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1961-10-12 第39回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十二日(木曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 飛鳥田一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       伊藤 郷一君    内海 安吉君       大森 玉木君    島村 一郎君       高橋  等君    辻  寛一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       緒方 孝男君    田口 誠治君       楢崎弥之助君    山内  広君  出席国務大臣         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     沼尻 元一君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁総務部         総務参事官)  藤本  幹君         総理府事務官         (調達庁総務部         総務課長)   松下 敏郎君         総理府事務官         (調達庁総務部         補償課長)   久保田栄一君         総理府事務官         (調達庁不動産         部連絡調査官) 高野藤吉郎君         総理府事務官         (調達庁不動産         部管理課長)  水谷平一郎君         大蔵事務官         (主計官)   新保 実生君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 十月十二日  委員岡田利春辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  柳田秀一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九号)  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第四一号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五〇号)  連合国占領軍等行為等による被害者等に対す  る給付金支給に関する法律案内閣提出第四  五号)  連合国占領軍等行為等による被害者等に対す  る給付金支給に関する法律案石橋政嗣君外  十名提出衆法第一号)  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。福永国務大臣。     —————————————     —————————————
  3. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容の概略を御説明申し上げます。  本年八月八日、人事院は、国会及び内閣に対し、一般職国家公務員俸給表を全面的に改善し、期末手当を増額し、初任給調整手当及び通勤手当改定すべきことを勧告いたしたのでありますが、政府といたしまして慎重に検討を重ねました結果、これを実施することが妥当であるとの結論に達しましたので、本法について所要の改正を行なおうとするものであります。  すなわち、第一に、全俸給表の全等級を通じまして、人事院勧告通り俸給月額を現行の俸給月額よりおおむね千円ないし三千円程度増額いたすことといたしました。特に研究職俸給表につきましては、研究職特殊性にかんがみまして、従来七等級構成とされておりました等級区分を六等級構成に改めまして、職員研究能力等に応じて昇格できるよう改善を行ないました。これらの改善によりまして、本法適用を受ける一般職国家公務員の全職種平均給与水準は、おおむね七・一%上昇いたすこととなります。  第二に、六月十五日に支給する期末手当の額を〇・二月分増額いたしまして、〇・九五月分とするとともに、十二月十五日に支給する期末手当の額も〇・二月分増額いたしまして、一・七月分とすることといたしました。  第三に、科学技術振興の趣旨に沿い本年四月から新設されました初任給調整手当支給額最高限を、月額二千円から二千五百円に引き上げますとともに、新たに、専門的知識を必要とし、採用による欠員の補充について、特別の事情があると認められる他の官職に採用される職員につきましても、支給額最高限月額千円とする初任給調整手当支給することといたしました。  第四に、通勤手当につきまして、交通機関等利用者に対する支給額最高限を、月額六百円から七百五十円に引き上げるとともに、自転車等使用者に対する支給額月額百円から二百円に増額いたしました。  第五に、俸給月額改定に伴いまして、委員、顧問、参与等非常勤職員に対する手当支給額最高限を、日額四千七百円から四千九百円に引き上げることといたしました。  第六に、給与支給事務能率化をはかるために、勤務一時間当たりの給与額等端数計算につきまして、一簡素化を行なうことといたしました。  なお、本法に附則を設けまして、俸給の切りかえ方法および切りかえに伴う措置規定いたしますとともに、昭和三十二年当時行なわれましたいわゆる高学歴是正との権衡を考慮し、この際、昭和三十二年四月一日以降の新制大学以上の学歴取得者に対しましても、前回に準じて措置いたすことといたしました。  この法律案は、以上申し述べました内容につきまして改正を行なおうとするものでありますが、人事院勧告において、本年五月一日とすることを適当と考えるとされました実施時期につきましては、現下の経済情勢等にかんがみまして、これを本年十月一日とすることとし、初任給調整手当改定に関する規定は、昭和三十七年四月一日から施行しようとするものであります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 中島茂喜

  5. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容の概要を説明申し上げます。  この改正案は、今般提出されました一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案の例に準じまして、防衛庁職員俸給月額改定等を行なおうとするものであります。  すなわちまず、事務次官、統合幕僚会議議長及び参事官等並びに自衛官俸給表につきましては、一般職の例に準じて改定を行なうこととし、事務官等俸給表につきましては、従前通り一般職適用される俸給表によることといたしております。これにあわせて、防衛大学校の学生に対する学生手当の額につきましても改定を行なうことといたしております。  また、今次の職員俸給月額改定にあわせて、営外手当の額の改定を行なうことといたしております。  なお、この法律案は、公布の日を施行日とし、本年十月一日から適用することといたしております。   なにとぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  6. 中島茂喜

    中島委員長 以上で提案理由説明は終わりました。両案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  7. 中島茂喜

    中島委員長 大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提出連合国占領軍等行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律案石橋政嗣君外十名提出連合国占領軍等行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律案、以上の各案を一括議題とし、審議を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。飛鳥田一雄君。
  8. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 政府提案連合国占領軍等行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律案、これについて主として御質問を申し上げたいと思います。ごくしろうとの考え方ですが、法律というのは世の中に出されますとなかなか呼びにくいものです。この場合でも連合国占領軍等行為等による被害者等に対する給付金支給に関する法律案というふうに非常にむずかしい。など、など、などということがたくさん入っておるのですが、まあ立法技術上正確を期するという意味である程度理解できないことはありませんが、何かこの点について一般国民が呼びいいような、被害者の人が簡単に呼びいいような名前を当局として考え余地はなかったのでしょうか。
  9. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通りまことに呼びにくい名称でございます。この名称につきましてはいろいろ検討したのでございますが、こういうふうに呼ぶのが比較的正しいというような考え、また比較的これによって内容がわかるというようなことで、このような名称をつけたのであります。この名称については検討をいたした結果こういうことになったのであります。
  10. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私たちもいろいろな議員立法なんかいたします場合に、そういう点に注意したいと思いますが、お互いに一つ研究したいと思います。  そこでこの法案の問題に入ります前に、現在のこの法案適用を受くべき被害者状況がどうなっているのか、これはもう前回国会でも伺ってはおりますが、その後いろいろ御調査によって新しい人も発見をせられたかもしれませんし、もっと詳しくわかった分もあるかと思いますので、やはりこの国会で一応現状についての御報告を伺っておきたい、こう思います。
  11. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在までの被害者状況を申し上げますと、事故種別件数から申し上げますと、これは本年の七月三十一日現在でございますが、九千百七十一件、これが総数でございますが、その内訳は、交通事故による被害件数が六千八百二十八件、刑法犯による件数が千二百五件、航空機による被害件数が六十二件、海上における被害件数が百十一件、その他というのが九百六十五件になっております。その他と申しますのは、爆破とか流弾等による被害ということになっております。  次に被害種別による件数でございますが、死亡件数が三千八百八十件、傷害件数が二千二百二十八件、療養の件数が三千六十三件、総計九千百七十一件ということになっております。これも同じく七月三十一日現在でございます。
  12. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。まだこのほかに今後判明をしてくる可能性がある、こういうような予測はつかないでしょうか。今まででも公告というとおかしいのですが、調達庁のお力で周知徹底をする努力をしていただいて、警察とか町役場とか村役場に公告をしていただいた結果、かなり出て参りました。今後どのくらい出てくるか、ちょっと予想はつかないでしょうか。大体出切ったと見ていいでしょうか。
  13. 大石孝章

    大石政府委員 ただいまの長官の御説明を私から補足的に御説明申し上げます。御指摘の通り昭和三十四年度から調査にかかりまして、七月三十一日現在の統計を申し上げたわけでございますが、なおしかしながら警察あるいは自治体等の御協力によりまして、この実態というものが一そう明瞭になりつつあるわけでございまして、私ども過去の累積から推しまして、今後においてなおこういったような被害状況が若干は出るものというふうに判断をいたしております。
  14. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 実は私の個人的な経験なんですが、私のうちのすぐ裏に住んでいる方も占領軍子供を二人ひかれて、私もこの法律の話をしませんでしたし、御本人もりっぱにやっていらっしゃる方で、あえてこの補償を受け取らなくとも生活に困られない上流階級に属するのですが、その方も全然知らなかったらしいのです。おととい偶然一緒に飯を食って話をいたしましたら、ああそんなのがあるのですか、こういうことですが、私は今さらお金をもらっても仕方がないから、こう言っておられたのです。そういう人でもできるだけ周知徹底をすることによって名乗り出てもらう。お金をほしくないという人は辞退をしてもいいし、受け取ってどこか有益なところに寄付なさってもいいわけですが、そういう方がまだかなりあるのじゃないかという感じがするわけです。現に私の裏に一人おられたのでそう申し上げたのですが、今後とも一つ、この法律が通過いたしますと、そういう未知の人々に対するやり方というものが必要になってくるのじゃないか。しかしその場合でも、全国に平べったく啓蒙してみたところで意味のないことですから、神奈川県とか福岡県とか、駐留軍の多くおりましたところに、単なるビラを張るというような形でなしに、警察連絡をとって調べてみるとか、いろいろのことが必要なんじゃないかと思うのですが、そういうことをおやりになる予算なり計画なりをお持ちでしょうか。
  15. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お説の通りこういうことは一般周知徹底せしめる必要がある事柄でございますので、今までは主として各府県の公報に登載してもらいまして、一般周知徹底をはかったのであります。今後はできるだけの方法を講じまして、一般に知らせることを考えたいと思っております。そのような予算は、これはそうたくさんかかるものではないので、十分できることと存じます。
  16. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこでそういう問題を一つ考えてみましても、政府提出をせられている法案と、私たちの出している法案の違いが、ある程度出てくるのではないだろうかという感じがするわけです。と申しますのは、今の周知徹底とか、あるいはそういう被害者を探し出してくるとか、そういうことについて、どうしても地方自治体都道府県協力を得なければならぬわけです。ところが政府案においては都道府県協力ということは、単に望ましいという段階にとどまっておって、義務づけられていないわけです。ところが私たちの方で出しておる法案を見ますと、都道府県自治体協力が義務づけられておる。こういう点でも何か政府案の方が不親切のような感じがするのですがね。この点は運用において補うとおっしゃればそれっきりですが、やはり義務づけておく必要があるのじゃないでしょうか。これはただ周知徹底だけではありません。事故調査とかその他もっと正確に事態を知りますためには、都道府県協力というものが絶対不可欠なわけです。調達庁の中にそういう精細なデータが集まっていない段階ですから、この点について、政府案の方は協力を義務づけられていない、私たちの方は義務づけている、こういうことの違いがどう結果するか、こういう点について一つ伺いたいと思います。
  17. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただ占領軍関係人身被害につきましては、見舞金支給措置の当時から各府県協力を得て実施してきた実績から見まして、法律を施行する場合においても、従前と同様の協力をお願いすることで十分措置し得る、こういうように私ども考えておるので、従来通りの御協力をお願いするというような考えで進んできたわけであります。
  18. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 別に文句を言うつもりはありません。今までも都道府県が非常に協力してくれたということは僕らもわかっていますから、そういう義務、協力を喜んでしてくれるだろう、こういう御想定は決して間違ってはいないと思います。しかし今までで足りない部分がずいぶんあり得るわけです。協力を要請しても、現実には出してくれなかった例が、いろいろな事態で、たしかあるでしょう。これは大石さんなどよく御存じだと思うのです。そして同時にもっと今後は今までより以上に精細な調査をして、一人も残さずにこの法律の恩恵に浴させてあげたいという気持ですから、今まで以上の協力を要請しなければならぬ場合が出てくるかもしれないのです。ところが地方自治体というのは御存じのように非常に忙しい官庁ですから、現在程度なら喜んで協力してくれるだろうけれども、今まで以上の過大な要求をする場合には、なかなか義務づけておかない限りむずかしいのではないかと思います。そういう点で一つ上手に運営していただきたい、こう思います。  同じことは、この法律を見ますと審査会という問題にも出てくるのじゃないだろうか。政府案によりますと、中央一つ審査会を作るだけですね。しかし九州とか東北とか北海道とか、そういう遠隔の地に現実に起こっている被害を、中央で一本でやるというのは少し無理じゃないだろうか。むしろ駐留軍が非常にたくさんおって、そういう事件の多かった地域、たとえば福岡とか山口県とか広島とか、あるいは大阪、神奈川、仙台、北海道などというような地域には、当然この審査会県別にあるいはブロック別にお作りになる、こういう方途の方がスムーズにいくのじゃないかという感じがするわけです。そして同時にまたその土地の被害者も何か納得できるのじゃないか。簡単にその審査会へ出かけていって話をすることができる。まあ神奈川県の人なんかは、東京に出てくることはそうむずかしいことではありませんけれども九州の人などが出てくることは大へんなことです。被害者連盟の人を通じて中央意見を述べるということはできても、自分の子供をひき殺されてしまったおばあさんなんかが、わざわざその審査会に出かけていって、あるいはまあくどぐどとした訴えかもしれませんが、幾らかぐちまじりのくどくどした訴えをすることによっても、精神的な慰謝というものはあり得るのじゃないだろうか。こう考えてみると、できるだけ審査会をそういう被害が多発した地域には設置した方がいいのじゃないかと私たち考えて、私たち法案の中にはそういうことを入れてあるのですが、政府の方は中央一本、しかも「委員七人以内で組織する。」そうして「委員は、非常勤とする。」というような形で、比較的被害者にそっけない感じがするわけです。一体これで十分なのかどうか。被害者給付金審査会運営、そういう問題について、現実にこれから運営する長官の見通しを一つ聞かしていただきたいと思います。  そして二十一条を見ますと、「政令への委任」というのがあります。「前二条に規定するもののほか、審査会組織及び運営委員任期その他審査会に関して必要な事項は、政令で定める。」となっておりますから、この政令審査会出張所みたいなものを、少し無理ですが、そういうところへ作れないものかどうか。審査会自体を設けることは無理でしょう。ですが、政令最大限度解釈して、「審査会組織及び運営委員任期その他審査会に関して必要な事項は、」と書いてありますから、出張所——出張所というのもおかしいですが、何かそういう被害の多発した地域における被害者審査会の接触を緊密にする方法を、この政令の中で考えていただけないだろうか、こういうことはどうでしょうか。少し無理なことはこっちもわかっているのですが……。
  19. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お説のように、この審査方法につきましては、御意見にあるような点を十分検討いたしました結果、政府案のようなことになったのであります。私ども考えでは、各地方局におきましてやっておりまする見舞金支給業務実績から見まして、被害事実の認定等が大体順調に行なわれておる、こういうふうに私ども考えておるのであります。そういうような意味におきまして、各地方局地方審査会というものを設けることはやめまして、中央中央審査会を置きまして、これは不服ある者についてのみ審査するという機関といたした次第でございます。もちろんこのような給付金支給に関しまする具体的な事実、それらの認定というようなことは大事な業務でありまするから、十分手を尽くして審査する必要があると思うのであります。そのような意味におきまして、各地方局における従来の経験を十分に生かし、またさらに親切というような点も加えまして、各地方局を中心として十分審査をしていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。もちろんこのような方法で、やり方については御意見のような点について十分に考慮しまして、親切に、また適切にやっていきたい、こういうふうに考えております。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは中身の条文について一つ二つ伺いたいのですが、この政府提案法律の二条を見ますと、駐留軍暴行を加えられた結果、それが精神的な原因となって自殺をあえてしたというような人についての被害補償というようなものは、全然含まらないことになりますが、そう解釈してよろしいでしょうか。
  21. 林一夫

    ○林(一)政府委員 さようでございます。まあそのような場合は、占領軍行為死亡との間に因果関係が認められないということで、まことにお気の毒と存じまするが、本法による遺族給付金支給しない、支給できないということになっておるわけでございます。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、因果関係が立証できるときには入りますか。これはかなり立証する余地がある事件が、私たちの知っている限りでもございますが……。
  23. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この法文の規定が、占領軍等行為等により死亡した者の遺族に対する給付金、こういうことになっております。行為等により死亡したということは、占領軍等行為が直接の原因で、それによって死亡した、こういうふうに私ども解釈しておりまするから、そういう解釈ができるならばもちろん救済されるもの、こういうふうに私どもは思います。
  24. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 占領軍等行為によりと、こうなっておりましても、たとえば行為によって傷害が与えられ、その傷害の結果、数日を出ずして死亡する場合、さらには十五日、二十日、一カ月たって死亡する場合、こういう場合があるわけです。その場合にも、因果関係が認められれば、それが直接にして唯一原因でなくても、今までの解釈から言えばこれはこの二条の中に入るわけです。たとえば私が傷つけられた。その場合に私がもう光陰流亡、からだがすっかり弱っているときであれば死にます。しかし失礼ですが長官が傷つけられた。長官はゴルフか何かやられて健康を鍛えられておる、その場合には死に至らないわけです。そういう点でも、それが唯一の、しかも直接的な原因でなければならぬという解釈をいたしますと、私のからだが弱っておったということが一つの死に至る加工原因になりますから、今のような御解釈だとそれは事故として扱われなくなってしまう。ですからやはり今までのやり方としては、慣例としてはそういう場合も死亡事故としてきたわけですから、原因駐留軍行為に基づくといえども、それが唯一にして直接的な条件はなくてもいいのじゃないか。だとすれば暴行を受けた、はずかしめを受けたということを原因にして自殺をするような場合には、当然これは死亡事故認定をすべきものじゃないか、こう私たちは思っているわけです。その間に差等をつけるべき理由はありません。  それからもう一つ、もっと具体的に進んで考えていただけば、はずかしめを受けたために懐胎する人があります。赤ちゃんができる人がある。すると、おなか赤ちゃんができたということで、そういうことを自覚するまでには三月、四月かかるわけです。僕は男ですからわかりませんが、おなかの子が動き出しますとよく言いますが、動き出して初めてわかるわけです。そういう場合に、これは困るというわけで自殺をする人も現実にあったわけです。これなど最も直接的な原因を体内に持っているわけでしょう。少し変な話ですが、こういう場合なども当然入るべきじゃないだろうか。私たち社会党案としてはそういう場合は一切含めているわけです。ですから、今すぐこれを改正せよとは言いませんが、当然実行にあたってはそういうものをも含めた解釈をしていただくという余地は私はあるのじゃないか、こう思うわけです。一つここで、そういうはずかしめを受けて自殺をするような場合でもこれには入るのだという、一つの有権的な解釈をしておいていただきたい、こう思うわけです。
  25. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この法文案にありますように、「連合国占領軍等行為等により死亡したもの」こういうふうに規定されています。これは私どもはやはりその行為が直接の原因になって死亡したもの、こういうふうに解釈しておる。ですから、おっしゃる通り、この間の因果関係についてはいろいろな事例が出てくると思いまするが、私どもはやはりその行為が直接の原因になって死亡したという場合にのみ適用すべきものである、こういうふうに解釈しておるわけであります。
  26. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 法律解釈としてそういう解釈をおとりになることはうなずけますが、やはりあなたにしても、私たちにしても、それを当然含むべきだという気持、そういうことは同じじゃないかと思うのです。そうだとすれば、少し無理をしても、ここでそういう解釈を施しておいていただけば、全国で何十人、あるいは何百人かもしれませんが、そういう人々の遺家族は救われるわけです。そう大した金額でもありませんので、そういうことができないものか、こう伺っているわけです。  僕自身の体験ですが、僕は御存じのように横浜で弁護士をやっておりましたので、いわゆるプロヴォコート、憲兵裁判所の事件をずいぶんやりました。そしてCIDの扱っている事件にもずいぶんぶつかりました。あるときこんなことがありました。黒んぼが日本の婦人を犯した。そこで私はCIDへどなり込んだわけです。そしてたしか隊長は少佐だったと思っておりますが、僕はテーブルをたたいて怒ったのです。こんなことがいかに占領中といえども行なわれてよいものかどうか、占領ということは人権を侵害してよいはずはないのだ、こう言って怒りましたら、そのCIDの隊長は、それはその通りだと言って、その犯した黒んぼを連れてきて、お前は不届きじゃないか……。これはちょっと速記をとめて下さい。
  27. 中島茂喜

    中島委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 中島茂喜

    中島委員長 速記を始めて。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 こういうようなことを平然と言っておるわけです。その婦人はやはりその後非常に不幸な生涯をたどりました。死んでしまった人はまだしも、生きてその後そういう不慮の事実に基づいて非常に不幸な人生をたどっている人に、なぜ補償してやらないのか。何かからだが傷ついたとか、生命が失われたという場合だけに限定することはないのじゃないでしょうか。僕はあまり理屈を言ってもしょうがないと思いますが、解釈の仕方によって十分含められるのではないか。行為により、こう書いてあったとしても、それはその行為一つ原因となり、あるいは重大な原因一つとなりというふうに解釈することによって、含められるのだと私は思うのですが、私たち法案のように、明白にそれをきめてあれば別ですが、解釈によってもできると思いますので、そこは一つ踏み切っていただいて——幾らのものでもないと思うのですよ、金額からすれば。ぜひこれは入るのだとおっしゃっていただきたい。もしだめなら、まだきょうこの法案は上げるわけじゃありませんから、次回までに一つ考えおきをいただきたいと思います。いかがでしょうか。考え余地はありませんか。
  30. 林一夫

    ○林(一)政府委員 これはこの因果関係認定の問題だと思うのであります。おっしゃるように、その関係が直接であるか、間接であるか、あるいはその直接原因としましても、それが唯一原因であるか、あるいは重大なる原因をなしておるかというように、その関係がいろいろあると思いますが、私ども現在考えておる解釈は、この行為が直接の原因になって死亡したものである、こういうふうに解釈しているわけです。もちろん考えるということはやぶさかではありませんが、この次までにはもう一度一つ考えておきます。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 直接にして唯一のというふうにおっしゃらないと、お説は通りませんよ。それ以外の直接原因というものは幾つも併存できますからね。一つぜひお考えおきをいただきたいと思います。  その次に、この文章の中に「正当な行為」という言葉が使われておるわけです。「本邦(政令で定める地域を除く。以下この項において同じ。)内における昭和二十年九月二日から昭和二十七年四月二十八日までの間(以下この項において「占領期間」という。)の連合国の軍隊若しくは当局又はこれらの構成員若しくは被用者(これらの者に随伴する者で政令で定めるものを含む。以下この項において同じ。)の行為(正当な行為及び故意又は過失によらない行為を除き、」こういうことでありますが、故意または過失によらない行為というものは大体正当な行為じゃないかと思うのですが、この点非常にあいまいですから、「正当な行為」という言葉の定義をここできちっと下しておいていただきたい、こう思うのです。
  32. 林一夫

    ○林(一)政府委員 「正当な行為」と申しますのは、国際法上占領軍として正当に行ない得る行為、または国際法上許される範囲内において占領軍の内部規律に照らして正当な行為という趣旨でございます。たとえば極東国際軍事裁判所の判決に基づく刑罰の執行というようなものが考えられるのであります。以上のように解しております。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それはそれでけっこうです。  さらに、遺族の範囲ですが、十一条です。「遺族給付金支給を受けることができる遺族の範囲は、被害者死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、子及び父母並びに被害者死亡の当時においてその者によって生計を維持し、又はその者と生計をともにしていた孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。」こう書いてありますが、この配偶者の定義ですね。これはこのごろいろいろの保険関係とか、その他の法規の中にもこれと同じような文句が出てくるわけです。「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。」これですね。これは非常に不明確で、しばしば遺族の間に醜い争いを起こす原因になっております。そして事実上の婚姻関係にあった人がなかなかもらえない場合も出てきます。ですから、この辺を少し正確に聞かしておいていただきたい、こう思うのです。「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」こういう場合に、普通常識的には、たとえば神前結婚をあげて、いわゆる挙式の事実はあった。そして世間的には夫婦として暮らしておる。しかしたまたま戸籍上の届けがしてない。古いお母さんなんかに言わせますと、子供ができたときに届出をするという人もありますから、そういう挙式の事実はあって、事実上の同棲がある、ただ届出がしてないという場合だけを意味するのか。最近のように、若い人たち同士が事実上同棲生活をしておれば、それで事実上の婚姻関係とみなすのか。その場合でも同棲は同居を絶対に条件としているのか。この時分も非常に住宅事情が困難でしたから、平安朝時代に戻って妻問いの夫婦生活をしている人もあったわけです。しかしそれをわれわれは形式的に同居という事実をあげて、お前たちは事実上の婚姻関係にない、こうは言い切れなかったのじゃないか、あのころのように住宅問題が非常に混乱しているとき、困っているときには。妻問い生活だって私はちっとも夫婦生活としての実態を欠いているとは思えないわけですが、いろいろなバリエーションがあるわけです。この点についてもここで一つ解釈を明確にしておいていただきませんと、実際の実施にあたって、いろいろけんかが起きたり、遺族の間に大騒ぎが起こったりいたしますので、はっきりしておいていただきたい。
  34. 大石孝章

    大石政府委員 ただいまの配偶者の解釈の問題でございますが、婚姻の届出をしてないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含むということは、私ども解釈では、形式的な挙式等の事実がなくても客観的に婚姻の実態にある、それから居住等の関係も、あるいは都合によって住宅事情等からある時期が分かれた生活をするといったような場合でも、婚姻の事実という客観性を持つ場合は、婚姻の事実と同様の関係にあると解釈すべきものと考えております。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 けっこうですが、ただそういうふうにおっしゃってそれきりにしておきますと、各地々々でお取り扱いになる方の認定でばらばらな状態が出ますよ。九州ではほぼ同じものを事実上の婚姻関係ありと御認定になり、横浜ではなしと認定なさるというような事態が出ますので、この法律が通過しましたら、あなたの方で一つの通達なり何なりをお出しになって、ある程度のパターンをお示しになっておかないと、ばらばらが出てくる、こう思いますので、そういうことを一つ考えておいていただきたいと思います。  そこで最後に、死亡の場合に十五万円、こういう大体のあれが出てきているわけですが、その算定の基礎は一体どういうふうになっているのでしょうか。
  36. 林一夫

    ○林(一)政府委員 占領期間中の人身被害につきましては、昭和二十一年の五月の閣議決定に基づきまして、見舞金支給することにしたのでありますが、その後六回にわたって支給額の増額、また支給基準の改訂等を行ない、最終的には昭和二十七年五月の閣議了解に基づきまして、追加支給措置が講じられたのであります。そこで三十四年度に実施しました実態調査の結果を見ますると、この被害の発生状況が、昭和二十四年までのいわゆる占領前期でありまするが、この占領前期に非常に多い。先ほど申しましたように、被害者総数が約九千、そのうち死亡者の数は、死亡者総数の約八三%というようなことが実態調査の結果明らかとなったのであります。しかもその期間におきまする死亡見舞金は、追加支給措置が講ぜられたにもかかわらず、最低一万七千円、最高は十五万円であるというようなことで、この期間におきまする被害者を主体としまして救済する必要を認めたわけであります。そのようなことで十五万円が適当であろうという一つの事由も出てきたのであります。もちろんこの十五万円に決定するにつきましては、いろいろな点を検討したのであります。その一つの点は、戦時中におきまする、あるいは戦後におきまする他の人身被害について、国が国家補償の精神に基づいて法律によって救済措置をとっている事例等を考えますると、大体十五万円程度がいいのではないかというようにも考えたのであります。このようなわけで、占領期間中におきまする人身被害に対する見舞金支給の実態というような点、あるいはほかの法律との均衡等を慎重に検討した結果、一律十五万円を支給するというのが妥当である、こういうような結論に達した次第でございます。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この問題は議論にわたりますから、あえて私の方ではたくさん申し上げません。そして与野党の委員諸公が、この点についていろいろ御配慮をいただいておりますことも知っておりますからあえて申し上げませんが、お説のような十五万円の算定基準というものはほんとうに恣意的なもので、伺っておりましても科学的な根拠などというものはありません。たとえば十年間放置されておったものというのは全然計算に入っていないじゃないですか。ほかの補償と比べてみてとおっしゃるのですが、ほかの補償はとにかく今までもらっている。ところがこれは十年間もおっぽりぱなしになっている、こういうような点なども考えてみる必要があるわけです。いずれにせよ私たちは不満でありますから、党の案が提出されているわけです。  最後に、政府案によりますと、終戦直後に上陸してきた日から九月二日までの問題というのが、ほとんど触れられていないわけです。この点はどうなるのでしょう。
  38. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私ども考えでは、この占領期間というのを二十年九月二日から二十七年四月二十八日まで、こういうふうに考えておるのであります。この立法の趣旨は、連合国占領軍等行為によって被害をこうむった方の救済ということにあるのでありまして、この連合国占領軍等が正式に占領管理を実施した期間は、日本国と連合国との間において降伏文書が調印されました昭和二十年九月二日から、平和条約の効力の生じた昭和二十七年四月二十八日まで、こういうふうにするのが国際法上妥当であるという考えのもとに、この間の期間を占領期間として、この期間中におきまする被害者を救済の対象としておるわけであります。従いまして九月二日以前の被害者というものは対象といたしてはいないのであります。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、上陸をしてきてから九月二日までの間の米軍というものは、交戦中の軍、こういうことになるわけですか。
  40. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通り、八月の十五日に無条件降伏が行なわれまして、引き続いて進駐軍が進駐して参ったのであります。でありまするからこの間の事態というものは、なるほど九月二日以降の事態と同様な事態である、こういうふうに考えられる点もあるのであります。これを法律的にはっきり線を引きますと、九月二日から占領開始だ、それ以前は戦闘状態が継続しておった状態である、こういうふうに私ども考えております。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますとかりに交戦中の軍といえども、戦闘中の軍といえども、無辜の市民を、非戦闘員を傷害するということは許されないのじゃないか。しかも署名は、九月二日にミズーリ艦上で降伏文書に署名をしたとしても、八月の十五日に一応無条件降伏をこっちは一方的に申し出ているのですから、同じ交戦中の軍といえども、性質は、ほんとうに大砲を撃ち合っている状態とは違うわけですね。しかもそういう特殊な交戦中の状態の中で、なおさら一般無辜の市民を傷つけることは、国際法でも許されていないと思うのです。だとするならば、当然九月二日以前、八月十五日以後の間の被害者は、いまだに米軍に対してあるいはアメリカ政府に対して損害賠償請求権を持っているものと認定していいのです。そう解釈をせざるを得ないと思うのです。もし逆に、サンフランシスコ講和条約十九条で、九月二日以前、八月十五日以後の間の被害者の権利まで放棄してしまったとするならば、そうサンフランシスコ講和条約十九条を解釈しなければならないとすれば、これは当然政府として被害の対象に入れなければならない、こういうことになるだろうと思います。どうなんでしょう。
  42. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通り、九月二日以前と九月二日以後との間には、そうはっきりした実際上の事態の差別はないのであります。ただこの九月二日に日本と連合国との間に降伏文書の調印が行なわれたということで、ここでこの日から占領が開始されたということが法律的にははっきりしたと思うのであります。この法律は、占領期間中の被害者というのを対象として考え被害救済立法でありますので、こういうふうな措置をとったのであります。おっしゃる通り、八月十五日に無条件降伏をしてから九月一日まで、これを私どもは戦闘状態の継続、こういうふうに考えておるのでありますが、この間に被害をこうむった方々の救済というものは、現在のところないと思うのであります。これはまことにお気の毒な状態であるのでありますが、実際問題として、この間の事案というものは二十件ぐらいあったかと思います。これも大体戦闘状態における占領軍等行為による被害、こういうふうに解されるような事案でございます。この占領期間をどこに置くかということについては、一応降伏文書を調印した九月二日に占領開始というところに線を引くのが妥当であるというような考えのもとに、このような規定をしたわけなんであります。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 たいぶ長官、苦しそうだけれども、あなただって僕だって、その間の二十人、二十件くらいの被害者に何とかしてあげたいという気持は同じだから、あなたも苦しいだろうと思うのです。ですが、何か僕は一つの錯覚があると思う。というのは、占領軍であるかないかというのは、日本対アメリカの国際的な関係において占領軍であるかないかということを言えば、九月二日にミズーリ艦上で正式に降伏文書に署名したそのときから、戦闘状態にある軍と占領軍との区別がはっきりつくのですよ。そうでしょう。それはアメリカ対日本の国際的な関係においてしかりなんです。しかし今僕らが問題にしているのは、これは国内的な日本国民対日本政府の関係を言っているわけです。だとするならば、国際的な関係の占領軍であるかないかということをしゃくし定木にこっちに持ってきて、何もほんとうに気の毒な二十人の人をこぼしてしまう必要はないのじゃないか。現実に八月の十五日に無条件降伏をしますという打電をして、ごめんなさいとあやまったのはだれですか。日本の政府じゃないですか。それはそれとしてちゃんと効力を発している。そうしてしかも八月十五日に天皇が、もうこれで戦争は終わりだ、こう言って、みんなそこで戦争は終わったものと国民は了解しているわけです。これは政府と国民との関係です。必ずしも国際法上の関係だとは言えないと思いますが、国民と政府との間においては、八月の十五日に戦争は終わったのですから、もしまだ終わっていないというのならば、何人かの人は、なにアメリカなんかに負けるものかといって、あるいは九月二日までの間に戦闘を継続したかもしれませんけれども、しかししてはいかぬということで政府が押えたという事実も、政府対国民の関係です。ですから、政府が国民に対して今、占領中の米軍の横暴な、暴虐なことによって被害をこうむった人に損害を補償してやろうという立場で、国民対政府の関係で考えれば、何も九月二日に筋を引く必要はないのです。何か法律関係を混同しているのじゃないか、今の御解釈は。ですから私は、当然二つしか解釈方法はない。一つは、八月十五日以降——正確ではありませんが、たしか二十日ごろに米軍は日本に上陸してきましたね。それから九月一日までの間に起こったものの占領中の被害事件補償をする、こういう解釈……(「準じてでもいい」と呼ぶ者あり)あるいは今石橋君が言うように、それでも法律家としてのあなた方が苦しければ、準じてという言葉を使われてけっこうです。そういう形で入れる、これが一つです。それでなければ、第二の解釈は、九月二日以前は交戦状態であるのだから補償はできない。しかしもしそれが無辜の人民を米軍が傷つけるがごとき事態であるとするならば、それは国際法上でも、戦時国際公法でも許されていないことだから、それらの人々は、時効の関係は別として、アメリカに対して請求権をいまだに持っているもの、こういう解釈をするか、二つに一つしかないのじゃないでしょうか。ただし後者の解釈をとった場合には、それらの二十人の人々がアメリカに対して権利行使をすることを日本の政府は妨げて、たしかこれはアメリカの法律でも時効にかかっていますよ。その時効にかけてしまった責任をとらなければならない、こういう問題が出てくると思います。二十人くらいのものですから、あなたはうしろを振り向いて大蔵省の人にかっと一喝食らわして、そして準じてとか含めてとかいう解釈をなすって決して間違いはない。その方面ならお手伝いします、けんかは大好きですから……。ともかく、そういう意味で、含めて解釈するでやってもらえないか、こう私は思うのです。ことに僕は横浜に住んでいたものですから、いろいろな事例を知っているのです。率直に言って米軍が一番暴虐をあえてしたのはこの時期です。この人たちの側から言っても無理ないでしょう。硫黄島から、沖繩から、歴戦の勇士が——勇士かどうか知らないけれども、彼らは勇士と思っているのでしょう。勇士がもう気もすさんで日本へ上陸してきたのですから、そこで相当な行き過ぎがあったことはわかります。僕らだってそうだったと思います。そういう意味でこの時期が一番ひどいのです。ただ幸いなことに、件数が二十件しかなかったというのは、日本人がこわがってあまりそばに寄らなかったらしい。女小供は疎開させろなんというので、みんないなかへ女房子供を送った人がいて、接触面が少なかったから二十件しかなかったわけです。しかしあった二十件というのは、理も非もない、それこそ自動車で突き飛ばしていくというような事件が多いのですから、それだけに何とかしてあげなければ二十人の人がかわいそうではないか。また家族にしても、やっと戦争が終わってほっとした。これからと思っているところで女房を自動車で突き飛ばされてしまったり、あるいは亭主を自動車でひき殺されてしまったりするようなことは、せっかく戦争が終わってほっとして、これから新しい家を建設していこうとする気分をそこなったという点でも、この時分の被害というのは心理的にも非常に大きいのです。全国でわずか二十件しかないのですから、二十万円ずつフルに上げたって四百万円じゃないですか。そのくらいなことは当然計算に入れて、含むと、こう有権的にここで解釈してしまおうじゃないですか。どうですか。そうでないと、われわれは附帯決議なり何なりをくっつけて、この自殺の場合も入れて下さい、強姦されて自殺した人も入れてあげて下さい、こういうのも入れてあげて下さい、ああいうのも入れてあげて下さいという附帯決議をたくさんつけざるを得なくなってしまう。そんなすっきりしないものでなくて、ずばりといこう、こういうのが僕らの質問の趣旨ですから、あなたの方も一つずばりそれに答えて、よろしゅうございますとおっしゃれば、私の質問はそれで終わりです。
  44. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通りの点につきましては、私どもは十分検討したのであります。検討した結果、やはり法的にはっきり線を引きますと九月二日が占領の開始、それ以前は戦闘状態の継続、こういうふうに見るのが妥当であるということで、このような結論を出した次第であります。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今僕が申し上げたように、法律関係は逆ではないでしょうか。国際関係と国内関係をきちっと分けてお考えになれば、ちっとも無理がないのじゃないか、こう私は思っておるわけですが、単なる片々たる法の解釈にからんで、当然救済すべき人を二十人こぼしてこの法律を作ったということは、だれがどう考えたってあと味の悪いことになるのではないか。別に林さんが先頭を切ってそうおっしゃっておると思いませんけれども、大蔵省あたりに言われてやむなくそうお答えになっていらっしゃる。あなたも気持が悪いだろう、僕らも気持が悪い。ここにいらっしゃる自民党の諸君もおそらく気持が悪いだろうと思います。この点の解釈を統一する意味で、大蔵省なり防衛庁の長官なりその他と御相談をいただいて、先ほどの自殺をなすった場合まで含めるかどうかということのお答えと同様に、次会にもう一度この点についてきちっとした有権的な解釈をお願いしたい。僕の質問は終わりです。
  46. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この点についてはいろいろの点から十分検討を重ねたのであります。重ねた結果、こういうようなことになったので、この点はこれで一つ御了承をお願いしたいと存じます。      ————◇—————
  47. 中島茂喜

    中島委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。楢崎弥之助君。
  48. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 米軍の基地の問題に伴って基地周辺の住民は、ただいまも問題になっておりますように、精神的あるいは社会的、経済的、肉体的に非常に多くの被害をこうむり、犠牲者が出ておるわけであります。これは当然国の責任において完全補償さるべきであると思うわけでありますが、私は以下おもに板付基地の問題に焦点を据えまして、質問をいたしたいと思います。板付基地の問題につきましては、去る三十八国会予算委員会分科会において、二月二十八日政府に質問をしたわけでございますが、なお多くの疑問点がございますので、数点にわたって質問をいたしたいと存じます。  そこでまずもう一度確認をする意味におきまして、現在問題になっておる板付の拡張の面積について、明確なお答えをお願いしたい。
  49. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍が提供を申し出ました土地の面積でありますが、これは六万二千坪でございます。
  50. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その六万二千坪の内訳につきまして、この面積は購入をするのだ、借り入れをするのだ、あるいはこの面積は地役権の設定なら設定をするのだという点を……。
  51. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 米軍からの要求は、進入灯設置の個所として土地の取得が二千六百坪、それから航空地役権として六万坪という内容になっております。
  52. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 地役権というのはどういうものか、またそれは購入の対象になっておるのか、あるいは借り入れの対象になっておるのか、その点をはっきりしていただきたいと思います。
  53. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 これは航空機の離着陸のために一定の間隔に高いものや何かが立っておっては困る、そういう建築物の制限という意味で、六万坪の地域にわたりましては、そういう建物や何かを建てられては困るというような制限を内容とする要求でございます。しかしそれを借り入れでいくか、あるいは購入でいくかということは、これは土地所有者等との交渉の過程においてきめていく問題でございます。
  54. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この拡張のための予算措置については、去る三月三日の日に資料を提供していただいたわけですが、それによりますと、土地購入費並びに提供に伴う補償費、そして借料というふうになっておるのですが、進入灯を設置するための工事その他そういう関係の直接費はどうなっておりますか。
  55. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 進入灯その他の工事は米軍の負担でございます。
  56. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今回の六万二千坪の拡張を行なう理由について、長官からお答え願います。
  57. 林一夫

    ○林(一)政府委員 拡張を行なう理由は、米側から施設特別委員会を通じまして、飛行場の北側に航空機の離着陸のための進入灯の設置というような、安全施設を設置する目的で、この六万二千坪の土地の提供の申し入れがあったわけであります。結局進入灯を設置するというような、安全施設を設置するのが目的でございます。
  58. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在の板付基地の滑走路の長さなり状態について質問いたします。
  59. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 現在の滑走路としては約一万フィートございます。しかしながら純然たる滑走路に該当する部分は約八千三百フィートでございまして、残りがオーバーランということになっております。
  60. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、一万フィートのうち主滑走路が八千三百フィート、残りの千七百フィートがオーバーランである、こういうことですね。そうしますとその千七百フィートのオーバーランというのは、南北についておると思うのですが、南北に分けてどういう長さになっておりますか。
  61. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 南北に約半分ずつついております。
  62. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 約半分ずつといいますと、八百フィートくらいずつというわけですね。  そこで今、拡張理由について、進入灯を作る。しかし現在の滑走路の長さは八千三百フィートで、オーバーランが南北両端千七百フィートついている。それがまた今度の拡張に伴って状態が変わるのじゃないですか。
  63. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 現在の滑走路の長さは八千三百フィートとなっておりますが、最近の機種の変更、航空機の発達ということから、八千三百フィートでは、そういった航空機の離着陸についてかなりな危険性がある、そういうことから、その安全性を確保するために滑走路を一万フィートにいたしまして、さらにオーバーランとして千フィートをふやす、そういうことでございます。
  64. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 進入灯を今回設置するから、安全施設で拡張ではないということを主張されているようですが、昭和三十二年度に、実は南北両端に、北側の方に二万一千七百四十坪、これは標識灯を設置するため、南側が二万一千六百二十四坪、これは方向指示器を作るため、つまりそういう安全施設のためにこの四万三千坪の拡張が行なわれた。そのときの政府の拡張理由も、こういう標識灯あるいは方向指示器を作るためだ、安全のためだから拡張ではないということで行なわれた。現在、この三十二年度の南北両端四万三千坪の拡張をやって、方向指示器と標識灯を設置するということで買収なさいましたが、予定通り、そういう安全施設をお作りになったのかどうか、これをお伺いします。
  65. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 三十二年度には、そのような目的で土地等の買収をいたしたわけでございます。そうしてその際、標識灯の設置というようなことを考えてそういう買収がされたわけでございますが、その後におきまして、そういう標識灯をまだ作らないうちに、機種の発達というような面から、三十二年度の計画では安全性が確保されないというようなことから、三十二年度の計画を見合わせまして今日に至ったわけであります。
  66. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう拡張理由の変更というのは、どこで行なわれるのですか。
  67. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 この板付飛行場を使っておりますのは米軍でございまして、米軍の方が最近の機種の発達、ことにここで使用されている機種がFの101、102というようなものが現在使用されておりますが、そういう機種からいって現在のようにふやすことが必要であるということが、軍の方から要求が出てきたわけでございます。
  68. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとおかしいと思うのですが、一応完全な計画をもって、しかも日本国民の財産を基地に取り上げて、取り上げる理由は、標識灯なり方向指示器を作るということで取り上げておって、これでは間に合わぬというのは、非常に計画がずさんではないか。これは私は非常に責任があると思うのですが、どういうことなんですか。だから結局方向指示器なり、そういう安全施設は、そのための用地は買収したけれども、何もしなかった。機種が改正になるというのは、そのころからわかっておったでしょう。わからなかったのですか。どうなんですか。そう簡単な理由で基地周辺の住民の土地を取り上げてもらっては困ると私は思う。この辺の責任はどうなんですか。もう少し勘ぐれば、まだ延ばしたいのだけれども、一応第一回目はこのくらいにしておって、住民の反対を押え、そうして安全施設のためといって一応四万坪を買い込んでおって、買った以上は、次の機会をねらって、何も作らない、結果的にそういうことではないですか。この点どうですか。
  69. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 米側としては三十二年度には、それで間に合うというふうに考えておったわけですが、その後の最近の機種の発達というのは、相当目まぐるしいものがあるわけでございますが、その後の発達の状況からして、滑走路をさらに一万フィートにし、オーバーランを千フィートにする、そういうことでなければ航空の安全性が期せられない、そういう情勢になりましたので、このような要求がされたわけでございます。
  70. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、今回拡張をまたされるわけですね。また進入灯を作るということで拡張される。飛行機は、今おっしゃったようにどんどん発達していく。そうすると板付の場合は、今度の拡張で終わるという保証はどこにもないわけですね。今度また拡張が行なわれたら、直ちにまた次の拡張を用意しなければならぬ、どんどん長い滑走路を必要とする飛行機ができてくるのですから。どうですかその点、長官一つお願いします。
  71. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 この機種の発達というものは、将来どのようになるかということは、私にもわかりませんけれども、しかしこの飛行場をさらに延長するとか、そういうことにつきましては、地方住民との利害というものを十分調整してかからなければならない問題でございますので、私たちとしてはそういう点を十分考えながら、将来善処しなければならないというふうに考えております。
  72. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、今度の拡張によって主滑走路を一万フィートにする、そして北側に千フィートのオーバーランを作る。そうすると南の方にも千フィートのオーバーランが要るのじゃないですか、どうですか。
  73. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 まだ私たちとしては軍側からそのような正式な要求を受けておりません。私たちとしては板付というような、ああいう福岡市の中心部に非常に近接したところで、さらに飛行場を延長するというようなことは、非常にむずかしい問題があるというようなことは、十分承知しておりますので、そういう点は常日ごろから軍側にも話をしておるわけでございます。
  74. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしいですね。二月二十八日の丸山長官の答弁によっても、オーバーラフンというのは南北に必要だと言っている。主滑走路を一万フィートにして、その内容は、本来ならば昭和三十二年度に標識灯なり方向指示器を作っておる土地を、実際は、今回内容はオーバーランにするのでしょう。そして一万フィートの滑走路を作る。北側に千フィートのオーバーランをつければ、常識として南側にも千フィートくらいのオーバーランが要るのは当然でしょう。今要求がなくても、安全のためには当然要るのでしょう。どうですか。
  75. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 お話のように、軍側としてはできたらそのようなことができないかという希望は持っているようでございます。しかしいろいろ国内の事情等もお話しし、また従いまして軍側からはそういう正式な要求には接していないわけでございます。
  76. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今南側にもそういうオーバーランの設置の希望があるというのは、すでに日米合同委員会の施設特別委員会あたりで、一応米軍側から希望が出されておるという意味なのかどうか、その点をはっきりしてもらいたい。
  77. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 そういう意味ではございません。
  78. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもはっきりしないのですが、当然南側にも要るでしょう、飛行の安全のため、安全のためと言って拡張なさるのだから。安全のためには、北側だけオーバーランが要って、南側に要らないという理由はないじゃないですか。そうでしょう、飛行の安全のためだったら。当然南側にまた千フィート、あるいはどのくらいになるか知らぬが、常識として、オーバーランを作るための拡張はもうすぐに控えているとわれわれは見ざるを得ない。どうお考えになりますか。今米軍からそういう希望が出されているが、まあ板付は福岡のどまん中にあるので、なかなか問題がむずかしいから、今それを出されてないだけの話で、今度の拡張が一段落つけば、もうすぐ次に南の方のオーバーランを作らぬと、あなた方の常識からいってもおかしいでしょう。米軍からの希望が出ていることですし、もう現実の日程にあるということをわれわれはおそれるわけです。どうです。
  79. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 確かに理想的にはそうありたいわけでございまして、軍側としてはいろいろな話の過程においてそういう話が出るわけでございますが、いろいろ福岡市の実情等、そういうものをお話ししまして、何とかそういうことをしないで済ませることができないものかというふうに、私たち考えているわけでございます。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 三十二年度の拡張と今回の拡張が、私は別々のものではないと思っておったのですが、それがきょうの質疑、答弁によって明確になってきたわけです。そこで三十二年度にそういう標識灯、方向指示器という安全施設がないと飛行機はあぶないといいながら、それを作らぬでも現在までやってきたのでしょう。そのための事故が起こったですか。その点はどうですか。
  81. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 現在まで作らないでやってきたので、将来も作らないでもいいのじゃないかというようなふうにも一応考えられるわけでございますが、それでは現在の機種の発達等から見て非常に不安であり、安全性を欠く、そしてこの安全性の問題は米軍だけじゃなく、飛行機の事故等があれば市民にも悪い影響を及ぼすことでございますし、かつまた板付の進入灯設置につきましては、この板付というものが民間航空にも使われておりまして、年間約二十万人に上る乗降客並びに貨物等が輸送されております。民間航空のそういった安全性の見地からも進入灯の設置は必要であり、かつ昭和二十八年の十月、マニラにおける第一回の太平洋航空会議におきましても、板付が民間航空としても非常に重要な機能を果たしておりますので、進入灯を設置すべきであるというような勧告がなされている。そういう点から、やはりオーバーランをある程度延ばし、そして進入灯を作るということは、米軍のみならず、民間航空の安全性という点からも必要だというようなことでございます。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 矛盾するじゃないですか。そんなに安全施設が必要なら、三十二年にどうして作らなかったのですか。今あなたのおっしゃっている理由によると、作らなければならぬでしょう。それからまた私が今も指摘したように、南側にオーバーランしているじゃないですか、矛盾するでしょう。あなたのおっしゃっていることと現実に今まで措置されてきたことと矛盾するじゃないですか。標識灯なり方向指示器を作るといって土地を買い上げておって、実際は作らないでオーバーランにしてしまっているでしょう。こういうことは勝手にできるかどうかよくわかりませんけれども、実際にはオーバーランにして事実上の滑走路の延長、そして勝手にそういう安全施設は作らないでおいて、今こういうあれがあるからとあなたは言われるがおかしいじゃないですか、どうして作らなかったのですか。
  83. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 先ほど御説明いたしましたように、昭和三十二年のときにはあのような要求の形で実現したいというふうに軍側は考えておったわけでありますが、機種の発達等の状況から見て、三十二年度のそれでは機種の発達等に追いつかない、そういうことから今回の要求ということになったわけでございます。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、前回昭和三十二年のものはF100受け入れのためだと言われた。今回はF102のためだとおっしゃった。ちょっとお伺いしたいのですが、今米軍の軍用機でどういう機種、たとえば長い滑走路を必要とする機種はどういう機種が来ておるのか、また近い将来見込まれる機種について、その機種の必要とする滑走路について、もしわかっておりましたらお答えをいただきたい。
  85. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 私の聞いておりますところでは、米軍の飛行機で最も長い滑走路を必要とするのが、現在のF101あるいはF102という機種であるというふうに聞いております。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは問題がちょっと違うかもしれませんが、自衛隊が来年度から装備するF104Jですね、これが発着するに必要な滑走路の長さは大体どのくらいなのですか。
  87. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 不勉強で、自衛隊の方は私まだ聞いておりません。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局今までの御答弁を伺っておりますと、今回はF102のためだ、次にまた飛行機がどんどん発達するのですから、また新しい機種が来て滑走路を必要とするならばまた拡張される、こういうことになるわけですね。そうすると拡張というのは、飛行機の発着に必要だから拡張するので、拡張というのは飛行の安全のためでしょう。発着する飛行機の安全のためであって、これは絶えず板付基地は、あるいはほかの基地でもそうでしょうが、拡張の危機にさらされている。特に板付の場合は南側のオーバーランの設置の問題は具体的な問題です。この点どうですか。
  89. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 板付飛行場は福岡市の中心部に非常に近接しておりまして、現在でも非常に問題の多い個所でありますだけに、今後機種の発達によってさらにそれに対応してこれを拡張していく、あるいは延びていくというようなことは、非常に困難なことであるというふうに私たち考えておるわけです。そういった点、今後どういうふうに機種が発達するのか私も予想できませんので、予想を申し上げるわけにもいきませんけれども、十分福岡市民との利害を調整しながら考えていかなければならない問題だというふうに考えております。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今の点につきましては、昭和三十一年の一月十一日に衆議院の内閣委員会が調査団を派遣されたわけですね。そして二月八日の内閣委員会においてその報告がなされ、それが内閣委員会で採択をされた、それは御承知だと思いますが、四項目からなっておるのですが、もう一度これを読んでみます。  一、板付飛行場の如き大飛行場が人 口五十四万もある大都市のただ中に あることは、世界稀有のことであっ て、その影響するところ極めて甚大 なることを重視し、出来るだけ速や かに他に移転さすべきものと認め る。  二、同飛行場移転のための換地と費 用とは、同地米軍の任務と防衛条件 とをできるだけ尊重し、日米合同の 委員会で合議の上速やかに決定すべ きものと認める。  三、板付飛行場の如き大飛行場の移 転については、相当の年月を要する ものと考えられるので、同飛行場の 使用によって、官民が蒙ったこれ迄 の被害並びに将来の被害補償については、政府はなお一層調達庁を 督励して、万遺憾なきを期すべきも のと認める。  四、同飛行場移転迄は政府は極力 米軍と交渉の上、この上の施設の拡 張、就中官民の生活をおびやかすよ うな所に危険施設をなさしむべきで はないことを警告する。 以上の四点が確認をされておるわけです。そこで福岡の場合は昭和三十年の六月に全市民が一体となって、政党政派を超越して、福岡市に板付があったなら困るというので、板付基地移転促進協議会というのを作って、現在まで移転について陳情を続けて署名も行ない、請願も行なっておるわけです。そういう市民の要望については、何らの具体的な皆さん方の努力が示されずに、昭和三十二年、そうして今回、また来たるべき将来に南の方、こういう拡張が現実に行なわれておる。この内閣委員会の決議に対して、一体調達庁はどのような責任を感じておるのか、この点の御答弁は長官にお願いしたい。
  91. 林一夫

    ○林(一)政府委員 地元に移転促進協議会という福岡市民の熱烈なる団体があるということはよく存じております。かねてから板付基地を他に移転せよという強い目的と意思を持っておられることもよく存じておるのであります。調達庁としましても、この内閣委員会の調査団の調査報告によりまして、お示しになった四点については、できることはやりたいということで、大いに検討し努力して参ったのでございます。移転ということにつきましては、これはいろいろの点から考えてきわめてむずかしい問題でございまして、今のところ行政的な措置でこれを解決するということは、ほとんどできない状態でございます。ただし福岡市民が移転についてきわめて強い意思を持っておられるということはよく存じておりますので、その点は十分了解して、今後いろいろの点において御懇談を申し上げたい、こういうふうに考えておるのであります。  またこの移転については長年月を要する。今までにこうむった被害、あるいは将来にかかる被害というものについての補償でありまするが、被害に対する補償につきましては、従来できるだけの措置を講じてきておるのであります。今後ともこの福岡板付基地の特殊事情をよく考慮しまして、十分考慮して参りたい、こういうふうに考えております。  もう一つ、第四点の官民の生活を脅かすような危険施設をなさしむべきではない、拡張なかんずく官民の生活をということでございますが、この点は十分考慮してやってきておるのであります。今回の進入灯の施設も、安全施設を作るというのが目的でございまして、これは官民の生活を脅かすような施設ではない。むしろ安全を確保するというような目的の施設でございますので、皆様方の御了解のもとに話を進めてきたわけであります。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、ごまかされると困るのですがね。先ほど私も申しておりますように、滑走路を中心にして考えれば、安全のためでない拡張はほとんどないでしょう。しかも三十二年度のいきさつを私がこんなにくどく言っておるのは、今回は進入灯の設置の用地買収かもしれないけれども、三十二年度のいきさつから考えると、明らかに滑走路の延長であり拡張でしょう。たまたま三十二年度にも買収をしておったので、標識灯を作るのが、オーバーランを作られておるから、すでにその分については滑走路の拡張が今回は形式的には表面に上がってこない。しかし内容は滑走路の拡張です。そうでしょう。だから安全施設のためであるからということで問題をすりかえては困ると私は思う。これはもう皆さん方が幾らどういう御答弁をなさっても事実でして、私は弁解の余地はないと思うのです。そこでこういう拡張をなさるときに、閣議の決定というのはどういう時期を選んでなさるのか、ちょっとその辺を御説明いただきたい。
  93. 林一夫

    ○林(一)政府委員 土地所有者の大方の御了解を得、また地元の方々の大方の御了解を得まして、その上で閣議の了解を得るということであります。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今回の拡張の分については、何月何日の閣議で決定をされたか、明らかにしてもらいたい。
  95. 林一夫

    ○林(一)政府委員 八月十八日の閣議決定であったと思います。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今長官の御説明によりますと、大体土地所有者の了解と地元の大方の了解があった時期に閣議決定をされるという御説明です。ところが御承知の通り現在拡張地に含まれておる土地所有者は、拡張されようとされまいと、現にあの土地はもう使えないから、政府の方で補償するなり、あるいは買い上げてもらいたいという希望を持っておったわけです。買い上げてもらうことが、あるいは補償してもらうことが真意であって、拡張に賛成ということには結びつかないのです。従って地元所有者の大体の了解は得られておるでしょう。しかしそのほかのいわゆる福岡市民の、市議会なり移転促進協議会の了解は全然取りつけてない。そういう段階でどうして閣議決定されたのですか。あるいはその閣議に参加された調達庁の役人の方の、もうそういう了解を得ておるという誤った報告によって、閣議決定をされたのではないですか。その辺の事情をはっきりしてもらいたい。
  97. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私どもは今回の交渉につきましては、土地所有者の方々の御了解はもちろん、地元の福岡市当局あるいは福岡市の代表の方々との話し合いもいたしまして、御理解を得たということで、手続を進めたわけでございます。あるいはその御理解を十分得なかったというおしかりをこうむるかと存じますが、私ども考えでは、大体一応の御了解を得た、御理解を得たというようなことで手続を進めた次第でございます。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは全然間違いです。その後の経過ではっきりしておるはずです。長官、それをお聞きになりませんでしたか。市議会の代表もあるいは移転促進協議会の代表も全然了解を与えていない。なぜならば、本来陳情をし、請願をし続けておった移転の問題には全然誠意を示さずに、この拡張問題だけを中心に持ってこられておる。そういうやり方について市議会も移転促進協議会も非常に不満を持っておる。事実と反するわけです。
  99. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その後いろいろお話を聞きまして、御理解を得るのが十分でなかったということはよくわかりました。今後この問題につきましてもさらに重ねて御相談を申し上げまして、十分の御了解をいただきたい、こういうふうに考えております。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは誤った報告によって閣議決定が行なわれておるから、これは当然この閣議決定を取り消さなければいかぬ。今長官がおっしゃったような了解を実際は得ていなかった。得ておるという報告に基づいて閣議決定がなされているので、実際はそういう了解は与えられていないのだから、その旨をもう一度閣議に持ち出して、八月十八日の閣議決定は事態がはっきりするまで取り消してもらう、閣議決定は白紙に返すべきである、私はそう思います。その点について長官の御答弁を願います。
  101. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御理解をいただくことが十分でなかった、こういうふうにも考えますが、一応御理解を得たと心得まして閣議決定をいたしたのであります。従いまして不十分な点もございますので、今後十分御相談申し上げまして十分の御理解をいただきたい、こういうふうに私ども考えております。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 十分ではなかったというふうに長官は問題をすりかえられるが、市議会も移転促進協議会も全然了解を与えていないのですよ。不十分じゃないのです。全然与えていないのです。従って閣議決定は白紙に返すべきだ。今長官がおっしゃったように、いろいろ今後努力を重ねて、問題がはっきりしてくるまでは、誤れる報告に基づいた閣議決定ですから、当然その旨をもう一度報告をして、閣議決定を白紙に返すことが、私は筋の通った話であると思うのですが、重ねてその点のお考えをはっきりさせていただきたいと思います。
  103. 林一夫

    ○林(一)政府委員 同じようなことを繰り返してまことに恐縮なんですが、私どもはある程度の御理解を得たもの、こういうふうに心得てやったわけです。さらに十分に御相談申し上げまして御理解をいただきたいと思います。それで一つ御了承願いたいと思います。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう肩をたたいて話すようなわけにいかぬのですよ。これは重大問題なのだから。福岡市議会なり移転促進協議会が了解を与えていないという事実はお認めになりますか。
  105. 林一夫

    ○林(一)政府委員 促進協議会というものの全員のお集まりを願って御理解をいただいたということは聞いておりませんが、相当の方々のお集まりをいただいて説明申し上げて、御理解をいただいた。またその前にも数回市当局あるいは県当局には十分相談しまして御理解をいただいた、こういうふうに考えております。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 移転促進協議会の人も集まってもらって話をしたとおっしゃるが、あのときの話は説明会であって、説明して、言いっぱなしで帰ってもらっておるはずです。それを了解を得たなんで、そういうばかな話がありますか。もしそうなら、この問題をはっきりさせましょう。そういうことでこういう基地拡張を進められるのはもってのほかだ。言いっぱなしでやるというようなこと、そういう態度では困ると思うのです。この点は一つはっきりして下さい。あのときは単なる説明のしっぱなしであって、了解もへちまも、そういう問題じゃないのです。全然了解を与えていない。これをはっきりして下さい。
  107. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私どもは市当局、県当局並びに代表の方々の一応の御了解を得たというふうに考えて手続を進めたのでございますが、先日も市当局の方々あるいは市会議員の方が大ぜい来られまして、あの点についてはもう少し相談してくれというような陳情もありましたので、今後はその御要望に従いまして、あの問題についてはさらに御相談を申し上げて参りたい、こういうふうに考えております。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと問題ははっきりしてくるのです。間違いの報告によって閣議決定がなされたのですが、この八月十八日の閣議決定はそのままで押し通すという意味ですか。ほかの説明は要らぬです。どうなのか。その点、一言でいいから、長官のお考えをお聞きしたい。
  109. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私ども考えは、閣議決定はこのままにしておいていただいて、十分に話し合いを進めて参りたい、こういうふうにお願いしておるわけです。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうやり方ではほんとうに住民の協力は得られません。これは板付に限らず、日本人の権利義務の関係が非常にややこしいこの基地問題で、そのようなお考えで今後この基地問題を扱っていかれるということは、私はこれは大へんな間違いであると思う。今度新しく長官になられたのですから、いろいろおわかりにならぬ点もあるかと思いますけれども長官がそういうお考えでは、私どもは困ると思うのです。これは御同意を得られませんが、今後とも地元と国との関係でこれは十分論議が続けられると思いますから、この点は非常に不満足であるということを表明をして、次に進みたいと思います。  今のような調達庁やり方でいくと、とにかくいわゆる地元関係者の了解がどうしても得られなくても、これは計画通りやるのだ。三月三日に提供された資料によりますと、結局買収も第四・四半期の当初において全部これを完了するという予定のようです。あなた方の今のスケジュールからいくと、実際にその事情変更といいますか、工事に着工されるのは大体いつごろになるのですか。
  111. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 軍側としてはできるだけ早く着工したい、このように申しております。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうとうふのような答弁では困るのです。大体いつごろなのかと言っておるのです。それにできるだけ早くとはどういうことです。できるだけ早くというのは、あなた方が工事に取りかかられる条件が完了して後という意味なのですか。長官がおっしゃっておるような、地元関係者の了解が完全にいって後すみやかにという意味なんですか。
  113. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 軍側としてはできるだけ早く着手したいわけでございますが、私たちとしてはいろいろな福岡市との関係もあり、円満な形でこの問題を処理したいというようなことから、もう少し待ってほしいということで話をしておるわけであります。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと結局地元関係者の完全な了解が取りつけられるまでは、調達庁としては米軍をして着工をさせないという方針なのかどうか。
  115. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 調達庁としては、軍側のそういう要望もございますし、このオーバーランを千フィートふやし、さらに進入灯を設置することを実現してやることも必要だという点から、そういう点についてさらに地元の理解を深めまして、なるべく早い機会に地元の了解を得たいというふうに考えております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは希望であり理想でしょう。だから私が言っておるのは、了解が得られるまでずっと待たれるのか、あるいは了解を得るについてはその期間にも限度があるというふうにお考えなら、大体どのくらいまでは一つ一生懸命にやってみる、しかしこの時期では万やむを得ないのだというふうにお考えなのか、その点をはっきりして下さいと言っておるのです。二つに一つでしょう。もし了解が得られるまで待つというのだったら、それも時期としては明快です。もしそうでないならば、一応了解を取りつけるまでの時間についての最大許容期間があると思うのです。二つに一つです。どちらか、明快にしてもらいたい。
  117. 林一夫

    ○林(一)政府委員 なるべく早く御理解をいただきまして、なるべく早く米軍に提供したい、こういうふうに考えます。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう答弁では私はやめるわけにいかぬですよ。どうしてもう少し親切に答弁をしていただけないのでしょうか。私の質問しておる趣旨がおわかりにならぬのですか。なるだけ早く了解を取りつけて早くかかりたい。では——ではと言っておるのです。では完全な了解が取りつけられるまで待たれるのか、待たれないのならばいつごろまでは待つのだ、それをはっきりして下さいと言っておるのです。もうできるだけ早い期間とか、なるべくという答弁は要りません。私がお尋ねしておることについて具体的にお答えいただきたい。具体的に答えられないなら答えられない、まだそういう具体的なことを考えていないならいないでいいです。あるいは答えることが何かの理由でできないならできないでいいですから、もう少し親切な、的を射た答弁をしてもらわぬと困るのです。
  119. 林一夫

    ○林(一)政府委員 いつまでに取りかかるかというようなことについては、この時期ははっきり申し上げられません。もちろん取りかかることについては、先ほどから申し上げておるように、御理解を十分いただきまして取りかかるということになるわけであります。一つこの際私どもも大いに折衝しまして、御理解をいただいて、できますれば早く取りかかりたい、こういうふうに考えております。時期の方は申し上げられません。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは工事着工の時期は聞かぬことにしましよう、答えられないとおっしゃるから。では問題を変えて、地元の了解を得るのに、大体どのくらいかかると思っていらっしゃいますか。
  121. 林一夫

    ○林(一)政府委員 これは御相談でございまして、相手が早く御納得あるいは御理解をいただけるなら早くいくのでございます。私どもはこの際なるべく早く、できるなら本年じゅうくらいまでには御理解をいただいて進めたいというふうに考えております。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 問題がやっと明確になって参りました。大体今年じゅうには地元の了解も取りつけたい、長官の御答弁の通り、それは明確になりました。それはいいでしょう。  次に、先ほどから部長なり長官、板付がほんとうに福岡市のどまん中にあって、大へん迷惑をかけておるということについては、再三御答弁をいただいておる。それほど福岡市民はあらゆる問題で迷惑をこうむっておるわけです。そしてまた長官は、私どももいろいろ移転促進協議会からの、あるいは市議会の方からの決議の内容について努力をして参りましたけれども、移転という問題についてはなかなかむずかしいという御答弁もいただきましたが、いろいろ陳情なり請願について努力をしたがという、その努力の内容なのです。私どもとしては、もう何年も前から、どのくらい福岡市民に迷惑をかけておるか、具体的な科学的な調査内容が私は必要であろうと思う。それが明確になってくれば、このぐらいならまあいいだろう、しかしこれでは悪いだろう。たとえば騒音からいくと百三十ホーン以上は鼓膜が破れるとかなんとかいうことを私は聞きましたけれども、いろいろ限度があると思うのです。そういう調査をすることが、やはり具体的に福岡市民の要望にこたえる調達庁の態度でなくてはならぬ、長官の御答弁の内容というものはそういうものでなくちゃならぬと思うのです。ところがここ二、三年来、福岡市からこの調査のことについて、再三具体的に予算上もお願いを申し上げておるわけです。それが今までは十分なる措置が、調査費の点についてとられなかった。これは今後どのようにお考えになるか、長官の決意のほどを一つ
  123. 林一夫

    ○林(一)政府委員 周辺の方々に非常に被害を与えて御迷惑をかけておりますので、その調査をいたしておるわけであります。御承知のように騒音が人体に与える被害、これにつきましては三十六年度におきまして、板付の基地でこの騒音の被害状況の実態調査、これを兼ねた騒音分布調査を行なっておるわけであります。これはこまかく申し上げますと、航空機の騒音を滑走路を中心として三十四地点で測定して、飛行場周辺地区の騒音の分布調査をするということが目的でありました。このような人体に与える被害調査につきましては、今後も十分考慮しまして進めて参りたい、こういうふうに考えております。また家畜——鶏も含めまして、こういうものに与える影響につきましても、本年度は予算を計上しまして調査を実施しておるわけであります。来年度も、できますならば何らかの調査費をいただきまして、調査を継続したい、こういうふうに考えております。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 御答弁が明確であれば早く済むのですけれども、非常に時間をとって恐縮ですが、もうあと少しです。  調達庁のお考えの中に、これは陳情なり請願に行ったときに、言葉の端々で地元では非常に心配をしておることがある。基地拡張の反対運動を盛んにすれば、補償の方はあまりうまくいきませんぞというようなニュアンスを持った態度なり、あるいは答え方をされる。それからまた国会でいろいろ質疑応答をやっておるけれども、そういう内容に一々調達庁が責任は負いませんと暴言を吐いた人がおるわけですが、今の基地拡張反対運動をやれば補償の問題はあまりうまくいかない、これは私は間違いであると思う。この補償の問題と、基地が拡張したら困りますという陳情の運動なり反対の運動、それをごっちゃにするような態度では調達庁はないと私は思うのですが、これは全然別個の問題で、反対の運動が盛んであれば盛んであるだけ、やはり受けておる被害が大きいからそういう運動が出てくるのである。従って、補償の問題もそれに従ってといえばおかしいですけれども補償補償で十分それだけに考えてやっていただかなければならぬと思うわけですが、この点一つはっきりお答えをしておいていただかぬと、どうも地元では調達庁はそういう考えでおるらしいというようなことを流す人たちがおるので、はっきりしていただきたいと思います。
  125. 林一夫

    ○林(一)政府委員 反対が強いから、あるいは反対が弱いから、その補償金を多くするとか少なくするとかいうようなことは、全然考えたこともありませんし、申し上げたこともございません。そういう点は一つ誤解のないようにお願いいたします。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後に、きょうの質問で明確になった点を、大事な点だけ確認したいと思うのですが、まず一番は、南の方にも当然オーバーランの拡張が予想される、すでに米軍からもその希望が出ておるということが一つですね。それから閣議決定の点については取り消すわけにはいかない、そういうお考え。そして今後の作業のスケジュールとしては、大体地元とのいろいろな交渉なり議会の賛成の取りつけをことし一ぱいに完了したい。それから拡張反対の運動と補償の問題は別であって、板付についてはほかの基地と違って、周辺住民の受けておる被害なり犠牲が非常に大きいので、今後とも十分措置をして参りたい。大体そういう御答弁を得たと思うわけですが……。
  127. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そのうち一つの点、板付飛行場の南側の基地の拡張を予想しておるというようなことでございますが、私ども考えは、南側についても米軍は、何と申しますか、進入灯設置の希望を持っておるということを先ほど申し上げたのでございまして、その他の点についてはおっしゃる通りであります。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっきはそうじやなかったですよ。北側にもオーバーランを今度作るので、オーバーランといえば南の方も必要なんだ。それはお認めになっておる。そしてそういう希望も米軍から出ておる、それもはっきり言われたでしょう。ただ今のところでは、調達庁としては板付の条件を考えて、南の方にそういう米軍の希望があるけれども、今は受けてないというか、それは困る、何とかほかにそれにかわるようなものがあればといって、努力をしておる、そう部長は言われたでしょう。南の方にオーバーランが必要だということは常識的にも考えられると言ったら、あなたは納得されておったでしょう。それを常識的に必要と考えられるというのを、常識的に予想されると、まあ言葉は変わったかもしらぬが、同じことです。しかも米軍からもその希望が出されておる、ただ今はペンディングしておる、こういうことでしょう。
  129. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、南側につきましては私は進入灯の設置、こういうふうに申しましたが、やはりオーバーラン、これは同じ安全施設でございますから、オーバーランの設置の希望が米側にある、これははっきり申しました。もちろんこれは先ほども不動産部長が申し上げたのは、これをかりに正式に向こうから申し入れがあって、かりにこれをやるとしましても、これは地元の御了解を得なくてはできないことであるということを先ほど申し上げたのであります。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おかしいじゃないですか。北側も地元の了解がなくちゃやらぬと言いなさるならわかるのですよ。北側の方は先ほどの答弁のようにあいまいな答弁をしておって、南の方は御了解がなくちゃできぬ。南も北も一緒のはずじゃないですか。一緒のはずでしょう。オーバーランを作れば、オーバーランのほかに当然方向指示器なり標識灯が要る。わかり切った話じゃないですか。すでに南側について延長は七千坪ということが一応の想定として持たれておるわけでしょう。その辺はそうごまかさないで、はっきりしてもらわぬと困ります。
  131. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 南側につきましても米側としては、できたらオーバーランを作りたいという希望は持っておることはいろいろな話の過程で、私たちが事務的な交渉をする場合に、北側との話の関係や何かでそういう話も出ますけれども、私たちとしてはこの板付飛行場という事情を話して、そういうことを要求されても、現在においてそれを直ちに実現し得るような見通しが——北側だけでもおたおたしておりますので、これは福岡市民との利害というふうなことを考えてしなくてはいかぬということで、そういう希望というものが米側にはある、ただそれを私たちはまだ予想をするということはしていないということでございます。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 安全のためにと言うて今までずっと拡張してこられたでしょう。また安全のためにと言ってやるのじゃありませんか。もし南側についてそれだけの配慮があるならば、どうして北側についても同じような配慮をせぬのですか。おかしいじゃないですか。一応あなた方が考えているのは、北側をまず片づけて、そうして南側に取りかかるということでしょう。今の段階では北側もすったもんだしておるので、まずこれを片づけて、当然安全のために必要であるオーバーランと、それに伴う方向指示器なり、標識灯なり、進入灯を作る、これは常識として当然のことですよ。それでは絶対やりませんか。絶対南の方には作らないですか。われわれの常識として、またあなた方が過去なさってきた板付の基地に対する一連の拡張のあなた方の態度からすれば、その答えは当然出てくる。北側だけオーバーランを作って、進入灯をその先に作って、南側は何もせぬでいいということはないじゃないですか。現に三十二年度のときも、北側に標識灯、南側に方向指示器を作るために用地を買収したでしょう。それはごまかしである。滑走路を拡張するために本来は買っておった。それを滑走路の延長といえば住民が反対するから、一応方向指示器なり標識灯を設置するという理由で、安全施設を作るという理由で、三十二年度は南北両端に四万坪買った。買った以上はもうそのままにして、すぐその用地は滑走路の延長になりましたよ。そうして来たるべき機会をねらっておる。それが三十六年、今年度の拡張です。そういうごまかしをやってもらったら困ります。その点ははっきりして下さい。当然予想されるでしょう。
  133. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 軍側はそういう希望がございますが、調達庁としては北側だけで済ませたいというふうに考えております。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 くどく言いません。もう南側は調達庁自身によって拡張要望が出ても承知をしない、そういうふうに受け取っていいですね。
  135. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 これはやはり条約とかそういうことを考えなければなりませんが、私たちとしてはこれまでもこの板付の特殊事情というようなものを話しまして、南側の方は正式に出されても、その処理が非常にむずかしいということで話をしておるわけでございます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 とにかくそういう御答弁では、私どもとしては納得するわけにいきません。今後の調達庁やり方が、きょう答弁なさった通りであるか、事実をもって私どもは見て参りたい、このように思うわけです。  以上をもって質問を終わります。
  137. 中島茂喜

    中島委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時散会