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1961-10-26 第39回国会 衆議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十六日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君    理事 高田 富與君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       宇野 宗佑君    小澤 太郎君       大沢 雄一君    大竹 作摩君       亀岡 高夫君    久保田円次君       田川 誠一君    津島 文治君       前田 義雄君    安宅 常彦君       佐野 憲治君    野口 忠夫君       松井  誠君    山口 鶴男君       門司  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         運輸政務次官  有馬 英治君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         気象庁次長   多田 寿夫君         建設事務官         (河川局水政課         長)      井上 義光君         自治事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         専  門  員 圓地与四松君 十月二十五日  全日制市町村立高等学校教職員退職手当全国  通算に関する請願田中正巳紹介)(第九三  九号)  同(松永東紹介)(第九四〇号)  同(神田博紹介)(第九八八号)  同(坪野米男紹介)(第一〇四九号)  同外一件(臼井莊一君紹介)(第一一〇九号)  同(佐々木義武紹介)(第一一一〇号)  同(野田武夫紹介)(第一一一一号)  同(藤枝泉介紹介)(第一一一二号)  同(菅野和太郎紹介)(第一二〇三号)  同(渡海元三郎紹介)(第一二〇四号)  同(中曽根康弘紹介)(第一二〇五号)  同(堀昌雄紹介)(第一二〇六号)  観光外客に対する料理飲食等消費税非課税措置  存続に関する請願池田清志紹介)(第九八  七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策基本法案内閣提出第四九号)      ————◇—————
  2. 渡海元三郎

    ○渡海委員長代理 これより会議を開きます。  園田委員長出席がおくれますので、その指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  災害対策基本法案を議題といたします。  質疑を続行いたします。松井誠君。
  3. 松井誠

    松井(誠)委員 災害対策基本法案につきまして、きのうも申し上げたのでありますけれども、非常に素朴な国民立場からの疑問を代表しまして、この法案の以前の問題と申しますか、あるいはそこに横たわる基本的な点につきまして、あらかじめ二点ばかりお伺いをいたしたいと思います。  私は、この法案最初に読みましたときに、もしこの法案ほんとう災害を受けた国民災害基本的な対策というものを要望しておる国民が読んだときに、一体どういう受け取り方をするだろうかということを実は考えたわけです。たとえば被害を受けた農民なら農民がいる。そうして水が出ればはんらんをする、そういう裏の川なら川の堤防が今度は一体どういうことになるのか。あるいはこの間の大風で木が倒れて自分の納屋がつぶれた、そういう災害は一体どうしてくれるのか。あるいはまた中小企業なら中小企業の人がこれを読んで、たとえばこの間の豪雨のために取引が停止をした、その間に非常に大きな損害を受けた。そういうものを一体災害基本的対策と銘打った法律案はどういう解決をしてくれるか、そういうことをおそらく期待をしながら読んでいくと思う。そうしますと、そういう自分要求に直接こたえてくれる条文は読めども読めどもなかなか出てこない。やっと財政金融措置というところへたどりつきまして、さてここにあるぞということでにらみ合って読んでみる。そうしますと、肝心な激甚災害というものは法律に譲るんだということになってしまう。そういうことになりますと、この法律案期待をしながら読んだ国民は非常に失望をするだろう。どなたかのお話では、この法律案には柱がないんだということを言っておりました。羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉がありますけれども、そんなものではないんだ。羊頭は掲げておりますけれども、狗肉らしいものさえも与えてくれないじゃないか、そういう失望を感ずるだろうと思う。しかし、それが失望である間は私はまだ問題は少ないと思う。ところが、この法律案には柱がないのじゃなくて、柱はあるにはある。ありますけれども、しかし、その柱はまさに国民が求めておったそういう防災——災害対策ということを防災から災害復旧までを含めて防災という言葉を使うとすれば、防災というものに対するそういう大事な国民が一番要求をしておる柱じゃなくて、むしろ政府説明によれば総合調整という言葉を使っておりますけれども、そういう政府立場からの措置というものは確かに一つの柱なのです。そういう柱のほかに、先日も申し上げましたけれども、国民にいろいろな義務を課するというもう一つの柱がある。柱がないのじゃなくて、柱はありますけれども、その柱は実は国民が求めておるものとは多少ズレたところで打ち立てられておる柱である。そうしますと、きのうも申し上げましたけれども、国民は、求めたものを与えられなかったという印象だけではなくて、あめを求めたのにむちを与えられたという印象を受けかねないと思う。国民の間で、これは防災というものに名をかりた弾圧法だという批判さえある。そういう批判にもちろん全面的には同調はしませんけれども、しかし、そういう批判があるということをやはり政府というものはもっと謙虚に反省すべきじゃないかと私は思う。そういういわば国民の素朴な疑問というものを基礎にしまして、今大臣がお見えになりましたので、私は二点ばかり基本的な問題についてお伺いをしたいと思います。  一つは、災害予防から災害復旧までを含めた意味での防災というものの責任は、一体どこにあるのかというきわめて素朴な質問なのです。これはおそらく災害が起きるたびに繰り返されたであろう質問なのですけれども、やはりあらためて質問をしなければならぬ。先般も行政局長は、災害の第一次的な責任というものは国にありますということを申しておった。その言葉をそのまま受け取り得るならば、私はこういう質問を何度も繰り返そうとは思わない。しかし、そういう言葉が、具体的な裏づけで少しも保障されてないというところに、やはりどうしても繰り返さなければならないという疑問が残ってくるわけです。政府からいただいた資料の中で科学技術行政協議会防災部会の報告というのがありまして、昭和二十七年の非常に古い資料でありますけれども、その中で報告されておるものの一部に、昭和二十五年度の災害の一部調査によって、不可抗力と見なされる災害は全体の五一%であったというくだりがあるわけです。これは資料そのものが非常に古いし、調査範囲も非常に限定されたものではありますけれども、しかしこの災害天災人災かという問題の一斑を知る資料にはなり得るだろうと思う。天災人災の判断の基準というものについても、もちろん議論はあるでありましょう。考え方の違いによって人災になり天災になるということはもちろんあり得るわけなのです。しかし、ともかくいわゆる人災といわれるものが国の責任、広い意味政治責任だということは申すまでもないことだと思う。今までともすると、災害といえば公共災害だけを問題にし、個人災害は国の責任でないかのごとき印象一般にあった。そして個人災害政治が手を出すことは、政府のいわば義務に基づいてやるのではなくて、一種の何か政治恩恵であるかのような印象一般にあったと思う。そういうことが根本的に間違いだということは、私はここでくどくど申すつもりはない。いわゆる人災というものが政府責任である、政治責任であるということについては、もう議論の余地はない。しかし私の申し上げたいのは、そういう人災ではなくて、文字通り不可抗力による天災の場合でも政治責任だと考えなければならぬのじゃないかということなのです。不可抗力によって個人災害を受ける、それは個人がどうしても防ぎ得なかったという意味で、これは個人責任ではないわけです。   〔渡海委員長代理退席高田富與委員長代理着席〕 従って個人自分責任に基づかないで被害を受ける、そういう場合に個人責任を持ち得ないという意味で、まさにそれは政治責任を持つべき問題じゃないか。考え方によれば人災天災範囲というものはいろいろございますし、われわれも何も科学的な不可抗力だけが天災あとは全部人災にしようなどとは考えておりません。少なくとも常識的に考え、社会的な普通の概念で可能であるものを怠ったというものは人災でありましょうけれども、常識的な限界、常識的な立場から考えて不可抗力であったという意味で、科学的には可能であっても常識的には不可能だというものは、やはりいわゆる天災に含めてもいい。しかし、その天災の場合には政治責任がないとは私には考えられない。天災の場合でも、いわゆる不可抗力の場合でも、それが個人責任ではなかったという意味で、個人にしわ寄せをするというわけにはいかないという意味で、まさにそれは政治責任だと考えるべきじゃないか、こういう疑問を持っておりますので、言い古された質問でありますけれども、防災は一体究極的にはどこの責任だということをお尋ねしたいわけです。私は、何度も申しますけれども、それはやはり政治責任だと考えなければならない。しかし具体的な国家財政の問題もありますし、個人復興能力の問題もありますから、全部が全部国が金を出せという意味で申すのではございませんけれども、しかし、少なくとも考え方基本としてはそういうものがあってしかるべきじゃないか。そうしないと、個人災害を救うことが何か恩恵であるというような間違った方向にすぐ結びつく、そういう危険が出てくると思う。その災害の原因が何であろうと、個人の過失に基づく場合は別ですけれども、少なくともそうでない場合は政治責任だという基本方針だけはやはりきちんときめて、できればそれを前文の中にうたうというくらいの気魂責任感があってしかるべきじゃないか。そういうものがあれば、具体的な国家財政範囲でこれがこうなんだからどうしてできないという説明も、あるいは納得し得るかもしれない。しかしそうではなくて、災害責任が一次的には国にありますということを言いますが、しかし本気でそう考えているかどうかという根本的な疑問というものがある限り、議論は果てしなく続くのではないか。そういう意味でまず大臣防災責任は一体どこにあるということについて御意見を伺いたい。
  4. 安井謙

    安井国務大臣 防災責任は、これは概念的に申し上げますれば、第一次的には国にある。そうして地方団体も分任をするし、その一部は国民もでき得る限り持ってもらいたい。こういうことに変わりはないと思いますが、今のお話のように、防災にしても、天災もあり人災もある。しかもその天災のきわめて限られた部分であってもこれは国の政治的責任じゃないか、こういうことにつきましては、私もその通りであろうと思います。いわゆる災害をいかに予防するか、あるいはこれに応急措置をどうとるか、復旧をどうするか、こういうものを根本的に考えなければならぬという意味におきまして、政治的責任を国がやはり負うべきものである、こういうふうに考えております。
  5. 松井誠

    松井(誠)委員 もう一点お伺いをいたしたいのですが、先ほど申し上げましたように、この法案には一つの重要な柱として、防災総合化計画化というものがうたわれておるわけです。しかし防災機構というものを幾ら細密に考えて、いかに精緻に考えて組み立てましょうとも、具体的な災害の場合になりますと、そういうものをはみ出す場合がもとよりたくさんあるだろうと思います。いわゆる具体的に災害が起きた場合だけでなくて、あとでまたいろいろこまかい点についての御質問はほかの方からあると思いますけれども、この防災会議機構なりあるいは防災基本計画の樹立の仕方なり、そのものについてさえも、実は総合性計画性というものがうたわれておるが、このような形でほんとうに貫き得るかどうか、もとより問題があるわけです。しかし私のお尋ねしたいのは、そういういわば平時の問題ではなくて、一たん災害が生じた場合に、どういう機構をこまかく作り上げようとも、そうしてその場合の法規というものをいかにこまかくあらゆる場合を想定して考えようとも、そこからはみ出す事態というものが必ずあるわけです。そういういわばはみ出す事態、いわば無法状態というか、アウト・ローという、そういう法規空白状態というものは必ず起きてくるわけです。そういう起きてきたときに、どういう基本的な方向でその無法状態の中で処置をしていくかという基本的な心がまえについて、実は私はいろいろ不安があるわけです。そこで、そういう点についてお尋ねを申し上げたいと思うのですが、そういうときに、今の官僚機構あるいは今のいわゆるお役人かたぎ、そういうものから、この防災基本的な至上命令である生命、身体財産の保護というものをほんとうに第一義的に考えて、そういう無法状態の中で、法規空白状態の中で処置をし得るかどうかという点なんです。先般新潟県の白根といろところで水害がありまして、そうして水防資材が足りなくて米俵を使ったという問題があった。これは御承知のことだと思うのです。あれはもとよりあのまま無条件に認めるというわけには参りませんでしょうけれども、しかしあの中には、やはり法律よりも人命がたっといんだという、そういう基本的な考え方がある。そういう意味で、私は基本的に是認はされてしかるべきじゃないかと思うのです。ああいう具体的な場合に、お役人が命よりも法律を大事にしたり、あるいは官庁セクショナリズムというものに閉じこもって、応急措置を時期を失することがないかどうかということについて根本的な不安がある。この法律案には、いろいろと訓示規定がたくさん並べられてありますけれども、私はむしろ冗談ではなくて、この中に、そういう際における政府処置方針として、法律よりも命をたっとしとしろとか、あるいはお役所のかきねというものを取っ払って、まさに公僕精神に徹しろとか、そういう訓示規定国民に対する訓示規定はたくさんあるが、お役人に対する訓示規定というものがないから、それを一つ入れてもらいたいぐらいに思うわけです。大臣お尋ねしたいのは、先般も佐野委員からいろいろ御指摘になりましたように、たとえば産業都市ないし基幹都市の問題にしても、水資源の利用の問題にしても、国民の目に余る官庁のそういうセクショナリズムというものの弊害が出てきている。そういう中で、平時総合調整だけではなくて、いざ一たん緩急の場合に、一体そういう法規よりも人命をたっとしとする立場で、そういう空白状態処置し得るという自信がおありなのかどうか。そういう点について不安がないかどうか。あるとすれば、具体的にそういうものを除去するためにはどういう手段をとられようとするのかという点について、お伺いをいたしたいと思います。
  6. 安井謙

    安井国務大臣 お話しの通りに、近来の行政が非常に複雑化をしておるということ、従って、行政機構自身も非常に複雑になるから、それぞれの責任の分野を取りきめなければいかぬというような建前から、往々にして言われる官僚セクショナリズムというものがないということは、私も一がいに断言できないと思います。ないということより、あるいは御指摘のように、ときどきそういったものの弊害があるということも事実であろうと思います。これはしかし、ただ一面から、もう常にそれが、すべてが官僚あるいはセクショナリズム弊害とばかりきめられない面もあるのでありまして、たとえばそれぞれの複雑な行政部門を担当しているが、同時に総会性を持たせなければならぬ、あるいはその部門々々における責任を明らかにしなければならぬという意味で、その運営上そういう摩擦が起きるというやむを得ない場合もあろうかと思います。しかし、これを政治的に総合して直していくのがやはりいい政治であろうと思いますし、この法律がねらっております点もそういうところにあるわけであります。従いまして、たとえば、新潟の例をおあげになりましたが、あのときの白根市でございますか、米俵を防水に使ったという場合、一時、いわゆる純技術的な解釈からいえば疑問も出ましたが、これは政府といたしましては、十分調査の結果、これはあの際は妥当な措置であったということを閣議で正式に決定もいたしておるようなわけでありまして、今御指摘のような問題が皆無と申せませんが、必ずしもそれが全部が全部弊害としてあるわけではなくて、いろいろの事情からよって来たるゆえんもあろうと思いますが、これをでき得る限り総合的に直していって、そうしてその欠点を少しでも除去していきたい、そういうふうに私どもは相努めていきたいと思っております。
  7. 松井誠

    松井(誠)委員 この問題は、お答えだけでどうというわけにも参りませんから、一応注文を申し上げるという意味でありましたので、これであと具体的な問題をお尋ねをいたしたいと思います。主として行政局長になると思いますが、重要な問題についてはまた大臣お尋ねをしなければならないことになると思います。  私がお尋ねを申し上げますのは、先日も申し上げましたけれども、この中の一つの柱である、国民にいろいろな義務を課するそういう一つの体系ができておる。そうしてそれは主として、災害応急対策といわゆる災害緊急事態、そういうものの中で、国民義務を課するいろいろな問題が出てきておるわけです。それを法律的な点からの疑問をいろいろお尋ねをいたしたいと思うのですが、一番大事な災害緊急事態のいわゆる緊急政令の問題が中心になると思いますので、自余の点についてはできるだけ簡単に一つお尋ねをしたいと思います。  この災害応急対策の中でいろいろな事前措置があり、あるいはまた応急対策があるわけですけれども、その中で、国民財産あるいは国民身体に対する規制というものが加えられておるわけです。そうしてそれは大部分は、この基本法一般法とすれば、今までのいわゆる特別法におおむねあるわけですけれども、それにないものを補充するというような形で、この中にもまたあるわけです。従って、その両方の関係というものが非常に入り乱れて、混雑——私の理解ではどうも混雑しているところがあるのじゃないかと思うのですが、その特別法を、もとよりあれもこれもというわけには参りませんし、そういうことはいずれまた別の機会があるだろうと思いますので、私は先ほど申し上げましたように、主として一つ代執行法、もう一つ警職法との関係についてお伺いをしたいのです。たとえばこの事前措置、第五章の三節には「事前措置及び避難」という規定がございますけれども、この中の五十九条の事前措置ということで、物件の除去その他についての市町村長指示というのがあるわけです。あるいは六十条の市町村長避難指示、それがさらに第四節の「応急措置」に入って、六十三条にやはり市町村長の立入りの制限、禁止、退去命令というようなものがあるわけですけれども、この最初の五十九条の除去等指示、この指示と、避難命令その他の命令というもの、この指示命令というものとは一体具体的に違うのか同じなのかということについて、行政局長からお伺いしたいと思います。   〔高田富與委員長代理退席委員長着席
  8. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 言葉の調子と申しますか、ニュアンスという点から参りますと、命令と申しますよりも指示の方がやわらかい感じで使われておるのが一般でございますが、実質的に効果の面から申しますと、指示ということと命令ということとは、普通の場合は変わりがございません。
  9. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、指示命令も、行政法上の言葉でいえば下命と言いますね。そういう意味では同じなんですね。従って国民にそういうことをしろという行政法上の義務を与えるということになるのです。その義務を履行しなかったときには一体どうなるかということについてお伺いをしたいのですが、罰則の問題は別として、義務を履行しなかったときにそれを実現をし得るような強制力というものを、その指示とか命令とかいう規定の限りにおいてし得るのかどうかということをお伺いしたいのですが、たとえば除去などを指示する、そのときにそれに従わなかったという場合には、行政代執行法でそれを取り除くというようなことは、代執行法の条件が備われば取り除くというようなことができるのか、あるいはやはりそういうことをやれるという具体的な行政法上の規定がなければそれはできないと考えるべきなのか、この点はどうでしょうか。
  10. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 行政代執行法は、これは一般的に命令等のなされた場合の行為について義務者がこれを履行しない場合におきまして、その履行を担保するための一つの方法について規定をいたしておるのであります。先刻来お話のございまする各種の措置について本法案規定をいたしておるのでございますが、そのすべてが全部代執行法規定に乗るというものではございません。立案に当たりました者といたしましては、今御指摘になりました五十九条の関係だけが行政代執行法でなずむ、これの規定適用があるものと解釈いたしております。
  11. 松井誠

    松井(誠)委員 それはもちろん避難指示とか、あるいは退去命令とかいうものを代執行するわけにはいきませんから、それは初めから代執行法対象外になるわけですけれども、ともかく代替的に第三者でもその義務実現ができる、そういう命令違反をした場合に、それを代執行法実現ができる、当然そういうことになると思いますけれども、そうしますと、代執行法実現のでき得るという部分は、主として人間身体に対する規制ではなくて、財産に対する規制だと思いますが、主としてというよりも、人間身体に対する規制としては、代執行はあり得ないわけでしょうけれども、そういう代執行法対象になり得るような条文、今五十九条をあげましたけれども、局長お話ですと、五十九条だけというお話でございましたが、ほかにはありませんか。
  12. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 代執行法規定適用がある条章は五十九条だけということでございます。
  13. 松井誠

    松井(誠)委員 それからその次の、先ほど言いましたような避難指示あるいは退去命令、たとえば六十三条の一項の方ですが、退去命令に従わなかったという場合には、これはもちろん代執行法の問題ではないわけですが、強制的に市町村長が退去せしめ得る、つまり直接強制力を使い得るか、あるいはそれはさっき言ったような規定がない以上は使い得ないか、その点はどうですか。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 強制権は使用できません。
  15. 松井誠

    松井(誠)委員 それは行政上の義務違反であるけれども、しかし違反した場合に、直接その強制力を加え得るのだという規定がなければ強制はできないのだという立場からそういう結論になるわけですね。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お説の通りでございます。
  17. 松井誠

    松井(誠)委員 その点はそれでわかりました。  それでは警職法との関係についてお尋ねをしたいのですけれども、たとえば警察官が五十九条の二項で除去等指示、あるいは六十一条の一項で避難指示あるいは六十三条の二項で退去命令というようなものを発し得ることになっておりますので、それと警職法との関係お尋ねいたしたいのですが、その前に、この六十一条の警察官の避難指示の場合に「避難のための立退きを指示することができないと認めるとき、又は市町村長から要求があったとき」つまり要求がなくても、「立退きを指示することができないと認めるとき、」という書き方になっておるわけですが、「指示することができない」というのは、具体的には、市町村長の所在がはっきりしなくて、そういう現実の必要があるのに指示をしないという意味なのか、市町村長に事故があって指示することができない場合というのか、これはどういう場合を想定されておるわけですか。
  18. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘になりました市町村自体が行政機能を失ってしまっておる場合もございましょうし、また市町村長自体に事故があるといった場合もむろん入るわけであります。そのほかに現場に警察官がおりました場合におきまして、市町村の方から何の指示もないけれども、現場の非常事態というものが差しおきがたい緊急の必要性に迫られておって、瞬時のいとまもできないというような事態もあり得るかと思うのでありまして、そういう場合に市町村長からの指示を待っておるというようなことではかえって被害を拡大させる、また人命にも大きな損傷を与えるような可能性が強いというような場合において、警察官独自で行動ができるということを考えた次第でございます。
  19. 松井誠

    松井(誠)委員 この六十一条と六十三条との違いといいますか、六十三条には「市町村長の職権を行なうことができる。」ということで、これは警察官本来の職務じゃないけれども、市町村長の職権を行なうのだというような書き方、六十一条ではそういう文句が入ってないわけですが、この六十一条と六十三条の二項の書き方の相違の根拠というのはどういうところですか。六十一条はいわば警察官は自分の職権として立ちのき云々の指示ができるというような書き方であり、六十三条の二項は「市町村長の職権を行なうことができる。」というように書いてあるわけですけれども、その違いはどういう根拠ですか。
  20. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 本法案の作成をいたしまする際には、他の法律との関連等につきましていろいろむずかしい点もございましたが、それらの調整をはかりながら共通的なもの、あるいは書き足りない部分を補完するという形式で規定をいたしておるのであります。ただ根本的には現行の各法規というものの建前はこれをくずさないということを前提として規定をいたしておるという態度で参っております関係上、ただいま御指摘になりました点につきましても、表現の上におきましてその点差異を生じておる次第でございます。  すなわち、第六十一条自体におきまして警察官が避難指示ができるということでございますが、この規定自体は、まるきり場合が同じというわけには参りませんが、警察官の職務執行法の第四条にもそれと類似の権限が規定されております。警察官自体といたしまして権限の規定があるわけであります。ところが警察官職務執行法におきましては、六十三条の警戒区域の設定というようなことはございません。これは本法におきまして市町村長に与えた権限でございます。従いまして、この権限自体は本来的に警察官が持っておるということでなくて、市町村長に与えられた権限というものを、応急の場合におきまして職権として代行する。こういう意味でもって規定いたしたのでございます。
  21. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、この六十三条の二項の「市町村長の職権」という言葉をわざわざ入れたのは、警戒区域の設定ということが警職法範囲外だから入れたのだ、しかしその設定という以外の立ち入りの制限とか禁止、退去命令そのものは、警職法の条件が備われば本来の職権の範囲に入るわけですね。
  22. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 第四条自体におきましても、天災というような規定もございまして、災害の場合も想定いたしまして相当の権限のあることを明記をいたしております。従いまして、その規定に該当するという場合は警察官職務執行法自体で動き得ることもございましょうし、本法によって運用が行なわれるということもあり得るわけでございます。
  23. 松井誠

    松井(誠)委員 警戒区域の設定という形式そのものはなるほど警職法範囲外でしょうが、事実上ここから先は立ち入ってはならないということは警職法ではできるわけなんでしょう。その要件が備わればできるわけでしょうから、従って事実上警戒区域の設定ということはできるわけです。ですから六十一条と六十三条の二項を、わざわざこういうふうな規定の体裁を変えなければならぬという理由はよくわからなかったのですが、形式的に警戒区域の設定というものはできないのだという立場だということならばそれはそれでわかります。  そこで今局長からあげた警職法との関係なんですが、そうしますと、この場合には六十一条の避難指示、これは警察官が避難指示をして、さらに必要があれば身体に対する規制警職法との関係ではできる場合があるということになるわけですね。
  24. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 本法におきましては、警察官について身体の拘束その他の問題について特別の権限を与えようとしておる趣旨ではございません。従いまして身体の拘束その他の点は警察官職務執行法の解釈、運用の問題として措置されるということに相なろうかと思います。
  25. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、一般的にいって、これは一部に誤解もあるようでありますので申し上げたいのでありますけれども、先ほど言いましたように財産に対する規制についてはこのように考えていいのでしょうか。財産に対する規制については特別法あるいは本法でいろいろな規定がある。そしてその義務違反した場合に、行政執行で可能な場合には行政執行ができる。しかし身体に対する規制については、警職法特別法にいろいろな身体に対する規制がある場合には別として、この法案に書いてある限りにおいては、身体に対する直接の規制としては、警職法の要件が備わったときに、警職法四条による引きとめあるいは退去ですか、そういうものはできるけれども、それ以外に、たとえば単に退去命令違反したから、あるいは立ち入り禁止命令違反したからというだけで警職法との関係なしに身体に対する規制はできない、このように考えていいわけですか。
  26. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御説の通りでございまして、なかんずく警戒区域の設定その他につきましては、あるいはその他の立ちのきということにつきましてもそうでございますが、市町村長自体においてもそういう身体の拘束、これはむろん職掌柄でもございますけれども、そういうものは認めておりません。警察官はその場合に、特別に必要のある緊急性のある場合に、それを代行していくという考え方でございます。そういうような点もございますので、今のお話の点につきましては、警察官職務執行法規定適用上なされる場合を除き、新たに本法によってそういう権限を与える趣旨のものではございません。
  27. 松井誠

    松井(誠)委員 私がそういう人命に対する義務というものについて特にお尋ねをいたしたいと思う理由は、これが何か一種の治安立法だ、つまり治安立法のにおいがするという不安があり、非難がありますし、それともう一つ、先ほど私が申し上げましたように、そういういわば無法状態になったときに、ほんとう公僕精神に徹して、人命をたっとしとするという立場で動いてくれるか、あるいはお役所の都合で、じゃまなものは全部どけという、そういう国民に対する規制をやるのは非常に便利でしょうし、安易でしょうから、ともすればそういうところに流れやしないか。だからそういう義務の柱というものが不必要に大きくなっていきやしないかという不安、疑惑がありますので、その点を特に取り上げておるわけですけれども、実はこの義務の問題と関連をしまして、いろいろ国民にそういう義務を負わせる。その義務を負わした国民の迷惑について、一体国家はどうしてくれるのかという問題があるわけです。  八十二条の損失補償の問題なんですけれども、関連をしますので、この点をついでにちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、ここで一つ問題になりますのは、損失補償の額の問題があるわけです。八十二条の一項の損失補償の範囲について「通常生ずべき損失」というように書いてありますけれども、これは具体的に、そのときに生じた損失を全部ということではなくて、通常生ずるであろう損失ということになりますと、実際に生じた損害よりも少ない場合ももちろんあるわけですね。
  28. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その評価の仕方というものにはいろいろ問題があろうと思いますけれども、こういう事柄の性質上、他の立法例におきましても大体同様に「通常生ずべき損失」というような表現のいたし方をいたしておるのであります。ただ、その場合におきまして、先刻来お述べになっておりますような基本的な態度、乱給その他に流れますことはむろん慎むべきでございますけれども、やはり災害というものが根本的には政治の問題につながっておるのだ、そのことが国民に対して迷惑をかけていく。公用負担、また立ちのきその他の問題にいたしましても、そのような事態が起こりさえしなければそういうようなことも必要がないわけでありまして、これはやむを得ず起こった場合に、生命なり身体なりあるいは財産の損害を最小限度に防止し、軽減するということのために、やむを得ずとられる措置でございます。従いまして、そういう基本的な態度をもって、こういう通常生ずべき損害ということの認定に当たっていかなければならないのではないか。ただ、その点についてはやはり客観的なものでなければなりませんので、ただ単に主観的な本人の希望とかそういったことだけでこれを決定いたして参りますことは困難ではないかと考えております。
  29. 松井誠

    松井(誠)委員 今局長が、ほかの法律にもそういう規定の仕方があるというお話でしたけれども、たしか災害救助法には同じような規定が、この資料としていただいた調査室の資料でも、この八十二条の点についていろいろあげてあるわけですけれども、道路法には同じような規定があったかと思うのですが、たとえば地方自治法の百六十条には、生じた損失の全額というような規定になっておったと思う。従って、通常生ずべき損失というような書き方は、一般的ではなくて地方自治法の百六十条のような書き方もある。時価によって生じた損失の全額の補償というような書き方になっておるわけであります。それの方が、今言われたような局長の趣旨ならば、むしろわかりやすい。通常生ずべき損害というと、具体的に、偶然の事情で生じた損害は除外されるというように考えられるおそれが多いのじゃないですか。
  30. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 自治法の規定は、今お述べになりましたように、「時価によりその損失の全額」という書き方をいたしております。ただ、それには時価という頭がついておるわけでございます。若干の規定のニュアンスはございますけれども、その損失補償の精神においては、実質的にさほどの相違はあるものではないというふうに私たちは考えておるのでありますが、ただ、先刻申し上げましたような精神に立つ場合におきましては、その運用上やはり十分な配慮をして参らなければならないと思います。ちなみに、災害救助法においては、先刻お話もございましたと思いますが、これと同じような規定をいたしておるはずでございます。
  31. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、趣旨は、具体的に生じた損害について現実にその全部を補償する。その評価をどうするかという問題はもちろん別ですけれども、適正な時価により全額を補償するという趣旨と解していい、つまり、そういう場合に国民に具体的な損失はかけない、もうけさせるわけにはいかないけれども、少なくとも現実に損失はかけない、そういうように考えていいわけですか。
  32. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 建前としてはそういう考え方で参るべき筋合いであり、またこの規定の趣旨もそこにあるものであると考えております。
  33. 松井誠

    松井(誠)委員 この点について、評価の問題よりも、私は一つの問題は、この八十二条の損失補償の中に、この六十五条の市町村長による従事命令に従った場合の補償というものがないということですね。これは別に不注意で落としたわけではなくて、この場合には、おそらくは損失補償は要らないのだというお考えだろうと思うのですけれども、どういうわけでこの六十五条による従事命令者に対する補償というものを抜かしたのか。これはそのあとの八十四条のけがをした場合というような特別な場合にはありますけれども、そうでない場合には、損失は補償しないという考え方だと思うのですが、その理由は一体どういうことですか。
  34. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘になりましたように、これは間違って落としているわけではございませんで、六十五条に規定をいたしておりまするような場合は、いわば住民の当然の責務として防災に寄与していかなければならぬ。そういう意味における最小限度の受任と申しますか、受任の限度でもって容認されていたし方のないものではないかという考え方をいたしておるのでありまして、当然住民でありますればそのような措置には一つ喜んでおもむいていく。それが報酬がなければ行かないというようなことでも、現実の間にも合いませんし、そういうことでも困るという立場から、本条につきましては弁償その他の規定を置かなかったのであります。ただその場合に、そのことのために死亡したり、あるいは負傷したりというような場合は、これはむろん非常にお気の毒なことでございますので、それに対しまして当然の補償措置を講ずるということにいたしたのでございます。
  35. 松井誠

    松井(誠)委員 おそらくはそういう趣旨でこの六十五条の従事命令の補償というものを抜かしたのだろうと思いますけれども、私は、そういう考え方はやはりこれは相当な問題があるのじゃないかと思うのです。確かにそういう地域の災害の場合に、地域の住民が協力をする、これは当然だと思う。しかし、先ほどから局長も強調されておりますように、そういう災害というものの責任が根本的に政治責任だというそういう基本的な立場に立つと、そういういわば隣保共助の関係から住民が自発的にその難におもむくということなら別ですけれども、従事命令というものに従ってやったという場合に、今お話しのように、つまり日当が出ないから従事命令に従わないのだということじゃ困るというお話でしたが、むしろ日当を出すのだという原則を立てておいた方が、実際に従事命令を受けた人が出やすいということにもなるでしょうし、それから従事命令を出した場合に、日当がつかないから行かないというような人はあるいはないかもしれませんし、あるいは国家がそういうものを出すといっても、これは当然のことで私は要りませんという人も多いかもしれない。しかし、そういうことは別にして、政治責任として、われわれの責任だから、御苦労だったからお金をやるのだという方が、もし国の災害は国の責任だという考え方を一貫させるならば、それの方が筋が通るのじゃありませんか。
  36. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そういうお立場もあるかと思います。確かに十分考慮に値する御意見であると思いまして、私たちといたしましても、そういう点全然度外視して検討しなかりたわけではないのであります。ただ、その場合におきましては、緊急の必要ということで、ほんとうにやむを得ない場合において行なわれる緊急避難的な措置でもございます。それと、住民自身につきましても、防災については寄与するという建前を貫いて参るということも必要でございます。また、この種のものについての他の立法例等のことも参酌いたしまして、本法案においては、そこまではやることにつきまして問題があるのではないかということで、八十二条の中に入れなかった次第でございます。
  37. 松井誠

    松井(誠)委員 この市町村長による従事命令というのは、おそらくは府県知事による従事命令なんというものよりも、実際には範囲はおそらく広いのじゃないかと思う。適用する場合は非常に多いのじゃないかと思います。そうすると、このように国民の協力義務が元来あるのだから、ただ働きが当然なんだという考え方がここにちょっとでも出て参りますと、先ほど言いましたように、時価の評価にしても、元来やらなくてもいいのだけれども、まあまあやるのだということになって、時価の評価が非常に押し下げられる。そういうところへの影響も非常にある。何か今の局長の口振りですと、よその人が承知しなかったというように、ちょっとこれは私の思い過ごしかもしれませんけれども、そのようにとれる。そういういきさつがあったかなかったか私知りませんけれども、しかし、こういうことになりますと、何か災害が起きる。そして被害者はまた国のためにもう一つ被害を受ける。つまり被害を二重に受けるという形になりゃしないか。ですから、やはりこの市町村長の従事命令に従った者も、やはり原則としては国がめんどうを見るのだという、そういう基本をここでも貫いていただいて、そこから、従ってそれ以上の損失についてはもちろん十分めんどうを見るのだぞという、そういう気がまえの前提としてもやはり入れていただく方がいいのじゃないか。繰り返しますけれども、そういう点についてこれからあとの御考慮をされる用意があるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  38. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 ただ働きは当然だという態度でもって、今御指摘の点につきましては損害補償あるいは実費弁償等の規定を入れなかったのではないのでありまして、最小限度の受任として、あるいは住民の責務としてその程度のことは一つ御協力が願いたいという趣旨があるわけでございます。まあ、しかし、これらの点につきましては今後の検討問題の一つとして、絶対にそういうことはやるべきではないという筋合いのものではむろんございませんので、研究問題として今後さらに検討を重ねて参りたいと思っております。
  39. 松井誠

    松井(誠)委員 これはたとえば自分のうちがあぶないというようなときに無理やりに——従事命令というのは、先ほど言ったように従事命令に従わなかった場合は、罰則はあるけれども、それを引っぱり出すという、そういう強権はもちろん使う根拠はないわけですね。しかし、そういうことを別に住民全部が知っておるわけではございませんから、従事命令があると、罰則がある。従って、自分のうちがあぶないというときでも飛び出して行かざるを得ない、そういう事態は十分に考えられ得る。そういうことが現実にたくさん起きておる。そのことのために自分のうちから品物を出し得る時間的余裕が元来あったのに、外へ飛び出して行かざるを得なかったので、自分自身が損害を受ける。そういう法律の正面から補償し得ないような問題が幾らでも出てくる。そういうことを考えてみますと、従事命令に従うのは国民の最小限度の受任の義務だというように、最小限度の義務というような軽いものではなくて、やはり災害地の住民が従事命令に従って難におもむくというのは、相当な努力と犠牲が要る。そういうことを考えてみますと、これくらいはがまんして下さいという、これくらいというようなささやかなものではないと思いますね。ですから、その点を一つ十分考慮していただきたいと思います。  これはやりとりしておりましても時間がございませんので、その次の問題に移りたいと思いますが、これは、この第八章の災害緊急事態の問題全部ではございませんで、私がお尋ねをしたいのは、第百十二条の緊急措置という、この問題だけをお尋ねをいたしたいと思います。  この百十二条の緊急措置というのは、先ほどから申し上げておりますけれども、これがこの法律案が治安立法的なにおいのする私はやはり一番中心になる規定だと思います。この百十二条による緊急政令というのは、これと同じような形の政令の形式というものは、戦後の政令の形式としてほかに実例がございますか、あるいはこれが初めてですか。
  40. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この種の形式のものは、これが初めてであると承知しております。
  41. 松井誠

    松井(誠)委員 これを緊急政令と呼ぶかどうかよくわかりませんけれども、かりに緊急政令という呼び名を使うとしますと、こういう緊急政令が現在の日本の憲法の考え方から許され得るものかどうかという問題については、もちろん御検討にはなったと思いますが、この提案理由の中でも、憲法の範囲内においてというような言葉をわざわざお述べになっておりますが、憲法の範囲内でというときに、具体的に何をお考えになったのか、その点をまずお尋ねをしたい。
  42. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 憲法の大きな柱といたしまして、国民基本的な人権というものを保障をしていかなければならぬという大きな一本の柱があるのでありますが、そのほかに公共の福祉を確保していくということも大きな一つの背骨に相なっておるというふうに考えるのであります。従って、国家の政治行政の活動というものにつきましては、そういう点を基本として運営をされて参らなければならないということに相なるかと考える次第でございます。その場合に、何が公共の福祉の限界かということは、これは非常にむずかしい問題であり、個々のケース、ケースによって判断をして参らなければならぬ事柄でありまして、その点は法律の形式、法律の実質審議という過程を通じて、具体的にはだんだんと明らかにされて参ってきておるわけであります。災害対策につきましても、いろいろ不備の点がございまして、その不備の点を補っていく、あるいは整備をしていくというのが今度の法案のねらいであるわけでありますが、その中の一つといたしまして緊急事態、たとえば関東大震災というようなああいう大災害が起こりました際におきまして、特に事項を限定いたしまして、経済活動の面等について最小限度の規制措置を講じていく、——現行の法律で補い得ない点、あるいはあらかじめ立法措置を講じておけない点というような点につきましては、臨機の措置に応じまして政令で必要な事項を規定するということは、社会の秩序を維持し、あるいは国民の生活を確保していく上に、いわゆる公共の福祉を確保するためには最小限度必要の措置ではないかという観点に立ちまして、本政令の規定を置いた次第でございます。
  43. 松井誠

    松井(誠)委員 その問題の、憲法との関係についての問題としては、今局長が言われたように、基本的人権と公共の福祉との関係という問題というよりも、緊急政令という形態の政令を今の憲法は許すのかどうかという問題が、むしろ基本的な問題ではないかと私は思う。こういう緊急政令、緊急命令というような制度が外国の例などで具体的にどうなのかということを私もちょっと調べてみましたけれども、よくわかりませんが、何かこれは五、六年前に書かれたものなんですけれども、その中で、約八十カ国くらいの国の中で、共産圏を除いてこういう緊急命令という制度がある国は約二十カ国くらい、その二十カ国というのは、国の名前をあげてありますけれども、おおむねいわゆる後進国あるいはせいぜい中進国で、ほんとに先進的な国であるイギリスとかアメリカとかフランスなんかには、何らそういう制度がないということを聞いておりますけれども、公共の福祉のために必要だという、そういう理由だけではこの緊急政令の具体的な根拠づけにはならないのじゃないか。これに書いてあるところの国の名前を読みますと、これはデンマーク、エジプト、エチオピア、イラク、ビルマ、台湾政府、韓国、アイスランド、インド、一つ例外的にあるのはイタリアぐらいなもので、あとは先進的な国というのはそういう制度はとってない。つまり、先進的な国では、そういう制度をとってなくても事実上そういうものは運営できるということを裏書きしておると思うのですけれども、私は、日本憲法の中で緊急政令というものが許されるかどうかという問題を考えてみますと、これはやはり明治憲法時代の緊急勅令のなごりがあって、それが何か非常にルーズに、安易に、そのままここに移し植えられたというようなことが、考え方の基礎にあるんじゃないか。緊急命令というものは元来例外の例外で、いけないのだという大前提から問題を考えないで、明治憲法のああいう緊急勅令という、廃止されたけれども、実に便利な、安易なものがあった。そういうところからこの発想がずうっと続いてきておるのではないか。つまり緊急命令というものに対する性格、言ってみれば非民主的な性格、そういうものについての配慮が十分でなかったんじゃないか、そういう危惧があるのですけれども、この点はどうですか。
  44. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 私も、世界各国の憲法なり災害対策法制に通じておるわけでもなんでもございませんが、今お話しになりましたようなことは事実であろうと思います。ただ普通の場合、諸外国におきましては戒厳令なり非常大権というような制度があるわけでございます。日本の場合には、そういう制度は新憲法とともになくなっておるわけであります。そういうようなことのために、ほんとうのいざという場合に何とも処置がないということでも困ります。そうかといいまして、その規定範囲が広範にわたって国民基本的人権全般に及ぶというようなことは、これは憲法の建前から許さるべき筋合いのことではございません。これはすべて法律でもってはっきりと書いていかなければならぬ筋合いのものでございます。しかし事柄の性質上、法律をもってあらかじめ決定をしておけないというものが、経済関係の事象の中にはあり得るわけであります。大工の手間賃の最高額をきめるといいましても、あらかじめこれをきめておくということでも、時代の変遷その他もございましょうから、そういうことも事実不可能な場合もあり得るわけであります。従いまして、そういう事柄の種類で対処しなければならない事項の中で、ごく限定的に経済現象の中の三つのものをとらまえまして、これに関して必要最小限度の規制措置を講じて参りたいというのが、本法の趣旨に相なっておる次第でございます。
  45. 松井誠

    松井(誠)委員 今局長の言われたその戒厳ということについては、これは軍事上あるいは治安上の問題でありますので、そういう問題の場合に、たとえば今の警察法で緊急事態の出動という制度もあるわけですね。戒厳というものは今の日本の憲法では当然予想しておらないわけでありますけれども、この緊急命令というものは、そういう軍事的なあるいは治安的な意味ではなくて、それ以外の場合に緊急命令——つまり治安上の必要という問題じゃなくて、しかも緊急命令という制度を採用しておる国というのを、私は先ほどあげたのです。これは私も知りません、孫引きですからなにですけれども。つまり戒厳という問題とは別に緊急命令という——つまり軍事上、治安上の問題とは別に緊急命令という制度をとっておる国としては、先ほど言ったように非常に少ないということです。日本の憲法が緊急集会という制度を設けて、それによって国会閉会中の緊急立法の必要というものをまかなう、そういう方針をとっておる。しかも緊急勅令という制度を廃止して、いわばそれにかわるものとして参議院の緊急集会という制度をとった。それでいわば緊急事態における立法活動というものはそれでまかなうのが限度だという考え方が、緊急集会という制度をとった裏にはあるのじゃないか。あとでもう少し具体的にお尋ねいたしますけれども、実際上緊急集会さえも間に合わないという事態が一体あり得るかどうかという問題を含めまして、国の唯一の立法機関である国会の権能を制限する方法としては緊急集会ということがいわば最大限度の方法なのです。緊急集会さえも認めないという緊急事態に処する方法は、憲法自体は予想してなかったのじゃないかと思うのですけれども、その点はどういうようにお考えですか。
  46. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 通常の場合は、参議院の緊急集会ということが旧憲法におきまする緊急勅令なりあるいは緊急財政処分というものに代行する意図があったという見方はあり得ると思っております。ただ参議院の緊急集会というものさえもこれを求め得ないという事態がありました場合において、全くこれはお手上げであるというのが現行憲法の建前であるとも私は言い切れないのではないかと思います。昔の、法律にかわるあらゆる権限を政令にゆだねていくというようなことになりますれば、これはむろん憲法構造自体の問題であろうということに私は考えるのでございますけれども、そういうことではなくて、本政令は、先刻も申し上げておりますように、経済的行為というものに最小限度限っておるということと、これは既存の法律について、それを改廃したり、効力を停止したりするような機能を持たせようとするものではございません。法律によって本来はきめるべきものであるけれども、そういう法律がないというような場合に、これを補完するものといたしましてごく一時的に効力を発生させて事態に対処していこうということでございますので、この程度のことが憲法に違反する、あるいは憲法の予想しておらないところであるというふうには考えておらない次第でございます。
  47. 松井誠

    松井(誠)委員 憲法が予想しておるか、いないかということは、今の局長お話でも必ずしもはっきりしない。緊急政令という制度を憲法が予想しているかいないかという問題と同時に、先ほどから言われておるように、かりにそういうものを予想をしていなくても、どうしても国家の緊急事態でやらなければならないという場合があるかもしれない。そういう場合には、いわば国家の緊急権というのですか、憲法を越えたそういうものがあって、それに基づいてやれるのだというような考え方、あるいはそういう緊急権というものがあるにしても、日本の憲法というものは、先ほど言ったように、緊急集会というところが緊急権の発動としてはぎりぎりなのだ、緊急というのは憲法のワクの中でしかないのだという考え方もあり得る。ですから今、緊急集会という制度を設けられたまさに歴史的な沿革から考えると、かりに緊急権というものがあるとすれば、これは緊急集会というものが限度である。明治憲法のあの苦い経験から、緊急勅令というものでびしびし国民義務というものがつけ加えられてきた、国民の権利が押えられていった、そういうものをためよう、直そうという立場からできた緊急集会だということを考えてみますと、やはり緊急集会というものが緊急権の行使のぎりぎりの線なんだというように考えるのがむしろ正しいのじゃないかと思うのです。  それではこの点具体的にお尋ねしますけれども、緊急集会というのは一体ぎりぎりに何日前くらいに召集して何日後にその緊急集会の期日になるのか。
  48. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 ちょっと私自信を持って今御答弁をいたすことができませんので、調べまして後ほどはっきりとお答えいたしますが、憲法並びに国会法の規定に従って措置されるのでございます。
  49. 松井誠

    松井(誠)委員 私がちょっと調べたところでは、何か先例によりますと、大体三日前です。大体三日前ということは、何日間の余裕を置けという規定がなくて、事実上召集して国会に参集し得る、そういういわば時間的な余裕さえあればいいのじゃないか。今まで先例は三日前だと言いますけれども、これは局長お尋ねしても無理かもしれませんが、ぎりぎり緊急集会を開き得る最小限度の日数というのは三日以上は縮められませんか。
  50. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 これは国会法自体の運用の問題になると思いますので、私自身がお答えをすることは適当ではないと思いますが、百十二条で書いてありますのは、むろんそのいとまがないという場合もございますし、事実問題といたしまして、緊急集会を求めてみても、緊急集会自体も成立しない、交通が全く途絶してしまっておって、召集をしても議員さんがお集まりにならないというような見込みの場合を含めて考えておるのであります。
  51. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、参議院の緊急集会を求めてその措置に待ついとまがないときというのは、たとえば交通途絶して、そのために通常の交通状態の場合とは違って非常に延引をするという場合も含めておるということになるわけでしょうが、通常の場合、一体参議院の緊急集会を求めるいとまがないというほどの緊急事態であるかどうかというあと質問とも関連をするものですからお尋ねをしたいのですが、通常の交通状態の場合には、三日という通常今までの先例——何か今まで二回かあったそうですけれども、それが大体三日前だということです。三日前ということが技術的に縮めることが可能であるか不可能であるか、実はあと質問のためにもちょっとその点をお尋ねしたいのですけれども、局長じゃ無理でしょうね。——それでは、その点は一つあと回しにいたしまして、具体的なこの政令の内容から、この緊急政令の必要ありやなしやという問題にもう一度戻りたいと思います。  この政令の内容につきまして一、二、三とあげておりますけれども、この一号の「国民の生活のため必要な物資で、その供給が特に不足しているものの配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」ということなんですが、これは具体的にどういう事態、どういう措置というものを予想されておるのですか。
  52. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 生活資材あるいは災害復旧資材等につきまして極端に不足をしておる、あるいは不足をする見込みがあるもの、そういうものにつきましては、あらかじめ手を打っておきませんと、非常に一方的に物が流れ過ぎたりいたしますことによって、極端な品不足というものが一部に起きて参りますというような事態がございますので、それに対処いたしまするために措置をするための規定でございます。
  53. 松井誠

    松井(誠)委員 「生活のため必要な物資」というと、一番必要な衣食住の資材というか材料、そういうものの、これは「配給」というところで切れるんでしょう、「配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」、つまり配給の制限もしくは禁止というんじゃないでしょうね、これは。
  54. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘のように、「配給」で切れまして、「譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止」でございます。
  55. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、そういうものの売り惜しみや買いだめというものを制限する、あるいは配給をさせる、わかりやすく言えばそういうことになりますね。
  56. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘通りでございます。
  57. 松井誠

    松井(誠)委員 その次の「賃金及び価格等の最高額の決定」というのですが、その「賃金」というのがよくわからないのです。先ほど局長は大工賃というようなことを言った。大工とか左官とか、そういうものの賃金の暴騰を押えるということならば、これは意味はわかるのですけれども、たとえば普通の会社に使われておる労働者の賃金、そういう使用者がある労働者の賃金、そういうものもこの賃金の中には入っておるのでしょうか、いないのでしょうか。
  58. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 形式的には賃金でございますから、そういうものは含まれ得るのでございますけれども、ここに書いてございまする立法の趣旨から申しますと、前にも御答弁申し上げたこともあるかと思いますが、普通の会社に勤めておる者とかなんとかいうのは、それぞれの法規に従いまして賃金が決定をされ、またそれ自体が継続的に生活のかてとなって参る筋合いのものでございます。従いまして、ここに予想をいたしておりますものは、先刻申し上げました手間賃というようなことを主として考えておるのであります。   〔委員長退席、高田富與委員長代理着席
  59. 松井誠

    松井(誠)委員 この賃金というのは、規定の体裁からいえば非常に広範で、別に大工賃、左官賃だけに限られたわけじゃない。そこから一つの不安が出てくるわけです。それから、もっと根本的に考えて、この法律で書いてある災害というのは、第二条に規定がありますが、「その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。」ということが書いてありまして、被害の程度がこれに類似すれば、必ずしも自然現象あるいは火事、爆発、そういうものによらなくても、何か社会的な原因による被害の程度がそこまで広がっても、これを災害と見得るような危険性があるかと思うのですけれども、この災害という政令に譲る予定である災害範囲というものはどの程度ですか。
  60. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 社会的原因に基づくようなものをここで規定することは毛頭考えておらないのでありまして、あくまで災害というのは、一般の観念に従いまして、自然的な現象と、それから人為的なものでも大規模な火事、爆発、それらを主として考えておるのであります。ただ、あまりこれに限定をいたしておきますと、いざという場合に、予測できないような災害が起きました場合に、それに対処できない、全然この法律が動かないということも困るわけでございますので、政令に譲るという態度をとっております。現在私たちが検討いたしました結果で、この政令で何を規定するかということでございますが、最終的に各省との間でまだ話がまとまっておるわけではありませんですが、一応は、海難、沈没等の場合、それから大規模な水道管の破裂あるいはガス漏れ、こういったものがいわば人為的災害の中で政令として規定されるものではないかと考えております。
  61. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは念のために伺いますが、たとえば労働者がゼネストをやる、そのために交通運輸機関が一切とまった、そういう場合には、この災害対策基本法は何も関係がないわけですね。
  62. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そういうものには関係はございません。
  63. 松井誠

    松井(誠)委員 私の心配しますのは、そういういわばゼネスト時における労働者の弾圧法というようなものが、具体的に外国で独立の法律としてできておる。その中に、賃金の最高額を押える、あるいは賃金要求のための労働者の動きというものを押える、そういうものがその法律には盛られておる。それと、これは思い過ごしでありましょうけれども、賃金の最高額の決定という書き方と、それから災害範囲を政令に譲ったというそういう形から、法律の体裁としてやろうと思えばできないことはない、そういう道が残されている。今そういう意図があろうとは私ももとより考えませんけれども、そういうことを心配をいたしましたので、実はお伺いしたわけなんですが、しかしそれにしても、この賃金というのをいわば手間賃だけだというように考えなければならない根拠は何にもないわけです。そうかといって、一般の労働者の賃金を災害の場合にストップさせなければならぬ必要はもとよりない。従って、そういう不安を起こすこういう規定の仕方そのものに非常に問題があると思いますけれども、もう一つ、「賃金及び価格等」というこの「等」というのは、賃金、価格に含まれない何かをまだ予想されておるからなんでしょうか、どうでしょうか。
  64. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 価格でもって何かきめていかなければならぬというもの、あるいは賃金等について最高額を決定すべきもの、これは大体賃金、価格ということでおおい尽くされるかと思います。ただ、言葉の表現自体といたしまして、実質は同じでも表現が違うといったようなものも中にはあるかもしれないという配慮から「等」ということをつけたわけでありまして、現在のところ、この「等」に何が入るかということについては考えておらないのであります。
  65. 松井誠

    松井(誠)委員 通常の常識的な言葉で賃金、常識的な言葉で価格というほかに、たとえば料金なら料金、報酬なら報酬という言葉がある。そういうものも、賃金、価格という言葉だけでは心配だから「等」というところに含めよう、こういうことなんですね。そうだとしますと、そういうことならばわからないのじゃないのですけれども、ただしかし、「等」ということを書いてありますと、賃金、価格及びそれに準ずるとかなんとかいうような「等」の範囲を限定することがないと、何か非常に範囲が広いような、そういう危惧を生ずるわけです。緊急政令というものの基本的な問題にまたあとで戻りますけれども、そういう点をもっと誤解の、そしてまた乱用のおそれがないような配慮というものはさらにされるお考えでしょうか、どうですか。
  66. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 実際にあたっては当然今のような配慮をやっていかなければなりませんし、中央防災会議におきましては、緊急事態におきまして措置すべき事項の大綱ということが審議事項の中に入って参るのであります。従いまして、その中におきまして災害緊急事態においてはどのような限度までやるのかというような政令の規定事項等につきましても、相当はっきりとした基準あるいはよるべき標準というものが決定されることに相なると思っております。
  67. 松井誠

    松井(誠)委員 この第三の金銭債務の支払いの延期ですけれども、これはやはり規定の体裁からいえば普通の個人間の貸借も入るわけですが、おそらくは主として考えておるのは銀行の取付騒ぎに備えるための、そういうことを目的にしたいわばモラトリアム、そういうものが頭の中にあるのだろうと思うのですけれども、そうなんですか。
  68. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その通りでございます。
  69. 松井誠

    松井(誠)委員 そういう場合に、やはり個人的な貸借一切について支払いの延期をする可能性ももちろんあるわけですけれども、それが実際災害が発生した場合に、そこまでやるということを可能性として考えておられるのか、その点はどうですか。
  70. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 あくまで普通の場合の銀行の取付騒動というようなものを抑制しなければならぬという趣旨に出ておるのでありまして、個人間の貸借等についてまでこの規定を広げるという趣旨ではございません。
  71. 松井誠

    松井(誠)委員 今具体的な政令の内容をお尋ねいたしましたけれども、最初の問題に返りまして、それでは一体そういう政令を緊急政令という形で出さなければならないほどの緊急性があるかどうかということについて、あらためてまたお伺いをいたしたいと思うのです。  それにしても、緊急集会というものは何日くらいかということがはっきりしませんと議論が進みませんけれども、この災害緊急事態の布告というものが発せられたときに、おそらくはそういう必要があるとすれば、緊急政令というものも即時に公布になる、あるいは災害緊急事態の布告がされると緊急政令の必要が生じるということで、災害緊急事態の布告と同時に参議院の緊急集会を求める。参議院の緊急集会を求めることさえも措置するいとまがないほどこの三つの条項というものは急を要するものかどうか。災害緊急事態の布告そのものは、たとえば警察法や自衛隊の防衛出動なんかの場合に国会の事後承認を求める。そういう形はございます。それはいわば治安上の必要ですから、これは一瞬を争うという場合があり得る。そういうことは私もわからないのではない。それからまた災害の緊急事態というものも突発的なものなので参議院の緊急集会を求めるいとまがなくて、そういういとまがないからまず布告をする。そういう必要性もわからないわけではない。しかし、この三つに含まれておるような、いわば経済的な混乱を防ぐということが、参議院の集会を求めるいとまがないほど急であるかどうか。治安上の必要ではなくて経済上の混乱を防ぐということが、二日か三日の余裕を与えないほど緊急であるかどうか、そういうことが問題になろうかと思うのです。  そこで、おそらくは緊急事態の布告と同時に参議院の緊急集会を求めるということになりますと、布告をして二日、せいぜい三日には緊急集会が開かれる。その間を待つひまがないくらい、緊急事態の布告と同時くらいにこの緊急政令を公布するというような腹づもりになっておるのではないかと思うのでありますが、それほどの緊急性が経済的な混乱を防ぐ上に必要であるかどうか。
  72. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そのときの事態によって、そのような緊急性がないということの認定がございますれば、むろん緊急集会を求めるとかいうような措置が講ぜられると思うのであります。あくまで災害緊急政令を作っていくということは例外中の例外でありまして、原則的にこれでもってやっていくという趣旨ではもちろんございません。そのために緊急集会を求め得る場合には求めるということをむろん前提といたしておるのであります。ただ交通機関等がずたずたに寸断をされてしまって、そのために実際に召集をかけましても議員さんがお集まりにならない、議院の構成ができないというようなことも当然考えておかなければならぬのでありまして、その場合にじんぜんと日を送って、それが五日、一週間とたってしまうということになりますと、災害の後には突如としていろいろな買いだめとか売り惜しみとかそういうことが起こってくるのでありまして、それは緊急やむを得ない措置として直ちに手を打たなければならぬというような事態もあり得ると思うのであります。そういう緊急の事態に対処いたしまして最小限度の規制をいたしていこうということが本百十二条の趣旨でございまして、むろん緊急集会の余地があります場合には、緊急集会を求めて正常のルートで措置をするのが望ましいのは申すまでもございません。
  73. 松井誠

    松井(誠)委員 今まで緊急集会を求めるいとまがないくらいの緊急状態があるかどうか、そういうことから逆にいって、今の憲法がおそらく予想していない緊急政令という新しい制度をここで切り開く、それほどの必要があるかどうかという点を主としてお伺いしたのでありますけれども、もう一つ、さらにこれはかりに今の憲法の範囲内における制度としますと、その次の問題は、これも政令がいわゆる憲法の委任命令法律による委任に基づく命令、委任命令の一種だということになるわけでしょうけれども、その委任命令でしょっちゅう議論をされるのは、白紙委任的な一般的な委任ではいけない、できるだけ具体的に委任の事項というものは法律ではっきりすべきなんだ。こういう一般的な議論がございますけれども、そういう観点からさらに考えて、ここに書いてあるような規定の仕方で委任命令の限度というものが満たされておるかどうか。委任命令には一定の限度があるということは議論の余地がございませんけれども、その委任命令の限度というものについてどのようにお考えになっておりますか。
  74. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 委任命令の限界というのは、やはり個々の事項に従って決定をされるべき筋合いでございまして、その場合において、なるべく委任事項は少なくしていくということが本旨でありまして、その線に立って決定をされていくことが望ましいと思います。御指摘になりましたように一般的な委任命令、白紙委任というようなことは、これは許さるべき筋合いのものではないと私も考えておるのであります。従いまして、ここでは経済的な行為、経済活動に限定をいたしまして、なおその中でもって物資の配給あるいは引き渡し等についての措置、それから物価等の最高額の決定とモラトリアムの問題、こういう事項にさらに限定し網をかぶせまして、これらの事項についてのみ政令の制定ができるというように範囲を限定をいたしたものでございまして、委任政令の範囲を逸脱しているものではないと考えております。
  75. 松井誠

    松井(誠)委員 今私がこの一、二、三の政令の内容についてお尋ねをいたしましたけれども、通常の労働者の賃金がこれに含まれないという保証はない。あるいは「価格等」という書き方で何かそれ以外にも許されるという可能性が残される。「金銭債務の支払の延期」という書き方も、一般の消費貸し借りまでを含み得る可能性ももちろん残される。そういう意味では、やはりこれは非常に広い範囲だと私は思う。先ほど局長が中央防災会議防災基本計画を立てるときに、そういう非常事態にどの程度まで政令に譲るか、どういうことを政令に書くかということをもう少し具体的にきめるのだということをおっしゃいましたけれども、それならば、そのようにきめる具体的な内容というものを防災会議であらかじめきめられるわけですから、そういうものをこの一、二、三というものの中にもっとこまかく入れるということは不可能じゃないわけです。そういうことを一体どうしてされないのか。
  76. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 緊急措置の大綱は、防災会議で大体の基準というものを論議し決定をしていただくことに相なろうかと思うのであります。それらの点につきましては、政府は国会に対して必要な報告を出すということにも相なりますので、それらの審議の過程を通じましてこれらの点がさらに具体化されてくるのではないかと考えております。それと災害対策基本法の性格自体からいたしまして、との程度にやっていくかということにつきましては、たとえば価格等の最高額といいましても、時々刻々変化いたすものでございますので、その時点に立って考えて参らなければ適当な措置が講ぜられないということもございます。従って、この程度のしぼり方で事柄をきめて参りましても、さほどの支障が起きないのではないか、かように考えておるのであります。ただし、あくまで独断を避けるという意味合いをもちまして、中央防災会議における緊急措置の大綱において論議された事項というものは当然参考にし、これを基準にいたしましてこれらの措置が行なわれて参るということに相なると思います。
  77. 松井誠

    松井(誠)委員 この程度のことでも差しつかえがないと言われましたけれども、政府立場からは差しつかえはないかもしれませんが、義務を受ける国民の側からは差しつかえがないわけじゃない。今言いましたように、賃金というものは、金銭債務の支払いという範囲は一体どの程度のものなのかということについて、この法律自体は何にも限定をしてない。そしておそらくは防災会議基本計画ではそういうものは入らない、もう少しそれが明確になるような形でかりに防災基本計画の中に入れるとすれば、緊急措置としてそういうものもおそらくはおきめになるのだ。そうすると、これは書くことが技術的に不可能だということではなくて、何かやはりこの程度でいいんだろうという非常に安易な考え方じゃないか。緊急政令というものが、緊急集会を認めた趣旨からいって、少なくとも非常に限定をしてやらなければならない制度だということは、私は政府も考えておると思う。しかも緊急政令という制度が戦後初めての制度で、ここで一つこういう制度を聞かれたことによって、あと第二、第三のどういう緊急政令という形態が出てくるかもしれない。そういうことは日本の憲法なり行政法の体系からいって一つ新しいことがつけ加わることになるのですから、従って慎重の上にも慎重にお考えいただく必要がある。そういう意味一つ大臣お尋ねをしたいのですが、こういう緊急政令という制度をとらなければならないという必然性あるいは法律上の根拠というものに私は非常に疑問があるわけですが、これから新しく切り開いていこうとするこういう緊急政令という制度というものについて、大臣もう少し根本的に考え直すお考えはございませんか。ことに今申し上げましたように、かりに憲法のワクの中だとしても、この規定の仕方が非常にあいまいで問題を残しでいる。いわんや、憲法が一体こういう政令を許すかどうか。とにかく初めてのケースであります。そういう問題だけに、今局長に、一体参議院の緊急集会は何日くらいだとお聞きしても、大体何日くらいのうちに開かれるのかちょっとおわかりにならない。どれほどの緊急政令を頭に置いてお考えになっておるのか、実ははっきりしないくらいであります。そういうことをあれこれ考えると、この緊急政令という制度について根本的にお考えになるという心がまえはございませんか。
  78. 安井謙

    安井国務大臣 お話通りに非常に重要な問題であろうと思いますし、それが今の憲法の範囲内のものであるかどうか、そういった法律的な検討についても、これを作成いたします前には十分の検討はいたして参ったつもりでございます。なおこの条章は、前にも申し上げましたように、これはめったに起こることではない、五十年に一回起こりますか、百年に一回起こるか、あるいは起こらないかもしれないような場合、しかもこれも起こり得る可能性もある。そういうきわめてまれな場合を想定して置いたものでございます。しかもそれは、従来の国会で法律を定めるという建前、緊急集会といったような制度と置きかえようとするものでは決してございません。それがどうしても間に合わなくてそういう必要があった場合だけこれを置こうということは、先ほどから事務当局が説明しておるところでありまして、緊急集会の時期等についても、通常であれば三日くらいでいけるという常識があるかもしれません。これはやはり異常な災害の場合に、全員に通告が発せられ、それが到着する時間というものを見たときに、五日かかるか一週間かかるかわからないといったような場合もあり得るのではないか、そういう場合に、やむを得ない最低限度の措置として、憲法の精神に違反しない範囲内でこの特例を設けたい、こういう気持でおります。
  79. 安宅常彦

    ○安宅委員 関連して。ちょっと聞きたいのですが、今大臣の答弁の中に五十年に一回とかなんとか言われましたが、災害が激甚な場合というのは、そういう場合には緊急措置がとれるという基準があるのですか。たとえば激甚地に今指定されている災害地がたくさんありますね。それはどの程度かということは、現在の激甚地の災害地帯に適用するという意図があれば幾らでもできる、こういう非常に大ざっぱな法律なんですが、それはどういうふうになりますか。
  80. 安井謙

    安井国務大臣 どこへ基準があるかということは、そのときの状況でありますが、およそ考えておりますることは、戦後起こりました災害といったようなものは、むろんこの範疇に入らない。もし入り得るような事例が前にあったかということになりますと、関東大震災といったような程度のものを想定しております。
  81. 安宅常彦

    ○安宅委員 この辺おかしいですよ。あなたはそういう意図だか知らないけれども、それを運用する者はあなたでなくなる場合もある。私もあなたも死んでしまう場合があるかもしれない。そういう場合には、これを激甚地だという考え方をすれば関東大震災のときくらいというのですが、関東大震災のときとは交通事情も全部変わっています。通信関係の系統もみな変わっていますよ。そういうときに、たとえば参議院の緊急集会と現在の場合とは大へん情勢が違う。あのときよりももっと大きい広範囲に及ぶ災害が現在でもあるかもしれません。現実にあるのです。そういうことで常識的にこれを国会で答弁をされて、この法律が通った場合に、とんでもないことが起きるということを、私は大臣には指摘をしておきたいと思います。  さらに、関連して立ったのですから行政局長お尋ねいたしますが、先ほど賃金のことで、賃金というのは、一般的に法律上書いた場合には、あなたが答弁されたように大工さんの手間賃でございますなんという限定を国会の答弁としてでき得るものでしょうか。そこのところをちょっとお伺いしたいと思います。
  82. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 法律上の表現としては、一般的に賃金ということで入るわけでございます。ただ政令をきめるということについて、中央防災会議等で論議をしてもらいたいということで、その結果によってきまると思いますけれども、私たちが立法の過程において考えておりまするのは、それらの賃金について全面的にというようなことは一切考えておりませんので、むしろこの中でもって当面のところでは大工の手間賃でありますとか人夫賃であるとかいうようなことが、その対象になるべき筋合いのものではないかという意味を申し上げたのでございます。
  83. 安宅常彦

    ○安宅委員 適用されるものではないかと思いますでは、これはどうぞ通して下さいと言われても、私はああそうですかというわけにはいきませんよ。賃金と明確に法律で書いた以上、賃金ですよ。これは労働組合法や労働基準法にいう賃金とどういう関連を持って、あなたが賃金という言葉をここで使われたか、もう一回重ねてここでお伺いいたします。
  84. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 これは労働基準法なり何なりというもの、それについての特例を書こうというようなことではございません。法律でもって規定をしておらない事項について、緊急の必要のある場合におきまして、その最高額等についても規定をなし得るという根拠を置いた、それまでのことでございます。
  85. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは賃金と書かないで、大工さんの手間賃と書けばいい。賃金と書いた以上は、そういうふうに解釈するのが法律解釈である。あのときに行政局長がそういう答弁をしたから、賃金といっても大工の手間賃だけだったはずだなんて言ったって、世の中は通りませんよ。それではその具体的な例を申し上げましょう。あなたはそういうふうにおっしゃっていますが、私はごまかしじゃないかと思う。百十二条の二項をごらんなさい。これは罰則でありますが、三行日あたりから「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関してその政令の違反行為をした場合」と書いてあるでしょう。ここはどうです。つまり法人に対してあるいは人の代理人あるいはその事業所の責任者ですか、そういう者に対して、その従業者あるいは使用人がこの政令に違反行為を行なった場合には、罰則が適用になっているのですよ。大工さんだけではないということを明確にこの百十二条に書いてあるではありませんか。これはどうなんですか。
  86. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 第二項は前項の規定を受けまして包括的にこれを書いております。従いまして、法人等におきましても、たとえば第一号の物資の供給あるいは譲渡、制限等については、これは当然該当すると考えるのでございます。それからモラトリアムなどについても、当然この規定の該当があるわけでございます。ここに書きましたところで一号から三号全部が必ずひっかかるという意味ではなくて、必要のある向きについては、一号から三号の中で、法人関係のものもその両罰規定が働くという趣旨を明らかにしたものでございます。
  87. 安宅常彦

    ○安宅委員 だんだんあなたは苦しくなりつつあるのですが、そうすると百十二条の第二号の「賃金及び価格等の最高額の決定」の分は適用になりませんと、ここであなたは明確に答弁することができますか。
  88. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 大工さんのお話が出ましたので関連して申しますと、大工さんの場合におきましても、会社で大工さんを働かしておるというような場合があり得るわけであります。
  89. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから問題が起きるのです。大工さんというのは、たとえばいろんな資格が要る。そうして災害時でなくても、たとえば今住宅なんかは国で災害地における住宅というものを建てたりなんかする、そういうときに建てられる資格のある大工さんなどというようなものは、大正の関東大震災の時代にはあったかもしれぬけれども、今ではほとんど請負工事を大きな土建業者がやって、その中に含まれている大工さんが大部分であって、独立しておる大工さんでこういうときに家を建てられるような資格のある人は、ほとんどいないのです。そうすると、その人だけに最高賃金額を押えておって、その土建業者は、これは今はたくさんの需要がある。それでは一つこの際お前らも賃金をよけいやるぞ、こういうふうに労働契約によってその大工さんは賃金がぐっと上がっていく。そうした場合には何らこれを規制することができない法律になっておるじゃありませんか。そうすると、独立した一人親方の大工さんだけが賃金を押えられて、普通の土建業者の下請をやったりいろいろなことをやっておる、あるいは直接雇用されておる大工さんというものは、賃金の最高額の制限の適用を受けない、あなたの答弁からいきますと、こういう理屈になるではありませんか。
  90. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 大工さんの話になっておりますので、大工さんだけに限定して申しますと、これはあくまで、いざという場合に非常に人手不足で、そのために手間賃等が暴騰して消費者に大へんな迷惑をかけるということを抑制したいという趣旨でございます。従いまして、今お話のありましたように、大規模の土建会社に従業員として雇われておる場合は、これは会社とその従業員としての大工さんとの間の契約でございます。これは要するに先刻申した一般の賃金というものであって、それを規制対象にする趣旨ではない、そういう意味を申し上げておるのであります。
  91. 安宅常彦

    ○安宅委員 それは、もう少し勉強した方がいいと思うのです。たとえば労働組合法においても、私のところには、一人親方の大工さんを含めて労働組合を作って、そうして日雇い健保やいろいろなものの適用を受けて、そうして団結権なり団体行動権を享受しておる団体もたくさんあります。こういう人々も、その地域における最低賃金額を同じ事業所で決定しようとする場合には、そういういろんな組合なりあるいはいろんな法人に準ずるようなそういう団体を作って、今みずからの賃金のダンピングを避けようとして作っておるのが通常になっておるのであります。そういう場合には、そういうことができる時代になっておるのでありますから、そういう大工さんの手間賃を押えようなどという、そのこと自体が労働法における最低賃金なりそういうものの特例をあなたは作るということと同じになるのでありますから、そういうことは地方行政委員会では知らないやつばかりいるんだろうと思って、そういうなめたような答弁をしないでもらいたいと思うのですが、どうですか。
  92. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 決してなめたりなんかいたすつもりはございません。そういったような措置がちゃんと法的に講ぜられるものであれば、これはこの政令の対象にするようなことはないだろうと思うのです。ただそういうことが行なわれない、またそれが乱れて参る、そういうおそれのあるような事態が現実に発生する場合において、その最高額を決定していく、これによって消費者というもの、住民一般というものの立場を保護していこう、その趣旨にほかならない次第でございます。
  93. 安宅常彦

    ○安宅委員 まあ人の質問の関連ですから、私がやるときに徹底的にやりますけれども、これは非常な問題です。つまり激甚な災害という範囲、基準というものは、全然常識以外には答弁になっていないということが、まず重要な一つの問題。それから百十二条第一項のうちの第二号というものは、第二項の関連でいきますとあなたが答弁されるようなものではなくて、「使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関してその政令の違反行為をした場合」、たとえばあなたの方の意図としては、賃金をこれくらい押えようと思った、ところがそれでは飯が食えないから、土建業者の親方に対して、その従業員が賃金を上げろということを言った、それではとても働けないと言った。これは政令の違反になりますよ。そういうことをあなたがねらっているというふうに言わざるを得ません。だって、第一項の第二号というものを適用しないという答弁はあなたの口からは聞かれなかった。それからそういうものと関連をして、その中で大工とかなんとかいうものに限定した賃金の考え方だというならば——この賃金及び価格というものを、賃金という法律上使う言葉だったならば、あなたが言う大工さんや左官屋さんや、そういうものの手間賃だと考えで、そうして作ったのでございますということが明らかになるような、そういう法の体裁にしなければならないと思うのです。そういうことが明らかである証拠には、まず第一条にそれを書いてあるじゃないですか。第一条というのは、目的が書いてある。これには、災害を防止して国の財産なりあるいは個人財産なりを擁護していくのだということが目的でなければならない。ところが、この第一条の目的は、ずっといろいろなことが書いてありますが、最後に「もって」、ここからが目的で、結論なんだ。「もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」こんな災害対策基本法がありますか。社会の秩序の維持と公共の福祉だけを確保するのが目的だなんということが書いてある、その法律のこの目的から受けた場合には、やはりこれは百十二条の解釈などというものはあなたのような解釈にならない。これだけは明確に私は言っておきたいと思うのです。そうでなかったら、賃金という言葉は直しなさい。あるいはまた大工だけだということをはっきり言いなさい。あるいはここでいう賃金の範囲というものはこういうものだということを明確にできるようなものにこの条文を変えるべきです。そうでなかったならば、いつでもこの百十二条を発動することができるし、それからその範囲というものは、大工さん、左官屋さんだけではなくて、使われている人、そういうものも、法人、またはその使用者に対して、従業者、従業員が何かやった場合には政令違反行為としてこれを処罰することができるという、まことにもって団決権やそういうもの、あるいはその基本的な権利である賃金の確保、人の最も重要な基本権というものを制限し、あるいはこれを極度に押えようとする、そういうところに大きな目的があるのがこの百十二条だと私は言わざるを得ない。それで、私は常識論と、法文の体裁の分と両方言っておりますが、どちらからいっても、常識で私が言う分には、あなた方は答弁としては一応切り抜けるためにごまかすことができるかしらぬけれども、そうでなかったならば、法文の体裁というものをまるきり変えなければこの百十二条というものはとんでもない恐ろしいばけものみたいな条文だということを明らかにわれわれは感ずるものでありますから、これに対して明確な反論があるならば出してもらいたいと思うのです。
  94. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 決してごまかし等でもって切り抜けようといたしておるつもりはございません。あくまでも、前々から申し上げておりまするように、本措置は関東大震災級の災害が襲来したという場合に、しかも参議院の緊急集会等も開かれない、そういう事態の場合におきまして、最低限度の、経済的行為について制限を課する道を開いておりまして、もって全体の公共の福祉に役立てようという本旨にほかならない次第でございます。ただ、御指摘のような点につきましては、運用上もその他の点においても十分に配慮をしていくべきであるということについては、私も同感でございます。
  95. 安宅常彦

    ○安宅委員 最後に申し上げますが、運用上ではだめなのであって、たった一つ、たとえば関東大震災級ではわからない。軍艦でも三万トン級とか一万トン級とか、はっきりしている。そういうことは常識であなた方が答弁されても納得できない。それから百十二条の一項の第二号というものは、同じ条文の二項を受けて、処罰の対象にならない。法人または云々というそこのところを受けて、それを処罰をすることができないのだという明確な二つの答弁がないということだけは私ども了承しておきます。  私はこれで終わります。
  96. 松井誠

    松井(誠)委員 いま一つ質問が残っていますけれども、その前に、今安宅委員からの質問で気がついた点二つばかりお尋ねいたします。  その一つは、土建会社などがやる場合には、その土建会社の大工さんの場合は賃金であるけれどもこれには入らない、しかし土建会社が請負契約をやるその請負代金というものは、この二号の「賃金及び価格等」の「等」の中へ当然入れなければならないし、入るだろうと思いますが、その点が一つ、それからもう一つ、この法律案で私あるいはどこか見落としておるかもしれませんけれども、非常災害という言葉が突然出てくるわけです。非常災害とは何かという定義がどこにもなくて、いきなり非常災害という言葉が出てくる。これは、非常災害ということの意味は一体どういうようにお考えになっておるのか。この二点をお伺いいたします。
  97. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 第一の点につきましては、今お話しになりましたような点に極限をいたしますれば、「等」の中に入るということも考えられると思うのであります。それでなければ実効の上がらない場合におきましては、そういうことも考えていかなければならないと思います。  それから第二点の問題でありますが、非常災害というのは、ここに突如として出て参るわけではございません。二十四条でございますが、二十四条には非常災害という概念をここにも打ち出してきておるのでありまして、ここで非常災害対策本部の設置がやれるというふうに書いておる前提といたしましての非常災害というのは、戦後におきましても累次災害がございましたが、その中で政府の方から国務大臣が事実上の機関といたしまして現地に出向きまして、いろいろな防災応急態勢の指揮に当たったことは御承知の通りであります。この点につきましては、狩野川台風の場合、あるいは伊勢湾台風の場合というものがあるわけでございます。これらの普通の災害よりも相当大規模であるというような災害を、いわゆる非常災害と称しておるのであります。しかも、その非常災害の中でさらに程度の激しいもの、非常災害の発生があり、かつこれがわが国の経済及び社会の秩序の維持に重大なる影響を及ぼすべき異常かつ激甚なるもの、これを災害緊急事態布告の前提といたしておるのでありまして、これは程度の問題であって、どこのところに線を引くかということは、むろん問題はございましょう。そういう点につきましては、防災会議等で今後ある程度基準は論議されると思いますけれども、しかし、ただ単に形式的に死者が何人出たから何人以下は普通災害で、何人以上は非常災害だ、あるいはさらに激甚災害だというふうに、死者の数あるいは行方不明者の数、負傷者の数、家屋の損壊数というようなものについて、ただ数だけでいくということもできかねる問題でもあろうかと思うのであります。また、かなり広範な災害でございましても、事実上いろいろな諸措置が万全に行なわれております結果、いろいろな緊急措置を講ずべき必要性のないような場合もあるわけでございます。ただ、この場合において、そういう必要のある場合においてのみ限定して措置がとれるという態勢をとったのであります。非常災害あるいは激甚の災害ということについての定義はございませんけれども、一応の基準といったようなものは、防災会議等においてその大綱が決定せられるときに論議されることに相なるだろうと思います。その他の点につきましては、一般の社会通念、そのときにおける情勢というものを総合的に判断して、決定をされることに相なると考えておる次第でございます。
  98. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、非常災害の中に、非常災害対策本部を設けなければならないような非常災害と、それから災害緊急事態の布告をしなければならないような非常災害、あるいはそういう二つの特別の措置の必要のない非常災害、非常災害というものは三段階になるというお考えですか。
  99. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 非常災害は三段階ということも、形式的にそこまで詰めればあり得るかもしれません。あり得るかもしれませんが、普通考えておりますものは、やはり非常災害は二段階でございまして、非常災害対策本部が置かれるような事態と、それから緊急災害対策本部が置かれる事態、これを想定いたしておるのであります。
  100. 松井誠

    松井(誠)委員 この二十四条の規定ではそう読めないわけです。「非常災害が発生した場合において、」これこれのため「特別の必要があると認めるときは、」ということで、非常災害の場合に特別の必要があるときだけ非常災害対策本部を設けるということになると、むしろ非常災害対策本部というものは非常災害の中での特別の場合だという規定の仕方になっておるわけです。ですから、一体非常災害というものはどの程度のことを考えておるのか。非常災害ということが卒然として出てきて、災害は全部非常災害だというのか、あるいは災害の中で非常災害という段階が一つあるのか、非常にはっきりしないわけです。非常災害対策本部は大したことはございませんけれども、先ほどから安宅委員が言っておるように、災害の緊急事態の布告を必要とするような非常災害はどの程度かということは、非常に重要な問題だと思う。従って、今局長から防災会議で具体的ないろいろなことをきめるということをおっしゃいましたけれども、もしそういうことが何かの形できめられるならば、非常災害とは何ぞやという定義をやはりもう少し具体的にあげるべきであろうし、それから特に災害緊急事態というものは具体的にどういう場合にやるかという、それも緊急政令との関係もありまして、非常に国民義務というものに影響があるので、一応文字の上で、きめられるということを前提としておるものならば、むしろ初めから法律におあげになったらどうだろう、そういうふうに考えるわけですけれども、どうでしょうか。
  101. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そういうことをきめるということは絶対に不可能だとも考えておりませんが、現行法でも非常災害的なそういう感覚は出ておるものもあるわけであります。これをもう少しわかりやすくという努力をしてみようと試みた段階も、実はございます。ただいろいろ考えてみましても、その点は、やはりただ単に災害の規模とかということだけでもって形式的に押えるというわけにも参りません。そうなりますと、どうしてもやはり一般の社会通念に従いまして、その解釈運用にゆだねなければならないというようなことで、勢い表現というものは抽象的にならざるを得ないというようなこともございまして、非常災害というのは一応一般社会通念的なものとして、一般災害ではない、相当大規模な影響、激甚災害というものを押えることにいたしたのでありまして、その中で非常災害対策本部が置かれる場合と、それから緊急災害対策本部が置かれる場合、これが程度の差として現われてくる。そういう組み立て方にいたしたのであります。
  102. 松井誠

    松井(誠)委員 もう一点、この緊急政令の問題についてお伺いをしたい。  緊急政令というものは、憲法上いろいろ問題がある。その憲法上の疑問を少しでも少なくする一つの方法としては、事後の措置、つまりこれが憲法違反だというような非難をできるだけ少なくするための事後の措置というものを考えなければならぬじゃないか。その点から考えてみますと、この百十二条の四項の「第一項の規定により政令を制定したときは、直ちに、国会の臨時会の召集を決定し、」「直ちに、」ということを書いておりますが、その「直ちに、」というのは、具体的にはどういう程度のことを考えておられるのですか。こういうことを私がお尋ねしますのは、たとえば社会党が臨時国会の召集を要求する。そうすると直ちに開かなければならぬということにはなっておるけれども、直ちにというのは何も一日や二日のことではなく、一カ月、二カ月でも直ちにだというようなことで、延び延びになったという事例がありますので、一体この「直ちに、」というのはどういうことなのかということです。
  103. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 法律上の表現形式あるいは法律上の意味において、直ちにということがそう二つも三つもあり得るはずもありませんし、同じことであろうと思っております。ただ国会召集等の場合は、これは私が申すような事柄ではございませんが、いろいろの政治上の配慮その他から考えられておるようでございますが、この場合の「直ちに、」というのは、これは文字通り直ちに、ということでございまして、客観情勢の許す限り、手続が進められる限り直ちにということでございます。
  104. 松井誠

    松井(誠)委員 この直ちにという言葉政治的な配慮が加え得る可能性があるということを局長自身がちょっと言われまして、この「直ちに、」ということは政治的な配慮がないんだということでありますけれども、直ちにという言葉に別に区分けがあるわけじゃない。しかもこの緊急政令というものが非常に乱用される可能能性をはらんでおるとすると、この「直ちに、」というものもまさにその政治的な配慮で長く引き延ばされた直ちにということにもなりかねない。私よく知りませんけれども、イギリスなんかの緊急権法とかいう法律には二日以内とかいう制限があるそうです。そういう緊急の事態で、国会を召集をするいとまがないというような緊急の場合でさえも、一応措置するけれども、しかもなお二日以内という制限があるそうです。また交通機関が途絶をして、いつ召集できるかわかりませんから、そこで直ちにということは何日以内とは申し上げられないという、おそらくそういう御答弁になると思いますが、これがほんとうにそういう憲法のワクをあるいは踏みはずすというような疑惑のある規定であるだけに、そういう疑惑からのがれるためには、できるだけその後の跡始末をきちんとしておかなければならない。そういう意味ではこの「直ちに、」というのにいわゆる政治的な配慮が入る余地がないように、具体的な何かもっときちんとした書き方を御考慮願えないか、そういう点はどうでしょうか。
  105. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この場合は、特に法律規定をされておらないような事柄について、政令でもって緊急措置を講じたというような場合でございます。いわば異例の事態であるわけであります。この点は事後の復旧対策といたしまして、直ちにこれを補てんをしていかなければならない。瑕疵というものがございませんでしょうけれども、それを補正をしていかなければならぬということでございます。これは純行政的に考えていかなければならぬ問題でございまして、ここにいわゆる不純な——と言っては語弊があるかもしれませんが、いろいろな配慮を加えるべき筋合いのものではございません。災害対策という一点にしぼって参りますならば、「直ちに、」というのはこれは文字通りに直ちにということで運用をすべきものでございます。しかしそこで即日とかあるいはその翌日とかいうようなことを書くのもいかがか、そのときのやむを得ない客観的な事情もあるいはあるかもしれないということでございます。ただ建前といたしましては、万難を排してやり得るのであれば、「直ちに、」ということで尽くされているのではないかと考える次第であります。
  106. 松井誠

    松井(誠)委員 そこで、最初ほんとうに素朴な国民立場からもう一ぺん考えてみますと、これはやはり国民義務を課するという、そういうところではなかなか至れり尽くせりであり、あるいは防災機構なりそういうものを作る上においては、なかなか熱心に考えられる。そういう大きな桂は二つあるけれども、国民をどうして救ってくれる、一体どうしてわれわれを守ってくれ、そしてその跡始末をしてくれるのかという一番国民が求めておるものは、その二つの柱の谷間になって、非常に細々としてしまっている。そういう印象をどうしてもこの法律案の全体の印象から受けざるを得ない。そこで今いろいろ国民に対する義務の面でお伺いをしましたけれども、そういう義務の点につきましては、その柱が大きいだけじゃなくて、しかもそれが何かと初めからふくれそうな可能性を持った柱だということを質問を通して感じないわけにいかなかったので、そういう点だけ最後に私の考えを申し述べまして、質問を終わります。
  107. 高田富與

    高田委員長代理 午前中の会議はこの程度にとどめます。  本会議散会直後に再開することにいたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後三時十分開議
  108. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  災害対策基本法案を議題とし、質疑を継続いたします。門司亮君。
  109. 門司亮

    ○門司委員 まず最初大臣に聞いておきたいのでございますが、この法律国民期待いたしております災害に対する予防と申しますか、防災関係についてのことが従になって、災害が起こった場合における対策が主になっておるように見受けられるのであります。そのことは、この法案を提案されておりますものの最後に書いてある理由の中には、防災関係を主とした字句が使われております。ところが、大臣説明書を読んでみますと、防災関係というものはきわめてわずかであって、そうして災害に対する善後策のようなものが非常にたくさん書かれております。そのいきさつはどういうことですか、この法律ほんとうのねらいというのはどこにあるのですか、その点をまずはっきり聞いておきたいと思うのです。
  110. 安井謙

    安井国務大臣 門司さんのお話通り、全章を通じまして、災害応急対策に類する部分の条章が非常に多いということは御指摘通りであろうと思います。これは性格上そういうふうなものになったわけでありまして、今後災害予防をやるためにいかなる態度と方法でやるかということに一番大きい重点を置いておる。さらに実際に災害が起こった場合に、どういう対策を講ずるかという点を第二に置いておるわけであります。ただ、災害予防の具体化につきましては、これは各省間にわたる問題でございますし、この法律の建前が各省の制度、法律を一応そのまま認めまして、さらに総合的に災害に対処していかなければならぬ、その対処すべき機構と調節をこの法律で与えよう、こういうふうに考えております。その個所は、費やしておるページ数は少ないのでありますが、非常に重点を置いて考えております。ただ数が多いために、今のような応急対策に非常に紙数を費やしておるという結果になっております。
  111. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、この法律は現在あります各省の法律を生かしておいて、そうして総合調整をするのが目的だというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  112. 安井謙

    安井国務大臣 総合調整もまた一つの大きな目標でございますが、調整すると同時に、これを総合して、さらに災害そのものを目標にした一つの集中的な前進をさせる足場を作るということに重点を置いておるわけであります。
  113. 門司亮

    ○門司委員 どうもその辺の答弁が非常にあいまいですが、どう考えても、この法律を見てみますと、国民の要望しておるもの、またわれわれが従来考えておったものとは似ても似つかぬものが出ておるような気がするのです。起こった災害について善処すべきことは当然でございまして、現行法が円満にある程度行なわれれば、それはなし遂げられる仕事だ。また今日までなしてきた。今国民が要望しておりますのは、そういう災害をいかにしてなくすか、いかにしてこれを押えていくかということが私は非常に大きな問題じゃないかと考えます。ところが、・さっきの大臣の答弁を聞いておりましても、単なる総合調整をするというようなことでは、この法律も全然意義がないのじゃないですか。ここに書いてありますことは、いろいろのことが書いてありますけれども、これは大体現行法で災害にあった場合はみんなやっているでしょう。もし大臣がそういう御答弁なら聞いておきますけれども、今までの災害で不都合であった、いわゆる災害対策に対してどういう点が不都合であったかという点を一つあげてもらいたい。これには書いてないのです。どういう点が不都合であったからこういう法律をこしらえるということ、——防災法だけなら話はわかるのです。わかるのですけれども、今のお話のようなことなら、今までの災害にはどういう点が不都合であったかということ、この点を一つ明らかにしておいていただきたい。
  114. 安井謙

    安井国務大臣 私は、現在の災害に対する制度、組織、法律というものが、必ずしも話にならぬというふうなものじゃなかろうと思います。これは、各省それぞれの所管によりまして、相当やるべき仕事もやってはおる。しかし、まだまだ足りない面が非常に多いことも事実でございます。しかしてそれをほんとうに総合的に災害というものを——今まで一番欠けておるのは、各省がそれぞれの仕事の一部として災害を意識しながら、また災害対策を考えながらやっておる仕事はたくさんあるし、それなりの効果はあげておると思うのでございますが、災害そのものに直接対処して、各機関をあげて総合的に検討して進めていこうという仕組みが今までなかった。この仕組みを今度はこの法律で考えたい、そういう意味防災会議というものを起こして防災基本計画を立て、その計画の方針にのっとって各省がそれぞれ実施計画を責任を持ってやる。この仕組みを一つ作っていくということは、従来の災害対策に比べまして大きな進歩であるというふうに私ども考えております。
  115. 門司亮

    ○門司委員 今の大臣の答弁は、私はこの法律を見て必ずしもその通りではないと思います。もうあまり時間もないようですから端的に私は申し上げておきますが、今の大臣の御答弁のようなら、こういう協議会なんか幾らこしらえたからといって、それでものがまとまるものじゃございません。少なくとも新しい庁なり省なりを設けて、災害に対しては、予防からあるいは災害に対する処置というようなものを一手に引き受けてやるという確固たる責任政府になければならぬ。この法案を見てごらんなさい。政府責任は何にも書いてありはしない。国民を取り締まったり、国民に対する義務は至るところに書いてあるが、この中に政府が講ずる財政措置一つ書いてありはしない。一体どこにこれを持っていけばいいかわからない。防災会議防災会議と言うが、だれが主催して、どこでどういうことが行なわれるか。計画を立ててもこれは計画倒れですよ。国民が今ほんとう要求しておるのは、こういう災害が年々起こってくる。大体大臣の方が統計は詳しいだろうから、私から申し上げる必要はないだろうと思いますが、戦後ずっと災害による年次の国土の損失は大体二千億ないし三千億程度毎年やられておる。平均して二千四、五百億という数字が出ておるでしょう。それだけ大きく国土を消耗しておりますときには、やはりそれをなくすということが先であって、それだけ国土を消耗しておいて、あとどう壁を塗っていくかということであってはならないと思う。もし大臣の言われるようなことが正しいとするならば——正しいという言葉はどうかと思いますが、ほんとうだとするならば、国の責任をもう少しこの法律の中に明らかにしてもらいたい。防災会議できめるんだと言っても、国民はどこがよりどころかわからない。その点がこの法律で非常に大きい一つの欠陥だと思います。この法律で国の責任は一体どこにありますか、だれがこれを主管して、だれがこの法律執行に当たるのか、防災会議執行に当たるわけじゃないでしょう。その国の責任を明らかにして、主管庁はどこであるかということを明らかにしておいていただきたい。
  116. 安井謙

    安井国務大臣 今の門司さんのお話のような考え方も、一つの有力でかつ有効な方法だと私は思うのであります。防災庁なり防災省を作って、防災の実際機関、あるいは実際の計画実施を一本にまとめる、これは非常に有効だと思いますが、反面から考えますと、たとえば防災という仕事がいわば各省の全般にわたっておる部面がある。これは建設省の治山治水もございましょうし、防波堤の問題も、運輸省の関係もございましょうし、あるいは厚生省の防災救助という問題もございましょうし、消防の面もあり、警察の面もある。こういうものをそれぞれまとめて一本の省にしてやることがはたして実際上の効果が上がるかどうかという点になりますと、私どももまだ多分の疑問を持たざるを得ない。門司先生の御意見も私どもは確かに御意見だと思いますし、将来の問題としてはこのことも考えなければならぬと思いますが、これをやるといたしますと、非常に機構上の大改革にもなりますし、またそれが実際上能率にはたしてマッチするかどうかという点には、まだわれわれは確信が持てないのでありまして、そういう意味から、現在ありますそれぞれの機能をフルに防災というものに向けて発揮させるにはどういう仕組みがいいかということを考えました結果、それぞれの各省の責任において実施はする。しかしそれをまとめて推進するのは総理大臣のもとで各省大臣責任でもって災害というものを対象に真剣に検討し、施策を進めていく。この仕組みはこの法律で明らかであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  117. 門司亮

    ○門司委員 大臣の今の御答弁でございますけれども、国の場合はそれでよろしいかと思います。また地方にも何か会議を置くようにしてありますが、地方の会議は国の会議とはおのずから別でありますから、災害をどう防止するかということが地方的に行なわれることはいいと私は思います。しかし、国では今のお話のように、ただ協議だけはするが、ほんとうのことはみんな各省がそれによって行なうのだということになりますと、地方の引き受ける方は一つなんです。今、地方の一番困っておるのはそれなんです。厚生省の問題については、厚生省に行かなければ話がつかない。建設省の問題は、建設省に行かなければ話がつかない。運輸の問題は、運輸省に行かなければ話がつかない。学校がどうなったかといえば、文部省に行かなければ話の筋が通らないということで、この法律ができたら、ことさら地方の自治体はやりにくくなりはしないか。地方の自治体の要求するのは、少なくとも一本の姿で、災害が起こったら、厚生省の問題にいたしましても、あるいは教育の問題にしても、何の問題にしても始末がつくといいますか、処置がとれるのだという問題がやはり地方には一番大事なことであって、国が協議をして、その協議に基づいて行なうのだというなまぬるいことをやっておって、一体災害がかりに起こったときの処置としては、私は満足なものではないと思います。われわれがさつき申し上げましたように、何か一つの国の主管庁をこしらえて、わかるようにしなさいというのは、災害が起こった場合でもこれを迅速に処置していくためには、自治体にとってそれが最も必要だと思うのです。一方において伝染病が出てきておる。それについて厚生省が処置をとっていく。しかし道路の計画の方は、そこにはなかなかいけない。一体道路をどうするかというような問題等がやはりこの中に考えられなければならない。こういう国と地方との責任の所在といいますか、それを考えてみますと、国はこういうことでやればよろしいかもしれません。協議さえしておればよろしいかもしれません。しかし、地方は協議だけでは済まないのであって、実際にこれを行なっていかなければならない。そうすると国のはっきりしたよりどころがあって、一カ所に行けば、災害があって、災害を報告して実態がわかれば、国は、厚生省の処置も、建設省の処置も、運輸省の処置もすべてそこから処置がとられるという有機的なものがなければならないと私は思う。今日のような各省の官僚のなわ張り争いが是正できないようでどうするのですか。災害というのは、国民にとって一番大きな問題なんです。人為的の災害なんかありはしない。ほとんど大部分が自然災害だと思うのです。それは国の政治のやり方が悪かったからこういう被害が起こったという現象的なものはありましょうけれども、形からいけばやはり自然災害であることには間違いない。その自然災害に対処していく地方の自治体としても、地方の住民としましても、望んでおるのは、そういう一つの大きな国の機構ができるということを望んでおると私は思うのです。そのことは何も書いてない。国の責任なんというのは、露骨にいえば財政措置一つ書いてないでしょう。この法律案を読んでみますと、地方の自治体は非常災害に対する場合に、財政の積み立てをしなければならないというようなことが法律案に抜けている。それに対して国はどうするかというと、国のことはちっとも書いてない。ただ、財政措置をするとかきわめてなまぬるいことでのがれておる。もし地方の自治体にこういう災害が起こったときの予防措置として財政上の規定を設けるなら、国も予算の何割かというものは毎年積み立てて置く。そうして何も補正予算だなんということをしなくても、いつでも金が出せる準備をした方がよろしいと思う。その方が国の責任がよほど明らかになる。地方もよほどたよれると思う。そういう処置はちっともとっていない。国の責任を明らかにしていないところにこの法律案の一番大きな欠陥があると思う。そういう処置はとれませんか。たとえば、予算の何%かを必ず積み立てていく。そうして財政的にはちっとも地方に心配をかけないというようなことが明確になる。主管庁はどこで、どこに行けばそういうことは一切わかるのだということがどうしてできないかということなんです。これを自治省の大臣に聞いても無理だと思うのですよ。私ははっきり言っておきますけれども、自治省としては、これだけの法律案をまとめられたことはせい一ぱいだ。これ以上は自治省の力ではまとめられなかったと思う。これは審議する方においてははなはだもの足りないのであって、従って審議の過程において総理大臣に出てきてもらって、そうして国の総元締めである総理大臣に対してわれわれの意見というものが十分に反映する——という言葉はどうかと思いますが、わかっていただいて、そうして、もう少し国の責任の所在が明確になり、地方の自治体や住民が安心してある程度たよれるような法律案に直す必要がこの際あるのではないか。私は、自治省の大臣としては、この問題で議論することははなはだ気の毒だと思っていますけれども、そういうと大臣は怒るかもしれないけれども、おれの力でやれるのだということになるかもしれませんが、実際はそういうことではありませんか。この点どうなんですか。どうしてもできませんか。一つの省にするということはできませんか。災害で少なくとも二千億か三千億の国幣が毎年消耗しているのですよ。それをいかに防止するかということについて、もう少し国が真剣になっていいと思う。各省もそのことを考えるなら、事こういう防災に関する限りにおいては、やはり一つの省の施策ではないのであって、国の施策でありますから、一つの省の考え方だけでいけるものでは決してないのであります。この間もお話がありましたように、いかにここで防災会議できめられましても、おのおのの施行団体がかわってきますと、干拓の場合の防波堤は農林省がやるんだ。築堤の場合の防波堤については建設省がやるんだというようなことになっておったのでは、一貫した仕事はできないのです。だからやはり高潮の来るようなところ、あるいはそういう被害のありそうな、大体予想されたところは、一つ法律で、農林省も建設省も同じような建前でやれる仕組みにしておきませんと、防災会議でどんなにいろいろきめましたところで、おのおのの省には予算がありますし、おのおのの省にはまた考え方がございます。だからかりに申し上げて参りますと、干拓事業に対しての農林省の予算というものについては、おのずから制限があると思う。この制限の中から国があるいは国民要求しているような築堤というものができるかどうかということは、予算の関係で非常にむずかしかろうと思うのです。それが今までの伊勢湾台風のような弊害を起こしておる原因ではないかと思う。あの伊勢湾台風というものは、どっちがよかったとか悪かったとかいうことを議論するよりも、皆さんの方がよく御存じです。農林省と建設省の行なった同じ災害に対する防波堤の築き方というものは、間違っておる。そうして一方はくずれて潮が入ってきたが、一方はくずれずにおった。こういう実例があるのです。これをまとめるのは、どうしても国の責任の所在をもう少し明確にすることのために、やはり将来でなくて、こういう法律のできるきっかけに行なっていったらどうか。私はこういうことを考えておりますから、この問題については一つ総理大臣に来ていただいて、ほんとう政府の腹を聞きたいと思うのです。そういう点について、一つ委員長からも、総理大臣出席を促していただきたいと思います。  それで、重ねて聞きますが、そうすると、この法律によりますと、防災会議というものは内閣にあって、内閣総理大臣の諮問に答えることになっております。ところが、従来のこの種の会議というのは、あまり政府は言うことを聞かないのです。その年度のやり得る範囲においては、政府は案外言うことを聞くのだけれども、予算がどうだとか、あるいは各役所の意見が違うとかいうようなことで、なかなか諮問された会議の意見がそのまま通らないのです。だから念を押しておきますが、この法律でいう防災会議できめられることは、政府は必ず責任を持って実行するのだという保障がつけられますか。
  118. 安井謙

    安井国務大臣 お話のように、広い意味を含めた防災という仕事は、これは大へんな仕事でありまして、できるだけ集約的にやった方がよろしいという御意見は、私どもも決して否定するものじゃないのであります。その意味からは、むしろ政府全体がこれに当たるというふうな心組みがいいんじゃないか、そういうような意味におきまして、総理大臣のもとに各省の責任者を網羅した防災会議というものを作るわけであります。それによってきめられた事項は、各省の意見が違うとか予算があるとかないとかいう問題は、それは個々には技術的には生ずるかもしれませんが、大綱的には、これは政府全体の責任としてきめることでございますから、これは普通の諮問機関等にはかるような仕事とは趣を異にしておると思うのであります。そういう意味で、一省とか一庁を作れという御主張も私どもも傾聴はいたしますが、ほんとうに能率を上げるためには、政府全体が力を合わせるという形の方がより効果があるであろうという意味におきまして、各省の権限、各省の持っておる法律というものを生かしながら、それを総合的に推進していける。こういう仕組みを今日考えておるわけであります。
  119. 門司亮

    ○門司委員 今の説明は、災害の起こった場合に対処するものは、それでよろしいと思います。しかし、防災関係ということになると、私はその考え方ではいけないと思います。私どもが考えておりますのは、災害を未然にどういうふうに押えていくかということであります。やはりそれについてのはっきりした主管をする場所がないと、今のお話のようなことは、問題が起こった場合に協議して、そしてどうするかというお話になるのじゃないかと思います。しかし、問題になるであろうと思いますのは、日本の国土に関する法律はたくさんあるのですね。大臣も大体御承知だと思います。たとえば国土の総合開発だけを見てみましても、幾つありますか。国土の総合開発とこの法律との関連性というものを私どもは考えてみなければならない。御承知のように、われわれが調査いたしました範囲においても、国土の開発に関する現行法規というものは、大体総合的の全国的開発に関するものとして、国土総合開発法というのが昭和二十五年にできておる。そのあとにできたのが地域開発としては北海道開発促進法、首都圏整備法、東北開発促進法、九州地方開発促進法、四国地方開発促進法、北陸地方開発促進法、中国地方開発促進法、さらに特殊の問題としては離島振興法というものが出てきておる。あるいは奄美群島の復興特別措置法というものがあるわけでありまして、こういうふうに日本は国土に関する総合開発を目標とした法律がたくさんあるわけであります。この法律も動いているのであります。この法律とこの防災関係は一体どうなりますか、この法律の動き方と防災との関係は、どこかでこの法律とかみ合わせる、あるいはこれを配慮するということがございますか。私はこの問題は非常に大きな問題だと思います。日本国中、あと残っているのは関東と東海くらいなものでございまして、関東と東海ができれば、国土総合開発という全国組織のもとに各地域開発ができてくる、この地域開発は、おのおのの性格は、ここで一々私が読まなくても、大体政府当局の方がおわかりだと思いますが、地方のいろいろな仕事を開発していこうというのであります。そういたしますと、そこには河川の問題も出て参りましょうし、水の問題等も出て参りましょう。しかし、このことが、開発だけにものが片寄っては、往々にして損害を招く原因を起こすようなことがありはしないかということが考えられる。そこで防災法というような法律をこしらえるからには、こういう国土総合開発法との関連性をやはりはっきり保っていく必要がありはしないかということで、こうなって参りますと、単なる防災会議だけによってこれが議論されておったのでは、私は満足なものはできないだろうと思う。だから端的に聞いておるのでありますが、国土開発法との関連はどういうことになりますか、地域開発は地域開発で勝手に進んでいく。しかし、防災を考えろということが法律自身の中にも書いてありますよ。決して野放しでこれがあるわけじゃございません。おのおの開発関係を考えていくにしても、たとえば「土地、水その他の天然資源の利用に関する事項」「水害、風害その他の災害の防除に関する事項」「都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項」「産業の適正な立地に関する事項」「電力、運輸、通信その他の重要な公共的施設の規模及び配置並びに文化、厚生及び観光に関する資源の保護、施設の規模及び配置に関する事項」というふうにずっと書いてあるわけであります。どの法律にも同じことが書いてある。従って、この国の総合開発法とこの法律の関連性はどこでどういうふうに、だれが調整するのか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  120. 安井謙

    安井国務大臣 それは、災害が起こったときは総理大臣が総括的に当たるのでいいかもしれぬが、災害の予防対策としての恒久的な治山治水には当たらぬというお話でありますが、やはり内閣総理大臣責任におきまして、各省責任者を集めて、いわゆる中央防災会議というものを置きまして、それによって基本計画を定め、それに基いて各省が責任をもって遂行していこうという仕組みをここで考えておるのでありまして、これが普通の単なる諮問機関で、いつ実行されるかわからぬじゃないかという御懸念とはいささか趣を異にしておると、こう思う次第であります。さらにほんとう災害が起こりました場合には、今度は対策本部というものができて、実際活動をまたそれぞれの責任分野でやっていくという仕組みでございます。そうして国土開発計画等につきましても、今まで申し上げておりますように、それぞれの法律は、それぞれの意味があって起きておるのでありまするから、これはできるだけ尊重いたしまして、そうしてその中の防災に関するものは一つ一まとめにして推進をしていこうというふうに、おのおのの存在は存在で認めながらも、一方で集約をしていこう、こういうふうに考えておるわけであります。
  121. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、この法律のどこでそういうものが一応集約されることになりますか。これは一切あげて防災会議というものでおやりになるということですか。
  122. 安井謙

    安井国務大臣 そういうことでございます。全体の恒久的な基本計画を立てるとかということは、防災会議が基礎になるわけであります。さらに今の個々の開発法等の条章との関係につきましては、行政局長から御答弁いたさせます。
  123. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 災害対策の中で、災害の未然防止、なかんずく治山治水その他の国土の保全について対策を計画的に効果的に推進をしていかなければならないということは、最も重点的に考えなければならぬことであります。その点は門司委員の御指摘になる通りであろうと考えておるのであります。従いまして、本法案におきましても、その点についての配慮を十分にいたすように心がけておるつもりでありまして、一つは第八条におきまして国というものがすべての施策を講ずるという場合において、直接、間接に災害対策ということを念頭に置いて事柄の処理をしていかなければならぬ、そういう心がまえを明確にいたしまするとともに、災害の発生を予防するために実施しなければならない事項の一つといたしまして、特に治山、治水その他の国土の保全に関する事項といったものを掲げておるのであります。これらを含めまして、災害予防を含めた災害対策基本ということが防災会議において諮問され、また防災会議においてそれらを骨子といたしまする基本計画その他が作成され、それが実施の推進に当たられていくという建前に相なるわけでございます。なお、国土総合開発促進法との関係でございますが、これも御指摘のように、総合開発は総合開発として一つの別個の観点に立っておりますけれども、それにいたしましても、やはり計画内容の中に防災ということを念頭に置いて考えるべきことは当然でございまするし、またそれらの既存の計画自体にいたしましても、防災に関する基本計画というものが策定されまして、それとの間において改善を要するという面が出てくることも予想せられるのであります。従いまして、それらについては第三十八条において規定をいたしまして、国土総合開発法に規定をいたしまする全国総合開発計画というものも、基本計画なりあるいは各省が作成をいたしまする防災業務計画に矛盾したり抵触することのないように措置をいたしていかなければならない、そういうような方法を明示いたしておる次第でございます。
  124. 門司亮

    ○門司委員 ところが、今の御答弁ですが、国土総合開発に関する規定の計画決定手続を見てみますると、内閣総理大臣関係行政関係の長の意見を聞くと、こう書いてあるんですね。だから、ちょうど今のこの法律で言う審議会みたいなものが、大体国土総合開発の中に入っているんです。そうして、国土総合開発の仕事の中に、ちゃんと災害防除の仕事があると書いてあるんです。だから、内閣総理大臣は、どっちの意見を聞けばいいかということですね。国土総合開発も、各省の責任者、行政機関の長を集めて話を聞く、それによって内閣総理大臣が、この国土総合開発審議会の調査、審議を経て、全国総合開発計画を作成すると書いてある。いわゆる内閣総理大臣の計画機関ということになっておるわけです。そういたしますると、同じようなことがこの法律に書いてあるということですね。この法律ほんとうに動くのか。この国土総合開発に関する規定の中にも、現実に災害防除は書いてあるんです。一体どっちがほんとうに動くことになるか。こういうところに非常に錯綜したものがあるんです。内閣総理大臣は、一方においては、国土総合開発に関する各省の意見を聞いたり、あるいは審議会の意見を聞かなければならない。一方においては、また、ここで審議会が一つできて、それの意見も聞かなければならない。しかし、当局の説明では、この法律でそれは調整されているとおっしゃるけれども、なかなかそういくものではない。だから、もし政府考え方のようなら、国土総合開発の仕事というものがそういう防災まで含んでおるのでありますから、ここで一つはっきりしたものをこしらえていって、これも全部含めた防災というものをこしらえていく。その防災に関する限りは、これはもう主管省をちゃんとこしらえて、そうしてこれをやっていく、こういうことが私は必要じゃないかと思うんです。今、日本の一番悪い役所のなわ張り争いというものがある。こういう国土総合開発法と今申し上げました地域開発法とダブってきているんですね。これは同じことなんでしょう。読んでごらんなさい。大体やることもなすことも同じことが書いてあるんです、どの法律を見てみても。これは一面においては、あるいは役所の方から言わせれば、おそらく国会議員さんの提案が多いのであって、何かみやげ法案のような関係が出てきているというそしりもないわけではございません。しかし、それにしても、国にはこういう総合開発の一つのれっきとしたものがあるのだから、これで十分にやれるんだというなら、それでおやりになった方がよろしいんじゃないか。そうして、一方においては、やはりはっきりした防災省というようなものをこしらえて、この中から防災に関する限りは防災省が実際にやるんだということで、今こそほんとうにこの役所の一つのなわ張り争いを破っていくということがなければ、二重に重ねたような法律が幾らできたって、内閣の動きはとれませんよ。しかも総合開発の方はそのまま仕事が進行していくんですから、それを待った、そこはそうやられては困る、防災関係からいけば、それはちょっと待ってもらいたいというような調整ができますか。私はそれはなかなか困難だと思いますよ。そういう国の二重の組織、それから国の各省のなわ張り争いというようなものが、この法律をずっと見てみましても、ただおざなりに協議するとかあるいは話し合うということが書いてあるだけであって、ちっとも進まない。だから、国土総合開発があっても、各地方の開発法が奄美大島まで入れて九つぐらいあっても、それがなかなか実行に移しにくい、実際は効果が上がらない、こういうことになるんじゃないか。予算も従ってばらばらの予算が使われておって、そうしてほんとうの仕事をする予算をここにあてがわれておらない。こういうところに私は問題がありはしないかと思う。ほんとうに国が災害防止をしていこうとする、あるいは一方において国土を開発していこうとするからには、こういうばらばらになっている、あるいは二重、三重になっている組織をこの際一本にまとめていく、また、何度も申し上げますが、従来の悪い官庁のなわ張り争いというものを打破していくという考え方はございませんか。これは自治省の大臣がそういうことを考えているということを言うと、あとで怒られるかもしれませんから、総理大臣あとで聞いた方がいいかもしれませんけれども、私たちはそういう考え方で、この法律にはもう少し国の責任の所在というものを明確にしていく建前をぜひとっていきたいということでありまして、そういう点について、将来国土総合開発とこの防災法との関連において、何かはっきりした役所といいますか、行政機関を設置されるようなお考えがあるかないかということをもう一度聞いておきます。
  125. 安井謙

    安井国務大臣 御意見として十分傾聴もいたし、将来の問題としては十分検討もいたしていきたいと思っておりますが、防災という仕事自身が、何か一つの目標だけつけて、一網かけられるというようなものでございませんので、少なくとも今の政府の各機関にすべて関連があるというような性格もございますから、ただいまのところ、そういった防災省、防災庁を作るというような考え方は私も持っておりませんし、総理大臣もその点については御意見は同じであることを確信しております。
  126. 門司亮

    ○門司委員 もしそういう考えだとすると、私はさらに聞いておきたいと思います。こういう災害というものは、総合的に一つの問題として取り扱うことも必要であると思って、今まで申し上げて参りましたが、今の大臣のようなお考えだとすると、むしろ、こういうものよりももう少し明確に、個々の災害を防止するという態度において立案をしていった方がよろしいのではないか。むしろそれの方がはっきりしはしないか。災害についてはこの法律に幾つか書いてありますね。「災害」として、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象」とこう書いてありますが、こういうものについて一つ一つに、もし大臣のようなお考えだとするならば、はっきりした対策を立てていくということ、総合的な意見の調整でなくて、暴風に対してはどうい、対策を立てていくかということ、あるいは豪雨とかいうものについても一々はっきりした対策を立てていくという態度が、かえってよろしいのではないか。総合調整あるいは総合的な対策ということになりますと、これまた各役所の考え方、一体どれを先にやるのか、どれをどうするのかということでかなり問題も起ころうと私は思います。これについては一つ一つやっていく。このことを私が申し上げておりますのは、地方の自治体にこれは非常に関係がありまして、総合施策がこうだからといってぼっと打ち出されて参りましても、その地方でそれを受け入れることができるかどうかということと、やはりおのおのの地方でどれからやっていくかというような順序が私はあると思うのです。たとえば、豪雨については、非常に被害を受ける低い土地なら、それの対策を一番先に立てなければならぬし、また実行しなければならぬと考える。それから、暴風についての問題なら、今まで大体被害がわかっておりますから、どういう対策を立てなければならないかということは、地方においては、おのおのこの項目に書いてあるものについて緩急の順序があると思うのです。もしそうだとすれば、おのおの別個に方策を立てていった方が、地方の実態とはマッチしはしないか、こういうことも考えられるのでありますが、それらについての考え方を一応承っておきたいと思います。
  127. 安井謙

    安井国務大臣 たとえば、今のような個々のものに対する対策をきめるということも確かに必要だと思います。これにつきましても、しかし、たとえば暴風なら暴風というものを対象にしましても、やはり一つ対策だけではなくて、現在でいえば、政府の各機関に関連のある問題が生じてこようかと思います。そういったような問題を総合的に検討いたしまして、具体的な方針を推進する。現在でもないわけではありませんので、各省がそれぞれの立場で必要な対策はそれぞれに講じておるわけでありますが、なお一そう有効に、総合的に推進をしていくということが地方防災会議防災基本計画の任務であろうかと思うわけであります。
  128. 門司亮

    ○門司委員 今のように任務だと言われれば任務かもしれませんが、たとえば、ここにある、これは政府機関の気象庁から発表した記録でございますが、昭和二十一年から昭和三十二年の主要な台風の経路図というものがちゃんとあるのです。大体風の通る道というものは、ほとんどきまっておるのです。そうするとこの地区にはやはりこういうものが必要だとか、ここにはこういうものが必要だというようなことをおのずから考えて計画を立て、それを実施に移していくというようなことが私は必要ではないかと考えておりますからお聞きをいたしましたが、今の大臣の答弁について、さらにあわせてそのことについて聞いておきたいと思いますことは、地盤沈下に対する政府考え方、あるいは実施方策であります。その前に、この法律を出されるからには、地域及びその面積その他の費用の概算額は大体きまっておりますか。日本の地盤沈下に対して、政府はどういう方策を持っている、従ってその費用はどのくらいだ、完成されるのはいつごろだという概括的の、日本全体の総合的のお考えがあるはずだと思う。また、それが立っていなければならないはずだと思う。だから、もしあるならばそれを一つ調べて、すぐここに出していただきたい。  それから、ついでだからもう一つ申し上げておきますが、海岸保全についての政府の今のお考えは、一体どうなっているか。われわれの調査した範囲におきましても、大体海岸の延長は二万六千キロぐらいあって、その中の一万五千キロから六千キロくらいはどうしても保全を要する建前になっておると思う。裏日本全体というものは、ほとんど海岸をほうっておくわけにはいかないような状態になっておる。これに対する政府の今日までの費用の概算とか、事業の関係等についてお考えになっていることがあるかどうか。この問題は単に海岸保全の問題だけではありませんで、御承知のように、臨海地帯の経済的価値というものを考えて参りますと、やはり国土総合開発との間における非常に大きな問題がこの中に含まれておる。単に海岸保全というだけではない。たとえば、尼崎のようなところについても、単に海岸保全という考え方だけではない。やはり主たるものは、あそこの工業地帯をどう守るかという臨海工業の今日の発展と相待って、海岸保全というものは当然考えられなければなりません。それの大体の計画が立っておれば、一つ出していただきたい。  その次に聞いておきたいと思いますことは、治山、治水の基本的の方向でありますが、これについて何か政府はお考えがあるとするならば、一つこの際発表しておいていただきたいと思います。  大体今申し上げました三つのことについて、政府の具体策なりあるいはこの法律を出された基礎的のお考えがあるはずであります。なくて漠然とこういう法律を出されたものではないと思う。そういう施策をどうするかということが基礎になってとの法律が出ておると思いますので、今の三つの点の政府の具体的な考え方、あるいは政府の施策、さらに費用の見積もり概算等について、御報告ができるならば、この際お願いをしておきたいと思います。
  129. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 建設省所管の事柄につきまして、概要を御説明申し上げたいと思います。  地盤沈下対策関係でございますが、これは現在大阪方面の高潮対策事業と東京の高潮対策事業、この二つがおもなものでございまして、これは治山治水事業十カ年計画の内容の一部をなしておるものでございます。このうち、大阪におきましては、すでに御案内かと思いますが、昭和二十五年から三十三年までの間におきまして、百十九億円を費やして完了いたしておりますが、その後の地盤沈下の状況にかんがみまして、三十四年度からさらに新しい計画を立てて事業を実施中でございます。さらに、御案内のような第二室戸台風の被害の状況等にかんがみまして、これは既定の計画をさらに促進するということで目下検討中でございます。本年度は、大阪におきまして十億三千万円の予算を計上して実施いたしております。これはなお本年度から来年度にかけましてむしろこれを繰り上げ促進するという方向で検討中のものであります。  次に、東京高潮対策事業でございます。これは隅田川につきまして行なわれておるものでございまして、総額二百七十六億円の計画でございまして、三十六年度と三十七年度で三十一億円の経費をこれに充当いたして実施しておりまして、大体、この二カ年で、永代橋から隅田の水門の左岸までができ上がるというふうに考えております。  そのほか、海岸保全事業の一部といたしまして、地盤沈下の関係の海岸の部分における対策事業が、約三億円計上予算がございまして、事業を実施しておるようなわけでございます。  次に、なおこの地盤沈下対策の一連の対策といたしましては、特に大阪方面等におきまして、あるいは東京の一部の地区もそうでございますが、地下水のくみ上げに対する規制措置を講ずる必要があるということで、目下これにつきまして所要の立法措置等を講ずべく検討中でございます。また同時に、この地下水のくみ上げ規制措置とあわせまして、これを規制する以上は、諸用水の供給を確保するという措置をあわせて講じなければならないことは申すまでもございませんので、用水確保対策といたしまして、これもただいま御審議をわずらわしておりまする水資源開発の促進法、あるいは水資源開発公団法によりまして、こういう地域に対する緊急な用水確保措置をぜひ今後講じて参りたいと、かように考えておる次第でございます。そのほか、やはり地盤沈下地域におきまする排水上の施設といたしまして、排水ポンプを整備する問題でありますとか、若干そういう施設整備の仕事を今後なお進めていかなければならぬと考えておる次第であります。  次に、お尋ねの第二点の治水事業の計画の点でございまするが、これも御案内のように、治水基本対策というものが昭和二十八年にきめられましたけれども、この治水基本対策に基づきまして、従来治水事業を推進して参りましたが、その後の諸般の情勢にかんがみまして、これを計画的に一段と推進するために、昭和三十五年度から治水事業十カ年計画を決定して、これに基づいて現在治水事業を計画的に進めております。この十カ年計画の内容をごくかいつまんで申し上げますると、十カ年で総額九千二百億円の投資を行なおうとするものでございまして、そのうち政府におきまして直接めんどうを見ると申しますか、地方単独等を除きまして八千五百億円が閣議で決定されました事業の計画と相なっております。これを前期、後期五カ年ずつに区切りまして、前期の五カ年計画におきまして三千六百五十億円、後期の五カ年におきまして四千八百五十億円の事業を実施することといたしておりまするが、これの内容につきましては、いろいろございますけれども、もちろん防災ということが最重点の観点でございまして、そのために中小河川であるとか、小規模河川の改修あるいは防災ダムを建設するというような問題、それから従来から引き続いてやっておりまする多目的ダムの建設、あるいは今後特に重点を置きたいと思っておりますることは、低い地域の排水ポンプの整備とか、砂防、地すべり対策あるいは河川の下流の方の部分の高潮対策、こういう事業に重点を置きまして毎年度の事業の具体化をはかって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  130. 門司亮

    ○門司委員 今のそのお話ですが、私は今そういうことはあまり聞いているわけではございませんで、御承知のように、昭和二十八年の災害対策要綱というものを読んでみますと——私の方に、ここに書いたものが全部ありますが、これをずっと読んでみますと、なかなかはっきりしたことが書いてある。そうして当時の予算総額におきましても、この要綱に基づきますと、当時の金で大体一兆一千六百九十一億という数字が出ております。これを今の金に直してみますと、一応一兆四千四十二億という計画であったかと考えられる。ところが、今のお話の三十五年の治水十カ年計画における総予算というものは一兆五千億でしょう。これが前後に使われる、こういう形になっておりますね。私の数字は多少違うかもしれないが、前期は大体これの四九・五%を治水事業に使う。それから治山事業には五・二%使う。後期においては約四千億の金を使って、これは三八・一%が治水事業で、治山事業には七・一%が使われる、こういう予算の内訳になっておりまして、形から見ますと、二十八年の計画よりも小さいです、実際は。一体これでいいのですか。私はこの計画を見て驚いたんです。二十八年のやつをずっと調べてみて、読んでみて、予算総額を見てみると、二十八年は大体一兆四千四十二億という数字を出しておる。ところが今になっても同じような、やはり一兆五千億というような数字しか出しておらない。時限の違いもありますし、それから金の価値も違いますが、むしろ治山治水事業というのは後退しているんだということは、この数字の上から私は言えると思います。こういう法律を私ども見て参りますと、いかにもこの法律の弱いところは、こういうものに対する規制をする、あるいは計画をはっきり行なっていくというようなことが単なる審議会にかけられて、そうして審議会がこれをきめるというようなことであってはならない、私はこういう気持が十分ありますからお聞きをするわけでありますが、今の当局の御答弁でよろしいとは私は考えられない。たとえば、この今聞きました治山治水事業の基本方向というようなものについても、おそらく政府の十カ年計画で、最後的に考えられるものは、これは政府の発表ですよ。私が言うのでなくて、あなたの方から発表したものに書いてあるから、その通り言うのでありますが、たとえば、水力電気の計画においても、多目的ダムによるものであって、大体一千百万キロくらいのものが四十五年までに造成される。そうして、わが国の包蔵せる水力の六三%くらいが大体これで開発されるということがここに書いてあるのであります。が、しかし、そういう問題を見て参りますと、この法律というものが、災害防止の根本対策について、そういう今のような考え方がはたして災害対策になるかならぬか、一方においてはこういう治山治水事業といいながら、開発その他がずっと含まれてきておるので、私は最初から聞いておりまするように、こういう形で建設省は建設省で、あるいは電力の開発は開発で、こういうものの含まれた四十五年までの十カ年計画というものが立てられておるということでは、この審議会だけで私はこれについての考え方はなかなかまとまらないということを基本にして申し上げておるのであります。  それで、さらに治山対策について一応聞いておきたいと思いますが、この法律ではそういうことも審議会にかけてということかもしれないと思いますが、民有林と国有林に対する計画の実施というものがどういうふうに規制されておるかということであります。いわゆる防災関係の今日最も大きいものは、戦争中の乱伐が今日の災害を起こしておる大きな問題であるということは、だれでもわかっておるはずであります。そういたしますと、造林計画を立て、あるいは森林計画を立てていくには、どうしても民有林と国有林との考え方をあわせて考えないわけには参りません。国有林の場合は、計画的にこれを伐採することがあるいは可能かもしれない。しかし、民有林に規制を加えようとすれば、ある程度やはりはっきりした法律が必要ではないか。従来伐採をいたしておりまするものでは、今日まで伐採適齢期に達したものについて何割までを伐採してもよろしいというような、こういう規定が私はあろうかと思います。しかし、そういう問題についても、民有林についてどういうふうにこの法律規制が行なわれるのか、これもあげて審議会にまかせるのだと言われればそれまでだと思いますが、もしお考えがあるなら、ほんとう防災をしていこうとするには、こういう点に非常に重要な問題が伏在しているのではないかと私は思う。今私が申し上げておりますような治山対策と治水対策とをかね合わせた問題であって、民有林に対する考え方がもしおありなら、この際発表しておいていただきたいと思います。
  131. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 農林省当局は参っておらないようでございますので、私の専門外でございますけれども、一応御答弁を申し上げておきたいと思います。  お話がございましたように、防災というような見地から見ますれば、治山ということも、治水と並んで非常に重要性を持つことは、その通りであろうと思うのであります。最も基本的なことの一つであろうというふうに考えられるのであります。その場合において、民有林に対する規制措置というものをどのようにすべきかというような点も、当然防災全般の有効適切な効果を上げるという観点から考えて参らなければなりませんし、従来もそういう観点に従ってやってきておると思いますけれども、それらに関しましても、将来改善を要する点は、さらに角度を変えて、いろいろの措置が講ぜられて参るというふうに期待されるわけであります。現在は民有林に対しましても、それぞれ施業案というものがございまして、これについての承認という方法を通じまして規制を行なって参っておることは、御承知の通りであろうと考える次第であります。
  132. 門司亮

    ○門司委員 二十八年に一応きめました基本計画の中で、防災関係で最も問題になりますのは、やはり保安林であります。国有保安林はそれでよろしいかと思いますが、これはやはり重要な水資源であって、地方の公益上の重要なものであることに間違いはないのでありますが、それと同時に、民有保安林に対する問題等が当然考えられなければならない。ところが二十八年の計画がなくなって参りまして、新しい治山治水の計画——三十五年度に立てられて四十五年に終わるというこの計画の中には、こういう保安林に対する措置はほとんど考えられていないのじゃないかという気が私はするのです。これは、農林省の諸君がいないからわからぬといえばわからぬでしょうが、建設省はどうなんです。これは、多目的ダムを今申しましたようにこしらえて、水の六三%を一応利用するという計画を立てられておりますが、そうだとすると、水資源の涵養には、こういう森林対策というものを離して考えられないのであります。こういうものを涵養する保安林に対する民有地の措置をどうお考えになっておりますか。
  133. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 ただいまの御意見はごもっともでございまして、建設省といたしましては、従来砂防事業、たとえば多目的ダムの建設事業を実施いたしておりますけれども、その具体的な計画を立てます場合に、農林省、特に林野庁の方面とは、ただいま御指摘のような民有林の治山上の効果、特に水源地帯の水源の確保というようなことにつきまして、たとえば貯水池の埋没を防ぐ問題でありますとか、あるいは貯水池の水の浄化をはかるというようなこと、そういう面で、水源の涵養につきまして具体的に打ち合わせをいたしまして、ダムあるいは砂防施設の事業の計画を立てて実施してきておるような次第でございます。
  134. 門司亮

    ○門司委員 農林省の諸君がおいでになっておりませんから、この災害防除に関する問題は、今の建設省の御答弁では、ただ水源をどうするかということだけしかお考えになっていないようでありまして、災害対策についてのお考えが聞けないのでありますが、一つ次の機会には農林省の方に来ていただいて、そして災害防除に最も密接不可分の関係にある森林行政をどうするかということ、なかんずく保安林をどう保っていくかということ——二十八年の計画では、保安林の増設が考えられておるようでございます。保安林を広げていくという考え方があるようでございます。そうなって参りますと、その二十八年の計画がもし続けられるといたしますと、どうしてもそういうことが行なわれておったと思いますが、これが行なわれない。そうして新しい治山治水の十カ年計画の発表がされておる。同時にこの法律が今度は出てきておる。従って二十八年の水資源をどうするかということ、あるいは災害をどう防止するかということに密接不可分な保安林対策というものを、この法律の審議の過程の中である程度明らかにしておいていただきたい、私どもこう考えておりますが、農林省の方が見えませんので、これ以上質問することはあと回しにいたしまして、あとは運輸大臣に少しお聞きをしていきたいと思いますから、運輸大臣の方から一つ御答弁を願いたいと思います。  私が運輸大臣に聞きたいと思いますことは、気象の関係でありますが、気象庁から発表になりまするいろいろな資料を見てみますると、災害に対するいろいろな資料が出されております。そうして災害は非常にたくさんあるのでありまして、この災害ということに対して、気象庁の動きというものは非常に重要であると思います。大臣に直接聞いておきたいと思いますことは、この間も質問があって、気象庁の長官からは答弁があったのでありますが、それと重複する点を避けまして、今の気象業務の法律を見てみますと、当然航空機による気象観測が行なえるように書いてあります。ところが日本では気象庁が飛行機を持っておらないというので、アメリカとの間における行政協定に基づいて行なわれておるように聞いておりますが、行政協定によりましても、実際その点ははっきりしていないのです。この気象観測についてのアメリカ合衆国との間における日米安全保障条約と米軍の地位協定、あるいはその他の付属協定の中には、実は何にも規定してないのでありまして、今日本の気象庁が米軍の第一気象隊からいろいろな資料をもらっておりますのは、気象庁の長官と米軍の第一気象隊長との間の書簡の交換という形式で、個々の取りきめを行なっておる。こういうことの答弁があったわけでありますが、もしできますなら、取りかわされております書簡の内容を、この際はっきりしておいていただきたいと思います。
  135. 多田寿夫

    ○多田説明員 大臣にかわりまして、私から御答弁申し上げます。  今の書簡の内容といいますのは、行政協定第八条に基づきますところの気象に関する現行行政協定による細目合意というあれでございまして、第八条のCの二項であります。合衆国空軍並びに海軍の気象隊は、合衆国の操縦士の報告並びに、気象観測結果を中央気象台が利用し得るようにする。こういう一項目がございます。
  136. 門司亮

    ○門司委員 これにつきましては、われわれの調査した範囲で、日本が合衆国軍隊から提供を受けております気象観測の業務の実態というものは、大体日本国政府がアメリカ合衆国軍隊に対して日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の八条でありますが、通称が地位協定、こう申しておりますが、これによって日本政府が受けております。今の御答弁のことは「地上及び海上からの気象観測(気象観測船からの観測を含む。)」「気象資料(気象庁の定期的概報及び過去の資料を含む。)」「航空機の安全かつ正確な運航のため必要な気象情報を報ずる電気通信業務」「地震観測の資料(地震から生ずる津波の予想される程度及びその津波の影響を受ける区域の予報を含む。)」等の気象業務を提供することになっておりますが、あなたの方の考え方は……。
  137. 多田寿夫

    ○多田説明員 今門司先生が言われました(a)(b)(c)(d)四項目についての細目合意が、われわれの方の気象庁長官と先方の米空軍の気象隊との間に取りかわされておるのであります。
  138. 門司亮

    ○門司委員 今の協定に基づきまして取りかわされた書簡に基づいて、さらに詳しくこれをずっと七項目、八項目に私どもの方で一応分けていろいろ見て参りますと、問題になりますのは、どう考えてもアメリカ軍の行なっております気象通報というものは、少なくともアメリカ軍の航空の安全というものが主たる目的で、アメリカにこういう気象台ができておることは間違いないのであって、従って日本の台風その他の情報を得るということは、今までのあなたの方の発表を見てみますと、不都合はなかったという発表がされております。こちらから聞いたことは全部教えてくれたから、何にも不都合がなかった、こう書いてある。ですから、私はそうかとも思います。しかし少なくとも日本の気象業務の中に、航空機による気象観測ができるように書いてあるのです。義務づけてあるのです。それを日本が飛行機を持たないということ自身については、一体どういうことになるかということでありますが、御承知のように気象観測については、一方において定点観測が行なわれる、しかしこの場合は船でありますから、結局領海以外になかなか出られないですね。どうしても早く気象を観測していこうとすれば、国際協定によりまする例の航空機による観測ということが、私は非常に大事なことだと考えられるので、この際大臣に聞いておきますが、大臣は、一体気象観測のための飛行機を持たせるようなお考えがあるのかないのか、これの計画を見てみますと、何か自衛隊に頼んでどうだこうだと書いてあるようですが、率直な大臣の御意見を聞いておきたいと思いますが、気象庁の業務の一つである航空観測ができるということが、日本の災害対策については非常に大事なことだと思いますが、その点について大臣のお考えをはっきり聞かしていただきたい。
  139. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 航空機による気象観測は、非常に日本にとって、特に台風時においては必要だ、かように考えておりますが、しかしおっしゃいますように、ただいま米軍からその観測の結果の通報をもらっておりまして、実際上は事欠いておらぬのであります。しかし少なくとも日本としては、日本のわれわれの手によって航空観測のできることが望ましいと私は思っておるのであります。しかしながら何分にも多額の経費を必要といたします。今日気象業務を完全にやりますためには、相当なお多額の経費を年々かけていかなければ相なりませんので、従いまして気象庁といたしましては、まず事欠かずに米軍から供与を受けておりますから、将来は持たなければならぬ、かように考えておりますが、日米の関係を考えまして、今早急にこの航空機による観測の提供を断わられることがないという予測のもとに、今さしあたって不足をいたしておる点に重点を注いでおる、こういうふうに御了解をいただきたいと思います。
  140. 門司亮

    ○門司委員 私は、今の大臣の答弁ははなはだ奇怪に存ずるのでありますが、少なくとも日本は独立国としております以上、ことに先ほどから申し上げておりますように、また当局も十分御承知のように、大体年々台風の災害が——主として台風でありますが、災害によって受けておる被害というものは、これは公けにされておる国帑の消耗だけでも二千四百億ないし約三千億という数字が明確にわかってきておる。それをいかに少なくするかということについて、飛行機による観測ができるという気象業務になっておるのに、その施設を怠って、そうしてアメリカ軍との間の協定があるからそれでよろしいのだという考え方は、私は間違いじゃないかと思うのです。アメリカ軍との協定につきましても、気象観測の取りきめの中には、恒久的なものとそうでないものとあるでしょう。気象庁の方が私よりよく知っておられると思う。この点について、私はかなり不安だと思うのです。永久にアメリカがこれをやってくれるという保障はどこにもないのであって、同時に取りきめの中にすら、永久的なものと部分的なものとあるはずです。そういうふうに考えて参りますと、今の大臣の答弁は非常に奇怪しごくであって、どんなに金がかかってもいいじゃないですか。飛行機一台買って百億かかるかもしれない、あるいはパイロットを養成するにしても三年や五年はかかるかもしれない。しかし日本が年々受けておりますこの災害対策としては、気象観測についてもう少し政府は考えたらどうなのですか。総計したところで百億かそこらあればやれるじゃないですか。大体飛行機を買ってやるにしても、私は日本国民がもしこういう実態を——まだ気象庁はあまりラジオで放送しておりませんけれども、気象庁の業務はこういうことで、データはみなアメリカからもらっています。しかも、それも協定の範囲内であるというようなことが放送されてごらんなさい、日本国民は必ず不安を持つと思いますよ。やればやれる仕事なのだ、やれない仕事では決してない。大した金じゃないのです。自衛隊の飛行機は幾らでもこしらえる、戦争道具の方は幾らでもこしらえるが、こういう国土保全のためのわずか百億ぐらいの飛行機をこしらえる金が出せないという理屈は、私はどこにもないと思うのですよ。国土保全の最も大事なものは、自衛隊の養成ではないでしょう。だから大臣ほんとうに腹をきめてやってくれませんか。私は、このことをこっちからたのむのですが……。
  141. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 実は防衛庁長官ともその話をいたしておるのですが、百億ぐらいとおっしゃいますが、飛行機関係だけで二百億、維持費として七十五億程度要るということなのでございます。しかも一度台風の中につっ込むと、一回だけで、あと完全にオーバーホールをしなければならないというようなことから、飛行機は一種の消耗品のように考えなければなりませんので、相当の金を覚悟していかなければなりません。ただ将来は必要だ、こう思っております。私も、今持てるなら持ちたいと思うわけですが、しかし、とにかく米軍からまずまず満足な提供を受けておりますので、先ほど申し上げましたように、もっと緊急に気象庁自身で持ちたいものがたくさんございますから、その方を今急いでおるわけであります。しかしながら、防衛庁長官とも寄り寄り協議はいたしておりますが、来年度で実現をしようというところまでは、まだ実はよう踏み切らないでおるのです。  なおレーダーは米軍の供与を受けておりません。全部わが国で買って持っておるのであります。
  142. 門司亮

    ○門司委員 どうもその辺がはっきりしない。それでは、私どものところで一応調べました範囲を、どういうことになっているか読んでみましょうか。米軍から受けております情報は、いわゆる協定に基づいて、日本の国の義務づけられたものということが一つの条件になっているでしょう。日本もアメリカ軍にそういう情報を提供している、そうしてアメリカ軍からももらっておる、こういうことなのでしょう。これは協定にそう書いてあるから、そうだと思うのです。そうだといたしますと、私はそういう不安なことであってはならないということと、さっきから申し上げましたように、現在日本の持っております台風関係の情報というものをキャッチするためには、いわゆる定点観測船だけではほとんど不可能だということがわかっておるのです。そうだとするならば、台風をキャッチするためには、どうしても費用がかかるからというような、大臣の今のようななまぬるい答弁だけでなく、こういう法律を出されるからには気象観測も——この法律の中に、五十四条に気象庁という言葉が使ってありますけれども、もう少しはっきりとこの際答弁をしていただきませんと、私どもほんとうに安心してこういう法律を認めるわけには参らぬのでありまして、おそらくこの法律による防災会議等には、大臣も出られることだと思いますが、その点をもう少しはっきりしておいていただけませんか。
  143. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は持ちたくないとは言っておらぬのでございます。できたら防衛庁の方で、あるいは海上保安庁の方で持てばこれに越したことはない、こう思うわけでありますが、実際には今申し上げましたように、何分にもそれよりも先に、今さしあたってこれがあればさらに完備ができるであろうと思える施設がたくさんあります。また人の増員も必要といたしておるわけでございますから、皆様方の御支持によりまして、一日も早く持てることを念願はいたしておるのでありますか、今日まだその運びに至ってないのはきわめて遺憾と思っております。
  144. 門司亮

    ○門司委員 そういう答えをあなたの方からいただいても、このことはこの間要求していただいた資料に書いてあるのです。ですから、それはわかっておりますが、どうもこの気象の観測についてはきわめて冷淡であって、満足なものもできない。一応私は、自治省の大臣の方に聞いておきますが、今お聞きになったように、運輸省としては、そういうもののこしらえられる見通しは今のところつきません。がしかし、この法律ができれば、そういう気象観測その他の面についてどういう効果がありますか。この法律を見て、私は機関の長において大体そういうものについての総合的な対策が立てられて、そうしてはっきりした防災処置がとられると、こう考えておりましたが、防災処置の中の最も重要な部面である気象観測が、今のようにアメリカの軍事目的のために観測しておる飛行機からのレーダーを、しかも交換条件がついておって、お互いに情報を交換し合うという条件でこれが書かれておるようなことでなくて、日本独自の立場災害の——これは何といっても基本的なものですからね。災害を早く知り、さらにそれに対する対策を立てていく、これが一番基本的なものなんです。これに災害の予防という言葉が使ってありますけれども、災害を予防するのには気象観測が一番大事だ。その一番大事な気象観測が今の大臣の答弁のようなことでは、どうもたよりないと思うのです。運輸省は運輸省として、少し奮発してもらうということにしまして、提案者である自治省の大臣としてはそれでよろしいかどうかということを、もう一度聞いておきたいのです。
  145. 安井謙

    安井国務大臣 気象観測が非常に大事な災害予防対策一つであることは、お話通りであると思います。またこれは、政府自体が独自にやり得ることが好ましいことも申すまでもございません。ただし現状におきましては、今運輸大臣からお話ししたような事情でございますので、現状は私どもやむを得ないものと心得ております。将来の措置としては、この防災会議、あるいは基本計画を進める上からは、十分これも考慮に入れて考えていかなければならぬと思っております。
  146. 門司亮

    ○門司委員 どうも遠慮してものを言わないで、一つはっきり言っておいてもらいたいんですよ。運輸大臣がそばにおったって、あなたの考えはあなたの考えで言ってもらいたいんです。そうでないと、いつまでも質問を続けることになりますから、はっきり答えていただきたい。  それから、なおこの問題の中で聞いておきたいのは、アメリカとの取りきめの中に、永久的なものと短期的なものとあるように思いますが、気象庁としては、こういう取りきめだけで一体よろしいのかどうかということが一つと、それからもう一つは、定点観測船や何かで、その前にいろいろ整備を要するものがたくさんあろうと思います。大臣はまたそう言われております。それらの問題について、一体何年くらいでこれが完成されるというようなお考えでございますか。ここに一応データをもらっておりますが、気象庁として、飛行機を除くその他の気象観測業務に差しつかえのないように整備するのには、どのくらいの費用と、どのくらいの年月がかかるか、もし計画がありましたら、一つ発表しておいていただきたいと思います。
  147. 多田寿夫

    ○多田説明員 実は私の方といたしましては、五カ年計画ということで、ただいま作成しております。実は各先生のお手元に配付してありますが、気象業務整備五カ年計画によりまして、昭和三十七年度から昭和四十一年度までに整備するように計画ができております。
  148. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 関連して一つお尋ねいたします。  ただいまの航空機を気象庁が持つ問題については、運輸大臣、自治大臣の見解は非常に消極的のようです。ところが、この法律の第八条の二項七号を見てみますと、非常に雄大な計画を政府お考えになっておるようで、台風に対して人為的調節をするというのです。台風のエネルギーたるや、どのくらいであるか御存じですか。何メガトンというような原爆のエネルギーよりも、台風のエネルギーの方が大きいんですよ。そういうような膨大なエネルギーを持つ台風に対して、人為的な調節をお考えになる。これはエネルギーの量からいうと莫大なもので、金額についても非常な額だと思います。一方では、そういう雄大な計画をお持ちになりながら、一方では、航空機というようなたかだか百億か二百億というような問題についてきわめて消極的である。非常に私どもとしては、首尾一貫しないお考え方のように思うのでありますが、この点は運輸大臣、自治大臣どうですか。
  149. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この台風に対する人為的調節に必要な研究、これは研究でありますから、将来、学術の進歩によってこういうこともできたらさぞよかろうということで、科学技術庁の方でこういう研究のことに進んでもらうよう、私らも希望いたしております。
  150. 安井謙

    安井国務大臣 決して気象観測に消極的なつもりがあるわけではございませんが、飛行機を使う使わないについては、現状としては、運輸大臣の所管大臣としての御見解のようにならざるを得ないであろうということを申し上げますが、さらに気象観測その他の充実、あるいは将来の台風に対する人為的な調節等につきましても、十分な検討を続けていってもらいたいというのがこの法律考え方でございます。
  151. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 運輸大臣のお答えですが、科学技術庁の方でこういう研究もしたいからというので、ぽんと載せたというのですか。科学技術庁の方の意向は非常に雄大なものが入っておる。ところが運輸省の方の希望というものはきわめてささいである。各省庁で所管する事項が違うからそういうことになるといえば、確かにそうかもしれませんが、しかし、そこに私は問題があると思うのです。いわゆる災害予防というものは、先ほどから各委員の方々が指摘されておるように、国全体が取り組まなければならない問題である。それを実施に移すのは各省庁だと言われるのでありますが、この基本法を見れば、各省庁がばらばらに取り組んで、しかもその希望たるや、雄大なものがあるかと思えば、みみっちいものもある、そういうところに今回の災害基本法の大へんアンバランスな問題があるのじゃないか、こういうことだけを御指摘申し上げておきたいと思います。
  152. 門司亮

    ○門司委員 それでは気象庁に再度聞いておきますが、気象庁としては、今のような五カ年計画ということでよろしいかどうかということ、これは、計画はないよりはあった方がよろしいと思いますが、しかし国民の側から見ますと、少なくともこういう防災に対します基本的な法律ができますれば、災害を非常に受けております者に、ある程度安心感を与えることが考えられるのじゃないかと思います。それで問題になりますのは、これは、気象庁の方は遠慮なく言ってもらいたいのでありますが、気象庁が国民から期待されるほどの活躍ができるかどうかということであります。さっきも申し上げましたように、あなたの方からもらっておる資料に、定点観測船が完備されるように書いてありますけれども、船の関係は、なかなか領海以外には出られないのです。あとは、国際協定による航空による情報が一番私は重要だと思うのだが、それが現在のような状態で、あなた方の業務にちっとも差しつかえないかどうかということ。今まではアメリカからそういう情報を受けて差しつかえなかったと言われておりますけれども、しかし今申し上げましたように、アメリカはあくまでも軍事目的のための観測でありまして、向こうの戦争が激しくなってくれば、向こうの軍事目的のための気象観測はやるでしょうが、日本の台風観測というようなものを一体どの辺までやってくれるかということについて、私ども非常に疑問がありますので、よそにたよらないで、気象庁独自の立場でこれがやれるようにしたいというのが私どもの考え方でありますが、これについて、気象庁としてのお考えがもしこの機会にお聞かせが願えるなら、一つお話を聞かしていただきたいと思います。
  153. 多田寿夫

    ○多田説明員 その前に一言だけお断わりいたします。定点観測船が領海外に出られないということは事実に反しておりまして、御案内のように、今潮岬南方六百キロT点として観測しておるのであります。ですから、定点観測船は領海内だけで領海外に出られないということはないと思います。  それから全般的に、われわれの予報気象業務というものは、先ほどからのお話もございますように、災害の未然防止にきわめて大きな役割を演じておるというので、われわれは非常にその点におきまして責任を痛感しております。従いまして、昨年度の予算並びに今年度の予算及び来年度の予算においても、そういうつもりで進む決心でございますが、災害防止という見地に立ちまして、予算を組んでおるわけであります。昨年度においては、おおむね五十億予報のみに向けておるわけでございます。今後もこういう方面に重点を置いて邁進するつもりであります。
  154. 門司亮

    ○門司委員 今のお話ですが、私の言葉が足らなかったと思いますが、日本の領海外ではほとんど不可能である、こういうことを私の原稿に書いてきたのだが、その意味は、今の船は事実上出られないでしょう。五百トン、千トン近い小さな船のようなものでは、ほんとうの仕事はできないですね。領海外の観測というのは非常に困難です。だから問題は、五カ年計画が達成されれば、こういう面が、一応あなたの方からもらっておりますものではわかるのでありますが、しかし私がさっきから申し上げておりますように、実際の日本の災害対策最初基本条件というものは、何と言っても気象観測のキャッチだと思うのです。これが国民に対して一番安心感を与え、また予防の措置を講じさせるものであります。この法律では、災害の防止と予報、二つに御丁寧にも分けて書いてある。これは、予防の方から申しますと、非常に大事なことだと思うのです。それに対して、五カ年間で何か事務だけが行なわれて、それで差しつかえないというような御答弁では、私どもは国民が満足しないと思うのです。少なくとももう少し早くここで計画されておるものは、あなた方の船にいたしましても、あるいはその他のものにいたしましても、何も大してむずかしい問題じゃありませんので、費用の調達さえできれば、ある程度のものは、そう五年もかからなくてもできるはずなんですね。これについてどうなんです。もう少し率直に一つ言ってくれませんかね。気象業務の完成のために、経費さえあれば一体どのくらいの期間でできるかということですね。私は、この問題が非常におくれておるということは、全部を見てみましても、あげて経費の問題だと思うのです。そんなに長くかかるようなものは、私はあまりないと思います。どうでしょう、もう少し率直に、経費があればもっと早くやれるのならやれるのだというように、一つお話が願えませんか。五カ年計画を立てたのだから、何でもかんでも五カ年でやるというお話だと思いますが、五カ年のうちに台風は必ずくるのですよ、それからまた整備が必要だと思うのです。気象庁の方にほんとうに聞いていただきたいと思いますことは、気象庁というもの自身のあり方が、逓信省であったり、あるいは運輸省にいったり、いわゆる目的は、一方においては航海の安全というように大体考えられて、そうして今日までなされておった。ところがアメリカ軍の行なっておりますものは、戦争目的である。この法律によるわれわれの考えておる気象観測というのは、災害に対する予防措置をどうするかということの最大の国民に対する示唆を与えるものが、気象庁の気象観測である、こういうことで、航海に対しまする安全を保障するための問題もあるかもしれない。それからだんだん変わってきて——昔は外国との交易が主であったからというので、逓信省に置いておった。ところが最近は航空機が非常に発達してきて、今度は航空機の管轄が運輸省だから、これを運輸省に持っていった、こういうことになっておるのです。現在この法律に基づく問題というのは、やはり何と言っても、日本のそういう航空機の安全というものは、必要であることに間違いがありませんが、それよりも一番大きな大事な問題は、毎年々々たくさんの国帑を消耗しております。予防措置が完全にいくかいかないかということは、人命に対する非常に大きな問題なんです。それと、国民の持っておる財産に対する非常に大きな問題です。これをいかに守るかということは、あげて気象庁の気象観測が完全であれば、ある程度人命の損失も防げる、あるいは個人財産の損耗もある程度なくすることができる。こう考えて参りますと、気象観測というものは、今までのようなものの考え方、ただ航空機の安全だけで気象観測をやるのだということではなくして、この際考え方を変えていただいて、そうしてこの法律にいう災害予防のための気象庁の充実というものについて、一つ考え方を変えてもらいたいと思うのです。これも、運輸大臣がおいでになれば、運輸大臣に聞いた方がよかったと思いますが、そういうわれわれの考え方に対して、気象庁はどうお考えになりますか。
  155. 多田寿夫

    ○多田説明員 結論的にはその通りでございます。そのために、基礎的な観測業務の充実に今までも邁進しておりまして、今後もさらに一段と邁進するつもりでおります。
  156. 門司亮

    ○門司委員 どうも今の答弁では、どうしようもないですな。あとでまた気象の問題でお聞きをすることがあろうかと思いますが、一応話を進めて参りまして、今建設省からお話がございました答弁の中で、私が聞いておりますものをさっきも申し上げましたが、目下検討中であるとか、あるいは考えておるとかというようなことでなしに、こういう法律が出てきて、そうして同時にまた二十八年に考えられておった、いわゆる基礎的のものが一応やめられて、新しい保全計画が立てられております限りにおいては、まずここで資料を出してもらいたいと思います。それは、先ほどお話をいたしましたが、地盤沈下に対しまする政府考え方と、その実施の方策を今お聞きをいたしました。われわれがその次に知りたいのは、一体これらの地域の面積と費用の概算というものです。面積が一体どのくらいあるか。単に大阪方面と江東方面と考えられておりますが、新潟にもございますし、京浜間にもあるのであります。至るところにこれはあるのである。従って、これらに対する大体の経費を一つ知らしてもらいたいということ。  それからもう一つの問題は、海岸保全に対しまする、建設省が考えておる概略の規模と費用を、一つこの際はっきりしておいていただきたい、こういうことを資料として要求をいたしておきたいと思います。  それから次に、建設省関係が見えておりますから聞いておきたいと思いますととは、砂防工事に対しての問題でありますが、御承知のように水源地の山はだが現われてきて、そうして崩壊する、そのことのために、渓流に土砂が流れてくるとか、あるいはダムを埋めていくというようなことがありますので、砂防計画が立てられておりますが、これについて、一体どのぐらいの範囲に行なわれて、そうしてどのぐらいの費用を使われようとしておるのか、もし計画がありましたら一つお聞かせを願いたいと思います。
  157. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 砂防事業につきましては、建設省所管の事業といたしましては、前期五カ年計画といたしまして七百三十億、後期五カ年計画といたしまして千四十億円の資金を投入するという計画にいたしております。
  158. 門司亮

    ○門司委員 私の聞いておりますのは、面積はどのぐらいあるのか、ただ金だけではなくて、それの基本的なものを出してもらいたい、こういうのです。
  159. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 面積ということは、砂防の効果が及ぶ範囲ということになりますので、面積は精細にここで算出することは困難でございますが、中身を申し上げますと、まず一つは直轄砂防、直轄と申しますのは、建設省が地方建設局を通じまして、直接やっておる砂防の事業でございますが、これは、水系の数にいたしまして三十水系でございます。それから川の数から申しますと、六十河川になります。  次に補助砂防でございますが、これは、都道府県に補助金を交付してやらせまする事業で、これは渓流の数で申しますと一万三千四百渓流、こういうことになっております。これは、全体で十カ年計画になっておりまして、これらのうちから前期と後期に分けて、大事なところから重点的に事業を進めていく、こういうふうに考えてやっておるわけでございます。
  160. 門司亮

    ○門司委員 今のお話のようなことは、大蔵省から出た七月十五日付のこういう本にちゃんと書いてあるんですよ。砂防工事に幾ら金を使って何年でやる、前期、後期……。ところが私の知りたいのは、そういう河川の水系だけではなくて、どのぐらいの面積を持っているかということです。そういうものが私はあるはずだと思うのですよ。ばく然として河川の水系別にきめられたものではないと思うんですよ。この大蔵省の出して来たものには、今お話しのようなことは書いてあるのですが、それが書いてないのです。大蔵大臣の官房の調査課長という人の名前で出た、こういう本がありますが、この中にちゃんと計画は書いてある。私の聞いているのはそういうことではなくて、一体実質どのぐらいの面積をやられようとしているかということであります。
  161. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 ただいまお尋ねの点は、砂防施設を今後やっていく地域の面積のことだと思いますが、これは砂防法に基づきまして、砂防設備地域というものを指定いたしておりますものと今後の予定も合わせまして、今ちょっとここに資料がございませんから、後日全体の面積の集計をいたしたものを提出さしていただきたいと思います。
  162. 門司亮

    ○門司委員 それでは、大臣がおいでになりませんから、具体的の問題を聞いておきたいと思いますが、この法律の中で、われわれがこの災害について最も防止が困難で、処置が非常に困難だという問題は地震であります。他の問題はいろいろな処置がとれると思うが、地震は、これは自治省からのお話で私はよろしいかと思いますが、火事の原因になります。それが大きくなるわけです。火災の大体の発生というのは、ほとんど人為的災害なんですね。どこからか失火したというのが大部分なんですね。それに自然現象が加わって、この法律で書いてある大火災になる、こういう形になっているのですね。この自然現象の中でありますが、たとえば暴風であるとか、あるいはフェーン現象であるとかというものがございますが、もう一つあるものは地震なんですね。この地震の場合、最も被害を大きくするのは火災なんですね。大正十二年のあの大震災を見てみましても、火事がなければ、あんな大きな私は人命の損失はなかったと思う。同時に国帑の消耗もなかったと思う。ところが火事があったからですね。これをその当時の内務省、あるいは警視庁あたりから出て参りました震災に関するいろいろな書類を見てみますると、大部分というものが、というよりもほとんど全部のものが火災による被害であって、そうしてほんとうに家が倒壊して、その下敷きになって死んだという人はきわめてわずかなんですね。それから家がこわれての損失というものは、きわめてわずかなんですね。今の東京都、昔の東京市の被害範囲というものは、約八割ぐらいに及んでおりますが、横浜の方も大体そのくらいこわれたと思います。こういう大惨害を起こしたのも、やはり原因は火災だと思います。従って、この地震に対する火災の予防措置というものをどの程度にお考えになっておるのか、もし考えがあるなら一つ聞かしておいていただきたいと思います。
  163. 川合武

    ○川合政府委員 地震によります一番問題が火事であるということにつきましては、ただいま先生のお話しの通りと思います。地震と火事との関連、実はことに東京のように大都会におきましては、この問題につきましてどう処置するかということは、いろいろむずかしい問題でございますが、大事な問題であると思いまして、実は東京消防庁が中心で東大の地震研究所の先生方にも寄っていただきまして、濱田先生が委員長でやりまして、二年ほど研究していただきました。その研究の結果がございますが、対策の問題の第一点は水利の点、第二の点は道路、消防車を通すための道路の問題、さらには消防能力それ自体の問題、こういう施設の強化をはからなければいけない。もっとも、あるいは不燃化ガスによって、水に代用して消火するとか、ヘリコプターを使うというような研究課題はございますが、当面与えられました条件での消防のこれに対する解決策といたしましては、ただいま申しましたような点が考えられるのでございますが、   〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕 しかし一番大事なことは、これらの点を解決しますことは、なかなか言うべくしてむずかしい点もございまして、一番大事な点は、現在の制度、現在の状況で行なわれております予防の面を強化していく。ことに申し上げるまでもございませんが、風台風のようなときには、かえって警戒をいたしまして、火事が少ないというようなこともございますが、地震のようにぐらぐらっといきなりきます場合には、警戒ということもなかなかむずかしゅうございますので、現在制度で行なわれておりますところの予防の問題、たとえば防火管理者の制度の問題につきまして充実する。あるいはその他の点につきまして、予防面の強化をはかっていきたい、かように考えております。
  164. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁ですが、地震の問題は、現実に地震が起こって、そうして火災になります場合は、消防機能というものは大体停止するんですね。それは水道が破裂するということが一つと、それから道路が通れなくなる。道路の上に架線がたくさんありますから、電信柱以下、大都会における電車の架線がこわれてきて、これが道をふさいできて、これは東京の大震災でよくわかるのでありまして、消防車があっても歩けない。水がなくなるし、火事が起これば自然に放任する以外に手はないのであります。ところが現在の消防法では、御承知のように去年の修正によりましても、ある程度出火に対しまする予防処置として義務づけられたものがあるのでありますが、これも劇場だとかあるいは人の集まるところだとかいうようなところで、一般の民間にこういう義務づけられたものはないはずであります。地震による、あるいは火災によるものですが、強風や何かの場合は別といたしまして、ことに地震の場合に火事を少なくしようとするのには、少なくともおのおの家庭から出火が少なくなるといういわゆる火災の拠点を、できるだけ少なくしていくという建前が必要ではないか。同時に火災についても、たとえばフェーン現象のようなものがあるといたしましても、あるいは暴風雨のときがあるといたしましても、出火さえなければ火災にはならぬのでありますから、出火を防止することのためには、ある程度の各家庭における予防処置というものが必要ではないか。それも今消防の立ち入り検査等によって一応行なわれているようでありますが、それよりも初期防火に対する施設が何か必要じゃないかというふうに考えられる。消防庁のとっておいでになります態度は、私は非常に時間がおくれておりますから率直に申し上げておきますが、国の試験に合格した消火器その他については奨励をされておるようでございます。しかし、消火器はかなり高いものでございまするから、これをみんなが各家庭に備えつけるというわけにはなかなかいかないと思います。従って、一応制限された法律が出ている。そこで各家庭に対する初期防火の方法について、何か消防庁としてお考えになっていることがあるなら、一つこの機会に発表しておいていただきたいと思います。
  165. 川合武

    ○川合政府委員 先生の御説の通りだと思います。私どもが家庭の消火につきまして、いろいろ研究もいたし、また指導と申しますか、各消防機関に対しまして指導いたしております点は、実は昭和三十二年であったと思いますが、科学技術庁の資源調査会でございますかで、ことに地震との関連におきまして、消火の点につきましての指導書のようなものがございまして、これを参考にしております。とれにはこまかく記載になっておりますけれども、まず地震が起きましたときには、あわてないでもって、何といいますか、手早く火のもとを始末する。こういう非常に簡単なことでございますが、今の科学技術庁の研究もそれが一つの要点になっております。さらにいろいろの点がございますが、私どもの消防機関の活動を通じまして、地震との関連、地震だけではございませんが、火事の火のもとをつぶすということにつきまして、さらにいろいろな角度からPRと申しますか、徹底をしていきたい、こういうふうに思っております。
  166. 門司亮

    ○門司委員 今の話は抽象的なお話ですが、ところが今地方によりましては、今申し上げましたような国家の検定を受けた消災器についてはこれを奨励される。ところが一方においては、これは私は何も消火弾というようなものを奨励するわけではありませんし、これをちょうちん持ちするわけではありませんが、現在やはり初期防火についての一つ考え方とし、あるいは従来からあったものとして例の消火弾みたいなものがあるのですね。こういうものについては消防庁はどうお考えになっておりますか。そんなものは使っちゃいけないというお考えなのか。あるいはそういうものでも安くて手に入るなら、初期防火の一つの方法としてやはり考えられるのではないかというように私どもは考えるのでありまして、実際この地震に際しまする火災というものは、非常に大事な問題であって、それと同時に火災全体に対しても、やはり初期防火というものは非常に重大な問題であって、従って、初期防火に対する今の抽象的な御答弁だけでなくて、実質的にはバケツに水をくんで置いておくこともいいでしょうし、いろいろあわてないでやるということも考えられるでしょうが、例の消火弾みたいなものがあったわけでありますが、そういうものについての一つお考えは……。ここで何でもやれということではありませんが、安易に庶民の家庭でも手に入るようないわゆる消火器等があれば、私はこれはやはりある程度勧めてもいいのじゃないか。何でもかでも国定の検査で合格したものでなければだめだというようなかたくなな考え方は、私はいけないと思うのだが、そういう点はどうですか。
  167. 川合武

    ○川合政府委員 消火器あるいは薬品的なものにつきましての国家検定との関連の問題でございますが、取り扱いによってかえって危険な状態を生ずるもの、こういう問題につきましては、国家検定をやっていくことが必要かと思いますが、明らかにさような危険でないものにつきまして、国家検定オンリーでもってこれをどうこうするということでなく、もっと簡便に普及して、簡便に消火の目的を達し得るというものにつきましては、国家検定だけでなく十分なる指導の面をもちましてその普及をはかりたい、かように考えます。
  168. 門司亮

    ○門司委員 あとは、あまり消防のことだけ長くなっていると限りがないと思いますから、先ほどお話のありました、この法律の中にある緊急措置の問題でありますが、これについてもう一言私から聞いておきたいと思いますことは、現実にそういう問題が起こるということを、先ほど局長からは、たとえば大正十二年の災害のような、大震災の起こった場合というような指摘もございましたが、私はあの当時にはちょうど横浜におって災害を受けたから、実情はよくわかっております。が、しかしそういう現象が出てくるのは、起こった当時にすぐ出てくるのじゃありませんで、大体一日あるいは二、三日まごまごすると一週間くらい後でなければ、緊急措置を要するような事態は出てこないですね、なかなか実際は……。だから、この法律でそういうことまで書いておく必要があるかどうかということですね。自治体がやろうと思えば、現行法でやれるのじゃないですか。たとえば緊急措置としての人命救助の問題があれば、これはおのおの自治体の機関で私はやれると思います。また金銭あるいは債務の支払い延期というようなものについては、これはきょう災害が起こったら、あしたやらなければならないという筋合いのものでは私は毛頭ないと思う。そういう災害もある程度調査が行なわれて資料が集まってこなければ、実際は出せない問題ですね、支払いの延期というようなものは……。ただ地震があったから、大火事があったから、大津波があったからすぐあしたから出そうという筋合いのものではないと思う。また同時にそういうものでもないと思う。だからさっきの御答弁のようなことで、この緊急の措置ということが考えられておるとするならば、これは現行憲法の中に疑いのあるような緊急勅令にひとしいようなものは、この際私はこしらえない方がいいんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、どうしてもこれがなければならぬという理由をはっきりこの機会に聞かしておいていただきたいと思います。
  169. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御説のように、たとえば大地震というものが起きました場合におきましても、平生の防災に関する訓練なり諸措置というものが民間にも全部徹底をいたしておりまして、また政府地方団体におきましても、その線に向かって適切なる措置を講ずるということによりまして、ただ単に被害の程度が大きいということだけでもってこういう事態を布告する必要がない場合もあり得るという点については、私も門司委員考え方が同じであるということを申し上げておきたいと思うのであります。ただ、しかしながら非常災害であり、それはまたきわめて規模の大きい問題でございますので、あらかじめこれを想定をいたしておくということが、なかなかむずかしいのではあるまいかと考えられるのであります。また、事実そのような異常災害で、災害緊急事態の布告をやらなければならない事態というものも、全く絶無であるというふうには言えないと思うのであります。   〔渡海委員長代理退席委員長着席〕 そういうことになりました場合に、だんだん事態が進展しておりまして、しかもなお、その場合におきましても、参議院の緊急集会さえも、召集をかけても集まらない、そういったことも、事態としてはやはり想像はされるわけでありまして、そういう事態が起きた場合の万全の措置といたしまして、やむを得ず最小限度の事項につきまして、緊急政令というものを出し得る道を開いておきたいというのが、この規定の趣旨でございます。
  170. 門司亮

    ○門司委員 それで、私はあと大臣がおいでになってから聞く方がいいと思いますが、私は今のような、こういう規定があった方がよろしいのだということだけで、憲法論議まで発展するようなきめ方はどうかと実は思うのです。先ほども話しましたように、大体大正十二年の大震災のときは無線、ラジオというものがまだ十分に普及しておらない。それからそのほかの通信も十分でない。辛うじて何か羽のはえた単葉の飛行機か何かで航空写真のとれる程度で、従って、東京と大阪との音信が全く不通になるというような状態で、当時の新聞を見てみますと、一日の新聞は出ておるが、その次の新聞の発行は五日になっております。大阪朝日は一番早いのでありますが、九月五日に初めて号外を出しておる。しかも、それもきわめて抽象的なことで、満足なことはされておらない。こういう事態であれば、ある程度の人心の不安もありますし、いろいろな問題が私は起こるかと思います。しかし現在では、こういう政府の考えておいでになることは、知らせようとすれば知らせる機関はたくさんあるわけですね。あの当時のように、全くもう電話線が一本切れればそれでおしまいだという時代ではないわけでありまして、ラジオによる話はどこまでも伝えられるわけです。だから、私は予測して、こういう議論の多い条項を設ける必要はないのじゃないか。もしあなたの方でどうしてもこれが必要だということなら、少し憲法論議をやってもいいのですけれども、かなり長くなりますので申し上げませんが、これは今申し上げましたように、あの大正十二年のときと次元が違うのですね。大正十二年のときは全くわからない異常な状態であった、暗黒地帯ができたということは間違いないのであります。しかし、今はそうではないのであって、飛行機もかなり発達しておりますし、ことにラジオが、これは何も一軒々々で持たなくても、携帯ラジオであれば、放送さえできれば十分に国民全体に徹底するのであります。だから、あの大正十二年の震災のときのような社会不安を助長するというようなことは私はないと思う。せっかくのそういう将来をおもんぱかっての条章だと思いますが、今この条章は要らないのじゃないか。あの大震災を想定されたことならば私は必要ない、こういうふうに考えます。この点はこれ以上聞いても同じような答弁をされると思いますが、私の意見としてはあの大正十二年の震災とは全然違う次元である。何も緊急集会をする日にちをそう急がなくても、できる限りで行なわれれば人心の不安を助長するようなことはなかろう。政府はこういう措置をとる、こう考えているのだということや、被害の程度はいつでも放送できる。だからこれは必要ないと思います。  大臣が見えましたので一応最後の問題として、この問題に対する総体的な政府考え方を聞いておきたいと思います。それは、今日まで行なわれておりますいわゆる公共事業の中で、特に治山治水の対策費あるいは道路整備費、港湾、漁港あるいは空港の整備費というような、災害に最も関係のある、いわゆる防災関係と考えられるような費用が、年々予算の中に計上されております。ところが、この予算のふえている形は必ずしもわれわれが考えておるような割合ではふえていないのであります。国家総予算に対しまするふえ方は、必ずしも大きい数字ではございません。これは数字を言えと言われれば、ここに申し上げてもいいのでありますが、特に私は現在行なわれております公共施設を見て参りますと、これの使い方でありますが、どう考えても、道路整備あるいは港湾あるいは空港あるいは工業用水というような形で使われております金は、大都市を中心とした周辺地域に多くつぎ込まれている。そうして大事な国土保全であります海岸の整備あるいは治水治山の費用というようなものについては、ごくわずかの割合でしか行政投資が行なわれていないということが、数字によって明らかになっておりますが、この点について、この法律ができればどういう形が現われてくるかということ、いわゆる現在の公共投資では、今申し上げましたように主として国土保全に対しまする金というのは、全体の割合からいいますならばきわめてわずかである。しかも公共投資の大部分は工業地帯を中心とした周辺にほとんど使われる、こういうことでは、こんな法律ができても、なるほど国家予算の面から見れば道路整備とか港湾の設備とか、これに書いてありますような災害の予防計画あるいは災害の防止態勢に使っているように見えますが、しかし、その仕様書を見てみると、治山治水の方がわずかで、ほかに多く使われておると思いますが、この点について大臣はどう考えておりますか。
  171. 安井謙

    安井国務大臣 治山治水をやります際に、主管省といたしましては、むろん全国的な配慮のもとにやられていると思いますが、防災全体の計画から見て御指摘のような点がありとすれば、今後の基本計画あるいは実施計画等において直して、今お説の目的に十分に沿うようにやっていかなければならぬと考えております。
  172. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ重要なことでありますから聞いておきたいと思いますことは、この法律ができて参りますと、従来の公共投資関係の費用がどのくらい増額をされるか。その見通しが一体つくかということであります。これは非常に迂遠なことであって、それはそのときでなければわからぬというような御答弁があろうかと思いますが、今までの数字を見てみますと、防災は非常に大事だと言いながら、年々ふえております率はそう大きくないのであります。特に公共事業関係をずっと見てみますと、治山治水対策事業費というのは三十一年が三百五十五億、三十二年が三百七十億、三十三年が三百八十四億、三十四年の災害があっても四百六十四億、去年が六百七十億で、ことしは七百三十億、ふえてはおりますが、しかしこのふえ方というものはほかの公共事業費のふえ方に比べてみますとはなはだ心もとないものがある。たとえば公共事業費のふえ方というものは、治山治水事業あるいは道路整備五カ年計画、さらに港湾、漁港、空港の整備計画というようなものをずっと合わせて参りましても、実はかなり大きな幅で伸びております。数字を言うならば——多少数字は違うかもしれませんが、一応申し上げてみますならば、公共事業関係の費用というものは三十一年度が千四百十九億、三十二年が千六百四十五億、三十三年が千七百九十九億、三十四年で二千四百二十六億、三十五年になって三千六十七億で、三十六年度予算が三千六百十億、ずっとかなりの速度でふえております。しかし、との中には災害対策費も入っておりますので、災害が多かった年は勢い多くなっておる。しかしこういうものを勘案いたして参りましても、災害予防に対します費用というのは、年々のふえ方というものが、私たちの考え方からすれば非常に少ないのであって、その当時の物価指数との関連性をもっていけば、むしろ低くなっていやしないかという考え方が出てくるのであります。昨年の六百七十億に対することしの七百三十億というのは、六十億ふえたといえばふえておりますが、これは一割ふえておりません。物価の指数からいえば、必ずしも予算総額に対してことしの治山治水予算がふえたとは言えないのであります。今までずっとこういう経路をたどってきております。私どもは、この法律ができたら、こういう問題に対してどういうふうにこれが作用していくかということでありますが、今までの政府は、これだけ災害があって、二十八年には基本法について一応考え方をまとめられて要綱を発表されて、ここに私が持っておるような書類ができておるわけであります。重要度は十分お考えになっているのだが、実際は総予算との比較でいくとふえていないという、まごまごすると減っているような傾向さえ見えるというようなことでは、この法律をこしらえても、政府の施策が今までと変わらなかったならば、こんな法律ができても何にもならぬのじゃないかというように考えるのですが、その点はどうですか。大丈夫そういう、今までのようなことでなくて、予算も十分とって、そして予防措置を講ずるんだというようにお考えになる、そういう言明ができますか。
  173. 安井謙

    安井国務大臣 この法律が通ることによりまして、この災害に対する基本的な、総合的な政府責任のある考え方がまとまっていくと確信しております。そういう意味から、御説のような、御要望のような点も十分に——十分とは、これは国の財政の全体の問題がございますが、極力推進されていくことを私ども確信しております。
  174. 門司亮

    ○門司委員 そういう答弁では困りますな。そこで問題になりますのは、さっきから申し上げておりますように、国の責任における予算措置というものが、この法律の中には何も考えられておらない。地方には、冒頭に申し上げましたように積み立てというものをしろと書いてある。どころが国の方は何も書いてない。そこで私は心配になりますから、この法律ができれば国は災害予防のために、従来の予算の中の何パーセントかは必ず災害があってもなくてもこれを積み立てていく、いわゆる特別会計でこれを持っていくというような予算的措置か、あるいは財政的の措置を講ずることができるかどうかということです。
  175. 安井謙

    安井国務大臣 直ちに今お話しのような災害のために別途積立金を作るということが、はたして運営上いいかどうか。しかし、これは御提案のようなお話も非常に貴重な御意見としてよく検討はしなければならぬと思いますが、直ちに具体的にそれが実現できるかどうかは別にいたしまして、大蔵大臣も本会議説明されましたごとく、これを通すことによって、一本化のそういったもろもろの法案というか、基礎的な問題も考えていきたい、こういうことを言っておるわけでありまして、おそらく御希望の線に沿ったようなものが相当推進されると思っております。
  176. 門司亮

    ○門司委員 これは、どうですかね、自治省大臣だけではなかなかこの答弁もむずかしいことと思います。百一条には明らかに、地方の自治体は災害対策の金を積み立てろ、災害対策基金を置けと書いてある。地方の自治体にはこういう義務づけを法律でしておる。しかし、地方の自治体の場合には、財源が豊かであるとは言えないのであります。かなり窮屈なものができようかと思う。地方にはこういう財源の積み立てを法律できめてしまうが、国の方には何らの考えも持っておらない。そのときそのとき、起こったときに、補正予算を組むとかあるいは予備費の中から出すということでは、少し片手落ちではないか。やはり国も毎年何%かというものを積み立てておくとか、あるいは特別会計によってこれを確保しておくというようなことで、災害予防についても、災害対策についても確保しておくというようなことが必要だと思います。そうしなければ非常に大きな片手落ちだと思うのですよ。地方だけにこういう大きな義務を押しつけておいて、国はそのときの財源でやるんだといいましても、地方の自治体では実際できやしませんよ。この内容を実際に聞きたい、どのくらいの規模で積み立てさせるのか。百一条に書いてありますが、「地方公共団体は、別に法令で定めるところにより、災害対策に要する臨時的経費に充てるため、災害対策基金を積み立てなければならない。」こういうふうに書いてある。だから地方にこういうように義務づけるなら、国もはっきりしたらいいじゃないですか。そのぐらいの責任を国も負う必要がありはしませんか。そうしないと、地方の自治体では、こんな法律ができたって実際は迷惑だと思いますよ。この積み立ての内容あるいはどの程度のものを積み立てれば一体いいのかというようなことを、もし御答弁ができるならこの際しておいていただきたい。
  177. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お説のように、地方にだけ災害対策基金というようなものを積み立てさして、国において何らの措置を講じないのは片手落ちではないかという御議論につきましては、ごもっともの点もあろうかと思うのであります。ただ百条におきまして、災害が発生した場合におきまする必要な財政上の措置を講じなければならぬ、こういう努力義務を書いておりまして、そのための予備費または国庫債務負担行為の計上等についても十分配慮をしなければならないという関係規定も同時に置いておるのであります。ただ、この点につきましては十分なものではないと思います。もっと積極的に、災害が発生した場合にということに限らず、全般的に防災あるいは災害対策ということに対してもっと積極的な意欲を持っていかなければならぬということは言えるかと思うのであります。その点は法文に明確にはなっておりませんが、法の趣旨は、国の責務なりあるいは国の防災上における配慮なりということにおきまして、その前向きの姿勢、方向というものが明らかにされておるのでありまして、その方向におきまするいろいろの施策の改善というものが期待せられるわけでございます。  それともう一つ災害対策費を地方公共団体に義務づけるという点でございます。これはさらに別途法律を作ってやるというようなことをずる場合にどの程度のことを考えているんだということについては、今のところ成案を持っておりません。ただ地方においては片手落ちというふうな御議論もあるかもしれませんが、地方につきましては、何と申しましても財政規模その他の点について小さくございます。それと弾力性等につきましても十分ではございませんので、やはりあらかじめこういうようなことで積み立てしておきまして、いざという場合に間に合うようにしていくという長期的な財政運営というものが必要ではないかというような配慮から、御承知のように従来も災害救助法というものに基づきます災害救助の基金でありますとか、あるいは財政法に基づきます積立金というような制度——これはただ単に防災というためではございません。もっと広い財政健全化というようなことを目的といたしておる制度でございますけれども、それも災害対策のためには、片方において支出ができるというようなことになっております。そういう従来からのいきさつ、現実の制度というものを中心といたしまして、さらに改善を要する点があれば改善をさしていきたい。しかし、その場合において、何らか特に義務づけをしていくということになりますれば、当然それに見合う国における財政措置というものをあわせて考究をして参らなければならない、かように考えておる次第でございますが、特にここでどの程度のことを義務づけるかということは、目下のところ具体的にはきまっておらない次第でございます。
  178. 門司亮

    ○門司委員 そういう点が非常にまずい。大臣どうですか、今百条のことを局長は言いますけれども、百条の規定なんということはあたりまえの規定なんです。災害が起こって、国が国の予算を大きく傷つけない範囲で出すとか、あるいは予算の範囲内で出すとかというのはあたりまえの話であって、何も法律に書かなくても、現在でもやっておるのです。ただ新しい法律の問題は、百一条の問題は、地方自治体に対する普遍的な義務ですから、今地方の自治体が積み立てておりますのは、余裕のあった場合にはこれを積み立てろということであって、そうして貧弱団体に対して無理にこれをしいてはおりません。余裕のあったときに積み立てるという形をとっておくことが一応必要である。そういう考え方ならば何も無理はないと思う。しかし、問題になりますのは、こういうふうに義務づけてしまって、そうして今の政府のお考えでは、一体どのくらいの規模で積み立てさせればいいのか、こんなことをよく法律上書けたものだと思う。実際少なくともこの章に関する限りは、自治省に責任があると思うのです。ほかの省との話し合いでこういう法律ができたというようなことでなくして、この章に関する限りは私は自治省に責任があると思う。だから、政令で一体どのくらいのものを出されるのかということが明らかにならないと、審議を進める上に、私は厄介だと思うのです。そうだとすれば、この政令が出たときに、この法律を一緒に審議した方がいいと思うのです。こんなものをうっかりきめておいて、親も子もできてしまって、そのときになってこれは大へんだとあわてても間に合いはしない。親法ができてしまえば子はどうしても出てくる。ことに政令なんというものについて、われわれはそんなに審議する時間もありませんし、また意見を申し上げることも困難だと思う。だからこの際、こういう自治省の責任においてやれる問題については、大臣から一つもう一ぺん答弁をしていただきたい。あとの起債の特例であるとかいうようなものについては、これはあたりまえのことであって、何も別に特別の問題ではないが、この災害対策基金の積み立てだけについては、もう少し明らかにしてもらいたい。
  179. 安井謙

    安井国務大臣 ごもっともな仰せとも考えるわけでございますが、今も局長説明を申し上げましたように災害救助基金といったような他省に関係のある法律との関連もございますので、この点は慎重にいろいろの総合的な関係を考慮いたしまして、その上に新しく法律案として御審議を願う、こういうふうに考えております。
  180. 門司亮

    ○門司委員 それでは法律をお出しになりますね。これは政令でなくて「法令」と書いてありますけれども、令でなくて法になりますね。
  181. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 現在のところは、先刻来申し上げておりますように、災害救助法に基づく災害救助の基金、あるいは地方財政法関係の積立金というものとの間の関連をつけるために、こういう表現をしておるのであります。ただ別に何らかの新しい観点から必要があるという場合、それを新たに義務づけるということになります場合は、今の政令でもって独自でやるつもりはございません。法律をもって別個に御審議をいただく運びに相なると思います。
  182. 門司亮

    ○門司委員 まさにこの法律の審議の上にそういうような疑問がたくさん出ておりまして、逐条にこれを見てみますと、非常にたくさん問題がありますが、非常に時間がおそくなっておりますので、私は最後に聞いておきたいと思いますことは、この法律がかりに通過いたしまして、そうして動き始める時期というのは一体いつごろになるのか、そうして機能を発揮するということには大体どのくらいの時間を見られておるのか、この点を一つ聞いておきたいと思います。
  183. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 本法案が成立いたしました暁におきましては、施行の期日は一年以内で政令の定めるときからというふうに法律上はなっておるわけでございます。これは諸般のいろいろな手続がございます。この法律の精神に基づいて関係法律についても手を加えなければならない、そういう時期的な余裕も見ておかなければならないわけであります。そういう意味で、一応最高限度一年という期限を置いたわけでございますが、いずれも緊急を要する問題でございます。これが動き出したといたしましても、軌道に乗るというまでにはいろいろの準備手続を要することでございますので、そういうことにいたしておりますが、なるべく早い機会ということを私たち事務当局として考えておりまして、たとえば来年の四月あるいはおそくても六月ということに実施のめどを置いて、本法の適正な運営について準備に遺憾のない措置を講じて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  184. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。法律の実施は大体一年以内に実施をされるようにしていきたい。それから生まれてくる防災会議が、さらに日本の防災計画を立てて、そうして内閣総理大臣に答申するという時間が、私はどうしてもあろうと思いますが、その時間は大体どのくらい見ておいでになりますか。この法律ほんとうに完全に動く、防災会議ができて、そうして内閣総理大臣が諮問をして、そうして何のかんの会議が開かれると思いますが、そこで決定して、この法律が完全に動き出すまでの間は、一体どのくらいの時間がかかりますか。その点をもう一応聞いておきたいと思います。
  185. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この法律の企図いたしておりますことは、部門によりましては、相当理想的な目途を示しておる向きもございます。たとえば治山治水の問題であるとか、その他重点をもって考えていかなければならない事項というものにつきましては、そう簡単に結論が出るものばかりではないと思うのであります。ただ問題といたしましては、防災会議の設定によりまして、各機関の間の相互連絡というものがつけられていく、あるいは災害が起きました場合におきまして、いろいろの応急措置等についての諸般の手続を講じていく、そういう体制というものがこれによって整備をされる段階になるわけでございます。しかしながら、もっと基本的な問題等についても、問題のむずかしさはございますけれども、じんぜんとこれは日を送っていくべき筋合いのものではございません。そうして問題自体は、私は、むずかしい点もございますけれども、今まで各方面でも主張され、また研究をされ尽くしておる事項もあるわけでありまして、問題は、それに対してどのような熱意をもって対処するかという心がまえによって事柄の成否が固まってくるのではないかと思います。そういう意味で、完全実施の体制がいつになるかということについては、私といたしまして、今ここで言明の限りではございませんですが、しかしながら、なるべく早い機会に完全な形においてこれが動き出すというふうに努力をいたして参る所存でございます。
  186. 門司亮

    ○門司委員 これを建設省に聞いておきたいと思いますが、建設省は、御承知のように二十八年の計画を一応おやめになって、そうして新しい十カ年計画を立てられておりますが、この法が動き出して、そうしていずれ何らかの答申がされると思います。その場合は、建設省はそれに従って今の計画をやめられるということに考えておいてよろしゅうございますか。
  187. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 治水事業十カ年計画につきましては、この基本法が施行されました暁におきまして、防災基本計画等が固まってきますれば、その内容については再検討をさしていただきまして、この防災基本法の趣旨に即応して治水事業の充実をはかって参りたい、かように考えております。
  188. 園田直

    園田委員長 門司君、先ほどの質問の答弁の追加がありますから、この際お願いします。
  189. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 先ほどお尋ねのございました砂防指定地の面積の件でございますが、これは昨年九月に集計したものが最新のものでございまして、これによりますと、六十七万五百七十ヘクタールでございます。その後もちろん事業の進捗に伴いまして若干ふえておると思いますが、約千四、五百ヘクタールはふえておると推定されます。
  190. 門司亮

    ○門司委員 どうも答弁は、実際はそういうことになろうかと私は思いますが、今の砂防の問題で私の調べたのとは少し数字が違うわけでございますが、数字の論議はおのおのの見方で多少違いますから、この際やめておいた方がいいと思います。私の心配しておりますのは、こういう計画が一応出て参りますと、いずれじゃまになるのは今の十カ年計画ですね。なぜかといいますと、やりかけた仕事がまだたくさんある。それからまたあなた方のお考えも大体これでやれるというお考えですから、それを途中で変えろということについては、役所としては非常にむずかしい問題が出てくると思います。だから念のために聞いたのでございます。そこで自治大臣にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、今のような答弁でありますが、従ってこの法律が完全に動く日にち、それから今計画が立てられておりますものの変更の時期というものについては、まだ見通しはおそらく立たないだろうと私は思います。しかし、今の局長の答弁だけではわれわれ安心をするわけには参りませんので、大体この法律ができて、そうして今の建設省の持っておりまするいわゆる十カ年計画に変更を加えるというようなことが途中で当然あろうと思いますが、そういうことは大体どのくらいのときに一体ほんとうに行なわれるかということであります。私がこういうことを繰り返して聞いておりますのは、災害というやつは毎年やってくるのですね。被害をこうむるかもわからない。長く国がこういう会議を開きましてごたごたやっているうちに——しかもこれは主管省がきまっておればいいですよ。どの官庁がやるのだということがきまっておればすぐやられますけれども、おのおのの官庁にこれをまかせるということになりますと、私はなかなかうまくいかないのじゃないかという感じがします。大臣から答弁を得ておきたいと思いますことは、一年の範囲でこの法律は一応出て参ります。そうすると、この法律の効果というのは何年くらい先になる予定なのか。今の局長の答弁だけではちょっと安心ができないのです。
  191. 安井謙

    安井国務大臣 私どもも、災害に対する対策でございまするから、これはもう可及的すみやかに実施をしなければならぬと思っております。そこで今のいろいろな準備的なものをおきましても、もしこれが春にスタートするということになりますれば、おそらく三十八年度の予算を組みます際には、そういったものが、これは程度の問題もございますが、いろいろ加味せられていくであろうということを確信いたしております。それから告示になって正式に実施する前でも、それぞれの官庁なりあるいは地方団体におきましても、この法案が両院を通過したということになりますれば、その心組みでいろいろな施策も相当前進をし得るものであろう、こういうふうに思っております。
  192. 門司亮

    ○門司委員 最後にはっきりしておきたいと思いますことは、冒頭にも聞きましたが、この法律災害対策基本法であって、そうして防災並びに災害の予防、災害に対する処置という三つの要素を含んでおるわけであります。従って法律の内容はきわめて複雑でありまして、条文も非常に多い。ことに地方の自治体に全部といっていいほど関係を持っておりますので、地方の自治体の建前からいけば、自治体では早く法律をこしらえてもらいたいという陳情をしばしばいたしておりますが、私ども、やはり法律をこしらえる場合には、さっき申し上げましたような、積立金がどのくらいあるのかとか、あるいは地方の自治体でこれを動かしていくにはどういうものが必要かということ、これはさっきの答弁ではまあ一年くらいと言われますけれども、地方でこしらえた防災計画が上に上がってくるのでしょう。だからこれは実際にはそう簡単にいかぬと思うのですよ。都道府県までは割合に早くいくかもしれませんが、市町村の防災計画なんというのはなかなか立てにくい。この法律の中には、またがった府県等についてはこうするとかああするとか書いてありますが、いろいろとむずかしい問題が出てくる。非常に用心深くできておるようでございますが、複雑怪奇——怪奇という言葉は悪いかもしれませんが、混とんとしたようなものでなくて、もう少しあっさりした防災法というものがなぜできなかったかということであります。私は、災害処置については、大体現行法が完全に運用されれば間に合うのじゃないかと思う。今日本の国民ほんとうに要望しておるのは、災害をいかにして防止するかということであります。このことのために全力をあげていくことが、国のとるべき態度であり、またわれわれの審議すべきものではないかと考えておる。ところが、これには何にも防災に対する具体案がないのであります。わずかに十条ばかり書いてありますが、この十条も完全に防災についてどうするということも見えない。あるいは予防についてもわずかに三、四条しか書いてない。こういうことでは、この法律は何かかかしみたいなもので、実際はほんとうに効果がないのではないか。ただ政府が、非常に災害が多くて何かしなければならぬということで、お茶を濁すという言葉はよくないと思いますが、国民がそういうことを心配しているから、一応国がこういう処置をとるべきではないかということでこしらえられた法律であるというように考えられます。それで私はこれは委員長にお願いをしておきますが、成立も非常に急いでおいでになるようでありますけれども、自治省としては、これだけ法律をまとめられるには大へんだったと私は思います。各省がおのおのなわ張りを持っておりますから、こういう法律ができて防災会議一つにまとめていこうなんということになりますと、非常にむずかしかったと思います。自治大臣の苦労は十分お察しをいたしますが、われわれから考えると、もう少しこの法律ははっきりしたものにしていただきたかった。そのことのためには、総理大臣防災関係基本的な施策を私どもは聞く必要がありはしないか。従ってそれについてわれわれの意見を申し上げ意見を聞きたいということと、それからこの法律を審議いたしますには、自治省の苦労された最大のものを除くことのためには、各関係省の大臣に来ていただいて、各関係省の大臣が、この法律ができたら、この法律に従って今までのような勝手なことはやるかやらぬかということを、自治省の苦労に対しても一応私どもは言質をとる必要がありはしないか。そういう処置が講ぜられておらなければ、せっかくこの法律が動いて参りましても、またこの防災会議の中で議論がたくさん出てくる。そうして実施にあたりましてはちくはぐなものができてくるというようなことがあってはなりませんので、法律に対する主管がきまっていればまだいいのでありますが、主管がどこともきまっておらない。そうして総理大臣の諮問に答えるだけだということになりますと、今までの国の行政機構の中にはたくさんあります。たとえば選挙の問題にしても審議会が一つある。あるいは税制調査会もある。あるいは地方行政に対する一つの審議会ですか、そういうものがたくさんある。これは数を勘定するとうんとあるでしょう。百くらいあるかもしれませんよ。たくさんの審議会があって、その審議会から答申してくるのですが、その答申されたものを国がなかなか実行しないというのは通例なんです。だから各省の大臣責任のある態度を示してもらわぬと、審議会ができてそれに一任したところで、この法律の所期の目的を達することはできないのじゃないかという心配がある。政府がやらぬというのは典型的なものです。人事院の勧告があってもなかなかやりませんし、法律にちゃんとやれと書いてあってもなかなかやりませんし、こういう形で各省が集まって審議をして計画を立てるのだ、その計画に従って遂行するのだという法律の体裁だけは一応整っておりますけれども、実施にあたっては非常に心配される点がある。だから委員長にお願いしておきますことは、これに関係のある各省の大臣に出ていただきまして、そうして防災計画ができたら、その実施について、各省の大臣は今までのような考え方ではなくて仕事は完全にやっていくという言明、また総理大臣からは、その答申についてはこれを完全に履行するという言明をいただかぬ限りは、この法律はそう簡単によろしいというわけには私どもにはいかないのじゃないか、こういうように考えますので、委員長からぜひ関係省の大臣に来ていただきまして、そうして法律施行にあたってわれわれが心配することのないように、今までのような、審議会を設けても、その審議会はただ言いわけだというようなことに終わらぬようにする。この審議会の内容については、政府内部の審議会でございますから外部から委員は入れないのでしょう。政府内部の各官庁の審議会だと私は考えております。そうだとすれば、あるいはこれはほかからも審議委員が入るということになって、ことに市町村から上がってくる、都道府県から上がってくる一つの計画というものが中心になってものが考えられるということになりますると、非常に大きな問題が私は出てくると思います。だから、ぜひ法律施行にあたっては、一つ各省の大臣が今までのようなわがままなことを言わないということを、繰り返して申し上げておきますが、審議会で決定したことは、内閣総理大臣が必ず実行するというはっきりした声明をこの際していただきたいと思いますので、委員長に、一つさような取り計らいをしていただきたいということを最後に申し上げまして、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  193. 園田直

    園田委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は明二十七日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時五十二分散会