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荒木参考人 これは各項目にわたっていかなければならないわけでありますが、可もなし不可もなしというのもどうかと思うのでありまして、これはやはり、健全な常識で運営すれば、今度の
改正でも、あるいはプラスの面もありましょうし、また、マイナスになる点は防げるわけでありますが、健全なる常識による運営という保証がなかなかない
ようでございますので、私
どもとしては、結局この程度の
改正なら可もなし不可もなし程度でおさまるほかはないのでございます。
項目別に申しますと、第一の、
市場に関する
開設並びに
整備についての計画を農林大臣が定める、これは当初の草案では定めなくちゃならぬというふうに伝えられておりましたから、これは大へんなことだと思ったのでありますが、定めることができるというだけならば、予算とそれだけの人員と余裕が
農林省のお役所にあれば、やろうと思えばいつでもできるし、できなければやらぬだけのことでありまして、別に、業界の方にどう、
開設者の方にどうということはない。
それから、それを勧告すると申しましても、勧告に応ぜぬ場合にはどうするということも何もありませんし、従って、農林大臣がその計画を定めて、これを告示し、勧告しても、それで何人も権利義務で制限束縛を受けることはないのでありますから、やれたらやってよろしいし、やれぬでも何も差しつかえない、こういうわけであります。
それからまた、農林大臣は、
地方公共団体が自分の負担と
責任において
開設する
市場の計画を調べて、そのいいところを進め、悪いところがありましたならばそれを直して認可をする立場にあるのです。それが、逆に、みずから先に計画を立てて、そうして
開設者の
意見を聞いて計画を定める。むしろそれは逆の
ようなことで、どっちが主であるのか客であるのかも疑わしいという
ような感じもいたします。それらのことを論じなくても、要するに、これは
ただ計画を定めることができるというだけのことである。別に農林大臣がそれに縛られるわけでもなければ、またそれに何人も束縛を受けることがない
ようになっておりますから、これはどちらでもよろしい。
兼業の方は、何で卸
会社が兼業ということをやるかといえば、これは
会社にそれだけの
利益なり余裕があって初めてできることで、本業そのものがあやしいという
ような
会社は、兼業をやれといってもできるものではない。従って、これはそうやかましく言う必要はない。むしろ兼業をやる
ような余裕があり資力があるものの方がいいのでありますから、別段禁止するとか承認するとかいう必要もない
ように思う。ことに、今度の場合、
ただ届け出るというだけで、届け出た結果についてどうということもない
ようでありますから、これもこの程度ならどうでもよろしいという
ように考えるわけであります。
それから、第三の、卸業に対する勧告、これが
農林省の方でも一番ねらいのあるところだろうと思いますが、これは、やはり、
中央市場の建前から申して、
公共団体が
中央市場を
開設をしてみずから卸
業務をやるというまでにいけば別でありますが、それをみずからやらないで業者を収容し許可をして
営業をやらせる。その
営業はやはり普通の物品の売買
取引であります。決して統制による配給とか公定
価格に基づく
価格公定制というものではありませんから、これはやはりなるべくは自由に手腕を発揮させた方がよろしい。しかし、そう自由放任して何でも勝手次第というわけにはいきませんから、必要限度、つまり、公益を保護する上において、また卸
業務の権限を確保する上において必要なだけの勧告なり
指導をすることは必要でありますが、あまり行き過ぎたことはしない方がむしろよろしいのではないか。たとえば、卸
業務の会計並びに
業務について
改善の命令をする
ようなこともありますが、これは、やはり、現在でも、公共の
利益を害する、あるいは法令に違反するという
ようなことは、当然にこれは勧告をして
指導するわけでありますから、それ以上に積極的に、こうした方が
利益である、こうした方がためになるだろうという
ようなことを命令をもってやる、これも全然間違いのない非常にいいことならばやってもいいかもしれませんが、万一そのためにかえって業態が悪くでもなった場合に、だれが
責任をとるか。これは、おそらく、こういう規定があっても、農林大臣もそう軽々しくそういう命令を出されることもあるまいと思いますから、場合によっては命令をするという
一つの伝家の宝刀みたいな意味で念のためにこういう規定があっても、健全な常識で
指導される場合には差しつかえないのではないかという意味で、私
ども必ずしも絶対反対せぬでもいいと思うわけであります。
それから、役員の解任命令については、株式
会社の役員を官庁が解任の命令をするなんということはよほど珍しい例でありまして、こういうことまでしなければならぬ必要がはたしてあるか。これは、やはり、法令に違反するとか、あるいは公益を害する行為をやってその
会社がとがめられる、あるいは
業務停止をくうとか取り消しを受けるとかいう
ようなことになれば、当然そのことをやった役員としては
会社に対しても
責任があるし、世間に対しても
責任があって、これはもう監督官庁の命令を待つまでもなく辞職とかあるいは退職、株主総会における何かの処分というものがありましょう。ですから、こういうことも必ずしも必要ではないと思いますが、しかしながら、また、多数の場合においては、明らかに
責任を感ぜずに居すわるとかいう
ようなこともありますから、これも、
一つの、そうしなければこうしてやるぞという
ような意味で、そんな規定があることもあるいはいいかもしれぬ。また、これもおそらくは農林大臣がこういう規定をたてにとっていかなる場合もどんどん解任命令を出す
ようなことはありますまい。また、その必要もおそらくありますまい。
ただ、私は、この場合、
会社がそういうとがめを受ける
ような場合に当該役員が
責任を負うて辞職するとか解職されれば、あえて
会社をとがめない、
会社の
業務を停止するとか取り消すとかいうことは非常に重大なことであるから、その役員に
責任を負わせて、
会社の
責任はまた見のがしてやる、あるいは問わないという意味なら、これは
一つの非常にいいやり方かとも思うのでありますが、はたして運用がそういうふうにされるのか、
会社もとがめられた上にその当人もまた退職命令を受けるのか、これは運用のいかんによることでありますが、この点はいろいろ業界でも議論のあるところでありますが、これまたしいて反対することもない、こう思うわけであります。
それから、審議会の点。これはおそらく私
どもの議論をする必要はないところと思います。
それから、順序がちょっと違いますけれ
ども、独禁法除外の規定を
類似市場にも及ぼす、これも当然と言えば当然でありましょう。
中央市場の
卸売人同士の間の合併や譲渡について独禁法の除外的の規定を置くというならば、やはり、本場、他
市場との間の合併も同様にするということは当然でありましょう。
ただ、現在の独禁法除外の規定というのは非常に独特なものでありまして、全然独禁法から適用を除外して、公取委には何らのあいさつもなしにどんどん
農林省の御方針なり業者の同意によって進行するなら、これも独禁法除外の規定が非常に生きてくるわけでありますが、現在の規定は、やはり公取委に協議をするという規定は残してあるわけでありますから、あまり大したいい手でもないと思っております。従って、これはこういうふうに
改正されてもあえて差しつかえはない。
それから、
地方市場の
規制。これは周辺地ということを新たに指定することになっておりますが、これも、やり方はどうでもよろしいのでありますが、
指定地域を広げればそれだけの話。現在ある
指定地域というのは、何も
地域の指定があったからどういう権利を生ずる、どういう義務を生ずるということはないのでありまして、必要に応じてその
指定地域を広げて、
類似市場は
類似市場として
規制していけばいい。あえて隣接し近接した
類似市場なり周辺地
市場という
ようなややこしい区別を設ける必要はない
ように思います。
それから、また、現在の
ような
改正で、
中央市場法の中に、
類似市場という特定の名称を持った
市場、周辺地
市場というまた特定の名前を持った
市場、そういうものを現在の
中央卸売市場の中に織り込むならば、これは
中央市場法ではないのです。もう一般的の
卸売市場法になってしまった
ようなものでありましょう。私
どもはむしろそういう方向に進むのがいいと思いますから、この点は別に反対ではないのであります。
もう
一つ、何か分場のことの規定がありますが、大体今の分場というのは二つの独立の
市場でありまして、
立法当時の当局の説明でも、分場は本場と全く同一のもので、本場に隷属するものではないということをはっきりと説明しておりまするし、また、実際から見ても、今の
実例で言いましても、何も分場、本場という
法律の
改正などは全然関係ないのであります。これは、やはり、原則的に
中央市場は一地区
市場であるべきものですが、大きな都市においては一地区
市場ではどうしても実際上おさまらぬから、結局二つ以上の
市場、
東京で言えば現在は七つの
市場でありますが、
中央市場が
一つの集中統合の
市場とはいっても、やはり、大きな都市には、その集中の度合いから三つとか四つとかあるいは七つに分けなければならぬという事情に基づいて、
中央市場が複数であるわけです。これがなぜ分場、本場という
ようなことになったかということを推量しますと、やはり、
中央卸売市場という名前を特定の
市場の固有名詞の
ように考えております。だから、
東京都
中央卸売市場といえば築地
市場そのものをさすのです。そうすると、神田の
市場とかその他の
市場が同じ名前で
東京都
中央市場では区別も何もつかぬですから、結局そういうものはみた分場という名前になった。ところが、実際は分場でも何でもない。全くの独立した
市場であります。これは、中学でもなんでも、幾つもある場合には、第一中学、第二中学あるいは第三中学というわけで、
中央市場でも、
東京、
大阪の
ような大きな都市には、第一
中央市場あるいは築地、神田の
中央市場があっていいわけで、これを木場、分場というのがむしろおかしいのですから、今度の
改正はその点においてはいいと思います。
ただし、
東京都あたりの
実例で申しますと、問題になるのはその点だけではないので、今日は
東京都には分場のほかに配給所が十幾つあります。この配給所というのが、実際はこれもほとんど独立の
市場みたいな
状況になっておって、これは、規定の上で、
東京都知事が必要に応じて作る、こういうことになっておる。これがむしろ問題でありますから、この点に触れるならば配給所という
ようなものをどうするかという点まで触れなければならぬと考えますが、これは
農林省の方でもしかるべく御考慮になっておることと思います。
以上の
ようなことでありますから、いずれも、今度の
改正は、さきにも申しましたけれ
ども、われわれが最も必要な根本的の、しか本常に
中央市場の既設なり運営について問題になる点にはほとんど触れていないし、たまたま触れても、それはむしろ方向を違った
ようにしているきらいがある。しかし、今申しました
ように、これは十分いろいろな手を経て審議されたものでありましょうから、しいて私
どもが異を立ててこの
法案の通過を阻止する
ような意思は毛頭ございません。このままに通過されても、今申します
ように、運営よろしきを得れば、まあ大したプラスもマイナスもないという
ようなことで、そういう
意見であります。