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1961-10-13 第39回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十三日(金曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君    理事 高田 富與君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    小澤 太郎君       大竹 作摩君    亀岡 高夫君       久保田円次君    田川 誠一君       富田 健治君    前田 義雄君       安宅 常彦君    赤松  勇君       大原  亨君    佐野 憲治君       二宮 武夫君    野口 忠夫君       松井  誠君    山口 鶴男君       門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁長官官         房企画審査官) 宍戸 基男君         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第一課長) 本多 丕道君         厚生事務官         (社会局施設課         長)      瀬戸新太郎君         農林事務官         (農地局参事         官)      堀  真治君         自治事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         警  視  長         (警視庁警備部         長)      高橋 幹夫君         専  門  員 圓地与四松君     ————————————— 十月十三日  委員赤松勇君、大原亨君及び前田義雄君辞任に  つき、その補欠として和田博雄君、野口忠夫君  及び薩摩雄次君が議長の指名委員に選任され  た。     ————————————— 十月十三日  地方自治法の一部を改正する法律案川村継義  君外二名提出衆法第五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策基本法案内閣提出第四九号)  昭和三十六年度分の地方交付税単位費用の特  例に関する法律案内閣提出第六〇号)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 これより会議を開きます。  園田委員長指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  昭和三十六年度分の地方交付税単位費用特例に関する法律案議題といたします。  本案に関する質疑は前会において終局いたしております。  これより本案討論に付します。討論通告がありますので、これを許します。山口鶴男君。
  3. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 社会党を代表いたしまして、提案をせられました昭和三十六年度分の地方交付税単位費用特例に関する法律案に対しまして、反対討論を行ないたいと存じます。  今回提出をせられました地方交付税単位費用特例に関する法律案は、国家公務員給与改定に準ずる地方公務員給与改定に必要な財源措置及び生活保護基準の若干の引き上げに伴うところの地方負担分財源措置、この二つに限定いたしておりまして、二百十億円を地方自治団体に交付するための単位費用改定でございまするけれども、現在の地方自治団体財政状況を考えてみまするに、池田内閣のいわゆる所得倍増計画経済高度成長という名の経済政策の失敗によりまして、設備投資はきわめて過大に行なわれ、このため物価値上がりは著しいものでございます。従いまして、現在地方自治団体実施をいたしておりまするところの各般の事業、すなわち治山治水あるいは道路、住宅学校建設、これらの工事につきましては、いずれも諸物価値上がりのために、当初予定をいたしましたところの計画をもってしては、実施することがきわめて困難な状況に立ち至っているわけでございます。現在都道府県といわず、市町村といわず、いずれも公共事業におきましては入札をいたしましても、すべてこれは不調である。こういうような状況に立ち至っていることは、われわれのよく認識をいたしておるところでございまして、このような実態であるにかかわらず、政府におきましては、住宅及び学校建築に対しまして若干の国庫補助率の是正を行なっておるにとどまっておるのでございまして、これだけでは現在当面いたしておりまする地方自治団体の財政困難を是正することは全く不可能であると申さなければなりません。従いまして、政府自治省がこれらの施策に対しまして、今回の法律案提案によりまして、何ら配慮をいたしておりませんために、これら諸物価の高騰に基づくところの経費は、あげて地方自治団体にしわ寄せされておる、こういう状況であると申さなければなりません。政府におきましては、地方自治団体においても若干の税収の伸びがあるから、これをもって措置すればいいと申しておりますけれども、しかし地方自治団体の中には、あるいは現在大きく問題になっておる石炭不況によるところの産炭地域、あるいは財政力のきわめて貧困である地域、これらの地方自治団体財政力がきわめて苦しい状態に立ち至っていることは明白な事実でございます。従って政府自治省が言われるような方式では、これらの地域、特に財政力貧困地域に対しては何ら配慮ある措置がとられておらない、かように極言して差しつかえないと思うのであります。まさにこれは政府自治省責任は重大である、かようにわれわれとしては考えざるを得ません。  次に給与費の問題でありまするけれども、この給与改定に対する財源見積もり方は、あるべき姿の標準団体をもとにいたしまして給与改定を算定いたしておるのでありまするけれども、しかしこの算定におきましては、地方公務員の構成なり、あるいは地方公務員の勤務の実態なり、こういうものに対して全く配慮が欠けておると申さなければなりません。従って、こういう点に対しては問題でありまするし、同時にこの措置人事院勧告すら完全に尊重していない措置であり、われわれとしてはきわめて不満であると申さなければなりません。当然これら給与改定に対する経費は、憲法に認められた権利に基づき、公務員政府あるいは公務員自治団体、こういうものとの交渉によって必要な経費を全額確保するということこそが必要な方策でございまして、こういう観点からいきますならば、給与改定に対する組み方すらきわめて不備であると言わざるを得ないと思うのであります。  このような観点に立ちまして、わが党におきましては、十一日予算に対する組みかえ動議提案いたしまして、地方交付税に対しましても百四億円の増額提案を行なったのであります。不幸にいたしまして、この組みかえ動議は否決をせられたのでありまするけれども、しかしわが党といたしましては、現在当面する地方自治体の財政状況なり、あるいは公務員給与に対する考え方、こういうものからいきまして、きわめて遺憾ではありまするけれども、今回政府提案をせられました昭和三十六年度分の地方交付税単位費用特例に関する法律案賛成することはできません。われわれとしては、ただいま申し上げましたように、わが党の組みかえ動議において主張いたしましたように、百四億円の交付税増額、三百十五億円の経費をもって貧困な自治体に対して十分な財源補てんをいたすことが必要であり、給与改定につきましては、政府公務員諸君との団体交渉による結果をそのまま充填すべきである、こういうふうに考えるところであります。  以上申し上げまして、社会党を代表いたしまして反対討論を行ないました。(拍手)
  4. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  5. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 これより採決いたします。  昭和三十六年度分の地方交付税単位費用特例に関する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  6. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 起立多数。よって本案は原案の通り可決するに決しました。  次にお諮りいたします。すなわち、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、先例により委員長に御一任を願いたいと思います。これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 異議なしと認めます。よってそのように決しました。      ————◇—————
  8. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 次に、災害対策基本法案議題といたします。これより質疑に入ります。質疑通告がありますのでこれを許します。小澤太郎君。
  9. 小澤太郎

    小澤(太)委員 ここ数年、年ごとに激甚な災害が起こっておるわけでありまして、これに対しまする政府並びに関係機関防災に関連した一貫処置が系統正しく行なわれるということ、さらにその防災計画総合的に立てられるというようなことが、従来の経験にかんがみまして必要であるということが要望されておったわけでございます。この要望に基づきまして、ようやく今回災害対策基本法案提案されるに至ったのでございまして、ここまでこの法案を作るにあたっての政府関係各当局の御努力に対しましては敬意を表し、その労を多とするのでございます。  提案理由にありますように、その基本法の骨子とされておりまするところは、まず第一に災害対策総合化である、そのために中央及び地方防災会議を設けて、中央地方公共団体関係公共機関、さらに住民が、それぞれ責任分野を明確にして、その間に一糸乱れぬ対策総合がとれる、こういうことがねらいの一つであるようであります。第二は災害対策計画化ということであります。そのために防災計画中央地方を通じて作る。さらに第三点としましては、緊急非常災害に対してのこれに対処する態勢を確立する、こういうことが説明されておるのであります。その説明から考え、さらに本案を通覧いたしますると、なるほど今までこのような災害に際して、かなりの混乱をいたしておりまして、関係機関が非常に多数であり、輻湊する、法律もたくさんある、との間の脈絡をただして、その活動一貫性を与えたということにつきましては、今までに比べて大きな進歩でございます。この法律案のねらっておるところもわかるのであります。しかし一面におきまして一般国民が、さらに地方団体においてもそうであろうと思いますけれども、この災害対策基本法に期待しおりました事柄については、ややその点が欠けておるのではないかといううらみがあるわけであります。つまりこの法案は、防災行政組織運営に関する法律というのがむしろ適当であって、災害対策基本法というには何か大事なものが欠けておるのではないか、こういうふうな感じがいたすわけでございます。せっかくこのような法案提案されたのでありますが、この法案によって、政府は今後天然その他の大災害に対しまして、国民がその被害から免れるように万全の措置がとれるというために、積極的な施策の意図がどこにあるのか、そのような意欲的な施策がこの法案の中に盛り込まれておるのかどうか、その点につきまして自治大臣の御意見を伺いたいと思います。
  10. 安井謙

    安井国務大臣 今回防災対策基本法提案いたしました理由等につきましては、提案理由説明、あるいは本会議で御答弁申し上げた通りでございます。  現在各政府機構、あるいは地方機構を通じまして、それぞれ法律制度あるいは各省の防災に対する施設というものは、相当完備したものがあるのでございますが、しかしこれをほんとうに総合的に運営をして、また災害そのものを各関係機関総合的に対象として考える仕組みに抜けておるということから、今お話し中央地方の各防災会議、あるいは各機関連絡統合を強力にやろうということが第一の趣旨であります。それに伴いまして、今後総合的に見た防災対策機構、いわゆる治山治水あるいは砂防、そういった方面からの根本的な対策、あるいは激甚災害に対する応急措置、あるいは特例法案の設置、こういうものに対する具体的な策は、この基本法を通すことによって、それを足場にさらに大きく推進をしようというこの二段階をとっておるわけであります。従いまして、小澤委員の御指摘になるように、具体的にどれとどれが推進に役立つのかということになりますと、多少議論の分かれるところもあろうかと思いますが、まずその基盤を作ることが第一である。そしてその基盤を作って、それを土台にしまして新しいより具体的なそれぞれの立法を、各政府機関あるいは地方ともよく協議をいたしましてなるべく早く作っていこう、こういうかまえにいたしておるわけであります。
  11. 小澤太郎

    小澤(太)委員 なるほど基本法でありますから、一応方向なり原則なりをここに掲げて、それに関係いたします具体的な事柄につきましては、それぞれの法律をもってその内容を確定していく、こういうお考えのようでありますが、なるほどそれは法律建前としてはけっこうかと思いますけれども、それならば、この法律基本としてそこから関係した法律が出てくる、その基本になるものの中に、そのような関連した法律が、十分目的に合うような積極的なものができ上がる、その基礎がこの法案になければならぬ、このように考えるわけでございますが、その点はどのようなところにあるものか、お示しをいただきたいと思うのであります。
  12. 安井謙

    安井国務大臣 御承知通りに、この基本法を通すことによって次へ発展すべき段階、その準備はこの法案でどうできておるかというお話でありますがこれにつきましては、まず第一にいわゆる中央防災会議というものを通じまして、災害そのものをあらゆる角度から対象にして、あらゆる機関でまず新しい検討をして、現在全体として足りないものを早急に作っていかなければいかぬという中央防災会議の規定ができております。次に地方におきましても、それぞれその会議趣旨に従って、同じように防災会議をやりまして、平素防災に対処すべきいろんな備蓄材準備であるとか、訓練その他のあらゆる施策推進をしていくという態勢になっておるわけであります。さらに、それをもっとより大きく具体化する治山治水、あるいは砂防、またダムのかさ上げ等による防災、そういうような直接予算なりあるいは費用を伴い、また政府公共事業計画として考えなければならぬというものにつきましても、十分にこれから考えるという建前をあの防災会議の条項でうたっておるつもりであります。それから激甚災害に対しましては、今まで御承知通りに、そのつど、そのつど特例法によって処理をしておるが、これは特例法でなくて、今後基本的な恒常法にしなければならないということも、本法の中でうたっておるわけであります。さらに一般地方における防災活動につきましても、それぞれ組織を統合することによって、より積極的ないろいろの対策を遂げられるというふうに、それぞれに対して心がまえをすべき基準を、それぞれの各章でうたっておるのでありまして、また単に災害復旧だけではなくて、関連事業の場合についても、同様のきめ方をいたしております。
  13. 小澤太郎

    小澤(太)委員 大臣の御答弁がございましたが、それでは若干内容につきまして、大事なことでございますので、多少条文にわたると思いますが、お尋ねをいたしたいと思います。大臣の御答弁が適当でなければ、行政局長からお答え願いたいと思います。  まず災害対策といたしましては、何と申しましても治山治水等積極的な防災対策が行なわれまして、国民生命財産被害を、自然災害その他のこれに類する大きな災害からなくするという積極的な施策が一番大事であろうかと存じます。災害が起こって、それに対する応急処置、または災害復旧、これももちろん大事でございますが、それよりも災害未然防止する、被害未然防止するということが大事であろうかと存じます。そこでこの法案の中で、災害予防と申しますか、災害未然防止するという考え方、その観念について実は伺いたいと思うのであります。  本法案の第二条第二号「防災」という定義が書かれてございますが、「災害未然防止し、災害発生した場合における被害拡大を防ぎ、及び災害復旧を図ることをいう。」こう書いてあります。その災害未然防止するということと、法案の第四章に「災害予防」という章がございます、この災害予防ということ、その言葉意味でございますが、これが同じものであるのか、あるいはその間に広い狭いの差があるのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 今御指摘のございました第二条の第二号の定義のところで、防災ということについて、その内容を明らかにいたしておるのでありますが、ここでは、災害未然防止、それから災害発生した場合における被害拡大を防ぎ、それと、災害が起こってしまいました場合に、そのあとの復旧をはかっていく、これを一貫した形においてとらまえるという意味合いを持ちまして、防災という言葉を使ったわけでございます。この法案では、先刻大臣からも御説明を申し上げましたように、災害対策というものをその段階々々にばらばらではなくて、これを総合的に有機的に体系をつけていくということに一つの大きなねらいを置いたわけであります。そのためには、予防ということも大へん大事な事柄である、また災害発生した場合の救助、あるいはその後の災害復旧、これらを一つ総合的な立場で把握しながら、その効果を十分に上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。  そこで第八条に参りまして、第二項に、いろいろ災害発生予防災害拡大防止ということのために留意すべき事項というものを、特にその中で重点的な事項というものを掲げておるわけでございます。さらに章を追って参りますと、第四章に参りまして「災害予防」という章がございますが、ここでは、災害というものの未然防止をはかっていく、さらには災害が生じました場合に、その被害拡大というものをできるだけ防止をしていく、この考え方を含めて、それぞれ内容として包含せしめていくということでございます。そういう考え方に立って参りますと、災害予防ということの中には、災害未然防止というものと、災害発生した場合における被害拡大を防ぐ、この二つを含めた広義の意味解釈をいたしておるのであります。
  15. 小澤太郎

    小澤(太)委員 ちょっと私の質問の仕方が不十分だったせいかと思いますが、私のお聞きしたいことと御答弁が食い違っておりますので、もう一ぺんお伺いしたいと思います。私のお聞きしたいことは、この法案防災という意味が書いてありますが、この防災の中には、今お話し通り災害未然防止する、そして発生した場合における被害拡大を防ぐ、それから災害復旧をはかる、この三つの観点を含めて防災という言葉で表わす。そこで、その一つであります災害未然防止するというその観念と、第四章にあります災害予防という観念が同じものであるかどうか、あるいはどっちが広いかということ、それを伺いたいというわけでございます。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その点につきましては、第八条の二項のたとえばその二号に、「治山治水その他の国土保全」ということがございますが、その考え方は、未然防止、あるいは災害発生した場合の被害拡大を防ぐという事柄よりもさらに広い意味において、災害発生予防するための措置ということにいたしまして、災害が起こった場合に、その被害最小限度に食いとめるとか、あるいは災害復旧をやるとかいうことも大事でございますけれども、もっと根本的には、そもそも災害の根を断つということについて重点を置くために、治山治水その他の国土保全というようなことも、特に重視してやっていかなければならぬという意味合いでございまして、ここでは広い意味に使っておるわけでございます。
  17. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それでは、第四章における災害予防という言葉災害未然防止するという第二条の防災の中の言葉とは、意味が片一方が広い、こういうことでございますね。そう解釈してよろしゅうございますね。
  18. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その通りでございます。
  19. 小澤太郎

    小澤(太)委員 災害予防という言葉をこの法案に使ってありますが、それはただいま局長お話し通り、かなり狭い意味に使ってあると思うのであります。第四章におきましても「災害予防及びその実施責任」の第四十六条第一項四号に「防災に関する施設及び設備整設及び点検に関する事項」とございますが、この「防災に関する施設及び設備の整備」は、いわゆる広い意味治山治水、積極的な意味治山治水というようなことを含むのか、含まないのか、おそらく私はそのような広い意味を持たないものだと解釈せざるを得ないのであります。と申しますのは、法案の二十三条五項で、災害時における災害対策本部長に、警察並びに教育委員会に対する指示権を認めておるわけでありますが、これは、災害の起こったときでありますから別といたしまして、この際におきましても、災害予防ということが条件になっております。これは、おそらく狭く解釈しなければならない事柄だと思います。さらにまた三十五条の二項一号、防災業務計画及び地域防災計画の中にも災害予防という言葉がありますが、これもその条文を拾ってみますと、きわめて狭い意味で、治山治水事業というような広範な根本的なものに触れておらない。また百二条一項二号の地方債財源とすることが認められる個条におきましても、やはり災害予防ということがあります。これも、おそらく自治省としては広く解釈されないと思います。このような狭い意味災害予防という言葉法案に使ってあるわけであります。  そこで私がお聞きいたしたいことは、この法案に流れております精神で大事なこと、それは第三条に「国の責務」というのがございます。「国は、国土並びに国民生命身体及び財産災害から保護するため、災害予防災害応急対策及び災害復旧基本となるべき計画を作成し、」云々とあります。ですから、国が国の責務として国土並びに国民生命身体財産災害から保護するために立てるところの基本となるべき計画は、災害予防とあるわけであります。この災害予防というのは、従って先ほどから申し上げましたようにきわめて狭い。第八条にありますような治山治水根本対策、そういうものを言っておらないというように解釈されるわけでございますが、それはどうでございましょう。
  20. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘のように、第三条に言っております国の責務としての災害予防というものは、広い意味にわれわれとしては解釈いたしておるのであります。
  21. 小澤太郎

    小澤(太)委員 そうしますと、この災害予防というのは広い意味というのは、治山治水根本対策、これの基本計画ということが入っておるのでございますか。
  22. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 治山治水等根本対策も包含さるべきものと解釈いたします。
  23. 小澤太郎

    小澤(太)委員 まことにけっこうなことでございまして、そのように解釈されて、初めてこの第三条の意義があると思います。この法案に用いられております災害予防という言葉は、そのような意味で用いられておりません。先ほどから私が御指摘申し上げましたように、きわめて限定された意味に用いられておるのでありますが、この三条に限って、災害予防という言葉は、広い意味治山治水根本対策に触れたところの基本計画を作成する義務が国にあるという御解釈。それが正当に解釈されるならば、私は、最初に御指摘申し上げましたように、この法案が生きた法律として国民の期待に沿う法律となる、このように考えるのでございますが、この点は間違いないかどうか、もう一度確認をいたしたいと思います。
  24. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 先刻も申し上げましたように、災害対策といたしましていろいろな局面があるわけでございますが、その中で、何と言ってもゆるがせにできない最も基本的と思われますことは、災害自体が起こる可能性というものの根を断っていくということが、最も基本的な事柄ではないかというふうに思っておりまして、このためには、恒久的な国土保全治山治水の根本的対策ということを総合的な立場から進めて参りますことが、最も肝要なことではないかという立場に立っておりますので、第三条の「国の責務」にございます災害予防は、そのようなものを含めた広い意味解釈をしなければならない、またそのようなつもりで規定をいたしたのであります。
  25. 小澤太郎

    小澤(太)委員 ただいまの局長の御答弁を、大臣もその通りとお考えになりますか、伺いたいと思います。
  26. 安井謙

    安井国務大臣 その通りでございます。
  27. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それでは、さらにお伺いいたしたいと思いますが、この第九条に、「政府は、毎年、政令で定めるところにより、防災に関する計画及び防災に関してとった措置の概況を国会に報告しなければならない。」こうあります。これは、もちろん毎年のことでありますから、毎年の計画になると思いますが、この九条で国会に報告しなければならない義務のある防災に関する計画は、ただいまお話しになりましたように、第三条の国が災害予防災害応急対策災害復旧基本となるべき計画を作成するという国の責務に照応して、それに従って国会に提出されるものだと思います。従って、その提出される毎年の防災に関する計画内容は、治山治水等の根本的な対策が含められておるものであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  28. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 政令で定めるところによりまして、その手続なり内容の細目なりを明らかにいたしたいと思っておりますが、根本的には、この防災に関する計画の中には、長期の治山治水対策等の基本的な計画もここに含ましめるつもりでおるわけでございます。
  29. 小澤太郎

    小澤(太)委員 ただいまの御答弁を伺いまして、私のこの法案に対します積極的な治山治水をやろうという意欲が十分に現われておらないのではないかという心配、懸念が、一応ある程度解消したような気がいたすのでございますが、しかし、そういたしますならば、私はこの法案の書き方、ことに第三条の書き方などにつきましては、もう少し用語の上において十分な表現の方法があろうかと思います。この災害予防というきわめて局限された、狭い意味に用いられておる用語をここに使うということがどうであろうか、このような感じがいたすのでございますが、その点が重大な問題の一つだと存じます。そのようなお話を承ったので、ある程度私の疑問は氷解したわけでございますけれども、さらに伺いたいのは、三十五条に防災基本計画を立てることになっておりますが、その防災基本計画は、今御答弁になりました通り、その内容といたしまして、治山治水の根本的な対策が含まれておるものかどうか、この点を念のため承っておきたいと存ずるのであります。
  30. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 第三十五条の防災基本計画についてのその定むべき内容の大綱を、三号にわたって規定をいたしておりますが、その第一号「防災に関する総合的かつ長期的な計画」この中には、今御指摘になりましたような長期根本的、かつ総合的な治山治水その他国土保全に関する計画も、当然含ましめる予定でございます。
  31. 小澤太郎

    小澤(太)委員 そのお話を聞いて安心いたしましたが、第三項の第二号には「防災上必要な施設及び設備の整備の概況」を参考資料として添付しなければならぬ。これは、日本の治山治水その他防災に関する根本的な対策の現状、そういうものが資料として添付されるとするならば、おそらく今おっしゃったように「防災に関する総合的かつ長期的な計画」は、そのようなものを基礎として、その上に築き上げられた計画、こういうふうに解釈できると思います。そこで、今までの解釈が正しいとするならば、この法文の上から治山治水に対する積極的意図がうかがわれるのでありますが、さらにこのような計画を立てるといたしましても、それが実行に移るためには、予算上、行政上の措置が必要かと思います。この法案を拝見いたしますと、国が積極的に治山治水等のいわゆる広い意味災害防止するための措置として、どのような予算を計上しなければならぬかというような国の重大な責務については、何らの規定がない、このように思うのでございますが、私の見落としかも存じませんが、どこにあるかお教えを願いたい。
  32. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 第三条「国の責務」のところに、国の一般的、最も根本的な責務を規定いたしておるのでございますが、そのおしまいの方に「災害に係る経費負担の適正化を図る責務を有する。」というふうに規定をいたしておるのであります。この前段といたしまして、今まで御論議がございましたように、災害予防という観念自体が、広範囲にわたる国土保全等についての計画も当然含ましめてこれを立案し、遂行をしていかなければならない。そのためには、それぞれ分担々々がございまして、国がやらなければならないもの、地方団体その他がやらなければならないもの、地方団体その他がやるといたしましても、そこに地方団体だけではとうていまかない切れないものもございますので、国がこれについての国庫補助、国庫負担等のことをやっていかなければならぬというような点も出てくるわけでございます。これらについて、全体の国土災害から有効に防止するというための諸施策を進めて参る、それについての経費負担の適正化をはかっていくということを、ここにはっきりとうたっておりまして、今のような御指摘の点も、経費負担の適正化というところにはっきりと現われておるのではないかというふうに解釈をいたしております。
  33. 小澤太郎

    小澤(太)委員 「経費負担の適正化を図る責務を有する。」適正化をはかるというのは、負担の区分が適正に行なわれるようにするという意味でありまして、国が治山治水その他国土保全に関する施策を積極的にやる、そのための予算の計上をはかるというような意図はここにはない、ただ調整をするというような規定であります。さらに若干私が拾ってみますと、なるほど災害予防応急対策については、九十一条に「実施の責めに任ずる者が負担する」という規定はあります。これもまた、負担の区分を明らかにしたのでありまして、積極的に国が予算を組んで、治山治水対策をやろうという意図はないのであります。そのほかに、実は応急対策については「予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。」とある。それから災害復旧につきましても同じように、他の法令あるいはまた「予算の範囲内において、国がその全部又は一部を負担し、又は補助することができる。」とあるのでありまして、それ以外、には実はないのであります。激甚災害につきましては、特別の高率補助等ができるような基礎の条文はございますけれども、それ以外には、国の大事な治山治水国土保全の仕事に国が積極的に予算を計上して、これから大いにやるんだ、国民をこの災害から徹底的に守り抜くんだというような気魂が少しもない。またそのような条文が見当たらぬということは、まことにものさびしい気がするのであります。それについてはどんなお考えをお持ちですか、伺いたいと思うのであります。
  34. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 表現の仕方その他については、いろいろ御議論の点もおありになろうかというふうに考えるのであります。ただ災害対策基本法案におきましては、防災基本計画というものをしっかりとした裏づけをいたしまして、長期にわたる総合的な防災についての諸施策基本を策定をしていくということを根本のねらいといたしております。そこに、私といたしましては、積極的な災害対策にあたっての姿勢と申しますか、態度というものが現われておる、また表わしておるというつもりでおるわけであります。この基本計画なり、あるいは各省庁が作ります業務計画でありますとか、あるいは地方で作ります地方防災計画というもので、それらの点が漸次明らかになって参るわけであります。具体的な施策は、国の方針なり地方の方針として、だんだんと積極的にやっていかなければならぬということを明記いたしております。現在経費負担の適正化ということだけを見ますと、あるいは何か現行制度はそのままにして、その負担区分だけを適正にやっていくということではないかというような御疑問かと思いますけれども、これはそうではございませんので、現行制度の負担の適正化というものもむろんございますけれども、もっと長期的な、総合的な視野に立って防災基本態勢というものを確立していく。確立をしていくにあたってはどのような事業実施されなければならぬか、またその事業実施主体はどのようなふうに配分されなければならないか、またそれの裏づけとなる財政負担はどういうふうになっていくかということが、漸次具体化されてくるというふうに思われるのでありまして、その場合においても、災害にかかわる経費負担の適正化とはかっていく、国が積極的にそういう意図を明示していくというふうに解釈をいたしておるのでありまして、私どもといたしましては、これが非常に消極的なものであるというふうには考えておりません。むしろ基本計画その他を作っていくというようなことから推して参りまして、相当積極的な意図が盛り込まれておるというふうに解釈しておるのであります。
  35. 小澤太郎

    小澤(太)委員 御説明を伺っておりますと、この法案をすらっと表面から読んだのとは違いまして、そこに積極的な意図がおありだということを言われるわけでございます。そういうふうに受け取られるわけでございます。そこで、そのような意図のもとに作られましたこの法案が、先ほどから私が申し上げますように、条文の普通の解釈から申しましても、そのような積極的な意図がくみ取られないといううらみがあることは、これはいなめない事実だと思います。そこで、そのような意図がありまするならば、せっかく災害基本法として銘を打って、国民待望のこの基本的な、いわゆる災害の憲法ともいうべきものができるのでありますから、ただいま大臣並びに局長からお話がありましたような意図をこの法案の中に盛り込むというようなことについては、どういう御意見でございましょうか。
  36. 安井謙

    安井国務大臣 今御指摘のありましたように、国が積極的な意図をこの法案に盛り込む点に欠けておるじゃないか、あるいは具体性に欠けておるじゃないかという御指摘がありました。これは読み方によりますと、実はこの法案自体が、ごらんのように非常に技術的な面がたくさんございます。御承知のように、百五十からの法律をそれぞれ分析いたしまして、それぞれの地位において総合性の中での位置づけをやるというような意味から、非常に技術的な面がたくさん載っておりまして、そういう点の調子が弱いじゃないかという感じは、あるいは持たれるかもしれないと思うのであります。また、今も行政局長お話し申し上げましたように、第三条でも「国は、国土並びに国民生命身体及び財産災害から保護するため、災害予防災害応急対策及び災害復旧基本となるべき計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する」ということを前提にうたっております。そうして、さらにそれを具体化する方法として中央防災会議、そうして基本計画というものの策定をこの法律は命じておるわけでありまして、そこで積植的な意図は十分出ておると思うのでありますが、何分技術的な面がたくさんありますために、どうかするとその視点から分散しがちであるという印象を受けておる点はあろうかと思いますが、意図はそういう意図で作られております。
  37. 小澤太郎

    小澤(太)委員 技術的な面がたくさんありまして、大部分をそれに費やしておるというそのこと自体が、実はこの基本法が行政組織運営に関する法律だといわれるゆえんだと思うのでございます。大事なところは、やはり技術的なものはございましても、十分にその意図が現われるようにということが最も願わしいことであり、また国民だれが読んでも、すらっと大臣のお考えになっておられることがそのまま受け取られるというようにすることが法律としてもよりよきものであろうかと私存じます。  それ以上は申し上げませんが、そこで第八条でございますが、局長が最初の方に御答弁になりましたこの第八条には、ややそのような国の積極的な意図というものが加わるかのごとき表現がいたしてあるのであります。   〔渡海委員長代理退席、纐纈委員長代理着席〕 ただし、これは表題から見ましても、「施策における防災上の配慮等」と、何かほかのことをする場合にこのことも考えてやらなければいけないぞ、こういうふうな受け取り方をしかねない書き方でございます。もっと端的に、国はこのようなことをするんだというような、第三条にある「国の責務」これを明確にする規定がほしかったのでありますが、それにいたしましても、その第二項に「災害発生予防し、」云々とありまして「治山治水その他の国土保全に関する事項」こういろいろございます。まことにけっこうなことが並べてございますが、これは、一体このことを積極的にやるのかどうか、「特に次の各号に掲げる事項実施に努めなければならない。」と書いてあるのであります。これは、現在でも実施に努めておるのだといえばそれまででございまして、これからこの基本法ができた以上は、もっともっと今までのに反省を加えまして、積極的にこの施策をやるのだというようなこと、これは法律に書くことはむずかしいかと思いますけれども、そのようにこれが読めるものかどうか。また関係の各省の御当局は、この条文に従って、たとえば建設省において、治山治水その他国土保全に関する事項を、現在までありまする計画をさらに強化し拡大していくような考えを持っておられるかどうか。あるいは防災上必要な気象観測その他の業務に関する施設、これなどにつきましても非常に欠けておるところがある、これなども積極的にやらなければいかぬ。これは、各号に掲げてあること全部そうだと思いますが、この条文の精神はどこにあるか、そしてそれをおやりになるお気持がありますか、まず関係各省の政府委員の方に御答弁をいただきたいと思います。
  38. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 一般的な問題として、まず私からお答えを申し上げておきたいと存じます。  第八条の一項の問題は、国及び地方団体があらゆる日常万般の施策をやる、あるいは将来の計画をいろいろやっていくという場合におきましても、必ず防災的な観点を入れて、それが終始念頭を離れないような考え方を持ってやっていかなければ、防災のほんとうの効果が上がらないということを明確にいたしたいということで、こういうふうな書き方をいたしておるのであります。  第二項に至りましては、特に国、地方団体が、災害発生予防なり、災害拡大防止なりのために重点的に実施に努めなければならない事項というものを書き出して、ここに十号まで並べたわけでありますが、問題はこれに限られておるのではございません。「特に」というふうに書きましたのは、そういうことでございます。  なお、これらの点については、今までも曲がりなりにも、あるいは不十分ながらもやっておるじゃないか、そういうことを特段に書くためには、もっと今までよりも熱意を持って、あるいは積極的にやるのだということが現われなければ意味がないじゃないかというようなお話であったかと思いまするが、この災害対策基本法は、名の示すがごとく基本法ということでございまして、現在の防災体制の不備欠陥を是正して、災害対策全般についての総合化計画化を特に推進をしていこうということをねらいとして持ちまするとともに、あらゆる災害についての基本的な事項は、全部ここに網羅していくという態度をもって法案の作成に当たった次第でございます。そういうことで、現在すでにやっておるものもここに入って参っております。また足らないところについてつけ加えたものもございます。そういうことで、ここに書きましたのは、積極的に努力する意図をことさらに放棄するというようなことではございませんで、これらのことは災害対策の最も基本的な事項だ。従って、特にこれらに掲げてある事項については、その実施について努力をしなければならぬという一つの大きな目標として、大前提としてこれを掲げたという意味でありまして、当然治山治水その他の国土保全の問題につきましても、従来の計画をもってよしとするのでなくて、新しい観点に立ってさらに積極的な施策を考え、これを実施に移すという努力をしていかなければならぬという意図を宣明をしておるものと解しておるのであります。
  39. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 建設省といたしましては、御承知のように治水事業、あるいは建物の不燃堅牢化、防災建築街区の造成事業、あるいは水防に関する事項等を所管いたしておりまするが、先ほど来話がございましたように、この基本法におきましては、以上申し上げました施策についての基本的方向は明示されておると思います。ただ、具体的な内容につきましては、この法律案の第八条、第十条、第三十五条等から考えまして、それぞれの実定法によって規制されておるというふうに考えておりますので、治水事業について申しますと、治山治水緊急措置法によって計画が立てられ、実施推進される。建物の堅牢化におきましては、防災建築街区造成法でありますとか、あるいは公営住宅法等その他の法律によって規定されております。また水防につきましては、御承知のように水防法がございます。そこで私どもの考えといたしましては、この法律が成立いたしますれば、この法律案の第一条はもちろんでございますが、第四条の関係、それからただいまの第八条、あるいは防災基本計画関係等におきまして、十分この法律趣旨に沿いまするように一そう施策の充実をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  40. 小澤太郎

    小澤(太)委員 この第八条は訓示的な規定でありまして、訓示を承っておくというようなことになりかねない、どうもなりがちであるのでございます。そういうことをやるにしましても、やはり予算を伴う、結局政府が積極的に財政措置をしていくというような意図がなければ、関係の各省庁において仕事をしようとしましても、それ以上出られぬということもあろうかと思います。そこで私は、農業基本法の第四条を思い起こすわけでございますが、農業基本法の——いろいろなことが書いてあるわけでございますが、この第四条に、政府は法制上、財政上また金融上の措置をしなければならないという規定を一条設けております。これは予算の範囲内において云々ということでなしに、政府としてはこのような義務を負うんだということを明確に書いておるのでございますが、そのような考え方をこの災害対策基本法においても持たない限り、やはり従来やっておったことを集めた、あるいは従来やっておる仕事を取りまとめてやるんだというような、結局消極的な意味しか持たないような感じがするのでございます。先ほど来の私の質問に対しましての政府当局のお答えは、いずれも積極的な意図があるんだというようなことでございます。従いまして、そのような事柄がこの法案の中に盛り込まれることを、私は特に期待し希望するのでございますが、自治大臣におかれてはこれに対してどのような見解でございますか、御見解もわかると思いますけれども、もう一度くどいようでございますが、お話を伺いたいと思います。
  41. 安井謙

    安井国務大臣 御指摘のような点につきましては、特にこの法案提出する際に考慮を払ったところでございまして、本会議説明におきましても、内閣総理大臣あるいは農林大臣建設大臣、それぞれからこの法案について、それぞれの持ち分については積極的な推進をするという御答弁もいただいておりまして、御趣旨通りであります。さらに大蔵大臣も、この精神によって早急に特別立法化もはかる、予算化もはかる、こういう答弁をしておられるわけでございます。法案の様式等につきまして、若干御指摘のようなことがあるかもしれませんが、内容そのものにつきましては、お話しの精神と全然変わっておらぬと確信をいたしております。
  42. 小澤太郎

    小澤(太)委員 そのような見解をいただいて、まことにけっこうに存じます。  そこで話を少し変えますが、第八条で、いろいろ先ほど申し上げましたように訓示的な規定がございますが、その中で一つ私ども心配いたしておりますのは、今までも災害における個人の被害についての復旧、復興等について、第一次産業、農林漁業等についてはある程度の措置が行なわれておりますが、全般的に個人の被害についての措置というものが行なわれておらない、原則として行なわれておらぬということが言えるわけでございます。   〔纐纈委員長代理退席、渡海委員長代理着席〕 そこで、この訓示規定の中にそのようなことを何か配慮をしていい、すべきであるということが書いてあるかと探したのでありますが、この第三項に「国及び地方公共団体は、災害発生したときは、すみやかに、施設復旧災害からの復興に努めなければならない。」この災害からの復興というのは、個人の災害からの復興、個人というものを含むのかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  43. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘のございました個人の災害復興の問題、あるいは救助の問題等でございますが、この関係は非常に重要な問題であり、また現行のままでいいというものではないということは、われわれもそのように考えておるのであります。そういう意図をもちまして、第三項に書いてございまする「災害からの復興」ということの中には、個人の災害からの復興ということも含ましめておる趣旨でございます。なお一般的な規定といたしましては、そのようになっておりまするが、そのほか防災計画関係で、基本計画の中で「防災業務計画及び地域防災計画において重点を置くべき事項」というものがございます。三十五条の二項でございますが、その二項の中のさらに第三号の「災害復旧に関する事項」この中で「被災者の生活確保に関する事項」これも考えていかなければならぬ、当然防災計画の中にうたい込んでいかなければならぬということを明らかにいたしておるのであります。さらに激甚災害の場合の特例でございますが、九十九条に、激甚災害特例措置を規定いたします法律に盛り込むべき事項を規定をいたしております。その中の第三項に「激甚災害発生に伴う被災者に対する特別の助成」ということを明白に掲げておるのであります。こういうことから、個人災害に対する措置というものも今後ますます改善の方向において考えていかなければならない、当然国の関心もそこに向けられなければならぬ。防災基本計画の策定にあたりましても、あるいは防災業務計画の作成、あるいは地域防災計画の策定実行にあたりましても、これらの点は重視して施策を進めていかなければならぬという点を明らかにいたしておるつもりであります。
  44. 小澤太郎

    小澤(太)委員 個人災害に対して政府配慮をしておるということは、今のお話でわかりました。これがこの配慮のところで明確に表現されることが望ましかったと思います。そこで、この個人災害につきまして最近特に感ぜられますことは、住宅被害に対してこれをどのようにして復興するか、それの援助をどのようにしてやるかということが問題になっております。これにつきまして、政府当局ではどのような対策をお持ちでありますか。またこの基本法に基づいて、将来どのような方針を立てて立法上の措置などをする御意図でありますか、そのような点をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 災害を受けました被災者に対する住宅対策につきまして、全般的に申し上げたいと思いますが、まず御承知のように、これは厚生省で所管しておりますが、災害救助法に基づいて応急住宅を建てる、あるいは住宅の補修の経費を支出いたしておりますが、大体罹災家屋の三割程度は、これでまかなわれておると見ております。  それから、次は建設省で所管いたしておりまする災害住宅対策でありまするが、まず被災者のうち比較的低額所得者の方々に対しましては、災害公営住宅建設いたしまして、それに入っていただくということにいたしております。これは通常の災害の場合は、滅失いたしました家屋戸数の三割までを限度といたしまして、三分の二の補助で地方公共団体建設をするということになっております。ただ御案内のように、先回の第二室戸台風のような激甚な災害が起こりました場合には、この建設戸数を滅失戸数の五割まで引き上げるということで、これは今回も特別立法を提出して御審議をいただいておるところでございます。また補助率も三分の二から四分の三に引き上げるということにいたしております。  これでかなり救われますが、その次に住宅金融公庫によりまして、罹災者の方に金を融資する。災害復興住宅建設のための資金を融資しましたり、あるいは一部いたんだかこわれた家屋の補修の資金、あるいは土地の取得なり造成の資金も、これは一部でございますが、融資することをやっております。これは補助ではございませんので、償還していただきますから、被災者の中でも償還能力のある方に、しかしまたできるだけ便宜をはからって融資をいたしておる実情ごでざいます。  そのほかに、さらに住宅金融公庫におきまして、一般の貸付ワクの中から、特別に抽せん等をいたしませんで、貸付をするということもやっております。これはもう少し財力のある方に融資をする、こういう方策を講じまして、現在までは家をなくしたり、また家屋が相当いたんだという被災者の方々の御要望には大体沿い得ているというふうに考えております。
  46. 小澤太郎

    小澤(太)委員 いろいろの対策があるようでございますが、そのようないろいろの対策を行ないましても、実際には、たとえばただいまのお話の住宅金融公庫からの融資にいたしましても、現実にはなかなか借りられない。また公庫としても、担保能力が十分でない者に貸すというわけにも参らないというようなこともございますので、何らかそれに、たとえば自治省でどうお考えになりますかわかりませんが、市町村がこれを保証するとか、何かの方法でもって被災者に貸せるように、そのような方途を講ずるというような御意図がありますかどうか。現状からさらに一歩も二歩も前進して住宅問題を解決するという手段の一つとして、このようなこともお考えかどうか伺いたいと思います。
  47. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 災害住宅対策につきましては、大筋の点では、現行制度をより適切に運用して参ればまず足りるのではないかと考えております。ただ、ただいま御指摘のように、住宅金融公庫が融資いたします場合に、市町村が保証をしたらどうかという点でございまするが、これは現実に、従来も一部市町村が保証をいたしておる例がございます。ただ全面的にこの市町村の保証を期待することは無理ではないか。あるいは国が再保証という問題が出て参りますので、この点は私どもといたしましては、国が再保証までして融資をするということは、ただいまのところは考えておりません。  ただ今後検討いたして参りたいと思いますのは、融資の場合に、償還期間が三年普通の場合より延びております。据置期間がございます。こういう問題は、もう少し検討する必要があるかと思いますけれども、しかし今までの実績から申しますると、大体四年目からは順調に償還していただいておりますので、普通の融資を受けた方々は差しつかえない。場合によりまして、特例的に個々のケースによって、さらに据え置きを認めるというようなことを考えなければならぬかと思います。  それから償還の時期等につきましても、農村地帯においては、まあ出来秋にまとめて返していただくというようなことを考えております。  それからお金を借りる場合の収入基準でございますが、現在は償還額の、大体毎月三千円程度になりますが、それの六倍ということにいたしておりますが、この辺ももう少し検討いたしまして、倍率を下げてもいいのではないかというようなことを考えて参りたい。そういう、こまかい点と申しましては恐縮でございますが、具体的な条件等につきましては、今後なお十分検討さしていただきたいと思います。  なお御参考までに、伊勢湾台風の場合の災害住宅融資等の例になりますると、被災戸数の約三割の方が住宅公庫から融資を受けまして、その融資の実績は申し込み者の九四%、ほとんど全部が実際に融資を受けておる、こういう状況でございます。三割の九四%が現実に融資を受けている。その他の被災者の方々は、公営住宅等の建設によりまして入っていただいておる、こういう実情でございます。
  48. 小澤太郎

    小澤(太)委員 償還の状態がよろしいというのは、確かによく考えて、償還のできそうな人に貸し付けておるというような事情もあろうかと思います。必ずしもそれだけではなしに、もう少し個人の災害について十分な配慮をするということが、この基本法に出ます以上はもう少し積極的な、たとえば国の再保証でもやるんだ、こういうふうな意気込みで一つやっていただきたい。そのような御要望を申し上げるのでございます。  なお、基本計画には中小企業に対する措置が書いてありますが、中小企業に対しましても、その個人的な被害に対しては、現在まことに不十分であります。金融措置などがありましても、これまた災害で商品も家もいたんでおる。従って信用の関係も必ずしもよくないというので、信用能力は落ちております。これを積極的に援助していくというような方途はどういうところにあるか。これまた個人の災害を特に配慮するという以上は、今まで以上な、今までにないことをやっていただかなければ、基本法が泣くのではないか、こう思います。
  49. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 中小企業の被災者の対策につきましても、一般の個人災害に対する対策と同様に、重要視して考えていかなければならない事項であると思うのであります。そういう意味で今御指摘になったのでありますが、防災計画の中で重点的に考えなければならぬという事柄一つとして、被災中小企業の振興に関する事項というものも特記をいたしておるのでありまして、この点は、一般の個人災害に対しまする対策等ともにらみあわせながら、現状で十分であるというわけにはとうてい参らないのでありまして、そういう面におきましても、さらに総合的な、積極的な対策推進をされることを期待をいたしておるのであります。
  50. 小澤太郎

    小澤(太)委員 中小企業関係は、関係政府委員がおいでになっておりませんから、別の機会にいたします。  さらに、現在市町村におきましては、被災者に対しまして見舞金を出しておるわけでございます。これは、それぞれの市町村で額なども適当にやっておるわけでありますが、被災者に対する見舞金ではございますけれども、被災者に復興の意欲を持たせる上においても、現実の生活の面においても、かなり助かっておるわけであります。被害者個人に対する行き渡った施策としてはこれだけだと思います。これは市町村が任意にやっておるわけでありますが、そのようなことをもう少し積極的にやれるような措置を国において考えられないか、こう考えるのでございますが、いかがでございますか。
  51. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 災害の場合に、被災者に対して、市町村によっては見舞金を出しておることは事実でございます。しかしこれは、一律にどの市町村でも出しておるというわけではございません。個々の市町村の実情に応じ、または災害の実態に応じて措置をいたしておるのが現況のようでございます。これに対しましては、特別交付税の算定をいたしまする際に、それらの特例措置というものもあわせて要素の中に入れてやる配慮は、現在もいたしておるようであります。ただ、これを一般的に見舞金をやるような道を開く、さらに積極的にこれの推進をはかっていくということになりますると、問題は災害対策一般の問題といたしまして、その一環としてやはり考えて参るのが適当ではないかという感じがいたしておるのであります。ただ単に見舞金というだけを取り上げまして、その点だけの推進をはかっていくということもいかがであろうかというふうな感じを持っております。ただ身近な市町村として、被災者にほんとうにお気の毒で、十分なことはできないけれども、何とかしてあげたいというやむにやまれぬ気持というのが、そういう見舞金という形に現われておるのでありまして、その点は国としても十分に実情を把握して、その点を考えて参らなければならぬというふうに考えるのであります。ただその場合に、見舞金としてやるのがいいのか、もっと総合的な生活保障なり立ち上がりの資金なりというようなことと関連してやっていくのが適当かというような点につきましては、各省とも寄り集まりまして、さらに総合的な立場から研究を進めて、できるだけこの基本法の精神に基づきまして結論を出すということにいたしたいと考えておる次第でございます。
  52. 小澤太郎

    小澤(太)委員 次に災害復旧につきまして若干お尋ねをいたしたいと思います。  災害復旧につきましては、今回の法案で、関連した再災害防止するための関連事業、改良復旧というようなことをやらなければならぬ、やるのだというようなことが明記してあるわけでございます。まことにけっこうなことでございますが、それにいたしましても、やはり災害復旧は、原則は原形復旧ということにいたしておるのだと思いますが、それはいかがでございますか。
  53. 安井謙

    安井国務大臣 お話の通り災害復旧そのものの原則は原形復旧でございましょうが、今度の基本法で精神としておりますところは、単に原形復旧にとどまらず、改良あるいは関連事業についても、それぞれ十分配慮をするように考えております。
  54. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それでは、原形復旧主義よりも、原則として再災害防止のための災害復旧事業をあわせて施行する、施設の新設または改良に関する事業が行なわれる、それをむしろ原則として持っていく。おそらくいかなる場合におきましても、単なる原形復旧主義でもって防災ができる、災害復旧ができると考えられるものはほとんどありません。すべてが、今までのようなこそくなやり方を重ねておるために災害、再災害ということが起きるわけでございますから、その点については、特に円滑に実施されるように十分配慮しなければならぬというような表現でありますけれども、むしろ原則としてこれらのことをやるのだというような考えで臨んでいただかなければ、私は災害復旧というものが今までのようなことを繰り返すにすぎないと思うのでございます。現実に私ども地方におりまして、災害を受けて復旧の仕事に当たりましても、今まではなかなか政府当局は、原形復旧主義を堅持されまして、どうしてもこの改良復旧だとか、あるいはこれに関連した施設の新設ということはなかなかやってもらえない。しかも原形復旧にしましても、その査定がまことに厳格でございまして、なさっているところをもう少しついでにやればいいのに、そこはやらないのだ、やられたところに限るというようなことを非常に地方の出先においておやりになるわけでございますが、この法案に書いてあるような配慮は必要でございますが、むしろその方を原則にするというふうにこれを読む、こういうふうに考えていきたいと思いますが、御所見はいかがでございますか。
  55. 安井謙

    安井国務大臣 この復旧意味のとり方によろうかと思いますが、復旧そのものが必要にして十分な場合は、これはやはり原則として復旧ということでございます。ただ御指摘のように、いま少しさらに改良的に直せばいい、あるいはこれに関連した施設をやることによって今後の災害が明らかに防げる、こういう場合には、それを十分に取り入れていく、こういう両立てと申しますか、そういう考え方であります。
  56. 小澤太郎

    小澤(太)委員 こういうふうに施設の新設または改良事業ということをはっきり出しておりますので、ただいま大臣の御説明もありましたから、それが現実となるというふうに考えていきたいと思いますが、さらに大事なことは、災害復旧を早期に完了しなければならぬと思うのでございます。ところが遺憾ながら、ここには、調査費の決定はすみやかにしなければならぬとか、適正かつすみやかにしなければならぬとありますが、災害復旧そのものをすみやかにするというようなことが書いてない。これは、おそらくそういう気持であろうと思いますけれども、書いてないのでありますが、それはどういうお気持でありますか。   〔渡海委員長代理退席、委員長着   席〕
  57. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 趣旨においては、災害復旧というものはできるだけ早くやらなければならぬということは当然のことであろうと思うのであります。ただこの基本法建前から申し上げまして、現在一般的に行なわれておりまする三年度の計画、いわゆる三・五・二でありましたか、そういう計画を直ちにここでもって変えて、当年度で全部やってしまう、あるいは二カ年度にそれを短縮してやるのだということを具体的に書きますこともいかがかというふうに考えたのであります。災害発生いたしました場合の施設復旧の問題につきましては、八条の三項、先刻御指摘のございました災害からの復興というものにあわせまして、災害発生したときはすみやかに施設復旧に努めなければならぬということを書いておりまして、この趣旨に従って漸次現在の体制自体を改めてもらうという方向に進めていくべき努力を、ここにうたっておるという趣旨であります。
  58. 小澤太郎

    小澤(太)委員 災害復旧は原形復旧主義を打破するということと、早期に復旧を完了するということが眼目だと思いますので、早期にこれをやるというようなことがただいまお話しの第八条かにありますけれども、災害復旧として特に掲げられたこの章において、やはりそういう考えであるということを明確にしていただきたいと思うのであります。  さらに別の問題に移りますが、激甚災害についての特別の立法、これは別に法律で定めると、こういうことになっております。この基本法の中で、やはり非常に大きな要点になっておりますのは、激甚災害に対する措置でありますが、政府のこれに対しまする財政上その他の面において、関連する団体その他についての特段の措置が期待されるわけでございますが、いかんながら今回は、その内容は別に法律で定めることになっておりまして、規定していないのであります。ただ、触れなければならぬという事柄はここに列記してありますが、そこで地方自治体におきましても、あるいは罹災民にいたしましても期待いたしておりますのは、逐次大きな災害が出て参ります。特に伊勢湾台風等における措置といたしまして、従来よりも相当手厚い措置が行なわれて参ったと思います。このように、従来は災害のたびごとに立法をやっておりまして、その間に厚薄があったり、対象につきましてもまちまちになっておりますが、今回はこれを一本にするというお気持であるようであります。それはけっこうなことでありますが、そのつど作るよりも一本に作って、それがどこにも適用されるということが適当だと思いますが、その一本作るものが今までよりも程度の落ちたものであって、そしてそれがどの災害にも当てはまるということであれば、これはむしろ仏作って魂を入れない逆の効果になるおそれがあるのであります。従いまして、この特別立法は、いずれ次の通常国会にはぜひとも出していただかなければなりません。出していただけるものと信じますが、その内容につきましてはどのようにお考えになっておられるか。今までのうちの最高のものをみな取り上げて、さらにそれをよりよくしょうという努力が払われるかどうか、その点を一つお聞きしたいと思うのであります。
  59. 安井謙

    安井国務大臣 お話のように、激甚災害に対する措置につきましては、どうしても恒久法を作らなければいかぬ、こういうように考えております。その標準は、大体今までに出ております特例法、これを標準にいたしまして、さらに不備な点があれば十分補っていきたい、こういうふうに考えておりますが、これは、それぞれ防災計画等にもよりまして、各省とも折衝しながらそれを進めていくことになろうかと思います。
  60. 小澤太郎

    小澤(太)委員 大へんいいお話でございましたが、実はこのような特別立法を作りますにつきましても、私どもが過去の経験からいたしまして、おそらく政府部内におきましても、関係各省の間で意見の調整をするということが非常にむずかしい問題だと思います。今まではよるべきものがない、そのつど、そのつどの陳情なり要望なりというものの度合いによって、また知事等の政治力によってきまったような形だと思いますけれども、今回はこのような基本法ができてやるということで、もとが定まったのでありますから、どうか関係各省においてはこの問題でとかくの議論をして、じんぜん日を移すということはなく、また内容につきましても、ブレーキをかけるようなことはせずに、関係各省の間がスムーズに交渉が進むように期待いたしておるわけでございます。またそうあらなければならぬと思いますが、いかがでございましょうか、大蔵省からどなたかおいでになっておるならば、大蔵御当局の御意見も伺いたいと思います。
  61. 園田直

    園田委員長 大蔵省から来ておりませんから、後刻答弁いたさせます。
  62. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それでは、その点はまた後日に譲ることにいたします。  この法案は、通常国会には御提出になる御予定でございますか。
  63. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 通常国会にぜひ間に合わせたいということで、目下努力をいたしております。
  64. 小澤太郎

    小澤(太)委員 時間がありませんので、次に進みたいと思います。  次に百一条にあります災害対策基金の問題でございますが、地方団体災害対策基金を設けるという義務が課せられたわけでございます。地方団体によりましては、なかなか財政上の余裕もないところもございます。この義務を課する以上は、その基金を設定できるような、それを助けるような措置政府の側において行なうということが期待されるわけでございますが、そういう点はいかがでございますか。
  65. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この点は、御指摘通りでございまして、百一条で災害対策基金の積み立てを地方団体に義務づけるということになりますれば、その分だけ何といっても義務的な支出がふえるわけでございます。単に何らの措置を講じないで、一片の法律を出して積み立てなければならぬというようにいたしますることは、財政計画といたしましても適当ではございません。その点につきましては、別に法律が作られるというようなことも考えられるのでありますが、それらの進行状況とにらみ合わせまして、財政的な措置についてもあわせて考慮をして参りたい所存でございます。
  66. 小澤太郎

    小澤(太)委員 これとは違いますが、災害救助基金、これは災害救助法によって設けることになっておりますが、現在の積み立ての状況はどうでしょう、十分に積み立てが行なわれておりますかどうか、これは厚生省の方から伺いたい。
  67. 宍戸基男

    ○宍戸説明員 ただいまの積み立ての状況は、総額にいたしまして約九億でございまして、災害発生しましてその方面に資金を充当した府県を除きましては、所定額におおむね達しておる府県が大部分でございます。
  68. 小澤太郎

    小澤(太)委員 この災害対策基金につきましては、ぜひとも国の措置をお願いいたしたいと思います。  それからちょっと話がまた飛びますが、この法案によりまして、災害に対するいろいろな組織中央地方にできておりますが、すでにありまする法律、たとえば水防法によって水防協議会ができておる、あるいは災害救助法によりまして災害救助対策協議会というのができております。こういうすでにできておりまする大体似たような組織は、基本法によってできまする組織に大体吸収されるものだと思いますが、そういう方針でありますか、あるいは別個にやはり従来と同じように計画してやっていくものであるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  69. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 災害対策基本法におきましては、広範にわたって組織の整備を行なっておるのでありますが、この際に各省庁の機構にまで直ちに影響を及ぼすというようなことは、なるべく避けるという方向で組み立てができておるのであります。ただ機構組織等の面で、本基本法案で設定をしようとしておりまするような防災会議といったようなものと、既存の機構等との間に明白に重複が生ずるもの、二重に重なるといったようなおそれのあるものにつきましては、これをできる限り統合し、簡素化するという方向が正しいのではないかというふうに考えておるのであります。それらの点につきましては、基本法案の制定に伴いまして、関係法律の整理法というものを考えて参らなければなりません。各省におきましても、基本法の精神にのっとって、それらの法案についてどのような手直しをするかということは、目下検討を続けてもらっておる次第でございまして、先刻申し上げました激甚災害特例等とあわせて、できるだけすみやかに成案を得た上で、通常国会には提案の運びに持って参りたい、かように考えておる次第でございまして、機構をなるべく簡素化してむだな重複を避けるということが、指揮系統を明確ならしめる上でも必要でありますので、それらの点について十分の措置を講ずる方向において、関係各省とも十分に連絡をとって結論を得たいと考えておる次第であります。
  70. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それでは最後に一つだけお尋ねいたします。  本会議におきまして、前田議員の質問に対しまして、国務大臣から答弁がございました。災害緊急事態に際しての政令、これが憲法との関係はどうなるが、憲法違反のおそれはないかということに対しましての御答弁があったわけでございます。その点で私どもよくわかったのでございますが、大事なことでございますので、この間の見解を自治大臣から御答弁をお願いいたしたいと思います。
  71. 安井謙

    安井国務大臣 この緊急災害に際しまして、緊急事態の告示をやるという条章が今度の基本法に添えられたことは、今御指摘通りでございます。この緊急災害と申しますのは、たとえて申しますれば、かつての関東大震災といったような程度の超非常時の災害をさすわけでございます。こういう場合にとり得る国の施策をきめたわけでございまして、これを必要の最小限度において政令にゆだねる、これは国会を召集するひまがなかった場合における措置でございますが、(「戒厳令だ」と呼ぶ者あり)これは早急に国会を召集いたしまして承認を得る、さらに国会で承認が得られない、あるいは国会召集中においても、必要がなかったものにつきましては、順次廃止をしていくということで、常に国会の召集が間に合わなかった場合の、それも特別の措置におけるだけの緊急措置でございますので、今横から出ましたような戒厳令であるとか、そういったような思想的なものを持ったものでない、最低の必要措置を規定したものでございます。
  72. 小澤太郎

    小澤(太)委員 私も、憲法との関係につきましては、これが戦前にありました旧憲法下の緊急勅令のごときものとは全然性格を異にしておりまして、憲法違反ということはない、かように考えるのでございますが、この見解につきましては、政府におかれましても、大事なことでありますので、常にはっきりした見解でもってお臨みいただきたいと思います。  そこで最後でございますが、先ほどからいろいろお尋ね申し上げておりましたその御回答によりまして、最初に私が疑っておりましたような、この法案は肝心の柱が抜けておる、魂がないというような印象は薄れて、参ったわけでございます。まことに私としても欣快に存ずるわけでございますが、それにいたしましても、何となくまだ歯切れが悪い。結局法案条文をしさいに読んで参りますならば、その底にあふれる御答弁のような積極性というものが、なかなか見出しがたいのであります。そういう面につきましては、今後この審議の過程におきましても、政府当局の意図が法案の中に十分に現われるように、私どもも協力をしていきたい、こう考えるのでございます。  長い時間質問いたしましたが、これで質問を終わります。
  73. 園田直

    園田委員長 本日の災害対策基本法案に関する質疑は、この程度にとどめます。      ————◇—————
  74. 園田直

    園田委員長 これより警察に関する件について調査を進めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。大原亨君。
  75. 大原亨

    大原委員 昨日以来、わが党の赤松委員や阪上委員の方から、公安条例に関連いたしまして、いろいろと質問があったのであります。私はこの七月二十八日の広島県における公安条例による全日自労の吉田委員長逮捕事件、こういう具体的な問題を中心といたしまして、具体的な問題から一般的な公安条例の本質論まで含めまして、一つ御質問をいたしたいと思います。  これは一労組の問題だけでなしに、非常に労働運動との関連において重大な具体的な事例でありますので、そういうおつもりで一つ明快に御答弁いただきたいと思うのであります。質問も簡潔にいたしますから、御答弁の方も簡明にやっていただきたい。そういう点を昨日の質問を聞いておりまして感じたのでありますが、いろいろな説明の仕方をするのでなしに、一つ簡明な答弁をしていただきたい。昼も過ぎて時間も迫っておりますので、そういう点で特にそのことを要望いたします。  質問の本論に入ります前に、私は根本的な問題、前提となるべき問題が二、三ございますので、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。公安条例の論議を通じまして、いろいろ問題となるのは、基本的な人権、特に労働運動との関連であります。しかしながら私は、各府県の府県会において議決する公安条例ではあっても、その発案は県の公安委員会でやるわけであります。それに対しましては、中央警察庁、公安委員会の方はいろいろな指導や助言をすると思うのでありますが、その問題については、昨日議論がありましたから、ここではむし返しません。しかしながら、そこで公安条例の原案を作りまして、そして県会の議決を得て公安条例を適用する場合に、とかく独断的な解釈に陥りまして、非常に権力の乱用という場面が出てくるのではないか、そこには自治体の立法権の限界と憲法問題が出てくると思うのであります。  質問に入る前提といたしまして、私は二、三どういう御認識を持っておられるかという点の御質問をしたいと思うのですが、その第一点は、自由労組の問題というのは、これは非常に各方面から現在問題になっている社会問題であります。これは市町村長からも、あるいは与党からも、あるいは政府の中においても、むろん社会党は別の角度からこの問題を議論いたしておるのであります。しかしながら、たとえば先般ありました釜ケ崎の事件、山谷の問題、そういうふうな問題とは、これは社会問題といたしましては、本質的に似通うておるものでありますけれども、この治安とかあるいは行政秩序という方面から考えてみますと、根本的に違った問題があるのであります。私はこれから逐次具体的な問題について質問をいたして参りますけれども、警察庁の幹部諸君は、全日自労という組織はあるけれども、日雇い失対労働者の事業、そういう社会問題としてのこの問題の実態、こういう点についてどういう御理解をしておられるかということを私が一問一答の形で御質問申し上げますから、わからぬ点はわからぬというふうに明快に答えてもらえばよろしい。  そこで、私の質問に対してお答えいただきたい。これは結論と関係があるのでちょっと申し上げるのですが、自由労働者の日々雇用をやっておる人々の賃金が一カ月は大体どのくらいだ、収入がどのぐらいあるか、こういう問題についてどういう御理解をしておられますか。
  76. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 ところによって額もあるいは違うようですが、ほぼ六千円ないし八千円見当かと思っております。
  77. 大原亨

    大原委員 家族はどのくらい養っておりますか。
  78. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 具体的に調査をいたしましたわけでございませんが、年配の方も相当多うございますので、家族は二人ないし四人くらい養っていられるもの、これは推量でございますが申し上げます。
  79. 大原亨

    大原委員 平均は扶養家族が三・六人です。三・四人という資料もありますが、そのくらいです。そういたしますと、五人も六人も養っている人があるのです。適格基準というのがありまして、主たる関係者が一人しか働けないわけであります。月収については大体そういうことであります。あなたの方の答弁は少し違っておりましたけれども、これはこのことが本質論でありませんから私の方で訂正しておきます。  日雇い労働者の雇用関係は一体どうなっておるかということを御承知ですか。
  80. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 どうなっておるかというお尋ねがちょっと理解しかねますけれども、市町村あるいは県だけの職場もあるようでありますが、そういう職場が県下に幾つかありまして、つまり事業主体といたしましては府県なり市町村が事業主体として雇用している状況であります。
  81. 大原亨

    大原委員 だんだん本論に入って参りますが、日雇い労働者の身分は法律上どういうふうな身分ですか。
  82. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 地方公務員法によります第三条三項六号に該当いたします特別職と心得ます。
  83. 大原亨

    大原委員 今の答弁はその通りであります。特別地方公務員であります。そして雇用者はお話の通り知事あるいは市町村長であります。これは憲法二十五条、最低保障の問題、そういう規定に基づいて国が社会保障制度の一環として失対事業を起こしてやっておるのであります。このことはあとに問題が関係いたしますから、質問をここでちょっと方向を変えて参ります。  先ほど申し上げたように、七月二十八日に公安条例をめぐりまして問題が起きたわけでございますけれども、第一番に御質問申し上げたい点は、広島県の公安条例第一条の、道路、公園、広場その他の屋外の公共の場所において行なわれる集団示威運動、行進、集会が公共の安全と秩序に対し直接危険を及ぼすことなく行なわれるために云々、こう書いてありますが、その公共の場所という法律上の意味はどういうふうに御理解になっておりますか。
  84. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 一般公衆が自由に出入もしくは利用できる場所であるというふうに考えます。
  85. 大原亨

    大原委員 道路とか公園、広場その他屋外の公共の場においては公共という目的があるわけであります。場所の概念の中には公共という概念があるわけであります。その公共という概念の中には、たとえば労働者その他組織的な集団行動が自由にできる、こういう内容を含んでいる、こう私は考えますけれども、この点についてあなたの方の御見解を聞かしていただきたい。
  86. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その自由にという言葉が、公安条例の適用なしに、許可、届け出なしにという意味でおっしゃるのでありますならば同意いたしかねるのでありますが、そこを利用して集会等が行なわれることもあろうかと思います。
  87. 大原亨

    大原委員 これは公共の福祉と一般的な人権に関する問題であります。きのうも議論になったものであります。私が言っておるのは、公共の場所、今私はその修飾語につけて申し述べましたが、こういう公共の場というのは、あなた御説明になりましたけれども、これは基本的な人権との関係においては、そういういろいろな規制ということを全然無視するわけではありませんが、やはり自由に権利として集団的組織的な行動をとることができる、こういうふうな内容を含んでおるのではないか、こう私は質問したわけであります。
  88. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 所要の手続を経た後に自由に使える場所であろうかと思います。
  89. 大原亨

    大原委員 きのうの御質問で私一つ確認しておきたい点があるのですが、会社、工場等の前の広場におきまして、その工場の労働者が集会を持つということは、公安条例の届け出の対象になりますか。
  90. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 結論としては、一般的にお答えいたしますならば、ならないと思います。
  91. 大原亨

    大原委員 これは当然だ。そういう民間の工場などの前の広場におきまして、他の労働者がその労働者と合流していく場合には、一緒に集会を持つ場合には、これは公安条例の対象になりませんね。
  92. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その場所が公共の場所でないという意味で私は先ほどお答えしたのでございますから、公共の場所における集会を規制する対象にはならない。同様でございます。
  93. 大原亨

    大原委員 この工場の前の広場に、その工場の労働者と関係のない労働者、一般市民が集会を持つということは、これは許されますかどうですか。
  94. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 それは御指摘のような環境でございますれば、もっぱら工場管理権と申しますか、所有権に基づく措置が前提となるわけであります。随意にだれでも許しておるという状態でありますればもちろん行なわれることと思います。
  95. 大原亨

    大原委員 私が具体的に取り上げている問題は、七月二十八日に全日自労の広島県委員長の吉田治平君が公安条例違反に問われて逮捕された、こういう事件があるわけでありまするが、この公安条例のどの条項に違反する行為なのですか。
  96. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 第四条に「道路、公園、広場その他屋外の公共の場所において集団示威運動、集団行進又は集会を行なおうとするときは、その主催者(団体が主催しようとする場合にあっては、当該主催しようとする集団運動を総括して主宰する者とする。以下同じ。)は、あらかじめ、公安委員会の許可を受けなければならない。ただし、集団運動が、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。」という規定がございます。そういう意味で、公共の場所において許可を受けることなくして集団示威運動を行なったということで検挙されたものと聞いております。
  97. 大原亨

    大原委員 県庁の前庭は公共の広場である、こういう理由一つはっきり御説明願いたい。
  98. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは毎々一がいに申せないというお答えをいたしておるわけでございますが、広島県の県庁前の広場と申しますのは、私より委員さんの方かよく御存じと思いますが、生けがきによって区画をされておりまするけれども、各入口が十ほどございまして、その間はきわめて広い。しかも門扉等がございません。随意に入ることができるようになっている。これはほかにも例があることと思います。ところがそこは諸車または人が通り抜けをする、つまり県庁に入る人でないものが自由に通り抜けをするということで、車も人も使っておる。あるいは市内観光や、野球見物など自動車駐車場などにして盛んに利用されている。あるいは樹木、芝生などもありまして、市民のいこいの場所として公園的な性格も持っておって、相当広いようでございまして、私どもは現場を知りませんけれども、図面などを見ますと、芝生などか相当広うございまして、申し上げましたように一般の市民がそこを公園のように使う。逆に申しますと、県庁に入るという者だけがそこを通るという意味ではなくて、自由に使わせておるという状態だというふうに聞いておるのであります。
  99. 大原亨

    大原委員 自由に使わせておるという場所であるというふうに聞いておる、その通りですね。それからもう一つ通り抜けが自由にできる場所である、こういうことも入っておりましたが、その通りですね。一つもう一回答弁して下さい。
  100. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは広島県庁側の何かそういう御説明を承ったということを県警察から私は聞いておるだけでございます。その限りでございますが、おっしゃる通りでございます。
  101. 大原亨

    大原委員 それではちょっと方向を変えまして、この七月二十八日の第四条に違反をするといわれる行為のどこに、公共の安全と秩序に対して直接危険を及ぼすおそれがある、こういうふうに認められるような、そういう事態があったのですか。
  102. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お尋ねでございますが、公安条例の目的として、直接そういう危険が及ぶかどうかというものについて——許可をしなければならないという公安条例の目的として掲げた点をお読み上げになったと思うのでございます。そこで集団示威運動というものが公共の場所で行なわれるということになりますと、繰り返して申しますように、一般市民もそこを利用しておるわけでございますので、そういう意味では個々の集団示威運動、いろいろな態様があると思いますけれども、集団示威運動ということになれば許可を受けてやるということになっておるわけでございまして、個々の集団示威運動の態様いかんというのは結果から生ずるわけでございますが、許可を受けるのは集団示威運動である限りは受けろということになっておるものと思います。
  103. 大原亨

    大原委員 これから本論ですが、二つに分けて答弁を願いたいと思うのです。知事の管理権の問題と警察権の問題、それから労働運動と警察権の問題、この二つに分けて、これから本論の質問に入ります。  県庁前の構内は、今日まで慣例上もあるいは県庁の規則から見ましても、道路、公園、広場などと同じような公共の場所とは判断をされていないのです。あとで具体的に質問いたしますが、県で公安条例を作ってから、突然一方的に公安条例違反という問題が起きたから大きな社会問題となったのであります。広島県の県庁舎取締規則のあることを知っておられますか。
  104. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 管理規則があることは承知いたしております。ただ外と内との適用が事実上だいぶ違っておるというようなことを聞いております。
  105. 大原亨

    大原委員 それは私の質問を認められたと思うのです。それに異議があれば一つ説明してもらいたい。頭をうなずいておられるから、その通りに思います。  その広島県庁舎取締規則によりますと、構内とは庁内及び敷地をいう、第四条には、特定の目的を達成する手段としての集団示威行為は禁止する、こういう規定があるのです。いいですね、私の言っておるのは間違いないですか。もう一回言いますと、構内とは庁内及び敷地をいう、その門の中を全部構内という、建物と庁内とそれから敷地をいう、取締規則の第四条には、特定の目的を達成する手段としての集団示威行為は禁止するとあるのです。管理者、県知事が禁止しておるのです。従来から県知事は構内は公共の場ではないといっておったのです。だから規則をもって包括的、全面的に禁止をいたしておった。従って、一般市民が慣例上いろいろ利用しておることはあるけれども、県庁の自動車や来客や陳情者やその他の、県庁に付随した建物といったような場所として管理しておったのです。だから県知事が包括的に管理いたしまして、その明文の中に、集団示威行為は禁止するということがあるのです。そういう点について、私が申し上げた事実についてあなたの認識と違っておる点があれば、これについて意見を言って下さい。
  106. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 手元に管理規則がありませんので、私としてはその規則があることを承知いたしておりまするが、内容に、ただいま御指摘のような、お読み上げになったような内容がそこにあるということは、私は確かめておりません。
  107. 大原亨

    大原委員 それはあるのです。でなければ問題にならぬわけです。それで、公安条例が憲法に違反するということとは私は一応これは別な議論をいたします。公安条例はすべての集会、団体行動を許可することが前提なんです。それでなかったら、これは憲法違反だし、法律違反です。公共の広場の論争にまた返って参りますけれども、それは前提なんです。許可することが前提になっておる。許可制の場合には、第十一条にも書いてある、県議会に報告しなければならないと。そうすることになると、知事は包括的に取締規則で禁止をいたしておりますけれども、公安条例の公共の場という規定をあなたの方が一方的にここに設定いたしましてやるということは、知事の管理権と矛盾を来たすのではないか、この点について……。
  108. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 御指摘のようでありますれば、その限りでは両立しないわけでございますけれども、ただ公安委員会が、許可をいたしますのは、そういう集団行進、集団示威運動が行なわれることが公共の秩序維持のために支障がないという意味において許可するのでございます。集団示威運動をする地域の全部または一部が他の管理権または所有権に属しておりまして、その管理者や所有者の許しがなければ使えないという状態があります場合は、その限りで公安委員会が許してもできないという事態が起こると思います。ただいま御指摘の庁舎管理規則というものにそういう明文があり、しかもそれは庁内のみならず、前庭についてもそれが適用されるんだという前提に立ってやりますと、これは許可しても、知事の方がその場所をそういうことに使うことを許可しないという管理権に基づく禁止が出れば実際はできない。そこで公安委員会が許可するというのは、管理権に基づく使用権まで一緒に認めるという趣旨ではございません。
  109. 大原亨

    大原委員 あなたの答弁はおかしいです。どこがおかしいかといえば、公安条例の公共の場というのは、実際上集会はできないというふうにきまっておる場所でも、あなたの方は集会をさせてもいいんだという、そういう一方的な公共の場の規定の仕方ができるような結果になるじゃないですか。知事の管理権と矛盾を来たすじゃないかというのは、たとえば知事の管理権の発動があって、退去命令が出る、そうすると警察権を発動する、こういうことは不退去罪との関係において常識上、慣例上やられておるのです。そういう場所に対して包括的に禁止をしておるのです。禁止をしておる場所に対してやぶから棒に——そこの集会の善悪、法律上の問題はあとで議論するけれども、やぶから棒に公安条例を、自分が原案を作ったんだから、自分が一番よく公安条例を知っておるのだからというので、独断的な一方的な判断をもって、適用して責任者を逮捕するということは、管理権との間において重大な矛盾やそごを来たしておる。管理権の中には、あとで申し上げる労使関係の問題もある。そういう関係においてそごを来たしておるのじゃないですか。そういうことは今まで慣例上何もなかったのですよ。法規上も、県知事は公共の広場ではないから集会を許さないといっておったのですよ。そういうところまで、あなたの方は管理者の意図とは関係なしに、公安条例違反をもって責任者を逮捕するというようなことはあり得るのですか。そこはおかしいでしょう。あなたは、私が言ったことに対しておかしくなければ反論してごらんなさい。
  110. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私どもは直接事件を判断してやったということではない。現地の警察の判断でございますが、私どもここで考えますのに、県庁前の前庭がそういうものができないという管理規則があり、そこでそういうことを行なえば管理権に基づいて退去命令が出るという状態において、公共の場所というふうに判断したのではないのではないか、つまり管理規則はお話し通りでございますけれども、先ほど申しましたように、現実には随意に使われ、一般の公衆も使っておる場所という意味において公共の場所であるという判断をし、その判断をすることについては同じところにおるわけでございますから、県庁側とも十分意思を通じたことであろうと私は考えるわけでございます。
  111. 大原亨

    大原委員 私は意思を通じたであろうということについて実情を言っているのではない。知事が管理権に基づいて管理している場所は、今まで慣例上も実際上も知事の退去命令がなければ警察権の発動はしていない。しかし、警察がいつも出ていけないということを言っているのではない。たとえば暴行とか傷害とかいう刑事犯があれば警察権を発動するでしょう。これはこの議論とは別なんです。これは第二義的な問題です。私が言っているのは、包括的に禁止している場所を、無届け集会、無許可集会として、許可を前提とする公安条例の第四条を基礎にして処罰するということはおかしいのじゃないか、こういうことを言っている。純粋の法理論をここでやっているんだから、あなたは法律的な議論で答弁して下さい。あなたのは答弁にならない。わからなければわからないでいい。
  112. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 重ねてのお言葉でございますけれども、管理権がそこで強く行なわれておるというのが現状でありますならば、公共の場所というふうに扱われなかったであろうと思うのでございます。いかにいたしましても、そういうことで今裁判に現実になるわけでございますから、そこでの御判断に待つ以外、ここで私がどう述べましても、現実に事件としては進行するわけでございます。ただ私が考えますのは、先ほど来繰り返して申しますように、管理規則というもの、これは他の公園の場合でもみな管理規則があるわけでありまして、管理規則があることが公共の場所ということと矛盾するということはないのでございますけれども、お話しのように、そこでは特定の意味を持った集会はやらせないという現実の規則があり、それが励行されているという状態においては、同じことをそこでやるという意味で、公共の場所ということに扱われたのはいささか私もわかりませんので、それ以上お答えはできないと思います。
  113. 大原亨

    大原委員 公共の場所というのは、たとえば公園でありましたら、許可を得たら使用できるのです。公安条例の公共の場というのは本来そういうことなんです。道路とか公園とか広場というように規定しているのはそういうことなんです。あなたは不特定多数云々ということをきのうから説明しておられるけれども、その説明は別に論争いたしますが、公共の場というのは、私が先ほどから言っているように、通行もできるし、自由に出入りもできる、これが原則です。集団的な行動も、自主的にやるか、あるいは法律上許可とかいうことをやるかは別にして、一定の秩序の中でできる。管理者の許可を得たらできる建前になっておるところに対して、これを公共の場として公安条例の適用があるのです。これは例をあげている通りなんです。道路とか公園とか広場とか、その他屋外における公共の場というように書いてある。はっきりしている。県庁の前は包括的に、県民の陳情の自動車が来たり、県庁の自動車が来たり、あるいは出入りする人その他のことがあるから、芝生もあることであるし、いわゆる公安条例でいう集会ができるという前提における公共の場ではない。管理規則第四条で建物と一体のものとして集団示威行動等については禁止している。私はうそを言っていません。このことについてははっきり言っている。  そうだといたしますと、今度は価値評価なんだが、私が言っておることを事実とすると、こういう場所において、公安条例をもって、管理者との関係なしに一挙に逮捕したり処罰することは公安条例の乱用である、警察官の職権乱用である。一方においては管理権の侵害である。そういうふうに解釈してもよろしいか、してもよろしいじゃない、そうすべきである。こう私は思うのでありますが、この点はやや事務当局の限界を越えた問題でありますから、自治大臣の方から簡潔な御答弁をしていただきたい。
  114. 安井謙

    安井国務大臣 ただいまの県庁前の広場が、今おっしゃるように完全に公共の場所と目されないかどうかという点について、現実を私どもはっきりと把握をいたしておりません。ただ、われわれが伺っているところは、実際上公共の場所と同じような扱いをされておったのであるから、従って公安条例にいう公共の場所と同じような意味での扱いがされたものじゃなかろうか、こういうふうに思っております。しかし、この間の事情につきましては、さらによく事情を調査して御返答したいと思います。
  115. 大原亨

    大原委員 私が言うのは、現実に県庁の構内の取締規則があるのですよ。その第四条の中には、構内とは建物と庁内と敷地をいうというようになっているのです。その中においては、包括的にそういう行為を禁止している。その善悪については問題、あるいはどの場合に許されるかということについては問題、これはあとに残しておくけれども、そういうふうに規定があるのです。包括的に禁止しておる。そういうふうに管理権で知事が明記しておる場所において、やぶから棒に、第一次的に犯罪が起きたという場合は別ですよ。いわゆる直接現行犯があったという場合は別です。それは私も法律を知っているから別だ。包括的に禁止しておるところに対して、公共の場というふうに規定をして、無届けデモであるということで、公安条例の罰則を適用しているというふうなことは、行き過ぎも行き過ぎ、これは間違いじゃないか、職権乱用じゃないか。大臣としてはこの私の言っていることに対して答弁していただきたい。
  116. 安井謙

    安井国務大臣 くどいようでありますが、私は、その場所が確かに管理権が形式上あったといたしましても、あるいは公共の場所と同じように扱われておるというような場合に、そういう扱いのもとに取り扱いをされておるのじゃなかろうかというように思うのでございますが、この点はもう少し事情を調べませんと、今、大原さんのお話し通り解釈していいかどうかという点には若干疑問がございます。それから、事件そのものが、今言われますように明らかに条理をはずれた職権乱用のものであれば、私は検察庁が起訴するというようなこともなかろうと思うのでありますが、実際上は起訴されておるというような状況もありますので、その間の、これが職権乱用であったと思うであろう、そうだという返事をしろと言われましても、私にはちょっと今いたしかねるわけであります。
  117. 大原亨

    大原委員 それは、私はこの論争をするとたくさん言い分があるのです。検察庁は、私もいろいろ聞いているけれども、うんと時間が離れちゃって、いつ起訴しているかということはあとで聞くけれども、うんと時間が離れちゃって、ずいぶんこれは疑義があるのです。だれがこういう問題を、公安条例の罰則を発動するように策動をしたかという事実もあるのです。そうすると検察官の主体性の問題になるから、それを全部ここでばらしてしまうと、いろいろまた国会において法律論以外の問題で論議することになるから、私は言わない。あなたがそういうことを言うのだったら、検察官は本部長やその他の立場上泣きつかれて起訴されてきておる。この前だってそういう事件があったのですよ。調べてみたらわかりますよ。選挙違反ということで数十人を逮捕した。そうしたところが、文書図画の違反で、裁判で六千円の罰金ということになった。略式命令の普通の二万円、三万円の罰金よりもわずかな文書図画の違反ということで、数十名を逮捕して調査したという事例がある。私はそういう問題について裏のことをいろいろ論議すればたくさん問題があるけれども、そういう法律というものは、そういう感情とか社会問題とか、そういうものを正確に把握して、感情とかそういう問題を頭に置いておいて——先入主的な圧力その他において公安条例が乱用される、公安条例という形は自分が作ったということにおいて乱用される、そういうおそれを持っておるところに、これは結果的に憲法問題にも関係してくるのです。あぶないそういう公安条例を作っているということになる。だからそのことを申し上げておるのであって、私はそのことの議論をしますと、これは長い時間かかるだけでなしに、皆さん方に相当聞き苦しい点もあろうと思うから言わないが、そういうことになると、大臣が言われることの言葉じりをとらえるわけではないけれども、とにかく法律でも条例でもぱかっと権力を発動しておいて、あとは裁判に行け、やはりそういうような議論になります。私は少なくとも警察権力を発動する際には、関係者が筋を立てて、客観的に納得できる、そういう冷静な発動の仕方をしなければいかぬと思う。検察庁が起訴をしておるからといって、裁判も何もありはせぬけれども、起訴をされておるからというだけで、これは疑いが十分にあるという議論をここに持ってくるのはいけない。  私は、これから一般的な問題にします。たとえば鉄道管理局、郵政省その他の方面で前に庭があるとする。それはさくがあっても、陳情者その他は自由に出入りができるのです。労働者はその前において集団行動をとっておるのです。公安条例が適用になっていない。道路に出た場合には道路交通法でひっかかる。それは一般の労働運動なんかにおける常識なんですよ。しかも知事が包括的に禁止しておることははっきりしておるのです。慣例上もそうだった。事実上もそうだった。それを出し抜けに広島県に三月に公安条例ができるやいなや、こういう公安条例の罰則をやぶから棒に適用する問題が起きたから社会問題になった。だから、そういう問題の中において、私は法律論として、包括的に知事が管理者といたしまして規則を制定して、知事が警察権の発動の要求をしたならば別だ。退去命令を出したのなら別だ。出してもいないのに、やぶから棒に公安条例違反であるといって逮捕するというようなことは、これは一体公安条例の趣旨なのか、どうなのか。
  118. 安井謙

    安井国務大臣 私が起訴されておるというのは、これは事実を申し上げたのでありまして、起訴されておるから必ず有罪だとかなんとか言っておるわけではない。ただ大原委員のお話は、管理権の及んでおる地域であるから公安条例を適用されるべきものじゃない。それをあえて適用したのは、警官の職権乱用でないか、こういう御質問でございますので、一応そういう議論も立つかと思いますが、おそらくその実況については、その場所は実際上公共の広場と同じような意味で、公安条例が目的としております公共の福祉あるいは安全を守るという趣旨からは、どうしてもそういう扱いが必要であったというような状況から、この発動があったのじゃなかろうか。その結果としましては、事実上の問題として起訴されておる。でありますから、そういうような起訴もされぬで、逆に非常に乱用だというような問題が起こっておる場合なら別でありますが、一応事件は事件として進行しておる状態でありまするから、ここで直ちにこれを警官の職権乱用だというふうに私に認定をしろと言われましても、これはちょっとするわけにいかない。しかし、その事情につきましては、さらに必要に応じては十分な調査はいたしたい、こう申しておるわけであります。
  119. 大原亨

    大原委員 それで、こういう公安条例の解釈や適用の仕方というものは、この第二条にも書いてある。倫理規定、訓示規定だけれども、第二条には、議会を通すための方便かもしれない、うそも方便という言葉があるからそうかもしれぬが、「この条例は、前条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」第二項として「この条例による権限は、前条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行使すべきであって、いやしくも権限を逸脱して個人の基本的人権若しくは団体の正当な活動を制限し、又は団体の正当な活動に介入するようなことがあってはならない。」こういうように書いてある。これは当然だと思うのです。思うのだけれども、今までの慣例と規則を無視して、しかもその実態について周知徹底させるということもしないでおいて、やぶから棒に公共の広場というふうに一方的に規定をすることはいけないのじゃないか。私は十分大臣の方からそういう事件の問題——このことと事件は別です。事件は裁判にかかっておるから別だけれども、こういう条例の解釈や適用の仕方というものは、これは行き過ぎどころではない、こういうことがあってはならぬのじゃないか。それでは法の秩序というものがなくなってしまう。鉄道管理局の中なら中で集団行動が起きておる、団体交渉の前提として集会を持たれておる。そういう場合にも一方的に、ああいう状態だからけしからぬ、こういうことをだれかが言えば、警察権が出て行って、公安条例違反だということで屋外集会を全部規制してしまうということになるんだ。そういうことになると、私は警備局長に質問いたしましたが、たとえば民間の工場や会社の前庭において労働者が集会を持っても、それは公安条例の適用にならぬということと矛盾するじゃないか。管理権と矛盾するじゃないか。管理権は管理権でぴしっとしておって、まさか建物の中において、わざわざ公安条例その他の規則をもってやぶから棒に権力の発動はないだろう。しかしながら、建物と一体の関係にある前庭において、こういう管理の規則があって、慣例上のそういうものがあって、だれもそういうふうに認識しておるところに、公安条例違反であるということで一方的なことをやると、ますます社会問題が混淆して秩序が乱れるんです。権力の乱用というのはそういうことになる。だから、そういう点については慎重の上にも慎重を期してもらいたいと思うんです。これは事情を言えばまだいろいろあるけれども、この点について大臣の公安条例に対する政治的な見解を御答弁願いたい。
  120. 安井謙

    安井国務大臣 お話し通り、公安条例を適用いたします場合に、できるだけこれは必要最小限度のものでなければならない。この点につきましては御説の通りであろうと存じます。ただ、この管理権があったらそういうようなものが絶対に行使できないかどうか。これは一つの例でございますが、たとえば駅前の広場といったような問題を見まして、これは駅長に管理権はあるが、公衆の安全というものを考えた場合に、やはりそういった法令の適用がある場合もあろうと思うのでありまして、県庁前の広場といったようなものがはたしてそのままそれに当てはまるかどうかの具体的な点につきましては、さらに調査をしてみなければ私は断言はできませんが、あるいはそういうような場合にあって、公共の安全のためにやむを得ずそういうものを適用しておるのではないかというように私ども思われるのでございまして、その詳細につきましてはさらに十分調査をいたしたいと思っております。
  121. 大原亨

    大原委員 それで、駅の構内とかそういうふうな場合は人通りがたくさんある。そういう場合に、たまりがあれば別ですけれども、そこで集会を直ちに持つということは、これは常識上ないでしょう。しかしその構内については駅長が管理権を持っているんです。その責任分野は明確にしておかないと、秩序が立たないんです。受ける側の労働者とか市民という立場に立ってみたら、どう法律が適用されるかわからぬというふうなことはないんです。あなたみたいなそういうふうなことはないんです。そういう考えを持ってはいけないんです。私は、そういうことを否定される大臣言葉だと思うけれども、法律についてそういうことがあってはいけないのですよ。  そこで私はもう一つ、公共の広場という問題についての場という問題を一つ取り上げるけれども、公共の場というのは、公共の用に供することを目的とした場所なんです。道路とかあるいは公園とか広場とか、その他屋外の集会はそうなんです。そういう学説、そういう解釈が正しいんです。そういう解釈をとった記録があるんです。公共の用に供する場所なんですよ。単に不特定多数が出入りをしているという事実じゃないんです。その中では、公共の福祉と基本的人権との関係はあるけれども、自主的に規律をするかあるいは国家権力によって規制するかは、いろいろな法律、条例でいっておるところの問題があるけれども、法律論としてはこれは成り立ち得るんです。だから、そういう場合には、そういう秩序の中において集会を持ち、集団行動を持つ自由を保障するという、公共の目的の中には中身があるのです。それを公共の場ということを乱用して、そして一方的にやぶから棒に罰則を適用しているというところに、そういう可能性を持っておるところに、この公安条例の問題がある。公共の場所ということについての私の解釈について、あなたの方で違った議論があれば、局長でもよろしいから答弁をしてもらいたい。
  122. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 一般論として、御指摘通りであることは先ほど来お答えいたしておる通りでございますが、しかし公園の管理権で、ある特定のことを禁止することは間々あることでございまして、思いつくまま変な例を申し上げるわけですが、犬を連れて入ってはならないという規則のある公園で、そこを通って犬を連れた愛犬家の集団行進が行なわれるというような場合に、これは公安条例としては許すということがあり得ましても、その公園は通れないということはあり得るだろうと思います。
  123. 大原亨

    大原委員 犬が通ってはいけないという公園がありますか。
  124. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 いや、そういうところがあろうかと思います。
  125. 大原亨

    大原委員 あるかないか言って下さい。そんな非常識な例を引いて私の議論の反駁をするなんてない。
  126. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 それでは、自動車が入っては困るという公園もあろうかと思います。自動車を用いた集団行進をした場合に、その公園内を通れないということはあり得ると思います。ですから、一般論として、いろいろなことが自由にできる場所は公共の場所ではあるけれども、その管理規則で特定の行為が禁止されたものであるということをもって直ちに公共の場所でないということは言えないかと思います。
  127. 大原亨

    大原委員 あなたの答弁はへ理屈ですよ。俗にいうへ理屈というのはそういうことを言うのです。私が言っているのは、公園とかその他道路とか、公共の場というのは、一般大衆、不特定な人々が自由に使用している場所です。その中において集団行動をとる場合には、許すことが原則です。そのことを周知させたり、あるいはそういうことを自分でやるか他がやるか別にいたしまして、そういうことでやるということは、これは許されるのです。もちろん芝生が全部敷き詰めてあって、芝生の温存上必要であるということでいろいろな制約はある。しかし、そういうことはあくまでも許すということが原則なんです。だから、公共の場ということになっている。ここは包括的に、集団示威運動をなしてはいけないということを管理権者が規定している。今までの慣例も事実もそうだったのです。そこが私は問題であって、あなたの答弁していることは的はずれです。  それからもう一つ、方向を変えまして御質問いたしますが、第二の問題ですけれども、最初にこの問題の前提といたしまして御質問を申し上げましたが、日雇い労働者の身分関係については、知事やあるいは市町村長を相手にする特別地方公務員であって、雇用関係がある。日々雇用であるけれども、日々の雇用の関係においては、特別公務員の身分を持っている。そういうことになりますと、政府とは違った意味において、県知事は労使関係の当事者であります。その点については異議ありませんね。
  128. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 県庁で雇用している者はお話の通りかと思います。
  129. 大原亨

    大原委員 そこで、まあ団結権の問題は今は触れませんけれども、そういう特別な雇用関係、権力関係にある人々、この雇われた人々が団結をしまして、そうして団体交渉や団体行動をする場合は、一方の当事者である知事の管理権の中において第一義的に処理される。第二義の問題じゃない、第一義的に処理される、これはよろしいですね。
  130. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お話の通り、第一義的には雇用者であります知事の管理権に基づくのが適当であろうかと思います。
  131. 大原亨

    大原委員 国鉄にいたしましても、全逓にいたしましても、民間の労働者の場合もそうですが、公社、公団公務員等がこの構内建物の前庭等におきまして集団行動をとる場合においては、重大なる執務の障害その他いろいろな場合があるだろうと思うけれども、管理権の範囲において慣例上許されているのです。そういうことは公安条例の許可を受けてないわけです。その点は法解釈といたしましても、皆さんが道路交通法その他で取り締まる場合があるけれども、その法解釈については異議ありませんね。
  132. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 公共の場所でないという判断をいたすわけでございますから、公安条例の適用がないというふうに考えるわけであります。
  133. 大原亨

    大原委員 そういう議論は相当進んで参りましたけれども、ここで分かれるわけでありますが、そういう県庁の構内でない——これは新聞記事を持ってきてもわかります、いろいろなデータを持ってきてもわかりますけれども、今まで実はそういう見解をとっていた、そういう場所に公安条例の発動によって逮捕事件があったということが問題になったのです。問題の所在についてはおわかりでしょう、いい、悪いは別にして。
  134. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お言葉に関する限り、私は理解したつもりであります。
  135. 大原亨

    大原委員 そこで私が申し上げたい点は、私どもの考えというのは、公共の場というのはあくまでも集団行動を、市民の自由なる活動や行動を、歩行を含めて保障する。そういう前提の上に出ている条例でなければ憲法違反です。そうでしょう。
  136. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 ちょっと間違うといけませんから、恐れ入りますがもう一度おっしゃって下さい。
  137. 大原亨

    大原委員 つまり公安条例による公共の場というのは、市民的な自由権、基本的な人権を秩序立って保障するという建前でできておる、人権を守るという建前でできて運営されなければならぬ。でなければ法律違反であり、憲法違反の問題が出てくる、よろしいですね。
  138. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お言葉をあるいは間違っているといけませんが、個人々々の憲法上の権利があるわけでございまして、これと公共の秩序、安全を維持するという公共の福祉の目的とが競合するといいますか、それを調和させるということを考えるのが公安条例でございます。
  139. 大原亨

    大原委員 それは個人々々の市民的な自由権あるいは憲法二十八条の保障する基本的な人権、二十一条の表現の自由、そういう集団的な社会的な権利をも含む基本的な人権の問題でしょう、公安条例というのは。それをよりよく保障するために条例があるのでしょう。
  140. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 大変頭の悪いお答えで済みませんけれども、そういう個人個人の表現の自由は確かにあるわけですけれども、集団行動という形で表現をする場合には、公共の他の秩序を乱すおそれがあるということで、そういうものについて最小限度の規制をするということでございます。従って、精神としてそういうものを認めようという精神は御指摘通りでございますけれども、しかし具体的な場合に即して、その個人的な人権を認めない限度——認めないというとおかしゅうございますけれども。規制する限度をきめたのが公安条例であります。従って、その限りでは個人的な人権は制限を受けるという結果になるわけでございます。
  141. 大原亨

    大原委員 知事の、建物の構内の取締規則、それから労働関係の問題、そういう点につきましては、公安条例の解釈の問題については、質疑応答した限りにおいては、あなたは私の説と一致するところがある。しかし実際にこういう公安条例が運営をされる場合においては、こういう問題が起きておるという事実を私は指摘したわけです。そうすると、地方議会における立法権が現実に責任者の逮捕その他を通じて非常に誤った方向、職権乱用の方向にいっておる事実を指摘いたしたい。これ以上やると、事実の認定その他の問題で、皆さんの方では事実を認定してないと思うけれども、私は今までの記録を調べてみて、現地におけるあなた方の方の実態調査の結果を待って、この問題は保留しておきますから、場合によれば広島県の県警本部長の出席を求める、そういうことを委員長を通じて委員会に要請いたしまして、具体的なそういう問題を通じて権力の乱用がないように、そういう議会といたしましての十分な使命を果たすことが必要である、こういうように考える。これ以上きょうは議論いたしましても、事実認定の問題等もございますので、その点は論争になる点があると思いますから、問題を後日に保留いたしますが、私のきょうの質疑応答は、いろんな面において、ある意味においては部分的だけれども、非常にいろんな参考になった。皆さんの部下が権力をどういうように乱用しておるか、あるいは権力を適正にどういうように解すべきかという問題についてはいろんな参考になる問題だと思います。この問題を含めてそういうように思っておる。従って、問題を保留いたしまして、後日この問題は委員会等を通じて問題としていきたい、こういうように思います。以上をもって質問を終わります。
  142. 園田直

    園田委員長 本会議散会後に再開することとして、これにて休憩いたします。    午後一時十七分休憩      ————◇—————    午後二時五十七分開議
  143. 渡海元三郎

    渡海委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件の質疑を続行いたします。松井誠君。
  144. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、昨日来赤松委員、阪上委員、あるいは大原委員から御質問がありました公安条例の問題につきまして、引き続き御質問をいたしたいと思います。  われわれがなぜ今この公安条例というものを問題にするかという理由につきましては、昨日来いろいろ各委員から申し上げました。私もさらに一つ加えるならば、今われわれが公安条例を問題にしておる理由一つとして、少なくとも本年度に入ってから、この公安条例の実際の運用というものが従来に増して非常にきびしくなっているという、そういう新しい事態を招来したわけです。そのために公安条例の存在というものがさらに脚光を浴びてきた、そういう事態になっておるわけであります。この取り締まりがきびしくなった。これは新聞紙その他で、このたびのたとえば政防法のデモの場合に、警察の取り締まりが非常に高姿勢になったという表現でいろいろ報道をいたしております。私もこの東京都の政防法のデモの取り締まりの実際というものをこの目で実は見まして、そしてはなはだ行き過ぎがあるのではないか、そういうことを痛感をいたしたわけなのであります。これは何も東京都の公安条例の運用だけの問題ではなくて全国的な現象であったということに問題があるわけであります。たとえばあの政防法のデモの際には、せいぜい五月の下旬から六月の上旬に至るまでの短い間に、検挙された人、そしてその結果起訴された人というものが、あの安保のデモのときの規模に比べるとはるかに多いということ、そしてあの短い期間に、たとえばわが党の代議士である西村関一、あるいは楢崎弥之助、あるいは井岡大治という方々が、おのおの傷害を受ける、あるいはひっくり返って脳震盪を起こす、あるいは自分の衣服をずたずたに破かれる、そのような事態が起きたわけであります。あまりやり方がひどいので、実はわれわれもそのような紛争というものを未然に防ごう、こういう立場で、わざわざ社会党の国会議員団という立場をはっきりさせるためにたすきをかけまして、見るに見かねて二、三日その紛争の防止に当たったことがあるわけであります。私自身そのときに経験したのですが、たとえばあまりひどいので注意をする。そういうことは大体明るいときにはない。だんだん宵やみが迫るころになりますと、機動隊の動きというものが非常に激しくなってくる。そういうときに見るに見かねて注意をしますと、ともかく目の前の動きというものは多少静まる。ところが、機動隊のうしろの方におる者から私自身に対してこういうことを言った。あれは先生は先生だけれども、気違い病院の先生じゃないか、そういうことを言われた。この間弁護士に聞きますと、弁護士が立っておると、ああ、あそこにチンピラ弁護士がおる、そういうようなばり雑言が警察の隊の中から飛んでくる。これは非常におそるべき現象だと私は思う。社会党というものをあるいは社会党の議員というものを警察が、少なくとも現場におった警察は初めから敵視をしておる。そういう空気というものがあのときにはすでに生じておった。一体警察庁では機動隊にどういう教育をされておるのか知りませんけれども、ああいう現象というものは決して偶然に起きたのではないのじゃないか。一つの考えられることは、これはどなたも指摘をするように、例の昨年の七月の公安条例の合憲の判決、それをきっかけにして公安条例を整備しよう、そうして今までの取り締まりというものを厳重にしよう、そういうことが警察庁の方針として出てきたのではないかということをわれわれは想像をするわけです。そこで実は大臣がおられますならば、冒頭に一点だけお伺いしたいと思いましたが、大臣がおりませんので警備局長にお尋ねをいたしますが、このような全国的な公安条例に対する適用の変更、つまり取り締まりを厳しくするということ、言葉の表現はどっちでもよろしゅうございますけれども、そういうようなことの現象そのものがあったということは御存じでございましょうか。
  145. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 言葉づかいを二つに分けておっしゃいましたけれども、私どもは公安条例その他の法令の厳正な適用をするということは常々念願をいたしておるところでございます。最近になって特に強くなった、きびしくなったということでございますけれども、そういうふうには私考えませんが、昨年の国会周辺のいわゆる安保条約に対する闘争、あのときに実はいろいろなことが行なわれ、それに対して警視庁の取り締まりが十分でなかったと申しますか、その後に行なわれた政防法のときと比較をいたしますと、政防のときの方が強くなったということでございますけれども、安保のああいう状態の中で、公安条例の運用が適正に行なわれなかったということは、ある程度やむを得なかったことかと思うのでございますが、最近になって特に従来の扱いをきびしくしたとかということはない、常々そういう意味では適正に厳正に運用するように努力をいたしておるものと思うのでございます。
  146. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そのようにお答えになるだろうと思いまして、私もあらかじめ言葉の使い方はどっちでもいいということを申し上げたのでありますけれども、少なくとも一般の新聞もそのように報道をする、週刊誌も報道をする、お読みになったかどうか知りませんが、世界という雑誌の八月号には、事こまかなそういう具体的な事例をあげた座談会が載っておる。ここに総評弁護団会の会報というものを持っておりますけれども、それにも非常にひどい例が具体的な被害者の名前を並べて載っておる。そういうことはあの短期間に——安保のときから比べるとはるかに整然としておった。あのデモに対してあれだけのことが行なわれたということは、取り締まりを厳正にしようという表現であろうと、あるいはきびしくしようという表現であろうと、とにかく安保のときの取り締まりの方針よりも、より厳正にしようとしたという、そういう意図はございませんでしたか。
  147. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 先ほどお答えいたしましたように、安保闘争のあの時期におきましては、警視庁が国会の構内に警備をしておるというような状態におきまして、現実に公安条例の違反をされ、その他の違反がありましても、十分な取り締まりができなかったという実情もあったように存ずるのであります。そういうのに比べて厳正に行なわれたということは確かであろうかと思います。
  148. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ともかくより厳正に行なわれたということはお認めになりましたが、それはより厳正に行なわれるように警察庁の方で指示といいますか、そういう具体的な警察行政についての指示をされたかどうか。
  149. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 公安条例の適用について特にこれから厳正にしろという指示をいたしたことはございません。しかしながら、法令の執行は警察の職務でございますので、全国本部長会議その他における警察庁長官の言葉の中にも、しばしば法令の執行にあたってはこれを厳正に適用するようにということを言っておりましたのは、従来からの例でございます。
  150. 松井誠

    ○松井(誠)委員 昨年の公安条例の運用の方針と、ことしに入ってから政防法のデモ以来の、春闘以来の公安条例の運用が変わってきたということ、そういう新しい事態になりまして、そこでわれわれはこの公安条例が違憲か合憲かという、そういういわば果てしもない問題をここで取り上げようとは思わない。しかし、少なくとも昨年の最高裁の七月の判決が出た、そういう判決というものを基礎において考えてみても、その後の運用というもの、そうしてその運用の基礎になっておるこの公安条例のいろいろな規定の内容というものが、やはりあらためて問題にさるべきものではないかということを考えますので、そういう意味で公安条例の問題についてお尋ねをするわけであります。  そこで私は以下主として東京都の公安条例の運用ないし規定の内容、そういうことについてお尋ねをいたしたいと思います。これは何も東京都の公安条例だけを問題にするという意味ではもちろんございません。東京都の公安条例はいろいろな意味で全国的な意味を持っておると思います。一つはやはり東京都の公安条例が直接対象にする多くの政治的なデモというものは、多くの場合、政府に向けて行なわれるわけであります。従ってそのような政府に向けて行なわれるデモというものに集まる群衆というものは、東京都の人だけではなくて、全国から集まってくる。そういう意味で、東京都の条例というものは全国民の問題だというようにいわなければならないわけであります。そればかりではございませんで、この東京都の条例というものは、御承知でもありましょうけれども全国的な条例のモデルになっておる。そういう二重の意味でこの東京都の条例というものの運用あるいはその内容、そういうものについては、これはやはり国民が全部関心を持たなければならないし、そういう意味で私がここでどうしても取り上げなければならない、このように考えるわけであります。  そこでこの都条例の規定の内容の問題、それからもう一つ実際の運用の問題という二つの点に分けまして、私はその実際の働き、機能というものが、少なくとも最小限度昨年のあの最高裁の判決というものを肯定する立場においてさえも違法であり違憲であるということを断ぜざるを得ない。そういう意味でその問題についていろいろ深刻な疑問がございますので、お尋ねをいたしたいと思います。  問題は山ほどありますけれども、あまりこまかいことを申し上げるつもりはございません。まず第一に、この運用の問題といたしまして、これはまず警視庁の方にお伺いをいたしたいと思いますが、実際にこの集団示威運動あるいは集団行進というものの許可申請をした場合に、具体的にどういう手順で許可になりあるいは不許可になるかという具体的な手順について、要点だけ一つまず簡単にお答えを願いたいと思います。
  151. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 公安条例の取り扱いにつきましては、公安委員会がこれを処理することになっておるのでありますが、内部委任によりまして警視総監にその事務が委任されておるわけであります。従いまして、警視総監はそれに関する事務を行ない、なお警視総監は内部の委任規程によりまして警備部長に事務を処理させる。それでそれぞれの条例の適用になります対象に従いまして、重きに従って今の手順に従ってやっておるわけでございます。
  152. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それをもう少し具体的にお伺いをいたしたいと思いますが、適用になる対象に従っていろいろ段階がある、こういうことでございましたが、それは具体的にはどういうことですか。
  153. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 東京都の公安委員会で処理いたします事項は、一つは不許可処分、第二は緊急許可の取り消し処分、第三は緊急条件変更処分、第四は重要特異な許可処分、たとえばメーデー等の行事の問題でございます。第五は条件による進路変更処分、こういうようなものにつきましては、東京都公安委員会が直接処理をいたすわけでございます。  総監につきましては、今公安委員会の事務処理規程で、部長等の事務処理規程によりまして警備部長が専決をしておりますが、一つは集団行進及び集団示威運動の許可の取り扱い、重要特異なものを除く、第二点は、集会のうち集団示威運動、集団陳情を伴いまたは伴うおそれのあるもの及び紛争発生のおそれのあるものの許可の取り扱いということ。なお、警察署長に取り扱わせておりますものは、定例軽易な集会の許可取り扱い、上記の、今申し上げた二以降に該当しないものにつきまして取り扱っているわけでございます。
  154. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この警備部長が取り扱うというその内容といいますか、それをもう一度一つゆっくりお答えを願いたいと思います。
  155. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 これははっきり申し上げますと、東京都公安委員会が直接処理担当をいたすものと、それから警察署長の定例軽易な集会の許可取り扱いというものを除きまして、ほとんどすべてが私のところで直接取り扱っていることでございます。  なお申し上げますが、いずれも取り扱いました事項につきましては、公安委員会に定例的に私報告をいたしておるような次第になっております。
  156. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、実際の問題として、この警備部長で取り扱うというものが件数的にもやはり圧倒的に多いということになるわけです。そこでその警備部長が取り扱われる許可手続というものは、さらに具体的にはどういう手順になっておりますか。
  157. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 それぞれの集合あるいは集団行進または集団示威運動を開催いたします主催者側が、条例に定められます時間内に、所定の手続によりまして警備部にあります警備課、私の事務を処理しております直接の課でありますが、警備課第三係に申請をいたします。またこれの申請受理は警察署長を通し、あるいは私のところ、今申し上げた警備第三係に直接申請をしてくる、こういうことでございます。そこで所要の内容につきまして審査をいたしまして、主催者側と十分話し合いをいたしまして、所要の手続に従いまして許可をするということになっております。
  158. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、警備課第三係というところが具体的には最も多く許可申請の窓口ということになるわけです。その警備課第三係の窓口で、今言われたようなことを行なうわけでありますけれども、一番問題なのは、この許可にどういう条件をつけるか、あるいはつけないかということが問題になってくると思いますけれども、そういうものもこれはもちろんのことでしょうが、この警備課第三係で扱うわけですね。
  159. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 条件をつける場合におきましては、もちろん公安委員会が、事務処理の基準といたしまして。公安条例に定めておりますところの許可条件をつけるところのそれぞれの条項に従って条件をつけるわけでございます。従いまして警備三係において独断で条件をつけるということはございませんので、平常の事務処理としてかくかくのものについてはこういう条件、かくかくのものについてはこういう条件という一つ基準はきまっております。しかしながら、具体的な集会なりあるいは集団運動なり集団示威運動につきましては、それぞれのケースに応じて条件をつけるわけでございます。
  160. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その場合に、抽象的な許可基準そのものは条例にもございますけれども、さらにもっとこまかく許可基準というものを内規か何かのような形で定められておるんじゃございませんか。
  161. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例の取り扱いについて、というものと、集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例の取り扱いについて、というので、それぞれこまかくそれぞれの内容につきまして規定した通達に従って処理をいたしておるわけでございます。
  162. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それは何年にできたものですか。
  163. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例の取り扱いについて、というのは、昭和三十五年一月八日の東京部公安委員会の決定に従いましてでございます。
  164. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ちょっとわき道へそれますけれども、その一種の内規というものは、一般には別に公表はされないでしょうけれども、たとえばここの委員会でその内容についての説明の要求、資料として提出の要求があれば、これは出されて差しつかえございませんね。
  165. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 差しつかえございません。
  166. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その具体的な許可基準が、実際の問題として具体的な問題をお尋ねしますけれども、昨日赤松委員も問題にされましたこの政防法のデモのときに、国会の周辺は開会中は集団示威運動は許されない。それは請願のための集団行進しか許さない。そのように申請を変更しなければ許可をしない。そういう取り扱いがされておることには間違いございませんか。
  167. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 開会中における国会デモ禁止の理由につきましては、いわゆる国会議事堂周辺の静穏の保持という面と、国会議員の登院と国会の審議権の公正な行使を妨げないようにという趣旨で国会周辺の集団示威運動は自粛されるようにということで、公安委員会も従来そういう方針をとってきたわけでございます。しかし請願をされる場合においては、憲法に保障された請願権の行使の一つの形態として、三々五々行かれる、あるいは平穏に行かれるということについては、警察としてはそれに対して何ら干渉する権限を持っておりません。しかしながら、請願というものが平穏かつ整然と行なわれなければならないということは、憲法に規定されております請願権の行使として当然のことでございますので、請願権の行使の一形態として、集団示威運動によって国会周辺、国会に来られるということについては、われわれとしては適用することはできないということで、集団行進でおやりになったらいかがでしょうかということで相手方といろいろと話し合いをいたしまして、請願を行なう場合においては集団行進によって請願を行なうことに納得をいただいて許可をいたした次第でございます。
  168. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、集団示威運動を許可しないという方針であるかどうかということを問いましたので、従って集団行進を許しておるというお答えは、実はそのあとの質問でお答えいただけばいいわけなんです。これはこれからあとの時間の関係もありますので、できるだけそういう形式で一つお願いいたしたいと思います。  そこで、集団示威運動はできるだけ自粛をしてもらう、遠慮をしてもらうという言葉をお使いになった。昨日も警備局長でありましたか、話し合いの上で国会の周辺には行かないというようにしてもらっているというような表現がございました。そうすると、何か話し合いで、納得の上で、それではもう国会の周辺にはデモはいたしませんということを承知して、それで現実には国会の周辺にはデモが行なわれないんだ、こういうようなお考えなんですか。
  169. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 話し合いによって行なわないということは一つのケースでありまして、東京都の公安委員会といたしましては、先ほど申し上げた理由によりまして、国会周辺の集団示威運動は原則として許可しない、こういうことでございます。
  170. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、話し合いによって国会の周辺はデモはしないんだということではなくて、かりに国会の周辺について——かりにところではなくて、しょっちゅうやっているわけですけれども、国会のまわりのデモの申請をしても、その路線を変更しなければとうてい許可はされない。仕方がないから、警視庁の言うようにその路線の変更をして許可をしてもらう、そういうことが具体的に、現実に行なわれておるわけでしょう。従って、それは対等の立場に立った話し合いでも何でもなくて、むしろそういう行政指導で、事実上国会の周辺のデモというものを禁止をしておるということになるわけでしょう。
  171. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 先ほど大へん言葉が足りなくて申しわけございませんが、国会周辺の集団示威運動は開会中は行なわせない、こういうことになっております。閉会中は必要に応じて許すということになっております。
  172. 松井誠

    ○松井(誠)委員 では、国会開会中はデモは許可をしないというのは、一体どういう理由なんですか。
  173. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 それは先ほど私が申し上げましたように、いわゆる国会議事堂の周辺の静穏という点を顧慮いたし、なおかつ国会の審議権の行使並びに国会議員の登院ということを主たる目的といたしまして、私どもは国会周辺におけるいわゆる集団的示威を伴うような集団示威運動は許可をしない、こういうことになっておるわけであります。
  174. 松井誠

    ○松井(誠)委員 国会開会中に国会のまわりにデモをしたいというのは、これは申すまでもございませんけれども、まさに国会に対して意思表示をしたいという——別に閉会中に国会のまわりに来てデモをしたところで、それは国会に対し、あるいは政府に対する意思表示にはほとんどならない。従って、政府に対して意思表示をしたい、あるいは国会に対して意思表示をしたいという、そのときに最も効果的なそういう場所を制限をし、そういうデモを事実上禁止をするということになりますと、一体この許可というものはどういう基準で行なわれておるのかということに根本的な疑問を持たざるを得ないわけです。一つは、これは御承知でもありましょうけれども、例の国会周辺のデモ規制法というものが出た。きのう赤松委員も申し上げましたが、それがあのような経過で日の目を見なかった。それを東京都の公安条例の運用という形で事実上実現をしておる。この適法、違法の問題はまたあとでお尋ねをしますけれども、今国家公安委員長がお見えになりましたので、ちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、少なくとも政治的に見て、このような国会で日の目を見なかった国会周辺のデモ禁止ということが都条例の運用という形で復活をしてきておるということについて一体どうお考えになるか、そのことについてまず国家公安委員長としての御見解をお伺いいたしたいと思います。
  175. 安井謙

    安井国務大臣 予算委員会へ呼ばれておりまして、おくれまして申しわけありません。  東京都の公安条例におきまして、国会周辺のデモというものを非常に条件をつけて、これは御遠慮願うというふうになっておると存じますが、やはり私はこの国会での審議というものは、そういった外の圧力といいますか、声によって左右されるのでなく、国会の内部でお互いに討議をかわし、静粛のうちに審議を進めていただくというのが建前であろうということから、この措置はやむを得ないものというふうに心得ております。
  176. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私の質問に一つ正面からお答えをいただきたいと思うのですけれども、繰り返して申しますと、このデモ規制法というものが国会でだめになったというそのことと照らし合わしてみるときに、そういう国会でつぶれたものを公安条例の運用という形で復活をするということが、一体政治的に妥当なものかどうか。これは公安条例の運用で今委員長の言われたように国会周辺のデモを御遠慮願うなどというなまやさしいものじゃない。実際の手続は、絶対にさせないわけです。ですから、そういうことで禁止をしておるわけです。そういう禁止をして、死んだデモ規制法をよみがえらせるということが、一体政治的に妥当なものかどうかということをお伺いしておるのです。
  177. 安井謙

    安井国務大臣 国会周辺のデモ禁止の法律が流産になっておることは承知いたしておりますが、あの周辺のデモ禁止法というものは、一定区域を相当広範囲に区切って一切立ち入りを禁ずるという非常に明確なものでございました。その精神は私ども今でも必要だと思っておりますし、その前にこの公安条例というものはできておりました。先ほど申し上げました国会の審議というものが十分静粛のうちに尽くされたいという精神から、特別に公安条例がこうしてできておりますことは、私やむを得ぬことだろう、こういうふうに思っております。
  178. 松井誠

    ○松井(誠)委員 時間をとるばかりですけれども、私の申し上げますのは、今、国家公安委員長は、あのデモ規制法の精神は正しいのだということを言われた。そして都の公安条例はもうそれ以前からできているのだということを言われた。私のお尋ねするのは、公安条例がそれ以前からできておることは承知しております、しかし、この周辺のデモを事実上禁止をするという措置をとったのは、デモ規制法がだめになってからです、従って、その二つ関係から見て、不当じゃないかということをお伺いしたいのですけれども、重ねてその点を伺います。
  179. 安井謙

    安井国務大臣 これは御承知のように公安条例の三条一号の「官公庁の事務の妨害防止に関する事項」といったようなものを根拠にしておるわけでありまして、いわゆる国会周辺のデモ禁止法がだめになったからこれを直ちに取り上げてやっておるのだということじゃないので、従来もできるだけそういうふうに取り運んできておった。ただ、はっきり申しまして、昨年のあの安保のときの場合には、状況上それが思うようにできなかったのだ、こういうことであろうと思います。
  180. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は何もデモ規制法が死んだので、それでわざわざ今度の場合にそれを事実上復活さしたのだというように、因果関係を主張しておるわけじゃないのです。そうじゃなくて、そういうものがなくなったのに、それを事実上復活させることじゃ、おかしいじゃないかということを言っておるわけです。もっと具体的に申しますと、国会というものは国権の最高機関です。そして憲法に書いてありますように唯一の立法機関です。そういうものがああいうデモ規制法というものに一つの判断を事実上下して、そういうものを県や都の条例で作るということ自体ももちろん問題ですけれども、それよりもっと手軽にこの運用で復活をさせるということになりますと、国権の最高機関である国会とは一体何なのか、国の唯一の立法機関である国会の権威というものは一体何なのか、そういうことを考えて政治的にどうかということをお尋ねしておるのです。
  181. 安井謙

    安井国務大臣 デモ規制法は、御承知通りに、相当広範囲な全面的禁止規定であったわけであります。しかもこれが衆議院でも一回通り、参議院でも一回は通ったが、手続の関係上、今日審議未了という形で残されておる。しかし、それだからといって、それにかわるものを運営でやってくれというのじゃないのでありまして、それとは別に、東京都の公安委員会としましては、公安条例によりまして、国会の審議の正常化を妨げてはならぬという精神からこの規定を作り、また実施をいたしておるのだと思います。しかし、それには非常に幅を持っているわけでございまして、請願運動による集団行進、こういう形のものはそれぞれ話し合いによって認めて、できるだけ静粛な意思表示については妨げのないようにはかっておるのであろうと存じます。
  182. 松井誠

    ○松井(誠)委員 きりがありませんのでそれはその程度にいたしますが、大臣もお見えになりましたので、今の問題はまたあとで立ち返るといたしまして、最初にお問いすべきであった問題をもう一度お伺いいたしたいと思います。   〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕 警視庁の警備部長にお尋ねをいたしますけれども、先ほど警備課で許可、不許可の処理をされ、その処理をされたものについては都の公安委員会に報告されるということを申されましたけれども、一体都の公安委員会は何日に一回くらい会議をお持ちになるわけですか。
  183. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 私の方の公安条例の公安委員会に対する報告は、十日に一回ずつ一括してやっております。また東京都の公安委員会は月に三回程度開かれております。
  184. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうすると、都の公安委員会が取り扱う許可その他の仕事というものは、この公安条例の許可だけではなくて相当あると思いますけれども、大体十日間におよそ何件ぐらいのものがたまっているのですか。
  185. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 その前に、前提といたしまして、昭和三十五年度にどのくらいの集会、集団行進、集団示威運動の許可取り扱いの件数があったかということを御説明いたしますと、昭和三十五年度におきましては、集会が三千二百七十四件、集団行進が百十件、集団示威運動が六百四十九件、合計しまして四千三十三件でございます。それから昭和三十六年度の上半期におきましては、集会が千五百八十二件、それから集団行進が三十四件、集団示威運動が二百八十三件、計千八百九十九件でございます。平均して十日にどうこうということは必ずしも申し上げられません。ということは、そのときによって、ただいまのように国会開会中におきましては非常にいろいろな集団運動が多いわけでございます。また同時に、それぞれのシーズンになりますと非常に多いわけでございますので、一律に十日に何回ということはお答えいたしかねるわけであります。
  186. 松井誠

    ○松井(誠)委員 今お伺いした数字ですと、三十五年は大体十日で、この公安条例関係だけでも百件ぐらいになっちゃうんですね。そのほかにも仕事がございましょうが、十日に一回集まって百件の公安条例の許可、不許可の事後の処置をする、事後の報告を受ける、こういうことになるわけですね。
  187. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 先ほど申し上げました取り扱い件数の中で許可しなかった処分は一件もございませんし、先ほど私が御説明しました東京都公安委員会が特に直接取り扱うべき非常に重要特異なる事項というものは、ほとんど該当がございません。しかしながら、たとえば先般の政防法なり、あるいは春闘なり、あるいはそれぞれの非常に重要特異なものにつきましては、そのつど私から、あるいは総監から公安委員長あるいは公安委員会の各位に御連絡をするなり、あるいは特にお集まりを願うという特に慎重な取り扱いをいたしております。
  188. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうすると、春闘なり政防法なりというようなデモのときには重要であるから、そのつど公安委員長に連絡を必ずしておるというのですか。そのうちでも特に重要なるものについてはされるということですか。
  189. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 それは総監なり警備部長の判断といたしまして、当然社会通念上非常に重大であるという問題につきましては、それぞれの集団行動の折衝の過程において十分はっきりすることでございますので、非常に重要特異なものにつきましては、そのつど連絡をいたしておる次第でございます。
  190. 松井誠

    ○松井(誠)委員 具体的にどういう条件をつけるかということは、そのときそのときの申請の内容によって違うわけであります。従って判こでも押したように同じ条件がつけられるわけじゃない。どういう条件をつけるかという裁量は、やはり原則として警備第三条がやる。そうして、こういうようにいたしますがよろしゅうございますかという程度の、せいぜい都の公安委員長にはその程度の連絡くらいしかないんじゃありませんか、実際は。
  191. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 全くそういうことはございませんので、それぞれの重要な許可条件につきましては、私から一々連絡をいたしておりますし、私も警備部長として警備第三係から全部こまかく聞きまして、それぞれ具体的に条件をつけて、そうして総監に報告をし、必要に応じて今申し上げたような手続をとっているわけでございます。
  192. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これは現実の取り扱いというものは私自身が知りませんので、深くは申しませんけれども、われわれが聞いた範囲では、そういうことじゃなくて、警備課の第三係でも大体あらかじめ条件というものはちゃんとできておる。そうして、そういう条件に申請書の方が合ってこなければ、もう初めから許可しない。そして、そういうふうに条件が合ってくれば、許可をするという書類は事実上もうすでにできておる。そういう経過を考えますと、一体こういう一番大事な、どういう条件をつけるかという、これは違憲か合憲かという問題に直接つながる問題でございますけれども、それを、警備第三係というような一つ機関がそういうことをやるということは、これは大へんなことだということをわれわれは非常に心配するわけです。そして、これは国家公安委員長にちょっとお尋ねをいたしたいのでありますけれども、公安委員会という制度をわざわざ作ったのは、警察が政治的な中立を保つために国家公安委員会あるいは都道府県公安委員会というような行政委員会をわざわざ作った。時の行政機関から一応独立しようという形で作った国家公安委員会というものが、実際にこういう公安委員会の仕事として一番大事な問題について、せいぜい今警備部長が言われたような形でしかタッチしないということになると、私は国家公安委員会という制度を設けた本来の趣旨からいって少なくとも不当じゃないかと思うのですけれども、大臣のお考えはいかがですか。
  193. 安井謙

    安井国務大臣 個々の手続につきましては、今警視庁の警備部長の報告の通りだろうと存じますが、それの基本的な取りきめ方、扱い方等については、十分地方の公安委員会が公正な態度をもって検討され、基礎を考えて、その上でこういった手続をとっておるものだと心得ております。
  194. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それでは、問題は戻りまして、警備局長にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、なぜ国会開会中は国会の周辺のデモを許可しないか。これはもう警備部長ははっきり言われましたけれども、許可しないという方針であるという理由といたしまして、審議権に影響があるんだということを言われる。あるいは議員の登院に差しつかえがあるんだということを言われた。じゃ審議権に具体的にどういう影響があるのか、そういうことは警備局長は一体どういうように考えておりますか。
  195. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 国会で御審議いただきますのは、国の最高の方策を御審議いただくわけでございまして、ほんとうに各議員さんが何ものにもとらわれないお気持で審議されるということが前提であろうと思うのであります。表に非常に大きな集団が威勢を張るという状態におきまして、そういうものに精神的な影響を受けて御審議になるということは、これは国民全体にとっても工合の悪いことであろうという意味におきまして、公共の秩序と安全を保持するということのためにできました公安条例でございますが、公共の安全と秩序と申しますものは、もちろん国民の社会生活の健全な、正常な運行が保たれている状態というふうに言われるわけでございますけれども、その中には、国民のために国民を規制いたします法律なり、いろいろなことを審議されます議会が、ほんとうに正しく御審議を願うということについては、国民全体が非常な関心を持っておるわけでございます。そこで、公共の秩序と安全という観点から申しますと、きわめて高次な立場で考えまして、議会が平穏な状態で御審議になるということが当然必要だと思うのでございます。そういう意味におきまして、公安委員会が、万が一審議権に影響を与えるいろいろなニュアンスにおいて与え方が違いましょうけれども、各議員の方々に精神的な影響を与えるというようなことを避けるという意味でおきめになったものと思うのでございます。
  196. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、今の御答弁は非常におかしいと思うのです。というのは、審議になぜ影響するか。たとえば大きな声を出すために物理的にじゃまになるということならば、東京都には騒音防止条例というものがあるそうですから、従ってそういうもので処置できないわけでもない。そうじゃなくて、くしくもあなたが、そこに大きな集団がおるということ自体が圧力になるのじゃないかということを言われた。私はそれが実は公安条例というものは政治警察の強化なり、治安立法の新しい型なんだという考え方をそのまま、問うに落ちず、語るに落ちるといいますか、そういうことを表わしておるのではないかと思う。なぜかというと、かくも大勢の人が国会へ来て訴えるというのは一体どういうわけか。それじゃ、一体国会議員というものは日常何らのそのような圧力を感じないで国会の審議をやっておるか。金の圧力があるじゃないか、マスコミの圧力があるじゃないか。そういう圧力のない人が、せめて自分の口と足で、われわれの意見を表明しようというのが、つまり国民の表現の自由としてのデモなんです。そういうものがまさに一番必要なときに、そういうものが審議のじゃまになるということでは、表現の自由というものを認めた理由は一体どこにあるのかと私は言いたい。  そこで、お尋ねをいたしますけれども、今のお話ですと、あそこにおる大きな集団そのものが圧力だということになりますと、これは集団行進そのものもいけないのだというふうに発展する可能性はありませんか。
  197. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私は、まあ集団示威運動というものがいろいろな状態があるということで、包括的に申し上げたわけでございますが、集団行進と集団示威運動との違いは、これはもう申すまでもなく、高声を発し、いろいろなもので気勢を上げるということでございます。周囲で大勢の方がそれぞれ声を出すということは、物理的にもこの中に声が響くわけでございます。そういう意味で、私は御審議に影響があるというふうに公安委員会がお考えだと思うのでございます。国民が国会に対して意思を表明したいというお言葉でございますが、これはいろいろな方法がありましょうけれども、憲法で認められた請願というものがあるわけですが、この請願も平穏ということをかしらにかぶっておるのでございます。そこで威勢を張って請願をするということになりますと、憲法の考えておりますいわゆる不当な圧力を加えることなしに意思を表示するということにならないのじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、世界各国の例をみんな見たわけではございませんが、いわゆる先進国と言われる国々におきまして、国会の周辺でそういうものを全部とめておるというようなことも、これは立法例でございますけれども、国会が平穏に審議をすべき場所であるということについて裏づけになろうかと思うのでございます。そういう意味では、先ほど、この国会ではすでにそういうものは要らぬのだというふうにおきめになったやのお言葉がございましたが、それは大臣からお話しいたしましたように、そういうものが要らないのだという積極的な御決意が表明されたのだというふうには考えておらないのでございます。
  198. 松井誠

    ○松井(誠)委員 こういうときに先進国の例を引いて御説明になる必要はない。日本の政治の現実がもっとおくれておるのですから、従って、やはり日本の政治の現実に照らしてお答えを願わなければならぬと思う。一体請願で平穏にというのはどういう意味か。これはもう深く議論はしませんけれども、平穏にというのは、別に大声を立てるなという意味ではない。そうではなくて、いろいろな犯罪を伴うような、そういうことがいけない。犯罪を伴わなければ、むしろ平穏にというのは静粛に黙ってということではない。これは何も私の新説でも何でもなくて、学者がそう言っておる。従って、平穏にというのは、初めから犯罪を犯そうということでそういう乱暴をするというのはいけないということであって、声を立てるな、声を立てるのが平穏ではないのだという、そんな意味ではないと思う。しかし、それは別といたしまして、そうすると、今のお話を聞いておりますと、この表現の自由というものについて、われわれとは非常に考え方が違うんじゃないかと思うのです。この表現の自由は、基本的人権の中でも一番根本的な自由なんです。従って、その自由を制限するためには、まさに明白で、かつ現実にそういう危険というものがなければ、少なくとも表現の自由は制限できないのじゃないかという考え方が、昨年の最高裁の判決の基本原則になっておりますけれども、それはやはり警備当局の方針としても尊重されるわけですね。
  199. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 表現の自由を尊重するということは、もちろん私ども全く同感でございます。ただ御指摘になりました……。
  200. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いや、間違えました。私が昨年の最高裁の判決と言ったのは、二十九年の誤りです。
  201. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 最高裁の大法廷の昨年の七月の判決の新しい判例の方を引かせていただきとうございますが、「集団行動には、表現の自由として憲法によって保障さるべき要素が存在することはもちろんである。ところでかような集団行動による思想等の表現は、単なる言論、出版等によるものとはことなって、現在する多数人の集合体自体の力、つまり潜在する一種の物理的力によって支持されていることを特徴とする。」ここでちょっと省略しますが、こういう力が結局内外の刺激によって危険な状態になり得るということを言うております。そこで「地方公共団体が、純粋な意味における表現といえる出版等についての事前規制である検閲が憲法二一条二項によって禁止されているにかかわらず、集団行動による表現の自由に関するかぎり、いわゆる「公安条例」を以て、地方的情況その他諸般の事情を十分考慮に入れ、不測の事態に備え、法と秩序を維持するに必要かつ最小限度措置を事前に講ずることは、けだし止むを得ない次第である。」ということを言っておるのでありまして、同じく表現の自由と申しましても、集団行動による表現の自由につきましては、言論、出版等の表現の自由と違いまして、そういういわば特殊な態様である限り、公安条例等で公共の秩序を維持するという必要な条例をきめることは違憲ではない、こういう判決であったのであります。従って、表現の自由はもちろん尊重すべきだと思いますし、公安条例による表現の自由の制限も最小限度にすべきだと思いますが、この程度のことは、けだしやむを得ないと考えるのでございます。
  202. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、判例をつい間違って引いたので、一つ先の御答弁をいただいてしまいましたけれども、私がお伺いしたいのは、昭和二十九年だと思いますが、新潟県条例についての合憲を判断をしたあの最高裁の判決の基本的な考え方である表現の自由というものについては、明白かつ現在のそういう危険の存することが必要なんだという基本原則は、何も昨年の最高裁の判決で正式に否定されておるわけではないのです。そこで、その二十九年の判決の基本的な立場というものを、やはり警備当局は維持されるだろうと思いますけれども、念のためにお伺いするわけです。
  203. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その原則は、昨年の判例で、表現の上では少なくともやや緩和されておりますけれども、基本的な考え方といたしましては同感であると思うのでございます。
  204. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それで、今局長は、昨年の判決のことを申しましたけれども、これは、巷間伝えられるところによりますと、田中最高裁長官のいわば置きみやげだということで、学者の中では非常に反対が多い。これはおそらく御承知だろうと思う。そしてその判決によりますと、今あなたが言われたように、何か集団デモそのものは群衆心理があるので、元来危険性をはらんでいるということを大っぴらに言っておる。そうしますと、そういう集団行動そのものは元来いけないのだ、むしろそれをまず規制をして、そしてこれは大丈夫だというときだけ、その規制を解き放してやればいいのだという考えにつながりやしませんか。
  205. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 判決をいただきました内容について批判を避けたいと思いますけれども、元来それがけしからぬのだから、全部不許可にすべきだというふうな考え方にはなってこないだろうと私は思います。
  206. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その集団デモというものは元来危険なのだ、ですから、やはりまず一般的には規制しなきゃいけないのだという考え方には、集団デモは、そういう集団的な暴力というものは、どういうチャンスで暴徒と化するかもしれないということを、群衆心理という立場からいろいろ言っておるわけでしょう。ですから、そういう形を敷衍していけば、当然今言ったように集団デモは、あるいはそういう大衆運動というものは、元来事前に、一般的に規制するのがむしろ原則なのだというふうにつながっていく危険性はないかと言うのです。そして、そういう危険性がある考え方に、警備当局はやはり同調されるのかということです。
  207. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 前提といたしましては、憲法の表現の自由はこれを尊重するということ、これは私は、最高裁の判例といえども認めないわけではもちろんないわけでございます。表現の自由は認める、しかしながら、その表現の自由にいろいろな形のものがあり、集団行動という形における表現の場合には、えてしてこれが行き過ぎるおそれがあるという状態である。そこで、その両方をどう調和をするかということが公安条例の内容でございますが、これを不許可にするという建前ではなくて、必要な条件をつけ、そしてこの表現の自由を大いに活用していただく、いただくが、公共の秩序が守られるために最小限度の条件を付する、こういう考え方だろうと思うわけであります。
  208. 松井誠

    ○松井(誠)委員 われわれは、あの昨年の最高裁の判決の考え方そのものには、とうてい同調することができませんけれども、しかし赤松委員がきのうも申されましたように、その最高裁の判決も、現実の運用において乱用の危険が非常にあるのだということを戒めておるわけですね。ところが、その実際の運用そのものが、やはり現実に乱用されておる。このほんとうに乱用されておる現実というものを、最高裁の裁判官が、少なくともその後の実際の現実というものを知ったならば、あの判決の基礎に立っても、どういう判断を下すか、私は必ずしも予断を許さない、それほどの状況じゃないかと思う。その一番典型的な例が、今申し上げましたように、国会の開会中は、ともかくどういう理由があろうと、集団のデモは国会の周辺は許さないということ、これはもう全く一般的な、全面的な禁止でしょう。しかも、そういうことによって侵害される法益というものは一体何か。それは審議権です。審議権の公正だという。それでは審議権の公正というものは——まさにその審議権というものに影響を与えたいからこそ、そういうものに圧迫を加えたいからこそ、表現自由という形でそういうものがあそこで出てくるわけでしょう。そういうものが審議権というものに何の影響もない、審議権に何も圧力のない表現の威力というものがありますか。まさにそういう表現の威力というものが一番大事なときに、どこかその辺に行っておれ、犬の遠ぼえみたいにやっておれということは、国民に与えられ表現の自由という大切な自由権が、一番基本的な問題においてもうすでに掘りくずされておるということになる。一体審議権が侵されるということと公正というものと比べてみて、その重い、軽いというものをどのように判断されるか、公共の福祉というのもを乱用すれば、そういう制限というもには、これはないと同じです。今のような形というものを広めていけば、そういうことになってしまう。われわれは、そういうことでは、最高裁の昨年の判決の精神に立ってさえも、違憲であり、不当であるということを言わざるを得ないわけですけれども、その点について、もう少しこまかいことを一点お尋ねをしたいのでありますが、これは警備局長にお尋ねをいたしますけれども、昨日愛知県の公安条例の問題で、その後条件の変更について連絡ができないときには、どこか警察の掲示板か何かにすればいいのだというような規定が出ておったわけですけれども、そういうことになりますと、いわば憲法の考えておる罪刑法定主義というものですね、つまり法令によらなければ、あらかじめ明確な範囲がちゃんときまっておる、そういうものによらなければ処罰ができないという罪刑法定主義の精神からいって、いつの間にか条件が変わっておった、あるいはさらに言うならば、東京都の条例の条件の運用の場合でもそうですけれども、今度の場合には、具体的にどういう条件をつけるのか皆目見当がつかない。そして、その条件に現実に違反すれば、首謀者その他は処罰されるということになりますと、一体罪刑法定主義の精神からいって、処罰をするときには、こういうことはいけないのだぞということが少なくともあらかじめはっきりしていなければならぬ。そういう精神からいって、都の公安条例の条件の運用の仕方もそうですけれども、特に愛知県のそういう場合については、そういう問題とは真っ正面からぶつかるのじゃありませんか。
  209. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは、大臣が昨日も明確にお答えになりましたけれども、民法並びに民事訴訟法にもあるわけでございますが、公示送達という、これはぎりぎり最後の方法でございます。これは各団体等で、もうそこに責任ある人がおり限りは、警察としてはそれに説明をして条件をつけて渡すのが、これは当然のことでありまして、警察としては、いかなる方法をとっても、そういう責任者に連絡をとりたい、とる努力をいたすわけでございます。しかしながら、御設例がいつも総評とかなんとか、非常に確固たる団体、りっぱな団体についてのお話になるわけですけれども、これはもうどういう種類の人が、かりに団体と銘打たなくても、集まってそういうことをやるということはあり得るわけでございまして、そういうものが出たときに、こちらとして許可をする、あるいは条件をつけて許可をするということを、どう伝えようにも伝えようがない。そこで、今回二十四時間前までに許可、不許可の表示をしない場合には、許可したものとみなすという救済規定が入ったわけでございますが、それとの関係において、どうしても相手に送達する方法がないという場合には、他に例があります公示送達の方法で、やむを得ず公示をする、こういう道を開いたと思うのでございまして、そういうものを乱用して、届け出がきた場合に全部署の前へぶら下げて、それをもって送達をされたというふうにする危険があるのではないかという御心配かと思いまするけれども、これは現地の警察といたしましても、どれだけでも努力をして相手にお渡しする、お渡ししなければ意思が伝わらないわけでございますから、そういう努力はいたすわけでございます。最後の、何と申しますか、どうにもならない場合の措置をここに入れたものと考えるのでございます。
  210. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ちょっとこまかいことで横道にそれますけれども、東京都の条例の場合には、二十四時間以内に云々ということがないわけですね。そうすると、もし二十四時間以内に何もそういうことがない、つまり許可も不許可も何も結論が出ないということで、現実にその期日が来てデモをやったという場合には——これは許可も不許可もないのですよ、不許可があったのじゃなくて、許可も不許可もないという状況でその当日が来て、集団デモをやったという場合には、公安条例の運用上、どういうことになりますか。
  211. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 この点につきましては、当然その規定の中に入れるべきだと存じますが、私の方といたしましては、先ほど説明いたしましたところの集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例の取り扱いに関する東京都公安委員会の決定の第六号に「主催者または連絡責任者が受領しない等、申請者の責に帰すべき事由のある場合を除き、その他の特別の事由により前項の所定の時限内に交付できなかったときは許可のあったものとして取扱うものとする。」という規定を設けまして、そうして今御指摘になったような点の誤りのないように努めております。従来この規定を適用いたしました事例は一件もございません。
  212. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういう規定があるということを、実は申請をする人たちは知らないのですよ。  そこで問題を次に移しまして、公安条例の内容の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、この公安条例の内容の、特に私がお尋ねをいたしたいのは第四条の問題であるわけであります。この第四条と警職法の第五条を比較をして、その警察官による規制、警告ないし制止という、そういう規制の問題を規定をしてある都の公安条例の四条と警職法の五条との関連について、昨日も警備局長からいろいろお答えがありましたけれども、必ずしもはっきりしないのであらためてお尋ねをいたしたいと思いますが、都の公安条例の四条の規定の体裁は、警職法の五条の規定の体裁とは、少なくともその体裁において相当な違いがある。この都条例の規定は、警職法の場合と違って、警察官のそういう警察力の行使というものに対して条件が非常に緩和されている、そのように読まざるを得ないわけですけれども、その読み方自体はその通りですね。
  213. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その通りでございます。
  214. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、都条例の四条によりますと、警職法の五条でいろいろな条件がつけてある、その条件が緩和されておる、そういう意味では警職法の内容と異なるわけですね。その異なる理由、異なってもいいという理由、つまり憲法の九十四条や自治法の十四条で書いてある法律の範囲内においてとか、あるいは法令に違反しない限りとかというそういう制限との関係で、この警職法の五条と都条例の四条との関係はどのように説明されるか、もう一度お答え願いたいと思います。
  215. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 昨日の御議論にもありました通り法律がすでに占有している場面につきまして、これと異なることをきわめることは条例としていけないのだ、こういう御議論があったわけでございます。警職法は一般的な警察官の職権行使につきまして規定をいたしたものでございますが、さて、法律の中で集会、集団行進、集団示威運動等によって公共の秩序が乱されないようにするという意味法律は、御承知のように今ないのでございます。従いまして、その観点からこの法律が占有しておりませんので、今のような行政目的を果たしますために、自治権に基づきまして東京都が条例を定めておるものと思うのでございます。そこで、そういういわば目的が違いますので、そういった法の占有しておりません場面に対して、行政上の目的からきめられた条例でございますから、その条例が有効に施行される、つまりその集団行動によって公共の秩序が乱されることがないようにするという、この行政目的を達する意味におきまして、必要な措置をこれにつけることは差しつかえないものと思うのでございます。従いましてここでは、今の公安条例の違反というものが重大な段階になった場合に、この公共の秩序がそうしなければ保持されないというような場合に、必要な警告なり制止なりをする、こういうことになっておるのでございまして、警職法の警告、制止の要件は、警職法に申します要件を満たしたときに警職法によって警告、制止ができるというので、これに非常に違う、相似た分野もあるわけでございますけれども、違うものと思うのでございます。
  216. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、この自治体の条例制定権の問題につきまして、もうちょっと一般的にお尋ねをいたしたいと思いますので、自治省の行政課長にお尋ねをいたしたいと思いますが、この自治団体の条例制定権というものが、根源的には憲法の九十四条から出ておる。しかしその九十四条から出ておるけれども、現実にそういう条例を作る場合に、憲法の九十四条だけに基づいていきなり条例が作れるのか、あるいはその中間に具体的な法律があって、その法律の具体的な委任がなければ条例が作れないという考え方もあるわけですけれども、どのように条例制定権の根拠をお考えになっておりますか、お尋ねしたい。
  217. 岸昌

    ○岸説明員 条例制定権の根拠につきましては、ただいまお尋ねの中にもございましたように、二つの学説があるととは事実でございますが、政府の見解といたしましては、憲法の規定に基づいて自治団体にそういう条例制定権が与えられておる、個々の法律の委任でなければ条例が制定できない、そういうものではない、こういうように解釈いたしております。
  218. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうすると、自治法の十四条というものは、いわばあってもなくても、元来条例は作れるのだということになるわけですね。
  219. 岸昌

    ○岸説明員 自治法の十四条は、そういう憲法の趣旨を確認したものでございまして、創設的な規定だとは解釈いたしておりません。ただ十四条には、たとえば第二項にございますように、「行政事務の処理に関しては、法令に特別の定があるものを除く外、条例でこれを定めなければならない。」というような特別の規定がございますので、この規定全体が意味のないものである、かようには解釈いたしておりません。
  220. 松井誠

    ○松井(誠)委員 われわれは、少なくとも私は、このような条例の中で、法律学者の言われるように、国民の権利義務を規制をする、そういう問題については、憲法からいきなり条例権を引き出すのではなくて、具体的にはやはり法律の根拠というものが必要なんだということを主張いたしたいと思うのです。実はそうしないと、この公安条例をめぐる混乱というようなものは、そういうところから、そういう考え方から実は出ておる。公共の福祉というものを非常にルーズに考える、そういう考え方で条例をいきなり制定する、そういうところから出ておる。現に先ほどから何べんも言いますけれども、デモ規制法というものがだめになった。もしデモ規制法というものがあって、そのデモ規制法の具体的な根拠に基づいてしか、デモ規制の具体的な条例というものができないということになりますと、そういうコントロールというものは非常にきく。ところがそういうものじゃなくて、やはり憲法からいきなり条例ができるのだという、そういう考え方のために、今言ったようないろいろな混乱というものが起きてきておる。しかしこれは考え方の相違でございますので、これ以上は申し上げませんけれども、そうしますと、さらにお伺いをいたしますが、今警備局長の言われた具体的に法律がすでに占領しておるその部分については、法律には違反はできない、しかし法律が全然占領していない部分、その部分については、いわば法律のいかんにかかわらずといいますか、条例の制定権が法律のいかんにかかわらずという言葉はおかしいかもしれぬですけれども、そういう法律がない場合には、条例というものは自由に制定できるというお考えになるわけですか。
  221. 岸昌

    ○岸説明員 法律が占領しておるという占領の仕方にもいろいろあるわけでございまして、まず地方自治法の二条の二項に書いてございますように、地方団体の事務がここに掲げられております。公共事務、委任事務のほかに、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理することになっておりますので、行政事務で国の事務に属するものについてはそもそも処理の能力を有していないわけでございます。また自治法の二条の九項に「普通地方公共団体は、次に掲げるような国の事務を処理することができない。」かように書かれてございます。従いましてまず地方公共団体が条例を定め得る事務は、ただいま申しました二条の第二項に掲げられておりますところの事務に限る、こう申さなければならないと思います。  次に、これが法律の定めとして地方団体の条例制定権の限界があるわけでございますが、より根本的には、憲法の規定によりまして、憲法の規定に違反するような条例はもちろん作れないわけでございます。その二つの点を除きます限りにおきましては、地方公共団体の事務であります限り、憲法の規定に違反しない範囲内において条例が制定できる、かように申せると思います。
  222. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その条例制定権の範囲の問題として、今警備局長が言われたように、警職法の規制の対象というものと、公安条例がねらっておる規制の対象というものとは違うのだから、従って公安条例の規制の対象法律に規定のないことを書いてあるのだから、従って警察力の行使についても警職法よりは条件は緩和しておるけれども、しかしそれはそれで差しつかえないのだという御答弁なんですけれども、条例制定権の範囲という立場からお考えになって、やはり今の警備局長答弁というものを支持されるわけですか。
  223. 岸昌

    ○岸説明員 警察官職務執行法の解釈は、それぞれ主務当局でおやりになることでございますが、警察官職務執行法の解釈は、警備局長お話しになりましたような解釈であります限り、条例は制定できる、かように解釈いたしております。
  224. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この議論も実は果てしがないので、この辺で一応打ち切りますけれども、それではもう少し具体的な問題として警備局長にお尋ねをしたいわけですが、全国の公安条例の中で、きのうのお話ですと、警察官による規制の措置を規定してある条例が三十三、その規制の措置を書いてない条例が二十八というようにお答えになりましたけれども、そうするとこの二十八の警察官の規制を書いてない公安条例の運用の場合には、警察の規制というものはどういうことになって、どういうものに基づいてやっておられるのですか。
  225. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは他の法令で定めてないということになりますと、警職法に返りまして、警職法の要件が満たされた後に警告、制止をするということにならざるを得ないと思うのでございます。従いまして国民生命身体に危害が及び、あるいは財産に重大な危害が及び、しかもそれが犯罪に基因する。その犯罪がまさに行なわれようとして、しかも急を要する、こういう要件を必要とするわけでございます。
  226. 松井誠

    ○松井(誠)委員 重要な違いは警職法の場合と違って、都条例の場合には参加者に対して警察の規制を加えることができるような規定になっております。従って参加者は処罰の対象にはならないけれども、警察の規制の対象にはなる、そういうことになるわけですけれども、そういう場合に、それでは現実にこの条例で規制を規定してない公安条例の運用として、参加者に対する規制というものはどういうことになりますか。
  227. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これはその参加者の行為の態様が、他の法令といいますか、法令に違反して犯罪がまさに行なわれようという状態に達して——これは道交法であったりいろいろするわけでありましょうが、それによって人の身体生命に危害が及び、あるいは財産に重大な危害が及んで急を要するという状態になりますれば、その参加者にも制止ができるわけであります。
  228. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうすると規制の規定のないところでは警職法が適用になるのだ、そうしてその警職法の適用では、参加者に対する規制は、参加者の行為そのものが具体的な犯罪を犯しそうだという、そういうときにだけ規制をされるということになるわけでありますけれども、そういう警職法の規制だけでは、現実にどうしても公安条例といういわば警職法の範囲をはみ出すものを作らないと、現実の規制というものが不可能なんですか。
  229. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは適切な例かどうかわかりませんが、一例をあげてみますと、非常なジグザグ・デモ等が行なわれまして、それによって交通がとまるというようなことになりますれば、これは道交法の違反ということになるわけでございます。しかも自動車がとまったりするわけですけれども、その自動車がかまわずに突っ込んでくるというような状態でございますと、人の生命身体財産に危害が及ぶというようなことも起こるわけでございますけれども、そういう状態でない、全体として交通の円滑な運行がとまったという状態でありますと、警職法にいう要件を満たさない場合があり得ると思います。しかしながらここにいう公共の秩序を維持するために警告、制止をするということはあり得るだろうと思います。
  230. 松井誠

    ○松井(誠)委員 都条例の場合に、無許可の場合あるいは許可の条件に違反をした場合、そういう場合には警告、制止、その他の所要の措置をとることができるということを書いてあるわけですけれども、たとえば午後九時なら午後九時までと請願の行進の終了時間がきめられてある、ところが九時半まで行進した、請願を行なったという場合には、具体的には都条例の具体的な問題としてどういう規制をされておるか。
  231. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 具体的な問題を引用して御説明するとはっきりするのでございますが、先般の政防法の際におきましても、許可時間を過ぎました場合におきましては、もうすでに請願の時間は終了したのだ、ここで請願はやめていただきたい、集団行進はやめていただきたいということを主催者に対して警告をいたしまして、そうして主催者の納得を得てその場でやめる。あるいはその場で主催者がその警告に応じないという場合においては、実力によりますところの警察上の必要な規制をいたされるわけでございます。
  232. 松井誠

    ○松井(誠)委員 警察の実力による必要な規制というと、具体的にはどういうことですか。
  233. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 大体従来の私どもの経験から申し上げますと、必要な規制という場合には、すわり込んでいる場合にはすわり込みをやめさせるというために警察官の力を用いて立たせる、あるいは歩いていただく、こういうようなことを具体的にやるわけでございます。
  234. 松井誠

    ○松井(誠)委員 つまり実力でもって解散をさせる、こういうことですか。
  235. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 実力によって解散をさせるということも、一つの場合としてございます。
  236. 松井誠

    ○松井(誠)委員 条件違反の場合に、その状態というものは一体どういう状態になるのかということです。たとえば九時までの時間であったところが、九時半になった。九時半になったということで、確かにこれは条件違反、従って公安条例違反である。そういう状態が生ずるわけですね。そういう状態が生じたときに解散をさせることができるという、そういう強い規制というものをやり得るのでしょうかね。
  237. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 単なる時間が過ぎただけということではございませんので、公共の秩序の保持上という意味において解散を命ずるわけでございます。
  238. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それはただ時間が過ぎたというだけではなくて、過ぎたことのために、具体的に、現実にどういう必要が生ずるのか。現実に公共の秩序安全というものを脅かす具体的などういう事情が生ずるのか、時間が過ぎたというただそれだけのことで。そういうことを具体的にお尋ねしたい。
  239. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 私どもも、三十分過ぎたから、あるいは一時間過ぎたからという、単純な数字的な計算でやっておるわけでございません。現実に政防法の場合に起きました実例といたしまして、六月の七日と存じますが、夜間三時、四時にわたりまして請願を行なったという実例がありました。その機会におきましても、われわれとしては十分警告をし、主催者の自主的な、社会的通念において当然考えらるべき措置をとっていただくということで、実力規制というものにつきましても、相当われわれとしては緩和した方法でやったわけでございます。しかしながらその翌日におきましては、同じように牛歩を行ない、同じように停滞をいたしまして、昨日と同様に、夜間三時、四時までにも及ぶような国会周辺、あるいはひいてはその請願のあとで行なわれるところのデモというものが、その沿線に与える影響というものを顧慮いたしまして、時間内に切り上げるようにという警告を行ない、同時に、時間を相当経過した場合におきましては、それに対する必要な措置を講じた。もちろん相手方の団体の性格にもよります。先般の場合におきましては全学連いうものが主としてそういうような行動を行ないまして、その結果労組の大部分の方にそういう影響があったということで、私どもといたしましては一律にこれを律するというようなことではございません。具体的な場合に応じまして、警察の判断といたしまして合理的な限度内において必要な措置をとっているわけでございます。
  240. 松井誠

    ○松井(誠)委員 たとえば九時なら九時というものが三十分過ぎた、それだけでは、条例違反という条件が生じたにしても、公共の安全という問題から見れば、何も特段の変化がない。それではそのときに、今のままではデモも済みそうもないからもう少し時間の変更ということで、申請のし直しでもやったらどうかというような具体的な措置をとられておるのですか。
  241. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 それは相手方の主催者が良心的に、しかも条件を正しく履行されるという場合におきましては、それぞれの話し合いにおいて十分必要な措置をとっております。しかしながら故意に牛歩を行なったり、あるいは故意に時間をおくらせるということが歴然として明らかである場合においては、そういうことにおいての話し合いについては警察当局は応じておりません。
  242. 松井誠

    ○松井(誠)委員 故意に時間をおくらせるということが、具体的には公共の安全にはどう関係するのですか。
  243. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 たとえば、今申し上げたように、当然九時もしくは十時に終わるべき請願であるにもかかわらず、翌朝にわたる、あるいは翌日にわたるというようなことにおきましては、それは合理的に判断いたしまして当然のことではないかと存じております。
  244. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから時間を制限した場合に、いつでも翌朝にわたる、翌日にわたるという、そういう超過をしておるわけではないでしょう。というのは、実際の運用の仕方というものは、多少の時間を経過をした——これはまたあとでお尋ねしますけれども、経過をしたということで、もうすぐ解散をしろ、解散をしろという放送をしておる。従ってこの解散というものは、何か時間が過ぎればもうすぐに解散をしなければならないという、そういう、表現の自由というものをほんとうに制限をする具体的事情が生じておるのか、あるいは生じなくてもできるというお考えであるのか、そういうことをお尋ねしたいわけなんです。もう御承知でしょうけれども、一橋の田上教授でさえも——さえもというとおかしいのですけれども、田上教授でさえも、そういう条件違反だということだけで解散はさせられないのだ、条件違反ということがさらに具体的に、まさに現実のそういう危険というものが生じなければ、すぐ解散に持っていくわけにいかないのだということを言っておられるでしょう。田上教授でさえもいわばそういう立場をとっておるのに、少なくともあの警視庁宣伝カーは、もう三十分、一時間過ぎると、非常にやかましく、解散をしろ、解散をしろ——解散をしないで時間を延ばすというようなことが幾らでもできる昼日中においてさえも、そういうことを言っておる。そういう現実の運用の面というものは、警備部長は御存じなんですか。
  245. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 一般的にそういう議論をされると、私ども大へん困るのでございます。それぞれ具体的なケースにおいて、それぞれとった所要の措置でございます。それと同時に、今申し上げたように、警視庁の広報車から解散をせよというようなことを、直接すぐ申し上げるようなことはないと思います。相当の時間を置きまして、十分相手方の主催者に警告を発し、さらに相当の注意をいたしまして、しかる後に措置をとっておるということで、やみくもにそういうようなことをやっておるというふうには思っておりません。
  246. 松井誠

    ○松井(誠)委員 だんだん終わりにしたいと思いますけれども、その現実の運用の面というものを、警備部長は一体どの程度御存じかどうかわかりませんが、これはもう笑い話になってしまいましたけれども、私自身目撃をした。何かの座談会にも出ておりましたけれども、あの地下鉄の、第二会館と第三会館の方へ行けるところの入口で、女の人が歩道に立ちどまった。そうすると宣伝カーは、そこに立ちどまってはいけません、交通妨害になりますから、さっさと歩いて下さい——あまりおかしいので、みんな笑った。女の人も笑った。そうすると、笑ってはいけません、笑うと逮捕しますよ、こういうのですよ。あの警視庁の車というのは全部レコードをとっておるそうですから、一ぺん聞いてごらんなさい。そんなむちゃな取り扱いをやっておる。そこでこれは一ぺんお尋ねしたいと思うのは、たとえば九時なら九時で新橋で解散するという条件になっておる。ところが九時にならないけれども、たとえば八時四十分なら八時四十分に国会のところにやっと到着した。そういうときも、もう請願の時間は過ぎました、ここからあなた方はもうお帰りなさい、そういうことで、あの通用門のところで追い返す、そういうことをやっておることを御存じですか。
  247. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 ただいま松井委員から言われました前段のようなことは、事実がないと確信いたしております。同時に、今申し上げたように、八時四十分あるいは九時というようなことについて、私どもは機械的にやっておるわけではございません。それぞれの実情に応じた取り扱い方をいたしております。  さらに申し上げておきますが、私どもが非常に時間の制限を気にするという点は、ともすればやはりおくれがちである。しかもあの沿道のデモ路線の状況は、いろいろな意味において——解散地における解散のやり方とか、あるいは沿道における交通整理等の問題について、警察側は、労組あるいは集団運動を行なわれる方からは非常な非難攻撃を受けますが、反面、あの沿道の各路線におけるところの各位からも、私どもはいろいろな注文を受けるわけであります。従いまして私どもは、集団運動というものとあの沿線におけるところの、それによって受けるいろいろな影響というものを、いかにうまく調和するかということに念願を置きまして、デモの規制あるいはデモの取り締まりをやっておるわけでございます。
  248. 松井誠

    ○松井(誠)委員 時間が非常におくれて、著しくおくれて、深夜になり、夜明けになるという場合の配慮というものは、私どももわからないではない。しかし私の今お尋ねをしたのは、そういう制限時間であるのに、たとえば九時が制限時間であるのに、八時半や八時四十分ごろに解散をさせる。なぜかというと、たとえばここから新橋まで行くのにはどうしても九時を過ぎる、従って九時にならない限度においてもそれは条件違反だ、時間はまだこないけれども、どっちみち新橋まで行くには九時は過ぎるだろう、ですから解散をしろという建前で解散を呼びかけている。こういうことは一回や二回じゃないのです。そういうことは御存じですか。
  249. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 私どもといたしましても一回ぐらいそういうことをやったことに対して、きつい規制を加えた実例は全然ございません。やはり二回、三回、四回とたび重なって参りますと、それに対する当然の結果というものをわれわれは予想せざるを得ないということで、許可条件の範囲でできるだけやっていただくということは当然ではないかというふうに考えております。
  250. 松井誠

    ○松井(誠)委員 どうも私の質問がおわかりにならないのか、制限時間以内に、たとえば九時に終わるのだというのに、八時半か八時四十分に解散をさせるというようなことをやっておるじゃないかということです。
  251. 高橋幹夫

    ○高橋説明員 そういうふうに許可時間以内で必要な規制を加え、解散をさせた実例は一件もございません。
  252. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これは具体的な資料を出さないと水かけ論になりますので、これだけで終わりたいと思いますけれども、最後に一言申し上げたいと思いますのは、今度の政防法のデモというものが非常に高姿勢だといわれたその一つの原因は、確かにあの判決というものがあるに違いない。しかしさらに考えると、私たちはやはりあの安保のときの跡始末というものをきちっとされていなかったということが、大きな原因をしておると思う。この前も国会で私は具体的に、もうのがれようのない、だれが考えても行き過ぎだという、そういう具体的な事例を二、三あげて、そういうことについては少なくとも警察当局としては判断をはっきりさせるべきじゃないかということを言ったわけです。ところが、いずれ善処する、調査中だということで、一言もその非を認めようとされない。そうしますと現場の警察官というのは、一体どこまでやれば違法だといわれるのか、まるで際限もなく自分の権限が伸びていくような錯覚を受ける。デモの方でも、一体どこまでやったら警察にしかられないで済むのか、そういう限度というものがてんでわからなくなる。そういうようにだれが考えてももう——あのときに私も何べんも言いましたけれども、全国に放送されて、あのようにラジオ関東のアナウンサーをとっつかまえてぎゅうぎゅういわせ、あるいはずっと遠い堀ばたにいる大学の先生に乱暴をする。その直後に警察はちゃんと見舞に行っておる。こんなだれの目にも明らかなそういうことぐらいは、少なくともこういうことは行き過ぎだという意思表示をされないから、野放図になる。そういったことを考えるわけですけれども、これからあとの問題もいろいろございますので、一つ国家公安委員長にお尋ねしますけれども、そのような安保の跡始末、そういうものをやはりきちんとして、それこそ厳正に行なうというお考えであるか。
  253. 安井謙

    安井国務大臣 安保の問題につきましては、御承知通りあのときのデモはあまりにも目に余るものがございました。その結果としていろいろな不祥事も生じたわけでございまして、これはお互いにはなはだ遺憾なことだと私ども心得ております。従いまして当然に処置すべきものについては十分調査をして、それぞれ当局において手続をとっておることと確信をいたしております。  またいろいろとデモの問題についてはお話がございました。要はデモの本体を認めないというようなことではなくて、それが公共に及ぼす影響を最小限度に食いとめようということでございますが、これを一つの事例だけで極端に突き進んでいきますと、どちらにも極端な言い分が出てくるだろうと思います。結局は社会の通念といいますか、常識によって、ほんとうにお互いに秩序正しい行動あるいは取り締まりを今後もやっていきたいと思っております。
  254. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういう抽象的なことは何べん伺ってもあれでございますからこれでやめますけれども、先ほど来いろいろ問題になっておりますように、公安条例がなぜ問題になるかということは、一つはデモ規制法という、つまり国会で一応の判断が出た。これには見解の相違はありますけれども、われわれはそう考えている。そういう国会の判断の出たものについて、裏口から全国の公安条例でそういうものを復活させようとする、あるいは警職法で、いわばこれは私の考えによれば現在の日本の警官の職務執行のぎりぎりの限界を規制したものだと思っている。従って警備部長の言うように、これとは別の規制の面であるならば、露骨にいうならば、政治警察の面であるならばもっと条件を緩和した方がいいだろう。むしろそういう政治警察であろうと行政警察であろうと何であろうと、警察権のぎりぎりの限界というものを警職法というものは考えておる。そのように私たちは考える。ところがそういうようにワクを破って公安条例というものがあちこちにできている一そうすると一体公安条例というものがやっておれば、国法全体の体系、スタイルというものを破って出てくるということはどういう意味か。先ほど来言っておるように国会は国権の最高機関である。少なくとも国会の中における民主的な勢力は、各地方議会における民主的勢力よりもその比率ははるかに大きい。そういう大きいところを避けて、保守的な要素の非常に強い地方議会で、その楽な土俵の上で勝負しようというところに持っていこうとする。それは私は一種の資本の分断政策であると思います。そういう分断政策によって、中央の民主的な運用を、 コントロールを避けていこうとされる。こういうところにこの公安条例というものの混乱の根本の原因があると思う。  そこで一体デモ規制法なりあるいは警職法なり、そういう法律が今のような形で次々に無視されて、地方議会にこういう国民を直接に取り締まる警察条例が次々に出ておる。青少年保護条例がすでに問題になっておる。そういうものが次々と問題になったときに、一体これはどういうことになるのか、そういうことについて最後に公安委員長の御意見をお伺いして終わりにしたいと思います。
  255. 安井謙

    安井国務大臣 私どもは公安条例を裏口から作って、デモとか住民の当然の権利を徐々に規制していこうというような考えは毛頭ないのです。いわゆるデモなり、あるいは国民の請求権といいますか、発言権が不当にわたらない程度で十分に発揮されるように、おのずから社会的な常識のワク内でこれを整理していきたい、こう考えておるわけであります。
  256. 松井誠

    ○松井(誠)委員 終わります。
  257. 園田直

    園田委員長 門司亮君。
  258. 門司亮

    ○門司委員 二、三お尋ねいたしたいと思います。  最初に聞いておきたいと思いますことは、公安条例なるものを考えます場合の基本的なものの考え方として、一応大臣にお伺いをしておきたいと思いますが、この公安条例は憲法の概念との関係を考えてみますと、憲法の概念はやはり何といっても基本的の人権を主にしてものがすべて考えられておると思います。しかし、そうはいっても公共の福祉に反することがあってはならないということが書いてある。公共の福祉は第二義的なものだと考える。そうだとすると、この公安条例なるものは、どっちにウエートを置いて条例が制定されておるものであるか、その辺の解釈を一応大臣から聞いておきたいと思います。
  259. 安井謙

    安井国務大臣 公共の福祉と人権というものとのほど合いはなかなか議論が尽きないかと思いますが、公安条例の精神は、その両者の調和をはかっていくということにあろうかと思います。
  260. 門司亮

    ○門司委員 私の聞いておりますのは、調和をはかるということが具体的に出て参りますのは法律であります。公安条例という一つ地方自治体の条例によって、そういうことが言えるものではないと考えております。法律を制定いたします場合においては、少なくとも憲法にもそう書いてありますから、憲法によって基本的の人権を認めながら、公共の福祉については法律でこれを定めると憲法に書いてありますから、これは法律によって制定されるものと考えておる。しかしこれは条例なんです。地方条例なんですから、私が聞いておりますのは法律があって、その法律に基づいて条例をこしらえるというのなら一応話はわかるのですが、基本的なものの考え方として法律を飛び越えて、そして公安条例というものが、憲法の基本的の精神である人権の尊重を保持し、公共の福祉が調和したというようなことが言えるかどうかという問題です。私はあくまでも地方条例というのは、憲法並びに地方自治法に書いておりますように、法律の範囲内でなければならないということ、従ってこの公安条例は、もちろん自治法の十四条に基づいて制定されたものであるということに間違いはないと思います。しかしそうだといたしますと、この条例の内容についてもう少し検討してみますと、もし基本的人権というものが先行して、そして公共の福祉というものが、従という言葉はどうかと思いますが、基本的人権を尊重しながら、しかしそれは公共の福祉というものを守らなければならないということになって参りますと、この条例の規定というものはあくまでも届出制が原則でなければならないと私は考える。いわゆる一方において憲法の保障した集団の行動であり、結社の自由であり、その他のものは憲法がずっと保障しておるのである。しかしそれが社会の公共の福祉を阻害するものではないということになって参りますと、公共の福祉の方が従であるとするならば、基本的人権を尊重するとするならば、この条例は届出制でよろしいのだ。許可制ということは私は誤りであると思いますが、委員長、どう考えますか。
  261. 安井謙

    安井国務大臣 私は公共の福祉が従といいますか、それは基本的人権を主として尊重しなければならぬという門司さんの御説には賛成でございますが、それかといって公共の福祉をそれではどこまで限定していくかということになりますと、これはおのずから社会通念上の観念できまってくるものだと思うのであります。そういう意味先ほど行政課長も答えましたように、地方の条例というものは必ずしも法律できめてない分野で出さなければならぬ、地方の行政事務を執行するという意味から出さなければならぬ分野も出てくるのだと思います。そういう意味からは、法律を受けてそのままそれの委任された形の条例ばかりではなかろうと考えております。
  262. 門司亮

    ○門司委員 そのことは自治法の二条の二項に書いてあります。だから大体条例を定めるときには、この法律の二条の二項によってこしらえられておるものに間違いない。さらに同条の三項に規定してありまするいろいろな業務の中にこれは規定されておる。そうして公安条例の法律的根拠というものは、地方自治法の二条の二項を十四条が引用して、さらに実体は三項の第一にこれが掲げられておることは法律を読めばすぐわかることであるし、だれでも知っておることである。私の聞いておりますのはそういうことでなくして、こういう公安条例のいわゆる発想法の基礎となるものは、あくまでも公共の福祉が基本的人権に優先するのだというようなものの考えであってならないと私は思うのです。どこまでもこういう条例の発想は、いわゆる基本的人権というものがやはり一つの大きな基本でなければならない、土台でなければならない。その上に公共の福祉というものを一応考えていきますならば、これらの条例の内容というものは、届出制が私はどうしても正しいと考える。許可制ということはあくまでも国家権力による一つの制裁規定でありまして、国家権力による制裁規定の前に、やはり憲法の規定した人権というものは尊重さるべきである。ただ今両方を兼ね合わせたようなものだと御答弁がございましたが、それでは私どもは承服できない。いわゆる発想の根拠というものは、どこまでも基本的人権を尊重するという建前に立たなければいけないものだ。そういう基礎に立てば、この条例は許可制ということは誤りであって、届出制であって、特別の場合に許可制がつくということが当然でなければならない。ところが条例の内容を見てみると、ほとんど全部許可制によってこれが行なわれておるというところに、私はこの公安条例の問題がありはしないか、こう申し上げておるのでありまして、もう少し明確に公安条例の発想法に基づいて、一つ説明を願っておきたいと思います。
  263. 安井謙

    安井国務大臣 たびたび申し上げますように、基本的人権というものは尊重しなければならないし、またその基本的人権といえども、公共福祉のために一定の制限が加えられることはやむを得ない、これはお認めをいただけるであろうと思います。従いまして公安条例で出しておる許可制度というものも、初めからこれはデモを許すべきか許すべからざるかというようなことで許可制度にしておるわけではないのでありまして、原則としてはデモは許すべきものである。しかし最低の公共の福祉という立場から、やむを得ない場合にこれに条件をつけるという趣旨で、これは届出でなくて許可制度といいましても、その精神自体は届出制に通じるものがあろうと思います。
  264. 門司亮

    ○門司委員 今の大臣答弁、前段は大体届出制が認められるような気持でお話を願っておったが、あとになってこれはまた許可制にするのだというようなお話があった。私は、どこまでもこの公安条例というのは許可制がどうしても正しい、もしこれが届出制でなくて許可制でなければならないというのなら、憲法にかなり大きな疑義を生じてくると思う。憲法をすなおに解釈をして、そうして基本的人権を尊重するのだという建前の上に立って、しかし公共の福祉というものを度外視するわけにはいかないという建前の上に立てば、どこまでも公安条例の本体というものは届出であって、そうして特例に許可を必要とするような場合というようなことが、あるいは具体的に言えば個条書きにでも書かれておれば、まだ多少の恕すべき点もあろうかと思いますが、最初から全部を許可制だとすることになりますと、これはもう公共の福祉ということが基本的人権に優先しておるという、こういう考え方になって参ります。そうなって参りますと、公共の福祉に対しまする行政的の処置というものは、国が権力を持っておるのである、こうなるでしょう。基本的の人権というものについては、憲法がはっきり保障すると書いている。ところが公共の福祉についての行政上の運用というものについては、これは時の政府考え方によって考え方がかなり左右されると思う。従ってどう考えても、この種の発想の基礎になりますものは、どこまでも基本的人権を土台にして考えなければならないということは、私は当然だと思うのですがね。大臣はそうお考えになりませんか。そのときの行政権によって左右されるいわゆる公共の福祉なんというものは、そのときの行政者の頭によってかなり私は左右されると思うのです。また事態がかなり違うと思うのです。時代によって公共の福祉というような解釈も多少違ってくると思う。憲法の保障する人権というものは、これは変えるわけには参らぬと思う。そうするならばどうしても憲法で保障しておる基本的人権の方が優先すべきである。ところが公安条例を見てみますると、いずれも公共の福祉というのが優先して、国家権力によって、いわゆる警察の力によってこれが左右されるということになっておるので、私は問題点があるのではないかということが考えられる。私はこの解釈はそう私自身としては誤ってはいないと思うのですが、この点について私の考え方が違っておるのか、基本的の人権を尊重しておる、あるいは保障すると書いておっても、公共の福祉が優先するのだという大臣のお考えであるかどうか、もう一度伺いたい。
  265. 安井謙

    安井国務大臣 私は公共の福祉が基本的人権に優先するとは申しておらぬのでありまして、今言われる基本的人権はあくまでも尊重しなければならぬという憲法の条章は、十分承知いたしております。しかし同時に個人の権利というものも乱用されてはいかぬし、公共の福祉のために制限されるということも、同じように憲法の条章で書いてあるわけでございます。しかしその精神は、たとえば公安条例に現われましたような精神は、やはりできるだけ保障された国民の権利、たとえば具体的に申せば示威運動あるいは示威行進といったような権利はできるだけ保障したい、そういう意味で考えておるわけであります。しかしやむを得ない制限を条件としてつける場合があり得る。そこで今お尋ねの公安条例を許可制にしておるということは、許可という方へ重点を置いておるのじゃないかというお考え、そうでなくて、本来これは届出制によるべき精神のものじゃないかというお問いに対しましては、これは私も門司さんのおっしゃる通りであろうと思います。本来届出制によって許可すべき性質のものである。しかし条件によってやむを得ない場合だけ、これは一定の制限を付することがある、そういう意味からは、これはもう精神は届け出に通じる、こういうふうに考えます。
  266. 門司亮

    ○門司委員 精神が届け出に通ずるんなら、届け出と書いて届出制にしておきませんと、先ほどから何度も申し上げておりますように、公共の福祉というものの解釈については、さらにこれの実行といいますか、その取り扱いについては、時の権力者である政府考え方によって左右されるのであります。これはいなめない事実だと思う。ある場合における公共の福祉と、また何年かたった後における公共の福祉というものの考え方については、私は変わってくると思う。同時にこのことは考え方によって非常に幅が広いのであって、時の権力によって左右される危険性がある。従って、もし大臣がそういうお考えであるならば、この公安条例はすべて届出制でやる。そうして特別の場合にのみ許可制にするんだというようなことに直すことが、公安条例本来の姿ではないか。私は公安条例をそのまま認めるというわけじゃございませんが——そうしませんと、これを一切許可制にしておる今日の、しかも窮屈ないろいろな条件をつけておりまする場合には、これははっきり憲法にいう基本的人権の侵害である、違憲であると申し上げることが私にはできると思う。だからどうしてもこの際大臣がそうお考えならば、一つ各都道府県が持っておりまする公安条例の内容等についても、やはり助言なり勧告をしていただく必要がありはしないかと私は思う。そうして一切これは届出制でよろしいんだ、特に問題が起こりそうな場合に許可制にすることがあるんだというようなことが正しいんじゃないですか。このごろはだんだんだんだんこれは許可がむずかしくなって、もう許可どころでなくて、制限をしてきている。許可の上に制限がついてきている。それが往々にして行き過ぎになって、そうしてデモや何かの問題に触れてきているのである。届出制ならば何も行き過ぎということは私はあり得ないと思う。許可制であるから、結局取り締まりやその他に行き過ぎがだんだん出てくる。だから、どうですか、ここだけは一つ大臣、国家公安委員長としてはっきり言っておいてくれませんか。公共の秩序を保持することのために現行法律だけでは工合が悪い。そこで現行法律以外に各自治体が条例をこしらえて、そうして社会の秩序を保持することのために、詳しく言うならば、地方自治法二条の三項を忠実に守っていくというならば、こういう規定も必要だ、こういうことがあなたの方では言えると思います。しかしそうだといたしましても、憲法の精神からいえば、基本的人権の関係は、これはどこまでも届出制が正しいんだ、これをそういう通ずるものだというようなあいまいなことでは、これを私ども承認するわけには参らない。これは届出制の方がどう考えても正しいんだという理論に立たざるを得ないのであります。その点を一つもう一度答弁しておいてくれませんか。
  267. 安井謙

    安井国務大臣 門司さんの御質問は、おそらくこの公安条例といったような手続のものは、自治体がその権限を行使するために、ある場合にはやむを得ない場合もあるかもしらぬが、それには憲法の精神を尊重して、そうして基本的人権を認めるという建前から、たとえば公安条例というようなものに対しては届出制を基本にすべきものだという御質問であろうと思いますが、私もその考え方自体には決して反対じゃございません。今の自治体でそれぞれきめておりますのは、届出制にしておるものもありますし、許可制にしておるものもある。この許可制にしておるものも、これは初めからデモそのものを禁止するかどうかということをきめるための許可制にじゃなくて、本来はデモそのものは認める、認めるのであるが、しかしそれには今の憲法十二条でいうところの一定の制限もあるんだから、そういったようなものを付する必要上許可制をとる場合もあり得る、一定の条件をとる場合もあり得る、それを今日地方自治体が採用しておる点につきましては、今われわれがこれをやめて許可制にしろとかなんとかいうのを直ちにやるつもりは毛頭ない、こういうことでございます。
  268. 門司亮

    ○門司委員 これはこれ以上私は押し問答はしませんが、この公安条例をかりに認めるといたしましても、これが許可制だということは私は誤りだと思う。これはかなり大きく憲法に抵触した面があると思う。どこまでも届出制が正しいのだ。そして行動は自由であるべきだ。ただその自由行動が公安を害するようなおそれがある場合においてのみ、これに多少のチェックをすることは考えられることだということが、私にはいえるかと思う。  そこで問題になりますのは、もし許可制というようなことが、私の考えておりまするように憲法に大きく抵触するという考え方をもってこの問題を見て参りまするのと、もう一つの見方は、自治体の持っておりまする権限とこの条例との関係であります。なるほどいわゆる地方自治法の二条の三項には、地方の秩序を保持して、そうして住民の福祉あるいは安全をはかれということがちゃんと書いてある。だから社会の秩序を保持することのためにこういう条例が必要だというふうになろうかと私は考える。しかしもう一つの問題は、地方自治体の持っておりまする権限、この問題と相関連いたしておりまする集会あるいは行進というようなものについては、おのおの財産権に対する権限を地方自治体は持っております。そこで平たく申し上げて参りまするならば、たとえば公園を、この公安条例の中に、名古屋かどこかですが、占拠という文字を使っておりまするが、公園自身の管理権を持っておりまする市役所、あるいは県庁であるならば、私は公園の使用条例の中にそういうことは入れらるべき問題であって、これで私は規制ができるのではないか。これは所有権を持っておりまする者の一つの管理権でありまするから、公安条例というような団体全部を規制するというような考え方でなくて、一般の所有権に基づく監督権の発動というものによって、こういうものは処理さるべきものじゃないかと思う。道路にいたしましても、道路交通に対しまする規制がちゃんと法律できめられておるのであります。何も公安条例というものでこれを取り締まる必要はないのではないか。こういうふうに考えて参りますと、ことさらに公安条例の必要が一体どこにあるかということになって、おのおの持っておりまする自治体の権限に基づく範囲内において私は処理され得るものだと解釈する方が正しいのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、この点についての公安委員長としての意見はどうですか。
  269. 安井謙

    安井国務大臣 たとえば公園等においては管理権があるというお話でございますが、その際、門司さんも初めからお話し通り、今財産権という立場からの管理権がある、あるいは道路につきましては道路交通法というものがあるから要らぬじゃないかというお話でありますが、やはり公共の福祉を守るという意味の条例といいますか、条件と、そういった財産権にもとを発した管理権とはいささか異なると思います。この道路交通法だけでは今日の状況では不十分だといわゆる地方の議会が判断をいたしまして、地方の議会の意思によってこれは行なわれるのでありますから、私はそれが法律の精神を非常に逸脱していない限り、この条例を今われわれの立場からとやかく言うべき筋ではなかろうと思っております。
  270. 門司亮

    ○門司委員 そういうことになって参りますと、この条例の発案者は一体だれですか。発案者は、私から申し上げれば公安委員会だと思うのだが、大体そういうことになりますか。
  271. 安井謙

    安井国務大臣 この議会の条例の発議者は、都道府県の知事あるいは市町村長あるいはその団体の議員等、直接の発案者はそうなっております。むろん条例の内容につきましては、いろいろと原案を作るとかその他につきましては、地方の公安委員会警察が十分これに関与するものと思います。
  272. 門司亮

    ○門司委員 大体そういうことの御答弁があろうかと考えておりましたが、問題は、さっき申し上げましたように、憲法で保障いたしておりまする財産の管理権、これは明らかに憲法が保障いたしております。その財産の管理権に基づいて考えて参りますると、どこまでもこれは、条例というものは、公園使用条例に入れるとか、あるいは道路交通の特殊の場合においても、現実にこれは取り締まりをやっておるでしょう。従って、特殊のこういう公安条例というようなものをこしらえてこれを取り締まる必要は、私には見当たらない。またこういうものをこしらえる必要はない。同時に、昨日の阪上委員の質問に大臣は答えて、阪上委員が、条例の中に警職法あるいは銃砲刀剣の取り締まりの規定以外のものの携帯までもこの条例で禁止をしておるではないか、法律で定めておらない分野までもこれに規定されておるではないかという質問に答えて、大臣は、これは憲法並びに自治法の規定によってというような答弁をされております。いかがでしょう。あくまでも地方の自治体の持っております条例の範囲というものは、法律に定められた範囲を逸脱してはならないと私は考えておる。これは自治法に何と書いてありましょうとも、憲法の条章から見ますると、どうしても法律の範囲を越えて条例が制定されるということは、私は誤りだと思う。あくまでも条例は憲法ないし法律の範囲内でなければならないものが、きのうの大臣答弁を聞いてみますると、どうも国の規定にないものをこれにきめられているのもやむを得ないような答弁をされておりまするが、この答弁は私は非常に重大だと思います。大臣は今でもそういうようにお考えですか。
  273. 安井謙

    安井国務大臣 これはまた事務的な答弁になってしかられるかもしれませんが、私は今の法律を越えてという意味じゃなくて、先ほど行政課長から御答弁申し上げましたような意味の、法律そのものに規定してない地方の行政権を行使する上に必要な部門、その面については条例として出ざるを得ないのであろう、こう思っておるわけであります。
  274. 門司亮

    ○門司委員 自治法の二条の二項の一番終わりに、今大臣が言われた最後の言葉が書いてあります。そのことは単に、国の行なっていない仕事についてということであって、法律を越えてこしらえてもよろしいという解釈をすべきものではないと私は思う。そういうことは日本の自治体はおのおの憲法によって保障されてはおりまするが、しかし日本の国の外にあるわけじゃございませんで、日本の自治体というものは憲法によって保障はされておるが、完全自治体としての建前はとっておらないのであります。従って二条の二項の一番最後の字句も、私どもの解釈から考えまするならば、法律があって、そうしてその法律の適用は当該自治体に行なわれていないものというようにこの条文解釈するのが正しいのであって、二項に国で定めるその他のものが条例で制定ができると書いてあるから、だから法律を逸脱してもよいのだという解釈は、私は成り立たぬと思う。もし委員長のお考えのように、また行政課長が考えているように、国の定めのないものをやれると書いてあるから法律を逸脱して公安条例をこしらえてもいいんだということになると、私は大へんなことになると思う。日本の憲法ないし日本の自治法は、そこまで日本の自治体の独立性というものを認めていない。あくまでも地方自治体の権限というものは、憲法に保障され、法律で定められた範囲内でこれを処置していくべきものであるという概念を失ってはならないと私は思う。だから大臣のお考え、昨日の阪上委員に対する答弁は非常に大きな誤まりを犯す原因になりはしないかということを考えますのでお聞きをしておるのであります。大臣は今でもやはりそういうようにお考えになっているんですか。
  275. 安井謙

    安井国務大臣 私は昨日の御答弁で、憲法の精神はむろん当然のことでございますが、法律の精神を逸脱してよいというように考えておるわけじゃないのでありまして、憲法の十二条でいう公共の福祉を守るためには人権も一定の制限を受けなければならないというような条章、あるいはそれぞれ国の治安なり公安を維持していくという必要からいろいろ行なわれておる法律、それが地方の行政権を行使する場合にぴたりと当てはまらない部門があるので、その部門について、これは地方の議会の意思によってその部門をきめておるのだ、これはやむを得ないのではなかろうかと思うのであります。ところが、そのきめておる内容が、地方の議会の意思が逸脱しておるじゃないかということになりますと、これは多少水かけ論と申しますか抽象議論になろうかと思いますが、その点につきましては、昨年の最高裁の判決におきましても、集団示威行動というようなものが時として非常に常軌を逸脱する場合があり得るんだから、こういう程度のものはやむを得ないという判決もあったわけでございまして、こういったような意味から申しましても、現在あります公安条例が乱用されれば別でありますが、それを厳に慎んで、しかもこれは本来届け出制になるべき性質のものだが、必要の最小限度に制限を付する必要のため、手続としてこれを許可制にする。そういうきめ方をやっておりますことは、これはその程度のことは自治体の行政権の権威といいますか、条例の発動権の権威のために認めざるを得ない、こう思っております。
  276. 門司亮

    ○門司委員 時間が非常に迫っておりまして、あとの問題もございますので、これ以上押し問答はしませんが、私は憲法ないし法律をどう解釈してみましても、今大臣お話しになっておりますように、この種のものはかりに公安条例を認めるとしても、これを届け出制にして、基本的人権を尊重すべきことは当然であると思います。同時にわれわれの考え方としては、今大臣の言われておりますようなことがほんとうに地方自治法の第二条「地方公共団体は、法人とする。」第二項として「普通地方公共団体は、その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」と、こう書いてあります。その次の三項にありますのは、御承知のように「法律又はこれに基く政令に特別の定があるときは、この限りでない。」と書いて「前項の事務を例示する」と書いてありまして、地方公共の秩序の維持ということが一番先に書いてあります。私は、これらのものがこの公安条例制定の法律的基礎になっておるとしか考えられない。またその通りだと私は考える。そうだといたしますと、現在ありますさっきから申し上げておりますような、おのおの所有権に基づくあるいは法律に基づく規定があるのですね。その地域における国の事務に属しないものじゃないのですね。道路交通法というりっぱな法律がある、あるいは銃砲刀剣所持禁止のりっぱな法律がある。だから決してその区域内に国の定めるそういうものがないわけじゃないのです。だから私は、この二条がもし適用されておるとすれば、これも誤まりじゃないか。どう考えても、公安条例というものについては少し行き過ぎである。現行の法律で取り締まることが十分できますので、従って「その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」と書いてある。国の事務に属しないものはない。みな国の事務に属しているのである。道路交通取り締まりからくる公安条例も、やはりそこに発足があると思うのです。大衆の交通に障害を来たすおそれがあるからこれを規制しようとされておることに間違いはないのである。それでなければ一般の示威運動なんというものは自由でよろしい。百歩を譲っても届け出制でたくさんだと考える。この辺がどう考えても私は公安条例自身についてのものの考え方というものは違法であると考えております。  最後に聞いておきたいと思いますことは、今冒頭に聞きました発案者との関係でありますが、知事並びに市町村長が地方の自治体の秩序を保持することのためにこういうものが必要であるということが、私は発案の趣旨になろうかと思います。決してこれは警察権の拡大強化のためにあるなんということに考えを及ぼすわけではないが、そうだといたしますと、問題の所在はこの秩序の保持という自治法の二条三項の一番上に書いてある字句との関連性だと思います。秩序を保持することのためには、さっきから申し上げておりますようにたくさんの法律があって、それでこれはできる。所有権の監督権はおのおの自治体が持っておる。これに対しても規制をしようと思えば規制ができる。従ってさっきから申し上げておりますように、こういう公安条例の必要はないと考える。この公安条例というものは、考えようによりましては国家権力の拡大になっておるのですね、警察権自身がそうですから。これは地方自治体の権限に属する仕事と考えたら私は大きな間違いだと考える。警察によってこれが許可をされ、警察によって今日これが取り締まりを受けておる。今日の警察は一応警察法の中には都道府県警察なんという字句を書いておりますが、警察の幹部は全部国家公務員であることに間違いはない。だれが考えても国家権力の作用であるということが正しいと私は言えるかと思います。そういたしますと、地方の自治体の都道府県や知事やあるいは市町村長が、自分の権限外といいますか、管掌外の権力によってこれの取り締まりをしていこうとすることが、はたして自治法上認められるかどうかという問題です。条例については御承知のように違反した者について罰則がくっついております。十万円以下の罰金あるいは二年以下の懲役に処することができる、こう書いてあることは事実であります。しかしこのことは国家権力の作用というものでなくして、いわゆる自治体が自分の自治体の中の秩序を保持することのためにいろいろな条例をこしらえ、その条例についての違反者に対しての一つの制裁でありまして、しかもその制裁の決定は御承知のように裁判所においてこれが行なわれるものだ。警察権のみによってこれが処置されるものでは決してない。言いかえますならば、地方の都道府県知事や市町村長が警察権を行使することができる、大体こういうことに公安条例をそのままうのみに解釈すればなりはしませんか。都道府県知事あるいは市町村長が発案するのじゃないですか。そうして議会できめられて、その処置をするのはあげて警察である。ところが市町村は警察の権限は持っておらない。これは少なくとも都道府県の県警にあるといえばあるのであります。権限を持っておらない。だからどうしても市町村長が発案して、権限の行使は警察権によってこれを行なわしめる、こういうことになるのです。こういうことが自治法上認められますか。私は、自治法に認めておりますものは、あくまでも都道府県知事並びに市町村長の権限において、そして地方の秩序を保持していくということになっているのじゃないかと考える。こういうふうに考えることが私は正しいと思うのですが、この点はどうですか。都道府知事や市町村長はこういう条例を勝手にこしらえて——勝手にこしらえると言っては悪いが、こしらえて、そうして警察権を行使することができる、こういうことが許されるかどうか、もう一度答弁を願っておきたい。
  277. 安井謙

    安井国務大臣 警察の根本的なあり方とか警察権の問題に対する広範な御議論になりますと、またこれは対象からはずれるといいますか、時間の関係もあると存じますが、私は今の警察権の行使というものは、今日地方団体の都道府県にまかされておるものである、そういう制度になっておると思うのであります。しかし法律がいろいろあるのだから、そういう目的を達するために公安条例なんかかえって逆作用するので、要らぬじゃないかという門司さんの御議論も、私はこれは御議論として、あるいは御主張としてもわからぬことはないと思います。そういう観点でありますかどうですか、今の地方自治体においては公安条例を作ってない団体もたくさんあるわけでございます。あるのは、それで私たち認めないわけじゃない。そういう門司さんの御議論の通っておるところもあると思います。しかし同時に、何度も言いますように地方の自治体にまかされておる権限であるこの公安条例といいますか、地方条例の発議権というものは、これはやはり地方自治体の権限としてあるのでございまして、所定の手続をとって地方議会の意思によってこれが決定をしておりますものは、現在の内容においては、私は憲法なり法律の精神を著しく逸脱するというようなものではなかろうと思う。やっておるものはやっておるもので認めていこう。しかしこれを奨励をして、一律に警察あるいは国家公安委員会から指示をして、どこにでも全部作らせるというような行動をしようとすることは、そういうつもりは毛頭ないわけであります。でありますから、門司さんの御議論というものはそれで一応通っておる面もたくさんあると思いますが、私はそれかといって今の公安条例をやめさせようという気にはならない。
  278. 門司亮

    ○門司委員 大臣の意見もだいぶ聞きましたが、私はどう考えても、行政の組織の上から見ましても、自治体の長、ことに市町村長が発案をしてそうして警察権の行使を引っぱってくる。取り締まりは明らかに警察権の行使でありますから、そういうことが一体よろしいかどうかということですね。これの許可その他は、少なくとも県の警察に属するものであって、そこに許可権限を委任しなければならない。こういう条例を市町村で一体こしらえてよろしいかどうかということについて、かなり私は大きな疑問がある。この点についても、きょうは時間がおそうございますから、これ以上論議はいたしません。私の考え方からいけば、どう考えても憲法の人権の問題とそれから制定の過程における逸脱は免れない問題だと考えております。  それから最後に、これはちょっとあとの問題ですが、大臣に聞いておきたいと思いますことは、地方自治法のこういう条例の改廃に対する議会の制限がされておりますね。いわゆる議員八分の一の賛成を得なければ動議提出することができないということが書いてありますね。そうしますとこれらの地方において、たとえば革新系の議員というものは非常に少ないのでありますが、愛知県のような乱暴なことでかりに議会が通ってしまう。そうするとあとの改廃は事実上住民の意思にまかせる以外にない。議会で発案をすることができない。そういたしますると議員が住民から負託された権限というものは、非常に大幅に減じられおります。ことに愛知県の条例を見ますと、かなり無理なことがたくさんありますが、あとは地方住民の意思による改廃の請求権の発動以外に、これを修正する機会がなくなってしまう。議会内の闘争は事実上できないことになる。だから、この問題とはちょっと離れるようでありますが、この機会に聞いておきたいと思いますが、大臣は自治法を改正されて、議員の固有の権利と思って私は差しつかえないと思いますが、議員の固有の権利として条例の改廃権というものを議員に与えられるお考えがあるかどうか。
  279. 安井謙

    安井国務大臣 二つあると思います。一つは、市町村条例で警察権を制限するというか、命令するようなことはおかしいじゃないか、この御議論はまことにごもっともだと思うのであります。これは御承知のように警察制度が変わります前の市町村警察がありました当時にできた条例で、現在ではこれは県条例ができればそれに統一をするということで、今御指摘通りに新たに市町村条例を作って、県の警察権を制限するとか命令するとかいうことは、自後ないことに相なっております。  それから今の発議権についても、むしろ人員の制限を緩和するとか、もっと自由にやらせたらいいじゃないかという議論につきてましては、これは今後も十分検討していきたいと思います。
  280. 門司亮

    ○門司委員 そうだとしますと、六十一の中で二十五が都道府県であとは市町村であります。この市町村の公安条例は廃止するということに、大臣の方は何か助言でもいたされますか。
  281. 安井謙

    安井国務大臣 県条例ができます際には全部吸収をしていく、経過措置として今残っているということであります。
  282. 園田直

  283. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私はきのうこの警察関係でもって二つの質問をいたしたいと存じまして、公安条例については、ほぼ質問は終了した格好になっている。それからいま一つは釜ケ崎事件、スラム街対策、これについて御質問を申し上げたいと思っておりますが、大へん時間がおくれておりますので、スラム街対策については来週に保留いたしたいと思っております。時間が迫っておりますので、ごく簡単なことで一つだけ私の意見を申し上げておきたいと思う問題があるのであります。  それは、昨日の公安条例の質問の際に、資料の提出をお願いいたしたのであります。それは国の法律の先占領域、法律が先に占めておりますところの先占領域を侵して、なおかつ競合しておるというような条例の例を示してくれ、こういうことを申し上げたのであります。これに対しまして出て参りました条例が、青少年保護条例、これは神奈川県のものをお出しいただきました。それから金属条例、これも大阪、兵庫等にございますが、兵庫県のものが出て参りました。そこで先ほどから検討いたしてみたのでございますが、この保護条例が、警職法であるとか、あるいは少年保護法であるとか、あるいは風俗営業等取締法であるとか、こういったものの先占しておるところの領域を侵しているとはどうしても思えないところのものであります。むしろその法律の細部の細則のようなもの、あるいは細部規定というものを設けておる。従って、その法律よりもさらにこまかく具体的に物事を規定しておる、こういうことであります。同時にまた、金属条例等におきましても、古物営業法の範囲内におきまして、しかもさらにそれよりもこまかく具体的に規定しておる。私が問題としておるのは、公安条例はその細部の規定の問題でなくして、むしろ非常に包括的なものでもって、たとえば刃物を持ってはいけない、こうきておる。たとえば公共の秩序と安寧を維持するために明らかに危険だと認められた場合に云々という非常に包括的なものを持っておる。そういった法の先占しておるところの領域を侵しているものは、これは法律違反であり、憲法の違反である、私はこういう考え方を持っておるのであります。そのことにつきまして、先ほどから門司委員からもるる質問があったと思うのであります。何か私は勘違いしておるのではないか、こういうふうに思うわけであります。こまかく規定することがいけないのだと私は一言も言っていない。こまかく規定することは正しいのであります。そうしなければいけないのであります。先刻来の御質問を承っておりましても、安井大臣、それから局長さんといろいろ伺っておりますが、その皆さんの考え方が、何かこまかいものを規定することが法律の領域を侵しているのだ。そういう意味ではないのでありまして、これは一つ専門的に物事を考えていただきたい。しかも皆さんの答弁によりますと、条例というものは自主立法である、こういうことが明確に言われております。また一般的な法通念としても、条例が自主立法であるということは、これは明らかであります。自主立法であるがゆえに、これは明らかに一般法と特別法との関係にあるものじゃないということです。あなた方の考え方を支配しているものは、とかく一般法が警察法、警職法であって、条例が何か特別法である、従って特別法は一般法に優先するのだというようなものの考え方に支配されているように思うのでありますけれども、そうじゃない。これはあくまでも地方自治体の自主立法であるという建前をとらなければならない。このことが大きくあやまちを犯しているのではないか、こういうふうに私は思うのであります。従って、この理論をここで政府との間で論争いたしましても、これはなかなか簡単に結論は出てこない、並行綿をたどっていくだろうと思いますが、私どもはそういうものの観点に立って、従って、この公安条例だけがそういう立場をとっている。ほかの条例を見ますと、必ず法の先占の領域を侵していない、ただ細部の規定をしておるにすぎないのだ、これとの間に大きな開きがある。現在あるところのものが、ただ単にこれが集団示威行進だけに対してそういった法の先占領域というものを侵しておるのだ、こういう私は考えを持っておるのでありますが、しかしこの論争はなかなか簡単におさまりますまい。きょうはいろいろと重大な行事もございますので、この辺で私はとどめたいと思います。
  284. 園田直

    園田委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後五時二十五分散分      ————◇—————