価格が確保できないことに相なろうと思います。この点も、先ほど来、根本を委託に置き、そして単一の機関で取り扱い、販売をする、こういうことを申し上げました理由であります。  それから、さらに、農林大臣の定める交付対象数量、これは農林大臣の定める一定数量が交付金を支出するもとの数量になって参るわけでございますが、先ほど渡辺参考人からも御意見がありましたように、麦作転換、あるいはその年の豊凶、それから、私どもすでに生産の合理化を進めつつございますが、その結果から出て参りますものは、逐次数量は増加して参ろうと思いますので、この大臣の定める一定数量というものには慎重なる御配慮をいただくことが必要であろうというように考えます。  さらに、この数量の決定の時期でございますが、法文を拝見いたしますと、大体物が流通し出す以前の段階においてこの数量が決定される、それは協同組合または法人の提出いたします調整計画の承認の段階においてこめ一定数量が決定を見る、こういうことになろうと思いますが、先ほど申し上げたように、単なる買い取れるであろうという見込みをもとにした数量によって各団体が提出したトータルが、当初予定しております農林省当局の数量をはみ出てしまったという場合に、この調整をいかにするか。また、この調整を終わって、一定の数量が定められて、実際に現物を取り扱った結果、ある団体はその大臣の定められた一定の数量の範囲内であり、ある団体は定められた数量のワクをはみ出たという場合に、ワクをはみ出た団体に属する農家の取得する交付金の単価は非常に安くなってくる、こういう矛盾が生じて参りますので、これらの点につきまして、もっと合理的な方法で実施を行なえるように十分御配慮をお願いを申し上げたい。  それから、さらに、大豆の特殊性といいますか、従来の国内大豆は、流通されるであろう数量の約半数というものが無検査で流通をしておるわけでございますが、無検査で流通しているものに対する格づけというものが非常に困難になって参りますので、この流通される対象にするものは、検査を受けて格づけの行なわれたものを対象にするということにして、正しく農家に格づけに基づく品位の価格が支払えるように御配慮を願いたい、こういう点でございます。  さらに、最後に申し上げておきたいのは、この制度で、扱う法人を通じて交付金が流された場合に、農家に正しく渡らない場合が虫ずる。こういう場合には、波さなかった取り扱い機関は処罰を受けますけれども、もらわなかった農家にだれかがかわって支払うという保証がないわけでございまして、間違いなく農家に必ず渡るという制度に御配慮を願わなければならない、こういうようにお願いをいたしたいと思うわけでございます。  以上、問題になります主要な要点を申し上げたのでございますが、最後に、この大豆、なたねとはちょっと関係がはずれるわけでございますけれども、大豆、なたねがこの七月以来自由化されました結果、こういう保護を要請し、実現をお願いしておるわけでございますが、また近年のうちに色豆類のAA制が実施されるということもうわさされております。これらについても、AA制実施の暁は、また国内生産者への圧迫が生じて参りますので、事前にこれが保護を講ずるように特に諸先生方に御配慮をお願い申し上げまして、私の意見の陳述を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。
  132. 野原正勝

    野原委員長 次に、石井盤根君にお願いいたします。石井磐根君。
  133. 石井磐根

    ○石井参考人 ただいま御紹介にあずかりました全国雑穀商協同組合連合会の石井でございます。委員長から御注意がございましたので、簡単に要点を申し述べさしていただきたいと思います。  結論を率直に申し上げますと、私どもは原案でけっこうと思います。ただ、この法律措置だけでもって大豆、なたねの生産農家所得の安定をはかるということは片手落ちでありまして、日本の大豆、なたねというものは、品質そのものにおいては外国産に比べて決して劣っていないのでありまして、大豆のごときは輸入物よりもはるかに格上で取引されているのが現状でございます。しかし、それがこの大豆のAAによりまして非常に市場で圧迫を受けるというふうな懸念を生ずるようになったのは何が原因かと申しますと、これは、言うまでもなく、大豆生産性が低いということが一番根本的な原因になっておるわけでございます。従いまして、この措置でもって外国産大豆の圧迫を一応阻止することはできるかもしれませんが、この間に、日本の大豆、なたねが、輸入大豆と競争できるところまでの生産性の向上をはかるという措置が十分に講ぜられなければ片手落らではないか、かように考える次第でございます。従いまして、この措置に並行する、あるいは並行でなくして先行して、大豆、なたねの生産性の向上をはかる措置を講ぜられることが必要であろう、こう思う次第でございます。  その次に、この法律案内容になりますが、この第二条で、調整事業を行なう団体として、一つ農業協同組合とその連合会、もう一つは、大豆、なたねの販売を業とする者の団体と、こう二つの流れを認めてありますが、これは、現在の国内の大豆、なたねの流通の実情に即したものでございまして、大豆団体の独占とならず、生産農家の要望と消費者の利益に即応した考えと存じますので、けっこうと思います。  その次に、第三条におきまして調整販売計画の樹立及び承認の事項が規定されてございますが、行政官庁におかれて形式的な数量にとらわれて生産者、消費者の要望に合致しない調整計画を承認しないようにしていただきたいということをお願いするわけでございます。最初に申し上げましたように、大豆、なたねの生産性を上げるということが根本問題でございますから、調整計画の検討にあたられましては、どうすれば生産性が上がるかという点に考慮を払うとともに、農業協同組合は農業協同組合としてそれに適した調整計画がありますし、また、われわれ取り扱い業者といたしましては農協の行ない得ないような特徴を持っておりますから、この特徴が生きるような調整計画を、高度の経済性に立たれてこれを検討し承認していただきたい。この点につきましては、この法律案の運営の根本になろうかと思いますので、国会におかれましても、この点に適切なる御指導をお願いする次第でございます。  最後に、われわれ取り扱い業者といたしましては、この法律案が可決、運営された場合におきましては、農業協同組合とは十分な協力を行ないまして、この運営の円滑をはかることについてはやぶさかでございません。また、今後、生産農家の経済の安定と消費者の利益のためでありますれば、農業協同組合と無用な摩擦を避けるための必要な協調を行なうことについての用意もございます。この点はつけ加えて申し上げます。
  134. 野原正勝

    野原委員長 続いて、参考人鈴木善一君にお願いいたします。
  135. 鈴木善一

    鈴木参考人 それでは、私から北海道大豆生産状態等を最初に申し上げまして、それからそれぞれ問題点を申し上げたいと思います。  まず第一に、北海道における大豆の出産は、豆類畑作反別総体の三割五分、約七万町歩を耕作しております。しかも、全国の市場出回りの四割、八万トンくらいの商品化が見られておるわけであります。そういうような状況から、北海道におきましては、畑作農家経営上重大な問題でありまして、数年前から国会並びに政府大豆対策の問題を要請して参ったのであります。しかも、その要請につきましては、大豆を全量買い上げるような法律を要請して参ってきたわけでありまして、今川の交付金法によりましたことは非常に遺憾であるわけでありますが、今後、運営におきまして、実際に買い上げ法と同様な効果をわれわれは期待しておるものであります。特に貿易自由化が導火線ではありますが、この中には「当分の間」というような字句が入っておるわけであります。でありますが、本道における先ほど申し上げましたような実情から、大豆あるいはなたねの増産確保の問題と、その耕作農家がそれぞれ農業基本法にうたわれておりますような他産業と同様な所得が得られましてその耕作農家の経済確立ができ得るような考え方基本を置いていただきたいわけであります。これがまず第一点であります。  次に、集荷並びに販売調整機関の問題でありますが、北海道における大豆の先ほど申し上げました約八万トンの出回りにつきましては、系統農協が八割を集荷しておるような現状であります。さらに、昨年の三十五年産の大豆につきましても、それぞれ、全級を調整機関といたしまして、八十何万俵、五万トン以上の北海道大豆が参加をして、全国の大豆調整販売に協力を申し上げておるような次第であります。そういうようなために、われわれは、集荷につきましては農業協同組合、販売調整につきましては連合会を通じて実施をいたしたい、こう考えておるものであります。さらにまた、いろいろ問題の発生するのは末端における集荷業者の問題だと思います。このことにつきましては、われわれは従来の集荷業者の活躍は農業協同組合として十分考えていきたい、かように考えておるのが第二点であります。  次の題三点の基準価格決定でございますが、これは、法案には農業パリティの問題と生産事情あるいは需給事情あるいは経済慕情というようなことをうたっておりますが、この価格算定方式は麦価方式によって決定をしてほしい、こういうようなことでございます。しかも、この場合の基準年度は昭和三十一年、三十二年、三十三年を基準年として、農業パリティを乗じた価格でもって価格決定し、しかも作付前にこの価格を発表願いまして、それぞれ大豆、なたねの耕作農家が計画経営ができるようなことにしていただきたいと思います。  次に、第四点でありますが、いわゆる標準価格基準価格の差が交付金としてもらえるわけでありますが、標準価格は実際の取引価格。先ほど全敗の岩下部長が害われましたが、実際の取引価格からそれを策定をしてもらわなければならない。ややもすると、穀取等の実際に取引の伴わない価格等を係数として使われることは、非常に迷惑を生ずるわけであります。そういうような意味から、調整機関が実際に販売した価格標準価格として採用され、その基準価格との差を交付金として交付されることを要請するものであります。  それから、次に、法案によりますと、予算の範囲内というようなことと、それから、一定数量ということを言っておりますが、これは、そういうことではなく、交付対象の数量は耕作農家の販売する全量を対象数量としていただきたい。これが第五点であります。  次に、第六点は、審議会の問題でございますが、交付金の対象数量の策定の問題あるいは基準価格決定の問題、標準価格決定、あるいは大豆、なたねの生産改善対策等の問題を審議するために審議会を設置いたしまして、これには生産者代表、生産者団体代表を、午前に申し上げました通り、三分の一以上を参加させ、特に国会議員あるいは学識経験者の参加を得てこれらの問題を処理することを特に申し上げる次第であります。  次に、第七点でありますが、法律の中にありますところの流通経費の問題でございます。流通経費は、従来われわれが聞いているところでは、保管料、金利、運賃あるいは販売の費用、こういうことになっておるわけでありますが、先ほど申し上げました基準価格は、つけ加えますが、これはいわゆる素俵価格、検査法による一号検査の規格のものを基準といたしまして、さらに、北海道といたしましては、道外に移送する場合には本づくりにしなければならぬわけであります。そういうために、従来の流通経費の中には加工閥は入っておりません。安定法によりますとつくり価格で買い上げるようなことになっております関係から、そのようなことを誓われております。従いまして、この法案の中には、特に流通経費については加工費を含むものであるように特にお願いを申し上げるわけであります。そういたしますと、北海道帝の大豆が素俵価格基準価格がきまり、そうして、つくりになって販売調整機関がそのものの販売をする。そうなりますと、そのほか流通経費の中に加工費が入りますから、明確なことに相なるわけでございます。そういうような方法で処置することをお願いするわけでございます。  次に、大豆、なたねの問題には直接関連はございませんが、ちょっと時間を拝借いたしまして、先ほど全敗の岩下部長から覆われましたが、北海道といたしましては、大豆に次ぐ色豆類の生産が相当量あるわけであります。これは、北海道の色豆類は、国内需要の少なくとも七〇%くらいの供給力があるわけでありますが、これは毎年輸入雑豆のためにいろいろな対策要請しているわけでありますが、なかなかうまくいかぬわけであります。しかも、将来これが自由化されましたならば、この色豆生産農家は相当大きな影響をこうむるわけであります。そういうことで、先般来色豆類を農安法に対する追加品目として特にこれを措置することを要請しているのであります。そのような面から、北海道の畑作農家経営安定をはかるために、ぜひとも色豆類を農産物価格安定法に追加することをつけ加えてお願いを申し上げます。  以上で終わります。
  136. 野原正勝

    野原委員長 これより参考人に対する質疑を行ないます。  質疑の通告がありますから、逐次これを許します。できるだけ簡潔に願います。芳賀委員
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 大豆、なたね交付金の法案内容に関連した部分だけを参考人にお尋ねしたいと思います。  本日は全雑連の石井専務も出席されたわけでありますが、実を申しますと、私ども、全雑連の性格あるいは業務の内容等については非常に不勉強でありまして、はたしてこの法律の原案が予定しておる生産者団体以外の法人として全雑連がこの法律の要請にこたえる任務を確実に行なえるかどうかという点についても、幾多の疑点と不安がありますので、その点につきまして、石井さんから、全雑連の成立の経過とか、あるいは最近の業務や事業の実態等について大よその点をお聞かせ願いたい。
  138. 石井磐根

    ○石井参考人 お答えいたします。  私の方の全雑連の設立の経過とそれから実態についての御質問と思われますが、私どもの全雑連と申しますのは、全国の雑穀の取り扱い業者の協同組合の連合会でございまして、北海道を初めといたしまして、内地の大豆、なたねの生産のあります主要府県におのおの協同組合がございます。それと同時に、主要消費地と申しますか、東京、大阪、名古屋というような大都市中心に、これはおもに雑穀の卸をやっております取り扱い業者でございますが、この人たちが県単位でございませんでブロック単位の協同組合を作っておりますが、それと両方が一緒になりまして、この全国雑穀協同組合というものを組織しております。  それから、もう一つ、お尋ねの中に、この取り扱い業者がこの法案にいいますところの業者団体として適当かどうかという点に疑問があるというような御質問に承りましたけれども、どういう点で不適格という疑問が先生に抱かれたのかわかりませんが、大体、大豆の取り扱いの実績は、北海道は別といたしまして、内地の府県では、農業協同組合よりもわれわれ取り扱い業者の方がはるかに多いわけであります。それから、なたねにつきましては、大体半々でなかろうか、かように思っております。それでございますから、われわれの取り扱い業者の団体といたしましては、大豆の取り扱い、特に国産の大豆の取り扱いにつきましては、法律でいうところの指定団体として決して不適格ではない、かように私は考える次第でございます。  ただ、御疑問の点が一つあろうかと思いますが、今までそれではそういうふうな調整販売というような仕事をやっていたかどうか、こういう点、もし御質問がそこまで触れているということでありますれば、これは、われわれの組合として調整販売は今までやったことはございません。そういう必要が今までなかったし、そういうふうな要請がなかったためにやっていなかったわけでございまして、それだけの取り扱い実績を持って、それだけ農家なり消費者の信用を得たもので組織された団体でございますから、今後調整販売をやっていく場合に、生産者なり消費者の要望に沿うことができないということは万々ないと私は考えております。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、私たちの立場から見ても、この法律は、決して、既存の集荷業者、たとえばそれが販売事業を行なう農業協同組合であろうとあるいは一般の個人あるいは法人の集荷業者であっても、いわゆる商権を圧迫したり侵害するという思想はないのではないか。ですから、集荷業務をやるということは、これは議論の余地はないのですが、ただ、法律で期待するところの、国が指定した大豆、なたねについて交付金を生産者に確実に渡す仕事、それから、特にその法律で期待しておる指定された団体が大豆あるいはなたねの調整販売計画を立てて、それを承認された場合には、その計画の内容というものは完全に実行されて、そして期待された成果をあげ得るかどうか、この二つの任務に対してどうあるかというような不安が実はあるわけでございます。  一方、農協団体の方は、御存じの通り、昭和二十八年に農産物価格安定法ができまして、白来、大豆、なたねあるいは澱粉、なまぼしイモ等、この法律が示した農産物の各品目については、これが調整販売の行為は、いわゆる出産者が構成員となって構成している農業協同組合、その協同組合が構成員となっている農業協同組合の地域の連合会、またその連合会が構成員となっている全国の農協連合会、そういうものを総称して法律では生産者団体と定めまして、この生産者団体が、大豆あるいはなたね等について過去数年の間、あるいは澱粉等について調整販売計画を立てて、これに沿ってこの行為をやってきた。従って、経験、実績というものが農協団体の方にはあるということになるわけであって、しかも、もう一つは、政府が無理に貿易自由化を行なったわけです。国内の大豆、なたねに対する法的保護措置を講じないで、ことしの七月一日から自由化を行なった。それで、政府としても若干反省して、罪滅ぼしの意味で、行政的に予算を計上して、昨年産の大豆、今年産のなたねについては、生産者団体で扱ういわゆる委託販売を通じて共同販売による調整販売計画を国が認めて、これによって現在行政措置によって大豆、なたねについては自由化対策の一環として措置が進められておる、こういう経緯があるわけです。これは石井さんも御存じの通りですね。  今度は、全雑連の場合は、この法律ができると初めて法人としての指定がされ得る場合も出てくるわけです。ですから、全く全雑連に対してはその点は未知な点があるわけであります。全雑連の組織を見ても、濃紺のように生産者が下から積み上げてきた系統組織とは違って、いわゆる同業組合的な同業組合の連合体組織が全雑連であるというふうに承知しておるわけでありまして、一方、全販連は農産物の販売業務を主としてそれに専念する。全雑連の方は、集荷したものの販売もやれば、また、一方、生産者団体が販売する農産物買い入れあるいは卸売業務を行なう、こういう両面を持っておるわけです。  ですから、そういう二つの異なった性格の団体法人を対比した場合において、従来経験と実績を持っておる全販連の機能と同じような機能が同様にはたして発揮できるものであるかどうか。悪意ではなくて善意の不安と危惧をわれわれは持っておるわけであって、一番責任のある石井さんからこの点について率直にお話を聞きたいわけです。
  140. 石井磐根

    ○石井参考人 ただいま芳賀先生からの御質問と御注意、御懸念でございます。今、農業協同組合それから連合会の全敗連中心にして農産物調整販売という事業をやっておられますが、これに対してはわれわれといたしましては大いに賛成でございます。これは、大豆、なたねといわず、ほかの農産物についても今後ますます強力におやりになることは大いにけっこうだ、これについて私どもは決して反対するものではございません。ただ、この際、御注意と申しますか、私の方として申し上げたいことは、先生が今お話しになりましたように、たとえば昨年の三十五年産の大豆北海道の例を見てもわかりますように、われわれ取り扱い業者の方に大豆を売った農家と、それから農業協同組合の方に大豆を委托された農家とは、手取り価格において非常な差が出ております。これは先生十分御承知のことと思います。こういうふうに非常なハンディキャップをつけられていながら、農業協同組合以外に農家が売っている大豆は相当の量であるということは明らかな事実でございます。これは北海道でございますが、内地の府県においても大豆、なたねというものは、これは前から農業協同組合が扱えるようになっておりますし、そうしてまた、農業協同組合が共同販売という仕事を、大豆、なたねについては内地の府県についてもいろいろ御熱心に奨励されておる、こういうふうに思いますが、それにもかかわらず、相当の量の大豆、なたねというものは、協同組合の方に行かないで、取り扱い業者の方に行く。こういうことはどういう原因から来たかということは別といたしまして、それだけやはり協同組合ではやり得なかった、あるいはやりにくかったという点が、結果から申しますとあるのではないか。ですから、そういうふうな農家の要望にこたえるためには、われわれといたしましては、やはりこれは、農業協同組合の足らないところを補うと申しますと語弊があるかもしれませんけれども、農業協同組合と協力しまして、全部の大豆、なたねの生産農家がこの政府措置の均霑にあずかることができるようにならなければならない、これが私たちの使命であります。こういうふうに考えて、われわれの組織を強化して、今までやってなかった仕事をここで新たにやろうということになったわけであります。  それで、確かに、これは、先生の御指摘の通り、今までそういう実績がございません。それから、取り扱い業者個々としては非常に古い実績を持っておりますけれども、団体としてやった実績というものは、これは仰せの通り戦後にはありません。ただ、戦前におきましては、やはり、戦時の統制時代には、われわれ取り扱い業者は、みんな自分の今までの実績に応じて持ち分を持った株式会社あるいは協同組合を作りまして、そうしてそれによって政府の配給の仕事を引き受けてやってきたわけでありますが、そのやった人たちは現在まだみんな健在でございますから、そのときの経験というものを生かしてやる以上は、御懸念の点はそれほどないのではないか、こういうふうに申し上げたいと思います。ただ、今までのわれわれの取り扱い実績そのものを全量扱うということになりますと、これは下部組織においてわれわれから見てもあるいは心配ではないかというふうな点がありますから、これは、政府のこういう仕事を引き受けてやるわけでございますし、この扱いあるいは組合の内容につきましては、十分に検討して、取捨選択はしなければならない。従って、今までの取り扱い量に比べますと、われわれのやる調整計画という内容は小さくなるのではないか。しかし、小さくても、これは確実にやった方がいいのではないかというふうに考えております。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 現在、国内の取引関係を見ると、農協系統あるいは集荷業者系統の分野というものはおのずから明らかになってくるわけです。ただ、今度の場合、はたして全雑連傘下の集荷業者が系統的、組織的な集荷とかあるいは調整販売の行為がやれるように組織化がうまくいけるものだろうかどうかという点なんです。政府の指定する場合にも、全販連、もう一つは、集荷業者の法人となると全雑連ということを政府は予定しておると思うわけです。ですから、二面的に二つの指定団体が組織化した中で集荷あるいは調整販売の業務をやるということになると、一体系統立った組織化が急速にできるかどうか。一昨年、昭和三十四年の七月に成立された全雑連ですから、まだ日も浅いですが、石井さんの確信のほどを伺いたいわけです。ことしこの法律ができて、原案では三十六年産の大豆に適用するわけですね。なたねは三十七年産からということになれば、すでに出回り期にも入っておるわけですが、法律が通って直ちに指定されてやれるかどうか、これはほんとうに具体的な問題です。
  142. 石井磐根

    ○石井参考人 法律が通りまして三十六年産の大豆にすぐ適用されたという場合に、それでは全雑連としてはすぐ右から左にそれに即応した措置が講ぜられるかという御懸念だと思いますが、率直に申しまして、東京から南の大筋につきましては、すでに大部分以上出回っておりますから、それについて遡及してやれとおっしゃられても、私らの方としてもこれは無理だろうと思います。それで、これは、大体地域的に言いますと、岩手から北の、岩手、青森、それから北海道、こういうところの大豆に大体適用されるものと思われますが、私の方といたしましては、そういうぎりぎりでこの法律が施行になった場合に混乱しないようにと思いまして、前々から、産地の方では全部寄りまして、農家から買う場合の様式でありますとかいう点をいろいろ検討いたしまして、いつでもそれに乗りかえられるような体制にはなっております。ただ、その場合に、先ほども申し上げましたように、今まで扱っていた量そのものが上がってくるかという点になりますと、これはどうしても減るのじゃないか、かように考えます。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の関係で率直な質問をするわけですが、これは法律とは直接関係ないようなものですけれども、全雑連の立場として、一体、大豆、なたねの自由化というものに対してはどういうお考えを持っておるか。これは参考意見でいいのですが……。
  144. 石井磐根

    ○石井参考人 参考意見という御質問でございますが、私どもとしても、これは参考意見としてお聞き願いたいと思います。  大豆、なたねの自由化に対しては、私の方の組合員の中では二通りの見解があるわけです。それは、消費地にいますところの卸売を主にしている取り扱い業者の方は、大豆が自由化になりますと、今まで割当制度で自由に扱えなかった大豆が今度は自由に扱えるようになるという、抽象的な期待といいますか、そういうものはあるわけでございます。しかし、一方、生産地にいるところのわれわれの方のメンバーからいたしますと、輸入大豆がどんどん生産県まで入りやすくなってくるということは、今まで農家からいろいろ物を買うことによってなりわいを立ててきた仲間業者の立場からいきますと、どうも暗い。こういう明暗二様の立場があります。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 実は、この質問をするのは、たまたま全雑連の事業の概要を私どもも検討したことがあるのですが、その中に、全雑連の運動、——全敗連農協の場合も農政活動や運動はやっていますが、その意味における運動の一環として、大豆、なたねのAA制を促進するという事項があるのです。この実現に全雑連として努力した。あるいは岩下参考人の言われた色豆の自由化促進に努力した。あるいはまた、かつて外貨の割当制、輸入権の獲得等にも努力した。これはその立場から見れば当然のことであると思いますが、この法律は、政府が無理に自由化をやっちゃったものですから、罪滅ぼしの意味で実は作っておるのだが、その推進力としてどれだけの力があるかどうか知りませんが、とにかく政府の方向と似たような側に立ってこの自由化実現のために団体としては努力された。その団体が今度は自由化からの犠牲を守るための仕事を引き受けてやるということになると、いささかじくじたるものがあるのじゃないかと私も推測するわけですが、これは業者として割り切ってしまえば別に何でもないことでありますが、その点について、これは無理な質問ではありますが、そういう過去の運動の経緯から見た場合に、一体どういうふうなお考えですか。
  146. 石井磐根

    ○石井参考人 大豆なりあるいは雑豆の輸入の自由化について、全雑連として自由化の方向に動いたということは、過去において御指摘の通り事実でございます。ただ、それによってAAになったわけではないと思いますが、それでは、どうして、AAになるのを一方では尽力して、それで一方では今度は大豆生産の片棒をかつぐようなことになるのか、矛盾しているのではないかというような率直な御質問だと思います。御質問が率直でございますから、私も率直にお答えしますが、取り扱い業者というのはイデオロギーをもって動くのじゃないのです。結局、生産者と消費者の両方の間に立って、両方の利益のために動かなければなりません。そうしますと、考えようによりますと、二面では矛盾したようなこともありますけれども、それは業者の思想的に非常に弱いところでございまして、その間に立って両方にいいようにやろうとしますと、これは仲人みたいに両方にうまいことを言わなければならない、こういう面があることを一つ御了承願いたいと思います。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 イデオロギーはもちろん排除しなければならぬとしても、野放しで自由化が行なわれれば、その結果として、従来皆さんが扱ってこられた国産大豆がどうなるかということは、実際扱った立場から見れば当時もおわかりのことだったと思う。非常な犠牲を受ける。そういうことはイデオロギーじゃないと思うのです。自由化の影響が現実にどう起きるかということは、これはイデオロギーの範疇じゃないと思う。判断の問題だと思う。これは追及するわけじゃないのですよ。私たちはあくまでも自由化はすべきでないという立場です。しかも、年間の大豆の消費量の二〇%程度しか国内生産はあがっていない。あがらない理由は、石井さんがさつき述べられた通りなんです。大豆の品種の徹底した改善とか単位生産の向上とか、そういうことに対しては政府は全く無政策だったわけです。何もやってこなかったことは事実なんです。その無為無策の結果がこういうことになって、百万トン以上の輸入をしなければならぬという状態になっているわけです。その上に今度はさらに重石を重ねるようにして野放しの自由化をやって、アメリカでは海にでも持っていって捨てなければならぬ、捨てるにも経費がかかるということで、結局日本に自由化を押しつけて、そうして百万トン、百二十万トンとどんどん入ってくるわけですから、生産者と取り扱い業者の歴史的な血のつながりから考えた場合に、やはり、野放し自由化を促進するのはそろばん上でやむを得なかったということだけでは、個々の業者は別ですが、いやしくも全国の業者を網羅した一個の団体としての人格に立った場合においては、いささか反省の余地があったのではないかと率直に考えるわけです。
  148. 石井磐根

    ○石井参考人 野放しで自由化ということは、われわれとしてはそういう主張をしたわけでもございませんし、そういう運動もしたわけではないのです。ただ、われわれの傘下の組合員の中には、御指摘のように、いろいろな人がおりますから、あるいはユダヤ人のように何でもいいからもうかればいいというふうな人もなきにしもあらずだと思います。ですから、そういう人の考え方があるいは非常に強く伝わりまして、そうして無用に生産団体なり生産者を刺激したということは過去においてあったかとも思われますけれども、現在のわれわれの立場の者はそういう誤った考えは持っておりません。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、系統化の問題ですが、全国の全雑連の会員の分布状態を私たち検討しておるわけですが、主産地を中心にして、北海道は広大な面積の割に集荷業者の数は二百四、五十軒ということになっておるのでそれほど多くはないのですが、たとえば東北、特に青森県とか岩手県、山形県とか、中央に来て長野県あるいは愛知県とか、一つの行政府県の地区内において、たとえば一つの市の行政区域の中に、同業者が二十軒あるとか、はなはだしいのは三十軒もあるわけです。五俵扱っても集荷業者ということになるわけだから、そういうことになると思いますが、同一市町村の中に同業者が二十戸あるいは三十戸もあるというようなことになると、調整販売計画に参加するということの系統化とか組織化はなかなか困難な事情があると思う。まず主産地を中心にした市町村段階においてはどうやるかとか、あるいは都道府県段階はどうするかとか、最終は全雑連ということになるが、そういう機構上の問題については事前に検討されておると思いますが、その点はどうお考えですか。
  150. 石井磐根

    ○石井参考人 最初、この前の通常国会法律案のときに、私どもの方といたしましては、先生の御指摘のようなことがありますので、あの場合はクーポンでございましたが、農家からクーポンを集めてくるのは個人でよろしいが、これは組合の仕事の代行という形で個人でやってもよろしいということで、あの場合の登録取り扱い業者としては、個人でなしに町村単位の組合にしてくれ、できれば町村単位よりももう少し大きい上の段階の組合にしてほしい、こういうふうにお願いしたわけです。しかし、実際の経済単位といたしまして、北海道のような主産地では町村単位でもよろしゅうございますけれども、内地、特に愛知とか岐阜とか、生産の少ない県にいきますと、市町村単位でも経済ベースとしては合わないのじゃないかと思いまして、できればそういうところは県単位の組合が委託を受けるということにいたしまして、たくさんいます組合員は、今までの取り扱い実績を基準にいたしまして、組合の手数料の中から按分で組合員に経費として払ってやる、こういう格好で、個々にばらばらで農家から買い付けるという方法はとらないという考えであります。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、販売の形態ですけれども、政府原案では、法文ではこれは「売渡し又は売渡しの委託」となっていますが、これは表現が悪いのであって、一般人に理解させるには買い取りとか委託販売とか、そういう表現の方が適切だと思うのです。いやしくも販売調整計画を立ててその計画に基づいて調整保管あるいは販売を統一的にやるということになれば、これは実際上はやはり買取り販売ではそのことはできないということに当然なるわけであります。この点は岩下参考人も強調された点でありますが、全雑連としても、指定団体となって調整計画を立てて、それを業務として行なうということになると、やはり原則は委託販売方式でやって、そうして、できるだけ組合の期待する方向に協力して、そういう善意な販売の努力というものが最終的には生産者の手取り価格を引き上げて、政府の支払ういわゆる不足払い、交付金の額をなるたけ圧縮して、国家的にも生産者立場にもこれが寄与する、そういう結果をとるためには、当然これは委託販売方式が至当であると思いますが、この点についてはどのように考えておりますか。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕
  152. 石井磐根

    ○石井参考人 これは委託販売でなければ絶対にできないということはないとも思われますけれども、それは委託販売でいくのが原則で適当であろうと私も思います。ただ、この際に、特にわれわれの方として強調しておきたいことは、農家は、やはり、先で金がきらんと来るのがいいか、それとも、多少金が少なくてもいいから早くもらう方がいいかという、農家によって希望が違う場合があります。それから、あるいは府県産の大豆のように、盆暮れに金が非常にほしい、こういうような農家の要望に対しては、われわれとしては自分たちの資金の範囲でできるだけそれにこたえていきたい。ですから、委託でありましても、できるだけ内金として相当十分にいける程度に内金は払っていきたい、こうは思いますけれども、内容的には、私の方もやはり原則は委託でやりたいと思います。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は明快になったからいいと思いますけれども、委託の場合は最終的な清算がおくれるということになるし、この場合やはり年間一期の清算ということが一番望ましいわけですが、集荷から清算に至るまでの間は当然指定団体が仮払いあるいはそういう措置を早期にとらなければ生産者に迷惑になるのです。たとえば、全販連の場合には、政府等があっせんして、中金の資金をその力にできるだけ満足に近い額を流すとかいう措置も講ぜられております。全雑連の場合を申すと、それに似たような仮払いのための融資措置というものがやはり並行して措置されなければならぬ、これはわれわれも委託販売を原則にしてやっていく場合には当然であるというふうに考えております。  次にお尋ねしたい点は、法律を見られるとわかりますが、特に、法文の中には、生産者が販売した全量に対して政府がきめた交付金を交付するということにはなっていないわけであります。農林大臣が事前に一定数量というものを定めてしまうわけですね。ですから、実際販売に供される数量というものが農林大臣の定めた一定数量をこえる場合には、大臣のきめた一定数量にこれを局限するというのがこの法律です。全販連としても、全雑連としても、そういうふうに限定された場合に、政府の定めた交付金を生産君全体に正確に支払うことができるかどうか、その点はどう考えるのですか。これは、岩下さんと石井さん、御両人から聞きたいのです。
  154. 石井磐根

    ○石井参考人 御質問の点は、ワクがはみ出た場合だと思いますが、さようですか。——これは、ワクがはみ出ますと、確かに御指摘のようなことになるのじゃないか、こう思います。ですから、先ほど私が意見を申し上げましたときに、必要があればこれは農業団体と協定を結んでやっていこうということを申し上げましたが、こういう場合は、やはりお互いに譲るべきは譲って、できるだけ農林大臣の指定のワクにきちっとはめるように努力をいたしたいと思います。しかし、これについては岩下参考人はあるいは別な御意見があるかとも思いますが、私の方は、この際はできるだけ謙譲の美徳を発揮したい、かように思います。
  155. 岩下豊水

    ○岩下参考人 御指摘の問題は、先ほど申し上げた場合にも触れてあるのですが、今法案に示しておりますような、買い取りをもとにして、それから事前に調整計画の承認を申請してという場合、机上の見込み計画を承認申請を出す、そして、その複数の団体の数量をトータルして、大臣が勘案して数量がきめられた場合、結果としてその数量との食い違いが生じてくる。その場合、御指摘のように、ある団体はそのワク以上に数量があり、あるいはその他の団体はワク一ぱいであったという場合には、今石井参考人の言われる協調するというワクがなく、一方の方が満ぱい、一方だけ飛び出たという場合には、まさに、御指摘の通り、その団体に属する生産者は、按分されますから、交付金の単価が下がったものになる、こういう弊害が生じてくるわけでございます。
  156. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、買取り販売をやれば、これはどうしようもないですね。そこでもう取引が結了しておるのですから、それに対して、はみ出したからあなたにはやるとかやらぬとかいうことはできないと思うのです。ですから、買取り販売は法律的に見ても実行は不可能ということですね。委託販売の場合、たとえば実例を申し上げますと、政府はなるたけ少ない数量に限定する考えの上に立っておるわけです。たとえば数字をあげて十五万トンという一定数量を政府が定めた、その場合に、指定団体が実行した数量というものは二十万トンに達したということになると、そこに五万トンの数量の差というものが出るわけですね。しかも、法律は、たとえば一俵について交付金を五百円ずつ生産者に渡せ、あるいは六百円渡せということは、これは決定されて告示されるわけですね。ところが、五万トン数量が多いから、その五万トン分はもらうことができないものが出るということに当然なるわけですね。あるいは、販売につながった生産者の数量に対して全部平等に均一に分けるということになれば、今度は大臣晦が一俵当たり五百円ときめたのがあるいは四百円ずつしか交付金を渡すことができないということになるわけです。ですから、数量以上はこれを除外して、告示された交付金を渡すようなことに一体やれるかということですね。あるいは示された交付金を相半減額してみんなで分けるようなことが事実上できるかどうか。これは業務を取り扱う者の立場に立って考えなければわからない点なんです。政府や役人がやれと言ったって、実際仕事をやる人にはできないものだと思うのですが、この点についてお考えを述べていただきたい。
  157. 石井磐根

    ○石井参考人 これは御指摘の通りだと私思います。ですから、そういうことのないように、あらかじめこれは協定していくよりほかに方法はないんじゃないかというふうに私は申し上げたわけでございますけれども、これが協定ができない場合どうするかということになりますと、これはやはりお互いに分けた範囲でもってプールして清算するという以外に方法がないと思います。そうしますと、御指摘のように、買い取りでは、あとで不足分は買い取った人が自腹を切るという結果になってくる。ですから、これは、そういうことのないようにするためには委託でなければいけませんけれども、同時に、そういうことがあると、これは農家に対して非常に期待を裏切ることになりますから、できれば、あとで予算措置を講じて、これはわれわれだけでなしに農業協同組合も同様ですけれども、農家期待を裏切るということのないようにしていただきたいと思います。
  158. 岩下豊水

    ○岩下参考人 お話しの通り、数量がはみ出た場合の措置は、実際実務の面でどの農家の分を除外するかという問題は、これはもうほとんど不可能になって参りまして、結局、最後は按分をするということになれば単価が薄くなってしまう、こういう結果が出て参りますので、この点は非常に不合理だと考えております。
  159. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、渡辺さんと鈴木さんにお尋ねしますが、特に価格問題について、法律の原案では、価格算定の方式は非常にあいまいに幾らでも安くできるようにうたってあるわけです。これは皆さんが御指摘の通りなんですが、それでは、具体的に農家が安心して生産拡大に努力できる算定方式をどうやったらいいかということが問題だと思う。それで、今までの実例をあげると、食管法では、米については食管法第三条で明らかにしております。あるいは麦については第四条の二の二項の規定でこれは述べておるわけです。ですから、この際政府のやり方には、これは法律を抽象的にしたのでは安心できないことはもちろんだからして、できるだけ詳しく、政府がごまかせないような価格算定の方式を明細にうたっておく必要があるとわれわれは考えておるわけです。ですから、その場合、たとえば食管法の第三条二項による米の規定によるか、あるいは麦の規定によってきめるか、そういう点について渡辺さんと鈴木さんから具体的にお伺いしておきたい。
  160. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 私たちが基準価格として期待をいたしますのは、従来の大豆、なたねでも、農安法を一つのよりどころとして参りました。物質統計の三十一年から三十三年までの三年を基準年として、その後のやはりパリティ指数を乗じて得た額というものを明確に規定していただきたいということであります。三十四年をなぜ捨てたかということは、三十四年はすでにAA制の影響によって非常に値下がりをし出した年でありますのでこういう影響を受けない年次として三十一年から三十三年の物賃統計、そういうものの平均価格、それにパリティの指数を乗じて得た額を基準価格として明確に規定していただきたいということであります。
  161. 鈴木善一

    鈴木参考人 先ほど私申し上げた意見は、今渡辺参考人が申し上げたと同様なことを申し上げてあります。麦価算定方式をとるということ、しかも、その場合は、基準年次は三十一、三十二、三十三年を一応とっていただきたい、それに対してその後の農業パリティを乗じて基準価格を設定いたしたい、このように先ほど意見を開陳したわけでありますが、渡辺参考人と同様な意見でございます。
  162. 芳賀貢

    芳賀委員 大体要点をお尋ねしたのですが、最後に、この法律にはございませんが非常に大事な点を一点お尋ねして終わりたいと思いますが、交付金の対象になる現物の数量の確認措置をどの段階でやるかということは、実際に実務を行なう者の立場に立った場合には重大な責任のある点だと思うわけです。法律では何もその点はうたってない。しかも、現在の取引状態を見ると、大豆等についても無検査品が大体全体の五〇%もあるということになりますと、確認措置というものはなかなかとれないわけです。ですから、第一番は、やはり生産者による集荷登録ですね。そういう措置はやはり体制としてどうしても必要であると思うし、その次には、たとえば農産物検査法の規定に基づく生産検査を行なう、あるいは都道府県の条例に基づく生産検査を行なうということで、検査を通じて第一の現物確認を行なう。第二段階は、その検査を受けて現物をどの場所で保管、認定するか、これも非常に大事な点であります。そういう場合には、当然、政府が政令によって指定する場所、たとえば指定された農業倉庫などに入庫しなければならぬとか、少なくともその程度措置は明確にしておかないと、実際仕事をやる皆さんが迷惑を受ける場合も出てくると思いますので、その点について、大事な点でありますので、あらためてお二人から聞かしておいてもらいたいと思う。
  163. 岩下豊水

    ○岩下参考人 お尋ねの数量確認というのが一番大事なことでありまして、さらに、これは麦と同じような二重価格の性格を持って市場に流通するという観点から、特に還流の防止、それから耳の生産者の販売品であるという数量の確認をするということが、一番スタートにおいて大事な点だと思います。この点については先ほど私も申し上げたのでありますが、今先生からも御意見がございますように、取り扱い業者を農家が選択をして予約登録を一定の期間に行なって、その数量を検査して確認し、一定の場所に入庫するということで確認し、そして、販売は、先ほど申し上げましたように、販売方法といいましても、今三十五年産大豆及び三十六年滝なたねにつきまして私どもがこの行政措置に基づく交付金の対象になる大豆、なたねを取り扱っております場合の、販売方法は、大部分は競争入札制度によって競売をしておるわけでございますので、これは集荷したその人が販売をしなければならないという特定の関係を結ぶ必要はないと考えられますので、一定の集荷場所に確認された数量が入ったものを、一つの実行機関がこの販売の衝に当たって還流及び生産者以外のものの混入することのないようた措置を講じていくのが、実施にあたって一番重要な点であろうと思うわけでございます。
  164. 石井磐根

    ○石井参考人 この数量の確認の点でございますが、私の方といたしましては、先生のおっしゃるように、検査と、それから政府のきめた倉庫の証明書、この両方でやるわけで、私の方はけっこうだと思います。ただし、これは、北海道は問題ございませんけれども、内地の府県は、全部の大豆——たたねは大体大丈夫だと思いますが、大豆について全部検査しろということになりますと、検査員の数でありますとか、あるいは能率とか、そういう点から言って、実際問題としましてやり得ないところがありはしないか。そういう点は、検査という問題は何か便法を役所で講じていただかないと無理だと思います。私の方はそれでけっこうです。
  165. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 永井勝次郎君。
  166. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は二、三の問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのです。  第一に石井さんにお尋ねしたいのですが、この法案でいう調整販売計画というような事柄と、あなたの団体の営利的な事業の性格とは競合するものではないか、だいぶ矛盾が起こる問題ではないか、こういうふうに考えるわけです。この調整販売計画というような公共性を持った、公益性のある行き方と、営利を追求するやり方と、企業の中でどういうふうに調整するか。これは、うまくやる人もあるだろうが、そういう仕事自体の中に矛盾するものを持っておる、こういうふうに考えるわけですが、これはどうでしょうか。
  167. 石井磐根

    ○石井参考人 これは、私はそういう点はないと思います。というのは、大豆、なたねを農家から買っていた取り扱い業者というのは、以前には、確かに、御指摘のように、そういうふうな農家の繁栄をはかるということよりも、自分の利益の追求だけに専念したというような方々も相当ございましたけれども、最近においては、やはり、近代意識と申しますか、自分たちの職務というものに対しての自責が非常に出て参りまして、特に北海道において、農業協同組合といろいろな点で競合してきた結果、組合員自体に非常な自党が出てきたわけでございまして、これがみんなで協同組合を作ったわけでございますから、協同組合というものは、上に農業がつくか、あるいはほかの業という字がつくにいたしましても、そのねらっていますところの精神においては変わりはないわけでありますから、そういうふうな利益追求の権化のような考え方で動くということは絶対にないと思います。
  168. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は、農産物であれ何であれ、ことにこの農産物関係においては、生産者価格市場価格とを比較する場合、いろんなもののしわ寄せが生産者に来て、生産者の手放しは安くなる、それから消費者のところには高く、中間だけが、消費者の犠牲と生産者の犠牲で中間マージンがひどく収奪されておる、こういう形態が今いろいろな形であるわけです。でありますから、野菜の場合をとってみてもいろいろなことがあるわけで、やはり、メカニズムとしては、流通機構の合理化、不合理な面をチェックしていくという方向が原則としてずっと出されなければならぬ、こう私は思います。  そういたしますと、大豆の問題にいたしましても、少なくとも現実の目先の問題をどう扱うかということだけではなくて、そういう扱いを通してどういう合理化の方向を進めていくか、少なくも国際価格と競合するという場合には、これは、国の名において、国民の名において、そういう不合理な面をできるだけチェックするということがきびしく追及されなければならぬ、こう思うのであります。そういたしますと、今、あなたの方の団体が、生産者から消費者の中に割り込むと言っては何ですが、そこへ来て、そうして一つの複数の取り扱いにたる。ところが、交付金の交付やその他において非常にむずかしい問題が出て参りましょうし、買い取りとか委託とか、こういう扱いにいたしましても、これは生産者団体が取り扱う場合と違って非常にむずかしくなる。あるいは交付金が確実に生産者に交付されるかどうか、交付されなかった場合の補償の問題もずいぶん出てくるわけでありますが、そういう一連の運営の中で、私は、当面はこの農業団体が手不足で不十分な点があるかもしれませんが、行く行くはこの全穀連が後退するような方向に行くということが合理化の方向ではないか、こう思うのでありますが、これに対して、現実に扱っていく過程における交付金の交付しなかった場合の補償の問題とか、あるいは複数によるところの取り扱い方の問題とか、そういう問題を含めて所見をお伺いいたしたい。
  169. 石井磐根

    ○石井参考人 私どもの方の取り扱い業者の扱いによると、かえって出産者団体のお扱いよりも中間経費がよけいにかかるのではないか、こういう御懸念と、それから、もう一つは、われわれの方の団体が扱った場合には、はたして生産者に対して正確に交付金が交付されるかどうか、こういう点だと思います。  第一の、われわれ取り扱い業者が中間経費を非常によけいとるかどうかという点でありますが、これは、われわれの方が農家から買いまして、そうして消費者に渡しますところの中間経費と、それから、農業協同組合が現在おやりになっておりますところの中間経費を比較いたしますと、大豆についてはわれわれの方が多少低いのではないかと思っております。ただ、その際に、長井先生にあるいは誤解があるといけませんから申し上げておきますが、これは大豆、なたねの問題でありまして、特に小豆、手亡のような取引所で上場されております品目につきましては、これは御指摘のように生産地の価格と消費地の価格との間に非常な差異が現在あります。しかし、これはわれわれの方の取り扱い業者がその間で利益を得たのではなくて、これは取引所の別の原因でもってそういう現象が出てきたのでありまして、われわれの方としてはこれは全然関係のないことでございます。その点は一つ誤解のないように御了承願いたいと思います。それで、大豆、なたねにつきましては、そんな中間経費はわれわれの方はかかっておらぬと思います。  それから、もう一つ、はたしてわれわれの機関を通じた場合に農家に正確に金が行くだろうかという御懸念でありますが、この点については、われわは決して心配はいたしておりません。現在農業協同組合とわれわれの方とは同一歩調をとってやっていくのでありますから、その間でそういうふうなおかしなケースというものは当然淘汰されるわけでありますし、同時にまた、農家がそういうふうな不徳な取り扱い業者に対して委託をはたしてするかどうか。これが買い取りとかあるいはプレミアムでもつければ別でありますが、委託ということになってきた場合に、そういうふうな人を信用するかどうかということでおのずから規制されるわけでありますから、御懸念は私はないと思います。
  170. 永井勝次郎

    ○永井委員 もし事故が起こった場合の交付金交付に対しての補償についてはどういう建前ですか。
  171. 石井磐根

    ○石井参考人 事故というのは、不可抗力の事故であれば別でございますが、あるいは組合の当然の責めに帰する事故で農家に迷惑を及ぼした場合には、われわれの方も、これは農業協同組合も同様でございますが、組合の責任において農家に補償をするなり、あるいはその責任を果たす、かように考えております。
  172. 永井勝次郎

    ○永井委員 岩下さんにお尋ねいたしますが、この法律では非常に幅があって解釈が広い。具体的な取引きについての取り扱いというのは、もっともっと実際の面ではっきりさせなければならぬ点があるだろうと思うのでありますが、今のこれを運用していくという場合において、価格も、標準価格基準価格、あるいは素俵取引、こういうようなことが少なくとも安心してやられるようなところまで問題の話し合いが煮詰まっているのかどうか。さらにそういう点についてはっきりさせなければ、これだけの法律では安心ができないという状況にあるのか。この法案の運用にあたっての取り扱いの実際面において不安であるという点を明確にしていただきたい。
  173. 岩下豊水

    ○岩下参考人 ただいま永井先生の御質問ですが、この前にも申し上げてございますが、現在の法案そのままでは、実際運用面に非常に幅があり、政令の内容等をもっと具体的に明示していただかないことには、どこへ行くのか行き先きがちょっと明確につかめないという不安を多分に持っておりまして、先ほど来各条各項にわたりまして問題のおもな点を申し上げたわけでございますが、一番問題は、先ほども申し上げましたように、年間計画に乗らないで雨だれ式に物が出てくる。それが、歩どまりというか、行きついたところが結果であったということで、あらかじめ計画が立てられない。まさに机上計画ということからスタートしていく場合に、非常に実際と狂って参りまして、真の調整販売という効果が生まれて参らない。ことに、複数の団体、——先回も申し上げましたように、団体の単位というものの考え方、区域、分量、そういうものによって真に調整販売の効果の現われる規模の団体が対象の団体にならないと、一地方、一区域の団体がそれぞれの立場における計画を立てられた場合には、全体の計画の調和が乱れて、ねらいとするところをくずしてしまう、こういう危険がございますし、先ほど申し上げたように、真の生産者の物がつかめないで還流するという危険も多分に心配されるわけで、そういう点を、がっちりと、スタートから最終までの行方と、それに伴う代金及び交付金というものが真の生産者の手元に確実に渡る、こういう仕組みがもっと明確に規定される必要があろうというふうに考えておるわけであります。
  174. 永井勝次郎

    ○永井委員 渡辺さんと鈴木さんにお尋ねしたいと思います。  この法律は、貿易自由化による生産農家の犠牲を少なくして、暫定的な措置として、少くも堤防としてそれを阻止する、そして次の段階では国産大豆生産を発展させる、こういう積極的な意図が流れているのではなくて、貿易自由化によって打撃を受ける、だから、言いわけのように暫定措置を作って、そして、一定の時期が過ぎたら、もうこれは時期が過ぎたのだからと野放しにして、その犠牲はほおかぶりしよう、こういう消極的なもので、言いわけのように時間的に糊塗しようという、こういう意図が底流している、こういうふうに思うわけであります。そういう立場からいきますと、この暫定期間が過ぎたら非常に危険だということと、それから、実際の取引の面において、こういうものであればもう具体的にいじめつけられる、こういう心配がある。そして、価格にしても、すでに、三十五年産については三千二百円が保障されたのが、三十六年産については、今のところ三千二十円で、諸物価が上がっているときに逆に一俵について百八十円から切り下げられている、こういう現実がある。ですから、国産大豆生産を強化し発展させる丸めにはどういうことが必要か、この法案の中にどういうことを織り込むことが必要か。そして、今、言いわけのように白芽の大豆を試験的にやって、これを強化していくのだということを言っておりますが、この白芽の大豆生産についての見通しをどういうふうにお考えになっているか。それから、現在国滝大豆は四十トン内外だろうと思うが、この制度の中において現状のままでいくたらば、これが増産の方向をたどるか城西の方向をたどるか、その見通しについてお尋ねしたい。
  175. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 基本的には、私たちは、何と申しましても、国内における大豆なりなたねの需給状況から見て、その過半が輸入に依存しているという実態を見きわめますと、この大豆なりなたねが日本の畑作には立地的に不向きであるというのならばいたし方がないのでありますが、これはやはり将来非常に有望視すべき重点的な作物の一つとしてあげることができると思います。従いまして、その七割なり八割を国内需要の不足分として輸入に仰いでおるという事態、これを少なくともやはり生産に適する限りは国内で生産すべきであることは当然の建前でなければならぬと思います。従いまして、そういう一つの国内自給度の向上をはかるということを前提としますならば、やはり、この貿易自由化のあらしにさらされている大豆なりなたねの価格というものをまず生産費に見合うようなものを保障してもらうとともに、やはり、生産についていろいろな品種の統一あるいはその規格の統一によって市場価値を高めるという問題が大切である。そういう点が、わが国の農業におきましては、水稲なりあるいは養蚕というように長い年月を経、資金を投下された技術の革新というものが畑作についてはきわめて乏しい。大豆についてもそういうことが言えるわけでありますので、こういう非常に大きな国内の需要に対して輸入に依存しておるようなものを脚光を浴びせる意味におきましても、一つの技術というものをもっと積極的に政府施策の中に据え置いていただく必要があろうかと思います。また、それらを受けて、われわれ自主的な農業協同組合というものは、その機能を発揮して、みずからの努力と相待って、この大豆、なたねを国内自給によって解決する、また、その間における出産性の向上によって国際競争力を保持し得るまで、やはり大豆、なたねにおける貿易自由化のあらしを国の施策で防衛していただきたいというのが私の念願であります。
  176. 鈴木善一

    鈴木参考人 先ほど、私、意見開陳の際にそのことを申し上げたわけでありますが、法律の中には当分というようなことが書いてあります。しかしながら、その導火線は確かに貿易自由化が導火線になりましたが、農業基本法でも言われておるように、日本の農業なり北海道農業を発展させるそのために、——北海道は特に畑作においては豆が気候的にも適しておるわけであります。そういう面から、この大豆につきましては、私どもは一昨年からいわゆる増産運動を提唱いたしまして、技術の講習なり、あるいは地域を設定して共励会やら、あらゆる面を通じて行なって、多少なりとも成果をあげておるわけであります。しかしながら、この成果をあげるには相出の期間を要するのじゃなかろうか。そういうような意味から、あの基本方針については、大剛並びになたねの増産確保、これは耕作者の経済が確立するまでやっていただくようにしなければならない、こういうことを申し上げたわけであります。  さらにまた、白芽の問題は、昨年非常に問題になりましたが、最近は何か火が消えたように何ら問題がありません。最近のように加工技術が進んで参りますと、そういうような白芽、黒芽の問題は、私は、問題でないのではなかろうか、昨年の価格調整の際にいやがらせのように問題が提起されたのではなかろうかと思うわけであります。しかしながら、国民の食化活なり、国民の必要な用途に合致するような大豆の耕作条件を私どもは積極的に進めておるような次第であります。  以上で終わります。
  177. 永井勝次郎

    ○永井委員 私のお尋ねしたのに答弁漏れがあるわけですが、現状施策の上に立てば、現在四十万トン内外の国産大豆があるわけですが、これが増産の方向に向いていくだろうか、減産の方向をたどるだろうか、こういう見通しにつきまして、岩下さんからも御答弁願いたいと思いますが、鈴木さんからも……。
  178. 岩下豊水

    ○岩下参考人 お尋ねの増産の方向かどうかという問題は、大豆につきましては、今までの経過は、横ばいまたはやや面積が減少するという傾向をたどっておりますし、なたねにつきましては、数年前には二十六万町歩の作付がありましたものが、年々減って参りまして、現在では二十万町歩を割っておる、こういう状況になっております。このことは、価格が非常に上がり下がりが激しい、ことに、なたねのごときは、前年安かった翌年は面積が非常に減少し生産が減退しておる、こういうことが非常に顕著に統計上現われております。このことは、傾向といたしましては大豆においても同様のことが言えるわけですが、大豆の場合は、ローテーションの関係から、価格が多少不利であっても作付をしなければならないというような関係も織りまぜて、その傾向は顕著には現われておりませんが、一応そういう傾向にあるということは言えるわけでございまして、そういう点から、先ほど来各参考人から御意見が出ておりますが、今まで政府として生産の合理化の施策はほとんど講じていなかったと言って差しつかえない程度でございますが、幸いにして、そういうことであったが、今後この自由化を機にして生産の合理化をはかるならば、技術の進歩は相当水準も高くなっておるので、これを農家に普及し徹底をはかるということによって、相当の効果をあげることは期待できるわけでございますので、先ほど来お話が出ておりますように、相当大量の需要があるもので海外にこれを依存しておるということでございまして、大豆の作付の増加及びなたねの栽培面積の確保と生産の合理化による増収をはかって自給度を高めていくということは、申し上げるまでもなく国の施策として積極果敢に取り入れていただきたいわけでございますが、申し上げるまでもなく、農業生産の合理化はなかなか一朝一夕にして達成し得るものではございませんので、この法案にいわれております政府の定める基準価格というものも、ことしから来年にかけて相当がくりがくりと価格が下がっていくというようなことでありますれば、とうてい生産の合理化は追いつかないので、面積の減退と収穫量の減少ということが出て参りますので、この点は、農作物の特性から、相当長期間にわたって保護価格をとっていただいて、そう一年々々下げる方にいじくることのないように御配慮を特にお願いを申し上げないと確保できない、こういうように考えるわけであります。
  179. 鈴木善一

    鈴木参考人 現在までのような政府生産政策でありましては、私は、大した狂いがないのではなかろうかと思います。しかしながら、積極的な土産改善対策を講じたならば、伸びるだろうと予想をいたします。しかしながらこれはほんとうにやるかやらぬかの問題だと思います。現に私ども多少ずつやっておりますが、多少ずつ伸びております。でありますが、今まで、豆類のような試験研究でも、いろいろな技術面でも、ほんとうにやりっぱなしでありますので、このような状態ならば伸びていきません。でありますので、私どもは数年前から早急に価格対策の問題と生産改善対策の問題を強く政府要請をしておるような次第であります。
  180. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 川俣清音
  181. 川俣清音

    川俣委員 参考人の方に時間をさいていだだくことは非常に恐縮に存じますが、もう少しごしんぼうを願えるかどうか、それを先に聞いておきたい。がまんしていただけますか。——それでは、できるだけ簡潔に申し上げます。  大豆、なたねは麦類にかわる畑地作物として大いに助成をしなければならないと言われております。私が言うのではない。世間で言われておる。また、転換作物として取り上げられておるわけです。大豆、なたねのそういう考え方からすれば、大豆、なたね等の振興助成法というものが考えられなければならないと思います。今度の交付金暫定措置法なんということでごまかされておったのでは、転換作物として発展できないと私は思うのですが、参考人方々はどういうお考えでございますか、お尋ねをいたしたい、こう思うのです。  特に、大豆は国内の柄物性蛋白質の大宗でございまして、なたねはまた国内の油脂資源の基礎でございます。こうした点から、将来の食改善のために努力をしなければならないとだいぶ大きい戸で騒がれておるのにかかわらず、出されたものは交付金暫定措置法というようなことで逃げるということについて、おそらく不満であろうと私は察しますが、不満でございませんかどうか、この点つけ加えて御答弁願いたいと思います。
  182. 渡辺勘吉

    渡辺参考人 繰り返して申し上げることをはばかりたいのでありますが、法律の名称は別といたしまして、先ほどからるる申し上げてお聞き取りいただいていることですでに尽きていると思います。結局、私たちは、やはり国内の非常に大きな需要に対して生産が不足をしている。こういう事態が、日本の農業でその生産が不適格な作物であればともかく、私も岩手の産でありますが、岩手でもやはり畑作では大豆作がかなり重要な位置を占めております。そうして、年々自主的に品種改良を試験場技術等を導入しながらやっておりますが、これは民間だけの力ではどうにもならない。やはり、国の大きな施策中心に据え置いて、そうして国内の自給度を高めるということを前提として、総合的な施薬の一環として取り上げていただきたいということをこの際繰り返して申し上げておきます。
  183. 岩下豊水

    ○岩下参考人 この点は、先ほど来申し上げております通り、増産は絶対必要である。そのためには、やはり技術の普及によって生産の合理化をして反収を苛める、こういうことがまずわれわれとして考えなければならない第一点でございます。現に、試験場技術においては、現在全国平均の大豆反収一石わずか余という非常に低い反収でございますが、これを現在の試験場技術をもってしても全国平均二石に倍に上げるということはさして困難ではない、こういうことを技術者が言われておることからしましても、力を施せば当然期待が持てる作物であり、特に、過剰ぎみになっておりますカンショ地帯、あるいは陸稲地帯、こういう地帯に対して大豆の転換をはかっていくということも当然諸先生方にお考えをいただかなければならない。そのためには、品種の改善育成ということもあわせて相当試験研究費をつぎ込んでやっていただかなければなりませんが、御承知のように、これらの品種育成をやるには、おおよそ固定するまでに十年間を要するというほどの長期の日子を要するわけでございますので、その点、暫定的措置というような形でなくて、相当長期にわたっての保護育成と合理化施策の積極的な推進に御配慮をあずかりたいというふうに念願しておるわけでございます。
  184. 石井磐根

    ○石井参考人 私の考え方は、最初に申し上げました通りに、この措置は片手落ちであって、これに並行するかあるいは先行して大豆、なたねの生産性の向上をはからなければいけないということでございますから、御趣旨において同意見でございます。
  185. 鈴木善一

    鈴木参考人 私の方からお答えをする前に、質問がきわめて簡単でありますので、どういう意味か、私のとった意味を聞いて、それが了解されれば私の見解を申し上げます。といいますのは、大豆、なたねの生産振興法の方がいいんじゃないか、こういうような簡単な言葉でありますが、その内容は、もう少し砕いて申し上げますと、私はこういうようにとっているわけであります。生産振興の問題と流通の問題、大きな面では価格等も含めた流通の問題、こういうような内容の御質問でございますか。   〔田口(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 川俣清音

    川俣委員 その通り
  187. 鈴木善一

    鈴木参考人 そういうようなお考えであれば、そういうようにとりまして答弁をいたします。  実は、国内の農畜産物の中で、国内に需要のある大豆あるいはなたね等は、百万トン以上海外から輸入しなければならぬ、こういう内容のものでありますから、今日の農業ではまず大きな成長部門の作物ではなかろうかと思うのであります。さらに、畜産等については、現在非常に需要が伸びており、将来も伸びるだろうと予測をしているようでありますが、大豆、なたねは現実に非常に不足をしているのであります。そういう意味から、私は、今川俣先生の言われたような、生産流通の面を含めた総合的な生産振興法に賛成でございます。
  188. 川俣清音

    川俣委員 いずれも御答弁によって了解いたします。私は、こんな消極的な防衛だけではあなた方の期待するようなものができないであろう、こういうことを聞きたかったので、これは防衛手段ではありますけれども、消極的防衛です。しかも、防衛といっても、ずいぶん抜けた法律です。一部修正すれば目的が達成されるであろうような御発言はなかったと私は思うのです。それで念を押しただけです。  そこで、流通上の価格の安定も必要でありましょうが、大豆は商品取引の上場品目になっております。商品取引というものはどういう作用をするかというと、これは商品化率を高めるものでありますがゆえに、生産が多くなった場合には流通の数量を引き下げていき、品物が不足な場合には流通商を高めていくという作用をなすのが商品取引の大きな眼目になっている。従って、商品取引になりますると、これは生産費であるとかあるいは農民の将来の補償をするという本質的なものではない。なぜかならば、一年の間に非常に高低があるのが商品取引の常態です。動揺がなければ、高低がなければ商品取引としては価値がない。すなわち、逆に言えば、価格が非常に不安定である、高低があるということが、商品取引の商品たる価値があるわけだ。このような価格の不安定を来たすような商品取引に上場されておるということについて、あまり御発言がなかった。価格の安定が必要だということはるる述べられましたけれども、不安定の要素になっておりまする商品、取引については何ら発言がなかったのでございますが、いかようにお考えになっておりますか。私どもが心配いたしまするのは、役所なんというものは、経済のことについて人を説教することは上手ですけれども、市場操作なんというものについては、これは負けるのが従来の例です。池田さんがおれにまかしておけと言った経済も、経済のためには振り回されている格好です。従って、市場の操作には、これは負けるのが普通なんだ。そういうものを土台にして価格を形成させるということは問題である。あるいは、今なおこれは成長部門として育成しなければならぬということになりまするならば、これは上場からおろしまして、やはり、さっきお話しになりましたような、品種の改良のために力を注ぐ、あるいは生産性を向上させるための積極的な努力を払うとか、生産に対してもっと努力を払うべきである、できた品物の価格に対して交付金をやるということよりも、もっと進んだ対策をとらなければならないではないかと私は考えますがゆえに、そういう適当な取り扱いを受けていないんではないかという点について、御見解を承りたいと思うのです。
  189. 岩下豊水

    ○岩下参考人 お尋ねの点でございますが、この法案で言っております調整販売をして市場価格を幾らかでも維持向上させるという精神、そういう考え方は私ども一応了としておるわけでございますが、基準価格というものも、作り方によって、生産が維持向上するかどうかという境を握ることになるわけでございまして、この基準価格設定方式というものが、先ほど各参考人から述べられましたように、物材その他上がっていく傾向にあります今日、過去の年次の農家の販売した価格をそのまま据え置いていくというような価格の設定の仕方では、年産の維持もおぼつかないということになりますので、物価の値上がりに対応し所得の均衡が維持できますような価格の設定をまずこの法律の中で、——勘案するとかしんしゃくするとかいうような非常に幅のある言い方でなくて、もう少し固定的な算出方式法文上で明確にしていただくということになりますと、農家も安心して作付に当たれる、こういうことになろうと思いますので、この点十分御審議の上御修正をお願いしたい、こういうふうに思います。
  190. 川俣清音

    川俣委員 もう少しちょっと時間をかして下さい。  私は、この改正法によって市場の人々はどう考えるであろうかということでいろいろ問い合わせいたしましたところが、これはかつて通常国会のおりでございますが、これによって非常にうまみが出て取引数量がふえるという見方の人と、相当値幅がなくなってうまみがないという見方の人とが市場にあったわけでございます。ある程度価格が安定して相当これはうまみがあるということは、投機の対象になり得るという考え方が出ておるわけです。そういたしまするというと、価格の安定ということと、投機の対象になるということとは逆なことでございます。投機の対象になるということは価格の変動を見越してのものでございます。価格の安定というのは、できるだけ動揺の少ない、高低の少ないことが望ましいということになりましょう。出産者から言えばできるだけ高いところで動かないことを念願しておる。消費者から言えば低いところで動かないことを望むということになりましょう。特に、加工業者は、とうふにいたしましても、みそにいたしましても、とうふなどは割合に早く加工される、商品化されるものでございますけれども、みそ、しょうゆになりまするというと、相当の年月を要す。年月とは言わないにしても期間を要するものでございます。価格の不安定はこれらの加工業者を不安定ならしめて、消費者にそのはね返りが来るのであります。農林省が、みそ、しょうゆについては絶対上げないということを宣言いたしましたけれども、ほかのことは割合にうまくいったけれども、これだけはうまくいかないのはなぜか。こういう点について、あなた方日夜いろいろ苦労されておることはもうお察し申し上げます。あなた方を責める気は一つもないのですけれども、政府にだまされて、あとでへそをかむようなことがあったのでは印しわけないのじゃないかと私は思いまするので、声を大にして実はお考えを承って、責任も一つ明らかにしておいていただきたい、こういうことなんです。ですから、これはどうも商品市場から取り除くということが好ましいのではないかと思うのですが、もう一度一つ答えていただきたい。
  191. 岩下豊水

    ○岩下参考人 今、川俣先生のおっしゃるような市場価格の問題は、基準価格以下で形成されるという点については、これは大体突発事故がない限りにおいて基準価格以上の市場価格はない、こういうふうに考えておりますので、基準価格以下における上がり下がりということは、対消費者との関連、それから、もう一つは対政府との関係、こういう二つの作用に反映して参るということになると思うのですが、従って、私どもとしましては、基準価格の水準線がどこに形成されるかというのが一にかかって生産者農民の関心の的でございまして、市場の価格は上がり下がりがあまり激しくないようにして、年間、出盛り期と端境期との差がそれほどなくなるような需要に見合う供給をはかっていきさえすれば、価格の上がり下がりはそれほど大きな幅でなくて実現し得る。それで、もし大きくフラクチュエイトするということでありますれば、これは海外の大豆の市況に左右される、こういうことになろうと思いますので、この点は、できるだけ、高いにしろ安いにしろ、なるべく上がり下がりの幅を少なくして、需要家が安心して使用できる、こういうことを実現し得れば非常にけっこうだ。そのことは政府自身の負担もまた軽くなることでありますわけですが、市場価格が安くなるがゆえに基準価格を引き下げるということがあっては、生産者が非常に不安になりますので、この点は十分に御配慮を願いたいと思う次第でございます。
  192. 川俣清音

    川俣委員 もう一点だけで終わりたいと思います。  それは、農安法に基づく価格の算定でございますけれども、従来なぜこれを用いないかというと、実情に合わないからと称しまして実際はこれを使わない傾きがございます。今問題になりました基準価格にいたしましても、市場の形成に支配されるところ非常に大きいというところから私は申し上げたのでありますが、この考え方によりますと、農産物価格安定法の算定方式、これを今までは使わないでおって、今度はこれは使うというのですが、そこなんですね。都合が悪いときは使わない。今度は使うというのですけれども、またこれは現状に合わないということで使わないことになるかもしれない。そうすると、基準価格というものは非常に不安なものであるというふうに思うわけです。だから、その価格に対して交付金を払うという考え方でなく、生産助成といいますか、生産を刺激するようないわゆる助成策をとって、その結果生産費が安くなったんだから価格についてはそれほど苦労しなくてもいいという助成策が先にならなければならぬじゃないか。価格生産助長をするといっても、大豆、なたねの場合はなかなかうまくいかないのじゃないか。作りなれた米であるとか麦であれば、これは価格政策によって生産を助長することは困難ではございませんけれども、大豆、なたねは、先ほど御説明のあったように、技術的にもおくれておりまするし、品種の改良もまたおくれておるのです。生産性を高めていかなければならぬ、技術指導をしていかなければならぬということで生産費の点に全力をあげていくということになりますると、価格の点についてはそれほど心配をしないでもよろしいのじゃないか。今逆に価格生産を助長するということは、大豆、なたねについては適切な方策じゃないのじゃないか。そう考えるというと、この法律案は出直してくるべきだという御意見になるであろうと私は想像する。私が参考人であれば、この法案は出直すべきである、こういうふうになると思うけれども、岩下さんも渡辺さんもずいぶん苦労しておられるから、そう言いたいけれどもここは場所が悪い、こういうことであれば遠慮して聞いてもよろしゅうございますが、ほんとうはそうじゃないのでしょうか。
  193. 岩下豊水

    ○岩下参考人 さいぜんから申し上げますように、生産の合理化に主力をそそいで、国際価格の競争に耐え得るという時期を一日も早く実現するということが私どもの念願であることは申し上げるまでもございませんが、先ほど来申し上げるように、それには相当長期の日子を要するということを覚悟しなければならない。その際に、AAはすでは七月から実施されてしまって、現実に大豆、なたねは下がっておるわけであります。これを保護するという価格政策も当然ないと、生産の合理化施策だけを十年待っておるわけには参らぬ。そういう足もとの切実さがありますので、価格の保護政策もあわせて当面実施してもらわなければ、農民は作付放棄より方法がない、こういうことになってくるわけであります。
  194. 野原正勝

    野原委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位に一言あいさつ申し上げます。本日は御多忙中のところ御出席をいただき、きわめて貴重な御意見を長時間にわたりお述べいただきましたことは、まことにありがたいことでございまして、この際厚くお礼を申し上げます。  この際暫時休憩いたします。    午後八時三十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕