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1961-10-12 第39回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十二日(木曜日)    午後一時二十五分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 太田 一夫君 理事 川村 継義君    理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    小澤 太郎君       大沢 雄一君    大竹 作摩君       久保田円次君    田川 誠一君       富田 健治君    前田 義雄君       安宅 常彦君    赤松  勇君       大原  亨君    佐野 憲治君       二宮 武夫君    松井  誠君       門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  裕君         警視監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君  委員外出席者         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 十月十二日  委員野口忠夫君及び和田博雄君辞任につき、そ  の補欠として大原亨君及び赤松勇君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度分の地方交付税単位費用の特  例に関する法律案内閣提出第六〇号)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度分の地方交付税単位費用の特例に関する法律案を議題といたします。  本案に関する質疑はこれにて終局いたします。      ————◇—————
  3. 園田直

    園田委員長 次に警察に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。阪上安太郎君。
  4. 阪上安太郎

    阪上委員 きょうは警察関係につきまして二つ質問いたしたい、かように考えております。その一つ釜ケ崎事件であります。それからいま一つは最近広島岐阜愛知静岡、こういったところで公安条例改正をめぐりまして相当混乱を起こしておるのでありますが、このことにつきまして、二つ伺ってみたい、かように考えております。  そこで最初公安条例について質問いたします。まず第一番に、現在各地でもって公安条例改正が行なわれておるのでありますが、どうもこの改正方向というものを考えてみますと、政防法の成立をわれわれ社会党によって阻止されたために、何かそれにかわるべき手段として警察当局があるいは公安委員会が、政防法なしくずしのために最も手っ取り早く持っていく方法として、それぞれの公安条例を改悪いたしまして、そのことによって政防法の不成立を補っていこう、こういうようなものの見方があるようにわれわれ考えられるのであります。そこでわれわれといたしましても、政防法は絶対にこれは通すべからざるところのものであるという考え方の上に立っておりますがゆえに、特にそういったなしくずしのおそれがあるところのこの公安条例の最近の一連の改正について、われわれとしては非常な関心事でございます。そこでこの問題を少し取り上げてみたいと思いますが、最初に、現在公安条例制定状況はどうなっておるか、このことにつきまして、特に昭和三十六年以降においてどういうふうな状態にあるかということを警察庁から伺いたい、かように考えます。
  5. 安井謙

    安井国務大臣 公安条例の適用の実態につきまして、警備局長から一つ報告させていただきます。
  6. 三輪良雄

    三輪政府委員 お手元に資料がお届けしてございまして、「各都県の公安条例制定の現況」というのがございます。これでごく大体の全国状態を御理解いただくわけでございますが、お尋ねはごく最近の、今年になりましての公安条例制定がどういう状態かということでございますので、それに限ってお答えいたしますと、広島県の公安条例が本年の三月三十日に制定をされてございます。次いで群馬県が六月の十六日、新潟県がこれは一部改正でございますが七月の十一日、三重県が同じく一部改正で七月の十五日、岐阜県がこれは全面改正ということで八月の五日、ごく最近愛知県の条例が十月の三日、静岡公安条例が十月の四日というふうに制定をせられたわけでございます。全体の数字もございますけれども、今お尋ねが最近ということでございましたので一応それでお答えいたします。
  7. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたの方からお出しいただいた資料で、全体の数字というものはわれわれほぼ承知いたしております。それによりますると県が二十五県、市が三十五、町が一、合計いたしまして六十一自治団体条例制定しておる、こういうことになっております。しかもそれらの制定昭和二十三年以降ずっと行なわれておると思うのでありますが、特に今あなたの方から御報告がありましたように、四県についてはきわめて最近これが行なわれておる、こういうことであります。そこで私、端的にお伺いしたいんですが、この条例制定している数字からながめてみると、全国四千になんなんとする地方自治体の中で、制定しておる数というものはきわめてわずかなものである、こういうことは事実だと思うのであります。そういたしますると、公安委員会として、この実態からながめてみたときに、はたして公安条例というものが何がために必要であるか。多くの市町村というものがほとんど制定してないにかかわらず、きわめて一部のものだけがこの公安条例制定しておる。こういう実態について、はたして公安条例などというものは制定する必要があるものであるかどうか。もしあるとするなら、なぜそういうような少数のものにのみ必要であるか、こういうことになってくると思うのでありますが、この点公安委員長としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  8. 安井謙

    安井国務大臣 公安条例全国市町村三千五百有余の中で六十一しかないじゃないか、こういうわずかの団体しかやってないのに対してどう思うかという御質問だと存じますが、御承知のように条例は、これは憲法の規定によりまして、地方団体、知事、市町村長あるいは地方議会が、その地方自治体の現状に応じて独自にこれを出し得る建前になっております。そうしまして、今の地方のいろいろな公共の安全、福祉を守るという意味から地方団体がこれを判断して、条例を出した方がいい、こういうふうに考えたそれぞれの団体が出しておるのだと思います。私どもは、その事情につきましては、出しておることは十分肯定もいたしますが、しかしそれに対して、将来、あるいは公安委員会というものが積極的に指導するとかなんとかというようなことは、現在のところ、建前上やれるわけでもございませんし、やるつもりもないので、それぞれの自治体自主性にまかせておる、こういうふうに考えております。
  9. 阪上安太郎

    阪上委員 そういたしますると、多くの制定してないところの都道府県市町村、これらは必要がないので制定してないんだ、こういうことになろうと思うんです。そこで逆に、必要であるとして制定しているわずかな六十一、それぞれ自治体特質もあろうかと思うのでありますが、どういう必要性から六十一の都道府県市町村がこれを制定しているか、その辺について、その根拠が明らかでありますならば一つ示していただきたい。それは自治体が勝手に作っているんだから、作ったところの考え方によって勝手にやっているんだから、われわれは知らない、こうは私は言えたものじゃないと思うんです。重ねて言いますけれども、わずかに六十一が必要性を認めておる。他のものは認めていない。四千五百からなんなんとする自治体の中で認めていない。認めていないものは認めていないんだから仕方がない。しかし、認めておるものは一体どういう理由でこれを認めておるのか、どういう特質性があるのかということについて一つ聞かせていただきたいと思います。
  10. 安井謙

    安井国務大臣 全体の数から申しますと六十一の団体でございますが、そのうち占めております比率は、御承知通り都道府県が二十五、市が三十五といったように、大都市あるいは大集団的な自治体が主として条例を作っておると思うわけであります。そこで、その根拠は何かと申されますと、これは終局的には、その地方自治体意思判断警察あるいは公安委員会としては尊重いたしておるということに尽きるかと思いますが、全体で社会公安あるいは秩序を維持する上に今の制度だけじゃ足りない、許された範囲内で条例を作って、さらにこれを整備したい、こういう趣旨で作っておりますので、作ったものについては十分その存在価値を認めておる、こういうわけでございます。
  11. 阪上安太郎

    阪上委員 全国都道府県市町村の中で作っているものの作った根拠というものは、現在の治安関係立法の中で処理することができないので、従って、それを補う意味において条例を作っているんだ。こういうような御答弁のように私は承りましたが、そういたしますると、他の多くの地方自治団体は、現行法規内でやることができないにもかかわらずそのままでやっておる。従って、行進または集団示威運動等に対する取り締まりについては、全然これはほったらかしにしているんだ。だから、ほったらかしにしている方が取り締まりが間違っておるのであって、条例制定している方が正しいのだ、こういうお考えでございますか。
  12. 安井謙

    安井国務大臣 必ずしもそう考えるわけじゃありませんので、ただいま申し上げましたように、れの地域々々の自治体状況によって、補足的にこの条例を作った方がより公共秩序を保ち安全を保つ上に便利だ、あるいは好ましいと思うというように自治体判断いたしましたところは、それでやっております。また、それ以外にそれぞれ法律制度によりまして、公共秩序を維持するという目的制度法律もございますから、それでもって今日のところまだ間に合うと考えておるところには、それを別に窓通しようというつもりはないわけでございます。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 そういたしますと、警察行政というものが、この集団示威取り締まりについては二つ方向を持っておる、こういうことになるのじゃないかと思うのであります。つまり、ある府県、ある市町村では、現行治安法規の中でもって十二分に取り締まれると考えておる。ところが、ある府県市町村、いわゆる制定したところの六十一の都道府県市町村においては、現行法律ワク内では取り締まりができない。こういう二つの違った方向警察行政というものは動いておる、こういうことになると思いますが、それでいいわけですか。
  14. 安井謙

    安井国務大臣 警察行政一般といたしましては、いろいろな目的がございますが、この社会安寧秩序を守るということは一つの大きな目的でございます。しかし御承知のように、今警察権行使いたしますのは、都道府県単位にいたしました地方公安委員会責任者でございます。その判断によりまして、これを行使するのにはたして今早急にこれを作らなければならないかどうか、あるいは作りたいが、多少いろいろな事情でまだ見合わせておる、あるいは今のところ作る必要もない、それぞれの状況があるであろうと思うのでありまして、その状況は、それぞれの自治体意思にまかせておく。こういうふうに考えておりまして、基本的な警察行政二つ、三つに分かれておるということはなかろうと思います。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 今公安委員長はそのようにお答えになったのでありますが、警察庁に伺ってみたいと思いますが、そういったことでもって警察行政というものが、集団示威運動を取り締まるために矛盾を生じてこないだろうか。たとえば、集団示威行動というものは必ずしも一の県内に限られていないと思います。一つの県から一つの県へ渡っていく場合もあり得るのであります。そのときに、一方では公安条例で取り締まる、一方では現行警職法あるいは道交法あるいはその他の銃砲刀剣類等取り締まり法律によって取り締まっている、こういうことをやっておったら一体どうなるか、こういうことなんでありますが、実際上あなた方が取り締まりをやる場合には、この二つ——私は二つ方向に分かれておると思う。これについてどういうふうにお考えになるか、また、どういうふうに実際操作していられるか。
  16. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお尋ねは、たとえば集団示威運動が県の境をまたがって行なわれる場合もある、そこで、一方にあり、一方に公安条例がないというようなことでは困るであろうということでございます。そういうことをとらえますと、おそらく行進をされる立場の方からいうと、同じ歩調であることがより便宜であるというふうにお思いになることは当然であろうと思います。実際の運用といたしましては、公安条例を持っておりますところでは、公安条例による事前の届け出ないし許可申請を受けまして、これによって必要な警察措置の準備をするということになりまするし、ないところでは、法律といたしましては、御指摘のように、道路交通取締法警職法その他の法令で、公安条例違反と申しますか、実際に行なわれるこの集団示威運動等が著しく秩序を乱すということでございます場合には、そういう現行の他の法令取り締まりをしておるのでございます。  公安条例におきます規制と他の法令による規制とは、御指摘のように若干ねらいも違いますし、ワクも違うわけでございます。ただこれがあるとないとで警察扱いが著しく異なるというふうには、現実の問題としては私も考えておらないのでございます。どちらが便宜であるか、ことに今のように県、市町村の境を越えてやるような場合に扱いが異なっては困るではないかという点は、確かに同じであった方が望ましいと思うのでございますけれども、しかしながら、ある公共団体公安条例というものによって直接規制する事態を必要と認めてやっております、一方はそれを持っておりませんという状態について、ただいま警察庁といたしましては、大臣お答えいたしました通り公安委員会としても何らかの指示をして統一するというふうなお考えを承っておりませんし、私どももその御方針に沿って別段の指示等をいたすつもりはないわけでございます。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 そこでさらに伺いますが、どうも先ほどからのこの問題についての御答弁を伺っておりますと、公安条例がなくても現行法規内でもって集団示威行為等を取り締まることができるという考え方に立っておるものと、公安条例がなければ取り締まれないんだ、公安条例があった方が便利だ、こういう考え方に立って公安条例を作っておるものと二通りあって、そうなりますと、公安条例というものは、現行治安関係法律ワク外に出たところのものをもって公安条例をきめておる、こういうことになろうと思うのですが、どうなんでしょうか。大臣からでも……。
  18. 安井謙

    安井国務大臣 私は、地方公安条例を作ります際には、現行法律というものの精神の範囲内で当然作られておるものだと心得ております。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 私は当然作られておるものだと思うとおっしゃるけれども、実際問題として公安条例がなくて十二分に取り締まってやっておる。先ほど大都市だと言われたが、必ずしも大都市がやっているとは限っておりませんよ。あなた方の資料からながめてみましても、大都市にもやってないところはある。小都市でやっているところもある。だから結局は、私は、この問題については、現行警察法規でもって、あるいは治安法規でもって取り締まれるにもかかわらず、取り締まりを強化するという意図から始めて公安条例を作った方が便利である、こういうことが言えるのじゃないか。現にやっておるじゃないですか。四千に近いところの都道府県市町村公安条例なしでもってやっているじゃないですか。それに対して六十一の都道府県市町村だけがこれをやらなければならぬということは——しかもあなた方の説によりますと、それを作った方が便利である、こういうふうにおっしゃっているのでありますけれども、その便利の意味がわからないのであります。公安条例法律の解説をしているわけでも何でもない。そうなりますと、便利というあなた方の言葉は、それ自体が欺瞞であって、そうじゃなくして、実際はやはりこういった公安条例法律ワクを越えて作る、法律が先占しているところのものを、法律よりも先に公安条例で占めていこうという考え方、そういうところから現実公安条例制定してやっているのだ、私はこういうふうになると思うのですが、重ねて一つお伺いしたいと思います。
  20. 安井謙

    安井国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたが、警察権行使運営という問題は、御承知通り地方都道府県自治体公安委員会に一任されているわけでありまして、公安委員会がそれぞれの立場で、今ある法律のもとにどういう運営をしていくか、これにはそれぞれ自治体によって運営の仕方、行使の仕方に若干の差異が出てくることもやむを得ないかと思います。しかし社会公安を守るという大きな軌道から、むろん法律の線からはずれるわけではないと思います。そういう意味で、どうもある団体公安条例を作った方がよりベターである、こういう考えのもとに出発いたしました場合に、これは便利といえば便利でありますが、より合理的な警察行政運営ができるという判断に立っているのだと思います。一例を申し上げますと、たとえばデモ行進をやる場合に、警察があらかじめその団体と交渉して、こういう条件のもとにやったという方がより混乱を防げるだろう、こういう判断に立つ場合が多いと思われる地方団体条例を作っておるわけでございます。しかし出たとこと言ってはあれでありますが、そのときの状況警察はこの行き過ぎをとめればいいんだというふうに考えておる場合には、必ずしも今条例を出さなくてもこれはやれるのだ。こういうふうに考えている団体もあろうかと思いまして、そこらの判断一つ地方自治体警察行政権なり警察権行使意思にまかせる、こういうふうに考えているわけであります。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 今の点については、なお問題点があり、われわれとしては釈然としない点がございますが、時間の関係もございますので、少し話題を変えてみたいと思います。  先ほど言われた愛知岐阜静岡広島昭和三十六年度以降、しかも政防法の国会の審議がああいう状態になって、一応継続審議になった直後に作られたところのものもこの中に含まれておる。こういうことであります。そこで一体、これらの四県の条例改正方向はどういう方向改正されておるか、この点を一つお伺いいたしたいと思います。
  22. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお答えをいたします前に、ちょっとお断わりをいたしたいと思うのでございますけれども、なぜこの段階で公安条例改正することになったのかということでございます。先ほどの御議論では、公安条例というものが必要か必要でないかということで、今新たに作るか作らないかという御議論かと思うのでございますけれども、これらはいずれも従来持っておったのでございます。ただ広島のように、広島公安条例というものがございまして、これは御承知のように警察制度が変りました二十九年に、経過規定で、県が何分の規定を作りますまで市の条例が依然として生きておりまして、市の公安委員会、市の警察がやりました従来の仕事は、県の公安委員会、県の警察がやるということになって生きておりまして、すでに警察を持っていない市の条例をいつまでも持っていることは適当でないということで、県の方とお話があり、市が廃止をして、県がこれにかわって五市についての県条例という形に生まれ変わったというものがございますけれども、その他愛知の例をとってみましても、群馬にいたしましても、静岡にいたしましても、従来ありましたものが、愛知とか、群馬岐阜等におきましては、御承知のように、五月八日の岐阜県の条例の問題で名古屋の高裁の判決がございまして、岐阜県条例の中で、不許可にした場合に県もしくは市町村議会報告をするということになっております。そういう文句がありましたところから、この公安委員会というのは、以前の国警の、県の公安委員会あるいは市の公安委員会というものをさすので、二十九年に新たにできた公安委員会とは性格が違う。そこでその後に手直しをしていないから、この公安委員会というものはすでになくなったものであるという免許の判決がありました。このこと自体につきましては納得がいきませんので、上告をしておるところでございますけれども、しかしながら、そういうことが裁判所で疑いを持たれるということは、公安条例として適当じゃないというようなことから、これらの点は今回文言その他内容について若干の修正を加えたということでございます。静岡はその前に、昨年の七月に最高裁の判例で、これは特殊な形の条例でございましたために、今や死文に帰しているという判決がございました。それを今度前と同じものを、死文といわれるところを訂正しまして出すというような格好になったわけでございます。  そこで先ほどお尋ねのどういう方向にということでございますが、これを分けて申しますと、一つ制定目的を新たに規定をいたしております。たとえば集団示威運動等公共の安全と秩序に対して直接危険を及ぼすことなしに行なわれるようにすることというようなことを目的とするというふうな目的規定をきめましたものが島根広島群馬岐阜静岡等であります。それから解釈規定といたしまして、拡張解釈及び乱用を禁止するというような訓示規定を設けて、必要な最小限度にとどめるというのを加えましたのが広島岐阜静岡等でございます。それから公安委員会許可を求めるという際に、従来の東京地裁違憲判決が出たときの内容といたしまして一番大きな点として、公安委員会が故意にといいますか、あるいは過失といいますか、許可ないし不許可処分を全然しないで時間が過ぎてしまった場合には、できないということになる、救済がないではないかというような御意見もありましたので、今回二十四時間前までに公安委員会許可もしくは不許可という処分をしない場合には許可されたものとみなすというふうな救済規定を入れましたのが島根広島三重岐阜愛知静岡というような各県でございます。それから従来七十二時間前といいますものを四十八時間前というふうに短縮いたしましたのが島根広島岐阜三重群馬愛知——愛知はただ行進を伴わないものだけでございますけれども、それと静岡、これが時間の短縮でございます。それから、これはいささか技術的でございますけれども許可内容及び条件主催者参加者に周知させ、順守させるための必要な措置を講じなければならないということを入れ、これをやった場合には主催者に免責をするというような規定を入れましたものが島根群馬岐阜静岡の各県でございます。  それから、これは拡張ということでよく言われるわけでございますけれども、その集団示威運動等が無許可であったり、あるいは条件に反したりしたというような場合に、警告または制止ができるというふうな規定が、従来ないものを入れましたものでございますが、これが新設されましたものが島根岐阜愛知静岡でございます。広島の場合には前の市に同じようなことがございましたので入れたようなわけでございます。群馬は従来からあったわけでございます。そういうことで、この点を新たに強化したという御批判があちこちにあるようでございますので、その点で御参考までに、そういった措置規定を入れております条例と、ありません条例との数でございますが、そういう警告または制止等措置ができるという規定を入れた条例が三十三ございます。ないのが二十八ございます。これは現在までの状態でございます。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 今の御説明によりますと、新潟県条例あるいは東京公安条例等において合憲違憲の問題があって、そして最終的に判決が出てきた。大体そういった合憲違憲判断の基準になるようなものに対して、今回の改正ではそれに措置をしていった、こういうのが大体の方向じゃなかろうか、私どもこういうふうに思います。先ほど言われた救済規定等についても、これは今までなかった。しかしながら、その救済規定がほとんど今度の改正等には入ってきておる、こういうことも私は事実だと思います。しかし、その救済規定許可の時間の問題でもって説明されておるけれども静岡県条例等におきましては、議会報告する義務があるというようなことでもって救済規定とみなしておる。これなどについては、はたして救済規定であるかどうかはわれわれは非常に疑問に思う。集団示威行為をやろう、デモをやろうというときに、届出に対して許可しなかった。許可しなかったものをいつ開かれるかわからないところの県議会報告する。報告するだけでもって、そのときに許可しなかったのは悪いじゃないかというような議会の結論が出たといたしましても、すでにそのデモの時期というものは失してしまっておる。そんなものをもって救済規定だなどという考え方は、それ自体おかしいのであります。ただその一例をとって考えてみましても、今回の改正方向というものは、どうも、そういった合憲判決あるいはその場合における逆の違憲の問題というものを、何か、今言ったような全く体裁をつくろう程度の範囲内においてごまかしておるというような感じが非常に強い。そこで私、具体的に伺ってみますが、この四つの県の一つ一つのあれを取り上げるわけにも時間的に参りませんので、静岡県の場合を取り上げてみたいと思います。  この中で、許可基準について、これは旧条例の五条の一項にあるわけなんです。それが新五条によりますと、「公安委員会は、前条の規定による許可申請を受理したときは、集団示威運動等を行なうことにより、公共の安全と秩序に対して直接危険が及ぶことが明らかであると認められるときのほかは、これを許可しなければならない。」こういうふうになっておるわけなんです。この点について私は率直にいって、これは現在の警察官職務執行法の先占しておるところの、法が持っておるところの権利というものを侵犯しておるところの、そのらち外に出たところの考え方じゃないか、こういうふうに私は思うのですが、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  24. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお言葉の中で、静岡県の救済規定議会報告するだけだということでございますが、私の述べました二十四時間前に許可、不許可がなければ許可とみなすということは、静岡県条例にも入ってございますので、その点は御了解をいただきたいと思います。それから直接公共の安全と秩序に対して危害が及ぶことが明らかであると認められる場合のほかは許可しなければならないというところをとらえて、警職法の占めておるところだというお言葉でございます。警職法は御承知のように、犯罪がまさに行なわれようとして、これによって人の生命、身体に危害が及びもしくは財産に重大な危害が及ぶ、急を要する場合に制止をする云々ということでございまして、いわば人の生命、身体、財産という法益が侵され、犯罪がまさに行なわれようとするその犯罪を未然に防止する観点で見ておるのでございます。この場合は、公安条例で見ておりますものは、集団行進集団示威運動にいたしましても、そういう集団行為は、最高裁の判例でも言っておるのでございますけれども、とかく群衆心理のために、あるいは興奮のあまり秩序を乱すということが経験則上遺憾ながらしばしばあるということで、公共の場所において直接に公共の安全なり秩序なりに害を及ぼすことがしばしばある。そういう事態をこれによって規制をしようということのねらいでございますので、なるほど相似た部分はあるわけでございますけれども警職法五条が占有している場所をそのままこれがねらっておるというふうには考えないのでございます。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたが今おっしゃったように、警職法五条では身体、生命、財産、こういったはっきりしたものをここにぴちっと規定しておるのであります。そしてこれの乱用を防止するという建前をやはり堅持されておる。ところが今回のはそうじゃないんでしょう。今言いましたように、ただ単に公共の安全と秩序に対して直接危機が及ぶことが明らかであると認められるとき、こういうことになっておって、非常に一般的、包括的な規定じゃないかと思うのです。公共安全、秩序なんというきわめて抽象的なものをやはりここに依然として持ってきておる。これは私考えるのに、かつて警職法の改悪のときにわれわれ非常に問題にしたのはこの一点だったわけです。そういうことは違憲の疑いが十二分にあるということで、われわれは警職法のときも審査の場合にこの点を非常に問題にしたのです。その問題にしたものがそのままここへ移ってきておるのです。これは明らかに警職法というあの現行法律を越えたところのものがここにある。条例というのは、御承知のように法律範囲内で、あるいは法律に違反しない限りこれを制定することができると、こうなっておるのでありまして、これをながめてみると、現行の、しかも警察官の行動の基準であるところの警職法の域を一歩飛び出たところのものでもって公安条例が作られておる、こういうことなんです。私はこれは非常におそるべき考え方ではなかろうかと思うのです。この点どうでしょうか。
  26. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお話は、私の承るところによりますと、公共秩序が直接危険にさらされるというような包括的なことでは違憲の疑いがあるというお尋ね一つあったと思うのでございますが、この点はその程度に、何と申しますか、裁量のワクを定めるということであるならば、これは自由に許可、不許可をきめるというわけでございませんので、憲法に違反しないということが、これは再々の判例であるところでございます。また警職法改正の際にねらったところと同じである、いわば警職法の占めた場所であるというふうなことにつきましては、先ほどお答えをいたしましたように、警職法とねらいが必ずしも同じではないということで、私としては警職法で拾ってない場面をこれが拾ったのだというふうに考えるわけでございます。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、だんだん明らかになってきたのでありますが、条例というものは法律範囲内でこれを定めなければならぬ、条例というものは法律に違反しない範囲においてこれを定めなければならぬ。これは地方自治法の使い方と憲法の使い方は違っておる。けれども内容は、大体その範囲というものは同じものだと思うのです。従ってあなたの考えでは、この静岡県の条例の五条というものは現行警職法ワクからはそれておるけれども、しかしそれは憲法の違反ではないのだ。つまり法律で定めてないことを扱っているのだから、これは条例で定めても合憲であるという解釈に立っておるわけなんであります。私が言っているのはその違憲論ではなくして、現行法律があって、同様の警告制止のものがあって、その現行法律ワク外に出ておるということは、明らかにこれは法律の精神から逸脱しておるんじゃないかということを言っているんです。この点はどうですか。
  28. 三輪良雄

    三輪政府委員 警職法のねらいと申しますのは、先ほど申しましたように犯罪を未然に防止をする、そして人の生命、身体、財産を保護するということであるわけでございます。そこで警職法の性質いかんということを言うのもやや大げさでございますけれども警職法というのは、いわば警察官の一般的な職務執行につきまして、これはその手段を定めたものというふうに考えるわけでございまして、それ以外のことについては警察官にそういう職権を与えることは間違いだというふうなことは私はないと思う。というのは、まあ文理だけの問題から申しましても、警職法の第八条に、警察官の職務といたしまして、この法令並びに他の法令あるいは警察規則を執行するということが書かれておりまして、その法令というものの中には、警察規則と並べてございますので、条例も含むというふうに考えられる。そこで警職法というものが、その条例によって、警職法が一般的に規定してありますもののほかに、他の行政目的警察官に権限を、職権を付与するということ、しかもそれを条例で付与するということを警職法自体が禁止している趣旨ではないというふうに私ども考えるわけでございます。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 それではこの場合伺いますが、条例法律関係なんでありますけれども、前々からこの法律条例の限界というものは非常に問題になっておったことは事実であります。そこで私はお伺いしたいのでありますが、その条例法律の限界というものについてどういう考え方を持っておられるか、公安委員長一つお答え願いたいと思うのです。
  30. 安井謙

    安井国務大臣 法律条例の限界という問題につきましては、今お話しの通りに、憲法では、法律範囲内と、こううたってあるわけでございます。自治法では、いわば法律の精神を通じて、その精神に沿うような条例を認めておるわけでございます。そこで、両方の精神から申しまして、私どもは、法律が一定の方向を示しておるという場合に、それを個々の自治体というものは、今日固有の自治行政あるいは警察権行使の権限を持っておるものでありますから、必要な場合にその法律の精神の範囲内でそういった条例等を作るということは、現在の自治権の建前からも許されておるものであろう、こういうふうに思っております。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 「法律範囲内で条例制定することができる。」これが憲法九十四条です。そこで先ほどの局長のお話によりますると、この意味法律というのは法令を含んでおるという解釈ですが、これは私は正しいと思う。従って、条例、規則等もその中に入るという考え方も正しいと思う。しかしながら、憲法が、法律範囲内で条例を定めると、こうなっている限りにおいて、それを受けて、地方自治法の十四条の一項による「法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務」これは自治法できめられたところの地方のいろいろな事務、委任事務であるとか、固有事務であるとか、そういったものでありますが、そういった事務に関して条例制定することができる、こういうふうに受けておるわけであります。そこで私が先ほど聞いているのは、その条例法律の限界点はどうなるかということを私は聞いておるのでありまして、それじゃ、法律にないものは何でもかんでもきめていい、あるいはまた警察官の警告制止という一つの問題をつかまえてきた場合に——この場合はそうなんですが、警告制止について警職法規定されている。警職法においては、その他の法令にものっとってやらなければならぬということであるから、従って、条例法律を越えたものを作っておいても、それによって行動して差しつかえないのだというのがあなたの意見なんです。これじゃ、あなた、果てしがないじゃありませんか。こういう問題は、どこかでその限界点を定めなければならぬと思う。私は、その場合に、先ほど公安委員長が言われたように、法令の精神にのっとってやればいいのだという考え方は少し荒っぽいのじゃないかと思う。そんなことを言い出したら、これはとんでもないことになってぐる。やはりここに規定してあるように、違反しない限りにおいて、しかも第二条第二項の事務に関して条例制定する、こういうふうになっておるのです。この場合、その親法ともいうべき警職法の中で規定されておる警告制止といったものは、現に法律できめられているのだから、その法律できめられたものを逸脱して、さらに拡張するようなものの考え方公安条例を作って、しかも一方において、わずか六十一の公安条例を作っているが、一方において四千になんなんとする地方自治体条例を作らずに、この警職法範囲内で警告制止をやっている、こういうことなんですよ。こういう問題についてどうするのですか。
  32. 安井謙

    安井国務大臣 今お話しの点は、非常にむずかしい問題でもあるし、デリケートな問題であることは私も十分に認めるのでありますが、今お話しのような警職法で認めた警告制止という規定は、今警備局長が答えましたように、これは一般的な警官の行動を律しておるものである。同時に、同じように並列をして、第八条で、その他の条件に従った場合にはまたその他の行動も認められるのだということを、同様にうたっておるわけなのであります。その場合には、今の警職法の二条で定めましたものと別のケースが出てきても、これは決して警職法の違反になるというふうには考えられないと思うのであります。しかも、もう一つ法律の精神ということでありまするが、この地方自治権というものにつきましては、相当な権限が憲法でも認められておるわけであります。法律を逸脱するとか、むやみに法律ワク外にはずれるということであれば、これは別でありますが、社会公安秩序を維持するという精神といいますか、関係法律は幾多もあるわけであります。そういう法律範囲内においての行動規制条件をきめるという意味で、その程度の条例が認められることは、決して違憲でもむろんないし、違法なことじゃなかろう、私はこういうふうに考えます。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 委員長、私が言っておるのは、警職法の違法だとは言っていない。地方自治法十四条の違法である。いわゆる法律範囲内でこれをきめなければいかぬ。こういうことであるから、法律範囲を逸脱しておれば、警職法であろうと、刃物の取締法であろうと、何であろうと、私は違法だと言っておるのです。これはどうでしょう。
  34. 安井謙

    安井国務大臣 今のお話、私の言っておることも同じことだと思いますが、自治法十四条でいっております法律に反しない範囲、憲法では、御承知通り法律範囲内、こういうふうに両方でうたっておるのであります。従いまして、私は法律の示しておる精神の範囲内、あるいは法律が一般的原則を示しておるその範囲内ならば、条例は当然作り得る。社会公安秩序を維持するといういろんな法律建前のもとにこの条例を認めることは、決して違法でも違憲でもない、こういうふうに思います。
  35. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、治安関係立法がたくさんあり、拾っていきましてもずいぶんございます。そういったいろいろな取締法に規定されていないところのものはすべて条例で作って差しつかえない、こういう解釈ですか。
  36. 安井謙

    安井国務大臣 これはすべてでありますか、どうですか。今出ております公安条例といったような程度のものは、自治権の範囲内で当然今の法律なり憲法の中で認め得る性格のものだと考えておるので、これ以外にどういうやつでも、何でも作っていいかどうかになりますと、これはやはり個々のケースによって判断しなければなるまいかと思います。
  37. 阪上安太郎

    阪上委員 それでは次のケースによって一つ判断していただきたいと思います。  これは委員長お持ちでないと思いますから、私読んでみたいと思いますが、許可条件の中で、静岡県条例が取り上げております六条では、「公安委員会は、第三条の規定による許可をするにあたり公共の安全と秩序に対して直接危険が及ぶことを防止するため、次の各号に掲げる事項について条件を附することができる。」こうなっておりまして、その中に「(1)官公庁の業務の妨害防止に関する事項、(2)刃物、こん棒その他危険な物件の携帯の禁止又は制限に関する事項」こうなっておるのであります。  そこで私がお伺いしたいのは、刃物等を携帯してはいけないということは銃砲刀剣類等所持取締法にはっきりと規定されておるわけであります。どんな刃物を持ってはいかぬということも、ここにはっきりとこまかくうたわれておるわけです。これはあなた御承知だと思います。ところが、ここにはこれまた包括的に「刃物、こん棒その他危険な物件の携帯の禁止又は制限に関する事項」こういうふうにうたっておる。そうすると、銃砲刀剣類等の取り扱いの中できめられておるところのものよりももっと包括的なものであり、刃物といえば一切の刃物が入る。こういうことをこの条例は取り上げておる。これはやはり今言ったような、ちょうど先ほど警職法の問題で結論が出ませんでしたが、今度は銃砲刀剣類について、この法律とこの関係において、その法律規定しておるものを、さらにこれを上回って侵しているのではないかという私の見解になるのですが、この点どうでしょう。
  38. 安井謙

    安井国務大臣 銃砲刀剣類の取り締まりにつきましては、いろいろ相当な限度が個々の場合にしてあることはおっしゃる通りでございます。これは、個々の個人が持ち歩きます場合に、いろいろな生活の必需品との関係もある、あるいはその他の関係もあって、一律に大ざっぱに取り締まったのでは社会的に非常に不便である、こういう点から個々の場合の規定をいたしておると思います。公安条例でいいます場合は、主としてこれは集団的な示威行動でございますから、個々の場合では起こり得ないケースであっても、集団的に起こると思われる危険を防ぐためには、そういう目的のためにもっと包括的な制限が必要になるという場合もあろうと思うのでありまして、これはやはりやむを得ないきめ方だろうと思います。
  39. 阪上安太郎

    阪上委員 警察庁はどうですか、あなた専門ですから……。
  40. 三輪良雄

    三輪政府委員 大臣のおっしゃる通りかと思います。先ほどもちょっと触れましたが、集団行為というものがえてして群衆心理にかられて不法越軌になりやすいということが、そもそもこの条例の必要とされているゆえんでございますから、そういう際に、こん棒あるいは刃物にいたしましても、銃砲刀剣では個人々々が、たとえば鉛筆や刃物を持っていてもいい、そういうものも、そういう集団に来るときには持たせないということを考えての規定かと思います。
  41. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、集団示威運動というものについて、一般的なものの考え方でこれを取り締まるのではなくして、特例の考え方で取り締まる、こういうことになるわけですね。そして集団示威行動等については、法律できめられた一般的な制限のほかに特に強烈なる、こういった法律以外にさらに拡大したところのものの考え方で包括的にこれを全般的に取り締まっていく、こういう考え方になると思いますが、どうでしょうか。
  42. 三輪良雄

    三輪政府委員 あるいは私のお答えが誤解を受けたかと思いますが、これはたとえば選挙演説会に刃物、兇器等を持っていってはいけないということで、普通の銃砲刀剣の場合よりも範囲を広く書くとか、いろいろ行為の態様によってその危険物を持たせないという必要性は変わってくるのではなかろうかと思うのでございます。そこでこの条例の中で刃物と申しておりますのは、銃砲刀剣では御承知のように刃渡りが幾らというふうになっているわけでありますが、そういう意味ではこの条例においては、危害を及ぼしますおそれのある刃物を持たせないということを考えて、こういう条件をつけるというふうに考えられたものと思うのでございます。ただ、この条例はできたばかりでございますし、この条例審議につきましては、県議会でそれぞれ御審議になったことと思うのでございまして、御審議の過程でどういうふうになりましたか、条例の解釈を私どもは決定的に、確定的なお答えはいたしかねるわけでございますが、私の受けます感じではそういうふうに思うのでございます。
  43. 阪上安太郎

    阪上委員 私は、ただいまの答弁には非常に重大なものが含まれていると思います。私はあえてここできようは憲法論を出さなかったのでありますけれども、憲法的なものの見方からいたしましても、やはり今言ったようなものの考え方は、憲法の、法のもとに平等であるというところすらも犯していく考え方じゃなかろうかというくらいの考え方を持つわけであります。もちろん公共の福祉、秩序、安寧、そういった問題から見れば、そこで言いのがれの点は出てくるかもしれません。けれども今の考え方は大へんな問題です。それなればこそ、政府等においても、あなた方のような考え方が横溢しておるがゆえに、政防法などの取り扱い、それから提出したところの理由なども、そういった観点から出てきておる、こういうことなんであります。先ほどから私が申し上げておるように、この一つの県の条例を見ても、すでに明らかに現行法律範囲を逸脱したところの、拡張されたところの解釈というものがある。しかも、そういう拡張解釈集団示威行為の場合には許されるのだという結論をあなた方は出しておられる。これはとんでもないことだと私は思います。  これは重ねてお伺いしますが、それでいいですか。
  44. 安井謙

    安井国務大臣 今警備局長の御答弁にありましたように、集団的な示威行動を制限するために、どんなことをしてもいいのだというような精神を全然持っておるわけではありません。これはやはりおのずから最小限度の制約にとどめるべきものであるということは、先ほども局長自身からもお答えしておると思うのでありますが、ただ集団的な示威運動になった場合に、たとえば昨年の最高裁の判決文でもありますように、集団的示威行為というもの自体が、その指導者あるいは集団の人の意思いかんにかかわらず、時として、これが非常に乱れてくるような場合もあるので、そういう場合には、どうしてもこれに対処する一定の措置は認められてしかるべきものだ、こういう解釈も現在出ておるわけです。そういう意味で、この公安条例におきましても、集団的になれば、指揮者の意思あるいは集団個人の意思にかかわらず、つい群衆心理というものが働きかける場合には、同じ凶器にしても、少し範囲の広いものを考えなければいかぬのじゃないか。これは私は常識上当然だろうと思います。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 右翼テロが、たった一人でも、あるいは数名のごくわずかな集団によってでも、ああいう行為をやってくる。一方、しかしながら、デモ行進をやっている場合に、ああいった凶悪な犯罪に類するような行為というものは出てきていない。そういったことを考えても、今言われたことについては、私は非常にこれは納得しない。ことに先ほど憲法、憲法と言われるが、憲法には、やはりこういう場合に大前提として、明白かつ現在の危険という大前提に立っているのではないかと私は思うのであります。ところが、先ほど言いましたように、これらの法律を越えたところのものの一番大きな前提としては、この明白かつ現在の危険というものを全く忘れてしまって、そうしてきわめて包括的な言い方でもって公共の安全と秩序というようなものを頭にもってきている。こういうことになっているわけなんです。それだから、特にその後におけるいろいろなこの条項を見ましても、こういった刃物、銃砲刀剣類等取り締まりに関する法律範囲を越えたもの、あるいは警職法五条の範囲を越えたようなものは、これは私は明らかに法律範囲を逸脱している、こういうように思うのです。法律範囲を逸脱したものは無効だというということは事実であると思うのです。この点について、大臣は依然としてやはりこれは法律範囲内だとお考えになるか、あるいは範囲を越えているものであるというふうにお考えになるのか、そうして範囲を越えているということについての説明としては、集団デモ行進等の場合は差しつかえないのだ、こういうようにお考えになっているのか、この点さらに確認しておきたいと思います。
  46. 安井謙

    安井国務大臣 私どもは、法律の精神の範囲を越えておるものではないという確信を持っております。従いまして、特に集団デモ行進を目のかたきにしてやっておるということではない。集団デモ行進というような場合に、その一般的な法律の精神の範囲内で必要だと思われる措置地方団体がとるという判断に対しては、われわれはそれを当然認容すべきものであろう、こう考えております。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 言葉のニュアンスになってきますので……。それならば集団示威行為というようなもの、こう言われたが、そういったものをもう一つ二つあげてみて下さい。法律範囲を越えてやたら条例をきめてどしどしやっていいというようなものを、集団示威行為の以外のもので該当するものがあるかどうか、一つあげてみて下さい。
  48. 安井謙

    安井国務大臣 詳しいそういった条例の提示につきましては、事務当局からまた必要に応じて資料などを出しますが、たとえば青少年の行為の青少年保護条例といったようなものも、同様な精神で出ておるものだと思います。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 よくわかりませんが、青少年保護条例のどこにそういうふうなものがあるか、説明して下さい。
  50. 三輪良雄

    三輪政府委員 たとえば青少年保護条例で、十八才に満たない者はとか、正確に覚えませんが、午後十一時以降は外出しないとかいうふうな条例をきめるわけでございます。これは法律ワクを越えたというふうに、先ほどおっしゃいますけれども、たとえば公安条例というのは、公安の、直接の公共の安全を維持するという目的の行政措置でございますから、そういうことのためにこの刃物、こん棒等の凶器を、どういうふうに制限するかという考え方でございますので、一般的に個人々々に銃砲刀剣を取り締まるという立場からきめた一般的な法規というものが占めていない領域、つまり目的としてねらっていない領域だというふうに考えるわけでございます。同様に、青少年保護条例あるいは金属屑条例というようなことで、法律がねらっておりません場面につきまして、法律に明白に反しないというものが、その府県府県民の意思によって条例としてきめられることは、他に例があろうかと思うのでございます。
  51. 阪上安太郎

    阪上委員 青少年保護条例が、ある法律ワクを越えておる、しかもそのようなことは差しつかえないのだ。青少年という特定のものを取り締まる場合には差しつかえないのだ、こういうことでありますが、私はその場合、その法律が何であるかということを——私は、そういったことにつきましては、どうも今の答弁は納得できません。また金属屑条例の場合において、その条例一つ法律範囲を逸脱しておるというような例になっておる、こういうことになっておりますが、それも私はよくわかりませんので、さらにこの質問は保留いたしまして、次に譲りたいと思いますが、その場合、それらの点について何か資料を明白にして一つ提出して下さい。  なお、きょうは釜ケ崎事件について御質問申し上げようと思っておりましたが、公安条例が先に出て参りましたので、できる限り一本に問題をしぼっていきたいと思いますので、釜ケ崎の問題につきましては、今の点とさらに加えまして保留いたしまして、後刻に譲りたい、かように存じます。よろしくお願いいたします。
  52. 園田直

  53. 赤松勇

    赤松委員 公安条例の問題につきまして質問をいたします前に、一言念のため大臣に申し上げたいことがあるのであります。  それは、きょうはわが党の浅沼前委員長が凶刃に倒れました日でございます。当時、委員長を失いまして、続いて嶋中事件が発生した。この嶋中事件に関連しまして、私は予算委員会の部屋におきまして、あなたに対して、国家公安委員会の責任を追求しました。当時、国家公安委員の中で出席常ならず、しかも国家公安委員としてふさわしからぬ言動をするという一、二の公安委員につきまして、これを糾弾しました。ところが休会中再び政府は、私が指弾いたしました国家公安委員を任命した。そうしてこの国会に承認を求めるの手続をとった。はなはだ私は遺憾であります。これは当然承認を求めるの案件が出て参りますから、その際、詳細にわたって私もこれに反対をしたい、こう考えておりますけれども、なぜあなたが、このような人物に対して再度任命されたか、その一点だけを、まず公安条例の質問の前に承っておきたい。
  54. 安井謙

    安井国務大臣 お話のように、国家公安委員の中で任期が参りまして、これが国会中でございませんので、規定に従いまして、あらかじめ任命の措置をとり、そうして現在国会へその承認方を申請しておることは、今、赤松委員の御指摘通りでございます。その際、個々の人の問題ということになろうかと存じますが、政府といたしましては、これは手続は官房でやられる手続でございますが、手続より、これは直接国家公安委員の問題でありますので、私がお答えするわけでありますが、これは私どもの方の政府の目から見ますと、今御指摘の御批判はいろいろあるかと存じますが、必ずしもそういう御批判に当たるわけではない。出席日数等におきましても、あるいは学識経験というような点につきましても、十分信頼に足りる人だという信頼をもちまして、再度任命の手続をいたしておるわけであります。
  55. 赤松勇

    赤松委員 はっきり名前を申し上げますと、小汀利得ですね。これは彼を指名することは当然野党の反対が予想される。予想されるにもかかわらず、あえて政府の方でこの問題の人物を再度任命したということにつきましては納得いきません。従いまして、適当な機会におきまして私ども意思表示をしたい、こう考えます。  まず第一にお尋ねしたいが、この公安条例というものが各地にできました。一番最初にできたのは福井県だと思います。続いて大阪であったと思いますけれども、この条例の原案は何人の手によって作られたか。むろんこれは日本政府でなしに、地方公共団体自身であると思うのでありますけれども、これを示唆し、助言し、かつ指導し、発想したのは一体だれであるか、この点についてまず第一にお伺いしたいと思います。
  56. 安井謙

    安井国務大臣 公安条例は、前にも御答弁申し上げましたように、地方自治体の長あるいは議員の権限になっております。また発議も当然その関係機関の手によって発議されておるわけでございまして、それぞれの地方公安委員会が必要と認めまして、所定の手続を地方議会にとっておるものと心得ておりまして、これにつきましては警察庁なりあるいは国家公安委員会が、あれこれと指示をいたしておる次第のものではございません。
  57. 赤松勇

    赤松委員 これは最初に占領軍の示唆によってでき上がった。これは大阪市議会警察委員会におきまして、当時鈴木警察局長が緊急動議として、「行進、示威運動及び公の集会に関する条例」を出したわけであります。その提案理由の説明の中に、「終戦を機として従来の治安関係法律が廃止せられ、進駐軍の命令により取り締まりを行なっていたのであるが、先般の朝鮮人騒擾事件、中央公会堂事件等最近の諸情勢にかんがみ、市民の治安を確保するため、今回この条例制定して、不測の事態を未然に防止したい」こういう提案理由の説明をやりました。ところが、この中に集会の禁止というのを入れておりましたために、特にこれに対する世論がきびしく、このために占領軍は第一軍司令部のスウィング少将が特別な声明を発しまして、そして、集会の権利を不当に侵害するおそれのある部分は私の命令で直ちに撤回された。こういうように当時声明をしております。従いまして、いわゆる占領軍の占領政策によって、各地において公安条例が出て参ったということは明らかであります。たとえば東京都の都議会におきましても、やはり当時の警視総監が、占領軍の示唆によってこの条例を作らざるを得なかったということの説明も行なっておるのであります。従いまして、最初公安条例制定の動機というものは、これは地方自治体それ自身でなしに、占領軍の地方の司令部の助言あるいは指導、そういうものによってでき上がったことは明らかであります。この点はいかがでありますか。
  58. 安井謙

    安井国務大臣 占領軍治下におきましては、占領軍の命令、示唆というものが相当日本の法令条例等にも影響しておったことは事実であろうと存じます。しかし、現在の段階におきましての公安条例というものは、そういうものを別にいたしましても、地方自治体がそれぞれ独自の見解で権限を行使しておるというふうに私どもは解釈しております。
  59. 赤松勇

    赤松委員 私はなぜこのことを問題にするかといえば、占領政策というものは日本国憲法に優先して当時その政策が行なわれた。従いまして、日本国憲法の二十一条の表現の自由あるいは二十八条の団体行動の自由、そういったものが占領政策の一環として大幅に制限をせられた。もちろんその自由は根本的に剥奪されておるとはわれわれ理解しておりません。これが大幅に制限をされた。従いまして、占領政策によってこれが大幅に制限された当時の情勢といたしましては、われわれは別にそれは賛成はいたしませんけれども、これはやむを得ない情勢であった、こういうように判断をいたします。この公安条例に対する違憲合憲の論争は今日なお続いております。政府の方は、あるいは警察庁の方は、最高裁におけるあの東京条例に対する違憲にあらず、合憲であるというところの判決をただ一つの武器として、いわゆる合憲を主張され、しかもそれに基づいて今日全国各地において条例の改悪がどんどん行なわれておる。こういう状態であるのであります。私どもは、日本人の立場から考えまして、占領政策によって作られた、いわゆる違憲とおぼしき個所は随所にある、あるいはまた日本国民の自由と権利を不当に拘束するものであるという見地から、憲法に忠実であるべき国家公務員の立場としては、あるいは地方公務員の立場としては、憲法の条項に即して違憲と思われるようなかような条例は、むしろ廃止の方向に持っていくということが必要ではないか。いわゆる自民党政府がしばしば言う占領政策の是正は、まず第一に憲法違反と思われるようなこういう条例の改廃をやることが必要ではないか、こういうように私ども思うわけでありますけれども、この点については国家公安委員長はどのようにお考えになっておりますか。
  60. 安井謙

    安井国務大臣 お話しの通りに、占領政策上、日本の国情に必ずしも合わなかったようなものも、なかったとは言えなかったろうということは御説の通りでございます。従いまして、平和条約ができまして独立以降、そういった行き過ぎあるいは不適当なものにつきましては逐次これを直していく、もとへ返して国情に合うようにしていく、これは当然とってきておる政策でございます。ただ、公安条例というもののできました由来については、むろん赤松委員の御指摘のような状況もあるいはあったかと思いまするが、しかし、その後の一般の社会の動き、あるいは全体の自治体の自治権というものを尊重するという意味からは、今日私どもはそういったものの影響以外に、この存立の理由があるものとして認めざるを得ないと思っております。
  61. 赤松勇

    赤松委員 結局、占領軍にかわって今日では政府やあるいは警察庁が、むしろ地方にある種の示唆を与え、あるいは指導をしておると思われるような点が数点あるわけであります。一つの例をあげますと、愛知議会におきまして、県の松尾総務部長が総務委員会におきまして、社会党の県会議員の質問に対して、実は国の要求によって今度の公安条例改正をやったのだ、こういう発言をしたわけです。これはあとで取り消しましたけれども、その前後の事情から見まして、警察庁あるいは国家公安委員会がそういう指導を与えておるのではないかということが疑われるのであります。また法律時報の資料版によりますと、ここに秋田県の財務課長の久世という人が論文を書いております。「行政事務条例制定の推移と今後の問題点」という中で、「この再度の最高裁の判決の後、学界においては、甲論乙駁の論議がはなばなしく展開されており、また各府県においても、既定の公安条例について、これらの判例、学説を参考とした検討、反省が行なわれ、主管庁である警察庁においても、その運用ないし改正をめぐっての指導を行なっているもののごとくである。」こういうように書いております。こういうような一連の事実から帰納いたしまして、国家公安委員会あるいは警察庁がそういう指導を行なっておるのじゃないか、こういうように思われます。だといたしまするならば、かつて占領軍が占領政策の一環として作った公安条例、それを今度は警察庁もしくは国家公安委員会が占領軍にかわって条例の改悪をやりつつある、こういうように私どもは疑わざるを得ないのであります。  そのことはしばらく別といたしまして、安井国家公安委員長も私どもと同様の国会議員でありまして、かつて警察法の、まあわれわれの立場からいえば改悪、あなたの方の立場からいえば改正、こういうことになるわけでありますけれども、この警察法の改悪が行なわれた。これはどういう理由、どういう必要によって行なわれたかは別としまして、少なくともこの警察法を変えることにつきましては、国会は、ことに衆議院におきましては、かつてない大混乱のうちにあの法律の改悪か改正かはわかりませんが、とにかくそれが行なわれた。記憶に新しいところでありますけれども、堤康次郎君が廊下において指を二本出して、それで会期延長が議決になったということで警察法は成立したんだというような苦い経験を私ども持っておるのであります。ことに政府原案の中で当時修正されました点は、いわゆる道府県警察本部長の任免については、政府原案では国家公安委員会が任免する、こういうことになっておりましたけれども、あの政府原案の修正をやりまして、国家公安委員会がこれを任免し、かつ道府県公安委員会の承認を得て、そうして任免をする。こういうように変わったわけですね。これなどもいわゆる警察の官僚化、警察の独裁化、そういったことを心配いたしまして、こういうような修正が行なわれたことは御承知通りであります。私どもは、今さら警察法の精神を言わなくても、できる限り民主的な警察立場から、国民の基本的な人権を守っていくんだという立場に立たなければならぬことは言うまでもないことです。これは現に今運輸大臣をやっておりまする齋藤昇君が、警察法解説の中で詳しくそれを述べておるのであります。ところが、公安条例のたとえば届け出の問題にしましても、罰則規定にしましても、かつて戦前ありました治安警察法と対比しまして、私は非常に過酷な、非民主的な規定が行なわれておる、こういうように思うわけです。それでかつての治安警察法、これが、たとえば集会する場合に何時間前の届け出が必要だったか、あるいはそれに違反した場合の罰則はどうなっておるか、この点を一つお答え願いたい。
  62. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、大へん申しわけございませんが、手元に資料がございませんので、取り寄せましてお答えいたします。
  63. 赤松勇

    赤松委員 それでは私から説明いたしましよう。  まず、いわゆる許可基準、公安条例でいうところの許可基準と同じでありますけれども、この許可基準の中には、多衆運動の取り締まり、第四条において多衆としております。第四条において、「屋外ニ於テ公衆ヲ会同シ若ハ多衆運動セムトスルトキハ発起人ヨリ十二時間以前ニ会同スヘキ場所、年月日時及其ノ通過スヘキ路線ヲ管轄警察官署ニ届出ツヘシ但シ祭葬、講社、学生、生徒ノ体育運動其ノ他慣例ノ許ス所ニ係ルモノハ此ノ限ニ在ラス」こういうように書いてあります。これは間違いございませんか、どうですか。
  64. 三輪良雄

    三輪政府委員 申しわけございませんが、手元にございませんので対照のしようがありません。
  65. 赤松勇

    赤松委員 そうしますと、あなたは先ほど、七十二時間前の届け出を四十八時間にしたと申しましたね。ところが、戦前は、ここにもありますように十二時間以前に会同する場所及びその通過すべき路線を届け出たらいいということになっておる。戦前が十二時間で、今は七十二時間、それを四十八時間にしたといっていばっているのですけれども、これは私はおかしいと思う。いわゆる民主憲法の中で、なぜ届け出の時間といわゆる許可基準についてこういうような開きがあるのか。また同じく治安警察法の第八条で、「安寧秩序ヲ保持スル為必要ナル場合ニ於テハ警察官ハ屋外ノ集会又ハ多衆ノ運動若ハ群集ヲ制限、禁止若ハ解散」することを得、こういうように書いてある。ここでも公共の安全とかあるいは安寧秩序を保持するとか、今の公安条例の文字と同じ文字が使われておる。いかに類似しているかということを私が説明する必要はないと思うのでありますけれども、たとえば、愛知県の条例でいいますと、「公共の安全を保持し、公衆の道路等を使用する権利を保護するために、行進又は集団示威運動が道路、公園若しくは広場を行進し、又は占拠する場合は、予めその区域を直轄する公安委員会許可を受けなければならない。但し、左の各号の場合には許可を要しない。」すなわち、「五百人未満の場合」それから「葬儀、祭礼の行事」「スポーツ競技等体育運動」「学校、官公庁が慣例として催す行事」こうしてある。そうすると、治安警察法で書いてあるところの「但シ祭葬、講社、学生、生徒ノ体育運動其ノ他慣例ノ許ス所ニ係ルモノハ此ノ限ニ在ラス」、どうも私はこの公安条例というのは昔の治安警察法に戻りつつある、むしろ昔の治安警察法の焼き直しではないか、こんなふうな感じがするのであります。また罰則等におきましても、許可なくして集団行進を行なった者、許可条件に反して行なった者、申請書に虚偽の記載をした者に対しては、おおむね一年以下の懲役もしくは五万円以下の罰金、こういうようになっておるわけであります。ところが、治安警察法では、二月以下の軽禁固、懲役と違うのです、軽禁固です、二月以下の。現行公安条例が一年以下の懲役ですよ。ところが治安警察法は二月以下の軽禁固または三十円以下の罰金、こういうことになっておる。物価が四百倍に上がったとして三、四一万二千円です。ところが、公安条例の方は懲役で一年以下、または五万円以下の罰金、こういうことになっておる。この刑罰規定を見ても、先ほど言った許可基準を見ても、むしろ治安警察法の焼き直しであるばかりでなしに、当時の治安警察法よりもむしろきびしい取り締まり条例である、こういうことが言えると思うのですが、安井国家公安委員長はどのようにお考えになっておりますか。
  66. 安井謙

    安井国務大臣 赤松さんの御指摘の面だけからいうと、ちょっとそういったような御議論も可能かと思いますが、私ども考えますには、治安警察法にしましても、治安維持法にしましても、まるでこれはスタンダードが違うのでございます。当時は一定の思想あるいは思想団体を取り締まる、こういう大前提のもとにすべてが立てられておる。今日の憲法及びすべての法律は、そういった思想団体なり思想団体の活動そのものを取り締まろうという精神は毛頭ないわけでございます。初めから立場といいますか、立て方が異っております。従いまして、そういったような今日ではほんとうに現実に公衆の公安を妨げる、あるいは安寧秩序を乱すというものを現実に取り締まろうという、目的範囲がしぼられておりますので、必ずしも今御指摘のような治安維持法式の精神を今後強化していこうというようなことは毛頭ないわけであります。  それからもう一つは、国家公安委員会なりあるいは警察庁公安条例を示唆し、あるいは強要してやらせておるというようなものでは全然ないのでありまして、その点はたびたび申し上げますように、地方自治体自体意思によってやる、いわゆる地方の自治権をわれわれは尊重し、そうして実情を認めておる。こういうわけでありまして、決して御懸念のようなものへ向かって進もうというつもりは毛頭ございません。
  67. 赤松勇

    赤松委員 言葉じりをつかまえるわけではありませんけれども、治安維持法とおっしゃったが、治安維持法は御承知のように私有財産の否認、国体の変革、こういうことになっておりまして、最高刑は死刑、私の言っているのは治安警察法であります。前提が違っておるとおっしゃいましたけれども、私は昔の帝国憲法、それから現行の民主憲法との違いがあると思うのです。思うのですけれども、この条例は、実際に施行する場合、あるいは警察権を発動する場合におきましては、それは思想団体であるとかなんとかということでなしに、いわゆる条例に違反したと思われるときには、これは取り締まれるのですから、従って取り締まられる側、つまりこの条例によって処罰される側にとりましては、やはり処罰の条件なりあるいは許可の基準というものが非常に重要だと思うのです。そんな前提よりも何よりも、むしろそのことの方が重要ではないか、こう思うわけであります。そこで私がここで申し上げたいのは、東京都の公安条例については、たしか昨年の七月だったと思うのですが、最高裁で合憲判決が出た。ところがその前に各地裁におきましては、これは違憲だという判決がたくさん出ているわけです。昨年七月に出た最高裁の判決の中におきましても、御承知のように二人少数意見として公安条例違憲であるという意見の留保が行なわれておる。これも御存じの通りだと思うのです。そこで地裁、高裁、最高裁を含めて、合憲違憲判決が一体どれくらい出ておるかということを、一つ答弁願いたいと思います。
  68. 安井謙

    安井国務大臣 事務当局から御説明いたします。
  69. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいま資料を調べておりますけれども、手元の資料では違憲とされました第一審の判決の数は十三件あるのでございます。合憲判決はただいま資料を調べましてお答えいたします。
  70. 赤松勇

    赤松委員 御答弁私は非常に遺憾でありますけれども理事会においてきまっておるようでありまして、国家公安委員長は三時に退出して、三時四十分に再びこの部屋に帰ってきて質問に応ずるということでございますので、理事会の申し合わせを尊重いたしまして、私の質問は三時四十分から始めたい。その間一つあなたの方で今秋が質問した違憲合憲判決が、最高裁、高裁、地裁を含めてどれくらいあるかということを御報告願いたい、こう思います。
  71. 園田直

    園田委員長 三時四十分まで休憩いたします。    午後二時五十七分休憩      ————◇—————    午後三時五十二分開議
  72. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件の質疑を続行いたします。三輪政府委員
  73. 三輪良雄

    三輪政府委員 先ほど赤松委員からのお尋ねでございますが、公安条例が裁判所にかかりましたのは、実は数多くございますわけですが、その中で憲法問題が判断の対象となりました刑事事件は、二十四件ございます。これは二十四件と申しましても、実は第一審、第二審とかかりましたので、判決の出ました件数は五十件になるわけでございまして、うち合憲とされました判決が四十一件でございます。最高裁七件、高裁十七件、地裁十七件でございます。それから違憲とされました判決が九件ございます。これは先ほど十三件と申しましたが、つつしんで訂正いたします。最高裁はございません。高裁は静岡県条例につき一件、それから地裁にありまして、八件ございまして、うち一件は一部違憲でございます。条例内容と申しますか、県別で申しますと、東京のものが四件、静岡のものが一件、広島条例、岩国市条例、京都市条例、こういうことでございまして、この違憲とされましたもののうち、京都市条例は高裁で合憲、最高裁で合憲とされております。広島市並びに岩国市条例は、高裁の段階で合憲とされております。それから静岡のものは後に免訴になっておるわけでございます。それから東京のもののうち一件が最高裁の飛躍上告で合憲とされ、三件がまだ高裁にかかっておる状態であります。
  74. 赤松勇

    赤松委員 ちょっとつけ加えておきますけれども、私は先ほど公安条例は占領政策の産物であるということを言いました。これを大阪市議会及び東京議会におけるそれぞれ警察責任者の発言を引用して立証したわけでありますけれども、さらに蒲田事件に際しまして、東京条例違憲であるという東京地裁判決がありました。その判決文の中におきましても、「本件条例をはじめ当時各地方自治体において相次いで制定された同種の所謂公安条例は平和条約発効前の占領時代の制定にかかるものであり、その制定の動機が、例えば昭和二十五年京都市条例第六十二号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例前文に「この条例は占領政策に違反する行為又は社会不安をじょう成する行為を未然に防止しようとする」ものである旨明示されているところからも窺い得るように、占領軍若しくは占領政策に反対しこれを誹謗する意図を表明する手段として行われるこれらの行動を禁止することをその目的一つとしていたことを考慮に入れるならば、右の「公共の安寧」という概念は極めて伸縮性に富み安易に解釈される危険があったものと謂わなければならない。」こういうのですね。公共の安寧とか、あるいは公共秩序だとか、そういった概念は伸縮性に富んでおって、安易に解釈される危険があり、かつこの条例というものが生まれてきたその歴史的背景というものは、京都の条例の前文にあるように、占領政策の一環として生まれてきたんだ、こういうように裁判所の判決は明瞭にうたっておるわけであります。そうして本条例が憲法違反であるというところの論拠は、大体共通性があるのでありまして、「本件条例は憲法上表現の自由の保障を受くべき集団行進集団示威運動につき殆ど一般的にこれを禁止」、その実施の具体性を欠き不明確な基準に従う公安委員会許可にかからしめ、かつ公安委員会の恣意的な怠慢ないし不許可処分に対しこれが実施を可能ならしめるための救済方法を与えていないことが明らかであって、このような規制方法を与えていないことが明らかであって、このような規制方法は憲法上特に重要視さるべき表現の自由に対するものとして必要やむを得ない限度を超えたものと謂うべきであり、従って本件条例が第五条において同第一条所定の公安委員会許可なくして行なわれた集団行進集団示威運動主催者、指導者又は煽動者を処罰する旨を規定する限りにおいて、同条例は憲法に違反するものと解せざるを得ない。」大体これが共通性だと思うのです。この中の救済方法の問題ですけれども、これは先ほど局長の御説明になりましたように、大体今度の改悪条例の中でこの一点だけは確かに改正だというふうに私どもは認識をしておるのでありますけれども、要するに、これは地裁の判決の中におきまして、今言ったように、占領政策の産物であるということが明瞭になっておる。  それから最高裁が判決を下しました中におきましても、特に国家公安委員会並びに警察庁が十分に自省しなければならない点は、この判決文にはこう書いてあります。「もっとも本条例といえども、その運用の如何によっては憲法二一条の保障する表現の自由の保障を侵す危険を絶対に包蔵しないとはいえない。条例の運用にあたる公安委員会が権限を濫用し、公共の安寧の保持を口実にして、平穏で秩序ある集団行動まで抑圧することのないよう極力戒心すべきこともちろんである。」こういうふうに判決文は書いております。これは当然のことを言っておると思うのであります。なお先ほど申し上げましたように、この最高裁の判決は藤田八郎裁判官及び垂水裁判官、この二人が少数意見を留保し、ともに違憲であるというところの意見を留保しておるという点が非常に重大であると思う。しかも学界におきましては、本条例は憲法違反であるという学説が圧倒的に多いということ、これまた国家公安委員会並びに警察庁当局はこのことを十分考えなければならぬと思うのでありますけれども、今申し上げました合憲判決の中でさえ、憲法二十一条の保障する表現の自由の保障を侵す危険があるから、その運用に当たっては万全を期せ、こういっておりますけれども、これに対して国家公安委員長はどのようにお考えでありますか。
  75. 安井謙

    安井国務大臣 今違憲の意見が非常にあるという点につきまして、いろいろ例証をされました。そういう御意見が今までもあったということは、私どももよく承知をしておりますが、結論といたしまして、大多数の判決、あるいは最高裁の判決によりましても、合憲であるという点につきまして、私どもはこの点は確信を持つ次第でございます。なおしかし、これを運用するに当たりましては、今の行き過ぎの危険を十分気をつけなければならぬ、この点は仰せの通りでございまして、先ほど局長も御答弁申し上げたかと思いますが、この公安条例を実施します場合、行き過ぎのないようにということにつきましては、十分の戒心をいたしておるつもりでございます。
  76. 赤松勇

    赤松委員 憲法が地方公共団体条例制定権を与えておるのは、言うまでもなく制限付であります。それは憲法及び法律範囲内においてというように、厳重に制限を付しておるわけであります。先ほど阪上委員の質問に対する答弁の中で、現行法規をこえておると思われる条例が現に指摘をされておるのであります。これはもう非常に重大な問題でございまして、問題は、こえた部分だけ削るべきであるか、条例そのもの全体を廃止すべきであるか、いわゆる改廃のいずれをとるべきであるかということも、一つ問題点として残るかと思うのであります。いま一つは、もとよりこれは憲法及び法律範囲内において条例制定権は地方公共団体に許されておる。許されておりまするけれども、それと同様に、私ども国権の最高機関に属するものは、これまた立法権を持っておるわけであります。一方司法権に属する最高裁が今のような判決を出した。しかし私どもは、国権の最高機関として、これは行政権も含めて最高裁の判決は正しくないという考え方を持っておる。将来私どもこういう考え方を持つ者が国会で多数を占めた場合に、もちろん地方公共団体制定した条例でありますから、これを国会でもって廃止をするということは困難でありますが、しかしながらこの憲法違反と思われる条例に対しまして、国会の多数の意思が統一し、これを決定するならば、われわれは将来この条例を事実上廃止するいろいろな方法、手段があると思われるのでありますけれども、そのことは別としまして、ここで私は、今、国家公安委員会が最高裁の判決文の中の非常に重要な点について、同意見であるということをおっしゃいました。そこで、同意見であるというならば、そういう危険が地方条例の中に内包されておるかどうか、あるいは運用に当たって行き過ぎていないかどうかということを以下具体的に示して、国家公安委員長の御答弁をいただきたい、こういうように考えておるわけであります。  そこで第一に問題になることは、許可の基準の問題であります。この点は先ほど阪上委員から質問がありました。しかしながら、その許可の基準についての御答弁に対しましては、私ども満足をしておりません。重ねて私はここでお尋ねいたしまするが、条例の運用の面と、それから条例それ自身が持つところの法律違反あるいは憲法違反と思われるような個所、こういう二つの問題に分かれまするが、ここに私はもう一つだけ最高裁の判決の中で確認をしておきたい。以下質問に対する用意として確認をしておきたいことは、やはり最高裁の判決はこういっております。「本条例を検討するに、集団行動に関しては、公安委員会許可が要求されている。しかし公安委員会は集団行動の実施が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」の外はこれを許可しなければならない。」これは条例第三条によって示されております。「すなわち許可が義務づけられており、不許可の場合が厳格に制限されている。」こういうように最高裁の判決はいっておるわけです。これについてはいかがですか。
  77. 安井謙

    安井国務大臣 原則といたしましての集団示威行動というものを否定するつもりは毛頭ございません。それが直接社会公共安寧秩序にたがうというような場合が想定されます場合にのみこれを制限する、こういうふうに考えております。
  78. 赤松勇

    赤松委員 それでは、許可が義務づけられており不許可の場合が厳格に制限されておるというこの最高裁の認識に対しましては、あなたは同じ認識なんですね。
  79. 安井謙

    安井国務大臣 同じでございます。
  80. 赤松勇

    赤松委員 わかりました。そこで、愛知県条例を引用しまして、あなたの認識と著しく相違する事実が出ておるのをまず指摘したいと思うのであります。この間改悪されました愛知県条例によりますと、こういうことが書いてあります。条四条の二に「ただし、主催者又は連絡責任者の所在が不明である等のやむを得ない理由により交付することが困難である場合には、許可申請書が提出された警察署の掲示場にその書面を掲示することをもってその交付に代えることができる。」こういう一項目がございます。これについては公安委員長、どうお考えになりますか。あなたの認識とこれは著しく相違しておると思いますが、いかがですか。
  81. 安井謙

    安井国務大臣 これは手続の問題でございまして、その許可または不許可条件を相手に伝達しようとしてもできない場合に、最も手近い告示といいますか意思表示の方法を規定しておるものだと思います。
  82. 赤松勇

    赤松委員 単なる手続の問題としてあなたはお考えになるところに問題があるのです。これは国民の基本的人権に関する重大な問題ですよ。先ほど引用した最高裁の判例がいっておるように、すなわち許可が義務づけられており、不許可の場合は厳格にこれが制限されておる。従って、許可することが原則なんです。原則というより義務なんです。国家公安委員会の義務なんです。やむを得ず不許可の場合は、この判例にあるように、厳格に制限されておるから、不許可になった理由、そういったものを、いわゆる主権者国民、基本的人権を持っておる国民に示して、納得のいくように説明するのが本来の公安委員会の責任じゃありませんか。その点どうお考えですか。
  83. 安井謙

    安井国務大臣 その通りでありまして、でき得る限り相手方を探して、十分な説明、納得をされるようにやろう、こういう手配をいたすわけであります。それをやろうと思っても、どうしても相手が行方不明であるというような理由でこれができない場合に、これにかわるやむを得ない告知の方法をとっておる、こういうことであります。
  84. 赤松勇

    赤松委員 これは個人に対する許可、不許可の問題じゃないのですよ。団体として届け出るのです。なぜそういうことがいえるかといえば、この条例第一条によって人数というものがちゃんときめられておるじゃありませんか。一人とは書いてない。何人以上ということが書いてある。何人までは届け出なくてもよろしい、あるいは許可を必要としない、何名以上は許可が要る、こう書いてある。そうだとすれば、当然条例が予想しているのは団体なんです。その団体主催者もしくは責任者が不明な場合は、それにかわる者を呼んで、懇切丁寧に不許可になった理由を説明するのが義務じゃありませんか。あなたさっきそうおっしゃったじゃありませんか。それを行方がわからぬからと言って、何か掲示をする。どこへ掲示をすると書いてあるか、よう読んでみなさい。「警察署の掲示場にその書面を掲示することをもってその交付に代えることができる。」とある。こんなむちゃな話がありますか。これは国民の基本的人権ですよ、憲法二十一条、二十八条で許されておるところの権利じゃありませんか。それを制限する場合に責任者がいない——この場合の責任者は一体だれをさしているのかわからぬが、「主催者又は連絡責任者」と書いてある。それがいないということでもって、警察の掲示場へぽっと張り出す、そういうことでもって周知徹底させることができますか。私はこれは単なる手続の問題ではないと思う。国民の持っておるところの基本的人権が不当に制限をされる、禁示をされる、あるいは侵害をされるという場合なんだ。侵害しなければならぬ理由、制限をしなければならぬ理由、禁止しなければならぬ理由を公安委員会なりあるいは警察責任者が懇切丁寧に説明をして納得させるという手続をとることこそ、最高裁の判例が示しておるところの精神じゃありませんか。これはどうお考えですか。
  85. 安井謙

    安井国務大臣 お話しの通りに、懇切丁寧にでき得る限り手段を尽くして説明し、了解を求める、これは私はもう当然必要なことであろうと思うのであります。ただ連絡責任者あるいは主催者がいない場合に、それじゃだれでもつかまえてきてお話をすればよろしいかというふうな、だれが聞いたかその団体としてはわからぬといったようなあいまいなことになった場合に、やむを得なくてこれはとる手段であろうと思います。今御指摘通り、でき得る限りの方法をもって懇切丁寧に了解を求める、これは私は当然必要なことであろうと思っております。
  86. 赤松勇

    赤松委員 そういうことは絶対に許されません。団体でいない場合というようなことがありますか。たとえば総評がデモの届け出をやる。太田議長がいなければ岩井事務局長がおるじゃありませんか。岩井君がいない場合は柳本政治部長がおります。それがいないときは小山組織部長がおります。そんなことが想定できますか。デモの場合、人員というものが第一条によって規定されておる。団体がやるのですよ。個人がやるのではありませんよ。そうでしょう。もっともどうしてこの示威行進なり集団行進に制限を加えたかといえば、その集団行進なり示威行進というものが一定の政治的意見もしくは思想、考え方、そういったものを政治の部面に反映をさせるということのために行なう政治活動だからじゃありませんか。そのためにお葬式や、祭礼や、スポーツや、学校、官公庁が慣例として行なうところの行事はこれを除外すると書いてある。そうでしょう。そうすると機関を持った一定の組織じゃありませんか。組織に責任者がいないなんということがありますか。そんなことが想定できますか。またそんなほとんど考えられないことを想定してここに入れるということは、とりもなおさず将来都道府県公安委員会が、届け出た責任者がわからない、連絡責任者に連絡がつかぬということを口実に、警察の掲示場に掲示するという手続をどんどんやるようになったら、一体国民の基本的人権はどうなりますか。許可することを義務づけられておるのですよ。それを不許可にする場合は、重大な人権の侵害なんです。それについて責任者がいなければその次の責任者、組織の機関があるのですからその機関の者を呼び出して説得をするということは、私は手続の問題でなしに、憲法の精神からいって当然主権者国民に対する義務だと思う。この点どうですか。
  87. 安井謙

    安井国務大臣 これは御心配のように、ちゃんと責任者がおるにもかかわらず、いないというようなことでいいかげんなことをやるという精神のものでは私は絶対ないと思います。これは許可の場合にも同様の手続をきめておるわけでありまして、今おあげになりました総評といったような非常にしっかりした組織がありますときには、そういう問題はおそらく当然起こらぬだろうと思います。しかしそうでないような場合もないということは私は言えないと思う。しかし精神は、あくまで十分手を尽くして、求められる限り団体責任者あるいは連絡責任者に十分な連絡をするということが精神である点は間違いなかろうと思っております。
  88. 赤松勇

    赤松委員 言葉じりをつかまえるわけじゃありませんが、私はあなたが昔から同じ地方行政の中におって、友人として非常に尊敬してきたわけなんです。ところが国家公安委員長など長くやっておると、大へん警察の諸君には悪いけれどもだんだん警察官僚じみて、今あなたは、これは偶然だと思うけれども、相手がわからなければ引っぱってくるわけにいかぬと、こういうことをおっしゃる。問題はその考え方なんです。引っぱってくるとは何ですか。引っぱってこようとしても、おらなければ仕方がないじゃないかということをおっしゃる。そういう考え方がいけない。  まあそのことは別としまして、総評の場合などは今おっしゃったように機関がきちんとしておる。では学連の場合など考えてみましょう。たとえば愛知県の場合は愛学連というのがありますね。これは執行部は二十人おるのです。だから委員長がいなかったら書記長、書記長がいなかったら執行委員を二十名のうちだれか呼べばいいでしょう。だれか出て参ります。私はこれは前段の、許可、不許可の決定をしない場合は自動的に許可になるという問題と関連しておると思うのです。というのは、許可する場合は何もトラブルが起きませんよ。不許可にする場合はトラブルが起きる。それは人権が侵害されるのだから、トラブルが起こることはあたりまえなんです。そういう場合には、いやであってもやはり当事者を呼び出して説得をするということが憲法の精神です。それを引っぱってくるとか、あるいは警察の掲示場に掲示をして事足れりとするというようなことは、私は許されない、こういうふうに思うのです。あなたも国家公安委員長であって、この警察法の中にどう書いてありますか、民主的な警察を育成するために、あなたはその任務を持っておるわけです。地方でそういう間違った条例が行なわれる場合は、あるいはあなたがおっしゃるように、それはあなたは県知事じゃありませんから、あるいは都道府県公安委員長じゃありませんからやむを得ないとしても、警視正以上は、たしか一般職の国家公務員になっておりましたね。それから下が地方公務員になっていますね。そしてこの警察法にも、国家公安委員会都道府県公安委員会を通して、警察本部長に対して指揮監督をするという言葉が明らかに使われている。従って、あなたとは無関係のものじゃないのです。条例そのものは無関係であっても、いよいよ警察権を発動するという場合においては、警察庁の指揮監督のもとに各県の警察本部長は動くのですから、決して無関係じゃないのですね。その意味においてもこういう乱用されるというような点については、あなたはここで条例改正権はないんだけれども、私はこういうやり方に対しては遺憾に思うとか、あるいは非常に不十分だとか不当という言葉を使われて、先ほどあなたが最高裁の判例に同意されたようなあの精神でもって答弁ができないかどうかということです。
  89. 安井謙

    安井国務大臣 私、引っぱってくるというような言葉を使ったつもりはなかったのでありますが、そういうふうに聞こえましたら、これはつつしんで訂正いたします。  また、ただいまの警察庁あるいはその機構のあり方というものは非常に民主的でなければならないし、またあろうと努めておることも事実でございます。正直申しまして、私は国家公安委員長をいたしておりまして、警察庁というものの中へ入ってみて、非常に幹部が民主的な気持でおるということを常々実は感じておるものでございます。そういう意味におきましては、赤松委員の言われるような精神にもとるようなことは今後もあっちゃいけない、これは十分心得ております。ただ、今の、通知をしようとすれば当然その次から次へ連絡責任者がおるはずだ、これはまさにその通りだと思いますし、そういう場合にはすべて手を尽くして十分に措置すべきものである、こういうふうに思っております。ただ、しかし、万やむを得ない事態がどういう場合に起こらないとも限らない。これはここでもっと言いますと、よけいなことかもしれませんが、 たとえば、仮定の問題でございますが、ある団体が意識的にこの制限条項を聞くまいと思うために、すべての警察からの連絡を断わったといったような場合があって、明らかにこれは危険である、こういうような場合にやむを得ずとる処置もやはり残しておかなければなるまい、こういうような気がいたすわけでございます。
  90. 赤松勇

    赤松委員 私が先ほど言った許可、不許可がきまらない場合に自動的に許可になるということに関連して、たとえば不許可を受領した場合には不許可になってしまう、ほっておけば自動的に許可になるというようなことが想定されて、おそらくこの文句が出てきた、こういうふうに私は思うのだけれども、まあそういっても、あまり神経質に心配なさる必要はないと思う。むしろそれよりこわいことは、あなたを初めここにおられる民主的な警察をつかさどっておられる諸君が健在な限りは、私は安心してまかしておいてもいいと思うのだけれども、かつて大正十四年でしたか、治安維持法がこの国会に上程されたときに、この治安維持法は当時非合法政党である共産党以外には適用しないということを国会で何度も何度も答弁をした。また田中内閣のときには、治安維持法の改悪をやった。死刑までの処罰をきめた。その際におきましても、共産党以外には適用しない、こう言いながら、それがどうかといえば、ずっと戦争段階になってきて、宗教団体にまでこれは適用されてくる、こういう事例がある。私は共産党員でなくても法安維持法でやられる。大内兵衛さんも有沢広巳さんもやられたのだ。だから立法当時の当事者の認識がどうあろうとも、これは乱用を防止する規定は、最高裁の判例が言うように、不許可の場合は厳格に制限されているのだという考え方の上に立って、こういうよけいなものはつける必要はないのじゃないか。いわゆる運用の面において乱用にわたらないようにしろということを最高裁の判決は言っているんだ。そうだとすれば、こんなものはよけいなものであって、少なくとも一定の団体組織であれば、そこには一人もなくなるというようなことはあり得ないのだ、だからこういうものはなくした方がいい、こういうふうに思うのでありますけれども、この点であまり時間をとるとあれですが、この点はさらにあなたといろいろ討論するとして、これは保留しておきます。  その次にお尋ねしたいのだが、今度の条例の改悪点の中には、第一条で、従来の条例は五百人未満の場合は許可を要しなかった。「但し、左の各号の場合には許可を要しない。一、五百人未満の場合」。ところが今度の条例では、「五百人未満」というのは変わらないですよ。しかしカッコして、「(名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、半田市及び津島市の区域においては五十人未満)」、五十人までは許可なしでやってよろしい、ところが五十一人からはだめだということになるのですね。五百人未満までは今まで届け出を要しなかった。それが五十人まで切り下げられる、一体これはあなたは不当と考えませんか。いかがです。
  91. 三輪良雄

    三輪政府委員 やや事務的なことと存じますので、私から便宜かわってお答えをお許し願いたいと思います。これは県条例だけ比べてみますと、五百人が五十人になったように見えるのでございますけれども、従来改正前にはそれぞれここに書いてございますような名古屋市その他の市に特例というものがございまして、名古屋市の例で申し上げますと、二十五年の十二月十六日、名古屋市条例第二十一号で、行進または集団示威運動に関する条例の特例に関する市条例がございまして、これはただ一条の問題でございますが、行進または集団示威運動に関する条例、これが御指摘愛知県条例改正前のものでございます。この第八条の規定に基づいて、第一条ただし書きの第一号の人数を五十人未満に減ずる。こういうことになっているのでございます。つまりここで書いてございますような当市にありましては、その市の特例で、つまり県下一円と違った厳重な規制をするということで、市の条例で五十人にしてあったものでございます。今回これを県条例一つとして取り入れたということでございまして、それぞれの実態は変わらないように存ずるのでございます。
  92. 赤松勇

    赤松委員 あなたは事務的な問題だと言っているけれども、そういう考え方は改めてもらいたいと思う。たとえば五百人のものが五十人というように下げられた場合に、四百五十人という人がこれは権利を侵害されることになるのですから、事務的な問題ではなく、これは基本的人権と思っておる国民の側からいえば、非常に重大な問題だと思う。県の議会において県当局が説明したのもあなたと同じ説明です。今まで市の特例でこういうものがあったので、従って今度の改正の中にはそのまま取り入れた、こう言うのです。ところが従来の県条例は五百人未満、これは名古屋市の場合とか、今言った特別な区域を除外したということは事実です。事実ではありますけれども、ここで私がお尋ねしたいのは、いわゆる公共秩序あるいは公共の安全というようなものを保持しなければならぬ。そのために許可許可あるいは人数の制限というものが考えられるのでしょう。そういたしますと、五十人までは公共秩序を乱さない、五十一人からは公共秩序を乱すだろうというのは、一体どこから出てくるのです。五十一人を多人数だとお考えになりますか。
  93. 三輪良雄

    三輪政府委員 五十人というのが適当であるか百人が適当であるかということについては、これは条例の批判でございますので、お答えいたしかねますが、多くの場合、集団示威運動あるいは集団行進として、人数が書いてないのが通常でございます。常識上、集会というのは、まあ数十人程度であろう、あるいは集団行進というのは、百人程度であろうというようなごく常識的な考え方はございますけれども、多くの条例には書いてございません。ところが、これは逆に公安条例の適用を受ける側の立場から見ますと、じゃどのくらいからやったらいいのかということが不明確だという御意見もあろうかと思うのであります。そこで基準といたしまして、ここに書いた市については、従来通り五十人その他の地域については五百人としたわけでございまして、これを取り上げまして、五十人と五十一人の差はどこにあるかというお尋ねでございますと、その差はなかろうかと思うのでございますが、どこかのところで線を引くということで、むしろ明瞭に、県民に明らかにした方がいいというお考えであったように承知しているのでございます。
  94. 赤松勇

    赤松委員 国家公安委員長お尋ねしますが、私は五十人、五十一人のことを言っているのではない。そうではなしに、たとえば五十一人からは届け出なければならぬ、こう言うけれども、この条例の前提となっておるのは、憲法十二条の公共の福祉というものを保持するということが前提になっているのでしょう。そうでしょう。その憲法十二条でいうところの公共の福祉、それから憲法二十一条の表現の自由、憲法二十八条の団体行動権、この三つの調和点として、この条例が出てきたのだ、おそらくあなた方はそういうふうに説明したいと思うのです。ところが、一体公共秩序を保持するという場合に、五十一人というものが多人数と認められるかどうか、許可を必要とするほどの人数であるかどうか、私の聞きたいのは、こういうことなんです。これはどうですか。
  95. 安井謙

    安井国務大臣 五十人程度というものを一体単位考えなければならぬのかどうか、もっと広い人数で考えるべきものではないかというふうなお問いであろうと思いますが、これにつきましては確かにいろいろ御議論もあろうと思います。もしわれわれが制定をまかされたという場合には、またそれなりのいろいろな観点もあろうかと思いまするが、これは先ほど答弁もありました通りに、従来名古屋市その他でありました事例をそのまま包括的に生かすという精神でこうきておるのだと思いますので、私はその点については、現在この条例が出ておることはやむを得まいかと思います。
  96. 赤松勇

    赤松委員 それでは国家公安委員長は、これは県が制定した条例であるので、これに対して批判がましいことは言えないけれども、もし自分が原案を作る場合においては、そういう基準は適当でないと思うというように理解しておいてよろしゅうございますか。
  97. 安井謙

    安井国務大臣 適当でないというふうに断定されますと困るのでございますが、これは赤松委員も御指摘のようにいろいろ議論が出るところであるから、こういう場合には十分慎重に考えたいということでありますが、といって、逆に私の方で今そういう法律案考えておるというわけでもございませんから、その点もあわせて御了承願います。
  98. 赤松勇

    赤松委員 それでは次に移ります。  ここでは第一条で、「公園若しくは広場を行進し又は占拠する場合は予め公安委員会許可を」云々、こういうようになっておる。そうすると、ここでいう公共の場所ということが非常に重要な問題になってくるわけですね。公共の場所とは、一般通念からいってどういうものをさしていうのであるか。つまり不特定多数人が利用し出入りする場所をいうのかどうか、この点はいかがですか。
  99. 三輪良雄

    三輪政府委員 一般論といたしまして、御指摘通りと私も考えております。
  100. 赤松勇

    赤松委員 そうすると、特定の者が集会する場合はよろしゅうございますね。
  101. 三輪良雄

    三輪政府委員 たとえば一般の者が通常使う場所にありましても、特定の団体が借り切って、そこをある一定の時間占有するというような手続によった場合は、公共の場所でないというふうに考えます。
  102. 赤松勇

    赤松委員 答弁が非常にあいまいなんですね。それでは困ると思います。具体的に一つ例を示していただきたい。
  103. 三輪良雄

    三輪政府委員 適切な例かどうかわかりませんが、たとえば新宿御苑のような場合に、これは一般の人が自由に入れる公共の場所だと思います。そこをある特定の時間、観桜会、観菊会というようなことで、一定の資格のある者だけしか行けないというふうに限って、ある特定の団体が使うという場合には、その場所は公共の場所ではないというふうに考えるわけでございます。
  104. 赤松勇

    赤松委員 商工会議所あるいは貿易会館というようなところで財界の人がよく五十人以上集会しますね。そういう場合はどういうことになりますか。
  105. 三輪良雄

    三輪政府委員 どなたでもその集会の場所は借りられるというところでありましても、特定の団体が借りて使うということでありますれば、公共の場所でないというふうに考えるわけであります。
  106. 赤松勇

    赤松委員 それではお尋ねしますけれども東京の財界などで五十人以上使う、たとえば日経連などが総会をやるという場合などは、届けが出ておりますか。
  107. 三輪良雄

    三輪政府委員 具体的な条例の適用につきましては、私ちょっと警視庁から聞かないとわかりませんが、今お答えいたしましたように、特定の場所でありましても、ここを幾らと借り切って、その場所はある団体の者以外は使わないというような状態におきましては、公共の場所でないわけでございますから、そういう意味で、今の御設例のような場合、一般的に届け出の必要がないものというふうに考えます。
  108. 赤松勇

    赤松委員 公安委員長に特に一つ御留意願っておきたいことは、あなたは、先ほど私の質問に対して、こうお答えになった。戦前の治安警察法は、思想なりあるいは団体の性質というものを考えて、そうしてそれを取り締まることを前提としてその法律ができていたのだ。ところが、戦後においては、全然そういう考え方はないのだ。ところが、現実には、たとえば集会が労働組合とか、あるいはその他の集会という場合におきましては、これは地方公安委員会は非常に神経質になって、そうして届け出その他を要求するわけですね。ところが、中小企業や財界の人が集まる場合におきましては、事実上野放しで、公共の場所において集会した場合に届け出を出したということはほとんど聞いたことがございませんが、こういう点はどうなんでございますか。
  109. 安井謙

    安井国務大臣 同じような場合に、団体の性質によって、届け出の手続を省略させたり、あるいは扱いを変えるというようなことがあってはならぬと思っておりますし、また今後そういうことのないように十分に留意したいと思っております。
  110. 赤松勇

    赤松委員 不当に警察が弾圧を加えた、それに対して、たとえば検束者を釈放しろという抗議のために、警視庁なりあるいは警察署に押しかけていく、そういう場合に、時間的に考えまして事前に許可が得られませんね。そういう場合には、これは無届けデモとか、無届け集会というふうになるのですか、いかがですか。
  111. 三輪良雄

    三輪政府委員 御指摘通りでございます。
  112. 赤松勇

    赤松委員 だって事前に許可を得ることができないじゃないですか。
  113. 三輪良雄

    三輪政府委員 でございますけれども、事前に届け出をしない集会であるという形においては、無届け集会であることに間違いない。ただ、それをどう扱うかということは、おそらくあらかじめ許可なり届け出なりする時間の余裕が少なかったというような扱いはあろうかと思いますけれども、これは個々の具体的な場合に即して第一線の警察が扱うことになると思います。
  114. 赤松勇

    赤松委員 そういう場合に、それを集会と認定するということは非常に無理ですよ。そんな認定はむちゃですよ。だから、そういう認定をされるから、いろいろな不当な取り締まりが行なわれるわけですね。私は、そういう認定は誤りで、これは一つ公安委員長の方でぜひよく御検討願いたいと思う。これは偶発的に起きる、しかも事前に届け出する時間的な余裕がないという場合に発生した事件ですね。だから、そういう場合に、警察は、たとえば警職法立場に立って、まさに犯罪が発生せんとするか、あるいは身体、生命に危険を及ぼすという場合のほかは、これは放任すべきだと私は思うのですが、この点、いかがですか。
  115. 三輪良雄

    三輪政府委員 御意見としてはわかるわけでございますけれども、これは偶発的と申しましても、ただ偶然に何人か集まったということではございませんで、そこに指揮者ができ、全体の意思が統一されたことになりますれば、これは集会と見るわけでございます。その集会の続きます時間、あるいは規模、いろいろそういう問題につきまして個々の扱いは違うと思いますけれども、そういうものについては、これは公安条例の適用外だというふうに、私、第一線の扱いをここで決定的なことを申し上げることはできないのでございます。
  116. 赤松勇

    赤松委員 この問題は、釜ケ崎の事件などとも関連しますので、おそらく阪上委員の方から、後ほど釜ケ崎の事件と関連して御質問があると思うのであります。従いまして、遺憾ながら答弁は非常に不満足でありますけれども、次に移りたいと思います。  そこで、今度お尋ねしたいのは、地方公共団体の管理権というものはどの程度に及ぶものであるかということですね。これは集会、行進公共の場所というように限っておりますから、この範囲の問題は非常に重要だと思いますが、この点、いかがですか。
  117. 三輪良雄

    三輪政府委員 お話の点は、地方公共団体の建物並びにこれを取り巻く庭園、そういうものについて管理権がどう働くかというお尋ねかと思います。これもまた個々に検討いたしませんと一がいに言えないと思うのでございます。通常の場合は、かきねを囲い、門扉がある、そういうところでございますれば、これは管理権が非常に厳重に及ぶということになる。あるいはその県庁に行く者だけがそこを通る、つまりその県庁の建物と全く付属した感じであるということになりますと、これは公共の場所といえない場合もあり得ると思うのでございますけれども。しかしその場所自体が、あたかも小公園をなして、県庁に入る人でない人がそこにいこいの場所を求めるというようなことが一般的に許されるというような場合におきましては、あるいは管理規程でそこを管理するということになっておりましても、公共の場所とみなさなければならないという場合もあり得るかと思うのであります。個々のその場所の状態、現状がどうなっておるか、また管理規程がどうなっておるかということによって、一がいにはいえないのじゃなかろうかというふうに思います。
  118. 赤松勇

    赤松委員 あなたは県庁の構内などを大体予想して御答弁なすっておられる。私の質問はそうじゃないのです。その点については、大原委員が後に事実問題を取り上げまして質問することになっておりますから、その方へ譲りますが、私の言おうとしておるのは、つまり私有権に属するそういう場所において五十人以上——名古屋市の場合でいえば、五十人以上集会しても、それは公安条例の及ばないところなんでしょう。
  119. 三輪良雄

    三輪政府委員 先ほども申しました通り、もっぱら現状がどうなっておるかということになるのではなかろうかと思うのであります。その土地が国有のもの、県有のもの、あるいは私有のものでありましても、一般の人がそこに行くことが自由であって何ら拘束されない、だれでもそこへ行って自由に使うというような状態になっておりますところは、これは公共の場所といわざるを得ないと思うのであります。従って、所有権がどこにあるかということではきめられないのじゃないかというふうに考えます。
  120. 赤松勇

    赤松委員 法律によってきめられた権利によって判断することができないということになって参りますと、全く政治的判断公安委員会がきめていく、こういうことになるのですね。これらの点は非常に重大な問題を含んでいるのですよ。また私はもっと別な観点からいえば、ここに工場がある、工場の管理権というものは、その工場の経営者にあるのです。そこで集会を催した場合、これは公安条例によるところの届け出を必要としますか。
  121. 三輪良雄

    三輪政府委員 公共の場所における集会だけを問題にする場合には、今のような御設例は、通常の場合は入らないと思います。
  122. 赤松勇

    赤松委員 わかりました。それがややもすれば、工場の中で経営者の許可を受けて労働者が集会をやる、それを公安条例違反だといって取り締まるというような行き過ぎもありますので、お聞きしたのですが、今警察庁当局の見解で、そういうものは公安条例取り締まりの対象にならないということが明白になったわけであります。  そこでその次に進みます。ここに私は東京都の許可条件書というものを持っております。繰り返し私が先ほど申し上げましたように、違憲であるという判例の引用を私はわざわざ避けまして、合憲であるという判例を示しながら質問しておるわけです。これで私自身は非常に、何と言いますか、立場にとらわれないでやっておるつもりであります。この先ほどの最高裁の判決の精神からいえば、当然許可することが義務づけられておる、不許可にする場合には慎重にやらなくてはいかぬ、厳重に制限をしなければならぬということになっている。それに対して、ここに赤坂警察署長が三十六年五月三十日に総評に対して与えました許可申請書並びに条件書があります。その条件書を見ますと、行事実施中、放歌、合唱、かけ声、シュプレヒコール、それから示威にわたる言動は一切行なわない、こういう条件書がつけられておるわけです。赤坂警察署長の判こを押した公文書です。そうしますと、合唱することはいかぬ、それから示威にわたる言動はいかぬ、一体こんなことが憲法の精神から許されますか。この許可書こそ憲法違反ではありませんか。この点公安委員長、どうでしょうか。
  123. 安井謙

    安井国務大臣 ちょっと特別な事情があったようでございますので、警備局長から御答弁申し上げます。
  124. 三輪良雄

    三輪政府委員 今御指摘の設例は、国会に対する請願の問題だと思うのでございます。国会に対しまして実は請願を集団で行ないたいということでございまして、いろいろ御要望があるわけでございます。東京都公定委員会におかれましては、国会開会中、国会は国権の最高機関でございまして、国民のために静穏な環境の中で国政を御審議願う、こういうことで公共秩序維持ということからいうと、きわめて高次な要請であるという判断から、国会開会中は国会周辺にいわゆる示威運動というものをやることが適当でないという判断に立っておられるのでございます。従いまして、国会開会中に国会に請願をするのだ、そこでその請願が何万人にも及ぶのだということも間々あるわけでございます。請願は国民の基本的権利でございますが、御承知のように請願は平穏にこれを行なうということがまたきめられているところでございます。そこで国会に請願されるのは、これは請願権の行使と申しましても、国会に至ります一つの道程が示威運動あるいは集団行進ということになっておれば、これはその形態によって集団行進なり集団示威運動という許可手続をとっていただくわけでございまして、今の例もその通りでございます。  そこで初めに戻りまして、国会開会中に請願される方々については、示威にわたらないという条件をつけて、つまり集団行進として国会に至り、請願を平穏にしていただく、こういう趣旨で条件をつけたものと承知いたしております。
  125. 赤松勇

    赤松委員 示威にわたっていけないという法的根拠を明らかにしていただきたい。
  126. 三輪良雄

    三輪政府委員 東京公安条例条件を付します中に……。
  127. 赤松勇

    赤松委員 わかりました。それでいいんです。この条例法律範囲で定められなければならぬ。従って、今言ったような示威にわたっていけないという法律上の根拠——条例ではありません。法的根拠を明らかにしていただきたい。
  128. 三輪良雄

    三輪政府委員 請願は憲法に基きましても平穏に行なうということでございます。そうして繰り返して申し上げますが、国会は平穏な、静粛な状態において最高機関として国民のために審議をしていただくわけでございます。
  129. 赤松勇

    赤松委員 法的根拠を示しなさい。
  130. 三輪良雄

    三輪政府委員 それは何と申しますか、その条例が全体として合憲であるわけでございますから、その官公庁の事務の妨害に関する事項として国会は静穏にしてやっていただくということが最高の、高次の要求であるということで、そうされているわけでございます。
  131. 赤松勇

    赤松委員 条例合憲であるから、従ってその条例が自由に拡張解釈されていいということがどこにあるのですか。だから私は、さっきから最高裁の判決を何度も何度も引用しているじゃないか。これは本条例といえども、その運用のいかんによっては、憲法二十一条の保障する表現の自由の保障を侵す危険を内包しているから、条例の運用にあたっては公安委員会が権限を乱用し、公共の安寧、秩序の保持を口実にして集団行動まで抑圧することのないよう極力戒心すべきであるということを言っておるじゃないですか。合憲であるからといって示威運動を禁止したり——制限ではなくて、禁止をするというようなことを請願行動に還元させなければならないという理屈は、一体どこから出てくるか。合憲だという判決を下した最高裁が、しかも憲法二十一条の表現の自由を侵すような危険を内包しているから、この条例の運用にあたっては、公安委員会は権限を乱用したり、あるいは公共の安寧の保持を口実にして集団行動まで抑圧することのないよう戒心すべしといっておるじゃありませんか。そうすれば、東京都の公安条例というものは憲法に違反しているということになる、あるいは法的根拠がないということになる。あなたは、公安委員長、自民党政府でもってかってデモ規制法というものを出してきた。デモ規制法がどうして国会で廃案になったか、このことをよく考えてもらいたい。それから国会周辺のデモ取り締まりのあの法律も、これも廃案になっておるのですよ。そうすれば、国会の周辺にわたって示威行進をやる自由はあるじゃありませんか。憲法二十一条によって、その表現の自由があるじゃありませんか。表現とは一体何ですか。表現とは、自分の意思を表示することなんです。シュプレヒコールだって一つの表現の一種じゃありませんか。歌を歌っていけないということは、一体どこにあるのですか、そんなばかなことが。そんな解釈をあなたたちがしているから、示威運動については、幾ら出しても、公安委員会で今まで許可したことがあるか、この周辺のデモを。安保以来ないでしょう。その以前はあったのです。今ないでしょう。乱用しておるじゃありませんか。公共の安寧の保持を口実にして、集団行動を抑圧しているじゃありませんか。最高裁の言う判決とは全く逆の行き方をしている。デモ規制法はつぶされたのですよ。国民の意思によって、廃案になったのです。国会周辺におけるデモの規制も、これもやってはいけないということになっておる。公安委員会に示威運動の届け出をした場合には、ほとんどこれを許可していない。これは一体どうですか。
  132. 安井謙

    安井国務大臣 国会の審議が静穏なうちに行なわれるということは、私はやはり憲法十二条で言う社会公安を維持するというような広い意味条件にはまるものだと心得ております。そこで、警視庁といたしましては、この国会周辺が非常に喧噪過度にわたらないために、請願という形式をとって、一つ集団行進はやってもらいたい、こういう話し合いをいたしておるようでございます。そうして請願につきましては、今御指摘通り……。
  133. 赤松勇

    赤松委員 請願のことを聞いておりません。示威運動のことです。
  134. 安井謙

    安井国務大臣 ですから、今の国会というものができ得る限り静穏な形で審議が尽くされるということが、これが社会公安を維持するという憲法十二条の解釈からも妥当なものであろうと思うのであります。そういう精神にのっとりまして、今警視庁としては、いろいろなそういった示威行動の際に、国会開会中にそういうものが行なわれる場合には、集団行進という形をとって、示威運動にわたらないようにという話を、話し合いによってやっておるわけであります。それが現在実施されておる次第であります。
  135. 赤松勇

    赤松委員 大体そういう話し合いをする労働組合もだらしない、私に言わせると。みずからの権利を放棄しておる。しかしこの問題については、松井委員が明日触れるそうでありますから、私ははなはだ今の答弁不満であります、絶対に反対ですが、これを明らかにして、次に進みたいと思います。  その次にお聞きしたいが、愛知県の条例によりますと、第八条において、「集団示威運動に参加した者に対して、公共秩序を保持するため、警告を発し、又はその行為を制止することができる。」こう書いてあります。そこでこれは何ですか、公安委員長、一警察官でも制止はできるわけですね。
  136. 安井謙

    安井国務大臣 これは一警察官でもできると思っています。
  137. 赤松勇

    赤松委員 その制止の及ぶ範囲はどこですか。
  138. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、現実には警察官が第一線でやるわけでありますけれども、条文はごらんの通り、「警察本部長は」云々ということでございます。その命令によってやるわけであります。制止範囲とおっしゃいますと、制止の具体的な内容がどういうものかということですか。
  139. 赤松勇

    赤松委員 手段。一番ひどいもの。
  140. 三輪良雄

    三輪政府委員 これは制止というのは、結局条例違反が行なわれましたときに、まず自発的に自分の気持でその条例違反をやめてもらうということを警告をするわけであります。これで聞けば一番いいわけですけれども、聞かないということになりますと、実力でこれを阻止するという格好になりますのが制止でございます。従いまして、現実に行なわれております条件違反といますか、条例違反というものの態様によってこれはおのずと相関関係があるわけでございますから、その態様が著しく公安を害する度合いに応じて、制止に使います警察力というものも大きくならざるを得ない、これは御承知警察比例の原則で行なわれるかと思います。通常は警察官が列を作って、行ってはいけない方向に入れないようにするとか、あるいはさらに行こうとする者は抱きかかえるとかいうようなことでございますけれども、さらに進めば相互の力関係警察力としても必要な力を使わなければならぬ場合があろうと思います。
  141. 赤松勇

    赤松委員 警職法は、御承知のように明白かつ現在の危険の原則というものの上に立っておりますね。先ほど何度も御説明があったように、身体、生命の危険、あるいはまさに犯罪が発生ぜんとする、従って、それは非常にきびしい制約があるわけです。その場合でも、制止の具体的な内容についてはほぼもう定説はあるのでしょう。お宅の方の、警察庁当局の方針というものはあるのでしょう。たとえばホースで水を浴びせるとい5のも制止の中に入るのですか。
  142. 三輪良雄

    三輪政府委員 これは先ほど申しましたように、著しく暴動化するというような状態においては、ホースで水をかけるということも入り得ると思います。判例では、非常に広く、解散させるというようなところまで含めて、制止ということも相関関係でございますからあり得るということを言っているのでございます。
  143. 赤松勇

    赤松委員 警視庁の警棒の使用規程などもあるのでございましょう。たとえば振り上げれば武器になるとか、制止をする場合にはこう押すとかというような規程があるのでございましょう。私はよくわからぬけれども、それは前にいろいろここの地方行政委員会で問題になりましたね。そのことは地方行政委員の専門家の諸君に譲るといたしましても、今おっしゃったように明白かつ現在の危険の原則というものがその場合の条件になるということですね。私の一つ言おうとしていることは、岐阜県の条例では、八条二項「前項の規定により警察官が行なう警告又は制止は、やむを得ない場合を除き、警察本部長、警察署長又は現場における警察活動の責任者の指揮に基づいて行なわれなければならない。」こう書いてある。これは私は当然のことだと思うのです。そうでしょう。別に下級警察官の教養が低いとかなんとかいうことを私は言っているのじゃない。指揮命令系統、あるいは責任体制というものから考えれば、国民の基本的人権を侵害する、あるいは制約するというような警察権の発動の場合に、少なくとも現場の判断というものが非常に重大なんです。公安委員会は管理機関です。警察は実施機関です。だから管理機関がきめて実施機関がやるのじゃないのです、そういう場合には。実施機関がやってしまう。やってしまって、そのやり方のいい悪いは公安委員会自身が判断をするということになる。しかしその場合においても、法律というものは警察権の発動をできる限り抑制をするということなんですね。消極的に消極的にやるということ、これが原則でなければならぬ。従って、そういう場合には割合に合理的に判断のできる警察本部長なりあるいは警察署長というものが、指揮監督あるいは制止に対するところの命令を出すというようなことは、私は、今までも警視庁なども——それは下級警察官や機動隊で、鬼の一機に蛇の三機、泣く子も黙る四機動といってむちゃくちゃな機動隊がおる。しかし、あの諸君もまあ現場でいろいろ興奮してくれば行き過ぎもある。そういう場合に、僕らが警察庁や警視庁の幹部などと話し合えば、幹部諸君は冷静に判断してよくわかるけれども、いろいろな不測な事態が起きれば、たとえば学生と警察官とやり合う、そうすると、もういろいろなそこへ連鎖反応が加わって、もうとめてもとまらないような状態が生まれるわけですね。ですからそういうことのないように、あなたたちは絶えずそれに対して監督をしてもらわなくちゃ困る。愛知県の条例では、岐阜のように「やむを得ない場合を除き、」というのがないわけです。これはいきなり八条で「集団示威運動に参加した者に対して、公共秩序を保持するため、警告を発し、又はその行為を制止することができる。」こういっておるわけですね。この点は私は非常に危険だと思うのです。それで今条例をあなたたちに変えろということを私は言っているのではない。現場において事件が発生した場合、「やむを得ない場合」というように岐阜県条例はちゃんと書いてある。愛知県の場合は書いてない。今公安委員長は、いや第一線の一警察官でもやれるのだ、こうおっしゃるけれども、私はそれは非常に危険だと思う。あなたの方の指導方針でもいい、条例を変えよとは言わぬけれども警職法法律を厳守して、そうして少なくとも警職法から逸脱しないように、また条例はこうなっておっても、そういう現場の判断については、やはり警察本部長がその指揮命令権を持つというような指導方針を明らかにしてもらいたいと思うのですが、これはいかがですか。これはあたりまえのことだと思いますが……。
  144. 三輪良雄

    三輪政府委員 この第八条をごらんいただきますと、「警察本部長は」、ということになっておりまして、現実には第一線の警察官が当たる場合がありますがと大臣が簡単におっしゃったわけでありますけれども岐阜のように明文でそういうことを書くことがよりよいということは私も同感でございます。しかしながら、愛知県におきましても警察本部長がそうするのだ、現実にはそのことが起こりますところの現場指揮官ということになることが通常多くあろうかと思いますけれども、現場の最高指揮官がやるいとうことで書いてございませんでも、警察内部のしつけと申しますか、内部の命令といたしましては、現場の最高指揮官、しかもこれはそういう時間的ゆとりがございますれば、警察本部長の指揮を受けてやるということに慎重を期しておるのが現状でございます。しかしながら、なおただいま御注意がありました点は、愛知県その他にもよく伝えておきたいと思います。
  145. 赤松勇

    赤松委員 公安委員長、あなたの口からはっきり一つ言っておいていただきたいのだが、今言ったように、警察官職務執行法の範囲内においてやる、それを逸脱しないということはこれはあたりまえのことなんですから、これはよろしゅうございますね。
  146. 安井謙

    安井国務大臣 これは最初阪上さんからも御指摘がありましたが……。
  147. 赤松勇

    赤松委員 いや条例の問題ではなしに、たとえば条例に基づいて警察官が動く場合でも何の場合でも、警職法範囲内でやらなければいかぬから……。
  148. 安井謙

    安井国務大臣 それは当然警職法の精神に基づいてやらなければいかぬし、また、条例があるからといって必要以上の行き過ぎがあってはいかぬ、この点は明らかでございます。
  149. 赤松勇

    赤松委員 続いてお尋ねしておきたいのは、この警視庁の許可条件の中にも、随所に主催者責任者は集会の秩序に関する指揮統制について全責任を負い、会場において解散した後も、なお場外における平穏な完全解散について主催責任者は統制を保持せよ、こういうように随所に書いてありますね。これは私はその通りだと思う。そこで今国家公安委員長がおっしゃったように、たとえば警察官職務執行法を執行しなければならないような事態になったときは、まずこの主催責任者に対して警告を発するということは当然でございますね。公安委員長、それは一つ確認しておいて下さい。
  150. 安井謙

    安井国務大臣 これは当然そうあるべきものであろうと思います。
  151. 赤松勇

    赤松委員 私はなぜ心配するかといえば、第八条で「集団示威運動に参加した者に対して、」こう書いてある。ところがほかの条例を見れば、これは主催者あるいは責任者にまず警告を発する、それから制止の行為に出る。ところがこれでは、集団運動に参加した者に対してということになれば、たとえば四列縦隊でいこうという許可条件をとった、それが六列になったという場合に、うしろの方の部分が六列になったからといって、直ちに六列の部分に対して制止の行為に出るというようなことがあってはならないと思いますからこの点をお尋ねするのですけれども、この場合におきましても、これは条例でははっきりしておりませんが、責任者あるいは主催者に対して警告をしあるいは制止を勧告するということ、だけ、一つはっきりしておいていただきたい。
  152. 安井謙

    安井国務大臣 当然そういう場合の執行の手順といたしましては、主催者に対して警告を発するなり善後処置をとるように折衝すべきものであろうと思います。まあそれがどうしても守られない場合とか、あるいは制止を必要とした場合には、それがまた個々にわたる場合はこれはやむを得ぬかと思います。
  153. 赤松勇

    赤松委員 私は条例それ自身には賛成じゃないのです。反対だ。反対の立場に立っておっても、すでに条例が県議会を通過してこの十一月から施行される。施行される条例の中で、その危険と思われるような個所を、現行警察法あるいは警察官職務執行法あるいは憲法、こういうものにのとって、でき得る限り警察権の発動を少なくしてもらう。そうしていたずらに事態を混乱させないようにしてもらおうということのために、ただいま答弁をしてもらったのでありますから、誤解のないようにお願いをしておきたいと思うのであります。  警備局長は五時から用があるそうでございます。何かこれはもう理事会の申し合わせになっておりまして、大臣は十分違反したから僕も違反する権利があるけれども、しかしそんなやぼったいことは言いません。続いて簡単に質問しておきましょう。  次にお尋ねしておきたいのは、先ほど大臣は、条例は各地の事情によってそれぞれ制定されるんだ、こういうことをおっしゃいましたね、私もその通りだと思う。ところが、各地の状況あるいはその区域におけるいろんな情勢によってこれがきめられるものだとすれば、警視庁において申請書が常時印刷されておる。画一的に書き込むようになっておるわけです。私はああいうようなやり方というものは、公安条例制定意味からいって間違いじゃないか、こう思いますが、これはいかがですか。
  154. 安井謙

    安井国務大臣 警視庁への届け出について、それぞれその規定された様式があるということは、これは私、警視庁として事務を運ぶ便宜上やむを得ないんじゃないかと思っております。
  155. 赤松勇

    赤松委員 そこで私は最後に、東京地裁判決の中から、この条例を設けなくても現行法で十分事足りるのであるということをこの判決文が言っておりますので、これをぜひ国会におきまして発言をし、かつ国家公安委員会に対して注意を喚起しておきたいと思うのであります。   例えば一部破壊的分子の煽動等により当初から公安を害し一般公衆に対し直接危害を及ぼす危険が合理的に判断して明らかである場合にも、事前に不許可処分によりこれを禁止制限し得ないことは不都合であるとの反論が考えられるのであるが、このような場合は、まさに自由権の濫用に該当し、本来許可申請の対象となり得ないものであって、警察官職務執行法第五条により警察官等において関係者に必要な警告を発し、或いはこれを制止することができるのであり、またこれら行動の参加者が多数官公庁の構内に集りその執務の妨害となる程度に達すればこれを退去せしめることができ、その違反は刑法第百三十条によって取締ることができ、更にこれらの行動が表現の自由の保障を受くべき正当な集団運動を装う場合にも既に述べた公共の福祉による調整の観点に立って、道路交通秩序維持の目的のため道路交通取締法に基き罰則を伴う許可制によってこれを規制し、なお一般公衆の静穏な生活を保持する目的のため昭和二十九年東京条例第一号騒音防止に関する条例によって騒音を発する者等に対し警告しまたは制止し、これに従わないものを罰則を以て強制することは憲法上も許されるものと解すべきことは既に説明したところから明らかであり、また以上のいずれの場合においても警告制止を行う警察官等の職務行為に対する暴行脅迫は公務執行妨害罪を構成することは当然であるから現行法による秩序維持の手段に欠けるところはなく、なお、集団運動に対する警備の特殊性に鑑み、ことに不測の事態の発生に伴う混乱に対処するため綜合的警備計画を立てる必要があることを十分に考慮するとしてもその手段としては警察当局はこれら行動について単なる届出制を以てこれを確認すれば足り、かつ、かかる制度の下にあっても、前示濫用の場合にこれらの行動を制止ないし解散させることのできることは謂うまでもないから一般的な許可制によって規制するまでのこともないと解せられるのである。  こういうふうに東京地裁判決文が示唆しているということを申し上げます。  最後に、これは公安条例じゃありませんけれども、特に地方公共団体として、今度は、自治大臣に考慮してもらいたいということを言っておりますので、これは一点だけ考慮しておいていただきたい。それは道路交通法によりまして、御承知のように運転免許の試験手数料とか免許証交付の手数料とか、あるいは更新手数料、こういったものが千円をこえない範囲において政令で定めることができる、こういうことになっております。それから同じく道路交通法の施行令の四十四条でもって、これまた運転免許手数料というように、免許手数料がずっとありまして、なお交通違反関係の罰金ですね。今ここで数字を持っておりますけれども、非常に莫大な数に上る。この点については、これを国の方で吸い上げるのではなしに、交通改善のためにその施設にこれらのものを利用するようにしてもらいたいということは、地方住民及び地方公共団体の強い要望でありますので、この点はぜひ御検討願いまして、適当な機会に御回答願いたい、こう思います。  以上をもちまして、私の公安条例に対する質問を留保して終わりたいと思います。
  156. 園田直

    園田委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は明十三日午前十時より開会することとして、これにて散会いたします。   午後五時十四分散会