○
太田委員 私は、第二班の
国政調査の結果の
概要を御
報告申し上げます。
第二班は、
津島文治、
小澤太郎、
二宮武夫の三
委員と私に、
調査室からは崎川
調査員が参りまして、九月十七日から同二十日まで四日間の
日程で
兵庫県、
大阪府、和歌山県の
調査を行なったのであります。かなり盛りだくさんの
日程ではございましたが、
現地関係者の熱心な御
協力によりまして、ほぼ
所期の
目的を達成することができました。また、
兵庫県では当
委員会理事の
渡海委員がわざわざおいで下さいまして、
調査上多大の
便宜をお与え下さいました。この際あわせて
感謝の意を表したいと存じます。
調査の
目的は、主として第二室
戸台風等過般風水害を受けました
地方公共団体における
地方行政の
実情についてであります。
私どもは十一月十七日午後三時半
大阪駅に到着後、直ちに自動車で
尼崎市に向かい、まず
尼崎市役所において
市当局より
同市の
高潮対策並びに
地盤沈下対策について詳細な
報告と
要望を受け、次いで小雨の中を
尼崎市
長洲ポンプ場及び大物川並びに
尼崎港
防潮堤と
同港門を
調査いたしました。
翌十一月十八日は、午前九時より
兵庫県庁におきまして
県当局より第二室
戸台風による
被害と県における
応急措置の
概要並びに
災害対策に関する
要望を聴取し、同十時三十分
被災現地の
実情を
調査するため
海路淡路島に向かい、
洲本市役所において
市当局より
被害の
状況と
応急対策の
概要並びに
要望を聞き、次いで同島において特に
被害のはなはだしかった
由良地区におもむき、つぶさに
被害の
実情を
視察し、三時半
洲本港を出発して
神戸港に帰着、直ちに阪神国道を
大阪に向かったのであります。
翌十九日は日曜でありましたけれども、午前中は
大阪府並びに
市当局より第二室
戸台風災害に関する被災の
状況と
災害対策に関する
要望、なかんずく
大阪湾
高潮対策事業に関する特別
措置及び今や焦眉の急となっております
地盤沈下対策について詳細な
説明を受け、午後は西淀川河口
地帯における地盤沈下の
状況と高潮
災害の
実情を
調査し、次いで堺、泉大津、岸和田等、泉州海岸における
高潮対策の
実情を
調査しつつ和歌山へ参ったのであります。
同二十日午前は、
地域開発の
実情を
調査するため和歌山市をたちまして、海草郡の初島町へ足を伸ばし、東亜燃料工業の和歌山工場を
視察いたしました。午後は地盤沈下、高潮
災害の
実情を
現地に見るため海南港等を
調査し、後
県庁へ参りまして、
県当局より第二室
戸台風による
被害と
応急措置の
概要等につき詳細な
説明を受けました。
以下順次
調査の結果を詳細に申し上げるべきでありますが、時間の
関係もありますので、ここでは適宜省略して、その概略を御
報告させていただきます。
まず
兵庫県から申し上げます。
初めに
災害の
被害状況でありますが、人的
被害は死者十人、負傷者百三十一人、計百四十一人であり、物的
被害の総額は百二十五億九百四十五万円であります。このうち建物
関係は
全壊流失四百九十七戸、半壊千七百五十八戸、床上浸水八千八百一戸床下浸水三万六千三十四戸、計四万七千九十戸、それに非住家四千二百十五件でありまして、被災人員数は二十万四千八十六人であります。
次に物的
被害の内訳のあらましを申し上げますと、建設省
関係は
市町村単独工事分及び国の直轄分を除き、その
被害個所数は三千二百九十九ヵ所、
被害の見積額は三十二億円、以上であります。
次に、運輸省
関係の
被害見積額は三億一千九百二十九万八千円、農林省
関係は四十九億六千八十万八千円、通商
産業省
関係は被災
企業数が八千七百二十五ヵ所、
被害の見積額は十五億七千百七十五万一千円、厚生省
関係は三千三十八万四千円、文部省
関係は
被害校数四百四十校、文化財三十三件、
被害の見積額八千三百五万六千円となっております。
さて、第二室
戸台風によりまして
兵庫県は甚大な
被害を受け、
公共施設等の
災害復旧を初め各種の
災害対策事業等に多額の
経費の支出を余儀なくされる一方、その歳入面では、
地方税等の減免の
措置に伴う
減収が予想されております。このため
県当局といたしましては、第二室
戸台風による
災害につきまして特別の
措置を強く
要望しております。その根本的な考え方は、第二室
戸台風による
災害復旧に対し、伊勢湾台風に際してとられた特別
措置と同様な
措置を講じられたいというのであります。そしてこれらの
要望は、具体的には
関係各省にわたるわけでありますけれども、共通の事項といたしましては、第一に
復旧については、単なる原形
復旧にとどめず、
改良復旧を全面的に認めること、第二に淡路、但馬のような
災害の常襲
地域に対しては防災
恒久対策を樹立し、その実現をはかるよう大幅な国の援助
措置を行なうことなどであります。
次に各省別に申しますと、まず自治省
関係としては、一、補助
災害復旧事業費の地方負担額及び単独
災害復旧事業費の全額に相当する
起債ワクを確保すること、二、
農地、農業用施設の小
災害に対する
起債については満度に認めること、三、
起債の
特例法による元利補給率は伊勢湾台風よりも低いので、同等以上に引き上げることなどであります。
農林省
関係につきましては、一、十月
災害に対しても九月
災害と同様に
特例法を
適用すること、二、天災融資法、自作農創設維持資金及び農林漁業金融公庫の取り扱いにかかる
災害資金の貸付
対象の
拡大、貸付限度額の引き上げ、償還期限の延長及び貸付利率の引き下げ等の特別
措置を講ずること、三、
災害復旧事業の労務費
単価を増額すること、特に淡路地区については丙地区を甲地区に引き上げること、四、農業
災害補償法による共済金について概算払いの
措置を講ずること、五、
被害を受けた漁船、漁具については、共同利用によるものはもちろん、個人分についても
復旧のため大幅な国庫助成の
措置を講ずることなどであります。
厚生省
関係といたしましては、一、
災害救助法に基づく救助に要した費用の合計額が標準税
収入額の千分の二を超過した場合に、超過額の百分の五十が国庫負担金として交付されることになっているが、少なくとも千分の二を千分の一に改正すること、二、応急仮設住宅の坪
単価を増額することなどであります。
建設省
関係につきましては、一、
公共事業の認可、
実施設計に用いる労務
単価を
実情に応じて引き上げること、特に甲、乙、丙の
地域区分を是正すること、二、
市町村が施行する
公共土木施設
災害復旧事業における激甚地
指定混合方式によれば、当該
市町村の
被害が標準税
収入の二分の一に相当する額をこえ、かつ当該
市町村にかかわる
災害復旧事業費総額が当該
市町村にかかる標準税
収入合計額をこえるものの区域となっているが、
災害復旧事業費総額が標準税
収入合計額をこえる
市町村は全
災害が激甚であったことを証するのであるから、初めの二分の一以上という規制を除外することなどであります。
文部省
関係といたしましては、
公共学校施設
災害復旧費国庫負担法の一部を改正して
災害復旧制度を完備すること、特にこのたびの
災害においては小
災害が非常に多かったので、これが
復旧工事についても大幅な国庫負担を認めることなどであります。
次に
尼崎市を中心とする
高潮対策並びに
地盤沈下対策につきまして簡単に述べておきたいと存じます。
あらためて申し上げるまでもなく、
尼崎市及び西宮市一帯は、新潟、
大阪、東京地区と並びまして地盤沈下がことにはなはだしく、政府におきましても真剣にその
対策が検討されていると承知しておりますが、私どもの
調査によりましても、市内の排永はその後ますます悪化の一途をたどり、
防潮堤におきましては、建設以来すでに一・五メートルの沈下を生じているところもあるような状態でありまして、かりに伊勢湾台風
程度の台風が襲来いたしましたならば、南部全域が水没し、
河川、港湾はその機能を失い、交通機関は途絶し、工業
生産に重大な支障を及ぼすのみならず、市民の
生活に深刻な脅威を与えることは火を見るよりも明らかなことであります。
このような
実情から
兵庫県、
尼崎市、西宮
市当局は一致して、一、これらの
地域では地盤沈下がことにはなはだしく、満潮位以下の区域に
工業地帯と
人口密集
地域があるため、緊急に防御
対策を必要とするので、これらについては
高潮対策事業の
計画を繰り上げ
実施して、三ヵ年で完成するように取り計らわれたいこと、二、この
地域はわが国でも有数の
重工業地帯であり、その消長は国家経済に
影響するところ甚大であり、かつ
高潮対策事業の、ことき大規模の
事業は、
地方財政力をもってしてはとうてい負担しがたいので、
高潮対策事業の国庫負担率を六割に引き上げるとともに、
起債の充当率についても引き上げの
措置を講ずることとの切実な
要望がありました。
次に
大阪府並びに
大阪市について申し上げます。
初めに
被害の
状況から申し上げますと、人的
被害は、死者二十五人、負傷者その他千四十二人、計千六十七名であり、物的
被害の見込み総額は千二百五億八千五百万円となっております。
その内訳を申しますと、物的
被害のうち、まず住居
関係につきましては、全壊三千五百八十七戸流失二百二戸、半壊一万二千八十四戸床上浸水六万九千九百三十八戸、床下浸水七万七千六百七十六戸、一部損壊十三万三千九百十八戸、その他五十二万四千百六十二戸でありまして、その
被害金額は実に四百十八億二千二百万円となっております。
次に
土木関係は、
被害金額二十七億五百万円、農林水
産業関係八十一億一千四百万円、文教施設
関係三十億三千万円、商工業
関係五百十七億三千八百万円、公用、
公共用施設
関係三十一億五千九百万円、電気、運輸及び通信
関係五十億一千七百万円、
災害救助
関係その他が五十億円となっております。
あらためて申し上げるまでもありませんが、この
災害によりまして、
大阪府・市は
財政上甚大な
打撃をこうむり、
公共施設等の
災害復旧を初め各種の
災害対策事業等に多額の
経費の支出を余儀なくされる一方、歳入面におきましては、
地方税等の減免
措置に伴う多額の
減収が予想されておる
実情であります。
このため、
大阪府・市は、
公共土木、住宅、農林水
産業施設、学校等の
災害復旧について万全の
措置を講ずるのみならず、再
災害防止のための抜本的
対策として、
高潮対策事業、
地盤沈下対策事業等を強力に
推進するため、所要の立法
措置その他の特別
措置を強く
要望しております。
そのあらましをここに述べますと、防災
関係のうち、
大阪湾
高潮対策事業に関する特別
措置につきましては、今次
災害による被災の
状況にかんがみ、
大阪湾に面する海岸及び
河川について、高潮、暴風、洪水等による
災害を防止するため必要な海岸堤防、
河川堤防、防波堤等の施設の新設、改良及び
災害復旧に関する
事業については、伊勢湾等
高潮対策事業におけると同様の特別
措置を設け、十分の八以上の国庫補助を行なうとともに、
事業の
実施に当たっては、治水十ヵ年
計画の別ワクとして、その
早期完成を期すること、特に再
災害防止の見地より緊急を要する
大阪市内
河川及び淀川、大和川河口
高潮対策事業、
大阪市港湾
地帯高潮対策事業、泉州海岸
高潮対策事業等については、昭和三十九年度までに
事業の完成を期すること、また
大阪市地盤沈下のための地下水のくみ上げ規制等につきましては、地盤沈下による
災害を防止するため、冷房
用水及び工業
用水等の地下水くみ上げを、既設の井戸をも含めて強力に規制するための立法
措置を講ずることなどであります。
次に
起債関係につきましては、今次
災害の特殊性にかんがみ、
復旧事業債は大幅に増額すること、また住宅
関係におきましては、
災害公営住宅の建設について、国庫補助率を現行の三分の二から四分の三に、建設戸数を滅失戸数の現行の三割から五割に引き上げるとともに、その建設に当たっては耐火構造を原則とすること、さらに住宅金融公庫の融資ワクを十二億円増額し、一戸
当たり融資限度額を、建設にあっては現行三十二万円を五十万円に、補修にあっては、現行十六万円を二十五万円にそれぞれ引き上げることなどであります。
次に
農林関係では、被災農林漁業に対する融資の資金源として、総額二十五億円を
措置すること、文教
関係では、公立学校施設の
災害復旧に要する
経費について、国の負担率を四分の三とする特別
措置を設け、その
適用基準を緩和すること、公立学校の建物で木造であったものを鉄筋作りのものに改良して
復旧する場合には、原形
復旧とみなすこと、また私立学校施設についても、
被害の
程度に応じて助成の
措置を講ずること、さらに
中小企業関係につきましては政府
関係中小企業金融機関の府下被災
中小企業への融資資金源として百五十億円を
措置すること、またその貸付利率については年六分五厘以下の低率とすることなど、以上の諸点が強く
要望されておるのであります。
そのほか
大阪府
財政の
問題点として、第一に
人口の伸びは全国平均を著しく上回っているにもかかわらず、府
財政の伸びは全国平均より低いこと、第二に義務教育費国庫負担金の抑制、
起債の抑制等により投資的
経費が伸び悩んでいること、たとえば昭和二十九年度から昭和三十四年度までの五ヵ年間における全国の伸びは四九・七%であるのに対し、
大阪府は一一・二%しか伸びていないことがあげられ、第三には財源調整問題が取り上げられました。すなわち
大阪府は昭和二十九年度から昭和三十五年度の間において財源調整の名のもとに百八十億円を吸い上げられている。もしこのようなことがなければ今述べた一、二の
事例も当然緩和されているものと考えられる。しかも財源調整問題は毎年持ち出されるので、
財政運営の
計画性が持てなくて困惑している。府においては現在
人口増加等に伴う重要諸
事業が山積しているが、これらの
事業はあらためて述べるまでもなく、現在の
行政水準を維持するもの、または防災のための府として不可欠の
事業であるので、これらの
事業を
推進するためにも財源調整による財源の抑制は全く不当と言わざるを得ない。
なお、先般の
税制調査会の答申によれば、
大阪府は平年度において約十三億円の
減収となる。しかもこの改正案によれば、全体では減税となりながら、府民が直接納める税金は増額となる
事情を十分に勘案していただきたい。また、たばこ消費税の本数割課税方式への改正は反対であるなどの
意見が述べられました。
税制調査会の答申に対しほぼ同様な
意見は
大阪市からも出されております。すなわち同
市当局者からは現行税制による税源の配分
状況並びに伸長性を見ると、
大阪市は
大都市として複雑多岐にわたる
行政事務をかかえているにもかかわらず、制度上きわめて不利な
立場に置かれている。特に今回の税制改正は
大都市行政の現状に対する配慮が欠けているとしか考えられない。税制改正案の
大阪市に対する
影響は初年度十億円、平年度十四億円の大
減収が予想されており、膨大な
財政需要をかかえている上、
災害復旧には多大の
経費を要するなど、本市
財政は今や危機に瀕している。たとえば富裕団体の名で呼ばれる
大阪市の財源超過額は昭和三十三年度の二十二億から、三十四年度十三億円、三十五年度六億円と縮小し、三十六年度において財源超過額はほとんど皆無になるのではないかと予想されている。しかるに
目的税である地方道路譲与税は昨年度来ほとんど交付されず、あまつさえ改正案においては、たばこ消費税の従量配分制度が考えられているが、これは本市のとうてい容認しがたいところであるとの
意見が述べられました。
最後に和歌山県について申し上げます。
まず、第二室
戸台風による
被害の
概況から申しますと、人的
被害は死者十五人、行方不明一人、負傷者三百三十七人、計三百五十三人であり、物的
被害の総額は三百三十九億三千八百八十六万三千円であります。罹災家屋及び罹災者につきましては、全壊二千九百四十二戸、流失百五十三戸、半壊九千百十戸、床上浸水九千九百四十九戸、床下浸水一万五千百七十一戸、非住家一万四千六百四十五戸、計五万一千九百七十戸でありまして、その罹災者数は十三万六千百九十五人となっております。物的
被害金額の内訳のあらましは、
土木関係が
被害個所数五千三百五十個所で、その
被害金額五十億四千七百五十三万円、農業
関係六十九億二千九百七十五万八千円、耕地
関係十三億六千七百五十三万円、林業
関係二十八億五千九百九万二千円、水産
関係二十八億五千二十八万八千円、
公共施設
関係十一億四千三百十五万二千円、商工業
関係六十七億八千八百三十六万円、衛生
関係一億三千三百四十二万三千円、住宅
関係六十七億一千百二十七万七千円、開拓
関係一億八百四十五万三千円となっております。
さて、第二室
戸台風が和歌山県
財政へ及ぼした
影響につきましては、同県がその
財政力において貧弱県でありますだけに、
兵庫県や
大阪府とは別の意味においてきわめて深刻なものがあると考えられるのであります。御承知のように和歌山県は、地理的に台風の常襲コースとなっておりまして、連年その
被害があとを断たず、相つぐ台風による
災害復旧費が県
財政窮乏の大きな
原因をなしていると言えるのであります。このため他県にはあるいは例を見ないことかもわかりませんが、県政の最重点
目標の
一つに、既発生
災害の
早期復旧と
災害未然防止のための恒久的諸施策の
整備確立が掲げられており、この基本方針に基づいて次のような
要望が行なわれました。
一、
災害関連、助成及び
災害防除法
対策事業費等については高率
適用すること。
二、統一的恒久法により
災害常襲県における激甚
災害については全県下
適用とし、
財政金融
措置についても特別の考慮を払うこと。
三、
公共災害として採択されなかった失欠格分については全額小
災害として
起債を認め、これが元利補給については
公共災害並みに
措置すること。
四、連年常襲する
災害によって小
災害個所が増大し、これら単独
災害復旧事業に充当した
起債の
元利償還金は
増加の一途をたどっているが、これが元利補給については地方交付税において
公共災害並みに
措置すること。などであります。
このほか、県政の最重点施策としての道路
整備の積極的
推進並びに所得倍増
計画に即応した経済構造の高度化を
目標とする臨海
工業地帯の
整備と工場誘致の積極化につきましても、
県当局より種々の
要望がございましたが、あまり長くなりますので省略させていただきます。
以上をもちまして第二班の
報告といたす次第であります。(拍手)
—————————————