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飛鳥田委員 たいぶ
長官、苦しそうだけれ
ども、あなただって僕だって、その間の二十人、二十件くらいの
被害者に何とかしてあげたいという気持は同じだから、あなたも苦しいだろうと思うのです。ですが、何か僕は
一つの錯覚があると思う。というのは、
占領軍であるかないかというのは、日本対アメリカの国際的な関係において
占領軍であるかないかということを言えば、九月二日にミズーリ艦上で正式に降伏文書に署名したそのときから、戦闘状態にある軍と
占領軍との区別がはっきりつくのですよ。そうでしょう。それはアメリカ対日本の国際的な関係においてしかりなんです。しかし今僕らが問題にしているのは、これは国内的な日本国民対日本
政府の関係を言っているわけです。だとするならば、国際的な関係の
占領軍であるかないかということをしゃくし定木にこっちに持ってきて、何もほんとうに気の毒な二十人の人をこぼしてしまう必要はないのじゃないか。
現実に八月の十五日に無条件降伏をしますという打電をして、ごめんなさいとあやまったのはだれですか。日本の
政府じゃないですか。それはそれとしてちゃんと効力を発している。そうしてしかも八月十五日に天皇が、もうこれで戦争は終わりだ、こう言って、みんなそこで戦争は終わったものと国民は了解しているわけです。これは
政府と国民との関係です。必ずしも国際法上の関係だとは言えないと思いますが、国民と
政府との間においては、八月の十五日に戦争は終わったのですから、もしまだ終わっていないというのならば、何人かの人は、なにアメリカなんかに負けるものかといって、あるいは九月二日までの間に戦闘を継続したかもしれませんけれ
ども、しかししてはいかぬということで
政府が押えたという事実も、
政府対国民の関係です。ですから、
政府が国民に対して今、占領中の米軍の横暴な、暴虐なことによって
被害をこうむった人に損害を
補償してやろうという立場で、国民対
政府の関係で
考えれば、何も九月二日に筋を引く必要はないのです。何か
法律関係を混同しているのじゃないか、今の御
解釈は。ですから私は、当然二つしか
解釈の
方法はない。
一つは、八月十五日以降——正確ではありませんが、たしか二十日ごろに米軍は日本に上陸してきましたね。それから九月一日までの間に起こったものの占領中の
被害事件も
補償をする、こういう
解釈……(「準じてでもいい」と呼ぶ者あり)あるいは今
石橋君が言うように、それでも
法律家としてのあなた方が苦しければ、準じてという言葉を使われてけっこうです。そういう形で入れる、これが
一つです。それでなければ、第二の
解釈は、九月二日以前は交戦状態であるのだから
補償はできない。しかしもしそれが無辜の人民を米軍が傷つけるがごとき
事態であるとするならば、それは国際法上でも、戦時国際公法でも許されていないことだから、それらの人々は、時効の関係は別として、アメリカに対して請求権をいまだに持っているもの、こういう
解釈をするか、二つに
一つしかないのじゃないでしょうか。ただし後者の
解釈をとった場合には、それらの二十人の人々がアメリカに対して権利行使をすることを日本の
政府は妨げて、たしかこれはアメリカの
法律でも時効にかかっていますよ。その時効にかけてしまった責任をとらなければならない、こういう問題が出てくると思います。二十人くらいのものですから、あなたはうしろを振り向いて大蔵省の人にかっと一喝食らわして、そして準じてとか含めてとかいう
解釈をなすって決して間違いはない。その方面ならお手伝いします、けんかは大好きですから……。ともかく、そういう
意味で、含めて
解釈するでやってもらえないか、こう私は思うのです。ことに僕は横浜に住んでいたものですから、いろいろな事例を知っているのです。率直に言って米軍が一番暴虐をあえてしたのはこの時期です。この人
たちの側から言っても無理ないでしょう。硫黄島から、沖繩から、歴戦の勇士が——勇士かどうか知らないけれ
ども、彼らは勇士と思っているのでしょう。勇士がもう気もすさんで日本へ上陸してきたのですから、そこで相当な行き過ぎがあったことはわかります。僕らだってそうだったと思います。そういう
意味でこの時期が一番ひどいのです。ただ幸いなことに、
件数が二十件しかなかったというのは、日本人がこわがってあまりそばに寄らなかったらしい。女小供は疎開させろなんというので、みんないなかへ女房
子供を送った人がいて、接触面が少なかったから二十件しかなかったわけです。しかしあった二十件というのは、理も非もない、それこそ自動車で突き飛ばしていくというような
事件が多いのですから、それだけに何とかしてあげなければ二十人の人がかわいそうではないか。また家族にしても、やっと戦争が終わってほっとした。これからと思っているところで女房を自動車で突き飛ばされてしまったり、あるいは亭主を自動車でひき殺されてしまったりするようなことは、せっかく戦争が終わってほっとして、これから新しい家を建設していこうとする気分をそこなったという点でも、この時分の
被害というのは心理的にも非常に大きいのです。全国でわずか二十件しかないのですから、二十万円ずつフルに上げたって四百万円じゃないですか。そのくらいなことは当然計算に入れて、含むと、こう有権的にここで
解釈してしまおうじゃないですか。どうですか。そうでないと、われわれは附帯決議なり何なりをくっつけて、この
自殺の場合も入れて下さい、強姦されて
自殺した人も入れてあげて下さい、こういうのも入れてあげて下さい、ああいうのも入れてあげて下さいという附帯決議をたくさんつけざるを得なくなってしまう。そんなすっきりしないものでなくて、ずばりといこう、こういうのが僕らの質問の趣旨ですから、あなたの方も
一つずばりそれに答えて、よろしゅうございますとおっしゃれば、私の質問はそれで終わりです。